2018年10月7日日曜日

沖縄県知事選の結果は「民主主義国家」の皮肉!? 今後は中国の「間接侵略」が一段と進行するだろう ―【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!



玉城氏は、普天間飛行場の危険を放置するのか?
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

沖縄県知事選は、元自由党衆院議員の玉城(たまき)デニー氏が、約8万票の大差で圧勝した。玉城氏は、名護市辺野古にある米軍キャンプ・シュワブを拡張して、米軍普天間飛行場(宜野湾市)を移設する計画について「断固阻止する」と公約している。

 以前も指摘したが、「国防は国の専権事項」というのが世界の常識だ。自治体の首長や住民が国防問題を左右できる日本の現状は、法制度に不備があるという意味だ。国会は怠慢過ぎないか。

 そもそも、市街地にある普天間飛行場は危険だからと、沖縄県民が移設を望んだのだ。日米両政府はその希望を聞き入れて移設を推進してきた。

 今回の選挙結果は「沖縄県民が普天間移設の希望を撤回し、固定化を望んだ」と解釈することも可能だが、本当にそれで良いのだろうか。

 実は、辺野古よりも普天間の方が、米軍にとって使い勝手がいい。例えば、標高75メートルの高台にある普天間は、辺野古と比べて津波や高波の影響を受けにくい。さらに、V字型に配置される辺野古の2本の滑走路は、いずれも1200メートルと短いが、普天間はボーイング747も離着陸可能な2700メートルである。

 普天間飛行場は市街地の真ん中にあり、「世界一危険」だと言われてきた。私も長年そう信じていたが、詳しく調べてみると、1945年の設置から現在まで、普天間に関わる航空機事故で死傷した日本人は1人もいない。

ちなみに、2015年に東京都調布飛行場近くで発生した小型機墜落事故では、搭乗者5人のうち2人死亡、3人が負傷し、地上でも1人死亡、2人が負傷した。普天間が世界一危険であれば、調布は宇宙一危険なのか?

2015年に東京都調布飛行場近くで発生した小型機墜落事故

 04年、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したときも、乗員3人が負傷したが、日本人の死傷者は1人も出ていない。

 もちろん過去に、普天間飛行場を拠点とする米軍機の事故が何度も発生し、多数の米兵が死亡・行方不明になったことは事実だ。彼らは日米安保条約に基づく任務中の事故により、日米両国のために命を落とした英雄である。基地反対派だけでなく、日本はこの事実を軽視していないか。

 先週のコラムで私は「沖縄県知事選の本質は、米中代理戦争だ」と指摘した。結果的に、米国が敗北し、中華人民共和国(PRC)が勝利した。

 共産主義国として国民に参政権を認めない国が、民主主義国の選挙制度を利用して勝負に勝つとは皮肉な話だ。今後、PRCの「間接侵略」が一段と進行するだろう。もし、「琉球独立」が実現したら、協力した沖縄県民は、参政権に加えて人権まで失う「究極の皮肉」が実現する。 

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!

ケント・ギルバート氏は、PRCの「間接侵略」が一段と進行するだろうと警告していますが、これについては米国ですでに警告を発していました。それも、オバマ政権末期の時点で発していました。

沖縄では中国が米軍基地反対運動をあおり、米軍へのスパイ活動を展開している。このようなショッキングな警告が米国議会の政策諮問の有力機関からすでに二年前に、発せられていました。中国は長期戦略として日米同盟を骨抜きにすることを図り、その具体策として沖縄での米軍基地反対運動へのひそかな支援や米軍の活動への秘密裡の軍事諜報工作を展開しているのだそうです。

沖縄基地反対運動

米国側の政府や議会の関連機関が日米同盟の光や影、虚や実について論じ、内外への注意を喚起するという作業は長年、続いてきました。ところが沖縄での米軍基地問題に関して中国の干渉を正面から指摘したという実例はきわめて珍しいです。米国側としてはそれだけ沖縄での中国の動きを危険視するにいたったということでしょう。日本側としては日米同盟の堅固な保持を望む限り、その警告を真剣に受けとめざるを得ないでしょう

日米同盟はこのところ全体として一段と堅固になりながらも、なお沖縄での在日米軍基地への反対運動は複雑な振動を広げています。まるで強壮な人間のノドに刺さったトゲのように、全身の機能こそ低下させないまでも、中枢部につながる神経を悩ませ、痛みをさらに拡大させかねない危険な兆候をみせているといえるでしょう。

沖縄の米軍基地の基盤が揺らげば揺らぐほど、日米同盟の平時有事の効用が減ることになります。日本への侵略や攻撃を未然に抑えるための抑止力が減ることになるからです。また朝鮮半島や台湾海峡という東アジアの不安定地域への米軍の出動能力を落とし、中国に対する力の均衡を崩すことにもつながるわけです。

沖縄あるいは日本全体を拠点とする米国の軍事力が弱くなることを最も歓迎するのは誰でしょうか。いまや東アジア、西太平洋の全域で米国の軍事的な存在を後退させようとする中国が米軍弱化の最大の受益者であることは明白です。

中国がそのためにソフト、ハード両面での多様な措置をとっていることは歴然ですが、二年前までは沖縄での反米軍基地運動への中国の関与は提起されることはまずありませんでした。しかも中国の対沖縄工作の最終目的は日米同盟分断だというのです。

「沖縄と中国」というこの重大な結びつきを新たに提起したのは米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関です。この委員会は2000年に新たな法律により、「米中両国間の経済と貿易の関係が米国の国家安全保障にどう影響するかを調査して、議会と政府に政策上の勧告をする」ことを目的に常設されました。議会の上下両院の有力議員たちが選ぶ12人の委員(コミッショナー)が主体となり、米中関係を背景に中国側の軍事や外交の実態を調査するわけです。

各委員は中国の軍事、経済、外交などに詳しい専門家のほか、諜報活動や安保政策の研究者、実務家が主になります。最近まで政府や軍の枢要部に就いていた前官僚や前軍人、さらには上下両院で長年、活躍してきた前議員たちも委員を務めます。そしてそのときそのときの実際の中国の動き、米中関係の変動に合わせて、テーマをしぼり、さらなる専門家を証人として招いて、公聴会を開くのです。

同委員会は毎年、その活動成果をまとめて、年次報告書を発表する。その内容は詳細かつ膨大となります。最終的には米国の政府と議会に対中政策に関する提言をするわけです。同委員会の事務局も中国や軍事、諜報に関する知識の抱負なスタッフで固められ、特定テーマについての報告書を委員たちとの共同作業で定期的に発表しています。

米国の中国研究はこのように国政レベルできわめて広範かつ具体的なアプローチが多いです。中国の多様な動向のなかでも米国側が最も真剣な注意を向けるのはやはり軍事動向だといえます。この米中経済安保委員会はまさに中国の軍事動向と経済動向の関連を継続的に調べているのです。



米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が沖縄と中国のからみに関しての調査結果をこのほど明らかにしたのは 「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」 と題する報告書の中でした。

合計16ページのこの報告書が警告する沖縄での中国の動きを米国の戦略全体の中で位置づけるために、まずこの報告書の主眼についての記述を紹介します。
中国は東アジア、西太平洋地域でもし軍事衝突が起きた場合の中国人民解放軍の米軍に対する脆弱性を減らすために、その種の衝突への米国側の軍事対応を抑える、あるいは遅らせるための『接近阻止』または『領域否定』の能力を構築することを継続している。 中国側は同時に軍事衝突が起きる前の非軍事的選択肢を含むその他の措置も推進している。それらの措置とは米国側の戦略的な地位、行動の自由、作戦の余地を侵食することを意図する試みである。
要するに中国はアジアでの米軍の軍事能力を削ぐことに最大の努力を傾けているというのです。その米軍能力の削減のための工作とは必ずしも軍事手段には限らないです。一連の非軍事的な措置もあるというのです。同報告書がその非軍事的措置としてあげるのが以下の三種類の動きでした。
・関与
・威圧
・同盟分断
以上、三種の中国側の戦術はみなアジアでの米軍の弱体化、同時に中国軍の強化を狙いとしています。その戦術の標的は米国と同時に日本などその同盟諸国により鋭く照準が絞られていまなす。本稿の主題である沖縄に対する中国の工作はその中の「同盟分断」の戦術に含まれていました。

では中国はなぜアジアでの米軍の能力の弱化にこれほど必死になるのでしょうか。その点については同報告書は以下の骨子の理由をあげていました。
中国人民解放軍幹部が軍科学院の刊行物などに発表した論文類は中国がアジア、西太平洋で 『歴史上の正当な傑出した立場』 に戻るためには、米国がアジアの同盟諸国とともに、有事に中国の軍事能力を抑えこもうとする態勢を崩す必要がある、と主張している。
以上の記述での中国にとっての「歴史上の正当な傑出した立場」というのは明らかに 「屈辱の世紀」 前の清朝以前の中華帝国王朝時代のグローバルな威勢、ということでしょう。その過去の栄光の復活というわけです。

この概念は習近平国家主席が唱える「中国の夢」とか「中華民族の偉大な復興」というような政治標語とも一致しています。「平和的台頭」という表面は穏やかなスローガンの背後にはいまの中華人民共和国を過去の王朝時代のような世界帝國ふうに復活させようというギラギラした野望が存在している、と米国側の専門家集団による同報告書はみているのです。

この「野望」は2016年、南シナ海での中国の海洋覇権追求に関して国際仲裁裁判所が「根拠なし」と裁定した「九段線」にもあらわとなっていました。「南シナ海は古代から九段線の区画により歴史的に中国の領海だった」という時代錯誤の中国政府の主張は、「歴史上の正当な傑出した立場」の反映なのです。ただし現代の世界ではその正当性はないのです。ちなみに、この「九段線」なるものはルトワックの『中国4.0』という書籍によれば、中華民国の将官が酔っ払って何の根拠もなく地図に描いたものとされています。

中国が主張する九段線

しかし中国側からすれば、その「正当な傑出した立場」の構築や達成には米国、とくにアジア駐留の前方展開の米軍の存在が最大の障害となります。

この点の中国側の軍事的な認識を米中経済安保調査委員会の同報告書は以下のように総括していました。
中国軍幹部たちは、米国が中国の正当な進出を阻もうとして、その中国封じ込めのためにアジアの北地域では日本と韓国、南地域ではオーストラリアとフィリピンを拠点とする軍事基地システムを築き、グアム島をその中核とし、中国深部を長距離の戦略兵器で攻撃ができるようにしている、とみている。
だからこそ中国にとっては米国がアジアで構築してきた一連の同盟関係とその軍事態勢は有事平時を問わず、敵視や反発の主対象となるわけです。

同報告書は中国側のそのアジアでの米軍の能力を弱めるための対米、反米そして対米国同盟諸国への非軍事的手段の基本的な特徴について以下のように解説していました。
中国人民解放軍の最高幹部たちは各種の論文で『戦争は単に軍事力の競合ではなく、政治、経済、外交、文化などを含めての総合的な競い合いだ』と繰り返し主張している。 つまり政治、経済、外交、文化などの非軍事的要因が軍事作戦を直接、間接に支えなければ勝利は得られないという考え方なのだ。
だから米軍のアジアでの中国のかかわる紛争への介入を阻むためには単に軍事力だけでなく、米国の政治システムや同盟相手の諸国の対米依存や対米信頼を弱めるための外交、情報、経済などのテコが必要となる。その種のテコには貿易協定や友好外交などから賄賂的な経済利権の付与も含まれてくる。
つまりは非常に広範で多様な手段による米軍の能力削減、そして同盟の骨抜きという意図なのです。中国側のその種の意図による具体的な活動が前述の三戦術「関与」「威圧」 「同盟分断」だというわけなのです。

その三戦術のうち対沖縄工作が含まれた「同盟分断」を詳述する前に「関与」と「威圧」について報告書の概略を紹介しておきます。
【関与】 
中国はタイやパキスタンとの経済協力を深め、軍事協力へと発展させ、中国海軍の現地での港湾使用などで、米軍に対する軍事能力を高めている。オーストラリアやタイとの合同軍事演習を実施して、両国の米国との安全保障協力を複雑にする。 韓国との経済のきずなを強めて、安保面でも韓国の米国との密着を緩める。
  【威圧】
中国はフィリピンとのスカーボロ環礁での衝突の際、フィリピン産バナナの輸入を規制した。日本との尖閣諸島近海での衝突の際はレアアース(希土類)の対日輸出を規制した。いずれも経済的懲罰という威圧行動だった。尖閣付近では海警の艦艇の背後に海軍艦艇を配備し、軍事力行使の威圧をかける。中国はベトナムの排他的経済水域(EEZ)での一方的な石油掘削作業でも軍事的な威圧をした。この種の威圧はいずれも米軍の抑止力を減らす意図を持つ。
「米中経済安保調査委員会」の同報告書はそのうえで3戦術の最後の【同盟分断】に触れて、そのなかの主要項目として「沖縄」をあげていました。

注目されるのは、同じ「同盟分断」の章では米国の同盟諸国の国名をあげて、国別の実態を報告しているのに対し、日本の場合は、日本という国名ではなく「沖縄」だけを特記している点でした。中国の日本に対する同盟分断戦術はいまのところ沖縄に集中しているという認識の反映のようなのです。その記述は以下のような趣旨でした。
【同盟分断】
中国は日本を日米同盟から離反させ、中国に譲歩させるための戦術として経済的威圧を試みたが、ほとんど成功しなかった。日本へのレアアースの輸出禁止や中国市場での日本製品ボイコットなどは効果をあげず、日本は尖閣諸島問題でも譲歩をせず、逆に他のアジア諸国との安保協力を強め、米国からは尖閣防衛への支援の言明を得た。
中国はだから沖縄への工作に対日戦術の重点をおくようになったというわけです。
中国軍部はとくに沖縄駐留の米軍が有する遠隔地への兵力投入能力を深刻に懸念しており、その弱体化を多角的な方法で図っている。
沖縄には周知のように米軍の海兵隊の精鋭が駐留しています。第3海兵遠征軍と呼ばれる部隊は海兵空陸機動部隊とも称され、空と海の両方から遠隔地での紛争や危機にも対応て、展開できます。多様な軍事作戦任務や地域の安全保障協力活動が可能であり、有事や緊急事態へスピーディーに出動できます。米軍全体でも最も実践的な遠征即応部隊としての自立作戦能力を備えているともいわれます。

沖縄の米海兵隊

まさに中国側からすれば大きな脅威というわけです。だからその戦力、能力をあらゆる手段を使って削ぐことは中国にとっての重要な戦略目標ということになります。

同報告書は次のようにも述べていました。
中国は沖縄米軍の弱体化の一端として特定の機関や投資家を使い、沖縄の米軍基地の近くに不動産を購入している。
報告書はこの中国側による沖縄の不動産購入について脚注で「中国工作員が米軍基地近くに米軍関係者居住用のビルを買い、管理して、管理者用のカギで米軍関係者世帯宅に侵入して、軍事機密を盗もうとしている」という日本側の一部で報道された情報を引用していました。

米国の政府や議会の報告書では米側独自の秘密情報を公開することはまずないですが、一般のマスコミ情報の引用とか確認という形で同種の情報を出すことがよくあります。つまり米側の独自の判断でも事実と認めた場合の「引用」となるわけです。

そして報告書はこんどは引用ではなく、同報告作成者側の自主的な記述としてさらに以下の諸点を述べていました。
中国は沖縄に米軍の軍事情報を集めるための中国軍の諜報工作員と日本側の米軍基地反対運動をあおるための政治工作員を送りこみ、日米両国の離反を企図している。
沖縄での中国の諜報工作員たちは米軍基地を常時ひそかに監視して、米軍の軍事活動の詳細をモニターするほか、米軍の自衛隊との連携の実態をも調べている。
中国の政治工作員は沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動することに努める。そのために中国側関係者が沖縄の米軍基地反対の集会やデモに実際に参加することもよくある。その結果、沖縄住民の反米感情をあおり、日米同盟への懐疑を強め、日米間の安保協力をこじれさせることを企図している。
同報告書は中国側の沖縄でのこうした動きをはっきりと 「スパイ活(Espionage)」とか「扇動(Agitation)」と呼び、そうした行動が将来も続けられるという見通しを明言していました。このへんはこの記述以上に詳細で具体的な情報こそ示されないものの、明らかに米国当局独自の事実関係把握に基づく報告であり、警告だといえます。

米中経済安保調査委員会の同報告書はさらに中国側の沖縄領有権の主張や沖縄内部での独立運動についても衝撃的な指摘をしていました。

要するに中国は自国の主権は尖閣諸島だけでなく、沖縄全体に及ぶと主張し、その領土拡張の野望は沖縄にも向けられている、というのです。報告書の記述を以下に掲載します。
中国はまた沖縄の独立運動をも地元の親中国勢力をあおって支援するだけでなく、中国側工作員自身が運動に参加し、推進している。
中国の学者や軍人たちは『日本は沖縄の主権を有していない』という主張を各種論文などで表明してきた。同時に中国は日本側の沖縄県の尖閣諸島の施政権をも実際の侵入行動で否定し続けてきた。この動きも日本側の懸念や不安を増し、沖縄独立運動が勢いを増す効果を発揮する。
確かに中国政府は日本の沖縄に対する主権を公式に認めたことがないです。中国が沖縄の領有権を有すると政府が公式に言明することもないですが、中国政府の代表である学者や軍人が対外的に「沖縄中国領」論を発信している事実はあまりに歴然としているのです。同報告書はこうした点での中国側のトリックの実例として以下のようなことも述べていました。
中国の官営ニュースメディアは『琉球での2006年の住民投票では住民の75%が日本からの独立を望むという結果が出た』という報道を流した。しかし現実にはその種の住民投票は実施されてはいない。沖縄住民の多数派は日本領に留まることを欲している。
中国側の官営メディアがこの種の虚報を流すことは年来の中国のプロパガンダ工作ではよくある事例です。この虚報の背後にすけてみえるのは、中国がやがては沖縄も自国領土だと宣言するようになる展望だといえます。

米中経済安保調査委員会の「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」という題の同報告書は中国の沖縄に対する活動について以上のように述べて、中国側のその目的はすべて日米同盟にくさびを打ちこみ、日米の離反を図って、米軍の沖縄などでの軍事能力を骨抜きにすることだと分析していました。

とくに中国側の領土拡張の狙いが単に尖閣諸島だけでなく沖縄本島などにも及んでいるという指摘、さらには中国側がすでに沖縄の内部に工作員を送りこんで、軍事、政治の両面で日米の連携をかき乱しているという警告は日本側としても重大に受けとめねばならないでしょう。

中国による日米同盟への揺さぶり工作では同報告書が日韓関係についても警鐘を鳴らしている点をも最後に付記しておきます。中国がアジアでの米国の存在を後退させる戦術の一環として日本と韓国との対立をもあおっている、というのです

日本も韓国もいうまでもなく、ともに米国の同盟国です。米国を中心に日韓両国が安保面で緊密な連携を保てば、米軍の抑止力は効果を発揮します。日韓両国が逆に対立し、距離をおいていれば、米軍の効用も減ってしまいます。中国にとっては東アジアでの米軍の能力の減殺という目的の下に、日本と韓国との間の摩擦や対立を広げる戦略をも進めてきたというのはごく自然です。同報告書は以下の諸点を指摘していました。
中国は日韓両国間の対立の原因となっている竹島問題に関して同島を軍事占領する韓国の立場を支持して、日本側の領有権主張を『日本の危険なナショナリズムの高揚』などとして非難してきた。
中国は日韓両国間の慰安婦問題のような第二次大戦にかかわる歴史認識問題に対して韓国側の主張を支持し、日本側の態度を非難する形の言動を示して、日韓間の歴史問題解決を遅らせてきた。
中国は日本の自衛隊の能力向上や役割拡大への韓国側の懸念に同調を示して、韓国側の対日不信をあおり、米国が期待するような米韓両国間の安全保障協力の推進を阻もうとしてきた。
米国の議会機関が指摘する中国の日韓離反工作も中国の沖縄への介入と目的を一致させる反日、反米のしたたかな謀略活動だともいえるでしょう。日本側としても硬軟両面でのそれ以上にしたたかな反撃が欠かせないでしょう。

安倍総理は、総理に着任する直前に、「安全保障のダイヤモンド」という論文を国際NPO団体PROJECT SYNDICATEに発表しました。この内容は、単純に言ってしまうと多国間の連携による中国封じ込め政策です。

そうして、安倍総理はこの論文の内容を実現するため全方位外交を展開し、安全保障のダイヤモンド構想を現実のものとしてきました。これは、中国にとって大きな脅威だと思います。

ただし、この内容は、未だにほとんどのマスコミで報道されることはありません。沖縄の危機についても、産経新聞などは例外としてほとんど報道されません。テレビ局ではどこも報道しません。

この状況は何としても打開しなければなりません。これを打開するには、まずは日本でも米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関と同じような機関をつくるべきです。

中国に親和的なリベラル・左派が多数派を占める米国のマスコミや共和党が大きな力を持っていたオバマ政権末期にこの委員会は設立されています。

そうして、このブログでも以前掲載したように、米国議会のこの「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、今年の8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書が公開されていますが、これを期に米国議会では中国をあからさまに擁護する議員は、ほとんどいなくなりました。

その記事のリンクを以下に掲載します。
【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに―【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみを引用します。
中国共産党の正体を暴いた同報告書はトランプ政権の大きな実績です。中国共産党の各種不道徳な行為は、トランプ政権によって次々と暴露され始めています。これからも、さらに中国の異形のおぞましい姿が次々に晒されていくと思います。 
なお、この『中国共産党の海外における統一戦線工作』に書かれていことは、以前から知られていることです。多くの筋からそのような内容は、多くの人々に知られていました。その一旦は、このブログにも過去にも数多く掲載しています。 
とはいいながら、このような内容が、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書によって正式に公表されたという事実は大きいです。 
これで、中国に対して面と向かって擁護する人は少なくとも米国ではいなくなりました。そうして、これはトランプ大統領ならび米国議会が中共との対立もじさないという並々ならぬ決意を示すものです。 
そうして、このような中国の統一戦線工作は無論米国にだけではなく、日本を含む他の先進国にも様々な工作をかけています。 
日本も、米国のように中国の化けの皮を剥がし、白日のもとに晒すべきです。
日本でも、このような委員会を超党派で設立して、中国の沖縄での工作活動を表沙汰にして、中共の化けの皮をはがせば、日本でも中国を擁護するような国会議員などいなくなります。それでも、産経新聞などの一部を除いては、それを報道しないでしょうが、政府が積極的にSNSなどで公表するようにすれば、いずれ日本も米国と同じようになり、マスコミも政治家も中国をあからさに擁護する者はいなくなるでしょう。

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「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国―【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!


2018年10月6日土曜日

「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国―【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!

「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国

米日豪印の4本柱に英仏を加えた4+2体制の構築が不可欠に



米海軍誘導ミサイル駆逐艦ディケーター 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念
 米海軍作戦部長のジョン・M・リチャードソン大将は、今年(2018年)9月はじめ、ワシントンで開催されたディフェンス・ニューズ(Defense News)主催の会議において「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念を提唱した。

 そして「本格戦闘に至る前の段階」(Areas Short of Open Warfare)での対処がいかに重要であるかを述べた。

 「Gray War(灰色戦争)」は、わが国でも大きな課題となっている「グレーゾーン事態」あるいは「グレーゾーンの戦い」に相当する概念と解釈される。

 それを主として軍事の対象領域である戦争(War)と捉え、しかも、日本で言えば海上幕僚長に相当する米海軍現役最高位の軍人が公言にしたところに重大な意味がある。

 会議の講演の中でリチャードソン作戦部長は、南シナ海はもちろん中東領域での中国およびロシアとの対立は「本格戦闘に至る前の段階における灰色戦争」であると述べた。

 そして、米海軍は、「灰色戦争」に勝利する能力を備えなければならないと強調した。

 繰り返すと、米国は、現在の中国との対立を「本格戦闘に至る前の段階」にあると認識し、その渦中にある「灰色戦争」に勝利すると明言しているのである。

 それを象徴するかのように、最近になって米軍は、西太平洋以西、特に東シナ海と南シナ海における軍事的プレゼンスを強化している。

 米国防総省は9月26日、核兵器搭載可能な米空軍の「B52」戦略爆撃機が、尖閣諸島をめぐり日中が対立する東シナ海や中国の軍事拠点化が進む南シナ海の上空を飛行したことを明らかにした。

 その際B52は、航空自衛隊の戦闘機の先導で尖閣諸島付近や、中国が東シナ海に設定した防空識別圏内を飛行したと報道されている。

B52戦略爆撃機

 9月30日には、米海軍のイージス駆逐艦「ディケーター」が、「航行の自由作戦」の一環として南沙諸島のガベン礁などの領海(12海里)内を航行したようだ。

 また、インド洋に長期派遣中であった海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)「かが」は、南シナ海において英海軍のフリゲート艦「アーガイル」と共同訓練を実施した。

 このように、日米を中心に英仏などが米国の「灰色戦争」に共同連携する動きを強め、中国の海洋進出と覇権拡大への対抗姿勢を鮮明にしつつある。

「国家安全保障戦略」に基づく既定路線
 このような米軍の動きは、昨年(2017年)12月にドナルド・トランプ米大統領が公表した米国の「国家安全保障戦略」(NSS2017)の方針に沿った「既定路線」と見ることができる。

 NSS2017は、中国(とロシア)を力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難し、米国に挑戦し、安全や繁栄を脅かそうとしている「ライバル強国」であると位置づけた。

 そして、中国はインド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの範囲を拡大し、地域の秩序を好きなように再編成しようとしていると指摘している。

 そのうえで、「我々は新たな対立の時代に入っている」と述べ、米国は中国(とロシア)に対抗して世界各地の係争地域において、米軍の増強や近代化そして同盟国との連携などによってこうした脅威に立ち向かい、「このゲームで米国は勝利する」と宣言している。

 また、NSS2017は、「強い経済は、米国民を守り、米国の生活様式を支え、米国の影響力を維持する」として米国経済を活性化し、米国の国力と優位を回復する必要性を強調している。

 特に中国を睨んで、巨額で慢性的な貿易赤字は許容しないとし、自由で公正、互恵的な経済関係を追求するとしている。

 また、研究、技術および革新の分野で先頭に立たなければならないとして、米国は知的財産を盗用し自由な社会の技術を不当に利用する者から、自国の安全保障の基盤技術を守ることなど、いわゆる経済安全保障の見地から、中国との貿易戦争を予見させる内容になっている。
 今年7月初め、米国が340億ドル分の中国産品輸入に対する25%の関税引き上げを実施したことに始まった米中貿易戦争は、関税措置での制裁と報復の応酬が激しく繰り返される中、出口戦略を見出せない状況が続いている。

 しかし、この問題は、中国が「将来的には地球規模での優位を確立し、米国に取って代わろうとしている」との米国の対中認識が示すように、国際社会の首座を巡る米中の覇権争い、すなわち地球規模での地政戦略的支配権争いが基底をなしている。 米中相互に遠大な戦略の一部であるがゆえに、その解決が容易でないことだけは、はっきりしている。
そして、貿易戦争は、通商的・経済的対立にとどまらず、政治、軍事、情報、サイバー戦など広範な分野へと拡大する危険性を孕んで推移し、「長く、厳しい対立の時代」に入る始まりにすぎないといっても過言ではないのである。

米中は貿易戦争から全方面対決へ

 経済分野においては、対中融和派とされるウィルバー・ロス商務長官やスティーブ・ムニューシン財務長官に代わって強硬派のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表やピーター・ナバロ米国家通商会議(NTC)委員長、ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長が貿易問題で実権を握り、タカ派色が強まっていると伝えられている。

 また、外交・安全保障分野では、国際協調派のジェームズ・マティス国防長官は健在であるようだが、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やマイク・ポンペオ国務長官など、いわゆるタカ派と呼ばれる側近がトランプ大統領に大きな影響力を持つようになり、米政権の顔ぶれは対中強硬派で固まったようだ。

 2018年9月28日付ロイターの『アングル:トランプ政権、中国向け「圧力戦略」が新局面入りか』という記事は、政府高官の話として下記のように伝えている。

 長年の対中強硬派として知られるボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が中心となって、貿易摩擦の枠を超え、サイバー活動や台湾、南シナ海の領有権問題なども含めて、中国に対して強い姿勢を取るようトランプ大統領を説得した。

 新たな戦術はまだ策定中だが、中国への圧力強化により、今後数週間で米国側からのさらなる強硬発言や、新たな政策措置が出てくるだろう。

 その見通しの背景としては、米中関係が緊迫化する中で、トランプ大統領が、先の国連安保理会合で、中国が11月の米中間選挙で共和党が不利になるよう介入し、通商問題におけるトランプ氏の強硬姿勢に一矢報いようとしていると非難したことに現れていると指摘している。

 対中関税措置のほかにも、米国は中国に対し、ロシアから戦闘機やミサイルシステムを購入して米制裁に違反したとして、中国人民解放軍の兵器管理部門を制裁対象に指定した。

 また、バラク・オバマ政権下で延期されていた台湾への3億3000万ドル(約375億円)相当のF16戦闘機の部品などの売却も承認した。

 さらに、中国によるネット上の盗難行為やスパイ行為に対しても、より厳しい行動を取ることを米国政府は検討している。

 前述のとおり、米国の中国向け「圧力戦略」は、NSS2017の対中脅威認識を背景に一貫した展開を見せている。

 そして、「中国は、われわれの政策を撤回させるためにあらゆる手段を講じている」「中国は、政治的、経済的、通商的、軍事的な手段やメディアを使い、中国共産党の利益を得ようとしている」とし、中国は、ロシアがクリミア半島併合で仕掛けた「ハイブリッド戦」と同じ「Gray War(灰色戦争)」を、米国に仕かけていると見ているのである。

 以上の文脈からすると、トランプ政権は、長期的・戦略視点に立って、たとえ中国から激しい反応を引き起こす恐れがあっても、より幅広く押し返そうとする全方面対決を決意していると言えるのではないだろうか。

日米豪印の「4本柱」による安全保障協力体制

 安倍晋三首相が、米ニューヨークで開かれた、先の国連総会での一般討論演説で、「北東アジアの戦後(冷戦)構造を取り除く」(カッコは筆者)と述べたことは、極めて重要である。

 北東アジアでは、終戦から73年経った今日でも戦後は終わっておらず、また、戦後とほぼ同時に始まった冷戦も完全には終わっていない。

 中国、ロシア、北朝鮮をめぐる外交・安全保障の問題がそれである。

 なかでも中国は、国力の増大に伴ってグローバルなパワーバランスに大きな変化をもたらし、軍事的動向にも顕著な影響を及ぼしている。

 それを念頭に、安倍晋三首相は、改めて国連の場で「自由で開かれたインド太平洋戦略を進める」と述べた。

 「私が『自由で開かれたインド太平洋戦略』を言いますのは、まさしくこれらの国々(ASEAN諸国や太平洋島しょ国等)、また米国や豪州、インドなど、思いを共有するすべての国、人々とともに、開かれた、海の恵みを守りたいからです」(カッコは筆者)と訴えた。

国連で演説する安倍総理

 この戦略を実効性ある現実的なものに高めるには、日本は、まず自主防衛力を強化することが先決だ。

 そのうえで、日米豪印の「4本柱」を中心として、基本的価値や戦略的目標・利害を共有する努めて多くの国・地域を有機的に連結した多国間主義による安全保障ネットワークを構築することである。

 この際、日米豪印による「4本柱」を、インド太平洋地域に強い戦略的利害関係をもつ英仏の「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化されるのは請け合いである。

 そして、日米豪印と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制に、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出と世界的覇権拡大の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができるのである。

【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の以下の結論部分は、このブログで私も主張してきたものです。
日米豪印による「4本柱」を、インド太平洋地域に強い戦略的利害関係をもつ英仏の「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化されるのは請け合いである。

そして、日米豪印と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制に、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出と世界的覇権拡大の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができる。
そうして、安倍総理はまさにこの体制を築くために総理に就任直後から全方位外交に傾注してきました。この体制は完成に近づきつつあります。

さて、この体制にも大きな影響を及ぼす米中の経済冷戦はどのようになるのでしようか。

これについては、85年ほど前に起きた銀をめぐる米中間の対立に、昨今の米中貿易摩擦といくつかの類似点があり、米中関係もしくは国際関係の今後を占うためのヒントが含まれています。

各国の金本位制採用とそれに伴う銀売却、1929年に始まった世界恐慌によるデフレーション、銀鉱脈の発見による銀生産の増大などにより銀の価格は低下し、世界恐慌前には1オンス65セント程度あった銀価格は25セント程度にまで落ち込みました。

これに危機を感じた米国の銀業界は積極的なロビーイングを行いました。このころ米国内の銀生産は西部山岳の7州(アリゾナ・カルフォルニア・コロラド・アイダホ・モンタナ・ネバダ・ユタ)に偏り、米上院では人口の多寡にかかわらず各州2名の上院議員がいるので、7州14名の上院議員は「シルバー・メン」と呼ばれて一大勢力を形成していました。

シルバー・メンは、①各国に働きかけて銀需要の喚起と供給の制限を図る、②銀価格を引き上げて、銀を通貨として使用している中国等の購買力を引き上げ(つまり、ドル安元高に誘導する)、米国の輸出を増やす、③銀を通貨発行準備の一部とすることで貨幣供給量を拡大する、などの主張を行いました。

シルバー・メンの声を聞かざるをえないフランクリン・ルーズベルト大統領は銀買い上げ法の施行(1934年)等いくつかの銀価格引き上げ政策を採用し、その結果銀価格は高騰し1オンス70セントをも超えるに至りました。

米国の保守派からは、ソ連と対峙していた日本に戦争を仕掛け、
ソ連と手を組んだ大悪人とみられているフランクリン・ルーズベルト

つまりは、国際経済関係のなかで苦境に陥っている国内産業の声を聞き、自国を最優先して他国を犠牲にする典型的なアメリカ・ファースト政策です。

当時の中国の状況をみると、銀本位制度を採用する中国は、世界恐慌のときには銀価格下落のおかげで自国通貨である元が銀価格に並行して下落し、元安が世界恐慌という大火事に対する防火壁となり、中国は延焼を免れました。

ところが米国の銀価格引き上げ政策が始まると状況が一変しました。銀を米国にもっていけば高値で買い取ってもらえるのですから大量の銀が中国から米国へ流出。中国国内の銀流通総量の3分の1にもなる銀が国外に出ました。中国の貨幣供給量は一気に収縮し、中国経済は深刻なデフレーションに陥って株価は暴落、小銀行や工場、商店が相次いで閉鎖に追い込まれました。銀恐慌に陥ったのです。

中国はどう対処したかといえば、中華民国政府は応急的、一時しのぎ的な対処ではなく、大胆で根源的な策を採りました。1935年11月、約500年続いた銀本位制度を捨て去る幣制改革を断行したのです。これにより、もはや米国の政策により中国経済が翻弄されることがなくなりました。

中華民国十二年発行 竜鳳壱圓(ONE DOLLAR)銀貨
直径:39.39㎜ 重量:26.8g 現在の買取価格 ~65,000円

一連の出来事を通じて、各国の経済にどのような影響があったのでしょうか。主には次の点を挙げることができます。

まず米国については、銀業界は結局損をしました。中国を銀本位制からの離脱に追い込んだがために、もはや地球上に銀を通貨として使う者はほとんどいなくなったのです。銀に対する需要は大いに減退し、銀価格は数カ月のうちに1オンス当たり20セント程度も下落しました。

日本については、一時的ながらも漁夫の利を得ました。

中国は幣制改革を断行する直前、銀の輸出に対して高率の税を課すことで銀流出を食い止めようとしました。ところがその結果、銀の内外価格は数十%も乖離するようになり銀の密輸が激増しました。中国の銀は北方の山海関を越えて満州国に密輸出され、日本はそれを高値で売却して大きな利益を得たのです。

中国については、経済が大いに復活しました。1元40セントを超えていた為替レートは1元30セントを下回るまで下落し、貿易量が増え、生産活動は上昇し、物価は緩やかに上昇しました。恐慌状態にあった中国経済は米国の銀政策を契機とする幣制改革により一気に回復しました。

そして世界経済には、巡り巡って構造変化がもたらされました。中国の銀本位制度からの離脱により銀は大航海時代から続いた国際通貨としての地位を失いました。一方で、米ドルは基軸通貨としての地位を高めました。

中国は幣制改革を実行するにあたり、銀に代わる対外支払準備をある程度確保しておく必要がありました。幣制改革実行直後に中国は米国に5000万オンスの銀を売りドルを獲得して、それを対外支払準備としました。それまで中国経済はイギリス、もしくはポンドの強い影響下にあったのですが、これにより米国、もしくはドルの影響下に軸足が移ったのです。両大戦間期は基軸通貨としての地位がポンドからドルへと移行した時期ですが、米国の銀政策がポンドからドルへの交替を後押しすることとなりました。

ドル紙幣でできたビキニを着用する女性たち ロンドンにて

この85年前の歴史経緯をトランプ政権と中国とのあいだの貿易摩擦に当てはめつつ考えてみるとどうなるでしょうか。

銀をめぐる米中間の対立においてはポンドからドルへと基軸通貨の重心が移動し、米国は覇権国の地位を引き寄せましたが、それから約85年を経た今回の米中対立でも再度米国の地位を大幅に引き上げることが予想できます。

ここ20年くらいは、米国は中国によって、知的財産権を無視され、富を一方的に略奪されていたようなものです。今回の経済冷戦の行き着く先は、この略奪がなくなるということですから、途中経過はどうあれ、最終的には米国が唯一の超大国に返り咲くことになるでしょう。

まずは、今回の貿易戦争は、米国が知的財産権を全く守る気がないどころか、積極的に侵害しようとする中国に守らせることを主目的としているということであり、貿易戦争はその手段にすぎないということです。ここが、85年前の米国とは全く異なります。大義は米国のほうにあります。

そのため、この戦争は長く続きます。中国が音を上げ、知的財産権を守るように体制を変えることになるか、中国が体制を変えなければ、中国が経済的にも軍事的にも他国に影響が与えられないほどに弱体化するまで続けられるでしょう。

ただし、中国が知的財産権を守るように体制を変えるといっても、それはかなり困難です。現在の中国は、民主化、経済と政治の分離、法治国家がなされていません。知的財産権を守る体制にするためには、これらを先進国並みに変えなければできないです。

民主化、経済と政治の分離、法治国家化を推進するためには、驚天動地の構造改革をしなければなりません。これを実行すれば、現在の中国共産党は統治の正当性を失って、崩壊した後他の政治勢力がとって変わることになるかもしれません。

それをおそれて、この驚天動地の構造改革を実施しなければ、中国の待つ未来は、図体が大きいだけの、他国に対して影響力が全くない内にこもったアジアの凡庸な独裁国家となることでしょう。ただし、この場合も、中共は弱体化し、多くの人民が不満を持ち、内乱等が勃発して中共は崩壊することになるでしょう。

このまま、米国が経済冷戦と、ブログ冒頭の記事のように、米日豪印の4本柱に英仏を加えた4+2体制を構築さらにASEAN諸国も巻き込み、中国に軍事的に対峙して、中国の封じ込めに成功した場合、いずれにしても中共は崩壊することになるでしょぅ。

これは、当時からすれば、抜本的な構造改革である銀本位制を放棄した当時の中国(中華人民共和国)が、経済的には安定し、日本との戦いには米国などの支援があったため、なんとか勝つことができましたが、統治の正当性を主張することが出来ず、結局共産勢力に負けて、台湾に逃亡したことと類似しています。

結局現在の中共が、米国の経済冷戦と、灰色冷戦に負けて、抜本的な構造改革を断交した場合、現在の中国も過去の中国のように、経済が安定し発展するかもしれませんが、やはり統治の正当性を失い、中国共産党幹部は海外に逃亡することでしょう。彼ら幹部は、すでにドルなどで天文学的な額の蓄財をして海外に大部分を送金し、家族なども移住させ、中共が崩壊したときに自分たちも後から移住できるように準備を整えています。

中共が崩壊した中国では、中国は分裂することでしょう。そうして、おそらくいくつかの民主化、政治と経済の分離、法治国家化の進展度合いが異なる国々が成立することでしょう。これらのうち進展度合いが高い国が、米国と接近して、いずれ経済的に大成功を収めることができるかもしれません。

その後には、米国は中国による富の簒奪を免れ、しばらくの間は超大国は米国一国という時代、すなわち現在と同じような体制から中共が抜け落ちた体制が続くことになるでしょう。

ただし、これは経済冷戦や灰色冷戦が中途半端で終わらない場合です。オバマ政権のように、中途半端で終わらせれば、中共がしぶとく中国に生き残るだけとなります。やはり、この戦争は中国が抜本的に変わるまで続けなければならないのです。

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2018年10月5日金曜日

米議会で人気コメディアンなど数百人逮捕 キャバノー最高裁判事候補に抗議―【私の論評】この世界は、個人中傷キャンペーン等の嘘もすぐに見破られるところとなった(゚д゚)!

米議会で人気コメディアンなど数百人逮捕 キャバノー最高裁判事候補に抗議

BBC
After the FBI report's release, activists have gathered in the Senate office building to protest Judge Kavanaugh's nominationImage copyrightREUTERS
Image captionキャバノー判事の米最高裁判事承認に抗議して大勢が上院議員会館に集まった。赤い幕には「すべての生存者を信じる」と書かれている(4日、ワシントン)
性的暴行疑惑で揺れる米最高裁判事候補の承認手続きをめぐり4日、数千人が連邦議会などで抗議し、人気コメディアンのエイミー・シューマー氏など数百人が逮捕された。保守派のブレット・キャバノー高裁判事(53)を最高裁判事に推す与党・共和党は、連邦捜査局(FBI)の捜査の結果、性的暴行の疑いは晴らされたと表明。野党・民主党は反発している。
女性を中心とした数千人のデモ隊は4日、キャバノー判事が現在勤めるコロンビア特別区控訴裁判所を出発点に、市内を行進した。連邦議会議事堂や最高裁の前で集会を開き、「キャバノーは辞めさせなくては!」と繰り返した。さらには、上院のハート議員会館で座り込み、警察に退去を命じられるも拒否。警察によると、302人が逮捕された。その中には、シューマー氏やモデルのエミリー・ラタコウスキ氏も含まれていたという。
抗議する人たちは、「(性的暴行の)すべての生存者を信じる」と書かれた横断幕や、「女性の声を聞かなくては」、「務める資格なし」、「最高裁を救え」、「キャバ・ノー」などと書かれたプラカードを掲げて、承認に抗議した。
連邦議会警察は、廊下を歩く議員たちと抗議する人たちの間に柵を設置した。
ニューヨークのトランプ・タワー前でも抗議集会があった。
Comedian Amy Schumer (C) joins a protest on Capitol HillImage copyrightGETTY IMAGES
Image caption人気コメディアンのエイミー・シューマー氏(中央)も上院での抗議に参加し、逮捕された

承認の見通しは

上院本会議で過半数が承認に賛成すれば、キャバノー判事は終身の最高裁判事となる。
現在の最高裁判事はすでに保守派5人、リベラル4人で、保守派が優勢な構成。終身の最高裁判事たちの政治的傾向が圧倒的に保守寄りになった場合、その判決はトランプ氏の任期満了後も長く米社会に影響を及ぼすことになる。
現在の上院は、共和党が51対49で多数党だが、僅差だけに数人の穏健派議員が造反すれば承認は否決される。
しかし、上院司法委員会でその穏健派共和党議員の1人、ジェフ・フレーク議員(アリゾナ州選出)が求めた連邦捜査局(FBI)の捜査の結果、フレーク議員を含め穏健派議員2人が4日、性的暴行疑惑は裏づけられなかったなどと発言。キャバノー判事承認の公算が強まったとみられている。
上院共和党は5日午前10時半(日本時間同日午後11時半)に「討論終結」の議決を予定している。最終的な承認採決は6日午後5時半(日本時間7日午前6時半)ごろになる見通し。

Protesters outside court holding signs, one saying: SUSAN COLLINS DON'T BETRAY WOMEN, VOTE NO.Image copyrightREUTERS
Image caption連邦最高裁の前で、キャバノー判事の承認に反対する人たち。手前左のプラカードは共和党穏健派の1人、スーザン・コリンズ上院議員に「女性を裏切らないで、反対して」と呼びかけている

FBI報告書を評価

カリフォルニア州パロアルト大学で心理学を教えるクリスティーン・ブラジー・フォード教授は、お互いが10代のころにキャバノー氏に性的暴行を受けたと9月末に上院司法委員会で証言したキャバノー判事は同じ公聴会で、疑惑をすべて否定した。
フレーク議員が、フォード教授の証言内容をFBIが捜査しない限り自分は本会議で承認に反対すると表明したのを受け、ドナルド・トランプ大統領はFBIに捜査を指示。FBIは捜査報告書を4日までにホワイトハウスに提出し、ホワイトハウスが上院に提示した。
上院議員たちによるとFBIは、フォード教授の証言に関連する証人5人に事情聴取したほか、イェール大学でキャバノー氏に露出した性器を突きつけられたと名乗り出たデボラ・ラミレス氏の主張についても4人から事情を聞いた。キャバノー判事はいずれの告発内容も否定している。
上院司法委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党)は、「捜査の結果、問題行動があった様子はいっさい伺えなかった」と明を発表した
一方で、同委員会の民主党筆頭委員、ダイアン・ファインスタイン議員は、FBIの報告書は「不完全な捜査の産物」で、事実関係を裏づけられる複数の重要証人が捜査協力を申し出たにもかかわらず、FBIはあえて事情を聞かなかったと非難した。司法委に所属する民主党のリチャード・ブルーメンソール議員は記者団に「ごまかしだ」と述べた。
これに対して、フレーク議員は「裏づけとなる追加情報はなかった」と発言。同じく共和党穏健派のスーザン・コリンズ上院議員(メイン州)も、「とても綿密な捜査だった」と評価した。
同様に造反の可能性があるとみられていた共和党のリーサ・ムルコウスキ上院議員(アラスカ州)は4日、事務所で性的暴行の生存者と面会したと言われている。
一方で、承認に賛成を検討していたとされる民主党のハイディ・ハイトキャンプ上院議員(ノースダコタ州)は、キャバノー判事の「過去の行状に関する懸念」を理由に、承認に反対することにしたと発表した。
民主党側でもう1人、賛否を明らかにしていないジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)は、5日の午前中にFBIの報告を読み終えるつもりだと話した。
ホワイトハウスのラージ・シャー報道官は、「(キャバノー判事を)批判する側は、高校生の飲酒について果てしない調査を求めている」と批判した。
一方で、共和党穏健派のジョーン・コーニン上院議員は同僚議員たちに、「これは自分たちがアティカス・フィンチかどうかが問われている」と発言し、周りを驚かせた。アティカス・フィンチとはハーパー・リー作の小説「アラバマ物語」に登場する弁護士で、人種差別の激しい1930年代のアラバマ州で白人女性を強姦したと無実の罪に問われた黒人男性を弁護する。
私は無実だ」 キャバノー判事と共和党、激しく反撃

この間、上院公聴会での激しい口調や、民主党議員に向かって飲酒で記憶をなくしたことはあるのかなど繰り返し問いただした攻撃的な態度、自分に対する性的疑惑は民主党やビル・クリントン夫妻による政治的工作だなどと批判した政治的偏向ぶりなどを非難されているキャバノー判事は、米紙ウォールストリート・ジャーナルに論説を寄稿し、「自分の口調がきつかったことは承知している。言うべきでないこともいくつか言ってしまった」と書いた。
米政界では11月6日に、連邦議会などの中間選挙が行われる。民主党が下院の過半数を奪還する可能性があるだけに、共和党は中間選挙の前に保守派判事を最高裁に送り込みたい構えだ。

【私の論評】この世界は、個人中傷キャンペーン等の嘘もすぐに見破られるところとなった(゚д゚)!

ドナルド・トランプ米大統領は今年の7月、連邦最高裁判事の引退に伴い、その後任として、保守派で熱心なカトリック教徒でもあるブレット・キャバノー判事(53)を指名しました。

トランプ政権による判事の指名は2人目です。今後、上院の承認手続きを経て就任となる見通しでした。 前任のアンソニー・ケネディ判事(81)は、保守派ではあるものの、同性結婚合法化や人工中絶などを支持することもあり、リベラル寄りでした。

一方、後任のキャバノー氏は人工中絶に反対の立場を取るなど、典型的な保守です。

 これにより、長官を含む計9人の最高裁メンバーのうち、「保守派5人・リベラル派4人」の構図が明確になると指摘されていました。 

オバマ政権下の2016年6月、最高裁は、テキサス州の州法である人工中絶の制限を無効とするリベラル的な判断を下しました。州法は、人工中絶を行う病院に対し、廊下の幅や空調などに厳しい規制を課していました。

 最高裁は、5対3で同州法が無効と判断 (保守派判事の急死により、1人欠員していた)。このリベラル的な判決を決定づけたのが、今回引退するケネディ判事による投票でした。

もしケネディ判事が州法を有効と判断していれば、4対4の可否同数となっていました。 新たにキャバノー氏が就任することで、最高裁の判断が保守的になると期待されています。最高裁判事は、引退や弾劾、死亡した場合を除いて終身制です。

トランプ政権後も、司法に「保守の遺伝子」が残り続けることになるでしょう。 司法の保守回帰への期待に加えて、米メディアで興味深い論点が報じられていました。

7月9日付FOXニュースに、このような題の寄稿記事が掲載されました。 

「トランプが指名した最高裁判事ブレット・キャバノーは、私たちの最も聖なる権利である信教の自由を守ると信頼できる」 

寄稿したのは、「ファースト・リバティ・インスティチュート(First Liberty Institute)」という組織のCEOを務める、ケリー・シャックルフォード氏。同組織は、アメリカ国民の信教の自由を守ることを目的とした、国内最大の非営利団体です。

ケリー・シャックルフォード氏

 シャックルフォード氏は、全国民に信教の自由を保障する「合衆国憲法修正第一条」に関するキャバノー氏の実績などから、こう述べています。 

「彼(キャバノー氏)の意見は、政府が神から与えられた人間の権利を守るために存在し、憲法は、権利を守ることを信託された政府が、権利を侵害することがないよう存在するという原則に、一貫して忠実だ」

 注目すべきは、最高裁判事を選ぶ際に、信教の自由をどのように扱ってきたかという実績が問われているということです。信教の自由が、あらゆる権利の根幹を成すという考えが現れていると言えます。

日本ではあまり見られない事象です。 トランプ氏の最高裁判事の指名からは、司法の方向性と、信教の自由の重要性をうかがい知れます。

リベラル・左派としてはこの信仰の自由というのが気に食わないのでしょう。信仰の自由は守られるべきことですが、リベラル・左派にとっては、ピューリタン的な考えかたが世の中で息を吹き返すことは我慢ならないのだと思います。

しかし、それは彼らの考え方であって、米国の人口の少なくとも、およそ半分は存在するとみられる保守層は、ピューリタン的考え方を自らの信条としたり、信条とまではいかなくてもかなり親和的です。

ただし、米国の大手新聞はすべてが、リベラルであり、大手テレビ局はFOXTVを除いてすべてが、リベラルであるため、この保守派の考えなど長年無視されてきました。

しかし、トランプ大統領誕生により、米国には保守層が厳然として存在することが誰の眼にも明らかになりました。

ブレット・キャバノー氏の無罪は、はっきりしているようです。それは国際政治学者の藤井厳喜氏は以下の動画で断言しています。



この動画にあるように、被害を受けた女性のとされる人の証言が全くあやふやであることと、米国では司法関係者も政治職についたりするので、キャバーノ氏は過去24年にわたり6回もFBIの身辺調査を受けて、何もでてきていなかったと言う事実もあります。

これは、10月の中間選挙に向けて民主党はかなり追い詰められていることから、選挙キャンペーの一環として、このようなバカ真似した可能性が高いです。

このようなことは日本でもあったことです。たとえば「もりかけ」騒動です。あれだけマスコミや野党政治家などが騒いで、国会で時間を費やしたにもかかわらす、何にもでてきませんでした。

米国でも、トランプ氏個人に対する中傷も酷いものがありました。しかし、このようなキャバノー氏、トランプ氏、安倍氏に対する推定有罪的な中傷キャンペーンはあまり効果がないようです。

今やネットで様々な情報が得られる時代です。情報源がほとんどテレビや新聞という年配者は別にして、70歳未満の人だと自分の意志でいくらでも、多くの情報源にあたることができます。

そんな時代に、いくら中傷キャンペーンをやっても世界のどこの国でもすぐに見破られてしまうことでしょう。中国や北朝鮮などの例外を除けは世界は変わったのです。

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トランプ米大統領、最高裁判事に保守派のカバノー氏指名―【私の論評】実は平時に世界最弱の権力者米大統領の権限強化に動くトランプ大統領(゚д゚)!


2018年10月4日木曜日

政府の“プロパガンダ”も成果なし? 世界中で中国の「好感度」が上がらないワケ ―【私の論評】中国の行き詰まりは、日本のパブリック・ディプロマシーにとってまたとないチャンス(゚д゚)!

政府の“プロパガンダ”も成果なし? 世界中で中国の「好感度」が上がらないワケ 

 「残念なことに、中国が11月の中間選挙に介入しようと試みていることが分かった」

 9月26日、国連安全保障理事会でドナルド・トランプ米大統領がそう発言して話題になっている。トランプは続けて、「彼らは、私が貿易問題で中国に盾突いた初めての米大統領だから、私、あるいは共和党に勝利してほしくないのだ」とも述べている。

 この翌日には、その根拠となるような話を、写真入りでTwitterにアップ。中国国営英字紙チャイナ・デイリーの写真とともに「中国は実際に(アイオワ州の地方紙)デモイン・レジスター紙や他の新聞で、ニュース記事のように見せたプロパガンダ広告を入れている」というメッセージをポストした。

 こうしたトランプの発言は、11月の中間選挙に向けたアピール以外の何物でもない。また米国のテリー・ブランスタッド駐中国大使も9月28日、「中国政府は、プロパガンダを広めるために、米国が守る言論と報道の自由という伝統を利用している」と発言している。こちらは中国だけでなく、トランプを意識したアピールだと見ることができるだろう。

 もちろん、中国によるプロパガンダは実際に行われているし、そもそも今に始まったことではない。最近、中国が世界的にイメージ向上を狙ったプロパガンダを強化していることも確かだ。だが、実は中国のプロパガンダは、トランプが懸念するほどの力はなく、成果も出ていない、というのが実情だと言える。そこで、世界に対する中国の「プロパガンダ」の実態について探ってみたい。

世界で展開されている中国のプロパガンダ。その実態とは?

■「世界は中国をもっと知る必要がある」

 2016年末、中国の国営テレビ局である中国中央電視台(CCTV)の外国語放送を行う部門が、「CGTN」という新たな部門として再スタートすると発表された。CGTNの発足は、中国政府による対外的な情報発信の強化を意図しており、プロパガンダ強化の一環だとされる。

 最近のプロパガンダの強化は、習近平国家主席の肝いりだとみられている。習はこれまで「世界は中国についてもっとよく知る必要がある」と主張したり、「中国のストーリーをうまく伝える能力を高めなければならない」などとコメントし、やる気をアピールしている。

 さらに18年3月には、中国政府がCCTVと、対外向けラジオ局である中国国際放送局(CRI)、そして国内向けの中央人民広播電台(CNR)を統合し、「ヴォイス・オブ・チャイナ(中国の声)」という組織の発足を発表。ヴォイス・オブ・チャイナは世界最大規模の放送局になり、60以上の言語で放送を行うという。公式発表によると、ヴォイス・オブ・チャイナは「中国共産党の見解と指針、政策を広めること」を目的に、「国際的な放送の力を強化する」ことになる。

 米CNNは、戦時中からある米国営放送「ヴォイス・オブ・アメリカ」をまねたヴォイス・オブ・チャイナは、「中国政府の新たなプロパガンダ兵器」だと指摘している。

 こうした最近の動きは、プロパガンダを今以上に組織的に行うのが目的であり、今後、世界的に中国のポジティブな情報を浸透させたいという狙いがある。

 これまでも、中国が世界でプロパガンダ工作を行ってきたことは知られている。中国政府は、対外的なさまざまなプロパガンダ工作のために、年間100億ドル(約1兆1000億円)を費やしているとも言われている。

 例えば、有名なところでは、孔子学院が最たる例だろう。孔子学院は世界140カ国以上に施設を設置しており、日本でも私立大学との提携でいくつもの学院が開設されている。そこで中国政府の方針にのっとった「中国文化」が教えられている。ただ、FBI(米中央情報局)は18年2月、スパイ工作やプロパガンダ行為をしているとして孔子学院を捜査していると述べている。

 また、中国政府の裏工作も暴露されている。中国は、CRIやフロント企業を使って、米国など世界14カ国にある33のラジオ局で主要株主になるなどして、目立たないように裏でコンテンツを支配していることが明らかになっている。そうした局では、中国寄りの放送はするが、中国に都合の悪いニュースを排除しているという。

■好感度は上がっていない

 冒頭でトランプが批判した中国国営英字紙のチャイナ・デイリーの件も、いまさら驚くような話ではない。チャイナ・デイリーは、デモイン・レジスター紙に「チャイナ・ウォッチ」という4ページにわたる広告セクションを入れていた。ただこのやり方は、欧米メディアでは珍しい話ではなく、チャイナ・デイリーは広告セクションにページを入れてもらうために「広告費」を支払っている。日本などでも広く行われている、いわゆる「記事広」(編集記事のように見せた広告)のようなものである。

 またこんなケースもある。英国では、デイリー・メール紙がオンライン版に中国国営の人民日報の記事を週40本掲載するという契約で契約料を受け取っている。デイリー・メール紙から見れば単なるビジネスだが、中国側からすればプロパガンダ戦略の一環である。

 筆者が留学していた米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)でも、学内の掲示板のあるコーナーには、学校新聞「ザ・テック」に並んでチャイナ・デイリーがいつも山積みにされていた。学内のあちこちで、無料で手に取れるように置いてあったのである。他の大学でも同じように置かれているところが少なくなく、さらには国連関連の機関などにも配られているという。

 このように、中国はあの手この手でプロパガンダを実施してきた。ただ残念ながら、こうした取り組みの効果は、これまでのところ微妙だと言わざるを得ない。米調査機関のピュー研究所が世界38カ国で実施した調査では、09年に中国政府が対外プロパガンダの強化を始めたとき、中国を好意的に見ている人は50%ほどいた。だが17年にはそれが3ポイント低下。少なくとも、好感度アップにはつながっていなかった。

 また、米ジョージ・ワシントン大学国際関係大学院中国政策プログラムのディレクターで中国専門家のデイビッド・シャンボー教授は、「圧倒的にネガティブな見方が多く、好感度は時間をかけて落ちている。09年と15年を比べると好感度は20%も落ちている」と指摘している。

 少なくとも、イメージは以前と比べて大して良くなっていないということだろう。そんな背景から、中国は最近になって、あらためて強化策を行っていると考えられている。

プロパガンダを強化してきたが、中国のイメージは大して良くなっていない

■国内弾圧でイメージ悪化

 ただ残念ながら、世界に向けて大枚をはたいて実施しているプロパガンダも、国内での過剰な弾圧によって、一瞬にして全てが台無しになってしまうケースが相次いでいる。最近でも、18年8月に山東大学の中国人元教授が、山東省の自宅から米国のラジオ番組に電話で生出演している最中に、治安当局者が自宅になだれ込む事態が起きた。

 元教授は生放送で政府に批判的なコメントをしていたのだが、最後に「表現の自由があるのだ!」という言葉を残して中継は切られた。結局、元教授はその場で拘束されたのだが、この顛末(てんまつ)は欧米メディアで大きく報じられ、多くが中国の強権イメージを再認識することになった。

 またアフリカ東部のケニアでも18年9月、ケニア警察が不法移民取り締まりのためにCGTNのアフリカ本部を強制捜査して中国人記者らを一時拘束する騒動が起きている。また在ケニアの中国人実業家がケニア人を「みんな猿みたいだ」などと発言する動画が拡散され、この中国人は逮捕された。この1件も世界的に大きく報じられている。

 政府がどれだけ中国政府や文化のイメージを向上させようと画策しても、SNSなどが広く普及している現代では、中国当局の恐ろしさと一部の中国人らの素行の悪さは隠し切れない。

 まずは国内の現実に目を向け、そこから改善しないことには、プロパガンダもなんら意味を成さなくなる。中国は、対外的なPR活動なんかよりもまずは国内に目を向けるべきである。

 ちなみに、11月の米中間選挙までは、トランプの対中ネガティブキャンペーンは話半分で聞いておいたほうがいいだろう。

【私の論評】中国の行き詰まりは、日本のパブリック・ディプロマシーにとってまたとないチャンス(゚д゚)!

「残念なことに、中国が11月の中間選挙に介入しようと試みていることが分かった」というトランプ大統領の発言は単なるネガティブキャンペーンとはいえないでしょう。実際にあらゆる手段を講じて中国はこれに介入しようとしているに違いありません。

中国の真の姿を知ってしまえば、このように考えるのが当たり前です。これを単純にネガティブキャンペーンと受け取る人は、米国のリベラルメデイアによるキャンペーンによりかなり偏向した見方しかできなくなった人だと思います。とはいいながら、中国の対米国プロパガンダもしくは対中国パブリック・ディプロマシーは最近効果がなくなってきているのは事実です。


今日、海外の世論をめぐり、各国はパブリック・ディプロマシー(PD)(定義は後に掲載します)を活発に展開するようになりました。特に米国はPDの主戦場であり、米国世論をめぐる各国のPD合戦は凄まじいものがあります。

しかし、今、その環境が変容しつつあります。その原因が、中国の対米世論工作、つまりはPDの行き詰まりです。中国ではPDを「公共外交」と呼び、中国のソフトパワーを行使する手段として、これを重視してきました。

ただし、中国は自らの民主化されておらず、政治と経済が分離されおらず、法治国家化もされていない現状は表に出さず、自らの良い面を強調し、日本などは貶めるような工作をしてきたので、これはPDというよりは、やはり本質的には旧来のプロパガンダと変わりはないだけで、目先を変えただけのものが中国のPDということできると思います。

中国は、これまで米国においても活発にPDを展開してきましたが、ここに来て手詰まり感を見せ始めました。その一例が、全米に設置されている孔子学院の相次ぐ閉鎖です。例えば、フロリダ州北フロリダ大学は、学内に設置されている孔子学院を、2019年2月には閉鎖する方針を固めました。

孔子学院の設置は、中国のPDの中でも特に重視される手法の一つです。孔子学院は中国政府の非営利教育機構であり、中国語や文化の教育をはじめ、宣伝、中国との友好関係の醸成などの一環として世界中の教育機関に設置されています。特に米国における文化・教育の普及活動には熱心です。

孔子学院をめぐっては、最近になって、米国内で「中国政府の政治宣伝機関と化している」などとの批判が高まる傾向にあります。孔子学院は中国政府から資金を得ており、米国の教育機関から、「学問の自由に反する」と批判され、また、学内で中国に有利なプロパガンダを宣伝していると懸念されています。

米国では孔子学院に逆風が吹いている

このように、日本PDの最大のライバルともいうべき中国の米国に対する働きかけは難航しています。日本においても、PDの必要性が叫ばれる今日、こうした状況をどのように捉えるべきなのでしょうか。

PDとは、海外における自国の利益と目的達成のために、メディアでの対外情報発信や、海外の個人や組織との文化や教育に関する交流などの活動を通じ、海外における自国のプレゼンスやイメージの向上を目指す活動を指します。

大戦期に各国が戦略として用いた「プロパガンダ」が元々の形態であるとされます。しかし、戦後は「プロパガンダ」という言葉がネガティブなイメージとして想起されるようになり、PDという言葉が誕生しました。冷戦終結後には、ソフトパワーの重要性が増大したことや、世論が政府の政策決定において果たす役割が増大したことなどから、米国を中心に、各国がPDを重視する政策を採用していきました。


中国のPDは、日本がPDの重要性について着目するかなり以前から政治、経済、文化など、あらゆる分野において活発に展開してきました。その起源は天安門事件にあるといわれています。1989年6月4日に生起した天安門事件によって欧米諸国のメディアなどが作り上げた中国のマイナスイメージを払拭することが、当初の目的であったのです。

21世紀に入ると、中国は目覚ましく台頭していきます。中国の経済発展が急速に進行し、米国をはじめ、国際社会における中国のプレゼンスは格段に高まっていくこととなりました。

そして中国は、天安門事件以降の経験などから、PDが米国内の世論形成に大きな役割を持っていることを認識し、米国向けに積極的な活動を行ってきました。米国の政府機関などを通じた間接外交だけでなく、例えば、米国在住の華人を同胞として重視した地方都市における草の根レベルでの働きかけ、企業や市民団体との連携など、政府が前面に出ない形のPDを展開してきたのです。

とりわけ米国一般世論に働きかけるためには多彩なメディア戦略が必要だとの認識から、米国メディアへの働きかけをはじめ、中国中央電視台米国 (CCTV America)の発足や、China Watchの広告広報など、多大な努力を払ってきました。

特に2012年に米国に開局したCCTV Americaは、演出戦略などが卓越しているといわれます。多くの米国人をはじめとする外国人に視聴してもらうために、キャスターの人選や多言語化など、多様な演出の工夫を凝らしてきたことが功を奏したのでしょう。

文化・教育面では、孔子学院の拡大をはじめ、米国メトロポリタン・オペラで中国を舞台とした巨大オペラを上演するなどして、中国のイメージ向上に努力してきました。

メトロポリタン・おベラ

特に孔子学院については、中国の代表的なPDとしても有名で、海外の大学などの教育機関に設立しています。中国が米国に設置した孔子学院の数は110であり、世界全体における同学院の総数525(2018年9月時点)の約21%を占めます。これは、ほかの地域や国における数と比較して、群を抜いて多いです。

こうした中国の対米PDの影響は、米国世論にも表れ始めました。米国における対日世論調査(2016年度末まで外務省が実施)において、自国にとっての「アジアにおける最も重要なパートナー」を、「日本」ではなく「中国」と位置付ける見方が増え始めたのです。特に、日本がPD強化戦略をとる以前は、有識者の間にもこの考え方が浸透しており、2010年には「中国」が「日本」を20ポイントも追い抜き、調査開始以来最大の開きとなりました(中国56%、日本36%)。

そして、その後しばらくの間、「中国」が「日本」を上回る情況が続くこととなりました(下グラフ参照)。

外務省データより作成(以下同じ)

さらに中国は、日本を劣勢に立たせる形で、米国の対中政策に有利に作用させようとするPDも展開してきました。例えば、中国や韓国が国際社会において対日批判を激しく行う状況が多発し、その韓国の活動に中国が協力する形でPDを展開しています。その影響は、徐々に米国国内でも現れるようになりました。現地メディアが日本の慰安婦問題や靖国神社参拝問題に関し、日本を批判的に取り上げるようになっていたのです。

中国にとって都合が良いのは、日米関係が悪化することです。しかし、中国が単独で、米国の対日感情を悪化させたわけではないです。米国内でも中国のプレゼンスが増大しており、米国自身が日米同盟を維持しながら中国とも良好な関係を構築しようとしたこともその一因です。

そうしたなか、同盟国の日本が歴史認識をめぐる問題や領土問題などで中国と対立することに対して、米国内で不快感が広がっていきました。さらに、歴史認識をめぐる日本政府の強硬な姿勢が、中国の反日的なPDを後押しする形となり、米国が「失望」という声明を出すこととなってしまいました。こうした状況を背景として、米国世論のなかでも、日本より中国をアジア最大のパートナーと見なす考え方が増えていったのだと考えられます。

このように、中国の米国におけるPD戦略は、日本にとって不利に作用していました。安倍政権による2015年度のPD強化戦略も、こうした事態に対する強い危機感があったからだと考えられます。

しかし、冒頭の記事にもみられるように、中国のプロパガンダ(PD)は、効き目がないようです。日米関係を悪化させるかに見えた中国の対米PDが、行き詰っているように見受けられます。しかも、文化、経済、政治と、多岐にわたる分野で上手くいっていないようです。

文化面でいえば、先に紹介した、米国各州の教育機関における孔子学院の相次ぐ閉鎖です。米議会では、共和党のルビオ上院議員をはじめ複数の議員が、孔子学院の閉鎖を働きかける活動を展開しており、これまで、シカゴ大学やペンシルバニア大学をはじめ、最近では2017年9月にイリノイ大学の、2018年4月にテキサス農工大学の孔子学院が次々に閉鎖を決定しています。

さらに2018年2月には、米連邦捜査局(FBI)が孔子学院に対して、スパイ活動容疑やプロパガンダ活動容疑で捜査を開始しました。

また、経済面では、トランプ政権誕生後、米中の貿易摩擦が「貿易戦争」と呼ばれるまでに緊迫しており、中国の通信機器大手であるHuaweiなどの通信機器の販売を制限・禁止する動きを見せています。そのHuaweiは、2018年に入ってから、米国におけるロビー活動費を大幅に削減し始めました。米国議会に対するロビー活動を縮小させたのです。

同社は民間企業でありながら、中国人民解放軍の退役軍人が創業した「人民解放軍のスピンオフ企業」ともいわれており、米国では中国人民解放軍や情報機関との関係が疑われていた企業です。

一見すると、米中の貿易摩擦の一環とも受け取られるこの問題は、実はPDの問題でもあります。政府が関係するロビー活動がPDの手法の一つといわれることに鑑みても、Huaweiは中国のPDの担い手の一部であるといえるからです。

さらに、政治面では、中国政府がワシントン所在の有力シンクタンクに資金提供を行っているとされており、それが最近になって米国内で問題となっています。2018年8月25日までに米議会が発表した報告書によると、中央統一戦線工作部(統戦部)が主体となり、米国政府に影響力を持つシンクタンクに資金提供し、中国寄りの立場をとるよう働きかけを行っていたといいます。

統戦部は、海外におけるPDを実施する組織であり、プロパガンダ工作も行っているとされます。報告書によると、統戦部と深い関わりを持つ中国の非営利団体「中米交流基金」が、ジョンズ・ホプキンズ大高等国際問題研究大学院をはじめ、ブルッキングス研究所、戦略国際問題研究所(CSIS)、大西洋評議会、カーネギー国際平和基金など、米国の外交政策策定に影響力を持つ多数のシンクタンクと研究活動などを通して提携していたといいます。

さらに、同基金がワシントンにおいて数十万ドルもの予算を投じてロビー活動を行ったり、統戦部が全米の巨大留学生組織「中国学生学者連合会」と連携してスパイ活動に準ずる活動を行ったりしているともいわれています。共和党のクルーズ上院議員も、これを問題視し、今年1月にはテキサス大学に対して交流基金からの資金提供を受けないよう促しています。


中国のPDの強みは、共産党独裁体制のもと、予算や人員といった豊富な資源を状況に応じて自在に投与できることです。米国の議員や大手企業幹部に働きかけるために多額の予算を組み、ロビー活動を通じて親中派を増やしているともいわれます。

中国は、経済・文化交流を通じて世論を誘導あるいは分断し、敵の戦闘意思を削ぎ、戦わずして中国に屈服するよう仕向けることを目的とした「三戦:輿論戦(世論戦)、法律戦、心理戦」を掲げています。PDは中国にとって安全保障戦略の重要な一部でもあるのです。その中国の対米PDが、今、転換点を迎えています。この状況を受けて、日本はどうすべきでしょうか。日本のPDの今後のあり方について検討してみます。

以下に日本のPDのあり方について考える際に注意すべき3つの点を確認しておきます。

(1) 世論の変化に敏感に。中国の動向など外部要因を吟味。
二次安倍政権発足当初は日中間で揺れていた米国世論も、最近では再び日本寄りになってきています。前出の外務省の世論調査において、2014年以降は「日本」が逆転する一方、「中国」を「アジアにおける最も重要なパートナー」とする一般世論は、減少傾向にあります(下グラフ参照)。

しかし、こうした状況を楽観視して良いわけではないです。有識者に限っていえば、日本を「アジアにおける最も重要なパートナー」と見なす考え方が減少傾向にあるからです。2014年はこれまで最も多い58%が日本を「最も重要なパートナー」と見なしていたのですが、それ以降は年々減少し、2016年には前年より14ポイントも落としてしまいました(グラフ3参照)。


米国の有識者は、政府の政策決定に直接的な影響力を持ちます。アジア最大のパートナーとして「日本」を選ぶ有識者の割合は「中国」より上回っているものの、その考え方が減少傾向にあるのは望ましくないです。
2016年にネガティブな視点が出てきた背景には、2016年11月に行われた米大統領選で勝利したトランプ大統領の影響があります。トランプ氏が選挙中から日米同盟を軽視するような発言を繰り返したり、TPPからの離脱を表明したりしたことが、今後の日米関係に対する米国有識者の見方に影響したと考えることもできるでしょう。
ただし、トランプ氏は保守派であり、米国の保守派の歴史の見方は近年変わってきており、単純な「日本悪玉論」は忌避される傾向にあることは、以前のこのブログに掲載したことがあります。 
世論調査の結果と日本PDの関連についての判定は簡単ではないです。しかし、検証が困難だからといって、何もしなくて良い訳ではないです。日本は、米国におけるPD環境が変化しつつあることを認識し、中国の対米PDの行き詰まりを、自らのPDを一層推し進めるチャンスと捉えるべきです。PDの効果が表れるのには時間がかかります。中長期的な視点が必要とされるのです。
(2) PDに安全保障の視点を。日本主導で海外シンクタンクとのタイアップ。
日本のPDのあり方を考える時、PDを展開する国の関心を理解することが重要です。特に米国に対してPDを展開する際は、「中国の台頭」や日米同盟の存在を無視することはできず、安全保障の視点を交えてPD戦略を考えなければならないです。例えば、日本に対する米国社会の支持を得るべく、広報や宣伝活動に加えて、日本主導で米シンクタンクなどと共同研究や机上演習を行い、その成果物を、米国メディアを通じて米国内の一般世論に働きかけていくのも一案です。安全保障分野での、こうした双方向性を重視したPDは、新しい取り組みとなることでしょう。
(3) 感情的にならない。グローバル・スタンダードに沿った理知的な発信を。
歴史認識をめぐる問題については、中国や韓国が、海外(特に米国)において反日的ロビー活動を行ってきました。過去には、国際社会における中韓の反日ロビー活動は一定の「成果」を挙げており、当時は、日本もこうした海外の反応に抗議する形で発信してきました。
しかし、最近では、世界的に女性の権利擁護の意識が高まり、女性への性犯罪は厳しく断罪されています。そして慰安婦問題は、国際社会では今日の人権や女性の権利の問題として受け止られる傾向にあるのが現状です。
強硬な抗議を展開するだけでは、実情をよく理解しない国々に感情的な反応と捉えられかねないです。中韓に反発しているという印象を与えることは、かえって日本にとって不利になります。グローバル・スタンダードに沿った理知的な発信とするためには、間接的ではあっても、現在の日本がどのような国であるのかを発信することによって、日本の悪いイメージを植え付けようとする中韓の試みを無効化することができるでしょう。
中国は「日米離反」が中国の対米PDの主目的である。日本が歴史問題で中韓の挑発に乗ってしまえば、向こうの思う壺となってしまうのです。
対米PDの最終的な着地点は、日本に対するポジティブな米国世論が定着、拡大し、より幅広いグループや年代に日本に興味を持ってもらい、日米関係が発展することです。その鍵は、従来のPDが重視する広報や文化を通じた交流のみならず、政治や安全保障といった分野でも協力し、一般から有識者まで、幅広い米国の個人や団体などとの関係を発展させることにあります。

日本の多様な魅力の発信拠点であるジャパン・ハウスは、ロンドン、ロサンゼルス、サンパウロの世界の3大都市でオープンし、強力に発信し始めました。しかし、これらの都市が存在する国以外でも、中国をめぐる世論やPD環境が変化しているのです。そこには、日本にとって、有利な変化も不利な変化もあります。

ジャパンハウス・ロサンジェルス

日本におけるPDの考え方やその戦略は、未だ発展途上にあります。これからの時代の外交にあっては、周辺の国や地域の情勢や考え方の変化を敏感に受け止め、世界的な視野に立ち、独りよがりになることなく、相手から受け入れられるメッセージを発信ことが必要となってきます。また、PDの効果を左右させうる外部要因を上手く利用する形で、自らのPDの方途も柔軟に適応させていく能力が求められるでしょう。

特に「中国のPDの行き詰まり」は、日本のPDにとってまたとないチャンスであると考えられます。

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