2018年4月7日土曜日

妄想丸出しで安倍政権の足引っ張るだけの政治家は市民活動家に戻れ ―【私の論評】本当に必要なのは財務省解体からはじまる政治システム改革だ(゚д゚)!

妄想丸出しで安倍政権の足引っ張るだけの政治家は市民活動家に戻れ 

ケント・ギルバート ニッポンの新常識


チャート、写真はブログ管理人挿入 以下同じ


 米国の民主主義の特徴は、共和党と民主党という二大政党が政権交代を繰り返してきたことだ。

 1853年以降に就任した歴代大統領は、全員が二大政党いずれかの所属である。上下両院の連邦議員や州知事、州議会議員なども、大半が二大政党に所属している。

 大戦後の70年余だけで、両党間の政権交代は9回起きた。1981年から93年まで共和党政権が12年間続いたが、米国では2期8年という大統領の任期満了時に政権政党も入れ替わる場合が多い。両党とも、米国の国益のために政権を担う。

 日本では、55年11月に自由党と日本民主党が保守合同し、自由民主党(自民党)が発足して以来、90%以上の期間は自民党政権だった。

 自民党総裁以外の人物が首相を務めた期間は、保守合同から今日までの62年5カ月弱のうち、計約5年9カ月、9%強に過ぎない。戦後の日本は自民党内の派閥間で事実上の政権交代を繰り返してきた。無責任野党が日本の国益を主張する姿を見た記憶がないから、当然の結果ともいえる。

 私は東京に80年から住んでいる。古い記憶をたどると、昔は「日本の政治は優秀な官僚が動かすから、誰が首相でも同じ」といわれていた。

 最近は、財務省や防衛省で公文書の改竄(かいざん)や隠蔽が発覚したり、座右の銘は「面従腹背」と公言する人が教育行政の官僚トップだった事実などから、官僚の非常識さが世間にバレた。

 2012年12月、自民党の安倍晋三総裁が、民主党から3年3カ月ぶりに政権を取り戻した。この政権交代後、多くの日本国民は、日経平均株価の上昇や失業率低下といった日本経済の好転と、G7サミットなど外交における安倍首相のリーダーシップを目撃した。

 安全保障法制整備や、国際組織犯罪防止条約(TOC条約・パレルモ条約)加盟など、重要案件を次々に成立させ、70年間1ミリも進まなかった憲法改正もいよいよ現実味を帯びてきた。もはや、「誰が首相をやっても同じ」と考える日本人は絶滅したはずだ。

 優先順位第1位が「憲法改正阻止」である無責任野党と左派メディアは、安倍政権にダメージを与えて退陣に追い込むことを狙っている。国防や外交、経済など日本の国益は彼らの眼中になく、まるで外国勢力の手先として行動しているかのようだ。

 やる気も能力もないのに、民主党時代に閣僚などを経験した人々は、政権与党の重責は割に合わないと考えたのだろう。政権奪還の意欲は感じられず、妄想丸出しで安倍政権の足を引っ張る活動に専念している。

 有権者の力で彼らを「市民活動家」に戻すことは、日本の国益と彼らの幸福につながる。

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】本当に必要なのは財務省解体からはじまる政治システム改革だ(゚д゚)!

米国の2大政党制について、その歴史を簡単にふりかえっておきます。建国期、連邦党と民主共和党が形成され、二大政党が並び立つ政党制度が始まった。しかし、連邦党はすぐに凋落し、二大政党制度を形成するに至りませんでした。1828年までは民主共和党の実質的な一党支配が続きます。

民主共和党の崩壊後、民主党とホイッグ党が実質的に最初の二大政党制度を成立させました。しかし、ホイッグ党は南北戦争以前に消滅しました。その代わりに共和党が出現し、今日のアメリカの民主党と共和党による二大政党制度に繋がっています。

これらの歴史をチャート化すると以下のようになります。


以下に米国の二大政党の特徴をあげておきます。

共和党

共和党は、主に、上中流階級、エリート、実業家、そしてプロテスタントのアングロ=サクソン系を支持基盤とします。

1854年に共和党が結成された時、共和党は奴隷制度の拡大に反対しました。1860年の大統領選挙でエイブラハム・リンカーンが当選するまで共和党の綱領は、ホームステッド法による西部入植の推進、国内開発事業、大陸横断鉄道の建設、保護関税、そして、奴隷制度の封じ込めなどを含むようになりました。1880年代、共和党は実業志向で社会的に保守的になり、そうした傾向は今日まで続いています。

19世紀後半の綱領の重要項目として、関税を通じてのアメリカの実業の保護、強力な通貨、低い税率、そして国際貿易の促進が掲げられました。19世紀後半から20世紀初頭の大統領職は主に共和党で占められました。

民主党がアメリカ政治を支配した1930年代から1940年代の後、1953年から1993年の40年間のうち28年間を共和党が支配しました。1968年にリチャード・ニクソンが大統領に当選し、共和党は連邦政府の権限を縮小して、州に権限を返すことを目的としたニュー・フェデラリズムを導入しました。

1980年、ロナルド・レーガンの当選で共和党は決定的な勝利を得ました。宗教的保守派、南部の白人、裕福な郊外居住者、そして、若年層の保守派は犯罪、ポルノ、薬物に対する厳罰化、妊娠中絶の反対、減税、防衛費の増大を支持しました。

概して共和党は実業の利益を支持し、防衛費を増大させ、宗教団体が主導する社会事業、社会保障の民間化、妊娠中絶の規制を支持します。1980年代から、妊娠中絶の反対と学校における祈祷の支持から宗教的保守派の支持を集めるようになりました。

民主党

民主党は主に、貧困者、低中流階級、人種的少数派、宗教的少数派、女性、そして労働組合を政治基盤とします。概して民主党の綱領は積極的な政府事業、公共部門、積極的差別是正措置、性と生殖に関する権利、同性愛者の権利、そして、銃規制を標榜します。

共和党の綱領では、強力な民間部門、実業と軍需の利益、銃を保持する権利、そして減税を標榜しています。概して共和党は積極的差別是正措置のような権利に基づく政策に消極的であり、福祉と政府主導の計画に歴史的に反対してきました。

1829年のアンドリュー・ジャクソン大統領の就任以来、ジェームズ・ブキャナン大統領が退任する1861年まで民主党は全国的の政治を支配しました。初期の時代、民主党は合衆国銀行に反対し、州権と奴隷制度を支持し、農民と地方の独立を尊重しました。

1860年に奴隷制度問題が民主党を分裂させた結果、何度か全国的な成功を収めることはありましたが、1932年にフランクリン・ルーズベルトが選出されるまで完全に力を取り戻すことはありませんでした。

19世紀後半のグローヴァー・クリーブランド大統領の下で民主党はより都市化し革新的になり、ウッドロウ・ウィルソン大統領、フランクリン・ルーズベルト大統領、ハリー・トルーマン大統領を通じて革新主義の立場をとりました。

民主党はフランクリン・ルーズベルト政権下でニュー・ディールを推進し、福祉国家への転換を目指しました。1960年代までに民主党は教育や都市再生といった社会的な分野で広範な政府の介入を支持しました。

さらに1980年代までに民主党は支持基盤を女性や黒人に拡大しました。さらに1990年代から2000年代にかけて、民主党はさらにヒスパニック系にも支持基盤を広げました。民主党はますますリベラルになり、強力な環境保護、積極的差別是正措置、同性愛者の権利、性と生殖に関する権利、銃規制、医療保険の拡充、そして労働者の権利を支持しています。

政治の継続性の原則

ただこのような民主党と共和党の違いは、より幅広い層の支持を集めるために不明瞭になっています。つまり、両党はともに中道寄りになる傾向を示しています。

実際、米国では二大政党間で政権交代があったにしても、6割〜7割は前政権と同じ政策をとります。政党の独自性を出すのは、残りの4割〜3割です。これは、政治の継続性の原則と呼ばれ、政権交代による政治的混乱を防ぐものとされています。

米国の政治というと、この二大政党制が注目されるのですが、政党の近代化が行われているということも注目すべきです。

政党の近代化

近代政党には、三つの要素があります。綱領、組織、議員です。そうして、米国の二大政党もこの要素に基づき、近代化されています。

まずは、明確な理念をまとめた綱領があります。綱領に基づいて全国組織が形成されています。全国の政党支部が議員を当選させます。その議員たちは政策の内容で競い合い、自由で民主的な議論で党首を決めます。

選ばれた党首は直属のシンクタンクとスタッフを有し、全国組織に指令を下します。この条件に当てはめると、自民党は近代政党ではありません。かつての政権与党であった民主党もそうでした。

無論、他の野党も、近代政党とは言い難い状況にあります。公明党と共産党は近代政党に近いといえますが、まともなシンクタンクを有してはいません。

自民党が有する最大のシンクタンクは官僚機構(実体は財務省主計局)ですが、米国の二大政党は官僚機構に対抗できるシンクタンクを自前で揃えています。 このシンクタンクは数も種類も多いです。そうして、このシンクタンクが様々な政策案を立案します。

このようなシンクタンクが充実しているので、官僚は政府の示す目標に従い、実行する手段を専門家的立場から、自由に選択して、政府の目標を達成するため迅速に行動することができます。執行に専念できるわけです。

米国では政党系シンクタンクが政策案を立案し政治家が決め、官僚がそれを実行する

日本のように官僚が政策や目標案を定めて、それを政治家が了承し、官僚が実行するというやりかたは良くないのはわかりきっています。会社で金を使う人が、金の管理をしていたらどういうことになるかは、はっきりしています。このようなことは元来すべきではないのです。

政治家は、このシンクタンクの政策案をもとに国会で発議し、法案を成立させます。さらに、自前でブレーンを用意して勉強した政治家だけが、党の出世階段を上ります。その時々で、政策案を選定するにしても、まともに選定するためには、選定能力が必要不可欠です。それには、論理的思考、水平的思考のほかに特に統合的思考が必要不可欠です。

企業の経営者や、政治家には特にこの統合的思考が重要です。これを欠いている人は、他の能力がいくら優れていたにしても、本来は経営者や政治家になるべきではありません。なれば、企業の従業員や国民が不幸になるだけではなく、自分自身が不幸になります。今の政治家をみていると、幸福で自信に満ちてい人は少ないように見受けられます。

政権交代があった場合には、負けた政党の政治家はシンクタンクに入り、次に与党となる時期を待ちます。その間は、シャドーキャビネットを築き、再び政権を担うを準備を行います。

このような準備をするわけですから、野党としても妄想などに基づいて、与党を批判することもあまりないわけです。

政治システムの改革が最大の課題

だからといって、米国政治が何から何まで良いとは申しませんし、米国では中には桁外れに悪い政治家も存在するわけですが、それにしても、第二次安倍政権の以前のように誰かが総理大臣になれば、すぐに総理大臣おろしがはじまり、短期政権に終わるとか、野党が万年野党で、政権を担う気概も何もないとかということは、さすがに米国においてはありません。

この違いは、個々の政治家の資質の問題ではありません。やはり本当に必要なのは、まずは政党の近代化などの政治システム改革ではないでしょうか。

確かに、妄想丸出しで安倍政権の足引っ張るだけの政治家には、問題があることは確かです。しかし、政治家の資質の問題にだけにしていても、何の解決にもなりません。

経営学の大家である、ドラッカー氏は「頻繁に同じような問題が起こり続けるときは、それは最早個々の人間の資質の問題ではなく、システムの問題である」としています。

ドラッカー氏

日本の政治も同じであり、本当に必要なのは政治システム改革であり、それなしにいくら政治家個々人を叩いても何の解決にならないと思います。とはいっても、政党の近代化など実現するためには時間もかかります。まずは、できることから始めるべきと思います。

それにはたとえば、単純な省庁再編などではなく、まずは財務省を解体すべきです。官僚が日本国の政策の目標を定めるのではなく、それは政治家が行うことを目指す、そうしていずれ政策案はシンクタンクにまかせるようにするのです。今は、まずは財務省の息の根を止めるべきです。

そのためには、財務省を単純に分割するのではなく、財務省をいくつかに分割した上で、各省庁の下部に編入するというやり方を採用すべきです。そうでないと、この省庁は、分割して他省庁につけると、他省庁を植民するという性癖があります。これを防ぎ、過去の大蔵省の悪いDNAの部分(計画立案と執行の両方を行うこと等)を根こそぎに消滅させるのです。

そこから日本の政治システム改革の夜明けがはじまります。そうして、政治システム改革をしたほうが、本当は官僚も執行に専念できて、仕事がやりやすくなるはずです。政策案を立案したい官僚は本来、シンクタンクのスタッフになるべきなのです。政策を定めたい官僚は、本来政治家になるべきなのです。

政策案の立案と、執行を両方とも実行するのは困難です。近代的な企業ではあれば、計画と執行は完璧に分離されています。企業ですら、商法や会社法などで、これは禁じられているにもかかわらず、政治の世界ではなぜか現在に至るまで許容されてきました。本当は困難なことを日本の官僚は日々実行しているのです。

そこから、様々な欺瞞や矛盾が出てきているのが、現在の姿なのです。これでは、日本の政治が永遠に良くなるはずはありません。官僚にとっても、政治家にとっても不幸なことです。そうして、最も不幸なのは国民です。

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2018年4月6日金曜日

安倍晋三首相、米皮切り相次ぎ首脳会談 北の包囲網突破許さず 「戦略描いたのは日本。置き去りではない」―【私の論評】アジアの平和と安定の脅威は日本のマスコミと野党(゚д゚)!

安倍晋三首相、米皮切り相次ぎ首脳会談 北の包囲網突破許さず 「戦略描いたのは日本。置き去りではない」


 安倍晋三首相は17日からの訪米を皮切りに、夏にかけて首脳会談ラッシュに突入する。狙いは、国際社会との対話に動き始めた北朝鮮が試みる包囲網突破の阻止だ。対北圧力路線の旗振り役として、非核化だけでなくミサイル問題の解決についても北朝鮮が具体的な行動を取らない限り圧力継続が重要と訴え、包囲網維持を呼びかける。同時に拉致問題の解決に向けた協力の確約取り付けも目指す。

 「米政府内には『シンゾーからトランプ大統領に言ってもらった方がいい』という声が多い。首相が発言することが多くて負担が重くなってしまう…」

 日本政府関係者は日米首脳会談を前にこう語る。自身のスタッフにさえあまり耳を貸さないトランプ氏だが、首相の話はきちんと聞くため、米政府も首相に頼っているのだ。


 今月の日米首脳会談はトランプ氏就任後、6度目となるが、日本側は「これまでで最も重要な会談」と位置づける。5月末までにトランプ氏と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の会談が予定されているからだ。

 首相はトランプ氏に対し、北朝鮮の「非核化」のあり方を具体的に説明し、核開発のための猶予を与えずに短期間で実行させる重要性についてクギを刺す。日本にとって脅威の中・短距離ミサイルの廃棄も不可欠であることをすり込む考えだ。拉致問題についてもトランプ氏から金氏に直接、解決を迫るよう要請する。

 米国と綿密なすり合わせの後、首相は日米連携をテコに韓国や中国、ロシアと対北包囲網堅持を確認する。特に韓国は日米と連携を取っているが、いつ中朝にすり寄ってもおかしくない。北朝鮮の非核化を話し合う6カ国協議の「日米韓対中朝露」の構図が「日米対中韓朝露」に変化すれば、包囲網の効力は低下しかねない。

 こうした事態を避けるため、首相は5月上旬に東京で開催する日中韓サミットで、韓国の文(ムン)在(ジェ)寅(イン)大統領、中国の李克強首相とそれぞれ会談し、圧力路線継続の一致を目指す。5月下旬には訪露してプーチン大統領と会談するほか、6月上旬のカナダでの主要7カ国(G7)首脳会議でも協力を呼びかける。

 北朝鮮が米韓中との首脳会談に加え、近く朝露首脳会談を行うとの臆測もあり、「日本置き去り」論は根強い。しかし、北朝鮮が対話を求めるほどに追い詰められたのは、日本が圧力路線を主導したからだ。

 日米はトランプ政権発足以降、(1)軍事力を含むすべての選択肢はテーブルの上にある(2)最大限の圧力をかける(3)北朝鮮側から話し合いを求めてくる状況を作る-の3方針を主導してきた。いずれも日本が提案し、米国が国連などで主張し日本が支持する形を取ってきた。

 外務省幹部は「実は日本がこれまでの戦略を描いてきた。決して置き去りになっていない」と断言する。首相の一連の外国訪問は置き去りではないことを証明する狙いもありそうだ。(田北真樹子)

【私の論評】アジアの平和と安定の脅威は日本のマスコミと野党(゚д゚)!

電撃的だった中朝首脳会談

平昌オリンピックにおいて、北朝鮮による華々しい「微笑み」外交が繰り広げられ、その後の電撃的な中朝首脳会談の背後で、北朝鮮をめぐる軍事的緊張は確実に高まってきています。こう書いても、いまや話半分にしか聞いてくれないことが多いかもしれません。

それも理解できなくもありません。昨年来、マスコミでは、トランプ政権がいまにも北朝鮮を攻撃するかのような憶測が事あるたびに報じられてきましたが、軍事行動が起こらないまま1年が過ぎたからです。

狼少年ではありませんが、半島危機は起こらないのではないのかという奇妙な楽観論がいまの日本を覆いつつあるようです。しかし、この1年のあいだに危機は確実に進行しています。

その危機の実情を理解してもらうためには、まず、なぜこの1年間、トランプ政権が軍事行動を起こさなかったのか、ということの説明から始める必要がありそうです。

そもそも、北朝鮮に対してトランプ政権はどのように考えているのでしょうか。特にその中でも、米軍関係者はどのように考えているのでしょう。

米軍側は、北朝鮮だけを見ているわけではありません。北朝鮮有事はあくまで前哨戦に過ぎず、本丸は中国であり、ロシアが連動してくると考えているようです。

米軍は、アジア太平洋方面において2つの大きな脅威に直面しています。短期的には北朝鮮。長期的には中国が自国の利益を確保するために軍事力を使おうとしていることです。

北朝鮮の脅威は、軍事だけといえます。経済力がないため、中国に比べればそれほど難しくはありません。この北朝鮮の問題を混乱させているのがロシアです。ウクライナ問題でもロシアは事態を混乱させる方向で動いていました。

中国は経済力をもっているため、中国に対して軍事は重要ですが、それ以上に外交、情報、経済などの分野で中国を抑止していくことが重要です。とくに中国は、他国が他の問題に気を取られているあいだにいろいろと手を打ってくるので注意が必要です。

金正恩朝鮮労働党委員長を筆頭とする北朝鮮の体制を崩壊させたとしても、米軍は、中国が軍事的増強を続けているため、これから10〜20年はアジアの緊張が続くものとみるべきでしょう。特にこのブログでも何度か掲載しているように、台湾を巡る米中の争いはアジアに新たな火種となるのは間違いないです。

3月22日、トランプ米大統領は中国への高関税措置に署名した

トランプ米政権が国防予算を大幅に増やしたことから、半島危機に備え本気で対応しようとしているのは間違いないでしょう。

その上で、安倍晋三政権は外交で、北朝鮮の暴発を阻止する努力を続けています。アジア紛争のリスクは実は、安倍批判が強い日本のメディアの論調にあるかもしれません。

その中でも、「(北朝鮮問題で)日本は置き去りにされている」マスコミの論調は、最低、最悪と言って良いかもしれません。その尻馬に乗って、森友問題などでとにかく倒閣に結びつけようとする野党も大問題です。

安倍総理は、ブログ冒頭の記事のように、これからも様々な外交活動をしますが、それ以前にかなりの外交努力を継続してきています。そのため、トランプ大統領にも外交では頼られる存在になることができたのです。

安倍総理の経済制裁の強化は、正しい路線です。この制裁に日米が本気でとりくんだからこそ、金正恩は焦りに焦り、それまでとはうってかわって、平昌五輪での融和路線を打ち出し、中朝首脳会談をも実現させたのです。

経済制裁はときに大きな効果をもたらすことがあります。これに関しては、実例があります。80年代後半、各国が次々に制裁に踏み切ると、国際的に孤立した南アの白人政権は、黒人との融和をめざさざるをえなくなりました。

国連が一連の経済制裁を解除したのが93年、南アでの初の黒人政権が誕生したのは、94年のことでした。経済制裁があの南アの白人を動かしたのです。

ダーバンビーチ条例第37節に基づき、この海水浴場は白人種集団に属する者専用とされる」と
英語アフリカーンス語ズールー語で併記された1989年撮影の標識 アパルトヘイトの象徴

日米の本気の経済制裁がなければ、そもそも、韓国と北朝鮮との南北会談も実現せず、相変わらず北は、ミサイル発射実験を継続していたかもしれません。

国民も安倍外交の成果や、半島危機の実態を正しく理解することが必要です。これから、半島危機で日本がうまく立ち回れないとすれば、残念ながら最大の要因はマスコミや野党が倒閣のために安倍政権の足を引っ張ることでしょう。

そもそも、安倍政権がここ数年以内で、崩壊することにでもなれば、日本経済は再びデフレスパイラルのどん底に落ち込み、さらに外交面では世界から置き去りにされることでしょう。これがどれだけ、日本経済や外交・安全保障に悪影響を与えるかは明らかです。さらに、安倍晋三というパートナーを失った米国は外交経験の浅いトランプ氏では中国との対決に苦しむことになります。

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2018年4月5日木曜日

希望の党と民進党が元サヤに収まり、立民が合流しない奇妙な状態 野党に政権を委ねられない不幸―【私の論評】景気回復への道を明示することができない連合も野党も今のままでは凋落していくだけ(゚д゚)!

希望の党と民進党が元サヤに収まり、立民が合流しない奇妙な状態 野党に政権を委ねられない不幸

代議士会に臨む希望の党の玉木雄一郎代表=3月29日午後、国会内

 希望の党が民進党との合流に向け、分党について協議すると報じられた。民進党も新党結成構想について全会一致で了解を得たという。衆院で野党第1党の立憲民主党を含め、展望はあるのだろうか。説明を追加

 希望と民進の協議に関する報道を見たとき、筆者はエープリルフールの冗談かと思ったくらいだが、関係者は「新しい民主党」に真剣なようだ。その時点で、一般人と感覚がずれていると思う。

 今からわずか半年前、昨年10月の総選挙で、小池百合子都知事が立ち上げた当初の希望の党は台風の目となり、その人気目当てに民進は分裂した。

昨年10月、希望の党の立ち上げ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 いち早く駆け込んだ人は希望、入りたかったが小池氏が「排除」したので入れなかった人が立民、そのままの人が民進-と大ざっぱに分けられる。このときの分裂は、結局選挙目当てが最大の動機だったのは間違いない。

 ところが、小池氏が、「排除」発言で大きくこけて、希望は伸びなかった。総選挙後に希望は、創設者だが既に人気がなくなった小池氏を「排除」した。「排除」の過程で、希望と立民をかろうじて分けていた、リアルな安全保障や憲法改正について、どちらも変わらなくなっていった。

 変節は有権者に見透かされており、次期総選挙では希望の消滅は確実との見方もある。そのような情勢で、希望と民進の合流話が出てきているのだが、やはりこれも「選挙互助会」を作りたいということだ。半年の間に、こうした分裂や再編を繰り返せば、有権者の信頼を失うだけだろう。

 それでも、希望と民進は合流するだろう。というのは、両者は今のままではじり貧だからだ。衆議院の勢力をみると、希望51、民進12(党籍を持っている無所属)、立民55である。ここで、希望と民進が合流すれば、立民を抜いて衆院で野党第1党になる。

 そうなると、立民はどうするのか。財務省による文書改竄(かいざん)問題などでは野党6党で一致団結している。野党6党とは、立民、希望、民進、共産、自由、社民の各党だが、共産を除く5党は、一般の有権者から見れば、もはや政策の違いがわかりにくい。

 希望と民進の合流がうまくいけば、その次には立民も合流してもおかしくない。民進分裂の原因であった小池氏がもういないので、元の鞘に収まっても不思議ではない。

 とはいえ、立民は合流話に乗らないだろう。というのは、小池氏の「排除」発言によって、結果として勢いを増したので、「排除」した側の希望には乗れないからだ。昨年の総選挙の際、希望と立民について「偽装分裂」との見方もあり、やはりそうだったのかといわれないためという理由もあるだろう。

 となると、似たもの同士の希望と立民が合流しないという、政治的には奇妙な状態となる。

 政策はどうでもよく目先の選挙だけで右往左往する野党に、有権者はとても政権を委ねられない。これは日本の民主主義にとって不幸なことだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】景気回復への道を明示することができない連合も野党も今のままでは凋落していくだけ(゚д゚)!

希望、立民、民進党の行動を考えるには、やはり労組の動きを理解しないと十分に理解できないと思います。

その中でも、連合とこれらの党の関係を理解すべきです。連合(正式名称:日本労働組合総連合会)は、1960年代後半から繰り返し志向されてきた社会党系の日本労働組合総評議会(総評=社会党右派を中心に中間派・左派を含む)、民社党系の全日本労働総同盟(同盟)、中間派だった中立労働組合連絡会議(中立労連)、全国産業別労働組合連合(新産別)の労働4団体の統一によって結成されたものです。

但し、1986年の「日本社会党の新宣言」採択まで長くマルクス・レーニン主義を掲げ、自衛隊違憲・解消、日米安保反対、非武装中立、日の丸・君が代反対、脱原発を主張した社会党系の総評(公務員労組中心、日教組・自治労など)と、民主社会主義と反共を掲げ、自衛隊や日米安保、日の丸・君が代、原発に賛成していた民社党系の同盟(民間労組中心)とは水と油の関係であり、基本政策のすり合わせをしないままに行われた統一でもありました。

当該4団体等による「労働戦線統一」の動きは、1982年12月14日の全日本民間労働組合協議会(全民労協。初代議長は竪山利文・電機労連委員長)の結成により大きく進展しました。

全民労協が1986年11月の第5回総会で翌年秋の連合体移行を確定したことを受け、まず同盟が1987年1月の第23回年次大会で解散方針を決定し、総評、中立労連、新産別の3団体も秋までに「連合」への合流を決定しました。


1989年11月21日、東京厚生年金会館で日本労働組合総連合会の結成大会を開き、初代会長に情報通信産業労働組合連合会(情報通信労連)委員長・山岸章を選出しました。 総評系産別を加えて78産別、組合員約800万人を結集させ、労働4団体等の統一を完成させました。なお、山岸は“労働戦線統一の功績”により2000年4月に勲一等瑞宝章を受章しました。

山岸章氏

他方、連合の発足を「労働界の右翼的再編」「反共・労使協調路線」と攻撃する日本共産党系の「統一労組懇」等は、これに対抗して連合結成と同じ1989年11月21日に全国労働組合総連合(全労連)を、総評左派系(社会党左派系)の一部は12月9日に全国労働組合連絡協議会(全労協)を結成しました。

さて、この連合は昨年衆院選で特定の政党を支援せず、立憲民主党や希望の党(結党メンバーを除く)、無所属で戦った民進党出身者らを個別に推薦し、このうち99人が当選しました。


しかし選挙戦では連合傘下の産別労組のうち、自治労など左派色の強い旧総評系が立憲民主党、自動車総連など旧同盟系が希望の党の支援を目立たせるなど、組織に長年潜んでいた対立構図も浮き上がりました。

希望の党で当選した民進党出身の衆院議員は「連合から推薦を受けたが自治労などはほとんど現場で動かなかった」と打ち明けています。

立民、希望、民進3党がそれぞれ地方組織をどう構築するのかも見通せず、高い集票力を持つ連合の組織力は宙に浮いたままです。今年の通常国会では連合が強いこだわりを持つ「働き方改革」の関連法案も審議される見通しで、神津氏らは焦りを募らせています。

希望の党は小池元代表の「排除発言」だけでコケたというわけではない。その背後になは何が?

さて、ここであれだけ台風の目になった希望の党がなぜ選挙戦中でコケてしまったのか、もう一度振り返っておきます。ブログ冒頭の記事では、小池氏が、「排除」発言で大きくコケてしまったとありますが、無論表面的にはそのような面もありますが、それだけではありません。

何と言っても、まずは、希望の党の公約に示された経済政策があまりにもお粗末であったことと、希望の党が改憲勢力でもあることから、希望の党が躍進すれば、国会で改憲勢力がさらに大きな勢力を占めることに危機を抱いた、マスコミが選挙戦途中から希望の党を徹底的に叩きはじめたことの両方によるでしょう。

それでも、経済政策がまともであれば、いくらマスコミが叩いたとしても、保守派などでも擁護する人がでてきた可能性がありますが、あまりに酷い経済政策であったためその動きもなかったことが致命的になったと考えられます。

その、希望の党の経済政策を以下にあげておきます。

希望の党の政策集『私たちが目指す「希望への道」』には、消費税増税について「凍結する」と明記しているのですが、同時にこう書いていたのです。
「金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す『ユリノミクス』を断行する」「日銀の大規模金融緩和は当面維持した上で、円滑な出口戦略を政府日銀一体となって模索する」。
大規模な金融緩和によって現在の景気回復があるのに、その金融緩和を止める方向を模索するというのです。しかも「財政出動」にも否定的です。仮にこうした「緊縮財政」政策が採用されたら、日本は再び不景気へと転落し、再びデフレスパイラルのどん底に沈みことが予想される内容でした。

特にひどいのが「内部留保」課税でした。政策集には「300兆円もの大企業の内部留保に課税することにより、配当機会を通じた株式市場の活性化、雇用創出、設備投資増加をもたらす」とあります。

内部留保とは、そもそも法人税(国税)と事業所税(地方税)を払った後の残りです。これに課税するのは二重課税であり、租税原則に反するものです。

しかもこの内部留保は、必ずしも現金として手元に残っているわけではなく、設備拡充や技術開発などの再投資に回されている場合が多です。ただし内部留保が積み上がり、現預金の比率が高くなってきていることも事実ではありました。このため、麻生財務大臣のように「金利のつかない金を貯めて何をするのか。給与や設備投資に回したらどうか」と問題視する声もありました。

そもそも企業が設備投資を拡大しないのは、2014年に消費税を8%にあげて個人消費を縮小させてしまったからです。よって政府がなすべきことは個人消費を拡大する政策、つまり消費税減税と、日銀による更なる金融緩和による環境整備であるはずです。

ところが希望の党は、大企業に対して「設備投資を拡大しないのなら内部留保に課税するぞ」と恫喝する政策を打ち出したのです。内部留保を積み上げる大企業に対して罰金を課そうという発想は社会主義特有のものであり、極めて恐ろしいものでした。これでは、保守層は反対にまわるのも無理はありませんでした。

もしこの内部留保課税が具体化するならば、優良企業は国外へと逃げ出すことになったでしょう。そしてそれは、雇用環境の悪化をもたらすだけでした。これでは、『私たちが目指す「希望への道」』ならぬ、『私たちが目指す「地獄への道」』と言っても良いような内容でした。

希望の党の公約。特に経済政策を読み込むと、それは恐ろしい内容だった

枝野幸男代表の「立憲民主党」の選挙公約における経済政策も、金融政策や財政政策には見るべきものがありませんでした。「所得税・相続税、金融課税を含め、再分配機能の強化」と、金持ちに対する税金を上げて、その一部を貧困層に配る典型的な「社会主義政策」が掲載されているぐらいでした。

企業や金持ちに対する課税強化では、景気は回復しません。そして景気が回復しなければ、福祉を充実させる財源も捻出できません。立憲民主党は、民主党政権時代になぜ景気が低迷したのか、なぜ社会保障を充実させることができなかったのか、まったく学んでいないようでした。

現在の希望の党、立憲民主党、民進党とも、希望の党がなぜ勢いを失ってしまったのかその根本原因を全く理解していないようです。そうして、最初から筋悪の「森友問題」に拘泥し、政局においてすらも何の成果もあげられていません。労働者の生活を脅かす増税キャンペーンを長年にわたって行ってきた財務省に矛先を向ければ、まだ何とかなったのかもしれませんが、とにかく「疑惑」の追求で決定打に欠いて、ワイドショー民にすら飽きられて埋没してしまいました。

デフレ期には、適切な金融政策と政府による財政出動、そして民間企業の活動を阻害する「規制」の緩和で自由な企業活動を支援し、個人消費を拡大することこそが景気回復への道であるはずです。そうして、景気回復によって一番の受益者になるのは、他ならぬ労働組合を組織している労働者でもあることに気づくべきです。

この点について、野党だけではなく、連合自体も気づくべきです。そうして、景気回復への道を明示することができない連合も野党も今のままでは凋落していくだけになることでしょう。無論今の野党に政権を担わせることもできません。

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2018年4月4日水曜日

不倫疑惑再燃で「デメリットばかり」と総スカン 山尾氏は立憲民主党の「お荷物」に―【私の論評】山尾を一時でも支持したり、賞賛したりした人は人を見る目がないと厳しく反省すべき(゚д゚)!

不倫疑惑再燃で「デメリットばかり」と総スカン 山尾氏は立憲民主党の「お荷物」に


立憲民主党の山尾志桜里衆院議員(43)が同党の「お荷物」になりつつある。昨年末の入党後、安倍晋三政権追及の急先鋒(せんぽう)となることを期待されたが、政策顧問の倉持麟太郎弁護士(35)との不倫疑惑が再燃し、「山尾氏を抱えることにデメリットしかない」と総スカンを食らっているのだ。倉持氏の元妻は、山尾氏への慰謝料請求訴訟の準備を進めており、展開次第で離党の可能性を指摘する識者もいる。

「山尾氏は、もう『賞味期限切れ』だろう。なぜ執行部は、疑惑がくすぶっている段階で迎え入れたのか。今では党の大半の議員が、山尾氏に近づこうともしない」

立憲民主党関係者は、夕刊フジの取材に、あきれた様子でこう答えた。

山尾氏は昨年9月、週刊文春に倉持氏との密会を報じられ、「男女の関係」を否定しながらも民進党を離党した。同年10月の衆院選に無所属で当選後、立憲民主党の衆院会派に入り、同年12月下旬に入党を認められた。

不倫疑惑は先週、倉持氏の元妻、A子さんが週刊文春に《山尾さんのせいで、全てを失った》との手記を寄せ、再燃したが、山尾氏の党内での立場はすでに孤立化に向かっていたという。

原因の1つは、山尾氏が1月ごろからアピールしていた「立憲的改憲」というスタンスだ。前出の党関係者が言う。

「立憲的改憲は、日本が行使できる自衛権を『個別的自衛権』に限定する方向で、憲法を変えるという主張だ。枝野幸男代表は、安全保障法制を維持したままの改憲に否定的だ。漫画家の小林よしのり氏や、倉持氏と一緒に(立憲的改憲に)前のめりな姿も不評だった。山尾氏は執行部から注意され、持論を封印せざるを得なくなった」

さらに、テレビ中継された2月22日の衆院予算委員会での質問も、あつれきを生んだという。

「希望者が殺到するなか、山尾氏に30分も与えた執行部への不満が噴出し、辻元清美国対委員長が『結果を出させる』と収拾に走らされた。ところが、山尾氏は待機児童問題や憲法改正ばかり質問し、旬の議題だった裁量労働制は不発だった」

今回のA子さんの手記から、山尾氏が、倉持氏の家庭を壊す一因となったことは間違いなさそうだ。党関係者は「もはや、子育て政策も説得力を持たない。存在意義が問われる」と手厳しい。

A子さんが訴訟に踏み切れば、党のイメージダウンや政党支持率の低下に直結する。山尾氏は、A子さんの告発に、沈黙を続けているが、今後の展開をどうみるか。

政治評論家の伊藤達美氏は「これまで世論の関心は、財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題にあった。一段落して、山尾氏の不倫疑惑への批判が高まれば、党員資格停止や離党に追い込まれる可能性もある」と話している。

【私の論評】一時でも山尾を支持したり、賞賛したりした人は人を見る目がないと厳しく反省すべき(゚д゚)!

山尾志桜里氏の国会での発言も、多くの人々から反発をかっています。たとえば、以下のような発言には私自身も怒りを覚えました。

「子供が犯罪の被害者になった時に繰り返し被害状況を話すことが子供の心理的負担になってる!」

 倉持の元奥さん、上の記事ではA子さんから子供を奪った原因をつくりだした山尾が国会で子供の味方みたいな発言を繰り返しています。 山尾は自分自身のせいで母親と引き離された2歳の子供がいることを忘れているようです。
そうして、倉持氏も鬼畜のような手紙を元奥さんのA子さんに送っていたことが明らかになっています。

山尾志桜里議員の政策顧問を務める倉持倫太郎弁護士

山尾志桜里衆院議員(43)の政策顧問を務める倉持麟太郎弁護士(35)は、3月30日、元妻A子さんに対し、メディアの取材に応じないよう圧力とも取れる内容の通知書を送付していたことが明らかになっています。

 A4用紙3枚の通知書には、〈第三者への口外禁止を書面にて確約していただくことが必要です〉、〈(確約がなければ長男との)面会交流を見合わせざるを得ません〉などと記されていました。そのコピーの一部が以下です。


A子さんは、文藝春秋3月22日発売号で「山尾志桜里さん、夫と息子を返して」という手記を発表。山尾氏が夫婦の寝室に足を踏み入れたことなどを明かし、不倫発覚後に倉持氏から離婚を突きつけられ、親権を失った現状を赤裸々に綴っていました。文春ではA子さんが以下のように語ったとしています。

「手記発表後、倉持に面会を拒否され、2週間も子供に会えていません。今回の文書は、まるで子供を人質に取り、脅すような内容でした。私がメディアの取材に応じたことを理由に、長男への面会を拒否するなんて許されるのでしょうか。また山尾さんは子を持つ親として、私の気持ちが分からないのでしょうか」

文春はね倉持氏に見解を尋ねたそうですが、期日までに回答はなかったといいます。

それにしても、山尾志桜里の神経を疑います。倉持の子供だけでなく、自分の子供も被害者にしておいて、子どもの味方であるような発言を平然としています。山尾志桜里には、今後一切、子供に関することと女性活躍に関することを言ってもらいたくないです。山尾を見ていると、ただただ不愉快になります。これが、ワイドショー民の一般的な見方ではないかと思います。

山尾志桜里に関しては、あの「日本死ね」というブログを国会で公開したときから、どこか狂っていると思っていました。それについては、以前もこのブログに掲載しています。

その記事のリンクを以下に掲載します。
山尾氏、今度は衆院選直前に不可解な「500万円の移動」 週刊新潮報道 ―【私の論評】献金問題と同じく匿名ブログに基づく議論も指弾されるべきだ(゚д゚)!
山尾志桜里

この記事は、2016年4月14日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
国会で匿名のブログをもとに、審議をするなどということは、考え及びもつかないことです。匿名のブログなど何の責任も伴わないものですから、そこに書かれていることなど、信ぴょう性も何もありません。疑問に思っても、書いた人間に質問することすらできません。そのようなものを元に、公の場で議論などすべきではありません。まともな会社の取締役会で、匿名のブログなどに基づいて議論をすすめる役員がいたら、愚か者と言われることでしょう。
これは、ネット社会における最低限のエチケット(ネチケット)であると思います。そのようなことを、認識できない山尾志桜里氏が、検事であったという事自体も信じられません。検事なら、何事に関しても、物的な証拠などを重視するのが普通だと思います。それに、マスコミが献金問題と同じようにその点を追求しないのも本当に奇異なことです。
このようなネチケットが守れない国会議員が何の指弾も受けない、それを褒めそやす党代表が存在したり、それを批判もしないメディが存在するということ自体が、現代の陰湿なネットいじめなどを助長していると思います。
ネットいじめの温床は何か?
匿名のブログはエビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)ではありません。新聞の報道はエビデンスであることが求められます。だから、まともな新聞記者は、情報の出処を裏取りして、正しい情報に基づいて報道します。国会での審議であれば、当然新聞社などより、さらこの点において厳格であらねばならないはずです。

このようなことがなおざりにされても、何の問題にもならない社会は病んでいるとしか言いようがありません。これでは、ますますネットいじめなどをさらに助長するだけです。
このあたりには、山尾志桜里は、マスコミにとりあげられ、脚光を浴びましたが、私はどうしても山尾の行動については、胡散臭さを禁じえませんでした。 そうして、今日その胡散臭さは正しかったことが明るみにでたと思います。

山尾を一時でも支持したり、ましてや賞賛したりした人は、自分には人を見る目がないと厳しく反省すべきでしょう。ということは、反対をおしきって山尾を立憲民主党に入れた枝野氏にも人を見る目がないということかもしれません。

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2018年4月3日火曜日

トランプ氏、5月に正恩氏「死刑宣告」 北の魂胆見抜き「戦争内閣」構築 ―【私の論評】北朝鮮問題は、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれない(゚д゚)!

トランプ氏、5月に正恩氏「死刑宣告」 北の魂胆見抜き「戦争内閣」構築 

IOCのバッハ会長に笑顔をみせる金正恩氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、狡猾な「延命工作」を続けている。電撃訪中に続き、先月30日には、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長と、平壌(ピョンヤン)で会談したのだ。平和友好ムードを演出しているが、北朝鮮は「核・ミサイル開発」放棄を一切進めておらず、国際社会をダマしている。ドナルド・トランプ米大統領は魂胆を見抜き、「戦争内閣」を立ち上げ、米韓合同軍事演習も1日始まった。米朝首脳会談(5月予定)の開催場所と、正恩氏の「亡命準備」情報とは。ジャーナリストの加賀孝英氏が核心に迫った。

 ご承知の通り、トランプ氏は先月、レックス・ティラーソン国務長官を更迭し、後任にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名した。続いて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も解任し、後任にジョン・ボルトン元国連大使を内定した。

マイク・ポンペオ氏(左)とジョン・ボルトン氏(右)

 以下、後任2人に関する関係者情報だ。

 「ポンペオ氏は、『正恩氏排除=斬首作戦』に賛成している。CIA内に初の北朝鮮専門部隊『朝鮮ミッションセンター』をつくった。結果、正恩氏の隣に協力者を構築し、反正恩一派が結成された。朝鮮人民軍の一部は命乞いを始め、クーデターを計画し始めた。正恩氏が一番憎む男だ」

 「ボルトン氏は、対北先制攻撃を公言している。ジェームズ・マティス米国防長官は3月末、国防総省でボルトン氏を迎えた際、『あなたは“悪魔の化身”だと聞いている』といった。イラク戦争(2003年~11年)時にも、北朝鮮とイランへの攻撃を強硬に主張した。正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記は2週間も地下に隠れて震えていた。『ボルトン』という言葉は、北朝鮮では『死神』と同じだ」

 トランプ氏が、対北強硬派2人を抜擢したのには、明確な意志がある。

 旧知の米情報当局関係者は「トランプ氏は『戦争内閣』を構築した。ポンペオ、ボルトン両氏を信頼し、対北朝鮮政策の最終形を組み立てている」「米国が要求する『核・ミサイル開発』放棄は、ボルトン氏がいう『リビア方式』だ。正恩氏は『武装解除だ』と激しく拒否している」「米国の要求を飲まなければ、5月の米朝首脳会談は、正恩氏への『死刑宣告=宣戦布告の場』になる」と語った。

 リビア方式とは、「アラブの狂犬」こと、リビアの独裁者、カダフィ大佐が03年、核放棄に合意し、査察団を受け入れ、06年に国交正常化した方法だ。「北朝鮮が先にすべての核兵器と核物質などを放棄し、その後に制裁解除などの補償を行う」というもの。

 ちなみに、カダフィ氏は11年、「ジャスミン革命」で、反政府勢力に捕まり、命乞いをするも、射殺された。

カダフィ氏

 正恩氏は間違いなく、自分をカダフィ氏に重ねて震えている。この間、何があったか。以下、複数の日米情報当局関係者から入手した情報だ。

 「中朝首脳会談(3月26日)は、ボルトン氏起用に慌てた正恩氏が、習近平国家主席に泣きついた結果だ。習氏に、リビア方式を否定してもらった。さらに、『韓米の平和・安定雰囲気の醸成=米韓合同軍事演習の中止・在韓米軍撤退』などを主張した。だが、手は震え、顔は哀れなほど、強張っていた」

 当たり前だ。正恩氏は最近まで「中国は千年の敵」と公言していた。屈辱的な命乞いといえる。さらに情報は続く。

金正恩(左)と習近平(右)

 「北朝鮮は水面下で、5月の米朝首脳会談の開催場所としてフィンランドを提示している。2つ理由がある。1つは、ロシアの領空だけを飛んでいける。安心だ。もう1つは、亡命準備だ。フィンランド滞在中、万が一、北朝鮮国内でクーデターが起きたら、正恩氏はロシアに亡命するという情報がある」

 そして、結論はこうだ。

 「日米主導で進めてきた経済制裁が効いている。北朝鮮の人民と軍部は飢餓状態だ。数十万人の餓死者が出る恐れがある。正恩氏はまだ、圧力に屈して『核放棄の意思』を伝えたことを人民や軍の末端に隠している。公表すれば、人民と軍の怒りが爆発する」

 河野太郎外相は3月31日、高知市での講演で、「北朝鮮が新たな核実験に向けた用意を一生懸命やっている」と明言し、北朝鮮に核放棄の意思がないことを指摘した。北朝鮮はまた、国際社会を欺く気なのだ。

 安倍晋三首相は今月18日、トランプ氏と日米首脳会談を行う。

 米軍関係者がこういう。

 「南北首脳会談が同月27日に行われるが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は『反米・反日・従中・従北』の裏切り者だ。何を話しても関係ない。すべては5月の米朝首脳会談だ。日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをする。リビア方式の確認や、日本人拉致問題。北朝鮮の運命が決まる。全世界が注目している」

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】北朝鮮問題は、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にあるように、日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをします。その中ではリビア方式の確認や、日本人拉致問題も話し合われるでしょう。北朝鮮の運命がこの会議で決まることになります。

マスコミなどは、北朝鮮問題に関しては日本は蚊帳の外におかれているということを報道したりしていますが、日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをするということから考えてみても、そんなことはあり得ないです。

日本蚊帳の外論に関しては、北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、米政府関係者と北朝鮮当局者が昨年12月上旬に北京で極秘協議を行っていたことや、同じ時期にカナダ政府が日本政府に「対北圧力」方針の見直しを迫っていたことなどを根拠にしていたようです。

さらに、一連の動きの直後、ティラーソン米国務長官(当時)は北朝鮮との無条件対話に応じる考えを表明したため、トランプ政権内で対北融和派が巻き返しを図っているとみられたことも、その根拠のようです。

北朝鮮との極秘協議を主導したのは米国務省情報調査局のジョン・メリル=元北東アジア室長です。「トラック1.5」と呼ばれる官民合同の意見交換会の形をとったとされています。北朝鮮側の出席者ははっきりしませんが、対話の再開条件や枠組みなどについても協議したとみられます。

直後の12月12日にティラーソン氏は講演で「前提条件なしで北朝鮮との最初の会議を開く用意がある」と発言しました。メリルらの報告を踏まえ、対話再開に向けたシグナルを北朝鮮側に送った可能性もあります。

米朝間では、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表と北朝鮮外務省の崔善姫米州局長も度々接触しているとされています。

以上のことをもって、マスコミや一部の識者は、日本は蚊帳の外におかれているとしたのですが、その後ティラーソン国務長官を更迭し、後任にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名し、続いて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も解任し、後任にジョン・ボルトン元国連大使を内定し、さらに米朝会談の前には、日米首脳会談が行われることから、日本は蚊帳の外に置かれているどころか、当事者である米国に最も近い、あるいは当事者そのものといって良いです。

ブログ冒頭の記事では、以下のような下りがあります。
北朝鮮は水面下で、5月の米朝首脳会談の開催場所としてフィンランドを提示している。2つ理由がある。1つは、ロシアの領空だけを飛んでいける。安心だ。もう1つは、亡命準備だ。フィンランド滞在中、万が一、北朝鮮国内でクーデターが起きたら、正恩氏はロシアに亡命するという情報がある。
これも、注目に値する情報です。金ファミリーは、ロシアに亡命するかもしれないということが以前から言われていて、ロシア亡命受け入れ先と考えられていたのが、フインランドに近い、 スヴァールバル諸島なのです。

これについては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下にに掲載します。
トランプ氏、正恩氏に亡命促す? 異例ツイートで“真意”注目、識者「行き着く先はロシアのプーチン大統領」―【私の論評】金ファミリーの亡命も選択肢の一つ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を以下に引用します。
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スヴァールバル諸島とは、北極海に浮かぶ群島です。第一次世界大戦の頃、ロシア、ノルウェーなど、多くの国が領有権を争ったため、大戦終結後のパリ講和会議で、スヴァールバル諸島を、永久非武装地帯としました。以下にその位置を地図で示します。


このスヴァールバル条約には、ロシアやアメリカなど40ヵ国以上が加盟していますが、島内にはロシア人居住地区があり、ロシアの法律が適用されています。ここには、世界でもっとも北端に位置するレーニン像があります。

スヴァールバル諸島の面積は、ちょうど九州と四国を足し上げたくらいの大きさです。夏は4〜6度くらいまで気温が上がりますが、冬は-12〜-16度にもなる極寒の島です。

大部分の島が永久凍土に閉ざされ、人が住める島は1つのみ。植物はほとんど生えていません。

「スヴァールバル条約」を批准している国の国民であれば、スヴァールバル諸島に「ビザなし」で住め、しかも「外国人の戸籍のまま商売」ができます。ちなみに、日本もこの条約を批准しています。

2012年時点で、2642人が島で暮らしています。大部分がノルウェー人ですが外国人も暮らしていて、439人のロシア人、10人のポーランド人、その他タイ、デンマーク、スウェーデンの人が暮らしています。

この条約は、今から100年近く前の条約ですが、1920年代から'30年代にかけて各国が加盟しました。ところが昨年になって突然、このスヴァールバル条約に、ロシアの後押しを受けて、北極海になど、何の縁もない北朝鮮が加盟したのです。これは朝鮮人労働者の受け入れの他は、金ファミリーの亡命目的以外には考えにくいです。

しかも現在、島内のロシア人居住地区で、大邸宅の建設が始まっていることまで分かっています。

スヴァールバルはスピッツベルゲン島という名前でも知られている。
今でもロシア人が生活している唯一のバレンツブルクという集落
これを知れば、なぜ金正恩委員長があそこまで強気でいられるのか、その理由が理解できます。いざとなればロシアが逃がしてくれるという「保険」があるのです。

プーチン政権は、核の技術もミサイルの技術も提供したあげく、亡命先まで用意したのです。金正恩にとってこれほど頼もしい庇護者はいません。

しかもプーチン政権には、シリアがあれほど激烈な内戦のさなかにあっても、6年半にわたってアサド政権を守り続けてきたという実績があります。

プーチン政権がそこまで金正恩政権に肩入れする理由としては、やはり極東におけるアメリカと中国という両大国への剥き出しの牽制だと考えられます。

米中露「3大国」とは言うものの、ロシアの経済力は米中に較べて圧倒的に脆弱です。ロシアの現在のGDPは日本の1/5程度であり現在の韓国と同水準です。ロシアの人口は日本よりわずかに多い、1億4千万人、そうして極東には600万人くらいしかロシア人が住んでおらず、強い危機意識を抱いています。だから「東アジアのシリア」を作りたいのです。

もう一つは、天然ガスのパイプラインを、韓国まで引きたいという野望があります。9月6日、7日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムに、プーチン大統領と韓国の文在寅大統領が揃って参加し、この話を詰めています。気をよくした文在寅大統領は、北朝鮮に800万ドルの人道支援を表明しました。

これも、人道支援を大義名分にしてシリアを支配したプーチン大統領の入れ知恵でしょう。

プーチンロシア大統領
ロシアから韓国に天然ガスのパイプラインを引く計画は、'08年に李明博大統領がロシアを訪問した際に盛り上がった話です。ロシアのハバロフスク、ハサンから北朝鮮の元山を経て、韓国の仁川まで約2000kmを結ぶ壮大な計画です。

北朝鮮にはパイプラインの通行料として年間1億ドルを支払う予定でしたが、韓国の命脈を北朝鮮に握られるという懸念からご破算になりました。


2011年10月3日のボイスオブロシアによれば、ロシアのウラジーミル・プーチン首相は、ロシアの半国営の天然ガス:PNG独占企業であるガスプロム Gazpromに対して、日本、韓国と中国などとの協力発展についての拡大的な提案を準備するよう指示したとあります。

つまり、プーチンの頭の中には、日本、韓国、中国を巻き込んだ「国家成長プログラム」が出来上がったと言う事でした。

東北の大震災直後、当時民主党政権だった、日本政府は将来のエネルギー不足を見越してロシアの天然ガス取得に対して積極策に出ることをロシアに伝え、ロシアはこれを受け、一連の開発を前倒しにし、同時に韓国、中国への供給も早める対応を取りました。

これには、当時次期大統領を着々と狙う、プーチン首相の思惑が働いたとみるべきでしょう。恐らく彼は、日本の大震災を好機と取ったはずです。

すでに、サハリン州の天然ガス田から日本海側の港湾都市ウラジオストクを結ぶ全長約1820キロのパイプラインの完成式典が2011年9月8日ウラジオストクVladivostokで行われ、プーチン氏も参加しました。

次はこれを北朝鮮経由で韓国に送り込む事(2017年稼動予定で、その際には経由する北朝鮮内700kmに1億ドルの収入が見込まれる)の実現で、2011年8月、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が9年ぶりに訪露し、協議の場でロシアは、北朝鮮の協力に対し食糧援助を約束し、これをロシアは2011年9月末に完了しました。

全ては着々と進行し、全てが完成したときに、ロシアは日中韓の経済を握るとの目論見だったのでしょう。しかし、この計画は日本では、民主党政権の崩壊とともに潰え、韓国でも、命脈を北朝鮮に握られるという懸念からご破算となりました。

その計画を、9年ぶりにロシアと韓国、北朝鮮で復活させようというわけです。そんな「密談」が進んでいるところに、安倍首相が出かけて行って、プーチン大統領に「北朝鮮への圧力」を説いたのです。

これを考えると、文在寅の最近の不可解な動きも理解できます。米国は朝鮮半島周辺海域に、原子力空母3隻を集め、11~14日(ブログ管理人注:昨年11月)に米日韓3カ国の合同軍事演習を行い、北朝鮮に圧力をかける予定でした。ところが、韓国が突然『日本とやるのは嫌だ』と言い出し、米日、米韓とバラバラになったのです。北朝鮮やロシアは大喜びでしょう。

文在寅は、中国に踊らされただけではなく、裏ではロシアにも踊らされたというわけです。最近、米国のWSJ紙が韓国に対して痛烈な批判を行いましたが、背景にはこのようなこともあったのです。

文在寅とプーチン
さて、いざとなれば、ロシアが金ファミリーを亡命させるという選択肢があるということは、我々も認識しておくべきです。

これに関しては、当然のことながら、トランプ大統領、安倍総理、習近平も知っていることでしょう。その上で、ポスト北朝鮮危機後の世界をなるべく自分たちに有利になるように立ち回っているというのが、実体でしょう。
"
金正恩は、リビア方式での核廃棄を米国に確約しなければなりません。しかし、そうなると、後にカダフィーのような運命をたどることになるかもしれない恐怖に苛まされているに違いありません。

であれば、米朝首脳会談では、トランプ大統領にリビア方式での核廃棄を確約するとともに、その直後に家族もろともにロシアに亡命し、そのままスヴァールバル諸島に行くというシナリオも十分に考えられます。

それに向けての準備のため、金正恩は習近平に会ったのかもしれません。自分が亡命した後は、中国に近い人間を指導者とした新たな指導者をたてることなどを相談にいき、自らの亡命に賛同してもらったかもしれません。

それがその通りになるかどうかは別にして、金正恩とその家族はそれで延命をはかることはできるかもしれません。

そうして、その後の北朝鮮の運命に関しては、すでに日米中露の間で一定のコンセンサスに達している可能性があります。これについては、従来の日米中露の首脳会談等で話し合われ(この話あいを私はこのブログでは北朝鮮版ヤルタ会談と呼んでいます)、おそらく日米中露にとって譲れる範囲内のコンセンサスとなっていることでしょう。八方美人的で経済的にも軍事的にも重要ではない韓国は蚊帳の外でしょう。

日米首脳会談を直前に行うのは、このコンセンサスに向けての韓国抜きの同盟国としての最終的な準備に入ることと、拉致被害者問題の対処についての話し合いを行うためでしょう。

北朝鮮問題の解決は、マスコミ報道などとは全く異なったものになるかもしれません。

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2018年4月2日月曜日

テレビ局がそれでも「森友改ざん問題」を報じるときに疑うべきこと―【私の論評】テレビ局の執拗な安倍攻撃は、「放送制度改革」への反発である(゚д゚)!

テレビ局がそれでも「森友改ざん問題」を報じるときに疑うべきこと
あとは検察に任せるべきはずなのに
髙橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 プロフィール

支持率は下げ止まったのか

先週火曜日に開かれた佐川氏の国会証人喚問がどのように世論に影響したのか。注目の世論調査がでてきた。

共同通信社が3月31日、4月1日の両日に実施した世論調査によると、内閣支持率は42.4%(前回比3.7ポイント増)、不支持は47.5%(前回比0.7ポイント減)だった(なお、前回調査は3月17、18日だ)。また、佐川氏の証言に対して、納得できないとする回答は72.6%だった。

証人喚問に応える佐川氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


また、読売新聞社も同時期に世論調査を実施しており、内閣支持率は42%(前回比6ポイント減)、不支持率50%(前回比8%ポイント増)だった。やはり、佐川氏の証言に納得できないという人は75%である(なお、読売新聞の前回調査は3月9~11日だ)。

共同通信社と読売新聞社の調査は前回調査時点が異なっているので、前回比の動きがちょっと違う。佐川氏の辞任が3月9日。その後、急速に内閣支持率が下がっていったので、共同通信社の前回調査の方が内閣支持率が下がっていて当たり前である。

ということは、内閣支持率は下げ止まった可能性がある。もっとも、世論調査は各種のものを総合的に判断する必要があるので、断定はできないが。

一方で、佐川氏の証言に対して、納得できないという人はかなりの数に上っている。これは、刑事事件の捜査対象になっていることから、多くの場面で答弁を拒否したことが原因であろう。

もっとも、この点はあらかじめ予想されていたことである。議院証言法では、「証人は、自己……が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。」(第4条第1項)と定められているので、これを否定したら人権問題になる。もちろん、この点については、証人に告げられている(議員証言法第1条の5)。

一部の野党は「佐川氏は50回以上も証言拒否をした」というが、逆に言えば、その分だけ拒否されるのがわかっていた質問をしたわけで、まったく野党の議員には芸がないといわざるを得ない(議院証言法を理解していれば、こうして証言拒否をされることは分かっていたはずだ)。

さて、決裁文書改さんについては、佐川氏は「理財局内でやったこと」だとし、財務省の他局のみならず、官邸の首相、官房長官、補佐官、秘書官らの指示、協議などが一切なかったと証言した。これは、偽証罪に問われるかもしれない国会の証人喚問の場で出た新しい発言だ。

もし野党が理財局以外も関係しているというならば、「疑惑が深まった」と叫ぶだけでなく、佐川氏を偽証罪で告発すべきだ、となる。

ちょっと刺激的な言い方になるが、ハッキリ言えば元官僚の佐川氏であれば、国会での四時間程度の「尋問」を凌ぐことは楽である。国会議員の質問力がたいしたことないからだ。しかし、捜査当局が証拠を示しながら、1日8時間くらいの尋問を1週間くらいやられたら、さすがの佐川氏も音を上げるかもしれない。

が、もはや国会での「政治ショー」は必要ない。改ざん事件の真相解明は捜査当局に委ねた方がいいだろう。捜査当局も、国会証人喚問後に、佐川氏に事情聴取しているという。これから、財務省文書改ざん問題は刑事事件として捜査当局へ移っていくだろう。

「約8割が起訴」の衝撃

ところで、過去の国会証人喚問をみると、かなりの人が刑事訴追されている。過去30年間で、佐川氏を除くと延べ56回、45人の証人喚問が行われた。


この45人のうち、時期の前後を含めると起訴されているのは23人で5割以上である。1990年代前半の「証券損失補填問題」や「佐川急便問題」ではほとんど起訴されていないので、過去20年間でみると、述べ18回、14人の証人喚問が行われ、約8割の11人が起訴されている。

内容は、追及されている問題そのものであったり、国会での証言が偽証であった、などあるが、約8割とはかなりの確率である。捜査当局も、なんだかんだで世論の動きを見ているので、証人喚問までされた人物になにもしないままでいるわけにはいかないということで、こうした高い起訴率になるのだろう。

佐川氏の場合、悪質な改ざんではなく、文章の一部削除なので、刑事罰の適用は難しいという人もいるが、これまでの高い起訴率や「納得できない」という世論があることを考えると、事情聴取後、起訴される確率が結構あるように思える。

起訴された場合、文書改ざんを理財局内でやったことなのかどうかもわかるだろう。森友学園の案件そのものは、現場の近畿財務局がやったことなので、当初は理財局だけで処理していたのは間違いないだろうが、はたして理財局内だけで対応していたのかどうか。

さて、今後の「テレビ報道」はどうなるか

関係者からの事情聴取や、佐川氏の携帯電話等の通話記録などを捜査当局は調べることになるはずだ。そうした捜査情報は、今後たびたびリークされるだろう。そのたびに、財務省文書改ざん問題は盛り上がるかもしれない。しかし、傾向的には、徐々にトーンダウンしていくだろう。

というのは、どうやら先週火曜日の佐川氏の証人喚問、午前中の視聴率は高かったが、午後に入ると低下したと聞くからだ。テレビはなんとも現金なもので、視聴率が取れない問題については積極的には報じなくなる。

国会の証人喚問自体が盛り上がらず、佐川氏のキャラクターも(籠池夫妻とは異なり)地味なので、視聴率が取れないとテレビ関係者はいう。このため、ワイドショーも急速に佐川氏を取り上げなくなった。そうしたことが、内閣支持率の低下に歯止めをかけているのかもしれない。

テレビの取り上げ方ひとつで、一時的な内閣支持率が上下するとはなんとも情けない話だが、それも十分にあり得る話だ。これは、昨年から見られる傾向で、いくら筆者などが「真相はこれだ」といっても意味はなく、テレビがその問題をどれだけ報じるかで支持率が変わってしまうのは経験済みである。

テレビで一時的にネガティブに取り上げられても、そのうちネタ切れとなり、視聴者が飽きてしまい、視聴率が落ちてくる。そうなると、番組はますますその問題を取り上げなくなり、結局、下がっていた内閣支持率が下げどまる、というのは、これまで何度も見られたパターンだ。

今回はどうなるか。テレビもさすがに「この問題はしっかり報じよう」と、かなり踏ん張るかもしれない。というのも、いま、安倍政権側からメディアに対してカウンターパンチが出ているからだ。

そのカウンターパンチとは、「放送制度改革」のことである。その一部は、昨年12月11日付けの本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53787)で書いた電波オークションである。加えて、政府は「政治的公平」などを定めた放送法4条の撤廃方針や、ソフトとハードの分離などを打ち出したと報じられている

この話は、実は10年ほど前に検討されたことがある。筆者は官僚時代の2006年当時、総務大臣の補佐官を務めたことがある。そのとき筆者はもっぱら郵政民営化と地方財政を担当していたので、放送行政は担当外だったが、通信と放送の融合に合わせた放送制度改革が議論されていた。

放送法で規制されていることが、今後は通信技術の発展によって有名無実化するので、放送制度改革を急がなければならないというのは「常識的」なものであったが、実際には、放送の既得権益者(テレビ局など)が抵抗し、改革は全く進まなかった。

ブラックジョークか…?

総務省在籍当時、筆者の仕事部屋は大臣室の隣にある秘書官室だった。筆者とは面識のない多数の人が秘書官室に訪れ、名刺を配っていく。筆者も秘書官室の一員であったので、彼らの名刺をいただいた。それをみると、ほとんどがメディア関係の人たちだ。

その中には、「波取り記者」と呼ばれる人も含まれていた。「波取り記者」の「波」とは電波のことで、いわゆる「電波利権」を確保するために電波行政のロビイングをする人たちのことをこう呼んでいた(こうした人はテレビ業界だけでなく新聞業界にもいた)。

彼らの政治パワーは強力で、その結果として改革が全く進まなかった。これによって、日本の電波・放送行政が先進国で最も遅れることとなった。本来であれば、10年以上前にやっておくべきであったのだが、それが出来ずに、時間を無駄にしてしまった(で、結局今になって再度の提案となったわけだ)。

技術の進展は目覚ましく、インターネットを使っての「放送」は安価に誰でもできるようになった。筆者も私塾をやっているが、かつては講義内容をテキストにして配信していたが、今ではビデオ配信だ。その方がコストも安く、速報性にも優れている。いうなれば、いまや電波の希少性を超えて、誰でも「放送」ができるようになったわけだ(念のためだが、この「放送」は、放送法の範囲外である)。

これまでは、電波は希少性があるものなので、与えられる対象は少なくならざるを得ず、少数の既得権者は、公共のために放送法を遵守しなければならないという理屈だった。だが、電波の希少性という物理的な制約がなくなれば、放送法の規制は最小必要限度でよいことになり、様々な主体の参入を認めて、その競争に委ねるという政策が可能になる。ようやく放送制度改革の機が熟したと言えるだろう。

これはもはや世界の常識なのだが、放送業界は抵抗するだろう。例えば、放送法4条の撤廃については、早速「番組の質の低下をまねいたり、政治的に偏った番組が放送される懸念がある」という、反論が出ている。

番組の質の低下を心配するということは、いまの番組は質が高い、ということを前提としている。これについては、部外者から失笑が出ている。また、いま現在でも、政治的にやや偏っていると思われる番組が多いことを一般の視聴者は感じているので、放送業界の反論はブラックジョークに見えてしまう。

番組の質や政治的に偏向しているかどうかは、放送業界が上から目線で決めつけるのではなく、視聴者の判断に委ねるべき、というのが成熟した民主主義国のあり方ではないだろうか。もちろん、その前提として国際標準の規制の下で十分な競争があることが必要である。

いずれにせよ、視聴率が下がっているのに、なおこの改ざん問題が報じられるときは、「メディアの使命」を掲げてそれを続けているのか、あるいは「放送制度改革」への抵抗なのか、をよく見極める必要があるだろう。

【私の論評】テレビ局の執拗な安倍攻撃は、「放送制度改革」への反発である(゚д゚)!

佐川氏の証人喚問は、私の予想通りの結果になりました。結局、佐川氏は、核心的な部分に関しては、「私自身、刑事訴追のおそれがありますので、そこの答弁は控えさせて頂きたいと思います」として答えませんでした。

しかし、これは篭池氏の答弁でも核心部分化に迫ると同じような答えをしていたことから、十分に予想がついたことです。

こういうときに、効果的なのは、やはり現在まで公開されている資料をよく読み込み、さらには独自に調査をした上で、新たな事実ゃ、矛盾点を指摘するような方法をとれば、まだまともな証人喚問になったかもしれません。

テレビのワイドショーを主な情報源とする、ワイドショー民はシンプルな話を好みます。これは、政治の世界でも、小泉元首相が用いた「ワンフレーズ・ポリティクス」といわれる、『自民党を変えます』『日本を変えます』『構造改革なくして景気回復なし』という、すべて15秒以内のスローガンの羅列で政治を語るという手法がもてはやされるようになりました。

小泉元総理の「ワンフレーズ・ポリティクス」は日本の政局を動かした

広告業界では従来から15秒のコマーシャルの中で『ワン・コマーシャルでワン・メッセージでないと伝わらない』といわれており、これを聞いて小泉さんは、多言を弄するのではなく、ワン・メッセージで端的にいう大切さを悟ったと言われています。

いくらテレビで、安倍首相や昭恵夫人の「疑惑」を演出してみたところで、佐川氏などの証言から、シンプルに、誰にでもわかりやすく「疑念」が本当であることを「ワンフレーズで」立証してみせなけば、ワイドショー民はすぐに飽きてしまいます。

しかし、このようなことは、過去に何度もあり、その度に安倍首相や自民党の支持率が落ちたのですが、結局元通りになるといことを何度も繰り返してきました。

さらに、ワイドショー民には誰にでもわかる、悪役が必要です。時代劇でいえば、「越後屋と悪代官」のような存在が必要です。

ワイドショー民にはシンプルさと悪役が必要

野党やマスコミは、安倍首相や昭恵夫人を悪役に仕立てようとしたのですが、結局過去1年間いわゆる「疑惑」を追求し続けてきたのですが、結局何もでてきませんでした。

そうして、佐川氏の証人喚問でもシンプルで誰にでも簡単に納得できるような内容の証言はありませんでしたし、佐川氏や財務省を悪役に仕立てることもできませんでした。

これでは、さすがのワイドショー民も飽きてしまいます。今後、森友問題を政局に利用しようとしても無理があります。今後も森友問題の追求を続けることは、さらに野党を弱体化するだけになるでしょう。

後は検察の仕事であることはいうまでもありません。そもそも、野党には検察のような真似はできないことがはっきりしています。今後、森友問題にかかわりつづければ、野党はますます弱体化するだけです。

それこそ、ブログ冒頭の記事にもあるように「テレビで一時的にネガティブに取り上げられても、そのうちネタ切れとなり、視聴者が飽きてしまい、視聴率が落ちてくる。そうなると、番組はますますその問題を取り上げなくなり、結局、下がっていた内閣支持率が下げどまる、というのは、これまで何度も見られたパターン」を繰り返すだけで、野党の悪あがきは徒労におわるだけです。過去にこれを何度も繰り返してきて、未だに気づいていないようなので、情けないといえば情けないです。

政府が「放送制度改革」を検討しているのは、テレビ局が既得権化してしまっているからです。なぜ既得権益かしているかといえば、地上波放送事業への新規参入が実質的に不可能になっているからです。

総務省の認可を受けた場合にしかテレビ放送事業はできません。「放送法」によって免許制度になっているわけですが、このことがテレビ局を既得権まみれにしている最大の原因です。

はっきり言おう。「電波オークション」をやらないことが、テレビの問題なのです。電波オークションとは、電波の周波数帯の利用権を競争入札にかけることです。

日本では電波オークションが行われないために、電波の権利のほとんどを、既存のメディアが取ってしまっています。たとえば、地上波のテレビ局が、CS放送でもBS放送でも3つも4つチャンネルを持ってしまっているのもそのためです。

電波オークションをしないために利権がそのままになり、テレビ局はその恩典に与っています。テレビ局は「電波利用料を取られている」と主張するのですが、その額は数十億円程度といったところです。もしオークションにかければ、現在のテレビ局が支払うべき電波利用料は2000億円から3000億円は下らないでしょう。現在のテレビ局は、100分の1、数十分の1の費用で特権を手にしているのです。

つまり、テレビ局からすると、絶対に電波オークションは避けたいわけです。そのために、放送法・放送政策を管轄する総務省に働きかけることになります。

その総務省も、実際は電波オークションを実施したら、その分収入があるのは分かっているはずです。それをしないのは、テレビ局は新規参入を防いで既得権を守るため、総務省は「ある目的」のために、互いに協力関係を結んでいるからです。

そこで出てくるのが「放送法」だ。昨今、政治によるメディアへの介入を問題視するニュースがよく流れてくるようになったので、ご存じの方も多いと思います。話題の中心になるのが、放送法の4条。放送法4条とは以下の様な条文です。

放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

 一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二  政治的に公平であること。
 三  報道は事実をまげないですること。
 四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

これを根拠に、政府側は「放送法を守り、政治的に公平な報道を心がけよ」と言い、さらに電波法76条に基づく「停波」もあり得るというわけです。

一方で左巻きの人々は、放送法4条は「倫理規範だ」とする。つまり、単なる道徳上の努力義務しかない、と反論をしています。

しかしこれは、なんともつまらない議論です。

そもそも、世界ではそんな議論をしている国はないです。「放送法を守れ」「これは倫理規範だ」なんてつまらない議論をするのではなく、「市場原理に任せ、自由競争をすればいい」だけの話です。

電波オークションによって放送局が自由に参入して競争が起これば、質の高い報道や番組が生まれるはずです。おかしなことを言っていたら人気がなくなるし、人気があれば視聴者を獲得しスポンサーも付きます。そうやって放送局が淘汰されれば、放送法など必要ないはずです。

繰り返すしますが、電波オークションをやると一番困るのは既存の放送局です。だから、必死になって電波オークションが行われないように世論を誘導しているのです。

総務省はその事情を知っているから、「放送法」をチラつかせます。「テレビの利権を守ってやっているのだから、放送法を守れよ」というわけです。それはテレビ局も重々承知。言ってしまえば、マスコミは役所と持ちつ持たれつの関係になっているのです。

しかし、政府のほうとしては、このようや持ちつ持たれつの関係はやめて、「放送制度改革」をして、電波オークションを実施しようとしているわけです。そうなると、放送局としては死活問題です。

だからこそ、ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は「いずれにせよ、視聴率が下がっているのに、なおこの改ざん問題が報じられるときは、「メディアの使命」を掲げてそれを続けているのか、あるいは「放送制度改革」への抵抗なのか、をよく見極める必要があるだろう」としているのです。

私自身は、そもそもテレビ局によるいわゆる「安倍攻撃」そのもの自体が、やはり「放送制度改革」への抵抗であると思います。だから、この抵抗を排除していただくため、そうして既得権で守られた放送局に活を入れて、もっとまともな番組を作らせるためにも何としても実行してもらいたいです。

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2018年4月1日日曜日

「ヤバい数字」を隠すため…?中国全人代の幹部人事のウラを読む―【私の論評】李克強の力を削いでも、中国の経済社会の矛盾がさらに蓄積されるだけ(゚д゚)!

「ヤバい数字」を隠すため…?中国全人代の幹部人事のウラを読む

中国経済が抱える爆弾

ドクターZ

デタラメを暴く、ナンバー2

3月19日、中国の全人代(全国人民代表大会)は政府機能を担う国務院の副首相や閣僚を選出した。

中国副首相 左より 韓正、孫春蘭、胡春華、劉鶴 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

筆頭副首相には共産党序列7位で政治局常務委員の韓正氏が就き、その他の副首相は習近平氏の側近で経済ブレーンの劉鶴氏らが担う。また、中国人民銀行の総裁は同行副総裁の易綱氏が昇格するなど、経済政策に強い人物を中央に固めた形となった。

この人事は、習近平国家主席の「一強独裁」体制が色濃くなるなか、長期政権の運営には経済政策の強化が欠かせないと政府が考えてのことだろう。だがもうひとつの側面から見れば、習氏の独裁を維持するため、強力な「ナンバー2」の登場を阻止するためとも見てとれる。

これまで、経済政策は李克強首相が主導してきた。李氏は遼寧省の党委員会書記だったころ、「李克強指数」で有名になった。

これは、中国が発表するGDP統計は信頼できず、それよりも鉄道貨物の輸送量、銀行融資残高、電力消費の各統計から経済指数を導き出したほうが、信頼度が高いと発言したことに由来する。実際欧米のシンクタンクでは「李克強指数」を使って中国の経済の実力を測ろうとしてきた。

李克強氏

このエピソードが示すとおり、李氏は中国の経済の実態に通じていて、なかなか指摘しづらい政府のごまかしを率直に指摘してきた人物でもある。

しかし、劉氏の副首相起用で、李首相の影響力は一段と低下するだろう。筆頭副首相に共産党序列7位の韓正氏をあてたのも、政権運営で反抗分子となる存在を作らないためだと考えれば合点がいく。

「不良債権」問題

ところで、中国の経済問題として懸念されるのは、膨らみ続ける債務の問題である。ありていにいえば「不良債権」なのだが、中国政府の言い分では、「不良」ではなくあくまで「大き過ぎる」債務なのだそうだ。

欧米の不良債権問題への対応はシンプルで、回収可能性を国際的な会計基準から判定し、回収不能となれば債権償却する。このプロセスには裁量の余地は少なく、機械的に処理していくだけだ。

一方、中国の過剰債務に関する処理は国際基準から程遠い。そもそも中国は会計基準も国際的なものから遅れている。

たとえば証券市場には適切な会計基準が不可欠だが、中国の証券市場には根本的に根付いていない。証券市場では企業による自由な証券の売買が認められることが資本主義の常識だが、中国では「管理されるべきもの」との考え方が残っている。

また、証券市場の発展は国有企業の民営化をもたらすものなので、一党独裁かつ社会主義の中国では、なかなか国際標準化しないという事情もある。

きちんとしたGDPの統計も持たない中国では、当然会計基準も国際レベル未満だし、結果として正確な不良債権の額すら把握できていない。

中国の公式統計では、金融機関が保有する資産の2%程度が不良債権額としているが、海外のあるシンクタンクによればその10倍に膨れ上がっていると指摘される。

こうした中国経済のデタラメを暴く存在になるかもしれない李首相の封じ込めが、今回の全人代の人事には意図されているのだ。

『週刊現代』2018年4月7日号より

【私の論評】李克強の力を削いでも、中国の経済社会の矛盾がさらに蓄積されるだけ(゚д゚)!

さて李克強指数と公に公表されている統計数値の比較によって最近の中国の経済成長をみてみます。



中国では2月の株価下落で市場が動揺しましたが、さほど大きな問題とはなっていないようです。しかし、今年に入って中国の内モンゴル自治区、天津市が域内GDP(域内総生産)の「水増し」を認めるという出来事がありました。

中国のGDP(国内総生産)統計に対する疑念は今に始まったことではありませんが、ほかの地域や国全体の統計にも少なからず不正があることでしょう。この疑念が強くなったのは上海株の暴落などによって景気が悪化していた2015年あたりからでした。

ここで注目すべきは、過去に水増しが行われていたことそれ自体ではなく、2015~2016年の水増しの影響が今も残っている可能性が高いという点です。この影響が、2018年の世界経済にとって思わぬリスクとなる可能性があるということです。

過去の水増しが残るというのは、たとえば2016年に1%ポイントだけ成長率が水増しされていたとすれば、成長率を計算する際の「発射台」がカサ上げされるため、2017年の成長率が低くなってしまうというテクニカルなものです。

本当の2017年の成長率は公式統計が示す以上に高かった可能性があります。さらに、このような過去の水増しによるテクニカルな影響だけでなく、「水増し分のつじつま合わせ」のために、各地域が2017年にあえて低い成長率を設定したとすれば、本当はさらに成長率が高かった可能性があります。

実際に、GDPと連動するといわれている李克強指数(鉄道貨物輸送量、電力生産量、銀行融資残高の前年比〈%〉を平均したもの)との連動性は2015年あたりから失われ、2015~2016年の公式GDPの伸び率は李克強指数よりも高かった一方、2017年はむしろ公式統計のほうが弱い結果となっていました。

実際の中国GDP成長率は、李克強指数が示すように2015年は2~3%台、2016年は4~5%台まで鈍化していた可能性があります。そして、2017年は逆に8~9%台まで成長率が加速していたとみられます。

なお、李克強指数もまた実際の経済成長率を反映できていないという批判があることには留意が必要です。一般に経済が成熟化すればサービス業のシェアが拡大するが、鉄道貨物輸送量ではサービス業の成長をとらえることができない、などの指摘があります

とはいえ、ほかに適当な指標もないことから、今回はこの李克強指数をベースに中国経済鈍化が世界経済に与える影響を探ってみます。

さて中国の2018年の経済成長率目標は2017年と同じ「6.5%前後」となる見込みです。公式統計を信じ、仮にこの目標どおりの成長を達成したとすれば2018年のGDP成長率は2017年の6.9%から0.4%ポイントの鈍化にとどまることになります。現状では世界経済全体に対して中国経済の動向があくまでもテールリスク(市場において、ほとんど起こらないはずの想定外の暴騰・暴落が実際に発生するリスク)としてしかみられていないのは、成長鈍化が小幅にとどまると予想されているからです。

しかし、李克強指数が正しいとすれば、0.4%ポイントではすまないことになります。数%は確実であり、これは予想範囲外ということになります。さらに、中国経済に不安が生じた場合に金融市場(特に2017年後半に急上昇した各国の株式市場)に与える影響もあり、これらを含めて考えれば、2018年の世界経済のリスクは一段と大きいことが予想されます。

胡錦濤派である李克強氏の封じ込めは、このようなことを中国内外に悟られないようにするための措置なのでしょう。ただし、いくら李克強氏を封じ込めてこうした危機がないかのように装ったとしても、実際に経済が落ち込めば、そのリスクは顕在化することになります。

ただし、来年には特に国内向けに、習近平にとって都合の良い形で、またGDPの数値が公表されることになると考えられます。ただし、そんなことをしても、国内外の市場関係者の中国に対する不信感を増幅させることになるだけのことです。

さらに、中国にはこの問題だけではなく、ブログ冒頭の記事にもあるように、不良債権の問題もあります。こちらのほうは、GDPよりもさらに分析しがたいものになっています。

なぜこのようなことがおこるのかといえば、中国では民主化、政治と経済の分離、法治国家化が十分になされていないからです。

北京の人民大会堂で、3月5日~15日まで開かれた第12回全国人民代表大会。
5日の開幕式に参加した習近平国家主席と李克強首相 

民主化ということでいえば、中国には選挙制度というものがなく、共産党の幹部を選ぶのも指名です。こういうことから、中国には正式には他の先進国などにみられる、政治家は存在しません。存在するのは、すべて官僚です。官僚だけが、中国を動かしているのです。

そうして、官僚組織でもある中国共産党は憲法よりも上に位置している存在です。結局気共産党の都合により何もかも共産党の恣意というか、現実的には共産党内の権力闘争の結果に帰するということです。

そうして、それは経済すらも例外ではありません。そのため、中国では政治と経済は分離されておらず、共産党が経済を管理します。しかし、一国の経済など管理しきれるものではありません。そのため、どんどん上記で述べたような矛盾が蓄積していくことになります。

さらには、先に述べたように、中国共産党は憲法より上の存在ですから、当然のことながら、法治国家化も十分ではなく、法律に基づいて行われるのは、共産党にとってそれが都合の良いときだけです。

ということは、共産党の管理により経済上の矛盾が蓄積したとしても、それを止める手立てはないということです。矛盾を解消するために、さらなる矛盾が蓄積していくことになり、ますますカオスの世界に突入するだけです。

それでも、中国が過去に崩壊しなかったのは、どれだけ矛盾が発生しても、共産党にとって都合が良くなるように、国家権力によって、むりやりにそれを解消してきたからです。

しかし、国内ではそれはできても、外国にまでそれを拡張することはできません。中国国内では、それができるのかもしれませんが、それを恐れて外国企業などは中国国内から資金を引き上げることになります。中国政府がそれを妨害したとしても、今度は海外からの投資はなくなることになります。

この中国共産党が外国でも、国内と同じように何でも共産党の思い通りにできるようすることを目指したのが、習近平の一帯一路であり、それを金融的に裏付けるものがAIIBなのですが、この試みも最初から頓挫するのが目に見えていることは、このブログでも何度か掲載してきましたので、ここでは詳しくは述べません。

このままだと、中国には社会的にも、経済的にも、ますます矛盾が蓄積していきます。さらに、この矛盾が海外にまで飛び火することになります。実際、南シナ海、尖閣諸島、インド国境その他多くの地域に飛び火しています。中国社会はすでに崩壊していますが、それは共産党が無理やりに繕って何とか機能させています。

しかし、経済・金融はそのようなわけにはいきません。中国の官僚は自由主義経済の本質などには無知ですから、中国経済・金融や対外関係を管理できるものとの幻想を抱いていますが、それは不可能です。いずれ、矛盾に矛盾が積み重なり管理不能の状態になります。何かの弥縫策を打ったとしても、今度は別の何かが悪くなり、それに対して弥縫策を打つと今度は別の何かが悪くなるというモグラたたきのようなことを繰り返すことになります。

もうその時期が近づいていると考えられます。過去のように共産党により無理やり繕って機能させることはできなくなります。いくら管理しようとしても、中国共産党の管理能力を超えた矛盾の蓄積はいかんともしがたいものになります。

今のままでは、習近平の独裁は10年持たずに崩壊します。この後には、中国共産党も統治の正当性を完璧に失い崩壊することになります。

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南シナ海、米比合同演習の周囲を埋め尽くす中国船が見えた まとめ 南シナ海の係争海域に多数の中国船舶(海警局艦船と武装した漁船)が集結している。これは米比合同演習への対抗と見られる。 中国船舶は特にフィリピンのEEZ内の環礁周辺に集中しており、中国はこの海域への実効支配を強化しよう...