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2020年4月23日木曜日

欧州遠ざける中国のコロナ外交-今の雰囲気は「かなり険悪」―【私の論評】マスク外交をアジアで展開できない中国が、EUに触手を伸ばしてもそれに乗るのは経済弱小国だけ(゚д゚)!

欧州遠ざける中国のコロナ外交-今の雰囲気は「かなり険悪」
 「人々に何をすべきか命じようとする態度が至る所に見られる」
  幾つかのEU加盟国は対中依存を減らす政策を探っている
中国の習近平国家主席による欧州歴訪の翌年となる今年は、欧州と中国の外交関係が強固になるはずだった。だが今、その関係にダメージを与える亀裂が走っていると欧州側は警戒している。

中国の習近平国家主席とメルケル独首相(パリ、2019年3月26日)

 欧州の外交官が語るのは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を巡る中国側の振る舞いだ。中国の医療機器サプライヤーによる価格つり上げの報告や、そうした行動がどう受け止められるかについての無神経さなどが話題に上る。中国側の新型コロナ危機への対応は、同国が世界的なリーダーシップをアピールできるまさにこのタイミングで、自らの信頼性を損ねる結果となっている。

 「中国はここ数カ月で欧州を失った」と話すのはドイツの緑の党に所属し、欧州議会で対中関係を担当するラインハルト・ビュティコファー議員だ。同議員はウイルス拡散初期段階での中国側の「真実のマネジメント」から北京での中国外務省報道官による「極めて攻撃的な」スタンス、民主主義より中国共産党が優れていると主張する「強硬なプロパガンダ(宣伝工作)」などへの懸念を挙げる。

 関係悪化をもたらしたのは一つの行動というよりも、「パートナーシップを構築しようという意思ではなく、人々に何をすべきか命じようとする態度が至る所に見られることにある」と同議員は指摘する。

上海のマスク工場

 トランプ米政権が再び中国非難を強める一方で、欧州の当局者は表立った対中批判は控えがちだ。仕返しを恐れていることもある。だがベルリンやパリ、ロンドン、ブリュッセルの政治家たちが新型コロナに関する中国の対応に懸念を示しているという事実は、広範な影響を伴う怒りが深まっている状況を示唆している。

 すでに幾つかの欧州連合(EU)加盟国は対中依存を減らし、搾取(さくしゅ)にも転じ得る投資を阻止する政策を探り、昨年7500億ドル(約81兆円)に迫った中国EU貿易を損ねるリスクを冒してでも防御策を講じようとしている。

 新型コロナのパンデミックは中国からの対欧医療品支援などを通じ、欧州と中国の連帯の好機となるはずだったが、在中国EU商業会議所(中国欧盟商会)のヨルグ・ワトケ会頭は「中国について言えば、欧州の雰囲気は今かなり険悪だ」と語る。

 主要7カ国(G7)の外相が3月25日に行った電話会議では、欧州とG7は中国に警戒すべきだとの認識が示された。他の多くの国が新型コロナ封じ込めでロックダウン(都市封鎖)を続けている間に中国が「一段と自信を強め、より強力」に動く可能性があると報告されたという。電話会議に詳しい欧州当局者が明らかにした。

 中国外務省の趙立堅報道官は4月17日の定例記者会見で、中国は欧州各国を含めた国際社会と協力し「全人類の健康と安全を共に守る」用意があると表明した。

 それでも中国のやり方は今月、欧州で裏目に出た。在フランス中国大使館のウェブサイトに、仏高齢者施設の職員は入居者を死ぬに任せているとの誤った批判が掲載されたのだ。モンテーニュ研究所のアジアプログラムディレクター、マシュー・デュシャテル氏はフランスでの新型コロナ危機の「最もセンシティブかつ最も悲劇的な側面の一つについて、信じられない主張がなされた」とツイートした。

 北京に駐在する2人の欧州当局者によれば、中国はプロパガンダの窓口機関が増幅させる「陰謀説」への反発を過小評価していた。新型コロナを巡る対欧支援に欧州の人々は感謝し称賛しなければならないという中国の主張もまた、本来得られるであろう好意を損ねているとも2人は説明している。

【私の論評】マスク外交をアジアで展開できない中国が、EUに触手を伸ばしてもそれに乗るのは経済弱小国だけ(゚д゚)!

中国がEUで信頼を失っているのは、EUを踏み台にして、自らの回復を優先しているからでしょう。マスク外交で恩を売っておき、その後関係を構築し、回復後には輸出や、インフラ整備などで、利益をあげようという魂胆です。私は、習近平が一週間ほど、姿をくらましたとされている期間に、こういった悪巧み等を考えたのだと思います。

そうして、なぜ中国が、EUを標的にしてマスク外交をしているか、その真の理由は以前このブログで述べたばかりです。当該記事のリンクを以下に掲載します。
新型コロナが証明した「独立国家」台湾―【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!
flickerより Robin Huang 台湾国旗柄のビキニの女性 写真はブログ管理人挿入
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になりました。
もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。
台湾のみでなく、日本も未だコロナの被害は他国と比較すれば少ないですし、韓国も収束しつつあります。他国の支援を受けなくとも独力で、中国ウイルス対策が十分にできているということです。これからも、何とかなりそうです。

あの北朝鮮ですら、表向きは感染者ゼロとしています。これは、本当なのかはわかりませんが、少なくとも"感染者ゼロ"と表明するのは、北朝鮮はウイルス対策で中国の助けなどいらないと表明しているのと同じです。世界感染マップをみても、アジアの感染率は明らかにEUよりも低いですし、EUは多いです。

これでは、アジアで中国の出番はないのです。だからこそ、中国ウイルスでかなりの痛手を被っているEUに触手を伸ばしたのです。しかし、上の記事のように、中国はEUでかなり警戒されているようです。

EUに限らず、中国は多くの国々で警戒されているようです。それどころか、世界はコロナウイルスの抑制に必死で、経済は疲弊の一途ですが、中国は国民の命を無視して経済活動を再開。その結果、中国では何百万人かは死ぬでしょうが、経済は復興してすさまじい強国になると同時に人口抑制にも成功するかもしれない。そうなれば、中国が覇権を握り、世界は暗黒になるとの恐怖を抱いている人も多いのではないでしょうか。

しかし、これは杞憂かもしれません。なぜなら、中国経済はそもそも対外依存型で海外への輸出に頼る部分が大きいからです。これに比較すると、日本などの先進国では、GDPに占める個人消費が60%台であり、米国では70%台です。中国は40%程度です。

世界が疲弊する中で、中国の対外輸出が激減し企業の倒産・休業が広がっています。1~3月に企業倒産が46万件もあったのですが、4月に稼働再開したメーカーが再び停止となった場合も多いです。

4月17日に開かれた中国共産党政治局会議は、今後の経済運営に関して「食糧とエネルギーの安全を守ること」「基本的な民生(国民生活)を守ること」を重要任務として掲げました。中国的に言えば、その意味するところは今後下手すると「基本的な国民生活」の維持すら覚束ないようなのです。

とにかくこれからの中国はもはや経済成長どころではないのです。人民が食べていけるかどうかが問題となるのです。これでは、私が以前このブログで主張したように、中国は石器時代を迎えることになるかもしれないということが、さらに現実味を帯びてきました。

石器時代の狩りの想像画

EU諸国も、中国の経済力すなわち、金だけに注目していたのであり、金なし中国には全く関心を抱かなくなることでしょう。

中国ウイルス対策では、経済発展しつつあるアジアで見向きもされない中国が、歴史的にみて元々黄昏を迎えつつあるEUに触手を伸ばしてみても、結局それに乗ってくるのは、経済弱小国だけでしょう。それらの国々には手厚い経済支援をしなければならなくなり、中国のお荷物になるだけです。

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2019年3月29日金曜日

【主張】欧州の対中戦略 結束乱れる危うさ認識を―【私の論評】日欧ともに最早お人好しであってはならない(゚д゚)!

【主張】欧州の対中戦略 結束乱れる危うさ認識を

     欧州で自らの勢力圏拡大を図ろうとする中国にどう対応するか。欧州の対中戦略は世界の経済や安全保障にも影響する重要な意味を持つ。

 だが、中国の習近平国家主席による訪欧で明確になったのは、対中国で足並みをそろえられない欧州の現実である。

対中接近をはかる中・東欧諸国(16カ国)

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、中国を貿易や技術開発の「競争相手」とする見解をまとめ、中国への警戒感をあらわにした。実際、フランスやドイツではそうした見方が多い。ところがイタリアや中・東欧諸国は、むしろ対中接近を図っている。

 EUの結束どころか、分断が深まるようでは危うい。経済、軍事上の覇権を追求する中国が、EU各国を切り崩しながら膨張主義を強めることに懸念を覚える。

 欧州に求めたいのは、目先の経済利益に踊らされず、日米と連携して中国に厳しく対処する姿勢である。その認識を共有し、結束を取り戻せるかが問われよう。

 マクロン仏大統領は習氏に「EUの結束を尊重するよう望む」と求めた。イタリアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に協力する覚書を結んだためである。EU内の旧共産圏諸国なども覚書を結んでいるが、先進7カ国(G7)ではイタリアだけだ。対米関係で苦境に立つ中国には成果である。

 問題は、これを機に一帯一路が再び勢いづきかねないことだ。一帯一路は、相手国を借金で縛る手法への批判が世界中で相次いでいる。欧州でも中国の手に落ちたギリシャ港湾などが軍事利用されることに警戒がある。そうした懸念が強まることにならないか。

 反EU機運が高まる中、イタリアのように経済が停滞する国が中国に傾斜する流れが強まれば、EUの求心力は一段と弱まることにもつながりかねない。

 域内では第5世代(5G)移動通信システムでも対応に温度差があり、欧州委員会は米国が求める中国の華為技術(ファーウェイ)の一律排除を見送った。それが米欧の溝を際立たせてもいる。

 留意すべきは、EU域内のみならず、日米欧がばらばらに動けばどこを利するかである。日本は一帯一路に前のめりとなる一方、ファーウェイ製品の政府調達を事実上排除した。国ごとの違いを乗り越え対中戦略でどう連携できるか。G7の場で深めるべき重要なテーマだと認識しておきたい。

【私の論評】日欧ともに最早お人好しであってはならない(゚д゚)!

上の記事では、「日本は一帯一路に前のめりとなる一方、ファーウェイ製品の政府調達を事実上排除した」としています。しかし、「一帯一路にまえのめり」は事実ではないと思います。特に日本政府、安倍首相はそうではありません。それについては、以前このブグにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍首相、中国の一帯一路協力に4つの条件 「全面賛成ではない」―【私の論評】日本には中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどの潜在能力がある(゚д゚)!

参院予算委員会で答弁を行う安倍晋三首相。右は麻生太郎副総理兼財務相、
左奥は根本匠厚生労働相=25日午後

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、安倍晋三首相が25日の参院予算委員会で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に日本が協力するには、適正融資による対象国の財政健全性やプロジェクトの開放性、透明性、経済性の4条件を満たす必要があるとの認識を示した。「(4条件を)取り入れているのであれば、協力していこうということだ。全面的に賛成ではない」と述べたことを掲載しました。

そうして、安倍総理は「一帯一路」に対して両手をあげて賛成しているどころか、牽制しているという趣旨の主張をしました。それに関する部分を以下に引用します。
安倍総理が、条件づきで一帯一路への協力の可能性を述べたのは、何も今に始まったことではありません。以前から何度か述べています。
たとえば2017年都内で行われた国際交流会議の席上、安倍総理は中国の経済構想「一帯一路」に初めて協力の意向を表明しています。これを受け一部メディアはあたかも日本が中国に屈したかのように報じるなど、「中国の優位性」が強調され始めました。
安倍首相は同年6月5日に国際交流会議「アジアの未来」の夕食会で講演し、中国の経済圏構想「一帯一路」について、「(同構想が)国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合し、地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことを期待する。日本は、こうした観点からの協力をしたい」と述べました。
新聞各紙は、初めて安倍首相が「一帯一路」への協力を口にしたということをポイントとして強調しています。これだけ見ると、いよいよ日本も「一帯一路」に参加するかのような印象を与えました。
当時は、米国のTPP離脱で窮した安倍政権が、「一帯一路」に尻尾を振り始めたと見る向きもありました。しかし、その後日本は自らTPPの旗振り役となり、米国を除いた11カ国で昨年末に発効しています。
ただし、産経新聞は「安倍晋三首相、中国の『一帯一路』協力に透明性、公正性などが『条件』」という見出しで、中国が支援する国の返済能力を度外視して、インフラ整備のために巨費を投じることが問題化しつつあることを踏まえた発言だという内容となっています。むしろ中国を牽制する狙いがあるという論調です。私もそう思います。

本日の安倍総理による4条件①対象国の財政健全性、②プロジェクトの開放性、③透明性、④経済性も同じことであり、これは中国を牽制する狙いをより明確にしたものです。
安倍総理の対中戦略は一貫したものであり、要するに中国がまともになれば、協力することもあり得るが、そうはなりそうもないので、当面は協力はあり得ないということを表明しているのです。

中国の習近平国家主席は27日、イタリア、モナコ、フランスの欧州3カ国への歴訪を終えて帰国しました。巨大経済圏構想「一帯一路」についてイタリアと先進7カ国(G7)で初となる覚書を交わすなど、習指導部は「中欧関係の発展に新たな推進力を注入した」(耿爽外務省報道官)と成果をアピールしています。ただイタリアの対中傾斜で欧州連合(EU)内部の警戒感はさらに高まり、人権問題をめぐる溝も埋まっていません。

米国との貿易摩擦が長期化する中、習指導部は巨額投資と巨大市場の開放をテコにEUとの関係強化を図っていますが、期待したほど一帯一路への支持は拡大できていないのが現状です。

中国共産党は27日、収賄容疑で調査していた国際刑事警察機構(ICPO、本部・仏リヨン)前総裁の孟宏偉前公安省次官を党籍剥奪処分にしたと発表しました。同事件をめぐってはフランスにとどまる孟氏の妻がマクロン仏大統領に、中仏首脳会談で待遇改善を提起するよう求める書簡を送付。訪仏後まで処分の発表を遅らせたのは、事件に注目が集まるのを避ける狙いがあったようです。

中国外務省は習氏が外遊に出発した21日、EUの駐中国大使らに新疆ウイグル自治区へのツアーを提案しました。100万人以上のウイグル族らを強制収容しているとの批判に反論するのが狙いとみられますが、EU側は「準備が必要」だとして拒否しました。中国側の政治的主張に利用される懸念があったとみられます。

EU首脳会議後の会見で笑顔を見せるユンケル欧州委員長=22日、ブリュッセル

陸のシルクロードと呼ばれる「一帯一路」では、中国は欧州において、すでに旧共産圏16カ国との間で協力の枠組み「16プラス1」を持っています。バルト3国、旧東欧諸国、バルカン半島の国々が参加し、大規模なインフラ整備事業ではこれらの国々の対中依存度は高まりつつあります。

問題は、このうちポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、バルト3国など11カ国がEU加盟国であることです。これに加えて、中伊の急速な接近に対し、フランスのマクロン大統領やEU執行機関・欧州委員会のユンカー委員長らが強く反応したのも無理はないです。

マクロン氏は22日にブリュッセルで行われたEU首脳会議の場で記者団に、「中国に関して欧州がお人好しでいる時代は終わった。長い間、われわれは対中政策で共同歩調を取らず、中国は欧州の分断から利益を吸いあげてきた」と警戒感を直截に表現した。ユンカー氏の中国に関する発言は「トランプ米大統領並みだった」との報道もあります。

EU首脳らは会議で、欧州委員会による対中戦略の見直し計画を承認しました。この文書は中国について「全体的なライバルである」と明記し、気候変動対策や核不拡散問題では従来型の協調維持を掲げつつも、「お人好し」一辺倒の路線とは明確に決別するトーンで貫かれている点が目新しいです。

中国の対欧投資を規制することや、中国に市場開放をより厳しく求めること、中国が積極的に輸出する次世代通信5Gの通信網整備については安全保障上の脅威の有無について検討すべきことなども盛り込んでいます。

ある欧州外交官は「中国による分断工作をはねつけるための対策だ」と語っています。首脳会議では、サイバー分野についてはコンテ伊首相も「懸念を共有する」と述べ、この分野で中国と協力する場合には、透明な形でEUに情報提供すると約束しました。EU内で高まる懸念に一定の配慮を示さざるを得なかったのです。

マクロン仏大統領

マクロン氏は26日、習氏が国賓として滞在中だったパリにユンカー氏とメルケル独首相を呼び、4者会談を行いました。EUの中軸をなす独仏と欧州委員会の共同歩調をアピールするために設定したものです。この場でもマクロン氏は「中国はEUの一体性と価値観を尊重しなければならない」と述べ、カネにものを言わせて欧州の分断を図る試みを率直に批判したのである。

問題の一因は、EU加盟国が自国の国家安全保障政策に関する主権をまだEUに移譲していない制度にもあるでしょう。例えば、中国の通信大手「華為技術(ファーウェイ)」を5G通信網整備に関与させるか否かについての最終的な判断は、EUではなく、加盟国が下すのです。

安保政策の「統合不足」は、中国による分断工作を許す弱点でしょう。マクロン氏が中国に注文をつける一方で、300機のエアバス機売却について習氏の同意を得たことが示すように、対中関係は是々非々のバランスも難しいです。

マクロン氏はさる3月5日、EU加盟国の28のメディアに寄稿し、「欧州の再生」を呼びかけました。ドイツを怒らせるユーロ圏の共通予算構想など従来の主張は封印し、米国が強く求める国防費の増額をEUが義務化することや、内実の伴う共同防衛計画の策定、EUから離脱するであろう英国を取り込んだ「欧州安全保障理事会」の創設、相互防衛条約の締結をなど提唱しました。

通商政策では、租税、データ保護、環境などのEU基準や戦略的利益を無視した商取引を禁じることや、米中並みの産業・調達政策を導入すべきことも主張しました。

EUが今後、マクロン氏の問題提起をどこまで議論するかは不透明です。28カ国の総意で重要案件を決めていくEUの意思決定は確かに時間がかかります。しかし、こうした大手術が必要であることは間違いないです。

第2次大戦後の欧州は「平和構築」「繁栄の共有」「民主制度の改革」という発展指向の試みによって運命共同体を築きました。その欧州はいま、文明を共有する一体的な空間の「防衛」、つまり自らの浮沈をかけた闘いに直面しているのです。

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2019年1月9日水曜日

欧州の混乱とトランプの米国第一主義、世界は混迷の時代へ―【私の論評】TPP11が世界を変える一里塚となる(゚д゚)!

岡崎研究所 

 12月13日付のProject Syndicateのサイトで、米外交問題評議会のリチャード・ハース会長が、欧州の混乱について、米国の助けが当てにできない以上、欧州は自力で対処する他ないと述べているので、以下に紹介する。

ポーランドの画家、ズジスワフ・ベクシンスキー(1929年 - 2005年、享年75歳)の作品 タイトルなし

 欧州が混乱している。パリの一部は炎上し、英国は、Brexit に疲労し分断されている。イタリアは、EUの予算ルールに抵抗する厄介な左派・右派連立政権である。ドイツは政治的再編と格闘している。ハンガリーとポーランドは非自由主義的政権を擁している。

 フランスと欧州中の極右が、第二次大戦後の政治的秩序を脅かすために経済的・文化的ポピュリズムを利用している。イタリアの左右ポピュリスト連立はまさにそれである。英国とEUとの関係は、亀裂が入ったままであろう。一方、プーチンがウクライナ等への攻撃で満足するか、全く定かではない。さらに、不平等、暴力、気候変動が悪化している世界にあって、移民による圧力は増大するだろう。グローバルな競争が強まり、多くの職を奪う新技術が 生まれている世界において、経済的再編は不可避であろう。

 欧州の民主主義、繁栄、平和の将来は、不確実になってきている。こうした展開は、単一の理由では説明できない。フランスのデモは新税を拒否する左派のポピュリズムである。これは、欧州中で極右の台頭を促している要因とは異なる。EUはあまりに官僚的でエリートによる指導が続き過ぎた。一方、ロシアによる新たな侵略は、プーチンが更なる行動で失うものはないと判断したことを反映しているのかもしれない。    

 欧州は、民主国家の最大の集合体である。20世紀、欧州大陸の秩序崩壊のコストが一度ならず示された。欧州の混乱を説明できる理由は一つではないのだから、答えも一つではない。しかし、助けになる政策は存在する。安全保障、人権、経済的競争力とバランスの取れた包括的な移民戦略は、そうした政策の一つである。どれだけのお金が必要かに焦点を当てた防衛政策は、欧州の安全保障を強化する。さらに、NATOとウクライナの防衛強化により、抑止力を高めるべきである。欧州がロシアの天然ガスから離れること、すなわちノルドストリーム2計画を止めることは、意味がある。そして、グローバル化とオートメーション化で職が失われる労働者を再訓練することが必要である。

 これらの政策課題の多くは、米国の関与と支援があれば有益である。米国が EUを敵視しNATOをタダ乗りするものと見るのを止めれば、助けになる。欧州には、ロシアの侵略抑止、グローバルな貿易・投資の枠組みへの西側の利益に沿った形での中国の取り込み、気候変動の軽減、サイ バー空間のルール作り等について米国と協働する用意のある国々がある。しかし、こうしたアプローチは、近い将来トランプからは出てきそうにない。欧州は、自力で混乱と戦うしかない。

出典:Richard N. Haass,‘Europe in Disarray’,(Project Syndicate, December 13, 2018)
https://www.project-syndicate.org/commentary/growing-threats-to-europe-democracy-security-by-richard-n--haass-2018-12

 欧州が混乱しているのは事実である。その要因はいろいろあるが、その中でも移民問題の影響が大きい。EUを指導してきたメルケルの地位を危うくしたのは移民問題であった。Brexitの要因の一つも移民問題であった。欧州諸国での極右の台頭の背景にも反移民の世論があった。

 移民問題が発生したのは、シリアの内戦、リビアの政治的混乱など、主として中東、北アフリカの政治、社会の混乱のためであり、欧州の責任ではないが、それが欧州に混乱をもたらした大きな要因であったことは間違いない。

 ハースは、フランスの最近の混乱をもたらしたのは新税を拒否する左派のポピュリズムであると言っている。イエロー・ベスト運動の暴徒化は、経済的困窮を訴える労働者、市民に一部の過激派が便乗して起こされたものである。マクロンの譲歩で小康状態にあるが、強く要求すれば政府が譲歩するという前例を作ってしまったようなものであり、今後再び運動が活発化する恐れがある。

フランスのデモ

 英国はBrexitで動きが取れないが、Brexitがどのような結果に終わろうと、英国の混乱は続くだろう。 ハンガリーやポーランドは、かつてソ連圏にあったこともあり、民主主義の定着には時間がかかるであろう。

 ハースは欧州の混乱の事態は好転すると考えるべきではないと言っているが、その通りだろう。 欧州の混乱とトランプのアメリカ第一主義が同時に起きていることが問題である。 民主主義、自由貿易体制、法の秩序といった戦後世界秩序を担ってきたのは、米国と欧州であった。米国はトランプの下、最早そのような担い手の責任を負い続けることに関心が無いようであり、欧州は混乱が続き、責任の一端を担うことが困難になっている。

 これまで世界は覇権国が秩序を保ってきた。第一次大戦までは英国の主導するパックス・ブリタニカであり、第二次大戦以降は米国の主導するパックス・アメリカーナであった。トランプは米国が世界を主導することを止め、欧州が米国を補完出来なくなった。

 世界は混迷の時代に入ったと見なければならないかもしれない。 このような状況の下で、日本は何をなすべきかを真剣に考えなければならない。取りあえず経済面で、TPP の実施、日欧経済連携の強化、ASEANなどとの協力強化等を図るなど、戦後日本が裨益してきた世界秩序を少しでも支えるようリーダーシップを発揮すべきだろう。

【私の論評】TPP11が世界を変える一里塚となる(゚д゚)!

私は、現行の世界経済秩序は、国際金融が主導する弱肉強食型の原始資本主義であると考えており、こうした考え方の基盤には更に、“覇権主義=Hegemonyがあり、力の有る者が人間界の標準を作り、波及させ、その下で世の中を安定させていくほうが世の中は相対的に安定化するという意識があり、現行の世界はこうした意識の下で動いていると見ています。

つまり、力のある人=強者が弱者をリードするというような世界の構築を選好しているものと思われ、そしてその中で、強者になりたいという欲を持つ人の間で対立が出てくると、その過渡期では世界は大混乱する可能性が高まる、そして現在の世界は正にそうした時期へと突入していこうとしていると考えています

そして、このような「国際金融が主導する弱肉強食型の原始資本主義」を生む背景として覇権主義では、普通、強者となるリーダーたちは,「人々が生きていく為に必要なものをコントロールしようとします。つまり、水、食糧、原材料、エネルギー資源のコントロール権拡大に走るのです。

そうして、貨幣経済の下、これらを経済的に支配する通貨によって、更に強く支配するのです。ここに国際金融の大きな役割があり、現在、その力が強大化してきていると考えます。

そうしてまた、こうした意識の下で、強者が,このような世界を守るために作った法と制度・仕組みの下では、平和裏には強者の立場は決して揺るがないのです。

即ち、これに逆らおうとする者が、強者の作った法や制度、仕組みによって「違法」や「不法」などと判断されれば、法令遵守の違反ともなるのです。現行のビジネス社会がComplianceを殊更に強調するのもこうしたことが背景にあると私は見ます。

しかし、弱者の中に本能がふつふつと芽生え、強者に対して反発してこようとすると、究極は自らが強者となるしかないと、究極の力である武力を以って立ち上がるのです。

これをまた、既存の強者は、武力を以って押さえようとするのです。

従って、既存の強者は、自らが強者であるうちに、万一の際に備えて、“軍事力”を強化、その結果として、上述したような国際金融によって束ねられた、水、食糧、原材料、エネルギーの世界を、軍によってコントロールされる軍事力によって、護衛できれば世界は安定するとの意識の中で現行の世界を運営していこうとするのです。

しかしまた現行の世界では、それに対する反発の動きもまた、顕在化してきています。私達は今、そうした世界の中で生きてきているのではないかというと私は考えます。

そして、こうした世界情勢を最近になり、更に深めている背景には、2017年、アメリカ合衆国にトランプ大統領率いるトランプ政権が登場したことから、昨年は米中の対立が本格化、顕在化しました。
昨年暮イラクを電撃訪問したトランプ大統領

2019年は、この「米中対立の行方」に加えて、BREXITをはじめとする、ドイツやフランス、イタリアの不安に見られる欧州情勢の先行き、イランやシリア問題を背景とする中東情勢の不安定などが既に懸念され、国際金融市場も昨年末より不穏なスタートとなっています。

さて日本としては、こうした混迷の世界の中で、北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題は、包括的解決を進めなければならない課題です。拉致問題だけに脚光を当てるのは、かえって拉致問題の解決も難しくしてしまうでしょう。拉致問題と併せ北朝鮮の非核化に向けて役割を果たしていくべきですが、しかし、そのような動きはまだ見えないです。
ロシアとの関係についても危うさが存在します。
安倍首相とプーチン大統領との会談で、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約を締結する方針が確認されました。
ところが、ロシア側は、北方領土は戦争によって合法的に取得されたことを日本は認めるべきだとか、同宣言では主権の引き渡しとは言っておらず引き渡しの条件は交渉事項だとか、どんどん交渉のハードルを上げる発言をしています。
政府は4島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶという従来の方針に変わりはないと説明しますが、2島を対象として交渉を進める結果になれば、日本国内の強い反発が出ると予想されます。
中国との関係については、ここ1年、雰囲気は改善し、安倍首相の訪中により大きく前進したようにもみえます。
米中関係が対立の度を深める結果、習近平国家主席は日本との関係改善にかじを切ったようですが、日本は米中関係の推移に流されないような明確なビジョンを持って中国との関係を考える必要があります。
中国が将来も、対日関係改善の姿勢を維持するのかどうか、不透明な面があるなかでは、抑止力として日米同盟関係は今後とも極めて重要です。
対中関与を弱めつつ、中国を変えていく努力は必要ですが、過去の経緯と、中国国内の体制が根本的に何かわっておらす、これでは中国は変われないし、変わるつもりもないのは、はっきりしています。
日本としては、「TPP11」の拡大をはかり、この地域における自由貿易の拡大やルールの尊重に日本が旗を振っていくことが、米中との関係でも望ましいです。そうして、いずれは、トランプ大統領もしくは次の大統領のときに米国にもTPPに復帰してもらうのです。
これは、覇権主義によらない最初の貿易協定になるかもしれません。なぜなら、当初言い出したのは米国ですが、その後米国は抜け出し、その後日本が旗振り役となり、TPP11の発効にまでこぎつけました。
TPP11の署名式に集まった11カ国の首脳や閣僚(3月8日、サンティアゴ)

これに米国が加入し、独裁国家である中国、ロシア、北朝鮮そうして韓国が入らない状態で運用し、域内を繁栄させるのです。
そうして、この繁栄をみてこれらの独裁国家がTPPに加入したいと考えるようになったときが、チャンス到来です。
これらの独裁国家が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をするように迫るのです。どうしてもできないというのなら、まずは自由貿易ができる程度にはこれらをすすめてもらうのです。
それができれば、いずれこれらの国々も構造転換をして、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめるようになると考えらます。なぜなら、それ以外に、国を本当に富ませる手段はないからです。日本をはじめとする先進国が歩んできた道です。中国は例外であるようにみえましたが、そうではないことが、米中冷戦で明らかになりつつあります。
そうして、いずれTPPを世界共通の貿易協定にまで高めるのです。そのためには、覇権主義によるルールづくりではなく、あくまで世界中の国々が自由な取引をするためのルールづくりとするのです。そうなれば、世界は変わるでしょう。
むろん、貿易だけで世界が変わるわけではないです、しかし、それを一里塚として、いずれは、他の分野にまで覇権主義に基づくルールづくりに変わるものを構築していくのです。

そのときはじめて国際金融が主導する弱肉強食型の原始資本主義が終焉し覇権主義も終焉するのです。

私は現在のように世界が混沌とするときは、世界が次のシステムや規範を求めているときなのだと思います。人々はもう古い社会や政治システムには何の期待もしていないし、希望も持っていません。にもかかわらず、新しい世界の次のシステムや規範が示されないから、世界は混沌とするのです。
こうした時こそ、我々は、真理を求めて考え、すべきことを粛々としていかなければならないのです。

本年もよろしくお願い申し上げます。

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2018年10月16日火曜日

欧州の驚くほど直截的な中国への警戒感と批判―【私の論評】我が国も中国共産党独裁政権が推進する経済活動に対して警戒を緩めてはならない(゚д゚)!

欧州の驚くほど直截的な中国への警戒感と批判

岡崎研究所

仏警察、中国企業所有のワイン醸造所10軒を差し押さえ 脱税などの容疑。写真はフランス
南西部ボルドー近郊のブドウ畑、フランスでも中国に対する警戒感が高まっている。
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

9月12日、欧州議会は「対中関係報告書」を採択、EU中国関係は、人権、法の支配、公正な競争の尊重の上に成り立つべきことなどを強調、中国の一帯一路等を通じた欧州の戦略的インフラへの投資にも警戒感を表している。欧州議会のプレスリリースに従って、ごくあらましを紹介すると、次の通り。

 EU対中関係報告書は、中国がEUの戦略的パートナーであり、さらなる協力の大きな余地があることを認めるが、課題がある。欧州議会は、EU加盟国が結束して、中国の影響力に対抗できるよう、中国の政策に対し結束を強めることを求める。

 人権、法の支配、公正な競争は、EUの対中関与の中核であるべきだ。中国における、人権活動家、弁護士、ジャーナリスト、その他一般市民に対する嫌がらせや逮捕を非難する。中国が外国人ジャーナリストの立ち入りを拒否したり制限する姿勢を強化させるなどしていることは大変懸念すべきことである。

 「一帯一路」を通じた欧州の戦略的インフラへの中国の投資の取り組みは、自由貿易を妨げ、中国企業を優位にしている。こうした投資は、銀行、エネルギー部門、その他のサプライチェーンをコントロールしようとする、中国の戦略の一環である。中国には透明性を改善し、環境的・社会的基準を守るよう求める。 

 世界で25の最も人気のあるウェブサイトのうち8つが中国によりブロックされている。現在進んでいる中国によるインターネットの自由への弾圧、大規模なサイバー空間監視を非難し、法的強制力のある私権の保護を導入するよう求める。

出典:‘Chinese investment in EU infrastructure: MEPs urge EU countries to act together’(European Parliament, September 12, 2018)
http://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20180906IPR12110/chinese-invstment-in-eu-infrastructure-meps-urge-eu-countries-to-act-together

 この報告書は欧州議会で、賛成530、反対53、棄権55の圧倒的多数で採択されたという。一読して分かる通り、驚くほど直截的な中国への警戒感と批判の表明である。欧州においても、中国の影響力の増大、それが自由、人権、法の支配、公正な競争などと言った西側が立脚してきた価値を損ね得ることを的確に認識しつつあることの証左であると言えるだろう。オランダ出身の欧州議会議員バス・ベルダー氏は「EUと中国との強固な関係の原則は、市場アクセスから報道の自由に至るあらゆる分野における相互主義である。相互主義が相互信頼を強化し、EUと中国との間の強固な戦略的パートナーシップを作ることになる」と述べている。

2016年台湾軍のカレンダーより、4月の人物は空軍司令部所属の方稜溶中尉

 報告書では、台湾についても以下のような注目すべき記述がある。欧州において台湾に対する関心も高まっていることが分かる。

・一方に権威主義を強める一党独裁国家、もう一方に多党の民主国家が存在することは、両岸関係のエスカレーションを高める危険がある。

・2015年の対中関係報告書ではEUと台湾との2国間投資協定の交渉開始を求めているが、遺憾なことにまだ始まっていない。

・EUと加盟国は、中国の台湾に対する軍事的挑発をやめるよう最大限求めるべきだ。両岸のあらゆる紛争は国際法に則り解決されるべきだ。中国が台湾海峡上空で新たな航空ルートを一方的に開始する決定をしたことに懸念を表明する。中台間の公式対話の復活を勧奨。台湾のWHO,ICAO(国際民間航空機関)等の国際機関への参加を支持し続ける。台湾が国際機関から排除されることはEUの利益にならない。

 台湾は最近、考え方を同じくする国々が連帯して中国に対抗することを外交政策の基本に据えている。欧州の上記のような姿勢は、台湾にとっても心強いであろうし(台湾政府は欧州議会に感謝を表明している)、民主主義陣営全体にとってもプラスとなろう。

【私の論評】我が国も中国共産党独裁政権が推進する経済活動に対して警戒を緩めてはならない(゚д゚)!

このブログでは、「ぶったるみドイツ」という表現で、EUの盟主であるドイツが、中国と自由貿易を進めようとしたり、国防では主力戦闘機のユーロファイターが数機しか稼働しなくなったとか、Uボートに至っては一隻も稼働しなくなったこと等を厳しく批判してきました。

このようなことは、他の国でもおうおうにしてあることなのかもしれません。日本でも、同じ自民党の中でさえ、中国に対して警戒感を露わにする政治家が存在する一方、あいかわらず親中派・媚中派の政治家も存在します。

ドイツも同じで、一方ではぶったるんでいるように見えるのですが、もう一方ではそうではないドイツの姿があります。

ドイツ政府は欧州連合(EU)域外の企業がドイツ企業に投資する場合、従来は出資比率が25%に達した場合、政府が介入できる規制を実施してきましたが、その出資比率を15%を超える場合に政府が介入できるように、規制を更に強化する方向で草案作りに入っているといます。ドイツ日刊紙ヴェルトが8月7日報じました。ズバリ、中国企業のドイツ企業買収を阻止する対策です。

外国投資の出資比率に対する政府介入の強化に乗り出したアルトマイヤ経済相

ドイツでは2016年、中国の「美的集団」がアウグスブルクで1898年に創設された産業用ロボットメーカー、クーカ社(Kuka)を買収して話題を呼びました。それ以降、ドイツ政府は昨年、EU域外企業のドイツ企業への出資比率を25%としたのですが、今回はさらに規制を強化しました。ペーター・アルトマイヤ経済相は今年4月26日、出資比率の引き下げを既に示唆していました。

ドイツ政府はそれだけ中国企業の活動を恐れ出してきたわけです。ヴェルト紙によると、アルトマイヤ経済相は、防衛関連企業や重要なインフラ、ITセキュリティーなど市民の安全に関わる技術への投資については、将来をしっかりと見極める必要があると警告を発しています。ズバリ、中国企業のスパイ活動です。ドイツの先端科学技術を企業の買収を通じて習得するやり方です。

中国企業の欧州市場進出への懸念はドイツだけではないです。例えば、スイスでも同様の懸念が聞かれだしました。スイス・インフォ(8月14日)によると、ドリス・ロイトハルト通信相は、スイス紙(同13日)とのインタビューで、中国企業がスイスの「戦略的に敏感な」企業を買収する可能性について懸念を表明し、「ドイツが行ったように、我々も中国企業による企業買い漁りの対応策を議論しなければならない」と強調し、「スイスにとって戦略的に重要な企業の場合は、スイス競争委員会はそれぞれのケースを検討し、また所有権の大部分をスイスが所有すべきだ」と述べています。

ドリス・ロイトハルト通信相

ちなみに、2016年には中国化工集団(Chem China)が農薬大手シンジェンタを433億ドル(436億スイスフラン)で買収しています。

ドイツのシンクタンク、メルカートア中国問題研究所とベルリンのグローバル・パブリック政策研究所(GPPi)は今年1月5日、欧州での中国の影響に関する最新報告書を発表しましたが、その中で「欧州でのロシアの影響はフェイクニュース止まりだが、中国の場合、急速に発展する国民経済を背景に欧州政治の意思決定機関に直接食い込んできた」と指摘し、「中国は欧州の戸を叩くだけではなく、既に入り、EUの政策決定を操作してきた」と警告を発しています。

海外の中国メディア「大紀元」(8月19日)は米セキュリティ会社サイバーセキュリティ会社ファイア・アイ(Fire Eye)の報告を報じ、「中国共産党政府は世界規模の経済圏構想「一帯一路」を利用して、スパイ活動を拡大させている。諜報はプロジェクト建設地域のみならず、海外現地の中国の電子商取引プラットフォームや孔子学院を通じて、情報収集や世論操作が行われている」と指摘しています。(「米大学で『孔子学院』閉鎖の動き」2018年4月13日参考)。

ジグマ―ル・ガブリエル氏(当時外相)は2月17日、独南部バイエルン州のミュンヘンで開催された安全保障会議(MSC)で中国の習近平国家主席が推進する「一帯一路」(One Belt, One Road)構想に言及し、「民主主義、自由の精神とは一致しない。西側諸国はそれに代わる選択肢を構築する必要がある」と述べ、「新シルクロードはマルコポーロの感傷的な思いではなく、中国の国益に奉仕する包括的なシステム開発に寄与するものだ。もはや、単なる経済的エリアの問題ではない。欧米の価値体系、社会モデルと対抗する包括的システムを構築してきている。そのシステムは自由、民主主義、人権を土台とはしていない」と明確に指摘しています「独外相、中国の『一帯一路』を批判」2018年3月4日参考)。

ジグマ―ル・ガブリエル氏(当時外相)

習主席は昨年秋の共産党大会で権力基盤を一層強化し、シルクロード経済圏構想「一帯一路」などで覇権主義的な動きを強めてきたましたが、ここにきて反習近平派の巻き返しを受け、党内の権力基盤が揺れ出しているという情報が流れてきています。

一方日本はといえば、中国の地方政府幹部による「日本詣で」が再び増えています。日本企業の誘致を目的に幹部級が来日する投資説明会が相次いでおり、日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると2018年度は17年度の2倍程度に増える見込みです。日中関係が悪化した時期に急減したのですが、外交関係の改善が徐々に進んでいることが背景にあります。

なぜ中国が日本との外交関係を最近改善してきたかといえば、それは明らかです。米国をはじめとして、EU諸国も中国に警戒を強めてきたからです。中国としては、外資が逃げ出していく中、日本企業を騙して沈もうとする舟に誘い込む魂胆です。甘い言葉に乗せられて一旦入ってしまったら、それこそ地獄の始まりです。

我が国も中国共産党独裁政権が推進する経済活動に対して警戒を緩めてはならないです。

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2015年3月5日木曜日

日本の国民負担率は低いのか 消費税に依存する欧州を持ちだす財務省の魂胆 ―【私の論評】正味国民負担率は、スウェーデンよりも高い日本の現実を直視せよ! この事実を糊塗して、詭弁を弄する騙し屋財務省に諜略されるな(゚д゚)!

日本の国民負担率は低いのか 消費税に依存する欧州を持ちだす財務省の魂胆 
2015.03.05

昨年暮の衆院選は、安倍総理と財務省との全面対決だった
写真図表はブログ管理人挿入 以下同じ
国民所得に占める税金や社会保険料などの割合を示す「国民負担率」が、2015年度は43・4%となり、4年連続で過去最高を更新すると財務省が見通している、という報道があった。

それによれば、日本の国民負担率はOECD(経済協力開発機構)33カ国中7番目の低さである。財務省は、国際的にみても国民負担率が低いのだから、もっと高めてもいいという魂胆なのだろう。

ただ、日本より負担率が高い26カ国中23カ国は欧州の国々で、日本より低い6カ国中には欧州の国は1つしかない。非欧州の先進国9カ国中では4番目に国民負担率が高い国であり、日本の国民負担率は決して低いとはいいがたい。

その上、国民負担率の定義では、分母を国民所得にするが、海外では国内総生産(GDP)にすることが多い。というのは、GDPと国民所得の関係をいうと、GDPに海外からの純所得を加えて国民総生産を産出し、それから国定資本減耗を控除し、さらに純間接税を控除したものが国民所得になる。

つまり、分母を国民所得にすると、税収に占める間接税(消費税など)の割合が高い国の国民負担率は見かけ上高くなるというバイアスが出てしまうので、OECDのような国際機関では、分母は国民所得ではなくGDPにするのである。なお、分母をGDPにすると、国民負担率の低さはOECD33カ国中9番目となる。日本より低い数字の8カ国中、欧州の国は3カ国に増える。

財務省のように、分母を国民所得にして国民負担率を計算し、それが世界より低いから、増税すべきだというロジックに安易に乗ると、消費増税がベストな手段となってしまう。というのは、所得税増税も消費増税もともに、分子が大きくなるのは同じだが、消費増税のほうが分母を小さくするので、より国民負担率を引き上げることになるからだ。

いずれにしても、消費増税のために、財務省は都合の良い数字を出してくる。しかし、欧州が消費税に依存せざるを得ないのは、それぞれが地続きの小さな国で、しかも人の移動の自由が確保されているという事情がある。このため住所を定めて徴収する所得税、資産税などの直接税にあまり依存できない。

『21世紀の資本』の大ベストセラーで有名になったフランス人のトマ・ピケティ氏が格差問題解消のために、国際的に資産課税を主張するのは、今の消費税中心の欧州の実情を嘆いているという側面もあるのだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

この記事は要約です。詳細は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】正味国民負担率は、スウェーデンよりも高い日本の現実を直視せよ! この事実を糊塗して、詭弁を弄する騙し屋財務省に諜略されるな(゚д゚)!

上の記事では、国民負担率の分母の数字国民所得にするとバイアスが出ることを指摘していました。上の記事でも十分消費税増税などすべきではなかったし、これからも増税すべきでないことははっきりしています。

しかし、消費税をあげようがあげまいが、日本国民の税負担の重さは、もともと半端ではありません。それについてはしばらく掲載していませんでしたので、本日再度掲載することにしました。

これについては、随分前にこのブログに掲載してそのままになっています、まずはその記事のURLを以下に掲載します。

【参院選序盤情勢】民主失速 民主目標「54」下回る可能性―スウェーデンよりも国民負担の重い日本でもボストン・ティー・パーティーを開こう!!

この記事は、 2010年6月のもので、民主党政権時代のものです。民主党政権になってから、初の参院選の直前の記事です。この記事では、その当事の国民負担率を掲載するとともに、スウェーデンと日本を比較して、国民負担率などではなく現実の国民負担はどの程度なのかを明らかにしました。以下にその部分のみ掲載します。
スウェーデンよりも国民負担の重い日本 
世間一般では、日本では何か税金がスウェーデンよりも低く、将来の社会保障などのことを考えれば、増税もやむなしという意見も多くなってきています。しかし、この議論、何かを忘れています。さて、財務省から出されている税金と社会保障費を含めた、国民負担率は以下のような数字で表されます。

          租税負担+社会保障負担

国民負担率 = -----------------------
国民所得




財務省による

各国の国民負担率


アメリカ    34.5%


日本      40.1%


ドイツ     51.7%


フランス    62.2%



スウェーデン  70.7%

スウェーデンは高福祉だが高負担だ、といいたいのでしょうか。確かに、スウェーデンの国民負担は70%くらいと見えますが、実際には政府は「あずかる」だけで、政府は素通りして、そのまま右から左へ50%を国民に配るのです。それがばらまきかどうかは別として、金額としては国民から集めてそのまま国民に配るので国民は負担していません。  
100万円もらったお給料のうち70万円天引きされたましたが、同時に50万円振り込まれました、その場合国民負担70.7%といえるのでしょうか。(但し、高所得者は多くとられて低所得者は大きく戻ってくるので、これは国民全体を一まとめとした場合と考えてください)。 
 国民負担率を諸外国との比較を表にすると上のようになるそうです。これは、2008年度の数字ですが、2007年にはじめて40%を超えたそうです。2007年、2008年というと、「実感なき成長」といわれ、経済が伸びていたはずなのに、どうして国民負担率があがったか理解できないところです。それは抜きとして、問題は一体この数字で何が言いたいのかというところです。 
スウェーデンの本当の国民負担率は、20%程度です。日本は40%ほど集めて15%ほど配るので、本当の国民負担率は25%ほどです。これはスウェーデンより国民負担は重いといわざるをえません。 

正味国民負担率


日本       25%

スウェーデン  20%

ですから、スウェーデンの国民負担率が高いなどというのは錯誤にすぎません。実際日本の財務省だけが、こういう世界に類を見ない「国民負担率」なる数字を発表し続けています。もちろん官僚の出す数字というのは数字そのものは虚偽ということはありません。しかし、毎年「国民負担率」なる数字を発表し、スウェーデンの数字を付記することを忘れない。こんな錯誤を誘発するようなことがいつまでも通用するはすがありません。  
この記事によれば、この当事のスウェーデンの本当の国民負担率である正味国民負担率は、20%程度ですが、日本は当事から25%であり、かなりの負担だったということです。

そうして、昨年の4月から増税をしたため、国民負担率は当時の、40.1%からさらに43.4%になったということです。本当の負担率が上昇し、25%を超えたということです。25%超えはとんでもないことです。

スウエーデンと日本とは単純比較はできない!

このように、世界でも高水準のの正味国民負担率の高さにもかかわらず、消費税増税をしてしまったのですから、増税後に消費が落ち込んで、マイナス成長になったのは当然のことです。

それにしても、財務省は性懲りもなく、増税のするためこのようなだましを続けています。こんなだましに、加勢して、多くの似非識者どもや、新聞などのマスコミも増税キャンペーンを続けてきました。もう、私達は詭弁を弄する騙し屋財務省に諜略されるべきではありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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安倍首相、消費増税めぐる財務省の政界工作を示唆 省益優先で不況下に緊縮財政の罪―【私の論評】敵は財務省にあり!今回の解散総選挙は、官僚主導から政治主導への転換の第一歩である(@_@;)

財務省の屈辱と安倍総理のリップ・サービス―【私の論評】今回の解散は、どんなに反対があっても総理大臣は、解散・総選挙という伝家の宝刀を抜くことができるということを示したことで大義は、はっきりしているのに「大義なし」といった輩はただの無能蒙昧の大馬鹿野郎(゚д゚)!


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2012年5月11日金曜日

【日本の解き方】欧州の“緊縮派”敗北は経済にプラス!―【私の論評】財政再建より、デフレ克服のほうが先であることはわかりきった事実!!日本の国民もフランス国民がサルコジにノーをつきつけたように、現政権にノーをつきつけよう!!

【日本の解き方】欧州の“緊縮派”敗北は経済にプラス!:


オランド氏
欧州で6日に行われた選挙が面白い結果になった。仏大統領選で現職のサルコジ氏が敗れ、社会党のオランド氏の当選が決まった。ギリシャでも与党の過半数割れとなり、第1党が連立樹立できずに再選挙の可能性も出てきたのだ。

サルコジ氏

共通するのはいずれも緊縮政策派が敗れたことだ。オランド氏は緊縮財政より欧州中央銀行での金融緩和を含む経済成長政策に力点を置いている。欧州の各国首脳らは、緊縮政策が選挙で選択されなかったことを理解する必要がある。

・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・・

いずれにしても10年ぐらいで財政再建するという話は、不況・デフレ期に増税しないという話と矛盾しない。不況・デフレ期に増税すれば経済の回復が遅れて、結局財政再建にならないからだ。

今回の選挙結果は一時的には欧州金融市場に動揺を与えるかもしれないが、長期的には欧州経済にプラスになるだろう。

興味深いのは、消費税増税を審議しようとしている日本の政治状況への影響だ。不況時に緊縮政策はダメという常識が世界に広まる中で、日本が消費税増税という緊縮策にどのような答えを出すのか、試金石になる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財政再建より、デフレ克服のほうが先であることはわかりきった事実!!日本の国民もフランス国民がサルコジにノーをつきつけたように、現政権にノーをつきつけよう!!

それにしても、上のようなこと、日本のマスコミは全く報道しません。日本のマスコミは、完璧に御用一般人化してしまったのでしょうか?

ヨーロッパの不況も、景気回復よりも財政均衡を重要視しすぎたというところが、主な原因です。サルコジが選挙で敗北したのも、ギリシャでも与党の過半数割れとなり、第1党が連立樹立できずに再選挙することになったのも、すべて、背後に政府がこのような考え方をしていたことが原因です。


たとえば、ギリシャですが、この国の国民は、かなりレージーで頭も悪く、セックスばかりが大好きで、どうしようもない国民であることはこのブログでも述べたことがあります。しかし、だからいって、景気が悪い時期に、緊縮財政をやっていたら、どういうことになるのかは、目ににみえていたはずなのに、それをやってしまって、税収が増えるどころか、どんどん減ったため、政府がやったのは、ドイツなどから、ユーロをどんどん借りまくり、あろうことか、ドイツの公務員よりも高い給料をギリシャの国家公務員に支払っていました。そうして、昨年現代ギリシャが開国して以来、はじめて、国家公務員の総数を把握したなどというとんでもない状況でした。とうとう、政府、国民ともに、ユーロ建で借金まみれになってしまい、あのような状況をになってしまいました。

ギリシャは、もともと小国であり、経済・軍事・社会に及ぼす影響があまりに少なく、はっきりいって、誰が大統領で、誰が首相であったかなど、全く記憶にもないし、おぼえる気もありません。まあ、今とはなっては、歴史の古い観光地であるというだけです。

しかし、フランスの場合は、今でも、人口は、六千万人以上いる大国です。また過去、特に近現代史なおいても、大きな役割を果たしたのと、日本のようにころころ変わるというこもないので。少なくとも、大統領は覚えています。その大統領の中でで、サルコジは、、フランス第五共和制の中では唯一のアホで無能な大統領でした。


ド・ゴールは、第二次世界大戦中から、戦後しばらくは、大統領でした。あのフランス独特であった、縦に高い帽子がかなり似合った大統領であり、かなり権力もありました。日本にも欲しい逸材でした。


ポンピドゥは、元ド・ゴールの最側近で、あらゆる面からみて、まともでした。


ジスカールデスタンは、今日開催されるサミットを始めた人で、それにまだ生存している人です。


ミッテラン冷戦構造の中でフランスの利益を守り抜いた社会党党首です。社会党であっても、フランス国民国家の利益を最優先したということです。どこぞの国とはかなり違います。だから、フランスや、イタリアなどの社会主義者などとは、まともな会話が成り立ちます。日本の社会主義者、共産主義者などとは違います。それに日本国解体を目論む、民主党とも全く異なります。


シラクは、元パリ市長で、90年代のバルカン危機を一人で捌きまくった人です。世界大戦勃発の危機を四度防ぎました。

同時代の指導者は、以下です。日本でいうと、九州・沖縄サミットの頃です。

日本 森喜朗首相

ウイリアム・ジェファソン・クリントン
(ビル・クリントン)大統領
米国

フランス ジャック・シラク大統領

ロシアプーチン、ウラジ-ミル・
ウラジーミロヴィチ大統領

ジャン・クレティエン首相カナダ

英国トニー・ブレア首相

ドイツ ゲアハルト・シュレーダー首相


九州・沖縄サミット
何か、つい最近のようにも思えるのですが、開催日は、2000年7月21日(金)~7月23日(日)でした。もう、10年以上も前のことなんです。そうして、この頃は、日本はとっくにデフレ状況にありました。本当に長い長いデフレです。


さて、上記の歴代フランスの大統領と比較すると、サルコジの印象は、まともな奥さんと離婚して、モデルと結婚したことと、グルジア危機でプーチンに土下座したこと、サミットで、当時のブッシュ大統領に「帰りやがれ」と怒鳴ったこと、徹底的に若い移民を弾圧したことなどしか、記憶にありません。そうして、フランスの国益よりも、グローバル化を熱心にすすめました。その結果もあってか、フランスは今日著しく不況です。

オルランド氏は未知数だから良くは知りませんが、オルランド氏も含めて、サルコジとは、決定的に異なるとろがあります。それは、サルコジがEUの利益や、グローバルスタンダードをかなり重んじて、その路線から、緊縮財政を主導したのですが、他の大統領は、すべて、フランスという国民国家の利益を重んじました。

オルランド氏は、まだ、未知数ですが、少なくとも、選挙公約では、「グローバル化ばかり推進するのではなく、いまは、まずは、国民国家フランスの利益を優先することをあげていました。


今のIMFの理事長ラガルドさんは、サルコジ大統領だったときの元財務大臣ですが、この方、日本に苦しくても、財政均衡を保つようにすべきだとのアドバイスをしていました。それをニュースワンのキャスターが、そのまま受けとめて何の反論もしていませんでした。全く、わけのわからない馬鹿な理事長だと思いました。経済に関してはサルコジ氏と同様な考え方なのだと思います。フランス国民は、サルコジ氏は無論のこと、このラガルドさん財政運営にも、結局ノーをつきつけたのだと思います。

最近では、何でもかんでも、財政均衡という考え方には、IMFの中でも意見が割れています。それに、ある人から、あろうことか、IMFは、アジアの中進国(そのほとんどが農業国)のデータを用いた、数理モデルで計算して、日本にプライマリーバランス(財政均衡)をすすめているという話しを聴いたことがあります。だとしたら、全く愚かです。いわゆる国際機関のほとんどが、目だった成果をあげていませんが、IMFもその例外ではないということです。

サミットといえば、あの菅さんの海外デビューでもある、カナダ・トロント郊外で開かれたムスコカ・サミット(主要国首脳会議)が2010年に行われました。さらにこれに続き、トロント中心部に場を移して、中国やインドなど新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会合が2010年26日夜(日本時間27日朝)、2日間の日程で開催されました。2009年のピッツバーグG20首脳会合以後の最大の状況変化として、ギリシャに端を発した財政健全化問題と、成長強化が中心議題となっていました。これに関しては、以前このブログでも掲載したことがあります。

当時、このサミットの最後にカナダの首相が、最後に各国に財政再建を求めました。ただし、日本は例外ということで、財政再建を優先しなくても良いとの見解を示しました。詳細は、当該ブログをご覧いただくものとして、その背景だけ簡単に述べておきます。

カナダ首相スティーブン・ハーバー
結局日本は、財政均衡が崩れてはいますが、それは、たとえば、その当時のギリシャなどとは全く異なり、日本の場合、借金の大部分占める、日本国債のほとんどが、他国とは異なり日本国の国民もしくは、法人が円建てで購入しているという事実がありました。この場合、確かに、政府は国民からは借金をしていることになりますが、国自体としては、借金などしていないということです。それどころか、日本は、海外金融純資産(世界に貸し付けている金融資産)は、当時から世界最大260兆円前後でした。しかも、過去20年間一位の座を保っています。これは、バブルの時よりも増えています。実際、国債の購入の96%もが、国内で自国通貨で購入されている国は、その当時も今も、日本とカナダくらいなものでした。



だからこそ、カナダ首相は、日本は例外としたのです。それは、国債の購入のあり方が、日本と同様だったカナダ首相だからこそ、理解できたことだったと思います。全く、IFMの理事長よりも、日本の首相よりも、日本の経済を理解しているのだと思います。カナダは、国債のほとんどが、自国民もしくは、自国法人が自国通貨で購入しているということもあり、金融危機や、リーマンショックの影響はほとんど受けていません。こんなこともあり、ハーバー首相の経済運営には、定評があり、国民の信任も厚いです。あっというまに、首相の座から下ろされた、菅さんとはえらい違いです。ちなみに、上の写真は、当時のサミットのとき、他国の首脳同士は交換しているのに、左はじにポツンとたたずむ、菅さんです。

しかし、今となってみれば、ハーバー首相、日本とカナダの経済に関しては、見立ては正しかったのですが、他の多く国が金融危機などて不況であるにもかかわらず、財政再建を優先させるという見立て違いをしてしまったということです。たとえば、アメリカは、300兆円にもおよぶ対外債務(外国から借りているお金)がありますが、そのほとんどすべてが、自国通貨ドル建によるものであり、いくら借金をしていても、自国通貨によるものであれば、財政破綻をする可能性は低いです。にもかかわらず、アメリカでも、不況であるにもかかわらず、財政再建、緊縮財政を主張す輩もあらわれましたが、最近ようやっとなりを潜めつつあります。

ギリシャのような対外債務、それも、自国通貨ではなく、ユーロでの債務が多い国も、不況の最中に緊縮財政ばかりやっていれば、長い目でみれば、不況に陥り税収は減り、財政再建することはかなわなくなります。それは、どの国でも同じことです。最近、こうした一見もっともらしくみえる財政再建の罠に気づく国々が増えてきました。

その一つがフランスということです。カナダ首相ですら見立て違いをした、不況の最中に財政再建をするという愚かな、経済運営をフランス国民は、ノーといって退けたということです。オランド氏が公約したように、フランスの国益を考えEUの意思に従って、財政再建を優先するのではなく、当面の経済対策である、金融緩和、政府による財政出動などを速やかに行えば、フランス経済は好転すると思います。

それにしても、日本の場合、どこまでもどこまでも、緊縮財政、金融引き締めを行うことばかりに執着しています。そのため、もうすでに、失われた10年が、20年になりそうです。へたをすれば、30年になりかねません。そうなれば、豊かな日本であるはずにもかかわらず、デフレの泥沼に沈ん、とんでもないことになります。雇用も最悪になります。所得も増えるどころか、減ることになります。未来への展望がみえなくなります。自殺者も増えます。

世界の趨勢がこれだけ変わってきているのですから、政府も、日銀もはやく目覚めてほしいものだと思います。それに、フランスのように日本国民も目覚めてほしいです。不況のときに、増税しても、それは、結局緊縮財政をやっていることで、経済は悪くなるばかりです。さらに、税収も減ります。税率をあげたからといって、増収になると考えるのは、単なる錯覚です。税収を増やすには、まずは、デフレを克服しなければならないはずです。それに輪をかけて、中央銀行が、金融引き締めばかりやるというのでは、どうしようもありません。日本国民も、増税などで、緊縮財政ばかりやる政府、金融引き締めばかりを行う日銀には、ノーを突きつけようではありませんか!!それに、世界の趨勢に乗り遅れた自民党もデフレのときに増税するというのなら、ノーを突きつけましょう。マインドコントロールされることなく、自分の意思でノーをつきつけましょう!!



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