2023年1月28日土曜日

岸田首相「再調査踏まえ必要な対応」 Colabo不正会計問題―【私の論評】colabo問題を追っていくと、財務省の「財政民主主義」にまでたどり着く(゚д゚)!

岸田首相「再調査踏まえ必要な対応」 Colabo不正会計問題

岸田首相

   岸田文雄首相は27日の参院本会議の代表質問で、東京都監査事務局が都の若年被害女性等支援事業を受託している一般社団法人「Colabo(コラボ)」の経費精算に一部不当な点があるとして都に再調査を指示していることについて、「再調査結果などを踏まえて必要な対応を行いたい」と述べた。同事業は国が経費の一部を負担している。

【私の論評】colabo問題を追っていくと、財務省の「財政民主主義」にまでたどり着く(゚д゚)!

岸田首相のColabo不正会計問題に対する発言は、悪くはないですが、それにしても具体的にどうすべきかは見えてきません。colaboというミクロの現象をどうやって政府がマクロ的に捕らえ、政府として具体的にどのように行動していくのが見えてきません。まさに「検討師」的な発言です。発言するなら、マクロ的な観点からある程度発言してほしかったです。

Colabo問題が未だはっきりしていないのに、厚生労働省は、困難に直面する女性への対応を手厚くするため「女性支援室」を4月に新設します。ドメスティックバイオレンス(DV)や性被害、貧困など女性を取り巻く問題は複雑化している実態を踏まえ、問題の解決や自立の促進につながる体制を目指すそうです。 

厚労省は従来から女性支援に前のめりだが・・・・・

現在は、厚労省の子ども家庭局に所属する職員3人が中心となり、生活困窮に苦しむ母子家庭の女性の問題などに対応しています。一方、アダルトビデオ出演の強要といった性的搾取に遭う若い人も増えてきました。 

このため、社会福祉を担う社会・援護局に女性支援室を4月に設け、問題に総合的に対処。専任の担当を10人確保するそうです。

こうした組織、結局またおかしげなことに活用されかねないと思います。女性支援という趣旨は結構だとは、思いますが都道府県などで実際に政策へ下ろしていくときは、このブログでも以前述べたようにいろいろな補助金を出します。その補助金が正しく使われているかどうかを、確認するのは至難の技です。その記事のリンクを以下に掲載します。
ネットで大騒ぎ「Colabo問題」めぐる税金の不適切な使われ方 国は〝弱者ビジネス〟助長させる「困難女性支援法」を見直せ―【私の論評】Colabo問題の本質は、日本の経済・支援政策のほとんどが減税ではなく、補助金で実行されること(゚д゚)!
結局、日本の経済政策や支援政策などの多くが、減税ではなく、補助金等で実行されることが、Colabo問題のような数々の問題を助長しているのです。

補助金等にばかり頼っていれば、補助金等のための審査は際限なく増え必然的に甘くなるというか、事実上できなくなり、Colabo問題のような問題を生み出し、さらに執行漏れが多数出るのは最初から判りきったことで、余った大量の補助金等は財務省が特別会計等として溜め込み、「死に金」となるのです。

このような不合理なことは、一刻もはやくやめて、日本でも減税を多用すべきです。減税であれば、補助金等と異なり、税金をとらないだけですから、簡単に実施できますし、それに不正の温床となることもあまりありません。それでいて、確実にしかも素早く効果があります。

このような、政策転換をしない限り、Colaboのような問題は防ぐことは難しいでしょう。

colaboのようなNPOでも、女性を助けるためには、様々な物品を購入するはずです、そのときに消費税が減免されれば、かなりの補助になるはずです。

しかし、支援のほとんどが税金ではなく、補助金や助成金ということなれば、それを実行するのは最寄りの地方自治体ですし、補助金は女性支援だけではなく、コロナから、失業対策から、から子供支援などもあり、地方自治体の事務量は莫大なものになります。 

そうなると、補助金・助成金の審査は十分にはできず、形式的なものになってしまいます。様々な書類などが型どおりに揃っていれば、それでOKという事にならざるを得なくなります。また、あまりにも数が多いので、監査もおざなりにならざるを得ないです。

このことが白日のもとに晒されたのは、まさに一般社団法人「Colabo(コラボ)」の件であるともいえます。

補助金などの使い道に関する、住民監査請求権がありますが、とにかく補助金には様々なものがあり、地方自治体もそれに関わる余裕がなく、住民監査請求は95%が門前払いで、「こんなものは請求に値しない」ということで終わってしまうのが、通例です。

ところが、Colaboに対する住民監査請求は2月末までの再調査になっています。とても珍しい例です。

今回のColaboの件については、以下の監査結果で、請求内容も見られます。
東京都若年被害女性等支援事業について 当 該 事 業 の 受 託 者 の 会 計 報 告 に 不 正 が あ る として、当該報告について監査を求める 住 民 監 査 請 求 監 査 結 果
この結果では、監査請求の内容もみることができますが、不正会計とみられる内容があまりに酷いのです。これは、本来補助金を出す時に、東京都の福祉保健局が十分対応すべきだったと思われますが、先にも述べたように、おそらくコロナの影響などでコロナ関係補助金や補助金が山積しており、十分に審査できなかったのでしょう。

岸田政権の経済対策や、事業支援対策など、ほぼすべてが、補助金によるものなので、地方自治体や政府なども実質上モニタリングできないような状態になるでしょう。

そのため、Colabo問題を住民監査請求に委ねるとしても、第三者が見るのにも限界があるでしょう。だから補助金などを配るにしても、方法を変えるべきです。

行政が手間をかけて審査や、監査を徹底するという考え方は事実上パンクしているのですから、全体の仕組みを変えるべきです。

まずは、政府の経済対策や事業支援対策などは、補助金・助成金主体から、減税主体とするのです。これで随分地方自治体の手間が減り、補助金の審査や監査がかなりやりやすくなります。

それともう一つの方法としては、補助金を配るのではなく、寄付したい人が、直接NPO法人などに寄付してもらう形式にするのです。補助金は税金を吸い上げて役所が配る仕組みです。それであれば、直接NPOなどに寄付してもらうようにするのです。

直接寄付してもらい寄付金額に応じて、税金を控除する方式にするのです。税収はその分減るのですが、効果は一緒です。それに税金を控除すれば、それが寄付へのインセンティブにもなります。

これが、欧米などで行われている方式であり、欧米では寄付金文化が根付いています。日本で、こうした寄付金文化が根付いていなかったのは、こうした仕組みがなかったことが大きな原因です。

このブログでもかつては、良く掲載していたことなのですが、日本ではNPOというと、奇特な人たちが手弁当で集まり、実施する奇特な事業ということで、あまり期待される存在ではありませんでした。

一方米国では、たとえば、低所得者住宅提供を、就業支援プログラムなどを含む、包括的パッケージとして提供する事業などがあります。それを実行するNPOに建設会社、銀行なども加わり大々的な事業を展開したりしています。こんなことを言うと、日本ではなんのことやら、わからないという人もいるかもしれません。

そのため、NPOは米国では立派な事業と考えられており、大学院を卒業した将来を嘱望されるような優秀若者が、就職先に選ぶということも普通のことです。また、民間営利企業でやり手だった企業経営者が、営利企業に嫌気をさして、非営利企業のNPOの経営者に転身して、大事業をやり遂げるということも珍しくはありません。

かつてドラッカーも評していたのですが、米国の優秀な非営利事業のNPOにおける、マネジメントは利益という指標がないからこそかなり厳しく、徹底的に使命(ミッション)やそれに関わる目的や目標を追求しているとされ、民間営利企業はこれを見習うべきと述べています。

米国のように、寄付したい人が、NPO法人などに寄付すれば、寄付した人が自分が寄付したお金がきちんと使われているかどうか監査することになります。この方法なら、寄付した人はより関心がありますから、よりきちんと監査することになるでしょう。

そういうこともあってか、米国では毎年、星の数程のNPOが生まれる一方、星の数程のNPOが消えていきます。

米国では、税金では自分の寄付したお金がどう使われているかをよく見ることができなので、なるべく税金を支払わないようにして、NPOになるべく多く寄付するという人もいます。

日本では、colaboの資金源は補助金の他どこからお金が拠出されているかを調べると、いろいろな名前が上がった中に、「赤い羽根共同募金」もありました。

colaboに寄付できますの間違いか・・・・・・

日本では、NPOへの寄付が根付いておらず、寄付金は少額なのが通例です。しかし、米国式に大きな金額の寄付も受け付けられるようにして、寄付した人達自身が監視するという方式にすべきです。無論、NPO側も、インターネット上で財務内容を公表するのが前提です。そうした方が、政府や自治体が監視するよりも監視は効くと考えられます。

ただ、こうしたことを推進する上でネックになるのが財務省です。財務省は、個人の意向でNPOに寄付をしそのお資金でNPOが社会事業を推進することは、「財政民主主義」に反するとみているようです。

日本では社会事業に関しては、全部税金という形で一旦国庫に入れて、それを国が分配するという形をとります。財務省は、これを「財政民主主義」と主張しています。しかし、もし先にあげたように、税金を控除されるしくみがあれば、国民は今より多く民間のNPOに寄付をすることになるでしょう。

そうすれば、国の財政として国民に選ばれた国会議員が何にいくら使うということを決めないで、民間のNPOが社会事業を実施することになります。財務省は、これだと財政について民主主義が崩れると考えているようです。

しかし、この「財政民主主義」という考え方によれば、社会事業に関する財政は、全部公務員が進めていくことになります。この考え方だと、減税や寄付よりは補助金・助成金のほうがより民主的ということになります。これらは、単なる手段であり、どのような手段を取ろうと、場合によって効率的、非効率等の違いはありますが、民主・非民主的の指標とはなりえません。


この論理はおかしいです。現状のNPOは業務に関して官庁や地方自治体の認可を受けかつ官庁等に詳細な報告義務を持つはずですが、先にも述べたように、すべての社会事業を官庁や地方自治体が事前審査し、事後監査することなど不可能です。

こうした財務省による「財政民主主義」の間隙をぬって、これを活用して、社会事業を餌に、公金をチューチュー吸い上げよういう人達も多数でてくるのでしょう。

無論、ミクロ的に見れば、様々な個人や組織が結びついたり、ついたりで、さながらアメーバのようにして、その時々で、最も公金を吸い上げやすいように変幻自在に形を変えているものとみられます。

そうして、官僚は補助金によって自ら差配をしたがります。このような仕組みをつくろうとする人はたくさんいます。官僚でも助成に限らず、NPO関係の補助金の仕組みをつくろうとする人は多いです。

今後も女性支援を強化していくなら、きめ細やかな対応が必要なことから、NPOの数が増えると思います。

これを全部行政が対応するとなると、先の述べたようにマンパワーも何もかも足りないです。そこで専門性のあるNPO法人に委託するにしても、監査を全部行政がやるのは非効率です。

東京都であれば、女性支援を担当している部署は福祉保健局になりますので、まさにコロナと正面で向き合っているところです。マンパワーも予算もそちらに割かれることになります。

先にも述べたように、厚労省で別の組織をつくるということですが、「女性支援室」の10人では、いくら何でも全国の話をそこでチェックするのは無理です。政策は良いにしても、公金を使うときには何らかの仕組みを考えなければなりません。

日本でも、NPOの基盤を強くし、今回のcolabo問題のような問題をなくすためには、官庁や自治体、NPOの自助努力だけでは限界があります。まずは寄付文化が根付くように、今後の税制改正も実現すべきです。

そうして、寄付金を元に、まともなNPOが活動しやすくするとともに、大口寄付者等がNPOの審査や、監査ができる体制も整えるべきです。財務省や他省庁の官僚たちも、すべての社会事業を自分たちが差配できるなどという幻想は捨てるべきです。

そうでないと、colaboのような問題はモグラ叩きのようになって、いつまでたってもなくならないでしょう。

このような問題については、随分前には、このブログに掲載していたのですが、最近はほとんど掲載していませんでした。それは、ブログに掲載しても、多くの人に関心を持ってもらえなかったからです。

しかし、今回Colabo問題が起こったことにより、日本の寄付金文化の問題やNPOの問題は従来よりは、はるからに多くの人に理解してもらえるきっかけになると思います。まさに、暇空茜さんの功績は大きなものです。

さらに、もし安倍元総理がご存命であれば、この問題の全容を岸田総理のようにミクロ的な見方しかしないのではなく、マクロ的な観点から理解し、暇空茜さんの功績を、行政に活かす試みがスムーズにできたと思います。それを思うと、残念でなりません。

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2023年1月27日金曜日

気候学者:今、地球規模の冷却サイクルに突入している―【私の論評】地球温暖化CO2説は「仮説」に過ぎないが、世界中に様々な弊害や対立を生み出している(゚д゚)!

気候学者:今、地球規模の冷却サイクルに突入している

2023年1月26日掲載 文:トム・ネルソン


原文:https://principia-scientific.com/climatologist-were-going-into-a-global-cooling-cycle-now/


デービッド・デイリー教授


政府機関は、二酸化炭素のレベルが上昇しているのは、すべて人間の活動と化石燃料の燃焼が原因であると言っている。しかし、本当にそうなのでしょうか?

デービッド・ディリー教授は、今日の気温と二酸化炭素のレベルが、過去の周期に基づいたあるべき姿に非常に近いことを示します。

また、長期的な地球寒冷化のサイクルに移行しつつあることも紹介します。地球温暖化は極地で始まり、極地で終わる。そして、地球寒冷化は北極と南極で起こっている。

#第64回 デイヴィッド・ディリー 「ついに証明された、大気中の二酸化炭素の増加は、ほとんど自然なものである」 - YouTube



ディリー教授は、気象学者、気候学者、古気候学者であり、元NOAA国立気象局の気象学者である。

自然界の気候・気象サイクルを予測する技術の研究開発に大きく関わるGlobal Weather Oscillations(GWO)社の創設者兼CEOを務めている。
ディリー教授は、空軍からNOAA国立気象局、GWOに至るまで54年の経験を有している。

GWOの上級研究員兼予報官として、ディリー氏は地球-月-太陽の地磁気サイクルに基づき、これらのサイクルが歴史的、現在的、そして将来の気候・気象のサイクルとどのように整合するかを研究するクライメートパルステクノロジーを開発しました。

【私の論評】地球温暖化CO2説は「仮説」に過ぎないが、世界中に様々な弊害や対立を生み出している(゚д゚)!


日本全国が、寒波に見舞われています。現在、野菜などが値上がりしていますが、今後もこの状況は続きそうです。以下に、これに関する動画を掲載します。


このブログでは、10年くらい前までは、良く地球温暖化CO2説への疑問などを、掲載したものですが、最近では、世界的に「地球温暖化CO2」説は、当然のこととされ、特に先進国では、それを前提として動くようになったのでほとんど掲載したことはありません。

ただ、これだけ日本国内でも、全国的に寒さが続けば、さらに世界中から寒波のニュースが入ってくると「地球温暖化」に疑問を持つ人も多いのではないかと思います。


元々「地球温暖化説」や「地球温暖化二酸化炭素説」は、「仮説」に過ぎません。そのことは、わかっているのですが、それにしても仮説が当たっている場合もあり得るし、限りある化石燃料を節約するということでも意義があり、今では世界の多くの国々、特に先進国がこの「仮説」を正しいものとして、様々な政策を立案したり、外交をしたりしています。

ただ、「仮説」に過ぎないものを「真説」として動くことには、様々な弊害もあります。これについては、以前このブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ―【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、その開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!
これは、昨年8月19日の記事です。詳細は、粉の記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。


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スリランカの経済が破綻し大規模デモがおきて政権が転覆したのは、数々の失政が重なった結果ですが、とどめの一撃となったのは燃料費の高騰でガソリンが輸入できなくなったことでした。


スリランカの最大都市コロンボで最近みられる、ガソリンスタンドでたくさんの車やバイクが行列をつくる光景

いまの開発途上国でのエネルギー危機は、単にウクライナの戦争のせいではありません。近年になって、欧米の圧力によって化石燃料事業への投資が停滞していたことが積み重なって、今日の破滅的な状態を招いているのです。

インド人の研究者である米国ブレークスルー研究所のビジャヤ・ラマチャンドランは科学雑誌Natureに書いています。
「近代的なインフラを最も必要とし、世界の気候変動問題への責任が最も軽い国々に制限を課すことは、気候変動の不公正の極みである」。
ラマチャンドランは、国際援助において、気候変動緩和をすべての融資の中心に据えるという近年の方針について、偽善であり、二枚舌だとして、猛烈に抗議しています。
「それは、経済開発に使える資源を必然的に減らすことになり、しかも地球環境にはほとんど貢献しない。・・なぜそのような努力をするのか。世界銀行とIMFの主要株主である富裕国は、これまでのところ、エビデンスや合理的なトレードオフに基づく気候変動政策の策定にはほとんど関心を示していない。 
それどころか、天然ガスを含む化石燃料への融資を制限し、自国では思いもよらないような制限を世界の最貧国に対して課すことを、自画自賛しているのである。その規制の中には、化石燃料への開発金融をほぼ全面的に禁止することも含まれている。 
世界銀行は、気候変動緩和政策と貧困削減の間の急激なトレードオフを最もよく理解しているはずである。しかし、国内の環境保護団体を喜ばせたい資金提供者が課した条件には従うしかなかったようだ。・・欧州連合は、自分たちはクリーンエネルギーの原子力発電所を停止し、天然ガスの輸出入を増やし、国内の石炭発電所を新たに稼働させる一方で、開発金融機関に対しては、貧困国でのすべての化石燃料プロジェクトを直ちに排除するよう主張している。」
「さらに悪いことに、EUの官僚たちは現在、『何がクリーンエネルギーか』をめぐって一進一退の攻防を繰り広げている。燃料不足に直面する加盟国から、原子力や天然ガスまで定義(タクソノミー)を拡大するよう圧力がかかっている。その一方でEUの広報担当者は、“EUの柔軟な分類法は、開発政策に反映されることはない”と明言した。つまり天然ガスはヨーロッパ人にとってはグリーンだが、アジアやアフリカの人々にとっては事実上禁止されるということだ。」
何十億人の人々が、先進国のエリートたちによって、化石燃料のない、貧困に満ちた未来へと組織的に強制されているのです。気候危機説を信奉する指導者たちが、開発途上国の化石燃料使用を抑圧しているからです。哲学者のオルフェミ・O・タイウォは、この現象を「気候植民地主義」と呼んでいます。

残念ながら、日本もこれに加担しています。

6月22日に、日本の外務省はバングラデシュとインドネシアに対する政府開発援助(ODA)による石炭火力発電事業支援の中止を発表しました。CO2の排出が理由であり、G7の意向に沿った形です。

ちょうどその同日、この夏の電力不足に対応するため、停止していた火力発電所の再稼働を急いでいる、とのニュースが流れました。千葉県の姉崎火力発電所5号機、愛知県の知多火力発電所5号機などです。

自分の国で電力不足になると火力発電に頼る一方で、途上国の火力発電所は見捨ててしまうというのは道義にもとります。日本がいま電力不足なのは事実だですが、バングラデシュほど慢性的に電力が不足し停電が頻発し経済に甚大な悪影響を及ぼしている訳ではありません。

開発途上国の化石燃料利用を禁止する一方で、今後は経済開発を再生可能エネルギーで実現しろと命じるのは、発電の物理的現実と何十億人もの貧困を否定する傲慢さを示すもの以外の何ものでもありません。
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温暖化になろうと、寒冷化になろうと、日本は南北に長い国ですから、暑い所から涼しいところへ、寒いところから温暖なところへと国内で移住することができます。国内で移住できるということは、言語の問題も生活習慣の問題もなく、外国に行く思いをすれば、やりやすいです。

さらに、日本は原発もありますし、CO2をほとんど出さなくても発電できる石炭火力発電所をつくる技術もあります。このようなことができない国々も世界には多数あります。

発展途上国からみれば、恵まれているといえます。私達は、「気候植民地主義」によって、被害を受ける人たちのことなど、気に留めることもなく、「暑い」「寒い」と語っています。ただ、日本でもエネルギー価格が上昇しているのは事実ですし、この世界的な状況はなんとしても変えなければならないでしょう。

以下に、さらにこの記事より引用します。


"
2017年11月に開催された「東アジアサミット」、2017年9月に開催された「ASEAN+3エネルギー大臣会合」においても、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用していきたいとの言及がありました。また、その導入のため、金融面・技術面で支援を求める声もありました。

2017年11月に開催された「東アジアサミット」中央は安倍総理(当時)

日本は、海外に対して、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を提案し、支援しています。日本は、石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本ができる貢献として、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっているのです。これは、途上国の発展に対する貢献になることはもちろん、アジア地域全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減への貢献にもなります。
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この「東アジアサミット」には、当時安倍首相も参加していました。安倍元首相は、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用していきたいとの言及があったことや、その導入のため、金融面・技術面で支援を求める声もあったことを覚えていたことでしょう。

ウクライナの戦争があって以来、先進国はエネルギー獲得のために奔走し、何とか冬を越せるだけのエネルギーの獲得には成功したようです。

経済力が劣る発展途上国はグーローバル・サウスといわれるように、ほとんどが南に位置しているため、エネルギー不足であっても、日常生活はなんとかできるということはあるのですが、それにしてもスリランカのように、その影響を受けて、財政難になる国も多いでしょう。

エネルギー問題は、先進国の都合だけで考えるべきではありません。発展途上国が成長できるように、全世界レベルで考えるべきです。

先の引用記事にも書いたように、日本は、海外に対して、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を提案し、支援しています。

日本は、石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっています。これは、途上国の発展に対する貢献になることはもちろん、グローバルサウス全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減への貢献にもなります。

もし、安倍総理がご存命であれば、こうした問題にも真剣に取り組み、新たな概念を打ち出し、「気候植民地主義」に対抗したのではないかと思います。それは、また世界を動かすことになったかもしれません。

昨年9月、ドナルド・トランプ前米政権の国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏が「ウクライナの戦争は、なぜ世界が米国の『エネルギー・ドミナンス(優勢)』を必要とするのかを明らかにした」という論説を発表しました。これは米国共和党の考えをよく要約しています。

《バイデン米政権は、米国の石油、天然ガス、石炭、原子力を敵視してきた。これがなければ、米国も欧州も戦略的にはるかに有利な立場にあり、プーチンのウクライナでの戦争を抑止できた》《欧州はロシアのエネルギー供給に依存して脆弱(ぜいじゃく)性をつくり出してきた。だが、本来は、そのエネルギーは米国が供給すべきものだったのだ》

《われわれは、米国のエネルギーの力を解き放たねばならない。天然ガスやクリーンコールなどのクリーンエネルギーを、欧州やインド太平洋地域の同盟国に輸出する努力を倍加させねばならない》《われわれ共和党は秋の中間選挙で大勝し、民主党の環境に固執したエネルギー政策を覆し、米国のエネルギー・ドミナンスを取り戻す》

力強い発言なのですが、グローバル・サウスのことはあまり考えていないようです。先進国が、グローバル・サウスを無視して、動けば世界はますます混乱することでしょう。エネルギー欲しさのために、ロシアに近づく国々もでてくるでしょう。

さらには、西側同盟と中露枢軸の競争激化は、ミドルパワー(中級国家)に機会とともに脅威をもたらしています。米欧や中露は、大国の中間にいるトルコ、サウジアラビア、インドネシア、南アフリカなどに一層の注意を払わねばならなくなっています。

これらの国々がグローバル・サウスに大きな影響力を行使することも考えられます。西側同盟国は、ミドルパワー国を数多く、味方にひきいれる必要があります。そのためか、このポンペオ氏の論説は、あまり多くの人の心を打つこともなく、世界に多大な影響を及ぼすこともなく、単に昨年の中間選挙の共和党への応援で終わってしまったようです。

やはり過去にエネルギー問題で苦しんできた日本のような国が、エネルギー安全保障においても、グローバル・サウスを含めた世界のエネルギー安保を打ち出していくべきです。無論、エネルギー安保でも、今の世界は、中露と対峙しなければならないことは言うまでもありません。中露にエネルギー覇権を握られてしまえば、とんでもないことになります。

安倍元総理が亡くなられたことが、残念でなりません。しかし、これはいずは誰かが必ずやらなければならない避けて通れない問題です。


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2023年1月26日木曜日

金氏、在韓米軍の駐留許容に言及 18年、トランプ氏特使と会談で―【私の論評】ポンペオ回顧録で金正恩が、中国の朝鮮半島への浸透を嫌がっていることが改めて浮き彫りに(゚д゚)!

金氏、在韓米軍の駐留許容に言及 18年、トランプ氏特使と会談で

 回顧録 表紙

 ポンペオ前米国務長官は24日出版の回顧録で、2018年に当時のトランプ大統領の特使として極秘訪朝した際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記から「中国共産党から自分を守るため在韓米軍は必要だ」と伝達されたことを明らかにした。北朝鮮が敵視してきた在韓米軍の駐留を許容する発言として注目されている。

 中央情報局(CIA)長官だったポンペオ氏は18年3月30日に米国を出発し、北朝鮮の首都平壌で金正恩氏と会談した。

 金正恩氏は「中国は朝鮮半島をチベット、新疆ウイグル両自治区のように扱うため、米軍撤収が必要なのだ」と述べたという。

【私の論評】ポンペオ回顧録で金正恩が、中国の朝鮮半島への浸透を嫌がっていることが改めて浮き彫りに(゚д゚)!

回顧録によると、ポンペオ氏は2018年、CIA局長の資格で平壌(ピョンヤン)を訪問し、金委員長に会いました。この席でポンペオ氏が「中国共産党は以前から『在韓米軍が韓国を離れれば金委員長は喜ぶはず』と主張している」と話すと、金委員長は「中国人は嘘つきだ。中国共産党から自分たちを守るために韓国内の米国人が必要であり、中国共産党は朝鮮半島をチベットや新疆のように扱うために米軍の撤収が必要だと話す」と答えたといいます。

ポンペオ氏(左)と金正恩

「中国は朝鮮半島をチベット、新疆ウイグル両自治区のように扱うため、米軍撤収が必要なのだ」と述べたといいます。

金正恩氏の言葉に出てくる中国の本音については事実と合致する側面もあります。中国の習近平・国家主席はトランプ前大統領に「韓半島は中国の一部だった」と語ったことがあり、実際に北朝鮮はチベットや新疆ウイグル自治区と同じ道を歩んでいます。

北朝鮮は貿易の90%以上を中国に依存しており、中国からの食料支援や石油支援なしには存立そのものが難しいです。「北朝鮮は(中国の)東部4省」という言葉もあるほどです。この中国を「高い山のいただき」などと仰ぎ見ていたのも文前大統領でした。

ポンペオ氏は「金正恩が(中国の脅威から朝鮮半島が)保護されることを望んだ」とし「朝鮮半島に米国のミサイルや地上戦力が増強されることを北朝鮮は全く嫌がっていない」と記録しました。

回顧録には2018年6月12日にシンガポールで開催された米朝首脳会談での対話も詳細に伝えました。当時、トランプ大統領は金委員長に「エルトン・ジョンを知っているか」と尋ね、彼のヒット曲「ロケット・マン」に言及した。

そして金委員長のあだ名「リトルロケットマン」を曲名にしたと語った。この言葉に金委員長を含む出席者の大半が笑い、金委員長は「ロケットマンはよい。しかしリトルはよくない」と冗談を言ったと、ポンペオ氏は振り返りました。

2019年2月にハノイで行われた米朝首脳会談の決裂について「金正恩氏が寧辺核施設解体の見返りに北朝鮮制裁の全面解除を求めたため」と明かしています。金正恩氏の要求が通れば北朝鮮は名実共に核保有国となっていました。この北朝鮮の要求を飲むよう求めていたのが文前大統領でした。当時文在寅政権の青瓦台(韓国大統領府)はボルトン氏の回顧録について「歪曲」と主張し強く否定しましたが、青瓦台のこの主張もやはり嘘だったのです。

2019年6月30日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領とトランプ大統領、金委員長が板門店(パンムンジョム)軍事境界線で会った「板門店会談」(写真下)のエピソードもあります。


ポンペオ氏は「当時、北朝鮮はもちろん米国も文大統領の同行を望まなかった」と強調しました。ポンペオ氏は「(当時)私たちが直面すべき最も大きな挑戦について知っていた」とし「その挑戦とは文大統領が歴史的事件の一部になることを要求することだった」と伝えました。

また「金委員長はトランプ大統領と2人で会うことを望んだ」とし「金委員長は文大統領のための時間も敬意もなかったため、我々は正しい判断をした」と回顧しました。

互いに核保有国である、インド・パキスタン関係については、「2019年2月にインドとパキスタンの対立が核戦争に突入する寸前まで行ったことを、世界が正しく理解しているとは思わない」と述べています。 

「真実は、私も正確な答えは知らないが、あまりにも寸前だったことは知っている」 また、ヴェトナムの首都ハノイで「核兵器について北朝鮮と交渉していた」首脳会談の夜、「インドとパキスタンが、数十年にわたる北部国境地帯カシミール地方の紛争に関連して互いに脅迫し始めた」ことを「決して忘れないだろう」と述べました。 


このブログては、北朝鮮に関して、金正恩は中国を嫌っていること、さらに、北朝鮮およびその核が結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいることを主張してきましたが、このことをポンペオ氏の回顧録でも裏付けられたと思います。

最後に、回顧録に安倍元首相のことが書かれているかどうかについては、ここに掲載するとネタバレになってしまいますので、興味のある方は是非、ご自分で直接書籍をご覧になって下さい。

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2023年1月25日水曜日

ウクライナ情勢が大きく動く…独「レオパルト2」米「エイブラムス」主力戦車を供与へ―【私の論評】戦車を戦地に配備するまでは数カ月を要する。ウクライナ戦争はこれから1年は続く(゚д゚)!

ウクライナ情勢が大きく動く…独「レオパルト2」米「エイブラムス」主力戦車を供与へ

ショルツ首相

 ドイツのショルツ首相が、主力戦車「レオパルト2」の供与を決めたと、ドイツメディアが報じている。一方、アメリカも、主力戦車を供与する方向で、最終調整に入ったという報道もある。

■北欧諸国など“同盟国”も連携 供与する計画

 ウクライナが求める“主力戦車”の供与が大きく動き出した。

 ドイツのショルツ首相が、自国製戦車「レオパルト2」をウクライナに供与することを決めたと、現地メディアが報じた。

 ドイツからは、少なくとも「レオパルト2」を1台供与し、ポーランドなどからの供与も、許可することを決定したという。

 また、北欧諸国など、他の同盟国もドイツと連携し、ウクライナに「レオパルト2」を供与する計画だと伝えている。

■米国が一転…主力戦車「エイブラムス」供与へ

 一方、アメリカにも新たな動きがあった。

 主力戦車である「エイブラムス」を供与する方向で、最終調整に入ったと複数のアメリカメディアが報じている。

 「エイブラムス」を巡っては、これまでアメリカ国防総省が、ウクライナでの運用はメンテナンスやコストの点で理にかなわないとして、供与しない方針を示してきた。

 しかし、ここにきて一転、供与に向け動き出したアメリカ。そして、慎重姿勢から、ついに転換したドイツ。侵攻から11カ月、ウクライナ情勢が大きく動いている。

【私の論評】戦車を戦地に配備するまでは数カ月を要する。ウクライナ戦争はこれから1年は続く(゚д゚)!

なぜレオパルト2が重要視されるのでしょうか。シンクタンク「欧州外交評議会」によると、ポーランドやフィンランドを含む欧州13カ国は既に、近代的なドイツ製レオパルト2を保有しています。レオパルト2は1979年に導入された後、数回にわたって改修が行われてきました。

レオパルト2

保有国の多くはウクライナへの再輸出に同意したものの、ドイツの承認が必要な状況だ。ポルトガル国防省によると、ドイツのラムシュタイン空軍基地で開かれた会合では、こうしたレオパルト保有国の関係者が協議する場面がありました。

合計では約2000両のレオパルト2が欧州各地に散らばっており、準備状態にはばらつきがあります。

レオパルド2は120ミリ滑腔砲や7.62ミリ機関銃を搭載。オフロードで時速70キロを出せる高い機動性が特徴です。製造元であるドイツのクラウス・マッファイ・ベクマンによると、即席爆発装置(IED)や地雷、対戦車砲などの脅威に対する全周防御機能も持ちます。

多数の車両が既にウクライナの近くに配備されていること、他のモデルに比べ整備の必要性が少ないことから、専門家はレオパルト2が供与されればすぐさまウクライナの追い風になる可能性があると見ています。

米大手兵器メーカー、ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)は2022年10月9日、次世代主力戦車のコンセプトモデル「エイブラムスX(AbramsX)」を公開

一方、第二次世界大戦(WW2)後の最強戦車と称されるのが、米軍のM1エイブラムスです。無論単純比較、特にレオパルト2と単純比較はできませんが、第二次世界大戦後の冷戦期、朝鮮戦争やベトナム戦争に本格的な戦車戦はありませんでした。中東紛争でも、当事国に武器供与はあったのですが、逆に東西双方の兵器が混在し、米国のM46/47〜60パットンや、旧ソ連のT-54/55〜62、そして独・仏・英の主力戦車も大戦車戦を経験していませんでした。

こうした中、本格戦車戦となったのが、1991年に勃発した湾岸戦争で、1981年に採用された主力戦車M1が初めて、ソ連製のT-62や72と真っ向から対峙しました。それまで西側諸国の戦車は常に、ソ連のT-54/55・62・72を「脅威」として追従してきた経緯がありました。

M1エイブラムスは半ば伝説化されていたT-62や72を、圧倒的な火力と装甲で一方的に撃破し、地上戦勝利の立役者となりました。その後のイラク戦争やアフガニスタン紛争でも、イスラム側のT-55〜72に対しても一方的な戦いをし、WW2後の実戦における最強戦車として評価されました。

WW2から米陸軍は、M4中戦車、M26重戦車とも二流品であることを承知していました。戦後第1世代戦車のM46〜48パットン シリーズが、ソ連のT54/55と何とか互角に戦えれば良いという状況でした。これは、米軍にとって本土が戦場と化すことはないという前提があり、戦車の出番は主に同盟国の支援に過ぎなかったためです。

第2世代のM60パットンが旧式化する頃、西ドイツと共同開発を行っていた第3世代戦車/MBT-70計画が頓挫。ここから生まれたのが、M1エイブラムス(1981年採用)と、ドイツのレオパルド2(1979年配備。M1と並び現代最強とされる)でした。

火力と装甲に関しては他のメディアでごらんいただくものとして、M1の最大の特徴は機関にガスタービンエンジンを採用したことです。ガスタービンはジェットエンジンの派生形。航空機ではお馴染みの機関で、吸気タービンの前にシャフトを出しプロペラを装着すればターボプロップ。排気タービンの後方にシャフトを出せば、ターボシャフトエンジンとなります。

吸気-圧縮-燃焼-排気を行程ではなくブロックで行う構造があり、次の特長があります。
■小型軽量・高出力。
■高品質の燃料を必要としない。ジェット燃料・軽油・ガソリンとも使用可能。
■振動・低周波騒音が少ない。
■過給機・冷却補器類が不要。
■オーバーホール期間が長い。
このように航空機や船舶に最適な理由で、レシプロエンジンにとって代わったわけです。また、米軍は伝統的に武器装備や燃料の共有化と互換性を重視しており、M60の前期型まで戦車もガソリンエンジンでした。航空機や艦船でガスタービンエンジンが一般化すれば、同じ燃料が戦車にも供給できる理屈になります。

しかし、常時タービンを回す(駐車待機時は、補助の小型ガスタービンエンジンを作動して車内電力を確保している)ため、毎時約45Lもの燃料を消費し、小型軽量化されても燃料をバカ食いする燃費のため、第3世代ディーゼル戦車の2倍もある巨大な燃料タンクが搭載されています。

ガスタービンは、加減速のレスポンスこそレシプロエンジンに劣りますが、一度パワーに乗ると爆発的で、非常時は約2万2500rpmのタービン軸から3500rpmを出力し、100km/h走行も可能とされています。無論駆動系がもてばの話です。

M1エイブラムス戦車はシステムとして世界最高品質の戦車です。レオパルド2より防御力などが優秀です。しかしながら、それは、いわばスイス製の高級腕時計のようなもので、実に繊細で、手のかかる戦車だ。米軍というゆりかごの中でこそ実力を発揮する戦車といえます。ウクライナ軍が運用できるようになるまでは、ある程度の期間が必要ですし、米軍のサポートは欠かせないでしょう。

一方、ドイツのレオパルド2の最新型は、レオパルト2A7Vです。これは、2021年9月15日に実戦部隊に配備されたばかりです。運用を開始したことを明らかにしました。

レオパルト2A7Vは、ドイツが40年ほど前に開発したレオパルト2シリーズの最新型で、「V」とは改善を意味する略語とのことです。従来型と比べて防御力、機動力、火力などが大幅に向上しているのが特徴で、加えてエアコンや補助電源装置、新型のNBC(核兵器・生物兵器・化学兵器)防護装置、最新のネットワーク通信システム(C4I)なども搭載されています。

また、エンジンとトランスミッションが一体化したパワーパックは新型に換装されており、これにより装備が増えても機動力は向上しているといいます。そうして、何と言っても運用面では、M1エイブラハムより簡単です。ウクライナ軍も運用しやすいでしょう。

M1エイブラハムはバージョンアップの度に追加装備が増え、現在は64トン弱もありますが、これはドイツのレオパルド22A7Vも同じです。むしろ両者とも40年間更新しながら配備されていることが、最強伝説といえます。

独政府は声明で、レオパルト2を保有する他国と合わせて「2個の戦車大隊」編成を目指すと表明。独メディアによれば、計80台程度の規模が想定されています。

ドイツは第1弾として14台を供与。これとは別にポーランドが、自国保有の14台をウクライナへ引き渡す手続きに入っています。フィンランドやオランダなども追随する姿勢。製造国ドイツが供与を認めたことで、こうした動きがさらに広がりそうです。

米国からはエイブラムス数十台が送られる可能性があります。英国は既に戦車「チャレンジャー2」14台の供与を決め、フランスでも戦車「ルクレール」供与の可能性が取り沙汰されています。いずれもウクライナ兵の習熟訓練や整備に時間が必要で、実際に戦地へ配備されるまでは数カ月を要する見込みです。

領土奪還を目指すウクライナは、ロシアによる大規模な攻勢に警戒感を強め、欧米諸国に戦車供与を強く要望してきました。AFP通信によると、イェルマーク大統領府長官はドイツの決定を歓迎するとともに「次は『戦車連合』形成だ。多数のレオパルトが必要になる」と主張しました。

欧米製の主力戦車は地上戦で敵陣を突破する破壊力を持ち、こう着が続く前線で大きな威力を発揮すると期待されています。とりわけレオパルト2は「最も成功したモデル」(英シンクタンク)と評され、欧州諸国が計約2000台を保有。部品の調達も容易で、ウクライナ軍には最適と見なされてきました。

ドイツのレオパルト2が、ウクライナに提供されることになれば、20、30両では戦況を変えることはできませんが、少なくとも100両あれば、重要な作戦で正面に配置し、かなり戦況は有利になると考えられます。

ただし、実際に戦地へ配備されるまでは数カ月を要することから、それまでの間ロシアの反攻が続く可能性があります。これをどれくらい持ちこたえるか、あるいは反攻されて後退したとしても、なるべく多くの損害をロシア軍に与えることが鍵となりそうです。

実際、ウクライナがロシア軍に占領された地域を奪還するための戦いは、今年中には終わらないとの見通しをアメリカ軍の制服組トップが示しました。

米軍ミリー統合参謀本部議長(制服組トップ)「軍事的な観点から言えば、(ウクライナから)今年ロシア軍を追い出すことは非常に困難であると考えています」と述べました。


軍の制服組トップ・ミリー統合参謀本部議長は20日、このように述べたほか、戦闘によるロシア側の死傷者は10万人をはるかに上回るとの見方を示しました。

米軍制服組トップがこのような発言をするのは、無論レオポルト2のような戦車を投入したとしても、その戦場への配置には数ヶ月はかかることから、そのくらいはかかるとみているからでしょう。

兵器一つを導入するにしても、それを操作する乗員の訓練、弾丸、部品などの消耗品のロジスティクス、メンテナンスの体制を整えなければならず、わたしたちが新車を購入して、運転するのとは全く違い、多大な時間と労力を必要とするのです。

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2023年1月24日火曜日

日銀の「追加利上げ」見送りで思惑外れた債券村の自業自得 新体制では金融業者寄りに転向も―【私の論評】岸田政権が増税路線を貫き、4月からの日銀新総裁が金融引締派なら、今年中にGDPで独に追い越されかねない(゚д゚)!

日本の解き方
日銀の「追加利上げ」見送りで思惑外れた債券村の自業自得 新体制では金融業者寄りに転向も

日本銀行

 日銀は18日、黒田東彦(はるひこ)総裁体制で最後になるとみられる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表した。4月以降の新体制での金融政策によってどのような変化が出る可能性があるだろうか。

 展望リポートでは「消費者物価の前年比は、現在、2%を上回って推移しているが、来年度半ばにかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと予想される。消費者物価の基調的な上昇率は、時間はかかるものの、マクロ的な需給ギャップの改善や、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率の高まりなどを背景に、『物価安定の目標』に向けて徐々に高まっていくと考えられる」としている。

 要するに、今の消費者物価指数は2%を超えているが、来年度半ばには2%を下回り、その後いずれ2%に盛り返すだろうという見方だ。

 来年度半ば以降の話は、日銀の政策努力を示したものとみられるので、そのシナリオを考えてみたい。

 今の消費者物価の上昇は、主に海外要因であるエネルギー価格と原材料価格の上昇によるものだ。これが価格転嫁できるかどうかは、国内需要が旺盛かどうかによる部分が大きい。

 一部品目では転嫁する動きがあるが、それが功を奏するかは今後の景気動向に依存する。つまり、価格を上げたものの、需要がついてこれず、引き下げになる企業もあり得るというのが筆者の見方だ。

 現状ではまだ相当のGDPギャップ(総需要と総供給の差)がある。全体としては需要不足なので、価格転嫁が全てでうまくいくとは思えない。その意味から、日銀のシナリオは、筆者のものと大差はない。

 需要不足が予想されるのは、岸田文雄政権の「反アベノミクス」の立場が、昨年末の「防衛増税」や、「日銀の事実上の利上げ」で明らかになったからだ。

 黒田日銀は昨年末、事実上の利上げを行い、岸田政権の意向に従った。市場関係者は、国債の償還期間と利回りを示すイールドカーブ(利回り曲線)で、10年物の利回りが落ち込んでいることを「ゆがみ」と称し、マクロ経済からの観点ではなく、金融業者の観点から、さらなる利上げを日銀に求めている。

 黒田日銀ではイールドカーブコントロール(長短金利操作)を導入したこともあり、債券業者は開店休業状態だった。ここにきて、にわかに利上げを催促しているが、日銀は応える必要はない。1月17、18日の金融政策決定会合ではさらなる「利上げ」を踏みとどまり、現状維持とした。当てが外れた業者もいるだろうが、自業自得だ。

 消費者物価の上昇が海外要因であること、本来のインフレ指標であるGDPデフレーターがまだマイナスというマクロ環境を考えると、昨年末の利上げもすべきでなく、今回も同様だ。

 黒田日銀は、3月10日が最後の決定会合だ。よほどのことがない限り、現状維持とみられる。ただし、次の体制は、これまでの岸田政権の人事からみて利上げ志向だろう。マクロ経済重視から、金融業者寄りの金融政策に転じる可能性がある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】岸田政権が増税路線を貫き、4月からの日銀新総裁が金融引締派なら、今年中にGDPで独に追い越されかねない(゚д゚)!

上の記事にででくる債権村については、普通の人とは、利益相反の関係にあると言ってもよく、良く理解できないというのが普通だと思います。これについては、下の動画で、国債の空売りをして儲けようとする人たちのことです。

金融機関の中でも元々は特殊な人たちで、日本では不況が長く続いてきたために、存在感を増したところはありますが、本来なら片隅にいるような人たちです。


日銀の1月17、18日の金融政策決定会合ではさらなる「利上げ」を踏みとどまり、現状維持としたために、当てが外れた業者たちのことです。これについては、たしかに自業自得としかいいようがないです。


しかし、上の記事にもある通り、これまでの岸田政権の人事からみて次の日銀総裁は、利上げ志向の人物になる可能性が高いです。そうして、黒田総裁のように、マクロ経済重視から、金融業者寄りの金融政策に転じる可能性があります。

岸田政権下では、防衛増税等、増税の声も聞えています。日銀が、金融業者よりの金融政策に転じ、さらに増税も実行されることになれば、当然のことながら、現状ではまだ相当のGDPギャップ(総需要と総供給の差)があるため、消費は抑制され、景気は落ち込み、また日本はデフレの底に沈むことが予想されます。

その落ち込みは、どの程度のなるか、過去の経験からある程度の想像はつきますが、これに関しては、誰にでも理解しやすいショッキングな出来事が起こるでしょう。

それは、GDPで現在世界第三位の日本が、ドイツに追い越されることになることです。


米中に次ぎ世界第3位の日本の名目国内総生産(GDP)が、経済の長期停滞などを受けて早ければ2023年にもドイツに抜かれ、4位に転落する可能性が出てきたのです。

経済規模の国際比較に用いられる名目GDPは、国内で生産された財・サービスの付加価値の総額です。物価変動の影響を取り除いた実質GDPに比べて、より景気実感に近いとされます。

国際通貨基金(IMF)の経済見通しでは、22年の名目GDP(予測値)は3位の日本が4兆3006億ドル(約555兆円)なのに対し、4位のドイツは4兆311億ドルで、ドイツが約6・7%増えれば逆転することになります。

IMF予測では23~27年も辛うじて逆転を免れるものの、23年時点(予測値)でその差は約6・0%に縮小します。

日本の名目GDPは高度経済成長期の1968年に西ドイツを抜き、米国に次ぐ2位となりました。ところが、2010年には台頭する中国に抜かれて3位に転落し、40年近く維持したアジア首位の座を奪われました。

とはいえ国力の源泉である人口は、日本のおよそ1億2千万人に対しドイツは8千万人にとどまります。14億人を超える中国に抜かれたのは仕方ないとしても、なぜドイツに追い付かれたのでしょうか。

それは簡単なことです。日本は、平成年間の30年間のほとんどを、金融政策も財政政策も間違えたからです。それに対して、ドイツも日本と並び緊縮傾向が強いのですが、それでも日本のように度々消費税増税をするなどのことはせず、日本よりは緊縮の度合いは低いです。

さらに、金融政策は、ドイツ独自の政策はできず、EUの政策に従っているのですが、EUの金融政策も日銀のように、平成年間のほとんどを実体経済におかまいなしに、金融引締を実行したのとは対照的に、比較的まともな政策を行っています。

欧州中央銀行

このような違いの長い間の積み重ねが、今日、日本の低迷、ドイツの堅調な成長という状況につながっているのです。

これを生産性で説明しようと試みる人もいますが、これは大きな間違いです。考えてみてください、デフレの底に沈んでいるときに、生産性を高めたら、どうなりますか?

無論、デフレがますます深刻になるだけです。このあたりのこと理解できない人は、10円玉を生産性として、それに対応するお金を一円玉として、いくつか並べてみて下さい。

10円玉と1円玉を同数並べます。そこで、生産性を示す10円玉を増やしてみて下さい、そうなると、当然のことながら、10円玉に対応する1円玉を増やさなければ、最初の時と比較して、生産性に比してお金が少ないことになります。

このとき、中央銀行(日本の場合は日銀)が、生産性が向上した分に相応しいだけの、通貨を発行しなければ、これはデフレになります。実際日銀は、そのようなことを繰り返してきました。それどころか、リーマンショックのような危機に瀕してさえ、他国は大規模な金融緩和をしたのに日銀しませんでした。そのため、日本は深刻な円高とデフレに見舞われました。

日本の生産性が伸びてこなかったのは、このせいです。ものが売れなければ、生産性をあげてもしかたないわけで、輸出企業や、海外に投資できる企業だけが、なんとかまともに操業できたり生産性もあげることができました。一方、国内産業は活力を失い、挙げ句の果てに、国内産業が海外に出ていき、産業の空洞化が起こってしまったことが、日本の経済が伸びなかった大きな原因です。

これを理解せずに、現在のような状況で、単純に利上げをして、円高にすれば良いとか、生産性を上げるべきと語る人もいますが、それをしても、日銀が適正に対応しなければ、デフレが深化するだけです。大本の日銀が金融緩和を継続しなければ、デフレになります。さらに、増税はそれに拍車をかけるだけです。

今年の早い時期に、岸田政権が増税をすることを決めてしまえば、仮に増税そのものは、来年以降になったにしても、市場は冷え込み、消費マインドは冷え込みますし、それに4月からの日銀新総裁が、金融業者寄りの金融政策に転じることになれば、さらに冷え込み、今年中にドイツにGDPを追い越されることになりかねません。

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2023年1月23日月曜日

NATO事務総長が今月末にも来日へ…2017年以来、岸田首相との会談調整―【私の論評】日本からNATOへの働きかけを強め、主体的に日・NATO関係を強化してゆくべき(゚д゚)!

NATO事務総長が今月末にも来日へ…2017年以来、岸田首相との会談調整

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長

 北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長が今月末にも来日し、岸田首相との会談を調整していることが23日、分かった。複数のNATO関係者が明らかにした。インド太平洋を巡る安全保障の連携を強化する狙いがある。ストルテンベルグ氏は、日本政府が昨年末に改定した国家安全保障戦略への支持も打ち出す見込みだ。

 事務総長の来日は2017年以来となる。ストルテンベルグ氏は日本に先立って韓国を訪問し、 尹錫悦ユンソンニョル 大統領とも会談する予定だ。

 NATOは昨年6月に改定した戦略概念で、インド太平洋地域の安定に貢献する方針を鮮明にした。ウクライナ情勢が緊迫する中での訪問は、民主主義国家である日韓との連帯をアピールする狙いもある。

 岸田首相との会談は、31日を軸に調整が進んでいる。台湾有事などを見据え、軍事的な手段と非軍事的な手段を組み合わせる「ハイブリッド戦」への備えなどで連携強化を確認するとみられる。

 軍事力を増強する中国について、NATOは戦略概念で「挑戦」と新たに位置付けた。日本政府も国家安保戦略で「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と明記した。防衛費でも、日本はNATO加盟国の目標と足並みを合わせ、防衛費と関係費の合算を現在の国内総生産(GDP)比2%とする閣議決定をした。NATO内には「NATOと日本は進む方向は同じだ」との認識が深まっている。

【私の論評】日本からNATOへの働きかけを強め、主体的に日・NATO関係を強化してゆくべき(゚д゚)!

昨年6月26〜28日のG7首脳会合に引き続いて行われた29日からの北大西洋条約機構(NATO)首脳会合に、今回、初めて日本の総理大臣が参加したことは、日本のウクライナへの連帯を象徴するものとして、日本国内でも大きな注目を集めることになりました。


北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に日本の首相として初めて出席した岸田首相は、ロシアのウクライナ侵攻や中国の覇権主義的な動きを念頭に、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分だと強調。従来の日米同盟に加えて、NATOと連帯を築いていく考えを示しました。その意思決定機関である北大西洋理事会に、日本などアジア太平洋のパートナー国の定期参加も提案しました。

首相は、「日・NATO関係を新たなレベルに引き上げることで一致した。歴史的な意義を有するものだ」と成果を誇示しました。


さて、今回のNATO事務総長の訪日は、こうした岸田首相の発言に基づき、より具体的な日とNATOとの関係を深めるためと考えられます。

昨年日本だけではなく、韓国、豪州、ニュージランドを初めてグローバルなパートナーとして招待したNATOにとって、脅威と価値観を共有する安全保障プラットフォームとしての課題は、地域の枠を超えて影響力を強める中国だけではありません。

そこでは、サイバー・宇宙空間、認知領域における安全保障上の公共財の安全確保、そして、気候変動の影響に対する協調的行動、更には、将来の装備体系に大きな影響を与える、人工知能(AI)、量子コンピューターなどの新興・破壊的技術の実装化など、パートナー国に対して、幅広い協力の可能性が数多く示されています。

今後、他のパートナー国と共に、日本にも、NATOとの協力拡大のためのロードマップが準備されると見られますし今回の事務総長の日本訪問はまさに、これに関するものと考えられます。

日本政府はどのような対応を行うのでしょうか。岸田政権は安全保障関連の三文書(国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画)を年末に改定しました。

反撃能力保有や、5年間の防衛費総額を約43兆円とし、最終の令和9年度には防衛費と補完する関連予算を合わせ、今の国内総生産(GDP)比2%にすることが決まった。相手国の軍事的「能力」に備える防衛力整備という、現実路線への転換も明記しました。

平和を守る抑止力を格段に向上させる歴史的な決定を歓迎したいです。政府の最大の責務は国の独立と国民の生命を守り抜くことです。岸田首相が決断し、与党と協力して、安倍晋三政権でさえ実現できなかった防衛力の抜本的強化策を決めた点を高く評価します。だだし、防衛増税を言い出したことには、はっきり言って幻滅しました。


日本としては、新たな安全保障戦略の方向性を踏まえつつ、積極的かつ主導的に、NATOとの協力メカニズムを活性化するべきです。

インド太平洋地域には、NATOのような集団安全保障機構は存在しませんが、価値観を共有し、地域の枠を超えたパートナー国の関与を導くことによって、米国を中心とする二国間同盟のネットワークをより強化し得ることになります。

その一方で、NATOは、防衛的な組織であり、コンセンサスに基づく地域機構であるため、将来的にも、NATO側から、欧州域外に位置する日本に対して、より積極的なアプローチをかけてくることはないでしょう。

ここでは、日本からNATOへの働きかけを強め、インド太平洋地域におけるNATOの更なる関心や関与を引き出し、主体的に日・NATO関係を強化してゆくという能動的な姿勢が求めらています。

そのためには、日本の戦略的なメッセージのグローバルな発信が不可欠であり、改訂された三文書は、日本の安全保障面でのコミュニケーションの道具として、重要な役割を果たすことが期待されます。

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2023年1月22日日曜日

フランス国防費、3割以上増額へ…中国念頭に南太平洋の海軍力も強化―【私の論評】米中の争いは台湾から南太平洋に移り、フランスもこれに参戦(゚д゚)!

フランス国防費、3割以上増額へ…中国念頭に南太平洋の海軍力も強化

フランスのマクロン大統領は20日、仏南西部モン・ド・マルサンの空軍基地で演説し、2024~30年の7年間で計4000億ユーロ(約55兆5000億円)を国防費に充てる方針を示した。19~25年の2950億ユーロ(約41兆円)と比べて、3割以上の増額となる。

20日、仏南西部の空軍基地でドローンを見学するマクロン仏大統領(手前左)

 20日、仏南西部の空軍基地でドローンを見学するマクロン仏大統領(手前左)=ロイター

 マクロン氏は演説で国防費増額の背景について、ロシアによるウクライナ侵略などを挙げ、「危機に見合ったものとなる。軍を変革する」と述べた。

 情報収集活動予算を6割増額するほか、核抑止力の強化や無人機(ドローン)の開発促進などに充てる。中国の海洋進出を念頭に、領土がある南太平洋の海軍力も強化する。近く関連法案を議会に提出する予定だ。

 マクロン政権は現行計画で、25年までに、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める国内総生産(GDP)比2%の水準に国防費を引き上げる方針を示していた。

 マクロン氏は、昨年11月に発表した「国家戦略レビュー」で、「フランスの核戦力は欧州の安全保障に貢献している」として、核抑止力を重視するとともに、中国に対抗する姿勢を打ち出していた。

【私の論評】米中の争いは台湾から南太平洋に移り、仏もこれに参戦(゚д゚)!

上の記事で「中国の海洋進出を念頭に、領土がある南太平洋の海軍力も強化する」という下りがありますが、これだけですませるというのが、さすが「読売クオリティー」というところであり、大手新聞だけを読んでいると、世界がわからなくなるということの典型例だと思います。

これについては、すでにこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
米中対立の最前線たる南太平洋 日米豪仏の連携を―【私の論評】米中対立の最前線は、すでに台湾から南太平洋に移った(゚д゚)!
日米豪などが参加する太平洋パートナシップ2022(PP22)で演説するソロモン副首相

これは12日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、まずは、元記事の結論部分を以下に掲載します。
 そのため(ブログ管理人注:中国に伍して、南太平洋の島嶼国の国々に対してこちらから付け入る余地は十分ある)には、同じ目線で相手の共感を得ることに加え、「こちら側」の陣容の拡充も必要ではないか。それはフランスとの一層の連携だ。仏領ポリネシアは南太平洋におけるフランスの拠点だ。
 元々PIF(太平洋諸国フォーラム:ブログ管理人注)とその前身はフランスの核実験などに反対して結成されたという歴史的経緯はあるが、今や仏領ポリネシアは準メンバーであるし、フランスもパートナー国になっている。我々にはあまり余裕はないはずだ。先の米・島嶼国サミットにもオブザーバーで豪・ニュージーランドは参加する一方、フランスが参加していない点が気になる。

 しかし、島嶼国との関係についても昔から努力しているのは日本だ。日本が太平洋・島サミット(PALM)を始めたのは1997年で、中国より10年近く早い。同じ目線で「共感」を得るアプローチは日本のお家芸だ。上記の論説で取り上げられている不発弾処理についても、既に日本は、ソロモン国家警察爆発物処理部隊に対する支援を開始している。今後これを日米豪(または日米豪仏)のプロジェクトとして進めると言うことも一案だろう。ちなみにPALMには仏領ポリネシアも入っている。
次にこの記事の【私の論評】の部分から引用します。
現在、台湾と外交関係を維持する国は世界でたった14か国です。うち4か国が太平洋の小さな島国です。最近ではソロモン諸島、それにキリバスが台湾から中国へスイッチしました。中国が国交を結んだ国々では中国主導でインフラ整備を進めています。

それは、対象国のためであるとともに、中国自身が共同利用しようという狙いもあるとみられます。台湾問題に行き詰まった中国は、今後も南太平洋でさまざまな活動を行い、活路を見出すつもりでしょう。このままの中国有利な情勢が続けば、断交ドミノ現象はいっそう勢いを増す恐れがあります。米豪日は、今後のマーシャル諸島、ツバル、パラオ、ナウルへ政治的なテコ入れを強化していくでしょう。

その意味では、米中対立の最前線は、台湾そのものではなく、すでに南太平洋に移っていると認識を改めるべきです。そうして、南太平洋でも軍事力の衝突というよりは、経済支援や、外交的な駆け引きが主であり、米国とその同盟国と、中国との間の戦いということになるでしょう。特に同盟国がほとんどない中国にとっては、南太平洋の島嶼国を味方につけることは重要です。国連の会議などでは、どのような小さな国でも、一票は一票です。
・・・・・・・・・〈一部略〉・・・・・・・・・
現在、台湾と外交関係を維持する国は世界でたった14か国です。うち4か国が太平洋の小さな島国です。最近ではソロモン諸島、それにキリバスが台湾から中国へスイッチしました。中国が国交を結んだ国々では中国主導でインフラ整備を進めています。

それは、対象国のためであるとともに、中国自身が共同利用しようという狙いもあるとみられます。台湾問題に行き詰まった中国は、今後も南太平洋でさまざまな活動を行い、活路を見出すつもりでしょう。このままの中国有利な情勢が続けば、断交ドミノ現象はいっそう勢いを増す恐れがあります。米豪日は、今後のマーシャル諸島、ツバル、パラオ、ナウルへ政治的なテコ入れを強化していくでしょう。

その意味では、米中対立の最前線は、台湾そのものではなく、すでに南太平洋に移っていると認識を改めるべきです。そうして、南太平洋でも軍事力の衝突というよりは、経済支援や、外交的な駆け引きが主であり、米国とその同盟国と、中国との間の戦いということになるでしょう。特に同盟国がほとんどない中国にとっては、南太平洋の島嶼国を味方につけることは重要です。国連の会議などでは、どのような小さな国でも、一票は一票です。

中国の台湾侵攻は、現実にはかなり難しいです。実際、最近米国でシミレーションシした結果では、中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。中国の報復によって、日本と日本にある米軍基地などは甚大な被害を受けますが、それでも中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。そうして、無論中国海軍も壊滅的な打撃を受けることになります。

であれば、中国としては、台湾侵攻はいずれ実施するということで、まずは南太平洋の島嶼国をなるべく味方に引き入れるという現実的な路線を歩もうとするでしょう。これによって台湾と断交する国をなるべく増やし、台湾を世界で孤立させるとともに、これら島嶼国のいずれかに、中国海軍基地を建設するなどして、この地域での覇権を拡大しようとするでしょう。

南太平洋の島嶼国といっても、ニューカレドニアは仏領であり続けることを選びましたし、そもそも一人あたりのGDPは34,942ドルであり仏本国を若干下回る程度です。ただ、南太平洋の島嶼国のほとんどは一万ドルを下回る貧困国です。

現代的な軍隊を持った、台湾や日本、韓国、NATO加盟国などの領海近くを中国の空母が通ったにしても、それに対する対艦ミサイル、魚雷など対抗手段は十分にあるので、これを警戒はするものの、大きな脅威とはなりませんが、南太平洋の島嶼国は、貧乏で小さな国が多く、これは大きな脅威になります。

そのときに、日米豪などだけでもこれに対処はできるでしょうが、これに南太平洋に海軍基地を持つフランスもこれに対処できれば、それこそ百人力になります。

フランスとしては、こうした南太平洋の中国の脅威に自ら対抗し、さらに日米豪とも連携し強化するためにも、国防費を増やすのでしょう。

現状では、以下の表でもわかる通り、日本の軍事費はフランスよりも下です。


倍増なら防衛費は世界3位となります。ただ、対GDP比でみれば、また違った見方もできます。


フランスの軍事費は2020年時点ですでにGDP比で2%を超えています。ドイツも2%超を目指しています。日本としては、2%は当然ともいえるかもしれません。

ただ、防衛費増を増税で賄うという岸田政権の方針には、あきれてしまいます。フランスも防衛費を増税では賄うことはないのでしょう。もし、増税で賄うとすれば、多くのメディアはそれを報道するでしょう。フランス財務省としては、そのようなことは考えも及ばず、当然のことながら、長期国債でこれを賄うのでしょう。

これは、あまりにも当たり前のど真ん中で、ニュースバリューもなく、報道もされないのでしょう。もし増税ということになれば、とんでもないことになるでしょう。

フランス政府は最近年金の支給を開始する年齢を64歳に引き上げる年金制度改革案を示しています。これに反対するデモが各地で行われ、参加者は100万人を超えました。もし、増税で防衛費増を賄うなどとすれば、フランス各地で大暴動がおこり、それこそ、2018年から行われている、黄色いベスト運動が苛烈となり、マクロンの政治生命が危ぶまれることになるでしょう。

マクロンが防衛増税をすれば黄色いベスト運動は苛烈となり政治生命が危ぶまれることに(AI画像)

岸田政権も同じです。もし、増税を強行すれば、とんでもないことになるでしょうし、岸田政権は崩壊するでしょう。しかし、増税されれば、日本の財政基盤は脆弱となり、将来安定的に防衛費を賄うことはできなくなるでしょう。

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2023年1月21日土曜日

三浦瑠麗氏の夫が代表の投資&コンサル会社を東京地検特捜部が捜索 「私は夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ない」―【私の論評】三浦瑠璃氏の夫の背後には、巨悪が潜んでいるかもしれない(゚д゚)!

 三浦瑠麗氏の夫が代表の投資&コンサル会社を東京地検特捜部が捜索 「私は夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ない」

三浦夫妻 三浦瑠麗氏(左) 三浦清志氏(右)

 再生可能エネルギーに関する投資やコンサルタントを手がける東京都千代田区の会社の代表が詐欺容疑で告訴され、東京地検特捜部がこの会社を家宅捜索していたことが20日、関係者への取材で分かった。国際政治学者の三浦瑠麗氏の夫が同社の代表を務めている。

 関係者によると、捜索を受けたのは2014年7月に設立された「トライベイキャピタル」で、太陽光発電事業でトラブルを抱えていたとされる。同社を巡る訴訟の資料によると、東京都港区の投資会社側から19年6月に10億円の出資を受け、太陽光発電事業を共同で手がけたが、想定通りに進まなかったという。

 三浦氏は自身が代表のシンクタンク「山猫総合研究所」のホームページで「私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ない」とのコメントを発表した。その上で「捜査に全面的に協力する所存です。夫を支えながら推移を見守りたい」としている。

【私の論評】三浦瑠璃氏の夫の背後には、巨悪が潜んでいるかもしれない(゚д゚)!

この出来事に関しては、かなり多くのメディアが報道しています。代表的なものは、以下の岩田温氏の動画です。客観的に論評されています、興味のある方は是非ご覧になって下さい。

既に、メディアが報道しているものに関しては、そちらをご覧になって下さい。

手短に知りたい人は、下のサイトをご覧になってください。ただし、信ぴょう性等は保証の限りではありませんが、網羅性はあります。

三浦瑠麗の疑惑をまとめたページ
このブログでは、現在までに報道されているものは掲載しません。それについては、他のメディアを参考になさってください。

一般に公開されている情報からでも三浦氏の行動には、疑問符がつくものがあります。たとえば、内閣官房主催の「成長戦略会議」にもそれが伺えます。

この要旨から一部を以下に引用します。

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成長戦略会議の開催要領すべてを斜め読みしてみたところ、 太陽光発電事業の規制緩和・推進の発言しているのはほぼすべてが三浦瑠麗氏でした。これでは、利益相反を疑われても仕方ないのではないでしょうか。

今後三浦氏がすぐに、様々な番組から降ろされれば、さほど問題はないと思いますが、あまり降ろされなかつた場合は、システムが出来上がっており、すでに太陽光パネル事業においても、日本固有の鉄のトライアングルが出来上がっている可能性があります。今後、どうなるか注目です。

鉄のトライアングルに関しては、以前このブログで説明したことがあります。その記事を以下に引用します。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】菅首相1年間の大きな功績 懸案を次々処理した「仕事師内閣」、対韓国でも厳しい姿勢貫く―【私の論評】新政権は、雇用の維持、迅速な鉄の三角形対策ができる体制を整えれば、長期安定政権となる(゚д゚)!


この記事より以下に一部を引用します。
日本には様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。
それは、医療の世界にも厳然として存在します。医師会、族議員、厚生官僚による三角形(医療ムラ )は厳然として存在してるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

1年以上も前から、コロナ病床は、かなり増床すべきことはわかっていました。そうして、昨年の補正予算でも、それに関する予算は潤沢につけられていたにもかかわらず、この医療ムラの猛反撃にあい、現在に至るまで大きく増床されることはありませんでした。感染症対策分科会も、こうした医療ムラの圧力に対抗できなかったのか、結局対策といえば、病床の増床ではなく、人流抑制ばかりを提言していました。
尾身会長
そのため、コロナ感染者数が増えるたびに、野党・マスコミは、医療ムラを批判するのではなく、菅政権を批判しました。尾身会長は、マスコミに利用された形になったといえます。これは、間違いなく菅政権を追い詰めていきました。特に、マスコミは感染者数が増えるたびに、不安を煽り、様々な印象操作で菅政権を追い詰めました。

特に日本では、まだまだマスコミの報道を信じる人が多いので、強力な医療ムラを崩壊させるには、仕事人内閣の菅内閣ですら、時間と労力がかかることは無視して、菅内閣を責め立てました。野党もその尻馬にのり、菅内閣を糾弾しました。
さて、この鉄のトライアングルについては、colabo問題の本質もそうなのではないかという記事を掲載したことがあります。

ただ、本質的には同じかもしれませんが、鉄のトライアングルも業界によって、様々なパリエーションがあり一つとして同じものはないのだと思いますし、さらに時間とともに変化し、アメーバのように様々な団体や個人とついたり離れたりしているのだと思います。

国会議員、関係省庁、業界団体のいずれかが強いとか、絡み合い方が、どれ一つとして同じものは無いのだと思います。

だから、同じ鉄のトライアングルという共通点がありながらも、この事実を解明したり、違法性を追求したりするにしても、自ずとやり方は変わってくるのだと思います。

今回は、東京地検特捜部が「トライベイキャピタル」を家宅捜査をしたというのですから、これはこの会社の単独の犯罪だけではなく、政治家や官僚が絡んでいる可能性もあります。三浦瑠璃氏の夫の背後には、巨悪が潜んでいるかもしれません。

特捜部は「特別捜査部」の略称です。検察庁の中の1つの部署ですが、全国で東京、大阪、名古屋の3つの地方検察庁にしか設置されていません。

東京地検特捜部は、この3つの中の1つということになります。


東京地検は霞が関の法務省の隣にありますが、東京地検特捜部は霞が関ではななく、千代田区九段の合同庁舎内にあります。

1947年に、戦時中の供出物資や軍需物資を政治家が隠匿した事件を捜査する隠退蔵事件捜査部として結成された歴史があります。現在は、部長・40人程度の検事・副検事・検察事務官で構成されています。

東京地検特捜部は、汚職事件、脱税事件・経済事件などを担当します。

公正取引委員会・証券取引等監視委員会・国税局などが法令に基づき告発をした事件に関しても独自の捜査を行います。

具体的には、贈収賄事件、企業の粉飾決算事件や大型詐欺、業務上横領、不正競争防止法違反、インサイダー取引、独占禁止法違反、投資詐欺などの被害が甚大で世間に大きな影響を与える事件を担当しています。

今後の展開がどうなっていくか、注目です。


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