2025年6月21日土曜日

中東危機と日本の使命:世界の危機の連鎖を打ち破れ

 まとめ

  • 中東危機:2025年6月、イスラエルがイランを空爆。原油15%急騰。イランは原油4%を供給、ホルムズ海峡封鎖で混乱。報復ミサイルがハイファ港を襲う。日本は中東原油90%依存。物価高でGDP0.6%減。試練である。
  • ロシアとウクライナ:原油高でロシアの戦争資金増。イランのドローン供給途絶。ウクライナへの関心薄れ、トランプがゼレンスキー会談キャンセル。ロシアにとって有利。
  • 米国の限界とクアッド:米国はイスラエル支援も二正面作戦は無理。トランプはイラン介入に揺れる。クアッドは中国牽制。日本は台湾海峡監視、米国は海軍力、インドはインド洋監視、オーストラリアはフィリピン支援。2025年演習で結束。
  • 日本の覚悟:6月12日、護衛艦「たかなみ」が台湾海峡通過。中国挑発に対抗。国際法を守り、同盟固める。米国は防衛費3.5%要求。原潜購入、F-35進化、艦艇にSMR搭載で未来を開く。
  • 日本の使命:原発再稼働で電力30%回復。LNG増。イラン核協議支持、G7対話主導。自衛艦台湾海峡通過常態化、クアッド演習拡大。ウクライナにLNG供給。ガソリン補助で日本経済守る。SMRで2030年実用化。原油高はロシアを利し、台湾を危険に晒す。「たかなみ」は日本の魂だ。クアッドで中国封じ、原発・原潜・F-35・SMRで立ち上がる。日本は危機の連鎖を打ち破り、アジアの希望となる。世界を変えるだけの潜在能力を有する。
原油高騰と戦火の連鎖

16日イスラエルがイランを空爆

2025年6月、イスラエルがイランの核施設と軍事基地を空爆。原油価格は15%急騰した。イランは世界の原油4%を握り、ホルムズ海峡の封鎖をちらつかせる。イランの400発のミサイルがイスラエルを襲い、ハイファ港が炎上。この混乱はロシアに力を与える。原油収入が15%増え、ウクライナ戦争の資金が膨らむ。だが、イランのドローン工場が壊滅し、ロシアの武器供給に暗雲が立ちこめる。米国はイスラエルを支えるが、大規模な二正面作戦をに戦えない。トランプはイラン介入を迫られるが、反戦派が猛反発。中東の火はウクライナを苦しめ、台湾に影を落とす。中国は米国の隙を狙い、海軍演習で台湾海峡を挑発。日本は中東から原油の90%を輸入。物価高で国民が苦しみ、GDPは0.6%減の予測だ。この危機は日本の試練である。

日本の覚悟とクアッドの力


日本は黙っていない。6月12日、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が台湾海峡を堂々と通過。中国の空母演習への答えだ。この行動は日本の誇りである。国際法を守り、中国の横暴を許さない。米日同盟を固め、台湾やASEANに信頼を示す。米国が中東に縛られる今、日本の旗は希望の光だ。

Quad(日本、米国、インド、オーストラリア)は中国の脅威を封じる。日本はP-1哨戒機で台湾海峡を監視。米国はP-8哨戒機と海軍力で中国の潜水艦を牽制。インドはインド洋で中国の動きを監視し、情報共有を強化。オーストラリアはフィリピンの防衛を支援し、南シナ海で演習を拡大。2025年には日本とインドの海保当局が連携訓練 米豪も視察、意見交換もおこなった。クアッド(日本、米国、インド、オーストラリア)の「宇宙協力法案」(Quad Space Act of 2025)は、2025年6月に米上院議員ケビン・クレイマーとマイケル・ベネットが提出。中国やロシアの宇宙進出に対抗し、インド太平洋の安定を確保する。Quadはさらに結束を固める。


米国は日本に防衛費をGDP比3.5%に増やすよう迫る。現在の1.6%(8.7兆円)から倍増だ。重荷ではない。日本の未来を切り開く鍵だ。米国からバージニア級原潜を買えば、さらにASW(Anti Submarine Warefare:潜水艦戦)能力を高められ、タンカーの航路を守ることができる。F-35の計画全納入数147機を国産ミサイルで進化させる。さらに将来は小型モジュル炉(SMR)を潜水艦や艦艇に積み、レーザー兵器を、レールガンなどを実用化すべきだ。無論民生用にも活用する。

日本の使命:世界を変える

日本は危機を力に変えるべきだ。エネルギー防衛を固める。再生可能エネルギーの幻想を捨て、原発の早期再稼働に舵を切る。福島事故後の停止で電力の30%を失ったが、最新の安全基準で再稼働すれば、中東依存を減らし、安定供給を確保できる。北米やオーストラリアのLNGを増やし。外交ではイラン核協議を支持し、G7で対話を主導。台湾海峡では自衛艦の通過を常態化。2025年のクアッド演習を拡大し、中国を牽制。ウクライナにLNGを供給し、2024年の20億ドル支援を続ける。ガソリン補助を延長し、GDP押し下げを0.3%に抑える。SMR研究を米国と始め、2030年実用化を目指す。米国の3.5%要求に応じつつ、原潜やF-35で日本の主体性を確保。


原油高騰はロシアを利し、ウクライナを苦しめる。米国の限界は台湾を危険に晒す。だが、「たかなみ」の通過は日本の魂だ。クアッドは中国の野望を封じる。原発を再び動かし、原潜、F-35、SMRで日本は立ち上がるのだ。エネルギー、外交、軍事、経済の全てで、世界の火薬庫を断ち切る。日本は試練を跳ね返す。アジアの希望となり、世界を変えるのだ。日本の誇りが未来を切り開く。それだけの潜在能力を日本は有している。

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日本の護衛艦が台湾海峡を突き進む!中国の圧力に立ち向かう3つの挑戦と今後の戦略 2025年6月20日

トランプのイラン強硬策:核危機と中東の命運を賭けた対決 2025年6月18日


2025年6月20日金曜日

日本の護衛艦が台湾海峡を突き進む!中国の圧力に立ち向かう3つの挑戦と今後の戦略

まとめ

  • 2025年6月12日、護衛艦「たかなみ」が台湾海峡を通過。中国の圧力を抑える狙い。フィリピン海軍と演習「マリタウ2025」(4隻参加)を実施。
  • 6月7~8日、中国軍戦闘機が海自哨戒機に異常接近。日中緊張が高まり、中国は「たかなみ」を監視。日本は米国などと協力し、自由な航行を主張。
  • 2024年9月25日、護衛艦「さざなみ」がオーストラリア、ニュージーランドと初の通過。岸田首相のメッセージとして中国の海洋進出を抑えた。
  • 2025年2月、護衛艦「あきづき」が単独通過後、演習「IPD24」に参加。フランスが60年ぶりに空母派遣。日米欧の連携で中国を牽制。
  • 中国の妨害があれば、台湾海峡通過は継続。日中の信頼醸成は重要だが、中国の挑発は対話を拒む。日本の現代海戦の要となる対潜水艦戦(ASW)能力は優位であり中国はこれは脅威とみなすが、緊張緩和は中国の行動次第。

海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が2025年6月12日、台湾海峡を突き進んだ。中国の台湾への圧力を抑え込む狙いだ。複数の外交筋が6月19日にその事実を明かした。「たかなみ」は東シナ海から南へ進み、フィリピンのルソン島沖に到達。その後、フィリピン海軍と合同演習「マリタウ2025」を繰り広げた。この訓練は両国の戦術を磨き、絆を深めるため、護衛艦や哨戒艦4隻による中規模なものだ。6月7日と8日には中国軍戦闘機が海自哨戒機に危険な接近を繰り返し、日中の緊張が一気に高まった。中国軍は「たかなみ」の動きを逐一監視した。日本はこれまで中国への遠慮から台湾海峡を避けてきたが、中国の強硬な態度に立ち向かい、米国などと手を組んで自由な航行を貫く道を選んだ。




過去の挑戦とその意味

日本の初挑戦は2024年9月25日だった。護衛艦「さざなみ」がオーストラリアとニュージーランドの艦艇と台湾海峡を通過した。岸田文雄首相はこの航行を退任前の強烈なメッセージとし、石破茂政権に引き継いだ。中国の海洋進出を抑え、国際水域の自由を守るためだ。中国は反発したが、言葉だけで終わった( Al Jazeera, 2024年9月26日)。

 パシフィック・ステラー

2025年2月、護衛艦「あきづき」が単独で台湾海峡を進んだ。その後、米国、フランス、オーストラリア、フィリピンと合同演習「パシフィック・ステラー」」に挑んだ。これは2月8日から18日にフィリピン東方で行われた大規模訓練で、十数隻の艦艇と哨戒機が参加。フランスが1965年以来60年ぶりに空母「シャルル・ド・ゴール」を太平洋に送り込んだ姿が目を引く。日米の絆を土台に、欧州や地域の国々と手を組み、中国の動きを封じる狙いだ。

フィリピンとの連携と地域の安定

たかなみ

2025年6月の「たかなみ」の通過は、フィリピンとの演習「マリタウ2025」に直結した。南シナ海で中国と対立するフィリピンとの協力は、地域の安定を支える柱だ。これら3回の通過は、それぞれ明確な目的を持つ。2024年9月は国際協調で中国に立ち向かい、2025年2月は欧州との絆を深めて日本の存在感を高めた。2025年6月はフィリピンとの連携で南シナ海の安定を目指した。中国は台湾を自国の一部とみなし、他国の航行に神経を尖らせる。日本の行動は、緊張を抑えつつ、自由と秩序を守る強い意志の表れだ。

今後の展望と日中の緊張

今後、中国が日本に牽制や妨害を仕掛ければ、台湾海峡通過は単独や同盟国と、さまざまな規模で繰り返されるだろう。国際水域の自由を貫き、地域の安定を確保する戦略だ。2025年版防衛白書は、中国の軍事行動を「最大の挑戦」と断じ、日本の安全保障が厳しい局面にあると訴える。

先日もこのブログに掲載したように、日中の信頼を築くことは欠かせないが、2025年6月7日と8日の中国軍戦闘機の異常接近は対話を拒む行為だ。国際法を無視し、日本の対潜水艦戦(ASW)能力を脅威とみなした挑発は、中国の責任だ。ASWに優れる日本は戦略的優位を保つ。緊張の緩和は中国の挑発停止から始まる。

そうならない限り、日本の護衛艦は、これからも台湾海峡を通過し続けるだろう。

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2025年6月19日木曜日

日本経済を救う鍵は消費税減税! 石破首相の給付金政策を徹底検証

まとめ
  • 石破茂首相は2025年6月、物価高対策として給付金(1人2万円、非課税世帯や子どもは4万円)を給付金は「消費減税よりはるかに効果的だ」「決して少なくない」と推すが、消費税減税には慎重。給付金は迅速だが持続性に欠ける。
  • 日本の経済は低成長(GDP成長率1.2%)、物価上昇(CPI 2.5%)、格差拡大(非正規雇用37%)に苦しむ。国の借金は経済規模の2.5倍、毎年の赤字は経済の6%。
  • ただし統合政府(政府+日銀)の視点では、資産600兆円が総債務1250兆円を相殺し、ネット債務はGDP比100%。日銀の国債保有(50%)で実質黒字。EUでは統合政府統計が標準。
  • 消費税減税(10%→5%)は低所得層の消費を刺激し、GDPを0.5~1.0%押し上げる。逆進性を和らぎ、格差縮小に効果的。給付金の乗数効果(0.3~0.6)は小さい。
  • ガソリン暫定税率廃止は物価を0.2~0.3%抑制、地方経済を支える。消費税減税を優先し、ガソリン税廃止を次に、給付金は補助的役割にすべき。
石破首相の給付金政策と日本の経済危機


石破茂首相は2025年6月18日、カナダでのG7首脳会議後に記者会見を開き、物価高対策として給付金政策を説明した。給付金は1人2万円、子どもと住民税非課税世帯の大人には4万円を支給し、2024年度補正予算の低所得世帯向け給付(1世帯3万円+子ども1人2万円)より手厚いと強調。「決して少なくない額」と述べ、総合的な支援を訴えた。物価高対策の基本は賃上げとし、給付金を参院選公約に検討。消費税減税より給付金は困窮層に重点を置き、迅速だと主張。消費税は社会保障の財源で、減税には「慎重な上にも慎重」とし、給付金の正当性を訴えた。

日本の経済は停滞している。2025年6月、推定実質GDP成長率は1.2%(IMF予測)、消費者物価指数は2.5%上昇、実質賃金は横ばい(総務省)。家計消費は2024年も低迷(内閣府)、エネルギーや食料品の値上がりで低所得層は苦しむ。非正規雇用は37%(総務省)、格差は拡大(ジニ係数0.33、OECD 2023)。国の借金は経済規模の2.5倍に膨らみ、毎年の赤字は経済の6%に相当する(IMF、2024年)。しかし、統合政府(政府+日銀)の視点では、政府の資産約600兆円(金融資産、国有資産、日銀保有国債等)が総債務約1250兆円を相殺し、ネット債務はGDP比約100%に縮小する(財務省、2023年)。


日銀が国債の約50%(約600兆円)を保有し、利払い負担が政府に戻るため、実質的な財政赤字は黒字となる。EUでは統合政府ベースの統計が標準的で、資産と負債の差を重視する(Eurostat、2024年)。日銀はゼロ金利を緩め、短期金利は0.1~0.25%。この状況で、恒久的減税、給付金、消費税の逆進性、ガソリン暫定税率廃止を、標準的なマクロ経済学で検証する。日本の主流経済談義、財務省、マスコミの声、現代貨幣理論(MMT)は無視し、データと理論で迫る。

恒久的減税と給付金の経済効果

標準的なマクロ経済学では、財政政策の効果は乗数効果で評価される。恒久的減税は家計の可処分所得を増やし、消費と投資を押し上げる。消費税を10%から5%に下げれば、年間10兆円の減税(財務省試算)。低所得層の消費を刺激し、OECD(2018)は乗数効果を0.5~1.0と推定。日本の需要不足はGDPギャップ5~10兆円(内閣府)。減税ならGDPを0.5~1.0%押し上げ、企業や雇用に波及する。給付金(1人2万円、総額2.5兆円)は貯蓄に回る。2009年の定額給付金の消費性向は20~30%(内閣府)。乗数効果は0.3~0.6(IMF、2010)、GDP押し上げは0.1~0.2%。給付金は即効性があるが、持続性がない。減税が優れる。


消費税の逆進性は深刻だ。10%の消費税は低所得層(年収300万円で負担率7~8%)を直撃、高所得層(年収1000万円で3~4%)は軽い(総務省家計調査)。2024年の物価上昇が実質所得を削り、格差は悪化。消費税を5%に下げれば、低所得層の消費が跳ね、GDPは0.5~1.0%増(Poterba、1996)。食料品を0%の軽減税率にすれば逆進性は和らぐ。食料品は低所得層の家計の30%(総務省)。非正規雇用者(37%)の生活を支え、格差を縮める。

消費税の財源問題とガソリン税廃止

消費税は社会保障の専用財源ではない。2024年度の消費税収22兆円は一般会計(114兆円)の一部。社会保障費(36兆円)の60%を賄うが、公共事業や債務返済にも流れる(2024年度予算)。5%減税で10兆円減収でも、経済成長で所得税や法人税が増え、赤字を補う(成長率1%増で2兆円増、財務省)。国債は国内保有率90%、金利は低い(10年物0.8~1.0%、日銀)。財政赤字(経済の6%)は管理可能(S&P格付けA+)。減税は経済活性化を優先すべきだ。


ガソリン暫定税率(1リットル25.1円)の廃止は、2024年の原油高(WTI80ドル/バレル)と円安(1ドル150円)で効果を発揮。2.5兆円の減収でガソリン価格が25円下がり、物価は0.2~0.3%抑制(日銀)。地方や低所得層(燃料費は支出の5~10%)の負担が減る。乗数効果は0.4~0.7、GDPは0.1~0.2%増(OECD)。消費税減税ほどではないが、地方経済を支える。

日本の経済は需要不足、格差、物価圧力に苦しむ。石破首相は給付金を推すが、消費税減税は逆進性を和らげ、消費を刺激し、格差を縮める最優先策だ。ガソリン暫定税率廃止は物価抑制に役立つ。給付金は持続性がない。減税と税率廃止で税収は12.5兆円減るが、低金利と国債の国内保有率で財政は耐える。消費税減税をまず実行し、ガソリン税率廃止を進め、給付金は補助に留める。経済を動かし、国民を救う道はここにある。

引用文献

OECD Economic Outlook Volume 2024 Issue 2, 2024年12月4日
IMF Japan 2025 Article IV Mission Statement, 2025年2月7日
総務省家計調査, 2024年
内閣府令和6年度経済財政報告, 2024年
日本銀行統計, 2024年
財務省国際収支状況, 2023年
Eurostat Government Finance Statistics, 2024年
Blanchard, O. (1985), “Debt, Deficits, and Finite Horizons,” Journal of Political Economy, 93(2), 223-247, https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/261297
Poterba, J. (1996), “Retail Price Reactions to Changes in State and Local Sales Taxes,” National Tax Journal, 49(2), 165-176, https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/NTJ41789195

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2025年6月18日水曜日

トランプのイラン強硬策:核危機と中東の命運を賭けた対決

まとめ

  • トランプの強硬策と攻撃検討:トランプはイランの核施設への攻撃を検討。米軍はイスラエル支援に徹するが、攻撃は方針転換となり、紛争激化のリスクを伴う。
  • イランの核と中東和平:イランの核保有は中東を不安定化。核開発阻止で和平の道が開くが、アブラハム合意の進展は遅い。
  • イラン国内の危機:イスラム原理主義と経済制裁で国民生活が悪化。2022年のマフサ・アミニさんの死で不満が高まる。
  • 米軍の攻撃可能性と中国との対峙:イランへの圧力は中国牽制の一環。中国の軍事支援を削ぐ狙いがあるが、国際経済への影響が課題。
  • 抵抗の枢軸の弱体化:2024年12月のアサド政権崩壊とイスラエルの攻撃で、イランの「抵抗の枢軸」が壊滅的打撃を受け、地域支配力と国内安定が揺らぐ。
トランプ大統領は、中東対処のためG7を中途退席

トランプ米大統領は2025年6月17日、イランの核問題とイスラエルとの交戦を巡り、国家安全保障会議をホワイトハウスのシチュエーション・ルームで1時間20分にわたり開催した。協議内容は明かされていないが、米ニュースサイト「アクシオス」は、トランプ氏がイランの核施設、特に中部フォルドゥのウラン濃縮施設への軍事攻撃を真剣に検討していると報じた。この施設を破壊するには地中貫通弾やB-2爆撃機が必要で、米軍の直接参戦を意味する。

現状、トランプ政権はイスラエルの防衛支援に徹し、紛争への関与を避けているが、攻撃に踏み切れば方針転換となる。ロイター通信によると、米軍は中東に戦闘機を追加配備し、備えを固めている。トランプ氏は同日、SNSでイランに「無条件の降伏」を突きつけ、最高指導者ハメネイ師を「容易な標的」と脅しつつ、殺害の意図はないと述べ、「我慢は限界に近い」と警告した。バンス副大統領もSNSで、イランの核兵器保有を許さないと強調し、さらなる措置の可能性を示唆した。

イランの核問題と中東和平の行方


イランが核保有国になれば、イスラエルやサウジアラビアへの影響力が増し、ホルムズ海峡での挑発やテロ支援を通じて中東は混迷を深める。核拡散が他国を刺激し、核軍拡競争が起きかねない。だが、イランの核開発が阻止され、外交で核計画が制限されれば、中東和平への道が開ける。イランとイスラエルやアラブ諸国の緊張が和らぎ、経済制裁の緩和でイラン国内の安定も期待できる。ただし、歴史的・宗派的な対立の解消には長い時間がかかる。

イラン国内は、イスラム原理主義の厳格な統治で悲惨な状況にある。1979年のイスラム革命以来、女性や少数派への抑圧が続き、2022年のマフサ・アミニさんの死は国民の怒りを引き起こした。言論の自由は奪われ、インターネット検閲や監視が日常だ。経済制裁でインフレと失業が国民を苦しめ、貧困層が拡大、医療や教育へのアクセスも悪化している。政権は核開発に固執し、国民の不満を抑えるためさらなる抑圧を重ねる。

2020年のアブラハム合意は、イスラエルとUAE、バーレーン、スーダン、モロッコの国交正常化を実現し、中東和平の大きな一歩となった。イランへの対抗を背景に、経済や安全保障の連携を深めた。2025年、トランプ政権はサウジアラビアなどとの正常化交渉を進めるが、イスラエル・パレスチナ問題が壁となり、進展は遅い。イランを孤立させる戦略の一環だが、イランの核開発や代理勢力の動きが和平を阻む。

米軍の攻撃可能性と中国との対峙

米軍のイラン攻撃の可能性は、複数の事実が示す。「アクシオス」は、トランプ氏がフォルドゥ施設への攻撃を検討中だと報じた。これは、IAEAが2023年以降、イランの高濃縮ウラン蓄積を確認しているためである。攻撃には高度な兵器が必要で、米軍の戦闘機追加配備は準備の兆候とも取れる。トランプ氏やバンス氏の発言は、軍事オプションを交渉の切り札とする意図をうかがわせる。

ソレイマ二氏

だが、2020年のイラン革命防衛隊司令官ソレイマ二氏暗殺後の報復合戦や、過去のトランプ政権が大規模衝突を避けた経緯から、攻撃は抑止力強化の「脅し」に留まる可能性もある。攻撃すれば、放射能汚染やイランの報復で地域紛争が激化し、欧州や中国からの批判は必至だ。国内の支持基盤へのアピールも背景にある。

トランプ氏のイランへの強硬姿勢は、中国との対峙の布石でもある。米国防総省の報告書は、中国がイランにドローンやミサイル技術を提供していると指摘。トランプ政権は、インド太平洋での軍事プレゼンス強化や対中関税継続で中国を牽制している。イランへの圧力は、中国の影響力を中東で抑え、エネルギーや地域覇権の競争で優位を保つ戦略だ。攻撃は中国の支援を受けたイランの軍事力を削ぐ狙いがあるが、国際経済への影響や中国の反応を慎重に計算する必要がある。

イランの弱体化と抵抗の枢軸の崩壊

イランの「抵抗の枢軸」は、2024年12月のシリアのアサド政権崩壊とイスラエルによる攻撃でかつてないほど弱体化した。シリアはイランの最重要同盟国で、ヒズボラへの武器供給の陸上ルートだったが、反体制派のハヤト・タハリール・シャームがダマスカスを制圧し、アサドがロシアに亡命した。イランはシリアに多額の資金を投じ、革命防衛隊やヒズボラが支えたが、イスラエルの空爆で司令官らが殺害され、ヒズボラ指導者ナスララも2024年9月に暗殺された。


ガザのハマスもイスラエルとの戦争で弱体化し、抵抗の枢軸は壊滅的な打撃を受けた。イランはシリアから撤退を余儀なくされ、核開発への投資を強める可能性が指摘されている。この弱体化は、イランの地域支配力と抑止力を大きく損ない、国内の不満を高める要因だ。

イランの反応は不明だが、過去の強硬姿勢から軍事・外交的対抗が予想される。米国の攻撃は中東の混乱を招き、国際社会の批判を浴びる。トランプ氏の強硬発言は国内や中国へのメッセージかもしれないが、軍事行動の可能性は不透明だ。イラン、国際社会、アブラハム合意の行方が中東の未来を左右する。

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2025年6月17日火曜日

羊蹄山の危機:倶知安町違法開発が暴く環境破壊と行政の怠慢

 まとめ

  • 倶知安町巽地区の違法開発は、デタッチドハウス(住宅の様式)の建設を目的に、森林法や水資源保全条例を無視し、3.9ヘクタールの森林を伐採した。
  • 鈴木直道知事の中国への友好的姿勢や夕張での疑惑が、投資家に規制の緩さを印象づけ、違法開発を間接的に助長した可能性がある。
  • 北海道と倶知安町の事前監視不足が、開発の進行を許し、2025年6月になってようやく工事停止命令が出された。
  • 中国系とみられる「L.I.」が建築主として関与し、中国資本の投機的動機が環境破壊を加速させた疑いがある。
  • この開発は中国の「鬼城」造成に似ており、水源汚染や生態系破壊の危機を招き、厳格な規制と透明性が求められる。

羊蹄山のふもと、倶知安町巽地区で発覚した違法開発は、北海道の自然と地域社会を脅かす重大な問題だ。約3.9ヘクタールの森林が許可なく伐採され、水源地が汚染の危機に瀕している。この事件は、中国の「鬼城」造成のような無責任な開発の危険性を示す。鈴木直道知事の中国への友好的姿勢や自治体の監視不足が、事態を悪化させた可能性がある。以下、事件の全貌を明らかにし、その危機を訴える。

違法開発の全貌と環境への脅威

倶知安町巽地区で進められた違法開発は、観光客向けの別荘として人気の高い独立型住宅、いわゆるデタッチドハウスの建設を目的としたものだった。デタッチドハウスは、隣接する建物と完全に分離された一戸建てで、ニセコのような観光地では、プライバシーを重視する富裕層や外国人向けに短期賃貸や別荘として近年注目されている。札幌の企業が主導したが、森林法、建築基準法、景観計画条例、都市計画法、北海道の水資源保全条例をことごとく無視した。

法令
違反内容
森林法
約3.9ヘクタールの森林を許可なく伐採、1ヘクタールを超える開発に許可を取得せず([Kutchan Development Illegally Cleared 3.9 Hectares Of Trees)
建築基準法
建物を建てる際の必要な申請を提出せず
景観計画条例
景観計画に違反する開発が行われた
都市計画法
開発規模が規定を超える可能性があり、調査中
水資源の保全に関する条例
土地取引時の届け出を提出せず

約3.9ヘクタールの森林を許可なく伐採し、建築申請も提出せず、水源保護区域での土地取引の届け出も怠った。地元住民は「水が汚れたら困る」と訴える。羊蹄山周辺は、1日8万トンの湧水で知られる福出公園など、地域の生活と観光を支える水源地である。開発はかなり進行した後、2025年6月4日に北海道が現場を検査し、6月6日に工事停止命令を発令した。6月9日に事業者から森林復旧計画が提出されたが、環境へのダメージは深刻だ。この違法行為は、生態系を脅かし、水源汚染のリスクを高める。福出公園の湧水が汚染されれば、地域経済は壊滅する。

親中派鈴木知事と自治体の怠慢
鈴木直道知事は、中国との友好関係を重視する姿勢で知られる。2020年、新型コロナ対策で「結果責任は私が負う」と発言し、中国古典「史記」の「隗より始めよ」を引用。中国のネットで「日本の若きリーダー」と称賛され、アクセスランキング1位を記録した。2019年には中国の王岐山副主席と会食し、交流強化を議論した。一方、2023年には中国の日本産水産物輸入禁止を「科学的根拠がない」と批判し、バランスを取る姿勢も見せた。


しかし問題は、鈴木知事の夕張市長時代だ。中国系企業「元大グループ」に観光施設を売却し、後に香港系ファンドに高値で転売されたことで、利益供与の疑惑が浮上。夕張市は損失を被り、破産に至った。この過去が、倶知安町の違法開発に間接的に影響した可能性は否定できない。建築主として中国系とみられる「L.I.」が関与し、中国系の投資会社がSNSで「販売価格5200万円、賃貸利回り7%」と投資を呼びかけていた事実も、それを裏付ける。

北海道と倶知安町は、違法開発がかなり進行した後で対応した。2025年6月4日の検査で違法性を確認し、6月6日に工事停止命令を発令。6月9日に復旧計画を受理したが、事前の監視体制は不十分だった。事業者は伐採面積を0.99ヘクタールと偽り、実際は3.9ヘクタール。行政が事前に気づいていれば、防げたはずだ。倶知安町議会では、波方真如町議が「なぜ事前に防げなかったのか」と追及。文字一志町長は「法令無視は遺憾」と述べ、指導強化を約束したが、遅すぎる対応だ。倶知安町は、高級コンドミニアムやホテルの開発を推進する姿勢を明確にしている。ニセコの建設ブーム再開も、経済成長優先の姿勢を反映する。この姿勢が、監視の甘さを生み、違法開発を許した可能性は高い。

結論:北海道の自然と未来を救うための緊急対策
この違法開発は、北海道の自然と地域社会を破壊する危機だ。約3.9ヘクタールの森林破壊は生態系を脅かし、水源汚染は観光と生活を直撃する。鈴木知事の中国への友好的姿勢や夕張での疑惑が、投資家に誤った安心感を与えた可能性は否めない。自治体の監視不足も、違法行為を許した大きな要因だ。

この開発は、中国の「鬼城」造成に酷似する。中国では、投機的な不動産投資が未入居の住宅地を生み、環境破壊と経済的損失を引き起こした。内モンゴル自治区オルドス市の康巴什新区は、100万人都市を目指したが、居住者は3万人にとどまる。倶知安町の事例は規模こそ小さいが、法規制無視と水源地への影響は同じ道を辿る危険性を示す。

「ふきだし公園」北海道虻田郡京極町字川西(羊蹄山の麓)にある公園

ふきだし公園の湧水が汚染されれば、地域経済は壊滅する。今後、北海道は直ちに以下の対策を実行すべきだ。森林法や水資源保全条例を厳格に運用し、違法行為を未然に防ぐ。水源地での開発には、厳格な環境影響評価を義務づける。行政と事業者の関係を透明化し、外国資本の投機的投資を管理する。住民の声を反映した開発計画を策定し、信頼を回復する。これを怠れば、北海道は中国の「鬼城」のような荒廃を迎えることになりかねない。自然と経済を守るため、道民そうして行政は目を覚まさなければならない。

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2025年6月16日月曜日

衝撃!ミネソタ州議員暗殺の裏に隠された政治テロと日本メディアの隠蔽の闇

まとめ

  • 2025年6月14日、米ミネソタ州でホートマン下院議員と夫が殺害され、ホフマン上院議員と妻が重傷を負った政治的動機の暗殺事件が発生。
  • 容疑者ボールターは逃亡中であり、車から70人以上を名指しした殺害リストが見つかり、事件が政治的テロである可能性が浮上。
  • ホートマンは不法滞在者健康保険廃止に賛成するなど信念を貫いた議員で、ホフマンは教育と福祉に尽力した重鎮だった。
  • 日本メディアは事件の背景報じず、報道の偏りや政治的配慮が懸念され、国民の知る権利が脅かされている。
  • 過去の安倍元首相暗殺と公判遅延が示すように、日本でも政治的暴力のリスクが高まりつつあり真実追求の必要性は、ますます高まりつつある。
衝撃の事件が米国を揺るがす
暗殺されたメリッサ・ホートマン下院議員と夫マーク氏

2025年6月14日、米ミネソタ州で異様な銃撃事件が起きた。州議会議員2人が襲われ、メリッサ・ホートマン下院議員と夫マーク氏が未明に自宅で暗殺された。同じく狙われたジョン・ホフマン上院議員と妻は重傷を負ったが、手術で命をつないだ。ウォルズ知事は記者会見で「政治的動機による暗殺だ」と断言し、州民を震撼させた。容疑者はバンス・ボールター、57歳。警備会社プレトリアン・ガード・セキュリティーでパトロール部門の責任者を務め、軍の訓練を受けた男だ。今、彼は逃亡中だ。州を挙げての大捜索が始まり、地元警察トップのマーク・ブルーリー氏は「尋常じゃない規模の捜査だ」と息巻く。ボールターの車からは、70人以上を名指しした殺害リストが発見された。議員や中絶支持者らの名が並び、事件が単なる犯罪を超えた政治的テロである証拠が浮上した。警察は複数の容疑者を拘束し事情を聴いたが、勾留者はおらず、捜査は混迷を深めている。

ホートマンとホフマンの信念と背景
防犯カメラの映像に、暗殺犯バンス・ボールターが警察官のように見せかけたラテックス製マスクと警備員の制服を着てミネソタ州議員の自宅のドアをノックする様子が映っていた。



メリッサ・ホートマンは1970年5月27日、ミネソタ州ヘネピン郡で生まれた。弁護士として出発し、2005年から州下院議員としてツインシティーズ北部を支えた。ボストン大学で政治学と哲学を学び、ミネソタ大学法学部で法務博士号を取得後、ハーバード・ケネディスクールで公共行政学修士号を手に入れた。アル・ゴアやジョン・ケリーのインターン、ジョン・サマービル判事の事務員を経験し、抜群の経歴を積んだ。2023年の立法会期では、民主党が僅差で多数を握る中、中絶権の拡大、娯楽用マリファナの合法化、有給家族医療休暇の義務化を推し進め、ミネソタを変えた。しかし、2025年、彼女は不法滞在者の健康保険廃止に賛成し、党内の反対を押し切って共和党と手を組んだ。この決断が命を奪う引き金となったと見られる。彼女の勇気は、党の枠を超えた信念の証明だった。

ジョン・ホフマン上院議員は1965年1月17日生まれで、ミネソタ州アノカ・ヘネピン郡を代表する民主農民労働党(DFL)の重鎮だ。2005年からアノカ・ヘネピン学区教育委員会で活躍し、連邦機関の調整理事会で幼児教育や特別ニーズ児童の支援に尽力した。2012年に初当選し、以来2016年、2020年、2022年と再選を重ね、2017年から2020年まで少数党幹事長を務めた。彼は教育と家族支援を重視し、予算配分や社会福祉政策で実績を残してきた。今回の事件で標的にされたのは、彼のこうした立場が政治的対立を招いた可能性を示唆している。

ミネソタ州議会

この事件の根底には、ホートマンが支持した法案がある。不法滞在者に無料健康保険を提供する政策を廃止するものだ。コスト増と予算赤字を憂う共和党の声に応えた選択だったが、民主党内では異端とされた。だが、その勇気が彼女を標的に変えた。捜査当局は、ボールターが警察官を装い複数の政治家を狙ったと明かす。政治的意見の違いが暴力に結びつく危険性が、痛ましい形で露呈した。

日本メディアの沈黙と日本の危機

米国のこの恐ろしい現実を示すこの事件の背景を、日本メディアはスルーしている。なぜか。国際ニュースでは反トランプデモや中東情勢が優先され、他の事件に埋もれる。不法移民や政治的暴力はデリケートで、国内の政治バランスを崩す恐れがあるから報じない可能性もある。さらには「報道しない自由」で国民の知る権利を奪っているとの批判さえある。この沈黙は、反トランプデモの本質や政治的暴力の脅威を隠してしまう。

日本では新聞紙の暗殺報道の見出しが全て「安倍元首相撃たれ死亡」という不気味な一致を見せた

過去の日本にも政治的暴力の暗い影が残る。2022年7月8日、奈良市で起きた安倍晋三元首相の暗殺だ。演説中、41歳の男が手製の銃で撃ち殺した。動機は統一教会への恨みとされるが、事件後、メディアは関係者の名前を隠し、国民に真実を伝えなかった。さらに異常なのは、2025年6月16日現在、暗殺から3年近く経つのに公判がまだ開かれていないことだ。この異常事態は、政治的圧力や情報隠しの可能性を示し、ミネソタの事件報道と重なる。

ミネソタのテロは、米国の政治的分断が暴力を生む現実を突きつける。ホートマンとホフマンの信念が命を奪われ、または脅かされた悲劇だ。日本メディアの沈黙は、報道の偏りや政治的配慮、情報隠しの兆しを示し、この闇はますます深まりつつある。安倍元首相の事件と公判遅延が示すように、政治的暴力は対岸の火事ではない。今、目を覚ませ。真実を求める闘いはここから始まる。

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2025年6月15日日曜日

イスラエルのイラン攻撃:核開発阻止と中東の危機を読み解く

まとめ
  • イスラエルのイラン攻撃は核開発阻止と体制崩壊を狙い、分裂したイラン社会をシリアのような内戦状態に追い込む戦略だ。
  • ネタニヤフは1995年の著書でイランの脅威を予見し、「抵抗の枢軸」による攻撃や2024年のイラン直接攻撃を警告。
  • 2023年、当時の国防相はイスラエルは7地域で「多方面の戦争状態」にあルトの認識を公表、過去のサイバー攻撃や暗殺でイランの核開発を遅らせたが阻止は不完全。
  • 米国は2018年に核合意離脱、中国はイラン支援、ロシアは軍事協力と、大国間の動きが事態を複雑化。
  • イランの核開発は世界を危機にさらし、イスラエルと西側諸国が行動を起こす時間は限られている。
2024年12月8日アサド政権崩壊

イスラエルによるイランへの奇襲攻撃は、核開発計画を遅らせ、現体制を崩壊させる明確な狙いを持つ。核施設、ミサイル工場、軍の要人や核科学者を標的に、民間人の犠牲を抑えつつイラン国内の反体制運動を促す意図があった。しかし、イスラエルの真の目的は、民族や宗派、経済格差で分裂するイラン社会をさらに分断し、アサド政権崩壊前のシリアのような内戦状態に追い込むことだ。

ネタニヤフの予見とイランの脅威

ネタニヤフ首相は1995年の著書『テロリズムとはこう戦え』でイランの脅威を予見。イスラムテロ組織の反米動向を分析し、2001年の9・11テロを予告するような警告を発していた。同書では、国際テロが支援国家の「安全な避難所」なくして成り立たないと断じ、イランがヒズボラ、ハマス、フーシ派の「抵抗の枢軸」を通じてイスラエルを攻撃してきたと指摘。2024年、イランは4月と10月にドローンやミサイルでイスラエルを直接攻撃。ヒズボラの弱体化やシリアのアサド政権崩壊で「抵抗の枢軸」が揺らぐ中、イラン自身が直接対決に踏み切る危険性が浮上した。


ネタニヤフは、イランが核兵器を手に入れれば、都市全体を人質に取りかねないと警告。ナチズムを例に、ヒトラーが核を持っていたら文明は終焉していたと述べ、民主国家が時間を無駄にしてきたと訴える。「一刻の猶予もない」と力強く断言した。攻撃直後、ネタニヤフはヒズボラへの対応がレバノンやシリアの政権変動を招いたと主張し、イラン国民に「解放」の日が近いと呼びかけた。しかし、反イスラエル感情が根強いイランで体制崩壊は不透明だ。軍上層部の排除で体制を揺さぶる狙いはあるが、後継者が強硬姿勢を強める危険もある。米国なしでは核開発阻止は困難だ。

多方面の戦争とイランの抵抗

2023年、当時のガラント国防相は、ガザ、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸、イラク、イエメン、イランの7地域で攻撃を受ける「多方面の戦争状態」を認識。イランと「抵抗の枢軸」による攻撃で、2023年10月のハマス襲撃もイランの支援が背景にあった。イスラエルは2010年のスタックスネットウイルスや2020年の核科学者暗殺で核開発を遅らせたが、完全な阻止はできていない(国際原子力機関報告、2023年)。2022年のイラン国内抗議運動は体制への不満を示したが、治安部隊に鎮圧され、民衆蜂起は遠い。イランの分裂を加速させる戦略は、シリアのような混乱を招く可能性があるが、地域全体の不安定化はイスラエルにも跳ね返るリスクをはらむ。

大国間の駆け引きとイスラエルの孤立


イランをめぐる大国間の動きは事態を複雑にする。米国は2015年のイラン核合意から2018年に離脱し、経済制裁を強化(米国務省、2018年)。2025年6月、イスラエルの攻撃直前に核交渉が予定されたが、イランの報復脅威で米国はイラクから人員を避難させ、交渉は中止(ロイター、2025年6月)。トランプは核開発阻止を求め、軍事攻撃を示唆するが、直接対決は避けたい。一方、中国はイランの最大の石油輸入国として制裁回避を支え、2021年の25年戦略協定で軍事・経済協力を強化(中国外務省、2021年)。2025年3月の北京での三国協議で、核問題の外交解決を主張しつつ米国を非難(新華社、2025年3月)。

ロシアはウクライナ戦争でイランのドローン支援を受け、2025年1月に戦略パートナーシップを締結(ロシア外務省、2025年1月)。イランを政治的に後押しするが、軍事介入には慎重だ。イランは米国の圧力に対抗し、ロシア・中国との関係を深めるが、両国が米国との取引でイランを見限る可能性を警戒する。イスラエル国内では、ネタニヤフへの支持は揺らぎ、反政府デモも起きている。しかし、イランの脅威は世界的な問題だ。

作戦名「アム・ケラヴィ」(雌獅子のような民)は、聖書の民数記に由来し、イスラム革命前のイランのライオンを暗示するとの見方もある。特別非常事態宣言が続く中、作戦は数週間続く可能性がある。米国はイランのウラン濃縮加速を警告(国際原子力機関、2025年)。米国の関与縮小傾向の中、イスラエルは単独で立ち向かう。イランの核開発と地域の混乱は、世界を危機にさらす。イスラエルと米国を中心とする西側諸国が行動を起こす時間は限られている。

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2025年6月14日土曜日

イスラエル空爆の衝撃!イラン核施設壊滅と中東緊迫の行方:日本への警鐘

まとめ

  • 2025年6月13日、イスラエルがイランのナタンズ核施設を空爆、革命防衛隊司令官や核科学者を殺害。モサドの作戦「ライジング・ライオン」でミサイル施設と防空システムを破壊。
  • イランは100発弱のミサイルで報復するが、イスラエルがほぼ迎撃。78人死亡、320人以上負傷。ウクライナの「スパイダーウェブ(蜘蛛の巣)作戦」とイスラエルの潜入・ドローン戦術が類似。
  • 今回の攻撃は、2023年ガラントの「多方面戦争」認識の延長線上にあると見られる。ハマス奇襲後、敵の能力排除を優先。ネタニヤフはイランの核開発を30年間脅威視。
  • 米国は関与せず、トランプが攻撃を称賛。国連で対立、IAEAは他施設の被害なしと報告。2027年まで中東不安定化が続く見通し。
  • 日本は中東の石油供給リスクに備え、原発再稼働やエネルギー多様化を急ぐとともに、ドローン搬入戦術への防衛策として監視システムや対ドローン技術の強化が必要。

2025年6月13日、イスラエルはイラン中部のナタンズ核施設を空爆し、革命防衛隊のホセイン・サラミ司令官、モハマド・バゲリ参謀総長、核科学者のモハマド・メフディ・テヘランチら要人を葬った。この攻撃は、モサドが長年イランに潜入し、現地協力者から得た情報で成し遂げた作戦「ライジング・ライオン」の成果だ。ニューヨーク・タイムズやアルジャジーラは、イスラエルが誘導ミサイルや自爆型ドローンをイランに持ち込み、テヘラン近郊にドローン基地を設けたと報じた。イランのミサイル発射施設と防空システムは壊滅。イスラエルはモサドの諜報力を誇示し、イラン指導部の報復の気力を挫く狙いを明かした。2020年にもイランで核科学者が暗殺されており、イスラエルの執拗な工作が浮き彫りだ。

攻撃後、イランはテルアビブやエルサレムに100発弱のミサイルを発射したが、イスラエル軍はほぼ全て迎撃し、被害は軽微だった。イラン国営メディアは数百発と誇張し、最高指導者アリ・ハメネイは「報復」を宣言。イラン国連大使は、攻撃で78人が死亡、320人以上が負傷し、テヘランやケルマンシャーの住宅地も被害を受けたと訴えた。国際社会は民間人被害を憂慮している。

イランがイスラエルに向けてミサイル100発以上を発射し、一部はテルアビブに着弾

この攻撃は、ウクライナの「スパイダーウェブ作戦」と似ている。2025年6月1日、ウクライナは117機のドローンをロシア領内に運び、トラックから発射して5つの空軍基地を攻撃。約10機の戦略爆撃機を破壊した。両作戦は、敵国内への潜入、偽装トラックによるドローン発射、精密攻撃で共通する。イスラエル軍ラジオは、ウクライナの手法を取り入れたと報じた。イスラエルはイランの防衛を突破し、敵の戦力を削いだ。

この攻撃は、2023年12月26日、ヨアヴ・ガラント国防相が議会で述べた「多方面での戦争状態」に基づく。2023年10月7日、ハマスが1200人以上を殺害、250人以上を拉致する奇襲を仕掛け、イスラエルはガザ、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸、イラク、イエメン、イランの7戦域で脅威に直面。6戦域で反撃を開始し、敵の戦力を潰す戦略に転換した。ガラントは「敵は誰でも標的」と言い切り、ハマスの壊滅と人質奪還を誓った。イランとハマス、ヒズボラ、フーシ派との全面対決が背景にある。

スパイタ〜ウェブ作戦に用いられたドローン ウクライナ保安局

ネタニヤフ首相は30年間、イランの核開発を最大の脅威とみなし、2010年と2012年に攻撃を計画したが、米国の反対で断念。2023年のハマス攻撃後、イスラエルはヒズボラやフーシ派への攻撃を強化。ガザでは約5万5000人が死亡、シリア政権崩壊にも影響を及ぼした。2024年11月、ネタニヤフは今回の作戦を指示。モサド元幹部は、イランにドローン基地を事前に設けたと明かした。

米国は関与せず、トランプ大統領は攻撃を称賛しつつ、イランとの交渉の余地を残した。国連安保理ではイランが米国を非難、イスラエルは「国家存続のための行動」と反論。国際原子力機関は、ナタンズ以外の核施設に被害がないと報告。専門家は、攻撃がイランの核開発を遅らせても、体制危機が核兵器開発を加速させる恐れを指摘。イランの軍事力と代理勢力の衰退は報復を制限している。

イスラエル・ネタ二アフ首相

戦争の行方を占うと、イスラエルの目標である核開発遅延や代理勢力の無力化が進んでも、イランとの緊張は2026年以降も続く。ガラントは2024年に「戦争は長引く」と警告。専門家はイランの核兵器完成を2~3年遅らせられると見る。外交的合意やイラン体制の変革がなければ終結は難しい。2024年11月、国際刑事裁判所がガラントとネタニヤフに逮捕状を発行。ガラントは解任され、イスラエル・カッツが国防相に就任。2027年までは軍事衝突や諜報戦が断続するだろう。イランが核開発を加速すれば、大規模作戦が再び起きる。

中東の不安定は2027年まで続くだろう。その後も両者の睨み合いは続く。日本はエネルギー安全保障と防衛を見直すべきだ。中東からの石油・ガス供給が不安定化する中、再生可能エネルギーへの過度な期待は危険だ。原発再稼働や石炭、LNGの活用でエネルギー多様化を急ぐ必要がある。さらに、スパイダーウェブ作戦やライジング・ライオンに見るドローン潜入戦術への備えが急務だ。敵国が日本にドローンを密輸したり、日本国内で製造して、重要施設を攻撃するリスクに備え、監視システムや対ドローン技術、物流網の点検を進めるべきだ。現実的なエネルギー政策と防衛策は、経済と安全保障を守る鍵だ。

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  まとめ 中東危機 :2025年6月、イスラエルがイランを空爆。原油15%急騰。イランは原油4%を供給、ホルムズ海峡封鎖で混乱。報復ミサイルがハイファ港を襲う。日本は中東原油90%依存。物価高でGDP0.6%減。試練である。 ロシアとウクライナ :原油高でロシアの戦争資金増。イ...