バイデン政権がウクライナ危機を失地挽回に利用?保守派の論客は「不干渉」訴え
米国は
ウクライナ問題に関わるべきではないという意見が、保守派の間から上がり始めた。
今回のウクライナ危機の原因を考えてみましょう。なぜロシアが腹を立て、衝突の危機が迫っているのでしょうか?その理由はこうです。米国政府は長年にわたってウクライナを
NATO(北大西洋条約機構)に加盟させるよう推し進めてきました。もしメキシコが中国に軍事的に支配されたらと考えてみてください。我々は当然、それを疑いもない脅威と受け取るでしょう。ロシアもNATOによるウクライナの支配をそう見ているのですが、間違っているでしょうか。それに引き換え我々は、ウクライナをNATOに押し込んでもなんら得なことはないのです。
(FOXニュース「タッカー・カールソン・トゥナイト」1月18日放送)
この発言は大きな反響を呼び保守・革新双方から批判の声があがったが、カールソン氏は屈せず、21日には自身の番組で“ウクライナ不干渉説”を説いた。
昨日はロシアとウクライナの戦いという暗い話題について話しました。
ワシントンでは超党派のネオコンの同盟が、この衝突を発火させるべく仕掛けてきました。米国の外交問題の当事者たちは数億ドルもの兵器を世界でもっとも不安定なこの地に送り込み、爆発が起きるのを期待して待っているのです。 その期待が叶う日が近いようです。爆発は起きそうですし、それは米国をいとも簡単に紛争の中心に吸い込むことになるでしょう。私は昨夜そう言ったわけです。しかし正直言って、信じられないことです。我々は本当に戦略的に意味のない地域の腐敗した国のために戦わなければならないのでしょうか。我々の国で他にもいろいろな問題を抱えている時にです。正常な人間ならばそんなことをするわけがないでしょう。それなのになぜそうなるのでしょうか。
(FOXニュース「タッカー・カールソン・トゥナイト」1月21日放送)
カールソン氏は「ネオコン(新保守主義者)」に対抗する「ペイリオコン(伝統的保守主義者)」で、外交的には「孤立主義」の立場をとり、かつてトランプ前大統領に
アフガニスタン撤退を助言したと言われる。
バイデン政権の「ワグ・ザ・ドッグ」作戦?ウクライナ問題に対しては、別の視点から疑問を挟む声もある。
この(バイデン)行政府は、ウクライナ問題を「ワグ・ザ・ドッグ」に利用しようとしています。
保守派のコメンテーターのジャック・ポソビエック氏は、19日に公開したポッドキャストでこう言及した。
「ワグ・ザ・ドッグ」とは、直訳すれば「(尾が)犬を振る」で「本末転倒」を意味するが、かつて同名の映画(邦題『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』)が、大統領のスキャンダルを隠すために米国が架空の戦争を始めるという筋書きでヒットした。
現実でも、ビル・クリントン元大統領が1998年8月に
アフガニスタンとスーダンに爆撃を命じたが、それは同じ日に大陪審で行われたインターンの女性との不倫問題の聴聞から世間の関心を逸らすための「ワグ・ザ・ドッグ」だったと言われている。
ポソビエック氏は、ホワイトハウスのスタッフから得た情報として、行政府はその失地挽回と国民の関心を逸らすためにウクライナとロシアの間の緊張激化を利用していると、そのポッドキャストで語った。
彼ら(バイデン政権)は武装衝突を利用して米国の若者たち、あなたの息子や娘たちを戦地に送り込もうとしているのです。政権の国内的、対外的な信頼感を取り戻すために。
そして同氏はポッドキャストでこう警告した。
これは「ワグ・ザ・ドッグ」に他なりません。そしてウクライナで米国人が殺されるのです。ちょうど(アフガニスタンの)カブールで起きたのと同じように。私の言葉を信じなさい。
こうした中、バイデン政権の新たな支持率が47%という世論調査の結果が23日伝えられた。 最近の平均支持率より5ポイントほど上昇している。それも、バイデン政権には厳しいFOXニュースの行った調査なので説得力がある。「ワグ・ザ・ドッグ」作戦が功を奏しているのかもしれない。
【私の論評】日米とその同盟国は、悪の3枢軸こそ本当の敵であることを片時も忘れるな(゚д゚)!
バイデンが失地回復を狙っていることについては、すでにこのブログにも掲載しています。
昨日も掲載したばかりです。その部分を以下に引用します。
中国への強硬姿勢に対しての米国内での支持は大きいです。「中国に厳しく」という世論はますます強く、対中国政策で弱気な対応を見せれば、それはバイデン氏の民主党政権にとって国民の支持を失いかねない局面に直結することになります。
秋には中間選挙があります。2021年11月の2つの州知事選挙、バージニア州ではバイデン大統領が応援に入ったにもかかわらず民主党候補が破れ、ニュージャージー州でも民主党の現職知事が大苦戦して辛くも逃げ切りました。中間選挙の結果、そして次期大統領選の結果によっては超大国の指導者がまた変わるかもしれません。
2022年の世界も“世界唯一の超大国”と言われる米国を中心に動くでしょう。2月の北京冬季五輪パラリンピックを見据えた外交戦術、さらにロシア軍が国境に展開して緊張が続くウクライナ情勢など外交の課題は山積です。その一方、苦戦している国内での支持率。バイデン政権2年目は、秋の中間選挙に向けて、国内外の多くの緊張と共に歩んでいくことになる。
移民政策でも、アフガン撤退でも明らかに失敗したバイデン、今年の中間選挙のことを考えると、中露に対して弱い姿勢は見せられません。何らかの形で、失地を回復する必要があります。
米国のウクライナ情勢に対する対応のすべてがバイデンの失地回復のためということはないでしょうが、そういう要素があるのは間違いないです。
21日にジュネーブで行われた米露外相会談で、バイデン米政権は、外交による事態打開に道を残しました。ロシアの要求に対して「文書での回答」を約束したことで、プーチン露政権に言質を与えて交渉の幅をせばめるリスクも負ったといえます。ただ、どのような回答をするかによって、失地回復のための交渉なのか、そうでないのかも、ある程度判断できると思います。
一方ウクライナ国内の現状はどうなのか述べておきます。
「ウクライナの子どもは悪い環境で生まれて悪い選択だけを強要される。そしてその人生は良くならない。政治家は権力さえ手にすれば同じ失敗を繰り返すからだ」。 2015年10月に初放送されたウクライナの国民ドラマ『国民のしもべ(Servant of the People)』の第1話に登場するセリフです。
ドラマの中で小市民であり高校の歴史教師である主人公は、国民の生活よりも自分の利益を真っ先に考える政治家に怒り激しい批判を浴びせ、偶然撮影されたこの様子がSNSを通じて人気を呼び、結局大統領になります。
その役を演じたウォロディミル・ゼレンスキーは4年後、実際にウクライナの大統領になりました。清廉潔白な政治新人であることを前面に出し、決選投票で73.2%という高い得票率を記録しました。
ウクライナ国民は17歳でロシアのコメディテレビショーに出演して知名度を上げてきたコメディアンに希望をかけるほど、前職大統領の腐敗と無能に身震いしていたのでしょう。
しかし12万7000人を要するロシア軍が侵攻の準備を完了した危機の中で、ゼレンスキー大統領はウクライナ国民の期待とは異なる姿を見せています。
19日(現地時間)この日、ウクライナ裁判所が国家反逆容疑を受けているペトロ・ポロシェンコ前大統領に対して検察が請求した拘束令状を棄却して内紛はさらに泥沼化しています。令状実質審査が行われた裁判所の周囲にはポロシェンコ氏の支持者が集まり、警察と小競り合いが起きました。
ポロシェンコ氏の支持者は大統領宮に向かって行進しながらゼレンスキー大統領に対して抗議デモを行いました。 ポロシェンコ氏は2019年大統領選挙でゼレンスキー氏に敗北して再選に失敗した政治的ライバルです。
彼は在任時代だった2014~2015年、ウクライナ東部ドンバス地域の親ロシア分離主義勢力の資金調達を助ける大量石炭販売に関与したという容疑で調査を受けている間、先月ポーランドに出国しましたが17日にウクライナに復帰しました。
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キエフのスタジアムで2019年4月19日、ウクライナ大統領選の決選投票を前に 討論するウクライナのポロシェンコ大統領(左)とゼレンスキー氏 |
帰国当時の第一声は「危機に瀕している祖国を助けるために帰ってきた。ゼレンスキー氏は全く関係がない容疑を私にかけて粛清を行おうとした。彼はロシアの攻撃に対して何をするべきかも分かっていない」でした。
国が風前の灯火の状態だというのに、前・現職指導者が団結どころか政治的な争いを繰り広げているのです。17日、米国ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「ウクライナと西側間の会談で疎外されたゼレンスキー大統領が国内問題に重点を置いている」と指摘しました。
19日、ウクライナ首都キエフでゼレンスキー大統領に会ったトニー・ブリンケン米国務長官も「ロシアに対抗するウクライナのリーダーたちが団結した戦線を形成しなければならない」と強調しました。
ウクライナが本当に危機に瀕していれば、前・現大統領とも利害を超えて、協力すると思うのですが、そうではありません。ウクライナ危機はさほど深刻ではないのか、あるいは前・現大統領とも愚かなのかどちらかです。
一方ウクライナと中国の関係をみてみます。中国とウクライナは2013年末、友好協力条約を締結。両国は中国の100億ドル以上の投資計画で合意し、ウクライナ側も「一帯一路」を全面支援しました。
2014年のロシアによるクリミア併合以降、中国がロシアに代わってウクライナ最大の貿易相手国となり、特にウクライナ製兵器の輸出先は中国向けが圧倒的に多いです。
人民解放軍系企業が穀倉地帯のウクライナ東部で、200万ヘクタールの農地を50年間租借し、中国最大規模の海外農場を建設する計画を進めているとの報道もありました。
友好協力条約には、ウクライナが核の脅威に直面した場合、中国が相応の安全保障を提供するとの一節があります。ウクライナを脅かす国はロシアだけであり、ロシアのウクライナ攻撃では中国がウクライナを擁護するとも読めます。
1月初めには、習主席とゼレンスキー大統領が国交樹立30周年の祝電を送り合い、「戦略的パートナー関係の発展」を誓ったばかりでした。中国はロシアのクリミア併合を承認していません。
そうしたウクライナですが、ウクライナ政府は、同国の航空エンジン製造大手「モトール・シーチ」の中国企業による買収を阻止することを決めています。ゼレンスキー大統領は、昨年3月23日、関連する大統領令に署名しました。中国への軍事技術流出を警戒する米国が買収に懸念を示していました。
阻止の背景には、ロシアとの対立で米国の支援を得たいゼレンスキー政権の思惑があります。ウクライナの国家安全保障・国防会議が11日に開かれ、ダニロフ書記が「近い将来、モトール社はウクライナ国民と国家に戻されることが決まった」と説明していました。
1907年設立のモトール社はソ連の軍用ヘリコプターや輸送機のエンジンを製造し、ソ連崩壊後もロシアが大口顧客でした。しかし、2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合で両国関係が悪化。ロシアとの取引を停止した結果、経営難に陥っていました。
こうした中、モトール社買収を狙ったのが中国企業「北京天驕航空産業投資」(スカイリゾン)で、19年末までに株式の過半数を取得したとされます。しかし、米国はウクライナに買収を認めないよう要請。20年8月に行われたゼレンスキー氏との電話会談で、ポンペオ米国務長官(当時)は「モトール社の買収を目指していることを含め、ウクライナにおける中国の悪意ある投資への懸念」を表明していました。
米商務省は昨年1月、スカイリゾンが「外国の軍事技術の獲得を進めていることは米国の安全保障と外交利益に対する重大な脅威」として、米国製品の輸出を制限する軍事企業のリストに加えました。スカイリゾンが中国人民解放軍と深い関係を持つとも指摘しました。
このような状況をみていると、ウクライナが米中露の間で揺れ動いていることがよくわかります。ただ、モトールシーチへの中国の悪意ある投資を阻止したことで、やはり米国寄りであることが見て取れます。
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プーチン氏(左) とライシ氏(右) |
こうした最中イランの反米・保守強硬派のライシ大統領は19日、去年8月に就任して以降初めてロシアを訪れ、プーチン大統領と会談しました。
冒頭でプーチン大統領は、国際社会の課題に対してイランと緊密に協力していると強調したうえで「核合意をめぐりイランの立場を知ることは、非常に重要だ」と述べました。
これに対し、ライシ大統領は「両国関係は戦略的で永続的なものになるだろう。アメリカの一方的なやり方に、ロシアとともに対抗していく」と述べ、アメリカの制裁に対抗するため経済面などで両国の連携を強化する考えを強調しました。
イランの核合意をめぐる協議では、アメリカが解除する制裁の範囲などをめぐって意見の隔たりが大きく、妥結のめどは立っていません。
ライシ政権としては、伝統的に友好関係にあるロシアとの関係強化を図ることで、核合意の立て直しに向けた協議でアメリカに譲歩を迫るねらいもあるものとみられます。
ライシ師は20日にはロシア下院で演説、「北大西洋条約機構(NATO)がさまざまな口実を使って独立国家に侵入を図っている」と米欧を非難し、ウクライナ侵攻も辞さないとするプーチン氏を援護射撃しました。外国の首脳が下院で演説するのは極めて異例。プーチン氏がライシ大統領を歓迎し、厚遇した証と受け取られています。
イランは核協議が不首尾に終わった場合、不倶戴天の敵であるイスラエルが核施設などに軍事攻撃を仕掛けてくると警戒しており、SU35、S400ともイスラエルに対する強力な抑止力になると見られています。イスラエルはロシアと良好な関係を維持しており、今後、イランへの兵器売却を思いとどまるようロシア側に働きかけることになるでしょう。
首脳会談での具体的な合意については公式的には発表されていないですが、今年で期限切れとなる「経済・安全保障協力協定」の枠組みを更新することで一致したといいます。特に安全保障面では、ロシアがイランに対し100億ドルに上る兵器売却で合意したとされ、イランが強く求めていた最新鋭戦闘機SU35や地対空ミサイルS400も含まれている模様です。
新協定のモデルになったのはイランが昨年3月に中国と締結した戦略協定です。
中国がイランのエネルギー、通信、交通などの分野に総額4000億ドル(約44兆円)を投資するのと引き換えに、イラン原油を安価で安定調達するというのが骨子。制裁で苦しむイランにとっては国益にかなう協定です。イランはロシアからの兵器購入費約100億ドルの支払いについては、中国からの石油代金の未回収分でまかなうのではないかと観測されています。
イランとロシアによる関係強化により、世界の対立軸はこの2カ国に中国を加えた「反米枢軸」と「米国連合」という図式に収れんしつつあります。とりわけ、米国の制裁に対抗しようとするイランの動きが目立ちます。イランは昨年9月、ライシ師がタジキスタンで開催された「上海協力機構(SCO)」首脳会議に出席、機構への正式加盟が承認されたのですが、これもそうした動きの一環です。
SCOは中国とロシアが主導し、8カ国で構成。オブザーバーで参加してきたイランは9番目の加盟国となります。プーチン氏にとってもイランとの関係強化を世界に見せつけることはプラスです。
中露とイランは3カ国枢軸を誇示するようにこのほど、ペルシャ湾の外側のオマーン湾付近で海軍の合同演習を実施しました。
ウクライナ危機も、「3カ国枢軸」と「米国連合」という図式の中で見ていく必要があります。ただ、その中で一番の強敵はやはり中国です。ただ、この悪の3枢軸は互いに協力しあうでしょう。
たとえば、ロシアによるクリミア併合以降、中国がロシアに代わってウクライナ最大の貿易相手となったり、友好協力条約を結びウクライナが核の脅威に直面した場合、中国が相応の安全保障を提供するとしてロシアのウクライナ攻撃では中国がウクライナを擁護するような素振りをみせましたが、今後もこのような行動をとるでしょう。
このようなことが、今後ウクライナ以外でも行われるでしょう。この三者は互いに連携しており、現実には「3カ国枢軸」にとって最も良いように動くことになるでしょう。ロシアは、中国やイランに軍事技術の提供をある程度強化するかもしれません。
バイデンを含む民主党も、無論共和党にとっても選挙、特にこの秋の中間選挙は重要でしょう。ただ、バイデンは「ワグ・ザ・ドッグ」だけで動くのではなく三国枢軸こそが、本当の敵であると見極めるべきです。共和党もそうです。両者とも選挙に勝つために、悪の3枢軸を利することがあってはならないです。
バイデン政権が同盟国との関係を強化しているのはいかに超大国とはいえども米単独で「反米枢軸」と対峙していくのは財政的にも軍事的にも耐え切れなくなり、応分の負担を要求せざるを得ない、というのが実情でしょう。特に日本は対中、対ロシアの最前線に位置し、同政権にとっての日本の存在価値は格段に上がりました。今後も日本が米戦略にさらに組み込まれていくでしょう。
しかし、昨日も述べたように、これは同時に日本の存在感を高めるチャンスでもあるのです。
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