2019年6月7日金曜日

ついに「在韓米軍」撤収の号砲が鳴る 米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った―【私の論評】日本はこれからは、米韓同盟が存在しないことを前提にしなければならない(゚д゚)!


鄭景斗・韓国国防部長官とシャナハン・米国防長官代行(韓国国防部公式より)

「在韓米軍撤収」の号砲が鳴った。米軍人その家族が半島から引き上げれば、米国は心おきなく北朝鮮を先制攻撃できる。(鈴置高史/韓国観察者)

司令部も家族も「ソウル脱出」

 米国のシャナハン国防長官代行は6月3日、韓国で鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官と、米韓連合司令部をソウルから南方の京畿道・平沢(ピョンテク)の米軍基地キャンプ・ハンフリーに移転することで合意した。

 これにより、米軍の司令部や第1線部隊はソウル市内を流れる漢江の北からほぼ姿を消す。移転先のキャンプ・ハンフリーには国連軍司令部や在韓米軍司令部、歩兵2個旅団などが集結済みだ。

米韓連合司令部はソウル、ヨンサン区からピョンテク市に移動

 ソウルの北の京畿道・東豆川(キョンギド・トンドゥチョン)には米砲兵旅団が駐屯するものの、いずれ兵器を韓国軍に引き渡して兵員は米本土に撤収する計画と報じられている。

 米韓同盟に自動介入条項はない。北朝鮮軍が侵攻してきた場合、米地上部隊と兵火を交えない限り米国は本格的な軍事介入をためらう、と韓国人は恐れてきた。

 ことにイラク戦争以降、被害の大きい地上部隊の投入を米国は極度に嫌うようになった。防衛線となる漢江以北から米軍人とその家族が姿を消せば、北朝鮮の「奇襲攻撃でソウルの北半分を占領したうえ、韓国と停戦する」との作戦が現実味を帯びる。

 保守系紙、朝鮮日報は「韓米連合司令部が平沢に、米軍の仕掛け線は南下」(6月4日、韓国語版)で、朴元坤(パク・ウォンゴン)韓東大教授の談話を紹介した。以下である。

《平沢基地に行くというのは結局、米国は(軍事介入の引き金となる)仕掛け線たる陸軍を引き抜き、有事の際も空・海軍依存の「適当な」支援をする、ということだ》

 同じ6月3日、ソウルの米軍基地内にあった米国人学校が閉校し60年の歴史を終えた。在校生は今後、キャンプ・ハンフリー内の米国人学校などで学ぶことになる。

韓国人が在韓米軍を指揮

 では、米陸軍は漢江の南には残るのだろうか。専門家はそれにも首を傾げる。6月3日のシャナハン国防長官代行と鄭景斗国防部長官の会談で、米韓連合司令部のトップを韓国側が務めることでも合意したからだ。

 韓国軍の戦時の作戦統制権は米国が握っている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は韓国に引き渡すよう要求、米国も応じていた。それに伴い、連合司令官も韓国側から出すことを今回、正式に決めたのだ。

 韓国人の連合司令官の誕生は、在韓米陸軍の撤収に直結する。米国は一定以上の規模の部隊の指揮を外国人に任せない。米軍人が副司令官を務めるといっても、在韓米軍の3万人弱の米兵士が韓国人の指揮を受けるのは米国の基本原則に反する。在韓米陸軍の人員が大きく削減されると見るのが自然である。

 そうなれば、あるいは米陸軍が韓国から撤収すれば、連合司令部は有名無実の存在となる。米国は韓国に海軍と海兵隊の実戦部隊を配備していない。在韓米空軍はハワイの太平洋空軍司令部の指揮下にある。

 連合司令部が指揮する米国軍が、ほとんど存在しなくなるのだ。米国にすれば、有名無実の連合司令部のトップなら韓国人に任せても実害はない、ということだろう。

 6月2日、シャナハン国防長官代行がソウルに向かう飛行機の中で、記者団に「米韓合同軍事演習を再開する必要はない」と語ったことも、在韓米陸軍の撤収を予感させた。もし陸軍兵力を残すのなら、韓国軍との合同演習が不可欠だからだ。

寝耳に水の南方移転

 米韓連合司令部の平沢移転は、韓国政府・軍にとって寝耳に水だった。在韓米軍司令部などが平沢に移っても、米韓連合司令部だけはソウルに残ると米国は約束してきた。

 首都ソウルに米国の高級軍人と家族が残る、という事実こそが、韓国人に大きな安心感を与えるからだ。だが5月16日、中央日報が特ダネとして「米軍が最近、連合司令部の移転を要請してきた」と報じて1か月もしないうちに、それが実現した。米国はよほどの決意を固めたのだろう。

 2017年にスタートした米韓の両政権ともに、同盟を重荷に感じていた。トランプ大統領はカネがかかる在韓米軍の存在に疑問を抱き「今すぐではないが朝鮮半島の米軍兵士を故郷に戻す」と約束した(拙著「米韓同盟消滅」(新潮新書)第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

 一方、文在寅政権の中枢は「民族内部の対立を煽る米帝国主義こそが真の敵」と固く信じる親北反米派が固めている(拙著「米韓同盟消滅」(新潮新書)第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

中国の脅しに屈した韓国

 米韓の間の溝は深まるばかりだ。米国や日本は経済制裁により北朝鮮に核を手放させようとしている。というのに、韓国は露骨にそれを邪魔する。

 世界の朝鮮半島専門家の多くが、文在寅大統領は金正恩(キム・ジョンウン)委員長の使い走りと見なすようになった。

 6月5日にも、文在寅政権は北朝鮮への支援用として800万ドルを国連に拠出することを決めた。人道援助の名目だが、国際社会はそのカネで購った食糧が軍に回るのではないかと懸念する(デイリー新潮「文在寅は金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)

 北朝鮮との緊張が高まった2017年3月、米国は慶尚北道・星州(キョンサンプクト・ソンジュ)にTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)を持ち込んだ。韓国と在韓米軍を北朝鮮のミサイル攻撃から守るためだ。

 だが、韓国政府は2年以上たった今も、配備を正式に許可していない。表向き環境影響評価に時間がかかると説明しているが、中国が怖いからだとは誰もが知っている。配備の場所が韓国南東部で中国から離れているのも、中国への忖度からとされる。

 中国は、韓国配備のTHAADの高性能レーダーが米国に向けて発射した自身のICBM(大陸間弾道弾)の検知に利用されると懸念する。

 2017年10月には「これ以上のTHAAD配備には応じない」との一札を韓国から取り上げた(拙著「米韓同盟消滅」(新潮新書)第2章第2節「どうせ属国だったのだ……」参照)。

 今年6月1日にシンガポールで開いた中韓国防相会談でも、中国はTHAADの話題を持ち出し、韓国を圧迫した模様だ。韓国政府は隠していたが記者の追及で明らかとなった。

「市民」がTHAAD基地を包囲

 親北反米派の「市民」はTHAAD基地の周辺道路を封鎖しているが、韓国政府は放置している。米軍はやむなく、食糧や燃料、交代要員を基地まで空輸している。

 米軍の度重なる要請を受け、2019年3月になって韓国政府は一般環境評価に重い腰を上げた。だが、今後も政府の時間稼ぎは続くと見られ「正式配備を認めるかどうか、結論を下すのに1年はかかるだろう」と韓国メディアは報じている。

 米議会調査局は5月20日に発表した「South Korea: Background and U.S. Relations」で「米韓の協力関係は、ことに北朝鮮に関しては、亀裂が深まる一方で先行きは予測しがたい」と断じた。

 中立的な議会調査局までが「米韓同盟はいつまで持つか分からない」と言い出したのだ。そんな空気が広がるワシントンにとって、米陸軍の韓国からの撤収は、当然、通るべき一里塚である。

 米下院軍事委員会は2020年度の国防授権法の草案から「在韓米軍の兵力の下限」を定めた条項を削除した。2019年度の同法は2万2000人と定めていた。

 なお、上院の軍事委員会は2020年度も2万8500人を下限とする草案を固めた。この条項は上下両院で調整することになるとVOAは「米下院、国防授権法草案公開…『韓国と情報共有強化』」(6月5日、韓国版)で報じた。

「先制攻撃は北に通報」

 急に現実味を帯びた在韓米軍の削減――。北朝鮮は喜んでいるのだろうか。確かに北朝鮮にとって、安全保障上の脅威である米軍の兵力削減は願ってもないことだ。米韓同盟の解体にもつながる話だから、普通なら大喜びするところだ。

 ただ良く考えれば、北朝鮮が攻め込まない限り、在韓米陸軍は脅威ではない。それどころか、北朝鮮のミサイルやロケット攻撃の人質にとれる。

 そして今は、先制攻撃も念頭に米国が核放棄を迫って来る最中なのだ。陸軍やその家族が引き揚げた後、米軍は思う存分、北朝鮮を空から叩けることになる。

 もちろん、在韓米空軍は特性を生かして、日本に瞬時に後退できる。そもそも韓国の空軍基地は使いにくい。そこから先制攻撃に動けば、文在寅政権が金正恩政権に直ちに知らせるのは間違いないからだ。

 文在寅氏は大統領選挙の最中の2017年4月13日、「米国が北朝鮮を攻撃しようとしたらどうするか」と聞かれ、「米国を止める。北朝鮮にも、先制攻撃の口実となる挑発をやめるよう要請する」と答えている(拙著「米韓同盟消滅」(新潮新書)第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

加賀とワスプ

 米国は北朝鮮の核施設への先制攻撃を、日本、グアム、海上から実施する。韓国の基地が使いにくい以上、北朝鮮に最も近い日本の基地が極めて重要になる。

 北朝鮮は「第2次朝鮮戦争に巻き込まれるな」との声が起きるよう、日本の左派陣営を煽ってきた。その意味で金正恩委員長は、トランプ大統領の5月25日からの3泊4日の訪日に、大きなショックを受けたに違いない。

 トランプ大統領とその夫人は、皇居で天皇陛下やご家族と親しく交わった。横須賀では、安倍晋三首相夫妻と海上自衛隊の空母型護衛艦「かが」に乗艦。その後、大統領夫妻は米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ(Wasp)」にヘリコプターで移動した。

天皇陛下とトランプ大統領

 太平洋戦争で空母「加賀」は真珠湾攻撃に参加し、ミッドウェー海戦で米海軍の急降下爆撃機によって沈められた。先々代の米正規空母「ワスプ」は第2次ソロモン海戦で伊19潜水艦の雷撃を受けて大火災を起こし、総員退艦後に自沈した。

 太平洋の覇権をかけ死に物狂いで戦った2つの海洋国家が、固く結束し共通の敵に立ち向かう意思を表明したのだ。もちろん「共通の敵」の第1候補は北朝鮮である。

 在韓米軍撤収の号砲が、日米の運命的な結束誇示の直後に始まったことも、金正恩委員長の目には、さぞ不気味に映っていることだろう。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集


【私の論評】日本はこれからは、米韓同盟が存在しないことを前提にしなければならない(゚д゚)!

上の鈴置氏の記事の中で、トランプ大統領の日本訪問の意義の大きさを指摘していますが、私もそう思います。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍総理が米国でゴルフをしたときは、トランプ大統領がカートを運転したので、今回は安倍首相が
運転するのが当たり前だが、多くマスコミはトランプの運転手安倍総理ということで揶揄していた
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、今回の日米会談の意義に関する部分をこの記事から引用します。


様々な背景を知った上で、トランプ大統領のこれら一連の行動は何を意味するのかは、明らかです。それは、戦後はじめて、米国の大統領が大東亜戦争(米では太平洋戦争)の清算を日本で行ったということです。


そうして、これは大東亜戦争のわだかまりを捨てた日米関係のさらなる強化を意味します。そうして、これは中国・北・韓国にとって、大きな脅威です。
中国は貿易問題で米国と激しく対立しています。トランプ政権の制裁強化に対し、中国はすぐさま報復に出ましたが、どう見ても中国に勝ち目はないです。そもそも、中国の米国からの輸入量が米国の輸入量に比べて4分の1程度しかないのに加えて、米国からみれば、多くの中国製品は他国製品で代替可能だからです。 
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は先月、年内に「3回目の米朝首脳会談に応じる用意がある」との声明を出しました。ところが、一方で5月に入ると、短距離の弾道ミサイルを2度、発射しました。

それだけでは、国内強行派をなだめることがでなかったのか、2月の米朝首脳会談が物別れに終わった責任を問い、金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表、および事務レベルの交渉を行った複数の外務省担当者を処刑したとの報道もされています。

金革哲(キム・ヒョクチョル)氏

しかしこれでは、米国は痛くもかゆくもないです。国内の強硬派をなだめるために、何かせざるを得ないが、「これくらいなら大統領を怒らせないだろう」という中途半端な中途半端な短距離弾道ミサイルの発射です。逆に言えば「私も困っている。どうか、私ともう一度会ってください」というラブコールにほかならならなかったようです。

それでも、国内強行派はおさまらず、金革哲氏らを処刑せざるを得なかったのでしょう。米国との交渉の顔だった金革哲氏のような人々を処刑あるいは完全に排除することは、協議したことの全面否定を示唆することにもなり、米国に非常に悪いシグナルを送ることになりかねません。それでも、処刑せざるを得ないかったのは、金正恩がかなり追い詰められているということです。

一言で言えば、中国も北朝鮮も「八方塞がり」に陥っているのです。トランプ政権は相手が制裁に音を上げて動くのを待っていればいいだけです。北朝鮮による日本人拉致問題では、安倍首相も相手の出方待ちでしょう。無条件で正恩氏との会談に応じる姿勢を示しているのは、呼び水です
日米首脳会談により双方が基本認識を確認したので、中国と北朝鮮に対して、「ボールはそちら側にある」と対応を迫るかたちなりました。

本当は、中国の干渉を嫌う北朝鮮に籠絡された上、中国に従属しようとする韓国も、中国や北よりもさらに、「八方塞がり」に陥っています。文在寅は、米国と中国のバランスをとっているつもりのようですが、結果として、米国からも中国からも見放されています。

マスコミは、以上のような状況に全く対処できないのでしょう。これが、習近平や文在寅、金正恩などが来日して、首脳会談をして大歓迎ということであれば、大絶賛したのでしょう。なにやら、見出しが踊るのが目に見えるようです。残念ながら、そのような機会は永遠に来ないでしょう。ご愁傷様といいたいです。
 金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表の処刑に関しては、トランプ大統領自身は否定しています。これが事実かどうかは、まだはっきりしないところがありますが、このような噂が乱れ飛ぶくらいですから、金正恩が相当追い詰められていることには変わりはないです。

米軍は、今春になり韓国との大規模合同軍事演習をすべて打ち切りました。停止ではなく廃止です。ただし、大隊レベルの小規模合同演習は当面継続しています。トランプ大統領は盛んに「経費節減」を打ち上げ、米国防総省は「外交を後押しするための打ち切り」という側面を強調していますが、理由はそれだけではないでしょう。

より大きな戦略的判断が背後にあることを見落としてはならないてしょう。

第一に、もはや米国は、韓国を守るため、すなわち北の対南侵攻部隊を撃退するために自国兵士の血を流す気はないです。文在寅政権が対北宥和に汲々とし、自ら武装解除を進める以上、当然です。

また北への反攻に当たっても米側は基本的に地上軍を投入するつもりはないです。海空軍力による北の指令系統中枢や軍の拠点への攻撃は行っても、地上戦はもっぱら韓国軍の責任という仕切りになるでしょう。

従って、韓国領土の防衛および韓国領からの北進を想定した従来型の大規模合同演習は存在の意味を失ったのです。

一般的な現代同盟のあり方を考えても、これは自然な流れです。例えば日本領土に外国軍が侵攻した場合、地上で撃退に当たるのは日本の陸上自衛隊であり、米軍はそもそも地上戦闘部隊を日本に駐留させていないです。米軍は専ら「槍」の役割、すなわち海空軍力を用いた敵の拠点攻撃の役割を担うことになるでしょう。

一方、在韓米軍2万8500名の内訳は、目下、陸軍1万8500名、空軍8000名、海軍・海兵隊併せて2000名と「陸」偏重が明らかです。

従来のように北が異常に危険な存在という認識に立てば、「異常な」戦力配置も正当化されますが、韓国政府自らが北は「主敵」ではなく「気の合うパートナー」との認識に転換した以上、米軍が特異な配置を続ける理由はなくなりました。

米韓同盟が続くとしても、米軍は海空軍力による「槍」の役割に特化する方向に動くでしょう。その場合、敵の短中距離ミサイルの射程内にある韓国に基地を置く必然性はないどころか置かない方がより安全に攻撃態勢を取れます。

米韓合同軍事演習が廃止に至ったもう一つ見逃せない理由は、このブログでも以前掲載したように、情報漏れの阻止です。

米軍が現状の韓国と合同演習を行うと、機微な軍事情報が北朝鮮に筒抜けになると見ておかねばならないです。情報が伝わる先は北に留まらないです。北は南から得た情報を、中国、ロシア、イラン、キューバ等に適宜与え、代わりに別の秘密情報や禁輸物資を得ようとするでしょう。韓国と実戦に近い演習をすればするほど、米軍はより重要な作戦情報を世界中の反米勢力に知られかねないのです。

日本としては、38度線はすでに対馬にまで降りてきたと考え、これに対する準備をすべきでしょう。韓国からの軍事攻撃は滅多なことではないとは思いますが、いざというときには韓国から大量の難民が押し寄せることもありえます。さらには、北のテロリストが難民に紛れて入ってくる可能性は否定できません。

この状況に、日本は米韓同盟が存在しないことを前提で対処しなければならないのです。

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2019年6月6日木曜日

対馬の危機! 韓国資本による土地買収で… 自衛隊増員“渇望”する島民の声 ―【私の論評】38度線になるかもしれない対馬を守るための施策は、まだまだたくさんあるはず(゚д゚)!


長崎県・対馬の海上自衛隊基地(左)と、隣接して営業する韓国資本のホテル(右上)

 この春、南西諸島方面に陸上自衛隊の部隊が次々に創設されたが、そちらに注目が集まるなか、長崎県・対馬は、なおざりになっている感も否めない。最大の問題は、韓国資本による土地の買収が拡大していることだ。それは自衛隊の庭先のような場所、いやほとんど敷地内といっていい場所にも及んでいる。

このことを報道で知った人から、自衛隊の部隊に「しっかりしてくれ」という電話があったという。だが、部隊の隊員にとってみれば、国として自衛隊周辺の土地を守ってくれないなかで、周囲をハングルの看板で取り囲まれていく状態にあり、やるせなく悔しい思いだったに違いない。韓国側としては、売ってくれるから買っているまでで、これは極めてこちら側の無策と言わざるを得ないだろう。

「対馬の自衛隊を増やしてほしいんです」

地元の人たちは、自衛隊にどんな感情を抱いているのか。そんな関心を持って、最近、対馬に行ったが、私の聞いた声は好感どころか渇望していると言っていい思いが多かった。対馬には陸上自衛隊対馬警備隊と、海上自衛隊対馬防備隊、航空自衛隊第19警戒隊がある。警戒監視を担う海空自衛隊よりも陸自は人員が多いが数百人規模の部隊である。

もし、朝鮮半島有事となって難民が上陸し、武装工作員が紛れている可能性がある状況が生起したら、丸腰で出動して対応できるのか、など対馬の人々の「気がかり」事項は多い。

現状は、島内の民宿などが次々に韓国人に買収され、地主も店主も利用客も韓国人というケースが圧倒的に多くなっている。昨年の韓国人観光客は初の40万人を超えたといい、人口が3万人強の島にとっては極めて大きな数字だ。

高齢化もあり、島民は「年間約600人ずつ減っている」と言われるなかで、「国境の島に外国人の方が多い状態」が将来起こり得て、それに対するリスク管理は不十分だ。また、韓国人ガイドの中には、対馬を韓国領であるかのような案内をする者もいるとも聞く。

北朝鮮の非核化は私たちの望むものだが、もし米国がそれと在韓米軍撤退を引き換えにしたら、現在の38度線は対馬海峡に下りる。そうなれば対馬の防衛態勢は各段に強化しなくてはならない。そういうイメージトレーニングが今まさに必要だ。

韓国人観光客を敵視する必要などまったくない。だが、自衛隊周辺の土地買収対策はすべきだ。そのうえで、訪れる韓国の若者に正しい歴史・文化に触れてもらい、日本は自国をしっかり守る良い国だと思ってもらえるようにしたい。

■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストとして防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。

【私の論評】38度線になるかもしれない対馬を守るための施策は、まだまだたくさんあるはず(゚д゚)!

上の記事を書いた、桜林美佐さんが対馬を訪れた際の動画を以下に掲載します。



日本海に浮かぶ島、長崎県対馬市。古くは『魏志倭人伝』や『日本書紀』にも登場する歴史ある島に、もうずいぶん前から異変が起きていました。韓国・釜山まで最短で49.5キロという位置に浮かぶ対馬には、近年になって韓国人観光客が殺到しています。それだけならまだしも、上の記事にもあるように、韓国資本が対馬の不動産や土地を買収する動きが活発化していたのです。

なぜ、対馬の土地は韓国人に買われてしまったのでしょうか。また、対策はどのようになっているのでしょうか。

対馬 和多都美神社(わたつみじんじゃ)
対馬は、この10年で大きく変わったようです。10年前には、『韓国人お断り』という貼り紙をした飲食店が数多くありました。当時、すでに年間10万人くらいの韓国人観光客が来ていたのですが、マナーの悪さが目立ち、島民にはあまり歓迎されていませんでした。盗難防止のために、ホテルの冷蔵庫やテレビは鎖につながれていることもあったくらいでした。

しかし、10年たった今では、そうした貼り紙はほとんどないのです。それどころか、比田勝のフェリーターミナルを降りると、韓国人観光客専用のツアーバスが何十台も列をなし、観光客を待ち構えています。免税店には韓国人が殺到し、まるでコリアンタウンの様相を呈しています。

Tシャツに短パンという、近所にふらっと遊びに来たかのような出で立ちの観光客も少なくないです。もはや、韓国人にとって対馬は“気軽に立ち寄れる場所”なのです。事実、フェリーに乗って免税店で買い物をし、日帰りで戻っていく人も多いといいます。

一昨年は37万人の韓国人が対馬を訪れました。対して、日本人の島民は3万人。住民票を置いたまま本土に働きに出ている人もいるので、実際に住んでいる人の数はもっと少ないかもしれません。かつてあったような韓国人観光客への抵抗感は、すっかり消え去ったようです。

一方で、韓国人観光客が増えると同時に、島の土地や民宿、民家などが次々に買収されるました。その結果、韓国人なしには島の経済が成り立たなくなってしまったのです。

かつて日本一人口密度が高いといわれた博多中州の川端通りの飲食店街は、今や韓国人御用達の店だらけです。店舗を買収した韓国人が経営者となって、島民を従業員として雇っているケースも少なくありません。民宿や釣り宿なども買収されました。したがって、大勢の観光客が来たところで、彼らがお金を落とすのは韓国資本が関係するホテルや飲食店、免税店。島自体にはそれほどお金は落ちないといいます。つまり、対馬は単なる場所貸しになってしまっているようです。

仕事がなく定年を迎えると、島を後にする島民もいます。すると、今度は空き家になった民家をまた韓国人が買うのです。高く買ってくれる人がいれば、売り手にとっては、それが日本人だろうと韓国人だろうと関係はないです。上の記事にもあるように、2008年に海上自衛隊対馬防備隊本部に隣接する土地が韓国資本に買収され、韓国人観光客を受け入れるリゾートホテルになったことは衝撃を与えました。

対馬のホテルの内部

海上自衛隊本部の隣の土地が韓国資本の手に渡ってしまったのは、安全保障上も大きな問題です。さらには、自衛隊の基地、海栗島レーダーサイトは、韓国展望所から丸見えです。これについては、以下に関連ツイートを掲載しておきます。

しかし、韓国からすれば『買えるものを買っただけ』にすぎません。しっかりと規制をせずに曖昧に放置していた日本に責任があります。米国でも韓国でもどの国でも、他国の人間が土地を買う際には制限が設けられていますが、日本にはその規制がありません。国際的に見ても異常なことが実際に起きたのです。

韓国展望所から丸見えの「海栗島レーダーサイト」 

対馬には、ターミナルがある比田勝と中心街の厳原、その間にもいくつもの町があります。それらの地域でも、不動産が韓国資本に買収されるところが増えているといいます。点と点がつながれば線となり、気がついたときには島の大部分が韓国人のものになっていてもおかしくはないでしょう。

高齢化が進み、地場産業もどんどん衰退していっています。ある免税店の店員は、『もう、対馬はいつ韓国の国旗が掲げられてもおかしくない。実質、韓国領だと言っていました。対馬は、あと10年もしないうちに日本ではなくなっている』と不安がる人もいます。

韓国資本による買収が進む対馬は、なぜ放置されているのでしょうか。多くの日本人が、不動産が外国資本に買収されるということに関心がないからです。その証拠に、対馬の現実はメディアで報じられることはほぼありません。『領土を奪われるなんて、現実に起きるわけがない』と多くの日本人が信じ込んでいるのと、領土が実際に奪われることへの危機感が薄いのでしょう。

しかし、“危機”はすぐそこまで来ています。一方で、国はいっこうに対策する気配を見せていないです。

一時は、自民党の議員連盟「真・保守政策研究会」や超党派の国会議員による「日本の領土を守るため行動する議員連盟」が立ち上がり、外国資本の参入に規制をかける新法制定に向けて動きを活発化させたこともあったのですが、議員連盟を牽引していた中川昭一氏が病死したことで、その流れは止まってしまいました。その後の動きがないことからも、国の対馬に対する関心の低さがうかがえます。

そんななか、17年4月に施行されたのが、いわゆる「有人国境離島法」です。しかし、同法は対馬の現状に対しては意味をなさないようです。

有人国境離島法は、離島から本土に渡る費用の6割を国が負担するというもので、利用できるのは島民だけです。本土から島に行く人に対する援助ではないので、これでは意味がありません。それに、島民が島から本土に行きやすくする法律は、かえって島の防備を手薄にするだけのものです。本来なら、本土から島に行きやすくするのが筋です。

対馬に訪れる中国人も年々増加しています。中国資本が本格的に入ってきたら、韓国も太刀打ちできないといわれています。

ただ、韓国は現在では、日本より深刻な少子化に見舞われています。中国もそうです。今後これらの国々が、少子化がさらに深刻になっていけば、このような問題は沈静化するかもしれません。それどころか、少子化で韓国資本なども引きあげることになるかもしれません。しかし、そうなると、今度は韓国人に依存していた、島の経済がなりたたなたくなる可能性もあります。そうなると無人化して、現在の尖閣諸島のようになってしまうかもしれません。

以上のような問題を防ぐためには、自衛隊の隣接地などを外国資本が購入できないをように、法律を改めたり新設する、地場産業が活発化するように人を投入する、本土の人間が行きやすくなるように環境づくりを行う等対馬を守るための施策は、まだまだたくさんあるはずです。取り返しのつかない事態になってからあわてて対策を打っても、もう遅いということになりかねないです。

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2019年6月5日水曜日

日本の外交立場が強くなる米中新冷戦―【私の論評】米国の対中「制裁」で実利面でも地位をあげる日本(゚д゚)!

日本の外交立場が強くなる米中新冷戦

岡崎研究所

米中関係は、新冷戦と言われる時代に入った。貿易交渉の決裂から、米中間での報復関税の応酬、次世代通信システム5Gをめぐるファーウェイ(華為技術)問題等、毎日のように米中の対立が話題になっている。


ただ、この米中対立を、単に貿易問題・経済問題としてとらえるのは不十分である。そのことを踏まえながらも、より広い視野で米中関係の現在を分析し、将来どうすべきかを論じることが重要である。

今の米中対立は、貿易赤字問題に端を発しているが、その枠を超えて、より広範な問題での争いに発展してきていると判断できる。米国は、中国の国家資本主義的なやり方に対する批判を強めており、それは共産党が企業をも指導する体制に対する批判になってきている。中国は、少なくとも習近平政権は、そういう批判を受け入れることはできないだろう。体制間の争い、覇権をめぐる争いになってきていると考えるのが正解であろう。これはマネージすることが極めて難しい争いである。大阪G20サミットの際に、もし米中首脳会談が開催され、トランプ大統領と習近平国家主席との間で、対立緩和への何らかの合意がなされたとしても、それは一時的な緩和にしかならず、底流としてこの対立は続くだろう。

トランプ、習近平が政権の座を離れる時が対立底流を変えるチャンスになろうが、習近平の方が長続きすると中国は考えていると思われる。

この米中対立の影響は今後どうなっていくのか。経済的には、米中双方の経済、さらに世界経済に下押し圧力がかかることは確実である。高関税の相互賦課は米中貿易を縮小させるし、サプライチェーンの再編成は諸問題を引き起こすだろう。しかし結局、製造拠点が中国から他の東南アジア諸国に移動するなどで新しいバランスが時を経て作られていくだろう。中期的に見れば、この影響は大したことにはならず、ベトナムなどのような国のさらなる発展につながる結果になろう。

経済と安全保障の境目にある技術の問題については、米国は華為技術をつぶしたいと思っているのだろうが、華為技術はもうすでに十分な技術を持っているのではないかと思われる。それに中国には有能な技術者が沢山いる。技術面で優位にある国はその優位を維持したいと思うのは当然であるが、そういうことは大抵成功しない。技術、知識というものは拡散する傾向がある。米国が核兵器の実験をした1945年の4年後、ソ連が核実験に成功したことを思い起こせばよい。

華為技術は、米国や日本からの技術調達ができなくなるし、販売でも苦労しようが、つぶれることはないだろう。

軍事・安全保障面では、ウィンウィンの経済関係の維持に配慮することが、米中双方の対決への緩和要素になっていたが、それがなくなるに従い、厳しさを増してくることになる。歴史を見ると、経済的相互依存関係が戦争抑止になったことはあまりなく、政治的対立は経済的損失を考慮せずに深まる例が多い。南シナ海問題や台湾問題がどうなるかはまだ今後の展開による。

昨年10月4日のペンス米副大統領の演説以来、米中間には「新しい種類の冷戦」の時代が来たように思われる。この新冷戦が日本に与える影響は政治的には総じてポジティブなものと考えられる。

米国にとり西太平洋でのプレゼンス維持は重要になるが、日本との同盟関係の重要性は高まるだろう。中国にとっては、米国との対立に加え、日本とも対立することは不利であり、日中関係をよくしておきたいと思うだろう。日本の外交的立場は強くなるのではないか。もうすでにその兆候は出てきている。

【私の論評】米国の対中「制裁」で実利面でも地位をあげる日本(゚д゚)!

米中冷戦で本当に、日本の外交的立場は強くなるのでしょうか。これを読み解く前に、まずは米中冷戦なるものを見直しておきます。

現在「米中貿易戦争」と呼ばれるものは、単なる経済的な戦争では無く、かつてソ連と米国が対立した「東西冷戦」と同じく「冷戦(コールド・ウォー)」であるということを改めて確認すべきです。

東西冷戦では、「どちらが先に核ミサイルのボタンを押すのか」という神経戦が続きました。1962年のキューバ危機のケネディvsフルシチョフの「どちらが先にボタンを押すか」という緊迫した駆け引きは、ケビン・コスナーが主演した「13デイズ」(2000年)という映画にもなっている。



この冷戦では人々が核兵器の恐怖に恐れおののいたものの、実際に銃で殺し合う現実の戦争はむしろ抑制されました。

今回の「米中冷戦」も神経戦であることは同じですが、いわゆる東西冷戦とは違って3つの要素で成り立っています。
1)核の恐怖 
2)サイバー戦争 
3) 経済力の戦い
1)の「核の恐怖」は共産主義中国の核戦力が米国と比較にならないほど貧弱であることから、ロシアを巻き込まない限り(北朝鮮も米国にとって本当の意味の脅威とは言えない)、クローズアップされることはないでしょう。

2)の「サイバー戦争」こそが今回の「米中貿易戦争」=「冷戦」の核心です。中国の核兵器は、米国にとってそれほどの脅威ではないですが、フロント企業などを通じた米国内への工作員の浸透ぶりや、広範囲にわたるサイバー攻撃には大いに脅威を感じています。

だから、関税よりもファーウェイをはじめとするIT企業および中国製IT製品に対する対策こそが米国にとって最も重要なのです。関税の引き上げは、この部分における米国の要求を通すための「駆け引きの道具」なのです。

しかし、日本はサイバー戦争に無頓着で、お花畑の中でいるかを実感している人は少ないです。日本人は、70年もガラパゴスな平和が続いたおかげでずいぶんボケてしまいました。。

3)の経済力といえば、本当の殺し合いを行う現実の戦争では「兵站」=「武器弾薬・食糧の補給など」にあたります。この兵站は古代から重要視されてきましたが、現代社会ではこの「兵站=経済力」が勝敗を決めるうえでますます重要になってきています。

典型的なのが「経済制裁」です。北朝鮮への経済制裁は、中韓ロなどの友好的な国々による「裏口」からの供給がありながら、ボディーブローのように効いています。

世界経済がネットワーク化された現代では、その「世界経済ネットワークの枠組み」から排除されることは死刑宣告にも等しいです。

そうして、米国の中国に対する関税引き上げは、「経済制裁」の一部であり、その行動を経済合理性から論じるべきではないのです。

今回の「米中貿易戦争」の目的は、かつてのソ連と同じ「悪の帝国」である共産主義中国をひれ伏させることであり、その意味で言えば、トランプ大統領にとって「米中交渉」は、「米朝交渉」と何ら変わりはないです。

そして、このブログにも以前から主張しているように、「米中冷戦」は食糧もエネルギーも輸入依存の中国全面降伏で終わることになるのです。

米国の真の狙いは、ファーウェイのような中国フロント企業を壊滅させ、サイバーテロを行う力を中国から奪うことです。

直接的にファーウェイなどの中国系IT企業を攻撃したり、中国への技術流出を止めてサイバー攻撃ができないようにするのはもちろんですが、関税をはじめとする経済制裁で中国の国力(経済力)を弱らせ、サイバー攻撃に使える余力を減らすことも行うでしょう。

ただ、北朝鮮の例からもわかるように、共産主義独裁国家というものは、国民が飢えていても軍事費は削りません。北朝鮮がその典型例であるし、かつてのソ連邦も軍事力では米国と競い合っていたのですが、その実国内経済はぼろぼろであり、それが大きな原因となって自滅しました。

ソ連の軍事力は確かにすぐれていましたが、その技術は終戦直後はドイツから化学者とともに移入したもので、その後はスパイ工作によって米国をはじめとする西側から盗んだものです。秘密警察が牛耳っている共産主義独裁国家に西側スパイが潜入するのは極めて困難であったのですが、逆に自由で開かれた西側資本主義・民主国家にスパイが紛れ込み先端情報を盗むことは比較的簡単でした。

今、米中の間でそれが再現されています。共産主義独裁国家として自国内では厳しい監視を行うのに、米国をはじめとする西側世界ではサイバー攻撃や情報の入手などでやり放題です。

WTOルールを中国は守らないのに、WTOルールの恩恵を最大限に享受していることにも米国は立腹していますが、米国が本当に守りたいのは「軍事技術・通信技術」の絶対的優位性です。

この「核心」を犯した共産主義中国は、安全保障上極めて危険な存在であり、その安全保障上の問題が解決されない限り、経済制裁である「米中貿易(関税)戦争」は終わりません。

米国の真の目的は、旧ソ連と同じ「悪の帝国」=共産主義中国を打ちのめすことにあるのですが、ソ連のような核大国になる前に叩きのめしたいというのが本音です。

5月13日に米国務省、ポンペオ国務長官が同日に予定していたモスクワ訪問を取りやめたと発表しました。9日にもメルケル首相との会談を直前にキャンセルしていますが、目的はイラン問題への対応です。

北朝鮮のように核保有国になってしまうと、対応が厄介です。だから、まずはイラン問題に集中して、核保有を未然に防ごうという考えのようです。

共産主義中国への対応も同じ路線です。かつてのソ連邦のような核大国になってしまってから対応するのでは遅すぎます。すでにサイバー攻撃や工作活動では米国が遅れをとっているようにも見えます。

だから、戦後最低のオバマ大統領(米大学の国民へのアンケート調査による)による、悪夢の8年間に失った優位性を一気に取り返す秘策として、今回の貿易(関税)戦争が考案されたのです。

マスコミや多くの評論家が見落としているのは、今回の「貿易戦争」が「経済制裁」であることです。制裁なのですから、中国はこれに注文を付ける立場にはありません。

経済制裁を受けている北朝鮮が緩和を求めて米国「ちゃぶ台返し」されたように、共産主義中国が緩和を求めても「お預け」を食うだけです。

米国にとって国防問題は経済問題以上の優先課題です。場合によっては、中国との全面貿易停止もあり得ます。打撃を受けるのは中国であって米国ではありません。

なぜなら、現在は世界的に供給過剰であるから、米国の輸入先はいくらでも開拓できるからです。短期的な混乱はあっても、日本のすぐれた工作機械を設置すれば、どのような国でも米国の求めに応じて、良質の製品を安く米国に提供可能です。ファーウェイにかつて、日本企業がかなり部品供給をしていたことを思い出してほしいです。

さらに、日本の強みがあります。デジタルが機能するには半導体など中枢分野だけでなく、半導体が処理する情報の入力部分のセンサーそこで下された結論をアクションに繋げる部分のアクチュエーター(モーター)などのインターフェースが必要になります。

また中枢分野の製造工程を支えるには、素材、部品、装置などの基盤が必要不可欠です。日本は一番市場が大きいエレクトロニクス本体、中枢では負けたものの、周辺と基盤技術で見事に生きのびています。また円高に対応しグローバル・サプライチェーンを充実させ、輸出から現地生産へと転換させてきました。

トヨタのケンタッキー工場

世界的なIoT(モノのインターネット)関連投資、つまりあらゆるものがネットにつながる時代に向けたインフラストラクチャー構築がいよいよ本格化しています。加えて中国がハイテク爆投資に邁進していたのですが、その矢先に米国からの「制裁」によって、出鼻をくじかれようとしています。ハイテクブームにおいて現在日本は極めて有利なポジションに立っているし、これからもその有利さが続くことになりそうです。

現在の低金利、供給過剰の世界では、中国が生産しているコモディティの供給などどのような発展途上国でもできます。簡単な工場なら半年もかからないし、大規模・複雑な工場でも1~3年程度で完成します。

むしろ、米中貿易戦争は、供給過剰で疲弊している世界経済を救うかもしれないです。なぜなら現在世界経済が疲弊しているのは、中国を中心とする国々の過剰生産の影響だからです。

「供給過剰経済」については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!
野口旭氏

世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。 
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。
ここで、貯蓄過剰は、生産過剰と言い換えても良いです。生産過剰の世界では、貯蓄が増えるという関係になっているからです。新興国、特に中国の生産過剰が問題になっているわけです。

競争力を持たない中国製品の貿易戦争による関税増加分を負担するのは、中国企業であり中国経済です。中国社会はその経済的圧力によって内部崩壊するでしょう。値上げによって米国消費者の負担が増えることは全くないとはいいませんが、あまりありません。他の発展途上国の商品を買えばよいだけのことだからです。実際、中国では明らかに物価の上昇がみられますが、米国はそうでもありません。

それがトランプ大統領の真の狙いのようです。中国をたたきつぶすことが優先で、実のところ貿易で利益を得ようとは思っていないフシがあります。貿易戦争で勝利しなくても、米国は多額の関税を手に入れることができる立場にあります。

今回の貿易戦争は、核や通常兵器使用しないだけで、「戦争」なのですから 共産主義中国に融和的な欧州は、経済・国防面から排除されかねないです。

例えば、ファーウェイに融和的な国は、例え英国といえども、ファイブ・アイズから外されかねない危険性があります。

習近平氏は日本に媚び始めていますが、「距離感」を間違えると、日本が米国の報復に合う可能性もあります。ただし、安倍首相とトランプ大統領の友好関係が続く限りそれはないと思います。

結局、中国の「改革・解放」は40年の輝かしい歴史の幕をペレストロイカと同じように悲劇的に閉じるかもしれないです。

そうして、日本は中国から発展途上国にサプライチェーンが移るにつれて、工作機械などの提供で利益を得ることになります。さらには、貿易戦争の過程において、欧州が凋落すれば、ハイテク分野でもそこに入り込む隙ができます。

日本としては、中国とは距離をおいた上で、米国と協調して、中国の凋落を待てば良いです。そうすれば、外交上の立場も上がるし、実利も得ることができるのです。しかも、それは中国のように窃盗によるものでなく、自前で積み上げてきた独自の技術でそれが可能になるということです。

ただし、サプライチェーンが完全に中国から海外に移転しないうちは、短期的には様々な悪影響がある可能性は十分にあります。他にもブレグジットの問題もあります。やはり、今年増税などしている場合ではないでしょう。

せっかく日本の外交上の地位があがったり、実利的に有利になったにしても、日本のGDPの6割は個人消費なので、増税すれば個人消費が冷え込み、再びデフレに舞い戻ることになるでしょう。それでは、全く無意味です。

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2019年6月4日火曜日

【6月4日で30年】中国の「天安門事件」とは何だったのか?―【私の論評】「天安門の虐殺」で次世代を担う多くの若者の命を奪った中共は国家の未来へのビジョンをも殺した(゚д゚)!

【6月4日で30年】中国の「天安門事件」とは何だったのか?



あの「天安門事件」から30年。風化させてはならない「民主化運動」の軌跡

本日6月4日で、1989年に発生した中国の「天安門事件」から30年が経ちました。あらためて天安門事件とは何か、そして中国をはじめ台湾・香港で受け継がれた「民主化運動」の歴史について、駆け足で振り返ってみたいと思います。

多くの犠牲者を出した「天安門事件」とは何か?

米ソ冷戦時代の80年代後半、当時のソ連では「ペレストロイカ(政治体制の改革運動)」を始め「民主化」「自由化」が進みそうなムードになっていました。そのソ連と同じく共産党の「一党独裁」である国、中華人民共和国(中国)にも、変革の波が押し寄せていたのです。その「自由化」を推進していた人物が、中国共産党の胡耀邦(こ・ようほう)総書記でした。

胡耀邦(こ・ようほう)氏

胡氏は、中国版「ペレストロイカ」ともいうべき民主化・自由化を中国で実行しようとしましたが、当時の実際の最高実力者だった鄧小平(とう・しょうへい)氏が反対し、胡氏は失脚。1987年1月のことでした。

その後も要職を解かれた胡氏は、1989年4月15日に心筋梗塞で急死しました。この胡氏の死をきっかけに4月17日、北京で学生たちが追悼集会を開催。これは、ほどなくして「民主化要求デモ」に発展し、中国全土に拡大していきました。4月21日には北京のデモ参加者数は10万人までに膨れ上がったのです。

そして5月、その数は50万人に増加。革命を恐れた中国共産党のトップは6月4日、学生デモを「武力で鎮圧」するよう命令を下しました。これがいわゆる「天安門事件」です。犠牲者の数は、中国共産党の公式発表では「319人」としていますが、正確な数字は現在も不明ながら、欧米では「3000人から1万人」とも言われています。人民解放軍の戦車の前に1人で対峙する学生の写真などを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

当時の駐中国アラン・ドナルド英大使が翌6月5日に本国政府へ送った外交機密電報によると、「最低でも1万人以上が中国軍に殺害された」「1時間の退去期限を通告したが、実際には5分後には装甲兵員輸送車による攻撃が始まりひき殺され、大多数は広場から離れる途中で(学生たちが)犠牲に遭った」「学生たちは腕を組んで対抗しようとしたが、兵士たちを含めてひき殺されてしまった。そしてAPC(装甲兵員輸送車)は何度も何度も遺体をひき、ブルドーザーが遺体を集めていった」と記載されていました。この数字が正確なものだったかどうか、現在も多くの議論がおこなわれています。

この事件をきっかけに、中国政府は世界中から非難を浴び、現在も「言論弾圧」や「人権蹂躙」などの問題が指摘されています。

香港・台湾で語り継がれる「六四天安門事件」。本土はTV放送の遮断も

武力鎮圧によって亡くなった多くの犠牲者を追悼する集会が、香港や台湾で毎年行われています。しかし、中国本土では今も、天安門事件に関すること(例えば、六四、64、8964といった数字さえも)をネット上に書き込むことや、話すことも許されていないのが現状です。

中国では4日、NHKの海外向けテレビ放送で「天安門事件30年」に関するニュースが流れた瞬間、映像と音が消え、画面が真っ暗になったということです。現在も、この事件は中国本土では「タブー視」されていることがわかります。

天安門事件が発生した1989年といえば、ベルリンの壁が11月に崩壊、東西ドイツが再統一された歴史的な大事件があった年です。その後、ソ連が崩壊してロシア共和国となり、東欧諸国が民主化。しかし、中国は今も中国共産党が一党独裁を続けたまま、さまざまな「統制」が続いています。

主に経済面で「米中戦争」が激化するいま、世界2位の経済大国となった中国が過去に起こした「歴史的大事件」について、いま一度振り返ることも必要ではないかとの思いから、1989年の天安門事件から30年という節目の年となる本年の6月4日、この特集記事を組ませていただきました。(MAG2 NEWS編集部)

【私の論評】「天安門の虐殺」で次世代を担う多くの若者の命を奪った中共は国家の未来へのビジョンをも殺した(゚д゚)!

まずは、天安門事件でなくなった方々のご冥福をお祈りいたします。

以下に、2012/06/02 に公開された、六四天安門事件の動画を掲載させていただきます。私が検索した限りでは、この動画が当時の様子を最も生々しく伝えていると思います。現実は、これよりはるかに残虐だったことが、当時の写真をみるとよくわかります。

無論中国では、この動画は見ることはできません。


この出来事は、「事件」とされていますが、現実はぎ「虐殺」と呼ぶべきです。

米国務省のオルタガス報道官は30日の記者会見で、6月4日で発生から30年を迎える中国の天安門事件について「平和的に抗議活動をしていた人々に対する徹底した虐殺行為だった」と指摘し、「罪のない命が失われた痛ましい事実を忘れない」と述べました。
オルタガス氏はまた、犠牲者数など事件の詳細を明らかにせず、抗議参加者や遺族らへの弾圧がいまだ続いているとし、「中国共産党による構造的なおぞましい抑圧。今日の世界で起きている悲劇の一つだ」と厳しく批判しました。

米国務省のオルタガス報道官

中国外務省の耿爽・副報道局長は31日の記者会見で米国務省のオルタガス報道官のこの言に関し、「中国政府に対する根拠のない非難で、内政干渉だ。強烈に不満であり断固反対する」と表明しました。

さらに耿氏は「米側は偏見を捨てて誤りを正し、いつもの論調を繰り返して内政干渉することをやめるよう促す」と要求しました。

耿氏は6月4日で30年となる天安門事件について「1980年代末に発生した『政治風波(騒動)』に対し、中国政府はとっくに明確な結論を下している」と公式見解を繰り返し、事件を正当化しました。その上で「今年は中華人民共和国成立70周年だ。新中国の発展は巨大な成功を収め、国情に合った発展の道を歩んだことを証明している」などと主張しました。
中国外務省は31日、ホームページで当日の記者会見内容を公開しましたが、天安門事件に関する質問と回答は掲載しませんでした。

中国共産党の六四天安門事件の対外的反応は、事件直後からこの調子で、今でも全く変わっていません。国内では、情報を封鎖して、この事件は無かったことになっています。これにより、中国共産党は、「恐怖による抑圧」で中国民衆から理想を求め向上を目指す崇高な人間性を奪ってしまったといえます。

統治の正当性の維持と権力闘争のために、次代を担う多くの若者の命を奪った中共は同時に、国家の未来へのビジョンをも殺してしまったのです。

経済発展と都市の近代化が進む中国で、天安門事件のような虐殺と弾圧のおぞましい過去は葬り去られてしまったのでしょうか。

いえ、思想弾圧や少数民族の独立など、弾圧と虐殺は今でも続いています。中共の体質は当時と全く変わっていません。

変わったのは、民衆の心であり、中共の邪悪な本質を見て見ぬふりをし、64事件の虐殺と弾圧を正当化する論理を受け入れてしまった中国民衆なのかもしれません。

しかし、私は中国共産党がなくなれば、正義を重んじる善良な中国民衆が必ずや再び歴史に輝きをもたらすと信じたいです。 

このブログで、何度か述べてきたように、現在の中国では民主化が遅れているだけではなく、政治と経済の分離、法治国家化もなされていません。やはり、ある程度民主化が実現されないと、他のことも進めることはできないのでしょう。

このような国が、軍事と経済だけを発展させて、遅れた体制を維持しつつ長期に渡って繁栄し続けることはあり得ません。それは過去の歴史が証明しています。

いずれ、中国共産党一党独裁は黙っていても自ら崩れる運命です。最近の米国による対中国冷戦は、それを若干はやめるだけです。

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