2024年10月26日土曜日

イスラエルがイラン報復攻撃 首都周辺の軍事基地標的か―【私の論評】中東の緊張と日本の安全保障:イスラエル・イラン対立から学ぶべき教訓

イスラエルがイラン報復攻撃 首都周辺の軍事基地標的か

まとめ
  • イスラエル軍はイランへの報復として、イラン国内の軍事目標を攻撃した。
  • イランがイスラエルにミサイルを撃ち込んだことへの報復措置であり、イスラエルは自衛の権利を主張している。
  • この攻撃は中東の緊張を高める可能性があり、さらなる紛争のリスクを孕んでいる。 
イスラエル軍によるテヘラン近郊の軍事基地への攻撃

 イスラエル軍は、イランがイスラエルにミサイルを撃ち込んだ報復として、26日未明にイラン国内の軍事目標に対する攻撃を開始したと発表した。イランのメディアによると、テヘラン近郊の軍事基地が攻撃され、防空システムが作動したとのされる。詳細な被害状況は不明だ。

 イスラエル軍は、イランとその代理勢力が継続的に攻撃を行っているとして、反撃の正当性を主張している。イスラエルは米国のTHAADシステムを配置し、再攻撃に備えている。再報復があれば、中東全体の緊張が高まる可能性がある。

 イランは今月初め、ハマスやヒズボラの指導者が殺害されたことに対する報復として、イスラエルに大規模ミサイル攻撃を行った。ネタニヤフ首相は報復を予告し、米国は一部理解を示しつつ、石油や核関連など重要施設への攻撃には反対していた。

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【私の論評】中東の緊張と日本の安全保障:イスラエル・イラン対立から学ぶべき教訓

まとめ
  • 今回のイスラエルの攻撃は石油や核関連施設を標的にせず、軍事施設に限定された。
  • 現代の攻撃手段として、核を搭載しないミサイルやドローンによる精密攻撃が普及し、軍事行動のハードルが低下している。
  • ロシアはウクライナの民間施設をミサイル攻撃の標的にすることにより士気をくじこうとしているが、中国も台湾に対してこのような戦略をとる可能性は否定できない。それどころか、日本もその標的になりかねない。
  • この現実的な脅威に対す安倍晋三氏の取り組みは、敵基地攻撃能力やミサイル防衛体制の強化を通じて抑止力を強化することに焦点を当てていた。
  • 現在の衆院選では、イスラエルとイランの対立や台湾問題を語る候補者が少なく、これらのテーマに触れない候補者には、信頼を置くことはできない。


今回の攻撃には石油や核関連施設は含まれていないようだ。イスラエル軍の情報筋がCNNの取材に応じ、イランへの報復でエネルギーインフラは標的にしないと明かした。情報筋によれば、26日に行われたイラン攻撃は100%イスラエル主導であるが、米国とは防空分野などで深い協力関係が続いているという。また、ネタニヤフ首相を含むイスラエル政府が米国に対し、石油施設や核施設は攻撃対象から外し、軍事施設に限定すると確約したことも明らかにされた。

イスラエルが石油や核施設を重要視するならば、まず最初にそこを叩くはずだ。軍事施設から手をつけ、後回しにするというのは考えにくい。なぜなら、そうすることでイラン側の防御が強まり、攻撃効果が下がるリスクがあるからだ。

このブログでも10月20日の記事で予測していたが、核や石油関連施設には手をつけず、軍事基地などが狙われるだろうという予想が的中した形だ。

イスラエルにとってイランの挑発は一大問題だが、米国が石油施設や核関連施設への攻撃に反対しているため、イスラエルも慎重を期している。もしイランの石油施設を攻撃すれば湾岸地域が不安定化し、原油価格の急騰は世界経済に悪影響を及ぼす。また、イランが報復としてアラブ諸国の産油施設を攻撃する可能性があり、これが中東全体の戦火拡大を招きかねないからだ。中東の戦火拡大は米国もイスラエルも、そしてイランも望まないはずである。

さらに、現代の戦争において重要な要素は、核を搭載しないミサイルやドローンによる精密攻撃である。これらは敵味方の損害を最小限に抑えつつ、特定の軍事目標を正確に狙うことが可能となった。このため、従来よりも軍事力を用いる障壁が低くなったと言える。精密攻撃のハードルが下がったことで、戦争の敷居が下がり、少ないリスクで相手に打撃を与える選択肢が拡大した。

ロシア軍の攻撃を受け破壊されたウクライナの高層住宅

この情勢の中、目を向けたいのが台湾やウクライナである。ロシアがウクライナで行っているのは、民間施設への攻撃を通じて相手国の士気をくじく戦略である。同様に、中国も台湾に対して、必ずしも直接的な侵攻ではなく、ミサイル攻撃などによる威圧行為を繰り返す可能性がある。さらには、日本がその標的になる可能性すら否定できない。これは絵空事ではなく、国際情勢の変化や軍事バランスの移り変わり次第で現実に起こり得るシナリオである。

安倍晋三氏が取り組んだのは、まさにこうした現実的リスクへの抑止力強化である。安倍政権下で「敵基地攻撃能力」が議論され、自衛の範囲内で防衛力を整備し、日米同盟の抑止力を強化する取り組みが進められた。さらに、イージス艦やパトリオット(PAC-3)、イージス・アショアといったミサイル防衛体制の強化も試みられたが、一部の計画は地元の反対で撤回されるなど、課題も残る。

外交面では米国との同盟強化と同時に、ロシアとの関係改善にも注力した。ロシアとの平和条約交渉も試みたが、大きな成果には至らなかった。それでも安倍氏の外交努力は、日本の防衛を支える抑止力の一環として機能していたといえる。


安倍氏の戦略は、軍事力と外交力の両面で抑止力を築き、敵国の攻撃をためらわせるものだ。現在の防衛政策の基盤となっているのは、この抑止戦略である。

現在、衆院選の真っ只中だが、イスラエルとイランの対立や台湾、ウクライナ問題について語る候補者は少ない。この重要なテーマに触れない政治家に、果たして信頼を置けるだろうか。

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2024年10月25日金曜日

半導体ラピダスへ追加支援検討 武藤経産相、秋の経済対策で―【私の論評】安倍ビジョンが実を結ぶ!ラピダスとテンストレントの協業で切り拓く日本の次世代AI半導体と超省電力化

半導体ラピダスへ追加支援検討 武藤経産相、秋の経済対策で

まとめ
  • 武藤容治経済産業相は、ラピダスに対する追加の財政支援について経済対策の中で検討する方針を表明し、必要な支援法案の早期提出を強調。
  • ラピダスは現在工場建設が順調に進んでおり、IBMと連携して技術開発を進め、2025年4月の試作用ライン稼働を目指している。


 経済産業相の武藤容治氏は、次世代半導体メーカー・ラピダスに対する追加の財政支援について、秋の経済対策の中で検討する意向を示した。

 武藤氏はラピダスの工場を視察し、政府としても必要な支援を行うための法案を早期に提出したいと述べた。ラピダスの小池社長は、現在建設中の工場の進捗と、将来的に1.4ナノメートルの半導体製造を計画していることを説明した。ラピダスはIBMと連携し、2025年4月の試作用ラインの稼働を目指している。

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【私の論評】安倍ビジョンが実を結ぶ!ラピダスとテンストレントの協業で切り拓く日本の次世代AI半導体と超省電力化

まとめ
  • ラピダスは日本の大手企業8社と政府から巨額の支援を受け、先端半導体の量産を目指している。
  • 顧客確保の課題に対処するため、AI半導体のカナダ企業テンストレントと提携を発表。
  • 提携の焦点は省電力AI半導体の開発で、世界的な電力消費増加への対応が期待されている。
  • 米中対立の中、日本の技術力に注目が集まり、地政学的要因も背景にある。
  • 安倍元首相の国家戦略の影響が、この提携を支えている。


2027年に世界最先端の半導体量産を目指すラピダスが、ついに大きな一歩を踏み出した。ラピダスは、日本を代表する8つの大手企業――ソニー、トヨタ、デンソー、NTT、NEC、ソフトバンク、そして三菱UFJ銀行――からの出資を受け、政府も9200億円という巨額の支援を約束している。日本の技術力を結集し、世界最先端のロジック半導体開発を目指すこの計画は、経済的な価値を生み出すだけではない。防衛の観点からも極めて重要な意味を持つ。

さらに、上の記事にあるように、ラピダスとIBMは先端半導体の開発と製造で提携し、具体的には、半導体の製造工程のうち、特に半導体基板をパッケージに収める「後工程」の技術が対象となっており、ラピダスの技術者はIBMの米国拠点で研修を受ける。この提携は日本の半導体産業の競争力を高めるための重要なステップであり、特に2nm世代の半導体量産技術の開発においてIBMのノウハウが大きく貢献することになる。

だが、この野望には一つの難題があった。顧客の確保――すなわち市場の支持をいかに勝ち取るかという課題だ。

そんな難局を打開するため、ラピダスは驚きのカードを切った。2023年2月27日、AI半導体で業界を席巻するカナダのスタートアップ「テンストレント」との協業を発表したのだ。テンストレントのCEO、ジム・ケラー氏――その名を聞けば、技術者なら誰もが首を縦に振る天才エンジニアである。アップルやテスラといった名だたる企業で輝かしい実績を残し、いまやAI向け半導体の最前線に立つ彼が、ラピダスのパートナーとなる。

ラピダスの小池淳義社長は、この提携に強い意欲を見せる。「日本が得意とする産業ロボットやヘルスケア分野で、世界標準を作り上げていく。それが我々の目標だ」。彼の目には、日本の強みを世界に広げる覚悟がにじみ出ている。AI技術は莫大な電力を消費する。小池社長は、これをどう抑えるかが今後の鍵になると語り、「省電力な半導体の開発は必須だ」と強調した。

これについては、昨日のこのブログ記事でも述べたように、生成AIの普及により、データセンターの電力消費が急増。AIサーバーは従来よりも6〜10倍の電力を消費する。米国ビッグテック企業のグーグル、マイクロソフト、アマゾンが、安定的な電力供給を目的に原子力への投資を進めており、特に小型モジュール式原子炉(SMR)の導入や、原発再稼働が注目されていることを示した。

2009年には「1回のGoogle検索で二酸化炭素7グラム排出」という論文が発表され電力消費が破滅的に伸びることが予想されたが、この危機は半導体産業による半導体の省電力化(特に微細化)技術により、そのようなことは結局起こらなかった。

今後AIの普及により、現在のままであれば、電力消費量はやはり破滅的に増えることになるが、それを回避する超省電力半導体の設計と製造をラピダスとテンストレントの提携で実現しようとするのが、ラピダスの小池淳義社長の目指すところなのだ。

小池淳義とジム・ケラー氏

ジム・ケラー氏もまた、提携を心待ちにしていた。「日本で強力なビジネスを進める機会を得たことに感謝している」と、彼は語る。だが、彼の言葉の裏には、単なるビジネスパートナーシップ以上のものがある。ケラー氏は、半導体業界でその名を轟かせた真の天才だ。彼のキャリアは革新そのものである。デジタルエキップメント社(DEC)でAlphaチップの開発を担い、AMDではAthlonの開発を指揮。そして、何よりも特筆すべきは、x86-64命令セットの共同設計者として名を馳せたことだ。

彼の手腕は、アップルでのプロセッサ設計にも現れた。iPhoneやiPadの設計に携わり、アップルの躍進を支えた立役者の一人となった。その後、再びAMDに戻り、Zenアーキテクチャーの開発で同社の復活に貢献。テスラでは、自動運転向けの半導体開発にも携わり、名実ともに業界の巨人となった。

今や、ケラー氏はテンストレントのCEOとしてAI向け半導体の最前線に立ち、さらにラピダスと協力して2nm世代の技術を用いたエッジAI向け半導体の開発に乗り出す。この提携は、単なる技術協力では終わらない。これは、新しい半導体エコシステムの構築という大きなビジョンの一端なのだ。ケラー氏のリーダーシップと革新性が、この提携を成功へと導くだろう。

この背景には、米中対立という地政学的な要素も絡んでいる。中国が先端半導体開発で困難に直面する中、世界は再び日本の技術力に注目している。IBMやジム・ケラー氏の参加は、米国、カナダと日本の連携を強化し、新たな半導体サプライチェーンの構築を加速させる象徴的な一歩だ。

この動きの起源には、日本の国家戦略がある。安倍晋三元首相が掲げた「自主・自立」の理念が、今日ラピダスがIBMやテンストレントとの提携を可能にしたのだ。安倍政権下で半導体製造を国家戦略に位置づけ、日本の技術力を強化し、経済安全保障を確立しようとする政策が生まれた。経済産業大臣として萩生田光一氏や西村康稔氏も、この戦略を推進。人材育成や産業振興に取り組み、半導体産業の復活に力を注いだ。

北海道を訪れた旨を伝える安倍首相(当時)の安倍首相のツイート

ラピダスへの支援は、単なる国内の産業政策を超えた国家的そうして国際的プロジェクトだ。IBM、テンストレントとの協業は、日本が世界市場で再び競争力を持つための重要な布石となり、技術的な自立と国際的な影響力の向上に寄与するだろう。この提携が生み出す技術革新は、日本の未来を変える可能性を秘めている。そして、その成果は、経済的利益だけでなく、国の安全保障にも直結する。これこそ、安倍元首相の「自主・自立」が形となった瞬間だ。

結局のところ、ラピダスとIBM、テンストレントの提携は、米中対立の中で生まれた新しい半導体の時代を切り開くものであり、日本の技術力が再び世界を驚かせる未来が、すぐそこに迫っているのだ。

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マイクロソフト・グーグル・アマゾンが「原発」に投資しまくる事情―【私の論評】米ビッグ・テックのエネルギー戦略とドイツの現状

マイクロソフト・グーグル・アマゾンが「原発」に投資しまくる事情

まとめ
  • 生成AIの普及により、データセンターの電力消費が急増。AIサーバーは従来よりも6〜10倍の電力を消費する。
  • 米国ビッグテック企業のグーグル、マイクロソフト、アマゾンが、安定的な電力供給を目的に原子力への投資を進めており、特に小型モジュール式原子炉(SMR)の導入や、原発再稼働が注目されている。
  • 日本では電力供給が減少傾向にあり、原発の再稼働も進んでいない。再生可能エネルギーの主力化が進むが、安定的な電力供給が課題となっている。
  • グーグルはSMRを、マイクロソフトはスリーマイル島の原発を再稼働させる計画を発表し、AI技術の成長を支えるためのエネルギー供給を模索している。
  • 日本もAIや経済成長に対応するため、安定的でクリーンなエネルギーの確保を目指し、エネルギー政策の議論を進める必要がある。

データセンターのエネルギー消費量予測(世界) 出所:TDK

 生成AIの急成長に伴い、データセンターの電力需要が急激に増加している。特にChatGPTなどの生成AIは、従来のサーバーに比べて非常に多くの電力を消費し、今後さらにこの傾向が強まると予想されている。AIサーバは従来のサーバに比べて6倍から10倍の電力を消費するとされており、これが電力需要の急速な増加に拍車をかけている。たとえば、ChatGPTの検索クエリは従来のGoogle検索と比べて約10倍の電力を消費するとされている。

 2023年から2030年の間に、データセンターの電力需要は年平均15%の成長率で増加し、2030年までには現在の3倍以上の消費量に達する見込みだ。これを背景に、グーグル、マイクロソフト、アマゾンといった米国のビッグテック企業は、AIの成長を支えるため、安定した電力供給を確保する手段として「原子力」に注目している。

 マイクロソフトは、過去に原子力事故が発生したスリーマイル島の原子力発電所を再稼働させる計画を発表し、注目を集めた。また、グーグルは小型モジュール式原子炉(SMR)の導入を推進し、2030年までに最初の原子炉を稼働させる計画を進めている。SMRは従来の原子炉よりも小型で、より安全かつ効率的なエネルギー供給を実現する技術として期待されている。一方、アマゾンも原子力エネルギーの活用を進めており、既存の原子力施設の隣にデータセンターを設置するだけでなく、SMRへの追加投資も発表している。

 日本では、電力供給量が過去10年にわたって減少傾向にあり、データセンターや生成AIの普及による電力需要の急増に対応するためのエネルギー確保が課題となっている。政府は再生可能エネルギーの主力化を進めているが、安定した低コストの電力供給が難しく、原子力発電の再稼働も進んでいない。東日本大震災後、原発再稼働の動きは鈍く、現在稼働しているのは36基中12基にとどまっている。エネルギーの安定供給が実現できない場合、日本はAI技術や経済成長の競争で他国に後れを取る危険性がある。

 グーグルやマイクロソフト、アマゾンといった企業が積極的に原子力エネルギーへの投資を進める一方で、日本は化石燃料への依存が依然として高く、エネルギー自給率が低い状況だ。福島第一原子力発電所の事故を受け、再生可能エネルギーの利用が推進されているが、十分な電力を安定して供給するには課題が残っている。こうした背景から、安定的かつクリーンで競争力のあるエネルギーの確保が、日本の経済成長と生活の安定を支えるために重要なテーマとなっており、国全体での議論が急務となっている。

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【私の論評】米ビッグ・テックのエネルギー戦略とドイツの現状

まとめ

  • 米国のビッグテック企業は異なるエネルギー戦略を採用し、マイクロソフト、グーグル、アマゾンは原子力に積極的である一方、アップルとメタは再生可能エネルギーに依存している。
  • アップルやメタの再生可能エネルギーへの依存は、自然条件に左右される供給の不安定さやインフラ不足により、競争力低下のリスクを伴う。
  • 原子力投資を進める企業は、特に小型モジュール式原子炉(SMR)の導入により、エネルギーの安定供給を確保し、コスト変動に対する耐性を高めることが期待される。
  • ドイツのエネルギー政策の失敗は、再生可能エネルギーへの過度な依存が経済の安定に悪影響を与えることを示しており、エネルギー政策には現実的な判断が重要である。
  • 我が国は従来の化石燃料と原子力を組み合わせたバランスの取れたエネルギー政策を採用し、安定したエネルギー供給体制を築く必要がある。

  • スリーマイル島原子力発電所の1号機が2028年までに再稼働し、Microsoftに電力を供給することが明らかに

    米国のビッグテック企業がそれぞれ異なるエネルギー戦略を採る中で、マイクロソフトやグーグル、アマゾンが原子力に積極的な姿勢を見せている一方、アップルやメタは再生可能エネルギーに依存する道を選んでいる。この違いは、電力の安定供給やコスト面でのリスクに直結する問題であり、両者の将来に異なる結果をもたらすことが予想される。そして、ドイツのエネルギー政策の失敗が警告する通り、再生可能エネルギーへの過度な依存は経済の安定に負の影響を与える可能性が高い。

    アップルやメタは、環境に優しいとされる再生可能エネルギーに大きく賭けている。しかし、この選択は多くのリスクを伴う。まず、再生可能エネルギーは自然条件に左右されるため、その供給は不安定である。加えて、再生可能エネルギーを支えるためのインフラ整備、例えばエネルギー貯蔵技術や送電網の強化がまだ十分ではないことが、供給の安定性を損なう要因となっている。これが、データセンターやAI技術といった大量の電力を必要とする産業において、競争力の低下を引き起こすリスクを高めている。

    太陽光パネルが敷きつめられたアップル本社の屋上

    対照的に、マイクロソフトやグーグル、アマゾンが進める原子力投資は、長期的なエネルギーの安定供給を確保する現実的な手段である。特に小型モジュール式原子炉(SMR)などの技術は、従来の大型原子炉に比べて安全性や柔軟性に優れており、AIやデータセンターのような大量の電力を必要とするインフラを支えるには最適な選択肢である。これにより、電力供給の不安定さやコスト変動に対する耐性が強化され、企業の競争力を高めることが期待される。

    そして、ドイツの失敗は我々にとって重要な教訓である。ドイツは原子力を放棄し、再生可能エネルギーに過度に依存するエネルギー政策を急進的に進めた結果、電力供給が不安定になり、エネルギー価格が急上昇した。これにより、エネルギーを多く消費する産業の競争力が低下し、経済全体が低成長に陥った。特に、化石燃料への依存度が高まり、結果としてエネルギー転換は成功とは言い難い結果に終わっている。このドイツの状況は、エネルギー政策において現実的な判断がいかに重要であるかを示している。

    破壊されるドイツ西部の原発の冷却塔

    我が国が進むべき道は、こうした現実に基づいた戦略を採ることである。我々もまた、安定的で大量の電力供給を確保する必要があり、特に経済の成長を維持し、技術開発を進めるためには、エネルギー供給の不安定さを排除しなければならない。再生可能エネルギーは現時点では技術的制約が多く、これに過度に依存することはリスクが大きい。

    そのため、我が国は原子力を再評価し、特に小型モジュール炉(SMR)などの新しい技術に投資することが重要である。SMRは従来の原子力発電に比べて安全性が高く、設置場所やコスト面でも柔軟性があり、今後のエネルギー政策の柱となり得る。

    また、従来の化石燃料による電力供給も含め、安定したエネルギー供給体制を築くことができる。重要なのは、理想に基づいた過度な再生可能エネルギーへの依存ではなく、原子力やその他の現実的なエネルギーソリューションを組み合わせ、バランスの取れたエネルギー政策を構築することである。再生可能エネルギーは現在の技術水準では、いまだ実用化には不向きだが、ただしいずれイノベーションが生まれるかもしれず、これへの取り組みは実験レベルで継続する程度に留めるべきだ。

    結論として、我が国が進むべき道は、再生可能エネルギーの可能性を見極めつつ、従来の化石燃料と、原子力を含む安定したエネルギー源に現実的に投資することである。ドイツの失敗を教訓に、過度な理想主義を排し、経済成長とエネルギー安定の両立を目指す現実的なアプローチが必要だ。ビッグ・テックといえども、一企業に過ぎず、エネルギー政策に失敗したとしても、国全体のレベルで考えれば悪影響はさほどではないかもしれないし、後から取り返しがつくかもしれない。しかし、政府の失敗はそうではないことが、ドイツの現状が示している。

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    2024年10月23日水曜日

    〈ソ連崩壊に学んだ中国共産党〉守り続ける3つの教訓と、習近平が恐れていること―【私の論評】習近平体制の内なる脆弱性:ソ連崩壊と中国共産党の共通点

    〈ソ連崩壊に学んだ中国共産党〉守り続ける3つの教訓と、習近平が恐れていること

    岡崎研究所

    まとめ
    • 習近平は中国共産党がソ連の運命を辿ることを恐れ、党の内部統制とイデオロギー強化を重視している。
    • 「ゼロコロナ」政策の急な終了や経済復興の困難さが、党の安定に影響を与えている。
    • 習近平は後継者の育成に無関心で、自らの長期在位を望む姿勢が将来の権力移行を不安定にする可能性がある。
    • 党の統治継続、イデオロギー堅持、米国との直接対決回避を教訓として、習近平はこれを守りつつも党内外のバランスに苦しむ。
    •  習近平の厳格な管理は党の自発性を奪い、腐敗や無気力を生むリスクがあるが、党の体制自体は強固で経済が崩壊しない限り維持されるだろう。

    習近平

     エコノミスト誌10月5日号の解説記事が、今年10月に創設75周年を迎えた中国共産党は、支配年月がソ連共産党のそれを超えたが、指導者の習近平は中国がソ連のように崩壊することを恐れている、と書いている。要旨は次の通り。

     中国共産党が創設75周年を迎えた2024年、習近平国家主席は自身の党の永続的な支配について深い懸念を抱いている。特にソ連崩壊の歴史から学んだ教訓を基に、党の内部統制とイデオロギー管理の強化を図っている。

     習近平の政策は、ソ連の崩壊が党内の派閥争いやイデオロギー的、組織的規律の喪失によるものだと捉えており、これを避けるため、党の団結と戦闘力を維持する必要性を強調している。2022年の党大会やその後の演説で、彼は「我々を敗北させ得るのは我々だけだ」と述べ、内部からの崩壊に警戒を呼びかけている。

     しかし、習近平の施策は二つの面で問題を孕んでいる。一つ目は、経済政策の失敗とその後の景気刺激策が必ずしも成功を収めていないこと。2022年の「ゼロコロナ」政策の突然の撤廃やその後ろくな復興策なしに経済を回復させようとした結果、国民の間に不満が広がっている。

     二つ目は、習近平自身が後継者育成に無関心であり、自身の権力維持を優先する姿勢だ。これにより、将来的な権力移行が混乱を招く可能性が指摘されている。ソ連の指導者選びが党内争いやクーデターで決まったという歴史を反面教師にすべきだが、習はその教訓を活かしているとは言い難い。

     鄧小平時代以降、中国はソ連崩壊の原因を徹底的に研究し、政策提言をまとめてきた。鄧の教訓では、共産党の統治継続、イデオロギーの堅持、そして米国との力比べを避けることが挙げられた。これらの原則を習近平は守っているが、彼の厳格な党管理は、党内外のバランスを崩し、党官僚に過度なプレッシャーを与えている。党員の献身性を求める一方で、組織の自発性を殺し、腐敗や無気力さを招く可能性もある。

     習近平の路線は、党のガバナンスの難しさを象徴している。引き締めと緩和の適切なバランスを見つけることは容易ではなく、現在の中国が直面する最大の課題の一つである。しかし、党の内部には、党の統治継続というコンセンサスがあり、経済が崩壊に瀕しない限り、党の体制自体が傾くことは考えにくい。党内での是正力が働くという観点から、共産党の支配は今後も続くと見られている。

     この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

    【私の論評】習近平体制の内なる脆弱性:ソ連崩壊と中国共産党の共通点

    まとめ
    • 習近平の強権的な統制は、党内部の弱点を覆い隠すための手段である可能性が高い。
    • ソビエト連邦も中央集権による統制を試みたが、地方の腐敗や非効率性が崩壊を引き起こした。
    • KGBやプロパガンダなどで体制を維持したが、ソ連の根本的な問題は解決されず、最終的に崩壊した。
    • 習近平の政策はソ連の全体主義を継承しているが、同じ道を辿るリスクがある。
    • 中国の軍事演習は強大に見えるが、内部には多くの問題があり、体制の脆弱さを示唆している。
    元記事には次のような記述が見受けられる。

    「習近平による組織管理と精神教育の強化は、すべてを党が指導することを国政の中心に据えた結果、その実施部隊である党幹部と党員があまりにふがいないというので進めている可能性の方が高い」

    中国共産党の結党100周年を祝う式典

    この発言を深く考察すると、中国共産党の表面的な強さは実は内なる弱さを隠しているに過ぎないことが浮かび上がってくる。党の全てを握り、党幹部や党員に強権的な統制を敷くことは、一見すると党の結束力や支配力の強化に映るかもしれない。しかし、それは真に強固な基盤を築いているわけではなく、むしろ党の内部に潜む問題を覆い隠すための手段であると言えるのではないだろうか。

    続けて、元記事では「1980年代の半ばまでは、ソ連は極めて厳格に管理された党と社会であり、現在の中国など足元にも及ばない」としている。だが、これは実情を表面的に捉えたものであり、実際にはソ連の崩壊に至る数十年の間に問題は徐々に蓄積されていた。その問題は表に出なかっただけで、ソ連の成立当初から内包されていた不協和音であると捉えるべきだ。

    ソビエト連邦は、理論上は中央集権による完全な統制を目指していた。すなわち、国家全体を一つの統一した力で支配し、全ての決定権を中央に集中させることが目標であった。しかし、理想と現実は異なる。現実世界は、ソ連が描いた統制モデルを超えるほどの複雑な問題に満ちており、そのために完全な中央集権体制は最後まで実現されなかった。

    中央集権の弊害として、地方ごとの自治や経済計画の非効率性が生じ、地方官僚たちが腐敗し、時には中央の方針を逸脱して独自の行動を取ることもあった。情報伝達も遅滞し、中央の意図が末端に届くまでには時間がかかり、時には誤解が生じることもあった。また、党内には権力闘争が絶えず、その度に政権内部が揺れ動いていた。

    それでもソ連は、中央集権の欠陥を補うためにさまざまな政策を打ち出した。その中でも、秘密警察であるKGBの強化は、中央の統制を維持するための重要な柱であった。KGBは反体制的な動きを迅速に察知し、地方の反抗を力で抑え込んだ。また、プロパガンダや教育を通じて共産主義のイデオロギーを国民に浸透させ、国家全体の統一意識を維持しようとした。さらに、経済面では重化学工業や軍事産業に巨額の投資を行い、国家の優先事項としてこれらを発展させることで、国全体の経済成長を目指した。

    ソ連はまた、党の幹部を養成するための教育制度を整え、忠実な党員を育成し、彼らに中央からの政策を実行させる体制を構築した。このエリート層は「ノーメンクラトゥーラ」と呼ばれ、ソ連社会において特権階級としての地位を築いた。しかし、こうした取り組みは短期的には一定の効果をもたらすことがあっても、中央集権体制が抱える根本的な問題を解決するには至らなかった。その結果、ソ連の崩壊は、中央集権体制が理想と現実の間で揺れ動き、最終的にその矛盾に耐え切れなくなったことを象徴する出来事となった。

    ソ連崩壊を伝える新聞紙面

    このような歴史的背景を鑑みれば、習近平の政策もまた、ソ連と同様に、中央集権の名のもとに体制を強化しようとする試みだと言える。しかし、ソ連の全体主義を継承するだけでは、その運命もまた同じ道を辿るだろう。現状を維持することに固執すれば、中国共産党は自らの崩壊に向かうしかない。政治体制を自ら変革し、改革の道を歩むか、それとも内部分裂と崩壊の道を進むか、習近平にはその選択が迫られている。

    その兆候は既に見られる。たとえば、最近の中国による台湾周辺での大規模な軍事演習である。この演習は台湾の海上封鎖を狙ったものであるとされているが、その実態は2022年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台時に行われたものとほぼ同じである。規模こそ拡大しているものの、演習の基本的な枠組みは変わっていない。このような演習が、台湾や周辺諸国に対する脅威を高めることは間違いないが、同時に日米の抑止力を強化させる結果にもなっている。

    さらに、中国軍の内部でも不穏な動きがある。戦略ロケット部隊では、異例のトップ交代が発生しており、これは汚職や機密漏洩が背景にあるとされる。また、戦闘準備の不備が指摘されており、訓練や実戦能力に疑問を投げかける事態が相次いでいる。潜水艦部隊においても、新型潜水艦の導入が進んでいるが、その運用能力や効果については未知数である。最近の報道では、新型潜水艦が沈没したとのニュースも流れており、装備の統合や訓練不足が実戦での即応性に影響を与える可能性がある。


    こうした状況を踏まえれば、習近平の中国は外から見れば強大な軍事力を誇示しているかのように映るが、内部には多くの問題が積み重なっていることがわかる。米国防総省のロイド・オースティン国防長官も、中国軍が台湾を包囲した5月の軍事演習に関して、その実行の難しさを指摘している。米軍は中国軍の演習を詳細に観察し、その運用方法や動向を分析している。その結果、米軍は中国の軍事力に対して適切な対策を講じることができているという。

    このような軍事演習は、ソビエト連邦が崩壊前に行っていた大規模な軍事演習を思い起こさせる。冷戦期、ソ連は「ザーパッド演習」や「ビースト演習」などを定期的に行い、崩壊末期まで実施され、西側諸国に対する抑止力として用いていた。しかし、これらの演習は強さを誇示するものではなく、実はその内部に抱える弱さを隠すための手段であった。それはまさに現在の中国にも当てはまると言えるだろう。軍事演習の規模が大きければ大きいほど、むしろその体制の脆弱さが浮き彫りになるのだ。

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    2024年10月22日火曜日

    “トランプ氏圧勝“の可能性「内気なトランプ支持者」を掘り起こすと激戦州で優位に…ハリス陣営はパニック!?―【私の論評】誰に投票するのか、自らの目で、耳で、そして頭で考え抜け

    “トランプ氏圧勝“の可能性「内気なトランプ支持者」を掘り起こすと激戦州で優位に…ハリス陣営はパニック!?

    まとめ
    • トランプ前大統領の優位性: スイング・ステート7州での僅差リードと「内気なトランプ支持者」の存在から、トランプ氏が選挙人数で圧勝する可能性が高い。
    • 世論調査の限界: 過去の世論調査の誤差や候補者の変更による影響を考慮しなければならない。
    • メディアと専門家の見解: 最近の報道や専門家の意見では、トランプ氏の優位性が強調されている。
    • ハリス副大統領の政策: 中東情勢ではイスラエルの安全保障やガザ地区への人道支援重視、ハリス氏は即時停戦を訴えている。
    • 結論の不確実性: 分析は世論調査の正確性に依存し、完全な確実性はないが、現時点ではトランプ氏の圧勝が予想される。


    米大統領選挙の情勢では、トランプ前大統領がスイング・ステート7州で僅差ながらカマラ・ハリス副大統領をリードしていることが分かった。しかし、過去の選挙ではトランプ支持者が実際よりも少なく見られる傾向があり、それを「内気なトランプ支持者」と称する現象が確認されている。この現象を考慮すると、トランプ氏は6州で確実に優位に立ち、ジョージア州でもほぼ優位と言える。これにより、トランプ氏が選挙人数で圧勝する可能性が高い。

    世論調査の背景に目を向けると、2016年と2020年の選挙では、トランプ支持者の数が実際よりも低く見積もられることが多かった。これは、トランプ氏の政策には賛同しながらも、その人柄や周囲との関係を考慮して本音を明かさない有権者が存在するからだ。この「内気なトランプ支持者」の存在は、スイング・ステートでの結果に特に影響を与えいる。

    ただし、この分析には限界もある。まず、世論調査会社がこの「内気なトランプ支持者」を完全に補正できるかは疑問だ。また、2020年と2024年の民主党候補者が異なるため、この違いがデータにどれほどの影響を与えるかも考慮する必要がある。

    メディアの報道や専門家の意見もまた、トランプ氏の優位性を強調している。最近の報道では、ハリス氏の勝利の可能性が低下していることが指摘され、選挙ギャンブル市場でもトランプ氏の支持が高まっていることが報告されている。

    結論として、現時点での情報と分析から見ると、トランプ氏がスイング・ステートでの優位性を保ち続けると、大統領選での圧勝が予想される。しかし、この予測は世論調査の前提条件やその正確性に依存しており、完全な確実性はないことを認識する必要がある。それでも、トランプ氏の圧勝可能性は十分に高いと見て良いだろう。

    この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

    【私の論評】誰に投票するのか、自らの目で、耳で、そして頭で考え抜け

    まとめ
    • トランプ前大統領が選挙ギャンブル市場で有利とされる一方、市場の予測は不確実であり、選挙結果は投開票日までの動向に左右される。
    • 米国ではメディアの信頼が低下しており、日本でも2021年の衆議院選挙でメディアの情勢調査が外れたことから、虚偽回答の増加や調査の信頼性低下が問題となっている。
    • メディアと有権者の信頼関係が揺らぎ、民主主義における情報の重要性が問われているが、最終的には個々の国民が自ら考え抜く必要がある。

    米国選挙ギャンブル市場の現状では、トランプ前大統領が勝利する可能性が高いとされている。市場の予測によれば、トランプ氏の勝利予想は57.9%、一方でハリス氏は41.0%に留まっている。

    これはベッターたちがトランプ氏に賭けていることを示しており、市場分析でも、彼の勝利が株価の上昇や特定の投資機会を生むと期待されている。しかし、ギャンブル市場の予測には常に不確実性が伴い、投開票日までの情勢が勝敗を左右することは言うまでもない。

    10月はじめの賭けサイトpolymarketの予想

    米国では、近年多くの国民がマスコミの選挙報道を信用しなくなっている傾向が顕著だ。特に共和党支持者を中心に、メディアが政治的に偏っていると疑う声が強まり、フェイクニュースや不正確な報道が増加しているため、メディアの信頼性は大きく揺らいでいる。この背景には、トランプ氏の在任中やその後のメディア報道が、公正さを欠いていたとの認識が根強く残っていることがある。

    日本でも、この傾向は無視できない状況になっている。例えば、2021年の衆議院選挙では、各メディアが発表した情勢調査や予測が大きく外れた。特に出口調査の結果は実際の投票結果と著しく乖離し、多くのメディアが信頼を損ねた。

    ここで注目すべきは、調査に対する有権者の意図的な虚偽回答の増加だ。保守系の有権者が左派系メディアに対して、あるいはリベラル系の有権者が保守系メディアに対して、わざと異なる回答をするケースが頻発しているのだろう。さらに、特定の政党支持者が自らの陣営に有利な結果を誘導するために虚偽の回答を行うことも考えられる。

    出口調査

    これらの現象は、メディアに対する根深い不信感を象徴しており、出口調査の精度を著しく損なっている。「マスコミです」と名乗った瞬間に、信頼性が揺らぐという皮肉な状況が現実となっているのだ。

    この問題は単に出口調査の信頼性にとどまらない。メディアと有権者の関係性、選挙報道のあり方、そして民主主義のプロセス全体に関わる重大な課題を浮き彫りにしている。国民が正確な情報を得られなければ、民主主義はその土台から崩れ去る。かつて「第四の権力」とまで称されたメディアが、今や自らの手でその権威を失墜させ、信頼のない存在へと転落している。

    果たして、次の選挙の時、我々は誰の言葉を信じるべきなのか。誰も答えを持っていないが、選択肢があるとすれば、それはただ一つ。「自らの目で、耳で、そして頭で考え抜け」。これこそが、今この時代を生き抜くための唯一の方法なのである。

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    2024年10月21日月曜日

    葛城奈海氏、国連女子差別撤廃委員会でスピーチ「日本の皇位継承は尊重されるべき」―【私の論評】守るべき皇統の尊厳

    葛城奈海氏、国連女子差別撤廃委員会でスピーチ「日本の皇位継承は尊重されるべき」

    まとめ
    • 葛城奈海氏のスピーチ: 10月14日から17日までスイス・ジュネーブで開催された国連女子差別撤廃委員会において、葛城氏が日本の皇位継承が男系男子によって引き継がれてきたことの重要性を訴え、皇位継承への批判は内政干渉であると主張。
    • 日本政府の立場: 10月17日に日本政府も国連で答弁し、男系男子による皇位継承が日本の伝統文化に根ざしたものであることを強調し、国際的な批判に対して反論。
    • 帰国報告会の開催: 「皇統を守る国民連合の会」は、スピーチや国連での活動についての帰国報告会を12月1日に開催予定であり、日本の伝統と文化の重要性を広めることを目的とする。
    皇統を守る国民連合の会のサイトに掲載されていたポスター。クリックすると拡大します。

    「皇統を守る国民連合の会」の会長である葛城奈海氏が、10月14日から17日にかけてスイス・ジュネーブで開催された国連女子差別撤廃委員会(CEDAW)に参加し、日本の皇位継承についてスピーチを行いました。葛城氏は、国際社会に向けて日本の皇統が男系男子によって引き継がれてきた歴史と伝統の重要性を訴えました。

    葛城氏のスピーチは、「ローマ法王やイスラム教の指導者、チベット仏教のダライ・ラマが男性であることが問題視されないのに、なぜ日本の皇位継承だけが女性差別とされるのか」という問いかけから始まりました。彼女は、日本の皇位継承の伝統が「内政干渉」に該当するような批判を受けるべきではないと主張しました。

    日本政府も答弁、内政干渉に対する反論

    10月17日には、日本政府もこの問題について国連で答弁を行い、皇位継承に関する国際的な批判に対して対応しました。政府は、男系男子による皇位継承が日本の伝統と文化に根ざしたものであることを強調し、内政問題に対する干渉を避けるべきだとする姿勢を示しました。

    「皇統を守る国民連合の会」の決意

    葛城奈海氏やその仲間である佐波優子氏、saya氏は、「皇統を守る国民連合の会」の代表メンバーとして、日本の伝統文化を守る覚悟を示すため、着物姿で国連の場に登場しました。彼女たちは、これまでの日本の皇位継承が続いてきた背景を説明し、その重要性を世界に発信しました。

    このような活動は、日本の伝統的な価値観を国際社会で強調し、グローバリズムによる影響から国のアイデンティティを守るための取り組みとして位置付けられています。

    帰国報告会の開催予定

    「皇統を守る国民連合の会」は、このスピーチと国連での活動についての帰国報告会を12月1日に開催する予定です。多くの人々に、日本の伝統と文化の重要性を理解してもらうことを目的とし、今後の活動についても広く共有する機会にする予定です。

    この記事は、「皇統を守る国民連合の会」のサイトに掲載された記事を、会員以外の方々にも、理解しやすいように、新聞記事風にリライトしたものです。

    【私の論評】守るべき皇統の尊厳

    まとめ
    • 葛城奈海氏が国連女子差別撤廃委員会で、日本の皇位継承が男系男子によって受け継がれてきた重要性を強調し、国際的な批判に反論。
    •  皇室は日本の象徴であり、国民のアイデンティティや文化的根源を体現しているため、皇統の価値を国際社会で主張することが不可欠。
    • ローマ法王やダライ・ラマが男性であることは問題視されない一方、日本の皇位継承だけが女性差別として批判されることは不公平であり、多様な文化を理解し尊重する姿勢が重要。
    • 日本政府は、国際社会において日本の伝統文化を尊重する姿勢を示し、外圧には毅然とした態度で臨むべきである。
    • 葛城氏やその仲間の活動は、日本の伝統を維持し次世代に引き継ぐために重要であり、皇統は未来の日本人にとっても大切な存在である。

    上の事実、日本のメディアは全く報道しませんが、これは保守派にとってはかなり重要なことであると判断したので、「皇統を守る国民連合の会」のサイトに掲載されたものをリライトした。

    国連女子差別撤廃委員会でスピーチを行った葛城奈海氏

    葛城奈海氏が国連女子差別撤廃委員会でスピーチを行ったことは、非常に重要な意義を持つ。彼女は、日本の皇統が男系男子によって受け継がれてきた歴史的意義を強調し、国際社会における批判に対して反論した。このことは、日本の伝統と文化を守るための明確な姿勢を示すものであり、内政に対する不当な干渉を拒むべきであるという信念を反映している。

    現代において、皇統の重要性はますます高まっている。皇室は日本の象徴であり、国民のアイデンティティや文化的な根源を体現する存在である。国際的な舞台で、皇統の価値を主張することは、日本の伝統を守るために不可欠である。

    皇位継承が男系男子に限定される理由は、長い歴史の中で築かれてきた日本の文化的背景に根ざしている。これを軽視することは、我々の文化や歴史を軽視することに他ならない。

    神武天皇画

    また、国際社会においては、多様な文化や伝統が存在し、それぞれが尊重されるべきである。ローマ法王やイスラム教の指導者、ダライ・ラマが男性であることが問題視されないのに、日本の皇位継承だけが女性差別とされるのは、実に不公平なことである。文化の多様性を理解し、尊重する姿勢こそが、国際的な理解を深める鍵となる。

    このような背景から、日本政府は、国際社会に対して一貫して日本の伝統文化を尊重する姿勢を示すべきである。無用な外圧に対しては毅然とした態度で臨み、我が国のアイデンティティを守るためにあらゆる手段を講じることが重要である。特に、国際的な場での発言は慎重に行い、日本の伝統が持つ価値を正当に評価されるよう努力するべきである。

    さらに、「皇統を守る国民連合の会」の活動は、現代日本において非常に重要な役割を果たす。彼女たちが着物姿で国際の舞台に立つことは、日本の美と精神を体現し、世界にその重要性を訴えるための象徴的な行動である。このような活動は、日本の伝統を維持し、次世代に引き継ぐために必要不可欠なものである。

    連綿と続く日本の皇統

    皇統は、未来を生きる日本人にとっても重要な存在である。我々がこの伝統を尊重し、守り続けることは、将来の日本が誇りを持てる国であるための土台となる。皇統は、単なる制度の維持にとどまらず、日本の精神文化を支える大きな柱である。

    我々は、この伝統を守るために、一丸となって行動し、次の世代に誇れる国を築く必要がある。これは、我々の義務であり、責任である。先人の志を継ぎ、皇統の未来を刻むために、共に立ち上がり、進むべきである。これは決して一時の運動ではなく、日本国国民一人ひとりが心に留めるべき、永遠の課題である。

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    2024年10月20日日曜日

    米極秘情報が流出か イスラエルの対イラン攻撃計画めぐり―【私の論評】イスラエルのイランへの報復攻撃、石油生産施設・核関連施設は避けるか

    米極秘情報が流出か イスラエルの対イラン攻撃計画めぐり

    まとめ
    • イスラエルの対イラン攻撃計画極秘情報の流出が確認され、米当局が深い懸念を示している流出した文書は2件あり、「ファイブ・アイズ」の「最高機密」とされるものだ。
    • 文書にはイスラエルの攻撃準備状況、武器弾薬の移動、空対地ミサイル演習の詳細が記されている。
    • イスラエルの核兵器使用計画の兆候はないとされているが、これは暗に同国の核保有を示唆すしている。
    • 流出の経緯は不明だが、ハッカーの仕業か意図的な流出の可能性がある。
    • この事態はイスラエルの強い反発を招く可能性があり、米当局は捜査を進めているが、FBIはコメントを控えている。

    イスラエルの対イラン攻撃計画に関する米政府の極秘情報が流出し、当局が捜査を進めている

    米政府の極秘情報がインターネット上に流出し、イスラエルの対イラン攻撃計画の詳細が明らかになった。この情報は複数の関係者によって確認され、米当局者は深い懸念を表明している。

    流出した文書は2件あり、「ファイブ・アイズ」の「最高機密」とされるものだ。これらはSNS「テレグラム」上の「中東の観測者」というアカウントに投稿された。文書にはイスラエルの攻撃準備状況、武器弾薬の移動、空対地ミサイル演習の詳細が記されている。

    特筆すべきは、イスラエルがイランに対して核兵器使用を計画している兆候はないとの記述だ。これはイスラエルの核保有を暗に示唆しているが、同国はこれまで公式に核保有を認めていない。

    この情報流出に対し、米当局は捜査を進めているが、FBIはコメントを控えている。専門家は、この事態がイスラエルの強い反発を招く可能性を指摘している。流出の経緯は不明だが、ハッカーの仕業か意図的な流出の可能性が考えられる。この事件は中東情勢と国際関係に重大な影響を与える可能性がある深刻な問題として注目されている。

    この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

    【私の論評】イスラエルのイランへの報復攻撃、石油生産・核関連施設は避けるか

    まとめ
    • イスラエルは、イランの「誠実な約束2」作戦による弾道ミサイル攻撃に対して、大規模な報復攻撃を数日内に実施する可能性が高い。
    • 攻撃対象は、イランの戦略的施設(石油生産施設や核関連施設など)が考えられるが、これには米国が戦火の拡大を招く可能性があり難色を示している。
    • そのためイスラエルの反撃は、軍事基地や革命防衛隊の拠点を狙い、最新鋭の兵器を使用して民間人の犠牲がすくなく、イランの攻撃能力を大きく削ぐような攻撃目標を選ぶだろう。
    • イスラエルは公式には核兵器の保有を認めても否定もしていないが、これを攻撃に使うこととはないだろう。
    • イスラエルは、国際社会との関係を損なわないことと、イランとの総力戦にならないように、バランスを取るため時制的な攻撃をするとみられるが、引き続き注視すべきである。

    イスラエル国防軍カラカル大隊(Caracal Battalion)、所属兵士の約7割が女性となっている。

    イスラエルがイランに対する大規模な直接報復攻撃を実行するのは、もはや時間の問題である。緊迫した状況を考慮すると、この攻撃は数日中に発生する可能性が非常に高い。イランが「誠実な約束2」と名付けた軍事作戦で、2024年10月1日に約180発の弾道ミサイルをイスラエル本土に撃ち込んだ。攻撃の対象はテルアビブや南部のネバティム基地、そしてディモナの核施設であり、これに対してイスラエルが黙っているわけがない。

    イランの攻撃は、イスラエルにとってまさに挑戦である。この事態に対する報復が必要なのは明らかだ。では、イスラエルの反撃はどのような形を取るのか?攻撃の標的として考えられるのは、イランの戦略的に重要な施設である。特に、イランの経済の命脈を握る石油生産施設や、エスファハーンの核関連施設が注目される。しかし、問題はここからだ。イスラエルにとって、これらの施設を攻撃することがどれほど効果的であっても、米国が強く反対していることは無視できない。

    米国がこれほどまでに反対する理由は明白だ。もしイスラエルがイランの石油施設を攻撃すれば、湾岸地域全体の不安定化と原油価格の急騰が避けられない。これによって世界経済にも波及効果が及ぶことは明らかだ。さらに、イランが報復としてアラブ産油国の施設を攻撃する可能性も考慮しなければならない。核関連施設の攻撃もイランの大反発を招く可能性が高く、中東全体が戦火に包まれることを避けたいというのが、米国の本音であろう。

    バイデン米大統領

    では、イスラエルの攻撃対象は具体的にどこになるのか?ここで焦点が絞られるのが、イランの軍事施設だ。軍事基地、ミサイル発射施設、革命防衛隊の拠点、通信・指揮系統の施設などが主要なターゲットになるだろう。これらの施設を破壊することで、イランの攻撃能力を削ぎ、将来の脅威を根本から断つ狙いがある。特に革命防衛隊の司令官や軍の高官を標的とすることで、イランの指揮系統に混乱をもたらすことを目指すだろう。

    イスラエルは、これらの攻撃を実行するために、ミサイルはもとより最新鋭のF-35戦闘機、精密誘導兵器、そしてドローン技術を駆使することになるだろう。複数の標的を同時に叩き、イランの防空網やレーダー施設を一気に無力化することが目的だ。イスラエルの軍事技術と戦術のレベルから考えて、これが成功する可能性は高い。

    ただし、ここで見逃せないのが核の問題である。イスラエルは公式には核兵器の保有を認めても否定もしていないが、専門家の見解では約80発の核弾頭を保有していると推定されている。しかし、現時点でイスラエルが核兵器を使用する段階にあるとは考えにくい。なぜなら、核兵器の使用は国際社会からの激しい非難を引き起こし、自国にも深刻な地理的リスクをもたらす可能性があるからだ。核はあくまで最後の手段であり、主に抑止力として存在しているに過ぎない。

    また、米国をはじめとする同盟国の圧力も無視できない要素である。イスラエルが核のカードを切れば、国際的な非難だけでなく、同盟関係にも亀裂が生じる可能性がある。加えて、現状ではイスラエルの通常兵器が非常に強力であるため、核兵器に頼らずともイランに対する有効な軍事行動が可能だ。

    結局のところ、イスラエルのネタニヤフ首相が選ぶ道は、軍事施設や革命防衛隊の関連施設を徹底的に叩くことであろう。この選択は、国際社会の反応を見ながらも、イランの軍事力を確実に削ぐための最善の策であると言える。

    ネタニアフ首相

    しかし、攻撃の影響はイスラエルだけにとどまらない。攻撃によって引き起こされるイランの報復行為は、さらに地域の緊張を激化させる可能性が高い。そのため、イスラエルは、報復の規模と内容を慎重に考慮し、国際社会との関係を損なわないようなバランスを取る必要がある。結果的に、イスラエルは攻撃の計画を立てつつも、自己抑制を保つことが求められるだろう。

    このように、イスラエルの報復攻撃がもたらす影響は非常に大きい。中東地域の安定と国際秩序に直結する問題であるため、国際社会は緊張感を持ってこの動きを見守るべきである。報復攻撃がどのように展開され、またそれに対するイランの反応がどのようなものになるのか、事態の推移は非常に重要な意味を持つ。

    最後に、情報の流出に関しては、未だその意図や背景は明らかになっていないため、具体的な評価は難しい。しかし、イスラエルは「核の曖昧性」政策を維持し、核兵器を保有する一方で、その使用は国際情勢における最終手段であるという立場を崩さないだろう。この現状が、イスラエルのイランに対する報復攻撃の計画にどう影響するのか、引き続き注目が必要であるが、それほど大きいとは思えない。

    数日中に示された軍事目標に向けた報復攻撃が行われるのは間違いない。それがどのように展開され、国際社会がどのように反応するのか、我々は注視していく必要がある。

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    2024年10月19日土曜日

    いきなり危険水域〝28%〟石破内閣支持率 時事通信調査 森喜朗内閣下回る「何かの間違いかと…発足直後で政権末期レベル」―【私の論評】石破内閣の崩壊と岸田総裁再登場の可能性

    いきなり危険水域〝28%〟石破内閣支持率 時事通信調査 森喜朗内閣下回る「何かの間違いかと…発足直後で政権末期レベル」

    まとめ
    • 石破茂内閣の支持率が28%で、「危険水域」に入る低さを示し、永田町に衝撃を与えている。
    • 衆議院選挙の中盤で、自民党が単独過半数を割る可能性が指摘されている。
    • 石破首相の政策や人事への批判、特に安倍元首相への厳しい態度が支持率低下に影響している。
    • 石破首相は大型補正予算編成や物価対策を強調する一方、党内の意見収拾に苦慮している。
    • ジャーナリストの分析では、早期解散の決定が失望を招き、衆院選の結果次第で更なる厳しい局面に直面する可能性がある。


     時事通信の調査で、石破茂内閣の支持率が28%と、発足直後から「危険水域」に突入したことが永田町に衝撃を与えている。衆議院選挙が中盤を迎える中、報道各社の情勢調査では、自民党が単独過半数を割る可能性が指摘されている。石破首相の「変節」や安倍晋三元首相を「国賊」と罵倒した人物の入閣などが影響していると見られる。

     自民党ベテラン議員は、調査結果に驚き、「旧安倍派を切り捨てた反動」だと述べ、党内外の不満が広がったことを示唆した。調査は全国の18歳以上の2000人を対象に実施され、内閣発足直後の支持率としては過去最低を記録している。

     同様に、日経新聞・テレビ東京の緊急調査でも内閣支持率が低く、石破首相の早期解散決定が批判されている。石破首相は長野市で物価対策を強調する演説を行ったが、党内の意見を収拾しながらの難しい舵取りを求められている。

     ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、石破首相の早期解散が失望を招き、党内基盤の弱さが表面化したと指摘。衆院選の結果次第では、石破首相はさらに厳しい局面に直面する可能性があると分析している。

     この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

    【私の論評】石破内閣の崩壊と岸田総裁再登場の可能性

    まとめ
    • 現状の低支持率により、石破内閣は来年の参院選まで持たない可能性が高く、解散も党内外から強い反発を呼んでいる。
    • 石破の最大の問題は党内基盤の弱さであり、政策決定や人事で統制が取れず、支持率が低下している。
    • 国民の政治への信頼が失われ、特に石破内閣に対する不信感が強まっている。閣僚の資金管理問題やスキャンダルも信頼性を損なわせている。
    • 次の総裁候補には高市早苗が浮上するが、財務省は彼女を阻止すべく岸田を支持するだろう。
    • 石破内閣の崩壊はほぼ確実で、岸田が再び総裁に選ばれる可能性が高いが、高市氏を含む積極財政を唱える政治家の台頭がこれからも有り続けるだろう。

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    現状の支持率の低さを考えると、石破茂内閣が来年の参議院選挙まで持たない可能性が高い。発足直後から支持率が低迷していることは、政権の安定性への信頼を揺るがし、早々に石破首相が解散を決断したのも、無理もない。しかし、この解散自体が党内外からの強烈な反発を呼び、石破の政策やその政治姿勢に対する失望感を一層深める結果となっている。

    石破の最大の問題は、党内基盤の脆弱さにある。新たな政策決定や人事においても、党内の意見をまとめることができず、統制が取れない。そのため、内閣の安定性がどんどん揺らぎ、支持率の低下に歯止めがかからない。特に、政策のブレや自民党の路線からの逸脱が、党内外からの批判を呼び寄せているのは致命的だ。

    さらに、国民全体に広がる政治不信も石破内閣の存続を脅かす要因だ。今や政治全体への信頼が地に落ちている中、どの政権が立とうと厳しい審判を免れないが、石破内閣に対する不信感は特に強い。発足直後から政権の危うさが見え隠れしているのは、その象徴だろう。

    そこへきて、最近のSNS投稿や報道で明らかになったのが、石破内閣に絡む「政治とカネ」の問題だ。閣僚の資金管理の不手際や親族のスキャンダルが次々と露呈し、信頼性がどんどん失われている。これでは、内閣の信用失墜は避けられない。これらの問題が続発すれば、来年の参議院選挙まで持たない可能性がますます強まる。

    これらの要素を踏まえると、石破内閣が参院選まで生き残ることは厳しい。支持率の低さ、党内外からの批判、政策の迷走、さらにはスキャンダル問題が追い打ちをかけ、政権はもはや崩壊寸前といえるだろう。

    さて、問題はポスト石破だ。次の総裁候補として真っ先に名前が上がるのは高市早苗だが、彼女がスムーズにトップに立てるかというと、そう単純ではない。ここで忘れてはならないのが、日本政治に深く絡む財務省の存在だ。総裁選にすら強い影響を与えたと見て間違いない。


    高市早苗は積極財政と金融緩和を訴え続けた政治家だ。当初は泡沫候補扱いだったが、総裁選が進むにつれて勢いを増し、有力候補として浮上した。しかし、財務省にとってこれは大いに不都合だった。長年、安倍政権や菅政権が行ってきた経済政策に不満を抱いていた財務省は、高市が総裁になることを阻止すべく、岸田に「高市だけは絶対に総理にさせるな」と強く働きかけた可能性が高い。

    その結果、岸田は石破を擁立し、高市を封じ込める作戦に出たと考えられる。石破と岸田は、高市を阻止するという一点で手を結び、安倍派の影響を排除するために暗躍したと言っても過言ではない。この動きが財務省の影響下にあったことは、容易に想像がつく。

    さらに、財務省が次に期待を寄せているのが「コバホーク」、つまり小林鷹之の存在だ。彼は財務省にとって、新たな経済政策を推し進める上で都合の良い駒としての期待が高い。小林が総裁候補として浮上すれば、財務省の望む増税路線をさらに確実に進める可能性もある。小林鷹之が持つ柔軟な政治姿勢と、財務省出身であることがその理由だ。しかし、未だ経験が少なく、知名度も低いという難点もある。さらに、小林氏が財務省と同じく緊縮財政を志向するかどうかは不透明である。

    麻生太郎の存在も無視できない。高齢にもかかわらず、彼の政治的影響力は未だ健在であり、党内での存在感も依然として強い。しかし、自らが再び総裁を目指すことは考えにくく、むしろキングメーカーとして、影から総裁選に影響を与える立場を続けるだろう。

    財務省との長い結びつきから、麻生は財務省寄りの政治家を支援し、高市のような積極財政派を徹底的に封じ込める動きをとる可能性はある。ただ、現状では総裁になり得る人物の持ち駒が不足している。河野太郎は、麻生派だが、今回の総裁では沈んてしまい、今後復活する見込みは低い。ただ、今回の総裁選では、結局岸田旧派閥が麻生派に勝った形となっているため、麻生氏が今後どのように動くかは見えないところがある。

    菅義偉氏は今回の総裁選では、小泉進次郎氏を強く推したが、小泉は当初は優勢だったものの、その後勢いを失い、結局総裁選の決勝選には残ることができなかった。


    他の総裁選候補者は、すべて泡沫といってもよい状況だ。麻生・菅は強力なキングメーカーをめざしているようだか、もう総裁になりえる駒は両方とも不足しているといって良い状況だ。

    こうした状況で、ポスト石破として再び浮上する可能性が最も高いのは岸田だ。財務省にとっても、石破に続いて増税路線を踏襲する岸田ならば、彼を後押しするのは理にかなっている。

    来年の参院選前に石破内閣が崩壊する可能性は極めて高い。しかし、その後の総裁選でも、最終的に高市対岸田の戦いになり、再び岸田が総裁に選ばれる展開もあり得るだろう。我々保守派としては、まだまだ予断を許さない状況が続きそうだ。

    しかし、唯一の希望は、たとえ石破内閣が倒れても、岸田が総裁に返り咲いたとしても、高市のような強力な政治家が完全に排除されることはないという点だ。財務省がどれだけ画策しようと、高市氏を含め積極財政を唱える者たちが再び台頭してくる可能性は残っている。

    結局、岸田や彼に近い政治家が総裁に就いたとしても、その基盤は脆弱で、強固な支配体制を築くことは難しいだろう。財務省と対峙しながらも、安倍氏のような経済政策をとることが結果として政権を安定させ憲政史上最長の政権を築いたという現実は無視できない。

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    2024年10月18日金曜日

    空母にそっくりで大騒ぎに発展した、自衛隊所有の「ざんねんな乗り物」の名前…なにかと風当りも強かった―【私の論評】おおすみ型輸送艦の実力と日本の防衛戦略の未来

    空母にそっくりで大騒ぎに発展した、自衛隊所有の「ざんねんな乗り物」の名前…なにかと風当りも強かった

    まとめ
    • 「おおすみ」型輸送艦は空母に似た外観から誤解され、正当な評価を得られず「残念な乗り物」として扱われることがあるが、実際には固定翼機の運用はできない設計である。
    • その広い甲板とヘリコプター運用能力により、物資の輸送や揚陸作戦で優れた性能を発揮できるが、航空戦には不向きである。
    • 「おおすみ」型の本来の機能や活躍が過小評価されているため、正しい理解と評価を促すPRが必要である。

    おおすみ型輸送艦と、エアクッション型揚陸艇(LCAC)(手前)

    「おおすみ」型輸送艦は、その登場時に海上自衛隊が「ついに空母を保有したのか」と多くの人々に誤解され、大きな話題となった艦船だ。外見上の特徴として、艦首から艦尾までがフラットな全通式の甲板と、アイランド型と呼ばれる右端に配置された艦橋構造物が、第二次世界大戦中の空母に似ていたために、このような誤解を招く結果となった。しかし実際のところ、「おおすみ」型の甲板はヘリコプターの発着に対応しているだけで、戦闘機やその他の固定翼機を運用する設計にはなっていない。

    このため、固定翼機を運用する空母とみなすことは無理があるが、「おおすみ」型の広い甲板は物資の輸送やヘリコプターの発着といった任務において優れた利便性を提供している。それにもかかわらず、そのシルエットや外観が原因で誤解され、正当な評価を受けることなく批判にさらされることが多く、その期待に十分に応えられなかった「残念な乗り物」として扱われている面がある。

    拙著書籍『ざんねんなのりもの事典』では、このように優れた性能や可能性を持ちながらも、時代のニーズや世間の期待とズレてしまった乗り物を多く紹介している。「おおすみ」型もその一例として挙げられており、登場時には高い期待を寄せられたものの、その後の誤解や手のひら返しにより、正当な評価がなされていない。実際に軍艦の知識が少しでもある人であれば、「おおすみ」型で航空戦を展開することが無謀であることは明らかだろう。

    「おおすみ」型は本来の性能と役割をもっとPRされて評価されるべきだとされ、無理解な批判を受け流し、真に評価されるための専守防衛の姿勢を持つべきだ。

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    【私の論評】おおすみ型輸送艦の実力と日本の防衛戦略の未来

    まとめ
    • 「おおすみ」型輸送艦は設計上、空母としての機能を果たせない。固定翼機の運用に必要な設備がないため、空母として扱うのは無理がある。
    • 一方で、ウェルドックやヘリコプターの発着能力を持ち、強襲揚陸艦としての機能は備えているため、その役割を果たすことが可能である。
    • 日本は「専守防衛」の原則に縛られているため、空母や強襲揚陸艦を建造することに対して国内の抵抗が強い。
    • 近年の安全保障環境の悪化により、「いせ」や「かが」の軽空母化が受け入れられ、防衛力の強化が必要とされる流れがある。
    • 日本は今こそ、防衛戦略を進化させ、より強力な防衛力を持ち、国の独立と安全を守るための決断をするべき時を迎えている。
    巨大輸送船「おおすみ」の甲板

    「おおすみ」型輸送艦を空母とみなすのは、どうしても無理がある。その理由は明白だ。設計そのものが根本的に違うからである。「おおすみ」型は、兵員や車両の輸送および揚陸作戦を主目的とした艦であり、空母のような固定翼機を運用するために作られたわけではない。空母とは、航空機の運用にすべてを捧げた存在だ。広大な飛行甲板、カタパルト、アレスティング・ギア、格納庫、整備施設、燃料供給設備に至るまで、すべてが航空戦力を最大限に発揮するために設計されている。「おおすみ」型には、そうした装備はどこにも見当たらない。

    たしかに、F-35BのようなVTOL(垂直離発着機)を使えば、固定翼機の運用も理論的には可能だろう。しかし、それはあくまで「限定的な可能性」にすぎない。空母とは違い、「おおすみ」型には航空機の格納や整備、燃料補給などを行うための設備が充実しておらず、継続的な航空運用は困難を極める。また、空母には通常、航空機を守るための強力な防空システムと武装が求められるが、「おおすみ」型は軽武装であり、自衛力が限られている。空母としての役割を果たすには、圧倒的な防空能力が不可欠だが、それをこの艦に期待するのは無理な話だ。

    しかし、一方で「おおすみ」型を強襲揚陸艦として見なすことには、一定の説得力がある。この艦にはウェルドックが装備され、エアクッション型揚陸艇(LCAC)の運用が可能である。ウェルドックとは、艦内部に設けられた乾ドックで、注水・排水が自在に行われ、上陸用舟艇の迅速な発進を支援する機能を持つ。これにより、兵員や装備を迅速に上陸させることができ、揚陸作戦の展開速度が飛躍的に向上する。

    「おおすみ」のウェルドック

    「おおすみ」型はさらに、ヘリコプターの発着能力を備えているため、ヘリボーン作戦にも対応可能である。これらの機能を考慮すれば、揚陸艦としての役割を担うには十分な資質を持っていると言える。確かに、強襲揚陸艦と比較した場合に限定的な武装や防空能力の面では劣るが、その揚陸および兵員輸送能力の点では、相応の役割を果たすことができるだろう。

    問題は、日本の国防政策が長らく「専守防衛」の原則に縛られてきたことだ。だからこそ、空母や強襲揚陸艦を自ら建造することに対して、日本国内では強い抵抗がある。しかし、ここで注目すべきは、「いせ」や「かが」のように、ヘリコプター搭載護衛艦を軽空母に改装する動きが比較的スムーズに受け入れられたという事実だ。この背景には、急速に悪化する日本の安全保障環境が存在している。

    中国の軍事的拡張や北朝鮮のミサイル開発が現実の脅威として迫る中、日本はもはや、旧来の防衛戦略だけでは対処できない状況に直面している。「いせ」や「かが」の軽空母化が受け入れられたのは、防衛力の強化が必要不可欠だという認識が広まったからにほかならない。これにより、日本は国際社会からも柔軟な防衛姿勢を求められ、防衛の「現実路線」を進むことに対する理解が得やすくなっている。


    だからこそ、「おおすみ」を強襲揚陸艦へと改修するという選択肢が、将来的に排除されるべきではないという議論が生まれても不思議ではない。だが、そのためには日本国民自身が、専守防衛の枠を超えた新しい防衛戦略を受け入れる覚悟が必要だ。これは単なる軍事装備の問題ではなく、国家の未来と独立を守るための決断である。

    同盟国、特に米国は、日本が強力な防衛力を持つことを期待している。今こそ、日本が「守り手」から「攻めの盾」へと進化する時なのだ。我が国は平和を守るために立ち上がり、自由と安全を確保するために、さらなる防衛力強化を進めるべき時を迎えているのだ。専守防衛に甘んじていては、日本の未来を切り開くことはできない。今こそ、日本が真に独立した国として、自らの手で運命を切り拓く時が来たといえる。

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    2024年10月17日木曜日

    アングル:中国のミサイル戦力抑止、イランによるイスラエル攻撃が教訓に―【私の論評】イスラエルへのミサイル攻撃の教訓:台湾防衛の現実と課題

    アングル:中国のミサイル戦力抑止、イランによるイスラエル攻撃が教訓に

    まとめ
    • イランのイスラエルに対する大量のミサイル攻撃は、米国とその同盟国のミサイル迎撃体制の課題を浮き彫りにし、現状の防衛システムの効力と限界を示唆している。
    • イランの攻撃を通じて、米国は中国のミサイル攻撃がイランのものより迎撃が困難であり、防御に加えて反撃能力の必要性があることが明らかになったといえる。
    • 従来の防御中心の抑止力だけでは不十分であり、懲罰的抑止力を重視する必要がある。
    • 中国のミサイルは高度で、長射程や精密誘導の能力を備えており、インド太平洋地域における米国とその同盟国の防衛体制にとって重大な脅威となっている。
    • 米国はインド太平洋地域で新たなミサイルシステムや兵器を配備しており、中国の対衛星攻撃やサイバー戦といった複合的な攻撃に対する防衛力を強化しようとしている。

    ミサイルを迎撃するイスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」

    イランが今月イスラエルに対して行った大量のミサイル攻撃は、4月の同様の攻撃と合わせて、インド太平洋地域における中国との潜在的紛争に関して、米国とその同盟国のミサイル防衛体制の効果と弱点を示唆している。複数のアナリストによれば、両シナリオには差異があるため得られる教訓は限られるものの、イランがイスラエルに向けて発射した400発近いさまざまなタイプのミサイルは、米中両国にとって重要な情報を提供している。

    10月1日のイランによる攻撃は、近代的な防衛システムに対する弾道ミサイルによる攻撃として、これまでで最も多いサンプルを提供した。シンガポールのS・ラジャラトナム国際学院のコリン・コー氏は、米政府にとっての最大の教訓として、中国によるミサイル攻撃はイランに比べて迎撃が困難であり、大規模攻撃を阻止するには反撃能力が必要になる可能性を指摘している。コー氏は、純粋な防御による抑止力だけでなく、懲罰的抑止も重要になると述べている。

    インド太平洋地域でのミサイル攻撃を伴う紛争の即時発生の懸念は低いが、中国の兵器はイランよりも高度で、機動式弾頭と精密誘導を採用している。米国は中国に対抗するため、インド太平洋地域で新たな兵器開発・配備を進めている。

    米カーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ氏は、イランの大量ミサイル一斉発射とその迎撃に関する情報が充実することで、紛争の可能性が低下する可能性を指摘している。パンダ氏は、ミサイル防衛システムの効果が不明確な場合、大幅なエスカレーションにつながる危険性を警告している。

    イスラエルは多層的な防空・ミサイル防衛を展開しているが、インド太平洋地域における米国とその同盟国の状況は大きく異なる。米国側は「パトリオット」、THAAD、イージスシステムなどを使用している。中国のミサイル、特に東風26と東風21は、インド太平洋地域における米国及びその同盟国のほとんどの目標を攻撃可能で、高い精度を持つ。

    戦略国際研究センターのミサイル防衛プロジェクトでは、中国が最も多く保有する通常型中距離弾道ミサイル「東風(DF)26」の命中精度を半径150メートルと推定している。また東風21は最大射程こそ劣るが、一部の改良型は50メートルの精度を誇る。米国防総省は、中国は東風26を数百発保有している可能性があると推測している。

    対照的に「ファタハ1」などイランが使用するミサイルは、理論上は数十メートル以内と命中精度には優れるが、最大射程ははるかに短い。ケネス・マッケンジー米中央軍司令官は昨年、連邦議会において、イランはすべての種類を合わせると3000発以上の弾道ミサイルを保有していると証言した。

    オーストラリア戦略政策研究所のマルコム・デービス上級アナリストは、中国の能力がイランを上回っていると指摘し、ミサイル攻撃が対衛星攻撃やサイバー戦争と連携して行われる可能性を示唆している。デービス氏は、インド太平洋地域における西側の防衛システムが中国の大規模ミサイル攻撃を撃退するのは、イランの攻撃に対する防衛よりもはるかに困難になると予測している。

    この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

    【私の論評】イスラエルへのミサイル攻撃の教訓:台湾防衛の現実と課題

    まとめ
    • イランのイスラエルへのミサイル攻撃からみて、中国の大規模ミサイル攻撃に対する台湾の防衛は極めて困難であり、完全な防御は現実的ではない。
    • 台湾は多層防衛システムや国産ミサイル開発を進めているが、中国の圧倒的な軍事力に対抗するには不十分である。
    • 台湾の戦略は完璧な防御ではなく、攻撃を遅らせ国際社会の介入を呼び込む時間を稼ぐこと、および中国への攻撃コストを高めることに焦点を当てている。
    • 日米の強固な連携と明確な軍事介入の意思表示、経済制裁の準備が台湾防衛には不可欠である。
    • 現在の日本の政治家は安全保障問題に真剣に取り組んでおらず、北朝鮮、中国、ロシアに囲まれた現実を直視し、国家戦略を議論する必要がある。
    専門家たちの意見をまとめると、現実は厳しい。「中国による大規模なミサイル攻撃は、イランの攻撃を防ぐよりも遥かに難しい。ミサイル防衛システムの効果が不確かならば、迅速なエスカレーションを招く恐れがある。こうした状況下では、ただの防衛だけでなく、懲罰的抑止の概念も必要になってくる」というのが、総じての見解だろう。

    中国軍が訓練で発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)=9月25日

    この難題を、台湾を例にして考えてみよう。台湾が中国の大規模ミサイル攻撃を受けた場合、その迎撃には並々ならぬ困難が伴う。台湾は現在、防衛システムの強化を急ピッチで進めている。だが、それが中国の圧倒的なミサイル攻撃に対抗するためにどれだけ有効なのか、疑問が残る。

    とはいいながら、台湾は短距離から長距離まで多様なミサイルを組み合わせた多層防衛システムを導入しており、「天剣III」や「天弓III」などの国産ミサイルの開発が進展している。これにより、台湾の防衛力は確かに向上している。しかし、このシステムが中国の大規模ミサイル攻撃に完全に対抗できるかというと、それは難しい現実だ。中国は圧倒的な数のミサイルを有しており、台湾の防御を突破することは決して不可能ではない。

    さらに、台湾は中国のミサイル発射をいち早く察知するために、山岳地帯に強力なレーダー基地を配置し、早期警戒システムを整えている。だが、いくら事前に察知したところで、数百発にも及ぶミサイルの飽和攻撃を防ぎきるのは極めて困難である。中国の軍事技術は日々進化し、台湾のシステムの脆弱性を突いてくるだろう。

    結論として、台湾の防衛システムは年々改善されているものの、中国の圧倒的な軍事力に完全に対抗するのは難しい。しかし、これらのシステムは攻撃を遅らせ、国際社会の介入を呼び込む時間を稼ぐための重要な役割を果たす。台湾の防衛戦略は、完璧な防御ではなく、相手にコストを強いることで抑止力を高め、戦局の主導権を握ることに焦点を当てている。

    次に、台湾の懲罰的抑止力に焦点を移そう。台湾は長距離ミサイル「雄風2E」や「雲峰」を開発し、中国本土の主要都市や軍事施設を攻撃する能力を持っている。これらのミサイルは台湾の懲罰的抑止力の柱となり、中国に対して強力な威嚇材料となっている。また、2026年までに「天弓III」を12の発射施設に配備する計画も進行中であり、これにより台湾の防衛能力は一層強化されるだろう。

    こうした防衛強化に加えて、台湾は地理的にも戦略的なアドバンテージを持っている。中央山脈に設置されたレーダー基地は、中国本土の深部まで監視可能であり、敵の動きをいち早く察知できる。こうした情報戦の強化は、台湾が中国の攻撃に対して迅速に対応するための鍵となる要素である。さらに、このブログでは何度か述べきたが、台湾は天然の要塞といっても良い地形であり、これを侵攻するのはいずれの国の軍隊も困難を極める。

    日本でいえば、台湾は能登半島のような急峻な地形であり、さらに能登半島よりも急峻であり、しかも台湾は半島ではなく、島嶼である。能登半島に物資を人力で運ぶ姿をテレビ報道で見た人も大勢いるだろう。中国の軍隊も台湾では、あのような戦いを強いられるのである。

    米国も、大東亜戦争末期に日本領であり、軍事的にも重要であったはずの台湾に侵攻していない。これは、かなりの犠牲が強いられることが、最初から分かりきっているので意図的避けたのであろう。賢い選択だったといえる。このようなことが、台湾の軍事的な立ち位置を高めているともいえる。このあたりが日本では、ほとんど理解されいないようなので、そのような方で興味のあるかたは、是非ともこのブログの他の記事を読んでほしい。下の【関連記事】のところに、URLを貼り付けてあるので、是非御覧ください。

    急峻な台湾の地形 最高峰の玉山(新高山)は富士山より高い

    しかしながら、中国との軍事力の差は依然として大きい。中国の急速な技術革新と圧倒的な戦力の前に、台湾への侵攻自体は難しいものの、台湾の国土が破壊を免れるのは難しい。台湾の戦略は、中国の台湾への攻撃を高コスト化し、国際社会の支持と介入を引き出すことにあるのだ。中国にとって台湾の国土破壊がどれほどのリスクを伴うかを認識させることこそ、真の抑止につながる。

    そしてここで、ウクライナ戦争が我々に突きつけた現実を無視するわけにはいかない。ロシアは未だ戦争目的(それすら曖昧になりつつある)を果たせないまま、日々ウクライナにミサイルを撃ち続け、その国土を破壊し続けている。もし台湾が同じような状況に陥ったらどうなるのか。中国が台湾にミサイルを発射し続ける光景は、決して非現実的なシナリオではない。実際のところ、台湾がウクライナのような状態に追い込まれる可能性も十分にあり得る。さらに、現在のウクライナのように戦争が泥沼にはまり、長期になる可能性もある。

    ロシア軍のミサイルで破壊されたキーウの郊外

    このような事態を避けるためには、日米の強固な連携が不可欠だ。中国に対して、台湾の国土破壊のコストが高すぎることを明確に伝える必要がある。日本と米国は軍事介入の意思を明確にし、台湾周辺の防衛体制を強化しなければならない。特に、日本の南西諸島への自衛隊の配備や、米軍の前方展開の強化が求められる。また、台湾の防衛力を高めるために最新の防衛技術や装備の提供も急務だ。非対称戦力の強化を支援し、台湾の防御を強固なものにする必要がある。

    経済制裁の準備も抜かりなく進めるべきである。中国が台湾を攻撃した場合、即座に発動できる制裁措置を整え、中国にその代償の大きさを思い知らせるべきだ。また、サイバー攻撃や偽情報キャンペーンにも対応できる体制を構築し、情報戦においても中国に優位を渡さないようにするべきだ。

    これらの措置は短期的には地域の緊張を高めるかもしれないが、長期的には台湾海峡の安定とアジア太平洋地域の平和を守るための最善の策である。台湾の中国に対する懲罰的抑止力と、防衛力の強化、そして明確な日米の姿勢が、中国に対して侵攻のコストを高くする最も有効な手段となるだろう。

    現状、日本国内の政治家たちは衆院選を控えても、こうした重大な安全保障問題に真剣に取り組んでいるとは言いがたい。まるで、イランによるイスラエル攻撃などなかったかのようである。北朝鮮、中国、ロシアという三つの全体主義国家に囲まれている現実を直視し、安全保障のあり方を真剣に議論する必要がある。今こそ、政治家たちは「裏金」や「統一教会」問題に目を奪われず、日本の未来を見据えた国家戦略を語るべきだ。日本も台湾も、そして地域全体も、平和を守るためには現実と向き合い、備えを怠らないことが求められるのだ。

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    2024年10月16日水曜日

    ハリス氏の“意味不明発言”をCBSが“差し替え” インタビューに応じるも逆効果に?「まさにフェイクニュース!」トランプ氏猛反発―【私の論評】カマラ・ハリスの言葉の迷宮:ワードサラダとその政治的影響

    ハリス氏の“意味不明発言”をCBSが“差し替え” インタビューに応じるも逆効果に?「まさにフェイクニュース!」トランプ氏猛反発

    まとめ
    • カマラ・ハリス副大統領がCBSテレビのインタビューで意味不明な発言をし、その部分が「60ミニッツ」で異なる内容に差し替えられたことで、トランプ陣営から批判を受けている。
    • ハリス氏は対イスラエル政策に関する質問に答える中で、論理的な繋がりのない抽象的な表現を用い、視聴者から「言葉のサラダ」として非難された。
    • トランプ前大統領はこの差し替えを「フェイクニュース」と呼び、CBSに謝罪を要求した。彼は、編集が選挙資金違反の可能性があると指摘した。
    • ハリス陣営は、好意的なマスコミへの出演を増やす「電撃メディア作戦」を展開しているが、逆に「言葉のサラダ」を露呈してしまった。
    • CBSの編集による影響で、ハリス陣営の信頼性やCBSの報道姿勢が問われる事態となっている。


    カマラ・ハリス米副大統領がCBSテレビのインタビューで発言した内容が、意味不明だと指摘された後、CBSはその部分をより分かりやすい発言に差し替えて放送し、これが選挙干渉だとしてトランプ陣営などから強い批判を受けている。

    インタビューは、CBSの報道番組「フェイス・ザ・ネーション」で初めて放映されました。その際、ハリス副大統領が米国の対イスラエル政策に関する質問に答えた部分が「意味不明」だとされ、多くの視聴者からSNS上で「ことばのサラダ」だと非難された。「ことばのサラダ」とは、文法的には正しいものの意味が支離滅裂で理解しづらい発言を指す。ハリス副大統領は以前から「ことばのサラダ」の使い手として知られており、今回もその特徴が際立っていたことが問題視された。

    その後、このインタビューが別の番組「60ミニッツ」で再放送された際には、問題となった発言部分が大幅に編集されて、より整然とした内容に差し替えられていた。この編集が行われたことで、映像の内容が最初に放送されたものと大きく異なることに視聴者や批評家からの指摘が相次いだ。

    トランプ前大統領も、この件に対して激しく反発し、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「フェイクニュースだ」と強く非難した。彼は、「60ミニッツ」の制作者たちがハリス副大統領の発言を切り貼りして編集し、意味不明な発言を意図的に整えて報道したと主張し、これが選挙干渉にあたる可能性があると批判している。トランプ氏は、CBSがこの編集について説明し、国民に対して謝罪すべきだとも訴えている。

    今回の編集に関して、CBS側からはその理由や意図についての公式な説明は出ておらず、透明性の欠如が批判をさらに強めている。ハリス副大統領は、選挙終盤に向けてメディア露出を強化している時期にあり、このインタビューもその一環だったとみられている。しかし、編集によって彼女の「ことばのサラダ」を排除したことが明らかになり、逆に批判を浴びる結果となってしまった

    ハリス氏の発言が編集されることで、メディアが彼女を意図的に支援しているとの見方が広がり、特に保守系メディアやトランプ支持者からの強い非難を引き起こしている。これに対し、CBSのジャーナリズムに対する信頼性も問われる事態となっており、「フェイクニュース」としての批判がますます強まっている。

    この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

    【私の論評】カマラ・ハリスの言葉の迷宮:ワードサラダとその政治的影響

    まとめ
    • ことばのサラダの定義: 文法的には正しいが意味が支離滅裂な発言を指し、カマラ・ハリス副大統領がその使い手として知られている。
    • 例示された文章: 一見すると政治的テーマに触れているが、論理的繋がりがなく、抽象的で具体性が欠ける内容。
    • 検索エンジンとの関係: ワードサラダはSEO対策として利用されたが、現在はスパムとして認識され、逆に評価を下げるリスクがある。
    • ハリスのレトリック: 彼女の発言は華やかだが中身がスカスカであり、リベラル派の主張を寄せ集めたようなものである。
    • リーダーの役割: リーダーは明快で率直な言葉で人々に訴えるべきであり、カマラ・ハリスのスタイルにはそれが欠けている。
    word salad

    皆さんは上の記事にもでてくる「ことばのサラダ」という言葉を知っているだろうか。 文法的には正しいが、意味がまったく分からない支離滅裂な発言を指す。カマラ・ハリス副大統領がこの「ことばのサラダ」の使い手として知られているのは、もはや驚きではない。今回も彼女の発言が「ことばのサラダ」として際立っていたことが批判の的となっている。

    そもそも「ことばのサラダ」はWeb界隈で使われる用語で、英語では"word salad"という。例えば、「自由の権利が憲法に基づき実行される限り、国家の透明性は無限であり、社会主義的な理想が右傾化する現象は民主主義の相互依存性に依存している。すべての市民が集団的な平等性を維持するためには、インフレと人権の尊重が不可欠であり、グローバル経済における民族主義はエコロジカルな観点からも再分配的な義務を促進するべきである。」(無論これは、「ことばのサラダ」の事例として出したものであり、私の主張ではない)

    この文章は、一見すると政治的なテーマに触れているようでありながら、実際には無関係な概念を混在させ、論理的な繋がりがない点が特徴だ。抽象的で曖昧な表現を多用し、それぞれの言葉の意味が具体的でないため、全体としての主張が見えない。

    こうしたワードサラダは、検索エンジン最適化やコンテンツ量の増加を狙ったものだが、内容の乏しさから実際には何の情報価値も持たない。そのため、現在の検索エンジンではスパムと判断され、評価が下がることが多い。言葉の内容そのものは置いておいて、なにやら石破総理大臣や小池東京都知事の発言にも似たところがあるのではないかと感じてしまう。

    ワードサラダが登場した背景には、検索エンジンを騙すという意図がある。昔の検索エンジンは、リンクの数でサイトの評価を決めていた。これを利用して、サイト運営者たちは自分のサイトにリンクを貼るためだけの専用サイトを量産(下の図)した。そこに必要だったのが「テキストの塊」で、内容の充実度などは二の次であった。ここで活躍したのがワードサラダだ。意味のない文章を大量に生成し、あたかも内容があるかのように見せかけたのだ。


    しかし、検索エンジンも馬鹿ではなかった。アルゴリズムを進化させ、ワードサラダのような無意味な文章をスパムとして弾き出すようになった。現在、ワードサラダを使ってもSEO効果はゼロ。むしろサイトの評価を大きく下げるリスクがある。検索エンジンにスパムと認定されたサイトは、インデックスされず、検索結果からも完全に姿を消す羽目になるのだ。

    カマラ・ハリスの発言も、このワードサラダと似たところがある。彼女のレトリックは華やかで耳障りのいい言葉を並べるが、中身はスカスカである。進歩的なフレーズを次々と口にするが、どれも本質的な政策には触れていない。まるでリベラル派の主張を一つの鍋でぐちゃぐちゃにかき混ぜたような、無味無臭のスープといったところだ。

    小池東京都知事の外来語多用もワードサラダの一環か?

    ハリス副大統領が選挙対策本部から言葉遣いや想定問答集の指導を受けているのは確かだ。しかし、それを自分の言葉として使いこなせず、ただの言葉の羅列になっているのが実情だ。トランプ元大統領が「60ミニッツ」でハリスの発言が意図的に編集されていると主張したのも、こうした背景が透けて見えるからだ。

    リーダーはもっと腹を割って本音を語るべきである。政治的な言い回しや専門用語で煙に巻くのではなく、真っ直ぐで明快な言葉で人々に訴える必要がある。衆院選を間近に控えた日本でも、必要とされているのは、政治的な二枚舌ではなく、正直で率直な対話である。残念ながら、それがカマラ・ハリスのスタイルには見当たらないのである。

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