2022年6月19日日曜日

日銀の金融緩和策、「現状において変えるべきでない」-岸田首相―【私の論評】現在日銀が利上げすべきと主張する人は、金融政策の本質を何もわかっていない(゚д゚)!

日銀の金融緩和策、「現状において変えるべきでない」-岸田首相

中小企業の金利負担に考慮が必要、日本は他国より物価高抑制
財政は国際社会や市場の信認が重要、健全化の旗「掲げ続ける」

  岸田文雄首相は19日、円安抑制に向けて日本銀行の金融緩和政策を転換するべきだとの意見に対し、中小企業の金利負担への影響も考慮する必要があると述べ、「現状においては変えるべきではない」と語った。午前のフジテレビの番組で述べた。

岸田総理

  金融政策運営は「為替にも影響を与えるが、中小企業の金利等の負担にも影響を与える。こうしたことも考えなければならない」とし、景気全体の動向も考えた上で総合的に判断するべきものだとの見解を示した。その上で、「急速な円安によって物価に影響が出ている。ここが問題だ」とし、エネルギーや食料品に特化した物価対策をしっかり行うことが取るべき政策だと主張した。

  日銀は17日の金融政策決定会合で、現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の維持を賛成多数で決めた。海外の中央銀行がインフレ高進に対応するために金融引き締めに踏み出している中で、外国為替市場では24年ぶりとなる一時1ドル=135円台まで円安が進行。事前の市場では金融緩和政策の修正観測が広がっていた。

  岸田首相は19日午後には「令和国民会議」(令和臨調)の発足大会に参加し、財政の持続可能性について「国際社会やマーケットの信頼をつなぎ留めることができる財政政策を日本が維持できるかが大変重要なポイントになる」と指摘。今後も「財政健全化の旗はしっかり掲げ続けていかなければならない」と述べるとともに、「経済成長あっての財政再建という考え方も大事にしたい」と語った。

【私の論評】現在日銀が利上げすべきと主張する人は、金融政策の本質を何もわかっていない(゚д゚)!

他の発言は別にして、日銀の金融緩和策、「現状において変えるべきでない」という発言は正しいです。財政健全化に関する発言はいただけませんが、金融政策に関する発言は全く正しいです。岸田首相にはぜひともこうした姿勢を崩さず、来年の日銀総裁人事に取り組んでいただきたいものです。

そもそも、世の中で識者と言われるような人でさえ、どうして通貨安になったり通貨高になったりするのか、その要因が理解できていません。特に長期的にはどのように決まっていくのか、全く理解していません。

為替は簡単に言ってしまうと、以下のような数式で決まります。

世界中に出回っている円の総金額➗世界中に出回っているドルの総金額=(単位:円/ドル)

中短期では、他の要素もあります。ただ、長期的にはこの方向に向かって円ドル相場が決まります。


日本が金融緩和を継続し、米国が利上げなどで金融引き締め的な姿勢をとれば、円安になるのは当然です。要するに、ある国の金融緩和の度合いが強いほど、他国に比較すると通貨安になります。

そうして、このブログにも掲載したように、円安になると日本はGDPが伸びる傾向にあります。というより、ある国が通貨安になるとその国経済は伸び、他国に比較して有利になります。これについては、高橋洋一氏が動画でわかりやすく説明しています。その動画を以下に掲載します。


世界的なコストプッシュインフレに対し、質素倹約や節電を説く「アドバイザー」が増えています。しかし、そのような事は、賢明な日本国民は誰に言われなくても実行します。問題は豊かな消費生活ができる所得環境をいかに造るかということです。財政出動で資金循環を拡大し、国民所得を増やす事が第一です。

しかも上の動画でもわかるように、円安は日本経済にとってプラスです。しかし、円安によって輸入価格が押し上げられているのは確かで、その対策として、消費税やガソリン税の減税や高コストに苦しむ中小企業への給付金等を実施すべきなのです。輸入品の価格の上昇は、所得が伸びなければそれ以外の価格の下落を招き、デフレに戻る危険性あります。

世の中には為替戦争などという言葉があり、意図的に自国の通貨を安くして有利にすることができると考える人もいるようですが、そんなことは不可能でしょう。なぜなら自国通貨を安くするために、自国内の経済とは無関係に緩和を続けていれば、国内は大インフレになります。だから自ずと、金融緩和政策をやめざるを得なくなります。

ただ、 以前もこのブログで述べたように、4月時点ではコアコアCPIが未だ0.8%の日本では、金融緩和を継続する必要があるのです。

上記で述べたような一連の事柄を知らずに、ただただ日銀は利上げせよと主張する人もいますが、これは良いリスマス試験紙になります。要するに今回利上げせよと主張するような人はまるで金融政策というものを理解していないということです。

緩和継続を支持する与党に対し、立憲民主、共産両党が見直しを求めています。国会は15日に閉会し、与野党は事実上の選挙戦に突入しました。

「欧州中央銀行が来月の利上げ方針を決定して、日本だけが金利においては取り残されている状況でさらに円安が進む。この状況をいつまで岸田政権は放置するのか」。立憲民主党の泉健太代表は10日の会見で、金融緩和を維持する政府・日銀の対応を批判しました。 

立憲民主党代表 泉健太氏

円安は輸入価格の上昇をもたらすことから、同党は物価高を「岸田インフレ」と称し、国会で首相や日銀の黒田東彦総裁の姿勢をただしてきました。参院選公約では「異次元の金融緩和」は円安進行と「悪い物価高」をもたらす、として政府・日銀の共同声明見直しを求めました。

立憲民主党、代表がこのような発言をして、円安そのものを争点にしているようですが、かなり無理があります。円安を容認した上で、中小企業やそれらの勤労者に対する支援を強化すべきとという主張をするならわかりますが、円安そのものを争点にするというのでは、ワイドショー民とあまりレベルは変わりません。共産党も似たようなものです。

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2022年6月18日土曜日

宗谷岬と伊豆諸島周辺を航行 ロシア海軍の艦艇―【私の論評】日米英はオホーツク海で大演習を行い、スターリンが関特演で味わった以上の恐怖をプーチンに味合わせるべき(゚д゚)!

宗谷岬と伊豆諸島周辺を航行 ロシア海軍の艦艇


 ロシア海軍の艦艇が、北海道の宗谷岬沖と太平洋の伊豆諸島周辺をそれぞれ航行していて、自衛隊が警戒監視を行っている。

 防衛省によると、17日午前、宗谷岬の北およそ40kmのオホーツク海で、ロシア軍のフリゲートやミサイル護衛哨戒艇など、あわせて9隻を海上自衛隊が確認した。

 9隻はその後、宗谷海峡を抜け、日本海に入った。

 一方、15日に北海道沖で確認され、太平洋を南下していた別のロシア軍艦艇7隻は、17日までに、伊豆諸島の須美寿島と鳥島の間を南西に通過した。

 日本近海でのロシア軍の活発な動きに、自衛隊は警戒を続けている。

【私の論評】日米英はオホーツク海で大演習を行い、スターリンが関特演で味わった以上の恐怖をプーチンに味合わせるべき(゚д゚)!

極東ロシアは上の地図をご覧いただいてもわかるように、面積は広大ですが、人口は650万人程度にすぎません。ロシアにとっての重要部分ではありません。産業は育っておらず、隣接する中国の東北部に比べれば人口は20分の1でGDPの格差はそれ以上です。陸軍の兵力でも、瀋陽方面の中国陸軍に比べてロシア極東部の陸軍は弱体です。

日本と比べても、極東ロシアは経済面でも貧弱です。そもそもロシア全体のGDPが韓国よりも若干下回る程度であり、一人あたりのGDPは中国と似たりよったりの1万ドル(日本円で百万円)前後であり、比較の対象にはならない程お粗末です。

ちなみに、一人あたりのGDPは、一人あたりの収入と近似できますが、日本では百万円前後の賃金の人など、一部の非正規雇用の人だけだと思います。軍事的にも貧弱です。たとえ日本を攻めようとしても、従来からいわれているようにロシア軍の揚陸作戦能力が乏しいことから、日本に軍隊を送るにしても、逐次投入するしかなく、そうなると個別撃破されてしまうことになります。

この理屈を理解しない人もいるようですが、今回ウクライナの黒海岸にロシア軍はほとんど上陸できず、揚陸艦も撃沈されてしまったことからも明らかです。

海軍ではカムチャツカ半島に基地を置く原子力潜水艦が何隻も戦略核ミサイルを抱えてオホーツク海に潜っていますが、これは米国向けのものです。海上艦のほうはお粗末で、駆逐艦クラス以上の軍艦は7隻程度しかなく、海上自衛隊の陣容の10分の1程度です。日本海岸には海上自衛隊の主要な潜水艦基地があり、数と質でロシア海軍の潜水艦を圧倒しています。

特に、中露は日米に対して対潜哨戒能力(潜水艦を発見する能力)がかなり劣っているため、ロシアには日本のステル性(静寂性)に優れた潜水艦を発見することは難しいです。一方日本の対潜初回能力は米軍と並び世界トップクラスであるため、ロシアの潜水艦を日本が探知するのは比較的容易です。

ASW(Anti Submarine Warfare:対潜水艦戦闘力)に劣ったロシア海軍は、海戦においては日米の敵ではありません。現在のロシア海軍は単独で日本の海自と戦っても、勝つことはできません。一方的に敗北するだけです。

しかも有事になるとロシアの艦船は宗谷海峡と津軽海峡は日本の潜水艦が潜んでいることもあり、危なくて通れなくなるので、太平洋方面での作戦やウラジオストクから補給を受けるカムチャツカの基地の維持も難しくなります。

さて、以上を前提に最近のロシア軍の極東における行動を振り返っておきます。

ロシアは、陸続きのモンゴルと中国と北朝鮮以外、つまり日本と米国に対しては、海を隔てて向き合っています。したがって、極東方面の防衛は海軍力と空軍力に頼ることになるわけですが、この脆弱性がウクライナとの戦争によって露わになっています。

下院副議長セルゲイ・ミロノフ氏

当然のことながらが、ロシア側はこのような実情をおくびにも出さないです。それどころか、4月1日には、下院副議長のミロノフが「ロシアは北海道への主権を有するという専門家もいる」と、日本に対して脅迫じみた内容をSNSに投稿したほか、同14日には日本海において、キロ級潜水艦2隻から核弾頭も搭載可能な最新式の巡航ミサイル「カリブル」を発射して、わが国をけん制しました。

ロシア版のトマホーク級巡航ミサイル「カリブル」は、射程距離が2,000km以上あり、ロシア軍が黒海などに展開する艦船や潜水艦から発射されている主力ミサイルです。ロシアは5月末までに、弾道ミサイルや巡航ミサイルなどを航空機や地上発射機や潜水艦を含む艦艇などから1,000発以上発射したと見られるが、米国防情報局(DIA)の関係者は「ロシアのミサイルの命中率は、40%にも達しない」と分析しており、巡航ミサイルについては、約10%がウクライナにより撃墜されているとしています。

 また、6月3日から10日まで、太平洋において40隻以上の艦艇と約20機の航空機による大規模な演習を実施すると発表して、北海道南東沖から北方四島南方海上にミサイル発射に関わる航行警報海域を設定し、数隻の艦艇を北海道根室沖で活動させたり、6月7日には日本海でロシア空軍機による威力偵察と見られる活動を実施しています。

この40隻というのが実態としてどのような艦艇なのか不明ですが、根室沖に姿を現したのは、駆逐艦「ウダロイI級(DD-543:8,500トン級)」1隻、フリゲート「ステレグシチーI・II」級(FF-333,335,337,339:2,200トン級)」4隻の5隻です。

その後、これらの艦艇は千葉県沖まで南下し、新たにウダロイ級の駆逐艦(DD-548)とミサイル観測支援艦「マーシャル・クルイロフ(AGM-331):2万3,700トン級」と合流しました。おそらく、このクラスの艦艇がこの40隻の主力なのでしょう。

このウダロイI級は1980年代に建造された旧式艦です。ステレグシチー級フリゲート艦は、2000年以降に建造されたものでウダロイ級よりは新しく、前出の巡航ミサイル「カリブル」が8基のほか、ハープーン級の対艦ミサイルが8発搭載可能であり、小型艦ながらそれなりの対地、対艦攻撃能力があります。 

しかし、ウダロイ級もステレグシチー級も防御能力の観点からすれば、脆弱な艦艇といえる。特に、対空防御能力という点からみると、ウダロイI級は射程12km程度の対空ミサイル(SAM)「キンジャール」を装備していますが、これでは日米両軍が保有するほとんどの空対艦ミサイル(ASM)でスタンド・オフ(SAM射程圏外からの)攻撃が可能であり、ステレグシチー級フリゲートに至ってはSAMを保有しておらず、両艦ともに対空防御能力は極めて脆弱です。

また、6月7日夜間、ロシア軍機と推定される4機がロシア沿海方面から真っすぐに北海道へ向けて飛来し、うち2機については本邦領空手前で反転して北海道西方で旋回飛行を行い、残りの2機については北上して樺太方面へ消え去りました。

ただ2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、わが国に接近してきたロシア軍機は、今回のものを除き、5月24日に中国の爆撃機(H-6)4機と合同パトロールと称する示威行動を実施した、戦略爆撃機(Tu-95)2機とこの際偵察活動を実施した電子偵察機(IL-20)1機の3機のみという閑散ぶりです。 近年のロシア軍機の活動においては異常に少ないです。 

ちなみに、今回と同様にロシアが親露派武装勢力を前面に出してウクライナに対してハイブリッド戦争を仕掛けた2014年の同時期、わが国はG7で取り決めた経済制裁に踏みきりましたが、この際、これに反発したロシアは連日、戦略爆撃機などを本邦周辺に飛行させてわが国を威嚇しました。 

今回と同時期の2014年2月24日~6月10日の間、わが国周辺に飛来したロシア軍機は、戦略爆撃機(Tu-95)22機、対潜哨戒機(IL-38,Tu-145)12機、電子偵察機(IL-20)19機、早期警戒管制機(A-50)1機の延べ54機である。単純に比較すれば今回はこの8分の1(戦略爆撃機は10分の1)程度です。

以上のことから、極東ロシア軍は、かなり脆弱化しているとみられます。現在のロシア軍による日本への挑発行為は、今の極東ロシア軍にできる精一杯の虚勢に過ぎず、わが国に脅威を与えるような活動とは程遠いです。

ある程度の準備期間を経て、満を持してウクライナに侵攻したロシア軍でさえ、あの体たらくです。ましてや、日米に比して貧弱で駆逐艦以上の戦闘艦艇に至っては海上自衛隊の10分の1程度の太平洋艦隊です。

ロシア空軍は、日常の活動などを見ても航空機の稼働率がおそらく30%(空自は90%を超える)に満たず、パイロットの操縦訓練(飛行時間は空自の半分以下)も全く航空自衛隊とは比較にならないような低練度の空軍の飛行部隊や海軍航空部隊の現状で、通常戦力ではとても日米の軍事力に太刀打ちできるはずはないです。さらに、最初にも述べたように、海戦においては日米に勝ち目はありません。当の軍人たちが、誰よりもそれを熟知しているでしょう。

 「核兵器搭載可能な巡航ミサイルの発射」とか、「太平洋で40隻以上の艦艇による大演習」などというロシア側の虚勢を張ったプロパガンダなどに惑わされるべきではありません。 

我々は、極東ロシア軍を等身大に見るべきです。わが国は今こそ、強気の姿勢で政治的にも軍事的にもロシアに対して存在感を発揮し、強力プレッシャーをかけるべきです。政治的には、硬軟両面の姿勢でロシアに対して外交的な揺さぶりをかけるべきです。

また、軍事的な面では、日本海や北方四島方面などにおいて、ロシアに対する自衛隊による(無人機を含む)偵察活動をさらに強化すべきです。また、これに加えて、南樺太や北方四島方面などにおいては、戦闘機などによる威力偵察を行うべきです。そうして、これらの地域での日米共同訓練を増やすべきです。

関東軍特別演習

プーチンに対して、関東軍特別演習でスターリンが味わったような恐怖を味あわせるべきです。ちなみに、ノモンハン事件においては、スターリンが事実を隠蔽したため、日本が大敗を喫したようにされていましたが、ソ連崩壊後の資料の公開で、実はソ連軍も甚大な被害を被っており、どちらかといえば、日本が辛勝していたことがわかっています。

このときは、日本は米英と敵対していましたが、現在世界で最強の海洋国である日米英は、緊密に協力する間柄であり、ロシアと対峙しています。日米英がオホーツク海で大規模な共同訓練を行えば、関東軍特別演習でスターリンが味わった以上の恐怖をプーチンが味わうことになります。

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2022年6月17日金曜日

「一帯一路」に〝亀裂〟参加国が続々反旗 スリランカが債務不履行、各国が借金漬けに 親ロシア、東欧地域も戦略失敗で高まる反中感情―【私の論評】自国民一人ひとりを豊かにできない中国が「一帯一路」を成功させる見込みはない(゚д゚)!

「一帯一路」に〝亀裂〟参加国が続々反旗 スリランカが債務不履行、各国が借金漬けに 親ロシア、東欧地域も戦略失敗で高まる反中感情

4月にスリランカで起きた反政府デモ

 中国外交が敗北を重ねている。南太平洋の島嶼(とうしょ)国との安全保障協力で合意に失敗したほか、巨大経済圏構想「一帯一路」でも、スリランカが事実上の債務不履行(デフォルト)となるなど各国が借金漬けだ。さらにロシアのウクライナ侵攻で欧州でも反中感情が高まる。習近平国家主席は「中華帝国の偉大な夢」を抱くが、「脱中国」が加速しているのが現実のようだ。

 「強固だった関係が壊れている」と語ったのは、スリランカで先月、新首相に就任したウィクラマシンハ氏だ。

 同国ではラジャパクサ大統領らが港湾開発などを中国企業と進める方針を示すなど、親中外交を進めてきたが、4月に対外債務の支払い停止を発表した。一帯一路の拠点として実施してきたインフラ整備のために背負った借金がふくらみ、財政難に陥ったことも一因とみられる。

 これまでも一帯一路の参加国がインフラ開発費用の返済に窮すと、中国が戦略的施設の長期使用権などの要求を突き付ける「債務の罠」が警戒されてきた。

 中国からユーラシア大陸を経由して欧州へと続く一帯一路構想のほぼ中央に位置するパキスタンでは、中露関係を重視したカーン前政権が高インフレや通貨安による経済危機で4月に失脚した。シャリフ新首相も親中姿勢だが、経済再建をめぐる政情不安が続く。

 米シンクタンク、世界開発センター(CGD)は18年の時点で、一帯一路のインフラ投資計画があったパキスタンやモルディブ、ジブチ、ラオス、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、キルギスの8カ国について債務問題に懸念があるとのリポートを公表していたが、すでに現実のものとなっている。

 中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「中国はパキスタンの政情不安を背景に一帯一路の要衝だったグワダル港を諦め、最大都市カラチに港湾整備を移した。モルディブも親中派大統領の失脚でインドが勢力下に収めた。次にスリランカで大統領打倒の動きになれば、中国には大きなショックだ」とみる。

 こうした状況を受けて、中国の王毅国務委員兼外相が今月8日、カザフスタンで開かれた中央アジア5カ国との外相会議に出席し、一帯一路への協力強化で一致するなど関係維持に躍起だ。

 アジア圏だけでなく、欧州でも一帯一路に危機が生じている。きっかけの一つがロシアのウクライナ侵攻だ。

 そもそもウクライナは中国と関係が良好で、一帯一路の拠点でもあった。しかし、ロシアの侵攻後、中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」もウクライナを経由する便は運航停止となった。欧州の貨物輸送大手企業も相次いで中欧班列関連の受け付けを停止している。

 モスクワを経由する便は運行が続いており、中国国営のラジオ放送局「中国国際放送」(日本語電子版)は、中欧班列は4月に1170本運行し、3月と比べて36本増加したと伝えた。中国外務省の汪文斌報道官が「中国の強靱(きょうじん)性と責任を負う姿勢が示され、世界に力や自信を伝えた」と自信をみせたという。

 しかし、鉄道網の主要な拠点で、中国IT大手ファーウェイ(華為技術)の地域本部もあるポーランドでは、「プーチン大統領を支持した中国を非難するウクライナ難民であふれかえっている」とロイター通信は指摘。「東欧地域における中国の戦略はさらに傷ついている」と報じた。

 評論家の石平氏は「中国が一帯一路を守りたいのならば欧州と足並みをそろえるべきだった。ロシアの肩を持ったことで自ら拠点を破壊するに等しい矛盾した外交となった。アジアの取り込みにも失敗し、欧州からも反感を買うなど、習氏の外交上の失敗がまた一つ加わることになった」と語った。

【私の論評】自国民一人ひとりを豊かにできない中国が「一帯一路」を成功させる見込みはない(゚д゚)!

一帯一路構想を手短にふりかえっておきます。2013年、習近平国家主席は「シルクロード経済ベルト」構想を打ち上げ、2014年にそれを海洋方面と合体して「一帯一路」構想としました。これは、当時中国の広げた大風呂敷であると感じられたものです。

しかし当時中国は08年のリーマン危機を乗り切って自信満々。しかも、合計4兆元(約60兆円)の内需拡大が一段落し、閑古鳥の鳴いていた中国国内の素材・建設企業は「一帯一路での国外の事業」に活路を見いだしました。政府各省は一帯一路の美名の下、予算・資金枠獲得競争に狂奔しました。


ただ、当初からこの一大事業が成功するのかどうかは、疑いを目をもってみられていました。そもそも、一帯一路構想は、中国内ではインフラ投資が一巡し、国内には当面優良案件が期待的図、このままだと中国経済は先細りになることが予想されたため、今度は海外を標的にして投資をしようというものとしか受け取れませんでしたが、特にユーラシアには、採算性がとれるような案件はありませんでした。

そもそも巨大な海外投資の経験がない中国にこのような大事業ができるのかどうか疑問でした。そもそも、海外投資において成功するには、自国より経済成長をしている国や地域に投資するのが基本中の基本です。

そのような案件は、滅多におめにかかれるものではないし、私は当初からこれは失敗すると踏んでいました。

ところが一帯一路上にある途上諸国は、イタリアやギリシャに至るまでもろ手を挙げて大歓迎しました。かつての日本のような、「見境なく貸してくれる金持ちのアジア人」がまた現れたのです。ただ、かつての日本は採算性を重視した手堅い投資を行いました。見境なく見えたにしても、たとえ貧困国であっても経済成長率が著しいところに投資しました。

そうして中国のカネ、そしてヒトはアフリカ、中南米にまで入り込み、融資総額は13~18年の5年間で900億ドルを超えました。受益国の政治家・役人たちは、この資金で港湾施設やハイウエーを建設してもらって大威張りし、一部は自分のポケットにも入れたことでしょう。

ところが、中国の投資は案件の採算性や住民の利益を考えていないですから、返済は滞るし、受益国の政権が交代すると前政権の手掛けた中国との案件はひっくり返されたりしました。

それに、中国国内の状況も変わりました。4兆元の内需拡大策は諸方で不良債権を膨らませたため、債権回収が大きな関心事になったのです。

そういうわけで、「中央アジア経由で中国と欧州を結ぶ鉄道新線」「新疆からパキスタンを南下してインド洋と結ぶハイウエー」など、多くの構想は掛け声だけで進みません。ロシア経由の東西の鉄道での物流も、安価な海上輸送に歯が立ちません。

あれだけ騒がれたアジアインフラ投資銀行(AIIB)も、19年末の融資残高はわずか22億ドルで日米主導のアジア開発銀行(ADB)の年間平均60億ドルの融資に及ひません。こうして「一帯一路」の呪文の威力は薄れてきました。

2月9日、習は中欧・東欧17カ国の首脳とテレビ会議を行ったのですが、バルト3国、ルーマニア、ブルガリアは首脳が欠席。閣僚で済ませたのです。国連などで中国が、外交において途上国の支持を取り付けるのも難しくなるでしょう。友人に金を貸せば、友情は失われるのです。

中東欧といえば、このブログでも中国の影響力が薄れつつあることを掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中東欧が台湾への接近を推し進める―【私の論評】中国が政治・経済の両面において強い影響力を誇った時代は、徐々に終わりを告げようとしている(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくもとして以下に一部を引用します。 

米ソ冷戦終結後の民主主義指数(Index of Democracy)と一人当たりGDPの伸びの関係を見ると(下図)、旧東側陣営で一人当たりGDPの伸びが最も高かったのは、共産党による一党独裁の政治体制の下で1986年に「ドイモイ(刷新)路線」を宣言し、市場経済を導入したベトナムでした。

ソ連崩壊とほぼ同時に共産党政権が崩壊し民主化を進めた中東欧諸国の一人当たりGDPを見ると、水準という観点では民主化が後退したロシアやCIS諸国を上回っている国が多いものの、伸び率という観点では大きな差異が見られません。

そして、CISを中途脱退し民主化を進めたウクライナ(2004年にオレンジ革命、2018年にCIS脱退)やジョージア(2003年にバラ革命、2009年にCIS脱退)の伸びは低迷しています。

ただ、一般にいえるのは、民主化が進んでいる国のほうが、一人当たりGDPが高いというのは事実です。これは高橋洋一氏がグラフにまとめており、これは当ブログにも掲載したことがあります。下に再掲します。
一人あたりGDP 1万ドル超と民主主義指数の相関係数は0.71 。これは社会現象の統計としてはかななり相関関係が強い
世界各国地域の一人当たりGDPのトップ30を見ると、米国は約6.3万ドルで世界第9位、西側に属した日本は約3.9万ドルで第26位、同じくドイツは第18位、フランスは第21位、英国は第22位、イタリアは第27位、カナダも第20位と、米ソ冷戦で資本主義陣営(西側)に属した主要先進国(G7)はすべて30位以内にランクインしています。

一方、米ソ冷戦で共産主義陣営(東側)の盟主だったロシアは約1.1万ドルで第65位、東側に属していたハンガリーは約1.6万ドルで第54位、ポーランドは約1.5万ドルで第59位とランク外に甘んじている。また、世界第2位の経済大国である中国は約9,600ドルで第72位に位置しており、人口が13億人を超える巨大なインドも約2,000ドルで第144位に留まっています。

中国は人口が多いので、国全体ではGDPは世界第二位ですが、一人あたりということになると未だこの程度なのです。このような国が、他国の国民を豊かにするノウハウがあるかといえば、はっきり言えば皆無でしょう。

そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。

一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。 

バルト三国よりも、一人当たりGDPでは、中国のほうが低いのです。ルーマニアは一人あたりGDPでは1万ドル台と、中国と大差はありません。ブルガリアですら、中国よりは低いですが、それでも9千ドル台であり、中国と大差はありません。

そこに国際投資のノウハウがない中国が投資したからといって、バルト三国や、ルーマニア、ブルガリアが 栄えて国民一人ひとりが豊かになるということは考えられません。

スリランカのような貧困国の港をとったにしても、軍事的にはある程度意味があるかもしれませんが、経済的には無意味です。目立った産業もないスリランカの港を得たとしても、そこでどれほどの交易が行われるかといえば、微々たるものでしょう。わざわざ、スリランカに荷物をおろしたり、スリランカから大量に物品を運ぶ船もないでしょう。やはり近くのシンガポールを使うでしょう。

ところが、これで中国の外交そのものが退潮するわけではないでしょう。米国への当て馬としての「中国」への需要はなくならないからです。

バイデン米政権も、政治・軍事・先端技術面での中国への圧力は強めていますが、通常の貿易は妨げていません。今年1~2月も中国の対米輸出は対前年同期で伸び続け、貿易黒字も1月だけで390億ドルになっています。中国は対米黒字を元手に、また小切手外交を強化できます。

しかし、それでも一帯一路が、習近平が思い描いた元の姿で復活することはないでしょう。

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2022年6月16日木曜日

バイデンが転換すべき「貿易臆病」のナラティブ―【私の論評】TPPに復帰し中国を封じ込め「地政学的戦争」に勝利すれば、バイデン氏は歴史名を刻むことに(゚д゚)!

バイデンが転換すべき「貿易臆病」のナラティブ

岡崎研究所

 5月25日付けフィナンシャル・タイムズ紙の社説‘US influence in Asia depends on economic engagement’が、アジアでの米国の影響力には経済関与が必要だ、バイデンのアジア訪問は前向きのアジェンダを出すのに苦労した、と述べている。


 この社説の主張と観察の主要点は次の通りだ。

(1)バイデンの初のアジア歴訪は、軍事に比べ経済アジェンダが貧弱だった。インド太平洋経済枠組み(IPEF)では物足りない。アジアでの影響力を維持するためには、軍事と同じレベルの経済イニシャティブが必要だ。

(2)力不足のIPEFも米の他12カ国の参加を確保できたが、「米国提案の魅力というよりも、日本の努力によるところが大きかった」。

(3)理想は環太平洋経済連携協定(TPP)に復帰することだ。しかしバイデンは議会の反対があると決め込んでいる。英国のTPP加盟は米の復帰に有益な役割を果たすかもしれない。

(4)バイデンは先ず反貿易のナラティブを変える必要がある。

(5)米国はアジアとの関与につき外交・経済サイドを軍事コミットメントと同じレベルまで高める必要がある。

 バイデンのアジア政策、特に対中政策には貿易政策が欠如しているとの議論は、ここ最近、フィナンシャル・タイムズ紙が頻りに繰り返している。良いことだ。バイデン政権には良く咀嚼して欲しいものだ。

 貿易政策の良し悪しを議論する前に、バイデン政権には貿易政策がないように思える。貿易について思考停止しており、貿易課題に挑戦する意思もないようだ。何故そうなのか。党内左派や議会の反貿易を過大評価し、憶病になっているのか。あるいは大統領選挙の公約違反を恐れているのか。しかし、大統領選挙では先ず国内企業への投資をせねばならない旨、注意深く発言していたはずだ。

 あるいは政権内の貿易グループ、もっと言えば米通商代表部(USTR)と商務省ラインに知恵がないのか。あるいはバイデンの側にあって政策の司令塔になる最側近達が不十分なのか。あるいはタイミングを待っているのか。本当に理解し難い。

 上記の社説は、バイデンはまず「貿易憶病」のナラティブを転換すべきだという。これ以上同意できる指摘はない。

バイデンに理想型から変革型への期待

 政治は闘いだ。言説を辛抱強く維持してこそ、道が開ける。それを続けてこそ説得できるし、ディールが出来る。

 力強いナラティブで挑戦することによって戦略が出来る。そう考えると、バイデン政権が発足してもう2年になるが、バイデン政権は次から次へと起きる状況への対処には総体としてうまく対応してきたように見える(特にウクライナ戦争)。しかし、歴史に残る偉業を達成したかと言えば心もとない。

 バイデンはそろそろ自分の理想を喋り始めることにより、「変革型」の大統領に変わることが必要なのではないだろうか(特に貿易について)。まさにナラティブを変える必要があるのだ。

【私の論評】TPPに復帰し中国を封じ込め「地政学的戦争」に勝利すれば、バイデン氏は歴史名を刻む(゚д゚)!

バイデンには米中が熾烈な地政学的戦いをしているという観念が希薄なのかもしれません。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

そうして、中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったはずです。

そうであれば、不公正な行動を繰り返す中国を除いた、貿易体制を築くのが当然であり、それがまさしくTPPだったはずです。ところが、そのTPPから離脱を決めたのが、「地政学的戦争」を認識したはずのトランプ大統領だったのです。

「アメリカ・ファースト」を提唱したトランプ氏は、関税を軸とした自由貿易協定への米国内での強いアレルギーを強く意識したため、こうした挙に出たものと考えられます。

通商における保護主義は、関税障壁と非関税障壁から構成されます。そこで、関税の削減・撤廃を目指すのが自由貿易協定(FTA)であり、関税に加えて知的財産保護や投資ルール、労働制度など非関税障壁を含むのが経済連携協定(EPA)です。

2国間か多国間かに関わらず、締約国・加盟国が相互に自国・地域の市場を開放する枠組みであり、いずれにしても関税が重要な要素であることに違いはないです。

昨年10月27日、オンライン形式で開催された第16回東アジア首脳会議(EAS)において、バイデン大統領は初めてIPEF構想に言及しました。さらに今年2月11日、ホワイトハウスは『インド太平洋戦略』を発表、IPEFについて、インド太平洋地域における通商促進、デジタル経済の拡大、サプライチェーンの回復力強化、インフラ投資の喚起などを目指す枠組みであることが示されています。

もっとも、IPEFは通商に関する多国間のフレームワークとしては極めて特殊と言えるます。理由は、関税を対象とせず、議会の承認を必要とする条約・協定でもないとされているからです。背景には、米国国内において、関税を軸とした自由貿易協定への強いアレルギーの存在があるのでしょう。

ジョージ・W・ブッシュ大統領は、APEC全体を包括する『アジア太平洋自由貿易圏構想(FTAAP)』を提唱、高い基準を設けることで、実質的に中国の排除を目指しました。それが『環太平洋パートナーシップ(TPP)』であり、バラク・オバマ大統領もこの戦略を踏襲したのです。

しかしながら、次のドナルド・トランプ大統領は、就任初日の2017年1月20日、TPP交渉から離脱する大統領令に署名、米国のインド太平洋戦略、そして対中戦略は大きく方向転換したと言えます。

ロシアによるウクライナ侵攻もあり、バイデン大統領は対中戦略の見直しを迫られています。しかし、米国の国内事情からTPPへの加盟は難しいようです。そこで、関税を含まず、議会の承認も必要のないIPEFの概念を捻りだしたと言えます。

問題はIPEFの実効性です。米国の関税率引き下げが期待できず、自国の非関税障壁の縮小を迫られるならば、新興国にとりIPEFに参加するメリットは不透明と言えます。一方、日本政府は、TPP加盟こそが米国の本来採るべき道と考えているようです。萩生田光一経産相は、5月10日の閣議後会見で、IPEFに関し「加盟国のメリットが不明瞭」と率直に語りました。

米国もそうした指摘は十分に認識しているのでしよう。IPEFの交渉の柱とする「公正な貿易」、「サプライチェーンの回復」、「インフラと環境への投資」、「税制と腐敗防止」の4つの分野に関し、個々の国が全ての議論に参加する必要はなく、個別に選んで参加できる方式を導入する模様です。


それでも、今のところASEAN10ヶ国でIPEFへの参加が見込まれるのはシンガポールだけと言われています。トランプ前大統領がTPPから離脱したツケは、米国のインド太平洋戦略に大きなダメージを与えていると言えます。

岸田首相は、バイデン大統領の訪日で緊密な日米関係をアピールし、中国を牽制する意向と見られます。また、岸田政権が重視する半導体に関し、IPEFを通じて日米両国を軸としたサプライチェーンの再編成を図る目論見があるようです。

ただし、インド太平洋は非常に複雑です。例えば、ベトナム、インドは中国と緊張関係にある一方、ロシアとは長期に亘り良好な関係を維持してきました。バイデン政権がIPEFを武器にこの地域の国々を自陣に引き入れることができるのか、そのシナリオは極めて不透明と言えます。

やはり米国はTPPに復帰すべきでしょう。関税削減対象外のIPEFでは、中国との地政学的戦いに挑むことはできません。やはり、TPPのような関税の撤廃や削減を含む仕組みで、中国には障壁が高く参入できないという方式のほうが、中国との地政学的な戦いにはるかに適しています。

一方中国は、TPPに参加申請をしていますが、これは最初から無理筋です。中国はTPPに参加するオーストラリアなどと貿易面での摩擦を抱えていて、加入に必要なすべての参加国の同意を得られる見込みはありません。

またTPPには貿易や投資のルールについて、国有企業に対する行き過ぎた優遇措置の是正や知的財産の保護など高い自由化を求める規定があるため、中国はこうした自由化をしない限り、TPPには加入できません。

中国がWTOに加入するときには、中国はこうした自由化をすると約束しましたが、中国は未だにその約束を守っていません。

こうしたことから、TPP加入国は中国が先に、国内で自由化がされた後でないと、加入を認めることはしないでしょう。ただ、中国共産党は自由化を認めれば、自ら体制を変えなければならず、そうなれば統治の正当性を失うことになるので、それはしません。ということは、中国はTPPには参加できません。

中国がTPPに参加申請をしたのは、本気でTPPに入ろうというのが目的ではなく、一つの中国という観点から台湾を牽制するのが目的だと考えられます。


トランプ氏は、米国のマスコミの9割はリベラルであることから、マスコミによって徹底的に印象操作され、その功績は評価されていないようにもみえますが、その実正しく米中の争いを「地経学的戦争」だとはっきり認識した最初の大統領であること、それに先日も掲載したトランプ減税等により、歴史に残る偉業を達成したといえるでしょう。

ちなみに、トランプ減税により、米国では国内投資が飛躍的に増えるとともに、賃金も上がっています。

一方残念ながら、バイデン氏は歴史に残る偉業を達成した大統領とはいえません。TPPに復帰することにより、中国を封じ込め「地政学的戦争」に勝利すれば、そうなる可能性は高まることになります。

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2022年6月15日水曜日

習近平政権のほころびが見える中国経済の損傷―【私の論評】李克強の台頭により、権力闘争の駆け引きは一段と苛烈に(゚д゚)!

習近平政権のほころびが見える中国経済の損傷

岡崎研究所

 エコノミスト誌5月24日号は「習近平はどのように中国経済を損傷しているか、柔軟性を欠く政策が実用主義を圧倒している」との社説を掲げ、習近平の政策を批判している(‘How Xi Jinping is damaging China’s economy’)。


 社説の主な観察点は次の通りである。

(1)毛沢東の死後、中国共産党は国家統制と市場改革を混合した現実的なアプローチをとってきたが、いま中国経済は危険な状況にある。

(2)直近の問題はゼロコロナ政策だ。2億人以上が制限下の生活を強いられ、経済はふらついている。小売り、工業生産、輸出量、いずれも減った。

(3)習近平の一連の経済政策の背後には、党が指導すべしというイデオロギー上の熱意がある。罰金、新しい規制、粛清の嵐は、国内総生産(GDP)の8%を占める活力あるテク産業を停滞させた。GDPの20%を占める不動産セクターの取り締まりで、住宅販売は4月前年比47%も落ちた。

(4)この40年間で初めて、成長に不可欠な民間セクターの自由化改革が行われていない。

(5)多くの企業がサプライチェーンを中国から遠ざけるようになっている。中国の企業が2030年代にはいくつかの産業を支配するかもしれないが、西側は中国産品輸入により用心深くなっている可能性がある。

 この社説は、今の中国の状況を経済面から批判的に描写したものであるが、かなり的を射ていると考えられる。中国経済の今年の成長目標は5.5%前後とされているが、この達成は難しいのではないかと思われる。

 政府の大規模な公共投資で成長率を底上げする可能性はあるが、ゼロコロナ政策、それにともなうロックダウン、それに習近平の民間部門への締め付けと、経済の党による指導強調などは非効率な政府部門の肥大化につながるように思われる。

 そのうえ、社説では触れられていないが、高齢化と少子化の人口構成の変化が与える影響も考えなければならない。

ワンマン支配の禍根を残す可能性

 習近平のワンマン支配の欠点が目立ってきている。鄧小平が集団指導体制を重視し、最高指導者の任期制を導入したのを習近平はひっくり返しているが、将来に大きな禍根を残すように思われる。

 ロシア共産党の歴史を見ると、共産党というものは独裁になる傾向が強い。トロツキーがスターリン体制を批判して、「プロレタリアート独裁のプロレタリアートは前衛である共産党にとって代わられ、共産党はその中央委員会にとって代わられ、中央委員会は書記局にとって代わられ、書記局は書記長にとって代わられる」と述べたが、これはなかなかの卓見であったし、事実そうなった。

 鄧小平が個人崇拝を排し集団指導を言ったのは、共産党のそういう傾向を踏まえた優れた見解であったと思うが、習近平はこの鄧小平の考えを否定してきている。残念なことであると同時に、習近平の中国には適切なブレーキがないことを踏まえ、相当な注意をもって対峙していく事が必要であると思われる。

【私の論評】李克強の台頭により、権力闘争の駆け引きは一段と苛烈に(゚д゚)!

中国では上記のような不安があるからこそ、李克強氏の台頭が取りざたされているのでしょうし。

ゼロコロナかウイズコロナか、それが政治問題となっている中、李克強首相の言動が国内外を騒然とさせました。5月18日、李克強は雲南大学を視察し、多くの人に囲まれたにも関わらず、マスクをつけていなかったのです。

人だかりで密集した中で彼は笑顔で人々と話を交わし、コロナウイルスを気にする様子を全く見せなかったのです。習近平が唱えたゼロコロナの方針に明らかに反する彼の行動は、「やっと習近平に反旗を翻したか」と内外に騒ぎを巻き起こしました。

李克強のマスクなしでの視察姿の映像は、まず雲南大学の微博(中国最大のSNS)で公表されました。たちまち話題を呼び、ツイッターなどでも多くの人々に転送されました。海外の一部中国語メディアはお祭り騒ぎのように取り上げ、李克強による習近平の独裁への「反旗」に期待を込めた論評も見られました。

李克強のマスクなしでの視察姿の映像

(雲南大学での李首相の動画リンク先はhttps://weibo.com/u/2241191945?refer_flag=1005050010_&layerid=4770471331236416

海外での盛り上がりとは異なり、中国の政府系メディアの報道は興味深いです。5月19日の『新華網』に李克強が雲南で経済安定と雇用確保に関する会議を主宰したとの報道はあったのですが、動画も写真もありませんでした。『人民網』と『人民日報』も同様でした。

17日から19日までの李克強の雲南視察についての総合的な報道は、20日になりやっと『人民網』などが掲載するようになりました。その多くも写真もなく文字だけの記事でした。

以上のことで「李克強は異例な行動で態度を表明した」と『ラジオフリーアジア(RFA)』は報じ、彼の視察先でマスクをつける人がなく、ゼロコロナを政治任務とする中国で実に異例だと強調しました。李克強の最近の視察などで本人はもとより同行者もマスクをつけていなかったと指摘しました。

『ラジオフランス』(中国語版)も、これまで弱いと思われてきた李克強の言動は“習降李昇”(習近平の権力が弱まり李克強が勢いを強める)の噂を増幅させたと取り上げました。噂というのは「習近平の内政と外交の連続失敗で、長老達、多くの高級幹部達が、李克強を支持する方に回った」といった話です。確かに4月29日に行われた政治局会議の後に、これらの噂が具体的に流れだしました。

この政治局会議に関する『新華社』の報道は、珍しく「習近平を核心とする」との文言を使わず、またほぼ全てを経済情勢の安定を強調することに費やしました。その後に「習近平のコロナ政策や外交面での国際的孤立、ロシアへの対応などが会議で批判された」との噂が流れました。

また海外にいる消息筋は、中国国家安全部の内部情報として、中国指導部の政策が調整され、「集団指導制」に回帰したとツイッターしました。

『ウォールストリートジャーナル』(中国語版)も5月16日、「李克強は習近平の影から脱した」との長文の記事を掲載し、李克強が勢いを強めているとの見方を更に増幅させました。

確かに習近平が2012年11月15日に共産党総書記と党中央軍事委員会主席に就任して以来、政治局常務委員を9人から7人にするなど、権力掌握に腐心してきました。経済は李克強首相が主宰する国務院(内閣)の責務であるはずですが、習近平はわざわざその上に多くの「小組(中国語で人数の少ないグループの意味)」を作りました。

「中央全面深化改革領導(統帥して指導する)小組」、「中央ネット安全と情報化領導小組」、「中央財経領導小組」といった経済関係の小組の責任者は全て習近平です。李克強は肩書だけで経済政策で決定権のない立場に追いやられ、習近平の指示の執行係に降格されたのだと誰でも分かりました。

習近平は反腐敗キャンペーンなどで権力基盤を固め、個人崇拝も復活させました。共産党中央宣伝部の指示で政府系メディアの報道で習近平の顔が出ない日は珍しくなりましたた。

しかし4月29日の政治局会議の後、李克強や汪洋などの政治局常務委員も、政府系メディアの一面に登場する日が増えています。

李克強が、その言動で習近平との違いを示したのは2年前に遡ります。2020年5月29日、恒例に従い李克強が中国全国人民代表大会(全人代)に際しての記者会見を行った際、中国の6億人の収入はまだ1か月1000人民元(日本円換算で約1万6千円)だと公言しました。それは習近平が一番重視し、誇っていた脱貧困の政策への評価として、相反する発言でした。

2016年に習近平政権は2020年までに中国の貧困人口をゼロにする5か年計画をうちだしました。習氏自身も2013年から9年連続して「新年賀詞(年頭所感)」で脱貧困に言及し、2020年までに中国の農村で貧困人口を無くすとの目標を達成すると繰り返し強調しました。

しかし、習が言っていた脱貧困の基準は一人当たりの平均収入が年4000人民元(日本円換算で約6万4千円)です。だから李の発言は、習が実現したい目標の達成は困難であると言った,あるいは習近平の誇る成果の意義をおとしめたに等しいです。

その後も、李克強による習近平とは異なる言動が続きました。2021年から李克強への国民の好感度は一気に上がり、マスコミへの露出度もわずかながらも増えました。

地方政府幹部との会議に臨む中国の李克強首相=11日、中国江西省

ただ未だにマスコミに冷遇される李克強首相は5月25日、地方幹部ら10万人以上を動員したビデオ・電話会議を開きました。李が演説で話したのは、ほぼ悪い知らせばかりでした。国内経済は著しく悪化し、地方政府予算は縮小し、大規模なロックダウン(都市封鎖)が行われた2020年より状況はある意味深刻だ、と述べました。

対照的に、共産党の機関紙である人民日報は同日、中国経済の見通しの明るさと、習近平(シー・チンピン)国家主席の指導力をことさら書き立てました。

李が経済悪化を直視したことは、さまざまな臆測を呼んでいます。今秋の党大会を前に権力争いで李が優勢になっているのでは、習のゼロコロナ政策で亀裂が深まっているのでは、李が不況の責任を負わされているのでは、などです。

こうした臆測が広がるのは、共産党内の権力闘争の内実が外からは全く見えないためでもあります。唯一誰の目にも明らかなのは、李の言うとおり中国経済が苦境にあるということでした。

5月27日午後、「中南海」(北京の最高幹部の職住地)で、第39回集団学習会が開かれました。この学習会は、その時々のトピックについて、党中央政治局委員(トップ25)が全員集合して、専門家を呼んで話を聞くというもので、不定期に開かれています。

この日のテーマは、当然ながら、中国経済をどうやってV字回復させていくかということかと思いきや、習近平主席が選んだテーマは、「中華文明の深源な流れと深化」。講師は、中国社会科学院歴史学部の王巍主任でした。

例によって、外部の講師というのは「刺身のツマ」のようなもので、中央に鎮座した習近平主席が、いかに中華民族が歴史的に偉大な民族だったかについて、延々と「重要講話」を述べました。

その様子を、CCTV(中国中央広播電視総台)のニュースで長々と報じていたのですが、中央政治局委員たちは、「重要講話」を聴きながら、熱心にメモを取っています。

ところが、李克強首相と、李首相に出身や考えが近いナンバー4の汪洋政協主席だけが、ふてくされたような表情で聞いていました。

ともあれ、コロナは徐々に収まりつつあり、中国が経済を「超V字回復」させていかないと、それはウクライナ危機と並ぶ、世界にとっての「もう一つの危機」となってしまうでしょう。

いや、ウクライナ危機よりもさらに大きな危機になってしまう可能性もあります。なぜなら、ロシア経済は今や韓国を若干下回る程度ですが、中国は違います。一人あたりのGDPでは中露は10000ドル前後で似たり寄ったりでずが、人口では中国がロシアの10倍の14億人です。

中国は国全体では、世界第二の経済大国です。この国の経済が傾けば、ロシアなどの比ではなく世界経済に大きな影響を与えるのは明らかです。

実際、今年の年初のユーラシアグループの今年の地政学的リスクの予想では、中国のゼロコロナ政策の失敗が筆頭にあげられています。


中国がゼロコロナ政策に大失敗すれば、世界の経済不安はウクライナ戦争の比ではなくなる可能性が大きいです。

李克強が政府系メディアに冷遇されてきた理由は、宣伝部のトップ黄坤明(こう・こんめい、ファン・クンミン)にあります。黄は福建省龍岩市長、浙江省杭州市党委員会書記を務めた後、2013年10月、習近平に抜擢され、宣伝部副部長、2017年10月、政治局委員、中央書記処書記、宣伝部部長に上り詰めました。

まさに“習家軍(習近平派)”ならではのスピード出世です。黄宣伝部長が李克強よりも習近平に忠誠を示すのも当たり前でしょう。これで政府系メディアは全て習近平派に掌握され、李克強は冷遇されています。しかしそれに対抗するかのように、SNSでの李克強の人気は習近平よりはるかに高いです。今回の“習降李昇”騒ぎもその状況を如実に物語っています。

まもなく首相職を2期10年間務めあげることになる李克強は、習近平に対してひたすら我慢する必要もなくなるはずです。その上、ゼロコロナで中国経済が大きなダメージを受けていることで、李克強の腕を発揮すべき時が来ました。もう習近平への遠慮は不要です。

「李克強派は、第20回党大会でより重要なポストを占めるように動くだろう」との内部情報もありまずが、「最近の李克強の大胆な言動も、習近平は黙認せざる得なくなっている」と分析する人もいます。権力闘争の駆け引きの一端が現れているのでしょう。

中国をいわば北朝鮮化させた習近平派に対して、今後も李克強を筆頭する改革開放派は更なる反撃を強めるでしょう。中国での権力闘争の駆け引きは一段と苛烈になるでしょう。ただし、未だ誰が勝利するのかは、はっきりとは見えてきません。

そうして、ウクライナでの戦争、米国の金融引締め、中国の景気減速が東アジア・大洋州地域の回復を阻むリスクであるのは間違いないです。

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外交部「台湾海峡は国際水域」 中国の主張を非難―【私の論評】日本も台湾のように、中長距離ミサイルを開発・配備することが安全保証上の最大の課題(゚д゚)!

2022年6月14日火曜日

外交部「台湾海峡は国際水域」 中国の主張を非難―【私の論評】日本も台湾のように、中長距離ミサイルを開発・配備することが安全保証上の最大の課題(゚д゚)!

外交部「台湾海峡は国際水域」 中国の主張を非難

外交部(外務省)の欧江安(おうこうあん)報道官

 外交部(外務省)の欧江安(おうこうあん)報道官は14日の定例記者会見で、台湾海峡は国際水域だと強調し、中国の最近の主張は「誤った言論」だと厳正に非難した。

 13日付の米メディア、ブルームバーグは関係者の話として、中国軍当局者がここ数カ月、米当局者との会合で台湾海峡は国際水域ではないと繰り返し主張していると報じた。中国の外交部は同日、台湾海峡水域は両岸(台湾と中国)の海岸から海峡の中心線に向かって伸び、順に内水、領海、接続水域、排他的経済水域になっているとし、中国が台湾海峡の主権と管轄権を有していると主張した。

 欧氏は、台湾海峡は国際水域であり、中華民国台湾の領海範囲外の水域には全て国際法上の「公海自由の原則」が適用されると強調。中国政府は台湾の主張を無視し、国際法の規則を故意にねじ曲げ、台湾海峡を矮小化して中国の排他的経済水域と見なしていると指摘した上で、台湾を併呑しようとする中国の野心は明白だとし、外交部として受け入れられず、非難すると述べた。

【私の論評】日本も台湾のように、中長距離ミサイルを開発・配備することが安全保証上の最大の課題(゚д゚)!

台湾ではこの手の中国に対する発言は頻繁になされています。たとえば台湾の游錫堃(ゆう・しゃくこん)立法院長(国会議長に相当)は12日、台湾メディア主催のオンライン講演会で「われわれには北京を射程圏に収める雲峰ミサイルがある。中国が台湾を侵略する前によく考えてほしい」と発言した。中国が台湾の武力統一に踏み切った場合には北京を攻撃する可能性があることを強く示唆した形です。

台湾の游錫堃(ゆう・しゃくこん)立法院長(国会議長に相当)

游氏は陳水扁総統時代の2002年から05年に行政院長(首相)を務めました。行政院長時代から「雲峰ミサイルで北京をたたけると知っていたが、当時は言えなかった」とし、「今は量産している」と述べました。

台北から北京までの直線距離は約1800キロ。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が18年3月に発表した報告書には「台湾の軍は射程2千キロの雲峰ミサイルを配備している」との内容がありました。当時、台湾でミサイル開発などを担当する中山科学研究院はメディアの取材に対し、「秘密だ」として肯定も否定もしませんでした。

雲峰ミサイルの射程距離を表すチャート

游氏は「台湾人自身に戦う意思がなければ、どんなに良い武器があっても無駄だ」と指摘し、「ウクライナで起きている戦争は台湾人に多くのことを教えてくれた。侵略者と勇敢に戦うウクライナ人を見習いたい」とも話しました。

游氏の発言について、与党・民進党の関係者からは「よく言ってくれた」といった声が上がったが、最大野党・中国国民党のある関係者は「中国を無意味に刺激し軍事的緊張をつくっている」と批判しました。

雲峰ミサイルについては、このブログでもすでに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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台湾の防空識別圏に飛来したH6K爆撃機の同型機(上)。下は台湾のF-16戦闘機

これは昨年の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。

台湾は、長年かけて自主開発した中距離巡航ミサイル「雲峰」の量産を2019年から開始しています。アナリストによると、雲峰の飛行距離は2000キロで、台湾南部の高雄から北京を納める距離です。

さらに、台湾は中長距離ミサイルの開発配備も視野に入れています。台湾の国防部(国防省)は25日、4年に1度となる国防計画の見直しを行い、立法院(国会)に報告しました。中国軍機が繰り返し台湾の防空識別圏に侵入するなど、軍事的圧力が強まっていることを踏まえ、長距離ミサイルを配備し、抑止力を強化する内容を盛り込みました。予備役など有事の際の動員強化も掲げました。

台湾当局は25日、1種類の長距離ミサイルの大量生産を開始したことを明らかにしました。これとは別に3種類の長距離ミサイルを開発していることも認めました。
さてこの記事には以下のようなことも記載しました。
台湾はミサイルによる防衛体制や、中近距離ミサイルによる抑止戦略について、あまり多くを語ってこなかったのですが、今回は異例の公表だといえます。しかしながら消息筋によると、現状でも、台湾側は中近距離ミサイルによって、中国本土の三峡ダムを破壊することを含め、抑止体制を十分に整え終わってるとされています。

三峡ダム
これについては、中国の軍事情報サイト「捷訊網」は21日、米国や台湾と戦争の事態になった場合、三峡ダムがミサイル攻撃を受け破壊された場合には、戦争に必要な軍部隊も水に飲まれ、民間人の被害は数億人にのぼると紹介しています。

三峡ダムが決壊すると、中国では大洪水か発生し国土の40%近くが洪水に見舞われるとされています。この雲峰ミサイルは北京にも到達するわけですから、これより近い三峡ダムにも確実に届きます。

もし、三峡ダムが台湾の中長距離ミサイルによって飽和攻撃を受けた場合、中国はこれを防ぐことはできず、三峡ダムは破壊されます。そうなれば、中国もかなりの打撃を被ることになります。

核を使うまでもなく、中国にはこのような脆弱なポイントは他にも多数あります。

日本では、防衛当局の発表と複数の報道によると、北朝鮮と中国からの脅威の高まりを踏まえ、日本防衛省は2022年も引き続き国内防衛産業の基盤強化を加速していく予定です。この基盤強化は防衛装備の国内生産の増加を目的としています。

防衛省が優先している開発中の先進装備には、ステルス戦闘機ジェット、長距離巡航ミサイル、無人戦闘航空機(ドローン)、極超音速兵器が挙げられます。こうした状況の中、今年防衛省の外局に新設される予定の事務所が防衛産業支援などの中核的機能を果たしていくことになります。

岸信夫防衛相は2021年12月28日に開かれた年末の記者会見で、「厳しさを増す安保環境や技術革新の急速な進展などの状況を踏まえれば、日本の防衛を全うするためには防衛産業・技術基盤の維持・強化への重点的な取り組みが必要不可欠である」と述べています。

日本の場合、中露に対抗する措置としては、潜水艦22隻体制を整え、専守防衛的な構えはある程度できているといえます。世界的にみても、かなり高い水準に達しています。このあたりは、岸防衛大臣あたりが、わかりやすく多くの人たちに啓蒙すべきと思います。

日本は、中国と比較するとASW(Anti Submarine Warfare:対潜水艦戦闘力)が格段に優れています。特に対潜哨戒力においては、中国海軍はかなり劣っており、日本のステルス性(静寂性)に優れた潜水艦を探知するのは難しいです。

一方日本は対潜哨戒力に優れており、中国の潜水艦はステルス性に劣るため、日本にとっては中国の潜水艦を探知すことはかなり容易です。

そうなると、仮に中国海軍が日本に侵攻しようとして、兵を送った場合、ほとんどの艦艇は撃沈されてしまうことになります。それでも、仮に中国海軍が日本に上陸部隊を上陸させることができても、日本の潜水艦隊に阻まれ、上陸部隊に対する補給ができなくなり、上陸部隊はお手上げになります。

このように日本は、専守防衛的な防衛では、ある程度は守備を固めたといえます。台湾は自前で潜水艦を建造中ですが、それまでの間は日米が台湾を潜水艦隊で防衛すべきでしょう。なぜなら、それが最も効果的に中国軍に攻撃できて、日米とも被害が少くとすむからです。

そうではなくて、潜水艦抜きで空母打撃群、海兵隊、航空機、水上艦艇だけで現代海戦に対処しようとすれば、中国にわざわざ付け入る隙を与え、日米両軍も甚大な被害を被ることになるからです。現在では、海戦の主役は潜水艦であり、それを否定するような考え方をするのは時代遅れであり、それは習近平などの夢想家だけでたくさんです。

ただ、日本の防衛にも不安な点はあります。それは、日本は台湾のように中長距離ミサイルがないため、中国軍が中長距離ミサイルで攻撃したとしても、中国のミサイル基地を叩いたり報復攻撃ができません。

そうなるとどのようなことが予想されるかといえば、たとえ中国海軍を崩壊させ、中国軍に日本の領土・領海に侵入することを防ぐことができ、日本の独立を保つことができたにしても、日本国土は中国の中長距離ミサイルで破壊放題ということになりかねません。それこそ、日本中がウクライナのマウリポリのようになってしまうかもしれません。

日本としては、敵基地攻撃能力を持つのは当然のこととして、台湾のように中長距離ミサイルを開発すべきです。

そうすることにより、日本を本当に守ることができます。そのための法律的な手だてをすることと、中長距離ミサイルの開発が日本にとっての喫緊の課題だといえます。専守防衛に傾きすぎている日本の安全保障は是正されなければなりません。専守防衛だけでは、国土が蹂躙されることをウクライナ戦争が教えてくれたと思います。

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2022年6月13日月曜日

クアッドが注力すべき中国の違法漁業と海上民兵―【私の論評】違法漁業と海上民兵には飢餓戦略が有効か(゚д゚)!

クアッドが注力すべき中国の違法漁業と海上民兵

岡崎研究所

 5月の東京における日米豪印4カ国によるクアッド首脳会議では、IPMDA(海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ)が発表された。世上あまり注目されていないようであるが、意義のある重視すべきイニシアティブと考えられる。


 その内容は、ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対抗するために、違法漁業、瀬取り、密輸など、違法な活動を継続的にモニターすることを目的とするものである。衛星技術によってこの地域の幾つかの既存の監視センターを繋ぎ包括的な追跡システムを作るとしている。

 念頭にあるのは中国の漁船団による収奪的な漁業である。米国の当局者は「この地域における違法漁業の95%は中国によるものだ」と述べている。南シナ海その他海域におけるその活動はつとに報道されているが、2020年夏には300隻近い漁船団がエクアドル領ガラパゴス諸島の周辺海域に出現し、荒っぽい漁業を行い環境破壊の懸念を惹起する事件を起こしている。

 しかし、それだけではない筈である。中国の漁船には偽装漁船もあり、その実態は解明されていないが、海警の船舶と連動して、いわゆる海上民兵として政治目的のために行動する例がある。

 昨年3月からほぼ1カ月の間、中国の海上民兵とおぼしき多数の船舶が南沙諸島のウィットサン礁(フィリピンの排他的経済水域内にある)に集結する奇怪な行動をしたのも、その一つである。クアッドの共同声明には「海上保安機関の船舶及び海上民兵の危険な使用」を含む「威圧的、挑発的又は一方的な行動」に反対するとの文言はあるが、IPMDAと関連付けることは(恐らくは意図的に――反カ国色が強過ぎるとパートナーを募ることに支障が生ずる)避けている。しかし、海上民兵は最も警戒を要する問題の一つであり、これがIPMDAの継続的モニターの対象を外れることはあり得ないだろう。

海洋秩序維持で他国への広がりも

 今後、クアッド諸国はインド・太平洋の諸国と協議してIPMDAによる海洋秩序維持の態勢を整えるようである。どの程度の下工作が行われたものか分からないが、このイニシアティブのパートナーとなることに関心を持つ諸国は少なからず存在するだろう。IPMDAは、これら諸国が自らの能力の足らざるところを補い、「威圧的、挑発的又は一方的な行動」に対処する上での助けになるに違いない。

 IPMDAは安全保障、経済権益の保全、環境保護などインド・太平洋の諸国が関心を有する分野において、これら諸国の需要に応えることを狙いとするものと考えられる。そういう形でクアッドは活動の裾野を広げることも出来る。その着眼点は高い評価に値すると思われる。

【私の論評】違法漁業と海上民兵には飢餓戦略が有効か(゚д゚)!

IPMDAの継続的モニターで中国の違法操業や海上民兵の動きを封殺することはできるでしょぅか。私は、できないと思います。最初は警戒するかもしれませんが、これに対して何もしないということであれは、中国は図に乗って、海上民兵を有効に使い、場合によっては島嶼を手に入れるなどのことを平気でするでしょう。

それも、南シナ海でやったように、サラミ戦術で少しずつ実行支配し、これに対して有効な手を打たなければ、少しずつ支配地域を拡大し、いつの間にか多くの部分や、島嶼などを実行支配すなどのことを行うでしょう。

なぜそのようなことを自信を持って言えるかといえば、米国と中国の真の戦場は、軍事力ではなく、経済とテクノロジーの領域であり地政学的な戦いだからです。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業、海民兵を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

中国が南シナ海の環礁を埋め立てて、実行支配したのも、地政学的戦いの一環です。従来であれば、環礁を領地とするためにでさえ、軍隊を派遣して戦争をして、敵を排除して手に入れたものです。

南シナ海の環礁を埋め立てて作った中国の軍事基地

実際第2次世界大戦中の日米はそうでした。大量の兵器や兵隊を送り込み、真正面から戦争して、敵を排除して、日米は太平洋の島々を自らの支配下に置きました。

しかし、中国は違います、軍隊ではなく、環礁を埋め立てるための道具や、人員を送り込み、環礁を埋め立て、他国が危機感を感じながらも、結局軍事的には何もせず、中国が環礁を埋め立ててそこを実行支配することを許してしまいました。

中国が民兵を場合によっては軍事目的にも使おうとしているのは明らかです。例えば2014年、東シナ海において、横、あるいは縦に並んで航行しながら、タンカーからフリゲート艦に燃料を給油する訓練が行われました。次いで、2019年には、洋上において横に並んで航走しながらコンテナ船から駆逐艦や補給艦にコンテナなどの貨物を移送する試験が行われました。

また2020年に行われた民間企業等を動員した大規模な統合軍事演習では、普段はカーフェリーとして利用されているRo-Ro船が、車両搭載用ランプ(傾斜路)を強襲上陸作戦用に改造されて参加していました。

そもそもタンカーであれ、コンテナ船であれ、Ro-Ro船であれ、商業目的に用いられる船舶は、できる限り大量の物資や車両、燃料などを積載して、仕出し港から仕向け港にできるだけ早く、安全かつ経済的にそれらの荷物を届けることにより利益を上げることを目的とするものです。

本来、そのような目的に合致しない洋上で貨物や燃料を移送する装置などを設置することは、設置に必要な区画や重量の分だけ積載可能な貨物の量が減るばかりか、船自体の重量を増加させ、速力や燃料効率に影響を及ぼすなど経済コストは悪化します。

とくに、Ro-Ro船の車両搭載用ランプの改造については、そのランプを水面下まで下げることにより、水陸両用車両や舟艇を船内から洋上に、あるいは洋上から船内に積み下ろしできるようにしています。一般的なランプとは強度や重量など構造が大きく異なるものです。

このような取り組みは、漁船についても同様です。外洋で操業する漁船が新造される場合には、「海上民兵」として必要な武器庫と弾薬庫を設置することが一部の地方政府の条例により義務づけられていることも明らかにされています。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎(とが)め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

中国は国営企業、民間企業、民兵を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったり、周辺諸国などにお構いなしに、環礁を埋め立てたり、埋め立てた環礁を実行支配したり、世界各地て違法操業したりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

中国漁船による違法漁協や民兵とおぼしき多数の船舶が南沙諸島のウィットサン礁(フィリピンの排他的経済水域内にある)に集結する奇怪な行動をしたのもこれは従来の戦争は異なる、「地政学的戦争」の一環なのです。

そうして、こうした戦争に対して、、IPMDA(海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ)などで監視を強めるだけでは、中国の戦争を止めることはできないでしょう。これは、海軍力では日米などに格段に劣る中国による地政学的戦争なのです。

簡単にはやめないですし、監視するくらいでは、絶対にやめません。

ただ、これらに対する有効な手立てはあります。それは、こうした海域や島嶼付近に日米およびEUなどの潜水艦隊を派遣することです。

海上民兵が上陸した島嶼や、違法漁業をする海域で、これらを潜水艦で取り囲み、行動できなくしてしまうのです。そうして、船舶や航空機による補給を絶ってしまうのです。

こうしたことを実施されると、ASW(対戦戦闘力)が劣る中国は何もできなくなります。そうして、日米EUの潜水艦隊は中国軍に対して警告し、海上民兵に対して補給をしようとする船舶、航空機は撃沈すると、警告し、実際中国軍が艦艇などで補給しようとした場合、それを撃沈すれば良いのです。無論このようなことは、最終段階であり、いくつかの段階を踏み、途中で警告などをしながら、最後の段階でこれを実行するということになります。

水も、食糧も、弾薬も補給させないようにします。そうなれは、海上民兵は島嶼か海上で餓死することになります。そうなる前に降伏するでしょう。こうしたことにより、中国の地政学的戦いを封じることができます。こういうことをすると、警告しただけでも相当効き目があると思います。

それでも、実行しようとした場合は、補給する艦艇や航空機を攻撃し、無力化すれば良いのです。ASWその中でも、対潜哨戒能力に劣る中国は、これに対抗する術はなく、このようなことを米国等が実行したとしても、ほとんど被害を被ることはないでしょう。このくらいのことをしないと、中国の海上民兵による地政学的戦争はこれからも続き、世界が不安定化するだけになります。日米EU諸国もこれを覚悟して、いずれ踏み切るべきでしょう。

鳥取飢え殺し

そうして、これは昔からある戦法です。はやい話が兵糧攻めです。織田信長の家臣であった羽柴秀吉は,播磨三木城や鳥取城を,兵糧攻めにより落城させたと伝えられています。ご存知のとおり、兵糧攻めとは、城を包囲し城内へ食料を持ち込ませないことで、城内にいる兵士や馬などを飢えさせる戦法で,直接武器を使うわけではないですが、残酷な方法です。

大東亜戦争末期の日本に対して米軍は「飢餓作戦」を実施しています。米軍が行った日本周辺の機雷封鎖作戦作戦名です。この作戦米海軍が立案し、主に米陸軍航空軍航空機によって実行されました。日本の内海航路朝鮮半島航路に壊滅的打撃を与え、戦後海上自衛隊戦術思想や日本の海運に影響を残しました。

飢餓作戦のためB-29爆撃機から投下されたパラシュート付きのMk26機雷

中国の海上民兵はプロの軍人ではありませんし、日米EUなどがこのような試みをすることを警告しただけでも、無謀な振る舞いをやめる可能性も高いです。鳥取城に立て籠った人たちやかつての皇軍のように、飢えてもなお最後の最後まで低抵抗戦する者はいないでしょう。

ただ、これは中国による地政学的戦いの一環なのですから、海上民兵の中に人民解放軍が紛れている可能性もあります。その場合は万難を廃して、使命を遂行しようとするかもしれません。そうなった場合は、餓死するまで包囲を続けるしかないでしょう。ただ、人民解放軍でもそこまでする人間はいない可能性のほうが高いです。

降伏すれば、手厚く保護してあげれば良いのです。

通常の戦闘のほかにも、海上民兵による地政学的戦闘に備えるためにも、AUKUSが結成されたのでしょう。

上で述べた「飢餓戦略」など、物騒に思われるかもしれませんが、「地政学的戦争」の観点からすれば、こうしたことも考えておくべきです。そうして、これに近いことがすでに、世界の海のいずれかで行われているかもしれません。

ただ、潜水艦の行動に関しては、従来からいずれの国も公にしないのが普通であり、米国では軍のトップですら、米国の戦略原潜の所在を知らないくらいですから、何か大きな事件でも起こらない限り表には出てこないだけかもしれません。

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2022年6月12日日曜日

中国からも米国からも逃げ出す中国人。富豪と研究者が向かった意外な国―【私の論評】米国のロシアへの経済制裁の真の目的は地政学的戦いで中国が米国に対抗できなくすること(゚д゚)!

中国からも米国からも逃げ出す中国人。富豪と研究者が向かった意外な国


5月23日、日米首脳会談を終えたバイデン大統領が、有事には台湾防衛のため軍事的に関与すると発言し、米中双方を慌てさせる事態となりました。台湾に関連して度々起こるバイデン大統領の失言騒ぎの意図を紐解くのは、メルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』著者で、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さん。こうした米中の緊張関係を嫌って米国から中国系研究者が流出していること、一方中国からはゼロコロナの窮屈さを嫌い富豪が離れ始めていることを伝え、共通の逃避先として選ばれている国を挙げています。

中国から逃げる富豪とアメリカから逃げる中国の知識 漁夫の利を得る意外な国とは

中国発の国際ニュースを読んでいて気付くことがある。それは今年に入り、台湾を扱う頻度が増していることだ。なぜ、国際ニュースかといえば、言うまでもなくアメリカが台湾問題に触れることに反応しているのだ。

直近の大ニュースは5月23日、バイデン大統領の失言だ。日米首脳会談後に行われた記者会見の場で記者から「有事には台湾の防衛に軍事的に関与する意思があるか」と問われ「イエス」と答えた。「われわれが約束した責務だ」と付け加えることも忘れなかった。

ホワイトハウスは直ちに火消しに回り、オースティン国防長官も米国の立場に変更はないと続いた。そして最後はバイデン氏自らが「あいまい政策(武力介入の有無を明確にしない)は変わったのか」と問われたのに対し「変化していない」と答え、「『一つの中国』政策にも変化がない」と修復に努めた。

台湾の蔡英文政権からすれば、期待の次に落胆が続いたような感覚だろう。だが、一方の中国も「これで一安心」というわけにはいかないのだ。バイデン発言はアメリカの隠れた意図を徐々に鮮明しただけと受け止めているからである。

というのも同様の発言は昨年にも二度発せられていて、中国側の抗議で発言が修正されているものの、すぐにまた約束と反する言動で中国側が揺さぶられるからだ。

バイデン政権の意図は明確で、言うまでもなくアメリカが台湾問題に口を出すことの「常態化」だ。そして本来はハードルの高い台湾への兵器の売却や相互訪問のレベルを上げてゆくことだ。その先にあるのは事実上の中台切り離しだ。

守る中国は少しずつ陣地を奪われるようにレッドラインを後退させられてしまう。アメリカの元国務長官・ヘンリー・キッシンジャー氏の言葉を借りれば「by a gradual process develop something of a ‘two-China’ solution」だ。

キッシンジャー氏は5月23日、バイデン発言を受けて米CNBCのインタビューに応じている。記事のタイトルは「台湾を米中外交の交渉の核にしてはならない」だ。つまり、現在のアメリカの対中外交が危険水域に入り始めていると警告しているのだ。

こうした状況をみれば米中対立が簡単には収まらないとの予測が定着するのは不思議ではない。ネガティブな空気はアメリカに住む中国人の社会を直撃している。なかでも影響を受けているのが学術界だ。

中国の国際紙『環球時報』のウェブ版は6月1日、米誌『ネイチャー』の記事を受けて米中の共同研究の数がここ3年間で激減したと報じている。顕著なのは米中それぞれの研究機関に所属する研究者が、共同で執筆した論文の発表数だ。記事で紹介されたデータによれば、3年間で20%も下がったという。まさに激減だが原因は政治由来だ。

周知のようにアメリカは知的財産の保護や安全保障上の理由を挙げて中国系の研究者に対する取り締まりを強化してきた。いわゆるチャイナ・イニシアチブ(イニシアチブ)だが、これは開始から3年で大きな曲がり角を迎え、今年初めにはプログラムを終了させた。

イニシアチブの失敗を先陣切って報じたマサチューセッツ工科大学の『MITテクノロジーレビュー』(1月18日)は「混乱する米国の対中強硬策、チャイナ・イニシアチブのお粗末な実態」と報じた。要するにスパイ疑惑で3年間大騒ぎしたが、ほとんど成果はなかったという意味で、冤罪の犠牲となった人々には大きな傷が残ったのだ。具体的な後遺症となったのが中国系研究者のアメリカ離れと学術界における米中協力の減少の進行だった。

ここに追い討ちをかけたのがヘイトクライムである。アジア人が狙われるケースが増えて安全が脅かされたのだ。カリフォルニア州立大の憎悪・過激主義研究センターが暫定値として主要都市での憎悪犯罪を集計した対アジア人のヘイトクライムの統計によれば、2021年は15都市で計2106件。20年に比べて5割増え、地域別ではニューヨーク市でほぼ倍増の538件。西部カリフォルニア州ロサンゼルス市でも7割増の615件だったと、『日本経済新聞』は伝えている。アジア系にとっての生活環境悪化は顕著だ。

こうした変化を嫌ってアメリカを離れようとする研究者は多い。だが複雑なのは彼らがそのまま中国に戻るわけではない──もちろん戻る人も多いが──ということだ。裏側でイギリスやカナダ、オーストラリアが食指を伸ばし、スカウトしているからだ。

一方、上海のロックダウン解除から少しずつ日常を取り戻しつつある中国では、いま1本の記事が人々の注目を集めている。『時代読財』が発信した〈1万5000人の富豪が資産とともに移民となる 中国は資産の持ち出しを厳格に管理〉という記事だ。

これはロックダウンに代表される中国の厳格過ぎる感染対策を嫌って、大都市の金持ちたちの間で「中国逃避」の流れが起きているという現象を報じたものだ。いわゆる古くて新しいキャピタルフライトの問題だが、いま大きな流れとなれば問題は深刻だ。

受け皿はアメリカと思われそうだが、実はそうではない。興味深いのは、彼らが逃避先として選ぶのは、やはりカナダやオーストラリア、そして東南アジアなのだということだ。

米中それぞれの問題で逃げ出す富豪や研究者たち。その避難先が東南アジアやカナダ、オーストラリアであれば、米中対立の漁夫の利は彼らが得ることになるのだろう。

【私の論評】米国のロシアへの経済制裁の真の目的は地政学的戦いで中国が米国に対抗できなくすること(゚д゚)!

このブログでは過去に何回か掲載したことがありますが、まずは2020年の世界の人口について振り返っておきます。中国とインドが14億人でアメリカ3.3億人であるのに対し,ロシアは1.65億人と全世界の1.9%である。因みに日本の人口は1.25億人です。

つぎに、新型コロナ発生前の2019年の名目GDPのシェアを見ておきます(IMF)。ロシアのGDPは,世界第11位の170百億ドルであり、韓国の164百億ドルとほぼ同じです。これに対し、米国は2,143百億ドルで12.6倍の規模です。日本が507百億ドルで約3倍です。

新型コロナ発生後の2021年の名目GDPの状況もほぼ変わらないです。ロシアのGDPは177百億ドルで世界第11位です。米国は2,299百億ドルでロシアの13倍。この時点で韓国は,179百億ドルとロシアを上回りました。

そうして注目すべきは中国が、1,745百億ドルとアメリアの4分の3にまで迫ってきてはいますが、一人たりGDPでは、1万ドルをわずかに超えた程度であり、これはロシアとあまり変わりありません。

中国の人口は、ロシアの人口の10倍であり、GDPも約10倍です。中露の一人あたりのGDPは、台湾、韓国などはもとより、バルト三国のうちの一つであるリトアニアよりも小さいのです。このリトア二アの人口は約280万人であり、空軍には輸送機はありますが、戦闘機や爆撃機はありません。

リトアニアのシャウレイ空軍基地では7日、NATO加盟国など17カ国から約3000人の兵士、50の航空機が参加した大規模な演習が行われていました。しかし、リトアニアは戦闘機を持っておらず、駐留するのはスペインとチェコの空軍です。

もともとバルト3国は、ソ連崩壊後の混乱で、航空戦力を自分たちで賄うことができませんでした。「空軍基地」ではあるものの、リトアニアが持っているのは、輸送機など攻撃能力を持たないものです。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000257415.html

リトアニア空軍、スロビカス指揮官は、「『もっと機体を』と常に思っています。戦闘機とパイロットは軍の予算には高すぎます。今の情勢下では我々の戦力は不十分なので、NATOの支援は重要です」と語っています。

このようなリトアニアよりも、中露の一人あたりのGDPは低いのです。これを考えると、いかに両国が国民を犠牲にして大きな軍事力を持ち、それを維持しているのかが実感できます。

そうして、ロシア経済は原油価格に大部分を依存します。その原油価格の指標となるのは,アメリカのWTI(West Texas Intermediate)原油の先物市場です。この価格が2020年4月20日に1バーレル当たり―37.63ドルをつけました。この時期にはロシアのウクライナ侵攻は難しかったのです。

この価格が、わずか2年後、ロシアのウクライナ侵攻後の2022年3月7日には130.50ドルとなりました。1次産品である原油の先物市場価格の乱高下は通常でですが5月26日時点でも111ドルです。

ただ、ロシアの原油埋蔵量は世界6位に過ぎない上に、さらに枯渇が取りざたされています。石油のような1次産品が需給ひっ迫すると,価格が急騰します。次に、「代替生産」が起こり,価格は急落します。また、歴史的に、時間をかけると「技術進歩」が1次産品問題を克服します。1次産品問題はイノベーションにより克服され、今日があります。したがって、ロシア抜きの世界経済は存立可能です。



そのことがわかっているし、現状のロシアのGDPは韓国以下であり、とても米国やEUと地政学的な戦い(経済安全保障など)をして勝つことはできないプーチンは今が最後のチャンスと考えウクライナに侵攻したのかもしれません。

以上の経済状況を踏まえて世界のロシアへの経済制裁の効果を評価する際に、ロシアのウクライナ侵攻の根底にあるのは米中覇権争いであることを認識すべきです。

ロシアへの経済制裁の効果は、短期的には石油など禁輸する国があっても追加的に輸入する国もあり、弱められる。中長期には、高価格が維持されれば、石油はロシアからアメリカなど代替が進む可能性があり、小さなロシア経済が更に弱体化します。つまり、中長期に経済制裁は有効です。

ただし、ロシアがよく言われる北朝鮮化するとしても経済制裁によりプーチン大統領を排除できるかといえば難しいです。また仮に死亡したり、失脚したとしても、強権国家が管理を強化しても北朝鮮、中国でさえ政権を変えるまでには進まないでしょう。ロシアも同じでしょう。プーチンが消えても、次のプーチンが大統領になるだけです。

こうした状況下で、米国は、中国を意識したロシアへの制裁を継続することは理解できます。中国の最大の損失は、現状の戦争犯罪者であるプーチン氏と習近平氏の同盟が続けば、中国がロシアと同じ強権国家として世界中の国々がブランド化されることになります。現在の第4次産業革命下では、「世界全体からの多様性のあるイノベーション人材」の招致が不可欠です。

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上の記事では「米中それぞれの問題で逃げ出す富豪や研究者たち。その避難先が東南アジアやカナダ、オーストラリアであれば、米中対立の漁夫の利は彼らが得ることになるのだろう」としていますが、そもそも米国にいようが中国にいようがはたまたそれ以外のEUなどの国にいようが、中国籍の中国人でノーベル賞を獲得した学者は存在しません。

それと、日米やEUなどと比較して、東南アジアやカナダ、オーストラリアなどの国が全く及ばないことがあります。それは、日米EUあたりだと、弱点などはあったにしても、ほぼすべての産業基盤があります。

日米EU以外は、多くの産業の基盤がなかったりします。たとえばオーストラリアには最近AUKUSに入り原子力潜水艦の技術を得ることを決めたことからもわかるように、オーストラリアには原子力産業も潜水艦を建造できる造船技術も育っていません。

様々な科学技術的な研究をするにしても、多くの産業基盤が揃っている国でないと、なかなか本格的な研究はできないです。いずれの分野でも本格的な研究をしたいなら、日米やEUにとどまるしかありません。特に現在のような地政学的な戦いにより、いつ制裁などを受けるかわからないような時代はそうです。

ロシアのように、先端技術を生み出そうとしても、満足に半導体や精度の高いベアリングすら手に入らないようでは話にならないです。最新型の戦車や戦闘機を作ろうとしても、制裁で半導体が使えなくても、すぐに代替品が使えるようでないと話にならないのです。

本当の意味での、先端技術を生み出すためには、おおよそすべての他の先端技術を素早く容易に取り込むことができなければ、不可能です。

中国人研究者は、そのほとんどは一流ではないし、一流で志の高い研究者はやはり米国などにとどまるでしょう。これからは、特にそうです。そんなことよりも、中国が人材を得ることができるかどうかが、今後の米中の地政学的戦い(経済とテクノロジーの戦い)の趨勢を決めるのです。中国人研究者がどこに行くかなどは些細な問題にすぎません。

ロシア制裁の継続は、中国強権国家ブランドを確定し、中国への世界からの人材招致を難しくすることになります。「人口減少時代」に入る中国が、米中経済覇権争いで米国に対抗できなくなります。これこそが、中長期のロシア経済制裁の最大の効果となるでしょう。

米中の地政学的戦いは、ロシアが呼び水となり、中国が本格的に人材を得ることができなくなり、技術的にも経済的にも米国に勝つことができず、それで米国の勝利で終わることになるでしょう。


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