しかし、そんな華やかなイメージとはうらはらに、宅配ピザ業者も原燃料価格の高騰に四苦八苦している。実際、宅配ピザは「コストの固まり」のようなビジネスなのだ。
「1年前と比べてピザの生地に使用する小麦のコストが1.5倍、全製造コストの3割を占める輸入ナチュラルチーズが2倍、配達バイクの燃料費が5割もアップした」と嘆くのは、大手宅配ピザチェーンの営業担当者。まさに「三重苦」の値上げが起きているのだ。
そればかりではない。原燃料価格の高騰が本格化する以前から、仕事が過酷なドライバー人気の低下で人件費も高止まりしている。「これまでの時給 1000円を1300~1500円にしても、なかなか人が集まらない」(営業担当者)という状態で、これも加えれば「四重苦」になる。
現在、宅配フード業界はただでさえ岐路に立たされている
少子高齢化で家族世帯が減少しているにもかかわらず、これまで主流だったピザに加えて、ここ数年のあいだに寿司、中華料理など新手の業者が続々と参入したため、市場はすでに過当競争に陥っている。お客が自ら店舗を訪れるファミリーレストランなどと違い、家庭に直結したビジネスを手がける宅配フード業者にとって、このような構造変化は頭痛のタネ。そんな折に本格化した原燃料価格の上昇は、「恐怖」以外の何ものでもない。
だが、そんな状況にもかかわらず、ほとんどの業者はこれまでピザの値上げに二の足を踏んでいた。そもそも本格志向をウリにする宅配ピザの人気商品は2000~3000円台と、コンビニのピザと比べてかなり割高だ。
「わざわざ高い宅配ピザを取らなくても、コンビニのピザで十分と言うお客も多いため、値上げによる客離れが怖かった」(営業担当者)のである。
これに対して、中途半端に事業を拡大してきた中堅業者の台所事情は苦しい。大手と違い、広範な地域を少ない拠点や人数でカバーしている彼らは、システム投資はおろか拠点の合理化もままならない苦境が続く。
「仕方なく採用を減らしたところ、過重勤務で倒れて辞めるドライバーが増え、人手不足による配達時間の遅滞が問題になっている」(都内中堅業者)というケースまである。
宅配ピザの魅力の1つは、約束した時間に焼きたてのピザが届くこと。しかし、今後は「約束した時間内にピザが届かない」といったお客のクレームが増えるかもしれない。
(ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也 2008年6月12日)
そこで各社は、商品価格を上げずにチラシの頒布量を増やしたり、付加価値の高い新商品の開発を行なうなど、あの手この手の工夫を凝らしてきた。だがその結果、「むしろ以前よりもコストがアップしてしまった」(営業担当者)という企業も多いのが実情である。
拠点の合理化もままならずシステム投資で耐え抜く各社
「にっちもさっちも行かない」
あまりのコスト圧力に、最近では大手さえも音を上げて、ピザの値上げを余儀なくされている。
ヒガ・インダストリーズは、3月中旬、53商品について平均5.5%の値上げを発表。宅配ピザ事業が足を引っ張り、2007年12月-08年2月期が28%の営業減益となった日本ケンタッキー・フライド・チキンも、4月から一部の商品について、1円単位の端数を切り上げる「実質値上げ」に踏み切った。
今後、各社が利益水準を維持して行くためには、システム投資を行なって配達を合理化するしかない。宅配フード業界で雌雄を決する要因は、何よりも拠点数だ。店舗を構えてサービスで差別化を図れる業態ではないため、拠点を減らすと地域のシェアを根こそぎ他社に奪われる恐れがある。
そのため、資金力がある大手3事業者はシステム投資に余念がない。たとえば、ドライバー1人が1回の出動でより多くの家庭にピザを配達できるよう、各拠点ごとにコンピュータで徹底管理する体制を整えているのだ。これなら、人件費や燃料費をかなり節約できる。
これに対して、中途半端に事業を拡大してきた中堅業者の台所事情は苦しい。大手と違い、広範な地域を少ない拠点や人数でカバーしている彼らは、システム投資はおろか拠点の合理化もままならない苦境が続く。
「仕方なく採用を減らしたところ、過重勤務で倒れて辞めるドライバーが増え、人手不足による配達時間の遅滞が問題になっている」(都内中堅業者)というケースまである。
宅配ピザの魅力の1つは、約束した時間に焼きたてのピザが届くこと。しかし、今後は「約束した時間内にピザが届かない」といったお客のクレームが増えるかもしれない。
アギェンストの風でも背中に受ければ追い風となる? さて、こうした動き、ピザに限らずいろいろなところに影響が出ています。その典型的な例が生協の個配だろう。日常用品(粗利がもともと少ない)ものを定期配送するのが、生協の個配です。
この事業、生協の中では、順調に伸びていた事業なのに、ここに来て陰りがでてきています。一つは、上に述べたような宅配ピザのような三重苦。さらに、最近では中国餃子問題で、イメージダウンしただけではなく、国内生産物を好むという消費者の嗜好の変化であります。さらには、駐車違反の罰則強化もいたいです。
さらに、居酒屋、スナックなどの業態にも顕著な変化があります。いわゆる飲み屋街といわれるところに、出店しているところには、相当陰りがでてきています。ただし、住宅街に隣接しているようなところに出店したところはそこそこ利益を上げて、最近の厳しい状況にあっても相変わらず人気があるようです。価格もお手ごろ価格にしているところが多いようです。そのため、立地を変えるところもでています。そのような、ところは、まるで近所の社交場になっているところもあります。
回転寿司に関しても二極化していて、伸びているところと、低迷しているところがある。伸びているところは、システム投資などを含む努力を傾注し、従来どおりの価格で商品を提供しているが、何とか利益をあげられているようです。立地はやはり、住宅地の多いところが有利なようです。
これら、二つの伸びている業態に共通するところは、いわゆる住宅隣接型ということです。また、価格も回転寿司の場合は何らかの方法で据え置いているところもありますが、やは住宅隣接型であれば、地下も安いので、さほど努力しなくても低価格で提供できるということもあります。
なぜ、このようなことになったのかといえば、やはり消費者の変化ということがあります。消費者もガソリン高騰、酒酔い運転や違法駐車の厳しい取締り、食料品の値上げなどに影響を受けているということです。だからこそ、遠くまでいくより、近くに比較的良い店があればそこに行くということです。
また、最近の厳しい状況にあっても、変わらない消費者もいます。それは、いわゆるお金もちです。最近、グッチやティファニーの売上げに陰りが出てきているそうです。しかし考えてみれば当たり前のことです、少し前ならば特に、所得が高くもないのに、グッチの商品をいくつ持っているという人が大勢いました。しかし、ここにきてガソリン高騰、食料品の値上げなどで買い控えをする人が増えてきたのだと思います。しかし、高所得層の消費行動は変わりません。相変わらず、中途半端な高額品ではなく、本当の高額商品は売れ続けています。
ここにきて、年収2000万まではいかないですが、1000万円を超える世帯なども狙い目だと思います。本当のお金持ち層に対する商品・サービスに関しては、大昔から数え切れないほどありますが、実はこの層に対する商品・サービスはどちらかというと希薄だからです。
それより下ということになると、100円ショップや、安売りスーパーはじめ多数の商品・サービスを提供しています。最近のピザ宅配における三重苦などとは、比較的無縁ですが、さりとて全く考えなくもないこのような層に対する商品・サービスの市場は未だ手付かずといっても良いと思います。
そのため、これらの層の人たちは、図らずも自分たちより下のレベルか、上のレベルの消費を時と場合によって使い分けているのだと思います。だから、外からみると一見それで満足しているようですが、実は自分達にピッタリのものが出てくれば、喜んで試したり、購入すると思います。しかも、これが最近の原油だかの影響などを受けて顕著になってきていると思います。
さて、確かに現在はどの商売にとっても厳しい時期ですが、上記のような変化に対応をすれば、やり方はいくらでもあるわけです。まさに、アギェンストの風も背中に受ければ、追い風になるということだと思います。
こうした最中にあって、創意工夫を続けるピザ宅配業、回転寿司、居酒屋などの業態はもとより、他の業態でも、生き残って、次の段階ではより一層足腰の強い業態となって、次の時代を開拓するイノベーターとなっていくことでしょう。
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