政府、1人当たり2万6000円支給へ 税収上振れ分「人々に還元」/台湾蘇貞昌(そていしょう)行政院長(首相)は4日、国民全員に1人当たり6000台湾元(約2万6000円)を現金で支給する方針を明らかにした。時期は春節(旧正月)明けとなる見通し。
2022年度の税収は当初見込んだ額より4500億台湾元(約1兆9000億円)上振れし、国民に還元されるかが注目されていた。蔡英文(さいえいぶん)総統は3日、政府が運用可能な分について、一部を緊急時に備えて積み立てる以外は人々に現金で分配する考えを示した。
視察先の南部・嘉義県で取材に応じた蘇氏は、運用可能な1800億元(約7700億円)のうち400億元(約1700億円)を緊急時の資金とし、1400億元(約5700億円)を市民に分配する方針を発表。給付方法など詳細を詰めている段階だと話した。行政院院会(閣議)で決定され次第、立法院(国会)に送られるという。
対象に外国人が含まれるかどうかについて、行政院(内閣)は中央社の記者に対し「検討中」と回答した。
また、地方政府にも一部を回し、低所得層に一定額を毎月支給する。
残りの2000億元(約8500億円)について、蔡総統は労働保険や健康保険の基金、電気代の抑制に充てる他、従来型産業、農漁業、観光業などの支援に投入する方針だと説明した。
【私の論評】日本の財政の最大の欠陥は「死に金」が大量に溜まっていく構造になっていること(゚д゚)!
税収が想定より多かったので目に見えるはっきりした形で、国民に還元してくれる国、台湾です。日本とは随分異なるようです。
日本では、2022年度の一般会計税収が68兆3500億円余りと、過去最高だった21年度実績を上回る見通しであることが4日、分かりました。複数の政府関係者が明らかにしました。政府が近く閣議決定する22年度2次補正予算案で、昨年末の見積りを増額修正します。
主要税目のうち所得、法人税収などが堅調に推移していることを反映しています。当初は22年度税収を65兆2350億円と想定していました。新たに3.1兆円上振れすると見込み、政府が先月28日に決定した総合経済対策の財源に充てるとしています。
国の税収はコロナ禍でも伸び続け、20年度にそれまで最大だった18年度の60兆3563億円を抜き、一般会計税収が60兆8216億円となった。21年度は67兆0378億円と、再び過去最高を更新していた。想定通りに推移すれば3年連続で過去最高を更新することになります。
これについては、昨年もこのブログで解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
防衛費のGDP比2%以上に〝増税不要〟 この10年で税収は25兆円増に 税収増で増額分を確保、アベノミクス継承すべき―【私の論評】2018年に一般会計税収がバブル期を超え、2021年に過去最高となった日本で最早増税は必要なし(゚д゚)!
この記事は、昨年11月19日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より二つのグラフを引用します。
財務省が昨年7月5日発表した2021年度の一般会計決算概要によると、国の税収は67兆378億8500万円と過去最高だった20年度の税収(60兆8216億400万円)を更新しました。更新は2年連続です。新型コロナウイルス禍からの世界的な景気回復や円安による企業収益の増加で法人税収が伸びました。賃上げなどによる所得環境の改善で所得税収も堅調でした。
21年度税収は当初予算段階で57兆4480億円を想定。景気回復の動向を踏まえ、昨年12月成立の補正予算では63兆8800億円に上方修正していたのですが、さらに上振れる結果となりました。
このグラフに関しては、上の記事から引用します。
2018年の段階で、もうすでに、税収はバブル期を超えていたのです。2018年というと、このブログでも以前掲載したように、統合政府ベース(政府+日銀)の財政再建は2018年には確実にプラスに転じていました。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
このグラフをみれば、良く判りますが、1990年代に入ってから、消費税増税が繰り返されましたが、最初は、消費税をあげても税収は下がっていたのですが、一時あがった時期もありましたが、リーマンショックあたりで、かなり落ちてしまいましたが、その後はまた上がりはじめ、14年あたりから、しっかりあがりはじめ、18年にはバブル期の水準を上回りました。
そこからは、バブル期の水準を下回ることなく、上の方のグラフをみてもわかる通り、19年は一時下がりましたが、20、21年と上がっています。
どうしてこうなったかといえば、消費税をあげたばかりのころは、政府は緊縮財政を繰り返し、日銀は金融引締を繰り返していたので、04年頃からは、税率があがったこともあり、税収が増えたのですが、2008年にリーマン・ショックがあったにもかかわらず、震源地の米英をはじめ、他国がかなり思い切った金融緩和をして、立ち直りが早かったにもかかわらず、日銀が金融引締の姿勢を変えなかったため、2009年にはかなり落ち込みました。
2013年には日銀が異次元の包括的金融緩和を始め、2014年には消費税率が8%になったこともあり、税収が増えました。 16年には、若干へりましたが、17年はまた上がり、18年にはとうとうバブル期の水準を超えました。
それ以降は、19年には一度税収が前年より若干落ちましたが、20年、21年そうして、先にあげたように、22年も前年を上回るのです。
2次補正では、税収の上振れ分に加えて税外収入なども歳入に計上します。足りない分は新規国債を22兆8500億円余り追加発行することで補います。歳出総額は28.9兆で、世界的な景気減速に備えて創設する「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費」には1兆円を計上します。
補正予算案は8日の概算閣議決定を想定していますす。20カ国・地域(G20)首脳会議などに出席する岸田文雄首相の帰国後に国会に提出し、年内の早期成立を目指します。
補正予算すらまだ本決まりしていないのですから、岸田政権は仕事があまりに遅すぎです。これは、夏休みの宿題をやり残し、年明けになって提出するようなものであり、あまりに酷すぎです。
台湾政府としては、すでに昨年の夏辺りから準備をして秋頃には決まって、どの程度の上ブレが出るかを待ったいたという状況なのだと思います。だから、このようなことができのるだと思います。新年早々ということで、タイミングも良いです。
一方岸田政権は、補正予算を決めるにも時間がかかっているだけではなくその組み方にも問題が山積です。
政府は11月8日、2022年度第2次補正予算案を閣議決定しました。高騰する電気やガス料金の抑制策などを盛り込んだ総合経済対策を中心に、一般会計の歳出総額で28兆9222億円を計上。財源には、当初の計画を上回った税収などもあますが、歳出の約8割にあたる22兆8520億円は新たに赤字国債を追加発行して賄います。
ただ、国債を大規模に発行しなくても予算は組めるはずです。同時期に「過去の経済対策でどのくらい使い残しがあったか」という会計検査院の報告がありましたが、それが20兆円くらいでした。それを繰り越すなり、不用なものを組み込めば減らせるはずですが、繰り越しているのですから、どこかに必ず財源、いわゆる埋蔵金はあるはずです。
それを集めれば、簡単に補正予算となどできるはずです。埋蔵金を残しつつ、多くの国債を出して、見かけ上での財政の大変さを演出したのではないかと考えられます。それが、財務省のやり口です。
22兆円が赤字国債だということで、財政規律上望ましくないという意見もありました。独立行政法人であれば、埋蔵金もありますが、それは数百億円や1000億円~2000億円のレベルになってしまいますので、理解しにくいですが、外為特会では40兆円もあり、これは理解しやすいです。
埋蔵金問題の本質は、繰り越しの使途をあいまいにしておき蓋をして、まるでこれらが存在しないかのよう装い「財政危機」などといいたていることです。これは、本当に異様です。
さらに、コロナ対策なども含めて相当、財政出動したはずなのに、それが実需になっていないという問題もあります。これは、結局のところ予算が執行されていないのです。
財政支出には補助金系と減税系の2つがあって、減税系は執行率がほぼ100%になります。税金を取らないだけだから簡単なのです。しかし、補助金系は支出するにおいては、様々な書類と手続きが必要となります。そのため、補助金系の支出は執行がスムーズにいかないときがあます。
通常、国際的にはOECDなどの資料を調べると、景気対策は「減税系」7で「補助金系」が3ですが、日本ではこれが逆どころか補助金のほうが圧倒的に多くなっています。景気対策は、減税で実行するのが一般的なのです。
日本だけが、補助金系が8で減税系が2です。そうして、今回の岸田政権では、ほとんど減税系がありません。要するに補助金系が10という感じで「かなり執行残がありそうだ」と最初から認識できました。
予算を積んでも執行できなければ意味がありません。岸田政権は、このような予算を意図的につくっているのかと疑ってしまいたくなるほどです。普通は、補助金系は増やさず、減税系を増やして素早く執行すべきなのです。
このような予算の策定方式の背景には「減税などすべきでない」などの前提があるのでしょう。だから、不自然なことになってしまうのです。まず入り口にそれがあるのでしょう。もう1つは、補助金系の方が官僚や政治家は喜ぶのです。減税よりも、補助金のほうが、いかにも仕事をしたという達成感があるのかもしれません。
岸田政権の予算は、「減税系が嫌だ」という財務省と、補助金系が好きな他省庁と政治家をうまく組み合わせたような感じです。
そうなると、限られたところにしかお金が流れず、世の中全体の経済の浮揚にはつながりにくくなります。
ガソリン税に関しても暫定税率を廃止すべきでしたが、結局それも補助金で屋上屋を架しましたし、今回のガスや電気も結局そうです。
このような予算は、はっきりいうと一般国民が割を食うことになってしまいます。執行がスムーズにできない予算は良い予算ではありません。よくバラマキと批判されますが、これは完璧な間違いであり、経済対策では、特に減税系でばら撒く方が景気対策としてはるかに優れています。どうせ予算をつくるのであれば、バラマキ100%で素早く執行すべきと思います。
岸田政権の予算は何かといえば、補助金ばかりです。官僚達は大喜びでしょうが、執行という観点からみれば、景気対策で100%の効果は出しにくいのです。
効果が出せなくて、残った分が、それがそのまま埋蔵金になっていくのです。一方、上の台湾の例のように、税収が上ブレすれば、国民に目にはっきり見える形で還元するというのが台湾政府のやり方であり、そこには埋蔵金を溜め込むという考えはさらさらないようです。
それに、減税系の対策を行いつつも、時にはこういう目立った形で、補助金を直接国民に配布するというやり方で、上手に経済対策をアピールしているといえます。これは、岸田政権も見習うべきです。
台湾政府は減税政策を日本よりはかなり多用しています。たとえば、昨年11月17日には、台湾の行政院(内閣)、半導体などの先端技術の研究開発や投資を促すため、関連企業への減税措置を拡大する案を閣議決定しました。
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台湾半導体製造大手のtsmc |
法人税額から、研究開発費の25%(従来は15%)、設備投資の5%(同0%)をそれぞれ乗じた額を控除できるようにします。今年1月1日から施行されました。半導体などで一段の優位性を確保するのが狙いです。
一方日本では、減税措置はなく、補助金100%で埋蔵金がなるべく出るようにして予算を組み、それを財務省が特別会計等としてせっせと溜め込むというのですから、本当に困ったものだと思います。蓄えるばかりで、活用されない金のことを「死に金」といいますが、日本の財政の欠点は、いわゆる「死に金」が溜まっていく構造になっていることだともいえます。
以前このブログにも掲載したことがありますが、統合政府ベースでみれば、実は2018年あたりで、財政赤字は解消されています。そこから先は黒字に転じています。しかし、この黒字を家計と同じように良いことと、考えるのは間違いです。
「死に金」が積み上がる財政黒字よりも、「死に金」が積み上がらない財政赤字のほうが、はるかに健全です。経常収支赤字は悪で、黒字は善と決めつける人もいますが、それは間違いであって、赤字、黒字の原因により、良いこともあれば、悪いこともあります。たとえば、好景気であれば、輸入が増えて経常収支が赤になりがちですが、景気が良いことを悪いこととはいえないので、これは悪いことだとはいえません。
それと同じく、財政も赤字だから悪、黒字だから善とは言い切れません。財政が黒字ということは、政府が国民のために仕事をせずに、せっせと「死に金」を溜め込んでいることを意味するかもしれないからです。財政が赤字であっても、予想したより支出が増えたというだけであり、何も問題もないこともあれば、外国からの借金がかさんでいるというということもあります。赤字、黒字だけでは、財政が良い、悪いなどとは言い切れません。
財政赤字はそもそも駄目ではないと考える人は、それこそ家計と財政をごちゃまぜにして考えているのです。家計では、お金が外にでてなくなり、さらにお金も借りることができなければ、それでおしまいで破綻しますが、政府の場合は、徴税権があって税金を徴収できますし、国債も発行できますし、政府は、貨幣を発行することができますから、家計とは根本的に異なるのです。
財政も、経常収支も、不健全な赤字とともに、不健全な黒字もあるのです。
現状の日本を考えれば、財政は黒字より赤字くらいのほうが、「死に金」は溜まらず、財政は健全だといえます。何が何でも、黒字にもっていくことだけが、善であり正しいことだという考えは完璧な間違いです。
不健全な財政黒字のお先棒を担ぐのが、岸田政権ということもできると思います。岸田首相は財務省のいいなりで、国民のことは何も考えていないようです。ふざけるなと言いたいです。
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