2018年6月20日水曜日

華為技術(ファウエイ)の「スマートシティ」システムに潜む妖怪―【私の論評】このままでは、図体が大きいだけの、アジアの凡庸な独裁国家と成り果てる中国(゚д゚)!

華為技術(ファウエイ)の「スマートシティ」システムに潜む妖怪

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

平成30年(2018年)6月21日(木曜日)
         通巻第5729号  <前日発行>


中国の多くの地域でトラック運転手が一斉ストライキを敢行している

 日本ではまったく伝わらなかった。いや、中国の主要メディアも報道せず、ネットに流れたストライキのニュースは当局がさっさと削除した。だから中国の国民も大規模なトラック業者のストライキがあったことを知らない。

    中国ではトラック運転手が連絡を取り合い、拠点は安徽省の合肥と四川省の成都だったが、全国一斉のストライキとなり、波紋が広がった。

    これは6月8日の事件で、原因は「ウーバー」への不満が爆発したからである。

    何故か?

 ウーバーはタクシーの空車が近くにいれば、スマホで呼び出せる新しいネットシステムで、日本のように空車が多い国では普及しないが、中国で急成長した。その結果、バイク、レンタサイクルにも及び、ついにはトラック業界にも影響が拡がる。


 たとえば荷物がある。出入りのトラック輸送業者より、近くに空車のトラックがあれば、簡単に呼び出して輸送を頼める。つまりダンピングも起こり、業界の秩序と取引慣行までが攪乱される。

 悲鳴を挙げたトラック運転手たちが、ネットで連絡を取り合って一斉に同盟罷業を提案し。実際に未曾有のストライキが行われた。

 ところがネットを監視している全体主義国家の中国においては、「社会の安定」と「経済発展」が優先され、いかなるストライキも禁止されている。

 ただちに当局が介入し、弾圧し、指導者を逮捕する。ストライキ参加者も罰金刑か、あるいは解雇という悲運が待ち受けている。中国共産党というビッグブラザーが禁止していることに刃向かったからだ。

 こうした弾圧の先兵として、大活躍し、委細漏らさずに、その監視をおこなう装置がファウェイの通信機器と施設なのである。

 だから「スマートシティ」だ。「共産党独裁にとって安全な装置」を張り巡らせた功績がある。監視カメラなどでストライキ参加のトラックを特定し、顔面認識システムは、運転手の顔を割り出す。

 弾圧から逃れる手だては望み薄だろう。

 ▲ウーバー・ビジネスの殆どを中国共産党系企業が抑え込んだ

 トラックのウーバー・ビジネスは当初、ふたつの私企業が運営していた。
2017年四月に突如、ファンドが買収し、これら二社を合併させて「ムンバン」という会社に統合された。

 つまりこの合併は共産党系列ファンドが表向き実行したことになっているが、自転車のウーバーを買収した手口と同じであり、すべてのネットビジネスも国家の監視下におく措置である。

 国民に勝手な行動を取らせ、ストライキなど起これば、そのエネルギーは突然、反政府暴動に発展することになり、中国共産党は不安で仕方がないのである。

 独裁システムとは、つねに過剰な監視を行うものであり、嘗ての密告制度と寸毫の変化はない。新兵器を用い、ネットシステムさえも、独裁政治の武器化しておこうという思惑からなされているのである。

 かくてネットシステムは、中国においては中国共産党の安全のために酷使されるが、国民の安全のためではないことがわかった。

 中国ばかりか、ファウェイの通信機器は「スマートシティ・ソルーション・システム」と銘打たれて、ロシア、アンゴラ、ラオス、ベネズエラに輸出されている。

 西側は公務員の無駄を削減し、効率を上げるための「e政府」を謳っており、ドイツなどでは一部試験的にファウエイのシステムを導入しているが、米国とオーストラリアは、厳密にファウエイの通信設備、機器、システムの導入を禁止している。

【私の論評】このままでは、図体がでかいだけの、アジアの凡庸な独裁国家と成り果てる中国(゚д゚)!

このストライキは、かなりの大規模であり、空前絶後の規模だといわれていますが、確かに日本では報道されていません。中国国内のメディアもほとんど報道していないようです。

2018年6月10日、米華字メディア・多維新聞によると、安徽省や江西省、江蘇省、浙江省、貴州省、山東省、四川省、重慶市など、中国の多くの地域でトラック運転手が一斉ストライキを敢行しているそうです。

一斉ストを実施した目的は、当局による罰金徴収の多さや、通行料金、燃料費の高騰などへの抗議、政府と企業が結託していることへの不服申し立て、労働条件改善の要求などがあるといいます。

中国ではトラック運転手の多くが過積載しなければ赤字に陥ってしまう状況にあるにもかかわらず、交通警察や行政の道路管理部門は厳しい取り締まりを行っています。しかし、運転士たちには何の社会的保障もありません。

ストを始めたのは8日。トラック運転士たちは主要な国道や高速道路、パーキングなどに集まって全国のトラック3000万台に対してストへの参加を呼び掛けています。

中国政府はストに関する情報を封鎖。海外メディアやネット上の関連報道を排除するなどの対応を取っています。

さて、中国の監視システムが、テクノロジーの発展によって大きく進歩していることは、近年、メディアでも報道されるようになりました。中国の監視社会を支えるシステムについて、次の3つを取り上げたいです。

まず一つ目のシステムは、「信用中国(クレジット・チャイナ)」です。習近平政権が、百度(バイドゥ)の技術協力を得て、2015年に稼働を開始しました。


同システムは、個人情報に基づき、利用者がどれほど「信用」できるかを数値化しています。今月1日には、航空機や鉄道の利用を拒否された計169人のブラックリストを公開。一方で、信用が高ければ、中国当局から表彰される仕組みとなっています。

このシステムは、監視というネガティブな側面よりも、中国政府にとって望ましい人民をつくり出す方向に主眼を置いているのが特徴的です。

中国では、そうした信用力で人々をコントロールする考え方が広まっています。

その象徴が、アリババの関連会社である「芝麻信用」。同社がつくる信用度の指標と他社のサービスを連結することで、例えば、信用度が高ければ、優先的に予約できたり、金額の面で優遇されたりするサービスが始まっています。

二つ目は、「天網(スカイネット)」



これは、2012年に北京市から本格導入されたシステムであり、AIの監視カメラと犯罪者のデータをリンクさせ、「大衆監視」を効率的にしたものです。13億人の中から1人を特定するのに、約3秒しかかからないといいます。

中国の都市部には、2000万台を超える監視カメラが設置されているとされ、2020年までに、そのカバーエリアが全土に拡大されるとしています。

天網の監視画面

さらに香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、このシステムが、マレーシアの警察に提供されたと報じられており、監視網は、中国だけでなく、世界にまで広がりつつあるといいます。

三つ目は、インターネットを監視する「金盾(いわゆるグレートファイアウォール)」

中国は1993年に、情報化・電子政府化を目指す戦略を策定し、その中に「公安の情報化」を盛り込みました。このシステム開発には、多くの多国籍企業が協力。検索ワードやメールの送受信、人権活動、反政府活動などを「検閲」し、ネットのアクセスの自由を厳しく制限しています。


昨年、「くまのプーさん」が、習氏に似ているとの理由からネットで表示されなくなった騒動は記憶に新しいでしょう。当然、オンラインにおける自由度は、「世界最悪」と評価されています。

中国は、こうした"三種の神器"とも言える監視システムを駆使して、人民をコントロールしています。興味深いのは、一部のシステムは、海外に輸出されたり、多国籍企業が協力したりしていることです。

つまり、監視システムは国境を越え、世界に影響を与えており、日本としても対岸の火事ではないと言えます。

さて、これらの監視システムによる過度な管理社会は、ジョージ・オーエルが描いた"1984"のようでもあります。

ジョージ・オーウェルの"1984"の初版本の表紙

このような厳重な監視をしなければならない、中国は将来どうなるのでしょうか。テクノロジーがあまり発達していなかった19世紀あたりまでに近代化を図った先進国は、自国内ではある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現しました。たたじ、植民地においてはこれらは、守られていませんでした。

しかし、第二次世界大戦後は、先進国は植民地を手放さざるを得なくなり、手放した後は国内でさらに近代化をおしすすめ現在に至っています。

しかし、中国はこれを実行しないまま、経済的にある程度成長し、最新のテクノロジーを用いて本格的な監視社会に突入しようとしています。

先進国が他国と比較して、富を築けたのは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現したため、一部の富裕層だけではなく、数多くの中間層が社会活動を活発化させ、それが経済にも良い影響を及ばしたためです。

先進国の富は植民地経営でさらに増えたなどという人もいますが、これも仔細に調べて見れば、そうではないことがわかります。植民地経営は、植民地となる国々にはそもそも富があまりないし、持ち出しもかなり多いのです。

しかし、中国はこのことを忘れています。このままでは、多数の中間層が輩出することなく、一対一路などで大失敗をして、中国社会はいずれ勢いを失うことでしょう。

そうして、いずれ中進国の罠にはまり、経済的にも発展せず、図体が大きいだけの、アジアの凡庸な独裁国家と成り果てることでしょう。

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2018年6月19日火曜日

安倍首相&トランプ氏の“罠”にはまった正恩氏 トランプ氏「拉致解決拒否なら経済発展はない」―【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!


安倍首相

米朝首脳会談を受け、日本政府は「拉致問題」解決のための日朝首脳会談の実現に向けて動き出している。これに対し、北朝鮮の国営ラジオ「平壌放送」は「(拉致問題は)すでに解決された」「(日本は)稚拙かつ愚か」との論評を流すなど、いつもの揺さぶりをかけてきた。ただ、水面下では、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮の関係者が、安倍晋三政権への接触を図ってきているという。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情報に迫った。  

 「私は北朝鮮にダマされない」「(米朝首脳会談で、ドナルド・トランプ大統領が、正恩氏に拉致問題を提起した)次は私の番だ」「日本が北朝鮮と直接(日朝首脳会談で)向き合い、拉致問題を解決していく」

 安倍晋三首相は14日、首相官邸で、拉致被害者家族に、断固たる決意をこう表明した。

 さらに、安倍首相は16日、読売テレビ系「ウェークアップ!ぷらす」に生出演し、「(拉致問題は)すべての拉致被害者を日本に帰国させたとき、初めて解決する」「拉致問題が解決しなければ、経済支援は行わない」「正恩氏が、大きな決断をすることが求められる」と断言した。

 いまが拉致被害者全員奪還の最大のチャンスだ。

 驚かないでいただきたい。米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている。

 旧知の米情報当局関係者は「すべては、安倍首相とトランプ氏が綿密に仕組んだ罠(わな)だ。正恩氏は完全にはまった。逃げられない」といい、続けた。

 「米朝首脳会談の席上、トランプ氏は『戦争か、非核化か』と決断を迫り、『完全非核化すれば、北朝鮮に素晴らしい経済発展がある』とバラ色のビデオを見せた。正恩氏は大喜びだった。そのうえで『完全非核化後、経済制裁は解く。だが、米国は1セントもカネは出さない。中国や韓国もほぼ同じだ。頼れるのは日本だけだ。拉致問題を解決すれば安倍首相は応じる。解決拒否なら経済発展はない。いま決めろ!』とやった。正恩氏は震えながら『(安倍首相と)会いたい』といった」

 米朝首脳会談後の夜、トランプ氏は安倍首相に次のように電話している。

 「今後は非核化と同時に、拉致問題を交渉して進めていかなければならない。シンゾー、ビッグ・プレーヤーとして関わってほしい」「100%、シンゾーを信頼している」

 トランプ氏の勝利宣言ではないか!

 現時点で、官邸が検討している日朝首脳会談の候補は以下の3つだ。

 (1)8月中に、安倍首相が電撃訪朝し、平壌(ピョンヤン)で開催する。

 (2)9月11~13日に、ロシア極東ウラジオストクで国際会議「東方経済フォーラム」が開かれる。ウラジーミル・プーチン大統領が、正恩氏を招待し、フォーラムの合間に安倍首相と会談する。

 (3)9月中~下旬、米ニューヨークでの国連総会に合わせて設定する。

 衝撃情報がある。水面下で、北朝鮮はとんでもない行動に出ている。以下、日米情報当局から入手したものだ。

 「米朝首脳会談から帰国後、正恩氏は幹部らに『日朝首脳会談の早期実現』を命令した。幹部らは『このままでは、正恩氏と北朝鮮のメンツが立たない』と頭を抱え、日本国内の北朝鮮協力者に『正恩氏礼賛、安倍潰しの世論工作をやれ!』と秘密指令を出した」

 「首相官邸や自民党の周辺に、北朝鮮関係者とされる人々が秘密接触している。彼らは『(拉致被害者を帰したら)安倍首相は本当に北朝鮮を支援するのか。信用していいのか』『拉致被害者を帰して、日本で激しい北朝鮮バッシングが起きたら、抑えられるのか』と泣きついている」

 日本はこのチャンスを絶対に逃してはならない。何度でもいう。拉致被害者全員の帰国は日本人全員の悲願だ。日本の主権がかかっている。

 だが、問題は左派野党の方々だ。

 政府・与党が「国会会期の1カ月延長」を申し入れたら、断固拒否したのだ。

 はぁ? 能天気もいい加減にしろ! 現状が分かっているのか。ゴールデンウイーク前後には職場放棄の「18連休」で、国民からは「税金ドロボウ!」と批判された。反省すらない。あきれてものが言えない。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!

この記事の冒頭の記事で、"米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている"というのは間違いないでしょう。

これは、トランプ大統領が意図的にそのように仕向けたのだと思います。何しろ、米国は北朝鮮に長年にわたって騙され続けてきたという経緯があります。

その米国がまた北朝鮮に援助などの面で直接関われば、また同じことを繰り返す可能性が大きいです。だからこそ、トランプ大統領は援助の部分は安倍総理に任せたのでしょう。

実際安倍総理なら、かなり前から北朝鮮と交渉してきたという経緯があります。北朝鮮との交渉ということでは、各国首脳の中では最も経験のあるうちの一人であることは間違いありません。

長年北と交渉をしてきた経験のある安倍総理

まさに、日本が北への支援にあたるということになれば、拉致問題の解決に関して北に譲ることはないでしょうし、拉致問題は、核の完全放棄に対する正確なリトマス試験紙なる可能性が高いです。

拉致問題を積極的に解決しようとしない北が、核の完全放棄だけを積極的にするなどということは考えにくいです。

このブログでは、米朝首脳会談後すみやかに、中朝首脳会談が開催されるか否かが、リスマス試験紙になるのではないかという見方をしていましたが、それよりも、拉致問題のほうがより正確なものになることでしょう。

実際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が19日、空路で北京に到着し、2日間にわたる訪中日程を開始しています。中国の習近平国家主席は金氏の滞在中、3月と5月に続き3度目となる首脳会談を実施。朝鮮半島の非核化や平和体制構築を巡る米朝間での協議本格化を見据え、中国の立場を伝え、積極的に関与する姿勢を強調する構えのようです。

6月12日の米朝首脳会談で北朝鮮は完全な非核化を約束しました。ただ米側は対北朝鮮制裁解除は完全非核化実現後になるとの立場で、非核化の行動ごとに北朝鮮が見返りを得る「段階的措置」を求める北朝鮮側の主張とは隔たりがあります。

この隔たりを埋めなおかつ、拉致問題を解決しなければ、日本は北朝鮮を支援することはありません。というより、日本の国民感情を考慮すればそのようなことはできないでしょう。



日本だけが、拉致問題を北朝鮮に迫っても、日本は北朝鮮に憲法の制約上軍事オプションを用いることは難しいので、たとえ援助をするという約束をしても、北が拉致問題解決に応じることはなかなかないと考えられますが、同時に米国の強大な軍事力を背景にすれば、話は違ってきます。

拉致問題を解決しなければ、日米による制裁はさらに強化され、それても北が応じなければ、次の段階では、機雷封鎖や一部爆撃をして、北朝鮮を完璧に孤立させることもできます。最後の段階では米国が軍事オプションを用いることになります。その時は、金正恩がこの世から姿を消すことになります。

これだと、北朝鮮は結局日本の経済支援を受け入れざるをない状況になります。

現在、トランプ政権は中国と貿易戦争を行っています。これに関しても、米国だけではなく、日本も絡めばかなりのことができるはずです。

いずれにせよ、トランプ大統領としては日米の協力のもとに北を早い段階で屈服させ、中国に対してさらに激しい締め付けを行い、いずれ屈服させたいと考えていることでしょう。


トランプ大統領は15日に、中国からの輸入品500億ドル相当への25%の追加関税措置を発表したばかりで、その際、中国が報復措置を講じた場合は追加関税を課すと述べていた。中国は直ちに報復措置を発表しました。

トランプ米大統領は18日、中国が発表済みの報復措置を実施すれば、同国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)相当に追加関税を適用すると警告した。中国側は直ちに対抗する姿勢を打ち出し、このまま行けば米中貿易摩擦の一段の激化は必至の様相です。

この貿易戦争、以前もこのブログでも掲載したように、中国には全く勝ち目がありません。この貿易戦争、いずれかの段階化で日米が協力して、中国に対する制裁という形にもっていけば、中国はかなり窮することでしょう。

中国も、北朝鮮も、まともに先進国などと貿易をしたいのなら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化することを迫られることになります。

しかし、これを実行するとすれば、両国とも現体制は崩壊するしかなくなります。

その日が来るのは案外近いかもしれません。

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2018年6月18日月曜日

活断層集中、浅い直下型…大阪北部地震に専門家「いつ起きてもおかしくなかった」―【私の論評】市場で国債が品薄の現在は震災対応長期国債を大量に発行し、耐震対策をしっかりすべき時(゚д゚)!

活断層集中、浅い直下型…大阪北部地震に専門家「いつ起きてもおかしくなかった」

倒壊した大阪府高槻市立寿栄小の壁=18日午前10時56分

 18日朝に大阪府北部で震度6弱を観測した地震は、浅い地下で起きた「直下型」の地震だ。周辺には活断層が集中し、専門家は「いつ大きな地震が起きてもおかしくなかった」と口をそろえる。歴史時代に大地震が起きた活断層や平成7年の阪神大震災との関係、さらに大きな地震が起きる危険を指摘する意見も出ている。

 震源付近には大阪府内を南北に走る断層帯や、兵庫県から大阪府へ東西に走る断層帯が集まる。

 気象庁は、安土桃山時代の1596年にマグニチュード(M)7・5の「慶長伏見地震」が起きたことで知られる「有馬-高槻断層帯」が関与する可能性を指摘する。データ解析からは、今回は断層が上下にずれる「逆断層」の可能性が考えられる。有馬-高槻断層帯は水平方向にずれる「横ずれ」の傾向が高いが、上下のずれも含まれることがあるという。

 地殻のひずみを研究する西村卓也京都大准教授(測地学)は、阪神大震災を起こした「六甲・淡路島断層帯」の東端で起きた可能性を指摘。「95年の地震によって周辺にひずみがたまり、それによって起きた余震かもしれない」と話す。

 また、有馬-高槻断層帯は、近年の観測で地下にひずみが集中していると分かっていて、いつ地震が起きてもおかしくない場所という。

今回の地震の震源地と断層帯

 活断層が専門の鈴木康弘名古屋大教授(変動地形学)も、有馬-高槻断層帯の関与を疑う。「震源が浅かったので局地的に強く揺れたのだろう。阪神大震災からは20年以上経過しているが、影響は残っていたのかもしれない」とする。

 大阪府茨木市に住む岡田篤正京都大名誉教授(変動地形学)は「いきなり地震が起きて食器が飛び出して壊れた。直下型で、すぐ近くで起こったと分かった」と語る。

 岡田名誉教授によると、大阪北部では小さい地震は起こっていたが「阪神大震災以来の大きな揺れだった」という。有馬-高槻断層帯が部分的にずれた可能性があるとみている。

 大阪市の真下を南北に走る「上町断層帯」が関係しているかもしれないと分析するのは、遠田晋次東北大教授(地震地質学)。活断層では繰り返し地震が起きるが、上町断層帯では1万年以上活動しておらず、危険な活断層として注目され、調査や研究が進んでいるという。上町断層帯が地下で東に傾斜し、震源地付近につながっている可能性もあるとしている。

【私の論評】市場で国債が品薄の現在は震災対応長期国債を大量に発行し、耐震対策をしっかりすべき時(゚д゚)!

地震に関しては、私は専門家ではないので、この記事の冒頭の記事に何も付け足すことや、解説することもありません。

私としては、これに対する備えてについて掲載したいと思います。備えといっても、地震の予知とか、耐震に関する事柄、地震が起こった場合の退避方法などについても専門家ではないので、このあたりは、他のニュースソースにあたっていただきたいと思います。

それにしても、これだけ危険が目の前にあるということがはっきりわかっているというのなら、震災対応国債を大量発行して耐震対策してリスクに備えるべきでしょう。現状は、ゼロ、マイナス金利であり、なおかつ国債が品不足な状況ではなおさらです。

実際最近の、債券市場では、長期金利の代表的な指標になる国債の取り引きが成立しない日が相次いでいます。日銀が、大規模な金融緩和の一環として、大量の国債を買い入れた結果、いわば品薄になっているためで、専門家からは市場の機能の低下に懸念の声も上がっています。

国内の債券市場では、今月11日と13日に長期金利の代表的な指標になる償還までの期間が10年の国債の売買が一日中成立せず、値がつきませんでした。

国債の取り引きを仲介する「日本相互証券」によりますと、取り引きが成立しない日は、去年は1年間で2日でしたが、ことしはすでに5日と2倍以上に増えています。

これは、日銀が5年前から続けている大規模緩和の一環で大量の国債を買い入れてきた結果、市場で取り引きされる国債が大きく減っていわば品薄になっているためです。

今の金融緩和策は当面続く見通しで、取り引きが成立しない日は今後も増えるとみられています。

専門家からは「長期金利は国の財政の信用力を見るうえでも重要な指標で、取り引きが低調になると、財政悪化に対する市場の懸念が見逃されるリスクも出てくる」として、市場の機能の低下に懸念の声も出ています。まさに、現状は、地震の復興などとは別に国債を大量に刷り増すべきときなのです。

私は、経済の専門家ではないのですが、以上のようなことは専門家ではない私でも十分に理解できます。現在は、国債を大量に発行して将来投資(震災対策など)をすすべきなのです。これは、別に高度な経済な知識がなくても十分に理解できます。

しかし、こんなことを言うと赤字国債発行は絶対駄目とか、国債は将来世代へつけを回すことになるなどという、とんでも理論を言い出す馬鹿者共が大勢湧いてくるので困ってしまいます。

挙句の果てに、震災対応は税金で賄うべきなどという、経済的には明らかに間違いであることを平気で語る財務官僚、政治家、マスコミ、いわゆる経済専門家まででてきそうで本当に頭が痛いです。そうして、そのようなことは過去に事例があります。

これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
震災7年でも徴収される「復興増税」のおかしさに気づいてますか―【私の論評】公文書書き換え以前にも、復興税、消費税の目的税化で嘘をついていた財務省(゚д゚)!

皆さんも皆さんの給与明細などをご覧になれば、復興税が未だに徴収されていることがわかると思います。この記事の中から、震災などの大規模な自然災害などの復興には、増税ではなく国債などを発行すべきであるその理由を掲載した部分を引用します。
「経済理論では、数百年に一度レベルの震災に際しては、たとえば100年など超長期の復興債を発行すれば、経済に対する悪影響を最小限に抑えることができる。この手法を取らなかった日本経済は、大災害と増税というダブルパンチを受けてきたといえる」ということになるのは、最初からわかりきっているのに、(復興税が)導入され、しかもそれが未だに続いているということです。 
そもそも、地震などの大災害では、「ガレキなどの処分」とか「すぐに必要な仮設」等の費用と、「学校や橋、水道・電気など数十年以上も使うインフラ」の費用がかかりますが、これらのうちほとんどは、被災した世代だけではなく、その後の世代も使いその便益を享受ものです。 
だから、復興を税で賄うなどのことをしてしまえば、被災した世代だけが負担をすることになってしまい、世代間で不公平が生じてしまいます。 
だからこそ、100年など超長期の復興債を発行したり、60年などの建設国債などを発行して、世代間の不公平をなくすのです。 
しかし、なぜか現在では、国債を発行することは将来世代につけをまわすことなどとされてしまい、国債を発行することが悪いことのように言われています。これは、全く逆の話です。そのようなことを言う人は、そもそも国債がなんのためにあるのか、全く理解していません。 
特に東日本大震災のような規模の大きな災害の場合は、古今東西どこでも復興を税で賄うなどという話は聴いたことがありません。日本の過去の関東大震災のときもそうですし、諸外国でも全く例がありません。日本の復興税だけが、全く例をみない特異な事例です。
この異常な復興税に賛同した馬鹿な経済学者どものリストのリンクを以下に掲載します。


リストのトップに掲載されている伊藤 隆敏東京大学名誉教授

このリストをみて驚くのは、いわゆる東大を頂点とする、日本の主流派の経済学者のリストと重なるということです。

このリストは、ほとんどそのまま、8%の消費税増税に賛同した者と重なります。彼らは、デフレから完璧に抜けきっていない状態で消費税増税をしても日本経済への影響は軽微としていました。その彼らだからこそ、まともな経済理論など無視して、復興税にも賛同するというとんでもないことをしでかしたのです。

これについて、現在の官邸はそこそこ理解しているようではありますが、安倍総理以降の総理大臣候補と目される人々はほとんど理解していないようで絶望的です。

かといって、野党の連中は、かつて民主党の議員であった、馬淵氏や金子洋一氏などは例外中の例外として、全く経済のことには疎く、無論、税金や国債のことなど誰一人知らないといっても良いくらいです。

少なくとも、政治家は難しいマクロ経済理論など理解しなくても、少なくとも税金とか国債のその基本や基礎は理解すべきと思います。そんなこともしていないので、経済に関しては常識も働かないのだと思います。

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2018年6月17日日曜日

【田村秀男のお金は知っている】国連制裁ルールを守れ 強欲な対北朝鮮投資家に警告せよ―【私の論評】無制限の対北投資は、北を小中国にするという結果を招くことに(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】国連制裁ルールを守れ 強欲な対北朝鮮投資家に警告せよ

 「今や世界全体はお前がバカだと知ることになったぞ」-。シンガポール在住の著名投資家、ジム・ロジャース氏は12日、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が握手するや、ただちに日本の市民団体「アジア調査機構」の加藤健さんに対して、子供じみた電子メールを送り付けてきた。(夕刊フジ)

アジア調査機構の加藤健代表

 加藤さんは長年にわたって対北朝鮮国連制裁破りを調べ、各国政府や議会、国連に告発活動を続けてきた。対北投資を推奨するロジャース氏については、国連安保理、米財務省、さらに米上下院議員百数十人に不当だと訴えた。加藤さんは本人にも直接、警告した。

 ロジャース氏はかなりのプレッシャーを感じていたようだ。米朝首脳が「非核化で合意」したなら、今後は国際社会の対北経済制裁が緩和され、西側からの対北投資のチャンスになる。どうだ、俺の投資判断は正しい、とうれしさ爆発というわけだ。

ジム・ロジャーズ 写真はブログ管理人 挿入

 軍事国家北朝鮮の国民生活は犠牲にされ、インフラ、産業設備も老朽化が激しい。しかし、戦前に日本の朝鮮総督府が調べたデータによると、北朝鮮の鉱物資源は極めて豊富である。金、ウランなど希少金属にも恵まれている。それに着目した有象無象の投資家や企業が対北投資のチャンスを狙ってきた。

 ロジャース氏の他にもっと「大物」の仕掛け人が西側にいる。最近は鳴りを潜めているが、英国の投資家、コリン・マクアスキル氏が代表例だ。英海軍情報将校上がりの同氏は1970年代から北朝鮮産の金塊をロンドンで商い、87年には対外債務不履行を引き起こした北朝鮮の代理人となって西側民間銀行と交渉した。2006年からは北朝鮮の隠し口座のあるマカオの銀行BDAを対象とする米国の金融制裁解除に向けマカオとワシントンの当局と交渉、解決した。

 08年にブッシュ政権(当時)が北に対するテロ支援国家指定解除に踏み切ると、大型の対北投資ファンドを準備したが、その後の情勢緊迫化とともに休眠に追い込まれた。昨年には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に接触を試みるなど、活動再開の様子だ。

 米欧系投資ファンドに対し、対北投資の主役の座を狙うのは韓国と中国だろう。中国は、地政学的利益の点からも北への開発投資での主導権に固執する。グラフは中国の対北投資と貿易の推移だが、投資面では12年をピークに急減している。金正恩氏が亡父、金正日(キム・ジョンイル)氏の権力を継承したのが11年末で、13年12月には中国資本の導入に熱心だった叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を粛清した。


 米朝首脳会談開催決定後、中国の習近平国家主席が停滞してきた対北投資の再活性化をめざすとの期待が中朝国境地帯に高まっている。遼寧省の丹東市の不動産価格はこの数カ月で2倍になったという。

 核・ミサイルばかりでなく、横田めぐみさんら拉致問題の全面解決を最優先すべき日本は毅然として、ムード先行の強欲な対北投資・貿易には、国連制裁ルール厳守を求めるべきだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】無制限の対北投資は、北を小中国にするという結果を招くことに(゚д゚)!

この記事の冒頭の田村氏の記事のように、このブログでも昨日無制限に北に投資をすることを懸念する記事を掲載しました。

その懸念とは、民間だろうが、日本政府のものであろうが、無制限に投資を続ければ、北は拉致問題はもとより、核廃棄やその他の約束を破る可能性があることです。

さらにその先にあるのは、民主化も、政治経済の分離も、法治国家化も不十分なまま、国家資本主義的に経済だけが肥大してしまうことです。

そうして、これは人口等の規模は違うものの、現在の中国のような体制です。まかり間違って、北がまともな体制をとらないまま、韓国なみの経済をもしくはそれを上回るような経済を身につければ、それはまさに小中国です。

これは、全く荒唐無稽な話ということもないと思います。半島の歴史を振り返ると、北朝鮮と、韓国が独立したばかりの頃は、北のほうが多く日本の産業基盤を引き継ついだ一方、韓国の当時の主要産業は農業であり、北のほうがGDPは大きかったということがあります。

韓国のほうが、北の経済を上回るようになったのは、1970年代からのことです。そうして、これは日韓基本条約による日本からの韓国への大規模な支援によるものが大きいです。さらに、北には鉱物資源がかなり豊富です。このようなことから、北が再び韓国の経済を上回るということはあり得ることです。

そうして、その小中国は現在の中国のようなことを実行する可能性もあります。

中国の場合は、広大な陸に囲まれていてまわりにたまたま蒙古や東トルキスタン、チベットなどの軍事的には強くない国々があったので、これらの国々の領内に侵攻しました。

北の場合は、北は中国に、南には韓国が控えており、西東は海です。そうなると、はやい時期から、海洋進出をする可能性があります。まずは、延坪(ヨンピョン)島砲撃事件で有名になった延坪島に侵攻するかもしれません。

延坪(ヨンピョン)島砲撃事件

その後は日本の南西諸島や、台湾などにも目をつけるかもしれません。そうすると、日本は小中国による第二の尖閣列島事件に巻き込まれるかもしれません。また、台湾本島は無理にしても、台湾の領海内には金門砲戦でも有名になった金門島などの島々もあります。

ただし、このようなことが起こったとしても、無論来年や再来年ということではなく、10年後かもっと先ということになるかもしれません。

その頃には、現在の中国は、米国からの貿易戦争や、国内経済の低迷で、かなり力を落としていて、それでも台湾は中国の一部と主張していても、結局何もできず、北の好き放題にされるということもあり得ます。

北朝鮮に無制限に民間企業などが、投資を実施するということにでもなれば、いずれこのようなことになりかねないのです。

とにかく、何が何でも半島に小中国ができることは、避けなければなりません。これを防ぐためには、北が経済成長をしたいというのなら、昨日も述べたように、まずは北が自身で民主化、経済と政治の分離、法治国家化を実施することにより、中間層の社会活動を活発化させる必要があります。

そこである程度経済を自力で大きくすることができれば、海外からの北への投資もある程度自由にできるようにするというような措置が必要です。

しかし、そのようなことをすれば、北の社会は、現在の金王朝体制とは相容れない社会となります。そうなれば、金正恩体制は崩壊せざるを得ません。国民が許せば、イギリス王朝のような形で残る可能性もありますが、歴史の短い金王朝にはそれは困難であると考えられます。おそらくは、ソ連への亡命ということにかもしれません。

現在は、19世紀ではなく、21世紀なのですから、これは当然といえば当然なのかもしれません。

とにかく、現在の金王朝体制は、金正恩が米国側につき、米国の対中国戦略の駒として北が動いている限りは暫くは持ちこたえることでしょう。米国から見れば、毒を持って毒を制するということです。

金王朝を象徴する金日成と金正日の巨大像

それにしてもそのまま続くことはなく、数十年のスパンでみれば、必ず崩壊することになります。

現在の米国においては、過去の米国の対中国戦略は間違いであったことが明らかになっています。過去の戦略の前提は、中国が経済発展さえすれば、いずれ米国や他の先進国なみに、民主化、政治と経済の分離、法治国家化するであろうというものでした。しかし、それは、数十年の年月を経ても成就しませんでした。

そうして、それは今日ではすっかり間違いであったことが明らかになりました。現在の中国は、南シナ海を実効支配したり、一対一路で中国の価値観を世界におしつけようとしたりで、米国の価値観と真っ向から対決するようになりました。

こうした苦い経験を持っている米国政府は、北朝鮮が小中国になることは絶対に許容しないでしょう。比較的はやい段階で、北にある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を迫ることになるでしょう。

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2018年6月16日土曜日

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日米、次の一手は“中国封じ” 台湾&マレーシアと連携、河添恵子氏「中国は四面楚歌になりつつある」

マレーシアのマハティール首相(左)と安倍首相(右)

 世界が注目した米朝首脳会談(12日)と同じ日、日米両国が痛烈な「中国の牽制(けんせい)」姿勢を誇示していた。米国は、台湾の大使館に相当する「米国在台湾協会」(AIT)の新事務所をオープンし、安倍晋三首相は「親中路線」を見直したマレーシアのマハティール・モハマド首相と会談したのだ。これは偶然ではない。専門家は、北朝鮮を連携して取り込むだけでなく、台湾やマレーシアへの関与を強め、世界の覇権を狙う中国と対峙(たいじ)する「日米の意思表示」と分析する。

 「21世紀の強固な米台パートナーシップの象徴だ」

 マリー・ロイス米国務次官補(教育・文化担当)は12日、台北市内で開かれたAIT台北事務所の新庁舎落成式で、こう語った。
AIT台北事務所の新庁舎落成式 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 式には、台湾の蔡英文総統と、首相にあたる頼清徳行政院長が顔をそろえ、ジェームズ・モリアーティAIT理事長と固い握手を交わした。

 蔡氏は「(台湾は)自由で開放的な民主国家として、共通の価値観と利益を守るよう協力する義務がある」と述べ、米国との「価値観同盟」をアピールし、「1つの中国」原則への対抗姿勢を打ち出した。

 これに対し、中国はロイス氏が出席したことに反発した。中国外務省の耿爽副報道局長は「米国に間違ったやり方を正すよう促している」と記者会見で語ったが、傲慢な内政干渉ではないのか。

 米国は最近、覇権主義の中国を「脅威の本丸」とみなし、貿易問題で対立するとともに、南シナ海での「航行の自由作戦」を展開している。今回のAITの新庁舎整備は「台湾重視政策」の一環といえる。

 トランプ政権は以前から、台湾との関係強化を進めてきた。

 自主規制してきた米台高官(一定の地位以上)の往来を促す「台湾旅行法」を3月に成立させた。4月には、超タカ派のジョン・ボルトン氏を大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に起用した。ボルトン氏は昨年1月、米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿論文で「台湾への米軍駐留」を提言している。

 背景には、中国が台湾周辺や南シナ海で、示威的な軍事行動を活発化させ、「台湾統一」の野心を隠さないことがある。これを許せば、日本をはじめ、世界のシーレーンを、共産党独裁の中国が支配することになる。

 中国軍は4月にも南シナ海で、空母「遼寧」を含む艦艇や航空機による「史上最大規模」の演習を実施したほか、台湾海峡では、陸軍航空隊所属の攻撃ヘリ部隊が実弾射撃訓練を強行した。

 台湾は、米中双方の利害がぶつかる「発火点」として、戦略的重要性が高まっている。

 元航空自衛隊空将で、軍事評論家の佐藤守氏は、米朝首脳会談と新庁舎落成式が同じ日に重なったことについて「中国への牽制になっていることは間違いない」と指摘し、続けた。

 「AITの新庁舎整備は、米国の『台湾は死守する』というシグナルだ。台湾周辺と南シナ海を中国に制圧されれば、自由主義陣営が危ない。トランプ政権の戦略として、『反中国』の北朝鮮を取り込むと同時に、台湾を(自由主義陣営の)前進基地にしようとしているのではないか」

 わが日本も、米国と連携して「中国包囲網」の形成に動いている。

 安倍首相とマハティール首相の首脳会談では、「北朝鮮の非核化」だけでなく、南シナ海の岩礁を軍事拠点化している中国を念頭に、「海洋安全保障分野でも連携する方針」で一致した。

 共同記者発表で、安倍首相は「インド太平洋地域を平和と繁栄のための国際公共財としていくことが重要だ」と強調し、マハティール氏は「南シナ海、マラッカ海峡を含む公海を自由で開かれたものにしなければならない」と足並みをそろえた。

 マハティール氏といえば、2003年までの22年間、マレーシア首相を務め、日本の経済成長を手本にする「ルックイースト(東方)政策」を提唱した。野党連合を率いて今年の下院選を制し、92歳の高齢ながら首相に復帰した。復活の一因に、中国の対外膨張策「一帯一路」のプロジェクトにのめり込む、ナジブ・ラザク前政権への危機感があったという。

 日米と台湾、マレーシアの連携が、中国への対抗軸となるのか。

 中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏は「トランプ政権は、12日の米朝首脳会談をもって、北朝鮮問題に1つの区切りをつけ、『中国との対峙』にかじを切ったといえる。台湾のAIT新庁舎も、マハティール氏の訪日も、すべてが連動し、自由主義諸国が中国と対決する新時代の幕開けを告げている。中国は四面楚歌(そか)になりつつあり、今後の火種は、朝鮮半島から台湾に移るだろう」と話している。
【私の論評】日本は経済により南北全体の生殺与奪の権を握ることができる(゚д゚)!
北朝鮮問題がある程度収束すれば、次は台湾を巡って米中対立があらわになるであろうことは、このブログでも以前から主張してきたことです。
北朝鮮問題の根底には、米中対立があり、米朝首脳会談はその前哨戦に過ぎないのです。米朝首脳会談の大きな目的一つは、今後金正恩が米国側につくか、中国側につくのか旗幟を鮮明にさせることだったのです。
トランプ大統領は、米朝首脳会談において北が、米国側につくというのなら、核廃棄と人権問題(拉致問題等)の解決などを条件に、北の現体制の存続を認めるが、もし中国側につくというなら、北の現体制を認めないということで金正恩に迫ったのです。
そうして、金正恩は中国側ではなく、米国側につくとトランプ大統領に約束したのです。そうして、その約束は、今後金正恩がすみやかに米朝首脳会談を開催しないこと、さらに核廃棄と人権問題の解決などで履行されているかどうかが検証されるのです。
トランプ大統領として、この約束が履行されるかどうかを検証する過程と同時進行で、対中国戦略をさらに強化していく腹です。
さて、このようなことは過去にもありました。
このトランプの戦略は70年代のキッシンジャーのものと似ています。当時は中国をソ連との対決に利用しました。今度は北朝鮮を米側に引き入れ中国共産党と対決するのです。

70年代のキッシンジャー(右)  周恩来(左)と食事をしている

そうして、米の中国包囲網は安倍首相が6年前の首相就任翌日12月27日に発表した戦略掛『安全保障のダイヤモンドhttps://www.project-syndicate.org/commentary/a-strategic-alliance-for-japan-and-india-by-shinzo-abe … と合致します。この偶然は歴史的必然なのかもしれません。

ただし、この戦略は注意を要します。米国は中国を利用したのですが、確かにソ連は崩壊してこの戦略は大成功だったのがですが、これには中国の増長という副作用を招いてしまいました。今や米国は、軒を貸して母屋をとられそうな状況になり、現在中国が海洋進出を強化して、南シナ海を我が物として米国に対抗しています。

トランプとしては、北朝鮮問題ではこのようなことは避けたいと考えたのでしょう。だからこそ、北の援助は米国が直接手がけるのではなく、日本と韓国に任せたのでしょう。特に、安倍総理は北の実情を知り抜いています。

日本と韓国の経済を比較すると、韓国の経済は日本の東京都と同程度です。であれば、北への援助のほとんどは日本によるものになるでしょう。

日本は最近北への援助の方式等の見解公表しています。

  「北朝鮮に現金を直接与えることはないはず。経済協力プロジェクト形式を取って支援することになるだろう」

最近、日本政府の関係者が記者に述べた言葉です。日朝交渉に関連し、北朝鮮は植民地支配および過去の清算による経済支援、すなわち現金支援を期待しているのですが、日本の構想は違うということです。実際、日本経済新聞は14日、日本政府の「3段階対北朝鮮支援」構想を紹介しました。
第1段階は国際原子力機関(IAEA)の核査察に対する初期費用の支援です。北朝鮮非核化の最初の段階といえるIAEAの査察に投入される人員と資機材の調達に必要な費用を日本政府が負担するという計画です。
菅義偉官房長官は13日の定例記者会見で「IAEAが北朝鮮の検証活動を再開する際は初期費用を支援する用意がある」と明らかにしました。2007年にIAEAが北朝鮮寧辺(ヨンビョン)にある核施設を査察した際、日本政府は50万ドル(当時約5700万円)の費用を支出しています。
第2段階は国際機関を通じた人道的支援です。これはコメや医薬品の提供を意味するもので、直接的な現金支援は含まれていません。2014年に拉致被害者の再調査を約束した「ストックホルム合意」では「適切な時期に北朝鮮に対する人道的支援を実施することを検討する」という内容が盛り込まれています。
菅官房長官は「引き続き北朝鮮に『ストックホルム合意』の履行を求めていく」と明らかにしていますが、北朝鮮は2016年に「ストックホルム合意」破棄を宣言し、拉致被害者に対する調査も中断した状態です。日本側は人道的支援をするには拉致被害者の帰国など目に見える成果がなければいけないという立場です。
第3段階はインフラ整備など経済協力です。2002年の日朝平壌(ピョンヤン)宣言では、国交正常化後に無償資金協力、国際協力銀行を通じた融資などの実施に言及しました。しかし今回は有無償借款のような現金支援方式でなく、経済協力を通じた投資形態で進める可能性が高いです。
安倍首相も11日、日本経済新聞社主催の国際交流会議「アジアの未来」に出席し、北朝鮮に対する投資形態の経済協力構想を明らかにしました。安倍首相は「北朝鮮には、手付かずの資源がある。勤勉に違いない豊富な労働力がある。北朝鮮が平和と法の支配と安定に向けた道へと踏み出すことの効果は、アジアを超越し、世界経済全体へ及ぶに違いない」と述べ、北朝鮮の非核化と経済協力を結びつけて述べました。

1965年の韓日国交正常化当時、日本は韓国政府に5億ドル(無償3億ドル、借款2億ドル)相当の経済支援をしました。したがって北朝鮮に現金支援でなく経済協力方式を選択する場合、北朝鮮の反発が予想される部分です。物価の変動などを勘案すると、北朝鮮に対する経済協力は1兆円を超えるという見方もあります。

日本政府が現金支援でない方式を考慮するのは国内の世論を勘案した選択でもあります。日本経済新聞は「巨額の資金拠出になれば、国内世論の理解も得なければならない」と分析しました。また「3段階目の経済協力のハードルは高い」と伝えました。

昨日のこのブログの記事では、北や韓国の経済援助に対して以下のような主張をしました。
日本が北に対して援助をするということになれば、韓国での失敗を反省して、援助にもさまざまな条件をつけるべきです。拉致問題の解決は絶対条件です。さらには、人権擁護に関しても、ある程度の基準を満たすようにさせるべきです。それと、いきなり巨大な額を一度に援助とするというのではなく、様子をみながら少しずつ援助し、約束を守らないなら、中止するというような方式をとるべきです。 
れと、韓国に対しては、援助にしても何にしても、目の前に北という協力なライバル現れて、慰安婦問題などでグズグズすれば、すべて北にかっさらわれてしまうという脅威を与えるべきです。 
また、北に援助をしてもなかなか約束など破らないなどのことがあれば、すぐに援助を打ち切り、韓国への援助を厚くするなどのことをすべきです。 
両方を拮抗させ、日本の国益にとって最も良くなるように、バランスをとって援助をしていくべきです。ただし、あまり長い間朝鮮半島にはかかわらないようすべきです。そもそも、ここしばらくは朝鮮半島には上で述べたような奇妙な状態が続くでしょうが、このような状態がいつまでも続くと考えるべきではありません。
まずは、日本が北に対して現金で援助することはないということは高く評価できるます。北に直接現金で援助した場合、北は密かにその現金で核開発を続ける危険があります。これは断じて避けなければなりません。

また、日本が様々な条件をつけて援助を始めるにしても、北朝鮮が約束を守らない場合はすぐにでも援助を中止する旨を最初から北朝鮮側に伝えて実行すべきです。

さらに、北朝鮮が約束を履行しているかどうかを監督するために、日本の監視団も受け入れさせるべきです。

これに加えて、上でも述べたように、韓国と北朝鮮を拮抗させ、日本にとって国益が最大限になるように管理しつつ、朝鮮半島への援助をすべきです。韓国も最近では経済は低迷し、雇用は最悪の状態です。韓国内では、通貨スワップなどを日本に求める声も大きくなっています。

一方、援助を外交カードとしてうまく立ち回れば、日本が半島全体に対して生殺与奪の権を握ることができるかもしれません。無論これは、米国の強大な軍事力を背景としてなりたつものです。だから、正確には日米が半島に対して生殺与奪の権を握るということです。

在韓米軍

しかし、深入りは禁物です。日本はもとより米国などの他国も、北が発展するとみて、民間企業が無制限に大規模な投資をするなどというようなことはやめるべきです。これは、しっかりと規制すべきです。

そんなことをすれば、民主化、経済の政治の分離、法治国家が不十分で潤沢な資金を手に入れ経済だけが発展した、小中国が半島生まれるだけです。中国と韓国に挟まれた小中国が、海洋進出などはじめたら、さらにアジアは緊張を強いられることになります。

北がさらに経済発展をすることを望むならば、すべての先進国がかつて歩んできたように、自力である程度の民主化と、法治国家化と政治と経済の分離を実行することにより、国内の中間層の活動を活発化させて経済を発展させるように仕向けるべきです。

それで、ある程度北の経済が良くなれば、その後は海外企業からの投資の規制も解くべきです。

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2018年6月15日金曜日

「在韓米軍撤退すれば日本が最前線」 安保パニックに陥った日本―【私の論評】日本は北と韓国を拮抗させ日本の国益を最大化せよ(゚д゚)!

「在韓米軍撤退すれば日本が最前線」 安保パニックに陥った日本

朝鮮日報日本語版

トランプ大統領は今年の3月にも在韓米軍の撤退について言及している

「ドナルド・トランプ米大統領が在韓米軍の撤退に言及したが、絶対に言ってはならないことだった。在韓米軍が撤退するということは韓国の軍事境界線が対馬海峡になるということで、日本の安全保障にとって計りしれない危機だ」(深谷隆司・元国家公安委員長)

 「(在韓米軍撤退の話を聞いて)目と耳を疑った。米国自ら将棋の駒を捨てたような行動だ」(香田洋二・元自衛艦隊司令官)

 トランプ米大統領が在韓米軍撤退の可能性に言及して以降、日本列島が「安保パニック」に陥っている。首相官邸、外務省、防衛省、それぞれが記者会見するたびに「在韓米軍が撤退すれば日本の安全保障にも影響が出るのではないか」との質問が相次ぎ、官房長官、外相、防衛相が「米国は今すぐ撤退すると言っているわけではない」と火消しに躍起になっている。

 菅義偉官房長官は14日の定例記者会見で「米国は現時点で在韓米軍の撤退・縮小を検討しているわけではない」として「韓米同盟に基づく抑止力が、北東アジアの安全保障に不可欠な役割を果たしている」と述べた。河野太郎外相は「韓米同盟と日米同盟はアジアの平和と安定を維持してきた『公共財』だ」と述べ、小野寺五典防衛相は「在韓米軍の縮小はあってはならない」と強調した。

 政界やメディア、官僚、安全保障専門家の間でも「韓米軍事演習の中止や在韓米軍の撤退はあってはならない」「中国と北朝鮮だけがホクホク顔だ」などという声が噴出している。

 日本経済新聞は「米朝会談の合意には、非核化のプロセスが北朝鮮ペースにはまりかねない三つのわながある」と指摘した。一つ目のわなは、米朝が非核化を段階的に進めるということを明言しなかった点だ。北朝鮮が非核化の措置に一つ着手するごとに、韓米日は「見返り」を支払わなければならない一方、北朝鮮は時間を稼ぐ上にカネももらえるというわけだ。二つ目のわなは、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は米国本土まで到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射を中止するとは言ったが、韓日を狙った短・中距離ミサイル1000基については一言も言及していない点だ。三つ目のわなは、米国が自国の利益だけを手にしたまま在韓米軍の縮小や撤退を実施した場合、北東アジアの勢力バランスが急激に中国側に傾きかねないという点だ。

 このような「安保パニック」の裏には「トランプ氏を信じすぎた」という自責の念もある。日本政府は今回の米朝首脳会談に合わせ「安倍首相の外交ブレーン」とされる谷内正太郎・国家安全保障局長をシンガポールに派遣した。朝日新聞は「谷内局長が米国の実務チームと接触した際『在韓米軍の話は出ないだろう』という話を聞いたため、日本政府が安心していた」と報じた。トランプ氏の口からどんな言葉が出てくるのか、日本も知らなかったというわけだ。

 これまで安倍首相は日本国民の前で「私とトランプ大統領は『ドナルド』『シンゾー』とファーストネームで呼び合う関係」「いつどんな話でもできる仲」と何度も強調してきた。しかし、いざ米朝首脳会談が近づくと、トランプ大統領は11月に行われる米国の中間選挙を意識してICBMの発射実験を中止させることに集中し、「(非核化の見返りである)北朝鮮への経済支援は韓国と日本がやるだろう」と韓日に請求書を突き付けた。今回の会談で、中国だけが今以上に強くなるとの分析も出ている。

米国の軍事力評価機関、グローバル・ファイヤーパワー(GFP)が発表した2018年の世界の軍事力ランキングで、日本は8位、中国は3位だったが、日本は中国に比べ人口は10分の1、兵力は9分の1、防衛予算は3分の1にすぎない。経済も既に中国に抜かれた。慶応大の渡辺靖教授は「今は北朝鮮について議論しているが、中長期的に見れば日本にとって問題の核心となるのは中国の存在」だとして「台湾と南シナ海での中国の振る舞いを考えると、(今回の米朝首脳会談によって)日本が中国と対峙(たいじ)する最前線の国になるか、日米同盟で今以上の負担を強いられる可能性がある」と指摘した。

【私の論評】日本は北と韓国を拮抗させ日本の国益を最大化せよ(゚д゚)!

今回の米朝会談ではっきりと分かったのは、米国が韓国を見捨てることであり、米韓合同演習も中止されて、在韓米軍も近いうちに撤退する可能性も出てきたことです。韓国政府や国民の反応が気になりますが、朝鮮日報では自国のことよりも日本を心配をしているようです。

在韓米軍

このように、米韓同盟が危機的状態にあるのに韓国のマスコミの動きは意外に小さな反応しかありません。米韓合同演習の中止は韓国にとっては、米朝会談よりも大きなニュースだと思うのですが、どうも韓国はそう受け止めていはいないようです。

米韓同盟はすでに空洞化しており、トランプ大統領は旗幟を鮮明にしない韓国を見捨てて、北朝鮮と手を組むつもりなのかもしれません。

このブログでも最近、トランプ大統領は金正恩が米対中国戦略の駒として動くつもりなら、北を存続させるだろうし、もしその気がないなら、制裁をさらに強化して北を自滅させるか、場合によって軍事オプションを使うこともあり得るだろうことを掲載しました。

そうして、米朝首脳会談においては、トランプ大統領は、そのことついて会談中に金正恩に対して因果を含めたであろうということを主張しました。さらに、トランプ大統領は、金正恩が、米朝首脳会談以降半年以内くらいに中朝会談が開催されれば、トランプ大統領は金正恩は米国の駒ではなく、中国の駒でいることを選択したとみなすであろうことも掲載ました。

まさに、今後すぐに中朝会談を開催するかしないかが、金正恩の踏み絵になるということを掲載しました。

すぐに中朝会談を開催すれば、金正恩はトランプに見限られるだろう

北朝鮮の外交は従来から、二つの大国をうまく操ってバランスをとるというスタイルでしたが、ソ連崩壊とともに中国一国に頼らざるを得なくなりました。それとともに北朝鮮は核とミサイル開発に全力を注いで、米国を挑発し続けてきました。ところが現実には、米国向けに核とミサイルを開発していると見せかけつつ、中国に対抗できる軍事力を身につけてきたという側面は否めません。

米国としては、北朝鮮が核とミサイルをほぼ手にした段階で、トランプが手を伸ばしてきたわけですが、中国にはバレないように金正恩とトランプは派手なプロレスを中国の前で演じてきました。北朝鮮は中国の鉄砲玉として振舞ってきたわけですが、このままでは米国に蹂躙されるとみせかけたのです。

金正恩は、米国に「どうか攻撃しないでください」とお願いするように会談を呼びかけました。これはトランプと金正恩の猿芝居であり、中国を騙すためのプロレスショーなのです。その状況は、現状も続いているのですが、そのようなことも知らず中国の習近平は今回の米朝会談で「よくやった」と喜んでいるに違いありません。なぜなら、金正恩はなんの具体的な約束も米国と結ばなかったからです。

しかし二人だけの秘密会談では、トランプと金正恩はがっちりと手を組んで、米国の対中包囲網に加わる事を合意したのでしょう。その為には米国は対北朝鮮への経済制裁を解除して、大規模な経済援助をしなければならないのですが、そのカネは韓国と日本に出させるつもりのようです。

中国の習近平はそのような動きを察知して見抜いているのでしょうか。中国は今頃その動きに気がついても、トランプと金正恩はすでにがっちりと手を組んでしまいました。中国が金正恩を何とかしようと思っても、殺してしまえば北朝鮮は大混乱して大量の難民が中国に押し寄せることになりかねません。

金正恩は、まさに中国と米国との間を綱渡りしているのです。中国に対抗できるのは世界の中では、現状では米国だけであり、米中との間の綱渡り外交で行くことを金正恩は決断したのでしょう。これからあらわになる米中冷戦体制の現実を目にして、金正恩はトランプに対中包囲網で協力をすることを約束したのです。金正恩は現在は冷戦においては、中国の勝ち目は全くないとみているのでしょう。


今回の米朝会談は、中国の一人勝ちと言う人もいますが、実際はそうではなく北朝鮮が米国に寝返ったと見れば、そうではないということが理解できます。韓国は韓国で米国から中国に寝返ったとも言えるような状況であり、実際に米国よりも中国の言いなりになっている部分があります。というより、どっちつかずで、米国からも中国からも信頼されていません。

このような状況から、トランプ大統領は、北朝鮮が対中包囲網に加入ることを引き換えに、日本からのカネを出させることを約束したのでしょう。無論、カネを出させる条件としては、核の完全放棄、拉致問題の完全解決を外せないことをしっかり伝えたのでしょう。

さらに南北統一についても言及する人もいますが、北朝鮮の核とミサイル廃棄と南北統一は別問題です。米国としては、本土に届き中東に渡る可能性がある核とミサイルは許せないわけです。日中を含めた、周辺諸国も北朝鮮の難民を望んでいません。

金正恩は、国の枠組みは変えたくはありません。金体制維持に最も邪魔なものは自由や人権です。南北統一で人の往来が始まれば政権が脅かされることになります。当面は、南北統一はないでしょう。平昌五輪で、北が南北統一を演出したのは単なる猿芝居に過ぎません。

そうなると、朝鮮半島は米国の駒となった北朝鮮と、中国の駒か米国の駒か良くわからない韓国が対峙するという奇妙な状況ができあがるわけです。北朝鮮が日本や韓国から資金援助を受けるということになれば、この奇妙な状態がしばらく続くことになるのでしょう。

日本が北に対して援助をするということになれば、韓国での失敗を反省して、援助にもさまざまな条件をつけるべきです。拉致問題の解決は絶対条件です。さらには、人権擁護に関しても、ある程度の基準を満たすようにさせるべきです。それと、いきなり巨大な額を一度に援助とするというのではなく、様子をみながら少しずつ援助し、約束を守らないなら、中止するというような方式をとるべきです。

それと、韓国に対しては、援助にしても何にしても、目の前に北という協力なライバル現れて、慰安婦問題などでグズグズすれば、すべて北にかっさらわれてしまうという脅威を与えるべきです。

また、北に援助をしてもなかなか約束など破らないなどのことがあれば、すぐに援助を打ち切り、韓国への援助を厚くするなどのことをすべきです。

両方を拮抗させ、日本の国益にとって最も良くなるように、バランスをとって援助をしていくべきです。ただし、あまり長い間朝鮮半島にはかかわらないようすべきです。そもそも、ここしばらくは朝鮮半島には上で述べたような奇妙な状態が続くでしょうが、このような状態がいつまでも続くと考えるべきではありません。

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2018年6月14日木曜日

日本に巣食う寄生虫を駆除する方法とは?『財務省を解体せよ!』で高橋洋一氏が指摘する「官僚とマスコミの利害関係」―【私の論評】財政政策の大失敗をリスクとみない恐るべき怠慢官庁財務省(゚д゚)!


高橋洋一・嘉悦大学教授の著書『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)
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高橋洋一・嘉悦大学教授の新作『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)は、題名からして剛速球だ。そしてそれはズドンと日本の本当の問題に気付いている人たちの心に響く。

 その昔、ある高名な評論家が、私に「日本を本当に支配しているのが誰かがわかった」とつぶやいたことがある。それは正確にいえば「誰」ではなく、組織であり、またそこに群がる人たちのことでもある。もちろんそれは財務省のことであった。

 最近の財務省のトップによるセクハラ疑惑とその辞任劇、そして理財局と近畿財務局という組織そのものが関与した文書改ざん問題、さらに今も懲りずに繰り返す「財政危機」というフェイク(嘘デタラメ)を利用した増税の宣伝工作。よく政治家の方が財務省よりも優位であり、財務省よりも政治家の責任が重く、財務省は悪くない、というデタラメな話がある。高橋氏の新著を読めば、財務省は歴代政権でさえも、消費増税や自分たちの政策を利用するひとつの道具でしかないことがよくわかるだろう。まさに財務省は日本国に巣食う最悪の寄生虫である。

 高橋氏によれば、財務省が増税を目指すのは自分達の利益になるからである。つまり予算編成権などでさらに権力をふるえる余地が生まれるからだ。この国民の血税を利用して、財務省官僚たちは、自らの虚飾に満ちた「権限」を強化していく。例えば、最近では、東京金融取引所のトップに旧大蔵省(現在の財務省)出身者が五代続いて就任する。完全なる「天下り」というか財務省の植民地である。しかもこの人物の経歴をみると日銀理事と金融庁幹部も歴任している。

東京金融取引所社長に木下信行氏 5代連続で大蔵OB

 90年代後半の大蔵省スキャンダルという不祥事で、当時の大蔵省は社会の批判を浴び、その権限から金融監督行政の権限を奪われ、それは金融庁となって財務省から「独立」した。また日本銀行も法律が改正され、これも政治つまりは財務省の権限から隔絶できるような地位を与えられた。しかし20年近く経過して金融庁、日本銀行ともに人事面を含めて財務省とのつながりは最強化され、再び植民地化している。

 ちなみに旧大蔵省、財務省ともにそこに務める人間の知的レベルをあまりにも世間は髙く評価しすぎである。偏差値や公務員試験での合格と、その後に官僚たちの行う行政のパフォーマンスはまったく因果関係はない。例えば財務省が主導する「財政危機」を理由にした緊縮増税路線が、日本を20年にも停滞させたのは自明である。まだこの単純な事実を理解できない人は、心の中に「小さな財務省」でも巣食っているのだろう。

■マスコミが財務省が擁護する理由とは?

 高橋氏の指摘にもあるが、日本のマスコミの「スクープ」のほとんどが官僚発のリークである。その意味で、マスコミと官僚たちは利害関係者である。特にいまのような時期では、「消費増税しても対策はばっちり」とか「消費増税しても景気はそんなに悪くならない」というマスコミと財務省のコラボが大展開中である。増税志向の政治家たち、とくにポスト安倍を狙う政治家たちもまたこのような増税脳とでもいうべきスタンスである。財政状況は、あくまでも民間の経済活動の結果でよくもわるくもなる。つまり我々が働くことで実現するのだ。財務省の目論見にしたがうのではない。この基本的なことさえも財務省は理解していない。その実例は高橋氏の著作に実に豊富だ。

 このような財務省の「おごり」をどうすべきか。高橋氏は長年、歳入庁を設置して、税金と年金など社会保険料の徴取を統合的に行う機関にすべきだと主張している。私も賛成だ。これにより国税庁という財務省の植民地であり、また税の調査権限という政治家さえも恐れる権力を財務省からとりあげることになる。ただし歳入庁には財務省に一年でもいた人は正規・非正規のポスト含めて一切ノータッチにすべきだろう。金融庁と日銀の経験がそれを教えている。また今回の文書改ざん問題をうけて、高橋氏は「公文書管理庁」の設置も提案している。それに日本銀行の目標を増税目的など財務省の思惑に左右されないように、雇用の最大化と物価の安定に寄与するよう改正すべきである。

 またこれは私見だが、トップがセクハラスキャンダルで辞任、そして組織の一部がまるごと関与した文書改ざんなど、財務省の体質は民間であればまさに「ブラック企業」そのものである。そんなところがぬけぬけと今年も国家公務員試験などで若い有能な人材を国家の権限として採用する。国民の厳しい視線をうけ、その体質改善も具体的でない今、今年の採用及びここしばらくの同省の採用は制限すべきである。それでは人材育成に弊害がでるという指摘があるだろう。なにを言っているのだろうか?「弊害」というペナルティを課すために行うべきなのだ。

それで仕事ができないなら、他の省庁の下部組織にでもなって人材を貸してもらえばいいだろう。だが、この財務省という「ブラック企業」は今日も健在で、「天下り」や増税指南に元気である。まさに国家の寄生虫そのものである。

経済評論家 / 上武大学ビジネス情報学部教授

田中秀臣



上武大学ビジネス情報学部教授。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。国土交通省社会資本整備審議会委員、内閣府経済社会総合研究所客員研究員など歴任。 著作『日本経済は復活するか』(編著 藤原書店)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)、『デフレ不況』(朝日新聞出版)など多数。毎週火曜午前6時から文化放送『おはよう寺ちゃん活動中』レギュラーコメンテーターとして出演中。

【私の論評】財政政策の大失敗をリスクとみない恐るべき怠慢官庁財務省(゚д゚)!

財務省の所業は昔からひどいものがありますが、最近のものも掲載しておきます。

財務省は4日、『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する報告調査書』を公表しました。最近も企業の不祥事が相次いでおり、そういうときの対応として、危機管理ということが、叫ばれています。その鉄則は、早めに記者会見を開き、「第三者委員会を設けたのでその結論を待ちたい」として一種の時間稼ぎをすることです。しかし、財務省の対応はあまりにも遅すぎましたし、未だに不十分です。

最近では日本大学の「危険タックル問題」があり、大学の危機管理能力が問われたばかりです。問題の試合から1カ月近く経ってからようやく、第三者委員会を立ち上げたことについて、そのスピードが遅すぎるという非難が高まっていました。その間、記者会見も中途半端で、かえって火に油を注ぐ結果となりました。

財務省の場合は、第三者委委員会すら作っていません。前事務次官のセクハラ問題については、不徹底とはいえ弁護士事務所に依頼していました。今回の文書改竄問題では、そうしたこともなく、財務省名で調査報告書が作られたのみでした。これでは、外部に対する説得力は皆無です。

危機管理の観点では、第三者委の設置が遅くて非難された、日大と比べても、第三者委すら作らなかった財務省の有様はあまりにもお粗末です。

まともな組織なら、文書改竄が部内で分かった段階で第三者委を設置し、国会からの問い合わせと並行して第三者委による部内調査を行い、大阪地検が財務省関係者の不起訴処分を発表する日に合わせて中間報告を実施し、時機を見て最終報告をするくらいのことはするでしょう。

財務省の報告書の表紙

報告書の中身も疑問だらけです。例えば、7ページ目の注10に「未利用国有地の売払いは、公用・公共用の利用を優先する考え方を基本として、まず3カ月間、地方公共団体及び公益法人その他の事業者からの取得等要望の受付を行い、当該受付期間中に要望がない場合には、一般競争入札により売却することとされている」とありますが、公共用でも当初に一般競争入札しておけば、問題なしだったはずです。

25ページの注27は「本省理財局の国有財産審査室長は、『一元的な文書管理システム』において『文書5(特例承認)』の決裁文書の更新処理を行えば、元の決裁文書は上書き保存されて無くなるものと考えていたが、実際には、元々の文書もそのまま保存されていた」と書かれているのですが、これでは単に電子ファイルに関するる無知を晒しているだけです。

さらに、あれだけの文書改竄を行えば、たとえ刑法には問われなくとも、国家公務員法違反です。この場合、停職3月等ではなく懲戒免職相当です。そういう処分であれば、退職金は全て返納となり、国民もある程度納得したかもしれません。

そもそも、財務省は普段からリスクを意識して仕事をしているのでしょうか。おそらく、全く意識していなかったのでしょう。だからこそ、実際にリスクが生じたときに、手順も何もなく、慌てふためき、まともに対応できなかったのが実情なのでしょう。

民間企業等のリスクについて、経営学大家であるドラッカー氏は以下のように述べています。

「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになる」(『創造する経営者』)

リスクには4つの種類がある。負うべきリスク、すなわち事業の本質に付随するリスク、負えるリスク、負えないリスク、負わないことによるリスクである。

ほとんどあらゆる産業に負うべきリスクがある。新薬には人体を傷つけるリスクがある。しかし、なおかつ製薬に携わるには負うべきリスクである。

多少の資金と労力を失うリスクは、負えるリスクです。失ったならば存続できないほどの資金がかかるのであれば、それは負えないリスクです。

事業に着手するに当たっては、成功を利用できるか、もたらされる機会を実現できるか、それとも誰かのために機会をつくるだけかを問わなければならない。

負わないことによるリスクの典型は、革新的な機会に伴うものである。その古典的な例が、第二次大戦直後のGEの原子力発電への進出である。専門家は原子力を経済的な電力源にできる可能性は低いと見ていた。しかしGEは発電機メーカーとして、万が一にも取り残されるというリスクを負うわけにはいかなかった。
「リスクの有無を行動の基盤としてはならない。リスクは行動に対する制約にすぎない」(『創造する経営者』)

ドラッカーが提唱した企業の4つのリスク

以上が、まともな民間企業のリスクについての考え方です。普段からこのように考えているからこそ、いざというときに特に「負うべきリスク」に関しては、リスク管理体制を普段から整え、迅速に対応できるようにしているのです。

さて、財務省の負うべきリスクとは何でしょうか。財務省や、マスコミ、経済学者が何をいおうが、それははっきりしています。それは財政政策に失敗することです。これこそが、財務省のリスクです。

ところが、当の財務省は財政政策の失敗をリスクとはみていません。過去20数年間財務省の財政政策は失敗続きでした。この度重なる失敗をしても、誰も責任をとったものはいません。

日銀も過去は金融引締め一辺倒で、失敗を繰り返してきましたが、2013年4月からは金融緩和策に転じて一部不十分なところがありながらも、現在まで継続しています。そのため、雇用状況はかなり良くなっています。しかし、財務省の場合は過去20数年間どころか、現在に至るまで、失敗続きです。

失敗の原因は明らかです。デフレの時期や、デフレからまだ完璧に抜けきっていない時期に、本来積極財政すべきところを増税等の緊縮財政を実行してきたことです。

そのため、日本経済は金融緩和の影響もあって、雇用は随分改善されそれによって若干経済にも良い影響を及ぼしている面もありますが、増税によって個人消費が落ち込み、未だに完璧にデフレから脱却しているとはいい難い状況ですし、GDPの伸び率は未だに韓国以下です。

これだけ失敗を続けてきたというのに、財務省の官僚は誰もマスコミや識者から非難されることもなく、また民間企業なら当然のごとく行われる、これらの失敗に対する降格、罷免、左遷、減給などの措置もありません。

病院や医師が患者の治療に何十年も失敗し続けてきたらどういうことなるでしょうか、病院は閉鎖され、医師は医師免許を剥奪されることもあり得ます。しかし、財務省はそうはなりませんでした。

これでは、財務省の官僚はリスクのことなど意識しなくなるのは当然のことです。リスクのことを意識せず、それに対する備えも何もしなければどういうことになるでしょうか。

民間企業でいえば、リスクを避けることにばかりとらわれ、リスクに向き合うことなく、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになってしまったのと同じです。

財務省の場合は本来のリスクに全く無頓着で気にもとめていなかったので、リスクというものに対する感受性やアンテナがすっかり失われしまったのです。

そのため、文書改ざんなどというリスクを平気でおかして、その挙句に、まともな対処もできず、佐川国税庁長官が自ら辞任ということになり、それでも未だリスクに対する備えがなく、次にはセクハラ問題で福田事務次官が自ら辞任ということになったのです。

まともにリスクを考えるような組織ならば、このようなことにはならなかったはすです。そもそも、このような問題など最初から起きなかったでしょう。

負うべきリスクについてまもに考えるどころか、それを無視して、憚らない財務省。民間企業の組織なら、とっくの昔に淘汰されてしまう組織です。それが淘汰されずに残ったため、今回のような不祥事が表面化してしまったのです。

このまま、財務省の組織がそのまま改革も改善もされないまま残れば、さらなる不祥事が起こり続けるでしょう。そうなる前に、ブログ冒頭の記事で田中秀臣氏が主張するように、財務省は解体して、ただ解体しただけでは、長い年月をかけて他省庁を植民地化するという性癖があるので、他の省庁の下部組織とするべきです。

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2018年6月13日水曜日

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明確な定義なく「煽る」だけ…非論理的な財政破綻論者 不要な緊縮招く危険な存在

財政破綻を煽る記事 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


 「日本が財政破綻する」「国債が暴落する」と煽(あお)る論者はいまだに少なくない。

 そもそも財政破綻などを煽る人は、なぜかその定義を明らかにしない。これまでの筆者の体験も次のようなものだった。

 その1。私「国債暴落の定義を言ってください。何カ月以内で何%とか。暴落はあるのですか」

 先方「暴落なき暴落が『あります』」(ありますを強調)

 私「暴落はないのですか」

 先方「暴落『なき』暴落があります」(なきを強調)

 その2。私「ハイパーインフレの定義は何ですか。ケーガン(経済学者)のもの? 国際会計基準?」

 先方「(一切答えず)ハイパーインフレになっていいんですか。日銀引受はハイパーインフレになるのです」

 私「日銀引受は毎年やっていますよ。私はその最高記録保持者ですが」

 先方「…」

 かつて役所内で議論した際にも、「財政破綻の定義は難しい」と言われ、定義することも避けられた。

 不良債権処理の専門書を書いたこともある筆者にとって、民間の破綻認定は簡単だった。債務の支払い能力がないというためには、基本的には貸借対照表(B/S)で債務超過を示せばいいからだ。

 政府の場合、徴税権(見えない資産)があるから債務超過でも即破綻ではないが、資産を考慮したネット債務残高がポイントだ。通貨発行権は統合政府のB/Sに出てくるので、ネット債務残高を見ればいい。ちなみにインフレ目標は、通貨発行権の乱用予防の役割もある。

 ネット債務残高というものの、その国の経済力との関係が問題になる。となれば、ネット債務残高対国内総生産(GDP)比が将来的に発散(ブログ管理人注:数列の極限値や積分の値などが有限値に定まらない、つまり無限大や不定になること。数学に詳しくない人は無限大になったとの理解で十分です)したら、破綻と言っていいだろう。

 こうした計量的に明確な定義もなく財政破綻を唱える人は、客観的に説明できずに煽るだけになる。日本の今の財政状況とは関係なく、実際に財政破綻した国で行政サービスが低下したことなど、国民生活面での不都合を強調しがちだ。または、B/Sの片方の借金だけを強調して「借金は避けるべきだ」「将来世代の負担になる」というが、見合い(ブログ管理人注:対応していること、釣り合っていること)の資産があると、こうした論法は馬脚をあらわす。

 正確に定義され計算された基礎的財政収支(プライマリーバランス)の動向は、ネット債務残高対GDP比の発散条件と密接に関わっている。通常、プライマリーバランスが赤字であっても改善傾向にあれば、ネット債務残高対GDP比はめったなことでは発散しない。プライマリーバランスが均衡化するに越したことはないが、改善さえすれば「財政破綻」を過度に心配する必要はない。

 財政破綻の定義を明確にせずに財政再建を語るのは、不必要な緊縮財政(増税、歳出カット)を招き、意図せざる失業者を発生させるので、経済にとって危険である。

 今の多くのマスコミ、学者や財界は財務省に洗脳され、財政再建を盲目的に追求し、緊縮財政そのものを目的化している。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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何でも緊縮すれば良いと思い込む「緊縮脳」は始末に負えない

財政破綻論者のほとんどは当然のことながら、緊縮策の支持者です。

不況時に緊縮策をとれば景気はさらに冷え込み、その結果税収は落ち、財政状況はますます悪化する。このような事は経済学を学んだことがない人でも直感としてすぐにわかるはずだと言いたいところですが、日本のみならず、世界的に見ても不況時に緊縮こそが答えだと信じてしまう人のほうがむしろ多数派かもしれません。

さらには経済学を学んだことのある人どころか、権威あるとされる経済学者の中にも、依然としてこのような主張をする人までいます。古今東西の歴史を紐解けば緊縮策の結果として手痛い思いをした経験を持つ国は歴史的に数多くあり、その教訓を嫌というほど学んでいるはずなのに、なぜ緊縮策という「ゾンビ経済学」はこのように蘇ってくるのでしょうか。

ジョン・クギンのオーディオブック"ゾンビ経済"の表紙

日本でも、古くは江戸時代に徳川吉宗の緊縮策などを皮切りに、様々な緊縮策が何度も実行されましたが、長続きはしませんでした。さらに、戦前には日本が世界で一番はやく金融恐慌(日本では昭和恐慌)から脱却したのは、無論緊縮策ではなく、高橋是清による積極財政と金融緩和によるものでした。

こうした貴重な体験をした日本人が、過去の歴史を忘れて、緊縮策になびく人が多いというのは、全く理解に苦しむところです。しかし、世界恐慌の原因がデフレであったことが、わかったのはなんと1990年代の経済研究によるということを考えると無理もないのかもしれません。

高橋是清

それだけ、緊縮は多くの人々に支持される経済政策なのです。経済が悪い時に緊縮策が機能しないのははっきりと確かめられた事実です。緊縮策は倫理的な問題を別にしても、経済学的に不合理で誤った政策です。

経済的に正しいのは、不況の時は、財政政策と金融政策を二つとも発動せよ、です。

これはマクロ経済学を学んだ者にとっては当たり前の話です。通常の教科書モデルでも、変動相場制の国ではマンデル=フレミング効果が働いて、金融緩和の後ろ盾のない財政政策はあまり効果がありません。かといって、金融緩和だけでは、痛みの出ている箇所への集中投下ができないので即効性がなく、また大きな需給ギャップを埋めるには財政政策が不可欠になってきます。

さらに流動性の罠の下での財政出動は、クラウディングアウト(民間投資圧迫)も“後世へのツケ”も残すことはありません。

ノーベル賞受賞者でもあるアメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツも、不況の時の緊縮策は「自殺」への処方箋だとしています。同じくノーベル賞受賞者であるクルーグマンも、はっきり「狂気の沙汰」と言っています。過去おいては、欧州では緊縮財政で失敗しています。

日本も、安倍政権が誕生して、積極財政に踏み切るかとみられましたが、14年4月から、増税という緊縮策に踏み切ってしまいました。そのため、個人消費が低迷してしまい、今でもデフレに一歩手前の状況にあります。

ただし、金融緩和は政権発足当時が継続して行ってきたので、雇用は過去にない程良い状況になっています。

2012年に民主・自民・公明の三党合意で消費税増税法案が成立しました。そうして、14年4月から消費税が8%に増税されました。19年10月には、10%増税が予定されています。増税しないと日本が駄目になるというのですが、今の日本で緊縮財政を強行するのはデフレを長引かせるだけであり、まさに「狂気の沙汰」です。


緊縮策とは個人の行為でいえば、節約ですが、これが多くの人々の琴線に触れるのかもしれません。だれでも、贅沢三昧することよりは、節約のほうが、良いと考えるものですが、それを政府の支出にまで拡大して解釈し、緊縮こそ善であると思い込むのは完璧な「狂気沙汰」です。これは、社会の常識として多くの人々に認識していただきたいです。

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2018年6月12日火曜日

【日本の選択】朝鮮専門家の無見識バレた「米朝会談中止」報道―【私の論評】ドラゴンスレイヤー達の夢は実現するか?中朝首脳会談がすぐ開催されるか否かが今後の鍵(゚д゚)!

【日本の選択】朝鮮専門家の無見識バレた「米朝会談中止」報道

トランプ大統領(右端)をはじめ各国首脳が繰り広げる外交は駆け引きで成り立っている

 米朝首脳会談をめぐって、国内では一喜一憂したような報道が繰り返されている。いまだに実現されていない会談の結果を、あたかも知っているかのように論じる人たちもいるが、まことに滑稽である。

 先日の南北首脳会談で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が終始笑顔であったこと、その他の映像を見て、正恩氏が人格者で人情味のある指導者であるかのように論じる人がいる。一方で、安倍晋三首相率いる日本外交は「蚊帳の外」に置かれていると警鐘を乱打する人まで、多種多様だった。

 冷静に考えれば、親族まで平然と殺戮(さつりく)する人物が、人格者であるはずがない。ドナルド・トランプ米大統領と太いパイプを持つ安倍首相が、「蚊帳の外」に置かれているはずがない。

 しかしながら、冷静になって考え直すべきなのは、この会談の本質である。これは、「米朝友好」や、「東アジアの平和」「正恩体制の維持」などをめぐる各国間の駆け引きであり、その結果は誰にも分からない。話し合いをすれば必然的に友好が訪れるといった類の話では決してない。

 私が最も情けなく感じたのは、トランプ氏が5月24日、正恩氏に「米朝首脳会談を中止する」との書簡を送ったときだ。トランプ氏を不甲斐なく思ったのではない。「これで米朝首脳会談がなくなってしまった」と素直に信じ込む人々が日本ではあまりに多かった。

米朝首脳会談中止を伝えたテレビ報道

 私は注意を喚起すべく、25日のツイッターで次のように指摘した。

 《米朝首脳会議が開催されるといえば、はしゃぎ、中止されるといえば、周章狼狽(ろうばい)する。これでは話にならない。開催すると言ったときに中止の可能性を考え、中止といったときに開催の可能性を考えておくのが政治だろう。日本の朝鮮問題の専門家とやらは、全く見識がないことが白日の下に曝された》

 率直に言えば、私はこの報道に接した際、「これで米朝首脳会談は実現に近づくのではないか」と感じた。両者の真剣さを確認するためのブラフではないかと直感したためだ。

 今回の会談は、平和な時代における紳士と紳士の和やかな話し合いではない。米国大統領史上、相当型破りなトランプ氏と、現代における冷酷な僭主、正恩氏の駆け引きなのだ。首脳会談を開催する、しないをめぐって駆け引きが存在しないはずがない。

 日本にとって重要なのは、この米朝首脳会談に過度な期待をすることでも、過度な失望をすることでもない。日本の同盟国として米国は何をなし、そして何をなすことができないのかを、冷静に見極めることだ。

 すべてを米国に依存するのではなく、戦略的に米国と友好関係を維持するために、日本自身が何をなすべきなのかを、焦ることなく冷静に考え始めることが肝要だ。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員等を経て、現在、大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

【私の論評】ドラゴンスレイヤー達の夢は実現するか?中朝首脳会談がすぐ開催されるか否かが今後の鍵(゚д゚)!

現状のニュースを見る限り、北朝鮮には得るものが多かったようですが、日本にとっては北朝鮮に核兵器が長期間有効なまま残存し続ける可能性が大きく、また拉致問題については提起はあったものの今後の進展は不透明です。壮大な予告編を見せられた感覚を覚えました。そうして、これは予告にもならない可能性もあります。

おそらく、交渉の本当の行方は、今後開催されるであろうポンペオ氏やボルトン氏等が関わる米朝実務者協議で決まることでしょう。

トランプ米大統領に同行してシンガポールを訪問したポンペオ米国務長官は11日、ホワイトハウスを通じて声明を発表し、シンガポールで11日午前に行われた米朝首脳会談を巡る両政府間の実務者協議について、「中身のある詳細な議論を行った」と評価しました。

ポンペオ米国務長官

首脳会談で最大の焦点となる北朝鮮の非核化を巡り、前進があった可能性があります。

ポンペオ氏は「米国の立場は明確で不変だ」と述べ、12日の首脳会談で北朝鮮に、「完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄(CVID)」を求める方針を示しました。「大統領と米国のチームはあす(12日)の会談を楽しみにしている」と期待感も示しました。

今後もこのような実務者協議を何度か重ね、具体的な核放棄の方法や検証の方法などを話し合うことになると考えられます。この段階で決裂するということは十分あり得ます。

今後の実務者協議の決め手になるのは、昨日もこのブログで掲載したように、米国の対中国戦略において金正恩が使い勝手の良い駒になるかどうかです。ポンペオやボルトンなどのドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)たちは当然そのような見方をするはずです。

核兵器を確実に廃棄し、対中国の駒になる覚悟があれば、トランプ大統領は金正恩が米国の駒である限り、北の現体制の存続を認め、核兵器廃棄の後には実質的に米国の核の傘の下に入ることも認めるでしょう。

さらに、日米が北朝鮮に対して経済援助をすることも認めるかもしれません。その時が日本の拉致問題の解決の時です。拉致問題解決なくして、日米の援助なしという形をとることができれば、日本にとってはベストでしょう。

米国はすでにこれに関して、金正恩に踏み絵を用意している可能性があります。それは、今後金正恩が、米朝会談の直後(半年以内)に習近平を訪問して、中朝首脳会談を開催するか否かです。私は、トランプ大統領はこのことに関して、首脳会談中に金正恩に因果を含めたと思います。

中朝首脳会談がすぐ開催されれば北は米国から見放される

中朝首脳会談をすぐにでも実施すれば、米国は北の存続を認めない方向に大きく舵を切るでしょう。無論経済援助などしません。一方、すぐに開催しなければ、北の存続を認めるほうに大きく傾き、経済援助もする方向で検討に入ることでしょう。

半年以内に実際に、米朝首脳会談が開催されなければ、上で述べたことはかなりの確度をもって正しいことといえると思います。

そうして、核廃棄が終了した後には、北朝鮮が米国の対中国の最前線基地となり、将来的には米軍が駐留することもあり得るかもしれません。

米国のドラゴンスレイヤーたちはそのような日が来るのを夢見ているのかもしれません。

これは、私の想像ですが、ドラゴンスレイヤー達は、台湾と朝鮮半島の両方を中国に対抗するための最前線にすることを狙っているに違いないと思います。

米朝首脳会議が開催されるかされないかで一喜一憂するような人々は、このようなことは考えもつかないのだと思います。

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