まとめ
- 日本の文明ストックは1人あたり1億円規模で、インフラ・制度・文化・信頼・日本語など膨大な無形資産が積み上がった世界でも特異な厚みを持つ。
- 治安・秩序・清潔さ・公共心・行政の信頼、そして“霊性の文化”と呼べる日本固有の精神的基盤が、文明ストックの最深層で機能し、国際的な比較でも突出している。
- 欧州の移民問題は文明ストックの価値を理解せず元本を切り売りした結果であり、欧州は文明の元本を食いつぶしつつあると見るべきである。
- 我が国の文明ストックは、緊縮・増税・デフレ放置など官僚の政策失敗にもかかわらず、ほとんど毀損されないほど強靭で、日本人はその価値を過小評価させられてきた。
- 日本の将来は文明ストックを守り、さらに積み増していけるかどうかにかかっており、その価値を正しく自覚し磨くことが次世代への責務である。
ある外国人が日本に降り立つ。
財布の中には数万円ほどしかない。
しかし、日本に足を踏み入れた瞬間、彼は自分が想像もしなかった巨大な価値を手にしている。
誰も価格を提示しないし、領収書も存在しない。
だがその価値は確かにそこにある。
我が国が150年以上にわたって積み上げてきた“文明のストック”である。
電車は時間どおりに走り、夜道は比較的安全で、役所へ行けば最低限の秩序は守られる。
街は清潔だ。行列には自然に秩序が生まれ、誰もが当たり前のように約束を守ろうとする。
これは自然に湧いてきたものではない。
日本人が世代を超えて税を負担し、努力し、規範を守ってきた結果として築かれた“文明の元本”である。
1️⃣見えない「文明ストック」と国際比較
| 東京の夜景 |
内閣府の試算では、我が国の総資産は約13京円に達する。
これを国民1人あたりで割れば、およそ1億円の“見えない土台”の上に日本人は生活している計算になる。
もちろん、現金で1億円を持っているわけではない。
道路、鉄道、港湾、上下水道、電力網といったインフラ。
裁判所、警察、行政の制度。
企業文化、社会の信頼、そして日本語という知の基盤。
こうしたものすべてが「文明の基礎資産」であり、その総体が我が国の社会の滑らかな動きを支えている。
世界銀行の包括的国富(インクルーシブ・ウェルス)でも、我が国の文明ストックは国際的に極めて高い水準にある。
おおよその比較は次のとおりだ。
- 米国:1億2,000万〜1億5,000万円
- 日本:6,000万〜8,000万円(実際には他国にない文明資産を加えれば、1億円は下らないかそれ以上)
- ドイツ:5,000万〜7,000万円
- イギリス/フランス:4,000万〜6,000万円
- 韓国:2,500万〜3,500万円
- 中国:800万〜1,500万円
これだけでも特異だが、実際はここに「数値化しにくい資産」が加わる。
治安、秩序、清潔さ、公共心、約束を守る文化、行政への基本的信頼。
そして何より我が国を特徴づける“霊性の文化”である。
フランスの作家アンドレ・マルローは「21世紀は宗教の時代ではなく、霊性の時代になる」と語ったとされる。
心理学者ユングも、人類が再び象徴性や内面性を重視する時代が来ると予見していた。
我が国では、祭りや祈り、自然への畏れ、穢れを避ける感覚、空気を読む文化、そして“和”を重んじる気質が、人々の行動に静かな規律を与えてきた。
宗教制度・組織に依存せずとも成立するこの“霊性の文化”は、世界的にも極めて珍しい文明資産である。
数字では測れないが、この層こそ、我が国の文明ストックが世界でも例を見ない厚さを持つ理由だといってよい。
2️⃣シェフの比喩が教える「文明の使い方」
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| パリのバンリュー(郊外)の低所得者住宅は今や移民街 |
しかし、そんな契約は本来成立しない。
背後には、何十年の経験、鍛え抜かれた技能、厨房を運営してきた判断力、店に積み上がった信頼、そして文化的な蓄積までが含まれている。
これを数時間の講師料だけで評価するなど、本質を見誤っている。
さらに、そのシェフが毎日のように安い講師業に追われれば、技術を磨く時間は失われ、店の質も落ち、後進を育てる力も削がれる。
やがて一流である理由そのものが失われる。こんなことをする経営者は経営者失格である。
文明の元本は、決して「ただで切り売りしてよいもの」ではないのだ。
いま欧州の一部で起きている移民問題は、まさにこの構図と重なる。
文明ストックの価値を考えず、目先の労働力としてだけ移民を受け入れた結果、治安の悪化、行政サービスの負荷増大、社会的信頼の崩壊といった“元本の劣化”が広がっている。
欧州は文明の元本をじわじわ食いつぶしつつある。
我が国は、同じ誤りを繰り返してはならない。
3️⃣我が国はまだ間に合う──元本を「守り、積み増す」方向へ
さらに特筆すべき事実がある。
我が国の文明ストックは、財務省や日本銀行がここ30年にわたり続けてきた失策──緊縮、消費増税、デフレ放置、誤った金融引き締め──によっても、ほとんど毀損されていない。
本来なら国家を弱らせかねない政策の連続にもかかわらず、治安は保たれ、秩序は崩れず、企業は契約を守り、社会は最低限の調和を維持している。
つまり、我が国の文明ストックは、政策の下手さ程度では壊れないほど強靭だったということだ。
この事実はもっと知られるべきだ。
ところが、こうした稚拙な政策のせいで、日本人自身が「我が国は衰退している」「もう貧しい国になった」と思い込まされてきた。
だがそれは数字の錯覚であり、文明の元本はむしろ世界の中で突出した厚みを維持してきた。
国家とは、収支の帳簿で動く家計とは異なる。財務省の頭の悪い官僚が示すワニの口など、愚劣極まりない例えだ。まるで、資産も経験にも乏しい小学生のお小遣い帳のようだ。本当に腹立たしい稚拙な比喩だ。
国家とは教育、文化、制度、信頼、霊性といった無形資本が複合し、未来を生み出す巨大な仕組みだ。
GDPは、その仕組みが生み出す出力の一部にすぎない。ましてやお小遣い帳では断じて計り知れない価値である。
我が国の未来は、先達の努力によるこの文明ストックを守り、さらに我々自身が積み増せるかどうかにかかっている。
文明ストックこそ国家の本当の力であり、その価値を理解し、自覚し、磨き続けることで初めて次の世代につながる。
我が国には、いまなお誇りうる厚みがある。
まずこれに気づくことこそ、次の一歩である。
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