2022年10月28日金曜日

防衛費増額「国民全体で負担を」 安定財源、増税が軸―財政審―【私の論評】財務真理教問題こそ、日本国内の最重要課題(゚д゚)!

防衛費増額「国民全体で負担を」 安定財源、増税が軸―財政審

財務神理教教団本部
 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は28日の分科会で2023年度の予算編成で最大の焦点となっている防衛力の強化を巡り議論した。委員からは、財源は「国民全体で広く負担するのが基本」として増税を軸に検討する必要があるとの意見が相次いだ。

防衛力、2段階で強化 32年までに先進ミサイル整備―防衛省

 同日は、慶応大の神保謙教授と河野克俊前統合幕僚長から防衛力整備の在り方について意見を聴取した。神保氏は「安全保障環境の変化に応じて優先順位などを不断に再構築する必要がある」と指摘。河野氏からは長期戦に耐える「継戦能力」に重点を置く必要があるとの説明があったという。

財政政策審議会

 委員には継戦能力を確保するためにも借金に依存しない安定財源が必要との意見が多く、防衛費増額の財源確保には増税論議が避けられないとの見方が示された。一方、国民の理解を得るには「民間との連携など最も効率的な(防衛力整備の)形を説明する必要がある」との指摘もあった。
【私の論評】財務真理教問題こそ、日本国内の最重要課題(゚д゚)!

官邸有識者会議といい、財政制度等審議会といい政府内で財務真理教は、やりたい放題です。防衛は、長期便益がありますから、増税ではなく防衛国債で賄うべきです。そうしなけば、財政一般でも、まずは増設の前に①天下り無駄カット、②外為特会などの埋蔵金の活用、③経済を伸ばすことによる増収があります。

官邸有識者会議

いきなり最初から増税というのは、いかにも財務真理教らしいです。ただの馬鹿といって良いです。
もう随分前から、消費税や社会保険料の引き下げや支払い免除や猶予、すなわち減税こそが最善の策なのは、もはや自明のことです。これに、反対する人は、すでに財務真理教の洗脳によって頭がいかれた人と言って良いでしょう。
ところが、岸田政権はまるでその選択肢が見えていないかのように、頑なに俎上に載せようとしません。なぜなら、それは財務神理教が、決して許さないからです。
国の予算を一手に握り、総理大臣よりも強大な権力を握る日本の怪物、それが日本の最強教団・財務真理教です。東大阿呆学部の愚鈍なバカどもが集い、「増税で庶民から徹底的にカネを巻き上げる」という本能だけに従って、マクロ経済の基礎ですら理解できないその悪い頭脳を増税のためには、ずる賢くフル回転させるのです。
彼らの「鉄の教義」は財政の健全化です。つまり「緊縮財政と増税こそが絶対正義」という信仰です。異を唱える者は、どんなに優秀でも出世のレールから外され、排除されます。
財務真理教には主計局次教団長、総括審議教団官、理財教団局長、主計教団局長、そしてトップの教団長が、霞が関で一番強固なレールがあります。最も優秀な信者をそこに乗せて洗脳する一方、それ以外の人間は諦めさせ、脱落させるシステムが完成しているのです。
まさに財務真理教は、幾多の政治家を使い潰し、税率を上げることに血道をあげ、さらにそれを心底から正義と信じてやまない。その異常性は教団の凄まじいカルト性を物語っています。カルトの中のカルトが財務神理教なのです。
なぜなら、旧統一教会や、あのオウム神理教ですら、影響を及ぼせるのは、信者のみですが、財務真理教は信者は無論のこと、全国民に対して影響力を及ぼすことができます。この記事を読んでいる人はもとより、あなたの家族、会社での同僚、上司・部下などすべての人が影響を被るのです。
日本の税収は、'89年には35%を法人税が占め、消費税は6%にすぎませんでした。ところが'20年には法人税が18%に半減、一方で消費税が35%を占めるまでに激増しています。なおこの間、企業の現預金は倍増しました。

大企業の負担は軽くせよ。庶民からは搾り取れるだけ搾り取れ。現在のいびつな社会は、そんな財務真理教の倒錯した狂信が生み出したものなのです。
財務真理教教団長
政権と霞が関を支配し、「増税」という信念に邁進する財務省。その「怪物」と戦い続け、2回も増税を延期し、結果として三党合意を崩せず、意にそぐわない消費税増税を2度も行い、挙句の果てに凶弾に倒れたのが安倍晋三元総理だったのです。
旧統一教会がカルトとしてやり玉にあげられてますが、旧統一教会の信者は数万人程度です。一方、財務真理教は1億2000万人の国民に悪影響を与えるのです。どちらの問題のほうが重要かといえば、あまりにも明らかです。
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2022年10月27日木曜日

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社説:英政権の混乱 他山の石としなければ

スナク新首相

 英国の保守党政権で混乱が続いている。先月首相に就いたばかりのリズ・トラス氏が、経済政策の迷走により英史上最短の50日で辞任し、インド系のリシ・スナク氏に交代した。

 国内政治の安定と経済の再建に手を尽くすとともに、秩序が揺らぐ世界で国連5大国としての役割を果たしてもらいたい。

 ジョンソン政権の外相だったトラス氏は、党首選の決選投票で財務相だったスナク氏を破り、サッチャー氏らに続く史上3人目の女性宰相として注目された。

 だが、看板公約だった年450億ポンド(7兆円超)の大型減税を実施しようとして、市場から強烈な「ノー」を突きつけられた。通貨ポンド、国債、株がそろって急落する「トリプル安」に陥ったのだ。

 裏付けとなる財源を手当てしなかったのが大きい。英中央銀行がインフレ抑制のため利上げを続ける中、物価高を助長する企業や富裕層を含めた大型減税を行う矛盾も、市場の不信を招いた。

 トラス氏は財務相の更迭や減税撤回などで軌道修正を図ろうとしたが、英と「特別な関係」とされる米国のバイデン大統領からも「(政策が)間違いだと思ったのは私だけではないだろう」と批判され、進退が窮まった。

 大盤振る舞いで人気取りに走った末路と、他国も冷笑してはいられないだろう。日本では自民党内で、国債を無制限に発行しても財政は破綻しないと主張する勢力が歳出拡大を求め続けている。

 しかし、英の失政が示す通り、通貨の価値や信認を決めるのは一国の政治ではなく、国際市場であることを忘れてはなるまい。

 他山の石として、特に先進国は将来にわたって持続可能な財政を維持する責任を共有すべきだ。

 無投票で党首に選出され、首相に就いたスナク氏は、英史上最年少の42歳にして初のアジア系である。金融業界出身で財政規律を重視する立場から、先月の党首選ではトラス氏にこき下ろされた。

 膨らんだ政府債務を圧縮しつつ、記録的な物価高騰に疲弊した国民生活を支える難題に挑まねばならない。ウクライナ支援ではロシアへの厳しい姿勢を堅持し、国際協調を主導する必要がある。

 欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票があった2016年以降、首相が4人も交代した保守党に対し、支持率を伸ばす野党労働党は総選挙を求めている。政権の方策を示した上で、国民の信を問うのも選択肢ではないか。

【私の論評】英国を他山の石としてはいけない日本のマクロ経済の現状を、岸田首相は理解しているか(゚д゚)!

英国のトラス前首相の後任として与党・保守党の党首に決まったスナク元財務相(42)は10月25日、ロンドンのバッキンガム宮殿で国王チャールズ3世の任命を受け、新首相に就任しました。

バッキンガム宮殿で国王チャールズ3世(左)の任命を受け、新首相に就任したスナク氏

私は、この以前このブログで、今回のイギリスの政変は、経済というよりも英国保守党内の内部政局によるものが多いということ掲載しました。ただ、誤解のないように言っておきますが、トラス前首相の経済政策が正しいとは言っているわけではありません。

マクロ的にいえば、あり得ない政策です。さらに、減税政策もあながち間違いではないとしましたが、それはたとえばコストブッシュ要因として、海外由来のエネルギーや資源価格に対して、減税などすべきとは思いましたが、多くの品目に対して減税するのは明らかに間違いです。

現在の英国経済の状況で減税策を行うことは、マクロ経済政策の解としてあまり考えらません。英国はEUを離脱し大陸からやすい労働力が入らなくなってしまったことと、さらに現在ではロシアとの関係でエネルギー・コストが上がり相対的にコストアップになっています。

英国の現状の経済をマクロ経済的に見ると、「総供給が下がっている」という状況にあります。そんなときに需要刺激策をしてしまえば、さらにインフレになる事になります。だから、減税策は解にはならないのです。

総供給が下がっているときには、総供給をまた戻すような政策が必要です。たとえばEUを離脱したのでTPPに加入して貿易を促進するというような政策にすべきです。このようなときに需要刺激策を実施すると、インフレをさらに亢進することになります。スタグフレーションの時としては間違った、マクロ経済的対応です。

ただし、英国はこの間、財政破綻の確率が高くなっているわけではありません。しかし、データ的に見ればトラス氏が減税策を打ち出しても、財政破綻の確率を示すクレジット・デフォルト・スワップにはあまり大きな変化がありませんでした。

日本でも、このような減税策をするのは財政規律の観点からあり得ないと言う人がいます。上の記事もそのような論調です。

ただし、日本と英国とでは、マクロ経済の状況が全く違います。

日本の場合は総供給が多くて需要が少ないので、総需要刺激策は有効な対策となります。これは、経済状況によって、インフレ・ギャップとデフレ・ギャップがあり、これらへの対応は異なるため、それに応じてマクロ対策を行わなければいけないという格好の事例です。

英国と日本のマクロ経済の状況の違いをまとめると下の図のようになります。

クリックすると拡大します

このマクロ経済の状況から、日英で同じマクロ経済政策をすることは明らかに間違いです。

ただ、一ついえるのは、コストプッシュの要因となる、海外由来のエネルギーや資源に対して、日本ではこれに対して、減税をしたり、補助するのは当然ですが、英国でもこのような分野に限って減税や補助をするということはあり得ることです。

日本では、総合経済対策が近く岸田政権から発表される見込みです。

日本では、総需要を喚起させるような減税をすべきです。そのような政策が出ないと30兆円もあるとされる、需給ギャップを埋めることができないので、日本経済が回復するのは難しくなります。

政府・与党は27日、総合経済対策の全容を固めました。焦点となる規模は財政支出ベースで39.0兆円とし、民間企業の支出も含めた事業規模を71.6兆円とします。

新型コロナウイルス禍を受けた大規模な対策を除けば、消費税引き上げ後の2019年12月に当時の安倍内閣がまとめた経済対策(財政支出13.2兆円、事業規模26.0兆円)、参院選勝利後の2016年8月の対策(財政措置13.5兆円、事業規模28.1兆円)を大幅に超える規模となる。

対策を膨らませることで物価高や円安に対処するほか、世界的な景気減速懸念に備える狙い。複数の関係者によると、岸田文雄首相が鈴木俊一財務相に予算規模を拡大するよう指示する異例の措置を取り、歳出を積み上げました。財政支出は当初案から4兆円上積みしました。

財政支出のうち国・地方の歳出を37.6兆円、財政投融資を1.4兆円とする。国の支出である国費は35.6兆円となる。

国費のうち2022年度2次補正予算は29.6兆円と想定。一般会計で29.1兆円、特別会計で0.5兆円としています。財投追加額は1.0兆円とします。

総合経済対策は、1)物価高騰への対応と賃上げ加速、2)円安を生かした稼ぐ力の強化、3)新しい資本主義の加速、4)国民の安全・安心の確保――を柱とし、28日に閣議決定します。

財政支出ベースでは物価高騰・賃上げ対策に12.2兆円、円安対策に4.8兆円をそれぞれ計上します。岸田首相が看板政策とする新しい資本主義実現に6.7兆円を充て、国土強靭(きょうじん)化などに10.6兆円を支出ます。新たに「今後への備え」との枠を設け、4.7兆円の財政支出を見込みます。

最終案によると、事業規模としては物価対策37.5兆円、円安対策8.9兆円、新しい資本主義実現9.8兆円、国土強靭化10.7兆円などとなるとしています。

財務真理教教団長

ただ、このブログで示したように、財務真理教のトリックなどもありますから、この中にどれくらい去年の繰り越し金が入ってるのか、また新規国債発行はいくらなのか、為替特会の含み益は含まれているか、防衛増税は実施するのかなど、これから出てくる詳細の資料をみてみないと何ともいえません。


余裕資産の炙り出し「外為埋蔵金」は捻出可能だ 国民・玉木代表も国会で指摘 小泉政権で実施経験も―【私の論評】岸田首相は財務省などの「不埒な1% 」の仲間に入らず、まともな補正予算を組め(゚д゚)!

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2022年10月26日水曜日

中国に戦闘機発注 ミャンマー弾圧強化―【私の論評】岸田政権は、まずはミャンマー軍事政権への姿勢を改めよ(゚д゚)!

中国に戦闘機発注 ミャンマー弾圧強化

航空ショーに登場したFTC2000G練習機兼戦闘機(2006年11月1 日、中国・広東省・珠海)

【まとめ】

・ミャンマー空軍は近代化と戦闘能力向上を目的としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注。

・ミャンマーは国土の51%を反軍政勢力が支配下に置いているとの情報があるほど「苦戦」している。

・中国がミャンマー軍の軍備の増強や近代化に深く関わっていることで「内戦状態」は長期化して人権侵害が全土で深刻化。

ミャンマー空軍が中国に対して戦闘機を新たに発注したことが地元の独立系メディアの報道で明らかになった。ミャンマーでは2021年2月の軍によるクーデターでアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政権が打倒し、ミン・アウン・フライン国軍司令官をトップとする軍事政権が政権を奪取して治安維持を担っている

しかし民主政権の復活を願う武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や少数民族武装勢力と軍との衝突が激化し、治安は極端に悪化して実質的な「内戦状態」にある。

こうした中、ミャンマー空軍は旧式となってきた中国製F7迎撃機やA5攻撃機などの近代化と戦闘能力向上を目的としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注したという。

反軍政の立場から報道を続ける独立系メディア「イラワジ」は10月18日、情報筋などからの話としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注したと伝えた。

FTC2000は中国の国有航空宇宙国防企業である「中国航空工業公司」の監督下で「貴州航空工業公司」が設計、製造した2量練習機兼戦闘機「JL-9」の輸出型機で1機約850万ドルとされている。「FTC2000」の改良型が「2000G」で2人乗り。2018年に初飛行に成功した軽戦闘攻撃機といわれている。

発注した時期や機数などは明らかではないが2020年に中国とカンボジアのメディアが東南アジアの国に対して中国が戦闘機を売却する計画があり、2020年1月に契約は調印され納入は2021年に開始され2年後には完了することを報じた。

その後のコロナ禍でこの計画が遅延していたものが再始動したとの見方がでているが、明確なことは軍政が秘密主義なため明らかではない。

もしそれが事実とすれば2003年に初飛行、その後量産態勢に入ったとされるFTC2000の発注・契約はスー・チーさんの民主政権時代のもので、遅れていた導入計画を軍政が改めて発注し直し、最新型の「2000G」を導入する計画となった可能性が高いとみられている。「イラワジ」は今年6月空軍パイロット8人、技術者8人、軍の将校2人がミャンマーと国境を接する雲南省昆明経由で中国に渡ったと報じており、空軍機発注との関連を示唆している。

FTC2000G」の導入後は北東部シャン州の空軍基地への配備が検討されているという。

■ 抵抗勢力への空爆、攻撃を激化

軍政はクーデターから1年半以上が経過してもPDFや少数民族武装勢力による抵抗が激しく、一部では国土の51%を反軍政勢力が支配下に置いているとの情報があるほど「苦戦」しているという現状がある

軍は地上部隊が抵抗勢力による待ち伏せ攻撃やドローンによる爆弾投下、爆弾爆発などで兵士の犠牲者が増えていることもあり、空軍の戦闘機などによる爆撃といった空からの攻撃で支配地域拡大を狙っている。

抵抗勢力側は戦闘用の航空戦力を保持していないため空軍の制空権は確保されているという。

10月23日夜8時半ごろ北部カチン州ハパカント近郊のギンシ村で地元少数民族武装勢力「カチン独立機構KIO)」の創立62周年を祝う記念音楽コンサート会場が軍政の空軍機3機による空爆を受けた。この攻撃でコンサートに集まった一般市民やKIOとその武装部門である「カチン独立軍(KIA)」の幹部ら約60人が死亡、約100人が負傷する事件が起きた。

投下された爆弾の1発はコンサートのステージ近くで爆発、近くにいたカチン族の著名歌手らが即死したという。SNS上などには爆撃でばらばらになった木造のステージとみられる建物や観客席の写真がアップされ、死亡した歌手らへの追悼の言葉が並んでいる。

KIOとKIAのスポークスマンであるナウ・ブー大佐は「軍は敵ではなく一般の住民を狙って攻撃した。これは邪悪な行為であり戦争犯罪である。国民の死を悼んでいる」と「イラワジ」に述べて軍の空爆を非難した。

■ 空軍力で戦況打開を企図か

ミャンマー空軍機によるこうした軍事拠点ではない集落などへの空爆は全土で行われており、無抵抗、無実、非武装の住民の犠牲が増えている

軍政は空軍力の近代化、増強で戦況の打開を図り全土での治安回復を狙っているのは間違いないとみられている。

ミャンマー軍政にとってロシアと並んで国際社会で数少ない後ろ盾である中国がミャンマー軍の軍備の増強や近代化に深く関わっていることで「内戦状態」は長期化し、教師などの斬首や女性へのレイプその後の殺害・遺体放棄、逃げ遅れた一般住民らを生きたままで焼殺するなどといった残忍な人権侵害が全土で深刻化している

こうしたミャンマーの現状に対する新体制となった習近平体制の中国による責任は重いと言わざるを得ないだろう。

【私の論評】岸田政権は、まずはミャンマー軍事政権への姿勢を改めよ(゚д゚)!

東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のカンボジアは、ミャンマーでの暴力の激化に警鐘を鳴らし、自制と戦闘の即時停止を呼びかけました。

カンボジアは声明でミャンマー最大の刑務所への爆撃、カレン州での紛争、23日にカチン州で発生し少なくとも50人の死亡が報告されている空爆を例として指摘。

「犠牲者の増加、そしてミャンマーの一般の人々が耐えてきた計り知れない苦しみに深い悲しみを覚える」としました。

さらに、紛争は人道状況を悪化させるだけでなく、昨年ASEANと合意した和平「コンセンサス」実現に向けた努力も台無しにしていると批判しました。

暴力の最大限の自制と即時停止を強く求め、全ての当事者が対話を追求するよう求めました。


ミャンマーでは2021年2月1日のクーデターから現在まで混乱が続いています。ただ、どの程度の混乱なのかについては見定めることが難しいです。一部では破綻国家になる懸念すら示されています。果たしてミャンマーは破綻国家になってしまうのか。

当初は平和的だった国軍への抵抗運動が、弾圧を受けることでいかに「自衛のための戦い」(Self-Defensive War)という武力闘争を容認する運動に発展してしまいました。この抵抗勢力
の動きがミャンマーという国を破綻国家にするのでしょうか。

結論は2つあります。抵抗勢力の武力闘争が激しくなっていることは確かであるものの、国軍の実効支配を崩すことは難しく、紛争によって国家が破綻する可能性は極めて低いです。

もう一つは、国軍の実効支配が続くとしても、この国が政変前の状況に戻ることはなく、不安定な脆弱国家として継続することになりそうであることです。

ただ、政変 前の状態にこの国が戻ることもないです。危機国家の状態に陥る可能性を常に秘めた脆弱国家と して国軍の実効支配が続くことになりそうです。

ミン・アウン・フライン・ミャンマー国軍司令官

 危機に陥るきっかけは、民主化勢力の抵抗だけでなく、経済や外交面 でも生じ得ます。ミャンマーの2021年の経済成長率をマイナス18%であり、なかでも新型コロナウイルスと政情不安で工業とサービス業の落ち込みは20%を超 えています。

外国直接投資はすでに半減しています。ミャンマー・チャットの大幅 な下落や、外貨準備の不足、現金供給の制限など、金融面での不安も大きいです。 

しかし、経済が落ち込んでも国軍は自らの任務と自認する国家安全保障を優先し、その「脅 威」の殲滅を目指すため、国民生活を後回しにするでしょう。

国民生活どころか、紛争を逃れ た避難民(すでに20万人以上発生)に対する人道支援の受け入れすら国軍は消極的である。新 型コロナウイルスの感染対策で国境管理を各国が強化するなか、難民たちも国内にとどまる しかなくなるため、危機はより深刻でみえにくくなりました。 

国際社会の関与が不可欠の情勢ではあるのですが、クーデター以来明らかになったのは、国 際社会の無力です。唯一、わずかながら国軍から譲歩(「5つのコンセンサス」)を引き出せ ているようにみえたASEANの働きかけもいまや手詰まり状態です。

特使の任命 に手間取ったうえに、焦点であった特使とアウンサンスーチーとの面会を国軍が受け入れな かったため、昨年10月末のASEAN首脳会議へのミンアウンフライン将軍の出席を認めないこと が直前のASEAN外相会議で決定されました。

「コンセンサスによる意思決定」と「内政不干渉」 というASEANの基本原則に反する決定だと国軍は反発しています。こうした決定でミャンマ ー軍の行動が変えられないことはASEAN諸国も十分に知っているため、ミャンマー情勢よ りもASEANに対する信頼が低下することを懸念しての決定だとみらます。

こういうことからも再び 国軍との対話を前進させることは相当に困難だと思われます。 欧米の圧力外交には批判的な中国も、現在のミャンマーの情勢を楽観視している わけでありません。国境を接する中国にとっては、国軍を支えることで受ける国際的な非難 とミャンマーでの反中感情の高まりを懸念しつつ、同時に、国軍による実効支配が危機に陥 る事態は避けたいはずです。

日本もまた、自由主義圏の国として国軍の政治介入には批判 的ですが、ここでミャンマーを孤立させてしまえば、自国の国益が脅かされるばかりか、 ミャンマー市民の生活や人権にも深刻な被害が生じ、さらには、東南アジアの地政学的な要 衝であるミャンマーが中国の影響下に入るという地域安全保障上の懸念もあります。

 各国ともに難しいバランスのなかで、ミャンマーという脆弱国家に対処していかねばなら ないです。たとえ万が一であっても、この国が今後、危機から破綻国家状態になるというシナリ オは多くの関係者が望むものではないでしょう。必要とされているのは、現状の手詰まりを打 開する次の一手を構想することです。日本にもできることがあります。

たとえば、日本にとって最大の外交カードは、ミャンマーへのODA=政府開発援助です。支援額を公表していない中国を除いて、日本はミャンマーに対する最大の支援国で、2019年度だけでおよそ1900億円に上っています。

政府は、ODAの新規の供与を当面見送る方針ですが、継続案件も含めた全面的な停止など、より厳しい対応を求める声も出ています。

これに対し、政府は、「事態の推移や関係国の対応を注視しながら、どういった対応が効果的か、よく考えていきたい」としていました。

軍の変化を促すため、ODAカードを効果的に切ることが出来るのか、日本の外交の力が試されているといえます。

経済面での圧力の強化を求める声も強まっています。ミャンマーには、軍と関係する2つの大手複合企業があります。

傘下に不動産や建設、金融など幅広い業種を手掛ける100社以上の企業があり、その収益が軍の資金源になってきたと指摘されています。

米国は昨年この2社に、資産凍結などの制裁を科し、ブリンケン国務長官は、先週、各国の政府や企業に、軍の資金源を断つため、ミャンマーへの投資を見直すよう訴えました。

日本企業も無関係ではありません。大手ビールメーカーの「キリンホールディングス」は、制裁対象の企業と合弁でビール事業を行っています。クーデターのあと、キリンは提携を解消する方針を発表しました。

また、日本のODAで、ヤンゴンに建設されている橋の工事では、元請けの日本企業が制裁対象の企業に橋げたの製造を発注しています。

この元請け企業は、「制裁を受け、今後の対応を検討中だ」と話しています。

さらに、日本の官民ファンドやゼネコンが関わっているヤンゴンの商業施設の開発事業は、事業用地の賃料が国防省に支払われています。

軍の資金源になっているという批判に対し、官民ファンドは、「最終的な受益者は、軍ではなくミャンマー政府だと認識している」と話しています。

軍系企業の活動内容は公表されていない部分が多く、ミャンマーで事業を続ける進出企業は、ビジネスが本当に軍の利益になっていないか、細心の注意を払う必要があります。

経済制裁は、市民の生活にも大きな影響を与えるおそれがあります。それでも、常軌を逸したともいえる軍の弾圧を止めるには、制裁の強化しかないという声は、そのミャンマーの市民の間からも強まっています。

日本を含む国際社会には、こうした声をどう受け止め、どう対応するのか、判断が迫られています。

ただ、岸田政権においては、こういうことを検討する前にすべきことがあります。

日本政府は国際社会と一丸になるどころか、効果のない「独自路線」を取ってきました。成果が全く出ていないのにも関わらず軌道修正を頑なにしません。

また、岸田首相はミャンマーの「軍事政権」を「ミャンマー政府」と表現。こうした答弁自体が国軍にお墨付きを与えることになってしまうのです。

ミャンマー駐日大使 ソー・ハン氏

さらに、安倍元総理の国葬儀にミャンマーの駐日大使を招いたということについて、民主化運動を弾圧するような軍事政権に、お墨付きを与えるに等しいのではないでしょうか。

国会で岸田首相はミャンマー軍事政権の駐日大使を国葬儀に招いた件について、関係を断たないようにために必要だったとの旨の答弁をしました。民主主義をないがしろにして人権侵害をしている国を国葬儀に招かずとも、国交はあるわけですし、事務方レベルで調整できているので、参列者を増やすために手段を選ばなかっただけだと考えられます。

まずは、岸田政権は、ミャンマーの軍事政権に対する姿勢を改めことからはじめるべきです。

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2022年10月25日火曜日

英保守党内の分断深刻 総選挙へ結束課題 スナク新党首―【私の論評】新首相になっても安定しない英国の保守党内政局(゚д゚)!

 英保守党内の分断深刻 総選挙へ結束課題 スナク新党首



 辞任を表明したトラス英首相の後任として与党保守党の新党首に決まったスナク元財務相にとって、最大の使命は遅くとも2年余り先に行われる総選挙での勝利だ。

 そのためには自身の出馬表明でも触れた党の結束が必須だが、党首選の過程で明らかになったのは党内の深刻な分断だった。

 今回の党首選でジョンソン前首相を担ぐ動きがあったのも、カリスマ性があり前回総選挙で党を大勝に導いた「勝てる党首」に期待してのことだ。だが、スキャンダル辞任から間がない再登板の動きに、反ジョンソン派は激しく反発。ジョンソン氏は出馬断念に追い込まれた。

 ジョンソン氏は声明で「党が団結しなければ効果的な統治はできないため、それ(出馬)は正しいことではないとの結論に至った」と出馬断念の理由を説明した。だが、選挙戦を回避しても団結を実現するのは容易でない。

 そもそもジョンソン政権は、スナク氏の財務相辞任を機に一気に崩壊に追い込まれた。スナク氏をジョンソン氏退陣の引き金を引いた「戦犯」と見る議員には、スナク氏に対する反感が依然として根強い。ジョンソン氏が党首選でモーダント氏に連合を持ち掛けたともいわれる。

 トラス氏の辞任は、大型減税を柱とする経済対策が市場の混乱を招いたためだが、重要閣僚の辞任や下院採決での党上層部によるパワハラ疑惑など、党内の混乱が直接のきっかけだった。スナク氏が早期に党内融和を実現できなければ、支持率ではるか前を行く野党労働党の背中は遠のくばかりだ。 

【私の論評】新首相になっても安定しない英国の保守党内政局(゚д゚)!

このブログでは、トラス首相の辞任は、経済政策がどうのこうのということよりも、政治的な動きがトラス氏を追い込んだというのが正しい見方であると主張しました。また、トラス辞任劇の裏側も新首相が決まってから、しばらくすれば表に出てくるであろうことも主張しました。

上の記事は、まさにそれを示していると思います。これからも、英保守党内の内輪話が出てくると思います。8月に保守党の代表選があったとき、最後にトラス氏とリシ・スナク氏の2人が戦っていました。しかし、保守党内ではジョンソン前首相を含めると、誰が最も良いかと問われたら圧倒的にジョンソン氏に人気がありました。

ジョンソン氏は6月に保守党内での信任投票でも信任されましたし、さらには2019年12月の総選挙でも圧勝していました。

ボリス・ジョンソン氏

スナク氏の人気は元々は保守党内では低かったのです。なぜなら、スナク元財務大臣は、ジョンソン政権の下でいち早く閣僚を辞任し、その後の政権崩壊のきっかけをつくった裏切り者という印象が強まったことや、財務相として国民の生活が非常に苦しい状況で数十年ぶりの規模の増税案を提示したからです。

そもそもジョンソン氏を引き摺り下ろす必要がなかったのではないかという不満が強いのです。

一方で、ジョンソン氏は既に完全に信頼は失われていました。それなのに、まだ数ヵ月しか経っていない状況でもう1回ジョンソン氏が出てくるのはおかしいのではないかという意見が国民の間にも保守党の間にもあります。どちらが勝っても、かなりしこりが残る結果になるとみらていました。

保守党所属議員らの多くは恐らく、保守党には経済運営能力がないと判断されて2025年までに実施される総選挙で敗北するのを懸念し、スナク氏を党首に選んだのでしょう。

しかし党内右派はスナク氏の増税路線を好ましく思っていませんし、党内のリベラル寄りの勢力はスナク氏が英国の貿易活動の妨げになった欧州連合(EU)離脱を支持したことで不信感を持っています。

一方英国はEU からの安い労働力を絶たれることにより、生産性低迷という長期的課題と、エネルギー料金高騰に伴う生活費危機という大きな問題に直面しています。そうなるとスナク氏と市場の蜜月関係が一段落してしまえば、同氏は議会と国民の支持を確保し続けるのが難しくなるでしょう。

日本の物価は3%上昇ぐらいですが、英国経済は物価が9%ぐらいまで上がっていて日本よりもはるかに大変な生活苦が国民を襲っています。トラスの減税策は、決して完璧な間違いとまでは言えないと思います。

8月の消費者物価指数世界比較 クリックすると拡大します

スナク氏は財政を思いっきり締めると言われています。国民生活が物価高で疲弊しているなかで財政を締めた場合、国民が生活がどんどん苦しくなるなります。

財政を引き締めたとしても、海外由来のエネルギーや資源価格の高騰を直接抑えることにはつながらず、国民の不満は高まり、2年後の総選挙には勝てないという声が、保守党内で巻き起こり、そうなると、スナク氏も減税策を取らざるを得ない状況に追い込まれる可能性もあります。


英国物価推移 クリックすると拡大します

通貨安であることが、英国経済を助けていることは間違いありません。自国通貨安はしばしば「近隣窮乏化策」とも言われますが、逆にいえば自国経済は良くなることを意味しているからです。スナク氏がこれに気が付き通貨安を活用する方向に舵を切れば、今後英国経済も政局も安定するかもしれません。

しかし、そうはせずに、緊縮財政を続ければ国民生活はますます苦しくなります。すぐに減税策に走れば、スナク氏の経済政策は間違いだったことを認めることになります。いずれに転んでも、保守党内の政局が動けば、トラス氏のように辞任せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれません。

日本でも、安倍総理がお亡くなりになってから財務真理教が様々な場面でせり出してきており、防衛増税や年金の支払期間の延長など、緊縮財政を実行しようとしています。日本でも、岸田政権が緊縮に動けば、英国のように党内政局が動き、不安定化の要因になります。

今後英国の政治は不安定化するのは間違いないようです。

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2022年10月24日月曜日

「32年ぶりの円安」が日本にとって大チャンスである理由…バブル期との決定的な違い―【私の論評】安倍元総理が亡くなってから、急にせり出してきた財務省に要注意(゚д゚)!

「32年ぶりの円安」が日本にとって大チャンスである理由…バブル期との決定的な違い

メディアの印象操作に欺されるな

 為替が1ドル150円近辺と、1990年以来の水準と報じられ、大騒ぎになっている。地上波の大阪朝日放送『正義のミカタ』で、筆者もこれを解説した。

 そもそも、円安はGDPプラス要因だ。古今東西、自国通貨安は「近隣窮乏化政策」(Beggar thy neighbour)として知られている。

 通貨安は輸出主導の国内エクセレントカンパニーに有利で、輸入主導の平均的な企業に不利となる。全体としてはプラスになるので、輸出依存度などに関わらずどのような国でも自国通貨安はGDPプラス要因になる。

 もしこの国際経済常識を覆すなら、世紀の大発見だ。

 このため、海外から文句が来ることはあっても、国内から円安を止めることは国益に反する。本コラムで書いてきたように、これは国際機関での経済分析からも知られている。ちなみにOECD(経済協力開発機構)の経済モデルでは、10%の円安であれば1~3年以内にGDPは0.4~1.2%増加する。


 それを裏付けるように、最近の企業業績は好調である。直近の法人企業統計でも、過去最高収益になっている。これで、法人税、所得税も伸びるだろう。

 しかしマスコミ報道は、こうしたマクロ経済ではなく、交易条件の悪化などごく一部の現象のみを取り上げて「円安が悪い」という印象操作をしている。

 円安がGDPプラスになるということだけで、経済全体の事情は示されている。そこで経済学的な議論はおしまいだ。しかしテレビ番組では、一般の人にもわかってもらう必要がある。筆者が番組スタッフに「円安で起こる悪いニュースと良いニュースを探してくれ」と頼んだところ、次のような資料になった。


 円安の結果で、一世帯あたりの年間負担8.6万円と経常収益28.3兆円という数字が並んでいる。

 日本の世帯数は5400万なので、家計全体の負担は4.6兆円になる。一方、企業収益は28.3兆円で、前年比17.6%増なので5兆円プラスで家計全体の負担を相殺できる。
 
 バブル期は酷いインフレではなかった

 実際の番組では話はこの通りでないが「まだ政府の儲けがあるので、日本経済全体では大丈夫」と言った。儲けているカネで、困っている人への対策に回せばいいのだ。それは政治の問題でもある。

 そもそも、今回の円安は32年ぶりだという。32年前というと1990年バブル絶頂・崩壊時だ。その当時のマクロ経済指標はどうだったのか。名目GDP成長率7.6%、実質GDP成長率4.9%、失業率2.1%、CPI上昇率3.1%だ。文句のつけようもない数字だ。バブル期というと酷いインフレと思い込んでいる人もいるが、そうでない。

 テレビ番組でも、MCの東野さんから「32年前はウキウキしていたが、今は違うではないか」との質問があった。これはまともな質問なので、「バブル時に取られた政策が間違いで、今になっている」と答えた。バブル潰しのための金融引き締めだった。

 頭の体操だが、その当時に今のインフレ目標2%があったらどうなのか。

 昨今の欧米の例をみても、4%くらいまでは金融引き締めをしないのが通例なので、金融引き締めをしてはいけないことになる。

 当時、マスコミは日銀の三重野総裁を「平成の鬼平」ともてはやして、金融引き締め(金利引き上げ)を後押しし、日銀も従ったが、それは間違いだった。筆者の見解では、日銀はこの間違いを「正しい」といい続け、間違いが繰り返され、失われた平成不況の元凶になった。

むしろ円高・デフレがまずかった

 それを示すのが、次の図だ。カネの伸びと名目経済成長はかなり関係している。


 バブルの前、日本のカネの伸びはそこそこで経済成長も良かった。しかし、マスコミはバブルを悪いモノとしていた。


 そしてメディアの論調に押されて、バブル潰しのために金融引き締めをして、それが正しいと思い込んだ日銀は金融引き締めを継続した。その結果、日本のカネの伸びは世界最低級となり、成長も世界最低級になってしまった。

 ちなみに、カネの伸びが低いとモノの量は相対的に多くなり、その結果、モノの価値が下がり、デフレになりがちだ。バブル潰しの結果、金融引き締めを継続したのが、デフレの原因である。

 アベノミクスは、それを是正するものだった。カネの伸びは世界最低級からは脱出したが、まだ十分とはいえない。

 また、日本のカネの伸びは、他国のカネの伸びに比べて低い傾向になるので、結果として円の他国通貨に対する相対量が少なくなり、円高に振れがちだ。なので、バブル以降、デフレと円高が一緒だったのは、カネの伸びが少なかったことが原因だ。

 GDPをドル換算して日本のGDPランキングが下がったといい、円安を悪いものとして煽る論調があるが、円払いの給与のほとんどの日本人には無意味なことだ。むしろこれまでの円高・デフレで成長が阻害された結果を表していると見たほうがいい。

 もっとも、1990年と今との違いに対外純資産がある。1990年末は44兆円だが、2022年6月末(一次推計)は449兆円。円安メリットは大きくなっている。その中でも最大のメリットを享受しているのは外国為替資金特別会計(外為特会)で外貨資産を保有する日本政府だ。
 
  どんどん為替介入を

 筆者からみれば、外為特会は霞が関埋蔵金の一つであり、かつて小泉政権の時に、財源捻出した経験がある。その当時は政府内で調整が行われたが、岸田政権で埋蔵金を指摘するようなスタッフはいないので、国会で議論されたのだろう。いずれにしてもできないという理由は分からない。

 国民民主党の玉木雄一郎代表が10月6日の衆院代表質問で、外為特会の含み益が37兆円あることを指摘し、円安メリットを生かすのなら、その含み益を経済対策の財源に充ててはどうかと提案した。

 これに対し岸田首相は「財源確保のために外貨を円貨に替えるのは実質的にドル売り・円買いの為替介入そのもの」などと述べ、否定的だった。

 18日の衆議院予算委員会では、鈴木俊一財務相も、外貨資産の評価益を経済対策の財源とする提案について「その時々で変動する外国為替評価損益を裏付けとして財源を捻出することは適当でない」と語った。

 一方、円安に対し、鈴木財務相は「円安を食い止めるための為替介入も辞さない」と繰り返して主張している。

 財源とするのは否定するが、介入は行うとの発言であるが、この二つの発言は矛盾している。

 というのは、含み益を実現益とするためには、外為特会で保有しているドル債を売却するわけだが、その売却行為自体が為替介入そのものだからだ。実現益は出したくないが、為替介入するという発言を同一本人が言うとは理解できないし、マスコミや国会はこのような矛盾点を指摘しなければいけない。

 為替介入は1回あたり大きくとも数兆円程度の規模だ。1日の為替取引は大きい。国際決済銀行の2019年のデータでは、1日の平均取引量は6.6兆ドル(1ドル140円とすれば約1000兆円)である。ドル・円の取引はシェア13%なので130兆円程度だ。これでは、当局が介入しても、量的には雀の涙であり、1~2日の間、介入効果はあるように見えてもすぐになくなる。

 であれば、どんどん為替介入すればいい。そのたびに為替評価益は実現益に変わる。その実現益を財源対策にすればいいだけだ。

 含み益を実現益にするためには、ドル債の売却は金融機関相手でなく政府内の特会会計間取引でもいい。その場合、為替介入は事後的にわかるがその時にはわからない。国際的な為替操作を気にするのであれば、この手法でもいい。

 いずれにしても、外貨債を持っている日本人にとって円安メリットは現実のものだ。最近の円安によるGDP増加要因で、日本経済は1~2%程度の「成長ゲタ」を履いており、他の先進国より有利になっている。1990年の失敗を繰り返さず、この好機を逃してはいけない。

 以上の記述を含めバブル崩壊をはさんだ戦後経済史に興味のある方は、筆者の『戦後経済史は嘘ばかり 日本の未来を読み解く正しい視点』(PHP新書)をご一読いただきたい。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】安倍元総理が亡くなってから、急にせり出してきた財務省に要注意(゚д゚)

「1990年以来、32年ぶり」とよく言われますが、1990年の経済状況はどうだったかと言うと、名目経済成長率が大体8%ぐらいで、実質経済成長率が5%でした。失業率が2%台で、インフレ率が3%台でした。このどこが悪いことなのでしょうか。32年前に戻れるなら、それは日本経済にとって良いことです。


多くの人が、これを「悪い」と思っているようですが、かなり良い状態です。上の記事にもでてきた、近隣窮乏化は、普通は他の国から苦情が出るのが普通ですが、現状ではそのようなことがないので、非常に良い状況です。 

このようなことは、初めてかもしれません。 それどころか、バイデン大統領はドル高容認発言をしています。 IMFの世界経済見通しでも、来年(2023年)の日本は先進国のなかでも高い成長率が予測されています。日本経済は、円安によって下駄を履かせてもらっている状況です。これは様々な産業の日本回帰への絶好のチャンスです。

超円高のときには、日本で部品を組み立てて、海外に輸出するよりも、中国や韓国で組み立てて、そこから輸出したほうがはるかにコストを低減できるという状況でした。中国や韓国がぬるま湯に浸かっていたような状況の一方、日本企業は手足を縛られたような状態でした。様々な産業が日本国外に出ていきました。

今度は、円安で「サプライチェーンを中国や韓国から奪う」という時代に入ることになります。

サプライチェーンの見直しは、まさに経済安全保障の議論のなかでずっと言われていたことですが、ここまでの為替水準になると、いろいろな産業をの国内回帰させることができますし、、実際にそのような企業も増えつつあります 。

経済安全保障推進法などは、高市早苗氏の活躍も実際に法律になっていますが、この考え方も「中国からサプライチェーンを奪う」というところまでにはなっていません。現実が追い越してしまったので、法改正はもちろんのこと、追い付かなければいけません。

 すでに、現実に「サプライチェーンを奪う」という時代になっているのです。あの法律は、「なるべく中国に日本のサプライチェーンを獲られないようにしましょう。この法律は、「サプライチェーンの中軸は中国なので、なるべく防ぐべき」という考え方の法律に留まっています。 

経済安全保障推進法は。 現実にあわせてさらに、前に進まなければなりません。現実にあわせて自ら法改正をすべきです。

安倍元総理は、総理大臣時代に日本戻ってくる企業に補助金を出しました。現在国会で審議されてる対策も、この補助金はあります。今後は、そのような企業がもっと増えるはずです。実際、戻りたいという人も多いです。

かつてアジア通貨危機のときに、「カントリーリスク」ということがずいぶん言われました。最近はやや死語のようになっていますが、中国はカントリーリスクの塊です。そのようなところにサプライチェーンを依存したくないという思いは、日本だけではありません。

 カントリーリスクは日本貿易保険(NEXI)が発表しています。A~Hまでカテゴリーがあって、ロシアはHぐらいなのですが、中国はCです。全くあり得ないことです。 日本政府は中国に対して甘すぎます。 

中国に技術を盗まれてしまうリスクもありますし、罰金のようなものを科せられたり、人が拘束されるなど、様々なことがあり得ます。 

中国のカントリーリスクは、アジア通貨危機のときに言われた諸国よりも根深いですし、いまの中国共産党大会を見ていても、改善される見通しがないどころか悪化しています。 

現在の中国は、ますます習近平に対する個人崇拝の道に進んでしまい、誰も何も言えなくなっています。そのようななかで、経済だけがうまく資本主義で回るはず等ありません。

中国の経済政策は、独裁の手助けをさせようとしているだけです。本来の「自由意志によって経済を司る」という考え方がまったくないので、巨大なカントリーリスクです。何があってもおかしくありません。

アジアで本当に資本主義国として自立できる可能性があるのは、日本しかありません。円が安くなったと言っても日本のGDPは世界3位なのですから、発想の逆転が必要です。 

為替について、日本ではマスコミなどを筆頭に、「円高のときにネガティブに考えるし、円安のときもネガティブに考えます」本当に不思議です。GDPが減ってしまうので、円高のネガティブは理解できるところがありますが、円安でネガティブになるべきではないです。

最近の、企業の実績を見ても、「税収は70兆円までいくのではないか」と言われています。法人企業統計でも、企業の収益は過去最高です。

ただ、「なぜ円安になるとGDPが伸びるのか」という説明はほとんどされません。 簡単に言ってしまえば、円安では輸出関連が有利になって、輸入関連が不利になります。

世界の檜舞台で競争するので、輸出関連企業には優良企業が多いです。優良企業の業績に、他の円高によるデメリットを平均的に与えたにしても、総合的にプラスになるということで日本全体のGDP は伸びるのです。

よって、いずれの国においても実は自国通貨安の方がGDPは伸びるのです。これは輸出依存度に関係ない世界であり、世界貿易の常識です。もしこの常識を破るような理論がでてきたとすれば、その理論でノーベル経済学賞を獲れると思います。

日本人が日本で、普通に生活していると、円安になった場合、特に輸入しているものの物価が高くなってしまうので、デメリットになります。そこは政策でカバーできます。 

国全体が経済がプラスになります。大事なことは、「国のなかで誰が最もプラスになったのか」を探すことです。そうなると、日本国政府が最もプラスです。日本国政府は約180兆円の外債投資をしているので、含み益だけで40兆円ほどあります。

上の記事にもあるとおり、小泉政権のときに、高橋洋一氏はこれを埋蔵金と呼びましたが、今回もまた同じことを言っているだけです。 小泉政権のときにあった埋蔵金は、60兆円ほどでしたか。それに外為特会も入っていたので、財源として捻出しました。

当時はそこまで円安ではなかったので、さほどではありませんでしたが、今回の円高は当時よりも規模が大きいです。いまでも40兆円ほどあります。現在円高で最も儲けているのは誰かといえば、それは日本国政府です。

為替特会の財源化等も含めて、当然、消費減税も考えるべきです。岸田総理は消費税は、「社会保障の財源」と主張していますが、これはこのブログても過去に主張してきたように、明らかに間違いです。社会保障は保険であり、消費税をこれにあてるなどという考えは、根本から間違えています。

円安を活用するためには、消費税減税も含めて、いままで財務省が否定してきた政策を取らなければなりません。そうしなければ岸田政権は反転攻勢はできないです。 高橋)心強いですね。 

岸田総理にそれができるかどうか。岸田総理は、安倍元総理が亡くなってから、より財務省に近くなっているともいわれています。ただ、岸田総理が財務省に寄って行ったというよりは、財務省が「グッ」と身を乗り出してきた感じが明らかにあります。

安倍元総理が亡くなってから、急にせり出してきました。 防衛予算の話でいくと、法人税や所得税など、税金を上げる、いわゆる防衛増税すり替わってしまっているのは、まさにそういうところです。


ただ、この防衛増税は、自民党の保守派の怒りに油を注いでしまったようです。先程も述べたように、政府は円高で潤っており、これを防衛費にあてるとともに、他の施策も実施すべきです。

以前もこのブログで述べたように、財務省で出世するにはできるだけ、多くの緊縮・増税をするかが決め手になります。これこそ、「財務真理教」です。

彼らは国益よりも省益、自分の出世と天下りが大事なのです。財務省入省後に厳しい洗脳が始まります。円安で政府が儲かった分を防衛費に廻すなどのことはせずに、防衛増税をしてその結果日本が再び失われた30年に見舞わて、国民が苦しもうが、全く頓着しないのですから、異様なカルト集団といわざるをえないです。

日本では、統一教会が問題視されていますが、一番問題なのはカルトの財務真理教です。このようなカルトになぜ、大勢の政治家が恭順するのか、理解できません。

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2022年10月23日日曜日

安保、資源で「準同盟」強化 中国を警戒、重なる思惑 日豪―【私の論評】2015年の安倍政権による安全保障法制の整備がなければ、豪州をはじめとする他国の関係はかなり希薄なものになっていた(゚д゚)!

安保、資源で「準同盟」強化 中国を警戒、重なる思惑 日豪

コアラを抱いて記念撮影するオーストラリアのアルバニージー首相(左)と岸田首相=パースで2022年10月22日

 日本とオーストラリアが安全保障協力を深化させる新たな宣言を打ち出したのは、インド太平洋地域で軍事力を背景に影響力を増す中国に対抗するためだ。 【写真】談笑しながら会談へ向かうオーストラリアのアルバニージー首相と岸田文雄首相  約15年前に締結した共同宣言に中国の脅威を念頭に置いた文言はなく、今回の「改定」で現実の安保環境を踏まえた内容にリニューアルした。「準同盟国」と位置付ける豪州との連携強化で「増大するリスク」(新宣言)に備える。  両首脳が新宣言に署名した22日はくしくも中国共産党大会の閉幕日と重なった。岸田文雄首相は共同記者発表で「安全保障、防衛協力をさらに深化させる充実した内容だ」と意義を強調。アルバニージー首相も「この画期的な宣言が地域に強力なシグナルを発信する」と息の合ったところを見せた。  日豪は07年3月に当時の安倍晋三首相とハワード首相が安保共同宣言に署名し、徐々に関係を進めてきた。ただ、豪州は中国との自由貿易協定(FTA)が15年に発効するなど、中国との貿易関係も重視してきた。

豪ハワード首相(左) と安保共同宣言に署名する安倍首相(右 ) 
 豪中関係は、
新型コロナウイルスの発生源を巡り、豪州が20年に独立した調査を求めたことに中国が反発して冷え込んだ。今年4月には、安保上の「要衝」である南太平洋のソロモン諸島と中国が安保協定を締結するなど、豪州にとって中国が懸念材料となっている。  一方、日豪は21年、海上自衛隊の護衛艦が豪軍艦艇を警護する「武器等防護」を実施。自衛隊が米軍以外を警護するのは初めてだった。22年には日豪の部隊が互いの国を訪問する際の法的地位などを定めた「円滑化協定」で合意した。外務省幹部は「唯一の同盟国・米国を除けば、豪州は日本にとって特別な地位にある」と指摘する。  豪州側も米国、インドを加えた日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」などを軸に、中国の覇権主義的な動きを押しとどめたい考えだ。  ◇会談場所はLNG輸出拠点  日豪首脳が会談場所に選んだ豪州西部パースは液化天然ガス(LNG)や鉄鉱石の輸出拠点として知られる。豪州は日本が輸入するLNGの約4割、鉄鉱石の6割を供給する一大資源国だ。  今回の訪豪は、ロシアのウクライナ侵攻に起因する原材料価格上昇への対策も重要テーマだった。岸田首相は共同記者発表で「協力をさらに進展させることで一致した」と資源・エネルギーの安定供給確保をアピールした。 

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22日に署名された日豪共同宣言の第6項

「我々は、日豪の主権及び地域の安全保障上の利益に影響を及ぼし得る緊急事態に関して、相互に協議し、対応措置を検討する」(日本外務省による和文)

岸田文雄首相とオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相が22日に署名した新し「安全保障協力に関する日豪共同宣言」の第6項に盛り込まれた文言です。

共同宣言は拘束力を伴う国際条約ではありません。このため、他国から武力攻撃を受けた際、互いに防衛義務を負う軍事同盟とは異なります。それでも、共同宣言の一文は、有事の際に日豪が共同作戦を行う可能性に道を開いたものとして関心を集めています。

日豪が戦火を交えた第2次世界大戦の終結から77年。安倍晋三元首相とジョン・ハワード元首相が2007年に締結した最初の安保共同宣言から15年を経て、安保協力を強化してきた両国関係は非公式に「準同盟」とも称されます。今回の新しい共同宣言は、中国の海洋進出やロシアによるウクライナ侵攻など激変する安全保障環境に合わせ、日豪の防衛協力をさらに一段と格上げした格好です。

 1942年日本軍に爆撃された豪州ダーウィン

アルバニージー首相は第6項の文言について「日豪の戦略的連携の強いシグナルを送るものだ」と述べた上で、「緊急事態の相互協議への取り組みは、地域の安全と安定を支える自然な一歩となる。地域の安全保障に対して、両国は互いに責任を共有する」と指摘しました。

同日付の豪州公共放送ABC(電子版)は、「画期的な安保防衛協力の共同宣言に署名」との見出しで伝え、「安保協力の水準を著しく引き上げるものだ」と評しました。

民間シンクタンク「オーストラリア国際問題研究所」(AIIA)の代表で東アジアの国際問題に詳しいブライス・ウェイクフィールド博士はABCに対し、第6項の文言は日米や豪米の同盟関係のように明確な義務を約束するものではないものの、「相互防衛の担保に向け前進した」と解説しました。

「日本にとって(共同宣言は)安全保障上の新しい道筋となる。日本は過去に日米同盟に強く依存してきたが、現在はオーストラリアのような主要パートナーとの間で安保のネットワーク化に傾斜している」(ウェイクフィールド博士)

2014年7月1日、安倍政権は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定しました。2015年(平成27年)5月14日、国家安全保障会議及び閣議において、平和安全法制関連2法案を決定し翌日、衆議院及び参議院に提出しました。

この時には、皆さんもご存知のように、国会議事堂前で大規模な反対デモが行われました。しかし、 平和安全法制関連2法案は可決され、成立しました。これを当時のマスコミや野党は、「強行採決」として反発しました。当時は、この安保法制整備がなされた途端に戦争が起こるとか、徴兵制が復活になるなどのデマが飛び交いました。

しかし、そのようなことは未だに起こっていません。むしろ、この時期に安保法制の整備がなされなければ、戦争の確立は高まっていた可能性のほうが大きいです。


2015年安保法制改正に反対する国会前のデモ

しかし、これがなければ、現在の日本とオーストラリアの関係は現在よりは、はるかに希薄なものになっていたでしょう。上の記事にもある通り、日豪は21年、海上自衛隊の護衛艦が豪軍艦艇を警護する「武器等防護」を実施しましたが、これも当然なかったでしょう。

安保法制の改正など、政権の維持だけを考えた場合、実施しないほうが良いに決まっていますが、それでも当時の安倍総理はこれを実行しました。このことがなければ、当然のことながら、今日のオーストラリアと日本との関係等もなかったものと思います。無論、現在同盟国や準同盟国などの他の国々との関係も、現在よりはるかに希薄なものになっていたでしょう。

それを考えると、安倍元総理の決断はまさに時宜を得たものでした。それだけではなく、安倍政権下において、日銀は金融緩和に転じ、雇用状況は過去にないほど良くなりました。だからこそ、多くの人は安倍元総理を支持し、安倍政権は憲政史上に残る最長の政権になったのです。国会前で大騒ぎのデモの参加者も単なるノイジー・マイノリティーであることがはっきりしました。

岸田総理には、安倍元総理のように一時政権支持率を下げても、国民国家のために、実施すべきことはするという決断力があるのでしょうか。岸田総理にも安倍元総理のような政治家としての矜持をみせてほしいものです。

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