2025年7月25日金曜日

減税と積極財政は国家を救う──歴史が語る“経済の常識”

まとめ
  • 減税と積極財政は矛盾しない。ともに有効需要を喚起する拡張的財政政策であり、状況に応じて併用されるべき常識的な手段である。
  • 「支出拡大=リベラル」「減税=保守」という二項対立は、通俗的な分類にすぎず、経済の実情を無視したレッテル貼りに過ぎない。
  • 江東新橋の事例は、国債を活用した復興と経済支援が、長期にわたり国民生活を支えることを示した歴史的証左である。
  • 高橋是清の判断と国債発行は、将来世代との負担の分担と経済成長を両立させた成功例であり、今なお政策の羅針盤となる。
  • 英国の国債のように、経済成長と適切な資金運用により、長期的な国家財政は十分に持続可能であることが世界の常識となっている。
  • ・減税と積極財政の両立は、もはや理論上の話ではなく、歴史と実例が裏付ける現実的な選択肢であり、保守派が担うべき責任ある経済政策である。

減税と積極財政は常識である

 
いま、保守派を中心に「減税」と「積極財政」を両立させるべきだというごく当たり前の主張が、語られるようになっている。財務省が長年掲げてきた緊縮路線は、支出拡大や減税に対して「破綻する」「将来世代にツケを回す」といった恐怖を煽るばかりで、実体経済の停滞の回復には無力だった。その結果、日本は「失われた30年」という長期低迷から抜け出せずにいる。

だが、参政党、国民民主党、日本保守党、さらには自民党内の保守系議員たちが掲げる「減税と積極財政の併用」は、世界標準のマクロ経済学に即した常識的な政策である。需要が不足しているとき、政府が支出や減税を通じて経済を刺激するのは当たり前の話だ。右か左かなどという話ではなく、ただの常識である。


しかし日本では、減税と積極財政は矛盾するかのように語られることが多い。たとえば「支出拡大はリベラル的」「減税は小さな政府を志向する保守的」といった、単純な二項対立に落とし込むレッテル貼りが横行してきた。これは実際、政治評論やメディア解説などにしばしば見られる通俗的な分類である。しかし、これはマクロ経済学の基本すら理解していない浅はかな見方だ。減税も支出も、有効需要を喚起するという意味で同じ拡張的財政政策に属する。経済の実情に応じて使い分ければいいだけの話である。

常識を証明した橋──江東新橋の教訓
 
このような「経済の常識」に、ようやく国民も気づき始めている。今回の参議院選挙では、減税と積極財政を堂々と掲げた新興勢力が一定の支持を得た。国民は、財政均衡信仰や官僚の刷り込みによる「常識風の非常識」に、もはや騙されてはいない。

この常識を象徴する実例が、東京・江東区にある江東新橋である。江東新橋は、1923年の関東大震災からの復興事業の一環として構想され、国債を財源として建設された鉄橋である。

当時、蔵相を務めていた高橋是清は、東京や横浜が関東大震災で壊滅した被害を目の前にして、税金だけで復興費を賄えば国民生活が立ちゆかなくなると判断し、即座に国債発行を決断した。こうして造られた頑丈な鉄橋のひとつが江東新橋だ。現在でいう積極財政を実行したのだ。

高橋是清

この橋は1945年の東京大空襲でも焼夷弾に耐え、避難路として機能した。10万人以上が犠牲になった大空襲の中で、この橋がなければ被害はさらに広がっていただろう。そして現在も、江東新橋は車両や人の往来を支え続け、テレビドラマにも登場する現役のインフラとして経済活動に貢献している。

もし当時、復興を積極財政ではなく緊縮財政の手法と言える税金で賄っていたらどうなっていただろうか。当時の日本は貧しく、重税は国民をさらに疲弊させたはずだ。たとえ橋が残っても、経済が死んでいれば橋の価値も半減していた。だからこそ、高橋是清の「国債で長期プロジェクトを行う」という判断は、現世代と将来世代の負担を分かち合う理にかなったものだった。

この成功体験は、のちの1930年代の積極財政政策にもつながっていく。江東新橋は、単なる橋ではない。国債で公共投資を行うことの意義を、歴史の中で証明し続けてきた生きた遺構である。

国債活用は歴史の証明済み
 
1815年6月18日ワーテルローの戦いでナポレオンはイギリスに敗北

同様の教訓は、イギリスの事例にも見られる。19世紀初頭、ナポレオン戦争の戦費を賄うために発行された英国の国債は、2015年に最終的に完済された。新たな国債で借り換えながら経済成長によって、200年もの期間をかけて実質的な負担を軽減してきた。これもまた、「国の財政は家計とは違う」という基本を裏付ける歴史的証拠である。

大きな戦争を税金で賄うなど、古今東西どのような国でも聞いたことがない。そんなことをすれば、すぐに経済的に行き詰まり、戦争で勝つことはできなくなる。イギリスのようなやり方が望ましい。当時のイギリスが戦費を税金だけで賄ったとしたら、その後も第二次世界大戦さらにはフォークランド紛争などの大きな戦争のたびに税金で賄い続けていたとしたら、イギリスという国は今頃存在しなかったかもしれない。

減税と積極財政の併用は、何ら突飛な政策ではない。減税は積極財政の一手法に過ぎない。積極財政は、国家を守り、人々の暮らしを支えるための、真っ当な常識である。保守派こそがこの世界の中で日本だけが狂っている常識を取り戻し、間違った観念で国家を毀損するのではなく、明るい未来への責任を持った政治を貫くべき時が来ている。

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2025年7月24日木曜日

イスラエル“金融制裁の核”を発動──イラン中央銀行テロ指定の衝撃と日本への波紋

 まとめ

  • イスラエルがイラン中央銀行を「テロ組織」に指定:国家の金融中枢を標的とした前例のない制裁であり、金融戦争の新段階に突入した。
  • 国際秩序を揺るがすリスク:国際合意を経ずに一国が制裁を発動したことで、他国による恣意的な金融制裁が拡大する恐れがある。
  • 専門家の警鐘:RUSIのジャック・ラウシュ氏や米財務省元高官スチュアート・レヴィ氏は、国際金融秩序の不安定化を強く懸念。
  • 日本への三つの波及リスク:①中東原油供給の不安定化、②金融機関の巻き添え制裁、③イラン進出企業への報復措置。
  • 政府の危機認識が問われる:この制裁は日本の国益に直結する問題であり、エネルギー・金融・外交の全方位的な対応が急務である。

中央銀行を“テロ組織”と断じた異例の決定
 
2025年6月25日、イスラエル政府はイラン中央銀行を「テロ組織」に指定した。国防大臣イスラエル・カッツ氏の署名によるもので、対象には中央銀行のほか、シャハル銀行、メッラト銀行、軍事関連企業Sepehr Energy Jahan、さらに複数のイラン高官が含まれる。これは単なる外交的な抗議ではない。国家の中枢を担う金融機関そのものを、テロの資金源と見なして制裁の対象にするという、かつてない決定である。

イスラエル側は、イラン中央銀行がヒズボラやハマスといった武装組織に数十億ドル規模の資金を提供していると非難し、「殺人者に金を流す装置だ」と断じた。イスラエルの諜報機関モサドおよび経済制裁専門チームの調査に基づき、この指定は金融を武器とする「通貨戦争(monetary warfare)」の一環として行われた。

イスラエル国防大臣イスラエル・カッツ氏

具体的な資金ルートも明らかにされている。メッラト銀行はイラン革命防衛隊(IRGC)の関連企業と連携し、資金をレバノン経由でヒズボラに流していたとされる。Sepehr Energy Jahanは、イエメンのフーシ派への燃料供給と引き換えに武器を提供し、その資金はドバイを経由し仮名口座を使って移動していたという。

イラン国内では即座に強い反発が起こった。外務省報道官は「これは経済戦争に名を借りた金融テロであり、国家主権への露骨な侵害だ」と非難。保守強硬派のメディアは「殉教の証」とまで呼び、サイバー攻撃や地域代理戦争による報復を訴える声が強まっている。
 
国際秩序を揺るがす“金融戦争”の始まり
 
この制裁は従来の経済制裁とは質が異なる。米欧がこれまで行ってきたのは、軍需産業や石油企業、あるいは核開発に関与した個人や団体への資産凍結や貿易制限であった。それに対し、今回は国家金融の心臓部たる中央銀行そのものが「テロ組織」と名指しされ、実質的に国家主権の否定に等しい措置が取られたのである。
この制裁は従来の経済制裁とは質が異なる。米欧がこれまで行ってきたのは、軍需産業や石油企業、あるいは核開発に関与した個人や団体への資産凍結や貿易制限であった。それに対し、今回は国家金融の心臓部たる中央銀行そのものが「テロ組織」と名指しされ、実質的に国家主権の否定に等しい措置が取られたのである。

さらに深刻なのは、この指定が国連安保理やFATFといった国際的な枠組みを経ず、イスラエル一国の判断で実行された点にある。これは、今後どの国がどの金融機関を“テロ支援機関”と見なしてもおかしくない、危険な前例となる。

英国のシンクタンク「RUSI(Royal United Services Institute)」の研究員ジャック・ラウシュ氏は、この指定を「国家の金融中枢へのピンポイント爆撃」だと形容したうえで、次のように警告している。
「この戦略が他国に波及すれば、経済的圧力の魅力と引き換えに、金融秩序の不安定化という代償を払うことになる」(Geopolitical Monitorより)
また、米財務省の初代テロ・金融情報局長スチュアート・A・レヴィ氏も、「中央銀行のような制度的存在をテロ組織に指定するのは極めて異例であり、SWIFT(国際決済網)を含む世界の金融システム全体に圧力をもたらす」と懸念を示している。
 
日本に突きつけられた三つのリスク
 
イラン(緑)と日本(オレンジ)

では、この事態は日本にとって他人事なのか。まったくそうではない。むしろ、地理的にも経済的にも日本はこの波に直撃される可能性がある。

第一に、エネルギー安全保障の問題だ。日本は原油輸入の9割近くを中東に依存している。イラン産原油の直接輸入は停止しているが、ホルムズ海峡周辺の不安定化や湾岸諸国の緊張激化は、原油価格の高騰や輸送ルートの混乱を引き起こしかねない。

第二に、国際金融インフラへの巻き添えリスクだ。日本のメガバンクもSWIFTやドル建て決済に深く依存している。今後、他国が中国や北朝鮮に対して類似の措置を取り始めた場合、日本の金融機関も「制裁協力」の名のもとに圧力を受け、業務制限や取引回避に追い込まれる恐れがある。

第三に、日本企業のイラン事業である。現在も60社以上がイラン市場に間接的に関与している。仮にイラン側が「テロ国家に協力した」として日本企業を名指しし、資産凍結や法的制裁を加えるような動きに出れば、日本企業の信頼と経済活動そのものが揺らぐ。

イスラエルのこの措置は、もはや中東だけの話ではない。世界経済と国際金融秩序、そして日本の国益に直結する問題だ。政府がこれを「遠い砂漠の出来事」と見なして傍観するようなら、あまりにも危機感が足りない。エネルギーの多角化、金融網の防衛、そして国際枠組みの強化。これらはもはや選択ではない。国家としての生存戦略である。

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トランプ政権、NATOと共同でパトリオット供与決定 米軍のイランへの抑止力強化 2025年7月
米国とNATOがイランに対抗するため地対空ミサイル「パトリオット」をウクライナに供与する動きを解説。中東の緊張が日本の防衛政策にも影響を及ぼす可能性を指摘。

トランプ氏の「イラン核開発阻止」戦略と中東情勢へのインパクトを解説。中国やロシアとの地政学的連動にも触れる。 

イスラエルによるイラン核施設攻撃の意味を考察。地域の緊張と報復の連鎖、日本への影響も示唆。 

シリア・ロシア・イランの関係を背景に、中東の秩序崩壊リスクを論じる。今回の金融制裁との関連も読み解ける。

日本のエネルギー安全保障に関する記事。中東依存を脱する選択肢として、アラスカLNG計画を解説。

2025年7月23日水曜日

「対中ファラ法」強化で中国の影響力を封じ込めろ──米国の世論はすでに“戦場”だ、日本は?

まとめ

  • 米国議会は2025年、中国共産党による影響工作を封じるため、FARA(外国代理人登録法)の対中強化法案を審議中。対象は外交官に限らず、親中ロビーやSNSインフルエンサーにも及ぶ。
  • 「チャイナ・デイリー事件」では、中国共産党が米大手紙に広告を装ってプロパガンダを掲載していた事実が発覚。これは合法を装った情報戦であり、FARA強化の契機となった。
  • 米保守派は同法案を高く評価しつつも、監視の恣意的運用や左派によるダブルスタンダード適用を警戒。透明性と公平な執行が課題とされる。
  • 日本ではFARAに相当する制度が未整備であり、参議院議員・神谷宗幣氏がその必要性を問う質問主意書を提出。日本政府は同様の制度が存在しないことを認めている。
  • 米国が情報主権確立に動き出す一方、日本は沈黙を続けており、主権と民主主義を守るためにも早急な制度整備が求められる。沈黙は最大の敗北であるとの警鐘が鳴らされている。

「対中ファラ法」強化で中国の影響力を封じ込め
 
米国の世論はすでに戦場になっている。2025年、米国議会で「対中ファラ法」の強化法案が帯上にのぼった。微細な法案に見えるかもしれないが、これこそが米中の情報戦における「ゲームチェンジャー」となりうる。

この法案がめざすのは、中国共産党が米国内で行ってきた世論工作、政治工作、情報操作などを、法的な手段を補うような形で展開している行為を、すべて登録・監視対象として、抜本的に封じ込めることである。FARA(外国代理人登録法)は1938年、ナチス・ドイツのプロパガンダ活動を抑止するために制定された。外国政府やその関係者が米国内で政治的影響を与えようとする際、その実態を司法省に登録し、透明化することを義務付けている。

広告を装った挟み込み紙「Chaina Watch」

今回の対中強化法案は、中国共産党に対してこのFARAを完全適用するための「特化型」改正案であり、単なる技術的改訂ではない。すでに米国は情報戦の壁内まで中国に入られており、それを明らかにしたのが「チャイナ・デイリー」による米大手新聞へのプロパガンダ紙の挟み込み事件である。広告を装ったこれらの挟み込み紙「Chaina Watch」は「一帯一路は平和の使者」「香港は安定している」といった中国寄りの主張を米国民に刷り込もうとするものだった。

この事件をきっかけに、米国議会はFARAの強化に本腰を入れ、その結晶として提案されたのが、2025年現在審議中の「対中特化型FARA」なのである。

保守派の支持と法案の持つ意義、日本への示唆
 
この法案は保守派から強く支持されている。中国共産党による情報工作の脅威に対して、ようやく法的な防波堤が築かれることになるからだ。一方で、過剰な監視や恣意的運用への懸念も提起されており、バランスの取れた運用が今後の鍵となる。

賛成党代表 神谷宗幣氏

そして、問題は日本である。日本にはFARAに相当する法制が存在せず、対抗措置が何ら講じられていない。この現状に一石を投じたのが、参議院議員・神谷宗幣氏である。令和4年10月、同氏は「日本においても、外国による不当な情報操作を防ぐため、米国の外国代理人登録法のような法制が必要ではないか」との質問主意書を提出。日本政府に対し、FARAやオーストラリアの外国影響力透明化法に相当する制度の検討履歴や、導入の必要性に関する見解を質した。

政府は、FARA相当の法律が日本に存在しないことを明言し、つまり現時点で我が国が中国の影響工作に対して完全に無防備であることが明らかになった。

米国が踏み出した第一歩──日本は沈黙を続けるのか
 
米国は今、自国の言論空間と主権を守るために、情報という戦場に法制度という武器を携えて挑もうとしている。これは単なる中国対策ではない。国家の生存戦略としての「情報防衛」であり、たとえ政権が代わっても揺るがぬ方針として、米国は情報主権の確立に向けて動き出している。

日本の大手新聞にも挟み込まれた、

一方、我々日本人はどうか。中国共産党との「情報戦」はすでに現実の脅威となっており、大学、自治体、政界、そしてメディアの中にまで、中国の影響力が静かに浸透している。にもかかわらず、日本ではFARA相当の制度がなく、行政も立法も本格的な対応を講じていない。情緒的な“反中”ではなく、冷静かつ制度的な対抗措置が必要だ。

今必要なのは、透明性と覚悟を持った実効的な法制度の整備である。米国が踏み出したこの一歩を、日本はただ眺めているだけでよいのか──沈黙こそ最大の敗北であることを、我々は深く自覚すべきだ。

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2025年7月22日火曜日

中国の情報戦は「戦争」だ──七月のSharePoint攻撃が突きつけた日本の脆弱性

まとめ
  • 中国政府系ハッカーによるサイバー攻撃が、MicrosoftのSharePointサーバーを標的に発生し、米欧だけでなく日本の自治体・企業にも被害が及んでいる。
  • 使用されたゼロデイ脆弱性(CVE-2025-53770)は未修正のまま悪用され、機密情報窃取と長期潜伏を可能にする国家的スパイ活動だった。
  • 日本国内では自治体の住民情報や大手企業の業務インフラが影響を受けており、被害はすでに現実のものとなっている。
  • 中国は「超限戦」理論と国家情報法に基づき、民間を装ったサイバー戦を展開しており、日本も通信・監視インフラ依存で同様のリスクに晒されつつある。
  • 「外国勢力」とうやむやにする
    時代は終わった。中国こそが主権とインフラを脅かす現実の脅威であり、日本は国家として明確な対抗姿勢と防衛体制を取るべきである。
     

中国系ハッカーによる国家レベルのサイバー攻撃が発覚
 
2025年7月、Microsoftの業務用サーバー「SharePoint Server(シェアポイント・サーバー)」が、中国政府とつながりのあるサイバー攻撃グループによって、大規模に侵害されていたことが明らかになった。この攻撃はアメリカやドイツをはじめ、複数の国の政府機関、企業、医療機関に深刻な被害をもたらした。日本国内でも、すでに複数の自治体や企業で被害の兆候が確認されている。

この攻撃を仕掛けたとされるのは、「ToolShell」と呼ばれるバックドア型マルウェアを使ったグループである。Google傘下のサイバーセキュリティ企業Mandiantは、初期の分析段階で「中国と関係のある国家支援型ハッカーが関与していた」と断定した。また、米AxiosやReutersも、Google脅威分析部門の情報を基に「中国政府系のアクターによる攻撃の可能性が高い」と報じている。
 
 
この攻撃は、単なる情報盗難を超えた国家的な諜報活動である。標的とされたのは、政府機関、大学、エネルギー関連企業などの重要インフラであり、攻撃の目的は機密情報の窃取だ。使用されたのは、CVE-2025-53770という未公開のゼロデイ脆弱性。SharePointサーバーへの不正アクセスが可能となり、攻撃者は暗号鍵を奪って正規通信を装いながら長期間にわたり潜伏。しかも、使われたインフラの一部は、過去に中国系スパイ集団が使っていたものと一致していた。

日本にもすでに被害──サイバー戦はすでに始まっている
 
日本でもすでに被害が出ている。関東のある自治体では、庁内システムに不正アクセスの痕跡が見つかり、住民情報や行政文書への接触履歴を調査中である。また、大手製造業では、SharePoint経由で社内サーバーが一時使用不能となり、海外子会社との契約調整や業務連携に混乱が生じた。これらは氷山の一角にすぎず、今後さらに被害が広がる可能性が高い。
 
 
忘れてはならないのは、この攻撃が偶然起きたものではないという点だ。中国共産党政権は「超限戦」という理論に基づき、軍事・経済・外交・サイバーとあらゆる手段を用いて国家間の影響力を拡大してきた。とくにサイバー空間では、技術や情報収集の遅れを補うため、他国の先端技術・軍事機密・インフラ構造を標的とした攻撃を繰り返してきた過去がある。

「民間任せでは国家は守れない」──日本が取るべき覚悟
 
さらに、中国の「国家情報法」によって、すべての中国人・中国企業は国家の命令に従って情報提供する義務を負っている。このため、たとえ民間企業が関与していたとしても、その背後に政府の指令があると考えるべきだ。HuaweiやTikTokが世界中で警戒されているのも、まさにこの構造があるからである。
 
 
加えて、中国は「デジタル一帯一路」と称して、アジアやアフリカ諸国に通信・監視インフラを輸出し、自国の情報統制モデルを海外に広げようとしている。日本でも、地方自治体やインフラ企業、教育機関が中国製のサービスに依存すれば、同様のリスクにさらされるのは時間の問題である。

今回のSharePoint攻撃は、ITの問題でも、企業の危機管理の失敗でもない。これは中国という全体主義国家が、日本を含む自由主義諸国の社会基盤にまで干渉し得る現実を突きつけた「警告」である。しかも、これは始まりにすぎない。次に狙われるのは、医療、交通、金融、通信といった、私たちの生活そのものである。

日本が今、取るべき道ははっきりしている。国家として情報インフラを守る覚悟を持ち、制度・技術の両面で防衛体制を整えること。そして、同盟国と連携し、中国のサイバー行動に対して明確な対抗姿勢をとることである。民間任せでは、もはや国家は守れない。

もはや「外国勢力」などと曖昧な言葉でごまかしてはならない。中国こそが、日本の情報インフラと主権に対する最大の脅威である。銃やミサイルではなく、「コード」と「サーバー」を武器にして、国家の内側へと侵入してくる――これが、いま目の前にある現実なのだ。

国を守るとは、サイバー空間を守ることでもある。その覚悟を、私たちは今こそ問われている。


🔍 関連記事:日本の安全保障を脅かす“サイバーの影”

今回のSharePointゼロデイ攻撃は決して孤立した事件ではありません。過去にも中国によるサイバー工作や技術流出事件が繰り返されてきました。以下の記事もあわせてお読みください。

🛡 あなたの一読が、日本を守る一歩に。

2025年7月21日月曜日

落選に終わった小野寺勝が切り拓いた「保守の選挙区戦」──地方から始まる政党の構図変化

 まとめ

  • 日本保守党は結党から2年足らずで衆参5議席を獲得し、比例だけでなく選挙区(北海道)にも挑戦。百田尚樹氏が参院比例で当選し、存在感を確立した。
  • 北海道選挙区で落選した小野寺勝氏は、保守党として初の地方区本格挑戦を果たし、国防やアイヌ政策を訴えて一定の得票を得るなど、今後に向けた布石となった。
  • 参政党は4~5年かけて勢力を拡大し、2025年参院選で8議席を獲得。だが、神谷宗幣氏は「参政党は保守ではない」と発言したとされ、保守党との立ち位置の違いが明確に。
  • 両党は急成長する一方で、飯山あかり氏や保守系雑誌など、同じ保守陣営からの批判にも直面してきた。
  • 日本保守党は明確な保守主義と党首の高い知名度を武器に、参政党は大衆政党としての浸透力で、それぞれ異なる方向から「新しい保守」の形を模索している。
百田尚樹の参院当選と日本保守党の異例の急成長
 

2025年7月21日、日本保守党代表の百田尚樹氏が、前日に投開票された参議院選挙の比例代表で当選した。同党からは弁護士・北村晴男氏がすでに当選しており、百田氏はこれに続く2人目の当選者となった。日本保守党にとって、これは参議院での初の議席獲得である。

百田氏はもともとテレビ放送作家として活躍し、「探偵!ナイトスクープ」などの人気番組を手がけた。50歳で作家デビューを果たすと、「永遠の0」でベストセラー作家となり、「海賊とよばれた男」では本屋大賞を受賞するなど、文壇でも強い存在感を示した。そんな百田氏が、ジャーナリストの有本香氏らとともに2023年10月に日本保守党を立ち上げたのは、自民党が左傾化する現状への明確な異議申し立てであった。翌2024年の衆議院選挙では、結党からわずか1年足らずで3議席を獲得し、今回の参院選ではさらに2議席を積み上げた。わずか2年も経たぬうちに、同党は衆参あわせて5議席を有する国政政党に成長したのである。

小野寺勝氏

また今回、日本保守党は比例区だけでなく選挙区にも初挑戦しており、北海道選挙区に立候補した小野寺勝氏の動きは注目に値する。落選こそしたものの、地方選出の新人としては異例の得票を記録し、保守党が地方区でも一定の存在感を示した初の事例となった。小野寺氏は国防・教育・アイヌ政策に関する問題を真正面から訴え、既存政党が触れようとしない論点を堂々と争点化。北海道という難しい選挙区で戦いながらも、党の全国的な支持拡大の「突破口」としての役割を果たしたといえる。

保守党と参政党──成長スピードと立ち位置の違い
 
参政党代表 神谷氏

この躍進は異例である。特に比較すべきは、2020年に結党された参政党だ。参政党は結党から2年後の2022年参院選で初の国政議席(比例1議席)を獲得。その後、2024年の衆院選で3議席、2025年6月には梅村みずほ議員が合流し、議員数は5名に達した。そして同年7月の参院選では、東京・茨城などの選挙区で初めて候補者が当選し、比例と合わせて計8議席を獲得。まさに急伸と言える結果である。

だが、ここで注目すべきは、両党の“成長の質”である。参政党が議席拡大までに4〜5年を要したのに対し、日本保守党はわずか2年足らずで衆参両院に足場を築いた。しかも、その原動力は党首自身の圧倒的知名度と発信力であった。

百田氏は、結党前から国民的知名度を有していた稀有な存在だ。作家としての成功に加え、言論活動を通じて保守層から圧倒的な支持を得ていたことが、党勢拡大を強く後押しした。一方、参政党の神谷宗幣氏は地方議員出身で、当初の知名度は限られていたが、YouTubeやオンライン講座などを駆使して地道に支持層を広げた。この点で両者は対照的である。

支持層の性質にも決定的な違いがある。日本保守党は、既存の自民党に失望した保守層、特に安倍晋三元首相の政治姿勢に共鳴する層を中心に支持を広げた。政策も伝統重視・国益重視が明確で、理念がぶれていない。一方、参政党は「反ワクチン」や「オーガニック志向」といった、保守・リベラルの枠組みを超えた主張を打ち出し、政治未経験層やスピリチュアル層にも広がりを見せた。

実際、神谷氏自身が「参政党にはリベラルな人もおり、参政党は保守ではない。保守は日本保守党に任せる」と語ったとされる発言が、SNS上などで注目を集めた。これは、参政党がイデオロギーにとらわれない保守も含めた大衆政党を目指している姿勢を示す一方で、日本保守党があくまで保守主義に軸足を置いているという違いを如実に浮かび上がらせる発言である。

支持と批判の狭間で──試される“保守の新興勢力”
 

もっとも、両党ともその急成長の裏で、同じ保守系の内側から厳しい視線を浴びてきた点は共通している。日本保守党に対しては、飯山あかり氏をはじめとする保守系評論家や、『Hanada』『WiLL』といった保守系メディアからの批判が相次ぎ、百田氏の言論姿勢や党の運営体制に疑問が呈された。一方、参政党もまた、結党当初から陰謀論的な主張やスピリチュアル色の濃い発信が、保守論壇から冷ややかに見られてきた。

つまり、両党はともに、既成政党に見切りをつけた有権者の受け皿となりながら、同時に保守陣営内部からの試練にもさらされてきたのである。その中で、日本保守党は知名度と明確な国家観を武器に、参政党は草の根運動と非主流層への共感を力に、それぞれ異なる道筋で台頭してきた。

今後、この二つの新興勢力が保守再編の中でどう存在感を強めていくのか。理念か大衆か、論戦か情念か──その行方は、日本政治の未来そのものを映す鏡となるだろう。

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ウェルズ・ファーゴ幹部も拘束──中国はビジネスマンを外交カードに使う。邦人が狙われても日本は動けない 2025年7月18日
ウェルズ・ファーゴ幹部の出国禁止とアステラス製薬邦人実刑。中国の“人質外交”が常態化する中、日本の無警戒が露呈している。

石破vs保守本流」勃発!自民党を揺るがす構造的党内抗争と参院選の衝撃シナリオ 2025年7月17日 
今回の参院選は、単なる政権の勢いを問うものではない。自民党という政党のあり方、その先にある国家の背骨を巡る構造的な転換点なのだ。

外国人問題が参院選で噴出──報じなかったメディアと読売新聞の“異変”、そして投票率操作の疑惑 2025年7月16日
参院選2025で「外国人問題」が大争点に!国民の怒りが噴出、メディアは沈黙?読売新聞が挑む「規制と共生」の議論。 あなたの1票が日本の未来を変える! 投票に行こう!

参政党・神谷宗幣の安全保障論:在日米軍依存の減少は現実的か?暴かれるドローンの落とし穴 2025年7月9日
神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。私が気づくようなドローンの落とし穴を放置し、専門家からも批判されるようでは、参政党の未来は危うい。

2025年7月20日日曜日

理念の名を借りた利権構造──日本だけが暴走するLGBT政策の真実

まとめ
  • 日本のLGBT理解増進法は、欧米諸国や台湾に比べても突出して急進的かつ拙速に導入されており、教育現場への影響が懸念されている。
  • 欧米では未成年の性転換治療に対する見直しが進んでおり、イギリスのタヴィストック・クリニック閉鎖やスウェーデン・フィンランドの方針転換がその象徴である。
  • 保守層は、この法律の裏に「公金チューチュー」的な利権構造が存在すると警戒しており、百田尚樹氏の日本保守党設立もこの危機感に基づく。
  • 台湾では「ジェンダーレス」ではなく「男女平等」を原則とし、実用性重視のトイレ制度(ポッティ・パリティ)など現実的な対応を取っている。
  • 今回の参院選に限らず、今後のすべての選挙で制度の中身と背後の利権構造を見抜く「有権者の目利き力」が問われている。

拙速すぎたLGBT理解増進法──日本だけが突出する危うさ
 
文部科学省は近年、「多様性の尊重」や「ジェンダー平等」といった理念を掲げ、教育現場に新たな指導方針を導入しつつある。これは単なる理念ではなく、具体的な制度としてすでに実行段階に入っている。令和4年12月には「生徒指導提要」が改訂され、性的指向や性自認に関する配慮が制服、更衣室、宿泊行事などに明記された。さらに令和5年6月、国会で「LGBT理解増進法」が成立。文科省は教職員の研修や相談体制の整備を全国の教育委員会に要請している。

だが、保守層からは「子どもへの過剰な性教育」「家庭の教育権の侵害」といった懸念の声が相次いでいる。こうした拙速な導入は、日本にとって決して無害ではない。欧米ではすでに、同様の流れが深刻な社会問題を引き起こしている。

イギリスでは、未成年への性別移行治療を行っていた「タヴィストック・クリニック」が2023年に閉鎖された。安易に思春期ブロッカーを処方し、後に後悔した若者たちが集団訴訟を起こしたことが引き金となった。スウェーデンでは2021年、カロリンスカ大学病院が18歳未満へのホルモン療法を原則中止。フィンランドも2020年、ガイドラインを改定し「心理的支援の優先」を明記した。

米フロリダ州では「教育現場での親の権利」により保護者の同意なく子どもに性自認を教えることを制限

アメリカでも連邦レベルでLGBT教育を義務づける法律は存在しない。各州に委ねられ、たとえばフロリダ州では2022年に成立した「Parental Rights in Education(いわゆる“Don’t Say Gay”法)」が、保護者の同意なく子どもに性自認を教えることを制限している。

アジアに目を向ければ、同性婚を合法化した台湾ですら、日本のような全国一律の「LGBT理解増進法」は存在しない。法整備は限定的で、教育現場への介入は見られない。日本は、世界でも例を見ないほど“理念先行”の道を突き進んでいるのだ。


理念の裏で進む利権構造──保守層が憂える「公金チューチュー」

 
このような制度の急進化に、保守派は強く反発している。作家の百田尚樹氏は、「この法律の成立は、自民党が左に大きく傾いた証だ」と断じ、LGBT理解増進法に対する危機感から日本保守党の設立を決意した。氏は「言論の自由を脅かす悪法」と位置づけ、その撤廃を訴えている。杉田水脈氏、小野田紀美氏といった議員たちも、法案の曖昧さや恣意的運用の危険性を早くから警告していた。

さらに深刻なのは、「理解増進」という名目のもとで進行している利権構造だ。実際、各自治体がLGBT関連の啓発事業を外部に委託し、その多くが特定のNPO法人などに流れている。印刷物の制作、講演活動、研修ビデオの配信といった表向きの活動の裏で、「予算獲得のための理念」が一人歩きしているのが実情である。

これは、かつての男女共同参画、慰安婦支援ビジネスと同じ構図だ。国民の税金が、特定の思想を推進する団体に流れ込む「公金チューチュー」の温床になりつつある。
 
台湾に学ぶ現実主義──理念より「誰が使うか」を考えよ

トイレ待ちの長蛇の列に並ぶ女性たち 東京駅 ジェンダーレストイレの前に女性トイレを増やすべきでは

「ジェンダーレストイレ」も、この問題の象徴的な事例である。美辞麗句だけで制度を語るのではなく、誰のための政策かを現実に即して考えなければならない。

台湾では、現在も一部に性別中立トイレが存在するが、その数は全国に約600か所とごくわずかで、男女別トイレは4万か所以上にのぼる。台湾は「ジェンダーレス」ではなく、「男女平等(gender equality)」を原則とし、2006年には女性用便器を男性の2倍以上にすることを定めたポッティ・パリティ(potty parity=トイレの平等)制度を導入した。これは理念ではなく、使用時間の統計や公共空間の利便性を根拠とした現実的な政策である。

また、多目的トイレや個室の設計で、トランスジェンダーや障害者に配慮する構造も整っている。要は、理念を掲げて対立を煽るのではなく、「誰もが不便なく使える空間」を目指すのが本来の公共設計なのだ。

選挙は未来への責任だ──すべての投票で問われる「目利き力」

いま問われているのは、「理念先行で作られた制度」が、現実社会にどれだけ歪みをもたらすかという視点である。スローガンに踊らされて税金を吸い上げられる構図に、我々はそろそろNOを突きつけるべきではないか。

今回の参議院選挙では、このような制度の実態と背景を見極め、どの候補がそれに対して明確なスタンスを示しているかを重視して投票すべきである。だが、それだけではない。今後の衆院選、地方選挙を含むすべての選挙で、この視点を失ってはならない。

理念の仮面をかぶった制度が、利権や思想の押しつけにすり替わる構図は、教育、福祉、文化、あらゆる分野で広がり得る。だからこそ、有権者には「中身を見抜く力」と「継続的な判断」が求められる。

未来は、表面的なキャッチコピーではなく、政策の背後にある実態を見抜いた者たちの手によって決まる。投票とは、その第一歩である。

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2025年7月19日土曜日

トランプが挑む「報道しない自由」──黙殺されたエプスタイン事件が、司法の場で再び動き出す

まとめ
  • トランプ元大統領がWSJとマードック氏を名誉毀損で提訴し、記事にあった“エプスタイン宛ての裸婦カード”報道を完全否定。訴額は100億ドルに上る。
  • 訴訟の背後にはエプスタイン事件の全容解明があり、トランプは司法省に大陪審資料の全面開示を要求している。
  • エプスタインは政財界・王室・学術界など上級層との関係を持ち、性的虐待ネットワークとその隠蔽疑惑が未解決のまま。主流メディアは報道を回避している。
  • 訴訟は単なる名誉回復ではなく、“虚報メディアへの制裁”としての政治的意味を持ち、保守派の反撃の象徴となっている。
  • 日本の主要メディアはこの訴訟をほぼ無視しており、“報道しない自由”による黙殺がかえって事件の重大性を浮き彫りにしている。

トランプ、メディアとの全面戦争に打って出る

2025年7月、ドナルド・トランプ元大統領が、とその親会社ニューズ・コーポレーション、そしてメディア王ルパート・マードックを名誉毀損で提訴した。訴訟額は実に100億ドル(約1兆4千億円)にのぼる。


事の発端は、WSJが報じた一本の記事だった。そこでは、2003年にトランプ氏が故ジェフリー・エプスタイン宛てに、裸婦のイラストを添えたバースデーカードを送ったとされていた。メッセージには「秘密を共有しよう」と書かれていたという。だがトランプ氏はこれを全面否定し、「自分は絵など一度も描いたことがない」と明言。報道そのものが捏造であり、悪意に満ちた中傷だとして訴えに踏み切った。

同時にトランプ氏は、報道の根拠となった大陪審資料の全面公開を司法省に求めた。名誉回復という次元を超え、腐敗したメディア構造そのものにメスを入れようという、彼らしい強硬な姿勢が際立っている。
 
エプスタイン事件──なぜアメリカ最大のスキャンダルは黙殺されるのか

ジェフリー・エプスタイン

この訴訟の背景には、現代アメリカの深層に潜む「闇」がある。それがジェフリー・エプスタイン事件だ。

エプスタインは、ウォール街の金融業者であり、未成年者を標的とした性的虐待ネットワークを構築していた張本人である。2019年、性的人身売買容疑で逮捕された直後、ニューヨークの留置所で“自殺”したとされるが、その死にはあまりにも多くの不審点が残る。監視カメラの故障、監視員の不在、そして首の骨折。もはや偶然とは思えない。

エプスタインが保有していた「ブラックブック」には、ビル・クリントン元大統領、英国王室のアンドルー王子、ハーバード大学の要人、ハリウッドの大物など、名だたるエリートの名が並ぶ。彼らが訪れたとされるエプスタイン所有の“島”──リトル・セント・ジェームズ島では、未成年との性的行為が秘密裏に撮影されていたとの証言もある。それが「脅しの材料」として使われていた疑いは根強い。

にもかかわらず、アメリカの主流メディアは、この巨大スキャンダルをまともに追及しようとしない。理由は明白だ。関係者の多くが、リベラル・グローバリズムの中心に位置する人物たちだからである。メディア自身が、彼らの“仲間”だからである。

だからこそ、トランプは動いた。米国に真実を取り戻すために。今回の訴訟は、“隠蔽された国家的犯罪”の扉をこじ開けようとする一撃なのだ。 

報道の自由か、報道責任か──保守派の反撃が始まった

大陪審資料の開示は容易ではない。原則非公開とされており、例外的に裁判所の許可が必要だ。さらに公開されても、多くは黒塗りされる。しかし今回、トランプ陣営のパム・ボンディ元フロリダ州司法長官が正式に開示請求を行っており、法の壁を超える試みが現実のものになりつつある。


この訴訟が象徴しているのは、「報道の自由」と「報道の責任」のせめぎ合いだ。WSJを含め、アメリカの主流メディアは、ここ数年トランプに対して執拗なネガティブキャンペーンを繰り返してきた。公平性の仮面をかぶりながら、一方で民主党寄りの姿勢を隠そうともしない。その一線を、トランプはついに越えたのである。

すでに保守系団体による同様の名誉毀損訴訟は複数の州で相次いでいる。報道責任を軽視するメディアに対する“トランプ・ドクトリン”とも言うべき訴訟戦略が、全米に広がりつつあるのだ。

そして肝心の日本のメディアは、今回の訴訟をほとんど報じていない。沈黙は語る──彼らが「報道しない自由」を振りかざし、真実を見ようとしない姿勢が、かえってこの訴訟の意義を証明している。

誰も真実を語らぬなら、自らが語るしかない。トランプは今、米国の“報道”に鉄槌を下そうとしている。これは単なる個人の名誉訴訟ではない。アメリカの情報空間に、保守派が再び風穴を開けるための戦いなのだ。

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トランプがNATOとともに進めるパトリオット供与の裏にあるリアリズム外交。イラン核攻撃の影響と欧州の危機意識とは?

「前例ない干渉」と政権非難 大学学長らが共同声明―米—【私の論評】腐敗まみれで奈落の底に落ちた米大学:ルーズベルト神格化と倫理崩壊でトランプの介入を招く 2025年4月24日


#トランプ訴訟 #エプスタイン事件 #WSJ #マードック #名誉毀損

2025年7月18日金曜日

ウェルズ・ファーゴ幹部も拘束──中国はビジネスマンを外交カードに使う。邦人が狙われても日本は動けない

まとめ
  • ウェルズ・ファーゴ幹部が中国で出国禁止措置を受けたが、過去の偽口座スキャンダルとは完全に無関係であり、政治的な外交圧力とみられる。
  • アステラス製薬の日本人幹部も2023年に中国で拘束・起訴され、証拠非開示のままスパイ罪で懲役3年6か月の判決を受けた。
  • 中国は外国人ビジネス関係者を「人質」として利用し、外交や経済交渉のカードにしている実態がある。
  • 日本政府の中国に対する渡航警告や危機対応体制は不十分で、企業や駐在員が守られていないのが現実である。
  • 経済安全保障を国家戦略の柱として位置づけ、邦人保護のための法整備と実行力を急ぐ必要がある。
米幹部拘束──“出国の自由”はもはや幻想か


2025年7月17日、米金融大手ウェルズ・ファーゴの女性幹部が、中国出張中に突如「出国禁止」措置を受けた。この人物は、アトランタ在勤のチェンユエ・マオ氏。同行の国際ファクタリング部門マネージング・ディレクターを務めるほか、国際業界団体「FCI」の会長職にもある要人である。

中国当局は、出国禁止の理由を一切明かしていない。本人にも通告はなく、事実上の“無言の拘束”だ。この措置は近年の中国で頻発している手法であり、外国企業の幹部が“外交カード”として扱われる現象は、もはや例外ではない。ウェルズ・ファーゴは即座に全中国出張を凍結し、マオ氏の安全確保と帰国に向けて動き出した。

だが皮肉なことに、この混乱の最中、同社は企業として大きな転機を迎えていた。2016年に発覚した「偽口座スキャンダル」では、数千人の営業担当者が、経営陣の過剰な営業ノルマのもと、顧客に無断で口座やクレジットカードを開設。被害総数は、銀行口座が約350万件、クレジットカードが56万件以上に及んだ。


この事件を受け、同行は30億ドル超の罰金を科され、当時のCEOが辞任。FRB(連邦準備制度理事会)からは資産拡大の凍結という異例の制裁を受けた。だが7年後の2025年6月、ついにFRBが制裁を解除。第2四半期決算でも業績は回復し、同社は「再成長」へと踏み出したばかりだった。

ここで強調しておかねばならないのは、この“出国禁止措置”と“偽口座スキャンダル”はまったく無関係だという事実だ。不正は米国内で行われ、中国企業や当局の関与は一切ない。米司法省やFRBの報告書にも、中国が絡んだ形跡は皆無である。時系列的にもスキャンダルは2016年、今回の拘束は2025年と、完全に切り離された出来事だ。したがって、これは過去の不祥事とは無関係な、別次元の“政治リスク”と見るべきである。

アステラス事件──「いつもの出張」が人生を奪う日


この問題は決してアメリカだけの話ではない。日本にも同様の火の粉は降りかかっている。2025年7月16日、中国・北京の中級人民法院は、アステラス製薬の日本人幹部に対し「スパイ罪」で懲役3年6か月の実刑判決を言い渡した。

この幹部は、2023年3月に突然拘束された。罪状の説明は一切なし。裁判は非公開で行われ、証拠の開示もないまま判決が下された。日本政府は繰り返し情報開示と釈放を求めたが、中国側は応じなかった。この人物は、日中経済交流の最前線で長年働いてきた企業人であり、スパイ活動とは無縁であることは、業界関係者の誰もが知るところだった。

だが、中国においては、善意も、実績も、現地貢献も通用しない。国家の都合ひとつで、誰もが“危険人物”にされる。それが今の中国という国家だ。そしてそのリスクは、実際に“現実の被害”として、日本国民にも及んでいる。

「守られない出張」は日本の国難である


2024年時点で、日本の対中投資額は約1兆5,000億円にのぼり、現地駐在員は3万人以上。だが、その安全を国家が担保しているかといえば、答えは否だ。外務省の中国渡航警告は依然として「レベル1(十分注意)」にとどまり、企業の出張マネジメントは各社任せ。拘束された際、政府が即応できる制度や予算、交渉の枠組みすら整っていない。

欧米諸国がすでに「経済安全保障」を外交戦略の柱に据えているのに対し、日本の対応はあまりに鈍い。このままでは、「海外に出すが、守れない」企業国家というレッテルを貼られかねない。もはや経済活動と安全保障は切り離せない時代だ。にもかかわらず、企業のリスク管理に“国家不在”の現実は、日本の根幹を揺るがす危機である。

ウェルズ・ファーゴ幹部の拘束。そしてアステラス製薬幹部への実刑判決。これらは偶然の出来事ではない。共通するのは、「ビジネスの顔をして接近し、外交の武器として人を拘束する」という中国の新たな常道だ。

この現実を前に、日本が「自己責任論」で済ませる余地など、どこにもない。国として、経済人を“守る意思”を明確にしなければならない。そしてそれは、外交辞令でも、安全保障三文書でもなく、法律と行動と予算によって示されるべきだ。

ビジネスと政治、自由と強制がねじれ合う世界において、我々はもう一度問い直す必要がある。国は誰を守るのか。自国民を守り抜くべきだ。明日は、自分の番かもしれないし、あなたの家族や会社の同僚かもしれないのだ。

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2025年7月17日木曜日

「石破vs保守本流」勃発!自民党を揺るがす構造的党内抗争と参院選の衝撃シナリオ

まとめ
  • 自民党内で石破派とFOIP戦略本部の間に、政策・国家観を巡る深刻な構造的対立が進行中。これは単なる派閥抗争ではなく、党の再編を伴う可能性がある。
  • FOIP戦略本部は対中抑止を軸とした安倍路線を継承し、保守派の再結集の中心として機能している。麻生・高市・旧安倍派が連携しつつある。
  • 多くのメディアは、この構造的対立を「選挙戦術」やスキャンダルとして矮小化し、実質的に石破政権寄りの報道を続けている。本質的な政策対立は意図的に報じられていない。
  • 参院選で自民党が敗北すれば、石破政権の居座りと立憲民主党との連携という事態が現実化し、自民党の保守政党としての輪郭が崩れかねない。
  • 今回の選挙は、自民党の理念と国家戦略を問う「構造闘争」の節目であり、保守派の再結集と党再編が今まさに始まろうとしている。
自民党内は、国家の背骨を変える闘いに直面している

自民党内部では、石破茂氏が推進するリベラル・左派路線と、安倍・麻生・高市系保守による「自由で開かれたインド太平洋戦略本部(FOIP戦略本部)」との政策的対立が、もはや単なる派閥抗争ではなく「構造的な党再編」へと深化している。石破氏は「派閥解体」「現場主義」「脱イデオロギー」を掲げ、中国・韓国との関係改善を志向する。一方でFOIP本部は、対中抑止を核とした実務路線を堅持し、党の国家戦略の本流として明瞭な意思を示している。

しかし主要メディアはこの重大局面を「商品券配布」や「人事騒動」へと貶め、真正面から政策軸の対立を扱おうとしない。彼らは石破氏を「穏健で現実的な改革派」と位置づけ、その継続を好意的に受け止める姿勢を隠さない。メディアの多くがその方向性に与し、構造的な対立を意図的に報じない現実が、いま政党の分断を助長しているのだ。
 
メディアの視線の盲点──政策対立をなぜ報じないのか
 
東洋経済表紙

たとえば東洋経済オンラインは、「石破降ろし」「商品券配布問題」など人事スキャンダルに終始し、構造転換の本質には一切触れない。これは日本のメディアにしばしば見られる「争点の回避」にほかならない。日本の報道では、政権批判にもかかわらず、党の根幹を揺るがす政策闘争を読み解く視座が欠けている。これは日本の主要メディアが左派リベラル的な世界観を支持し、石破政権の安定志向を歓迎しているからこそ起きている現象である。

確かに、メディアには「物語として描きやすい」に越したことはない。だが本来取り上げられるべきは、国家の方向性そのものを左右する構造的分岐だ。書きやすい「派閥対決」に逃げ込むならば、本質は闇に埋もれる。その傾向を変えるのは我々の視点と要求なのである。
 
参院選と再結集の呼び水──党再編シナリオの加速

年金法案で3党合意した自公立民

都議選や政権支持率の低迷から、参院選では自民党が歴史的敗北を喫する可能性が高まっている。石破氏がそれでも政権に居座り、立憲民主党との連携に舵を切るような事態になれば、自民党は保守政党としてのアイデンティティを失う。その時、再び注目されるのがFOIP戦略本部である。

安倍派・麻生派の有志による「保守再結集」はすでに始まっている。今回の選挙敗北を契機に、党内の保守主流が明確な国家観と価値観を掲げ、構造的に再結集する流れが生まれるだろう。メディアが構造の視点を無視し続けるかぎり、政党の分断と理念の空洞化は加速する。報道に求められるのは、スキャンダルではなく政策の分岐点に注目し、それを読み解く眼を研ぎ澄ますことである。 

結語──今、自民党は“国家の背骨”を書き換える闘いに直面している
 
自民党の「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」の初会合であいさつする麻生最高顧問(5月14日、党本部)

今回の参院選は、単なる政権の勢いを問うものではない。自民党という政党のあり方、その先にある国家戦略を巡る構造的な転換点なのだ。まさに自民党は“国家の背骨”を書き換える闘いに直面しているのだ。 FOIP戦略本部は、それを支える保守派の砦であり、党再編の舵取りを担う存在である。読者は今こそ、報道の罠に惑わされず、構造的な視座でこの政界の動きを見届け、自民党と日本の未来を考える必要がある。

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神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。神谷氏の安全保障観は専門家から国際舞台で通用しないと批判されるようでは、参政党の未来は危うい。

参政党の急躍進と日本保守党の台頭:2025年参院選で保守層の選択肢が激変 2025年7月6日 
保守派も含めた有権者の政治への熱が、今回の選挙戦をさらに激化させるだろう。

自民党の消費税減税反対は矛盾だらけ! 経済の真実を暴く 2025年6月30日
自民幹部には経済の真実と向き合う覚悟がない。物価高に苦しむ国民への素早い対応と、国の未来を切り開く変革を両立させる勇気が、今こそ求められている。

2025年東京都議選の衝撃結果と参院選への影響 2025年6月23日
東京都議選の結果は、来るべき参院選への重要な示唆を与える。国会での与野党の力関係が拮抗すれば、より活発な政策議論が期待され、国民にとってより良い政治環境が整うだろう。

【自民保守派の動き活発化】安倍元首相支えた人の再結集—【私の論評】自民党保守派の逆襲:参院選大敗で石破政権を揺さぶる戦略と安倍イズムの再結集 2025年5月22日

2025年7月16日水曜日

外国人問題が参院選で噴出──報じなかったメディアと読売新聞の“異変”、そして投票率操作の疑惑

 まとめ

  • 外国人問題は参院選で国民の実感としての争点となっていたが、大手メディアは長らく報道を避けてきた。
  • 都議選では在日候補者への差別的発言や、外国人優遇政策への反発が露わになり、国民の不満が表面化していた。
  • 読売新聞が「外国人と日本社会」特集を通じて報道のタブーに踏み込み、制度的課題を正面から扱った。
  • 今回の投票日は三連休の中日であり、低投票率を狙った政治的思惑が見え隠れする。
  • 筆者はすでに期日前投票を済ませており、有権者全員が政治的仕掛けに乗らず、自らの意思で投票すべき。

今回の参議院選挙では、各政党の公約や争点とは一線を画し、国民の関心が一点に集中した。それが「外国人問題」である。生活保護、医療、子育て支援、公営住宅、外国人労働者の急増など、日常の隅々にまで外国人関連の問題が浸透している。にもかかわらず、大手メディアは「センシティブ」として、この事実を報じることを避けてきた。しかし、現場に暮らす国民は実感として“沈黙できない”状況に置かれているのだ。

SNS上には、「外国人ばかり手厚く支援されて、日本人が置き去りにされている」といった声が多く投稿されている。公営住宅の倍率上昇や待機児童の増加は、もはや一部の商品・サービスの問題ではない。これは制度と現実の乖離から生じた国民の声である。
 
都議選から見え始めた変化──現場の声が怒りになった

都議選ポスター

この空気は既に都議選の段階でも顕在化していた。報道によれば、在日コリアン三世の候補者・金正則氏(70)に対し、「帰化人は帰れ」「朝鮮人」などと罵声が飛んだという事例が確認されている (朝日新聞)。しかし聴衆が「外国人支援ばかりでは?」と訴えると、通行人からの拍手が起きる場面すらあった。

金氏は街頭演説中に差別的嫌がらせを経験し、「日本国籍を取得しても、差別される現実」に衝撃を受けたと語っている (朝日新聞)。これは現象面だけで言えば確かに選挙妨害とも受け取られれかねないし、こうした妨害を擁護するつもりは全くないが、これは制度と社会の乖離が多くの国民の怒りとなり現場で噴出した瞬間とも言える。不満は確実にあるのだ。これは無視できない。

これを単にこのような行動や言動をする人にだけに問題があり、他には一切問題はなくこういう人たちだけを取り締まれば良しという従来の姿勢には、流石に無理がある。こうしたことの背景には多くの国民の切実な要望がある。一部の不心得者がこれを逆手に取り過激な言動をや行動をしているのだろう。中には、これを利用する組織も存在するのだろう。しかし、これを汲み取るか取らないかは、今参院選の大きな争点であることは明らかだ。

この流れを無視し続ける大手メディアの臭いものには蓋をしろという姿勢は、「現実を見ていない報道機関」そのものである。
 
読売新聞が突きつけた挑戦──報道は現実と向き合えるか

そんな中、読売新聞が「外国人政策 規制と共生 議論活発化」という記事を7月8日朝刊に掲載した。「規制と共生」のバランスを巡る議論が、これまで政治やメディアで十分に扱われなかったテーマとして本格化し始めたことを大見出しで報じた。これは参院選序盤に「外国人政策」が新たな争点として浮上していることを示すものである。これはX上での調査とも符号するものである。


ANNでは、参議院選挙について、公示日から7月12日までのXのすべての投稿を対象に、分析ツールを使って調べた。参院選の主な政策に関するワードがどれくらい投稿されたのか、調べた。その結果が、上の表だ。

読売新聞のこの記事の掲載は、他紙が「ヘイトにつながる」として報道をタブー視する中、勇気ある姿勢である。ただし、残念ながら現状ではオンライン版は削除されている。

ただ、その後も"[政策分析25参院選]<在留外国人>共生の道、制度に不備" という記事を12日に掲載している。これは現時点ではリンクは生きている。

事実を事実として報じ、問題に真正面から向き合う――これこそが報道機関の責務である。
 
私はすでに期日前投票を終えた──投票日を控え、すべての有権者へ
 

なお、私はすでに昨日、期日前投票を済ませた。今回の投票日が三連休中日の7月20日であることに違和感を覚えたからだ。休日の谷間に投票日を設定するのは、「投票率を下げるための仕掛け」ではないかと感じた。

低投票率になるほど、組織票に依存する勢力には有利に働く。有権者が投票を控えれば、国民感情を反映した政治が実現しづらくなる。そんな姑息な手口に、われわれは乗ってはいけない。

投票は権利であると同時に、責任でもある。あなたの一票が国家の将来を左右する。どうか投票に行ってほしい。どの政党に入れるかは問わない。しかし、日本という国の未来を左右するため、その事実と向き合い、自分の意思を示してほしい。

テレビでも新聞でもない。日本を変えるのは、あなたが投じるその一票である。

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2025年7月15日火曜日

トランプ政権、NATOと共同でパトリオット供与決定 米軍のイラン核施設攻撃が欧州を動かす

まとめ
  • トランプ政権はパトリオット供与を通じて「兵器外交・ビジネス・同盟再構築」の三位一体戦略を打ち出した。
  • 米軍によるイラン核施設攻撃が、NATO諸国の脅威認識を一変させ、兵器供与受け入れの下地を作った。
  • パトリオットの供与は欧州諸国の自己負担で実施され、米国は補充分を担当することで財政負担を回避。
  • 「これは商売だ」というトランプの言葉通り、供与は米防衛産業と雇用に直結する経済政策でもある。
  • 戦争を“複合戦略”として扱うトランプ流外交は、保守層の理念「関与すべき時には強く関与」を具現化している。

2025年7月、トランプ大統領がNATOとともにウクライナへのパトリオットミサイル供与を発表した。このニュースを、日本の大手メディアは「ウクライナ支援の一環」と軽く流しているが、実態はまるで違う。その裏には、イラン核施設への米軍攻撃という重大な伏線がある。そして、欧州がようやく「核の人質」であるという現実に気づき、行動に移した瞬間でもあった。今回は、この一連の動きの裏側にあるリアリズムと地政学の構図を徹底的に読み解いていく。

トランプが動かした同盟──兵器供与の裏にある現実主義

3月17日(現地時間)、マルク・ルッテNATO事務総長と会談するトランプ米大統領

2025年7月14日、トランプ米大統領はNATOのマルク・ルッテ事務総長と並んで、ウクライナに対しパトリオット地対空ミサイル・システムを供与すると発表した。表面的には兵器支援に見えるこの決定だが、その実、米国の外交、同盟戦略、そして経済政策のすべてを凝縮した一手である。政権発足以来、トランプが掲げてきた「アメリカ第一主義」を体現する構図が、ここにある。

この背景にあるのが、先月6月22日に米軍が敢行した「ミッドナイト・ハンマー作戦」だ。米空軍のB-2爆撃機とトマホーク巡航ミサイルが、イランのナタンツ、フォルドウ、イスファハンに点在する核開発施設を同時攻撃。IAEA(国際原子力機関)も、核インフラの重大な破壊を確認し、事実上イランの核開発は数年単位での遅延を余儀なくされた。

ミッドナイトハンマー作戦の概要:米国防総省(英語)


この攻撃は、単なる中東政策の枠にとどまらない。核兵器の完成が目前とされたイランを叩いたことで、欧州諸国にとっての安全保障環境が一変した。なぜなら、イランの核が完成すれば、その射程は確実にEU圏に及ぶからだ。イスラエルだけでなく、欧州全体が核の人質となる現実に、ようやく火がついたのである。
 
NATOが譲歩した理由──イラン攻撃がもたらした覚醒

この文脈を抜きにしては、今回のNATO加盟国によるパトリオット供与は説明がつかない。従来、欧州諸国は米製兵器の供与に対して慎重だった。だが今回は、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、オランダ、英国、カナダなどが保有在庫からウクライナに直接提供する。そして米国は、これらの国の不足分を補填するという形で間接的に支援に関与する。しかも、この補充費用はあくまで欧州側が負担するスキームである。


ここに、トランプ政権の特徴が色濃く表れている。かつてから「同盟国にも応分の責任を取らせるべきだ」と繰り返してきたトランプは、その言葉通りに各国の財布を開かせた。供与の場で彼が言い放った「これは商売だ」という言葉は、単なる挑発ではない。これは明確なメッセージであり、兵器支援を“国家間のビジネス”と位置付けたトランプ流のリアリズムそのものだ。

今回の供与によって、米国の防衛産業、特にレイセオン社を中心とするパトリオット製造ラインには新たな受注が舞い込む。雇用が生まれ、国内経済が回る。兵器供与が外交と経済を結びつける「成長戦略」となる――これほど明快な利害の一致があろうか。

トランプの「複合戦略」──戦争をビジネスに変える男


さらに、トランプはロシアに対して「50日以内に停戦しなければ、100%の関税を課す」と警告を突きつけた。軍事だけでなく、経済の側面からもプレッシャーを与える複合的な戦略は、彼の外交スタイルに一貫して流れる“力の論理”そのものである。

もちろん懸念もある。パトリオットは確かに優れた防空兵器だが、最新型のIskander-M弾道ミサイルのような超高速・高機動型弾頭に対しては、必ずしも万能ではない。しかも今回供与されるパトリオットが最新仕様であるかどうかは明言されておらず、性能にバラつきがある可能性もある。

それでもなお、今回の供与が持つ政治的インパクトは計り知れない。バイデン政権時代には見られなかった、「同盟国への負担転嫁」「米国財政の防衛」「兵器輸出による産業振興」「経済制裁による抑止」という四本柱が、トランプ政権下で再構築された。これこそが彼の持ち味であり、「戦争には巻き込まれない、だが必要な時は関与する」という保守派の理念を、実際の政策として体現している。

ウクライナを巡る戦局の今後は不透明だ。だが確かなのは、トランプが掲げる「ビジネスとしての戦争支援」が、単なるパフォーマンスではなく、現実の政治と経済を動かしているという事実だ。兵器供与の向こう側には、冷徹な戦略とリアリズムがある。それを見抜けない日本の現政権やメディアこそが、今この瞬間、我が国最大の脆さなのかもしれない。

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