2020年1月24日金曜日

歴史も証明。中国という国を滅ぼしかねぬ新型肺炎という「疫病」―【私の論評】新型肺炎の感染拡大で、習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなった(゚д゚)!

歴史も証明。中国という国を滅ぼしかねぬ新型肺炎という「疫病」

体温検査を受ける武漢を出て列車で移動する乗客。1月23日、杭州市

中国の武漢市を中心に猛威を振るう新型肺炎。1月25日の春節を含む大型連休には億単位の中国人が移動するとも言われ、パンデミックの可能性も囁かれていますが、過去にも中国から多くの疫病が世界に広がったとするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、中国の「疫病史」を紹介するとともに、現在も複数存在する「中国発の疫病」が世界に広がる要因を記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年1月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】「中国発パンデミック」はなぜ厄介なのか

新型肺炎、発症者540人超に拡大 死者は17人

中国湖北省武漢市を中心として広がる新型肺炎の感染が止まりません。ついに死者は17人、発症者540人超にも拡大しました。ついにアメリカでも武漢を訪れていた男性1人の感染者が確認されました。中国以外では、アメリカ、日本、韓国、タイで発症者が出ています。WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を出す可能性も出てきました。

死亡率は現在のところ2%でまだ低いですが、これから上昇していく可能性もあります。ちなみに、SARS(重症急性呼吸器症候群)も中国の広東省を発端として各国に広がりましたが、このときは発症者8,096人のうち774人が死亡しています(致死率9.6%)。

Summary of probable SARS cases with onset of illness from 1 November 2002 to 31 July 2003

また、2012年から中東やヨーロッパで発症例が報告され、2015年には韓国でも流行したMERS(中東呼吸器症候群)は、2,494人が発症し、そのうち死者は858人(致死率34.4%)でした。

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)

これに比べれば、まだまだ致死率は低いものの、前回のメルマガでも書いたように、これから旧正月によって一気に拡大する可能性があります。

また、かつてユーラシア大陸で流行った疫病は、必ずといっていいほど日本に入ってきています。江戸時代には天然痘(疫病)、麻疹(はしか)、赤痢が見られ、このうち天然痘は18世紀前期に大流行。麻疹も同時期に2~3回大流行し、赤痢は18世紀から19世紀にかけて大流行しました。いうまでもなく、中国からの伝染です。

中国では、1880年に広東と寧波でコレラが大流行。翌81年には北京でも大流行しました。この感染経路は、発源地を広東とする2003年のSARS流行とそっくりです。そして、中国でのコレラ大流行直後の1882年10月~11月の中旬、日本でもコレラが大流行することになります。北里柴三郎や初代内務省衛生局長であった長与専斉によれば、その日本侵入経路の起点は中国で、これがまず長崎に入り、そうして日本全国へ広がったといいます。

日本では、これに対処するため、1885年に函館、新潟、横浜、神戸、下関、長崎の港に常設の消毒所を設置。その後、1899年に「海港検疫法」が公布されるなどして、検疫制度が確立していきます。こうした取り組みが中国からの疫病侵入を防ぐ力となったのは言うまでもありません。しかし、一方の中国は、現在に至るまで根本的な対策は取られないままできているのです。

この日本と中国の衛生観念や防疫意識の違いは、台湾にも如実に見て取れます。日本植民地時代の台湾には、疫病の大々的な流行がほとんど見られませんでした。というのも、総督府は1900年代に入ってすぐに、都市計画に始まって衛生教育に至るまでを徹底して実施。北里柴三郎に依頼して、その一番弟子を台湾に呼んでまで、防疫をはじめとする公衆衛生に取り組んできたからです。

それが終戦で一変しました。日本が台湾から引き上げ、かわりに中国軍が台湾に進駐したとたん、すでに絶滅していたはずのコレラ、天然痘、ペスト、チフス、マラリアといった疫病の大流行が台湾全島を急襲したのです。1946年にはペストとコレラの、翌47年には天然痘の大流行に見舞われています。台湾から見た中国人とは、まさに疫病神以外の何者でもありませんでした。

中国でも日本軍が進出した際、地方の農民が大歓迎するケースも少なくありませんでした。それは、日本軍が通過した地方は、かならず伝染病が消えていき、衛生の問題と課題が消えるからでした。

中国の疫病流行は、すでに史前から甲骨文に刻まれています。現在、その甲骨文から確認できる殷周時代の古代人の疫病は約16~20種類もあります。そして、周初から漢代に至る「大疫」(疫病大流行)の記録では、しきりに「死者万数」「人多死」「士卒多死」「其死亡者三分有─」と、多くの死者を出したことを示す文言が繰り返し出ているのです。

中華帝国以後の中国は二千余年間、周期的、加速的に水害、旱魃等の天災に見舞われてきました。そして、旱魃の後に大飢饉が、水害の後に大疫病が発生するというのが、いわば「定番」になっています。歴代王朝の「正史」には疫病の大流行が数年ごとに、時には連年で記録されていることが、それを証明しています。

中国の歴代王朝は、実際には「大飢」や「大疫」によって滅ぼされた場合が多くあります。「大飢」によって生まれた流民が「大疫」の媒介や運び役となって世界へ拡散していくのです。

たとえば明の滅亡については、政治腐敗と、それに蜂起した農民反乱軍によって滅亡したと語られていますが、実は、それだけが要因ではありません。明末には「大疫」や「大飢」が間断なく襲い、餓死者や疫死者が続出。流民、流賊、流寇もあふれていたのです。これもまた、農民が反乱する要因にもなっていました。

ことに明末の万暦、崇禎年間(1573~1644年)には、華北地方で疫病が猛威をふるい、少なくとも1,000万人の死者が出ました。主にペストや天然痘です。明王朝は、実はこの大疫によって倒れたのであり、清に滅ぼされたわけではないのです。

また、黒死病(ペスト)といえば、中世のヨーロッパを襲った恐るべき流行が、史上でもっとも有名で、1348~51年の3年間で、人口の3分の1を死に至らしめています。その伝染経路については諸説があありますが、もっとも有力なのは中国大陸を発源地とするものです。

下の版画はパウル・フュルスト(Paul Fürst)の『Doktor Schnabel vonRom(ローマの嘴の医者)』(1656年)です。

当時はペストの原因として瘴気(悪性の空気)が考えれており、ハーブやスパイスが詰められた この独特のマスクは、ガスマスクの役割を果たしていました。ちなみに、当時の主な治療法は蛭(ヒル)による瀉血でした。


最初に大流行したのは南宋王朝です。この時、南征中だったモンケ・カーン(チンギス・カーンの孫、フビライ・カーンの兄)が病死していますが、その病気がペストだったとも指摘されています。南宋と戦っている間にモンゴル軍に伝染したのです。

このモンゴル軍の遠征を通じて、ペストは西アジア、クリミア、ベネチア、北アルプスを経て北上し、やがて全ヨーロッパに伝わっていきました。

元末の至正年間(1344~62年)の間には、「大疫」だけでも11回も起こっています。中華帝国の人口は、1200年には1億3,000万人いたとも推定されていますが、ペストの大流行によって、すでに1331年の時点で3分の2が死んでいます。ユーラシア大陸の東西ともにペストに襲われ、人口が大量に減ったのです。

また、それより以前、隋の煬帝末期の610年から唐初の648年の約40年間には、7回も疫病が大流行。隋も瘟疫で倒れています。

その他、インフルエンザ系の疫病はSARSに限らず、その発源地はほとんどが中国です。たとえば、1918年の秋に全世界で猛威を振るったインフルエンザ。感染者は地球人口の20~40%にも及び、感染からわずか4ヵ月で2,000万人が死亡し、その死亡率は約2.5%でした。日本でも2,000万人以上が感染し、死者は約40万人に上っています。

これが「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザで、名称からスペインが発源地であると誤解する人が多いですが、実は、これも中国が発生源でした。そもそもは、1917年に中国の南方で発生したものが、船便を通じて世界各国へと拡散したのです。

中国で医療衛生が制度化されたのは、なんと20世紀になってからのこと。義和団事件後に変法派官僚によって、やっと天津に衛生総局が設立(1902年)されたのです。それも、中国から世界にペストがばら撒かれることを危惧した列強からの強い要請があって、ようやく重い腰を上げたというのが本当のところです。外国人を排斥する大事件が引き金になって、その外国の圧力によってようやく医療衛生が制度化されるという、皮肉な話です。

一方、儒教の影響が現在も色濃い中国では、医師の社会的地位は非常に低いものです。たとえば日本と台湾では、通常、成績がいい学生が大学の医学部へ進みますが、中華の世界ではまったく逆で、成績の悪い学生が医師になるのです。だから、中国では現在も医者は軽んじられる存在なのです。

たとえば、中国では医者に対する患者の暴力行為が頻発しており、「医閙(イナオ)「医傷」などと呼ばれています。その件数は年間数万件にも及ぶため、中国政府は2018年に、毎年8月19日を「中国医師の日」にすることを定め、医者を尊重するよう呼びかけているほどです。

また、2012年の調査によると、臨床医の初任給は1カ月あたり平均2,339元ですが、中国の新卒の平均的な初任給は1カ月あたり3,051元であり、医師と看護師がもっとも低水準なのです(「中国網」2013年10月8日付)。このような状態であるため、誰も医師になりたがらないし、医療体制も低いままなのです。

また、日本のような医療保険制度がほとんど普及していない中国では、高額な医療費のために、病気になっても医者にかからない人民も多い。そのため、疫病が拡大してしまうのです。

もちろん、中国は言論統制の国であり、また、WHOまでもカネの力で牛耳っているため、事実隠蔽が平然と行われ、そのために被害が大きくなってしまうという点も重要です。

このように、中国発の疫病が世界に広がる要因は複数存在しています。日本人にとって、これからもっとも注意すべきは、パンデミックの流行です。中国への渡航、あるいは中国人観光客が多く集まる場所へ出かけていく場合には、十分に気をつける必要があります。

【私の論評】感染拡大で、習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなった(゚д゚)!

約20年前に流行したSARSは当初、ハクビシンが感染源と疑われましたが、現在はキクガシラコウモリが感染源であると考えられています。今回の新型肺炎の感染源は竹ネズミかアナグマ、蛇と説が分かれています。いずれもジビエ(野生の鳥獣食)として食されており、市場での取引を通じて人間に伝染したとの見方が強いです。

キクガシラコウモリのスープ
無論、他国の食文化を単純に否定するつもりはないですが、こうした食文化にも、病気を蔓延させる原因がある可能性ず大きいです。日本では、欧米では食べないクジラや、魚の刺し身を食すという食習慣がありますが、そもそも海産物であること、さらに細心の注意をはらった調理などにより、それが大規模な感染症の原因になったということは聞いたことがありません。

いくら食文化といっても、それが大規模な感染症を招くというリスクがあるなら、中国としてもそのような食文化は廃するか、それが不可能なら感染症を防ぐ方向で議論をすすめるべきです。


      竹ネズミの調理の動画。このくらいの衛生的な環境で調理されるなら
      問題はないのかもしれないが、劣悪な環境下での調理もあり得る

それに中共政府の対応も悪すぎです。もともと中国では、2019年12月の時点で、武漢で原因不明の肺炎患者が出ているとの情報がSNS上で出回っていました。その後も「海外で患者が出ているのに、国内の他地域にいないわけがない」との声があがっていました。

それから1カ月あまりで情報公開が始まったのは遅きに失した感が否めないです。中国の報道機関「財新メディア」は、現地からの報道として「複数の医師が最終的な感染者は6000人を超える可能性があると推計している」と報じました。財新はかつて当局によるSARS情報隠ぺいをスクープして名を馳せたジャーナリストの胡舒立氏が率いる独立系メディアです。

一方で当局寄りの論調が強い「環球時報」も、「武漢の対応の遅さを教訓とし、その他の地方での対応を急げ」という社説を掲げました。「早くから患者の全面隔離を実施し、伝染の経路をふさぐべきだった」と主張し、武漢当局を厳しく批判する内容ですが、こちらは責任を地方政府に押しつけ、中央への波及を防ぐ算段と見えなくもありません。

中国では24日から、春節に合わせた大型連休が始まりました。延べ約30億人が大移動する見込みで、日本など海外への旅行客も700万人を超える見通しです。

中国共産党機関紙、人民日報(電子版)によると、新型肺炎の発症者は24日朝までに31の省・自治区・直轄市のうち29で確認されており、武漢市だけ封鎖しても、新型肺炎が一気に国内外に拡散する危険性があります。

習近平は「(感染防止の取り組みが)非常に差し迫って重要だ」「(感染に関する情報は)直ちに発表しなければならない」と指示していますが、「社会全体の安定を断固として守らなければならない」とも述べており、パニックを阻止するための情報統制を示唆しました。

今後、日本国内で感染拡大・死者発生という事態になれば、初期の封じ込めに失敗した中国のトップ、習氏を「国賓」として歓迎できるのでしょうか。特に、仮に日本でも多くの人々がなくなることがあった場合、その責任者ともいえる人物を国賓として迎え入れるということは、国民感情が許さないと思います。

習近平

これ以外にも、元々中国は尖閣諸島付近の艦船による示威行動がますます過激になっているということもあります。これらをやめたというなら、国賓として迎えるということも筋が通りますが、そうでなければ、日本政府がいかに、丁寧に説明してもどう考えても無理筋です。

安倍首相は22日、衆院本会議での代表質問で、習氏の「国賓」招聘(しょうへい)について「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄に大きな責任を有しており、その責任を果たす意思を内外に示す機会としたい」「同時に、中国との間には懸案が存在している。主張すべきは主張し、中国側の前向きな対応を強く求めていく」と語っています。

新型肺炎の拡大は、習氏の「国賓」来日に直撃するのでしょうか。もしそうなれば、無論習近平は国内の疫病の問題を放置して、来日することは許されないでしょう。やはり、常識的に国内に陣取り、疫病対策の陣頭指揮をとるべきです。

仮に、日本で同じようなことがおこったとして、総理大臣がそれを無視して外遊ということになれば、とんでもないことになります。

日本としても、新型肺炎が蔓延している中、その当事者であり責任者でもある元首を国賓として迎え入れるなどということは、常識的にあり得ないです。

新型肺炎をめぐる中国の情報統制のような対応を見る限り、中国は発生国として国際的責任を果たしているとは思えません。習近平が国賓として来日すれば、天皇陛下も含めて日本全体で歓迎しなければならないですが、これまでの経緯もあり、祝賀ムードで迎えることを国民が許すとは考えにくいです。新型肺炎の感染拡大で、さらに習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなったのではないでしょうか。

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2020年1月23日木曜日

「健全財政」にこだわる不健全 財務省に飼い慣らされている「諮問会議」は専門家の仕事をせよ ―【私の論評】財政破綻は夜迷いごと、南海トラフ大地震があっても日本は財政破綻しない(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

経済財政諮問会議であいさつする安倍首相(右から2人目)=17日午前、首相官邸

 内閣府が経済財政諮問会議で、国と地方の基礎的財政収支が2025年度に3・6兆円程度の赤字になるという中期財政試算を示した。消費税率を引き上げても財政の悪化が続き、目標とする25年度の黒字化は遠のいたと報じられている。

 最近の指標は軒並み悪化しており、結局昨年10~12月の日本経済はかなり悪かったという結果となった。一応、補正予算を打ったが、東京五輪・パラリンピック後の秋口にも再び景気対策の必要性が出てくるのではないか。そのときに、財務省の「緊縮病」が気になるところだが、これは中期財政試算にも垣間見える。

 政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を25年度に黒字転換する目標を掲げるが、実現はさらに厳しくなったと強調する。試算の成長実現ケースで、25年度のPBは3・6兆円の赤字。昨年7月時点の試算(2・3兆円の赤字)より悪化したとし、麻生太郎財務相も17日の閣議後の記者会見で「歳出改革の取り組みをさらに進めなければならない」と語った。

        政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を
        25年度に黒字転換する目標を掲げる

 なぜ、PBを目標としているかといえば、PBの動きが、ネット債務残高対国内総生産(GDP)比の動きを規定するからだ。ネット債務残高対GDPがどんどん大きくなれば(数学的な表現では「発散」すれば)、財政破綻とも言えるような状況になるわけで、そのためにPBを管理しなければいけない。

 試算では、成長率の高い「成長実現ケース」と成長率の低い「ベースラインケース」がある。PB対GDPは、成長実現ケースで25年度均衡化は無理だが、27年度均衡化するくらいに改善するが、ベースラインケースでは、1・3%程度の赤字を続ける。その結果、グロス債務残高対GDPは成長実現ケースで低下傾向になるが、ベースラインケースでは高止まりするとされている。

 この結果を、ネット債務残高対GDPでみれば、成長実現ケースで現在のゼロ程度がマイナス、つまり純資産がプラス状態になるが、ベースラインケースでもゼロ程度を維持できるとなる。

 はっきり言えば、国の場合、ネット債務残高が多少のプラス、つまり債務超過でも問題なく、ネット債務残高をマイナスにする必要はない。例えば、日本でPB対GDPが2%程度の赤字を10年間継続しても、せいぜいドイツと同じ程度になるだけで、財政状況は悪いわけではない。こうした状況にもかかわらず、目標とする25年度の黒字化ができなくなったのは問題だというのは、おかしな議論である。

 特に、今のマイナス金利を生かして、将来投資をするのは、ネット債務残高対GDPを悪化させない意味でも優れている。今の状態で、PB黒字化はほとんど意味がないにもかかわらず、教条的に「目標順守」というのは、健全な経済政策ではない。経済財政諮問会議の専門家は、財務省の走狗(そうく)になるのではなく、もっとしっかりすべきだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】財政破綻は夜迷いごと、南海トラフ大地震があっても日本は財政破綻しない(゚д゚)!
日本の財政を考えるときに、良く出てくる言葉が「財政破綻」です。日本が財政破綻しないことはこのブログでも何度か述べてきました。それについては、過去のこのブログの記事か、まともなエコノミストである高橋洋一氏や田中秀臣氏の記事などを読んでいただきたいと思います。

日本では、大手新聞も財務省の走狗に成り果て、「財政破綻」を煽っている

本日は、今後数百年もしかすると、数千年の間には、「日本政府が破産する」と投資家たちが信じて国債を投げ売りし、国債が暴落して日本政府の資金調達が困難になる場面があるかもしれませんが、しかし、それでも大丈夫であることを掲載しようと思います。

日本政府が破産すると信じる投資家は、国債を売るだけではなく、円をドルに替えるはずです。政府の子会社が発行した日本銀行券が紙屑になることを恐るからです。それにより、超ドル高になるでしょう。

そうなると政府は、外貨準備として保有している巨額のドルを高値で売却し、受け取った資金で暴落した国債を買い戻すことができます。1兆ドルの外貨準備を1ドル300円で売却し、300兆円の資金を得て、それを用いて額面の3割に暴落した日本国債を買い戻すと、発行済み国債1000兆円がすべて買い戻せることになるのです。

発行済み国債をすべて買い戻した日本政府は、破綻するどころか、無借金の超優良財務体質を手にするわけです。

こうして考えると、元々統合政府(政府+日銀)の借金ということでは、米国や英国、フランスよりも借金が少ない上に、日本の投資家らが、万が一日本が財政破綻すると信じて、日本国債を投げ売りするようなことが起こっても、日本の財政が破綻する可能性は非常に小さいことがわかります。

もちろん、南海トラフ大地震で日本経済が破綻してしまうケースなどを考えれば、財政も実質的に破綻するのかもしれませんが、しかし、そうなったらそうなったで、政府は膨大な建設国債などを発行して、インフラの復旧などを数十年という長い年月かけて行うでしょう。

さすがの財務省も、このような大地震が起こったときには、「赤字国債は将来世代へのつけとなる」などという、世迷言はいってはおられなくなって、膨大な国債を発行するはすです。もし、それでも世迷言をいうなら、財務省などこの世からなくしてでも、政府は国債発行に踏み切るてしょう。

そうなれば、このブログにも掲載したように、日本は外国からお金を借りているわけでもなく、完全雇用でもないので(関連記事:   消費増税の「悲惨すぎる結果」が判明…日本の景気、打つ手はあるのか―【私の論評】令和年間には、日本の潜在能力を極限まで使い、超大国への道を歩むべき(゚д゚)!)参照)将来世代へのつけということもなく、復興に成功して、全く新しい国に生まれ変わることになるだけです。財政は破綻しないでしょう。

財政赤字は巨額だから、早急に緊縮財政を実施しないと、将来の財政破綻が防げなくなるという人がいますが、そうではない、ということは、はっきりしています。

そのため、性急に増税して景気を悪化させるリスクを負うくらいなら、増税を急がず、増税しても失業が増えないようなタイミングを狙って増税をすれば良かったと思います。



まあ、それでも増税してしまったのですから、マイナス金利の現状では国債を100兆円くらいは、大量に発行しても、うまくいけばゼロ金利かほんのわずかプラスになるだけですから、政府は発行で2兆円儲けて、残りは基金として様々な経済対策を行えば良いのです。

こう考えると、日本が財政破綻するというのは、ほんとに杞憂もしくは世迷言としか考えられません。


2020年1月22日水曜日

中東で、中国が米国に取って代わることはできない―【私の論評】中国は中東への危険な一歩を歩みだした(゚д゚)!

中東で、中国が米国に取って代わることはできない

宮本アジア研究所代表






イランのザリフ外相(左)と中国の王毅外相
第2次世界大戦後に作り上げられた国際的な仕組みは現在、大きく動揺している。国際秩序の動揺と言ってもよいだろう。

 このように言うと、自由貿易に代表される自由な経済秩序や、国連、世界貿易機関(WTO)に代表される多国間主義といったグローバルな政治と経済のメカニズムの動揺に目が行きがちだ。だが、地域情勢も不安定化し始めている。最も顕著なのが、これまで中東と呼ばれてきた地域である。

 第2次世界大戦後、地域の安定は大国同士の関係でほぼ決まった。米ソ冷戦が終わり、米国が唯一の超大国となり、一見したところ米国は圧倒的な存在となった。だが実際には、米国の相対的な力は一貫して低下してきていた。特にトランプ政権となり、外交上のミスを連発し、米国の影響力は急速に低下している。

 その「力の空白」を埋めるように、中東においてイランとトルコが影響力を強めている。どちらも歴史において大帝国を張ったことのある国である。米国を取り去ると、この2国が浮上してくる。歴史を生き抜いてきた伝統の力は大したものだと、つい納得したりする。

 加えて、中東において中国とロシアの存在感が増大しているという。イラン危機は米中覇権戦争の一環だという見方まで現れている。果たしてそうであろうか?

中東進出は、危険を抱え込むこと

 ロシアはロシア帝国とソ連の後継であり、ロマノフ王朝時代から中東と深い関係にある。ソ連時代も中東において米国と覇を競った。土地勘もあり、やり方も知っている。しかし今日のロシアは、依然として強大な軍事力を誇っているものの、英国際戦略研究所(IISS)によれば2017年の軍事支出は日本より少ない。GDP(国内総生産)は韓国より小さく日本の3分の1にまで縮んでいる。総合国力において昔の面影はもはやない。影響力においても限りがあるということだ。

 中国はどうか。国力を急速につけてきているが、歴史上、中東と全く関わってこなかった。中国の経験と知識には限界がある。

 中国の一帯一路構想が、世界制覇に向けた中国のグランドデザインのように喧伝(けんでん)されている。しかし中国の現場から伝わってくる感触は、それとはほど遠い。大きなスローガンを次々に打ち出すものの、それを支え実行する理念、原則、ルール、実施の仕組みは、現場に近づけば近づくほど中身が見えなくなるのだ。

 それに進出地域における経験と知識の不足という壁が立ちはだかる。これが中国の実態と言ってよい。

 中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもある。

 一帯一路構想を、中国を中心にかつて存在した朝貢貿易システムの再現と捉える人もいる。だが昔は、マルコポーロの例から分かるように、中国に来る人たちが道中のリスクをすべて負担した。しかし今度は中国が自ら出かける。リスクは中国が負わなければならない。中国が中東に積極的に関与するということは、宗教や民族など様々な理由から怨念が渦巻き、複雑で、世界一危険とみられる場所に足を突っ込むということなのだ。

【私の論評】中国は中東への危険な一歩を歩みだした(゚д゚)!

米中間の覇権争いが激化する中、米国の中東での最大の同盟国であるイスラエルが2020年にも中国との間で自由貿易協定(FTA)を締結する見通しになりました。関係者が明らかにしました。実現すれば、中国が中東・欧州で影響力を拡大するための一歩となります。シリア駐留軍撤収で米国の存在感が薄れる中、中東での米中の勢力図も変化しそうです。

中国とイスラエルのFTA交渉は2016年から続いており、最新の交渉は約1カ月前に行われました。両国のFTA締結に向けた動きは、両国の蜜月関係を浮き彫りにしています。

ブルームバーグのまとめによると、米国はイスラエルとの貿易総額で中国をなお上回っているものの、イスラエルからの対米輸出は15年以来、年々減少。この一方、同期のイスラエルからの対中輸出は7割近く増加しました。

中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を進める上で中東を欧州・アフリカ市場進出のための足掛かりとして重視しています。中東との関係強化の軸足を経済に置いており、今や中東最大の投資国です。米中対立が激化する中、アラブ首長国連邦(UAE)など中東の親米国が中国と敵対関係になることを避ける狙いもあります。


中国の習近平国家主席は昨年9月下旬、北京を訪問していたイラクのアブドルマハディ首相と会談し、緊張が続くイラン情勢について、「関係当事国は行動を自制し、平和的に問題を解決しなければならず、必要に応じて中国はすべての関係各国と協議を行う用意がある」と表明しました。

また、アブドルマハディ首相は、中国が進める経済圏構想「一帯一路」に新たに参加することを表明しました。昨年の両国間の貿易額は300億ドルを超えるなど、近年両国間の経済関係は深まっています。今後、イラク再建に向け、経済や社会インフラ、文化や治安など多方面での中国からの支援が加速するといいます。

イラクというと、冷戦以降、常に米国による戦争の最前線でした。政治的な米国の関与のイメージがどうしても強いですが、今後、中国とイラクの関係が米国の政策にどう影響を与えるのかが注目されまする。

中国はアラブの盟主であるサウジアラビアとの結びつきも強めています。習近平氏は昨年2月、北京を訪問したサウジアラビアのムハンマド皇太子と会談し、経済分野での連携をさらに強化することで一致しました。

ムハンマド(左)と習近平(右)

具体的には、中国の一帯一路構想と、ムハンマド皇太子が主導する2030年までにサウジを近代国家にするための国家目標「ビジョン2030」とのコラボレーションを緊密にし、中国が製油所の建設などでサウジアラムコに100億ドルを投資することなどが決定されました。昨年には、中国にとってサウジアラビアは最大の石油供給国となりました。

また、サウジアラビアは9月下旬、日本や中国など約50ヶ国に対する観光ビザの発給を開始しました。ムハンマド皇太子のもと、サウジアラビアは「脱石油」政策と経済の多角化を進めており、観光業を含み、今後いっそう両国の経済関係が深まることが予想されます。

ただし、中国は同地域の米国の軍事活動を阻害しないよう配慮しています。シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)はリポートで「中国は米国が主導する中東での安全保障構造へ挑戦することや、同地域の政治で主要な役割を果たすことに対して強い意欲を示していない」と指摘しました。

それでも米国は中国の動きを警戒しており、中国、イスラエル間の経済関係強化は波紋を広げることになりそうです。米国はイスラエルが中国の投資に対して十分な調査を行っているかどうか、第5世代(5G)移動通信システムのインフラ整備をめぐる中国の影響を抑制しているかについて神経をとがらせています。

また、米国海軍第6艦隊が寄港することのあるハイファ港をめぐり、中国国営企業が同港に関与することについて懸念を表明しています。

米中の板挟みとなるイスラエルは難しい対応を迫られています。テルアビブ大学の国家安全保障研究所のイスラエル・中国プログラムの責任者であるアサフ・オリオン氏は「中国との貿易を続ける一方で、米国との同盟関係を裏切ることがないよう、適切な線引きをしなければならない」と説明しました。

米国の圧力を受け、イスラエルは安全保障の観点から外国企業による投資の可否を審査する諮問委員会を設置したばかりです。しかし、その一方で中国とのFTA締結に動いている事実は、米国と安全保障をめぐる懸念を共有しつつも、中国との通商関係を強化するというバランス取りに苦慮している姿勢を浮き彫りしています。

こうした中でイスラエルが計画通り対中FTAを締結できるかどうかは予断を許さないです。イスラエル経済産業省のコーエン外国貿易局長は「対中交渉はいわば“ハーフタイム”にあり、米中双方との市場アクセス拡大に注力している。わが国は象同士のけんかを見ているネズミのようなものだ」と話したとされています。

一帯一路構想によって中国と中東諸国の経済的な結びつきが強まれば、今後何が生じるのでしょうか。

一つに、中国の中東接近によって、中東地域における米中摩擦が増えるかもしれないです。中東は地理的にアジア、欧州、アフリカの真ん中に位置し、中国が進めるシルクロード経済ベルト上にあります。中国による展開が進めば進むほど、米中摩擦の可能性は高まるでしょう。中国は、表立って米国との政治的対立は避けようとするでしょうが、今後の中東情勢において大きな利害関係者になるかもしれないです。

それにしても、やはり中国の中東における経験と知識の不足という壁が立ちはだかったいます。これが中国の実態です。中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもあります。

そもそも、イスラム教の本質など中国人の多くはほとんど理解していないのではないでしょうか。私達の先進国の人間が、想定する平和とは、戦争のない状態です。少なくとも、中国でもこの考えは、先進国と変わらないかもしれません。

ところがイスラム教の想定する平和は、これとは随分違います。いくら戦争がなくてもイスラム教が世界を支配していない場合は平和ではなく、だからその平和を実現するために戦い続けなければならないというのがイスラムの考えで、これをジハードというのです。私達から見るとテロでも彼らから見ると宗教的な義務なのです。そういう観点からすると、イスラム教は平和の宗教ではありません。

テロも宗教的な義務

これは、意外と習近平の考えと会い通ずるところがあるかもしれません。なぜなら習近平も世界の新たな秩序、それにも中国の価値観でそれをつくりあげようとしているからです。

ただし、中国の国内のようなやり方で、中東でもゴリ押しすると、とんでもないしっぺ返しを食らうかもしれません。東南アジアでやっているように、多額の借款で中東諸国の港や、施設などを取り上げる等のことをすれば、それこそテロの標的になるということも十分考えられます。

さらに、先日もこのブログでも解説したように、これだけ困難な地域であるにもかかわらず、それに対する見返りとしては、石油だけということができます。そもそも、中東で一番豊かな国ともみられているサウジアラビアですら、そのGDPは日本の福岡県と同程度です。

中東全部をあわせても、GDPということでは、九州全体にも満たないのです。私自身は、米国がこの地域への関与を弱めることが大正解だと思います。無論、トランプ氏にとって大きな選挙基盤でもある、米国福音派は、イスラエルを守ることは米国の義務であると考えているようで、そのためトランプ氏はすぐに中東からの関与をやめてしまうということはないです。

ただし、日本としては石油の大部分をこの地域から輸入しているわけですから、米国とは事情が異なります。日本が普通の国であれば、米国よりもさらに、中東に関与を深めていたかもしれません。それこそ、今頃米国にとって変わろうとしていたかもしれません。ただし、イスラエルと米国の関係は日本も無視はできません。

しかし、そのイスラエルが中国との関係を強化しようとしているのですから、これはトランプ大統領にとっても、中東からの関与を減少させることに間する良い言い訳にもなるかもしれません。

中国やロシアが中東に拘泥して、体力を消耗させるようにもっていき、トランプ大統領は、やはり中国との対峙に再優先順位を置き、中国の体制変換を促すか、それが不可能であれば、中国の経済が衰退して、他国に影響を及ぼせなくなるくらいまで、冷戦を継続すべきです。

中国は中東への危険な一歩を踏み出したようです。本当は、一帯一路のため中東がどうのこうのなどということなどは捨て置き、冷戦に対する備えをすることを最優先すべきです。習近平は未だ、米中冷戦はいずれ終焉し、米中は元通りなるという甘い幻想を捨てきれないようです。

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2020年1月21日火曜日

米国やイランも歓迎なのに…海自中東派遣に反対の野党 韓国外交は板挟みで迷走中 ―【私の論評】中東海自派遣には、いずれの国も反対していない。反対するのは日本の野党のみ(゚д゚)!

米国やイランも歓迎なのに…海自中東派遣に反対の野党 韓国外交は板挟みで迷走中 
高橋洋一 日本の解き方

中東に派遣された海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」

 海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機が中東に派遣された。その意義と、中東情勢において日本の果たす役割について考えてみたい。

 イラン沖のホルムズ海峡は、狭いところが33キロしかない世界海上交通の要衝だ。特に日本にとっては、この海峡が封鎖されると、石油の輸入の大半が絶たれてしまう。

 経済産業省の「石油統計」によれば、日本の原油輸入元として、2018年時点でサウジアラビア(38・0%)、アラブ首長国連邦(25・4%)、カタール(8・1%)、クウェート(7・6%)と上位4カ国で約計79%を占める。欧米の中東依存度が2割程度であるのと比べても比重が大きい。日本の1次エネルギー国内供給の4割は石油であり、その8割がホルムズ海峡に依存しているので、同海峡は日本のエネルギーの生命線といってもいいだろう。

 現在、米国とイランの間で一触即発の緊張関係が続いている。もし万が一ホルムズ海峡で有事になると、日本経済への打撃は他の欧米諸国の比でない。

 日本のタンカーはホルムズ海峡を日々通過しているが、その安全が確保されない場合、どのように対処すべきか。

 ロジカルには、(1)自衛隊の単独派遣(2)他国との協力(3)静観-である。このうち、(2)の他国との協力では、米主導の欧米の有志連合への参加以外の選択肢は今のところない。

 一部の野党は、(1)にも(2)にも反対なので、結果として(3)の静観ということになる。かつて一部の野党は、「石油が日本に入らなくてもたいしたことはない」と豪語していたが、論外だ。国内の石油備蓄は200日分以上もあるので、備蓄がある限りは日本経済はなんとか持ちこたえるが、それがなくなると苦境に陥るのは、過去の石油危機をみればわかることだ。

海自中東派遣に反対の立憲民主党枝野代表

 筆者は、あるべき対応として、(3)は論外として、本コラムで(1)を勧めてきた。日本の米国とイランに対する立ち位置を考えたときに、(2)の有志連合では対イランとの関係でまずいからだ。安倍晋三政権は常識的な判断として(1)を選択した。

 この方針は、米国にもイランにも支持されている。今回、安倍首相は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーンを歴訪した。中東での平和外交であり、タイミングは絶妙だ。しかも、その成果として、(1)について、これらの諸国の賛同を取り付けた。

 一方、韓国外交はこの問題で迷走している。当初は有志連合への参加方針だったが、イランから恫喝(どうかつ)され、米国からは有志連合への早期参加を催促され板挟みになった。日本は早い段階で(1)を決めたのと好対照だ。

 今回の安倍首相の中東歴訪は、オマーン国王死去にも重なり、弔問外交にもなった。喪に服するという意味で中東には一時的に紛争が起きにくい状況なので、この好機に日本主導で中東和平ができるかもしれない。これは、米国とイランの両方にパイプを持っている安倍政権しかできないことだ。まさに正念場である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中東海自派遣には、いずれの国も反対していない。反対するのは日本の野党のみ(゚д゚)!

私は野党がなぜ、海自中東派遣に反対するのか全く理解できません。そもそも、民間のタンカーが危険な地区に行くのは問題がなくて、海自がその地区に行くことは反対というのは理解できません。

中東に派遣された海自のP3C哨戒機

たとえば、武装した敵に包囲されていて、それでも日々に必要な水を包囲した敵の近くの水場まで汲みに行くのに、主婦や子供などに水を汲みにいけというのでしょうか。まともな感覚であれば、もし身近に軍人や、警察などがいれば、それらに行かせるか、あるいは水汲みをする人たちの警護に当たらせるのではないでしょうか。

自衛隊を中東派遣すると「イスラムに嫌われる」などと報道されていますが、あれは全くの欺瞞です。中東の産油国にとっても海路の安全確保は極めて重要です。

タンカーがミサイル攻撃されるとか、海賊に襲われることはあってはならないということで、日本と産油国の利害は一致しています。そもそも、日本を敵視するイスラムとは誰のことなのでしょう。IS、アルカイダ、それとも海賊なのでしょうか。

日本はテロリストや海賊のご機嫌を取るために、自衛隊を派遣しない方が良いというのでしょうか。彼らは自衛隊を派遣しようとしまいと日本を敵視しています。自衛隊を派遣すると中東諸国に嫌われるという発言はいろんな意味でまともではありません。

それにしても、安倍総理がこのタイミングで中東歴訪したことは良いことでした。サウジアラビア、UAE、オマーンに行って皆さんと同じように海路の安全確保が大事だと考え、自衛隊を派遣しますと直接伝え、相手からも同意を得た上で海自を中東に派遣したのです。

サウジアラビア・ウラー近郊でムハンマド皇太子(左)の歓迎を受け握手する安倍首相=1月12日

一方、上の記事では韓国外交はこの問題で迷走しているとしていますが、韓国もとうとう中東に艦艇を派遣することを決めました。

韓国政府は21日、中東・ホルムズ海峡への独自の海軍部隊派遣を決めたと発表しました。海賊から韓国船を保護する目的でソマリア沖・アデン湾へ既に派遣されている部隊の活動範囲を一時的に拡大します。米国が求めていたホルムズ海峡の安全確保を目指す有志連合には参加せず、必要に応じて協力するとしています。

米韓間では最近、北朝鮮への韓国人の個人観光を進めたい韓国と難色を示す米国との溝が深まっています。文在寅政権としては、米側の派兵要請に応じることで懸案を減らしたい考えとみられますが、支持層が反発する可能性もあります。

いずれにせよ、韓国ですら派遣を決めたのです。日本の一部の野党は、これをどう捉えるのでしょうか。

海上自衛隊の護衛艦による警護を希望する船舶は約2600隻にのぼるといいます。これは、アデン湾を航行する日本関係船舶の年間隻数にほぼ匹敵するそうです。

海賊発生件数が多発した2010(平成22)年には、219件の襲撃があり49隻が乗っ取られ、1181人が人質にされました。ニュースとしてしばしば取り上げられ、翌2011年にピークに達し237件も発生しました。

しかし、2012年には80件弱となり、2013、2014年はひと桁、2015年には遂にゼロになったことからも劇的に状況が改善しました。

世界各国が手を携え、軍艦や自衛艦などを派遣し根気強く洋上の監視を行い、海賊という共通の脅威に対抗した結果がもたらしたものです。

今回の派遣は海賊対処に加えて日本関係船舶の安全航行のためで、ジブチ基地沖のアデン湾からアラビア海北部、そしてホルムズ海峡(含まない)に繋がるオマーン湾まで、正しく日本列島に匹敵する広範囲に及びます。

国家存立の基本であるエネルギーは、輸入先や資源の多様化が叫ばれて久しいですが、原油の中東依存は1970年代の石油危機時よりも増大し88%にも達しています。

北海道では、昨年ブラックアウトがあつたばかりですが、石油がなくなれば、あのようなことも起こりえます。北海道では2、3日のことですみましたが、長期にわたってあのような事態が起これば、大変なことになります。それこそ、死人がでかねません。

他方で、ドナルド・トランプ大統領は、米国はエネルギーを他国に依存する必要がなくなったと宣言しました。

このことからは、米国の中東関与も逐次縮小が予測され、日本は自らエネルギー安全確保の必要性に迫られることになりました。

このことからも、自衛隊の活動の礎をしっかり確立することが直近の課題であり、現行憲法範囲内でもできることはすべて行うという姿勢も重要ですが、将来的には憲法の見直しが不可欠です。

その意味で、野党の自衛隊の安全のため、中東への派遣は中止すべきという提言はあまりに近視眼的なものであり、とうてい日本の安全保証をまともに考えているとは思えません。

私には、彼らは倒閣のため、国民の安全を犠牲にしているとしか思えません。

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2020年1月20日月曜日

米中貿易「第1段階合意」を中国はマジメに履行しない―【私の論評】習近平は、未だ米国による対中国冷戦は米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いている(゚д゚)!

米中貿易「第1段階合意」を中国はマジメに履行しない

<米中両国が先週、貿易問題の「第1段階合意」文書に署名したことは世界を安堵させた。しかし習近平政権はこの合意を「ほどほど」にしか履行しないだろう>

劉鶴副首相(左)は微妙な表情でトランプ大統領と握手(1月15日、ワシントン)

米中両国政府は今月15日、貿易問題に関する「第1段階合意」の文書に署名した。この第1段階の合意には、(1)知財保護(2)技術移転の強要禁止(3)農産品の非関税障壁の削減(4)金融サービス市場の開放(5)通貨安誘導の抑止(6)輸入拡大(7)履行状況の検証――といった7項目が盛り込まれている。だが、先月16日に本サイト掲載の拙稿がすでに指摘しているように、それらは全て中国側が履行義務を一方的に負う性格の合意内容である。

例えば(1)知財保護は当然、中国側がアメリカの要求に応じて知的財産権に対する保護を約束したことであり、(2)技術移転の強要禁止はすなわち、中国側がアメリカの要求に応じて、今までの悪しき慣行である外国企業に対する技術移転の強要を止めていくことである。(4)金融サービス市場も当然、中国が外国の金融機構に対して国内市場を開放することを意味している。そして(6)輸入拡大で中国は今後2年間に2000億ドル分のアメリカ製品を追加で購入することを約束させられた。アメリカの一方的勝利である根拠

筆者が中国商務省の公式サイトで公表されている合意文書の中国語版を確認したところ、文中で「中国側が〇〇すべき」と規定された箇所は82にも上ったのに対し、「アメリカ側が〇〇すべき」というのはわずか4カ所しかない。合意事項のほとんどは中国側が履行義務を背負うものであることがよく分かろう。

一方のアメリカ側が合意の達成において「すべき」ことの内容は、去年の9月から1100億ドル分の中国製品に課している15%の制裁関税を半分の7.5%に減らす、というだけである。それ以外の2500億ドル分の中国製品に課している25%制裁関税はそのまま据え置きにされる。

結局アメリカ側は、中国に対する制裁関税の大半をそのまま維持しながら、中国側からは2000億ドル分の米国製品の購入や知的財産権への保護や金融サービス市場の開放などの約束を取り付けることに成功した。どう考えてもアメリカの一方的勝利である。

中国側が手に入れた最大の成果は、合意によってアメリカが中国製品に対して新たな制裁関税を発動する可能性は当分の間なくなるので、貿易戦争のさらなる拡大は避けられる、というところにある。とはいっても勝者はやはりアメリカである。第1段階合意はアメリカとトランプ大統領にとっての勝利であるからこそ、大統領はホワイトハウスに米政界・財界の要人たちを200人も招待して盛大な署名式を行い、得意満面の風情で自ら文書に署名した。一方の中国側にとっては、アメリカの諸要求を一方的に呑まされたこの合意内容は単なる敗北というよりも屈辱的な降伏、「城下の盟」というべきだろう。屈辱の合意だからこそ、習近平国家主席は署名式には出席せず、副首相の劉鶴を派遣して代役をさせた。それは当然、国家元首としての習の体面と権威を何とか保つための必要最低限の措置だろう。以前、劉が貿易協議の中国側代表としてアメリカを訪れる時、「国家主席特使」という肩書を付けることが多いが、今回はその肩書もない。習と今回の屈辱的合意との関係性を極力薄めたいという中国政府の思惑が見え透けている。

中国政府にとって、副首相の劉をアメリカに派遣して署名させたことにはもう1つの政治的効果があった。自国の副首相がホワイトハウスで、アメリカの国家元首たるトランプとあたかも対等であるかのように文書に署名したことで、中国政府は一般国民に「中国が優位である」との錯覚を与えることができた。実際、テレビを通してこの光景を眺めた多くの中国人ネットユーザーは一斉に「中国が凄い!」と興奮し、合意の内容とは関係なくいい気分になっていたようだ。

米中の「第1段階の合意」はこれで成立したが、今後の最大の問題は中国政府がこの合意内容をきちんと履行していくのかどうかにある。

そして私の結論は、それは今年11月のアメリカ大統領選の結果次第である。

一体どういうことか。合意内容の一つである、中国側が約束した追加2000億ドル分の米国製品の購入を例にとってみればわかりやすい。

米大統領選に潜む大きな「抜け穴」

合意に従って、中国は2020年と21年の2年間で、農産物・エネルギーなどを含めた米国製品を追加で2000億ドル分を買うこととなっている。しかし一部の経済紙や専門家が分析したように、その完全履行は中国にとって極めて難しい。経済の減速に従って中国の国内需要がむしろ減っていく中で、今までの輸入ペースを維持した上でさらに米国製品を追加で大量購入するのは、国内需要の面からしても購買能力の面からしてもかなりの無理を強いられる。

その一方、明確な数値目標が決められているこの約束の履行を、中国がごまかすのも結構難しい。履行しなければ、トランプ政権はいつでも中国に対する制裁関税の追加や引き上げを実行する。

それでは中国はどうするのか。実は中国にとって幸いなことに、「2年間で2000億ドル分の米国製品を買う」という約束には、米大統領選と絡む1つの大きな抜け穴がある。

この抜け穴とはすなわち、「2年間で2000億ドル分を買う」との約束はあるものの、最初の1年間、つまり2020年の今年にどれほど買うべきかは必ずしも明確に決められていない、ということである。

そうすると中国側はずる賢い方策を取ることができる。今年1年間、つまり米大統領選の結果とは関係なくトランプ大統領が確実に政権の座にいるこの1年間は、中国は約束した米国製品の購入を部分的に履行していく。例えばこの1年間で数百億ドル分の米国製品の追加購入を何とかして実現すれば、それでトランプ大統領のご機嫌を損なうことなく、合意を履行していることにもなる。

しかしその代わりに、年内に2000億ドル分の米国製品の半分以上を買うようなことは絶対しない。約束の「2000億ドル分米国製品購入」の大半をさまざまな理由をつけて来年の2021年に回す。そして今年11月まで大統領選の行方を見極める。「バイデン当選」は中国のチャンス

もしトランプが落選すれば、来年1月には新政権が誕生する。新政権は当然民主党政権になるが、もし運良く親中のジョー・バイデン前副大統領が新しい大統領になれば、それこそ中国にとっての起死回生のチャンスとなる。

来年1月に新政権が成立すれば、中国はトランプ政権と交わした「第1段階合意」の履行を渋ったり停止したりできる。前述のように、第1段階合意の諸項目はすべて中国が履行していくものだから、中国が状況に応じて履行を止めることも簡単にできる。その際、第1段階合意の破棄を明確に宣言する必要はまったくない。中国側が履行を止めていれば「合意」はその時点で死ぬのである。

その場合、中国に対してアメリカが取り得る唯一の制裁手段はすなわち制裁関税の引き上げあるいは追加拡大である。しかし、中国に圧力をかけるために、中国製品に対して大規模な制裁関税をかけるというやり方はそもそもトランプの発明であって、トランプだからこそ取れる強硬手段・非常手段である。新しい大統領が今のトランプと同じような強硬手段を取るかどうかはかなり疑問であろう。おそらく、新大統領が「第2のトランプ」でなければ、中国との貿易戦争の拡大にはなかなか踏み切れない。それこそ中国側の期待する展開である。

その際、今の第1段階合意の履行を一旦止めてから、アメリカの新政権との間で「自由貿易」の理念に基づく新たな貿易協議の再開を呼びかけ、米中間の貿易枠組みの再構築を目指すのが中国の新戦略となるであろう。それによって中国は、今のような悪夢の現状から脱出できる。

もちろんそれはトランプが再選を果たせないという前提であって、中国側の一方的な甘い期待ではある。しかし今の習政権には、そう期待する以外に難局打開の方法がない。トランプ政権との間で最初から履行困難な「第1段階合意」に署名した以上、この厄介な政権の早い終結に賭けるしかない。理論的には、この賭けの勝算は50%程度あるはずである。

しかし、もしトランプが再選を果たして来年からも引き続き大統領であるなら、中国は一体どうするのか。おそらく習政権とっては、それはそうなった時に考える問題で、今の緊急課題ではないのだろう。習政権にとっては、米国製品をほどほどに買うことで少なくとも今年いっぱい貿易戦争のさらなる拡大を避けることができれば、それはまず大いなる成果なのである。

第1段階の米中合意を「ほどほど」にして履行していくというのはおそらく、米国製品の購入だけでなく、他の合意内容の履行でも中国側の戦術となろう。知的財産権の保護にしても外国企業にたいする技術移転の強要にしても、中国は年内には今までの悪行をある程度控え目にしてアメリカに「改善」の実績をつくって見せるだろう。そして来年になって別の政権がアメリカで誕生するのであれば、最初から検証可能な数値目標のないこれらの合意事項の履行を放棄するのはいとも簡単である。

「第2段回の合意」はもはやない

第1段階の合意について結論を言えば、今年いっぱいは中国も米国製品の大量購入を含めた合意事項をある程度履行していくだろう。だが、来年になってどうなるのかは米大統領選の結果次第である。トランプが再選すれば、中国は苦しみながらも合意を履行していくしかないが、来年1月にアメリカの政権が変わった場合、中国が合意不履行に踏み切る可能性は大である。

後者の場合、米中間の貿易戦争となるのかどうかはアメリカの新政権・新大統領の考え方と政治スタイルによるので、今のところ予想は不可能だ。

最後に1つ付け加えれば、いわゆる「米中貿易第2段階の合意」は大統領選前はもはやないと考えた方がいい。選挙前の「第2段階の合意」が不可能だからこそ、双方は「第1段階合意」で手打ちしたわけである。今後の問題はむしろ、この「第1段階合意」がきちんと履行されていくのか、にある。

【私の論評】習近平は、未だ米対中冷戦は米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いている(゚д゚)!

弾劾訴追を受けたアメリカ史上3人目の大統領になったにもかかわらず、ドナルド・トランプの再選の可能性が急上昇しています。トランプ氏には旧来に政治的な思考などは通じません。いま米国では、大くの識者らが、トランプが2期を務め上げる連続で4人目の大統領となる確率を50%近いと見積もっています。

トランプ再選の可能性が高いとみる根拠は、2つあります。第1に米国経済が好調であることです。株式市場は上昇を続け、失業率は低下を続け、消費は増え続けています。高くあるべき指標は高く、低くあるべき指標は低いのです。

トランプ大統領は2020年の始まりを、歴史上記録にある中でどの大統領の同時期より低い平均失業率を取り仕切ったという実績で飾っています。

10日、労働統計局は12月の失業率が3.5パーセントという歴史的な低さを維持したと報告しました。トランプの大統領就任からまる1カ月後の2017年2月以降、毎月の失業率の平均は3.9パーセントでした。就任してから35カ月の間に平均4パーセントを下回った大統領はこれまでいませんでした。最も近かったのはドワイト・アイゼンハワーで、1953年2月から1955年12月までの間の平均は4.3パーセントでした。(下表参照)


ちなみに雇用は景気の指標の中でも、最も重要なものであり、たとえ他の指標が悪くても雇用に関する指標である、失業率が低ければ、及第点といえるほど重要なものです。

景気拡大期に行われた直近の12回の大統領選では、現職大統領が常に2期目を目指し、常に勝利を収めています。経済がこのまま好調を続ければ、民主党がトランプを退けることは極めて難しいです。

トランプ再選の可能性を支持する第2の根拠は、民主党がトランプに優る選択肢を提示できていないことです。

いま民主党の大統領候補指名争いの先頭集団には、4人の有力候補がいます。ジョー・バイデン前副大統領は全米の支持率調査で首位を維持しているが、77歳と高齢であることが深刻な弊害を露呈しています。選挙活動で訪れている州の名を頻繁に間違えたり、討論の最中にとりとめのない発言をしたりという具合です。

民主党の候補者が勝った場合、通商面で不確実性がなくなるかもしれないですが、人権問題で中国との関係がより厳しくなる可能性があります。

候補指名を目指す20人のほとんどは、トランプ氏が中国と関税を掛け合うことで農家や消費者、企業が痛めつけられていると批判するものの、ではどんな別のやり方をするのかについて意見が統一されていません。

結果として国際金融市場が動揺し、米消費者が中国からの輸入品価格上昇に直面したり、農家が最大の輸出市場を失う事態になっているのに、各候補者から出てくるメッセージは付け焼刃的であったり、時には支離滅裂な内容にとどまっています。

トランプ氏の側近らは、同氏の中国に対する強硬な態度は支持基盤を離反させず、むしろ活気づかせると主張しています。ただ貿易戦争での中国の報復措置により、与野党の支持が伯仲しているウィスコンシンやペンシルベニア、ミシガンなどの農家や製造業が2年にわたって痛手を受けており、トランプ氏にとって対中戦略が再選のより大きなリスクとなってきた様相です。

一方民主党も議会ではずっと中国に批判的で、米国の経済と安全保障が脅かされているとの立場を取ってきました。そこで大統領選に出馬した面々は、強引なトランプ氏と同じ手法とみなされることを避けつつ、独自の対中強硬策を打ち出すことに苦労しています。

対中通商政策はそのまま、民主党内の穏健派と急進派の相違も浮き彫りにしています。例えば穏健派でインディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏やベト・オルーク元下院議員は、トランプ氏が導入した関税の完全撤廃に動こうとしています。逆に急進派のバーニー・サンダース上院議員は関税が中国を屈服させる有効な武器だと評価し、エリザベス・ウォーレン上院議員が示した通商政策はトランプ氏と同じぐらい保護主義的と受け止められています。

対中強硬路線を崩さないトランプ大統領

それでも民主党の大統領候補指名を目指す人々の大半は、そのイデオロギーが何であれ、中国問題に慎重な態度を崩していません。

何しろピュー・リサーチセンターが8月に実施した世論調査では、米国民で中国に負の感情を持っている割合は60%と、昨年の47%から上昇したのです。トランプ氏の中国たたきに効果があるという証拠が出ています。

実際、16年の大統領選でトランプ氏が一気に台頭した原動力は、同氏が中国への敵意を示し、対決を約束したことでした。また米国内で工場の仕事がなくなり、地域経済が停滞するのを目にした多くの有権者の共感を呼んだのが、グローバル化や自由貿易に対する同氏の露骨な反感です。

トランプ氏はそうすることで、グローバル化は米国の労働者を犠牲にして多国籍企業を太らせている、というサンダース氏やウォーレン氏らの進歩派がずっと掲げてきた主張を取り込んだのです。

米国民が反中国のメッセージを待ち構えているのは間違いないです。しかし民主党側の出すメッセージは巧みで戦略的でなければならないです。さもないとトランプ氏に主導権を渡すことになるでしょう。この面で民主党の候補指名レース参加者が差別化を図るのは簡単ではなく、サンダース氏やウォーレン氏の通商問題に関するメッセージは、トランプ氏と違うとは一般有権者にみなされていません。

甘い期待を抱く習近平

以上のようなことを考えると、トランプ氏の再選が50%以上であると見るほうが良いでしょう。さらに、仮に番狂わせが起こって、民主党の候補者が大統領になったとしても、議会は超党派で、中国強硬派が多く、しかも民意も色濃く反中的であることから、次の大統領も中国に対峙し続けることでしょう。

トランプの再選がなかったにしても、米中関係が元のようになることは考えられず、習近平は引き続き厳しい対応に迫られることでしょう。

習近平は、未だ対中国冷戦はトランプ政権がどうのこうのではなく、最早米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いているようです。

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米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由―【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!





2020年1月19日日曜日

日米安保60年 トランプ大統領が同盟の意義を強調―【私の論評】日本は米国有事の際に、憲法上・実力上で何ができるのかを明確にすべき(゚д゚)!


20カ国・地域首脳会議(G20サミット)閉幕後に記者会見する
アメリカのドナルド・トランプ大統領=昨年6月29日、大阪市内
日米安全保障条約の改定から19日で60年となるのに合わせ、アメリカのトランプ大統領は「60年にわたり両国の強固な同盟関係は世界の平和、安全、繁栄に不可欠なものだった」などとする声明を発表しました。

1960年に改定された今の日米安全保障条約は、19日で署名から60年となります。

これに合わせ、アメリカのトランプ大統領は18日、声明を発表しました。

この中でトランプ大統領は、「過去60年にわたり、両国の強固な同盟関係はアメリカ、日本、インド太平洋地域、そして世界の平和、安全、繁栄に不可欠なものだった」と同盟の意義を強調しています。

そのうえで、「安全保障をめぐる環境の変化が続き、新たな課題が生じる中で、日米同盟を一層強化し深めることが不可欠だ。今後、相互の安全保障への日本の貢献がさらに増し、同盟関係が引き続き発展していくと確信している」として、日本のさらなる貢献に期待を示しました。

日米同盟をめぐっては、アメリカ国務省のオータガス報道官が17日、NHKとの単独インタビューで、「負担は公平でなければならない」と述べるなど、トランプ政権はことし夏にも本格化する見通しの日本とのアメリカ軍の駐留経費をめぐる交渉で、日本に対しさらなる負担を求めていく姿勢を示しています。

【私の論評】日本は米国有事の際に、憲法上・実力上で何ができるのかを明確にすべき(゚д゚)!

昨年の大阪でのG20後に米国のドナルド・トランプ大統領は、板門店を訪れ金正恩・朝鮮労働党委員長と電撃会談しました。それに先立つ6月25日、米ブルームバーグ通信がトランプ大統領による「日米同盟破棄発言」を伝えました。

記事によればトランプ大統領は、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束するが、米国が攻撃された場合は日本の自衛隊による支援が義務ではない日米安全保障条約について「あまりにも一方的だと感じて」おり、「日米安保を破棄する可能性」について側近に漏らしたといいます。


トランプ大統領は同月29日、G20サミット閉幕後の記者会見でも日米安全保障条約について「不公平な条約だ」と不満を表明し、安倍晋三・首相に対し「片務性を変える必要がある」と伝えたことを明かしていました。

もし「日米同盟破棄」が現実となれば、日本の外交・防衛は抜本的な見直しを余儀なくされることになります。

1960年に締結された日米安保条約では、米国は日本の防衛義務を負います。その代わり、日本は在日米軍基地や空域を提供し、さらに年間約2000億円という巨額の米軍駐留経費を負担しています。

在日米軍が撤退するとなれば、米軍駐留経費の負担はなくなるものの、日本は隣国の脅威に一気に晒されることになります。

中国は今でも沖縄・尖閣諸島周辺の日本領海への公船の侵入を活発化させています。もし東アジアにおけるアメリカの最前線部隊である在日米軍がいなくなれば、中国人民解放軍は即座に尖閣諸島強奪作戦を開始する可能性があります。場合によっては沖縄まで標的になるかもしれません。

それに乗じて北朝鮮やロシアも一気に動き出すでしょう。中国を敵に回せば国連の安全保障理事会は機能しません。自衛隊の戦力だけで侵略行為をしのぎきるのは不可能です。米国を頼ろうにも、同盟破棄してしまえば積極的な介入は期待できません。2014年にロシアがクリミアに侵攻した時のように、中国に対して日本は軍事力は投入せず、抗議や経済制裁をするのみではないでしょうか。

そのような事態に備えるためには、現在5兆3000億円に膨れ上がっている防衛予算を、さらに上積みしなければならない状況も考えられます。トランプ発言ははったりだと見ておくべきですが、片務性を正したいという意思があるのは間違いないです。

仮に日米同盟が破棄されるならば、より重要度が低い米韓同盟も破棄され、在韓米軍も撤退する可能性が高いです。すると、韓国は中国と北朝鮮の影響下に入ることが、自国の安全保障につながると考えるでしょう。

米軍撤退によって野心を再燃させた北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が核・ミサイル開発に邁進しても韓国の文在寅・大統領では対応しきれず、日本は核の脅威に晒されることになるでしょう。

これまでの経緯を考えれば、トランプ大統領と金正恩委員長の「友好的演出」は一時的なものにすぎない可能性は十分にあります。再び北朝鮮が強硬路線に走り、韓国も反日姿勢を強めれば、まさに日本は四面楚歌状態です。

その中で求められるのは高度な外交手腕ですが、60年の長きにわたって日米同盟に依存するばかりだった日本の政治家や外交官に、各国と立ち回る能力があるかは疑わしいのが現実です。

トランプ大統領の「日米同盟破棄」にどれだけ現実味があるかは今のところ全くわからないです。しかし、仮にも米国の大統領が、日米両国の安全保障協力の基本を定める日米安全保障条約は「不公平」だ、と発言した事実は重く受け止めねばならないでしょうし、これは日本外交が「主体的な安全保障体制とは何か」を真剣に考える契機となったのは間違いないです。

そうして、冒頭の記事にもあるように、日米安保60年の今年、トランプ大統領は同盟の意義を強調しています。そうして、トランプ政権はことし夏にも本格化する見通しの日本とのアメリカ軍の駐留経費をめぐる交渉で、日本に対しさらなる負担を求めていく姿勢を示しています。

トランプ大統領は、来日前に米テレビが行った電話インタビューのなかで、米国が攻撃されても日本人はソニーのテレビでそれを見ているだけでいい、というようなことを話しています。安保条約の権利義務だけから見れば、あるいはそういうこともいえるかもしれません。

たしかに、2001年の9・11同時多発テロ事件においてわれわれ日本人は、世界の多くの人々と同様、米国が攻撃される様子を(ソニー製かどうかは別にして)テレビで見ました。

しかしテレビで見た後、何もしなかったわけではありません。すぐにテロ対策特別措置法を作り、アフガニスタン戦争でインド洋に展開する米軍への後方支援(米艦船への給油など)を行っています。

その時からすでに18年の時が流れましたが、この間の日米同盟の発展により、さらに常軌用は変わってきています。たとえば4年前の「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」再改定などを考えれば、次に米国が攻撃されるようなことがあった場合に、日本人がテレビを見ているだけで、米国防衛のために行動しないというのは、まったく非現実的な話です。

サンフランシスコ平和条約とともに1951年に締結された旧安保条約には、相互防衛の規定がなく、日本は米国に基地を貸すが、米国の日本防衛は米国の義務ではありませんでした。日本国内では、それは不公平だとの批判が高まり、1960年に条約が改定された際には、相互防衛の規定が設けられ、米国の日本防衛義務が明示されました(現行の安保条約第5条)。


それは良かったのですが、相互防衛の範囲は米国が提案した「太平洋」ではなく、日本政府が受け入れ可能と判断した「日本の施政の下にある領域」になり、米国の日本防衛義務に対する日本の米国防衛義務は、日本に駐留する米軍の防衛に限られることになりました。そうなると安保条約は今度は、日本が米国領土の防衛義務を負わない分、米国にとって不公平な条約に見えるようになるのです。

もちろん日本は、条約改定後も米国に基地を貸す義務を負い、実質的にはそれで、日米双方の義務のバランスがはかられたのはよく知られている通りです。しかし、こういう非対称なかたちの義務のバランスは双方に不満を生じさせやすいです。

有事になれば、自国の若者に血のリスクを負わせてでも相手国を守ることを約束する側は、同じことをしてくれない相手を尊敬せず、その一方、有事も平時も基地を貸し続ける側は、相手が基地の価値、そしてそのコストと危険を十分理解していないのではないかと疑う、そういうことになりやすいからです。

日米同盟の発展の歴史は、同盟の骨組みである安保条約におけるこの非対称な相互防衛協力を、さまざまな補助的取り決めによって補強し、日米双方に満足のいく相互性、また公平性の感覚を発展させることに努めてきた歴史だといえるかもしれません。

そして実際にその努力は、かなりの成果を上げており、もしいまの日米同盟が、安保条約でいう「極東」の平和と安全のためだけの同盟であるならば、安保条約は不公平だという批判に反論することは割と簡単です。

しかし、そこで忘れるべきでないのは、日本と米国が21世紀に入ってから、日米同盟を「世界の中の」日米同盟に発展させようしていることです。

戦後70年の節目に行われた2015年4月28日の日米首脳会談は、「世界の中の日米同盟」を高らかに宣言する舞台となりました。中国の覇権拡大という構造的な変化への対応を、アジア太平洋地域における最大で共通の戦略課題とする両首脳が、リバランス(再均衡)戦略と積極的平和主義との融合を図った形でもありました。

「相互依存、敬意、責務の分担…。『お互いのために』が日米同盟の本質であり、この同盟には世界へ向けた教訓が含まれている」

共同記者会見に臨んだオバマ大統領は、「お互いのために」という日本語を交え、こう強調しました。

2015年4月28日の日米首脳会談で協同記者会見に望む日米両首脳
そうしてトランプ大統領になってからは「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げるなど、同盟協力の範囲を大きく広げようとしています。

そうなると、安保条約は不公平だという批判への反論が少し難しくなります。米国の領土がそこに存在しない「極東」における同盟協力ではなく、それが存在する「世界」あるいは「インド太平洋」での協力となれば、日本が米国の領土防衛を約束していない、安保条約の義務の非対称性が目立ってしまうからです。

結局のところ、トランプ大統領の「不公平」発言が示すのは、日米同盟を真の意味で「極東」における同盟から「世界」における同盟に発展させようと思えば、米国の領土防衛義務を形式的に負わない、いまの安保条約のかたちには限界があるということなのでしょう。

だから改めた方が良いのかどうか、また改めるとしてどう改めるのかは、相手の意向もあり、さまざまな検討や議論が必要になるでしょうが、いざ米国有事となった場合、日本は米国を守るために、憲法上また実力上、できることは何でもやることを明確に約束する規定を含んだ、安保条約再改定の試案を準備しておくべきではないかと思います。

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2020年1月18日土曜日

トランプ減税2.0では中間層に思いがけない利益も:クドロー【私の論評】安倍政権は、古(いにしえ)の日本に思いを馳せ、まともな経済政策を早めに実行すべき(゚д゚)!


国家経済会議のラリー・クドロー委員長

<引用元:FOXビジネス 2020.1.17

トランプ、2期目ではさらに急速な経済成長を目指す

トランプ政権は中間層の減税という目標を達成する方法を検討し始めている。

給与税の低減はホワイトハウスのリストの上位ではないが、低・中所得者の勤労所得控除を調整することは検討対象となっている、と国家経済会議のラリー・クドロー委員長はFOXビジネスのスチュアート・バーニーに語った。

「我々はこれでさらに急速な経済成長率を目指したい。大統領の2期目に打ち出すものだ」とクドローは語った。

最新のデータが利用可能な期間として、2019年第3四半期の米国の経済成長率は2.1パーセントだった。成長率は2018年の第2四半期に4.2パーセントというトランプ時代のピークに達した。減税・雇用法の可決後のことだ。その法律で最高法人税率は35パーセントから21パーセントに引き下げられ、多くの米国人の個人所得税は削減された。

政権は児童税額控除を継続したいと考えているとクドローは述べた。2018年に2千ドルに倍増されたものだ。また、2017年の税制改革では期限切れを迎える、個人・企業両方の「一部の減税を永続化」することを検討していると述べた。もう1つの選択肢は、即時の経費計上を可能にすることであり、クドローはそれを企業の投資にとっての「とても強力なカンフル剤」と呼んだ。

減税提案は2月に提出されるホワイトハウスの予算の一部となる可能性がある、と事情に詳しい3人の人物がFOXビジネスに語った。だが税法の変更のような大きな法案を可決するのは、選挙の年には通常難しく、特に弾劾の混乱の中ではなおさらのことだ。

「トランプ大統領を再選させれば税率は低くなり、税金の負担は軽くなるだろう」とクドローは語った。

【私の論評】安倍政権は、古(いにしえ)の日本に思いを馳せ、まともな経済政策を早めに実行すべき(゚д゚)!

トランプ氏は、次の再選を目指してまた効果のある減税策で経済成長を目論んています。現在の世界の状況を見れば、このようなことをするのは当然のことと思います。選挙といえば、米国国民が行うものであり、他国の国民は関係ありません。

有権者の多くは、外交や世界情勢などよりまずは国内の暮らしぶりを良くしてもらいたいという願いを持っています。暮らしぶりが安定して、はじめて国家レベルや、国際レベルで物事を考えます。

それは、当然のことです。保守やリベラルと自称する人たちは、まずは国内政治に興味があるのかもしれませんが、日々働いて生活をしている一般国民は最大の関心事は、自らの暮らしぶりと、次に自分が携わっている仕事です。

そのようなことは、日本でも古から知られていることです。日本書紀にある「民の竈」の話など昔から語り継がれています。

仁徳天皇は「民のかまどより煙がたちのぼらないのは、貧しくて炊くものが
ないのではないか。都がこうだから、地方はなおひどいことであろう」と
仰せられ「向こう三年、税を免ず」と詔をされた

左翼や保守を自称する人たちの中には、それがビジネスになっている人たちもいます。そういう人たちが、政治を一番に考えるのも当然のことです。それは、一般の人々が自分の仕事を二番目に考えるのと同じです。

しかし、ビジネスリベラル、ビジネス保守の人たちが、一般の人々が政治への関心が低いことを軽蔑したり、何らかの行動を起こすべきと煽るようなことはすべきではありません。ビジネスで政治に関わるのと、一般人が政治に関わるのとでは、姿勢が違ってくるのは当然のことです。

一般の人々が様々な事業に従事して、各々が限られた範囲の中で専門性や能力等を発揮して、社会の隅々にまで、製品やサービスを提供して利益をあげたり、給料を頂いたりしているからこそ、この社会が成り立っているのです。

多くの人々が、自分の仕事を疎かにして、政治に走れば、社会は成り立ちません。そのようなことを防止するためにこそ、選挙制度があるのです。その選挙制度によって有権者が政治家を選び、多くの人々は政治はその人たちに任せるのです。

政治に関しては、一般の人々はアクション(行動)よりもリアクション(反応)という姿勢でいるのは当然のことなのです。ただし、一般の人々も選挙という制度を通じて、政治にまともに反応すべきであることは、いうまでもありません。

元々は不動産というビジネスをしていたトランプ氏は、このことを良くわきまえているようです。多くの人々の関心は、政治よりも自分たちの暮らしぶりであり、それを政府として改善できるのはまともな経済政策であるということを良く理解しています。

だからこそ、一期目に続いて二期目でも、なるべく効果がありそうな減税政策を実現しようとしているのでしょう。

日本とは異なり、まともな経済政策を実行する米トランプ大統領

昨年10月に消費税を10%にした日本とは全く異なります。いや、米国だけではありません。日本は世界の潮流からかけ離れています。

たとえば、インド財務省は昨年9月20日に法人税を減税すると発表しました。これまでインドの法人税は30%だったのですが、これを22%まで引き下げたのです。しかも2019年4月まで遡って適用したのです。

そうして、今年(2019年)10月1日以降に新規で設立された会社で、2023年3月までに生産を開始する企業の法人税率は、15%に軽減しました。これは、世界でも類をみないほど低いです。

これは合弁企業、つまりインドの国内企業だけではなく、外資系企業も対象になります。重要なのは、税控除を一切しないということです。日本で言うところの租税特別措置、大企業優遇策です。非常にシンプルでわかりやすい法人税制になります。ただ、このインドの減税政策は、米国のトランプ減税をそっくりそのまま真似しているのです。

いまの世界の流れは、他の国もそうですが、いかに税負担を低くするか、景気浮揚を図るかという方向に流れています。この状況で増税したのは日本だけです。

しかも、日本の場合は、増税するだけではなくて、軽減税率が複数あり、ポイント還元もあるので、結局は5通りの税率が存在すると言う事態になりました。これは、税制としては下の下です。シンプルで公平で、わかりやすいことが税制にとって必要なのに、全部が真逆です。軽減税率で線を引くにあたり、そこの裁量で権限が生まれてしまうことになります。

裏読みすると、わざと複雑にして批判をそちらに集め、増税そのものについて議論させないようにしているのではないかとさえ思えてきます。

今回の消費税増税は、特に中小零細企業にとってかなりの負担増です。どちらかと言うと、個人がお金を払う際のことばかり議論されていて、そういうところが置き去りにされています。世界が減税の方向へ向かっているのに、あのタイミングでやるべきことだったのでしょうか。日本だけが取り残されて、沈む可能性が出てきたと思います。

米中の関係も含めて世界経済が減速気味のところを、何とか各国は浮揚させようと頑張っているのにも関わらず、日本だけが増税です。「政府、特に財務省は、空気読めよ、何をやっているんだ」と言われても仕方ないです。

日本増税という税制と比較すると、インドの税制はかなり戦略的で、世界の工場の座を中国から奪うということを目指しています。これは相当大きなインパクトがあります。インドは、確かに社会的に遅れた面はありますが、曲がりなりにも政治体制は自由民主主義体制ですから、中国のように大きな政治的リスクはありません。中国の場合は政治的リスクがかなり大きいです。

そのため、マーケットから聞こえて来るのは、アップルがどうも生産拠点をインドに移す、その検討を開始したという情報です。まだ噂ですが、出ているのも事実です。その根拠として、インドの法人税減税があるのではないでしょうか。

インドモディ首相と安倍総理

法人税減税の話をすると、日本も消費税を上げてつつ、それを原資に法人税を下げているではないか、だから日本も戦略的だと言う人もいます。しかし、それにしては法人税も複雑怪奇すぎます。

しかし、税制はトータルで考えるべきです。何か1つだけ「下げた、上げた」で議論するのではなく、トータルでどうなのか、企業の税負担はどうなのか、なぜあの大企業はこれだけしか税金を納めていないのか、という議論を進めるべきなのです。

たとえば、サービス業はほとんど租税控除の特別措置がなくて、税金を多く払っているにもかかわらず、製造業の大企業は様々な特別措置があります。そのような企業が多く加盟している経団連企業の経営者などは「消費税ばんざい」というようなことを平気で言います。

これは、まったく公平ではありません。日本の場合、税制に関しては公正・シンプルという観点からは、全部真逆を行っているといっても過言ではありません。後々、大きなダメージになるのではないでしょうか。

特に、中小・小規模事業者によるキャッシュレス・ポイント還元事業は、消費税率引上げ後から2020年6月末までと期限があります。来年の秋頃からは、消費が一段と落ち込み、日本経済が確実に沈むと見られます。

そのような状態では、当然の多くの人々の暮らしぶりは以前よりは悪くなります。トランプ政権は一期目でも、公平でシンプルな税制改革で成功し、さらに中間層の減税に向けて準備をしているといいます。

トランプ大統領の弾劾裁判が開廷したため、日本ではトランプ氏の再選は難しいなどと主張する人もいるようですが、このブログでは過去に様々なエビデンスとともに、トランプ氏が再選する可能性が高いと評価してきました。

その中で、トランプ氏の税制への取り組みは最も評価できるところです。なぜなら、多くの人々にとっての再優先順位は自らの暮らしぶりだからです。そうして、ここではっきりさせておきますが、多くの有権者のこのような考え方や行動を軽蔑するような、政治家や保守・リベラルビジネスに携わる方々は、結局滅びの道を歩むことになります。

それは、米国だけではありません。日本も例外ではありません。安倍政権は、発足とともにアベノミクスを発動し、税制では失敗しましたが、発足当時から金融緩和を実行し、最近では引き締め気味ながら、緩和を継続しています。

そのため、雇用はかなり改善され今日に至っています。だからこそ、内閣支持率は今でも高いのです。特に若者からの支持は絶大です。しかし、この空前の雇用も、昨年の10月の増税で帳消しなる可能性が高まってきました。

そうなると、国民の暮らし向きは明らかに悪くことになります。

このことを念頭において、安倍政権には、来年の秋に景気が落ち込む前に、何らかの経済政策を実行して、人々の暮らし向きを改善していただきたいです。

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2020年1月17日金曜日

プーチン院政への布石か 経済低迷のロシア、政治経験ゼロのミシュースチンが首相に―【私の論評】プーチン院政は、将来の中国との本格的な対峙に備えるため(゚д゚)!


   ロシア下院は16日、内閣総辞職したメドベージェフ首相の後任としてプーチン大統領が指名した
   ミシュースチン連邦税務局長官(左)を賛成多数で承認した。2017年4月撮影

ロシア下院は16日、内閣総辞職したメドベージェフ首相の後任としてプーチン大統領が指名したミシュスチン連邦税務局長官(53)を賛成多数で承認した。これを受けプーチン氏はミシュスチン氏を正式に首相に任命した。

投票結果は、賛成383票、棄権41票。反対票はなかった。

ミシュスチン氏は連邦税務局のトップを務めた経験があるが、政治経験はほとんどない。首相に抜てきされるまで知名度は低かった。同氏は近く新内閣の組閣人事を発表すると明らかにした。

プーチン氏は15日、首相を含む政府の要職選定の権限を議会下院に移管することなどを柱とした「政治制度の大幅な改革」を表明、議会の権限強化に向け憲法改正を提案した。

新首相の任命を含め、今回の一連の改革は20年来政治を支配してきたプーチン氏が2024年の任期満了後も影響力を保持するための布石とみられる。

こうした中、ロシアの有力紙コメルサントは16日、プーチン氏の改革を「1月革命」と評した上で、今後さらに多くの変革が続くとの見通しを示した。

突然の内閣総辞職からわずか1日で新首相が誕生したことで、プーチン氏は、数年にわたる緊縮財政措置や年金受給年齢の引き上げなどに対する国民の不満に耳を傾けているということをアピールできる。

欧米諸国による制裁や原油価格の下落で国内経済が低迷するなか、国民の批判の矛先は2012年から首相を務めていたメドベージェフ氏に向かっていた。

実質賃金はここ5年下落し続け、政権支持率も落ち込む中、プーチン氏の支持率にも影響が出るとの懸念が浮上していたと専門家は分析する。

【私の論評】プーチン院政は、将来の中国との本格的な対峙に備えるため(゚д゚)!

プーチンは何のために、院政をするのでしょうか。それは、外交は全くの素人であり実績のないミシュースチン氏を首相に据えたとということで、予測することができると思います。

1966年生まれのミシュスチン氏はシステム工学を学んだ後、経済学の分野で博士号を取得した。税制改革には手堅い実績のある人物です。

プーチン氏は国内政治に関しては、ミスチュスチン氏にまかせて、様々な改革を実現させようとしているのです。さらに、ミスチュチン氏は仮に改革に失敗したとしても、面倒な後ろ盾等もなく、容易に取り替えが聞く人物でもあるのでしょう。

そうして、プーチンは院政を敷いて、自らは国際政治を主に担当しようとしているとみて間違いないでしょう。その国際政治の最優先順位は無論隣国の中国でしょう。

はやい話が、将来本格化する中国との対峙に備えて、それに取り組みやすい最善の体制を築いたのです。

中露の関係は、現在まるでロシアが中国の属国であるかのような状況になっています。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の属国へと陥りつつあるロシア―【私の論評】ロシアの中国に対する憤怒のマグマは蓄積される一方であり、いずれ、中国に向かって大きく噴出する(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 エリツィンは、プーチンを改革者であると考えて後継者に選び、自分の家族を訴追などから守ってくれることを期待した。
 プーチンは、後者の役割は義理堅く果たしたが、ユーラシア主義者として欧米に対抗する路線をとった。そういう経緯で、プーチンは必然的に中国に近づいた。それが今の中露の蜜月関係につながっている。 
 しかし、プーチン後は、この蜜月関係が続く可能性よりも、ロシアの指導者が欧米重視主義者になり、この蜜月は続かない可能性の方が高いと思われる。 
 プーチン政権の上記のような傾向にもかかわらず、中露間にくさびを打つという人がいるが、プーチンがいる限り、そういうことを試みてもうまくいかないだろう。北方領土で日本が妥協して、中露間にくさびを打つことを語る人もいたが、ピント外れである。

 7月27日付の英エコノミスト誌は、ロシアが中国の属国になってきていると指摘している。その指摘は正しい。ロシアがそれから脱したいと思う日は来るだろう。そうなったときには、ロシアとの関係を考える時であろう。
プーチンはロシアがこのまま中国の属国になってしまうことを、潔しとはしていないはずです。 ただし、中国はつい最近人口が14億人を超えましたが、ロシアの人口は1億4千万人に過ぎません。経済に関しては、現在のロシアは東京都なみのGDPしかありません。

だからこそ、ロシアは中国に対する不満はあるものの、属国的地位に甘んずるしかないのです。そうして、プーチン自身も自分の目の黒いうちは、この状況は変わらないと考えていたでしょう。

しかし、昨年あたりからこの状況は大きく変わってきました。そうです。米国による対中国冷戦が過激さを増してきたのです。もはや米国内では、トランプ政権等とは別にして、米国議会が超党派で中国に対峙する体制を固めています。だから、トランプ氏が大統領をいずれ辞任したとしても、米国の中国に対する姿勢は変わりません。

プーチン(左)と習近平(右)

そうして、どうやら米国は中国が現在の中国共産党独裁体制を変えるか、それができなければ他国に影響力を行使できないように、徹底的に中国の経済を破壊しようとしているようです。そうして、これは最早貿易戦争の域を超えて、価値観の対立にまでなっています。

中国は独裁体制をおそらく変えられないでしょう。なぜなら、それを実行すれば、中共は統治の正当性を失い、崩壊するからです。となると、米国は中共が経済的に衰え他国に影響力が行使できない程に中国の経済を破壊するまで、制裁を続けるでしょう。

こうした状況をみたプーチン氏は、自分の目が黒いうち(短くてここ数年、長くて10年くらい)に、ロシアが中国の属国的地位から脱する見込みがでてきたと判断したに違いありません。そうして、ロシアがうまく立ち回ることによって、中共の崩壊を加速することも視野に入れているに違いありません。

だかこそ、自らは中国との対峙に専念し、国内政治は信頼できる人物にまかせ、自らは他国に伍して中国の崩壊に際して、ロシアの権益を最大限に拡張すべきとの結論に至ったのでしょう。

さて、中国がある程度経済的にも疲弊した頃には、かつての中ソ対立のように、中露の対立が激しくなってくると予想されます。

その時がまさに、日本にとっては北方領土交渉がやりやすくなるのです。戦後70年以上が過ぎた今、世界でもっとも危険な国は中国です。この唯物論・無神論を国是とした軍事独裁国家を封じ込めるためには、ロシアは日米と平和条約を結び、協力しなければならなくなります。そうでないと、ロシアは中国の属国とみなされ中国の道連れにされるかもしれません。

北方領土

それはプーチンとしては、是が非でも避けたいところでしょう。日米とも手を結び、中国の属国的地位からの脱却を望むに違いありません。

その時こそが、まさに北方領土が我が国に返還される可能性が最大限に高まるのです。我が国としても、今後のロシアの動きに最大限に注意を払い、その機会を逃すべきではありません。

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