まとめ
- ウクライナ軍は、ロシア西部クルスク州に対して奇襲攻撃を行い、第80独立空中強襲旅団が参加していることが確認された。
- ソーシャルメディアに投稿された動画には、ウクライナ軍の装甲車両や砲兵部隊がロシア側の陣地に対する攻撃を行っている様子が映っている。
- 第80空中強襲旅団は、旧ソ連から引き継いだ車両と米国から供与された車両を組み合わせて使用しており、ストライカーとマルダーを併用している。
- ウクライナの今回の作戦は、これまでの小規模な襲撃とは異なり、正規軍の複数の旅団が参加する大規模な侵攻である。
- ウクライナ軍は、ロシア軍の手薄な場所を狙って国境を越え、奇襲作戦に成功したとされているが、ロシア軍の迅速な対応が進撃の成否を左右する可能性がある。
ウクライナ軍はロシア西部のクルスク州に対して大規模な侵攻作戦を展開しており、これにはウクライナ軍の中でも特に精鋭とされる第80独立空中強襲旅団が参加している。この旅団は、旧ソ連から引き継いだ装備と米国から供与された装備を組み合わせて使用しており、特にストライカー装甲車とマルダー歩兵戦闘車を併用しています。これらの車両は、迅速かつ強力な攻撃を可能にするため、ウクライナ空中強襲軍にとって理想的な組み合わせだ。
今回の作戦には、第22独立機械化旅団や第88独立機械化旅団も参加しており、砲兵部隊、ドローンチーム、防空部隊が重要な支援を行っています。各旅団は最大で2000人規模の部隊で構成されており、これにより総勢1万人規模のウクライナ軍がクルスク州に展開している可能性がある。
ウクライナ軍は、ロシア軍の北方軍集団が手薄な場所を狙って国境を越えたとされ、これにより奇襲作戦に成功したと報告されている。北方軍集団は現在、ウクライナの国境近くのボウチャンシクで行き詰まっており、ウクライナ軍はこの隙を突いて進撃を試みている。しかし、ロシア側の迅速な対応があれば、ウクライナ軍の進撃が抑えられる可能性もある。
クルスク州スジャを制圧したとされるウクライナ軍 |
この作戦は、ウクライナ軍の指揮官たちが攻撃のペースと規模でロシア軍を混乱させることに成功していると評価されているが、同時にリスクも伴っている。ウクライナ軍は、支援範囲を超えて進軍することでクルスク州の奥深くで孤立し、敵の火力に圧倒される危険性がある。特に、ウクライナ軍は容易には代替できない数千人の人員を危険にさらしているため、慎重な進軍が求められる。
ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は、今回の作戦において北方軍集団司令部の意思決定に「顕著な遅れ」が見られると指摘しており、これはウクライナ軍の作戦の本質を見誤ったためだとしている。ウクライナ軍の指揮官たちは、ロシア軍の指揮官たちを慌てさせることに成功しているとされ、これは称賛に値するものの、最終的な結果はロシア側の対応速度に依存している。
【私の論評】ウクライナ軍のクルスク州侵攻:戦略的目的と国際的影響
まとめ
- ウクライナのクルスク州への侵攻は、ロシアの戦力を分散させ、クリミアや東部の占領地域からロシアの戦力を引き離すことを目的としているとみられる。
- この侵攻は、ロシアの戦争遂行能力を削減し、ウクライナの防衛を強化し、将来的な和平交渉において有利な立場を築くことを目指しているようだ。
- クルスク州が選ばれた理由は、ロシア軍の守備が脆弱であり、ウクライナ軍が奇襲作戦を成功させることができたためとみられる。
- 米国やG7は、ウクライナの行動を非難しておらず、ウクライナの戦略がロシアの侵攻に対抗する正当な手段であると見なしている可能性がある。
- 西側諸国はウクライナ支援に対する「支援疲れ」の兆候を見せ始めており、今後の国際情勢や国内政治の動向により支援の継続が試される状況にある。
侵攻にウクライナ軍が用いたとされるストライカー装甲車 |
また、ウクライナは、ロシアの戦争遂行能力を削減することを目指しています。ロシアのインフラや軍事施設を攻撃することで、ロシアの軍事的な圧力を軽減し、ウクライナの防衛を強化する狙いがあります。さらに、ウクライナは戦場での優位性を確保し、将来的な和平交渉において有利な立場を築くことを目指していると考えられます。戦場での成功は、交渉の場での強力な交渉カードとなり得るからです。
クルスク州が選ばれた理由として、ロシア軍の守備が脆弱であったことが挙げられます。ウクライナ軍は、ロシア軍の防衛が手薄な場所を狙って国境を越えたとされており、これにより奇襲作戦に成功したと報告されています。ロシアの軍事ブロガーや専門家も、クルスク州でのロシアの対応が後手に回ったことを指摘しており、ウクライナ軍の侵攻が前々から準備されていたことを示唆しています。
さらに、ウクライナは国際社会の注目を集め、ウクライナへの支援を強化するための一環として、この攻撃を行っている可能性があります。これにより、ウクライナの立場を国際的に強化し、ロシアに対する圧力を高めることを狙っています。また、ウクライナ軍の越境攻撃は、ロシア国内での混乱を引き起こし、ロシアの指導部に対する圧力を高めることを目的としている可能性もあります。これには、ロシア国内の住民の不安を煽ることも含まれます。
この侵攻に対して、米国やG7は非難をしていないというのは事実です。米国務省の報道官は、ウクライナの行動が米国供与の兵器使用に関する規制に違反していないと述べており、米国はウクライナの行動を容認する姿勢を示しています。G7についても、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する声明を出しているものの、ウクライナのクルスク州への侵攻に対する直接的な非難は見られません。
このような反応の背景には、ウクライナの戦略がロシアの侵攻に対抗するための正当な手段であると西側諸国が見なしている可能性があります。ウクライナの攻撃は、ロシアの戦争遂行能力を削減し、和平交渉において有利な立場を築くための一環と考えられており、これが非難されない理由の一つと考えられます。西側諸国は、ウクライナの戦略的な行動がロシアの侵攻に対抗するための正当な手段であると見なしている可能性が高いです。
ウクライナのクルスク州への侵攻は、西側諸国にさまざまな影響を与える可能性があります。まず、ウクライナの行動は、ロシアの戦力を分散させる戦略の一環と見なされており、西側諸国はこれを理解し、非難しない姿勢を示しています。米国務省も、ウクライナの行動が米国供与の兵器使用に関する規制に違反していないと述べており、ウクライナの戦略を支持する姿勢を示しています。
しかし、西側諸国はウクライナ支援に対する「支援疲れ」の兆候も見せ始めています。特に、米国では大統領選挙を控えており、政権が変わればウクライナ支援が後退する可能性があります。また、中東情勢の悪化により、米国はウクライナと中東での二正面作戦を強いられており、ウクライナへの支援がこれまで通り継続できるか不透明です。
さらに、ウクライナの侵攻は西側諸国の外交政策にも影響を与えています。アフリカ諸国は、西側諸国の対応をダブルスタンダードとして批判しており、ウクライナ避難民への手厚い支援が報道されるたびに、西側諸国からの距離が広がっているように見えます。
今回のウクライナのクルスク州への侵攻は、以上のような西側諸国のネガティブな反応に対する起死回生策としての側面を持っている可能性があります。
これらの状況は、西側諸国にとってウクライナ支援の持続可能性や民主主義の強靭性を試す試金石となっています。西側諸国がウクライナ支援を継続するかどうかは、今後の国際情勢や国内政治の動向に大きく依存することになるでしょう。
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