2018年8月21日火曜日

米中貿易戦争 衝撃分析! 貿易戦争で「中国崩壊」でも心配無用? 世界経済はむしろ好転か…―【私の論評】中国崩壊の影響は軽微。それより日銀・財務官僚の誤謬のほうが脅威(゚д゚)!

米中貿易戦争 衝撃分析! 貿易戦争で「中国崩壊」でも心配無用? 世界経済はむしろ好転か… 国際投資アナリスト・大原浩氏「世界にとってプラス」

中国経済が変調すれば、習近平主席の地位も危うくなるが、他国にとっては歓迎すべき事態か

 トランプ米政権に貿易戦争を仕掛けられた中国が大揺れだ。世界第2位の経済大国が「経済敗戦」となった場合、習近平政権に大打撃となるのは確実だが、世界経済も大混乱しないのか。中国経済や市場に詳しい国際投資アナリストの大原浩氏は、むしろ「世界経済は好転する」とみる。その理由について緊急寄稿した。

 「米国との貿易戦争で中国の負けは確定している」というのが筆者の持論だが、中国が崩壊でもしたら世界経済はどうなるのか? と心配する読者も多いかもしれない。しかし、結論から言えばごく短期的な負の影響はあっても、長期的に考えて中国崩壊は世界経済にプラスに働く。

 そもそも、現在の世界経済の最大の問題は「供給過剰」である。1979年からトウ小平氏によって始められた「改革・開放路線」は、89年のベルリンの壁崩壊、91年のソ連邦崩壊の後、92年ごろから加速した。80年代ぐらいまでは「鉄のカーテン」や「竹のカーテン」で西側先進諸国と隔絶されていた共産主義諸国が、大挙して世界の貿易市場に乗り出してきたという構図だ。

 東南アジアや南米などの新興国も供給者として名乗りを上げた。それまで日本と欧米先進諸国以外にはシンガポール、香港、タイ、台湾、韓国程度しかプレーヤーがいなかった市場環境は大きく様変わりした。

 日本のバブル崩壊は90年ごろだが、世界的な供給過剰が始まる時期と重なったのが不幸であった。今後、もし中国が崩壊し莫大(ばくだい)な供給がストップすれば、日銀が目標に掲げる物価上昇率2%もやすやすと達成でき、日本経済は短期的な波乱を乗り越えながら力強い発展を続けるだろう。

 忘れてならないのは生産性の向上である。経営学者のピーター・ドラッカー氏によれば、「科学的分析」が生産に取り入れられて以降、工業製品の生産性は50倍以上になっている。つまり50分の1の人手で足りるというわけだ。

経営学の大家ピーター・ドラッカー氏
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 20~30年前にはハードディスク50メガバイトのパソコンが30万円ほどしたが、今やそれは数千円のUSBレベルであるし、1本1万円ほどした映画のDVDは、月額1000円ほどで見放題である。

 だから、中国1国が“消滅”したくらいでは世界、そして日本への商品供給は途絶しない。生産性の向上ですぐにカバーできる。

 このような供給過剰の世界で、いくら資金を供給しても物価が上昇しないのはある意味当然かもしれない。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が金利引き上げを2019年で打ち止めにする意向を表明した後、トランプ大統領が「金利引き上げは望ましくない」と述べたが、供給過剰社会で金利の引き上げは困難だ。これは欧州においても同様だ。

 歴史的には、世界大戦級の大規模な戦争が供給過剰を解消してきたが、今回は中国の崩壊によって世界経済が好転するかもしれない。その方が、はるかに世界にとってプラスだといえる。トランプ氏がそこまで考えて中国を経済的に「攻撃」しているのならあっぱれだといえる。

 国防・セキュリティー問題での中国企業への厳しい制裁、中国製品への貿易関税、さらには「北朝鮮」問題も実は中国を押さえ込む導火線の役割を果たしていたのかもしれない。今回の一連の動きは「中国外し戦略」といっても良いだろう。

 いずれにせよ、今のトランプ氏の言動を見ている限り「米国という偉大な国にたて突く中国など無くなってもかまわない」という気迫を感じる。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

大原浩氏

【私の論評】中国崩壊の影響は軽微。それより日銀・財務官僚の誤謬のほうが脅威(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事、結構納得できるところが多いです。まずはソ連が崩壊した時のことを考えると、確かソ連崩壊後のロシア国内は酷い有様となりましたが、ではそれによって日本をはじめとする他国がそれによって甚大な影響を被ったかどうかいといえば、まず日本についてはほとんど影響はなかったと思います。

これは、経済統計をみたとかそういうことではなく、その当時にリアルタイムで生きて経験したということからいうと、その影響についてはほとんど記憶にないです。さらに、「ソ連崩壊の世界への影響」「ソ連崩壊の日本への影響」などというキーワードでGoogleで検索してみましたが、これに該当する内容はありませんでした。試みに、この時代を生きていた私以外の他の複数の人々にも聞いてみましたが、誰も記憶している人はいませんでした。

これから類推するに、ソ連崩壊の影響は少なくとも、日本経済に及ぼす影響は軽微もしくは、ほとんどなかったのだと思います。もし、大きな影響があれば、誰かが記憶しているとか、少なくともGoogleで検索すれば何かの記録が出てくるはずです。どなたかこの方面に詳しいかたがいらっしゃいましたら是非教えていただきたいです。

直感的には、ソ連が崩壊しても、ほとんど影響がなかったというのであれば、たとえ中国が崩壊したとしても、世界経済に悪影響はほとんどないのではとの考えは間違いではないと思われます。

さらに、日本のことを考えると、そもそも、中国への輸出はGDP(国内総生産)比3%未満であり、投資は1%強でしかありません。この程度だと、無論中国に多大に投資をしていた企業は悪影響を受けるかもしれませんが、日本という国単位では、他国への輸出や投資で代替がきくので、日本経済にはほとんど影響がないといえそうです。

米国では、輸出そのものがGDPに占める割合は10%を切っています。さらにその中の中国といえば、数%にすぎません。これも、他国への輸出で十分に代替えがきくものと思われます。

さて、ブログ冒頭の記事では、生産性の向上による、供給過剰ということが掲載されてました。これは実際そうです。

それについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!
野口旭氏
この記事の元記事は野口旭氏のものですが、野口氏はやはり現在の世界は供給過剰になっていることを指摘しています。その部分を以下に引用します。
ところが、近年の世界経済においては、状況はまったく異なる。「景気過熱による高インフレ」なるものは、少なくとも先進諸国の間では、1990年代以降はほぼ存在していない。リマーン・ショック以降は逆に、日本のようなデフレにはならないにしても、多くの国が「低すぎるインフレ率」に悩まされるようになった。また、異例の金融緩和を実行しても景気が過熱する徴候はまったく現れず、逆に早まった財政緊縮は必ず深刻な経済低迷というしっぺ返しをもたらした。世界経済にはこの間、いったい何が起こったのであろうか。 
一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。 
この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。
相対的にモノが不足していた、旧来の世界とは異なり、現代の世界は貯蓄が過剰であり、その結果供給が過剰なのです。

このような世界ではよほど世界需要が急激に拡大しない限り、供給の天井には達しないのです。その結果として、高インフレや高金利が近年の先進国では生じなくなったのです。

このような世界においては、確かに中国が崩壊したとしても、日本や米国のようにGDPに占める内需の割合が多い国では、ほとんど影響を受けないでしょうし、輸出などの外需の多い国々では、たとえ中国向け輸出が減ったにしても、中国になりかわり、中国が輸出して国々に輸出できるチャンスが増えるということもあり、長期的にはあまり影響を受けないことが十分にあり得ます。

日本や米国が貿易戦争で甚大な悪影響を被ると考える人々は、両国のGDPに中国向け輸出が占める割合など全く考えていないか、あるいは過大に評価しているのではないかと思います。

今でも一部の人の中には、「日本は貿易立国」と単純に信じ込んでいる人もいます。こういう人たちは、過去の日本は、輸出がGDPに占める割合が、50%とかそれより多いくらいと思っているかもしれません。それは全くの間違いです。20年前は、8%に過ぎませんでした。これは、統計資料など閲覧すれば、すぐにわかります。

ただし、日本で一番心配なのは、過去に日銀官僚や大蔵・財務官僚らが、数字を読めずに、なにかといえば金融引締めと、緊縮財政を実施してきたという経緯があることから、彼らは世界が需要過多の時代から、供給過剰の時代に変わったといことを理解せずに、またまたやってはならないときに金融引締めと緊縮財政を実施してしまい、再度「失われた20年」を招いてしまうという危険です。

実際、2019年10月より、10%増税の実施が予定されていますが、自民党政権がこれに抗えず、これが実行されれば、日本経済は再び甚大な悪影響を受けるのは間違いないです。これに加えて、物価目標が達成されないうちに、日銀が金融引締めに転ずることになれば、今度は失われた20年どころか、「失われた40年」になりかねません。とんでもないことになります。

現実には、中国がどうのこうのなどという問題よりはこちらの問題ほうがはるかに大きいです。

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2018年8月20日月曜日

日銀、緩和策で国債大量購入 総資産、戦後初の「直近年度GDP超え」548兆円―【私の論評】何かにかこつけて、「緩和出口論」を語る連中には気をつけろ(゚д゚)!



日本銀行の総資産が2017年度の名目国内総生産(GDP)を上回る水準に達したことが19日、分かった。直近年度のGDPを超えたのは戦後初めて。日銀は13年に開始した大規模な金融緩和で国債などを大量に買い続けている。物価低迷に伴う緩和長期化で保有額は今後も膨らむため、来年にも世界最大の資産を持つ中央銀行になる可能性がある。

 今月10日時点の日銀総資産は548兆9408億円に上り、17年度の名目GDPの548兆6648億円を2760億円上回った。

 大規模緩和が始まる直前(12年度末)の総資産は約164兆円で、5年余りで3.3倍に膨らんだ。大半を占めるのは国債の466兆973億円。株価を下支えするため購入している上場投資信託(ETF)は21兆741億円だった。

 日銀は13年に“異次元緩和”を開始し、大量の国債購入などで世の中に出回るお金の量を2倍、3倍と増やしてきた。ただ、物価上昇率は目標の2%に遠く及ばず、先月の金融政策決定会合で20年度の予想値を1.6%に下方修正するなど持久戦を余儀なくされた。

 今年3月末時点の総資産を比べると、約528兆円の日銀は485兆円の米連邦準備制度理事会(FRB)を既に上回り、572兆円の欧州中央銀行(ECB)にも迫る。ECBは金融緩和の正常化で国債買い入れ額を減らしており、日銀がこれまで同様の規模で買い入れを増やせば、ECBを抜き総資産で世界一になるとの指摘がある。

【私の論評】何かにかこつけて、「緩和出口論」を語る連中には気をつけろ(゚д゚)!

日銀の総資産が増えたことについて、産経新聞も含めて大手新聞が懸念を表明しています。典型的なものを以下にあげておきます。以下はSANKEI BIZのものです。
日銀資産膨張、利上げなら債務超過懸念 GDP超え548兆円、上がる対策のハードルどこまで
以下に一部だけ引用します。
 日銀の総資産が膨張したことで、将来的に大規模金融緩和を手じまいする「出口」戦略を開始した際に財務体質が悪化する懸念が強まっている。日銀が国債購入で放出したお金は金融機関が日銀に預ける当座預金に入る仕組みで、金利水準を引き上げればその利払い費が増加するからだ。最悪の場合、日銀の自己資本8兆円が消失して債務超過に陥る恐れもあり、出口を検討する際の障害になる。 
 三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「もし総資産の規模を保ったまま利上げに踏み切れば、債務超過もあり得る」と指摘する。 
 問題は日銀の収入となる保有国債の利息と、支出となる当座預金の利払い費の差額だ。2017年度末の国債保有額は448兆円で、利息は1兆2211億円に上る。対する当座預金は378兆円で、利払い費は1836億円。差額の1兆円余りが日銀の収益となる。 
 当座預金の金利はマイナス金利政策下で0.1~マイナス0.1%に抑えられている。ただ、出口戦略で金利を引き上げれば保有国債の金利(17年度は0.28%)を超え、利息の受け取り分を支払い分が上回る“逆ざや”になりかねない。仮に1%利上げすれば単純計算で3兆7000億円規模の利払い費が追加発生するため、数年で日銀の自己資本を食い潰してしまう。
なにやら、ゴテゴテ書いていますが、これ以上引用するのは、バカバカしいのでやめます。結論からいうとこのような懸念はありません。

 日銀の異次元金融緩和について、「見えない国民負担」が隠されているなどとして、日銀が高値で国債を大量購入しているが、景気がよくなれば国債価格は下落し、その局面での金融引き締めは日銀には逆ざやとなって巨額損失が見込まれなどの議論です。

実はこの種の議論は、15年以上前から行われています。かつてローレンス・サマーズ元米財務長官が来日したとき、日銀関係者から同様の質問が出たことがありますが、サマーズ氏は一言、「So what?」でした。それがどうかしたのか、とあきれて返答したのです。


ローレンス・サマーズ氏

経済学者等経済に詳しい人であれば、政府と中央銀行を合算する「統合政府」という考え方を知っています。その観点では、日銀の「資産」である保有国債の評価損は、政府の「負債」である国債の評価益となるため、合算してみれば問題ないのです。

中央銀行の国債購入は、カネを刷って行います。つまり、国債購入額は通貨発行益(シニョレッジ)の範囲内です。もちろん、実際の日銀会計で通貨発行益が一気に発生するわけではないですが、毎年の日銀の利益を合算すれば、基本的に通貨発行益となります。評価損が発生しても、それは通貨発行益の一部でしかなく、統合政府でみれば何の問題もありません。

ベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が来日した時にも、同じような質問がありました。バーナンキ氏はサマーズ氏より親切丁寧なので、「心配無用だが、どうしても心配なら政府と日銀の間で損失補填(ほてん)契約を結べばいい」と答えていました。


ベン・バーナンキ氏

そもそも日銀は時価会計ではないので、満期まで国債を保有していれば評価損など問題になりません。しかも金融緩和の「出口」戦略を取るからといって、日銀が保有国債を急減させるようなオペレーションを取ると考えるのは、かなりの素人です。

ただし、過去の日銀が緩和すべきときに引き締めを繰り返してきたという事実があるので、日銀は信用できず、「出口」においては、日銀が保有国債を急激に減らすということもありえるといって批判するならまだ理解もできなくはありませんが、大手新聞のどの記事を読んでいてもそのようなことは書いてはいません。

それに現在の状況で「出口戦略」というのも非常に疑問です。この手の記事には良く「出口戦略」という言葉がでてきますが、ほとんどの場合海外の例が全く言及されていません。

2008年9月のリーマン・ショック以降、英米など先進国の中央銀行は量的緩和を行いました。米連邦準備制度理事会(FRB)は14年10月に量的緩和を終了したのですが、マネタリーベース(中央銀行が供給する資金量)の残高を急激には減少させておらず、今でもリーマン・ショック前の4倍以上になっています。英イングランド銀行は、マネタリーベース残高を傾向として減少させないで今に至り、リーマン・ショック前の5倍以上です。

中央銀行のバランスシートの規模とは、まさに各国の中央銀行が
行っている金融緩和政策の“規模感”を如実に確認できるものである。

なお、日本では01年3月から量的緩和を実施していましたが、06年3月、インフレ率が事実上マイナスであったにもかかわらず量的緩和を解除し、さらに急激にマネタリーベースを減少させるという手痛いミスがありました。英米ともに、このミスを研究しており慎重に行動しています。

日銀は13年4月から再び量的緩和をするようになりました。その後1年でインフレ率は1・5%程度まで上昇したのですが、14年4月の消費増税によって再びインフレ率が低下してしまいました。

比較的うまくいった米国でも出口は6年、英国では9年以上経ってもまだ至っていません。

こうした英米の例をみれば、日本での出口の議論は時期尚早と言わざるを得ないです。しかも、議論するとしても、06年の二の舞にならないように、「残高は微減または現状維持」とならざるを得ないでしょう。

このように、サマーズ氏やバーナンキ氏ら世界の碩学(せきがく)がすでに答えを出しているのですが、この手の新聞記事を読む限り、15年ほど前に決着済みの問題を蒸し返したことになります。

この記事に限らず、多くの新聞記事が金融緩和に懸念を示していますが、現状の経済環境はさらなる量的追加緩和を必要としています。金融緩和の出口論を語るのは、未だ時期尚早と言わざるを得ません。

すでにこのブログでも過去に何度か述べているように2016年度あたりからは、国債が品不足の状態なので、買いオペ(市場からの国債購入)の増額は正直言えばやりにくいです。だからこそ、日銀当座預金の一部付利をマイナス金利にするなど、追加緩和の手段がとられたのです。

そうして、現状では、政府は地震・水害の復興のためにも、そうして日銀が買いオペをしやすくするためにも、国債を大量に発行すべきです。

いずれにしても、現在のような状況で日銀の金融緩和の出口論を語る人はこのような現実を知らなさすぎです。知っていてこのような主張をするのか、それとも馬鹿なのか、悪意があるのか、全く理解に苦しみます。

何かにかこつけて、「緩和出口論」を語る輩のいうことは信じるべきではありません。

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2018年8月19日日曜日

米国で日本叩き運動を先導、中国のスパイだった 米国に工作員を投入する中国―【私の論評】結局頓挫した中国による米国内での「日本悪魔化計画」(゚д゚)!

米国で日本叩き運動を先導、中国のスパイだった


米国に工作員を投入する中国当局、その実態が明らかに


 日本の慰安婦問題がまた国際的な関心を集めるようになった。韓国の文在寅大統領が公式の場で改めて提起したことなどがきっかけである。

 ちょうどこの時期、米国で慰安婦問題に関して注目すべき出来事があった。司法当局から中国政府のスパイだと断じられた中国系米国人が、米国における慰安婦問題追及の枢要な役割を果たしてきたことが判明したのだ。

この人物は長年米国上院議員の補佐官を務め、現在は慰安婦問題で日本を糾弾する在米民間組織の中心的人物となっている。慰安婦問題への中国政府の陰の関与を示す動きとして注目される。

中国のスパイがベテラン女性議員の補佐官に

 8月5日、連邦議会上院のダイアン・ファインスタイン議員(民主党・カリフォルニア州選出)が突然次のような声明を発表した。

ダイアン・ファインスタイン議員

「5年前、FBI(連邦捜査局)から私の補佐官の1人が中国諜報機関にひそかに情報を提供し、中国の対米秘密工作に協力していると通告を受けた。独自調査も行った結果、すぐに解雇した。機密漏れの実害はなかった」

 ファインスタイン議員といえば、全米で最も知名度の高い女性政治家の1人である。サンフランシスコ市長を務め、連邦議会上院議員の経歴は25年になる。この間、上院では情報委員会の委員長のほか外交委員会の枢要メンバーなども務めてきた。民主党リベラル派としてトランプ政権とは対決姿勢をとり、とくにトランプ陣営とロシア政府機関とのつながりをめぐる「ロシア疑惑」でも活発な大統領批判を展開している。

 そんな有力議員がなぜ今になって5年前の不祥事を認めたのか。

 その直接的な契機は、7月下旬の米国のネット政治新聞「ポリティコ」による報道だった。ポリティコは、「上院で情報委員会委員長として国家機密を扱ってきたファインスタイン議員に20年も仕えた補佐官が、実は中国の対外諜報機関の国家安全部に協力する工作員だった」と報じた。FBIによる通告はそれを裏付ける形となった。

 ロシアの大統領選介入疑惑が問題になっている米国では、外国政府機関による米国内政への干渉には、官民ともにきわめて敏感である。また、中国諜報機関の対米工作の激化も、大きな問題となってきている。そんな状況のなかで明らかになった、ファインスタイン議員の側近に20年もの間、中国のスパイがいたという事実は全米に強い衝撃を与えた。

 トランプ大統領はこの報道を受けて、8月4日の遊説でファインスタイン議員の名を挙げながら「自分が中国のスパイを雇っておきながら、ロシア疑惑を糾弾するのは偽善だ」と語った。同議員はこの大統領の批判に応える形で前記の声明を発表し、非を認めたのである。

スパイはラッセル・ロウという人物

 さらに8月6日、ワシントンを拠点とするネット政治雑誌「デイリー・コーラー」が、「ファインスタイン議員の補佐官でスパイを行っていたのは、中国系米国人のラッセル・ロウという人物だ」と断定する報道を流した。ロウ氏は長年、ファインスタイン議員のカリフォルニア事務所の所長を務めていたという。

ラッセル・ロウ

 デイリー・コーラー誌は、ロウ氏が中国政府の国家安全部にいつどのように徴募されたかを報じた。ロウ氏は、サンフランシスコの中国総領事館を通じて、長年にわたって同安全部に情報を流していたという。

 ファインスタイン事務所もFBIもこの報道を否定せず、一般のメディアも「ロウ氏こそが中国諜報部の協力者、あるいはスパイだ」と一斉に報じた。主要新聞なども司法当局の確認をとりながら、ロウ氏のスパイ活動を詳しく報道した。

 ただしロウ氏は逮捕も起訴もされていない。その理由は「中国への協力が政治情報の提供だけだと訴追が難しい」からだと説明されている。

中国のスパイが日本糾弾活動を展開

 米国の各メディアの報道を総合すると、ロウ氏はファインスタイン議員事務所で、地元カリフォルニアのアジア系、とくに中国系有権者との連携を任され、中国当局との秘密の連絡を定期的に保ってきた。

 米国内での慰安婦問題を調査してきた米国人ジャーナリストのマイケル・ヨン氏によると、ロウ氏は、歴史問題で日本糾弾を続ける中国系反日組織「世界抗日戦争史実維護連合会」や韓国系政治団体「韓国系米人フォーラム」と議会を結びつける役割も果たしてきた。また、2007年に米国下院で慰安婦問題で日本を非難する決議を推進したマイク・ホンダ議員(民主党・カリフォルニア州選出=2016年の選挙で落選)とも長年緊密な協力関係を保ち、米国議会での慰安婦問題糾弾のキャンペーンを続けてきたという。



 ファインスタイン議員事務所を解雇されたロウ氏は、現在はサンフランシスコに本部を置く「社会正義教育財団」の事務局長として活動していることが米国メディアにより伝えられている。

 数年前に設立された同財団は「学校教育の改善」という標語を掲げている。だが、実際には慰安婦問題に関する日本糾弾が活動の主目標であることがウェブサイトにも明記されている。同サイトは「日本は軍の命令でアジア各国の女性約20万人を組織的に強制連行し、性奴隷とした」という事実無根の主張も掲げている。

 ロウ氏は2017年10月に社会正義教育財団を代表してマイク・ホンダ前下院議員とともに韓国を訪問した。ソウルでの記者会見などでは、「日本は慰安婦問題に関して反省も謝罪もせず、安倍政権はウソをついている」という日本非難の言明を繰り返した。

米国に工作員を投入する中国当局

 今回、米国において慰安婦問題で日本を糾弾する人物が、実は中国のスパイだったことが明らかになった。つまり、中国当局が米国に工作員を投入して政治操作を続けている実態があるということだ。

 前述のヨン記者は「米国内で慰安婦問題を糾弾する反日活動は、一見すると韓国系勢力が主体のようにみえ、そのように認識する人は多い。だが、主役はあくまで中国共産党なのだ。長年、米国議会の意向を反映するような形で慰安婦問題を追及してきたロウ氏が実は中国政府のスパイだったという事実は、この中国の役割を証明したといえる」と解説していた。

【私の論評】結局頓挫した中国による米国内での「日本悪魔化計画」(゚д゚)!

ラッセル・ロウ氏や、マイク・ホンダ氏が中国スパイであろうことは前から知られていたことでした。今回は、それがかなりはっきりとわかったということです。

実体のない慰安婦問題や、日本は核武装を画策しているというようなデマで米国内で日本を貶める中国の画策は前から知られていました。これは、米国の識者の間では以前から「日本悪魔化計画」と呼ばれていました。これについては、以前このブログに掲載したことがあります。

「日本は核武装を狙っている」 中国が進める日本悪魔化計画―【私の論評】米国の中国対応の鈍さ!本当は20年以上前にこのようなことを言わなければならなかった(゚д゚)!
悪魔といってもいろいろあるが、中国の日本悪魔化計画の悪魔はどんなものか?

この記事は、2015年12月25日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を以下に引用します。

"
  「アメリカを超える大国」を目指す中国は、その大目標の邪魔になる日本を貶める動きを加速させている。その試みは欧米の識者から日本の「悪魔化」と呼ばれ、警戒されている。

 さてこの中国の「日本悪魔化」戦略はアメリカでも中国軍事研究の最高権威によって指摘されていた。1970年代のニクソン政権時代から一貫して国防総省の高官として中国の軍事動向を研究してきたマイケル・ピルズベリー氏の指摘であり、警告だった。

 同氏は2015年2月刊行の著書『100年のマラソン=アメリカに替わりグローバル超大国になろうとする中国の秘密戦略』(日本語版の書名は『China2049』)で日本悪魔化戦略を明らかにした。
マイケル・ピルズベリー氏
 ピルズベリー氏は中国語に堪能で共産党や人民解放軍の軍事戦略関連文書を読みこなす一方、中国軍首脳との親密な交流を保ってきた。同氏はこの新著でアメリカ歴代政権の対中政策は間違っていたとして「中国を豊かにすれば、やがて国際社会の健全な一員となるという米側の期待に反し、中国は当初から建国の1949年からの100年の長期努力でアメリカを圧することを狙ってきた」と述べた。その世界覇権への長期の闘争を中国自身が「100年のマラソン」と呼ぶのだという。

 同氏は中国のこのアメリカ凌駕の長期戦略の重要部分が「現在の日本は戦前の軍国主義の復活を真剣に意図する危険な存在だ」とする「日本悪魔化」工作なのだと明言している。日本の悪魔イメージを国際的さらには日本国内にも投射して日本を衰退させ、日米同盟やアメリカ自体までの骨抜きにつなげる一方、「軍国主義の日本との闘争」を中国共産党の一党独裁永遠統治の正当性ともする狙いだという。

 逆にいえば、習氏にとって日本がいま平和、民主のままで国際的な影響力を強めれば、共産党統治の正当性を失いかねない。さらには中国の最大脅威であるアメリカのパワーをアジアで支えるのはやはり日本そして日米同盟であり、その両者が強くなることは中国の対外戦略全体を圧することにもなる。だから習氏はいまの日本をいかにも恐れるような異様な工作を進めるのだろう。ピルズベリー氏はその日本悪魔化工作の例証として以下の諸点を列記している。

 ◆習近平氏が愛読する書『中国の夢』(劉明福・人民解放軍大佐著)は「日本は常に中国を敵視するから中国が軍事的に日本と戦い、屈服させることが対米闘争でもきわめて有効だ」と強調している。

 ◆清華大学の劉江永教授は最近の論文で「日本の首相の靖国神社参拝は中国への再度の軍事侵略への精神的国家総動員のためだ」と断言した。

 ◆李鵬・元首相に近い学者の何新・社会科学院研究員は一連の論文で「日本は中国の植民地化を一貫した国策とし、今後もそのために中国を分割し、孤立させようとする」と警告している。

 ◆多数の中国の軍人たちが「日本は中国攻撃のための軍事能力を整備しており、日本の宇宙ロケット打ち上げはすべて弾道ミサイル開発のため、プルトニウム保有は核兵器製造のためだ」と主張している。
"

この日本悪魔化計画の一環として、中国当局は随分前から、米国に工作員を投入していたことが今回明らかになったということです。

ファインスタイン氏は中国との架け橋役となることで、自身の政治的利益を享受してきました。1979年1月、サンフランシスコ市長に就任すると、上海を訪れて、姉妹都市契約を結びました。 次に、米国と中国を結ぶ航空便の再確立を目指し、1981年1月には、中国人乗客130人以上を乗せたボーイング747が上海ーサンフランシスコ間を飛びました。

それからファインスタイン市長は公式に数回上海を訪問し、のちに国家主席となる江沢民・上海市長と交友を深めました。

2003年10月、サンフランシスコ市で面会するダイアン・ファインスタイン
上院議員と江沢民国家元主席。間に立つのは同市長ウィリー・ブラウン氏

ファインスタイン氏は90年代の訪中で、江沢民氏をはじめとする上級共産党幹部との関係を築きました。夫と共に毛沢東の旧宅訪問に招待され、外国人で初めて、毛沢東が息を引き取ったという寝室を見学したといいます。彼女は、「非常に歴史的な瞬間だった」と、その感激を当時、ロサンゼルス(LA)タイムズに語っていました。

毛沢東は中国を共産主義国家へと導いた張本人であり、大躍進や文化大革命などの政策で数千万人の中国人が餓死、病死、虐殺、迫害などで非業の死を遂げました。

ダイアン・ファインスタイン議員(左)とのその夫リチャード・ブラム氏

90年代のファインスタイン氏と中国共産党との緊密な関係は、彼女だけでなく、夫で投資家のリチャード・ブラム氏も受益した。 1997年のLAタイムズの報道によると、ブラム氏は中国では著名な投資家になっていたといいます。

ブラム氏は妻の訪中にたびたび同行し、共産党幹部や地方高官と接触する機会を得ました。1994年には1.5億ドルの投資計画があり、1996年には2.3億ドルで鉄鋼業の国有企業に投資しています。 ブラム氏はまた、世界銀行の1部門である国際金融会社(International Finance Corp.)を通じて、中国の豆乳と飴の大手生産業者に1000万ドルを投資しました。

互いに上海とサンフランシスコを往来するファインスタイン氏と江沢民氏との良好な関係は、民主党ビル・クリントン政権(1993~2001)時代に、中国を世界貿易機構(WTO)に加盟させるための大きな助けになっていました。

実際、当時の米国務省エリザベス・ニューマン報道官は「ファインスタイン議員は、この重要な貿易協定の道を開く上で重要な役割を果たした」と述べています。

江沢民政権と蜜月と思われたクリントン政権時代でしたが、1999年5月コソボ紛争末期にセルビアのベオグラードにある中国大使館を米軍爆撃機が誤爆したことで、米中関係は一時悪化しました。

ファインスタイン議員は、江沢民氏との個人的な付き合いから、米中関係の改善に奔走しました。その手腕は、クリントン大統領政権からも一目置かれる存在となりました。 同年8月、米政府はファインスタイン議員を中国に派遣し、大統領の親書を江沢民主席に大連で手渡して、WTO加盟交渉の席につくよう説得しました。

同年11月、マーキュリー紙の取材に答えたファインスタイン議員は、「彼(江沢民)は私の話に耳を傾けてくれたと思う。私たち実質的なテーマを話し合った。私は、中国が(WTOに)関心を再び抱かせることに成功した」「彼は、大統領が親書を書くために時間を割いてくれたことを感謝していた」と語っていました。

同紙の取材のなかでファインシュタイン氏は、新たな中国の貿易状況の期待のために、経済と並行して人権問題を改善するよう中国に求めることは「圧力」であり、米国年次の人権報告書では言及しないよう意見しました。

有力な米上院議員の対中擁護により、中国共産党は深刻な人道犯罪や弾圧に効果的な策を講じることなく、世界市場へのアクセスに最良な貿易環境を得た、ということになります。

江沢民政権では、中国全土で気功修練・法輪功の弾圧が始まり、今日も続いています。中国の人権弁護士は5月、中国最高裁判所や検察庁に宛てた公開書簡のなかで、法輪功への弾圧は「(中国における)第二次世界大戦後の犠牲を上回り、終戦以来最大の人道被害だ」と例えました。

トランプ現政権の経済政策顧問で、対中強硬派で知られる経済学者ピーター・ナバロ氏は、共産党政権の中国が2001年にWTO加盟したことで、世界の製造業が中国により支配的に占有され、知的財産問題など不公平な貿易慣行がまかり通ることになったと分析しています。

「ピーターナバロ」の画像検索結果
ピーター・ナバロ氏

ナバロ氏は、2017年1月20日、ドナルド・トランプ次期大統領から指名を受け、新設された国家通商会議(現・通商製造業政策局)のトップ(ダイヤモンド社 2017)に就任しました。

ナヴァロは政府主導の中国経済と市場主導の米国経済のモデルは「地球と火星のように離れてる」とし、WTOに加盟してから中国は2015年時点で世界の自動車の3割近く、船舶の4割、テレビの6割強、コンピューターの8割強を生産して世界の製造業を支配するに至ったとして人工知能やロボット工学などでも脅威になりつつある中国の知的財産権問題など不公正な貿易慣行への対処を主張しています。また、軍用無人機でも中国は市場を奪ってるとして米国の輸出規制緩和を推し進めています。

ナバロ氏の主張が全面的に正しいかどうかは別にして、現在の中国は、自由貿易の前提ともいえる、民主化、政治と経済の分離、法治国家化もなされておらず、特に米国などの先進国が中国と貿易をすれば、著しく不公平なものになるのは事実です。

しかし、このような中国でも、米国のパンダハガー(親中派)らは、中国が経済的に発展すれば、いずれまともな国になるであろうと考えていたのですが、そうはなりませんでした。

そうして、結局のところパンダハガーや、中国工作員らの日本悪魔化計画は失敗したようです。しかし、中国は米国を頂点とする戦後秩序の変更に挑むことをやめないどころか、これに挑戦すると、習近平が公言しています。

米国の現在の主流派は、日本を悪魔とみなすのではなく、中国を悪魔とみなすようになり、先月より、米国トランプ政権は、中国に対して貿易戦争を挑みはじめました。

この貿易戦争は、中国が国内市場を開放したり、人民元を完璧に変動相場制に移行すること、すなわち1980年代の日米摩擦と同程度のことで収束することはありません。

中国が根本的な構造転換を行うこと、すなわち民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめない限り続行されることになるでしょう。

もし、中国がこれを進めないというのなら、米国を頂点とする戦後秩序を変えることに二度と挑戦できなくなるくらいに、貿易戦争、金融制裁で叩きのめされ、経済的にかなり弱体化するまで継続されることになるでしょう。

米国内での慰安婦像設置運動 マイク・ホンダ(マイクを握る人)もみられる

これは、韓国がたとえ、米国内に10万、20万、いや100万の慰安婦増を設置することに成功したとしても、そのようなこととは全く関係なく実施されるでしょう。

結局中国による米国内での「日本悪魔化計画」は頓挫したのです。なぜなら、中国の目的は、決して米国全土に慰安婦像をできるだけ多く設置することではなく、マイケル・ピルズベリー氏が主張するように、日本の悪魔イメージを国際的さらには日本国内にも投射して日本を衰退させ、日米同盟やアメリカ自体までの骨抜きにつなげる一方、「軍国主義の日本との闘争」を中国共産党の一党独裁永遠統治の正当性とすることが目的だったからです。

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2018年8月18日土曜日

【日本の解き方】トルコリラ暴落の政治的背景 トランプ大統領流の揺さぶり…過小評価できない世界経済への打撃―【私の論評】世界にとって通貨危機よりもはるかに危険なトルコ危機の本質(゚д゚)!

【日本の解き方】トルコリラ暴落の政治的背景 トランプ大統領流の揺さぶり…過小評価できない世界経済への打撃

トルコ エルドアン大統領

 トルコの通貨リラが暴落したことで、一時、ユーロが売られたり株式市場が急落したりする場面があった。

 トルコは経済協力開発機構(OECD)加盟国であるが、インフレ率はその中でも一番高い。ここ10年間で、トルコの平均消費者物価上昇率は8・4%であり、OECD平均の1・8%を大きく上回っている。ちなみに、トルコはインフレ目標を採用しているが、その目標水準は5プラスマイナス2%としており、インフレ率は常時上限を超えている状態だ。

 これは、インフレ目標を上回るくらいの金融緩和をしているわけで、マネー増加率も常に2桁とOECDの中でも高い伸びになっている。このため、トルコリラは継続的に割安状態だ。

 長期的な為替は、ソロスチャートを持ちだすまでもなく、国際金融の基本理論から、2国間の通貨量の比率でだいたい決まる。これをトルコリラと米ドルで当てはめてみると、2007~16年では、通貨量の比率とリラ・ドル相場の相関係数は96%とほぼ予想された動きとなっている。

 しかし、17年に入ると、この理論で予想された為替動向とは乖離(かいり)するようになった。16年7月のトルコ国内でのクーデター未遂事件が関係しているようだ。

 この乖離はここ数カ月ではさらに大きくなっている。一時、1ドル=7リラ程度となっており、これは理論値の2倍以上のリラ安である。理論値とかけ離れている理由は政治的なものであろう。

 まず、インフレ率が目標以上に高いにもかかわらず金融引き締めを行わないことが主因であるが、それを中央銀行ではなく、エルドアン大統領が指導している。しかも、これは、中銀が「手段」の独立性を持つという先進国のスタイルとは異なり、この意味で政治的な問題だ。

 もっとも、この政治スタイルは今に始まったことではないので、これだけであれば、理論通りにリラ安になるだけだろう。しかし、今や米国とトルコは政治的な対立をしており、それがリラ安に拍車をかけている。

 トルコは、2年前のクーデター事件に関係したとする米国人牧師を拘束している。それに対して、米国はトルコ閣僚の資産凍結を決めた。さらに、リラ安に伴い、トルコから輸入する鉄鋼などの関税を引き上げることも表明した。

 米国の対トルコ投資・与信はそれほど多くない。欧州の対トルコのほうがはるかに大きいので、米国はリラ安の影響を受けにくく、トルコ問題は欧州への打撃が大きいのが実情だ。この意味では、新興国とはいえ世界経済への影響を過小に評価することはできないだろう。

 トルコは北大西洋条約機構(NATO)国でもあり、米軍はトルコ国内のインジルリク空軍基地を使用している。安全保障体制そのものではなく米国人牧師の解放というトランプ流の政治的な揺さぶりであるが、仕掛けられたトルコは思わぬ苦境になっている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】世界にとって通貨危機よりもはるかに危険なトルコ危機の本質(゚д゚)!

米連邦準備理事会(FRB)が基軸通貨でもあドル引き締めを継続している以上、遅かれ早かれ「新興国市場からの資本流出」自体は起こるべくして起こることだったということで、たまたま直近の要因でトルコが一番先だったといえるかもしれません。

そうして、「あとはきっかけ待ち」という状況にあったところ、今回のトルコリラ・ショックが起きたということでしょう。これを機に新興国市場からの資金流出が続く展開になると考えられます。

もともとトルコリラ安の底流には、ブログ冒頭の高橋洋一の記事にもあるように、中央銀行への政策介入をするエルドアン大統領の経済政策という内政要因がありましたが、対米関係の悪化という外交要因もありました。

とりわけクーデター容疑でトルコ当局に拘束されている米国人牧師を巡って問題がこじれた結果、「鉄鋼・アルミニウムに係る追加関税率を倍に引き上げる」という米政府の決定につながり、これによりトルコにも追加関税をかけることになり、トルコリラ急落のトリガーを引くに至っています。

トルコ・イズミルで、私服警官らによって自宅へと移送された
米国人牧師、アンドルー・ブランソン氏(2018年7月25日)

こうした状況下、トルコが現状を打開するために必要な選択肢は、1)緊急利上げに踏み切る、2)米国人牧師を解放する、3)資本規制の強化、4)国際金融(IMF)支援の要請です。

もっとも、「利下げをすればインフレ状況も落ち着く」という奇異な主張の持ち主であるエルドアン大統領は8月12日の演説で、1番目の選択肢については「自分が生きている限り、金利のわなには落ちない」と一蹴しており、その上で2番目にも応じない姿勢を明確にしています。

また、4番目の選択肢についても「政治的主権を放棄しろというのか」と述べ、これも退けたというか、元々IMFは米国が単独拒否権を保有しており、米国の合意なしでは利用できません。

今のところトルコは、3番目の選択肢を取っています。8月13日早朝、トルコ銀行調整監視機構は、国内銀行による海外投資家とのスワップ、スポット、フォワード取引を銀行資本の50%以内に制限すると発表し、投機的なリラ売りの抑制に踏み出しています。

しかし、投機のリラ売りを抑制しても同国が経常赤字国であるという事実は変わらないので実需のリラ売りは残ります。資本規制を強化するほど、トルコへの投資は敬遠されるはずですし、経常赤字のファイナンスは難しくなります。新興国が危機に陥る際の典型的な構図が見て取れます。

そのほか、8月に入って以降は、中銀が設定する各種準備率を調節することで市中への流動性供給を増やすという措置も取っています。それらの措置が市場の緊張緩和に寄与するには違いないでしょうが、利上げによる通貨防衛を期待する市場参加者にとって迂遠(うえん)な一手と言わざるを得ないでしょう。言い換えれると、政策金利の調整を決断できない「中銀の独立性の無さ」を逆に誇張しているようにすら見えてしまいます。

トルコ・ショックはどれほどの震度を持つと考えるべきなのでしょうか。トルコの国内銀行が外国銀行に対して持つ対外債務の約6割がスペイン・フランス・イタリアによって占められていることから、市場が「トルコ発、スペイン・フランス・イタリア経由、ユーロ圏行き」といった危機の波及経路を心配することも一理あります。

とはいえ、トルコにとって欧州が重要な債権者であるからと言って、欧州にとってトルコが同じくらい重要な債務者であるとは限らないです。例えば、国際与信残高(国外向けの与信残高)を見ると、スペインは約1.8兆ドル、フランスは約3.8兆ドル、イタリアは0.9兆ドルです。ちなみに、ドイツは約2兆ドルです。

ここで、それらユーロ圏4大国の国際与信残高合計に占めるトルコ向け与信残高の割合を計算してみると、2%にも満たないことが分かります。国別に見てもスペインの4.5%が最大であり、トルコ・ショックがそのまま欧州金融システムを揺るがすような話になるとは考えにくいです。

それでは、全く問題がないのかといえば、そうではありません。というのも、欧州連合(EU)はトルコに対して大きな借りがあるからです。2015年に勃発し「債務危機を超える危機」とも言われる欧州難民危機は今も根本的な解決には至っておらず、正確には解決のめどすら立っていません。しかし、その一方で大きな混乱も招いていません。

シリア難民のEUへのルートは主に3つだが、そのうち2つはトルコを経由している

これはなぜなのかといえば、ひとえにEUとの合意に従ってトルコが難民をせき止めているからです。EUに流入する難民の多くは内戦激化により祖国を飛び出したシリア人であり、トルコ経由でギリシャにこぎ着けてEUに入るというバルカン半島を経るルートを利用していました。そのため、EUとしては何とか経由地であるトルコの協力を得て流入をせき止める必要がありました。

2016年3月18日、ドイツが主導する格好でトルコとの間で成立した「EU・トルコ合意」は非常にラフに言えば、「カネをやるから難民を引き取ってくれ」という趣旨の危うい合意ですが、効果はてきめんでした。少なくとも、その合意がEU(とりわけドイツ)に余裕を与えているのは紛れもない事実です。

なぜこのような条件をトルコがのんだかといえば、日本では意外に知られていないのですが、トルコはEU加盟候補国でもあるからです。


これは裏を返せば、難民危機はトルコひいてはエルドアン政権次第ということです。ここに至るまでの大統領の言動を見る限り、今後、意図的に難民管理をずさんなものにするリスクはないとは言えないでしょう。

いや、故意ではなくともトルコの政治・経済自体が混乱を極めれば難民を管理しきれないという過失も考えられます。どちらにせよトルコがいつまでも欧州のために難民をせき止めてくれる保証はないのです。

率直に言って、EU域内に難民流入が再開するのは非常にまずいことです。そうなった場合、難民流入に不平不満を抱えるイタリアのポピュリスト政権が勢いづくことになるでしょう。ただでさえ、それを切り札として欧州委員会と交渉する雰囲気があるのですから、事態はより複雑になるはずです。

また、10月にバイエルン州選挙を控えるメルケル独政権も難渋することでしょう。難民受け入れのあり方を巡って長年の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)がメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と仲たがいを起こしたことが6月に話題になったばかりです。ここで状況が悪化したら余計に両者の溝が埋め難くなることでしょう。

さらに2019年5月には欧州議会選挙もあります。EU懐疑的な会派をこれ以上躍進させないためにも難民を巡る状況はやはり悪化させるわけにはいかないでしょう。

金融市場ではトルコの国内金融システム混乱がユーロ圏に波及する経路が不安視されていますが、現実的にはエルドアン政権が欧州難民危機ひいてはEU政治安定の生殺与奪を握っている事実の方がより大きな脅威であるようです。

こちらのほうが本質であり、難民危機が再びユーロ圏内を襲えば、そちらのほうがはるかに世界経済に悪影響を及ぼすことになりそうです。

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2018年8月17日金曜日

中国急変!習氏“最側近”王氏、8月恒例の「北戴河会議」に姿なし…政策失敗の全責任を負わせ失脚か? ―【私の論評】日米リベラルの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!

中国急変!習氏“最側近”王氏、8月恒例の「北戴河会議」に姿なし…政策失敗の全責任を負わせ失脚か? 

中国の習近平国家主席。米中「貿易戦争」に頭が痛い=7月、南アフリカ・ヨハネスブルク

中国共産党最高指導部メンバーと長老らが毎年8月、河北省の避暑地、北戴河に集まる非公式・非公開の「北戴河会議」が終わった。今回は「米中貿易戦争」の激化や、広域経済圏構想「一帯一路」の限界など、難題山積で紛糾したとみられている。揺らぐ習近平国家主席の立場と、「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)の失脚情報、狙われた日本の元首相2人について、ノンフィクション作家の河添恵子氏が緊急リポートする。

「この夏の休暇は、これまでと雰囲気が異なる」「形勢が緊迫し、緊張が張りつめている」

中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の新メディア「人民日報中央厨房」は9日、北戴河で休暇を取った人物の発言を、こう報じた。難題山積、北戴河会議の異変は確実なようだ。

難題といえば、ドナルド・トランプ米政権が仕掛けた米中貿易戦争だろう。これは、「中国=最大の脅威」とみなした対応で、中国経済の息の根を止めかねない。そして、世界の製造強国を目指す「中国製造2025」計画も、欧米諸国は「軍事覇権に拍車をかける」と警戒態勢に転じた。

「一帯一路」構想についても、関係国からは「債務の罠」であり、国が借金まみれになり、政治がコントロールされ、港湾など戦略的軍事拠点が奪取されるとの非難が噴出している。北極海航路を狙われているロシア、中央アジアも「一帯一路」への警戒感を強めている。

さらに、野党連合を率いる、93歳のマハティール・モハマド首相の再登板によって、マレーシアなどでは“脱中国”の動きが急速に進行中である。

中国国内でも、党幹部を含めて、習独裁体制への懸念が高まり、人民解放軍や人民の不満も爆発寸前…。内憂外患の習政権は、まさに崖っぷちにある。

党最高幹部の動向にも“異変”がある。

「北戴河に(チャイナセブンの1人)王滬寧(オウ・コネイ)の姿がない」「1カ月近く雲隠れしている」「失脚か?」「影響力を失った」などの内容が、反共産党系中国メディアから噴出している。

歴代中国共産党トップの理論的支柱を務めてきた
王滬寧氏。習近平思想も彼が骨格をつくりあげた。

序列5位の王氏は、「3つの代表」「科学的発展観」「中華民族の偉大なる復興」など、江沢民、胡錦濤、習近平という国家主席3代の重要理論の起草に関与し、中南海の“知恵袋”と言われてきた。第16回党大会(2002年11月)で中央委員入りし、党中央政策研究室主任に就いて16年、現在に至るまで、その地位を維持してきた。

だが、第2次習政権は、その王氏に一連の政策失敗の全責任を負わせ、習政権の“イメージ転換”を図るのだろうか?

海外の中国人ジャーナリストらの弁によれば、「鄧小平時代の『韜光養晦』(とうこうようかい=才能を隠して、内に力を蓄える)の時代とは一変し、習政権が傲慢に『見える』ことで、世界から不評を買ってしまった。その責任が彼(=王氏)にある」という論理だ。2月下旬に封切られた中国の自画自賛映画『すごいぞ、わが国』も4月に突如、上映禁止が報じられた。

世界各国が本気モードで中国を警戒するなか、この“新潮流”からズレまくっているのが、日本の元首相たちである。

鳩山由紀夫元首相は11日、北京で開かれた国際シンポジウムに出席し、「一帯一路」構想について、「習近平主席は、目的は平和をもたらすことだと述べた」「日本は大いに協力すべきだ」と強調したという。

福田康夫元首相も6月、江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」を訪問し、「日本人はもっと過去の事実を正確に理解しなければならない」などと語ったことが報じられた。

2015年全国戦没者追悼式で献花をする(左から)福田康夫、鳩山由紀夫、菅直人の歴代首相経験者

1989年6月の天安門事件で、「自由と民主」「法の下の平等」「人権」という価値観を重視する欧米諸国から一気に四面楚歌(そか)となった中国は、日本へすり寄ってきた。

歴史は繰り返す。欧米諸国に危険視された習政権がいくら微笑み外交に転じようと、中国は、沖縄県・尖閣諸島も台湾も「我がもの」と考えており、軍事超大国となり世界覇権を目指しているのだ。

日本はもういい加減、だまされてはならない。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。

河添恵子氏

【私の論評】日米リベラルメディアの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事に掲載されていること以外にも、揺らぐ習近平国家主席の立場を象徴するような事件が起こっています。

その最大のものは、退役軍人のデモの拡大です。中国では、年金削減など退役後の待遇に不満を抱いた元軍人によるデモが続発し、沈静化の兆しが見られません。

このブログでも紹介したように、6月13日に四川省徳陽で最初のデモが勃発したのを皮切りに、江蘇省鎮江で19~24日、湖南省長沙で7月9日、河北省石家荘で12日、山西省太原で17日、内モンゴル自治区赤峰では19日、山東省煙台で24日にと、各地に飛び火しています。

以下に煙台市でデモに関する、動画つきのツイートを掲載します。


79年に中越戦争に参加した60代の退役軍人を先頭に、デモ参加者の年齢層は幅広いです。元軍人たちは相互に呼び掛け、地域を超えてデモを行っています。

彼らは労働者や農民の抗議と異なり、自分たちで選んだ「指揮官」の号令に従って隊列を組み行進し、政府庁舎前で抗議を行うときも整然としています。警察と機動隊を前にしても一致団結して抵抗し、簡単には退きません。

かつて国家の「暴力装置」だった軍人は、鎮圧する政府側の出方を知り尽くしているだけに厄介です。デモ隊に退官後の己の姿を重ね合わせて見てしまうのか、鎮圧側も強くは出られず、事態は深刻化しつつあります。

退役軍人は中国全土に5700万人以上いるといわれます。習政権になってから国有企業の改革が進まず、経済が悪化の一途をたどり、地方政府の予算も潤沢ではなくなりました。

もともと地方政府は経済統計の水増しを繰り返して業績を偽り、発展を装ってきました。ここに至って地方財政は破綻し、退役軍人に支払うべき年金も削減されているのです。

16年には退役軍人数千人が待遇改善を求め、首都北京の国防省を包囲しました。習政権は今年4月に再就職支援などを行う退役軍人事務省を発足させ不満解消を図ったのですが、情勢は好転していません。

待遇がひどくなっている背景の1つに、習の進めた軍改革があります。人民解放軍は広大な大陸を舞台にした20年代から40年代にかけての国共内戦から発展しました。国民党との長い内戦から次第に4つの野戦軍が形成。毛沢東を最高指導者と認めながらも、それぞれ独自の派閥と地域に立脚した組織が維持されていました。

毛が死去し鄧小平時代になっても、派閥と地域性は基本的に残されました。4つの野戦軍はさらに複数の軍区に分割されることがあっても、旧来の人事・指揮系統は不動のままです。それぞれの軍区内で退役軍人の面倒を見る伝統もそれなりに機能していました。

しかし、総司令官となった習は16年2月から従来の7大軍区を廃止し、5大戦区に整理統合し、人事と指揮は党中央に吸い上げられました。こうした改革で、実戦の際には指揮系統を統一したことで命令伝達はうまくいくかもしれません。ところが、軍と地方の関係を薄めたことで、平時において軍内部の福祉政策は麻痺してしまったのです。

共産党は「党が軍を指揮する」と主張するのですが、それは建前に過ぎません。実際は軍を掌握できた者だけが党を動かし、国家の最高指導者として人民に君臨するのです。

まさに毛沢東が語ったように「政権は銃口より生まれる」わけなのです。この「伝家の宝刀」は毛や鄧の時代はうまく使えましたが、江沢民(チアン・ツォーミン)時代から次第に軍に対する党の権威が衰えました。

胡錦濤(フー・チンタオ)から習に至って威光は一層低下しました。そもそも人民解放軍は27年に中国南部で結成された中国工農紅軍を祖としています。一方、習の父・仲勲(チョンシュン)は中国中部の陝西省を拠点とするゲリラ部隊の出で、しかも文官だったので毛並みはよくないです。そして、習は反腐敗運動を利用して高級将校を多数摘発してきたので、軍に不満がたまっています。

共産党大会の開幕式で拍手する習近平総書記(中央)、江沢民元国家主席(右)、胡錦濤前国家主席(左)

党の軍隊から国家の軍隊に改編すべきであり、人民解放軍を共産党の私兵から国軍に改造すべきだとの意見は昔から改革派知識人から出されていました。ただ、その改革は私兵に守られた共産党の命脈を絶つことを意味しています。

こうして抜本的な軍改革に手をこまねくうちに、退役軍人という時限爆弾は刻々と暴発へと近づいているようです。

現在はオバマ以前の大統領のときとは全く異なり、完璧に反中国派のトランプ大統領が、大統領選挙線のときから「中国を叩く」とはっきり公約を宣言して、その通りの実行しています。

現在の総理大臣は、中国包囲網を構築するという「安全保障のダイヤモンド」を提唱する安倍総理大臣ですから、良かったものの、鳩山由紀夫や福田康夫のような親中派が総理大臣だったら大変なことになっていたかもしれません。

それこそ、中国に利するような発言や行動をして、米国から利敵行為をしているとみなされ、米国から貿易戦争を挑まれたり、金融制裁をくらったりして大変なことになっていたかもしれません。

それこそ、1980年代の貿易摩擦よりも酷いことになっていたかもしれません。

しかし、この歴史上の大転換ともいえる、この時代を理解していないのは、過去の総理大臣らのみではありません。政治家の中はもとより、マスコミは未だ親中派で染まっているようです。

中国国営テレビCCTV(中国名称は中国中央電視台)といえば、反日の評論や報道、そして日本人を殺人鬼のように描く反日ドラマの放映で知られています。

その中国国営テレビの日本支局というのが、なんとわが日本国の公営放送のNHKの内部に存在しているのです。

中国中央電視台(中国国営テレビCCTV 日本支局)のオフィスは未だに、渋谷区神南2-2-1 のNHK放送センタービル内にあります。このようなことで、重要な情報が中国に漏れたりした場合、米国から目の敵にされたりすることもあり得ます。

それにしても、世界のどこの放送局でも、特に国営の放送局などに、中国中央電視台の支局があるなどとは聞いたことがありません。それだけ、NHKは、異常だということです。

米国では、自身に批判的な記事を「フェイク(偽)ニュース」と非難し、一部メディアを「国民の敵」と断じたトランプ大統領に抗議するため、全米の350を超える新聞社が16日、報道の自由を訴える社説を一斉に掲載しました。

ただし、日本ではあまり知られていないことですが、米国のマスコミのほとんどはリベラル派で占められています。特に大手新聞は100%がリベラルであり、日本でいえば「産経新聞」のような保守派の大手新聞は存在しません。

デレビはフォックスTVだけが大手保守系テレビ局ですが、他はすべてリベラルで占められています。そのため、米国では過去数十年間にわたり、少なくとも米国の総人口の半分は存在すると考えられる保守層の考えは、リベラルメディアによってかき消されてきたというのが現実です。

日本のメデイアが米国の報道をするときは、米国メディアの報道を垂れ流すため、多くの日本人は米国のリベラル派の考えや文化ばかりをみて、後の半分の保守派のことは見過ごしてきたというのが現実です。

そのようなリベラルメディアが、トランプ氏をまるで気狂いピエロのように報道してきたのは事実です。日本での報道もこれに右に倣えです。

米国メディアはトランプ氏をまるで気狂いピエロでもあるかのように
報道し、日本のマスコミはそれに右ならえをしたが・・・・・・・・・

米国ではトランプ氏のメディア敵視の姿勢に非難が集まる一方、メディアの信用低下も加速している。とくに共和党支持者の間で著しく、米調査機関ピュー・リサーチ・センターの昨年6月の調査によると、メディアが自国にマイナスの影響を与えていると答えた共和党支持者は85%となり、2010年の68%から大幅に増えた。

共和党支持者というより、米国の保守層の多くは、もう米国のメディアをほんど信用してないでしょう。米国メデイアのほとんどが、トランプ大統領誕生の予測ができなかったように、トランプ大統領による中国成敗がどうなるのかも予測できないでしょう。

そうして、それは日本のマスコミも同じです。日本でも似たような現象があります。いわゆる「アベニクシーズ」「アベノセイダーズ」の存在です。あれだけ「もりかけ」で過去一年間以上も「疑惑は深まった」などと主張したり報道しつづけてきたのに、現在に至るまで何らのエビデンスもあげられないでいます。

安倍総理の件でなくても、どのような件であっても、過去1年以上も「疑惑が深まった」として追求してあげくのはて何らの確証もあげられなければ、無能のそしりを受けるのは当然です。

今後、日米のメデイアなどの中国報道を単純に信じ込んで、米国のトランプ政権による対中国叩きをみていては、世界情勢の変化についていけなくなります。

それこそ、鳩山氏のようになってしまい、時代に取り残された化石のような存在になってしまうことになるでしょう。

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2018年8月16日木曜日

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トランプ氏、ハイテク分野から中国を締め出し…国防権限法で中国製品の政府機関での使用禁止 島田教授「日本でも対応が必要」

ドナルド・トランプ米大統領が、ハイテク産業からの「中国締め出し」に踏み出した。13日成立した国防権限法で、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)の製品について、米政府機関での使用を禁じたのだ。トランプ政権は、両社と中国情報機関との関係を問題視している。機密漏洩防止という安全保障上の観点から、断固たる措置に踏み切った。

「米国は平和国家だが、戦いを余儀なくされれば必ず勝つ」

トランプ氏は13日、ニューヨーク州のフォートドラム陸軍基地で大勢の兵士を前に国防権限法の署名式を開き、こう演説した。

国防権限法に署名したトランプ大統領 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

米国ではこれまでも、ZTEとファーウェイの製品について「情報を不正に改竄(かいざん)したり盗んだりする機能」や「ひそかにスパイ活動を実施する機能」の存在が指摘され、使用が問題視されていた。情報機関の高官が、中国のスマホメーカーによって米国人ユーザーの安全が脅かされるとの見方を示したこともあった。

国防権限法では、両社について「中国情報機関と関連がある」と指摘した。そのうえで、2社の製品を米政府機関が使うことを禁止したほか、その製品を利用する企業との取引を制限した。

同法では、中国が米企業を買収して先端技術を奪うのを阻止するため、対米外国投資委員会(CFIUS)の監視機能を強化し、IT産業への投資に上限を設けることも政府に要請している。

米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「ロシアに加え、中国がさまざまな形で米国に対するハッキングを行っていることが近年、強く主張されている。このため、防御だけでなく、反撃もしていくべきだという流れになっており、国防権限法はその一環だろう」と話す。

米国だけでなく、他国でも中国企業への警戒が進んでいるという。

島田氏は「欧州でも、中国企業によるハイテク分野の買収を阻止する動きがあり、日本だけが遅れ気味となっている。戦略的センシティブな分野では、対応が必要だろう」と指摘した。

【私の論評】世界は日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあり(゚д゚)!

国防権限法とは、米国政府が国防総省に対して予算権限を与える法律のことです。当該会計年度より5年間にわたり特定の事業計画に対する支出について権限が与えられるもので、年度ごとに制定されます。

今年の7月を皮切りに、国際関係において明らかに構造的変化が起こりました。7月6日米国は支那(中国のこと、以下同じ)に対して貿易戦争を発動しました。これにより、本格的な米中対立の時代が幕開けしました。

ブログ冒頭の記事の国防権限法関連による支那への対応もその一環です。

日本の政財界人のほとんどはこのことをほとんど理解していないようですが、米トランプ政権は、世界の経済ルールを公然と破ってきた支那を徹底的に叩く腹です。

今後は、支那に対して味方をするような経済活動は、米国から反米行動とみなされることになります。

そうして、7月に起きたもう一つの大きな出来事は、米露協調時代が始まったことです。7月16日にはフィランドの首都ヘルシンキで米露首脳会談が開催され、その路線が確定しました。

フィランドの首都ヘルシンキで米露首脳会談で握手するトランプとプーチン

トランプ氏もプーチン氏も、公式にそのような発言はしていませんが、ロシアは米国に協調して世界秩序を再構築する方向に大きく舵をきったものとみられます。

7月には、この大きな2つの出来事が起こったのです。この2つの出来事が、今後の世界情勢を大きく方向づけることになるのです。

今から振り返ると、対中国貿易戦争の開始をトランプ大統領が宣言したのは、今年の3月でした。ところが、実際に開始したのは今年の7月6日です。そうして、この貿易戦争は、本格的な金融制裁も含む、本格的な経済戦争に発展していくことでしょう。

支那経済は、既に落ち込み始めていますが、これから本格的に大きな被害を被ることになります。

これまでの支那の経済的に大発展できたのは、輸出によるドルの獲得と、華僑も含む諸外国からの巨額の投資でした。これにより、支那は巨額のドルを得ることができ、それが経済発展の原動力となり、支那の人民元の信用を高めることになりました。

この巨額のドル獲得能力を破壊しようとするのが、トランプ政権による高関税政策なのです。
この狙いはあくまで、支那に知的所有権や独禁法などの国際ルールを守らせることです。ただし、それは表面上のことで、真の理由は、支那の軍事拡張策を抑制するためです。支那はドル獲得能力をもとに経済を発展させ、それを元に過去30年以上にわたり軍拡を継続してきました。

その結果、南シナ海で傍若無人な軍事行動を行うとともに、日本の尖閣諸島付近で挑発行為を繰り返し、台湾には直接支配をしようと様々な画策をしています。

さらに、一帯一路の巨大プロジェクトにより、世界各地でインフラ投資・開発をし、結局のところ支那の企業に受注させたり、労働者を支那から派遣したりして、当該国の儲けはほんどなく、返済不能とみると、領土を実質的に奪うなどの暴虐の限りをつくしています。

こうした暴虐を繰り返す支那の能力の源泉は巨額のドル獲得能力であり、この能力の源泉を一気に叩き潰してしまおうとするのが、トランプ政権の対支那戦略なのです。

現在支那の経済は急速に縮小しています。企業倒産だけではなく、個人の住宅ローン破産も続出しています。経済悪化にともない支那全土で反政府デモが起きています。その数は今や年間100万件を超えるともいわれています。人口13億人以上の中国でもこれは、破滅的に大きな数字です。

このような支那ですが、この支那が1949年に建国して以来、支那共産党が何故統治の正当性を保つことができたのでしょうか。それは、結局のところ建国からしばらくは、何とか人民を飢えることなく食べさせることができたからです。無論、大躍進等の期間などは、相当の人民が餓死しましたが、それを除くと何とか飢えをしのぐくらいのことはできていました。

そうして、ここ20年くらいは、人民により良い経済生活を約束しそれを維持することができたため、ようやっと統治の正当性が保たれてきたのです。昨日よりは、今日のほうが収入が多く、今日よりは明日の方が豊かな生活が約束されていました。

それどころか、共産党の幹部に取り入ることに成功した人民の中には巨万の富を得るものまであらわれました。こうした人民とっては、支那共産党はなくてはならない存在になりました。

だからこそ、人民の大多数は、共産党の一党独裁、共産党員の横暴と不公正、暴力にも耐えてきたのです。元々、支那には民主政治、自治、言論の自由の伝統もありません。封建制度と呼ばれる分権的自治の伝統もありません。

現在の先進国では当たり前になっている、民主化、政治と経済の分離、法治国家化もされていません。こんな環境でも、支那人は生きていけるのです。

そのような彼らにとって一番の関心事は経済です。皆、カネが儲かれば、少なくとも昨日より今日が儲かるようになっていれば、人民は大人しくしているというのが、支那の伝統でもあります。

現在まで、支那共産党はこのような人民の行動原理をわきまえで、政治的自由は与えなかったものの、人民各層によりよい経済生活だけは約束し、曲りなりもそれを実現してきました。それが支那共産党の統治の正当性を示す唯一のものでした。

拝金主義が蔓延する中国で中国で実施されている富豪との
お見合いパーティー、審査を経て最終的に候補者12名に絞られる

ただし、その正当性は脆いものであり、それを補うために、支那共産党は意図して意識して、体系的に時間をかけて、反日教育を行ってきました。しかし、それにも限界があります。

かつて、支那では反日サイトが興隆した時期がありましたが、この反日サイトを放置しておくと、結局反政府サイトに変貌してしまうことがしばしば起こったので、しばらく前から中国共産党は反日サイトを強制的に閉じるようにしたため、今日ではみられなくなりました。

また、2012年あたりまでは、中国全土で反日デモが開催されましたが、これもそのまま放置ておくと、反日デモがいつの間にか反政府デモに変わってしまうということが、しばしば起こるようになったため、政府がこれを取り締まるようになったため、現在支那ではほとんど反日デモはみられなくなりました。

2012年あたりまでみられた中国の大規模反日デモ

こうなると、ますます支那共産党の統治の正当性は、経済だけということになってきました。つまり、経済成長ができなくなれば、支那共産党の統治の正当性も失われるのてす。これは他の国では全くみられない、支那独自の現象です。ここがまさにトランプ政権の目の付け所です。

さて、大統領選挙の頃からのトランプ氏の演説等を分析すると、彼がロシアと大きな協調体制を築きたいと考えていたのは確かです。米露が協調して、イスラム過激派や支那を抑え込むというのが、トランプの基本的な世界戦略観です。

この米露協調路線を米国内で妨害しようとする人々が叫んでいたのが現在では、日本の「もりかけ」と同様に何の根拠もないことが明白になった「ロシア・ゲート」でした。

ロシア・ゲートを騒ぎ立てた人々は、反トランプ派であり、それは親支那派であったとみて間違いないです。そうして、問題なのはこれらの人々の中には共和党の一部も含まれていたのです。共和党の中にも、無国籍の大企業を支持するような立場の人々は反トランプでした。

そのような人々は、トランプ大統領がロシアと組むことにかなりの危機感を感じていたものと思います。彼らの頭の中には、かつてのソ連があったものと思います。

しかし現在のロシアは、現在でも世界第2の軍事大国ではありますが、このブログでもたびたび掲載しているように、経済は韓国より少し小さいくらいです。韓国の経済というと、大体東京都と同程度です。

いくら東京都が核武装をしたり、他の軍事力を強化したとしても、米国に伍して、覇権国家になろうと思ってみても土台無理な話です。さらに、人口もこの広大な領土であるにもかかわらず、日本よりわずかに2千万人多い、1億4千万人です。

そんなことよりも、ロシアのプーチンは、米国を中心とする現在の世界秩序をうまく利用しながら、ロシアの権力を少しでも拡大していこうというのがプーチンの基本戦略です。さらにはロシアは、世界で一番長く支那と国境を接しているということから、プーチンは支那の台頭に脅威を感じています。

ところが、習近平は現在の米国を頂点とする世界秩序に挑戦し、かつてのソ連のように、支那が覇権国家になることを目指しています。もし支那が世 界 ナンバー1の覇権国家を目指すというなら、それは米国を妥当しなければ不可能です。 それを習近平はどうどうと宣言しています。プーチンは無論そのようなことは宣言していません。

米国からすれば、ロシアと組み支那を阻害するというのは当然の戦略です。ただし、プーチンはロシアがかつてのソ連のように覇権国家になる夢を完全に捨ててはいないでしょうが、それにしても現在のロシアではどう考えてあと20年は全く無理です。

そんなことよりも、プーチンが何よりも米国に望むのは、経済制裁の解除でしょう。米国の経済制裁により、ロシアの経済成長はほとんどゼロの状態が続いています。米国が解除すれば、EUの対ロシア経済制裁も解除できるでしょう。

一方米国が、ロシアに求めるのには、北朝鮮やイランの核武装の阻止、中東の安定化、イスラム過激派の壊滅、アフガニスタンにおけるアヘン問題などにおけるロシアの全面的な協力です。

世界一の軍事大国である米国と、世界第2の軍事大国であるロシアが協力しなければ、このような地域紛争を安定化させることは難しいです。だからこそ、両国が大き国益を踏まえた上で手を携えたのが7月16日の米露サミットだったのです。

またアジアにおいては、日米英の三国同盟にロシアが協力することになれば、経済的にも軍事的にも、対中国封じ込めは完璧となり、支那の衰退は確定したようなものです。そうして、この路線は日本の安倍総理が目指す路線とも一致しています。

以上のようなかなり大きな構造変化があったのが、今年の7月だったのです。後世の歴史家は、この時を歴史の大きな転換点だったと位置づけることでしょう。

ただし、米国内では未だ反ロシア派が一定の力を持っていることから、トランプ大統領が、今すぐに米露協調路線を全面的に実行することはないでしょうが、両首脳の間ではこの路線が合意されたというのが7月16日だったのです。

いずれにせよ、今後日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあるとみるべきです。日米の経済力、米露の軍事力、それに加えて英国など有力な他国の協力があれば、支那を叩きのめすことは十分可能です。

ただし、英国とロシアの関係は、英国内でのロシア元スパイ暗殺未遂事件などがあり良くはありませんが、中国に対峙するという共通の目的に向けては十分に協調できると考えられます。その他、フランスも太平洋に領土を持つということから、協力を仰ぐことはできるでしょう。豪州も協力が見込めます。

このあたりを理解しない日本のマスコミは、また米国大統領選でトランプ大統領登場を予測できなかったように、これからも世界情勢を誤って判断して、誤った報道を続けることでしょう。

マスコミは過った判断をしても、それで危機に陥ることはありませんが、支那で活動したり、支那に投資している企業はそうではありません。支那に利する活動をしていると判断されれば、米国の制裁の対象になる可能性も十分あります。国際情勢を見誤れば、とんでもないことになりかねないです。マスコミの無責任な支那報道に惑わされたり、煽られたりせず自ら情報収集し、自ら対処すべきです。

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2018年8月15日水曜日

米国、非核化の成果なければ「海上封鎖」断行か 日本に激震の危機―【私の論評】北の海上封鎖は十分あり得るシナリオ、その時日本はどうする(゚д゚)!

米国、非核化の成果なければ「海上封鎖」断行か 日本に激震の危機

日本を守る

世界最強の米原子力空母「ロナルド・レーガン」。
正恩氏率いる北朝鮮の「海上封鎖」に乗り出すのか

 米中間で“関税合戦”による死闘(貿易戦争)が始まった。その脇で、いま中東が爆発しそうだ。米中間のデスマッチの幕が上がる一方、北朝鮮危機がどこかへ行ってしまったように、見える。米朝両国はここ当分の間は、交渉を続けてゆくのだろうか。

 8月初めに、シンガポールで東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議が催された。

 北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は「米国が同時並行する措置を取らなければ、わが国だけが『非核化』を進めることはあり得ない」と演説した。にもかかわらず、マイク・ポンペオ米国務長官は「北朝鮮の非核化」について、「北朝鮮の決意は固く、実現を楽観している」と述べ、李氏と固い握手を交わした。

 日本は、6月にシンガポールで「歴史的な」米朝首脳会談が行われてから、しばらくは緊張が解けたものと判断した。北朝鮮からのミサイル攻撃に備えて、東京の防衛省、北海道、島根、広島、愛媛、高知の各駐屯地に展開していた、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊が撤収した。

 北朝鮮は、米国から「南北平和協定」「制裁の緩和」など段階的な見返りを求めて、ドナルド・トランプ政権をじゃらしている。北朝鮮はワシントンを甘くみているのだ。

 だが、トランプ政権は北朝鮮をあやしながら、北朝鮮に鉈(なた)を振るう瞬間を待っている。

 もし、11月初頭の米中間選挙の前までに、北朝鮮が「非核化」へ向けて、米国の選挙民が納得できる成果を差し出さなければ、海軍艦艇を用いて、北朝鮮に対する海上封鎖を実施することになろう。米国民は何よりも力を好むから、喝采しよう。

 私は、前回の「日本を守る」連載(4月掲載)で、米国が北朝鮮に対して海上封鎖を断行する可能性が高いと予想した。

 海上封鎖という“トランプ砲”が発射されると、日本の政府と国会が激震によって襲われよう。米海軍が日本のすぐ隣の北朝鮮に対して、海上封鎖を実施しているのに、自衛隊が燃料や食糧の供給などの後方支援に役割を限定するわけにはいくまい。

 米国-イラン関係の険悪化など、中東情勢も不安定化している。中東は日本のエネルギーの80%以上を供給している。

 日本を揺るがしかねない危機が進行しているのに、日本の世論は目をそらしている。

 ■加瀬英明(かせ・ひであき) 外交評論家。1936年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、エール大学、コロンビア大学に留学。「ブリタニカ百科事典」初代編集長。福田赳夫内閣、中曽根康弘内閣の首相特別顧問を務める。松下政経塾相談役など歴任。著書・共著に『「美し国」日本の底力』(ビジネス社)、『新・東京裁判論』(産経新聞出版)など多数。

【私の論評】北の海上封鎖は十分あり得るシナリオ、その時日本はどうする(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、海上封鎖について定義も何もあげずに、使用していますが、平和ボケ日本では、海上封鎖について良く知らない人もいらっしゃると思いますので、以下に簡単な定義をあげておきます。

海上封鎖とは、ある国が海軍力を用いて、他国の港湾に船舶が出入港することを阻止することです。封鎖行動は宣言によって開始され、その前には中立国の船舶の退避時間が設けられます。

海上封鎖は戦時封鎖と平時封鎖に分類されます。戦時封鎖の場合は通商破壊や攻勢機雷戦を伴います。平時では非軍事的措置の一環とみなされ、海軍部隊による臨検が主となりますが、封鎖を突破しようとする船舶が現れた場合には攻撃が避けられないです。
米国によ海上封鎖に関しては、今年の3月に米国が、米国沿岸警備隊を朝鮮半島に派遣してより強化することも検討していることが報道されました。それに関してはこのブログでも、今年の3月に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米、北に新たな一手“海上封鎖” 沿岸警備隊のアジア派遣検討 「有事」見据えた措置か―【私の論評】沿岸警備隊派遣の次には、機雷戦?その時には海自が活躍することになる(゚д゚)!
米国沿岸警備隊の艦船と航空機
ブログ冒頭の記事では、米軍が海上封鎖と掲載しているだけですが、実際に海上封鎖するということになれば、最初は平時海上封鎖ということで、沿岸警備隊の艦船が臨検することになるでしょう。無論もしもの軍事衝突に備えて、空母や潜水艦なども当然派遣するでしょうが、これらは臨検などには向いていません。

軍艦を臨検することは滅多にはないでしょうが、もしそのようなことがあれば、当然イージス艦などの軍艦がこれにあたることになるでしょう。

しかし、それ以外の小さな艦船であれば、やはり沿岸警備隊の艦船が臨検などにあたるのか適当であると考えられます。

ただし、そこから一歩踏み込んで、戦時封鎖ということになれば、最初からフリゲート艦や、駆逐艦などが主に担当し、機雷敷設などのことも当然行うことになります。

機雷の敷設や、それを取り除く掃海に関しては、日本の能力は世界でもトップクラスというか、現実には他国を引き離し断トツで世界一といって良いでしょう。これについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷―【私の論評】戦争になれぱ中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!
平成20年6月12日、海上自衛隊による機雷の爆破処理で
海面に噴き上がる水柱。後方は神戸市街=神戸市沖

この記事では、日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷であるという元記事について論評しましたが、論評の過程で日本の掃海の現状や、歴史について触れました。

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、日本の海上自衛隊による掃海能力は世界一です。もし、米軍が北朝鮮を海上封鎖するということにでもなれば、当然日本も、怪しい艦船の臨検などを米国側から求められるでしょう。

ただし、海上自衛隊はすでに戦後長い間踏み込まなかった黄海にまで、艦船を派遣して、監視活動にあたっています。

ただし、北朝鮮そのものを海上封鎖するということになれば、港を封鎖するのとでは規模が違います。これを機雷敷設なしで、行うということになれば、想像もつかないくらいの莫大な数の艦船が必要になることでしょう。

これは、現実的ではありません。現実的に北朝鮮を海上封鎖するとすれば、やはり機雷の敷設は避けられないでしょう。

ただし、機雷で封鎖ということになれば、かなり効果があげられるでしょう。北朝鮮のほとんどを機雷で封鎖してしまえば、艦船などで監視や臨検を行う部分はかなり限られてくるので、莫大な数の艦船は必要ありません。

空においても、日々哨戒活動にあたり、北や北に協力する航空機などが北と外国との間の行き来を完全に封鎖し、韓国も北との国境は完璧に封鎖し、さらに北と中国との間の橋梁や道路など破壊してしまえば、北を完璧に封鎖できます。

この状況にまで追い込めば、北には石炭や石油の供給が絶たれてしまいますから、軍隊をはじめほとんどの組織が、身動きの取れない状態になります。

その状態で、交渉に持ち込むか軍事攻撃をすれば、すぐにでも北朝鮮は音を上げることになります。

トランプ砲が炸裂して、北朝鮮を海上封鎖するというシナリオは十分にあり得る

それにしても、ブログ冒頭の記事では「米海軍が日本のすぐ隣の北朝鮮に対して、海上封鎖を実施しているのに、自衛隊が燃料や食糧の供給などの後方支援に役割を限定するわけにはいくまい」と掲載していますが、まさにその通りです。

北朝鮮付近の海域に機雷の敷設や除去など、憲法上や法律上の制約があるので、できないと専門家などは言っていますが、これは時限立法を成立させてでも、少なくとも除去くらいはできるようにしておくべきものと思います。

そうして、海上封鎖をすることになれば、その後北の崩壊はかなり現実的になります。そのときに、拉致被害者や最近拉致された日本人の救出をするために、自衛隊を派遣できるように、これも憲法解釈の変更と、時限立法などでできるようにすべきです。

1962年のキューバ危機においては、米国はキューバ周囲を海と空から海上封鎖すると宣言し、実際にそうしました。

確かに、海上封鎖という“トランプ砲”が発射されると、日本の政府と国会が激震によって襲われることになるのです。日本の世論はこれから目をそらすべきではありません。

これを単に激震などとだけとらえるのでなく、日本が世界平和に大きく寄与するチャンスだと捉えて、必要な措置をとるべきです。

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