<「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」がここへ来て急に見直されているのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたからだ>
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は中国・武漢の研究所から手違いでウイルスが流出して引き起こされた──これはつい最近までオルト・ライト(新右翼)的な陰謀論としておおむね無視されてきた主張だ。【ローワン・ジェイコブソン】
<チーム名は「ドラスティック」>
それは言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法である。彼らは自分たちをDRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19=新型コロナウイルス感染症に関する分散型の急進的な匿名の調査チームの頭文字を取った略称だ)と名乗る。まず、武漢の研究所が長年、コウモリのいる洞窟で何種類ものコロナウイルスを収集してきたこと。その多くは2012年にSARS(重症急性呼吸器症候群)のような症状を起こして3人の鉱山労働者が死亡した銅鉱山で見つかったもので、新型コロナと最も近縁なウイルスもそこに含まれるとみられている。
また、武漢の研究所はこれらのウイルスを使ってさまざまな実験を行なっていたが、安全管理はお粗末で、曝露や流出の危険性があったことも明らかになった。研究所も中国政府もこうした活動を外部に知られないよう、ひた隠しにしていたのだ。
さらに、新型コロナの発生源とされた武漢の華南海鮮市場で最初の集団感染が起きるよりも何週間も前に、既に感染者が発生していたことも分かった。
これらのいずれも、研究所流出説を裏付ける決定的な証拠とは言えない。研究所が発生源ではない可能性も十分にある。しかしDRASTICが集めた証拠は、検察官の言う「相当な理由」にはなる。つまり、研究所から出た可能性を疑い、本格的な捜査を行うに足る理由がある、ということだ。
<最初は「海鮮市場が発生源」を信じた>
ピーター・ダスダック氏 |
<自然発生説のほうが陰謀だった>
世界で最も多くコロナウイルスを収集してきた研究所のすぐそばで、未知のコロナウイルスの集団感染が発生したとなると、研究所から流出した疑いを持つのは理の当然だ。ダザックはすかさずそれに待ったをかけた。他の26人の科学者と連名で2020年2月19日、医学誌ランセットで公開書簡を発表。「新型コロナウイルス 感染症が自然な発生源を持たないことを示唆する陰謀論を、私たちは断固として非難する」と宣言したのだ。
論文はRaTG13の起源については曖昧で、中国南部の雲南省に生息するコウモリから以前検出されたと述べるだけで、いつ・どこで発見されたのか具体的な言及はなかった。
彼を駆り立てたのは好奇心だけではなく、ひとりの市民としての責任感でもあった。「新型コロナウイルスは、数えきれない人の命を奪い、大勢の人の生活を破壊した。多くの謎も残しているのに、その追跡調査が行われていない。人類には答えを知る権利がある」
シーカーをはじめとするメンバーたちは徐々に、RaTG13がその「答え」の一部を解明する上での鍵を握っているのではないかと確信するようになった。
グループのスレッドでは、6人ほどの参加者がこの謎について活発な議論を展開。彼らはヒントを求めて、インターネットや武漢ウイルス研究所の過去の論文をくまなく調べた。彼らは世界中の人々が見られる形で、リアルタイムでデータを更新し、さまざまな仮説を検証し、互いの意見を修正し合い、幾つかの重要な指摘を行った。
RaTG13の遺伝子配列が、石正麗が何年も前に発表した論文に記されていた遺伝子コードの一部と完璧に一致した、というのもその一つだ。この遺伝子コードは、武漢ウイルス研究所が雲南省のコウモリから発見したウイルスのものだった。
<始祖ウイルス発見は2012年?>
DRASTICチームは、2つの論文に含まれる重要な詳細情報を過去の複数の報道と結びつけて、RaTG13は雲南省の墨江八二族自治県にある鉱山の坑道で発見されたウイルスだと断定した。ここでは2012年に、コウモリの糞を除去していた男性6人が肺炎を発症し、そのうち3人が死亡していた。DRASTICはこれが、ヒトが新型コロナウイルスの始祖ウイルス(おそらくRaTG13かそれに類似したウイルス)に感染した初めての症例だったのではないかと考えた。
<2012年の鉱山労働者の死因を追え>
その宝物に出くわしたのは、あきらめかけた時だった。昆明医科大学の院生が2013年に提出した60ページに及ぶ修士論文だ。タイトルは「未知のウイルスによる6人の重症肺炎患者の分析」。患者1人1人の症状と治療の進展を事細かく述べた上で、執筆者は疑わしい「犯人」を挙げていた。「シナキクガシラコウモリ、あるいはその他のコウモリ由来のSARSのような(症状を引き起こすコロナウイルス)」の仕業だ、と。
スパイ活動には、オシント、シギント、ヒューミントの3つがある |
・複数名で行うこと
一人で分析をすると、思い込みが強くなっていって、正しい結論を導けない可能性があります。複数名で分析することで、ディスカッションが生まれるようにします。この時、処遇評価を行える権限のある人(あるはそれに近い人)を参加させないように注意します。
DRASTICチームは、まさに一人ではなく、複数の人間で行ったからこそ、成果をあげることができたものと思います。・フレームワークを使うこと
思い込みをなくすために使いましょう。「知っていること」を整理するのと同時に、「知らないこと」は何であるかを明らかにしておきます。但し、フレームワークに定義できないものもあることを認識しておきましょう。そうしないと、無理やりフレームワークに収めて結論を誤ったり、情報を落とす可能性があります。検討状況はリアルタイムでわかるようにしたいですが、最終結論は急がないようにすべきです。フレームワークも、ネット上を探せば、様々なツールがあります。・カウンターインテリジェンスに気を付けること
とうぜこのような活動には、攻撃者も陽動してきます。頭の片隅に、そのことも意識しながら分析しましょう。上級者向けのテクニックとして、Deception(おとり)をシステムに組み込んでおくのも良いです。うまくいくと、攻撃者のPlaybookから外すことができます。(例:hostsファイルにダミー用の情報を書いておく、とか)
・ Common情報に気を付けること
分析の過程で、公開プロクシのIPアドレスや枯れたマルウェアのハッシュ値だったり、そういったものが見つかります。それらはどの攻撃者(スキル高低問わず)も使いますので、それらを細かく調べても、特定の攻撃者にはたどり着けません。目を向けすぎないように注意しましょう。特徴となりえるものを探しましょう。
さて、長々とツール自体について、講釈をたれるつもりはありません、以上にようなことを掲載したのは、今の世界では、OSINTを実行するために、有用なツールがネット上にオープンソースで提供されているということを言いたかったからです。
さて、このようなオシントを一躍有名したのが、べリングキャットです。
独立系オープンソース調査組織の「べリングキャット」は、OSINTの報道への応用を最初に実行した機関です。ブロガーのエリオット・ヒギンズは、イギリスのレスターにある彼のアパートのノートパソコンから、乳児の娘の世話をしながらシリアの戦争を取材して、波紋を呼びました。2014年、彼はべリングキャットを設立し、今ではハーグにオフィスを構え、約十数人のスタッフを抱えるまでに成長しました。ヒギンズは、国際紛争やデジタルデータに関する特別な知識があるわけではなく、ビデオゲームで遊んでいた時間があったからこそ、どんな謎も解けるという考えが身についたといいます。
べリングキャットは2014年に ウクライナ東部上空で起きた マレーシア航空17便の墜落事故を調査したことで 一躍有名になりました。
当時 ベリングキャットは ボランティアのグループで主にSlackチャンネルを使って協力していました。墜落現場の写真とフェイスブックの更新情報をもとに、攻撃に使用された発射装置を特定し、ミサイルが発射される数日前にロシアからウクライナの反政府勢力の領土に移動されたと報告しのです。
昨年6月、オランダ主導の国際検察チームは、ロシアの軍事・諜報機関とつながりのある3人の男を襲撃事件で起訴しましたが、べリングキャットは今年、その裏話を詳述したポッドキャストを製作しました。
オランダ人映画監督のハンス・プールは、ベリングキャットの墜落事故の報道を見て、ベリングキャットのドキュメンタリーを作ろうと思い立った。プールのドキュメンタリー『Bellingcat: Truth in a Post-Truth World』は、国際エミー賞を受賞しました。
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