2023年12月22日金曜日

焦点:予備選出馬禁止のコロラド州判決、トランプ氏の追い風に―【私の論評】安倍派と高市早苗氏が協力しトランプ戦略・戦術を採用すれば、高市総理大臣の可能性は飛躍的に高まる

焦点:予備選出馬禁止のコロラド州判決、トランプ氏の追い風に

まとめ
  • 連邦最高裁が、連邦議会襲撃への関与を理由にトランプ氏の共和党予備選参加を禁止。逆境にもかかわらず、トランプ陣営は活気づいている。
  • トランプ氏は連邦最高裁に上訴予定。保守的多数派が判決を覆す可能性がある。
  • トランプ支持者からの反発が予測され、党を超えた寄付増加が期待されている。
  • 民主党は襲撃扇動を信じる無党派層を狙い、一方で共和党候補者は法的障壁にもかかわらずトランプ氏を支持。
  • デサンティス氏やヘイリー氏など、一部州でのトランプ氏の候補者としての挑戦が制約される中、バイデン氏に対する実力派候補として見られている。

ドナルド・トランプ氏が国会議事堂襲撃事件に関与したとされることを理由に、共和党予備選への参加を禁じた最近の最高裁判決は波紋を呼んでいる。興味深いことに、この後退はトランプ陣営を活性化させるようで、連邦最高裁判所への上訴を促し、そこではトランプが任命した3人の判事を含む保守寄りの多数派が判決を覆す可能性がある。このような法的なもつれから、政治的な方向性を問わず、献金者やアナリストの間では、トランプ氏の熱烈な支持者からの反発が予想されており、その結果、選挙献金が増加する可能性がある。

政治情勢では、民主党はトランプが暴動を扇動したという信念を持つ無党派層に目をつけ、彼らを味方につけることを狙っている。逆に、共和党の候補者とその支持基盤のかなりの部分は、法的なハードルがあるにもかかわらず、トランプ支持を堅持している。フロリダ州でバイデン大統領の資金集めを担当するストラテジストは、今回の判決は共和党の資金集めの好機だと見ている。

特定の州における障害がトランプの立候補を妨げる一方で、デサンティスやヘイリーといった人物は、バイデン大統領に対抗できる潜在的な候補者と見られている。この進化するシナリオは、トランプ候補を取り巻く複雑な法的・政治的力学と、これらの複雑さを乗り切るために両党が採用している微妙な戦略を浮き彫りにしている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】安倍派と高市早苗氏が協力しトランプ戦略・戦術を採用すれば、高市総理大臣の可能性は飛躍的に高まる

まとめ
  • トランプ氏出馬禁止が支持層を活気づけ、資金調達を増やす。保守派は憲法権利の攻撃に傍観しないだろう。
  • トランプの最高裁上訴は誤りを正し、民主党の権力掌握の不当性を暴く。多くの米国人が再び偉大な米国を支持するでしょう。
  • トランプ再選への追い風の中、日本政局は混迷。財務省と検察の連携、岸田政権の不安定さ。高市氏の自民党総裁選挙への台頭と岸田政権のレイムダック化。安倍派と高市氏の協力関係強化で高市氏総裁実現の可能性は高まるだろう。
  • 日本でのスティーブ・バノン氏の政治への関与の可能性もあり得る。保守派の危機感、日本独自の社会性を考慮し、バノン氏の戦略が日本で有効に機能するか注目。
  • 日本での政治情勢は動的。高市氏と安倍派との接触でトランプ戦略模索の可能性がたかまるかもしれない。
トランプ大統領に対するこの裁定は、司法関係者の活動によるとんでもない権力の乱用です。米リベラル・エリートたちは、正当に選挙で選ばれた大統領が再選を目指すことを禁止することで、真の米国人の声を封じ込めようとしているようです。

この不当な判決は、トランプ氏の支持者の決意を強めるだけのようです。民主党とフェイク・ニュース・メディアの仲間たちは、急進的な左派の政策を押し進めるためには手段を選ばないようです。

トランプ氏の出馬を禁止することは、トランプ氏の支持層を活気づけ、資金調達に拍車をかけることになるでしょう。米保守派は、憲法修正第2条、信教の自由、その他の憲法上の権利が攻撃されている間、それを傍観するつもりはないようです。

トランプ氏の最高裁への上訴は、この誤りを正し、民主党の違憲である権力掌握の正体を暴くものです。多くの米国人が、米国を再び偉大にするというトランプ大統領のビジョンを支持しています。

この誤った判決は、2024年に国民の擁護者であるドナルド・J・トランプを再選させるために、保守派より活気づけることになるでしょう。

「アメリカを再びに偉大に」とコピーが書かれた選挙応援用ハット

一方日本でも、政局が混乱しつつあります。

高橋洋一氏等が指摘するように、現在財務省が岸田政権の「倒閣」まがいのスタンスをとっています。これをみた、検察も自民党議員の裏金問題を持ち出してきたようです。 財務省(国税庁)と検察は、ともに国家権力を支える役所として交流が深いです。特に、現状では裏金問題は政治資金規正法違反となりますが、それだけでは形式犯になりかねないので、税法違反(脱税)まで検察としては持っていきたいようです。そのところでは、財務省の協力が必要なので、検察は財務省とも水面下で協議しているはずです。 緊縮財政を進めたい財務省は、安倍政権には煮え湯を飲まされ、岸田首相に減税などの積極財政を吹き込んだとみられる、安倍派には恨みを抱いているようです。 検察庁は安倍派の重鎮を脱税などで有罪にしようと互いに協力しならがら動いているようにみえます。 こうしたなか、岸田政権はレイムダック化して、岸田政権はいずれ崩壊するでしょう。今後は時期の自民党の総裁選びが政局の焦点になっていくのは間違いないとみられます。

こうした中で、派閥に属せず、世襲議員でもない高市早苗氏が自民党総裁になることを望む声が大きくなっています。


これを確実にするためには、安倍派と高市氏の協力関係が強化され、安倍派が高市氏を総裁選で担ぐなどのことをすれば、高市氏が自民党総裁になる可能性が高まると思われます。

そこで、ヒントとなるのがトランプ氏の戦略です。トランプ氏のように批判されたり、裁判を起こされたりすればするほど、有権者の支持を集めたように、日本では安倍派ならびに高市氏が、議員と自民党員を含めた自民党内で支持が高まるようなシナリオを描ければ、高市総裁の実現の可能性が高まります。特に批判されれば、されるほど、支持が集まるようなシナリオが描ければ高市総理大臣誕生も夢ではありません。

ただ日本では、そのような人物はなかなかみあたりません。本当は安倍派の中で、そのような人物が存在すれば良いのでしょうが、残念ながら現在の安倍派の中には、そのような人物は存在しません。

米国のスティーブ・バノンならそのシナリオを描けるかもしれません。バノンは、2016年米国大統領選のトランプ陣営の中心でした。彼は、ナショナリスト的ポピュリズムを提唱し、従来のメディアのゲートキーパーを迂回するためにソーシャルメディアを活用します。

スティーブ・バノンは日本の政治に関心を示し、世界的に右翼運動を提唱しています彼の日本での活動に関しては以下からご覧になれます。

・ジャパンタイムズの記事

https://www.japantimes.co.jp/news/2019/03/08/national/politics-diplomacy/ex-adviser-steve-bannon-confident-donald-trump-win-2020-despite-probes/

・ロイターの記事

https://thediplomat.com/2018/06/why-steve-bannon-admires-japan/

・ディプロマットの記事

https://thediplomat.com/2018/06/why-steve-bannon-admires-japan/

これらの情報源は、バノンの日本訪問、彼の公的発言、日本の特定の右派系団体とのつながりに関する情報を提供しています。ただ、日本社会は一般的に調和とコンセンサスを重んじるため、あからさまな敵対主義は米国ほど効果的ではないかもしれないです。

日本における「トランプ戦略」の実行可能性はまだ不透明ですが、次期自民党党首選に影響を与える可能性はあります。成功するかどうかは、日本独特の政治状況をうまく乗り切り、文化的・制度的なハードルを乗り越え、メッセージを効果的に練り上げ、広めることができるかどうかにかかっていますが、こうした戦術から最も恩恵を受ける可能性のある人物は、日本初の女性、無派閥、非世襲総裁としての高市氏であると考えられます。

日本社会は一般的に調和とコンセンサスを重んじるため、あからさまな敵対主義は米国ほど効果的ではないかもしれないですが、日本の保守派はかなり危機を感じているので、これからは効果的になるかもしれません。また、日本の社会の特性をみて、バノン氏は戦術・戦略を日本では米国で異なるものにするかもしれません。

スティープ・バノン氏

ただ、これはあくまでも入手可能な情報に基づく分析であることを忘れないでください。政治情勢はダイナミックであり、予期せぬ展開で流れが変わる可能性もあります。展開されるこれからのレースから目を離さず、様々な情報源から提示される情報を批判的に評価し続けることにより真実が見えてくるでしょう。

ただ、バノン氏等が来日し、安倍派や高市氏と会談ということにでもなれば、安倍派と高市氏は、「トランプ戦略・戦術」を目指す可能性が高くなっているとみなすべきと思います。これは、突飛な見方、穿った見方ですが、政治の世界は一寸先と言われていますが、これは裏返せば、一寸先は光明ともいいかえることもできます。

以上の見方は、私自身の憶測に過ぎず、穿った見方にすぎないのですが、これは一重に日本の政治が良くなって欲しいという私の希望から出た、一つのシナリオです。

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2023年12月21日木曜日

これぞ未来の大砲「レールガン」の使い方、研究現場で聞いてきた 米軍も諦めた課題、日本―【私の論評】軍事から宇宙開発まで、電磁波武器の未来を切り拓く日本

これぞ未来の大砲「レールガン」の使い方、研究現場で聞いてきた 米軍も諦めた課題、日本

まとめ
  • 日本の防衛装備庁が公式YouTubeチャンネルでレールガンに関する研究動向を公開。
  • レールガンは電気を利用して弾丸を加速させる砲で、日本は世界で初めて洋上射撃試験を実施。
  • レールガンの開発には高速で射程の長い特性があるが、砲身摩耗の問題が大きな課題。
  • 日本は砲身素材変更と電流制御の改良により、120発以上の発射に成功し、実用化に向け進展。
  • レールガンはコストやサイズの利点があり、ミサイルとは異なる戦術的利点を持つが、技術的な試験が進行中で、自衛隊の要望に応じた最終運用形態が検討されている。


2023年12月1日、防衛装備庁は公式YouTubeチャンネルで、レールガンに関する研究動向を公開しました。この技術は電気を利用して弾丸を加速させる砲であり、その研究は従来の火薬を使用する兵器とは大きく異なります。世界中で未来の兵器として注目を集める中、日本は他国をリードし、今年10月には初めて洋上での射撃試験を行いました。

研究を担当する陸上装備研究所からは、現在のレールガンの開発状況や潜在的な用途に関する情報が提供されました。この兵器は、弾丸に電気を通して磁場を生成し、それによって弾丸を加速させて射出するものであり、現行の試験機は全長約6mで口径は40mm四方です。

従来の火砲と比較すると、レールガンは弾丸の速度が桁違いで、射程も極めて長い特性を持っています。ただし、この技術には砲身摩耗の問題があり、アメリカ海軍はこの問題から開発を中止しましたが、日本は砲身素材の変更と電流制御の改善により、120発以上の発射に成功し、実用化に向けて進展しています。

レールガンの優れた点は、コストとサイズの面での利点が大きいことです。ミサイルよりも小型で低コストな弾丸を多く携行でき、レーダーでの捕捉が難しく、迎撃が困難な特性を持ちます。ただし、ミサイルは射程や精度で優れており、それぞれの兵器には独自の利点があります。

現在は、技術的な試験が進行中で、単発の試射から始まり、連射や安定した飛翔に関する課題に取り組んでいます。最終的な運用形態は、自衛隊の要望によって決定される見通しです。防衛省の資料によれば、「早期装備化」が目指されており、研究者たちは実用化に向けて努力を重ねています。この先、レールガンが実戦配備されれば、日本の防衛力に革新的な役割を果たすことが期待されます。

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】軍事から宇宙開発まで、電磁波武器の未来を切り拓く日本

まとめ
  • 米海軍は2021年にレールガンの開発中止を発表し、予算案でレールガンプログラムへの資金供給を「0」に設定。
  • レールガンの開発は技術的課題やコスト面、極超音速兵器の出現など複数の要因で困難を伴い、米海軍は他の技術開発に資金と人材を集中する方針。
  • 小惑星探査機「はやぶさ2」の衝突装置「インパクタ」は人工クレーターを形成し、成功を収めた。
  • インパクタに代わる爆薬の代替として、電磁波を利用したレールガンの研究が進行中で、小惑星への衝突やクレーター形成に利用される見通し。
  • 日本はレールガン開発を進め、将来的には極超音速兵器への対処や低コストの射撃手段としての実用化が期待されているが、課題も残る。
米軍が試作したレールガン

レールガンの開発は相当難しいようです。米海軍は、レールガンの開発を長年にわたり進めてきましたが、2021年に開発の中止を発表しました。これは、2022会計年度予算案の中でレールガンプログラムへの資金供給を「0」に設定したことから明らかになりました。

レールガンの開発は、技術的な課題やコスト面、さらには極超音速兵器の登場による戦略的な変化など、多くの要因により困難を伴っていました。そのため、米海軍はレールガンの実用化に見切りをつけ、他の技術開発に資金と人材を集中させることを決定したと考えられます。

ただし、これは米海軍の予算案で示された方針であり、議会がレールガンプログラムへの投資継続を決断すれば、同プログラムへの予算が復活する可能性も残されています。

日本では、惑星探査の目的でレールガンの開発をすすめています。これをレールガンと呼んで良いのかは別の問題ですが、レールガンのようなものの開発をすすめているのは事実です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の衝突装置「インパクタ」は、小惑星の表面に人工クレーターを作るための装置です。これは、直径約10m、深さ約2mの人工クレーターをつくることに成功しまた。

光跡を引っ張りながら地球に帰還する「はやぶさ2」の試料カプセル=2022年12月6日未明

現在、インパクタに使用される爆薬の代替として、電磁波を利用したレールガンのようなインパクタの研究が進行しています。

電磁波を使用したレールガンは、電気の力を利用して弾丸を加速し、それを小惑星の表面に衝突させることでクレーターを形成します。この場合、爆薬の使用がなく、電磁力を利用するため、より環境に優しく、クレーターを形成するプロセスにおいてもより制御が可能になると考えられています。

レールガンが実用化された場合、その特性を活かした様々な用途が考えられます。以下にいくつかの可能性を挙げてみます。

ミサイル防衛:レールガンは、その高速性と連射能力を活かして、敵のミサイルを迎撃する手段として使用される可能性があります。特に、中国やロシアなどが開発に力を入れる「極超音速兵器」に対する防衛手段として期待されています。

敵基地攻撃能力:レールガンは、その長射程性を活かして、敵の基地を攻撃する手段としても使用される可能性があります。

低コスト:レールガンは火薬を使わず、電磁力を使って弾を発射するため、理論上は低コストでの連射が可能です。

日本がレールガンの実用化に成功する可能性は十分にあります。その理由は以下の通りです。

技術的進歩:日本はレールガンの開発において一定の進歩を遂げています。防衛装備庁は2020年代後半にレールガンの実用化を計画しており、初速が秒速1700メートル程度の一般的なミサイルに対し、研究段階で音速の6倍を超える秒速2300メートル近くを達成しました。

高度な素材技術:レールガンは電気を通しやすい丈夫な材料が必要で、日本が強みを持つ高度素材が開発の焦点となります。

防衛需要:中国やロシアなどが開発に力を入れる「極超音速兵器」に対する防衛手段として、レールガンの実用化が期待されています。

中国の超音速ミサイルDF-ZF簡体字:東風ZF)

以上の理由から、日本がレールガンの実用化に成功する可能性は高いと言えます。ただし、レールガンの実用化にはまだ多くの課題が存在します。例えば、大電流の供給、加速距離やレールの摩擦・電気抵抗・耐熱限界といった物理的・技術的制約があります。これらの課題を克服するためには、さらなる技術開発と研究が必要となります。

ただ、いずれこれを克服できる可能性はあると思います。早期の実用化に向けて努力していただき是非実現していただきたいものです。

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2023年12月20日水曜日

中国のデフレを西側諸国が歓迎する理由―【私の論評】来年は中国のデフレと資源・エネルギー価格の低下で、日本に再びデフレ圧力が!


まとめ
  • 中国の消費者物価指数が前年比0.5%の下落でパンデミック以来の最低を記録。
  • 西側諸国では中国のデフレが一部のデフレを自国に「輸入」する可能性があり、これはインフレ抑制に役立つと考えられる。
  • 中国のデフレは西側諸国にとって好ましい影響をもたらす可能性があり、インフレ期待に影響を与えると議論されている。
  • アメリカの消費者物価指数は3.1%で、FRBの目標を上回っており、金融市場はインフレ鈍化を歓迎しているが、注目が集まっている。
  • 中国のデフレが西側諸国にとってはインフレ抑制になり得るが、アメリカでのインフレ崩壊につながる可能性もあり、債券投資家はこの状況を好ましく見るかもしれない。

11月の中国の消費者物価指数が、前年比0.5%の下落となり、パンデミック以来最低となった。

だが、これは西側諸国にとっては良い知らせであり、デフレの一部を自国に「輸入」できる可能性があると、アナリストは見ている。

中国のデフレ問題は、西側諸国にとっては歓迎すべきインフレ抑制効果があるという。

中国は経済的困難が続き物価が再び下落しているが、中国政府の苦悩は西側諸国の勝利につながる可能性があるとアナリストは語っている。

これは、中国のデフレ傾向が、アメリカのような必要以上の物価上昇を抑えるかもしれないからだ。

「中国が国際貿易を通じて世界にデフレを輸出するのではないかという懸念が高まるため、中国経済が回復を示せない期間が長くなるほど、西側諸国のインフレの期待は下がる可能性が高くなる」とマッコーリー(Macquarie)のストラテジストのティエリー・ウィズマン(Thierry Wizman)は述べた。

11月、中国の消費者物価指数は前年比で0.5%下落し、パンデミック以来の最低となった。2023年初頭には物価がマイナスから再び上昇したが、回復への期待は裏切られた。

一方、世界的に見ると、同期間におけるアメリカの消費者物価指数は3.1%で、前月の3.2%から若干落ちた。

アメリカの金融市場はインフレ鈍化を歓迎しているが、依然として連邦準備制度理事会(FRB)の目標の2%を上回っている。アメリカの投資家はFRBがいつ金利引き下げを開始するかを推し測っているため、これらのインフレの数値に大きな注目が集まっている。

ウィズマンと同様に、ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)のアナリストのアルバート・エドワーズ(Albert Edwards)も、中国のデフレは物価下落を自国に「輸入」したいと考える西側諸国にとって救済のサインになると見ている。

「中国のデフレ問題は、西側諸国にとって歓迎すべきインフレ抑制になり得る」

中国のデフレは、不動産セクターの崩壊、外貨の流出、パンデミック後の冴えない成長からくるものであるため、驚くものではない。

依然としてGDPの成長が健全なアメリカとは対照的だ。だが、突然の逆転は、中国のデフレをメリットではなく障害にしかねない。

「仮に(マネーサプライの弱さを反映して)アメリカのハードランディングが迫り、いずれにしてもアメリカ国内のインフレ崩壊を引き起こすなら、それは台無しになり、中国のデフレを輸入することは、歓迎されず状況を悪化させるだろう」とエドワーズは述べた。

「念のために言っておくが、債券投資家はこれを歓迎するだろう」


【私の論評】来年は中国のデフレと資源・エネルギー価格の低下で、日本に再びデフレ圧力が!

まとめ
  • 中国経済の減速により、中国国内のインフレ率が低下している。
  • 中国の輸出向け製品の価格も下落している。
  • 中国の景気減速は、世界的なインフレ圧力の抑制につながる可能性がある。
  • 中国の景気減速は、日本など西側諸国にとってプラス要因となり得る。
  • 日本政府は、来年の中国によるデフレ圧力とエネルギー・資源価格の低下に伴うデフレリスクに備えて、さらなる積極財政と金融緩和を行うべき。
中国のデフレ傾向が西側諸国にとってマイナスではなく、プラスになる可能性があることをこのブログでは過去に二度ほど指摘してきました。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国のデフレ圧力、欧米中銀にとって朗報=PIMCO―【私の論評】中国の長期デフレにより、世界のマクロ・バランスが元に戻る可能性がでてきた(゚д゚)!

これは、8月17日の記事です。この元記事の要約を以下に掲載します。

中国のデフレ圧力  AI生成画像

 中国のデフレ圧力が世界市場に波及する可能性があると、米大手債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は分析した。中国経済の悪化は、中国国内のインフレを緩やかにし、中国製品が供給される市場でもインフレ鈍化が進む可能性があると指摘している。 
 PIMCOのエコノミスト兼マネジング・ディレクター、ティファニー・ワイルディング氏は、「中国におけるデフレの持続は先進国市場に波及する可能性が高い。人民元安と在庫・売上高比率の上昇により、中国製品の海外価格が下落するからだ。先進国の中銀はこのような展開を歓迎するだろう」と述べている。また、「通常の遅れを考えると、デフレの波及は世界の消費者市場に影響を与え始めたばかりであり、今後数四半期にわたって値下げが加速する可能性が高い」としている。

 中国にとって、デフレ圧力がさらに強まるリスクは今後数カ月の政府の政策にかかっている。内需拡大に向けた十分な財政刺激策はインフレを再加速させるかもしれないが、政策措置の遅れや不十分さは下降スパイラルにつながる可能性があるとした。

 中国国家統計局が今月9日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.3%下落し、2021年2月以来2年5カ月ぶりにマイナスとなった。長引く不動産不況や輸出入の減少で中国経済が減速する中、デフレ圧力が強まっているという懸念を助長する内容となった。

 一方、オックスフォード・エコノミクスは16日付のメモで、中国の2023年国内総生産(GDP)成長率予測をコンセンサスを下回る5.1%に引き下げた。「デフレ、低調な貿易、ローン需要の急減、不動産セクターの麻痺がリスク選好度を低下させる」とした。

中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風に―【私の論評】中国長期経済停滞で、世界の「長期需要不足」は終焉?米FRBのインフレ対策の追い風はその前兆か(゚д゚)!

これは、7月18日の記事です。こちらも元記事を要約したものを以下に掲載します。 

FRBパウエル議長

中国経済は2023年に予想以上に減速しており、成長予測は引き下げられ、インフレ率は低下している。

中国の景気減速は世界経済と市場に悪影響を及ぼしている。一次産品の価格は下落しており、商品の需要は減少している。現状では、世界的にインフレの軌道修正が課題となっている。

中国経済の減速は、米国連邦準備制度理事会(FRB)にとって救いとなっている。中国の景気減速は、FRBに対する積極的な利上げ継続への圧力を軽減している。

中国ではデフレの兆候が見られ、消費者物価と生産者物価が多くの分野で下落している。中国の内需は著しく減速している。中国の輸出に対する外需も急減した。

中国の景気減速は、今年の力強い中国の成長を期待していた米国および世界経済にとって悪いニュースである。

中国は依然として金融政策と財政政策を通じて経済を刺激する可能性がある。しかし、中国は債務水準の削減と通貨安の回避に努めるため、大規模な景気刺激策の実施を躊躇する可能性がある。

今のところ、中国経済の減速により、米国を含む世界全体のインフレ圧力が低下している。しかし、中国の政策担当者が成長刺激を決定すれば、状況は変わる可能性がある。 

 中国の「中国のデフレ問題は、西側諸国にとって歓迎すべきインフレ抑制になり得る」のは十分にあり得る話です。

このところ世界はかなりのインフレに悩まされてきました。エネルギー・資源価格が、高騰しかなりのインフレが続いていました。未だデフレ気味の日本では考えられないほどの物価の上昇が続いてました。

エネルギー資源価格は、過去の経緯からいっても、常識的に考えても、いつまでも上昇し続けることはありません。価格が高騰すれば、多くの地域で、増産などがはじまり、価格はいずれ安定します。

ただ、エネルギーや資源などを増産するにしても、すぐにはできません、1年から数年は要します。そのため、増産までには一定のタイムラグがあるので、一時的に高くなるのです。

来年は、エネルギー・資源価格の高止まり状況は終わり、今度は低くなっていくことでしょう。それに加えて、中国のデフレにより、今度は全世界的なインフレ傾向は収まることになるでしょう。

日本においては、エネルギー・資源価格高騰のため、物価が上がっていましたが、それがおさまり、さらに中国によるデフレ圧力が加わり、デフレ傾向がまた顕著になる可能性があります。

これを考えると、日銀が昨日の金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和政策の維持を決めたのは正解でした。

日銀植田総裁(左)と岸田首相

もし、利上げなとが決定されていたら、来年はさらにデフレが亢進したことでしょう。例年だとこの時期には、日銀が金融政策を変えるということはありません。なぜなら、来年度予算編成をしつつある今の時期に、日銀が金融政策を変えると予算編成の前提が狂ってしまい、編成作業をやり直さなければならなくなるからです。

ですから、余程のことがない限り変えないのが普通です。しかし、現在政治資金の不記載問題で、政局が揺れている現在、岸田政権はレームダック化しつつあり、この時期に日銀官僚等の思惑で、ゼロ金利政策をやめて金融引き締めに踏み切ってしまえと考える可能性もあったのですが、それは回避されました。

本当に良かったです。もし、利上げに踏み切ってしまえば、日本だけでなく世界に悪影響を及ぼし、リーマンショックよりもはるかに甚大だ悪影響を国内外に及ぼす可能性については、最近このブロクで指摘したばかりです。

リーマン・ブラザーズが入居していたビル

さて、来年はエネルギー・資源価格は下がり、中国のデフレ圧力が強まる可能性があります。現在政治資金の問題で、政局は揺れていますが、来年は日本ではデフレが深化する恐れがあります。今後政局がどのように揺れたにしても、国民のことを考えれば、政府は積極財政を、日銀は金融緩和を継続するだけではなく、量的にも質的にも、緩和政策を強化すべきです。

政局がどんなに揺れたとしても、政府・日銀が正しい政策をすれば、政府の信任も高まることになります。岸田政権はそのことをしっかり認識して、政権運営を実行すべきです。

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2023年12月19日火曜日

英BP、スエズ運河を回避 原油・ガス価格に上昇圧力―【私の論評】スエズ運河の安全を脅かすフーシ派、日本はタスクフォースに参加し貢献すべき

  英BP、スエズ運河を回避 原油・ガス価格に上昇圧力

まとめ

  • フーシ派による船舶攻撃のリスクが高まり、エネルギー企業やコンテナ船が紅海の運航を回避。
  • 原油相場と欧州の天然ガス価格が上昇。
  • 紅海はスエズ運河につながる重要航路で、喜望峰経由だと時間とコストがかかるため、供給網に影響。
  • フーシ派はイランの支援を受けており、米国は友好国と共同で対応する方針。
BPのタンカー

 英BP(ブログ管理人注:国際石油資本、いわゆる「スーパーメジャー」と総称される6社の内の1社)は、イエメンのフーシ派による船舶攻撃のリスクを理由に、紅海の通航を回避すると発表した。これにより、中東から欧州に向かう原油タンカーや液化天然ガス(LNG)船は、スエズ運河を避けてアフリカ大陸の喜望峰経由の運航を余儀なくされる見込みで、原油相場と欧州の天然ガス価格の上昇圧力につながった。

 コンテナ船にも影響が広がっており、欧州の海運会社や台湾の長栄海運などが紅海の運航を回避している。紅海はスエズ運河につながっており、欧州と中東・アジアを結ぶ重要な航路である。喜望峰経由の運航は時間とコストがかかるため、供給網(サプライチェーン)に大きな影響を与える。

 フーシ派はイエメンの武装組織でイランの支援を受けている。イスラエルのパレスチナ自治区ガザへの侵攻を受け、反発したフーシ派は、イスラエルと同国に近い船舶を攻撃している。

 米国は、フーシ派に対応するため、友好国と共同で行動する方針を表明した。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】スエズ運河の安全を脅かすフーシ派、日本はタスクフォースに参加し貢献すべき

まとめ
  • スエズ運河は、物流の中心地であり、この付近での船舶攻撃は世界経済に深刻な影響を及ぼす
  • スエズ運河通過料がエジプト経済にとって重要であり、減少は大きな打撃を与える
  • 船舶攻撃を阻止するための米国手動のタスクフォースの設立に向けた動きがある
  • タスクフォースの目的は、船舶護衛、情報収集・共有、脅威の抑止
  • 日本にとっては、これに参加することで経済的利益の保護、国際的信頼の確立、自衛隊の能力向上が期待できる

スエズ運河は、年間2万隻以上の船舶が通過する、世界でも最も重要な海上交通路の一つです。欧州とアジアを結ぶ最短ルートであり、アフリカ南端の喜望峰を回る場合よりも、距離が約1万2千キロも短縮されます。

今回の攻撃により、原油や天然ガス、穀物、工業製品など、さまざまな物資の輸送に遅延や混乱が生じる可能性があります。特に、原油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸送は、世界のエネルギー供給網に大きな影響を与える可能性があります。

また、スエズ運河の安全が脅かされる事態は、世界の経済・政治にも影響を及ぼす可能性があります。

すでに米国主導で、船舶護衛のための国際船団のタスクフォースを作る動きがあります。

このタスクフォースの目的は、紅海・アデン湾におけるフーシ派による船舶攻撃を阻止することです。紅海は、欧州と中東・アジアを結ぶ重要な航路であり、フーシ派の攻撃が続くと、原油相場や天然ガス価格の上昇、サプライチェーンの混乱などの経済的影響が懸念されます。

これには、すでにNATOの6か国以上がコミットしたと報道されています。具体的には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ、ポーランド、デンマーク、ノルウェー、ギリシャ、ブルガリア、ルーマニア、トルコ、イスラエルなどが参加する見込みです。

日本も、この地域の海運に依存していることから、タスクフォースに参加する意向を表明しています。しかし、フーシ派はイランの支援を受けており、攻撃にはミサイルやドローンなどの高性能な武器が用いられているため、日本は武器使用の基準など、法的問題を整理する必要があります。

自衛隊は、特に米軍と並び哨戒能力が高く、ソマリア沖の海賊対策などで培った経験を活かして、タスクフォースに参加し役割を担える能力を有しています。しかし、自衛隊は専守防衛の原則に基づいて運用されており、海外で武力行使を行うには、国際法上の正当防衛や他国からの要請などの要件を満たす必要があります。

八戸からソマリア沖の海賊対策に向かうP3C哨戒機

タスクフォースの活動は、主に以下の3つに分けられます。
  • 船舶の護衛
  • 情報収集・共有
  • 脅威の抑止
船舶の護衛は、タスクフォースの主な活動です。護衛艦や哨戒機などを派遣して、フーシ派による攻撃から船舶を守ります。

情報収集・共有は、フーシ派の活動を把握し、攻撃を未然に防ぐために重要です。衛星や無人機などの情報収集手段を活用して、フーシ派の活動を監視します。

脅威の抑止は、フーシ派に攻撃を思いとどまらせるために行われます。タスクフォースの存在をアピールすることで、フーシ派の士気を低下させ、攻撃を抑止する効果が期待されます。

日本のタスクフォースへの参加は、以下の3つの意義があると考えられられます。
  • 経済的利益の保護
  • 国際社会の信頼の獲得
  • 自衛隊の能力向上
経済的利益の保護は、タスクフォースの目的そのものです。紅海は、日本にとっても重要なエネルギー輸入路であり、フーシ派の攻撃が続くと、日本の経済に大きな影響を与える可能性があります。タスクフォースへの参加は、紅海の航行の安全を守り、日本の経済的利益を保護するために重要です。

国際社会の信頼の獲得も、日本のタスクフォースへの参加の意義の一つです。フーシ派の攻撃は、国際社会の秩序を脅かすものであり、日本は国際社会の一員として、その抑止に貢献することが求められています。これへの参加は、日本の国際社会における役割を示すものであり、国際社会の信頼を獲得することにつながります。

自衛隊の能力向上も、日本のこれへの参加の意義の一つです。ソマリア沖の海賊対策などで培った経験を活かして、自衛隊はこれに参加することで、国際平和協力の能力を向上させることができます。また、フーシ派による攻撃という新たな脅威への対応力を高めることにもつながります。

日本には憲法上、法律上の様々な括りがあって、こうしたことに対処するは他国と比較すると難しいですが、フーシ派を海賊とみなし、「海賊対処行動」を行うのであれば、船籍を問わず、襲撃を受けている船舶を助けることができます。また、武器使用も可能です。ただ、それにしても、他国よりは難しいことは否めません。これについては、以前このブログにも述べたことがあります。興味のある方は、この記事もご覧になってください。

日本はこのタスクフォースに積極的に参加することで、日本はフーシ派を含む地域の海賊等に対し、海洋安全保障に対する脅威を容認せず、米国の同盟国と協力してそのような行動を抑止するという明確なメッセージを発信すことができます。

海自の潜水艦「しょうりゅう」と護衛艦「いかづち」

また、ガザでの戦闘のさなかに、イスラエル船籍を含むタンカーをタスクフォースが協同で守ることは、象徴的な意味合いもあります。

これはイスラエルの自衛権を支持するという重要なメッセージを送ることにもなります。フーシ派とハマスとは、隣国を支配しようとするシーア派とスンニ派の過激派であり、イランの支援を受けています。

フーシ派を阻止することで、イランを牽制、イスラエルを支援することで、ハマスの牽制につながります。これはタスクフォースの参加国にとって互いにWin-Winの関係であり、タスクフォースの共同行動は軍事的にも外交的にも妙手になることでしょう。

日本は、このタスクフォースに参加し大きな役割を担えば、世界に向かって日本の強固な意思を伝えることになり、中・露・北に対する大きな牽制となり、日本の安全保障を強化することになります。

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2023年12月18日月曜日

レームダック化が止まらない岸田首相に「日銀」が仕掛ける「ステルス引き締め」―【私の論評】リーマン・ショックから15年後:日本銀行の政策修正が世界経済に及ぼす影響とは?

レームダック化が止まらない岸田首相に「日銀」が仕掛ける「ステルス引き締め」

まとめ
  • 岸田内閣に対する国民の支持率は歴史的に低く、政権の安定を脅かす可能性がある。
  • 安倍首相関連の閣僚を交代させ、林氏を起用しても、岸田内閣の支持率は改善しなかった。
  • 岸田氏の「自我の目覚め」による減税計画は財務省と衝突しており、検察は岸田氏をさらに弱体化させるために安倍派をターゲットにしている可能性がある。
  • 日銀は、岸田政権の苦境を、政治的干渉を受けずに金融政策を調整する好機と見ている。
  • 日銀はこの好機に、技術的にはマイナス金利政策を維持しながらも、金利を微妙に引き上げる「ステルス引き締め」をする可能性がある。

 岸田文雄首相は、安倍晋三前首相の政策に沿った4人の閣僚を交代させたが、内閣支持率の低迷は続いている。内閣改造の前後に行われた最近の世論調査では、内閣支持率は2012年に自民党が政権に返り咲いて以来最低の水準となった。

岸田首相

 この支持率の低さは、野党が強ければ政権交代の可能性を高める。検察庁と密接な関係にある財務省は、岸田首相の最近の減税重視の姿勢をよく思っておらず、安倍一派排除の動きを支持しているとされる。

 日本銀行(BOJ)も岸田政権のレームダック化を歓迎しているようだ。日銀の上田和男総裁は、金融政策の運営は今後数カ月でより難しくなると表明している。インフレターゲットが金融政策変更の指針であることに変わりはないが、現在の経済状況は変更を正当化するものではない。

 上田総裁は、雇用志向よりも金融機関志向の金融政策を好むことで知られている。短期マイナス金利と長期ゼロ金利からなる日銀のイールドカーブ・コントロール政策は精査されており、短期マイナス金利の解除の可能性は金融政策の「ステルス引き締め」となる可能性がある。

 現在、政治とメディアが政治資金問題に焦点を当てているため、金融政策から注意がそれている。岸田内閣が政治的課題に直面しているため、政策がアベノミクスとは逆の方向に傾く可能性があると推測されている。12月と1月に開かれる日銀の政策決定会合で、金融政策の方向性が変わるかどうかが見極められるだろう。

 「ステルス引き締め」に関しては、デフレ完全脱却のチャンスとでも官邸に説明すれば、官邸は何も言わないだろう。  

 短期のマイナス金利の変更は、超テクニカルなので、ステルスでやることもできる。今の日銀当座預金について、三層に分かれるが、一層の金利は0.1%、二層目はゼロ金利、三層目がマイナス0.1%。そこで、三層の分け方を微妙に変更すれば形式的にはマイナス金利は維持だが、実質的に金融引き締めというように「ステルス引き締め」が可能だ。 

 しかも、今メディアや世論は政治資金問題に染まっている。来年の通常国会開催までに、誰が検察に事情聴取され誰が立件されるかというのが延々と報じられることになるだろうから、金融政策への関心は若干薄れている。

 財政政策でも金融政策でも、逆アベノミクスになるような政策がでてくるかしれない。

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【私の論評】リーマン・ショックから15年後:日本銀行の政策修正が世界経済に及ぼす影響とは?

まとめ
  • 15年前のリーマン・ショックは「ブラック・スワン」と呼ばれる困難な出来事だった。
  • リーマン・ショック前にも危機の兆候があり、各国で金融機関の問題が発生していた。
  • 現在、日本銀行の政策修正についての議論が起きており、ゼロ金利政策の解除は慎重を要する。
  • 日本の政策変更が世界経済に波及する可能性があり、米国や中国の影響も大きい。
  • 日本が利上げを行い、それが世界経済に及ぼす影響が大きければ、日本ではリーマン・ショックを上回る災厄が起こる可能性がある。

リーマン・ブラザーズ本社があったタイムズスクエアビル

 2008年のリーマン・ショックから15年が経過しました。当時の金融危機は、確率論や従来の知識や経験に基づいて予測することが困難な極端な出来事である「ブラック・ スワン」と呼ばれました。

 日本銀行が本格的な利上げを実施すれば、次に起こる災厄はリーマン・ショックよりもはるかに大きくなる可能性があります。それは、日本のみならず、全世界的なものになるでしょう。なぜなら、グローバルな金融(マネー)がリーマン・ショック時よりもはるかに膨張しているためです。

 リーマン・ショック以前にも、危機の兆候はありました。2007年8月には、フランスの大手金融機関BNPパリバが投資ファンドの償還を停止すると発表した「パリバショック」が起きました。

 2009年には、スイスの金融大手クレディ・スイスが金融取引で巨額の損失を出した。同社は、今年8月にニューヨークの裁判所に Chapter 15 破産保護を申請しました。

 今年3月には、米国のシリコンバレー銀行が崩壊しました。ソーシャルネットワーキング時代の株高が電子ネットワークを介して「数秒のうちに」広がり、金融当局を慌てさせました。

 また、ロシアのウクライナ侵攻は依然として続いており、イスラエルとパレスチナの戦闘も10月に始まって以降、収まる気配を見せません。

 リーマン・ショック時、世界各国の中央銀行は経済を「支えるために」余剰資金を供給しました。当時の日銀は、それをしなかったため、日本はリーマンショックの震源地でないにもかかわらず、日本は申告なデフレと超円高に悩まされました。しかし、現在のインフレの時代には、その余剰流動性を維持することがますます困難になっています。

 米国の利上げは、債券価格の下落を通じて、先述のシリコンバレー銀行やその他の破綻に大きな影響を与えました。

 日本でも、金融緩和政策の修正を求める声が上がり始めています。しかし、現状では「ゼロ金利」の解除には、痛みを伴うのは確実です。なぜなら、現在の日本はデフレから抜けきっておらず、消費は相変わらず低迷しているからです。

 日本銀行がゼロ金利政策を解除すれば、米国や中国などにも影響が及びます。米国や中国のバブルは、日本では想像もできないほど膨らんでおり、それが崩壊すれば、被害は計り知れないです。

日銀植田総裁(左)と岸田総理

 日銀が「ステルス引き締め」により、引き締めに転じ、来年利上げに転ずることになれば、今度は日本が震源地となり、それが米中等にも波及し、世界経済が低迷することになるでしょう。

 そうなると、円高になり、日本の輸出企業も悪影響うけ、しかも国内消費はさらに低迷し経済は低迷し、そうして他国が利下げに走るなか、日銀が利上げを継続し、さらに財務省が緊縮に走れば、そのときリーマン・ショックをはるかに上回る災厄が日本を襲うことになるでしょう。

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2023年12月17日日曜日

中国「戦争恐れない」 尖閣めぐる発言に日本は断固たる措置を 高橋洋一―【私の論評】中国の脅威に直面する日本の安全保障:意思の強さと抑止力の重要性

 日本の解き方

中国「戦争恐れない」 尖閣めぐる発言に日本は断固たる措置を 高橋洋一

まとめ
  • 中国軍の元副院長が共同通信のインタビューで、戦争は望まないが恐れないと述べ、日本へのメッセージを送った。
  • 日本は感情的ではなく国際法を考慮し、外交において中国に適切なメッセージを送るべきだと指摘されている。
  • 中国の台湾に対する行動が尖閣諸島を巻き込む可能性を示唆し、日本の安全保障に影響を与える可能性があると主張されている。
  • 中国の南シナ海での行動と国際法への無視が強調され、日本は中国の力による現状変更に強い姿勢を示すべきだとされている。
  • 日本は中国の核心的利益とされる台湾と尖閣の問題に注意を払い、万一日本有事が発生した場合には断固たる対抗措置を取るべきだと強調されている。

軍事科学院の何雷・元副院長(中将)

 中国軍のシンクタンク、軍事科学院の何雷・元副院長(中将)が共同通信のインタビューで、「戦争は望まないが恐れない」と述べ、日本向けのメッセージを送った。

 この発言を感情的に受け止めず、国際法を考慮しつつ、外交において中国に適切なメッセージを送る必要がある。彼らの台湾に対する行動が尖閣諸島を巻き込む可能性があり、中国の動きが日本の安全保障に影響を及ぼす可能性がある。

 さらに、中国の南シナ海での行動とその国際法を無視しており、日本は中国の力による現状変更に対して強い姿勢を示すべきだ。中国は「核心的利益」として台湾と尖閣を掲げており、その行動が極東アジアの安全保障に深刻な影響を与える可能性がある。

 南シナ海での中国とフィリピンの対立も注目され、国際仲裁裁判所の判断を無視する中国の姿勢が国際社会における危険性を浮き彫りにしている。

 日本は中国の力による現状変更を望まず、万が一日本有事が発生した場合には、断固たる対抗措置を取るという強い立場を国内外で示すべきだ。

【私の論評】中国の脅威に直面する日本の安全保障:意思の強さと抑止力の重要性

まとめ
  • 中国の対潜水艦戦能力は日米に劣るため、中国の台湾・尖閣への軍事侵攻の可能性は低い。
  • ASWにおけるハード面とソフト面の両方が重要であり、経験とノウハウの積み重ねが必要であり、中国は未だハード・ソフトとも日米に及ばない。
  • よって中国軍のシンクタンク、軍事科学院の何雷・元副院長(中将)の「戦争は望まないが恐れない」情報戦の一環と考えられる。
  • 日本は中国の軍事力に対し強く反論し、防衛を強化し、強い態度で臨まなければならない。
  • 弱腰な姿勢は侵略と不安定を招くだけであり日本の意思と抑止力が安全保障に重要である。
尖閣諸島

 私は、中国は対潜水艦戦(ASW)で日米にかなり劣っているため、現実には中国が尖閣や台湾への軍事侵攻をする可能性は低いと思っています。
 
 ただ、こういうことを言うと、中国のASWも相当進んできているから、そうとは言えないと主張する人が必ずでてきます。
 
 しかし、こういう人たちは大事なことを忘れていると思います。それはASWにはハード面も重要ですが、ソフト面も重要であるということです。
 
 借りに、中国海軍が、日米なみにASWのハード面を整えたとしても、すぐにはASWが日米並にはならないということです。ASWはそれだけでは強化できず、長年の経験とノウハウの積み重ねが必要だからです。ましてや、中国海軍のASW関連のハードは、未だに日米に比較して遅れています。
 
 これは、たとえば脳外科手術において、様々な最新のハードを導入したとしても、長年の経験やノウハウがないと、満足な手術ができないのと同じです。ハード面を整備したからといって、すぐに高度な手術ができるわけではないのです。優れた脳外科医のノウハウや経験必要不可欠なのです。

現代の脳外科手術には様々なハードが利用されるが、ハードが揃ったからといって優れた手術ができるわけではない

これと同じような、発言をする自衛隊幹部の人もいますが、このような発言をするためか、その方は、「おかげで自分は地上波テレビには出られない」と語っておられました。しかし、これが現実なのです。この現実を突きつけられるのを嫌がる人がマスコミには多いようです。
 
 米国では確か昨年台湾有事のシミレーションが行われたと記憶していますが、台湾有事になれば、日米は相当損害を受けるものの、それでも中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。

それは、中国のASWが劣っているためと思います。日米海軍と中国海軍が真正面から戦えば、中国海軍は崩壊します。ただ中国側は、当然のことながらミサィルを発射して日米を攻撃することになるでしょう。

だから日米も被害を受けることになるのです。しかし、海戦において日米が負けることはなく、よって台湾侵攻はかなり難しいのです。この事実をふまえると、何雷・元副院長(中将)の発言は情報戦の一環であると思われます。

私は日本は、この将軍の恐喝を真に受けるべきではないと思います。これは、中国を強く見せるためのプロパガンダであり、実際には日米同盟に比べれば、中国の軍事力、特に海軍力ははるかに弱いです。日本は防衛を強化し、米国と緊密に協力し、中国のハッタリや挑発があればいつでもこれに強く反論すべきです。

もし日本が中国の侵略に対して強い態度で臨まなければ、悲惨なことになるでしょう。宥和政策は、中国共産党のような専制政権には決して通用しません。日本が弱さを見せれば、中国はそれを利用するでしょう。

尖閣諸島をめぐる挑発行為をより大胆にし、日本の決意を試すために行動をエスカレートさせるでしょう。毅然とした対応がなければ、中国はますますみずからの軍事的限界を押し広げることになるでしょう。これは最終的に、日本が引き下がると信じて中国が仕掛ける直接的な軍事衝突につながりかねなです。

尖閣諸島沖を航行する中国海警局の鑑定と、海保の艦艇

国内的には、強い態度に出なければ、日本の安全保障と独立性が損なわれることになります。国民は危険を感じ、政府は国民の信頼を失うことになるでしょう。

また、同盟国から日本の自衛の意志を疑われ、海外での日本の立場を損なうことになるでしょう。国際的には、米国のような同盟国との関係を損なう一方で、中国や北朝鮮のような敵対国を増長させることになるでしょう。

地域のパワーバランスに危険な変化をもたらす可能性もあります。日本が自国を守るために立ち上がる姿勢をみせなければ、米国が自国の利益を危険にさらしてまで日本を守らなければならないのだろうかという疑問を生じさせるでしょう。

日本の弱腰と宥和は侵略と不安定を招くだけです。日本は領土、主権、国益を断固として守らなければならないです。それを怠れば、日本とインド太平洋地域の同盟国にとって、より大きな混乱と不安を招く危険性があります。

中国のような覇権主義・権威主義国家は、日本の意思が弱いと思ったり、断固とした行動に消極的だと思えば、その隙につけ込むでしょう。日本の安全保障は、意思の強さと抑止力にかかっているのです。

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2023年12月16日土曜日

“ロシア勝利”なら米負担「天文学的」 米戦争研究所が分析…ウクライナ全土の占領「不可能ではない」―【私の論評】ウクライナ戦争、西側諸国は支援を継続すべきか?ISWの報告書が示唆するもの

“ロシア勝利”なら米負担「天文学的」 米戦争研究所が分析…ウクライナ全土の占領「不可能ではない」

まとめ
  • ロシアがウクライナ全土を占領した場合、ロシア軍はNATO加盟国への脅威となる。
  • アメリカはこれに備え、ヨーロッパに大規模な兵力を配置する必要があり、そのコストは膨大なものとなる。
  • ウクライナへの軍事支援を継続し、戦線を維持させるだけでも、これらのコストに比べれば「はるかに安上がりだ」という。
  • ウクライナが勝利すれば、アメリカはヨーロッパ大陸で最大かつ最も戦闘力の高い友軍を獲得し、NATO防衛を強化することができる。


 米国の政策研究機関「戦争研究所(ISW)」は、西側諸国がウクライナへの軍事支援を打ち切りロシアが勝利した場合、アメリカは「天文学的」な軍事的・経済的負担を強いられると分析した。

 具体的には、ロシアがウクライナ全土を占領した場合、ロシア軍は豊富な戦闘経験を積み、NATO加盟国への脅威となる。アメリカはこれに備え、ヨーロッパに大規模な兵力を配置する必要があり、そのコストは膨大なものとなる。また、ステルス戦闘機の多くをヨーロッパに配置すると、台湾有事への対応能力が低下する可能性もある。

 一方、ウクライナへの軍事支援を継続し、戦線を維持させるだけでも、これらのコストに比べれば「はるかに安上がりだ」という。ウクライナが勝利すれば、アメリカはヨーロッパ大陸で最大かつ最も戦闘力の高い友軍を獲得し、NATO防衛を強化することができる。

 戦争研究所は、アメリカなどで支援継続の先行きが不透明になるなか、ウクライナが敗北した場合の軍事的・経済的コストについても真剣な議論を促した。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ウクライナ戦争、西側諸国は支援を継続すべきか?ISWの報告書が示唆するもの

まとめ
  • 戦争研究所は、ウクライナが勝利するためには、西側諸国の支援が不可欠であると主張している。
  • 米国議会では、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いている。
  • 欧州議会では、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流だが、具体的な金額や内容については、まだ合意に至っていない。
  • 米国や欧州が現段階で、支援の有無をはっきりさせていないため、日本への支援への圧力が高まる可能性がある。
  • バイデン政権は、ウクライナ支援を国際社会で共有していくことが重要だと繰り返し強調しており、日本にも支援の拡大を働きかけているとの見方もある。

ロシアが勝った場合のISWによる想定地図

The Institute for the Study of War(戦争研究所)は、伝統的な米国の価値観を推進する保守系シンクタンクです。彼らは、米国が築き上げられた原則を尊重する観点から、外交政策と国家安全保障問題について貴重な研究と分析を提供しています。米国の民主主義、自由、人権などの価値観を支持しています。

その彼らが、以上のようなレポートを出しているわけですから、ウクライナ戦争においてウクライナ側が負けるようなことがないように、西側諸国は支援を継続すべきなのでしょう。

米国議会においては、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いています。欧州議会においては、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流ですが、具体的な金額や内容については、まだ合意に至っていません。

米国議会においては、2023年11月に、ウクライナへの118億ドルの支援を盛り込んだ歳出補正法案が提出されました。しかし、共和党議員の中には、この金額が過剰だと主張する声があり、法案は可決に至りませんでした。

2023年12月現在、米国議会では、ウクライナへの追加支援を盛り込んだ歳出補正法案の再提出が検討されています。しかし、共和党議員の反対をどう乗り越えるかが課題となっています。

欧州議会においては、2023年10月に、ウクライナへの500億ユーロ(約780億ドル)の支援を盛り込んだ財政支援パッケージが採択されました。しかし、このパッケージは、あくまでも4年間にわたる計画であり、毎年125億ユーロ(約180億ドル)の支援を継続するかどうかについては、まだ合意に至っていません。

欧州議会では、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流ですが、ロシアとの経済関係を維持したいという意見もあり、具体的な金額や内容については、まだ議論が続いています。

このように、米国議会においても、欧州議会においても、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いています。今後の戦況や、米国と欧州の経済状況などによって、支援の継続や規模が決まっていくと考えられます。

米国や、欧州が現段階で、支援の有無をはっきりさせていない現状では、日本への支援への圧力が高まる可能性もあります。

バイデン政権は、日本の巨額のウクライナ支援を肩代わりさせるため、岸田首相にかわる、米国が御しやすい総理大臣を擁立させたいのではないかと、現在の岸田総理の支持率低下や、検察の不自然な動きなどに結びつけて語る識者もいますが、それに関しては現状では肯定も否定もできません。いずれ、何かの情報がでてくれば、このブログにも掲載することとします。

林官房長官は記者会見で、米国 が ウクライナ 支援を削減した場合、日本政府がこれを肩代わりするのかについて、質問に答えなかった。

実際、バイデン政権による日本にウクライナ支援を肩代わりさせるような具体的な発言、行動は、現時点では確認されていません。

しかし、バイデン政権は、ウクライナ支援を国際社会で共有していくことが重要だと繰り返し強調しています。また、日本は、アメリカの同盟国であり、民主主義や人権の価値観を共有する国であり、ウクライナ支援に積極的に貢献することが期待されています。

こうした背景から、バイデン政権が日本にウクライナ支援の拡大を働きかけているとの見方もあります。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。
  • 2023年11月、バイデン大統領は、日米首脳会談において、岸田首相に対し、ウクライナへの支援を強化するよう要請しました。
  • 2023年12月、アメリカ国務省は、日本を含むG7諸国に対し、ウクライナへの追加支援を呼びかけました。
日本政府は、2023年11月15日、ウクライナへの人道支援として、10億ドルの追加支援を決定しました。また、2023年12月20日には、ウクライナへの防衛支援として、1億ドルの追加支援を決定しました。

日本国内では、ウクライナ支援を巡って、自民党と野党の間で意見の相違が生じています。自民党は、ウクライナ支援を拡大すべきだと主張していますが、野党からは、財政負担や経済への影響を懸念する声が上がっています。

こうした状況を踏まえると、バイデン政権が日本にウクライナ支援の拡大を働きかけていることは、十分に考えられます。しかし、日本がそれに応じるかどうかは、国内の政治状況や、今後の戦況などによっても左右されると考えられます。

北朝鮮のICBM

ただ、日本は中国や北朝鮮との間で独自の課題に直面しており、資源は限られています。より良いアプローチは、米国が模範を示して支援をリードすることです。米国自身がウクライナに強力な援助を提供し、同盟国にもできる限りの支援を行うよう促すべきです。

ISWの報告書は、同盟国にウクライナ支援を押し付けるのではなく、同盟国に情報を与え、支援を説得するものであるべきと思います。

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2023年12月15日金曜日

政権浮揚狙った首相に翻弄された自民税調、問われる存在感―【私の論評】 自民税調の衰退と政局の混乱の果にみえるもの

 政権浮揚狙った首相に翻弄された自民税調、問われる存在感

まとめ

  • 所得税と住民税の定額減税は、岸田政権の経済対策で打ち出され、金額などの重要事項は既に決まっていた。与党税調の議論は、所得制限を設けるかなど細部の調整に限られた。
  • ガソリン税の一部軽減については、首相の指示で自公と国民民主党の政調会長での議論が中心となり、自民税調は実質的に〝蚊帳の外〟だった。
  • 防衛費増額のための増税は、開始時期の議論が迷走。自民の宮沢洋一税調会長は「今年の年末に決めるべきだ」と強調していたが、自民のパーティー券問題が浮上し、開始時期の明示は見送られた。
  • かつての自民税調は絶大な影響力を持っていた。しかし、第2次安倍晋三政権以降は官邸と自民税調の力関係が逆転し、重要事項が税調の頭越しに決まるようになっていた。
 令和6年度税制改正大綱は、物価高対策や防衛費増額などの観点から、所得税と住民税の定額減税、トリガー条項の凍結解除、防衛増税などを盛り込んだ。

 その過程では、所得税減税やトリガー条項の凍結解除は、岸田政権の浮揚を狙う首相官邸の主導で決まり、自民、公明両党の税制調査会は調整に追われた。

 防衛増税の開始時期については、自民税調会長の宮沢洋一氏が今年の年末に決めるべきと強調していたが、自民党のパーティー券を巡る問題が浮上するなど、政権への増税批判なども重なり、開始時期の明示は見送られた。

宮沢税調会長 こちらが本当の増税メガネ?

 かつての自民税調は、時の首相でも踏み込めない別格の組織だったが、第2次安倍晋三政権以降は官邸と自民税調の力関係が逆転。重要事項が税調の頭越しに決まるようになっていた。

 岸田政権は支持率が低く、政権基盤も脆弱だが、そのことがかえって、政権浮揚を視野に入れた官邸主導の税財政政策につながったようだ。

 宮沢氏は「税調の役員になりたい人は多い」とアピールするが、ある自民税調の幹部は官邸中心で6年度の税制改正の方針が次々と決められた状況に「税調が軽んじられてはいないか」と危機感を吐露した。

 内閣支持率の低迷が続くなど、官邸側が期待した政権浮揚効果はこれまでのところ得られていない。政権への求心力が弱まる中、来年以降、自民税調がいかに税制改正の議論をリードしてかつてのような威信を取り戻せるかが注目される。

【私の論評】 自民税調の衰退と政局の混乱の果にみえるもの

まとめ
  • 自民税調は、かつて与党税制の議論を独占していたが、第2次安倍政権以降、官邸との力関係が逆転し、影響力が低下している。
  • 岸田政権は、所得税と住民税の定額減税を打ち出したが、この決定は、自民税調の意向を反映したものではなく、官邸主導で行われた。
  • 高橋洋一氏は、岸田首相の減税方針は、財務省の思惑とは相反するものであり、財務省は倒閣運動を始めた可能性かある。
  • 現在の政局は、財務省の倒閣運動によるものであり、特に安倍派に対するパーティー券問題にの背後に、その可能性が高い。
  • 今後、減税などの政策は、官邸主導で行われるようになる可能性がある。現在自民党税調が機能しないのは、その予兆であると思われる

まず、はっきりさせたいのは自民税調がかつのような威信を取り戻す必要性など全くないことです。私自身は、実体経済におかまいなしに、増税ばかりを提言してきた自民税調など、解体すべきと思います。

これについては、以前このブログに掲載した記事をご覧いただければご理解いただけるものと思います。その記事のURLを以下に掲載します。
民間企業なら絶対許されない…政治家が繰り返す「減税の法改正は時間がかかる」の大嘘「本当は能力がないだけ」―【私の論評】国民を苦しめる与党税調の独占!自民党は国民の声を反映した迅速な減税を!

増税メガネをかけると誰もが増税したくなるらしい AI生成画像

詳細は、この記事もしくは、この記事の元記事をご覧いただくものとして、この元記事のさらに要約したものを以下に掲載します。 

岸田政権は経済対策の一環として所得税と住民税の定額減税を提案し、金額などの大まかな内容は決定された。与党税調は細部の調整に留まり、所得制限などの議論は限られた。 
ガソリン税の一部軽減については、自公と国民民主党の政調会長が中心となり、自民税調は実質的に排除された。防衛費増額のための増税については開始時期についての意見が分かれ、宮沢洋一税調会長は年末までの決定を主張したが、自民のパーティー券問題が浮上し、具体的な開始時期は見送られた。 
かつて影響力を持っていた自民税調は、第2次安倍政権以降官邸との力関係が逆転し、重要な決定事項は税調の意向を無視して決められるようになっていた。

 この記事の【私の論評】の要約したものを以下に掲載します。

税制改正は与党税調で要望が審議され、その結果を基に翌年の通常国会で法案が提出される。しかし、法的には通常国会や臨時国会でしか法案を提出できないという制約はない。 
多くの先進国では、複数回の機会があり、米国や英国では大統領や財務大臣が法案を提出できる。このようなルールが民間企業にあった場合、経営効率の低下が懸念される。 
日本では与党税調に権力が集中しており、渡瀬氏はこの点を批判している。税制改正のための法案を国会で迅速に成立させられるようにすることは、国民の声を反映し、政治の透明性と効率性向上につながるとして、自民党はこのプロセス改革を実施すべきだと提言している。
高橋洋一氏は、岸田首相が2023年10月に所得税の減税を打ち出したことを「岸田首相が自我に目覚めた」と評しました。これは、岸田首相がこれまでは財務省の意見に従って財政再建を優先し、減税に消極的だったことを踏まえた指摘です。


高橋氏は、岸田首相の減税方針は、財務省の思惑とは相反するものであり、財務省は減税をしない総理を擁立するために倒閣運動を始めた可能性を指摘しています。

具体的には、高橋氏は以下の点を指摘しています。
  • 財務省は、財政再建のためには増税が必要だと主張しており、減税は財政を悪化させると考えている。
  • 岸田首相の減税方針は、財務省の権威を失墜させる可能性がある。
  • 財務省は、自民党内の増税派と結びつき、倒閣運動を進めている可能性がある。
高橋氏の指摘は、財務省が岸田首相の減税方針に不満を持っていることを示唆するものであり、注目を集めました。

現在の政局は、財務省の倒閣運動によるものであることを示唆しており、特に安倍派に対するパーティー券問題にの背後は、その可能性が高いと指摘しています。

その理由として、高橋氏は以下の点を挙げています。

  • パーティー券問題は、安倍派の資金集めに関わる問題であり、財務省は安倍派と対立関係にある。
  • パーティー券問題は、岸田首相の支持率を低下させる材料として利用することができる。
  • 財務省は、安倍派の弱体化を図ることで、岸田首相を倒しやすくなる。
高橋氏の指摘は、財務省が財政政策を巡って対立する安倍派を弱体化させることで、岸田首相の退陣を狙っている可能性を示唆するものであり、注目を集めました。

いずれにしても、パーティー券問題は、岸田政権の支持率を低下させるとともに、政局の不安定化を招く可能性があり、今後の政局に大きな影響を与える可能性があります。

具体的には、以下のようなシナリオが考えられます。
  • 安倍派の弱体化が進み、岸田首相の支持率がさらに低下した場合、自民党内で総裁選挙が行われる可能性が高まります。
  • 総裁選挙で岸田首相が敗北した場合、財務省が支持する候補が総裁に就任し、財務省主導の政治が復活する可能性があります。
ただし、これらのシナリオはあくまでも可能性であり、今後の政局の展開を予測することは困難です。

岸田首相が、安倍派からの提言でもあった減税を言い出さなければ、財務省は倒閣運動に走らず、政権支持率もある程度維持できたでしょう。

そうして、検察も岸田政権の支持率の低下で「パーティー疑惑」に目をつけはじめたといえます。これは、安倍派の狙い撃ちになっているので、岸田派にとってはダメージはほとんどなく。野党が脆弱であり、自民党内力学で政局が動いており、岸田派、麻生派、茂木派も、実質的にはダメージはあまりありません。

財務省としても、安倍・菅政権で増税せずに100兆円の補正予算を組むなど、財務省の意向に逆らい続ける等ことをされ続けたので、検察の安倍派叩きは好ましいものでしょう。

ただ、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでありません。麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合です。また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っているでしょう。これが、官僚機構の背景にある「自民党内派閥力学」です。

安倍派6人の幹部

岸田文雄首相は14日、政治資金問題で疑惑が浮上した自民党安倍派(清和政策研究会)所属の閣僚4人を入れ替え、政権の要である官房長官に林芳正前外務相を任命した。4ポストとも安倍派以外の閣僚経験者を後任に据えることで、党と内閣への信頼回復を目指す。

ただ、岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないでしょう。

安倍派もこのまま排除されるだけではないでしょう、激しい抵抗が水面下で行われるのは必至です。

しかし、現状だけをみると、岸田首相の自民税調無視の行動と連日の裏金疑惑により税調は機能せず、改革が行われしまったかのような状況になっています。これは、財務省にとっては、良い動きとはいえません。

さらに安倍派の抵抗が、財務省の予期せぬ結果招く可能性もあるかもしれません。そうして、いわゆる裏金疑惑は、減税のきっかけを生み出すかもしれません。その1つは「ガソリン税」です。

ちなみに、現状は補助金政策を行っていますが、これは裏金作りを助長し、しかも約6兆円の財政負担がかかっています。一方で直接ガソリン税を値下げすれば、国民にとってありがたいだけでなく、財政負担も約1.5兆円にまで抑えられ可能性があります。ガソリン税だけではなく、そもそも補助金政策は裏金作りを助長するものです。減税はその対象者に直接及ぶものであり、他者が介在しません。だから、裏金作りなどを助長することはありません。

もう1つの減税チャンスは、「消費税」です。消費税が下がれば、政府に対する国民の信頼は少なからず回復します、このブログでも指摘してきたように数年間減税したとしても、財源には全く問題がありません。

今後このような改革が行われる可能性は否定できません。なぜなら、自民党自体は、岸田政権がもたなくなることは許容するかもしれませんが、自民党政権が存立の危機に直面すれば、存立を危うくする財務省の意向を聴いている余裕などなくなるからです。

現在の自民党税調が機能していない状況は、私にはその予兆ともみてとれます。

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2023年12月14日木曜日

米国の中国への優位性と日本が持つべき視点―【私の論評】中国との競争的共存は希望論、抑止力こそが厳しい現実に対処する術

米国の中国への優位性と日本が持つべき視点

まとめ
  • フィナンシャル・タイムズ記事では、ジョセフ・ナイ氏の主張が取り上げられ、米中関係の複雑さを強調しつつも、競争的共存を目指すべきだという立場が示されている。
  • ナイ氏は、米国の地政学的優位性やエネルギー自給能力、労働力の増加などの利点を強調し、中国との関係を緊張や冷戦を回避しつつ、協力して管理すべきだと述べている。
  • ナイ氏の主張は中国に近接した国々の安全保障上の懸念に十分に答えていない。
  • ナイ氏は米国が国内の開放性を維持し、民主的価値観を守ることも重要だと強調しており、米国のソフトパワーの重要性を示唆しています。
  • しかし、中国に近接した国々の視点や安全保障上の懸念についてはナイ氏の議論は、十分に答えているとはいえない。

習近平とバイデン

 11月17日のフィナンシャル・タイムズの記事は、米中関係の複雑さとその解決策についてジョセフ・ナイ氏の論説America should aim for competitive coexistence with Chinaを紹介している。それによれば、ナイ氏は米国と中国の関係は困難であるが、競争的共存を目指すべきだと主張している。ナイ氏は、バイデンと習近平のカリフォルニアでの会談で合意された米中軍組織の対話再開にも触れながら、両国関係は依然として険しいと指摘している。

 その上で、ナイ氏は米国には地政学的優位性やエネルギーの自給能力、労働力の増加といった利点があると強調している。そして、米国は競争的共存のためには中国の外交姿勢を牽制しつつ、緊張や冷戦を回避し、協力する方策を模索すべきだと述べている。彼は、米国が国内の開放性を保ち、民主的価値観を守ることも重要だと指摘している。また、米国のソフトパワーが中国の支配を望まない国々から支持されている点も強調している。

 しかし、ナイ氏の主張が、中国に近接した国々の安全保障上の懸念に十分に答えていない。さらに、オバマ時代のアジア政策に似た点が見られ。過去の米国の対応が寛容すぎた。ナイ氏の議論が米国以外のインド太平洋諸国にとって、中国の振る舞いが安全保障上の脅威になっている現状にどのように対応するか、議論が不十分である。

 ナイ氏の主張は米中関係の複雑性を示しつつも、競争的共存を模索すべきだという立場を取っているが、特に日本を含めた中国に近接した国々の視点に焦点を当てることができていない。

 この記事は元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国との競争的共存は希望論、抑止力こそが厳しい現実に対処する術

まとめ
  • 日本の保守派の視点では、ジョセフ・ナイ氏の穏健なアプローチには信頼性を感じられない。
  • 中国の権威主義は、米国や日本の民主的同盟国の利益を脅かす存在であり、日本は慎重に対処すべきだ。
  • 日本は米国との軍事同盟を強化し、中国の侵略に対抗する必要がある。
  • 軍事的、経済的、外交的な力による抑止政策をとることで、日本は中国の圧力に立ち向かい、安全保障を確保するべきだ。
  • 日本は民主主義の価値観を強化し、中国の圧力に対抗するための連帯を形成する必要がある。
保守派の視点から見ると、ジョセフ・ナイ氏の穏健なアプローチは信頼できないと感じます。競争的共存は、リベラルな理想にすぎないと思えます。

ジョセフ・ナイ

中国は米国や日本などの民主的同盟国の利益を脅かす権威主義国家です。日本は慎重に中国との接し方を検討すべきです。米国との軍事同盟を強化し、東シナ海や南シナ海での中国の侵略に対処する必要があります。

日本は中国の経済的圧力に屈してはなりません。民主主義の価値と国家の安全保障のために立ち上がる必要があります。過去のオバマ政権の政策は失敗でした。バイデン政権も同じ過ちを繰り返そうとしているように見えます。

日本やアジアの他の同盟国は、ソフトパワーや協力だけではなく、ハードパワーや強さを誇示する必要があります。中国は力しか理解できない国です。

日米をはじめ、先進国は、すでに中国に対して国交を回復したり、WTOに加盟させたりなどして、競争的共存の機会を十分に提供しました。にもかかわらず、中国はそれを無視しました。そのような国が今後、競争的共存をする見込みなどありません。

日本や米国のような同盟国は、軍事費を増やし、合同軍事演習を実施し、中国の不公正な貿易慣行や人権侵害に対抗するために関税や制裁措置を積極的に用いる必要があります。

中国共産党大会

中国共産党が支配している限り、競争的共存は夢のまた夢です。彼らの目標は世界支配であり、協力ではありません。日本と欧米諸国は、現実を直視する必要があります。今こそ、中国の野心を抑止し、希望ではなく力で対処する時です。

中国に対抗するために日本がすべきことは、東シナ海や南シナ海での中国の野心に直接対抗するために、海軍力や空軍力を増強することです。戦闘機、空母、潜水艦、沿岸ミサイル防衛の強化が不可欠です。

日米同盟を強化する必要があります。日本は米国との軍事協力を深めるべきであり、米国の「核の傘」は中国を抑止する鍵となります。安倍元総理が主張していた核シェアリングも検討すべきです。

インド、オーストラリア、ヨーロッパとの安全保障パートナーシップを築く必要があります。日本は同じ民主主義国家と協力し、中国の圧力に対抗する統一戦線を構築すべきです。情報共有や武器取引、海軍の共同パトロールは、抑止力を高めることができます。

外交的、経済的な反撃が必要です。日本は中国の行動に正式に抗議すべきであり、関税をかけたり技術輸出を制限したりすることもできます。中国の圧力に立ち向かうべきです。

中国の軍事活動を監視する必要があります。日本は中国の海軍増強や極超音速ミサイル実験、台湾への潜在的な侵略計画を注視する必要があります。警戒が不可欠です。監視衛星やサイバー・プログラムは欠かせません。


国内での民主主義の価値観を強化すべきです。日本は民主主義、人権、法の支配へのコミットメントを再確認すべきです。民主主義の連帯は、中国の野心に対抗するための、道徳的な権威を持つことになります。

日本は軍事的、経済的、外交的に、力による抑止政策を取る必要があります。中国の圧力に立ち向かうことによってのみ、安全保障を確保できます。競争的共存は希望論であって、抑止力こそが厳しい現実に対処する唯一の術です。保守派の視点から見ると、これが日本が中国の野心に対処する最も適切な方法です。

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