激戦区の西部アリゾナ州で民主党候補の当選が確実となり、同党が上院維持に王手をかけた11日、トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)でマコネル氏を「ポンコツ」と呼び、同氏が党の選挙資金の投入先を間違えたと批判。「あいつは最悪だ!」とまで罵(ののし)った。トランプ派議員らが同調し、マコネル氏をはじめとする党指導部との対立が深まる可能性がある。
急速なインフレ下でバイデン政権への支持率が低迷する中で行われた今回の中間選挙は、共和党にとって圧倒的に有利だとみられてきた。にもかかわらず上院の多数派を獲得できなかったことは、共和党にとって痛恨の痛手だ。
同党の得票が伸び悩んだ要因として、各種出口調査に基づく分析では、2020年大統領選で「大規模な不正があった」と主張し続けているトランプ氏が、自派候補の大量当選を狙ったことが嫌気されたとの見方が強い。米CNNテレビの調査では、政権運営への不満などからバイデン大統領を「支持しない」とした有権者のうち、それでも民主党に投票した人は49%に上り、共和党の45%を上回った。元来は政権への「信任投票」の意味合いが強い中間選挙としては異例の現象だ。
このため共和党では、中間選挙後、トランプ氏が党の前面に出るべきではないとの声が表面化しつつある。
その中でトランプがマコネル氏への攻撃をエスカレートさせているのは、自分への批判の矛先をそらして責任を転嫁し、求心力を維持する思惑があるためだ。
民主党は上院を維持したことで、政府高官や連邦裁判所判事の人事がスムーズに進めることが可能になる。また、仮に下院が共和党に奪還され、政権と民主党に不利な法案が下院を通過した場合でも、上院でそれを否決することができる。
民主党は、投票日直前に共和党優勢という報道が飛び交ったために、危機感を持った有権者が投票所に押し寄せたという見方があります。いわゆるアンダードッグ効果が働いたという見方です。
アンダードッグ(underdog)は、日本語でいうと「かませ犬」。かませ犬は、もともと闘犬用語で、自信を付けさせたい闘犬に「噛ませるため」にあてがわれる犬のことで、転じて「戦いに勝ちそうにない/不利な状況に置かれている方」を指すようになりました。アンダーという語感から日本語の「負け犬」の意味で捉えられることもありますが、「負け犬」は「すでに敗北が決定している」状態を指す言葉なの意味が異なります。
〈アンダードッグ効果の例〉共和党優勢という予測の背景には、有権者の超インフレと治安への大きな不満があり、現政権への強い批判となるだろうという見通しがありました。ところが、これも、民主党支持者にとっては、トランプ復権への強い抵抗感、あるいは環境や中絶問題などへの危機感を覆すまでには至らなかったとみえます。
・大柄な選手と小柄な選手が戦う試合で、小柄な選手の方を応援したくなる
・「対して何もしていないのに成果が出ている人」と「頑張っているのに結果が伴わない人」がいた場合、後者を応援したくなる。
結果として、民主党は結束力を強める方向に動いていたといえます。
一方の共和党については、分散する方向に動いていたといえます。
まずは、多くの予備選において、ドナルド・トランプ前大統領は、現職もしくは共和党の穏健派の候補を「引きずり下ろして」自派の候補を押し込んでいました。その候補の多くが、急遽政界入りを決めた「素人候補」であり、結果的に選挙戦で民主党に競り負けたと考えられます。
典型例は、今後の政局を左右した、ペンシルベニア州上院の選挙です。トランプ氏は、知名度の高いTVタレントであるメフメト・オズ医師を激しい予備選の結果、共和党の統一候補に押し込むことに成功しました。
投票日直前に「オズ候補は隣のニュージャージーに豪邸を構えており、ペンシルベニアの代表ではない」という暴露キャンペーンを張られて結果的に落選しました。怒ったトランプは、オズ医師を推薦したメラニア夫人を罵倒したという報道すらあります。
終盤の選挙戦において、共和党の本部は「トランプ隠し」をしたようです。
上院議員選で敗北したペンシルベニア州の場合は、11月5日の夕刻に演説会が行われましたが、これは本来であれば、大都市であるフィラデルフィアかピッツバーグで行うのが有効なはずでした。
ところが、演説会の行われたのはラトローベという山間部の小さな町の小さな空港でした。つまり、長距離をドライブして駆けつける熱心な支持者「だけ」が参加できるイベントだったのです。
大都市での大規模イベントはただでさえ目立つのに、そこにトランプが登壇すれば、さらに目立つからです。無党派層が「やっぱりトランプはイヤだ」として、共和党への投票を控える危険があるので、そうしたという見方があります。
元々大統領選と比較すると、中間選挙は地味なイベントです。熱心なトランプ派の中には「トランプが登場しない」のであれば、選挙に関心を持たないし、投票にも行かないという「シラけたムード」が広がったかもしれない。「トランプ隠し」が共和党の集票にマイナスとなった可能性は十分あります。
その反対の見方もあります。党本部は「隠そう」としたのですが、結局トランプは「11月14日(後に15日訂正)には大統領選出馬について重大な発表をする」などと発言し、メディアで取り上げられて「悪目立ち」しました。つまり、共和党はトランプを隠そうとしたが隠すことが出来ずに、結局は無党派層を呼び込むチャンスを逸したという見方です。
この2つのものは、相反するようでもありますが、両方とも当たっている可能性があります。いずれにしても、現在の共和党は「トランプの党」なのか、それとも「脱トランプ党」なのかをはっきりさせず、なし崩し的に二兎を追うような姿勢で選挙戦に臨んでしまったのです。この中途半端な姿勢が、チャンスを活かしきれなかった最大の原因でしょう。
いずれの党なのか、早い時期に党の上層部が決めて、決まった以上は、それに従って選挙戦を闘うという方向で一致していれば、共和党は、今回のチャンスを活かせた可能性があったと思います。
私自身は、今回の中間選挙は民主党が優勢であったのではなく、共和党が自らを劣勢に導いてしまったと思っています。
いずれにしても、トランプ氏は共和党の姿勢を徹底的に批判するでしょう。それでも、共和党上層部が「トランプ党」路線をいくのか、「脱トランプ党」路線を行くかをはっきりさせなければ、2024年大統領選挙にも負けてしまうことになるでしょう。
そうして、どちらの路線に決まったとしても、決まってしまった以上は、党の方針に従って動くべきでしょう。ただ、各派閥で不満もあるでしょうから、それは選挙が終わってから本格的に調整すれば良いことです。選挙中にそれをやれば、今回のように、せっかく良い風向きだったものを活かしきれないということになるのです。
これは、日本でも同じようなことがいえると思います。永田町では、すでに岸田政権が長く持っても、広島サミットまでだろうという見方が広がっています。
今後しばらくは国政選挙はありませんが、それまでの間に、自民党は総裁選を行い、新しい総裁のもとで、本格的な選挙を闘うことになると考えられます。
選挙戦の争点は、各候補者が様々なことを言うでしょうが、つまるところは、安倍路線継承か、そうでないかということが焦点になるのは間違いありません。
安倍元総理が亡くなってから、世界中の国々が安倍元総理が亡くなってしまったことを残念に思っているようです。そうして、米国を筆頭に多くの国々が日本に対して、安倍路線を踏襲することを期待しています。インドのモディ首相は、安倍首相との思い出を語るときに、泣きそうになったとも報道されています。
日本では、あまり報道されませんが、安倍元首相の国際的な働きは、インド太平洋戦略やQuadの成立など実際に世界の構造を変え、今日に至っています。安倍元首相の働きなしに、今日の世界はないと言っても過言ではありません。
国内では、岸田総理による内閣改造において、旧統一教会を利用したともいえる、露骨な安倍派外しが行われ、増税や防衛予算の総合防衛費化など自民党内の保守派の憤怒のマグマに油を注ぐような政策ばかり実施しようとしています。その結果岸田政権は、大ブーメランに見舞われ、支持率がかなり落ちています。
黄金の3年間を享受するであろうと見られていた岸田政権は、もはや最長で広島サミットまでしかもたないという見方は正しいです。ただ、次の総裁選では、できれば、安倍路線を継承する人物を総裁とすべきです、仮にそうでない人物が総裁になったとしても、自民党全体では安倍路線を継承すべきです。
まだ先の話しではありますが、来たるべき選挙では、米国の共和党のように、負けてしまうことになりかねません。そのようなことだけは、避けるべきです。
黄金の3年間において、数の力を知る自民党は、米国の共和党の今回の中間選挙での敗北を他山の石として、党内の結束を固める方向で動くべきです。
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