2018年3月17日土曜日

【トランプ政権】米で「台湾旅行法」成立、政府高官らの相互訪問に道 中国の反発必至―【私の論評】アジアの脅威は北朝鮮だけではなく台湾を巡る米中の対立もあり(゚д゚)!


トランプ大統領

 米ホワイトハウスによるとトランプ大統領は16日、米国と台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目的とした超党派の「台湾旅行法案」に署名し、同法は成立した。

 同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官、行政機関職員など全ての地位の米政府当局者が台湾に渡航し、台湾側の同等の役職の者と会談することや、台湾高官が米国に入国し、国防総省や国務省を含む当局者と会談することを認めることを定めている。

 また、台湾の実質的な在米大使館である台北経済文化代表処などの台湾の組織や団体に米国内での経済活動を奨励する条項も盛り込まれている。

 米国は1979年の米台断交と台湾関係法の成立後、米台高官の相互訪問を自主的に制限してきた。台湾旅行法の成立で、トランプ大統領の訪台や蔡英文総統のワシントン訪問が理屈の上では可能になる。

 法案は1月9日に下院を通過し、2月28日に上院で全会一致で可決された。今月16日がトランプ氏が法案に署名するかどうかを決める期限となっていた。

 米国務省は、台湾旅行法が米台関係の変化を意味するものではないと説明しているが、台湾を不可分の領土とみなす中国が米台の接近に危機感を抱き、「一つの中国」原則に反するとの理由で猛反発してくるのは確実だ。

【私の論評】アジアの脅威は北朝鮮だけではなく台湾を巡る米中の対立もあり(゚д゚)!

トランプ米大統領と蔡英文台湾総統

「台湾旅行法」により、米台首脳会談も可能になりました。私は、いずれ米対首脳会談が開催されることになると思います。これは、中国にとっては一大事です。

中国側は、同法には以前から反対していました。同法が「一つの中国」の原則に反するとして強く反発していました。中国外交部の華春瑩報道官は、3月1日の定例記者会見で、「台湾旅行法のいくつかの条項は、法的拘束力はないものの、“一つのの中国の原則”、米中間の3つのコミュニケに反する。中国は強い不満と抗議を表明する」などと述べていました。

人民日報系の環球時報は、3月1日付け社説で「経済的には台湾は中国に依存している。軍事的には、人民解放軍の強さが台湾海峡の軍事的・政治的情勢を根本的に変えた」、「台湾の独立勢力は、米国が用いることのできる対中カードである。中国は、同勢力に的を絞った対応をし得る。台湾にとり、米国の中国に対する敵意に巻き込まれるのは良い選択肢ではない」などと、台湾を恫喝していました。

米国側の台湾を支持する最近の重要な動きには、台湾旅行法以外にも、昨年12月にトランプ大統領が署名し成立した、2018会計年度の国防授権法(2018国防授権法)もあります。

会見する上院多数党院内総務のマコーネル議員

2018国防授権法には、米艦船の高雄など台湾の港への定期的な寄港、米太平洋軍による台湾艦船の入港や停泊の要請受け入れ、などの提言が盛り込まれています。なお、オバマ大統領の下で成立した2017国防授権法でも、米台間の高級将校、国防担当高官の交流プログラムが盛り込まれており、今回の台湾旅行法の内容は目新しいものではありません。

2018国防授権法に関しては、在米中国大使館公使が「米国の艦船が台湾の高雄港に入港する日が、中国が台湾を武力統一する日になろう」と、異例の威嚇的発言をしています。中国側が、米国による台湾への軍事的関与に対して極めて敏感になっていることを示しています。

「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平政権にとっては、中台の「統一」は、政権の存在理由にかかわる最重要事項であると言えます。今後とも、硬軟両様で働きかけを強めていくものと考えられます。

台湾旅行法は、今後の米中関係、中台関係にとっての一つの対立点になるのは間違いないようです。

最近の米中関係を振り返っみると、昨年12月にトランプ大統領が2018国防主権法に署名してから1週間もたたない12月18日、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を公表し、ここで中国、ロシアを米国の影響力、価値や資産への競争相手とするとともに、米国が維持する国際秩序の変更を迫る「修正主義勢力」と位置づけました。

米国はこの内容を台湾に事前通告し、米国が台湾の自衛のための武器を供与する義務を負っていることを明記しました。台湾は、これを好意的に受け止めています。さらに、同月反中派ランドール・シュライバー氏を国防総省のアジア太平洋問題担当の次官補に任命し、この1月、連邦議会に正式に通告しました。そうして、今回の「台湾旅行法案」への署名です。

ランドール・シュライバー氏

たて続けに、台湾と米国の結びつきを強化する動きを見せています。これは、トランプ大統領が中国に対する対決姿勢を明らかにしたということです。

トランプ政権の台湾の地位見直しが進むとなると、当然ながら、今後注目されるのは中国の出方です。今後、中国の台湾に対する武力統一を含めた全面的な軍事攻撃はありえないでしょう。米国が介入することは必至だからです。そのため、軍事的介入ではなく台湾の親中派を利用して、台湾が自ら中国側に帰属すように強力仕向けることでしょう。

かといって、中国が傍観することもないでしょう。立場上、習近平に傍観は許されないでしょう。もし傍観すれば、国内の反習近平派が勢いづくことになります。そのため、部分的な衝突を含め相当な緊張が予想されます。

ただし、究極的な力と力の勝負では、まだ米国の優位は疑いないです。かといって、オバマ時代の米国とは異なり、トランプ大統領がオバマ大統領のように結局中国の面子を立てて、中国が矛を収めることになるとは限りません。

1996年の台湾海峡危機で米空母2隻に圧倒された屈辱をまだ忘れていない中国にとって、さらに屈辱感を増大させる結果になるでしょう。米国側から見れば、中国は習近平の独裁国家となったことですし、従来のように親中的な勢力は弱体化しています。

中国は米国に到達するICBMを持つ核武装もしています。さらに、南シナ海や、尖閣でも、他の地域でも、手を緩めることはありません。

北朝鮮問題に目を奪われている中で、東アジアでは次なる摩擦の火種が明日にも火を吹きそうです。

北朝鮮の脅威に関しては、南北会談を行っても、米朝を仲介する韓国が結局仲人口のような結果になり、そもそも米朝会談が実現しないとか、実現しても物別れに終わる可能性も大きいです。というより、私は、たとえ米朝会談が実現して一見良い結果が出たとしても、これは数年の期間では有名無実になるとみています。

そうなると最悪、北朝鮮と米国、中国と米国の争いが、同時にアジアに緊張をもたらすこともあり得ます。

日本としては、今からこの最悪の事態に備えるべきです。

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米国が見直す台湾の重み、東アジアの次なる火種に―【私の論評】日本は対中国で台湾と運命共同体(゚д゚)!

2018年3月16日金曜日

【日本の選択】正恩氏が狙う「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」 南北、米朝首脳会談は目的のための手段でしかない―【私の論評】最終的には北を複数の国々で50年以上統治して中立的かつ民主的な新体制を築くしかない(゚д゚)!

【日本の選択】正恩氏が狙う「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」 南北、米朝首脳会談は目的のための手段でしかない

金正恩 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が南北首脳会談、米朝首脳会談を行う希望を表明した。歓迎する向きもあるようだが、「これで北朝鮮問題が解決した」とするのは全くの間違いだ。今ほど冷静な判断が求められている瞬間はないだろう。

 憂慮すべきは、「親北左派」で知られる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の今後の行動だ。文氏は、今回の首脳会談に前のめりになり、「不都合な真実」から目を背け、実体のない「友好」という観念に耽溺(たんでき=不健全な遊びにおぼれること)するであろうことは、火を見るより明らかだ。

文在寅

 北朝鮮が、韓国、そして、米国をも欺き、「核・ミサイル開発」の時間を稼ごうとしているという可能性を直視することが重要なのだが、文氏にそれを期待することはできない。

 今回の北朝鮮から韓国特使団に向けられたメッセージの中で重要なのは、次の箇所だ。

 「北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消されて、北朝鮮の体制の安全が保障されるならば、核を保有する理由はない」

 このメッセージの後半部分の「北朝鮮の体制の安全が保障されるならば」という部分に注目し、金一族による独裁体制が保障されれば、北朝鮮が核兵器を放棄するとみなすのは間違いだ。

 重要なのは、前半の「北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消されて」の部分だ。ここでの「軍事的な脅威」とは、具体的には在韓米軍の存在を意味している。すなわち、この個所は「在韓米軍が撤退すれば」と読み替えて解釈すべきなのだ。従って、在韓米軍を撤退せよとの要求が通らなければ、北朝鮮には核の保有が必要であると宣言していることになる。

 正恩氏の望みが「在韓米軍の撤退」であることは、亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の米国下院における証言からも明らかだ。

太永浩(テ・ヨンホ)氏

 太氏は証言で、核開発を完了させた後、米国と交渉することで在韓米軍を撤退させようとする、正恩氏の戦略を明らかにしている。正恩氏はベトナム戦争を参考にし、韓国を(消滅した)南ベトナムに見立て、在韓米軍を撤退させ、韓国の体制崩壊を狙っているというのだ。

 南北首脳会談、米朝首脳会談も、基本的には「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」が目的であり、両首脳会談自体は目的のための手段でしかないと見做すべきであろう。

 北朝鮮の口先の言葉ではなく、実際の行動に注視することが肝要である。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

岩田温氏

【私の論評】最終的には北を複数の国々で50年以上統治して中立的かつ民主的な新体制を築くしかない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で岩田氏が主張する"南北首脳会談、米朝首脳会談も、基本的には「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」が目的であり、両首脳会談自体は目的のための手段でしかない"という主張は妥当なものです。そうして、北朝鮮の最終目的は、北朝鮮主導で南北朝鮮を統一することです。最終的には、朝鮮半島全部を北が支配することです。

北の核と、南の経済力、技術力を融合して、半島に先進国並の経済力のある、軍事独裁政権を樹立することです。

このようなことは、まともな人なら、薄々気づいているのではないでしょうか。最近の情勢をみて、米国が北朝鮮を武力攻撃することなどないなどと判断するのは、全くの早計です。

ここ数カ月から、1〜2年くらいはもしかすると、ないかもしれませんが、その後北朝鮮が核を廃棄しないというなら、米国は必ず武力攻撃します。これに関しては、中国も、ロシアも反対はしません。なぜなら、彼らも朝鮮半島に核武装した経済力のある、軍事独裁政権が出来上がることを望まないからです。

そうして、日本としては、まず第一に米国が武力攻撃をした後、朝鮮半島はどうなるのか、それを想定して今から準備しておくべきです。

もし米軍の武力行使が行われ、瞬時に北朝鮮側の核ミサイル能力が完全に除去されたとして、その後の朝鮮半島はいったいどうなるでしょうか。

軍事的に大打撃を受けた北朝鮮の体制が存続しうることは考えにくいです。それでは、北の体制崩壊後、朝鮮半島は統一されるのでしょうか。それ以前に「北の脅威」がなくなったあとの在韓米軍や米韓同盟はどうなるのでしょうか。

大統領選でトランプ氏は在韓米軍の撤退に言及しましたが、仮にそれが行われたら日米同盟は根底から揺さぶられることになります。米国の一部で唱えられているような米中両国による共同分担作戦によって事が進められれば、戦後の朝鮮半島では中国の影響力が画期的に高まることは明らかです。

第二に、米朝対話などによって査察体制など細部の合意も含め「北の非核化」が進むとすれば、その後に北朝鮮の現体制は存続しうるのでしょうか。あれだけ派手に核危機を演出しておいて、揚げ句、核放棄を約束して体制が揺らがないとは考えにくいです。

さらに、北が米本土に届く核搭載の大陸間弾道ミサイル開発を放棄すれば、残りの核はいわゆる「凍結」で事態が収められるでしょうか。そうなると、日韓を含む東アジアでは北の核脅威は恒常化することから、米国の「核の傘」や対米同盟の信頼性は低下することになります。その場合も、この地域の地政学的現状は決定的に変化することになります。

要するに、どのような事態変化があったにしても、日本周辺の地域の秩序は、この数十年続いてきたものとは大きく変容したものになるということです。これだけはどう考えても避けられないです。

そしてここで大きく浮上してくるのが、「習近平の中国」です。

今回の米中首脳会談で、権力基盤を強化した習近平国家主席はトランプ大統領と朝鮮半島の将来像についてかつてなく突っ込んだ話し合いをすることになるでしょう。対北制裁の強化とともに、米中間で将来の朝鮮半島の運命が決められるかもしれません。

その一つとして、この数カ月、米マスコミが繰り返し報じている「キッシンジャー構想」があります。

それは、北の核廃棄に向けて中国のかつてない強力な取り組みを求めるために、米国が北の非核化(つまりは北の体制崩壊)の後に、在韓米軍の大半を撤退させることをあらかじめ中国に約束する、というものです。

キッシンジャー氏はトランプ大統領、とりわけイバンカ氏の夫で親中派とされるクシュナー上級顧問に対して影響力が大きく、またティラーソン国務長官にはすでにこの助言を行っていると噂されています。

キッシンジャー構想は成り立たない?

ただし、私としては、この構想は容易には成り立たないと思います。その根拠として、2つがあげられます。一つ目としては、まずはキッシンジャー氏はすでに過去の人物であり、かつてのように大きな影響力はないといことです。

二つ目には、習近平はすべてを掌握しているわけではないということです。

第1次習政権で試みた、「朝鮮半島を、南(韓国)から属国化していく戦略」も見事に失敗し、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)が配備されています。かつては「兄弟国」だった北朝鮮との関係も史上最悪で、「1000年の敵」呼ばわりされるまで悪化しました。

頼みの綱だったロシアとの関係も、中国政府が1月下旬、「(中国主導の広域経済圏構想)『一帯一路』構想に北極海航路を入れる」と発表したことで、プーチン大統領を激怒させてしまいました。

朝鮮半島情勢について、表向きは「米朝対話」を主張しながら、本音は大きく違う可能性が高い。「金王朝の崩壊」を狙っているはずの習氏が、それを察知する金王朝の核ミサイルや生物化学兵器の脅威にさらされているとすれば、トランプ政権が軍事オプションに踏み切ることを、内心で期待していてもおかしくはないです。

中国は長さ約1400キロという中朝国境に、数千人から数万人とされる人民解放軍を配備しました。ところが、いざ戦闘状態に突入すれば、朝鮮族の多い北部戦区(旧瀋陽軍区)の部隊が、どこに銃口を向けるか分からないです。習近平と、江沢民を比較すると後者のほうが、北部戦区や北朝鮮と親和的です。

そもそも、北部戦区の受け持つ地区は、旧満州(中国東北部)といわれるところに位置していて、この地はもともとは満州族のものでした。この地には数は減ったとはいえ、今でも満州族が1千万人以上も住んでいるのです。

朝鮮半島と接する中国東北部(赤とピンクの部分)

さらにこの地域は、今日急速な少子高齢化に見舞われ、人口流出が深刻化しています。経済的にもこの地域は北朝鮮という地理的な障壁があって経済が中国の他の地域から比較すると遅れていることから、不満が鬱積しています。

こうした人口の減少と高齢化は、当然のことながら中国がいま進めている養老保険(年金)の整備に大きなマイナスの効果を与えています。国家開発銀行の元副行長の劉国によれば東北部の年金の負担率(年金を支払う労働者と年金受給者の比率)は、1.55であり、これも全国平均の2.88にはるかに及んでいません。これらは「火薬庫」としての東北部の火種が将来的にもなかなか消えない可能性を示唆しています。

そうなると、米国が中途半端をして、北の核関連施設を完全破壊するのと、金王朝を潰すだけで手を引いてしまえば、北が無政府状態の混乱した状態になってしまう可能性が高いです。今の中東のように多数の勢力の衝突による不安定な地域になる可能性が高いです。

これを防ぐには米軍が少なくと50年以上の長期にわたり、この地域に軍隊を送り込み統治して、中ロ寄りでもない、日米寄りでもない、中立的な民主的な体制をつくりだすしかありません。

米国一国だけでは無理というのであれば、複数の国々で構成される国連軍を派遣して長期間統治して、北に新たな秩序を構築するしかありません。そうして、その中で韓国との関係をどうするのかも十分に考慮したうえで、新たな秩序を模索して、アジアから不安定要因を取り除くべきです。

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2018年3月15日木曜日

米、中国に貿易黒字1000億ドル削減要求=ホワイトハウス―【私の論評】米国の中国非難は理解できるが、同盟国まで非難するのは筋違い(゚д゚)!


トランプ大統領

米ホワイトハウスの報道官は14日、トランプ政権が中国に対し対米貿易黒字を1000億ドル削減するよう求めていることを明らかにした。

トランプ大統領が中国に米国との貿易不均衡を10億ドル是正するよう要請したとツイッターに先週投稿したことについて、報道官は「10億ドル」は「1000億ドル」の誤りだったと述べた。

ただ同報道官は、貿易黒字削減に向け米政府が中国に求める具体的な方法については言及せず、中国に対し大豆や航空機などの米製品の輸入を増やすことを求めるのか、国営企業への政府助成の削減や鉄鋼とアルミニウムの生産能力削減などを求めるのかについては明らかにしなかった。

中国は米企業が中国市場へのアクセスを得るためには中国の合弁相手への技術移転が事実上必要となる投資政策を導入しているが、これに対し米国では不満の声が上がっている。米政府が中国に求める貿易黒字の削減がこうした問題への対処となるかは現時点では不明。

中国との貿易を巡っては、トランプ政権が中国からの輸入品のうち最大600億ドルに相当する製品に関税を課すことを計画していることが前日、関係筋の話で明らかになっている。

中国国営紙の環球時報は、15日付の論説記事で「貿易赤字を削減したいなら外国に変化を求めるのではなく、米国人をより勤勉にし、国際市場の需要に沿った改革を実行する必要がある」とし、貿易戦争がいったん始まれば、妥協は選択肢にないと主張した。

【私の論評】トランプ大統領の中国非難は理解できるが、同盟国まで非難するのは筋違い(゚д゚)!

トランプ大統領が、中国に対して対米貿易黒字を1000億ドル削減するよう求めていることについては、私もある程度妥当であると考えます。

1000億ドル自体が、妥当なものかどうかは、正直なところわかりませんが、中国による米国への輸出に関しては、自由貿易という観点からは、非常に不公正なところがあり、それが結果として米国の労働者の雇用を奪うなどのことに結びついている側面があるのは確かであると考えられるからです。

習近平とトランプ

ただし、対米貿易黒字だからといってそれ自体を問題にするような考えかたは、間違いです。そうして、これは経済学上の常識です。

統一通貨を用いている、ユーロ圏では日本のように一国の独断では、通貨や国債発行はできません。さらに、同じユーロ圏同士の国々では、為替レートも関係ないので各国間の貿易の格差は拡大します。そのため、ユーロ圏内では特に「輸出額=輸入額」ということが必要になります。

しかし、米国、日本、中国のような国民経済では、自国の意思で自国通貨を擦り増しや、国債発行が自由にできるので、そのような必要性はありません。本来、貿易黒字がどうの赤字がどうのと騒ぐ必要性など全くないです。

実際、経済が成長していると、輸入が増えて、貿易赤字は増える傾向にあります。この場合、貿易赤字が単純に悪いとはいえません。貿易赤字に関しては、あくまで中身を検討した上で良い悪いを判断すべきなのです。

トランプ政権の過去の1年では、経済成長をしつつ貿易赤字が減らなかったということですから、これはほとんど問題などありません。だから、貿易赤字など問題にすること自体が間違いです。

ただし、中国と米国を比較した場合、米国は中国と比較すれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がはるかに進んでいます。これらが、進んでいない中国では、労働者を不当に悪い条件や、低賃金で働かせたり、政府の都合で経済に直接介入したり、法律を変えたり、新たな規制をもうけたりすることを無制限にすることができます。

さらには、知的財産権の保護なども全く不十分です。そうなると、中国と米国の間では、そもそも自由貿易など成り立ちません。



米国が抜けたため、日本が主導するTPP11は、参加予定国が新協定に署名し、19年に発効することとなりました。このTPPには、最初から中国は参加していません。無論、中国もそれを希望していませんでしたし、TPP参加予定国も特に中国の参加を希望もしていませんでした。

なぜかといえば、中国がTPP参加国として、自由貿易をするためには、抜本的な構造改革をして、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめなければならないことになり、現在の中国の体制では困難だからです。

韓国も、TPPには参加していなかったものの、TPP11には参加の意向があったようではありますが、結局参加しないまま、TPP11は19年に発効の運びとなりました。

これは、韓国は最初は米国とのFTAを進めていたということもありますが、やはり、韓国も平昌五輪の女子カーリング日本チームが休憩のときに食べていた苺に象徴されるように、知的財産権の権利の保護に対して意識が希薄なところがあったり、中国ほどではないにしても、やはり民主化、政治と経済の分離、法治国家化が遅れているところがあり、TPPの目指す自由貿易にはなじまないところがあるからです。

韓国の苺は元々は日本の苺の種苗を盗んだものだった

以上のようなことから、トランプ大統領が中国の貿易黒字に対して、非難して、米国が被ってきた損失を補填するように迫るということはある程度理解できます。

しかし、トランプ大統領は驚いたことに、14日、中西部ミズーリ州で開かれた地元選挙の資金調達会合で、日韓を含む同盟国が何十年にもわたって米国の雇用を奪ってきたと非難し「同盟国は自国のことを気にして、米国のことはどうでもいいと思っている」とこき下ろしました。

韓国との貿易が米国に有利にならなければ、在韓米軍に何が起きるか「様子を見よう」と述べ、撤収もあり得るとの考えを示唆しました。また、日本の自動車市場は閉鎖的だと主張しました。同紙は、トランプ氏によるこれまでで最も保護主義的な発言の一つだと報じました。

トランプ氏は、カナダのトルドー首相に対し、両国の貿易収支に関して事実に反し「米国は赤字を被っている」と伝えたと自慢げに語った。米通商代表部(USTR)は米国の対カナダ貿易は黒字だとしています。

以上で述べたように、そもそも貿易赤字を会社の決算の赤字のように捉えるのは全くの間違いですし、TPPのような自由貿易協定に入ることができない程、国内の整備が遅れている中国が非難されることはわかります。

しかし、カナダや他の同盟国にまで、非難の矛先を向けるのは筋違いです。韓国も遅れたところは、ありますが、それでも中国よりは、はるかに整備されています。

単純に貿易赤字だからといって、それを非難して、挙句の果てに関税でもかけるようなれば、今度は米国国民が、本来自由貿易の結果得られるメリットを得られないようなことになり、不利益を被ることになります。

トランプ大統領は同盟国を貿易赤字で非難することは、やめるべきです。米国が同盟国に対して関税障壁を設けたりすれば、同盟国側も黙ってはいないでしょう。米国に対して報復関税をかけることにもなりかねません。そうなれば、世界の自由貿易が阻害されることになります。

さて、中国についてですが、1980年代の日米貿易摩擦と違って、米中は同盟国ではなく敵対国であり、相容れない政治体制でもあるので、日米構造協議のような解決は無理でしょう。

どのみち中国経済は無理がたたっているので、今後緩やかに下落していくでしょう。また習近平が 国家主席の任期を撤廃して長期政権が可能になりましたが、これこそ『中国の終わり』の始まりです。

中国がいつまでも、構造改革をしないというのなら、米国は中国に対して貿易障壁を設けるようなことにでもなるかもしれません。そうなれば、他国も同様のことをすることでしょう。そうなると、中国はますます経済が低迷することになります。

習近平の独裁は、以前もこのブログでも述べたように、10年ももたないと思います。これから20年位かけて中国は衰退し分裂していくことになるでしょう。

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2018年3月14日水曜日

【日本の選択】日本の民主主義はここまで堕落してしまったのかと呆然… 野党に日本のかじ取りを任せることも不可能―【私の論評】稚拙な全能感で腐敗・堕落した財務省は解体するしかない(゚д゚)!

【日本の選択】日本の民主主義はここまで堕落してしまったのかと呆然… 野党に日本のかじ取りを任せることも不可能

「最強官庁」は腐敗・堕落した

 青天の霹靂(へきれき)というべき事態だ。朝日新聞の報道が契機となって、森友学園に関する公文書が財務省の指示によって書き換えられていたことが分かった。私は当初、このような事態は考えられないと思っていたので、誤解に基づく報道ではないかと想像していた。

 官僚が公的文書を偽造するなどということは、民主主義の根幹に関わる問題であり、日本の民主主義がそこまで腐敗しているとは想像できなかった。

 実際に書き換える前後の文書を眺めると、財務省による姑息(こそく)で悪質な文書改竄(かいざん)であることは明らかだ。安倍晋三首相をはじめとする政治家の名前、そして、「安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した」との記述も削除されている。わが国の民主主義は、ここまで堕落してしまったのかと、呆然(ぼうぜん)としてしまった。

 政治を成り立たせるのは、為政者と国民の信頼関係だ。

 『論語』に「信なくば立たず」との言葉があることは有名だが、これは信用が大切だといった程度の言葉ではない。孔子の悲壮な覚悟が伝わってくる言葉だ。

 弟子の子貢(しこう)が孔子に「政治の本質」を問うた。その際、孔子は「兵」(安全保障)、そして、「食」(経済)と同時に、民衆からの「信」を挙げた。子貢が、その中で1つを捨てるとしたら、と問うと、孔子は「兵」を捨てるべきと答えた。さらに進んで、もう1つ捨ててしまうとしたら何かを問うと、孔子は「食」を捨て去るべきと答える。

 孔子が安全保障、経済を軽んじていたわけではない。それらが重要であることは熟知していた。憲法9条が存在するから日本は平和だなどという、空疎な平和主義者であったわけではない。「兵」よりも「食」よりも「信」が肝要と説いたのは、政治の本質が国民からの「信」にあることを訴えたかったからであろう。

 今回の財務省の姑息な文書の書き換えによって、政治に対する国民からの信が失われてしまった。しかも、絶望すべきなのは、このような事態に至ってもなお、野党に政権を担えるとは到底思えないことだ。通常、これほど国民からの信用を失う事態に至れば、野党への期待が高まるはずだ。

 だが、いまだに「平和安全法制を違憲だ」と叫び続ける立憲民主党、「自衛隊は違憲だ」と獅子吼する(=雄弁に語ること)日本共産党、何をしたいのかが、さっぱりわからない希望の党。これらの政党に日本のかじ取りを任せることは不可能だ。

 日本に重要なのは、自民党に代わり得る「健全で現実的なリベラル政党」だ。現実的な安全保障政策を取り、国民が信用できるリベラル政党が何よりも必要だ。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

【私の論評】稚拙な全能感で腐敗・堕落した財務省は解体するしかない(゚д゚)!

私自身は、このブログで随分前から何度か指摘してきたように財務省の腐敗・堕落については別に驚きもしません。ただし、今回の書き換え事件に関しては、あまりにもやり方が幼稚であり、その稚拙さ加減に驚いてしまいました。

いずれ書き換え露見することがあまりにも目に見えたようなやり方で、なぜこのような書き換えをしてしまったのか、本当に理解に苦しみます。そうして、このような書き換えが、起きてしまった背景を分析すべきだと思います。

現在のマスコミ報道や、政治家の発言等を参照しても、具体的な書き換えの事実や、様々な憶測だけであって、なぜこのような事件が起きてしまったのか、その根本原因に迫るものはありません。ただし、これから徐々に明らかにされていくと思います。

このブログでは、根本原因について迫ってみたいと思います。

現在、与野党の政治家や、マスコミ、学者などが様々なことを語っていますが、私は今回の事件は彼らにも責任があると思っています。いや、むしろ間接的かもしれませんが彼らが、財務省を暴走させてしまったとさえ考えています。

財務省が社会福祉と税の一体改革、消費税増税、復興税等の必要性を主張する際に出鱈目理論を用いたにもかわらず、政治家、マスコミ、財界、主流のエコノミストまで敢えてこれに異論を唱えてこなかったため、財務省に全能感を抱かせたことが今回の事件の背景にあると思います。要するになめられのです。

財務省は省益を追求するために、出鱈目理論で機会さえあれば、増税しようとしてきたのは明々白々です。にもかかわらず、これに対して真っ向からその間違いを指摘してきたのは、ごく一部の人々のみです。

財務省がどんなに奇妙奇天烈、世界水準からすれば明らかに間違いであることを語っても、これに唯々諾々と従い、異を唱えてこなかったどころか、増税すべきと気炎をあげてきたのが、日本の政治家であり、マスコミであり、多くの学者たちや、エコノミストたちです。

NHKも財務省におもねり、国の財政状況の厳しさを訴えているが、これに全く根拠はない

消費税の社会保障目的税化(財源化)に関しては、まず、事実として、目的税化といっても程度問題であるということがいえます。消費税の社会保障支出へのひも付きは、ゴムでできていると考えれば良いです。ただし、財務省は目的税化を強調していました。

また、財務省による、増税に協力しないと社会保障を削る、また軽減税率には「財源」が必要だ、軽減税率なら社会保障を切る-といった恫喝(どうかつ)もしばしば行われました。これでだまされる識者も多数存在しました。

消費税の社会保障目的税化は政策論からみれば、明らかな間違いです。しかし、1990年代までは大蔵省の主張でもあり、99年の「自自公(自民、自由、公明)」連立時に、財務省が当時の小沢一郎自由党党首に話を持ちかけて、消費税を社会保障に使うと予算総則に書いたのです。

ただ、2000年度の税制改正に関する答申(政府税制調査会)の中で、「諸外国においても消費税等を目的税としている例は見当たらない」との記述があります。実際、諸外国では諸費税を目的税になどしていません。

社会保障の観点から見ると、その財源は社会保険方式なので保険料が基本です。税方式は少なく、しかも社会保険料方式から税方式に移行した国などありません。
また、復興税なるものは日本が東日本大震災を契機に導入した以外には、古今東西に例を見ません。なぜ復興を税によって賄うことをしないかといえば、被災の直後に復興税を徴収すれば、被災を受けた世代にのみ復興のための負担が集中することになるからです。

通常は、大災害などがあった場合に、その復興をするためには、償還まで数十年以上である建設国債などを用いるのが、世界の常識です。なぜなら、数十年かけて償還ということになれば、復興の負担が将来の世代も背負うことになり、被災直後の世代のみが多大な負担を背負うことはなくなるからです。復興を税で賄うという考え方は、最低最悪の考え方であり、

これに対して、財務省は、建設国債は将来の世代につけを回すことになるなどという、奇妙奇天烈な論理で、結局復興税を導入してしまいました。しかし、これは、とにかく増税しよう、そうして復興税の次は消費税増税を目指すという意思の現れでした。

しかし、先に述べたように、これらに多くの政治家、マスコミ、識者は反対するどころか、賛同しました。以下に、復興税に賛成した日本の経済学者らのリストを掲載します。

以下http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htmより引用。


 共同提言者・賛同者(2011年6月15日10:00現在)(敬称略)

伊藤 隆敏 (東京大学)
伊藤 元重 (東京大学)
浦田 秀次郎 (早稲田大学)
大竹 文雄 (大阪大学) 
齊藤 誠 (一橋大学)
塩路 悦朗 (一橋大学) コメント
土居 丈朗 (慶応義塾大学)
樋口 美雄 (慶応義塾大学)
深尾 光洋 (慶応義塾大学)
八代 尚宏 (国際基督教大学)
吉川 洋 (東京大学)

(★印のついた方は「第3提言の賛成は留保」)
青木 浩介 (東京大学)
青木 玲子 (一橋大学)★ コメント
赤林 英夫 (慶應義塾大学)
安藤 光代 (慶應義塾大学)
井伊 雅子 (一橋大学)
飯塚 敏晃 (東京大学)
池尾 和人 (慶應義塾大学)
生藤 昌子 (大阪大学) コメント
石川 城太 (一橋大学)
市村 英彦 (東京大学)★ コメント
伊藤 恵子 (専修大学)
岩井 克人 (国際基督教大学)
祝迫 得夫 (一橋大学)
岩壷 健太郎 (神戸大学)
宇南山 卓 (神戸大学)
大来 洋一 (政策研究大学院大学) コメント
大野 泉 (政策研究大学院大学) コメント
大橋 和彦 (一橋大学) コメント
大橋 弘 (東京大学) コメント
岡崎 哲二 (東京大学) コメント
小川 英治 (一橋大学)
小川 一夫 (大阪大学)
小川 直宏 (日本大学)
翁 邦雄 (京都大学)★ コメント
翁 百合 (日本総合研究所)
奥平 寛子 (岡山大学)
奥野 正寛 (流通経済大学)
小塩 隆士 (一橋大学)
小幡 績 (慶應義塾大学)
嘉治 佐保子 (慶應義塾大学) コメント
勝 悦子 (明治大学) コメント
金本 良嗣 (政策研究大学院大学)
川口 大司 (一橋大学) コメント
川﨑 健太郎 (東洋大学) コメント
川西 諭 (上智大学) コメント
北村 行伸 (一橋大学)
木村 福成 (慶應義塾大学)
清田 耕造 (横浜国立大学)
清滝 信宏 (プリンストン大学)
國枝 繁樹 (一橋大学)
久原 正治 (九州大学)
グレーヴァ 香子 (慶應義塾大学) コメント
黒崎 卓 (一橋大学)
黒田 祥子 (早稲田大学)
玄田 有史 (東京大学)
鯉渕 賢 (中央大学)
小林 慶一郎 (一橋大学) コメント
小峰 隆夫 (法政大学)
近藤 春生 (西南学院大学)
西條 辰義 (大阪大学) コメント
櫻川 幸恵 (跡見学園女子大学)
櫻川 昌哉 (慶應義塾大学) コメント
佐々木 百合 (明治学院大学) コメント
佐藤 清隆 (横浜国立大学)
佐藤 泰裕 (大阪大学)
澤田 康幸 (東京大学)
清水 順子 (専修大学) コメント
新海 尚子 (名古屋大学) コメント
鈴村 興太郎 (早稲田大学 / ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ) コメント
清家 篤 (慶應義塾大学)
瀬古 美喜 (慶應義塾大学)
高木 信二 (大阪大学)
高山 憲之 (一橋大学)
武田 史子 (東京大学)
田近 栄治 (一橋大学) コメント
田渕 隆俊 (東京大学)
田村 晶子 (法政大学)
田谷 禎三 (立教大学)
中条 潮 (慶應義塾大学) コメント
筒井 義郎 (大阪大学)
常木 淳 (大阪大学)
釣 雅雄 (岡山大学)
中田 大悟 (経済産業研究所)
中村 洋 (慶應義塾大学) コメント
長倉 大輔 (慶應義塾大学)
畠田 敬 神戸大学
林 文夫 (一橋大学)
原田 喜美枝 (中央大学)
深川 由起子 (早稲田大学) コメント
福田 慎一 (東京大学)★
藤井 眞理子 (東京大学)
藤田 昌久 (経済産業研究所)
星 岳雄 (UCSD)
細田 衛士 (慶應義塾大学)
細野 薫 (学習院大学) コメント
堀 宣昭 (九州大学)
本多 佑三 (関西大学) コメント
本間 正義 (東京大学)
前原 康宏 (一橋大学)
松井 彰彦 (東京大学)★
三浦 功 (九州大学)
三重野 文晴 (神戸大学)
三野 和雄 (京都大学)
森棟 公夫 (椙山女学園)★ コメント
柳川 範之 (東京大学)
藪 友良 (慶應義塾大学)
山上 秀文 (近畿大学) コメント
家森 信善 (名古屋大学)
吉野 直行 (慶應義塾大学)
若杉 隆平 (京都大学)
和田 賢治 (慶應義塾大学)
渡辺 智之 (一橋大学)

以 上

これは、日本の大学の主流派の経済学者といわれる人々です。震災について、やはり復興増税に賛成した経済学者だけは、心情的にも学問的にも許せないです。まさに曲学阿世の徒とは、こういった諸氏を指すために存在する言葉だと思います。

それにしても、このようなことが続けば、財務省が慢心して、自分たちは頭が良く、自分たち以外は頭が悪く、何を言っても自分の思い通りになると勘違いするようになるのも無理はありません。

「われら富士山、他は並びの山」――。東大法学部卒のエリートが集う霞が関で、財務省は大蔵省時代から他省庁を見下ろしながら「最強官庁」を自任してきました。


ただし、たかだか東大法学部を卒業して、国家公務員上級試験に受かり財務省に入ったからといつてエリートといえるのでしょうか。確かに、モノを短期間に暗記したりする能力に勝ているからといってエリートといえるのでしょうか。本来のエリートとは、「本人の命よりその責任が重い人間」のことをそういうのであって、日本のエリートの定義は明らかに間違っています。

彼らからすれば、日本の将来は政治家でも、国民でもなく、頭の良い自分たちがつくるのであり、何をやっても自分たちが正しいというような、中二病的な全能感に浸るようになったのも無理はないと思います。私は、この全能感が、財務省を腐敗・堕落させたのだと思います。

どんなことをやっても、自分たちは他者や他の組織を、結局自由に操れるという全能感が、彼らを公文書書き換えなどという稚拙な犯罪に走らせたのです。


ここ最近、財務省の高級官僚に限らず、「価値のあるボク」「価値のあるアタシ」といった肥大した自己イメージを、いつまでたっても抱えている男女がそこらじゅうに溢れているようです。つまり、全能感を捨てきれない大人達が増えているわけですが、彼らが全能感を維持するメカニズムについては、あまり取り沙汰されていないようです。

しかし従来ならあり得なかった、財務官僚などの全能感を維持したい・いつまでも子どもの王様のままでいたい人にありがちな、二つの処世術を確認してみます。

自分の優秀さや自分のバリューを確認しやすい場所で、それを反復的に確かめる、という方法です。財務官僚なら、東大卒業、国家公務員上級合格、財務省入省ということで、まずは全能感に満たされます。さらに、そこから出世階段をなるべく速くかけあがることで、さらに全能感に満たされます。次官にでもなれば、それこそ神様にでもなったような全能感に満たされるのでしょう。

これは、財務官僚の例ですが、一般の人なら異性をひっかけて自分の価値を確認する人もいれば、ネットゲームやtwitterで優秀さや有能さを確かめたがるタイプの人もいるようです。この際どこでもいいから、とにかく自分が優秀でいられそうなフィールドをみつけ、自分が価値があるという証拠を確認し続けられる限り、全能感を維持できます。その点で、財務官僚は自他共に認める全能感かもしれません。
 
ポイントとなるのは、「全能感が傷つく可能性の高いところには手を出さない」ということです。
 
自分の値打ちを確かめ損ねてしまったら「全能ではない自分自身」「たいして価値のないかもしれない自分自身」に気付いてしまうかもしれませんから、そういう事態は避けなければなりません。実際、安定確実に優越性が示せるフィールド、反復的に自己評価を確認しやすいフィールドが、無意識のうちに選ばれるようです。
 
ただし、強すぎる全能感とある種の才能とが結合した結果、ほとんど全分野で「全能な自分自身」を確認できる(というよりは確認せずにはいられない)人も稀にいて、このような人がスーパーマン、スーパーガールのような外観を呈することは、ありえます。

スーパーガール

自分が手を出す分野のすべてで「全能な自分自身」を確認するというのは、大変な才能と努力を必要とする処世術ですが、年が若くて生命力に溢れているうちは、そのような処世術が成立することもあるかもしれません。

歳をとってどうなるかは知りませんが。財務官僚の場合は、退官してさらに、天下り先に行き、信じがたいほどの高給に恵まれ、老後のハッピーライフを送ることができれば、さらに全能感を維持できるのかもしれません。

さらに、「何もしない」「何も本気でやらない」人ほど、全能感は温存される、ということもあります。
 
本気で勉強しない、本気で恋愛しない、何にも真面目に打ち込まない……こういう処世術は今日珍しくありませんが、現実世界で本当に全能・有能になるには向いていません。しかし気分としての全能感を保持するには向いています。
 
なぜなら、全能感は「挑戦して、自分がオールマイティではないという事実に直面する」「それほどには価値のあるボクではないという事実を突きつけられる」まではいつまでも維持されやすいからです。
 
たいていの人は、思春期のトライアンドエラーや人間関係のなかで、自分が思うほどオールマイティではないという事実に直面し、その直面によってゆきすぎた全能感がなだらかになっていくものなのでしょう。

しかし、自分が傷つくかもしれない状況や自分にあまり価値が無いとわかってしまいそうな挑戦を避け続ける人の場合は、いつまでたっても全能感は失われません。「挑戦すれば価値のあるボクがへし折られるかもしれない」……じゃあ挑戦さえしなければ、いつまでも価値のあるボクが維持できる、というわけです。
 
もし、自分の全能感が失われそうな試験・競争に直面した時にも、全能感を維持するのはそう難しくありません。「俺は本気じゃない」とか「ネタですから」と言い訳しながらの挑戦なら、全力を出してないから失敗した(=全力で挑戦していれば成功していたに違いない)と自己弁解できますから、全能感は保たれます。
 
こんなことばかりしていれば、受かる試験も受からないし競争に勝つ確率も下がってしまいそうですが、全能感を手放したくない人達は、トライアルをクリアする確率を1%でも高めるよりも、自分自身の全能感がひび割れるリスクを1%でも低くすることのほうに夢中になりがちです。

そしてこの処世術に慣れすぎてしまった人は、いざ本気で挑戦しようと思った時には、もはや本気で挑戦できません。いったん“逃げ癖”“言い訳癖”が身についてしまうと、もう、そうせずにはいられなくなるのです。

心の持ちようには無限に近い逃げ道がありますから、第三者が逃げ道をカットすることも難しく、ズルズルといつまでも、真剣なトライアルを回避し続けることになります。そして全能感の維持と引替えに、いつまでたっても技能や経験に恵まれることもなく、生ぬるい日常を過ごし続けます。

どちらのタイプも、全能感を維持するために歪な処世術を発達させているという点ではそう違いませんし、全能感を砕かれる不安を遠ざけるために必死になっているという点でも似たもの同士です。

ただし、受験勉強ばかりで過ごした人は、成績は良くなるものの、目立った失敗はしないすむことになります。思春期のトライアンドエラーや人間関係などで、全能感が破壊されることもなく、維持されるのかもしれません。
  
どんなに有能な人でも、老いて能力が衰えれば、全能感を確認しきれなくなくなる日がやってきます。また、なにもせずに全能感の挫折を回避しつづけてきた人も、いつかは「実は何もできないまま歳だけとった自分」に直面する日がやってくるでしょう。

そのとき、「等身大の自分自身」と「全能な自分自身のイメージ」のギャップにひどく苦しめられる運命が待っています。全能感を失った打撃が背景となって、ついにメンタルヘルスをこじらせて精神科/心療内科を受診する人もけっして珍しくありません。
 
全能感に必死にしがみつくような処世術は、全能感が保たれているうちは威勢良く自惚れていられるかもしれません。しかし、いつか全能感が失われた際にはとても脆く、ギャップや葛藤に悩まされる可能性が高そうです。

とことん全能感にしがみついてきた人は、10代の頃の全能感を40〜50代になっても維持し続けているかもしれず、それが破綻したときの心理的打撃を小さくおさめるのは容易ではないでしょう。
 
そんな生き方をするよりは、適度な失敗や挫折を経験したりして、過度に全能感にしがみつかない人生のほうが、平坦ではあっても危なげないと、私は思います。もちろん、その場その場では辛い経験や充たされない経験もあるでしょう。けれども「常に充たされて当然」「辛い経験は避けるのが当然」という処世術をカチコチに築き上げるより、よほど柔軟な生き方が出来そうですし、挫折や失敗にへし折られるリスクも小さくなりそうです。

そもそも、個々の人間には強みと弱みがあります。だからこそ、組織があるのです。組織の中では、個々の人間は、強みを発揮して、弱みは他の人にやってもらうなどして、中和します。それが組織の役割です。20歳をすぎれば、ほとんどの人は強みを伸ばすことはできても、弱みを是正することなどなかなかできません。


それに、現代ではすべての事柄が、専門化してしまい、何でもできる人というのはいません。現代では、何でもできる人とは「何も出来ない人」ということです。そもそも、この社会では本来全能感など成り立ち得ないのです。

そうして、まともな企業であれば、それを前提に個々人が強みを極限まで伸ばし、そのことにより成果をあげ、出生の階段を登ることになります。

全能感に浸っている人はこのことが理解できないのかもしれません。全能感を維持できるような組織は、そもそもこの根本を理解しておらず、いずれ腐敗・堕落するのです。民間企業であれば、腐敗・堕落すれば、いずれ潰れるしかありませんが、財務省のような組織、そのようなこともなく温存されてしまうのです。

官僚に関しては、「大過なしに過ごす」という言葉に象徴されるように、財務省なら、省益のことだけ考えて、強み、弱みなど関係なく、省益に沿った考え方、行動をとり国民経済など二の次で出世の階段をあがり、あわよくば財務次官になるか、なれなくても、高い地位まで上り詰めて、天下り先に行きほとんど仕事らしい仕事もしないで高給をとるということで、幼稚な全能感が維持しやすいのかもしれません。

それにさらに、自分たちの考えなど、本来であれば、間違いを指摘すべき経済学者などもこれを指摘せず、ほとんどの政治家やマスコミもそれを否定することなく、財務省のいいなりで、財務官僚の全能感を助長してきたのです。

佐川氏も、このような全能感に浸り、公文書の書き換えなどという稚拙な犯罪に手を染めてしまったのでしょう。彼からすれば、書き換えをしようが、何をしようが、全能の自分は無敵であり、何でも自分の思い通りになると考え、あの国会での胡散臭い答弁を何の疑問もなくしてしまったのでしょう。

そうして、佐川氏は自らの全能感は、否定せざるをえなくなり、辞職したのでしょうが、財務省には全能感に浸ったおろかな官僚がまだ大勢いるはずです。この全能感という財務省のDNAは破壊しなければ、同じようなことがまた何度でも起こることでしょう。

やはり、財務省は完全解体して、そのDNAを引き継がれることがないようにしなければならないです。

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2018年3月13日火曜日

日米露中まで頭痛のタネ 世界に広がる「韓国疲れ」―【私の論評】南北統一で、主体思想に染まった経済的にはロシアより大きな、核武装した軍事独裁政権ができあがる(゚д゚)!

日米露中まで頭痛のタネ 世界に広がる「韓国疲れ」

文大統領は御満悦だが・・・・

平昌五輪を“利用”して北朝鮮との対話を始めた韓国。五輪後に訪朝した特使団は10年ぶりとなる南北首脳会談まで取り付け、あれよあれよという間に南北が大接近。一方で金正恩朝鮮労働党書記長はトランプ大統領に会談を申し入れ、5月までに実現する見込みとなった。見守るしかない世界の国々は“この先”の難儀を察して頭を痛めている--。

韓国の特使派遣は、朝鮮半島の平和実現に向けた大きな前進--というのが世界の表向きの評価である。4月末の南北首脳会談の開催に加え、北朝鮮が非核化に向けた米朝協議の用意があると表明したことを受け、米国のトランプ大統領も、「前向きだ」と評価した。

だが、韓国の“単独行動”に、各国は内心ヒヤヒヤしている。

「文在寅大統領の判断は、国連決議も含めて、世界各国が取り組んできた北朝鮮への圧力路線を壊すもの。各国はリップサービスのコメントを出していますが、本音では“韓国のおかげでこれまで続けてきた制裁や圧力がすべて無駄になった”と嘆いている」

こう指摘するのは、元在韓国特命全権大使で外交経済評論家の武藤正敏氏だ。

「今回、特使が伝えた合意内容は非常に曖昧で、『北朝鮮に対する軍事的脅威が解消されて体制の安全が保障されれば、核を保有する理由がない』というのは、米国が求める非核化とは程遠い。米国の情報関係者は揃って南北対話に懐疑的だし、日本はもちろん、欧州やアジア各国も同様です。韓国はあまりにも北朝鮮側に妥協、譲歩しすぎている」

慰安婦問題でさんざん「ゴールポスト」を動かされてきた日本にとっては、またも韓国の行動に翻弄される事態だ。2014年1月には米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターのダニエル・スナイダー研究副主幹が、日本の政治指導者が「韓国疲労症」にかかっていると指摘したこともある。

だが、日本だけでなく、「コリア・ファティーグ(韓国疲れ)」は米国でも流行語になった。きっかけは執拗な“反日”だ。最初にこの言葉が、使われたのは6年ほど前のこと。

2012年4月、米国歴史教科書の「日本海」表記を「東海」に修正させようと、ホワイトハウスの公式サイトに「東海」支持の韓国人と見られる書き込みが殺到。サーバーが一時パンクする騒ぎになった。2015年4月には安倍首相の米国議会でのスピーチ阻止のため、在米韓国人が「訪米反対声明」を発表し妨害工作を展開。米国政府を激怒させた。

◆トランプは「弱腰」と指摘

今回の特使派遣についても、米外交専門メディア『ザ・ディプロマット』はこう書いている。

〈五輪後の金正恩の友好ムード演出は、文在寅の気前の良さと統一への情熱を食い物にして、食糧援助と制裁解除を獲得するための試みだ。ソウルと国際社会は、太陽政策を再試行しても、国民を無視し国防費を優先させる北朝鮮を変えることができないことを自覚するべきだ〉(3月6日配信)

産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が言う。

「米国は北朝鮮が韓国のすり寄りを利用して、核開発のための時間を稼ぎ、自分たちに都合のいい形での米朝対話を画策する可能性を懸念しています。トランプ大統領の文大統領に対する不信感は根強い。象徴的なのが、文大統領を『appeasement』と批判した昨年9月のツイート。これは直訳すると『宥和』で、相手に不必要な妥協や譲歩をしてすり寄る姿勢を批判する時などに使われ、“弱腰”という強い意味が込められている。同盟国のトップに使うのは極めて異例です」

◆中国も「面白くない」

文大統領は政権発足以来、歴史問題で足並みを揃えようと中国に接近してきたが、その中国からも嫌われているという。中国に詳しいジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聰氏が言う。

「朝鮮半島が平和へと向かうことに中国は賛成していますが、中国自らが主導して、北朝鮮が核とミサイル開発をやめる一方、米韓も大規模な合同軍事演習を当面中止する『ダブル・フリーズ』で非核化への交渉再開の条件を作り出そうとしていた。昨年7月にはロシアも合意して、それに乗る形になった。

中国は北朝鮮に特使を派遣していたが、今回の件で、韓国に主導権を持っていかれてしまった形です」

ちなみに中国の特使は金正恩氏に会えなかったというから、メンツを重んじる中国が怒らないはずがない。加えて、その中国に乗ったロシアも、韓国にハシゴをはずされた形だ。元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏が言う。

金正恩も御満悦・・・・?

「南北首脳会談が、そのまま非核化に繋がるとは考えにくい。それどころか会談の中で“米国の干渉排除”や“経済制裁の中断”が議題にのぼり、その時に決裂を恐れる文大統領が強く否定できない展開もあり得る。

金正恩氏の狙いは日米韓の分断です。いずれ韓国はこの宥和策から降りなければいけない。そうなった時、米国や日本が対応することになる」

18年前に訪朝した金大中大統領(当時)はノーベル平和賞まで受賞したが、核放棄に繋がらず、逆に北朝鮮に開発の猶予を与える結果になった。だが、韓国の『中央日報』はこう書く。

「平昌でまいたタネを平和の巨木に育てることは、文大統領にとって重い歴史的荷物であると同時にノーベル平和賞までいける千載一遇の機会だ」

振り回される世界が疲れるのも無理はない。

※週刊ポスト2018年3月23・30日号

【私の論評】南北統一で、主体思想に染まった経済的にはロシアより大きな、核武装した軍事独裁政権ができあがる(゚д゚)!

韓国と北朝鮮の歩み寄りは、いずれ南北統一につながる可能性が高いです、そうして統一朝鮮が朝鮮半島に出来上がることには、日米中ロの四つの国にとっては脅威です。

これは、以前もこのブログで指摘してきたことです。統一朝鮮が出来上がった場合どのようなことになるかといえば、北朝鮮と韓国が一緒になるということですから、半島全体が核武装をした(あるいはいつでも核武装できる)一つの国になることを意味します。さらに、韓国の進んだ工業力と北の核が結びつけば、朝鮮に核大国が出来上がる可能性も否定できません。

さらに、韓国のGDPは東京都なみであり、日本人からみればたいしたものではないと感じられるかもしれませんが、ロシアと同等以上であり、これが北朝鮮と結びつけば、ロシアより完璧に大きな経済になります。

これは、核武装をしたロシアよりも経済の大きい国家の誕生を意味します。この統一朝鮮が、独裁軍事国家になり、さらなる軍拡をする可能性は、かなり大きいです。そうなれば、将来的には核武装したロシアなみの独裁軍事国家が半島にできあがる可能性も否定できません。

そのような国が半島にできあがることは、日米中ロにとっては望ましいことではありません。

そうして、統一朝鮮が、北に近いような政治風土の国になった場合、「韓国疲れ」どころではなく「北朝鮮疲れ」のような状況どころか、大きな脅威が世界各国を悩ませることになるでしょう。

なぜそうなるかといえば、北朝鮮は主体(チェチュ)思想なるものがあるからです。

この思想は、中ソ対立のはざまで、自国の自主性維持に腐心する金日成が、「我々式の社会主義(ウリ式社会主義)」に言及する中で登場し、金正日によって体系的に叙述された。

この過程で、モスクワ国立大学哲学博士である黄長燁が哲学的緻密化に貢献したといわれる。後に金日成により性格づけられ、1972年の憲法で「マルクス・レーニン主義を我が国の現実に創造的に適用した朝鮮労働党の主体思想」と記載されました。朝鮮人民が国家開発の主人であり、国家には強力な軍事的姿勢と国家的資源が必要、とするものです。

「主体(チュチェ)」は、哲学およびマルクス主義の用語「主体」を朝鮮語に変換したもので、また「主体」とは、北朝鮮では「自主独立」や「自立精神」を意味する場合も多いです。主体思想は「常に朝鮮の事を最初に置く」との意味でも使われています。金日成は、主体思想は「人間が全ての事の主人であり、全てを決める」という信念を基礎としている、としました。

簡単にいうと、 人間は自己の運命の主人であり、大衆を革命・建設の主人公としながら、民族の自主性を維持するために人民は絶対的権威を持つ指導者に服従しなければならないと唱える思想です。

チュチェ思想は、人間に譬えるなら「首領」は「頭」であり、「党」は「胴体」であり、「人民大衆」は「手足」であると北では説明しています。胴体と手足は頭が考えた通りに動く必要があります。また頭がなければ生命が失われてしまいます。故に首領の権威は絶対的で、あらゆる人民大衆は無条件に首領に従わなければならない。云々、云々・・・。

書きながら頭が痛くなってきそうな内容ですが、これがどうやって導かれるのか、私には全く理解することができません。ちなみに「主体思想」は序論として「哲学的原理」なるものを掲げており
*人間は世界と自分の運命の主人で、これを開拓する力をもつ 
*人間は自主性、創造性、意識性をもつ社会的存在である 
*人間の自主性、創造性、意識性の高まりが社会により強く影響する方向に社会は発展する
と、これだけ取り出せば、悪くなさそうにも見えるお題目が並ぶのですが、このあと「故に」として「必ず首領の指導を受けねばならない」と来るのです。いったい何が「故に」なのか理解不能です。

相手が「首領」であれなんであれ、「絶対的な服従」というのは人間の自主性、創造性、意識性の否定以外の何ものでもなく、世界と自分の運命の「主人」たることを放棄させることとしか、論理的には読みようがないものです。

「主体思想」の「主体性」とは首領様への絶対服従が原点であり到達点になっている。理屈では通りません。

この思想に染まっている人間に対しては、理屈などの通りません。宗教の一種と考えると、話がすっきり通るかもしれません。指導者を政治的に見るとピンと来ないことが「生き神様」と考えれば「個人崇拝」の構造が別の様相を見せるようになります。主体思想でのそもそもの首領とは金日成国家主席個人を指したわけで、この「生き神様」を祭り上げる、一種の擬似宗教として、これを見ることができるかもしれません。

この主体思想に染まったのが、北朝鮮であり、北と南が統一された、統一朝鮮にもこの主体思想が受け継がれ、生き神様である「金王朝」の出身者を首領とするような国家になったとすれば、これはまともな理屈も何も通じないような、経済的には先進国なみの、核武装した軍事独裁政権ができあがるかもしれません。

文在寅はこのチェチュ思想の恐ろしさを認識しているとはとても思えません。仮に文在寅が、南北統一を推進するということになれば、文はどうあがいても、チェチュ思想による狡猾さには太刀打ちできないでしょう。

統一すれば、元韓国の大統領や政権の幹部など、すぐに暗殺されるか幽閉されるでしょう。チェチュ思想に染まった連中にとっては、このくらいのことは朝飯前の所業でしょう。

そうして、核武装した軍事独裁政権が主体思想という宗教を信奉することになれば、それはとんでもないことになります。

主体思想については、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
朝鮮大学校元幹部逮捕 「スパイ天国・日本」狙い撃ち 北朝鮮の指示役、韓国大統領選でも暗躍―【私の論評】日本人は、事件の裏にある主体思想の精神破壊力に目覚めよ(゚д゚)!
この記事は、2016年2月3日のものです。以下に主体思想の破滅的な破壊力について解説した部分を引用します。

"
この主体思想の破滅的な破壊力については、2005年4月のNHKスペシャル、「ドキュメント北朝鮮・第1集 個人崇拝への道」という三夜連続のドキュメンタリーで報道されていました。これは、当時のNHKとしては、かなりまともな報道でした。

この番組の後ろのほうで、元旧ソ連共産党中央委員会委員のワディム・トカチェンコ(ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮研究センター長)がしみじみ語った言葉こそ、今日本人が最も重要なキーワードとして胸に刻まなければならない言葉です。トカチェンコは苦々しい顔をしてこう回想しました。
「北朝鮮はソビエトにとって常に頭痛の種でした。彼らは主体思想を教え込まれ、目的達成のためならどんな手段を用いてもかまわないと考えています。国家のためならば何をしても許されるのです。 
私は時折思いますます。このような人々と全く関わり合いをもたないほうがいいと。不用意に関わるとこちらが病気になり、傷つくことになるのです。」

この動画、以前はYouTubeにも掲載されていたのですが、現在は削除されています。ただし、ニコニコ動画のほうには未だ掲載されています。ご覧になっていない方は、是非視聴していただければ、北朝鮮の本質に迫ることができると思います。

元旧ソ連共産党中央委員会委員のワディム・トカチェンコをして、ここまで言わせた、恐るべきチュチェ思想です。あまりこのような、思想に慣れていない日本人など、この思想に触れてしまえば、あっという間に北朝鮮側に籠絡されると思います。

このチュチェ思想は、北朝鮮では、主体思想塔(チュチェササンタプ、しゅたいしそうとう、韓国語: 주체사상탑)として目に見える形に体現されています。この塔は、朝鮮民主主義人民共和国の平壌市中区域にあります。高さ170メートル。金日成の70歳の誕生日を記念して建てられ、1982年に完成しました。

主体思想塔

こんな思想に基づいて動く国ですから、拉致問題も平気で起こすし、人民が食うや食わずでも、核開発は行うし、他の国のことなどおかまいなしに、全く自分のペースで動くのです。あの中国ですら、主体思想にはかなり悩まされているのではないかと思います。
"

南北統一によって、このような思想に染まった、軍事独裁政権が半島に出来上がる可能性があるのです。そうして、統一朝鮮は、習近平の独裁体制となった中国よりもさらに厄介な存在になるでしょう。朝鮮族の多い、中国の東北地方(満州)に領土的野心を抱くようになるかもしれません。日本の竹島は永遠に日本に戻らなくなるかもしれません。それどころか、中国と同じように尖閣付近で問題を起こすかもしれません。

金正恩ももちろんこの思想に染まっていることでしょうから、トランプ氏と会談したにしても、その場では何か、トランプ氏の意向に沿ったような話をしたとしても、都合が悪くなれば、すぐに裏切ることに関しては何の躊躇もしないことでしょう。

ただし、トランプ氏は高齢であり、長い間自由主義経済の中で商売をしてきて、その時々で失敗したり、成功したりした経験もあるでしょうし、金正恩に匹敵するような狡猾な人物と取引してきた経験もあるでしょう。さらに、年齢も70歳台ですから、若い世代よりは簡単に主体思想に巻き込まれるということないとは思います。

しかし、金正恩などとまともに話ができるなどと考えていては、「韓国疲れ」どころか、深刻な「主体思想疲れ」に見舞われることでしょう。

私自身は、従来のように段階を踏んだり、戦略的忍耐などをしていると、「主体思想」に破れて、南北統一朝鮮が成立してしまうと思います。

その前に、当面は南北統一の動きを見せた場合や、核開発を始めた場合は、米国はためらうことなく即座に軍事的行動をとることを金正恩に納得させ時間稼ぎをして、主体思想なる宗教を破壊することが最善の策だと思います。さらに、実際に北が不穏な動きを見せれれば、すぐに軍事行動に打ってでるべきです。これに関しては、日米中ロで合意することはさして難しいことではないと思います。あるいは、すでに条件付きで合意に達している可能性もあります。

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2018年3月12日月曜日

森友文書問題で「財務省解体」「財務大臣辞任」はやむなしか―【私の論評】Z解体の好機、ただしZが他省庁の植民化を排除するような方式で完璧に解体せよ(゚д゚)!


そして財務大臣の辞任も…




髙橋 洋一

なぜ金曜日午後に発表されたのか

例年、筆者は確定申告をしている。筆者はかつて税務署長を務めた経験があるので、この時期の税務署関係者の忙しさはわかっている(2月19日付け本コラムhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/54514参照)が、今年ばかりは怒りをもって確定申告した。

今週は確定申告の最終週であるので、税務署では1年のうち最も忙しい時期だ。そのタイミングで、佐川宣寿国税庁長官が辞任した。確定申告のこの時期に辞めた国税庁長官は初めてである。

国税庁長官のポストは、(国内系ポストでは)財務省内において事務次官の次のナンバー2である。主税局長や理財局長などの主計局の次のランクの局長がこのポストに就任することからもわかるだろう。

財務省ナンバー2の佐川氏が辞任したのは、どう考えてもただ事ではない。辞任の理由の一つとして、一連の森友問題に関する決裁文書が国会に提出された時の理財局長であったこともあげられていた。

辞任の第一報は、9日(金)の午後に流れた。その直前のやはり9日(金)の午後には、森友問題に対応していた近畿財務局職員が自殺したという報道があった。

金曜日の午後に報道発表を行う、というのは、役所にとっては大きな意味があることだ。たとえば金融機関の破綻処理が行われる場合などは、「金月処理」と呼ばれる処理が典型的となる。つまり、社会的に影響が大きい発表は、まず金曜日に行って、土日を挟んで、月曜から諸手続をする、というものだ。

(近畿財務局職員が亡くなったのは7日水曜日であり、今回の案件について書かれた遺書もあるといわれている。なんとも痛ましいことであり、ご冥福をお祈りしたい。)

この段階では、打開策として、決裁文書の原本を大阪地検から返してもらって、国会に提出するしか他にとるべき手段は財務省には残されていなかった。

筆者は本件について、先週5日(月)の本コラム<朝日新聞「森友新疑惑」事実なら財務省解体、誤りなら朝日解体危機か>(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54700)でも書いた。

ハッキリ言えば、このときの論考はいろいろな可能性について過不足なく場合分けして考えただけである。筆者は数学畑の出身で、確率計算は得意だ。確率計算は、過不足のない場合分けからスタートするのがセオリーだ。ただし、それぞれの場合分けはできても、どのくらいそれが起こるかという「確率」はわからなかった。

マスコミの報道では、しばしば「前提」や「条件」を書かないで結論だけを書く。筆者には、そのように結論だけを書く書き方にはかなり違和感がある。この点をマスコミの人に聞くと、「一般読者が結論だけを求めるから、そうなってしまう」というが、そもそも記事を執筆する記者の思考自体も「条件→結論」というロジカルシンキングができていないことが多い。

先週の筆者のコラムと、その後状況が変化した後に筆者が執筆・発言したことについて、ロジカルシンキングができない人からは「結論を変えている」と批判を受けたが、書いたものをもう一度読み返してもられば、一貫して「条件→結論」しか書いていないので、そうした批判は間違いであることがわかるだろう。

いずれにしても、各場合の確率がわからない状況は、9日(金)の午前中まで同じだった。例えば、別の媒体に筆者が書いた<決裁文書「書き換え」あり得るか 元財務官僚の筆者の見解>(https://www.j-cast.com/2018/03/08323108.html)では、朝日新聞には「書き換え」の証拠となる「ブツ」(決裁文書の画像など)を出すべきだ、財務省側には大阪地検に文書の「原本」を返してもらってそれを国会と国民に提示せよ、と言っている。それが、この問題を解決するためのベストな方策だったからだ。

ところが、9日(金)の午後に、近畿財務局職員の自殺が報じられ、さらに佐川氏辞任について各社が報道。その後、財務省は決裁文書の書き換えを認め、12日月曜日に国会に報告するという各社の報道があった。ここまでくると、今回の問題の火付け役となった朝日新聞の3月2日の「文書書き換え」に関する報道は、概ね事実であろう。

ところで、財務省が国会になにか重大なことを報告する際には、事前に「要路」を押さえるのが慣習となっている。つまり、政府や自民党幹部のところに赴いて、事前に説明をするわけだ。この説明を受けた政治家は、それを親しいマスコミ記者などに漏らす(というか、マスコミ記者がそれを待っている)。そして、そのことを確認したのちすぐに報道する。

というわけなので、今回も12日の月曜日を待たずして、財務省がなにを国会で報告するかがおおよそわかるのだ。

12日、財務省は自公両党、参院予算、衆院財務金融両委員会の理事懇談会でもろもろの説明を行うのだろう。そのとき、財務省や近畿財務局での処分者も出てくるかもしれない。

財務省はどうなるのか

財務省の側でできるのは、形式的な職員の処分までだ。だが、佐川氏、近畿財務局長、近畿財務担当者らは、一般市民から様々な疑惑で刑事告発され、かつそれが受理されている状態だ。今回の一件が「訂正」だったのか「改ざん」だったのかはまだ分からないが、もし公文書偽造などの刑法に抵触するような場合には、大阪地検によって彼らが起訴される可能性もある。身柄確保(自殺防止)で逮捕ということもありえる。

問題なのは、財務省本省から近畿財務局に対して書き換えの指示があったかどうかだ。それがあれば、指示した人にとどまらず、それこそ「組織的な関与」となって、財務省解体までにつながる重大事件になるだろう(8日の夕刊フジ http://www.zakzak.co.jp/soc/news/180309/soc1803090003-n1.html?ownedref=articleindex_not%20set_newsList 参照)。

この、指示があったかどうかについては、マスコミの間でも見解がばらけている(23日午後11時現在)。毎日新聞では、「財務省書き換え、佐川氏が指示 12日国会報告」(https://mainichi.jp/articles/20180311/k00/00m/010/141000c)と、指示があったことを明示しているが、産経新聞は「文書書き換え 「改竄ではなく訂正」 自民幹部「問題なし」冷静」(http://www.sankei.com/economy/news/180311/ecn1803110006-n1.html)と違ったニュアンスの報道をしている。

これは、明日以降判明するだろう。ここでは「毎日新聞の報道が正しいとすれば」という前提で、指示があった場合財務省はどうなるか、どうすべきかを考えたい。

4つの提案

こうした場合、一つの参考になるのが「前例」である。もちろん、国民の怒りのレベル次第では前例が参考にならない場合もあるわけだが、前例を知っておいて損はない。

財務省の場合、なんといっても20年前(1998年)の大蔵省スキャンダル事件が「前例」となるだろう。筆者はその当時、大蔵省内で管理職になったばかりだったので、よく覚えている。地検職員が大蔵省に入ってきたのだが、意外にも、というべきか、大蔵省の職員は地検が来ることを当日になって初めて知る。

地検職員が省庁などに入るときには各テレビ局が来て、その姿を放映するのがお決まりだが、大蔵省の職員は、テレビ局の車が来ているのを見て、初めて「今日は強制調査だ」と知るわけだ。当時は大蔵省4階にある金融部局に東京地検の強制調査が入ったが、それに伴い4階への通路の防火扉が閉じられ、4階への出入りが禁止された。

その事件で逮捕されたのは、大蔵省5名、日銀1名。自殺者は3名にのぼった。これらの人はみな筆者の知り合いだったので、本当に切なかった。大蔵省内での処分も多数に上った。その後の省内出世をみると、この時の処分はあまり関係がないようだったが(ただし、大蔵大臣、日銀総裁、大蔵事務次官らは辞任した)。

この事件が大蔵省に与えた影響は大きい。金融行政への信頼を失わせたということで、銀行局、証券局が大蔵省から分離され、これらは後に金融庁になった。そして、それまでは「法律」ではなかった公務員倫理を立法化し、1999年には公務員倫理法ができた。社会の仕組みが変わったわけだ。

さて、もし毎日新聞がいうように財務省による「書き換え」の指示があったのならば、やはり社会の仕組みが変わるほどの変化が起きるだろう。筆者は「財務大臣の辞任」「消費増税の凍結」「財務省の解体」「公文書管理法の改正」が必要だと思う。それを順次説明しよう。

まず、財務大臣の辞任についてだが、さすがに財務大臣は佐川氏をかばい過ぎた。このままいくと、佐川氏の起訴は免れないだろう(ひょっとしたら逮捕もありうる)。佐川氏は辞任しているとはいえ、財務省幹部の逮捕となれば、1948年の昭電疑獄における福田赳夫大蔵省主計局長の逮捕以来だ(裁判では無罪)。

1998年の大蔵省スキャンダルでは、課長補佐のキャリア官僚が逮捕され、執行猶予付きの有罪になったが、佐川氏は局長、国税庁長官とトップクラスの官僚であるので、財務省の信頼失墜という点では、かなり大きいといわざるを得ない。そうなれば財務大臣も責任を取らざるを得ないだろう。

続いて「消費増税凍結」だが、財務省が組織ぐるみで決裁文書の書き換えという「禁じ手」をやってしまったのであれば、もう財務省は役所としての信頼を完全に失うだろう。

筆者はこれまで何度も指摘してきたが、もともと財務省は、日本の財政事情について国民に誠実な説明をしてこなかった。本コラムでも、財政再建の必要性について財務省は過剰な説明をしてきたと再三書いてきた。財務省が主張してきた財政再建の必要性にも疑義があると考えるべきなので、「財政再建」を前提とした消費増税については、凍結が必要と筆者は考える。

すでに信用を失っているのだから

三つ目に、現職の国税庁長官が仮に逮捕、起訴されるということになれば「いまのように、財務省の下部機関として国税庁を置いておくのはいかがなものか」という議論になってもいいだろう。

国税庁は、国家行政組織法第3条に基づく機関として財務省に置かれている。ただし、この組織のトップは歴代財務省キャリアであり、(前述のとおり)財務省の国内ナンバー2のポストになっている。国税庁でも国税のエキスパートを独自に採用しているが、トップはおろか、国税庁の主要部長にすらなれないのが現実だ。

どうして税務執行に詳しいといいがたい財務省キャリアが国税庁のトップや主要部長になるのかといえば、国税庁が財務省の「植民地」と化しているからだ。

民主党は政権を奪取した09年の衆院選で、政権公約として「歳入庁の創設」を掲げていた。筆者はこれに期待していた。歳入庁とは、税と社会保険の徴収を一体化させるための組織であり、世界のほとんどの国が歳入庁のような組織を有している。

民主党政権はいつの間にか歳入庁を公約から下ろしてしまったのだが、今回の事件を契機に、自公政権が財務省から国税庁を分離して歳入庁を作れば、災い転じて…となるだろう。

最後に、公文書管理法の改正についてだが、まず、いまの公文書管理法は、本コラム(2017年11月27日付け「森友問題で「的外れな追及」続けるマスコミには書けない、本当の結論」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53622)でも書いたように、かなりザル法である。

特に横断的な文書管理がまったくできていない。たとえば今回の件を機に、過去の文書の改ざんができないように、ブロックチェーンを使った省庁横断的な電子公文書管理の仕組みをつくる、などを考えるべきだ。

これについては興味深い国会審議もあった。3月9日の参議院予算委員会において、浅田均参院議員(維新)から「ブロックチェーンを公文書管理に取り入れるべき」との質問があった。これにはさすがの麻生財務大臣も前向きに答えざるを得なかった。

いずれにしても、12日月曜日以降の国会で財務省がどんな説明をするのか、だ。とにかく情報公開と事実解明を優先して、国民にスッキリとわかるようにしてもらいたい。が、すでに信用を失っている財務省の報告を国会は鵜呑みにせず、大阪地検にあるとされる決裁文書の原本現物を国民に明らかにしてもらうなどの追及を行うべきだろう。

原本現物があれば、のちに提出されたものが改ざんされたものかそうでないかは、1日もあれば判定可能である。捜査に支障をきたすからというなら、国会の非公開の理事会でそれを判定して、翌日大阪地検に返せばいいだけの話である。

12日から「大きな転換点」を迎えるのか。それぞれの行動に要注目である。

【私の論評】Z解体の好機、ただしZが他省庁の植民化を排除するような方式で完璧に解体せよ(゚д゚)!

佐川宣寿氏に関しては、かなり胡散臭い人物であることはこのブログに過去に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ「森友」問題で露呈した 「官僚の裁量で文書管理」の罠―【私の論評】最初からバレバレの財務省キャリア官僚の嘘八百はこれだけではない(゚д゚)!
この記事は昨年の4月13日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、佐川氏の国会での答弁をとりあげました。

財務省の佐川宣寿・理財局長(当時)
財務省の佐川宣寿・理財局長は、4月3日の衆院決算行政監視委員会で、「パソコン上のデータもですね、短期間で自動的に消去されて復元できないようなシステムになってございますので、そういう意味では、パソコン上にも残っていないということでございます」と答弁した。
IT関係の方なら、この佐川氏の発言には、かなりの胡散臭さを感じたと思います。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では以下のような要旨を述べました。
現在のパソコンだと、かなり容量が大きくデスクトップ型ならテラバイト級の記憶装置を持つものも珍しくはないため、パソコン上のデータを自動的に消去して、復元できないようにする必要性など全くないこと。  
仮に消去したとしても、データはかなりの確率で復元できるはずであること。文書でもメールでも、たとえ消去したとしても、ほとんどの場合復元できること。
以上の観点から、同感が手見ても佐川氏の発言は異常としか思えませんでした。本日の財務省の発表をみているとやはりこの考えは正しかったと考えざるを得ません。

そうして、疑問なのは、なぜ政府、野党、マスコミがこれを徹底的に追求しなかったのかということです。特に野党や、マスコミは徹底的に追求すべきでした。もし徹底していたら、本日の財務省による本日の報告は、もっと早い時期に行われていたかもしれません。

ただし、野党やマスコミにとっては、森友問題は倒閣あるいは、安倍政権になるべく悪いイメージを植え付けることが主目的ですから、ここで財務省や佐川氏を追求しても、本題からそれるし、さらに新聞などは、10%増税の際には、財務省から軽減税率を適用してもらいたいなどの意向があり、あまり財務省をつつかなかったのかもしれません。

政府も、もっと厳しく追求すべきでした。そうすれば、少なくとも佐川氏を国税庁長官にする人事などなかったかもしれません。ただし、あたかも政治勢力であるかのように振る舞う財務省といたずらに揉め事を起こしたくないとか、派閥間の力学などで、佐川氏を追求するのはやめたのかもしれません。


いずれにせよ、野党・マスコミ、政府も佐川氏や財務省を追求しなかったのは、明らかに手違いだったと思います。

政府、野党、マスコミが徹底的に財務省と佐川氏をあの頃に徹底的に叩きまくっていれば、財務省解体はもっと早い時期に議論されていたかもしれません。政府にしても、内閣人事局という部署が発足していますから、佐川氏など他省庁に片道切符で左遷するなどのことも出来たかもしれません。

ブログ冒頭の記事では、高橋氏は「財務省本省から近畿財務局に対して書き換えの指示があったかどうかだ。それがあれば、指示した人にとどまらず、それこそ「組織的な関与」となって、財務省解体までにつながる重大事件になる」としています。

私は、これには本当に大賛成です。たとえ「組織的な関与」がなかったにしても、財務省には解体されても致し方ない事由があります。それについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
財務省の補正予算編成が日本のためにならない理由―【私の論評】日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てた財務省はこの世から消せ(゚д゚)!

この記事では、財務省が日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てていることを掲載しました。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
日本経済の最大のボトルネック(制約条件)は、ご存じの通り「クニノシャッキンガー」という嘘です。私ははこの「クニノシャッキンガー」という嘘、プロパガンダ・レトリックこそが、日本経済の復活の最大のボトル・ネックであると確信しています。 
酷い人になると、国の借金どころか、「日本の借金は1000兆円!」と、あたかも「日本国」が外国から多額の借金をしており、財政破綻が迫っているかのごときレトリックを使います。このような主張をする人々は、世界最大の対外純資産国、すなわち「世界一のお金持ち国家」であることを知っているのでしょうか。 
テレビ等で「国の借金」「日本の借金」という用語を安易に使う人がいますが、これは明らかな間違いです。本当は「政府の負債」です。そもそも、先に述べたように、日本は外国からお金を借りているわけではなく、世界で一番お金を外国に貸している国だからです。 
政府の負債、と聞くと、皆さんは「政府の借り入れ」と認識します。それで正しいわけですが、「日本の借金!」「国の借金!」などという用語を使われると、皆さんはあたかも「自分たちの借金」であるかのごとく感じてしまい、財務省の緊縮財政プロパガンダに洗脳されてしまうわけです。
そうして、なぜ財務省がこのようなことをするかといえば、予算の配賦権を利用して、他省庁に睨みをきかせ、さらに政府関連機関や外郭団体などに金を貸し付けたりして、財務省の高級官僚の天下り先を開拓し、さらに高級官僚が退官した後の天下り先での超豪華なハッピーライフを満喫するためです。大雑把にいえば、これが目的です。

財務省は、そのためには、増税で国民が塗炭の苦しみを味わうことになってもお構いなしです。高級官僚さえ良ければ、それで良いのです。

民主党政権のときには、様々な政策立案などの実務を官僚から奪いとって政治主導を実現しようとしましたが、欠局事業仕分けなど財務省に仕切られ、野田政権に至っては、財務省の助けがないと政権運営もおぼつかないなどの醜態を晒しました。

このようなことを考えると、私自身は、今回の書き換えに「組織的な関与」があろうが、なかろうが何としてでも必ず財務省を解体すべきと思います。

そうして、財務省解体ということになれば、一つ気をつけなければならないことがあります。

ブログ冒頭の記事にもあるように、国税庁が財務省の「植民地」と化しているように、財務省は、単純に分割すると10年くらいかけて他省庁の植民地を拡大する手段につかうので、それを防ぐために、まずは公的金融部門の廃止、次に財務省官僚が目下においている官庁の下部組織に財務省を分割の上で編入するなどの方式にすべきです。

要するに、従来の財務省組は、他官庁の下部組織に分割されて編入されるため、どうあがいても、所属官庁の次官にはなれそうもないくらいの地位に落とすのです。

これにより、少なくともすべての官庁の高級官僚は財務官僚のDNAとは無縁となります。このようにして、はじめて財務省を解体することができます。

今回は、財務省解体ということにでもなれば一時的に政権側にかなり不利ですが、その後は10%増税の凍結はかなりやりやすくなりますし、それに最近は緊縮気味だった財政を、積極財政にもっていくこともやりやすくなります。

いや、それどころか、最早誰の目から見ても明らかに大失敗だった8%の消費増税をやめて、5%に減税するなどということもかなりやりやすくなるはでず。ボトルネックだった財務省がこの世から消えれば、まともな起動的財政政策が実施しやすくなります。

これを実施しつつ、さらなる量的緩和を実施すれば、短期間で日本経済は上向くことになります。そうなると、国民からの支持率もかなり上がることになります。政府はなんとしても財務省解体に挑むべきです。

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2018年3月11日日曜日

【中国全人代】国家主席の任期撤廃、改憲案を可決 中国政治体制の分岐点―【私の論評】共産党よりも下の位置づけの中国憲法の実体を知らなければ現状を見誤る(゚д゚)!

【中国全人代】国家主席の任期撤廃、改憲案を可決 中国政治体制の分岐点

全人代で憲法改正案が採択され、拍手する
習近平国家主席=11日、北京の人民大会堂

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は11日、国家主席の任期を2期10年までに制限した規定を撤廃する憲法改正案を可決した。賛成2958票に対して反対は2票、棄権3票で賛成票が99%を上回った。習近平国家主席が兼務する中国共産党総書記と中央軍事委員会主席に明文化された任期制限はなく、最高指導者としての習氏の3期目続投が制度上可能となった。

 党内や国内世論の一部では、習氏の長期政権化が集団指導体制の崩壊や個人独裁、指導者終身制につながるとの懸念も高まっている。だが、習指導部が反腐敗闘争で政敵の打倒を進めた結果、強引ともいえる権力集中を表立って阻止できる党内勢力は存在しないのが現状だ。中国の政治体制は大きな分岐点を迎える。

 1982年に制定された現行憲法の改正は14年ぶり5回目で、今回は習氏と党の権威強化が主眼だ。今世紀中頃までに、「社会主義現代化強国」を実現することをうたう「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が、毛沢東思想やトウ小平理論などと並ぶ「中国各民族人民」の指導思想として位置づけられた。中国で現役指導者の理念が憲法に明記されるのは毛沢東以来。

 また、総則第1条の「社会主義制度は中華人民共和国の根本的な制度だ」との文言に続いて「中国共産党の指導は中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴だ」と追加し、共産党統治の正統性が強調された。

 このほか反腐敗闘争の制度化に向け、党員以外の公務員らも摘発対象とする国家機関「監察委員会」の設立を憲法に明記。行政機関の干渉を受けない独立した監察権の行使が認められ、国務院(政府)や最高人民法院(最高裁)、最高人民検察院(最高検)などと同格の機関として位置づけられた。


【用語解説】中華人民共和国憲法

 1954年9月に開かれた初の全国人民代表大会で制定され、その後3度の大幅改正が行われた。現行憲法は82年に制定されたもので「82憲法」とも呼ばれ、序文と「総則」「公民の基本的権利と義務」「国家機構」「国旗、国歌、国章、首都」の4章で構成される。2004年までに計4回の小規模改正を行い、今回の改正では「国家機構」の章に「監察委員会」の新節が加わり全143条となる。総則の第1条では中国について「労働者階級が指導」する「人民民主主義独裁の社会主義国家」だと規定している。

【私の論評】共産党よりも下の位置づけの中国憲法の実体を知らなければ現状を見誤る(゚д゚)!

憲法改正案に賛成2958票に対して反対は2票、棄権3票とされていますが、この意味するところは何なのでしょうか。これには、2つの見方があると思います。

まずは、習近平が権力を完璧に掌握できていないという見方です。もし、完璧に掌握できていたとすれば、反対や危険票は出ないはずです。

もう一つの見方は、習近平が憲法改正の投票がまともであることを印象づけるため、わざと反対2、棄権3が出るように仕組んだという見方です。

私自身は、この2つの見方以外にないと思います。そうして、いずれの場合であっても、習近平は未だ全権力を掌握していないとみるべきです。

なぜなら、最初の見方では、そもそも反対票がでているということは、習近平が権力を掌握できていないということです。

二番目の見方の場合では、憲法改正の投票がまとめであることを印象づける必要性があるということです。それは誰に対してかといえば、まずは共産党内部において、まともな投票が行われたことをアピールするという側面と、中国人民に対して、習近平はまともな手段を用いて、国家主席の任期撤廃をしたということを印象づけるためです。

いずれの場合でも、やはり習近平が全権力を掌握していない可能性が十分にあります。

英経済誌 エコノミストの表紙に掲載された皇帝になった習近平

それと、上の記事では、中華人民共和国憲法の位置づけが説明されておらず、この記事を読んだ多くの人は、中国の憲法も、日本や他の憲法も同じようなものであって、 国家の統治権・統治作用に関する根本原則を定める基礎法であり、他の法律や命令で変更することのできない国の最高法規であると無条件で思い込んでしまうかもしれません。

しかし、これは完璧な間違いです。なぜなら、中国には憲法の上に君臨する存在があるからです。言わずと知れた、中国共産党です。中国の憲法前文には"中国共産党の指導"という文言があります。該当部分を以下に引用します。
中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下に、マルクス・レーニン主義、毛澤東思想、鄧小平理論及び"三つの代表"の重要思想に導かれて、人民民主独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、改革開放を堅持し、社会主義の各種制度を絶えず完備し、社会主義市場経済を発展させ、社会主義的民主主義を発展させ、社会主義的法制度を健全化し、自力更正及び刻苦奮闘につとめて、着実に工業、農業、国防及び科学技術の現代化を実現し、物質文明、政治文明および精神文明の調和のとれた発展を推進して、我が国を富強、民主的、かつ、文明的な社会主義国家として建設する。


"中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下に"ですから、中国の憲法や人権は、ハナから"制限付き憲法・人権"にしかすぎないわけです。

習近平が憲法を変えたということで、習近平がとうとう中国皇帝になり、なにもかも思い通りにできると考える人がいるかもしれません。しかし、これは、表面上はそうかもしれませんが、実体は違う可能性が十分にあります。

そもそも、憲法の上の存在が共産党であり、習近平が現状では共産党の最高権力者なのですから、憲法に違えたことを習近平はいつでもできるし、憲法改正も他国と比較すれば、容易にできるということです。

そもそも、中国では憲法の上に共産党があるということで、元々民主的でもないし、政治と経済の分離ができていないので、すべての中国経済は常時中国政府のコントロール下にあり、実際政府が経済のすべての点に関して、規制したり管理することができる体制にあります。これは、共産主義ではなく国家資本主義と呼ぶべき体制です。さらに、法治国家化もされていないのです。

最近まで、憲法改正がなかったのは、中国にあるいくつかの政治派閥の力がある程度均衡していたからに過ぎず、中国の憲法が他国憲法のように有効に機能していたというわけではありません。

これは、派閥のヘッドが他の派閥のさらに上に出ることができなかったか、出ようとしなかったからに過ぎないのです。それは、出れば他派閥に潰されるからです。

習近平はここ数十年ではじめて、他の派閥のさらに上に出て、全権力を掌握しようとしているわけです。

しかし、そのようなことがおいそれと成功しそうもないのは、はっきりしています。まずは、江沢民、胡錦濤の元前総書記には鄧小平に指名されたとの統治の正当性がありました。しかし習近平以後の党指導者にはそれがありません。

さらに、毛沢東に関しては、大虐殺をしたという悪い側面もありますが、建国の最大功労者であったことには異論はないと思います。鄧小平は、天安門事件では、軍隊の出撃を命令し大虐殺をしたという悪い側面もありますが、毛沢東の死後、文化大革命によって荒廃した中国に四つの経済特区を指定することで改革開放を実施し、その結果、著しい経済成長が起こり、現在の中国を基礎を築きました。

建国の父である毛沢東(左)と現代中国経済の基礎を築いた鄧小平(右)

しかし、習近平にはそのような成果は何もありません。一帯一路を実行しようとしていますが、これは今のところ構想に過ぎず、さらにこの構想はこのブログでも何度か掲載させていただたように、とても成功の見込みはありません。ということは、習近平には毛沢東や鄧小平なみの成果をあげることは不可能であるということです。

さらに、習近平が、如何に腐敗と戦っても、腐敗は古来中国の伝統であり、撲滅することは不可能です。それどころか、習近平自身がファミリー・ビジネスなどで、腐敗しています。腐敗しているものが、腐敗撲滅するなど、撲滅される側にとっては理不尽以外の何ものでもありません。日本を含めた先進国の感覚では、中国の幹部で全く腐敗していないものなどいません。それを考えると、この先の10年以上も習近平独裁政権が続いていることは想像しにくいです。

いずれかの時点で、習近平体制が崩れ、その後中国共産党独裁体制も崩れるであろうと、見なすのがまともだと思います。

私は、今回の習近平の独裁体制は、現在の中国政治体制の崩壊の序曲であると見なすべきだと思います。これは、中国憲法が共産党よりも下という位置づけを理解しないと、到底理解できないと思います。

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