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2026年10月17日土曜日

簗前農水相の辞任で終わりか――栃木3区と福岡で見えた地方政治の構造

 連載「地方政治は誰が監視するのか」第1回

2026年10月14日、簗和生農林水産相が辞任した。自身を選挙で応援しなかった首長のいる自治体について、道路予算を大幅に削減したとする発言が問題となり、地元の那須烏山市議会が抗議決議を可決したのである。首相官邸の公式発表によれば、高市早苗首相は、農林水産行政への影響などを踏まえて辞任を受け入れた。

その3日後の17日未明、福岡県議会では正副議長人事をめぐる金銭授受疑惑について、百条委員会の設置が決まった。議会運営委員会では設置議案を継続審査とする判断が示されたが、本会議で覆され、賛成多数で可決された。共同通信の報道によれば、議会は会期を延長し、深夜まで紛糾した。

栃木3区では国会議員の予算削減発言、福岡では地方議会の人事をめぐる金銭授受疑惑が問題となった。性質は異なるが、共通する問いがある。地方政治では誰が権限を持ち、誰が財源を配分し、その決定について誰が責任を負うのか。そして、住民はその過程を検証できるのか。

今回、簗氏の辞任問題を出発点として那須烏山市の過去の公開資料を調べると、2012年の企業誘致政策、2013年の市長答弁、2014年の国会質問、中国系企業が関与する太陽光発電事業、地元建設会社と政治団体の接点などが浮かび上がった。ただし、これらが一つの不正な関係で結ばれていると立証されたわけではない。

このように公開情報を収集・照合して分析する手法をOSINT(オープンソース・インテリジェンス、公開情報調査・分析)という。その価値は、疑惑を補強することではなく、事実と推測を区別し、行政や政治家の説明を検証することにある。本稿では栃木3区と福岡の事例から、我が国の地方自治が抱える構造的な問題を考える。

1️⃣栃木3区――上海電力、地元建設会社、政治団体を公開資料からたどる

2026年2月8日の衆議院選挙では、無所属の新人、渡辺真太朗氏が5万8483票を獲得し、自民党の簗氏の5万3975票を4508票上回った。簗氏は比例復活したが、小選挙区では渡辺氏が勝利した。とちぎテレビの選挙結果から確認できる。

地元の対立は選挙後に始まったものではない。とちぎテレビの2026年1月12日の報道によれば、那須烏山市議の渋井由放氏と渡辺氏の父親が、簗氏の政治活動用ポスターを無断で撤去したなどとして、2025年12月に器物損壊の疑いで書類送検されていた。両者は渡辺氏を後援する立場だったと報じられている。ただし、書類送検は有罪判決ではなく、その後の刑事処分も確認できていない。この事件と上海電力関連事業との関係も立証されていない。

那須烏山市の企業誘致政策から上海電力関連発電所の整備まで。公開資料を時系列で整理した。クリックすれば拡大します。

2012年から始まったメガソーラー誘致

那須烏山市では2012年12月、企業誘致関連の条例を改正し、再生可能エネルギー関連事業を支援対象に加えた。国の固定価格買取制度によって太陽光発電への投資が拡大するなか、市もメガソーラーの誘致を進めていた。

2013年9月4日の那須烏山市議会会議録138ページによれば、当時の大谷範雄市長は、旧ゴルフ場跡地の太陽光発電計画について、森林伐採の手続や送電ルートなどの相談を受けていたものの、具体的な事業計画の提出や正式な事前協議には至っていないと説明した。同時に、法令上の問題がなければ企業誘致条例に基づいて支援する方針も示していた。

ここで重要なのは、市が企業誘致を進める一方、開発の適法性を審査する立場にもあったことである。栃木県の公式資料によれば、那須烏山市には2010年4月、森林法に基づく一定の林地開発許可権限が県から移譲されていた。企業誘致と開発審査を同じ自治体が担うこと自体は問題ではない。しかし、産業振興の政策判断と、許認可を公正に審査する行政上の責任が適切に区別されていたかは検証する必要がある。なお、上海電力関連事業の個別の許可権者や審査内容については、当該事業の記録による確認が必要である。

簗氏が国会で追及した上海電力の問題

2014年6月4日、簗氏は衆議院農林水産委員会で、上海電力日本株式会社が大株主となる会社による、約48メガワットの太陽光発電計画を取り上げた。国会会議録によれば、簗氏は県や市との事前協議が済んでいないとの指摘を紹介するとともに、外国資本の参入状況を政府がどこまで把握しているのかを質問した。

これに対し、資源エネルギー庁の政府参考人は、当時の固定価格買取制度では、設備認定に際して事業者名や設備出力などは確認するものの、外国資本かどうかについては特段の報告を求めていないと答弁した。つまり、当時の設備認定制度は、外国資本による事業支配の実態を網羅的に把握する仕組みではなかったのである。

外国資本の参入そのものが違法性や安全保障上の危険を意味するわけではない。しかし、電力は重要インフラである。事業者の実態を国がどこまで把握し、必要な場合に対応できるかは検証すべき問題だ。その後、計画は実現し、上海電力日本の公式サイトには、定格出力47.52メガワットのSJソーラー那須烏山発電所が掲載されている。

ここで問うべきは、発電所の存在そのものではない。2013年には正式な事前協議に至っていなかったと説明された事業が、その後、どのような審査や許認可を経て建設されたのかということである。国のエネルギー政策、地方の企業誘致、開発許認可が交差するところに、地方行政と国家安全保障の接点がある。

地元建設会社と政治団体に確認された接点

那須烏山市の上海電力関連事業を取り上げた動画では、地元建設会社、国会議員の親族、地方議員の関与などが問題提起されている。そこで県公報や企業関係資料を照合すると、具体的な接点が見つかった。

2024年12月13日付の栃木県公報911ページには、渡邊真太朗氏を代表者とする「三区真の会」、笠井慎介氏を代表者とする「三区の未来をつくる会」、渡邊眞氏を代表者とする「渡辺しんたろう後援会」が、いずれも那須烏山市金井2丁目7番11号を主たる事務所として届け出ていたことが記載されている。那須烏山商工会の会員情報によれば、同じ住所には渡邊建設株式会社が所在する。また、栃木県建設業協会の2020年度定時総会資料には、渡邊眞氏が同社の関係者として協会理事を務めていた記録もある。

同社が市の公共工事を受注していたことも、那須烏山市の2023年度契約結果で確認できる。2023年10月には「道路整備工事(社資)関下精神場線その1」を税抜き1630万円で落札していた。

ただし、政治団体と企業が同じ住所を使うことや、企業関係者が政治活動に関わること自体は違法ではない。公共工事の受注も、それだけで不当な利益誘導を意味しない。さらに、渡邊建設が上海電力関連発電所を施工したとする独立した契約資料は確認できていない。 政治家や地方議員と当該事業との具体的な関係についても、なお裏付けが必要である。

渋井市議についても、2011年には太陽光発電の導入を提案した一方、2015年には別の開発事業の行政監督を追及した記録がある。発言の対象事業を区別せず、上海電力の事業を一貫して推進したと断定することはできない。

政治家、企業、行政の接点が確認されたことと、不正が立証されたことは別である。 今回の調査によって、発電所の施工体制、林地開発許可、土地の権利移転など、今後確認すべき事項が明確になった。これこそが、公開資料を照合するOSINTの意義である。

2️⃣道路予算と福岡県議会――権限、財源、責任の所在を問う

栃木3区の道路予算問題と福岡県議会の金銭授受疑惑は、性質こそ異なるが、政治的な影響力と公的な権限を区別し、その行使について説明責任を求める必要性を示している。

道路関係交付金は、市町の事業だけを見るか、県の事業まで含めるかで増減の見え方が変わる。福岡県議会の第三者調査と百条委員会の権限の違いも整理した。クリックすれば拡大します。

道路予算を国会議員が自由に削減できるのか

簗氏は、自身を応援しなかった首長のいる那須烏山市と那珂川町について、道路予算を大幅に削減したと発言した。しかし、個々の国会議員が国土交通省の道路関係予算を独断で配分・削減する権限を持つわけではない。国会議員による政策要望や働きかけと、所管省庁による正式な予算配分は区別しなければならない。

国交省の調査結果を伝えた日本工業経済新聞によれば、2025年度と2026年度の当初配分を比較すると、那須烏山市が実施する道路事業への想定国費は1億4200万円から1億500万円へ、那珂川町では4900万円から2300万円へ減少した。一方、県が実施する事業まで含めると、那須烏山市域では3億2500万円から3億9200万円へ、那珂川町域では2億6200万円から3億1900万円へ増加していた。これは道路関係交付金の想定国費であり、すべての道路予算を網羅したものではない。

つまり、市町事業だけなら減額、県事業を含めれば増額という結果である。どちらか一方だけを取り出しても、実態は正確に伝わらない。

10月9日の井林辰憲国土交通相の公式会見によれば、簗氏から2月中旬に予算配分について問い合わせがあったものの、事業担当部局には伝わっておらず、配分作業への影響はなかったという。したがって、簗氏が削減したと発言したことと、実際に政治的圧力によって予算が削減されたことは別であり、後者は立証されていない。

一方、国交省は簗氏と幹部との面談について、記録を作成する必要がないと判断し、記録を残していなかったと説明している。記録の作成義務は面談内容や文書管理基準によって異なるが、行政判断に関わる政治家との接触を後から検証できるかという問題は残る。行政が適切に判断したと説明することと、その経緯を記録によって検証できることは同じではない。

地方自治の根本問題――権限と財源の分離

日本国憲法第92条が定める「地方自治の本旨」は、一般に団体自治と住民自治という2つの原則によって説明される。前者は国から一定の独立性を持つ自治体が地域行政を担うこと、後者は住民の意思と責任に基づいて行政を運営することである。

地方分権によって国から自治体へ権限を移しても、それだけで住民自治が強化されるとは限らない。また、自治体は道路、学校、福祉、防災などを担うが、財源のすべてを独自の税収で賄っているわけではない。地方税のほか、地方交付税、国庫支出金、地方債などが財政を支えている。

地方交付税には財政力格差を調整し、必要な一般財源を保障する役割がある。一方、国庫支出金は特定の事業などに対する国の財政負担であり、性質が異なる。こうした制度には合理的な目的があるが、国と地方が権限と費用を分担するため、住民からは決定と責任の所在が分かりにくい場合もある。

地方自治を考える際には、権限、財源、責任、情報という4つの要素を区別し、その関係を検証する必要がある。 問題は国と地方が役割を分担することではなく、誰が何を決定し、その結果について誰が説明責任を負うのかが不透明になることである。

福岡県議会――監視する議会自身を誰が監視するのか

福岡県議会では、正副議長への就任をめぐり、吉松源昭県議と江藤秀之県議が、自民党県議団の幹部らに合わせて2840万円を支払ったと証言した。テレビ西日本の報道では、議長経験者の樋口明県議も、過去にゴルフ代や食事代などとして約700万円を負担したと証言している。ただし、関係者の説明は一致しておらず、不正な金銭授受が事実として認定されたわけではない。

地方議会の正副議長人事では会派間の政治的調整が行われる。しかし、役職への就任と金銭授受が結びついていたとの疑惑が生じれば、その目的や経緯を調査する必要がある。福岡県議会の公式発表によれば、県議会は8月17日、地方自治法第100条の2に基づく外部専門家の知見を活用する調査を決めた。

その後、より強い調査権限を持つ百条委員会の設置が争点となった。百条委員会は地方自治法第100条に基づく調査権を行使し、証人の出頭や記録の提出を求めることができる。第三者による専門的な調査とは、法的な権限が異なる。

10月16日、福岡県議会の議会運営委員会では、百条委員会設置議案を継続審査とする判断が示された。しかし、17日未明の本会議でこれが覆され、設置議案が賛成多数で可決された。調査方法を慎重に議論すること自体は不当ではないが、行政を監視する議会が、自らの疑惑を調査する権限の行使をめぐって深夜まで対立したことは、地方議会の統治を考える重要な事例である。

地方自治体は、首長と議会議員をそれぞれ住民が直接選ぶ二元代表制を採用している。両者が独立した民主的正統性を持ち、相互に抑制・均衡することが基本だ。しかし、議会自身に疑惑が生じれば、その議会も住民に対して説明責任を果たさなければならない。

百条委員会の設置は、事実解明の始まりである。今後は証言や資料の検証、結果の公表、再発防止策まで確認する必要がある。行政を監視する地方議会も、住民による監視の対象なのである。

3️⃣地方自治の本当の危機――権限を住民が統制できているのか

栃木3区と福岡の事例を通じて見えてくるのは、地方政治の意思決定が住民から分かりにくいという問題である。栃木3区では、道路予算の実際の配分と政治家の発言を区別する必要があった。上海電力関連事業についても、企業誘致政策、国会質問、市長答弁、企業情報を照合しなければ経緯を把握できなかった。福岡では、金銭授受をめぐる証言だけでなく、議会の調査権限と、その行使を決める政治過程が問題となった。

地方分権だけでは住民自治は実現しない

地方自治の目的は、国から地方へ権限を移すことだけではない。その権限を住民の意思と責任に基づいて行使できるようにすることである。那須烏山市には県から一定の林地開発許可権限が移譲されていたが、権限の移譲と、その行使を住民が検証できることは別問題である。福岡県議会でも、法律上の調査権限が存在することと、それを実際に行使することは同じではなかった。

地方の首長や議員は、住民から選ばれた代表である。しかし、選挙によって権限を託すことは、任期中の判断を白紙委任することではない。地方分権が地方の政治家への権力集中に終わり、住民による統制が伴わなければ、地方自治の本旨は十分に実現されない。 権限を移すことと、その権限を住民が監視できるようにすることを、一体として考える必要がある。

地方議会を傍聴し、公開資料を確認する住民。地方政治の監視は、住民自治の基本である。※画像はイメージ。

公開されている情報を住民は利用できるのか

今回の栃木3区の調査では、国会会議録、市議会会議録、県公報、企業情報、公共工事の契約記録などを照合することで、通常の報道だけでは分かりにくい事実の関係を確認できた。これらは一般の住民も利用できる公開資料である。しかし、資料は異なる機関に分散し、保存形式や検索方法も統一されていない。過去の行政判断を調べるだけでも、相当な時間と労力を要する。

情報が公開されていることと、住民がその情報を使って行政判断を検証できることは、同じではない。 特に公共工事、土地開発、補助金、行政契約などについては、決定主体、根拠法令、審査内容、契約結果を確認しやすくする必要がある。行政文書の作成・保存も欠かせない。記録が存在しなければ、情報公開請求によっても過去の判断を十分に検証できない場合があるからだ。

近年はAIを利用して大量の行政資料を検索・整理することも可能になりつつある。しかし、AIが提示した情報をそのまま事実と認めることはできない。今回の調査でも、法人名、所在地、工事件名、契約金額などを原資料に戻って照合する作業が重要だった。OSINTの基本は、情報の量ではなく、出典を確認し、異なる資料を突き合わせることである。

住民自身が地方政治を監視する

住民は選挙後も、自治体の予算、決算、公共事業、議会活動について情報を確認できる。疑問があれば行政に説明を求め、情報公開請求や議会への請願・陳情などを利用することもできる。一定の財務会計上の行為については、地方自治法第242条に基づく住民監査請求という制度もある。こうした仕組みを活用するためにも、行政の権限や判断の経緯を正確に理解することが重要である。

監視の対象は、反対する政党や政治家に限らない。支持する政治家であっても、公金の使途、行政権限の行使、政策の実績については同じ基準で検証する必要がある。政治家への支持と、その行動に説明責任を求めることは矛盾しない。むしろ、権力の行使を継続的に確認することが、地方自治を健全に保つ条件となる。

今回の問題は栃木県や福岡県だけにとどまらない。北海道の土地・水資源管理、札幌市の政策決定、沖縄の安全保障政策や住民避難など、地方自治体が担う行政事務は国家の基盤とも深く関わっている。道路、港湾、電力、水源、通信などは国民生活と我が国の供給力を支える重要な資産であり、その整備と維持管理には国と地方の双方が責任を負っている。

国が政策を立案し、必要な財源を確保しても、地方行政が適切に機能しなければ、政策の効果は十分に発揮されない。逆に、国と地方が権限に応じた責任を果たし、住民による監視が機能すれば、地域インフラの整備や維持管理は、長期的な国家資産の形成と国民生活の安定につながる。

地方政治の問題は、地方だけの問題ではない。我が国の統治能力と国家の基盤を支える問題なのである。

結語――辞任と百条委員会の設置は、問題解決の終点ではない

簗和生前農水相は辞任した。福岡県議会では百条委員会の設置が決まった。しかし、辞任や委員会の設置によって、すべての問題が解決したわけではない。栃木3区では道路予算の配分経緯に加え、上海電力関連事業の開発許認可や施工体制など、なお確認すべき事項が残っている。福岡では、百条委員会による証言や資料の検証、調査結果の公表、再発防止策が問われる。

今回の調査から分かったのは、地方政治の問題が政治家個人の言動だけでは説明できないということである。国と地方の権限、公共事業の財源、行政の判断、議会の監視、企業活動、地域の政治的関係が複雑に重なっている。それぞれの決定主体と責任を区別しなければ、問題の所在を見誤る。OSINTによって公開資料を照合することは、確認できる事実を増やすだけでなく、何が未確認なのかを明らかにすることにもつながる。

地方自治の本旨は、住民の意思と責任に基づいて地域の行政を運営することにある。そのためには、権限を地方へ移譲するだけでなく、行政の判断を記録によって検証できる制度と、それを活用する住民の存在が欠かせない。政治家が辞任して全国的なニュースが終わっても、地域には道路が残り、発電所が残り、住民の生活が続いていく。行政判断の影響は、政治ニュースよりはるかに長く続くのである。

そして、地方自治の健全性は国家安全保障とも無関係ではない。土地、道路、港湾、電力、水源、防災、住民避難など、我が国の存立と国民生活を支える基盤は、地方行政の日常的な活動と結びついている。国家の政策が十分な効果を発揮するためにも、地方の行政能力と住民による監視が重要となる。

国家の安全保障を国政だけに委ねてはならない。そして、地方自治の健全性を地方の政治家だけに委ねてもならない。

本稿は、全3回の連載「地方政治は誰が監視するのか」の第1回である。今回は栃木3区と福岡を通じて、地方政治の権力構造と監視の問題を検証した。第2回では北海道、札幌、沖縄を取り上げ、地方自治と国家安全保障の関係を考える。そして最終回の第3回では、OSINTによる公開資料の調査、情報公開請求、住民監査請求、AIの活用など、住民自身が地方政治を監視する具体的な方法を明らかにする。

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2025年11月25日火曜日

半導体補助金に「サイバー義務化」──高市政権が動かす“止まらないものづくり国家”


まとめ
  • 半導体補助金にサイバーセキュリティ要件が義務化され、日本の産業政策が「工場をつくる支援」から「国家の生命線を守る安全保障政策」へ転換した。
  • この動きは、高市早苗政権の「強い経済」「技術立国」「危機管理投資」の戦略に基づき、AI・半導体・サイバーを国家戦略の中核に据える方針の具体化である。
  • 工場停止が国家停止に直結するという危機認識が背景にあり、TSMCのウイルス感染やトヨタ工場停止など実際の事例が政策判断を後押しした。
  • サイバー義務化は企業にとってコスト増だが、同時に“止まらないサプライチェーン”という強力な競争力を生み、日本製半導体・装置・材料の国際的な信頼性向上につながる。
  • 今回の決定は、我が国の「常若」の精神—技術を絶えず更新し未来へ継ぐという霊性の文化—と高市政権の国家戦略が重なり合い、日本が「止まらないものづくり国家」へ踏み出した象徴である。
経済産業省が2026年度から半導体工場向け補助金の条件としてサイバーセキュリティ対策を義務づける方針を固めた。日本経済新聞が「半導体工場への補助金、サイバー対策を条件に 供給途絶リスク低減」(2025年11月23日)と報じている。

この動きは、日本の産業政策の性質そのものを変える。補助金を「工場をつくるための支援」から「国家の生命線を守るための安全保障ツール」へと引き上げる方針だからだ。

ちょうど同じ時期、高市早苗政権は「『強い経済』を実現する総合経済対策」を公表した。内閣府の政策文書では、AI・半導体を経済安全保障の中核に据え、複数年度にわたる危機管理投資を行うと明記されている

さらに、首相官邸の特設ページには、AI、半導体、重要鉱物、サイバーセキュリティなどを戦略分野として重点投資する方針が記さた。

つまり今回の決定は、単なる制度変更ではない。
高市政権が掲げる「技術立国」「経済安全保障」「国家としての危機管理投資」という大きな戦略が、半導体政策の現場に具体的な制度として落とし込まれた瞬間なのである。
 
1️⃣高市政権の危機認識──工場が止まれば国が止まる

高市政権閣議

高市政権がこの政策を推し進める背景には、明確な危機認識がある。
半導体を失えば日本は立ちゆかない。
そして「半導体工場が止まる」ことは、いまやサイバー攻撃で容易に起き得る。

その危機を裏づける事例はいくつもある。TSMCは2018年、ウイルス感染で複数工場が停止し、復旧に数日を要した。米国では2021年、コロニアル・パイプラインがランサムウェアで停止し、燃料供給が混乱した。日本でも2022年、トヨタがサプライヤーのシステム攻撃によって国内14工場の稼働を丸一日止めた。

これらの事例が突きつけるのは、「攻撃はデータではなく現実を止める」という事実だ。
爆弾を落とさずとも、ラインを止められる。
これは、半導体の供給力が国家そのものの脈動と結びついているということを意味する。

高市政権は、この現実を政策の中心に据えた。
「工場が止まれば国が止まる」という極めて直接的な危機感だ。

だからこそ補助金にサイバー義務化を付けた。
「作る国」ではなく、「止められない国」を目指すという方針である。
 
2️⃣補助金とサイバー要件──負担ではなく“新しい武器”である

日経の報道によると、2026年度以降の補助金には「高度なサイバー防御体制」が求められる。工場だけでなく、装置メーカーや素材メーカーにも同一水準のセキュリティが求められる見通しだ。これはサプライチェーン丸ごとを防衛の範囲に組み込むということだ。

TSMC熊本には4,760億円、Rapidus千歳には1兆7,225億円という巨額の支援が投入されている。国家規模の投資である以上、工場が攻撃一つで止まることは許されない。だからこそ「補助金の条件=工場を守る義務」という仕組みが導入される。

ラピダスの半導体工場「IIM-1」(7月、北海道千歳市)

企業にとってサイバー投資は確かにコストだ。しかし、それ以上に「安全性」という競争力を手にできる。世界の調達基準は、価格だけではなく「止まりにくいサプライチェーン」を重視する方向に進んでいる。
日本のものづくりは、信頼性と安全性で世界を席巻してきた。
その強みを、半導体という国家戦略分野で取り戻すことができる。

つまり、今回のサイバー義務化は負担ではない。
企業にとっては新しい“武器”であり、日本にとっては“国家としての保険”である。
3 技術自立、国際競争力、国家リスク軽減──三つの柱が一つの線でつながった

今回の政策は、高市政権が掲げる三つの柱を一本化したものだ。

第一に、技術自立だ。
TSMCとRapidusの進出で先端ロジックの国産能力は回復しつつある。しかし真の自立には「いつでも動く」ことまで含まれる。サイバー義務化はその条件を制度として明確にした。

第二に、国際競争力である。
日本製の半導体、日本製の装置、日本製の材料が“止まらない”というブランドを得れば、価格競争ではなく信頼性競争で世界をリードできる。

第三に、国家リスクの軽減だ。
台湾海峡の緊張、サイバー戦の激化、複合的な地政学リスクの拡大――どれを見ても、半導体工場の停止は国家機能の停止を意味する。
だからこそ、補助金とサイバー要件を一体化した。

この三本柱が一本の線でつながった時、日本の産業政策は“量”から“守り”へと歴史的転換を迎える。
 
結語


今回の決定には、我が国ならではの背景がある。我が国には古来、「常若」の精神がある。技を磨き続け、欠けた部分は更新し、未来へ絶えずつなぐという姿勢だ。ものづくりを単なる作業ではなく“いのちある営み”として重んじてきた文化である。

半導体工場を止めないという国家の決意は、この常若の精神と響き合う。技術を守り、強め、絶えず更新する姿勢は、我が国の底に流れる霊性の文化の現代的な姿だ。

そして、この方向へ舵を切ったのが高市政権である。高市早苗は、伝統と技術を断絶させず、我が国の魂を国家戦略へと昇華させた。

「止まらないものづくり国家」とは、単に工場を止めないという意味ではない。
常若の精神を受け継ぎ、絶えず未来へつなぎ続けるという、我が国の魂そのものなのだ。

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半導体ラピダスへ追加支援検討 武藤経産相、秋の経済対策で―【私の論評】安倍ビジョンが実を結ぶ!ラピダスとテンストレントの協業で切り拓く日本の次世代AI半導体と超省電力化 2024年10月25日
ラピダスへの巨額支援とジム・ケラーらとの協業を通じ、日本が次世代AI半導体と省電力化の中核を狙う国家戦略を解説した記事。安倍政権から高市政権へ続く「半導体を経済安保の要にする」流れを押さえており、今回のサイバー要件付き補助金を、その延長線上にある“止まらないものづくり国家”構想として位置づけるのに最適な関連記事。

2025年10月11日土曜日

日本列島総不況が生んだ自公連立に別れを──国家再生の号砲を鳴せ

 まとめ

  • 自公連立解消は必然:公明の対中志向の強まり(10/6の中国大使面会報道)と、10/10の離脱通告が“理念乖離”を可視化。長年の共依存構造が終わった。
  • 不況は人災:1988–1990のコアコアCPIは年+1.01%/+2.50%/+2.65%で物価暴騰はなし。実態は資産(地価・株価)バブルだったのに、日銀が実体過熱と誤認して引き締め、信用収縮を招いた。
  • 誤った政策が連立依存を生んだ:金融・財政を同時に締め、景気を冷やし続けた結果、自民は単独で安定多数を得にくくなり、選挙互助としての自公連立に依存した。
  • 構造的ゆがみ(国交相の“指定席”):公明が長期にわたり国交相を占め、公共事業のゲートを握ったことで、中立性や配分の歪み、レギュラトリー・キャプチャーの懸念が恒常化。
  • 処方箋は経済成長:連立という延命装置に頼らず、金融緩和+積極財政と供給制約の緩和、減税の組み合わせで経済成長軌道へ。成果で支持を得れば、連立は不要になる。

公明党が自民党との連立解消を正式に宣言した。四半世紀続いた「自公体制」は終わった。

離脱通告の数日前、10月6日に斉藤鉄夫代表が国会内で呉江浩・駐日中国大使と面会したと日経報道の要旨を引く複数記事が伝え、10月10日の自公首脳会談で離脱が通告された[1]。時系列は、公明党の対中志向の強まりと、連立の理念的乖離を象徴する出来事である。これは単なる政局ではない。日本政治を縛ってきた“共依存”の終わりだ。

この連立は当初から「政権安定」を名目に組まれた。しかし、その安定は国民経済の活力を犠牲にし、誤った政策を温存する装置に変質した。なぜ連立が必要になり、なぜ終わらざるを得なかったのか。本稿で道筋を示す。

1️⃣日本列島総不況が生んだ「自立喪失の政治」
 
1990年代初頭の資産バブル崩壊は、自民党政治の地盤を直撃した。地価と株価が崩れ、都市の中間層や地方の建設業、農業団体など従来の支持層は傷んだ。結果、自民が単独で安定多数を取りにくい体質になった。これが後の連立依存の土壌である。

日本経済は1992年以降「失われた10年」に沈んだ。強調すべきは、これは循環的景気後退ではなく政策による人災だという点だ。

当時の実体物価は「狂乱物価」ではない。コアコアCPI(食料・エネルギー除く)の年平均上昇率は、1988年+1.01%、1989年+2.50%、1990年+2.65%で小幅にとどまっていた[2]。高騰していたのは土地と株価という資産価格で、物価本体の暴騰ではない。にもかかわらず、日銀は実体の過熱と誤認し、急速な金融引き締めに踏み込んだ。これが資産バブルの崩壊を誘発し、信用収縮と過剰債務の連鎖を拡大させた。CPIの定義・接続は総務省統計の公開資料で確認できる[3]。


崩壊後も金融は引き締め基調が続き、政府は不況期に増税と歳出抑制で需要を冷やした。金融と財政が同時にブレーキという失策で、倒産と雇用不安が全国に広がった。これが文字通りの「日本列島総不況」であり、自民の支持基盤を破壊し、選挙での連立依存を不可避にした。

しかも解決は難しくなかった。本来は大胆な金融緩和と積極財政を同時に回せばよかった。それを官僚は「財政規律」や「インフレ懸念」で押しとどめ、政治も連立で延命を選んで誤りを温存した。

2000年代には「構造改革」論が台頭し、デフレ下で需要をさらに冷やして停滞を長引かせた。正しいマクロ政策(緩和+積極財政)を阻害したという意味で、ここが決定的な失敗である。

2️⃣「自自公」から始まった政権延命の構造
 
現在の自公は1999年の「自自公連立」に始まる。小渕恵三内閣の下、自民・自由・公明の三党体制が組まれ、参院の数不足を補って法案通過を容易にした。狙いは理念一致ではなく数による安定である。

自自公連立政権に向けた3党首会談を前に握手する(左から)小沢一郎自由党党首、小渕恵三首相、神崎武法公明党代表=1999年10月、首相官邸

しかし自由党との関係は持たなかった。2000年に小沢一郎が連立を離脱。自由党の一部は連立維持のため「保守党」を結成して残留し、のちに「保守新党」(2002年)を経て自民に吸収された。こうして自民+公明の二党体制が定着し、20年以上続いた。

公明の母体・創価学会の動員力は強い。小選挙区で1~2%の差が当落を分ける現実の中で、自民は公明の票を前提に選挙を組み立てるようになった。ここで自公の本質は、「政策連携」より選挙互助となった。理念を削り、延命装置としての連立だけが残った。最初から間違った連立だったと言わざるを得ない。

この構造的依存が長期化する中で、国政の重要ポストにも歪みが出た。とりわけ国土交通相の「長期専有」は象徴的だ。第二次安倍政権以降、太田昭宏(2012–2015)→石井啓一(2015–2019)→赤羽一嘉(2019–2021)→斉藤鉄夫(2021–2024)と公明党が連続で国交相を務め、その前にも北側一雄(2004–2006)・冬柴鐵三(2006–2008)ら公明出身の大臣が続いた[4][5]。主要紙はこのポストを「公明の指定席」と表現してきた[6]。

ポスト固定化は継続性という利点と引き換えに、①調達・公共事業を所管する巨大省庁の“政治的囲い込み”、②交通・都市開発における政策中立性への疑念、③公共事業配分の政治的バランスの歪みという統治リスクを恒常化させた。いわゆる土建国家の議論から見ても、特定政党が公共事業のゲートを握り続ける配置は、規制俘虜(レギュラトリー・キャプチャー)や利権化の温床になりやすい[7][8][9]。結果として、本来のマクロ政策転換(金融緩和と積極財政)が、所管利害の論理に吸収・希釈される副作用が生じた。

3️⃣共依存の崩壊と再生への道
 
不況が長引くほど有権者は“安定”を求め、自民は公明という“安定装置”に依存した。経済不安定→連立依存の鎖は二十余年続いたが、2020年代半ばに綻び始めた。

公明はこの間に変質した。かつては中道・福祉重視を掲げたが、近年は対中融和の姿勢を強め、訪中団派遣や政党交流を重ねた。香港や新疆など人権案件では慎重に終始し、防衛・経済安保で自民の対中警戒路線と乖離が目立った。連立の理念的基盤は内側から侵食されたのである。

さらに、10月6日に斉藤代表が国会内で呉江浩・中国大使と面会したとの日経報道の要旨を引用するまとめ記事が出ており、4日後の10月10日に自公首脳会談で離脱通告が行われた[1]。

そして2025年10月10日、公明は連立離脱を正式表明した。主要外電・経済紙も相次いで速報し、国政の大きな転換点となった[10][11][12]。

公明党斉藤哲夫代表と会談する自民党高市早苗総裁(10日、国会内)

これから自民は「票の装置」に頼らず、価値観と政策で結ぶ連携に向かうべきだ。理想は、そもそも単独過半を取り切るだけの経済成果で支持を固めることにある。バブル崩壊後の日本は、景気低迷→支持率低下→連立依存という負の連鎖にあった。

裏返せば、成長軌道に戻せば連立は要らない。安定は選挙互助ではなく、賃金・雇用・投資が回る現実の繁栄から生まれる。

結論は明快だ。自公解消は「不況が生んだ共依存政治」の終わりであり、民主政治が自立を取り戻す通過儀礼である。政治の自立を支える最強の処方箋は経済成長だ。金融緩和と機動的・積極的財政、供給制約を外す規制改革、家計・投資減税を組み合わせ、当たり前のマクロ政策を回せば、票は政策成果に回帰する。延命装置としての連立はいらない。誇りある政治はそこから始まる。高市政権はその道を選択するだろう。ただ、高市政権が長期政権にならなければ、時間がかかるかもしれないが、他党がこれを目指すだろう。確かなのは、もしそうなれば、それは自民党でも公明党でも無いということだ。

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「統合政府」の視点から積極財政の正当性を明快に解説。 

株価回復を手掛かりに、インフレ目標・財政協調による成長路線の有効性を示す。

参考・出典(脚注番号対応)

[1]「10月6日・国会内での大使面会」報道ベース(※日経本文は有料)
https://search.yahoo.co.jp/realtime/search/matome/0e53a70f5c7c45e5b390b6f6dc74103b-1759861209

[2]FRED(OECD系列)“Consumer Price Index: OECD Groups: All Items Non-Food Non-Energy: Total for Japan(Annual)”
https://fred.stlouisfed.org/series/CPGRLE01JPA657N

[3]総務省統計局「消費者物価指数(CPI) 結果・時系列データ」
https://www.stat.go.jp/data/cpi/index.html

[4]首相官邸:歴代大臣プロフィール(例)— 斉藤鉄夫/赤羽一嘉/石井啓一
斉藤:https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/meibo/daijin/saito_tetsuo.html
赤羽:https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/meibo/daijin/akaba_kazuyoshi.html
石井:https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/meibo_a/daijin/ishii_keiichi.html

[5]国会・公的機関記録(例)— 北側一雄/冬柴鐵三(差し替え版)

[6]毎日新聞「10年以上『指定席』 公明が国交相ポストにこだわるワケ」(2023/8/18)
https://mainichi.jp/articles/20230815/k00/00m/010/259000c
J-CAST「国交相はなぜ『公明党』が独占しているのか」(2020/9/19)
https://www.j-cast.com/2020/09/19394785.html?p=all

[7]East Asia Forum “From people to concrete: reviving Japan’s ‘construction state’ politics”(2013/2/26)
https://eastasiaforum.org/2013/02/26/from-people-to-concrete-reviving-japans-construction-state-politics/

[8]Gavan McCormack “The State of the Japanese State – Chapter 6: The Construction State”(書籍章案内)
https://www.cambridge.org/core/books/state-of-the-japanese-state/construction-state/A280C00E070DA119C87086A8BFF17060

[9]Jeffrey Broadbent “The institutional roots of the Japanese construction state”(ASIEN, 2002, PDF)
https://d-nb.info/1371264538/34

[10]AP “Japan’s Komeito Party withdraws from ruling coalition”(2025/10/10)
https://apnews.com/article/e9fe611e8868f6ce3ad8241dff7965ff

[11]Financial Times “Komeito quits Japan’s ruling coalition”(2025/10/10)
https://www.ft.com/content/d621cdce-051c-4e47-99a3-2ad408232cfa

[12]Wall Street Journal “Japan’s Komeito Party Withdraws From Ruling Coalition”(2025/10/10)
https://www.wsj.com/world/asia/japans-komeito-party-withdraws-from-ruling-coalition-0315bdd6


2022年12月28日水曜日

順序が逆…増税決定後に解散選挙 ネット上で批判噴出、自民党内からも「拙速だ」の声 岸田首相、具体的時期触れず―【私の論評】新年の冒頭「増税見送り」解散で、岸田政権は長期政権になるか(゚д゚)!

順序が逆…増税決定後に解散選挙 ネット上で批判噴出、自民党内からも「拙速だ」の声 岸田首相、具体的時期触れず


 岸田文雄首相は27日のBS―TBS番組「報道1930」で、防衛費増額に伴う「増税」を開始する前に衆院解散・総選挙に踏み切るとの見通しを示した。増税は2024~27年の適切な時期に始まるとしたうえで、「スタートの時期はこれから決めるが、それまでには選挙がある」と述べた。増税を決定した後で「国民の信を問う」やり方に、ネット上などで批判が噴出している。

 《増税を決める前にやれよ! 参院選の時には、何も言ってなかったろ》《勝っても負けても増税するという意味らしい》《これほど増税増税言った政権は未だかつて無かった》

 産経ニュースが27日夜に伝えた「岸田首相、防衛増税前に『総選挙あると思う』」との記事には、ツイッターでこうした批判が寄せられていた。

 いわゆる「岸田増税」の対象は、法人、所得、たばこの3つの税。増税分は防衛費増額の財源の一部となる。27年度時点で1兆円強を見込む。

 日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、岸田首相は5月の日米首脳会談で「防衛力の抜本的強化」をジョー・バイデン大統領に約束した。

 ところが、7月の参院選で、財源や増税の是非が問われることはなかった。岸田首相は今月8日、与党税制調査会に「増税」の検討を指示し、1週間あまりでの結論を求めた。自民党内からも「拙速だ」などと批判が噴出していた。

【私の論評】新年の冒頭「増税見送り」解散で、岸田政権は長期政権になるか(゚д゚)!

増税を決めた後で、解散総選挙すれば、選挙で勝つことはできず、大敗して岸田総理は、その責任をとる形で辞任せざるをえなくなるでしょう。最長で、来年の広島サミットが終わったあたりで辞任ということなります。

これは、上の記事にもある通り、順番が逆です。一番良いのは、新年の国会の冒頭で、増税しない旨を公表して解散をし2月に総選挙をするというのがベストでしょう。

こうすれば、選挙が勝利し、岸田政権はさらに継続されることになるでしょう。それについては、高橋洋一氏が下の動画で述べています。


私自身は、岸田総理が、増税の決意を翻意しないという前提で、新年の国会前に、安倍派の閣僚が、「増税反対」の意思を表明しつつ、辞任する案を考えていました。これは無論、絶対に「増税」させないことを前提としています。

これは、かなりインパクトがあり、新年の国会が開催される前の、政府より防衛増税財源法案などが提出される前にこれを実行すれば、新年の国会は、財源法案の審議など吹き飛び、審議どころでなくなり、岸田総理は、増税を決める前に、解散総選挙に追い込まれることになります。

こうなると、選挙には大敗し、岸田総理は、その責任をとってやめることになります。そうして、総裁選が行われることになりますが、その有力候補は、茂木、河野、林ということになり、これでは残念ながら、岸田政権以下になりそうです。三人のうち誰が総理になっても、求心力は低下するでしょうし、支持率も上がることはないでしょう。

であれば、岸田総理が「増税」しないと宣言して、冒頭解散に踏み切れば、自民党にとっても、岸田総理にとっても最も良いやり方ではないかと思います。

冒頭解散とは、首相が召集した国会の初日(冒頭)に衆議院を解散する状況です。

1月に必ず開かれる通常国会や、それ以外の期間で召集された臨時国会では通常、冒頭で首相が施政方針演説(通常国会)や所信表明演説(臨時国会)を本会議で行います。

後に主に通常国会では重要閣僚(国務大臣)の演説があり、引き続き国会内の議員団体である会派(所属政党と必ずしも一致しない)代表による質問が行われ、舞台は委員会へと移ります。 

冒頭解散は首相の演説さえなされず、衆議院議長が召集および開会を宣言した後に解散詔書を読み上げるといった段取りになります。 

解散詔書とは閣議(首相と国務大臣の会議)で首相が解散への同意をはかり、全員が署名した閣議書を作成、皇居に運ばれて天皇陛下がサインと押印をしたもの。「詔書」とは「天皇の文書」です。慣例にしたがって紫色の袱紗(絹製の布)にくるまれて衆議院議長の下に運ばれ、議長が宣言したら解散です。厳密にいえばもう少し複雑ですが、省略します。

 では日本国憲法下で、これまでに回あった「冒頭解散」を振り返ってみます。

冒頭解散は、一番最近のものは、2017年安倍政権において行われました。同年9月28日に召集された臨時国会は、安倍晋三首相の所信表明演説や各党代表質問などを行うことなく冒頭で衆院解散となりました。これは、21年ぶりことでした。解散の理由は、当時森友問題という未だに何が問題なのかも理解できない疑惑なるものがあり、安倍政権の信を問うという意味合いでした。結局このときの解散選挙でも自民党は勝利しました。

未だに、野党は「もり・かけ・さくら」にこだわっている向きもありますが、現在に至るまで、明確に安倍総理の不正行為を証明できていません。

冒頭解散をしたため、「残業代ゼロ」カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法の施行を踏まえ提出したギャンブル依存症対策法案なども廃案になりました。

これ以前に行われたのは三回でした。それを振り返っておきます。

(1)1966年「黒い霧解散」

1966(昭和41)年4月ごろから東京地検特捜部のメスが入った大がかりな不正融資事件の捜査過程で、自民党所属の国会議員が逮捕されたあたりから露わになってきた「政治とカネ」問題に加えて、大臣が自身の選挙区に急行が停まるよう要請した「我田引鉄」や横領疑惑などの不祥事が連発しました。

1967年、1月29日の衆院選で、勝利した佐藤栄作首相

第1次佐藤栄作第3次改造内閣が成立した12月3日から始まった臨時国会(20日閉幕)は紛糾し、事態打開を図るため27日召集の通常国会(当時は12月召集でした)冒頭に解散しました。

(2)1986年「死んだふり解散」

第2次中曽根康弘第2次改造改造内閣(1985年12月成立)が打って出た「衆参ダブル選挙」です。1983(昭和58)年の総選挙で自民党が公認候補で過半数割れしたのを解散で挽回したい思惑が首相にあるというのは誰もが察知していました。通常国会中に首相は解散風を吹かせたかと思えば、「考えていない」と発言するなど観測気球を上げ続けます。


総選挙の争点の一つとみられていたのが、現在の消費税の源流にあたる大型間接税導入でした。首相は微妙な言い回しで、やる気があるようなないような発言を繰り返し、選挙中は導入しないと断言。「この顔が嘘をつく顔に見えますか」とまで言い放ちました。結果は自民の歴史的圧勝。ところが選挙後に間接税の一種である「売上税」を導入すると豹変して87年の通常国会に法案を提出します。 

中曽根氏のあだ名は「風見鶏」。この解散にせよ間接税導入にせよ本領が存分に発揮されたといえましょう。

(3)1996年「小選挙区解散」

1993(平成5)年の総選挙で自民党が過半数割れ。長らく野党第一党の座に君臨した日本社会党(社会党)も大幅に議席を減らす中、この頃生まれた新党が躍進しました。新生党(創設は93年)、日本新党(同92年)、新党さきがけ(同93年)など。新生党を事実上率いていた小沢一郎衆院議員が、持ち前の豪腕で非自民勢力をまとめ上げ日本新党代表の細川護煕(もりひろ)衆院議員を担いだ非自民連立内閣成立を果たし、自民党を野へ追い落としました。この内閣の下で、衆議院の選挙区がこれまでの中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へ変更されます。

巻き返したい自民は94年、非自民勢力から離れた社会党と、あっと驚く連立構想へ動き出します。同じく新党さきがけも加え、社会党トップの村山富市衆院議員を首班とする「自社さ連立内閣」をつくり、政権を奪い返しました。自民と社会は1955年以来の宿敵。そこと組んだばかりか首相の座まで用意した執念の奪還劇だったのです。 

ただ村山政権は崩壊過程にあった社会党を基盤としていて弱体でした。解散も打たないまま退陣して橋本龍太郎自民党総裁が96年1月に跡を襲いました。 

この頃、非自民勢力も集合離散を繰り返しており、小沢氏が実質的に仕切る新進党(創設は94年)と、社民党(社会党から党名変更)やさきがけの多くを糾合した96年結党の民主党などに収れんされていきます。93年の敗北から名実ともに立ち直るべく、第1次橋本内閣が96年9月27日の通常国会冒頭で解散、小選挙区比例代表並立制下で初めての総選挙で勝負に出ました。自民は議席を伸ばし第2次橋本内閣が成立します。

開票速報を見守る橋本竜太郎首相(左)と野中広務幹事長代理(1996年10月20日、自民党本部で)

さて、今回冒頭解散を行えば、しかも「増税しない」解散を打てば、岸田政権にとっては起死回生のチャンスとなるのは間違いないです。

そうして、この選挙が終れば、もともと黄金の三年間といわれていたように、選挙はありません。岸田首相は、次の総裁選で勝てる見込みもでてきます。

増税にこだわり続けて、地獄をみるのか、増税などすっぱりやめて、長期政権を狙うのか、岸田総理の決断がそれを決定します。

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2022年12月26日月曜日

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岸田首相の失策で、アベノミクスは潰えた…ついに「失われた20年」が再来する予感
◆
髙橋 洋一 

萩生田氏はまだ粘っているが…

 先週の本コラムで、防衛増税はほぼ決まりかけており、一縷の望みは、財源確保にかかわる法案の扱いだと述べた。その法案について、政府(岸田政権・財務省)は次期通常国会に提出予定としている。

現物はこちらからご覧になれます

 実施時期は確定しないが、この法案に増税措置が盛り込まれるはずだ。次期通常国会の提出が決まれば、防衛増税は確定する。

 ただし、萩生田政調会長はまだ頑張っている。12月25日、フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演し、防衛増税について「明確な方向性が出た時には、国民に判断してもらう必要も当然ある」と述べ、衆院の解散総選挙で信を問うべきだとの姿勢を示した。

 5年後に1兆円超を増税でまかなう方針について、「必ずしも1兆円でなくてもいいわけだから、しっかり見れば、まだまだ使える金はあるのではないかと思うので、来年、深掘りしていく」と述べ、具体的には「歳出改革の努力、あるいは特別会計など」を挙げた。

 この防衛増税は、アベノミクスの方向を大きく転換させることになる。安倍・菅政権では、民主党政権で決めた消費増税以外は、極力増税を回避してきた。本コラムにも書いたが、新型コロナ対策の100兆円予算も、政府・日銀の連合軍(安倍首相の言葉)により、増税せずに行った。

 ここで、アベノミクス10年を振り返っておこう。

 アベノミクスの最大の成果は、雇用の確保だった。筆者は安倍元首相と話す機会が多かったが、マクロ経済政策について、最低ラインは雇用の確保、その上に所得が高ければいいといつも説明した。そのために、財政政策と金融政策を使って、GDPギャップを解消しインフレを加速しない失業率(NAIRU)を目指すというシンプルなものだ。そうしたマクロ経済を表する筆者の基準もシンプルで、雇用の確保が出来れば60点、その上に所得の向上があれば40点を追加して100点満点とするものだ。

 アベノミクスでいろいろなことを言う人がおり落第点という人も少なくないが、その評価基準について筆者にはさっぱり分からない。筆者は大学教授をしているが、学生の評価について、100満点でつける。その評価基準はどこの大学でも同じで予めシラバスで公開しているが、筆者の場合、授業点(出席点)が50点、定期試験が40点、レポート提出点が10点としている。この基準では、万が一定期試験が0点であっても、まじめに出席し正しいレポートを提出していれば、60点を取ることができ、及第(60点)となる。
 
 アベノミクスの方向性が大転換

 さて、アベノミクスを採点すると、安倍政権での雇用は歴代政権で最高である。雇用は失業率低下と就業者数で測れるが、安倍政権は400万人以上の就業者数増、1.3%の失業率低下だった。こうした点から見れば、雇用は60点満点だ。


 所得の観点ではどうか。所得は実質GDP成長率で計るが、同時にインフレ率(名目GDPと実質GDPの比であるGDPデフレータ)をみておく。安倍政権は、実質GDPは0.4%、インフレ率は0.7%であり、高度成長期の歴代政権と比べると見劣りがする。戦後GDP統計のある鳩山政権以降の31政権において、安倍政権の実質GDP成長率は25位、インフレ率は2%から乖離でみると7位。


 いずれにしても、戦後政権での安倍政権のGDPパフォーマンスはほぼ中位であるので、40点満点中20点である。

 したがって、安倍政権の評価をすれば、雇用60点、GDP20点で、計80点だ。

 なお、日本がデフレに陥った1995年以降の13政権の中では、安倍政権は実質GDP成長率で8番目、インフレ率では1位(安倍政権以外はすべてマイナス)だ。安倍政権は、デフレ経済にあって唯一デフレ脱却しかけた政権だった。

 これが、数字から見たアベノミクスの評価である。

 冒頭の防衛増税で、アベノミクスの方向性が違ってきた。防衛増税については、たかだか1兆円なので、防衛国債の範囲を拡大することか埋蔵金(外為特会や債務償還費を活用)でどう考えても回避できる。財務官僚がどうして増税したいとしか考えられない。

 これで、思い出すのが、東日本大震災後の「ホップ、ステップ、ジャンプ」論だ。復興増税をホップとして、ステップ、ジャンプで二段階の消費増税を行う財務省の構想だった。実は、それを2011年6月20日の本コラムで暴露した。実際にはそのとおりになった。

日銀が現した馬脚

 今回も、防衛増税はホップであり、ステップ、ジャンプで2段階消費増税を財務省は狙っている。そして、消費税率は15%になるだろう。そのためには、ともかく「増税」したのだ。

 他方、金融政策でもアベノミクスの真逆の政策が実施されようとしている。

 日銀は、20日容認する長期金利の上限と下限を0.25%から0.5%程度まで拡大した。会見で、黒田総裁は、事実上の利上げだとの指摘に対し、利上げではないと強調した。また、金融緩和は維持しているとし、景気にプラスとした。

 市場の反応は、長期金利が0.2%程度上昇し、為替は5円程度円高になり、株価は800円程度下落した。黒田総裁は利上げでないと言ったが、市場の反応は長期金利の急騰だった。黒田総裁は9月26日の会見で、長期金利の上限引き上げは利上げに当たるのかとの質問に「それはなると思う。明らかに金融緩和の効果を阻害するので考えていない」と明言していたので、そのとおりだった。

 その結果、急な円高になったが、黒田総裁は急な為替変動は好ましくないといっていたが、今回の円高は急な為替変動だ。

 日銀事務方の説明は、イールドカーブの歪みの是正だ。

 しかし、イールドカーブを是正して「金融緩和」するなら残存8~9年の国債を買えばいいだけだ。日銀はこのあまりに稚拙な説明資料により、実際は「利上げ」したかった馬脚が現れた。いくら黒田総裁が利上げでないといっても、変動住宅ローン金利は既に上がっており、借入者の金利支払いはもうすぐなのでそろそろ誰の目にも分かるだろう。

 また、10月24日付けの本コラムで書いたように、円安は日本経済全体のGDP押し上げ要因だったが、円高になったので、株価が急落したのは当然だ。

 円安で企業の経常利益は過去最高となっており、円高が景気悪化につながるだろう。生産拠点の国内回帰の動きにも冷や水を浴びせかねない。

 今後、住宅ローンの金利も上昇し、企業が融資を受ける条件も厳しくなるだろう。一方で、銀行など金融機関の経営には恩恵が大きい。今回の事実上の利上げは、雇用、GDPなどマクロ経済よりも金融機関を優遇した政策だといえる。

 いずれにしても、市場から見れば、黒田総裁は従来の発言を翻した。しかし、これだけの政策方向の転換について、黒田総裁だけの独断とも考えにくい。岸田首相の了解があったと考えるのが自然だ。

 いよいよアベノミクスから大きく舵が切られた。筆者の予感は、再びデフレ、失われた20年の再来だ。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】増税危機はかなり切迫!財源確保法案が来年国会に出されることが決まれば、その時点で試合終了(゚д゚)!

日銀は、20日容認する長期金利の上限と下限を0.25%から0.5%程度まで拡大したことについては、イールドカープコントロールの一環であると説明しており、これは利上げではないとしており、高橋洋一氏以外のいわゆるリフレ派の方々の中にも、そのように解釈している人もいます。

ただ、これは、確かに高橋洋一氏が主張するように、まったく実施する必要のない措置でした。日銀は、今まで通りの金融緩和を継続すべきでした。

高橋氏としては、半端ではない危機感を抱いているのだと思います。上の記事には、「今回も、防衛増税はホップであり、ステップ、ジャンプで2段階消費増税を財務省は狙っている。そして、消費税率は15%になるだろう。そのためには、ともかく「増税」したのだ」という指摘があります。

これについては、高橋氏がABCテレビに出演した際にも語っています。

嘉悦大の高橋洋一教授(67)、京都大学大学院の藤井聡教授(54)は24日、レギュラー出演するABCテレビ「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」の特番「わ~るいどカップ2022 ミカタオールスターズが語ーるSP」に出演。消費税15%の可能性について言及しました。下は、その番組で用いられたテロップです。


テロップ一番下の、高橋洋一氏の発言を御覧ください。防衛増税確保法案が出てしまうと、増税が確定しまい。その時点で、後から何を言おうと、どのような手段を講じても、試合終了になってしまうのです。

自民・公明両党は先日、防衛費増額の財源をまかなうため法人税、所得税、たばこ税の増税が盛り込まれた2023(令和5)年度の税制改正大綱を決定しましたが、元財務官僚の高橋氏は「今のところ、増税の話は自民党の文書でしか書いていない。本当にゲームセットになるのは法案が次の通常国会に出たら。財源確保法案っていうのを用意している」と今後の流れを解説しました。

来年の2023年1月27日からはじまる通常国会に防衛増税確保法案が出されることが決まれば、それでほぼ防衛増税が決まり、その後は消費税増税もいずれ15%は決まりになるだろうというのが高橋洋一氏の見立てです。

これを受け、藤井氏は「今回増税になると法人税と所得税が増税になる。これが本当に通ると、確実に消費税の増税を岸田政権は仕掛けてくる。15%になるとも言われている」と指摘。高橋氏も「東日本大震災を思ってください。復興増税があったでしょ?あれがホップ。その後にステップで消費増税。もう1回狙ってるんですよ」と話し、「多分、12%とかやって、そのあと15%」と防衛増税後の消費増税を予測しました。

番組MCの東野幸治やスタジオパネラーのほんこん、「ジャニーズWEST」中間淳太らが「15%?」と唖然とするなか、藤井氏は「その布石を止めるために、今の局面が極めて大事」と強調していました。


まさに、今の局面が大事なのです。「2023(令和5)年度の税制改正大綱」にもとづく、財源確保法が、次の通常国会にだされ、その法律が通ってしまえば、人税、所得税、たばこ税の増税が本決まりになり、そこから先は、どう頑張っても取り返しがつきません。

これは、三党合意により決まった、消費税増税法案を思い起こさせます。

三党合意(さんとうごうい)とは、2012年の民主党政権(野田内閣)下において、民主党、自由民主党、公明党の三党間において取り決められた、社会保障と税の一体改革に関する合意です。

2012年(平成24年)6月21日に三党の幹事長会談が行われ、三党合意を確約する「三党確認書」が、作成されました。この三党合意にもとづき消費税増税法案が国会で審議し、成立したのです。まさに、「2023(令和5)年度の税制改正大綱」は、この三党合意のような働きをして、今のままだと、防衛増税は決まってしまいそうなのです。

三党合意とその後の消費税増税法案が決まったということがあったため、後に安倍首相は、増税を2度も延期しましたが、結局総理大臣在任中に8%と10%の増税をせざるを得なかったのです。一旦決まった法律を覆すことは、本当に難しいことなのです。

だかこそ、高橋洋一氏はかなり危機感を感じており、日銀の実質上の利上げに関しても大反対しているのでしょう。

このブログでは、英国のジョンソン、トラス両首相の辞任という大政変を例にとり、日本でも増税反対に抗議して、閣僚が自ら辞めるということをすべきではないかということを主張しました。

ただ、このときは、ここまで増税危機が切迫しているとは思っていなかったので、安倍派閣僚が4人がひとりずつ辞任して、最後の最後にそれでも、岸田総理が翻意をしなかった場合、閣僚ではないものの、萩生田光一政調会長が辞任するという具合に進めれば良いと思っていました。

ただ、状況の切迫具合からみると、それでは甘いかもしれません。岸田文雄首相が26日、秋葉賢也復興相を事実上更迭する方針を固めました。これは年内に「閣内の火種」を消し、来年1月下旬に召集される通常国会の論戦に向けて仕切り直しを図るためとみられます。

これで、人事の岸田といわれる、岸田政権の閣僚の辞任は四人目となります。これとほぼ同時に、安倍派閣僚四人も防衛増税ならびに消費税増税に反対し、増税するなら、総選挙で国民の信を問うべきと主張して、辞任すべきではないかと思います。そうなると、秋葉氏とあわせて、5人が辞任というこになり、岸田政権への打撃は半端なものではなくなります。

それこそ、国会は、防衛費財源確保法案の審議どころでなくなります。これは、かなりのインパクトがあり、野党はこれに大反発して、国会はこの話題が中心となり、マスコミもこの話題でもちきりとなり、財源確保法案のことなど、忘れさられたような状況になるでしょう。当然審議は、後回しにされることになります。

岸田首相は、5人の閣僚がほぼ同時に辞任ということになれば、内閣改造だけでは国民も野党も納得せず、解散総選挙を迫られることになるでしょう。それでも、増税の看板を下げることがなければ、それに今更下げたとしても、大敗を喫するのは目に見えています。それでも、与党の座を譲ることにはならいないとみられますが、岸田首相は辞任せざるを得なくなるでしょう。

その後の総裁選びが焦点になります。ポスト岸田の有力候補は、茂木氏、河野氏、林氏とされ、茂木氏が有力とされていましたが、これも番狂わせが起こりそうです。ここで、掲載すると、長くなってしまいそうなので、また機会を改めて掲載しようと思います。

次の総裁はマクロ経済を理解する人になっていただきたいです。いずれにせよ、現在は切迫した状況にあるのは、間違いありません。皆さんも、大反対しましょう。

そうして、有力政治家に陳情しましょう。私自身も、最近甘利氏にツイッターで陳情しました。それで、行動や考え方はかわりはしなかったようですが、このようなことをかなり多くの人が実施すれば、ある程度の影響は与えられるものと思います。最近の政治家は、SNSをかなり気にしているようです。

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2022年12月9日金曜日

旧統一教会問題めぐる被害者救済法案の成立に向け注目、国民民主党の動向 「新・与党化」に公明党反発も―【私の論評】岸田クライシスで新たな政局が生まれる(゚д゚)!

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国民民主党玉木代表

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を受けた被害者救済新法が閣議決定された。野党には「救済につながらない」との声もあるが、実効性や問題点について考えてみたい。

 現行の消費者契約法は、霊感などによる告知を用いた勧誘に対し取り消し権がある。今回の被害者救済法案では、消費者契約法の改正により、この取り消し権の対象拡大、期間延長がなされている。

 政府案では不退去、霊感などによる告知などにより困惑して寄付した場合を禁止行為とし、取り消しができる。期間は追認できるときから1年(寄付から5年)である。被害防止策として、禁止行為、借入・自宅売却などによる資金調達要求に対し勧告、命令ができ、刑事罰を科すことができる。

 一方、立憲民主党と日本維新の会の法案も、不当拘束、霊感などによる告知、マインドコントロールを手段の悪質性として取り消しができる。また、寄付は可処分所得の4分の1を目安としている。期間は追認できるときから5年(寄付から20年)である。手段の悪質性や可処分所得の4分の1を超える寄付に対し勧告、命令ができ、刑事罰を科すことができる。

 こうしてみると、政府案と立民・維新案はかなり似通っている。

 立民・維新は「政府案は全く不十分」というが、そこまでではないだろう。行政の方でしっかりと権限行使すればその差はかなり少なくなるはずだ。

 しかし、可処分所得の4分の1などの微妙な差があるのは事実だ。それは、政府案が公明党に配慮したからだろう。もし実質的な差がなくても、政治的には差があると主張されてしまうのは政府案の弱みだ。岸田文雄政権が、被害者救済法案を提出しても、支持率が回復する気配は乏しい。

 岸田政権は支持率低迷に苦慮しているので、政権運営のカンフル剤として、自民党が公明党との連立政権に国民民主党を加える案を検討しているとの一部報道が出ている。もし国民民主党が与党入りするのであれば、年明けにも内閣改造があるだろう。

 国民民主党は、2022年度当初予算や第2次補正予算に賛成しており、今回の被害者救済の政府法案についても評価している。このため、野党からも、国民民主党は既に与党化しているので、与党入りするほうがスッキリしているという声もある。連立を組んでいる公明党は、早速「わが党にメリットはない」と反発している。

 こうした動きもあるので、被害者救済法は政府案を一部修正し、自民、公明、国民民主の賛成で、成立する公算が大きい。政治的には、立民・維新の要求を全面的にのんで政治的な手柄を与えるわけにはいかないからだ。公明党を刺激しない程度の救済法になっているので、実効性はまったくないわけでもないといったところだろう。

 万が一、国民民主党を加えた「新・与党」になった場合、これまでかなりの部分でほごにされてきた中国非難決議が、良い方向に変わるかどうかが注目だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】岸田クライシスで新たな政局が生まれる(゚д゚)!

“わが党にメリットはない”と国民民主党の連立入りに反対する中国共産党の代弁者・公明党。媚中・公明党にメリットがないということは、日本国にとって大いにメリットがあるということです。

自民党は、公明党との連立を解消し、国民民主を迎え入れて、真の国民政党になるべきです。国民の次は維新を入れ、公明を連立離脱させ憲法改正の体制を整えてるべきです。ただ、維新に関しては、媚中議員も多いので、要注意です。維新のこれらの議員が力を増せば、公明党と変わりないということにもなりかねません。

公明党山口代表

ただ、公明党は党そのものが、中国を代弁するような党です。国民の生命・財産、そして領土を守る為の憲法改正等に中国の代弁者など、不要です。“救済新法”も骨抜きになってしまい、自民の一体誰が公明との連立を維持したいのかわかりません。

国民民主党は、上の記事にもある通り、2022年度当初予算や第2次補正予算に賛成しており、今回の被害者救済の政府法案についても評価しています。

拉致問題国際セミナー(参議院議員会館)においては、国民民主党は玉木雄一郎代表が挨拶し、岸田・バイデン間では安倍・トランプ間のような強さで拉致問題が取り上げられていない。具体的に戦略を立てて日米首脳会談に臨むべきと語りました。全くその通りです。その通

衆議院で採決された被害者救済法案。成立に向けて与党と協議をしていたのが国民民主党です。

玉木代表は、「あまり報道していただけませんでしたが、私たち国民民主党も1ヵ月以上にわたり与党と協議を行い、20項目近い提案を法案に取り入れてもらいました。その結果が今回の新法です。特に、家族への配慮義務を創設し、それに基づき家族が『当事者として』損害賠償できる枠組みは、国民民主党からの提案です」と、胸を張りました。

これこそが建設的な野党のあり方です。批判ばかりと言われる政党もやり方を見習うべきです。

自民党内でもいわゆる反岸田勢力の「岸田離れ」は収まらないですが、それが目立った「岸田降ろし」の動きにはつながっていません。それだけに、“辞任ドミノ”を抱えながらなんとか臨時国会を乗り切れた岸田首相にとって、「連立組み直しはさらなる政権弱体化につながる」との見方もあります。

岸田首相は「年内に問題閣僚などを更迭するミニ改造を断行できれば、政権は当分安泰との考え」ているとも言われています。臨時国会閉幕と2023年度予算案の策定作業が軌道に乗れば、「今回の国民与党化の風説は、師走の寒風に吹き流されて消える」との声もあるようですが、はたして本当でしょうか。

私は、今回の支持率低下は、「ミニ改造」をしたくらいでは、収まらないと思います。特に大反発しているのは自民党サイドで、防衛増税など容認できるわけがないということでまとまっています。

防衛3文書の議論と税制改正の議論が並行して進んでいたので、官邸が増税というところで結論付けてしまい、自民党税調に回されてしまえば、自民党税調の宮沢洋一会長は財務省のひも付きですから、そこで増税を決められてしまうのではないかという相当な危機感があったようです。

この防衛増税への反対の動きについては、なぜかほとんど報道されません。本日、自民党で行われた会合では、怒号が飛び交う展開となりました。その理由は、きのう岸田総理が表明した、「約1兆円強については国民の税制で、ご協力をお願いしなければならない」という発言です。

これに党内から批判が噴出したのです。

西田昌司政調会長代理は、「財源的には国債でいいんです。全く問題ないわけ」。柴山昌彦衆院議員「増税ありきで無理やり決めていこうというふうにしか思えない」。と発言しています。


「増税ありき」と批判されるのは理由があります。政府は防衛費を来年度から段階的に増加させ、2027年度には今より4兆円程度増やす考えです。

財源には歳出改革や剰余金の活用などを優先的にあて、それでも不足する1兆円強を増税で賄うとしています。

しかし、歳出改革の中身については鈴木俊一財務大臣は、「具体的な内容の検討を今行っている最中でありますので、年末に向けて、さらに詰めていきたい」というばかりです。

牧原秀樹衆院議員「きょう、わずか数ページの資料と言えないような資料が出てきて、それを増税でやるんだみたいな議論をするのは拙速である」と発言しました。

マクロ経済や防衛にも疎い、自民党議員の中には、岸田首相に賛成する議員もいることはいます。ただ、これらの議員は財務相の片棒を担いでいるだけで、判断能力にも欠け、実務レベルではほとんど評価されない議員です。

これらの議員が、権力闘争だけ強みを発揮するとは考えにくいです。無論二階氏のような例外もいますが、さりとて、今後の政局の大きな台風の目になるとは考えにくいです。

以前にも述べたように、現状は、岸田政権の暴走により、安倍元総理支持者を中心とする保守岩盤支持層が離れてしまっています。特に、防衛増税ほど、まともな保守の憤怒のマグマを煮えたぎらせたことはないでしょう。防衛増税をして経済が落ち込めば、安全保障にも悪影響がでてきます。これでは、いつ岸田首相に向かって怒りのマグマが大噴出するかわからない状況です。

そのような自民党にとって、喫緊の課題は以前もこのブログで主張したように、離れてしまった保守岩盤支持層の支持を急いで取り戻すことです。それには、岸田首相が退き新たな首相のもとで、出直すということも考えられます。

ただ、現在ポスト岸田で名前の挙がっているのは茂木、河野太郎、林では、これは全く無理です。最近では、さすがに、あまりにもグレートアフォーすぎる、小泉進次郎や石破の名前はあがらなくなりましたが、それにしても、この三人では、保守岩盤支持層は全く納得しないでしょう。いくら、派閥の力学でそうなったといわれたとしても、これでは岸田首相のほうがましです。

これらのうちの誰が、ポスト岸田になったとしても、保守岩盤支持層は、これを支持しないでしょう。岸田政権並か、それ以下に支持率が下がることさえ予想できます。


であれば、岸田政権は継続するものとして、国民民主との連立をするという選択肢は、かなり有望であるとみられます。国民民主の玉木代表は、財務省出身であり、連立が成立すれば、岸田首相にとって強力な財務省対策にもなるものと考えられます。何よりも、玉木氏が、安倍元総理のようにマクロ経済を理解しているとみられるところが頼もしいです。

そうして、まともな経済対策や、防衛費の嵩上げ、憲法改正論議等を行うようになれば、岩盤支持層も納得するでしょう。

そうして自民党は黄金の三年間を利用して、次の政権の形を模索すれば良いのです。その間に若手を育成して、総理になり得る人物を育て上げるべきでしょう。

 国民民主党は、是々非々で物事をすすめる方向性で、どんどん健全かつ現実的な党になりつつあります。ぜひ、このままブレないで今のスタンスを貫いてほしいです。それができれば、公明党を排除して与党入りすることも十分ありえると思います。

岸田クライシスで、新たな政局が生まれつつあるようです。安倍政権や菅政権が続いていれば、保守岩盤支持層は満足したかもしれません。しかし岸田政権が生まれたことにより、様々な日本の課題・問題点が浮かびあがり、それが新たな政局を生み出し、良い方向に向かう可能性もでてきました。

安倍元総理がご存命であれば、岸田政権に睨みを利かし、良い方向に導かれ、岸田政権はそれなりの支持率を維持できたかもしれません。安倍元総理が亡くなってしまった現状では、自民党は核を失い、どんどん悪い方向に向かってしまう可能性がでてきました。そこに、国民民主との連立の可能性もでてきたわけです。これは、今すぐということではなくても、日本の政治に新たな風を吹き込むことになるかもしれません。

党派、派閥を超えて、保守系議員の方々はこの流れを加速・強化していただきたいです。

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岸田首相が増税を提起 防衛費増額に「国民全体で負担することを視野に入れなくては」―【私の論評】真摯さに欠る有識者会議、財務省、岸田総理(゚д゚)!


2022年12月5日月曜日

防衛費増額の財源に、ついに「埋蔵金」活用か…財務省の「増税悪あがき」の行方―【私の論評】防衛費は当面国債で歳出カットで対応と新聞報道されれば、財務省勝利!逆転には岸田退陣でまともな政権が必要(゚д゚)!

防衛費増額の財源に、ついに「埋蔵金」活用か…財務省の「増税悪あがき」の行方



もともとは「防衛国債」が有力

 政府は防衛費増額について、2023年度の一時的な財源確保策として、新型コロナ対策で厚労省所管の独立行政法人に積み上がった剰余金や外国為替介入に備えて管理している特別会計の剰余金の転用案の活用が浮上したと報じられている。

 一方で安定財源として増税策も年末に向け議論し、赤字国債の一種である「つなぎ国債」で、増税実施までの財源不足を穴埋めすることを視野に入れると報じられている。

 この問題の経緯をまとめておこう。今年2月に、ロシアによるウクライナ侵攻があり、世界情勢が緊迫した。一方、中国の習近平体制は台湾統一を公言しており、場合によっては武力行使の可能性も排除していない。

 台湾有事となれば、日本有事になる。自民党内の保守勢力から日本の防衛力強化が主張され、7月の参院選で自民党は「5年以内でGDP比2%」を公約とした。ただし、そのときには財源論はなかった。安倍元首相が主張していた「防衛国債」が有力視されていたからだ。

 ところが安倍元首相が暗殺されると、財務省は官邸に有識者会議を作った。そこで財源問題が議論され、増税の方向性が出されている。

 そこで、来2023年度予算にも防衛費増額の方向性が出てくるので、冒頭のように岸田政権は11月29日、23年度予算への検討を始めた。

さすがに財務省も抵抗できなくなった

 予算作りの一般論として、新規予算があるときには、(1)他の歳出カット、(2)建設国債対象、(3)その他収入(埋蔵金)、(4)自然増収、(5)増税で対応する必要がある。

 検討される順番は、それぞれの番号通りだ。

 (1)は言うは易く行うは難し。カットされる省庁の反発が強いし財源として巨額なものは出にくい。

 (2)の建設国債対象経費にできれば、有力な選択肢だ。これは、安倍元首相が生前に主張していた「防衛国債」である。財政法第4条第1項ただし書きでは、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については国債発行を認めている。一般会計予算総則で海上保安庁の船舶建造費が公共事業費として認められているので、海上保安庁の巡視船は建設国債で作られている。

 同じように防衛省予算を一般会計予算総則で規定するというのも有力案だ。実は、かつて人工衛星も建設国債の対象経費だった。人工衛星は衛星を打ち上げるのはロケットだが、爆弾を乗せればミサイルだ。この前例を踏襲すれば、ミサイルを国債発行対象経費とするのも、できない話ではない。

 (3)その他収入増というのが、筆者がかねてから主張していた埋蔵金である。特に外為特会(外国為替資金特別会計)では円安による儲け「評価益」があるのでこれを使わない手はない。

 筆者のところに多くの与野党議員が問い合わせて来たので、これまでの小泉政権以来の経緯、その際財務省の問題となっていた法解釈などを忌憚なく話をさせてもらった。そして、本コラムでもそれらを公開してきた。

 いくら岸田首相に否定させたところで、さすがに財務省も抵抗できなくなったのだろう。とうとう検討せざるを得なくなった。

すべては岸田首相にかかっている

 ただし、狡猾な財務省はダメージコントロールも上手く、最小限度のダメージに止めるだろう。各紙の報道では、外為特会「剰余金」や外為特会「余剰金」などと書かれている。会計知識のあやふやなマスコミなので仕方ないが、どのような概念であり、筆者のいうところの「評価益」とは違う。

 今の為替水準だと、少なくともとも30兆円程度の「評価益」があるが、剰余金だと、財務省が会計操作を行った後であるので、評価益そのものが剰余金になるわけではない。いずれにしても、筆者から見れば少なくとも30兆円くらい捻出できるが、複数年でその半分くらいになれば御の字だろう。

 (4)自然増収は、もっとも真っ当な方法だ。来年度を見れば、円安でGDP増なので、法人税、所得税はかなり増収になる。その後も経済成長すれは、名目成長を4%程度にできれば、その自然増収で防衛費増をかなり賄える。もっとも、財務省は成長はあてにならないとこの議論には乗らないだろう。

 (2)と組み合わせれば、建設国債の償還年数は60年なので、今の防衛費増に対して、自然増収が0.1兆円程度あれば十分なので、(2)ができるのならば、増税を考える必要はない。

 (5)増税は、最後の手だが、財務省はこれが本命だ。いきなり増税とはせずに、「つなぎ国債」で当面泳いで、特別会計を設置するなどして増税に結びつけるのが、財務省の戦略だろう。東日本大震災のときに、復興費用を復興増税に持っていたときのやりかただ。

 いずれにしても、実質的に(2)建設国債対象、(3)その他収入(埋蔵金)がポイントで、当面これで決着が付けば、(5)増税とは政治的にはならない。かつて小泉政権の時、埋蔵金が多額にあったので、小泉首相は自分の在任期間中は増税しないと言わざるを得なかった。

 いま、サッカーワールドカップで国民は盛り上がっているが、それにたとえると、(2)は右サイドからの攻めであり、(3)は左サイドからの攻めだ。ただし、財務省からは強烈なディフェンスがあり、これら(2)と(3)をできるかぎり少額にして、(5)に持っていこうとしている。

 いずれにしても防衛費増額は2023年度予算で方向性を出す必要があり、年末の予算編成の重要事項だ。支持率が低下して政権運営がままならない岸田政権はどのような道筋を描けるか。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】防衛費は当面国債で歳出カットで対応と新聞報道されれば、財務省勝利!逆転には岸田退陣でまともな政権が必要(゚д゚)!

以前にもこのブログの記事で主張したように、防衛費に関して、岸田首相は、財務省や財務大臣の意向を聞きすぎているように思われます。財務省が防衛費の増額に反対するのは当たり前です。そのようなことはわかりきっているので、英国では戦争中の戦略会議などには、財務大臣は出席させないそうです。


現在日本は戦争中ではありませんが、それにしても今年は年末までに防衛三文書の書き換えを行う時期であり、岸田総理は、財務省などの防衛費に関する主張などは、話半分に聞いて留めるべきです。そうでないと、判断を誤ります。

財務相や現在の官邸サイドは、防衛費増を増税の方向に持っていこうとしているようです。

有識者会議などでも増税の話ばかりが出てきて、具体的には東日本大震災の復興増税のようなスキームでどうか、というような話も出ています。

ただ、この有識者会議は内閣官房の有識者会議です。内閣官房は、間違いなく財務省の仕切りです。財務省のひも付きの有識者会議であることは、政府・与党のなかではわかってしまっています。

特に大反発しているのは自民党サイドで、増税など容認できるわけがないということでまとまっています。防衛3文書の議論と税制改正の議論が並行して進んでいたので、官邸が増税というところで結論付けてしまい、自民党税調に回されてしまえば、自民党税調の宮沢洋一会長は財務省のひも付きですから、そこで増税を決められてしまうのではないかという相当な危機感があったようです。


税調は、反対しそうなところの議論を迂回し、増税に賛成するところばかりに諮り、「皆さんに諮りました」という形に増税を強力に推進していこうというのが見え見えでしたから、自民党が怒るのも当然です。

増税の議論は、政権や首相に相当なパワーがなければ党内の反対を押さえつけられませんし、世論の協力も得られません。ここに関して言えば、岸田政権が弱体化していて良かったかもしれません。

ただ、不思議なのは、このような重要なことが報道で出てこないのでしょうか。特に新聞では、自民党のなかでかなり激しい議論が行われていることがほとんど報道されません。8%税率で軽減税率の恩恵を受けているというのが原因かもしれませんが、こういう議論が封印されているのは異常です。

増税に関しては、与党からも反対の話が出ていますし、野党も国民民主党などはいろいろな形で提言しています。そういうことも大きくは扱われません。政局絡みで「国民民主党が連立に入るのか」などという話ばかりが伝えられています。

この狙いは、野党の分断にあるのかもしれません。国民民主党の玉木代表は密室政治を否定しており、国対政治の否定論者なのです。国対政治とは、日本の国会において与野党の国会対策委員長同士が本来の議論の場である国会の本会議や委員会(理事会を含む)をさしおいて、円滑な国会運営を図る為に裏面での話し合いを行って国会運営の実権を握る事をさす言葉です。

それにもかかわらず密室に集ってこれが行われています。国対においての話し合いです、議事録が残りませんん。それをいいことに与野党が馴れ合い、そこでいろいろなことを決めていくのです。

内閣支持率が下がり、求心力がなくなってくると、すぐに連立組み替えのような話が出てくるものです。自民党は非常にしたたかな政党で、連立を組んだ相手をどんどん吸収していき、それによって延命を図ることを得意技としてきた政党です。現状でも、そういうことも考えているのかもしれません。

ただ、確かに国民民主党は、予算案や補正予算案には賛成しましたが、これは是々非々の形の表れだと考えるべきではないでしょうか。ただし、国民民主は、補正予算や被害者救済法で賛成なのですでに「与党」ともいえなくないです。

代表の玉木氏も私から見るとなぜ民主党に入ったのか不思議なくらいでした。岸田政権としても、公明党だけより牽制ができることから、国民民主の与党入りは願ったり叶ったりではないかと思います。


財源についてもオープンな形で国会で議論が出てくれば、そしてそれが報道されればと思います。しかし、なかなかそうなりません。それこそ敵基地攻撃能力なども、必要最小限という文言でいいのかどうか、もっと検討すべきです。維新の青柳議員などは質問に立っていたのですけれども、あまり報じられませんでした。

元々日本維新の会や国民民主党などは、何でも与党に反対ということではなく、是々非々の政党です。立憲民主党などの、何でも反対しているわりには国対政治を用いて密室で物事を決めていくという不透明な政治よりも、オープンな場で議論していくことが必要です。

現在はっきりしているのは、防衛費は当面国債で歳出カットで対応という新聞報道がされれば、建設国債と埋蔵金を封じた財務省が増税含みのつなぎ赤字国債で前半1点リードとみて良いでしょう。これを逆転するには岸田首相退陣でまともな政権が必要となるでしょう。

当然、財務省に屈した、岸田総理に多数の自民党議員は激怒し、政局が大きく動くことになります。増税以外で決着すれば、自民党保守派の勝ちで、政局は動かない可能性が高いです。防衛増税は、それだけ、自民党の保守派の怒りを買ったのは間違いないです。

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