バイデン米大統領 |
この記者会見は用意周到な準備の上で行われたようだ。バイデン氏による説明は当然としても、質問する記者やその内容に関しても、事前に用意していたかのような手持ちメモもあったという。
高齢で危うさのあるバイデン氏を揶揄(やゆ)する向きもあるが、決して非難されるものでなくバイデン政権の性格を表しているものだといえる。
前の政権ではトランプ前大統領のツイッターが政策の方向性を示すなどトップダウンで進んだが、バイデン政権ではボトムアップだ。
ボトムで支える国務省も万全の体制で臨んでいる。記者会見での事前準備もしっかりしていたが、ブリンケン国務長官は国務省出身で、今回の対中政策でキーパーソンになっている。
16日からの1週間、ブリンケン国務長官は、東京で日米、ソウルで米韓、アラスカで米中、ブリュッセルで米欧をこなして、対中包囲網を構築してしまった。
また、米インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノ太平洋艦隊司令官(海軍大将)は上院軍事委員会の公聴会で、中国による台湾への軍事侵攻について「予想より近い」と話した。こうした一連の動きの締めが、バイデン氏の記者会見だったというわけだ。今のところ、ボトムアップのバイデン政権は互いに連携し、うまく機能しているようだ。
アキリーノ太平洋艦隊司令官 |
バイデン政権が、対中関係を、民主主義対専制主義と話したことは大きい。バイデン氏に対する「親中」とのレッテル貼りを否定する狙いもあるようにうかがえた。筆者は、こうした変化が本当であれば、素直に歓迎すべきだと思っている。
この点、日米で首脳が同時期に交代したのはある意味で幸運だ。安倍晋三氏とトランプ氏は両者の個人的関係が深く、日本は国益を確保したが、菅義偉氏とバイデン氏では、両国の官僚機構が活用される。安倍政権時代、手持ち無沙汰だった外務省の出番が来て、外務官僚も張り切っている。菅氏もバイデン氏もそれぞれ新任なので、かえってやりやすいのだろう。
日本の外務省と米国務省という両国の官僚機構が相互に連携すると、かなり強固な日米関係になると期待できる。
懸念材料は今のところ少ないが、バイデン政権内のケリー大統領特使(気候変動問題担当)の動向は気にかかる。政治的にケリー特使はブリンケン国務長官より格上であるし、気候変動のためには米国は中国に配慮せざるを得ない。下手をすると、中国に気候変動で妥協するために人権を売りかねないという懸念がある。
そうならないために、日本としては環境政策でも米国と連携しつつ、4月上旬に菅氏が先進国初の米大統領との直接対談相手に選ばれたことを最大限に活用してもらいたい。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】いざという場合には、QUAD諸国はケリー氏をペルソナ・ノン・グラータに指定してでも結束せよ(゚д゚)!
昨日のブログで、私は以下のような主張をしました。
温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。バイデン外交は始動したばかりです。そうして、ジョー・バイデンが中国と深い関係を持ち、息子のハンター・バイデンが中国に買収されてしまっているのは紛れもない事実です。現在ジョー・バイデンの登場によって習近平は、政治的には有利な立場に立っているのは事実です。習近平がこれを、利用するのは間違いありません。温暖化で協力したみかえりに、バイデンから譲歩を得ようと画策するのは目にみえています。
これと同じような懸念を高橋洋一氏は持ったようです。 実際以下のように主張しています。
懸念材料は今のところ少ないが、バイデン政権内のケリー大統領特使(気候変動問題担当)の動向は気にかかる。政治的にケリー特使はブリンケン国務長官より格上であるし、気候変動のためには米国は中国に配慮せざるを得ない。下手をすると、中国に気候変動で妥協するために人権を売りかねないという懸念がある。
ケリー大統領特使(気候変動問題担当) |
オバマ政権で米国務長官を務めたた当時のケリー上院外交委員長は2013年1月24日、上院公聴会で米中関係の強化に取り組む意向を示し、「中国重視」の姿勢を鮮明にしました。
オバマ政権がアジア重視戦略に基づいて進めている米軍再編に対しても、ケリー氏は中国に誤解を与えていると疑問視していました。これをもって、日米同盟などを軸とする米アジア外交が後退する可能性もあると当時多くの専門家が指摘していました。実際、オバマ政権下で、米アジア外交は後退しました。
「中国側は、米国が彼らを取り囲もうとしているのかと言っている」。ケリー氏は公聴会で、日中が争う沖縄県・尖閣諸島や南シナ海での中国の海洋進出への対処方針を聞かれ、オーストラリア北部に米海兵隊がローテーション(巡回)駐留することなどを挙げ、中国への軍事的けん制に真っ向から反対しました。
ケリー氏をよく知る関係者によれば、同氏はもともと対中融和派とされています。当時の公聴会で、米中間の経済的な懸案事項に言及しながらも、不透明な軍事費の増額や人権問題に踏み込まなかったところにそうした姿勢がにじみ出ていました。
また、「アジア重視」のスローガンが「欧州や中東などとの関係を犠牲にしてはならない」とも戒めました。
ケリー氏の発言が際立っていたのは、アジア外交の方針を述べる上で、日米同盟など域内の同盟関係への取り組みについて全く言及しなかったことです。オバマ政権が重視している東アジアサミットなど多国間の協力の枠組みにも触れませんでした。
当時のクリントン国務長官も2009年1月の指名公聴会で中国を重要な存在と指摘しましたが、それ以上に「日米同盟はアジア地域における米外交の礎石だ」と表明していました。
就任後の最初の外遊で日本を訪問するなど日米関係を重視し続けてきました。24日のケリー氏の指名公聴会は約3時間40分続きましたが、次期国務長官の口から「日本」という言葉は一度も聞かれませんでした。
2014年11月6日付米Diplomat誌のウェブサイトで、ティエッツィ氏が、米国のアジア回帰に関するケリー国務長官の最近の発言を取り上げ、アジア回帰は、クリントン前長官が提唱した当時とは性格が変わり軍事的側面が大きく後退している、と述べました。
ケリー国務長官の米中関係に関する同年11月5日の演説は、米国のアジア回帰が、2011年に発表された当初とは性格が異なってきているとしたのです。
ケリー氏は、「リバランスを定義づける4つの柱」として、(1)持続的な経済成長、(2)クリーンエネルギー革命を通じた気候変動対策、(3)ルールに基づいた安定した地域に貢献する、規範と機構の強化による緊張緩和、(4)アジア太平洋の人々が、尊厳、安全、機会を与えられた生活を送れるよう保証することを挙げました。
これに先立つ3年前、ヒラリー・クリントン前長官は、「アジア回帰」のオリジナル版を発表しました。Foreign Policy誌の記事で、クリントンは米国の新しいアジア戦略の6つの行動基本を挙げました。二国間同盟の強化、中国を含む新興勢力との実務的協力の深化、地域の多国間機構への関与、広範な軍事的プレゼンスの強化、民主主義と人権の促進です。
ケリー氏の再定義は、クリントンのものと、いくつかの重要な点で異なっていました。特に、リバランスの経済的側面(特にTPP)が前面に出されていました。これは、単に政治的ジェスチャーである可能性もありました。当時TPP交渉は行き詰まっていました。しかし、ケリー氏の再定義は、「アジア回帰」に対して中国から頻繁に向けられる、「同盟・軍事偏重」との批判に対応するものでした。
ケリー氏の新しい定義では、クリントンが重視していたアジア回帰の軍事面は、見当たりませんでした。当時オバマ政権は、アジア政策において、軍事から経済・外交問題に、徐々に焦点を移していました。これは、一つには、当時ISISとの戦いやウクライナ危機に対応しなければならないという必要性から来るものでした。
しかし、リバランスの軍事面の重要性を引き下げる決定は、意図的な選択でもあったでしょう。リバランスにおいて、経済面に焦点を当てることは、「対中封じ込めである」との中国の不満の根拠を小さくすることが予想されました。気候変動対策をリバランスの課題に加えることは、米中が「アジア回帰」の枠組みの中で協力する余地を与えることになりました。それは元来の定義からは抜けていたことでした。クリントンの6つの目標のうち、3つが中国に関することである。ケリーの再定義では、4つの目標全てが、中国との共通の土俵を提供し得る。もちろん、これらの目標を追求するために米国の戦略を実行する際は、中国の国益と衝突が生じるであろう。必要性からであれ、外交的配慮からであれ、オバマ政権は、「アジア・リバランス」の論争的な側面を目立たなくさせた、と指摘しています。
出典:Shannon Tiezzi,“So Long Deployment, Hello Employment: Redefining the Rebalance to Asia”(The Diplomat, November 6,2014)ケリー当時国務長官は、ジョンズホプキンス大学のSAISで行った米中関係に関する演説において、米中関係の強化がリバランス戦略の鍵になる要素であることに疑いの余地は無いとして、「今日の世界において、最も重要なのは米中関係であるということだ。米中関係が21世紀の姿を決める大きな要因になる」と述べていました。
http://thediplomat.com/2014/11/so-long-deployment-hello-employment-redefining-the-rebalance-to-asia/
クリントン国務長官の退任以降、米国のアジア回帰が変質していることがしばしば指摘されていましたが、ケリーが演説で提示した4つの柱は、改めてそのことを示していました。
ケリー氏の新定義は、TPPをアジア回帰の中心に位置付けていました。TPPがアジア回帰の中心というのは言い過ぎですが、重要な構成要素であることには違いなく、TPPが無事に締結されるに越したことはありませんでした。この点は、共和党が両院で多数を占めた議会とオバマ政権との数少ない一致点でした。しかし、後にトランプ政権はTPPから離脱しました。そうして、日本が旗振り役となり、米国抜きのTPPが成立しました。
バイデン政権と中国の習近平指導部の外交トップによる初めての対面での会談がアラスカ州で行われ、米中双方の『プロパガンダ合戦』になりましたが、中国側に言われ続けたブリンケン氏の『外交素人臭さ』もあらわになりました。
ブリンケン米国務長官(右)は先月18日、中国の外交担当トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー) 共産党政治局員(左)とアラスカ州で会談した |
温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。
中国は、故がなく、経済成長2.3%の数字を出すはずはありません。習政権は、これを前面に打ち出し、中国が温暖化で大成功したように見せかけるつもりかもしれません。
この大成功をケリー氏が利用して、中国への宥和政策への転換をはかる可能性はかなり高いです。
これに対して、QUAD諸国やその他の米同盟国は、今から中国のGDPの嘘をエビデンスとともに告発できる体制を整え、ケリーが対中国宥和政策に踏み切ろうとした場合、中国の温暖化目標達成は出鱈目であることを白日のもとにさらし、米国の対中国宥和政策は全くの間違いであることを糾弾すべきです。
そうして、昨日も述べたように、QUAD諸国は、「毒薬条項」を盛り込んででも、中国の政治的介入から守り抜くべきです。あるいは、ケリー氏が明らかに、中国に人権を売り渡した場合には、ケリー氏をQUAD諸国特に日・豪・印はペルソナ・ノン・グラータに指定するくらいのことをすべきです。それくらいのショックを与えなければ、バイデンは覚醒しないでしょう。英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 ―【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!
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