2021年7月11日日曜日

世界で拡大するウイグル問題 太陽光パネルの価格も上昇中…影響を過小評価すべきでない ―【私の論評】日米に先行され、稼ぎ頭を失いそうな中国の小型原発開発(゚д゚)!

世界で拡大するウイグル問題 太陽光パネルの価格も上昇中…影響を過小評価すべきでない 

高橋洋一 日本の解き方

豪雨の影響でパネルが地面ごとずり落ちた太陽光発電所=2018年7月26日兵庫県姫路市

 新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐり、米国が中国の太陽光パネルの部品を輸入禁止とした。またフランスの捜査当局はウイグルの強制労働の疑いでユニクロなど衣料品企業の捜査を始めたと報じられている。欧米のこうした動きはどこまで本気なのか。日本はどう対応すべきだろうか。

 今回の動向はやはり米国の影響が大きい。トランプ前政権では、対中姿勢は強硬だったが、連携がなかった欧州は対中姿勢では同調しなかった。しかし、バイデン政権になって、欧州との協調路線が明確になるとともに、対中姿勢でも欧米は徐々に強硬姿勢に転じている。おそらく来年2月の北京冬季五輪まで、人権問題はうってつけの理由となるし、中国は対抗措置を取りにくいので、今の流れは続くだろう。

 フランスで捜査対象になったのは、ユニクロの他、スペイン、フランス、米国のアパレルメーカーだ。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が2020年3月に発表した報告書では、82社がウイグルの人権を侵害する現地企業と取引をしていた。今回捜査対象になったのは、その中の4社であり、NGOが提訴したものだ。

 こうした訴えは、フランス以外でも起こり得るだろう。

 太陽光パネルについては、バイデン政権が21年5月、強制労働を利用した疑いで中国製パネルを貿易制裁の対象製品に指定するか検討していると明らかにしたが、その結果、バイデン政権として大規模な禁輸措置になった。欧州でも中国製パネルを問題視する声がでており、この動きも欧州に広がる可能性がある。

 問題は、太陽光パネルの主原料であるシリコンは、ウイグル地区で生産されたものが世界の5割程度を占めていることだ。短期的には、代替地を確保するのが困難だ。そのため、シリコン価格は1年間で5倍近くに高騰。パネル価格も3~4割上がった。

 もっとも、この価格の動向は歓迎すべきだろう。というのは、これまでの太陽光発電は安価な中国製パネルで支えられて、必要以上に推奨されてきているとも言えるのだ。

 中国製が安価なのは中国政府の補助金のためだといわれてきたが、それも不公正で問題だが、ウイグルでの労働搾取でもあれば、それは人権問題からも容認できなくなるだろう。

 パネル価格は、そうした懸念のシグナルと見た方がいい。となると、脱炭素戦略としては、(1)太陽光などの再生可能エネルギー(2)既存火力の炭素ガス除去(3)安全な原発と3つに大別できる。安価な中国製パネルを前提として、(2)と(3)は消極的扱いだったが、もはや(2)と(3)も積極的選択肢になりうる。

 本コラムでは、安全な小型原子炉を紹介してきたが、エネルギー戦略として、ますます有望になっていくのではないだろうか。

 ウイグル問題は、各分野にさまざまな波及があるので、その影響を過小評価しない方がいい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日米に先行され、稼ぎ頭を失いそうな中国の小型原発開発(゚д゚)!

このブログにも以前掲載したように、太陽光発電業界の中国強制労働への依存がバイデンのクリーンエネルギー経済を脅かすことが懸念されていましたが、バイデン政権は太陽発電によるクリーンエネルギーに固執する考えはないようです。

それはなぜかといえば、バイデン政権は安全な小型原子炉を、クリーンエネルギー戦略の中心として位置づけたからだと考えられます。そもそも、いわゆる代替エネルキーとされる、風力発電、太陽光発電はあまりに不安定で、現在までの開発経緯から何かとてつもない突破口が見つからい限り、次世代を担うエネルギーになることは、考えられません。

特に、太陽光発電のネガティブな点は、以下の記事をご覧になってください。
太陽光発電業界の中国強制労働への依存がバイデンのクリーンエネルギー経済を脅かす―【私の論評】日米ともに太陽光発電は、エネルギー政策でも、安全保障上も下策中の下策(゚д゚)!
太陽光パネルの上に横たわる女性

この記事では、太陽光発電がクリーン・エネルギーとは呼べないし、結果として、ウイグル人のブラック労働に依存することになることを述べました。まさに、太陽光発電は、発電手段としては、下の下です。先にも述べたように、当初懸念していた、バイデン政権は太陽光発電への依存はしないようです。これは、冷静に考えれば、当然といえば当然です。

小型原子炉についても、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日米首脳共同声明で追い詰められた中国が、どうしても潰したい「ある議論」―【私の論評】小型原発を輸出しようという、中国の目論見は日米により挫かれつつあり(゚д゚)!

         小型モジュール炉「NuScale Power Module」
     高さ約23×直径約4.6m。加圧水型炉(PWR)を構成する圧力容器や蒸気発生器、加圧器など
     を1つのモジュールに収めている。(出所:米NuScale Power)


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、まずはこの記事から小型原子炉に関する部分を以下に引用します。

菅政権が「2050年カーボンニュートラル」を掲げたことを受け、経済産業省は20年12月25日にその具体的な産業施策として「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表した。

その中で注目されるのが新型炉です。具体的には、[1]小型モジュール炉(SMR)、[2]高温ガス炉(HTGR)、そして[3]核融合炉、です。経済産業省は20年12月、カーボンニュートラルを実現するにあたって、既存の原子力発電所の再稼働と並行し、これら3つの新型炉の開発を推進するとしました。

3つの新型炉のうち、最も開発が進んでいるのが[1]小型モジュール炉(SMR)です。これは、文字通り小型の原子炉にモジュール化の発想を取り入れたもので、使い勝手がよく安全性も高いとされています。

小型モジュール炉についての詳細はこの記事をご覧になってください。 

さて、この小型モジュール炉の優れた点は、使い勝手の良さや安全性が高いだけではなく、他にも大きなメリットがあります。それは、工場で大部分を製造し、現場では据え付けだけですむということがあります。

既存の原発で主流の軽水炉は大型化が進み、1基当たりの出力が100万キロワット以上が主流なのに対し、数万~数十万キロワットと小さいのですが、原子炉の容積に対する表面積が大きく、原子炉を冷却しやすいのが特徴です。

プレハブ住宅のように、主要機器を事前に工場で製造してから現地で据え付けるため、初期投資抑制や工期短縮が可能です。建設費が1兆円を超えることも珍しくない軽水炉に対し、数分の一で済むようです。

安定的に発電できるため、天候に発電量が左右されがちな再生可能エネルギーにとって変わることが期待されるほか、比較的狭い地域ごとに発電所が散在する形が想定されており、万一の事故の影響も少ないとされます。

無論モジュール一個だけでは、発電量は少ないのですが、それは、このモジュールの数を増やすということで、増やすことができます。ただ、従来軽水炉のように、かなり広い地域に送電するのではなく、比較的限られた地域に送電することが想定されていますから、一箇所で多数のモジュールで発電することはないと考えられます。

この小型モジュール原子炉は、輸送もしやすいです。工場でほとんどを組みたて、船で運び現地で設置するという方式が考えられます。これだと、従来よりかなり簡単に運ぶことができます。現地での複雑な組立作業も必要がないので、原子力発電所の工期も以前より、格段に短くなります。

日立GEニュークリア・エナジー社と米国GE Hitachi Nuclear Energy社はSMRであるBWRX-300を開発中です。同社は、原子力発電所の設計・製造経験と、さまざまな製品のモジュール製造経験が豊富で、その経験を活かした原子力イノベーションを進めています。米国でBWRX-300初号機の建設をめざして、米国原子力規制委員会にはすでに安全審査項目に関する技術レポートを提出しています。また、カナダでの建設も視野に入れ、カナダ原子力安全委員会でも審査を開始しています。

従来型の巨大原子力発電所は時代遅れになる

中国は、これを強力に推進しようとしているようです。一つは、たとえば南シナ海に小型モジュール原子炉を積んだ船舶を派遣して、南シナ海の中国の環礁を埋め立てた地域の軍事基地などへの電力の供給に用いようとしています。

さらに、一帯一路の一環として、対象地域にこの原子炉を輸出しようと考えているようです。ただし、この計画いまのところは、スムーズには進んではいないようです。

中国の原子力開発を担う国有企業、中国核工業集団(CNNC)は3月19日、国産原子炉「華龍1号(Hualong One)」を採用したパキスタン・カラチ原発2号機が送電網に接続されたと発表しました。中国が初めて海外に輸出した原子炉が稼働することで、同国の原子力業界の海外進出が加速しようとしているようです。

原発は大きなビジネスとなるだけでなく、輸出相手国に大きな存在感を示すことができます。国の成長を支えるエネルギーを保証することで、政治的な結び付きの強化や国民の対中感情向上につながる可能性もあります。

華龍1号は英国ブラッドウェルB原発建設プロジェクトへの採用も決まっており、年内中にも設計承認確認書が発給されるとみられています。原発輸出が順調に進めば、中国の国際的影響力も高まっていきそうです。

ただ、そこに伏兵が現れたのです。先に中国は小型モジュール原子炉を開発を進めているのに、開発はスムーズには進んでいないことを掲載しました。

実は、これを最初に実用化しそうなのは、米国なのです。米国がこれの開発に成功して、世界中に輸出するようになれば、中国の出る幕はなくなります。中国にとっては、大きな稼ぎ頭がなくなってしまうのです。

しかも、実は日本もこの方向に進むと見られています。バイデン政権を見越して、米大統領選の直前の昨年10月26日、菅政権はギリギリのタイミングで「2050年カーボンニュートラル」を打ち出しました。それを受けて、経済産業省は12月25日、カーボンニュートラルを実現するにあたって、既存の原子力発電所の再稼働と並行し、新型原子炉の開発を推進するとしたのです。

日米欧どこでも、再生エネルギーには現状ではあまり多くを頼れません。あまりに不安定ですし、発電効率が絶望的に低いからです。主力は原発と火力にならざるをえません。カーボンニュートラルのためには火力で生じるCO2を回収・貯留する必要がありコスト高にならざるを得ません。となると、やはり原発が必要です。

といっても、従来の大型原発の再稼働も政治的に難しく、新設は事実上不可能に近いので、いずれ減らしていかざるを得ないです。その場合、カーボンニュートラルで、より安全な小型原子炉の開発が大きなカギを握ることになるのです。

日米が、小型モジュール原子炉に先行すれば、一帯一路で失敗ばかりしている中国は、最後の稼ぎ頭を奪われることになります。


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2021年7月10日土曜日

米軍アフガン撤収 タリバン攻勢に歯止めを―【私の論評】米国は、中国を弱体化させる方向で、対アフガニスタン政策を見直しつつある(゚д゚)!

米軍アフガン撤収 タリバン攻勢に歯止めを

9カ月間のアフガン派遣から帰国し、荷物を降ろす米兵(2020年12月、ニューヨーク州フォートドラム)

 米軍のアフガニスタンからの撤収完了を前にイスラム原理主義勢力タリバンの政府軍への攻撃が勢いを増しており、大きな不安を禁じ得ない。

米軍は20年にわたり拠点を置き、政府を支え、治安を守ってきた。撤収はアフガン国内のみならず、中央アジアを含む地域全体、あるいは世界を巻き込んだテロとの戦い全般に影響を及ぼさずにはおかない。

重大な岐路にあると認識すべきだ。アフガンがかつてのような内戦状況に陥り、「テロの温床」となる事態は絶対に避けたい。

米国は急ぎ、周辺国の協力を得て、バグラム空軍基地に代わる出撃拠点の確保など、いざというときの態勢を整えなければならない。日本を含む国際社会は、アフガンへの変わらぬ支援を表明し、関与の継続を明確にすべきだ。

バイデン米大統領は今年4月、米中枢同時テロから20年の9月11日までに撤収すると表明し、すでに9割以上が作業を終えた。

一方、タリバンは北部を中心に着実に支配地を拡大させ、劣勢に立たされた政府軍は1000人を超える兵士が国境を越え、タジキスタンに逃げる事態になった。

気がかりなのは、米軍撤収が早めのペースで着々と進められていることだ。内戦や政府崩壊を危惧する声も上がる中、慎重さを欠くのではないか。タリバンの攻勢に歯止めをかける必要がある。撤収がトランプ米前政権とタリバンとの合意に沿ったものとはいえ、「人権外交」を掲げるバイデン政権が、住民に厳しい規律を押しつけるタリバンとの合意を進めようとする姿勢に違和感を覚える。

バイデン氏は撤収表明の際、「中国との競争」に言及し、撤収で生まれる余力を対中国シフトに振り向ける考えを強調した。

その発想は正しいが、危うさもはらんでいる。撤収後のアフガンが混乱し、再度、本格介入を迫られれば、元も子もないからだ。

米軍不在となるアフガンには、中国、ロシアも無関心ではいられまい。中国は過激派流入を警戒する一方、アフガンを「一帯一路」の中核地域とみている。アフガンの北の中央アジア5カ国はロシアが「勢力圏」とみなす。

アフガンに介入するなら、この国の安定とテロとの戦いへの貢献につながるものでなくてはならない。やみくもに影響力拡大を競うなどもってのほかだ。

【私の論評】米国は、中国を弱体化させる方向で、対アフガニスタン政策を見直しつつある(゚д゚)!

超大国がアフガニスタンで苦杯を喫するのは米国が初めてではありません。米国と入れ替わるようにアフガニスタンを去った旧ソ連は、親ソ政権擁護のために1979年から10年間駐留したましたが、武装勢力ムジャヒディーンの抵抗で1万4000人以上の戦死者を出し、ソ連崩壊の原因の一つにもなりました。

 それ以前に英国も、帝国全盛時代の19世紀から20世紀初めにかけて三次にわたりアフガニスタンで戦いましたが、1842年にはカブール撤退で1万6000人が全滅させられました。その後シンガポールで日本軍に敗北するまで「英軍最悪の惨事」と言われていましたた。

 こうしたことから、アフガニスタンは「帝国の墓場(Graveyard of Empires)」と呼ばれるようになり、米国もその墓場に入ったのですが撤退を余儀なくさせらました。

最貧国にあげられるこの国がなぜ超大国を屈服させられるのでしょうか。まず、国土の四分の三が「ヒンドゥー・クシュ」系の高い山で、超大国得意の機動部隊の出番がありません。ちなみに「ヒンドゥー・クシュ」とは「インド人殺し」の意味で、この山系を超えるインド人の遭難者が多かったことによるものとされています。

アフガニスタン ヒンドゥー・シュク山脈

 次に、古くは古代ギリシャのアレクサンドロス大王やモンゴルのチンギスハーン、ティムールなどの侵略を受けて、国民が征服者に対して「面従腹背」で対応することに慣れていることです。

 さらに、アフガニスタン人と言っても主なパシュトゥーン人は45%に過ぎず、数多くの民族がそれぞれの言語を使っているので、征服者がまとめて国を収めるのはもともと無理なことが挙げられます。

この国を征服しようとした超大国は、なす術もなくこの国を去ることになったわけですが、この後もアフガニスタンを自らのものにしようという帝国が現れるのでしょうか。

 一つ考えられるのが中国でしょう。中国が米軍撤収完了後のアフガニスタン安定化に向け、関与を深める姿勢を見せています。アフガンが「テロリストの温床」と化せば、隣接する新疆(しんきょう)ウイグル自治区への中国による弾圧に影響を与えかねないことなどが、その理由です。米軍撤収による混乱拡大を最小限に抑えるため、イスラム原理主義勢力タリバンを支援するとの観測も上がっています。

「中国は地域の国や国際社会とともに、アフガン内部の交渉や平和再建を推進するために積極的に努力したい」。中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は8日の記者会見でアフガン情勢についてこう語り、安定化に向けて関与する意向を強調しました。

6月3日には王毅国務委員兼外相がアフガンとパキスタンの外相とオンライン会合を開催。「3カ国は意思疎通と協力を強化し、共通の利益に合致する方向へ情勢を進める必要がある」との考えを示しました。

古くはシルクロードの拠点だったアフガニスタンは、今中国が推し進めている「一帯一路」でも要地と位置付けるからです。 米国が去った後のアフガニスタンの空白を中国が埋めようとするかもしれないですが、おそらく「帝国の墓場」入りを避けることはできないでしょう。


さらに、中国は英国や米国とは異なり、新疆ウイグル自治区を介して国境を接しています。崩壊したソ連もこの状況に似ていました。

現在のロシアは、アフガニスタンと国境を直接接していませんが、当時のソ連は、連邦に加盟していた中央アジアの国々を介してアフガニスタンと接していました。


1979年、ソ連のブレジネフ政権が、親ソ政権を支援し、イスラーム原理主義ゲリラを抑えるために侵攻しました。反発した西側諸国の多くはモスクワ=オリンピックをボイコットしました。経済の停滞するソ連でも大きな問題となり、ソ連崩壊の一因となりました。

ソ連軍に対しイスラーム原理主義系のゲリラ組織は激しく抵抗、ソ連軍の駐留は10年に及んで泥沼化し、失敗しました。

ソ連のアフガニスタン侵攻に米国など西側諸国が反発し、70年代の緊張緩和(デタント)が終わって新冷戦といわれる対立に戻りました。これを機にソ連の権威が大きく揺らいで、ソ連崩壊の基点となりました。 

当時はソ連のアフガニスタン侵攻の理由は明確にはされず、諸説あったが、現在では次の2点とされています。

まず第一は、共産政権の維持のためです。アフガニスタンのアミン軍事政権が独裁化し、ソ連系の共産主義者排除を図ったことへの危機感をもちました。ソ連が直接介入に踏み切った口実は、1978年に締結した両国の善隣友好条約であり、またかつてチェコ事件(1968年)に介入したときに打ち出したブレジネフ=ドクトリン(制限主権論)でしたた。

第二位は、イスラーム民族運動の抑圧のためです。同年、隣国イランでイラン革命が勃発、イスラーム民族運動が活発になっており、イスラーム政権が成立すると、他のソ連邦内のイスラーム系諸民族にソ連からの離脱運動が強まる恐れがありました。

現在の中国も似たような状況に追い込まれることは、十分に考えられます。アフガニスタンのイスラーム過激派などに呼応して新疆ウイグル自治区の独立運動が起きる可能性もあります。

それに影響されて、チベット自治区、モンゴル自治区も独立運動が起きる可能性もあります。そうなると、中国はかつてのソ連や、米国のようにアフガニスタンに軍事介入をすることも予想されます。そうなれば、かつてのソ連や米国のように、中国の介入も泥沼化して、軍事的にも経済的にも衰退し、体制崩壊につながる可能性もあります。

意外と、トランプ氏はそのことを見越していたのかもしれません。米軍がこれ以上アフガニスタンに駐留をし続けていても、勝利を得られる確証は全くないのは確実ですし、そのために米軍将兵を犠牲にし続けることは得策ではないと考えたのでしょう。

さら、米軍アフガニスタン撤退を決めたトランプ氏は、中国と対峙を最優先にすべきであると考え、米軍のアフガニスタン撤退後には、その時々で中国に敵対し、中国を衰退させる方向に向かわせる勢力に支援をすることに切り替えたのでしょう。バイデン氏もそれを引き継いだのでしょう。誰が考えても、米軍がアフガニスタンに駐留し続けることは得策ではありません。

今後米国は、中国を弱体化させる方向で、対アフガニスタン政策を見直すことになると思います。その先駆けが、米軍のアフガニスタン撤退です。

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2021年7月9日金曜日

【日本の解き方】自民党は衆院選で勝てるのか 五輪とワクチン接種だけでは不十分、一時的な消費減税で国民に還元―【私の論評】緊急事態宣言、五輪無観客開催を決めた現状では、減税などの思い切った手を打たなければ自民は衆院選で敗北(゚д゚)!

【日本の解き方】自民党は衆院選で勝てるのか 五輪とワクチン接種だけでは不十分、一時的な消費減税で国民に還元

小池東京都知事

 4日に投開票された東京都議選の結果を受けて、今度の衆院選など国政にどのような影響が出てくるだろうか。

 投開票の結果は、都民ファーストの会が31議席、自民党が33議席、公明党が23議席、共産党が19議席、立憲民主党が15議席、日本維新の会が1議席、その他が5議席を獲得した。

 事前の予測では、都民ファ惨敗、自民圧勝というものもあったが、ふたを開けてみれば、自民はかろうじて都議会第1党だが伸び悩み、自公で過半数という目標も達成できなかった。一方、都民ファはかなり踏みとどまった。

 自民がそれほど勝てなかった要因はいろいろ考えられるが、まずは低投票率が不利に働いたのは否めない。自民は支持者の多くが若い世代であるが、それが投票に行かないのでは話にならない。

 次に、政策論争というより、新型コロナで、東京に「第5波がくる」というメディア報道が関係したのかもしれない。菅義偉政権の内閣支持率も、新型コロナ感染状況と密接に関連している。

 それとともに、見過ごせないのが、小池百合子都知事の老獪(ろうかい)ともいえる選挙戦略だった。

 小池氏の過労による緊急入院以降、同情や判官びいきもあり、都民ファの支持率が上昇し始めた。選挙戦最終日の3日に一部の都民ファ候補者を応援したものの、選挙期間中の街頭演説はなく、事実上選挙活動をしなかった。それでも、都民ファの健闘につながった。政治は結果がすべてだ。

 一般に政治家の病気や過労、入院にはいろいろな見方がある。小池氏は実際に過労だったのだろうが、病気を実にうまく使ったともいえる。

 小池氏をめぐっては、東京五輪・パラリンピック後に国政復帰の観測もある。小池氏の地元は菅原一秀元経済産業相が議員辞職した東京9区と目と鼻の先だ。

 自民にとって、今回の都議選は大誤算だっただろう。かろうじて都議会第1党になったが、公明と合わせて過半数は取れなかった。今後は10月にあるとされる衆院選までに、五輪・パラリンピックでの不測の事態を避けるとともに、徹底したワクチン接種を行い新型コロナを抑え込む必要がある。

 幸いにもワクチン接種は順調に加速しており、重症化リスクの高い高齢者の感染率は顕著に下がっている。その意味で、若者を中心とした感染者数だけを見ていると本質を見誤ってしまう。いずれにしても10月までにはかなりの国民にワクチンが行き渡っているだろうから、新型コロナは別の風景になっているだろう。

 しかし、五輪とワクチンだけでは必ずしも十分とはいえず、適切な経済対策を打ち出す必要もあるだろう。経済政策ではいい財源も出てきた。2020年度税収は60兆8216億円と過去最高になった。

 5兆6966億円もの上振れとなったことで、一時的な消費減税を含め国民に還元するチャンス到来だ。それが若者を選挙に向かわせることにもつながるのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】緊急事態宣言、五輪無観客開催を決めた現状では、減税などの思い切った手を打たなければ自民は衆院選で敗北(゚д゚)!

確かに、野党がいうように政権交代に関しては、かなり無理がありますが、それにしても
自民党が次の衆院選で惨敗する可能性は出てきたと考えられます。

その要因は、なんといっても、上の高橋洋一の都議選の自民の敗北とともに、最近てば東京都都などで、緊急事態宣言を発令しつつ、五輪を開催するという矛盾した政策をとったことです。
まだまだ国民の自粛は通じる

昨日も分析したように、最近のコロナ感染は、高齢者のワクチン接種がすすんだことにより、高齢者の重症化がかなり防げるようになったせいですが、若い世代の感染が多いです。そうして、若い世代は感染しても重症化する率はかなり低いです。

今年のはじめころの状況とはかなり異なっており、うまくリスク管理をすれば、緊急事態宣言を出したり、他の都府県のよう、重点措置をとらなくても、医療崩壊などを起こす可能性は格段に減ったといえます。

にもかかわらず、緊急事態等を発令しつつ、五輪無観客開催をするという政策をとってしまいました。無観客であったにしても、世界中から選手団が来日するので、感染リスクは高まると考える人も多いでしょう。しかし、こちらのほうもまともなリスク管理をずれば、マネジメントは可能だと考えられます。

しかし、こうなると、マスコミや野党などの無責任な主張とあいまって、染拡大が起こっているのに、医療を脅かすオリンピック開催強行に拘泥し続ける姿勢は完全に矛盾していると都民等には受け取られるでしょう。都民は総じて鼻白むことでしょう。

立憲民主の福山哲郎氏は、 緊急事態宣言出すべきとツイートした、 5時間後は緊急事態宣言は最悪などと著しく矛盾したツイートを発信しています。

他の重点措置が取られている道府県でも同じことです。本来は、都道府県の首長が、緊急事態宣言や重点措置などを望んだにしても、政府としては、リスク管理上の観点から、その必要なしと突っぱねるべきだったでしょう。

そうなれば、各都道府県知事のほうから、政府に対して強い要請ということになり、たとえ緊急事態宣言等を出すにしても矛盾したようにみられるということはなかったと思います。しかし、一番良かったのは、緊急事態宣言等はださず、五輪無観客開催は突っぱねることだったと考えられます。

そうしていれば、すぐに経済対策など打つ必要はなくなり、衆院選後に大規模な補正予算を組むことを公約にして、衆院選を戦えば、楽に勝てる可能性がありました。

実際、菅義偉首相は8日夜の記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済を立て直すための2021年度補正予算編成について、「経済の状況を見ながら臨機応変にしっかり対応する」と述べ、前向きに検討する考えを示した。自民党の二階俊博幹事長は30兆円規模の補正予算を編成すべきだと主張しました。

  4度目の緊急事態宣言発令を決め、記者会見する菅義偉首相(左)。右は政府の
  新型コロナ対策分科会の尾身茂会長=8日午後、首相官邸

現在コロナで、経済が落ち込み、30兆円から40兆円のGDPギャップがあるので、これは、正しい措置です。

しかし、緊急事態宣言や重点措置が出された現時点では、この補正予算の以前に、何らかの大型の政策を打ち出すべき状況になってきたといえます。

一部野党の無責任は、多くの国民の知るところとなっています。下は立憲民主の福山哲郎氏のツイートです。緊急事態宣言出すべきとツイートした後のわずか5時間後 緊急事態宣言は最悪とツイートしています。


多くの国民は、一部野党の無責任さやいい加減さにも辟易としているので、次の衆院選で自民が負けたにしても、それで政権交代になったり、そこまでいかなくても、後の政権交代へのきっかけになることもないでしょう。ただ、自民党が議席数を減らせば、国会運営や政権運営が難しくなるのは当然です。

こうした動きのほかに、小池百合子氏、二階氏、小沢氏など新進党・自由党の結成にもかかわた古株たちのもきな臭い動きをしています。

こうしたことを防ぐためには、確かに高橋洋一氏が語るように、減税などは良い方法です。何しろ、実行しようとした途端に実現できます。これほど素早く効果をあげられる政策は現状では減税以外にありませんし、実際、欧米では減税がなされ、大きな効果をあげています。日本だけが実施しないのが、奇異でもあります。確かに消費税減税など大型減税をすれば、目に見えて経済が回復し、国民からは一定の評価が得られるでしょう。

その後、選挙と補正予算を組んで実行すれば、日本経済の回復ははやまることが予想されます。それで、菅内閣への支持率も高まるもとのと考えられます。補正予算の他、何もやらなければ、衆院選での敗北ということになり、政権運営が難しくなることでしょう。

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2021年7月8日木曜日

五輪、1都3県は「完全無観客」へ 今夜正式決定―【私の論評】まともなリスク管理もせず緊急事態宣言を出したり、五輪の無観客実施を決めてしまうのはあまりに拙速(゚д゚)!

五輪、1都3県は「完全無観客」へ 今夜正式決定

五輪モニュメント

 東京五輪について、政府や大会組織委員会、東京都などは8日、東京と神奈川、千葉、埼玉の1都3県で行われる競技会場を「完全無観客」とする方向で最終調整に入った。同日夜に行われる国際オリンピック委員会(IOC)などとの5者協議で正式に決める。

 複数の大会関係者が明らかにした。都内では新型コロナウイルスの感染状況が悪化していることから、週明けにも緊急事態宣言が発出される見通し。小池百合子知事は7日夜、記者団に「コロナ対策を進めながら安全に開かれるように進めていきたい」と話していた。

【私の論評】まともなリスク管理もせず緊急事態宣言を出したり、五輪の無観客実施を決めてしまうのはあまりに拙速(゚д゚)!

昨日は、東京に緊急事態制限を出す必要性がないことについて、掲載しました。しかし、緊急事態宣言は出されることに決まりました。そうして、今度は東京と神奈川、千葉、埼玉の1都3県で行われる競技会場を「完全無観客」とする方向で最終調整というニュースです。これは、もう決まりのようです。



一体どうなっているのでしょうか。私自身は、通常通りにすることは避けるべきだとは思うのですが、それにしても、現在の状況で「完全無観客」は完璧に行き過ぎだと思います。

文部科学省は6日、スーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を使い、国立競技場(東京都新宿区)に観客1万人を入れた場合の新型コロナウイルスの感染リスクを解析した結果を発表した。間隔を空けて座るなど感染対策を行えば、リスクは「ゼロに近い」と評価した。

昨日は、このブログで、感染症対策にはリスク管理が重要であるにもかかわらず、それが行われていないことを指摘しました。感染症だけのことを考えれば、東京五輪は開催しないほうが良いかもしれませんが、そんなことはわかりきったことであり、誰もが理解できることです。

さらに、開催するにしても、無観客にするかどうかの対応も変わって然るべきです。感染症対策だけを考えれば、無観客が一番良いには決まっています。

ただ、リスク管理の立場からいえば、そうはならないはずです。リスクがどの程度マネジメントできるかによって対応は変わるはずです。

ただし、このことについてはあまり明確には説明しなかったので、理解しにくい内容になったかもしれません。しかし、これを理解する上で非常に理解しやすい例を高橋洋一がツイートしていましたので、以下に掲載します。

  

この事例をみれば、リスク管理的にはどのようなことをすれば良いが良く理解できます。若い人の場合は、コロナに感染しても重症化・死亡はかなり低いので、若い世代のコロナ感染症は、ジフテリア、鳥インフルエンザ、結核なみのの二類に分類するのではなく、鳥インフルエンザなどを除く通常のインフルエンザなみの五類に分類して、インフルエンザなみの扱いにすべきです。

そうすれば、医療崩壊など起きようがありません、実際2016 年には、インフルエンザが蔓延して、1周間で200万人の感染者が発生しましたが、医療崩壊は起きませんでした。

ただし、高齢者の場合は、重症化率が高いので、二類扱いのままにするなどの措置が考えられます。そうはいいながら、高齢者のワクチン接種がすすみ、高齢者の重病化、死亡はかなりすくなくなりつつあります。ただし、感染してしまえば、重症化率は高いということを念頭におけば、二類扱いが妥当だと思います。

このようなリスク管理をせずに、単純に緊急事態宣言を出し、あろうことか、五輪の無観客実施を拙速に決めてしまうことなど、考えられないことです。新型コロナ感染症が未知であつた、昨年までであれば、まだこれも理解できますが、この感染症の傾向等が判明した現状では考えられないことです。

何やら、この出来事何かに似ています。そうです、平成年間に実施された、デフレ政策です。財務省や識者といわれる人々が、日本は財施破綻寸前だとして、なにかといえば増税をしたことや、日銀官僚や識者が、インフレになるからといって、金融引締ばかりやっていました。

本来は、デフレから抜け出すには、積極財政と金融緩和をするべきなのですが、財務省や日銀や識者それにマスコミなどが、様々な屁理屈で、間違った政策を先導し、結局日本は平成年間のほとんどの期間にわたりデフレが継続されました。

今回は、オリンピックとコロナ感染対策ということですが、今回も感染症専門家やマスコミが、様々な理屈で、まともなリスク管理をすることもせずに、結果として煽りまくり、挙句の果てに、必要もない緊急事態宣言と、五輪無観客開催を決めました。

マスコミとしては、オリンピック開催中止はさすがに無理だったものの、「完全無観客」を勝ち取ったわけですから、「やった」ということで、少し前までのコロナワクチンの猛烈なダッシュによる意気消沈モードは晴れたかもしれません。

誰も止められなかったデフレ政策、それに、誰も止められない緊急事態宣言と五輪無観客開催です。

日本でも、明らかに間違いであるという方向に大勢の人間が走ってしまうという傾向が見られます。このようなことは、二度と繰り返すべきではありません。コロナが収束した後に将来のことも考えて再度真摯に検証すべきです。そうでないと何度でも同じ間違いが繰り返されることになります。

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2021年7月7日水曜日

東京に4回目の緊急事態宣言へ 政府方針―【私の論評】死者・重傷者数が減った現状では、緊急事態宣言を出さずに五輪を開催すべき(゚д゚)!

東京に4回目の緊急事態宣言へ 政府方針


新型コロナウイルス対策で、政府は、東京都を対象に4回目となる緊急事態宣言を出す方針を固め、与党側に伝えました。

また、沖縄県の緊急事態宣言も延長し、期限は、いずれも来月22日までとする方針です。

【私の論評】死者・重傷者数が減った現状では、緊急事態宣言を出さずに五輪を開催すべき(゚д゚)!

東京都内では、7日新たに920人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。
900人を超えるのは5月13日以来で、1週間前の水曜日より206人増えました。

また、都は、感染が確認された3人が死亡したことを明らかにしました。

東京都は、7日都内で新たに10歳未満から80代までの男女合わせて920人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。

7日の920人は1週間前の水曜日より206人増え、18日連続で前の週の同じ曜日を上回りました。

7日までの7日間平均は631.7人で、前の週の124.3%となりました。

7日の920人の年代別は、
▽10歳未満が53人
▽10代が70人
▽20代が265人
▽30代が191人
▽40代が181人
▽50代が103人
▽60代が39人
▽70代が12人
▽80代が6人です。

これで都内で感染が確認されたのは17万8356人になりました。

また、都が参考として発表した6日の検査件数は7939件で、6日までの3日間の平均は7372.3件でした。

一方、都の基準で集計した7日時点の重症の患者は、6日より1人減って62人でした。

また、都は、感染が確認された50代と70代の男女3人が死亡したことを明らかにしました。

これで都内で感染して死亡した人は2244人になりました。

ということですが、内訳をみてみると、

920人の内訳は60歳未満863人、60歳以上57人です。若い人がコロナにかかってもそれほど深刻ではありません。

前週の同じ曜日に比べて、新規感染者は714人→920人の半面、重症化リスクの高い高齢者は42人→29人。新規感染者に占める高齢者の比率は5.88%→3.15%。 重症者は前日より1人減って62人でした。

60歳以上は急減しています。これはワクチン接種が進んでいるからに他なりません。高齢者がどれだけワクチン接種をしたかが重要です。若者を含めて新規感染者がどうのこうのというのは、現在であまり意味ありません。重症者、死者に着目して諸対策を考える段階になっています。


上のグラフをみてもわかる通り、元々死者はすくなかったですが、最近でも増えている様子はありません。

最近感染者が増えているのは確かですが、入院者と重傷者は超順調に減っています。重傷者は5月初旬のピークの半分、入院者は1/5くらいまで減っています。 増加傾向もありません。

東京で1,000人の陽性者は、1万人あたり1人という水準。仮にワクチンが浸透しても、日常生活に戻れば、この位の水準は達してもおかしくはありません。この状況におたつく政府の挙動が全く信じられません。

それなのにマスコミは煽るのでしょう。実際「東京都 コロナ 3人死亡 920人感染確認 900人超は5月13日以来」などと煽っています。そうして、政府は東京都を対象に4回目となる緊急事態宣言を発する予定であることを公表しました。

これは、必要あるとは思えません。最近では、ワクチンの接種も進んでいます。今月末までにもかなり接種できるでしょう。そうなれば、重傷者、死者数ともにこれから目立って増えることはないでしょう。同じ感染者920人とはとは言っても今年始めや、昨年のそれとは、全く意味合いが異なると思います。であれば、本当に東京の緊急事態宣言が必要なのかはなはだ疑問です。

もう政府は、思考停止で叫んでいるだけのバカのクラスターの不合理な要求に合わせる政治はやめるべきです。このようなことを繰り返していれば、日本はとんでもないことになります。何より予測もハズれっぱなしでワクチンの効果も評価もしないいわゆる専門家のレベルの低さは絶望的です。迅速な分析が一切できない彼らはリスク管理のド素人といわざるをえません。

すでに終わったことを後講釈しても無意味です。政府の専門家会議には、感染症の専門家だけではなく、リスク管理の専門家も加えるべきでしたし、リスク管理の専門家に主導権を握らせるべきでした。

政府として必要だったのは本当は、リスク管理の専門家であり、感染症の専門家ではなかったようです。IT関連の人間だと、専門外のことでも要点を素早く吸収する人も多いのですが、感染症専門家には無理だったようです。


東京に緊急事態宣言を出すといえば、野党やマスコミは「緊急事態宣言下で五輪だけを開催して庶民に我慢を強いるのか」と政府を批判することでしょう。

東京に緊急事態宣言を出さなければ、野党やマスコミは「緊急事態宣言を出すと五輪の開催に不安が出るので出さない。政府は無責任だ」といい出すのでしょう。

であれば、現在の感染状況や、重病者数や死者数からいって、後者のほうがまだはるかにましです。緊急事態宣言を出さずに、重症者、死者に着目して諸対策を立案すべきです。

「勝者なき都議選」が終わるやいなやのこの措置がだされれば、染拡大が起こっているのに、医療を脅かすオリンピック開催強行に拘泥し続ける姿勢は完全に矛盾していると都民には受け取られるでしょう。都民は総じて鼻白むことでしょう。

小池東島都知事

都知事も総理も自分の支持率と選挙しか頭にないようですが、こんなことでは選挙にも勝てないかもしれません。そもそも、東京都の感染症対策などは、小池知事に最大の責任があります。次の衆院選に出馬する予定であるといわれている、小池氏はそれを全く自覚していないようです。小池氏にとっては、都民も将来自分が女性初の総理大臣を目指すための、踏み台でしかないようです。

「国民に自粛を強いて五輪強行か」という共産党のプロパガンダがさらに声高になるのは見えています。

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2021年7月6日火曜日

“台湾有事は「存立危機事態」にあたる可能性” 麻生副総理―【私の論評】麻生氏の発言には、軍事的にも裏付けがある(゚д゚)!

“台湾有事は「存立危機事態」にあたる可能性” 麻生副総理


中国が台湾に侵攻した場合の対応について、麻生副総理兼財務大臣は、安全保障関連法で集団的自衛権を行使できる要件の「存立危機事態」にあたる可能性があるという認識を示しました。

麻生副総理兼財務大臣は5日、都内で講演し、中国が台湾への圧力を強めていることを踏まえ「台湾で騒動になり、アメリカ軍が来る前に中国が入ってきて、あっという間に鎮圧して『中国の内政問題だ』と言われたら、世界はどう対応するのか」と指摘しました。

そのうえで「台湾で大きな問題が起きると、間違いなく『存立危機事態』に関係してくると言っても全くおかしくない。日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」と述べ、中国が台湾に侵攻した場合「存立危機事態」にあたる可能性があるという認識を示しました。

「存立危機事態」は安全保障関連法で、集団的自衛権を行使できる要件として「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」などと規定されています。

【私の論評】麻生氏の発言には、軍事的にも裏付けがある(゚д゚)!

存立危機事態とは日本が集団的自衛権を使う際の前提条件で、「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」事態のことです。

政府がこの事態に認定したうえで、「他に適当な手段がない」「必要最小限度の実力行使」という要件を満たせば、首相は自衛隊に対し、防衛出動を命令することができます。安倍政権が2015年9月に成立させた安保関連法に規定されています。

この文脈からいけば、当然のことながら、台湾有事は存立危機事態とみなすことは十分可能です。一般的な想定は以下のようなものですが、実際はそうはならないように思います。



台湾有事が実際に発生したときには、日本がどのように貢献するかは、このブログでは何度も述べてきましたが、以下のようになるでしょう。

それは、日本の潜水艦隊の参戦です。中国は、対潜哨戒能力がかなり低いことと、日米のそれが格段に高いくて、世界トップ水準であること、日本の潜水艦のステルス性が格段に高いこと等があいまって、中国は日本の潜水艦を探知できません。そこで、日本の潜水艦は台湾周辺などを自由に潜航して、情報収集にあたることができます。

米軍の原潜は原潜であることの宿命で、日本の通常型潜水艦にステルス性には劣るものの攻撃力に優れています。これらの長所を組み合わせ、日米が協同して、台湾を包囲すれば、人民解放軍は太刀打ちできません。

呉第一潜水群

米原潜が軍事上の要所、要所に潜み、台湾を包囲しつつ、日本の潜水艦は台湾付近などを自由に潜航し、情報収集をしつつ、米軍と情報を共有すれば、日米は台湾に近づこうとする中国の艦艇をすべて撃沈できます。

さらに、いくつかの艦艇を撃沈できず、人民解放軍が仮に台湾に上陸できたとしても、日米により補給を絶つことができます。そうなると、人民解放軍は自給自足のゲリラ戦に転じるでしょうが、ゲリラとて水、食料、弾薬が尽きれば戦えません。そうなるといずれお手上げになります。

無論、中国のミサイル攻撃や航空攻撃もあるでしょうが、それも日米台の協同であたれば、防げないことはありません。特に中国の航空機は、最新のものですらJ-20の能力は米軍の最新ステルス機と「比較する意味もない」程の低さで、30年前に発表された米国ステルス戦闘機F-117程度であるともされています。

そうなると、海戦でも空戦でも、日米台がかなり有利です。以上のようなことを考えると、中国が台湾を奪取しようにも、日米台が協同して、中国に対抗すれば、中国が軍事力で無理やり台湾を奪取することは不可能です。

中国が核弾道ミサイルを使ったらどうなると考える人もいるかもしれませんが、そうなれば、米台とて、手段を選ばない攻撃をすることになります。そのときは、三峡ダムなどは格好の標的になるはずです。核を使用しなくても、ここを破壊すれぱ、中国の国土の4割は水浸しになるといわれています。

数百発の巡航ミサイルを発射して、飽和攻撃をすれば、人民解放軍はこれを撃墜することはできず、確実に三峡ダムは破壊されることになります。だから、中国は核兵器を使用することはないでしょう。

改良型アイオワ級原潜一隻で、154発ものトマホークを発射できるのです。そうして、中国には三峡ダムのように脆弱な標的はほかにもいくらでもあります。当然のことながら、米国のCIAはこれに熟知していることでしょう。

昨年7月19日、湖北省の洪水

このようなことになることを中国も承知しているので、中国が台湾に侵攻することは、当面ないでしょう。

にもかかわらず、米軍のある将官が、米国は中国に負けるようなことを語っていましたが、これは、単なる米軍による日本に対する「政治的メッセージ」であることをこのブロクに掲載したばかりです。

このように、中国台湾侵攻はあり得ないことなのですが、それにしても、日本の副総理が安全保障関連法で集団的自衛権を行使できる要件の「存立危機事態」にあたる可能性があるとい発言をしたことは、中国側にとっては、かなりショッキングだったと思います。

麻生財務大臣が台湾有事の際は「存立危機事態」として対応する可能性を示したことについて、中国外務省は「極めて危険だ」とし、日本側に抗議したと明らかにしました。 

中国外務省は6日の会見で「このような発言は極めて誤りで危険だ」「中国は強い不満を表明し、断固反対する。すでに日本側に厳正に抗議した」と強調しました。

また、「いかなる国も台湾問題に干渉することを容認しない」と牽制(けんせい)しました。

さらに「中国人民の、国の主権を守る断固とした意思を見下してはならない」と述べました。

ショッキングだったからこそ、このような声明を出したのでしょう。そうして、これは、中国に対する抑止となるのは確かです。しかも、麻生副総理の発言には、上でも述べたように軍事的裏付けもあるのです。

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2021年7月4日日曜日

SLBM水中発射成功…世界で8番目の技術保有国に=韓国軍―【私の論評】韓国SLBMが破壊するのは、韓国自身の国防や経済(゚д゚)!

SLBM水中発射成功…世界で8番目の技術保有国に=韓国軍


SLBM水中発射成功…世界で8番目の技術保有国に=韓国


韓国軍が国内独自の技術で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射に成功したことが伝えられた。これにより、韓国は世界で8番目の技術保有国になる。 

 YTNは4日、軍関係者を引用して、昨年末にSLBMの地上発射の成功に続き、最近は水中発射に成功したと報じた。SLBMは一定の深さで水圧を受けながらも正確に目標物を打撃する制御技術が必要なだけに、地上発射よりもはるかに難しい。 今回成功した韓国産SLBMは玄武2B弾道ミサイルを改造したもので、最大射程距離は500kmほどであることが分かった。

【私の論評】韓国SLBMが破壊するのは、韓国自身の国防や経済(゚д゚)!

米国の戦略家ルトワック氏も語っていたように、日米にとって「韓国は無視すべき国」という発言もあったので、ここ最近は私も、韓国についてこのブログで取り上げることはありませんでしたが、本日は久しぶりに取り上げてみることにしました。

昨年8月に韓国軍当局が公表した「2021~2025国防中期計画」の中では、4,000トン級原子力潜水艦3隻の建造計画が明らかにされています。SLBMを搭載した原子力潜水艦は、戦略原潜(SSBN)に分類されます。SSBNを保有する米ロ中英仏及びインドの6か国は、SSBNを核抑止戦略として位置付けていますが、韓国のSSBNの戦略的役割は何であり、何を狙っているのでしょうか。

SSBNは、大陸間弾道弾、戦略爆撃機とともに国家の核抑止戦略の三本柱の一つです。潜水艦は一旦洋上に出てしまえば、大部分の期間を海中で行動することから、その位置を把握することは容易ではありません。

原子力機関を装備すれば、長期間の潜没航行が可能です。そのため、大陸間弾道弾や戦略爆撃機が相手の先制攻撃で無力化されても、SSBNによる第2撃能力を保有することで、先制攻撃を抑止するというのが大枠の構図です。

従って、核弾頭を装備しないSLBMに戦略的意味合いはありません。韓国が開発しているSLBMには核を搭載する計画はありません。そもそも米国は朝鮮半島の非核化に躍起となっています。韓国のSLBMに核を搭載することは米国が許容することはあり得ませんし、韓国がSLBMと核を配備すれば、当然北京を含む中国も標的になることから、中国もこれを許容しないでしょう。

ただ、一方では海中から弾道ミサイルを発射できる体制をとることにより、北朝鮮に対し戦術的柔軟性が増すとの主張があります。確かに原子力潜水艦の高速かつ長大な航続距離、さらには長期間潜没航行できる能力は無視できないです。

しかしながら、韓国最大脅威である北朝鮮に対する兵器としては疑問があります。韓国SLBMの元とされている弾道ミサイル「玄武-2B」の射程は最大で500kmであり、しかも移動式装輪車に搭載されています。


相手の先制攻撃から逃れること目的として、発射位置を自由に変えることができます。北朝鮮の偵察能力を考慮すると、これを完全に無力化するためには、核攻撃により韓国全体を焦土化しなければ不可能でしょう。「玄武-2B」を、わざわざ海中から発射する軍事的合理性はかなり低いです。

次に指摘できることは、費用の問題です。韓国国防省が昨年発表した「2021~2025国防中期計画」で示されている予算は、300兆7千億ウォン(約30兆円)です。日本の令和元年度(2019年度)から5年間の防衛力整備計画(01中期防衛力整備計画)の総額は「概ね27兆円」とされています。これは、国家予算が日本のほぼ半分程度である韓国が、日本を超える国防予算を充当するという極めて野心的な計画です。

韓国の中期計画には、韓国型防空迎撃システム、軍事用偵察衛星等に加え、軽空母の導入も想定されています。米海軍の次期戦略原子力潜水艦コロンビア級1隻の建造費は94億7千万ドル(約1兆円)です。韓国がSLBM搭載3隻の原子力潜水艦を建造するとすれば、その研究開発費を加えると、空母建造を含む他の計画に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

潜水艦内を視察する文大統領 青瓦台facebookページより

更に問題なのはは、韓国が原子力機関の燃料となる「濃縮ウラン」を保有していないことです。韓国文大統領は大統領候補であった2017年4月の討論会において原子力潜水艦保有の必要性を強調し、核燃料購入に必要な原子力協定の改正を米国と議論すると語っています。

朝鮮半島の非核化を推進したい米国が、韓国に「濃縮ウラン」を提供する可能性はほとんどありません。韓国が原子力潜水艦の建造を推進し、中国やロシアから購入の決断を下した途端に、米韓同盟は終焉するでしょう。

北朝鮮は1月行われた第8回労働党大会において、米国を最大の敵とし、引き続き核戦力の強化を図るとしています。1月14日に行われた軍事パレードで目を引いたのは「北極星5号」と記載されたSLBMと思われるミサイルでした。

更に金正恩総書記は原子力潜水艦を保有することにも強い意志を示しています。実際に建造できるかどうかという問題はありますが、対米核抑止を目的とする、北朝鮮のSLBM搭載原子力潜水艦の狙っている目標は米本土や日韓の米軍基地であることは明白です。

翻って、韓国のSLBM搭載原子力潜水艦については、核抑止力にもならず、戦術的にも保有する軍事的合理性は低いです。しかも高額な調達費は他の国防関連予算を圧迫することは確実であすし、相対的に対北抑止力が低下することになるでしょう。さらに、米韓同盟を危機に陥らせる可能性も高いです。

軍事境界線に近い首都ソウル

このようなことをするくらいなら、米国が韓国に要求しはじめてから、40年以上たっても実現されていない、38度線に近い首都ソウルの移転などをしたほうが、余程合理的です。現在だと、首都ソウルに北朝鮮国内から長距離砲を用いれば、ソウルを砲撃できます。なぜいつまでも、ここを首都にしているのか意味不明です。

韓国SLBMが破壊するのは、韓国自身の国防や経済という韓国国家そのものと言えそうです。

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2021年7月3日土曜日

豊田真由子氏が解説「実は4500万回分のワクチンが使われていない」―【私の論評】国民全員にワクチンを2回接種しても有り余るほどの準備がなされており、接種したい人は、いずれ必ずできる(゚д゚)!

豊田真由子氏が解説「実は4500万回分のワクチンが使われていない」

豊田真由子氏

 元厚労省官僚、元衆議院議員の豊田真由子氏が3日、読売テレビ「あさパラS」に出演。各地で供給不足が問題となっている新型コロナウイルスのワクチンについて「実は国から供給がきてないんじゃなくて、4500万回分のワクチンが全国のいろんな地域の医療機関の冷凍庫の中に分散されて使われてない」などと解説した。

  番組では、大阪市で12日以降の1回目接種の予約受付を停止し2回目接種を優先、神戸市では予約済みの1回目接種をキャンセルにするなど深刻な状況になっていると報道。

  豊田氏は「実は国から供給がきてないんじゃなくて、国は今まで9000万回分を自治体には配っている。だけど実際に接種をされているのが4500万回分。そうすると、4500万回分のワクチンていうのが全国のいろんな地域の医療機関の冷凍庫の中に分散されて使われてないってことなんです」と話し、ニューヨーク州弁護士・山口真由氏も「接種を入力しなきゃいけないシステムがある。結構手がかかるので、自治体によっては管理が進んでないところがある」などと付け加えた。 

 豊田氏は、使われていない4500万回分の解決法について「国から都道府県に送ったものを都道府県が市町村に分配してるので、都道府県の中で、『ここの市町村に余ってるからこっちの市町村に移そう』とか、あるいは市町村で医療機関と連携をして、『この医療機関からこっちの医療機関に回そう』とか横の動きをやらないと、国の分は今の時点で配っちゃってるのでそれしか方法がない」と提言した。

【私の論評】国民全員にワクチンを2回接種しても有り余るほどの準備がなされており、接種したい人は、いずれ必ずできる(゚д゚)!

職場や大学で新型コロナウイルスのワクチンを接種する「職域接種」が北海道でも始まりました。ワクチン接種が急ピッチで進められる一方で、格差も生まれています。

当別町にある北海道医療大学でも、先月21日から「職域接種」が始まっていました。学生や教職員、教職員の家族、約6000人が対象で1日最大400人の接種を予定しています。これについて、地元のSTV(6/21(月)「どさんこワイド179」)が報道していましたので、その内容を簡単に以下にまとめます。


(接種した大学職員(20代))「職場で(ワクチンを)打てるのはいいなと思っていたのでありがたい」

(接種した大学職員(30代))「大学で学生も(ワクチン接種を)受けられるとなれば安心できると思う」

接種にあたるのは大学内の看護師や歯科医師です。

「職域接種」は接種対象者が1000人程度のほか、会場や打ち手の確保など実施の条件があります。

北海道医療大学は医療系の学部の強みを生かし、学内で打ち手を確保しました。

18日、国からワクチンを保管するフリーザーなどが届き、他の大学に先がけて「職域接種」の実施にこぎつけたといいます。

(北海道医療大学 浅香正博学長)「8月6日ぐらいまでには(接種を)終えようと思っています。我々のほうが早く終わった場合、当別町とも相談しながら、年齢は関係なく(ワクチン接種を)やっていこうと計画をしています」

札幌市豊平区の札幌大学です。

現在、オンラインによる講義が中心の大学では、事態を打開しようと21日から学生と教職員ら最大3500人の「職域接種」を目指していましたが。

(水谷記者)「こちらの体育館では、本来ならばきょうからワクチン接種の会場として使われる予定でしたが、現在のところ滞っている状態です」

打ち手が確保できず、21日からの「職域接種」を断念したといいます。

道が厚別区に設置した大規模接種会場では、19日から札幌、江別、恵庭、千歳在住の65歳以上を対象に接種が始まりました。

22日からは新たに白石区でも集団接種が始まるため「職域接種」の打ち手の確保が難しい状況だといいます。

(札幌大学 秋山一二三事務局長)「(打ち手は)やはり自治体のほうが優先されることになるので、職域接種、医療系の大学はできて、文系の大学はできない現状があるので、そのへんを汲んでいただいてサポートしていただければ大変ありがたい」

ワクチン接種が加速化する中、道内でも始まった「職域接種」。打ち手不足をどう解決するかが課題となっています。

 ワクチン接種の遅れは、打ち手不足の問題もあるのでしょう。それに、上の記事で、豊田真由子氏が語るように、市町村で医療機関と連携をして、『この医療機関からこっちの医療機関に回そう』とか横の動きもすべきなのでしょう。打ち手が足りないのなら、まず足りているところに、ワクチンを回すというのが筋です。

感染症の専門家などは、五輪開催開催がどうのこうの、飲食店での感染がどうのこうのと言う前に、こうしたノウハウに関して、日本に適用できるものなど広く啓蒙周知すべきだったと思います。

厚生労働省によりますと、自治体が接種しているファイザー社製のワクチンは、7月5日からの2週間で1万1千箱(1箱195瓶入り。1瓶6回接種で計1287万回分)を全国の自治体に配分する予定です。その前の2週間で1万6千箱配分したのに比べて大幅に減りますが、当初の計画通りといいます。6月末までにファイザーからは約1億回分届いて十分な供給量になりつつあり、今後も配分量は減る見通しです。田村憲久厚生労働相は供給不足にはならないとの考えを示しました。

田村憲久厚生労働相

その上で、田村氏は「心配で、なるべく多く確保したいという気持ちがあるかも分からないが、ワクチンの偏りが出てくると本来必要なところへ行かなくなる」と強調。偏在が起きている可能性を指摘し、実態調査に乗り出す方針を示しました。

今回のような大規模なワクチン接種は、日本では久方ぶりのことです。そのため、各自治体からワクチン接種のノウハウの蓄積がありません。そのため、思いがけない手違い等がある程度発生することは予め予期できました。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その内容を以下に再掲します。

先に、自治体にコロナ集団接種のノウハウがなくなっているとしましたが、このノウハウが急速に蓄積されて、これから幾何級数的に投与が増えていくと思います。そうなると、感染者数もおのずから減っていくはずです。

各自治体は、ワクチン投与の良い事例に関しては、積極的に他の自治体に知らせるべきです。そのようなシステムを構築すべきです。それが、ノウハウの蓄積に大いに役立つはずです。

政府は、ワクチンの供給はもとより、日本の自治体のワクチン大量摂取のノウハウを補うために、以下のようなサイトを作成しています。

ワクチン接種これいいね。自治体工夫集 
自治体でも、市町村あたりになると、感染症に縁のない人でも、ワクチン接種に関わる自治体関係者も大勢いると思います。ワクチン接種関係で何か疑問に感じたり、悩んだ場合は、まずはこのサイトをご覧いただくと良いと思います。すぐに解決策が見当たらなくても、質問先を見つけるなど、解決の緒になると思います。

そうして、最後に言いたいことは、政府によるワクチンの供給体制は十分です。これは、先日もこのブログにも掲載したように、予算を十二分にとったうえで、昨年の5月あたりから予定されていたものです。国民全員に2回ワクチンを接種しても、有り余るほどの、準備がなされています。そのため、ワクチンを接種したいと考えている人は、多少の遅れはあるかもしれませんが、必ず接種できます。だからこそ、日本は他国に対してワクチンの供給支援ができるのです。


そうして、先進国を見ていると、国民の5、6割はワクチン接種をするようで、それで十分です。6割がワクチンを打てば、集団免疫を獲得さているといわれてますし、それを下回っても5割くらいの人が接種を受ければ、いずれ比較的短期間で集団免疫は獲得できます。ワクチンを打たない自由はありますが、デマで人をだますのは厳に慎むべきです。

エビデンスに乏しいワクチン懐疑論は、そもそも流さないか、流すにしてもコロナが収束した後にするというのが、ものの道理というものです。

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2021年7月2日金曜日

先進諸国の大半で中国に否定的評価 米機関調査―【私の論評】自民は選挙直後に、まともな中国政策に転換し、補正予算を成立させ、有害な幹部を閣内から追い出せ(゚д゚)!

先進諸国の大半で中国に否定的評価 米機関調査


 日米など先進諸国で中国に対する否定的評価が最高水準にあることが米調査機関ピュー・リサーチセンターが実施した国際世論調査で明らかになった。

 同センターが2~5月に実施した先進17カ国・地域の成人約1万8900人を対象に実施した調査によると、15カ国・地域で過半数の人々が中国を「好ましくない」とみていた。

 特に否定的な評価が多かったのが日本で、88%が「好ましくない」と回答した。スウェーデン80%、オーストラリア78%、韓国77%。米国76%がこれに続いた。また、韓国と米国、カナダ(73%)、ドイツ(71%)では「好ましくない」がこれまでの調査で最高となった。

 中国を「好ましい」とする回答の方が多かったのは、シンガポールとギリシャだけだった。

 また、「中国は国民の自由を尊重していない」との回答は、17カ国中15カ国で80%を超えた。

 米中のどちらと強い経済関係を望むかについては、シンガポールを除く16カ国・地域が米国を選んだ。

 中国の習近平国家主席への信頼度は、シンガポール(70%)を除く16カ国・地域で10~36%の低水準だった。最低は日本で10%。

 中国との経済関係を犠牲にしてでも人権問題を重要視する回答が70%以上を占めたのは米国、オーストラリア、ニュージーランド。日本は54%、台湾は45%。一方「経済関係を優先する」との回答が上回ったのは韓国(57%)とシンガポール(55%)だった。

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ピュー・リサーチ・センターは各種調査・分析を手掛ける非営利組織で2004年に設立された。米ワシントンD.C.に本部があり、民間調査機関、世論調査機関、シンクタンクなどと呼ばれ、
世界を構成する問題、態度、トレンドを社会に伝える無党派のファクトタンク
を自任しています。

不偏不党を掲げ、その膨大なデータは保守系、リベラル系を問わず、内外のメディアに活用されています。時の政党や特定の宗派におもねることのない姿勢を貫いています。

その母体は、ピュー慈善トラスト(Pew Charitable Trusts)で、調査などのために年数百億円という巨費を用意しています。一方、この母体が海洋問題などで積極的に提言していることは、あまり知られていないかもしれないです。

上の記事にもあるピュー・リサーチ・センターの調査の一覧表を以下に掲載します。

多くの国において多数派の人が中国に対し否定的な意見を持っている、というピューリサーチの調査結果です。日本はここ10年、安定して中国嫌いが大多数、欧米ではここ数年で中国嫌いが急増していることがわかります。

このような状況にもかかわらず、日本の政治家は理解に苦しむ行動をとっています。

中国の共産党100周年に対して、祝賀を送っているですと?何を寝ぼけたことをしているのでしょうか。

河野洋平氏も送っています。立憲民主党の小沢氏も祝辞を送ったそうです。

こういう政治家たちは、国民の声など全く無視しているといえます。

民主党政権政権末期、野田佳彦首相は、自民党の安倍晋三総裁との党首討論で「どちらが政権を取っても、定数削減をやると約束できるか」と迫りました。安倍氏が「やりましょう」と応じて、衆院の解散が決まりましたた。大向こうをうならす場面として記憶に残る場面です。

しかし、一票の格差を是正する小幅の調整にとどまり、下野した野田氏が国会質問で「国民にうそをついた」と追及しましたが、安倍首相に「言うのは簡単だが、実行するのは簡単ではない」とかわされました。

民主党政権時代の2012年、衆院解散日を電撃表明し「名場面」を作った党首討論

大多数の国民が中国に否定的な見方をしているにもかかわらず、平然と中国に祝辞を送る政治家、さらにコロナ禍という国難で、国民に不要不急の外出自粛を求めているのに高級クラブに出入りする議員。

汚職や悪質な選挙違反もありました。こんな国会議員はいらないという事例をいやというほど見せつけられて、今さらながら議員の数を減らすべきだったと思ってしまいます。

ただ、政界も玉石混交で、寸暇を惜しんで勉強し、働く議員もいます。任期満了となる秋までに必ず衆院選挙があります。定数削減はできなくても、しっかりふるいにかけるべきです。

そうして、自民党もしっかりしていただきたいものです。

加藤勝信官房長官は2日午後の記者会見で、中国の習近平国家主席の国賓来日について、現在は具体的に検討する状況にはないとの考えを示しました。「現在は新型コロナウイルス対策に集中すべきときであり、具体的な日程調整をする段階にはない」と述べました。

現在コロナ禍だから「日程調整する段階にない」のではなく、「習近平国賓」など永遠に調整すべきではありません。史上最悪のジェノサイドの主犯を「陛下のお客様」として呼ぶようなことがあれば、日本人自らが拭い難い恥辱を歴史に刻むことになります。

自民党内でも幹部が共産党100周年に対して祝辞を送るなどのゆるいことをしているので、加藤官房長官のような発言になってしまうのでしょう。

自民党は、おそらく、無能な野党のおかげや数の力を知っているので、選挙戦では党内で一致して戦うでしょうから、秋の選挙で勝利はするとは思われます。

しかし、その後まともな中国対応や、経済政策を実施すべきです。特に財政政策、その中でもに補正予算の下支えが絶対必要です。現状では、消費や投資など景気を刺激する予算は、かき集めても5~6兆円程度です。

GDPギャップが大きい現状では、これでは明らかに経済的に力不足なので、補正予算を早めに策定して、最低でも30兆円、できれば40兆円規模くらいなければ、世界経済の中で失速することになります。

それに、無能どころか、害のある自民党幹部などは、閣内から追放すべきです。これら一連のことを選挙後すみやかに実施しなければ、次の選挙では惨敗することにもなりかねません。

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2021年7月1日木曜日

【日本の解き方】中国共産党100年の功罪と今後 経済世界2位に成長させたが…一党独裁では長期的に停滞へ―【私の論評】中国も、他の発展途上国と同じく中所得国の罠から抜け出せないワケ(゚д゚)!

【日本の解き方】中国共産党100年の功罪と今後 経済世界2位に成長させたが…一党独裁では長期的に停滞へ


 中国共産党は7月1日に創立100年の記念日を迎える。この間の同党の功罪はどのようなものがあるのか。そして習近平指導部の一党独裁は今後も続くのだろうか。

 これまで世界で共産党は110ほど結成されている。そのうち現存し、指導政党なのは中国、北朝鮮、キューバ、ラオス、ベトナムの5カ国で、そこでは一党独裁だ。そのほか現存するのは76、解散などで事実上現存しないのは29にのぼる。その中で、共産党(共産主義を掲げる政党)で国会に議席を有するものは、一党独裁の5カ国を含めて56カ国ある。

 世界初の共産党は、1912年1月に結党されたソビエト連邦共産党だ。同党はソ連崩壊とともに、91年12月に解散している。中国共産党の結党は21年7月であるが、それ以前に結党された共産党は世界17カ国にある。そのうち解散した国はソ連など6カ国、民主主義国の中で存在するのは11カ国(うち国会に議席を有するところは7カ国)。ちなみに、日本共産党の創立は22年7月であるので、中国共産党が100周年のときに、99周年となる。

 こうしてみると、中国共産党は長く存在し、今や一党独裁の指導政党になっているのだから、世界の共産党の中では希有(けう)な存在だ。

 中国は政治的には一党独裁であるが、経済面では「社会主義市場経済」と称して、78年以降部分的な開放政策を行い、国内総生産(GDP)は世界2位になっている。経済面で中国を経済大国にしたのは、紛れもなく中国共産党の功績といっていいだろう。

 問題はこれからだ。政治的な独裁は、自由で分権を基調とする資本主義経済とは長期的には相いれないのは、ノーベル経済学賞学者であるフリードマン氏が50年以上も前に『資本主義と自由』で喝破している。

 本コラムでは、そうしたフリードマン氏の主張は、独裁的な政治では民主国家にならず、ある一定以上の民主主義国にならないと1人当たりGDPは長期的には1万ドルを超えにくいという「中所得国の罠」という形で紹介してきた。

 1万ドルの壁を超えるためには、一部の産油国などを例外とすれば、一定の民主主義が必要だ。英エコノミスト誌が公表している民主主義指数でいえば、少なくとも香港と同程度の「6」以上だ。しかし、中国の民主主義指数は「2・3」程度しかない。これから、現在の中国は1万ドル程度だが、1万ドルを長期に超えることはできず最後は民主主義対非民主主義の覇権争いに負けるだろうと予測できる。

 要するに、中国が一党独裁を続けようとすると、中所得国の罠にはまり、長期的な成長はできなくなると筆者はにらんでいる。

 これは習指導部であってもなくても、中国が一党独裁を続ける限り妥当するだろう。

 併せてこの社会科学理論から予測できるのは、現在一党独裁のベトナムは、国有企業改革や資本自由化を含む環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に加入したので、10年程度以内で政治的な一党独裁を放棄し、民主主義国に転換し資本主義経済に移行することだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国も、他の発展途上国と同じく中所得国の罠から抜け出せないワケ(゚д゚)!

中国は、このままだと「中所得国の罠」に嵌るのは確実であり、今後経済が伸び悩むのは当然の帰結です。

このブロクでは、なぜ「中所得国の罠」が存在するかの背景について、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされないからだとしてきました。

これらが実施されないと、いわゆる「中間層」が成長することなく、たとえ政府が音頭をとって、大金を投入して何らかのイノベーションを行おうとしても、それは点のイノベーションに過ぎず、結局社会に非合理、非効率なことが温存されてしまい、そのため経済も社会も発展しないのです。




「民主化」「政治と経済の分離」「法治国家化」がある程度なされると、多くの中間層がでてくる余地がてできます。様々な地域や、様々な階層の人々の中に、自分の身近な社会の非合理や非効率を是正しようと試みる人がでてきます。

そういう試みを実行することにより、富を得ることができます。そうして、中間層は富裕層ほどではないものの、ある程度の富が得られることになります。

ここが重要なところです。現在の中国のように、富裕層と貧困層ばかりが多い社会においては、富裕層はそもそも社会の非合理、非効率を改革する動機などあまりありません。中には、いるかもしれませんが、それはほんの少数の変わりものです。さらには、何かを変えたいと思っても、そもそも富裕層なので単なるユートピアを夢見ることに終始しがちです。

貧困層に至っては、日々の生活を送ること、生きることに精一杯であり、そもそも社会の非合理や、非効率などには無関心にならざるを得ないです。中には、それを是正しようと試みるものもでるのですが、貧困がゆえに考えるだけに終わってしまうことになります。

これは、100年前の中国ではありません。現代中国です。

この状況が放置されると、社会には非効率と非合理が温存されたままとなり、経済発展もままならなくなります。これが「中所得国の罠」です。中世まではほとんどの国というか、地域がこの状況下にありました。

その壁を最初に破ったのは英国です。英国は他国に先駆けて、国民国家を形成し、国民国家を強くするために、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめました。

そうなるとどうなるかといえば、国家の中のあらゆる地域、あらゆる階層に、中間層が輩出することになります。それらが、自由な社会・経済活動を行うことになります。

富裕層から中間層が輩出するというのは、おかしな表現かもしれませんが、元々は富裕層だったもののうち、家督をつがないか、そもそも嫡子でないものが、中間層になり活発な社会経済活動を行うようになります。

そうして、国家の中のあらゆる地域や階層で、星の数ほどの中間層が、あるものは理想に燃えて、ある者は富を求めて、あるいは両方を求めて、爆発的なイノベーション(技術革新ではなく、社会を変革するのが真のイノベーションです)を行うことになるのです。これを促すのが、民主化であり、政治と経済の分離であり、法治国家化なのです。

そうして、社会が豊かになり、経済発展し、軍事力を強化して、英国は世界最初の海洋国となったのです。この状況をみて、自国も強い国にしたいと考えた現在の先進国というわれる国々もこれに追随したのです。

こう言うとイメージがわかないかもしれないので、以下に事例をあげます。これは、「ヒッポウォーターローラー」というものです。


このローラーは、一度に90リットルの水を運ぶことができます。地面を転がす仕組みになっており、ポリウレタン製のローラーは地面の凹凸に反発するデザインになっているため、90kgの水を運んでも体感としては10kg程度の重さにしか感じないといいます。頭上に載せていたポリバケツの4倍以上の水量であり、長ければ7人家族が1週間の生活を営むことができます。

これは、1991年、南アフリカのデザイナーのジョアン・ジョンカーとぺティ・ペッツァーが、これをデザインしました。

それまで南アフリカの女性や子どもが生活用水を運ぶ際に使っていたポリバケツは、約20リットルの水しか入りませんでした。それを頭や肩の上に載せて運ぶため、それ以上重くなると持ち運べなくなるからである。

場所によっては生活に必要な水量を確保するために、給水地と自宅を1日に3往復しなければならなりませんでした。時間を拘束するだけでなく、さらに、20kgの水を頭上に載せて歩くことによって背骨が圧迫され、子どもの健全な成育に支障が出ることも多かったのです。

このような状況を解消するには、富裕層の人間であれば、すぐに水道を導入するなどの方法を考えるでしょう。無論水道を導入すれば良いのでしょうが、たとえそれを実行したにしても、貧困層の人々には水道料を払うことができませんし、水道を完備するためには、かなりの年月を要することになります。

そうして、貧困にあえぐ人達は、何とか水くみの苦しみから逃れたいと思っても、日々生活していくのが精一杯であり、情報を得られることもなく、この苦しみを甘受するしかありません。

しかし、経済的に余裕があり、現地に密着した中間層ならば、「ヒッポウォーターローラー」のような道具を思いつく可能性は高いです。実際、南アフリカのデザイナーのジョアン・ジョンカーとぺティ・ペッツァーも中間層なのだと思います。

これによって、時間とエネルギーが節約されると同時に、背骨への負担を減らすことができました。女性や子どもたちは学んだり遊んだりする時間を手に入れました。実際、多くの集落において教育レベルや識字率が向上し、なかには女性起業家の数が増えた集落もあるといいます。まさに、新たな中間層の登場です。

ローラーの耐用年数は7年間で、販売価格は9,000円。発売された1991年以降、南アフリカ共和国を中心にアフリカ全土で3万2,000個以上のローラーが使われており、22万5,000人以上の生活を変えています。

このイノベーションにより、地域が以前よりは豊かになるはずです。豊かになった地域の中間層は、さらに次のイノベーションにとりかかり、次のイノベーションを生み出すでしょう。さらに豊かになった地域では、水道料が支払えるようになり、水道が導入されるようになるかもしれません。このような地域は、たとえ現在貧乏であっても、将来への希望が見え、明るい社会になります。

このように、「民主化」「政治と経済の分離」「法治国家化」が達成され維持されていれば、戦争や大規模な自然災害でもない限り、地域や階層を問わず、継続的なイノベーションが行われるようになり、いずれの地域であってもどの階層であっても、いずれ一定レベル以上のインフラを獲得できるようになるのです。そうして、豊かな社会となり経済的にも発展することになるのです。

それが、今日の先進国の姿です。しかし、そもそも、「民主化」さえされていない中国は、このようなことは起こり得ず、中国共産党が多額の投資をして、イノベーションを行ったにしても、それは点か、せいぜい線のイノベーションにしかなりえず、先進国にみられる、あるゆる地域、あらゆる階層にまで広がることはなく、継続もされず、その結果として「中進国の罠」から抜け出せなくなるのです。

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