2021年11月3日水曜日

米バージニア州知事選、真の敗者はバイデン氏―【私の論評】2024年大統領選挙で、トランプ・バイデンが対峙する可能性が高まりトランプ勝利も十分ありえるシナリオに(゚д゚)!

米バージニア州知事選、真の敗者はバイデン氏

バイデン大統領

米南部の激戦州バージニア州で民主党候補が敗れた知事選で、真の敗者はバイデン大統領だ。1年後に中間選挙を控え、バイデン氏の政策的な行き詰まりと支持低迷は今後も民主党の足かせとなりうる。政治経験のない共和党候補ヤンキン氏の勝利は、トランプ前大統領の支持層を手放さず無党派層も取り込む勝利の方程式を共和党に示したといえるだろう。(ワシントン 渡辺浩生)

「バージニアはどんどん青色(民主党のイメージカラー)に変わっている」。外遊先の英国で記者団に知事選の情勢を聞かれたバイデン氏は余裕をみせた。確かに同州は昨年11月の大統領選でバイデン氏が10ポイント差をつけてトランプ氏を破った。

だが1年で形勢が逆転したのはバイデン氏自らの支持低迷と、「トランプ色」を薄めたヤンキン氏の選挙戦略が奏功したからだ。トランプ氏本人から支持を得ながら選挙戦では終始、同氏から距離を置いた。

ヤンキン氏は1日夜の住民集会でも前大統領の名前を一切口にせず、教育、税金、治安など「食卓の話題」に集中した。学校教育で「批判的人種理論(CRT)」の導入禁止を訴えると歓声は一気に高まった。

CRTは人種差別や白人至上主義が教育や司法などの社会制度に構造的に組み込まれ、差別や格差を固定化させたとする理論だ。進歩的な教師らが学校教育に浸透を図っているとの批判を保守層が強め、その是非が全米の論争となっている。

教育と人種問題をからめた主張は、トランプ氏に不信感が拭えない無党派層と同時に、トランプ人気が根強い共和党支持層を取り込むためだ。CNNの出口調査によれば、ヤンキン氏は共和党支持者の96%、無党派層の54%、トランプ支持層の95%を獲得。狙いは的中した。来年の中間選挙で共和党がどう戦うか、その処方箋を示した形だ。

民主党候補のマコーリフ氏はヤンキン氏への攻撃で「トランプ批判」を連呼したが効果なく、その敗北はバイデン氏の不人気ぶりをかえって印象付けてしまった。

政権の看板法案が党内の路線対立で難航し直近の支持率は43%に低下。バイデン氏は外遊出発直前の先月末、大型経済対策法案の予算規模を1兆8500億ドルに半減させる妥協策を発表して打開を図ったが、穏健派の重鎮議員から合意を得られなかった。大型インフラ整備法案も、財政拡大に固執する下院の民主党左派の条件闘争に遭い棚上げ状態だ。

気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合でバイデン氏は「米国は世界中の国々を助ける義務がある」と指導的立場をアピールしたが、最初の信任投票の敗戦は今後のかじ取りに暗い影を落とす。米国が再び内向きに転じる兆候を同盟諸国は警戒するだろう。
【私の論評】2024年大統領選挙で、トランプ・バイデンが対峙する可能性が高まりトランプ勝利も十分ありえるシナリオに(゚д゚)!

日本では、総選挙が大きな焦点となりましたが、米国でも来年の中間選挙に向けて、ある知事選挙の行方に全米が注目していました。バイデン政権にとって負けられない戦いにはオバマ元大統領も参戦。そして無論トランプ氏も参戦していました。

先々週土曜日。バージニア州で開かれた集会に多くの人が集まっていました。

民主党 マコーリフ候補:「みなさん、こんにちは。バージニアを愛しています」
登場したのは、知事選の民主党候補マコーリフ氏。多くのメディアが駆けつけ、全米に生中継される中、そこに現れたのは・・・
記者:「民主党の候補者の応援に大物が駆けつけました。バラク・オバマ元大統領です」
オバマ元大統領:「バージニアをより良い将来に導きましょう。みなさんを信じていますよ。自分を信じて投票に行き、やるべきことをやりましょう。YES WE CAN!」
退任後も人気を誇るオバマ元大統領がわざわざ応援に駆けつけたのには訳がありました
共和党 ヤンキン候補:「我々が勝利するこの選挙は、バージニアの私たち全員のためのものです」
共和党の知事候補のヤンキン氏。新型コロナワクチンやマスク着用の義務化に反対するなどバイデン政権の政策に批判的な立場で、着実に支持を伸ばしてきました。バージニア州では過去5回の知事選で民主党候補が4回勝利してきましたが、今回は支持率がほぼ並んでいます。

民主党にとってはバージニアでもし負ければ、来年の中間選挙でも厳しい戦いを迫られるとの危機感があったのです。そんな知事選の“陰の主役”とも言われているのが、この人でした。
トランプ前大統領: 「ジョー・バイデンと過激な左派が国を破滅の瀬戸際に追い込んでいる」
トランプ前大統領

トランプ前大統領は共和党のヤンキン候補の支持を表明。これを機に、民主党側はヤンキン氏をトランプ氏や連邦議会襲撃事件と結びつけるネガティブキャンペーンを繰り広げました
民主党候補の選挙CM(トランプ前大統領):ヤンキン氏はバージニアをまともにし、我々が知事に求める全てのことをやってくれるでしょう。全部取り戻すぞ、バージニアを取り戻せ」
民主党候補の選挙CM:「グレン・ヤンキン氏、トランプ氏の考えが一番

 日本時間の27日午前にはバイデン大統領も応援に入り、こう強調しました。

バイデン大統領:「ヤンキン候補は人格検査で不合格だ。『大統領選挙が盗まれた』というトランプの嘘を市民に広げて回っている」
勝敗を左右するのは無党派層の投票はどう動くのか。トランプ氏の存在が有権者にどんな影響を及ぼすのか。全米が注目しましたが、結局ランキン氏が勝利ました。その勝因は、上の記事にもある通り、ヤンキン氏が、トランプ前大統領の支持層を手放さず無党派層も取り込む勝利の方程式を編み出したことによるものでしょう。

選挙から半年経った5月24日にロイターが発表した世論調査によると、米国人の25%が大統領選挙には不正があったと信じています。4人に1人がトランプが勝利者だと考えているわけです。

8月4日にヤフーが発表した調査では、共和党支持者の66%が本当の大統領はトランプだと信じています。依然として、共和党で最大の支持者を持つ存在です。

いっぽう、バイデン大統領の支持率は急落していました。

バイデンは就任以来、50%以上の支持率を維持してきました。8月13日の金曜日、ロイターの世論調査では53%がバイデンの仕事ぶりを評価していました。それが、週明けの17日火曜日には46%にダウンしました。その間に何があったのでしょう。

8月15日、アフガニスタン全土がイスラム武装勢力タリバンの手に落ちたのです。20年間、24万の犠牲者を出し、3兆ドルを投じたアフガン戦争は米国の敗北に終わりました。

バイデン大統領は4月末に米軍の撤収を開始、8月に最初の都市が陥落すると、1カ月かからずに首都カブールは陥落しました。米軍に訓練され、装備を与えられたアフガン政府軍30万人はタリバンにほとんど抵抗しませんでした。

バイデンは米軍撤収について、「自国を守るために戦おうとしないアフガンの人々のために、米兵が命を落とすべきではない」と正当化しました。それは同盟国との結束を強めると言っていたバイデンが言ってはいけないセリフでした。

さらには、バイデンが最も力を入れてきたコロナ対策も行き詰まってきました。

バイデンは就任から破竹の勢いでワクチン接種を進めました。5月いっぱいまでで全人口の5割が少なくとも1回の接種、4割が2回接種を受けることができました。

ところがその後、接種率は伸びませんでした。8月になっても接種を2回受けた国民は6割しかいません。トランプは7月17日にバイデンのワクチン接種の遅れを揶揄しました。

「ワクチン接種を拒否してる人々が多いからだ。なぜなら、彼らはバイデン政権を信じていない、選挙の結果を信じていないからだ」

現在、米国のコロナ感染による死者は再び増えています。その99%は1回もワクチンを受けていない人々です。でも、未接種者が全人口の4割もいるので、収束にはまだほど遠いと言わざるを得ません。死者が増えれば、経済の立て直しもまたスローダウンし、バイデンの支持率もさらに下がるでしょう。

コロナ対策をめぐってトランプと戦ったニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事もその後、セクハラで辞任に追い込まれ、民主党は失点が続いています。

クオモ知事の性的ハラスメントを告発した、アナ・ラッチ氏の友人が撮影した写真

トランプのほうは、2024年の大統領選挙に向けて、着実に捲土重来の準備を固めています。支持者の熱狂度だけでなく、彼が大統領選から現在までに集めた寄付の額は1億ドル(約100億円)を超えます。

最新世論調査によると、民主党の大多数は、バイデン大統領以外の人物なら2024年大統領選で民主党が勝利する最善のチャンスが与えられると考えています。

バイデンは、大統領の座について1年足らずですでに支持率が低迷していますが、最新のマリスト世論調査で民主党が次期大統領選挙でどれだけバイデンを信頼しているかが明らかになりました。

同調査によると、民主党・民主党寄りの無党派の36パーセントは、バイデンが2024年の候補者のトップとなるべきだと考えています。

実に民主党と民主党寄り無党派の約半数は、バイデンが候補者のトップとならずに別の人物に出馬して欲しいと望んでいます。これはバイデン大統領が自身の党の信頼を維持しようと四苦八苦している状況を示す明快な数字です。

一方、共和党と共和党寄り無党派の50パーセントは、トランプ前大統領が2024年に共和党の候補者のトップになって欲しいと考えています。

共和党の35パーセントは、次期大統領選挙でトランプが共和党の候補者トップとなることに反対でした。

さらに、民主党と無党派左派の5人に1人は、バイデンが2024年に候補者トップとなることについてどちらともいえないと答えましたが、共和党でトランプについて同様の回答をしたのはわずか14パーセントでした。

バイデンの大統領就任1年目は、サプライチェーン危機、何万人もの不法越境移民、そしてアフガニスタン陥落を含む複数の危機によって打撃を受けました。

その上、インフレ増大によって冬の休暇前に経済が落ち込み続け、冬に近づきある現状でエネルギー価格が高騰しています。

2024年大統領選挙で、トランプとバイデンが対峙する可能性が高まってきました。そうして、トランプ勝利も十分ありえるシナリオになってきました。

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2021年11月2日火曜日

台湾「日本が出兵協力」58% 中国の武力攻撃に対して―【私の論評】日米潜水艦隊が協同で「台湾有事」に対応することを表明すれば、中国の台湾侵攻の意図を挫ける(゚д゚)!

台湾「日本が出兵協力」58% 中国の武力攻撃に対して

軍装の蔡英文総統

 台湾の民間シンクタンク、台湾民意基金会が2日発表した世論調査で、中国が台湾に武力攻撃した際に「日本が出兵して台湾防衛に協力すると思うか」との問いに58.0%が「見込みあり」と回答、「見込み無し」は35.2%だった。米軍については「見込みあり」が65.0%だった。

 日米の台湾軍事支援に対する期待の高さが浮き彫りになった。

 台湾軍による自衛能力については48.4%が「自信あり」と答えたのに対し、「自信なし」も46.8%。中国による武力攻撃に対する備えは「十分」が43.7%だったが、47.6%が「不十分」と回答した。

【私の論評】日米潜水艦隊が協同で「台湾有事」に対応することを表明すれば、中国の台湾侵攻の意図を挫ける(゚д゚)!

このブログに以前何度か掲載したとおり、台湾防衛はさほど難しいことではありません。米国の有名な戦略家でルトワック氏は、「潜水艦を三隻も派遣すれば守れる」と語っています。

ルトワック氏

私もそう思います。巷の軍事評論家などは、台湾防衛がいかにも難しいことのように語っていることも多いですが、それは完璧な間違いです。こうした軍事評論家は、決まって潜水艦のことは語りません。まるで、中国も米国も潜水艦なしで、空母やその他の艦艇だけで、米中が海戦を戦うような論評をします。

米軍は世界一の対潜哨戒能力を誇り、攻撃力がずば抜けて高い攻撃型原潜を多数持っています。そのため米軍は世界最高の対潜水艦戦闘能力(ASW)を持っています。

ASWに優れた米軍が、台湾に三隻もの潜水艦を派遣して、台湾を包囲してしまえば、ASWが格段に劣る中国軍が台湾を奪取しようとしても、この包囲網を破ることができないので不可能です。

米国の原潜は原潜という構造上ステルス性には難がりますが、それでも原潜としてはステルス性に優れたものも存在します。中国の攻撃型原潜や通常型潜水艦はステルス性はかなり劣っています。

米軍の攻撃型原潜はステルス性に劣るとはいえ、米軍は先に述べたようにASWが中国に比較して格段に勝っているので、米軍のほうが圧倒的に有利です。米中が海戦になれば、米軍に圧倒的に有利となり、中国には不利となります。

米中が海戦となれば、米軍は圧倒的に優れたASWにより、まずは台湾海域の中国の潜水艦隊を殲滅するとともに、空母を含むすべての艦艇を撃沈するでしょう。その他台湾の侵攻にかかわる、航空基地、レーダー施設、衛星監視のための地上施設等をことごとく破壊するでしょう。

そうなる前に中国は戦闘を中止せざるをえなくなります。もし、それでも無理やり戦闘を継続して、台湾に中国軍を上陸させることに成功しても、米軍が台湾を原潜で包囲してしまえば、輸送船や航空機などが近づけなくなり、台湾に上陸した中国兵に対して、食料・水・弾薬などの補給ができなくなります。これでは、中国軍は戦闘を継続できず、お手上げになってしまいます。

このように米軍は攻撃型原潜で台湾を包囲することにより、台湾を中国から守ることができます。

日本も米軍のように通常型潜水艦を5隻も派遣すれば、同じように台湾を守ることができます。日本の場合は、米軍の攻撃型原潜に比較すれば、攻撃力は高くはないですが、それでもその攻撃力は侮れません。

何よりも日本の潜水艦は、ステルス性が高く、最新鋭のものはほとんど「無音」と言っても良いくらいで、中国海軍にこれを発見することはできません。日本もASWにおいては、中国軍圧倒することになります。

10月14進水した日本の最新鋭潜水艦「はくげい」

中国海軍は台湾海域に日本の潜水艦が潜んでいるという懸念があれば、台湾に近づくことはできなくなるでしょう。何しろ中国海軍は日本の潜水艦を探知できないのですから、発見できない敵から攻撃されても防御できないからです。

さらにもう一つの利点は、日本が潜水艦を多様する戦闘を実施すれば、たとえ日中海戦になったとしても、日本側の犠牲はほとんどでないということがいえます。

これに対して、中国は強襲揚陸艦などを撃沈されれば甚大な被害を出すことになります。

冒頭の記事では、「日本が出兵して台湾防衛に協力すると思うか」とありますが、これはそもそも曖昧なアンケートだと思います。

アンケートをとる際に日本のASWが中国よりもかなり高度であることを知らせ、さらに潜水艦で加勢する可能性も示せば、「見込みあり」と答える人ももっと増えたのではないかと思います。

私は、日米ともに、台湾有事の場合は、日米単独でも加勢する旨を台湾に伝えるべきと思います。

日本は平和憲法の観点からそのようなことはできないという人もいるようですが、私はそうではないと思います。

中国が台湾に侵攻した場合の対応について、7月5日麻生副総理兼財務大臣は、安全保障関連法で集団的自衛権を行使できる要件の「存立危機事態」にあたる可能性があるという認識を示しました。

麻生太郎氏

「存立危機事態」は安全保障関連法で、集団的自衛権を行使できる要件として「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」などと規定されています。私は、台湾危機は「村立危機事態」であると十分解釈できるものと思います。

そうして、私は「台湾有事」の場合は、日本と米国が協同してこれを防ぐべきと思います。日米ともにASWに優れています。初戦においては、このASWを最大限活用して、潜水艦を最大限に活用して、中国の試みを打ち砕くべきです。

日本の潜水艦隊は、ステルス生を生かして情報収集にあたりその情報を米国潜水艦隊と共有し、いざ海戦ということになれば、日本は主に中国の潜水艦を攻撃し米潜水艦を支援し、米潜水艦艦隊は強大な戦闘力を用いて、あらゆる艦艇を撃沈、軍事施設を破壊するというような戦術をとるのが望ましいと思います。

さらに、日米は食料などの補給、乗組員の交代などを台湾の港でできるように予め台湾と交渉しておくべきものと思います。

このようなことをすることにより、日米は台湾を勇気づけ、中国の台湾侵攻の意図を挫くことになります。

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2021年11月1日月曜日

枝野立民代表、進退あすまでに判断 衆院選敗北、党内に辞任論【21衆院選】―【私の論評】今回の選挙は、自民党が勝ったというより、 野党共闘により惨めで哀れで醜悪な面々が明らかにされ、自滅した(゚д゚)!

枝野立民代表、進退あすまでに判断 衆院選敗北、党内に辞任論【21衆院選】

枝野氏


 立憲民主党の枝野幸男代表は1日午前、衆院選で公示前の110議席を割り込む敗北を受けて、「結果が出たばかりなので、何人かの方と相談して、あすの執行役員会までには何らかの考え方を示す」と述べ、自身の進退を含めた執行部の責任について明らかにする考えを示した。東京都内で記者団の質問に答えた。

自民、「魔の3回生」当選は9割超 選挙区では苦戦も

 枝野氏は「議席を減らしたことは大変残念で申し訳なく思っている」と陳謝した。


 立民は共産党などとの野党共闘を実現させて、213選挙区で候補者を一本化させたものの96議席に後退。党内からは「執行部の責任問題」(党関係者)との声が上がっており、枝野氏らの辞任は避けられないとの見通しが出ている。


 これに先立ち、同党の福山哲郎幹事長も国会内で「執行部として、選挙結果には責任がある。私自身の対応については腹を決めているが、ここで申し上げるべきことではない」と述べた。 


 枝野、福山両氏は連合本部を訪れ、芳野友子会長らに選挙結果を報告し、支援への謝意を伝えた。


 一方、11議席に上積みした国民民主党の玉木雄一郎代表は東京都内で記者団に「改革中道、対決より解決の姿勢で政策を訴えて手応えを感じた」と強調。来夏の参院選に向けて「こうした路線をしっかりと貫き、ぶれずに筋を通したい」とも語った。


【私の論評】今回の選挙は自民党が勝ったというより、 野党共闘により惨めで哀れで醜悪な面々が明らかにされ、自滅した(゚д゚)!

東京8区では、自民前職の石原伸晃元幹事長と立憲新顔の吉田晴美氏が争ったのが争いでした。

当初、共産党も候補者擁立を準備していたがのです、野党共闘で立憲・吉田氏に候補者を一本化しました。


ただ、公示前にれいわ新選組の山本太郎代表が同区からの立候補を発表するなど、候補者擁立をめぐって野党内で一時混乱もありました。一悶着はあったのですが、共闘した野党陣営は吉田氏をバックアップ。結果、岸田文雄首相も応援に入った自民党の派閥領袖を下しました。しかも、比例復活を許さないほどに……。

「東京8区」の重みは、立憲民主党の開票センターで午後9時前からはじまった「花付け」からも伺えました。

当選確実が伝えられた議員の名前を張り出す立憲・長妻副代表(右)と福山幹事長

「花付け」とは、当選確実が報じられた候補者の名前を張り出すセレモニーのことです。このとき、最初に貼り付けられたのも「東京8区」を制した吉田氏のものでした。

「東京8区」は、まさに“野党共闘の象徴”となった選挙区でした。

ところが、開票が進むにつれて風向きが怪しくなりました。

深夜にかけて、立憲の票の伸び悩みが明らかになってきたからです。

枝野氏の会見終了からおよそ1時間半後が経った11月1日午前1時半過ぎ、立憲民主党が公示前の109議席を下回ることが確実になりました。

加えて、自民党で起こった「ベテラン」敗北の事例は立憲民主党にも起こりました。

党重鎮の小沢一郎氏や「無敗の男」と呼ばれ無所属から立憲入りした中村喜四郎元建設相が選挙区で敗北。党副代表の辻元清美氏と党選対委員長平野博文氏は比例復活もならず、議席を失いました。

辻元清美氏

結果、立憲民主党の議席数は公示前勢力の109議席から13減らし96議席に。野党共闘による議席増で与党を過半数割れに追い込むことを目指したが、不発に終わりました。

たしかに小選挙区では自民党との接戦に持ち込んだ選挙区がいくつもありました。

立憲幹部が誇った東京8区や神奈川13区にように立民が圧倒した選挙区もありました。達成したところもあった。

ところが、思った以上に競り負けるところがあったのも事実です。加えて比例が伸びなかったことも響きました。

社民党や共産党などとの連携を進め「野党共闘」を推進したことで、有権者が立憲民主から離れていった点は否めません。

いかに枝野氏が「政権奪取時、共産党は“閣外からの協力”」と、距離を置く発言をしても、政策的には共産党と重なる部分はかなりありました。社民・共産と支持者が被れば、支持の広がりを欠いたことも想定されます。

野党にはこの先、どんな手段が残されているのでしょうか。

比例で当選した小沢氏

枝野氏は小選挙区で当選したものの、日付が変わって当確という有様でした。

日付が変わった一日午前零時十分ごろ、さいたま市大宮区にある立民前職の枝野幸男(57)の事務所に当選確実の一報が入ると、支援者からは「よかったー」と安堵(あんど)の声が一斉に漏れました。


枝野は東京都内で結果を見守ったため、代わりに選対本部長の熊谷裕人参院議員がマイクを握り、「簡単な選挙戦ではないと思ったが、こんな時間に当確が出るとは」とあいさつ。険しい表情を浮かべました。

党代表として応援に全国を回り、選挙期間中に地元に入ったのは二日間だけ。一騎打ちとなった自民前職には安倍晋三、菅義偉の両首相経験者ら政党幹部が相次いで応援に入りましたが、何とか退けました。


今回の衆院選で対決パターン別に与野党の勝敗を分析したところ、立憲民主や共産など野党5党が統一候補を擁立した213選挙区のうち、保守系無所属を含む自民または公明のいわゆる与党系候補は、約65%にあたる139選挙区で勝利したことが分かりました。これに対し、統一候補は約28%の59選挙区でしか勝てず、野党共闘の効果が限定的だったことを裏付けました。


213選挙区を地域別にみると、北海道は官公労が強い地域とあって、統一候補を擁立した9選挙区中、自公4勝、立民5勝と野党5党側が勝ち越しました。東京では革新系の影響力が残っていますが、与党系10勝なのに対し、統一候補は7勝と及びませんでした。 保守地盤が強固な西日本では、日本維新の会が幅を利かす大阪府を除き、中国地方で統一候補は14選挙区中1勝、四国では8選挙区中2勝しかできませんでした。


九州でも自民16勝なのに対し、統一候補は6勝にとどまるなど、野党が束になって掛かっても、与党側は寄せ付けませんでした。 135選挙区に上る事実上の与野党一騎打ちでも、与党系が96勝なのに対し、野党系は39勝と振るいませんでした。 一方、野党5党から複数の候補者が出た72選挙区ついては、与党59勝に対し、野党5党側はわずか6勝と無残な結果に終わりました。


 これらの選挙区については、反自民票が分散したために5野党側が敗北したとは必ずしも言えず、5野党で候補者を一本化した場合の票数を単純計算で足し合わせた場合、与党候補を上回ったのは5選挙区だけでしたた。与党に太刀打ちできないと判断した選挙区については、あえて候補者調整をせずに、比例票の掘り起こしを優先させた可能性があります。


今回の衆院選結果は、立民が組織票目当てで共産などと組んでも、票の上積みには限界があり、地力に勝る自民を負かすには、旧民主時代から言われ続けてきた、党の足腰となる地方組織の強化が急務であることを改めて突き付けたといえます。


今回の選挙では、立民共産の共闘が一見功を奏したかのようにみえた局面もありましたが、総体的には失敗であったことが明らかになりました。


野党は自民党には提供できない価値を提示する努力をせずに、与党への批判と数合わせの論理だけで自らの存在価値を示そうとしたので、結果的には成長できなかったし、これからも成長できそうにもありません。表面的方法が通じるほど有権者は馬鹿ではないということです。

今回の選挙は、自民党が勝ったというより、 野党共闘により惨めで哀れで醜悪な面々が明らかにされ、自滅したといえると思います。

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2021年10月31日日曜日

函館市の期日前投票所で12歳の男の子が小選挙区の投票箱に投票 “有効票”に―【私の論評】選挙においては、選挙違反は見逃さず、マスコミの印象操作には幻惑されない姿勢が肝要(゚д゚)!

 函館市の期日前投票所で12歳の男の子が小選挙区の投票箱に投票 “有効票”に


函館市役所

 函館市内の衆議院選挙の期日前投票所で、選挙権のない12歳の男の子が投票するという事態が起きました。この投票は有効だということです。

  函館市の選挙管理委員会によりますと、30日午後5時前、函館市港町のショッピングセンターに設けられた期日前投票所で、12歳の男の子が50歳の母親の代わりに小選挙区投票用紙を受け取り、投票を行いました。

  その後、比例代表と国民審査の投票で、現場の担当者らが名前や年齢に違和感を覚え、投票用紙を渡すのを止めました。

  男の子は父親と一緒に投票所に来ていて、父親は、妻が体調が悪く来られなかったため、代わりに投票させようと妻の入場券を息子に渡したと話しているということです。  市選管は、小選挙区の投票用紙を渡す際に混んでいたこともあり、最初の受付係や名簿対象係、用紙交付係での確認が不十分で見落としたとしています。

  また、男の子が投票した小選挙区の投票用紙は、有効票として扱われるということです。 

 31日の投票日には、本人確認と合わせて、来場者を目で見て間違いがないか確認するなど、再発防止を徹底すると話しています。

【私の論評】選挙においては、選挙違反は見逃さず、マスコミの印象操作には幻惑されない姿勢が肝要(゚д゚)!

このニュース最初は、テレビのニュースで知ったのですが、最初は何のことかあまり理解できませんでした。上のニュースではじめて事実確認ができました。


我が国の投票に際しての本人確認は甘すぎます。考えてみれば、 レンタルビデオを借りるのにでさえ身分証明書の提示は当たり前です。それが義務付けられれば、今回のような出来事は未然に防げたでしょう。

 投票率がさがるなというのは言い訳でしかなく身分証明書による本人確認、身分証明書がない人は宣誓書提出くらいは検討すべきと思います。 反対する人は本人確認されたら困る人だけでしょう。

この事件については、悪質なものではなく、大きな影響を及ぼすものではないですが、毎回選挙では違反が起きています。

警察庁によると、今回の衆院選で、全国の警察は29日までに公職選挙法違反の警告を1376件出した。今後、悪質な選挙違反の捜査を進めるそうです。

警告件数は前回選挙の同時期より82件少なかったそうです。内訳は、禁止場所にポスターを貼るなどの文書掲示違反が1061件、法定外のビラをまくなどの文書頒布違反が262件など。ほかに、ポスターを破るなどした容疑で3人を逮捕したそうです。

衆院選が公示以降も、共産党の「しんぶん赤旗10月号外」なる文書が各戸配布などの形で全国各地で大量にばらまかれ、「選挙違反」「法律を守れ!」といった声が相次いでいます。公職選挙法では、衆院選比例代表選挙における「法定ビラ」である旨を記載しなければならないが、同文書には記載が全くありません。


選挙違反、内容によって逮捕立件、注意や警告などかなされます。注意や警告も累積すれば悪質とされて逮捕されます。ですから、丁寧に通報するのが正しいです。

写真やスクリーンショットで証拠保全した上で、所轄の警察署に通報して下さい。無論、選挙が終わった後からでも、証拠があれば通報すべきです。判断は警察や選挙管理委員会がする事です。

それと、これは選挙違反とはいえないかもしれないですが、昨日このブログに掲載したように、マスコミは政府のコロナ政策について、感染者が増えたときには、諸外国に比較すれば、かなり低いにもかかわらず、政府の対策が大失敗したように報道するのですが、最近のように感染者数が少なくなると今度は報道しません。

これについては、以下の記事をご覧いただければ良くご理解いただけるものと思います。
主要メディアはなぜコロナウイルスの大ニュースを報じないのか
この記事は、古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)によるものです。以下に要点だけ掲載します。
・主要メディアは新型コロナウイルスの感染の驚異的な減少を報じていない。

・ワクチン接種の急速な拡大や、政府の水際対策も効果を発揮したといえるだろう。

・ 主要メディアは、目前の現実を報じ、論じてほしい。それこそジャーナリズムの本来の責務だろう。
パチンコ屋でワクチン接種を受ける女性、大阪にて(2021年10月13日)

昨日このブログでは、英国のガーディアン紙が、日本の驚異的な感染者数の激減について報道していることを掲載しましたが、米ウェブメディアもこれについて報道しています。

Japan's success in smashing its latest wave of COVID has 'puzzled' health experts
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では専門家らは日本の急激なコロナ感染の収束に戸惑いを隠せないようなのですが、参考にすべきと語っていることを報道しています。

日本のメディアがこれを報道しないのは、選挙違反ではありませんが、印象操作だと謗られても致し方ないです。

選挙においては、選挙違反は見逃さず、マスコミの印象操作には幻惑されないことが肝要だと思います。

なお、日本においては米国など他国と比較すれば、投票所の数がかなり多く、比較対照がしやすいため、いくつかの投票所で大規模な不正行為が行われた場合、他の投票所と比較して、数学的に分析すると、明らかに異常であることが検証できるそうです。その点では比較的安心ともいえます。

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2021年10月30日土曜日

成功だった日本のコロナ対策 世界的にも良いパフォーマンス 死亡率もワクチンで劇的改善 ―【私の論評】菅政権のコロナ対策は、病床増床には失敗したが医療崩壊は起こさず、総体的には大成功(゚д゚)!

成功だった日本のコロナ対策 世界的にも良いパフォーマンス 死亡率もワクチンで劇的改善 
高橋洋一 日本の解き方

 衆院選では新型コロナウイルス対策が争点の一つだが、昨年以来の日本のコロナ感染状況や医療体制、経済対策、ワクチン確保はどうだったのか。今後の課題は何か。

 10月22日現在までの累積ベースの状況について、20カ国・地域(G20)の中の日本の順番をみてみよう。100万人当たりの感染者数は少ない方から4位、死亡者数も少ない方から4位、100万人当たりのワクチン総接種回数は4位。これらは良いパフォーマンスといっていいだろう。

日本のコロナワクチン接種率は、70%を超え米英・イスラエルを越した

 なお、各国の人口当たりの超過死亡推計(2020年1月からの実際の死亡者数と前年からの推計された死亡者数との差)をみても、G20諸国中13カ国のデータしかないが、その中で、日本は最も少なく1位である。これは、新型コロナに対して、日本が最も悪影響を受けなかったと解釈できるだろう。最新の超過死亡推計では、日本のデータが幾分増加しているようだが、世界の中では依然少ない。

 こうしてみる限り、結果としては日本のコロナ対策は申し分ないパフォーマンスだ。

 一方、同じベースでみて、1000人当たりの検査数では14位だった。各国の検査状況をみても、検査を多くした国とその国の感染者数や死者数には特段の関係を見いだせない。

 こうしたデータをみる限り、いまだに、検査を重要項目としている政党は世界から取り残されていると言わざるを得ない。第6波に備えて、医療体制の強化を主張している政党はまだまともだ。

 医療体制については、医療サービスの供給強化のために予算がつけられたが、結果として未消化になった。本コラムで指摘してきたが、政府分科会や医師会側は供給体制強化より感染抑制のための人流抑制など社会規制の一本やりだった。そのため、第5波にいたるまで、この2年間で医療供給体制の強化はほとんどなされなかった。この点は、衆院選後に、政府としてもしっかり検証を行うべきだ。

 経済対策についても、人流抑制一本やりのために、うまく機能したとはいえない。都道府県が飲食店などに営業時間の短縮などを要請したものの、その補償的な意味がある補助金は必ずしも十分ではなかった。地方創生交付金も配布されていたはずだが、未消化部分もあった。これも検証対象とすべきだ。

 ワクチン確保はかなりうまくいった。昨年の補正予算による冷凍庫確保などの準備、今年4月の菅義偉前首相の米ファイザー社との直接交渉や打ち手問題解決のための超法規的措置などが功を奏し、今や、欧米主要国を抜いた状況だ。

 そのため第1~4波で感染者数約77万5000人、死者約1万4000人、死亡率約1・9%だったが、ワクチンがかなり行き渡った第5波では、感染者数が約93万人と多かったが、死者は約4000人、死亡率は約0・4%と劇的な改善だった。

 ワクチンを十分に接種すればコロナは「普通の病気」並みなので、さらなるワクチン接種を行いつつ、感染症法上の扱いも引き下げるのが先決だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】菅政権のコロナ対策は、病床増床には失敗したが医療崩壊は起こさず、総体的には大成功(゚д゚)!

これだけ、急速に感染者数も死者も減ったのにはそれなりの理由があるはずです。今後は、その理由も解明してほしいと思います。

これについては、国内メディアでも様々な報道がなされていますが、英国のガーディァン紙等の見方を掲載します。

英国のガーディアン紙は、断定的な理由づけを行なっていないものの、日本の感染収束について2つの要因が大きく影響した可能性があるとみています。

 1つ目は、ワクチン接種の浸透です。日本は接種の開始時期こそ諸外国に遅れを取ったものの、現在では人口の約65%がワクチンの2回接種を終えており、これが新規感染を食い止めた可能性があります。

 一方、イギリスで必要回数の接種を完了している率は現時点での日本と同程度ですが、ここ1~2ヶ月ほどは伸び悩んでいます。オーストラリアは55%前後と、日本を10ポイント程度下回ります。

両国では反ワクチン・デモが行われ、警官隊と衝突して負傷者を出すなどしています。米国の完了率もオーストラリアと同程度で、なおかつ伸び悩んでいます。

 2つ目の要因として、マスク着用への抵抗感の少なさが幸いした可能性があるといいます。ガーディアン紙は「諸外国が屋内その他でマスク着用義務を緩和する一方、多くの日本人は思い切ってマスクを外すことを想像しただけでも身震いしている」と述べています。

パンデミック以前から風邪やインフルエンザなどの予防で冬場のマスクは習慣化しており、着用に抵抗が少なかったことが要因のひとつとして考えられそうです。

 このほか、夏場のピーク自体が季節性のものだったとみる専門家もいます。エアコンを利用する夏冬は窓を開けづらくなり、感染症の流行につながる環境が生まれやすいです。 

デルタ株の特性か 日本の状況の変化については、英インディペンデント紙の元姉妹紙である『 i 』紙も注目しています。「日本のコロナ件数が謎めいた減少をみせた」とし、他のアジア諸国において厳しい状況が続くなかで特異な例になっているとの見方です。

 英エディンバラ大学で疫学を研究するマーク・ウールハウス教授は同紙に対し、デルタ株が従来株よりも顕著な波を描く特性があるためではないかと説明している。デルタ株は急速に感染拡大する特性をもつが、感染の収束も早いのだといいます。

 ウールハウス教授は日本の緊急事態宣言を評価し、「こうした対策は感染数を抑えることを目的としており、その意味で成功しているように思われる」とも述べています。 教授はインドにおけるデルタ株の第1波でも同じく急激な拡大と収束がみられたと指摘し、日本の急速な感染者数減少は特別な驚きではないと見ているようです。

ある感染者が感染してから二次感染者にうつすまでの時間を疫学用語で「世代時間」というが、デルタ株はこの世代時間が短い特性があります。結果、集団内に急速に広まり、そして急速に波が引く形になるのだといいます。 

 医療機器の充実も貢献 i紙は日本の状況から、英国が学べる点は多いと指摘しています。「日本の主要メディアではネガティブな記事がヘッドラインを飾りがちだが、データを比較すれば他のG7諸国よりも日本はおおむねうまくパンデミックに対処している」との評価です。

英国の倍近い人口を抱える日本ですが、新型コロナの死者数は同国の7分の1未満となっています。 同紙は理由のひとつとして、日本は人口あたりのCTスキャナー配備数が世界で最も多く、肺の異常を早期に発見しやすいことを挙げています。

100万人あたり111台を確保している日本に対し、英国では9台に留まります。ほか、体外式膜型人工肺(ECMO、エクモ)の配備数や病床数が多いことも有利だといいます。一方、医師と看護師の数は他のG7諸国よりも少ないとの指摘です。 

英国メディアの報道は、日本のコロナ対策は大成功という認識のもとで報道しています。一方日本の主要メディアでは少し前までは、ネガティブな記事がヘッドラインを飾り、多くの人に日本の「コロナ対策」は大失敗だったかのような印象操作ばかりしていました。

最近では、どう考えてもコロナ対策、特にワクチン接種は大成功したのは間違いないことが明らかになりつつあるせいでしょうが、今度はほとんど報道しないという状況です。ほとんど報道しないということで、ワクチン接種の大成功も報道しないという、報道の自由の権利を行使しているようです。

衆院選終盤に入った26日、菅義偉前首相と立憲民主党の枝野幸男代表が鹿児島入りし、新型コロナウイルス対応を巡って舌戦を繰り広げた。菅前首相が「切り札はワクチン接種」と強調したのに対し、枝野氏は「常に後手後手」と批判しました。

菅前首相は志布志、鹿屋両市で演説しました。国民の7割以上がワクチンの2回接種を終えた現状を踏まえ「一日も早く、一人でも多く接種することが、国民の命と暮らしを守ることになると考えた」と成果をアピール。「安心安全で、にぎやかな日常を取り戻すための一歩を踏み出すことができた」と指揮した対策に自信を見せました。

現状日本でコロナが収束しつつあるのは、ワクチン接種の驚異的な速さが功を奏したのは明らかです。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
誰が五輪を「政治利用」するのか 一部野党は政府批判の材料に…日に日に現実離れする中止論 ―【私の論評】世界に先駆けて日本が「人類がコロナ禍に打ち勝てる可能性を世界に示す」 ことの意義は大きい(゚д゚)!

この記事は、月日のものです。以下に一部を引用します。 

100万回に関しては識者の人でも不可能と語っていました。しかし、この認識は全くの間違いです。

安倍政権だった2020年5月、2次補正予算が成立したときにワクチンに関しては1300億円の補正予算がつけられました。その予算計上の積算においては、ワクチンはファイザー製を用いることが前提でしたから、冷凍施設が必要とされ、これを全国1万ヵ所に設置するという想定で積算したのです。

冷蔵庫を1万ヵ所設置することを前提とすると、そこで1日に100人打つというのは難しい数字ではありません。100人には3時間ほどで打ててしまいます。だから100万回というのは、別にとんでもない数字ではないのです。当時の安倍総理はおそらく、一日100万回は不可能ではないと思っていたと思います。 さらに、ワクチン供給に関しては、2021年3月のときにほぼ決まっていました。さらに菅総理が渡米したときに、ファイザー協議して本決まりになりました。このときに、6月末までに1億回分のワクチンが送られて来ることは決まっていたのです。そうなと、6月末には高齢者はそれで全員接種できるし、2回打っても余ってしまうのです。それはもうわかっていたことです。

ワクチン1日100万回接種というのは、当初から予定されていたことなのです。そうして、それは安倍政権が計画をし、菅政権に引き継がれ、実行されて今日に至っているのです。 

一方、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、「医療体制については、医療サービスの供給強化のために予算がつけられたが、結果として未消化になった。本コラムで指摘してきたが、政府分科会や医師会側は供給体制強化より感染抑制のための人流抑制など社会規制の一本やりだった。そのため、第5波にいたるまで、この2年間で医療供給体制の強化はほとんどなされなかった。この点は、衆院選後に、政府としてもしっかり検証を行うべきだ」とありますが、これについては、その理由をこのブログにも掲載したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。

【日本の解き方】菅首相1年間の大きな功績 懸案を次々処理した「仕事師内閣」、対韓国でも厳しい姿勢貫く―【私の論評】新政権は、雇用の維持、迅速な鉄の三角形対策ができる体制を整えれば、長期安定政権となる(゚д゚)!

これは、10月2日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を以下に引用します。

日本には様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。
それは、医療の世界にも厳然として存在します。医師会、族議員、厚生官僚による三角形(医療ムラ )は厳然として存在してるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

1年以上も前から、コロナ病床は、かなり増床すべきことはわかっていました。そうして、昨年の補正予算でも、それに関する予算は潤沢につけられていたにもかかわらず、この医療ムラの猛反撃にあい、現在に至るまで大きく増床されることはありませんでした。感染症対策分科会も、こうした医療ムラの圧力に対抗できなかったのか、結局対策といえば、病床の増床ではなく、人流抑制ばかりを提言していました。
尾身会長
そのため、コロナ感染者数が増えるたびに、野党・マスコミは、医療ムラを批判するのではなく、菅政権を批判しました。尾身会長は、マスコミに利用された形になったといえます。これは、間違いなく菅政権を追い詰めていきました。特に、マスコミは感染者数が増えるたびに、不安を煽り、様々な印象操作で菅政権を追い詰めました。

菅政権のコロナ対策のうち経済対策については、マスコミ等はボロクソにいいますが、失業率という面でいうと、これもかなり良いパフォーマンスを発揮しました。それについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

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これは、9月22日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

日本の失業率はコロナ前の2020年2月に2・4%でしたが、その後上昇し、10月に3・1%とピークになり、21年7月は2・8%まで低下しました。米国は20年2月に3・5%でしたが、4月に14・8%とピークで、21年7月は5・4%。EUは20年3月が6・3%でしたが、8月に7・7%、21年7月は6・9%となりました。
それぞれ、コロナ前とコロナ後のピークの差は日本が0・7ポイント、米国が11・3ポイント、EUが1・4ポイントでした。コロナ前と直近の差は日本が0・4ポイント、米国が1・9ポイント、EUは0・6ポイントです。

これらの数字から、コロナ禍による失業率の上昇を最も抑えたのが日本であることがわかります。その理由は、日本では雇用保険の中に雇用調整助成金があるからです。この制度は、労働者の失業防止のために事業主に給付するものです。類似制度は世界ではそれほど多くないが、似た制度があるドイツも、ピーク時の失業率上昇は0・7ポイントと他国と比べて抑えられています。

コロナ失業を防いだ雇用調整助成金
厚生労働省は16日、2021年版の労働経済白書を公表しまた。新型コロナウイルス感染拡大により雇用が悪影響を受けたとする一方、雇用調整助成金(雇調金)などの効果により、完全失業率は2・6ポイント程度抑制されたとの推計を示ました。雇調金がなかった場合、失業率は5・5%に上昇した可能性があるとしています。

このように、雇用調整助成金は確実に効果を上げたのですが、一方では財源が逼迫しているので、保険料をあげようなどとの議論もされています。しかし、それでは何のための保険なのかということにもなりかねません。総裁選、衆院選と選挙が続く時期に、政府は当然このようなことはできないでしょう。それに、こういうことのためにも、補正予算を組むべきです。

このブログでは、経済政策においては、雇用政策がうまくいけば成功ですが、他の経済指標が良くても雇用政策がうまくいかなければ、失敗であるとのべてきました。その観点からすると、菅政権の経済政策はうまくいったといえます。

そのようなことを掲載すると、飲食店がどうのとか、旅行業者がどうのこうのという人もいるかもしれませが、それはミクロな見方であって、マクロ的には世界の先進国の中では最も失業者が少なかったのですから、菅内閣の経済政策は失敗したなどとはいえません。それは、何よりも数字ではっきり示されています。

岸政権は発足したばかりで、まだ良いとも悪いとも評価はできませんが、マスコミは菅政権の政策が大失敗したように、印象操作しているようですが、大失敗とはいえません。

それどころか、菅政権のコロナ対策は、病床増床には失敗しましたが医療崩壊は起こさず、総体的には大成功しました。

明日の選挙では、是非とも上に掲載したことなども考慮して投票をしていただきたいものです。

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2021年10月29日金曜日

中露の航行許す津軽の「特定海峡」指定 「領海」にしないと国益を損ねる 「非核三原則」も早急に見直しを ―【私の論評】中露などの軍艦艇、潜水艦や核兵器積載艦艇の海峡通過は有害通行とみなすべき(゚д゚)!

中露の航行許す津軽の「特定海峡」指定 「領海」にしないと国益を損ねる 「非核三原則」も早急に見直しを 
高橋洋一 日本の解き方

 中国とロシアの艦隊が津軽海峡を通過した後、太平洋側を南下し、大隅海峡を通過して東シナ海に入るのが確認された。この動きの背景は何か、日本としてはどのように対処すべきか。

 これまでも、中国とロシアの艦艇はそれぞれ津軽海峡を通過していた。中には、通常の通過通航とは言い難い、情報収集活動をしているとおぼしき船もあった。しかし、今回、中国とロシアの艦艇が津軽海峡を通過したのは軍事演習にも準じるものなので、日本としては看過できない事態だ。

 中国の言い分としては、米艦隊が台湾海峡に来るのと同じだというものだ。

 だが、台湾海峡は広く、中国の領海と台湾の領海が交わるところはない。その意味で、公海であるから米国に限らずどこの国の艦隊が通過通航しても、潜水艦が潜っても、航空機が飛んでも何の問題もない。

 一方、津軽海峡は狭いところの幅は20キロもない。領海は海岸から12カイリ(約22キロ)なので、津軽海峡は日本の「領海」であると素人目にも思える。その「領海」内を堂々と、他国の艦隊が通過通航することがそもそもおかしいというのが素人の感覚だ。


 しかし、津軽海峡は国際海峡とされ、軍民を問わず艦艇、潜水艦、航空機も通過通航権が認められている。その国内法の根拠となっているのが領海法で、津軽海峡は「特定地域」に指定されている。

 その建前は、「国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカー等の自由な航行を保障」とされているが、実際のところ、米艦艇などが核兵器を保有して通過通航するので、日本の非核三原則の一つ「持ち込ませず」に反することを回避する措置とみるのが常識だ。

 この非核三原則のうち「持ち込ませず」くらい馬鹿げたものはない。日本に帰港する米艦艇がどこかで核兵器を下ろすはずないからだ。「持ち込ませず」がこれまでも空文化しているのは、現実的な国民はみんな分かっていて、無意味な建前を言っているだけだ。この意味で、この議論は「お花畑」とほとんど変わりはない。

 その結果、津軽海峡を国際海峡としているのは日本の国益を損なう。

 なお、特定海峡には、津軽海峡のほか宗谷海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道および大隅海峡が指定されている。宗谷海峡はロシア、対馬海峡西水道は韓国と向かい合うが、それ以外の3海峡は日本の領土に囲まれているので、領海としないのはそもそもおかしい。

 こうした政府の決定は、40年以上前に行われたが、今や時代や国際情勢は大きく変わっている。

 非核三原則は法律でもないので、不合理なものは一刻も早く見直して、津軽海峡などの特定地域指定についても変更すべきだ。その場合、領海内の無害通航の範囲で外国艦艇に対処したらいい。そうなれば、もちろん今回の軍事演習のような行為は国際法上認められなくなるのはいうまでもない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中露などの軍艦艇、潜水艦や核兵器積載艦艇の海峡通過は有害通行とみなすべき(゚д゚)!

津軽海峡を通過する中露艦隊

今回の中国・ロシア艦隊の通航を背景として、上記のように「特定海域を廃止し、全て領海に含めてしまうべき」という主張も見られます。

無害通航の近代的制度は19世紀になって(国際法として)成立したといわれますが、通過通航の概念は比較的新しい考え方です。国連海洋法条約の制定によって、それ以前は(主に)3海里とされていた領海幅が12海里に拡張されるに伴い、それまで公海部分を自由通航すればよかった多くの国際海峡が沿岸国の領海となることがわかりました。

そうなると国際海峡の船舶の通航は無害通航しか認められず、航空機の公海上空飛行はできなくなってしまいます。

そこで先進諸国の主張を入れて、(公海と公海を結ぶ)国際海峡は全ての船舶および航空機に通過通航権(国連海洋法条約38条)を認めることになったのです。


大隅海峡、対馬海峡、津軽海峡などは、国際海峡ではなく、わが国独特の「特定海域」として国際社会に通告しています。これらは日本の領海内の海峡であり、もしここに通過通航権を設定するとなるといろいろと難しいことが想定されます。

例えば、核保有国である中国の(核兵器搭載の公算がある)軍艦が(領海である特定海域を)通過した場合、日本の国是である非核三原則に抵触することになり(その瞬間)非核三原則が崩れてしまいかねないです。無論米軍の軍艦が核兵器を積んで通過しても同じことです。

そこでわざわざこのような海峡に限って我が国政府独自の判断により領海幅3海里に縮めて公海部分を設け、自由航行ができるようにしたのです。

ただ、上の高橋洋一氏の主張するように、宗谷海峡はロシア、対馬海峡西水道は韓国と向かい合うのですがが、それ以外の3海峡は日本の領土に囲まれているので、領海としないのはそもそもおかしいです。

領海幅が12海里に拡張されたのですから、日本の領土で囲まれる、津軽海峡、大隅海峡、対馬海峡は領海にすべきです。この三海峡をわざわざ国際海峡のようにようにして扱う必要はないでしょう。通過通行権は、領海を除く国際海峡に適用されるものです。そうなると、外国の船は無害通航しかできなくなります。

軍艦も一般の商船と同様にこの無害通航権を行使することができるかどうかということについては争いがあります。欧米の海洋先進国は、無害通航権は船種の違いを根拠に否認されることはないと主張しているのに対して、軍艦の通航は当然に無害とみなすことはできず、その領海通航については、事前の通告を行わせるか、または事前の許可を求めさせると主張する国は少なくないです。

国連海洋法条約の採択過程では、この問題をめぐって諸国の見解が対立したので、条約には、軍艦が無害通航権を有するかどうかを直接に規定した条文は置かれていないです。

また、今日では、地球環境保護の問題への関心が急速に高まっていることもあり、軍艦のほかに、核物質など危険で有害な物質を積載する船舶の領海通航が規制の対象となるかどうかが論議を集めるようになっています。

そのため、今後の各国の実行が大いに注目されています。日本は、1968年の国会において、核兵器積載艦船の領海通航は無害とはみなさないという立場を表明し、この立場に変更がないことは、96年の国連海洋法条約を批准する際の国会審議においても確認されています。


日本としては、「核三原則」は捨てても、この立場は堅持すべきです。ただし、米国など同盟国の艦艇や潜水艦、核兵器積載艦艇の通過は無害とみなし、中露などの艦艇や潜水艦や核兵器積載艦艇に関しては、有害とみなすようにすべきです。

これにより、今回の中露の軍事演習のような行為は国際的にも認められなくなります。

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2021年10月28日木曜日

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蔡総統、米軍の台湾軍訓練認める 1979年の米台断交後、初


 台湾の蔡英文総統は27日に放映された米CNNのインタビューで、米軍が台湾に駐留し、台湾軍に訓練をしていると認めた。台湾の総統が米軍による訓練の実施を公に認めるのは1979年の米台断交後、初めて。米国の強い関与を公表することで、台湾側は軍事的圧力をかけてくる中国に対抗する狙いがあるとみられる。

  米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今月上旬、米海兵隊と台湾海軍が共同で小型艇を使った訓練を実施しているほか、特殊作戦部隊と支援部隊の二十数人が台湾陸軍の訓練に当たっていると報じていた。こうした訓練は少なくとも1年前から実施されているという。 

 蔡氏は英語で取材を受け、米軍が台湾軍の訓練に参加しているかを問われ「イエス」と答えた。CNN記者が「現在、何人の米兵がいるか」と問うたが、蔡氏は「多くない」と述べるにとどめた。蔡氏は訓練の詳細は明かさなかったが「我々の防衛力を向上させるために米国とは幅広い協力をしている」と言明。中国が台湾への攻撃を試みた場合に「米国が台湾を守ると信じているか」との質問には「確信している」と答えた。

  米国は79年に中国と国交正常化し、台湾と断交。台湾駐留米軍は中国との合意に基づき、撤収した。一方で米国は断交後に制定した台湾関係法に基づき、台湾への武器売却は続けてきた。だが米台は、米国の対台湾代表機関、米国在台協会(AIT)台北事務所に勤務する「警備要員」を除いて、米軍兵が台湾で活動していると公に認めていなかった。

  CNNは米国防総省の情報として、台湾に駐留する米兵は2018年の10人から今年は32人に増えたと報じた。この人数にはAITの警備要員が含まれている可能性がある。

【私の論評】米台ともに中国は台湾に侵攻できないと見ているからこそ、蔡総統は米軍台湾駐留を公にした(゚д゚)!

米軍が台湾で活動していることは、以前から指摘されていました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
台湾軍兵士がフェイスブックで“極秘情報”をポロリ「米軍進駐で忙しく昼休みもない」常駐なら「一線越える」―【私の論評】中国は台湾に侵攻できないし、米国にはそれを許せないわけがある(゚д゚)!

2020年11月、中部台中市内で戦車のメンテナンスを行う台湾陸軍部隊。同年7月には、台中に中国軍が上陸したケースを想定して大規模な軍事演習が行われている。

詳細は、この記事をご覧いただくものとしして、この記事では、結局バイデン政権は現状変更を認めることはないだろうことを掲載しました。

このことがあって、なかば米軍の台湾駐留が公にされた後でも、米国は以下のような動きをしています。

米国の外交代表部の役割をする米国在台湾協会(AIT)関連の航空機が相次いで台湾に到着し、中国側が強く反発しました。

7月20日、台湾の「自由時報」などの報道を総合すると、同日前日午前、フィリピンのニノイ・アキノ国際空港を出発したAITのチャーター機が午後0時14分ごろ、台湾の首都台北の桃園国際空港に着陸しました。このチャーター機は、米空軍の主力輸送機C-130を民間用に改造した機種だといいます。

台湾空港に着陸したC-130輸送機

AIT関連の米国の航空機が台湾に降り立ったのは、7月に入ってすでに2回目でした。15日にも沖縄の嘉手納空軍基地を離陸した米軍C-146ウルフハウンド輸送機が午前9時32分頃、台北の松山空港に到着しました。ウルフハウンドは米特殊戦司令部の主力輸送機として知られます。「自由時報」は当時、「輸送機には、今月12日に台湾に到着し2週間の義務隔離に入ったオウドカーク所長に渡される物が積まれており、荷物を降ろした直後の10時6分頃に離陸した」と報じました。

中国側は反発を強めました。官営の「グローバルタイムズ」は同日、「民間用に改造した軍用機が再び台湾に着陸したのは米国側の『サラミ戦術』(敵対する勢力を懐柔などによって少しずつ滅ぼす手法)流の挑発であり、台湾分離独立勢力に誤ったシグナルを送る行為」だとし、「中国側は米軍機の台湾着陸が日常化することを座視しない」と主張しました。

同紙は「AIT側が民間目的で利用したとしても、当航空機が軍用機を改造した機種だということ自体が挑発的」だとし、「一部では当航空機が米中央情報局(CIA)側と関連があるという主張もある」と付け加えました。

これに先立ち、中国国防部報道官は15日、ウルフハウンド輸送機の台湾着陸と関連して声明を発表し、「台湾は中国の一部であり、中国領土に着陸する外国軍用機は必ず中国政府の許可を受けなければならない」としたうえで、「米国が火遊びを止めなければ、厳しい結果を招く」と警告しました。

米軍の駐留等がなかば公になり、さらに今回蔡英文総統によってそれが公に公表されたのです。

これは、米国も台湾も中国はここしばらくは台湾に侵攻できないと踏んでいると考えるのが妥当です。もし本気で中国が近いうちに、台湾に侵攻してくると考えているとしたら、このような挑発的なことは言わないはずです。

では、なぜ中国は台湾にここしばらくは、台湾に侵攻できないのでしょう。具体的に考えてみましょう。どんな戦争も目的を達成すれば勝利で、達成できなければ、たとえ戦闘に勝利したとしても、それは敗北です。中国にとって台湾の武力統一とは、100km以上離れた重武装した島を完全占領し、新政権を樹立して統治を開始し、長期にわたって維持することを意味します。 

そのためには、弾道ミサイルなどによる攻撃、航空・海上優勢の確保、着上陸侵攻作戦などを成功させ、上陸させる大部隊に対して、途切れることなく補給をしなければなりません。どの段階で失敗しても、例えば米軍が介入して補給が途切れたとしたら、上陸部隊は孤軍となってせん滅されます。

これについては、このブログでも過去に何度か指摘されています。対潜水艦戦(ASW)に中国よりも圧倒的に優れた米軍が、強力な攻撃型原潜を数隻台湾に派遣して、台湾を包囲してしまえば、中国軍はこの包囲を破ることはできません。

ASWにすぐれた、米攻撃型原潜が、台湾に近づく中国の潜水艦を含む艦艇や航空機をことごとく撃沈することになります。特に、中国の潜水艦は米攻撃型原潜に真っ先に撃沈されることになるでしょう。さらに、中国のレーダーや監視衛星の地上施設なども破壊されるでしょう。

その後に、米軍は空母を含む艦艇などを出して、追撃戦にでくることになるでしょう。そうなると、中国としては、全く歯型たたず、降伏するしかなくなります。この戦いに英軍が加勢していればそれこそ、香港、澳門奪還作戦を敢行するかもしれません。しかし、そうされたとしても、国際世論は英国に味方するでしょう。

さらに、この間台湾軍が反撃して中国本土にも戦火が及びます。台湾にも対空、対地、対艦用など多数ミサイルがあります。最も航続距離が長いものでは、三峡ダムに到達する能力があることをこのブログでも述べたことがあります。三峡ダムが破壊されれば、中国の40%は洪水に見舞われるとされています。中国が台湾に侵攻しようとすれば、当然のことながら、台湾側は中国に対しても報復攻撃をすることでしょう。

台湾の巡航ミサイル雲峰の飛行距離は2000キロで、台湾から三峡ダムを納める距離

仮に宇宙やサイバーのドメインで中国がいくら強かったにしても、台湾占領はできません。台湾が抵抗する限り必ず大戦争になります。台湾は台湾を守り切りさえすれば勝ちになります。台湾を完全占領する作戦はあまりにもコストとリスクが高く、中国が踏み切れるとは到底思えません。

こういうとあまりに楽観的にすぎると思う人もいるかもしれません。たとえば、米誌ナショナル・インタレストが昨年8月に掲載した記事によると、米国防総省が米中の軍事衝突、中でも台湾をめぐる争いを想定して実施したWar Game(机上演習)で、米軍が敗北する可能性が高いことを示す結果が複数出ています。

しかし、米軍がなぜそうした机上演習をするかを理解する必要があります。それは、自軍の弱点を見つけ出して改善するためです。ですから、彼らは中国軍が最大限能力を発揮する条件で、台湾軍や米軍の弱点を突いてきた場合どうなるかを研究するのです。そしてその結果を、米軍の弱点を補強する改善策や予算要求につなげます。それが机上演習の目的です。

次に、中国が核兵器をもちいたらどうなるのかという人もいるかもしれません。米中が互いを核攻撃しあわない限り、米国本土はほぼ無傷の一方で、中国は戦場になります。対台湾武力統一は米国への真っ正面からの挑戦ですから、米国は中国が少なくとも短期的に立ち上がれないほどの打撃を中国に与える選択肢を念頭に置くでしょう。例えば、当然中国の空母は撃沈するでしょうし、ミサイル基地、空軍基地、軍需産業拠点を破壊することもできます。

それほどの打撃を被る中国が核使用の誘惑に勝てるでしょうか。ただし、もしも中国が対米先制核攻撃の構えをわずかでも見せたら、米国はためらうことなく中国に核の先制攻撃をかけるでしょう。つまり、対台湾武力統一戦争とは、米中どちらも始めたら絶対に負けられない戦争なので、エスカレートしやすいのです。

台湾占領に失敗し、自国の発展の機会が失われ、それどころか人類滅亡にもなりかねない核攻撃にまでエスカレートしかねない選択を中国がとるとは思えません。

おそらく中国の指導者が常軌を逸した誤算をしない限り、あり得ません。しかもこれは国運をかけた大戦争ですから準備に数カ月かかり、奇襲はできません。つまり、台湾、米国、日本など、中国がこの戦争に踏み出すことを察知し、ほぼ守りを固めた状況で中国の攻撃が始まるのです。それなのに、中国は、台湾の完全占領と占領の長期間にわたる維持というパーフェクトな戦争を完遂しなければ勝ったことにならないのです。

さらに、戦争に勝利できたとしても、その後数十年にもわたって台湾に軍隊を駐留させて、反中派を武力弾圧しながら、台湾を根本から作り変えなければならないのです。民主主義と、責任を伴う自由を知った台湾人は、香港人より人口も多いですし手強い存在です。

その間、米国および日本を含む同盟国が反攻の機会をうかがうでしよう、台湾の反中派を支援することになるのは当然です。そのさなかに中国は台湾を統治をして、台湾をつくりかえなければならないのです。そもそも侵攻してきた中国に台湾人が統治の正当性があると認めることはあり得ません。

国際社会も無論台湾に味方します。現状よりもさらに酷い制裁が中国に課されることになるでしょう。中国は世界から完全に孤立することになるでしょう。

台湾は、中国にとって、米国にとってのかつてのアフガンのようになることでしよう。仮に台湾を統治できたとしても、いつまで統治できるかもわからないのです。

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2021年10月27日水曜日

【日本の解き方】日本の賃金はなぜ上がらない? 原因は「生産性」や「非正規」でなく、ここ30年のマネーの伸び率だ!!―【私の論評】日本人の賃金が低いのはすべて日銀だけのせい、他は関係ない(゚д゚)!

【日本の解き方】日本の賃金はなぜ上がらない? 原因は「生産性」や「非正規」でなく、ここ30年のマネーの伸び率だ!!


 今回の衆院選に関連して、この30年間、日本の賃金が欧米に比べて上がっていないことが報じられた。生産性の低さや非正規雇用の多さ、企業の内部留保などを原因とする分析もあるが、引き上げるには何が必要だろうか。

 賃金は名目所得であるが、その伸び率は名目経済成長率とほぼ連動する。つまり、ここ30年間でなぜ名目経済成長率が低かったのかという問題だ。「失われた30年」の原因は何かという、今でも喧々囂々(けんけんごうごう)の論争でもある。

 筆者の分析は国際比較を使う。世界各国のここ30年間の名目経済成長率を比べると、日本は世界でほぼ最下位だ。その上で、何が関係してそうした順番になるかを探るために、他の要因となるような変数を探して、ここ30年間の数値を並べてみる。統計の言葉でいえば、30年間の名目経済成長率と相関(絶対値)の大きい他の変数を探すということだ。

 これまでの筆者の試行錯誤では、マネーの伸び率が最も相関が大きい。マネーの伸び率でも日本は世界の中でほぼビリだ。ちなみに、140カ国で30年程度の名目成長率とマネー伸び率の相関は0・90(1が最大)、大きな異常値と思われる数字を除いた130カ国でも0・73といずれも高い。社会科学ではめったに見られない高い相関だ。

 もちろん相関関係は因果関係を意味しないが、マネーの伸び率は政策的に操作可能なので、結果として名目経済成長率の低下を招いた可能性がある。つまり、こうした国際比較分析からいえるのは、日本の賃金が伸びなかったのはマネーの伸び率の低さによるものということだ。

 「生産性が低かった」という議論もあるが、生産性は名目成長率の一つの構成要素なので、トートロジー(同義反復)であり、原因とはいえない。賃金の伸びが低かったことと生産性が低かったことは、他の原因により同時に発生した可能性がある。

 筆者には思い当たる経験がある。1990年までは日本のマネーの伸び率は先進国の中でも平均的だったが、バブル潰しのために90年に入ってから日銀は引き締めた。その引き締めをその後30年近く、基本的に継続しているのだ。

 「非正規雇用の多さ」という議論は、非正規雇用が総じて低賃金だからという発想であろうが、国際比較すると日本だけが特別に多いわけではないので、必ずしも日本の賃金の低さを説明できない。

 「企業の内部留保の大きさ」というのは、企業が内部留保を吐き出さないので低賃金になっているとの主張だが、30年間常に日本企業の内部留保が大きかったわけではないので、30年間の現象をよく説明できない。

 マネーの伸び率を高めるために有効な政策は、インフレ目標の数字を引き上げることだ。筆者はすでに、インフレ目標を現状の2%から4%に引き上げれば、所得倍増を12~13年で達成できることを指摘している。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本人の賃金が低いのはすべて日銀だけのせい、他は関係ない(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の主張は、以下のグラフをご覧いただければ、一層理解しやすいです。


名目賃金とは、貨幣額で示された賃金を指します。つまり、賃金の額面そのものが名目賃金であり、賃金額が30万円であれば名目賃金も30万円で、3000米ドルであれば同額が名目賃金です。

原則的に、名目賃金は雇用契約による労働の対価として、金銭によって支払われた賃金額のみを指します。

通常、労働の報酬には無料の社員食堂や特別休暇、社員旅行といった福利厚生もあり、報酬の形は金銭とは限りません。

しかし、こういった労働者向けのサービスは賃金には含まれず、名目賃金として計算されないのが一般的な認識です。

実質賃金とは、物価の変動を考慮した賃金です。

一方、貨幣は財・サービスや商品などの価格を示す役割があり、店頭の商品や金・原油といったコモディティの価格は「10円」「1米ドル」といったように貨幣額によって表されています。

しかし、そういったお金で示された財・サービスの価値は絶対的なものではありません。貨幣の価値もモノの価値もその時々によって相対的に変動しており、額面の指す価値は一定ではないのです。

例えば、モノの価値が高まり貨幣の価値が下がるという物価上昇が起これば、同じ100円でも購入できるモノが減ることになります。賃金は日本円や米ドルといった通貨(貨幣)で支払うものです。そのため、賃金の価値は変動することになります。

例えば、名目賃金は同じ金額であっても、物価上昇(インフレーション)が起これば実質的な賃金価値は下がり、物価下落(デフレーション)が起これば賃金価値は上がるでしょう。

そこで、名目賃金に対して物価上昇率の影響を差し引いて、実質的な賃金価値を示すものが実質賃金なのです。

上のグラフは、1991年から2019年の28年間で日本を含めた22カ国で、この30年間の名目賃金と、物価変動を考慮した実質賃金の伸びを示したものです。名目賃金はほとんどの国で2倍以上になっているのですかが、日本は最低で、ほぼゼロの伸びで飛び抜けて低いです。実質賃金も50%程度伸びている国が多いですが、日本は5%程度であり、これも低いです。

それぞれの国で名目賃金の伸びと実質賃金の伸びを見ると、相関係数は0.75(1が最大)になっています。この観点から、日本の実質賃金の伸びが世界で低いのは、名目賃金の伸びが低いからだといえます。

名目賃金は、1人当たり名目国内総生産(GDP)と同じ概念なので、名目賃金が低いのは、名目GDPの伸びが低いからだということになります。

確かに、日本の名目GDPは、90年からほとんど伸びていません。これは世界で最も低い伸びであり、先進国の中でも際立って低いです。そのくらい名目経済が成長していないので、その成果の反映である賃金が伸びていないのは当然の結果です。労働が経済活動からの派生需要である以上、経済が伸びなければ賃金は伸びないです。つまり、賃金が低くなったのは、90年代以降の「失われた時代」の結果です。

そうして、この30年間で、名目GDPの伸び率と最も相関が高いのはマネー伸び率です。世界各国のデータでみても、相関係数は0.8程度もあります。

以下のグラフは、名目GDPとM2の成長率を比較したものです。相関係数は0.7です。M2とは、マネーストックの一種で、市場全体に供給される通貨(マネー)の量を測る指標です。日本ではかつて、「マネーサプライ」と呼ばれていました。

マネーストックにはいくつかの種類があります。現金と預金通貨の合計は「M1」と呼ばれ、このM1に定期性預金や譲渡性預金(CD)を加えたものが「M2」です。
ここで重要なのは、マネーは金融政策でかなりコントロールできることです。ところが、金融政策の主体である日銀はかつて、「マネーは、経済活動の結果であって管理できない」ととんでもないことを言っていましたた。マネーが管理できないなら中央銀行は不要だが、こうしたばかげた議論が実際にあったのです。

2000年代になっても、日銀はインフレ目標を否定し、その上、デフレ志向でした。いわゆる「良いデフレ論」です。しかし、「デフレ」で良いことは一つもありません。結論をいうと、日銀がこのようなスタンスで、金融緩和をしないで来た結果、日本人の賃金は30年間も上昇しなかったのです。

日本銀行

この間、政府も消費税増税や緊縮財政を繰り返し、さらにデフレと賃金低下に拍車をかけました。ただ、日銀が金融緩和をしない限り、仮に政府だけが積極財政をしても、短期的には成果をあげられるかもしれませんが、中長期ではマネーそのものが足りていないのですから、名目GDPも上がらず、名目賃金も上がりません。結局、日銀の金融政策が日本人の賃金が上がらないことの主要因だったのです。

しかしそうした意見は徐々に修正されてきました。第2次安倍晋三政権になると、世界の先進国でビリではありましたが、ようやくインフレ目標が導入され、日本もまともになり始めました。

00年代初めのような愚かな議論はなくなりました。それでも現状は胸を張って「デフレ脱却」と言えるところまではいっていないです。失われた20年に引き続き、今もデフレから完璧に脱出していないことから、現状も失われた20年は続いており、その意味で「失われた30」としています。いずれにしても、「失われた30年」はなんとも痛恨です。

これは、何とかしなければならないでしょう。しかし、これを何とかしようとして、いくら努力しても、日銀がさらなる量的金融緩和に踏み切らない限り、名目GDPも名目賃金も上がることはありません。これだけは、勘違いするべきではないです。

勘違いすれば、とんでもないことになります。たとえば、お隣韓国では、雇用状況がわるいというのに、あまり金融緩和をしないで最低賃金を機械的にあげましたが、どうなったでしょうか。雇用が激減してとんでもないことになりました。今日もテレビで、韓国の悲惨な現状が報道されていました。

日銀が大規模な金融緩和をしないうちに、「非正規雇用」が多いからなどとして、非正規雇用を機械的に減らしてみたり、「企業の内部留保」を機械的に減らすようなことをすれば、がん患者に、突然激しい運動をさせてみたり、厳しいダイエットをするようなものであり、無論賃金が上がるということもなく、韓国のようにとんでもないことになります。

立憲民主党のように「分配なくして成長なし」というのも、これと同じようにとんでもないことになります。成長する前に分配をしてしまえば、韓国のように雇用が激減するだけになります。

考えてみれば、「失われた30年」は、日銀による実体経済にお構いなしに、金融引締を実施し続けたことによるデフレ、政府によるこれも実体経済にお構いなしに増税など緊縮財政を長い間にわたって続けてデフレに拍車をかけてきたことが原因です。

もう、いい加減このような愚かな政策はやめるべきです。


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2021年10月26日火曜日

中国経済が抱える“深すぎる闇” 統計資料も企業開示も不透明…日本企業は守ってもらえない ―【私の論評】中国当局による中国企業への統制強化の方が、より深刻な「チャイナリスク」に(゚д゚)!

中国経済が抱える“深すぎる闇” 統計資料も企業開示も不透明…日本企業は守ってもらえない 
高橋洋一 日本の解き方

輸入額、鉄道貨物輸送料が減っても、変わらない中国のGDPの不思議

 中国経済をめぐって、経済成長率の減速や不動産大手の経営問題が浮上している。世界第2の経済大国である一方、経済安全保障の観点では問題も抱えている。日本や日本企業はどのようなスタンスで中国に対峙(たいじ)することが望ましいのか。

 中国経済の話をするのはいつも難しい。というのは、信頼できる統計がないからだ。中国国家統計局は18日、7~9月期の国内総生産(GDP)成長率が前年同期比4・9%増となったと発表したが、このタイミングは先進国から見れば信じがたいほど早い。GDP統計は各種の経済統計を加工しており、先進国でも1カ月以上の期間を要する。しかし、中国では2週間あまりで公表されている。

 筆者はかつて、中国の統計システムが旧ソ連のものと手法も組織も似通っていることを指摘し、旧ソ連のGDPがデタラメだったことから、中国のGDPも信頼性がないとし、統計がごまかしにくい輸入統計を利用してGDPを推計した本を書いたことがある。その際、中国関係者から筆者らに異常なほど直接クレームが来た。学問の世界であれば、異論があれば論文や本を書けばいいのに、どうして直接のクレームをつけるのか不思議だった。

 不動産大手の経営問題でも、財務諸表が十分に公開されていれば、その実態を把握するのはそれほど困難ではないが、何しろ中国では企業開示は先進国と比べて問題が多い。

 筆者は不良債権処理の専門家として中国に招かれたことがあるが、そのたびに情報開示の問題に直面した。今も情報開示が不十分なために、憶測が憶測を呼び、実態が分からない。

 不動産大手の経営問題の処理も、習近平国家主席らのさじ加減次第なので、先行きは不透明だ。もっとも、今回、債務返済において、ドル建て債務は中国人民元建て債務より劣後することは分かった。

 このように、中国経済は民主主義国の資本主義とはかなり異なっている。企業経営者は統計などの情報より、個人の体感をベースに判断するので、統計の有無など問題にしないのかもしれないが、危機的な状況になった際、統計資料が十分とはいえない中国政府の対応力に筆者としては疑問を感じる。

 最近、経済安全保障の考え方が国際政治では主流になりつつある。これは、平時では戦争行為はしないが、経済取引を武器として「戦争」を行っているという考えだ。サプライチェーン(流通網)で各種部品の供給元として中国に過度に依存していると、部品供給をストップされた場合に大打撃を受ける。販路を中国市場に依存しているのも経営にとって危うい側面がある。

 いずれにしても、中国経済のルールや情報開示は不透明であり、民主主義国とは異なっていることを認識したほうがいい。中国流ルールの下では、外国私企業という概念は極めて希薄なので、いざというときに日本企業は保護されないということも肝に銘じておくべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国当局による中国企業への統制強化の方が、より深刻な「チャイナリスク」に(゚д゚)!

中国政府は7月26日にネット業界に対する半年間の集中取り締まりを始めたことを突如発表しました。「今年前半のアプリの取り締まりを踏まえ、さらにネット業界の問題を整理する」と説明しています。

昨年来、中国当局はIT業界に対する統制強化をにわかに強めています。その起点となったのは、EC最大手のアリババグループ傘下で決済アプリであるアリペイを提供するアント・グループの昨年11月の上場延期です。その後、アント・グループの金融ビジネスは、事実上解体されようとしています。

当局は今年4月に、アリババグループに巨額の罰金を科し、またネット企業大手のテンセントなど他社にも相次いで指導や罰金処分などを行っています。7月に入ってからは、米国に上場したばかりの配車サービス大手、滴滴出行(ディディ)に対して「違法に個人情報を収集している」としてアプリのダウンロードの禁止を命じました。



7月24日には、国家市場監督管理総局が、国内ネット音楽配信市場における独占行為で、テンセントに対し独占禁止法違反で是正措置と罰金50万元の支払いを命じたと発表しています。

そうして、当局の規制・統制強化は、まったく別の業界にも及び始めている。7月24日には、小中学生向け学習塾を非営利団体化することを柱とする規制策が公表されました。教育産業はネット企業の利益拡大を助けるネット広告の大口顧客であるが、その観点以外に当局は、学習塾など義務教育以外の教育ビジネスが教育費の上昇を後押ししており、それが教育を受ける機会の不平等を生じさせるとともに、養育費の上昇を通じて出生率を高めることを妨げている、としています。

IT業界、教育産業以外に、今後は過剰債務などの大きなリスクを抱える不動産業界や医療業界などにも、当局の統制強化が広まるとの観測が、投資家の間で浮上していました。恒大集団のデフォルト危機などもあったためか、不動産業界では既にそうした動きが見られ始めています。

昨年までは、投資家にとっての「チャイナリスク」とは、IT関連の中国企業が、米国政府によって米国や先進国市場から締め出され、また、半導体など中国企業のサプライチェーンを遮断されることを意味しました。

しかし現在では、中国当局による中国企業への統制強化の方が、より深刻な「チャイナリスク」となっています。中国当局は、中国企業の海外での上場、あるいは海外での中国企業の活動に対しても統制を強めています。


7月23日には、中央銀行の中国人民銀行が、ネット決済事業者に対して、国内外での新規株式公開(IPO)など経営上の様々な「重大事項」について事前報告を義務づける、新たな規則を公表しています。

中国企業の海外での上場や海外での活動を規制することは、中国企業の資金調達や市場拡大を制約し、その成長を妨げることにもつながります。それにもかかわらず、中国当局が統制を強化する理由には、海外で活動する中国企業から、中国の個人データなどビッグデータが米国などに流出することへの警戒があるのでしょう。

従来は、米国で活動する中国企業が、米国での情報を不当に集め、中国に流していると米国政府は批判していました。米国側だけでなく、中国側からも情報流出を警戒して米中間の経済活動を切り離す、「デカップリング」を進め始めたのです。そうしたもとでは、中国企業に投資するグロース投資家に対する中国当局の配慮も、次第に低下しているように見えます。

中国政府が中国企業に対する統制強化を進めるのは、巨額の利益を上げ、また個人データを蓄積する企業が、中国政府の経済あるいは政治的な統制にとって脅威となり始めているからです。それに加えて、巨額の利益を上げる企業への統制強化を通じて国民の支持を集める狙いもあるようです。

この点、習近平国家主席がかつて断行した、腐敗取り締まりキャンペーンとも似ているように感じられます。それは、不正に利益を上げた政治家などを取り締まることで、国民の支持を得る狙いであるとともに、習近平国家主席の政敵を排除し、政権基盤の安定化に資することを狙ったのでしょう。

しかし、中国企業に対する統制強化の場合には、果たしてそれが国民の支持を集めるかどうかは分からないです。確かに、巨額の利益を上げるIT企業に対する統制を強化し、収益環境を損ねれば、それによって留飲を下げる国民も中にはいるかもしれないです。

しかし、ネット企業への統制強化は、サービスの低下にもつながります。また、教育産業が急成長している背景には、エリート大学に入学し限られた高給の職を子供に得させたい、という親の願いがあります。そうしたニーズを無視して、学習塾など教育産業への規制を強化すれば、それは国民からの反発を生む可能性もあるでしょう。


中国企業に対する統制強化は、このように国民の利便性を直接低下させる可能性があることに加えて、イノベーションを阻害することを通じて、中国経済の潜在力を低下させてしまう可能性もあります。これも、国民にとっては大きな不利益となります。

中国政府が急速に進める企業への統制強化は、中国が再び先進国グループと袂を分かち、独自の政治・経済体制の追求を進めていることの一端のようにも見えます。ただし、それがどこまで進められるかは、今後の中国経済のパフォーマンスと中国国民からの支持に大きくかかっているのではないでしょうか。

特に大企業に対する規制などは、いままで中国政府を支えてきた富裕層の反発を招くことになり、多くの一般国民からの反発に加え富裕層からの反発も招くことになれば、中国共産党の当地の正当性の基盤が揺らぐことにもなりかねません。

米中両サイドから中国デカップリンクがはじまり、チャイナ・リスクはさらに破滅的になりました。中国当局による中国企業への統制強化が新たな「チャイナ・リスク」となってるのですから、日本企業だけが安泰でいられるわけなどありません。


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