2019年12月21日土曜日

「弾劾」可決で“逆風”トランプ政権、朝鮮半島で「軍事作戦」決断も 図に乗る正恩氏にキレた!? 韓国・文政権は「レッドチーム入り」示唆 ―【私の論評】来年は米軍による北への軍事介入もあり得るシナリオ!我々日本人も覚悟を決めよ(゚д゚)!

「弾劾」可決で“逆風”トランプ政権、朝鮮半島で「軍事作戦」決断も 図に乗る正恩氏にキレた!? 韓国・文政権は「レッドチーム入り」示唆 

トランプ大統領

 ドナルド・トランプ米大統領が憤慨している。米下院本会議が18日、ウクライナ疑惑をめぐる弾劾訴追決議案を、野党民主党の賛成多数で可決したからだ。一方、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮は、クリスマスに合わせた大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射や核実験再開をチラつかせている。朝鮮半島の緊張が高まるなか、米軍幹部は「すべての選択肢がテーブルの上にある」と牽制(けんせい)した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の側近は「レッドチーム入り」を示唆しているが、逆風のトランプ政権が「軍事作戦」を決断する可能性があるのか。


 《これは米国に対する攻撃であり、共和党に対する攻撃だ》

 トランプ氏は18日、民主党多数の下院で弾劾訴追決議案の審議が続くなか、ツイッターでこう批判を繰り広げた。

 弾劾訴追決議案には、トランプ氏が軍事支援などを使って、民主党の政敵、ジョー・バイデン前副大統領周辺の捜査を発表するようウクライナに圧力をかけた「権力乱用」と、議会の弾劾調査に協力しないよう政府高官らに指示した「議会妨害」の2つの弾劾条項が盛り込まれた。

 米大統領の弾劾訴追は、1868年のアンドルー・ジョンソン氏(17代)と、1998年のビル・クリントン氏(42代)以来。トランプ氏は米史上3人目の弾劾訴追される「不名誉な大統領」となった。

 来月には上院の弾劾裁判が開始され、出席議員の3分の2が賛成すれば有罪・罷免となるが、上院は与党共和党が過半数を占めているため、「無罪」が濃厚な情勢だ。

 ただ、左派系メディアによる“トランプバッシング”は続きそうだ。

 トランプ氏の頭痛の種は朝鮮半島にもある。

 北朝鮮は今年5月から弾道ミサイル発射を再開し、13回を数える。さらに、7日と13日、北西部・東倉里(トンチャンリ)の「西海(ソヘ)衛星発射場」で「重大な実験」を実施した。ICBM用エンジンの燃焼実験とみられ、北朝鮮の非核化をめぐる米朝協議の停滞にイラ立ち、ICBM発射や核実験再開が懸念されている。

 「(北朝鮮が)何かを進行中なのであれば失望する」「その場合は対処する」「事態を非常に注意深く見守っている」

 トランプ氏は16日、ホワイトハウスで記者団にこう語ったが、米軍幹部が「対処」の概略について明かした。

 チャールズ・ブラウン米太平洋空軍司令官が17日、「(北朝鮮が挑発する場合)2017年に用意していたものが沢山あるので、われわれは早くホコリを払って準備することができる」「すべての選択肢がテーブルの上にある」と、ワシントンで記者団に語ったのだ。韓国・東亜日報(日本語版)が19日報じた。

 17年といえば、北朝鮮がミサイル発射や核実験を繰り返し、米朝関係が極度に緊張した年である。

 米軍は、朝鮮半島に最新ステルス戦略爆撃機B-2「スピリット」や、超音速爆撃機B-1B「ランサー」を何度も飛来させた。さらに、世界最強の原子力空母「ロナルド・レーガン」と「セオドア・ルーズベルト」「ニミッツ」を中心とする打撃群3つを展開するなど、「第2次朝鮮戦争」が真剣に取り沙汰されていた。


最新ステルス戦略爆撃機B-2「スピリット」

 あれから2年、クリントン政権の国防次官補を務めたグレアム・アリソン米ハーバード大教授は12日、東京での会議で、北朝鮮情勢について「非常に危険な展開」「第2次朝鮮戦争が起きる可能性が高まっている」と警告している。


 ■図に乗る正恩にキレる?

 朝鮮半島で軍事衝突が起きれば、韓国の被害は甚大だが、文氏のブレーンである、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官は国際会議で「中国の核の傘入り」を示唆するなど、「レッドチーム入り」の本音をあらわにした。トランプ政権の決断のハードルは下がっているともいえる。

 トランプ氏は、弾劾訴追という不名誉を受けたうえ、正恩氏から無礼な挑発を受けている。来年11月の大統領選を見据えて我慢してきたが、爆発する可能性はあるのか。「戦時の大統領」として選挙戦で勝ち抜く戦略は考えられるのか。

 拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司氏は「トランプ政権の安全保障政策を支えていた、ジェームズ・マティス元国防長官や、ジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はもういない。マイク・ポンペオ国務長官にも上院選出馬の話がある。トランプ氏のタガが外れて、『先制攻撃』を決断する可能性はある。正恩氏は図に乗っているが、危険だ」と指摘している。


【私の論評】来年は米軍による北への軍事介入もあり得るシナリオ!我々日本人も覚悟を決めよ(゚д゚)!

冒頭の記事で、"「弾劾」可決で“逆風”トランプ政権、朝鮮半島で「軍事作戦」決断"という見方は、おそらくは正しくはないでしょう。なぜなら、このブログでも以前示したとおり、トランプの弾劾は100%不可能であり、むしろ選挙戦に有利に働く可能性が高いからです。

さらに、トランプ氏が正恩氏にキレるというのもいただけないです。そもそも、キレた状態で意思決定する政治家は落第です。ビジネスマンとしても落第です。優秀なビジネス万でもあるトランプ氏は、キレた状態で意思決定することはないでしょう。

トランプ氏が北朝鮮攻撃を決断するとすれば、様々な事柄を冷静に計算しつくした後に意思決定し、実行することでしょう。

それにしても、弾劾など無関係としても、確かにトランプ政権は条件が整えば、朝鮮半島で「軍事作戦」を実行する可能性もでてきました。

米中貿易戦争が12日、双方合意により一段落した。約2年間続いた米中貿易戦争は一時的に小康状態に入ったようにみえます。

ところが、なぜ、今のタイミングで米中合意が出来たのでしょうか。疑問を捨てきれないところがあります。しかも、この合意は、先日もこのブログに示したように、米国の一方的勝利であり、中国にとっては、不平等条約そのものです。

おそらく、中国としては、経済が破綻目前であり、もはや防戦一方であり、なりふりかまわず、少しでも国内経済を良くしたいがために、米国の圧力に屈したのでしょう。あるいは屈したふりをしたのかもしれませんが、そこまでしても、米国の圧力から一時的にも逃れたのかもしれません。

そうして、このときに、中国は、米国の対北軍事行動に同意した可能性があります。すなわち、「中国が米国の意志に暗黙の了解を示した可能性が高い」です。

米国は3年前、中国に北朝鮮の非核化解決に1年間の猶予時間を与えたことがあります。当時、中国は全国重要都市の北朝鮮レストランを撤去するや北朝鮮は就業員を全て帰国させました。さらに、中朝合弁会社を取り消しするなど、中国は国連安保理理事国として対北制裁に前向きな役割を果たしていました。

ところが、中国は北朝鮮に繋がる石油パイプを閉めませんでした。さらに、海上で北朝鮮船が石油を船積みする国連の安保理合意違反に目を閉じていました。それで北朝鮮の非核化は前に進まず、これも一つの大きな要因で米中貿易戦争が始まった経緯があります。

今回、米朝貿易合意の前にトランプ大統領はツイッターに「中国とビッグディール(big deal)がほぼ目の前に来ている」とし「中国がそれを望んでいて、米国もほしい」とメッセージを飛ばしました。


米中交渉が一段落され、15日から1,560億ドル規模の中国産商品の関税は撤回されました。これにより、21ヶ月間続いた貿易戦争が一旦、峠を越して休戦に入ったわけです。米国が15日から対中国追加関税を撤回する代わりに、中国は米国産豚肉と農産物の購入を増やすことにしました。米国政府は中国産輸入品に対する関税を半分まで下げる案も協議しました。

中国は現在、巨額の借金を抱えており、国内経済の沈滞と経済破綻を止める為に精一杯です。今回、貿易戦争の最中で米中合意が出来たのは、中国が北朝鮮の面倒を見るより国内経済を優先させる政策変更だったとも考えられます。

加えて、北朝鮮の核が中国にとっても脅威であることもさらに、明確に意識したかもしれないです。北朝鮮の核と弾道ミサイルは中国全都市を射程に収めているからです。これについては、以前からこのブログで指摘してきました。

金正恩は、中国の北朝鮮への干渉を極度に嫌っています。そのため、北朝鮮とその核が、結果として中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。

さらに、中国にとっては北朝鮮の核が日本、韓国、台湾の核武装を招きかねない危険性を再認識したと考えらます。日韓台3国の核武装は中国にとって最悪の脅威です。

12月初め、北朝鮮外交部の米国担当副相は「米国へクリスマスプレゼントが何になるかは全て米国の決心次第である」と威嚇しました。今月7日には、平安北道東倉里の西海発射場で大陸間弾道ミサイルの噴射実験を3分間行いました。また、13日は同じ場所で7分間、噴射実験を行いました。これは第2段階のロケット噴射テストと見られています。

トランプ大統領は「必要なら武力行使もやむを得ない」「金正恩は全てを失う事もあり得る」と強硬なメッセージを飛ばしました。すると、北朝鮮外交部の崔善姫副相はトランプ大統領を“老いた者の忘霊”と非難しました。

12日、米国はカリフォニア州バンデンバーグ空軍基地で核搭載用中距離弾道ミサイルIRBM(射程5,400km)発射実験を行い、中国と北朝鮮を牽制しました。この中距離弾道ミサイル(INF)は近いうち、グアムに配備される予定です。グアムから北朝鮮までは3,400kmの射程距離です。

米朝間の緊張がエスカレートする最中、米国務省の北核担当特別代表、ビーガン氏が16、17日の両日間、急遽、韓国を訪れ、板門店での米朝実務者協議を打診しています。ところが、北側からは何も反応が出ておらず、年末中に米朝実務者協議が開催されても会談は決裂される可能性が高いです。

トランプ大統領はイランがサウジ精油施設を攻撃したり米軍偵察機を撃墜してもイラン空爆寸前に取りやめたことがあります。米軍戦力の分散を止めるための戦略的な判断です。核を持っていないイランより、北朝鮮の非核化が米国外交の優先順位であることが理解できます。


とりわけ、北核問題の解決可否はトランプ大統領の再選を左右する懸案です。結局、トランプ政権の措置が、ソフトランディング(海上遮断・制裁強化)であれ、ハードランディング(海上封鎖・軍事行動)であれ、北朝鮮の長期独裁体制は存亡の危機をかけた山場を迎えざるを得ないのです。

おそらく、今後北朝鮮が、弾道ミサイルを発射したり、核実験を再開した場合、米国はすみやかに何らかの軍事行動を起こす可能性があります。

ただし、ジョン・ボルトン前米国大統領補佐官は19日(現地時間)、北朝鮮の“クリスマスプレゼント”の脅威について「脅しの可能性がある」として心配する必要はないと語りました。

ジョン・ボルトン氏

ボルトン前補佐官はこの日に米国のマスコミのインタビューで「私は北朝鮮が語る全ての話の大部分を“話半分”に聞いている」と明かしました。

北朝鮮はこれまで「米国が今年の年末まで(北朝鮮に対する)敵対視政策を撤回するなど、朝鮮半島情勢に関して“新たな計算法”を提示しない場合、(北朝鮮は)“新たな道”を行く可能性がある」と警告し、特に北朝鮮外務省の対米担当者が先日の談話で「“クリスマスプレゼント”に何を選ぶかは全面的に米国の決心にかかっている」と明かし、挑発の可能性を示唆しました。

しかしボルトン前補佐官は「このすべてのことは北朝鮮のシナリオだ」とし「彼らは米国の今までの3政権をだますのに成功したので、この政権でも同じようにする計画である」と主張しました。

続けて「彼ら(北朝鮮)は(ドナルド・トランプ米国)大統領が(自分たちとの)合意に必死になっていると考えている。もし意図的に時間の制約を加えれば、よりよい合意が引き出せると考えている可能性がある」とし「我々はただ静観しているだけでいい」と語りました。

ただ「北朝鮮は核開発を自発的に放棄しないだろう」としながら「我々が30年間見続けてきたパターンがある。彼ら(北朝鮮)は経済的恵沢の代価として“核放棄”を宣言するが、実際にはそうはしない」と語りました。

また「北朝鮮やイランといった国は、不良国家の典型であるだけでなく、テロ支援国だ」としながら「彼らは自国民を抑圧している。このような特徴が彼らの行動方式を表している」と付け加えました。


私も、ボルトン氏の見方は正しいと思います。そのため、このクリスマスに北朝鮮が、弾道ミサイルを発射するようなことはないと思います。

ただし、北朝鮮は核を手放すことはないでしょうし、トランプ大統領もそのことを理解し、さらに中国が米国北攻撃を黙認するなら、来年の大統領選挙に邪魔にならず、有利になるとみられる時期に北に軍事攻撃をする可能性は高まったとみるべきと思います。

もし、米国が北朝鮮を軍事攻撃を加えた場合、核兵器開発ばかりしてきた北朝鮮の人民解放軍の通常兵力は、米国の敵ではありません。さらに、半島有事が囁かれてから、随分時がたっているので、米軍はかなり北の情報収集をしているものと考えられ、正確にピンポイントで北の核基地攻撃に成功するでしょう。

さらに、金正恩の斬首にも成功するかもしれません。そうなった場合、中国への脅威は計り知れないものになるでしょう。外交音痴の韓国も、中国の圧倒的な劣勢にさすがに気づき、レッドチーム入りを断念するかもしれません。もしそうなれば、トランプ氏の大統領選は圧倒的に有利なります。

来年は、何らかの形で米軍の北への軍事介入はあり得ることだと、私達日本人も覚悟を決めるべきです。

【関連記事】

2019年12月20日金曜日

ロシアやドイツも敵わなかった“海洋勢力”…中国も同じ轍を踏むか!? 今こそ「日米韓」を「日米台」同盟に―【私の論評】中国が経済的に疲弊しつつある今が、日米台関係を強化する絶好のチャンス(゚д゚)!

ロシアやドイツも敵わなかった“海洋勢力”…中国も同じ轍を踏むか!? 今こそ「日米韓」を「日米台」同盟に

安倍総理

 中国と、米国を中心とする海洋諸国同盟が、アフリカの岸を洗うインド洋から日本まで、「インド太平洋圏の覇権」をめぐって、激しい鍔迫(つばぜ)り合いを演じている。

 どっちが、勝つことになるのだろうか。テクノロジー、軍事力、資力以上に「戦略を構築する力」が軍配をあげることとなろう。

 ここでも、中国の習近平国家主席は重大なハンディキャップを負っている。

 習氏は中華人民共和国の玉座について以来、大海軍の建設に取り組んできた。いまではアフリカ大陸とアラビア半島に挟まれた、紅海の出入り口のジブチにまで海軍基地を持つようになった。

 秦の始皇帝が紀元前2世紀に中国大陸を統一して、中華帝国が地上に現れてから、中国が大海軍を持つのは初めてだ。

 中国は戦略的な発想を行う能力がない。2000年以上にわたって、「地上で自分だけが優れている」という中華思想によって蝕(むしば)まれてきたために、他国と対等な関係を結ぶ能力を欠いており、同盟国を持つことができない。

 手前勝手な華夷思想によって、中国と野蛮な夷(えびす)に、世界を二つに分けてきた。中国は海に背を向けた文明だ。

 習氏のもとで、中国は海洋勢力となろうとして、大海軍の建設を急いでいるが、海軍力によって、海洋勢力となることはできない。

 それに対して、米国は海洋諸国と結んで、中国を孤立させている。

 かつて大陸勢力であったロシアやドイツ帝国が大海軍を誇ったが、海洋勢力に敵(かな)わなかった。中国はその轍(てつ)を踏みつつある。

 中国は中華思想という歴史の檻(おり)から、抜け出せない。

 中国は来年11月の米大統領選で、ドナルド・トランプ大統領が再選に失敗するのを願っている。

 米国は経済が快調だ。民主党は議会でトランプ氏を弾劾しているが、共和党が多数を占める上院で否決されるから、嫌がらせにすぎない。

 だが、米国は民主国家だ。民主党のリベラルな牙城であるニューヨーク州、カリフォルニア州と、フロリダ州が最大の選挙人数を持っているから、万が一、一過性の人気によって“小池百合子現象”が起こって、オバマ政権のような民主党政権が誕生するかもしれない。

 海洋同盟諸国の弱い鎖が、日本、韓国、台湾だ。韓国は信頼できない。「日米韓同盟」を、「日米台同盟」にかえるべきだ。

 ■加瀬英明(かせ・ひであき) 外交評論家。1936年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、エール大学、コロンビア大学に留学。「ブリタニカ百科事典」初代編集長。福田赳夫内閣、中曽根康弘内閣の首相特別顧問を務める。松下政経塾相談役など歴任。著書・共著に『フーバー大統領が明かす 日米戦争の真実-米国民をも騙した謀略』(勉誠出版)、『グローバリズムを越えて自立する日本』(同)など多数。

【私の論評】中国が経済的に疲弊しつつある今が、日米台関係を強化する絶好のチャンス(゚д゚)!

冒頭の記事のようなことは、何度かこのブログにも掲載してきたことがあります。いかに、それらの記事のリンクを掲載します。
台湾問題だけでない中国の南太平洋進出―【私の論評】海洋国家を目指す大陸国家中国は、最初から滅びの道を歩んでいる(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとし、この記事より結論部分を引用します。
「ローマは3度世界を征服した。1度は武力で、1度はキリスト教で、1度は法で」(ドイツの法学者イェーリングの言葉)。では、現中国はどうでしょうか。上の言葉で言えば、武力しか持っていません。キリスト教(宗教・思想)や法(普遍的法体系)に当たるものがまるでないのです。これは、他国を真に魅了するものがまったくなく、経済と軍事のみで自己アピールしなければならないことを意味しています。 
ここが、過去の中華帝国とまったく違います。かつての中華帝国も周辺国への恫喝と侵攻を繰り返したのですが、その高度な文明の故をもって尊敬も勝ち得ていました。それが現中国にはないのです。これは、世界帝国として台頭するには致命的な欠陥となるでしょう。 
現在の中国は鄧小平が劉華清(中国海軍の父)を登用し、海洋進出を目指した時から両生国家の道を歩み始めました。そして今、それは習近平に引き継がれ、陸海併せ持つ一帯一路戦略として提示されるに至っています。しかしこれは、マハンの「両生国家は成り立たない」とするテーゼに抵触し、失敗に終わるでしょう。
劉華清(中国海軍の父)

事実、両生国家が成功裏に終わった例はありません。海洋国家たる大日本帝国は、大陸に侵攻し両生国家になったため滅亡しました。大陸国家たるドイツも海洋進出を目指したため2度にわたる世界大戦で滅亡しました(ドイツ第2、第3帝国の崩壊)。ソビエト帝国の場合も同じです。よもや、中国のみがそれを免れることはないでしょう。一帯一路を進めれば進めるほど、地政学的ジレンマに陥り、崩壊への道を早めてゆくことになります。
そもそも、海洋国家を目指した中国は、その時点から滅びの道を歩んでいると見て良いです。中国が、海軍力を増強し続ければ、何が起こるかというと、海洋戦略・戦術に劣っているため、いくらこれに資金を投下しても、現実には無駄ということになります

実際、純粋な戦力としては、海上自衛隊が中国海軍を上回っているという見方が主流のようです。ナショナル・インタレスト誌(2016年)は、海上自衛隊の艦艇と人員の数、装備の性能、組織力のどれをとっても「アジア最強」だと指摘する。主要装備の性能や役割を詳しく説明したうえで、東日本大震災発生時の災害救助活動の実績を紹介し、海上自衛隊の展開力の高さも折り紙つきだとしています。

ビジネス・スタンダード紙(インド日刊紙)は、「そうりゅう」型8隻と「おやしお」型11隻(2017年当時)を擁し、2021年までに23隻に拡大する予定の潜水艦戦力も、中国に脅威を与えるとしています
 
また、南シナ海を経てシンガポール入りし、その後さらに南シナ海で「デューイ」との共同訓練を行った「いずも」の動きを、ニール氏は尖閣諸島など日本周辺海域での「中国の執拗な動き」への対抗策だと断言しました。

そして、「『いずも』は安倍政権下で進む日本の軍拡の象徴だ。それは、第二次大戦中の日本の強力な空母艦隊によってもたらされた痛みを強烈に思い出させるものだ」と、中国側の見方を代弁しています。

ビジネス・スタンダード紙は豊富な防衛予算も海上自衛隊の強みだと見ています。「防衛費の上限が全体の1%という制約がありながらも、日本の2017年の防衛予算は436億ドルで、インドの535億ドルよりも少し少ないだけです。

そうして、インドや中国と違い、日本は陸軍よりも海軍と空軍に多くの予算を回している」と、予算面でも決して自国や中国に負けていないと指摘しています。

我々日本人の多くは、自衛隊の装備はかつての「武器輸出三原則」の制約などにより割高だという認識を持っています。しかし、ビジネス・スタンダード紙は、自国との比較において逆の見方をしています。

「川崎重工、三菱重工といった巨大企業を擁する日本の洗練された造船産業は、軍艦を迅速に安く作ることができる。そうりゅう型潜水艦は6億8500万ドルだが、これは半分以下のサイズのインドのスコルペヌ型潜水艦とほぼ同コストだ。排水量690トンのあわじ型掃海艦もたった1億6000万ドルで作っている」などと書く。

日米の連携強化も、中国にじわりとプレッシャーを与えていると各メディアは分析しています。「いずも」と「デューイ」(米ミサイル駆逐艦)の共同訓練は、デューイが中国の南シナ海での動きを牽制する「航行の自由作戦」に従事している艦なだけに、中国のみなら米国や周辺諸国の注目も集めました。

空母化が予定されている「いずも」

日本側は「いずも」は航行の自由作戦には参加しておらず、あくまで一般的な編隊・通信の確認だったと説明しましたが、ニール氏は、こうした日米の動きを中国は「アメリカによる地域支配の準備をカモフラージュするものだと見ている」と指摘しています。

また、ニール氏らアナリストは、武器輸出三原則の緩和により、インド、オーストラリアといったアジア太平洋地域の同盟国に高性能な日本製装備が行き渡ることも、広く日本の防衛力強化に貢献すると見ています。

こうした論調を俯瞰すると、アジア太平洋地域の覇権を米国から奪おうと目論む中国にとって、日本の“海軍力”が目の上のたんこぶになっていることが理解できます。これがアジア地域の安定に良い影響を及ぼすのは確かです。

そうして、中国の致命的な欠点である、中華思想という歴史の檻についても、このブログに掲載したことがあります。
【湯浅博の世界読解】「自滅する中国」という予言と漢民族独特の思い込み―【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!
孫氏の兵法書
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
民族は自らを「偉大なる戦略家である」と思い込んでいる。孫子の兵法を生んだ民族の末裔(まつえい)であるとの自負が誤解の原因かもしれない。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問、E・ルトワク氏は、戦略家であるどころか「古いものをやたらとありがたがる懐古的な趣味にすぎない」と酷評する。実際には、中核部分の「兵は詭道(きどう)なり」というだましのテクニックだけが生きている。

その詐術も足元が乱れることがある。米メディアが南シナ海のパラセル諸島への地対空ミサイル配備を報じた直後、王毅外相が「ニュースの捏造(ねつぞう)はやめてもらいたい」といった。すると、中国国防省がただちに「島嶼(とうしょ)の防衛体制は昔からだ」と反対の見解を表明して外相発言を打ち消していた。

国家の外交が、ひそかに動く共産党の軍に振り回されている。軍優位の国にあっては、当然ながら国際協調などは二の次になる。
その詐術も足元が乱れることがある。米メディアが南シナ海のパラセル諸島への地対空ミサイル配備を報じた直後、王毅外相が「ニュースの捏造(ねつぞう)はやめてもらいたい」といった。すると、中国国防省がただちに「島嶼(とうしょ)の防衛体制は昔からだ」と反対の見解を表明して外相発言を打ち消していた。 
国家の外交が、ひそかに動く共産党の軍に振り回されている。軍優位の国にあっては、当然ながら国際協調などは二の次になる。
中華思想に染まり、孫氏の兵法等に溺れる中国には、将来性は感じられません。一方、サイバー戦や、AI、宇宙開発に力を入れていますが、私はこれらもかつてのソ連のように中国の経済力を弱らせることにつながると思います。

さて、日米台同盟に関しては、その構築の方法などこのブログでも掲載しています。 
日米が台湾の港湾に寄港する重要性―【私の論評】日台関係は、「積み木方式」で実質的な同盟関係にまで高めていくべき(゚д゚)!
トランプ米大統領の蔡英文台湾総統
 この記事の結論部分の一部を以下に引用します。
台湾を取り巻く日本をはじめとする国際社会はどのように台湾と接していくべきでしょうか。それに有効な解決方法がすでに日台の政府間で進められている「積み木方式」による各種協定の締結です。 
これは、米台もすすめている方法です。今後米国は、「積み木方式」によって、実質上の同盟関係になることが予測されます。 
日本も台湾とは国交がなく、他の国家のように条約を締結することが出来ないです。例えばFTAを結ぶにしても、中国による妨害も考えられ現実的ではないです。
そこで、包括的な条約を結ぶのではなく、投資や租税、電子取引や漁業など、個別の協定を結ぶことを、あたかも積み木を積み上げていくことで、実質的にはほぼFTAを締結したのと等しいレベルにまで持っていくことを目指すのです。
日米台は、正式には国交が結べていません。ただし、この「積み木」方式により、日米台関係を同盟国と同等の次元まて、高めていくことはできるでしょう。実際米国は「台湾旅行法」等を施行させています。米国は、その方向でこれからも様々な法律を作成しているでしょう。

現在韓国は、ほとんど北朝鮮の衛星国のような有様になっており、韓国と日米との関係は最悪です。韓国の場合、朝鮮半島に位置し、大陸国家としても、海洋国家としても中途半端です。

無理やり韓国を日米韓同盟から引き剥がす必要もないですが、今後に日米とも中途半端な韓国には見切りをつけ、台湾との関係を強化していくべきでしょう。

日本としても、韓国がいつまでも貿易管理をまともにしなければ、台湾が条件を満たせば、ホワイト国に指定するということも視野に入れるべきです。韓国に資金や時間を割く分を台湾に割いたほうが、コストパフォーマンスも高いですし、はるかに信頼性が高いです。

台湾には、大陸中国に親和敵な人も多いですが、それにしても、国民党が政権与党の時の馬英九総統時代に、日本で東日本大震災が発生した際には、台湾は援助隊を日本送り多額の義援金を募るなど、積極的に日本を支援したことを忘れるべきではありません。

日米台の関係が強化されれば、大陸中国に親和敵な人たちも、日米台同盟に期待を持つようになるでしょう。何しろ、もう中国経済は深刻な状況であり、従来のように豊富な資金力で、台湾を懐柔することには限界がきています。まさに、今後は日米台関係を強化していくチャンスが到来したといえます。

【関連記事】





2019年12月19日木曜日

トランプ支持率が弾劾調査開始から6ポイント上昇:ギャラップ調査―【私の論評】日本でも間もなくネガティブキャンペーンは効かなくなるどころか、逆の結果を招くことになる(゚д゚)!

トランプ支持率が弾劾調査開始から6ポイント上昇:ギャラップ調査
<引用元:ヒル 2019.12.18

https://thehill.com/homenews/administration/475037-trump-approval-up-6-points-since-launch-of-impeachment-inquiry-gallup?jwsource=cl

最新の世論調査によると、トランプ大統領の職務能力支持率は民主党が弾劾調査を開始して以降6パーセント上昇した。

18日の朝発表されたギャラップ世論調査で、トランプの支持率は45パーセントとなり、秋に調査が開始された時の39パーセントから上昇した。

トランプの支持率上昇を支えているのは大統領を高く評価している共和党だ。民主党ではトランプの職務遂行を支持しているのがわずか8パーセントであるのに対して、共和党回答者では約10人に9人――89パーセント――が大統領を支持している。

トランプ大統領

トランプは就任以来、ギャラップの調査で45パーセント以上の支持率に到達したことが5回あったと、その大手調査会社はしている。46パーセントに到達したのは大統領になってから1度だけであり、5月のことだ。それには強い経済報告と、ロシア選挙介入に関するロバート・モラー元特別検察官の報告書が山場を迎えたことが背景にあった。

ギャラップの最新調査では回答者の51パーセントがトランプの弾劾と大統領辞任に反対だと答えており、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党、カリフォルニア)が大統領のウクライナ対応に対する弾劾調査を発表してから5ポイント上昇した。これに対して、回答者の46パーセントが現在弾劾と辞任を支持しており、6ポイントの低下となった。

共和党で弾劾と辞任を支持すると回答したのはわずか5パーセントだったが、これに対して民主党では85パーセントという結果だった。

無党派層での大統領の弾劾と辞任に対する支持はわずかに下がり、10月に実施した2度の調査では55パーセントと53パーセントだったが、最新の調査では48パーセントとなった。

最新の調査は1,025人の米国人成人に対して12月2日から15日に実施された。調査には4パーセントの誤差の範囲がある。

【私の論評】日本でも間もなくネガティブキャンペーンは効かなくなるどころか、逆の結果を招くことになる(゚д゚)!

米下院本会議は18日、トランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾訴追決議案を野党民主党の賛成多数で可決しました。トランプ氏は弾劾訴追された米史上3人目の不名誉な大統領となりました。

米政治史に残る弾劾手続きの舞台は与党共和党が多数派の上院に移り、来年1月上旬にも弾劾裁判が始まりますが、無罪が濃厚となっています。

トランプ弾劾に関しては、従来の米国マスコミは、無罪が濃厚ということは報道しなかったのですが、最近は多くのメディアが報道しています。

トランプ大統領の弾劾は、上手くいかないことを、民主党も分かったうえでやっています。まあ、日本人の私が、調べた限りでは、どう考えてもうまくいかないとこのブログでも以前から指摘していましたから、民主党の議員がそれがわからないとしたら、大馬鹿です。



要するにこの弾劾は、弾劾を目的としたものではなく、大統領選挙におけるネガティブキャンペーンの一環と、みておいた方が良いです。これについては、このブログでも過去に何度か掲載してきました。

国際情勢や、米国政治に疎い日本のメディアは、従来米国のメディアに右ならえで、前回の弾劾騒動では、元々弾劾は絶望的であるにもかかわらず、そのことには一切触れませんでしたが、今回は、米メディアに右ならえで、ほとんどの日本のメデイアが無罪が濃厚であることを報道しています。

私は、少なくとも日本のメディアの何社かは、無罪が濃厚であることを報道しないのではないかと期待していましたが、まるで判を押したかのよう国内メディアのほとんどが、これを報道していました。

このことにより、私が以前から主張しているように、日本のメディアは何の判断も、吟味もせずに、米国リベラル・メディアの報道を垂れ流しているだけであると確信しました。

私は前から、トランプ弾劾と、いわゆる「もりかけ問題」、「桜を見る会問題」とは、似たようなものだと思っていました。どちらも、ネガティブキャンペーンの一環なのです。

米国においては、もうそのことは多くの国民が理解していて、もう共和党のネガティブキャンペーンには、乗らないどころか、トランプ大統領の支持率がすぐに45%に上がったのです。

日本では、残念ながら、「桜を見る会問題」後の内閣支持率は、若干下がっています。以下に各メディアの調査結果を掲載します。


どのメディアでも、内閣支持率は下がっています。しかし、私はこれは過去にもみられたように、短期間に変わり、また支持率が上がるのではないかと思います。おそらく、次の衆院解散総選挙の時期には上がっていると思います。

というより、上がることを見越して、来年1月には解散、2月には選挙ではないかと思います。選挙の時期に関しては、このブログでも以前から、1月解散、2月選挙と予想していました。

日本の政局は、「もりかけ桜問題」(私の造語、いわゆる「もりかけ問題」と「桜を見るか会問題」の本質は一つなので一つにまとめてしまいました)は、米国のトランプ弾劾と同じで、次ぎの選挙におけるネガティブキャンペーンの一環とみるべきなのです。

そのようなことは、「森友問題」の初期から気づいている人もいたと思いますが、それでも実数は少なかったので、マスコミは得意のフレーズで「疑惑は深まった」と煽ったので、これに乗る人も多かったようです。

「もりかけ問題」の本質はネガティブ・キャンペーン

先日も「桜を見る会」問題が追及され始めたばかりころ、近所の焼き鳥屋に行ったところ、隣のテーブルの老人たちが、「もりとも問題はもっと追及すべきだ」などと声高に話をしていました。では、なぜそうなのかといてう話は誰もしていませんでした。結局テレビでそう言ってるからそうなのだというくらしか根拠はないでしょう。

これは、未だに継続されていて、「桜を見る会問題」でも、野党やマスコミが追及すると、実際に支持率は下がっているのですが、もし来年選挙で与党が勝利した場合、さすがに変わってくるのではないかと思います。

「もりとも」問題後には、いずれも内閣支持率は、すぐに上がりました。今度は、米国のように、野党が選挙目当てのネガティブキャンペーンを始めたとたんに、内閣支持率が上昇するかもしれません。

しかし、これは正しい反応だと思います。米国に限らず、日本でも、是々非々で、政策論争をすることを好ましく思っても、ネガティブキャンペーンに反発するのは、有権者としては、当然のことだからです。

最初のうちは、ただのキャンペーンと思われるかもしれませんが、何回もネガティブキャンペーンを繰り返していれば、ネットなどで情報が氾濫している時代ですから、いずれ多くの有権者にその実体は知れてしまうことになります。

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2019年12月18日水曜日

菅官房長官と記者の質疑応答 目立つ“的外れ”質問や印象操作…内容より答弁姿勢ばかり批判―【私の論評】破綻した社会を生み出そうとするマスコミ自体が最早「反社会勢力」なのではないか?


臨時閣議後、会見で記者団の質問に答える菅義偉官房長官=13日午後、首相官邸

 菅義偉官房長官の記者会見をめぐり、一部のマスコミでは「桜を見る会問題で連日苦しい答弁をしている」などと報じられている。今回はこれを検証してみよう。

 一つは、菅氏が「桜を見る会」の招待者名簿のバックアップデータを行政文書ではないので国会に提出しなかったことについての質疑だ。

 菅氏は「国会議員からの資料要求については、その対象が行政文書であること」と答えたが、これに対し記者から「これは何に基づいて、前提としているのか」という質問があった。菅氏の答えは同じだったのでマスコミは答えられなかったと報じた。この記者は、行政文書のみならず公文書であれば国会議員からの要求に応えるべきと言いたかったらしい。

 行政文書の定義は公文書管理法で定められている。(1)行政機関の職員が職務上作成したもので、(2)当該行政機関の職員が組織的に用いるものだ。(1)が公文書で、(2)の作成者以外の役人も存在を知っているものを行政文書というわけだ。

 形式的には、記者が想定する通り公文書と行政文書は違うが、行政文書でない公文書は、個人メモなど理論的には存在するが、実際の実務ではまず目にしない。というのは、作成者以外が存在を知らないからだ。というわけで、それを国会議員から要求されても対応しようがない。この意味で、菅氏の対応が正しく、記者の質問が的外れだった。

 ほかの記事では、政府が「反社会的勢力の定義が困難だ」と質問主意書に答弁したことを批判していた。それは、かつて安倍晋三政権で反社会的勢力の定義をしていたのに、都合が悪くなると定義が困難といい出したと言わんばかりだった。

 筆者は原資料を見たが、反社会的勢力を見るときの着目点が書かれたもので、とても定義といえるものでなかった。筆者の役人時代の感覚からいえば、定義なら本文に書くが、これは脚注に書かれた説明だ。

 もともと、定義の方法によっては人権侵害になるようなもので、定義は難しい。反社会的勢力の典型例である暴力団についても明確な定義は困難なので、法規制は暴力団の中で具体的に指定して明確性を確保しているくらいだ。

 なお、原資料は公開済みなのに、マスコミが引用するときには一部のみを出して周囲は黒くボカすなど印象操作的なことをしているのも不思議だ。

 マスコミは、菅氏の答弁内容に対しまともな批判をしていない。システムに関する記者会見では、答弁の時に、事務方からメモが差し入れられた回数に関する記事もあったが、本質的なことではない。記者も自社のシステムについて知っている人は少ないだろう。質問している記者の方の無理解もあるから、慎重を期して答えているだけだろう。そもそもシステムに関する記者会見は、官房長官より専門家が行うべきだ。

 マスコミが、答弁内容ではなく答弁スタイルを批判的に書くときは、内容で批判できないので、揚げ足取りや印象操作をしたいときではないのか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)


【私の論評】破綻した社会を生み出そうとするマスコミ自体が最早「反社会勢力」なのではないか?

最近でも、マスコミの不祥事はあとを絶ちません。以下に事例をあげます。

世耕氏


世耕氏「印象操作だ」 テレ朝は直接おわび 「批判」と「謝罪」への違和感
毎日新聞 2019年12月12日
https://mainichi.jp/articles/20191212/k00/00m/040/252000c
この記事は、先日世耕議員がテレビ朝日の報道に対してクレームを入れ、その件でテレビ朝日側が謝罪をした件について、「両者ともに過剰な対応をしている」と批判している記事です。

この件なのですが発端は以下の通りです。

世耕弘成 Hiroshige SEKO
@SekoHiroshige
https://twitter.com/SekoHiroshige/status/1204418540297576449
世耕氏が定例記者会見において、「定例会見が今年最後になるかもしれない」というやり取りの流れで「よいお年を」と発言したところ、それを編集で切り貼りし桜を見る会の問題でのやり取り取とつなぎ合わせ、あたかも問題を年越しさせ時間稼ぎをしようとしているかのように編集していたという事例です。

当たり前のことですが、そもそもそんな印象操作をする方が悪く、印象操作をされた方は抗議をして当たり前であり、毎日の主張は冤罪に対しての自己弁護を否定しているのと同じです。

しかし記事では、問題のやり取り自体を「自民党参院幹事長の発言の取り上げ方について触れ」と大幅に省略しており、「何が問題にされたのか」がわからなくなっています。

次に、朝日の事例をあげます。

千円札に気づかされたアジア人の葛藤論座/朝日新聞 2019年12月15日
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019121100013.html
非常に長い記事ですので、詳細は当該記事をご覧いただくものとして、一部分のみを抜粋します。記事では徴用工裁判に関連して「日本が韓国の三権分立を否定したり、攻撃的で嘲(あざけ)るような言葉を投げたりしたことは、過去にもなかったのではないか。」と書かれています。

そもそもこの裁判には大きく分けて以下の3つの問題点があります。

1:日韓国交正常化交渉の中の都合の悪い内容をなかったことにしている 
2:交渉にあたった韓国側当事者が「証拠としての価値がない」としている金額を根拠にしている 
3:国際学術会議において、「日韓併合は合法である」という結論が出されている事を無視している
このような、朝日の『論座』の記事は、根本的な部分を無視しています。つまり、「なぜ裁判が問題視されるのか」という最も肝心な部分を伝えず、「韓国の三権分立を否定している」と印象操作しているわけです。

この2つの事例では、どちらも問題において本来必要となる判断材料を欠いており、都合の悪い情報を排し、特定の結論へと誘導しているわけです。
マスコミのこの機能不全ともみられる、異常さはどこからでてくるのでしょうか。それは、このブログにも経営学の大家ドラッカー氏の考えを参照して何度かのべてきたことです。

多くのリベラル・左派、左翼のマスコミや識者は「政権や権力と戦うのが使命」であり、その使命を貫徹するためには安倍総理に対する個人攻撃をすることも当然と思っているようです。

ここが間違いの原点であると思います。
決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、最初から誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならない。(『経営者の条件』)
頭のよい人、しかも責任感のある人は、せっかくの意思決定も実行されなければ意味がないと思う。そのため、最初から落としどころとしての妥協を考えます。

GMのCEOアルフレッド・スローンは、当時無名の政治学者だったドラッカーに対し、GM研究の報告書には何を書いてもよい、ただし妥協は書いてほしくないと釘を刺しました。

妥協には2つの種類があります。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基づきます。前者では半分は必要条件を満足させます。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用とななります。半分の赤ん坊では妥協にもならないです。

ドラッカーは、何が受け入れられやすいか、何が反対を招くから触れるべきでないかを心配することは無益であって、時間の無駄だと言います。心配したことは起こらず、予想しなかった困難や反対が突然ほとんど対処しがたい障害となって現れるます。

何が受け入れられやすいかからスタートしても得るところはない。それどころか、妥協の過程において大切なことを犠牲にし、正しい答えはもちろん、成果に結びつく可能性のある答を得る望みさえ失う。(『経営者の条件』)
以上のドラッカーの意思決定に関する原理・原則は、マスコミの機能不全とはあまり関係なくも見えるのですが、実はマスコミという組織の機能不全の原因を探るため、大きなヒントがあります。 

私は、菅官房長官に質問する記者に限らず、大手マスコミではある種の不文律があるのだと思います。それは、「権力・政権と戦うこと」そうして「その戦いには必ず勝つべきこと」というような不文律、もしくはこのような言葉に出さなくても、日々大手マスコミの経営者や幹部などから、これに類することが社員等に向けて発信されているのではないでしょうか。

そうして、このようにすることの意思決定は、まともな議論を経てされたものではなく、「当然のこと」「やらなければならないから」ということで、何の吟味もされていないのではないでしょうか。

そうして、大手マスコミのほとんどでは、「最初から誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタート」して、中間管理職や現場の意思決定が行われているのではないでしょうか。

要するに、会社の幹部の言うことは、正しく、幹部に受け入れられやすい自分たちの行動は何かという観点から、日々の意思決定が行われているのでしょう。

そのためとにかく「倒閣」に結びつけば何でもよく、後先を全く考えないで行動するので、「桜を見る会」などて延々と時間をついやして何も得られないのだと思います。

そもそも、彼らの「権力・政権と戦うこと」が自分たちの使命であると思い込むことが大きな間違いです。

それに、権力者は全て腐敗しているような先入観を持っていては、統治という営み、政治という営みが不可能になります。いずれの世にも権力者は存在するからです。権力者が全く存在しないという社会はアナーキーな世界そのものです。ホッブズが「自然状態」として描いた社会といえばよいでしょうか。その実体が破綻した社会であることを知れば、そんな世界に住みたいという人はいないはずです。


ホップスの著作「リバイアサン」の表紙

マスコミは、このような誤った意思決定にもとづき、様々な行動をするため、仕事においていずれ必ずしなければならなくなる妥協においても誤り続け、衰退し続けているのでしょう。

妥協とは、ドラッカーも語っているように、半分のパンであるべきであって、半分の赤ん坊では、何の用も足さないのです。いつも半分の赤ん坊を得るような妥協を続ければ、衰退するのは当然のことです。

いまのまま「権力・政権と戦うこと」を使命にし続ければ、大手マスコミ自体が、多くの国民から「反社会勢力」とみなされることになってしまうでしょう。

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2019年12月17日火曜日

「日本は貧乏」説に「でも日本は住みやすいし楽しいから充分」と反論するのはもうやめないとオレら後進国まっしぐらだぞ―【私の論評】最も恐ろしいのは日本のニセコ化(゚д゚)!

「日本は貧乏」説に「でも日本は住みやすいし楽しいから充分」と反論するのはもうやめないとオレら後進国まっしぐらだぞ


中川 淳一郎


日経新聞の「 『年収1400万円は低所得』人材流出、高まるリスク 安いニッポン(下)」という記事が登場し、12月16日の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で、OECD加盟国で日本だけが成長しておらず、サンフランシスコでは1400万円でも「低所得」扱い、という話をしていました。日本の家庭あたりの所得は500万円、とも説明していました。

厚労省によると給与は男性441万円、女性249万円。外国人が日本のダイソーで爆買いするのは、日本の方が安いからだそうです。これは嘆くべき話です。しかし、これに対してネットでは反発する人も一部います。それは以下のような論に表れています。

【1】日本で十分に楽しく生活できているんだからいいじゃないか
【2】お前達は家賃60万円、ランチに3000円かかるサンフランシスコに住みたいか?
【3】それでもGDP世界3位だろ
【4】こんなに安全な国はない
【5】税金・医療費も安いし、物価も安くて最高じゃないか


【3】については「お前達は何位になるまでそれを良しとするのだ」という危機感を持つべきだし、OECD加盟国の中ではアメリカ・メキシコに次ぐ人口3位。一応「先進国」扱いの中で人口が多いんだからGDP3位というのも驚くべき話ではない。問題は「一人当たりの生産性」についてなのです。

ここではまず【2】から考えるべきです。東京では1人暮らしで満足できる家だと家賃12万円、ランチが800円~1000円でしょう。地方では家賃6万円~8万円、ランチは700~900円とでもしましょうか。「家賃60万円、ランチ3000円のサンフランシスコなんて最悪だろ?」という発想ですが、それは「下から上を見ている」ことに他なりません。サンフランシスコの人間が、東京事務所に駐在して、サンフランシスコと同様の賃金を貰えるとしたら、松濤のマンションやら高級タワマンを借りる「上級国民」になるわけです。


米国で最も家賃の高いサンフランシスコの家賃

普段、日本人のあまりカネ持っていない人々としか付き合っていないから、【2】のような発想になるんですよ。「彼らはこちらに余裕で来られるけど、オレらはサンフランシスコに行けない。それは悔しい」という発想になった方がいいんですよ。最低でも彼らは「世界のどこでも生きられる」という選択肢を持っている。

国の強さを表すのは通貨の価値ですが、私は1996年、1ドル=79円の時、アメリカ旅行をしました。いやはや、円の強さ、感じましたよ。だって学生街でまともな外食をしたら4ドルとか5ドルなわけで、すると320円~400円で腹いっぱいになるんですから。吉野家の牛丼が400円の時代ですから、アメリカの方が満足度は高かったです。ホテルに泊まろうにも60ドルのまともな部屋だったら4800円です。

こうした経験を経た上で2016年にイタリアに行ったら、ビール2本とパスタで4000円!ランチが4000円ですよ! しかし、周囲のイタリア人を含めた白人や中国人は平然とこれらを食べている。円の力が落ちたことと、日本国内の給与水準の低さを痛感し、「もうヨーロッパには来ない。惨めな気持ちになるだけ」と感じてしまいました。

【1】と【4】についてはセットで考えるべきですが、というかこれ、【2】と【3】も全部考え方としては同じだな。えぇい、すべてまとめてしまえ。【5】は詳しくないので述べない。

◆すべて、「日本買いがしやすくなる」ということに落ち着くのだ

この言葉がすべてです。バブル時代、日本が世界中でブランド品を買い漁ったり、企業の買収を仕掛けまくった時期がありました。あれは日本のあの時の富をもってすれば物価が安い国のものをいくらでも買えた、ということなんですよ。日本の若者も1990年代は東南アジア諸国で「安い安い!」と言いながら現地の人々を見下しながら若干お大尽プレイのようなことをしていました。

今、中国人や欧米の観光客、いや、タイ人だって日本で買い物を満喫しています。小売店で買う分にはいいですが、これがマンションの投機(これはもう充分中国人によって進んでいる)に始まり、土地、水源、企業の買収続出に繋がったらどうするか? 外国からやってきた金持ちに使い倒されるかつてのプランテーションの如き状況になってしまうのかもしれません。

恐らく「日本すごい!」でこの50年ほど来ていたけど、それはもう1995年ぐらいでやめるべき話だったんですよ。バブル崩壊から就職氷河期がやってきて、デフレは改善せず、値上げをすると企業にクレームが寄せられる。安物には大行列ができる惨めな光景がそこかしこで展開される。

多分、今我々は「海外から投機の対象になりうる後進国入りまっしぐら」であることを自覚し、値上げに耐えることをまずは、金持ちはカネをガンガン使い、あとは新たなる成長のエンジンを作ることに邁進する必要があるのではないでしょうか。そのためには基礎研究にカネをつぎ込む必要がある。2位じゃダメなんだよ!

多分、その際にネックになるのが英語力なので、文科省、そこなんとかしろよ。

スウェーデンの環境活動家のグレタさんにカッカしてる大人も多かったけど、あれ、16歳であそこまで英語うまいのに対して劣等感抱いた人も多いんじゃないの? 結局、日本企業が海外に進出しまくったり、海外の金持ちからカネを誰もがふんだくるようにできるには、英語力が必要。そして英語力がないことについても上記【1】のように「だって日本にいればすべて大丈夫だもーん」「日本は、英語ができなくても大丈夫なほど大きなマーケットがあるから問題ナシ」的に開き直り、低い給料に甘んじる。

それでいてソフトバンクが牛丼1杯無料になる企画をすれば道が渋滞するほどの車列を作り、無料の牛丼に群がる。こいつら、若いくせにマインドだけはバブル期の「日本すげー」的なんだよな。危機感ってもんは持った方がいいに決まっている。「取りあえず快適だから」でい続けても成長しないぞ。


【私の論評】最も恐ろしいのは日本のニセコ化(゚д゚)!

冒頭の記事をご覧になって皆さんは、どう思われたでしょうか。この記事は、現象面に関しては、確かに非常に良く描写されていて、説得力があります。

しかし、日本がどうしてこのような状態になったのか、さらに日本がどうすればこのような状況から脱出できるのかという点については、この記事を書いた人(以下記者と呼称)は、的外れか、誤った認識をしています。

最大の過ちは、「日本人が英語ができると、日本企業が海外に進出しまくったり、海外の金持ちからカネを誰もがふんだくるようにできる」としていることです。

この方は、対外純資産(ひらたくいうと、日本が外国に貸し付けているお金)が世界一の国はどこなのか知らないようです。

財務省は今年の5月24日、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産残高が2018年末時点で341兆5560億円になったと発表しました。17年末と比べ12兆2540億円(3.7%)増えました。2年ぶりの増加で、過去2番目の純資産規模になりました。対外資産負債を公表している国で比べると、日本は28年連続で世界最大の純債権国となりました。

今回の対外純資産残高の増加は、対外負債残高が17年末比7兆5800億円(1.1%)減の676兆4820億円となったことが寄与しました。1年前に比べ減ったのは9年ぶりです。海外投資家が保有する日本企業の株価が下落し、日本にとっての対外負債は減少しました。

対外資産残高は、17年末比4兆6740億円(0.5%)増の1018兆380億円となりました。7年連続で過去最大を更新しました。海外の証券投資による資産残高は減少しましたが、対外直接投資の資産残高が拡大して全体を押し上げました。


日本が世界に貸し付けている資産は、世界一ということです。これはバブル期よりもさらに大きくなっています。ということは、記者の人がいう言葉のままにいえば、日本人は英語ができるかできないかは、別にして、「海外に進出しまくったり、海外の金持ちからカネを誰もがふんだくるようにしている」ということです。それも、世界一これを実行しているということです。

ただし、海外純資産が大きければ、大きいほど良いことなのかといえば、そうとも言い切れないです。日本でいえば、日本ではあまりに長い間デフレが続いたので、国内に投資先等が乏しいので、海外に投資したり、進出したという面は否めません。

もし、日本がデフレでなければ、海外純資産がこれほど大きくはならなかったかもしれません。

記者の方も、「バブル崩壊から就職氷河期がやってきて、デフレは改善せず、値上げをすると企業にクレームが寄せられる。安物には大行列ができる惨めな光景がそこかしこで展開される」と、一応。日本がどうして今のような状況になったのか述べています。

しかし、これも現象面を説明しているに過ぎません。この現象はなぜ起きたかといえば、それは、財務省と日銀が政策を間違い続けたということです。財務省は、増税など緊縮政策ばかりとっていました。

日銀は、金融緩和すべきところを金融引き締めばかりやっていました。金融を大幅に緩めたのは、平成13年4月から、日銀がイールドカーブコントロールを採用する2016年9月までのほんのわずかの期間でした。これを採用してからの、日銀の金融緩和は十分ではありません。

特に財務省は、酷い財政政策の間違いを繰り返してきました。以下に「消費税の導入と増税の歴史」ならびに、一般会計税収の推移のグラフを掲載します。


平成元年は、西暦では1989年ですから、1989年から現在までに、4回消費税を増税しています。ご存知のように米国ではトランプ政権が減税を行っています。

このような短期間に、消費税増税を4回も行った国はどこにもありません。これは、日本と他国の大きな違いです。

税収に関しては、消費税増税をしてから現在まで、昨年も90年度なみの税収でした。19年には予算では若干上回るようですが、しかし、本当にそうなるかは未定です。

私は、増税したので、19年には90年よりは少し増えるかもしれませんが、20年にはまた過去のように下がるのではないかと危惧しています。

このグラブをみてもおわかりになるように、消費税増税政策は完璧に間違いだったということです。

では、なぜそうなったかといえば、消費税増税によって、個人消費が減退したためです。何しろ、日本のGDPの約60%は個人消費であり、その消費が減ったので、経済成長せず、その結果として税収も増えなかったのです。

さらにこれに輪をかけて、日銀が、金融引き締め政策をとってきたことが、これに拍車をかけ、日本はデフレが進行し、なかなか脱却できない状況に至ったのてす。

さらには、物価も賃金も上がらずじまいでした。このように長期間デフレを続けた国は世界でも、日本だけです。だからこそ、経済が成長せず、物価も、賃金も上がらなかったのです。

これが、上の記事の作者が鮮やかに描いている日本の厳しい現象が起こった、原因です。他にも原因は多少はありますが、90%以上はこれが原因です。

そのため、この現象を改善するためには、多くの日本人が英語ができるようになっても、金持ちがカネをガンガン使い、あとは新たなる成長のエンジンを作ることに邁進したとしても、根本原因を除去しなければ、何も変わりません。

特に、金持ちがガンガン金を使ったにしても、金持ちの実数はさほど多くはありません。ある程度のお金を使ってしまえば、後は打ち止めでしょう。大金持ちでも、普通の人でも生活していく上での基本的な支出には、天と地ほどの差があるわけではありません。そんなことよりも、多数の日本人が毎年消費を数十万くらいでも多くしたほうが、はるかに経済には効果があります。

こちらは、札幌ですが、札幌の近くにニセコスキーリゾートがあることは、皆さんご存知だと思います。そのニセコがまさにとんでもない状況になっています。

まるで外国のようなニセコの現在の町並み

昨年3月月末、国土交通省から発表された公示地価では、地元の倶知安町の住宅地の公示地価は前年比33.3%と3年連続全国トップ。しかもトップ3をニセコ地区が独占しました。さらに、商業地でも35.6%と全国トップとなり、まさにニセコが日本全国を圧倒しています。

ニセコ町の人口は2016年6月の時点で4901人。国勢調査の結果からみると、1975年以来の高水準となっており、まるで高度成長期並みだといいます。また、隣接する倶知安町では、冬季は特に、スキーリゾートに従事する関係者やインストラクターが多く移住するため、外国人の移住者がますます増加し、2015年には過去最高の809人となりました。

通年通しての移住者も多く、2016年10月6日現在457人、世帯数にして336世帯、これは倶知安町全世帯数7838世帯の約4.3%を占めます。全国都道府県の外国人移住者割合1位の東京都2.4%を上回る数字になっています。また、ニセコ町に関しては3.5%ではあるものの5000人に満たない小さな町でこの割合は異例な人口数だといえます。

こうなれば、少なくとも不動産開発の分野では、日本のデベロッパーや金融機関が荒稼ぎしているのだろうと思いきや、そうではありません。

私が調べた限り、ニセコでの海外富裕層向けを中心としたコンドミニアムや別荘への不動産投資ニーズに、国内の不動産業者・銀行は、ほとんど応えられていないのです。海外不動産業者やプライベートバンクと海外富裕層との間には、独自のネットワークが形成され、日系企業が入り込む余地がほとんどない状態であるというのです。

それどころか、観光客のほとんどが外国人なので、現地で雇用も最近ではほとんどが外国人になりつつあるそうです。

ニセコは、まさに「外国人の、外国人による、外国人のためのリゾート」と化していると言って良いです。地元ニセコ町の分析でも、民間消費や観光業の生産額のほとんどが、町外に流出超過だとされています。観光客や投資の増加は、もはや地域の収入には十分つながっていないというわけです。

まるでオーストラリアの租界になってしまったかのようなニセコ・比羅夫交番

どうして、このようなことになってしまったかといえば、やはり日本ではあまりに長い間デフレが続き、苗場や越後湯沢などのかつてのスキーリゾートでも、バブル期に建てられた、リゾートマンション等が二束三文で売られているというような状況になっているからでしょう。

確かに、今は良いように見えても、国際情勢の変化などで、外国人客がいなくなるという状況も想定できます。そんなことを考えれば、日本のデベロッパーや金融機関が二の足を踏むのも理解できます。私自身も、20年前くらいから、ニセコが今日のような状況になるのは、はっきりとわかっていましたが、それにしても投資をするかといえば、そのような気分にはとてもなれませんでした。

それにニセコの海外ペロッパーは、規模も大きく、世界各地に拠点を持っており、ニセコが一時的にだめになったとしても十分持ちこたえることができます。大手海外デペロッパーはそのようなリスクヘッジもした上でニセコに参入しているのでしょう。

一方日本のデペロッパーなどは、規模も小さく、バブル崩壊とその後のデフレで疲弊した上に過去に多くのスキーリゾートで失敗した経験を直接・間接に持っているので、ニセコ単独開発などできないし、かといって、海外での目ぼしい開発はほとんど終わっている現在では、海外にも進出できず、どうしても二の足を踏んでしまうのでしょう。

私が最大の危惧の念を抱くのは、日本がニセコ化してしまうことです。日本は、先にも述べたように対外純資産が28年連続世界一という大きな潜在能力を持っていながら、ニセコのようになってしまい、ブログ冒頭の記者がいうように、「日本買いがしやすくなる」ということにおちつき、リゾート産業だけではなくありとあらゆる産業が外国資本にとられることになることです。

そうなったときには、日本人はニセコ町や隣の倶知安町の住民のように隅に追いやられ、まともな企業には勤めることもできず、アウトローのような生活しかできなくなっているかもしれません。

本来、ニセコにも、多くの日本人富裕層も押し寄せていれば、あのようなことにはならなかったはずです。ニセコに訪れるスキーヤーの少なくとも4割から、6割が日本人が占めていて、後の残りが様々に国々から来た外国人が占めているという状況なら、ニセコも健全な状態を保つことができたかもしれません。

日本では、アウトバンド消費をもてはやす風潮がありますが、私はニセコの惨状をみていると、そのような気持ちにはとてもなれません。

そうして、現状の日本を改善するためには、もうおわかりでしょうが、愚かな、財務官僚や、日銀官僚のバカ真似を一刻もはやくやめさせることです。それなしに、日本の復興はあり得ません。

いまのままだと、愚かな財務・日銀官僚が日本がニセコ化した後もなお、増税・金融引き締めを行い、外国の日本買いを促進した見返りに、喜び勇んで外国資本の企業に天下りすることになるかもしれません。

そこでは、日本の企業とは桁違いの年俸がもらえることになるかもしれません。無論すぐにそのような状況になるわけてはないでしょうが、今のまま20年、30年と時を経れば、そうなってもおかしくはありません。

日本の復興は目に見える現象面でいえば、ニセコスキーリゾートの訪問者の半分くらかいが日本人になるということです。その時には、かつての苗場や越後湯沢などのスキーリゾートにもお客が戻ってきて、二束三文で売られていたリゾートマンションがまたどんどん値上がりしているでしょう。

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2019年12月16日月曜日

米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由―【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!

米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由
石平 中国深層ニュース

       13日に北京で会見する財政相副大臣の廖岷。重要な会見の
       はずなのに出席者はいずれも副大臣級ばかりだった
<先週末の深夜、突然発表された米中貿易協議「第1段階」合意のニュースは世界を驚かせた。どちらがより多くを勝ち取ったのか公式発表では曖昧なままだったが、これまでの経緯と合意項目を注意深く読み解けば、中国にとっての「不平等条約」であることは明白だ>

今月13日に発表された米中貿易協議「第1段階」合意は、中国側による全面的な譲歩の結果である。そのことは、合意に関する中国側の声明文からは簡単に読み取ることができる。

13日深夜に発表された中国側の公式声明によると、米中間の合意項目は(1)知的財産権(2)技術移転(3)食品と農産物(4)金融サービス(5)為替とその透明度(6)貿易拡大(7)双方による査定・評価と紛争処理の7項目に及ぶという。

7項目合意の具体的内容について中国側の声明は直接に触れていない。しかし、今までの米中貿易協議の経過と内容からすれば、この7項目合意の内容は概ね推察することができよう。要するに、7項目合意の内容は全て、中国側がアメリカ側からの要求を飲んでアメリカ側に譲歩した結果である。


7つの項目を1つ1つ分析すると......

まずは(1)の知的財産権。今までの貿易協議において、アメリカ側は一貫して中国による外国企業や研究機関の知的財産権侵害を問題視して、中国側に知的財産権の保護を求めてきた。第1段階合意がこの項目を含んでいることは当然、中国側がアメリカ側の要求に応じて知的財産権への保護を約束したことを意味する。

(2)の技術移転は要するに「技術移転の強要」のこと。中国は今までに外国企業に対して技術の移転を強要してきたが、アメリカ側は貿易協議においてその是正を中国側に強く求めている。従って(2)に関する米中間合意の内容は当然、中国側がこの要求に応じて外国企業に対する技術移転の強要を止めることを承諾したことであろう。

(3)食品と農産物の内容は簡単明瞭で、要するに中国側がアメリカ側の要求に応じてアメリカから大豆や豚肉などの食品・農産物を大量に購入することである。

(4)金融サービスの項目は、アメリカ側が求めている中国国内の金融サービスの外資に対する開放であるが、この項目で合意に達したことは、中国側がアメリカに対して金融サービス業の対外開放の拡大を約束したことを意味する。

(5)為替とその透明度は、アメリカ側がずっと問題視してきた中国政府による為替操作の問題を指している。この項目に関する合意は、中国側がこの要求に応じて為替の操作を控えることやその透明性を高めることであろう。

(6)貿易拡大に関しては、中国側の発表を見るだけで何を意味するのかがよく分からないが、同じ13日にアメリカ政府は、中国がアメリカから農産物などの輸入を今後2年間で2000億ドル(約22兆円)増やすことで同意したと発表した。つまり中国側はアメリカ側の要求に応じてアメリカからの輸入を大幅に増やすことを約束した、ということである。

以上は、(1)から(6)までの米中間合意の概要であるが、そこには1つの共通点があることにすぐ気がつく。この共通点とは要するに、(1)から(6)までの合意項目の全ては、中国側がアメリカ側の要求に応じて何かを約束したのであってその逆ではない、ということである。

そうすると、合意項目(7)の「双方による査定・評価と紛争処理」の意味は自ずと分かってくる。要するに今後において、中国側が自らの約束したことをきちんと実行しているかどうかを「査定・評価」し、それに関して双方で「紛争」が起きた場合はいかにそれを「処理」するかのことであろう。中国側の発表では一応「双方による査定・評価」となっているが、実際はむしろ、アメリカ側が一方的に中国側の約束履行を「査定・評価」することとなろう。

以上は、中国側の発表した「7つの合意項目」から見た、米中貿易協議「第1段階」合意の概要であるが、ともかくこの合意においては中国側が7つの項目にわたるアメリカ側の要求を受け入れて、それに従って何かをすることを約束した。そして(1)から(6)の項目に関しては、中国は今後具体的な行動をとって自らの約束を履行しなければならないが、アメリカ側は中国に対して背負うべき義務は何もない。アメリカはただ、合意項目(7)に従って、中国は今後約束を履行してくるかどうかを「査定・評価」するだけのことである。

中国が一方的にアメリカ側の要求に従って多くの約束・承諾を強いられ、そして約束の履行に関してはアメリカ側によって「査定・評価」される立場にも立たされた。このような合意内容はどう考えても、中国にとっての「不平等条約」であって、不本意と屈辱の合意であろう。

中国がどうしても譲らなかった項目

その代わりに、中国がアメリカ側から何を得たかというと、1つは、12月15日に予定されている新たな対中国制裁関税発動の見送りであり、もう1つは、発動済みの追加関税のうち、約1200億ドル分の中国製品に課している15%の制裁関税を7.5%に下げてもらうことである。その一方、アメリカの対中国制裁関税のもっとも大きな部分、すなわち2500億ドル分の中国に課している25%はそのまま維持されることになる。

その一方、中国側は最後までアメリカの要求を拒否して自らの立場を守った項目もある。アメリカ側が強く求めてきている、中国政府が国有企業に対する今までの産業補助政策をやめてもらうことである。国有企業こそは共産党政権の経済的基盤であるから、中国はどんなことがあっても国有企業に不利となるアメリカ側の要求を飲むことはない。そして、中国側がアメリカのこの要求を飲まないからこそ、米中貿易協議の合意は「第1段階」の合意に止まって、完成された全面的な合意にならないのである。

実は、この第1段階の合意に至るプロセスや合意にかんする中国側の発表の仕方などから見ても、合意の内容は中国にとって屈辱的な不本意なものであることが分かる。

まず、実に奇妙なことであるが、今年の10月までにずっと中国側を代表してアメリカとの貿易協議に当たってきた劉鶴副首相が、第1段階の合意が近づいてきている11月から突如、協議の場から姿を完全に消した。12月13日の合意達成までの数週間、劉の動静はいっさい伝えられていないし、13日の中国政府による合意発表の場にも現れていない。言ってみればこの合意は、中国側のトップの交渉責任者が不在のままの合意である。全く奇妙だ。

その理由は考えみれば実に簡単だ。第1段階の合意は中国にとって屈辱の不平等条約であるからこそ、習近平主席の側近の側近である劉鶴は意図的にそれに関わっていないようなふりをして、自らの政治的責任を回避しようとしているのであろう。そしてそれはまた、習主席自身の政治的権威を傷つけないための措置でもある。


さらに興味深いことに、13日に中国政府が記者会見を開いて合意に関する声明を発表した時、劉鶴が出ていないだけでなく、部長クラス(日本で言えば閣僚クラス)は誰1人として姿を現していない。今までの貿易協議に関わってきたはずの商務部長(商務大臣)の鐘山までが欠席している。出席者全員が各関連中央官庁の副部長(副大臣)ばかりである。

このような様子から見ても、アメリカとの第1段階の合意は中国にとっては実に不味いものであることがよく分かろう。不味いこそ、地位の高い幹部ほどそれから距離を置いて見せたのである。


中国経済を「破壊」するアメリカの制裁

習近平政権は一体どうして、このような屈辱の「不平等条約」を受け入れたのか。最大の理由はやはり、アメリカの制裁関税の破壊力で中国経済が大変深刻な状態に陥っていることだろう。

国内消費が決定的に不足している中で、対外輸出こそは中国経済成長の原動力の1つであるが、今年の8月から連続4カ月、中国の対外輸出はマイナス成長となっている。そして11月に中国の対米輸出は前年同期比では何と、23%以上も激減した。貿易戦争がさらに拡大していけば、中国経済がどうにもならないのは明々白々である。だから中国としてはどんなことがあってもアメリカの制裁関税の拡大を食い止めたい。そして今までの制裁関税をできるだけ減らしてもらいたい。だからこそ中国は止むを得ず、屈辱の不平等条約を飲んでしまったのである。


【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!

中国が「第一段階」の貿易協定に違反すれば米国は一方的報復を行う可能性がある、とホワイトハウスのピーター・ナバロ通商製造政策局長は15日、FOXニュースのエド・ヘンリーに語りました。


https://www.foxbusiness.com/markets/us-retaliation-phase-one-trade-china

「私が合意で最も気に入っている部分は強制の仕組みだ。それによってもし中国が合意に違反しそれに関して何もできなければ、我々は90日以内に、基本的に一方的に報復できる」とナバロは語った。「だからそのことについては強力な合意だ。中国が約束した2,000億ドル分の農産物、エネルギー・サービス、そして製品を買うか見てみよう。それは最も容易に観察できることだろう――見たままだのことだ」

ナバロは視聴者に、米国がまだ3,700億ドル相当の中国製品に関税をかけていることを思い出させました。

「これは中国に対話を続けさせるための保険であると同時に、我々の技術的重要資産に対する保護でもある」とナバロは語りました。



ピーター・ナバロ通商製造政策局長

ロバート・ライトハイザー米国通商代表は15日朝のCBS「Face the Nation」で同じことを指摘し、合意には「本当に確かな強制力」があると説明しました。

「最終的にこの合意全体が機能するかどうかは、米国ではなく中国で誰が決定を行うかによって決まるだろう」とライトハイザーは語りました。「強硬派が決定すれば1つの結果を得ることになる。改革派が決定を行うなら、それが我々の希望だが、別の結果を得ることになる。これがこの合意についての考え方であり、2つのとても異なる制度を両者の利益に統合しようという中での第一歩だ」

どのような反応だとしても「相応」となるとライトハイザーは述べました。



ロバート・ライトハイザー米国通商代表

米中は13日に「第1段階」の貿易協定に合意した。これによって一部の中国製品に対する関税は引き下げられ、19カ月にわたる貿易戦争の応酬によって痛手を受けてきた米国の農家にとっては好材料となる可能性があります。

中国政府はワシントンとの暫定貿易合意後、米国製自動車と他の製品に対して予定していた報復関税を延期するとしています。

北京は米国製自動車に対して15日に25パーセントの関税を課す予定でした。実施されれば総額が40パーセント引き上げられていました。最大の打撃はドイツのBMWとダイムラーのメルセデス部門であり、米国製SUVと他の車を中国に出荷しています。

ライトハイザーは第2段階合意の交渉がいつ始まるのか答えることはできませんでした。

「日程は決まっていない。・・・最終的な転換、手続きに決着をつける必要がある」と彼は語った。「我々はこの合意に署名しようとしている。だがこれを話しておく。第2段階は第1段階がどれだけ実行できたかによっても決定される。第1段階は細部に至るまで完全に実施されるだろう」



米中貿易交渉「第1段階」は、中国の一方的敗北だった、左よりライトハイザー、ムニューシン、劉鶴
米国が中国を監視するということで、中国はいよいよ身動きがとれなくなるでしょう。このようなことをされれば、従来の中国であれば、このような条項は突っぱねたのでしょうが、中国経済が落ち込んでいる現状では、これを受け入れるしかなかったと見えます。
しかし、これはWTOなどで米国が過去に苦い思いをしてきたからに他なりません。トランプ米政権は中国政府による巨額の産業補助金が世界市場をゆがめているとして非難し、WTOが十分に対処できていないとして改革を要求しています。改革がなされない場合は脱退も示唆しています。

中国は、国内で構造改革をすすめる以外に選択肢はなくなったものと思います。もし、これを進めなければ、米国はあらゆる手を使って、中国経済を破壊し、中国の世界への悪影響を除去するだけです。

このブログでは、過去に中国には民主的手続きで選ばれた、政治家は1人もおらず、すべてが官僚であると批判しました。

石平氏は、上の記事で、「第1段階の合意は中国にとって屈辱の不平等条約であるからこそ、習近平主席の側近の側近である劉鶴は意図的にそれに関わっていないようなふりをして、自らの政治的責任を回避しようとしているのであろう。そしてそれはまた、習主席自身の政治的権威を傷つけないための措置でもある」としています。

これは、まさに官僚の自己保身的行動です。中国共産党は官僚のつまらない無謬性へのこだわりにより、現実を見ず、一時しのぎを繰り返し、結局崩壊するしかなくなります。

中国共産党は、米国の要求を実現することができずに、結局滅びの道を選ばざるを得なくなるでしょう。

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