2019年5月11日土曜日

絶望的な日本。自民・二階幹事長を反米媚中にした中国の浸透工作―【私の論評】日本も、米国のように超党派で中国に対抗する体制を整えるべき(゚д゚)!

絶望的な日本。自民・二階幹事長を反米媚中にした中国の浸透工作

二階氏

これまでも「中国の浸透工作に豪が陥落寸前。日本にも伸びる習政権の魔の手」等で、強大な影響力を手に入れるためには手段をいとわない「中国という国のやり口」を紹介した、AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さん。その矛先は、当然ながら日本にも向いているようです。山岡さんは今回、無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』で「自民親中派筆頭」とも揶揄される二階幹事長の習近平政権への見事な絡め取られ振りを批判的に伝えるとともに、二階氏にはもはや政治家を続ける資格もない理由を記しています。

二階さん、拉致被害者救出は眼中になさそうですね?

全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

アメリカで中国人産業スパイが捕まったようですね。日テレNEWS24(4月24日)では次のように報じられました。「アメリカの司法省は23日、GE(=ゼネラル・エレクトリック)の企業秘密を中国側に渡した産業スパイの罪で、中国系アメリカ人と中国人の男2人を起訴したと発表した。中国政府が支援したと主張している」

GEと言えば、有名なジャック・ウェルチさんの時代に家電製品から完全撤退し、ハイテク分野に特化したアメリカ有数の企業です。

容疑者のうち、中国系アメリカ人はGEの元技術者で、GEから企業秘密のタービン技術を盗み出し、おいの中国人実業家に渡した疑いが持たれているとのこと。

二人は「中国企業を通じて中国政府から経済的支援などを受け、中国の当局者と連携していた」ことが疑われているそうです。

アメリカから留学生や産業スパイ経由でハイテク技術を吸い出し、ついには自国のハイテク産業を世界No1にしようと目論む中国に警戒を強めるアメリカ。両国の対立は決定的なものとなりました。

一方、その23日、自民党の二階幹事長は翌日からの訪中を前に記者会見を開き、次のように語りました。

「日中関係は双方の努力によって、だんだん良い方向に進展しつつある。さらに強力に取り組んでいけるように努力していこうということを、中国側と十分話合いたい」

そして、中国が進める「一帯一路」のフォーラムにも出席することを明らかにし、こう言い放ちました。

「米国の機嫌をうかがいながら日中関係をやっていくのではない。日本は日本として、独自の考えで中国と対応していく。米国から特別な意見があれば承るがそれに従うつもりはない」

二階さん、ここまで言ったら、もはや親中のみならず、反米と見做されても仕方がないですね。

きっと忘れているか、まったく関心がないんでしょうね。日本が北朝鮮による拉致問題を自力では解決できず、トランプ大統領のアメリカにすがっている事実を。

拉致された自国民を自国の軍隊で取り返しに行けない日本は、同盟国で超大国のアメリカに泣きついています。これ、はっきり言って恥ずかしい状態ですが、憲法の制約もあり、仕方ありません。

トランプさん、安倍首相のお願いを聞き入れて、シンガポールでもハノイでも金正恩委員長に日本の拉致問題解決の必要性を強調してくれました。

安倍首相も気を使って、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦しました。
これも情けない感じがしますが、はっきりいって、これが日本の置かれた立場であり、実力なわけです。

アメリカを筆頭とする自由主義陣営が共産主義独裁国家に敗れることがあれば、日本という国も消滅し、倭人自治区となるでしょう。

そのアメリカが、中国の覇権主義とスパイ行為に警戒して対立姿勢を強め、世界中で「一帯一路」がその露になった体質ゆえに警戒されているときに、「アメリカの意見に従うつもりはない」と啖呵を切る二階さん。

習近平主席にお願いして拉致問題を解決する秘策をお持ちなんですか?それとも、拉致問題なんて眼中にないのでしょうか?

そして、二階さんが中国へ渡った24日、尖閣諸島の接続水域で中国海警局の船4隻が航行しているのが海上保安庁の巡視船により確認されました。これで13日連続となりました。

二階さん、これを止めろと要求するどころか、6月に大阪で開催されるG20に習近平主席来日の確約をもらって大喜びのようです。「正常な関係に戻った!」と。

私は、中国がオーストラリアやニュージーランドで今なお繰り広げている浸透工作(サイレント・インベージョン)の凄まじさを知っているので、中国が「中華帝国再興の夢」というスローガンの元に進める覇権主義をあきらめない限り「正常な関係」などあり得ないことを確信しています。

二階幹事長のこのような言動を許しながら、安倍首相はまたトランプ大統領に拉致問題で支援してくれるように頼むつもりなのでしょうか?

あからさまな二股外交が破綻するとき、塗炭の苦しみを味わうのは日本国民です。

今回の二階幹事長の言動に違和感と危機感を感じない国民が大多数を占めるのであれば、オーストラリアやニュージーランドの心配をしている場合ではなく、日本に対する工作はすでに完了していると判断すべきでしょう。

これだけははっきり言っておきましょう。

「拉致された自国民を救い出す決意がない人間に政治家を続ける資格はない」と。

山岡鉄秀 Twitter:https://twitter.com/jcn92977110

【私の論評】日本も、米国のように超党派で中国に対抗する体制を整えるべき(゚д゚)!

それにしても、なぜ二階氏はこのようにすり寄るのでしょうか。ヒントになりそうなことが過去にありました。

以下に過去のZAKZAKの記事から一部を引用します。詳細は元記事をご覧になってください。
二階俊博・自民党幹事長が中国人ビジネスマンに脅されていた
 事件が弾けたのは2017年9月26日、折しも衆院解散の2日前で、小池百合子・東京都知事の「希望の党」結党宣言で政界に激震が走り、国民もメディアに視線を釘付けにされていたタイミングだった。 
 その日、警視庁捜査一課の捜査員10数人が中国籍の会社経営者・王俊彦氏の自宅や関係先に捜査に入り、王氏を逮捕した。
 王氏は上海出身で1988年に来日。不動産コンサルティング会社などを経営し、中国政府が関わる日中間の大規模ビジネスを展開、中国国営企業の日本法人や大手投資会社の顧問などを務めている。在日中国人社会では名の通った“大物”だ。「駐日中国大使館とも太いパイプを持つ」(公安関係者)とみられている。 
 事件のカギを握るのは王氏の会社が買収した静岡県小山町のセミナーハウス「東富士リサーチハウス」の倉庫から押収された段ボール約40箱分の資料だった。捜査一課の「押収品目録」にはこんな記載がある。 
〈段ボール箱(「衆議院議員二階俊博」等と記載のある封筒在中のもの) 2箱〉
〈段ボール箱(「新しい波」の契約書類等在中のもの) 1箱〉
〈段ボール箱(「金銭出納帳」等と記載のある書類等在中のもの) 1箱〉
 --など。「新しい波」とは旧伊吹派と合併する前の二階派の正式名称であり、派閥の経理資料などが保管されていたことが読み取れる。この段ボール資料が強要未遂事件の“材料”になった。
 捜査令状(勾留状)に添付された被疑事実の要旨に事件の概略が書かれている。
 〈被疑者は、株式会社〇〇の取締役であるが、自由民主党幹事長二階俊博が同派閥事務所の閉鎖に伴い、同事務所の書類等を△△株式会社が管理していた倉庫であるMother Village東富士リサーチハウス内に保管依頼していたところ、平成26年10月17日、株式会社〇〇が同倉庫の所有権を取得し、前記書類等も同時に入手したことを奇貨として、平成28年11月4日午後1時頃、二階俊博の二男である二階直哉(当時44歳)を被疑者が顧問を務める××に呼び出し、「東富士リサーチパークを買い取った。そこにあった荷物は大変なものだった。これを流せば大変なことになる。」「まだまだ大変なものがある。」などと同派閥「新しい波」名義の通帳の写しや事務連絡メモ等を示して、同人の父である二階俊博の名誉に害を加える旨を告知して脅迫し、(中略)政治家である同人の父親に働きかけさせて義務のないことを行わせようとしたが、同人がこれを拒否したためその目的を遂げなかったものである〉(要旨内では〇〇、△△、××は実名が記されている) 
 王氏が段ボール箱の書類を「奇貨」として二階氏に何らかの“口利き”してもらおうとした。それが強要未遂にあたる--とする内容なのである。 
 要旨の中には、王氏が二階氏サイドに求めた具体的なビジネス案件として、都内ターミナル駅周辺の大規模再開発事業が記されていた。運輸大臣(現国土交通大臣)を務め、国交族の大物として知られる二階氏の影響力を期待した形跡がうかがえる。
私は、これは中国政府も関与した工作であると認識しています。このようなことが、一度ならず過去にも何度か行われていたとしたら、二階氏の行動もある程度理解できなくもありません。

さらには、二階氏のこの事件はたまたま表に出ただけであって、他の政治にも同じような工作が行なわれていても、表に出ていない可能性もあります。野党の政治家の中にも、かなり工作をされている者も多いでしょう。

なぜこのようになるかといえば、やはり日本は他国のスパイなどを取り締まるスパイ防止法などがないため、政治家に対する他国からの籠絡に対して無防備なところがあるからでしょう。ただし、政治家が籠絡されることを防止するということは、籠絡ずみの政治家も厳しく罰するということになります。


ただし、政治家のほうにも問題がないとはいえません。たとえば、イスラエルとパレスチナの度重なる衝突について、日本の国会で議論されたという話を聞くことはまずないです。

「シリアのアサド政権はどうして化学兵器を使うのか。被爆国の日本は化学兵器の使用を容認していいのか」と発言する日本の政治家もほぼ見掛けないです。

遠いアラブ世界について勉強する意欲もないし、ユダヤ教やらイスラム教やら、ましてやイスラム教の宗派などを区別するのも面倒くさい、と思っているのでしょう。日本の国会議員は世界的に高い報酬を国から保障されていますが、野党議員の最大の関心事は現政権を打倒するのにあらゆるスキャンダルを探すことのみのようです。

当時「もりかけ問題」で窮地に追い込まれた安倍政権に助け舟を出すかのように、中国の王毅外相が昨年4月15日、約8年ぶりの日中経済対話のために日本を訪問しました。同年3月の全国人民代表大会で晴れて国務委員に昇格して出世を果たした後の再訪でした。

04~07年に駐日大使を務めていた頃は、王は日本の政財界の有力者らを低姿勢でゴルフに誘い、日本人以上に深々と頭を下げていました。今や、その彼自身が日本風のお辞儀も「中国人のくず」がやる行動で、「精日(精神的日本人)」だ、と激しい言葉で批判しています。

昨年3月8日,北京で記者会見後、「精日」に関するメディアの質問答える王毅

王は同年5月の日中韓首脳会談について、日本側と李克強首相訪日の詰めの調整を行ったといいます。日程で注目すべきは李が東京で首脳会談を終えた後、北海道を訪れ、高橋はるみ北海道知事との面談や経済視察をしたことでした。

一国の首相がどこを訪問しようととやかく言う筋合いはないかもしれないです。しかし中国は日本や米国と異なり、独裁体制を敷く専制主義国家で、日米の共通の脅威でもあります。李は沖縄にも足を運びたかったでしょう。尖閣諸島を中国領と主張しており、沖縄県への介入も諦めていません。

故翁長雄志知事を北京に誘っては「中国と琉球王朝との伝統的な絆」を持ち出し、親中派に期待を寄せてきました。沖縄県もかつて琉球が中国帝国に恭順を誓った印である龍柱を建ててまで、中国人観光客を歓迎しています。ところが結局、李は日本を刺激する沖縄県ではなく、北海道を訪問しました。

北海道はリベラル派が強く、道南を中心に人口の少ない各地の土地が知らぬ間に中国資本に買収されていても、特に警戒する姿勢を見せていません。沖縄では国境地帯の自衛隊施設付近に外国資本が進出している昨今、北海道は無防備だとみていいです。

また米国で複数の孔子学院がスパイ活動容疑でFBIから捜査を受ける一方、釧路では孔子学院を誘致する話も出るなど米同盟国の日本は鈍感で、国際的な潮流と逆行しています。

程永華駐日大使(当時)

昨年5月21日、中国の程永華駐日大使が釧路市を訪問、7カ月後の12月9日には張小平1等書記官(経済担当)も足を運びました。大使は蝦名大也釧路市長との会談で、「釧路市が民間・地方外交を積極的に進め、中日関係の改善と発展を後押しするためにさらなる努力をされるよう期待している」とラブコールを送りました。

その後、中国大使としては初めて、中国人らの研修生を受け入れている石炭生産会社、釧路コールマイン本社(釧路市興津)を訪問。「交流を強化し、両国の経済協力に力を注ぎ続けてほしい」と要望しました。

市長には大使館関係者から直接、中国政府系の文化機関「孔子学院」開設の打診があり、開設計画が現実的に検討されています。

道東は自衛隊の基地も密集する、国防上の要衝でもあります。釧路市は「中国が北極海航路に関心を持っているのは聞いているが、中国資本が急に活発化したという実感はない」と悠長に構えていますが、防衛省関係者らは、「国防面でも経済面でも海洋進出をもくろむ中国がまず、中央突破しなければいけないのは、太平洋に出ることでありその拠点として釧路を押さえるのが狙いだ」と分析、「すべて習主席の指示を受けた国家戦略なのは間違いない」と危機感を隠していません。

日本は、この頃の甘い対中国認識が現状でもほとんど変わっていないようです。それは、二階幹事長の行動をみても良く理解できます

このブロクでも以前も述べたように、安倍政権自体は、政府調達からファーウェイを排除したり、中国にサイバーセキュリティの基準の遵守を求めるなどして、リスクの高い5G企業を移動通信インフラから排除しようとしていますし、中国に一定の厳しい措置をしています。

これは、二階幹事長などの古いタイプの政治家や勉強しない政治家には理解ができない分野なので、このようなこともできるのかもしれませんが、それにしても、その二階氏が安倍内閣の幹事長というのが、現状の日本の政治状況を象徴しています。

日本も、他国と同じように、スパイ防止法を成立させて、国民は無論のこと、政治家を守る体制も整えた上で、米国のように、国会内で中国問題を議論する委員会などを設置するなどして、超党派で中国に対抗する体制を整えるべきです。

米国と同じように超党派で自国の国益のために、中国と対抗しなければならないという使命感を、政治家に持たせるべきです。

しかし、そのようなことは不可能と思う方々もいらっしゃると思いますが、トランプ政権誕生前の米国の絶望的状況を考えると、日本でもできると私は思います。

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2019年5月10日金曜日

米中貿易戦争「中国のボロ負け」が必至だと判断できる根拠を示そう―【私の論評】中国は米国にとってかつてのソ連のような敵国となった(゚д゚)!

米中貿易戦争「中国のボロ負け」が必至だと判断できる根拠を示そう

永田町もそれを見越して動き出した








トランプは、最初から決めていた

米国のトランプ政権が5月7日、中国からの輸入品2000億ドル相当に対する制裁関税を10%から25%に引き上げる方針を表明した。これを受けて、世界の株式市場は急落した。米中貿易戦争の行方はどうなるのか。

トランプ大統領

実際に関税を引き上げるのは10日なので、このコラムの公開後、土壇場で米中の合意が成立し、引き上げが撤回される可能性はゼロではない。だが、中国が大幅譲歩するとは考えにくい。そうなれば、中国の屈服が世界に明らかになってしまう。

私は結局、関税が引き上げられる、とみる。

日本のマスコミは「楽観的見通しを語っていたトランプ大統領が突如、強硬路線に転じた」とか「大統領得意の駆け引きだ」などと報じている。交渉なので駆け引きには違いないが、大統領の方針転換とは思わない。

トランプ氏は当初から、中国に厳しい姿勢で臨んでいた。楽観論を流していたのは「オレは甘くないぞ。だが、中国が折れてくるなら歓迎だ。だから、交渉している最中に『妥結は難しい』などとは言わない。よく考えてくれ」というメッセージだったのだ。

なぜ、そうみるか。そもそも「中国の知的財産窃盗行為を止めさせるために、制裁関税を課す」という目的と手法自体がまったく異例である。乱暴とさえ言える。大統領がそこまで踏み切ったのは、泥棒の中国があまりにひどすぎたからだ。

つまり、制裁関税という非常手段に訴える腹を決めた時点で、大統領の硬い姿勢は明らかだった。そうであれば、中国が窃盗を止める確証を示さない以上、トランプ氏にとって、制裁を強化するのは当然である。

ビーター・ナバロ氏の発言はヘイトではない

日本のマスコミは中国に対する批判よりも、トランプ政権を批判する傾向が強い。たとえば、朝日新聞は5月8日付け社説で「米国は大国としての責任を自覚しなければならない」「世界貿易機関(WTO)ルール違反の疑いがある制裁関税を自らがふりかざすことは厳に慎むべきだ」などと上から目線で指摘した(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14005072.html?iref=editorial_backnumber)。

自由貿易の守護神といえる米国が、保護主義的な手段を講じたことに当惑している面はある。だが、昨年7月の時点でホワイトハウスと通商代表部(USTR)はそれぞれ報告書を発表し、中国の泥棒行為を厳しく批判していた(2018年7月13日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56527、同9月21日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57602)。

昨年7月以来の流れを素直に見れば、トランプ政権が簡単に妥協しそうもないのは読み取れたはずだ。

ルール違反を言うなら、中国の方がはるかに悪質なのに、そこは「冷静に説得してほしい」などとキレイゴトを言っている。説得で片付くくらいなら、こんな騒ぎにはなっていない。中国が言うことを聞かないから、貿易戦争になってしまったのではないか。

朝日は「トランプ批判」のバイアスがかかっている。これでは、トランプ氏の真意を見誤るのも当然だ。ついでに言えば、朝日はどんな問題でも、最初に自分たちのスタンスを決めて報じる傾向が強い。事態を客観的に眺めるよりも、まず主張が先にありきなのだ。

中国が抱く「覇権奪取」の野望

脱線した。

トランプ氏にとって、問題は「泥棒の中国にどう対処するか」という話である。そこで決断したのが、前例のない制裁関税という手段だった。最初から「多少乱暴であっても、中国には断固として対処する」という方針を確立している。

背景には「中国は米国を倒して、覇権の奪取を目指している」という判断がある。

そうであれば、窃盗行為が止まる確証がないのに、制裁関税をあきらめて中途半端に妥協する選択肢はない。そんなことをすれば「これまでの制裁は何だったのか」という話になってしまう。繰り返すが、大統領の意思は最初から硬かった。これが1点だ。

加えて、私は直前に開かれた安倍晋三首相との首脳会談の影響もあったのではないか、とみている。私は3月29日公開コラムで「トランプ氏は中国に妥協しない」という見方を前提にして「安倍首相は大統領に『中国に安易に妥協するな』」と助言するのではないか」と指摘した(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63795)。

安倍首相は4月26日、欧米歴訪の途中で米国を訪問し、トランプ氏と2日間にわたってじっくり話し合った。その日米首脳会談を受けて、今回の制裁強化がある。時間軸でみれば、安倍首相とトランプ氏が対中強硬策で一致し、関税引き上げに至ったと考えるのが自然だろう。

なぜかといえば、先のコラムで紹介したが、そもそもトランプ政権の対中政策は、大統領就任前の2016年11月に会談した安倍首相の助言に基づいているからだ。トランプ氏は中国の扱いを判断するのに「シンゾーの話を聞いてから考えよう」と思ったはずだ。

外務省のホームページでは、日米首脳会談で「中国が話題になった」とは一言も書いていないが、日中関係が改善しつつある中、中国を刺激するのを避けるために、あえて触れなかったのかもしれない。

それはともかく、ここまでは私がコラムで予想した通りの展開である。

一方、先のコラムで、私は「安倍首相はトランプ氏の対中強硬路線を背中から押すためにも『日本経済は大丈夫』と請け合う必要がある。それには当然、増税延期が選択肢になるだろう」と書いた。こちらはどうか。おそらく、これもその通りになるだろう。

米国が対中制裁関税を引き上げれば、もちろん中国には一層の打撃になる。それでなくても、景気が落ち込んでいる中国はマイナス成長に陥ってもおかしくない。消費の落ち込みや輸入減少を見れば、もしかしたら、すでにマイナスになっている可能性もある。

習近平体制「大打撃」の予感

そうなると、世界経済はそれこそ「リーマン・ショック級」の危機に見舞われる公算が高い。日本も影響は免れない。すでに日本の対中輸出は落ち込んでいるが、さらに減少するだろう。そんな状況で、消費税引き上げはますます難しくなった。

5月13日に発表される3月の景気動向指数と、同じく20日に発表される1−3月期の四半期別国内総生産(GDP)速報の数字がそれぞれ「悪化」「前期比マイナス」と出れば、いよいよ増税延期の決断に踏み切る材料がそろってくる。

増税延期を決断するなら、安倍首相はそれを大義名分に衆参ダブル選に打って出るだろう。自民党の甘利明選挙対策委員長は5月8日、テレビ収録で「麻生太郎副総理兼財務相が4月30日、安倍首相を私邸に訪ねて、ダブル選を勧めた。首相は言質を与えなかった、と伝わっている」と語っている。

中国は経済的打撃を被るだけではすまない可能性がある。習近平体制そのものを揺るがすかもしれない。今回の制裁強化について、中国は国内で報道管制を敷いているのが、その証拠だ。当局は制裁関税が引き上げられる事実を報道させず、伏せたままにしている。

なぜ、そこまで過敏になっているのかといえば、まさに習近平国家主席がトランプ大統領にやり込められている事態を国民に知られたくないからにほかならない。主席の権威がぐらつくのを心配しているのだ。

これは「主席のメンツが丸つぶれ」という話だけではない。いくら主席のメンツが潰れようと、生活に影響がないなら、国民にとってたいした話ではないが、制裁関税は中国経済を直撃して国民生活にも必ず響く。すでに企業の倒産と失業も加速している。

制裁強化で一段と苦しくなると「習近平は何をしているんだ」という声が高まるだろう。それを事前に抑え込むために、徹底した報道管制を敷いているのである。だが、上海株式も暴落した。投資家は何が起きているのか、水面下で正確な情報を得ているに違いない。

米中貿易戦争は「米国の圧勝、中国のボロ負け」状態でヤマ場を迎えている。日本の永田町も風雲急を告げてきた。

【私の論評】中国は米国にとってかつてのソ連のような敵国となった(゚д゚)!

冒頭の記事では、トランプ政権とトランプ氏の対中国戦略を語っています。もし中国に対して、トランプ政権だけが厳しいというのであれば、習近平としてはトランプの任期が終わるのをひたすら耐え忍ぶことによって、米国の制裁をいずれかわせると考えたかもしれません。

しかし、このブログでも従来から指摘してきたように、それは大きな間違いです。もはや、米国議会も中国と対決する腹を決めていました。これは、トランプ政権が続こうが続くまいが、もう米国の意思となったのです。はっきり、言ってしまえば、米国にとって中国は敵国となったのです。

そうしてその動きは沈静化するどころか、ますます顕著になりつつあります。米国はソ連と正面対決した東西冷戦時代、議会に特別な危機委員会を設置しました。その対中国版がついに立ち上げられたのです。

戦略、外交、軍事などの専門家や元政府高官が約50人、加えて上下両院の有力議員たちが名を連ねたこの新委員会は、中国が米国の存続を根幹から脅かすとして断固たる反撃を宣言し、「共産党政権の中国と共存はできない」とまで断言しています。

中国に対する最強硬派ともいえるこの委員会の発足は、米中両国の対立がいよいよ全世界規模の新冷戦の様相を強めてきた現実を示しています。

委員会の名称は「Committee on the Present Danger: China(CPDC)」、直訳すれば「現在の危機に関する委員会:中国」です。組織としては3月末に設立され、実際の活動は4月から始まりました。

その活動の内容や目的については以下のように発表されています。
・この委員会は、中国共産党の誤った支配下にある中華人民共和国の実存的な脅威について、米国の国民と政策立案者たちを教育し、情報を与えるための自主的で超党派の努力を進める。 
・その目的は、加速する軍事拡張や、米国の国民、実業界、政界、メディアなどを標的とする情報工作と政治闘争、サイバー戦争、経済戦争などから成る中国の脅威を説明することにある。
以上の文中の「実存的な脅威」とは簡単にいえば、「米国の存在に関わる脅威」という意味です。つまり、中国の脅威は米国という国家や国民の存在そのものを脅かしている、という認識なのです。

ブライアン・ケネディ氏

同委員会の会長にはブライアン・ケネディ氏が就任しました。ケネディ氏は「クレアモント研究所」という保守系の戦略研究機関の所長を長年務めた長老的論客です。副会長はフランク・ギャフニー氏が務めます。レーガン政権や先代ブッシュ政権の国防総省高官を務め、民間のシンクタンク「安全保障政策センター」の創設所長となった人物です。

同時に発起人としてジェームズ・ウールジー元CIA(中央情報局)長官、スティーブン・バノン前大統領首席戦略官、ダン・ブルーメンソール元国防総省中国部長、ジェーズ・ファネル元米太平洋統合軍参謀、クリス・ステュワート下院議員ら約40人の安全保障、中国、外交などの専門家が名を連ねました。この委員会は4月9日に米国議会内で初の討論集会を開催しました。

3月25日設立発表では、委員会は最初に、当時合意間近と言われていた米中貿易交渉について警告を発しました。「トランプ政権が交渉中の米中貿易協定は、米国の知的財産を盗むという中国共産党の長年の慣行に対応することが期待されている。知財は経済と国家安全保障の生命線だ」「しかし、この(知財窃盗という)慣習が止むという約束はまだ見られない」

ブライアン・ケネディ委員長は、共産党支配の中国による脅威について、米国民や政策立案者に教示し、情報提供していくと述べた。副委員長のフランク・ガフニー氏は、共産主義の脅威に言及する。「われわれは、最終的に共産主義体制の性格から生じるこれらの問題に対処しなければならない。共産党体制をとる中国では、残酷な全体主義に支配されている」



クリントン政権の中央情報局長だったウールジー委員は、中国は古代中国の戦略家・孫子の理論に基づいて、大きな紛争を発生させることなく、米国を敗北させようとしていると述べました。

ブッシュ大統領政権の防衛情報官だったボイキン委員は、通信機器大手・華為科技(ファーウェイ、HUAWEI)による5G通信技術の拡大に注目し「中国によるインターネットの占拠を見逃してはいけない」と警鐘を鳴らしました。

ボイキン氏によると、米国に対する中国共産党の戦略は、人民解放軍が1999年に発表した書籍・超限戦で概説されているといいます。戦争に勝つためには、あらゆる手段、軍事、外交、経済、金融、さらにはテロも辞さないとする理論です。また、超限戦に基づいて、現在は中国共産党が米国を全面的に実行支配するための過程にあるとしました。

さらにボイキン氏は、米国の国防総省や大学、ハイテク企業は中国政府の代理人により何らかの浸透工作を受けていると述べました。たとえば中国から派遣された研究員は、米国の技術を入手することに注力しています。

米国を弱体化させようとする中国の行動は「非常に洗練されている」と、国防総省の核政策立案者だったマーク・シュナイダー委員は述べました。中国の核兵器は新型ミサイル、爆撃機、潜水艦など急速に最新化していると述べました。

シュナイダー委員によれば、中国の核兵器は「地下の万里の長城」と呼ばれる長さ36,000キロのトンネル複合施設に建設され、保管されているといいます。実際の兵器庫内の弾頭数はわかっていません。

元民主党議員で現ハドソン研究所研究員であるリャンチャオ・ハン委員は、中国共産党政権は米国に深刻な脅威をもたらしているが、多くの米国人は気付いていないとしました。

「だからこそ彼ら(中国共産党)が何をしているのか、何をしようとしているのか、なぜそれほど危険なのかを、アメリカの国民や政策決定者に知らせたり、教示することが私たちの義務だ」とハン委員は述べました。

冷戦時代の元海軍パイロットであり1970年代版の対ソ連危機委員会の委員でもあったチェト・ネーゲル委員は、中国共産党について「この実際的な脅威は、最終的に、全世界を支配する野心的な計画の一つだ」と述べました。

ネーゲル委員は「過去のソビエト連邦と同様に、共産主義の中国は、米国と自由主義に対立するイデオロギーの脅威がある」としました。

このように同委員会の活動は、議会で主に共和党議員たちが中心となってトランプ政権との協調を図りながら影響力を広げると予測されます。

この委員会の発想は、東西冷戦が激化した1950年代に結成された「現在の危機に関する委員会」を基礎としています。「現在の危機に関する委員会」は、ソ連共産党政権との対決のために、米国議会やメディア、一般国民など広範な分野で団結を呼びかけることを目的に結成されました。

危機委員会は、米国が直面する危機に応じて設置され、この度は4回目となります。1回目はトルーマン政権の1950年代に、2回目は「力を通じた平和戦略」を掲げるレーガン政権の1970年代に、それぞれソ連に関する危機委員会が設立されました。2004年の3回目となる設立は反テロを目的としていました。

「現在の危機に関する委員会:中国」もやはり中国共産党政権との対決姿勢を鮮明にしています。委員会の使命や活動目的などに関しては、以下のように打ち出していました。
・共産党政権下の中国は米国の基本的な価値観である民主主義や自由を否定する点でもはや共存は不可能であり、米国官民が一致してその脅威と戦わねばならない。 
・中国政権は東西冷戦中のソ連共産党政権と同様に米国の存在自体に挑戦する危機であり、米国側は軍事、外交、経済、科学、文化などすべての面で対決しなければならない。 
・中国のこの脅威に対して米国側ではまだその危険性への正確な認識が確立されていないため、当委員会は議会やメディア、国民一般への広範で体系的な教宣活動を進める。
同委員会は以上のように「現在の共産党政権下の中国との共存は不可能」と断じており、中国との全面的な対決を促し、中国共産党政権の打倒を目指すという基本方針までも明確にしています。

同時に同委員会はトランプ政権が昨年(2018年)10月のマイク・ペンス副大統領の演説で発表した対中政策への全面的な支援も打ち出しており、今後、同政権と連携して、中国との対決姿勢を一層強めるキャンペーンを推進することが予測されます。

同委員会のこの姿勢は、米国が現在の中国への脅威認識を東西冷戦中のソ連に対する脅威観と一致させるに等しいです。つまり、中国との対決をグローバルな規模での新冷戦と捉えているのです。

この委員会が継続される限り、米国は中国との対立をやめることはありません。米国は、中国が体制を変えるか、変えないなら中国経済を他国に影響を及ぼせないほどに弱体化させるまで冷戦を継続することでしょう。

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サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米―【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)!

2019年5月9日木曜日

サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米―【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)!

サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米

岡崎研究所 

 日米の外務・防衛担当4閣僚(河野外相、岩屋防衛相、ポンペオ国務長官、シャナハン国防長官代行)は4月19日、ワシントンで日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開催、日米両国が協力して「自由で開かれたインド太平洋」の実現に取り組むことを柱とする共同発表を発表した。

 共同発表では、とりわけ領域横断(クロス・ドメイン)作戦のための協力の重要性が強調されたことが目を引く。具体的には、宇宙、サイバー、電磁波である。以下、共同発表の当該部分を抜粋紹介する。


 閣僚は、宇宙、サイバー及び電磁波を含む新たな領域における急速に進化する技術進歩に懸念を表明した。

 戦闘様相が変化していることを認識し、閣僚は、従来の領域と新たな領域の双方における能力向上及び更なる運用協力の重要性を強調した。閣僚は、日米同盟が領域横断作戦により良く備えるべく、宇宙、サイバー及び電磁波領域を優先分野として強調した。

 サイバー空間に係る課題に関し、閣僚は、悪意のあるサイバー活動が、日米双方の安全及び繁栄にとって、一層の脅威となっていることを認識した。この脅威に対処するために、閣僚は、抑止及び対処能力を含む、サイバーに係る課題に関する協力を強化することにコミットしたが、優先事項として、各々の国が国家のネットワーク及び重要インフラ防護のための関連能力の向上に責任を負っていることを強調した。

 閣僚は、国際法がサイバー空間に適用されるとともに、一定の場合には、サイバー攻撃が日米安保条約第5条の規定(注:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する)の適用上武力攻撃を構成し得ることを確認した。

 閣僚はまた、いかなる場合にサイバー攻撃が第5条の下での武力攻撃を構成するかは、他の脅威の場合と同様に、日米間の緊密な協議を通じて個別具体的に判断されることを確認した。

出典:『日米安全保障協議委員会共同発表(仮訳)』(外務省、2019年4月20日)

 上記発表を一読すれば、中国(およびロシア)の宇宙空間、サイバー空間における能力、活動の活発化を念頭に置いていることは明らかである。共同発表では国名を具体的に名指ししてはいないが、共同記者会見でポンペオ国務長官は中国を、シャナハン国防長官は中ロを名指しした。

 国内の報道で最も焦点を当てられたのは、サイバー攻撃に対して日米安保条約第5条が適用され得るとされた点である。このことの意義は、日米同盟の枠組みにおいても、サイバー攻撃をその規模や態様によっては武力攻撃と同視し得る、従って自衛権の対象となり得る、と明確に位置づけた点にある。

 サイバー攻撃の国際法上の位置づけについては、2011年には米豪2プラス2で、米豪の安全保障を脅かすようなサイバー攻撃は、ANZUS条約(事実上の米豪同盟条約)の集団的自衛権行使の対象であると確認されている。

 画期となったのは、2013年にNATOの専門委員会がまとめた「タリン・マニュアル」である。同文書によれば、「動力学的武器」による攻撃と同視し得るような被害を出すようなサイバー攻撃は自衛権の対象となり得る。国際的な認識、取り組みは、そうした方向に向かいつつある。 

 2014年のNATOサミットでは「サイバー防衛は NATO 集団防衛の中核的任務の 1 つである」と明言されている。今般の2プラス2で、日米安保条約第5条の適用が明記されたのもそうした流れに沿ったものである。

 日米がサイバー防衛の協力を強化するとして、サイバー攻撃の抑止というのは技術的に困難が大きい。今後、さらなる共同研究が必要となろう。そうであっても、日米がサイバー防衛での協力強化を明言したことは、同盟の強化にも、サイバーセキュリティをめぐる国際規範の流れの強化にもつながり、意義深いと言える。

ファーウェイを排除するか否か

 ファーウェイを排除するか否かが国際的な問題となっている5G(第5世代移動通信システム)の構築は、当然、サイバーセキュリティの最大の課題の一つである。5Gについて、共同発表では触れられていないが、シャナハン国防長官代行は、共同記者会見で「情報安全保障は我々の防衛関係のまさに中核に位置している。

 日本が、政府調達から排除したり、サイバーセキュリティの基準の遵守を求めるなどして、リスクの高い5G企業を移動通信インフラから排除しようとしていることを、我々はよく認識し感謝している」と述べている。

 欧州諸国は、米国と情報を共有するファイブ・アイズ(米、英、豪、加、NZ)のリーダーの一つである英国も含め、5Gからのファーウェイの完全な排除に消極的であり、米国は神経を尖らせている。そうした中で、日本の一貫した態度は、米国にとって貴重なものと映っていることは想像に難くない。

【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)!

国家が関与するサイバー攻撃がますます高度化し、強力になっている中、一部の専門家は、意図的か偶然かはともかく、遅かれ早かれそうした事故で死者が発生するのではないかと恐れています。

国家によるサイバー攻撃によって別の国の国内で人命が失われた場合、何が起こるのでしょうか。

北大西洋条約機構(NATO)は2014年に方針を改定し、重大なサイバー攻撃は、条約の集団防衛に関する条項である第5条の対象になり得ると決定しました。また、冒頭の記事にもあるように日米の外務・防衛担当4閣僚は、4月19日サイバー攻撃は、米安保条約第5条の規定の適用上武力攻撃を構成し得ることを確認しています。

日米の外務・防衛担当4閣僚の共同声明の発表

法律の専門家も、重大なサイバー攻撃は武力攻撃に等しいと見なすことができると明確に述べています。しかし、実際に何が起こるかははっきりしないです。

Flashpointのアジア太平洋研究ディレクターJon Condra氏は、「政策コミュニティーの中でも、少なくとも10年以上前から、どの程度のサイバー攻撃になったときに軍による物理的な報復が必要になるかが議論になっている」と述べています。

「現在の戦争に関する法体系は古くなっており、必ずしもこの種の問題をうまく取り扱えるわけではない。サイバー空間の境界は実際の国境よりもずっと可変性があり不明確なため、どのような場合に、国家が強硬な手段で報復する道徳的、あるいは倫理的な権利が発生するかは完全には明確になっていない」(Condra氏)

攻撃の1つで大量の死者が発生し、明確に特定の国家によるものだと特定できた場合は、極めて重大な報復を行う必要がある、とCondra氏は言います。「倫理的および道徳的な要因を別にしても、被害国はおそらく、相応の対応を求める国内からの政治的圧力によって、報復を行うことを強いられるだろう」と同氏は述べています。

もっと率直な見方を示す専門家もいます。

カリフォルニア大学教授のGiovanni Vigna氏は、問題は単純だと主張します。「それは実際の戦争だ」と同氏は言います。

また、現在Illumioのサイバーセキュリティ戦略責任者を務めているJonathan Reiber氏は、「そのような事態は敵意を呼び起こす可能性が非常に高い」と述べています。

「なぜなら、それは他の領域における攻撃と同じようなものだからだ」と同氏は続けます。

サイバー戦争に関する問題の1つは、多くの場合、攻撃を実行したのが誰かを証明するのが難しいことです。どのようなレベルで活動している攻撃者も、痕跡を隠蔽し、責任を問われるのを避けるために全力を尽くしています。

Tritonの事件の場合、攻撃は国家関与のグループによるものだと指摘する研究者はいたが、公式には攻撃者は特定されなかった。

「攻撃者の特定は難しい作業だ。攻撃者の特定にはかなりの無理がある」とReschke氏は言います。

昨年開催された冬季オリンピックの最中に、韓国を標的とする攻撃に使用されたマルウェア「Olympic Destroyer」の例を見れば分かります。攻撃の発生後に各調査会社が発表したレポートに書かれていた攻撃者の正体はまちまちでした。攻撃を行った可能性がある国として、中国や北朝鮮、ロシアの名前が挙がっていました

昨年開催された平昌五輪韓国を標的とするサイバー攻撃がなされた

「攻撃者を特定することの問題は、それが極めて困難で、ほとんど当てずっぽうのようになってしまう場合があることだ」とVigna氏は言います。

「特定の犯人であることを示唆するような痕跡が見つかった場合でも、それは誰かが偽装のために残したものかもしれない。ロシア人に責任を押しつけるために、誰かがロシア語のメッセージを残した可能性もある。従って、なんらかの別のルートで事実を確認できない限り、誰が何をやったかを判断するのは非常に難しい」(Vigna氏)

しかし時には、攻撃者がミスを犯して、当局が攻撃の実行者を特定できる場合もあります。WannaCryは北朝鮮のものだと言われており、「NotPetya」はロシア軍の手によるものだとされています。サイバー攻撃で死者が発生し、実行した国が特定できた場合、被害者は報復を望む可能性が極めて高く、その報復は必ずしも別のサイバー攻撃の形を取るとは限らないです。

米国にはすでに、サイバー攻撃に関与したことに対する報復としてロシアに制裁を科した実績があり、攻撃で死者が発生すれば、より強い報復が求められるでしょう。

もっとも極端なケースでは、国土に対するサイバー攻撃への唯一の報復措置は、軍事的な報復だと判断する国が出てくるかもしれないです。そのような報復が行われるとすれば、かなりの人命が失われた場合である可能性が高いですが、複雑な国際地政学の世界では、小さな火花が前例のない反応を引き起こす可能性もあります。

「わたしには、どの時点から物事が破壊的な方向に進み、どこが分岐点になるのかは分からない。国家がこれ以上は我慢できないと判断する分岐点を知ることは、いつでも困難だ」とReschke氏は言います。

Hannigan氏は、ロンドンで開催された国際会議「Infosecurity Europe」の場で、攻撃で市民に死者が出れば、物理的な報復が行われるだろうと述べました。

「攻撃の1つで米国の患者に死者が出たり、重大な被害が出たりすれば、米国政府に物理的かつ決定的な行動を求める圧力は極めて大きなものになるだろう。これは西側諸国の政治家全般に言えることだが、特に米国では大きな圧力になると思われる」と同氏は言います。

米サイバー軍の一翼を担うコロラド州の空軍基地のサイバー部隊

幸いまだ、国家が後援するサイバー攻撃で、他国の市民に直接的に危害が及んだり、死者が出たりした例はないと見られています。これは、そのような事態が起こった場合に、どのような対応が適切かを合意する余地が残っていることを意味します。

「国際社会は、この種の行動に対してどのように対応し、攻撃者にどのような責めを負わせるべきかについて、何らかの合意を形成する必要がある」とCondra氏は言います。

Reiber氏は、事態の悪化を止めるための方法の1つは、サイバー攻撃を常に罰することで抑止力とすることだという意見を持っています。

「発生したどのようなサイバー攻撃にも、それが50ドルの盗難であるか、破壊的な攻撃か、選挙結果の操作かを問わず、何らかの懲罰的なコストを行為者に負わせる必要がある」と同氏は言います。

「もし行為者が一定の行動が許されると考えれば、いずれ想像を超えるような幅広い行動を取ってくるだろう。しかし、それらの行動すべてに代償を負わせれば、世界が攻撃者の行動に一丸となって対抗し、阻止しようとしていると示すことになる」

しかし、攻撃に対して懲罰を科すというこの議論は、国家による死者が出るような破壊的サイバー攻撃を抑止する唯一の方法である可能性が高いです。

「技術は人を殺さない。人を殺すのは人だ。ある程度は、一歩引いて国家間、あるいは国家内の人々の間の争いを、政治レベルで解決するような政治的条件を整える必要がある」とReiber氏は言います。

「そうすればいずれは、一方のグループが敵対する相手に対してサイバー空間での攻撃を使用する可能性は減るだろう。国家間の関係が平和であれば、攻撃の可能性も減ることは明らかだ」(Reiber氏)

サイバー攻撃の対処については、様々な考え方がありますが、ある一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得ることで、米国と日本は合意しているという点については記憶にとどめておく必要がありそうです。

確かに、手段は何であれ、人が大勢なくなったり、危害を受けた場合、あるいはそうなりそうな場合は軍事攻撃の対象になりうるのは当然といえば、当然だと思います。

その意味では、国際法がサイバー空間に適用されることは、当然といえば当然です。

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2019年5月8日水曜日

中国、1年間で1000万人が失業 天安門の再来を事情通懸念―【私の論評】平成の始まりに起きた、この事件を風化させるな(゚д゚)!

中国、1年間で1000万人が失業 天安門の再来を事情通懸念

あの悪夢が繰り返されるのか

中国の今年1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.4%増だった。これは、28年ぶりの低成長だった昨年全体の経済成長率の6.6%を下回る結果となり、中国経済の減速傾向が鮮明になった。これに伴い、中国では昨年1年間で約1000万人が職を失うなど、今後も失業ラッシュが続くことで、中国各地で激しい労働争議が発生することが予想される。

中国では昨年7月からトランプ米政権が対中貿易赤字の拡大を理由に、中国からの輸入品への関税を増額するなど米中貿易戦争が勃発しており、中国経済に大きな打撃を与えている。

中国国家統計局が1月21日に発表した2018年のGDPは実質で前年比6.6%増だったが、成長率は2017年から0.2ポイント縮小し、天安門事件の影響があった1990年以来28年ぶりの低水準となっている。

このため、中国では対米輸出の比率の高い製品を製造している企業が影響を被っており、圧倒的な人気を誇ってきた米アップルのiPhoneの売れ行きに急ブレーキがかかっている。「世界のiPhoneの半分超を生産する」(中国メディア)といわれる河南省鄭州の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループでは、出稼ぎ労働者が増える繁忙期は従業員が40万人を超えるといわれるが、今年に入って、5万人規模の労働者を前倒しでリストラしたと伝えられる。

今後も米中間の貿易戦争が激しくなれば、さらに失業者が増えるのは必至だ。中国国家統計局の調査では、中国の貿易産業で働く労働者は昨年下半期で、全体の2分の1が解雇されており、中国農業農村省は「740万人の農民工(出稼ぎ農民)が地元に戻った」と発表。

さらに、中国の経済ニュース専門サイト「財新網」は昨年11月、「国内雇用低迷のため、202万件の求人広告が消えた」と報じたほか、「網易」も同時期、「今年上半期国内504万社が倒産、失業者数200万人超」との見出しを掲げた記事を配信した。

『習近平の正体』の著書もあり、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏はこう指摘する。

「失業率の上昇で、労働者デモの激化など社会が不安定になり、その結果、中国共産党への信頼感が薄れれば、中国共産党による一党独裁体制が揺るぎかねない。習近平国家主席はこれを極めて恐れており、何とか米中貿易戦争の激化を回避したいと思っているのはやまやまだが、特効薬はいまのところ見当たらず、このままでは習近平最高指導部体制の存続も懸念される事態となることも予想される。今年の6月4日は天安門事件の30周年記念日だが、まさに早晩、天安門事件の再来も否定できないだろう」

【私の論評】平成の始まりに起きた、この事件を風化させるな(゚д゚)!

上の記事で今年は、天安門事件の30周年記念日と述べています。このブログでは過去においては天安門事件について取り上げたこともありますが、ここしばらくは取り上げていませんし、また掲載の仕方が、どちらかといえば、ある程度知っていることを前提としてとりあげているところがありました。

現在は、平成も終わり令和の御世となりました。思い返してみると、天安門事件は平成の始まりと重なります。平成元年、1989年を振り返ると、その年の6月4日に中国で天安門事件があったことを忘れてはならないでしょうあれほどの大事件も、中国国内では未だに全く報道されず、ネットでも検索できません。日本でも風化しているところもありますので、以下に簡単に解説します。

天安門事件とは。きっかけは胡耀邦の追悼集会

1989年4月15日、胡耀邦元総書記が心筋梗塞のため亡くなります。北京にある天安門広場では、学生らによって追悼集会が開かれました。

1989年4月15日の胡氏の死去を悼んで学生や民衆が天安門広場で行った
追悼活動。これが、同年6月4日の天安門事件のきっかけとなった

この集会は、胡耀邦を解任した最高指導者、鄧小平への抗議活動の意味合いも含んでいました。追悼集会は徐々に形を変え、中国独裁体制を否定し、民主化への移行を求めるものになっていったのです。

集会はヒートアップし、デモへと発展していきます。この動きを察知した中国共産党は、戒厳令を布き、デモの鎮圧のために警察ではなく軍隊を動員。無差別に発砲をし、強引に鎮圧しました。

この事件は、当然世界から猛烈な批判を浴びることになります。

現在でも中国共産党は、天安門事件に関するあらゆる検閲をおこなっており、中国国内ではこの件についてインターネットで調べることすらできない状態です。

ではこの事件が起こった原因は、どのようなものがあるのでしょうか。

天安門事件が起こった原因

発端は、亡くなった胡耀邦元総書記の追悼をするために、学生たちが天安門広場に集まってきたことでした。

学生のなかには中国共産党による独裁体制を快く思っていない者もおり、独裁体制を打破すべしといったような強硬派もいたのです。彼らが声高に独裁体制打倒を叫び、追悼集会は反体制派の集会と化しました。この動きは北京だけでなく、西安や南京などにも広がっていきます。


当時の天安門での抗議活動の動画

ここまでなら、彼らを解散させて穏便に収めることができたかもしれません。

しかし「人民日報」という中国共産党の機関紙が「旗幟鮮明に動乱に反対せよ」という社説を一面に掲載します。ここには学生たちの活動を「動乱」と位置づけ、共産党の指導に反するため断固として反対しなければならないという内容が記されていました。

これに学生たちが猛反発し、ハンガーストライキといった過激な行動に出るようになりました。以降、中国共産党の高官が話し合いをしようとしても、学生側は拒否します。

そして、しびれを切らした中国共産党が実力行使に出たのです。

天安門事件の死者数は?

中国共産党の公式発表によると、死者は学生や軍を合わせて319人とのことですが、一説ではそれよりもはるかに多い3000人とされています。

日本でも一斉に天安門事件を報道しましたが、各新聞紙でばらつきがありました。たとえば読売新聞は「死者3000人以上」、毎日新聞は「死者2600人かそれ以上」、朝日新聞は「死者2000人、負傷者5000人以上」といった具合で、正確な数は把握しきれていません。

英国で2017年に公開された外交文書によると、中国当局が民主化運動を弾圧した1989年の天安門事件で、中国軍が殺害した人数は少なくとも1万人に上ると報告されていることが明らかになっています。

「1万人」という人数は、当時のアラン・ドナルド駐中国英国大使が1989年6月5日付の極秘公電で英国政府に報告したものです。大使は、「中国国務院委員を務める親しい友人から聞いた情報を伝えてきた」人物から入手した数字だと説明しています。

国務院は中国の内閣に相当 し、首相が議長を務めます。

天安門事件の死者数はこれまで、数百人~1000人以上と、様々に推計されていました。

中国国内でもこの事件をひた隠しにするため、追加調査はおそらくおこなわれないでしょう。

天安門事件の犠牲者

情報が錯綜していますが、いずれにしても319人よりはるかに多い、というのは間違いないです。

天安門事件の真相

鄧小平(左)と趙紫陽(右)

事件当時、中国共産党内には鄧小平と趙紫陽という人物がいました。趙紫陽は総書記でしたが、実権を握っていたのは発言力の大きい鄧小平でした。

当時の共産党内には、共産主義を徹底しておこなう鄧が率いる長老派の存在があり、天安門事件を利用して政敵の排除を狙っていたようです。

ここでいう政敵というのは、趙紫陽のことです。共産主義の枠を超えた経済政策を打ち立て、若者から人気のあった趙は、伝統的な共産主義を維持したい長老派からは厄介な存在として認知されていました。

天安門事件の発端となるデモが起こった時も、趙は平和的な解決を模索し、積極的な話し合いをしていました。しかし学生のなかには過激な意見を持つものもいて、話し合いはどれも決裂しています。

鄧はこのデモを反社会的行動とみなし、軍隊によるデモの強制解散を実行します。趙は武力弾圧に断固反対しましたが、鄧は趙の役職をすべて解任して軟禁状態にし、大虐殺が実行されました。

天安門事件というと民主化デモの弾圧に目が行きがちですが、中国共産党内の政権闘争という側面もあったのです。

天安門事件を報道する当時の朝日新聞

今年は30周年ということもあって、習近平指導部は年初から人権派弁護士や中国に残っている民主化運動活動家を多数拘束しているようです。

香港メディアによると、民主化活動家の陳斌氏も逮捕されたといいます。同氏は2016年6月、天安門事件で戦車の前に立ちはだかった学生運動指導者の姿を描いた酒瓶のラベルを作り、白酒(焼酎)の瓶に貼りつけて配ったところ、社会の治安を乱したとの容疑で逮捕されました。この4月には裁判で懲役3年半の実刑判決が下されたといいます。

このほかにも、大学では学生らが不審な活動をしていないかを互いに見張り合い、怪しい動きをしている学生の密告を奨励していると伝えられています。こうした状況から、中国指導部は民主化運動の再燃を強く警戒しているのは間違いないです。

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2019年5月7日火曜日

「まるで茹でガエルのよう」中国共産党の浸透工作に警戒を=米公聴会―【私の論評】中国はサラミ戦術を用い、我が国を蚕食しつつあり(゚д゚)!

「まるで茹でガエルのよう」中国共産党の浸透工作に警戒を=米公聴会

経団連、日本商工会議所などで構成する訪中団は11月21日、北京の人民大会堂で
    李克強首相と会談。会議外の会場警備員

中央統戦部に詳しい専門家によると、在外中国人の活動目的は、共産党体制のコントロール外とみなされた思想組織を攻撃し、組織を弱体化・解体させることにある。その手段は、不和を起こして内部分裂させたり、悪質なレッテル貼りなどで社会から疎外させたりしている。

攻撃対象例は人権弁護士、民主活動家、チベットやウイグル、台湾など各地区の独立容認派、法輪功など。その他、自由主義や民主主義、保守的な思想、仏道儒の三教に基づく伝統的価値など、共産党イデオロギーの異見となる主張も含まれる。

中央統戦部の活動は拡大している。CECC(米国の中国問題に関する連邦議会・行政府委員会)委員長を務めるマルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員は、日本でも当てはまる工作事例を挙げた。たとえば工作員は▼勧誘や賄賂、脅迫などの手段で強引な取引を行う▼マスコミを使い世論を操作し、中国共産党寄りに傾くようにする▼中国という巨大市場を誘惑の材料にして、独裁政治を正当化させるような思想を海外に拡散する、など。

マルコ・ルビオ上院議員

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学校機関では、日本や西側諸国が伝える歴史事実や領土などの見解を受け入れようとしない中国人留学生が、教師の講義内容に異議を申し立て、学校側に授業内容の変更や謝罪を求めるなどの事態が起きている。

教育を通じた対外宣伝には、孔子学院が知られている。中国国務院によると、すでに1500以上の関連組織を世界中に設ける孔子学院の目的は「核心価値である社会主義を基礎とした教育を広める」「中国の夢を宣伝する」としている。日本には、早稲田大学、立命館大学、桜美林大学、工学院大学、武蔵野大学など20以上の教育機関に設置されている。

マスコミでは、ニューヨーク・タイムスなど在米有力紙に中国官製英字紙チャイナ・デイリーを定期的に織り込ませ、読者を無自覚に洗脳している。近年、共産党機関紙の日本語版が急増している。新華社通信、人民日報、中国国際放送局などの電子版は、相次ぎ日本語サイトを開設した。CNS(チャイナ・ニュース・ネットワーク)や人民網(チャイナ・ネット)と名付けられた媒体から共産党政策の宣伝、中国賛美を中心としたニュースが流されている。

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各国は中国共産党の浸透工作への対策に追われている。オーストラリアのターンブル首相は12月5日、中国政府の政治介入を念頭に、外国人や外国企業・団体からの政治献金を禁止する選挙法改正案を議会に提出すると発表した。

CECC委員長を務めるマルコ・ルビオ議員は先のホワイトハウスでの公聴会で次のように表現した。「足元で大きな異変が起こっているにも関わらず、私たちはそれにほとんど気づいていなかった。まるで茹でガエルのように」。

(翻訳編集・王君宜/佐渡道世)

【私の論評】中国はサラミ戦術を用い、我が国を蚕食しつつあり(゚д゚)!

上の記事で、マルコ・ルビオ議員が語る「ゆでガエル」という言葉、経営や組織を語る際によく使われるたとえ話です。

「カエルをいきなり熱湯に入れると慌てて飛び出して逃げるが、水から入れてじわじわと温度を上げていくと、カエルは温度変化に気づかず、生命の危機を感じないまま茹で上がり死んでしまう」

下の動画は、実際にカエルが茹で上がってしまうところを示す動画です。



これがいをゆる「ゆでガエル理論」、「ゆでガエル症候群」などと呼ばれるたとえ話で、元々は欧米で知られていました。日本では1998年に出版された「組織論」(桑田耕太郎・田尾雅夫著、有斐閣アルマ刊)の中で、「ベイトソンのゆでガエル寓話」として紹介され、知られるようになりました。

居心地の良いぬるま湯のような状態に慣れきってしまうと、変化に気づけずに致命傷を負ってしまうというビジネス上の教訓とされています。

これは、経営論でもよく知られていますが、最近では様々なたとえ話にも良く用いられています。

中国の他国への工作の仕方は、一度に大きく実行するのではなく、中国得意のサラミ戦術により行われることが多いので、多くの人がそれ気づかず、とんでもない状態になっているということです。

サラミ戦術とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法。
 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれる。

マルコ・ルビオ上院議員は日本の事例もあげていますが、その実態について日本政府は、すでに「警察白書」をもって公式に発 表していました。

 平成 29 年「警察白書」は、第 5 章第 2 節 1 項「対日有害活動の動向と対策」の中で、「中 国の動向」について、次のように記述しています。
 中国は、諸外国において多様な情報収集活動等を行っていることが明らかになって おり、我が国においても、先端技術保有企業、防衛関連企業、研究機関等に研究者、 技術者、留学生等を派遣するなどして、巧妙かつ多様な手段で各種情報収集活動を 行っているほか、政財官学等、各界関係者に対して積極的に働き掛けを行うなどの 対日諸工作を行っているものとみられる。
警察では、我が国の国益が損なわれるこ とがないよう、こうした工作に関する情報収集・分析に努めるとともに、違法行為 に対して厳正な取締りを行うこととしています。 在日中国人の数は約 73 万人。その中には、工作員として「選抜、育成、使用」される可 能性の高い「留学生」約 12.5 万人、「教授・研究・教育」約 2 千人、「高度専門職」約 5.2 千人、「技術・人文知識・国際業務」約 7.5 万人などが含まれる。(政府統計の総合窓口「e-stat」、 2017 年 12 月現在)

 また、中国から日本への旅行者は約 637 万人(2016 年、日本政府観光局(JNTO)統計) であり、通年で、約 710 万人の中国人が日本に滞在していることになります。 正確な数字は明らかではないですが、これほど多くの中国人の中には、相当数の工作員が含 まれていると見なければならないです。

 中国には「国防動員法」があり、動員がかかれば、「男性公民は満 18 から満 60 歳まで、 女性公民は満 18 歳から満 55 歳までの間、国防に従事する」義務があります。在日中国人や中 国人旅行者もその例外ではなく、日本国内において、彼らが在日工作員あるいは潜入した 武装工作員(ゲリラ・コマンド)と連携し、情報活動や破壊活動などに従事する事態を十 分に想定しておかなければならないです。 

加えて、北朝鮮およびロシアも、様々な形で対日有害活動を行っています。 一方、国内を見ると、日本共産党は、「しんぶん赤旗」(2007 年 11 月 29 日付)において、 読者の質問に答える形で「日本共産党は、一貫して統一戦線の結成と強化をめざしていま す」と表明しています。

 旧日本社会党であった社会民主党も、それ自体が中国や北朝鮮などとつながりを持った 統一戦線としての性格を有しており、日本共産党との「社共共闘」も革新統一戦線です。

 このように、日本は、中国をはじめとして、国内外の勢力が複雑に絡み合った「統一戦 線工作」の渦中に置かれ、そうしてわが国の至る所で、日常茶飯事のごとく、国民の身近に 工作が迫っている実態を理解し、厳重な警戒を怠ってはならないのです。

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2019年5月6日月曜日

トランプ大統領、対中関税25%に引き上げ表明 中国は協議取りやめと一部報道―【私の論評】大統領選を意識したツイートか?

トランプ大統領、対中関税25%に引き上げ表明 中国は協議取りやめと一部報道

トランプ大統領

 トランプ米大統領は5日、ツイッターへの投稿で、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆2000億円)分に上乗せしている10%の関税を、10日から25%に引き上げる方針を示唆した。追加関税の適用対象となる中国産品を拡大する可能性にも言及した。米中両政府は8日から閣僚級貿易協議を再開する予定だが、協議が瓦解(がかい)する恐れが出てきた。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は5日、トランプ氏の投稿を受け、中国が8日からの貿易協議を取りやめることを検討していると報じた。中国の劉鶴副首相が訪米し、同日から閣僚折衝を再開する計画だった。

 トランプ氏はツイッターで、「中国との貿易協議は続いているが、(進展が)遅すぎる」と述べ、中国側の対応に不満を表明した。

 米政権は、中国による知的財産権侵害に対抗するため、まず中国からの500億ドル分の輸入品に25%の追加関税を適用。さらに2000億ドル分に10%を課して段階的に圧力を高めてきた。

 トランプ氏は投稿で、このうち2000億ドル分を25%に引き上げると言及。さらに「課税されていない3250億ドルの物品も間もなく25%になる」と述べ、すでに追加関税を課した計2500億ドル以外の中国産品にも、25%の関税適用を広げる考えも示唆した。

 米中両政府は先月30日に北京で閣僚折衝を実施。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表やムニューシン財務長官が訪中して、劉副首相と会談していた。今月8日に劉氏が米ワシントンを訪れ、2週連続で閣僚レベルで話し合い、最終合意に向けた詰めの交渉を進める段取りだった。

 トランプ氏は先月初めに劉氏と面会した際、中国と最終合意に達する見通しについて「あと4週間で分かるだろう」と述べていた。

 ただ、米国が発動した計2500億ドル分の対中関税について、中国が合意時に即座に撤廃するよう要求したが、米国が一部関税を維持する方針を示し、両国間の対立点となっていた。また、米国が求める知財保護などの経済構造改革で、中国側が十分な対応策を取ろうとしていないとする見方も米政府内や産業界にあった。

 米中は昨年12月の首脳会談で、中国の構造改革などを話し合う協議を90日以内にまとめることで合意。ただ期限内に合意に至らず、協議は長期化していた。首脳会談では、米国は協議中に対中関税の引き上げをしないことで中国側と一致していただけに、米政府が今回、一方的に関税率を引き上げれば、昨年12月以来の協議を通じた米中貿易摩擦の緩和や解消の望みは立ち消えとなる公算が大きい。

【私の論評】大統領選を意識したツイートか?

トランプ氏のツイート

トランプ大統領は、5日中国からの輸入品に課している追加関税を10~25%へ引き上げる方針をTwitterで表明していました。

6日のアジアの株式市場は、アメリカのトランプ大統領が、中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税を引き上げる方針に言及したことを受けて、中国・上海市場で一時、6.5%余り、急落するなど、各地で大きく値下がりしました。

また、ほかのアジアの株式市場も売り注文が加速し、各地の代表的な株価指数の終値は、先週末と比べて、
▽シンガポールが3%、
▽香港が2.9%、
▽台湾が1.8%、
▽ベトナムがおよそ1.6%の下落でした。

この背景には何があるのでしょうか。折しも北京での閣僚級の会議が終わって、8日からワシントンで実施というタイミングのときのこのトランプのツイートです。日本時間だと深夜の1時か2時かというタイミングで、いきなりこのような発表を行いました。

交渉は順調に進んでいるともみられていましたが、この強硬策ということで多くの人が驚いたと思います。

このような動きの背景にはそろそろ米国の大統領選挙が本格化しつつあるということがあると思います。

党の公認候補を選定する民主党の動きがここへきて結構激しくなっていました。様々な人が名乗りを上げていますが、ただそのラインナップを見ると、民主党の左派リベラル一色です。ですから低所得者層対策をどうやって打ち出していくのかに、各候補の一番のポイントが置かれているように思えます。

これは、トランプ氏の一番の支持基盤、内陸部の白人、経済的にはあまり恵まれていない白人層がコアの支持層です。民主党はそこに手を突っ込んでくる構えを見せてくるわけです。

トランプ氏としては来る大統領選挙では、大統領の任期中のレガシー、成果や結果をきちんと目で見える形で出していくべきと考えたのでしょう。そのため中国との貿易戦争に大きく軸足を移してきたのだと思われます。

要するにここで変に折り合ってしまうと、有権者の支持を失ってしまうということで強硬策に打って出たのでしょう。政治的な思惑がかなり色濃く出たものと考えられます。

トランプ氏のTwitterを見ていると、この貿易に関してつぶやいた直後にモラー特別検察官を国会に招致に関して「呼ぶべきでない」と呟いています。これはロシア疑惑で突っ込まれたくないとの、選挙を目の前にしてという思惑とも受け取れます。

トランプ氏のツイート

その一方でモラー特別検察官を国会への召喚も、下院民主党の政治的な思惑なのです。実際にモラー氏の報告書を見ても、どこを突いてみたところで、トランプ氏の違法行為が出てくるものではありません。

大統領選挙を意識する中でトランプ氏の足を引っ張るという民主党の思惑以外のなにものでもありません。トランプ氏としては痛くもない腹を探られたくないといところもあるでしょう。これは、いわば米国版「もりかけ問題」です。

マラー特別検察官はロシアによる米大統領選への介入やトランプ氏の司法妨害疑惑を捜査したが・・

さて、こうした動きは日本にはどのような影響があるでしょうか。中国は間違いなく景気後退の中に入っています。特に去年の11月以降そういった傾向が強まってきています。

日本と中国の経済関係を見ていく上で一番注目すべき指標は、工作機械の輸出の状況です。工作機械、これは機械を作る機械のことです。日本の輸出主要産業のうちのひとつです。

去年の11月、12月はかなり落ち込みましたが、年明けからやや回復してきているという状況にあります。これがかなり落ち込むようなことになると、日本も大きな影響を受けることになる可能性もあります。それ以前に中国の経済がかなり落ち込んでいるということです。

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2019年5月5日日曜日

【日本の解き方】憲法改正論議は前進するか… 慎重な公明と積極的な維新、「とにかく反対」の左派野党―【私の論評】8月に、平成ではなかった衆参同時選挙もあり得る(゚д゚)!


安倍首相

5月3日は憲法記念日だった。1947年に日本国憲法が施行されてから70年以上が経過したが、この夏の参院選で憲法改正は争点になるだろうか。

 今の国会勢力を振り返っておこう。衆議院465議席のうち「改憲勢力」といわれているのは自民党が283、公明党が29、日本維新の会が12、希望の党が2の計326議席だ。これは衆院全議席の3分の2にあたる310を超えている。

 参議院242議席のうち、改憲勢力といわれるのは自民124、公明25、維新15の計164議席。これも3分の2にあたる162を超えている。

 国会勢力だけでいえば、憲法改正の国民投票の前段階である国会の発議の要件はクリアしており、改憲論議が前進していてもおかしくない。

 ところが、実態は全く進んでいない。憲法改正などについて話し合う国会の憲法審査会はこれまでほとんど議論が行われず、4月25日に、衆院憲法審査会が今国会で初めて開催されたくらいだ。

 公明党は「改憲」ではなく「加憲」という形で議論を進めるという立場だ。そこには、憲法9条には触れずに、他のところで基本的な権利などを「加える」改正にしたいという本音がうかがえる。

 こうした事情があったため、9条について安倍晋三首相は、現行の1項と2項には手をつけずに、3項を「加える」と公明党に配慮した案を出している。

 これは、安倍首相の本来の考えとはかけ離れたものといえ、保守系からも不十分と批判されている。しかも、かつて立憲民主党の枝野幸男代表が唱えたものとも類似しており、かなりの妥協だといえる。

 しかしながら、公明党は慎重姿勢を崩しておらず、国会での改憲議論が進んでいないことにつながっている。こうした局面を打開するには、憲法改正を国政選挙の争点にして世論に訴えるしかないだろう。

 参議院がその場になるはずだが、政治日程は読みにくい。国会の憲法審査会はようやく議論が始まりつつあるとはいえ、まだ先は見えない。ただ、統一地方選で、改憲勢力の維新が躍進したので、公明は世論の動きを見ていくだろう。

 自民党と公明党との連立は20年にも及び、多くの自民党議員は公明党の支持なしでは当選はおぼつかない。このため、自民党は維新と連立を組むところまではいかないが、協力勢力として抱えることで、公明党を牽制(けんせい)したいところだ。

 維新も、改憲は他の野党との差別化を図る上で格好の話題だ。教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所など独自の提案をしており、国民の関心をいかに呼び込めるかがポイントだ。

 他の野党は、維新の提案は憲法改正なしで対応できるとし、改憲を一切認めないスタンスだ。「内容はいいが改憲は反対」というのは、国の基本方針ではなく、時の政権の方針で変えてもいいということになる。

 また、安倍首相の9条「加憲」についても、他の野党は「安倍政権での憲法改正は許さない」との理由で反対のようだ。選挙の争点になった際、国民にどう説明するのだろうか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】8月に、平成年間ではなかった衆参同時選挙も多いあり得る(゚д゚)!

日本国内の経済指標も個別に発表されて来て、特に今年の1~3月期については軒並みあまりよくないです

そうなると解散総選挙とすぐ言いますが、その前にいろいろな手順があって5月13日に景気動向指数が出ます。

これがいちばん最初です。これで3月期の動向指数が出るので、1月から3月のGDPはほとんど計算できます。

予想では、良くないです。景気動向指数もよくないですし、1~3月のGDPも良くないです。良くないという結果が出れば、その後、どうなって行くかということで、正極も動き出すと思います。

その前までは指標が出ていませんから、政策変更をやりようがない状態です。この1週間の安倍総理の外遊や改元の1週間、そういうもので現在様々なことが起こっていて、だからこそ現在観測気球上がっているのですが、それで5月13日に悪い数字が出たら「どうする」ということになって、そこから政局も動き出して行くと思います。

景気動向指数は5月13日と20日に悪い数字が出るのは間違いないとでしょう。この後にG20があります。安倍総理は今月外遊しましたが、その時には当然「経済政策はどうするの」と各国の首脳と話したと思います。これは表に出て来ません。

各国首脳との話は、G20に向けての話なのですか、G20の話があったときに、日本だけが増税しますとは、なかなか言いづらかったでしょう。格好つけたいのであれば、政治家は「G20の議長国の日本が世界経済を引っ張ります」というようなことを言いたくなるでしょう。

積極財政したり、金融緩和して世界経済をリーダーとして引っ張って行くという可能性はあります。そうすると消費増税はしにくくなります。

2017年1月28日、総理大臣官邸にて内閣総理大臣安倍晋三(左)と(萩生田光一 – Wikipediaより)
いま開いている国会は6月26日が会期末で、それを前提とすると7月21日が投票日となる可能性が高いともいわれています。

ただし、国家を最後までやったら21日に限定されてしまいますが、その前まで解散できるということがあります。それを考えると6月30日から延長もできるため、8月の中下旬までダブル選挙の可能性はあります。

萩生田さんが先日、6月の日銀短観の数字と言っていました、それは7月1日に公表されるはずです。だからあの発言は、延長前提の話です。延長をいつまでするかにもよるのですが、8月も参院が残っていて、参院選ができるという状況になるのです。参院議員の任期を越えてもできるということです。

だからそういう萩生田氏が、あの話を言っただけなのです。短観は経済政策からみれば非常に遅いです。5月13日と20日にほとんどわかるから、短観を見るまでもないのです。あれは短観を見るということではなくて、「延長もあり得る、ダブルするときは8月もあり得る」と言っただけなのです。それは安倍総理の選択肢を広げているだけです。

総理側近の萩生田さんが言っているということは、萩生田さん個人の見解のはずがないといえます。
大阪G20のロゴ

安倍政権には追い風が吹いています。4月1日に発表された新元号は、共同通信の世論調査によると、7割以上に好感を持って受け止められ、内閣支持率も52.8%と3月の前回調査比9.5ポイントの大幅増となりました。

もともと自民党内では、2019年中の衆院解散が望ましいとの声が多く「衆参ダブルになると見ている声が多数」という情勢になりつつあります。

衆院の任期は2021年で、東京五輪・パラリンピック後の景気の落ち込みが想像されやすい時期です。ましてや、この時期にすでに増税していれば、日本経済は壊滅的打撃を受けているという観測もあります。

衆議院議員も議員でなくなればただの人です。自民党の衆議院議員からすれば、増税などやめて、前倒しで衆院選をやるべきだと思うのは当然のことです。

東京五輪ロゴ

また与党内の選挙事情に詳しい関係者によると、2020年は東京五輪が開催されるため、衆院解散に踏み切るには日程的に余裕がなく、消去法的に、今年のどこかで衆院選を行う可能性について肯定的にみる声が広がっているといいます。

ただ、衆院解散には「大義名分」が必要との認識は、「令和」時代になっても変わらないもようです。

一時は、北方領土問題の進展をテーマにするとの思惑が与党内にありましたが、直近でのロシア側の強硬姿勢を受け、この見方は急速に後退しました。

与党内では、7月選挙を目前に控える参院改選組などを中心に「消費増税延期」への期待感もあります。

政府・与党内には、増税延期・同日選と増税実施と同日選という複数のシナリオがささやかれています。増税実施を前提の選挙は与党に不利なようにみえるが「野党の体たらくをみれば、増税で選挙をしても勝てる」(与党関係者)とソロバンを弾く意見もあるといいます。

ただし、選挙は水物ですから、やってみないとわからないところがあります。不安定要素は一つでも潰しておくべきと考える議員のほうが多いでしょう。英国は量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税(日本の消費税にあたる)」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。

その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。

ロンドンオリンピックのびーボールの試合

どの選択肢を選ぶかは、安倍首相の最終判断にかかっています。現時点では「4─5月の企業決算、1─3月期のGDP(国内総生産)、マーケット動向などをみて、5月中には判断するのだろう」(与党中堅幹部)との見方が与党内には多いです。

安倍首相の選挙に対する直感には定評があり、世界経済や市場動向も踏まえギリギリのタイミングで判断を下すとみられます。

衆参同時選挙になる可能性はかなり高いと言えます。そうして、それが実行されるということは、野党がかなり不利な状況にあるということです。

安倍総理が、増税見送りを国民が納得できるように説明し、それ公約にして、衆参同時選挙に踏み切った場合、野党は確実に惨敗することになるでしょう。

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