2012年7月25日水曜日

クリエイティブな良い仕事をするには、無意識に任せてなるべく放置すべし?―【私の論評】確かにそうだが、それには条件がある!!

クリエイティブな良い仕事をするには、無意識に任せてなるべく放置すべし?:


誰しも「先延ばしにする」ことを否定的にとらえがちですが、特にクリエイティブな仕事や課題の場合は、生産的に取り組めるようになるまで「待っている」というのもままあります。果たしてそれは良いことなのでしょうか? モンティ・パイソンのメンバーとして有名なイギリスの喜劇俳優であり、素晴らしい脚本家でもあるジョン・クリーズ(John Cleese)さんが、その問いに答えるようなクリエイティブに関するアイデアを教えてくれました。 ブログ「Co.Create」に、カンヌ国際映画祭で開かれた、クリエイティビティに関するクリーズさんのレッスンレポートがありました。そのうちのひとつは、サセックス大学の心理学教授Brian Bates氏の、クリエイティブでない建築家とクリエイティブな建築家を見分ける研究についてのものでした。 Photo by Rennett Stowe

ジョン・クリーズ氏

この記事の詳細はこちらから!!

【私の論評】確かにそうだが、それには条件がある!!

このブログでは、クリエーティビテイ(創造性)に関しては時々掲載しています。それは、自分のためでもあり、購読者の皆様のためです。最近では、ますます、知識労働が増える傾向にあります。知識労働には、創造性はかかせません。

結論からいうと、上の記事の「クリエイティブな良い仕事をするには、無意識に任せてなるべく放置」は、私も正しいと思います。しかし、これには二つ条件があると思います。

独創的な建築物
その条件とは、たとえば、建築家なら、まず、それこそ数十年建築家の仕事を続けてきて、建築に関するありとあらゆる知識が、特に今からつめ込まなくても、頭の中に一杯詰まっていて、たいていのことは、調べなくても既にほとんどを知っているという条件です。もう一つが、放置する期間は、なるべくリラックスして、睡眠時間を十分とるということです。



これなら、先の仮定は、ものの見事にあてはまると思います。しかし、そうではない人は、そもそも、これは、無理です。建築の仕事をはじめたばかりの人で、建築に関する情報や、知識が入っていない人、特に実務経験がほとんどない人が、「無意識にまかせてなるべく放置する」ようなことをしても、ほとんど閃きなど浮かんでこず、全く仕事にならないことでしょう。


しかし、このような人でも、この条件を満たせば、アイディアが沸々と湧いてくることがあります。それは、どういうことかといえば、上の経験豊富な建築家のような状況を人為的につくってしまうのです。どういうことかといえば、経験のない人が、建築の仕事、それも相当クリエーティブイブな仕事を要するタスクをするにおいては、まずは、徹底的に関連の建築に関する事柄について、徹底的に、人の話しを聴いたり、似たような建築物を実際に訪れたり、あるいは、インターネットや書籍などの情報を徹底的に頭にこれでもか、これでもかと詰め込むのです。


そうして、その後すぐに、建築の企画にとりかからず、上のように、しばらく放置しておくのです。それが、一晩なのか、一日なのか、あるいはもっと長いのかは、別にして、とにかく、一定以上の期間を必ずおくということが重要です。そうして、おいている間は、なるべく意識的にそのことを考えないようにます。これは、企画をする人たちの間では良くいわれている「考えを寝かせる」ということにあたります。


許されるなら、頭に関連事項の詰め込みが終わった直後には、すぐに寝て、何日になるかは、企画の内容にもよりますが、大きな企画の場合であれば、数日間は寝かせるのです。できれば、何もしないで自分の好きに遊んでいるのが一番良いでしょう。そうして、この間は、意図的に十分睡眠をとるようにします。このようなことが許されない人の場合は、その間、雑用など、企画にほとんど関係ないことを意図して意識して行うようにして、「考えを寝かせる」のです。この場合でも、無論、雑用がすんだらすぐ帰るようにして、家などでリラックスして、早めに寝て睡眠時間を十分とるようにします。


そうして、一定期間がたってから、おもむろに、また企画にとりかかるのです。そうなると、まだ情報で足りない部分をさらに補強したり、新たなアイディアが浮かんで、思ってもみなかったことを思いついたりします。この「寝かす」ということをしないで、情報集めなどから、すぐに企画づくりにはしると、ほとんど陳腐なものしか生まれません。



それは、脳科学的にも証明されているものと思います。

脳科学者茂木健一郎氏が脳科学にもとづいて自身の仕事術を紹介した日経新聞のコラムがあります。その中で、<午前中が創造的な仕事をするゴールデンタイム>と語る氏によれば、<寝ている間に脳が無意識のうちに記憶を整理してくれ、体験の意味がより明確になり熟成してくる>からだといいます。

茂木健一郎氏
睡眠中における脳の無意識下の働きについては、養老孟子氏も述べています。その記事、探してみたのですが、すでに消去されていたので、私が覚えている範囲内で、以下に要約を掲載します。
「人間の脳は、意識するとせざるに関わらず、昼間目にしたものや聞いたものを記憶し、溜め込んでいる。また、思考し何らかの考えも蓄積する。そうして、脳内のエントロピーが増大した状態で夜を迎え、眠る。眠りながら脳が働き整理する」ということです。


養老孟子氏
私が上記リンクの養老氏のコラムを読んだのは5、6年前の10月だと記憶していますが、それ以来、目覚めた時が一番脳が整理された状態であることが分かったので、茂木氏のように仕事を朝型に切り替えました。実に効率がいいです。ただし、上にも述べたように、睡眠時間は十分にとることが前提です。また、茂木氏があるテレビで、複数のそれぞれの世界でトップクラスの人たちが、意図的に、企画のときに眠ることの重要性を示唆したテレビ番組もあり、脳科学的に茂木さんが、ますます、確信を深めました。


もう一つ実践していることは、無意識下の脳に意識的に働かせることです。
「無意識で意識的?」と完全に論理は破綻していますが、不思議とそれができるのできるのです。

眠りに入る直前、意識が少し遠のく瞬間に一つの命題を脳に与えておきます。例えば企画書で書きたいと思うようなテーマの断片をいくつか思い浮かべるのです。すると、眠りに落ちる瞬間までそのことを少し考えます。眠ったあとは無意識の脳に任せます。茂木氏や養老氏の言うような情報整理のプロセスを脳が行っているうちに、その命題と脳内の情報や記憶の断片が結びつきます。うまくいけば、目が覚めると何んらかの考えが浮かんでいます。ベッドサイドに茂木さんのようにパソコンはないですが、できるだけ早くパソコンに向かうか、必死にメモをとります。最近では、iPhoneでフリック入力で素早くメモをとるようにします。毎回うまくいくわけではありませんが、なれてくると結構、勝率が良くなります。


こんな話をすると、「眠っている間までそんなことをしていたら、気が休まらないでしょ?」と人に言われることがあります。しかし、養老氏は「この脳の働きを裏付けている最大の証拠は、寝ていても起きていても、脳が使っているエネルギー量は変わらないということだ」 と語っています。誰しも眠っている間も脳を動かしているのです。どうせなら、それを効率的に使った方がいいでしょう。これは一つのライフハックと言えると思います。騙されたと思って、今夜にでもお試しあれ。


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2012年7月24日火曜日

【日本の解き方】あまりにヒドい政府の“日本再生戦略”―【私の論評】今の政府や政治家は、自分の頭の上のハエを追えない人が、他人の世話を焼いているようなもの、自分がやるべきことに専念せよ!!

【日本の解き方】あまりにヒドい政府の“日本再生戦略”:



政府は「日本再生戦略」の原案を公表した。それは2020年までに環境や医療、観光など11の戦略分野で38の重点施策を掲げ、630万人の雇用を創るという政府の目玉の成長戦略だ。7月末までの閣議決定を目指しているという。

11分野を具体的にいえば、グリーン成長戦略、ライフ成長戦略、科学技術イノベーション・情報通信戦略、中小企業戦略、金融戦略、食農再生戦略、観光立国戦略、アジア太平洋経済戦略、生活・雇用戦略、人材育成戦略、国土・地域活力戦略。これはほぼ全省庁の守備範囲だ。


これだけ広範囲になると、「戦略」という名前がすたってしまう。戦略とは選択と集中が伴うものだが、政府のものは総花的で戦略の名に値しない。まるで、各省庁が予算獲得のために「一丁目一番地」(各省庁の優先政策事項)を束ねたものに見える。

・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・・

個別では一見もっともらしいことが、全体を見ると奇妙なことは雇用創出にもある。

人口減少の日本では雇用者数があまり増えない。となると、630万人の新規雇用を創出すると、別の産業で雇用者の減少になるだろう。630万人の雇用が創出されるということは、600万人くらいの雇用喪失が別の産業でありうるということになる。それはどのような産業なのか。政府原案では示されていない。そんな産業はわかるはずがない。

成長する産業としない産業が政府でわかるなら旧共産圏の計画経済は失敗しないはずだ。もし本当に政府が分かるなら苦労はない。

ちなみに、グリーン成長戦略は、50兆円市場で新規雇用140万人。労働分配率が6割として、新規雇用者の平均年収は2100万円になる。どうして「日本再生戦略」を書いた官僚が役所をやめて、そこに就職しないのだろうか。書いた本人はそのいい加減さを知っているからだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今の政府や政治家は、自分の頭の上のハエを追えない人が、他人の世話を焼いているようなもの、自分がやるべきことに専念せよ!!

上の記事で、高橋洋一氏は、「成長する産業としない産業が政府でわかるなら旧共産圏の計画経済は失敗しないはずだ。もし本当に政府が分かるなら苦労はない」と語っていますが、まったくその通りと思います。

成長する産業は、政府はおろか、優秀な民間企業でさえ、見抜けないことがあります。たとえば、あの世界を携帯電話で、席巻したNOKIAです。


ノキアが、実はスマホをアップルに先駆けて、開発していたことをWSJが伝えています。詳細は、WSJをご覧いただくものとして、以下にその記事の一部を掲載します。


スマホ戦略を誤ったノキア 膨らむ開発費、ユーザー動向つかめず
ノキアの開発チームは、アップルがスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」を発売する7年以上前に、ボタンが1つだけ付いたカラータッチスクリーン搭載の携帯電話を披露していた。端末を使ってレストランを探したり、レーシングゲームをしたり、口紅を注文するデモが行われた。1990年代後半にノキアがひそかに開発していたもう1つの魅力的な製品がタブレット端末だ。無線接続可能で、タッチスクリーンが搭載されていた。それら機能は全て大ヒットしているアップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」に今日搭載されているものだ。
「なんてこった」。ヌーボー氏は古いスライドを次々クリックしながら声を上げ、「われわれは完璧に仕上げていたのに」と語った。
ノキアの元デザイン責任者、フランク・ヌーボー氏は、アイフォーンを予期させるような試作品をノキアは既に開発していたと話す
いずれの製品も消費者の目に触れることはなかった。これらはノキアの企業文化の犠牲となった機器だ。研究にばかり多額の費用をつぎ込み、開発した画期的な製品を市場に投入するチャンスを無駄にしてきたのだ。
ノキアは1990年代にワイヤレス革命を主導し、世界をスマートフォン時代へといざなうことを目指した。そのスマートフォン時代が到来した今、ノキアは株価が落ち込み、数千人の従業員が職を失う事態に陥るなか、競争力ある製品の発売に向けて必死に取り組んでいる。
民間企業ですら、このような失敗をすることがあるわけですから、政府が成長する産業を見極めることなどほとんど不可能です。特に自由主義経済下では、そのようなことは誰もわからないというのが事実です。いろいろなタイプの企業が種々様々な工夫をして、その結果いずれかの事業がその時々の市場に適合うして、それが産業として伸びて行くというのが普通です。


スマホは、アップルがiPhoneで、現在の原型をつくりあげ、それを市場に投入しました。これが、たまたま、市場に適合していたため、それが、大ヒットして、今日につながっています。そうして、今では、iPhoneだけではなく、Android携帯なども様々の種類のものが、開発され、一大産業となっています。しかし、その影て、ノキアに限らず、ブルーベーリーその他、失敗しているところたくさんあります。それに、私としては、これら携帯電話に限らず、いまでは完璧に姿を消したPDSだって、電話機能さえつければ、現在のスマホと変わりないものがいくつもありました。


スマホの例でもわかるように、どの産業でも、いくつもの会社が、いくつもの新しい次世代のものを開発しており、そのうちの本の数社、場合によっては、1社だけが、次世代の産業を担って、大きく発展していのです。今日確かにアップルは大成功を収めましたが、何かがどこかで違っていれば、アップルがノキアのような目にあっていたかもしれないのです。


そんな自由主義経済下の競争において、政府が発展する産業を見抜けるわけはありません。政府はもともと、そのようなことをする機関ではありません。城山三郎氏の小説「官僚たちの夏」では、あたかも、通産省が日本の産業を主導してきたような扱いですが、あれは、幻想にすぎません。現実には、通産省主導で行ったことは、何一つ成功していません。大成功したのは、先送り戦術だけです。


それに、本来自由主義経済下の政府の役割は、こんなことをすることではありません。政府の役割は、新産業などが生まれやすいように、経済活動が活発になるように、法律を整えるだとか、規制を撤廃するとか、逆に規制を強化するとか、さらに、公共工事をするとか、安全保証などをして、いわゆるインフラ(基盤)を整えることです。このインフラづくりが政府の本命の仕事です。このインフラ上で活動して、成果をあげるのが、民間企業営利企業、非営利企業、その他の組織ということです。間違っても、政府が、インフラの上にのっかって、様々な事業を展開するようなことがあってはなりません。

女性ソ連兵
それを大規模に行ってきたのが、旧ソ連邦をはじめとする社会主義国であり、部分的に行ってきたのが、自由主義陣営による高福祉国家でした。旧ソ連邦をはじめとする、社会主義国家は、今日では全滅しました。また、ソ連邦に脅威を感じて高福祉国家をめざした国々は、その本家本元のイギリスでも財政負担があまりにも大きくなりすぎたので、取りやめました。一部まだ続けている国もありますが、それは、スウェーデンなどの人口数百万の比較的規模の小さい国々だけです。

旧ソ連邦の雰囲気を出した携帯電話ショップ
旧ソ連邦に関しては、その破綻は、すでに1950年代にアメリカの経済学者が予測していました。統計資料などからみて、その頃のソビエトの経済はいたって簡単で、いわゆる、投入物=生産物という具合で、付加価値がほとんどなく、戦後のソビエトの繁栄は、結局戦後に敗戦国からの資源などを大量に投入し、大量の生産物を得ていたというだけであって、このようなことは長くつづくはずがないと予測したのです。まさに、その通りになりました。

旧ソ連邦の版図

社会主義など魅力的に見え
るが過去のものに過ぎない
社会主義国の時代のソ連といういうと、私が覚えているのは、アイロンです。当時アイロンは、ソ連の独占国営企業がつくって市場に投入していて、ソ連国内では、輸入ものでないかぎり、ほぼすべて同じものが使われていました。しかも、確か、崩壊する直前のものでも、30年前につくられたそのままです。

計画経済なので、顧客ニーズやウォンツなどとは全く関係なく、政府による来年はいくつ必要になるであろうという予測のもと、それに従って生産して、市場に投入していただけだったのです。競争も何もないため、結局30年にわたって、モデルチェンジも行われなかったのだと思います。

政府がインフラづくりだけでなく、実際に産業活動をしても、できるのは、このようなことだけです。ソ連邦の計画経済ほどは規模は大きくありませんが、政府が、重点施策を実行して、投資をするのも、結局は社会主義国政策と同じようなものであり、結局失敗します。

自由主義経済下の日本政府は、日本再生のための、インフラ整備をすべきです。このインフラ整備の中には、当然のことながら、デフレ対策も含まれるべきです。これなしに、日本再生など考えられません。デフレ対策のためには、まずは、景気を良くしなければなりません。そのために、真っ先に政府がやるべきは、大規模な、財政出動と、金融緩和です。このなこともせずに、やみくもに増税しようとしたり、「日本再生戦略」をぶちあげるなど、とんでもありません。

何やら今の政府や政治家、自分の頭の上のハエも追えない人がやる必要もない他人の世話を焼いているようなものです。そんなことをしないで、本来自分たちがやるべき仕事に専念しろと言いたいです。そうして、何が自分たちの本当の仕事なのか、よくわかっていないのが、腐れ官僚たちなのだと思います。そう思うのは私だけでしょうか?

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2012年7月23日月曜日

相手の話を聴くときの9つのスキル~朝の読書『上から目線の扱い方』―【私の論評】組織内外のことはドラッカーに原点がある!!



職場の困った「何様」上司&部下には、こう対処しろ!本書の帯には、こんな言葉が躍ります。『「上から目線」の扱い方』(榎本博明著、アスコムBOOKS)は、会社において誰しもが経験するであろう人間関係にひとつの解を与えてくれる一冊です。部下に対して、または上司に対してどう接するべきか。手助けのつもりで声をかけた部下から「偉そうに」と陰口を叩かれたり、はたまた上司に威張り散らされ辟易としたり...。いずれの場合にも人間関係を阻害する一因となるのが「上から目線」であるとして、それに対し、いかに対応していくべきか書かれています。本書より一部紹介します。円滑なコミュニケーションのために必要な、「相手の懐に飛び込んで、話をしっかり聴く」ための9つのスキルです。 

【私の論評】 組織内外のことはドラッカーに原点がある!!

プレゼンスキルだけで、人を感動させることはできない
上の記事では、以下の9つのスキルを掲載しています。
相手に興味をもつ 
相手の話に意識を集中する 
うなずきを多用する 
あいづちを打ちながら聴く 
共感しながら聴く 

相手の言葉の一部を繰り返す(反映の技法) 
はっきりつかみきれないところは確認する(明確化の技法) 
質問をすることで、関心をもって聴いていることを暗に示す 
似たような経験が自分にもあれば、それを簡単に話す
この書籍は、あくまで、比較的若い人を対象として、自己の立場から、どのように話を聴けば良いのか、そのスキルを掲載したものだと思います。だから、対象の人が読むには、これは、これで良いことだと思います。また、この書籍の著者もそれを意図しているのだと思います。しかし、コミュニケーションを深めるという立場からは、これだけでは不十分です。

もし、この書籍に書いてあることを部下が実施すれば、たちどころにコミュニケーションが成立すると考える管理者や経営者がいるとすれば、それは愚かなことです。



上記のスキルは、スキルという言葉が示すように、所詮ツールにすぎません。ツールがどんなに優れていたからと言って、それで良しということはありません。どんなに優れたツールをもっていようとも、それで仕事がうまくいくとは限りません。たとえば、切れ味の良い素晴らしい包丁を持ったからといって、素晴らしい料理ができるとは限りません。素晴らしいグローブや、バットを持ったからといって、野球に勝てるわけではありません。では、どうすれば、良いのでしょうか?





ドラッカーは、コミュにーションを深めるためには、目標管理を導入せよと主張しています。
目標管理を導入せずして組織の円滑なコミュニケーションはない 「耳を傾けることはコミュニケーションの前提である。だが、耳を傾けるだけでは、効果的なコミュニケーションは実現しない」(『マネジメント[エッセンシャル版]』) 
耳を傾けることは、上の者が下の者の言うことを理解できて初めて有効となる。ところがドラッカーは、下の者は当然のことながら、上の者であってもコミュニケーション能力を持ち合わせているとは限らないという。 
そこでドラッカーは、組織におけるコミュニケーションの近道を教える。しかも、近道であって王道である。それはドラッカーが開発した目標管理(MBO)だ。 
ドラッカーは目標管理を導入して初めて組織の円滑なコミュニケーションが成り立つという。なぜなら部下は、会社もしくは自らの部門において、いかなる貢献ができるのかを明らかにすることが求められるからである。 
部下の考えが上司の期待どおりであることは稀である。事実、目標管理の最大の副産物は、上司と部下のものの見方の違いを明らかにすることにある。 
同じ事実を違ったように見ていることを互いに知ることこそが、コミュニケーションの第一歩である。 
「コミュニケーションは私からあなたへ伝達するものではない。それは、われわれのなかの一人から、われわれのなかのもう一人へ伝達するものである。組織においてコミュニケーションは手段ではない。それは組織のあり方そのものである」(『マネジメント[エッセンシャル版]』)
ドラッカーは、コミュニケーションは「われわれのなかの一人から、われわれのなかのもう一人へ伝達するものある」としています。まさしく、そういうことです。これは、コミュニケーションをかわす人たち、かわさなければならない人たちは、「私とあなた」「私と大勢」「大勢と私」という関係ではなく、「われわれ」という関係になっていなければならないことを言っているのです。


これが、コミュニケーションの本質です。そうして、「われわれ」「私たち」「俺たち」という関係にならければならないということです。そうして、ドラッカーが目標管理が友好であるというのは、無論こうした文脈においての話です。ただ、目標管理をやりさえすれば、すぐにコミュニケーションがなりたつということではありません。しかし、こういう文脈の上で、目標管理管理を実施すれば、コミュニケーションがより深まるということです。

実際に、目標管理を導入しても、いっこうにうまくいかない企業があります。このようなことをせずとも、コミュニケーションが良い企業もあります。「われわれ」という関係になるのは、どういうことかといえば、様々な「経験」を共有するということです。


仕事をただ機械的にするだけではなく、うまくいけば皆で喜ぶ、失敗しても、皆で残念に思い反省し、次に生かすようする。たまには、飲みに行ったりしたり、飲みだけでなく、趣味の集まりとか、会社でも、様々な行動をともにするこによって、「われわれ」という関係が生まれます。そういう下地ができているところで、目標管理を実施するとますます、コミュニケーションが深まるということです。そうして、さきほどのスキルも生きてきます。


スキルや、ツールをよくしただけでは、何も変わらないということです。本日のように、コミュニケーションに関することでも、こと、企業内外というより、組織内外ということで考えてみた場合は、やはり、どのようなことでも、原点はドラッカーにあるといっても過言ではありません。できたら、やはり、ドラッカーを読んで考えてみることが、近道だと思います。「上から目線」に関することも、ドラッカーの書籍をみれば、多くの書籍に、宝石のようにあちらこちらに、智慧がきら星のごとく、輝いて見えることでしよう。とにかく、いわゆる組織内外のマネジメントに関わることなど、まずはドラッカーの書籍を読むのが一番と思います。

皆さんは、どう思われますか?




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2012年7月22日日曜日

ポール・クルーグマンの新著『さっさと不況を終わらせろ』−【私の論評】まったくその通り!!

ポール・クルーグマンの新刊『さっさと不況を終わらせろ』


これは、ポール・クルーグマンの新刊です。この書籍の主張は、きわめてシンプルなものです。5年目に突入した大不況は、失策を認めたくない人たちが複雑な構造的問題に見せかけているだけであり、脱出は驚くほど簡単であるという内容であり、 いま最も信頼できるノーベル賞経済学者が叩きつける最終処方箋ともいうべき内容です。「不況のときに緊縮財政するな。政府は財政赤字なんか気にせずに拡張的な雇用創出政策をやれ。中央銀行はそれを支援しろ」というものです。煎じ詰めれば、これだけです。

そうして、この主張を補強するために、金融危機の前史から経緯をふりかえり、アメリカ、ユーロ圏、イギリスなどの現状を概観し、流動性の罠に関する不況の経済学をわかりやすく解説し、清算主義を批判しています。とりわけ不況を「道徳劇」として見る発想をくりかえし批判しています。

ただし、一部で議論を呼びそうだなと思われたのは、以下のくだりです。(p.143)
フリードマンの取った政治的な立場の多くを嫌う人々でさえ、彼が立派な経済学者だったことは認めざるを得ないし、非常に重要な点をいくつか指摘したのも否定できない。残念ながら、彼の最も影響力ある宣言の一つ――大恐慌はFRBがちゃんと仕事をすれば起こらなかったはずだし、適切な金融政策があれば、二度目の大恐慌に類するものは決して起きないという宣言――は、ほぼ確実にまちがっていた。そしてこのまちがいには深刻な結果が伴う。金融政策が十分でないときにはどんな政策が使えるか、FRB内部でも、他の中央銀行でも、学術研究の世界でも、ほとんど議論が行われていなかったのだ。
「金融政策が十分でないときにはどんな政策が使えるか」に対する近年のマクロ経済政策の模範的解答は「非伝統的金融政策」というものです。これ自体はクルーグマンも否定していませんが、それだけじゃぜんぜん足りないし、だいいちそれは主役じゃない、という主張をしています。

この書籍でもっとも感動したのは、「第13章 この不況を終わらせよう!」の冒頭です。以下にその部分を引用させていただきます(p.286)。
ここまできたら、少なくとも一部の読者は、いまはまっている不況が基本的には人為的なものなんだと納得してくれたと期待したい。これほどの苦痛に苦しみ、これほど多くの人生を破壊する必要なんかないのだ。さらに、だれも想像できないほど急速かつ簡単に、この不況を終わらせることができる――だれもといっても、本当に不況経済の経済学を学び、そうした経済に政策がどう作用するか歴史的な証拠を検討した人々は除くけれど。
でも、前章末にくるまでには、ぼくに好意的な読者ですら、経済分析をいくら積み重ねても意味がないんじゃないかと思い始めていることと思う。ぼくが述べたような路線での回復プログラムなんて、政治的な問題としてそもそもあり得ないのでは? そんなプログラムを主張するだけ時間の無駄では?
この二つの疑問に対するぼくの答えは、必ずしもそうとはいえない、そして絶対に無駄ではない、というものだ。過去数年の財政引き締めマニアをやめて、雇用創出に改めて注目するという本物の政策転換の可能性は、通説に言われるよりもずっと高い。そして最近の経験が教えてくれる重要な政治的教訓がある。穏健で物わかりのいいふりをしようとして、基本的には論敵の議論を受け容れてしまうよりも、信念のために立ち上がり、本当にやるべきことを主張するほうがずっといいのだ。どうしても必要ならば政策では妥協してもいい――でも真実については決して妥協してはいけない。
このブログの詳細は、こちらから!! 

【私の論評】まったくその通り!!日本は、何をさておいても、まずはデフレを解消すべき!!


上の書籍は、クルーグマン氏がブログで書いたことを書籍にまとめたものだそうです。だから、経済学の本というより、クルーグマン氏が日々考えていることを反映したものであり、学問的なものではありません。そこが、クルーグマン氏の信念が伝わてくるところがあり、良い所だと思います。

クルーグマン氏の、ブログは、以下のURLを参照してください。

http://krugman.blogs.nytimes.com/



上のブログの記事にもあるように、もちろんクルーグマン氏の多くの論敵もまた「信念」をもっていることでしょう。緊縮財政は「本当にやるべきこと」なのだと主張することでしょう。そうした信念は「借金は早く返さなきゃ後がこわい」という素朴な感情によくなじむものです、いまや経済運営上の「常識」と化して世界中を支配しているかのように見えます。そうして、この一見常識にみえる非常識は、あの悪名高いワシントンコンセンサスの中にも含まれています。本書はそんな常識をくつがえし、過去にも十分証明された事実を思い返させるものであり、現在の常識は、ごく最近のものにすぎないものであり、しかもこれは、過去に何度となく繰り返されてきて、失敗し続けてきたものであり、本当の常識の重要性をおもいかえさせるものです。

アメリカやEUはどうなのかという話はどうなのかという話は、上の書籍にゆずるものとして、日本では過去にクルーグマン氏の提唱するような政策をとり大成功を収めた事例があります。ここでは、二つ事例をあげます。

元文小判

一つ目は、「宝永の改鋳」です。江戸時代中期に徳川吉宗が行った緊縮財政(享保の改革)により日本経済はデフレーションに陥いりました。そこで町奉行の大岡忠相、荻生徂徠の提案を受け入れ政策転換し、元文元年(1736年)5月に元文の改鋳を行いました。改鋳は差益を得る目的ではなく、純粋に通貨供給量を増やすことが目的でした。現在でいえば、日銀による増刷に相当するものです。

徳川吉宗
元文の改鋳は現在では、幕府初のリフレーション政策と位置づけられ、日本経済に好影響をもたらした数少ない改鋳であると積極的に評価されています。元文の通貨は以後80年間安定し続けました。江戸の経済対策というと、なにかといえば儒教思想にもとづく倹約道徳にもとづく、吉宗が行ったような緊縮財政であり、いわゆるこの事例のような、金融緩和策は数少ない成功事例の一つです。

もう一つの事例は、世界大恐慌に世界が陥ったときに、日本も同じように、恐慌に陥り日本では、昭和恐慌と呼ばれていました。この昭和恐慌をのりきったのが、上でクルーグマンが主張している方式です。

高橋是清
昭和恐慌は、第一次世界大戦時の好況の反動が発端です。1914年第一次世界大戦は起りましたが、日本は戦場にならず、輸出の増大で日本経済は大いに潤いました。しかし大戦が終わり、列強が生産力を取戻すにつれ、日本経済は落込こみまし。1920年以降、日本経済はずっと不調が続きました。特に27年には世界大恐である金融恐慌が起り、取り付け騒ぎや銀行の休業が到るところで見らました。

昭和恐慌時のポスター
このような経済が苦境の最中の29年に発足したのが、浜口幸雄内閣でした。そうして、この内閣の蔵相は、元日銀総裁の井上でした。浜口・井上コンビはデフレ下で緊縮財政を始めました。浜口首相は「ライオン宰相」として国民から熱狂的な支持を受けていました。前の田中義一首相が、腐敗などによって国民から反感をくっていた反動でした。


濱口幸雄
浜口首相は「痛みを伴う改革」を訴え、「全国民に訴う」というビラを全国1,300万戸に配布しました。内容は「・・・我々は国民諸君とともにこの一時の苦痛をしのいで、後日の大いなる発展をとげなければなりません」と言うものでした。そうしてこの政策は国民から熱狂的に迎えられました。昔から日本ではバンバン金を使う者より「緊縮・節約」を訴え、「清貧」なイメージの指導者の方が、少なくとも当初は支持を集めるのです。

しかし不況下でこのような逆噴射的な経済運営を行ったため、経済はさらに落込み、恐慌状態になってしまいました。まったく当り前の話です。浜口・井上コンビは財政政策だけでなく、為替政策でも大きな間違いを犯しました。それは、「金輸出の解禁」です。

為替を変動させておけば、総合収支尻は、為替の変動によって自動的に調整されます。ところが為替を固定させておくと、総合収支の決済尻をなにかで埋め合わせる必要があります。輸出が好調で総合収支が黒字の場合には問題はありませんが、反対に赤字の場合には国際的に価値が認められている「金」などで決済することになります。つまり「金輸出の解禁」は、変動相場制から固定相場制、そして金本位制への移行を意味します。

井上準之助
さらに浜口・井上コンビは固定相場に復帰する際のレートを日本の実力以上に設定しました。実勢より一割も円高の水準で固定相場に復帰したのです。これは単純に以前の固定相場の時のレートを採用したからです。この二人は、蔵相や日銀総裁を経験した経済のプロと思われていた人物した。しかし頭が固い(悪い)のでした。

浜口・井上コンビの狙いは、構造改革で競争力を高め、輸出を増やして、不況から脱することでした。しかし設定した固定為替レートは高すぎ、逆に輸入が増えました。また貿易業者は、輸入代金を市場から外貨を調達して払うのではなく、高い円で金を買い、これを送って決済しました。金はどんどん輸出され、日銀の金の保有量が減りました。金本位制のもとで金の保有が減ったため、政府は財政支出を減らす必要に迫られました。これによって経済はさらに落込みました。この結果、財政支出を削っているにもかかわらず、財政はさらに悪化したのです。

さらに29年のニュヨーク株式相場の崩壊から始まった世界恐慌の影響も日本に及んで来ました。日本では街に失業者が溢れ、大幅な賃金カットが行われ、労働争議が頻発しました。特に農村は、農産物の大幅な下落によって大打撃を受け、「おしん」のような娘の身売り話も増えました。

世界恐慌の時のウォール街
このため農村から離れる者が増えました。しかし一方、逆に街で働いていた人々が失業して、どんどん農村に帰って来ました。彼等は元々農家の次男・三男達であり、帰農者と呼ばれました。帰農者は明らかに失業者でした。しかし井上蔵相は「帰農者は失業者ではない」と主張しました。元々彼は「失業はたいした問題ではない」と言う認識の持主でした。そして失脚後の32年2月に彼は暗殺されました。

30年の5月、浜口首相は、ロンドン軍縮会議・五カ国条約の批准に不満を持った分襲撃されました。次の首相の若槻礼次郎首相も構造改革派でした。したがって日本経済はどん底状態になりました。そしてついに31年12月に政友会に政権交代が行われ、犬養毅内閣が発足しました。犬養は、以前首相も経験したことのある高橋是清に大蔵大臣就任を懇請しました。

犬養毅
高橋は矢継ぎ早に、デフレ対策を行いました。まず「金輸出の解禁」を止め、さらに平価の切下げを行いました。最終的には約4割の円安になりました。そして積極財政に転換し、その財源を国債で賄いました。さらにこの国債を日銀に引受けさせることによって金利の上昇を抑えました。実に巧みな経済運営でありますが、上の書籍でクルーグマン氏が主張している方法と寸分たがわないやり方です。

以下に、当時の経済成長率の推移を示します。

昭和恐慌時の実質経済成長率(%)

経済成長率

1927 3.4

1928 6.5

1929 0.5

1930 1.1

1931 0.4

1932 4.4

1933 11.4

1934 8.7

32年からの経済成長は実にすばらしいものです。実際、列強各国はこの時分まだ恐慌のまっただ中であり、日本だけがいちはやく恐慌からの脱出に成功したのです。

1932年に国債の日銀を引受けを始めたましたが、物価の上昇は、年率3~4%にとどまっています。1936年までに日銀券の発行量は40%増えましたが、工業生産高は2.3倍に拡大しました。そしてこの間不良債権の処理も進みました。

ケインズの一般理論が世の中に出たのが36年の12月であり、実にその5年前に既にケインズ理論を実践したのが高橋是清である。さらには、今日クルーグマンが上の書籍で、主張していることを80年前に実行したのです。

ケインズ
日本ではこのような先駆的な成功事例があるにもかかわらず、多くの政治家や、官僚、マスコミはこれを評価するどころか、そもそも、このような歴史的事実を認識していません。上の浜口・井上コンビなど、時代背景が異なるのですが、現在や、少し前の政治家や財務大臣を彷彿とさせます。

日本では、何時の間にか高橋是清のような政策をとることは、ハイパーインフレを招くとか、赤字国債の発行や国債の日銀引き受けが禁じ手であるかのような錯覚をするものが多いです。

ハイパーインフレに見舞われた第一次世界大戦後のドイツ
上の書籍でクルーグマン氏が主張することは、探せば、世界中で、成功事例が見つかると思います。上のように、日本でも成功事例があります。逆に、不況のときの、緊縮財政、金融引き締めの結果かえって、経済が悪化した例も、日本の江戸時代のようにたくさんあります。


最近では、英国が不況であるにもかかわらず、付加価値税(日本の消費税にあたる)をあげて、さらに、不況を深刻化させました。これに対処するため、イングランド銀行(イギリス中央銀行)は、かなりの増刷をしました。増刷しても、イギリスの経済は、あまり良くはなりはしませんでした。そうして、インフレ傾向がしばらく続きました。これをもって、ハイパーインフレ論者は、不況のときに、お札を刷れというクルーグマンんの主張は、間違いであるとの格好のケーススタディーとしました。ところが、最近ではイギリスのインフレは、収束しました。そうして、もし増刷していなかったら、イギリス経済の落ち込みはささらに、悲惨なことになっていたことがはっきりしています。やはり、クルーグマンが正しかったということです。

現在でも、不況のときに、緊縮財政、金融引き締めをしては、かえって経済が悪くなるということです。不況のときには、財政などあまり気にせずに、積極財政と金融緩和策をしなければならないというのが当たり前の真ん中の常識です。ケインズなんぞまったく知らなかった、江戸幕府や、高橋是清も、この常識に従って成功しているのです。現在の不況は、この常識に常識に従わなかったことが大きな要因の一つです。非常識派は、過去の歴史を振り返ったり、現在の出来事を直視せず、ただただ、自分の頭の中でつくりだした、非常識な常識を唯一正しいものとして、押し付けているだけてあり、思い上がりも甚だしいです。

この書籍、こうした常識を忘れた現代人に対する警鐘を鳴らすものであると思います。そう思うのは私だけでしょうか?これは、本当に今の財務省、日銀はいうにおよばず、多くの政治家、官僚、そうして多くの国民に読んでいただき理解していただきたいと思います。

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2012年7月21日土曜日

【日本の解き方】白川日銀総裁は“デフレ・円高大魔王” - 経済・マネー - ZAKZAK―【私の論評】財政ばかりでなく、金融政策にも目を向けよ!!

【日本の解き方】白川日銀総裁は“デフレ・円高大魔王” - 経済・マネー - ZAKZAK

高橋洋一氏
日銀は12日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送った。この決定に市場は失望し、同日の日経平均株価は6営業日続落、下げ幅は130円を超えた。

白川方明日銀総裁は、決定会合後の記者会見で「現在も間断なく強力な金融緩和を進めている。効果の波及には時間がかかる」と説明した。と同時に、2012年の物価上昇率見通しを4月時点の0・3%から0・2%に引き下げ、13年度は0・7%に据え置いた。1%のインフレ目標達成は「2014年度以降」に「遠からず達成」という見方だ。

日銀は、2月にデフレ脱却の目標として1%のインフレ「目途」を掲げ、強力な金融緩和を進めると表明。白川総裁の任期は来年4月までだが、自らの任期期間中の目標達成をギブアップしている。このままでは、白川総裁は「デフレ・円高大魔王」ということになるだろう。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財政ばかりでなく、金融政策にも目を向けよ!!

さて、上の記事の内容など、下のグラフをご覧いただければ、一目瞭然であることがおわかりになると思います。リーマン・ショック後、世界主要先進国の他の中央銀行が、マネタリーベース(花柄通過量)をかなり増やしているのにもかかわらず、日銀がほとんど増刷していないことが良くわかります。


リーマン・ショックが起こった直後に、私をはじめ日本では多くの人たちが、日本はあまり影響を受けないだろとうと予測していましたが、実際には大きな影響を受けたことは、皆さんご存知だと思います。これは、本来は日本があまり影響を受けるはずがないというのが正しい見方であり、なぜそうならなかったかといえば、日銀のかたくなな増刷拒否によるものです。リーマン・ショックでは、本家本元のアメリカは、増刷などの金融緩和措置をすぐにとったので、日本よりもはるかにその影響を削ぐことができました。私を含め、多くの人の予測が崩れたのは多くの国が増刷したあとでも日銀が増刷拒否の姿勢を崩さず、頑なに金融緩和政策をとらないなどという、何というか、全く本来の仕事を放棄するなど、あり得ない状況を全く予知できなかったからです。



日本は、他国がこうして増刷して金融緩和措置をはかったにもかかわらず、日銀の増刷拒否の姿勢により、まるで、他国の増刷によるインフレの害を担保するような形になり、一人負けの状態に陥りました。本当に愚かなことです。

こうした日銀の対応のまずさもあり、日本は、3.11から円高傾向であり。3.11後さに超円高傾向になったことは皆さんご存知だと思います。このとき何が起こったかといえば、当然震災・津波の被災者に対する応急措置のため、円の需要は平時の時よりもはるかに高まり、そのまま放置しておけば、円高が進行することはわかりきっているのに、またまた、日銀は、増刷拒否の姿勢を崩さず、いたずらに超円高の事態をまねいてしまいました。


白河総裁に関しては、以前このブログで、デフレ悪魔という呼び方をしましたが、上の記事の白川総裁の発言や、下に掲載するWSJにおける発言などみると完璧にデフレ悪魔から、デフレ・円高大魔王に変身し、どこまで凶暴化するのか、先の見えない展開となってきました。

こんな大魔王なら魅力的だか、白川大魔王はお断りだ!!
さらに、下のWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)の記事では、円高を許容し、円高のために日本の景気が良くなっているかのような発言をしています。
日銀総裁、景気の底堅さの一因として円高メリットに言及
【東京】日本の政策当局者は長らく、円高を日本経済にとり「悪」とみなしてきたが、内需主導で景気が緩やかに回復するなか、日本銀行の白川方明総裁を含む一部関係者は円高のプラス面に言及し始めている 
白川総裁は先週、円高は景気に悪影響を与えるとする従来のスタンスから離れ、堅調な内需の背後にある5つの要因の1つとして円高メリットを挙げた。日本経済は1-3月期、内需主導で4.7%の成長率を記録している。 
「円高による景気への悪影響を無視しているわけではないが、プラス面もあることを言っているのだろう」と日銀の政策に詳しい関係者は語る。 
従来の日本経済の回復は、まず、輸出の持ち直しがけん引役となり、それが生産と消費の回復につながってきた。そのため、政策当局は、日本製品の国際競争力を損なう円高の阻止に注力してきた。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
白川総裁は、企業マインドの改善も経済成長の背景にある5つの要因の1つとして挙げた。 
ただし、当局は急激な円の動きに対して警戒を緩めているわけではない。日銀関係者は、総裁の発言は、急激な円高が日本経済全体にとって悪影響であるとの日銀の見方を変えるものではないとした。 
為替政策を担当する安住財務相は、「過剰な円高」は経済と金融の安定に悪影響を与えると考えており、「(メリットとデメリットは)それぞれあるとは思う。総合的に勘案し、我が国にとって今の水準がどうかということを、私の立場では常に考えなければならないと思っている」と述べ、最近の水準については「実態を反映していない」との見解を示した。

白川総裁も、安住財務大臣も、すっかり何かを忘れています。それは、日本がデフレである状況は、未だに変わっていないということです。それに、円高が景気に良い影響を及ぼしているというのは、全くの見当違いもはなはだしいです。この二人、金融と、財政を根本的にわかっていないか、外国の司令を受けて動いているとしかみえません。

上の記事で、WSJは、白川総裁にどちらかといえば、好意的な書き方をしていますが、それは、白川総裁のように増刷拒否の姿勢を堅持すれば、アメリカは増刷していますから、このことによって、アメリカドルはある程度日本の円高に担保されたようなもので、増刷による悪影響であるインフレなどから免れますから、当然のことです。アメリカの新聞などは、日本の売国新聞とは異なり、根本的には、アメリカの国益に合致した記事を掲載します。


今、景気が多少回復しているようにみえるにのは、円高のせいではありません。理由は、震災復興によるもの以外の何ものでもありません。復興のために、政府は一時的にでも、財政支出をふやさざるをえず、日銀も上の記事にもあるように、最近では金融緩和措置を見送ったものの、昨年や今年も緩和措置を実施し、若干緩めた時期もあり、その余波とみるべきです。

この超円高が続けば、企業の海外移転はますます増え、中国などを利するだけです。ただし、中国へ移転する企業は最近へりつつありますが、それにしても、中国政府は、固定相場制という金融環境の中で、日銀が増刷拒否の姿勢を崩さない限り、あたかもそれを担保として、元を刷りたいだけ刷ることができます。そうなれば、日本はさらにデフレスパイルの深みにはまっていくだけです。



私もかつてそうでしたが、どうしても多くの人の目は、政府の財政政策のまずさにばかりいき、日銀の固くな、増刷拒否の姿勢、金融引き締めの姿勢に目がいきません。WSJの記事の中の、白川発言などにすぐにだまされてしまいます。また、日銀の発表など、しばしば、明らかに嘘があるにもかかわらず、マスコミなどの不勉強のためその嘘を見抜けず、そのまま垂れ流しで報道してしまいす。これは、高橋洋一氏も指摘しているところです。

デフレの克服には、金融緩和政策が不可欠です。このブログには、以前マンデル・フレミング効果について掲載しました。これは、小国で変動相場制にある国において、景気対策としての財政出動はあまり効果がなく、金融緩和などの金融政策のほうが効果があるというものです。


日本は、陸地の面積は小さいですが、排他的経済水域は世界のトップレベルですし、経済的にも大国です。それに、日本のGDPに輸出が占める割合は、16%にすぎず、この点40%を超えるドイツや中国くなどとは根本的に異なるところがあります。だから、この効果がいつも働くというわけではなく、確かに働かない局面もあります。しかし、景気回復のため、デフレ克服のため、金融緩和措置は絶対に必要です。財政政策と、金融政策の両方が必要なのです。

日銀の、インフレ目処1%に関しては、最初からヤル気がないとこのブロクで掲載しました。そうして、実際そのとおりの推移になっています。上の記事で、1%のインフレ目処としていますが、平成14年あたりでは、原発の稼働が進まなければ、原油・天然ガスの大量輸入により、コストプッシュインフレとなり、1%でも、かなりのデフレ状況になっている可能性も大です。


こままでは、たとえ、結局増税しないことになっても、デフレ状況から抜け出せないかもしれません。先日イギリスの消費税増税の失敗をこのブログに掲載しましたが、イギリスで、増税後にイングランド銀行が、増刷を行い金融緩和をしていますが、日銀は、上の記事などみている限りそのようなことはすることは期待できないので、さらに、デフレの深みにはまっていくことでしょう。

このようなことから、やはり、白川総裁に任期を満了されてしまっては、とんでもないことになります。デフレ克服のためにも、白川総裁の任期満了は絶対に避けるべきです。


それから、日銀が暴走して、総裁が、デフレ・円高魔王になるには、それなりの背景があります。それは、平成10年に、日銀法が改悪され、日銀が大蔵省から分離され、日銀の独立性が確保されたためです。


本来、ガイトナーが日本に来て公演したように、「一国の中央銀行は、政府の金融政策に従い専門家の立場から、その時々で最も効果があるように、金融政策を選ぶことができるという」のが世界の常識のはずです。しかし、日銀は、そうではなく、拡大解釈をして、政府から独立し、全く自分独自に金融政策を実施できるものとして、実際上に掲載したように、暴走しっぱっなしどころか、さらに輪をかけて爆走しようとしています。そうして、あろうことか、日銀のガイトナー公演の発表では、「中央銀行の独立性とは、中央銀行が独自に金融政策を決定することと」とすり替えられています。こんなことを指摘する新聞もほとんとありません。

日銀の爆走は、何がなんでも阻止しなければなりません。白川征伐と、日銀征伐は、日本のデフレを克服するために、喫緊の課題です。多くの人に、財政だけでなく、金融政策にも目を向けてもらいたいです。次の選挙では、財政ばかり言う政治家ではなく、金融政策そうして、日銀法改正に言及する立候補者や政党に投票すべきです。


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