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2023年3月19日日曜日

プーチン氏の威信失墜 カギ握る国際社会の協力―【私の論評】今回の「子供連れ去り」の件での逮捕状は国内法でいえば別件逮捕のようなもの、本命は"武力行使そのもの"の判断(゚д゚)!

プーチン氏の威信失墜 カギ握る国際社会の協力


 国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は17日、ロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナからの子供連れ去りに責任があるとして、戦争犯罪容疑で逮捕状を出した。国連安全保障理事会の常任理事国の元首にICCが逮捕状を出すのは初めて。身柄拘束は困難とされるが、ウクライナ侵略を巡る戦犯容疑者として扱われることで、国際社会でプーチン氏の威信は失墜し、孤立が強まる可能性がある。

 ICCの発表によると、プーチン氏は指導者としてウクライナ占領地からの住民連れ去りに加担し、部下の犯罪を止めなかった責任などを問われた。戦時の文民保護を定めたジュネーブ諸条約は、住民の違法な移送や追放を禁じている。

 ICCのカーン主任検察官は、少なくとも子供数百人が孤児院や施設から連れ去られ、多くはロシア国籍を押し付けられて養子に出された疑いがあるとした。ICCは養子縁組を進めたリボワベロワ露大統領全権代表の逮捕状も出した。同代表は子供の権利問題を担当している。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は逮捕状発行について、「歴史的な決定だ」と歓迎。バイデン米大統領は17日、記者団に「正しいことだと思う」と支持を表明した。米国はICC非加盟だが、カーン氏らの捜査に協力する姿勢を示してきた。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は「ロシアの責任を追及する過程の始まり」とした。

 一方、ロシアは猛反発した。ペスコフ大統領報道官は「言語道断で容認できない」と逮捕状発行を批判。ロシアはICC非加盟であり、ザハロワ外務省報道官も逮捕状は「法的に無効。ロシアは(身柄拘束の)義務を負わない」とした。

 ICCが現職の国家最高指導者に逮捕状を出したのはプーチン氏で3人目。他の最高指導者2人の裁判はいずれも実現していない。

 ICCはこれまでアフリカのコンゴ民主共和国(旧ザイール)の国内武力紛争を巡り、政府当局が身柄を引き渡した武装勢力指導者を裁くなどしてきた。だが、ロシアが今回、プーチン氏を引き渡すことは望めず、重要となってくるのは国際社会の協力となる。

 ICCの加盟国は容疑者の逮捕や身柄引き渡しで協力義務を負う。ICCは拘束を強要することはできず、過去にはICCに逮捕状を出されたスーダンの大統領が周辺国などを外遊していた事例もある。ICCのホフマンスキ所長はこのため、「逮捕状の執行は国際社会の協力にかかっている」と訴えた。

 プーチン氏が訪問したICC加盟国が協力するかは見通せない。ただ、拘束される可能性がある以上、ICC加盟国への外遊に慎重にならざるを得なくなることも想定される。国際司法が戦犯としての責任追及の姿勢を明確にしたことで、「各国の指導者はプーチン氏との握手や会談を熟慮する」(ウクライナのコスチン検事総長)との効果を期待する声も出ている。


 国際刑事裁判所 ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略罪を犯した個人を訴追、処罰する常設の国際刑事裁判機関。2003年にオランダ・ハーグに設置された。日本を含む123カ国・地域が加盟。国連安全保障理事会の5常任理事国のうち、米国、ロシア、中国は加盟していない。

 ICCは各国の国内刑事・司法制度を「補完」するもの。関係国が被疑者を捜査・訴追する能力や意思がない場合に管轄権が認められる。管轄権を行使するためには、犯罪行為が行われた国または被疑者の国籍国が加盟国であるか、管轄権を認めていることが必要。ウクライナは非加盟だが、管轄権を受け入れている。

【私の論評】今回の「子供連れ去り」の件での逮捕状は国内法でいえば別件逮捕のようなもの、本命は"武力行使そのもの"の判断(゚д゚)!

上の記事では、「子供連れ去りの責任」について述べられていますが、そもそも、侵略戦争に関してはどうなのでしょうか。それについては、以前このブログで述べています。その記事のリンクを以下に掲載します。
ロシア軍「ジェノサイド」確実 耳切り取り歯を抜かれ…子供にも拷問か 西側諸国による制裁長期化 「ロシアはICCで裁かれる」識者―【私の論評】プーチンとロシアの戦争犯罪は、裁かれてしかるべき(゚д゚)!

この記事は、昨年4月4日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を引用します。特に、他国への侵攻ということになれば、国際法に関係してくるので、その部分を中心に引用します。
際社会は、プーチンを「露骨に国際法を破った無法者」と非難しています。国際法とは、法律のように誰かに強制される法ではありません。国際社会の合意として成立している慣習です。この慣習は掟でもあり、従えない国は文明国として扱われないのが普通です。

国際法には、大きく二種類あります。一つがユスアドベルム(戦争のための法)、戦いの正当性に関する掟です。もう一つがユスインベロ(戦争における法)、戦い方の正当性に関する掟です。
ユスアドベルムには、以下の5つの条件があります。
  1. 正しい理由(攻撃に対する防衛・攻撃者に対する処罰・攻撃者によって不正に奪われた財産の回復)の存在
  2. 正統な政治的権威による戦争の発動
  3. 正統な意図や目的の存在
  4. 最後の手段としての軍事力の行使
  5. 達成すべき目的や除去すべき悪との釣り合い
ユスインベロには、以下に条件があります
  1. 戦闘員と非戦闘員の区別(差別原則)
  2. 戦争手段と目標との釣り合い(釣り合い原則=不必要な暴力の禁止)
テレビ、特にワイドショーなどでは、このあたりを曖昧にして論議をしていて、結果として米国批判、ロシア擁護のようになっている論調が見受けられることには驚くことがあります。

国際法ついては、詳細は以下の記事をご覧下さい。非常にわかりやす行く解説されています。
敵基地攻撃の装備を検討 脅威高まり「専守防衛」拡大
プーチンはユスアドベルムとユスインベロの双方に違反しています。

さらに、この記事から一部を引用します。

ユスアドベルム(戦争のための法)において、その戦いの正当性が証明されなかった場合は、単なる違法です。負ければ、国が領土や賠償金を払って償わなければならないです。逆にユスインベロ(戦争における法)を犯した者は、戦争犯罪人として牢屋行きです。

スロボダン・ミロシェビッチやサダム・フセインは容疑の証明が曖昧だったにもかかわらず、牢屋に送られて死にました。 日本人はプーチンを甘やかしてきましたが、奴は日本とって味方でも何でもないことを認識すべきでしょう。
ウクライナの占領地から子供を連れ去るなどは、明らかに「ユス・イン・ベロ」に違反する行為です。これは誰がみても理解しやすいです。

ICCとしては、まずは誰にでも理解出来る「子供連れ去り」に関しては、「戦争行為」違反ということで、逮捕状を出したのでしょう。これによって、仮に逮捕できたとしたら、余罪として「武力行使そのもの合法性」へ侵犯の疑いでも裁く意図があるのでしょう。

国際法は、国内法とは違いまずか、これは国内法でいえば「別件逮捕」のようなものです。

上の記事で、ICC加盟国の協力が不可欠ということが言われおり、いますぐ、あるいは戦争が終了した段階で、すぐにプーチンを拘束して裁判というわけにはいきませんが、今回逮捕状が出されたことにより、その道は開けたといえます。

プーチン氏への逮捕状について、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は17日夜のビデオ演説で、「歴史的な決定だ。テロ国家の指導者らが公式に戦争犯罪の容疑者となった」と述べました。これは、武力行使そのものに関する裁判への道がひらけたことに対する発言であると考えられます。

ウクライナ政府の集計によると、ロシアによる1万6226人の子供の強制移送が確認され、このうちウクライナに戻ったのは308人だけとなっています。ゼレンスキー氏は「最高指導者の指示なしに、このような犯罪行為は不可能だ」と指摘しました。

米国のバイデン大統領は17日、記者団に対し「妥当だ。とても力強い指摘だと思う」と述べました。

一方、タス通信は、ロシアの大統領報道官が「言語道断で容認できない」と激しく反発したと伝えました。


プーチン大統領は先月16日、子どもの権利担当相ベロワ氏との会談で、「ドネツク州やヘルソン州などで現地の住民から子どもの養子縁組の申請が増えている」と述べ、ロシア国内への移送の正当性を強調しました。ただ、これはロシア側の一方的な主張であって、ウクライナ側にしてみれば、連れ去られたとの主張になるのは当然です。ロシア側の独善的な態度が、この戦争の実態を表しています。

中露北等はいまでも、「必要とあらば人を殺しても構わない」という価値観を有している国です、このような国と我が国のような「人を殺してはならない」という価値観の国とは理解し合えるはずもありません。日本は同じ価値観の国々と生きるしかないのです。

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2023年3月17日金曜日

バイドゥの「中国版ChatGPT」は期待外れ、株価10%急落―【私の論評】社会変革は二の次で、技術革新を追いかける中国は、今後経済成長できない(゚д゚)!

 バイドゥの「中国版ChatGPT」は期待外れ、株価10%急落

ロビン・リー(李彦宏)、2018年5月26日

中国のビリオネアであるロビン・リー(李彦宏)が率いる検索大手バイドゥは3月16日、ChatGPTの競合となることを目指す、独自のチャットボットの「Ernie Bot(アーニーボット)」を公開した。

バイドゥの北京本社で開催されたイベントで、54歳のリーはErnie Botの機能を説明した。しかし、この発表はライブデモではなく、あらかじめ用意されたさまざまなタスクをこなすボットの映像が流されただけだった。

そのため、参加者がその場でErnie Botと対話する機会はなかったが、バイドゥはこのサービスを16日から一部のユーザー向けに提供すると述べている。投資家はこの発表に感銘を受けなかった模様で、バイドゥの香港上場株は午後の取引で10%急落した後、6.4%安で日中の取引を終えた。

「当社のボットはまだ完璧とはいえないが、市場の需要を見た結果、リリースを決定した」とリーは語った。

香港のEverbright Securitiesの証券ストラテジストのKenny Ngによると、バイドゥがChatGPTを意識したプロダクトに取り組んでいることが最初に報じられたときに、市場の期待は非常に高く株価も上昇したという。2月のアナリスト向け電話会議でリーは、Ernie Botが検索エンジンだけでなく、動画サービスのiQiyi(愛奇芸)など、バイドゥのさまざまなサービスに徐々に統合されていくと述べていた。

近年は市場の影響力においてライバルに遅れをとっているバイドゥは、人工知能(AI)領域に注力して事業の多様化を図り、活力を取り戻そうとしている。同社の昨年第4四半期の売上高は予想を上回る48億ドル(約6400億円)を記録したが、売上の半分以上はオンラインマーケティングによるものだった。中国の経済成長が鈍化するなか、テンセントやTikTokの親会社のバイトダンスは、ブランドを自社のプラットフォームに誘致しようとしており、この分野の競争は激化している。

中国のチャットボットの限界

バイドゥはプレスリリースで、Ernie Botがビジネス文書や中国語の理解などの分野で優れていると述べている。同社のボットは、OpenAIが初期モデルのChatGPTをさらに進化させたChatGPT-4を発表したわずか2日後に発表された。マイクロソフトの支援を受けたOpenAIは、最新版のボットの安全性を高め、誤解を招いたり不適切と判断されるような回答をしないようにトレーニングしたと述べている。

しかし、中国ではChatGPTが利用できず、バイドゥやテンセント、アリババなどの大手がこぞってChatGPTを模倣したプロダクトを開発している。

リーは、Ernie Botのサービスの法的側面には触れなかったが、中国発のチャットボットは、デリケートな話題を避け、厳しい国内ルールに準拠することが求められる。ウォール・ストリート・ジャーナルが最近実施した調査によると、中国のチャットボットの多くは、すでに中国の指導者についての質問に答えることを拒否している。

【私の論評】社会変革は二の次で、技術革新のみを追いかける中国は、今後経済成長できない(゚д゚)!

このブログでは、以前ChatGPTの話題も掲載したことがあります。そうして、その中で中国のAIには限界があることを指摘しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国ソーシャルメディアがChatGPTをブロック、プロパガンダ拡散を警戒―【私の論評】技術革新だけで社会変革にAIを使えない中国社会はますます時代遅れとなり、経済発展もしない(゚д゚)!

中国ChatGPTに類似のChatYuanの画面 クリックすると拡大します

詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事より一部を引用します。
会話型AIが人間の友達になるか、うっとおしいセールスマンになるか、支配のツールになるか、全てはこれから決まっていくでしょう。ただ、西側諸国においては、これらのことは、一定の基準が設けられ、極端なことにはならないような仕組みが構築されるでしょう

ただ、中国のような国では、AIを監視システムに用いたりするという先例もありますから、技術的なもの等には利用していくかもしれませんが、社会に関するものには利用しないでしょう。

なぜなら、現在の中国は中国は遅れた社会のままであり、これを改革するためには、まずは何をさておいても、中国の現体制を変えなれければならないからです。それは、中国共産党の終焉を意味し、中共は絶対にそのようなことをしないでしょうから、中国社会は遅れたままになるでしょう。そうなると今後経済発展も期待できません。

以上、chatGPTは中国にとって、諸刃の剣であることを述べてきました。しかし、chatGPTだけが、中国にとって諸刃の剣というわけではありません。実はAIそのものが、諸刃の剣になり得ます。

たとえば、中国では監視カメラをAIで運用して、特定の個人を特定するシステムなども大々的に構築され、運用されていますが、これも諸刃の剣です。ただchatGPTのように、すぐに自分たちに危険が及ぶ可能性を認知しにくいだけです。

たとえば、このAI監視システムが反乱分子に乗っ取られたらどうなるでしょう。そこまでいかなくても、AI監視システムを運用できる人物が、その情報を反乱分子に伝えるようなことがあったらどうなるでしょうか。

この記事でも述べましたが、経営学の大家ドラッカー氏は、イノベーションとは技術革新ではなく、社会を変えるものでなければならない、社会を変えるものでなけば、それはイノベーションとは呼べないとしています。

その意味では、中国のいわゆるイノベーションと呼ばれているものは、すべてが、技術革新ということができるでしょう。

そうして、その技術革新の目的は、社会などどうでもよく、中国共産党の幹部とその走狗が、経済的に豊になることと、中国の全体主義体制を維持することです。中国社会などどうでも良いのです。


2021年、米国のGDPは23兆ドル、中国は17.7兆ドルでした。 1人当たりGDPは米国が6.94万ドル、中国が1.25万ドルで、総額でも米国が中国を上回り、1人当たりでも米国が中国の6倍近くになっています。

ただ、中国政府の出すGDP等の統計は、ほとんど出鱈目だといわれており、本当はもっと低いとも言われています。

それは、無視して、この数字が正しいものとしても、中国の一人あたりのGDPは米国の1/6程度に過ぎないのです。

なぜこのようなことになるかといえば、米国においては様々な社会問題があることは事実ですが、それにしても、真の意味でのイノベーションが実行され、社会が少しずつであっても良くってきたし、これからも良くなり続けるからでしょう。

米国においては、中国と比較すれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などが進んでおり、それが多数の中間層を生み出し、それが活発に社会経済活動を行い、イノベーションを実施し、その結果として経済も発展してきたのです。

米国においては、あらゆる地域、あらゆる階層においてイノベーションがなされた結果、今日のような繁栄をみるようになったのです。無論、問題も多々ありますが、それでも多くの人は社会を良くすること、良くなるを前提として、日々生活しています。

これが時には行き過ぎて、社会に分断を招いたりしていますが、それでも中国と比較すれば、社会は日々進歩しています。これは、多かれ少なかれ、我が国の含めた自由主義陣営の国々に当てはまることです。だからこそ、米国に限らず、一人あたりのGDPでは多くの先進国が中国よりも、高いのです。ちなみに、中東欧諸国や台湾や韓国も中国よりは一人あたりのGDPは高いです。

ちなみに、日本は過去には金融政策を、過去も現在も財政政策を間違い続けており、そのため過去ほとんどGDPが伸びず、賃金も30年間も伸びませんでしたが、それでも一人あたりGDPでは中国よりは遥かに上です。

一方中国では、先程の述べたように、イノベーションはなされず、技術革新のみが行われ、一部の人間を経済的に豊にすることだけに注力し、社会はなおざりされたままです。中国の技術革新は、中共が掛け声をかけ、資金を投じて、一部の人間を経済的に豊にするだけで、社会はそのままです。そのため、中国では信じられないような拝金主義が横行しています。

それは、日本などの先進国でもある程度はありますが、程度問題であり、中国ほど酷くはありません。

ChatGPTのようなAIは、イノベーションによって社会変革をする環境が整っている、国や地域で、利用されて初めて真価を発揮するものと思います。中国のような、技術革新だけしようというところでは、真価は発揮し得ないでしょう。

中国のネット上では、「中国のAIは米国のAIよりも賢いに違いない。なぜなら私たちはAIに、話す方法だけでなく、話さない方法も教えなければならないからだ」と皮肉を言う人もいます。

確かに、言論の自由のない社会で、賢く、対話に長けたAIが生まれるとは想像がつかないです。

科学技術の発展によって、独裁国家の政治制度、少なくとも言論が自由を獲得する日が来る、と考えている人はいるかもしれないです。しかし、過去の中国はそうではありませんでした。


長い間、科学技術は誰にとっても公平で中立であると考えられてきました。確かに民主主義国家も、独裁国家も、技術があればミサイルやコンピューターなどを同じように生産できます。

しかし、科学技術が社会を良くすることに使われるのか、そうではないかで社会は随分違ってきたのです。科学技術でイノベーションを実現するか、そうではないかで、社会は随分異なるものになります。特に、イノベーションは二の次で、技術革新のみを追いかける中国は、過去には経済成長できましたが、今後は成長できないでしょう。

チャットGPTのような自由な対話形式のAIが普及し始めたことで、この当たり前のことがも多くの人認識されるようになるでしょう。

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2023年3月7日火曜日

対中「先制降伏」論の何が危険か―【私の論評】日本が対中「先制降伏」すれば、米国は日本に対して大規模な焦土作戦を実行する(゚д゚)!

対中「先制降伏」論の何が危険か

国旗掲揚式で中国国旗を掲げる子供たち=香港で2021年10月1日

【まとめ】

・日本には中国に攻められたら「先制降伏」するのが正解との趣旨を公言する評論家や「学者」がいる。

・中国に無抵抗降伏した途端、アメリカは瞬時にして「最凶の敵」に転ずる。

・「先制降伏」すれば、占領中国軍による暴虐と、アメリカによる攻撃の両方に晒されることになろう。


アメリカの次期大統領選に出馬を検討するマイク・ポンペオ前国務長官は、かつて米陸軍の戦車部隊長として東西ドイツ国境地帯で偵察任務に当たった経験を持つ。

その時期、常にレーガン大統領の言葉を肝に銘じていたという。

「アメリカが自由を失えば、どこにも逃げる場所はない。我々は最後の砦だ」

日本には、中国に攻められたら逃げればいい、無理に抵抗せず降伏するのが正解との趣旨を公言する評論家や「学者」がいるが、歴史およびアメリカを知らない発言という他ない。

例えばテレビコメンテーターの橋下徹氏は、ロシアの侵略に軍事的抵抗を続けるウクライナに関し、抵抗すれば死傷者が増えるだけだから「政治的妥結」(降伏と同義だろう)をし、将来起こるかも知れない(と氏が仮定する)状況の好転に期待すべきだと、在日ウクライナ人研究者らに繰り返し説諭してきた。

これは、尖閣諸島への領土的野心を隠さない中国共産党政権(以下中共)の習近平総書記に対して、暗に「少なくとも僕はテレビを通じて、一切抵抗するなと、日本国民の説得に当たります」とメッセージを送っているに等しい。

中共は常に日本世論の動向を注視している。プーチン氏同様、独裁病の進行が懸念される習近平氏が、大手地上波放送局に頻繁に登場する橋下氏らの影響力を過大評価し、無謀な軍事行動に出るといった展開もあり得ないわけではない。

しかし橋下氏の勧めに反して、自衛隊はもちろん多くの国民は戦いや抵抗を選ぶから、日本はウクライナのような状況に陥るだろう(専守防衛を改めない限り、本土が戦場にならざるを得ない)。

トップに遵法精神も人権感覚もない国の軍隊は、占領地で歯止めなき暴行略奪集団と化す。現に、非武装のウクライナ人商店主らを背後から射殺し、略奪、乾杯に及ぶロシア兵たちの姿が監視カメラに捉えられている。

橋下氏は次のようにも述べている。

《軍事的合理性に基づく撤退は当然あり得る。問題は一般市民をどうするかだ。ロシア軍はウクライナ市民を虐殺するので戦うしかないと言っていたのなら一般市民を置き去りにする撤退はあり得ない》(2022年5月28日付ツイート)

当初は、降伏すればロシア占領下で平穏に暮らせるとのシナリオを提示していたはずだが、ロシア軍の残虐行為が次々明らかになるにつれ、ウクライナ軍は市民を全員引き連れてどこかに撤退し、町を無人の状態でロシア軍に引き渡せとの立場に変わったらしい。

中国軍日本侵攻の場合に置き換えれば、自衛隊は一般市民を先導していち早く僻地まで撤退せよ、あるいは海外に逃避せよ、との主張になろう。無傷のまま明け渡された家屋は中国兵が利用し、やがては一般の中国人が住むことになる。

要するに、中共に攻撃を逡巡させるような抵抗や反撃の態勢(すなわち抑止力)を日本は放棄し、中国の植民地になる運命を甘受せよというのが橋下論法の行き着く先となる。

こうした議論は、「アメリカの怖さ」を理解していない点でも致命的である。今でこそ同盟国だが、日本が中国に無抵抗降伏した途端、アメリカは瞬時にして「最凶の敵」に転ずるだろう。

東アジアにおいて、地理的位置、経済力の点で戦略的に最重要の日本が、中国軍の基地およびハイテク拠点として使われるのを座視するほどアメリカはのんき者ではない。

戦わずに手を挙げれば平穏無事どころか、占領中国軍による暴虐と、アメリカによる攻撃の両方に晒されることになろう。歴史はそうした事例に満ちている。

例えば第二次世界大戦初期の1940年7月3日、イギリス海軍が、直前まで同盟国ながらドイツに降伏したフランスの艦隊に総攻撃を加えた。地中海に面した仏領アルジェリアの湾に停泊していた船舶群だった。

その2週間前、フランスはナチスのパリ無血入城を許していた。そのためイギリスは、陸軍力、空軍力に比し海軍力が弱かったドイツが、フランス艦隊を組み込むことで一挙に海においても強敵となり、軍事バランスが決定的に崩れかねないと懸念した。そこでまず、艦船の引き渡しをフランス海軍に要求したが拒否されたため、殲滅作戦に出たわけである。

この間、フランス海軍のダーラン司令官は、ドイツ軍の傘下には決して入らないと力説したが、英側の容れるところとはならなかった。

結局、イギリス軍の爆撃によって、フランス側は、艦船多数を失うと共に、1297人の死者を出した。

アメリカも、戦略的に最重要の横須賀海軍基地(巨大空母が入港できるドックがある)をはじめ、日本にある軍事施設や戦略インフラを相当程度破壊してから去るだろう。

アメリカに甘え、アメリカを知らない「先制降伏」論は、日本を、かつて「中東のパリ」と言われるほど栄えながら、その後、戦乱とテロで荒廃の地と化したレバノンの東洋版へと導くだろう。

【私の論評】日本が対中「先制降伏」すれば、米国は日本に対して大規模な焦土作戦を実行する(゚д゚)!

米国による第二次世界大戦後における日本の占領は世界史上稀にみるほど、穏当なものでした。無論、問題がなかったかといえば、そのようなことはなく、極東裁判そのものには問題があり、GHQによるプレスコードによる言論統制は今でも日本に悪影響を与えているなどの問題はあります。

しかし、戦前のソ連内におけるウクライナなどへの圧政、第二次世界大戦中のドイツによる東欧諸国の占領、戦後のソ連による東欧諸国の占領政策等の苛烈さから比較すれば、米国の日本占領政策は穏当なものでした。

このブログでは、当時ソ連に属していた、ウクライナに対する圧政について掲載したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。
橋下氏らの執拗な「降伏」「妥協」発言、なぜそれほど罪深いのか ウクライナへの“いたわりに欠ける”姿勢で大炎上!―【私の論評】自由と独立のために戦うウクライナ人など馬鹿げていると指摘するのは、無礼と無知の極み(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。ここでは、スターリンの圧政のもとで起こされた人為的飢餓により、年間400万から1000万人超が餓死させられた大飢饉(ホロドモール)に関してのみ引用します。
さて、ここではホロドモールについてさらに詳しく述べていこうと思います。

当時限られた農作物や食料も徴収された人々は、鳥や家畜、ペット、道端の雑草を食べて飢えをしのいでいました。それでも耐えられなくなり、遂には病死した馬や人の死体を掘り起こして食べ、チフスなどの疫病が蔓延したとされています。
ウクライナの飢餓を伝える当時の米国の新聞
極限状態が続き、時には、自分たちが食事にありつくため、そして子どもを飢えと悲惨な現状から救うために、我が子を殺して食べることもあったと言います。おそるべきディストピアです。

通りには力尽きて道に倒れた死体が放置され、町には死臭が漂っているという有様でした。当時は、飢饉や飢えという言葉を使うことも禁じられていたそうです。

飢饉によってウクライナでは人口の20%(国民の5人に1人)が餓死し、正確な犠牲者数は記録されてないものの、400万から1450万人以上が亡くなったと言われています。

また、600万人以上の出生が抑制されました。被害にあった領域はウクライナに限らず、カフカスやカザフスタン、ベラルーシ、シベリア西部、ヨーロッパ・ロシアのいくつかの地域にまで及んでいます。

ソ連では長きにわたってホロドモールの事実が隠蔽され、語られることはありませんでした。結局、ソ連政府がこの大飢饉を認めたのは1980年代になってからです。

この飢餓の主な原因は、凶作が生じていたにもかかわらず、ソ連政府が工業化推進に必要な外貨を獲得するために、農産物を飢餓輸出したことにあります。

このことからウクライナでは、ホロドモールはソ連による人為的かつ計画的な飢餓であり、ウクライナ人へのジェノサイド(大虐殺)とみなされています。

しかし、ソ連は飢饉の存在自体は認めたものの、被害を被ったのはウクライナ人だけではないとして、虐殺については否定しました。

ソ連は虐殺を否定したものの、これは同じような被害を被ったのはウクライナ人だけではないと語っていることから、当時のソ連領内の他の地域でもこれと同様なことがあったことを暗に認めているわけです。

工業化推進に必要な外貨を獲得するために、農産物を飢餓と引き換えに輸出したというのですから、酷い話です。

ソ連の悪行はこれにとどまりません。

旧ソ連時代の共産党による「犯罪」を正当化するプーチン氏 ロシアが再び中・東欧諸国を脅かし始めた今、日本も対峙すべき―【私の論評】日本はプーチンの価値観を絶対に受け入れられない(゚д゚)!

赤軍に捕虜にされたポーランド軍将兵 多くがカティンの森事件で殺害された

 これは、昨年2月23日の記事です。この記事では、ソ連の東欧に対する過去の圧政に対して掲載しました。江崎道朗氏の元記事からその部分のみを以下に引用します。

 第二次世界大戦後、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどの中・東欧諸国はソ連の影響下に組みこまれ、バルト三国は併合された。これらの国々は50年近く共産党と秘密警察による人権弾圧と貧困に苦しめられてきた。

 意外かもしれないが、そうした中・東欧の「悲劇」が広く知られるようになったのは、1991年にソ連邦が解体した後のことだ。日本でも戦後長らく、ソ連を始めとする共産主義体制は「労働者の楽園」であり、ソ連による人権弾圧の実態は隠蔽されてきた。

 ソ連解体後、ソ連の影響下から脱し、自由を取り戻した中・東欧諸国は、ソ連時代の人権弾圧の記録をコツコツと集めるだけでなく、戦争博物館などを建設して、積極的にその記録を公開するようになった。

 そこで、私は2017年から19年にかけて、バルト三国やチェコ、ハンガリー、オーストリア、ポーランドを訪れて、各国の戦争博物館を取材した。それらの博物館には、ソ連と各国の共産党によって、いかに占領・支配されたか、秘密警察によってどれほどの人が拷問され、殺されたのか、詳細に展示している。
リトアニア KGBジェノサイド博物館(江崎道朗氏撮影)
 旧ソ連時代の共産党一党独裁の全体主義がいかに危険であり、「自由と独立」を守るため全体主義の脅威に立ち向かわなければならない。中・東欧諸国は、このことを自国民に懸命に伝えようとしているわけだ。

 それは、ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアの指導者たちが再び、中・東欧諸国を脅かすようになってきているからだ。プーチン氏らは、旧ソ連時代の「犯罪」を「正当化」し、ウクライナを含む旧ソ連邦諸国を、再び自らの影響下に置こうとしている。

以下にこの記事の【私の論評】から一部を引用します。

ウイグルや香港など、中国共産党からみれば彼らの私有物なのです。助ける方法などありません。むしろ今の中国は他人の持ち物を奪おうとしているのです。

欧米と中露の根本的な違いは何でしょうか。「人を殺してはならない」との価値観が通じる国と通じない国です。日本は明らかに「人を殺してはならない」との価値観の国々と生きるしかありません。そうして、同盟の最低条件は「自分の身を自分で守る力があること」です。

国際社会では軍事力がなければ何も言えないのです。ようやく「防衛費GDP2%」が話題になりましたが、それで間に合うのでしょうか。 いきなり核武装しろとまでは言いませんが、国際社会での発言力は軍事力に比例します。金を出さなければ何もできないです。

 欧米でも、西欧人に対しては「人を殺してはならない」という価値観をはやくから持っていましたが、西欧人以外は事実上の適応除外的な扱いをし、植民地においては苛烈な圧政を強いるようなことを平気でしていました。

国際会議において人種差別撤廃を明確に主張した国は日本が世界で最初です。第一次世界大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会において、日本が主張した、「国際連盟規約」中に人種差別の撤廃を明記するべきという提案をしました。

ところが、この提案に当時のアメリカ合衆国大統領だったウッドロウ・ウィルソンは反対で事が重要なだけに全員一致で無ければ可決されないと言って否決しました。

その後第二次世界大戦を経て、戦後に多くの国々が独立して、今日では人種差別撤廃は民主主義国においては当然のこととされています。

しかしこれを未だに軽んじているのが、ソ連の承継国ともいえる現在のロシアです。その残虐性は今もウクライナで発揮されています。ロシアのミサイルは、民間人施設を徹底的に叩き、多くの町を廃墟にしています。戦闘以外での殺人、略奪、強姦などが行われていたことが、報道さています。

それは、ウクライナ人に対してだけではなく、自国民である予備役に対しても遺憾なく発揮されています。

イギリス国防省は5日、ウクライナ侵攻を続けるロシアの予備役が、弾薬不足のために「シャベル」を使って「接近戦」を行っている可能性が高いとの見方を示しています。督戦隊まがいのようなことをしているという報道もあります。

中国は、ウイグル、チベット、内モンゴル自治区などで、苛烈な圧政をしています。

中露北等はいまでも、「必要とあらば人を殺しても構わない」という価値観を有している国です、このような国と我が国のような「人を殺してはならない」という価値観の国とは理解し合えるはずもありません。日本は同じ価値観の国々と生きるしかないのです。

にもかかわらず、日本が中国に無条件降伏してしまえば、中国は日本の優れた技術力を我がものにして、それで様々な軍事品から民生品まで、日本人に安い賃金で製造させ自国内に輸入したり、海外に輸出したりで自国を豊にするとともに、日本を米国に対する防波堤にすることは確実です。それどころか、日本を米国に対峙するための前進基地するでしょう。

米国からみれば日本は、中国を制裁すべき国なのにそれどころか、中国に無条件降伏してしまえば、積極的に中国を助けることになります。これは、米国に対する著しい裏切りであり、敵対行為であり、国際法違反でもあります。それだけで厳しい制裁対象になります。それどころか、世界から爪弾きされます。

そんなことは最初から分かりきっていますから、そもそも、米国が日本から引きあげるということになれば、将来に敵なる日本、しかも強敵になりそうな日本をそのまま中国に引き渡すはずもなく、軍事施設、艦船、航空機、武器などは破壊できるだけ破壊しつくし、日本の原発、火力発電所などの大部分を破壊し、鉄道、空港、港湾主要インフラも破壊するでしょう。

物理的には破壊しないかもしれませんが、ハッキング等で、破壊して使えないようにすることは十分にあり得ます。

さらに、当然のことながら、金融システムなども破壊するでしょう。無論米国資産は、できるだけ、持ち帰るでしょう。知的財産なども破壊するでしょう。それどころか、優秀な技術者その他米国に大きく寄与するような有能な人たちは、米国に引き抜かれることになるでしょう。

しかし、怒りを顕にした米国は、日本の皇族等を受け入れないかもしれません。他の国に受け入れてもらい、細々と日本文化が継承されることになるかもしれません。

これは、いわゆる焦土作戦というものです。これは、戦争等において、防御側が、攻撃側に奪われる地域の利用価値のある建物・施設や食料を焼き払い、その地の生活に不可欠なインフラストラクチャーの利用価値をなくして攻撃側に利便性を残さない、つまり自国領土に侵攻する敵軍に食料・燃料の補給・休養等の現地調達を不可能とする戦術及び戦略の一種です。

米国はアフガニスタンからの撤退は失敗していますが、それでも現状のアフガンは国外からの支援は枯渇し、物価は急騰。現地通貨の価値は暴落し、アフガンが持つ94億ドルの準備金も米国に凍結されて引き出せません。そのため、タリバンは経済では八方塞がりになっています。日本が対中「先制降伏」となれば、米国にとっては、アフガン失うどころではなく、大きな損失であり、しかも事前にそれは余地できるでしょうから、当然焦土作戦をできるだけ実施することになるでしょう。

本当に米軍が立ち去ることになれば、焦土作戦はかなり大規模なものになることが予想されます。無論、民間人や自衛隊員等を積極的に殺すことはしないでしょうが、この焦土作戦に反対するものは、殺傷される可能性もあり得るでしょう。そのようなことになっても、日本は米国を裏切り、国際法違反をしているのですから、米国側にためらいはないでしょう。特に、米国民の多くも、これに積極的に反対する人は少ないでしょう。

さらに、日本の弱点を知り抜いた米国は、通商破壊まではしないでしょうが、あらゆる方法で通商妨害を行い、日本は、エネルギーや食糧などを海外から輸入する道を絶たれるかもしれません。中国から多くを輸入するようになり、日本人は中国なしでは、生活できなくなるでしょう。

米軍の焦土作戦でめぼしいもの何もなくなった日本に進駐してきた中国は、日本から富を得るどころか、多数の日本人を当面養わざるを得ないことになり、何もない日本に怒りを顕にして、日本人をウイグル人やチベット人らと同じように強制労働させることになるでしょう。

挙げ句の果に、中国は「計画的、組織的、統一的な政策」として「長期的に日本人の人口削減」を実行し、日本人を地上から消そうとするかもしれません。そうして、日本を中国の領土の一部にして、多くの中国人が日本に移住することになるでしょう。

「先制降伏」すれば、日本にはこのような悲惨な未来が訪れるのです。ウクライナも日本と異なる形であるものの悲惨な未来が待っていることが予想できたからこそ、ロシアに対して徹底抗戦しているのです。平和ボケ日本人は目を覚ますべきです。

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2023年2月2日木曜日

チェコ下院議長、3月末に台湾訪問へ 呉外交部長、協力の推進に意欲―【私の論評】チェコがとうとう挙国一致で、台湾を応援できる日がきた(゚д゚)!

チェコ下院議長、3月末に台湾訪問へ 呉外交部長、協力の推進に意欲


呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)は1日、チェコのマルケタ・ペカロワ・アダモワ下院議長とテレビ会談を行い、台湾とチェコの友好関係を確認した。外交部(外務省)によるとアダモワ氏は3月末に台湾を訪問する予定で、呉氏は歓迎の意を伝えたという。

外交部によれば、会談は約20分間行われ、国立故宮博物院とチェコ国立博物館との協力や産業面での連携、権威主義の脅威への対応など幅広い分野で意見交換した。呉氏はチェコが台湾と同じ価値観と理念を分かち合い、ウクライナを支持・支援していることに感謝を示し、台湾は今後も民主主義の価値を堅持するとした上で、チェコとの協力推進の継続に意欲を示した。

アダモワ氏は訪台について強い期待を表明した他、蔡英文(さいえいぶん)総統が先月30日、チェコ大統領選で当選したペトル・パベル元北大西洋条約機構(NATO)高官と電話会談したことに触れ、チェコの台湾に対する支持と民主主義陣営団結の力を際立たせたと強調。台湾との友好関係のさらなる推進と深化に期待を寄せ、ウクライナの戦後復興でも協力の機会などがあると信じると述べた。

【私の論評】チェコがとうとう挙国一致で、台湾を応援できる日がきた(゚д゚)!

上の記事にもあるように、チェコでは1月、現職のゼマン氏の任期満了に伴う大統領選挙が行われ、NATO=北大西洋条約機構の元高官のパベル氏が当選しました。

日本のメディアでは、この事実が淡々と報じられるだけで、この新大統領の登場が何を意味するのか、とりわけチェコと台湾に関係にとってどのような意味を持つのか報道されません。そのため、本日にこれに関して掲載します。

チェコ・台湾関係というと、コロナが猛威を振るっていた2020年8月にチェコは台湾に90人の代表団を送っています。これについては、このブログでもその内容を紹介したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
チェコ上院議長が台湾到着 90人の代表団、中国の反発必至―【私の論評】チェコは国をあげて「全体主義の防波堤」を目指すべき(゚д゚)!

   台湾北部の桃園国際空港に到着したチェコのビストルチル上院議長(中央)と
   出迎えた呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(右)=30日

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。

まずは、元記事から引用します。
 東欧チェコのビストルチル上院議長(ブログ管理人注:現在も現職)を団長とし、地方首長や企業家、メディア関係者ら約90人で構成される訪問団が30日、政府専用機で台湾に到着した。台湾と外交関係を持たないチェコが中国の反対を押し切り、準国家元首級の要人が率いる代表団を台湾に派遣したのは初めて。国際社会での存在感を高めたい台湾にとっては大きな外交上の勝利といえるが、中国が反発するのは必至だ。

 チェコ上院議長の訪台をめぐっては、ビストルチル氏の前任のクベラ氏が昨年に訪台を約束したが、中国大使館から脅迫され1月に急死した。ビストルチル氏は上院議長就任後、何度も「クベラ氏の遺志を引き継ぐ」と表明していた。
この記事の【私の論評】から引用します。

親中的な現職ゼマン大統領
チェコ側も2013年に親露的でもある、ゼマン氏が大統領に就任して以後、対中関係の強化を図ってきました。ゼマン氏は訪中を繰り返し、2015年に中国が戦争勝利70周年記念の軍事パレードを実施した際も、欧米諸国のほとんどが国家元首出席を見送る中、北京に赴いて、中国との親密ぶりをアピールしました。
簡単に言ってしまうと、元々はチェコ政府は、親中的だったのですが、中国に反対する勢力が増大し、2020年にはチェコの憲法で大統領に次ぐ地位とされる上院議長のビストルチル氏をはじめとするチェコの議員団が90人も台湾を訪問したわけです。

そうして、大統領が新台派のペトル氏に変わることが決まってから、今度は下院議長のアダモワ氏は3月末に台湾を訪問する意向を表明したのです。おそらく、20年当時のように、下院の議員団も訪問するのではないかと考えられます。

台湾総統府によりますと、パベル次期大統領と蔡総統が先月30日夜、電話会談を行いました。

蔡総統はパベル氏の当選を祝福したうえで「台湾は、半導体設計や先端科学技術の人材育成、世界的なサプライチェーンの再構築などの分野で、チェコと協力を深めたい」と述べたということです。

次期大統領ペトル・パベル元北大西洋条約機構(NATO)高官

パベル次期大統領は会談後、ツイッターに「台湾とチェコは自由と民主主義と人権の価値観を共有していることや、将来、蔡総統と対面する機会を持ちたいことを伝えた」と投稿しました。

チェコは中国と国交を結び、台湾とは外交関係がありません。

こうした国の次期大統領が台湾の総統と電話会談するのは異例です。

ヨーロッパでは、中国の人権問題に対する懸念や、当初期待したほどの投資効果が得られないことなどを理由に、中国と距離をとり、代わりに半導体など先端技術で存在感を増す台湾との関係を深める動きが出ています。EUでも西側の諸国では、はやくからそのような動きをしていましたが、チェコを含む東欧諸国が当初中国の一帯一路による投資を歓迎しましたが、ここ数年はこれに離反するようになりました。

大統領がペトル氏に変わることで、チェコは国をあげて台湾を応援する国になったといえます。2020年当時のこのブログで、私が主張した通りになったということで、本当に良かったです。

先日、このブログにも掲載したように、最近では中国の南太平洋における動きが活発になっています。

中国の台湾侵攻は、現実にはかなり難しいです。実際、最近米国でシミレーションシした結果では、中国の報復によって、日本と日本にある米軍基地などは甚大な被害を受けますが、それでも中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。そうして、無論中国海軍も壊滅的な打撃を受けることになります。

であれば、中国としては、台湾侵攻はいずれ実施するということで、まずは南アジアの島嶼国をなるべく味方に引き入れるという現実的な路線を歩もうとするでしょう。これによって台湾と断交する国をなるべく増やし、台湾を世界で孤立させるとともに、これら島嶼国のいずれかに、中国海軍基地を建設するなどして、この地域での覇権を拡大しようとするでしょう。

実は、中国はチェコも含む一帯一路による投資などで、東欧で似たよう動きをしていました。しかし、今では多くの国々が離反しています。

どうしてこのような動きになるかといえば、やはり経済に着目すべきと思います。特に一人あたりのGDPに着目すへきです。

上のグラフをご覧いただけると、2021年のチェコの一人あたりのGDPは2万ドル台です。これは、先進国から比較すれば、低いですが、それでも中国の1万2千ドルの倍以上です。

しかも、中国の経済統計はデタラメで、本当は1万ドル以下とみたほうが妥当です。このような国が、チェコなどに投資して成功する見込みはほとんどありません。

なぜなら、チェコ政府が中国の一帯一路などを当初歓迎したのは、それによって国民一人ひとりが豊になることを期待したのでしょうが、一人あたりGDPが低い中国には元々そのようなノウハウはありません。幹部とそれに連なる幹部が豊になるノウハウを持っているだけです。

チェコの一人あたりのGDPは2000年代頭までは、1万ドルを切っていましたが、現状では2万ドルを上回っています。1万ドルだった時代には、中国の投資は魅力的にみえたのでしょうが、自力で2万ドルを越してしまった後では、魅力も薄れたのでしょう。

それと第二次世界大戦前までは、チェコは議会制民主主義が機能しており、工業化も進んでおり、米国と並ぶくらい豊な国だったのが、英仏などが当時のナチス・ドイツに対して宥和政策を取ったがゆえに、ドイツに蹂躙され、占領され、戦後はソ連の衛星国となり、全体主義に翻弄された悲惨な経験があるということもあるでしょう。

一方、南太平洋の島嶼国は、未だ一人あたりのGDPが1万ドル以下の国が多く、中国の投資を魅力的に感じる国も多いことでしょう。東欧で一帯一路に失敗した中国は、ここしばらくは、軍事的にも重要な、南太平洋に注力することでしょう。

それにしても、今回チェコが挙国一致で、台湾を応援できる体制になったことは、まことに喜ばしい限りです。いずれ、チェコ大統領が台湾を訪問するというような、歴史の1ページを飾るようなイベントが催されるかもしれません。今から楽しみです。

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2023年1月22日日曜日

フランス国防費、3割以上増額へ…中国念頭に南太平洋の海軍力も強化―【私の論評】米中の争いは台湾から南太平洋に移り、フランスもこれに参戦(゚д゚)!

フランス国防費、3割以上増額へ…中国念頭に南太平洋の海軍力も強化

フランスのマクロン大統領は20日、仏南西部モン・ド・マルサンの空軍基地で演説し、2024~30年の7年間で計4000億ユーロ(約55兆5000億円)を国防費に充てる方針を示した。19~25年の2950億ユーロ(約41兆円)と比べて、3割以上の増額となる。

20日、仏南西部の空軍基地でドローンを見学するマクロン仏大統領(手前左)

 20日、仏南西部の空軍基地でドローンを見学するマクロン仏大統領(手前左)=ロイター

 マクロン氏は演説で国防費増額の背景について、ロシアによるウクライナ侵略などを挙げ、「危機に見合ったものとなる。軍を変革する」と述べた。

 情報収集活動予算を6割増額するほか、核抑止力の強化や無人機(ドローン)の開発促進などに充てる。中国の海洋進出を念頭に、領土がある南太平洋の海軍力も強化する。近く関連法案を議会に提出する予定だ。

 マクロン政権は現行計画で、25年までに、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める国内総生産(GDP)比2%の水準に国防費を引き上げる方針を示していた。

 マクロン氏は、昨年11月に発表した「国家戦略レビュー」で、「フランスの核戦力は欧州の安全保障に貢献している」として、核抑止力を重視するとともに、中国に対抗する姿勢を打ち出していた。

【私の論評】米中の争いは台湾から南太平洋に移り、仏もこれに参戦(゚д゚)!

上の記事で「中国の海洋進出を念頭に、領土がある南太平洋の海軍力も強化する」という下りがありますが、これだけですませるというのが、さすが「読売クオリティー」というところであり、大手新聞だけを読んでいると、世界がわからなくなるということの典型例だと思います。

これについては、すでにこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
米中対立の最前線たる南太平洋 日米豪仏の連携を―【私の論評】米中対立の最前線は、すでに台湾から南太平洋に移った(゚д゚)!
日米豪などが参加する太平洋パートナシップ2022(PP22)で演説するソロモン副首相

これは12日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、まずは、元記事の結論部分を以下に掲載します。
 そのため(ブログ管理人注:中国に伍して、南太平洋の島嶼国の国々に対してこちらから付け入る余地は十分ある)には、同じ目線で相手の共感を得ることに加え、「こちら側」の陣容の拡充も必要ではないか。それはフランスとの一層の連携だ。仏領ポリネシアは南太平洋におけるフランスの拠点だ。
 元々PIF(太平洋諸国フォーラム:ブログ管理人注)とその前身はフランスの核実験などに反対して結成されたという歴史的経緯はあるが、今や仏領ポリネシアは準メンバーであるし、フランスもパートナー国になっている。我々にはあまり余裕はないはずだ。先の米・島嶼国サミットにもオブザーバーで豪・ニュージーランドは参加する一方、フランスが参加していない点が気になる。

 しかし、島嶼国との関係についても昔から努力しているのは日本だ。日本が太平洋・島サミット(PALM)を始めたのは1997年で、中国より10年近く早い。同じ目線で「共感」を得るアプローチは日本のお家芸だ。上記の論説で取り上げられている不発弾処理についても、既に日本は、ソロモン国家警察爆発物処理部隊に対する支援を開始している。今後これを日米豪(または日米豪仏)のプロジェクトとして進めると言うことも一案だろう。ちなみにPALMには仏領ポリネシアも入っている。
次にこの記事の【私の論評】の部分から引用します。
現在、台湾と外交関係を維持する国は世界でたった14か国です。うち4か国が太平洋の小さな島国です。最近ではソロモン諸島、それにキリバスが台湾から中国へスイッチしました。中国が国交を結んだ国々では中国主導でインフラ整備を進めています。

それは、対象国のためであるとともに、中国自身が共同利用しようという狙いもあるとみられます。台湾問題に行き詰まった中国は、今後も南太平洋でさまざまな活動を行い、活路を見出すつもりでしょう。このままの中国有利な情勢が続けば、断交ドミノ現象はいっそう勢いを増す恐れがあります。米豪日は、今後のマーシャル諸島、ツバル、パラオ、ナウルへ政治的なテコ入れを強化していくでしょう。

その意味では、米中対立の最前線は、台湾そのものではなく、すでに南太平洋に移っていると認識を改めるべきです。そうして、南太平洋でも軍事力の衝突というよりは、経済支援や、外交的な駆け引きが主であり、米国とその同盟国と、中国との間の戦いということになるでしょう。特に同盟国がほとんどない中国にとっては、南太平洋の島嶼国を味方につけることは重要です。国連の会議などでは、どのような小さな国でも、一票は一票です。
・・・・・・・・・〈一部略〉・・・・・・・・・
現在、台湾と外交関係を維持する国は世界でたった14か国です。うち4か国が太平洋の小さな島国です。最近ではソロモン諸島、それにキリバスが台湾から中国へスイッチしました。中国が国交を結んだ国々では中国主導でインフラ整備を進めています。

それは、対象国のためであるとともに、中国自身が共同利用しようという狙いもあるとみられます。台湾問題に行き詰まった中国は、今後も南太平洋でさまざまな活動を行い、活路を見出すつもりでしょう。このままの中国有利な情勢が続けば、断交ドミノ現象はいっそう勢いを増す恐れがあります。米豪日は、今後のマーシャル諸島、ツバル、パラオ、ナウルへ政治的なテコ入れを強化していくでしょう。

その意味では、米中対立の最前線は、台湾そのものではなく、すでに南太平洋に移っていると認識を改めるべきです。そうして、南太平洋でも軍事力の衝突というよりは、経済支援や、外交的な駆け引きが主であり、米国とその同盟国と、中国との間の戦いということになるでしょう。特に同盟国がほとんどない中国にとっては、南太平洋の島嶼国を味方につけることは重要です。国連の会議などでは、どのような小さな国でも、一票は一票です。

中国の台湾侵攻は、現実にはかなり難しいです。実際、最近米国でシミレーションシした結果では、中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。中国の報復によって、日本と日本にある米軍基地などは甚大な被害を受けますが、それでも中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。そうして、無論中国海軍も壊滅的な打撃を受けることになります。

であれば、中国としては、台湾侵攻はいずれ実施するということで、まずは南太平洋の島嶼国をなるべく味方に引き入れるという現実的な路線を歩もうとするでしょう。これによって台湾と断交する国をなるべく増やし、台湾を世界で孤立させるとともに、これら島嶼国のいずれかに、中国海軍基地を建設するなどして、この地域での覇権を拡大しようとするでしょう。

南太平洋の島嶼国といっても、ニューカレドニアは仏領であり続けることを選びましたし、そもそも一人あたりのGDPは34,942ドルであり仏本国を若干下回る程度です。ただ、南太平洋の島嶼国のほとんどは一万ドルを下回る貧困国です。

現代的な軍隊を持った、台湾や日本、韓国、NATO加盟国などの領海近くを中国の空母が通ったにしても、それに対する対艦ミサイル、魚雷など対抗手段は十分にあるので、これを警戒はするものの、大きな脅威とはなりませんが、南太平洋の島嶼国は、貧乏で小さな国が多く、これは大きな脅威になります。

そのときに、日米豪などだけでもこれに対処はできるでしょうが、これに南太平洋に海軍基地を持つフランスもこれに対処できれば、それこそ百人力になります。

フランスとしては、こうした南太平洋の中国の脅威に自ら対抗し、さらに日米豪とも連携し強化するためにも、国防費を増やすのでしょう。

現状では、以下の表でもわかる通り、日本の軍事費はフランスよりも下です。


倍増なら防衛費は世界3位となります。ただ、対GDP比でみれば、また違った見方もできます。


フランスの軍事費は2020年時点ですでにGDP比で2%を超えています。ドイツも2%超を目指しています。日本としては、2%は当然ともいえるかもしれません。

ただ、防衛費増を増税で賄うという岸田政権の方針には、あきれてしまいます。フランスも防衛費を増税では賄うことはないのでしょう。もし、増税で賄うとすれば、多くのメディアはそれを報道するでしょう。フランス財務省としては、そのようなことは考えも及ばず、当然のことながら、長期国債でこれを賄うのでしょう。

これは、あまりにも当たり前のど真ん中で、ニュースバリューもなく、報道もされないのでしょう。もし増税ということになれば、とんでもないことになるでしょう。

フランス政府は最近年金の支給を開始する年齢を64歳に引き上げる年金制度改革案を示しています。これに反対するデモが各地で行われ、参加者は100万人を超えました。もし、増税で防衛費増を賄うなどとすれば、フランス各地で大暴動がおこり、それこそ、2018年から行われている、黄色いベスト運動が苛烈となり、マクロンの政治生命が危ぶまれることになるでしょう。

マクロンが防衛増税をすれば黄色いベスト運動は苛烈となり政治生命が危ぶまれることに(AI画像)

岸田政権も同じです。もし、増税を強行すれば、とんでもないことになるでしょうし、岸田政権は崩壊するでしょう。しかし、増税されれば、日本の財政基盤は脆弱となり、将来安定的に防衛費を賄うことはできなくなるでしょう。

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2022年12月24日土曜日

今こそ民主主義の「強さ」について語ろう―【私の論評】全体主義国家が、政府の一声で何でも短期間に成し遂げられると思い込むのは幻想に過ぎない(゚д゚)!

今こそ民主主義の「強さ」について語ろう

岡崎研究所


 12月1日付のワシントン・ポスト紙に、同紙コラムニストのファリード・ザカリアが、「民主主義の弱さについては、もう十分だ。その強さについて語ろう」と題する論説を書いている。

 過去2~3 カ月、我々は民主主義の脆さを心配してきた。米国、ブラジルからスウェーデン、イタリアまで、民主主義は挑戦に直面していると思えた。しかし事実はこれらのすべての事例で、選挙は最も非リベラルな勢力の多くをおとなしくさせる効果を持ち、少なくとも今は中道が勢力を維持した。一方、我々は、その間、世界最強の独裁国で、深い構造的弱さの証を見ている。

 最も衝撃的な例は中国である。抗議の異常な波が権力に対決している。問題の中心にはコロナ政策を変えようとしない中央政府がある。これは政策決定が閉鎖的で上意下達で説明責任がない独裁制に固有の問題である。

 ロシアでは、同じように閉鎖的で無反応な政策決定がどう破局につながるかを見た。プーチンの戦争の結果、ロシアは孤立し、貧乏になっている。プーチンは最近、予備役30万人を召集した。数十万のロシア人は祖国を離れた。目標もなくコストの高い戦争なので、常に反対がある。

 イランでは、国をイデオロギーで支配する神権専制政治が見られる。イランの統治エリートは、イスラムの原理的信条は執行されなければならないと信じている。    

 対称的に、自由民主主義は国民にイデオロギーを押し付けない。人間は自分自身の幸福のあり方を選択する自由を持ち、他の人もそうであるとの深い信条がある。

 米国は、個人の権利を保護し、指導部の定期的変更を可能にし、宗教的ヘゲモニー(覇権)を防止し、大きな変化に適応できるために十分に柔軟な構造を作り上げた。

 民主主義はそれなりに壊れやすいが、今はその強さを考えるいい時である。第二次世界大戦時の英国の首相チャーチルは、民主主義は最悪の政府の形態である、ただし他のすべての形態を除外すればとの信条を持っていたが、彼の正しさは証明済みである。

*   *   *

 このザカリアの論説は時宜を得た良い論説である。

 最近、論説が指摘するように独裁制(専制政治)と民主主義のどちらがより良いのかとの問題が論じられている。しかし、ザカリアは明確に民主主義の優れた点を指摘している。彼の論に賛成である。

 プラトンは哲人政治を理想とする考え方を打ち出したが、独裁者が哲人であれば、独裁もその効率性などを考えればメリットがある。が、独裁者が哲人や賢人である可能性は大きくはない。また、権力は腐敗するのも事実である。

 プーチンは、ウクライナへの侵略で誤算につぐ誤算を重ね、ロシアをダメな国にしているが、選挙を通じて彼を退陣させることは、操作可能なインターネット投票の活用などで選挙結果を歪めて平気なので、不可能であろう。プーチンは哲人や賢人からはほど遠い。

「中国式民主主義」は民主主義ではない

 習近平は今の中国には中国式の民主主義があると米中首脳会談で言ったようであるが、共産党支配の堅持が彼の政策の中で核心中の核心である。共産党員数は中国の人口の 1 割にも満たない。こういう支配を民主主義とは言わない。習近平は宣伝で自分への個人崇拝を進めているが、同時に中国にも民主主義があるなど、よくわからない言説である。米ソ冷戦の時代に、ソ連は共産党支配の国であったが、新民主主義、参加型民主主義を唱えていた。それを思い出す。

 イランについては、ヒジャブをかぶらずに韓国でのボルダリング競技に参加した女子選手の家を破壊するなど、そのやり方は常軌を逸している。

 プーチンや習近平やハメネイの独裁制が、米国によって作り出された人権を尊重し、平和的政権交代を組み込んだ民主主義よりも体制として劣ることに疑問の余地はない。この民主主義を時代の進展に合わせて、さらに改善することが重要であると思われる。

【私の論評】全体主義国家が、政府の一声で何でも短期間に成し遂げられると思い込むのは幻想に過ぎない(゚д゚)!

民主主義が全体主義より優れていることは、このブログでも何度か主張してきました。特に、高橋洋一氏の経済発展の度合いと民主主義の度合いとの間には、高い相関関係があることは、何度かこのブログで掲載してきました。

その記事の典型的なものの、リンクを以下に掲載します。
米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由―【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
開発経済学では「中所得国の罠」というのがしばしば話題になる。一種の経験則であるが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得になれないのだ。ここで、中所得の国とは、一人あたりGDPが3000~10000ドルあたりの国をいうことが多い。

要するに、発展途上国が経済発展を目指し、政府主導て産業の近代化等をすすめると、確かに経済発展をするのですが、一人当たりのGDPが10000ドル前後に達するとそこから先はなかなか伸びないというのが「中所得国の罠」という経験則です。

例外はあります。たとえば、日本です。日本は、発展途上国から先進国に仲間入りしました。無論、随分前に一人あたりのGDPは10000ドルを超えています。

もう一つの例外はアルゼンチンです。アルゼンチンはかつて、先進国でした。「母を訪ねて3000里」という物語は、ご存知と思いますが、これはその当時先進国だったアルゼンチンに、イタリアの少年マルコが母を訪ねに行く物語です。


「母をたずねて三千里」は時代が1882年(明治15年)という設定です。 1882年、つまり19世紀後半のアルゼンチンがどんな様子だったかというと、スペインから独立を果たし、農業と畜産業で大いに栄え、ラテンアメリカ地域で最も繁栄した国になっていました。

当時のアルゼンチンは、一人あたりのGDPは現在価値に直せば10000ドルを超えており、先進国でした。

19世紀の欧州各国は、産業革命による工業化が進み急速に経済成長を遂げました。ところが、欧州においても経済成長の恩恵が行きわたらない地域が少なくなく、貧しさを克服できない人たちにとって産業革命は、新天地を求める動きをつくり出す「移民の時代」でもあったのです。

人口密度が高いヨーロッパで賃金があまり上昇しなかったのに対し、人口密度が低い新大陸では賃金が上昇しやすい傾向がありました。

マルコの父親は診療所を経営していたのですが、貧しい人を無料で診るなどしていたため借金がかさみました。そこで母親が高賃金を求めてアルゼンチンに渡ったというわけです。

産業革命そのものも「移民の時代」を後押ししました。航海の手段が、それまでの帆船から蒸気船にとって代わったからです。当時まだすべての面で蒸気船が帆船より優れていたわけはないですが、航行の確実性が間違いなく増し、人々の移動も貨物の運搬も飛躍的に進歩することになったのです。

ただ、このアルゼンチンは様々な不運が重なり、後に先進国から発展途上国になってしまいました。

そうして、発展途上国から先進国になったのは、世界で日本だけです。先進国から、発展途上国になった国はアルゼンチンだけです。

先進国になるのはそれだけ難しいことなのです。世界から先進国として認められるには、経済がある程度の規模がなければなりませんが、もう一つの条件は、民主化です。

さて、先の記事からまた引用します。
以上のG20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリアであった。それに1万ドルの壁を破った韓国、サウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁に跳ね返されたアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6ヶ国、まだそれに至らないインドとインドネシア。それに1万ドルになったと思われる中国だ。

さらに、世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。

民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。ただし、その例外が10ヶ国ある。その内訳は、カタール、UAEなどの産油国8ヶ国と、シンガポールと香港だ。

ここでシンガポールと香港の民主主義指数はそれぞれ、6.03と5.57だ。民主主義指数6というのは、メキシコなどと同じ程度で、民主主義国としてはギリギリだ。

もっとも、民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.71と高い。

さて、中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。
「民主主義指数」と「一人あたりのGDP」には明らかな相関関係があり、しかも相関係数は0.71であり、これは様々な条件が複雑らからみあっている社会現象の相関係数としてはかなり高い方の部類に入ります。

これをみると、民主化とは経済発展の前提条件であり、民主主義の強さを示すものといえます。なぜそうなるかといえば、民主化により星の数ほどの中間層が輩出され、それらが、自由に社会経済活動を実施して、あらゆる地域、あらゆる階層において、イノベーションを継続的に生み出すことができるからです。

そうして、民主主義の強さといえば、最近の中国のコロナ対策のあり方がそれを、さらに裏付けています。

中国で今、かつて低評価だった「日本のコロナ対策」の評価が高まっています。

厳しい「ゼロコロナ対策」が行われていた頃、中国の国民は政府の言う通りにせざるを得ない状況でしたし、そしてそれは、成功していたように見えました。中国は都市ロックダウンなど強固な措置を講じていったんコロナを抑えこみ、それによって経済活動が順調に再開できました。

当時、日本や欧米諸国が感染防止と経済活動のバランスに頭を抱えている姿を、中国は、「政府は寝そべって国民を見捨てている」とか「我々の宿題を丸写しさえできないのだ」などと冷ややかな目で見ていました。

「アメリカは高齢者を見殺した」「日本の第7波は医療崩壊、地獄」などの報道もたびたびありました。また、今年の8月には岸田首相が感染したことが中国で大々的に報道され、「一国の首相まで感染したのか?」と話題になりました。習近平国家主席からお見舞いの電報を送られたことも報じられました。

日本でも、中国のコロナ対策を評価する声もあちこちであがっていたことは、記憶に新しいです。

ところが、ここにきて中国政府は、一気に制限を緩和。現在の中国の人々は、ハーネスをつけられた犬の状態から、突然、ハーネスを外されたようなものです。「政府の方針」というハーネスに頼って行動していれば良かった状態から、急にハーネスなしで行動する、つまり「自らの判断」で行動しなければならない状態になってしまったのです。

そこで今、中国で改めて注目され、関心が高まっているのが日本のコロナ対策です。日本のコロナ対策を紹介する中国語の記事のアクセス数が急上昇している。

民主主義国である日本は、全体主義の中国政府のように厳しいコロナ対策ができません。その中で、「自由」と「感染予防」のバランスを考えながら、政府も国民も苦労しながらコロナ対策を実施してきました。

中国人からみれば、日本のコロナ政策はゆるい、事実上の放棄だとみえていたようです。しかし実際には、日本は経済活動を中止せず、国民には自由もあり、その間、国が緊急ベッドの確保や医療設備の増加など、医療崩壊しないようにいろいろな措置を取っていました。

これに加えて、特筆すべきは、安倍・菅両政権において日本政府は、合計100兆円の補正予算を組み、様々なコロナ対策を実施したことです。その中でも、雇用調整助成金という制度も用いて、コロナ蔓延中であっても、失業率が2%台で推移したことです。これは、まさに平時の失業率と言ってもよく、他国の失業率が同時期には鰻上り上がったことを考えれば、大成果といえます。

日本では、若年層の失業率も、コロナ蔓延期だけが特に上がったということもありませんでした。

以下に、中国の都市部の失業率のグラフをあげます。


中国では、特に若年の失業率が高いことがわかります。失業率は典型的な遅行指標であり、現状の失業率は半年前の経済政策による悪影響とみるべきです。5月の失業率は、昨年11月の経済対策によるものです。ということは、昨年11月の中国政府による経済対策は妥当なものではなかったということです。

菅政権においては、コロナワクチンの接種スピードを飛躍的にあげ、医療村の反発にあって、コロナ病床の増床はあまりできなかったものの、それでも結果的には医療崩壊を起こすことなく、収束することに成功しました。これは、大成果といえます。これが、今中国から評価されつつあるのです。評価しないのは、日本のマスコミと一部の野党です。

しかし同じ期間で中国が何をしたかといえば、ひたすら「ロックダウン」や、街ぐるみで数千万人ものPCR検査を行うことに財力や人力を費やしていました。もし、これらの予算で医療資源を充実させたり、医薬品を開発したりしていたら、今の状況にはならなかったでしょう。

結局、準備がまったくできていないのに政策を転換したこと、しかも段階的でなく、一気に転換したことが大きな問題です。中国でこれから重症者や死者が爆発的に増えていったとしても、それは無理のないことです。

中国では、今になって、日本のコロナ政策は悪いものではないと認識されたようです。中国人のほとんどは、政府の言う通りに従っていただけだったといえます。しかし、自由と感染リスクの兼ね合いがいかに難しいかを今頃思い知らされたようです。

日本のコロナ対策の中でも関心が高いのが高齢者への感染対策で、現在中国の政府関係者らや介護業界からの質問が集中しています。特に、日本の高齢者へのワクチン接種率の高さが注目されているようです。

結局のところ、民主主義体制においては、全体主義国家のように人々の自由を制限することはできないものの、「自由」と「感染予防」のバランスを考えながら、政府も国民も苦労しながらコロナ対策を実施し、中国のような全体主義よりは成果をあげているのです。

民主主義には自由の確保という前提があり、これは感染症対策には障害とみられていたのですが、「感染予防」のバランスを考えながら、政府も国民も苦労しながらコロナ対策を実施してきました。それが、結果として中国という全体主義の国家のコロナ対策よりも良い結果をもたらしているのです。

これは、民主主義の強さによるものと評価すべきです。そうして、この強さは、感染症対策だけではなく、先に述べたように経済の分野でも発揮されるでしょうし、社会のありとあらゆる面で発揮されると考えられます。

多くの社会問題なども、中国などの全体主義国家では、政府が号令をかけて、資金を提供して何かの方策を実施すれば、一見すぐに解決されてしまったようにみえても、時が経つと綻びがでてきて、どうしようもなくなり、実施をとりやめるか有名無実になり、その後大混乱に至るということになるのでしょう。

中国では、建国以来毎年数万、2012年あたりからは、10万件を超える暴動が起こっているともいわれているということがそれを示しています。これを中国は、ことごとく弾圧してきました。

ただ、中国のという国は、民族、言語、社会習慣も地域ごとに異なり、地域地域による特殊事情があるため、暴動は単発で起こることが多かったので、中国はこれを今までは弾圧することができました。 

しかし、先日の「白紙革命」は、バラバラだった中国国民がはじめ中共の「ゼロコロナ政策」に対する、恐怖と憎悪という念で一つにまとまって起こされた全国同時デモであり、これには中共も弾圧はできないと判断したのでしょう。だからこそ、今回は「ゼロコロナ政策」を緩和したとみられます。

一方民主主義の国々においては、社会問題の解決もいわゆる営利・非営利の組織である民間組織が実施し、最初はその解決は困難にみえ、いつまでたっても解消しないようにみえながら、ある民間組織が何とかそれに成功し、それが最適なものであると確認されれば、同じ社会問題を抱えている他の地域の民間組織がそれを参考にして、同じような社会問題を解決したり、大きな民間組織が全国的にそれを実施したり、場合によっては政府がそうした活動に資金を割り当てたりして、加速度的に進んでいくのです。これは、全体主義国家にはできないことです。

結局、国民一人ひとりの幸福を考えた場合、経済的にも社会的にも民主主義は全体主義に勝っているし、はるかに柔軟に対応できるのです。

これこそが民主主義の強みです。全体主義国家が、政府の一声でなんでも短期間に成し遂げるられると思い込むのは幻想に過ぎないのです。

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2022年10月26日水曜日

中国に戦闘機発注 ミャンマー弾圧強化―【私の論評】岸田政権は、まずはミャンマー軍事政権への姿勢を改めよ(゚д゚)!

中国に戦闘機発注 ミャンマー弾圧強化

航空ショーに登場したFTC2000G練習機兼戦闘機(2006年11月1 日、中国・広東省・珠海)

【まとめ】

・ミャンマー空軍は近代化と戦闘能力向上を目的としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注。

・ミャンマーは国土の51%を反軍政勢力が支配下に置いているとの情報があるほど「苦戦」している。

・中国がミャンマー軍の軍備の増強や近代化に深く関わっていることで「内戦状態」は長期化して人権侵害が全土で深刻化。

ミャンマー空軍が中国に対して戦闘機を新たに発注したことが地元の独立系メディアの報道で明らかになった。ミャンマーでは2021年2月の軍によるクーデターでアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政権が打倒し、ミン・アウン・フライン国軍司令官をトップとする軍事政権が政権を奪取して治安維持を担っている

しかし民主政権の復活を願う武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や少数民族武装勢力と軍との衝突が激化し、治安は極端に悪化して実質的な「内戦状態」にある。

こうした中、ミャンマー空軍は旧式となってきた中国製F7迎撃機やA5攻撃機などの近代化と戦闘能力向上を目的としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注したという。

反軍政の立場から報道を続ける独立系メディア「イラワジ」は10月18日、情報筋などからの話としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注したと伝えた。

FTC2000は中国の国有航空宇宙国防企業である「中国航空工業公司」の監督下で「貴州航空工業公司」が設計、製造した2量練習機兼戦闘機「JL-9」の輸出型機で1機約850万ドルとされている。「FTC2000」の改良型が「2000G」で2人乗り。2018年に初飛行に成功した軽戦闘攻撃機といわれている。

発注した時期や機数などは明らかではないが2020年に中国とカンボジアのメディアが東南アジアの国に対して中国が戦闘機を売却する計画があり、2020年1月に契約は調印され納入は2021年に開始され2年後には完了することを報じた。

その後のコロナ禍でこの計画が遅延していたものが再始動したとの見方がでているが、明確なことは軍政が秘密主義なため明らかではない。

もしそれが事実とすれば2003年に初飛行、その後量産態勢に入ったとされるFTC2000の発注・契約はスー・チーさんの民主政権時代のもので、遅れていた導入計画を軍政が改めて発注し直し、最新型の「2000G」を導入する計画となった可能性が高いとみられている。「イラワジ」は今年6月空軍パイロット8人、技術者8人、軍の将校2人がミャンマーと国境を接する雲南省昆明経由で中国に渡ったと報じており、空軍機発注との関連を示唆している。

FTC2000G」の導入後は北東部シャン州の空軍基地への配備が検討されているという。

■ 抵抗勢力への空爆、攻撃を激化

軍政はクーデターから1年半以上が経過してもPDFや少数民族武装勢力による抵抗が激しく、一部では国土の51%を反軍政勢力が支配下に置いているとの情報があるほど「苦戦」しているという現状がある

軍は地上部隊が抵抗勢力による待ち伏せ攻撃やドローンによる爆弾投下、爆弾爆発などで兵士の犠牲者が増えていることもあり、空軍の戦闘機などによる爆撃といった空からの攻撃で支配地域拡大を狙っている。

抵抗勢力側は戦闘用の航空戦力を保持していないため空軍の制空権は確保されているという。

10月23日夜8時半ごろ北部カチン州ハパカント近郊のギンシ村で地元少数民族武装勢力「カチン独立機構KIO)」の創立62周年を祝う記念音楽コンサート会場が軍政の空軍機3機による空爆を受けた。この攻撃でコンサートに集まった一般市民やKIOとその武装部門である「カチン独立軍(KIA)」の幹部ら約60人が死亡、約100人が負傷する事件が起きた。

投下された爆弾の1発はコンサートのステージ近くで爆発、近くにいたカチン族の著名歌手らが即死したという。SNS上などには爆撃でばらばらになった木造のステージとみられる建物や観客席の写真がアップされ、死亡した歌手らへの追悼の言葉が並んでいる。

KIOとKIAのスポークスマンであるナウ・ブー大佐は「軍は敵ではなく一般の住民を狙って攻撃した。これは邪悪な行為であり戦争犯罪である。国民の死を悼んでいる」と「イラワジ」に述べて軍の空爆を非難した。

■ 空軍力で戦況打開を企図か

ミャンマー空軍機によるこうした軍事拠点ではない集落などへの空爆は全土で行われており、無抵抗、無実、非武装の住民の犠牲が増えている

軍政は空軍力の近代化、増強で戦況の打開を図り全土での治安回復を狙っているのは間違いないとみられている。

ミャンマー軍政にとってロシアと並んで国際社会で数少ない後ろ盾である中国がミャンマー軍の軍備の増強や近代化に深く関わっていることで「内戦状態」は長期化し、教師などの斬首や女性へのレイプその後の殺害・遺体放棄、逃げ遅れた一般住民らを生きたままで焼殺するなどといった残忍な人権侵害が全土で深刻化している

こうしたミャンマーの現状に対する新体制となった習近平体制の中国による責任は重いと言わざるを得ないだろう。

【私の論評】岸田政権は、まずはミャンマー軍事政権への姿勢を改めよ(゚д゚)!

東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のカンボジアは、ミャンマーでの暴力の激化に警鐘を鳴らし、自制と戦闘の即時停止を呼びかけました。

カンボジアは声明でミャンマー最大の刑務所への爆撃、カレン州での紛争、23日にカチン州で発生し少なくとも50人の死亡が報告されている空爆を例として指摘。

「犠牲者の増加、そしてミャンマーの一般の人々が耐えてきた計り知れない苦しみに深い悲しみを覚える」としました。

さらに、紛争は人道状況を悪化させるだけでなく、昨年ASEANと合意した和平「コンセンサス」実現に向けた努力も台無しにしていると批判しました。

暴力の最大限の自制と即時停止を強く求め、全ての当事者が対話を追求するよう求めました。


ミャンマーでは2021年2月1日のクーデターから現在まで混乱が続いています。ただ、どの程度の混乱なのかについては見定めることが難しいです。一部では破綻国家になる懸念すら示されています。果たしてミャンマーは破綻国家になってしまうのか。

当初は平和的だった国軍への抵抗運動が、弾圧を受けることでいかに「自衛のための戦い」(Self-Defensive War)という武力闘争を容認する運動に発展してしまいました。この抵抗勢力
の動きがミャンマーという国を破綻国家にするのでしょうか。

結論は2つあります。抵抗勢力の武力闘争が激しくなっていることは確かであるものの、国軍の実効支配を崩すことは難しく、紛争によって国家が破綻する可能性は極めて低いです。

もう一つは、国軍の実効支配が続くとしても、この国が政変前の状況に戻ることはなく、不安定な脆弱国家として継続することになりそうであることです。

ただ、政変 前の状態にこの国が戻ることもないです。危機国家の状態に陥る可能性を常に秘めた脆弱国家と して国軍の実効支配が続くことになりそうです。

ミン・アウン・フライン・ミャンマー国軍司令官

 危機に陥るきっかけは、民主化勢力の抵抗だけでなく、経済や外交面 でも生じ得ます。ミャンマーの2021年の経済成長率をマイナス18%であり、なかでも新型コロナウイルスと政情不安で工業とサービス業の落ち込みは20%を超 えています。

外国直接投資はすでに半減しています。ミャンマー・チャットの大幅 な下落や、外貨準備の不足、現金供給の制限など、金融面での不安も大きいです。 

しかし、経済が落ち込んでも国軍は自らの任務と自認する国家安全保障を優先し、その「脅 威」の殲滅を目指すため、国民生活を後回しにするでしょう。

国民生活どころか、紛争を逃れ た避難民(すでに20万人以上発生)に対する人道支援の受け入れすら国軍は消極的である。新 型コロナウイルスの感染対策で国境管理を各国が強化するなか、難民たちも国内にとどまる しかなくなるため、危機はより深刻でみえにくくなりました。 

国際社会の関与が不可欠の情勢ではあるのですが、クーデター以来明らかになったのは、国 際社会の無力です。唯一、わずかながら国軍から譲歩(「5つのコンセンサス」)を引き出せ ているようにみえたASEANの働きかけもいまや手詰まり状態です。

特使の任命 に手間取ったうえに、焦点であった特使とアウンサンスーチーとの面会を国軍が受け入れな かったため、昨年10月末のASEAN首脳会議へのミンアウンフライン将軍の出席を認めないこと が直前のASEAN外相会議で決定されました。

「コンセンサスによる意思決定」と「内政不干渉」 というASEANの基本原則に反する決定だと国軍は反発しています。こうした決定でミャンマ ー軍の行動が変えられないことはASEAN諸国も十分に知っているため、ミャンマー情勢よ りもASEANに対する信頼が低下することを懸念しての決定だとみらます。

こういうことからも再び 国軍との対話を前進させることは相当に困難だと思われます。 欧米の圧力外交には批判的な中国も、現在のミャンマーの情勢を楽観視している わけでありません。国境を接する中国にとっては、国軍を支えることで受ける国際的な非難 とミャンマーでの反中感情の高まりを懸念しつつ、同時に、国軍による実効支配が危機に陥 る事態は避けたいはずです。

日本もまた、自由主義圏の国として国軍の政治介入には批判 的ですが、ここでミャンマーを孤立させてしまえば、自国の国益が脅かされるばかりか、 ミャンマー市民の生活や人権にも深刻な被害が生じ、さらには、東南アジアの地政学的な要 衝であるミャンマーが中国の影響下に入るという地域安全保障上の懸念もあります。

 各国ともに難しいバランスのなかで、ミャンマーという脆弱国家に対処していかねばなら ないです。たとえ万が一であっても、この国が今後、危機から破綻国家状態になるというシナリ オは多くの関係者が望むものではないでしょう。必要とされているのは、現状の手詰まりを打 開する次の一手を構想することです。日本にもできることがあります。

たとえば、日本にとって最大の外交カードは、ミャンマーへのODA=政府開発援助です。支援額を公表していない中国を除いて、日本はミャンマーに対する最大の支援国で、2019年度だけでおよそ1900億円に上っています。

政府は、ODAの新規の供与を当面見送る方針ですが、継続案件も含めた全面的な停止など、より厳しい対応を求める声も出ています。

これに対し、政府は、「事態の推移や関係国の対応を注視しながら、どういった対応が効果的か、よく考えていきたい」としていました。

軍の変化を促すため、ODAカードを効果的に切ることが出来るのか、日本の外交の力が試されているといえます。

経済面での圧力の強化を求める声も強まっています。ミャンマーには、軍と関係する2つの大手複合企業があります。

傘下に不動産や建設、金融など幅広い業種を手掛ける100社以上の企業があり、その収益が軍の資金源になってきたと指摘されています。

米国は昨年この2社に、資産凍結などの制裁を科し、ブリンケン国務長官は、先週、各国の政府や企業に、軍の資金源を断つため、ミャンマーへの投資を見直すよう訴えました。

日本企業も無関係ではありません。大手ビールメーカーの「キリンホールディングス」は、制裁対象の企業と合弁でビール事業を行っています。クーデターのあと、キリンは提携を解消する方針を発表しました。

また、日本のODAで、ヤンゴンに建設されている橋の工事では、元請けの日本企業が制裁対象の企業に橋げたの製造を発注しています。

この元請け企業は、「制裁を受け、今後の対応を検討中だ」と話しています。

さらに、日本の官民ファンドやゼネコンが関わっているヤンゴンの商業施設の開発事業は、事業用地の賃料が国防省に支払われています。

軍の資金源になっているという批判に対し、官民ファンドは、「最終的な受益者は、軍ではなくミャンマー政府だと認識している」と話しています。

軍系企業の活動内容は公表されていない部分が多く、ミャンマーで事業を続ける進出企業は、ビジネスが本当に軍の利益になっていないか、細心の注意を払う必要があります。

経済制裁は、市民の生活にも大きな影響を与えるおそれがあります。それでも、常軌を逸したともいえる軍の弾圧を止めるには、制裁の強化しかないという声は、そのミャンマーの市民の間からも強まっています。

日本を含む国際社会には、こうした声をどう受け止め、どう対応するのか、判断が迫られています。

ただ、岸田政権においては、こういうことを検討する前にすべきことがあります。

日本政府は国際社会と一丸になるどころか、効果のない「独自路線」を取ってきました。成果が全く出ていないのにも関わらず軌道修正を頑なにしません。

また、岸田首相はミャンマーの「軍事政権」を「ミャンマー政府」と表現。こうした答弁自体が国軍にお墨付きを与えることになってしまうのです。

ミャンマー駐日大使 ソー・ハン氏

さらに、安倍元総理の国葬儀にミャンマーの駐日大使を招いたということについて、民主化運動を弾圧するような軍事政権に、お墨付きを与えるに等しいのではないでしょうか。

国会で岸田首相はミャンマー軍事政権の駐日大使を国葬儀に招いた件について、関係を断たないようにために必要だったとの旨の答弁をしました。民主主義をないがしろにして人権侵害をしている国を国葬儀に招かずとも、国交はあるわけですし、事務方レベルで調整できているので、参列者を増やすために手段を選ばなかっただけだと考えられます。

まずは、岸田政権は、ミャンマーの軍事政権に対する姿勢を改めことからはじめるべきです。

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