2020年4月18日土曜日

政策スピード不足 官僚の壁 一律給付に財務省反対―【私の論評】中国ウイルスで死者が出る今、政治がまともに機能していれば、起こらないはずの悲劇が起こることだけは真っ平御免(゚д゚)!

政策スピード不足 官僚の壁 一律給付に財務省反対

安倍晋三首相は17日の記者会見で
安倍晋三首相は17日の記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大の阻止に向け「国民皆でこの状況を連帯し、乗り越える」と訴えた。2月29日以降、記者会見の回数は5回に上る。だが、都市部を中心に感染者数は増え続け、緊急経済対策に盛り込んだ現金給付では減収世帯への30万円の給付から国民1人当たり現金10万円の一律給付に方針転換するなど迷走を重ねた。首相の思惑とは逆に、政権への批判は強まっている。

 首相官邸の政策決定にスピード感が欠けるのは、前例踏襲を常とする官僚が壁になっているためだ。

 感染の有無を調べるPCR検査について、首相は再三、1日当たりの検査能力の引き上げを指示したが、厚生労働省は軽症者の入院が増えて重症者支援が遅れれば医療崩壊を起こすと難色を示してきた。新型コロナは感染しても軽症か無症状の人が多い。検査ができないままでは、国民の不安が強まるのは当然だ。

 新型コロナ感染症に治療効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の承認手続きやオンライン診療でも、副作用への懸念から、医師免許を持つ幹部職員らが「立ちはだかった」(政府関係者)とされる。

 現金給付をめぐっては、財務省が国民全員を対象にすれば、「大企業や年金生活者など打撃のない人にも配るのは不公平だ」と主張した。官邸は一律給付が膨大な財源を必要とすることも考慮し、対象を減収世帯に限り、1世帯当たり30万円の給付に傾いた。

 だが、首相が要請した全国の小中高校などの休校や外出自粛による在宅勤務で、家庭では食費など想定外の支出がかさんでいる。企業は先行きへの不安から今後の賃上げに慎重になるのは必至だ。消費税率10%も家計の重しになるだろう。首相はこうした国民感情を重視し、緊急事態宣言の対象区域を全国に拡大したのを機に10万円の一律給付に転じた。17日の記者会見で首相は「もっと判断を早くしておけばよかった」と率直に語った。

 「私たちにはもっとできることがある。目の前の現実に立ち向かうだけではなく、未来を変えることだ」。首相は会見でこう協力を呼びかけた。ただ、5月の大型連休を過ぎても感染者数が高止まりし続ければ、首相が要請した国民の努力も巨額の経済対策も水泡に帰する。来年7月に延期した東京五輪・パラリンピックの開催も危ぶまれる。首相は自らの判断が国家の命運を握る覚悟を持ち、果敢に対応すべきだ。(小川真由美)

【私の論評】中国ウイルスで死者が出る今、政治がまともに機能していれば、起こらないはずの悲劇が起こることだけは真っ平御免(゚д゚)!

10万円一律給付を決定する件で公明党がかなり強く出た事で、安倍総理が実現にこぎ着けることができたところがあるのは、事実ではあるのですが、朝日新聞は相変わらずこの件についても印象操作をしています。

「一律給付に反対の安倍首相が折れた」などと報道しています。

【世論の不満、折れた首相 与党に転換迫られ 10万円給付へ 新型コロナ】
(2020/4/17 朝日新聞)

そしてこれ、時事通信も全く同じような報道をしています。

【公明、「連立離脱」論で押し切る 官邸主導の政治手法に影―現金給付1人10万円】
 新型コロナウイルス感染拡大を受けた経済対策で、焦点の現金給付は国民1人当たり10万円とすることが決まった。連立解消まで持ち出した公明党の強硬な要求に安倍晋三首相が折れた形で、2020年度補正予算案を組み替える異例の展開となった。第2次政権発足以降貫いてきた官邸主導の政治手法が今回ははね返され、首相の求心力低下も印象付けた。~以下省略~(2020/4/17 時事通信)
一律給付はむしろ安倍総理は実施したい側でした。それを特に強固に反対していたのは麻生太郎でした。

麻生は「2009年の定額給付は叩かれまくったから絶対にダメだ」と国会でも個人的にも根に持っているのを隠さない答弁ぶりでした。

そこで安倍総理は岸田政調会長に指示を出したわけですが、財務省のポチで緊縮財政派の岸田政調会長は一律給付の声を無視して「1世帯あたり30万円給付します!」と、総理に話を持っていって了承を取り付けました。

岸田政調会長

しかも、蓋を開けてみたらおもいっきり所得制限がついてよくてもせいぜい5世帯に1世帯程度しか対象にならない中身でした。財務官僚としてはまんまとしてやったりと言ったところでしょう。

そこにでてきたのが、公明党です。総理としては、公明党と根回しをした上でこれを利用したのでしょう。

一律給付に連立離脱も辞さないと主張したものの、それでも岸田ら財務省派の連中が一歩も譲歩せず、4時間もの交渉の末に結局結論は先送りとなりました。そこに安倍総理の一押しでようやく一律給付実現にこぎ着けました。
消費税増税についても財務省のポチで国民の利益より財務省を守る個人的政治信念を優先する老害麻生太郎と岸田文雄という財務省の代弁者により、上げざるを得なくなったというのが事実です。

自民党内の若い議員達、特に今回の一律給付と消費税減税を求めた100人になる議員達に言いたいのですが、政府に文句を言うのではなく自分たちの派閥のボス、岸田、麻生にこそそのエネルギーをぶつけるべきだったと思います。

特に麻生は国民の利益より財務省を守るという事に関しては従来から全くブレたことがありません。過去には、消費税増税が間違っている事を講演などで語りつつも、必ず財務省の省益最優で動いてきました。

麻生財務大臣

その麻生の強い影響力の土台になっているのは、麻生に直接文句を言わないくせに麻生派に所属して党内第二派閥の領袖という麻生の権力を支えている議員達です。そこを自覚すべきです。

麻生派の議員がやるべきだったのは、定額給付に対しての個人的な恨みまで持ち出して一律給付断固拒否で抵抗した老害麻生を説得することであったはずです。

なんでもかんでも総理だけを悪者にするのは、「僕は派閥のボスに目を付けられたくないので総理を批判してポーズだけ取ります」という風に見られても致し方ありません。

朝日新聞や時事通信、読売新聞など第一次安倍内閣の倒閣に動いた記者クラブ談合メディアの一部は隙を見ては現在も第一次安倍内閣の時から全く同じ書き方を使っています。

「首相が折れた形だ」、「折れた首相」、「求心力の低下を印象づけた」

意思を通しきれない頼りないリーダー、安倍晋三。これが朝日新聞が第一次安倍内閣のときからずっと繰り返し使ってきたイメージです。そのための「折れた首相」という書き方です。

先のも述べたように、今回は安倍総理は公明党を利用したというのが真相でしょう。

今回公明党が切ってきた「連立離脱」カードは強固な基盤を持っていない議員にとっては
本当にあるかどうかわからない創価票が減る事で落選してしまうという危機を抱くことになります。

特に二階派はそういう有象無象が集まっていますし、岸田派、麻生派もそうした議員は少なくありません。

安倍総理のように地元に圧倒的な地盤を築いている議員ならいざ知らず、当落ギリギリのところにいる議員達にとっては次の選挙で落ちるかもしれないぞという脅しになります。

安倍総理が菅官房長官を切れないのも管-公明党ラインがあるからなのでしょう。

また、今回のことで公明党内の支持基盤層の不満もかなり抑えられるでしょう。公明、山口なつお氏に花を持たせた形ですからね。

自民党内では、一つの派閥ばかり強くさせるとパワーバランスを調整できなくなってしまうのです。面倒な話ですがこれが議院内閣制です。

安倍総理は、国会で反日野党にひたすら嫌がらせされながら空いた時間で政策を進めつつ、こんな水面下のバランス調整を7年以上も続けているのです。

これまでも何かある度にマスコミが「首相の求心力低下を印象づけた」「優柔不断な首相」という印象操作を行ってきました。

こんな事を書きながら同時に「第2次政権発足以降貫いてきた官邸主導の政治手法」などと報道しているのですから噴飯ものです。

朝日新聞や時事通信、読売新聞などの記事のとおりなら、<今までずっと党を無視して官邸で決定し押し切ってきた優柔不断で求心力低下を繰り返してきた安倍総理は8年も政権を続けてきた。>

という矛盾したことになるのですが、彼らはそれに気づいているのでしょうか。

今回のことで改めてはっきりしたのは、麻生太郎や岸田文雄らが国民生活より財務省のポチであろうとする事を選ぶ連中だということです。

岸田派としては岸田がせっかく総理に「1世帯あたり30万円給付します(ほとんど対象にならない)」と報告して了承を得た案が総理と公明党によってはっきりひっくり返されたわけですから、岸田派としてはメンツが丸つぶれということです。しかし、これは国民のことを全く考えずひたすら財務省ポチであり続けたことの代償です。

そうして、それ以上に、岸田があてにならないので切り捨てる事になってもかまわないという判断を安倍総理が行ったことになります。

長い時間外務大臣をやって次期総裁候補の一角にも名前が出るようになった岸田は、総裁選への備えのためにも大臣交代を直訴。そして今のポジションにいたわけですが、肝心な所で財務官僚が書いた台本で総理を騙して「ほとんど真水を出させない経済対策」を押し通そうとして大やけどをした形です。むしろ求心力低下は安倍総理よりも、岸田の方がよほど大きいです。

昨日の衆議院厚生労働委員会で、山井和則(京都6区比例復活)、岡本充功(愛知9区比例復活)らが安倍総理の揚げ足取りだけを目的に質問に立ちましたが、今回総理が10万円給付に変更したことに関連して以下のようなやりとりがありました。



山井
「総理は一律給付には3ヶ月以上かかると当初言っていた!嘘をついていたな」

安倍総理
「3ヶ月以上かかると言っていたので新たな方法を検討するように指示したら期間短縮ができるとなったから一律給付に決めた」

山井
「総理は虚偽の説明をしていたんだな!総理の言う事は信用できない!緊急事態宣言もろくに精査せず発表したんだな!」「総理の言う事は信用できない」

山井としては、「総理は一律給付をしたくなくて嘘をついていた。責任を取って辞任しろ!」ということにするために質問に立ったのがよくわかる質疑でした。

山井の不毛な質疑でしたが、こんな質疑でも山井の意図とは全く別の角度で安倍総理の役に立ちました。

山井の質問に対する安倍総理の答えは以下のようなものでした。

安倍総理
「これまで一律給付は3ヶ月以上かかると説明されてきた。新たな方法を検討するように見直しをさせたら住基台帳を使うアイデアが出てきた、これで5~6月頃から配布が可能と言われた」

自民党内で一律給付と消費税減税を求めた100人以上の議員が党内で議論を開いた時に政調会長らは「一律給付の場合は3ヶ月以上かかってかえって時間がかかるから所得制限」という話で押し切っています。

この件は小野田紀美議員がぶち切れしてツイッターで愚痴っていたのでご存じの方もいらっしゃると思います。

要するに麻生も岸田も一律給付反対、緊縮財政派なので一律給付に対して財務省サイドは「できない理由」を作ってそれしか方法がないかのように説明をしてきたわけです。

なので麻生大臣に至っては「一律にしたら金がくばられるのは8月以降になる」とまで言っていました。麻生は良くも悪くも自分の部下の説明は疑わないようにしているので財務官僚にまんまと嘘をすり込まれていたのかもしれません。

財務官僚はその説明で総理まで騙していた形になります。

財務省の岡本薫明事務次官

ところが一律給付を実現させたい総理が見直しをさせたら住基台帳やネットなどを使う事で早く配れるようにできる、という話が出てきたわけです。出てきたのは総務省サイドからのアプローチのようです。財務省ってほんとに国民の邪魔しているだけです。

本当ならマイナンバーカードが全国民に普及していたらそれに基づいて振り込めばいいだけなのでもっと短縮できたはずです。日本のマスコミと反社会勢力(共産党と旧社会党系)にとっては口座の名寄せが行われるといろいろ都合が悪いので長い間邪魔をしてきたおかげで歴代政権は、彼らに足を引っ張られ放題です。

先にもあげたように、総理に対してすら「一律給付は3ヶ月以上かかる」と「できない理由」を作って説明してきた財務省は嘘つきであり、やはり解体すべきだと思います。

対象を絞って30万円支給するのと、10万円一律給付とでは、どう考えても10万円一律給付のほうが、はるかに簡単で、早いはずです。対象を絞った場合は、対象であるかどうかを確認するのにかなり手間取るはずですし、役所に人が大勢集まりコロナ感染を誘発しかねません。

さらには、支給金詐欺も横行しそうです。何しろも対象を絞っての給付金は、給付資格を何らかの形で証明しなければならなくなりますから、複雑だし、不正受給の温床にもなります。

今回のような、緊急時には財務省と財務大臣は対策会議等に参加できないようにするという措置が必要かもしれません。何しろ緊急時であっても国民の命よりも省としての方針、緊縮財政を重視するのですから、これからも国難のたびに足を引っ張られることになるのは間違いないでしょう。

そもそも、復興税などという、自然対策に税金を用いるなど古今東西に全く例のない(疑うなら調べてください)奇妙奇天烈な税制をつくったのですから、これくらいのことはされても仕方ありません。多くのサラリーマンは未だにこの税金を天引きで支払い続けているということを忘れるべきではありません。

安倍総理は党内のバランスを取りながら今回は公明党まで使ってきたやっと実現できた形です。政策実現のためにそこかしこに根回しをしているのでしょう。緊急事態宣言についても反対する閣僚を説得して回っていたのが総理という実態だったようですし、五輪延期についてもしっかり関係各所とIOCなどと調整がついてから発表しました。

今回自民党内で一律給付を求めた若手議員達はこういう実態を踏まえて発言と行動をより磨くべきです。

中国ウィルス終息後、いかに中国の影響力を削いでいくか、むしろ本番はそこからになると見ておかなければなりません。党内で強力に議論を進められるだけの実力を付けてもらいたいです。

議院内閣制の総理大臣は独裁などできず、なかなか前に話が進んでいかないもどかしさがどうしてもあります。ですが面倒であっても手続きこそが民主主義でありますし、利害が対立するところを調整するのですから時間がかかるのは当然とも言えます。
これからの課題は、国益と利害対立する、財務省の「省益」をいかに取り除いていくかということです。

世論調査では、10万円の一律給付のほうが圧倒的な支持がありました。結局私たち国民の世論の後押しもあって今回の10万円一律給付は実現したわけですが、次のステージは消費税減税でしょう。

総理の負担を考えれば、国会で反日4野党のゴミ質疑に毎日何時間も付き合わされているのだけでも辞めさせるべきと思います。

日本のマスコミの大半は総理を潰すことしか考えてませんので、これからも実態を無視した記事を書き続けるのでしょう。また、テレビのワイドショーも右に倣えです。

私たち国民が冷静に状況を分析し続けていくしかありません。ワイドーショーだけが、情報のソースのワイドシー民は、情弱であり、ワイドーショーをみて「対策が遅すぎる」「首相は公明党に折れた」とか挙句の果てに「もりとも桜」の話題も出るような始末です。実際、私もワイドショー民のそうした反応に時々遭遇することがあります。

馬鹿な情弱は、馬鹿の壁を高く築いてどうしようもないのかもしれませんが、それにしても、それが自分の親族、おじいちゃん、おばあちゃんなら、子供や孫なら、本当に残念なことだと思います。幸いなことに、我が家ではそのようなことはなく、ワイドショー民にあうのは家以外であり、その点では私は本当に恵まれていると思います。

ワイドショー民には、ネットの報道番組等をテレビでみられるようにしてあげて、財務省やそのポチたちからの情報操作、印象操作を受けないようにして、緊縮病を解いてあげるべきです。

このブログでは、『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』という書籍を哨戒したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機はこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下のこの本の著者たちの言葉を引用します。
民主的な選択は、裏づけのある政策とそうでない政策を見分けることから始まる。特に国民の生死にかかわるようなリスクの高い政策選択においては、判断をイデオロギーや信念に委ねてはいけない。…正しくかつわかりやすいデータや証拠が国民に示されていないなら、予算編成にしても経済政策にしても、国民は政治家に判断を委ねることができない。その意味で、わたしたちはこの本が民主化への第一歩となることを願っている。
「経済政策はどんな薬、手術、医療保険よりも命に関係する」という著者たちの言葉の重みを感じます。この記事は、最近もこのブログで紹介させていただきました。

中国ウイルスが終息したとしても、その後の経済対策が悪ければ、中国ウイルスの死者を上回る死者を出すおそれもあるのです。

この記事を書いたのは、2016年3月4日です。この記事を読んだ私の知人の中に、「経済政策が人を殺すこともあるということは、絶対に信じることができない」という人がいました。

私は、これは私一人だけの意見ではなく、多くの経済学者などが指摘するところだと、言っても彼は考えを翻しませんでした。そうして、結局この書籍も読まなかったようです。

その彼に、最近「経済政策が悪ければ人を殺すこともある」と思うかと、再度聴いてみました。そうすると、今の彼は、中国ウイルスのこともあってか、考えを翻したようでした。そうして、この書籍も読んでいました。

世の中彼のような人ばかりだと良いのですが、ワイドショー民はそうではないです。彼らは、可愛そうなだけでなく、緊縮政策支持で自分で意識せず、意図せず、若い人たちを間接的に殺すことにもなりかねません。それが、自分の子供や孫だったらどうなるのでしょうか。今はただでさえ、中国ウイルスで死者が出る時期です。本来政治がまともに機能していれば、起こらないはずの、悲劇が起こることだけは真っ平御免です。


2020年4月17日金曜日

国が「休業補償」を実施しても財政破綻の心配などない カネケチらず国民の命守れ! ―【私の論評】財務省の緊縮病に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊される(゚д゚)!

国が「休業補償」を実施しても財政破綻の心配などない カネケチらず国民の命守れ! 
高橋洋一 日本の解き方

新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴う休業要請の補償について、東京都は独自に行う方針だが、国は実施に消極的だ。東京以外の道府県は必ずしも財政事情が良くないので、国が出てきてくれないと大規模な補償は難しいのが実情だ。

 これについて安倍晋三政権で首相補佐官をしていた磯崎陽輔参院議員は、ツイッターで「全額休業補償をすれば、国は、財政破綻します。国名を挙げれば失礼ですが、イタリアと同じような状況になります。それは、医療崩壊へとつながるのです」と書いていた。


 これに対し、筆者は「もしこのような間違った財政破綻論にとりつかれていたら確実に『Z(財務省)緊縮病』患者。全額休業補償に必要なのはせいぜい数兆円レベル。これで財政破綻といいきるのは、1、2、…9、10、『たくさん』という人笑笑。その程度の財源作りなら教えますよ笑」と書いた。

 一般論だが、事業が厳しくなると、事業主は経費を減らそうとする。これが人件費にまで及ぶと休業や従業員の解雇となる。解雇の場合、労働者には失業保険が手当てされ、休業の場合には事業主には手当てに要した費用が雇用調整助成金として支給される。ともに、雇用を守るためのセーフティーネットだ。どちらも不正受給はいけないが、法律に基づくものは大いに活用すべきだ。

 国は、休業補償には及び腰であるが、雇用調整助成金の枠組みの中ではある程度の対応をしようとしている。

 ということは、経費のうち人件費以外の固定費などについては補償したくないという意思表示がうかがえる。ここでも、「Z緊縮病」のケチケチ根性丸出しなのだ。

 一体どれくらいの金額が必要なのか。大ざっぱな計算であるが、緊急事態宣言の区域である7都府県の国内総生産(GDP)合計はほぼ250兆円。休業要請するのは、経済活動別分類でいえば、宿泊・飲食サービス業、教育、その他のサービスが中心だ。それらの付加価値額は全体の10%程度として、経費と利益を全て補償したとすれば年間ベースで25兆円となる。

 仮に補償期間を3カ月(0・25年)として経費率8割とすれば、経費全てを補償する場合、25×0・25×0・8=5兆円。補償期間1カ月で全額でなく8割補償とすれば、必要金額は1・3兆円にしかならない。この程度であれば、国債を発行し、日銀が買いオペ対象にするだけで、インフレを起こすこともなく、簡単に捻出できる。

 一方、地方公共団体には、日銀の通貨発行益という奥の手はない。財政余裕度を示す財政調整基金(2018年度末)について、東京都は8428億円だが、大阪府は1489億円、神奈川県が591億円、千葉県が465億円という状況で、1兆円を超す支出を地方公共団体に求めることはできない。

 新型コロナウイルスに対しては、人と人との接触率を減らすのが当面の課題だ。早く打ち勝つためにもカネをケチってはいけない。国民の命を守るのは国の責務だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省の緊縮病に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊される(゚д゚)!

私達は今、二つの危機に直面しています。一つは、新型コロナウイルス感染拡大の危機です。この危機に対して安倍首相は4月7日、7都府県を対象に「緊急事態」を宣言し、外出自粛によって感染拡大を抑制する方針を示しました。経済的損失を覚悟のうえで国民の大半は「政府の要請」に協力するでしょう。

もう一つは、「日本経済は戦後最大の危機に直面している」(安倍首相)ことです。この危機を乗り切るため、同じ日に、安倍首相はGDPの2割に相当する「108兆円」の緊急経済対策を発表しました。


それでなくとも昨年10月の消費増税で景気は悪化していました。そこに新型コロナの影響で日本経済は本年度GDPでマイナス10%、実に55兆円もマイナスになるのではないかと言われています。

その穴埋めを政府の財政出動でしておかないと、国民経済は致命的な打撃を受ける。このため政府は今回、108兆円もの緊急経済対策(補正予算)を打ち出したのです。

ただしこの数字はこのブログでも以前述べたように、「事業規模」です。多くの経済学者が指摘しているように「真水」、つまりGDPを押し上げる効果がある政府の財政支出がいくらかが重要なのです。

実はこの108兆円には昨年12月に閣議決定された26兆円の経済対策の未執行分が入っています。よって、新規対策は82兆円。しかも中小企業向けに実施する納税や、社会保険料の支払い猶予のための26兆円は「財政支出」ではありません。

実際の「真水」に相当するのは「大変困難な状況に直面している家庭(一世帯30万円)、児童手当の上乗せ、中小・小規模事業者に対する現金給付と地方税減免」8兆円、「医療体制の整備と治療薬の開発」2.5兆円、「観光や農林水産業への補助金」8.5兆円などで、総計で20兆円に満たないと言われています。

現に、この補正予算に伴う新規国債発行額は16.8兆円です。量としては不十分です。この財政出動の出し渋りをした事務方のトップは、財務省の岡本薫明事務次官です。

財務省の岡本薫明事務次官

しかもこの財政出動の恩恵を直に受けることができるのは、一部の人に限られます。今回の2つの危機は、国民すべてに襲いかかってきています。よって、「給付金を一律10万円配布すべきだ」という案が与党や野党の一部からも出されていたのだが、これを否定したのが麻生太郎財務大臣でした。

公明党代表山口氏の要請もあり、政府・与党は4月16日、減収世帯限定の30万円給付を取り下げ、「国民1人あたり一律10万円給付」という異例の決定をしました。これは、当然といえば当然です。

緊急経済対策をめぐって、公明党は来週から審議予定の今年度の補正予算案を組み替えて現金10万円を一律に給付するよう求め、15日に自民党幹部と協議し、また山口代表が16日朝、安倍総理に電話で実現を改めて求めました。

これを受け安倍総理は、麻生副総理兼財務大臣と会談したほか、自民党の二階幹事長、岸田政調会長らを呼び、公明党との協議内容の報告を受けた上で、引き続き調整に努めるよう指示しました。山口氏としては、減額世帯限定の30万円給付だけでは、与党支持者の不興を買うのは必至であるとみたのでしょう。正しい判断でした。

一方、「日本の尊厳と国益を護る会」など自民党の若手議員約100人が消費税を一時的に減税すべきだと主張しましたが、これを却下したのが甘利明・自民党税制調査会会長でした。

甘利明・自民党税制調査会会長

ところが、今回の危機は簡単に収まりそうもないです。よって改めて真水の追加、つまり「一律給付」だけではなく、「消費減税」に踏み切ることで、国民一丸となって2つの危機に立ち向かう態勢を整えるべきではないでしょうか。自民党若手と野党の一部の奮闘を期待したいです。

一律給付が実現したのですが、消費税減税もしくは撤廃も実現すべきです。復興税もやめるべきです。コロナ禍は長期戦なので、給付金は必要とあれば何度でも実施すべきです。消費税減税も絶対必要です。一度の給付金では低所得層が持ち堪えられません。今後必要があれば、何度か実施すべきです。

財務省の緊縮に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊されることになります。

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コロナ禍で「増税」主張する学者…GDP減らして失業を増やす 東日本大震災でも失敗の“悪手” ―【私の論評】中国ウイルス恐慌で地獄が始まるのに、それでも安倍政権は消費減税だけはしたくないのか(゚д゚)!





2020年4月16日木曜日

米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ―【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!

米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ
日本にも迫る中国海洋戦力による危機

台湾海峡を通過中の米海軍イージス駆逐艦「バリー」(写真:米海軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

前回の本コラム(「米空母『コロナ感染』でチャンス到来の中国海軍」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60070)で取り上げたように、南シナ海で対中牽制作戦を実施していた米海軍空母「セオドア・ルーズベルト」は艦内で新型コロナウイルス感染が発生したため急遽グアム島の米海軍基地に撤収した。

 作戦中断ならびに乗組員上陸措置を巡ってセオドア・ルーズベルト艦長のブレット・クロージャー大佐とトーマス・モドリー海軍長官代理をはじめとする海軍指導部が衝突し、クロージャー大佐は艦長を解任されてしまった。しかし、モドリー海軍長官代理に対する批判が湧き起こり、モドリー氏は辞職に追い込まれた。

 現時点(4月13日)で、およそ5000名のセオドア・ルーズベルト乗組員のうち感染が確認されたのはクロージャー大佐を含めて600名(全乗組員に対するPCR検査は現在も継続中)に上る。70機の航空機を積載した空母セオドア・ルーズベルトは完全に戦列を離脱してしまった。

 新型コロナウイルス感染のために緊急出動が不可能となってしまっている米海軍空母はセオドア・ルーズベルトだけではない。横須賀を母港としている「ロナルド・レーガン」、シアトル郊外のブラマートンで出動調整中であった「カール・ビンソン」と「ニミッツ」の3隻の乗組員にも感染者が発生している。

 このように大平洋艦隊の空母が4隻も新型コロナウイルス感染に見舞われたため、当面の間は東アジア海域に米海軍空母打撃群が緊急出動することは不可能な状況となっている。そのため米海軍などでは、「中国軍が米海軍空母戦力の不在につけ込んで、台湾を武力恫喝したり軍事攻撃するようような事態が起こらなければ良いのだが」と真剣に危惧している。

台湾東岸沖に中国の空母艦隊が接近

 米海軍がそうした危機感を抱くことはけっして杞憂ではない。実際に中国軍は台湾周辺で活動を活発化させている。

 4月10日午前、中国本土からH-6爆撃機、KJ-500早期警戒管制機、それに4機のJ-11戦闘機という計6機の中国空軍機編隊が、バシー海峡上空を台湾南端沖から台湾東岸沖へ抜けて、西太平洋上空での遠距離機動訓練を実施した。台湾空軍機が緊急発進し、監視活動を行ったところ、往路と同じくバシー海峡上空を経て中国大陸へ戻っていった。

中国福建省と台湾の間が台湾海峡。台湾とフィリピン(正確にはマヴディス島)の間がバシー海峡

 中国空軍機が中国へ取って返したのと入れ替わりに、アメリカ空軍EP-3E電子偵察機が台湾南端の南シナ海沖上空で情報収集活動を実施した。また、その日の夕方、アメリカ海軍第7艦隊に所属し、横須賀を母港としている米海軍イージス駆逐艦「バリー」が、中国軍による台湾周辺上空や海域における威嚇的行動を牽制するために、台湾海峡に北側から進入し南下を開始した。すると中国海軍はミサイルフリゲート「南通」を派遣して、バリーの追尾を開始した。

 バリー(および南通)が台湾海峡を南下中の4月10日夜7時頃、長崎南西沖東シナ海を南下する中国海軍の空母艦隊を海上自衛隊駆逐艦「あきづき」とP-1哨戒機が確認した。空母艦隊は空母「遼寧」、052D型ミサイル駆逐艦2隻、054A型ミサイルフリゲート2隻、そして901型高速戦闘支援艦「呼倫湖」の6隻で編成されていた。

中国海軍「遼寧」(写真:統合幕僚監部)

 4月11日、東シナ海を南下してきたその空母艦隊は沖縄本島と宮古島の間のいわゆる宮古海峡を西太平洋に抜けた。南下してきた中国艦隊は南西方向へ転進し、バシー海峡方面へと向かった。

 台湾東岸沖に中国空母艦隊が接近してきたため、台湾海軍では厳戒態勢が発令され、軍艦が出撃準備を開始した。それとともに台湾軍当局は台湾市民に向けて、「わが軍は台湾周辺の空域と海域に対する警戒態勢を固めている。台湾市民は安心してください」とのメッセージを発した。

 台湾東岸沖をゆっくりと南下した中国空母艦隊はバシー海峡を抜けて南シナ海へと抜ける模様である(4月13日時点で公式確認は取れていない)。

東アジア「唯一」の空母で台湾を恫喝

 東シナ海を南下し南西諸島島嶼線を抜けて台湾東岸を回り込んでバシー海峡を南シナ海へと向かった中国海軍空母「遼寧」は、現時点において東アジア海域で作戦行動を実施中の「唯一」の航空母艦である。

 上記のように東アジア海域に展開している米海軍空母セオドア・ルーズベルトとロナルド・レーガンはともに新型コロナウイルス感染のために緊急出動ができず、このほかの米大平洋艦隊空母も台湾・日本周辺海域に急行できる状態ではない。

 佐世保を母港としている米海軍強襲揚陸艦「アメリカ」は、軽空母としての運用は可能であるが、現在までのところ運用可能な艦載機F-35Bは最大で13機といわれている。したがって、練習空母の域を出ていないとみなせる「遼寧」に対してすら“空母”といえる状態ではない。

 もちろん中国海軍が空母艦隊を台湾東海岸沖に展開させて台湾を軍事攻撃するような愚劣な作戦を実施することはほとんどあり得ないが、現時点において東アジアで「唯一」の航空母艦を台湾周辺海域で航行させるということは、明らかに台湾に対する恫喝ということになる。

 実戦における航空母艦の威力に関しては、アメリカ海軍内においても疑義が生じてきている。だが、航空母艦という強力で巨大な軍艦を派遣することの政治的意義は、依然として強いのである。

 実際、中国軍当局者たちは、「中国軍航空機や艦艇による台湾周辺での各種機動訓練は、台湾分離独立分子に対する斬首作戦ならびに台湾独立分子を援助しようとする外国勢力の介入を阻止するための抑止効果を期待してのものである」と繰り返し述べている。

 そして「このような各種訓練を繰り返すことにより、台湾独立分子は自らの企てが無謀であることと、もはや外国勢力による効果的な支援は期待できないことを悟るであろう。そして、そのように独立分子が目を覚ますまで、この種の訓練は繰り返されるし、さらに強化されることになる」と警告している。

危機感を共有しなければならない日本

 確かに中国側が宣伝しているように、少なくとも現時点においては、アメリカ海軍による強力な台湾支援は極めて厳しい状況にある。また、かつてはアメリカ軍や台湾軍が僅かながらも期待していた日本による何らかの支援も、新型コロナウイルスに対する日本政府の危機感のなさや無為無策から判断すると、そもそも期待することが誤っていたと考えざるをえない状況に陥っている。

 とはいっても、台湾に対する軍事的危機は日本にとっても全く同様の危機である。日本にはCOVID-19だけでなく中国海洋戦力による危機も差し迫っていることを、日本政府・国会は直視しなければならない。

【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!

米軍もコロナ感染で深刻なダメージを受けています。しかし、中国の人民解放軍もダメージを受けているはずです。

中国ウイルスは相手を選びません。中国人民解放軍内にも感染が広がっている気配があります。護衛艦や国産空母を備え、世界に海洋覇権を打ち立てようという解放軍も、ウイルス相手では勝手が違うのかもしれないです。

湖北省孝感市の解放軍空軍降兵軍保障部の軍官に新型肺炎感染が確認されたのは1月25日、すぐさま同じ部隊の200人が隔離されたと1月27日に香港蘋果日報が報じています。孝感市は武漢から70キロ離れた小都市です。

湖北省は解放軍唯一の空軍降兵軍(空降兵15軍)が配置され、武漢全体で5000人以上の兵士を有する。感染の恐れのある兵士たちは軍用機倉庫に隔離されたといいますが、そこは暖房設備もなく外と気温がそう変わらず、劣悪な環境であると、香港に拠点のある中国人権民主化運動情報センターが指摘していました。

その後、軍内の感染状況についてはほとんど情報がありませんでしたが、解放軍報が2月17日に、東部戦区の多くの軍官兵士が隔離監察を受けており、その中には新型ミサイル護衛艦「常州」艦長・余松秋も含まれていると報じていました。

小さな記事ではありますが、解放軍内で新型コロナウイルス感染が起きていることを公式に認めた記事です。過去、エイズやSARSの感染が軍内で発生したときも、解放軍内の感染状況は国家安全にかかわる問題として公表してこなかったことを考えると、この新型コロナウイルス感染はかなり大規模なものではないか、という憶測も流れています。

「常州」は、解放軍艦艇として初めて紅海での船舶救援オペレーションを成功させ、映画「オペレーション:レッド・シー」のモデルともなった解放軍・東海艦隊のエース艦です。感染が発生してからは厳格な管理、体温測定と消毒、隔離措置などを行い、今年の訓練、任務においての影響はない、としています。また余松秋艦長は招待所で1月30日から隔離監察を受けており、隔離先で訓練の難題を研究していたとされています。

また、中国人権民主化運動情報センターによれば、国産空母「山東」からも1人の軍人の感染が確認され100人が隔離中といいます。山東は大連港でメンテナンス中であり、3月に海南島の三亜軍港に戻る予定でしたが、帰港は遅れるといいます。

ちなみにCCTV4(国際チャンネル)で放送された最近の山東の様子は乗員全員がマスクをつけ、密閉式の完璧管理で防疫対策を実施しており、「死角なし、感染者ゼロである」と報じています。

このほか、武漢にある海軍工程大学が1月初め封鎖されたという情報が一部で流れています。

中国人民解放軍とて、中国ウイルスには相当を手を焼いているようです。では、中国人民解放軍もコロナ禍で手を焼いている最中に、東アジアで「唯一」の航空母艦を台湾周辺海域で航行させてまで、台湾に対する恫喝するのでしょうか。

その理由は以前もこのブログに述べた、台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことにあると思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
新型コロナが証明した「独立国家」台湾―【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!
flickerより Robin Huang 台湾国旗柄のビキニの女性 写真はブログ管理人挿入
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になりました。
もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。
中国としては、台湾が中国ウイルス封じ込めに失敗していれば、中国がイタリアなどのEU諸国に対して実施している、マスクや医療機器の提供や、医療チームの派遣などで微笑外交を台湾に対しても実行したことでしょう。

これにより、中国は今年1月の台湾総統選での蔡英文氏の再選により、失った台湾での失地回復を行うことができたかもしれません。

そうして、中国ウイルスが終息した後には、甚大な被害を受けた台湾に対して、莫大な経済的援助をすることになったと思います。

そうなると、台湾独立派が台頭した台湾を馬英九政権時代のように、親中派を増やすことができたかもしれません。

考えてみると、中国は昨年11月には、香港区議会議員選挙で親中派が敗北しています。今年1月には、台湾選挙で蔡英文総統が再選されています。いわば連敗続きでした。

中国ウイルスに関しては、韓国は当初は対策に失敗しましたが、最近では収束に向かっています。日本も、感染者が増えつつはありますが、それでも死者は相対的に少なく、中国や米国、EU諸国に比較すれば、中国ウイルス封じ込めには成功しています。

香港の対応も素早いものでこれも封じ込めに成功しています。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。

中国官僚のごまかしをよく知っている香港人が、2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓をしっかりと心に刻み、徹底的な対策をしたことも効果的でした。

中国は、中国ウイルスで、台湾、香港、日本がかなり痛めつけられていれば、得意の微笑外交で、台湾、香港、日本に対して存在感を高めることができたかもしれません。

しかし、台湾は世界的にみても、最高水準で中国ウイルスの封じ込めに独力で成功し、独立国としての意地をみせました。

今の中国が、台湾統一のためにできることといえば、軍事的な脅威をみせつけて、存在感を強調することです。

だからこそ、本当は中国人民解放軍の中にも感染者がいるにもかかわらず、遼寧で台湾を恫喝しているのです。

おそらく、遼寧にも欠員ででいるかもしれません。欠員が出て、未熟な交代要員を乗鑑させて急場をしのいでいるかもしれません。

それにしても、今後中国ウイルスが終息するにつれて、中国による台湾への恫喝はさらに度合いを強めていくかもしれません。

香港も中国ウイルスで中国に頼ることなく、収束をみせています。

そうなると、中国に残されている道は、もう軍事的な示威行動による恫喝でしか、存在感を発揮できなくなります。

米軍が中国ウイルスから早期に立ち直れば、今後も中国は軍事的な恐喝どまりで終わらせるかもしれませんが、そうでなければ、台湾を武力で統一してしまおうと考えるかもしれません。

本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

ウイルスの封じ込めと、台湾統一に成功すれば、これは、習近平が成し遂げた大偉業ということになります。今まで、際立った業績のが一切なかった習近平にとって大きな手柄となり、習近平体制が定着することになります。

この脅威は日本にとっても他人事ではありません。台湾の次は、尖閣、尖閣の次は、沖縄、その次は日本ということになるかもしれません。

こうした脅威があることを前提に、日本は現行の憲法、法律内でこれに対処できることは実行し、さらに将来に備えて、憲法改正も急ぐべきです。特に、緊急事態条項は、中国ウイルスなどへの脅威への対処や、今後予想される中国による軍事的脅威に備えるためにも、必要不可欠であると考えます。

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2020年4月15日水曜日

コロナ禍で「増税」主張する学者…GDP減らして失業を増やす 東日本大震災でも失敗の“悪手” ―【私の論評】中国ウイルス恐慌で地獄が始まるのに、それでも安倍政権は消費減税だけはしたくないのか(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

復興税は未だに徴収され続けている

 2011年の東日本大震災の後、復興増税が行われた。今回のコロナ・ショックの際にも増税を主張している経済学者がいるが、危機の際に増税するというのは世界標準の経済政策なのか。

 経済政策を考える際、標準的なフレームワークは、総供給と総需要がどのように変化するかを考える。総需要は、民間消費、民間投資、政府需要、純輸出で構成される。総供給は、基本的には生産関数であり、人口、総資本、技術などが構成要素である。

 1973年と79年のオイル・ショックでは、生産基盤の一つであるエネルギー価格が外的要因で一気に上昇した。これは生産関数での価格上昇になるので「供給ショック」であり、国内総生産(GDP)の下落と一般物価の上昇という形になる。その場合、総需要を増加させる景気刺激策ではなく、供給に働きかける政策が主体となる。

 2008年のリーマン・ショックでは、不良債権問題に端を発する金融機関の倒産によって需要が一気に飛んだ。日本では金融機関の痛手は少なかったが、海外の需要減により輸出減少となった。これは「需要ショック」で、同時に一般価格の低下、失業の増加があった。

 こうしたショックに対しては、総需要を増加させるような財政政策と金融政策の一体発動が世界各国で行われた。ただし、日本では、十分な財政出動・減税が行われず、金融緩和も不十分だった。日本だけが金融緩和されなかったので、一方的な円高が進み、輸出が減少、内需増加の効果を外需減少で相殺してしまった。

11年の東日本大震災では、東日本の一部の生産設備に打撃があった。電力などの供給がネックになり、供給力は落ちると一部の経済学者は考え、供給ショックであるとした。供給ショックだと考えると、復興政策は、総需要を増加させる政策では適切ではないという結論になる。

 しかし実際には、東日本大震災は、供給政策にはほとんど影響を与えず、生産収縮を見越した需要減少が一気に生じた。要するに、供給減とともにそれを上回る需要減があったのだ。

 ここで必要だったのは、積極財政と金融緩和だったのだが、それと真逆な復興増税が行われた。

 さて、今回のコロナ・ショックも、世界的なサプライチェーンの分断という供給ショックの様相もあるが、やはり人の行動制限に伴う経済活動の縮小を通じて需要が一気に消滅したことの影響が大きい。要するに、供給ショックとともにそれを上回る需要ショックがあったと考えるべきだ。

 特に、日本ではコロナ・ショックの他に、消費増税ショックと東京五輪1年延期ショックがある。これらは需要ショックである。この点で増税を選択する余地はない。

 仮に供給ショックであったとしても、ほとんどの場合、増税は悪手であり、一般物価を上げない代わりにGDPを大きく減少させ、失業をさらに増加させる。そもそも経済ショックの際に増税することはありえないのだ。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国ウイルス恐慌で地獄が始まるのに、それでも安倍政権は消費減税だけはしたくないのか(゚д゚)!

東日本大震災で、復興税を推進した財務省とそのとりまきの経済学者らなど、中国ウイルス禍が収まった後に、またコロナ復興税などの名称で新たな増税を目論むかもしれません。これは、完璧に間違いです。今回は、何としてでも阻止すべきでしょう。

新型中国ウイルス問題が深刻化・長期化しつつある中、その経済的影響が強く懸念されています。世界中で都市封鎖が実施されており、各国の生産活動が一時的に停止することにより、株価は数年前に逆戻りして雇用は信じられない規模で失われました。

具体的には、世界経済の中心地である米国が3月26日公表した雇用統計において失業者数は跳ね上がり、ムニューチン財務長官が1929年の大恐慌以来初めて20%を超えるかもしれない、と警告する事態となっています。つまり、これは世界的に未曽有の経済危機がやってきたということを意味します。

ただし、米国は当面は深刻な事態であるものの、中長期的な視点に立つと底堅く回復していく見通しがあります。ホワイトハウス・上下両院は約220兆円に及ぶ緊急経済対策を既に可決しており、両者は更なる経済対策も視野に協議を行う構えを見せています。


また、トランプ政権が実現してきた減税と規制廃止は、米国の産業競争力を向上させて経済の底力を高めてきています。そのため、経済状況が一度上昇軌道に戻り始めればFRBの金融政策との相乗効果を発揮して、米国経済は劇的に復活する可能性があります。米国の現在の景気悪化は深い谷の中でも将来的な希望の光を見出すことできるものだと言えます。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月に「ゼロ金利」への回帰などを決めた際の議事要旨が8日、公表された。一気に大規模な金融緩和を進めることへの異論も出たが、「米経済の見通しが急激に悪化し、著しく不確かになった」との認識のもと、空前の緩和策を決めていました。

しかし、将来的な見通しについて全く光明が見えない国が存在しています。それは我が国日本です。日本の直近の景気状況は2019年10~12月期GDP改定値は年率7.1%減となっています。

政府はGDP減少の理由について様々な屁理屈を述べていましたが、誰がどうみても10月1日から始まった消費増税が影響していることは明らかです。アベノミクスの第二の矢であった機動的な財政政策は逆方向に砕け散った上に、第三の矢である規制改革に至ってはまともに飛んだ形跡すら見当たりません。

第一の矢である金融緩和も、当初は異次元の量的緩和を実行し、かなりの成果をあげ、特に雇用は劇的に改善しました。しかし、日銀は緩和はしてはいるものの、イールドカーブ・コントロールを実施しはじめてから、緩和には抑制的です。いまのままでは、アベノミクスの唯一の成功事例である、雇用にも陰りが見えてくるのは必定です。

したがって、米国経済と違って日本経済はその足腰が弱った状態で新型コロナウイルスに伴う経済危機に直面していることになります。日本政府は自ら転んで骨折したところで、更に交通事故にあったくらい悲惨な状況です。

4月7日に示された危機意識の欠落した補正予算だけでなく、その陰で3月17日に政府から衆参議員運営委員会理事会で示された日本銀行政策委員会の審議委員人事案も注目すべきです。

退任する布野幸利氏に代わって消費税増税容認派と目される中村豊明氏が政府から人事案として示されたのです。同氏は日立製作所取締役を務めた人物であり、産業枠として経済界の代表として送り込まれる人物です。

中村豊明氏

日本銀行政策委員会の審議委員は金融政策決定会合の結果を左右し、一度任命された後は5年間の任期中にそのポストを追われることはありません。当然ながら、日本経済に与える影響は極めて重要なポストです。

米国ではFRB理事の承認プロセスでは連邦議会によって徹底的な振るいにかけられます。過去の金融政策に関する発言はもちろん、その素行についても細かく審査されます。

直近でもトランプ大統領が指名した人事案は人選の問題が指摘されて首尾良く運んでいません。現在の承認プロセスにある人物も過去の金融政策に関する発言と現在の金融政策に関する方針に関しての整合性について連邦議員から問題視されています。

日本のように産業枠などの割り当てではなく、理事候補者の見識・人物が公開の場で問われるのです。その影響力の大きさから行われるべき当たり前のプロセスが踏襲されているのです。

中村豊明氏は12年社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会において、日本経済団体連合会税制委員会企画部会長として出席しています。その際、消費税率の引き上げが伴う三党合意について、消費税増税派である経団連の税制改革の責任者として増税賛成の見解を述べた人物です。

20年3月24日参議院財政金融委員会において、浜田聡参議院議員が上記の公聴会での発言について問題視すると、政府は「経団連の立場を述べただけで中村氏の意見では必ずしもない」という趣旨の回答をしましたが、これほどふざけた回答はないでしょう。

同氏は経団連の税制委員会の責任ある立場にあったことは明らかだからです。百歩譲って立場に応じて財政金融政策の見識が左右される人物を国会に推薦すること自体があり得ないことでしょう。

日銀政策委員会の審議委員は政府の税財政政策に関して直接権限を持つわけではないですが、日銀の決定が日本政府の税財政政策に影響を与えることは自明です。

つまり、新型コロナウイルスに伴う経済危機が顕在化していた3月17日、日本政府はこの期に及んで増税派と見られても仕方がない人物を経済政策の重責を担うポストに推薦したのです。

昨年の消費増税はコロナウイルス問題と同様に日本経済に深刻なダメージを与えており、この政府人事案は示す行為は危機感がないというよりも社会常識が欠落した所業だと言えます。

また、政府与党の経済危機への対策案としての補正予算も極めてインパクトに欠けるものでした。政府は補正予算を取りまとめる過程において、その内容について何度も観測気球の報道記事を垂れ流してきました。

その際、未曽有の経済危機に際して、自民党農林部会や水産部会からは和牛商品券などの業界利権丸出しの主張が行われる姿は国民の眼からは極めて奇異なものに映りました。無論これは、立ち消えになりましたが、自民党の議員の中にも緊張感に欠けた愚かな連中がいるのか、白日のもとに晒された形となりました。

なぜ和牛券?

新型中国ウイルス問題が表面化した1月段階で準備を始めるべき経済対策について4月に入ってもまだ議論していることにも驚かされますが、日銀人事に示された程度の税財政策に対する問題意識なのですから、政府与党と国民の意識との乖離は著しいものだと想定するべきでしょう

自民党若手有志による消費減税を柱とする政策要望の記者会見も開催されましたが、執行部は与党案として消費増税減税並みの給付を行うことで応じただけでした。むしろ、政府与党として断固たる消費減税の拒否の姿勢を見せつけた状況となっています。

実際、これらの若手議員は消費税減税へのゼロ回答はもとより、今回の問題だらけの補正予算に賛成票を入れるだけの事実上マシーンでしかありません。実際、消費減税法案の作成を参議院法制局に依頼するという具体的な行動を起こしたのは、100人超存在するとされる自民党若手有志ではなく、僅か2名の会派でしかない前述のN国の浜田聡参議院議員だったことは何とも皮肉です。

仮に今回減税に失敗した場合、今後、消費減税は未曽有の経済危機の時ですら選択できなかった政治的な禁忌として扱われていくことになるはずです。緊急時ですら手も足もでなかったことは平時では尚更難しいものとして記憶されてしまうことになります。

むしろ、それが狙いで一連の与党内でのプロセスが行われているのではないかと穿った見方をしたくもなるくらいです。

せめて与党・野党を問わず減税を主張している国会議員は、政府が示した日銀人事に反対票を入れることくらいの筋を通すべきでした。この人事は目先の経済対策だけでなく、今後5年間の金融政策の方向性を左右するものです。



党議拘束を理由に減税派の国会議員らは過去に増税を支持した人物に対して賛成票を入れるなら、表面上は減税派だけれども本音は増税派とみなされても仕方ないてしょう。

世論調査では国民が経済対策として求める政策は消費税減税が圧倒的です。今、試されていることは、国会議員が消費減税を求める国民の真の代表であるか否かということです。誰のため・何のための政治なのか、明確になる瞬間だと言えるでしょう。

もし、与党・野党を問わず減税を主張している国会議員が、政府が示した日銀人事に反対票を入れることくらいの筋を通していれば、事態は変わる可能性もありました。

いずれ中国ウイルスは終息でしょう。終息したまさにその時、財務省とその取り巻きは、またコロナ復興税などを画策しはじることでしょう。その時、安倍総理は、コロナ復興税の見送りと復興税の廃止、消費減税、追加経済対策ならびに、憲法改正を公約として、衆院解散・総選挙に打ってでるべきです。

おそらく、現時点ではこれだけが、安倍総理の唯一の起死回生策と思われます。そうでないと、安倍総理は念願の憲法改正もかなわず、歴史には、消費税を二度あげ、コロナ復興税で日本経済を悪化させた総理大臣として歴史に名を刻まれることになるでしょう。

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2020年4月14日火曜日

新型コロナが証明した「独立国家」台湾―【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!



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 今回の新型コロナウイルス禍をめぐる世界の反応を見れば、台湾が中国の一部でないことを世界の人々に認識せしめた意味は極めて大きい。

 台湾においては、2003年のSARS禍の際、84人の死者を出したことが教訓として残されていることもあり、今回の新型コロナウィルス禍の対策においては、初期対応、検査、隔離、治療などの諸措置が透明性を以て極めて効率的に行われた。これによって、諸外国に比べ、感染者数、死者数とも、今のところ、抑えられた状況にある。台湾は、中国、欧州、米国などに比べて、この災禍を見事なまでに制御していると言える。

 これまでのこの台湾の制御策は世界的にも評価されており、この状況から見れば、台湾と中国の違いは一目瞭然である。

 最近、中国外交部の報道官は、自らのツイッターに、この新型コロナウィルス禍の発生源として、米国軍人がウイルスを武漢に持ち込んだ可能性がある、と投稿した。これに対し、米国は、新型コロナウィルス禍の発生源が中国であることは疑いのない事実であり、初期段階における中国の隠ぺい工作の結果、世界各国が犠牲を払わざるをえなくなった、としてこの投稿内容を非難した。トランプ大統領は、これを新型コロナウイルスではなく、「CHINESE VIRUS」(中国ウィルス)と呼んだ。ポンペオ国務長官は「武漢ウイルス」と呼んだ。

 ごく最近、米国下院においても、この中国報道官のツイッター内容を「偽情報」であると非難して、超党派の決議案がまとめられた。

 中国共産党の習近平政権としては、自分たちの過ちを米国に転嫁する必要から、このようなやり方をとったのであろうが、これは米国の識者を憤慨させるものとなっている。中国としては、新型コロナウィルスを拡散したことの責任を曖昧にし、中国自身が被害者であるかのような印象を与えようと躍起になっているように見える。

 台湾の住民たちにとっては、中国における新型コロナウィルス禍の感染拡大、その後の様々な処置を見ていて、中国の一党独裁体制がいかに新型コロナウィルス対策において限界を有するかを改めて認識させられたに違いない。

 日本はこれまで台湾をWHO(世界保健機関)のメンバーに入れるよう支持してきた。しかし、今回のWHOの動きを見れば、中国の実質的な影響下にあるためであろうが、台湾の存在を無視するような態度を取り続けている。そのため、台湾が新型コロナウィルス禍を如何に抑え込んでいるかについての知識、経験が世界に直ちに共有される状況になっていないのは残念なことと言わねばならない。

 では、台湾がいかに、この新型コロナウィルスの危機に対応してきたかを、改めて、ここで共有しておきたい。日本にとっても参考になるはずである。

 台湾は、早い段階で、国境を閉め、中国との行き来を制限した。学校を2週間閉め、その間に消毒を徹底した。学校の再開時には、徹底した検温検査等を行なった。学校の入り口に、テントの待機所を設け、微熱等で感染可能性のある人はそこで控えるようにしてもらった。台湾の保険証のチップには、渡航歴が分かるようになっていて、診察した段階で、中国や日本に行っていた人かが一目でわかる仕組みが出来ていた。病院はもちろん、レストラン、ホテル等の入り口でも、入館者にはアルコール消毒液を噴射して対処した。そうしない人は、中に入れない。マスクは、早い段階で輸出を禁止し、国内で購入する人は、数を制限し、保険証等のチップで管理する。こうする事で、価格の急騰や品不足、買いだめを防止できた。

 これらの国内的対処のみではない。台湾は、小さい国ながら、世界第3の経済大国である日本に、救いの手を差し伸べてくれた。新型コロナウィルスによって国境が封鎖された南米ペルーで足止めされた日本人観光客29人を、台湾政府のチャーター便に乗せてくれた。104人の日本人観光客は旅行会社が手配したチャーター機で出国した。台湾政府は、自ら、遠いペルーまでチャーター機を手配して自国民の出国を助けたが、その恩恵に、日本も預からせてもらった格好だ。

 3月下旬、トランプ大統領は、超党派の支持で成立した「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ法(TAIPEI法)」に署名した。この法律は、台湾の外交関係強化についての施策を、国務省が議会に報告することを義務付けるとともに、台湾の安全保障に脅威となる国との係わりを再検討することを政府に義務付けている。

 日本も、米国の同盟国として、そして台湾への感謝も含め、今後、台湾との関係をより一層強化すべきであろう。将来的には、日米両国がリードして、国際社会の世論を喚起し、台湾の国際的地位の向上を推進できれば良い。今回の新型コロナウィルスの危機は、台湾が実体として独立した国家であることを証明したのだから。

岡崎研究所

【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!

本年1月11日の台湾総統選で史上最多得票で再選された台湾の蔡英文総統は英BBC放送のインタビューに応じ、台湾の地位について「独立国家だと宣言する必要性はない。既に独立国家であり、われわれは自らを中華民国、台湾と呼んでいる」と述べました。インタビューは英国時間の14日に公表されました。

台湾蔡英文総統

これに対し、中国外務省の耿爽副報道局長は15日の記者会見で、「中華人民共和国が中国を代表する唯一の合法政府であり、台湾は中国の分割できない一部分だ。『一つの中国』原則は国際社会の普遍的な共通認識だ」と不快感を表明しました。

蔡氏はBBCのインタビューで「台湾独立」に対する見方を問われ、与党・民進党の立場を改めて強調。中台統一のためなら武力行使も辞さない方針を示す中国に対し、「われわれは多大な努力をし、能力を高めてきた。台湾を侵略すれば、非常に大きな代償を払うことになるだろう」とけん制しました。

そうして、現在台湾は、中国の助けを一切借りることなく、独力で中国ウイルス対策を実施し、名実ともに独立国であることを世界に向かって、示すことができました。中国は現在国内の中国ウイルスは終息傾向にあるとして、イタリアなどに医療チームを送る等のいわゆる微笑外交をしていますが、台湾には全くその必要がありません。

新型中国ウイルスへのWHO=世界保健機関の初期対応をめぐり、台湾当局は、去年12月にWHOに送った文書を公表し、中国でヒトからヒトへの感染が疑われる事案が起きていると警告していたと強調しました。

WHOの対応を批判する米国に歩調をあわせた形です。

米国国務省は10日、WHOについて「台湾から早期に受けた通知を国際社会に示さなかった。公衆衛生より政治を優先した」などと批判しましたが、AFP通信の取材に対しWHOは「台湾からの通知にヒトからヒトへの感染について言及はなかった」と否定しました。

これについて台湾当局は11日、WHOに対して去年12月末に送った通知の全文を公表しました。

文書には「中国の武漢で非定型の肺炎が少なくとも7例出ていると報道されている。現地当局はSARSとはみられないとしているが、患者は隔離治療を受けている」などと書かれています。

台湾の陳時中衛生福利部長は会見で「隔離治療がどのような状況で必要となるかは公共衛生の専門家や医師であれば誰でもわかる。これを警告と呼ばず、何を警告と呼ぶのか」と述べ、文書はヒトからヒトへの感染が疑われる事案が起きていると警告していたと強調しました。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が台湾から人種差別攻撃があったと主張している問題で、台湾人がインターネット投稿で謝罪しているように中国側が見せかけていると台湾当局が指摘している。

台湾法務部(法務省)調査局は10日の記者会見で、中国のネットユーザーが台湾人を装い、テドロス氏に対する人種差別攻撃について謝っているように見せていると説明。同局情報セキュリティー部門の張尤仁主任によれば、こうした投稿は全て同じ言葉遣いのためフェイク(偽)だと容易に分かるとしています。

投稿は全て「台湾人として、このような悪意のあるやり方でテドロス氏を攻撃したことを極めて恥ずかしく思う。台湾人を代表してテドロス氏に謝り、許しを乞う」というものですが、いずれも中国に拠点を置くアカウントから発せられたようだとしています。

テドロス氏は8日、新型中国ウイルス感染症(COVID19)の対応を巡りオンライン上で3カ月にわたり台湾からの攻撃の標的になっていると述べましたが、台湾の関与を示す証拠は何も示しませんでした。これに対し、台湾の蔡英文総統はテドロス氏の主張に「強い抗議」を表明するとともに、同氏に台湾訪問を呼び掛けました。

台湾はWHOなど国連機関への加盟を長く求めていますが、台湾を領土の一部と見なしている中国が反対し続けています。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、台湾は新型中国ウイルスの感染拡大を他のアジア諸国・地域よりうまく封じ込めており、10日時点で確認症例数は約380件です。ちなみに、これを10万人あたりの感染者数でみると,1.59人です。驚異的な少なさです。

中国国務院台湾事務弁公室はウェブサイトに同日掲載した声明で、蔡政権は「うそを並べ憎悪をあおる」ことをやめ、ウイルスとの闘いに焦点を絞るべきだとコメントしました。

これでは、先程も述べたように、中国が台湾に対してマスクや、防護服の提供、医療チームの派遣などで台湾に微笑外交を展開しようとしても全く無理です。逆に「自分の頭の上の蝿を追え」といわれてしまいそうです。

ちなみに、日本も台湾よりは、感染者数の数は多いですが、それでも10万人あたりに換算(感染者数➗人口✖10万)すると、5.6人(4/11現在)です。台湾は、1.59人です。これは、米中や他の先進国と比較すれば、極端に少ないです。中国は人口も約14億人と多いので、10万人あたりでは、一応6人程度ですが、中国統計は全くあてにならないので、この数字は無意味です。

韓国もひところは、感染者数が拡大してしまいましたが、それでも最近は収束しつつあり、11日時点では、10万人あたりの感染者数は19.4人です。これも、他の先進国から比較するとかなり少ないほうです。

ちなみに、なぜ10万人あたりでみるかといえば、無論人口の多い少ないで、その深刻度は異なってくるからです。10万人あたりでみると、感染者が一番多い都道府県は東京ではなく、福井県です(下表参照)。


北朝鮮はどうなのかは、わかりませんが、いずれにしても、台湾、韓国、日本に関しては、中国は「消防士のふりをする放火犯」のように、中国ウィルス関連で、微笑外交を展開するわけにもいきません。

中国自身は、自国の被害の程度を熟知しているでしょうから、近隣の国々では微笑外交もままならないのです。だかこそ、被害がかなり大きかったEU等で微笑外交を展開しているのでしょう。

もし、台湾や日本がヨーロッパや、米国なみに被害が大きかったとすれば、今頃微笑外交で、台湾、日本、韓国などで、存在感を増していたかもしれません。その後には、様々な方法を駆使して、台湾、日本、韓国を取り込みに走ったかもしれません。恐ろしいことです。

今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になりました。

もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。

しかし、台湾は、日米の支援などではなく、独力で封じ込めに成功しました。これは、その後の世界に大きな影響をもたらすことでしょう。

冒頭の記事では、「新型中国ウィルスによって国境が封鎖された南米ペルーで足止めされた日本人観光客29人を、台湾政府のチャーター便に乗せてくれた」とありますが、これは3月29日のことです。

日本もすかさず、台湾におかえしをしています。

新型ウイルスの感染拡大防止のため都市封鎖を実施しているインドから、台湾人12人が現地時間4月1日夜、日本航空(JAL)の臨時便で出国し、2日早朝に東京に到着したことを台湾の外交部が2日、明らかにしました。

  都市封鎖を実施しているインドから、台湾人12人が現地時間4月1日夜、
  日本航空(JAL)の臨時便で出国し、2日早朝に東京に到着

会見を行った欧江安報道によると、現地に滞在する台湾人から、駐インド代表処(大使館に相当)に対し帰国支援を求める問い合わせがあり、代表処が在インド日本国大使館、日本航空などと調整を行い、日本政府が手配する臨時便に同乗できるようになったとのことで、「外交部として心から感謝する」と日本や関係者に謝意を表明しています。なお、東京に到着した12人は、すでに台湾に帰国されています。

日台が、それぞれ独力で、現時点では中国ウイルスの囲い込みに成功していること、日台のこうした友情が、これからの世界を良い方向に変える原動力になるかもしれません。

後は、米国が一日もはやく中国ウイルスから立ち直り、台湾を強力にサポートし、EUに手を伸ばそうとする中国を牽制していただきたいものです。

そうして、このブログにも何度か掲載したように、米国と比較して、日本の経済対策があまりにお粗末です。今のままでは、リーマン・ショック時に、震源地の米国や、その悪影響を直に被った英国が素早く回復したにもかかわらず、日本だけが一人負けになった状況を繰り返すことになりかねません。

この状況では、中国ウイルス後の世界秩序の大きな変更の先頭に米台と同じスタート地点に立つことができないかもしれません。それは、日本だけの損失ではなく、中国を有利してしまうという大きな損失を招く恐れがあります。

そのようなことにならないように、安倍総理は、減税、追加経済対策、憲法改正などを公約にして、はやく解散総選挙を実施して、大勝利をして、維新の党とともに、中国ウイルス収束後におこる、世界秩序の大変更にリーダーシップを発揮できる体制を築くべきです。そうして、台湾なみに、はやく日本も中国ウイルスを収束させるべきです。

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2020年4月13日月曜日

産経・FNN合同世論調査 立民の支持率急落 維新が野党トップ―【私の論評】目黒区長選挙は、安倍総理の起死回生につながるか? 


吉村洋文大阪府知事

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が11、12両日に実施した合同世論調査では、野党第一党の立憲民主党の支持率が3・7%と急落し、新型コロナウイルス対応をめぐって安倍晋三政権への批判を取り込めていない現状が浮き彫りになった。一方、日本維新の会が5・2%と急伸し、野党トップの座に躍り出た。

立民の支持率は3月の7・7%、2月の8・6%、1月の5・9%から大きく落ち込んだ。

立民は国会審議で「桜を見る会」などの追及に力を入れ、“初動対応”で批判を浴びた。緊急事態宣言を定めた改正新型インフルエンザ等対策特別措置法には賛成したが、他の野党が消費税減税を訴える中、枝野幸男代表は慎重な姿勢を崩さず、政権との明確な対立軸を打ち出せていない。

これに対し、維新は3月と2月の支持率はいずれも3・8%、1月は2・9%で、今回上昇が目立った。

お膝元の大阪府で感染が広がったが、維新副代表を務める吉村洋文知事は独自のクラスター(感染者集団)対策や患者の急増に備えた医療態勢の構築などに取り組む。元代表の橋下徹氏もメディアなどで発信を強めており、政府の対応に不満や疑問を持つ層の支持を集めた可能性がある。

【私の論評】目黒区長選挙は、安倍総理の起死回生につながるか?

以下に、政党支持率の4月と3月の結果をグラフにまとめたものを掲載します。与党自民党と、維新が伸びていますが、立憲は半分くらいに下がっています。自民が伸びるのは、コロナ禍拡大の折、急激な変化は望ましくないという有権者の意思が反映されているのだと思います。


新型コロナ危機であっても、倒閣運動の一環にすぎない「もりかけ桜問題」で与党を国会で追求するカルト政党よりも、明らかに具体的な政策提言とアクションをし続ける維新が伸びるのは、支持者でなくても理解できます。

ついに国民は野党を選別するようになったのかもしれません。 維新は努力しています。野党の中では一番まともです。 そうして立憲民主党は誰の目からみても異常です。

東京・目黒区では任期満了に伴う区長選挙が12日告示され、現職と新人のあわせて3人が立候補しました。



目黒区長選挙に立候補したのは、届け出順に、無所属の新人で、立憲民主党、共産党、社民党、地域政党の生活者ネットワークが推薦する元目黒区議会議員の山本紘子氏(43)、日本維新の会の新人で、医師の田淵正文氏(61)、5期目を目指す無所属の現職で、自民党と公明党が推薦する青木英二氏(65)の3人です。


目黒区は人口およそ28万。選挙戦では、4期16年にわたる現職の区政運営への評価のほか、子育て支援や災害対策の充実などが争点となる見通しです。また、今回は、緊急事態宣言が出される中での選挙となり、選挙管理委員会は感染防止策をとることにしています。

投票所での消毒などを徹底するとともに、有権者には自分の鉛筆を持参して使えることや投票の分散化などを呼びかけるということです。投票は今月19日に行われ、即日開票されます。

目黒区長選挙はいずれ行われる、国政選挙(特に衆議院選挙)試金石となります。目黒区民の良識に日本の未来がかかってます!

この選挙、コロナ感染下であることもあり、将来の国政選挙の趨勢を占うのには良い機会となるかもしれません。

この選挙の結果で、安倍総理は衆院解散の決意を固めるかもしれません。このブログにも掲載してきたように、安倍政権は消費税減税を実施しないなど、首をかしげるような経済政策を実行中です。

これは、このブログで解説したように、やはり緊縮病に冒された財務省の官僚が、与党議員にもその強力な感染力で緊縮病を感染させているからです。緊縮病に冒された、議員はコロナ禍の最中にあっても、緊縮をすることが、日本を救うと本気で思っているようです。

これだけ、自民党が緊縮病に冒されていれば、安倍総理もいかんともし難いところがあります。無論、安倍政権が悪い、安倍総理が悪いという側面は否定できませんが、財務省が、緊縮を省是として貫いてきたことも事実です。

財務省の緊縮病を、マスコミも、政府も、どの政党も、識者などのいずれの勢力も防ぐことができなかったのも事実です。その結果、つけあがった財務官僚は、平成年間の全期間を緊縮財政を実施し、令和年間もそれを押し通そうとしています。

このままだと、景気は最悪になり、復旧するにもかなりの時間がかかりそうです。いまのままだと、安倍総理は念願の憲法改正もかなわず、二度の消費税増税で景気を悪化させた総理大臣として歴史に刻まれることになります。

安倍総理の起死回生策は、消費税減税、追加経済対策、憲法改正を公約として、解散総選挙を実施して大勝利する以外にはなさそうです。

憲法改正にはできれば、緊急事態条項を盛り込むべきです。もし、この選挙で維新が躍進すれば、憲法改正ができる見込みが高まることでしょう。

そうして、自民の反緊縮派議員と、維新の反緊縮は議員が強力して、消費税減税と、追加経済対策を強力に推進すべきです。

その意味で、目黒区長選挙の趨勢は、日本の将来を占う上でも重要な選挙と位置づけることができると思います。

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2020年4月12日日曜日

「マスク戦争」の戦犯は誰なのか 中国、日本から“奪った”マスクを政治利用!? 有事に備え「中国依存」の脱却が急務だ―【私の論評】安倍政権は、中国から生産拠点を国内や第三国に移転する企業への支援を表明(゚д゚)!

「マスク戦争」の戦犯は誰なのか 中国、日本から“奪った”マスクを政治利用!? 有事に備え「中国依存」の脱却が急務だ

マスク姿の習近平

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)はさらに加速しており、米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、死者が10日、世界全体で10万人を超えた。2日に5万人を上回って約1週間で倍増したかたちだ。日本でも同日、新たに過去最多となる634人の感染者が確認された。累計は6159人。無症状でも他人に感染させるリスクが指摘されるなか、日本だけでなく世界各国で「マスク不足」が深刻化しており、強奪・盗難事件まで発生している。前代未聞の「マスク戦争」を引き起こした戦犯は一体誰なのか。国際投資アナリストの大原浩氏が緊急寄稿で解き明かす。


日本政府が、「1世帯あたり2枚」の布マスクを郵送すると発表したことに対して、「アベガ-」などを中心に激しい反発が起こった。「アベノマスク」などという言葉も登場したようだ。

 これについては、中身のないウソを国民に広げるためにプロパガンダが洗練されているファシズム国家や共産主義国家と違って、日本人の伝統的考えである「良い仕事をすればみんな分かってくれる」という政府・官僚の広報対策の不備が責められるのは、ある意味仕方がない。しかし、この「布マスク2枚」は国家の全体戦略のあくまで一部だということを考えるべきであろう。

 現在有事にある日本国民は、ジョン・F・ケネディ大統領の「国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。あなたが国のために何ができるかを問うてほしい」という名言を思い出すべきだ。

 特に悲しいのは、日本人同士がいがみ合うことである。

マスク不足の原因として、転売屋やドラッグストアに行列する高齢者などがやり玉にあげられる。それが事実である部分もあるが、根本的原因は「中国」または「中国依存」にある。


 新型コロナウイルスの感染が拡大する前、日本のマスクの年間生産・輸入量は約55億枚だったが、そのうち約44億枚が輸入品(=ほとんど中国製)で、国内の生産量は約11億枚しかなかった。つまり国産比率が20%程度なので、(輸入が止まって)国産だけで過去の需要を満たそうと思えば、これまでの5倍を生産しなければならない。政府の要請で国内各社が増産しても、5倍というのは厳しいハードルだ。

 しかも、現在はほとんどの国民がマスクを使用しているので、全国民の8割程度の1億人が毎日マスクを使用すれば、年間では365億枚と過去の需要の約7倍にも膨らみ、到底調達できない。

 だから、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化するなか、日本政府が(病院などに医療用マスクを回すために)再使用が可能な布マスクを国民に送付して、有効利用を要請するのは理にかなっているのだ。

 気になるのは、過去44億枚あった輸入品の行方である。AFP通信(7日)などは「中国は医療用物資の輸出を制限しているのか」などと報じている。

 検証可能な数字はないのだが、現在の中国からの輸入は週に1000万枚程度ともいわれるから、単純計算で年間5億枚程度で、過去の輸入量から比べれば雀(すずめ)の涙だ。

 しかも、そのようにして事実上日本企業=日本国民から奪ったマスクを、中国側がマスク不足に苦しんでいる各国にもったいぶって売りつけるという政治利用を行っているとすれば許しがたいことである。

 例えば、フランスには、マスク10億枚の供給と引き換えに、第5世代(5G)移動通信システムについて、中国の華為技術(ファーウェイ)の導入を求めたと伝えられた(=中国側は否定)。

 日本国民が怒りをぶつけるべき相手は、初期に日本からのマスクの寄贈を受けたにも関わらず(=そもそも、寄贈には問題があったが)、恩をあだで返す(人の足元を見る)中国共産党だとしか思えない。

 輸入依存で危険なのはマスクだけではない。

 在宅医療現場で使用されている人工呼吸器の約98%が輸入製品である。その他の医療製品も輸入比率がかなり高い。世界中で医療製品の取り合いが起こっており、この状況は非常に危険だ。

 食糧調達にも暗雲が立ち込めている。日本農業新聞によれば、4月3日時点でロシア、カンボジア、カザフスタンなど11の食糧輸出国が、自国への供給を優先する輸出規制を行っている。

 世界の穀物供給センターである米国でも状況は厳しい。新型コロナウイルス感染症の広がりによる国境封鎖・都市封鎖などによって外国人を始めとする労働者の確保が難しくなっているほか、配送トラック・配送センターの業務にも大きな支障が出ている。

 新型コロナウイルス感染は早く終息してほしい。もしそれが実現されなければ、われわれはまさに「戦時」の中で暮らさなければならないのだ。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】安倍政権は、中国から生産拠点を国内や第三国に移転する企業への支援を表明(゚д゚)!

中国への過度の依存について、政府も手を拱いているわけではありません。これに対応スべく安倍総理は行動を開始しています。

日本政府は、新型コロナウイルスの感染拡大で製造業のサプライチェーンの分断を受け、中国などから生産拠点を国内や第三国に移転するための支援を表明しました。米上院議員らはこの報道を受けて、米国もこの動きに追従すべきだと発言しました。脱中国依存の流れの始まりとしています。

この移転支援策は、4月7日に発表された緊急経済対策の一つとして盛り込まれました。総額は2435億円で、国内回帰分が2200億円、残り235億円が第三国への移転分として用意されます。

安倍首相は3月5日、官邸で開かれた未来投資会議でこの支援策について、次のように述べています。「中国などから日本への製品供給の減少による我が国のサプライチェーンへの影響が懸念される中で、一国への依存度が高い製品で付加価値の高いものは、我が国への生産拠点の回帰を図る。そうでないものも、一国に依存せず、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国などへの生産拠点の多元化を図る」


マスクがなくなったということで、マスクに関しては中国に依存していることが、多くの人に知られるようにはなりました。しかし、日本がどの程度中国に依存しているのかも明らかにしておく必要があります。

中国の主要な輸出先(2017年)は、1位米国、2位香港、3位日本、4位韓国の順。トップ4の顔触れは、20年前の1997年と全く同じです。ただ、日本は低下しており、輸出先としてのシェア(同)は6%と10年間で3分の1に低下しました。

急浮上したのが5位ベトナムです。同国への輸出額は過去20年間で約70倍、同10年間で6倍に急増、中国の対世界輸出額が各々13倍、2倍だったのに比べ大きな伸びを記録しました。この結果、ベトナムは中国の輸出先として10年前(2007年)の22位から急上昇しました。

世界貿易に占める中国の中国のシェア
上のグラフからすると、中国の対日輸出・輸入のしエアは年々減っていたことがわかります。この流れを加速することは、十分できそうです。米国もドイツも低下傾向です。

さらに、GDPに占める貿易の割合は、日本は29.3%、米国は20.56%です。韓国は、70.31%です。日本や、米国は元々貿易依存度が低いので、中国依存をやめることは比較的簡単です。とはいいながら、コロナ禍においては、マスクなどが品薄になるわけですから、早急にすすめるべきでしょう。

米国においては、ジョシュ・ホーリー(Josh Hawley)米上院議員は4月9日、日本政府が中国市場から撤退する企業を支援するとの報道をリツイートして、「米国も同じことをすべきだ」(1万8千いいね)と主張しました。トム・コットン(Tom Cotton)上院議員もまた、同記事を共有して「今後、世界でもっと中国に反旗を翻す動きが出てくるだろう」(3万5千いいね)とコメントしました。

中共ウイルス(武漢肺炎)の大流行は経済に大きな打撃を与え、多国籍企業は全体主義体制下にある中国市場からの撤退の動きが強まっています。調査会社によると、米国人の7割以上が米国のビジネスの中国市場撤退を予想しています。米国の上院議員は、米国も日本を見習って、米国のビジネスマンの復帰を支援するための資金を配分すべきだと考えています。

グローバル製造業コンサルティング会社・カーニー(Kearney)が4月7日に発表した第7回目の年次「回帰指数」(Reshoring Index)によると、2019年の米国国内製造業のシェアは、中国を含むアジア14カ国の生産品のシェアを大幅に上回りました。中国からの輸入が減り、自国生産品の流通が増加したことを示しています。

回帰指数は、アジア14カ国からの輸入品と、米国製品の変化を調査しています。 中国、台湾、香港、マレーシア、インド、ベトナム、タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、カンボジアの14カ国を含めます。

報告書を作成したパトリック・バン・デン・ボッシェ氏は、回帰指数の高まりについて次のように分析しました。米国の生産者は30年前、国内のコスト高を理由に生産と製造、調達を中国に移したましたが、米中貿易戦によって高関税のリスクにさらされています。また、中共ウイルス(COVID-19)の流行が非常事態宣言を招く危機的な状況にあるなか、米国企業は予測不能な経済ショックに対応できるかどうかを考慮しています。

カーニーの年次報告書は、中国発のウイルス肺炎の蔓延により、海外企業の中国生産活動や貿易の縮小、撤退が加速しており、パンデミック前の状態に戻る可能性は低いと指摘しています。また、パンデミックの影響で大きな打撃を受けた企業は、リスクを分散し、中国市場への依存から脱出するために「購買戦略とサプライチェーンを真剣に考え直すことになる」と書いています。

中国は世界の自動車部品、玩具、電子製品だけでなく、ペニシリン、抗生物質、鎮痛剤、手術用マスク、医療機器など多くの医薬品や医療品も生産しています。

ドナルド・トランプ大統領の貿易顧問ピーター・ナバロ(Peter Navarro)氏は2月、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、今回のウイルス蔓延の発生は米国が中国やその他の国からの医薬品や医療品の輸入への依存度を減らすための「警鐘」(wake-up call)であると語りました。

企業活動においても、物品の購入先が一箇所の会社に集中していれば、その会社が業績不審になったり、倒産した場合はもろに影響を被ることになります。分散するか、企業にとって必要不可欠なものは、内製化も検討すべきです。

国と国との関係も同じことです。中国一国に依存しすぎると、これからも何が起こるかわかりません。早急に改めるべきです。ただ、そうはいっても、中国に進出している企業がそれを実行するつもりがなければ、それは実現できません。

中国政府としては産業の高度化を進めるためにも日本企業にもっと来てもらいたいという意向は非常に強いでしょうから、日本政府の補助金に対して、「中国政府もAI(人工知能)や5Gなどハイテク分野において日本企業に補助金を出し、中国にとどまるようインセンティブを付けることも想定されます。

そうなると、対中国冷戦を挑んでいる米国は、そのような日本企業に対して直接制裁を加えるようになるかもしれません。いずれの企業にとっても、対中国依存は危険であると自覚すべきです。

そんなことはないだろうと、高をくくっている企業もあるかもしれませんが、予めコロナ禍も予想できなかったように、コロナ禍後の世界も何が起こるかは全く予想できません。とはいいながら、世界秩序は大きく変わるのは間違いないです。リスクはなるべく減らしておくべきです。

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2020年4月11日土曜日

【日本の解き方】カネ出し渋る「緊縮病」財務省に丸め込まれ…情けない議員たち あまりにみすぼらしい経済対策 「真水」はコロナ・ショックには力不足だ―【私の論評】緊急事態宣で暴露された、財務官僚とその取り巻きたちの日本をダメにする寄生虫ぶり(゚д゚)!

【日本の解き方】カネ出し渋る「緊縮病」財務省に丸め込まれ…情けない議員たち あまりにみすぼらしい経済対策 「真水」はコロナ・ショックには力不足だ


 政府は7日、新型コロナウイルス感染対策として7都府県を対象とする緊急事態宣言を発令した。

筆者の立場は、政府の緊急事態宣言が遅れたというものだ。改正された新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型コロナ特措法)施行日の3月14日に、宣言していてもよかった。

16日には、政府は東京と大阪で感染者数急増となる兆候をつかんでいたが、14日には東京都心で桜の開花宣言が出され、花見気分で、20~22日の3連休前に自粛ムードが緩んでいた。その時に緊急事態宣言が出されていたら、緩みが締め直され、今のような感染者数急増にならなかった可能性もある。緊急事態宣言そのものは、法的根拠があるとはいえ、強制力が乏しいので、あえて発動を抑制することもなかったともいえる。

しかも、緊急事態宣言の遅れは経済対策の遅れともパラレルになっている。一部では、経済への悪影響を気にして緊急事態宣言が遅れたという見方もあるが、「緊縮病」にかかった財務省らが主導して政府の経済対策を渋り、休業補償などでカネのかかりうる緊急事態宣言を出し渋ったというのが実態だろう。

これは、今回の経済対策が、あまりに遅れたうえ、シャビー(みずぼらしい)であることからもうかがえる。

シャビー(みずぼらしい)=Shabby

まず、事業費108兆円といわれ、国内総生産(GDP)の2割に相当するというが、事業費とGDPは、売上高と利益ほどの概念の違いがあるので比率を計算すること自体、筆者に違和感がある。重要なのはGDPを押し上げる効果がある「真水」だ。

この真水について、おおよその数字すら、経済対策を検討た与党議員もよく知らない。財務省は補正予算の検討をしているはずなので、与党議員に積極的に知らせなかったのだろう。そんな状態で議論に応じる与党議員も情けない。重要情報を知らずに、意思決定しているからだ。

新聞報道によれば、財政支出は39兆円だという。このうち、昨年度の未執行分が10兆円であり、今年度補正予算で手当てされるのは29・2兆円だという。そのうち、財政投融資が12・5兆円とされ、真水は16・7兆円だ。これは、今年度補正予算で新たに発行される国債16・8兆円とほぼ見合っている。

そもそも年度当初の補正であれば、使い残りの資金はないはずなので、新規国債発行額がそのまま真水になるはずだ。正確な数字は、補正予算書が国会に提出されないとわからないが、この程度の真水であると、GDP比3%程度でしかなく、今回のコロナ・ショックには力不足になる。そもそも日本は、昨年10月の消費増税により、既に経済は痛めつけられている。それにコロナ・ショックの追い打ち、さらには東京五輪の1年延期も決まっている。

筆者は、消費増税の悪影響がGDP比で4%減、コロナ・五輪延期で4%減で、合わせて8%減程度とにらんでいる。となると、今回の経済対策では足りずに、いずれ追加措置が必要になるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】緊急事態宣で暴露された、財務官僚とその取り巻きたちの日本をダメにする寄生虫ぶり(゚д゚)!

早期に経済を立て直さないと国民の収入が増えず税収も増えないという当たり前のことがわからない財務省に呆然とします。そうして、多くの国民が、生活保護を受けざるを得ない立場に立たされた場合、財務省はどうするつもりなのでしょうか。それも緊縮で乗り越えるつもりなのでしょうか。本当に恐ろしいです。これでは、いずれ経済苦で死人がでるかもしれません。

そもそも特措法自体に大欠陥があります。知事に自粛要請させて、政府は金の責任は一切負わなくて済むのです。とはいいながら、調整の名の下に知事の行動に口を挟むことができるのです。口を出すなら金も出すべきです。

このような法律を作ったのはコロナ禍などでも、給料がびた一文減らない国会議員と官僚です。特措法の正体は、民間だけが苦しむ法律なのです。

日本国には日本銀行という中央銀行があるので非常事態に備える資金はいくらでも手当することができるはずです。その上で、実際の執行は都道府県知事に全権委任が緊急事態おける基本です。それと同時に憲法で非常事態条項がないと、背骨がないのと同じで、非常時には混乱をきたすので、憲法にも非常事態条項を盛り込むべきです。

財務省がなぜこんなときまで、緊縮にこだわっているのか、全く理解不能です。

大阪の吉村知事は以下のような、ツイートをしています。
吉村洋文(大阪府知事)

国には通貨発行権あります。国債の発行権もあります。ですから、お金を沢山刷ることもできます。今はデフレ気味なので、お金を沢山剃っても全く問題ありません。そうして、国債がマイナス金利の現状なら、100兆円くらいは国債を発行しても、損をするのではなく2兆円くらいも逆に儲かるので、簡単に用意できるはずです。

そうして、これだけ国債を発行しても、以前もこのブログに掲載したように、これは将来世代の付けになどなりません。無論財政破綻もしません。

にもかかわらず、資金を手当しないのは酷すぎます。私自身は、総力戦のような戦争や、今回のような世界的な感染爆発のような危急存亡のときは、さすがの財務省ですら、そのときだけは緊縮はやめるのではないかという淡い期待を持っていました。

しかし、その期待は今回見事に裏切られました。財務省は、国民の命を守る義務を放棄しているとしか思えません。無論政府が悪いという部分はあります。それは、否定しません。しかし、平成年間のほとんどを緊縮で押し通しても、財務省は何らの咎めを受けることはありませんでした。


つけあがった財務官僚は始末に負えなくなってきた

それが、財務官僚らをつけあがらせたのです。そもそも、政府の金とは、税金が源泉です。それは、国民から徴収したものであり、彼らのものではありません。税金は、国民の安全、生命、財産を守るためにこそ使われるべきものです。この非常時のときにはなおさらそうです。しかし、財務省の官僚は平時のときのように、緊縮を続けようという腹です。

マスコミもこれらの事実を全く報道しようとしません。これでは、財務官僚やその取り巻き政治家たちと同様に「日本をダメにする寄生虫」といっていいでしょう。

彼らが肥え太れば、太るほど日本はダメになります。今回のコロナ禍を奇貨として、彼らを100年かかっても、1000年かかっても、日本から除去すべきです。

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