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2024年1月6日土曜日

インド、23年度GDP予想7.3%増 選挙に向けモディ首相に追い風―【私の論評】インド経済の堅調な成長、中国経済は体制が変わらなければ今後数十年低迷

 インド、23年度GDP予想7.3%増 選挙に向けモディ首相に追い風

まとめ

インドの経済成長率は2023年度も堅調に推移すると予想されている。これは、モディ政権にとって追い風となり、選挙での勝利につながる可能性があると見られる。


インド統計局は2023年度のインド国内総生産(GDP)が前年度比7.3%増になるとの予想を発表。これは主要経済大国の中で最も高い成長率となり、今年5月までに見込まれている選挙を控えてモディ首相にとって追い風となる。

統計局は、この予想は2023年度の早期見通しであり、経済指標の精度向上や実際の税収、補助金の支出などが今後の改定に影響を与える可能性があると説明している。

インド準備銀行(RBI)は昨年12月に2023年度のGDPが7%増になると予想し、従来見通しの6.5%から引き上げている。

インドの経済成長率は2022年度が7.2%、2021年度は8.7%だった。

2023年7-9月期は前年同期比で7.6%増、4-6月期は7.8%増えていた。

【私の論評】インド経済の堅調な成長、中国経済は体制が変わらなければ今後数十年低迷

中国の成長率は2024年も4.5%を超える可能性はあるでしょう。しかし、それ以降の成長は、中国政府の大規模な市場改革の成否にかかっているといえます。ただ、中国のGDPはこのブログでも述べてきたようにほとんどあてになりません。

ただ、出鱈目であったにしても、ある程度整合性をもった数値を出さなければならないので、実数値は全く信用できないにしても、推移はある程度みることはできるでしょう。


まとめ
インド経済は、モディ政権による経済改革や人口増加の恩恵を受け、堅調な成長を続けている。一方、中国経済は、ゼロ・コロナ政策の転換や中所得国の罠への陥落、国際金融のトリレンマなどにより、今後数十年低迷し続ける可能性が高まっている。
以下にインドの経済成長の推移の表を掲載します。

2020-21年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済成長率が大きく落ち込みました。しかし、その後は回復基調にあり、2022-23年度は7.2%と、主要経済大国の中で最も高い成長率となりました。2023-24年度も、7.3%の成長率が見込まれており、インド経済の堅調な成長が続くと予想されています。

なお、インドの経済成長率は、2021-22年度から2023-24年度にかけて、大きく上昇しています。これは、モディ政権による経済改革や、人口増加による労働力供給の増加などが要因と考えられます。

モディ首相と安倍首相

モディ政権の経済政策には、貧困対策やデジタル・インディアを含めて、前UPA政権が手掛けた政策を引き継ぎ、その焼き直しを図ったものが多く含まれています。倒産破産法(IBC)の成立、さらには憲法改正を伴う物品・サービス税(GST)の導入に漕ぎつけたことは、インドの経済政策に新たな一頁を付け加えたものとして評価されています。また、モディ政権は、製造業や雇用のさらなる拡大を目指しています。

モディ政権は、製造業や雇用の拡大を目指して、多数の政策を実施しています。例えば、第1次モディ政権下で発表された「Make in India」政策は、製造業の割合を2022年までに25%に引き上げ、5年間で1億人の新規雇用を創出することを目標としています。

また、第2次モディ政権では、法人税の約10%の引き下げを発表するなど、事業環境の整備を進めると同時に、重点分野を絞った税制優遇、人材育成等の実施を計画しています. さらに、第2次モディ政権は、エレクトロニクスやEV・電池製造分野でも段階的製造プログラム(PMP)を導入し、国内製造を促す見込みです。

一方中国経済は、ひどい状況に陥っています。中国経済にとっての2024年の課題は、GDPの成長率ではなく、その先の成長の持続性であるといえます。

中国の成長率は2024年も4.5%を超える可能性はあるでしょう。しかし、それ以降の成長は、中国政府の大規模な市場改革の成否にかかっているといえます。ただ、中国のGDPはこのブログでも述べてきたようにほとんどあてになりません。

ただ、出鱈目であったにしても、ある程度整合性をもった数値を出さなければならないので、実数値は全く信用できないにしても、推移はある程度みることはできるでしょう。

このブログでも何度か指摘してきたように、中国は経済発展により1人当たりのGDPが中程度の水準(中所得:約1万ドル)に達したましたが、その発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷する「中所得国の罠」に陥る可能性があります。

中所得国の罠に関しては、産油国などの特殊事情があるいくつかの例外はあるものの、ほぼ例がなく多くの国々がこの罠にはまっており、中国だけが例外になることはあり得ません。

特に、中国においては、再び経済成長するためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が必要不可欠なのですが、現在の中国共産党の体制ではほぼ不可能です。

中国は、1978年の改革開放以来、数十年間、世界で最も急成長を遂げた主要経済国の一つとなりました。1991年から2011年の間、毎年10.5%の成長を続け、その後も2021年まで10年間の平均は6.7%でした。ただし、これも実数は出鱈目の可能性がありますが、推移に関してはある程度信用しても良いとは思います。

しかし、2022年の暮れ、中国政府の厳格な「ゼロ・コロナ」政策が転換され、2023年に期待された経済回復は強い逆風にさらされました。

ロイター通信によると、コロナ後の中国経済は、消費者の消費回復、海外投資の再開、製造業の再稼働、住宅販売の安定など、さまざまな好材料が期待されていました。しかし、実際には、中国人消費者は不況に備えて貯蓄を増やし、外国企業は資金撤退を加速、製造業は西側諸国からの需要減退に直面、地方政府の財政は不安定になり、大手不動産会社は相次いで債務不履行に陥りました。

こうした状況を受け、一部の経済学者は、日本がバブル崩壊後に経験した「失われた数十年」との類似点を指摘しています。ただ、日本の場合は、このブログでも指摘してきたように、バブル崩壊そのものが、日銀官僚や財務官僚の誤謬によるものであり、正しいマクロ経済運営をしていれば、そもそも崩壊はなかっといえますが、現状の中国は違います。

また、中国政府が10年前に不動産開発主導の発展から内需主導型の成長に経済を移行すべきだったが、それを怠ったと批判する声もありますが、これもかなり難しかったと考えられます。

なぜなら、従来から指摘してきたように、中国は国際金融のトリレンマにもはまっており、これを現在の中国共産党による体制では、変えることは難しいからです。これにより、中国人民銀行は、独立した金融政策が行えない状況に陥っています。

中国政府は、こうした課題を克服するため、消費を拡大し、経済の不動産依存を減らすと宣言。金融機関に対し、不動産開発からハイテク業界への融資に転換するよう指導しています。

しかし、中国政府がこれらの課題を解決するには、より大胆な構造改革が必要です。具体的には、固定相場制から変動相場制への移行、金融システムの改革、民間企業の権利の拡大、市場競争の促進などが必要不可欠です。

中国政府がこれらの改革に成功すれば、中国経済は新たな成長軌道に乗ることができるでしょう。しかし、失敗すれば、中国は「中所得国の罠」に陥り、世界経済の成長を牽引する役割を失うでしょう。現在の中国の体制では、これはできないでしょう。

そうなると、今の体制である限り、今後中国経済は数十年にわたって低迷し続けるでしょう。いつか中国経済が米国経済を超すといわれていましたが、現状ではそのようなことは全く考えられません。

インド経済は、これからも飛躍的に伸び、米国や日本、EU経済もこれからもある程度は伸び続け、その他の国々も、中所得国の罠や国際金融のトリレンマにはまっていない国々や、これからそれにはまることを防ぐ国は成長を続けるでしょうが、そうではない国々は中国を含めて低迷し続けることになるでしょう。

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2023年8月28日月曜日

中国の若者失業率 過去最高―【私の論評】中国内で、無能で手前勝手な中国政府への不満はさらに高まる(゚д゚)!

中国の若者失業率 過去最高

まとめ
  • 中国の若年失業率は過去最高を記録し、その実態はさらに深刻である。
  • 家賃の高騰や経済の停滞が、新卒者の就職難に拍車をかけている。
  • 中国政府は、若年失業率の発表を停止した。


中国の若年失業率は、2023年6月に21.3%と過去最高を記録した。これは、2020年から3年間続いた新型コロナの流行によるものである。

北京大学の張丹丹准教授は、3月時点で、中国の本当の青年失業率は最大46.5%に達すると指摘した。これは、非労働者である「寝そべり」や「ニート」をすべて失業者と見なした場合の数字である。

最近、家賃の高騰と経済の停滞に直面し、新卒者が増えているという。実際、2022年度卒業生の47%近くが、学業を終えてから6ヶ月以内に実家へ戻ったという。

8月15日、中国国家統計局は青年失業率の発表を暫定的に中止すると発表した。中国外務省は、統計改善の努力の一環として、関連部門が統計指標を調整・削減するのは普通の事だと開き直った。しかし、海外SNS上では、中国の公的な経済データの透明性に対する疑問の声が広がっている。

【私の論評】無能で手前勝手な中国政府への不満はさらに高まる(゚д゚)!

まとめ

  • 雇用は、マクロ経済学において最も重要な指標である。
  • 日本の安倍政権は、金融緩和によって雇用を改善し、政権の安定につなげた。
  • 中国は、国際金融のトリレンマによって、独立した金融政策ができない。そのため、雇用が悪化し、社会不安が高まっている。
  • 中国政府は、雇用改善のために金融緩和を実施すべきだが、権威主義的支配を維持するためにそれをしない。
  • 中国の若者の失業率は高く、彼らは政府への不満を抱いている。
  • 日本は、中国の迷惑電話に対して毅然と対応すべきだが、動静を冷静に見守ることも重要である。

マクロ経済学では、政府の経済政策の中で、最も重要なのは雇用であるとされています。他の指標が悪くても、雇用さえ良ければ、政府の経済政策は及第点であるとされます。

これは、日本の憲政史上で最長となった安倍政権の経済対策をみれば、理解できます。

日本の憲政史上で最長となった安倍政権

安倍政権下においては、結果として二度も消費税増税が行われました。しかし、安倍政権の経済政策におけるいわゆる3つの矢のうちの、黒田日銀総裁総裁時代の日銀では当初は異次元の包括的金融緩和が実施され、その後もイールドカープ・コントロールを導入するなどの後退局面はあったものの、金融緩和自体は継続されました。

そのため、安倍政権時代にはかなり雇用が改善されました。特に新卒者の雇用は劇的に改善されました。そのため、多くの若者が雇用の改善をリアルタイムで認識することができ、若者こそが日銀の金融緩和による雇用改善の最大の、受益者になったといえます。これが若者の安倍政権支持につながったとみられます。

雇用の改善は若者以外の国民にも良い影響を及ぼし、これが安倍政権が憲政史上最長の政権になったことの原動力の一つになったのは間違いありません。

金融緩和は現在の植田日銀総裁も継続しています。ただ、長期金利の上昇を容認するYCCの運用柔軟化策を決定し、実質的に利上げともみられるようなことをしています。今後はどうなるかはわかりません。安易な金融緩和政策の変更は、厳に慎むべきです。そうでないと、日本も雇用が悪化し、円高を招きせっかく回復しかけている輸出産業を毀損することになりかねません。

雇用の劇的改善を喜ぶ日本の若者 AI生成画像

雇用はそれだけ重要なのです。しかし、最近の中国では雇用が悪化するばかりで、改善される兆しはありません。これは、習近平政権の経済対策は、失敗であることを明確に示しています。

これには、多くのメディアが様々に現象面だけを捉え、説明していますが、いくら現象面を多数あげたにしても、これだけの雇用の悪化とそれを政府が改善できない根本要因は理解できません。

その根本要因とは、国際金融のトリレンマです。これによって、中国人民銀行は、独立した金融政策ができない状況にあります。実施すれば、キャピタルフライトやインフレの加速などに見舞われ、やりたくてもできないのです。

マクロ経済学の初歩理論では、いかなる国においても、中央銀行が金融緩和をしてインフレ率を数%でも高めることができれば、その他は何もせずとも、瞬時に大量の雇用が生まれることを示しています。

日本では、数百万、中国であれば、数千万人の雇用が生まれるかもしれません。実際の雇用はその時々で様々な影響があるので、数字を一般化することはできませんが、大きな括りでは、そのようなことがいえます。

実際アベノミクスの金融緩和政策においては、数百万の雇用が生まれています。

だからこそ、中国人民銀行は、アベノミクスのような異次元の包括的金融緩和をすぐにも実施すべきなのですが、先にも述べたように、中国人民銀行はそれができない状況にあるのです。

中国人民銀行が国際金融のトリレンマから脱して、人民銀行が独立した金融政策を取り戻すには、変動相場制に移行したり、資本の移動をさらに自由化するなどの対策をすべきなのですが、中国共産党はそれをしません。

それはなぜなのでしょうか。

中国共産党は、金融政策や通貨評価など、中国経済のあらゆる側面をコントロールすることに重きを置いています。変動相場制と資本フローの開放は、彼らの支配力を低下させるからです。

人民元が割安になることで、中国の輸出品の価格が安くなり、経済成長が促進されることになります。変動相場制は人民元が値上がりし、輸出企業に打撃を与えるリスクがあります。

開放的な資本フローが中国経済と金融システムを不安定化させることを恐れているという面もあります。急激な資本流出は、他国の新興市場でも危機を引き起こしています。

経済と金融システムのコントロールを緩めることは、中国共産党の権威主義的支配を脅かすことになります。中国共産党は権力を手放したくないし、社会が不安定になるリスクも冒したくないのです。

強力な国有企業や輸出企業は、現状を維持するよう中国共産党に働きかけているとみられます。たとえ経済全体が苦しくなっても、彼らは現在の政策から利益を得ることができます。

中国共産党は、急激な自由市場への変化よりも、緩やかな国家統制の改革の方が良いと考えているとみられます。しかし、彼らのいわゆる "改革 "とやらは依然として政府の介入と操作を伴います。要するに、中国共産党は、自らの統治の正当性維持しようとして躍起なのですが、結果として、中国経済は毀損され続けることになるのです。

これだけ雇用が悪化していると、これに対する国民の憤怒のマグマが煮えたぎるのは当然のーことと考えられます。私は、福島県などの飲食店などに「処理水」に関しての嫌がらせ電話が増えている背景にはこのようなこともあると思います。

上の記事では、中国の本当の青年失業率は最大46.5%に達すると指摘もあり。これは、非労働者である「寝そべり」や「ニート」含めた数字であるとされていますが、これらの人たちは、政府の無能に怒りを感じながらも、何もできずにいると思います。ただ、時間的な余裕は有り余っています。そこで、「処理水」による日本批判などに容易に扇動されて、「迷惑電話」かけている可能性もあると思います。これは、あくまで私の推測です。

中国の寝そべり族

ただ、このようなことをすれば、一時的には不満の発散になるかもしれませんが、失業状態という事実には変わりないですし、それに中国から日本に電話をかければ、ダイヤル直通通話〔通話料 約120 円/分〕、クレジットカードによる通話料支払い〔通話料 約 40~160 円/分〕です。失業者が一時的な不満の発散のためにこれを負担するのは、割高だと思います。

それにこれは、日本のKDDIなどの電話会社にも利益をもたらすことになります。

これでは、無能で手前勝手な政府への不満はさらに高まることが予想されます。

日本政府としては、中国に対して毅然と対応すべきであり、何らかの対応手段を用意しておくべきですが、しばらく動静を冷静に見守り対処するという姿勢も同時に重要だと思います。

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2023年8月19日土曜日

中国恒大、再建見通せず 不動産不況が深刻化―【私の論評】なぜ恒大は最初に中国ではなく、米国で破産申請を行ったのか(゚д゚)!

 中国恒大、再建見通せず 不動産不況が深刻化


 中国不動産開発大手の中国恒大集団が、米国で破産を申請しました。資産が差し押さえられるリスクなどを減らし、債務再編に向けた債権者との協議を加速させる狙いがあります。しかし、中国では不動産不況が深刻化しており、経営再建に向けた道のりは見通せません。

 恒大は政府が融資規制を導入した影響で資金繰りが行き詰まり、2021年に実質的なデフォルト(債務不履行)に陥りました。負債総額は22年末時点で2兆4374億元(約49兆円)。この一部を占める外貨建てについては、今年3月に再編案を公表しましたが、多くの債権者が受け入れを拒んでいた。米破産法の適用申請で、今後の交渉を有利に進める考えとみられます。

 しかし、中国では景気の冷え込みを背景に、住宅販売が一段と低迷。碧桂園など恒大以外の大手デベロッパーの経営危機も相次いで表面化しています。人口減少も始まり、不動産需要はさらに落ち込むとの見方は多く、経営環境の好転は望めない状況です。

 今回の恒大の破産申請は、中国不動産市場の深刻な危機を象徴しています。中国政府は恒大の債務再編を支援していますが、その効果は不透明です。恒大の破産の影響は中国にとどまらず、世界経済にも波及する可能性があります。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください

【私の論評】なぜ恒大は最初に中国ではなく、米国で破産申請を行ったのか(゚д゚)!

日本や、欧米などの先進国では、状況により一概にはいえないですが、破産手続きはまずは本国で行う事が多いと思います。しかし、恒大グループは、米国で破産申請し、中国で破産申請していません。その理由は、以下のようなものと考えられます。 

1. 中国共産党政府は恒大グループに対して大きな支配力と影響力を持っている可能性が高いです。中国で破産を申請すると、資産を失ったり、権威主義政権から処罰を受けたりするリスクがあります。米国の法制度はより公平で、財産権も保護されているため、再建のためには米国の方が安全とみられます。

2. 中国の不動産市場は基本的に政府によって支えられており、真の自由市場資本主義ではありません。国内で破産を申請して問題の規模を認めることは、共産党にとって恥辱です。米国で静かに対処し、中国で面子を保つ方がやりやすいのでしょう。

3. 米国の破産法はより寛大で、企業にセカンドチャンスを与えるように制度設計されています。中国ではより懲罰的かもしれないです。というより法律が曖昧なので、厳しい懲罰になるのか、そうではないか、予め判断がつきません。恒大は、米国の破産法の下で再建し、生き残る方が有利だと考えたのでしょう。

4. 負債、資産、投資などに関連した複雑な財務上の理由があり、中国での申請を避けつつ、米国での申請を戦略的に実行しやすくしている可能性があります。

破産申請した中国恒大集団 AI生成臥像

そもそも、中国の法制度と金融制度が不透明です。そもそも、中国の憲法は共産党の下に位置づけられており、その憲法に基づいて制定される法律は、すべてが中国共産党の下に位置づけられており、極論すると、いかなる法律も中国共産党によってその時々で恣意的に運用できることになります。

その中でも、特に破産法はまだ発展途上で不透明です。企業は中国で破産を申請した場合、何が起こるか正確にはわかりません。

中国の会計基準は緩く、企業の財務開示は限られています。企業のバランスシートや負債を正確に把握することは難しいです。そのため、負債や資産の全容が不明確となり、破産手続きは厄介なものとなります。

中国の破産案件では、政府が大きな役割を果たしています。政府は頻繁に破綻した国有企業を救済措置で支えています。また、党に恥をかかせた民間企業を罰することもあります。政治は法の支配に優先するのです。

 中国のシステムには腐敗が蔓延しています。企業は、破産を申請すれば、その資産が汚職官僚によって私利私欲のために横領されるのではないかと心配しています。米国の法律はこのような事態を防ぐのに有効です。

中国では検閲があり、メディアの自由がないため、企業の破産の詳細が一般に公開されないことが多いです。透明性の欠如はシステムに対する信頼を損なうことになます。

 さらに、複雑なシャドーバンキングシステムと企業間のつながりが、中国の倒産を厄介なものにしています。ある企業の破綻が、複雑に絡み合った他の企業にどのような影響を与えるかわからないのです。

法律や金融システムの不透明さ、政府の介入、汚職、透明性の欠如、シャドーバンキング、これらすべてが中国の倒産プロセスの不確実性を高めています。米国のシステムは、完全無欠ではないにせよ、明らかに透明性が高く、法の支配に支配されています。

破産した企業に群がる債権者達 AI生成画像

破産プロセスですら、曖昧なのですから、中国のシステムは全般的に不透明なので、経済や政府の財政の本当の状態を知ることはほとんど不可能です。

 中国の公式経済統計は信頼性が低く、政治的目的のために操作されていると広く信じられています。本当の成長率、債務水準、資産バブルなどは誰も知らないです。

中国の銀行システムは大部分が国家管理下にあります。政府は破綻した企業や地方政府を支えるために、銀行に不良債権を転嫁させることができます。このため、金融トラブルは水面下に隠されています。

中国の政府債務は巨額だと考えられますが、その詳細は不透明です。多くの債務は「帳簿外」もしくは隠されているようです。問題の規模は公式発表よりもさらに大きい可能性があります。

政府はパニックを避け、統制を維持するため、否定的な経済ニュースを一切報道しません。倒産、債務不履行、破綻の報告は検閲されます。そのため、部外者は知る由もありません。

政府が企業を管理するということは、国家の利益のために民間の資金や資産を実質的に徴用できるということです。これによって一時的に経済危機を回避することはできますが、資本の恣意的な再配分は長期的な損害をもたらすことになります。

中国の全体主義的権威主義体制は、権力と支配を何よりも重視します。経済問題が権力の掌握を脅かすのを防ぐためなら、嘘をついたり、データを操作したり、失敗した政策を二転三転させたりすることでも、何でもするでしょう。

中国経済は、公に知られているよりもはるかに深刻な状況にある可能性があります。そのシステムの不透明さと政府の情報統制の厳しさから、共産党は権力を危うくするのを避けるために、負債の規模を隠している可能性があります。

北京の支配者たちにとって、真実はかなり不愉快なものかもしれないですが、わたしたちは、中国共産党の意図を読み解き、懐疑的であり続けなければならないです。

システムの不透明性に困惑する中国人 AI生成画像

もう10年以上も前から、中国経済は崩壊するとか破綻するとかいわれてきましたが、仮にそれが本当だったとしても、中国共産党の工作により、巧みに長期間にわたり隠蔽されてきた可能性があります。

このようなことが繰り返されてきたので、中国経済は回復し再び成長するのではという幻想を多くの人が抱くようになっていたようです。しかし、そうではないことが今回の中国恒大集団による、米国での破産申請によって暴露されたともいえると思います。

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2023年8月17日木曜日

中国のデフレ圧力、欧米中銀にとって朗報=PIMCO―【私の論評】中国の長期デフレにより、世界のマクロ・バランスが元に戻る可能性がでてきた(゚д゚)!

中国のデフレ圧力、欧米中銀にとって朗報=PIMCO

中国のデフレ圧力  AI生成画像

 中国のデフレ圧力が世界市場に波及する可能性があると、米大手債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は分析した。中国経済の悪化は、中国国内のインフレを緩やかにし、中国製品が供給される市場でもインフレ鈍化が進む可能性があると指摘している。

 PIMCOのエコノミスト兼マネジング・ディレクター、ティファニー・ワイルディング氏は、「中国におけるデフレの持続は先進国市場に波及する可能性が高い。人民元安と在庫・売上高比率の上昇により、中国製品の海外価格が下落するからだ。先進国の中銀はこのような展開を歓迎するだろう」と述べている。また、「通常の遅れを考えると、デフレの波及は世界の消費者市場に影響を与え始めたばかりであり、今後数四半期にわたって値下げが加速する可能性が高い」としている。

 中国にとって、デフレ圧力がさらに強まるリスクは今後数カ月の政府の政策にかかっている。内需拡大に向けた十分な財政刺激策はインフレを再加速させるかもしれないが、政策措置の遅れや不十分さは下降スパイラルにつながる可能性があるとした。

 中国国家統計局が今月9日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.3%下落し、2021年2月以来2年5カ月ぶりにマイナスとなった。長引く不動産不況や輸出入の減少で中国経済が減速する中、デフレ圧力が強まっているという懸念を助長する内容となった。

 一方、オックスフォード・エコノミクスは16日付のメモで、中国の2023年国内総生産(GDP)成長率予測をコンセンサスを下回る5.1%に引き下げた。「デフレ、低調な貿易、ローン需要の急減、不動産セクターの麻痺がリスク選好度を低下させる」とした。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国の長期デフレにより、世界のマクロバランスが元に戻る可能性がでてきた(゚д゚)!

上の記事は、ロイターのものですが、ブルームバークも似たような趣旨の記事を掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国経済の苦境、世界の物価抑制を支援も-悪いことばかりではないか

この記事の要約を以下に掲載します。

中国の物価下落は、短期的には世界市場にプラスの影響をもたらす可能性があると、投資マネジャーらは分析しています。中国は世界最大の製造国であり、同国の物価下落は、原材料や製品の価格を下押しし、インフレを抑制する効果をもたらすと考えられます。また、中国の経済成長が鈍化すれば、商品の輸入需要が減少し、原油価格の下落につながる可能性があります。

しかし、中国の物価下落は、長期的には世界市場にマイナスの影響をもたらす可能性があります。中国の経済成長が鈍化すれば、世界の経済成長も鈍化すると予想されます。また、中国の債務問題が深刻化すれば、世界金融市場に混乱を引き起こす可能性があります。

中国の経済動向は、今後の世界経済の行方を左右する重要な要素の一つです。投資家は、中国の経済動向を注視し、適切な投資判断を行う必要があります。
中国のデフレが中国製品を輸入する国々でインフレを抑制する効果があるというのは間違いないでしょう。

このブログでも、このようなことはすでに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風に―【私の論評】中国長期経済停滞で、世界の「長期需要不足」は終焉?米FRBのインフレ対策の追い風はその前兆か(゚д゚)!
FRBジェローム・パウエル議長

この記事より、一部を引用します。
中国経済は 2023 年に予想以上に減速している。成長予測は引き下げられ、インフレ率は低下している。

中国の景気減速は世界経済と市場に悪影響を及ぼしている。 一次産品の価格は下落しており、商品の需要は減少している。 現状では、世界的にインフレの軌道修正が課題となっている。

中国経済の減速は、米国連邦準備制度理事会とそのジェローム・パウエル議長にとって救いとなっている。

今のところ、中国経済の減速により、米国を含む世界全体のインフレ圧力が低下している。しかし、中国の政策担当者が成長刺激を決定すれば、状況は変わる可能性がある。
結局、米国は7月に0.25%の利上げを実施していますが、これは十分予期されたサプライズなしの利上げでした。中国のデフレによって、この利上げはかなりタイミング的に遅めになったのは間違いないです。中国のデフレがされに深化すれば、今度は利下げも視野に入ってくる可能性があります。

このように、直近の中国のデフレは、インフレ傾向の欧米はもとより、日本にとっても朗報といえます。

ただ中国の景気低迷は、日本や欧米などにとってそれ以上の朗報をもたらす可能性があります。

それは、上の引用記事でも述べました。その部分を以下に引用します。
1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えました。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきました。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しません。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近いです。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくいのです。
ローレンス・サマーズ
 というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができず、ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうのです。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由になってきました。

まさしく、現在中国のデフレは、インフレ傾向の欧米中銀にとって、朗報となっているのです。そうして、このブログでも何度か指摘した通り、現在の中国は国際金融のトリレンマによって、独立した金融政策を実施できない状況になっているため、中国は今後長きにわたって、景気が回復する見込みはありません。

そうなると、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰により変わってしまった世界全体のマクロ・バランスが元に戻る可能性がでてきたといえます。

ただし、戻ったとしても、中国のいわゆる貯蓄過剰が是正されなければ、中国の景気が回復すれば、元の木阿弥に戻ってしまうことになります。そうならないように、各国政府は中国に内需の拡大を促すことを要求すべきでしょう。

中国の内需拡大 AI生成画像

米国のGDPに占める個人消費は約70%台です。日欧は60%台です。中国は30%台です。中国には、内需を拡大できる余地がかなりあります。内需を拡大する方法はいくらでもありますが、一時的ではなく永続的にするためには、やはり民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通れません。

内需に関しては、いずれの国でも内需は能力限度内でなるべく大きくすべきです。内需の大きい国は自国内で経済を回していくことがしやすいです。そのため、世界経済の変化の影響を受けにくいです。無論、能力を超えて内需を拡大しようとしても、それは返って悪影響を及ぼすだけです。

これが、現代の中国の状況です。内需が伸びるような政策を打ったうえで、その内需に応えるために、国内産業が様々な物資やサービスを提供するようにすれば良いものを、中国はその逆をやりました。貯蓄過剰は、物資やサービスの供給過剰をもたらし、経済が悪化して、デフレが深化しつつあります。また、世界経済にも、「長期需要不足」、「長期停滞」をもたらしてきたのです。

中国の内需拡大を実現することが、中国にとっても、世界にとっても良いことなのですが、中共が体制を変えることは期待できません。ただ中国が現在の体制を変えないなら、中国の経済は低迷し続けることになり、やはり世界全体のマクロ・バランスが元に戻る可能性は否定できない状況になってきたといえます。

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2023年8月11日金曜日

「爆買い」復活か、2000億円押し上げ効果も 中国の訪日団体旅行解禁で―【私の論評】中国のインバウンド消費に過度に依存することは、日本にリスクをもたらす(゚д゚)!

「爆買い」復活か、2000億円押し上げ効果も 中国の訪日団体旅行解禁で

銀座で爆買いする中国人観光客 AI生成画像

 中国からの団体旅行が10日に再開され、新型コロナ前の訪日客に占める中国人の割合は約30%で、その復活により訪日客の消費額が増加し、関連業界は「爆買い」現象の復活に期待している。

 政府観光局の推計によると、中国からの訪日客はまだコロナ前の2割に過ぎず、訪日客全体の回復は70%弱。しかし、訪日客の消費額は元年同期の約90%に回復しており、円安も購買力を増している要因。

 今回の解禁で年間消費額は最大で4.1兆円に達し、政府目標の5兆円に向けた動きも見られる。

 訪日客を受け入れる業界も前向きで、航空会社や宿泊業などが需要に合わせて対応し、受け入れ態勢の整備を進める必要があるとされている。関連株も市場で上昇した。

【私の論評】中国のインバウンド消費に過度に依存することは、日本にリスクをもたらす(゚д゚)!

中国人は確かに外国訪問中にお金を使うのが好きですが、ゼロコロナ政策の失敗や経済政策が有効ではなかったようで、最近中国経済はかなりの打撃を受けています。

中国への海外からの直接投資は緩やかに減っていましたが、今年第2・四半期にそのペースが急速に加速、25年前の統計開始以来の水準に落ち込みました。長年の基調が変化しつつあるとの観測が広がっています。中国の観光業がすぐにパンデミック以前のレベルに戻るかどうかは疑問です。

中産階級は圧迫され、多くの人が職を失っているため、たとえ旅行制限が解除されたとしても、日本のような場所への贅沢な休暇は望めないかもしれないです。中国人の爆買い現象は、中国人が可処分所得を豊富に持ち、新たに得た富を誇示したいという欲求があるかどうかに依存します。

中国の富豪 AI生成画像

現在の中国経済の混乱を考えると、その可能性は低いと思われます。日本は、観光産業を活性化させるために、自由に消費する中国人観光客の大量流入に頼りすぎない方が賢明でしょう。

中国人が爆買い現象のような目立ちたがりやの消費ができるようになるまでには、まだ時間がかかるかもしれません。中国の観光産業が一部の人々が期待しているほど大きな景気浮揚効果をもたらすかどうかについては、懐疑的になるざるを得ません。

中国の共産党はコロナ政策や不景気に対する政策を誤り国の経済に大きな打撃を与えました。たとえ規制が解除されたとしても、中国国民は特定の産業が期待しているほど旅行や買い物をする手段も意欲もないかもしれなです。

しかし、時間が解決してくれるかもしれないです。もしかしたら、中国の回復への道のりは予想よりも早いかもしれないです。ただ、私自身は未だ懐疑的にならざるを得ないです。

どの国にとっても、他国、特に中国のような国に経済的に過度に依存するのは賢明ではないです。中国政府は信頼できないパートナーであることが証明されており、経済はより不安定になりやすいです。

もし日本が自国経済を押し上げるために、中国の観光や消費に頼っているとしたら、中国経済が失速したり、両国間の関係が悪化したりしたときに、自分たちがトラブルに巻き込まれる可能性があります。

実際、日本やEUなどの国々では、GDPの実に60%が個人消費によるものであり、さらに米国では70%が個人消費によるものであり、観光に関しても、国内の旅行者の消費のほうが中国人によるインバウンド消費よりもはるかに大きいです。この点を忘れるべきではありません。

それでも外国人のインバウンド消費に期待するというのなら、日本は、より多様な観光資源を開発し、特定の国に過度に依存しない方が良いです。リスクを軽減するために、様々な国からの観光客を誘致すべきです。

また、国内の観光と消費の活性化にも力を入れるべきです。外国人観光客に過度に依存する経済は、自らの運命を完全にコントロールできていない経済です。日本には、文化、料理、自然の美しさなど、観光地として提供できるものがたくさんあります。

文化、料理、自然の美しさなど、観光地として提供できるリソースが豊富な日本 AI生成画

近年、中国人観光客がその魅力を高く評価していますが、日本はアジアや欧米諸国にとって最高の旅行スポットとして売り込むことを優先すべきです。

観光の基盤を多様化することで、より安定し、コントロールしやすくなります。中国への過度の依存は、中国経済が今後数年で苦戦したり、地政学的な問題が生じて中国人の旅行意欲が抑制されたり、中共により遮断された場合に、かえって大きな危機をまねくことになります。

日本は中国人観光客を受け入れるのはやぶさかではありませんが、より広範で多様な観光戦略を犠牲すべきではありません。"Don't put all your eggs in one basket."(一つのカゴに多くの卵を入れるのは愚の骨頂)という諺が欧米にありますが、まさにその通りです。一つのカゴを落としてしまえば、全部の卵が割れてしまいます、いくつかのカゴに卵を分散して入れておけば、カゴを一つ落としても全部の卵を失うことはありません。


中国のインバウンド消費に過度に依存することは、日本にとってリスクをもたらしますが、それはより幅広い国籍の観光客を開拓し、国内の観光基盤を強化することで軽減できます。

どこかの国に依存しすぎた経済(この場合は日本経済の一部の観光産業など)は、安定性も自立性もないです。中庸とバランスが目標であるべきです。

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2023年8月2日水曜日

ノーベル賞経済学者が中国経済の問題点を指摘…「日本のようにはならない。もっと悪くなるだろう」―【私の論評】中共が政権を握っている限り、今後中国が真の経済的潜在力を発揮することはない(゚д゚)!

ノーベル賞経済学者が中国経済の問題点を指摘…「日本のようにはならない。もっと悪くなるだろう」

ノーベル賞経済学者 ポール・クルーグマン

 ノーベル賞受賞経済学者のポール・クルーグマンは、中国経済が大きな減速に向かっていると警鐘を鳴らしている。彼は、中国の経済パフォーマンスは、日本が1990年代に経験した経済的苦境と似ていると指摘している。

 日本経済が低迷した原因は、少子高齢化による労働人口の減少、アンバランスな経済構造、そしてパンデミックによる需要の低迷などだ。中国経済もこれらの問題を抱えている。

 特に、中国の労働人口は急速に減少している。中国政府のデータによると、前四半期の若年層の失業率は21%と過去最悪を記録した。このため、中国経済への投資は低迷し、債務残高が増加している。

 また、中国経済はアンバランスな経済構造にも苦しんでいる。製造業は5月に縮小し、中国経済の約5分の1を占める不動産も停滞している。

 こうした要因から、中国の将来について警鐘を鳴らしている専門家は少なくない。とりわけ、「中所得国の罠」に陥る可能性があるとクルーグマンは指摘している。これは新興国に見られる現象で、ある時点まで経済が急成長し、その後、停滞するというものだ。

 中国が景気減速に向かうとすれば、興味深いのは、日本の「社会的結束力」を再現できるかどうかだ。これは大衆の苦しみや社会的不安定を伴わずに低成長を管理する能力でだ。中国がこのように不安定な権威主義政権のもとで、これをやり遂げることができるという兆候はあるのだろうか。

 クルーグマンは2023年7月25日に公開されたニューヨーク・タイムズへの寄稿文にこう記している。

 「中国は最近失速しているように見えることから、将来的に日本のような道を歩むのではないかと言う人もいる。それに対する私の答えは『おそらくそうはならない。中国はもっと悪くなるだろう』だ」

 他の専門家たちは、中国経済の回復がいまだ期待外れであることから、中国経済が危機に瀕していると警告している。あるシンクタンクによると、需要が低迷を続ける中、中国の再開に向けての取り組みは「失敗する運命にある」とし、また別の専門家は再開の試みを「見せかけ」と評している。

 中国経済の行方は不透明だが、世界経済に大きな影響を与える可能性は十分にある。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい人は元記事をご覧ください。

【私の論評】中共が政権を握っている限り、今後中国が真の経済的潜在力を発揮することはない(゚д゚)!

昨日このブログでは、独立した金融政策が実施できない中国は、すでにバランスシート不況に陥ったか近日中に陥る可能性を指摘しました。そうして、一度パランスシート不況に陥ると、独立した金融政策ができないがゆえに、かなり長期にわたって不況から立ち直るのは難しいだろうと指摘しました。

中国のパランスシート不況 AI生成画像

こうしたことになれば、クルーグマン氏が指摘するように、「中所得国の罠」に陥り、長期間不況から脱することがでないどころか、過去の日本よりももっと悪くなることになりそうです。

過去の日本では、クルーグマン指摘した状況を克服するために、積極財政、金融緩和策をして不況から抜け出せばよかったものを、官僚の誤謬により、緊縮財政、金融引締を行い、平成年間のほとんどが超インフレ・超円高であったのが、安倍政権が成立してから、金融緩和に転じました。

積極財政に関しては、安倍政権下ですら、二度の消費税増税を行い、受給ギャップを埋めることができなかったのですが、安倍・菅政権合計で100兆円の補正予算を増税なしで組み、コロナ対策を実施したこと、他国が利上げなどの金融引締をするなか、日本は金融緩和を続けたため、円安傾向が続き輸出産業が好調で経済の回復の兆しがみえるようになりました。

しかし、独立した金融政策ができない中国では、日本のようなことはできません。そうなる、今後中国経済は過去の日本よりもさらに悪くなるのは間違いなさそうです。

中所得国の罠 AI生成画像

ちなみに「中所得国の罠」についても、このブログでは何度か言及しています。これは開発経済学で言われていることです。

中所得国の罠とは、開発途上国が一定程度の経済発展を遂げた後、成長が鈍化し、高所得国と呼ばれる水準には届かなくなる状態ないし傾向を指す通称です。

中所得国の罠は、いくつかの原因が考えられます。

労働コストの上昇:中所得国になると、労働コストが上昇します。これにより、低賃金労働力に依存した製造業が競争力を失い、経済成長が鈍化する可能性があります。
技術革新の遅れ:中所得国になると、技術革新が遅れる傾向があります。これは、研究開発への投資が減少したり、優秀な人材が流出したりすることが原因です。
インフラの未整備:中所得国になると、インフラが未整備になっていることがあります。これは、経済成長に必要な条件が整っていないことを意味し、経済成長の妨げとなります。

中所得国の罠一万ドル(≒100万円)の壁ということがいわれています。これは、一人当たりGDPが1万ドルに達した国が、中所得国の罠に陥りやすいという考え方です。これは、1万ドルの壁を超えた国は、低賃金労働力に依存した製造業が競争力を失い、技術革新が遅れ、インフラが未整備になるなどの問題に直面する可能性があるためです。

現在の中国は一人あたりのGDPが一万ドルを若干超えたくらいの状況です。ほとんどの途上国が一人あたりのGDPが1万ドルを若干超えたくらいのところで、成長がとまり、一万ドル前後に踏みとどまっています。

中所得国の罠は、非常に厳しいものであり、数少ない先進国以外ではほとんどの途上国が結局この壁を乗り越えられていません。唯一乗り越えて先進国の仲間入りをしたのは、かつての日本です。その逆に先進国から、発展途上国になったのはアルゼンチンだけです。その他例外も若干ありますが、産油国などのかなりの特殊事情によるものです。その理由は、中所得国の罠を回避するためには、長期的な視点と、多くの資金が必要となるからです。

また、中所得国の罠を回避するためには、政府と民間企業等が協力して取り組む必要がありますが、途上国では、政府と民間企業が協力して取り組むことが難しい事が多いです。それは、中国も例外ではありません。現在の中国は、民間企業の行動を規制しています。

習近平

中国がいわゆる「中所得の罠」を回避するためには、個人の力を解き放ち、政府の規制を減らし、自由で公正な貿易に市場を開放する必要があります。そのためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が必要不可欠です。それができれば、少なくとも台湾と同程度の経済(一人あたりのGDPは約3万ドル)になるかもしれません。そうなれば、中国のGDPは国単位では、確実に米国を超えることになります。しかし、中共が政権を握っている限りそれは不可能であり、今後中国が真の経済的潜在力を発揮することはないでしょう。

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2023年8月1日火曜日

中国の若年失業率、46.5%に達した可能性 研究者が指摘―【私の論評】独立した金融政策が実施できない中国は、すでにバランスシート不況に陥ったか近日中に陥る(゚д゚)!

中国の若年失業率、46.5%に達した可能性 研究者が指摘

中国の若者の失業率の高さ AI生成画像

 中国では、研究者によって若者の失業率が3月に50%近くに達した可能性が指摘され、公式統計をめぐる議論が再び燃え上がり、労働市場の低迷が注目されている。

 国家統計局は、16-24歳の失業率が19.7%であると発表したが、北京大学の張丹丹副教授は、学生でない1600万人の非学生の中には、家で遊んでいる人々も含まれている可能性があるため、失業率は46.5%にまで上がる可能性があると指摘している。

 張氏の研究は、製造業が盛んな地域での新型コロナウイルスの影響に焦点を当てており、若者は製造業の主要労働者であるため、より深刻な打撃を受けたと述べている。

 さらに、家庭教師、不動産、オンラインプラットフォーム分野の規制が、若い従業員や高学歴者に不公平な打撃を与えたと指摘している。

 中国の国営新華社通信は、第1四半期に中国経済が好調なスタートを切り、その勢いが第2四半期でも続いていると主張し、バランスシート不況の見方を否定している。

【私の論評】独立した金融政策が実施できない中国は、すでにバランスシート不況に陥ったか近日中に陥る(゚д゚)!

中国の若者の失業率はかなり深刻なようです。上の記事で、1600万人の非学生の中には、遊んでいる人々も含まれている可能性を指摘していますが、この「遊んでいる人」とは、中国で一時流行語ともなった「寝そべり族」も多く含まれているものと考えられます。

「寝そべり族」とは、大学を卒業しても、就職できず、何もしておらず、一日中寝そべっている人のことをいいます。


上の記事では、中国はバランスシート不況に陥っているかもしれないことを指摘しています。バランスシート不況とは、家計や企業がデレバレッジ、つまり負債を返済しているときに起こる景気後退の一種です。債務残高が急増し、その後に資産価格が下落した場合に起こります。資産価格が下落すると担保の価値が下がり、企業や家計の借入が困難になります。その結果、企業や家計は負債を返済するために支出を削減し、デレバレッジの悪循環に陥る可能性があります。

中国がバランスシート不況に陥っている可能性を示す証拠はいくつかあります。例えば、中国の家計の債務残高対GDP比は近年着実に上昇しています。加えて、中国の不動産価値が下落しており、企業や家計の担保価値が低下しています。その結果、一部のエコノミストは、中国がバランスシート不況の時代に入りつつあると見ています。

以下は、中国のバランスシート不況の可能性について論じた情報源です。

Bloomberg: Inventor of 'Balance-Sheet Recession' Says China Is Now in One: https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-06-29/inventor-of-balance-sheet-recession-says-china-is-now-in-one

Fortune: China is 'entering a balance sheet recession,' economist says: https://fortune.com/2023/06/30/china-balance-sheet-recession-nomura-institute-chief-economist/

WSJ: Is China Mired in a 'Balance Sheet Recession'?: https://www.wsj.com/articles/is-china-mired-in-a-balance-sheet-recession-f00fadda

中国がバランスシート不況に陥っているかどうかについては、エコノミストの間でコンセンサスが得られていないことに注意する必要があります。一部のエコノミストは、決定的な判断を下すにはまだ証拠が十分でないと考えています。しかし、バランスシート不況の可能性は中国経済にとって深刻な懸念であり、政策決定者が注視していく必要があります。

中国のバランスシート不況 AI生成画像

ただ、このブログでは何度か指摘しているように、中国は国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策ができない状況になっているとみられています。独立した金融政策ができなければ、失業率が増したからといって、金融緩和によって、雇用を創出することはできません。だかこそ、若者の失業率が深刻化しているのでしょう。

というより、通常雇用が悪化した場合、若者の失業者が増えるのが普通です。中国もまさにその状況にあるとみられます。

国際金融のトリレンマとは、経済学における概念で、ある国が3つの政策目標を同時に達成することはできないというものです。3つとは、以下のものです。
自由な資本移動: 自由な資本移動:資本が制限なく自由に国家間を移動できることです。
固定為替レート: これは、自国の通貨価値が他の通貨または通貨バスケットに固定されていることを意味します。
独立した金融政策: これは、その国の中央銀行が独自の金利を設定したり、量的緩和ができることを意味します。
国がこれら3つの目標をすべて達成しようとすれば、必然的にトレードオフに直面することになります。例えば、固定為替レートと自由な資本移動を望むのであれば、金融政策に対するコントロールをある程度放棄しなければならないです。中国はまさに現在この状況にあります。

為替レートは固定されているのですが、資本移動はある程度自由ではありますが、制限はあります。つまり、中国の中央銀行は独自の金融緩和ができない状況にあります。

この状況は、中国が雇用を改善できないだけではなく、バランスシート不況に陥る可能性を高めています。為替レートが固定されている国は、輸出競争力を高めるために通貨を切り下げることができないです。つまり、経済成長を刺激するためには、財政刺激策など他の手段に頼らざるを得ないです。しかし、政府がすでに多額の財政赤字を抱えている場合、これ以上の財政刺激策を講じる余裕はない可能性が高いです。

その結果、中国経済は経済成長を達成するためにデレバレッジに頼らざるを得なくなるかもしれないです。家計や企業が債務返済のために支出を減らすため、バランスシート不況につながる可能性があります。

この考えを裏付ける事実もあります。例えば、中国の家計の債務残高対GDP比はここ数年右肩上がりです。加えて、中国の不動産価値が下落しており、企業や家計の担保価値が低下していのす。その結果、一部のエコノミストは、中国がバランスシート不況の時代に入りつつあると見ています。

結論として、中国はすでにバランスシート不況に陥っているか、近い将来陥る可能性が高いと私は考えています。国際金融のトリレンマは、中国が独立した金融政策をすることを難しくしており、このことが中国がバランスシート不況に陥る可能性を高めているのです。

そうして、中国がバランスシート不況から抜け出るにはかなりの時間を要すると考えられます。なぜなら、バランスシート不況は、中央銀行が独立した金融政策が実施できたとしても、回復が難しい経済状況だからです。しかし、独立した金融政策ができなければ、さらに難しいです。

独立した金融政策できれば、金利を下げることや量的緩和より経済成長を刺激することができるからです。中央銀行が緩和策をとれば、企業や家計はお金を借りやすくなり、投資や支出の増加につながります。これは経済成長を後押しし、バランスシート不況からの回復につながります。

しかし、為替レートが固定され、資本移動が自由な国では、金利を下げたり量的緩和で経済成長を刺激することはできないです。中央銀行が緩和策をとれば、資本が流入して通貨高になるからです。その結果、輸出は割高になり、輸入は割安になります。

その結果、国は財政刺激策など、経済成長を刺激する他の手段に頼らざるを得なくなります。しかし、政府がすでに多額の財政赤字を抱えている場合、これ以上の財政刺激策を講じる余裕はないかもしれないです。

このため、独立した金融政策なしにバランスシート不況から回復するのはより難しいのです。経済成長を刺激するために他の手段に頼らざるを得なくなりますが、それだけでは回復につながらないかもしれないです。

さらに、バランスシート不況はデレバレッジの悪循環につながる可能性があります。企業や家計が負債返済のために支出を減らすと、経済活動の低下につながるからです。これがさらに支出の減少を招き、経済活動のさらなる低下を招くことです。

その結果、独立した金融政策ができない中国におけるバランスシート不況は、回復が非常に難しい状況となります。ここしばらく中国の経済は停滞し続けるでしょう。少なくとも、10年〜20年はそうなる可能性が高いです。ただ、中国が金融システムの透明性を高めたり、変動相場制に移行するなどの構造改革を行えば、回復ははやまる可能性はありまずか、それはかなり難しいです。

中国のバランスシート不況が長期化すれば、中国経済に多くの悪影響を及ぼす可能性があります。

経済成長の低下: バランスシート不況が長期化すれば、経済成長率が低下する可能性が高いです。企業や家計の投資や消費が減り、需要の減少につながるからです。
失業率の上昇: 経済成長の低下は失業率の上昇にもつながります。企業が将来に自信を持てなければ、新たな労働者を雇用する可能性が低くなるからです。
生活水準の低下: バランスシート不況が長期化すれば、中国国民の生活水準が低下する可能性が高いです。人々が商品やサービスに使うお金が減り、職を失う可能性も高くなるからです。
政治的不安定: バランスシート不況が長引けば、政治的な不安定にもつながりかねないです。政府の経済運営に不満があれば、人々が抗議行動を起こしやすくなるからです
これらの悪影響に加えて、バランスシート不況の長期化は世界経済にも多くの悪影響を及ぼす可能性があります。以下がその例です。

輸出需要の減少: 輸出需要の減少:中国の経済成長が低下すれば、他国の輸出需要が減少する可能性が高いです。これは、中国に商品を輸出している国々の経済に打撃を与えるでしょう。
世界経済成長の低下: 中国からの輸出需要の減少は、世界経済成長の低下につながる可能性があります。なぜなら、中国は多くの国にとって主要な貿易相手国であり、中国経済の減速は世界経済に波及するからです。

ただ、中国の不況は世界にとって必ずしも悪いことばかりではないかもしれません。これについては、以前もこのブログに述べました

1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えました。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきました。

供給過多の世界 AI生成画像

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しません。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

この貯蓄過剰が是正され、よって多くの国々おいて供給過剰の状況が是正される可能性がでてきたのです。要するに、一昔前のように、インフレ政策がかなりやりやすい状況になるかもしれないのです。ただ、これはどうなるかまだわかりません。そちらのほうに向かうように、各国は努力すべきと思うのですが、今のところそのような議論はされていないようです。

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2023年7月18日火曜日

中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風に―【私の論評】中国長期経済停滞で、世界の「長期需要不足」は終焉?米FRBのインフレ対策の追い風はその前兆か(゚д゚)!

中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風に

中国経済は 2023 年に予想以上に減速している。成長予測は引き下げられ、インフレ率は低下している。 

 中国の景気減速は世界経済と市場に悪影響を及ぼしている。 一次産品の価格は下落しており、商品の需要は減少している。 現状では、世界的にインフレの軌道修正が課題となっている。 

中国経済の減速は、米国連邦準備制度理事会とそのジェローム・パウエル議長にとって救いとなっている。

FRBジェローム・パウエル議長

中国経済の減速は、近年政策決定に欠陥があった FRBに対する積極的な利上げ継続への圧力を軽減しています。

中国ではデフレの兆候が見られ、消費者物価と生産者物価が多くの分野で下落している。 中国の内需は著しく減速している。 中国の輸出に対する外需も急減した。 

中国の景気減速は、今年の力強い中国の成長を期待していた米国および世界経済にとって悪いニュースである。 

しかし、中国は依然として金融政策と財政政策を通じて経済を刺激する可能性がある。 

中国は、債務水準の削減と通貨安の回避に努めるため、大規模な景気刺激策の実施を躊躇する可能性がある。 積極的な刺激策は、中国の不動産セクターでさらなる問題を引き起こし、米国との緊張を高める可能性がある。 

今のところ、中国経済の減速により、米国を含む世界全体のインフレ圧力が低下している。しかし、中国の政策担当者が成長刺激を決定すれば、状況は変わる可能性がある。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】中国長期経済停滞で、世界の「長期需要不足」は終焉?米FRBのインフレ対策の追い風はその前兆か(゚д゚)!

上の記事では、中国経済の減速により、近年政策決定に欠陥があったFRBに対する積極的な利上げ継続への圧力が弱まり、米FRBの反金融政策の追い風になったと主張しています。

私は、この主張に賛成します。 中国経済の減速は確かにFRBにある程度の安心感をもたらし、インフレ抑制の取り組みを助けているようです。

 FRBは近年、2019年の過度な利下げや物価上昇への対応の遅れなど、いくつかの重大な政策ミスを犯していました。 FRBは巻き返しを図る必要があり、積極的な利上げは米国経済を過度に減速させるリスクがあります。 

米国の高インフレは収まりつつある

中国からの需要鈍化もあり、世界的にインフレ圧力が緩和しているため、FRBはより柔軟性を持ち、以前の予想ほど急速に高い利上げをする必要がなくなりました。 これは、FRBが引き締めすぎて米国の成長に深刻なダメージを与えるリスクを軽減するのに役立つでしょう。 

 一次産品価格の下落、米国製品に対する需要の減少、中国経済の減速による生産者コストの低下はすべて、米国のインフレを最近の高水準から引き下げるのに役立っています。 このディスインフレ傾向はFRBが物価安定を達成するのに役立っています。 

中国経済が依然として好景気であったとすれば、世界的なインフレ圧力は依然として高止まりする可能性が高く、FRBはインフレ率を目標に戻すためにより積極的な行動をとらざるを得なくなるでしょう。 

中国経済の減速は米国や世界経済にとって理想的ではないですが、インフレ抑制という狭い目標にとってはFRBに短期的な利益をもたらすことになります。  FRBがインフレ抑制に向けて取り組むべき道はまだ残っていますが、中国経済の苦境により、当面はFRBの仕事が少なくとも少しは楽になりつつあるのは間違いないようです。

中国の政策担当者が成長刺激を決定すれば、状況は変わる可能性もあります。ただ、従来からこのブログで述べているように、中国は国際金融のトリレンマにより独立した金融政策ができない状況にあるため、中国はしばらく過去のようには成長刺激策をとれない可能性が高いと思われます。

中国が独立した金融政策を実施できなければ、政府は従来のように成長を刺激することは当面困難になるでしょう。 これは中国経済の減速の長期化につながり、世界の成長に悪影響を与える可能性があります。

国際金融のトリレンマでは、国は次の 3 つの政策を同時に実施することはできないとされています。できるのは、せいぜい2つです。
  • 固定為替レート
  • 独立した金融政策
  • 自由な資本の流れ
中国では固定為替レートが採用されており、人民元の価値は米ドルに固定されています。 このため、中国政府が中国の輸出品を安くし、成長を促進する人民元切り下げを行うことが困難になっています。量的緩和も難しいです。

また、中国は資本移動が比較的自由であり、これはお金が比較的簡単に国に出入りできることを意味します。 このため、中国政府が成長を促す金利引き上げも困難になっています。

その結果、中国は困難な状況に陥っています。 政府が従来の手段で成長を刺激しようとすると、人民元の切り下げや資本規制につながる可能性が高いです。 これらの措置はいずれも中国経済と世界経済に悪影響を与えるでしょう。

中国が成長を刺激する最善の方法は、構造改革に注力することです。 これは、経済における国家の役割を軽減し、金融セクターの効率を改善し、企業にとってより平等な競争条件を作り出すことを意味します。 これらの改革の実施には時間がかかりますが、長期的にはより持続可能となるでしょう。

一方、米国を含む多くの国は、中国経済の減速を前提に困難な状況を乗り切ることを余儀なくされるでしょう。 世界経済に大きな打撃を与えないよう、政府と中央銀行間の慎重な調整が必要となります。

中国経済の減速

ただ、習近平は、習近平が変動相場制への移行などの構造改革に乗り出すことに消極的である理由はいくつか考えられます。

政治的考慮事項。 経済を管理する国家の力を信じている共産主義指導者です。 同氏はまた、構造改革が不安定や社会不安につながることを懸念してます。 その結果、同氏が近い将来に大規模な構造改革に着手する可能性は低いです。

さらに、中国経済は依然として比較的健全なペースで成長しているため、直ちに大規模な改革が必要というわけでありません。 実際、一部の経済学者は、構造改革は短期的には実際に中国経済に悪影響を与える可能性があると主張しています。

中国は米国やその他の国から経済改革を求める圧力の増大に直面しています。 しかし、習近平は、そうすれば世界における中国の立場が弱まると信じているため、これらの国々に大きな譲歩をする可能性は低いです。

結局のところ、構造改革に着手するかどうかの決定は政治的なものです。 習近平氏は決定を下す前に、改革の経済的、政治的コストと利益を比較検討する必要があるでしょう。

いずれにせよ、中国経済は、ここしばらくは、低迷を続けるのは間違いないです。いずれの国も今後は、これを前提として製剤政策を実行する必要があります。

ただ、長期にわたる中国経済の減速は、デメリットばかりではありません。

1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えました。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきました。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しません。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近いです。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくいのです。

ローレンス・サマーズ

というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができず、ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうのです。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由になってきました。

ローレンス・サマーズの長期停滞理論は、世界経済が長期的な低成長時代に直面していると主張するマクロ経済理論です。 この理論は、世界経済が貯蓄を増やし、投資を減らしている原因は数多くあるという考えに基づいています。 これらの要因には次のものが含まれます。

先進国における人口の高齢化。 人は年齢を重ねるにつれて、より多くの貯蓄をし、より少ない支出をする傾向があります。 これは、彼らが老後のために資産を蓄積しており、新たな借金を負う可能性が低いためです。

不平等の拡大。 ここ数十年で不平等が拡大するにつれ、中産階級から富裕層への収入の移動が起きているとされています。 富裕層は中産階級よりも多く貯蓄する傾向があるため、この変化が世界的な貯蓄の増加につながっています。

投資機会の減少。 ここ数十年で世界経済の統合が進み、先進国における投資機会の減少につながっています。 これは、先進国では新興国に比べて高い投資収益率を得る機会が少ないためです。

これらの要因により、世界的な貯蓄過剰、つまり投資よりも貯蓄が多い状況が生じています。 この供給過剰により金利が低く抑えられ、経済成長の刺激が困難になっているのです。

サマーズの理論は物議を醸していますが、近年ではある程度の支持を得ています。 2016年、IMFは世界経済が長期停滞の時期に直面していると主張する報告書を発表しました。 報告書は政府に対し、インフラ投資や減税など経済成長を刺激する措置を講じるよう求めましたた。

サマーズの理論が正しいかどうかを判断するのはまだ時期尚早です。 しかし、今後数年間に世界経済が直面する課題を理解するのに役立つ可能性があるため、これは検討する価値のある理論といえます。そうして、中国の経済の停滞がある程度続けば、この理論の妥当性をみる、機会が訪れるかもしれません。それは、そう遠くない時期に実現するかもしれません。

中国の経済の停滞が続けば、「長期需要不足」の時代は終わるのではないでしょうか。そうなれば、今後は、財政拡張や金融緩和を相当大胆に行えば、従来のように、景気加熱やインフレが起きやすくなることを意味します。

中国経済の減速は、世界の各国のマクロ経済の状況が一昔前に戻ることを意味するかもしれません。そうなれば、「長期需要不足」、「長期停滞」は過去のものとなり、多くの国々で、経済政策が実施しやすくなるかもしれません。米国での中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風となっている事実は、その魁なのかもしれません。

現在まで、世界の各国のマクロ経済状況は、緊縮財政を行えば、経済が後退する一方で、金融緩和や積極財政をするかしないかというのが常道となりつつあったのが(これを全く認識していないのが財務省と旧タイプの日銀官僚)、一昔前のように、経済が落ち込めば、金融緩和をし、積極財政を行い、景気が加熱すれば、金融引締をし、緊縮財政をするというように、比較的簡単にコントロールできるようになるのではないでしょうか。

考えてみると、一人あたりのGDPがいまだかなり低いにもかかわらず、中国の貯蓄過剰という状況が異常だったのであり、中国経済がしばらく停滞を続ければ、世界経済はまた元にもどることになるかもしれません。

今後中国は、国内で貯蓄過剰が起きないように、国民の所得をあげ購買力の向上を目指し、内需を拡大することによって、発展することもできるのではないかと思います。それをしなかったからこそ、貯蓄過剰になったのです。

それとともに、中国は独立した金融政策を取り戻すために、変動相場制に移行したり、国際標準の中央銀行の独立性を確保したりして、金融システムの透明性や改革を図るべきです。そうして、民主化、政治と経済の分離、法治国家化もすすめるべきです。

何のことはないです。今まで世界は中国の歪な経済構造に翻弄されてきたのであり、それが中国の長期経済の停滞によって是正される方向に動き出したのかもしれません。

ただ、先に述べたような方向性で、中国が国内の経済改革を実行すれば、良いですが、中国が改革を実行しなければ、経済の停滞は長く続き、最終的に毛沢東時代の水準に戻ることになるかもしれません。

ただ、中国の長期経済停滞が続けば、先進国などは一時的には、その悪影響を受けるかもしれませんが、「長期需要不足」の状況が解消され、経済運営は実施しやすくなるでしょう。ただ、以上で述べたことは、様々な状況に左右されることが予想され、その通りになるとは限りません。

ただ、米国で中国の経済の減速が、インフレ対策の追い風になっているように、中国の経済の減速は悪いことばかりではなさそうです。

日本を含む先進国は、良い方向に向くように一致協力し、世界経済の秩序を取り戻すとともに、中国に体制の転換を促すべきです。

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2023年7月12日水曜日

中国の罠にはまった玉城デニー知事、河野洋平氏ら訪中団 仕掛けられた「沖縄分断」に…米国とズレた甘い対応の日本政府―【私の論評】1980年代、中共は日本はやがて消滅するとみていた、それを変えたのが安倍元総理!この流れはもう誰にも変えられない(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

2019年 玉城デニー沖縄県知事と、安倍総理

 日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)の訪中団に参加していた沖縄県の玉城デニー知事は先週、中国共産党序列2位の李強首相と会談した。

 しかし、玉城知事は尖閣諸島の問題に触れず、海警局船の連日の周辺海域侵入を黙認したと受け取られかねる状況になった。

 玉城知事は中国訪問時の査証(ビザ)の手続き簡素化や直行便再開を要請したが、米国務省は中国への渡航を再考すべきだと警告し、意見の相違が浮き彫りになっている。

 訪中団を歓待した習近平政権の狙いは政府と沖縄県を分断し、中国の影響力を高めることだと指摘されている。中国にとって沖縄は海洋進出にとって重要な拠点であり、玉城知事の訪中はその戦略の一環とみられている。

 玉城氏が訪中団に参加するのは2回目であり、中国側からの待遇は相当なものです。今回の訪問は台湾有事に備えた中国側の策略の一環とも考えられます。

 松野博一官房長官は6日の記者会見で、今回の河野氏と玉城氏が訪中し、李首相と会談したことに関し「歓迎する」と述べた。本来は「地方知事の行動にはコメントしない」とすべきでした。

 政府の対応には疑問が呈されており、米国は中国渡航について警戒を強めている。

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【私の論評】1980年代、中共は日本はやがて消滅するとみていた、それを変えたのが安倍元総理!この流れはもう誰にも変えられない(゚д゚)!

地球儀を俯瞰する外交 AI生成画像

都道府県知事などの外国訪問は国際親善に限定されるべきものであり、外交は外務省、場合によっては総理大臣が行うべきものです。

これにはいくつかの理由があります。第一に、外務省は効果的な外交を行うために必要な専門知識と経験を持っています。彼らは国際関係や異文化のニュアンスを深く理解しています。また、関係を構築し、日本の国益を増進するために利用できますし、世界中に張り巡らされた人脈も持っています。

第二に、外務省は国際舞台で日本を代表する責任があります。つまり、外務省には日本を代表して約束する権限があります。都道府県知事が外国の元首と約束をしても、日本政府を拘束するものではないです。これは混乱や誤解を招きかねないです。

最後に、外交政策に関しては、統一見解を維持することが重要です。日本政府の異なる部分が異なる国に対して異なる約束をすることは、国際舞台における日本の立場を弱めることになりかねないです。

もちろん、都道府県知事が外交目的で外国を訪問することが適切な場合もあります。例えば、当該国の地域の首長(道府県の知事や、市町村・特別区の長が)集まるサミットに知事が招待された場合、日本の利益を有意義な形で代表することができるかもしれないです。しかし、こうしたケースは例外であって、ルールではありません。

一般的に、外交は外務省が担当するのがベストです。そうすることで、日本の利益が効果的に代表され、国際舞台での統一戦線が確保されます。

外交とは、国家間の関係を築き、紛争を解決する技術です。世界における自国の地位を向上させ、自国の利益を促進し、他国とのパートナーシップを構築するのに役立つため、どの首相にとっても不可欠な手段です。

首相にとって外交には多くの利点があります。第一に、国際舞台での国のイメージ向上に役立ちます。首相が世界の指導者たちと会談し、関係を築くことは、その国が尊敬され、世界の舞台で活躍しているというメッセージを送ることになります。これは投資、観光、貿易の誘致に役立ちます。

第二に、外交は国の利益を促進するのに役立ちます。首相が他国と交渉する際、自国に有利な合意を取り付けようとすることができます。例えば、より良い貿易取引、新市場へのアクセス、安全保障問題での協力などを得ることができるかもしれないです。

第三に、外交は他国とのパートナーシップの構築に役立ちます。首相が他の世界の指導者と良好な関係を築けば、共通の目標に向かって協力しやすくなります。これは、気候変動、テロリズム、核拡散といった世界的な課題に取り組む際にも役立ちます。

ここで、安倍首相の外交について振り返っておきます。

2013年の訪米ではオバマ大統領と会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)などさまざまな問題について話し合いました。

2014年の訪中では習近平国家主席と会談し、両国関係改善の方策について話し合いました。

2015年のインド訪問では、ナレンドラ・モディ首相と会談し、両国間の経済関係を強化する方法について話し合いました。


これらは、首相にとって外交がもたらすメリットのほんの一例にすぎないです。関係を築き、利益を促進し、パートナーシップを構築することで、外交は世界における国の地位を向上させ、目標を達成するのに役立ちます。

1956年から1987年まで中華人民共和国の副首相を務め、中国政府で最も権力のある人物の一人とされていた中国高官「陳雲」はオーストラリアを訪問したときに、日本についてある発言をしました。

その発言は、「日本という国はいずれ消滅する」というものです。彼は1982年、オーストラリアを訪問した際にこの発言をしました。彼は中国と日本の経済的な対立について語ったとされ、日本は「紙の虎」であり、いずれ崩壊するだろうと述べたとされています。

陳氏の発言は日本に対する脅しと広く解釈され、日本国内で大きな怒りを買いました。しかし、陳氏は後に、日本が文字通り消滅するという意味ではなく、いずれ経済的な優位性を失うという意味であったと、自身の発言を明らかにしています。

陳雲氏の発言は、中国と日本の長年のライバル関係を思い起こさせるものです。両国には複雑な歴史があり、経済問題や領土問題でしばしば対立してきました。しかし近年、両国は関係改善に努めてきました。

2008年、日中両国は自由貿易協定に調印し、気候変動や核不拡散などの問題でも協力しています。両国が歴史的な対立を乗り越え、真に平和的で協力的な関係を築けるかどうかは、まだわからないです。

ただ、陳雲は、「日本という国はいずれ消滅」すると語っており、現在からみると当時の日本野与党自民党はかなりリベラル色が色濃く、そのままであれば、確かにいずれ中国に何らかの形で飲み込まれてもおかしくはない状態でした。陳雲はそのことを語ったとみられます。そうして、当時の自民党の主流であったリベラル派のお粗末ぶりをみて、彼らは与しやすく、御しやすく本気でそう思っていたことでしよう。

このことに脅威を抱いた、安倍晋三氏が首相になってから、特に第二次安倍政権においては、安倍首相は地球儀を俯瞰する外交といわれたように、様々な国を訪問し、あれよあれよという間に、中国包囲網を構築してしまいました。しかも、中国にこれに対抗する暇も与えず、急速に構築したのです。

この包囲網は現在では、米国をはじめとする西側諸国を中心として、他の地域も巻き込んだ大規模なものになっています。これは、構造的変化といっても良いようなものになっています。

この流れを変えることは難しく、中国はかなり脅威を感じていることでしょう。だからこそデニー知事の訪問は、渡りに船であったのでしょう。

渡りに船 AI生成画像

ただ、安倍総理は、在任中に日本の同盟国や、親しい国々と中国のとの関係を、完璧に変えてしまいました。それも、根底から、質的に完璧に変えてしまいました。今や、中国が世界秩序を変えて、自分たちに都合の良い秩序を樹立しようと試みていることは、世界中の国々が理解するようになりました。これは安倍外交の成果です。

この流れは、デニー知事などの努力で到底変えられるものではありません。それは、韓国の文在寅前大統領が、北朝鮮との関係を改善しようとしたものの、結局のところ文は、金正恩掌で転がされ続け、結局金づるにされただけで、最後にかえって関係が悪化したことをみても理解できます。仮にデニー知事に賛同して、自民党の現在の重鎮たちがそれを変えようとしても、多くの国々がそれを許さないでしょう。 

ただ、韓国で文在寅が台頭したように、自民党のリベラル派やデニー知事などが台頭すれば、結局大きな流れは変えられないでしょうが、それでもかなり後退することになる可能性があることには留意すべきでしよう。

まさに、中国はこれを狙っているのでしょう。文在寅時代の韓国のように時代の潮流に乗り遅れることだけは避けるべきです。

せっかく安倍晋三氏によって、日本は存在感を増し世界の中でリーダーシップを発揮できるようになったのですから、これからも世界の中で先頭を走り続けるべきです。

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