2019年6月28日金曜日

トランプ氏「安保破棄」発言で“憲法改正”後押し!? G20前に衝撃発言「日本に米国守る義務ない…不公平だ」 識者が分析「防衛・安全保障のあり方を熟考する契機に」―【私の論評】トランプ氏は、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促した(゚д゚)!


トランプ氏(左)は、安倍首相の悲願成就に協力したのか

ドナルド・トランプ米大統領が、「日米同盟の根幹」に関わる衝撃発言を放った。米テレビのインタビューで、日米安全保障条約に基づく防衛義務は一方的だとの強い不満を表明したのだ。米ブルームバーグ通信が直前、トランプ氏が「日米安保条約の破棄」に言及したと報じていただけに、この発言は深刻といえる。大阪で28日から開催されるG20(20カ国・地域)首脳会合に合わせた日米首脳会談の主要テーマにもなりそうだ。左派陣営の中には「日米同盟廃棄だ」などと小躍りする向きもあるが、識者の中には「自国の防衛・安全保障のあり方を熟考する契機になる」「安倍晋三首相の憲法改正を後押しする発言では」といった分析もある。

 「日本が攻撃されたら米国は第3次世界大戦を戦うだろう。米国はいかなる犠牲を払っても日本を守る。それなのに米国が攻撃されたとき、日本はその状況をソニーのテレビで見ていられる」

 トランプ氏は26日、FOXビジネステレビの電話インタビューで、こう語り、米国の同盟国への負担が重すぎるという持論を展開した。

 この直前、さらに踏み込んだトランプ発言が報じられていた。ブルームバーグ通信は24日、トランプ氏が私的な会話で「日米安保条約は不平等だ」として、「破棄」に言及したと報じたのだ。

 日米当局は強く否定したが、トランプ氏は2016年の大統領選中にも「米国が攻撃されても、日本は何もしない」「在日米軍は撤退してもいい」などと発言したことがある。

 米国民の中にも、自国が「世界の警察官」の役割を担って、多額の軍事費を支出していることに不満を感じる声は多い。

 だが、日米同盟はそれほど単純ではない。

 1960年に改定された日米安保条約は、日本の施政権下における武力攻撃について、日米が「共通の危険」に対処すると定めている。一方、日本側は米軍への基地提供義務を負っている。「非対称ながらも双務的」な同盟関係である。

 日米安保は米国にとっても重要だ。

 神奈川県横須賀市に司令部がある米海軍第7艦隊は、太平洋だけでなく、インド洋も管轄し、地球の半分を活動範囲としている。沖縄の米空軍嘉手納基地は、羽田空港の約2倍の広さがあり、極東最大の米空軍基地である。在日米軍撤退となれば、米国は世界の覇権を失うことになる。

 自由主義国家のナンバー1と2による日米同盟は、アジア太平洋や世界の平和・秩序維持に重要な役割を担っている。共産党独裁の中国による覇権拡大を阻止する強固な防波堤でもある。

 トランプ氏がG20への出発直前、衝撃発言を放った真意について、「来年の大統領選挙を見据えた選挙対策」とか、「日米貿易交渉で譲歩を迫る狙い(ディール)」「在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)などの増額要求」といった見方が出ている。

 ネット上では、左派陣営を中心に「安倍首相の外交的敗北だ」「日米安保廃棄」「沖縄・米軍普天間飛行場の辺野古移設は中止すべきだ」「米国への依存体質から抜け出そう」などと盛り上がっている。

 夕刊フジは26日午後、ブルームバーグ通信の報道を受けて、東京・新宿で街頭演説を終えた共産党の志位和夫委員長を直撃した。

 志位氏は「トランプ氏は『日本はもっと(米軍の駐留経費を)負担しろ』という文脈で言っており、とんでもない話だ。そこで(日本側が)『日米安保条約は止めないでください。何でも負担しましょう』となると、トランプ氏の言うがままになる」と述べた。

 そのうえで、「私たち(=共産党)の考えは、日米安保条約は国民多数の合意で破棄をし、対等で平等の日米友好条約に変え、本当の独立国をつくることだ」と強調した。同党は党綱領に「自衛隊の解消」「日米安保条約の廃棄」を堂々と掲げている。

 ■日米安保破棄なら防衛コスト23兆円?

 日米安保を廃棄すれば、日本は自主防衛に踏み切るしかなくなる。その防衛コストについて、「年に22兆3000億~23兆8000億円かかる」との防衛大学校教授の試算もある。年金どころではない。日本の社会保障費が吹っ飛んでしまう。

 そこで、防衛コストについて指摘すると、志位氏は「(試算には)どんな根拠があるんですかねえ」と語った。

 まったく違う見方もある。

 トランプ氏は「日本人に『自分の国は自分で守る』という覚悟を持たせ、憲法改正を後押しする意図があったのでは」と分析するものだ。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は当初、「フェイクニュースか?」と首をひねったが、大阪G20の隠れテーマが「対中包囲網の構築」であることから、次のように深読みした。

 「米国は長く、日本の軍事大国化を防ぐため、平和憲法と日米同盟で押さえ付ける『瓶のフタ論』をとってきた。だが、トランプ氏は以前から『経済大国の日本が米国頼りなのはおかしい』という疑問を明言してきた。米中対立が激化するなか、トランプ氏は『日本も憲法を改正して、自分の国は自分で守る国になるべきだ』『米国とともに共産党独裁の中国と対峙(たいじ)してほしい』とのメッセージを込めた可能性がある」

 トランプ流で、安倍首相の憲法改正を激励したのだろうか。

【私の論評】トランプ氏は、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促した(゚д゚)!

最近の報道では、トランプ大統領が日米安保破棄について語ったことが報道されていますが、その背景には米国ではすてに、オバマ政権の頃から日本は改憲すべきであるとの声が議会で高まっていたことがあります。

それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派に―【私の論評】憲法を改正するか、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になるか、あなたはどの道を選択しますか?
 GHQによる日本国憲法草案
1946年(昭和21)2月13日、外相官邸で行われた日米会談の席で、政府の「憲法改正要綱」は、あまりに保守的内容であるとして拒否され、GHQ起草の案(マッカーサー草案)が提示された。この草案は、GHQ民政局部内で極秘裏に起草されたもので、主権在民・象徴天皇制・戦争放棄などを規定していたため、政府側に大きな衝撃を与えた。

この記事は2010年のものです。詳細はこの記事をごらんいただくものとして、もうすでにこの頃からら、米議会では日本は改憲すべきという勢力のほうが、護憲勢力よりも大きくなっていたのです。

この記事の冒頭部分を以下に引用します。
米国議会が日本の憲法第9条を日米共同防衛への障害と見なし、改憲を望むようになった――。 
この現実は日本の護憲派にはショックであろう。だが、米国議会上下両院の一般的な認識として、日本側の憲法9条の現行解釈による集団的自衛権の行使禁止は、「より緊密な日米共同防衛には障害となる」というのである。
同じく以下のこの記事から私による結論部分を引用します。
憲法を改正して、パランス・オブ・パワーの一角を担う覚悟がなけば、いずれ選択できる道は二つしかありません。それは、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になることです。いますぐ、ということはないでしょうが、今後10年以内には、おそらくどちらかの道を選ばざるをえない状況に追い込まれます。あなたは、どの道を選びますか? 
しかし、私達としても、当然のこととして、どらの道も選びたくはありません。であれば、憲法を改正して、バランス・オブ・パワーの一角を担うしかありません。
この動きは近年さらに強まっていました。それについても以前このブログで取り上げたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声―【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?
米国・ワシントンD.C.の国会議事堂。米国議会で日米同盟の片務性を批判する声が高まってきた
この記事は2017年3月4日のものです。トランプ氏が大統領に就任して間もない頃です。
 米国のトランプ政権は日米同盟の堅持と尖閣諸島の共同防衛を確約している。その一方でこのほど、民主党の有力議員が米国議会で“日本は憲法を改正しない限り米国の公正な同盟パートナーにはなれない”“現状では米国は尖閣を防衛すべきではない”という主張を表明した。 
 日本側の憲法が原因とされる日米同盟の片務性は、これまで米国側から陰に陽に批判されてきた。だが、これほど真正面からの提起も珍しい。日本側としても真剣に受け止めざるをえない主張だろう。
・・・・・・・・・・・・一部省略・・・・・・・・・・・

 公聴会ではまず議長のヨホ議員が、中国の南シナ海での人工島造成や軍事基地建設を膨張主義だとして非難し、中国による東シナ海での日本の尖閣諸島領域への侵入も米国の同盟国である日本への不当な軍事圧力だと糾弾した。

 そのうえで同議員は、オバマ政権下の米国のこれまでの対応が中国をまったく抑えられなかったと指摘し、日本などの同盟国と連帯して対中抑止態勢を構築することを提唱した。その前提には、トランプ政権が日米で尖閣を共同防衛する意思を表明していることがもちろん含まれていた。

 ところがこの委員長発言の直後、民主党を代表して発言したブラッド・シャーマン議員が驚くほど強硬な語調で日本を批判したのである。

ブラッド・シャーマン民主党議員 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 「トランプ政権が日本の施政下にある尖閣諸島の防衛を約束したことには反対する」 
 中国の海洋進出を非難する前にトランプ新政権の対日安保政策に反対を唱える発言に、私は驚かされた。シャーマン議員はさらにショッキングな発言を続けた。 
「日本は憲法上の制約を口実に、米国の安全保障のためにほとんど何もしていない。それなのに米国が日本の無人島の防衛を膨大な費用と人命とをかけて引き受けるのは、理屈に合わない。日本側はこの不均衡を自国の憲法のせいにするが、『では、憲法を変えよう』とは誰も言わない」 
 「2001年の9.11同時多発テロ事件で米国人3000人が殺され、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国は集団的自衛権を発動し、米国のアフガニスタンでの対テロ戦争に参戦した。だが、日本は憲法を口実に、米国を助ける軍事行動を何もとらなかった。その時、『日本はもう半世紀以上も米国に守ってもらったのだから、この際、憲法を改正して米国を助けよう』と主張する政治家が1人でもいただろうか」 
 シャーマン議員は公聴会の満場に向けてそんな疑問を発すると同時に、日本やアジアに詳しい専門家の証人たちにも同じ質問をぶつけた。
 シャーマン議員はカリフォルニア州選出、当選11回のベテランである。民主党内でもかなりのリベラル派として知られる。そんなベテラン議員が、日米同盟が正常に機能するためには日本の憲法改正が必要だと主張しているのである。
シャーマン議員は以下のような発言もしました。

「2001年9月の9.11同時多発テロ事件では米国人3000人が殺され、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国は集団的自衛権を発動し、米国のアフガニスタンでの対テロ戦争に参戦しました。しかし、日本は憲法を口実に、米国を助ける軍事行動を何もとらなかった。その時、『日本はもう半世紀以上も米国に守ってもらったのだから、この際、憲法を改正して米国を助けよう』と主張する日本の政治家が1人でもいたでしょうか」

トランプ政権からでもなかなか出てこない過激な主張であり、日本に対する手厳しい批判でもありました。

しかし、この主張には無理な側面もあります。なぜなら、日本国憲法は日本が自主的に定めたものではなく、当時の米国によって作成されたものだからです。それは、バイデン元副大統領もそのように発言していました。そのため、日本が米国の要請に従い憲法を変えるというのなら、米国もそれ相当のことをしなければならないです。

まずは、極東軍事裁判の一方的な判決、さらには、その後のGHQの統治などの誤りを認めるべきです。そうすれば、日本は自主的に憲法改正をしやすい状況を醸成できます。

以下にこの記事の【私の論評】の結論部分を掲載します。
日本が米国の要請よって、憲法を変えるなどということになれば、日本としてもただ変更するというのではなく、当然のことながら、米国と日本の関係を大東亜戦争前の日米が戦争するなどとは思いもよらかなった頃の関係に近いものに戻すことを条件とすべきです。 
このようなことをいうと、そんなことは全く不可能と思われるかもしれませんが、私はそうでもないと考えます。なぜなら、米国の保守本流派とされる人々は、そもそもソ連の防波堤となって戦っていた日本と米国が戦争したは間違いだったと考えているからです。 
そもそも、ルーズベルトが全体主義のソ連と手を組んだことが間違いの始まりだったとしています。こういう米国保守本流の考え方からすれば、米国と日本の関係を大東亜戦争前の日米が戦争するなどとは思いもよらなかった頃の関係に戻すという考えは受け入れやすいかもしれません。
スターリン(左)とルーズベルト(右)
ただし、大東亜戦争前と現在とでは国際情勢が違いますから、全くその頃と同じということてはできません。しかし、日本としてはまずは国連の常任理事国入りは当然の前提条件とすべきです。
そうして、日本が自主防衛をするようになってにしても、日米の同盟関係は維持するという条件も前提条件とすべきでしょう。そうして、日米同盟の双務性を堅持すことも条件とすることは当然のことです。
その上でなら、米国による要請も受け入れて良いと思います。ただし、自分の国を自分で守ること、すなわち防衛戦争をできるようにすることや実際にすること自体は、米国とは関係なく、本来独立国としては、当然のことです。これができないというのは、日本は未だ独立国ではないという証です。
ただし、米国議会の日本に対して憲法改正圧力は、日本にとって憲法改正にはずみをつけるということから、日本政府は大いに利用すべきものと思います。
上にでできたブラッド・シャーマン議員は、最近も日本を鋭く批判しています。ご存知のように、米国連邦議会では2018年11月の選挙で野党の民主党が下院の多数を制しました。多数党は議会の全委員会の長ポストを握り、議題や審議の手続きを仕切ることができます。下院で共和党と民主党の勢力が逆転したことで、2019年初頭からは民主党議員たちが議事進行の先頭に立つようになりました。

なかでも活発なのは外交委員会です。外交委員会のなかで日本についての政策を審議するのが「アジア太平洋・不拡散小委員会」(Subcommittee on Asia, the Pacific and Nonproliferation)です。この小委員会の委員長に新たにブラッド・シャーマン議員が就任しました。

現在、下院外交委員会のメンバーは民主党26議員、共和党20議員です。この委員会は活動がきわめて活発です。この5月に入ってからでも、中国、ロシア、北朝鮮、イラン、人権、大量破壊兵器などに関する問題を幅広く取り上げて、12回も公聴会を開催しました。

そのなかでもとくに活発に動くメンバーが、カリフォルニア州選出のブラッド・シャーマン議員です。同議員は1997年以来、当選7回、外交委員会全体において民主党側議員のなかで委員長に次ぐ筆頭議員の立場にあります。また、民主党リベラル派としてトランプ政権への反発も激しく、トランプ大統領への弾劾決議案の提出を何度も試みてきました。

そのシャーマン議員が、下院外交委員会の「アジア太平洋・不拡散小委員会」委員長に就任したのです。下院外交委員会では、地域別、主題別に6つの小委員会を設けています。そのなかで日本や中国などアジア関連の課題を専門に扱うのがアジア太平洋・不拡散小委員会です。

このような意見の持ち主が、米国連邦議会のなかで日本への関わりが最も大きい小委員会委員長ポストに就いたのです。このことは日本側でも銘記しておくべきでしょう。そうして、米国においては平時には米国の大統領の権限は世界最弱であることも銘記しておくべきでしょう。ただし、米国では超党派で中国に対峙していて、こと中国に関することでは、大統領に権限が集まりつつあることも事実です。

米国の保守本流派とされる人々は、そもそもソ連の防波堤となって戦っていた日本と米国が戦争したは間違いだったと考えていることは、上でも述べましたが、米国のリベラル派である民主党のシャーマン議員にはそのような歴史観はないようです。

現状のまま、米国が日米同盟を断ち切るようなことがあれば、喜ぶのは中国です。米軍が日本からひきあげれば、中国は嬉々として、日本を占領しにやってくるでしょう。ロシアや北朝鮮、もしかすると韓国もそうするかもしれません。

そうして、日本の富と技術力を簒奪して、冷戦や制裁を勝ち抜くことでしょう。それどころか、日本の無能な官僚などは追い出し、自ら財政・金融政策などを抜本から変え、日本経済を成長させ、さらに莫大な富を得て、経済力で米国を追い抜き、世界を手にいれるかもしれません。そうなれば、世界は闇です。

そんなことは、日米双方にとって良いことは一つもありません。日米は互いに協力しつつ中国と対峙するために、やはり日本が自主的に憲法を変えやすい状況を醸成していくべきです。

トランプ発言の背景には、このようなことがあるのです。トランプ氏としては、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促したとみるべきです。

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2019年6月27日木曜日

米中貿易戦争より大きい日本経済のリスクとは―【私の論評】日本では、「リーマン・ショック」に続いて「コールドウォー・ショック」という和製英語ができあがるのか?

米中貿易戦争より大きい日本経済のリスクとは

先進国では日本だけ「異常な状態」が続く

米欧の金融緩和は市場の想定以上。ひるがえって日本は「緊縮政策」でいいのだろうか?

 前回のコラム「
今のままでは大幅な円高ドル安になりかねない」では、
5月からFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げへの転換など、各国中央銀行の緩和スタンスが強まっていることを強調した。

米欧中銀のハト派姿勢は市場予想を上回る

 その後、市場の想定を上回るペースで米欧中銀のハト派姿勢が強まっている。6月18日に、ECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁は、今後の景気下振れリスクに応じて利下げを行う可能性だけではなく、量的金融緩和政策再開の可能性に言及した。6月理事会でフォワードガイダンス強化のみが決定された直後だっただけに、早々に利下げ再開に踏み出したのは意外だった。

 ドラギ総裁の発言の2日後に結果が公表されたアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)において、FRBも市場の想定を上回る緩和強化姿勢を示した。政策金利は想定どおり据え置かれたが、FOMCメンバーの政策金利見通しにおいて、半数近い7人が年内0.5%の利下げを想定していることが判明。

 筆者はこの中にジェローム・パウエル議長が含まれる可能性が高いと見ているが、3月までは金利据え置きを想定していた中立派メンバーの多くが、年内に1~2回の利下げを想定していることが明らかになった。

 実は、FOMCメンバーの政策金利見通しこそ変わったが、2020年までの経済成長率、インフレ率の想定はほぼ変わっていない。米中貿易戦争の激化、インフレ期待の低下基調など、潜在的リスクへ対処するために、早期に複数回の利下げを行う必要があるとの考えが広がった。

 ECB、FRBによる緩和姿勢の強化をうけて、アメリカの長期金利は2%を一時下回り、ドイツの長期金利も史上最低金利を下回り、-0.3%台まで低下する場面があった。

 目先は、28~29日のG20で行われる見通しの米中首脳会談の結末が注目されている。これがどのような結果になっても、筆者はアメリカの中国に対する強硬な通商政策が続く可能性は高いとみており、関税引き上げが続くことを踏まえると、今後の世界経済に下押し圧力がかかるだろう。

 一方、最近起きている金利低下が示唆するのは、世界的な景気後退とそれに伴う先進国のデフレリスクの高まりである。ただ、各国中銀の緩和姿勢強化によって足元で進む金利低下が、アメリカなどの国内需要を高める方向に作用するため、今後の景気減速は緩やかなものになると筆者は予想している。

 米中貿易戦争による緊張は続くが、予防的かつ積極的な米欧中銀の利下げ転換によって、世界経済の深刻な後退が回避されるというシナリオである。

 アメリカの株式市場はFRBなどの金融緩和姿勢を好感し、6月20日にS&P500は最高値を再び更新した。長期金利の大幅低下で相対的な株式の魅力度が高まっていることが、年初からのアメリカ株市場反発のドライバーとなっている。

 では同国の株高は続くだろうか。金融緩和や財政政策の下支えで、同国経済の減速が限定的となり、株高は十分正当化できると筆者はみている。さらに、低金利環境が長期化するとの見方がより広がることで、PER(株価収益率)の上昇によって2019年後半に一段の株高となりうるだろう。
日本だけが緊縮的な財政政策に踏み出すという「異常」
 一方、日本株はどうだろうか。筆者は「アメリカの株市場は好調でも、それに置いていかれる状況が続く」と、当連載で繰り返し指摘してきたが、この状況はまったく変わっていない。先に述べたとおり、FRBの金融緩和強化によるアメリカの金利低下によって、為替市場ではドル安が進みドル円相場は一時107円を割り込んだ。金利が大きく低下しても、現時点ではドル円相場において小幅なドル安円高にとどまっている。

 しかし、FRBは市場の想定を超えるピッチで金融緩和姿勢を強める一方、日本銀行は現行の政策フレームワークに固執し、副作用を理由に挙げて新たな対応を講じるには至っていない。FRBはインフレ期待の低下を大きなリスクとして重視しているが、2%インフレ目標実現がみえていない日本銀行の中で、過去1年以上続くインフレ期待の低下を強く問題視しているのは、一部の審議委員だけである。

 当面「金融緩和に踏み出さなくても、日銀の黒田東彦総裁は円高進行などいざという局面になれば金融緩和を強化する」との思惑が大幅な円高を防いでいるのだろう。

 だがアメリカではMMT(現代貨幣理論)に関する議論が注目されるなど、世界的な経済成長率の低下のもとで拡張的な財政政策の必要性が高まっている、との見解は経済学の世界では広範囲に認められつつある。
世界の中で日本だけが緊縮財政

 そうした中で、日本では10月に消費税が引き上げられ、先進国の中でほぼ唯一緊縮財政が始まることになる。脱デフレの途上にある中で、安倍政権は他国とは反対に緊縮的な財政政策に踏み出すわけである。さらに財政政策によって国債購入金額が決まる制約から離れ、日本銀行が積極的な緩和政策を講じなければ、「日本は政府・中銀ともに脱デフレ完遂に背を向ける政策を行っている」との評価になることを覚悟すべきだ。

【私の論評】日本では、「リーマン・ショック」に続いて「コールドウォー・ショック」という和製英語ができあがるのか?

ブログ冒頭の記事で、「米中貿易戦争による緊張は続くが、予防的かつ積極的な米欧中銀の利下げ転換によって、世界経済の深刻な後退が回避される」というシナリオに、もうひとつ付け加えたいことがあります。

それは端的にいうと、米中貿易戦争は、供給過剰で疲弊している世界経済を救うかもしれないということです。それに関してはこのブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本の外交立場が強くなる米中新冷戦―【私の論評】米国の対中「制裁」で実利面でも地位をあげる日本(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。

"
現在の低金利、供給過剰の世界では、中国が生産しているコモディティの供給などどのような発展途上国でもできます。簡単な工場なら半年もかからないし、大規模・複雑な工場でも1~3年程度で完成します。

むしろ、米中貿易戦争は、供給過剰で疲弊している世界経済を救うかもしれないです。なぜなら現在世界経済が疲弊しているのは、中国を中心とする国々の過剰生産の影響だからです。

「供給過剰経済」については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!
野口旭氏

世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。 
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。
ここで、貯蓄過剰は、生産過剰と言い換えても良いです。生産過剰の世界では、貯蓄が増えるという関係になっているからです。新興国、特に中国の生産過剰が問題になっているわけです。

競争力を持たない中国製品の貿易戦争による関税増加分を負担するのは、中国企業であり中国経済です。中国社会はその経済的圧力によって内部崩壊するでしょう。値上げによって米国消費者の負担が増えることは全くないとはいいませんが、あまりありません。他の発展途上国の商品を買えばよいだけのことだからです。実際、中国では明らかに物価の上昇がみられますが、米国はそうでもありません。
"
以上の話をまとめると、もともと現在の世界は中国の過剰生産などによって、供給過剰によって貯蓄過剰になっており、そのような状況で米中貿易戦争で中国の輸出が途絶えたところであまり影響はないですが、短期的には悪影響もあり得るので、予防的かつ積極的な米欧中銀の利下げ転換によって、世界経済の深刻な後退が回避されるということです。

さらに、中国からサプライチェーンが撤退して、インド、バングラデシュ、韓国、台湾、ASEAN諸国などの周辺国に移行するということも考えられます。中国では新素材やハイテク部品も製造できなくなるため、それを日本が担うということも考えられます。

ただし、米中貿易戦争は、貿易戦争等という次元を超え、冷戦の次元まで高まったため、終息するまでには、時間がかかるとみられます。そうなると何が起こるのかわかりません。その中にあって、日本だけが増税という緊縮に走って、大失敗するというのはなんとも異様です。なんて愚かなことでしょう。これは、いわゆる「リーマン・ショック」の失敗を繰り返すということです。

ご存知のように「リーマン・ショック」という言葉は和製英語です。この言葉は英米にはありません。欧米で「リーマン・ショック」と同意語は「リーマン・ブラザース破綻を期に発生した世界同時不況」などと言う以外にありません。

もしくは、先に文書の中でこのようにのべておいて、その後は"the crisis"などとするのが一般的です。ただし、ほんの一部のメディアではリーマン・ショックと表記しているものもありますが、それは圧倒的小数であることと、英米豪などの公式文書には見当たらず、やはり和製英語と理解すべきです。

なぜこのようなことになってしまつたのでしよう。欧米ではいわゆる「リーマン・ショック後」に、世界中の国々の中央銀行が積極的な量的緩和を行い不況から比較的はやく回復したのですが、日銀だけが実施せず、さらには緊縮財政を続けました。そのため超円高・超デフレを招いてしまって大失敗したため、日本だけが一人負け状態になってしまったためです。

震源地である米英は比較的はやく不況から回復したにもかかわらず、日本だけがその後も被害が甚大だったため、「リーマン・ショック」という固有名詞ができあがったのです。


上のグラフをご覧いただくと、現状の国債商品価格はリーマン・ショックのときよりもさらに下がっており、これは中国などの過剰生産が寄与しています。何しろ、中国は過剰生産は、想像を絶します。

鉄鋼製品などもかなりの過剰生産で巨大な在庫があります。これをさばくため、中国はかなり価格を安くして輸出していました。そのため、何度も米国からダンピングであるとの警告をうけていました。さらに、住宅などもかなりの過剰生産で、中国各地に巨大な無人住宅が存在し、鬼城と呼ばれています。

少し前まで、地方政府は鬼城ができあがると、その鬼城の脇に、10倍規模の住宅街を築くため投資するというような信じられないようなことをしていました。このようなことをしているから、ゾンビ企業が生き残り、中国経済の足を引っ張っているのです。それでもGDPだけは伸びました。

このような状況の中で、中国が過剰生産をできないような状態になれば、世界経済にとっては決して悪いことではありません。ただし、短期では何が起こるかはわかりませんし、長期でみても、懸念材料は多々あります。

それに対して身構えているのと、日本のように、自ら手足を縛るような真似をするのとでは、何かあったときの対処にかなりの違いがでてくるのは当然です。

今回の米中貿易戦争においても、日本以外の国々では、中国も含めてこれが長期の冷戦になることを見越して、予防的かつ積極的な中銀の利下げ転換によってこれに対処しようとしているのです。

日本以外の国々では、冷戦がさらに深刻化して利下げしても、経済が悪化するなら、躊躇せずに、世界中の中銀が量的緩和、政府は積極財政を行うでしょう。

その中にあって、日本だけが緊縮財政の一手法である、増税をするのは、Anomaly(異常)というほかないです。日本では「コールド・ウォー・ショック」等という和製英語が再びできあがるのでしょうか。

今のままだと、「リーマン・ショック」を反省することなく、緊縮財政をしてしまい自ら「コールドウォー・ショック」招いてしまうのは必定です。

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2019年6月26日水曜日

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G20議長国・日本に難題山積 経済と安全保障の均衡取り…当面の解決策模索できるか


サミット会場近くで警備をする警官

28、29日に大阪で20カ国・地域首脳会合(G20サミット)が開かれる。中心となる議題やG20に合わせて開かれる予定の米中首脳会談などの注目点、議長国である日本の役割について考えてみたい。

 G20は、米国、英国、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダおよび欧州連合(EU)の「G7メンバー」に、ロシア、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンを加えたものだ。

 国際通貨基金(IMF)が4月9日に公表した世界経済見通しは、2019年の成長率予測を3・3%とし、前回1月の見通しから0・2ポイント引き下げた。米中貿易戦争や中国経済の減速、英国のEU離脱問題が引き続き懸念材料だからだ。

 世界中が注目している米中貿易戦争では、G20の場で米中首脳会談が開かれることが決まった。このニュースで米国株などが上昇する場面もあった。

 もっとも、今回の米中首脳会談で、すべてが解決するとは多くの人が思っていない。よくて部分的な解決であり、最終的な解決には時間を要するというのが一般的な見方だ。

 英国のEU離脱(ブレグジット)も大きな問題だ。メイ首相は来日するかもしれないが、すでに保守党党首は辞任しており、もはやレームダック状態だ。ブレグジットは英国の国内問題にとどまらず、欧州経済にすでに悪影響を与えている。メイ首相の政治力があれば日英間で貿易問題を話し合い、日英経済連携協定(EPA)や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への英国加盟などの可能性があったが、これらの問題は次期首相の手に委ねられる。

 香港の「逃亡犯条例改正」審議が、大衆デモによりに延期となったが、これについて英国は、香港返還の経緯などを国際社会に説明する必要がある。「一国二制度」がすでに形骸化しており、今回の事件もそれが顕在化したにすぎない。G20では、香港の人権問題を扱ってもいいはずだが、はたしてどこまで議論できるのだろうか。もっとも米中首脳会談において、トランプ米大統領が中国に対して人権問題として取り上げるかもしれない。

 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、G20に対し、世界的な経済成長へのリスクを和らげるため貿易摩擦の解決を最優先課題とするよう求めている。

 ただし、米中貿易戦争は、単に経済の問題だけではない。知的財産権の強制移転や盗用という安全保障面での問題もある。議長国の日本としては、経済問題と安全保障問題のバランスをとりながら、当面の解決策を求めていく必要がある。

 資本取引の自由という西側資本主義ロジックと、生産手段の私有を制限するために資本取引制限のある東側社会主義ロジックとの間の調和・調整が問題解決に求められている。

 また、人権や環境にも配慮し、地球規模問題の解決を図る必要もある。国際社会において名誉ある地位を占めるのは、言うは易く行うは難しだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】G20で見えてくる衆参同時選挙ではなく、時間差選挙の芽(゚д゚)!

夏の参院選を控え、G20サミットで議長を務める首相にとっては、外交手腕を示す格好の場となりそうです。一方、韓国大統領府高官は25日、G20サミットに合わせ、首相と文在寅大統領との日韓首脳会談について「開かれない」と記者団に語りました。高官は「われわれは会う準備ができていると伝えたが、あちら(日本)から何の反応もなかった」と説明。一方で、その場で日本から要請があれば、「いつでも会える」と述べ、会談への未練をにじませました。

安倍総理と、トランプ米大統領との会談は今回のサミットで12回目を数えます。4、5月に続く3カ月連続の相互往来で、強固な日米同盟を世界に示します。非核化をめぐる米朝協議など最新の情報を共有し、北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を示さない限り、国連安全保障理事会の決めた経済制裁は解除しない方針も再確認します。

また首相は、今月のイラン訪問の詳細をトランプ氏に伝えます。イラン革命防衛隊によるホルムズ海峡付近での米軍無人機撃墜などで米イランの対立は激化しており、首相は衝突回避の重要性を働きかける意向です。

中国の習近平国家主席は、2013年の国家主席就任後初の来日となります。首相との会談では、米中貿易摩擦が世界経済最大のリスクとなっていることから、通商問題で意見を交わします。20~21日の中朝首脳会談を踏まえ、北朝鮮情勢も協議します。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案撤廃をめぐる香港の混乱について、首相がどう提起するかにも関心が集まるところです。

26回目となるプーチン大統領との会談は、協議が停滞している日露平和条約交渉の取り扱いが焦点です。昨年11月、日露両首脳は1956(昭和31)年の日ソ共同宣言を基礎に条約交渉を加速させることで合意しましたが、プーチン氏は北方領土の引き渡しに関し「計画はない」と明言するなど、局面打開は難しい情勢です。

一方、G20サミットの全体会議では、世界経済、イノベーション、格差・インフラ、気候変動の計4分野が主要議題となります。

トランプ米大統領が今回のG20首脳会議で目指すのは、中国との貿易摩擦、ロシアとの核軍縮、イラン核問題など米国が抱える懸案に関し、「米国第一」の立場から自国に有利な展開を引き出すことです。

トランプ大統領

G20などの多国間会議の場で設定される首脳会談は外交儀礼上、必ずしも正式な会談に位置づけられるわけではないです。

しかし、主要国などの首脳が一堂に会する多国間会議は、複数の国の首脳とそれぞれ効率的に意見を交わす一方、利害が多国間にまたがる特定の懸案については会議の場で合意形成を図れるという利点があります。

トランプ大統領も中国問題については今回、首脳会議ではサイバー攻撃などによる情報窃取、技術移転の強制、関税や非関税障壁などに関し「不公正な貿易慣行」の排除に向けた各国と認識をすり合わせつつ、習近平国家主席との直談判で具体的合意にこぎ着けたい考えです。

ただ、G20首脳会議の枠組みそのものは既に形骸化が明白となっており、米政権としてはさほど重要視していないのも事実です。

2008年に当時深刻化していた世界金融危機に対応するためにワシントンで始まったG20首脳会議は、世界経済が回復軌道に乗った09年にピッツバーグで開かれた第3回首脳会議の時点で、本来の役割は終了したとの指摘は多いです。

ピッツバーグサミット

その第3回会議でも、メディアに最も注目されたのはイランが当時、秘密の核施設の存在を明らかにしたことに対して米英仏の首脳が抗議の合同記者会見を開いたことで、形骸化の萌芽は既に現れていました。

今回もG20自体は米中の直接対決を前に存在がかすみがちになるのは確実とみられます。

そうした中で、安倍総理にとってG20を活用する方法として、やはり増税凍結もしくは見送りの地ならしです。

これについては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【G20大阪サミット】大阪から世界が動く 米中貿易摩擦で歩み寄り焦点 日本、初の議長国―【私の論評】G20前後の安倍総理の意思決定が、安倍政権と国民の運命を左右することになる(゚д゚)!
詳細は、この記事をごらんいただくもとして、以下に増税見送りに関する部分のみ引用します。
経済協力開発機構(OECD)は5月21日、世界全体の実質GDP成長率が2018年から縮小し、19年は3.2%、20年は3.4%との経済見通しを発表しました。日本については、19年と20年のGDP成長率をそれぞれ0.7%、0.6%とし、3月の前回予測から0.1ポイントずつ下方修正しました。米中貿易摩擦の影響が大きく、OECDは「持続可能な成長を取り戻すべく、各国政府は共に行動しなければならない」と強調しました。 
そのような中、日本が初めて議長国を務めるG20サミットが開かれます。日本は議長国として、機動的な財政政策などを各国に呼びかける可能性が高いです。それにもかかわらず、日本のみが増税すれば、日本発の経済不況が世界を覆うことになる可能性を指摘されることにもなりかねません。 
平成28年5月下旬、三重県で開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット、G7)で、安倍首相は「リーマン・ショック級」の危機を強調しながら、増税延期の地ならしを進め、直後に延期を正式表明しました。
伊勢志摩サミットで「リーマン・ショック級」の危機を強調した安倍総理

果たして、G20はG7の再来となるのでしょうか。もし今回増税すれば、日本経済は再びデフレスパイラルの底に沈み、内閣支持率がかなり落ちるのは目に見えています。 
それでも、増税を実施した場合、安倍政権は憲法改正どころではなくなります。それどころか、野党はもとより与党内からも安倍おろしの嵐が吹き荒れレームダックになりかねません。 
まさに、G20前後の安倍総理の意思決定が、安倍政権と国民の運命を左右することになります。
 さて、増税見送りということでは、当初永田町では、衆院解散のタイミングは6月から7月初頭の間に断行して今夏の参院選との同日選に持ち込む案(この場合、投票日は8月4日とするとの説があった)と、今夏は参院選単独で行っておいて今秋から暮れにかけて衆院選を行う「時間差ダブル選挙」とする案がありました。

現状では、衆参同時選挙の芽はなくなってしまったようですが、全くないということでもないと思います。さらに、今秋に増税凍結を公約として衆院選挙という手は未だ否定しきれないところがあると思います。暮ということでは、増税延期には間に合わないので、今秋衆院選は未だにありえる選択肢です。

現在、政争の道具にするには、全く不利で実際他国ではほとんど政争の道具にされていない年金問題で野党は政府を追求しようとしています。この試みは、「もりかけ」問題と同じく野党にとって全く不毛な結果に終わることでしょう。

しかし、現実には与党の支持率は落ちています。とはいいながら、野党に支持率はあがっていません。この状況ですからから秋に衆院選をすることにし、それまでの間に年金問題に関して国民にわかりやすく説明していくことなどの戦略は十分に考えられます。

いずれにしても、伊勢志摩サミット(G7)で、安倍首相は「リーマン・ショック級」の危機を強調しながら、増税延期の地ならしを進めたように、G20でもそれを安倍総理が実行するかどうか、見逃せないところです。

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2019年6月25日火曜日

日本にとって心強い、モディ首相のインド太平洋重視―【私の論評】アジア地域のサプライチェーンの脱中国的な再編が加速化し日本やインドは良い影響を受ける(゚д゚)!

日本にとって心強い、モディ首相のインド太平洋重視

岡崎研究所

世界最大の民主主義国、インドで、モディ首相率いる与党は勝利をおさめ、モディ首相は、引き続き首相の座に留まることになった。総選挙勝利の一週間後の5月30日、モディ首相は、ジャイシャンカル前外務次官を外相に任命した。

インドの女優Shruti Haasan 

ジャイシャンカル氏は、駐中国大使、駐米国大使を勤める等、大物の外交官である。米印間の原子協定の締結に貢献した実績があり、第一期モディ政権でも、良好な米印関係の構築に寄与した。中国との関係では、2017年の中印間の軍事衝突の危機の際に、それを回避させることに成功した。モディ首相のジャイシャンカル氏への信任は厚く、モディ首相が第二期政権で外交を重視する方針を明らかにする中で、外交の責任者である外相に任命された。

今回、モディ首相は、就任式に、環ベンガル湾多分野経済技術協力(BIMSTEC)の代表を招待した。BIMSTEC の参加国は、インド、バングラデシュ、ミャンマー、スリランカ、タイ、ネパール、ブータンである。パキスタンを排除し、近年では、BIMSTECが、南アジア地域協力連合(SAARC)にとって代わっている。

インドは建国以来、インドのDNAと言われるくらい大国志向が強かった。南アジアでは超大国であり、その中でパキスタンとの関係の調整に腐心してきた。と同時に、世界の中での大国を志向する動きも見せてきている。核保有国になったのはその表れの一つであり、国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す動きもそうである。国連安保理の常任理事国入りでは、日本、ドイツ、ブラジルとともにG4を構成している。

これは一つには、中国を強く意識していたことの反映とも考えられる。 モディ首相がインド太平洋を重視するに至ったのは、中国の影響力の増大を強く意識する中で、地域的には南アジアの枠を越えて、大国としての外交を展開しようとする意欲の表れとも考えられる。

その点、モディ首相が BIMSTEC を重視するようになったのは興味深い。BIMSTECは日本ではあまりなじみのない言葉であるが、モディ首相が、インドの東側、東南アジアを重視するようになったことを示すものとして、インドの戦略の重要な変化を象徴するものである。

ジャイシャンカル外相の下、日本とインドとの関係が一層緊密化することが期待される。 6月4日、河野外務大臣は、ジャイシャンカル外相と電話会談を行い、日本と関係の深いジャイシャンカル外相の就任に祝意を表した上で、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、グローバル・パワーたるインドが果たすべき役割と責任は極めて大きい、と述べた。

日本と関係の深いジャイシャンカル外相というのは、ジャイシャンカル外相がかつて日本に勤務した経験があることを念頭にしての発言と思われる。ちなみに、ジャイシャンカル外相の夫人は日本人である。 

ジャイシャンカル外相

河野外務大臣はまた、昨年モディ首相が訪日したことを踏まえ、今年は安倍首相がインドを訪問する番であるとも述べた。 モディ首相が、インド太平洋を重視する政策を掲げていることは、日本にとって心強いことである。インド太平洋の航行の自由を確保することは、日本にとって死活的な重要性を持つ。日本は、2015年の安倍首相のインド訪問の際に言及した両国の特別戦略的グローバル・パートナーシップの一層の推進に努めるべきであろう。

第二期モディ政権のモディ=ジャイシャンカル外交は、十分、それに応えてくれることが期待できる。上記のBIMSTECを重視するインドの姿勢もそうだが、昨年のシンガポールでのアジア安全保障会議「シャングリラ・ダイアローグ」の基調講演でも、モディ首相が明言したように、インドは、「アクト・イースト」政策を推進し、ASEANを中心に、自由で開かれたインド太平洋を求めて行く(詳細は、2018年6月18日付の本コラムを参照)。実際、既に、インドは、様々な諸国と海洋協力を推進している。例えば、昨年10月11日から15日は、インド洋のベンガル湾で、日本の海上自衛隊が、護衛艦「かが」と「いなづま」を派遣して、日印共同訓練を行っている。


最近では、2019年(令和元年)5月3日から9日、米国と日本、インド、フィリピンの4か国で、南シナ海を中心とした海域で共同訓練を行なった。この4か国で共同訓練したのは初めてだと言われる。インドが、もはや非同盟中立国の伝統よりも、「アクト・イースト」政策を通じて、民主主義諸国とともに、ルールに基づいた「自由で開かれたアジア太平洋」を維持していきたいとの表れと見ることができる。日本としても歓迎すべきである。

【私の論評】アジア地域のサプライチェーンの脱中国的な再編が加速化し日本やインドは良い影響を受ける(゚д゚)!

今回の総選挙でモディ首相は有権者の愛国心をかき立てることによって勝利を引き寄せたが、途上にある経済改革を前進させることなしに国民の支持を維持し続けることは難しいでしょう。

経済大国に至る具体的な道筋を打ち出すことができなければ、格差や雇用に対する国民の不満が間を置かずに吹き出し始めるでしょう。

世界景気の先行きに不透明感が強まるなか、高い経済成長を実現し続けるのは難しいようにも見えます。ただインドにとっては、不透明感を強めている主因の1つである米中貿易摩擦が追い風になる可能性があります。中国と米国に代わる世界経済の担い手としてインドへの期待が高まっているからです。

これから、アジア地域のサプライチェーンの脱中国的な再編が加速化するのは当然のことであり、このことにより、日本やインドは良い影響を受けることになるでしょう。

アジア地域のサプライチェーンの脱中国的な再編が加速化

米中貿易戦争は、供給過剰で疲弊している世界経済を救うかもしれないです。なぜなら現在世界経済が疲弊しているのは、中国を中心とする国々の過剰生産とそれに伴う過剰貯蓄の影響だからです。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国においてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しないです。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

中国が過剰生産をできるなくなることによって、世界経済は良い影響を受けるでしょう。特に、インドや日本はそうです。ただし、これは中長期的みかたであり、短期的には中国経済の悪化は無論日印によって悪影響を及ぼす可能性もあります。そのため、日本では増税などしている場合ではないです。インドでも当面の経済運営が重要になります。

米国と中国という二大国の経済成長に対する不安が高まれば高まるほど、安定した日本と巨大な市場と豊富な人材を抱えるインドの重要性が相対的に高まります。インドは米中に代わる投資先としての魅力をアピールすることで、400億ドル台で足踏みしている海外からの直接投資の流入量を増やすことができるかもしれないです。日本は、安定したハイテク部品の供給の見地から、見直されることになります。

懸念材料として、米国が次の“貿易戦争”のターゲットとしてインドを見ているのではないかという指摘はあります。今年に入りインドに対する一般特恵関税制度の適用を取り消す方針を示したからです。

また米国のイランへの経済制裁は、同国から原油を多く輸入してきたインド、そして中国を直撃しています。ただ、仮に米国がインドへの締め付けを強めるとすれば、それはインドと中国とを接近させる結果を招き、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)のような新しい経済圏の誕生を後押しすることになるでしょう。

それに、インドと中国とは根本的に違います。中国では選挙はありませんが、インドでは選挙があります。確かにインドは地方にいくと、未だに社会が遅れているところがあり、数年前にも、持参金問題で嫁を焼き殺すなどの信じがたい事件がありました。

とはいいながら、インドは民主化、政治と経済の分離、法治国家化が十分とはいえないまでも、少なくとも中国よりははるかに進んでいます。

政治と経済の分離が進んでない中国では、国営・国有企業がゾンビ化して、中国経済の足を引っ張っていますが、インドではそのようなことはありません。そもそも、インドでは中国のように、需要を全く無視して、製品を製造したり、住宅を建設することなどできません。そんなことをすれば、企業が倒産します。

西欧的な社会構造をある程度受け入れたインドと、それを拒絶した中国とでは、社会構造が全く異なります。米国にとっても、中共は滅ぼすべき相手ですが、インドの現在の体制は滅ぼすべき相手ではなく、ともに繁栄したいと望む相手です。無論日本も米国にとってはそのような存在です。

モディ首相率いる与党の優勢が伝えられて以来、株式市場や為替市場ではインド株とルピーが買われ大きく上昇しています。モディ首相は今回の選挙で獲得した国内における強い基盤と、海外投資家や企業からの期待を追い風にして、途上にある経済改革を加速させることができるでしょうか。2期目に入る政権の真価が問われます。私としては、中国が弱体化しつつある現在、モディ首相はうまくインドの舵取りをしていくと思います。

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2019年6月24日月曜日

中国次官、米側の譲歩求める G20、香港問題は「議論許さぬ」―【私の論評】米国に続いて日本も中共の面子を叩き潰せ(゚д゚)!


G20で香港問題の議論は深まるか。トランプ米大統領(右)と中国の習近平国家主席の対応に注目が集まる

 中国商務省の王受文次官は24日の記者会見で、大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた米中首脳会談をめぐり、「一方(中国)だけでなく双方が譲歩しなければならない」と述べ、貿易協議の妥結には米国側の譲歩も必要だとの立場を強調した。中国外務省の張軍次官補も同じ記者会見で「G20で香港問題を議論することは許さない」とし、同問題を提起する方針を示したトランプ米大統領を牽(けん)制(せい)した。

 習近平国家主席は27~29日に大阪を訪問。王氏は、米中の交渉団が現在、双方の相違を解決する方法に関し、交渉を続けていると表明した。一方で、トランプ政権を念頭に「一部の国が一国主義や保護主義を実行し、ほしいままに貿易相手国に関税をかけている」と非難し、G20で多国間主義への支持が一層高まることへの期待感を示した。

 習氏は昨年11月末からのアルゼンチンでのG20首脳会議で、米中首脳会談を控えていたため「保護主義」への反対といった米国との対決色を封印した。ただ中国は、5月に貿易協議が事実上決裂した原因は米国にあると国内メディアを通じて宣伝。協議再開に道筋が付いた場合、一方的に譲歩したと受け止められるのを避けるため、今回のG20ではより強い表現で米批判を展開する可能性がある。

 一方で中国当局は、香港の混乱をめぐり各国から批判を浴びる事態を懸念している。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案について香港政府は作業の完全停止を発表したが、張次官補は条例改正が法律上の欠陥を補うために必要だとの認識を改めて表明。「どのような場面や形式であろうと、いかなる国も中国の内政に干渉することは許さない」と米側にクギを刺した。

【私の論評】米国に続いて日本も中共の面子を叩き潰せ(゚д゚)!

香港のデモに関しては、やはり話し合うべきでしょう。香港の政治的不安定は、世界経済にも影響を与えるから当然議題にすべき筋のものです。私は、中共はこの問題をあまりに安易に考えてると思います。中国がこれについて、全く話し合いをしないというのなら、トランプ大統領は習近平の会談をキャンセルすることもあり得ると思います。

もうオバマ政権時代の数年前とは事情が全く異なってきていることを中共は理解していないようです。トランプ大統領としては、オバマ時代に後退した中国との対決を本気で一気に進めて米国に有利な状況をつくりだそうとしています。

すでに、中国に対する米国による最終兵器が5月15日に炸裂しました。それは華為技術(ファーウェイ)を輸出管理法に基づく輸出規制の対象(エンティティーリスト)に加えたことです。

ファーウェイを標的にしたトランプ大統領

米国の企業がファーウェイに部品やソフトウェアを売ろうとするときには商務省に申請して許可を得なければならなくなりましたが、一般に申請は許可されないといいます。

昨年4月に中興通訊(ZTE)がイランに不正輸出を行ったとして同様の制裁を科され、スマホの工場の稼働が止まるほどの窮地に陥ったことは記憶に新しいです。その時は中国政府が米国政府と交渉して、米国企業との取引禁止から罰金に「減刑」してもらうことで何とか難局を乗り越えました。

とはいいながら、ZTEが米国に対して約束した透明性を確保しなければ、制裁が再発動されることになります。

一方、ファーウェイはZTEを上回る技術力を持つハイテク企業ですが、米国政府も周到にファーウェイを追い詰めようとしています。まず昨年4月にアメリカ連邦通信委員会(FCC)は米政府の補助金を使う通信事業者がファーウェイとZTEの機器を使うことを禁じる措置を決めました。

さらに昨年8月に成立した国防権限法2019(NDAA2019)は、アメリカの政府機関がファーウェイ、ZTEなど中国企業5社の通信機器や監視機器を使用することを禁じ、さらにこれらの企業の機器を利用している企業からの調達まで禁止しました。

そしてこのたびの輸出管理法は米国の企業がファーウェイに対して機器、部品、ソフトウェアなどを輸出することを事実上禁ずる、というだけではなく、他国企業がアメリカ企業の部品やソフトなどを含むものをファーウェイに売ることにも規制の網をかけています。もしこの規制を破れば、今度はその企業が米国企業との取引禁止や罰金などの制裁を受けることになるのです。

つまり、米国企業がファーウェイに何かを売ったり、ファーウェイから何かを買ったりするのを制限するというだけでなく、ファーウェイと取引するような企業は他国の企業であっても米国の政府調達から締め出されたり、米国企業との取引を禁止されるといった制裁が科されるというのです。

もっとわかりやすくいえば、ファーウェイは、インテルやAMDのCPU、チップセットを購入出来なくなったのです。これは小売用だけでなく、社内使用分もです。また、Windows OSもです。ファーウェイは自身で開発した新 OS 何を使って開発するようなことを言っていますが、これを実行したとしても、効率はかなり悪くなることでしょう。

世界中で共通のプラットフォームとして用いられている、OS等には、様々なノウハウが蓄積されており、その豊富なノウハウなどの資源を用いることができるのですが、自社開発のOSということになれば、そういうわけにはいきません。なんでも自前て開発しなければならなくなります。

ただし、禁輸にしても、第三国経由で横流しされるでしょう。米国はそれを追跡し、第三国企業に制裁、見せしめをする事で穴を塞いで行くことになるでしょう。

インテル、nvida、AMD 3社を禁輸にすれば、天網スカイネットも瓦解するでしょう。ウイグル等人権問題が関係するので正当性はあります。NDAA2020では、天網を崩壊させるてだても組み込むことでしょう。

なぜここまでするかといえば、もう米中の貿易戦争は、冷戦の次元にまで高まっているからです。そうして、その背景には「文明の衝突」があるからです。現在の米中の争いは、米国側からすれば、中共の価値観を排除するという意味合いがあるのです。

さらに、米国共和党のルビオ上院議員が「政府の監視対象となっている企業が国内での特許について、特許侵害での提訴も含めた法による救済措置を求めることを禁止する」法案を提出したそうです。 

ルビオ上院議員

これは事実上、アメリカの監視対象となっているヒューウェイを狙い撃ちにしたものです。

ヒューウェイは米国の大手通信会社・Verizonに対し230件を超える特許を巡って10億ドル以上のライセンス料を要求していますが、法案が成立すれば救済措置を求められないどころか「ヒューウェイの特許はいくらでも侵害していい」ということになるわけです。

なお、周知の通りヒューウェイiは現行の4Gおよび次世代産業の中核となる5G技術においてトップクラスの特許を保有。5Gの標準化に大きく貢献するなど名実ともにフロントランナーです。

5Gをめぐる米中覇権争いの中、ターゲットにされている感のあるヒューウェイ。知財保護を訴えていた米国とすれば、ヒューウェイの技術は、元々成熟しかけていた米国等の技術を盗み、中国の政府補助金などで、急速に成熟化したものであると断定しているのです。

だからヒューウェイの技術に関しては、当然のことながら自分たちが金と時間をかけ成熟させるはずだったものを、盗まれたのですから、盗まれたものは取り返すという意味でこのような措置をとるのでしょう。

さらには、日米はすでに6Gの基礎研究に入っていますから、これがある程度までいったときにまた盗まれては、同じことの繰り返しです。この措置は、そんなことは絶対にさせないし、すれば取り返すだけであるという覚悟を中共にみせたのでしょう。

中国も盗まれる痛みを知らなければ、いつまでも窃盗を続けるでしょうから、私はこうした措置を歓迎したいです。

それにしても、米国の要求に折れたら習近平の負けを認めたことになり共産党支配の崩壊が早まることになります。 突っぱねれば、中国経済に大打撃を受けることになります。

トランプ政権は、中国製品に理不尽なまでの制裁関税をかけ、ファーウェイに対するアメリカ製品の輸出を禁止した。トランプに態度軟化の気配は見えず、中国はこれ以上被害が広がらないうちに折れたほうが賢明ではないかと思います。

王受文次官は、G20で香港デモの話をしないとしていますが、もし本当にそうすれば、トランプ大統領は習近平との会談をキャンセルし、さらに何らかの形で具体的に、新たな制裁を実施することになるでしょう。

王受文次官

この米国の行動は、トランプ大統領が辞任した後も続きます。それは、次の選挙でトランプ氏が再び大統領になってもならなくても、超党派で継続されます。

これについては、日本の企業や日本政府が何を言ったとしても、今後しばらくは変わりません。そうして、日本の企業が米国のやり方に違反した場合は、何らかの制裁を受けるだけになります。それは、日本政府も同じことです。

そんなことよりも、今は米国に協力して、中国がまともな国なり、中共が崩壊するか、中国の経済が弱体化して、日本等の周辺諸国に覇権を及ぼすことができなくなるまで、中国を追い詰めるときです。今は、中共の面子を米中協同でたたき潰し、中共の崩壊を推進するべき時なのです。中共が面子を気にして粋がってみせていられるのも今のうちだけです。

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