2021年4月1日木曜日

ボトムアップのバイデン政権、「親中」否定の動きは歓迎も…気にかかるケリー特使の動向 下手をすると、中国に人権を売りかねない ―【私の論評】いざという場合には、QUAD諸国はケリー氏をペルソナ・ノン・グラータに指定してでも結束せよ(゚д゚)!


バイデン米大統領

 バイデン米大統領は就任後初の記者会見を3月25日に開いたが、これまでの外交や内政、経済対策からどのような方向性が見えてきただろうか。

 この記者会見は用意周到な準備の上で行われたようだ。バイデン氏による説明は当然としても、質問する記者やその内容に関しても、事前に用意していたかのような手持ちメモもあったという。

 高齢で危うさのあるバイデン氏を揶揄(やゆ)する向きもあるが、決して非難されるものでなくバイデン政権の性格を表しているものだといえる。

 前の政権ではトランプ前大統領のツイッターが政策の方向性を示すなどトップダウンで進んだが、バイデン政権ではボトムアップだ。

 ボトムで支える国務省も万全の体制で臨んでいる。記者会見での事前準備もしっかりしていたが、ブリンケン国務長官は国務省出身で、今回の対中政策でキーパーソンになっている。

 16日からの1週間、ブリンケン国務長官は、東京で日米、ソウルで米韓、アラスカで米中、ブリュッセルで米欧をこなして、対中包囲網を構築してしまった。

 また、米インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノ太平洋艦隊司令官(海軍大将)は上院軍事委員会の公聴会で、中国による台湾への軍事侵攻について「予想より近い」と話した。こうした一連の動きの締めが、バイデン氏の記者会見だったというわけだ。今のところ、ボトムアップのバイデン政権は互いに連携し、うまく機能しているようだ。

アキリーノ太平洋艦隊司令官

 バイデン政権が、対中関係を、民主主義対専制主義と話したことは大きい。バイデン氏に対する「親中」とのレッテル貼りを否定する狙いもあるようにうかがえた。筆者は、こうした変化が本当であれば、素直に歓迎すべきだと思っている。

 この点、日米で首脳が同時期に交代したのはある意味で幸運だ。安倍晋三氏とトランプ氏は両者の個人的関係が深く、日本は国益を確保したが、菅義偉氏とバイデン氏では、両国の官僚機構が活用される。安倍政権時代、手持ち無沙汰だった外務省の出番が来て、外務官僚も張り切っている。菅氏もバイデン氏もそれぞれ新任なので、かえってやりやすいのだろう。

 日本の外務省と米国務省という両国の官僚機構が相互に連携すると、かなり強固な日米関係になると期待できる。

 懸念材料は今のところ少ないが、バイデン政権内のケリー大統領特使(気候変動問題担当)の動向は気にかかる。政治的にケリー特使はブリンケン国務長官より格上であるし、気候変動のためには米国は中国に配慮せざるを得ない。下手をすると、中国に気候変動で妥協するために人権を売りかねないという懸念がある。

 そうならないために、日本としては環境政策でも米国と連携しつつ、4月上旬に菅氏が先進国初の米大統領との直接対談相手に選ばれたことを最大限に活用してもらいたい。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】いざという場合には、QUAD諸国はケリー氏をペルソナ・ノン・グラータに指定してでも結束せよ(゚д゚)!

昨日のブログで、私は以下のような主張をしました。
温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

バイデン外交は始動したばかりです。そうして、ジョー・バイデンが中国と深い関係を持ち、息子のハンター・バイデンが中国に買収されてしまっているのは紛れもない事実です。

現在ジョー・バイデンの登場によって習近平は、政治的には有利な立場に立っているのは事実です。

習近平がこれを、利用するのは間違いありません。温暖化で協力したみかえりに、バイデンから譲歩を得ようと画策するのは目にみえています。

これと同じような懸念を高橋洋一氏は持ったようです。 実際以下のように主張しています。

懸念材料は今のところ少ないが、バイデン政権内のケリー大統領特使(気候変動問題担当)の動向は気にかかる。政治的にケリー特使はブリンケン国務長官より格上であるし、気候変動のためには米国は中国に配慮せざるを得ない。下手をすると、中国に気候変動で妥協するために人権を売りかねないという懸念がある。
ケリー大統領特使(気候変動問題担当)

オバマ政権で米国務長官を務めたた当時のケリー上院外交委員長は2013年1月24日、上院公聴会で米中関係の強化に取り組む意向を示し、「中国重視」の姿勢を鮮明にしました。

オバマ政権がアジア重視戦略に基づいて進めている米軍再編に対しても、ケリー氏は中国に誤解を与えていると疑問視していました。これをもって、日米同盟などを軸とする米アジア外交が後退する可能性もあると当時多くの専門家が指摘していました。実際、オバマ政権下で、米アジア外交は後退しました。

「中国側は、米国が彼らを取り囲もうとしているのかと言っている」。ケリー氏は公聴会で、日中が争う沖縄県・尖閣諸島や南シナ海での中国の海洋進出への対処方針を聞かれ、オーストラリア北部に米海兵隊がローテーション(巡回)駐留することなどを挙げ、中国への軍事的けん制に真っ向から反対しました。

ケリー氏をよく知る関係者によれば、同氏はもともと対中融和派とされています。当時の公聴会で、米中間の経済的な懸案事項に言及しながらも、不透明な軍事費の増額や人権問題に踏み込まなかったところにそうした姿勢がにじみ出ていました。

また、「アジア重視」のスローガンが「欧州や中東などとの関係を犠牲にしてはならない」とも戒めました。

ケリー氏の発言が際立っていたのは、アジア外交の方針を述べる上で、日米同盟など域内の同盟関係への取り組みについて全く言及しなかったことです。オバマ政権が重視している東アジアサミットなど多国間の協力の枠組みにも触れませんでした。

当時のクリントン国務長官も2009年1月の指名公聴会で中国を重要な存在と指摘しましたが、それ以上に「日米同盟はアジア地域における米外交の礎石だ」と表明していました。

就任後の最初の外遊で日本を訪問するなど日米関係を重視し続けてきました。24日のケリー氏の指名公聴会は約3時間40分続きましたが、次期国務長官の口から「日本」という言葉は一度も聞かれませんでした。

2014年11月6日付米Diplomat誌のウェブサイトで、ティエッツィ氏が、米国のアジア回帰に関するケリー国務長官の最近の発言を取り上げ、アジア回帰は、クリントン前長官が提唱した当時とは性格が変わり軍事的側面が大きく後退している、と述べました。

ケリー国務長官の米中関係に関する同年11月5日の演説は、米国のアジア回帰が、2011年に発表された当初とは性格が異なってきているとしたのです。

ケリー氏は、「リバランスを定義づける4つの柱」として、(1)持続的な経済成長、(2)クリーンエネルギー革命を通じた気候変動対策、(3)ルールに基づいた安定した地域に貢献する、規範と機構の強化による緊張緩和、(4)アジア太平洋の人々が、尊厳、安全、機会を与えられた生活を送れるよう保証することを挙げました。

これに先立つ3年前、ヒラリー・クリントン前長官は、「アジア回帰」のオリジナル版を発表しました。Foreign Policy誌の記事で、クリントンは米国の新しいアジア戦略の6つの行動基本を挙げました。二国間同盟の強化、中国を含む新興勢力との実務的協力の深化、地域の多国間機構への関与、広範な軍事的プレゼンスの強化、民主主義と人権の促進です。

ケリー氏の再定義は、クリントンのものと、いくつかの重要な点で異なっていました。特に、リバランスの経済的側面(特にTPP)が前面に出されていました。これは、単に政治的ジェスチャーである可能性もありました。当時TPP交渉は行き詰まっていました。しかし、ケリー氏の再定義は、「アジア回帰」に対して中国から頻繁に向けられる、「同盟・軍事偏重」との批判に対応するものでした。

ケリー氏の新しい定義では、クリントンが重視していたアジア回帰の軍事面は、見当たりませんでした。当時オバマ政権は、アジア政策において、軍事から経済・外交問題に、徐々に焦点を移していました。これは、一つには、当時ISISとの戦いやウクライナ危機に対応しなければならないという必要性から来るものでした。

しかし、リバランスの軍事面の重要性を引き下げる決定は、意図的な選択でもあったでしょう。リバランスにおいて、経済面に焦点を当てることは、「対中封じ込めである」との中国の不満の根拠を小さくすることが予想されました。気候変動対策をリバランスの課題に加えることは、米中が「アジア回帰」の枠組みの中で協力する余地を与えることになりました。それは元来の定義からは抜けていたことでした。

クリントンの6つの目標のうち、3つが中国に関することである。ケリーの再定義では、4つの目標全てが、中国との共通の土俵を提供し得る。もちろん、これらの目標を追求するために米国の戦略を実行する際は、中国の国益と衝突が生じるであろう。必要性からであれ、外交的配慮からであれ、オバマ政権は、「アジア・リバランス」の論争的な側面を目立たなくさせた、と指摘しています。
出典:Shannon Tiezzi,“So Long Deployment, Hello Employment: Redefining the Rebalance to Asia”(The Diplomat, November 6,2014)
http://thediplomat.com/2014/11/so-long-deployment-hello-employment-redefining-the-rebalance-to-asia/
ケリー当時国務長官は、ジョンズホプキンス大学のSAISで行った米中関係に関する演説において、米中関係の強化がリバランス戦略の鍵になる要素であることに疑いの余地は無いとして、「今日の世界において、最も重要なのは米中関係であるということだ。米中関係が21世紀の姿を決める大きな要因になる」と述べていました。

クリントン国務長官の退任以降、米国のアジア回帰が変質していることがしばしば指摘されていましたが、ケリーが演説で提示した4つの柱は、改めてそのことを示していました。

オバマ政権が、中国を刺激しないよう、事実上の「中国封じ込め」としてクリントンが提示したアジア回帰を変容させた、という分析は、その通りでしょう。当時のオバマ政権が言う「アジア重視」は、もはや「中国重視」であると言っても過言ではなかったように思います。ケリー氏が4つの柱の一つとして挙げている気候変動対策については、早速、11月の米中首脳会談で、両国の削減目標で合意に達し、世界の耳目を集めました。

ケリー氏の新定義は、TPPをアジア回帰の中心に位置付けていました。TPPがアジア回帰の中心というのは言い過ぎですが、重要な構成要素であることには違いなく、TPPが無事に締結されるに越したことはありませんでした。この点は、共和党が両院で多数を占めた議会とオバマ政権との数少ない一致点でした。しかし、後にトランプ政権はTPPから離脱しました。そうして、日本が旗振り役となり、米国抜きのTPPが成立しました。

そうして、結局オバマ政権がアジア回帰を再々定義してクリントンのオリジナル版に戻することはありませんでした。米国のアジア回帰の空洞化は、トランプ政権が成立するまで、続きました。

バイデン政権と中国の習近平指導部の外交トップによる初めての対面での会談がアラスカ州で行われ、米中双方の『プロパガンダ合戦』になりましたが、中国側に言われ続けたブリンケン氏の『外交素人臭さ』もあらわになりました。

ブリンケン米国務長官(右)は先月18日、中国の外交担当トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)
共産党政治局員(左)とアラスカ州で会談した

早速、米共和党から『対中国で弱腰だ』と批判されています。バイデン政権は表向きは中国と『競争的な姿勢』を見せていますが、本音は違うようです。

いずれ、気候変動対策の大統領特使になった『親中派』のジョン・ケリー元国務長官が中心に出て、対中宥和を打ち出す可能性はかなり高いです。日本としてしては、要注意です。

昨日の記事では、温暖化について以下のように述べました。
温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

中国は、故がなく、経済成長2.3%の数字を出すはずはありません。習政権は、これを前面に打ち出し、中国が温暖化で大成功したように見せかけるつもりかもしれません。

この大成功をケリー氏が利用して、中国への宥和政策への転換をはかる可能性はかなり高いです。

これに対して、QUAD諸国やその他の米同盟国は、今から中国のGDPの嘘をエビデンスとともに告発できる体制を整え、ケリーが対中国宥和政策に踏み切ろうとした場合、中国の温暖化目標達成は出鱈目であることを白日のもとにさらし、米国の対中国宥和政策は全くの間違いであることを糾弾すべきです。

そうして、昨日も述べたように、QUAD諸国は、「毒薬条項」を盛り込んででも、中国の政治的介入から守り抜くべきです。あるいは、ケリー氏が明らかに、中国に人権を売り渡した場合には、ケリー氏をQUAD諸国特に日・豪・印はペルソナ・ノン・グラータに指定するくらいのことをすべきです。それくらいのショックを与えなければ、バイデンは覚醒しないでしょう。

これには、特に外交の専門家の方々などは、そんなことができるはずがないと言う方もいらっしゃるかもしませんが、QUAD所属国のほとんどの国には、あらゆる形で中国は深く浸透していることを考えると、生半可なことではこれに対応できません。

そうでないと、世界はまたとんでもないことになり、米中協同による中国寄りの新世界秩序が形成されることになりかねません。そうして、他国を無視してG2で世界新秩序が作られるようになれば、それこそ目もあたられらません。世界は闇につつまれることになります。

世界がオバマ政権のときのように、米国がグタグタになり、世界が大混乱するようなことだけは、避けるべきです。

そのようなことになる前に、米国共和党、民主党主流派と良心派が、このようになることを阻止していただきたいものです。

QUAD諸国は、米国が中国に対して宥和的になることだけは、二重三重の備え、いや、五重六重の備えをしてこれを絶対防ぐべきです。

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2021年3月31日水曜日

日米豪印クワッドが国際社会に示した意義―【私の論評】QUAD協定には「毒薬条項」を盛り込んででも、中国の政治的介入から守り抜くべき(゚д゚)!

日米豪印クワッドが国際社会に示した意義

岡崎研究所

 日米豪印4カ国(クワッド)の首脳、菅義偉総理、ジョー・バイデン米大統領、スコット・モリソン豪首相、ナレンダラ・モディ印首相は、3月12日に初の四カ国首脳会議をオンライン形式で開催した。翌日3月13日付のワシントン・ポスト紙には、4首脳が連名で投稿し、インド太平洋地域の自由と繁栄を連携して守ると国際社会に宣言した。


 バイデン大統領は政権発足直後から、外交に積極的に取り組んでいる。バイデン・ドクトリンとでも呼ぶべき 1)米国主導での国際社会への関与、2)民主主義など政治価値の推進、3)新型コロナウイルス、気候変動など国際的課題への取り組み、4)同盟国との連携及び国際機関への関与、5)政策専門家の重用などの、外交指針も明示した。

 政権発足前には、米国民の新型コロナウイルス感染への対応、米経済活動の再開と雇用の創出、国民の分断と対立の解消など国内政策に集中すると思われたが、予想以上に外交に注力している。トランプ前大統領の4年間で混乱し脆弱化した、リベラルな国際秩序を重視する国々には好感すべき滑り出しだ。

 ワシントン・ポスト紙に寄せられた論説では、日米豪印の首脳が連名でインド太平洋地域にクワッドとして取り組む宣言を行った。クワッドによる 1)民主主義的価値を基盤とした協働、2)新型コロナウイルスと気候変動への取り組み、3)インド太平洋地域の平和と繁栄の促進、4)東南アジア諸国、太平洋島嶼国、インド洋地域との連携が柱である。

 米国がクワッドを主導して、これまで概念的だった「自由で開かれたインド太平洋構想」に、具体的に四カ国が共有する行動指針を国際社会に示した意義は大きい。さらに、年内にはオンライン形式ではなく、実際に首脳が集ってクワッド首脳会合を目指すとしており、喫緊の課題に迅速に対応するという決意も伝わってくる。

 ワシントン・ポスト紙の論説は、スマトラ沖地震、新型コロナウイルス感染、気候変動など、インド太平洋全域に共通の危機への対応をクワッドの出発点、そして存在意義として打ち出している。共通の危機に対する含意の背景には中国の国内外における行動への強い警戒感があるが、中国を名指しすることはせず、中国も協力しやすい人道援助や災害救済を柱として書いている。中国と米国のどちらかを選択することを回避したい地域諸国、中でも東南アジア諸国への配慮が示されているのだろう。バイデン政権ではキャンベル・インド太平洋調整官が論説の作成に関与していると言われるが、北東アジア政策に加えて東南アジア政策も意識してきた人物であり、クワッドの鍵を握る存在なのだろう。

 ただ、政策の構築と遂行は全く別である。クワッドはインド太平洋全域の平和と繁栄のために協働することを宣言したが、「悪魔は細部に宿る」の通りで、新型コロナウイルスのワクチンで成果を出せるか、中国に対して東南アジア諸国も抱き込みながら対応できるかが、四カ国首脳に問われている。日本には、菅首相の4月の訪米でバイデン大統領と共に「インド太平洋構想」の強いメッセージを打ち出すことが期待されている。日米同盟を基軸に、この地域に具体的にどのような貢献ができるのか、域内諸国も注視する日米首脳会談となろう。

【私の論評】QUAD協定には「毒薬条項」を盛り込んででも、中国の政治的介入から守り抜け(゚д゚)!

インド太平洋において日米から中核的な役割を期待されているのが、日米豪印Quadです。Quad各国は、豪州に対する経済強制をはじめ、それぞれが中国と深刻な問題を抱えています。Quadの対話レベルは、トランプ政権により外相級に、バイデン政権により首脳級へと一貫して引き上げられており、その将来性には大きな期待が集まっています。

          QUADは12日(現地時間)、初の首脳会議をオンラインで行った。 シドニーから
         参加するオーストラリアのスコット・モリソン首相(左)。

今回のオンラインサミットでは、ワクチン、重要・新興技術、気候変動についての作業部会の立ち上げという成果も上がりました。だが協力の制度化はこれからが本番といえるでしょう。

この地域の平和と安定を維持する上で依然として最も重要なのは、抑止力と対処力を兼ね備えた日米同盟です。バイデン政権はこうした考えを明らかにするため、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官の初の外遊先として東京を選びました。

日米2+2での最大の注目点は、中国を名指しして批判したことです。前回2+2では「地政学的競争及び威圧的試み」といった表現が用いられました。これはもちろん中国を念頭に置いてのことですが、中国に対する姿勢を硬化させていたトランプ政権下での開催だったにもかかわらず、中国の名指しは回避されました。今回の言及で、バイデン政権の中国に対する強い危機感が反映された格好です。

日米豪印サミット、米韓2+2では中国への直接の言及が避けられたことから、対中脅威認識を日本が米国と高度に共有していることが示されました。尖閣諸島での領海侵入や海警法制定をはじめ、政治的、経済的、軍事的及び技術的な課題を引き起こしているのは中国であり、日本は自らの戦略上の判断として名指しでの中国批判に踏み切ったのです。

一方で米国は、日本防衛の手段として核能力が含まれると改めて表明しましたが、これも中国による現状変更の試みに対する危機感の表れです。

加えて台湾海峡の平和と安定の重要性が盛り込まれました。これは、6年以内の台湾侵攻の可能性という、インド太平洋軍のデービッドソン司令官による連邦議会上院軍事委員会での証言と軌を一にしているといえます。

インド太平洋軍のデービッドソン司令官


そうして日本の報道などでは見落とされがちですが、重要な意味を帯びたのがオースティン国防長官のインド訪問でした。インドは日、豪、韓国とは異なり、米国の条約上の同盟国ではありません。

しかしながら、国防長官が政権発足後の早い段階でインドを訪問したのは、中国についての安全保障上の懸念を米印が共有しているからです。インドにとっては中国との国境紛争で45年ぶりに死者が出たことが大きかったようです。

インド太平洋の重要な同盟国及びパートナーとの連携を深化させた上で、バイデン政権が臨んだのが中国との協議でした。この協議が行われたアラスカ州アンカレッジで、ブリンケン長官にサリヴァン大統領補佐官が合流したのですが、米中会談の幕開けは大荒れでした。

会議中に楊潔篪中国共産党政治局委員がふるった長広舌は異常だったと言わざるを得ないです。そしてアラスカから帰国した王毅外交部長は、広西桂林でラブロフ外相を迎え、中露の結束と米国への対抗を鮮明にしました。

一連の外交日程は、菅義偉総理のアメリカ訪問で山場を迎えることになります。菅総理はバイデン大統領と対面で会談する最初の外国首脳となり、日米同盟の重要性が改めて示されることとなるでしょう。

日米の戦略レベルでの足並みはほとんど一致していますが、例えばウイグル問題へのスタンスについての調整、すなわち日本によるより強い姿勢が必要となるでしょう。だが急激に高まる中国の脅威を考えれば、調整範囲は全体からみれば若干にとどまると言って差し支えないでしょう。

大いに議論を深めるべきは、日米同盟の将来像についてです。それは駐留経費負担といった同盟管理の文脈を越え、中国の脅威を見据えながらインド太平洋及び世界全体を視野に入れたものでなければならないです。

デービッドソン司令官は上院軍事委員会で、米軍の量的優位だけでなく、いくつかの領域では質的優位も崩れつつあると証言しており、対中抑止力をいかに維持するかが重要かつ喫緊の課題となっています。沖縄を含む第一列島線上でのミサイル網の構築は、待ったなしの状況です。

一方でプレスの前での緊迫した応酬にもかかわらず、バイデン政権は気候変動での米中協力を引き続き模索しています。もそも、中国では温暖化などの前に、人権が侵害されているのは明らかであり、人権侵害をしたまま、温暖化に取りくんだとしても、無意味です。

温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

バイデン外交は始動したばかりです。そうして、ジョー・バイデンが中国と深い関係を持ち、息子のハンター・バイデンが中国に買収されてしまっているのは紛れもない事実です。

現在ジョー・バイデンの登場によって習近平は、政治的には有利な立場に立っているのは事実です。

習近平がこれを、利用するのは間違いありません。温暖化で協力したみかえりに、バイデンから譲歩を得ようと画策するのは目にみえています。

上の記事にもあるように、政策の構築と遂行は全く別です。クワッドはインド太平洋全域の平和と繁栄のために協働することを宣言したのですが、「悪魔は細部に宿る」の通りで、バイデンが中国に譲歩してしまう危険性は無視できません。


そうならないように、日豪印は、米国を牽制するべきです。それも、努力目標などではなく、制度的に米国が中国に譲歩できない仕組みをつくるべきです。

2018年米国がトランプ政権下で、メキシコやカナダと合意した新たな自由貿易協定に、中国との自由貿易協定を厳しく制限するいわゆる「毒薬条項」が盛り込まれ、今後の日米交渉にも影響が出かねないとして、注目を集めました。

毒リンゴを食べたら死んでしまいます。同じように“毒薬条項”とは、その条項を発動すれば、契約そのものをご破算にすることが出来るというものです。主に企業の敵対的な買収を防ぐための対抗策などにも使われてきた言葉です。

米国は、NAFTA=北米自由貿易協定の見直しを求めて交渉した結果、2018年10月までにメキシコやカナダと新たな合意を結びました。米国通商代表部が公表したその条文案の中に、以下のような文言が盛り込まれていました。

3か国のうち1か国が「“市場経済でない国”と自由貿易協定を発効させれば」他の2か国は「この協定を“打ち切ることも出来る”」というのです。

“市場経済でない国”とは、ずばり中国のことです。当時のロス商務長官は、中国による知的財産権の侵害など、不公正な慣行を正当化するような“抜け道”を塞ぐのが目的だと言っています。

要は「米国の知らないところで米国の意に反する合意を中国と結ぶな!」そう釘を刺したかたちです。当然中国は反発しました。そして当時問題とされたのは、その後の日本と交渉する貿易協定にも同じような条項を取り入れたいと、トランプ政権が考えているとされていたことです。

仮に日米協定にも、こうした「毒薬条項」が盛り込まれたら、どうなるのかと懸念されたのです。当時日本が中国を含めて交渉している日中韓FTA=自由貿易協定やRCEP=東アジア包括的経済連携協定にも影響が出かねないともされていました。

最悪の場合、日本企業は、米国市場をとるか?それとも中国市場をとるか?いわば二者択一を迫られてしまうことになるかもしれないと危惧されていました。

そうした厳しい事態に追い込まれないためにも、“悪魔は細部に宿る”そう地米国の格言に言うとおり、その後の日米交渉には、細心の注意が必要となるといわれていました。

幸いなことに、その後日米協定に「毒薬条項」が盛り込まれることはありませんでした。これは、日本がインド・太平洋地域の安全保障に関しては、当時の安倍総理がその危機言い始め、QUADに関しても、安倍総理が最初に提唱したことなどもあり、さらには当時の安倍総理が当時のトランプ大統領と良い関係を構築したことになどにもよるでしょう。

「毒薬条項」とまではいかなくとも、QUADにおいても、いずれの国であっても、他国にみえないところで、中国に譲歩すれば、何らかの罰則が与えられるなどの、仕組みは構築しておくべきと思います。

そうすることにより、米国のバイデン政権はもとより、日本の自民党の二階氏などの親中派、媚中派を牽制することもできますし、インドやオーストラリアにも、親中派は存在するため、それらがいつ息を吹き返し、中国に譲歩するかなどのことは、ありえないことではないです。

いわゆる、QUADに属する国々の親中派・媚中派が中国に利するようなことをした場合、彼らの資産を凍結するとか、公職追放とか、QUAD諸国ならびに、QUADに親和的な国々に入国できなくするなどの措置を取るなどのことが考えられます。

さらには、これらの人をそそのかした中国人の資産凍結、QUAD諸国ならびにこれに親和的な国々に入国できなくするなどの措置もとれば完璧だと思います。

いずれ、QUADはそこまでしても、これに属する国々の安全保障を守り抜き、中国と対峙していくべきものと思います。

こんなことを言うと、人非人のように思われるかもしれませんが、それだけ中国各国への浸透は思いの外深いですし、現在でも中国夢という虚妄に浸り、中共のプロパガンダを信じ込み、中国で大金儲けをしようと考える人は多いです。

そうではなくても、中共のハニートラップにかかってしまい、頭ではわかっていても、下半身がいうことをきかず、中共のいいなりになる人も多いです。

そんなことで、世界の秩序が中共に都合良い良いに作り変えられてしまってはたまったものではありません。QUAD諸国は結束を固めるためにも、何らかの制度を導入すべきでしょう。

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2021年3月30日火曜日

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中国経済、本当に崩壊危機の様相…失業者2億人、企業債務がGDPの2倍、デフォルト多発

取材・文=相馬勝/ジャーナリスト

中国・人民大会堂(「Wikipedia」より)
 新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐって、欧米諸国が相次いで対中制裁に乗り出している。今のところは中国当局者らへの制裁にとどまっているが、今後対立がエスカレートすれば、同自治区産の綿花などの輸入禁止にとどまらず、中国製品へのボイコットや金融制裁などに拡大する可能性もある。ただでさえ中国経済の実態は思わしくないだけに、影響が深刻化することは確実だ。

 中国はさきの全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で、今年の経済成長率の目標を6%以上とする一方で、今年から始まる5カ年計画では成長目標を具体的な数字で示さなかった。これまでは必ず具体的な数値目標を明らかにしていただけに、極めて異例の対応だ。

 中国政府は「成長率の高さではなく、経済の質と効率を重視しているため」と説明しているものの、先行きに不透明な要素を抱えているため数字を出したくても出せなかったとの見方が広がっている。

 なぜなら、中国経済は深刻な構造問題を抱え、綱渡りの状況が続くことになりそうだからだ。最大の課題は失業問題だ。昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大により、経営基盤の弱い中小企業が倒産し、個人事業主が職を失い、約2億人が失業状態にあるとの統計が発表されている。1年間に2億人は極めて深刻な数字だ。

 際立つ中小企業の苦境ぶり

 中国は米中貿易戦争で2019年に景気が大きく減速し、中小企業の苦境ぶりが際立っていたが、20年以降は新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。米国ピーターソン国際経済研究所は、20年1~6月に中国全体の6%にあたる約230万社が倒産したと分析しているほどだ。

 この対策として、今年の全人代では、人員削減を行わない企業への税制・金融面での支援、高度な技能をもつ人材の育成拠点の増強を打ち出すなど、雇用の維持や新たな雇用創出に懸命となっている。失業者が増えれば、共産党指導部への不満が強まりかねないからだ。

 だが、中国の去年1年間の小売業の売上高は前年より3.9%も減少したほか、中国の財政収入もマイナス3.9%と官民とも回復は道半ば。中国の財政収入は前年比11.5兆円のマイナスとなっている。

 その一方で、コロナ対策の巨額財政出動が不動産市場で投機的な行動を後押しし、住宅価格が高騰しており、政府の幹部も「バブルの傾向が比較的強い」と警戒感を示しているほどだ。

 中国の企業債務残高も急増している。国際決済銀行(BIS)によると、中国の企業債務残高は08年末の31兆元(約480兆円)から18年末の136兆元(約2100兆円)へ4倍超に膨らんだ。企業債務残高の対国内総生産(GDP)比は98%から152%まで上昇し、その債務急膨張の様相はバブル期の日本と類似する。

 さらに2020年には、企業は業績不振が続いて借金を膨らませ、その総額はGDPの2倍以上に達している。中国国家統計局が今年2月28日に発表した公式為替レートをもとに計算したドル建てのGDPは前年比3.0%増の14兆7300億ドル(約1550兆円)となっているので、GDPの2倍となると、約3100兆円という巨額な数字となる。中国企業は、まさに借金まみれというほかはない。

 このようななか、80社以上の国有企業が借金を返せない、いわゆるデフォルトに陥ったと伝えられている。国有企業の借金は政府が保証するという暗黙の了解があるとみられていただけに、相次ぐデフォルトの動きは、経済界に大きな衝撃を広げている。

 日本との関係強化

 中国の国内経済が悪化するなか、中国指導部は日本との関係強化を急いでいる。沿海部の大連や青島、天津、上海、蘇州のほか、西部の成都といった全国の6主要都市では、日本企業を誘致するためのモデル地区を建設する動きが進んでいる。最新の技術やノウハウを取り込み、地域の雇用拡大につなげたいとの思惑が見え隠れする。

 日本企業も中国の巨大市場は大きな魅力だが、中国に技術が流出する可能性は捨てきれない。とくに軍事転用可能な技術の流出は米国が極めて警戒するところであり、日本企業はおいそれと中国側の誘いに乗れないとの事情もある。

 また政治的な問題も多い。中国の巡視船の武器使用などを合法化する「海警法」が全人代の直前に施行されており、日本の沖縄県尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返す中国の巡視船がますます威嚇的な行動に出てくるとの懸念も出ているなかで、日本企業にとって、対中進出は極めてリスキーな選択といえる。

 特に、本稿の冒頭に述べたように、新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐって、欧米諸国が相次いで、対中制裁に乗り出しているのに加えて、日本の同盟国の米国と、中国との関係は極めて険悪な状態であり、日本側は当面、極めて慎重な姿勢をとらざるを得ないだろう。

(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)

●相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

【私の論評】中国には雇用が劣悪化しても改善できない構造的理由があり、いまのままではいずれ隠蔽できなくなる(゚д゚)!

中国の李克強首相は5日の全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告で、新型コロナウイルス感染症対策での「戦略的成果」を取り上げ、2020年の成長率は2・3%と「予想を上回る回復だった」と胸を張りました。この数値は、このブログに以前掲載したように、全くのフェイクです。

全人代の会場で大型スクリーンに映し出された李克強首相

その一方で、李氏は個人消費の伸び悩みや、厳しい雇用情勢などは認めました。中国政府は20年12月末の失業率は5・2%と、コロナ前の水準に戻ったとしていますが、雇用の不安定な出稼ぎ労働者らは元々、中国の統計から除外されており、実際は約20%に上るとの試算もあります。

政府が発表する失業率は、実は都市に戸籍を持つ人が対象で、地方出身者はデータに含まれていません。北京大学国家発展研究院の姚洋院長は20年12月、中国メディアに対し、都市部の出稼ぎ労働者や農村部を含めると、失業率は20%、失業者は1億人以上いるとの試算を明らかにしました。

昨年(2020年)10-12月期の中国のGDPは、前年同期比で6.5%増えたことになっています。2019年の10-12月期といえばコロナ騒動は全くありませんでした。コロナ禍が全くなかったこの時と比べて、途中でコロナ禍で大きく経済が落ち込んだはずなのに、1年後はそんな影響などまるでなかったかのように、6.5%成長していると言っているのです。

中国が発表した昨年(2020年)の四半期ごとのGDP成長率は、前年同期比で1-3月期がマイナス6.8%、4-6月期がプラス3.2%、7-9月期がプラス4.9%、10-12月期がプラス6.5%です。この数字を前期比に変えると、年率換算で1-3月期がマイナス37%、4-6月期がプラス60%、7-9月期がプラス13%、10-12月期がプラス12%です。

1-3月期のマイナス37%は随分大きなマイナスに見えるかもしれないですが、英国の4-6月期のマイナス60%と比べると遥かに軽いことになります。

確かにコロナ禍は英国に大きな打撃を与えました。コロナ禍前のイギリスの完全失業率は4.0%でしたが、コロナ禍発生後に最大で5.1%にまで上昇しました。失業率が1.1%も上昇し、それが一時的にはGDPマイナス60%という大きなブレーキにつながったのです。

中国政府が発表する失業率統計はGDP同様全くあてにならないことで有名であり、これをそのまま真に受けるわけにはいきません。では、他の機関はどのような数値を出しているのみてみます。

アジア開発銀行は6290万人から9520万人が新たに失業したのではないかと推計しました。「スイス銀行」の俗称で知られるUBSは7000万人から8000万人が新たに失業したのではないかと推計しました。中国の有名エコノミスト、李迅雷氏も、新たな失業者は7000万人を超えるとし、これによって失業率が20.5%まで高まったのではないかと述べています。

コロナ禍で失業したりビジネスが立ち行かなくなって困窮した人たちもいるだろうということで、日本では10万円の定額給付金が支給されました。その他にも様様な精度があり、給付金が支給されました。英国でも休業せざるをえなくなった事業者や従業員に対して政府が最大8割の手当を支給しました。

そうして、その対策が奏功して、にほんでは失業率が比較的低い水準で推移しています。これは、昨日このブログにも掲載したばかりです。その時掲載した表を以下に掲載します。中国の統計は中国は先進国でもないし、出鱈目でもあるので掲載しません。


ところが、中国ではこうした痛み止めの支給は行われていません。失業率が10%も増え、経済的に苦しくなった国民に対する痛み止めの支給もなかったにもかかわらず、経済へのダメージは英国よりもはるかに軽く済んだということなどあり得ません。

政府による経済対策は、他の指標が悪くても少なくとも雇用が悪化しなければ、合格といわてています。その点では、日本政府は上のグラフからみてもわかる通り、優等生といえます。

中国は1-3月期にマイナス37%の大きな落ち込みがあった後の4-6月期にプラス60%にも及ぶ超V字回復を果たしたことになっています。ではこの超V字回復を果たした後の6月末の失業率はどの程度だったのでしょう。

北京大学国家発展研究院の姚洋所長の推計によれば、6月末での完全失業率は15%で、時々アルバイト的なことをやることはあってもほぼ失業しているのと同然の「半失業」の人たちを加えると、失業率は20%になるとしました。これでは、中国政府は雇用の劣等生ということになります。雇用がだめということは、経済対策が駄目ということです。

コロナ禍で1-3月に大きく落ち込んだ経済が4-6月期に超V字回復を果たしたはずなのに、失業率の改善は大して見られないのです。こうなるとこの超V字回復自体が怪しいです。

中国の中国はどうしてこれほどまで悪化しているのに、習近平政権はこれを本格的に修復しようとしないのでしょうか。これは、以前このブログでも述べたように、中国は国際金融のトリレンマという罠にはまり込んでいるからです。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国・李首相が「バラマキ型量的緩和」を控える発言、その本当の意味―【私の論評】中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせい(゚д゚)!

この記事は、2019年3月31日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。 

 先進国が採用するマクロ経済政策の基本モデルとして、マンデルフレミング理論というものがある。これはざっくり言うと、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先するほうが効果的だという理論だ。

 この理論の発展として、国際金融のトリレンマという命題がある。これも簡単に言うと(1)自由な資本移動、(2)固定相場制、(3)独立した金融政策のすべてを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べない、というものだ。
 先進国の経済において、(1)は不可欠である。したがって(2)固定相場制を放棄した日本や米国のようなモデル、圏内では統一通貨を使用するユーロ圏のようなモデルの2択となる。もっとも、ユーロ圏は対外的に変動相場制であるが。

 共産党独裁体制の中国は、完全に自由な資本移動を認めることはできない。外資は中国国内に完全な自己資本の民間会社を持てない。中国へ出資しても、政府の息のかかった国内企業との合弁経営までで、外資が会社の支配権を持つことはない。

 ただ、世界第2位の経済大国へと成長した現在、自由な資本移動も他国から求められ、実質的に3兎を追うような形になっている。現時点で変動相場制は導入されていないので、結果的に独立した金融政策が行えなくなってきているのだ。

一昔前の中国なら、雇用が悪化すればすぐに金融緩和したでしょうが、2019年時点でそれができない状態になっているのです。ちなみに、金融緩和すれば雇用が良くなるというのは、日本ではまるで非常識のように捉えられる場合もありますが、これは世界では経済学上の常識です。

これでは、雇用が悪化しても金融緩和できず、中国はこれから向上的に失業率が悪化し続ける可能性が大きいです。

このブログにも以前から掲載しているように、中国の経済統計がおかしいのは2020年だけではありません。随分前からそうです。

中国のスマホの国内出荷台数は2016年に5.6億台だったのが、2017年に4.9億台、2018年に4.1億台、2019年に3.9億台、2020年に3.1億台と、年々縮小し続けています。スマホは2〜3年もすればバッテリーのもちが悪くなって買い替えたくなるものだが、買い替え需要があまり発生していません。スマホは中国でも、多くの人の必需品になったようですが、それにしても横ばいではなく、年々下がっているのです。

中国の乗用車の販売台数の推移はどうかといえば、2017年に2376万台だったのが、2018年に2235万台、2019年に2070万台、2020年に1929万台と、やはり年々落ちています。これを見ると富裕層の消費も伸びているとは考えにくいです。

これでは、毎年6%以上の経済成長を続けてきたという話自体がフェイクだと考えないと辻褄が合わないです。

習近平は改革・開放と民営化によって伸びてきた中国経済を、社会主義的統制を強化することでどんどんと潰しています。例えばアリババなどのIT企業がさらに伸びれば、ITによる世界支配に貢献できるであろうに、習近平は愚かにもこうしたIT企業を解体・弱体化する方向に舵を切りました。

習近平独裁体制が強化される中で、習近平のやることに誰も異論を挟むことができなくなり、経済の崩壊速度が高まっています。そうしてこの現実を覆い隠すために、経済統計のフェイクのレベルが以前よりも強化されていると見るのが、正しい中国経済の見方でしょう。

中国経済は「世界一の人口を抱えて世界一のマーケットになる潜在力がある」「中国経済はまだまだこれからだ」といった幻想によって支えられているにすぎません。

日本企業は中国幻想など捨てて、等身大の中国経済を知ることによって、今のうちに思い切った撤退を進めるべきです。早ければ早いほど、傷口は小さくすむでしょう。中国に進出するには、現在の中共が崩壊して、民主化、経済と政治の分離、法治国家化がなされた後にすべきです。

中国幻想に酔っている方々、すぐに酔いを冷ましたほうが良いです。

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2021年3月29日月曜日

衆議院任期まであと半年…菅政権の支持率が「悪くない」水準にある、シンプルな理由―【私の論評】人口が1億人超という括りでも、先進国という括りでも、日本が感染症・経済対策でトップとは疑いようのない事実(゚д゚)!

衆議院任期まであと半年…菅政権の支持率が「悪くない」水準にある、シンプルな理由

世界とコロナ対策の成果を比較すると…


菅総理

 首相の腹のうちは誰にもわからないが…

衆議院の任期である10月21日まで、あと半年になっている。選挙がどうなるかという議題もちらほら出てきているが、任期満了を迎えるまでには、いろいろなパターンが想定できる。現状、

・4月の訪米・重要法案成立後
・7月4日東京都議選同日選挙
・9月20日自民党総裁選後
・10月21日任期満了

という4パターンが一応考えられる。もちろん、これは菅首相の専権事項なので、他の誰にもわからない。

26日に来年度予算が参議院本会議で可決した。その上で、記者団から「いつ解散総選挙があってもおかしくないのでは」と問われると、菅首相は「いつあってもおかしくないとは私は思っておりません。コロナ対策やるべきことをしっかりやる必要があると思っています」と答えた。

ただし、解散はみんなが思うときにはなく、思わないときにやるという政治格言もあるので、さっぱりわからないというのが事実だ。なので、政治記者などからまことしやかな話がでてくるが、誰も否定できないので、実質「言いたい放題」だ。

筆者は、そうした放談に加わるつもりはないが、菅政権のこれまでをデータで整理しておきたい。

菅政権が発足して半年が経過したが、マスコミは目の前の課題を追っているばかりで、半年前、昨年10月26日に行われた所信表明演説をもう忘れているだろう。

 菅政権の施策の進捗は?

菅政権の内政の目玉は、携帯電話料金引き下げ、デジタル庁創設と不妊治療への保険適用だった。

携帯料金引下げでは、携帯大手4社間で昨年12月から実際に料金引き下げ競争が行われた。その結果、20GB料金プランで2000~3000円程度が、3~4月から実施される。

日本の場合、普通の人が払っている携帯料金は7000円程度だろう。政府は、海外では20GBで月額5000円を下回る国も多いなどと指摘していたが、今回の料金値下げは、政府の指摘を上回る成果と見ることもでき、既に結果を出している。

デジタル庁創設については、政府は2月9日、デジタル庁創設を含むデジタル改革関連法案を閣議決定し、衆院に提出した。今国会での成立、9月の同庁創設を目指している。提出法案で細かな間違いがあったが、3月9日、衆議院本会議で審議入りした。

不妊治療への保険適用については、政府は22年4月に保険適用開始を目指している。今夏に学会が治療内容などをまとめたガイドラインを作り、その後、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で保険適用とするかどうかの議論が行われる見通しだ。保険適用までの間、予算措置によって実質的に不妊治療の費用の軽減がなされる。

そのほか、所信表明演説のはじめに新型コロナ対策と経済の両立が謳われている。

コロナ対策では、昨年12月に財政支出40兆円の総合対策を発表し、その中で、第三次補正も盛り込んだ。第三次補正は国会で成立した。また、それを使い、政府は3月16日、新型コロナ禍による生活困窮者などへの緊急支援策をまとめて発表した。

その中には、ひとり親や所得が低い子育て世帯に対し子ども1人当たり5万円を給付することも盛り込まれている。

 世界と比較するとわかるパフォーマンス

これらのコロナ対策の結果、先進国の中で比較すると、パフォーマンスは「優秀」とと言ってもいいほど出ている。

まず、G20諸国の中で、横軸に船員当たりの感染者数、縦軸に死亡率をとると、原点に近い方が新型コロナを上手く対処しているが、日本はG20の中でトップクラスだ。


一方、経済も踏みとどまっている。先進国の中で、財政支援を横軸、経済落込みを縦軸にすると、財政支援が大きいほど経済落込みが少ないことがわかる。

日本は財政支援も先進国中でトップクラスであり、その結果、経済の落込み(の低さ)も先進国中でトップクラスである。

こうしてみると、世界の中では、日本は新型コロナ対策と経済の両立をもっとも上手くやっている国であるといえるだろう。

 失業率の上昇も世界と比較してみると…

ちなみに、経済パフォーマンスがいいことは、失業率の動向にも表れている。昨年1月と今年1月の1年間の失業率の推移をみると、日本は世界の中でも失業率上昇の少なさはトップクラスだ。

テレビのワイドショーだけみていると、世界の中で日本のポジションを見ることはないので、まるで日本は失敗例のように見えるが、データで見ると、まったく違い、世界の優等生である。

外交では、菅政権発足後にアメリカもバイデン政権になったが、菅義偉首相がバイデン米大統領の就任後初めて訪米する外国首脳となる予定だ。具体的な日取りはまだ確定していないが、4月上旬のようだ。

そのために、3月16日、菅首相はワクチンを接種した。3週間あけて2回接種するので、4月上旬に2回目を接種する予定で、その後訪米となる。

安倍政権の時、トランプ氏が大統領選で当選すると、就任前にもかかわらず、トランプ氏と会談したことで、その後の日米関係が良好になった。今回の菅首相の訪米も、今後も良好な日米関係にしたいという思いがある。

 「なぜ支持率が下がらないのか」へのシンプルな答え

安倍政権のときに撒いたタネだが、日米豪印クワッドなどは既に動き出している。以下に動きを列挙しよう。

3月12日、日米豪印の、菅義偉首相、バイデン米大統領、モリソン豪首相、モディ印首相の間で初のオンライン首脳会談。

16日、東京において、茂木外務大臣、岸防衛大臣、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官は、日米安全保障協議委員会(いわゆる「2+2」)を開催。共同声明でウイグル問題懸念を共有。

17日、ソウルにおいて、米韓で「2+2」を開催。

18-19日、米国アラスカで米中外相級会談は行われ、米国ブリンケン国務長官は、ウイグル問題を非難。

22日からブリンケン国務長官はベルギーを訪問し北大西洋条約機構(NATO)外相理事会に出席。それに合わせて、米、英、カナダ、EUは、ウイグル問題で人権侵害にあたるとして、中国当局者らへの制裁を発表。また、同日、英語圏5カ国「ファイブ・アイズ」(米、英、豪、カナダ、ニュージーランド)の外相も共同声明。


この2週間をみると、日本は、制裁はまだだが共同声明で中国を非難しており、米・英・豪・カナダ・ニュージーランド・EUと同じ協調路線で「中国包囲網」といっていい。なお、韓国は、共同声明でも中国名指しをしておらず、中国包囲網に入っていない。

これまでの成果をみると、内政では新型コロナ対策と経済の両立を果たし、携帯料金引き下げ等でも実績を出している。また、外交でも、安倍政権の遺産である日米豪印クワッドを使って、民主主義陣営として存在感を出している。

NHKによれば、3月の菅政権の内閣支持率40%、自民党支持率35.6%なので、過去の政権から見て決して悪い数字ではない。


なぜ支持率が下がらないのかと「反スガ」は首を傾げるかもしれないが、その答えはは単純だ。菅政権はそれなりの結果を出しているから、である。

【私の論評】人口が1億人超という括りでも、先進国という括りでも、日本が感染症・経済対策でトップとは疑いようのない事実(゚д゚)!

菅政権は、冒頭の記事にもあるように、感染症対策でも大成功、経済対策でも大成功であり、これを見ているとまさに非の打ち所がありません。

しかし、野党やマスコミは、それでも政府を批判しています。これは、以前にもこのブログにも掲載したのですが、最近では野党もマスコミもいわゆる「出羽守」的な批判をしていません。

ネット界隈では以前から、「出羽守」(かいがいでわのかみ)という言葉が良く語られていました。意味はこうです。
二言目には「…では」(…は海外の国名)と言い、海外を持ち上げて日本を悪く言う(ネットスラングでいえば「日本をdisる」)
上記の国名として良く出てくるのが、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、北欧、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどの先進国。最近は英語力や教育の関連で「マレーシア」とか、ネットテクノロジー関係で「中国」が稀に出てきます。「韓国」もときおりでてきます。アフリカや南米、中近東地域の国名が出ることはほぼないです。
その「枕詞」なる「…海外では」を揶揄されて、「出羽守」と称されます。ニュアンス的には「放射脳」等と同様、「困ったちゃん」に対する蔑称の意味合いを感じます。

昨年の今頃は、「イタリアでは」「韓国では」と盛んに、「出羽守」発言や報道をしていました。諸外国では「PCR検査」どうのとかますびしく報道や発言がありました。しかし、最近は一切していません。

なぜかといえば、仮に現在あのような報道をしてしまえば、「イタリアのほうがはるかに感染者が多いではないか」「韓国では経済対策がうまくいっていない」「PCR検査は治療ではない、精度が最高で7割しかない検査を増やしたからと言ってどうなるの」「経済対策では日本のほうが上」と批判されるのは目に見えているからでしょう。

世界の中で、感染が日本より低いのは「台湾」くらいのものでしょう。ただ、台湾では、2019年の夏に中国が中国人台湾旅行を禁止したため、元々感染拡大の危険性は少なかったという特殊事情もあります。

無論、その後の対策も素晴らしいく、今日に至っているわけで、そこまで否定する気はありませんが、「台湾出羽守」のように、台湾が何もかも一方的にすぐれていて、日本はクズのような論調には賛同できません。

日本の感染症・経済対策があまりに良いので「出羽守」批判はできない!



テレビ局や野党も「台湾では」と出羽守報道や発言をすれば、このことも指摘されるので、「台湾」「台湾」ともいえないのでしょう。それに台湾の人口は2千万人程度です。人口が1億人を超える国では、日本が感染対策でも、経済対策でもトップであるというのは疑いようのない事実です。

現在「出羽守」報道や発言をしていまえば、結局菅政権のパフォーマンスの良さを指摘されてしまうので、野党やマスコミは、とにかく他国とは一切比較などしません。それが、野党の発言やマスコミの報道を全くつまらないものにしています。ただ、危険や危機を煽りまくるのは、変わりなく、毎回毎回同じようなことばかりで、いい加減飽きてきます。

テレビなどでは、コロナの危機を煽り、報道することによって視聴率を稼ごうとしているのでしょうが、広告収入がかなり減っています。テレビ各局はコロナ禍で広告収入が激減、某局の4~10月の広告収入はなんと80%も減ったという。

テレビを視聴していいると、「あおじる」「やずや」や「世田谷自然食品」のCMを結構みるようになってきましたが、これらのCMは元々は深夜の時間帯等の空いた時間帯に入れるということで、広告料も結構安いのだそうですが、これらの報告が場合によっては昼間や、ゴールデンタイムに入ったりしています。

さらには、AC(公共広告機構)などのCMも入っています。これは、東日本大震災の直後に結構入っていたのを記憶していますが、現時点でも結構見ることがあります。このCMはほとんど収入にならないようです。

そもそも、最近ではテレビがあまり視聴されません。特にワイドショーなど、今では年寄か暇な主婦くらいなものでしょう。日本におけるワイドショー民的な世論(ネット含む)、政治家、マスコミの金融政策に対する意識の低さは、先進国で最低レベルだと思います。日本の停滞の真因のひとつであり、単に知的な硬直化でしかなかったのですが、状況が変わりつつあると思います。

自民党の二階幹事長は、野党側から内閣不信任決議案の提出を検討するという意見が出ていることについて、仮に決議案が提出されれば、衆議院を解散する大義になりえるとして、菅総理大臣に解散・総選挙に打って出るよう進言する考えを示しました。

そもそも、野党はこれだけパフォーマンスの良い、菅内閣をどうやって、不信任決議案を作成するというのでしょうか。何やら、日米でいわゆるリベラル政党が似かよつてきたと思います。日本の野党はなにかというと最初から無理筋な「内閣不信任決議案」を出します。米国のリベラル政党民主党は現状では与党ではありますが、何かというと「大統領断崖」を打ち出します。

もう、両党ともまともではなく、米国の民主党も日本の万年野党のようになり、最初から通りそうもない「大統領断崖」を繰り出し没落し、万年野党の道をひた走ることになるのではないでしょうか。

立憲民主党の安住国会対策委員長は、28日放送されたNHKの日曜討論で「政権にわれわれの考えを伝える重要な方法の1つは、内閣不信任決議案で、準備をしたい」と述べ、菅内閣に対する不信任決議案の提出を検討する考えを示しましました。

立憲民主党の安住国会対策委員長

これについて、自民党の二階幹事長は記者会見で記者団から「仮に野党が不信任決議案を提出した場合、衆議院解散の大義となりえるか」と問われたのに対し「解散の権限を持っているわけではないが、自民党幹事長としては、そうした場合に『ただちに解散で立ち向かうべきだ』と菅総理大臣に進言したい」と述べました。

そのうえで「不信任決議案はもちろん否決するが、解散を望むなら、われわれは受けて立つ。それだけの信念や解散を覚悟の上で意見を述べるべきだ。不信任を出してくる限りは、与党は解散に打って出る覚悟を持っているということだから、『いつでもどうぞ』ということだ」と述べました。

これだけのパフォーマンスを発揮してきた菅政権は、衆院解散選挙では大勝利するのは明らかであり、「いつでもどうぞ」というのは偽らざる心境なのだと思います。

私自身は、コロナの感染拡大が起こってからは、安倍政権にも変わってほしくはありませんでしたが、あれは致し方ないとしても、現状の菅政権のパフォーマンスの良さからしても、わざわざ変える必要性などないと思います。そんなことよりも、少なくともコロナ禍が収束するまで、菅内閣でいくべきと思います。一体野党って何を考えているのでしょう。理解不能です。


賃金の伸びが低すぎる…メディアや日銀が理解していない「日本のヤバい現実」―【私の論評】デフレから完璧に脱却しておらず、コロナ禍で需要不足に見舞われた日本では、金融財政政策をさらに徹底するのが王道!他はすべて間違い(゚д゚)!

2021年3月28日日曜日

安保法施行5年、進む日米一体化=武器等防護、豪州に拡大へ―【私の論評】正確には武器防護は一度も行われてないないが、警護は行われ、それが中国等への牽制となっている(゚д゚)!

安保法施行5年、進む日米一体化=武器等防護、豪州に拡大へ

日本の燃料補給艦から補給を受ける米軍のイージス艦

 集団的自衛権行使を一部容認する安全保障関連法が施行されて29日で5年。この間、海上自衛隊の艦艇による米艦防護などを通じ、日米の軍事的一体化は進んだ。先の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、東・南シナ海で威圧的行動を繰り返す中国への懸念を共有。菅義偉首相とバイデン大統領による4月の日米首脳会談でも対中戦略が主要議題となる見通しだ。

 「もう米国から『ブーツ・オン・ザ・グラウンド』『ショー・ザ・フラッグ』と言われるような日本ではなくなっている」。茂木敏充外相は22日の参院外交防衛委員会で、イラク戦争で自衛隊の貢献を求められた象徴的な言葉を引き合いに、安保法施行後の日米同盟強化を強調しました。

ブーツ・オン・ザ・グラウンド』『ショー・ザ・フラッグ』発言をしたアーミテージ氏

 同法施行により、自衛隊は外国の艦艇や航空機を「武器等防護」の名目で護衛することが可能になった。2017年5月に初めて海自護衛艦が米補給艦を防護して以降、18年は16件、19年は14件と着実に実施。防衛省幹部は「米国からの信頼を得ている証しだ」と胸を張る。

 20年は25件で過去最多となった。内訳は、弾道ミサイル対応を含む情報収集・警戒監視に当たる米艦艇の防護が4件、共同訓練の際の航空機防護が21件だった。

 しかし、自衛隊の任務が拡大する一方で、その活動実態は不透明だ。防衛省は運用状況を毎年公表しているが、分類は「情報収集・警戒監視」「輸送・補給」「共同訓練」といった概要のみ。実施場所や時期も明らかにしていない。岸信夫防衛相は23日の記者会見で「相手(米軍)との関係で発信できる情報も限られてしまう」と理解を求めた。

 沖縄県・尖閣諸島周辺では中国海警局の船舶が領海侵入を繰り返している。米政府は対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が尖閣にも適用されると明言しているが、外務省幹部は「日本がまず自分たちで戦うことが前提。そうじゃないと米国は守ってくれない」と指摘する。年内に再び開く日米2プラス2では、自衛隊のさらなる役割拡大が議論される見通しだ。

 防護対象は米国以外にも拡大しつつある。昨年10月の日豪防衛相会談では、オーストラリア軍を防護対象に加える調整に入ることで合意。実現すれば米国に続き2カ国目となる。

 欧州各国も中国の海洋進出への懸念を強めている。フランスは昨年末、沖ノ鳥島(東京都小笠原村)周辺海域での日米仏共同訓練に潜水艦を派遣。英国は年内に最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を東アジアに派遣する方針だ。こうした国も将来的に武器等防護の対象になる可能性がある。

 ◇武器等防護の実施件数と種類

       情報収集・警戒監視 輸送・補給 共同訓練

2017年      0       0     2

  18年      3       0    13

  19年      4       0    10

  20年      4       0    21

【了】

【私の論評】正確には武器防護は一度も行われてないないが、警護は行われ、それが中国等への牽制となっている(゚д゚)!

2015年成立した安全保障関連法で新設された「武器等防護」(自衛隊法95条の2)の規定をいかに掲載します。
(合衆国軍隊等の部隊の武器等の防護のための武器の使用)

第九十五条の二  自衛官は、アメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊その他これに類する組織(次項において「合衆国軍隊等」という。)の部隊であつて自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。)に現に従事しているものの武器等を職務上警護するに当たり、人又は武器等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六 又は第三十七条 に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。

2 前項の警護は、合衆国軍隊等から要請があつた場合であつて、防衛大臣が必要と認めるときに限り、自衛官が行うものとする。
米軍等の要請を受けて防衛相が必要と認めるときは「警護」(95条の2第2項)を行う。この「警護」中に、外部からの攻撃など「防護」の必要がある場合に武器使用ができる(同第1項)。

現時点では外部からの攻撃が発生していません。今後「防護」すべき事態が起きる可能性がゼロとは言えないが、現段階はそうした事態に至っていません。したがって、正確には「防護」ではなく、「警護」の実施という段階にあるというのが正しいです。

法律概念の違いだけでなく、「防護」と「警護」では一般に与える印象も違うと思われます。「防護」は「警護」よりも一段と差し迫った状況を想起するのではないでしょうか。なぜ、メディアはわざわざ「警護」を飛び越えて「防護」の表現を使いたがるのでしょうか。

ところで、一部メディアでは、2017年当時には「防護」の際には「正当防衛や緊急避難のための必要最小限の範囲で武器の使用が認められる」(毎日新聞)といった解説もみらましたが、これも正確ではありません。武器使用要件は「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」、正当防衛等は危害許容要件(同但書)であるが、両者を混同しています。

ところが、新設された自衛隊法95条の2に基づく「警護」の実施は初めてだとしても事実上の米艦「警護」の例は過去にもありました。

9・11同時多発テロ直後の2001年9月21日、米空母キティホークなど4隻の米艦艇が横須賀から出航した際に、海自の護衛艦2隻が事実上の護衛に当たったとされる例です(東京新聞2007年5月28日付記事参照)。

当時は、自衛隊法に基づく米艦の警護が行えず、政府は防衛庁設置法の「調査・研究」名目という苦し紛れの説明を行っていました。ところが、中谷元防衛庁長官(当時)が記者会見で警戒監視であったことを認めるなど、実態的には「警護」同然だったと言われています。

上の記事もすべて、正しくは「警護」というべきものと思います。

防衛省は上の記事にもあるように、2月19日、自衛隊が米軍などを守る「武器等防護」の件数が昨年は過去最高の25件だったと国家安全保障会議(NSC)に報告した。武器等防護は自衛隊法95条に基づき必要最小限の武器使用を条件に艦艇や航空機を護衛する活動だ。安保関連法の施行で米軍など他国軍も対象とすることが可能になった。

安保関連法で可能になった活動のほとんどが発令されず武器防護も実施されず、警護では着実に実績を積み重ねています。

安保関連法制定当時、与党協議会座長だった高村正彦元自民党副総裁は「日本の自衛艦が米空母を警護して動いている絵が世界に発信される。これは大変な抑止力だ」と語っています。

この方は、無意識なのかもしれませんが、警護という言葉を使っています。洋上だけではなく、航空自衛隊の戦闘機は米空軍爆撃機を警備する形で東シナ海上空などをたびたび飛来しており、これが北朝鮮や中国などを牽制(けんせい)する意味も持っています。

一方、集団的自衛権の行使が可能になり、日米関係の安定に貢献する側面もありました。同盟国の公平な分担を求める米国のトランプ前大統領が安倍晋三前首相と親密な関係を築いた基礎には、安保関連法があったとの見方が政府内には根強いです。バイデン政権との関係でも政府高官は「法的な問題はすべて決着済みで日米間の懸案にはならない」と語っています。

安保関連法がもしなかったとしたら、トランプ前政権の時代は大変だったでしょうし、バイデン政権にも不興を買う恐れは十分にありました。2015年当時にやっておいて本当によかったです。当時は、マスコミも憲法学者も左派・リベラルも安保法制には大反対でした。

選挙などには明らかに不利になることを覚悟で当時の安倍総理は。安保法制の改正に取り組みました。ただ、中国や北朝鮮の脅威が高まりはじめていた当時には、いずれ誰ががやらなければ ならかったことは明らかでした。

安倍前総理大臣

岸防衛大臣は昨年10月19日、オーストラリアのレイノルズ国防相と会談し、安全保障関連法に基づいて、自衛隊が他国の艦艇などを守る「武器等防護」の対象にオーストラリア軍も加える方向で調整を始めることを確認しました。

岸大臣は、閣議のあとの記者会見で「オーストラリアは特別な戦略的パートナーであり相互運用性の向上が不可欠だ。連携する基礎となる『武器等防護』は、わが国の平和と安全や防衛協力にとって重要な意義のある活動だ」と述べました。

一方、岸大臣は、記者団から「自衛隊と他国の軍隊が一体化し、武力衝突に巻き込まれるのではないか」と問われたのに対し、「武力攻撃に至らない侵害からの防護を目的として行うものだ」と述べ、いわゆる武力行使とは区別して考えるべきだと説明しました。

岸防衛大臣

私自身は、岸防衛大臣は「警護」という言葉を使えば良かったと思います。警護と武器防護は明らかに違います。

ただ、ぃくら「警護」のつもりであっても、武力衝突になってしまえば「武器防護」に変わるわけですから、その意味では岸防衛大臣の対応は正しいのかもしれません。ただ、過去の「警護」については、これからは「警護」と語るべきと思います。

日本としては、少なくともQUADに属する、米豪印の三国に関しては、「武器防護」の対象とすべきです。

その後、日本は中国に対する牽制に参加する国々はすべて「武器防護」の対象とすべきです。

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2021年3月27日土曜日

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台湾の防空識別圏に飛来したH6K爆撃機の同型機(上)。下は台湾のF-16戦闘機

 中国が台湾への圧力を強めている。台湾の国防部(国防省に相当)は26日、戦闘機12機、爆撃機4機を含む中国軍機計20機が同日、台湾南西部の防空識別圏(ADIZ)に進入したと発表した。米国と台湾が沿岸警備当局の協力強化に合意する覚書に署名したことに反発、威嚇したとみられる。ジョー・バイデン米大統領は同日、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗する、民主主義国家による連携構想をボリス・ジョンソン英首相に提案した。

 ◇

 台湾のADIZに進入したのは、「J16戦闘機」10機と「J10戦闘機」2機、「H6K爆撃機」4機、「Y8対潜哨戒機」2機、「KJ500早期警戒管制機」1機、「Y8偵察機」1機の計延べ20機。

 中国は昨年9月19日、台湾の李登輝元総統の告別式に米政府高官が参列したのに合わせて計19機をADIZに進入させており、それを上回る最大規模となった。

 中国は2月、海警局に外国船舶への武器使用を認める海警法を施行した。台湾や沖縄県・尖閣諸島など、地域の緊張が高まるなか、米国と台湾は25日、沿岸警備当局の協力強化に合意する覚書に署名した。バイデン政権発足後、米台が文書に合意するのは初めて。

 こうしたなか、バイデン氏は26日、ジョンソン氏と米英電話首脳会談を行い、対中政策を協議した。この中で、中国の「一帯一路」に対抗するため、民主主義国家が連携して途上国の開発を支援する構想を提案した。

 「一帯一路」をめぐっては、中国が多額の借款を発展途上国に押しつけ、借金のカタに重要インフラなどを奪う「債務の罠」が国際問題になっている。民主主義陣営として、これに対峙(たいじ)するようだ。

 今回の中国軍機による台湾のADIZ進入をどうみるか。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は、「これまでは、爆撃機や戦闘機などの単独飛行が多かったが、今回は爆撃機を戦闘機が護衛するかたちになっており、『台湾有事』を想定した演習かつ恫喝(どうかつ)とみていい。『H6K爆撃機』は、ADIZ外からも台湾本島をミサイルの射程範囲に入れる能力を持つ。今後、台湾の澎湖(ほうこ)諸島や蘭嶼(らんしょ)などに、中国軍が強行上陸してくる可能性もある。尖閣諸島を含む日本の八重山諸島も危険にさらされるため、十分警戒が必要だ」と語った。

【私の論評】中国が台湾に侵攻すれば、台湾は三峡ダムをミサイルで破壊し報復する(゚д゚)!

今年は、米国のバイデン政権の成立を好機として中国の習近平は、懸案になっている台湾占領を目標とする軍事行動を始めるものと予想されています。

米海軍や米太平洋軍の情報担当者の分析によるもので、習近平はバイデン政権がこれまでのトランプ政権とは違って、台湾を守るために断固とした姿勢をとることはないと考えているようです。

オバマとバイデン親子

ただし、習近平の目論見が予期されたようにうまくいくとは限らないという見方も、米国の専門家のなかで有力になっているようです。

習近平が台湾に対する軍事行動に踏み切る最大の理由がジョー・バイデンにあることは、間違いがないでしょう。ジョー・バイデンが中国と深い関係を持ち、息子のハンター・バイデンが中国に買収されてしまっているのは紛れもない事実です。

そういった情勢のなか、習近平が台湾海峡を越えての大がかりな上陸作戦を練っていることはよく知られています。習近平が懸案になっている台湾占領に動き出す可能性が高まってきました。早ければ2021年中と推定されます。

米国防総省の中国軍事体制分析レポートは、次の点を指摘しています。
これまで中国が台湾占領に踏み切れなかったのは、三つの問題があったからである。まず、強力な陸軍部隊を搭載する輸送船団が不足していた。二番目に、台湾海峡を越えて上陸作戦を行うための準備ないし訓練を十分に行ってこなかった。三番目に、アジア極東に展開する強力な米海軍に対抗する海軍能力を持ちえなかった。
米国防総省の専門家によれば、この三つの問題を解決するために習近平がとくに力を入れているのは、台湾海峡を押し渡って攻撃部隊を上陸させるという作戦です。

確かに1950年代、金門馬祖の戦いといわれる中国の台湾攻撃計画は、大量の陸軍部隊を送り込むという計画がなかったために失敗に終わってしまいました。

現在の中国は、10隻以上の揚陸用舟艇や、さらに20隻近い強襲攻撃艦の建造を急ピッチで進めており、あと一年もすれば台湾海峡を越えての上陸作戦が可能になります。

中国はこういった上陸作戦を支援するため、すでに航空戦力の強化にも力を入れており、米軍のF35に対抗するステルス攻撃機J10などの大量生産を始めています。

こうした動きは、懸案になってきた台湾への軍事行動を早急に実施しようという中国側の意図を明確に示しているようです。

軍事面だけを考えれば、中国は台湾海峡を越えての上陸作戦を行う戦力を保有するに至っています。そのための軍事訓練も行われています。軍事的に見てようやく、中国の台湾上陸作戦が可能な状況になっているといえます。

ただ、米太平洋軍などの第一線の専門家たちの考えは、やや異なっています。その理由は、台湾側がすでに最新鋭通常型潜水艦などの大量生産に成功するとみられていること、優秀な中短距離攻撃ミサイルを開発し実戦配備したからです。

こうした現場の分析を詳しく見てみると、現在ジョー・バイデンの登場によって政治的には有利な立場に立った習近平や中国海軍がこのまま台湾占領戦争を始めたとしても、成功させるにはいま一つ不安な要因があるのは確かです。

先にも述べたように、台湾はすでに通常型潜水艦の建造に着手しています。そうして、台湾は日本やドイツ並みの最新鋭潜水艦を建造する可能性が高まっています。特に静寂性(ステルス性)に優れた潜水艦を建造する可能性が高いです。

これが、成功すれば、このブログにも以前掲載したように、今後数十年にわたって台湾は中国の侵攻を阻止できます。

ただ、現像には数年を要すると考えられるため、現状では残念ながら、まだ戦力にはなりません。

一方、中短距離ミサイルは実際に配備されつつあります。台湾は、長年かけて自主開発した中距離巡航ミサイル「雲峰」の量産を2019年から開始しています。アナリストによると、雲峰の飛行距離は2000キロで、台湾南部の高雄から北京を納める距離です。


さらに、台湾は中長距離ミサイルの開発配備も視野に入れています。台湾の国防部(国防省)は25日、4年に1度となる国防計画の見直しを行い、立法院(国会)に報告しました。中国軍機が繰り返し台湾の防空識別圏に侵入するなど、軍事的圧力が強まっていることを踏まえ、長距離ミサイルを配備し、抑止力を強化する内容を盛り込みました。予備役など有事の際の動員強化も掲げました。

台湾当局は25日、1種類の長距離ミサイルの大量生産を開始したことを明らかにしました。これとは別に3種類の長距離ミサイルを開発していることも認めました。

台湾が兵器の開発を公表するのは異例のことです。中国は台湾周辺で軍事活動を強化している。

台湾は、戦争時に中国内陸部の基地を攻撃する能力も含め、抑止力を高めるため、軍の近代化を進めています。

台湾の邱国正・国防部長(国防相)は、立法院(国会に相当)で長距離攻撃の能力向上が優先課題だと発言。

「長距離で、正確な、移動式(の兵器)が望ましい」とし、公的研究機関である国家中山科学研究院がそうした兵器の研究を「中止したことは一度もない」と述べました。

同研究院の幹部も立法院で、1種類の陸上発射型長距離ミサイルがすでに生産段階に入ったと発言。これとは別に3種類の長距離ミサイルを開発中だと述べました。ミサイルの飛行距離は明らかにしませんでした。

同研究所は台湾の兵器開発で中心的な役割を担っており、ここ数カ月、南東部の海岸で一連のミサイル実験を実施しています。

台湾はミサイルによる防衛体制や、中近距離ミサイルによる抑止戦略について、あまり多くを語ってこなかったのですが、今回は異例の公表だといえます。しかしながら消息筋によると、現状でも、台湾側は中近距離ミサイルによって、中国本土の三峡ダムを破壊することを含め、抑止体制を十分に整え終わってるとされています。

三峡ダム

これについては、中国の軍事情報サイト「捷訊網」は21日、米国や台湾と戦争の事態になった場合、三峡ダムがミサイル攻撃を受け破壊された場合には、戦争に必要な軍部隊も水に飲まれ、民間人の被害は数億人にのぼると紹介しています。

三峡ダムの危険性については早い時期から指摘があり、応用数学などを研究した著名学者の銭偉長氏(1912-2010年)は、三峡ダムが通常弾頭付き巡航ミサイルで攻撃されて崩壊すれば、上海市を含む下流の6省市が「泥沼」となり、数億人が被害を受けると試算しました。三峡ダムが崩壊すると、中国の1/4が水没するといわれています。

記事によると、三峡ダム下流の長江沿岸には軍の駐屯地が多く、軍も戦争遂行が不能になるといいます。

記事は、三峡ダム攻撃をまず研究したのは台湾と指摘。中国軍が台湾侵攻を試みた場合、台湾は同ダムを含む大陸部のインフラ施設攻撃を念頭に置いたといいます。

記事は次に、尖閣諸島で対立する日本による攻撃も取り上げました。奇襲すれば「釣魚島(尖閣諸島の中国側通称)はポケットの中の物を取り出すのと同様に簡単に手に入る」と豪語するタカ派軍人もいると紹介する一方で、三峡ダムへの攻撃リスクを考えれば、「釣魚島奇襲は不可能」と指摘。それまでに、時間をかけて三峡ダムの水を抜いておかねばならないと主張しました。

記事はさらに「釣魚島を奪取しても利は小さい。三峡ダムの被害は甚大だ。しかも、(尖閣奇襲で)先に手を出した方(中国)が国際世論の非難を浴びる」と論じました。

記事は、尖閣諸島が原因で戦争になった場合、米国による三峡ダム攻撃もありうると指摘。さらに、国境問題で対立するインドが攻撃する可能性にも触れました。

台湾が、ミサイルだけではなく、今後最新鋭の通常型潜水艦を建造し、さらに最新の対潜哨戒能力をつければ台湾の守りは完璧になります。

習近平が台湾攻撃にこのところ熱心になっているのは、中国国内政治の動向が不安定になっているからだと考えられます。それに、元々中国は自国の内部の都合で動くことが多い国です。習近平は中国国内の政治情勢についてあまり懸念していないといわれてますが、現実的に考えると、中国はアメリカをはじめヨーロッパへの輸出が急速に減っているうえ、「一帯一路」と呼ばれる全世界的な貿易輸出体制計画も行き詰まっています。

さらには、中国のウイグル民族に対する民族絶滅計画やチベット文明破壊などといった非人道的な行動に対してヨーロッパが強く反発しています。これが、国内で反習近平派から批判を受けないわけはありません。

中国は7月1日、中国共産党(中共)の結党100周年記念日に習近平国家主席(68)が「重要演説」を行う計画だと明らかにしました。天安門広場パレードは行わないと発表しました。記念日を100日後に控えた23日の記者会見でのことです。

「7月1日」の中共結成記念日は、1938年に共産国際と呼ばれるソ連のコミンテルンの指示で定められました。中共は1921年7月23日にコミンテルンの指揮により上海と嘉興を行き来し、創党した。その後、「7月1日」に中共は人民大会堂で記念大会を開いて結成を記念し、5周年・10周年には、さらに盛大な規模の記念式を開催しました。

 しかし、文化革命のさなか、1971年結成50周年「7月1日」に毛沢東は記念式の代わりに、中央文革小組の主要宣伝チャンネルだった人民日報・解放軍報・紅旗(両報一刊)に記念社説を掲載するに留まりました。

当時、毛沢東が後継者に指名した林彪を前面に出し、劉少奇国家主席を修正主義者として批判し、大規模な整風運動を展開しました。 以降、中共は結党60・70・80・90周年「7月1日」に人民大会堂で祝賀大会を開き、胡耀邦、江沢民、胡錦濤国家主席が記念演説をしました。

劉少奇氏

さて、今回の中共結成100周年で、習近平は何を行おうとしているのでしょうか。本来であれば、台湾を武力で併合して、100周年で盛大にその成果を誇りたかったのだと思います。

何しろ、毛沢東は建国の父、鄧小平は開放改革の立役者ということで、大きな実績があるのですが、習近平には、そのような実績はありません。にもかかわらず、憲法を修正してまで、みずからを終身主席の座に収まっています。

これでは、反習近平派から統治の正当性を疑われても当然です。こうした国内の反発をかわすためにも、習近平は台湾を併合したかったのでしょうが、それも難しいです。

では、習近平は共産党結成100周年の「重要演説」で、かつての毛沢東のように、政敵を葬るための演説をすることになるのではないでしょうか。

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2021年3月26日金曜日

習近平に逃げ場なし…人権弾圧を続ける中国に、アメリカ・EUが反撃を始めた!―【私の論評】菅首相は自ら制裁措置を取ろうと取るまいと、中国に進出している日本企業の商業活動を同盟国・米国から妨害されてしまいかねない(゚д゚)!

習近平に逃げ場なし…人権弾圧を続ける中国に、アメリカ・EUが反撃を始めた!

とうとう、EUが対中制裁を決めた

習近平

米欧の中国包囲網が強まってきた。欧州連合(EU)と米国、英国、カナダがウイグル人弾圧を批判して対中制裁を決めた一方、米英カナダと豪州、ニュージーランドの外相も、それぞれ中国を批判する共同声明を出した。日本は様子見でいいのか。欧州連合は3月22日、新疆ウイグル自治区での人権弾圧について、中国共産党の地元党委員会幹部ら4人と拘束施設を管理する公安当局について、EU域内への渡航禁止や資産凍結を決めた(https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2021/03/22/eu-imposes-further-sanctions-over-serious-violations-of-human-rights-around-the-world/)。

 決定は、EUに加盟する27カ国による全会一致だった。ハンガリー外相が「(制裁は)有害で、的外れだ」と述べたが、決定には反対しなかった(https://www.reuters.com/article/us-eu-china-sanctions-idUSKBN2BE1AI)。親中国で知られたイタリアも同様だ。EUの対中制裁は、1989年の天安門事件以来である。欧州には、かつてユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツの忌まわしい記憶が残っている。なにより、人権弾圧には敏感なのだ。欧州が対中批判で足並みをそろえた背景には、新型コロナの感染拡大を機に、中国への反発が高まっていた事情もあるだろう。そんな欧州が人権弾圧で制裁に踏み切ったとなると、中長期的な欧州の「中国離れ」につながる可能性が高い。欧州は習近平総書記(国家主席)の肝いり政策である「一帯一路」の終着点に位置づけられている。もちろん、中国には大打撃だ。それを証明するように、中国外務省の報道官は制裁に対して、次のように最大級の非難を浴びせた。中国もEUとの関係改善は当分、あきらめたかのようだ。---------- 

〈この(制裁の)動きは嘘と偽情報以外の何物にも基づかず、事実を無視し歪曲し、中国の内政に干渉し、国際法と国際関係を規律する基本的規範に全面的に違反し、中国・EU関係を深刻に傷つけている。中国は断固として反対し、強く非難する〉(https://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/t1863106.shtml)



アメリカなど5カ国も、人権侵害を批判

一方、米国務省は3月22日、制裁発動に合わせて、英国、カナダとともに次のような共同声明を発表した(https://www.state.gov/joint-statement-on-xinjiang/)。
 ---------- 

〈カナダと英国の外務大臣、および米国の国務長官は、新疆ウイグル自治区における中国の人権侵害と虐待について、深く継続的な懸念で一致している。中国政府自身の文書、衛星画像、目撃証言などからの証拠は圧倒的だ。中国の弾圧プログラムには、宗教の自由に対する厳しい制限、強制労働の断行、収容所での大量拘禁、強制不妊手術、ウイグル人の遺産に対する破壊が含まれる〉

 〈我々は、新疆ウイグル自治区における人権侵害と虐待について明確なメッセージを送るために、欧州連合による措置と並んで、協調的に行動した。我々は、中国がウイグル人の「イスラム教徒や新疆ウイグル自治区の他の民族的および宗教的少数グループに対する抑圧的慣行を終わらせ、恣意的に拘束された人々を釈放するよう呼びかける〉 

〈我々は透明性と説明責任の重要性を強調し、独立した国連の調査官、ジャーナリスト、外交官を含めて、国際社会に新疆への妨害されないアクセスを与えるよう、中国に要請する。我々は中国の人権侵害にスポットライトを当てるために、引き続き協力していく。私たちは団結し、新疆ウイグル自治区で苦しんでいる人々のために正義を求める〉
 ---------- 

すると、豪州とニュージーランドの政府も翌23日、米英カナダと立場と共有する、次のような声明を出した(https://www.foreignminister.gov.au/minister/marise-payne/media-release/joint-statement-human-rights-abuses-xinjiang)。
 ---------- 

〈豪州政府とニュージーランド政府は今日、新疆ウイグル自治区のウイグル人や、その他のイスラム教徒の少数民族に対する深刻な人権侵害について、信頼できる報告が増えていることを懸念する。宗教の自由の制限、大量監視、大規模な司法外の拘禁、強制労働、不妊手術を含む強制避妊など、深刻な人権侵害の明らかな証拠がある〉 

〈豪州とニュージーランドは、カナダ、欧州連合、英国、米国が発表した措置を歓迎する。我々は、これらの国々の深い懸念を共有する。懸念はオーストラリアとニュージーランドの社会全体で共有されている〉 

〈新疆ウイグル自治区の収容所に関する報告が出始めた2018年以来、豪州とニュージーランドは国連で一貫して中国に対し、ウイグル人やその他の宗教的および少数民族の人権を尊重するよう求めてきた。我々は透明性と説明責任の重要性を強調し、国連の専門家や他の独立したオブザーバーに新疆への有意義で自由なアクセスを許可するよう、中国に繰り返し呼びかける〉
 ---------- 

2つの声明は別々に発表されたが、中身はほぼ同じ内容だ。したがって、両者は一体とみてもいい。ちなみに、NHKは「5カ国の共同声明」と報じた(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210323/k10012930421000.html)。豪州とニュージーランドは、米英カナダの姿勢に異論はなかったが、何かの事情で同じ声明には名を連ねずに、1日遅れで参加した形になった。この経緯は興味深い。日本も同じ立場であるなら、少なくとも、1日遅れの豪州とニュージーランドと足並みをそろえるのは、可能だったはずだからだ。

中国に対して弱腰すぎる菅政権

加藤勝信官房長官

日本はどう対応したのか。答えを先に言えば「何もしなかった」。加藤勝信官房長官は3月23日の会見で、EUと米英カナダの制裁について、記者に見解を質問され、次のように答えている(https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/202103/23_a.html 以下は動画からの書き起こし)。
---------- 

〈新疆ウイグル自治区については、重大な人権侵害が行われているとの報告が数多く出されており、我が国として同自治区の人権状況については深刻に懸念し、中国政府に対して透明性のある説明を行うよう働きかけをしている。引き続き国際社会が緊密に連携して、中国側に強く働きかけることが重要と考えている〉
 ---------- 

これだけ聞くと、あたかも日本政府も欧米と同じように中国を批判した、と思われるかもしれない。だが、まったく違う。日本政府は独自に声明を出したわけでも、共同声明に加わったわけでもない。ただ、官房長官が記者の質問に答えただけだ。逆に言えば、記者の質問がなければ、日本政府は何のコメントも出さなかったのだ。自分で判断して声明を出すのと、記者に聞かれたから答えるのとでは、外交上の意味はまったく異なる。これでは、欧米の制裁に沈黙したのと同じである。記者からは「日本も制裁に加わるよう、米欧から打診があったのか」「日本として、人権侵害の認識はどうなのか」などと質問が飛んだ。すると、加藤氏はこう答えた。
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〈欧米諸国とは日頃からさまざまな意見交換を行っているところだが、具体的にどういう外交のやりとりがあったかについては、コメントを控えさせていただく〉 

〈我が国としては国際社会における普遍的かつ自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保証されることが重要と考えており、こうした立場を含めて国際社会からの関心が高まっているウイグル地区の人権状況について、中国政府が透明性のある説明をするよう、働きかけを行っている〉 

〈昨年10月、国連第3委員会で香港、新疆ウイグルに関する共同ステートメントにアジアから唯一の参加国として参加し、新疆の人権状況に関する深刻な懸念を表明した。さらに本年2月23日の人権理事会においても、我が国から深刻な懸念を表明するとともに、中国に対し具体的な行動をとるよう強く求めた〉 
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これも同じだ。「国連で懸念を表明した」という過去の経緯を紹介しただけで、今回の制裁を受けた日本の対応を説明したわけではない。何も対応していないから、話せないのだ。そのうえで、具体的に日本が制裁できるかどうかについては、こう答えている。---------- 

〈人権に関する制裁について、現行の外国為替及び外国貿易法においては、資産凍結や輸出入規制の要件として、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するための必要があると認めるとき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、とくに必要があると認めるとき、我が国の平和および安全の維持のためとくに必要があるとき、とされており、人権問題のみを直接、あるいは明示的な理由として制裁を実施する規定はない〉
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 結論を言えば、日本の菅義偉政権は残念ながら、欧米に比べて、中国に弱腰と言わざるをえない。自ら「国際社会の連携が重要」と強調しながら、自分自身は欧米が制裁したタイミングで「何もしていない」も同然なのだから、言行不一致と言ってもいい。加藤氏は言及しなかったが、日米の外務、防衛閣僚による安全保障協議委員会(2+2)が3月16日に発表した共同声明は「閣僚は、香港及び新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有した」と書いている(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100161034.pdf)。それでも、この1行だけでは物足りないのは当然だ。先週のコラムにも書いたように、私はかねて、ジョー・バイデン米大統領の対中宥和姿勢を懸念してきたが、こうなると、菅政権のほうが心配になる(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81341)。菅政権は4月初めに予定される訪米までに、本腰を入れて対中政策を見直す必要がある。このままでは、せっかく同盟国で真っ先に日本の首相との対面会談をセットしてくれたのに、バイデン政権を失望させてしまいかねない。

 付け加えれば、今回の制裁は来年冬の北京五輪を直撃する可能性も出てきた。欧米が人権弾圧で制裁している国の五輪に参加するだろうか。「ウイグル人弾圧は許せない。大量虐殺(ジェノサイド)だ」と拳を振り上げながら「五輪は平和の祭典。成功を祈る」というのは、辻褄が合わない。いずれ、日本は北京五輪への態度表明も迫られるだろう。

長谷川 幸洋(ジャーナリスト)

【私の論評】菅首相は自ら制裁措置を取ろうと取るまいと、中国に進出している日本企業の商業活動を同盟国・米国から妨害されてしまいかねない(゚д゚)

日本政府は経済的影響への懸念から対中制裁は慎重な姿勢を崩していません。ただし、与野党には主要7カ国(G7)の中で孤立するのは避けたいとの意見もあり、対応に苦慮しているようです。


実は中国新疆ウイグル自治区のウイグル人弾圧問題を巡り、日本でも中国への制裁措置に関する議論が始まっていました。同問題に関する議論は日本の国家安全保障局(NSS)、経済産業省(METI)、国会議員により推進されていました。

中国北西部に位置する同自治区ではイスラム教徒が多数を占めているが、中国政府は電子監視装置や不妊手術の強制など、同地域住民を対象としたいくつかの政策を施行しています。

世界各国もこの動きに注目していました。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が2020年3月に発表した報告書により、そのサプライチェーンがウイグル人労働力に絡んでいるとする83社の主要国際ブランドが特定されましたが、その中では11社の日本企業が名指しされていました。

同報告書によると、中国政府の労働力移送プログラムにより、少なくとも8万人のウイグル人が新疆ウイグル自治区(ウイグル人には東トルキスタンとして知られている)から中国各地の工場に労働力として強制的に移送されているといいます。

日本経済新聞(日経新聞)が報じたところでは、2020年6月、米国ではドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の署名によりウイグル人権法が成立したことで、継続的なウイグル人弾圧に関与する中国の個人や組織を制裁対象に指定することが可能となったのですが、日本が今後同様の法律制定を視野に入れて動く場合、報告書で指摘された日本企業が害を被る可能性があります。

すでに2020年12月の時点で、ウイグル人権法に基づき、4人の個人と1企業が米国の資産を凍結されています。

同盟を結ぶ日米政府間のこうした連携は、世界の民主主義諸国の国会議員代表により構成される非政府組織(NGO)「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の取り組みに端を発している可能性があります

日本では対象を絞った制裁を認める米国の法律と同様の効果のある法案が起草される可能性が高いともされていました。現在の日本国憲法に基づく法体系では、人権侵害問題だけを理由に制裁措置を課すことは難しいのです。

人権を理由にした制裁としては、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)の際に日本が経済制裁を発動した事例がありますが、当時、日本は国連決議を踏まえて同国との取引に規制を課しています。

国連決議がない限り制裁は難しい状況ではありますが、そもそも国連安全保障理事会常任理事国である中国がその類の決議を認めるはずがありません。こうした事情も踏まえ、同議会連盟が国際刑事裁判所(ICC)と国際連合人権理事会に、ウイグル民族に対する人道上の罪と大量虐殺(ジェノサイド)を理由に告発された中国当局者に関する調査を依頼しています。

日本が制裁に慎重なのは、中国が対抗措置に踏み切れば、日本経済に大きな影響が及びかねないと考えているからなのでしょう。特に経済界からは、対中貿易に影響を与えないでほしいと強く要望されていると思われます。確かに、経済的な依存度は天安門事件当時とは比べものにならず、制裁には相当な覚悟が必要なのかもしれません。

しかし、そうはいっても、中国政府は、日本企業のような外資企業が中国本土でビジネス展開を始めると、海外への送金を制限して、人民元を海外の本国通貨に自由に両替させないことで、資金が本国に戻ることを阻止しています。これでは、中国ビジネスの意味はないです。

それにウイグル問題は明日のわが国の問題ともいえます。そうなってしまえば、ビジネスどころではありません。むしろ、欧米諸国以上に日本が真剣に前へ出なければならないはずです。マスメディアはそれを後押しすべく、今こそ「対中包囲網というバスに乗り遅れるな」と大合唱すべきです。

確かに、人権侵害を理由に制裁を科す国内法がない現状では、国連安全保障理事会の決議がなければ資産凍結や貿易制限は難しいというのが政府見解のようではあります。ただ、与野党には米国の法律を参考に「マグニツキー法(人権侵害制裁法)」の制定を求める声もありますが、制裁実施が義務化される可能性もあり、政府は慎重な姿勢です。

一方で、各国と連携して対中圧力を高めたい米国の意向も無視できないです。バイデン米大統領が初めて対面で会談する外国首脳に菅義偉首相を選んだことなどから、日本にこれだけ配慮してくれた以上、日本も米国の要求をのまざるを得ないという見方もあります。

先日もこのブログに掲載した、新疆ウイグル自治区での人権抑圧状況を徹底調査してきたオーストラリア戦略政策研究所(Austrarian Strategy and Policy Institute=ASPI)が2020年3月に発表した報告書には、こう記述されています。

「中国政府の労働力移送プログラムにより、少なくとも8万人のウイグル人が新疆ウイグル自治区から中国各地の工場に労働力として強制的に移送されている」

「これらの工場で国際的なブランド製品を生産している企業は、H&M、日立、カルバン・クライン、アディダス、ビクトリアズ・シークレット、ジャパン・ディスプレイ、ミツミ、TDK、東芝、京セラ、アップル、グーグル、HP、マイクロソフト、任天堂、ソニー、シャープなど83社に上っている」

このリストには掲載はされていないものの、兵庫県に本社を置くスポーツ用品大手・アシックスの中国法人は3月25日、中国SNS・ウェイボーで、引き続き新疆ウイグル自治区産の綿花を購入すると発表しました。

重慶市のアシックス店舗

中国では、同自治区産の綿花を購入しないなどとした海外企業に対するボイコットが呼びかけられていて、アシックスは「中国に対する一切の中傷やデマに反対する」とした。声明は日本の本社の了解を得て出された模様です。

ほかにも、良品計画のブランド「無印良品」も新疆ウイグル自治区産の原材料を使っているとの指摘もあります。それ以外にも調査すれば、ある可能性もあります。

バイデン政権がこれら製品がウイグル人を強制労働で生産していると特定し、制裁対象にすれば、対米輸出ができなくなります。「メイド・イン・チャイナ」の日本製品も対象外ではなくなります。

菅首相は自ら制裁措置を取ろうと取るまいと、中国に進出している日本企業の商業活動を同盟国・米国から妨害されてしまうことになります。そうなってしまえば、日本の存在感は地に落ちることになります。

そうなる前に、日本も対中国制裁に乗り出し、日本政府の立場を明確にする必要があります。対中制裁を発動するだけではなく、日本企業に対する制裁も視野に入れるべきでしょう。


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