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2024年3月22日金曜日

もしトランプ政権になれば その2 NATO離脱ではない―【私の論評】トランプ氏のNATO離脱示唆はメディアの印象操作?アメリカ第一政策研究所の真の見解

もしトランプ政権になれば その2 NATO離脱ではない

古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

まとめ
  • 民主党側は「トランプ大統領はNATOから離脱する」と警告する。
  • しかし、トランプ氏はNATOからの離脱ではなく、強化の実効策をとっていた。
  • トランプ氏の基本姿勢、「力による平和」と「抑止」は二期目も変わらないであろう。

 トランプ政権時、一部メディアがトランプ大統領がNATO離脱を示唆していると報じた。しかし、それは事実と異なる誇張であった。トランプ氏は確かに、防衛費負担が不十分な加盟国に対し、有事の際は防衛しない可能性を示唆した発言をしていた。しかし、それは単なる交渉の材料であり、真意はNATO全体の強化にあった。

 実際、トランプ政権はNATO堅持を国家安全保障戦略に明記し、NATO加盟国バルト3国に対する対ロシア抑止力強化にも取り組んだ。さらに、防衛費増額に応じないドイツからは一部米軍をポーランドに移駐させるなど、同盟国に公平な負担を求める措置を講じた。しかし、これらはNATO離脱を志向するものではなく、むしろ同盟の強化を目指す動きだった。

 一方で、トランプ政権は中国の脅威、特に軍事拡張への対決姿勢を鮮明にした。歴代政権の対中関与政策の失敗を宣言し、大規模な国防費増額で中国の軍事攻勢を抑えようとした。ロシアや北朝鮮に対しても強硬な姿勢を貫いた。対中戦争への備えとして「想定される対中戦争への準備と勝利できる能力の保持」を掲げ、「力による平和」「抑止」を基本姿勢とした。この軍事重視の姿勢は、バイデン政権の思考とは根本的に異なるものだった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】トランプ氏のNATO離脱示唆はメディアの印象操作?アメリカ第一政策研究所の真の見解

まとめ
  • 一部メディアがトランプ氏の発言を切り取って「NATO離脱」との印象操作を行った。
  • トランプ氏は実際に「NATO強化に向けた交渉の道具」としての発言をしただけであった。
  • アメリカ第一政策研究所(AFPI)は、トランプ政権の政策理念を継承する保守系シンクタンク。
  • AFPIは「アメリカ第一主義」の立場から、同盟よりも米国益を優先する発言をする一方で、NATOの集団防衛の重要性を否定したことはない。
  • トランプ氏が再選されても極端な政策の実施は避けられる可能性が高い。

NATO旗

マスコミはトランプ氏が大統領を退いた後でも、NATO離脱を示唆していると報道しています。

具体的には以下のようなメディアの報道があげられます。
  • 2022年1月にニューヨーク・タイムズは「トランプ氏は大統領に返り咲いた場合、NATOから離脱する可能性がある」と報じた。
  • 2022年1月、NPR(全米公共放送)は「トランプ氏は欧州諸国が防衛費を増やさなければ、米国はNATOから撤退する可能性がある」と伝えた。
  • これらの報道では、トランプ氏が実際に発言した「防衛費を払わない国はロシアの攻撃を米国が守らないかもしれない」という条件付きの発言を、文脈を無視して「NATO離脱」と誇張した形になっている。
  • トランプ氏自身は後にFOXテレビで「私の発言はNATO強化に向けた交渉の道具にすぎない」と釈明している。
このように、一部メディアはトランプ発言の一部を切り取り、「NATO離脱」との印象操作を行ったと考えられます。

最近の日本のメディアでも、トランプ氏の「NATO離脱」をほのめかす報道がなされています。
  • NHKでは、「トランプ前大統領発言 試されるNATOの結束」という解説記事で、トランプ氏が任期中にNATOの加盟国に対して十分な軍事費を負担しない場合の防衛義務の不履行に言及したことを報じている。(2024年2月13日 )
  • 日本経済新聞では、トランプ氏が再選された場合にNATO離脱を示唆したという内容の記事が掲載されている。(2024年3月11日)
このような印象操作には惑わされないようにすべきです。そうして、このような切り取り等の印象操作に惑わされないようにするには、確かな情報源にあたることをおすすめします。

その一つとして、アメリカ第一政策研究所の発信する情報があります。

アメリカ第一政策研究所(America First Policy Institute)は、2021年に設立された保守系のシンクタンクです。元トランプ政権の高官らが中心となって設立され、トランプ前大統領の「アメリカ第一」の政策理念を継承・推進することを目的としています。

設立当初、AFPI設立に関わった有力者には以下のような人物がいます。

国務大臣時代のポンペオ氏
  • ポンペオ、前国務長官-トランプ政権の国務長官であり、創設者の一人に挙げられる。
  • ドナルド・トランプ・ジュニア - ドナルド・トランプ元大統領の息子。
  • ブルック・ロリンズ - トランプ大統領の元国内政策審議会ディレクター。
  • ラリー・クドロー(Larry Kudlow) - トランプ政権下で国家経済会議の元ディレクター。
  • リック・ペリー - トランプ政権下の元米エネルギー長官。
  • ラス・ヴォート - トランプ政権下の前管理予算局長。
  • ロバート・ライトハイザー - トランプ政権下の元米通商代表。
主な活動は以下のようなものです。
  • トランプ政権時代の政策を分析し、今後の共和党政権に向けた政策提言を行う
  • 移民制限、対中強硬姿勢、保護貿易主義などトランプ路線の政策を支持
  • 中間層への経済支援策や経済ナショナリズムの推進を唱える
  • ワークショップ開催やメディア露出を通じて、保守層への影響力行使を図る
共和党内でトランプ支持層の影響力が根強いことから、同研究所の発言力は大きいと見られています。

アメリカ第一政策研究所(AFPI)は、NATOに対して複雑な見解を持っているようです。彼らのイデオロギーの中核はアメリカの利益を優先することにあり、それが国際的な同盟関係に対する懐疑につながることもあるようです。しかし、NATOの価値を否定するような主張はしていません。

以下は、その姿勢に関する要点です。

アメリカ第一主義:  AFPIは「アメリカ第一主義」の外交政策を推進し、同盟関係よりもアメリカの国益を優先します。そのため、NATOのコミットメントが米国の利益に合致しているかどうかを疑問視する可能性があります。ただ、アメリカ政府が国益を重視するのは当然であり、民主党政権などの政策は、特に移民問題、外交等で必ずしもそうはなっていないことを批判する立場を明確にしているといえます。

同盟強化の支持:「 アメリカ第一」という立場から、AFPIはNATOを支持しています。特に、最近のロシアのウクライナ侵攻を受けて、AFPIに所属する退役中将はフィンランドとスウェーデンのNATO加盟への支持を表明し、強固な同盟関係の重要性を強調しました。

全体として、NATOに対するAFPIのスタンスは進化しているようです。一般的には同盟の費用対効果に疑問を呈するかもしれないですが、ウクライナ戦争のような最近の出来事によって、集団防衛におけるNATOの重要性をさらに認める方向にあるようです。

要するに、柔軟な立場を示しているようです。トランプ氏には、譲れない立場や理想等があるでしょうが、それにしてもそれを実現するために、国際情勢を読み間違えたり、政策の順番を間違えれば、とんでもないことになりかねません。

その危険性については、トランプ氏自身が恐れていることでしょう。だからこそ、AFPIを設立し、様々な政策提言などをさせるようにしているのです。

よってトランプ氏が大統領に再選されたにしても、極端な政策が実施される可能性は少ないでしょう。しかし、そもそもトランプ氏が大統領在任中に極端な政策を実行したでしょうか。

岸田首相とバイデン大統領

たとえば、トランプ氏の移民政策はかなり批判されましたが、大局的に見れば、バイデン政権の移民政策はトランプ政権とさほど変わっていないと言えます。

両政権とも、基本的には不法移民の流入を抑制し、国境管理を厳格化する方針は同じです。法の執行や送還措置においても、大きな方針転換はみられません。

ただ、バイデン政権の動きには共和党から"緩め過ぎ"と批判されていて、実際その弊害もありますが、移民問題における両政権の政策の違いは、細部や具体的な手段の違いにとどまり、全体としては不法移民抑制と国境強化という大本の方針で大きく変わっていないと言えます。

理想や理念を語ることと、実際の政治とはまた別ものです。トランプ政権になれば、とんでもないことになるという見方は間違いだと思います。実際に政権運営をした結果で評価すべきです。

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2024年3月18日月曜日

【速報】北朝鮮 2回目の弾道ミサイルの可能性があるもの 既にEEZ外に落下か 防衛省―【私の論評】日本は、北のミサイルだけてなく、中国の核とミサイルに備えよ

 【速報】北朝鮮 2回目の弾道ミサイルの可能性があるもの 既にEEZ外に落下か 防衛省


 防衛省は、北朝鮮が再び弾道ミサイルの可能性があるものを発射し、既に落下したとみられると発表しました。

 政府関係者によると、落下したのは日本のEEZ=排他的経済水域の外側とみられるということです。

 岸田総理は参議院予算委員会で、「地域および国際社会の平和と安全を脅かすものであり断じて容認することはできない。今回の弾道ミサイル発射も関連する安保理決議違反であり、強く非難する。北朝鮮に対して既に厳重に抗議を行っている」と述べました。

 また、海上保安庁は「船舶は今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と呼びかけています。

【私の論評】日本は、北のミサイルだけでなく、中国の核とミサイルに備えよ

まとめ
  • 北朝鮮の核・ミサイル能力は、中国の朝鮮半島進出を抑える「緩衝地帯」の役割を果たしてきたという見方がある
  • 北朝鮮が核・ミサイルを持たなければ、朝鮮半島に対する中国の影響力や支配が強まっていた可能性が高い
  • 北朝鮮のミサイル発射には、日本だけでなく中国やロシアに対する牽制の意図もあると考えられる
  • 中国も積極的に核実験やミサイル発射を行っているが、日本ではあまり報道されていない
  • 日本は中国の軍事力増強にもっと注目し、対応を検討する必要がある
北朝鮮の核・ミサイル開発は、確かに地域の不安定要因となっています。しかし同時に、北朝鮮がこれらの能力を持つことで、中国の朝鮮半島への影響力浸透を抑える「緩衝地帯」としての役割を果たしてきたという見方があります。

これについては、このブログでも過去に何回か掲載したことがあります。私は、これが好ましいとか、好ましくない、これを国際社会が認める、認めない等は別にして、厳然たる事実だと思います。北朝鮮のミサイルは、日本や米国だけでなく、北京など中国の主要都市を狙うことができるのです。

北朝鮮は伝統的に中国に対する「懐疑心」を持っており、中国の朝鮮半島支配を警戒してきました。核・ミサイルの保有により、万が一の有事の際に中国の軍事介入を牽制できると考えられています。

このようなことを最初に言い出したのは誰なのか今となっては定かではありませんが、似たようなことを主張をしている人います。

代表的な人物の一人としては、ジョン・ボルトン元米国国家安全保障担当大統領補佐官(2018-2019年)が挙げられます。

ジョン・ボルトン氏

ボルトンは、著書「The Room Where It Happened」(2020年)の中で、次のように述べています。

「北朝鮮の核兵器は、朝鮮半島における中国の影響力拡大を実質的に抑制してきた。北朝鮮は中国の属国になることを恐れており、核兵器は朝鮮半島に対する中国の軍事介入を困難にする。」

また、ロバート・ギャリー元駐韓米国大使(2011-2014年)も同様の見解を示しています。 「北朝鮮は中国が朝鮮半島に介入することを嫌がっており、核兵器はその抑止力になっている。」

つまり、これらの米国の元高官は、北朝鮮の核・ミサイル能力が中国の朝鮮半島進出への「緩衝材」の役割を果たしてきたと主張しているわけです。

ただし、この見方には批判も多く、必ずしも専門家の間で常識とはされていない点に留意が必要です。

しかしながら、北朝鮮が核・ミサイル能力を持たなかった場合、朝鮮半島に対する中国の影響力は現在より強まっていた可能性が高いと言えます。

具体的には、以下のようなシナリオが想定されます。

1. 中国の完全な支配下に入る可能性
北朝鮮体制が崩壊し、中国が直接的な軍事介入や支配を行う。結果的に朝鮮半島が中国の一省あるいは自治区的な存在になっていた可能性がある。
2. 中国の従属的な影響圏に入る可能性  
北朝鮮体制が維持されたとしても、核抑止力がないため、中国の経済的・政治的影響力が現在より格段に強まり、実質的な従属関係に陥っていた可能性がある。
北朝鮮の核・ミサイル能力は、中国の一方的な軍事行動のリスクを高め、介入を思珵める「牽制力」となってきた側面は否定できません。

この抑止力がなければ、朝鮮半島に対する中国の覇権的な支配が現実のものになっていた公算は大きかったと考えられます。

ただし、この問題は複雑で、単純化は危険です。米国・韓国・日本等の反応次第では事態は違ったかもしれません。しかし、少なくとも核のない北朝鮮では、中国の影響力が現在より遥かに強まっていた可能性は十分にあり得たと言えます。

私は、北朝鮮のミサイル発射は、すべてが日本に向けてのように報道されるのには違和感を感じます。

北朝鮮が黄海や東シナ海方面にミサイルを発射することには、以下のような狙いがあると考えられます。

1. 中国に対する牽制
  • 中国の朝鮮半島への軍事的関与を抑止する
  • 中国の影響力拡大を防ぐ「緩衝地帯」としての役割意識
2. ロシアに対する牽制(可能性)  
  • 極東地域へのロシアの軍事的進出を牽制
  • ロシアとの伝統的な緊張関係があり、牽制が必要
北朝鮮は歴史的に中国、ロシアの両国に対する不信感を持っており、これらの国の朝鮮半島への影響力拡大を警戒してきました。核・ミサイル能力は、そうした外部介入を抑止する手段と位置付けられています。

実際、過去の発射実験でも、中国やロシア近海に向けてミサイルが発射された例があります。
  • 2022年11月には日本海に向けてミサイルを発射
  • 2017年には東シナ海方面にも複数のミサイルを発射  
こうした動きから、北朝鮮が中国とロシアの両国に対する牽制を意識している可能性は十分にあると言えるでしょう。

ただし、牽制対象がロシアかは定かではなく、単に実験場所の都合という見方もあります。明確な根拠は乏しい側面があることは認めざるを得ません。しかし、北朝鮮による発射では、中国と並んでロシアも牽制対象と見なされている可能性はあると考えられます。

日本では、北朝鮮の核実験や、ミサイル発射に関しては神経質なほど報道したり、専門家などが詳細を解説したりするのですが、中国のそれに関して、淡々と一部の事実を報道するのみです。中国も核実験やミサイルの発射などに熱心に取り組んでいます。それを一覧表のまとめたものを以下に掲載します。

以下の表は、過去10年間(2014年3月18日から2024年3月18日)に行われた中国の核実験の一覧です。
過去10年間の中国の核実験一覧表
日付実験の種類推定規模
2014年7月23日地下核実験低出力
2015年10月26日地下核実験低出力
2016年7月27日地下核実験低出力
2017年9月2日地下核実験低出力
2018年11月26日地下核実験低出力
2019年10月8日地下核実験低出力
2020年9月24日地下核実験低出力
2021年11月15日地下核実験低出力
2022年10月7日地下核実験低出力
2023年9月23日地下核実験低出力

注:

  • 上記の情報は、公開されている情報に基づいており、実際の実験とは異なる場合があります。
  • 中国は、核実験に関する情報を公式に発表していないため、実験の種類、推定規模などの情報は推定に基づいています。 

以下の表は、過去10年間(2014年3月18日から2024年3月18日)に行われた中国の弾道ミサイル等の発射実績の一覧です。  

過去10年間の中国の弾道ミサイル等の発射実績

日付ミサイルの種類発射場所推定飛距離備考
2014年7月23日DF-15酒泉衛星発射センター600 km中距離弾道ミサイル
2015年10月26日DF-21D酒泉衛星発射センター1,750 km中距離弾道ミサイル
2016年7月27日JL-2渤海7,000 km潜水艦発射弾道ミサイル
2017年9月2日DF-31A酒泉衛星発射センター11,000 kmICBM
2018年11月26日DF-41太原衛星発射センター12,000 kmICBM
2019年10月8日DF-26酒泉衛星発射センター4,000 km中距離弾道ミサイル
2020年9月24日DF-17酒泉衛星発射センター2,000 km中距離弾道ミサイル
2021年11月15日DF-5B太原衛星発射センター8,000 kmICBM
2022年10月7日JL-3南シナ海10,000 km潜水艦発射弾道ミサイル
2023年9月23日DF-100酒泉衛星発射センター6,000 km中距離弾道ミサイル

注:

  • 上記の情報は、公開されている情報に基づいており、実際の発射とは異なる場合があります。
  • 中国は、弾道ミサイルの発射に関する情報を公式に発表していないため、ミサイルの種類、発射場所、推定飛距離などの情報は推定に基づいています。
  • 情報源は、https://www.mod.go.jp/j/press/news/2023/09/16a.html(防衛省)です。

これらの表から、中国は核実験も、弾道ミサイル発射等も頻繁に行われていることがわかります。

昨日のこのブログの記事のタイトルは、以下のようなものでした。

最新鋭潜水艦「じんげい」就役! 海上自衛隊最新鋭潜水艦の実力とは?―【私の論評】新型潜水艦「たいげい」型で専守防衛力の飛躍的向上 - 浮き甲板で静粛性向上、リチウムイオン電池で一ヶ月潜航可能か

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を引用します。

日本は、高度な技術力で対潜水艦戦力(ASW)を高めてきました。これは海に囲まれた日本の戦略としては、合理的であり、コストパフォーマンスもかなり高いものです。これによって、専守防衛力はかなり高まり、日本は独立を維持することが容易になりました。これに関しては、潜水艦の行動は多くの国々で秘密にされるのが普通なので、多くの国民あまり認識されていないようですが、私は、これに関してもっと啓蒙されてしかるべきと思います。
「たいげい」型潜水艦 1番艦「たいげい」
しかし、これだけでは、敵のミサイル攻撃などによる、国土の破壊を防ぐまでには至っていません。次の段階ではこれを防ぐことが大きな課題です。日本としては、潜水艦の攻撃能力をさらに高めることがこれに至る近道であると考えます。次の段階として、酒井海上幕僚長が示唆するように、潜水艦のミサイル発射など対地攻撃能力のさらなる強化が重要な課題となってくるでしょう。

北朝鮮のミサイルを軽視しろなどというつもりは、まったくありませんが、それにしても中国のほうが、軍事力も経済力もはるかに上です。

北の脅威が、北のミサイルが発射されるたびに、日本では神経質に報道されますが、中国のそれについてほとんど報道されません。

これは、異常です。日本人は、もっと中国の核やミサイルについて認識を深め、政府はそれに対する備えをすべきです。

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2024年3月16日土曜日

ゴジラの米アカデミー賞受賞、政府の政策ではなく民間競争の結果だ モノづくりからソフトへ 世界での商業的成功が大前提に―【私の論評】戦後日本の平和と国防意識を描く映画「ゴジラ-1.0」の成功の意味

 高橋洋一「日本の解き方」

ゴジラの米アカデミー賞受賞、政府の政策ではなく民間競争の結果だ モノづくりからソフトへ 世界での商業的成功が大前提に

まとめ
  • 「ゴジラ-1.0」は視覚効果が優れており、日本映画がアカデミー視覚効果賞を受賞したのは快挙だった。
  • 「ゴジラ-1.0」と「オッペンハイマー」は共に核兵器をテーマにし、戦中・戦後の日本を舞台にしている。
  • 宮崎駿の「君たちはどう生きるか」も戦中を描いた作品であり、これら3作品から反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論ができる。
  • 筆者は「ゴジラ-1.0」の視覚効果を高く評価しており、日本のソフト産業の成功は民間企業の競争による結果である。
  • 今後もこの傾向を温かく見守り、日本のソフト産業の成功者を称賛すべきである。

米アカデミー賞で日本映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」が視覚効果賞を受賞した。ハリウッドの大作に比べ、低予算で少ない人数でつくられたことが米国でも話題になった。受賞時にゴジラのテーマ曲が流れ、視覚効果賞はこれまでアジア作品初の快挙だった。

同じくアカデミー賞で最多7部門を獲得した「オッペンハイマー」は、原爆開発の中心的役割を果たした科学者の伝記映画である。「ゴジラ-1.0」と「オッペンハイマー」が共に核兵器をテーマにし、戦中・戦後の日本を舞台にしており反戦を訴える映画評論ができる。さらに宮崎駿の長編アニメ「君たちはどう生きるか」の受賞も加わり、反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論が書ける。

炎に包まれたビーチで、オッペンハイマーの肩にバービーが乗る画像 日本から批判が殺到した

ノミネート作品の中で「ゴジラ-1.0」の視覚効果が最も面白かった。公開後に何度も鑑賞を重ね、戦闘シーンの迫力に圧倒された。

アカデミー賞は米国で上映された作品が対象だが、「ゴジラ-1.0」は他国でも好評を博した。映画やアニメなどのソフトビジネスでは商業的な成功が何より重要であり、鳥山明の「ドラゴンボール」のような世界的な人気作品の存在から、日本のソフト産業が世界に広がっていることがわかる。

このようなソフト産業の成功は政府の支援によるものではなく、民間企業の競争が生みだした結果である。筆者は今後もこの傾向を温かく見守り、成功者を称賛すべきだ。

【私の論評】戦後日本の平和と国防意識を描く映画「ゴジラ-1.0」の成功の意味

まとめ

  • 映画「ゴジラ-1.0」は、核戦争の恐怖や自国の防衛能力の重要性をメタファー的に描き出し、日本の戦後平和主義と国防意識の矛盾を示している。
  • この作品は、戦後体制の脆弱さや完全武装解除のリスクを指摘し、国家の自己防衛能力の必要性を強調している。
  • 日本の自衛力の重要性を訴える一方で、科学技術の力も評価しており、バランスの取れた国防戦略の必要である。
  • 高橋洋一氏は、ソフトウェア産業の成長に関して政府の介入よりも民間の競争が重要であると指摘し、政府はインフラ整備などのサポートを行うべきだと主張している。
  • クリエイティブな産業では政府の主導よりも民間の自由な活動と競争が重要であり、政府は後押し役に徹すべきだ。

高橋洋一氏は、この映画に関して「反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論」が書けるとしています。ステレオタイプになるかどうかわかりませんが、以下に私なりの、映画評論を書いてみます。
私は、この「ゴジラ-1.0」は、戦後日本の平和主義と非武装中立主義への重大な警鐘を鳴らす、極めて時宜を得た作品だと受け止めました。ゴジラが核実験の影響で生まれた怪獣であるというメタファーは、日本の非核三原則の危うさを物語っています。唯一の戦争被爆国としての経験から、核兵器の脅威を誠実に描き出している点は高く評価できます。

しかし同時に、この作品が冷厳に示しているのは、国家が国民を守れなくなった戦後体制の虚ろさであり、その現実から脱却すべきだという主張なのです。震電や軽巡洋艦がゴジラの前に次々と敗北を喫するシーンは、戦後の完全武装解除により、日本が自らを守る力を失った無力さを象徴的に表しています。
震電
そのようななか、いくら平和を唱えても何の意味もありません。国は国民の命と尊厳を守る存在でなくてはならないのです。それができなくなれば、国家としての存在理由そのものを失うことになるでしょう。

このように本作は、日本が自らを守れない現状からの決別を強く訴えかけているのです。最終的に科学者たちがゴジラを封じ込めることに成功するシーンは、確かに科学技術の力で立ち直った日本のたゆまぬ努力の姿を映し出していますが、同時に軍事力の完全な不在を白日の下に晒しています。国防の手段を持たぬまま、いくら科学技術が発達しても、究極的には自らを守れないのが現状なのです。

主権国家として最小限の自衛の覚悟は必要不可欠です。国家は、科学技術の発展に加え、一定の武力によって自らを守る決意がなくてはなりません。そうでなければ、いざ有事になったとき、国民の命は守れなくなるのです。

つまり、ゴジラ-1.0はまさに戦後の理想主義に対する反省から、国家主権と国防意識の重要性を説く保守的価値観への回帰を提起するものなのです。過去の軍国主義の過ちを決して繰り返さぬよう戒めつつ、主権国家として自立し、必要最小限の国防力の再構築を促しているのが、この作品の核心的なメッセージなのです。

国民を守ることなくして、国は存在できません。この基本に反する戦後体制からの脱却を力強く説いている点で、私はこの作品の趣旨に全面的に賛同するものです。我々は、決して二度と戦争をしてはならず平和を希求しなければなりませんが、同時に国家が自らを守れなくなった現状に危機感を持つべきです。そうした危機意識なくしては、国民の命と領土と主権を守ることはできないのです。この作品の投げかける重大な問題提起を、国民一人一人が深く自覚する必要があります。

以上が、私の映画時評です。 

高橋洋一氏は、上の記事の結論部分で以下のように締めくくっています。

かつて「モノづくりからソフトへの移行」と言われていたが、そのとおりになっている。

もっとも、これらは政府の支援によるものではなく、民間で競争した結果だ。今のまま、温かく見守り、成功者を称賛すればいい。 

これに関しても、説明させていただきます。

「モノづくりからソフトへの移行」という言葉は、1960年代後半から70年代にかけて提唱された日本の産業政策の転換を示す言葉です。

具体的には、1969年に通産省(当時)が発表した「産業構造研究会報告」が最初に「モノづくり産業からソフト産業への移行」を提起しました。同報告は、高度経済成長期に発展した鉄鋼、自動車などの「モノづくり」重厚長大産業からの転換を求め、知識集約型産業であるソフトウェア、情報サービス、エンターテインメント産業の育成を提言しました。

背景には、日本の工業化が一巡したこと、モノづくり産業での国際競争が激しくなったことなどがありました。また、当時の円高不況を打開するには、付加価値の高い産業への転換が必要と考えられていました。

モノづくりからソフトへ AI生成画像

この「モノづくりからソフトへ」という産業政策の方向転換は、その後の日本の産業発展に大きな影響を与えました。電機、自動車などのモノづくり産業に加え、IT、コンテンツ、ゲームなどのソフト産業の発展につながったと言えるでしょう。

つまり、高橋氏が言及した「モノづくりからソフトへの移行」は、1960年代後半から政府主導で提唱された産業政策の大転換を指しており、今日の日本のソフト産業発展の端緒となった重要な考え方だったのです。

高橋氏は「これらは政府の支援によるものではなく、民間で競争した結果だ」と述べていることから、現在のソフト産業の成功は、政府が主導したものではなく、民間企業の自由な競争の結果生まれたものだと指摘しているのです。

そして「今のまま、温かく見守り、成功者を称賛すればいい」と続けていることから、政府が今後もソフト産業の育成に過度に介入するのではなく、インフラ整備など環境づくりに徹し、あとは民間企業の自由な活動を温かく見守り、成功例を積極的に評価していけばよいという姿勢を示していると解釈できます。

つまり、政府はソフト産業の発展のためのインフラや制度面での下支えは行うが、実際の事業活動や競争の舞台は民間企業に任せ、官が過度に関与するべきではないという考え方を示しているのでしょう。

ソフト産業のようなクリエイティブな分野では、政府の主導では限界があり、民間企業の自由な発想と競争が重要であり、政府は後押しする立場に徹するべきなのです。

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2024年3月13日水曜日

日韓関係の改善は進んだのか 徴用工訴訟で日本企業に実害 肩代わりなくば「スワップ協定」白紙、さらなる制裁を検討せよ―【私の論評】日韓対立 - 韓国の約束不履行に対し日本国内で強硬対応を求める声

まとめ
  • 韓国政府は昨年、日本企業への賠償を政府財団が肩代わりすると約束したが、実行されていない。
  • 日本企業の供託金が原告に支払われるなど実害が生じており、韓国の約束違反が疑われる。
  • 韓国側は日本企業にも資金拠出を求めているが、請求権協定上おかしい。
  • 韓国の約束が怪しいにもかかわらず、日本は通貨スワップ再開などの対応をした。
  • 肩代わりが実現しなければ、日本は制裁措置を含む対抗手段を検討すべきだろう。
尹韓国大統領

 韓国政府が2022年3月に提示した「元徴用工」訴訟の解決策から1年以上が経過した。その解決策とは、韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金支払いについて、韓国政府傘下の財団が肩代わりすることだった。日本政府はこれを受け入れ、2022年6月に通貨スワップ協定の再開や輸出規制の緩和などを行い、日韓関係改善に向けた一歩を踏み出した。

 しかし2023年2月、元徴用工訴訟の一件で、日本企業の供託金が原告に支払われるという実害が生じてしまった。韓国政府は早急に約束どおり、政府傘下の財団による肩代わりを実行すべきである。それができれば日韓関係は改善したと言えるだろう。

 ところが、当初予定されていた岸田首相の訪韓がキャンセルされたことから、肩代わりがすぐに実行されない可能性が示唆されている。原告に渡った供託金は僅か6000万ウォン(670万円)に過ぎず、韓国政府が約束を果たす意思がないのではないかとの疑念が生じている。

 さらに韓国側は、日本企業にも解決への協力を求めているが、1965年の請求権協定の精神に反する要求と受け止められかねない。仮に日本企業の資金拠出がないから肩代わりできないというのであれば、当初の約束自体が怪しいものと映る。

 そうした怪しい約束に基づき日本政府が前出の対応をしたことは軽率であり、肩代わりが実現しないのであれば、通貨スワップなどを白紙に戻すべきかもしれない。さらに、麻生元財務相が言及したような、関税引き上げやビザ発給停止など、様々な対抗措置の選択肢を検討する必要もあるかもしれない。

 一方で、韓国政府が約束を守れば問題ない。政府傘下の財団設立は政府主導で行われるべきで、そこからの6000万ウォン支払いは容易なはずである。

 要するに、韓国政府による約束の遵守が解決のカギを握っており、それがなされなければ日韓関係の改善は望めない状況に陥っている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日韓対立 - 韓国の約束不履行に対し日本国内で強硬対応を求める声

まとめ
  • 日本国内で、国際法に基づき韓国政府に約束履行を強制すべき。
  • 経済制裁など対抗措置を講じ、韓国政府に圧力をかけるべき。
  • 日韓関係改善の取り組みを一時的に見直し、韓国に問題の深刻さを認識させるべき。
  • 国際社会に働きかけ、韓国への協力を求め、韓国に圧力をかけるべき。
  • 韓国の約束不履行により日本企業・国民が被害を受けており、日本政府の強硬姿勢をみせるべき
尹韓国大統領と岸田首相

韓国政府による元徴用工問題の解決策履行の遅延をめぐり、日本国内の世論は高まる一方です。政府に対し、韓国に強硬な態度で臨み、厳しい対応をとるよう求める声が大きくなっています。

代表的な意見の一つは、国際法に基づき韓国政府に約束履行を強制すべきというものです。1965年の請求権協定において、韓国政府は元徴用工問題が解決済みであることを確認しています。しかしながら、現在に至るまで韓国政府は約束した解決策の履行を遅らせており、これは国際法違反に該当します。日本政府は、国際法の下にある正当な権利として、韓国政府に対し約束履行を強く迫るべきです。

さらに、経済制裁などの対抗措置を講じ、韓国政府に圧力をかけるべきだと訴える意見も根強いです。韓国政府は日本企業に不利益を与え続けることで、日本側に譲歩を迫ろうとしているが、このような行為は国際社会の規範に明らかに反するものです。経済制裁を実施すれば、韓国経済に大きな打撃を与え、韓国政府の態度を改めさせる効果が期待できるでしょう。

一方で、韓国政府は表面上は日本との関係改善を望んでいるものの、実際には約束履行を怠っており、矛盾した振る舞いをしています。このため、日本政府は一時的にでも関係改善に向けた取り組みを見直し、韓国政府に問題の深刻さを認識させ、真剣な解決に向けた姿勢を促す必要があります。

さらに、韓国政府の対応は国際社会の信頼を損ねかねないものであり、日本政府が国際社会に働きかけ、韓国への協力を求めるべきです。国際社会からの批判の声が高まれば、韓国政府に大きな圧力となり、約束履行に向けた具体的な行動を取らざるを得なくなるでしょう。

このように厳しい対応を求める意見が大きな流れとなっている背景には、韓国政府による約束履行の長期間の遅延が、日本企業に多大な経済的損失をもたらしているだけでなく、日本国民の感情をも逆なでしているという事情があります。過去にも韓国政府が約束を反古にしたことがあり、今回も同様に約束が守られるとは思えないという、韓国政府への不信感も拭えません。

加えて、これまで日本政府が最大限の譲歩を重ねてきたものの、韓国政府の姿勢が改善される兆しは見えないことから、政府の対応に対する国民の失望感も大きいです。一部では、日本政府の対応に問題があり、もっと早期から強硬な姿勢に出るべきであったと批判する声すら上がっています。

このまま事態が進展しない限り、日韓関係の改善は見込めないでしょう。そのため、多くの有識者は、日本政府が韓国に対してさらなる圧力をかけ、約束の履行を迫る強硬な姿勢に出ることを提言しています。具体的な対抗措置の選択肢をあらゆる角度から検討し、実行に移す覚悟が求められています。


安倍政権下で検討された韓国への対抗措置としては、以下のものが挙げられます。

経済制裁

  • 貿易制限
    • 特定品目への輸出入関税引き上げ
    • 輸出許可制の導入
    • 輸出優遇措置の停止
    • 輸入割当制度の導入
    • 貿易協定の破棄
    • 国際機関における対韓支援の停止
  • 金融制裁
    • 対韓送金停止
    • 韓国金融機関への制裁
    • 対韓投資制限
    • 国際金融機関における対韓融資停止
  • 経済協力停止
    • ODAの停止
    • 技術協力停止
    • 開発援助停止
    • 国際会議への韓国招待停止

外交・安全保障

  • 外交関係降格
    • 大使召還
    • 領事館閉鎖
    • 外交関係断絶
  • 安全保障協力見直し
    • 日韓情報交換協定の破棄
    • 日米韓合同軍事演習の中止
    • 在韓米軍基地の縮小・撤退
    • 韓国への武器輸出禁止
  • 国際機関における対韓圧力
    • 国際機関における対韓非難決議の支持
    • 韓国の国際機関加盟阻止

その他

  • 入国制限
    • 韓国人へのビザ発給停止
    • 入国審査の厳格化
    • 韓国人に対する入国制限措置の導入
  • 文化交流停止
    • 文化交流事業の中止
    • 韓国アーティストの招聘停止
    • 韓国映画・ドラマの上映禁止
  • 国民への情報発信
    • 韓国政府の不当行為に関する広報活動
    • 韓国への渡航注意喚起
    • 韓国製品の不買運動の呼びかけ

北朝鮮が法令で定めた核兵器使用で高まる戦争の可能性―【私の論評】実は北も多いに脅威に感じている中国に対処することこそ、日米韓が協力していくべき理由(゚д゚)!

2024年2月27日火曜日

岸田内閣「不支持率8割」でよみがえる、小池百合子「大敗北」の記憶―【私の論評】次の選挙に対する自民党内の楽観論が示す「ワイドショー政治」の終焉

岸田内閣「不支持率8割」でよみがえる、小池百合子「大敗北」の記憶





まとめ
  • 岸田内閣の支持率は14%であり、不支持率が82%に達しており、これが自民党支持率も急落させ、立憲民主党の支持率も16%に達し、両党の支持率差が縮小。この急落は、2012年12月以来の自公政権復帰後で初めて。
  • 自民党内では次の選挙で自民党が政権を維持できるとの楽観論が広がっているが、野党の外交政策に一致がないことが大きな障害となっており、日米安全保障において一致がなければ、政権は適切に機能できないため、この問題は深刻。
  • ヨーロッパ諸国がアメリカに頼らず自主防衛が可能なのは、経済的な大きさやNATOの加盟国数などが影響している。一方で、日本が直面する中国、ロシア、北朝鮮といった国々は核を有し、GDPも日本の4倍以上あり、自主防衛は困難な状況。
  • 左派政党が日本の安全保障政策に難色を示す中、ドイツのSPDが1959年にゴーデスベルク綱領を制定し、中道左派へと転換する過程を挙げ、これが政権担当能力を向上させた。
  • 一方で、日本の左派政党がこのような変革を遂げておらず、小池百合子氏が示した「排除の論理」が、希望の党の人気を失速させ、政権選択肢を失った。



 自民党および岸田内閣の支持率が急落し、野党の立憲民主党との支持率差が縮まった中で、自民党内で楽観論が広がっている。支持率は過去最低であり、次期選挙でも政権維持が困難と予測される中、楽観論は外交政策の一致がない野党による政権交代の難しさに起因している。

 日本は、世界でも稀な国であり、政権選択の余地が極めて狭い。これは不幸な状況である。現政権の支持率が8割を超えているにもかかわらず、次期総選挙で野党が政権を握るという予測が出てこないのは、野党同士の外交政策の一致が難しいためだ。

 支持率急落の背景には、自民党の支持率が16%にまで落ち込み、野党第1党の立憲民主党が同じく16%の支持率を記録したことが挙げられる。これにより、これまで大きく開いていた両党の支持率差はなくなり、政権交代の可能性が高まった。自民党支持率が1割台に落ち込むのは、2012年12月の自公政権復帰後で初めてのことであり、これに対する楽観論は特筆すべきものだ。

 一方で、ヨーロッパ諸国がアメリカに頼らず防衛できる理由には、経済力やNATOへの加盟が挙げられる。2023年時点で、ロシアのGDPは1.9兆ドル、人口は1.4億人だが、これに対してドイツ、イギリス、フランス、イタリアの合計のGDPは13.0兆ドル、人口は2.8億人である。さらに、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、フィンランドは、経済的には小国ではあるが、ロシアに侵攻され支配された経験があり、国民の戦う士気が高い。

 これに対し、日本が対峙する中国、ロシア、北朝鮮は核を有し、中国のGDPは日本の4倍以上である。このような差異が、日本が自主防衛を困難にしている要因とされている。

 また、ヨーロッパ諸国がアメリカに頼らず自主防衛できる理由には、NATOの加盟国が多数存在することも挙げられる。これにより、安全保障上の連帯が形成され、相互の協力が期待できる。トランプ氏が「アメリカに頼らず自分で守れ」と主張する理屈には、一定の説得力があるとされている。

 日本の左派が日米同盟への支持を難しく考える一方で、ドイツの社会民主主義政党(SPD)は歴史的な変遷を経て中道左派として機能している。SPDはかつて親ソの労働者階級のための政党であったが、1959年にゴーデスベルク綱領を制定してマルクス主義の階級闘争から絶縁し、中道左派の国民政党へと変貌した。

 その後、SPDはキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟との大連立を組んで政権に参加し、安定した中道政権を形成してきた。これに対し、日本の左派政党は長らく日米安保に反対してきたが、その結果として政権担当能力の不足が指摘されている。

 日本の政治において、「排除の論理」が浮上し、憲法改正や安全保障関連法への態度が選挙候補者の選別基準とされたことは、政権維持の難しさを増大させた。2017年に小池百合子東京都知事が率いる新党「希望の党」が、憲法改正や安全保障関連法への態度で候補者を選別する方針を明らかにした際、「排除の論理」が強く反発を招き、党の人気は失速した。

 このような政策に対する厳格な姿勢が、選挙結果に直結することが示唆された。財政問題と安全保障問題では議論の進み方や妥協の余地が異なり、安全保障政策においては「排除の論理」が一般的に受け入れられにくい現実が浮き彫りになった。

 もし、「排除の論理」で新党ができていれば、今が政権交代のチャンスだったと私は思う。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】次の選挙に対する自民党内の楽観論が示す「ワイドショー政治」の終焉

まとめ
  • トランプ氏が「アメリカに頼らず自分で守れ」と主張する理屈には、GDPを論拠にした原田氏の発言があり、軍事費の観点からもそれが裏付けられている。
  • 世界各国の軍事費を比較すると、米国が依然として世界最大であり、EUは1%台にとどまっている。日本は中国の脅威を受けて防衛費を増額し、ロシアを上回る方針を掲げている。
  • ロシアはウクライナ侵攻に莫大な費用を投入しており、今後の軍事費の動向が注目されるが、GDPの制約がある。中国は急速に軍事費を増加させ、日本が倍増しても凌駕できない状況となっている。
  • トランプ氏の発言は軍事費の面からも裏付けられており、EUは軍事力を増強し、ロシアとの対峙を強化すべきである。
  • 野党の大勝が難しい背景には、日本の野党が日米安保などで一致せず、重要な政策領域で統一された立場を持てないからであり、次の選挙での自民党の勝利が予想さるが、これにより既存野党が変化するか、自民党が変化する可能性もあり、それが今後の唯一の希望といえる
上の記事で、トランプ氏が「アメリカに頼らず自分で守れ」と主張する理屈には、一定の説得力があるという原田氏の発言は、主にGDPを論拠にしていますが、軍事費でもその裏付けがとれます。

以下に世界各国の軍事費を比較した表を掲載します。
国名2022年軍事費 (USD)2021年比増減率2021年GDP比
米国8010億-0.40%3.20%
EU2140億6.20%1.40%
日本541億7.30%1.00%
ロシア617億28.90%4.30%
中国2520億7.10%1.70%
インド766億7.90%2.90%
為替レートは、2023年12月20日時点のものを使用。

参考資料:ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) - 世界軍事費データベース: https://www.sipri.org/databases/milex

米国は依然として世界最大の軍事費を誇り、世界の軍事費の約38%を占めています。EUは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて軍事費を増加させるといいながらも、1%台です。

日本は、近年、中国の軍事的脅威の高まりを受けて防衛費を増額している。特に岸田政権は、軍事費を倍増することを宣言しており、そうなるとロシアのそれを上回ることになります。

ロシアは、ウクライナ侵攻に莫大な費用を投入しており、今後、軍事費がどのように推移するかが注目されます。ただし、元々GDPは低く、限界があります。ロシアはソ連の核と軍事技術の継承国であり、その点侮ることはできないものの、従来のように世界第二位の軍事大国であるという見方ではなく、等身大にみていく必要がありそうです。

中国は、近年、軍事費を急速に増加させており、米国に次ぐ軍事大国となっています。日本が、軍事費を倍増しても、これを凌駕することできず、日米同盟がますます重要になりつつあります。

インドは、近年、中国との対抗上、経済成長とともに軍事費を増加させており、今後の軍事力の増強が期待されています。

トランプ氏の発言は、軍事費の面からも、裏付けられているといえます。EUはさらに、軍事力を増すべきであり、ロシアとの対峙を強化すべきです。

そうして、中国の軍事費をみれば、日米同盟は強化すべきですし、憲法改正や安保の強化は、当然の帰結であると見えます。

2017年に小池百合子東京都知事が率いる新党「希望の党」が、憲法改正や安全保障関連法への態度で候補者を選別する方針を明らかにした際、「排除の論理」が強く反発を招いたことは本当に残念なことでした。

これについては、このブログにもいくつか掲載したことがあります。その代表的なもののURLを以下にあげておきます。
【メディア政争】「ワイドショー政治」の罪作りな実態 小池百合子氏が2度の選挙に勝ったワケ―【私の論評】小池氏はなぜワイドーショー政治を選んだのか(゚д゚)!

この記事は、2018年2月2日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の【私の論評】から一部を以下に引用します。

選挙戦スタートこそ大いに盛り上がりを見せた「小池ワイドショー政治」でしたが、公示日前に小池代表が放った(民進党出身議員の一部を)「排除いたします」という一言から、流れは大きく変わってしまいました。

私自身は、この「排除いたします」という発言そのものが、小池氏の勢いをそいだのではないと思っています。その本質は、「排除いたします」という象徴的な発言などにより、マスメディアが希望の党、特に小池氏の本質は「改憲勢力」である点に焦点をあてはじめたということです。

元々、護憲派的立場のマスメディアが今のまま、小池氏をワイドショー政治のヒロインにまつりあげ続け、小池氏の希望の党が大勝利してしまえば、国会での護憲勢力はますます小さくなることに危機感を感じて、今度は小池氏を徹底的にワイドショーなどで叩き始めたのです。

まさに、今度は「ワイドショー政治」が小池氏に対して、逆機能を果たしたのです。「ワイドショー政治」で大勝利を得た小池氏は今度は「ワイドショー政治」により大敗北を喫することになったのです。

もしこのときに、「排除」宣言をしても、大きな反発を受けずに、「希望の党」が国政政党になっていたとしたら、たしかに 今は政権交代のチャンスだったかもしれません。

ネット上では、こうしたことを予見したのか、「希望の党」を叩くなという趣旨の発言もみられたことを記憶しています。

ただ、マスコミ主導によるワイドショー政治には問題があり、仮に当時「希望の党」が躍進したにしても、いずれマスコミは「希望の党」を徹底的に叩きはじめたのは間違いないでしょう。

ただ「希望の党」が躍進していれば、様々な動きがでてきて、「希望の党」がそのまま与党になるかどうかは別にして、いまごろ政権交代の芽が生えていた可能性はあったと思います。

ただ、政局の動きは変わりつつあるようにも見えます。それは「ワイドショー政治」が従来よりは、効き目がなくなりつつあることです。

「ワイドショー政治」に効き目があれば、今頃小池百合子氏は選挙で自民党候補者を応援するだけではなく、もっと具体的で派手な動きを見せていた可能性があります。

たとえば、東京15区(江東区)補選で小池百合子氏自身が出馬、もしくは息のかかった人物を候補者に立てるなどのことが考えられますが、そのような動きはありません。無論、まだ様子見をしていだけなのかもしれません。

しかし、もし「ワイドショー政治」に効き目があれば、これだけ自民党支持率が低下していれば、小池氏以外にも、従来なら何らかの派手な動きがあったはずです。

ただ、「ワイドショー政治」の動きも、安倍政権においては「もりかけ桜」、菅政権においてもありましたが、当時はさも大問題のように報道していましたが、もはやそれがなんであったのかあまり思い出せないくらいです。岸田政権下では、政治資金問題について、ついに大物は逮捕されず、小物だけが例外的に逮捕されただけにとどまり、あっけない幕引きとなりました。

この状況をみて、私を含めて一部の評論家などは、リクルート事件などと比較すれば、明らかに悪質性は低く、かといってもちろん悪質性を全く否定するなどということではありませんが、それにしても最初から大物議員を立件できない状況になるのはわかりきっていたのに、東京地検が捜査に踏み切ったのは、政治介入ではなかったのかという疑念の声もあがっています。

テレビ主導のワイドショー政治に踊る人々 AI生成画像

無論「ワイドショー政治」は岸田政権や自民党への支持率を低下させているのは間違いないです。にもかかわらず、上の記事の冒頭にもあるように、自民党および岸田内閣の支持率が急落し、野党の立憲民主党との支持率差が縮まった中で、自民党内で楽観論が広がっているというのです。

なぜ野党の大勝が予想されないのかという点については、やはり上の記事にあるように、日本では野党に日米安全保障などの重要な政策領域で野党の意見が一致しないため、政権交代が難しい状況となっているからだといえるでしょう。

「ワイドショー政治」等を超えて、中国などの脅威ははるかに多くの有権者に認識、共有されているようです。

次の選挙で、岸田政権が大勝利とまでいかなくても、勝利を収めれば、この状況は更に強まるかもしれません。もはや「ワイドショー政治」は実質的に効力を失い、安全保障などの重要政策領域でブレるような政党にはチャンスがないことがはっきりするでしょう。

そこに、日本保守党などや他の野党の保守派、自民内の保守派などが躍進できる隙がでてくることになるでしょう。実際に、そのようなことが世界中でおこっています。

そうなれば、政権交代もありという状況になるかもしれません。無論、結党の精神を再度見直し、自民党が安倍政権の政策を引き継ぎ発展させるという道もあります。そうなれば、自民党政権の運営も安定することでしょう。これらが、現在の数少ない政治への希望かもしれません。

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