2021年1月19日火曜日

中国、粗悪品コロナワクチンを途上国へ援助の真の狙い…低い有効率、強い副反応の懸念―【私の論評】中共が国内外で粗悪品ワクチンを用いれば、国内外で人々の信頼を失い統治の正当性を失う(゚д゚)!

 中国、粗悪品コロナワクチンを途上国へ援助の真の狙い…低い有効率、強い副反応の懸念

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー



 新型コロナウイルス(以下、コロナ)による全世界の死者数が1月15日、累計で200万人を超えた。変異種の出現が感染拡大を加速させるとの警戒感から、「新型コロナウイルス用のワクチンを一刻も早く手に入れたい」との声が各国で高まっているが、このような状況下で「ワクチン外交」を大々的に展開しているのが中国である。

 フィリピンを訪問中の中国の王毅外相は16日、「中国製のコロナワクチンを50万回分寄付する」ことを表明した。中国がワクチンを提供したのはフィリピンだけではない。ミャンマーに対しても30万回分、カンボジアに対しても100万回分のワクチン提供を申し出ている。

 インドネシアでは13日、中国製のコロナワクチン接種が始まった。ジョコ大統領が最初に接種を受け、国民に安全性を強調した。マレーシアやタイ、香港、ブラジルも中国製のコロナワクチンの購入契約を結んでいる。東南アジア以外ではトルコで14日、中国製コロナワクチン接種が医療従事者らを対象に始まった。中国はアフリカ諸国に対してもコロナワクチンの提供をアピールしている。

 中国のワクチン外交には「健康のシルクロード」という呼び名がある。中国は「一帯一路」のスローガンを掲げ、国際的なインフラ投資計画を繰り広げているが、資金力の弱い国が建設費の返済ができなくなると、中国がインフラそのものを差し押さえるという事例が相次いでいる。ワクチンの提供についてもその見返りとして、中国が今後受け入れ国に対して外交的な圧力を強める狙いがあると懸念の声が上がっている。

 中国側の狙いはわかるものの、こんなにもワクチンを大盤振る舞いできる余裕があるのだろうか。中国でもコロナワクチン接種が始まっているが、国民全員に行き渡らせるためには28億回分のワクチンが必要である。

中国シノバック製のコロナワクチン

 中国政府が外交カードに利用しているワクチンを提供しているのは、中国製薬大手のシノバックである。シノバックは13日、「コロナワクチンの生産能力を2月までに2倍へ拡大し、年間10億回分にすることが可能である」との見方を示したが、現在に至るまで中国政府はこのワクチンを正式に承認していない。

 シノバックが提供するワクチンの有効性についても疑義が生じている。約1万3000人が参加したブラジルの後期臨床試験での有効率が50.38%にとどまったからである。世界保健機関(WHO)が定める50%以上の基準を満たしているものの、米ファイザーや米モデルナが開発したメッセンジャーRNA型のワクチンの有効率(90%を大きく上回る)と比べると、明らかに見劣りする。

 シノバックが開発したワクチンは、不活化ワクチンである。熱や化学物質(アンモニアなど)で不活化したウイルスを体内に投与して抗体をつくるという従来の製造方法である。この手法はインフルエンザワクチンなどで使用されていることから信頼性が高いとされている半面、効果が弱いとの指摘がある。インフルエンザウイルスに比べて新型コロナウイルスの増殖のスピードが遅いことから、体内で発生する抗原が少なく、抗体ができにくいとされているからである。

 中国では多くの人々がワクチン接種の臨床試験に参加しているが、「接種後に深刻な副反応に苦しみ、病院で治療を受けている」との噂が後を絶たない。ワクチン接種後の副反応で最も懸念されているのは「ADE(抗体依存性感染増強現象)」である。ワクチン接種によりつくられた抗体がウイルスの細胞への侵入を防ぐのではなく、逆に細胞への侵入を助長する現象のことである。ADEが生じれば重症化するリスクが高くなる。

 新型コロナウイルスと遺伝子情報がほぼ同じであるSARSウイルスの不活化ワクチン開発の際にADEが生じたことから、「コロナの不活化ワクチンでも同様の問題が起きる」ことを懸念する専門家は少なくない。

 中国製ワクチンを購入する国々にとっての期待は「感染防止」だが、ワクチンは「重症化防止」には効果があっても、「感染防止」にはつながらないとの見解が一般的である。中国産ワクチンの接種は、「感染防止」に役立たないばかりか、ADEのリスクに曝されるという極めて危険なものであり、「百害あって一利なし」である。

独ビオンテックからコロナワクチン1億回分購入

 ワクチン供給大国を自負する中国に目を転じると、意外な動きが生じていることに気づかされる。中国医薬品大手の上海復星医薬集団が昨年12月中旬、「政府からの使用許可を条件に独ビオンテックからコロナワクチンを少なくとも1億回分購入する契約を結んだ」と発表した。

ビオンテックのウグル・サヒン最高経営責任者(CEO)

 12月下旬には国営メディアは「人民解放軍の軍事科学院らがメッセンジャーRNA型のコロナワクチンの製造施設の建設を開始した」ことを報じた。臨床試験の初期段階にあるが、8カ月以内に利用可能になるとしている。製造施設の第1期の年間生産能力は1億2000万回分になる見通しとのことだが、中国はこの技術を自主開発したのだろうか。昨年7月30日付ロイターが「中国政府とつながりのあるハッカーらがコロナワクチンを開発している米モデルナを標的としていた」と報じていたことが気になるところである。

 ここから先は筆者の憶測にすぎないが、中国のワクチン外交の真の狙いは「国内でメッセンジャーRNA型のワクチン開発に目途が立ったことで、邪魔になった粗悪品(不活化ワクチン)を一掃するため」ではないだろうか。そうだとすれば、粗悪品と知らずにワクチン接種を行う国々からすればたまったものではないだろう。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

【私の論評】中共が国内外で粗悪品ワクチンを用いれば、国内外で人々の信頼を失い統治の正当性を失う(゚д゚)!

中国というと、マスク外交の大失敗は、まだ記憶に新しいです。

中国当局が初期対応を誤ったために武漢市で感染が拡大した新型コロナは世界中に拡散しました。中国に付いてしまったそんなマイナスのイメージを、「世界に手を差し伸べる責任ある大国」というプラスのイメージに転換するのがマスク外交の狙いでした。

中国が重点的に支援したイタリア、インドネシア、マレーシア、パキスタン、スリランカといった国々を眺めると、ある共通点が浮かび上がります。その多くは「一帯一路」の参加国です。

一帯一路は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が2013年に打ち出した広域経済圏構想でした。中国から中央アジアを通って欧州に至る陸路の「一帯」と、海路で東南アジア、インド、東アフリカ、中東、欧州に至る「一路」からなる。沿線国に資金を貸し付けて道路や港湾、鉄道、ダムなどのインフラを整備。人と物の交流を促進して親中の経済圏を構築するという壮大な計画です。

中国は一帯一路に未参加のフランスやオランダ、スペインなどにも医療支援の手を差し伸べており、「責任ある大国」との好印象を与えることで、参加に向けた下地作りを進めているようにも見えました。中国が医療支援した国は全部で150にも及びました。一帯一路を通じて中国の勢力圏を拡大し、米国を凌駕する超大国としての地位を獲得するという野望が透けていました。

中国遼寧省から韓国に贈られる医療用マスク=2020年3月16日、遼寧省瀋陽市

しかし、習氏の肝いりで始めたマスク外交は世界から反感を買うことになりました。医療支援を通じて国家イメージを高めようとする一方で、「戦狼(せんろう)外交」と呼ばれる強硬な外交姿勢で他国を威圧するという、矛盾した行動の結果です。

マスク外交が失敗した原因は、ほかにもある。例えば、中国にはまともな品質管理システムがないため、世界各国に輸出したマスクや検査キットの多くは、適切な基準を満たしていない欠陥品だったのです。また、中国の外交官たちは、世界各地で中国政府のあからさまなプロパガンダを売り込もうとして、かえって容赦ない批判を浴びることになりました。

在仏中国大使館はウェブサイトで「欧米は中国での感染が分かってから2カ月間、何をしていたのか」と皮肉り、「フランスの介護施設では飢えと病気で死ぬまで高齢者を放置している」などと不正確な情報を基にこき下ろしました。

新型コロナの発生源の独自調査を求めたオーストラリアには激怒して、同国からの農畜産物の輸入を制限し、自国民に留学や渡航の禁止を勧告。中国外務省の副報道局長は、「米軍が感染症を武漢に持ち込んだかもしれない」との陰謀論をツイートしました。

これら数々の不可解な言動は世界中に報じられ、不信感を生みました。

主要7カ国(G7)で唯一、一帯一路に参加し、中国からマスク外交で大きな恩恵を受けたはずのイタリアですら「悪化」が37%に達し、「改善」の21%をしのぎました。

不用意に諸外国の猜疑(さいぎ)心をあおる習氏は、鄧小平が唱えた国際協調路線を放棄したようだ。中国は1990年代以降、鄧小平が唱えた「韜光養晦(とうこうようかい、強くなるまで爪を隠す)」を外交の基本としてきました。米国をはじめとする各国と協調することで対外的に平和を保ち、国内の経済発展に専念する環境を整える意図がありました。

その一方で、鄧小平ら当時の共産党指導部は並行して愛国主義教育を強化しました。89年の天安門事件のような動乱を繰り返さないためにも、国民に共産党による統治の正当性を教育で植え付ける必要あると痛感したためです。

愛国主義教育の結果、ナショナリズムが高揚されました。やがて国民は民族の誇りをかき立てるような政策を希求するようになります。それに応えることで求心力を高めようとしているのが現在の習政権です。

習氏は2012年に総書記に就任した直後に、「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」の実現を国家目標に掲げました。

現在、米アジア・ソサエティー政策研究所の副所長を務め、13~17年に東アジア・太平洋担当の米国務次官補を担ったダニエル・ラッセル氏は、「どの国もそうだが、社会が豊かになって中流層が厚くなると、政府への要求が増えてくる。中国国内でも、一昨年ごろから一帯一路を疑問視する声が増えていた」と語っています。

ラッセル氏は「中国が植民地化されていた1840年のアヘン戦争から第2次世界大戦が終結する1945年までの『屈辱の100年』は終わった。もう誰にも踏みにじられず、皆からリスペクトされる強国に生まれ変わったと習氏は国民に訴えており、そのストーリーに沿うかたちで進める政策の1つが戦狼外交だ」と話しています。

中国政府が親中を世界に広げようと一帯一路やマスク外交に莫大な資金を投じる端から、威圧的な姿勢で帳消しにしてしまう背景には、間もなく「中国の夢」が実現するのだという国民の高揚感がありました。こうした覇権主義に通じる言動は、他国の警戒心を呼び覚ましています。中国と経済的な距離が近かった欧州でも対中政策の見直しが始まるなど、経済発展の阻害要因になりつつあります。

米クレアモント・マッケナ大学教授で政治学者のミンシン・ペイ氏は、「中国政府内には傍から見て奇妙と思えるような政治理論が存在し、無謀で逆効果となるような行為がイデオロギー的に正しく、政治的に有効と判断されることがある。誰も政策に異論が挟めない独裁的で中央集権的な体制下においては、しばしばこのようなことが起きる」と解説しています。

「中国の夢」を追いかけているようで、実は遠ざかっているのです。そのことに気がついていないという事実が、一党独裁体制の限界を示しています。

その中国が、現在は世界の富裕国が供給量に限りのある大手製薬会社の新型コロナウイルスワクチン確保に奔走する中で、中国は積極的に、資金力の弱い国々に中国製ワクチンの提供を申し出ています。中国政府が求めているのは外交上の長期的な見返りです。

 
  中国・北京にある製薬会社シノバック・バイオテックの新型コロナウイルスワクチン
  製造施設で、ワクチンを検査するスタッフ(2020年9月24日


この戦略には、新型コロナ流行初期の中国政府の対応への怒りや批判をかわし、中国のバイオテクノロジー企業の知名度を上げ、アジア内外での中国の影響力を強化・拡大するなど、複数のメリットがあります。

中国が、悪化したイメージの回復を図ってワクチン外交を展開しているのは間違いないです。中国は、ワクチン外交を、中国の世界的影響力を増大し、地政学的な諸問題を解消するツールとして用いようとしています。

中国は、低・中所得国のワクチン市場のわずか15%を獲得しただけで約28億ドル(約2900億円)の純利益を見込めると、香港の安信証券は試算しています。

全世界でワクチン接種を推進するためには、超低温での輸送を可能にする低温物流網(コールドチェーン)や保管施設の整備も必要だが、CFRのカーク・ランカスター氏はこれらの事業について、習氏が1兆ドル(約103兆円)を投じて推進する巨大経済圏構想「一帯一路」にうまく調和すると指摘しています。

すでに電子商取引(EC)大手アリババ(阿里巴巴)は、アフリカ・中東へのワクチン供給拠点となる倉庫をエチオピアとアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイに建設した。また、中国政府はブラジル、モロッコ、インドネシアなどにワクチン製造施設を建設しているほか、中南米諸国に10億ドル(約1030億円)規模の資金提供を約束しています。これらのインフラを、中国企業はコロナ後に利用できます。

こうした試みは『健康のシルクロード』と銘打たれ、中国の国際的な評判を回復しつつ、中国企業向けの新たな市場を開拓することにつながっています。

ただ、「マスク外交」で失敗した中国は「ワクチン外交」でも失敗する可能性が大です。上の記事で、藤氏は、中国のワクチン外交の真の狙いは「国内でメッセンジャーRNA型のワクチン開発に目途が立ったことで、邪魔になった粗悪品(不活化ワクチン)を一掃するため」かもししれないとしていますが、まさに粗悪品を「健康のシルクロード」に利用しているのだと思います。

それどころか私は、中国共産党は、自分たちや富裕層には独ビオンテック社のコロナワクチンを用い、それ以外のその他大勢には粗悪品ワクチンを用いようと目論んでいるのではないかとさえ思います。

中国が国内外で粗悪品ワクチンを用いれば、「マスク外交」で失敗したよりも、さらに多くの諸外国の猜疑心をあおる結果に終わるでしょう。それどころか、中共は国内外で統治の正当性を失うことになるでしょう。

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空白の対台湾政策、黙るバイデンに焦る日台―【私の論評】日台の安全保証上の最大の脅威は、中国でもコロナでもなくバイデンか(゚д゚)!

2021年1月18日月曜日

空白の対台湾政策、黙るバイデンに焦る日台―【私の論評】日台の安全保証上の最大の脅威は、中国でもコロナでもなくバイデンか(゚д゚)!

空白の対台湾政策、黙るバイデンに焦る日台

岡崎研究所

 米国のバイデン新大統領は、これまで台湾防衛について語ったことがない。たしかに「同盟の回復」については強調しているが、台湾防衛の部分は欠落している。



 ウォールストリート・ジャーナル紙の12月28日付け社説‘Japan’s Biden Jitters’は、日本の中山防衛副大臣の発言を引用しながら、台湾がアジア・太平洋において占める重要性について論じている。社説は、以下の諸点を指摘する。

・中山副大臣は、ロイターの記者に対し、「バイデンの対台湾政策を早く知りたい」、「そうすれば、相応の準備をすることが出来る」、「もし中国が一線を越えた時、バイデン氏は如何に対処するのか」と問題提起した。

・北京の強硬派は民主主義下の台湾を「分裂主義者の省」として、なんとか自分たちの統治下におきたがっているが、台湾世論の大きな動向は、中国による「統一」に反対であり、特に香港情勢を見てその傾向は一層強まっている。

・バイデン政権下において、中国共産党が台湾海峡を越えて軍事行動をしかけることもあり得ないことではない。 

・万一、台湾の独立が失われるようなことになれば、太平洋における力のバランスは大きく崩れ、中国側に決定的に有利に働くようになる。米国の目標は何よりも「抑止」である。米国はまず台湾の防衛を支援し、中国が台湾の島々を攻撃することが、いかに高くつくか、中国に知らしめる必要がある。

 その上で社説は、もしバイデンがアジア諸国の「同盟国」を安心させようというのなら、台湾防衛の目標をはっきり打ち出すべきだ、という。

 この社説は、時宜を得た良い社説である。台湾の蔡英文政権は、トランプ政権との関係緊密化を謀ってきたが、バイデン政権になっても変わらず、米台関係が緊密であることを熱望していることにかわりはない。台湾の世論調査等からもはっきりしていることは、米国が中国の圧力などにより、オバマ政権時代の対中「融和路線」に回帰することがないかを台湾としては危惧しているということだろう。

 トランプ大統領個人の資質については毀誉褒貶があるが、台湾の防衛という点については、トランプ政権下でいくつかの際立った進展が見られた。米国国内法である「台湾関係法」に基づく台湾への武器輸出の増大、米国関係閣僚のはじめての台湾訪問、総統就任直後のトランプ・蔡英文電話会談など、いずれも中国の強い反対のなかで実施された。ペンス副大統領、ポンペオ国務長官による、中国への「関与政策」終了の発言などは、最近の中国の強まる全体主義への警戒心と直結している。任期切れ間際にも、米台関係を強化する措置を打ち出した。1月9日、ポンペオ国務長官は、米国の外交官や軍人を含む当局者が台湾の当局者らと接触することを制限してきた国務省の内規を全面的に撤廃すると発表した。バイデン政権がこれらのトランプ政権時代の対中・対台湾政策をどこまで継承しようとするのか、大いなる注目点だ。

 バイデン氏は、意図的なことなのか分からないが、「自由で開かれたインド太平洋」という表現に変えて、「安全で繁栄したインド太平洋」という言葉を使用している。前者の言葉は、安倍政権、そしてトランプ政権も使用してきた。そこには、事実上、中国を仮想の脅威と見る前提が秘められている。新しい表現を使うところに、バイデン政権の対中融和路線の兆しが見えるという識者もいるが、いずれにせよ注意深く観察する必要があろう。

 バイデン氏の子息ハンターをめぐり、中国企業との不適切な関係が報道されたことがある。これらは単なる根も葉もないデマなのかあるいは、バイデン政権がそのうち中国から何らかの圧力や牽制を受けることもありうる類の話なのか、判然としない。

【私の論評】日台の安全保証上の最大の脅威は、中国でもコロナでもなくバイデンか(゚д゚)!

昨日述べたように、台湾は、自国で高性能潜水艦を開発し、最終的には8隻の潜水艦隊を持つ予定です。これは、中国に対してはかなりの抑止力になります。

なぜなら、もし台湾が日本の潜水艦のようにステルス性(静寂性)の高い潜水艦を開発できた場合、対潜哨戒能力が極端に劣る中国海軍はこれを発見できず、台湾側は中国の潜水艦を容易に発見できるため、海洋戦においては、中国は台湾に勝てなくなるからです。

ただ、現在は台湾の潜水艦は、計画段階であり台湾海軍が8隻の新型潜水艦隊を持っているわけではありません。現行は第二次世界大戦中に制作された、米国の旧式の潜水艦が4隻あるだけです。

台湾が高性能潜水艦を所有すれば海洋の軍事バランスが崩れ中国には不利

ただし、中国が台湾に侵攻することがあれば、米軍の攻撃力に優れた原潜と静寂性に優れた日本の潜水艦隊が情報収集にあたれば、中国軍が台湾への上陸を防ぐか、防ぎきれなくても、潜水艦隊で包囲して補給を絶ってしまえば、中国軍はお手上げになるだけです。

だから、台湾についてはさほど、心配するには及ばなかったのですが、バイデンが大統領になれば、どうなるかはわかりません。

米国はトランプ大統領の下で台湾への軍事支援を大幅に拡大し、関係強化にいそしんできました。そのトランプ氏に選挙で勝利したバイデン氏の次期政権が、こうした外交方針を受け継ぐかどうか、台湾側は不安な気持ちで見守っているところです。

国防総省のヘルビー次官補代行(東アジア担当)は10月の講演で、米国が台湾に対し、できるだけ多くの沿岸防衛の巡航ミサイルのほか、地雷、移動砲、最先端の監視装置も購入するよう促していると明かしました。その取り組みこそが、「絶対に敗北が許されないたった1回の戦闘」に勝利する可能性を最大化してくれると力説しました。

武器の提供はこれだけで終わりませんでした。トランプ政権は10月、台湾が要望していた対艦ミサイル「ハープーン」400基と発射・運搬装置、レーダーシステムの売却を承認。これにより軍艦や海陸両用部隊からの攻撃に対する対処能力が向上します。台湾空軍向けに空中発射式の新型巡航ミサイル135基を売却することも同月承認しました。

こうしたミサイルは、中国との軍事衝突が起きた場合には、台湾による中国艦艇、あるいは中国本土沿岸の重要拠点を攻撃する力を増強します。台湾は自前で製造する高性能の対艦、防空、対地攻撃の各種ミサイル開発も加速しています。

中国政府はトランプ政権が推進した「親台湾」政策に相当な不快感を抱いているようです。米国には直ちに台湾への武器売却と軍事的交流をやめもらいたいというのが、中国側の主張です。国務院台湾事務弁公室は声明で、台湾は中国の内政問題であると強調し、台湾への武器売却は中国に対する政治的挑発であり、「台湾分離独立」勢力を増長させるだけでなく台湾海峡の平和と安全を損なうと訴えました。

一方台湾国防部はロイターに、台湾の防衛力強化は米国内で長年、超党派から支持されていると説明した上で、米国が最近承認した武器売却に触れて、「次期米政権はこれに関する約束を履行し続けるだろう」と期待を示しました。

バイデン氏の政権移行チームはこの記事内容についてコメントを拒否しました。

台湾を不安にさせているのは、バイデン氏の過去の発言です。

例えば2001年、当時上院議員だったバイデン氏は、ジョージ・W・ブッシュ大統領(子)が台湾防衛を米国の「責務」だと表明したことを批判し、米国が中国と国交正常化した後に米台関係を規定した「台湾関係法」に基づけば、そうした義務はないと論じました。

もっともこの発言は、中国がアジア太平洋地域の米国の覇権にとって、重大な脅威として台頭するずっと前の話です。今年の大統領選中には、バイデン氏は台湾や「志を同じくする民主主義国家」とのきずなを深めるべきだと訴えていました。

バイデン氏の側近で外交に携わる人々の多くも、中国が強権的な姿勢を先鋭化し、さまざまな国際機関を都合の良いように変革させようとするようになったことで、米国が果たすべき責務は変わったと認めています。

バイデン氏が国家安全保障担当の大統領補佐官に指名したジェイク・サリバン氏はコメント要請に応じなかったものの、5月の外交専門誌フォーリン・ポリシーに共同執筆した記事で、台湾問題の核心に鋭く切り込んでいます。「中国人民解放軍は、台湾を支配下に置くために必要な兵力投射能力を築きつつある事実を隠そうとしていない。(中国の台湾制圧は)一夜にして地域の勢力バランスを覆し、西太平洋における米国の残りのコミットメントに疑念を生じさせてしまう」と論評しました。

バイデン親子

バイデン前副大統領の息子ハンター氏について、司法当局が捜査していることが9日、明らかになりましたた。ハンター氏が発表しました。税金にからむ内容が捜査項目になっています。家族のスキャンダルは次期政権の発足へ準備を進めるバイデン氏に痛手となりかねないです。

ハンター氏の声明によると東部デラウェア州の連邦地検が先月8日、ハンター氏の弁護士に「税金をめぐる事項」を捜査していると通知しました。ハンター氏は「とても重く受け止めている。ただ専門的かつ客観的な検証によって私が税務の専門家の助けを得ながら問題に合法的で適切に対処したことが証明されると確信している」と指摘。違法行為はないとの認識を示しました。

ハンター氏をめぐる詳しい捜査内容は明らかになっていないですが、バイデン氏に対する不信感が国民に広がっています。バイデン氏はトランプ氏について、2016年と17年に支払った所得税がそれぞれ750ドルにすぎなかったとの報道を引用し、過少だと批判したこともありました。

いずれにしても、最初の数ヶ月のバイデン政権の挙動をみていれば、バイデン政権がそのうち中国から何らかの圧力や牽制を受けることもありうるかはっきりするでしょう。

ただ、それに関しては日本も座して、バイデンの行方を見ているだけではなく、台湾の危機は、日本の危機という観点から、対処すべきでしょう。

米国があてにできないということになれば、日米豪印(クアッド)の連携を強め、台湾の安全保障に積極的にかかわっていくべきでしょう。そうして、日豪印によって、米国バイデン政権が台湾の安保に無関心であったり、及び腰であった場合には、徹底的に追求すべぎです。

2021年の国際的な最大リスク(危険)は、米国46代目の大統領となるジョセフ・バイデン氏だ――。こんな予測を国際的に著名な米国の政治学者イアン・ブレマー氏が1月冒頭に打ち出しています。同氏が代表を務める国際情勢分析機関「ユーラシア・グループ」が、「2021年のトップリスク」という報告書で発表しました。

イアン・ブレマー氏

この予測では、新しい年の国際リスクが1位から10位まで挙げられ、そのトップが「第46代アメリカ大統領」と明記されていた。ちなみに2位は「新型コロナウイルス」、3位は「気候変動」、4位は「米中緊迫の拡大」、以下は「サイバーの混乱」や「中東の低油価危機」「メルケル首相後の欧州」などと続いていました。

ブレマー氏はこの報告書で以下の骨子を指摘していました。
・もはや化石のように固まった米国内の政治的分断と国際的な米国の地位や指導力の低下によって、バイデン大統領は手足を縛られた状態となり、バイデン氏自身の能力や活力の限界によって統治は大幅に制約される。

・バイデン氏自身は国際情勢に対して指導力を発揮しようと試みるだろうが、まず米国が新型コロナウイルスの世界最大の感染に効果的に対処できないという現実が、国際的な信頼度を激しく低下させるだろう。

・中国の無法な行動を非難し、抑止するというバイデン政権の基本方針は、共和党と一致する部分も多い。だが、ヨーロッパがつい最近、中国との投資の包括的な合意を成立させたように、国際的には、米国の強固な対中政策を阻む要因も多い。
ブレマー氏は、2021年の最大のリスク要因は、コロナでも中国でもなくバイデン大統領であるとしているのです。

私達も認識を改めるべきでしょう。日台の安全保証上の脅威は、中国でもコロナでもなく、バイデンであると認識すべぎでしょう。

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2021年1月17日日曜日

台湾が建造開始の潜水艦隊、中国の侵攻を数十年阻止できる可能性―【私の論評】中国の侵攻を数十年阻止できる国が台湾の直ぐ傍にある!それは我が国日本(゚д゚)!

 台湾が建造開始の潜水艦隊、中国の侵攻を数十年阻止できる可能性

自前の潜水艦の着工式に出席した蔡英文総統=2020年11月24日、高雄市

香港(CNN) 台湾が防衛力の強化を目指し、最新鋭の潜水艦隊の建造に着手した。この動きについて専門家は、中国軍による台湾侵攻や海上封鎖の計画を複雑化させる可能性があると指摘している。

新造艦8隻のうち最初の艦の建造は昨年11月、南部の港湾都市・高雄の施設で開始された。同艦の試験航行は2025年に始まるとみられている。台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統は着工式で、建造計画を「台湾の強い意思を世界に示す歴史的な節目」と呼んだ。

台湾と中国は過去70年以上にわたり別々の政府によって統治されてきたが、中国政府は台湾に対する完全な主権を主張している。

中国の習近平(シーチンピン)国家主席は台湾独立を決して容認しないと言明し、必要なら武力行使も排除しないと主張。一方の蔡氏も屈しない姿勢を示し、台湾はアジアで「権威主義体制による侵略から民主主義を守る」取り組みの先頭にいると述べた。

中国の人民解放軍(PLA)はここ数カ月、台湾に対する軍事的圧力を強めており、台湾の防空識別圏に軍用機を派遣したり、付近の島で軍事演習を強化したりしている。台湾政府に対する威嚇との見方が多い。

ただ、侵攻を試みるPLAの艦隊はいずれも、台湾と中国本土を隔てる狭い台湾海峡を通過する必要がある。

専門家によれば、まさにこの場所において、台湾が建造を計画する潜水艦は大きな違いを生む可能性がある。新造艦は第2次世界大戦にさかのぼる現有4艦の後継となる。



隠密性の高い兵器プラットフォーム

潜水艦は今なお世界屈指の隠密性を誇る兵器プラットフォームで、相手がどのような艦隊であっても大打撃を与えることができる。

台湾の潜水艦にはディーゼル・エレクトリック方式が採用される見通し。水上ではディーゼルエンジンを動力源とする一方、潜航中は寿命の長いリチウムイオン電池で駆動する超静粛な電気モーターを使用するという。

米海軍や中国が配備を進める原子力潜水艦ではなく、ディーゼル・エレクトリック艦を選んだのは、台湾政府にとって簡単な選択だった。ディーゼル・エレクトリック艦は建造がより容易で、コストも低い。潜航時の騒音も電気モーターのほうが原子炉より少ない。

専門家は、こうした静かな潜水艦なら中国軍の対潜戦(ASW)部隊による探知が難しいとの見方を示す。台湾海峡の海底付近にひそみ、そこから浮上して台湾に向かう中国の兵員輸送艦を狙い撃ちにできる可能性もある。

新造艦にどんな技術が搭載されるのか正確なところはまだ不明だが、米政府は昨年、台湾にMk48魚雷の取得を許可した。

「大型の兵員輸送艦に魚雷が命中した場合、特にそれが米国のMk48のような現代型の魚雷であれば、侵攻する軍は1個大隊を失うことになる。従って、潜水艦がいないことを確信できるまでは、いかなる国も台湾海峡に強襲揚陸艦を派遣しないだろう」。元米海軍大佐で、現在はハワイ太平洋大学のアナリストを務めるカール・シュスター氏はそう指摘する。

未知の領域

台湾が大型潜水艦(排水量は2500~3000トンとなる見通し)の建造に乗り出すのは初めて。専門家の間では、台湾の造船産業にその能力があるか現時点では未知数との見方もある。

台湾は海外の供給業者を確保しようとしたものの奏功せず、台湾の造船企業「台湾国際造船(CSBC)」と自前潜水艦の開発契約を結ぶことになった。

「もし台湾がこうした潜水艦の建造に成功すれば、非常に先進的で有効な艦隊になる可能性がある。ただ、台湾に先進的な潜水艦の製造経験が全くないことを踏まえると、これが大きな『もし』であることは確かだ」(米シンクタンク「ランド研究所」の上級国際防衛研究員を務めるティモシー・ヒース氏)

シュスター氏は、台湾はまだ潜水艦建造技術を学習途上だと説明。8隻全てを実戦投入できるのは2030年以降になる可能性もある。

ただ、潜水艦の開発に失敗したり遅れが出たりしても、台湾には中国の軍事行動に対抗する重要な防衛手段が他にもあると専門家は指摘する。

英ロンドンの王立防衛安全保障研究所で海軍力を研究するシドハース・カウシャル氏によれば、台湾は米国製の「ハープーン」を含む各種の対艦ミサイルや機雷、特殊潜航艇を保有しているという。

パワーバランスでは中国が依然有利

専門家によると、長期的に見れば中国はまだ軍事面で優位を保っている。紛争になった場合、中国は潜水艦や水上艦、地上発射ミサイル、空軍の爆撃機および攻撃機を大量投入できる。

たとえば米国防省は中国の潜水艦隊について、近い将来に65~70隻規模になるとの見通しを示す。

その上、中国は猛烈なペースで軍備増強を進めており、すでに世界最大の規模を誇る艦隊に絶えず戦力を追加している。

この点を強調するように、台湾の潜水艦計画が高雄で始動したわずか1週間後、中国は潜水艦への対抗手段を見せつけた。

中国の環球時報は「PLAの対潜戦用航空機が爆雷攻撃演習を実施、台湾分離主義者への抑止力になるとの見方」という見出しで報道。記事の上にはY8対潜哨戒機が演習中に爆雷を投下する写真も掲載した。中国の対潜戦能力について報道が出るのは「異例」という。

【私の論評】中国の侵攻を数十年阻止できる国が台湾の直ぐ傍にある!それは我が国日本(゚д゚)!

冒頭の記事て、米シンクタンク「ランド研究所」の上級国際防衛研究員を務めるティモシー・ヒース氏の以下の発言が取り上げられています。

「もし台湾がこうした潜水艦の建造に成功すれば、非常に先進的で有効な艦隊になる可能性がある。ただ、台湾に先進的な潜水艦の製造経験が全くないことを踏まえると、これが大きな『もし』であることは確かだ」

シュスター氏は、台湾はまだ潜水艦建造技術を学習途上だと説明。8隻全てを実戦投入できるのは2030年以降になる可能性もあることも指摘しています。

米シンクタンク「ランド研究所」の上級国際防衛研究員を務めるティモシー・ヒース氏

ところが、このような潜水艦、いやおそらく技術的にはさらに上であろう潜水艦をすでに20隻以上も所有する国が台湾のすぐ近くにあります。それは、無論我が国日本です。

上の記事では、台湾が8隻の優れた潜水艦を持つことができれば、中国の侵攻を数十年阻止できる可能性を指摘しています。

しかし、それはなぜなのかについては、あまり詳しく解説していません。そのため、この記事の内容を多くの人が理解しにくくしています。

今回は、それを明快に説明しようと思います。このブログの読者であれば、もうすでにお分かりだと思います。

そうです。台湾の現在の技術水準を考えると、対潜水艦哨戒能力の低い中国には、探索することができない潜水艦を制作することが可能であると考えられるからです。

中国の対潜水艦哨戒能力は、元々はロシアから輸入したものです。そうして、ロシアの対潜哨戒能力は日米に比較すると現在でも極端に低く、中国も同程度以下であるからです。これから、数十年も同じ状況が続くこどか考えれます。

そこで、台湾がある程度静寂性に優れ、ある程度以上の攻撃量を備えた潜水艦の建造に成功し、8隻程度配備することができれば、中国の侵攻を数十年にわたって封じる可能性がでてくるということです。

もし、8隻の潜水艦を配備できたとして、どのようなことが想定されるのか、以下に述べます。

中国人民解放軍が台湾に進行しようとして、空母、強襲揚陸艦、その他の艦艇を台湾に派遣したとします。そうすると、これらの艦艇はすべて台湾の潜水艦に撃沈されることになります。

なぜなら、中国海軍の対潜水艦哨戒能力は低いので、台湾の潜水艦は自由に台湾付近の海域を航行して、逐次中国艦艇を狙い打ちできるからです。これに対して、中国の艦艇は、潜水艦も含め台湾の潜水艦は容易に探知できるからです。

ほとんどの艦艇は、台湾に人民解放軍を送り込む前に、撃沈されることになります。それでも、中国人民解放軍が多大な犠牲を払ってでも、むりやり、台湾に人民解放軍を上陸させたにしても、今度は台湾の潜水艦が台湾を包囲して、台湾に上陸した中国人民解放軍への補給を絶てば、人民解放軍はお手上げになります。

一方台湾軍は、台湾潜水艦の護衛により、自由に補給ができることになり、これでは人民解放軍お手上げになり、餓死するか降伏するしかなくなります。

中国人民解放軍が台湾に上陸すれば、餓死するか降伏するしかなくなる・・・

これは、同時に何を意味するかといえば、台湾が想定している静寂性に優れた、ある程度の攻撃力を有する潜水艦をすでに20隻以上配備している日本は、尖閣諸島や沖縄を含め、日本の領土を奪取することはできないということになります。それも今後数十年できません。

無論中国の対潜哨戒能力が向上すれば、別ですが、その見込はここ数十年はたたないようです。

これに似たようなことを以前のブログに掲載したところ、ツイッターで「中国が大量にドローンを派遣してきたらどうなのか」等と質問してきた人もいましたが、その人には「中国がいくらドローンを大量に派遣してきても、潜水艦を発見できなければ、攻撃のしようがない」と応えました。

そうです。仮に中国が超音速ミサイル発射したり、宇宙から攻撃ができるようになったとしても、発見できない敵に対しては、攻撃しようがないので、無意味ということになります。

ただ、現在は台湾は新型潜水艦を作成中であるということであり、現在それを所有していないわけですから、現状は危険といえば、危険ですが、それにしても米軍の原潜は無論日本の潜水艦も当然のことながら、台湾付近の海域に潜航し、中国の動向をうかがっていることでしょう。

中国人民解放軍が不穏な動きをみせれば、日本の潜水艦は静寂性を活かし情報収集にあたり、攻撃力の高い米軍原潜は、中国艦艇に攻撃をすることになるでしょう。それによって、中国人民解放軍の艦艇の大半は撃沈されるか、上陸したとしても、補給を絶たれお手上げになり餓死するか、降伏するしかなくなります。

そのことが、十分わかっているから、中国は思い通りの海洋進出が未だにできていないのです。中国海軍のロードマップによれば、2020年には、第二列島線を確保することになっていますが、現実には台湾・尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できていません。これからも、できないでしょう。

それにしても、台湾は良いところに目をつけました。空母や他の艦艇を大量建造するよりも、数隻の潜水艦のほうが中国抑止のためには、コストパフォーマンスがかなり高いです。心理的にも中国をかなり抑制できます。誰だって、目に見えない敵から攻撃を受けるのは恐ろしいです。

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2021年1月16日土曜日

SNSが先導、選挙不正問題に蓋、米国で現代の魔女狩りが始まった―【私の論評】バイデン政権が成立しても最初からレームダックになり、米民主党は日本の民主党のように分裂し万年野党になる(゚д゚)!

SNSが先導、選挙不正問題に蓋、米国で現代の魔女狩りが始まった

メルケル、マクロンも危惧を表明


 「公正な選挙」が「権力の集中」を防ぐ

今回の史上まれに見る混乱ぶりを考えれば、米国の大統領選挙史上唯一順守されてきたと言ってよい、1月20日の大統領就任式ですら当日まで気を抜くことができないであろう。


例えば、最近知られるようになってきた「1876年の大統領選挙」においては、大統領就任式の翌年3月4日直前の3月2日まで合衆国議会が選んだ15人の委員からなる選挙委員会が20票の票の行方をめぐって紛糾した。

詳細は昨年12月17日の記事「トランプが敗北しても『真の敗北者は民主党』であるワケ」3ページ目を参照いただきたいが、大統領就任式以外のものは絶対ではないし、初代大統領ジョージ・ワシントンが就任したのは1789年4月30日であり、1797年3月4日に勇退したことから3月4日が大統領就任式との慣例が続いた。

ちなみに、大統領が2期4年というのも、ジョージ・ワシントンが望めば十分3選可能であったところ、「権力の集中を排除する」ため勇退したことから慣例化した。

1947年のアメリカ合衆国憲法修正第22条で法制化されたのは、この慣例を無視するという暴挙で、民主党のフランクリン・ルーズベルトが1933年から1945年まで大統領職にとどまったからである。つまり、ルーズベルトが行った「権力の集中」に米国民は最終的にノーを突き付けたけたのだ。

反日と評価されるルーズベルトが、「第2次世界大戦参戦の口実をつくるために日本を苛め抜いて真珠湾を攻撃させた」とはよく言われることだ。ルーズベルトが1941年に3期目の大統領職についていなければ「12月8日」はどうなっていたのだろうかとつい考えてしまう。

また、4期目が始まった直後にルーズベルトが急死し、副大統領から大統領に昇格したハリー・トルーマンが「日本への原爆投下」という人類史上最大級の「人道への罪」を犯した。

その他、過去民主党が行ってきた日本(日系人)への非道な行いは、昨年8月7日の記事「もし米国に『日本にとって悪夢』の民主党政権が誕生したら?」で詳しく述べた。南北戦争で奴隷制度を支持し、前記の「権力の集中」という暴挙を行い、さらには「日系人(だけ)強制収容」というあからさまな人種差別を行ってきた、民主党の本質は「全体主義」だと考えられる。

日本にはメディア総出で誕生させた「悪夢の民主党政権時代」が存在するが、それがどのような時代であったのか、日本国民はよく知っている。

米国も「悪夢の民主党政権時代」がやってくるのか? 悪夢ならまだしも、ナチス・ドイツのファシズムや、中国に代表される共産主義のような全体主義が米国を支配するようになったら「地獄」である。

まだ今のところ、共産主義中国よりはましな状況だと思うが、すでに米国が「香港化」しているようにも思える。

当然、日本の民主主義も危機にさらされるから、日本国民も座視している場合ではないと思う。

「民意」はどこにある?

2020年大統領選挙の争点は、バイデン(民主党)とトランプ(共和党)の戦いととらえるべきではない。

A:「不正選挙問題を無視し、バイデン氏をごり押し当選させたい」勢力
B:「不正選挙問題を解明し、公正な選挙によってトランプ氏を当選させたい」勢力

の激突である。

不正選挙の「確実な証拠」については、1月10日の記事「それでも『臭いものにふたをすれば民主主義の危機だ』と叫びたい」の3ページ目で多数の参考資料を示したので、ここでは繰り返さない。

しかし、それらの「確実な証拠」に対して「見てみぬふり」をして、司法や議会の多数を占める金権議員が、自らの保身と既得権益を守るAの立場であることは、これまで読者が目撃してきたとおりだ。

もちろん、不正選挙があったと断定するわけではないが、これだけの「確実な証拠」がそろっているのだから、Bが主張するように少なくとも「国民的議論」は行うべきだということである。

実際、「1月6日の事件のトランプ氏の責任」に対して、米国民が憤っているのか?というとそうではないようである。

世論調査会社ラスムセンが調べた1月5日のトランプ大統領の支持率は47%だったが、事件後の1月8日の支持率は48%と、むしろ上がっているのである(朝香豊氏ブログ「絶体絶命のトランプに打つ手はあるのか」参照)

1%というのはごくわずかな数字だが、オールドメディアはもちろん大手SNSも「あからさまなトランプたたき」へ舵を切っている中で、支持率が下がらないというのは驚異的現象である。

「反民主主義勢力」による少なくとも香港並みと考えられる言論弾圧の中でも、「米国人の良心」が指し示すものは変わらないと言える。

ドイツもフランスも危機を感じている……

メルケル首相とトランプ大統領は「犬猿の仲」だと言われる。また、メルケル氏は媚中派だとされることは、昨年9月21日の記事「メルケル独裁16年間のつけ、中国がこけたらドイツもこけるのか?」で述べたとおりだ。

また、バイデン氏の「当選確実」に対する祝辞もいち早く述べている。

しかし、そのメルケル氏でさえツイッターの行動を糾弾している。ドイツ政府のザイベルト報道官は1月11日、ツイッターが「トランプ米大統領のアカウントを永久停止した」ことについて、メルケル首相が懸念していると明らかにし、民間企業が言論の自由の制限を決定するべきではないとの考えを示している。

また、トランプ大統領との関係が良好ではないマクロン首相率いるフランスのルメール経済・財務相も、1月11日、ラジオで「巨大IT企業に対する規制は、業界の寡占企業自らが行うことではない」と発言した。Twitter上で発信される偽情報や扇動発言には、国や裁判所が対応すべきだということである。

こうなると「選挙不正問題」だけではなく、問題が「言論の自由」や「民主主義」そのものに広がってきたと言わざるを得ない。ドイツもフランスも全体主義的傾向の強い国だが、その両国でさえ「米国の香港化」には脅威を感じ警鐘を鳴らしているのだ。

その点、先進民主主義国家のひとつであるはずの日本において、菅義偉首相の動きは鈍すぎる……

まさか、ファシズムや共産主義などの「全体主義」を支持しているとは思えないが、その疑念を抱かせる態度である。もっとも、1月15日公開の「大丈夫? 二階俊博の顔を見すぎる菅首相、それでも他にいないのか」で述べたように、単に決断ができないだけなのかもしれないが……

日本国民も米国の「言論弾圧」の状況を対岸の火事として眺めていると、わが身に降りかかってくることになる。

SNSの検閲は中国共産党並みだ

前記の問題以外にも大手SNSの暴挙は続く。昨年11月2日の記事「グーグル提訴の世界史的な意味…GAFAは人類の敵か味方か考えろ!」に対する答えは「敵」であり、ジョージ・オーウェルの「1984」に登場する「ビッグブラザー」の支配がすでに始まっているように感じられる。

象徴的な例が、1月11日、フェイスブックが「ストップ・ザ・スティール(選挙泥棒を止めろ)」に言及する全てのコンテンツを削除すると発表したことである。

もし、オールドメディアや大手SNSが飽きもせず棒読みするように「選挙不正は無かった。トランプ氏のたわごとだ」というのなら、その「確実な証拠」が無いたわごとは早晩消えていく。エイブラハム・リンカ―ンが述べるように「すべての人々を永遠にだます」ことはできないからである。

逆に言えば、「禁句」を設定して人々の目に触れさせないようにするのは、その「禁句」が事実だからとも言える。

例えば「天安門事件」は共産主義中国における「禁句」である。しかし、中国政府が主張するように「民間人の死者が存在しない平和的な集会であった」などと信じる良識ある人々はごくわずかであろう。

本当に、中国共産党が述べるような平和的な行動であったのならば「禁句」にする必要など無い。恐ろしいのは、共産主義中国の国民の多くが「天安門事件」が起こった歴史さえ知らないことである。

多くの中国人は、米国人や日本人などの外国人から事件の存在を知らされて腰を抜かすほど驚く。教科書や歴史資料から抹殺されているのだからある意味当然と言える。

「選挙泥棒を止めろ」という言葉を禁句にする背景に「天安門事件」を禁句にするのと同じ問題があるのだと考えざるを得ない。

米国人が「選挙不正問題」を外国人から教えられて腰を抜かすほど驚くなどと言うことが起こってはならないのは言うまでもないいことだ。

1月20日以降も続く

一時期、共産主義中国で「くまのプーさん」という言葉が「禁句」になったことが話題になった。習近平氏を名指しで批判すると「監視員」によってすぐに記事を削除されたり、場合によっては逮捕・投獄・処刑されるので、中国人の間で習近平氏が似ているとされる「くまのプーさん」が隠語として使われていたからだ。

恐怖を感じるのは、最近日本でも「トランプ=虎さん」や「バイデン=梅田」のような隠語が広く使われるようになってきたことである。もちろん、削除やアカウント凍結を避けるためである。

独裁権力と闘うレジスタンスの方々の便宜のために私のブログで「独立系」のSNSを紹介した。このうちパーラーは、アマゾンの一方的なサーバー使用禁止措置により、運営の危機に瀕しているのは報道されている通りだ。

状況は危機的だが、「米国の良心」によって、昨年10月27日の記事「第2次南北戦争も―選挙結果がどうなっても米国の分断は避けられない」で述べた、第2次南北戦争のような惨劇が未然に防がれることを願う。

トランプ氏や支持者は「非暴力不服従」での戦いを続けるはずだ。マハトマ・ガンジー、キング牧師のように「非暴力・不服従」こそが、最良の解決策であると考える。

公民県運動で「虐げられていた黒人の地位を劇的に向上させた」キング牧師の言葉で締めくくりたい。

「最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である」

【私の論評】バイデン政権が成立しても最初からレームダックになり、米民主党は日本の民主党のように分裂し万年野党になる(゚д゚)!

冒頭の大原氏の記事には、"日本にはメディア総出で誕生させた「悪夢の民主党政権時代」が存在するが、それがどのような時代であったのか、日本国民はよく知っている"と述べていますが、私自身は現在の米国の状況は先日もこのブログで述べたように、まさに日本おける民主党政権誕生前夜に非常に似ていると思います。

ただし、米国と日本は選挙制度や日本は大統領制ではなく、議院内閣制であることもあり様々な違いがあり、表面的には全く異なるようにみえて、根底では似ているところがあります。

それは、日米ともに、民主党政権のときにそれまでも存在した社会の分断が大きくなり、それが新たな政権を生み出したということです。

米国ではオバマ政権のときに、それまでもあった社会の分断がさらに大きくなり、その後トランプ政権が誕生しています。

2017年トランプ大統領就任式

日本では、民主党政権が誕生して、それまでもあった社会の分断が大きくなり、その後安倍政権が誕生しています。

分断が大きくなった直後に登場したリーダーとしては、トランプ氏も安倍氏も共通しています。そうして、その分断はこのリーダーたちが登場する直前に大きくなっていることでも共通しています。

日本と米国では社会の分断や規模の違いもあります。日本でも、社会の分断は進んだのですが、それにしても民主党政権が崩壊してからは、社会の分断は米国ほどには大きくはないです。それは、野党の支持率がかなり低いことで示されています。

ただし、報道や芸能関係や、労働組合、学術会議が問題が暴いた大学等比較的影響力の大きいところが、未だリベラル左派に占められています。リベラル左派は本当は、少数派なのですが、メディアがこれらの声を増幅するので、いかにも大きいように見えるだけです。

菅政権の支持率は下がっていますが、民主党から継承された、立憲民主党や国民民主党などの支持率は今でも低迷し続けています。自民党への支持率は変わりありません。そのため、現在でも選挙をすれば、自民党が勝つのは間違いないでしょう。菅政権を継続するか否かは、自民党の判断に委ねられることになります。

米国でも、これに似たような動きになっていくものと思われます。日々の大統領のツイッターなどで振り回された4年間のトランプ政権の混乱後、バイデン政権は政策に一貫性を取り戻し、表面上は米国政治が落ち着きを取り戻したように見えるかもしれません。

しかし、バイデン氏は、同氏が不正選挙で選ばれたと考える多くのトランプ支持者、さらには民主党左派といったさまざまな抵抗勢力に対応せねばならないです。危機対応においては幅広い国民からの支持が欠かせません。バイデン氏の政権発足後のハネムーン期間は短いものとなりそうです。

民主党内で最も勢いを増している左派は、中道の政策を望んでバイデン氏を支持したわけではありません。民主党を統一させる効果を発揮したのはバイデン氏の掲げる政策ではなく、トランプ氏の存在と同大統領の危機対応についての懸念でした。 

1月5日、ジョージア州上院決選投票で民主党候補2人がともに勝利したことで大統領府、上下両院の3つすべてを握る「トライフェクタ(三冠)」を民主党は実現しました。 

上院で共和党が多数派を維持していたとしたら、バイデン政権が成立を願う法案は共和党ミッチ・マコネル上院院内総務によって阻止される運命にありました。

ところが、上院奪還により民主党チャック・シューマー上院院内総務が議題を決定できることになります。またバイデン政権の閣僚など政府高官も上院で承認が容易になります。より大規模な対コロナ経済支援策、インフラ整備法案の可決なども可能性が高まります。バイデン政権にとっては公約実現のうえで、トライフェクタは朗報です。

ところが、次回選挙を考慮すると必ずしもバイデン氏は喜べないかもしれないです。共和党が上院多数派を維持していた時には、左派が望むグリーン・ニュー・ディール、オバマケアの大幅な改革をはじめ左寄りの政策に関わる法案を議会で可決できないことについて、バイデン氏は共和党に責任を転嫁できました。

しかし、トライフェクタでは左寄りの政策の法案可決に期待が高まり、政権に対する左派からの圧力が強まることになります。

ところが、上院では財政調整法を利用した一部の法案を除き、フィリバスター(議事妨害)を廃止しない限り、採決に入るためには60票の賛成票が必要です。つまり、引き続き穏健派を含む民主党上院議員の50票すべてと共和党上院議員10票が必要となります。

また、下院でも民主党の過半数確保はギリギリの状態(民主党222議席、共和党211議席、空席2議席)です。民主党提出の法案にすべての共和党議員が反対した場合、民主党6人が造反すれば可決できません。

日米の民主党の違いはまさにここにあります。日本の民主党の場合は、確かに左派、左翼なども内包していましたが、共産党や社民党は別であり、日本の民主党は共産党・社民党とは別であり、あくまでリベラルと捉えらていました。

だからこそ、政権交代ができたのです。米国の民主党のように、共産主義・左翼が内包されていれば、そもそも政権交代そのものができなかったでしょう。

ただし、日本の民主党の政策はこのブログでも主張していたように、最初から政策があまりにお粗末であり、民主党政権下では、経済でも、安全保障でも、外交もうまくいかず、さらには重要なことはほとんど何も決定できず、3年半漂流していたというのが、実態でした。

米国の民主党の場合は、左翼が内部に存在しているのです。副大統領になる予定のカマラ・ハリスも掲げる政策をみると左翼です。そうなると、左翼は左翼の望む法案を成立させたいと思うのは当然ですし。

大統領選から撤退した、サンダース氏は米メディアの取材に「格差改善へ最低賃金の引き上げが急務だ」と強調していたように、新政権に左派政策を積極的に取り入れるよう圧力を強めることは必至です。

サンダース氏

しかし、この政策は韓国で文在寅大統領が実行して、大失敗して雇用が激減して、とんでもないことになっています。最近の文在寅大統領の支持率の低下は、マクロ経済に疎いとみえて、韓国でも日本でも報道されていませんが、金融緩和しないで最低賃金をあげてしまえば、雇用が激減するのは当然のことです。これは、当初から十分予想できたことです。

本来賃金は、金融緩和をしつつ雇用を安定化させ、その上で様子をみながら上げていくべきです。日本でもそうでしたし、世界共通のことですが、大規模な金融緩和をすれば、雇用は増えるのですが、最小はアルバイト・パートや正社員でも若年層の雇用が優先するので、実質賃金は下がります。

それでも、さらに緩和しつづけると、もっと上の層の雇用が促進するとともに、賃金が上がっていきます。マクロ経済に疎い日本の野党などは、安倍政権発足時に日銀が包括的金融緩和をしたばかりのころ、予定通りに雇用が上向き、実質賃金が下がったことに対して「実質賃金がー」と無知丸出しの批判を繰り返していました。枝野氏など旧民主党の幹部の中には、民主党政権のほうが雇用政策は良かったなどと、頓珍漢な批判を繰り返しています。

いわゆる左翼といわれる人達は、文在寅氏、米国のサンダース氏をはじめとする左翼、日本では枝野氏をはじめとするリベラル・左翼の方々もほとんど理解しいないようです。これはなぜか、リベラル左派・左翼の特徴のようです。これに対して、トランプ氏も安倍元総理大臣も雇用においてはかなり良い成果をあげています。
単純に最低賃金を上げる政策に関しては、当然のことながら、民主党主流派も共和党も反対するわけですから、これらの法律はことごとく成立しなくなります。

これでは、左翼の不満は募ることになります。その不満が募った果にどうなるかといえば、米国の民主党も日本の民主党のように、何も重要なことが決められなくなり、漂流することになりそうです。そうして、米民主党の分裂が起こる可能性が高くなると考えらます。

米国の民主党には左翼が多く存在していて、かつての日本の民主党よりも党内での存在感は強いですし、米民主党の主流派とは全く違います。

日本の民主党の場合は、マスコミの加勢もあって、政権交代の時の選挙では圧倒的な勝利を治め、これは明らかに「自民党にお灸をすえる」とか、「民主党政権に試しにやらせてみる」と考えた有権者の間違いであったことは確かです。

米国では今回の大統領選挙でも、上院議員選挙でも、マスコミの加勢やSNSのかなりの加勢があっても、伯仲していましたし、米国民の多くも不正選挙があったと信じています。それは、上の記事にもある、ラスムセンが調べた1月5日のトランプ大統領の支持率は47%だったが、事件後の1月8日の支持率は48%と、むしろ上がっていることが如実に示しています。

不正選挙に関しては、日本では「不正選挙はあったが、大統領選挙の結果を覆すほどのものではなかった」とされていますが、米国のロイター通信は先月18日、米大統領選で共和党支持者の52%が「正当な勝者はトランプ大統領」と答えたとする世論調査結果を公表しました。証拠を示さず「不正によって勝利を盗まれた」と訴えるトランプ氏の主張に、支持者の多くが賛同していることが明らかになっています。

回答者全体でも、今回の大統領選の結果が「合法的で正確」と答えたのは55%で、16年大統領選から7ポイント減。逆に「違法または不正」と考える人は12ポイント増の28%で、選挙プロセス自体への不信感が広がっていることを示しています。

トランプ陣営の弁護士ジュリアーニ氏は、ミシガン州の220人の宣誓供述書やペンシルベニア州の宣誓供述書の一部を明らかにしています。これらの宣誓供述は、なぜか最高裁で争われることはなかったのですが、これからも格好の攻撃材料にされることでしょう。

この状況だと、米国では政権交代して民主党が政権与党となっても、日本の民主党以上に、混乱を極め、漂流することになりそうです。

挙げ句の果に、日本の民主党のように分裂して、万年野党になってしまう可能性も極めて高いです。

日本は、米民主党がかつての日本の民主党のように、漂流することを前提に様々な政策を推進していくべきです。

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2021年1月15日金曜日

中国・新疆ウイグル自治区で「ジェノサイドの可能性」 米報告書―【私の論評】ウイグル問題は、トランプ政権がバイデン政権に突きつけた踏み絵(゚д゚)!

 中国・新疆ウイグル自治区で「ジェノサイドの可能性」 米報告書

北京で2018年4月

 米国の中国問題に関する超党派の連邦議会・行政府委員会(CECC)は14日に公表した2020年の年次報告書で、中国当局が新疆(しんきょう)ウイグル自治区のウイグル族などのイスラム教徒少数民族に対し、国際法上の犯罪である「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を実施している可能性があると指摘した。

 報告書は、この1年間で自治区での大量虐殺を含む「人道に対する罪の証拠」が浮上したと指摘し、米政府に対して自治区でのウイグル族などへの弾圧をジェノサイドであると公式に認定するよう促した。

 国務省は、ポンペオ国務長官の指示でジェノサイド認定するかどうかについて検討を進めているとされ、トランプ大統領の任期が切れる20日までに認定に踏み切るかが注目される。

 報告書によると、自治区ではウイグル族やカザフ族、キルギス族などの少数民族や約180万人が「広範かつ組織的」に施設に収容され、強制労働に加え、拷問や政治教化を受けている。また、外部に流出した中国政府の文書によると、強制収容システムが中国共産党の最高幹部の指令によって構築されたことが一層裏付けられたとした。

 さらに、中国当局がウイグル族らに対し、「家族や文化、宗教的信仰心の破壊」を目的に避妊手術や産児制限を組織的な政策として強制している証拠が新たに浮上したと指摘した。

 報告書はその上で、米政府に対し、ジェノサイド認定に加え、自治区の住民の監視に利用される顔認証システムや人工知能(AI)技術に関する新た輸出規制を設けるよう要請した。

【私の論評】ウイグル問題は、トランプ政権がバイデン政権に突きつけた踏み絵(゚д゚)!

米共和・民主両党の上院議員は昨年10月27日、中国がウイグル人をはじめとするチュルク語系少数民族に対するジェノサイド(大量虐殺)を行っていると宣言する決議案を提出しましたた。

昨年ドイツ人研究者によるウイグル自治区“強制不妊リポート” 中国が真っ向反論したが・・・

上院では来週の大統領選後まで審議が行われないため、すぐに採決されることはありませんでしたが、これらの少数民族100万人以上が強制収容されているとされる問題で中国への圧力が強まる可能性があることが指摘されていました。

決議案は、中国が「新疆ウイグル自治区でウイグル人、カザフ人、キルギス人、その他のイスラム教徒の少数民族に行っている」活動は、「ジェノサイド」に当たるとしています。

 ジョン・コーニン上院議員(共和党)は、「決議案は中国の行為を犯罪と認め、中国にその極悪非道な行為の責任を取らせる第一歩だ」と述べました。

 ジェフ・マークリー上院議員(民主党)は、決議は米国が「黙っていられない」ことを示すだろうと語り、「監視の強化、強制収容、拷問、強制的な『再教育キャンプ』といった、ウイグル人やその他のイスラム教徒の少数民族に対する中国の攻撃はジェノサイドだ。単純明快だ」と話しました。

決議案の発起人には、外交政策でドナルド・トランプ大統領に近いマルコ・ルビオ上院議員(共和党)や、上院外交委員会の民主党のトップ、ロバート・メネンデス上院議員も名を連ねています。

マイク・ポンペオ国務長官は27日、訪問先のインドでニュースサイト、ザ・プリントのインタビューに応じ、「(中国の行動は)1930年代にドイツで起きたことを想起させる」と述べました。

マイク・ポンペオ米国務長官

米大統領選の世論調査でトランプ氏より優勢になっている民主党のジョー・バイデン前副大統領の陣営も、中国の行動をジェノサイドと呼び、対応を強化する方針を示してきました。

昨年12月24日には、対中強硬派のポンペオ国務長官が検討作業を指示されていることが、米当局者が明らかにしました。米政府が認定すれば、中国の強い反発が予想されます。

国務省で国際刑事司法問題を担当するタン大使が検討作業を取りまとめ、ポンペオ氏に報告する予定だといいますが、報告の時期は不明でした。その報告書が今回、提出されたのです。ジェノサイドに認定した場合、中国に対する何らかの制裁措置を求める声が高まるのは確実とみられます。

バイデン政権が、一部の識者が言うように対中強硬姿勢を崩さず、ウイグル問題でもトランプ氏と同じような対応をとる可能性もあり、そうであることを強く期待しています。

しかし、大統領になる以前に、そのような意向を表明することと、実際大統領として中国に対峙し、ウィグル問題でも譲歩しないかどうかは別問題です。

バイデン政権が、米国が中国との平和と安全を、人権を尊重する日本や台湾、他の先進国との共通の価値観よりも優先するように変わっていくのならば、日本は今度こそきちんと憲法と国防の議論を行い、この米国依存体質から脱却する方法を考えるときかもしれないです。

そうして、昨日も述べたように、安倍・トランプ両氏の置き土産である日米豪印(クアッド)の中国包囲網を強化すべきでしょう。

ウイグル問題はバイデン政権の踏み絵・・・・・

そういう意味では、トランプ大統領の任期が切れる20日までに認定に踏み切るにしても、バイデン政権に委ねられるにしても、これはバイデン政権の試金石になることは間違いありません。これはトランプ政権による踏み絵と見ても良いと思います。

ウイグル人権法がすでに施行されている現在、この法律に沿ってバイデンがどのような具体的な行動を起こすかが注目されます。宥和的な政策をとれば、共和党による批判攻撃は強まり、今回の選挙でも明らかになった、米国の人口のおよそ半分を占める保守層の国民の反発も強まるでしょう。

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2021年1月14日木曜日

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 トランプが最後に連発する駆け込みアクションの意味

バイデン政権誕生で問われる日本の覚悟

  米テキサス州ハーリンゲンのメキシコ国境の壁を視察した後、メリーランド州の
  アンドルーズ基地で専用機から降りるトランプ大統領(2021年1月12日)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 トランプ政権の任期が残りわずか10日余りとなった1月9日、ポンペオ米国務長官は米国と台湾の交流制限撤回の声明を出した。この声明によれば、これまで国務省が課してきた外交官や高級官僚、公務員らの米台相互交流への制限がなくなる。

 続いて1月12日には、ホワイトハウスが、2018年2月に制定された「開かれたインド太平洋戦略」の枠組みに関する機密文書を公開した。それによると、日本の尖閣諸島、台湾、フィリピンをつなぐ中国の防衛ライン「第一列島線」の中国側の空域、海域も米国が死守すると明記されていた。この機密文書は最初オーストラリアメディアが報じ、その後、ホワイトハウスが公表した。機密文書は本来なら少なくとも30年間は秘匿されるものであり、それが外国メディアにリークされてから公表されるのは極めて異例である。

 なによりも、こうした任期終了が迫ったカウントダウンのタイミングで、トランプ政権が日本を含むアジアの安全保障にかかわる重大なアクションを駆け込むように実行していることの意味を、日本人としてはいろいろ考える必要があるだろう。
台湾との公的接触の自主規制を解除

 ポンペオ国務長官は1月9日の「米国と台湾の公的交流制限解除」の声明で以下のように述べた。

 「台湾は活力に満ちた民主国家であり、米国が信頼できる協力パートナーである」
「しかし数十年来、米国国務省が制定した複雑な自主規制措置により、外交官、公務員、その他官僚同士が互いに行き来することに制限があった。米国政府は一方的にこれらの措置をとり、北京の共産党政権に配慮してきた。今後はこのようなことはない」
「今日、私は宣言する。これら自主規制を解除する。国務省がこれまで国務長官名義で行政機関に命じた、台湾関係におけるすべての“接触ガイドライン”を無効にする」

 そして、「米国在台湾協会(AIT)のほか、『外交事務準則』『外交事務マニュアル』にある行政当局および関連部門と台湾の接触に関する規則の部分は、すべて廃止する。台湾関係法が規定する行政当局と台湾の関係は非営利組織AITにより処理する」とし、声明を次のように締めくくった。

 「米国政府は世界中の非公式パートナーとの関係を維持しており、台湾も例外ではない。我々2つの民主国家の共同の価値観は個人の自由、法治、そして他人の尊厳に対する尊重である。今日の声明では、米台関係は我々の恒久的な官僚機構の自主規制に束縛されず、また束縛されるべきではないと認識している」

 台湾の駐米代表処はこの声明に関し、「台湾米国関係の強化と深みを十分反映しており、台湾政府も歓迎を表明する。台湾政府は米国務省に感謝を述べるほか、長期に台湾米国関係に関心を寄せてくれた米国国会両党議員に感謝を申し上げる」「我々は台湾米国パートナー関係が目に見える形で、将来持続的に強化し成長することを期待している」と述べた。

機密文書をなぜ今公開したのか

 ポンペオ国務長官はこの2日前の1月7日に、米国のケリー・クラフト国連大使の台湾派遣を発表していた。国際社会は、1971年の台湾(中華民国)国連脱退以降、米国連大使の初めての訪台か、と驚いたが、訪台予定日(1月13~15日)の直前になって、台湾訪問は「新政権移行の準備のため」キャンセルとなった。新政権移行前の忙しさは最初から分かっていたはずであり、急なキャンセルの本当の理由は別にあるかもしれない。中国側は、米国連大使が台湾を訪問すれば「重い代償を支払わせる」と恫喝していたので、それに臆したのか、あるいは蔡英文政権側が臆したのか、あるいはバイデンサイドが妨害したのか。いずれにしても国連大使訪台キャンセルは非常に残念であった。

 だが、その代わりというか、突然、米国の台湾や尖閣諸島に対する防衛姿勢が書かれた機密文書が公開された。1月12日に最初に報じたのは、オーストラリアメディア「ABC」だった。そのあと、ホワイトハウスが正式に発表した。

 それは、2018年2月に制定された米国のインド太平洋戦略の枠組みに関する文書だった。米国の政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ」によると、ホワイトハウスは次期バイデン政権にトランプ政権の対中政策を継続してほしいという願いから、同時に米国の同盟国を安心させるために、異例の機密文書公開を行った、という。

 オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はこの機密文書公開について、「米国人民と我々の同盟・パートナー国に、米国は、インド太平洋地域の開かれて自由な状況を永久に守るために引き続き力を尽くす所存であることをわかってもらうため」と説明している。

 およそ10ページの機密文書では、中国を米国の安全保障上の最大の懸案と捉え、同盟・パートナー国と協力して、インドの台頭を助けて中国を牽制することを1つの戦略としている。また同文書では、台湾の軍事発展と非対称作戦戦略を支援することで中国の脅威に抵抗することも強調されていた。

 「自由で開かれたインド太平洋」戦略は、日本の安倍晋三元首相が提唱し、トランプ政権とともに練り上げた国防戦略だ。機密文書では、米国は軍事衝突の有無に限らず、尖閣諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第一列島戦」内の制空権および制海権を中国から守り、台湾を含む国家の安全を保護し、同時に第一列島線の外側を米国主導の作戦領域とすることも明示している。

 この戦略に精通している安全保障専門家によれば、米国のインド太平洋戦略における台湾の描写から、米国は台湾を中国から攻撃されないよう牽制するだけでなく、必要であれば中国の侵攻を撃退するとしている、という。つまり、台湾を守るためならば軍事出動も辞さない、ということだ。

 こうした機密文書をあえて今公開したのは、おそらくはバイデン政権が対台湾政策や尖閣問題、そしてインド太平洋戦略についてトランプ政権の方針を転換させるのではないか、という懸念があるからだろう。台湾接近とインド太平洋戦略はトランプ政権の揺るぎない政治遺産として残さねばならない、というわけだ。

中国政府とメディアの反応

 ちなみに中国外交部の趙立堅報道官はこの機密文書公開について、「米国はインド太平洋戦略を利用して中国に圧力をかけ、地域の平和と安定を破壊しようという邪悪な動機がある」と批判している。

 また「環球時報」など中国メディアは、ポンペオ長官の米台交流規制撤廃宣言について「ポンペオが理性を失って狂った」と表現し、「米国と台湾民進党当局にはっきり自覚させなければならないのは、もし彼らが大胆にもポンペオを任期終了前に台湾に訪問させるといった演出を行うのであれば、北京は山を動かして海を埋めるような反応をするだろうということだ」と威嚇した。

 さらに環球時報は米ブルッキングス研究所のトーマス・ライターのコメントも引用して、「ポンペオの政治的動機は、バイデン政権誕生後の最初の数週間に中国との関係を膠着状態に陥らせ、バイデンの対中弱腰姿勢を変えさせることだ」と解説し、こうしたトランプ政権の駆け込み政策は次期バイデン政権への嫌がらせである、と論評している。

消えた「自由で開かれた」という表現

 さて、バイデン政権が誕生すると対中政策が親中的になっていくのかどうか。

 一部識者はバイデン政権の方がトランプ政権より対中姿勢が厳しい、という見方をしているようだが、私はやはりバイデン政権になれば、トランプ政権がこの2年ほどの間に進めた対中包囲網や対中デカップリング(切り離し)政策、そして対台湾政策やインド太平洋戦略は後退するだろう、と見ている。

 理由は、たとえば台湾政策については、バイデンチームは選挙戦当時から「一つの中国原則」の堅持を主張しているし、両岸問題の平和解決支持を継続することが台湾人民の願いであり最大利益だという立場だ。これは、オバマ政権時代の現状維持政策と変わらない。

 トランプ政権は現状維持から対台湾接近を進め、それがたとえ中国の軍事的威嚇を招きかねないとしても、台湾を守るために中国を撃退するという方針を決めていたことが、今回明らかにされた機密文書に書かれていたわけだ。

 尖閣問題についても、バイデン政権の方針は不透明だ。菅義偉首相がバイデン候補の勝利を確信した段階で行った電話会談で「日米安保第5条の適用範囲である」という言質を引き出したので、安心だという人もいるようだ。だが、オバマ政権時代のバイデン副大統領は、中国が尖閣を含む東シナ海上に防空識別圏を設定した2013年12月、当初は「絶対に認められない」と言っていたにもかかわらず、訪中して習近平に会ったのちは、その設定をあっさり容認した。後になって、同時期に息子のハンターが経営に関わるヘッジファンドに中国銀行から多額の資金が振り込まれていたという“噂”が一部米国メディアや華人メディアで報じられ、バイデンはチャイナマネーと引き換えに「尖閣を売った」のではないか、と憶測を言う人も出てきた。

 また「自由で開かれたインド太平洋」については、少なくともそのまま踏襲するつもりはないことも、その言動から明らかになっている。

 菅首相がバイデン候補との初めての電話会談で「『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けて連携したい」と述べたことに対して、バイデン候補が「『繁栄し、安全なインド太平洋』の基礎として日米同盟を強化したい」と答えたことを、朝日新聞など日本メディアも報じている。それに引きずられてか、菅首相までも「平和で繁栄したインド太平洋」と表現を変えてしまっている。

「自由で開かれた」というのは、「閉じられた統制社会」である中国に対峙する民主的自由社会の共通価値観の象徴であり、その価値観を守るために日米インド、オーストラリアらとともに組み立てた安全保障の枠組みだ。こうした価値観を「繁栄」「安全」「平和」といった言葉にすり変えてしまうと、平和や繁栄のために、自由で開かれた社会を犠牲にしてもいい、という誤ったメッセージを中国に与えかねないのではないだろうか。つまり、中国が軍事力を背景に圧力をかけてきた場合、あるいはチャイナマネーや広大な市場を餌に譲歩を迫ってきた場合、「民主的自由主義的な価値観を犠牲にしてでも、中国の言う繁栄や平和を受け取りたい」と言っているも同然に私には聞こえるのだ。

日本は台湾ともっと連携を

 もちろんバイデン政権が、一部の識者が言うように対中強硬姿勢を崩さず、台湾を民主国家の同盟パートナーとして関係緊密化路線を継続する可能性もあり、そうであることを強く期待している。だが、米国が中国との平和と安全を、日本や台湾との共通の価値観よりも優先するように変わっていくのならば、日本は今度こそきちんと憲法と国防の議論を行い、この米国依存体質から脱却する方法を考えるときかもしれない。

 そして、おそらくは脅威の最前線に立たされることになるのは台湾だ。もし日本が台湾との複雑な歴史を振り返り、その絆の深さに思い至るならば、日本だけで怯えたり日和ったりするのではなく、同じアジアの民主主義国家、自由社会国家同士としてもっと連携し協力し、共通の脅威に立ち向かっていく方策を考えるべきだろう。

【私の論評】日本は米国の大型経済対策に対応し、安倍・トランプの置き土産日米豪印(クアッド)の中国包囲網を強化せよ(゚д゚)!

米国の大統領選挙は、今から考えると、本当に疑問符のつくことが満載でした。様々な不正選挙疑惑に関して、結局連邦最高裁は受け付けませんでした。州によっては、受け付けたところと受け付けなかったところがありました。

これは、日本ではあまり知られていないのですが、州によって裁判所の裁判官も民主党寄りが多いところと、共和党寄りのところがあるからです。

連邦最高裁は共和党派の判事が多いのですが、結局は受け付けませんでした。その理由は、訴訟を起こすための原告としての資格がないというものでした。結局のところ門前払いということでした。

なぜ門前払いになったかといえば、テキサス州パクストン司法長官やパウエル軍事弁護士の提訴は、『国家反逆罪』の審理であり、連邦最高裁の管轄外だという見解からでした。

連邦最高裁は、第3条の 反逆条項1および2により、 これらの提訴は連邦最高裁の管轄外というものでしたが、今回の不正選挙の疑義の中には、国家反逆罪とまではいかなくても、様々な不正疑惑があったはずで、それは管轄内であると考えられます。

2000年には、ブッシュ対ゴア事件 (Bush v. Gore, 531 U.S. 98 (2000)) がありましたが、これは今回のように不正選挙があったのでないかという疑惑について、アル・ゴアが訴えたものです。

連邦最高裁判所は2000年12月12日に判決を下しました。この判決により、2000年アメリカ合衆国大統領選挙が、ジョージ・W・ブッシュの勝利に終わることとなりました。

このような事例があったにもかかわらず、今回は連邦最高裁は門前払いしてしまったのです。これに疑問を抱く人は多いと思います。それに、米国の大統領選挙については、今回や2000年の選挙にかぎらず、もう数十年も前から、不正疑惑がいわれてきていました。

人よっては、いわゆる米国の大統領選挙は米国のエスタブリッシュメントの意のままであり、米国大統領は操り人形に過ぎないという識者も昔からいました。

米国大統領選挙の取材をする我那覇真子氏 写真(左)

さらに、別の疑惑もあります。沖縄出身のフリージャーナリストである、我那覇真子氏が1月6日にワシントンDCで起きたトランプサポーターらによる議事堂への乱入に関する複数のYouTubeを見ていてあることに気づいたとしています。

サンディエゴ在住の女性、アシュリー・バビット(Ashli Babbitt)氏が警官に撃たれる前、ある一人の黒人男性がパイプを持ったもう一人の男とドアのガラスを割っていました。

その直後に警官が発砲して彼女は倒れた。我那覇さんは、一連の騒動の中で、この二人だけが、トランプサポーターとは異なる過激な行動をしていたと指摘しています。そして、他の証拠と合わせると、この黒人男性は極左団体のANTIFA(反ファシスト)だというのです。

これについては、日米メディアの一部もANTIFAがいた可能性を指摘していました。これについては、以下のリングより詳細を知ることができます。興味のある方は是非ご覧になってください。


今回の大統領選挙では、様々な陰謀論が囁かれてきました。あまりにも多くの情報が、フェイク情報とともに駆け巡ったので、何が本当で、何が嘘であるか判断がつかないこともありました。

しかし、現時点では、なぜ最高裁がトランプ陣営の訴えを門前払いをしたのか、ワシントンDCで起きたトランプサポーターらによる議事堂への乱入にアンティフアが潜り込んでいたのか、という点に関しては、疑惑というか、疑問符がつくのは間違いないと思います。

少なくとも、これらについて明確なエビデンスをもって答えられる人は、保守、左翼、リベラルのいずれにもいないと思います。もし、安直に答える人がいれば、その人は自分の利益のためか、あるいは世論を特定の方向に導こうだとか何らかの意図を持っているとみて間違いないと思います。

このような疑問符が解けない現段階では、バイデン氏が大統領になったとしても、まずは国内対応に追われるのは必定です。

実際、我那覇氏のツイートで以下のようなものがありました。


これは、米国のある共和党議員が、大統領就任式の次の日の21日にバイデン弾劾の手続きをすると発言したものですが、これが本当になされるのか、なされたとして、今の段階で弾劾が成立するかどうかは、確かではありません。

それに、バイデンが仮に弾劾されたとしたら、さらに恐ろしいことになります。左翼とみられる、カマラ・ハリスが大統領になる可能性がでてくるからです。

彼女の政治姿勢を見ると一目瞭然ですが、ほぼ社会主義者バーニー・サンダースと変わらない極左思想であることがわかります。彼女の主張する政策を以下にまとめます。
  • 軍備縮小
  • 銃規制
  • 国民皆保険
  • 大麻合法化
  • 人工中絶自由化
  • LGBTQ権利拡大
  • 国境解放、移民賛成
一方、外交問題は苦手なようで、安全保障への言及は少ないです。また、500万人が失職し、大不況をもたらすと予想される環境優先政策「グリーンニューディール」を支持しています。

カマラ・ハリス大統領それだけは、避けたいという議員は民主党の中、それも主流派の中にも大勢いると思います。共和党がバイデン弾劾などに打って出るなら、カマラ・ハリスの首も取らなくては、かえって事態は悪化します。バイデンを弾劾するなら、民主党内の主流派の助けも借りてカマラ・ハリスも追い込む手立てをすべきです。その他、民主党内左翼の台頭の芽を民主・共和党の議員たちの協力で摘むべきでしょう。

ただし、このような動きが出てくるのは当然のことだと思います。何しろ、民主党は、就任間近のトランプ氏を弾劾しようとしたのですし、マスコミどころか今度は、SNSまでバイデン側についたわけです。

共和党は今度は野党になり、民主党が与党になるわけですから、遠慮会釈ないどころか仁義なきバイデン攻撃、民主党攻撃がはじまることでしょう。さらに国民の半分近くは、トランプ支持派でした。この声も無視できません。民主党やバイデンは防戦にまわり、外交や安保は手薄になるかもしれません。

米国ではかつて政権交代があったときには、交代後の政権の政策が良くなかったにしても、半年から1年は、それは前政権の政策が悪かったのでそうなった可能性もあるのであまり批判しないという慣例がありました。

今回はそのような慣例は無視される可能性が高く、バイデン氏が大統領になった直後から、共和党は、批判攻勢にでて、トランプ派の国民も国民も声をあげることでしょう。

バイデン政権は、国内の分断の修復にエネルギーを費やさざるをえなくなった分、海外への余力は相対的に少なくならざるを得ないでしょう。

カマラ・ハリス(左)とバイデン(右)

そのため日本を取り巻く環境は厳しくなります。トランプ政権では一時途絶えていた対日要求は当分の間はないでしょうが、バイデン政権の財務長官はイエレン氏になることが予想され、まともな米国内の大型コロナ対策が実行され、FRBも無制限の緩和に踏み切るでしょう。

バイデンの公約の経済政策は、増税するなどのかなりの筋悪なものでしたが、国民の半分は反バイデン派であり、これがバイデンの公約の政策で苦しめられるということになれば、国内の分断の修復どころか、さらに分断を煽りかねないので、イエレン氏のオーソドックスな政策が受け入れられることになるでしょう。

そうなると、日本は円高圧力にさらされとともに、デフレ基調がますます強まることになるのは明らかです。

となると、コロナ感染拡大により日本の国内景気が弱いのがさらに悪化しかねないです。米国のコロナ対策に負けないように、状況によっては日本でも4月以降に大型補正予算を組むことを躊躇するべきではありません。財務省とその走狗たちは、当然これを牽制する動きにでるでしょうが、政府は現在は国難であるとして毅然としてこれに対峙すべきです。

そうして、無論4月以降の大型予算の財源は新規国債発行により賄うものとして、それを全部日銀が買い取るという政策を踏襲するべきです。これによって日銀は金融緩和を行うことになり、コロナ禍や米国の緩和による、円高・デフレの進行を防ぐことができます。

これ以外の増税などという方式をとれば、とんでもないことになります。デフレであり続けた平成年間に令和の日本はまた舞い戻ることになります。それも失わた20年どころではなく、失われた50年になりかねません。

大量の国債発行となることについて、財政状況は一層の悪化が避けられないとするむきもありますがこれは間違いです。これまでのコロナ対策では大量の国債発行がなされましたが、ほとんど日銀が買い入れています。日銀買い入れ国債について利払いがされますが、それは日銀の収益になって日銀から政府への納付金になります。このため政府にとって財政負担はないです。

これはやり過ぎればインフレ率が高くなるのですが、今のところ、コロナのためにインフレ目標には程遠いです。さらに、米国が大型の対策を打てば、さらにインフレ目標からは遠ざかります。いまこそ未曾有の大量国債を発行するときなのです。大量発行しても将来世代へのつけにはならないです。むろし、大量発行しないことこそが、日本経済を毀損して、将来世代へのつけになります。

バイデン政権が国内問題に注力している間、中国は東シナ海の覇権を構築しようとするでしょう。おそらく、2022年2月の北京冬季五輪までは派手な武力行使はしないとおもわれますが、それ以降は分からないです。少なくともそれまでに、中国は地歩をできる限り拡大したいはずです。

尖閣諸島でも、領海侵入など数々の既成事実化を狙ってくるでしょう。それに対抗するためには、海上保安庁と海上自衛隊のシームレス化や安全保障予算増強が急務です。さらに、米国が一時国内が混乱しても、中国包囲網を崩さないように、またバイデンの対中宥和政策を許さないように、安倍晋三氏とトランプの置き土産でもある日米豪印(クアッド)の中国包囲網をさらに強化すべきです。


安倍氏と、トランプ氏は着せずして、同じような時期に総理大臣と、大統領をやめることになりました。この二人、また返り咲いていただきたいものです。私は、必ずしもまったくあり得ないことではないと思います。同時カムバックということにでもなったら、素晴らしいと思います。

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2021年1月13日水曜日

「トランプ言論封殺」騒動で見え隠れ、巨大IT企業と欧州の下心―【私の論評】日本の産業界のイノベーションが、中国の世界覇権、GAFAの世界市場制覇を抑制し、平和な世界を築く礎になり得る(゚д゚)!

 「トランプ言論封殺」騒動で見え隠れ、巨大IT企業と欧州の下心

田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

米ワシントンで開かれた大規模集会で演説するトランプ大統領=2020年1月6日

 米連邦議会の議事堂襲撃事件後に、会員制交流サイト(SNS)のツイッターがトランプ大統領のアカウントを「永久凍結」し、フェイスブックも同様の措置をとった。

 ネットの世界だけではなくリアルな国際政治の場でも議論が起きた。ドイツのメルケル首相は報道官を通じて、言論の自由を制限する行為は一企業の判断によるべきではなく、立法府の決めた法に基づくべきだとして両社の対応を批判した。フランスの閣僚らもメルケル首相と同様に批判し、ウェブサービスの基盤を提供する「プラットフォーマー企業」への規制も視野に入れるべきだと、より立ち入った主張をしている。

 だが、トランプ大統領に関する規制はさらに進展している。トランプ支持者が集うとされるSNS「パーラー」はネットの世界から姿を消した。アップルとグーグルは1月9日までに、それぞれのスマートフォン向けアプリストアからパーラーのアプリを排除していた。さらに、ウォール・ストリート・ジャーナルなどの報道によれば、パーラーのウェブサイトやデータを支えていたアマゾン・コムが支援を停止した。事実上の「消滅」だ。

 ツイッターやGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などが、トランプ大統領とその支持者への言論の機会を根元から奪った行為は、まさに大企業による私権の制限と言えるだろう。端的に不適切極まりない行為だと思う。

 ただし、冒頭のメルケル首相やフランスの閣僚たちの発言を、単なる「言論の自由」の観点からのみとらえるのは妥当ではないだろう。経済金融アナリストの吉松崇氏から教えを受けたが、これは巨大IT企業と先進国政府のどちらが表現の自由をめぐる規制の実権を握るかの争いと見るのが正しいのではないか。

 つまり、メルケル首相らは言論の自由をトランプ大統領やその支持者に認めるべきだ、という観点から発言したというよりも、実はその規制も含めて旧来の政府が担うのが正しいのだ、と言ったにすぎないのだ。

 この吉松氏の指摘は興味深い。このことは今までの「デジタル課税」をめぐるフランス、ドイツと大手IT企業との攻防戦を見ても傍証することができる。GAFAなどのIT企業は「拠点なくして課税なし」という各国の課税ルールの原則から多額の「税逃れ」をしてきた。例えば、ネットを経由して大手IT企業が、ある国の消費者にさまざまなサービスを提供して利益を得ても、その国に恒久的な拠点(本店、支店、工場など)がなければ課税されない。

 このため自国に拠点を持っている国内企業と大手IT企業との間には、税負担の点で不公正が発生し、また国際競争力の点で国内企業が不利になってしまう。欧州委員会は国内企業の課税負担は23・2%であるのに対して大手IT企業は9・5%だと報告している。

 この税制上の大手IT企業への「優遇」を国際的な協調として是正しようという動きが、欧州勢には強かった。今までの国際課税のルール「拠点なくして課税なし」を変更して、IT企業に直接課税する提案や、また各国個別の対応が相次いで出されてきた。それに反対してきたのがトランプ政権であった。

 最近は妥協点を見いだそうという動きもあったが、基本的にトランプ政権のGAFAなどへの課税議論は消極的なものだった。米国では、共和党よりも民主党のほうが大手IT企業の独占力への規制に積極的であり、バイデン政権になればその動きが加速化すると言われてきた。

 現時点の大手IT企業の「トランプ封じ込め」ともいうべき現象は、発足まで秒読み段階に入ったバイデン政権への政治的「賄賂」に思えなくもない。そんな印象を抱いてしまうほど、あまりにも過剰な「言論弾圧」である。

 もちろん、メルケル首相らのIT企業への批判をトランプ寄りと見なすことはできない。一国の大統領の発言を封じてしまうような大手IT企業の危険性を世界に知らせることで、デジタル課税などの規制強化をしやすくしたいという思惑もあるのではないだろうか。

 米国の大統領選出をめぐっては、米国だけでなく日本でも、意見の分断や対立は激しい。トランプ大統領の業績について支持派は全肯定、反対派は全否定という大きな意見の隔たりも見られる。だが、誰が大統領であるにせよ、日本の備えを強めればいいだけではないか、と筆者は思う。

 バイデン氏は中国の環太平洋地域への覇権的介入に、トランプ大統領ほど関心がないかもしれない。対中国よりも対ロシア、つまり大西洋の方をバイデン氏は重視しているという見方が有力である。現在の日米の基本的な外交方針である「自由で開かれたインド太平洋構想」という、事実上の中国包囲網をバイデン氏は積極的に推進しないかもしれない。

 だが、他方で米国では党派を超えて中国への警戒が強まっているのも事実である。バイデン氏は同盟国との協調も訴えているのだ。ならば、日本が積極的にバイデン氏に働きかけ、韓国を除いた環太平洋の同盟諸国が共通して抱いている、中国の覇権主義に対する枠組みを進展させるべきである。

 米国に依存するのではなく、米国を日本の国益のために利用する。言うは簡単で行うのは難しいかもしれない。しかし、その気概がなくては、日本国の行方は危うい。

【私の論評】日本の産業界のイノベーションが、中国の世界覇権、GAFAの世界市場制覇を抑制し、平和な世界を築く礎になり得る(゚д゚)!

独占それもグローバルな独占ということでいうと、現在のGAFAに匹敵するのは、業種もそこで使われる技術も全く異なるのですが、セブンシスターズとも呼ばれた石油メジャーかもしれません。

20世紀の世界の経済を動かしてきたものは石油でした。時価総額でも石油メジャーと呼ばれる企業群がトップを走ってきたのですが、この石油メジャー4社の売り上げが2012年にデータメジャーと言われるGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)4社に抜かれました。

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それからわずか数年で、GAFAはさらに数倍の大きさになっています。例えば多くの日本の人々が知るよりもAmazonの成長速度はずっと早いです。現時点で高い利益率を挙げているのはEコマースではなくAWS(Amazon Web Service)で知られるクラウドビジネスで、そのシェアIaaS(Internet as a Service)の分野で50%以上を占めています。

ただ彼らによると、2000年初頭には日本企業にこそチャンスはあったといいます。ただ、既存のサービスとのカニバリゼーションの心配などで躊躇しているうちにチャンスを逃がしてしまったのです。

また、日本では優れたコンピュータというと、速いコンピュータを指していました。もちろん速さも重要ですが、クラウド時代には電力効率の良さが重要な要素です。AmazonやMicrosoftはこの点を踏まえた投資を行い、日本の企業が追従することが困難な差を作り上げました。

2位じゃだめなのですか?という議論がありました。もちろん1位を目指すべきです。しかしながら転換期においては既存のゲームだけでなく、新しいゲームで1位を目指すことが重要なのです。

21世紀の現在、世界で生じていることは20世紀の「石油」にかわる「ビッグデータを巡る争い」だと私は認識しています。ここで「世界」というのは、地理的な意味での「世界」でもあるのですが、あらゆる産業分野や生活分野に関わる概念的な意味での「世界」でもあります。つまり、我々の経済や経営、生活、思考方法まで大きく変革させているのが第四次産業革命であり、その中核になっているのがビッグデータなのです。

1位アップル、2位アルファベット(グーグル)、3位マイクロソフト、4位アマゾン・ドット・コム、5位フェイスブック、6位テンセント、これは2017年12月末時点における株式時価総額の世界ランキングです。

トップのアップルの時価総額は8688億ドル、2位のアルファベットも7294億ドルです。アリババ・グループも8位につけており,時価総額は4361億ドルです。ちなみに、日本企業で最高位に位置しているのは42位のトヨタ自動車であり、その時価総額は1891億ドルに過ぎません。


株式時価総額は投資家がその企業をどのように評価しているかの表れですが、私が指摘したいのは、上位にある企業は2017年時点ですべてビッグデータを収集・確保している企業であるということです。いまや、「ビッグデータを制するものが世界を制する」と投資家が判断していることの証左です。

ビッグデータは、あくまでただのデータであり、それを制御・活用してこそ意味があります。ビッグデータの制御に関わるのがAIであり、未来の量子コンピューターやニュロモーフィック・チップでしょう。

現在、世界が注目する日本のスタートアップ企業、プリファード・ネットワークスの西川徹社長・岡野原大輔副社長がファナックの「機械が機械を作る」工場を見て、「これだ」と着想を得たことはその象徴です。

プリファード・ネットワークスの西川徹社長(右)・岡野原大輔副社長(左)

ファナックの工場には大量のビッグデータが収集されていました。1つの超音波センサーだけでも毎分1GBのデータを収集するのですが、それが1つの工場の至るところにあり、かつ世界中いたるところに工場があります。

そのデータ量は莫大なものですが、ファナックはそれらを十分に活用できていなかったのです。西川社長らはそれらをAI活用の「エッジヘビーコンピューティング」で制御できないかと着想し、創業したばかりのスタートアップ企業を飛び出しプリファード・ネットワークスを創業しました。

同社に対してはトヨタ自動車も関心を寄せ追加出資も含め115億円の出資をするとともに自動運転で緊密な提携をしています(対等提携)。提携はトヨタ自動車やNTTといった日本企業のみならず、マイクロソフトやエヌビディアとも行っています。

車の自動運転は,人間の生命に関わる問題でもあるので、とりわけ正確なビッグデータ解析が必要になります。しかも、従来のコンピューターが得意としてきた「0,1」の構造データのみならず、人間や生物,信号,他車など数多くの非構造データを瞬時に解析し、ブレーキやハンドル、アクセルを制御しなければならないです。

通常のCPUよりもはるかにコア数が多く並列処理が得意なGPUが必要とされる所以です。また、それらのビッグデータをクラウド(サーバー)で解析しようとすると高速の通信が不可欠となります。

現在の4Gが5Gに置き換わる20年代以降、自動運転のレベル3が普及するでしょう。レベル4やレベル5に到達するためには、さらに10年ずつの時間が必要になるかもしれないですが、エッジ・コンピューティング(利用者や端末と物理的に近い場所に処理装置を分散配置して、ネットワークの端点でデータ処理を行う技術の総称)が可能になれば通信速度に頼らずに自己制御することも可能です。そうなると、自動運転の時期はもっと早まるかもしれないです。

工場のおけるビッグデータ、すなわちIoTもこの流れにあります。ファナックに限らず機械に数多くのセンサーを取り付け、ビッグデータを収集し、それらを活用することがコスト削減やメインテナンス、品質向上などに大きく役立ちます。

ドイツのインダストリー4.0もジェネラル・エレクトロニクスのGE Digitalも、課題はビッグデータの収集・活用です。つまり,ビッグデータを制するものが支配権を握るのです。中国が中国国内のビッグデータの国外流出に規制をかけているのもそのためです。

その中国においては、テンセントやアリババ・グループがビッグデータの収集・活用に余念がありません。もともとはSNSとそれを活用したゲームの販売あるいはeコマースで名を上げた企業ですが,インターネット空間で活用するウィーチャット・ペイやアリペイを開発することによって、サイバー空間のみならずリアル空間にも進出してきました。

滴滴出行などのタクシー手配アプリを使うにも、モバイク,Ofoなどシェア自転車を利用するにも、そのようなスマホ決済を使わざるを得ないですが、さらに進んで買い物や食事、友人との割り勘にも活用されています。最近では、浮浪者がお恵みを迫る際にもスマホ決済のQRコードを提示します。このような事態になると、ネット空間のデータのみならず、日常生活の買い物行動、移動、友達関係まですべて上記2社は把握することになります。これが、彼らの利益源となるのです。

ビッグデータの収集はビジネスの世界に限られたことではありません。2017年あたりから日本でも流行したスマートスピーカーは、消費者に利便性を与えるとともに、企業に生活のビッグデータを提供しています。アマゾン・エコーやグーグル・ホーム、アップル・ホームポッドなどの米国勢に加え、ラインもライン・クローバを発売しています。

ネットで「スマートスピーカー」を検索すると、名前も知らないようなブランドが数多く出てきます。これらは確かに商品ではありますが、単に機器として販売している企業はいずれ淘汰されるでしょう。ここでも生き残るのはビッグデータを制するものであり、彼らがスマートスピーカーから収集したビッグデータに基づき、音楽や本、家電、食品、日用品もろもろのマーケティングに活用したとき、彼らの競争優位は決定的なものになります。

正直なところ、ビッグデータの収集と活用という点においては、日本企業は世界のトップから2、3周遅れています。プリファード・ネットワークスのような企業が雨後の筍のように勃興しない限り先行きは暗いです。そうでなくても日本の起業率5.2%(2015年)は他国と比較しても低いのに、最先端分野で遅れをとれば日本経済にとって致命的になるでしょう。

では日本企業はお先真っ暗かと言えば、そうではありません。ビッグデータもAIも、フィンテックのようにサイバー空間の中だけで完結するものもありますが、多くはリアルの世界と繋がって初めて効果を発揮します。

それは自動車であったり工作機械であったり、コンピューターやスマホであったり、多くは「ものづくり」に紐付いています。この分野においては、日本企業はかなりの競争力を有しています。いち早くその「ものづくり」をAIと結びつけていけば、まだ復権の可能性はあります。ソニーが新型アイボをリリースしたのも、そのような決意の表れではないでしょうか。日本企業にもっと頑張ってもらいたいです。

ビッグデータ関連においても、デジタルが有効に機能するには半導体など中枢分野だけでなく、半導体が処理する情報の入力部分のセンサーそこで下された結論をアクションに繋げる部分のアクチュエーター(モーター)などのインターフェースが必要になります。

また中枢分野の製造工程を支えるには、素材、部品、装置などの基盤が必要不可欠です。日本は一番市場が大きいエレクトロニクス本体、中枢では遅れをとったものの、周辺と基盤で見事に生きのびています。また円高に対応しグローバル・サプライチェーンを充実させ、輸出から現地生産へと転換させてきました。

世界的なIoT(モノのインターネット)関連投資、つまりあらゆるものがネットにつながる時代に向けたインフラストラクチャー構築とビッグデータの活用がいよいよ本格化しています。加えて中国がハイテク爆投資に邁進しているのですが、ハイテクブームにおいて日本は極めて有利なポジションに立っています。

新たなイノベーションに必要な周辺技術、基盤技術のほぼ全てを兼ね備えている産業構造を持つ国は日本だけです。中国、韓国、台湾、ドイツはハイテクそのものには投資していながら、その周辺や基盤技術の多くを日本に依存しています。GAFAも例外ではありません。そもそも、半導体製造の工作機械が日本の独壇場です。

日本のエレクトロニクス企業群は、このイノベーションブームの到来に際して、最も適切なソリューションを世界の顧客に提案・提供できるという唯一無二の強みを持っているのです。

これからは、バソコン、タブレット、スマホ以外でもたとえば車自体がビッグデータ取得のためのツールになります。あるいは、ビル、駅、スーパー、コンビニ、ラーメン店など飲食店自体がビックデータ収集のツールになります。いやそれどころか、学校、病院、役所もそうなります。いやそれどころか、町や村、都道府県、日本国そのものがツールになるのです。

最初から意図して、意識して、このようなことをするのと、既存のインフラにビッグデータの入り口を設置するのとでは、全く別モノになる可能性があります。これについては、世界でも、新たなイノベーションに必要な周辺技術、基盤技術のほぼ全てを兼ね備えている産業構造を持つ日本しか本格的に取り組むことはできないと思います。

日本がビッグデーターの入り口のインフラで、大きな地位を占めることになれば、これはもう日本が打ち出の小槌を持ったようなものです。それどころか、安全保障でも強みを発揮することもできます。

たとえば、GPSを搭載したコマツの建設機械がいま世界で約30万台稼働しています。これは「KOMTRAX(コムトラックス)」と呼ばれる機械稼働管理システムで、どの機械がどの場所にあって、エンジンが動いているか止まっているか、燃料がどれだけ残っているか、昨日何時間仕事をしたか、すべてがコマツのオフィスで分かる仕組みになっています。

コマツの重機はビックデータを収集するツールでもある

中国の建設現場などでは、ほとんどの現場でコマツの重機が使用されています。ここまで、いうと、私の言っている意味が理解できると思います。

これは、ビッグデータで先頭を走る、米国、中国、GAFAに対しても強力な抑止力、牽制力になります。日本は、特定の企業ではなく、日本の産業界がこの方向で進み、政府はその方向にすすめるように支援をすべきでしょう。

ビッグデータ関連でも、独占体制になればそれが中国であれ、GAFAであれ、良いことは一つもありません。日本がその一角の大きな部分を占めることは、この独占体制を打破することにつながります。

日本のこうした取り組みが、中国の世界覇権、GAFAの世界市場制覇を抑制して、平和な世界を築く礎になるかもしれません。日本はこのチャンスを逃がすべきではありません。

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