検索キーワード「北朝鮮」に一致する投稿を日付順に表示しています。 関連性の高い順 すべての投稿を表示
検索キーワード「北朝鮮」に一致する投稿を日付順に表示しています。 関連性の高い順 すべての投稿を表示

2024年11月22日金曜日

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣

渡邉哲也(作家・経済評論家)

まとめ
  • 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。
  • 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他の4名は起訴されなかった。
  • 岩屋外務大臣が賄賂の受取人に含まれ、賄賂性を否定しつつも寄付金を返金した。
  • 日本では公訴時効が成立しているが、米国では時効が適用されず、収賄側も疑いの目で見られる。
  • 米国司法省による公表により、日本政府高官への賄賂提供が国際的に知られることとなった。

BITマイニング(BIT Mining Ltd)は、主に暗号通貨のマイニング運用事業を行う

 米国司法省は最近、500ドットコム(現在のビットマイニング株式会社)とその元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い、司法取引を結んだことを発表しました。この事件は、日本政府関係者への賄賂提供に関与したとして捜査されており、特に日本側では5名が資金を受け取ったことが確認されていますが、立件されたのは秋本司被告のみです。残る4名については、職務権限の有無や嫌疑不十分を理由に起訴されていない状況です。

 記事によると、日本では贈収賄の成立に職務権限が重要な要件とされており、他の4名に関してはその理由が明確にされていないものの、時効が成立しているため、法的な責任を問うことはできません。特に、収賄に関しては5年、贈賄に関しては3年の時効が適用されており、政治資金規正法に基づく外国献金の禁止についても時効が成立しています。

 しかし、このIR(統合型リゾート)に関連する疑惑は、日本国内では解決したかのように見えますが、米国ではまだ続いているという状況が浮かび上がります。500ドットコムは中国資本の米国企業であり、元CEOも米国に居住していたため、米国の司法制度のもとで問題が処理されることになりました。

 特に注目すべきは、岩屋外務大臣が賄賂の受取人の一人であったことです。500ドットコム側は、法廷で賄賂性を認める供述を行っており、一方で岩屋大臣は賄賂の受け取りを否定しつつ、別の自民党議員から寄付された100万円については「中国企業からの原資が含まれていた可能性は否定できない」として返金したと報告されています。ここで、岩屋大臣は企業献金を受け取れる政党支部での受け取りを認めている点が重要です。このことは、彼が100万円を無知で受け取ったとは考えにくいことを示唆しています。

 ただし、日本国内の公訴時効がすでに成立しているため、倫理的な問題は別として、国内の司法においてはこの件は終わった話とされています。しかし、米国の司法制度では時効が適用されず、500ドットコムと元CEOが有罪答弁をしたことにより、贈賄側が有罪を認めた以上、収賄側も疑いの目で見られることになります。このため、米国から見れば日本の外務大臣は国外逃亡中の容疑者という立場になるのです。

 さらに、この情報が米国司法省によって国際的に公式にリリースされたことで、実名は明かされていないものの「日本政府高官への賄賂提供」という形で公表されました。このため、各国の外交や司法当局が調査を行えば、具体的に誰が関与しているかはすぐに明らかになるでしょう。結果として、日本の外務大臣が米国法における収賄容疑者として名指しされることになったのです。この一連の流れは、日本における政治資金や贈収賄の問題に対する国際的な視線を一層厳しくするものとなるでしょう。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

まとめ
  • 米国が岩屋外務大臣に対して示した態度は、彼の賄賂疑惑が日本の外交政策や安全保障に重大な影響を及ぼす可能性を示唆している。
  • 岩屋外務大臣の信任が揺らぐことで、日米間の信頼関係が損なわれ、安保上のリスクが高まる。
  • 米国は国際的な腐敗防止に強い姿勢を持っており、過去の贈収賄事件が日本企業の信頼性に影響を与えた。
  • トランプ政権の成立により、米国の要求が厳しくなり、日本企業に対するセカンダリーサンクションのリスクが増大する。
  • 残念ながら、現政権の制裁リスクに取り組む能力には期待でぎす、当面日本の未来を守るためには、企業の自立した取り組みが不可欠である。

岩屋外相

米国が岩屋外務大臣に対して示した態度は、明確な警告である。この案件は、米国が国際社会に向けて「ノー」を突き付けたことを示しており、彼の賄賂疑惑が日本の外交政策や安全保障に重大な影響を与える可能性を秘めている。

まず、岩屋外務大臣が賄賂の疑惑に巻き込まれたことは、彼の国際的な信任に直接的な打撃を与える。米国は日本をアジアにおける重要な同盟国と位置付けており、特に安全保障や経済協力の面で深い関係を築いている。日米安全保障条約は、その重要な枠組みを提供しているが、信頼できる指導者の存在が不可欠である。岩屋氏のリーダーシップが疑問視されることは、米国にとって大きな痛手となる。

次に、安保上のリスクについて考えてみよう。米国は北朝鮮の核問題や中国の軍事的拡張に対処するため、日本の協力を重視している。日米共同訓練や防衛協力は地域の安定維持に欠かせない要素であり、これらが円滑に進むためには強固な信頼関係が必要だ。岩屋外務大臣が賄賂の疑惑に関与している場合、彼のリーダーシップが揺らぎ、日米間の信頼関係が損なわれる可能性がある。これは、米国のアジア政策にとって深刻なリスクをもたらすことになる。

さらに、米国は国際的な腐敗防止に強い姿勢を示している。海外行為防止法(FCPA)は、米国企業が外国の公務員に賄賂を提供することを禁じており、この法律は国際的なビジネスにおける透明性を確保するための重要な手段だ。過去の事例として、2014年に発覚した日本の大手商社による贈収賄事件がある。丸紅がインドネシアの国営企業関係者に賄賂を支払ったことが発覚し、約8,800万ドル(約90億円)の罰金を科された。この事件は、日本企業の国際的な信頼性に深刻な影響を与え、国際社会における透明性を高める試みの一環として注目された。

米国がこのような問題を公にすることで、国際社会からの監視が強化され、岩屋外務大臣に対する圧力が増すことになる。彼の行動は今後の外交交渉に影響を及ぼすだろう。米国は同盟国の政治家が腐敗に関与することを警戒しており、そのために日本のリーダーシップが国際的に信頼されなくなることを避けたいと考えているのだ。

結論として、米国の態度は岩屋外務大臣の行動が同盟国としての信頼性を損ない、安全保障や外交上の不利益をもたらすリスクがあることを示している。このような状況は国際的な信頼を維持するための重要な要素であり、米国はその立場を一貫して貫く必要がある。

米国ではトランプ政権が成立・・・・

また、トランプ政権の成立は、岩屋外務大臣に対する米国の態度に大きな影響を与えただろう。トランプ政権は従来の外交政策から逸脱し、同盟国に対して厳しい要求をすることが多かった。その一環として、多国間主義を軽視し、単独行動を重視する姿勢が際立っていた。特に、中国や北朝鮮に対する強硬な姿勢がアジア地域における影響力を強め、日本に対する貿易や安全保障への要求も強化されることが予想される。

今後、米国による日本企業に対するセカンダリーサンクション(二次制裁)の可能性も高まる。特に、米国の政策が特定の国や行動に対して強硬な姿勢を取る際、関連する企業に対して制裁を行うことが考えられる。中国やイラン、ロシアに対する制裁がその例だ。日本企業が米国の制裁対象となる国との取引を行った場合、経済的影響を受けるリスクが高まる。

したがって、米国の外交政策や制裁の動向を注視することが重要である。安倍政権と異なり、石破政権のセカンダリーサンクションに対する備えの期待は薄い。これにより、日本企業は自らの防衛策を強化しなければならない。

第二次石破政権

国際的なビジネス環境が厳しさを増す中、企業は米国の制裁に巻き込まれるリスクを軽減するため、コンプライアンス体制やリスク管理を整える必要がある。具体的には、サプライチェーンの見直しや取引先の選定における慎重な判断が求められる。また、情報収集や国際情勢の把握も不可欠である。企業は自らの利益を守るため、積極的に行動し、リスクを最小限に抑える戦略を立てることが必要だ。このような状況下では、企業の自助努力がますます重要になる。

つまり、岩屋外務大臣の賄賂疑惑は、単なる個人の問題にとどまらず、日本の外交政策や国際的な信頼性に深刻な影響を及ぼす可能性がある。今後の展開を注視しつつ、企業は自らの防衛策を講じ、リスクを回避するための準備を進めることが求められている。日本の未来を守るためには、企業の自立した取り組みが不可欠である。もう、安倍政権時代のような政府による防波堤の役割は期待できない。

【関連記事】

トランプ再登板で早くも始まった「世界の大転換」…EUが「ロシア産」天然ガス「米国産」に乗り換え、中国資本の企業にも「脱中国」の動きが!―【私の論評】トランプ政権下での日本の対応:安倍首相の成功と石破首相辞任後の課題 2024年11月14日

過去最高を更新し続ける米国の石油生産 何が要因なのか?―【私の論評】トランプ大統領再登場で米国エネルギー政策が激変!新たな世界秩序の幕開け 2024年11月12日

トランプ前大統領の圧勝とその教訓―【私の論評】トランプ再選がもたらす日本への良い影響:経済、安保、外交、社会的価値観と一貫性 2024年11月10日

石破政権で〝消費税15%〟も 自民総裁選は好ましくない結果に…国際情勢・国内の課題、期待できない〝財務省の走狗〟―【私の論評】岸田政権の国際戦略転換と石破氏のアジア版NATO構想:大義を忘れた政治の危険性 2024年10月3日

“裏切り者”石破氏の党内評価急落…「ポスト安倍」争い、岸田氏が逆転リード―【私の論評】トンデモ歴史観・経済論の信奉者石破氏は総理大臣の器にあらず 2017年8月1日

2024年11月5日火曜日

ミサイルは複数の短距離弾道ミサイル、韓国軍発表 金与正氏が日米韓訓練への対抗を表明―【私の論評】核・ミサイルだけではない北朝鮮のサイバー攻撃の脅威と日本の防衛

ミサイルは複数の短距離弾道ミサイル、韓国軍発表 金与正氏が日米韓訓練への対抗を表明

まとめ

  • 北朝鮮は5日朝に複数の短距離弾道ミサイルを発射し、発射地点は南西部の沙里院付近であった。
  • 金与正が日米韓の合同空中訓練を非難し、核戦力強化の正当性を主張したことから、発射は対北安全保障協力の牽制と考えられる。
  • 米国の大統領選直前に行われたこの軍事行動は、どの候補が当選しても北朝鮮の核・ミサイル増強路線を貫く姿勢を示す狙いがある。
北朝鮮が10月31日に発射した新型ICBM「火星19」

 北朝鮮は5日朝、日本海に向けて複数の短距離弾道ミサイルを発射した。発射地点は北朝鮮南西部の沙里院付近で、韓国軍の分析によると、ミサイルは日本時間の7時半頃に発射された。日本政府は、発射されたミサイルは既に落下したと報告している。

 この発射は、北朝鮮が10月31日に最新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した直後のものである。金正恩の妹、金与正は、日米韓が行った合同空中訓練を非難し、核戦力強化の正当性を主張した。今回の発射は、日米韓の対北安全保障協力を牽制する意図があると考えられる。

 さらに、米国では同日、大統領選が行われるため、北朝鮮は選挙を前にして、どの候補が当選しても核・ミサイル増強路線を続ける姿勢を示す狙いがあると見られている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】核・ミサイルだけではない北朝鮮のサイバー攻撃の脅威と日本の防衛

まとめ
  • 北朝鮮によるサイバー攻撃は、核・ミサイル開発やロシアへの派兵と同様に、国家や個人に甚大な被害をもたらす深刻な脅威である。
  • 「ラザルスグループ」を中心とした高度なハッキング部隊が、仮想通貨や銀行、政府機関を標的にして資金調達や情報収集を行っている。
  • サイバー攻撃の目的は、資金調達、情報収集、経済的混乱の引き起こしであり、特に核・ミサイル開発の資金源として利用されている。
  • 過去の「ワナクライ」攻撃や仮想通貨取引所への攻撃が示すように、サイバー攻撃は広範な影響を及ぼし、金融システムの安全性への不安を引き起こしている。
  • 日本は国際的な連携を強化し、サイバー反撃や先制攻撃の対策を講じると共に、個人レベルでもセキュリティ意識を高める必要がある。

北朝鮮の動きは、核・ミサイル開発やロシアへの派兵などが注目されているが、もう一つの差し迫った脅威として北朝鮮によるサイバー攻撃がある。これらの攻撃は、国家間の緊張が高まる中でますます重要な問題となっており、国際的な安全保障に対する新たなリスクを生じさせている。サイバー攻撃は、物理的な武力行使とは異なる形で、個人や企業、国家のインフラに甚大な影響を及ぼす可能性があるため、特に警戒が必要である。

北朝鮮のサイバー攻撃は、その脅威が国家の枠を超え、世界中の個人や企業に甚大な被害をもたらす可能性がある深刻な問題である。北朝鮮には「ラザルスグループ」を中心とした高度なハッキング部隊が存在し、資金調達や戦略的利益を得るために仮想通貨、銀行、政府機関、インフラといった分野を標的にしている。この攻撃によって、個人の財産損失から国家の安全保障に至るまで、影響は幅広く深刻である。

サイバー攻撃の目的は主に三つである。第一は資金調達であり、得られた資金は国連制裁を受けている中で経済を支える重要な収益源となっている。特に核やミサイル開発の資金源として活用されていることは、国際的な安全保障に大きな脅威である。たとえば、ラザルスグループは2017年の仮想通貨取引所への攻撃において、5億ドル以上の資金を得たとされ、これは北朝鮮の収益構造に深く関わっている。

第二の目的は情報収集やスパイ活動であり、北朝鮮は世界中の政府機関や企業に対する攻撃によって軍事機密や技術情報を得ようとしている。この活動は、特定の国家に対して軍事的な優位性を求めるだけでなく、国際的な安全保障環境を不安定にする要因ともなっている。

第三として、経済的および社会的混乱を引き起こす目的が挙げられる。金融機関や電力網といった重要なインフラを狙った攻撃によって、標的国の経済や社会が混乱に陥り、制裁対応の効果を弱めることを狙っているのである。

こうした脅威は実際の事例によっても明らかである。2017年に発生した「ワナクライ」攻撃は、ランサムウェアを利用して世界中の病院、企業、行政機関などに影響を与えた。この攻撃では15万台以上のコンピュータが被害を受け、多くの組織が一時的に業務停止に追い込まれたことから、サイバー攻撃の威力が再認識された。

また、北朝鮮は仮想通貨取引所への攻撃も繰り返しており、2020年にはクアドリガCXやビットフィネックスなどが標的となり、数億ドル規模の損失が生じた。このような攻撃によって仮想通貨市場全体が揺らぎ、世界中で金融システムの安全性に対する不安が高まっている。

VRゴーグルをつけた北朝鮮サイバー軍 AI生成画像

北朝鮮のサイバー攻撃がとりわけ脅威となっている理由は、彼らの手法が非常に巧妙かつ多様であることにある。攻撃にはフィッシングやランサムウェア、仮想通貨ハッキング、DDoS攻撃など多岐にわたる手法が用いられ、対象に応じて柔軟に攻撃手法を変えている。

また、北朝鮮は他国のネットワークインフラを経由して攻撃を行うことも多く、攻撃元の特定が困難である点も特徴である。国外のネットワークを利用しているため、国際的な法執行機関であっても対応が難しく、制裁が及びにくい環境にある。こうした状況を改善するには、各国が個別対応するのではなく、国際的な連携を強化し、情報共有や共同防御の仕組みを構築することが不可欠である。

日本は国際的な連携を強化するための取り組みを進めるべきである。具体的には、サイバーセキュリティに関する国際会議やワークショップを開催し、他国の専門家と情報を共有することが重要である。国内のインフラや企業に対して、サイバー攻撃に対する防御策の強化を支援する政策を推進する必要がある。たとえば、サイバー攻撃のリスク評価や対策計画の策定を促すための助成金や支援プログラムを設けることが考えられる。

さらに、日本としてはサイバー反撃やサイバー先制攻撃なども視野に入れた対策が必要である。近年、サイバー攻撃に対する反撃や先制的な措置を講じる国が増えている。例えば、米国はサイバー攻撃を受けた場合、その攻撃の発信源に対して反撃を行う方針を示している。

このような姿勢は、敵対的な行動に対する抑止力となる。日本も同様に、法的な枠組みを整備し、国際的なルールの中で反撃の選択肢を持つことが求められる。これにより、北朝鮮のような国家によるサイバー攻撃に対して、より効果的な防御を実現できるであろう。

個人レベルでは、サイバーセキュリティ(上図参照)に対する意識を高め、基本的な対策を講じることが重要である。強固なパスワードの使用や二段階認証の導入、定期的なソフトウェアのアップデートを行うことが推奨される。また、フィッシング攻撃に関する知識を得て、不審なメールやリンクに対して警戒心を持つことが必要である。仮想通貨を扱う際には、信頼性の高い取引所を利用し、セキュリティ対策が施されたウォレットを使用することが大切である。

北朝鮮のサイバー攻撃は、単なる国家間の問題にとどまらず、企業や個人の財産や社会全体の信頼を脅かす重大なリスクである。その影響範囲と深刻さを踏まえ、今後さらに国際的な協力によってサイバー防衛力を高める必要がある。

このような状況において、我々は毅然とした態度で北朝鮮の挑戦に立ち向かうべきであり、国家の安全保障を守るために一丸となって行動することが求められている。保守派の立場からは、国民の安全を最優先に考え、強固な防衛体制を築くことが不可欠であると強く訴えたい。 

以下の情報を参考にした。

[1] 公益財団法人電気通信普及財団 - 我が国のサイバーセキュリティ戦略の欠点と展望 ― 「平和国家 ... (https://www.taf.or.jp/files/items/1929/File/%E6%9D%BE%E6%9D%91%E6%98%8C%E5%BB%A3.pdf)

[2] Trend Micro - 能動的サイバー防御とは?日本でも必要性が高まる理由を解説 (https://www.trendmicro.com/ja_jp/jp-security/24/j/expertview-20241009-01.html)

[3] 衆議院 - 「専守防衛」及び「サイバー攻撃」に関する質問主意書 (https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a208089.htm)

[4] 内閣官房 - サイバー安全保障分野での対応能⼒の向上に向けた有識者会議 (https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cyber_anzen_hosyo/giron_seiri/giron_seiri_gaiyou.pdf

【関連記事】

今度はヒズボラの無線機が爆発、500人弱死傷 あわてて電池を取り外す戦闘員の姿も―【私の論評】中東情勢最新動向:イスラエルとヒズボラの緊張激化、米大統領選の影響と地域安定への懸念 2024年9月19日

衣服内で同時爆発、市民パニック 体中が出血、重傷者多数 レバノン―【私の論評】安倍政権下の日米安全保障協議(2プラス2)の成果:サイバー武力攻撃対策に先見の明 2024年9月18日

<正論>日本は本当にダメな国なのか―【私の論評】日本の防衛強化とシギント能力の向上:対米依存からの脱却と自立的安全保障への道 
2024年9月12日

サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米―【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)! 2019年5月9日

米国に桁外れサイバー攻撃、やはり中国の犯行だった―【私の論評】サイバー反撃も辞さないトランプ政権の本気度(゚д゚)! 2018年9月26日

2024年11月3日日曜日

米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも―【私の論評】北・露軍事協力の脅威と石破政権の対応不足が招く地域安定リスク

米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも

まとめ
  • 北朝鮮の兵力派遣目的: 北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻を支援するために部隊を派遣し、最新の戦闘経験を得ることで、韓国など将来的な紛争への備えを強化しようとしている。この参戦は北朝鮮軍にとって重要な学習の機会、特に近代戦の舞台での実戦経験を積む狙いがある。
  • ロシアとの連携強化: 北朝鮮はロシアとの関係を強化することで、中国への依存を減らそうとしており、これにより朝鮮半島の不安定化やアジア太平洋地域への影響が懸念される。ロシアからの見返りとして、北朝鮮は核開発計画の進展や軍事的支援の確保を期待している。
  • 軍事的影響とリスク: 北朝鮮の部隊が実戦で得る教訓は、ロシア軍の指導方法次第で大きく変わる。北朝鮮が「弾除け」として利用された場合、実質的な学習の機会が失われる可能性がある
同レポートの10月25日までに報告されいる北朝鮮軍のロシアに向けての配置状況図 クリックすると拡大します

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、北朝鮮がロシアを支援するために部隊を派兵した背景について分析した報告書を発表した。北朝鮮は、ウクライナ戦争を通じて得られる戦闘経験を将来の紛争、特に韓国との戦闘に活かす狙いがあると指摘されている。また、ロシアとの連携を強化することで中国への依存を減らし、朝鮮半島及びアジア太平洋地域の安定を脅かす可能性もあると警告している

報告書は、北朝鮮軍が現代戦の経験を欠いていることを指摘し、ウクライナ軍との交戦を通じて指揮統制や無人機操縦のスキルを向上させることを目指していると分析している。しかし、北朝鮮軍の実際の戦場での教訓が得られるかは、ロシア軍が北朝鮮兵をどのように利用するかに依存する。

さらに、北朝鮮はロシアからの支援を受けることで核開発を進め、将来的に朝鮮半島での紛争時にロシアの軍事的関与を期待しているとも述べている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】北・露軍事協力の脅威と石破政権の対応不足が招く地域安定リスク

まとめ
  • 北朝鮮はロシアを支援するため部隊を派遣し、ウクライナ戦争での最新戦闘経験を将来の紛争に活用しようとしている。
  • 北朝鮮とロシアの連携が、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安全保障バランスに長期的な影響を及ぼす可能性がある。
  • 北朝鮮はロシアとの協力を通じて中国依存を減らし、独立性を高めようとしており、これにより、地域全体の安定に新たなリスクが生じている。
  • 北朝鮮はロシアの支援を得て、韓国に対する威圧力を高めようとしており、安全保障バランスに影響を与える可能性がある。
  • 各国が北朝鮮の動向に懸念を示す中、日本政府は現時点で具体的な対応を示しておらず、外交政策が不透明である。
金正恩と北朝鮮人民解放軍

上の記事に示されている、米シンクタンクの戦争研究所(ISW)のレポートは、以下のリンクからご覧いただけます。

North Korea Joins Russia's War Against Ukraine: Operational and Strategic Implications in Ukraine and Northeast Asia

このレポートより、概要と主なポインのみ、以下に日本語訳を掲載します。

概要

北朝鮮はロシアのウクライナ戦争を支援するために部隊をロシアに派遣した。これは、2022年2月のロシアの全面的なウクライナ侵攻以降、両国間の協力が強化されているを示すもの。 
クレムリンは、北朝鮮の人材を利用して進行中の攻勢を支援し、ロシアの国内部隊を生成する能力の要求を補うことを考えている可能性が高い。ただし、北朝鮮の部隊がウクライナの作戦地域に配備される影響は、ウクライナの戦場をはるかに超えている。 
平壌は、北朝鮮の軍人が現代戦の条件の下で戦闘経験を得ることを期待している可能性があり、その経験を将来の戦争に応用できることを望んでいる。北朝鮮とロシアの連携は、朝鮮半島や広範なアジア太平洋地域の長期的な安定を脅かす可能性を内包している。

主なポイント
  • ロシアと北朝鮮との長期的な連携は、ウクライナの戦場を超え、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安定性に長期的な影響を及ぼす可能性がある。ウクライナの戦争は、これからのすべての戦争の性質を変えるだろう。そして、平壌はこの事実を自軍にとって重要な学びの機会と考えているようだ。北朝鮮軍は1953年以降、大規模な従来型戦闘を経験しておらず、特に韓国のような洗練された相手と現代戦を戦う準備が整っていないことを理解している。
  • 北朝鮮は、自国の部隊が攻撃的な戦略を磨き、西側が備えた敵に対して武器システムを試し、指揮統制の経験を得て、最新の戦場でドローンや電子戦システムを運用する方法を学ぶ機会を持つことを望んでいると思われる。平壌は、ウクライナ戦争で得たスキルが、韓国半島を含む未来の紛争で攻撃的な優位をもたらすことを期待しているだろう。
  • 北朝鮮軍が戦場で学んだ教訓を吸収し、広め、制度化する実際の能力は、ロシア軍が北朝鮮の人材をどのように活用するかに完全に依存する。もしロシアが北朝鮮の人員を「弾除け」として使用する場合、北朝鮮の部隊が避けがたい被害を受けることで、平壌が学びたいと思っている戦場の教訓が台無しになってしまうだろう。
  • 北朝鮮は、ロシアとの連携を深めることで中華人民共和国(PRC)への依存を減らそうとしており、その結果、北京の北朝鮮政権に対する影響力を軽減しようとしている可能性がある。PRCの北朝鮮に対する影響力の低下は、朝鮮半島の安定を減少させ、アジア太平洋地域全体を危険にさらすだろう。というのも、PRCはその影響力を利用して北朝鮮の侵略を抑制しているからだ。
  • 北朝鮮の最近のパートナーシップ協定とロシアとの関係強化は、たとえロシアの支援がプログラムへの直接的な技術援助の形であっても、北朝鮮の核兵器プログラムの発展を助けるのに役立つかもしれない。平壌は、ロシアとの大規模な兵力を完全に外国の紛争に投入するための見返りとして、朝鮮半島での紛争発生時にロシアの防衛コミットメントを確保しようとしている可能性がある。ただし、2024年のロシアと北朝鮮の相互防衛協定は、ロシアが南北間の戦争に軍隊を派遣することを回避する可能性がある。
  • 北朝鮮のロシアとの防衛協定は、韓国に対する脅威や威圧の信頼性と効果を高めることになる。
本レポートでは、中国が北朝鮮の侵略を抑制していることに関する具体的なエビデンスも示めされている。北朝鮮は経済的に中国(PRC)に大きく依存しており、その貿易の90%以上が中国に依存しているため、中国は北朝鮮に対して重大な影響力を持つ。例えば、中国は北朝鮮の主要な食料援助の供給国であり、エネルギーの原油供給者でもある。また、中国は朝鮮戦争以降、北朝鮮の重要な安全保障の担保者として機能し、北朝鮮政権の存続を支えているのだ。

金正恩と習近平

ところが、中国と北朝鮮の関係には常に不信感が存在する。北朝鮮は中国の行動制限に対して反発することがあり、特に2017年の核開発問題ではその限界が露呈した。中国の公式メディアは、北朝鮮が米国に攻撃を行った場合、中国は介入しないという立場を示した。このように、中国は北朝鮮の行動を抑えるために様々な制約を課しており、時には北朝鮮が直接的な対立を望んでいるような行動に対しても手をこまねくことがある。

最近の情勢では、北朝鮮がロシアとの関係を深めており、これが中国の影響力を削ぐ可能性が指摘されている。特に、北朝鮮とロシアが共同で核技術や軍事協力を進めることで、中国の制約から解放されるリスクがある。このような背景から、中国は北朝鮮の安定を保つために影響力を強める一方で、北朝鮮がより冒険的な行動を取る恐れが高まっているという状況が浮かび上がっているのだ。

このレポートは、北朝鮮と中国の複雑なダイナミクスを理解する上で重要である。北朝鮮の独立性の向上は、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安定に新たなリスクを引き起こし、国際社会に広範な影響を及ぼす可能性があることを覚えておくべきだ。

北朝鮮がロシアへの派兵を行う背景には、中国や米韓に対する戦略的な意図が潜んでいる。北朝鮮はロシアとの関係を深めることで、依存度を減少させ、北京の影響力を削ぐことを目指しているのだ。これにより、経済的および軍事的に安定する可能性が高まる。

次に、米韓連携の脅威を軽減するために、ロシアの支持を受けた防衛力を強化し、地域の安全保障バランスを変えようとしている。具体的には、北朝鮮はロシアからの軍事的支援を通じて、自国の軍事的威圧を強化し、韓国に対する影響力を高めることを企図している。北朝鮮のロシアへの派兵は、自己防衛と影響力の拡大を図るための重要な戦略として位置づけられるのだ。

金正恩とプーチン

各国政府は、北朝鮮がウクライナに派兵する動きに対して注目している。米国は、ホワイトハウスの声明を通じ、北朝鮮がロシアに派遣する兵士に対して強い懸念を表明した。国家安全保障担当者のジョン・カービーは、これがウクライナの軍事的抵抗力を強化する要因となると指摘しているのだ。

韓国の国家情報院は、北朝鮮が約12,000人の兵士をロシアに派遣する計画があると報告し、自国の安全保障への影響に懸念を示している。また、ウクライナの軍事情報部門は、北朝鮮兵がロシア側で訓練を受けており、今後の軍事的圧力が増す可能性について警告を発している。このように、北朝鮮の派兵に対する国際的な懸念が高まり、各国はその動向を注視せざるを得ないのだ。

だが、日本政府は現時点では何らのコメントも発していない。石破総理大臣の外交や安全保障に関するビジョンの欠如は、彼の政権が直面する重要な課題の一つであろう。北朝鮮の核開発やロシアの軍事行動が地域の安全保障に脅威をもたらす中で、明確な外交戦略が求められている。しかし、石破総理は具体的な政策や行動計画を示しておらず、国際社会との連携強化や信頼構築の観点からも評価されない状態だ。

さらに、外交政策において近隣諸国との対話を重視する一方で、国益を守るための具体的なアプローチが不透明であり、国民や専門家からの信頼を得るには至っていない。この状況は、大国との関係を形成する際に、意思決定や情報の透明性を欠き、政権の信用をさらに低下させる要因となる。

このような環境下で、石破政権が今後どのように国際社会と連携し、具体的なビジョンを描いていくのかが注目される。明確な外交政策や安全保障のビジョンがなければ、権力基盤の脆弱性とあいまって、政権全体の信頼性にも影響を与えるだろう。 

【関連記事】

<北極圏を侵食する中国とロシア>着実に進める軍事的拡大、新たな国の関与も―【私の論評】中露の北極圏戦略が日本の安全保障に与える影響とその対策 2024年10月29日

西側諸国、北朝鮮を甘く見るなら我が身の危険を覚悟すべし――ギデオン・ラックマン―【私の論評】北朝鮮のウクライナ派兵とロシア連携がもたらす脅威 - 日本が取るべき対策とは 2024年10月31日

ロシア派兵の賭けに出た金正恩―【私の論評】体制の脆弱さを浮き彫りにする北のロシア派兵 2024年10月27日

2024年10月31日木曜日

西側諸国、北朝鮮を甘く見るなら我が身の危険を覚悟すべし――ギデオン・ラックマン―【私の論評】北朝鮮のウクライナ派兵とロシア連携がもたらす脅威 - 日本が取るべき対策とは

西側諸国、北朝鮮を甘く見るなら我が身の危険を覚悟すべし――ギデオン・ラックマン

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年10月29日付)

まとめ
  • ウクライナのゼレンスキー大統領は、北朝鮮兵士がロシア・ウクライナ紛争に参加する可能性を懸念している。
  • 西側諸国は、ロシア、北朝鮮、イラン、中国から成る敵対国の協力が強まっていることに警鐘を鳴らしている。
  • 金正恩は米国との関係改善を放棄し、韓国を敵視し、戦争への突入を決断したと専門家が警告している。
  • 北朝鮮は130万人の現役軍人を持ち、核兵器の開発に成功しており、その軍事力は過小評価されている。
  • 西側の選択を迫られている。ロシアが北朝鮮の支援を受けてウクライナを制圧するのを許すか、対抗措置を講じるかの難しい選択が迫られている。

ゼレンスキー大統領

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、北朝鮮兵士がロシア・ウクライナ紛争に参加する可能性について強い懸念を表明しており、これが西側諸国にとって新たな安全保障上の脅威となると警告している。西側の安全保障担当高官たちは、数カ月にわたり、ロシア、北朝鮮、イラン、中国から成る「敵対国の枢軸」が協力を深めていることに警鐘を鳴らしてきた。特に北朝鮮は、米国との関係改善を放棄し、韓国を和解不能な敵国として明確に位置付ける方針を採っている。

 北朝鮮問題の専門家たちは、金正恩が戦争に突入する戦略的な決断を既に下したと警告しており、彼の最近の行動は、北朝鮮が保有する核弾頭を軍事的解決策として使用する可能性を示唆している。専門家の中には、北朝鮮が持つ核兵器庫が50発から60発に及ぶとする見解もあり、これが地域の安定に与える影響は計り知れない。また、北朝鮮はロシアに対して大量の武器供給を行い、ウクライナとの戦争におけるロシアの優位性を高める役割を果たしている。

 金正恩はロシアからの技術移転や資金を期待しており、それが将来的に朝鮮半島における紛争に対する準備である可能性も指摘されている。北朝鮮の軍事力は過小評価されがちだが、130万人の現役軍人を擁し、世界第4位の規模を誇る。ただし、その大多数は訓練不足の新兵であり、プーチン大統領はこうした兵士を「ミートグラインダー」作戦に利用することで、戦局を有利に進めることができると考えている。

 さらに、この状況は米国やEU、韓国にとって極めて困難な課題を提示している。これまで彼らは、ウクライナと朝鮮半島の双方でエスカレーションを避ける努力をしてきたが、今後は選択を迫られる可能性が高まっている。具体的には、ロシアが北朝鮮の支援を受けてウクライナを制圧するのを許すのか、それとも敵対国との対峙において、ウクライナへの支援を強化し、リスクを取る意欲を増すのかという難しい判断をしなければならない。

 このように、北朝鮮の動向は国際情勢における新たな複雑性をもたらしており、ウクライナと朝鮮半島の情勢は今後さらに緊迫化する可能性が高いと考えられている。このような背景を理解することは、今後の国際安全保障戦略を考える上で極めて重要だ。

 上の記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】北朝鮮のウクライナ派兵とロシア連携がもたらす脅威 - 日本が取るべき対策とは

まとめ
  • 防衛省は、本日北朝鮮がICBM級ミサイルを発射し、日本のEEZ外の日本海に落下したと発表した。
  • 北朝鮮の事実上のウクライナ派兵は、単なる派兵以上の大きな脅威となり得ることを認識すべきである。
  • 経済悪化や食糧不足、内部の社会不安が北朝鮮の体制を弱体化させており、国際的な孤立も影響している。
  • ウクライナ戦争を背景に、北朝鮮はロシアとの関係を強化し、軍事技術の向上を図る機会を得ている。連携強化された北とロシアの不安定化は、さらに大きな脅威になり得る。
  • 日本は米国や韓国との安全保障協力を強化し、防衛力の向上や国際的な外交努力を進める必要がある。

北朝鮮のミサイル発射を伝えるテレビ画面

防衛省は31日午前、北朝鮮からICBM=大陸間弾道ミサイル級のミサイルが発射され、北海道の奥尻島の西およそ200キロの日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したとみられると発表した。

飛行時間はこれまでで最も長く、防衛省は新型のICBMだったかどうかも含め詳しい分析を進めている。

北朝鮮の脅威は、ミサイルだけではなく、事実上のウクライナ派兵もある。これは単なる派兵以上のもっと大きな脅威になり得る。


北朝鮮の事実上のウクライナ派兵については、このブログでも既に取り上げている。そのリンクを以下に記載する。
詳細はこの記事を参照してほしいが、以下に結論部分を引用する。
北朝鮮はこれまで中国からの経済支援を受けてきたが、一方で中国の干渉や浸透を強く警戒している。金正恩は金王朝を守るため、中国の介入を嫌い、親中派の金正男やその後見人であった張成沢を粛清するなど、国内統制に腐心してきた。そのため、金正恩はロシアとの友好関係を模索しており、2019年にはロシアを訪問したものの、目ぼしい成果は得られなかった。

ロシア・ハサン駅に到着した正恩氏=2019年4月24日

しかし、ウクライナ戦争が状況を一変させた。戦局が長期化する中、ロシアは北朝鮮から砲弾やミサイルを求めるようになり、金正恩はこれを好機と捉えた。ロシアとの関係を強化し、核技術やミサイル技術の向上を図ることで、中国の影響力を削ぐチャンスが見えてきた。中短距離ミサイルの技術向上により、韓国、米国、日本を含む近隣諸国への対抗手段も強化できると考えたようだ。しかし、自国の命運をウクライナ戦争に賭け、未だに戦争目的を果たせないどころか、その目的すら曖昧になっているロシアに賭けざるを得ない北朝鮮の体制は、実際にはかなり弱体化していると見るのが妥当だ。
北朝鮮の体制が最近弱体化している理由はいくつかある。まず、経済状況の悪化が挙げられる。コロナウイルスの影響で国境が閉鎖され、貿易が減少し、食糧不足が深刻化している。国連の報告によれば、2023年には約410万人が食糧援助を必要としており、これは人口の約16%に相当する。また、北朝鮮の経済成長率は2020年に-4.5%、2021年には-0.1%と、連続してマイナス成長を記録している。

さらに、内部の社会不安が高まっている。食糧不足や物価上昇により、民衆の不満が増し、抗議行動が発生している。2023年には地方で食糧を求める抗議が報告され、これが体制への信頼を揺るがす要因となっている。

また、国際的な孤立も影響している。北朝鮮は核開発による制裁を受け、外貨収入が制限されている。特に、2023年には国連の制裁決議が強化され、石油の輸入制限や貿易の制約が厳しくなっている。加えて、指導部の不安定さも懸念されている。経済政策の失敗に対する批判が高まり、幹部の粛清が行われている。例えば、2022年には経済政策を担当していた幹部が処罰されたとの報道があり、これは権力闘争の一環とされている。

最後に、外部からの圧力も増加している。特に米国や韓国との緊張が続く中、北朝鮮は軍事的挑発を繰り返しているが、これが逆に国際社会の圧力を強めている。韓国は防衛力を強化し、米国との共同演習を拡大する動きを見せており、北朝鮮にとっての脅威が増している。

これらの要因が重なり、北朝鮮の体制は脆弱化の兆しを見せており、さらなる不安定化が懸念されている。元々ロシアからの支援を期待していた金正恩はますますロシアに傾倒し、ウクライナ戦争を継続するプーチンは、武器庫、さらには「ミートグラインダー」作戦における兵力源としての北朝鮮の役割を再認識したと言える。

プーチン

ロシアと北朝鮮の連携が強まることで、両国の不安定化は個々の不安定化よりもさらに脅威となる可能性がある。軍事協力の強化により、北朝鮮の軍事力が増大し、韓国や日本、米国に対する脅威が高まる。2023年の報告では、北朝鮮がロシアからの武器供与を受ける可能性が指摘されている。

さらに、ウクライナ戦争は地域の安全保障に影響を与えている。ロシアの軍事行動が国際秩序に対する挑戦と見なされる中、北朝鮮は核開発やミサイル発射を強化する機会を得るかもしれない。国連の報告によると、ウクライナ戦争の影響でロシアは北朝鮮との関係を強化し、武器取引が進む可能性があるとされている。

このように、ロシアと北朝鮮の連携が進むことで、地域の不安定化が加速し、ウクライナ戦争が再び朝鮮戦争のような脅威を引き起こす可能性が高まっている。各国はこの状況を注視し、適切に対応するための戦略を見直す必要がある。

ロシアと北朝鮮の連携が進む中で、日本が取るべき具体的な対策についても考えるべきだ。まず、日本は米国や韓国との安全保障協力を一層強化する必要がある。具体的には、共同軍事演習や情報共有を通じて、北朝鮮の動向に対する備えを強化し、迅速な対応が可能な体制を構築することが重要である。

次に、日本は防衛力の向上を図るべきだ。新たな脅威に対応するため、自衛隊の能力を向上させ、より効果的なミサイル防衛システムの導入や、サイバーセキュリティの強化を検討することが求められる。

さらに、国際的な外交努力にも積極的に関与し、北朝鮮に対する制裁や国際的な圧力の維持を支持することが重要である。国連や多国間の枠組みを通じて、北朝鮮の核開発や軍事行動に対する国際的な合意を形成する努力を強化する必要がある。最後に、北朝鮮の人権問題にも目を向け、国際社会と連携して人権状況の改善を促進する姿勢を示すことが、日本の国際的な立場を強化する上で有益である。

これは、無論北の国内の問題もそうだが、ウクライナに送られる北の兵士達の人権問題もある。北朝鮮が正規軍としてウクライナ戦争に参加するのではなく、兵士をロシアに送り込むことは、ロシアの「弾除け」としての役割をさせる可能性が高い。

この行動は、兵士たちの生命を著しく危険にさらすものであり、明らかに人権侵害と捉えられるだろう。特に、北朝鮮の軍人は自由意志で参加することが少なく、強制的な動員が行われることが多いため、彼らの人権が著しく侵害されることになる。国際社会は、このような状況に対して強い懸念を持つべきだ。

これらの対策を講じることで、日本は地域の安定に寄与し、ロシアと北朝鮮の連携による脅威に効果的に対応できる体制を整えることができる。日本の未来は、今まさにこの選択にかかっているのだ。 

【関連記事】

ロシア派兵の賭けに出た金正恩―【私の論評】体制の脆弱さを浮き彫りにする北のロシア派兵 
2024年10月27日

日中韓「朝鮮半島の完全な非核化目標」…首脳会談の共同宣言原案、北朝鮮の核・ミサイル開発念頭―【私の論評】北朝鮮の核、中国の朝鮮半島浸透を抑制する"緩衝材"の役割も 
2024年5月25日

北朝鮮が法令で定めた核兵器使用で高まる戦争の可能性―【私の論評】実は北も多いに脅威に感じている中国に対処することこそ、日米韓が協力していくべき理由(゚д゚)! 2022年10月19日

ロシアが北朝鮮に頼るワケ 制裁と原油価格低下で苦境 「タマに使うタマがないのがタマに傷」日本の自衛隊も深刻、切羽詰まる防衛省―【私の論評】中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはない(゚д゚)! 2022年9月13日

孤立する金正恩氏 中国すら制裁履行で…“プーチン頼み”も失敗か 専門家「露、大して支援はしないだろう」 ―【私の論評】ロシアは、朝鮮半島の現状維持を崩すような北朝鮮支援はしないしできない(゚д゚)! 2019年4月24日

2024年10月30日水曜日

【解説】首相は誰に? 1回目の投票で過半数「233議席」獲得へ…国会議員の間に浮上する“3つの案”とは?―【私の論評】4つ目の案自民党総裁選の可能性とは?石破総裁辞任と高市氏新総裁待望論の背景と展望

【解説】首相は誰に? 1回目の投票で過半数「233議席」獲得へ…国会議員の間に浮上する“3つの案”とは

まとめ
  • 特別国会の首相指名選挙に向け、過半数を目指す3つの案が検討されている。
  • 1つ目は「与党+一本釣り」で、自民・公明党が野党無所属議員を取り込み、石破首相続投を狙う案。
  • 2つ目は「野党大連合」で、複数野党が協力して立憲民主党の野田氏を首相に推す案。
  • 3つ目は「与党+国民民主党」で、国民民主党の玉木氏を首相に据える案が浮上している。
  • 現段階での実現可能性は不明であり、決選投票に持ち込まれる可能性が高い。
日テレの報道

 来る特別国会での首相指名選挙をめぐり、与党が過半数を割る中で、政界に緊張が走っていることが、日テレニューで報道された。日テレでは、11月11日に召集される見込みの特別国会で行われる首相指名選挙において、1回目の投票から過半数の議席を獲得するための3つの案が浮上している。

 第一の案は「与党+一本釣り」で石破首相の続投を図るものだ。自民党と公明党の議席に加え、非公認や無所属の議員、さらには野党議員に個別に働きかけて233議席の確保を目指すというものだ。

 第二の案は「野党の大連合」で、立憲民主党を中心に維新、国民民主党、れいわ新選組、共産党、参政党、社民党といった野党勢力を結集させ、235議席を確保するというものだ。この場合、最大野党である立憲民主党の野田代表が首相に就任する可能性が高い。

 そして第三の案として、「与党+国民民主党」で国民民主党の玉木代表を首相に据えるという、いわゆる「ウルトラC」的な案も密かに浮上している。この案が実現すれば243議席となり、過半数を確保できる。しかし、玉木代表は現在、連立入りを否定しており、この提案を受け入れるかどうかは「究極の選択」となるだろう。

 これらの案は、1994年に自民党が長年対立してきた社会党と手を組み、村山富市氏を首相に担ぎ上げた過去の例を想起させる。しかし、現時点ではいずれの案も実現可能性は不確実でだ。そのため、各党がノーガードで首相指名選挙に臨み、結果として決選投票に持ち込まれる可能性が高い。

 この状況下で、国民民主党の玉木代表の動向が注目されている。玉木代表は現在、石破内閣との連立や閣僚就任を否定しているが、首相の座を提示された場合、政策実現の絶好の機会と批判を浴びるリスクの間で難しい判断を迫られることになるだろう。

 最終的な結果は依然として不透明であり、特別国会までの間に様々な政治的駆け引きや交渉が行われると予想される。この首相指名選挙の行方は、日本の政治の今後を大きく左右する可能性があり、国民の関心も高まっている。政治家たちの決断と、それに伴う政局の展開が注目されるところだ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。


【私の論評】4つ目の案
自民党総裁選の可能性とは?石破総裁辞任と高市氏新総裁待望論の背景と展望

まとめ
  • 自民党内の不満が増大し、石破総裁の辞任を求める声が強まっている。
  • 党内保守派は、石破総裁の辞任を求めるため、両院議員総会を開催するのは現実的な案である。
  • 過去の敗北時には、総裁が責任を取って辞任するのが自民党の慣例である。
  • 石破氏辞任後に、総裁選が行われれば、党内保守層の支持を得る高市氏が有力候補として浮上する可能性が高い。
  • 高市氏が総裁になれば、自民党内外の支持基盤強化や、経済・外交・安全保障政策の推進につながる可能性が高まる。

過去の自民党両議院総会

上の記事の三つの案以外に、第四の案が存在する。それは自民党が両院議員総会を開き、石破総裁を辞任に追い込むというものだ。これは単なる勢力争いにとどまらず、党内の存亡をかけた試練である。総裁辞任後には総裁選が行われ、新たな総裁が選出される。その後、首班指名選挙に臨む形になるが、この案はマスコミや自民党リベラル派議員が最も忌避される案だろう。

だが、彼らがどう考えようと、党内の保守派や選挙戦略上の危機感を持つ議員たちにとって、これこそが「選択肢の一つ」として現実味を帯びつつあるのである。

そもそも、石破総裁が辞任を表明していないこと自体が、党内の反発と不満を増幅させている。自民党の歴史を振り返っても、大敗を喫した総裁が責任を取って辞任することは、ある種の伝統であり、例外はない。

2012年、衆院選で民主党が歴史的な敗北を喫した際、当時の代表であった野田佳彦氏は潔く辞任した。この時の潔い決断は、政治の世界で責任を取るという厳格な姿勢を象徴していた。

野田佳彦氏

同じく自民党においても2007年、参院選で大敗を喫した安倍晋三総理が辞任し、その直後には福田康夫総理が支持率低迷を受けて辞任を決意している。また、2021年においては、菅義偉総理が衆院選で自民党の議席を大幅に減少させたことを受け、事実上の辞任を表明。岸田総理も次期総裁選に出馬しないと発表し、総裁交代の波が続いている。

こうした過去の流れを見れば、今回もまた、党内で石破総裁の辞任を求める声が高まるのは当然の帰結である。

さらに、2025年の参院選が迫る中、特に参院議員たちは石破総裁のもとで戦うことに不安を抱いている。国民の間では支持率低迷に対する不満が根強く、このままでは選挙戦で大敗するリスクがあるため、新たなリーダーシップを求める声が党内で強まっているのだ。

両院議員総会は、こうした危機的状況に対応するために、党内の重要な意思決定の場であり、必要に応じて臨時に開催されることもある。過去の選挙結果を受けて緊急の対応を行い、迅速に方向性を定める場としても機能してきた。万が一、今回石破総裁辞任が両院議員総会で決議されるならば、それは前例のない一大事であり、党史に刻まれる出来事となろう。

仮に総裁選が行われるとすれば、前回次点であった高市氏が有力候補として浮上するが、彼女の勝利が確実であるとは言えない。しかし、もし高市氏が総裁となれば、自民党の内外での支持基盤が強化される可能性が高い。

高市氏は今年の総裁選においても第一回投票で多くの票を得ており、党内の保守層からは強い支持を受けている。また、高市氏は自民党初の女性総裁候補として女性の政治参加を象徴する存在である。これにより、女性有権者の支持を集めるのみならず、党内における女性活躍の推進という課題にも応えられるという利点があるのだ。


高市氏は経済政策においても、積極財政と金融緩和を基盤とした成長戦略が打ち出されている。経済の低迷に苦しむ現状において、こうした政策は日本経済の復活の糸口となるだろう。実際、高市氏は経済政策において「デフレからの脱却」を掲げており、そのための具体策を提示してきた。

たとえば、財政支出の拡大と同時に地域経済の活性化に力を入れることで、都市と地方の格差解消にもつながるとされる。加えて、彼女の外交・安全保障政策も堅実であり、台湾有事や北朝鮮の脅威に対する対策が盛り込まれている。これらの対策は、アジア地域の安全保障情勢を踏まえたものであり、日米同盟を基軸とした防衛強化にも資するものである。このような高市氏の政策の堅実さは、国民の安全を第一に考えたものであり、幅広い層からの支持を集めやすい。

さらに、高市氏のリーダーシップの下であれば、国民民主党との連携もスムーズに進む可能性がある。国民民主党もまた積極財政を掲げており、経済政策において方向性が一致する部分が多い。これにより、連立政権を組む際にも、両党が協調して政策実行に向かうことが期待される。

高市氏が新総裁となることで、自民党内の結束が強化されるのみならず、新たな支持層の開拓にもつながる。自民党は今、大きな転機を迎えているが、この歴史的な場面で、高市氏というリーダーを迎えることで、真の変革を果たす機会を得ることができるのだ。

結論として、高市氏を総裁に迎えることは、経済再生から外交・安全保障の安定まで、多岐にわたる政策課題に対応する上で最も効果的である。経済、外交、安全保障において確かなビジョンと実行力を持つ彼女こそが、党内外から信頼され、次世代のリーダーとして国を牽引するにふさわしい存在であろう。

【関連記事】

与党過半数割れで少数与党か石破退陣か連立再編か…まさかの政権交代も 衆院選開票後のシナリオは―【私の論評】高市早苗の離党戦略:三木武夫の手法に学ぶ権力闘争のもう一つのシナリオ 2024年10月28日

いきなり危険水域〝28%〟石破内閣支持率 時事通信調査 森喜朗内閣下回る「何かの間違いかと…発足直後で政権末期レベル」―【私の論評】石破内閣の崩壊と岸田総裁再登場の可能性 2024年10月19日

高市早苗氏 「ポスト石破」への党内基盤固めへ全国応援行脚 既に100人超の依頼―【私の論評】高市早苗と安倍晋三の「雨降って地固まる」状況:日本政治の新たな転換点に 2024年10月12日

日本保守党、百田尚樹氏が比例代表の近畿ブロック 有本香氏が東京ブロックから出馬へ 次期衆院選―【私の論評】次期衆院選と高市早苗氏:保守派の台頭と財務省の抵抗、雨降って地固まる政治転換の可能性 2024年10月9日

「最低賃金1500円」の幻想、石破政権の左派政策は失敗する 理念先行で具体的手順なし 安倍元首相は「リアル」を先に考えていた―【私の論評】フィリップス曲線の真髄:安倍政権の置き土産を食い潰す愚かな自民と立民 2024年10月8日

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...