2022年3月5日土曜日

北方領土の主権主張「永久に忘れた方がいい」…ロシア外務省幹部が強硬姿勢示す 交渉"さらに難航"の恐れ―【私の論評】ウクライナ人も多数居住する北方領土が戻ってくる可能性はかつてないほど高まりつつある(゚д゚)!

北方領土の主権主張「永久に忘れた方がいい」…ロシア外務省幹部が強硬姿勢示す 交渉"さらに難航"の恐れ

外務省のザハロワ報道官は2016年5月19日、「ロシア・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議」の公式レセプションで、ロシアの民族舞踊「カリンカ」を披露した

 ロシア外務省幹部が定例会見で3月3日、日本が北方領土の主権を主張することは「永久に忘れた方がいい」などと発言しました。ウクライナへの侵攻で国際社会から孤立する中、異例の直接的な発言で、領土交渉がさらに難航する恐れがあります。

  発言したのは、ロシア外務省のザハロワ報道官です。

  ザハロワ報道官は、日本の外務省の宇山秀樹欧州局長が2月28日、国会で「ロシアが北方領土を占領した」と話したことを受け、「日本の外交官の発言に秘められた"報復主義"を指摘したい。我々は(宇山局長の発言は)日本の政界で特定の勢力がロシアに領土を引き渡すよう求めていることを念頭に置いている証拠とみなしている。このやり方は永久に忘れることを勧めたい」と述べました。

  日本政府は一貫して「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島からなる北方四島は、一度も他国の領土となったことがない日本固有の領土で、ロシアの不法占拠が続いている」との立場です。

  ロシアは2020年7月、憲法に「領土の割譲を禁止する条項」を盛り込み改正していて、北方領土の交渉そのものが難しくなったという立場を示す発言が目立ちますが、日本側は平和条約締結に向け、帰属問題の解決を目指す立場を堅持しています。 

 ザハロワ報道官の発言は、ウクライナ侵攻で国際社会から孤立するロシアが強硬姿勢を強めていることを示唆したもので、今後の領土交渉がより一層、難航する恐れがあります。

【私の論評】ウクライナ人も多数居住する北方領土が戻ってくる可能性はかつてないほど高まりつつある(゚д゚)!

外務省の宇山秀樹欧州局長

宇山秀樹氏なる人物、私は上のニュースを見るまで知りませんでした。日本国内でも、宇山氏が上記のような発言をしたことなど、報道されていません。

これが、岸田総理とか林外務大臣などの発言であれば、理解できなくもありませんが、なぜザハロワ報道官がこのような発言をしたのか理解に苦しみます。

このようにあまり有名でもない人物の発言、しかもほとんど報道されもしない発言をわざわざ取り上げるということは、ロシアは北方領土に関して、神経質になっていると考えざるをえません。

なぜ神経質になっているかといえば、2つほど理由があると思います。

1つ目は、現在ロシアはウクライナに侵略をしており、極東の守備が疎かになっているということがあります。極東ロシア地上軍はソ連邦崩壊前では、40数個師団あったものが、現在では、半数以下の12個旅団(師団の半分から2/3の規模)と2個師団合計8万人です。これは、4分の1以下になったということになります。軍の地位も下がり、予算も多く削減され、兵員の士気は下がっています。

極東の東部軍管区には8万人しか配備されていない

北方領土への守備隊の配置は、第18機関銃・砲兵師団が、主に着上陸防御を目的として択捉島及 び国後島に所在しており、その規模は約3,500人とされています。

もう一つは、北方領土にはウクライナ人が多く住んでいるということです。1989年の調査では12%、1991年の調査によると全人口の4割がウクライナ人とする調査もあります。2016年時点で、国後島に7914人、択捉島に5934人、色丹島に2820人の計16,668人のロシア国籍の住民が在住していますが、そのうち1割~4割ほどが民族的にはウクライナ人とされます。

北方領土の代表的な町はユジノクリリスク(7048人、2002年調査で8.2%がウクライナ人)、ゴリャチエ・クリュチ(2025人)、マロクリリスク(1873人)、クリリスク(1666人、2002年調査で9.2%がウクライナ人)、クイビシェフ(1757人)等です。

2014年に起きたウクライナ内戦の混乱から逃れるため、ドネツィク州等の東部の親露派地域からウクライナ人がウクライナ系住民が多い北方領土に難民として入植してきた例も報告されています。


北海道新聞は、北方領土・国後島の中心地、古釜布(ユジノクリーリスク)で2014年3月17日、ウクライナ支援集会が開かれたことを報道しました。北方領土はウクライナ出身者が特に多く「3人に1人(国後島民)とも言われ、出身者を含む約500人が集まり「故郷を支えよう」などの声明を採択し、ウクライナ東部やクリミア半島のロシア語系住民との連帯を表明しました。参加した出身者の一人は「故国の混乱が早く収まってほしい」と話しました。

今回のロシアのウクライナ侵攻に関しては、このような報道はされてはいないものの、このような声が高まることはあり得ると思います。

現在ロシアによるウクライナ侵略多数の難民がウクライナを出国しているといわれています。いまのところ、こうした難民が北方領土に入植しているという報道はありませんが、今後のウクライナ情勢いかんでは、入植する可能性もあります。そうなると、北方領土のウクライナ人の比率はさらに高くなります。

ロシア革命の前後、ロシアから日本へ亡命してきた人(白系ロシア人)の中には、シュウエツ家に代表されるようにウクライナ人も多数いました。多くのウクライナ人は日本領である南樺太に定住していましたが、函館や神戸などで活躍したウクライナ人やユダヤ系ウクライナ人もいました。

亡命者は北海道や関東、関西を中心に在住し、一部は太平洋戦争前に米国などへ渡りましたが、残ったものは日本国籍を取得し、ウクライナ系日本人の系譜となりました。

戦後しばらくはウクライナ人と日本人の交流は停滞していましたが、90年代末以降、日本政府が興行ビザの発給を緩和して以降、在日ウクライナ人の人口が増加しましたた。日本に在留しているウクライナ人の数は2003年には最大の1,927人にまで急増したが、2005年の興行ビザ発給制限の影響で減少し続け、興行ビザの人口は2020年に29人にまで減りました。

2020年12月現在では1,867人となっています。

ロシア軍は、ウクライナのドネツク州、ルガンスク州のロシア系住民が虐待されたこと(真偽はあきらかではないが) をウクライナ侵略の理由の一つにしています。日本はロシアのように極悪非道なことはしませんが、ロシア側からみれば、日本が北方領土のウクライナ人が迫害を受けていることを理由に自衛隊を進駐させることもロシア側からみれば、理論的にはあり得るわけです。

だからこそ、ロシアとしては警戒しているのでしょう。

多くの人は、今回ロシアがウクライナに侵略したことをもって北方領土返還交渉が難しくなると考えているようですが、私はそうではないと思います。

現在ロシアは厳しい経済制裁を受けています、それによりいずれロシア経済はかなり低迷することになります。そのときには、ロシア経済は北朝鮮なみになる可能性があります。そうなったときに、ロシアは自らの根幹部分を守ることで精一杯となり、北方領土を守備したり、自らの領土として行政サービスをする能力すらなくなってしまう可能性が大きいです。

そうなれば、地震や津波のような深刻な自然災害が起こっても放置するしかなくなってしまうでしょう。医療や教育、さらには福祉政策もおろそかなになっとしまうでしょう。

ウラジーミル・プーチン大統領はロシア連邦大統領で、ロシア連邦内にはいくつもの共和国が存在し、共和国には大統領も存在します。ロシア連邦の行政・地方区分システムはかなり複雑で、州、地方、連邦市、共和国、自治州、自治管区、連邦管区などが存在します。これらの地方自治体は、憲法上同等ですが、実際には相互に大きな差があります。

ロシア連邦が経済的に苦しくなれば、軍事的にも守備できる範囲は狭まり、ロシアはモスクワを中心とした部分のみを自らのテリトリーとして他は手放す可能性が高まることが考えられます。

とはいいながら、ロシアはなるべく多くのテリトリーを維持したいと考えるでしょうが、それにしても極東はかなり無理になり、その中でも北方領土は放棄する可能性が高いです。

その頃には、極東にも別の国ができているかもしれません。そうなると北方領土はロシアとの交渉ではなく、その国との交渉となります。その頃には、極東の新しい国も経済的に低迷し、日本支援に期待するようになっている可能性もあります。

そのときが、日本が北方領土を取り戻す最大の機会だと思います。現在のロシアもそうした可能性も意識の上に顕在化はしていないものの、潜在的にはありうると感じているのではないでしょうか。

だからこそ、そのようなことは断じてあってはならないという思いから、あまり有名でもない人物の発言をわざわざ取り上げ異例ともいえる報道官の発言となったのではないでしょうか。

私自身は、北方領土が戻ってくる可能性はかつてないほど高まりつつあると思います。

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2022年3月4日金曜日

岸田首相「省エネ」呼びかけで政府の対応は―【私の論評】エネルギー政策で失敗し、ロシアを利することになりかねない日米両首脳(゚д゚)!

岸田首相「省エネ」呼びかけで政府の対応は


岸田首相が3日の会見で、国民に対してこれまで以上の省エネに取り組むよう呼びかけたことに関連し、松野官房長官は、4日、「政府としては、公用車の電動車への置き換えなど積極的に進める」と強調しました。

ロシアによるウクライナ侵略などの影響を受け、ガソリン価格などの高騰が続いています。岸田首相は3日の会見で、「エネルギー価格高騰による我が国経済への悪影響を少しでも減らすべく、これまで以上の省エネに取り組み、石油やガスの使用を少しでも減らす努力をしていただくことが大切だ」として、国民に対しこれまで以上に省エネに取り組むよう呼びかけました。

これに関連し、松野官房長官は4日、政府で率先して行う取り組みについて公用車の電動車への置き換え、庁舎におけるLED照明の導入、再生可能エネルギー電力の調達などを積極的に進めていく考えを示しました。

【私の論評】エネルギー政策で失敗し、ロシアを利することになりかねない日米両首脳(゚д゚)!

岸田、目の前にあるエネルギー危機に関して、この程度のことしか言えないのでしょうか。先日もこのブログに掲載したように、現在稼働を中止している全原発を稼働させるようにすれば、日本のエネルギー問題はすぐに解決します。

そうして、日本て余った石油やガスをヨーロッパにまわすようにすれば、日本の世界での存在感は高まります。それに、ロシアに対する制裁にもなります。まさに、一石三鳥ともいえる政策だと思います。

原発の危険を指摘する人もいるでしょうが、原発を稼働していなくても、そこに核燃料があれば、危険であることには変わりありません。稼働していようと、していまいと、危険があることには変わりないのです。であれは、稼働すべきです。


それに、首相が現在のロシアによるウクライナ侵攻の危機や、それに伴うエネルギー危機に対して危機感を示すことによって多くの国民や政治家にとっても、安全保障やエネルギー問題を考える良い機会になったのではないかと思います。

現在のような危機にあって、原発稼働について議論もしない現在の政府の姿勢には、本当に疑問を感じてしまいます。

これは、米国のバイデン政権も似たり寄ったりです。先日もこのブログに掲載したように、米国もシエールガス・オイルを増産すれば、ガソリンの高騰を抑えることができ、秋の中間選挙においても有利なることが考えれますし、ロシアの制裁にもなり、EUにガス・オイルを回すことができ、こちらも一石三鳥になるにもかかわらず、バイデン大統領もそれについては、全く言及しません。

バイデン政権としては、脱炭素社会を提唱しているため、シェールガス・オイルの増産に関して発言することは憚られる面もあるのでしょうが、それにしても、議論もしないのはいかがなものかと思ってしまいます。

米国デイリー・コーラーによれば、ジョー・バイデン大統領は就任以来、積極的に反化石燃料政策を推し進め、米国のエネルギー自給目標に悪影響を与え、ロシアによる侵略を可能にしたと専門家は述べています。まさに、バイデンの脱炭素政策が、ロシアに金を握らせてしまったともいえます。

バイデン政権は積極的な気候問題対策の一環として、パイプラインを拒絶して掘削プロジェクトを見捨て、重くのしかかる規制を推進して連邦政府の重要な石油・天然ガス承認プログラムを遅らせ、米国の化石燃料業界に反対する政策を実施しています。その一方で米国は、ロシアの石油を含めてますます輸入に依存するようになっており、ロシアは世界の天然ガス市場で主要なプレイヤーの地位を確立しました。

連邦政府の予測によると、米国はバイデン政権下で2022年に原油の純輸入国に戻ろうとしています。米国は石炭と天然ガス両方の取引を考慮すると、2019年に全エネルギーの純輸出国となり、2020年には石油の純輸出国となりました。

「原油価格が100ドルに迫り、ロシアが政府予算―軍とウクライナ侵攻も含まれる―の資金獲得のためにエネルギー販売に依存する中、ロシアのエネルギー輸出が西側に及ぼす影響力に今世界は注目している」と、米国商工会議所世界エネルギー研究所のマーチン・ダービン所長は1日のブログ投稿で述べました

「この現実から、こうした依存の一因となっているエネルギー政策を至急見直さざるを得なくなっている」とダービンは続けました。

1日に下院民主党は、連邦政府がエネルギー市場におけるロシアの支配を埋め合わせるために、米国の石油・天然ガス生産を「解放」するよう義務付けることを提案する共和党の米国エネルギーのロシアからの独立法案の検討を阻止しました。

「プーチンとロシア経済は、支配的なエネルギー生産と他国への輸出に依存している」と、法案起草者であるエネルギー商業委員会幹部メンバーのキャシー・マクモリス・ロジャースと、天然資源委員会幹部メンバーのブルース・ウェスターマンは2月28日の共同声明で述べました

「(プーチンは)そうすることで権力を得ており、彼の軍隊と攻撃的な行動の資金源となっている。プーチンに対抗するために、我々の法案は米国のエネルギー雇用、生産、輸出の推進にスイッチを入れるものだ」と彼らは続けました。

このように米国がエネルギー生産の観点から大幅に弱体化したため、ロシアに対抗する力が大きく失われることになりました。

いま世界中でエネルギー価格が高騰しています。欧米がロシアに経済制裁をすれば、ロシアからのガスの供給が滞ることになります。欧州はガス価格の高騰のみならず、物理的な不足に直面します。暖房もできなくなり、工場の操業も止まることになります。そして、すでに進行中のインフレが悪化すれば、どの国の政権も安定ではいられないです。

大統領就任の初日に、バイデンは環境問題を理由に、建設が進んでいたキーストーンXL事業を阻止する命令を出しました。こキーストーンパイプラインがあれば、ヨーロッパへのエネルギー輸出を拡大することで、ロシアに対抗する能力をアメリカに与えていたはずです。

工事中のキーストンパイプライン

いまEUは世界から天然ガスを買い漁っています。とくに米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入が急激に増えています。トランプ政権時代に増産していたおかげで、何とかまだ急場を凌(しの)いでいるという状態ですが、いつまで持つのでしょうか。こんな不安要素を抱えて、本当に経済制裁をして本当に大丈夫なのでしょうか。

さらに、大統領は下院と上院の民主党の中から助言を聞き入れることを選択し、1日にはエネルギー省に緊急用石油備蓄を放出するよう命じると発表しました。米国は備蓄から3千万バレルを引き出しますが、他の数十カ国も備蓄から同じ量を放出します。

バイデン政権は非常用の石油備蓄補充のための計画をまだ立てていません。日本も同じことです。

米国内では、バイデン政権のエネルギー政策がロシアのウクライナ侵攻を招いたとして、野党の共和党議員から猛烈な非難が浴びせられています。脱炭素政策の大幅な見直しは避けられないでしょう。

一般教書演説でロシアを非難するバイデン大統領

日米ともに、小型原発の開発をすすめてはいますが、それはまだ先の話です。ロシアがウクライナに侵攻した現在、ここ当面どうするかについては、はっきりとした政策は打ち出していません。それは、結局ロシアを利することになります。

特に日本では、エネルギーのロシア依存度は、EUほどには高くありませんから、いまのところ目立った弊害はありませんが、ロシアのウクライナ侵攻に続き、ロシアに対する制裁がなされ、エネルギー価格が上昇しています。この状況はしばらくおさまりそうもありません。

このままの状態が続くと、岸田政権もエネルギー政策に真摯に向合なければ、支持率が落ちて大変なことになりかねません。

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2022年3月3日木曜日

蔡総統、ポンペオ米前国務長官に勲章授与 台米関係への貢献たたえる/台湾―【私の論評】台湾大規模停電とも関係?ポンペオ氏を未だに恐れる中国(゚д゚)!

蔡総統、ポンペオ米前国務長官に勲章授与 台米関係への貢献たたえる/台湾

台湾総統府で会談したポンペオ前米国務長官(左)と蔡英文総統=3日、台北

蔡英文(さいえいぶん)総統は3日、総統府で、台湾を訪問しているポンペオ米前国務長官に特種大綬景星勲章を授与し、台米関係向上への貢献をたたえた。ポンペオ氏が在任中、米外交・軍事当局者と台湾間の交流制限撤廃や台湾への武器売却の常態化など台米関係に大きな進展をもたらしたことにも触れ、台湾の人々を代表して「最も深い感謝」を表明した。

ポンペオ氏の訪台は台湾のシンクタンク、遠景基金会の招きに応じたもので、2日から5日まで滞在する。滞在中は政財界や学術界の関係者と交流するほか、4日には講演を行う。

勲章を受け取ったポンペオ氏はあいさつで「光栄」だと述べ、蔡総統らと対面できたことに喜びを示した。また、ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に、今、欧州で起こっていることを見れば、自由が当たり前のものではないことが分かると言及。蔡氏の総統在任中、自由への渇望を踏みにじる行為が許されることはないと信じていると述べ、米国もずっと台湾と共にあると語った。

ポンペオ氏ら一行は、米国と中華民国(台湾)それぞれの国旗のデザインとともに中国語で「堅若盤石」(大きい岩のように固い)の文字をあしらったマスクを着用して授与式に臨んだ。

【私の論評】台湾大規模停電とも関係?ポンペオ氏を未だに恐れる中国(゚д゚)!

ポンペオ全国務長官の訪問に先立つ2日午前には、米国のマイケル・マレン元統合参謀本部議長率いる代表団が台湾を訪問しています。

蔡英文総統は2日午前、同代表団の表敬訪問を受けました。代表団はマレン氏のほか、ミシェル・フロノイ元国防次官、メーガン・オサリバン元大統領副補佐官(国家安全保障担当)、国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏とエバン・メデイロス氏で、米国の超党派で実績のある人物で組織されています。

米国のジョー・バイデン大統領が台湾に派遣した事実上特使団が「台湾との約束」を固く守っていくと明らかにした。台湾は今回の米国代表団訪台を通じてアジア太平洋地域の対中牽制(けんせい)体である日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)に参加し、外交的突破口を用意したいとの希望も正式に伝達しました。

蔡総統はあいさつの中で、全世界がウクライナ情勢を注視する今、バイデン大統領が代表団を台湾に派遣したことは台米のパートナーシップに対する重視のみならず、双方の関係が「岩のように」固いことを示していると歓迎、地域の安全保障における台湾の役割は際立っており、世界の民主コミュニティはより緊密に団結しなければならないと語りました。

バイデン米大統領の指示を受け、米国のマイケル・マレン元統合参謀本部議長率いる代表団が台湾を訪問。蔡英文総統は2日午前、同代表団の表敬訪問を受けた。写真は蔡総統(左から7人目)を囲む代表団のメンバーら。(総統府)

バイデン大統領の指示に伴う今回の代表団訪台は、昨年4月にクリス・ドッド元上院議員ほか、、国務副長官を務めたリチャード・アーミテージ、ジェームズ・スタインバーグら3人で構成された非公式代表団訪問以降、二度目となる。

さて、これらとは別に台湾では、ある大きな事件が起こっています。

3日午前9時7分ごろ、台湾各地で大規模な停電が発生しました。台湾電力(台電)は、南部・高雄市にある興達発電所の設備が故障したことが原因としており、ただ、詳細は明らかにされていません。蔡総統は原因究明と早期復旧を指示しました。総統府は停電していません。

また行政院(内閣)原子能委員会(原子力委員会)によると、外部電力の影響で、屏東県の第3原子力発電所の発電ユニット2基が運転を停止したといいます。安全性に問題はないとしています。

台湾南部、屏東県の第3原子力発電所

停電は南部だけでなく、台北など北部にも及びました。

台湾総統府によると、台北を訪問中のポンペオ前米国務長官と蔡英文総統の会談はライブ配信が中止されましたた。

半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などが拠点を置く新竹サイエンスパークは、停電していないといいます。

また、TSMCが工場を持つ南部の台南サイエンスパークは、午前中に電圧低下に見舞われたが、生産には影響がなかったとしました。

TSMCは複数の工場で、最長1秒以上続く「電力低下」が見られたとし、「現在、実際の影響があるかどうか確認している」と発表した。

運輸当局によると、北部と南部を結ぶ高速鉄道にも影響が出たが、通常運行が再開しています。

前日には事実上の米国特使団が訪問し、蔡英文総統とポンペオ元国務長官が米台関係強化を話し合っていたタイミングでの台湾の大規模停電です。

中国のサイバー攻撃を煽るつもりはありませんが、ただ「リスク管理」的な観点からしても、これは相当危険です。意図的に南部・高雄市にある興達発電所の設備を攻撃すれば、大規模停電が発生するということです。

今回の件、仮に中国のサイバー攻撃が関係していたとして、これを中国による台湾侵攻の前兆とする人もいますが、私はこのブログで主張してきたように、中国軍の海軍輸送力の脆弱性から、一度に数万の海上兵力しか送り込めないので、これは台湾軍によって個別撃破されてしまう規模であることから、軍事的にはすぐにはあり得ないです。

あるとすれば、やはりポンペオ全国務長官訪台に対する牽制だと思います。実際、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は3日の記者会見で、ポンペオ前米国務長官が台湾を訪問して蔡英文総統と会談したことに対し、「恥ずべき行為だ」と反発しました。その上で「徒労に終わることは避けられない」と主張しました。

中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官

中国がわざわざこのような発言をするということは、台湾の大規模停電に中国が関与していないとしてもやはりポンペオ長官のことを、かなり脅威に感じているということです。本当にわかりやすいです。

マイク・ポンペオ氏は米国務長官であった2020年7月23日、カリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館で「共産主義の中国と自由世界の未来」と題した演説を行い、中国との対決姿勢を鮮明にしました。当時のトランプ政権としては、2019年10月にマイク・ペンス副大統領が行った演説以降で最も高いレベルでの対中政策に関する演説となりました。

2019年10月のペンス氏の演説では、中国に対して現実的な関係構築を呼び掛ける内容でしたが、今回のポンペオ氏の演説は、中国共産党と自由・民主主義国家を明確に対比させ、「自由主義の世界は独裁体制に勝利しなければならない」と強硬姿勢を前面に出した内容となっていました。

ポンペオ氏は、中国が繁栄すれば民主主義に転換するとの期待の下で続けていた従来の関与政策は失敗だったとしました。その上で、演説の冒頭と最後で、1970年代の米中国交正常化を主導したリチャード・ニクソン元大統領の「中国が変わらない限り、世界は安全にはならない」との言葉を引用し、自由主義の同盟・有志国が立ち上がって中国の姿勢を変えるときだとしました。

これにより、政権や党派の枠組みを超えて、米国の中国に対峙する姿勢ははっきりし、その姿勢は現在のバイデン政権にも受け継がれています。実際、先日もこのブログで述べたように、ロシアがウクライナに侵攻している最中でも、米国は決して台湾海峡から目を逸らさないです。そういう意味では欧州の戦争に派兵しない米国の方針は大局的には、正しいかもしれないです。ロシア以上に世界の平和に対する脅威はまさに中国です。

中国としては、現状でもポンペオ氏は影響力があるし、秋の米国の中間選挙の結果いかんでは、2024年にはトランプが大統領に返り咲くかもしれず、たとえ返り咲かなくても、中国に対してはさらに厳しい大統領になる可能性も高く、またポンペオ氏が表舞台にでてくることを恐れているのだと思います。


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2022年3月2日水曜日

プーチンは当初4日でウクライナを片付けるつもりだったようだ。しかし、そうは行かなかった。戦いは長引くだろう―【私の論評】プーチンすでにオワコン、後釜はナルイシキンか(゚д゚)!

プーチンは当初4日でウクライナを片付けるつもりだったようだ。しかし、そうは行かなかった。戦いは長引くだろう

ロシアのプーチン大統領

抵抗続けるウクライナ…ロシアの目論見外れる?

「6日前、ロシアのウラジミール・プーチンは自由社会の礎を揺さぶり、彼の意のままに屈しせしめようとした。しかし、彼は大きな計算違いをした」

「彼は予想だにしなかった強固な壁にぶち当たったのだ。それはウクライナの人々だ」

アメリカのバイデン大統領は、ワシントン時間の3月1日夜、日本時間の先程、時季外れの一般教書演説で、ウクライナ侵攻を決断したプーチン氏を非難するとともに、抵抗を続けるゼレンスキー大統領とウクライナ国民をこのように讃えた。

アメリカの国防総省高官がオフレコのブリーフィングで、ロシア軍の侵攻計画の遅れを指摘したのは何日か前のことだが、バイデン氏が言う“強固な壁にぶち当たった”ロシア側の当初の目論見はやはり大外れのようだ。

イギリスの安全保障専門家の分析

安全保障問題に詳しいイギリスのポール・ビーバー氏は言う。

「ロシア側の攻勢はあたかも全面攻撃をまだ始めていないように見えるかもしれない。しかし、侵攻初日から、フル・スケールの攻勢に出ているのだ。ただ、ウクライナ側の頑強な抵抗が、攻撃は序の口だと思わせているだけだ。」

ビーバー氏はインディペンデントの防衛問題アナリストで、イギリス軍の元兵士でもある。

「ロシア軍部隊はウクライナに侵攻しても解放者として歓迎されると思っていた。プーチンもウクライナを解放するのだと説明していた。しかし、現実は全く違った。ロシア軍は侵攻初日から目標を達成できなかったのだ」と。

しかし、第二の都市ハリコフに最初に侵入したロシア軍部隊がすぐに撃退されたのは、あれが威力偵察と言われる作戦で、全面攻撃ではなかったからではないか?という素人なりの疑問をぶつけると、ビーバー氏は「ハリコフへの当初の侵入は威力偵察を含めたロシアの戦術の一環であろう。が、ロシア軍はウクライナの抵抗の激しさに驚愕したのだ。ウクライナの人々がロシア軍を解放者とは見なさないという決意を示したからだ」という。ウクライナ・ハリコフ(2月27日)

その上で、ビーバー氏は言う。

インテリジェンス情報が示唆するのは、ロシアは当初、わずか4日間の作戦で、主要都市を陥落させてウクライナ政府首脳を殺害するか捕え、キエフに傀儡政権を設立するつもりだった。しかし、これにロシア軍は失敗し、双方に想定以上の死傷者を出しているのだ」と。

前稿「“英雄”に大化けしたゼレンスキー大統領とウクライナ国民に最大限の敬意を表す」でも記したように、やはり、プーチン大統領の想定を遥かに超えたゼレンスキー大統領とウクライナ国民の勇気と決意、そして抵抗が、プーチン氏の邪悪な目論見を撥ね返し、持ちこたえているのである。

プーチン大統領の誤算

プーチン氏は明らかに誤算を重ねている。独裁を長年続けたロシアの大統領はとうに裸の王様になっているとも思われるが、西側の前例のない制裁にも苛立つその裸の王様は、見せ掛けの交渉で時間を稼ぎつつ、計画を練り直して更なる攻勢に出ようとしている。

徴兵された戦闘経験無しの若者が多いと見られる侵攻ロシア軍の士気は高くないようだが、それでも、キエフとハリコフを包囲すべく、ひたひたと迫っていて、現地で取材を続ける西側の記者が危惧するように、戦いはより激しく恐ろしい事態を招くかもしれないと不安は募るばかりだ。

しかし、ビーバー氏は「ウクライナがプーチン氏に憐れみを乞う可能性は非常に低い」と断じる。そして「戦いは長引くだろう」とも。

バイデン大統領も一般教書演説で「次の数日、次の数週間・数か月はウクライナ国民に厳しいものになるだろう。」しかし、「ウクライナの人々の自由への愛をプーチンが消し去ることは出来ない。自由社会の決意を彼が弱体化することは無い」と断じている。

現地1日午後のEU議会向けリモート・スピーチでゼレンスキー大統領も「誰も我々を打ち砕くことはできない。我々は強固だ。我々はウクライナ人なのだ」等と意気軒高だ。

戦いがより血塗れの泥沼に陥る前に、正義の側が侵入者を撃退することを願って止まない。

【私の論評】プーチンすでにオワコン、後釜はナルイシキンか(゚д゚)!

米国の情報によれば、ウクライナに派遣されているロシア軍のうち、多くの兵士が新兵で戦地に送られることも知らなかったことがわかっていますが、彼らは作戦に必要な通信手段を欠き、通常の無線や携帯電話に依存しています。このため中央からの命令も届かず、部隊間の連絡もうまくいかず、ウクライナに交信を傍受・遮断され、同士討ちさえあるというのです。

このようなことは、ウクライナ軍からの以下の報告でも裏付けられています。


以下に要約を掲載します。
1.ロシア軍の半分は、本人たちがどこへ行くのか知らなかった。冬季訓練地だと思っていたが、実はウクライナだった。

 2.保安維持で出発前に兵士たちの携帯電話を全部押収したが、いざ無線機を与えず多数の兵士が上部と連絡が途絶えた状態。

3. 兵士たちを指揮しなければならない将校陣は、作戦遂行のために出かけたが、距離が遠すぎて連絡が途絶えた状態。

 4. スペツナズの大半はセキュリティ維持で、自分がウクライナのどの空港にパラシュートで降下したのかも知らなかった。

5.補給計画を愚かに進めたため、物資はいまだにロシア本土に集積された状態。 6.特殊部隊がマートを略奪するのは本当に食糧普及が途絶えたからだ。 7.兵士たちはここがどこかも分からないがとにかく寒くてお腹がすいたから軍装備を捨てて脱走中。 8.作戦司令部は隷下部隊と全く連絡が取れない状況。
ロシアは今回の侵攻に向けてウクライナ国境周辺に約15万人超の兵力を集結させたと伝えられています。

ロシア経済にとって危険なレベルの損害を被ることなく、一気に戦争を始めて終わらせるための奇襲をするためには、あまりに少なすぎます。奥行きが1500キロのウクライナ全土を攻め落とすには、充分に訓練を積んだ兵力が最低50万人は必要であり、だからこそ、私は当初は侵攻の確率は低いと考え、このブログにもそのように述べました。

15万でウクライナに攻め込んだロシアは最初から苦戦を強いられることになるのは、目に見えていました。この数だと、ドンバス地区の完全占領は可能ですが、それ以上は不可能に見えました。

さらに、プーチン大統領は、ウクライナの抵抗や、欧米諸国の対ロ制裁やウクライナへの支援について安易に考えていたと思われます。

ゼレンスキー大統領は米国の亡命提案を拒否しました。これによってウクライナ軍は士気を高め、必死の抵抗を見せました。こうしたウクライナの「英雄的な抵抗」に続き、西欧諸国の対応も変化しました。

「SWIFT」からのロシア排除に消極的だったイタリアやドイツは一転して賛成にまわり、武器供与に慎重だったスウェーデンなどの中立国さえもウクライナへの武器支援に踏み切りました。

このため、「迅速でほとんど努力を要しない勝利を約束していた」プーチン大統領は突然窮地に立たされたのです。

現在、ロシアとウクライナの代表団による停戦交渉が現在行われていますが、これはプーチンが意図的に始めた戦争から解放されるために交渉しなければならないことを意味するため、これはプーチン大統領にとって大敗北といえます。

交渉において、ウクライナはロシア軍の即時完全撤退を要求し、ロシア側がもしこの要求を受け入れるなら、戦争に踏み切ったプーチン大統領は、権力の座に留まることはできないでしょう。

逆に拒否すれば、非常に厳しい戦いに戻り、ゆっくりとキエフに進軍するでしょうが、欧米等から支援を受けたウクライナ軍の抵抗に遭い、甚大な人的被害が生じるでしょう。さらに、その後には反ロシア派の多い地域も征服する必要があり、戦闘がさらに激化します。この場合はプーチン大統領がどのように勝利を収めるか想像できません。

もう一つの可能性は、核兵器の使用をちらつかせることでが、老婦人ですら火炎瓶を手にするなど激しい抵抗姿勢を見せる市民が、そうした脅しのために戦いをやめるとはとうてい思えません。

東部ドニプロで火炎瓶を手作りする女性たち

そうなれば、プーチン大統領は、迅速な勝利の約束を果たす方法も、ロシアに深刻な損害を与え、その軍隊に恥をかかせた理由の弁明もできなくなり、侵攻前にウクライナとの対話を提案していたロシアのセルゲイ・ナルイシキン対外情報局長官が台頭することになるかもしれません。

最近ロシアのプーチン大統領をめぐって話題になっている映像があります。ウクライナ東部、親ロシア派の地域の独立(ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国)を一方的に承認したプーチン大統領。承認をするにあたり政権の主要幹部を集めて独立国家承認に賛成か反対か1人ずつ登壇させて聞いていったそうです。

対外情報局長官セルゲイ・ナルイシキン、67歳が登壇すると空気が一変。プーチン大統領に詰問されたじたじとなったそうです。

この映像、ツイッターなどで拡散され公開叱責のようになっていました。パロディ画像も拡散されています。

ナルイシキンは米国のCIAのような機密情報を扱う機関のトップで大物政治家です。ロシア情勢に詳しい拓殖大学・名越健郎教授によると、2人は1970年代後半からの付き合いで、ナルイシキンはKGB(ソ連のスパイ組織)でプーチンの後輩です。

プーチンと、セルゲイ・ナルイシキン氏

そのため名越氏は、プーチンがナルイシキンを困らせようとからかったのではと推測しています。私自身は、やはりナルイシキンが侵攻前にウクライナとの対話を提案していたこととかかわりがあると思います。

ナルイシキンは、このとき自分が首になるかもしれないと考えたかもしれません。まさか、プーチンが首になるかもしれないとは、考えてもみなかったかもしれません。

その後に自らが台頭することになるかもしれないとは、考えてもみなかったかもしれません。

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2022年3月1日火曜日

バイデンの対ロシア政策は吉と出るか凶と出るか―【私の論評】米国が力を分散せず、あくまで集中して中国を封じ込むのは世界にとって良いことだ(゚д゚)!

バイデンの対ロシア政策は吉と出るか凶と出るか

岡崎研究所

 ブッシュ政権時代に国家安全保障会議(NSC)と国務省に勤務していた、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)外交・防衛政策担当ディレクターのコーリ・シェイクが、バイデンの対露政策を批判する論説を2月11日付ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)に掲載した。


 ウクライナ情勢は緊迫状態が続いているが、最近の欧米メディアにおいては、バイデン大統領の対露政策の対応や手法を問題視するものも目立っている。特に、NYT紙は、2月11日付で、このコーリ・シェイクの投稿の他に、オバマ時代のウクライナ担当の国防次官補代理であったエブリン・ファルカスが、クリミアなどへの対応が不十分であったとして誤りを繰り返すべきではないとして、より強硬な政策を求める投稿を掲載している。

 シェイクの投稿は、バイデンのリーダーとしてのマネージメント全般にも関するものでもある。シェイクは、バイデンの最大の問題は、ウクライナ危機の初期の段階で米軍をウクライナに投入しないことを明言したことであり、これによりロシアは安心して軍事介入の準備を進めることになったと指摘する。

 シェイクは、その背景として、安全保障チームに意見を同じくする昔の部下らを任命し政権内でしっかりした議論をせずに、自分の好む政策決定を行っている結果、人権外交、貿易政策、対中国政策、更にはアフガニスタン撤退などの失敗を引き起こしているのもバイデンの責任であるとする。

 ロシアは、その要求を実現するため正規軍10万人をウクライナ国境に集結し軍事演習を行っている。この段階で既に、国連憲章第2条4項の「武力による威嚇」の禁止義務違反の疑いが強い。また、仮に正規軍が国境を越えれば、明らかな武力攻撃、或いは侵略行為であり、憲章51条の「個別的又は集団的自衛の固有の権利」の行使の対象となる事態であり、米国はウクライナを軍事的に支援する集団的自衛権を国際法上の権利として持つことになる。バイデンは、なぜ早々にその権利を放棄するかのごとき発言をしたのであろう。

 シェイクは、バイデンが、ロシアとの直接対立の可能性を打ち消したのは、核大国である米露の軍事衝突リスクを避けたかったからであろうと指摘する。しかし、それではプーチンの交渉立場を極めて有利にし、その要求を断念させることが難しくなることは明らかであった。
核保有国への対応の前例に

 2014年のクリミア併合や15年のドンバス地域への間接侵略に対する米国および欧州諸国の制裁措置が甘く、その後のドイツのノルド・ストリームへの対応、更にはトランプのプーチン礼賛がプーチンを増長させたことは間違いないであろう。ウクライナで譲歩すれば、バルト3国が次の標的となることは目に見えている。

 そして、シェイクは、アフガニスタン撤退によりさらに弱まった米国の抑止力を回復するためにも、より強硬な対応が必要だと主張する。

 しかし、バイデン政権も、その後、周辺国に米軍を派遣し、バイデン自身が2月12日、ウクライナのゼレンスキー大統領に電話で、侵攻があればロシアはすぐにも「過酷な代償」を支払うことになるだろうと述べ、また2月13日、サリバン安保担当補佐官も、同盟国などと団結し、「断固と対応する準備もできている」と述べ、その表現は厳しくなってきている。種々の準備が進んでいることも背景にあるのであろうが、いずれにせよ、それは経済・金融上の制裁と見られている。

 他方、ロシアでは、2月15日、プーチンがショイグ国防相やラブロフ外相に対して今後の対応につき意見を求め、両大臣が回答する場面が国営放送で中継された。ラブロフは外交的解決の可能性はあるとして交渉継続を進言し、如何にも芝居がかっている印象を受けた。

 なお、ウクライナ情勢が今後どう推移しようとも、バイデンが、ロシアの軍事侵攻に対しても対策は経済制裁だけで軍事的介入は行わないとの方針を表明したことは、今後、核兵器国による同様の問題に関する米国の対応についての先例と見られてしまうことが懸念される。

【私の論評】米国が力を分散せず、あくまで集中して中国を封じ込むのは世界にとって良いことだ(゚д゚)!

バイデン政権は発足間もない昨年3月、発表した国家安全保障戦略の中で中国を唯一の競争相手に位置づけました。中国に対しては同盟国や友好国と共に協力しながら対抗していく姿勢を強調し、ロシアにも懸念はあったものの、対抗相手として中国とロシアには大きな差があります。

このブログでは、何度も述べたように、ロシアの現在のGDPは韓国より若干下回り、一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回っています。そのロシアにできることは限られています。ただ、ロシアは旧ソ連の核兵器と軍事技術を継承する国であり、軍事力も世界第二位とされており、決して侮れる相手ではありません。

対ロ関係は難しいですが、対中国でロシアと少なからず協力するという選択肢もあったのかもしれません。バイデン政権は中国を唯一の競争相手と位置づけることで、対中国に集中したかったのでしょう。

その思いは、バイデン政権による初の「インド太平洋戦略」にもにじみ出ています。先日もこのブログで指摘したように、この戦略には「ロシア」というキーワードが一つもでてきません。

米国の「インド太平洋戦略」は以下のリンクからご覧いただけます。
INDOPACIFIC STRATEGY OF THE UNITED STATES
バイデン政権による初の「インド太平洋戦略」の表紙

 このサイトで「Japan」で検索すると、10個でてきます。それだけ日本はこの地域で米国は、重要視しているということでしょう。


一方「Russa」で検索すると、一切でてきません。これは、いくらロシアの現状の海戦能力が低いからとはいえ、正直驚きました。

バイデン政権が「インド太平洋地域」でも、中国を唯一の競争相手と位置づけることで、対中国に集中しようとする姿勢を強力に打ち出したことにより、プーチンはウクライナに軍事侵攻したとしても、極東で米国に脅かされる懸念はないか、あったにしても少ないとみたでしょう。

そのバイデン政権の思惑を巧みに利用するかのように、ロシアのプーチン政権は思い切った行動に出ました。すでに米ロ関係が急速に冷え込み、バイデン政権は多正面作戦を回避したかったようですが、その思惑は確実に裏目に出ました。

ただ、バイデンが中国に集中するというのなら、ウクライナが脅威になるとは考えにくいわけであり、そこが矛盾するようにも見えます。ただ、現在の状況がいつまで続くかわからないという考えもプーチンにはあるのかもしれません。

米国には地政学を専門に扱うコンサルティング会社「ユーラシアグループ」がありますが、同社の社長である国際政治学者イアン・ブレマーは以前から「Gゼロの世界」を提唱してきました。

イアン・ブレマー

Gゼロの世界とは、簡単に言えばグローバルリーダシップを発揮できる指導者がいない世界ということを意味します。米国の力が相対的に弱くなり、中国が影響力を高め、ロシアが拡張主義的行動をエスカレートさせる今日の世界は、まさにGゼロの世界なのかもしれません。

プーチンもGゼロの世界になったとみなし、この世界はいつまで続くかもわからないし、今こそチャンスだとばかりにウクライナに侵攻したのかもしれません。

今後の世界は現在より不安定化する可能性が高いです。今回のウクライナ問題では、中国はその行方を第三者の立場で静かに注視し、欧米の死角や政治的間隙を縫う方策を探っているでしょぅ。

今後ロシアやイラン、北朝鮮など安全保障上懸念される国々は米国の反応をこれまでほど窺わなくなり、自主的な行動をさらにエスカレートさせる可能性もあります。

また、米国や日本、オーストラリア、欧州などは今後も対中国、対ロシアで協力することがあるでしょうが、第三世界の国々がそれにどこまで付いてくるかがポイントとなります。

21世紀に入り中国は着実に力をつけ、一帯一路などによって周辺地域やアフリカ、中南米諸国などとの経済関係を強化しており、すでに第三世界の国々にとって欧米陣営に付いていけば安心という国際関係ではない。今日ウクライナ情勢はGゼロの世界を加速させるプロローグなのかもしれません。

このブログでは、以前からロシアのウクライナ侵攻は、確率が低いこと、中国の台湾侵攻や、尖閣侵攻はないだろうことを主張してきました。ただ、それは純粋に軍事的に見た場合の観点から主張したものです。

中露がGゼロの世界になったとみなせば、軍事的に不可能とみられた行動も起こすかもしれません。まさに、それが今回のロシアによるウクライナ侵攻といえます。

ただ、このウクライナ侵攻はまだ結論が出ていません。これからもバイデンの政策いかんによっては、ロシアにそうして、中国に対しても未だ世界は「Gゼロ」ではないと思い知らせることはできます。

何よりも、ロシアの経済力ではウクライナで長期わたって戦争を継続することは不可能です。もう、その兆候はみられています。

バイデンが、ロシアの軍事侵攻に対しても対策は経済制裁だけで軍事的介入は行わないとの方針を表明を撤回すべきです。本当に介入するかしないかは別にしても、条件づきで介入する可能性を打ち出すだけでも良いでしょう。

さらに、米国およびその同盟国が結束して、返り血を浴びてもロシアを経済的に壊滅させる動きにてでいます。

それによって各国の国債のCDSがどうなったか、以下に本日の数字をあげておきます。

CDSとは、企業や国などの破綻リスクを売買するデリバティブ(金融派生商品)で、投資対象の破綻=デフォルトに備えた保険です。CDSの買い手は売り手に一定の手数料を支払う一方、投資先がデフォルト(債務不履行)した場合には売り手が損失を肩代わりし、「保険金」を支払います。

国家破綻のリスクが高くなった!というときに、国債の金利が上昇しますが、国債金利以上に端的に破綻リスクの高まりを表すといわれるのが「国債CDS」です。

以下に5年間の国債CDSの本日の一覧表を掲載しておきます。


ちなみにPDは破綻確率です。ロシアの破綻確率は6.87%です。日本は、0.31%です。日本というか、先進国では0%以下というのが普通です。日本は、どう考えても、破綻しようにもありません。しかし、ロシアやトルコは破綻確率がかなり高いです。

ロシアの金利は10%台にまで跳ね上がっています。国債金利の危険水域は7%ですから、ロシアはかなり危険ということです。

ロシアも、今後さらに破綻確率があがっていくことが考えられます。

ロシアは今回のウクライナ侵攻後には、いずれ二桁台で経済が落ち込みとてつもないことになるでしょう。そうなると、今後ロシアは戦争どころではなくなります。

ロシアがウクライナに侵攻している最中でも、米国は決して台湾海峡から目を逸らさないです。そういう意味では欧州の戦争に派兵しない米国の方針は大局的には、正しいかもしれないです。ロシア以上に世界の平和に対する脅威はまさに中国です。

ロシアのGDPは今や韓国を若干下回る程度です。一人あたりのGDPでは、韓国を大幅に下回ります。ロシアと中国の一人あたりのGDPは同じくらいですが、ロシアの人口は1億4千万人ですが、中国の人口は14億人で、GDPはロシアの10倍です。

力を分散せず、あくまで集中して中国を封じ込むのは良いことです。最悪の事態が生じても、NATOがこれに対峙できます。しかし、中国が相手では、QUADも結成されたばかりのAUKUSもまだ十分対応しきれるかどうかは、わかりません。やはり米国が前面にでて、中国に対峙しようとしているのです。

これは、大統領がだれであろうと、いまや米国の方針なのでしょう。

そのことを理解したからこそ、ドイツをはじめとするEUの国々も、方針を変えてウクライナに武器の支援等をしようとしているのでしょう。

以上を注視している中国は「Gゼロ」的な世界観を当面捨て去るかもしれません。

日本としては、以上のような状況を良く認識しておくべきでしょう。今後の世界は、いつ「Gゼロ」になるか、あるいロシアにようにそうなったと思いこむ国が出てくるかわかったものではないです。

そのときには、現在のロシアのような行動を、中国が起こすかもしれないです。それに対処するには、日本は安倍元総理が主張するように、たとえば米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核共有(ニュークリア・シェアリング)」について、国内でも議論すべきです。その他の抑止力についてもタブーにすることなく議論すべきです。

議論そのものすら受け付けないという人は、代替案を上げた上で反対すべきです。

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2022年2月28日月曜日

「逆キューバ危機」と言えるウクライナと中露共同声明―【私の論評】中露の思惑はウクライナでは外れそうな状況になってきた(゚д゚)!

「逆キューバ危機」と言えるウクライナと中露共同声明

岡崎研究所

 2月4日、中国の習近平主席とロシアのプーチン大統領は北京で首脳会談を行い、中露共同声明を発した。この共同声明には、その長さ(約5000語)と言い、中味と言い、些か驚かされた。

 基本的には、双方の文言提案の寄せ集めの感を受けるが、安全保障等重要部分については双方が調整、それぞれの政策を相互に支持し合い、中露連携を強く打ち出している。それは「新たな枢軸」の結成と言っても良い。要注意である。声明の主要点は次の通り。


(1)世界は「新たな時代」に入っている。多極化、経済のグローバル化、情報化、グローバル・ガバナンス制度・秩序の変化、世界のパワー配分の変化(米衰退論が透けて見える)を強調。国連安保理中心のガバナンス、国際法に基づく秩序の擁護を強調。(この部分は中国主導の起案か)。

(2)第I部:「民主主義は普遍的価値であり、一部の国の特権ではない」。(「民主主義」の語が中露のナラティブにハイジャックされないように要注意)。

(3)第II部:ユーラシア・パートナーシップの拡大や一帯一路計画に言及の上、経済発展の重要性を強調。気候変動、コロナ問題などにも言及。

(4)第III部:安全保障につき、中露は相互の「核心利益」を擁護する。「ロシアは一つの中国の原則を支持する、台湾は中国の固有の一部である、如何なる形であれ台湾の独立に反対することを再確認する」。ウクライナと明示しないで、「両国は近接地域での外部勢力による干渉を排除し、カラー革命に反対し、当該地域での両国の協力を強化すると述べ、テロ反対にも言及。双方は「北大西洋条約機構(NATO)の更なる拡大」に反対する。

 中国は欧州安保に関するロシアの提案を支持。アジア太平洋の閉鎖的なブロック化に反対、米のインド太平洋戦略を警戒する。ABMシステム(弾道弾迎撃ミサイル制限)を廃棄すべき。オーカス(AUKUS)を非難、核・ミサイル不拡散を守るべき。米のアジアや欧州での中・短距離ミサイルの配備計画の中止を求める。宇宙にも言及。福島の「核汚染水」の海洋投棄を懸念。

(5)第IV部:共同して「新たな形の国際関係」を築く。両国は第二次大戦の結果を堅持する。両国の友情に限界はなく、協力に禁止区域はない。WTOを支持。APECを強化する。

 ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスは、2月8日付け同紙掲載の論説‘The crisis in Ukraine is one for the history books’において、ウクライナ危機は将来専門家達による事例研究のひとつになると言い、上記の中露共同声明はケナンのソ連封じ込め戦略の中露版と考えることもできる、ウクライナを巡る対立は「逆キューバ危機」である、などと指摘している。その通りであろうと思われる。目下のウクライナ危機は、それほど歴史的な意味合いを持っている。

 ロシアとの話合いは続いている。何か動いているのではないかと思われるが、交渉の正確な状況は分からない。プーチンは長年の冷戦を米と共に管理することに成功してきたロシアの指導者であるという意味では、一定の合理主義者だと思われる。

 そうであれば、エスカレーションを支配しバイデンを困らせる危険なゲームを楽しんでいるとも考え難い。他方、プーチンは、ウクライナに対して、強迫観念に近い執着を持っているようにも見られる。不可解なのは、具体的に達成可能な何を達成しようとしているのか、よく分からないことである。

バイデンの積極的な情報戦

 ベラルーシやロシア西部、クリミア沖に集結する部隊や艦隊の写真は尋常でない。特にウクライナとの間での誤算が心配になる。プーチンには問題を外交で解決する責任を発揮してもらわなければ困る。

 今回の危機へのバイデンの対応は総じて評価されるだろう。特に目立つのは、積極的な諜報情報の発信である。単にアフガンでカブール政権の余命を読み誤ったことに対する教訓だけのようには思えない。危機の際の情報戦が地上の形勢に影響すると考えての事であろう。

 実際、ロシアは米国の発信を嫌がっている。また今回は軍関係者の意見をよく聞き、周到な部隊展開などを行っているように見える。もう一つアフガンとの違いは、同盟国との連携が大きく改善されていることだ。

 他方、バイデンはウクライナのために戦争をする意図はないと明言しているが、1月19日の「ロシアのウクライナへの侵攻が侵攻に留まるならば西側の対応も小規模にとどまる」旨の発言と相俟って、もう少し慎重な発言をすべきではないかとの印象も受ける。しかし、米露直接衝突は何としても避ける必要があること、プーチンに誤算させないことを確保するために米国の意図は明確にし、他方で侵略が何時あってもおかしくないとの情報戦は積極的に続けることで状況をコントロールしようとしているのかもしれない。

【私の論評】中露の思惑はウクライナでは外れそうな状況になってきた(゚д゚)!

キューバ危機時にソ連の輸送船を監視する米哨戒機

キューバ危機とは、キューバにソ連軍のミサイル基地が建設中であることに抗議して、1962年10月22日以降、米国が戦艦と戦闘機でキューバを海上封鎖した事件のことです。 米国大統領J.F. ケネディは、キューバから攻撃があった場合にはソ連によるものとみなして報復するとしました。

逆キューバ危機とは、この言葉を用いなかったものの、このブログにも掲載したことがあります。以下にその記事のリンクを掲載します。
カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出―【私の論評】中露ともにカザフの安定を望む本当の理由はこれだ(゚д゚)!

トカエフ大統領

これは1月11日の記事です。カザフスタンのトカエフ大統領は11日、抗議デモを鎮圧するため先週派遣を要請したロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の部隊が2日後に撤退を開始すると表明しました。

カザフスタンでは暴動などがあったため、ロシアはロシア軍主導のCSTOの部隊を急遽派遣し、その後迅速に引き上げさせています。そのロシア側の考えをこの記事では分析しています。その部分を以下に掲載します。
中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに中長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。
中露は、この逆キューバ危機に対処するためにこれからも、綿密に協力しようとしているのです。

ウクライナへの侵攻も、プーチンの頭の中では、基本的にはこのカザフスタンへのCSTOの派遣と同じような理屈によるものでしょう。

ただ、カザフスタンのトカエフは親露・親中的であり、カザフスタンのトカエフ政権が安定すれば、カザフスタンがNATOに加入したり、ウクライナのように親欧米的な行動をとることはないとみられることから、ロシアとしては、それ以上のことをする必要性もないためすぐに部隊を退かせたのです。

ウクライナに関しては、NATO入を検討したり、親欧米的であるため、侵攻して、ドンバス地域だけではなく、首都のキエフにも侵攻しようとしているようです。とくかく、ロシアの最終目標としてはウクライナを絶対にNATOに加入させないようすることだと考えられます。


ただ、上の記事にもあるように、不可解なのは、具体的に達成可能な何を達成してこれを実現ようとしているのか、よく分からないことです。

私としては、ロシアは本当は、ウクライナ全土に侵攻して、ゼレンスキー政権を倒して、ウクライナにロシアの傀儡政権を樹立して、ウクライナが未来永劫にわたって、NATOに入ることを阻止し、ウクライナをロシアのNATOに対峙する緩衝地帯としたいのでしょうが、それは軍事的にも経済的にもできないのでしょう。

そのため、次善の策として、ドンバスを独立させ、ロシアの傀儡政権を樹立させ、さら首都キエフなどの都市部に攻勢をかけ、占領するような素振りをみせ、ゼレンスキーを投降させるか、海外に脱出させ、ウクライナに傀儡政権まではいかないまでも、親ロシア政権を樹立させ、間違ってもNATOに加入することがないようにしようとしているのではないかと思います。

ただ、現状では思いの外頑強なウクライナ軍の抵抗にあることと、ゼレンスキー大統領がキエフにとどまり続けることを表明しているため、手詰まり状態になっているのだと思います。

ロシア側にとって、ウクライナ側の抵抗も予想以上でしょう。ソ連時代のアフガン侵攻と同じような泥沼化を避けられるかどうか。長期化すればするほど、ロシア国内の反戦ムードはますます高まり、欧米はウクライナ軍に軍事物資を供給し続けることになります。

ちなみに、米国はアフガニスタンに20年間もとどまり続けることができました。しかし、ロシア軍はこのように長期にわたって、ウクライナにとどまり続けることは、軍事的にも経済的に無理です。10日で戦費がつきるという話もありますが、これはウクライナ側の発表です。特に根拠はないのですが、私はは最長で、数ヶ月というところだと思います。

この戦い、ウクライナ軍は善戦していますが、その裏には米国の諜報活動があると思います。先日もこのブログで述べたように、ロシアの兵站は鉄道に頼るところが大きいので、米軍は偵察衛星を用いて、当然のことながら、鉄道を監視しその情報をウクライナ側に伝えていると考えらます。

そうすると、ウクライナ側はロシア軍からあまり不意打ちを仕掛けられることはなく、逆にウクライナ側はロシア軍に対して不意打ちを仕掛けられるのが容易だと思われます。衛星による監視や、諜報活動では米軍はかなり優れています。

その能力を生かして集めた情報をもとに、米国は効果的な戦術を考え出し、それをウクライナに伝えるなどのこともしているでしょう。兵站に関しても、ロシアに妨害されにくい方法を考えてウクライナ軍に実施している可能性もあると考えられます。

ロシア軍の進撃が停滞しているうちに、ウクライナ軍が順次強化、それも最適に強化されるということも考えられます。

この状況だと、プーチン大統領の思惑というか、中露の思惑とは真逆の事態になりかねません。

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2022年2月27日日曜日

強固な抵抗に遭うロシア軍、補給線に「明白なぜい弱性」 米当局者―【私の論評】先が見え始めたか、愚かなプーチンのウクライナ侵略(゚д゚)!

強固な抵抗に遭うロシア軍、補給線に「明白なぜい弱性」 米当局者

戦闘地帯に展開するウクライナ軍兵士

ウクライナ・リビウ/米ワシントン(CNN) 米当局者はCNNに対し、ウクライナに侵攻したロシア軍がウクライナ軍による「予想より強固な」抵抗に遭い、軍への補給で予期されなかった問題が起きているとの見方を示した。

ロシア軍は人員、装甲車両、航空機で予想より大きな被害を受けている。これはウクライナの防空システムが侵攻前の米国による情報分析よりも有効に機能していることが理由のひとつとなっている。国防幹部はまた、ウクライナ空軍と防空システムが制空権をめぐって戦っていて、ロシアが制空権を握れていないと指摘した。

十分な制空権がないと、進行する陸軍が空からの標的を認識して攻撃することはより困難になる。

ただ、当局者は戦況は現時点のものであり、ロシア軍が攻撃を続ける中ですぐに変わる可能性があるとも注意を促している。

軍事情報企業IHSジェーンズによると、ウクライナ軍はレーダー誘導ミサイルや熱探知ミサイル、対空砲など様々な防空兵器を保有している。米国は対空ミサイル「スティンガー」をこの数週間で供与し、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国も同様だ。

当局者によると、米国は26日夜の時点で、ロシア軍がウクライナの都市を制圧したことを示す情報を持っていない。ただ、ロシア軍は首都キエフを含む大都市のいくつかを包囲しようと行動を続けている。

ロシアの大規模な侵攻軍に燃料や弾薬の補給を維持するのも難しい状況となっている。ある米高官が説明するように、ロシアは早期の勝利を予想し、十分な再補給の計画を怠っていた可能性がある。この高官は、補給線は「明白なぜい弱性だ」と語った。

こうした課題がこれまで、ウクライナの主要都市の早期制圧を防いできた。米当局者は制圧は数日の問題だと懸念を示していた。当局が侵攻初日の夜に陥落の可能性があると見ていたロシア国境に近いハリコフも、まだロシア軍の手に落ちていない。

ただ、こうした当局者らはロシア軍がウクライナ軍を数で圧倒的に上回り、主要都市の周囲に軍を進めようとしていると指摘。軍の遅い動きの原因が補給の問題にどれほど帰着するのかは不明だとした。

ロシアは進軍の遅さについて、交渉の時間を与えるための停止であり、軍事的な後退ではないとしている。

ロシア国防省は26日、ウクライナ政府との交渉のため一時停止が指示されていたものの、その後軍に「全方向への」攻撃の再開命令が下ったと発表。ウクライナが協議を拒否し、攻撃継続が命じられたとしている。

ウクライナ政府の顧問は26日早くに、ウクライナが交渉を拒絶したことはないと否定した。

NATO当局者は最新の情報を基に、ロシア軍が「問題を抱えている」と指摘し、「燃料が不足し、進みが遅く、士気は明らかに問題となる」と述べた。

ロシア軍が攻勢を強めてくるかとの問いには、他に選択肢はないとの見方を示し、「彼らは予定より遅れている。彼らにとって手に負えなくなりつつある。1日延びるごとに大きな痛みとなる」と語った。

【私の論評】先が見え始めたか、愚かなプーチンのウクライナ侵略(゚д゚)!

ロシア軍の兵站は、鉄道に頼っているいるため、脆弱であることはこのブログで何度か述べたことがあります。鉄道に頼るということは、線路を破壊されれば、兵站が滞ることを意味します。

ロシア軍の兵站線(戦場において物資の輸送・供給などを行うため確保される物流連絡路)は、現在でも鉄道頼りです。ユニークな鉄道旅団という部隊も10個、存在します。鉄道の警備、建設、保守を担い民間から提供された車輌を運用することもできる、ロジスティックの専門部隊です。

そしてロシア国内ではその鉄道旅団を介し、工場から陸軍補給倉庫、軍管区から師団、旅団レベルまでを鉄道で結びつける体制が構築されています。主要兵站駅には、戦車や車輌が貨車に自走して乗降できるプラットフォームなど、専門の施設も用意されています。ウクライナ国境に集結した兵力の兵站線も鉄道が担っており、動画もよく投稿されています。

兵士1人当たり1日3000kcalの食糧、重さではおよそ100キログラムです。2万人規模の一個師団なら、2000トンの物資を消費します。さらには、弾薬その他消耗品の補給も必要です。

米軍のMRE(Meals,Ready to Eat=携行食)

これを適宜補うためには、作戦本部が予め消費を予測し、生産・輸送・備蓄・補給がネットワークとして存在しなければならないのです。

以前このブログに掲載したように、戦史家のマーチン・ファン・クレフェルトは、その著作『補給戦――何が勝敗を決定するのか』(中央公論新社)の中で、「戦争という仕事の10分の9までは兵站だ」と言い切っています。

実は第2次世界大戦よりもはるか昔から、戦争のあり方を規定し、その勝敗を分けてきたのは、戦略よりもむしろ兵站だったのです。極限すれば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧をどれだけ前線に送り込めるかという補給の限界が、戦争の形を規定してきました。そう同著は伝えています。

エリート中のエリートたちがその優秀な頭脳を使って立案した壮大な作戦計画も、多くは机上の空論に過ぎません。

大東亜戦争中の日本軍は、兵站をあまり考えなかったので、実は戦死者のかなり多くが戦闘によって死亡したのではなく餓死だったとされています。

現実の戦いは常に不確実であり、作戦計画通りになど行きません。計画の実行を阻む予測不可能な障害や過失、偶発的出来事に充ち満ちているのです。予測されるよりも多くの物資を蓄えておき、それをいつでも供給できるようにしなければ、確実に勝てると思われる戦争でさえも負けてしまうのです。

餓死寸前で米軍の捕虜となったマーシャル諸島の日本軍の水兵たち

では、トラックで運べばよいではないかという話になりますが、実はロシアではこれも頼りになりません。ロシア軍の旅団には2個トラック大隊があり、150台の貨物トラック、50台のトレーラー、260台の特殊トラックが定数になっています。

ロシアの旅団編制は米国など西側とは違うので単純な比較はできませんが、砲兵火力を重視した内容で、戦車や装甲車の数は米軍の旅団戦闘団(BCT)の4分の3、しかし砲兵は3倍、防空部隊も2倍です。航空優勢は米軍に取られることを念頭に、支援火力は自前で持ち、防空力を強化する編制になっているのです。

多連装ロケット砲大隊を含む砲兵は、短期集中で大火力を投射できますが大量の弾薬を一挙に消費します。この砲兵部隊に弾薬を完全に補給するのには、56台から90台の貨物トラックが必要になるとされます。しかし150台しかないトラックの半数を、砲兵部隊の弾運びのためだけに割くなど不可能です。

この兵站線の特徴からロシア軍は、旧ソビエト連邦領域内で「積極的防衛作戦」は行えますが、領域外で持続的な作戦行動を行う能力は限定的です。そうして、兵站を鉄道に頼ることの不利な点は、国境付近に集結した兵力を数えるだけではなく、軍用列車を観察することでロシア軍がどう動くつもりなのか占うことができるのです。

米軍では、偵察衛星などでこの動きをかなり詳細につかんでいることでしょう。そうして、その情報はウクライナ軍にも提供され、ウクライナ軍はあまり大きな不意打ちをくらうこともなく、逆にロシア軍に対して不意打ちをくらわすことができます。

それに、先日も掲載したように、都市部の武器を携行して立てこもるウクライナ軍を攻撃するのはかなり難しいです。人口280万人のキエフを占領しようと思えば、ロシアは数カ月の市街戦と利用可能な人的資源の全てを投入する必要があるとの見方もあります。米国の経験から、ホテル程度の建物一つを占領するだけでも、一個大隊または700-800人が必要だといいます。

ロシアとしては、ドンバス地方の侵攻だけではなく、首都攻略などを目指すようにみせかけた侵攻も含めて複数箇所から攻撃をして、脅せばゼレンスキー政権は崩壊し、ゼレンスキー大統領をはじめ幹部は、投降するか海外に逃亡すること等を前提として、戦略特に兵站計画を組んだのでしょうか。仮に代替案もないとしたら、あまりに愚かです。

ウクライナ東部と国境を接するロシア領ベルゴロドに急遽招集された約5,000人のロシア軍兵士は「ウクライナでの戦闘行為は契約に含まれていない」と主張して命令を拒否、そのため暴動に発展しているとウクライナメディアのObozrevatelは報じています。

招集された約5,000人のロシア軍兵士はウクライナで何が起きてるのかを知っており、プーチンの始めた戦争に自分の命を捧げるぐらいなら起訴された方がマシだと抵抗しているともいえるでしょう。

Obozrevatelの報道が真実かどうかは謎であり、ウクライナ側のプロパガンダである可能性も高いですが、本報道はウクライナ軍公式SNSなどを通じて多くの国民が目にしているため戦意高揚としての役割は十分果たしているようです。

ただし、報道の内容が真実で本当に暴動が発生しているなら「ウクライナでの戦いは先が見え始めた」と言えるでしょう。

それに、ウクライナ軍兵士に比較して、ロシア軍兵士は士気が低いのは確かでしょう。第二次世界大戦時のようにドイツ軍が侵攻してきて、それを迎え撃ついわゆる大祖国戦争のような戦争なら、ロシア兵の士気もあがるでしょうが、明らかに他国への侵略とわかる戦争で士気があがるはずもありません。


そのような戦争に命を捧げようなどという兵士は少ないでしょう。今どき、督戦隊を送り込んで、無理やりロシア兵を突撃させるわけにもいかないでしょう。一体プーチンは何を考えているのでしょうか、理解に苦しみます。

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2022年2月26日土曜日

露、ウクライナ抵抗で勢い減退か 停戦交渉の調整進む―【私の論評】ロシア軍のまさかの敗退もありうる(゚д゚)!

露、ウクライナ抵抗で勢い減退か 停戦交渉の調整進む

25日、軍用車両に乗ったウクライナ軍の兵士たち=キエフ

 ロシアによるウクライナ侵攻は25日、ウクライナの首都キエフを含む各都市へのロシア軍の攻撃が続いた。ウクライナ側が抵抗し、ロシア側に一定の損害を強いているとみられる。ウクライナ沖で日本企業所有の可能性がある貨物船が戦闘に巻き込まれ、損傷したとの情報もある。双方が同日、実施への意欲を表明した停戦交渉に向けた調整も進められている。

 ウクライナ大統領府は25日夜(日本時間26日未明)、「東部ハリコフや北東部スムイ、南部方面で激しい戦闘が続いている」と発表。同国軍高官は25日、ロシア軍の戦車80台やヘリ7機、航空機10機などに損害を与えたと発表した。

 米CNNによると、ゼレンスキー大統領は26日未明のビデオ声明で「敵がキエフに迫っている」とし、「今夜は困難な夜になる」と述べた。キエフ郊外では数回の爆発音が起きた。

 一方、露国防省は25日、東部で部隊が前進したほか、スムイと北部コノトプを包囲したと発表。ウクライナ軍の211施設を無力化したとした。同省はまた、露揚陸部隊が同日夕、戦闘せずに南東部メリトポリに入ったと発表した。

 プーチン氏は同日の政府会議で「ウクライナ軍は『ネオナチ』(ゼレンスキー政権から)権力を奪取すべきだ」と述べた。

 ウクライナメディアによると、キエフには先遣隊とみられるロシア兵が侵入したが撃退された。また、25日までに子供2人を含むウクライナの民間人38人が死亡したとみられるとした。

 米欧はロシアがキエフを陥落させ、ウクライナの体制転覆を狙っているとみている。ただ、ロイター通信によると、米当局者は25日、「ロシア軍は予想以上の抵抗に遭い、進軍速度が下がった」と指摘。ロシアの作戦が想定通りに進んでいない可能性を示しました。

 一方、ロイターは25日、ウクライナ側の発表として、南部オデッサ州の港付近で同日、パナマ船籍の貨物船「ナムラ・クイーン」がロシア軍のミサイルで損傷したと伝えた。船舶情報サイトによると、同船は愛媛県今治市の会社が所有。ウクライナ側は「危機的状況ではない」としているが、負傷者などは不明。

 双方が25日に意欲を表明した停戦交渉について、ウクライナ高官は「時期と場所を調整中だ」と発表。露外務省も調整が行われていることを認めている。

【私の論評】ロシア軍のまさかの敗退もありうる(゚д゚)!

ウクライナ陸軍によると、ロシア軍は戦闘で大きな損失を被った後、北東部の都市コノトプ付近で停止しているとされています。

停止の理由として、「燃料や補給に問題がある」とし、地元の商店でロシア兵による略奪があったことを明らかにした。

郊外には、約40台の焼失したロシア軍の戦車があるとされています。

「燃料や補給に問題」とは、やはりこのブログで指摘してきたように、ロシア軍は兵站を鉄道に頼っているところが大きく、ウクライナとロシアとでは軌道の幅が同じであり、ロシアの鉄道車両はウクライナ国内に乗り入れることができます。

ただし、ロシア側かウクライナ側、あるいは両方の鉄道線路が破壊されて、物資の輸送が滞っていることも考えられます。

ウクライナは、ロシアの脅威に対抗するため、アメリカなど欧米諸国から軍事支援を受けていて、アメリカなどから対戦車ミサイル「ジャベリン」を供与されているほか、トルコから攻撃型無人機「バイラクタル」を購入するなど、装備の近代化を進めています。

「ジャベリン」はアメリカ合衆国でドラゴン対戦車ミサイルの後継として開発された歩兵携行式多目的ミサイルです。ロシア軍の戦車やヘリコプターに対してかなり有効な攻撃をできますが、「バイラクタル」はあまり有効ではないようです。

ジャベリン

バイデン大統領は昨年9月1日、ウクライナのゼレンスキー大統領が米ホワイトハウスを訪れた際、兵器援助を承認していました。

米国によるウクライナへの軍事支援は昨年、約4億5000万ドル規模に達しました。ロシアがウクライナ・クリミア半島を強制併合して以降の援助総額は25億ドル以上に上りました。

米軍はウクライナ軍の訓練任務にも従事。昨年はウクライナ支援の多国間の共同訓練計画に従い米フロリダ州の州兵を派遣しました。米国防総省の声明によると、欧州の米特殊作戦軍はウクライナ特殊部隊の訓練や助言で大きな役割を果たしてもいます。ウクライナ内で活動する米特殊部隊の人数は作戦遂行上の機密事項として明かしていません。

また、2014年にロシアに、ウクライナ南部のクリミア半島が一方的に併合された後、ウクライナ政府は、徴兵制を復活させています。

国防省は、2014年に「領土防衛部隊」を結成し、市民に対して銃など武器の扱い方などの講習を行っていて、非常時には最大12万人が編成される見通しで、軍の指揮下に置かれることになります。

先月には「国家レジスタンス基本法」が施行され、ロシア軍が侵攻してきた場合、国民が一丸となって抵抗するとしています。

米国防総省のジョン・カービー報道官は25日の記者会見で「ロシア軍は停滞しており、計画どおり(作戦が)進展していない兆候がある」とし、露軍がウクライナ軍の反撃を受けて勢いを失っているとの分析を示しました。

国防総省高官も25日、「露軍はまだ人口密集地を掌握しておらず、特にキエフでは過去24時間で勢いが鈍っている。制空権もまだ獲得していない」との見解を示した。ウクライナ軍の防空システムも「空爆で弱体化したが、依然、機能している」と説明。その上で、侵攻作戦に投じられている部隊は周辺に集結している約15万人の約3分の1にとどまるとして、露軍が今後、兵力を追加投入する可能性があることを示唆しました。

全体の戦況としては、露軍が攻勢を強めている局面が続いている模様です。

露国防省は25日、ウクライナ政府軍と親露派武装集団が戦闘を続ける東部で、24日に侵攻を開始した露軍が政府軍の前線を突破し、20キロ・メートル以上にわたって政府軍を後退させたと発表しました。親露派支配地域に隣接するドネツク州の港湾都市マリウポリ周辺でも25日、親露派が支配地域を広げたと主張。ロシアが併合したクリミア半島と接する南部地域でも、露軍が新たな都市に進軍したとしています。

ただ、ウクライナ軍のフェイスブック投稿によると、これまでの侵攻でロシア兵3500人以上が死亡し、約200人が捕虜になったといいます。未確認情報ですが、ウクライナ軍はさらに、ロシア軍が軍用機14機、軍用ヘリ8機、戦車102台を失ったとしています。

ロシア軍はこれまでのところ、自軍の死傷者について発表していません。

徹底抗戦を呼びかけるウクライナ当局は、有志の市民に約1万8000丁の銃を配布し、火炎瓶の作り方の情報もホームページで提供しました。

軍事アナリストたちは、ウクライナ側の激しい抵抗により、ロシアの進軍速度が減速しているとしています。

ウクライナが予想以上に抵抗し、ロシア軍の勢いが奪われていると、米政府高官はロイター通信に語っています。

戦闘経験がなく、ウクライナの防衛隊への参加を希望する人々が行列する様子が目撃されています。軍隊に参加可能な年齢制限は撤廃されました。

英国防情報当局トップのジム・ホッケンハル中将は、ロシア軍は首都に向かって前進を続けているが、ウクライナ軍が「主要都市の防衛に重点を置き、強い抵抗を続けている」と述べました。

ゼレンスキー大統領は26日、新たな動画を公開し「インターネット上では私が軍に武器を捨てるよう呼びかけ、避難しているというような多くの偽の情報も出回っている。私はここにいるし、武器は捨てない。私たちは自分の国を守る」と強調しました。


そのうえで「私たちにとっての武器は私たちの真実だ。真実とは、私たちの土地であり、国であり、私たちの子どもたちであり、私たちはこれらすべてを守る」と述べ、ウクライナの領土と国民を守り抜こうと結束を呼びかけました。

今後の展開について、モスクワを拠点とする軍事アナリストのパベル・フェルゲンハウアー氏は、プーチン氏の「非武装化」を目指すとした発言に最も端的に表れていると指摘、フランスよりも大きな国土を持つウクライナの占領ではないとの見方を示した。

米シンクタンク、ジェームズタウン財団のベテラン軍事アナリストでもあるフェルゲンハウアー氏は「つまり、ウクライナの軍事力は完全に解体され、兵器は一掃され、ウクライナをロシアが全く抵抗を受けることなく好きなように扱える緩衝地帯へと転換することだ」と分析し、「プーチン氏は非常に明確だ。領土的な問題は副次的なものだ」と述べました。

これはまた、ドンバス地方を中心にウクライナ軍を標的にするということでもあり、ロシアに長期的な軍事作戦を継続できる余裕はなく、「電撃戦になるだろう」との見解をフェルゲンハウアー氏は示しました。

この見方に、米欧州陸軍の司令官を務めていたベン・ホッジス退役中将も同調しています。人口280万人のキエフを占領しようと思えば、ロシアは数カ月の市街戦と利用可能な人的資源の全てを投入する必要があると指摘。米国の経験から、ホテル程度の建物一つを占領するだけでも、一個大隊または700-800人が必要だといいます。

ホッジス氏は18-20日に開かれたミュンヘン安全保障会議に際し、ロシア軍のキエフ占領が「実現可能だとは全く思えない」と述べていました。AFPによると、ウクライナ軍は26日、首都キエフの勝利通り(Victory Avenue)で1部隊がロシア軍の攻撃を受けたが、撃退したと発表しています。

26日、首都キエフの近くでロシア軍の車列が破壊されたとされる

「電撃戦」がロシアの戦略ならば、ロシアの進軍速度が減速していることはこの電撃戦がうまくいっていない証拠だと思われます。

今後の推移をみてみないとまだ確定的なことはいえませんが、少なくともロシアが想定しているとみられる「電撃作戦」は成功しないかもしれないです。そうなると、今後ウクライナへの支援も増強されることが予想されるためロシアにはますます不利になります。

「電撃作戦」が成功せず、ロシアの軍事目的が達せられない場合、ロシアは撤退をはじめるかもしれません。これに対して、ロシア側は何らかの都合の良い説明をするかもしれませんが、ウクライナや西側諸国はロシア敗北と、表明するでしょう。

日本の報道などでは、ロシア勝利が当然のような論調ですが、未だそうではない可能性も十分に残されていると私は思います。ロシア軍の能力、ロシアの経済力からいっても、ウクライナ全土を短期間でも占拠するのは難しいし、ロシアもそれは望んでいないでしょう。

ロシアの電撃作戦が成功しなかった場合、次の段階では、ウクライナが勝利宣言をする可能性も十分に残されていると思います。この場合、ロシアがルガンスク州、ドネツク州で侵攻以外にも、攻勢に出たことが裏目に出るかもしれません。

ロシアがそうした挙に出たために、世界中の人々がロシアはウクライナ全土を攻撃して全土を占拠しようとしたとみなし、ロシアがウクライナの現政権を転覆させることもなく軍を引き上げた場合、ロシアの敗北とみなすでしょう。

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2022年2月25日金曜日

蔡総統「台湾とウクライナの状況は本質的に異なる」―【私の論評】日本が普通の国になれば、世界は今より平和になる(゚д゚)!

蔡総統「台湾とウクライナの状況は本質的に異なる」


蔡英文(さいえいぶん)総統は25日、「ロシアによるウクライナへの主権侵害を厳しく非難する」と述べ、台湾として国際社会のロシアに対する経済制裁に参加する方針を示した。また、「台湾海峡の状況とウクライナの状況は本質的に異なる」と強調した。

蔡総統は南部・台南市の成功大学で開かれた高機能試験水槽の拡張工事起工式に出席し、あいさつした。試験水槽は船艦の開発に用いるもので、蔡政権が推進する艦船の国産計画において大きな役割を果たすことが期待される。

蔡総統は、台湾には台湾海峡の険しさや戦略地政学上の地位があるだけでなく、本土を守る国軍の意志や戦力も向上し続けているとし、地域の安全に対する注視と努力によって、台湾の安全を守る強い自信をつけていると述べた。また、外部勢力と現地の協力者がウクライナ危機に乗じて恐怖をあおる誤情報を操り、台湾社会の人々の士気に影響を与えるのを避けるため、認知作戦への防衛を強化するよう呼び掛けた。

工事では、長さ165メートル、深さ4メートル、幅8メートルの成功大学えい航水槽を長さ285メートル、深さ5.5メートル、幅8メートルに拡張する。完成すれば、大学の模型船試験水槽としては世界で2番目の大きさになる。

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蔡英文相当が語るように、台湾とウクライナでは、地政学的にみても全く異なります。ロシアがウクライナに侵攻したように、中国が台湾に侵攻できるかといえば、それほど容易なことではありません。

まずは、ウクライナとロシアが陸続きであるという点が異なります。中国と台湾は海洋で隔てられています。

このブログでも、中国による台湾侵攻は、簡単にいうと海上輸送力の脆弱さによる不可能であることを何度か掲載しています。そもそも中国が台湾に侵攻するとすれば、台湾を併合するためであり、台湾を破壊することが目的ではありません。併合するのは、実はかなり難しいです。

それについては、このブログで何度か掲載していますが、以下の記事を参考にしています。これは、非常に理解しやすいので是非ご覧になってください。
【兵力想定】中国最大の「台湾上陸作戦」

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、中華民国外交部(日本の外務省に相当)が25日、ロシアを非難すると共に国際社会の対ロシア経済制裁に加わるとするプレスリリースを発表しました。内容は以下のとおりです。
中華民国台湾政府は、ロシアが国連憲章に違反して戦争を発動し、武力を以てウクライナに侵攻、ウクライナの領土を無理やり占拠したことを強く非難する。ロシアの行為は地域及び全世界の平和と安定を破壊するのみならず、ルールに基づいた国際秩序ならびに各国の主権と領土の一体性を維持・保障する国際法の体系に対する最も深刻な脅威と挑戦になるものである。

中華民国台湾は国際社会における民主主義陣営の一員として、民主・自由・法治・人権といった普遍的かつ核心的な価値を固く守っており、ロシアが外交交渉という平和的手段で争いを解決せず、「力に任せて弱者を攻撃する」武力での威嚇手段を選択したことに遺憾の意を表する。ロシアにウクライナへの軍事侵略を止めるよう促すため、また各方の平和的な対話を速やかに再開させるため、中華民国台湾政府は国際社会の対ロシア経済制裁に加わることを宣言する。

中華民国台湾政府はウクライナの主権の独立と領土の一体性に対する尊重を改めて表明すると共にそれを呼びかける。また、武力や脅迫といった方式で一方的に現状を改変することに反対し、各方が国際法の枠組みの下、平和的かつ理性的な対話と交渉を通じて立場の違いを解決することを支持する。我が国はこれからも米国など理念の近い国々と緊密に協調し、適切に対応していくことで、ウクライナが早期に戦禍から抜け出せるよう助け、地域と全世界の平和と安定を回復させる。

日本も、これくらいの声明を出してほしいものです。 

さて、ロシアによるウクライナ侵攻ですが、日本の報道をみていると、もうすでに決着がついて、ウクライナはロシアに負けてしまうだろうというような報道ぶりです。

私は、今でもロシアがウクライナに全面的に侵攻し、全土を一時的にでも制圧することはできないのではないかと見ています。それは、このブログにも掲載したように、ロシアは兵站の大きな部分を鉄道に頼っており、脆弱であることが最大の理由です。

そのため、国境付近ではロシアはかなり高いパフォーマンスを発揮できるものの、地上軍が奥地に進撃するにつれて、食糧・水、弾薬の補給が難しくなりパフォーマンスが落ちることになるからです。そうして、当然のことながらウクライナの奥地ではウクライナ側も防御をかためているでしょうから、地上軍が奥地にまで侵攻すれば、人的被害が増えるということもあります。

ロシア鉄道軍

ウクライナ各地で、ミサイル攻撃などが始まっているようですが、多数の地上軍が進撃しているわけではありません。破壊と占拠とはまた別問題であることを考えていただきたいです。

ウクライナを占拠するためには、多くの軍隊を派遣して、それを長期間にわたって、駐留させる必要があります。それは、現在のロシア軍ではかなり難しいです。

そもそも、現状のロシア軍は最盛期と比較するとかなり弱体化されています。その原因は、はっきりしています。現在ロシアのGDPは韓国を若干下回る程度あり、一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回る状況です。無論、旧ソ連の核兵器と軍事技術を継承するロシアは、侮ることはできませんが、それにしてもできることは限られてきます。

ロシア軍は、海軍では多くの艦艇を退役させ、売れる艦は中国に売却しました。例えば、未完成の空母「ワリャーグ」、ソブレメンヌイ級駆逐艦、キロ級潜水艦などです。

空軍では、爆撃機の解体を行い、中国の第一線で使用されている「Su-27」戦闘機も売却しました。

地上軍では、多くの師団(1万人規模の部隊)が解体されました。ミリタリー•バランスによれば、兵員数も、ソ連邦崩壊以前とその後では、半数以下までに削減されました。

極東ロシア地上軍は崩壊前では、40数個師団あったものが、現在では、半数以下の12個旅団(師団の半分から2/3の規模)と2個師団合計8万人です。

これは、4分の1以下になったということになります。軍の地位も下がり、予算も多く削減され、兵員の士気は下がっています。

この状況を見る限りでは、私はNATOが支援し、ウクライナ軍が徹底抗戦すれば、全面侵攻の可能性はかなり低くなると思います。

ロシア軍がウクライナ全土あるいはキエフに全面侵攻を行えば、ロシア軍の兵士は多数負傷するでしょう。その場合、コロナの陽性が1日に20万人も発生しているなど、多くの問題を抱える国内事情がある中で、手厚い医療手当ができるでしょうか。おそらく満足に手当はできないでしょう。

戦争になれば、大統領は兵士に命を懸けて戦えと言います。スペツナツ等の特殊部隊は、勇敢に戦うでしょうが、戦車や歩兵戦闘車で戦う兵士は、生還したいがために、勇敢に突進する行動はとらないでしょう。

このようなロシアの攻撃の主体は、ウクライナ軍の攻撃に晒されない火砲やロケット砲、短距離ミサイル(イスカンデル)を使った戦法になるでしょう。戦闘の詳細までは入ってきていませんが、地上軍同士の大きな激突の報はまだほとんどなく、現状ではミサイル攻撃などが多用されているようで、これに近い経過を辿っているようです。

プーチン大統領は、中国と北朝鮮を除く全世界を敵に回しました。国民をも敵に回すことになるかもしれません。

旧ソ連時代に、旧ソ連は衛星国と言われる国々に不当な政府を立ち上げさせ、その政府を承認し、軍事進攻し、反対勢力を軍事力で潰してきました。

また、プーチンのロシアが、旧ソ連だったバルト3国や東欧諸国に対して、再び侵攻するのではないかという恐怖が高まり、東欧の人々は、ソ連に併合された辛い暗黒の時代を思い出すことになりました。

暗黒の時代の暴挙を、プーチンはこの21世紀になっても実行しているのです。この蛮行により、ロシアは世界の敵になりました。私は、すでにプーチンの終わりが始まったと思っています。

日本は、現在、北方4島を不法に占拠され、不法にウクライナに侵攻しているロシアの隣にいることを忘れるべきではありません。

また、ロシアの侵攻が中国の台湾に対する侵攻作戦の手本とならないように、あらゆる手をつくすべきです。日本には、この暴挙に反対しない中国が隣国であることも忘れるべきではありません。

非難や制裁をもってしてもロシアの暴挙を止めらませんでした。我が国には、ロシアだけではなく、中国や北朝鮮の脅威もあります。

我が国は、現在の憲法のままで、軍事力で他国を踏み潰す行為を止められるのでしょうか。早急に議論し、準備すべきです。

憲法改正以外にも、できることもあります。先日もこのブログに掲載したように、我が国が、現在休止しているすべての原発を稼働させれば、日本のエネルギー問題はすぐに解消し、余剰の石油やガスをEUに提供することができます。これはロシアに対する制裁にもなります。

日本が普通の国になれば世界は今より平和になる

憲法を改正しなくても、防衛費の増加はできます。憲法や法律によって、防衛費が制限されているわけではありません。ただの慣例に過ぎません。これは、早急に検討すべきです。

防衛費を増やせば、今や一人あたりのGDPが韓国を大幅に下回るロシアの軍事力をも凌駕できる可能性はありますし、そもそも、そのようなことを実行していれば、ロシアは東方の脅威があることから、ウクライナに侵攻することなど考えなかったかもしれません。

日本が普通の国になりさえすれば、アジアでの現状の軍事バランスは一挙に崩れ、日本にとってかなり有利になります。中国も台湾を傘下に収めようなどという馬鹿真似は考えなくなるでしょう。

はっきりいいます。日本がいつまでもグダグダしていれば、世界はこれからも戦争が絶えなくなります。日本が普通の国になりさえすれば、世界は今よりももっと平和になります。そうして、これが、中露、北朝鮮そうして、もしかすると韓国が最も恐れることです。

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