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2019年5月21日火曜日

追い詰められるファーウェイ Googleの対中措置から見える背景―【私の論評】トランプ政権が中国「サイバー主権」の尖兵ファーウェイに厳しい措置をとるのは当然(゚д゚)!


[山田敏弘ITmedia]



中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の任正非・最高経営責任者(CEO)は2019年1月20日、中国中央テレビ(CCTV)のインタビューで、ファーウェイ排除の動きを強めている米国に対し、こんな発言をしている。

 「買わないなら向こうが損するだけだ」

 ファーウェイの騒動が18年に大きく動いてから、任正非CEOやファーウェイは強気の姿勢を崩していない。

 ただその一方で、ファーウェイはこんな「顔」ものぞかせている。実は最近、同社はメディアに対する「怪しい」PR活動をしていることが暴露されているのだ。

追い詰められたファーウェイの今後は……

 米ワシントン・ポスト紙は3月12日、「ファーウェイ、“お色気攻勢”も意味ないよ」という記事を掲載。この記事の筆者であるコラムニストが、「これまで聞いたこともないようなPR企業から、広東省深セン市にあるファーウェイ本社のツアーの招待を受けた」と書いている。

 さらにコラムニストは、「この申し出によれば、私が同社を訪問し、幹部らと面会し、『同社が米国で直面しているさまざまな課題についてオフレコ(秘密)の議論』をする機会があるという。ファーウェイはこの視察旅行で全ての費用を支払うつもりだとし、さらにこの提案を公にはしないよう求めてきた」と書く。「そこで私は全てのやりとりと、申し出を却下する旨をTwitterで公開した」

 これは、米国のジャーナリストの感覚では買収工作にも近い。またワシントン支局に属するロイター通信の記者のところにも同様の招待が届いていたことが明らかになっている。そちらは、なぜか中国大使館からの申し出だったという。

 ちなみに、ファーウェイは騒動後も、中国政府との密な関係を否定している。それにもかかわらず、大使館が関わっているというのは奇妙である。

 こうした一連の動きを見ていると、ファーウェイが表の発言とは裏腹に、やはり焦りがあったのだと感じる。そして、そんなファーウェイが今度こそ、絶体絶命の状況に陥っている。

 5月15日、ドナルド・トランプ大統領が、「大統領令13873」に署名。これは、「インフォメーションやコミュニケーションのテクノロジーとサービスのサプライチェーンを安全にするための大統領令」であり、サイバー空間などで国家安全保障にリスクがあるとみられる企業の通信機器を米国内の企業が使うことを禁じる。ファーウェイはここでは名指しされていないが、明らかに同社を対象にした措置である。

 さらに同じタイミングで、米商務省もファーウェイと関連企業70社を「エンティティーリスト」という“ブラックリスト”に追加すると発表した。これにより、ファーウェイは米政府の許可を得ることなく米企業から部品などを購入することが禁止になった。

 つまり、このままではファーウェイは米国企業とのビジネスを遮断され、身動きが取れなくなる。米国はファーウェイ、つまり中国に対して、「最後通告」ともとれる措置を行い、その力を見せつけたのだ。

 この騒動、一体どこに向かうのだろうか。そして、米国の措置はどこまで広がるのか。

政府の方針を受けて、米企業も対応を迫られている

 まず大統領令と商務省のブラックリスト入りしたことにより、ファーウェイ製品は使えなくなるのか。特にスマートフォンなどファーウェイ製品のユーザーは日本でも少なくないため、気になっている人も多いだろう。

 現時点で明確なことは、Googleの声明にある。Googleは5月20日、Twitterで「私たちのサービスを利用しているユーザーは、Google Playや、セキュリティサービスであるGoogle Play プロテクトを既存のファーウェイ機器で引き続き使える」との声明を発表している。

Googleのアプリにアクセスできなくなる可能性も

 だが、ロイター通信の取材に応じたGoogleの広報担当者らによれば、ここ数日、国外のネット上で浮上していた同社のスマートフォン用OS「Android」や「Gmail」「YouTube」などへのアクセス禁止も現実味を帯びてきているという。

 同記事で広報担当者は、「私たちは(政府の)措置を順守するし、その影響を慎重に調査している」とも語っている。つまり、現時点ではまだ全ては「確定」しておらず、Googleも詳細を社内で検討しているという。

 また記事にコメントした関係筋は、「ファーウェイはAndroidの公開バージョンのみ利用することができ、Googleが特許権を持つアプリやサービスへのアクセスが不可能になる」と語っているという。つまり、Androidの今後のアップデートが利用できなくなる可能性がある。

 ただ世界的に使われている米国製ソフトウェアは何もGoogleだけではない。マイクロソフトのWindowsなど、数多くの米国製ソフトウェアが存在する。それらはどこまでファーウェイとの取引を続けるのか。今後の動きが注目されている。

 筆者はこれまで、Androidの使用も禁じられるところまではいかないのではないかと思っていた。もちろん、米政府の措置では、そこまで規制を広げることは可能であるが、ファーウェイのスマホやタブレットなどの既存ユーザーが多いことからも、そこまでやってしまえば、Androidの信用、また米企業の信用そのものにも関わるのではないかと考えていた。よって、米政府もさじ加減で、そこまではやらないのではないかと考えていたのである。

 だが現実に、Androidまで禁じる可能性が高まっている。ファーウェイも頭を抱えているに違いない。とはいえ、ファーウェイは、Googleが使えなくなったときのために、独自のOSを開発しているとメディアに語っていたこともある。そのファーウェイOSが実際に開発されているにしても、ユーザーを満足させられるものなのかはまったくの未知数である。

“妥協”して制裁解除したZTEのケース

 この動きを見ていて思い出すのが、中国通信機器大手である中興通訊(ZTE)に起きたケースだ。米政府は18年、ZTEを米国内で活動禁止にしてから、禁止解除の条件としてかなりの妥協を引き出した経緯がある。

 現在のファーウェイ問題の顛末(てんまつ)がどうなるのかを予測する際には、このケースがヒントとなりそうだ。

 17年、米政府はZTEが対イラン・北朝鮮制裁に違反して米国製品を輸出し、米政府に対しても虚偽説明をしたとして米国市場から7年間締め出す制裁措置を発表した。

 これにより、スマホを製造する際の半導体といった基幹部品などを米企業に依存していたZTEは、事実上ビジネスを続けられなくなった。だが、当時話を聞いた米政府関係者はこう語っていた。「結局、ZTEは習近平国家主席に泣きつき、その後、習近平はトランプ大統領にこの措置を緩めるようお願いをした。そこでトランプは、非常に厳しい条件を提示して、制裁を解除したのです。まさにトランプによる『ディール』ですね。これはトランプの手腕としてもっと評価されてもいい」

 米政府は習国家主席の要請に応じ、ZTEへの制裁措置を10年間先延ばしにすることにした。その条件として、ZTEは10億ドルの罰金を支払い、エスクロー口座(第三者預託口座)に4億ドルを預託、さらには、米商務省が指名した監視チームを10年にわたって受け入れることにも合意させられている。

 今回のファーウェイへの強硬措置もこの流れがある。

 つまり、ファーウェイはこれと同レベルまたはそれ以上の妥協をしない限り、今後米企業とビジネスを続けることはできなくなるのではないだろうか。また、中国政府が製造業で世界的な覇権を手にすべく15年に発表した「中国製造2025」の実現のために重要な企業の一つとして、ファーウェイを位置付けてきた中国も、おそらく現在関税合戦で全面衝突の様相にある米中貿易交渉で妥協を強いられることになるだろう。

Googleの言動に感じる、中国への“報復”

 ちなみに、「情報戦争を制するものは世界を制する」という旗印のもと、5G(第5世代移動通信システム)時代の通信機器シェアを広げようとしてきた中国は、ファーウェイに1000億ドルともいわれる莫大な補助金などを与えて育ててきた経緯がある。CIA(米中央情報局)の元幹部は筆者の取材に、「ファーウェイが、中国政府、つまり中国共産党と人民解放軍とつながっていないと考えるのはあまりにナイーブである」と語っている。別の元CIA関係者も「共産主義国家が自国の産業界をスパイ工作に使わないのではないかと思っている記者がいるとすれば、その人は記者失格である」とまで、筆者に述べている。

 米中貿易交渉では、米国は中国に対して、主に次のようなことを求めている。「対米貿易赤字を縮小」「米国からの輸出品への制限の緩和」「中国市場に進出する外国企業に要求しているテクノロジーの技術移転の中止」などだ。またファーウェイやZTEなど中国通信会社に対しては、中国政府のスパイ工作に手を貸すのはやめるようプレッシャーを与えている。

 こうなると、米政府の要求を飲まなければ、ファーウェイは完全に追い詰められ、今後のビジネスもままならなくなるだろう。ここまでくれば、トランプは「ディール」を結ぶまで、引き下がらないかもしれない。

米政府の要求を飲まなければ、今後のビジネスに大きな打撃を受けるかもしれない

 もう1点、この騒動から感じられるのは、Googleも対ファーウェイ、すなわち対中国の措置に協力的であるかのようにすら見えることだ。というのも、Googleにしてみれば、やっと中国に対して「報復」できる時が来た、ということになるからだろう。

 どういうことか。事は2010年にさかのぼる。

 Googleは同年、人民解放軍につながりのある中国系ハッカーによる激しいサイバー攻撃に見舞われていると公表した。そしてそれを理由に、当時ビジネスをしていた中国市場から撤退する可能性があると発表して大きなニュースになった。このサイバー攻撃は米政府関係者の間では「オーロラ工作」と呼ばれている。

 Googleによれば、この攻撃によって同社はハッキング被害にあい、中国に内部システムへ侵入されてしまったという。

ハッキングによって、何が起きたのか

 結局、何が起きたのか。米NSA(国家安全保障局)の元幹部であるジョエル・ブレナー氏は筆者の取材に対して、検索エンジン技術の「ソースコードが中国に盗まれてしまった」と語っている。また米ニューヨーク・タイムズ紙のデービッド・サンガー記者も、中国は盗んだソースコードで「今は世界で2番目に人気となっている中国の検索エンジン、百度(バイドゥ)を手助けした」と指摘している。

 この「オーロラ工作」では、Google以外にも、金融機関のモルガン・スタンレー、IT企業のシマンテックやアドビ、軍事企業のノースロップ・グラマンなど数多くの企業が中国側からの侵入を許したと報じられている。

 Googleはその後、中国本土から撤退し、香港に移動した。この因縁が今も尾を引いているのである。今回の米政府の措置で、Googleが前のめりに見えるのはそういう背景もありそうだ。

 そもそも大手SNSのFacebookやTwitterなども、中国国内では禁止されており、事実上締め出されている。要は、どちらの国もやっていることは同じなのである。

 冒頭のコラムニストは、こう記事を締めくくっている。

 「ファーウェイが、安全保障を守るという理由だけで米政府によって不公平に標的にされていると非難するのはばかげている。中国の共産党が産業政策を武器化している方針こそが非難されるべきだ。米国は単純に現実と向き合い、自国を守っているだけだ。他の国も、後に続いたほうが賢明だ」

 G20(金融・世界経済に関する首脳会合)大阪サミットでこの問題が話題になることは間違いない。日本にとっては、この騒動が、ひょっとすると消費増税の延期を左右する「リーマンショック級」の出来事という認識になる可能性もある。今後の動きから目が離せない。

【私の論評】トランプ政権が中国「サイバー主権」の尖兵ファーウェイに厳しい措置をとるのは当然(゚д゚)!

米国トランプ政権はファーウェイに対してなぜここまで過酷ともいえるような措置をとるのでしょうか。それは、以前もこのブログに掲載したように、本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎず、ファーウェイはこの小道具の開発や運用を担う中国共産党「サイバー主権」の尖兵だからです。

中国の「サイバー主権」を知れば、なぜ米国トランプ政権がこのような措置をとるのか理解できると思います。

「サイバー主権」については以前もこの記事に掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
いまだ低いファーウェイへの信頼性、求められる対抗通信インフラ―【私の論評】5G問題の本質は、中国の「サイバー主権」を囲い込むこと(゚д゚)!

この記事から「サイバー主権」に関わる部分のみを引用します。
中国は「サイバー主権」という概念を唱え、それを促進するため、国連に対するロビー活動を行ってきました。インターネット規制を国家に限定すべきだと主張する一方、業界や市民社会を脇役に押しやりました。 
中国で2017年6月1日、インターネットの規制を強化する「サイバーセキュリティー法」が施行されました。中国共産党は統制の及びにくいネット上の言論が体制維持への脅威となることに危機感を抱いており、「サイバー空間主権」を標榜して締め付けを強化したのです。 
同法は制定目的について「サイバー空間主権と国家の安全」などを守ると規定。「社会主義の核心的価値観」の宣伝推進を掲げ、個人や組織がインターネットを利用して「国家政権や社会主義制度」の転覆を扇動したり、「国家の分裂」をそそのかしたりすることを禁止しました。 
中国で2017年6月1日、インターネットの規制を強化する「サイバーセキュリティー法」が施行されました。中国共産党は統制の及びにくいネット上の言論が体制維持への脅威となることに危機感を抱いており、「サイバー空間主権」を標榜して締め付けを強化したのです。
同法は制定目的について「サイバー空間主権と国家の安全」などを守ると規定。「社会主義の核心的価値観」の宣伝推進を掲げ、個人や組織がインターネットを利用して「国家政権や社会主義制度」の転覆を扇動したり、「国家の分裂」をそそのかしたりすることを禁止しました。 
具体的には情報ネットワークの運営者に対して利用者の実名登録を求めているほか、公安機関や国家安全機関に技術協力を行う義務も明記。「重大な突発事件」が発生した際、特定地域の通信を制限する臨時措置も認めています。

こうした規制強化について、中国は「サイバー空間主権」なる概念を打ち出して正当化しています。2016年12月に国家インターネット情報弁公室が公表した「国家サイバー空間安全戦略」は、IT革命によってサイバー空間が陸地や海洋、空などと並ぶ人類活動の新領域となり、「国家主権の重要な構成部分」だと主張。インターネットを利用した他国への内政干渉や社会動乱の扇動などに危機感を示し、「テロやスパイ、機密窃取に対抗する能力」を強化すると宣言しました。 
また同弁公室は今年3月に発表した「サイバー空間国際協力戦略」でも「国連憲章が確立した主権平等の原則はサイバー空間にも適用されるべきだ」と主張。「サイバー空間主権」の擁護に向けて「軍隊に重要な役割を発揮させる」とも言及しました。

そもそも「サイバーセキュリティ」とは何でしょうか。サイバー空間に対する立ち位置は各国によって千差万別ですが、その概念は大きく二つに分かれます。

一つは、通信・金融・エネルギーなどを始めとする「国民の社会生活や経済活動の基盤となっている国家重要インフラに対するサイバー攻撃」を脅威とみなし、その保護を目指すものです。前提としては、サイバー空間を自由なものとしてとらえており、米国・欧州諸国・日本はこの理念をかまえています。

もう一つは、国家重要インフラへの脅威だけでなく「国内体制を不安定にする情報」も脅威とみなす考え方です。サイバー空間を政府がコントロールすべきとしてとらえ、「その情報が脅威にあたいするかどうか」を決めるのは当該政府であり、その恣意性のもとに「サイバーセキュリティ」が運用されます。中国とロシアはこの理念を国家戦略として明確にかまえており、アラブ諸国・アフリカ諸国もこれに近いスタンスを取っています。

両者の隔たりは大きく、大まかには、米国主導のサイバー空間管理に中国とロシアが共闘して対抗する構図にあります。

たとえば、サイバー犯罪を規制するための国際条約「サイバー犯罪条約」においては、2014年7月の発効から米国・欧州諸国・日本など主要国が相次いで締約するなか、中国・ロシア・アラブ首長国連邦などは継続して反対運動を展開しています。

あるいは、欧米各国が1998年に「ITセキュリティ分野における国際相互承認に関するアレンジメント」を締結し、IT製品のリスク管理を相互に承認するなか、中国とロシアは国内IT事業者の優遇政策を進めており、その主眼は安全保障にあると推測されています。

とりわけ中国においては、2014年12月以降、IT製品業者に対してプログラム設計図の提出、強制監査の受け入れ、「バックドア」の設置義務などの規制が設けられており、外国企業の参入がいちじるしく阻害されています。

この「バックドア」とは、正規には公開されないシステムの「裏口」を指し、対象のシステムを第三者がハッキングしたり盗み見したりする際に使われます。この設置が義務付けられることは、機密保持における大きな懸念となることは言うまでもないです。

 総じて、中国セイバーセキュリティ法を考えるにあたっても、「日本や欧米とはサイバーセキュリティの考え方が、まったく異なる」ことに留意する必要があります。

このサイバーセキュリティ法と時同じくして「ネットニュース情報サービス許可管理実施ガイドライン」「ネット情報内容管理行政執法プロセス規定」なども施行されました。これは微博や微信を使ったニューメディアに対する規制管理強化であり、微信などでメディアアカウントが当局の許可を得ずに、ニュース情報を提供してはならない、ということを規定しています。2017年1月に出されたVPN規制の通達とセットとなって、ネットユーザー、公民がアクセスする情報のコントロール強化に拍車がかかっています。

2020年にはネット人口9億人が予測されている世界最大の中国ネット市場です。中国がこのように、インターネット規制・コントロールに力を入れているのは「サイバー主権」という概念を打ち出しているからです。

つまり、海洋や領土、領空の主権のように、ネットでも中国の主権を主張する、ということなのです。だから、中国でネットを使いたかったら、中国の法律、ルール、価値観に従え、ということです。領域を広げ、主権を主張することが、覇権につながります。それは海洋、宇宙、海底、通貨への覇権拡大の発想とも共通しています。

そうして恐ろしいことには、この中国のネット主権の考え方に、中東諸国など結構賛同する国もあったりします。米国が生み出し米国が支配していたネット世界ですが、中国が世界最大規模の市場を武器に「サイバー主権」を唱え始めたことで、ネット世界全体の形が変わろうとしているのです。

民主と自由を建前にする米国が生み出したネット世界は、国境のない自由な世界という理念を打ち出していました。ところが、中国はこれを真向から否定してネットをむしろ社会のコントロール、管理のためのツールであるとし、実際に信じられないような厳格なネットコントロールを実施しています。

これに対し、米国ネット企業までが、批判するどころか、中国のネットルールに従ってもいいからその巨大市場に進出したいという態度を隠さなくなってきていました。

そう考えると、このサイバーセキュリティ法は、単に中国の不自由なネット環境が一層不自由になった、という意味以上の影響力があります。中国が世界のネット覇権をとるや否や、中国は世界のネットでも「サイバー主権」を主張することになるでしょう。

人民解放軍全面協力で制作された中国のドラマ「熱血尖兵」より

そうして、ファーウェイはこの中国の「サイバー主権」を5Gという小道具を用いて、世界に敷衍(ふえん)するための尖兵なのです。

この脅威を察知したからこそ、トランプ政権はファーウェイに対して厳しい措置をとっているのです。

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習近平氏、窮地! トランプ氏、ファーウェイ“完全排除”大統領令に署名 「共産党独裁国家の覇権許さず」鮮明に―【私の論評】本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎない(゚д゚)!

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2019年5月17日金曜日

習近平氏、窮地! トランプ氏、ファーウェイ“完全排除”大統領令に署名 「共産党独裁国家の覇権許さず」鮮明に―【私の論評】本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎない(゚д゚)!


トランプ大統領

米国が警戒する背景には、次世代通信規格「5G」の到来がある。

 5Gは、現在の4Gの100倍とも言われる速度での通信を可能にし、あらゆるものがインターネットにつながる。共産党独裁国家である中国が5Gを「支配」すれば、安全保障への影響ははかりしれない。トランプ政権は、同盟国にも「ファーウェイ排除」を要請している。

 こうした、トランプ氏の対中強硬姿勢には、党派を超えて支持が広がっている。

 米民主党の大物、チャック・シューマー上院院内総務はツイッターで、「中国にタフな姿勢を貫け」と投稿し、トランプ氏の決断に賛同した。米世論調査会社ギャラップが4月下旬に実施した世論調査で、トランプ政権の支持率は過去最高の46%を記録した。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「米中貿易戦争は、世界制覇をめぐる権力闘争といえる。習近平国家主席が提唱した『中国製造2025』が実現すれば、欧米や日本のハイテク産業は壊滅し、世界経済の覇権は完全に中国共産党に握られる。自由も人権も、法の下の平等もなくなる。トランプ政権は『断固戦う』との国家意思を示した。今回の大統領令署名は、同盟国にも強いメッセージを発した形になった」と語った。

 米国が警戒する背景には、次世代通信規格「5G」の到来がある。

 5Gは、現在の4Gの100倍とも言われる速度での通信を可能にし、あらゆるものがインターネットにつながる。共産党独裁国家である中国が5Gを「支配」すれば、安全保障への影響ははかりしれない。トランプ政権は、同盟国にも「ファーウェイ排除」を要請している。

 こうした、トランプ氏の対中強硬姿勢には、党派を超えて支持が広がっている。

 米民主党の大物、チャック・シューマー上院院内総務はツイッターで、「中国にタフな姿勢を貫け」と投稿し、トランプ氏の決断に賛同した。米世論調査会社ギャラップが4月下旬に実施した世論調査で、トランプ政権の支持率は過去最高の46%を記録した。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「米中貿易戦争は、世界制覇をめぐる権力闘争といえる。習近平国家主席が提唱した『中国製造2025』が実現すれば、欧米や日本のハイテク産業は壊滅し、世界経済の覇権は完全に中国共産党に握られる。自由も人権も、法の下の平等もなくなる。トランプ政権は『断固戦う』との国家意思を示した。今回の大統領令署名は、同盟国にも強いメッセージを発した形になった」と語った。

【私の論評】本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎない(゚д゚)!

トランプ米大統領は15日、安全保障上の脅威があると判断した外国の通信機器の使用を禁じる大統領令に署名しました。次世代通信規格「5G」ネットワークの主導権を米国と争う中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)排除が念頭にあり、米商務省は同日、ファーウェイに対して米製品を許可なく販売することを禁じる措置を発表しました。

このブログでは、以前も5Gについて掲載しました。その記事の中では、5G問題の本質は、
"中国の「サイバー主権」を囲い込むこと"であると掲載しました。

このことは、多くの識者がそのようにとらえているようです。そうして、冒頭の記事の藤井厳喜氏も、それに近いようなことは述べています。しかしなぜか「中国のサイバー主権」については直接は述べていません。他の識者も中国の「サイバー主権」については5Gの問題について直接関連付けて述べる人はいないようです。

このことが、多くの人々のこの問題に関する認識を若干弱めているのではと思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
いまだ低いファーウェイへの信頼性、求められる対抗通信インフラ―【私の論評】5G問題の本質は、中国の「サイバー主権」を囲い込むこと(゚д゚)!

この記事から「サイバー主権」に関わる部分のみを引用します。

中国は「サイバー主権」という概念を唱え、それを促進するため、国連に対するロビー活動を行ってきました。インターネット規制を国家に限定すべきだと主張する一方、業界や市民社会を脇役に押しやりました。 
中国で2017年6月1日、インターネットの規制を強化する「サイバーセキュリティー法」が施行されました。中国共産党は統制の及びにくいネット上の言論が体制維持への脅威となることに危機感を抱いており、「サイバー空間主権」を標榜して締め付けを強化したのです。 
同法は制定目的について「サイバー空間主権と国家の安全」などを守ると規定。「社会主義の核心的価値観」の宣伝推進を掲げ、個人や組織がインターネットを利用して「国家政権や社会主義制度」の転覆を扇動したり、「国家の分裂」をそそのかしたりすることを禁止しました。 
中国で2017年6月1日、インターネットの規制を強化する「サイバーセキュリティー法」が施行されました。中国共産党は統制の及びにくいネット上の言論が体制維持への脅威となることに危機感を抱いており、「サイバー空間主権」を標榜して締め付けを強化したのです。
同法は制定目的について「サイバー空間主権と国家の安全」などを守ると規定。「社会主義の核心的価値観」の宣伝推進を掲げ、個人や組織がインターネットを利用して「国家政権や社会主義制度」の転覆を扇動したり、「国家の分裂」をそそのかしたりすることを禁止しました。 
具体的には情報ネットワークの運営者に対して利用者の実名登録を求めているほか、公安機関や国家安全機関に技術協力を行う義務も明記。「重大な突発事件」が発生した際、特定地域の通信を制限する臨時措置も認めています。

こうした規制強化について、中国は「サイバー空間主権」なる概念を打ち出して正当化しています。2016年12月に国家インターネット情報弁公室が公表した「国家サイバー空間安全戦略」は、IT革命によってサイバー空間が陸地や海洋、空などと並ぶ人類活動の新領域となり、「国家主権の重要な構成部分」だと主張。インターネットを利用した他国への内政干渉や社会動乱の扇動などに危機感を示し、「テロやスパイ、機密窃取に対抗する能力」を強化すると宣言しました。 
また同弁公室は今年3月に発表した「サイバー空間国際協力戦略」でも「国連憲章が確立した主権平等の原則はサイバー空間にも適用されるべきだ」と主張。「サイバー空間主権」の擁護に向けて「軍隊に重要な役割を発揮させる」とも言及しました。
そもそも、インターネットを構築したのは米国であり、その影響は避けられないです。中国のネット検閲技術も米国企業が協力したとされています。中国当局にはインターネットの情報を完全にコントロールできないことへのいらだちがあるようです。サイバー空間主権を掲げることで、領土内の決定権は中国にあると強調したいのでしょう。

そうして、「サイバー主権」は2017年に発表されたことと、5G問題は2018年あたりから、表面化したため、両者は互いに関連付けられることはあまりありせんが、これは不可分に結びついています。

というより、本質は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその道具に過ぎないともいえます。

この記事より、5G問題に関する部分を以下に引用します。
今後世界は5Gを中心として、オープンモデルの世界と、クローズドモデルの世界に分断されていく可能性が大です。クローズドモデルは闇の世界となることでしょう。 
私自身は5Gの問題の本質はここにあると思います。日米などの先進国は、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進することによって、中間層を多数輩出させ、彼らに自由な経済・社会活動を保証することにより、国富を蓄積して国力を増強しました。このようなことを実現した先進国では、インターネットは当然オープンなものと受け止められているのです。
しかし、中国にとっては5Gは、まず自国内での「サイバー主権」を確実に実行するための道具なのです。そうして、中国は次の段階では、世界の通信秩序をつくりかえようとしているのです。

もともと、米国がつくりだしたインターネットは、軍事的なものでした。当時はあり得ることと認識されていた、世界中が核兵器で破壊されても、通信インフラが多少でも残っていれば、世界中と連絡がとれるということが、当初の目的でした。

しかしこれが、軍事目的のほかに、学術面で使用されるようになりました。このオープンなシステムを用いて、従来では考えられなかった用途が考え出されました。

たとえば、学術誌で有名だったケミカル・アブストラクトがインターネットを介して、情報を提供するようになりました。

ケミカル・アブストラクトは、最新の化学物質の組成や性質を掲載したものですが、当初は冊子体は非常に大きく(1年で厚さ数メートルとなる)なるものでした。

ケミカル・アブストラクツ(冊子)の表紙

多くの化学者は、新たな化学物質を合成した場合、この冊子を検索して、自分の開発した物質が、本当に新しいものであるかどうかを確かめました。しかし、このような冊子であることから、更新に時間がかかり、たとえその冊子に掲載されていなくても、他の学者がすでに開発していたなどということもしばしばありました。

多くの化学者が自分では、ノーベル賞級の発見をしたつもりでも、たまたま冊子に掲載されていなかっただけで、実は他の学者がとっくに発見していたということもありました。

しかし、これが現在では、すべてデータベース化されていて、インターネットで検索できるようになっていて、オンラインで申請し要件を満たしていれば、すぐに新たな発見がデーターベースに掲載されるようになりました。

現在の化学者は、日々このデーターベースで検索していて、自分の発見が本当に新しいものであるか、そうではないかを検索することができます。これは、インターネットが普及するまでは考えられないことでした。

このように、インターネットの学術利用が普及していきました。そうして、次の段階では、一般の人もつかえるように、インターネットの商用利用がはじまり、今日に至っています。

このような歴史をたどった、インターネットは今日でも、基本的にオープンな仕様になっています。

しかし、中国はこのオープンなインターネットを「サイバー主権」なる主張をもとに、自分たちに都合の良いものに作り変えようとしているのです。その尖兵が5Gなのです。

こう考えると、5G問題は、単に技術上の問題であるとか、米国と中国の覇権争いなどという単純なものではないと理解できると思います。

基本的に、自由でオープンなインターネットを自分たちの都合の良いように作り変え、中国共産党の統治の正当性をより確かなものにしようとすることを許さない米国との対立というのが、5G問題の本質なのです。

もともと米国で開発されたインターネットは、当初は軍事目的だったものの、今日では自由でオープンな特性を活かし、社会の重要なインフラとなっています。

しかし、中国はこれをつくりかえ、まずは自国内で情報を政府が一元的に管理可能なものにつくりかえようとしています。さらに、中国の覇権の及ぶ他国においもその国の政府がインターネットを一元的に管理できるようにすることを目指していることでしょう。さらに、将来は、世界の情報を一元的に管理しようとの目論見も当然あることでしょう。

これからの世界は、中国の通信モデルと既存のモデルのせめぎあいになることが考えられます。ここは、なんとしても米国に勝利してもらい、通信インフラの世界を中国の都合のようにつくりかえることを防ぐべきです。

インターネットが中国の都合の良いようにつくりかえられてしまえば、世界は暗黒の闇になります。世界中がジョージ・オーウェルが描いた世界「1984」になってしまうかもしれません。これだけは、米国の覇権がどうのこうのという前に、絶対に避けるべきなのです。

この問題は、トランプ大統領からすれば、米国の信じる理念と、中国の信じる理念との対決なのです。

トランプ大統領がファーウェイ“完全排除”大統領令に署名したのは、背後にこのようなことがあることを理解すべきでしょう。本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎないのです。単なる技術上の問題とか、米国と中国の覇権争いだけのようにみてしまうと、本質がみえなくなります。

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2019年3月20日水曜日

日本もファーウェイ排除宣言を、曖昧は国を亡ぼす―【私の論評】日本には旗幟を鮮明にすべきときが迫っている(゚д゚)!




■ 「米中ハイテク覇権争い」により世界はブロック化する

今年の中国全人代、の政府活動報告から「製造2025}という言葉が消えた

 北京で開催されていた2019年の全国人民代表大会(全人代)が終了した。

 米ドナルド・トランプ政権を刺激する「中国製造2025」に言及する者はいなかった。あたかも、米中貿易戦争下において、鄧小平の「韜光養晦(とうこうようかい)」(才能を隠しながら、内に力を蓄え、強くなるまで待つこと)が復活したような状況である。

 李克強首相は、中国政府が中国企業にスパイ行為をさせているという欧米の批判に対して、次のように反論した。

 「(スパイ行為は)中国の法律に適合せず、中国のやり方ではない。スパイ行為は現在も将来も絶対にしない」

 しかし、私はこの主張を全く信じないし、これを信じる中国専門家はほとんどいないであろう。

 中国は、過去において国家ぐるみで先端科学技術などの入手を目的としたスパイ活動を活発に行ってきたし、現在も行っていて、将来においても必ず行うであろう。

 李首相の発言は、中国要人の「言っていることとやっていることが違う」という言行不一致の典型である。

 習近平主席が「中華民族の偉大なる復活」「科技強国」「製造強国」路線を放棄するわけもなく、トランプ政権が求める構造改革に応じず、結果として「米中の覇権争い」、特に「米中のハイテク覇権争い」は今後長く続くであろう。

 米中ハイテク覇権争いの焦点になっている華為技術(ファーウェイ)は、全人代開催中の3月7日、「米国で2018年8月に成立した国防権限法によってファーウェイの米国事業が制約を受けているのは米憲法違反だ」として米国政府を提訴し、全面的に戦う姿勢を見せている。

 ファーウェイの第5世代移動通信システム(5G)は、スウェーデンの通信機器大手エリクソンやフィンランドのノキアなどの競合他社を性能と価格で凌駕していると評価されている。

 世界の通信事業者にとってファーウェイは魅力的な選択肢である一方、米国側にはファーウェイを凌駕する代替案がないのが現実である。

 トランプ政権は、安全保障上の脅威を理由にして、ファーウェイを米国市場のみならず同盟諸国などに圧力をかけて世界市場からも排除しようとしている。

 その結果、世界は米国のブロックと中国のブロックに二分されようとしている。

 しかし、米国の同盟国のファーウェイ排除の動きは一致団結したものにはなっていない。

 日本やオーストラリアなどは米国の意向に沿う決定を一応下しているが、ドイツや英国は米国のファーウェイ排除の要請に対してあいまいな態度を取っている。

 その理由は、なぜファーウェイが安全保障上の脅威であるかを証明する具体的な証拠を米国が提示していないこと、トランプ大統領が同盟諸国に対して同盟を軽視するような言動を繰り返してきたことに対するドイツなどの欧州主要国の反発などであろう。

 米国は、5Gにおいて世界を米国のブロックと中国のブロックに二分する政策を取りながら、米国ブロックに囲い込まなければいけない欧州主要国の明確な支持を取りつけられていない。

 このような状況下で、英国の有力紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「ファーウェイ、排除ではなく監視が必要」 という社説を掲載し、「各国政府はファーウェイ製品の使用を禁じるよりも、監視を続けていくことが自己利益につながる」*1
と主張した。 *1=FT、“Huawei needs vigilance in 5G rather than a ban”

■ 「ファイブ・アイズ」で異なるファーウェイ排除の姿勢

 米国主導で機密情報を共有する5カ国の枠組み「ファイブ・アイズ」の国々のファーウェイ排除の姿勢はバラバラになっている。

 かつて米国と密接不可分な同盟関係にあった英国は、ファーウェイ排除の姿勢を明確にはしていない。

 英政府通信本部(GCHQ)の指揮下にある国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)が、「ファーウェイ製品を5G網に導入したとしてもリスクを管理することは可能だ」という結論を出した。

 英国はこの春にファーウェイの処遇を決めるが、ドイツとともに排除しない方向に傾いている可能性がある。

 これに対して、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の報告書*2
は、「ノキアやエリクソンではなくファーウェイの通信機器を使用するのは甘い考えと言うしかなく、最悪の場合は無責任ということになる」と批判している。 安全性のはっきりしない機器は、これを排除する方が安心だという。英国の有力な機関が全く違う見解を公表しているわけだ。

 一方、豪国防信号局は「通信網のいかなる部分に対する潜在的脅威も全体への脅威となる」として、ファーウェイを5Gに参入させないよう求めている。

 オーストラリアやニュージーランドは5G網にファーウェイ製品を使わないことを決定している。

■ ドイツは米欧州軍司令官の警告を受けた

 米欧州軍司令官(NATO=北大西洋条約機構の軍最高司令官を兼務)スカパロッティ(Curtis Scaparrotti)大将は、3月13日の米下院軍事委員会において、次のように発言した*3
。 「5Gの能力は4Gとは圧倒的な差があり、NATO諸国の軍隊間の通信に大きな影響を与える。NATO内の防衛通信において、(ドイツや欧州の同盟国がもしもファーウェイやZTEと契約するならば)問題のある軍隊との師団間通信を遮断する」

 この発言は、ファーウェイの5Gを導入する可能性のあるドイツなどを牽制する下院議員の懸念に答えたものだ。このスカパロッティ大将のドイツに対する警告は、日本への警告と受け止めるべきであろう。

 ドイツは、ファーウェイを名指しでは排除しない方針だが、アンゲラ・メルケル首相は「米国と協議する」と発言している。

 また、ドイツで5G網の整備を目指す英国のボーダフォンCEO(最高経営責任者)は「ファーウェイ製品を使わなければ整備は2年遅れる」と指摘して、ドイツの5G網の整備をめぐる苦悩は大きい。

 *2=英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)、“China-UK Relations-Where to Draw the Border Between Influence and Interference?  ”

 *3=House Armed Services Committee、“HASC 2019 Transcript as Delivered by General Curtis Scaparrotti”

■ 新たに判明したファーウェイの野望

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は3月14日付の記事*4
で、世界のインターネット網の支配を巡る米中の海底バトルを紹介している。 米中の海底バトルとは、海底ケーブル(海底に敷設された光ファイバーの束)を巡る戦いだ。

 現在、世界で使用されている海底ケーブルは約380本あり、それらが大陸を連結する音声・データトラフィックの約95%を伝送していて、ほとんどの国の経済や国家安全保障にとって不可欠な存在となっている。

 ファーウェイはこの海底ケーブル網に食い込んでいる。

 ファーウェイが過半数の株式を保有する華為海洋網絡(ファーウェイ・マリン・ネットワークス)は、全世界において驚くべきスピードで海底ケーブルを設置し、業界を支配する米欧日3社に急速に追いつきつつある。

 海底ケーブル分野では米国のサブコムとフィンランドのノキア・ネットワークス(旧アルカテル・ルーセント)の2社による寡占状態にあり、日本のNECが3位につけ、ファーウェイは4位につけている。

 ファーウェイが海底ケーブルに対する知識やアクセス権を保有することで、中国がデータトラフィックの迂回や監視をするデバイスを挿入したり、紛争の際に特定の国への接続を遮断する可能性が指摘されている。

 こうした行為は、ファーウェイのネットワーク管理ソフトや沿岸の海底ケーブル陸揚げ局に設置された装置を介してリモートで行われる可能性があるという。

 米国などの安全保障専門家は、海底ケーブルに対するスパイ活動や安全保障上の脅威について懸念を表明し、次のように述べている。

 「ファーウェイの関与によって中国の能力が強化される可能性がある」

 「海底ケーブルが膨大な世界の通信データを運んでいることを踏まえれば、これらのケーブルの保護が米政府や同盟国にとって重要な優先事項である」

 ファーウェイは一切の脅威を否定し、「弊社は民間企業であり、顧客や事業を危険にさらす行為をいずれの政府にも要請されたことはない。もし要請されても、拒否する」と反論している。

 *4=“America’s Undersea Battle With China for Cotrol of Global Internet Grid”

■ デジタル・シルク・ロードとファーウェイの関係

 中国は広域経済圏構想「一帯一路」の一環として、海底ケーブルや地上・衛星回線を含む「デジタル・シルク・ロード」の建設を目指している。

 中国政府のDSRに関する戦略文書では、海底ケーブルの重要性やそれに果たすファーウェイの役割が言及されている。

 中国工業情報化省付属の研究機関は、海底ケーブル通信に関するファーウェイの技術力を称賛し、「中国は、10~20年以内に世界で最も重要な国際海底ケーブル通信センターの1つになる態勢にある」と述べた。

 ファーウェイ・マリンは、「一帯一路やDSR計画で正式な役割は一切果たしていない」と説明しているが、ファーウェイが中国政府の大きな戦略に組み込まれていることは否定のしようがないであろう。

■ 米国側につくか、中国側につくか?  我が国は曖昧な態度を取るべきではない

 既に記述した米欧州軍司令官スカパロッティ大将の「(ドイツや欧州の同盟国がもしもファーウェイやZTEと契約するならば)問題のある軍隊との師団間通信を遮断する」という警告は、日本にも向けられていると認識すべきだ。

米欧州軍司令官スカパロッティ大将

 日本にとってのファーウェイ問題は、米国が安全保障上の脅威と認識する以上、その意向を無視するわけにはいかない。

 なぜならば、我が国が直面する中国の脅威は、欧州諸国が直面する脅威とは比較にならないくらい大きいからだ。

 我が国の報道では、2018年12月10日の関係省庁申し合せ「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続きに関する申し合わせ」を根拠として、防衛省・自衛隊がファーウェイ等の中国企業から物品役務を調達することはないとされている。

 しかし、この申し合わせには中国企業名が列挙されているわけではなく、あいまいさが残る。

 よもやそんなことはないと思うが、もしも自衛隊の装備品にファーウェイの技術や製品が入っている場合、米軍は「自衛隊との通信を断つ」と宣言するであろう。

 米軍にそう引導を渡されて慌てふためくことがないように、今から断固としてファーウェイやZTEなどの中国企業の製品を排除すべきだろう。

 その点で、日本政府のファーウェイなどの中国企業名を明示しないというあいまいな態度はいかがなものか。

 米国政府は、本気でファーウェイ等の中国企業を米国市場から排除しようとしている。我が国は、ドイツや英国のようなあいまいな態度を避け、断固として米国の側につくべきである。

 気になるのは、安倍晋三首相の3月6日の参院予算委員会での発言だ。

 安倍首相は、日中関係について「完全に正常な軌道へと戻った日中関係を新たな段階へと押し上げていく」「昨年秋の訪中で習近平国家主席と互いに脅威とならないことを確認した」と発言した。

 しかし、本当に日中関係が「完全に正常な軌道」に戻ったのか、本当に中国は脅威ではないのか? 

 このような楽観的な対中認識は、トランプ政権の厳しい対中認識とは明らかに違う。


 「米国側につくか、中国側につくか、日本は曖昧な態度を取るべきではない」という注意喚起は、サミュエル・ハンチントンが「文明の衝突」で日本に対して与えた警告でもある。

渡部 悦和

【私の論評】日本には旗幟を鮮明にすべきときが迫っている(゚д゚)!

ハンチントンの日本に関する基本的な見解は、『文明の衝突』日本語版に述べられています。
文明の衝突というテーゼは、日本にとって重要な二つの意味がある。
第一に、それが日本は独自の文明をもつかどうかという疑問をかきたてたことである。オズワルド・シュペングラーを含む少数の文明史家が主張するところによれば、日本が独自の文明をもつようになったのは紀元5世紀ごろだったという。 
私がその立場をとるのは、日本の文明が基本的な側面で中国の文明と異なるからである。それに加えて、日本が明らかに前世紀に近代化をとげた一方で、日本の文明と文化は西欧のそれと異なったままである。日本は近代化されたが、西欧にならなかったのだ。 
第二に、世界のすべての主要な文明には、2ヶ国ないしそれ以上の国々が含まれている。日本がユニークなのは、日本国と日本文明が合致しているからである。そのことによって日本は孤立しており、世界のいかなる他国とも文化的に密接なつながりをもたない。 
ハンチントンが言うように、日本は独自の文明です。しかも世界の主要文明のひとつです。私の知るところ、この点を最初に明確に主張したのは、比較文明学者の伊東俊太郎氏です。

人類の文明史を見るには、主要文明と周辺文明という区別が必要です。私は、日本文明は、古代においてはシナ文明の周辺文明でしたかが、7世紀から自立性を発揮し、早ければ9世紀~10世紀、遅くとも13世紀には一個の独立した主要文明になりました。

そして、江戸時代には熟成期を迎え、独創的な文化を開花させました。それだけ豊かな固有の文化があったからこそ、19世紀末、西洋近代文明の挑戦を受けた際、日本は見事な応戦をして近代化を成し遂げ、世界で指導的な国家の一つとなったのです。
15世紀から20世紀中半までの世界は、西洋文明が他の諸文明を侵略支配し、他の文明のほとんどーーイスラーム文明、インド文明、シナ文明、ラテン・アメリカ文明等――を西洋文明の周辺文明のようにしていました。この世界で、民族の独立、国家の形成、文明の自立を進め、文明間の構造を転換させる先頭を切ったのが、日本文明でした。

日本文明は、西洋近代文明の技術・制度・思想を取り入れながらも、土着の固有文化を失うことなく、近代化を成功させました。日本の後発的近代化は、西洋化による周辺文明化ではなく、日本文明の自立的発展をもたらしました。この成功が、他の文明に復興の目標と方法を示しました。
15世紀以来、世界の主導国は、欧州のポルトガル、スペインに始まり、覇権国家はオランダ、イギリスからアメリカと交代しました。この西漸の波は、西洋文明から非西洋文明へと進み、1970年代から21世紀にかけて、波頭は日本、中国、インドと進みつつあるように見えます。
 
ハンチントンの説に話を戻すと、日本文明は彼が論じるとおり「日本国=日本文明」であり、一国一文明という独自の特徴を持っています。ハンチントンは、日本文明は他の文明から孤立しているとし、そのことによる長所と短所を指摘しています。
文化が提携をうながす世界にあって、日本は、現在アメリカとイギリス、フランスとドイツ、ロシアとギリシア、中国とシンガポールの間に存在するような、緊密な文化的パートナーシップを結べないのである。日本の他国との関係は文化的な紐帯ではなく、安全保障および経済的な利害によって形成されることになる。しかし、それと同時に、日本は自国の利益のみを顧慮して行動することもでき、他国と同じ文化を共有することから生ずる義務に縛られることがない。その意味で、日本は他の国々が持ちえない行動の自由をほしいままにできる。
さて、このような日本文明を前提としているサミュエル・ハンチントン著書『文明の衝突と21世紀の日本 』(集英社新書) 新書 – 2000/1/18について解説します。この著書は新書なので、かなり読みやすいです。



『文明の衝突』を読むのは大変ですが、この書籍は日本に特化しているのと、『文明の衝突』が出版させたあとの出来事も掲載されているため、さらに理解しやすいものになっています。ただし、そうでありながら、やはり『文明の衝突』で主張されている事柄を変えることなく、解説しています。

構成は大きく3つに分かれていて、最初のパートのテーマは、冷戦時代とガラリと変わってしまった世界構造のなかで日本はどういう選択をするか、です。日本は過去、常に一番強いと思われる国に追随する戦略をとってきました。そして近い将来、中国が経済的にも軍事的にも強大になってきた時に、日本は、米国か中国か、追随すべき国の選択を迫られるといいます。

2番目のパートでは、唯一の超大国となった米国のとるべき戦略をテーマとしています。ハンチントンは、米国がパワーを保ち続けるためには、唯一の超大国であることをあからさまに押し出すべきではないとします。それをやると反アメリカ包囲網が形成されるといいます。

そして第3のパートでは、文明の衝突理論を簡明に説明しています。1993年に発表されて世界的なベストセラーとなった『文明の衝突』を読んだ人も、もう一度本書のこの部分を読むと、今世界各地で起きている複雑な紛争の意味が理解しやすくなるでしょう。

米ソ冷戦時代が終わって、世界各地で噴き出した紛争は、かつての国家間の紛争とは様相を異にしました。いわゆる内戦とも違って、民族と宗教と文化が複雑に絡み合った国家横断的な戦争が始まっていました。『文明の衝突』はそういう時代の到来を鮮やかに予測していた。本書では、当時起きている紛争を例に挙げて文明の衝突理論を解説しているのでよりわかりやすいです。

米ソ冷戦後は、国家とは別の枠組みで戦争が始まりました。それは国家を超えて影響力のある文明間の対立だといいます。これからは、国家よりも文明の差異が世界の政治・経済構造では重要になるのだそうです。

ハンチントンは、日本を中華文明から独立した1つの文明としていますが、それなら、あえて国家概念を明確にするより、曖昧は曖昧でそれを日本文明の特質とし、他文明との差異に敏感になった方がいいかもしれないです。

その上で、米国や中国をみると、今の米国は中国が世界の秩序を作り直すとはっきり宣言して以来、米国は中国に対して新冷戦を挑んでいます。これは、このブログでもかねてから主張しているように、中国が体制を変えるか、体制を変えないならば、経済的にかなり弱体化して他国に影響を及ぼせなくなるくらいに経済を弱体化させるまで継続されます。

ハンチントンは、唯一の超大国であることをあからさまに押し出すべきではないとしていしました。それをやると反アメリカ包囲網が形成されるといいます。米国は結局これは実行しませんでした。

ところが、中国が超大国になりきっていないうちから、あからさまに押し出し戦略を実行していまいました。そのため、今の世界では反中国包囲網が形成されつつあります。その中で日米はその範囲網の中核的な存在になっています。

もともと、安倍総理は安全保障のダイヤモンドや、開かれたインド太平洋地域などを構想を提唱して、中国包囲網づくりを目指してきました。全方位外交により、これをすすめてきました。トランプ政権は、この構想に乗った形で、中国包囲網の構築をすすめてきましたが、今では自ら対中国冷戦を挑んでいます。

冒頭の記事の「安倍晋三首相の3月6日の参院予算委員会での発言」ですが、これには続きがあります。

中国の海洋進出に関しては「軍事活動を拡大、活発化させている。国防政策や軍事力の不透明性と相まって国際社会の安全保障上の強い懸念となっており、今後も強い関心をもって注視する必要がある」と語っています。やはり、中国を脅威とみなしているのです。

日本政府は「IT 調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ(以下、IT調達申合わせ)」を公表しています。  

そもそも、日本政府はサイバーセキュリティにまったく無頓着なわけではなく、従来から中国製品を警戒していました。それでも敢えてIT調達申合せを公表したのは、米国政府の要請に呼応して同調姿勢を明確化する狙いなのでしょう。 

ただ、日中関係が改善傾向にある中で、日本政府としては中国政府を過度に刺激したくないのでしょう。日本政府はIT調達申合せについて「防護すべき情報システム、機器、役務などの調達に関する方針や手続きを定め、特定の企業や機器の排除が目的ではない」と説明し、名指しは避けて中国政府に配慮した格好です。

 IT調達申合せの公表前には複数の報道機関が日本政府による中国通信大手の排除を報じ、それに中国政府は強い表現で反発しました。しかし、IT調達申合せの内容を公表後は不快感こそ示しましたが、発言は抑制的な表現にとどめました。

名指しで排除されない限り、中国政府としては強い表現での反発は難しく、この点は日本政府の狙い通りです。 IT調達申合せの内容は米国に同調姿勢を示し、また中国には配慮した結果と言えます。これが日本政府の落としどころですが、米中に挟まれた複雑な立場が浮き彫りになったといえます。 

IT調達申合せは特定企業の名指しこそ避けましたが、実際にはファーウェイやZTEの排除を念頭に置いているのは言うまでもないです。事実、IT調達申合せの公表後に一部の公的機関では公私ともに中国通信大手を避けるよう指示があったようです。

日本政府機関では情報システム、機器、役務の調達先から中国通信大手は外れますが、従来から中国製品には警戒しているため、さほど大きな変化はないでしょう。

日本政府の方針を受けて、国内の大手携帯電話事業者も中国通信大手を排除すると報じられました。ただ、誤解されやすいのだが、政府機関内ではスマートフォンなどの端末も排除の対象となりますが、大手携帯電話事業者では端末ではなく、主に基地局側の通信設備が排除の対象となるのです。

一部これに関して懸念を表明するむきもあります。通信設備や端末には多くの日本企業の部品が使われているからです。中国通信大手を締め出した結果、日本企業を含めた中国通信大手の取引先にも影響が生じる可能性があるからです。

しかし、「中国は製造2025」を打ち出しているわけですから、いずれ日本製部品などつかわず、中国製部品を使うようなるでしょう。そのときがくれば、元々日本企業の部品は中国から排除されるのです。そのような不安定な中国をあてにするのではなく、ベトナムやインドなどのこれからの市場に手を付けるなどして、これに備えるべきです。

そうして、いずれ日本も米国側につくことをはっきりさせ、旗幟を鮮明にすべきでしょう。

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中国・ファーウェイvs.米国、全面抗争へ…世界中の通信で支障発生の可能性



中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)がアメリカ政府を提訴する方針であることが明らかになった。アメリカ政府は国防権限法で政府機関に対してファーウェイや同じく中国企業の中興通訊(ZTE)のサービスおよび製品の利用を禁じており、それに対してファーウェイは「裁判もなく特定の企業に制裁を科すのはアメリカ憲法違反にあたる」と主張する見込みだという。

 ファーウェイはアメリカ本社のあるテキサス州の裁判所に提訴するようだが、確かにファーウェイは中国企業であるものの、アメリカ本社はアメリカ企業であり、アメリカの国内法で守られるべき存在になる。判例としては非常におもしろい裁判になる可能性があるが、国防権限法は議会が定めた法律であり、政府はそれに従い行政を行っているにすぎない。そのため、ファーウェイの動きはアメリカ政府と議会のさらなる反発を招く可能性が高い。

 また、国防権限法は安全保障に関する法律であり、国民の安全を守るという国家の最大の責務と主権に関する法律である。世界貿易機関(WTO)でも安全保障に関する問題は例外条項とされており、安全保障を理由に国際貿易などを制限することが許されている。

 この問題を考える上では、法原則としての「統治行為論」が大きな意味を持つことになるだろう。これは「国家の重要な政治的判断は司法による法解釈の枠外である」という考え方で、簡単に言えば「国がなくなればその国の法律は無意味になるので、司法の判断の枠外である」というものだ。日本でも、過去に自衛隊違憲訴訟などで適用されている。

ファーウェイをいつでも潰すことができる米国

 ファーウェイといえば、副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟被告がカナダで拘束されており、アメリカは身柄の引き渡しを求めている。カナダ司法省は3月1日に身柄引き渡しの審理開始を決定しており、6日には孟被告が出廷する予定だ。

 孟被告と法人としてのファーウェイは1月にアメリカ司法省に起訴されているが、その理由はイランへの金融制裁違反と銀行詐欺(銀行を騙しての不正な送金)、さらにTモバイルに関する産業スパイの容疑であり、問題はそれらが誰の指示で行われたのかである。

 孟被告単独の可能性は低く、中国人民解放軍出身の創業者で孟被告の父でもある任正非最高経営責任者(CEO)や中国政府および軍の関与も指摘されている。アメリカとしては、事実上の終身刑もあり得る刑罰の軽減または免責と証人保護プログラムの適用を引き換えに、孟被告にすべてを吐き出させたいはずだ。そして、仮に孟被告が任CEOや軍の関与を認めれば、ファーウェイ問題は次のステージに移ることになるだろう。

 ちなみに、今回の容疑は金融制裁違反であるため、アメリカとしては大統領令でファーウェイをセカンダリーボイコット(二次的制裁)の対象として「SDNリスト」(アメリカの経済制裁の対象となる人や国、法人のリスト)に入れることができる。そうなれば、ファーウェイはアメリカとの取引がある世界中の銀行の口座が凍結され、一切の金融取引が禁じられる可能性もあるわけだ。いわば、アメリカはドナルド・トランプ大統領の判断ひとつでファーウェイをいつでも潰すことができるといっても過言ではない。

 ただ、現在のファーウェイのシェアを考えた場合、そうなれば世界中で通信に支障が出る可能性があり、同時にアメリカが悪者扱いされることも考えられる。そのため、通信規格の世代が変わるタイミングで、まずは「5G」市場から排除し、影響が緩和されたところで一気に締め付けるという方策が現実的だ。

 任CEOはすでにBBC(英国放送協会)のインタビューで「アメリカに押し潰されるなどあり得ない」などと語っており、アメリカに対して徹底抗戦の構えを隠していない。いずれにせよ、一連の動きによって、ファーウェイとアメリカは全面対決の様相を呈してきた。

 一方で、中国は拘束中のカナダ人2人について「国家機密情報の窃取に関与していた」との見方を示すなどカナダへの圧力を強めており、今後も中国およびファーウェイとアメリカの対立はエスカレートしていくだろう。そして、それは米中の貿易協議にも大きな影響を与えると思われる。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】ファーウェイは生き残れるかもしれないが、中国共産党はいずれ崩壊することに(゚д゚)!

18年にファーウェイ問題が騒動になってから、それまでメディアにあまり登場していなかった創業者の任正非CEO(最高経営責任者)や同社幹部などがたびたびメディアの取材に応じています。その中で、ファーウェイ側は米政府による指摘について、ことごとく否定していました。

しかし、彼らの疑惑に対する回答は「玉虫色」だと言わざるを得ないです。例えば、梁華会長は2月12日、カナダのトロントで記者の質問に応じ、「中国政府から外国の通信網へのバックドア(裏口)設置を要請されたとしても、法的に義務がないことを理由に拒否する意向を示した」といいます。また、「そうした要請をこれまで受けたことはないが、要請があったとしても拒否するだろうと話した」と報じられています(ブルームバーグ、2019年2月22日付)。

ちなみにバックドア(裏口)とは、攻撃者が自由に不正アクセスできる、システムの“裏口”を指します。

ただこの話はバックドアに限定した話であり、政府からの情報提供の要請に応じないとは言っていません。というより、中国企業には応じないという選択肢はありません。

中国には、17年に施行された「国家情報法」という法律が存在します。この法律は、民間企業も個人も政府が行う情報活動に協力しなければならないというものです。中国政府からの「バックドア設置の要請」は断れば、情報提供を断ったことになり、法律違反になるのです。

さらに言えば、サイバー空間のスパイ工作で情報を盗むのは、バックドアを設置しなくてもできます。情報を盗む術はいろいろと考えられるのです。任正非CEOは、「良い製品を作れば売り上げの心配をする必要などない……買わないなら向こうが損するだけだ」と自社の技術力に自信を見せていますが、その技術力をもってすれば、情報を抜く手段はバックドアを設置せずとも十分に可能です。



もっとも、過去には実際に、ファーウェイ製品から情報が抜かれていた話も出ています。17年には、エチオピアに拠点を置くアフリカ連合(AU)本部のコンピュータシステムから、過去5年にわたって、毎晩、真夜中の0時から2時の間に機密情報が上海に送信されていることが判明しました。このシステムは、中国政府がファーウェイ製の機器やケーブルなどを使って設置したものでした。

また14年には、オーストラリアの大手企業が、会社のネットワークからファーウェイ製品を介して不正にデータが中国に送られていることに気が付いたという事件がありました。それ以降、オーストラリアでは政府関係機関や大手企業などでファーウェイ機器を使わないよう情報を通達しました。

こうしたスパイ工作についても、ファーウェイの任正非CEOや幹部たちは反論しています。そして、ファーウェイが中国政府のスパイ工作に加担しているという指摘について、米国は何ら証拠を示していないと主張しています。「盗んでいる証拠を見せろ」ということです。

ファーウェイの任正非CEO

この点について、米国側の見方はどうなのでしょうか。実のところ、米国はスパイ行為を証明する必要はないと考えていいます。

そもそも必要とあれば、国民の代表である議会議員らが連邦議会の委員会できちんとした捜査を行うことになります。現状、米国内では、その必要性すら議論されていません。過去にファーウェイが米国のメーカーなどから機密情報を盗んできた証拠もあるし、それはファーウェイ側も否定しないはずです。そんな背景からも、米国側に言わせれば、今のところスパイ工作や中国政府とのつながりを証明するまでもないのです。

さらに付け加えれば、もし米国が新たにファーウェイによるスパイ工作などのハードエビデンス(動かぬ証拠)を持っていたとしても、それが米国側から中国に対するサイバー攻撃やハッキングなどで得たものならば、公表はできるはずがないです。それ自体が、機密作戦だからです。

そもそもサイバー攻撃は、それが行われた事実を具体的かつ決定的に証明するのが難しいです。真実はどうであれ、中国政府は自らの関与を否定することができるのです。また、米国が公の場で中国の責任を問い詰めるためには、自国政府の機密やサイバー上の能力を露呈しなければならなくなります。その犠牲を払ってまでアメリカが中国政府を責めたてるとは考えられないです。


一方で、こんな声もあります。ファーウェイ自身が、同社製品には何ら怪しいことはないと証明すべきではないか、と。

例えば、16年に韓国サムスン電子製スマホである「Galaxy Note 7」が火を噴いた事件を覚えているでしょうか。当時サムスンは、その大打撃から挽回するために、客観的に調査を行う外部の専門家を雇い、徹底した内部調査を開始。その結果を広く公表することで、自社製品の安全性を訴えました。さらに、欧米などのさまざまなメディアをバッテリー工場に招き、取材もさせました。そうすることで、安全性と再発防止に向けた意思を対外的にアピールしました。

ファーウェイも本部で開催する記者会見にメディアを呼ぶだけでなく、きちんと情報を開示するなどして「後ろめたいことはない」ということをアピールすべきでしょうか。

通信機器を販売する米シスコも、機器にスパイ工作用のチップが埋め込まれているという疑惑が出たことがありましたが、シスコ側は、消費者にシスコ製品を購入して徹底的に調べてほしいと訴えました。しかも調べるために購入した代金は、シスコが負担するとまで言ったのです。ファーウェイもここまでコケにされたら、口だけでなく、疑いを晴らすべく行動すべきです。


こうしたさまざまな議論が交わされている中、トランプ大統領がまた予想外の動きを見せているとして話題になっています。トランプは、ファーウェイ排除について「見直し」を示唆しているとも報じられています。協議中である米中の貿易交渉を意識してのことのようです。

そもそも、米国がファーウェイを排除することは何ら「異常なこと」ではありません。というのも、中国政府も米IT大手のFacebookやTwitterなどを利用できないようにして米大手企業を実質的に中国市場から排除しています。ファーウェイ排除も、要はお互いさまなのです。

ではトランプは「見直し」をする可能性があるのでしょうか。そのヒントは、中国通信機器大手・中興通訊(ZTE)のケースにあるかもしれません。

米政府は18年4月、対イラン・対北朝鮮の制裁に関連する合意にZTEが違反したとして、米国企業にZTEとの取引禁止措置をとりました。これによって、半導体など基幹部品を調達できなくなったZTEは、スマホなどの生産ができなくなってしまいました。

追い詰められたZTEは、習近平国家主席に泣きつき、トランプへの口利きを要請。結局、ZTEはトランプに屈して、10億ドルの罰金を支払った上で、今後10年間、米国の内部監視チームを入れることにも合意しました。

おそらく、ファーウェイもこのくらいまでしなければ、トランプに排除を撤回させることは難しいのではないでしょうか。


ここまで見てきたような動きに加え、メディアでは、中国がニュージーランドとの貿易などで輸出を遅延させているという話が浮上したり、中国がオーストラリアからの石炭輸入を禁止にするという話も出てきたりしています。

ニュージーランドもオーストラリアも5G(第5世代移動通信システム)でファーウェイ製品を排除する方向で動いており、中国による報復措置だとする向きがあるのです。事実なら、やはり中国政府はファーウェイの後ろ盾になっていると示しているようなものです。

ちなみに英国でも、情報機関がファーウェイ製品について「リスクは管理可能」だと述べていることが話題になっています。ただし、英政府はファーウェイ製のスマホなどは禁止にしないかもしれないですが、通信機器やルーターなどインフラに絡むものは禁止していくことになるでしょう。

そもそも、英国のHSBCが 窓口となった資金洗浄とイランへの不正輸出のかどで、ファーウェイの孟晩舟副社長がカナダで拘束され、取り調 べが済み次第、米国へ移送される手筈、米国で訴訟が待っているわけです。これまでに判明している事実経過は、送金に利用された HSBCが司法取引に応じて、確固たる資料を提供していたことです。

孟晩舟は「わたしは関与していない。無罪である」と主張を繰り返していますが、HSBCでファーウェイが架空取引の口座 として使用していたのが「スカイコム」と「カニュキラ・ホールディング」という二つのペーパーカンパニーでした。

ファーウェイが1590万ドルを「カニキュラ」に貸与して、一年後に返金されている事なども口座取引の記録から判明して います。

両口座はHSBCにより閉鎖され、その残金がファーウェイに戻されていました。「スカイコム」は、イランのパートナーを通 じて、HP(ヒューレット・パッカード)のコンピュータを1500万ドルで売却していました。

こうした不正行為が発覚したのが2010年で、HSBCは司法取引に応じて19億2000万ドルを米司法省に罰金とし て 支払い、同時にファーウェイとの銀行取引をやめ、口座を閉鎖しました。

1500万ドルの不正送金で、19億ドル余の罰金とは、なんと間尺に合わないことなのでしょう。おそらく水面下の余罪は、巨 額にのぼるでしょうが、米国の裁判で、そのような機密口座の資料が公開される可能性があります。

HSBCの内部調査資料では、ファーウェイとスカイコム、さらにはファーウェイが2007年にスカイコムを売却したとする相手企業のカニキュラ・ホールディングスとの関係について新たな情報を提供しています。3社ともかつてHSBCに口座を保有していました。

資料によると、スカイコム株売却を報告してからかなり後も、ファーウェイがスカイコムとカニキュラ両社の経営権を握っていたと示唆するような関係性があったことが調査で明らかになっています。また、カニキュラによるスカイコム買収に対してファーウェイが資金を融通したことも発覚しました。

こういった関係があったにもかかわらず、孟CFOはHSBCの幹部に対するプレゼンテーションで、スカイコムはイランでの「ビジネスパートナー」だと説明。司法省起訴状では、このプレゼンテーションは「多くの事実を曲げて伝えていた」とされています。

ファーウェイは、今後も米国を批判し、安全だと主張し続けて潰れる道を選ぶのでしょうか、もしくは透明性を高め安全性を客観的に証明して生き残りの道を選ぶのかいずれかの道を選ばなければならないのは間違いないです。


ファーウェイは生き残りを模索できるかもしれませんが、中国共産党はそうではないかもしれません。

孟晩舟被告が米国で、司法取引に応じて、中国政府の関与について証言することになれば、中国のメンツは丸つぶれになり、米国と中国の対立はさらにエスカレートすることになります。

私は、トランプ大統領のファーウェイ排除について「見直し」を示唆したことは、孟晩舟被告の司法取引に関係していると考えています。ファーウェイを完璧に排除ということになれば、孟晩舟被告は司法取引に応じない可能性もあります。

トランプ大統領というか、今や米国の考えでは、一企業であるファーウェイを潰すことに大きな意味はないです。それよりも、その背後にあり、ファーウェイを操っている中国共産党をどうにかしたいのです。

米国は、孟晩舟被告の司法取引を機に、中共の卑劣な情報技術の窃盗の実態を明確化し、その後に中国に対する制裁を強化しようとしているのです。

米政府は中国が本格的に構造改革を実行して民主化、政治と経済の分離、法治国化を推進するか、中国がそれを拒否すれば、中国に対しても北朝鮮に実行しているような本格的な制裁を課すことになるでしょう。

それは、中国経済が弱体化して、他国に対して影響力が行使できなくなるまで続くでしょう。その過程において、無論中国共産党一党独裁体制は崩壊することになります。


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2018年12月9日日曜日

機密戦争勃発! 米英が中国駆逐へ、ファーウェイ&ZTEの5G覇権“徹底排除” 識者「中国通信分野の『終わりの始まり』」―【私の論評】現代のコミンテルン、中国の5G世界制覇を阻止せよ(゚д゚)!

機密戦争勃発! 米英が中国駆逐へ、ファーウェイ&ZTEの5G覇権“徹底排除” 識者「中国通信分野の『終わりの始まり』」

トランプ氏(右)と習近平氏の戦いが本格化してきた   写真はブログ管理人挿入

 ドナルド・トランプ米政権の主導で、世界各国で中国IT企業を締め出す動きが加速化している。背後には、中国製通信機器などを通じて、政府や軍事、企業の機密情報が盗まれ、共産党独裁国家が「軍事・ハイテク分野での覇権」を握ることを阻止する、強い決意がありそうだ。米国で今年8月に成立した「国防権限法」と、機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」の存在とは。中国排除の動きは民間企業にも広がりつつある。

 カナダ西部バンクーバーの裁判所は7日、中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の創業者の娘で、同社副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟容疑者の保釈の可否をめぐる審理を開いた。

孟晩舟容疑者

 カナダ検察当局は、孟容疑者が2009~14年に子会社のスカイコムを利用して、米国がイランに科している制裁を逃れた疑いがあると指摘。有罪なら禁錮30年以上の刑が科される可能性があるとした。

 今回の逮捕劇が、単なる「イラン制裁逃れ」で終わらないことは、世界中が認識している。

 ファーウェイの創業者は人民解放軍出身の任正非・最高経営責任者(CEO)であり、同社は「完全否定」しているものの、中国政府や情報当局との密接な関係が指摘されてきたからだ。

任正非

 中国の習近平国家主席は、国家戦略として「中国製造2025」を掲げている。米国の最先端のハイテク技術などを吸収して、25年までに中国を製造強国にするもので、トランプ政権は「中国の軍事的覇権に拍車をかける」と警戒している。

 米国が、この「ハイテク技術吸収の先兵」と受け止めているのが、ファーウェイであり、同じく中国通信機器大手「中興通訊(ZTE)」なのだ。中国が、第5世代(5G)移動通信システムで世界の主導権を握ろうとすることを断固阻止する構えといえる。

 トランプ大統領は今年8月、「近代史において、最も重要な投資だ」と語り、国防権限法案に署名し、同法が成立した。この法律は、ファーウェイやZTEなど、中国IT5社を「米国の安全保障上の脅威」と名指しし、米政府機関や米政府と取引のある企業・団体に対し、5社の製品を使うことを禁止している。

 まさに、「米中新冷戦」の一環であり、孟容疑者の逮捕は、米国による「事実上の宣戦布告」と受け止められなくもない。

 この「中国ハイテク排除」の動きは、米国の同盟国中心に広がっている。特に注目されるのが、米英両国を中心に情報機関の相互協定を結び、最高の機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」(米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の存在と動きだ。

 英秘密情報部(SIS、通称MI6)のアレックス・ヤンガー長官は3日、孟容疑者の逮捕が公表される前に行った講演で、「われわれの仲間が行っているように、中国政府と密接な関係にあるファーウェイの次世代高速通信システム(=5G)に依存すれば、情報網を危機にさらす危険がある。とりわけ軍事関連の通信を傍受されれば、戦略が筒抜けとなって安全保障上の脅威となる」と述べていた。

アレックス・ヤンガー長官

 米国とオーストラリア、ニュージーランドでは、すでにファーウェイ排除の動きが進んでいる。英国の通信大手グループも、5Gについてファーウェイ製品排除の方針を表明した。孟容疑者はカナダで逮捕された。

 日本は2013年に特定秘密保護法が成立したことで、米国などから防衛やスパイ、テロなど、安全保障に関わる機密情報が入るようになってきた。日本政府も7日までに、ファーウェイやZTEの排除方針を決めた。将来の「ファイブ・アイズ+1」もありそうだ。

 中国情報に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏は「中国共産党は、ファーウェイとZTEを競争させながら、世界の覇権を握ろうとしている。これに対し、ファイブ・アイズを中心に『中国が、世界の移動通信システムの拠点を握ることを絶対に許さない』という強い方針がある。5Gの覇権を握られたら、政府の機能がダウンするぐらいのことをやられる可能性もある。いまや、『自由主義陣営vs中国共産党』という構図になっている。自由主義陣営は本気になり、不退転の決意で動いているだろう。中国の通信分野での『終わりの始まり』が見えてきたのではないか」と語っている。

【私の論評】現代のコミンテルン、中国の5G世界制覇を阻止せよ(゚д゚)!

すでにアメリカでは、8月の国防権限法の成立によって、米政府機関および米政府と取引がある企業でのファーウェイとZTEの機器の使用が禁じられるようになりした。ファーウェイの携帯にはバックドアが組み込まれ、個人情報が抜かれていることが明らかとなったからです。

トランプ大統領の安全保障チームは、今年1月に3年以内に政府による5Gのネットワークの構築を検討するとしていました。中国の諜報活動に対抗するために、AT &T、ベライゾン、Tモバイルなどのモバイル通信会社の仕事を引き継ぐ形で行うといいます。

危惧されるインフラへのサイバー攻撃

日本政府は、日本の通信インフラに与える影響を考慮して、ファーウェイやZTEを規制すべきだが、対応は後手に回っています。

一方、アメリカは、議会を中心に着実な手を打ってきました。

最終的には外国投資委員会(CFIUS)によって阻止された3Comに対する買収案件に見られるような、ファーウェイの技術獲得を疑問視した米議員は、徹底的な調査を開始。6年前の2012年、米下院情報委員会は、その調査に基づく詳細なレポートを発表しています。

このレポートにおいて、とりわけ危惧されているのが、送電網など重要な社会基盤(インフラ)の通信を握られることです。

海外での事業収益が全体の6割を占めるファーウェイは、アメリカでの国防権限法の成立直前に、ロビー活動を展開。アメリカからファーウェイを排除すれば価格競争の制限となるため、消費者が不利になり、かつ、イノベーションも妨げると主張しました。

ところが、「安ければいいだろう」ということで、送電網にファーウェイの機器が使用されている場合、電気、ガス、金融機関、水道や鉄道など、サイバー攻撃を簡単に仕掛けられる危険と隣り合わせになります。9月に北海道で起きた地震の際の「停電パニック」を、中国は簡単に引き起こせるということです。

アメリカが国防権限法に基づいて成立させた対米投資強化法において、重要なインフラへの投資も規制の対象とするなど、商業の論理より、安全保障を優先したのはこのためです。

国防権限法成立以前の2017年12月、米上下両院の情報委員会のメンバーである議員がFCC(米連邦通信委員会)を通じ、AT&T社がファーウェイの携帯を顧客に提供することを断念させています。私企業の事業計画を、国民の安全保障を理由として変更させた事例として参考になります。

監視カメラ産業に群がる投資家たち

また、次世代の大容量通信を可能にする5Gが、監視カメラの顔認証技術などと結びつけば、監視社会がより一層強化されます。

現在のところ、中国政府は2020年までに6億2600万台の監視カメラを設置する予定です。

監視カメラの技術で有名なのが、中国のハイクビジョンとダーファ・テクノロジー。この2社で世界の監視カメラ市場のシェアの4割を超えます。

ハイクビジョンは、中国の治安当局に対し、「少数民族に属するかどうか」を判定する技術があるとして自社の製品を売り込んできました。新疆ウイグル自治区のウルムチで、3万台の監視カメラを設置する計画を受注するなどし、昨年だけで売上を30%伸ばしています。

ハイクビジョンに関しては、株式の4割を国有の軍需企業のCETCが保有するなど、中国共産党と密接な関係がある企業。2018年4月に米インテロス・ソルーションズが公表したレポートでも、ファーウェイやレノボとともにアメリカが警戒すべき企業の一つとして挙げられています。

しかし金融業界は、倫理的なリスクのある中国のテクノロジー企業を「買い」だと推奨し、間接的に一般の投資家たちを中国の人権弾圧に加担させています。投資家たちも知ってか知らずか、「人種主義」の片棒を担いでしまっているのです。

日本に目を転じれば、ソフトバンクがファーウェイと5Gの実証実験を行い、中国の5Gの規格化に手を貸しています。だがファーウェイが次世代通信規格の開発に成功すれば、ウイグル人等の弾圧、中国人の総監視社会の完成を間接的に支援することになります。

監視カメラと5Gがつくる全世界監視

それだけでないです。中国は、スマートシティを国内で構築し、そのネットワークを巨大経済圏構想「一帯一路」の沿線地域である東南アジアなどに輸出します。つまり中国の5G戦略は、中国の監視モデル体制の世界への輸出でもあるのです。

これは現代版コミンテルンともいえます。1919年にレーニンが発足させた共産党の国際組織であるコミンテルンは、全世界の共産主義化と全世界同時革命をその使命としました。実際大東亜戦争中には、米国の中枢、そうして日本の中枢にもソ連のスパイであるコミンテルンが深く浸透していて、日米戦争のきっかけを工作しました。現代は、それが5Gや監視カメラ、AIの技術によって可能となるのです。

第5回コミンテルン(共産主義インターナショナル)のプラカード。
1924年6月17日-7月8日 モスクワで行われた。

中国のスパイ進出の先進国ともなったオーストラリアでは、ファーウェイに対し、次世代通信規格である5Gを使った同国の無線ネットワークへの参入を禁止しました。第4世代(4G)では、5割超の通信設備にファーウェイを採用しているのにもかかわらず、です。

日本は中国の5G覇権を迎え撃つ戦略を持て

イギリス、オーストラリア、さらにロシアでも規制に向けて動き始めている。

10月12日付のロイター紙のスクープによると、中国の海外投資や国内工作に対抗するために、年初よりアングロサクソンの国際諜報同盟「ファイブ・アイズ」に日本とドイツとを加え、情報が共有されているといいます。

アングロサクソン圏では、早くから対中包囲網の構築の必要性が共有され、そこに日本もドイツも加わってほしいという要請があったと見て良いでしょう。

ところが、日本にはスパイ防止法がないために秘密保全の措置がまだ不十分です。一刻も早くスパイ防止法を制定する必要があります。

さらに中国のサイバー攻撃から国民を守るためにも、中国製の監視カメラや次世代通信規格を日本の産業から排除すべきです。

先にも述べたように米通信大手AT&TはFCCの警告を受け、ファーウェイの携帯を顧客に提供するのを断念しています。日本も、「国民の安全」を守るために、政府が私企業の事業計画を変更させることも視野に入れるべきです。

日本は、来年からポスト5G の研究開発に乗り出すといいます。欧米諸国と協調しつつ、6Gで中国を迎え撃つ戦略が急務となります。

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2018年9月5日水曜日

統一選前に台湾で政治不信増大 中国共産党もアプローチに困惑―【私の論評】台湾に限らず、日本も含めてアジアの政治家はマクロ経済政策を疎かにすべきではない(゚д゚)!

統一選前に台湾で政治不信増大 中国共産党もアプローチに困惑

民進党党首蔡英文氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 台湾の政治が迷走している。

 今年11月24日、台湾では統一地方選挙(「九合一」)が行われる。投票まで100日を切ったとあって、メディアの報道も熱を帯びているので、ここで一度触れておこうと思う。

 ただ、取り上げようと思う反面、気になるのが、肝心な台湾の有権者の政治への関心が一向に高まっていないことだ。

 その理由は、有権者の“政治離れ”に歯止めがかからないからである。

 中国との関係で政策が対立する台湾では、台湾独立の受け皿となる与党・民主進歩党(民進党)と大陸との統一を掲げる国民党という二大政党の対立の構造が定着している。

 互いに象徴するカラーを定め、民進党の緑に対して国民党が青。有権者の選択はずっと、緑か青かという単純なものであった。

民主進歩党(左)のシンボル・カラーは緑、国民党(右)のそれは青

 しかし、ここにきて顕著になりつつあるのが緑にも青にも「ノー」という空気である。いわゆる「無色」勢力の伸長と呼ばれる傾向だ。

 いったいなぜこんなことになったのか。

 日本では、台湾の選挙といえば、緑か青のどちらが勝ったかで、台湾の人々の対中国観をはかろうとするのだが、対外政策が選挙の中心に来るケースは極めて稀で、実際はそうではないことの方が多い。

 では、人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善である。

 その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられた。

 だが、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいだろう。

 そのことは各種の世論調査に顕著だが、その一つ、台湾民意基金会の調査結果によれば、7月の政党支持率は、民進党が25・2%、国民党が20・7%だった。

 2016年に行われた同じ調査では、民進党への支持が51・6%であったことを考慮すれば、緑に対する失望の大きさは明らかと言わざるを得ない。

 ちなみに国民党の支持率は18・9%だったので、2ポイント程度伸びた計算になるが、民進党が失った支持を取り込めたとはとても言えないのが現実である。

 緑と青に代わって拡大したのは無党派で、49・6%となった。

 焦った民進党は選挙を前に慌てて基本月給や時給を引き上げる政策を打ち出したが、効果を期待する声は少ない。

 台湾住民の貯蓄率はずっと下降傾向にあるが、昨年は過去5年間で最低になるなど、家計の厳しさを示す数字は枚挙に暇がない。

台湾の個人消費の伸び率


 だが、繰り返しになるが国民党にも決め手がない。かねてから指摘される人材不足と内紛で満身創痍状態だからだ。

 興味深いのはこうした台湾の状況に中国共産党も戸惑っていることだ。

 かつて民進党の支持基盤の南部の農家から果物を“爆買い”して揺さぶりをかけたり、観光客を制限して蔡政権のプレッシャーをかけてきたが、いまは何処に向けて何を発して良いのか分からなくなっているという。

 なんとも皮肉な話だ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

【私の論評】台湾に限らず、日本も含めてアジアの政治家はマクロ経済政策を疎かにすべきではない(゚д゚)!

上の記事を読んでいると、民進党も、国民党も結局のところマクロ経済音痴なのではないかと思います。上の記事を書いている富坂氏もマクロ経済音痴なのではないかと思ってしまいます。

なぜなら、富坂氏も台湾のマクロ経済には全く触れないからです。こういう人は、なぜかアジアに多いです。一国の経済が、マクロ経済政策すなわち、政府の財政政策と中央銀行の金融政策に全く関わりがないなどということはありません。

それどころか、大きく関与しているというか、国の経済対策といえば、財政政策と金融政策であり、それが大部分を占め、ミクロ政策などは国にとってはあまり関係のないことです。

この基本中の基本を、民進党党首蔡英文も国民党党首呉敦義氏も、理解していないのではないかと思われます。さらには、民進党や国民党の議員のもこれを理解していないのではないかと思われます。

なぜそのようなことを言うかといえば、台湾の経済対策などみていると、どうもマクロ的な政策はみあたらず、ミクロ的なものばかりが散見されるからです。

2016年に馬英九総統に代わり、蔡英文氏が台湾総統として就任しました。

蔡政権の経済政策として特徴的なのは、「新南向政策」です。これは、蔡総統就任後の2016年に打ち立てられた政策で、経済発展が著しいASEAN10ヵ国、南アジア6ヵ国、オーストラリアとニュージーランド、計18ヵ国との関係を強化し、台湾の経済発展を目指すといった政策です。この政策では、下記4つの軸を主軸として、経済成長を目指すとしています。

(1)経済貿易協力
(2)人材交流
(3)資源の共有
(4)地域の連携


経済貿易協力では、ターゲット国のインフラ建設協力や、スマート医療、IoTシステムの輸出、さらにはEコマースでの台湾製品の発信、教育やヘルスケア分野での輸出の推進を目指しています。

人材交流では、専門性の高い人材を育成・交流を図るとしています。具体的には、台湾の大学の海外分校の設立、台湾専門のクラスの設立をすることで、台湾の専門家の育成の強化を目指します。また、交流促進の為にビザ申請等の手続きを簡素化する計画があります。

台湾で働いている外国人専門家や技術者には、評価制度を設け、一定の基準を満たした場合にビザの延長許可措置が可能になる施策も盛り込まれています。

資源の共有では、文化や観光、医療等のターゲット国の生活の質向上を目指すとしています。

文化面では、メディアやゲームを利用した台湾のブランディングの向上、観光分野では、ターゲット国からの旅行者へのビザ規制緩和、医療分野では、医薬品の認証、新薬、医療機器の開発の協力を目指しています。

最後に地域の連携では、ASEANやインドとの経済連携協定締結を積極的に図るとしています。これにより、台湾からのターゲット国への投資を期待しています。また、南アジアへの進出も第三国との連携で目指すとしています。

結局、貿易を伸ばして経済成長しようということであり、国の経済の基本である、財政政策や金融政策について具体的には何の方針もありません。

金融緩和というと、蔡英文氏は貿易に何の関係もないと思っているのでしょうか、仮にいずれかの国への貿易を増やそうとして、いくら人材育成や資源の共有、地域の連携などミクロ的な努力を重ねたとしても、台湾の中央銀行が金融引締めばかりしていて、貿易相手国が徹底的に金融緩和をしていたとしたらどうなるでしょうか。

結局台湾元高になってしまい、いくら努力をしたとしても貿易では不利になってしまいます。しかし、だからといって、今度は台湾中央銀行が金融緩和に走ったとして、際限なく金融緩和を続けたとすれば、今度は台湾国内が過度のインフレになってしまいます。

そんなことにならないように、様々な方法を駆使して、金融緩和で貿易では不利にならないように、国内では、インフレが過渡に進行しないようにしなければなりません。

この仕事を行うのは、無論台湾中央銀行ですが、それにしても方針・目標は台湾政府が定めなければならないです。

また、いくら貿易に力をいれるからといって、国内をおろそかにするわけにはいきません。国内では、まともな財政政策を実施して、経済成長を実現する必要があります。

財政政策の目玉としては、2017年に台湾政府が定めた「前瞻(せん)基礎建設計画」では、次世代インフラの建設を行うことで、投資の強化を目指しています。具体的には、

(1)風力発電や太陽光発電等のグリーンエネルギー
(2)ネットやITインフラ
(3)治水、水供給等の環境インフラ
(4)高速鉄道や台湾鉄道の高度化、都市MRT等の鉄道インフラ
(5)駐車問題の改善、道路の改善等の都市・農村インフラ


を挙げています。その中でも特に金額的に大きいのは、鉄道インフラの整備となっており、訪台した観光客や現地の住民の生活の高めることを優先としていることが考えられます。

台湾の経済対策なるものは、貿易振興のための投資計画がほとんどのようです。これによって、確かに経済が良くなることは良くなりますが、あまりに投資にばかり頼ると、クラウディング・アウトに見舞われることもあります。

クラウディング・アウトとは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されることをいいます。

公共投資と、同じ財政政策でも減税や、給付金などは大規模に行ってもクラウディング・アウトがおこることはありません。

減税、給付金といっても、盲滅法に行うのではなく、その時々で最も効果の上がりそうなものを選択して行う必要があります。これを行うのが、日本でいうところの財務省ですが、それにしても目標は政府が定めなければなりません。

さらに、財政政策、金融政策など、いずれの手法をとっても、効果が出てくるまでにラグがあり、このラグも考慮しながら、財政政策と金融政策をうまく組み合わせていく必要があります。

それに、金融政策は雇用政策でもあります。インフレ率を数%あげると、日本や米国では、それだけで他に何もせずとも、一夜にして数百万の雇用が生まれます。台湾では、人口のなどの規模が違うので、ここまではとはいわずとも、雇用が大量に生まれることには変わりないです。

などと、いろいろと述べましたが、台湾経済そのものは、さほど悪くはないものの、かなり良いとか、かなり伸びているともいえるような状況ではありません。それについては、みずほ銀行の資料にうまくまとめられているので、そちらをご覧になってください。以下にリンクを掲載します。
台湾経済の現状と展望2018年6月
 ただし、台湾の経済政策は上記にあげたように、貿易によって成長しようとしているようです。しかし、その前にマクロ経済政策によって内需拡大をすべきです。マクロ政策によって前途有望であると思われるような、政策を打ち出していないので、上滑り観はまぬがれず、台湾の国民は納得していないのでしょう。それは、国民党も同じことなので、国民の政治離れが進んでいるのでしょう。

それにしても、米国の経済対策など、政府は必ず財政政策や金融政策などをあげるのが常識ですが、日本をはじめとして、アジアの国々ではそうではありません。無論米国の場合は、世界経済に影響を与えるほど、米国の国内事情は重要です。だからかこそ、米国内のマクロ経済に関しては政府も公表する姿勢を貫いているのでしょう。

しかし、米国とアジアでは経済対策が異なるなどということはありません。アジアの国々も、本来政府の経済対策といえば、まずはマクロ経済政策というのが正しいありかたのはずです。

日本も、金融政策、財政政策などを政府の方針としてあげたのは、安倍政権による3本の矢においてが初めてではなかったかと思います。

お隣の韓国では、朴槿恵政権はまともなマクロ経済政策を実行せず、文在寅大統領にかわってからは、金融緩和はせずに、最低賃金をあげるという政策を実施し、これは見事に失敗して雇用が激減しています。そうして、これは金融緩和等のマクロ政策には全く関係なく、とにかく再分配を重視すべきと主張する立憲民主党の枝野氏が主張する経済政策と同じものです。

文在寅韓国大統領

このようなアジアの国々実体をみると、やはりアジアの諸国にはそのような共通点があると思ってしまいます。

ただし、中国だけは例外かもしれません。中国の場合、とにかく経済が悪くなれば、積極財政で巨額の投資をする、それでも足りなければ、金融緩和策として巨額の元を刷り増すという具合で、景気が加熱すると逆に、緊縮財政と金融引締めに転じるという具合に、単純にマクロ経済政策を実行しています。

ただし、中国の体制はそもそも、民主化、政治と経済、法治国家化がなされておらず、様々な矛盾が蓄積しているのも事実です。そのため、結局自ら他国に対して貿易戦争を仕掛けたにも等しいことをしてしまい、最近では米国から本格的に貿易戦争を挑まれるという手痛いしっぺ返しを食らっています。

日本も、ふりかえってみれば、総裁選に出る石破氏も、経済対策に関してはマクロ経済対策はあげていません。希望の党の小池氏もマクロ経済対策はあげていませんでした。

日本では、多くの政治家には、マクロ経済政策などはないものと同じようです。自民党の政治家の多くも、経済対策というと公共工事のことと思っているようです。

このようなマクロ経済政策を無視するような台湾を含めたアジアの政治は、結局うまくいかないのは確かです。

日本でも、マクロ経済的にみれば悪手中の悪手がある10%増税を来年10月からそのまま実施してしまえば、経済が停滞するのは必定です。

もし、そうなれば、台湾のような政治不信に日本も見舞われることでしょう。さらに、まかり間違って、日銀が金融引締めにでも転ずることでもあれば、韓国のように若者雇用が最悪となることでしょう。

安倍総裁の3選は間違いないようですが、予定通りに10%増税を実行してしまえば、次の任期のときに、自民党内で本格的な安倍おろしがはじまるかもしれません。ただし、安倍さんに変わって誰かが総理大臣になったとしても、まともなマクロ経済対策を実行しなければ、短命政権に終わることでしょう。

その後どの党の誰が、総理大臣になったとしても、経済政策を根本的にあらためなければ、どの政権も短命で終わることになるでしょう。

それだけ、マクロ経済政策は重大事なのです。アジアの政治家はこれをおろそかにすべきではありません。

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