2023年4月6日木曜日

少子化財源、社保料引き上げ軸 衆院選見据え「増税」慎重―政府・与党―【私の論評】子どもや若者の未来を明るく希望の持てる輝けるものにするため、岸田首相は正しい選択をし長期政権を築け(゚д゚)!

少子化財源、社保料引き上げ軸 衆院選見据え「増税」慎重―政府・与党

首相官邸に入る岸田首相

 政府・与党は「異次元の少子化対策」の財源について、公的医療保険など社会保険料の引き上げを軸に検討する方針だ。3月末に策定した対策の「たたき台」を全て実施すれば、数兆円規模の予算が必要となる。早期の衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、国民の反発を懸念して増税は避けたい考えとみられる。

岸田首相、教育国債に慎重 性の多様性尊重「世界に示す」―参院決算委

 財源に関し、岸田文雄首相は3日の参院決算委員会で「各種の社会保険との関係、国と地方の役割など、社会全体でどのように安定的に支えていくか考える」と説明。自民党の茂木敏充幹事長は4日のBS日テレ番組で、現時点での増税や国債発行を否定しつつ、社会保険からの拠出に言及した。

 会社員の場合、公的年金、医療、介護保険の保険料は社員と企業で折半している。首相が議長を務め、7日にも初会合を開く「こども未来戦略会議」で各種保険料の上乗せ徴収についても議論。政府はこれを踏まえ、子ども・子育て予算の「倍増」に向けた大枠を6月に示す方針だ。
 ただ、経済界には企業の負担増を懸念する声があり、理解の取り付けは不可欠。子育てを終えた世代や独身者の負担も増えることになるため、「社会全体で支える」とのコンセプトの浸透が課題となりそうだ。

 政府は昨年末、防衛力強化の財源として法人税などの増税方針を決定。物価高騰が国民生活を直撃していることもあり、内閣支持率が低迷する一因となった。少子化対策で増税を回避する背景には、政権の「中間評価」が問われる衆参5補欠選挙の投開票が今月23日に控えていることもあるとみられる。

 少子化対策のたたき台は、児童手当の所得制限撤廃を打ち出し、出産費用の保険適用に向けた検討を明記。「社会全体で子育てを支える意識を醸成する必要がある」として、幅広い層に負担を求めることを念頭に置いている。

【私の論評】子どもや若者の未来を明るく希望の持てる輝けるものにするため、岸田首相は正しい選択をし長期政権を築け(゚д゚)!

少子化対策の財源に関して、高橋洋一氏は、背後に財務省の存在があり、財務省は最終的には消費増税にもっていきたいと以下の動画で主張しています。詳細については、以下の動画をご覧になってください。



この動画で、今回の少子化対策は数年前に小泉進次郎氏が主張していた「子ども保険」に似ていることを思い出すべきと主張しています。それに関しては、このブログでも解説したことがあります。そのブログのリンクを以下に掲載します。
自民・小泉進次郎衆院議員ら「こども保険」創設で幼児教育無償化の財源確保提言 「教育国債」は「未来へのつけ回し」と批判―【私の論評】麻生財務大臣と小泉進次郎氏は財務省の使い捨て人材(゚д゚)!

この記事は、2017年3月31日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして。元記事を引用します。
 小泉進次郎衆院議員ら自民党若手議員でつくる「2020年以降の経済財政構想小委員会」は29日、新たに社会保険料を上乗せして徴収し、幼児教育無償化の財源を生み出す「こども保険」の創設を柱とする提言を発表した。30日に党「財政再建に関する特命委員会」に報告し、次期衆院選の公約への反映を目指す。

 こども保険は厚生年金の場合、平成29年度で15・275%の社会保険料について個人、事業者とも当面0・1%分を上乗せして徴収し、約3400億円の財源を捻出。将来的に0・5%分まで引き上げて約1・7兆円を確保し、幼児教育と保育を実質無償化する。

 小泉氏は記者会見で「世代間公平の観点からも、こども保険の導入は画期的なことだ」と語った。党内には教育無償化の財源として「教育国債」を発行する案もあるが、小泉氏は「未来への付け回しになるのではないか」と批判した。

この元記事に対する【私の論評】から一部を以下に引用します。

本当に、ものは言いようです。増税というと、多くの国民はかなり抵抗がありますが、こども保険というと、「子供のためならしかたないか」、という人も多いはずです。

そこに付け込んで、幼児教育から大学までの教育無償化の財源として、現在の年金に0.1%上乗せし、近い将来0.5%まで高めようというのが「こども保険」の本質です。これは、実質増税と同じことです。

自民党案である教育国債発行は、国の借金にすぎないということで、またもや財務省が難癖をつけ、小泉氏が財務省にうまく丸込まれたといった格好ではなかろうかと思います。

当時もそもそも保険というのが、理解できないという論議がありました。保険は被保険者(たとえば健康保険に加入し、病気やけがなどをしたときなどに必要な給付を受けることができる人のこと)というか、保険対象になる人がいますが、子ども自身か、そのもしくは子どもの親が被保険者ということになると考えられます。

子どもが成人した世代、もしくはそれ以上の世代が被保険者となるというのは明らかにおかしいです。このおかしいという感覚を利用し、財務省は保険料ではなく、消費税増税したかったとみえますが、これも含めて結局「子ども保険」に関しては、反対も多く実現することはありませんでした。

高橋洋一氏は、今回の「異次元の少子化対策」の財源に関しても、同じような経路を辿っているとみるべきと指摘しています。経団連は、社会保障に話を移し、それは「おかしい」という批判がまきおこるのを待って、今度は消費税増税に軸足を移すというパターンを踏襲しているとしています。

現状では、経団連は、戦略的に消費税の話題を落とすタイミングを計りつつ、各界からの批判を誘発しているとしています。そうして、頃合いを見計らって、日本商工会議所等による保険面での増税要求が予想されるとしています。

そうして、財務省はこうした動きを見計らい、さらなる消費税の増税を行うことを目指しているとしています。

少子化対策とは、企業でいえば、設備投資に近い投資といえます。多くの企業で、設備投資を営業利益で賄うということはありません。

一般的に、企業の設備投資には銀行融資を利用するのが普通です。営業利益だけで賄うとすれば、大規模で長期的な投資はできず、大きな機会を見逃すことになりかねないからです。

そうして、政府が国債を発行するということは、機関投資家等からおカネを借りることであり、企業が設備投資のために銀行からおカネを借りるのと同じようなものです。

そのことを創業者社長やベンチャーの経営者なら、十分理解しているでしょうが、経団連あたりの経営者は俗にいう「サラリーマン社長」であり、日本を含めた多くの国々で、保険料は結局のところ賃金から差し引いているものであるにもかかわらず、目先の保険料が高くなるのが嫌で、保険料に反対するわけです。それを利用して、世論を盛り上げて、あわよくば消費増税に結びつけたいとしているのが財務省です。

そうして国による教育投資などは企業による設備投資よりもさらに、かなりパフォーマンが良いことは、昔から知られていることです。これは、以前このブロクにも掲載したことがあります。

現在、日本でいわれている「奨学金」のほとんどは「教育ローン」です。これが、かなり混乱をきわめ、結局のところ外国人留学生には本来の奨学金が交付され、日本人学生のほとんどは「教育ローン」が課されているというおかしげな状況になっています。

これは、いわゆる「奨学金」という名の「教育ローン」で大学や大学院に進学した人なら良くわかっているでしょう。私自身も国立の大学・大学院を「奨学ローン」で卒業した人が、卒業して社会人になった途端に数百万円もローンを返さなければならない状況になっているのを聞いて驚いたことがあます。

とにかく、子ども支援や、中高等教育でも変えなくてはならないことが、日本ではかなりあります。そうして、これらは見返りが大きいので、増税ではなく国債で賄うべきなのです。

これや、少子化対策等を国債で実施するのは当然のことなのですが、これを実行できるのは、高橋洋一氏の動画でも語っているように、やはりトップである岸田首相の決断以外にありません。

高橋洋一氏も、岸田政権を潰しても、財務省は消費増税を実現するだろうと語っています。現状の日本で、消費増税をすれば、また経済は落ち込みデフレが進行し、失業率もあがり国民の不満は爆発し、支持率は低下し岸田政権は崩壊します。そのようなことは、おかまいなしで、財務省は消費税増税を虎視眈々と狙っているのです。

安全保障や、外交では覚醒したといわれる岸田首相、国内の特に財務省の問題を解消すれば、支持率もあがり、長期政権になり、その後は所得倍増計画などの岸田カラーも打ち出しやすくなります。

岸田首相には正しい選択をして、長期政権を築いていただきたものです。そうして、子どもや若者の未来を明るくて、希望の持てる輝けるものにしていただきたいです。

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2023年4月5日水曜日

トランプ氏、法廷で無罪主張 34の罪状も「違法なことは何もしていない」「犯罪者は大陪審の情報をリークした検事の方だ」―【私の論評】起訴でかなり有利になりつつあるトランプの大統領選戦(゚д゚)!

トランプ氏、法廷で無罪主張 34の罪状も「違法なことは何もしていない」「犯罪者は大陪審の情報をリークした検事の方だ」

4日、罪状認否のため、米ニューヨークの裁判所に出廷したトランプ前大統領

 米ニューヨーク州の大陪審に起訴されたトランプ前大統領(76)は4日午後(日本時間5日未明)、ニューヨーク市内の裁判所で罪状認否に臨んだ。ビジネス記録を改竄(かいざん)したなどとして34の罪状に問われたが全て無罪を主張した。トランプ氏はSNSで「違法なことは何もしていない」と主張した。

 トランプ氏は2016年大統領選の投票日の直前、一族企業の弁護士を通じて、不倫相手のポルノ女優に13万ドル(約1700万円)を支払ったとされる。起訴内容によると、自らの当選に不利になる情報を有権者に隠す目的で、一族企業の事業記録を繰り返し改竄したという。

 捜査責任者のブラッグ地方検事は記者会見で「16年大統領選の公正さを損なう行為だ」と述べた。ただ、ブラッグ氏は民主党候補として地方検事選に当選しており、トランプ氏は、検察の捜査は「政治的迫害だ」と訴えてきた。

 ロイターによると、罪状を合わせると100年を超える懲役刑となるが、有罪になっても実際の懲役刑ははるかに短くなる公算が大きい。また、有罪の場合も大統領選に出馬可能との見方も強い。

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、4日時点の共和党候補の各社世論調査の平均支持率は、トランプ氏が50・8%で2位のデサンティス氏(24・6%)を引き離している。

 罪状認否を終えたトランプ氏は、プライベートジェット機でフロリダ州の私邸マールアラーゴに戻って支持者らを前に演説した。トランプ氏は「犯罪者は大陪審の情報をリークした検事の方だ」「これは捜査ではなく迫害だ」と強調した。

【私の論評】起訴でかなり有利になりつつあるトランプの大統領選挙戦(゚д゚)!

以下に検察に出頭したトランプ前大統領の演説を同時通訳付きノーカットで掲載します。同時通訳つきです。


トランプ前大統領の起訴は、前代未聞の出来事です。ニューヨーク州の大陪審がトランプ前大統領を起訴したのです。アメリカの歴史上、大統領経験者が起訴されるのは初めてです。

マンハッタンにある司法当局の前には多くのメディアが駆け付けました。米メディアだけでなく、世界各国のメディアが詰め掛けました。

マンハッタン地区検察は2016年の大統領選に絡み、トランプ前大統領の捜査を続けてきました。不倫関係にあったと主張する元ポルノ女優に対する口止め料の支払いと、そのもみ消しを図った疑惑の捜査です。

トランプ前大統領は大統領選の直前、不倫関係が明らかになることを懸念し、ダニエルズさんに13万ドル、日本円にしておよそ1700万円を支払った疑いが掛けられています。大陪審の決定を受け、トランプ前大統領は声明を出しました。

 トランプ前大統領の声明:「これは歴史上、最大レベルの政治的迫害と選挙妨害だ」

一方、米・メディアによると、ニューヨーク市警はすべての警察官に対し「制服着用のうえ、31日の午前7時に出勤するよう」命じました。

ニューヨーク市警が警戒するのは、トランプ支持者による連邦議会襲撃の再来です。トランプ前大統領の別荘近くには支持者らが集まっていました。

 トランプ支持者:「こんな告発が本当にまかり通ると思うの?本当に年を取った馬面の嘘で、トランプ氏を大統領選から排除できると思うの?ほんの一瞬でも信じられません」

支持者が発した馬面という言葉。トランプ前大統領が不倫相手とされる女性を揶揄(やゆ)した表現です。

 トランプ前大統領:「馬面を好きになったことなどない。ひどいってほどじゃないが、そんなことはありえない。我々には素晴らしいファーストレディーがいる」

起訴を歓迎する声も聞かれました。

人類史上、経験がないので今後どう展開するかは、まるでシナリオのないドラマです。劇場型の政治の幕がトランプ氏ではなく、民主党側から切って落とされたという状況といえると思います。ドナルド・トランプ前米大統領は4日、ニューヨーク・マンハッタン地区の刑事裁判所で罪状認否に臨み、無罪を主張しました。

その直後に公開された起訴状によると、トランプは3人の女性との不倫関係を隠すために行った一連の口止め料支払いをめぐり、重罪となる第一級ビジネス記録改ざん34件の罪に問われています。

捜査を指揮したNY州のマンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事は2021年初めの選挙でマンハッタン地区の主任検事に選ばれましたが、選挙戦では一貫して「自分が検察官になれば必ずドナルド・トランプを有罪にする」と宣言していました。

NY州のマンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事

犯罪の裏付けの前に、まず特定人物への法的懲罰を公約にしていたのです。またブラッグ氏が選挙戦に際して、トランプ攻撃で知られる大富豪のジョージ・ソロス氏が100万ドルを寄付したリベラル派政治団体から42万ドルの献金を受けていたことも、共和党側からの非難の対象となっていました。

 実はスキャンダルの口止め料を払っただけでは違法にはならいため、この案件はブラッグ氏の前任の検事が捜査をしたものの途中で放棄しています。また7年前の口止め料の支払いは、たとえ違法部分を含んでいても時効となる可能性も高いです。 

ブラッグ検事は、おそらくトランプ氏側が口止め料支払いに伴い、選挙活動やビジネスの資金の流れの記録を改ざんしたことや、真実を述べないことなどを「重罪」扱いする見通しが強いですが、共和党側からすればこれは列記とした政治的捜査となります。

トランプ前大統領は来年の大統領選への出馬を表明していますが。こうした問題を逆手に取って自分の支持者、共和党の支持者たちをも巻き込んで熱狂を巻き起こして、さらに寄付金も豊富に集めて、今後の大統領選挙の勢いにこれを変えていこうとしています。

実際、イーロン・マスク氏は以下のようにツイートしていました。


マスク氏は、トランプ前大統領が逮捕された場合、彼は「地滑り的に再選されるだろう」と予測しているのです。

トランプ前大統領が起訴されることで、選挙戦が有利になると考える人は、以下のようなことを論拠としているとみられます。

彼の支持層を結集させることができる: トランプ氏の支持者の中には、起訴を政治的動機に基づく攻撃とみなし、選挙戦でトランプ氏を支持する気運が高まる可能性があります。また、支持者の中には、起訴を政治的な意図による攻撃とみなし、選挙戦での支持を強める可能性があります。

他の問題から目をそらす可能性: トランプ氏が起訴されれば、メディアや世間は法的手続きに集中し、他の候補者が掲げている問題には目を向けなくなるかもしれません。これにより、他の候補者から注目を集めることで、トランプ氏が有利になる可能性があります。

彼を被害者として見せることができる: トランプ氏はこれまで、自らを魔女狩りの被害者として描いてきましたが、起訴されれば、このイメージをさらに強めることができます。トランプ氏は、自らを魔女狩りの被害者として描いており、起訴されれば、このイメージをさらに強めることができるでしょう。

このような傾向は、すでにみられています。

たとえば、上の記事にもある通り、政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、4日時点の共和党候補の各社世論調査の平均支持率は、トランプ氏が50.8%で2位のデサンティス氏(24.6%)を引き離しています。

起訴が決まる前の米クイニピアック大学の世論調査によれば、共和党の指名争いではトランプがデサンティスを46%対32%でリードしていました。トランプ起訴によって、その差がさらに広まりました。

デサンテスの支持率が低いのは、ウクライナ戦争の見方によるものとみられています。デサンティス・フロリダ州知事のウクライナ戦争についての発言が物議を醸していました。米ワシントンポスト紙コラムニストのヘンリー・オルセンは、3月16日付の論説‘Ron DeSantis’s stance on Ukraine is a serious political blunder’で、「ウクライナ戦争でウクライナを支援してロシアに対抗することは米国の国家利益ではない」とするデサンティスの立場は政治的失策である、と論じています。

実際、このような考え方が、共和党の大勢を占めていた時期もあります。しかし、ウクライナ戦争が長引いた最近ではそれも変わっています。

トランプ氏は、このような問題に関しては、柔軟に対応できますし、過去にもそうしてきました。たとえば、選挙戦においては「アメリカ・ファースト」などといい、米国が世界から孤立する道を選ぶのではないかと危惧されながら、実際に蓋をあけてみると、かなりまともな外交を実践していました。

共和党内で、有利に選挙戦をすすめてきた、トランプ氏は今回の起訴で、さらに民主党に対しても有利になるとみられます。

日本のマスメディアはなぜか反トランプ報道一色ですが、それが一方に偏した魔女狩り的なものになっているかもしれないとの視点を、持つべきです。

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2023年4月4日火曜日

「執行猶予付き死刑判決」を受けた劉亜洲将軍―【私の論評】「台湾有事」への指摘でそれを改善・改革する米国と、それとあまりに対照的な中国(゚д゚)!

「執行猶予付き死刑判決」を受けた劉亜洲将軍

台湾南部・嘉義基地で行われた台湾軍の演習=1月6日

澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・李先念元国家主席の娘婿である劉亜洲上将が「執行猶予付き死刑判決」を受けるだろうと報じられた。

・劉は、重大な金融腐敗に関与した疑いがあるという。

・「台湾侵攻」について書いた論文が習主席の逆鱗に触れた可能性がある。

 

 最近、李先念・元国家主席の娘婿、劉亜洲上将(70歳)が「執行猶予付き死刑判決」を受けるだろうと香港メディアが報じた(a)。

 2021年12月下旬以降、劉は姿を消していたが、重大な金融腐敗財団や協会の名義で巨額の富を蓄財―に関与した疑いがあるという。

 劉亜洲は1968年に人民解放軍に入隊し、1997年から北京軍区空軍政治部主任、成都軍区空軍政治委員、空軍副政治委員兼規律委員会書記等を歴任した。 2009年12月に国防大学政治委員となり、2017年に軍を退役している。

 劉は、江沢民・胡錦濤時代に、時事問題をテーマにした記事を書き、「国と人民を憂う」人物として、知識人界では好感を持たれていた

 まもなく劉亜洲が「執行猶予付き死刑判決」を受けた事が確認(b)された。劉亜洲は経済汚職に手を染めたとされるが、これは“政治問題”を“経済問題”として扱う共産党の“定石”である。

 習近平主席が劉亜洲に対し激怒したというが、その理由は劉の論文「金門戦役の検討」の中身である。中国共産党が台湾との平和的統一の希望を失い、台湾への武力攻撃のタイムテーブルが提出された昨今、この軍事研究論文の重要性は言い尽くせないだろう。

ただ、その研究結果は「台湾解放」を目指す習主席に冷水を浴びせるモノだった。そのため、主席の逆鱗に触れた

「金門戦役の検討」(c)は以下の通りである。

 ―今日、台湾軍はかつての蔣介石軍と同じではないし、台湾島は金門と同じでもない。しかも、天険(自然の地勢が険しい)が横たわっている。台湾海峡での戦いは、金門戦役の1万倍も困難なものになるだろう。また、目下、台湾を守るのは台湾自らだけではなく、西側諸国全体である。

 ―ある者はこう言った。「(台湾と)戦え!できるだけ早く!」と。また、ある者は、「台湾軍は我々(人民解放軍)の一撃に耐えられない。我が軍は朝攻めて夕方には勝つ」と主張した。

 ―昨年、私(劉亜洲)は台湾との戦闘が議論された会議に出席して質問した。「頭上には衛星があり、下にはレーダーのある今、丸見えの状態でどのように軍を福建省に部隊へ輸送できるのか?」

 ある男性は「簡単だよ!長期休暇があるだろう。その長期休暇に兵士を私服へ着替えさせ、列車で福建省に向かえばいいんだ。」私が最後に呟いたのは、「最大の敵は自分自身だ」だった。

 実際、劉亜洲将軍は、「台湾侵攻」の難しさを軍事的、国際政治的観点から分析し、「台湾侵攻」に対する自身の認識を幾つもの角度から検証(d)している。

(一)台湾の地形分析:台湾は海峡の片側(西側)に近く、上陸に適した海岸が少ない。 海岸線から10kmも離れていない山林には、長年にわたって築かれた要塞がある。仮に、中国軍が上陸できたとしても、遠くの高台からの火力兵器で簡単に制圧でき、上陸地点は屠殺場と化すだろう。

(二)台湾東部軍事空港は洞窟の中に構築され、海に面した外部滑走路はわずか100m~200m、加速滑走路の約1000mは洞窟の中にある。そこから出撃した航空機に、ミサイル攻撃しても無駄である。台湾空軍は強力で、パイロットは皆、米国で高度な訓練を受け、陸上・海上での飛行と空母離着陸の経験は中国空軍に劣らない。

(三)台湾はほぼ「国民皆兵制」を採用し、200万人以上の予備役兵士は、毎年集中訓練を行っている。戦争になれば、24時間以内に募集・編成され、特に訓練しなくても、そのまま戦闘に入ることが可能である。

 しかも、台湾はすでに先進的防衛兵器を大量に購入し、米国から訓練を受けており、最近ではMQ9ドローンやハープーン対艦ミサイルを購入し、中国軍の上陸作戦にも十分に対応できる。

 したがって、米軍や周辺国が戦闘に参加せず、台湾が自国軍隊だけで戦っても、中国軍は、1、2の上陸地点確保のために多大な犠牲を払うだろう。たとえ、陸海空軍にロケット部隊を加えたとしても、台湾全土の「解放」はおろか、戦闘にも勝利できないかもしれない

(四)国際情勢の分析:米韓は共同防衛条約を、日米は安全保障条約を結んでいる。ひとたび有事が起これば、米国が介入し、日米、米韓の条約は自動的に発効し、共同戦線に参加することになるだろう。

 日韓はアジアの経済大国、かつ、空海軍の強国である。韓国の海軍・空軍力は、中国と互角に戦える。また、日本の自衛隊は中国軍より数では劣るが、その実力や戦闘力は間違いなく中国に劣らない。

((d)『毎日文摘』(解放台湾,谈何容易!刘亚洲泼冷水)の引用ここまで)

〔注〕

(a)『聯合早報』

「中国軍作家・劉亜洲が重大な汚職に関与し、『執行猶予付きの死刑判決』が下される可能性」

(2023年3月25日付)

https://www.kzaobao.com/shiju/20230325/135817.html)。

(b)『中国瞭望』

「『金門戦役の検討』が習近平の逆鱗に触れて、怒りの劉亜洲切り」

(2023年3月28日付)

(https://news.creaders.net/china/2023/03/28/2592122.html)。

(c)『禁聞網』

「劉亜洲:金門戦役の検討(2004年4月14日)」

(2023年1月23日付)

(https://www.bannedbook.org/bnews/wp-content/plugins/down-as-pdf/generate.php?id=1609505)。

(d)『毎日文摘』

「台湾解放は言うは易く行うは難し! 劉亜洲が冷水を浴びせる」

(2023年3月30日付)。

解放台湾,谈何容易!刘亚洲泼冷水)。

【私の論評】「台湾有事」への指摘でそれを改善・改革する米国と、それとあまりに対照的な中国(゚д゚)!


劉亜州は、人民解放軍(PLA)国防大学の政治委員を務めた中国の退役上級将校です。1951年、中国陝西省に生まれました。劉亜州は、中国で著名な軍人であり、中国共産党(CCP)内の「改革派」とも評されています。

劉亜州は1969年に中国共産党に入隊し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。2007年に上級大将に昇進しました。軍歴の中で、彼はPLA空軍の副政治委員や成都軍区の政治委員など、いくつかの重要な役職を歴任しています。

劉亜州は多作な作家でもあり、軍事戦略や政治理論に関する論文や書籍を数多く出版しています。中国共産党に対する批判的な見解で知られ、中国における政治改革を提唱しています。著作では、三権分立、司法の独立、表現の自由の拡大などを訴えています。

中国共産党に批判的な意見を持ちながらも、劉亜州は胡錦濤前国家主席の信頼できるアドバイザーとして中国共産党中央委員会の委員を務めました。中国共産党では習近平総書記を筆頭にした太子党の主要人物とみなされています。父である劉保恒は、軍の上級司令官であり、中華人民共和国の創設者の一人です。

退役後、劉亜州は中国政界で著名な人物であり続け、政治改革を提唱してきました。また、汚職や環境汚染などの問題に対する中国政府の対応に批判的です。また、近年は、世界舞台で自己主張を強める中国に懸念を示し、他国との協力関係を強化するよう求めています。

このような経歴を持つ人物ですから、劉亜州が「執行猶予付き死刑判決」を受けるのもむりからぬところもあります。

2004年5月20の台湾・陳水扁総統の二期目の就任演説をはさみ、中国は前回2000年よりさらに激烈な文攻(文章・言論による攻撃)を繰り出していました。なかでも、当の中国の幹部らをも驚かせたのが当時の最高幹部の一人、劉亜州・副政治委員(中将、五十一歳)が明かした江沢民の「中台戦争不可避論」でした。江発言の真意はなにか、なぜ劉はあの時期に発表したのかをめぐり、さまざまな憶測が飛び交っていました。

結局のところ、当時から20年近くたっても、中国による台湾侵攻はありません。劉亜洲氏が指摘するように、確かに中国による台湾侵攻は難しいのは事実だと思います。このブログでも同様の分析をしています。ただ、中国が台湾に侵攻するのは、難しいですが、中国が台湾を破壊するのは簡単です。そうして、破壊することも戦争の一形態ですから、台中が戦争になる可能性はあります。

侵攻するのと、破壊するだけというのは、雲泥の差があります。破壊するだけなら物理的にはさほど難しいことでありません。中国から台湾にミサイルを発射したり、航空機で爆撃したり、艦砲射撃をするなどでかなり破壊できます。そうして台湾に深刻な被害をもたらすことになります。

ただ、侵攻するとなると、これは別問題です。中国は台湾に大部隊を送り込み、台湾軍を制圧しなければなりません。制圧した後は、統治しなければなりません。このことの難しさは、ウクライナでも実証されています。ロシアはウクライナの都市を多数破壊し尽くしましたが、それでも未だに制圧できているのは、東部の数州の一部です。それもこれからどうなるかは、わかりません。

ロシア軍に破壊されたバフムト

陸続きのウクライナですら、ロシアは攻めあぐねているわけですから、中国が海を隔てた台湾に侵攻するのはかなり難しいと考えるのは当然だと思います。両方とも特にネックになるのは、兵站です。

ロシア軍の兵站は鉄道輸送に頼るところが大きく、そのため国境付近ではロシア軍本来のパフォーマンスを発揮できるのですが、奥に進むにつれて、兵站がネックになり本来のパフォーマンスを発揮しにくくなります。

中国が台湾を侵攻するには、大部隊を運ばなければなりませんが、現在運べるのは一回に十数万程度と見積もられ、今後一般商船を用いることも含めて改善を試みているようですが、根本的な解決には至っていません。

それに、台湾軍は開戦当初のウクライナ軍よりは現代的で精強であり、対艦ミサイルの多数配備しており、多くの艦艇は撃沈されることになります。地対空、空対空、長距離ミサイルまで多数備えています。そのため、兵員輸送や兵站が途切れることが予想されます。

以上のようなことを考えれば、劉亜洲将軍の「台湾侵攻」の難しさは、習近平は全く否定することはできないはずです。

一方、米国では軍は、様々な場合を想定して、ある特定の場合には米軍は中国軍に負けることが予想されるという報告書を頻繁に出しています。これをもって、メディアなどは、米中が戦えば、米国が負けるなどと報道していますが、そうではありません。局所的には負けることも多いにありますが、全体的にいえば中国は未だ米国の敵ではありません。

米軍は、世界最強といえる軍備を持っていても、十分に至らないところを中国に突かれれば、大損害を被ることを想定し、それを防ぐ方法とともに、政府に報告し予算を得てそれを改善しているのです。

私が一番不思議に思ったのは、過去の台湾有事のシミレーションなどでは攻撃型原潜、特に大型のものは当然出動させるべきなのですが、なぜか一回も出てこなかったことです。さすがに、昨年末のシミレーションでは登場していました。その結果、台湾有事では、日米は大損害を受けるがそれでも中国は台湾に侵攻できないというものでした。

攻撃型原潜が出動すれば、戦況は米軍にかなり有利になるはすですが、登場させなければ、米軍にかなり不利になります。ただし、そうしたことも想定されるわけで、それでも十分に対応できるように、米軍は軍備を整えたか、あるい整えつつあるのだと思います。

確かに、米軍が必ず勝てる条件のみで、シミレーションをしていれば、安心かもしれませんが、それでは想定外のことが起こったときに対処できなくなります。だから、米国のやり方は正しいのかもしれません。米国の原潜も数に限りがあります。特定の海域では、攻撃型原潜なしで戦わなければならない場合も想定しうると思います。

そういう場合も想定したのか、たとえば哨戒機P-8Aとコンビを組む無人航空機として、ノースロップ・グラマンのMQ-4C「トライトン」を採用しています。米軍は、有人哨戒機に比べて連続作戦時間が長い「トライトン」で洋上を監視し、「トライトン」が不審な目標を発見したらP-8Aが急行して対処するという運用方法を構想しています。こうした着想がでてきたのも、米軍の様々なシミレーションの結果だと思います。

哨戒活動をしているMQ-4C「トライトン」

劉亜洲の「台湾侵攻の難しさ」の指摘も、米軍による「台湾有事」のシミレーションに相通じるところがあります。

同じような指摘について、米国は改善・改革をし、中国はその指摘をした人物に対して「執行猶予付き死刑判決」をしたのです。どちらが、軍隊を強くするかといえば、無論米国だと思います。

ただ、米国にはこのようなことをする余裕がありますが、中国にはそのような余裕はないのかもしれません。弱い部分を指摘されても、それを克服する方法はすぐには見つからないのかもしれません。だからこそ、習近平は激怒したのでしょう。

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2023年4月3日月曜日

プーチン大統領が国内に缶詰状態…ICCの逮捕状で同盟国まで「入国すれば逮捕」と警告する事態に―【私の論評】過去には、スペイン、台湾も中国高官に逮捕状を出し、台湾では実際に拘束された事例も(゚д゚)!


ロシアの同盟国のアルメニアが、プーチン大統領に「逮捕せざるを得なくなるから来ないよう」警告していたことが分かり、同大統領はロシア国外には出られない缶詰状態になっているようだ。

「プーチン逮捕を警告」記事を掲載した「モスクワ・タイムズ」

ロシアの日刊紙「モスクワ・タイムズ」電子版は29日「アルメニア与党、ハーグからの令状でプーチン逮捕を警告」という見出しの記事をアルメニア国民議会のカギク・メルコニアン副議長の大きな写真とともに掲載した。

それによると、同副議長は地元メディアとのインタビューで「もしプーチンがアルメニアへ来れば彼は逮捕されなければならない」と語ったという。

アルメニアは昨年12月に国際刑事裁判所(ICC)への加入のための批准法案をまとめICC入りを目指しており、加入すればICCから逮捕状が出ているプーチン大統領がアルメニアが拘束する義務を負うことになる。

「もし我々がICCに加盟すれば、その義務を果たさなければならないことになる。ロシアの問題はウクライナと解決すればよい」

メルコニアン副議長はこうとも語っている。

同盟国もロシアの侵攻に疑問?

アルメニアは旧ソ連の構成国の一つ。現在もロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)の加盟国で国内にロシア軍の基地もある。ロシアの軍事同盟国であるわけだが、隣国アゼルバイジャンとの抗争をめぐって戦争犯罪を追及する目的でICCへの加盟に踏み切ったとされる。

一方プーチン大統領は、ウクライナ侵攻でウクライナの子供たちを不法に拉致した戦争犯罪で国際刑事裁判所(ICC)から3月17日逮捕状が出されたが、米国や中国はICCに加盟しておらず主に西欧の123の加盟国を避けて通れば逮捕は免れるので実質的な拘束力はないだろうという見方が有力だった。

しかし、アルメニアはロシアが再三警告したにも関わらずICC加盟を強行したわけで、プーチン大統領自身の威信を損ねることになっただけでなく、大統領の行動範囲を著しく制限することにもなった。

さらにアルメニアの決断はロシアの同盟国の間で、今回のウクライナ侵攻をめぐって疑問が生じていることを物語っていると注目されている。

気になる南アフリカの対応

今のところ、アイルランド、クロアチア、オーストリア、ドイツなどがプーチン大統領が入国すれば直ちにICCの逮捕状を執行することを公言しているが、今注目されるのが南アフリカだ。

南アフリカでは8月後半にBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興経済5大国)首脳会談がダーウィンで開催が予定されている。プーチン大統領は2013年の第6回会議以来参加しており、今回は特にウクライナ侵攻問題が主要議題になると考えられるので出席を希望しているはずだ。

しかし南アフリカはICCの加盟国であり、ICCの逮捕状対象者が入国すれば身柄の拘束に協力する義務が生じる。このため、南アフリカ政府は専門家に対応策を検討させているが今のところプーチン大統領に出席を断念させる以外に手立てはないようだ。

プーチン大統領がロシアに心情的に近い指導者とのこの会議さえも出席できないとなると、その打撃は計り知れない。

形式だけと思われていたICCの逮捕状は、プーチン大統領を国内に缶詰状態にしてその権威を失墜させるという意味では大きな役割を果たしているようだ。 

【私の論評】過去には、スペイン、台湾も中国高官に逮捕状を出し、台湾では実際に拘束された事例も(゚д゚)!

プーチンの逮捕は、ICC加盟国に行けば現実にあり得ることですが、実はこれと似たようなことは以前もありました。それについてはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国、チベット問題に異常な怯え 江沢民氏への逮捕状に過剰反応―【私の論評】中国高官が実際に台湾で逮捕されたこともあるし、中国5人の要人はずっと前から告発されていた!日本でも告訴せよ!これが馬鹿につける最高の良薬かもしれない(゚д゚)!
この記事は、2013年11月22日のものです。詳細は、粉の記事をご覧いただくものとして。この記事の元記事より一部を引用します。
スペインの裁判所がチベット族の虐殺に関与した疑いで、中国の江沢民元国家主席(87)ら元幹部5人に出した逮捕状が波紋を呼んでいる。中国政府はかつての国家元首に下された異例のジャッジに「強烈な不満と断固たる反対を表明する」と猛反発。ヒステリックな反応をみせる背景には「世界的な支持を得ているチベット独立運動への強い警戒感がある」(専門家)という。今後、世界中で中国共産党の横暴を告発する動きが広がる可能性もあり、不穏な空気が漂っている。

中国の最高権力者が「お尋ね者」になった。
スペインの国家裁判所に、ジェノサイドと拷問の罪で刑事告訴された江沢民・元国家主席を含む5人の中共高官
スペインの全国管区裁判所から逮捕状が出されたのは、江氏のほかに胡錦濤前主席(70)や李鵬元首相(85)ら5人。2006年、スペイン国籍を持つ亡命チベット人とともに同国の人権団体が、1980~90年代にチベット族に対して「ジェノサイド(大虐殺)や拷問などが行われた」として、当時の党指導部の責任を追及する訴えを起こしていた。

告発は、なぜ遠く離れた欧州の地で行われたのか。「スペインでは、人道に対する罪に関しては国外の事件であっても同国の裁判所に管轄権がある。98年にはチリで独裁体制を築いたピノチェト元大統領に、今回と同様に逮捕状が出され、スペイン側の要請で英国で身柄が勾留されたこともある」(外交筋)

ただ、法的拘束力は、スペインと犯罪人引き渡し条約を結ぶ国に限定されるため、実際に江氏らが逮捕される事態は考えにくい。

それでも、習近平国家主席体制下の中国はこの決定に敏感に反応し、裁判を起こしたチベット独立勢力を激しく非難。スペイン側の対応を「関係を損ねるようなことをしないよう」と強く牽制した。

2021年9月現在、スペインは世界約100カ国と犯罪人引き渡し条約を結んでいます。つまり、これらの国のいずれかで犯罪に問われた人がスペインに逃亡した場合、スペイン当局は一定の条件のもと、その国に引き渡しをして裁判を受けさせることができます。

その逆に、スペインがこれらの国に犯罪人引渡しを求め、スペイン国内で裁判を受けさせることもできます。100カ国にものぼるわけですから、これは結構厳しいともいえます。

さらに、習近平等の中国の幹部が訪米すると逮捕されるのではないかという懸念を抱いていたことが、あのwikileaksに掲載されていたことも明らかになっています。これもこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

<Wikileaks公電流出>習近平次期主席、「訪米で恐れるのは、法輪功に刑事告訴されること」―【私の論評】Wilileaksなどによる暴露などたいしたことではないが、日本でも、中国要人は全員告訴せよ!!

 この記事より一部を引用します。

習近平氏による「自分を含めて中国の高官らが訪米で最も恐れているのは、法輪功学習者に刑事告訴されることだ」という発言に関しても、さほど驚くようなことでもないし、Wikileaksで外電として出さなくても、中国に関する日本の報道のみでなくて、海外に目を通している人ならば、何を今更という程度のものです。

 2013年2月13日から17日まで中国の習近平国家副主席(当時)は、米国での正式訪問を無事終え、「私は自信を持って自らの訪米が大成功だったと言える」 との言葉を残して満足げに米国を去ったとされています。

同年秋に次期国家主席として中国の新リーダーとなった習副主席の訪米は、胡錦濤国家主席の副主席時代の訪米とは、全く異なる印象を米国民に与え、さらに、昨年の胡錦濤国家主席の訪米とも異なる様相を見せ、中国の対米外交が対等を前提とした新たな段階に入ったと言っていいだろとされていたのですが、この時習近平は逮捕されるかもしれないという疑念を拭いきれずに、訪問したようです。しかし、逮捕はされませんでした。

このときに本当に逮捕して、裁判などしていれば、良かったかもしれません。

なぜ、習近平がこのような懸念を抱くようになったかといえば、台湾では実際に中国高官が逮捕、拘束されたという事件があったからです。それについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

【日本で報道されない激レアニュース】台湾訪問中の中共高官2人、相次ぎ刑事告訴される―【私の論評】及び腰日本はなぜこのようなことをしないのか?
これは、2010年9月20日の記事です。この記事より、一部を引用します。
中国宗教事務局の王作安・局長は、先週15日に台湾を訪問した際、台湾法輪大法学会に、法輪功への集団弾圧を陣頭指揮した罪で告訴された。前日の14日、台湾を訪問中の陝西省趙正永・代理省長が同団体に刑事告訴されたばかり。
王作安
台湾法輪大法学会は、台湾の高等裁判所の検察署にジェノサイドと民権公約違反の罪状で二人をそれぞれ刑事告訴し、身柄拘束を要求した。同検察署は訴状を受理した。

原告側弁護団の朱婉琪・弁護士は検察署に対し、被告人の法輪功弾圧を陣頭指揮した事実をそれぞれ陳述した。それによると、王作安・局長は国内では宗教界、教育界、メディアを通して、法輪功に犯罪の濡れ衣を着せて、悪魔に仕立てる詐欺宣伝を繰り広げ、国民に法輪功への怨恨感情を煽ぎたてたこと、国外では米国や他国との宗教交流活動を通して、同様な宣伝を行ってきたという。
実際に、これら中共高官2人は、拘束され取り調べを受けましたが、結局は解放されています。それでも、これは中国高官の権威を失墜させ、台湾に二度と来れないようできたという点では、一定効果があったものとみられます。

台湾の例も、スペインの例も国内法に基づくものですから、当該国や当該国と罪人引き渡し条約を結んでに赴かない限り、逮捕や拘束されることはないですが、それにしても、心理的負担はかなり大きなものだったでしょう。

習近平も初渡米では、かなり肝を冷やしていたのではないでしょうか。

今回のプーチンへの逮捕状は、ICCによるものですから、その効力は複数の国々に及びます。ローマ規定の締約国がそれにあたります。

国際刑事裁判所ローマ規程の締約国は、国際刑事裁判所ローマ規程(ローマ規程)を批准し、またはその他の方法により同規程に加盟した国家のことです。

  締約国   未批准の署名国   後に脱退した締約国   後に署名を撤回した署名国   非加盟国

ローマ規程は、締約国の国民によって、あるいは締約国の領域内で犯された、集団殺害犯罪や人道に対する犯罪、戦争犯罪を含む一定の国際犯罪について管轄権を有する国際裁判所である国際刑事裁判所(ICC)を設立するための条約です。

締約国は、同裁判所から要請された際には、訴追された者の逮捕および引渡しや、証拠や証人を利用できるようにするといった協力を行うことが、法的に義務づけられています。

締約国は、同裁判所の運営主体である締約国会議に参加し、議事において投票する権利を有しています。

かかる議事には、裁判官や検察官といった構成員の選挙、同裁判所の予算の承認およびローマ規程の改正条項の採択が含まれます。

日本をプーチンが訪問した場合、日本もプーチンを逮捕して、ICCに引き渡す義務を負うことになります。

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2023年4月2日日曜日

中国外相、半導体規制に反発 台湾問題「介入許さない」―【私の論評】林外相は日本人男性の早期解放を要求し、それが見込めない場合訪問を取りやめるという選択肢もあった(゚д゚)!

中国外相、半導体規制に反発 台湾問題「介入許さない」

中国の秦剛国務委員兼外相(右)と会談する林外相=2日、北京の釣魚台迎賓館

 中国外務省によると、中国の秦剛(しんごう)国務委員兼外相は2日、林芳正外相との会談で、米国が主導する対中半導体規制を念頭に「封鎖は、中国の自立自強の決意をさらに呼び起こすだけだ」と述べ、日本に米国と連携しないよう求めた。

 秦氏は「日本はG7(先進7カ国)のメンバーであり、加えてアジアの一員でもある。会議の基調と方向性を正しく導き、地域の平和と安定に有益なことをすべきだ」と呼び掛けた。G7議長国を務める日本にクギを刺した。

 秦氏は「矛盾や不一致に対し、徒党を組んで圧力を加えることは問題解決の助けにはならず、お互いの隔たりを深めるだけだ」と発言。米中対立を背景に、G7メンバー国などが対中圧力を深めていることを暗に批判した。

 秦氏は、台湾問題について「中国の核心的利益の核心だ」と改めて主張。台湾との台湾との連携を進めている日本に対し、「台湾問題への介入は許されず、どのような形であれ中国の主権を損なってはならない」と警告した。

 日本政府が春以降の開始を見込む東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出については、秦氏は「人類の健康、安全にかかわる重大な問題で、日本は責任ある態度で処理すべきだ」と注文を付けた。

 日本の製薬大手・アステラス製薬の現地法人幹部男性の拘束については、「中国は法に照らして処理する」と主張した。また、秦氏は日本側に「実務協力を推進し、人文交流を増進することを望む」などと発言した。

 中国外務省によると、会談では日中韓協力や朝鮮半島情勢、国連安全保障理事会改革などについても意見交換を行った。

【私の論評】林外相は日本人男性の早期解放を要求し、それが見込めない場合訪問を取りやめるという選択肢もあった(゚д゚)!

中国を訪問中の林芳正外相は2日、秦剛政治局員(外交担当)と会談し、アステラス製薬の社員が拘束されたことに抗議し、早期解放を強く求めるとともに、日本周辺で中国の軍事活動が活発化していることについて懸念を伝えました。一方、首脳レベルをはじめ韓国を含めた3カ国の協議の枠組みを再開することで一致しました。


林外相と泰剛泰剛中国共産党中央外事工作委員会弁公室主任が対面で向かい合うのは初です。ただし、林氏は会談後、記者団に対し「邦人拘束について抗議し、早期の開放を含む日本の厳正な立場を強く申し入れた」とした上で、「中国において当面予見可能な公平なビジネス環境が確保されること、安全面とともに正当な経済活動が保証されることを強く求める」と伝えたことを明らかにしました。

秦剛主任は法律に基づいて対処すると強調したのは、ようはゼロ回答です。これに対して林外相は「安全面とともに正当な経済活動が保証されない限り、日本企業の中国進出には安全が保障できないと、日本政府として警告する」等というべきでした。
中国当局は先月、日本人男性をスパイ活動に関与した疑いがあるとして拘束。アステラス製薬の広報は、同社の社員だと明らかにしている。共同通信によると、中国では2015年以降、これ以外に少なくとも16人の日本人がスパイ活動の疑いで拘束されています。

日本の外相が訪中するのは3年3カ月ぶり。このあと中国共産党の最高指導部の1人、李強首相とも会談しました。

以前もこのブログで語ったことがありますが、中国と日本とでは、政治体制や組織が異なるので、日本の序列の感覚からいうと、中央外事工作委員会弁公室主任の秦剛氏を外相とするのは間違いです。それは、中国共産党の組織図を見ればすぐわかります。この組織図は古いです。この組織図では、楊潔篪の後釜に秦剛氏がなったということです。


外務省の部長クラスとみるのが正しいです。現在の王毅氏は、政治局員であり次官クラスとみるのが正しいでと思われます。ただ、これが正しいかどうかは、意見が分かれるところだと思います。そもそも、中国では外交はあまり重視されていないようで、日本でいう外交を担当する外務大臣のような閣僚のポストはありません。

中国には選挙が存在せず、その意味では日本でいうところの政治家は存在せず、官僚ばかりと言っても良いような体制で、日本とはあまりに違いすぎるので、日本の閣僚と中国共産党のポストは単純には比較できませんが、日本の閣僚(内閣府大臣など除く)に相当するのは、中国では俗にチャイナセブンと呼ばれる、党常務委員会に属する7人のメンバーといえるでしょう。

このメンバーの中には、外交を専門とする人はいません。それだけ、中国は外交を重視していないということです。

日本のマスコミがなぜ、外交担当中央委員を外相とするのか、全く意味不明です。それに、人民大会を「日本の国会にあたる」などと報道する報道機関もありますが、これも全く間違いです。

選挙がなく、よって選挙で選ばれだ国会議員も存在しない中国に「国会」などありようもありません。中国人民大会は、日本でいえば、官僚の集会にすぎません。一応合議制のようにみせかけていますが、常務委員や常務委員の指示に従って政治局員などが決めた事柄を、追認する機関にすぎません。

首相李強氏は、さすがに日本でいっても少なくとも閣僚以上には相当するので、中国側としても、日本の閣僚としての林外相に、秦剛政治局員だけを面談させるわけにもいかず、李強氏と政治局委員の王毅氏も面談という運びになったのでしょう。

今回の林氏の訪中は、昨年11月の岸田文雄首相と習近平国家主席による日中首脳会談で合意したハイレベル往来の再開に基づくものです。

日中双方の政府関係者によると、中国側はいったん昨年12月27~28日の日程を打診したのですが、中国国内で新型コロナ感染が急拡大したことや、日本側が求めた習氏との面会に中国側が難色を示したことなどから先延ばしにされていました。

林氏と習氏の面会について、日本政府関係者は「中国外相の訪日時には首相が会ってきた。習氏個人への権力集中が進む中、直接対話の機会を確保したい意味もある」と理由を語りました。

これに対し、中国外交筋は「国家元首である習氏と日本の外相では格が違いすぎる。中国側も首相が対応してきた」と反論しました。

こうした状況を受けて、日本側は2月に離任した孔鉉佑・前駐日大使の岸田首相へのあいさつを拒否。双方の思惑がすれ違う展開が続いていました。

今回も林氏と習氏の面会は見送られ、中国側は李強(リーチアン)首相が面会に応じました。それでも日本側が訪中に踏み切ったのは、3月下旬にアステラス製薬の男性社員が拘束されたことが大きいです。

社員が拘束されたのは3月20日ごろとみられます。中国外務省は「刑法と反スパイ法違反の疑いで拘束した」と認めていますが、具体的な容疑事実は明らかにしていません。中国でスパイを取り締まる国家安全省は今後、正式な逮捕や起訴に踏み切る可能性が高いです。そのため日本側は外交を通じた早期の問題解決へ動いた形です。

過去には、2019年9月に刑法と反スパイ法違反で北京で拘束された北海道大学教授が、約2カ月後に解放された事例もあります。当時、中国外務省は「教授が容疑を認め、反省の意思を表明する手続きに応じたことから保釈した」と説明しましたが、中国外交筋は「翌年に習氏の国賓訪日が予定される中で、日本の対中感情悪化を回避するための政治判断でした。最後は習氏が決めた」と認めました。

2019年、拘束の日本人が解放されたことを発表した菅官房長官(当時)

以上を勘案すると、林外相の今回の訪中は、プラスマイナス・ゼロか若干のマイナスというところでしょうか。こうなることは、分かりきっていました。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は2月3日、中国の偵察用気球とみられるものが米本土の機密施設の上空を飛行しているのが確認されたことについて、「容認できない無責任な」行為だと述べました。さらにブリンケン氏は翌週に予定していた中国訪問を急遽取りやめた。

林外相は今回は、アステラス製薬の男性社員の解放を強く要求して、早期解放が見込めない場合には、訪問を取りやめるという選択肢もありました。ただし、早期解放の折衝などは、外務省が継続的に行うなどのこともできたはずです。そのほうが、中国に対する牽制になったと思われます。

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2023年4月1日土曜日

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日本の解き方


 ロシアのプーチン大統領が、隣国でウクライナにも接するベラルーシに戦術核を配備する方針を表明した。実際に使用する恐れは高まるのか。

 表向きの口実は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコが、米国との核共有という考え方で、核兵器を配備していることと同じだとしている。NATOの核共有と同様に、ロシアやベラルーシが加入する核拡散防止条約(NPT)にも反しないとしている。

 1994年のブダペスト覚書では、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンがNPTに加盟したことで、米国、英国、ロシアがこの3カ国の安全を保障するとした。その結果、3カ国の核兵器はロシアに移転した。

 ところが、ロシアはこれを踏みにじってウクライナに侵攻し、核で脅した。それでも足りずに、今後はベラルーシに核を戻して(形式的には核はロシアのもの)、ロシアとベラルーシの両国でウクライナを脅すというおぞましい光景になっている。

 NPTに反しないというロシアの言い分は怪しい。NATOの核共有では保有国の軍の管理が必須だが、ベラルーシがどこまで管理できるのか疑問だ。

 それだけではない。ロシアを訪問した中国の習近平国家主席とプーチン大統領は21日、モスクワで首脳会談終了後、共同声明を発表した。その中の第7項に、すべての核保有国は「核兵器を自国領土の外に配備すべきではないし、外国に配備された核兵器は撤収しなければならない」とある。

 1年前、プーチン大統領は、北京冬季五輪の開会式に出席したが、五輪直後にウクライナ侵攻をした。これで中国のメンツは傷つけられたはずだが、またしても中露共同声明後、わずか1週間でそれをほごとするようなことをプーチン大統領は行った。はたして中国はどのような対応をするのだろうか。

 ここは冷静に考えてみよう。ロシアによるベラルーシへの戦術核配備といっても、配備しなくても、ロシアは自国内から発射できるので、戦力バランスを大きく変更するものではない。

 ロシアはウクライナに手を焼いているようなので、ベラルーシを使って恫喝(どうかつ)しているように見える。ベラルーシとしても、ロシアの手下のままでは居心地がいいはずはない。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は、配備されればベラルーシに新たな制裁を科す可能性に言及した。この方向は正しい選択だ。

 さらに、中国に対して、メンツを失ったままでいいのかという圧力をかけるべきだ。例えば、中露首脳会談で提示された「和平」は「ニセの和平」であることが、岸田文雄首相のウクライナ訪問で世界に明らかになったので、日本としてもその点をついて「ホンモノの和平」であるロシアの即時撤退をさらに強力に主張するのがいい。中露共同声明を1週間でほごにするプーチン大統領が評価するような「和平」ではダメだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】岸田首相、G7広島サミットで「真の和平」を訴え、外交で成果をあげるとともに政敵を葬るか(゚д゚)!

中国というと、現在林外務大臣が訪れています。林外務大臣が、上の記事で高橋洋一氏が語っているように「ホンモノの和平」であるロシアの即時撤退をさらに強力に主張できれば良いのですが、それには疑問符がつきます。

日本では以下のような報道がなされています。
 中国政府は、林外務大臣が来月1日から2日間の日程で中国を訪問すると正式に発表しました。

中国外務省は31日、「秦剛外相の招きに応じて日本の林外務大臣が来月1日から2日の日程で中国を訪問する」と発表しました。

 秦剛外相との会談については、「両国の関係に加え、ともに関心を持つ国際問題や地域問題について深く意見交換する」と説明しました。

 また、外相会談とは別に林大臣が「中国の指導者」と面会することも明らかにしていて、外交トップの王毅氏などと会う可能性があります。

ただ、この報道はかなり誤解を招きやすいです。そもそも、泰剛氏は日本でいうところの外相ではありません。外相といえば、日本では閣僚であり、外交トップです。

 泰剛氏は、第12代外交部長ではありますが、中国において外交部長はそもそも幹部ではありません。日本でいえば、外務省の部長といっても良いほどの位置づけです。

中国で幹部といえば、中国共産党中央政治局常務委員会の7人のメンバーです。王毅氏も現在外交トップではありますが、この7人のメンバーには入っていません。現状では、序列24位です。

この7人の誰かと林外務大臣が会談できれば、中国は林氏を重要視しているとみても差し支えないと考えられますが、秦剛氏との会談だけであれば、全く重要視されていないとみて良いでしょう。

王毅氏と会談できても、中国は林氏を重要視はしていないとみて良いです。

中国共産党が重要視をしていない林氏が、幹部でもない秦剛氏、王毅氏に対して「ホンモノの和平」を主張してみたところで、それはほとんど意味を持ちません。

林芳正外相は秦剛国務委員と会談し、東・南シナ海での中国の軍事的覇権拡大への懸念を伝えるとともに、中国当局に拘束された大手製薬会社「アステラス製薬」の中国現地法人幹部の早期解放を求める方針のようです。日本政府は、外相の訪中直前、先端半導体分野の23品目について、輸出規制強化策を公表しました。中国の「名指し」は避けましたが、これは明らかに米国と事実上歩調を合わせた対中牽制です。

「中国とは多くの課題や懸案がある。主張すべきは主張し、建設的かつ安定的な日中関係構築に向け、突っ込んだ意見交換をする」

林氏は3月31日の記者会見で、こう語りました。

秦氏とは2日に会談する予定で、中国外交担当トップ(日本閣僚クラスではない)の王毅共産党政治局員との会談も調整しています。3月に就任した李強首相に、日本の閣僚として初めて面会するかも焦点です。

中国で拘束されたアステラス製薬幹部の早期解放を要求するほか、ロシアのウクライナ侵攻をめぐって責任ある行動を求める。沖縄県・尖閣諸島を含む、東シナ海情勢も議論する見通しです。

「政界屈指の親中派」とされる林氏だけに、中国が仕掛ける「罠」を警戒する声があるなか、経産省は3月31日、「半導体装置の輸出管理強化」を発表しました。

もし、林外務大臣が李強首相と会談できれば、中国は林外務大臣を重要視しており、日本の中国に対する牽制なども、林外務大臣を通じて、中国に伝わる可能性もあります。ただ、その可能性は低いようです。

なぜなら、日本はすでに、習近平訪露中の岸田首相キーウ電撃訪問で、日中関係は構造変化を起こし、もとに戻る可能性はかなり低くなっているからです。

岸田文雄首相は27日午前の参院本会議で林芳正外相の訪中について「中国側から改めて招待があったところであり、引き続き具体的な時期を調整する」と述べました。日中関係については「主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ねる」とした上で「共通の課題は協力する、建設的で安定的な関係を構築する」と強調しました。

岸田首相は、習近平訪露中のキーウ電撃訪問でも「ホンモノの和平」を主張しましたが、「ホンモノの和平」であるロシアの即時撤退をさらに強力に主張するでしょう。そうして、その晴れ舞台は広島G7サミットになることでしょう。

これによって、林外務大臣の訪中など、すっかり霞むことになります。これによって、岸田首相による外交の成果は頂点に達し、林外務大臣の位打ちは、最終段階を迎えることになります。

ちなみに、岸田首相による林外務大臣の位打ちについては、以前このブログで述べたことがあります。
G7サミット・広島開催、中露に忠告する絶好の場所 日清戦争の「軍事拠点」「臨時首都」岸田首相、スピーチすれば歴史に残る!?―【私の論評】岸田首相は、令和の後白河法皇になるか(゚д゚)!


この記事は、3月5日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
林氏と岸田氏同じ出身派閥(宏池会)であり、岸田氏は総理大臣になってからも、この派閥を抜けていません。岸田氏も林氏も宏池会の中では、有力な政治家であり、岸田氏としては、林氏を入閣させて、側においておくことで、派閥内での勢力拡大を抑止しているものとみられます。これも、一つの「策士」ぶりの発露なのだと思います。
これは、林氏への「位打ち」といえると思います。最近岸田首相は、この位打ちさらなる策士ぶりを発揮しています。それは、林外務大臣に対する位打ちともみられるやり方です。
位打ちとは、昔から日本で用いられてきた手法で、時の権力者が、敵対する新興勢力を自滅させるために、その人物にふさわしくない位階を次々と与えることによって、人格的な平衡感覚を失わせ、自滅させていく手法です。
 この「位打ち」の使い手として有名なのが平安時代末期の後白河法皇で、その対象となった代表格は、平清盛であり源義経です。
天子摂関御影』より「後白河院」藤原為信 画

 

岸田首相は、林外務大臣がG20に出席しないことを決めたときには、本来尻を叩いてでも無理にでもいかせるべきだったと思われるのですが、意図的にそうはしなかったのでしょう。これによって、林外相の評判は、自民党内外で地に落ちました。もし、岸田首相が何をさておいても行くべきだと諭していれば、林外務大臣はG20に出席したと思われます。

岸田首相は、この直後に習近平が訪露中に、キーウを電撃訪問しました。一方林外務大臣はこのときに、クック諸島を訪問していました。この一連の出来事で、中露首脳会談は霞んだとともに、国内では林外務大臣の外交も霞んでしまいました。

もともと、林外務大臣は保守派議員からは親中派として嫌われていましたが、一連の出来事で、他の議員からも外務大臣としての能力も本格的に疑問視されるようになったと思います。

今回の林大臣中国訪問は、もし本人が辞退すれば、岸田首相もそれを追認したと思います。この時期にそのような判断ができれば、外務大臣として位負けしていなかったという評価もされたかもしれません。

しかし、あくまで親中派の林外務大臣は、中国を訪問することを決定し、岸田首相はそれを追認したのでしょう。

まさに、ここが林芳正氏に対する岸田首相の位打ちが、功を奏する所以ともいえます。現状では、林氏が中国を訪問したとしても、成果があげられる見込みはほとんどありません。

それどころか、中国の方から無理難題を押し付けられ、マイナスになることも十分予想されます。

一方、岸田首相は林外務大臣が、中国を訪問しても、成果はプラスマイナス0もしくは、若干のマイナスになるだろうと見込んでいると思います。

たとえ若干のマイナスになったとしても、G7広島サミットで、それは十分に取り返せると見込んでいるのだと思います。

中国に対して、ここぞとばかり、G7の国々も巻き込んで、メンツを失ったままでいいのかという圧力をかけ「ホンモノの和平」であるロシアの即時撤退をさらに強力に主張するに違いありません。

これで、岸田首相は林芳正氏への位打ちの最終ステージに一気に近づき、これによって、林氏の総理大臣の芽は積まれてしまうことでしょう。一方、岸田首相はG7における外交で、支持率をあげ、さらに国際的な評価も高めることに成功するでしょう。

場合よっては、この勢いに乗って、解散総選挙をするかもしれません。そうなったとして、林氏への位打ちについては、選挙後の組閣でどうなったか見えてくるでしょう。

そもそも、入閣しなければ、林氏は宏池会の中でも、力を失ったとみるべきです。外務大臣ではないものの、何らかの形で入閣すれば、外務大臣としてはその能力が疑われることになっても、まだ宏池会の中での勢力は衰えていないとみるべきでしょう。そうして、岸田首相の林氏への位打ちは継続されるとみるべきでしょう。

以上からもおわかりいただけると思いますが、岸田氏は一般に思われている以上に、策士の面があります。物腰の柔らかさなどから、「お公家様」とも揶揄されていた岸田氏ですが、後白河法皇のように、武力のなかった公家には公家の戦い方がありました。岸田氏には、岸田氏なりの戦い方があるのです。そうして、極端なことや法に触れることがなければ、政治においてはどのような戦い方も許容されるべきと思います。

岸田氏が、財務省が岸田政権の安定長期化に障害になると気がつけば、林芳正氏に対する位打ちのような、誰も思いつかないような妙策で緊縮財政や増税に走る財務省の力を削ぐ挙にでるかもしれません。

しかし林芳正氏への位打ちを兼ねた岸田首相の一連の外交は、それだけが主目的ではなかったものの、安倍元首相の逝去にともないう日本の外交の停滞のおそれを見事に払拭させてくれました。これは、日本にとって良いことです。

同じく、もし岸田総理が自らの政権の安定長期化を目指すために、財務省の力を削ぐ挙にでれば、それも日本にとって良いことです。

ただ、一つ忘れてはならないのは、権謀術数だけで、他のことを顧みなければ足元をすくわれ場合もあるということです。


とくに、国民経済は重要です。経済その中で特に雇用が悪くなれば、国民の不満は一気に高まります。第一次安倍政権以降、民主党政権も含めてすべての政権短期政権になったのは、まともな経済対策が打てずに、雇用や経済が悪くなったからです、それを正した、特に雇用を劇的に改善した、第二次安倍政権が第一次、第二次通算で、憲政史上最長の政権になったことを忘れるべきではありません。

それを忘れれば、岸田首相も足元をすくわれることになるでしょう。

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2023年3月31日金曜日

多くのナゾ残し「捜査終結」安倍元首相の暗殺事件 山上被告を追起訴も…消えた銃弾、遺体の所見に食い違い、動機など不可解な点―【私の論評】岸田首相は、政府主導で委員会を設置し安倍元首相暗殺事件の検証・報告にあたらせるべき(゚д゚)!

多くのナゾ残し「捜査終結」安倍元首相の暗殺事件 山上被告を追起訴も…消えた銃弾、遺体の所見に食い違い、動機など不可解な点

事件直前、奈良市で街頭演説する自民党の安倍晋三元首相。右奥は山上徹也容疑者=昨年7月8日午前

安倍晋三元首相暗殺事件で、奈良地検は30日、山上徹也被告(42)=殺人罪などで起訴=を建造物損壊のほか、銃刀法、武器等製造法、火薬類取締法の各違反の罪で追起訴した。一連の捜査は、発生から8カ月超を経て終結したというが、事件にはまだ、多くの謎が残っている。来年以降の初公判とみられる裁判で事実関係がどう認定されるのか。


安倍氏は昨年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の応援演説中、山上被告に手製のパイプ銃で銃撃されて死亡した。

奈良地検は、約半年間の鑑定留置の結果、山上被告の刑事責任を問えると判断し、今年1月、殺人と銃刀法違反の罪で起訴していた。

山上哲也被告

事件の謎の1つは、「消えた銃弾」だ。

安倍氏には銃弾2発が当たったが、致命傷を与えた1発が行方不明なのだ。「事実関係の立証に支障はない」(奈良県警)とするが、重要な物証が消えたことは確かだ。

「遺体の所見」にも食い違いがある。

安倍氏が緊急搬送された奈良県立医科大学付属病院は、直後の記者会見で、死因は失血死とみられると説明した。弾は首から入り心臓や胸の大血管を損傷、左肩にも、弾が貫通したとみられる傷が1つあったという。

これに対し、県警は司法解剖の結果、死因は左上腕部を撃たれて動脈を損傷したことによる失血死だと発表しているのだ。

このほか、「動機」や「背景」「第三者の関与」「手製銃の威力」など不可解な点は多々ある。裁判員裁判で、検察側が提出する証拠をもとに、どのような事実認定がされるのか注目される。

【私の論評】岸田首相は、政府主導で委員会を設置し安倍元首相暗殺事件の検証・報告にあたらせるべき(゚д゚)!

安倍元首相暗殺事件は、日本にとって未曾有の大事件であり、国民の不安や衝撃は非常に大きいです。警察の捜査に加えて、政府主導で事件の検証・報告が必要かどうかは、検討すべき問題です。

ケネディ暗殺事件のときには米国では当時リンドン・ジョンソン大統領によってウォーレン委員会が設置され、その背景や事情が異なるため、単純に比較することはできません。ただし、過去において政府主導で事件の検証・報告が行われた例もあります。例えば、1995年に発生したオウム真理教の一連の事件について、政府は「オウム真理教事件等に係る内閣調査委員会」を設置して、事件の検証・報告を行いました。

下は、1964年9月24日ウォーレン委員会報告書をジョンソン大統領に提出する委員たちのものです。左から右へ ジョン・ジェイ・マックロイ 、 ジェイ・リー・ランキン、 リチャード・ラッセル、 ジェラルド・フォード、委員長アール・ウォーレン、 大統領リンドン・ジョンソン、 アレン・ダレス, ジョン・シャーマン・クーパー, ヘイル・ボッグス。


ウォーレン委員会は、独自調査として延べ552人の証人喚問を行い、やがて1964年9月に全文約296,000語、全888ページに全26巻(20000ページ以上)、委員会文書1553の膨大な関連資料が付いた報告書がまとめられました。そして 1964年9月24日に調査の結果を報告書(Warren Commission report)としてジョンソン大統領へ提出され、その3日後に一般公開されました。

報告書の結論

1.ケネディ大統領を殺害し、コナリー知事を負傷させた銃弾(複数)は、テキサス教科書倉庫の南東角にある6階の窓から発射されたものである。

2.ケネディ大統領は、最初に首の後ろから入って首の前の下の部分から出た弾丸に撃たれたが、必ずしも致命傷にはならなかっただろう。 大統領は、頭の右後部に当たった2発目の弾丸で、致命的な大怪我を負った。

3.コナリー知事は、背中の右側から入った弾丸が胸の右側を通り、右の乳首の下から出て、右手首に当たった。この弾丸はその後、彼の右手首を通り、左大腿部に入り、表面的な傷を負わせた。

4.発砲がトリプル地下道や、車列の前方から、又はその他の場所から行われたという信頼できる証拠はない。

5.証拠の重みからみて、発砲は3発であった。

6.どの発砲がコナリー知事に命中したかを決定することは、委員会の本質的調査には必要ではないが、大統領の喉を貫いたのと同じ弾丸がコナリー知事の傷の原因となったことを示す、専門家の非常に説得力のある証拠が存在する。しかし、コナリー知事の証言やその他の要因によって、この可能性については意見が分かれている。しかし、委員会のどのメンバーにとっても、大統領とコナリー知事の傷の原因となったすべての銃弾がテキサス教科書倉庫の6階の窓から発射されたことは疑いのないことである。

7.ケネディ大統領を殺害し、コナリー知事を負傷させた銃弾(複数)はリー・ハーヴェイ・オズワルドによって発射されたものである。

8.オズワルドは、暗殺の約45分後にダラス警察のJ.D.ティピット巡査を殺害した。

9.ジャック・ルビーは1963年11月24日午前11時17分過ぎにダラス警察署の地下に入り、午前11時21分にリー・ハーヴェイ・オズワルドを殺害した。ルビーの侵入手段に関する証拠は決定的ではないが、証拠の重みから、ルビーはメイン通りから警察署の地下に通じるスロープを歩いたと考えられる。ルビーがオズワルド殺害に際してダラス警察の職員に助けられたのではないかという噂を支持する証拠はない。
10.委員会は、リー・ハーヴェイ・オズワルドまたはジャック・ルビーのいずれもが、ケネディ大統領を暗殺するための国内外の何らかの陰謀に加わっていたという証拠を発見していない。 
11.委員会の全調査において、連邦、州、地方のいかなる役人による、米国政府に対する陰謀、転覆、背信の証拠も見つかっていない。

12.委員会は、オズワルドの動機について決定的な判断を下すことはできなかった。 
13.委員会は、今回の調査で明らかになった事実によって、大統領警護の改善を勧告せざるを得ないと考えている。

ただ、この結論には今なお多くの米国民が納得しておらず、未だケネディ暗殺に関しては、様々ななところで議論されている状況です。最近でも、SNSなどで活発に議論されています。 

ケネディ大統領は1963年11月22日、テキサス州ダラスを訪問中に狙撃された

安倍元首相暗殺事件についても、政府主導での事件の検証・報告が必要かどうかは、慎重に検討する必要があるでしょう。政府主導での検証・報告には、警察や検察などとは異なる視点から事件を見ることができるというメリットがあります。一方で、政府主導での検証・報告が、事件の真相を隠蔽する可能性や、事件を政治利用する可能性があるというリスクもあります。

安倍元首相暗殺事件について、政府主導での検証・報告が必要かどうかは、今後の裁判などの状況を踏まえながら、慎重に判断する必要があると言えます。

ただ、上の記事でも指摘されたようなたとえば「消えた弾丸の行方」「遺体の所見」の食い違いなど初歩的ともいえるような疑問点は、少なくとも払拭すべきでしょう。できれば、裁判に明らかにすべきです。しかし、これすら明らかにならなければ、政府主導で、米国のように委員会を構成し、検証・報告させるべきです。

政府主導で事件の検証・報告を行う場合、以下の留意点が考慮されるべきです。

1.独立性の確保:政府主導での検証・報告が、事件の真相を隠蔽したり、政治的利用がなされることを防ぐために、独立した調査委員会を設置する必要があります。調査委員会のメンバーは、事件に関係のない第三者や専門家で構成されることが望ましいです。

2.透明性の確保:調査委員会の報告書は、公開されることが望ましいです。また、報告書作成のプロセスも公開されることで、報告書の信頼性が高まります。

3.時限の設定:調査委員会には、期限が設定され、その期限内に報告書を作成する必要があります。期限を守ることで、無限に検証・報告が続くことを防ぎます。

4.資金の確保:調査委員会には、必要な資金を充当することが必要です。資金不足が原因で、調査・報告が不十分なものになってしまうことを防ぐために、十分な予算を確保する必要があります。

ケネディ暗殺事件のように、事件の真相が解明されない場合には、調査委員会は、不十分な点を明確にし、後の調査方針や検証方法を示す必要があります。さらに、調査委員会の報告書には、真相解明に向けた新たな情報提供を呼びかけることで、事件の解明に向けた展開を期待することができます。

私自身は、裁判の結果などにかかわらず、国民の不安や疑問を払拭するためにも、岸田政権は委員会を設置し、この問題の解明にあたらせるべきと思います。

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2023年3月30日木曜日

英のTPP加盟、31日にも合意 発足11カ国以外で初―【私の論評】岸田首相は、TPPの拡大とそのルールをWTOのルールにすることで、世界でリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

英のTPP加盟、31日にも合意 発足11カ国以外で初

2018年3月8日、日本やカナダを含む11カ国は、環太平洋連携協定(TPP)に修正を加えた「包括的および先進的環太平洋連携協定(CPTPP)」に署名した

 環太平洋連携協定(TPP)に参加する日本など11カ国が31日にもオンライン形式で閣僚会合を開き、英国の加盟に大筋合意する見通しであることが分かった。複数の日本政府関係者が29日、明らかにした。発足時のメンバー以外では初となる。年内に、各国の閣僚がルールや新規加盟を議論する最高意思決定機関「TPP委員会」で正式に承認する見込みだ。


 TPPは、関税撤廃や知的財産などの統一的ルールにより自由貿易を推進する枠組み。今後は、英国と同様に加盟申請している中国や台湾の扱いが焦点となる。

 中国がアジア太平洋地域で影響力を拡大し、ルールの順守にも懸念があることから、日本は中国の加盟に慎重な立場を取っている。中国は台湾の加盟に反対している。一方、日本は英参加を足掛かりに、トランプ政権時代に離脱した米国の復帰に向けて機運を高めたい考えだ。

 英国は2021年2月にTPPへの加盟を正式に申請し、中国と台湾のほかウルグアイなどが続いた。英国の審査はこうした国々に対しての試金石となるため、加盟国が慎重に協議していた。

【私の論評】岸田首相は、TPPの拡大とそのルールをWTOのルールにすることで世界でリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

TPPは、域内の関税撤廃・削減や投資の共通ルール策定などを行う協定。最終的な関税撤廃率は95~100%と高いうえ、知的財産の保護など広い範囲をカバー。例えばデジタル分野でソフトウエアの「ソースコード(設計図)」の開示を求めることを禁止し、巨大ITなど多国籍企業の活動への進出先の政府の介入を防ぐ内容を含みます。

日中韓豪や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する自由貿易圏「地域的な包括的経済連携(RCEP)」の関税撤廃率が平均91%にとどまるのに比べ、「TPPは通商・投資ルールとしての水準が高い」(経産省筋)です。

TPPはもともと、シンガポールやニュージーランドなど4か国の協定をベースに交渉国を拡大し、日米豪、カナダ、マレーシアなどアジア太平洋地域の12か国で15年10月に合意した。しかし、米トランプ政権が「米国第一」を掲げて17年1月に離脱したため、18年末に11か国の「TPP11」として発効しました。

現在のTPP加盟国

英国が加われば、TPP加盟国の国内総生産(GDP)が世界のGDPに占める比率は現状の13%から16%超に高まります。

規模拡大効果は限定的ですが、欧州からの参加は高いレベルの国際貿易・投資ルールを、アジア太平洋を越えて広げる第一歩であり、日本としては、トランプ政権時代に世界的に後退した自由貿易の機運を再び盛り上げるきっかけとなります。さらに、米国の復帰に向けた呼び水にもなる可能性があります。

英国にとっては、欧州連合(EU)から2020年末に完全に離脱し、EU外と自由に通商交渉できるようになったばかりで、21年1月に発効した日英包括的経済連携協定(EPA)とともに、EU離脱のメリットを国民に分かりやすく示す目玉政策となります。

同時に、中国をにらんだ思惑も指摘されます。

そもそも、TPPは米オバマ政権時代、日米を中心に、高い自由化を掲げ、計画経済、統制経済が色濃く残る中国を牽制することも狙って合意した経緯がある。

関税引き下げや、外国企業の活動への介入の規制など高い目標を中国に突き付けることで、中国が受け入れれば中国の経済改革を進められるし、受け入れなければASEANなど他のアジア諸国との関係で中国に対して日米が優位に立てる――という狙いだった。

ところが、その後、状況は一変しました。2国間協議による「取引」を重視したトランプ政権がTPPを離脱し、後を継いだバイデン政権も、「自由貿易で国内の雇用が奪われた」という声が国内で根強いことから、TPP復帰には当面、消極的です。

他方、米国の混乱のスキを突くように、中国が動きました。20年11月、習近平主席がTPPへの参加を「積極的に考える」と表明しました。中国がにわかにTPPの厳しい条件を受け入れるのはこんなんですが、米国の方針が定まる前に手を挙げ、加入交渉で有利な条件を引き出したいとの思惑との見方が一般的です。

そのほか、韓国、台湾、タイも参加に関心を示すなど、英国の加入申請を含め、動きがあわただしくなっていました。

中国など1か国のためにTPPのルールを変えることは、ありえず、資本の自由な移動が制限されている中国は現在のままだと加入できる見込みは全くありません。

一方台湾については、TPPに加入することについて反対する国はありません。呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)は昨年11月21日、台湾の環太平洋経済連携協定(TPP)加入を推進する過程で、公開または非公開の場で台湾を支持しないと表明した国は「今のところない」と明らかにしました。立法院(国会)外交・国防委員会での答弁。

呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)

台湾のTPP加入申請を巡り、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席したオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相が同年同月18日、台湾のTPP加入を支持するか取材陣に聞かれ、「承認された国家しかTPPに加入できない」と発言。これを受け、野党や無所属の立法委員(国会議員)から関心が寄せられました。

最大野党・国民党の温玉霞立法委員から、台湾のTPP加入に対して支持を表明した国の数について聞かれた呉氏は、具体的な数字は挙げられないとしつつ、今のところ、ほぼ全ての参加国が台湾との非正式協議に応じていると説明。当初は台湾のことを理解していなかった国や台湾の加入に比較的冷ややかな態度を示していた国も、台湾側の努力によって支持する姿勢を見せるようになったとしました。

呉氏は、台湾の加入審査が進められるのは、英国の加入審査が完了した後になるとの見方を示しました。

外交部(外務省)は同年同月18日、アルバニージー氏の発言の直後にオーストラリア政府から「台湾のTPP加入に対する立場に変更はなく、台湾を含め、TPPの高いレベルを満たす全てのエコノミーの加入を歓迎する」との弁明を受けたことを明らかにしていました。

台湾がTPPに加盟することで日本と世界には、以下のようなメリットがあります。

まずは台湾市場の拡大です。台湾のTPP加盟によって、TPP加盟国との間で関税が撤廃され、自由貿易が促進されることで、日本企業や世界の企業が台湾市場にアクセスしやすくなります。

また、台湾のTPP加盟によって、日本と台湾の企業間で技術的な相乗効果が期待できます。両国の企業が協力し、製品開発や生産技術の向上に取り組むことで、世界の製造業にとってもプラスの影響を与えることができます。特に、半導体の分野では、それが期待できます。

以前このブログでも指摘したように、米国が中国に対して懸念していることの全てはTPP協定がカバーしています。これは、当然米国も理解しているでしょう。だから、TPPから脱退したトランプも、良い条件が得られるならという留保を付けたにせよ、TPPに復帰してもよいという発言をしたのでしょう。

英国、台湾に続き、タイ、インドネシア、コロンビア等を加入させてTPPが拡大し、また、米国がTPPに復帰して来るなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。

最悪、米国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。

TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国もあからさまに反対できないでしょう。

この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに随分前から倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

TPP協定発効記念式典で各国の関係者と談笑する安倍晋三首相(中央右 当時)と茂木敏充経済再生担当相(同左)

安倍元総理は、米国が加入しなくてもTPPを発効させることに成功しました。しかし、安倍元首相には、この方面で積み残したことがたくさんあります。

TPPの参加国を増やして、拡大すること。TPPの規定をWTO、すなわち世界の貿易ルールにすることなどです。私は、故安倍元総理は、この両方が成就することを望んていたと思います。

岸田政権は、こうした安倍政権の積み残しを実現して、世界でリーダーシップを発揮していただきたいです。


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