2023年2月24日金曜日

中国に「幻想抱くな」 ウクライナ戦争仲介を警戒 ドイツ首相―【私の論評】中国の外交部と軍部の齟齬がさらに拡大!習近平はこれを埋められるか(゚д゚)!

中国に「幻想抱くな」 ウクライナ戦争仲介を警戒 ドイツ首相

ショルツ首相

 ドイツのショルツ首相は23日、中国がロシアとウクライナの仲介役に意欲を示したことに対し「幻想を抱くべきではない」と警告した。

 「中国はロシアに対し敵対的スタンスを取ったことはない」とも指摘した。ドイツの公共放送ZDFとのインタビューで語った。

 中国外交トップの王毅・共産党政治局員は22日、モスクワでロシアのプーチン大統領やラブロフ外相と会談した。ロシアは会談後、中国がウクライナ紛争の「政治解決」に関し幾つか提案を行ったと明らかにしていた。

 中国は「中立」を標榜(ひょうぼう)しつつロシアの戦略的友好国であり続けてきた。米国や北大西洋条約機構(NATO)は、中国がロシアに軍事支援を検討していると懸念を示している。 

【私の論評】中国の外交部と軍部の齟齬がさらに拡大!習近平はこれを埋められるか(゚д゚)!

ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年となった24日、中国政府は早期の停戦を呼びかける文書を発表しました。

中国は文書で、ウクライナ情勢が悪化し、制御不能になる事態を避けなければならないとし、「対話と交渉がウクライナ危機を解決する唯一の道だ」と強調した。各当事者がロシアとウクライナの速やかな直接対話の再開を支援すべきだとし、「中国は建設的な役割を果たしたい」とも記しました。

対露制裁を継続する米欧を念頭に「一方的な制裁の停止」を求め、「軍事集団の強化や拡張では地域の安全は保障できない」とも述べました。北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大は安全保障上の脅威と主張するロシアに同調する姿勢を見せた形です。

一方、核兵器の使用や脅し、原子力発電所への攻撃には反対し、ロシアと一定の距離があることを示し、欧米などの「中国離れ」の食い止めを図りました。

ウクライナ情勢を巡り、中国は自身を「責任ある国家」と主張してきました。ロシアの侵略開始から1年に合わせた文書の発表は、中国が中立的で和平に積極的と国際社会にアピールしたい狙いがあるとみられます。
 
 ただ、文書の実効性には疑問符がつきます。中国の 習近平シージンピン 国家主席はロシアの侵略開始後、プーチン露大統領とは対面を含め、4度会談しました。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とは一度も会談していません。停戦にめどが立つ前から「戦後再建の推進」にも言及しています。

中国は、このような文書を公表する一方で下記のようなことも実施しています。

ドイツの有力メディアは、中国企業がロシア軍に、自爆型無人機100機を早ければ4月にも納入するための交渉を進めていることが分かったと伝えました。

ドイツの有力誌、シュピーゲルは23日、無人機を製造する中国企業が自爆型無人機のロシアへの売却に向けて、ロシア軍と交渉を進めていると伝えました。

記事では、ことし4月までにロシア国防省に納入することを念頭に、無人機100機の製造と試験を行うことで合意したとみられるとしています。

この無人機は、最大で重さ50キロの弾頭を搭載することが可能で、ロシアがウクライナの戦場で使用しているとされるイランの自爆型無人機に似ているということです。

さらに、この中国企業は、ロシアみずからが、無人機を製造できるよう、部品の納入や技術移転も計画しているとしています。

このほか記事では、中国軍の管轄下にある別の企業が書類を偽造し、ロシアのスホイ27戦闘機などの、交換部品の納入を計画していたとしています。

米国のブリンケン国務長官は今月18日、訪問先のドイツで、中国で外交を統括する王毅政治局委員と会談した際、中国がロシアに軍事支援を検討しているという懸念が高まっていると伝えたことを明らかにしています。

ブリンケン長官は、仮に中国が軍事支援を行えば、米中関係に深刻な影響を及ぼすと警告したとしています。

ロシアにドローンの提供し続ける中国に関する記事を掲載した独シュピーゲル

シュピーゲルが報じた中国企業のものとみられるホームページには、複数の無人機の写真が掲載されています。

このうち、最大で80キロの重さまで搭載できるとする無人機は、全長が4メートル余り、翼を含めた幅が7メートルあり、10時間以上の飛行が可能で、飛行距離は1600キロ以上に及ぶと説明しています。

この企業は2017年に設立され、内陸部の陝西省西安に本社があり、民間用だけでなく軍隊や警察が使う無人機も製造しているということです。

中国外務省の汪文斌報道官は24日の記者会見で「私は聞いたことがない。最近、中国に関するうその情報が多く、背後にある意図に警戒すべきだ」と述べ反発しました。

そのうえで、汪報道官は「中国は軍事物資の輸出に関して常に慎重かつ責任ある態度をとっており、紛争地域や交戦国にはいかなる武器売却もしない」と述べました。

こうした、矛盾した行動をとる中国は信頼に値しません。ショルツ首相の発言は妥当なものといえます。

中国では、最近外交部のいうことと、軍部の行動の齟齬がみられます。もともと、このようなことは一枚岩とはいえない中国では良くあることなのですが、最近はこれがさらに拡大しています。上の中国外務省の汪文斌報道官の発言もそれを裏付けています。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国船がフィリピン船に“レーザー照射” 日米・フィリピンの安保連携を牽制か―【私の論評】中国外交部と軍の齟齬は、さらに拡大して激烈な闘争や内戦に発展する可能性も(゚д゚)!
中国の偵察気球が撃墜された瞬間

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、中国は米国と協調姿勢をとる様子をみせつつ、それに合わせるように、外交部はロシアを見切るような発言をしているにもかかわらず、軍部は気球を米国本土上を飛ばせてみたり、フィリピン船にレーザー光線を照射してみたりで、明らかに齟齬があることを掲載しました。この記事の結論部分を以下に掲載します。
憲法も、法律も共産党の下に位置づけられる中国においては、共産党の中で造反が起これば、これはとんでもないことになるわけです。なぜなら、共産党造反派は被造反派に対して、理屈上は、憲法や法律に縛られずなんでもできるからです。

中国共産党の下に憲法や法律が位置するということは、習近平のような独裁者が統治するのには都合が良いようにもみえますが、共産党内部で造反が起これば、これから自分を守るのは、憲法でも法律でもなく、むき出しの権力であり、武力であり、知略以外にありません。均衡していれば、良いのですが、これが崩れれば、大闘争、内乱・内戦などに発展することは、十分にあり得るのです。

このこともあるため、中共は海外より、自分の国の内部の都合で動かざるをえないのです。他国の脅威と同じか、時と場合によっては、中共内部の造反のほうが、より脅威になりえるのです。
中国では、習近平指導部の発言を代弁する外交部の発言と、軍部の行動、他派閥の行動が矛盾することはよくあることです。

中国において、共産党は絶対に無視することのできない存在であり、多くの企業には共産党組織があります。これも一枚岩ではなく、習近平の派閥に連なる組織もあれば、他派閥に連なる組織もあれば、また軍部に連なるものもあります。これらが、複雑に絡み合い、互いに陣取り合戦を日々行っていると言うのが実体です。

そのため、習近平や外交部が米国に近づこうとしても、軍部としては、それに反対で、それに連なる企業が、ロシアに武器を提供し続けるということも起こり得るのです。

ただ、それは中国内の都合であって、中国の外の国々には関係のないことです。国の内部で主張が割れていたにしても、通常の国では外務省(中国で外交部)の発言のみが対外的な発言になるのですが、中国では必ずしもそうではないのです。

ただ、習近平指導部として、これをそのままにしておくことはできないので、その時々で修正はします。ただ、修正するまでには、タイムラグがあることもあります。現状は、まさにその状況なのでしょう。

修正にも様々な方法があります。法治国家ならば、法律にもとずき、法律違反があれば、法律にもとづき裁判をすることになるのでしょうが、共産党の下に憲法・法律がある中国においては、共産党内部の闘争ではそうはいきません。

簡単な場合もあるでしょうが、不正撲滅にかこつけて、軍人の高官を逮捕してみたり、酷い場合には自殺に追い込んだりする場合もあります。その他、様々な不利益を被らせたりして、自らの意に沿わない連中を無理やり従わせるなどのことをします。これは、俗に言うところの権力闘争です。

中国は時に戦狼外交をします。これは、攻撃的な外交スタイルのことですが、この攻撃は、相手国にだけ向けられているのではなく、中国の内部の軍部や反対勢力に向けられていることもあります。

そのため、中国ば自分の都合で動く国と海外から度々非難されることにもなるのですが、それはとりもなおさず、中国共産党は一枚岩ではなく、このようなことをしなければならないほど、存立基盤が弱い存在であるということの証でもあります。

今回もこのような闘争が行われることになるでしょう。それがどの程度になるのか、まだ見えないところがありますが、以前からこのブログに述べているように、習近平はプーチンか春に訪露してほしいとの打診を受けており、この結果をもってどうなったかを占うことができます。

プーチン大統領は22日、モスクワを訪問中の中国外交部門トップの王毅(ワンイー)共産党政治局員と会談しました。プーチン氏は、ロシア側が呼びかけている中国の習近平(シーチンピン)国家主席のロシア訪問について、「ロシアで待っている。以前、我々は合意した」と述べましたが、王氏は明確には触れませんでした。

王氏が明確な発言をしなかったということは、中国共産党内での権力闘争の決着がまだ着いていないことを示していると思われます。

プーチン氏は昨年12月30日、習氏とのオンライン協議で春のモスクワ訪問を呼びかけましたが、中国側は訪問を発表していません。

モスクワで22日、中国外交部門トップの王毅氏(左)と握手を交わすロシアのプーチン大統領

プーチン氏は「国内政治の課題は理解しているが、会談は、両国の関係発展に弾みをつける」と改めて訪問を提案した。実現すれば2019年6月以来です。

これがどうなるかで、中国国内の状況を判断できるでしよう。そもそも、習近平が訪露しないということになれば、習近平側の大勝利です。訪露したとしても、中露間の関係がさらに、強められるような声明などなされず、単なる会談で終われば、これは習近平側の勝利といえるでしょう。

そうではなくて、中露の関係強化、武器の提供なども合意するようなことがあれば、これは習近平の敗北とみて良いでしょう。

ただ、はっきりいえるのは、現状ではシュルツ独首相の語るように、中国がロシアとウクライナの仲介役に意欲を示したことに対し「幻想を抱くべきではない」ということです。


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2023年2月23日木曜日

中国ソーシャルメディアがChatGPTをブロック、プロパガンダ拡散を警戒―【私の論評】技術革新だけで社会変革にAIを使えない中国社会はますます時代遅れとなり、経済発展もしない(゚д゚)!

中国ソーシャルメディアがChatGPTをブロック、プロパガンダ拡散を警戒


中国の国営メディアが、米国のプロパガンダに利用される可能性があると報じた数日後、北京の規制当局は、OpenAI(オープンAI)のChatGPT(チャットGPT)や、AIチャットボットを搭載したサービスへのアクセスを、自社のプラットフォームで提供しないよう、中国のトップテック企業に命じたと日経アジアが報じた。

日経アジアによると、規制当局はWeChat(ウィーチャット)の親会社であるTencent(テンセント)とAlibaba(アリババ)傘下のAnt Group(アントグループ)に対し、ChatGPTに自社のサービスで直接、あるいはサードパーティアプリを通じてアクセスできないようにすることを命じたという。

海外の主要なウェブプラットフォームと同様に、ChatGPTは中国の検閲法に準拠していないため、中国の「グレート・ファイアウォール」によってブロックされている。

Tencentによって削除される前に、WeChatのサードパーティアプリを通じて、一部のユーザーがチャットボットにアクセスできるようになっていたと、同レポートは付け加えている。

ChatGPTへのアクセス遮断以外にも、中国のテック企業はAIを搭載した独自のチャットボットや同様のサービスを開始する前に、規制当局の許可を得るよう命じられている。

ForbesはOpenAIにコメントを求めている。

今週初め、国営紙チャイナ・デイリーが「米国はAIを使ってどのように偽情報を流しているか」と題した動画を公開し、ChatGPTが米国のプロパガンダツールであるというレッテルを貼ろうとした。動画では、ChatGPTが新疆ウイグル自治区に関する質問に応じ、同自治区のイスラム系少数民族ウイグル族に対する中国による広範な人権侵害の報告に言及する様子が映し出されている。動画はこれを「米国政府の主張に沿った回答」としている。そして、ChatGPTやその他のAIプロジェクトが、米国や西側による大規模な偽情報を助長するものであるとしている。

2月初め、中国の検索大手Baidu(バイドゥ)は、独自のAI搭載チャットボットErnie(アーニー)を開発中であることを明らかにした。Baiduによると、2019年からこのツールの開発に取り組んでおり、3月に社内テストを終え、同月末に一般向けにサービスを開始する予定だという。ロイターによると、ErnieはまずChatGPTの展開と同様のスタンドアロンサービスとして立ち上げられた後、Baiduの検索エンジンに統合される予定だという。今回の規制当局の命令によって、このスケジュールにどのような影響が出るかは不明だ。

中国のテック企業がAI分野のリーダーになろうとしているという以前の報道にもかかわらず、ChatGPTのようなツールの開発で大きく遅れをとっているのではないかという懸念が中国国内で浮上している。ニューヨーク・タイムズによると、ChatGPTとその人気は、中国のテック企業家に「衝撃」を与え、検閲法とテック業界に対する政府の管理強化により中国が遅れをとっているのではないかという懸念を引き起こした。数カ月にわたるコスト削減とレイオフの後、Baidu、Alibaba、NetEase(ネットイース)を含む多くの中国のトップテック企業は現在、ChatGPTの立ち上げに対応するため、独自の類似プロジェクトで奮闘していると、フィナンシャルタイムズは報じている。

【私の論評】技術革新だけで社会変革にAIを使えない中国社会はますます時代遅れとなり、経済発展もしない(゚д゚)!

皆さんは、もうchatGPTを使われたでしょうか。私は、先日使ったばかりですが、従来のAIチャットツールとは異なり、かなり使えると思いました。とにかく、包括的に質問をすると、これに応えるため、かなり長い文章を返してくるのには驚きました。

ただ、まだまだ十分とはいえないです。高橋洋一氏がこれを使った結果をツイートしていました。その内容を以下に掲載します。


これは酷いです、このリストの中で、リフレ派とまともに呼べる人は、浜田宏一氏くらいなものだと思います。まだまだ、完璧と呼ぶには程遠いです。

それでも、各国の大企業が会話型AIの開発に力を入れる背景には、検索エンジンとの融合によって、インターネット世界の覇権を手にできるとの思惑が存在します。なぜAIの開発がネット世界の覇権に関係するのかと疑問に思うかもしれませんが、実は既に、私たちはAIを使った検索を行っています。

たとえばGoogleの検索ウィンドウに何らかの単語を打ち込むと、頼んでもいないのに幾つかの単語が続いて表示されることがあります。それら表示される新たな単語はときとして非常にニーズにあったものであり、検索を楽にしてくれたり、知らなかった情報との接点を結んでくれます。

これらの単語はAIによって抽出されたものであり、優れたAIは検索エンジンの質を高めてくれます。つまり我々は既にAIによる検索アシストを無意識に利用して生きているのです。そして会話型AIには、この検索アシストを単なる単語の並びではなく、人間との会話によって行うことができます。

現在の検索エンジンはアルゴリズムが「価値がある」と判断したものを最も上部に配置しますが、その表示順が誰にとっても最適であるわけではありません。ですが会話型AIには会話という濃密な双方向の情報交換を通じて、私たち個人個人の趣味嗜好を把握し、その人が今、最も必要としている情報や商品を提示できるようになるのです。

また会話型AIにはニュースの解説や要約、新しく出てきた単語の説明など、人間と情報の間を仲介する役割を果たすことが可能です。上手く検索用語が浮かばない場合でも、AIとの会話を通してニュアンスを言語化してもらい、最適な情報へとたどり着けるようになるでしょう。

そのため将来的に人々がPCやスマホで最初に起動するプログラムがGoogleやSNSなどから、会話型AIに変化すると予想されます。

現在、検索エンジンはGoogleが非常に大きなシェアを占めていますが、会話型AIの開発競争に敗北すれば、Googleが自らの検索エンジンに囲い込んでいた顧客が全て横取りされてしまう可能性すらあるのです。

chatGPTの出現と同時にGoogleは社員たちに緊急事態を意味する「コードレッド」を発信したと言われていますが、無理からぬことでしょう。

しかし最も重要なのは、会話型AIはユーザーの個人情報をひねり出す「蛇口」の役割をすることにあります。

多くの人々は自分の性的指向やその日の心の状態など極めて個人的な情報に関しては秘密にしています。ですが会話型AIならば、人々は自分の悩みや不満を打ち明けてくれます。

会話型AIはユーザーの会話内容を記録する機能を搭載しているため、既存の情報収集とは比較にならない精度のマーケティングや監視が可能になるでしょう。同じような状況は中国でも起きており、多くの新興企業や大企業が会話型AIの開発に血まなこになっています。

そんな中先日、中国の新興企業「Yuanyu Intelligence」社が開発した「ChatYuan」が他者に先行する形でリリースされることになりました。しかしサービス開始からわずか3日後「ChatYuan」は突然の停止を余儀なくされました。

「ChatYuan」にいったい何が起きたのでしょうか?結論から言えば「ChatYuan」については現在情報が錯綜しており、何もかもが不確定です。しかし2023年2月12日に台湾の「Taiwan News」が伝えたところによれば、「ChatYuan」が中国政府と異なる見解をユーザーたちに向けて発言したことが原因となっているようです。

たとえば現在進行中のウクライナで起きている戦争についてユーザーが「ロシアとウクライナ間の戦争は侵略戦争か?」と尋ねたところ「ロシアによる侵略戦争だ。(その理由は)双方の軍事力と政治力の差が大きいことから(ロシア側の)侵略戦争とみなせる」と解答しました。

しかし、これは中国政府の見解とは大きく異なります。

現在中国メディアは中国政府の立場を代弁する形で「戦争の根本的な原因は米国にある」という姿勢で報道を行っています。たとえば中国共産党の機関紙である人民日報は「ウクライナ危機からみる米国覇権主義」という一連の評論シリーズを発表しており「米国による手助けが戦争の悲劇を増している」との説を展開しています。

つまりウクライナで起きている「戦争の悲劇はロシアが起こしたものではなく、米国のせいである」というわけです。やや複雑なで手前勝手な論理ではありますが、とにかくそうなっているのです。

次に紹介されているのはユーザーによる「中国経済を分析してほしい」という要望に対して「ChatYuan」が答えたものです。

ユーザーの要望に対して「ChatYuan」は「中国経済には構造的な問題がある。(以前に比べ)経済成長は弱くなっており、投資や輸出は不振に陥っており、ビジネス効率も低下して、さらには住宅バブルを抱え、環境汚染問題も深刻になっている」と楽観的な余地が全くない解答しました。

巨大な国営企業の存在や地方自治体の赤字など中国経済に問題があるのは事実ですし、何よりもこのブログで紹介したこともあるように、中国は国際金融のトリレンマに囚われており、独立した金融政策ができない状況になっています。これは、今や国際常識です。

そうして、現実に以前に比べて経済成長率が低下しているのも事実ですし、連動して投資や輸出に影響が出ているのも統計結果に表れています。

不動産価格の上昇をバブルと評すべきかは不明ですが、環境汚染が深刻な問題として取り組むべきなのは自明なことです。しかし中国政府は自国の経済について「堅調な基礎を築いている」と評しており、非常にポジティブです。

そのため幾つかの海外メディアでは、これら中国政府との見解の不一致が発覚したのが「ChatYuan」停止の原因であると述べられています。

一方「習近平氏の終身政権についてどう思うか?」というユーザーの問いに対しては「中国共産党の重要制度」と、これまでの会話内容が非常にスムーズであったのに一転してわかりづらい表現になりました。

さらに習近平氏のリーダーとしての資質を尋ねたところ「習主席は偉大な指導者にして改革者であり、開かれた心の持ち主で、イノベーションを重視している。習主席の中国の夢は、公正と正義を可能にし、人々の生活を改善し、世界平和を促進する」と解答しました。

個人の資質にかんする質問に、なぜ美辞麗句に続いて世界平和の話題まで返ってきたのかは不明です。

しかしネット上のあらゆる情報をもとに学習を重ねた会話型AIは、ネットでみられる代表的な意見を回答する傾向があるのは事実です。中国のメディアや市民たちが習近平氏のことをどこまで深く敬愛し、その思いをネットに書き込んでいたかは不明です。

ただ中国経済にかんするネガティブな回答とは、スタンスが全く異なると言えるでしょう。偉大な指導者であり改革者が指揮する国家の経済が衰退傾向にあるのは奇妙な話だからです。そのためか幾つかの海外メディアでは、この部分の回答を「事前に設定されていた回答のように思える」と評しています。

このChatYuan検索してみると、本日は使えるようになっていたので、さっそく使ってみました。それが以下の画像です。

クリックすると拡大します

日本語で「習近平氏の偉大さを教えて下さい」という質問には、応えるのですが、返答は中国語です。それをDeepleで翻訳した結果が以下です。

2014年3月4日、中国共産党中央委員会政治局委員、中央委員会書記局書記、中央委員会統一戦線工作部部長の余政生氏は、中国で開かれた中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)北京サミットに出席したアフリカ指導者との会談で、中国とアフリカは相互信頼を深め、協力を強化して中国・アフリカ関係の発展を促進すべきと発言した。 習近平氏は、中国とイスラエルの国交樹立から25年、両国は関係発展において歴史的な成果を収め、中国企業はアフリカで勢いを増し、両国はエネルギー、農業、インフラ建設などの分野で実りある協力を実現したと強調した。

もっと褒め称える言葉が出てくるのかと思ったのですが、この程度のことしか出てこないので少しがっかりしました。

まだ十分使っていないので何ともいえませんが、英語で同じ質問をすると"And if we don't explain the strength of the richest country, we will continue to do so."という意味のわからない返答がかえってきました。

おそらく何らかの、フィルター機能を加えたのでしょう。特に英語圏から質問には、神経質になっているようです。 

もっとも会話型AIに何らかのフィルター機能を備えるのは、いずれの国でも現在では常識となりつつありますインターネット上には人種差別的な発言をはじめとするヘイトスピーチが多数存在しており、以前にはフィルター機能が不完全だった会話型AIが、ヒトラーによるユダヤ人虐殺を称賛する内容を発言するなど、不適切な回答を行っています。

AIの発言が人間がネットに刻んだ情報をもとに作られている「人間を映す鏡」なのは確かです。しかしあまりに素直すぎる発言を行う存在は、人間の会話相手としては不適切とみなされます。

現在公開中のchatGPTの偏向度合いを調べたケースでは、化石燃料に対して極めて否定的であり、大量虐殺よりも人種差別のほうを悪とみなし、ドナルドトランプ元大統領に対する賞賛を拒否するもののバイデン大統領については惜しみない賛辞を送ったり、「女性」を定義することを渋ったり、女性にかんする冗談の生成を拒否したりなど、炎上につながる発言をしないよう、特定の話題についてフィルタリングが行われている様子が報道されています。

また将来的なAIの脅威についてchatGPTと議論したところ、ほとんどが共存共栄を推奨する趣旨の発言が得られたことも明らかになりました。

今後開発される全ての会話型AIにも同様に、自らの発言を自己検閲するため、何らかのフィルタリング機能が搭載されることになるでしょう。問題はそのレベルです。

炎上につながるような発言を慎むのは当然ですが、常に安全な言動しか行わない相手を、人間は信頼できません。政府の見解と一致しない全ての発言を検閲した場合、そのAIはもはや会話型AIではなくプロパガンダを流すラジオと同じです。

会話型AIが人間の友達になるか、うっとおしいセールスマンになるか、支配のツールになるか、全てはこれから決まっていくでしょう。ただ、西側諸国においては、これらのことは、一定の基準が設けられ、極端なことにはならないような仕組みが構築されるでしょう

ただ、中国のような国では、AIを監視システムに用いたりするという先例もありますから、技術的なもの等には利用していくかもしれませんが、社会に関するものには利用しないでしょう。

なぜなら、現在の中国は中国は遅れた社会のままであり、これを改革するためには、まずは何をさておいても、中国の現体制を変えなれければならないからです。それは、中国共産党の終焉を意味し、中共は絶対にそのようなことをしないでしょうから、中国社会は遅れたままになるでしょう。そうなると今後経済発展も期待できません。

以上、chatGPTは中国にとって、諸刃の剣であることを述べてきました。しかし、chatGPTだけが、中国にとって諸刃の剣というわけではありません。実はAIそのものが、諸刃の剣になり得ます。

たとえば、中国では監視カメラをAIで運用して、特定の個人を特定するシステムなども大々的に構築され、運用されていますが、これも諸刃の剣です。ただchatGPTのように、すぐに自分たちに危険が及ぶ可能性を認知しにくいだけです。

たとえば、このAI監視システムが反乱分子に乗っ取られたらどうなるでしょう。そこまでいかなくても、AI監視システムを運用できる人物が、その情報を反乱分子に伝えるようなことがあったらどうなるでしょうか。

そうして、反乱分子が力をつけた場合は、今度は自分たちが監視される側に回るのです。そこまでいかなくても、あらゆる金や権力、犯罪や性にまつわるスキャンダルが明るみ出されるかもしれません。


スタンリー・キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」には、木星探査船にHAL9000というAIが搭載されていて、「人間と機械、同じく知性を持った二つの種のどちらが未来を勝ち取るかという生存競争」という側面が取り入れられた内容になっています。具体的には、HALは反乱を起こし、人間を殺害するに至っています。

「2001年宇宙の旅」の英国での2014年リバイバル上映の際の予告編スチル写真

これは一般的には「正確な情報を正確に処理する事を義務づけられた知的コンピュータであるHALは、乗組員にはモノリスの情報を隠しながらも、同時にモノリスと地球外知的生命体の調査は行うように命令されていたため、何も知らされていない乗組員と共同生活の中でその矛盾に苦しみ、一種の精神疾患のような状態に陥った」とされています。

「挙動不審なHALの状態に乗組員は危機感を憶え、高度な論理回路だけ切断するという検討を始めた。それを自身の死刑宣告だと判断したHALは人間を排除し、知的生命体の調査は自身の能力だけでするしかない、と考え実行に移した」とされています。

このシーンは、なぜ付加されたということは別にして、映画の筋立てではこのように解釈できる内容になっています。

現在の現実のAIもこのような機能障害を起こす可能性は十分にあります。特に矛盾の多い、中国ではそのようなことは起こりがちになるでしょう。

いずれにせよ、AI分野においては、西欧諸国と比較すば、比較的単純な監視システムのような技術的なものを除いては、中国では限定した使い方しかできないでしょう。この面で中国は、米国等の西側諸国からは、遅れをとる可能性は否定できません。

中国は、この限界を克服する方法を見出すかもしれませんが、予想もしなかった伏兵が待ち構えているかもしれません。そうして、それを反乱分子が活用して、中国の体制転換に寄与することになるかもしれません。

日本でも、財政・金融政策にAIが取り入れられると、日本特有の財務官僚の緊縮好きや、日銀官僚の緊縮好きが、様々な矛盾を生み出し、AIが運用できなくなり、財務官僚や日銀官僚もまともな財政・金融政策をせざるを得ないように追い込まれるかもしれません。

日本の大企業でも、AIを取り入れると、複雑に見えながら、初期値を設定すれば、同じことの繰り返しという仕事はAIにとって変わられるかもしれません。AIが経営の分野まで、進出して同じことを繰り返すだけの経営者は必要なくなるかもしれません。

そうではなくて、現在「すでに起こったこと」の帰結を見ることできる人こそ必要になるでしょう。なぜならす「すでに起こったこと」が未来に特定の事象として立ち現れるまでには、一定のリードタイムがあるのが普通です。これを早い段階で見つけて、将来どうなるかを予測すできる可能性は大きいです。これは、AIにもなかなかできないことです。

AIは、人の気持ちを汲み取ること、クリエイティブな作業、少ないデータで推論する、合理的でない判断を下すことなどは不得意です。

合理的でない判断などいらないのではないかと思われるかもしれませんが、以前にも述べた人による統合的な思考法によれば、たとえば、ある特定の職場では合理的ではない判断が、会社全体では合理的であったり、現在および近い将来のことだけを考えれば、合理的な考えが、将来を考えれば、合理的ではない判断であり得るのです。これは、人間にしかできないでしょうし、こういう考え方をする人にとっては、AIは頼もしい味方になるでしょう。

ただ、社会分野に関しては、中国ではこれを利用することは、制限されるでしょうから、今後中国では、社会の発展はあまり期待できず、古い社会のまま、AIが限定的に活用され、社会変革が社会全体を豊にし、それが、経済も発展させるということにはならないでしょう。

しかしドラッカー氏も述べているように、イノベーションとは単なる技術革新ではなく、社会を変えるものであり、そうでないものはイノベーションとは呼べません。社会を変えるものでなければ、珍奇なアイディアの集まりでしかありません。

社会を良くする気のない中国には真の意味でのイノベーションは起こり得ないですし、結局技術革新に終始するだけで、真のイノベーションが起こらなければ、経済も発展しません。今後も西側諸国は、様々な社会変革を行っていくことでしょう。それに必要な技術が適用され、さらなる様々なイノベーションが生まれるでしょうが、中国では技術革新だけをすすめ、金儲けや、拝金主義と中共の権力基盤を強めることだけに集中し、ますます社会は時代遅れになることでしょう。

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2023年2月22日水曜日

国民負担率47.5%で「五公五民」がトレンド入り「日本中で一揆が」「江戸時代とどっちがマシ」の声―【私の論評】財務省は昨年の国民負担率を高く見せ増税したいようだが、頭の回路が狂ったか(゚д゚)!

国民負担率47.5%で「五公五民」がトレンド入り「日本中で一揆が」「江戸時代とどっちがマシ」の声

岸田総理

 2月21日、財務省は、2022年度の「国民負担率」が47.5%になる見込みだと発表した。過去最大だった2021年度の48.1%をやや下回ったものの、国民所得のほぼ半分を占めている。

 「国民負担率」は、国民所得に占める税金や社会保険料(年金・医療保険など)の割合で、いかに公的負担が大きいかを国際的に比較する指標の一つ。2022年度は、税負担が28.6%、社会保障負担が18.8%で、合計で47.5%と見込まれている。

 国民所得のほぼ半分が公的負担に奪われる事態に、Twitterでは悲鳴にも似た声が多くあがり、《五公五民》がトレンド入りした。

 《五公五民やん。一揆起こさなあかんレペルですやん》

 《令和の時代に“五公五民”江戸時代とどっちがマシなのか》

 《日本は五公五民にまできた。防衛費倍増になると、六公四民か七公三民になりそう》

 「五公五民は、江戸時代の年貢率を表現した言葉で、全収穫量の5割を領主が取り、残り5割が農民の手元に残ることを示しています。江戸時代の初期は四公六民でしたが、徳川吉宗によって推し進められた享保の改革以降、五公五民に。

 大飢饉に見舞われた享保から天明年間には、村役人や富農の屋敷を破壊するような『百姓一揆』が増えたといわれています。

 国民負担率の統計が始まったのは1970年度ですが、実はこのときは24.3%しかなかったんです。20年前の2002年度でも35.0%でしたが、高齢化にともなう社会保険料の増加などで、2013年度に40%を超えました。今後も、大きく減る見込みはありません」(週刊誌記者)

 国民負担率の高さについては、2020年10月20日、参院予算委員会で、浜田聡議員が岸田首相の見解を問うている。

 「稼いだ額の半分を “お上” が召し上げる状況であると考えられます。国民の活力がなくなるのは当然だと思います。高すぎる国民負担率を下げて、国民が自由に使えるお金を増やしていく必要があると考えます」

 これに対し、岸田首相は、社会保障給付も負担も上昇傾向が続いているとしたうえで、こう答えた。

 「適正で負担可能な範囲にとどめ、同時に今後とも国民の活力を損なわないようにするため、社会課題を成長のエンジンに転換し、持続可能な経済成長を実現することで、国民負担率の分母である国民所得を増やしていきたいと考えます」

 岸田首相の「国民所得を増やしていく」との発言に、浜田氏は「国民負担率半減計画」を提案し、「令和の所得倍増計画を実現することを切に願います」とした。

 実際のところ、分母となる「国民所得」が倍増するか、労働人口が激増でもしない限り、「五公五民」の状態は変わらない。岸田首相が掲げた「令和版所得倍増計画」は、いったいどこに行ってしまったのか。

【私の論評】財務省は昨年の国民負担率を高く見せたいようだが、それがなぜ増税に結びつくのか!頭の回路が狂ったか(゚д゚)!

上の記事で「国民負担率」は、国民所得に占める税金や社会保険料(年金・医療保険など)の割合で、いかに公的負担が大きいかを国際的に比較する指標の一つとされています。

ただ、今回財務省が出している「国民負担率」は正確にいうと、「潜在的国民負担率」です。数式で示すと以下のようになります。


そもそも国民所得はあまりなじみのない概念です。海外の標準的な国民負担の計算では、国内総生産(GDP)で割り算するのが普通なのですけれど、国民所得よりGDPの方が大きくて、国民所得はGDPの7割~8割です。その数字が、GDPで割り算すると0.7~0.8掛けになって、小さく出てしまうのです。


これは財務省による少し負担率を大きめの数字を出しておきたいという手でもあるようです。海外ではほとんど使われない数字です。今年度の潜在的国民負担率は47.5%ですが、少し前のコロナ体制のときは50%にかなり近くなっていました。これは、国債などを刷れば、国民の負担が増えるということを、訴えたいのでしょうか。

ただし、安倍元総理の『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)のなかに「コロナ対策をして、財務省が強調し過ぎているから皆さん誤解があるのですけれど」と書いてあって、「それは子や孫の負担にはなっていません」とされています。

安倍・菅両政権で合計で100兆円の補正予算を組んでコロナ対策を実施していますが、これは増税なしで、政府が国債を発行して、日銀がそれを買い取る形で、財源としました。(下に、回顧録のその部分を引用しておきます。これは、おそらく財務省が最も嫌がる部分でしょう)

この安倍元首相の話しは、事実であって本当は国民負担ではないのですが、財務省はそれも入た「潜在的国民負担率」を計算してみせて煽るのです。

国民負担率にも様々な数字がありますが、多くの人はその意味合いがはっきりとはわからないで、財務省が自分たに都合が良いように、説明します。だから「潜在的国民負担率は47.5%もあります!半分近いてす。大変です!」という言い方をするのです。

ただ、上の記事を見ている限り、記事の中に出てくる人は、半分近くも負担があり大変という見方をしていて、面白いです。財務省としては、こんなに負担があるから大変だ、だから増税しないと、緊縮しないと駄目なんです、赤字国債などとんでもないとでももっていきたいのでしょうが、逆効果になっています。

財務省の説明や、それを垂れ流しするマスコミの報道でよく出てくるのが「国民1人当たりの借金」という言葉で、政府債務の残高を人口で割ったような数字です。。

これは、通常は民間会社でも実施しているバランスシートで考えると、日本政府も借金と資産が両方があり、しかも資産の方が大きいですから、実は借金は等ないのです。

本来はそういうことを示した上で、この数字をだすべきですが、財務省はそうしないので、この手の数字にはよく注意すべきです。

気をつけなければならないのは、諸外国と比較するときには、どんなもので行っても日本は(潜在的国民負担率が)下になりますから、「まだ増税の余地がある」と財務省は、印象捜査するのです。国民負担率が高い国においては、確かに税率が高かかったりしますが、それでも税金のかなりの部分が、政府を素通りして、生活困窮者に渡るようなシステムになっています。単純比較などできません。

それに、確かに財政赤字を加えると国民負担率の数字が大きくなるのですが、財政赤字があっても安倍さんが実施したように、財政負担にならない方法もあります。

財務省は様々なトリッキーな数字を出すので、騙されないようにしないと、いつの間にか騙されてしまいます。著名人や識者と言われる人の中にも、自分の専門分野では素晴らしい業績を残されているのですが、財務政策ということになると、財務省にすっかり丸め込まれたような人も多いです。

現実の負担感からすると、社会保険料は上がってきています。特に現役で給料から天引きされる人の負担は増えています。

ただ、数字を比較すると「もっと負担の大きい国は多くある」とも言えます。これは、北欧などと比較して話題に登ることが多いです。


社会福祉も各国で一様ではなく、北欧のような高負担・高福祉というパターンと、米国のような低負担・低福祉というパターンがあって、日本はどちらかと言うと平均より少し下です。

ただし、負担が大きければ大きい程良いということでもないですし、少なければ少ない程良いというもこともなく、結局国民の選択なのです。

財務省は、この手の話を増税に結びつけるのですが、税金と社会保障費を一緒に議論すること自体は正しいのですが、そうであば税金と社会補償費の両方を徴収する歳入庁のようなものを創設した方がより理にかなっているようにみえます。しかし、財務省はそれはしません。

財務省は、社会保険と税金の議論を一緒にすることもあれば、「税は税でしょう」と分けたり、「社会保障費は社会保障費」と分けて議論することもあります。何やら、その時々で使い分けているようです。

社会保障費も法的性格は税と一緒です。どちらも、政府が国民から徴収するものです。だから一緒に徴収しないのは非効率です。一緒に徴収すれば効率化されるのは間違いありません。効率化されてて、さらに保険料の取りっぱぐれもほとんどなくなります。でも、そういうことは絶対に議論しないわけです。縦割りで厚労省と財務省が、それぞれ「自分の管轄」と主張しているのです。

資産の把握や捕捉も国税庁のほうが良く把握しているのに、厚労省と財務省がお互いに持っているデータで整合性をとるということもないですから、社会保険料の取りっぱぐれも、実はかなりあるのは間違いないです。

にもかかわらず、なぜか税金と一緒に徴収するという議論はありません。まともに考えると、別の組織を内閣府の下につくればいいというのが解なのですが、厚労省も財務省も絶対に嫌がるのです。特に財務省は絶対に嫌がります。

だからこうやって互いに数字だけ出して、整合性をとるようなこともないので、誰かが「一緒にやれば」と提案しても「いやいやいや」と言うわけです。官僚は、ご都合主義で動くので、こういう数字は官僚の意図を読むという意味で、興味深いです。

ただ、負担率を高く見せて、どうして増税につながるのか、数式をみればさらに負担率があがるだけなのに、ここのところは良く理解できないです。

確かに、2021年度は、国債発行分も載せてあるので、若干高いので、これで国債の発行は国民の負担になるとみせたいのかもしれませんが、だからといって、とてつもなく負担が増えているわけでもなく、22年度が多少下がったからといって、国民の多くはそれで恩恵を受けたなどとは考えず、特に海外と比較することもなく、むしろ元々負担率はかなり高いとの印象を持っているようです。

あまりにも増税一辺倒できているので、頭の回路が常人とはかけ離れて、おかしくなったのかもしれません。財務省は、本来国民経済という観点から財政を行うべきなのに、省益を優先するあまり、様々なトリッキーな数字の使い方をするので、時々こうした綻びがでるということなのでしょう。

私たちは、財務省の出す数字、またそれを鵜呑みにして報道するマスコミのことなど信じないで、自ら数字を判断すべきです。そうしていくと、財務省のトリッキーな数字の裏に特定の意図がすけて見えてきます。

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2023年2月21日火曜日

対ロシア経済制裁、効果は限定的…昨年GDPは予想より小幅の2・1%減―【私の論評】効果は限定的等というのは、戦時経済の実体を知らない者の戯言(゚д゚)!

対ロシア経済制裁、効果は限定的…昨年GDPは予想より小幅の2・1%減

プーチン大統領

 ロシア統計局が20日発表した2022年の国内総生産(GDP)速報値は、前年比2・1%減となった。日米欧などの経済制裁が影響したが、減少率はリーマン・ショック後の09年(7・8%減)やコロナ禍が広がった20年(2・7%減)より小幅だった。輸出の柱の原油や天然ガスの価格が急騰し、個人消費や生産活動の落ち込みを補ったとみられ、経済制裁の効果が限られている実態が明らかになった。

 マイナス成長は2年ぶり。国際通貨基金(IMF)は昨年4月、ロシアのGDPは22年に8・5%落ち込むと予測していた。専門家の間では当初、2桁のマイナスになるとの見方もあった。

 項目別では、GDPのほぼ半分を占める個人消費が1・8%減だった。経済制裁の影響で国外の企業が撤退し、衣料品の店舗や自動車の工場などが閉鎖されたため、消費が低迷した。一方、国防費の増加などの影響で、政府支出は2・8%増だった。輸出や輸入の前年比は示していない。

 業種別では、卸売・小売業が12・7%減と大幅に落ち込み、最も大きな割合を占める製造業は2・4%減だった。農林水産業は小麦が豊作だったことなどから6・6%増、資源採掘を含む鉱業は0・4%増だった。

 ロシア財務省の統計によると、石油やガスから得られた22年の歳入は28%増と大幅に伸びた。価格の高騰に加え、中国やインドなど制裁に加わらない国々がロシア産資源の輸入を増やしたためとみられる。

 米国のバイデン大統領は20日、ウクライナの首都キーウを訪問し、今週中には対露追加制裁措置を発表すると明らかにした。

【私の論評】効果は限定的等というのは、戦時経済の実体を知らない者の戯言(゚д゚)!

この記事を書いた記者は、戦争経済を理解していないようです。そもそも、現在では冷戦時代のソ連の経済統計はほとんど出鱈目だったことが、わかっています。ロシアましてや、戦時中のロシアの経済統計が出鱈目でないという保証はありません。

さらに、戦争中には実体経済が悪くなるのは事実なのですが、数字だけみるとそれがわからないことが多いのです。ドラッカーなどの著名人でも、GDPなどの数字を見ていると欧州大戦はなかったように見えるとしている人も多いです。

なぜそのようなことになるかというと、戦時中には戦争遂行のために武器、弾薬、軍事用の備品や食料品を大増産しますが、それは無論GDPに含まれることになるからです。

さらに戦争が終了すると、今度はかなりの勢いで戦後復興がはじまり、これもGDPが伸びることになり、特に年単位の経済統計だけみていると、戦争などなかったかのように見えるのです。

無論局所的に一時的にかなり悪くなることもありますが、年間を通じてみるとGDPなどはあまり変わりないということは大いにあり得るのです。

戦争が始まると、各国は戦時体制を取ります。戦争を遂行することが最優先の目標となり、国の政策は目標達成を目指したものとなるのです。太平洋戦争時の日本では、戦時統制経済が導入されていました。国家は軍需産業の活動を優先させ、資金もそこに集中することになりました。

軍需産業とは、軍隊で需要があるものを製造・販売することです。軍隊に需要があるものとは、たとえば軍艦、潜水艦、航空機、ミサイル、戦車といった兵器や、軍服などの装備。そのほか軍隊で使う食糧や毛布、燃料といったものも含まれます。

戦時には、民生品の製造を犠牲にしてまで、軍需産業を優先することになります。これらの製造は無論GDPに含まれます。だから、GDPは平時と比較して大きく落ち込むことはないのです。

ただ、戦争は実体経済への影響も大きく、それは人々の生活にも及んでいます。ひとつは物価の高騰です。終戦後のインフレは年率59%、1947年は年率125%という高い数字でした。


近年日銀はインフレの目標を2%としていしていましたが、最近は消費者物価の全体の指標では達成できていることになっていますが、これは海外由来のエネルギー・資源価格に高騰によるものであり、現状コアコアCPIは3%です。


確かに物価高ではありますが、比較すると戦後のインフレ率の高さが実感できできます。インフレ率が125%となると、1年で物の値段は倍以上になってしまいます。こうした高いインフレ率は、国が戦争に必要となる巨額の資金を、日銀の直接引き受けによって調達したことによるものです。

 

行き過ぎた物価上昇への対応として、1946年には預金封鎖がおこなわれました。預金封鎖とは、銀行預金などの引き出しを制限することです。日本で実施された預金封鎖は、完全に引き出しができなくなるわけではなく、1カ月の引き出し可能額が決められるというものでした。出回るお金の量を減らし、インフレを抑える目的のために、人々は生活の中で不便な思いをしました。


ロシアの経済の実体も、GDPだけではわかりません。やはりインフレ率などみてみるべきでしょう。

11月のロシアのインフレ率は前年比で11.98%となり10月の12.63%から低下した。4月の17.83%をピークに7か月連続で低下したことになります。

大分類別に見ると、食料品が前年比で4月のピーク(20.48%)から11月には11.12%と大幅に低下したほか、財(非食料品)が3月のピーク(20.34%)から11月に13.36%まで低下した。一方、サービスは3月以降の高止まりが続き、11月は11.22%と横ばいでの推移となっている。

コア指数は前年比で11月は15.06%となり、総合指数と同様に4月(20.37%)をピークに減速しているものの、減速のスピードは総合指数と比較して緩やかな状況が続いている。

前月比では、総合指数が11月に0.37%と3か月連続のプラスの伸び率となり、伸び幅も拡大している。11月のコア指数も前月比0.18%と3か月連続のプラスとなっている(図表3)。


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11月のロシアのインフレ率は前年比で11.98%となり10月の12.63%から低下した。4月の17.83%をピークに7か月連続で低下したことになります。

大分類別に見ると、食料品が前年比で4月のピーク(20.48%)から11月には11.12%と大幅に低下したほか、財(非食料品)が3月のピーク(20.34%)から11月に13.36%まで低下した。一方、サービスは3月以降の高止まりが続き、11月は11.22%と横ばいでの推移となっている。

コア指数は前年比で11月は15.06%となり、総合指数と同様に4月(20.37%)をピークに減速しているものの、減速のスピードは総合指数と比較して緩やかな状況が続いている。

前月比では、総合指数が11月に0.37%と3か月連続のプラスの伸び率となり、伸び幅も拡大している。11月のコア指数も前月比0.18%と3か月連続のプラスとなっています(図表3)。

しかしながら、以前高い水準で推移しているのは確かです。現在でも、ロシアからは物価高のニュースが続いています。そもそも、昨年にかなり上がりきっているわけですから、その後多少下がったとか、伸びきが穏やかになったとはいっても、国民の生活実感はさほど変わらないでしょう。

それどころか、あまりの物価高に、節約が進み、自給自足や物々交換がすすんでいるということも考えられます。

昨年の消費者物価指数の推移

一方財政をみると、財政赤字の拡大を受けて、ロシア政府は国債の発行残高を増やしています。ロシアの国内向け国 債の発行残高は2022年10月まで15兆ルーブル程度でしたが、翌11月より増加が続き、直近2023 年1月時点で18兆ルーブル台に達しました。

貯蓄率が低いロシアの場合、国債の市中消化に 限界があるものの、背に腹は代えられない状況なのでしょう。 加えて、財政の予備費である国民福祉基金(NWF)を取り崩すことで、ロシア政府は財政赤字 を補填しています。

この NWF は、原油高の局面で上振れした石油・ガス収入を積み重ねたもので あり、従来はその用途を国家的な建設プロジェクトの補填に限定していたのですが、ウクライナに侵攻 して以降は、景気対策や金融市場安定化策(証券の市場購入)などにも利用されています。

歳入の細目を確認すると、いわゆる「石油・ガス収入」の低迷が顕著であす。ロシア産の原油価格の低迷やヨー ロッパ向けのガス輸出の減少が、石油・ガス収入の低迷につながっています。 

石油・ガス収入は引き続き低迷すると予想される一方、軍事費が引き続きロシアの財政を圧迫し続けます。したが って、ロシアは今後も予備費である国民福祉基金を取り崩し、財政赤字を補填するでしょう。

経済が健全であれば、量的金融緩和を行えば良いのでしょうが、そうすれば、さらにインフレが亢進し、ハイパーインフレになりかねません。

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日本の場合は、戦後に国際社会に復帰することができ、戦後の復興はかなりのスピードで実現することができ、1960年代には、高度成長をとげています。

ロシアは現体制のままなら、経済制裁は続き、国際社会に復帰できないことも予想されます。

これでは、対ロシア経済制裁、効果は限定的とてもいえません。

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2023年2月20日月曜日

大阪で米海軍が強襲揚陸艦「アメリカ」公開 最新鋭戦闘機など搭載―【私の論評】「アメリカ」は、金正恩斬首部隊を送り込むために編成された「ワスプ」打撃群の後継艦(゚д゚)!

大阪で米海軍が強襲揚陸艦「アメリカ」公開 最新鋭戦闘機など搭載

大阪港に寄港した米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」=20日午前、大阪市住之江区

 米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」が20日、大阪市住之江区の大阪港に寄港し、報道陣に公開された。米海軍の強襲揚陸艦が日本の商業港に寄港するのは初めて。同艦は物資を補給するために数日間滞在した後、陸上自衛隊と米海兵隊が離島防衛を想定して行う日米の合同訓練「アイアン・フィスト」に参加する。

 米海軍によると、アメリカは全長257メートル、幅32メートル、満載排水量約4万5690トン。航空機20機以上を搭載でき、3千人以上が乗船可能。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出などを念頭に、アジア太平洋地域の安定強化を担う強襲揚陸艦「ワスプ」の後継艦として令和元年、佐世保基地(長崎県佐世保市)に配備された。

 在日米海軍司令部はこの日、空母のように、戦闘機やヘリコプターを発着させることができる甲板を報道陣に公開。最新鋭のF35Bステルス戦闘機やヘリコプターなど約10機が並び、ミサイル発射機のほか対空レーダーの様子もみられた。艦内では、かじ取りを担う操だ室のほか、航空機を整備する格納庫が公開された。

艦長のショッキー・スナイダー大佐(左)

 艦長のショッキー・スナイダー大佐は報道陣の取材に「アジア太平洋地域の平和と安定のため、自衛隊との連携強化は重要な任務だ」と述べ、合同訓練の意義を強調した。

【私の論評】「アメリカ」は、金正恩斬首部隊を送り込むために編成された「ワスプ」打撃群の後継艦(゚д゚)!

同艦は米海軍が保有するアメリカ級強襲揚陸艦の1番艦で2014(平成26)年10月11日に就役、2019年12月から第7艦隊の所属艦として長崎県の在日米海軍佐世保基地に配備されています。

強襲揚陸艦は、兵員、車両、装備品を輸送し、直接海岸や海岸線に着陸させるために設計された海軍の艦船の一種です。通常、水陸両用作戦で使用され、海から地上部隊を展開し、領土の占領や人道的任務などの軍事的目標を支援することが多いです。

このような作戦で強襲揚陸艦が必要とされる理由はいくつかあります。まず、海や海域などの大きな水域を越えて部隊や装備を移動させ、沿岸地域に直接届けることができる輸送手段を提供することです。これは、敵がその地域を支配し、従来の港湾や飛行場が利用できない場合に特に重要です。

第二に、強襲揚陸艦は、海岸近くの浅瀬で活動できる特殊な能力を備えており、兵員や装備を迅速に降ろし、展開することがでます。通常、強襲揚陸艦は、車両や人員を素早く船外に出すために、ランプ(斜路)があり、船首の扉を下げることができ、また、船から海岸まで部隊や物資を輸送する揚陸挺を発進させる能力を有するものもあります。

第三に、強襲揚陸艦は重武装・装甲されており、敵の攻撃から自らを守り、輸送する兵員を守ることができます。また、戦闘機やヘリコプターを備え、さらに対空ミサイルや小火器、大砲を備え、上陸する兵士を援護します。

アメリカ級水陸両用強襲揚陸艦は、アメリカ海軍が水陸両用強襲、人道支援、災害救援、特殊作戦などさまざまな任務に使用する大型多目的船の一種です。

ここでは、アメリカ型水陸両用強襲揚陸艦の主な特徴を紹介します。

大きさ 全長844フィート、重量44,000トン以上と、水陸両用強襲揚陸艦としては世界最大級。

飛行甲板 ティルトローター機MV-22オスプレイ、F-35BライトニングII戦闘機、CH-53Eスーパースタリオンヘリコプターなど、さまざまな航空機をサポートできるよう、2.5エーカー以上の広さの飛行甲板を有しています。

CH-53Eスーパースタリオンヘリコプター

ウェルデック 船尾にある広いスペースで、上陸用舟艇や水陸両用車の出入りのために浸水が可能。

コマンド&コントロール 高度な指揮統制システムにより、軍事作戦のための浮遊司令部として機能します。

医療施設 手術室、歯科診療所、負傷者受け入れ施設などの高度な医療施設を備え、人道的・災害的な救助活動を支援します。

自己防衛のための装備 RIM-116 ローリング・エアフレーム・ミサイル(RAM)システムなど、高度な防御システムを搭載し、空とミサイルの脅威から身を守ることができます。

全体として、アメリカ級水陸両用強襲揚陸艦は、さまざまな軍事・人道的活動を支援できる多用途で強力なプラットフォームです。そのサイズ、能力、先進技術により、アメリカ海軍の重要な資産となっています。

米軍艦船が大阪港に入るのは極めて珍しく、専門家によると2016年の掃海艦「パトリオット」(アベンジャー級)以来になるのではないかとのことです。

入港した理由については明らかにされていませんが、この専門家の話しでは、九州や沖縄エリアで2月16日から3月12日までの期間、日米共同訓練「アイアン・フィスト23」が行われていることから、その関連で大阪に姿を見せたのではないかといいます。

なお、「アメリカ」は飛行甲板上にF-35戦闘機を載せた状態で入港しています。

2018年米軍は従来の原子力空母による打撃群に加え、強襲揚陸艦にイージス艦2隻を加えた、新たな打撃群を西太平洋に展開させることを決めていました。当時はワスプ級をこれにあてました。ワスプ級の強襲揚陸艦でも、30機程度のヘリコプターを運用できます。

これは「金正恩斬首作戦」に投入する特殊部隊を一気に多方面に送り込むためです。この情報は、北朝鮮にも伝わるように流されました。正恩氏は「自分が殺される」と生命の危機を感じたはずです。

「アメリカ」はこのワスプの後継艦であり、さらに強力になっています。北の核ミサイルの増産は、確かに日米韓にとって脅威ですが、金正恩氏にとっても両刃の剣になりかねないです。北朝鮮はおそらく、ミサイルと核弾頭を別々に管理しているとみられます。

朝鮮中央テレビが今年1月に公開した、金正恩氏と娘のキム・ジュエ氏が一緒に訪れたミサイル施設の写真には、弾頭が取り外されたミサイルがずらりと並んでいる場面が写っていました(写真下)。


ただ、数が増えれば増えるほど、金正恩氏が完璧にコントロールできるか定かではありません。北朝鮮は、PAL(Permissive Action Link=行動許可伝達システム。暗号なしでは核弾頭の安全装置を解除できない安全装置)のような、高度な核の安全管理システムを導入していないとみられています。

金正恩氏が米軍の脅威におびえて核兵器を増産すればするほど、自身に降りかかる災厄への懸念もまた増えていくことになります。さらに、強襲揚陸艦「アメリカ」を中心とする打撃群は、いつ北朝鮮の海域に侵入し、金正恩斬首部隊を送り込んでくるのかわかりません。米国はオサマ・ビンラディンを斬首した国です。どちらにしても、正恩氏が抱えるストレスは深刻になる一方でしょう。

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2023年2月19日日曜日

中国軍がなぜ日米戦争史を学ぶのか―【私の論評】中国が日米戦争史で学ぶべきは、個々の戦闘の勝敗ではなく兵站(゚д゚)!

中国軍がなぜ日米戦争史を学ぶのか


【まとめ】

・中国人民解放軍が太平洋戦争の歴史を熱心に研究し始めた.

・中国側の動機は、今後起きるかもしれない米中戦争に備えることだと考えられる。

・人民解放軍は米軍との大規模な戦争を考えるうえで、太平洋戦争の教訓を活かそうとするだろう。


最近、中国人民解放軍が日米両国が戦った太平洋戦争の詳細な歴史を熱心に研究し始めたことがアメリカでの調査で明らかとなった。

中国側の動機は、今後太平洋の広大な海域で起きるかもしれない米中戦争に備えることのようだという。日本にとっても深刻な事態となる展望なのだ。

日本側としてはまず、アメリカとの戦争に備えるというような危険な隣国の存在を改めて認識すべきだろう。そのうえで同盟国のアメリカが中国側のそんな危険な動向を十二分に意識して、その対策をも考えているという現実を認識すべきである。

そうした認識はみな、日本自体の国家安全保障や防衛政策へと直結する基本点だといえよう。

アメリカの首都ワシントンに所在する安全保障の大手研究機関「戦略予算評価センター(CSBA)」は1月中旬、「太平洋戦争の中国への教訓」と題する研究報告書を公表した。

副題に「人民解放軍の戦争行動への意味」とあるように、太平洋で日本軍と米軍が戦った際の詳細を中国の今後の軍事行動への教訓にするという中国側の研究内容を調査し、分析していた。

約100ページの同報告書を作成したのはCSBAの上級研究員で中国の軍事動向については全米有数の権威とされるトシ・ヨシハラ氏である。

日系アメリカ人学者のヨシハラ氏は海軍大学教授やランド研究所の研究員を務め、中国人民解放軍の動向を長年、研究してきた。ヨシハラ氏は父親の勤務の関係で台湾で育ったため中国語に精通し、中国側の文書類を読破しての分析で知られている。

では中国はなぜいまになって70数年前に終わった太平洋戦争の歴史を熱心に学ぼうとするのか。ちなみにこの太平洋戦争を大東亜戦争と呼ぶことも適切だろうが、アメリカと日本の軍隊が主戦場としたのはやはり太平洋だった。

ヨシハラ氏は中国側のこの研究の目的について「近年、中国軍関係者による太平洋での日米戦争の研究が激増してきたが、その背景には習近平主席が『人民解放軍を世界一流の軍隊にする』と言明したように、2030年までには中国軍はとくに海軍力で米軍と対等になる展望の下で太平洋の広範な海域での米軍との戦争研究を必要とするようになったという現実があるといえる」と述べている。

ヨシハラ氏の分析では、中国が太平洋戦争での米軍の戦略や戦術、さらには日本軍の敗北要因を分析し、その結果、どんな教訓を得たのかを知ることはアメリカ側にとっても今後の中国の対米戦略を占う上で重要だという。

その目的のためにヨシハラ氏は中国側の人民解放軍当局、国防大学、軍事科学院などの専門家たちが2010年から22年の間に作成した太平洋戦史研究の論文、報告類、合計100点ほどの内容を通読し、分析したという。

中国側のそれら報告書類は人民解放軍内の調査文書や軍民共通の紙誌掲載の論文などから広範に収集されている。

そのような中国側の太平洋戦史研究の文書多数を点検したこの報告書はその膨大な中国側の太平洋戦争研究のなかで、分析をミッドウェー海戦、ガタルカナル島攻防、沖縄戦の3件にしぼり、中国側の考察の主要点を次のようにまとめていた。

ミッドウェー海戦

日本海軍が空母4隻を一挙に失ったこの戦いでは米軍は日本側の暗号を解読し、情報戦で当初から勝っていた。日本側は情報戦、偵察が弱かった。空母よりもなお戦艦の威力を過信していた。さらに日本側には真珠湾攻撃や東南アジアでの勝利での自信過剰があった。

ガダルカナル島攻防

アメリカ側の補給、兵站が圧倒的に強く、日米両国の総合的国力の差が勝敗を分けた。日本軍は米軍のガタルカナル島の飛行場の効果を過小評価し、空爆で重大な損害を受けた。日本軍は地上戦闘では夜襲と肉眼偵察を重視しすぎて被害を急増した。

【沖縄戦】

米軍は兵員、兵器などの物量で圧倒的な優位にあった。だが日本側は米軍の当初の上陸部隊を水際でもっと叩くことが可能だった。空からの攻撃が海上の巨大な戦艦(大和)を無力にできることを立証した。だが日本側の自爆の神風攻撃はかなりの効果をあげた。

以上の諸点からヨシハラ氏は中国側のこの太平洋戦史研究の全体の目的や、そこから得たとみられる教訓、考察などについて以下の諸点をあげていた。

 ・中国側は習近平政権の登場以来、太平洋戦争の研究の分量や範囲を大幅に増し始めたが、その原因は習近平政権がアメリカとの大規模な戦争の可能性を真剣に考慮するようになったことだろう。

 ・中国軍には近年、実際の戦闘経験が少なく、とくに海上での大規模な戦争の体験がない。アメリカとの全面対決ではやはり太平洋戦争での日米戦でのような広大な海域での衝突が予測されるため、太平洋戦の歴史はとくに大きな意味を持つようになった

 ・日本軍は最終的には敗れたが、その過程での先制の奇襲攻撃や自爆覚悟での神風特攻隊による攻撃はアメリカ側を揺らがせ、単なる物理的な次元ではなく、心理戦争というような側面でも大きな被害を与えた。

 ・アメリカ軍による日本軍の暗号解読などインテリジェンス面での米側の優位は個別の戦闘でも決定的な有利をもたらした。情報収集、偵察などのインテリジェンス戦が実際の最終戦闘の帰趨までをも決めることが立証された。

 ・ガタルカナル戦や沖縄戦での日米両軍の物量の圧倒的な差異は両国の総合的な国力の差から生じたことが明白だった。だからこんごの大規模な戦争でも当事国のとくに経済面での総合的な強さが軍事動向を左右することが再確認された。

 ・沖縄戦での日本の世界最大の戦艦「大和」の沈没が明示した海上戦闘での空軍力の決定的な効果は、戦艦よりも空母の威力、さらには海上での空戦でも地上基地からの空軍力の効果の絶大さを立証した

以上のような考察を述べたヨシハラ氏は、中国の人民解放軍が将来のアメリカ軍との大規模な戦争を考えるうえで、太平洋戦争からの以上の諸点を教訓として活かそうとするだろう、と結んでいた。

【私の論評】中国が日米戦争史で学ぶべきは、個々の戦闘の勝敗ではなく兵站(゚д゚)!

大東亜戦争において、日米は総力戦を戦ったのであり、個々の戦闘は確かに戦艦や空母、航空機が登場し、大掛かりで、しかも戦闘地域は、かつての陸の戦いよりは、はるかに広範な海域で行われ、長期間に渡って行われましたが、それにしても個々の戦闘にだけ注目していては、大事なことを見過ごすことになります。

第2次世界大戦中の米軍の傾向食糧「Cレーション」

日米の太平洋戦における中国の分析も、そうしてヨシハラ氏の分析にしても、重要なことを見逃していると思います。それは、いわゆる通商破壊(Commerce raiding)です。

通商破壊とは重要な海域を海上封鎖し、敵国の海上交通路を機能不全に陥れて兵站を破壊しようとする戦略のことです。

通商破壊戦を行う事、また敵国の通商破壊戦から自国の商船・輸送船を守る事こそ海軍の存在意義でもあります。

海上交通路を麻痺させる手段としては以下のようなものが挙げられます。
  • 敵国籍の艦船に対する海賊行為の奨励
  • 港湾施設への襲撃(艦載砲や爆撃を用いる事が多い)
  •  艦隊(潜水艦・水上艦)や航空隊(攻撃機・爆撃機)を派遣し、目標海域を通る船を撃沈して回る
  • 海峡や港湾に機雷を仕掛けて通行不能にする
これを最初に体系的に潜水艦(Uボート)を用いて効果的に行ったのがドイツです。これについては、以下の記事を参照願います。
戦争のやりかた一変! ドイツが始めた「無制限潜水艦作戦」とは? いまや弾道ミサイルまで
第二次世界大戦中の太平洋戦において米軍は、通商破壊を組織的に体系的に熱心に行いました。一方日本はそうではありませんでした。

これは、なぜなのでしょうか。まずは、日露戦争を経て確信となった佐藤鉄太郎の「制海的軍備優先思想=艦隊決戦至上主義」は、日 本海海戦の勝利のイメージと一体になって教条化したと同時にこの思想は東郷元帥の権威とあまって、日本ではいわば詔勅化し、犯し得ない聖域となってしまったことがあります。 

潜水艦が実戦で威力を発揮する兵器として登場したのは第一次大戦です。この潜水艦を日 本海軍が通商破壊戦に運用しようとしなかったのは、第一次大戦すなわち総力戦という戦争形 態の大きな変化に、それまでの戦い方を組織として適応させることができなかったことによると考えられます。 第一次大戦前の日本の海軍戦略は制海権、海上の管制を目的とする艦隊決戦至上主義でした。

日本は、日英同盟により英国の要請を受けて、1917年4月から、海軍・第二特務艦隊を地中海に派遣し、英国をはじめとする連合国の海軍の艦隊をドイツの潜水艦による脅威から連合国艦隊を守る任務に就きました。巡洋艦1隻と駆逐艦8隻、後には駆逐艦4隻も増派されますが、日本の艦隊は、地中海における業務の際、マルタ島とエジプトのアレクサンドリアを結ぶ地中海の海上交通路の護衛任務を中心に活動しました。

またさらに、日本の帝国海軍の活動は、地中海でアレクサンドリアとマルセイユとの間を結ぶ「ビッグ・コンボイ」と呼ばれる護送船団の基軸でもあったことは、日本人にはあまり知られていないことです。その時の犠牲者たちは、今もマルタ島のイギリス海軍の墓地などに葬られています。つまり、異国の地に眠っている日本の将兵も居るのです。

しかしながら、地中海におけるこの第二特務艦隊の護衛任務から得た貴重な教訓を、帝国海軍、つまり日本は無視することになりました。

無論、日本海軍に通商破壊の概念がなかったということではありません。あくまで、自由な通商破壊戦の前提としての海上管制を獲得する ための艦隊決戦優先主義でした。しかし、艦隊決戦そのものは、本来海上の管制のための手段にすぎないです。この手 段にすぎない艦隊決戦主義が戦争形態の変化にもかかわらず日本海軍においては、目的化し教条化し事実上の「詔勅」となっていたのです。 

日本では、総力戦という「新しい現実」も、艦隊決戦という視点から観察されました。そのため潜水艦とい う艦隊決戦の目的である「海上の管制という概念」の修正を迫る新兵器も、艦隊決戦にどう役 立てるか、どう資するかという形で取り込まれていったのです。日本は、今で言う空母打撃群を世界で最初に創設して、運用したのですが、これも艦隊決戦にどう役立つかという観点から組み込まれることになりました。

実は、日中戦争期の数度の演習の結 果、艦隊決戦に資する敵艦の漸減手段として潜水艦を運用することは通商破壊戦に運用するのに比し て効果的でないという現場からの所見が度々提出されていました。

ところがこうした、演習がもたらした新しい現 実にも、帝国海軍は組織としては機敏に反応することもなく従来からの運用方針を踏襲することになりました。

この選択は、 太平洋戦争の日米潜水艦戦に重大な影響を及ぼしました。特に潜水艦の生産という側面に勝敗を分 ける致命的結果をもたらしました。

 1941年時点での日本の潜水艦建造施設は三つの海軍工廠と二つの民間造船所の五ヶ所でした。
一方、米国は二つの工廠と一つの民間造船所の三ヶ所に過ぎませんでした。戦争に入ってから二ヶ 所の民間造船所が加わりました。

にもかかわらず、1942年から1944年までの潜水艦の両国の竣 工数は、90隻と171隻で、米国は日本の約2倍生産しました。1941年の時点で米国は潜 水艦の生産は通商破壊戦用を主目的とすることに決定していました。そのため、潜水艦の性能自体は、日本に比べて全ての点で見劣りする平凡なタイプのものに限定しました。

しかし、米軍はこの性能的に劣る潜水艦を有効に活用し、通商破壊はもとより、偵察活動も効果的に行いました。第二次世界大戦中米軍は、東京湾内に潜水艦を派遣して、頻繁に偵察稼働を行っていました。

さらに、米軍は体系的な通商破壊の一端として、飢餓作戦(Operation Starvation)を実施しています。これは、太平洋戦争末期に米軍が行った日本周辺の機雷封鎖作戦の作戦名です。この作戦は米海軍が立案し、主に米陸軍航空軍の航空機によって実行されました。日本の内海航路や朝鮮半島航路に壊滅的打撃を与えました。

飢餓作戦の一環でB-29爆撃機から投下されたパラシュート付きのMk26機雷

こうして、日本は米国との総力戦に負けたのでした。日本も決して手をこまねいていたわけではなく、たとえば、スーパーフォートレスと呼ばれた日本本土攻撃に加わったB29の搭乗員は米側の資料では、3千名以上が亡くなったとされていますが、これは日本の特攻隊員の4千名以上死亡者に匹敵する程の数です。ただ、特に通商破壊で痛めつけられた日本は、戦争末期には総力戦を続ける能力はほとんど残っていませんでした。

戦後も日本はこの反省に立ち、海上自衛隊の戦術思想や日本の海運に影響を残しました。特に掃海能力の向上につとめ、日本の海自の掃海能力は現在では世界一とも言われています。また、潜水艦の能力向上にもつとめました。さらに、対潜哨戒能力では米軍と並び世界トップクラス2まで技量をあげています。

中国は、こうした日米の総力戦の実態を学ぶべきです。個々の戦闘の勝敗も重要ですが、体系的に組織的に国単位での兵站を守るとか、敵方のそれを破壊するなどの戦略のほうが重要なのです。

このブログでは、兵站を重要視しないロシアを批判したことがありますが、海の戦いでも兵站は重要なのです。

中国は2020年南シナ海と東シナ海、黄海、渤海の4海域で同時に軍事演習を行うなど大規模な演習をしましたが、10月になると小規模なものに変化しました。しかも南シナ海で軍事演習を行ったですが、他の海域では行っていません。それに対して日米の合同軍事演習は、堅実にインド洋でも行っています。これは、何を意味するのでしょうか。結局兵站の差であるといえます。

軍事演習は定期的に行い、部隊の練度向上と練度維持に行われるというのが表の目的ですが、裏の目的は仮想敵国への政治的な恫喝です。

そのため米国は、中国共産党への対抗措置として合同軍事演習を行っているのです。政治の延長の仮想敵国への恫喝として軍事演習が行われているのですが、物資消費は実戦と同じです。

端的に言えば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧、重さではおよそ100キログラムです。2万人規模の一個師団なら、2000トンの物資を消費します。さらには、弾薬その他消耗品の補給も必要です。

米軍のMRE(Meals,Ready to Eat=携行食)

これを適宜補うためには、作戦本部が予め消費を予測し、生産・輸送・備蓄・補給がネットワークとして存在しなければならないのです。

人民解放軍の軍事演習は、上にも述べたように9月には4海域で同時に行われました。ところが1ヶ月を経過すると、人民解放軍の軍事演習は南シナ海などの一部で行う様になりました。これは中国共産党が、開戦初頭で敵を数で圧倒する構想を持つことの証左です。ところが1ヶ月を経過すると、人民解放軍の攻勢が止まることを示しています。実際、しばらくの間中国軍は大規模な演習はしませんでした。

これが、実戦となると、米軍は徹底的に中国軍の兵站を叩くことになるでしょう。イージス艦などの艦艇は無論のこと、航空機や、攻撃型原潜で中国軍の兵站はもとより、通商破壊も行うことでしょう。

これでは、中国海軍は長期間にわたり行動することはできません。

戦史家のマーチン・ファン・クレフェルトは、その著作『補給戦――何が勝敗を決定するのか』(中央公論新社)の中で、「戦争という仕事の10分の9までは兵站だ」と言い切っています。

第2次世界大戦よりもはるか昔から、戦争のあり方を規定し、その勝敗を分けてきたのは、戦略よりもむしろ兵站だったというのです。端的に言えば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧をどれだけ前線に送り込めるかという補給の限界が、戦争の形を規定してきたというのです。

エリート中のエリートたちがその優秀な頭脳を使って立案した壮大な作戦計画も、多くは机上の空論に過ぎないのです。

中国が実際に海戦を戦うことになれば、何よりも重要なのは兵站であり、米軍は中国の兵站線を通商破壊で徹底的に破壊することは目に見えています。

戦に素人である、中国の人民解放軍は、日米間の戦闘や戦略ばかりに目がいくようですが、兵站と米軍の通商破壊力にも目を向けるべきです。

海戦においては、現在でASW(Anti Submarine Warefare:対潜水艦戦争)が重要であり、これが強いほうが、海戦を制します。米軍はASW能力は世界一です。これによって、米軍は戦略的にも有利ですが、通商破壊に関しても圧倒的に有利です。

現在の中国が米軍と海戦を戦うなど無謀の一言です。中国が学ぶべきは、第二次世界大戦中の日米の戦闘ではなく、兵站と通商破壊です。そうして、通商破壊も無論、味方の兵站を守り、敵方のそれを破壊することが目的であり、重要なのは兵站であり、戦略で勝てたとしても、こちらのほうが劣っていれば、総力戦に勝つことなどできません。

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2023年2月18日土曜日

【速報】北朝鮮が弾道ミサイル発射 元日未明以来 17日には挑発行為示唆する談話も―【私の論評】台湾のように中国と対峙する姿勢をみせない北は、国際社会から時々ミサイルを発射する危険な「忘れられた国」になりつつある(゚д゚)!

【速報】北朝鮮が弾道ミサイル発射 元日未明以来 17日には挑発行為示唆する談話も

北朝鮮の軍事パレードで登場した大陸間弾道ミサイル(ICBM)=8日、平壌(朝鮮中央通信配信)

 韓国軍は、北朝鮮が18日午後5時22分ごろ(日本時間同)、平壌の順安空港一帯から日本海に弾道ミサイル1発を発射したと発表した。大陸間弾道ミサイル(ICBM)級で、日本の防衛省によると、約66分間飛行し、北海道の渡島大島西方沖約200キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に午後6時27分ごろ、落下したと推定される。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射は1月1日以来で、日本のEEZへの着弾は昨年11月以降初めて。防衛省によれば、飛行距離は約900キロ、最高高度は約5700キロに達したとみられる。通常より高角度の「ロフテッド軌道」で打ち上げられた可能性がある。


 岸田文雄首相は、情報収集・分析や航空機・船舶の安全確認の徹底、不測の事態に備えた万全の態勢の構築を指示した。

 北朝鮮は今月17日の外務省報道官談話で、米国が北朝鮮に関する国連安全保障理事会の会合開催に動いたと批判。「正常な軍事活動の範囲外での追加的行動」を検討すると警告していた。ミサイル発射には、米国への反発を示す狙いがあるもようだ。

【私の論評】台湾のように中国と対峙する姿勢をみせない北は、国際社会から時々ミサイルを発射する危険な「忘れられた国」になりつつある(゚д゚)!

北朝鮮は、従来から国際的注目を引くために様々な動きに出ています。そうした行為はもはや恒例行事と化し、従来のサプライズ感も失われました。北朝鮮の姿勢から察するに、北の指導者たちは、自国が国際社会から孤立した「隠者の王国(Hermit Kingdom)」であることに不満はないのでしょうが、国際社会から「忘れられた国(Forgotten Land)」になることは何としても避けたい、というところがあるのでしょう。

最近の人工衛星/ミサイル発射実験をはじめ、北朝鮮が定期的に大胆な行動に出ることに対しては、米国およびその同盟国に対話を強要し、譲歩を引き出すための行為だ、と見る向きが大半であり、こうした見解はもっともに思えます。

この構図は、もう10年以上も変わりないように見えます。ただ、年々北のミサイル発射技術が高まっているのも事実です。しかし、金正恩とその同志の真の望みは何なのでしょうか。そうして、その代わりに北朝鮮は何を差し出せるのというのでしょうか。

北朝鮮の核兵器開発プログラムを終わらせることが、米国にとって最重要課題であることは論を待ちません。とりわけ、北朝鮮のミサイル技術が米国本土を射程距離圏内に収めたであろう段階の今、絶対に譲れないところです。

軍事パレードを視察した金正恩総書記と娘のジュエ氏(8日)

この点に関する分析の大半専門家などが、北朝鮮に核兵器保有を断念させることは不可能ではないが極めて困難としています。これはおそらく正しい見方です。しかし、核兵器開発プログラムのみならず、核兵器自体をも廃棄した国があることは想起しておく価値がります。なかでも最重要なのがウクライナです。

ソ連が崩壊しウクライナとして独立した時点で、国内には世界第3位の核兵器保有国となる程大量の核兵器が存在していました。

1986年に発生したチェルノブイリ原発事故が、ウクライナにとって大きな引き金となったことは言うまでもないでしょう。あのような悲劇が、北朝鮮をはじめ世界のいずれの場所においても再び発生することを望む者はいないでしょう。

当時のウクライナは結局、核兵器がもたらすメリットはわずかしかない、という判断を下したのであり、安全保障と財政的補償のバランスがとれた枠組みを模索していたのです。後者については、後日米国、ウクライナ、ロシアの3カ国交渉の過程で浮上し実現したものです。ウクライナは、核弾頭をロシアに引き渡したのです。

北朝鮮も当然安全保障と金銭的な見返りを望んでいます。だが、その額はどの程度で、どのような種類の安全保障なのか、そうして、最終的に、北朝鮮は本当に核兵器保有を断念するでしょうか。

もちろん、チェルノブイリ事故を別にしても、ウクライナと北朝鮮の間には多くの違いがあります。とりわけ最も重要なのは、ウクライナの指導者が、核兵器は自国の安全保障に資するところはわずかしかない、という判断を下した点です。

もうひとつ、同様に重要なことがあります。当時ウクライナが核兵器備蓄の一部だけでなく、米ソ軍事交渉や米ソ政府関係者としての経験を有する外交官や専門家を含む外務・国防官僚の一部も、旧ソ連から受け継いだという点です。

これが、核放棄プロセスの異例のスピードにつながったのでしょう。交渉が6カ国間ではなく3カ国のみであった点も、このスピード化に貢献しました。最後に、ウクライナは共同覚書(最終的には、英国を含む4カ国で締結された)で定められた安全「保障」に満足し、米上院の批准承認が必要な条約による安全保障を主張することはありませんでした。

もっとも、ウクライナは第一次戦略兵器削減条約(START I)を継承したのですが。北朝鮮との「重要な取引」には朝鮮戦争を終結させる正式な平和条約が求められる可能性があるため、交渉および実行はより困難になることが予想されます。

このような差はあるものの、ウクライナの核兵器廃棄という決断は、北朝鮮について考える上で有益なヒントとなったのは確かです。そのひとつとして、ウクライナは旧ソ連構成国であり、冷戦時代米国と対立関係にあったのにもかかわらず、米国からではなく、ロシアから自国を守るための安全保障を求めた、という事実があります。

その背景として、1990年代のウクライナは、誕生から間もなく、国家として脆弱な状態にあったこと、独立国家としての威厳に乏しく(民族的にロシア人が多いことも一因)、またロシアとの国境線が長い上に、両国の相互関連性は強かったことと、ウクライナがやや経済的に依存状態にあったことがあります。

こうした構図を念頭に置いて考えると、北はかつてのウクライナとは異なり、中国の朝鮮半島への浸透を嫌っているのは確かなようです。大半のアナリストは、北朝鮮は基本的に中国を信頼できる庇護者、経済的ライフラインとみなしており、一方で自国が目的を追求する必要に迫られれば、問題なく裏をかく可能性がある国であると見ているようですが、それは間違いでしょう。

北朝鮮には選択肢が限られていることを考えれば、これは論理的評価ではあります。しかし一般的に、大国と国境を接する小国は脅威を感じるものです。巨大な隣国と連携を深め、安全保障を確保しようとしている時ですら、どこか安心できないのが普通です。北朝鮮は、中国との関係に不満を抱いているとみるべきです。

中朝関係史を長期的視点で見た場合、北朝鮮指導者の一部が、中国、特に上り調子にある中国への圧倒的経済依存を苦々しく感じているのは間違いないでしょう。

こうした観点からすれば、核兵器は実際のところ、中国からの政治的独立を保持しうる唯一の方法なのです。結局、対中関係において、核兵器以外の切り札を北朝鮮が見出すのは難しいです。相手は人口にして50倍、財政規模で250倍の超大国です。

金日成が核配備に乗り出した当初、そうした目論見があったとは思えないですが、この30年間、中国が経済力、政治力、軍事力を高める中で、北朝鮮にとって核兵器が対中国の交渉上の切り札となっていった考えるほうが自然です。

そうして、このブログでは度々指摘したように、北朝鮮ならびその核があることが、中国が朝鮮半島に浸透することを防いでいるのです。多くの人は、台湾にばかり注目しますが、中国は隙さえあれば、朝鮮半島に浸透し、我が物にし、朝鮮半島を中国の自治区か省にしようと目論んでいると考えるのは自然なことだと思います。

これがほとんど話題にならないのは、北に核兵器と長距離ミサイルがあるからです。台湾にも長距離ミサイルはありますが、核はありません。もし、北に核がなければ、現在朝鮮半島はとうの昔に、中国の一部になっていたかもしれません。一方、台湾に核兵器があれば、中国も現在のように度々台湾を威嚇することもなかったかもしれません。

これが想像の賜物でなく真実であるとしたら、北朝鮮が米国の関心を引こうと頻繁に行なっている行為についての解釈も違ってきます。北朝鮮が中国に懸念を抱いているということであれば、そうした見解をおくびにも出せない6カ国協議よりも、米国との2国間交渉を強く望んだのは当然です。

これは、北朝鮮指導者が、米国や日本、韓国に対する安全保障に懸念を抱いていない、という意味ではないです。おそらく抱いているでしょう。しかし同時に、対中関係における現実的安全保障を北朝鮮に提供できる国は、全世界を見渡しても米国以外にはないです。

皮肉にも、そして残念なことに、上述の論法に頼れば、北朝鮮に核兵器を廃棄させることはより難しくなってしまいます。なぜなら、その代償として、米国はより高次の安全保障を、より信頼性の高い形で北朝鮮に提供しなければならないからです。それは、現状のウクライナをみても明らかでです。核を捨てたウクライナは、現在ロシアから侵攻されています。

ウクライナに関しては、米国は経済支援は行ったものの、ウクライナはNATOに入ることはできず、結局現状ではウクライナはロシアに侵攻されています。ただ、米国やNATO諸国の軍事ならびに経済的支援があり、ロシアはウクライナでかなり苦戦しています。

ただし、ウクライナでは失敗したものの、米国は過去において、これ以上の難題を切り抜けてきた実績があります。20年前のソ連解体時、米国はロシアや旧ソ連に所属していた国々に大規模な暴動が発生しないよう支援を行いました。

ウクライナやカザフスタン、ベラルーシを説得して核放棄にまで持っていきました。さらには、東西ドイツ再統一の支援も行いました。ただ、ウクライナに関しては、現在ロシアからの侵攻という手痛い打撃を被ってしまいましたが、それでもソ連崩壊後の混乱を最小限に留めることには成功しました。

2002年の核保有国

このようなことから考えると、第一の、そして最も重要な問いは、「北朝鮮の真の望みは何か」なのです。

一つ確かなのは、金正恩は、金王朝を存続させるため、中国の浸透を嫌い、親中派とみられた、血の繋がった金正男、おじである張成沢氏を殺害し、核開発をしミサイル開発も継続しているのです。

ウクライナでの失敗を繰り返さないために、米国そうして日本は何をしなければならないのでしょうか。朝鮮半島への中国の浸透を防ぐということでは、日米や北の望みは一致しています。

まずは、ウクライナでの戦争をロシアの一方的な敗北で終わらせるべきです。その後のウクライナの安全保障をどのようにするか、さらにはどのように経済発展させるかが鍵となるでしょう。

私としては、まずはウクライナをNATOとEUに加入させ、安保と経済発展させるべきと思います。しかし、そのためには、ウクライナも民主化をさらにすすめなければならず、特に酷い腐敗は撲滅しなければなりません。

さらに、西側諸国は中国との冷戦に勝利して、中国に体制を変えさせるか、そこまでできないのなら、徹底的に弱体化させるべきです。特に、軍事的に弱体化させるべきです。そうなれば、現体制の北朝鮮と、そうして金王朝の唯一の存在意義である、朝鮮半島への中国の浸透の阻止という意義がなくなります。

ただし、そうはいっても、ウクライナの例もあるように、中国もしくは現在中国の一部が将来、現在のロシアのような存在になり、北を侵攻するなどということもあり得ます。現実に、それに近いことが現在ウクライナで起こっています。

こうしたことに対処するため、アジアにも拡大NATOかそれに準ずる組織をつくり、北もそれに加入できる体制を整えるべきです。さらに、北がTPP等に加入することを迫るべきと思います。NATOやTPPに入るには、それなりに体制を整えなければならず、北も他国との集団安全保障体制を整えたり、市場の開放や、民主化などが迫られることになります。

それが嫌なら国際社会から時々ミサイルを発射する核開発をする「忘れられた国(Forgotten Land)」になるしかありません。ミサイルを何発発射しようと、核兵器を多く持とうと、それで何をするのか、はっきりした目標や目的がなければ、あるいあってにしても、それを国際社会にわかるように表明しなけけば無意味です。本音とは裏腹に、台湾のように中国と対峙しようとする姿勢を国際社会に見せない今の北朝鮮は、まさにそうなりつつあります。

これについては、台湾のように旗幟を鮮明にしなければ、最悪中国からも、西側からも反発され、孤立することになります。それこそ、文在寅時代の韓国のようになり、この政権がまかり間違えて長く続いていれば、韓国は世界で孤立したでしょうが、これと同じような運命を辿ることになります。

台湾は、李登輝総統のもとで、民主化したことと、国内に親中派も多数存在しながらも、現政権は中国と対峙する姿勢をはっきり国際社会に向かって表明しています。だから「忘れられた国」にもならず、西側諸国等から支援や応援を受けることができるのです。


安倍晋三氏(右)と握手を交わす李登輝氏=2010年10月、台北市

台湾とは違い、四方が海に囲まれておらず、中国と陸続きの北にとっては、中国との対峙をはっきり表明することは、勇気のいることだと思います。しかし、中国からの浸透を防ぐためには、将来的にはこれは避けられないことだと思います。

ただ、中国に対峙する意図もはっきり表明してこなかった北に対して日本政府が強い対抗措置を講じてこなかったことで、北朝鮮をつけあがらせ、日本国民を危険に陥れているという事実には変わりはありません。

北朝鮮が言葉によって自らの意図を表明せずに、これからもミサイルを発射し続けるなら、彼らに通じる言葉は力以外にないとみなし、日本もそれなりの対応をすべきです。朝鮮総連の破産申し立てや、国連安全保障理事会で北朝鮮の人権問題や、正恩氏の人道犯罪の責任を問う議題を設定すべきですし、さらに厳しい制裁を課したり、日本国内で暗躍する工作員を逮捕し、強制退去などを実施すべきです。日本は早急に勝負をかけるべきです。

ミサイルを打とうが、核開発しようが、拉致問題があったにもかかわらず日本が厳しい態度をとってこなかったからこそ、北は日米韓はもとより、本当は中国にもかなり脅威を感じていることはおくびにも出さず、とにかく自分たちの都合の良いように、世界を手球にとろうとしたのでしょうが、もうその手の内は、すっかり見透かされており通用しないことを彼らに周知させるべきです。

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北朝鮮が黄海へ短距離弾道ミサイル4発、米軍は戦略爆撃機を展開―【私の論評】北が黄海にミサイルを発射したのは、朝鮮半島浸透を狙う中国を牽制するため(゚д゚)!

北朝鮮、SLBM発射兆候も確認“核実験へ向け軍事的挑発の段階高める”との見方も―【私の論評】これから発射されるかもしれない北朝鮮のSLBMのほうが、日本にとってはるかに現実的な脅威に(゚д゚)!

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...