2018年9月4日火曜日

米中貿易戦争はアメリカ絶対有利…感じ取った“老獪”マハティール首相「中国突き放し」― 【私の論評】マハティールは貿易戦争を開始したのは、元々中国だということを見抜いている(゚д゚)!

米中貿易戦争はアメリカ絶対有利…感じ取った“老獪”マハティール首相「中国突き放し」 

高橋洋一 日本の解き方
8月20日、北京の人民大会堂で硬い表情を浮かべる
中国の李克強首相(右)とマレーシアのマハティール首相

 90歳を超えて首相に返り咲いたマレーシアのマハティール首相が、中国の「一帯一路」戦略の高速鉄道建設中止や、消費税廃止などの政策を打ち出している。

 8月下旬にマハティール首相が中国を訪問したことに対して、中国を牽制(けんせい)するものだとの見方がある一方、両国は関係修復をし「一帯一路」でも協力するという報道もあった。

 前政権が中国政府系企業と契約した「東海岸鉄道」など個別プロジェクトを中止することは明確だ。マハティール首相の訪中時の報道が分かれているのは、個別プロジェクトの中止に力点を置くか、「一帯一路」全体ヘ協力すると言ったことを重視するかの差であろう。

 筆者としては、マスコミ報道の前者と後者の差について、中国経済の今後の見方に関係していることが興味深い。

 前者は、それぞれ中国経済の拡張が頭打ちになっていることを示唆しているが、後者は相変わらず中国経済が発展することを前提にしている。

 これは、米中貿易戦争をどのように報道するかにも関わっている。前者は、トランプ政権が仕掛けた貿易戦争によって中国が追い込まれるというシナリオであり、後者はトランプ政権は保護主義であり、WTO(世界貿易機関)ルールに反する不公正なものだとトランプ政権を糾弾する。

 たしかに、モノだけをみればトランプ政権の関税引き上げ戦略は自由貿易に反するが、筆者は、トランプ政権のやり方は政治的にかなり賢い戦法だと思っている。

 まず、トランプ政権は単純に米中間の経常赤字だけを問題にしていない。米国が対中経常赤字になると、複式簿記の原理で対中資本黒字になりやすい。つまり、米国が対中経常赤字ということは、それだけ中国からの対米投資になっているというわけだ。

 トランプ政権は、この点について中国は自由に米国に投資して、その中で知的財産権を盗み、米国に損害を与えているという論法だ。これに対抗するためには、中国は対米経常黒字を少なくするか、さもなければ、米国にも対中経常黒字の可能性を残し、中国が資本取引を自由化するしかない。

 前者は中国経済の鈍化になるし、後者は本コラムで再三繰り返しているように、中国の一党独裁・共産主義体制の崩壊にもつながりうる。つまり、米国は対中貿易戦争では負けないような手を打ってきているのだ。

 米国の対中の仕掛けをつぶさにみると、中国経済の先行きには楽観的になれない。おそらくマハティール首相もそれを感じ取って、前政権よりやや突き放したスタンスなのだろう。

 もちろん、マハティール首相は老獪(ろうかい)な政治家なので、中国にも一定の配慮を見せている。そして、今回の米中貿易戦争の際に、前政権の対中スタンスを少し変更し、消費税廃止で内需振興に転じたのは、政治的に巧妙な判断だといえる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】マハティールは貿易戦争を開始したのは、元々中国だということを見抜いている(゚д゚)!

米中間での貿易戦争を始めたのはトランプ米大統領であるかのように、一般に誤解があるようですが、これは正しくはありません。なぜなから、トランプ氏が大統領に就任するかなり前から、中国は事実上米国に対して貿易戦争を仕掛けていました。

自由貿易主義者や国際主義者でさえも、米国企業に重要なテクノロジーの移転を強要する、中国市場へのアクセスを制限するなどの中国の略奪的な通商慣行は、貿易相手国と貿易システムの両方を阻害するとの認識で一致することでしょう。

トランプ氏による中国たたきには、法律、政治、経済的な観点からみて有力な根拠があります。

自由貿易の典型的な比較優位論では、各国はそれぞれ比較的な優位性を持つ分野を専門とし、コストを引き下げ、全員の収入を増やすと見込まれています。仮に中国が米国への鉄鋼輸出に補助金を与えれば、理論的には米国はなお恩恵を受けます。

米国の消費者や鉄鋼を原料とする産業のコストを低減するほか、鉄鋼の雇用は一部消失する一方で、一段と生産的な雇用が取って代わるためです。

ところが、1980年代頃から、エコノミストはこの比較優位では、商用機や半導体、ソフトウエアなどの成功を説明できないことに気付き始めましたた。

これらの産業では、競合の参入が難しいです。巨額の研究・開発(R&D)費用や、すでに確立した技術標準、規模に関する収穫てい増(売れば売るほどコストは下がるという規模の原理)、ネットワーク効果(顧客の製品利用が増えるほど重要性を増す)がその理由です。

このような産業では、少数の企業が他社を犠牲にして、賃金や利益(エコノミストはこれを「レント(rent)」と呼ぶ)の大部分を握る可能性があります。中国は2025年までに、これらの産業の多くで、このような支配を手に入れることを目指しています。

「中国はわれわれの利益の一部を阻害する、または奪おうとしている。そのため、われわれの暮らしは相対的に悪化する一方、中国の暮らしは上向く」。こう指摘するのは「貿易を巡る衝突:米国の通商政策の歴史(仮題)」の著者、ダグラス・アーウィン氏です。

同氏は、輸入鉄鋼・アルミニウム関税とは違い、「エコノミストの多くは、トランプ氏の対中制裁措置への批判を控えるだろう。中国が過去数年にわたり、知的財産権を侵害し、技術移転を強要してきたことを誰も擁護することはできない」と述べています。

ダグラス・アーウィン氏

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2001年当時、支持派の多くは、国内企業を優先し他国の企業に打撃を与えることを禁じた国際規定に中国が従うだろうと考えていました。ところが、中国はWTOでは容易には解決できないようなやり方で、自国の企業を優遇しています。

情報技術・革新財団(ITIF)のロバート・アトキンソン理事長は、WTO訴訟では通常、打撃を受けた企業からの証拠提示が義務づけられます。ところが外資系企業の多くは、中国での不当な扱いを訴えることに消極的です。

提訴すれば、中国政府から、反トラストや不正、スパイ、消費者への不当な扱いなどの疑いで調査を受けるといった報復措置のほか、政府系企業に販売を奪われることを恐れているためです。

力の均衡、または独立した司法制度がない中で、「中国当局者による恣意的で、気まぐれな重商主義政策の実施に歯止めをかけるような法の支配はない」といいます。アトキンソン氏は1年前、他の2人と共同で、中国を厳しく批判した著作本を執筆しました。

また中国の制度は極めて不透明なため、WTOで定められた義務について、中国に責任を負わせることは困難です。アトキンソン氏は、差別的な措置の多くは明らかになっていないか、中国語のみでしか発表されていないと指摘しています。外部からの圧力を受けて、中央政府が一部の差別的な措置を撤廃しても、省や地方のレベルで、こうした措置が再び講じられるというのです。

ロバート・アトキンソン氏

トランプ氏の鉄鋼・アルミ関税は、中国とともに、法律を順守するカナダや西欧諸国にも打撃を与えるため、大きな批判を集めました。

対照的に、トランプ氏が抱く中国への怒りは広く共有されています。エマニュエル・マクロン仏大統領は、中国企業による買収を禁止する、統一の欧州連合(EU)政策を求めています。

ピーター・ナバロ国家通商会議委員長は22日、記者団に「中国と貿易を行う国はすべてこの問題に直面する」と指摘。「われわれはこれまでの過程の一環として、米国に同調する同盟国や貿易相手国との連携を探ってきた」と述べています。

日本は何十年も、現在の中国のように、外資への市場アクセス制限や直接的な産業支援の提供、欧米企業に技術のライセンス供与を迫ることで、国内企業を優遇しようとしてきました。

日本企業は自動車、電子機器、コンピューターなどの分野で追いついきましたが、米国はソフトウエアやサービスなど、新たな産業で大きく飛躍しました。日本経済はその後1992年、長い停滞期に入り、今でも完全には抜け出せていません。一部では、中国に関する現在のパニックは、日本のケースと同様に見当違いだとの指摘もあります。

しかし日本と中国は根本的に異なります。日本は米国の軍事同盟国であり、そのため貿易に関して、米国の圧力に対し敏感です。中国は戦略地政学上のライバルであり、民事・軍事両面で米国の機密を追い求めており、時には盗もうとします。日本は民主主義国家で透明であるのに対し、中国は独裁国家で不透明です。

規模も違います。前出のアーウィン氏は、ロナルド・レーガン元大統領が1987年、日本は米半導体企業に市場を開放しなかったとして、3億ドル相当の日本からの輸入品に100%の関税を課した点を指摘します。トランプ政権の当局者が中国の貿易慣行により500億ドル規模の損害を受けたとしているのに比べて、はるかに小さいです。

経済戦略研究所のクライド・プレストウィッツ所長は、「新作の演劇やミュージカルはブロードウェイで上演される前に、まずはフィラデルフィアやボストンなどで試されることが多い」とし、「日本はフィラデルフィアだった。中国は、ブロードウェイにあたる」と話しています。

日本は政治・戦略面で米国との関係を重視しているため、米国に対する報復措置には後ろ向きでした。ところが、中国は習近平国家主席の下で、一段と国家主義的で敵対的な姿勢を強めており、日本よりも報復措置に前向きです。

しかしながらこれは、貿易戦争による巻き添え被害、それ故にトランプ氏の戦略に伴うリスクが一段と大きいことを示しています。広範にわたるトランプ氏の行動により、米国の消費者、サプライチェーン(供給網)、輸出業者に対する潜在的な打撃は増大するでしょう。

アーウィン氏はトランプ氏の戦略が正しいかどうかは分からないと話しています。中国をWTO提訴する方がより危険の少ない方法かもしれないです。しかし、こう加えました。「何も手を打つべきではないとは、誰も言っていない」

中国による世界に対する貿易戦争には、いずれ世界の誰かが何か対抗措置を打たなければならなかったのです。それが、たまたまトランプ大統領だったということです。

中国への高関税措置に署名したトランプ大統領

このブログでも、以前から述べているように、現中国は民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされておらず、そもそも自由貿易などできる体制にはなっていないのです。

これらの体制ができていない、発展途上国と、先進国の貿易をすることもありますが、その場合発展途上国の経済規模は小さく、ほとんど問題になることもありません。

しかし、中国の実体は、発展途上国もしくは中進国の集合体(発展途上国的な省の集合体という意味)です。ところが、これらを一つにまとめる中共が、多額の外資を得て、集合体の生産力を増し、内需(先進国では、GDPの60%以上を占める、中国は35%)を拡大するよりも前に、貿易に力を入れたことから、様々な矛盾が発生するようになったのです。

国内でまともな体制ができていない中国が、外国相手の様々な規制や禁止事項のある、自由貿易だけはできるということはあり得ません。

中国が中国の国内と同じような感覚で、貿易をすれば、国内と同じく恣意的でルールなど守らなくなるのが、当然の帰結です。

発展途上国でもあるマレーシアの現マハティール首相がこのあたりのことを見抜いているのは当然のことです。

日本を訪問中だった、マハティール首相は6月11日、環太平洋連携協定(TPP)のような貿易協定には反対ではないが、再交渉する必要があるとの見解を明らかにしました。同国など成長中の国々には、異なる貿易保護が必要だと主張しました。米国や中国といった大国と公平に競争できるよう、国の成長段階に応じてそれぞれ異なるルールが必要と強調しました。

発展途上国の首相として、これから経済発展をしていこうとするマハティール首相にとっては、実体は発展途上国と中進国の集合体である中国の考えることは良く理解できるでしょう。

国の産業を保護しつつ、貿易も発展させたいところですが、これは二律背反的であり、国の産業を保護したいなら、なかなか自由貿易はできないです。ところが、保護貿易的体質のまま、中国は貿易を拡大させ、世界中の国々に対して結果として、貿易戦争を挑んでしまったのです。

最近のマレーシアは、経済成長率が低下していました。その主因が個人消費の減少でした。その「元凶」は、ナジブ前政権が2015年に導入した物品サービス税(消費税)です。マハティール氏は、6月1日に税率を0%にすることで事実上これを廃止し、早速公約を実現しました。

一方金融政策は、マレーシア中銀は、今年1月25日、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げ3.25%としました。利上げは3年半ぶり。中銀は、経済が着実な成長軌道を進む中で「金融緩和の程度を正常化することを決定した」と発表しました。その後は、再び金利を上げることなく、緩和的政策を継続しています。

マハティール氏は中国とは対照的に、まずは内需を拡大することが正しいやり方であると判断したのでしょう。

今後もマレーシアはしばらくは保護主義的な政策をとりつつまずは内需を拡大させていくことでしょう。

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2018年9月3日月曜日

ウイグル問題が米中の新しい火種に 200万人拘束情報も―【私の論評】米中経済冷戦は悪魔中共の現体制が崩れるまで継続すべき(゚д゚)!

ウイグル問題が米中の新しい火種に 200万人拘束情報も

日本で講演をしち世界ウイグル会議のドルクン・イサ代表
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

中国の新疆ウイグル自治区では「中国からの独立」を叫ぶ少数民族のイスラム教徒ら200万人が身柄を拘束されており、自治区内に巨大な収容所が数十カ所も建設されていることが明らかになった。収容所建設は数年前から始まっており、収監者は自治区の全人口である800万人のうちの25%にも達している。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が、ドイツのミュンヘンに拠点を置く世界ウイグル会議のドルクン・イサ代表の話として報じた。

 イサ氏は収容者数について、「今年初めには100万人ほどが収容所にいると聞いた。釈放された人がいるという話を聞いていない。いったん収監されたら、一生出られない。半年以上経ったいまも連行は続いており、いまや200万人以上だが、正確な数字は私たちにも分からない」と答えた。

 同紙によると、同自治区では、中国当局による「反テロ対策」により両親と親戚が拘束され、子供が孤児状態になったケースが何千件にも上っている。

 正確な収容所数は不明だが、米ワシントン大学に留学し、修士課程を修了した中国人留学生の張肖恩氏が米国の衛星監視システムで撮影した同自治区の画像を解析した結果、いまのところ21カ所の収容施設を発見している。そして、いまも建設中の収容施設が数カ所分かっているという。

新疆ウイグル自治区の中部にあるコルラ市の近辺にある、中国の再教育施設をとらえた衛星画像。
この施設を訪れたことがあるウイグル人亡命者が、GPS座標を提供してくれた。

 張氏は北京大学卒業後、ワシントン大に留学後、いまはカナダのブリティッシュコロンビア大学の博士課程で人権問題を解決するため、法学を専門に研究している。

 張氏は1989年6月の天安門事件に関するドキュメンタリー映画を観て、中国共産党政権による人権無視の実態を痛感。同自治区での独立運動やチベット問題などに関心を持ち、法律の知識が中国の人権問題に立ち向かう力になると考え、研究を続けている。

 張氏が今年3月、中国版ツィッター「微博(ウェイボ)」で、反共産党の論文を発表すると、数時間後には中国内在住の両親が警察に呼び出されるなどの圧力が加えられたという。

 中国外務省は、6年間北京に駐在してウイグル問題などを報じてきた、米ニュースサイト「バズフィード」のメーガ・ラジャゴパラン支局長の記者ビザの更新を拒否。同支局長は国外退去を余儀なくされている。

メーガ・ラジャゴパラン支局長

 これに対して、在中国外国人記者協会は同氏へのビザ更新不許可について、「遺憾で受け入れられない」との声明文を発表するとともに、中国外務省に対して説明するよう求めている。また、北京の米国大使館も「中国に在住する記者の活動が著しく制限され続けている」として懸念を表明。

 これを受けて中国外務省報道官は8月下旬の記者会見で、「内政に干渉してはならない」と強く反発するなど、ウイグル問題は貿易問題に次いで、米中間の新たな外交問題に発展しつつあるようだ。

【私の論評】米中経済冷戦は悪魔中共の現体制が崩れるまで継続すべき(゚д゚)!

このブログでも何度か掲載してきたように、新疆ウィグル自治区は、元々は東トルキスタンという独立国であり、現在の中華人民共和国が建国した後に侵略されたものです。

トルコ・イスタンブル在住の亡命ウイグル人組織によって運営されているインターネットテレビ『イステクラルTV』は今年2月14日、「信頼できる現地の公安筋から入手した」として、新疆ウイグル自治区の強制収容施設に収監されているウイグル人やカザフ人の数を公表しました。

この表は県単位で収容者数が記されており、ウルムチ市、ホタン市、イーニン(グルジャ)市など、市単位での数値が欠けています。中国の行政単位としては県が市より下となります。おそらく、大きな行政単位の中心市レベルと末端の県レベルでは管轄部署が異なり、このデータをリークした公安警察は、県レベルのデータ管理者だったのでしょう。

漏洩した拘束者数がいつの段階のものかはわからないですが、収容が大々的に始まった17年に作成されたと考えて間違いないです。データは1212万人いるウイグル人口の71%をカバーしているが、県レベル以外のデータが明らかになれば、収監者数はおそらくさらに増えることでしょう。

89万人を超す拘束者数は新疆全域のデータではないとはいえ、この数値からは多くを読み解くことができます。色で囲ったアクス地区、カシュガル地区、ホタン地区はいずれも住民に占めるウイグル人の割合が極めて高い土地で、データ上で明らかになった収監者数の約8割は、こうしたウイグル人密集地域から連れ去られています(アクス地区合計12万6306人、カシュガル地区合計24万8747人、ホタン地区合計31万5755人、ウイグル人密集地域合計69万808人)。


とてつもない数字なので、言葉を失ってしまいます。

このような中国の非道に対して、米国議員団は怒りを露わにし、トランプ大統領に対して制裁を要求しています。

米議会の超党派議員団は29日、中国の新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル人の強制収容に関わっているとして、中国当局者らに制裁を科すようドナルド・トランプ政権に要求しました。フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員が明らかにしました。

マルコ・ルビオ上院議員

米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、議員団はマイク・ポンペオ国務長官とスティーブ・ムニューシン財務長官に宛てた書簡の中で、中国当局者7人と監視装置を製造する2社に制裁を科すよう求めましたた。

ルビオ議員はツイッターで、「私と超党派議員16人から成る議員団は本日、新疆ウイグル自治区の収容施設にイスラム教徒を大量収容した中国当局者らの資産を凍結し、同当局者らの入国を禁止するためにグローバル・マグニツキー法を利用するよう大統領に要求した」と明らかにしました。

ウイグル人の女性 Mahire Emet / Mayire Ametjan ( Chinese:马 依 热 ・ 艾 买 提 江)  
ダンサー 女優 歌手 1987年5月24日生まれ 身長173cm

イスラム教徒を中心とする100万人近いウイグル人を収容施設で拘束しているとの疑惑について中国当局は真っ向から否定しており、中国共産党幹部は今月13日、ジュネーブで行われた国連の自由権規約委員会でウイグル自治区における厳しい治安対策は過激派やテロリストとの戦いに不可欠であり、特定の民族を対象にしたものでも宗教の自由を制限するものでもないと主張しました。

また中国政府はこうした収容施設に関する報道について「全くの事実無根」と断じており、施設は未成年犯罪者の社会復帰支援を目的とした「教育・訓練センター」だと主張しています。

しかし、複数の非政府組織(NGO)や中国の専門家たちは施設の実態はかなりひどいものとみており、政治的・文化的な教化が大規模に実施されていることを示す元被収容者の証言や公式文書もあるといいます。

フィナンシャル・タイムス7月11日付によると、新疆ウイグル自治区では、中国当局による「反テロ対策」により両親と親せきが拘束され、子供が孤児状態になったケースが、何千例もあるそうです。

とんでもないの一言につきます。このようなことをする悪魔中共と、世界の他の国々とは、ごく一部の例外的な国を除いて、もはや価値観を共有することは不可能でしょう。米中冷戦は中国の現体制が崩壊するまで継続すべきです。日本も他の国々も協調して、中共を追い詰めるべきです。

日本もそうすべきです。それにしても、日本の左派・左翼はポリコレなどで、「人権!人権!」と言うにもかかわらず、中共のこととなると口をつぐんでしまい誰も何もいいません。本当に不思議です。

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2018年9月2日日曜日

種子法廃止に反対している人たちが、誤解しているかもしれないことむしろメリットのほうが多い可能性も―【私の論評】4月に種子法が廃止されて以来何も不都合は起こっていないし、起こるはずもない(゚д゚)!。

種子法廃止に反対している人たちが、誤解しているかもしれないことむしろメリットのほうが多い可能性も

ドクターZ

奨励品種はなくらならい

今年4月に廃止された種子法(主要農作物種子法)が、'19年の参院選に影響するのではないかと、にわかに話題になっている。

種子法は1952年、戦後の食糧の安定供給を図るために制定された8条からなる比較的短い法律だ。米・麦・大豆の3種類を対象に、奨励品種の選定や原種の生産に都道府県が責任を持つことが定められた法律である。

これが廃止されると、海外から遺伝子組み換えの種子が流入し、海外に日本の食が乗っ取られるとして、一部の農家からは強い批判がある。ひいては与党支持にも影響が出るのではとされているのだが、政府としては種子法が「役割を終えた」ものとして廃止を決めたわけで、今後はどうなっていくのか。

種子法廃止に反対しているのは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に猛反対していた層とほぼ一致するが、農協などの農業関係者のなかでは冷静な見方をする向きも多い。

まず、彼らが懸念する遺伝子組み換えの種子については、厚労省管轄の食品衛生法の問題で、同法による安全性審査で規制されている。なお種子法が廃止されても、食品衛生法の規制は変わりない。


また、いろいろな食物の種子ビジネスに外資が入ってくるという理屈も不明瞭で、種子法に指定された3種だけでなく、対象外の野菜などの種子でも日本のメーカーのシェアは大きい。

種子法の「奨励品種」とは、たとえば「あきたこまち」のような都道府県でブランド化された作物になるが、たしかに地方としてはこの指定がなくなれば困るかもしれない。だが、じつは種子法廃止とともに、各地方自治体では、種子法と同様な条例や要綱を作った。これで、各地方自治体において奨励品種がなくなることは避けられたのだ。

種子法では、国が地方自治体に奨励品種の義務を課していたが、これからは地方自治体が独自に行うとしている。要するに、奨励品種は、国(中央政府)の仕事から地方自治体(地方政府)の仕事に変わっただけであり、やる主体が政府であることは変わりない。

昔よりも作物の生産量に差が広がった大都市と農業県では、農業への取り組み方が違うのは当たり前のことだ。国主体では、たとえば米の減反など、非効率的な政策しか取ることができないため、むしろ農業従事者のためには種子法廃止のメリットは大きいはずだ。

では、なぜ一部の人が反対するのか。しかも、種子法の廃止だけを強調し、同じ内容の各地方自治体の条例が同時に制定されていることを言わないのは、あまりにバランスを欠いている。

その理由としては、やはり一部でTPP反対論を引きずっている人がいるからだろう。

このときも日本の農業は外資に乗っ取られるとしてきたが、アメリカが抜けたことで枠組みは大きく変わり、反対論者の説得力は失われた。そのタイミングで種子法廃止が俎上に載り、TPPのときとまったく同じ絵を描いたのだ。

だが、これまで述べてきたように、日本の農業を守る枠組みはきちんと維持される。事が事だけに早とちりしている人も多いかもしれないが、正しく事情を理解しておけばその間違いに気づくはずだ。

【私の論評】4月に種子法が廃止されて以来何も不都合は起こっていないし、起こるはずもない(゚д゚)!

日本の食の安全を脅かす種子法廃止がなぜ問題にならないのか、なぜ話題にならないのかと疑念を抱いている方がいます。答えは簡単です。問題では無いからです。なにか陰謀があるからだ、などと言っている人いますが、そんなことはありません。

何の問題も無い些末な事を針小棒大に煽って、アジって自らのビジネスにしている輩が居る。ただそれだけのことです。

 以下にその例をあげます。
日本の農業をぶっ壊す種子法廃止、なぜほとんど話題にならない?
田中優 (MONEY VOICEより 2018年2月25日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
ならば「安全な種から育てた食品を選ぼう」と思ったとしても、主要農産物の種を守ってきた「主要農作物種子法」が2018年の今年から廃止されて、種は入手が困難になっていく。種は遺伝子組み換えのものに入れ替わり、それから育てた作物しか選べなくなる。
一見すると私たちに関係なさそうな「主要農産物種子法の廃止」が、私たちの選択の余地をなくし、健康を維持できない可能性が高まるのだ。
この記事の内容は、本当に酷いです。冒頭からデマ全開です。種子法が廃止されても種が遺伝子組み換えのものに入れ替わる事はありません。

種子法は元々別に遺伝子組換え作物を規制しているわけではないので、種子法が廃止されたからといって、種が遺伝子組換えのものに替わる事はないです。

 国内での遺伝子組換え作物の栽培は、特別に許可され隔離された圃場での実験栽培だけです。現在承認されているのはトウモロコシ、ダイズ、セイヨウナタネ、ワタ、パパイヤ、アルファルファ、テンサイ、バラ、カーネーション9作物だけです。また、商業栽培が行われているのはバラのみです。

 これもTPPのISD条項で訴えられて、外国から種子無秩序にがはいってくることになるような、主張をしている人を見かけますが、ISDは他国の法律を変える事はできませんし、もともとあった法律で規制されているのに外国企業が日本に乗り込んできて損をしたなどとして、訴えるなどということはできないですし、仮に訴えたとしても完全に非があるのは企業側なので、100%企業側が負けます。

また、上記の記事中では自閉症の増加とラウンドアップの普及に相関性があるから、ラウンドアップの成分、グリホサートに自閉症の原因があるに違いないとしていますが、なぜか記事では途中でネオニコチノイド系殺虫剤の話になっています・・・)グリホサートと自閉症に因果関係があるかどうかについては、色々調べてみましたが、それを裏付ける様な研究や論文をありませんでした。


ラウンドアップ

それに、遺伝的な要因が強いというとする論文はありますが、近年自閉症が増加している原因についてはまだ科学的にはっきりと解明されていません。

それをグリホサートの増加と相関があるから因果関係もあるはずだと結論付けるのは乱暴すぎるのではないかと思います。

このやり方ならば、自閉症増加と同時期に増えたものはなんでも因果関係があると結論付けてもいいと言うことになってしまいます。

 また、グリホサートはあまりに性能的に優れた除草剤であるため、現在グリホサートの代替となる除草剤が存在しません。

グリホサートを使用すると不耕起での栽培が可能になるので、農業生産性が大きく向上し、且つ土壌が流出しないため周囲の河川汚染のリスクが減るという報告があります。

この様な状況で、下手にグリホサートを規制すると、農家は他の毒性が強く、環境に負荷を与えやすい除草剤を使うことになってしまうため、意味がないどころかかえって事態の悪化を招きかねません。これでは本末転倒です。

そういった背景もあり、EUではグリホサート規制の声が大きかったものの、使用許可期限を5年間延長する決定が下されました。代わるものが無いのですから仕方がありません。グリホサートなしでは農業生産性が著しく低下しますので、農作物価格の高騰を招く可能性が大です。

 ネオニコチノイド系の殺虫剤も然りです。今の農業はネオニコチノイド系の殺虫剤前提で成り立っていますので、規制されたら別の有害な有機リン系の殺虫剤を使わざるを得なくなり、周辺の生態系に与える影響は必然的に大きくなりかねません。また、農業生産コストを増大させて農作物の価格は高騰するでしょう。

 では、農薬不使用の有機栽培をやればいいじゃないかという意見もあろうかと思いますが、農薬不使用で農作物を栽培するのはかなり困難です。
さらに、農薬が防ぐのは虫だけではありません。有毒なカビや病気も予防します。

自閉症誘発というハザードがある(この記事では完全なこじつけですけど)から廃止しろ
と言うのはかなり乱暴な議論で、きちんと経済利便性や、リスクを評価して総合的な判断を下さなければならないでしょう。

「危険性又は有害性(ハザード)」と「リスク」の違いとは ライオンは固有の危険性をもっているのでハザードにあたりますが、左の図はライオンのそばに人がいないので、ライオンに襲われる危険性はありません。 ... 「危険性・有害性(ハザード)」とリスクを明確に区別して理解をする必要があります。



車は交通死亡者を増やすハザードがあるからといって車の生産や利用が規制されないことと同じです。車がなければ現在の生活が成り立たないのと同様に、今の農業は農薬がなければ成立しないものになっています。

 農薬無しでできないことはないのですが、農作物価格の高騰は覚悟しなければなりません。日本はまだ先進国だから大丈夫かもしれませんが、途上国の貧しい人たちの中では餓死してしまう者が増えるかもしれません。

 何やら、話が飛んでしまったかのような印象をうけますが、上で引用した記事は元々は、種子法廃止の話だったはずです。グリホサートとネオニコチノイド系の殺虫剤とか、種子法とは種子法とは、一切関係ないはずです。

 ホームセンターいくとわかりますが、グリホサート系除草剤、殺虫剤など、大量に売られてます。それにJAが積極的にラウンドアップの拡販普及に力を入れています。本当に害があれば、そんなことをするはずもないです。

このような主張をする記事に煽られる必要はありません。一番はっきりしていることは、すでに4月に種子法が廃止されていますが、具体的に何か不都合が起こったでしょうか。

種子法廃止に反対する人々は、まともなエビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)をあげてほしいです。エビデンスなしに、不安を煽るのはやめるべきです。

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被ばく量「国内外で差はない」 福島高生、英学術誌に論文―【私の論評】発言するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!

2018年9月1日土曜日

防護服姿の子供立像「サン・チャイルド」撤去へ 福島市民アンケート7割が反対 市長「設置は困難」―【私の論評】反原発・自然エネルギー推進の主張は自由!だがそのため何でも利用する姿勢は許されなくなった(゚д゚)!

防護服姿の子供立像「サン・チャイルド」撤去へ 福島市民アンケート7割が反対 市長「設置は困難」

福島駅近くの教育施設「こむこむ」に展示されたサン・チャイルド=福島市で

 福島市が設置した防護服姿の子供立像「サン・チャイルド」に「原発事故の風評被害を助長する」などの批判が相次いだ問題で、同市の木幡浩市長は28日、会見し、像を撤去すると発表した。

 市長は、これまで「像を見て福島が危ないと受け取る人はいない」などと反論してきたが、市民向けアンケート結果は7割近くが反対・否定的で、「賛否分かれる作品を設置し続けることは困難」と語った。

 像は現代美術家ヤノベケンジさんが東日本大震災を機に制作。高さ6・2メートルで胸の空間放射線量計を模したカウンターには「000」と表示、原子力災害のない世界や希望を表した。

 だがJR福島駅近くの市の教育施設に設置されると、「福島が防護服の必要な街であるかのような誤解を与える」「線量がゼロにならないと安全ではないということか」などと批判が相次いだ。

 アンケートは18日から27日まで行われ、110人から集計。内訳は設置に「反対もしくは移設を」が75人で、存続派22人を大きく上回った。賛否不明の「その他」が11人。このほか、市のホームページなどに届いたメールなども、7割が否定的だった。

 これに対し同市長は「愛称募集には小学生199人が応募しており、賛否は拮抗(きっこう)している」としたが、「不快な思いをされた方々には、心からお詫び申し上げます」と語り、近く像を解体し、美術館など別の展示場所が見つかるまで市で保管する。展示費用は、解体も含め約260万円となる見込み。

 また、市長は展示を決める中で議会にはかるなど市民に向けた合意形成を欠いた点を改めて謝罪し、市長給与の減額措置を講じる意向を表明した。

【私の論評】反原発・自然エネルギー推進の主張は自由!だがそのため何でも利用する姿勢は許されなくなった(゚д゚)!

8月3日、JR福島駅前にモニュメントが設置されました。現代美術家として知られるヤノベケンジ氏が2011年に、東日本大震災をきっかけに制作した、「サン・チャイルド」と呼ばれる全高6.2mにもなる巨大な子供の像です。

その容貌は、ブログ冒頭の写真のように、黄色い放射能防護服を着た子供がヘルメットを脱いで左手に抱え、顔に傷を負い、絆創膏を貼りながらも、空を見上げて立っているというものです。胸には「000」と表示されたガイガー・カウンター(放射線測定器)が表現されています。
この像のメッセージは明らかです。「放射能をゼロにして初めて子供が健康になる」という主張です。右手にもっているのは、太陽光発電がエネルギー問題を解決するという意味です。ガイガー・カウンターがゼロになることはありえないですが、作者は「原子力災害や核がゼロになった世界を象徴的に」示したと弁解しています。

「放射能ゼロ」も表現の自由の範囲内であり、彫刻家を非科学的だと糾弾してもしょうがないです。この像は2012年に福島空港に設置されたましたが、そのときは批判は出ませんでした。

しかし、今回は、この像が設置されると、様々な批判と議論が起こりました。
国内のメディアの他、英国BBCが 「福島市がJR福島駅付近に設置した防護服姿の少年像に、住民らが怒りの反応を示している。2011年に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故以来、同市が未だに放射能に汚染されたままだとの印象を与えるとの声もある」と報じ、同国のガーディアンやデイリー・メール、シンガポールのストレイツ・タイムズや香港のSCMP、中国新華社通信などの海外メディアまでもが報道する事態となっています(https://www.bbc.com/japanese/45192561)。
その後、福島市長はブログ冒頭の記事の通り、撤去することを決めています。また、「サン・チャイルド」の作者である、ヤノ氏も以下のような声明を出しています。
ヤノベ氏が発表したコメント全文。公式サイトよりキャプチャ。

ヤノベ氏は撤去について、
「大変残念ではありますが、こむこむ館前に置き続けることで、苦しむ市民の方々がおられるならば撤去し、展示を取りやめた方がよいという結論に至りました。また、これ以上、市内外の人々を巻き込み、対立が生まれることは避けたいと思いました」
と胸中を語りました。「サン・チャイルド」は震災後、福島に通う中で着想したと明かし、「人類共通の大きな課題の解決に向けて、すべての人々を勇気付けたいと思いました」と説明しました。今回の批判については、
「展示する場所、時期、方法などによって受け止められ方は変わりますので細心の注意を払うべきでした」
と振り返えりました。今後、市民と対話する機会を設けたいと希望しています。

「サン・チャイルド」は東日本大震災をきっかけに、2011年からヤノベ氏が複数制作している。このうちの1体が2016年、同作品の10分の1スケール像と共に、「ふくしま自然エネルギー基金」に寄贈されたものです。

ふくしま自然エネルギー基金 代表理事 佐藤弥右衛門
以下に「ふくしま自然エネルギー基金」の代表理事、佐藤弥右衛門氏の略歴を掲載しておきます。
1951年、福島県喜多方市で200年以上続く造り酒屋・大和川酒造店の長男として生まれる。東京農業大学短期醸造科卒業後、大和川酒造店入社。2013年8月、会津電力を設立し社長に就任。現在、全国ご当地エネルギー協会・代表理事も務める。
佐藤氏は自然エネルギーの推進派であるようです。サイトをみてみると、2016年の設立記念シンポジュウムにおいては、反原発派で元総理の小泉純一郎氏が講演をしており、元官僚の古賀茂明氏らの講演も予定されています。
市の担当者によると、同基金から福島市に「寄贈したい」という声があったのは今年に入ってからだといいます。市へは、像の所有者である「ふくしま自然エネルギー基金」ではなく「ふくしま未来研究会」から寄贈されました。別団体からの寄贈になった理由は「詳しい経緯は不明」だと言います。

「ふくしま未来研究会」理事の佐藤勝三氏は、元佐藤工業会長です。佐藤工業は、 福島駅前再開発や除染・再エネ関連公共工事の地元土建最大手、談合での逮捕や指名停止もありりました。元福島県知事・佐藤善一郎の親族でもあります。

この「ふくしま未来研究会」は、地域活性化関連事業のほかに、再生エネルギー関連事業も実施しています。

設置場所がこむこむ前になったのは福島市の判断です。市西部にある「四季の里」や「十六沼公園」なども候補に挙がったのですが、「子どもたちに復興のシンボルとして見てもらいたい」という市の意向で決まりました。

像の設置に伴い、福島市は除幕式や組み立て費など合計133万円を負担しました。撤去には同程度かかる見通しです。撤去後は、分解した後、市が保管する予定になっています。その上で木幡市長は、今回の問題の責任を取り、自らの給与を減額する意向を示しました。


上部の骨組みがむき出しになった福島第原発の建屋

ご存じのように、2011年3月11日の東日本大震災に伴って、東電福島第一原発事故が発生しました。

事故当初には正確な被害状況が判らなかったこともあり、大きな混乱が生じました。たとえば福島市でも、空間の放射線量が一時20μSv/h を上回りましたが、「通常の○×倍の放射線量!」「放射能がくる」 といった、不安と恐怖を煽るヒステリックな言説が大量に飛び交った一方で、その数値が具体的にどういう意味を持ち、どの程度のリスクになるのか、それを冷静に伝えようとする声はかき消されてしまいました。

そのような状況を招いた要因の一つとして、原発や「放射能」そのものが、事故前から極めて政治的、かつ社会的なインパクトが強い存在であったことが挙げられます。

一部の人にとって原発は「核兵器と同じ放射性物質を燃料とする、原爆や戦争を想起させるもの」であるとともに「『権力』から押し付けられるものの象徴」でした。

福島はまたたく間に、激しい政治的対立やイデオロギー闘争の主戦場となりました。その中で、福島が「権力者の犠牲となった悲劇の地『フクシマ』」であり続けることや、「不幸なフクシマの真実」を喧伝することを、好都合とする人々さえ現れました。

結論を言えば、この事故で放射線被曝そのものを原因とした健康被害は起こりませんでした。福島に暮らす人々が実際に被曝した量は、内部・外部ともに世界の平均的な値と比べても高くなく、世界中で核実験が行われていた1960年代の日本人の平均的な被曝量よりもずっと小さいということが、国内外や官民問わず、さまざまな実測調査からすでに明らかになっています。

中には、福島の高校生らによる地道な実測調査もありました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
被ばく量「国内外で差はない」 福島高生、英学術誌に論文―【私の論評】発言するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!
 

この記事は、2015年11月28日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

本県(ブログ管理人注:福島県)など国内とフランス、ポーランド、ベラルーシ各国の高校生の外部被ばく線量を比較研究してきた福島高スーパーサイエンス部は、被ばく線量について「ほとんど差はない」と結論づけ、論文にまとめた。論文は27日、英国の学術専門誌「ジャーナル・オブ・レディオロジカル・プロテクション」(写真下:表紙)に掲載される。


この福島高校の生徒らによる放射能の測定関するニュースは、2015年の4月にNHKで報道されていました。その内容はNHKのサイトに掲載されていましたが、現在では削除されています。この記事にはその内容を掲載しました。その内容を以下に引用させていただきます。
福島の高校生たちが、原発事故があった福島県内と県外の各地、それに海外で暮らす人の被ばく線量を測定し、比較する調査を行いました。
それぞれの場所で日常生活での被ばく線量に大きな差はみられなかったということで、高校生たちは「科学的なデータを多くの人に知ってもらいたい」としています。
調査を行ったのは、県立福島高校スーパーサイエンス部の生徒5人で、海外の学生から「福島で暮らして大丈夫なのか」と尋ねられたことをきっかけに始めました。 
生徒たちは去年6月から11月にかけて、原発事故の避難区域を除く、いわき市や郡山市など県内の6つの地点と、神奈川県や兵庫県、岐阜県など県外の6つの地点、それにフランスやポーランド、ベラルーシの海外の3つの国で、そこに暮らす高校生などにそれぞれ線量計を2週間、携帯してもらって、被ばく線量を測定しました。 
得られたデータをもとに年間の被ばく線量を推計したところ、その値が、真ん中となる「中央値」の人は、福島県内が、0.63から0.97ミリシーベルト、県外は0.55から0.87ミリシーベルト、それに海外では0.51から1.1ミリシーベルトでした。
放射線は、原発事故で拡散された放射性物質によるものだけでなく宇宙や地表から放出されているものもあり、こうした自然由来の放射線は地質の差など地域によって異なっています。 
生徒たちは「いまの福島で暮らしていて、国内のほかの地域や海外に比べて、とりわけ被ばく線量が高いわけではないことが確認できた」としています。 
生徒たちは、先月下旬、フランスで開かれた高校生の国際会議で調査の結果を公表したほか、今後海外の生徒を福島に招いて、現状をみてもらうツアーも計画しているということです。 
調査を行った3年生の小野寺悠さん(17)は、「科学的なデータを多くの人に知ってもらうとともに、自分でも福島の放射線量をどう受け止めたらいいか考え続けていきたい」と話していました。 
そうして、この記事での私の結論は以下のようなものです。
いずれにせよ、何か発言したり行動するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行えと、声を大にして言いたいです。 
そうして、こうした若者にさらに大きな機会を与える社会にしていきたいものです。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
この私の信念は、今でも変わりません。これからも一生変わり続けることはないでしょう。

このブログの記事は、かなりインパクトがあったとみえて、多く人に読まれたようです。そうして、おそらく反原発派の方からと思しきコメントが寄せられました。下にそのままその内容を掲載します。
内部被ばくを理解していないあなたのような情報弱者が原子力推進派にとってはものすごく美味しいわけです。
このコメントに対して私は以下のような返答をしました。
内部被ばくの危険を煽る人もいますが、これを信用するなら私達は世界標準の放射線治療を受けることは不可能になります。
このコメントは、もっと詳細で長いものなのですが、簡単にいうと、癌の治療などで、放射性物質を飲み込み癌細胞に取り込ませ、癌を退治するのですが、もし内部被ばくが危険なものなら、そもそもこうした治療は最初から成り立たないことになります。

そもそも、治験時に相当危険な治療とされて、治療法として許可されないでしょう。ところが、実際にはこのような治療方法が用いられているわけですから、原発反対派の方々がよく言うほどの危険性はないことがわかります。そんなに危険であれば、この治療で内部被曝による死亡者がかなりでていることになります

詳細をご覧になりたい方は、このブログ記事の一番下のほうにある、コメント欄をご覧になってください。

原発事故から4年もたって、しかも私のような第三者が、掲載したブログにまでこのような人を小馬鹿にするようなコメントを平気でする反原発派の方がいるということですから、福島に向けられた誤解や、プロパガンダなどは凄まじいものがあったのは想像に難くありません。

この高校生たちの観察結果からも、 その他の報告書においても、福島の放射線被爆量は国内の他地域や海外に比較してとりわけ高いということはないのです。

一方で、避難に伴う生活環境の変化による健康状態の悪化や、震災関連死は増えました。避難を巡る考え方の違いを発端とした離婚が起こったケースもあります。もちろん、中には避難によって安心感や安定が得られた方もいらっしゃるでしょうが、少なくともデータの上では、無理に避難することは、もとの生活圏に留まるよりも総じてリスクが高かったといえるのです。

ただし、これはあくまでも結果論です。震災発生当時、多くの人が明日をも知れない大きな不安に包まれていました。それから必死で学び、悩み、沢山の決断を繰り返す中で、県民は多かれ少なかれ傷付いてきました。

重く苦しい2011年当時の空気感から7年以上の時間と苦難を越え、福島では平穏な日常を取り戻す住民が増えてきましたが、そこに至るまでの道のりや、震災の記憶が大きな痛みとして心に刻まれている人も少なくありません。

そんなある日、大勢の人たちが平穏な日常を暮らす福島駅前に突然現れたのが、2011年からやってきた「サン・チャイルド」でした。

2011年の作品ですから、その頃の感覚が強く表現されているのは当然のことです。作者であるヤノベ氏に悪意があったとは、少なくとも私は全く捉えていません。

しかし、人々が日常的な通勤や通学、ショッピングに訪れる福島駅前の、しかも子ども達のための施設の入り口に、突如として現れた6.2mの巨大な「2011年からの使者」に向けられたのは、歓迎の声ばかりではありませんでした。

像が着ている防護服が、「防護服が必要なほど、福島は汚染されていた」「市民は過去、大量の被曝をした(=将来、健康に影響が出るに違いない)」という誤ったイメージを喚起しかねない点も指摘されています。

福島市では、実際には防護服が必要となったことは一度もありませんでした。現在では、廃炉作業が進む福島第一原子力発電所の作業員ですら、防護服を着て作業するエリアは極めて限定的です。

つまり「サン・チャイルド」で表現されている、「2011年に想像された未来」よりも、「現実に訪れた未来」の放射線被害はずっと小さかったのです。

むしろ、実際に住民たちに苦難をもたらしたのは、自らのイデオロギーやビジネスのために「放射線被曝での健康被害に苦しむフクシマ」を望む人々による、偏見・差別、言いがかりや嫌がらせなどの二次被害だったとも言えます。

日常空間に防護服を着て乗り込んできたのは、一部の政治家や、住民への嫌がらせとデマ拡散を繰り返してきた人々ばかりだったことも、指摘しておきましょう。

「警戒地域」を防護服姿で視察する当時の政権与党民主党の岡田幹事長

国民新党の亀井静香代表は2011年5月10日午後、党本部で自民党の大島理森副総裁と会談していますが、大島氏によると、亀井氏は民主党の岡田克也幹事長が先に福島第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域を視察したことに触れ、「自分だけ防護服を着て、相手が防護服なしで会う姿にあぜんとした。心の通い合う政治をやらなければ駄目だ」と批判しています。枝野氏なども含めて民主党の政治家は、当時このような視察をしていました。当時、作業服姿で現地を訪問していた、天皇陛下とは対照的でした。 

このような経験があったために、今回の「サン・チャイルド」に対しても、設置に至る経緯の不透明さと説明不足もあいまって「なぜいま、どのような目的で持ち込まれたのか」「ツイッターなどSNS上の発言も含めて、県内外でどういう人たちが、どのような反応をしたり関わったりしているのか」など、その背後関係や経緯に対して、多くの住民から不安と警戒のまなざしが向けられてしまったのも無理はありません。

放射能は悪ではありません。自然放射線をゼロにすることはできないですし、する必要もありません。福島第一原発事故でも、放射能による死者は出ていません。今これを否定する人はいないですが、事故の当時、民主党政権は「年間1ミリシーベルト」という非科学的な安全基準を出し、これを根拠に過剰避難や莫大な損害賠償請求が発生しました。

反原発という主張をしたり、自然エネルギー活用を主張したりすること自体は自由ですが、その主張を通すために、虚偽の情報を流したりすることなど到底許されることではありません。さらに、今回のようにアートを自分たちの意図を通したり、強化したりするたに利用することも、多くの福島市民から拒否されて、撤去さざるをえなくなったのです。

このように、放射能をめぐる迷信が変わってきたことは歓迎すべきですが、デマを流した人々が復興を妨げた罪は大きいです。ヤノベ氏は謝罪のコメントを出したのですが、今度は反原発派がデマを撤回して謝罪するべきです。

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2018年8月31日金曜日

米も知らなかった…日朝極秘接触 7月にベトナムで拉致問題全面解決に向け協議 日米連携に影落とす危険性も ―【私の論評】ワシントン・ポストでは相変わらずパンダハガーが勢いを維持している(゚д゚)!


北朝鮮交換と接触したとされる北村滋内閣情報官
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 日本と北朝鮮の情報当局高官が7月、ベトナムで極秘接触していた。日本人拉致被害者の全員救出を目指し、安倍晋三首相が信頼する内閣情報官が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の側近である、金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長(統一戦線部長)に直結する女性幹部と非公式協議を行ったという。日朝首脳会談の可能性も探ったとみられる。ただ、ドナルド・トランプ米政権には事前に伝えておらず、今後の日米連携に暗い影を落とす可能性もある。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は28日、衝撃の「日朝極秘接触」のニュースを、関係者の話として伝えた。

 同紙によると、日本からは北村滋内閣情報官、北朝鮮からは南北関係を担当する統一戦線部の金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長が出席した。拉致被害者問題などについて協議したという。

金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長

 北村氏は警察庁出身で、第1次安倍政権では首相秘書官(事務担当)を務めた。民主党政権時代の2011年12月末に、内閣情報調査室(内調)を率いる内閣情報官となった。自民党の政権奪還後も留任し、「首相動静」の登場回数が断トツなど、安倍首相の信頼は絶大である。

 金聖恵氏は、金日成(キム・イルソン)総合大学出身とされるエリート官僚で、金英哲氏が5月、正恩氏の親書を持参して訪米した際に同行して注目された。統一戦線部は、CIA(中央情報局)とともに、6月の米朝首脳会談への事前交渉を主導した工作機関であり、金聖恵氏は実務責任者とみられている。

 トランプ大統領と正恩氏がシンガポールで行った米朝首脳会談で、正恩氏は「日本と対話する用意がある」と前向きに語ったとされる。拉致問題は、米国任せだけでは解決しない。そこで、北村氏と金聖恵氏による日朝極秘接触がセットされたようだ。

 官邸周辺は「正恩氏は昨年以降、米朝対話の総指揮を金英哲氏に一本化している。米国でいえば、金英哲氏は国務長官とCIA長官を兼ねているような存在で、北朝鮮の外交と諜報の両面で絶大な力を持つ。官邸とすれば、拉致問題の解決のためには、金英哲氏に絶対につながる金聖恵氏は、ノドから手が出るほど欲しいパイプだった。このため、本来は格が上の北村氏(=格的には金英哲氏と同等)を直々に接触させたと聞く」と語る。

金英哲氏

 この後、8月にも河野太郎外相が訪問先のシンガポールで、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相と短時間接触した。

 安倍首相にとって、拉致問題の全面解決は悲願である。

 拉致被害者家族会の結成20年にあたる昨年、安倍首相は夕刊フジの独占インタビューに応じ、次のように語った。

 「13歳の少女(横田めぐみさん)を含む、多くの日本人が拉致され、今も北朝鮮でとらわれたままだ。この問題を解決するのは、安倍政権にとって最重要課題だ」

 「正恩氏に対し、『拉致、核、ミサイルの諸問題を解決しない限り、北朝鮮は世界からますます孤立し、明るい未来を描くことはできない』と理解させなければならないと思っている」

 「拉致問題を解決するために、あらゆる選択肢を検討する用意はある。一方、『対話のための対話』では意味がない。私と正恩氏が握手するショーのための会談は、むしろ行うべきでないと思う」

 2002年の日朝首脳会談にも、官房副長官として出席した安倍首相は、北朝鮮の欺瞞(ぎまん)性を熟知している。北朝鮮が何度も日本や世界をだましてきたことも体験している。

 このため、安倍首相は6月、官邸で拉致被害者家族と面会した際、「拙速にはやらない。北朝鮮が被害者をすべて帰すといったら(北朝鮮に)行く」と、慎重に語った。

 「北朝鮮の非核化」をめぐる米朝協議が停滞・難航するなか、拉致問題をめぐる日朝協議の進展も簡単ではない。

 加えて、日朝極秘接触が事前に知らされなかったことに、米政府当局者らは不満を高めているという。

 前出のワシントン・ポストによると、複数の米政府高官は、北朝鮮政策について日本と日々情報を共有しているにもかかわらず、日本政府が接触の計画を事前に伝えなかったことに不快感を示したという。

 官邸周辺は「情報の出方を精査する必要があるが、今回の(ワシントン・ポストへの)リークは、北朝鮮問題をめぐる日米連携に暗い影を落とす危険性がある」と語っている。

【私の論評】ワシントン・ポストでは相変わらずパンダハガーが勢いを維持している(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事における、ワシントン・ポストの報道はすぐに真に受けない方が良いと思います。

ワシントン・ポストには「複数の米政府高官は、北朝鮮政策について日本と日々情報を共有しているにもかかわらず、日本政府が接触の計画を事前に伝えなかったことに不快感を示した」としていますが、これが具体的には誰なのかについては触れられていません。

当然のことながら、日本が北と接触することは、内密に行われていたことであり、米国には全く知らせないか、知らせたにしても、ごく一部にしか知らせない可能性もあります。

仮にワシントン・ポストが比較的下の職位の関係者に複数確認を入れたとしても、知らないのは当然なのかもしれません。

もし、複数の関係者の名称が具体的にあげられていたら、このワシントン・ポストの報道はかなり信憑性があると考えて間違いないです。日本側の関係者の実名もあげられていれば、さらに信憑性があるものといえます。

それに、そもそも独立国である日本が、米国に対して日本の高官が、北朝鮮の比較的低い職位の関係者に会ったことまで、何もかも報告する義務があるのでしょうか。

日米関係については、日本は何でも米国の言うとおりとする識者も結構いますが、それは、あのTPP交渉において、そうとばかりはいえないことがはっきりしました。TPP交渉反対派の人々は、TPP交渉をすれば日本は米国の良いようにされるといって大騒ぎしましたが、その懸念はトランプ大統領がTPPから離脱し、そうではなかったことがはつきりしました。

無論、今でも日本は米国の大きな影響下にあることは否定しませんが、何もかも米国の言いなりというのは、正しくはないです。

なぜ、このようなことを言うかといえば先日も、ワシントン・ポスト氏はトランプ大統領に関して間違った報道をしていましたので、特に日米関係の報道は、信憑性が疑われるからです。

それについては、昨日のこのブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
「真珠湾攻撃忘れないぞ」トランプ米大統領、安倍首相に圧力―【私の論評】日本のメディアは米国保守派の歴史観の変貌に無知(゚д゚)!
会談で握手する安倍首相(左)とトランプ米大統領=6月、ワシントンのホワイトハウス

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
米紙ワシントン・ポスト電子版は28日、トランプ大統領が6月にホワイトハウスで安倍晋三首相と会談した際「(第2次大戦の)真珠湾攻撃を忘れないぞ」と前置きした上で、難航している通商問題の協議を始めたと伝えた。異例の発言の背景には、対日貿易赤字の削減を目指し圧力を強める狙いがありそうだ。 
・・・・・〈中略〉・・・・・・・ 
一方多少まともに報道しているところもあります。これは、FNNの取材でわかったことですが、6月にアメリカで行われた日米首脳会談において、トランプ大統領は確かに「アメリカが日本の防衛費を負担して、対日貿易赤字も解消されなければ、ダブルパンチになる」と不満を表明しました。 
そのうえで、「真珠湾攻撃を忘れていない。日本も昔はもっと戦っていただろう。日本も周辺国ともっと戦うべきだ」と述べたのです。
この発言は、「日本が自国の防衛を強化して、アメリカの防衛費の負担を減らすべきだ」と、暗に求めたとみられます。 
関係筋などによると、この時トランプ大統領は、「日本はかつて真珠湾を攻撃したほどの軍事強国であったじゃないか」と言う意味で述べたもののようです。
日本は「防衛費をもっと増やすべきだ」という意味で発言したもので、通商問題で日本を非難する意味ではなかったとしています。
 また、トランプ大統領は、「パールハーバー」と発言したものの、「あのひきょうな攻撃を忘れないぞ」という批判的な意味、言い方はしていないとのことです。
外交上、際どい言葉は、異なる解釈を生み出すケースがあるため、そうした言葉が波紋を生んだケースだといえそうです。 
また、メディアとの関係もあります。トランプ大統領に対して批判的な米リベラル・メディアは、そういうふうに報道したというベースがあるとも忘れてはいけないです。
また、この記事では、 日本のパールハーバー攻撃を卑怯なだまし討とみるのではない見方もあることも掲載しました。米国では特に保守層では、真珠湾攻撃は日米両国がそれぞれの国益を追求した結果起こったものであるとして、日本を「侵略国」であると決めつけた「日本悪玉史観」は事実上、見直されているのです。

トランプ氏も保守派であることから、当然のことながら、こうした歴史観に立脚して「リメンバー・パール・ハーバー」という言葉を使っているとみるべきなのです。であれば、対日貿易赤字の削減を目指し圧力を強める狙いでこの言葉を使った事はありえないわけであり、ワシントン・ポスト紙によるトランプ大統領の「リメンバー・パールハーバー」報道はかなり偏向しているといわざるをえません。

ワシントン・ポスト紙は以前から、日本報道に関して、かなり偏向していました。たとえば、在米の複数の中華系団体は2016年8月15日付け付の米紙ワシントン・ポスト無料版に、日本最南端の東京都・沖ノ鳥島は「島ではない」と主張する意見広告を出しました。また、台湾が実効支配する南シナ海の太平島は「島」ではないとした7月の仲裁裁判所の判断は「不合理だ」と訴えました。

意見広告には台湾の大学の卒業生が組織したとみられる団体や、日本の戦争責任を追及する中華系の団体など台湾系を中心とするグループや個人が名を連ねました。仲裁判断への不満や、沖ノ鳥島を巡る異論を米国で認知させる狙いがあるとみらます。

このことから、ワシントン・ポストは、パンダハガー(親中派)が力を持った新聞であると考えれます。ちなみに、ワシントン・ポストは米国では発行部数が第5位です。

ルパート・マードック氏(左)と三番目元妻ウェンディ・トン氏(右)

一方米国で販売部数が第1位のウォール・ストリートはオーナーのルパート・マードック氏は三番目元妻ウェンディ・トン氏が、中国系であり、親中派であったとみられていますが、その後離婚しました。そのせいもあるのか、極端に親中的な報道をするということありませんでした。

そうして、今年の3月に、ウォール・ストリート紙は、ウェンディ・トン氏は「中国のスパイ」との疑惑を報じています。トン氏は米ドナルド・トランプ大統領の娘婿で、大統領上級顧問を務めるジャレット・クシュナー氏との親しい関係を利用して、トランプ政権内部の機密情報を入手し、中国共産党指導部に流しているというのです。

さらに、親中派の論客として知られ『鄧小平伝』も書いたデーヴィッド・シャンボー(ジョージワシントン大学教授)は大胆にも中国共産党の崩壊を予測し、「ウォール・ストリート・ジャーナル」(2015年3月10日)に寄稿していました。

これについては、詳細は、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国寄りの専門家さえついに唱えだした「中国大崩壊」の論拠―【私の論評】ニッポン人中国スパイ、親中派、媚中派は速やかに転向せよ、そうでないと飯のくいあげになるぞ(゚д゚)!
デビッド・シャンボー教授
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、これはタイトルの通り、中国共産党による支配が、今後〈終焉に向かうだろう〉ことを、理由を挙げながら指摘したウォルストリート紙のコラムで。

これが世界的な話題となった理由の一つは、チャイナハンド(*注)と考えられた人物が中国の崩壊に警鐘を鳴らしたからです。中国に対するスタンスは本人も認めているようで、天安門事件後に体制崩壊と衰退が不可避だと主張する中国ウォッチャーがいるなか、より慎重な立場をとってきたとしています。

【*注:中国の立場を理解する外交官、ジャーナリスト、学者の総称】

つまり衝撃の正体は「あの中国にやさしい専門家さえ『危ない』といっている」という点にあったのです。

以前からこのブログで指摘しているように、米国の新聞は、全部がリベラル系であり、日本でいえば産経新聞がないといっても良い状況ですが、その中でも老舗のウォール・ストリート・ジャーナルは比較的まともな報道をしているといえそうです。

しかし、ワシントン・ポストはあいかわらす、パンダハガー(親中派)の勢いが強いのでしょう。

これは、同時に中国の現状の大変さを物語っているとも受け取れます。日米が協同して、中国を叩くということになれば、中国には太刀打ちできません。

中国としては何とかして、日本を味方に引き入れ、日本を親中派政権にして米国の経済冷戦をかわしたいと考えているのかもしれません。だからこそ、ワシントン・ポストを利用して、日米が離反するように仕向けている可能性があります。しかし、次の総裁選では安倍総理が圧倒的に有利ですから、そのような目論見は成就することはないでしょう。

これは、しばらく趨勢をみてみないことには、まだなんとも言えませんが、ワシントン・ポストの報道にはこういう背景があるということを知った上で、報道を吟味すべきと思います。特にワシントン・ポストを鵜呑みにする日本の報道には、留意すべきです。

【私の論評】


2018年8月30日木曜日

「真珠湾攻撃忘れないぞ」トランプ米大統領、安倍首相に圧力―【私の論評】日本のメディアは米国保守派の歴史観の変貌に無知(゚д゚)!


会談で握手する安倍首相(左)とトランプ米大統領=6月、ワシントンのホワイトハウス

米紙ワシントン・ポスト電子版は28日、トランプ大統領が6月にホワイトハウスで安倍晋三首相と会談した際「(第2次大戦の)真珠湾攻撃を忘れないぞ」と前置きした上で、難航している通商問題の協議を始めたと伝えた。異例の発言の背景には、対日貿易赤字の削減を目指し圧力を強める狙いがありそうだ。

米国では真珠湾攻撃は「卑劣なだまし討ち」との見方が強い。日本側の弱みと見なしてトランプ氏が通商交渉で譲歩を引き出すために、あえて日米首脳会談で触れた可能性がある。

同紙によると、トランプ氏は真珠湾攻撃に言及した後、米国の対日貿易赤字について激しく非難し、安倍氏に対し牛肉や自動車の対日輸出で米国に有利になるような2国間貿易協定の交渉に応じるよう促した。

これに対し安倍氏は、トランプ氏の発言が終わるのを待った上で反論。日本政府当局者は「首相は大統領の主張を断定的に否定すれば、プライドを傷つけてしまうと分かっている」と説明した。(共同)

【私の論評】日本のメディアは、米国保守派の歴史観の変貌に無知(゚д゚)!

時事通信や共同通信、新聞各紙が、トランプ大統領が「真珠湾攻撃を忘れていないと発言し、通商交渉で厳しい姿勢を示した」とし、「揺らぐ日米蜜月」などと報じています。

この「パールハーバー発言」は、そもそもアメリカの新聞「ワシントン・ポスト」が、トランプ大統領が安倍首相に対して、「真珠湾攻撃はひきょうだった」と非難する、「アイ・リメンバー・パールハーバー」、つまり、「真珠湾攻撃を忘れないぞ」という言葉を使って、通商問題で譲歩を迫ったと報じたことが始まりでした。しかし、各紙はしっかりと総理周辺などに取材したのでしょうか。

日本軍による真珠湾攻撃

トランプ大統領は、真珠湾攻撃ではないものの先の大戦に関しこれまでも同様の発言を繰り返し、防衛費増について話を日本側に振っています。

すなわち防衛装備品の購入増につながるわけで、それをアメリカも狙っているわけですが、アメリカの新聞の引用ではなく、しっかりと取材をし記事を書いて欲しいものです。

一方多少まともに報道しているところもあります。これは、FNNの取材でわかったことですが、6月にアメリカで行われた日米首脳会談において、トランプ大統領は確かに「アメリカが日本の防衛費を負担して、対日貿易赤字も解消されなければ、ダブルパンチになる」と不満を表明しました。

そのうえで、「真珠湾攻撃を忘れていない。日本も昔はもっと戦っていただろう。日本も周辺国ともっと戦うべきだ」と述べたのです。

この発言は、「日本が自国の防衛を強化して、アメリカの防衛費の負担を減らすべきだ」と、暗に求めたとみられます。

関係筋などによると、この時トランプ大統領は、「日本はかつて真珠湾を攻撃したほどの軍事強国であったじゃないか」と言う意味で述べたもののようです。

日本は「防衛費をもっと増やすべきだ」という意味で発言したもので、通商問題で日本を非難する意味ではなかったとしています。

また、トランプ大統領は、「パールハーバー」と発言したものの、「あのひきょうな攻撃を忘れないぞ」という批判的な意味、言い方はしていないとのことです。

外交上、際どい言葉は、異なる解釈を生み出すケースがあるため、そうした言葉が波紋を生んだケースだといえそうです。

また、メディアとの関係もあります。トランプ大統領に対して批判的な米リベラル・メディアは、そういうふうに報道したというベースがあるとも忘れてはいけないです

このブログでも何度か述べたように、米国のメデイアはほとんどがリベラルです。その中で、特に大手新聞はすべてがリベラルです。米国のメディアのリベラル対保守を比率でいうと、代替9対1の割合です。

そのため、保守派が何かをいっても、ほとんどがリベラルメディアによってかき消されてしまうというのが現状です。そのため、私達日本人などは、リベラルメディアによる報道のみに接しているため、米国の半分のリベラルの見方や考え方にせっしているわけです。

ところが、トランプ大統領が誕生したことでもわかるように、実は米国にも当然のことながら、保守派も存在するわけです。少なくとも、米国の人口の半分くらいは存在するはずです。でなければ、トランプ大統領など誕生する余地もなかったはずです。

メディアを批判するトランプ大統領

結果として、私達日本人は米国のリベラルのことはみていても、後半分の保守層のことは全く見ていないということになります。

そうして、日本のメディアは米国のリベラルメデイアの報道する内容をそのまま報道することが多いので、いつまでたっても、日本ではアメリカの半分である保守の言っていることや考えていることがわからないままなのです。

だからこそ、ブログ冒頭の記事のような報道がなされてしまうことが良くあるのです。

そうして、このトランプ氏を含めた保守派の「真珠湾」という言葉の意味は、従来とは明らかに変わっています。それについては、以前このブログに掲載したことがあります。そのブログのリンクを以下に掲載します。
やはり「中国と対決」の道を選んだトランプ政権―【私の論評】背景には米国内での歴史の見直しが(゚д゚)!
米国のドナルド・トランプ大統領(左)と中国の習近平国家主席(2017年11月9日)

この記事は、2017年12月27日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事には動画が掲載してあり、その動画ではトランプ大統領のいう「真珠湾忘れるな」の意味について説明しています。

以下にその動画と、記事の一部を引用します。




この動画では、米国では多様な歴史の見方があることを語っています。たとえば、日本のパールハーバー攻撃を卑怯なだまし討とみるのではない見方もあることを語っています。 
1941年12月7日(現地時間)、日本軍が真珠湾攻撃をした当時、アメリカのルーズヴェルト民主党政権は「卑怯な騙し討ち」と非難しました。日米両国が懸命な戦争を避けるための外交交渉をしていたのに、日本がいきなり真珠湾を攻撃してきたという見方です。 
しかし、日米交渉の経緯について知られるようになるにつれ、日米交渉を潰したのは、ルーズヴェルト民主党政権側であったことが知られるようになっていきました。 
先の戦争は決して日本の侵略戦争などではなかったにもかかわらず、アメリカのトルーマン民主党政権は東京裁判を行い、日本の指導者を侵略者として処刑しました。このことは、公正と正義を重んじたアメリカ建国の祖、ワシントンやリンカーンの精神を裏切る行為です。 
これまで戦争責任といえば、必ず日本の戦争責任を追及することでした。過去の問題で批判されるのは常に日本であって、過去の日本の行動を非難することがあたかも正義であるかのような観念に大半の日本人が支配されてしまっています。しかし、どうして戦争責任を追及されるのは常に日本側なのでしょうか。 
敗戦後の日本人が、「戦争に負けたのだから」と連合国側による裁きを甘受したのは仕方のないことだったかもしれません。しかし、歴史の真実は勝者の言い分にのみ存するのではないはずです。 
上の動画をみてもわかるように、米国では真珠湾攻撃は日米両国がそれぞれの国益を追求した結果起こったものであるとして、日本を「侵略国」であると決めつけた「日本悪玉史観」は事実上、見直されているのです。

この「日本悪玉観」を見直しているのは、あくまで米国の保守派であって、リベラル派の多くは未だに「日本悪玉観」で歴史をみています。

米国のリベラル派は、おそらく米国の人口の半分はいるとみられる保守層の「歴史観」の変貌にきづいているでしょう。かなりの脅威を感じているに違いありません。

トランプ氏の歴史観も当然ながら、「日本悪玉観」ではないので、当然のことながら、安倍総理に「真珠湾を忘れない」と語ったのも、 無論「卑怯な騙し討ち」を意味するものではないのです。

このような事実を知っていれば、日本の新聞も誤った報道をしないですんだかもしれません。

その意味では、今回の出来事は、日本のマスコミが米国の主に保守派においては、歴史観が変わって単純な「日本安悪玉観」は通用しなくなっていることに関して無知であることを露呈したともいえると思います。

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2018年8月29日水曜日

金融緩和政策を止めるな! 平成の30年はデフレの時代…原因は不要な「バブル潰し」―【私の論評】「世界的貯蓄過剰2.0」に気づかなければ、日本は平成の終わりとともに「失われた100年」を迎える(゚д゚)!


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2019年4月30日をもって、「平成」の世は終わりを迎える。一体、平成時代とは日本にとってどんな時代だったのだろうか。新しい時代を迎えるにあたって、一体何が変わり、何が変わらないのだろうか。

 思えば平成は「バブル経済」で始まった。現在、一般的にバブルは“浮かれたカネの亡者による狂宴”のように思われている。しかし、果たして本当にそうなのだろうか。その功罪は、きちんと検証されているのだろうか。

 一向に景気が上向かなかった時期を経て、日本経済はITバブルや、筆者も期せずして当事者となった小泉改革、そして民主党政権、東日本大震災、アベノミクスへと移り変わっていった。この“失われた20年”、厳しくいえば、“失われた30年”から学ぶべきことは少なくない。

 あるテレビ番組で、デフレはいつから始まったのかという質問があった。

 デフレの国際的な定義は「2期連続での物価下落」と定められている。ここでいう物価とは、一国経済の話なので、消費者物価と企業物価を合わせたGDPデフレーターでみるのが普通だ。それによると、デフレは1995(平成7)年からと判断できる。となると、平成のかなりの期間はデフレだったといえるだろう。

 その原因は、「バブル」ではなく、「バブル潰し」だった。バブルには原因がある。当時、価格が高騰していたのは株と土地だけだった。筆者のみたところでは、これは株式に関する税制上の抜け穴が主要因で、それを利用した証券会社や金融機関の「財テク」商品が開発され、株と土地のバブルを形成していた。

 株と土地だけの話なので、証券会社の「財テク商品」(当時「営業特金」といわれた)と金融機関の不動産融資を規制すればよかった。当時、役人であった筆者は証券会社の規制を担当した。その規制は89年12月に出され、金融機関規制も90年3月に出た。それで終わりのはずだった。

 ところが、「平成の鬼平」と持ち上げられた日銀の三重野康総裁は、バブル潰しのために金融引き締めを行った。当時のインフレ率は3%以下だったので、もしいまのインフレ目標(2%)が導入されていたとしても、過度な引き締めは不必要と判断されるべき状況だった。

 この件について、筆者は経済学者のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)元議長に聞いたことがある。彼の答えは、「株などの資産価格だけが上昇しているときに必要なのは資産価格上昇の原因の除去であり、一般物価に影響のある金融政策の出番ではない」というものだった。そもそも一般物価に資産価格は含まれていないので、バブル退治に金融政策を使うのはお門違いだった。

 しかも、日銀官僚の「無謬(むびゅう)性」(間違いはないとの過信)から、バブル後の金融引き締めが正しいと思い込んだので、その後もデフレ不況が継続した。

 アベノミクスの金融緩和で、ようやく平成のデフレから脱出しかけている。あと一歩のところだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】「世界的貯蓄過剰2.0」に気づかなければ、日本は平成の世の終わりとともに「失われた100年」を迎えることになる(゚д゚)!

論評の前に、まずは上の記事にもでてきたGDPデフレーターの解説をします。GDPといっても、「名目」と「実質」があります。簡単にいってしまえば、「名目GDP」は物価変動の影響を受けた表面上の値、「実質GDP」は物価変動の影響を除いて計算された内情的な値です。

例えば第一次大戦後のドイツにおけるインフレはよく知られていますが、あのインフレ(インフレーション:物価上昇、通貨価値の下落)で上昇した同国の名目GDPをそのまま経年比較に用いると、「あの時のドイツは物凄い経済成長を果たした」となってしまいます(もっとも為替レートもそれに伴い急変しているので、他国との比較ではそこまで酷い話にはならない)。かといつて、実質GDPを用いれば、そのような奇妙な結果は出てこないです。

見方を変えると、名目GDPと実質GDPが均衡していれば物価も均衡、名目GDPが実質GDPを上回れば物価は上昇、下回れば物価は下落となります。

これを分かりやすくするために設けられた指標が「GDPデフレーター」という指標です。これは「名目GDP÷実質GDP」で算出されるものです。

実際には名目GDPから実質GDPを算出するための指標であり、実質GDPが最初から計上されているわけではありません。名目GDPが物価の影響を受けているもの、実質GDPが受けていないものであることから、GDPデフレーターは物価変動の度合いを示す物価指数でもあります。

よって、GDPデフレーターの動きを見て、増加しているようならばインフレーションが、減少しているならばデフレーションが生じていると判断できます。

次に示すのは日米中3か国のGDPデフレーターの前年比です。この値がプラスならばインフレーション、マイナスならばデフレーションが生じていることになります。また、この値をインフレ率とも呼んでいます(マイナス値ならばマイナスのインフレ、つまりデフレが生じています)。



アメリカ合衆国はきれいな形でインフレーションが生じており、1980年代後半以降は年2-3%程度のインフレが確認できます。他方中国は(統計上の精度の問題もあるのでしょうが)大きな上下を繰り返しており、20%を超えるインフレが生じた年もありますが、大よそはインフレを継続。2012年以降はアメリカ合衆国同様に年数%のインフレに留まっています。

日本はといえば元々インフレ率は低迷していて、1990年代後半に至ると失速し、以後は大よそマイナス圏、つまりデフレーションが生じる形となっています。2014年にようやく出れフーションから脱したものの、インフレ率は米中と比べるとまだ低迷状態にあることは否めないです。

GDPデフレーターの前年比推移のうち日本のみを抽出したのが次のグラフです。


バブル経済が崩壊して間もなくのタイミングの1997年あたりで、GDPデフレーター前年比はマイナスに落ち込み、デフレーション状態となっています。プラスに復帰するのは2014年に入ってからなので、言葉通り「失われた20年間」が生じたことになります。いわゆる「ロスジェネ」が発生したのもこの時期に一致しており、「ロスジェネ」が発生したのは、このデフレによるものであることは言うまでもありません。

デフレーション状態が続くと「政府の債務実質負担が増加する」「企業債務の実質的な負担が一層重たくなるので、債務を有する企業の活動が鈍くなる」「物価は下落するが名目賃金、名目金利がさほど下がらないと、実質賃金、実質金利が上昇するため、企業収益を圧迫」することになります。

「消費者は手持ち資産の購入力が増すために消費が増大する」ように見えますが、「実質的な効果はさほど大きくない」です。「住宅ローンを抱えている世帯が多く、その世帯の家計への負担が大きくなる」「物価下落に対する先行き不透明感や『待ちのお得さ』心理から買い控えが起きる」などの弊害が生じます。

多かれ少なかれ、これは多くの人々経験したことがあり、なるほど感を覚えるものがあります。バブル崩壊後から続く日本の長期景気低迷感は、デフレ状態が原因なのです。

デフレーションにもよい面はあり「デフレ期は名目賃金は下がるがそれ以上に物価も下がっているので実質的な賃金は上昇し、国民の生活は豊かになる」どと主張する人もいますが、それは大きな勘違いです。

実際は私達が実際に過去に見てきたとおり、デフレ期には実質賃金が下がっており、逆にインフレ期にこそ実質賃金が上昇しています。デフレで良い事など一つもありません。だからこそ、デフレは経済の癌などといわれて恐れられてきたてのです。

金融政策などによる明確なインフレへのかじ取りは、色々な意味でこの先数十年の日本の流れかを変えていくことになるでしょう。今後の動向にも大いに注目したいところです。

ブログ冒頭の高橋洋一氏記事では、平成におけるデフレのきっかけは、「株などの資産価格だけが上昇しているときに必要なのは資産価格上昇の原因の除去であり、一般物価に影響のある金融政策の出番ではない」にもかかわらず、バブル退治に金融引き締めをしてしまったことにあるとしています。

まさに、その通りです。確かにあの時に、金融引締めをしないでいれば、デフレは生じていなかったはずてす。官僚の誤謬は本当に恐ろしいです。

さて、平成の世があと少しで終わり、元号が何になるのか今はわかりませんが、元号が新しくなるとともに、日本はデフレからきっぱりと決別して、緩やかなインフレの時代に移行していただきたいものです。

ただし、新しい元号になってからも、官僚の誤謬による間違った金融政策が実施され、とんでもないことになり、失われた30年どころか、失われた40年を迎える可能性は否定しきれません。

そのもっともありそうなシナリオは、ここしばらく日本がデフレスパラルの底に沈んていた間に、世界は完璧に変わってしまったことを官僚が認識できずに、再び金融引締めをするというものです。

これについては、このブログでも以前紹介した野口旭氏の記事が参考になります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!

野口旭氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に従来とは明らかに変わった世界について関連する部分を引用します。
1960年代末から始まったアメリカの高インフレや、1970年代初頭の日本の「狂乱物価」が示すように、金融緩和や財政拡張の行き過ぎによる経済的混乱は、少なくとも1980年代前半までは、先進諸国においても決して珍しいものではなかった。つまり、その時代には確かに「財政と金融の健全な運営」がマクロ経済政策における正しい指針だったのである。 
ところが、近年の世界経済においては、状況はまったく異なる。「景気過熱による高インフレ」なるものは、少なくとも先進諸国の間では、1990年代以降はほぼ存在していない。リマーン・ショック以降は逆に、日本のようなデフレにはならないにしても、多くの国が「低すぎるインフレ率」に悩まされるようになった。また、異例の金融緩和を実行しても景気が過熱する徴候はまったく現れず、逆に早まった財政緊縮は必ず深刻な経済低迷というしっぺ返しをもたらした。世界経済にはこの間、いったい何が起こったのであろうか。 
一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。 
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。 
この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。
学問的にはそのようなことは明確にはいえませんが、それを裏付ける現象は多数存在しており、もう世界は、すでに「世界的貯蓄過剰2.0」の時代に入ったとみるべきなのです。この世界では、積極財政や金融緩和の支えがない限り、十分な経済成長を維持することすらできないのです。

ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥るのです。それが、需要が旺盛で、供給がそれになかなか追いつかなかった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなるようになり、現在では経済を維持するために金融緩和、積極財政を継続して行うことこそ、正しい選択なのです。

古い時代と現在とでは何が違うかといえば、その最たるものは、大きな戦争がなくなったということかもしれません。世界各地て、大きな戦争があれば、供給能力が大幅に削減され、すぐに需要を満たすことができなくなり、貯蓄が積み上がることもなくなって、しまうことなどが起こっていたのです。

しかし、今の世界には大きな戦争はないし、これからも起きそうにありません。実際、世界の唯一の超大国も、中国に武力を直接行使することなく、貿易戦争、経済戦争を挑んでいます。それは、現在では多数の核兵器が存在していて、大規模な武力行使をすれば、それはやがて核戦争に発展し、敵国を滅ぼすにとどまらず、自らも含む全世界を滅ぼすことにつながりかねないからです。

さらに、良い悪いは別にして、近代の西欧のライフスタイルは、世界中に広まりましたが。その後の世界は、科学技術は發展しましたが、これを変えるような動きはあまりありません。ポストモダニズムも、思ったほどには影響力がありませんでした。これまでにない、全く新たなライフスタイルやものの考え方がでてきて、これが世界を席巻するようなことでもあれば経済はたちまち供給不足となるのでしょうが、そのような動きは今のところみられません。

世界がこのように変わってしまったことに、気付かず日銀官僚が、金融緩和をしても、なかなか物価が上がらないから緩和をやめてしまうとか、財務官僚もこれに気付かず、もっともらしい理由をつけて、緊縮財政ばかり続けるようなことがあれば、日本はすぐにもデフレに舞い戻ることになるでしょう。そうして、今度は「失われた30年」などという生易しいものではなく、「失われた100年」を迎えることになるでしょう。

そのような官僚に、だまされることなく、政治家がまともな政策を打ち出せば良いのですが、自民党のポスト安倍の面子をみてもあまり期待できそうにもありません。野党は、問題外です。マスコミは圏外です。

このようなことになるか、それとも、「世界的貯蓄過剰2.0」に気づき、当面積極財政、金融緩和を続けるかにより、ここ数十年先の日本の趨勢が決まることでしょう。

日本が、これから再び深刻なデフレスパイラルに落ち込むことなく、まともに成長していくには、まずは私達が、世界が変わったことを理解しなければなりません。

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