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2022年3月26日土曜日

中村逸郎教授「北方領土返還は今がチャンス」 驚きのシナリオを解説「十分に可能性がある」―【私の論評】日本は、侵略戦争の戦後の新たな秩序づくりに貢献し、北方領土を取り戻せ(゚д゚)!

中村逸郎教授「北方領土返還は今がチャンス」 驚きのシナリオを解説「十分に可能性がある」

筑波大教授の中村逸郎氏

 ロシア政治が専門の国際政治学者で、筑波大教授の中村逸郎氏が26日、ABCテレビ「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(土曜前9・30)に生出演。ロシアのウクライナ侵攻について語った。

 中村教授は北方領土問題に言及し、「ロシアは崩壊寸前。北方領土返還が今がチャンス。十分に可能性がある」と主張。中村教授の北方領土返還に向けたシナリオは、(1)経済制裁の影響でロシアがデフォルトに陥って経済が壊滅、(2)食料などが届かなくなるなど北方領土に住むロシアの人の生活が崩壊、(3)日本は「島民への人道支援」を名目に北方領土に介入。島民は日本の支援なしでは生活できない状況に。(4)ロシア離れを起こした北方領土島民が独立を宣言して日本が受け入れる、というものだ。

 中村教授は「経済が落ち込んで、最初に切られるのは北方領土の人たち」と断言。その理由について、「北方領土の人たちの日常品はウラジオストクから海で運ばれるんですが、船舶の会社が経済制裁を受けて破綻寸前なんですね。ですから、ウラジオストクから日常品が北方領土入っていかないという現実が迫ってるんです」と説明。「そうなると北方領土の人たちは生活できないわけで、すぐそこにある北海道に支援を求めてくる可能性が高いわけです」と続けて、北方領土返還は現実味があるとした。

【私の論評】日本は、侵略戦争の戦後の新たな秩序づくりに貢献し、北方領土を取り戻せ(゚д゚)!

「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」での中村教授の発言の動画を以下に掲載します。
上の記事では北方領土返還のチャンスが近づきつつあるという中村逸郎教授の発言に対して「驚きのシナリオ」と形容していますが、わたし自身はこれは驚きでも何でもなく、このように考えるのが普通ではないかと思います。

それについては、以前このブログでも述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
北方領土の主権主張「永久に忘れた方がいい」…ロシア外務省幹部が強硬姿勢示す 交渉"さらに難航"の恐れ―【私の論評】ウクライナ人も多数居住する北方領土が戻ってくる可能性はかつてないほど高まりつつある(゚д゚)! 

外務省のザハロワ報道官は2016年5月19日、「ロシア・東南アジア諸国連合(ASEAN)
首脳会議」の公式レセプションで、ロシアの民族舞踊「カリンカ」を披露した

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を掲載します。

ロシア連邦が経済的に苦しくなれば、軍事的にも守備できる範囲は狭まり、ロシアはモスクワを中心とした部分のみを自らのテリトリーとして他は手放す可能性が高まることが考えられます。

とはいいながら、ロシアはなるべく多くのテリトリーを維持したいと考えるでしょうが、それにしても極東はかなり無理になり、その中でも北方領土は放棄する可能性が高いです。

その頃には、極東にも別の国ができているかもしれません。そうなると北方領土はロシアとの交渉ではなく、その国との交渉となります。その頃には、極東の新しい国も経済的に低迷し、日本支援に期待するようになっている可能性もあります。

そのときが、日本が北方領土を取り戻す最大の機会だと思います。現在のロシアもそうした可能性も意識の上に顕在化はしていないものの、潜在的にはありうると感じているのではないでしょうか。

だからこそ、そのようなことは断じてあってはならないという思いから、あまり有名でもない人物の発言をわざわざ取り上げ異例ともいえる報道官の発言となったのではないでしょうか。

私自身は、北方領土が戻ってくる可能性はかつてないほど高まりつつあると思います。

この記事では、北方領土においてはウクライナ人が多いことも掲載しました。この記事も掲載したように、1989年の調査では12%、1991年の調査によると全人口の4割がウクライナ人とする調査もあります。2016年時点で、国後島に7914人、択捉島に5934人、色丹島に2820人の計16,668人のロシア国籍の住民が在住していますが、そのうち1割~4割ほどが民族的にはウクライナ人とされます。

徳島文理大学大学院教授八幡和郎氏は、この北方領土のウクライナ人について興味深いことを述べています。その記事のリンクを以下に掲載します。
北方領土不法占拠者の四割はウクライナ人である

どうして(北方領土に)ウクライナ人が多いかと言えば、海外との交流が多かったウクライナの人は、故郷を離れて移住することを嫌がらず、欧米にも多いし、在日のロシア人と思われている人のかなりはウクライナがルーツである。また、黒海に面しているので、海に囲まれた島での生活への順応度が高かったのではないか。

彼らの国籍がどうなっているのかは、正確には分からない。というのは、旧ソ連人でずっと同じ所に住んでいる人はいいのだが、引っ越していたとか、混血だとか、夫婦が別のルーツだとかいう人の扱いはややこしく大量の無国籍者も出ているようだし、二重国籍もいる。ただ、もし島民の多くにとって、日本に返還されたときに帰るべき故郷がウクライナである人の割合がロシアの他地域以上に高いのは間違いない。

その意味でも、ウクライナ支援をするなら、北方領土問題について、旧ソ連の一員としての歴史的責任を明らかにし、また、島民の帰還に協力することくらいは、約束してもらっていいのではないかと思うのだ。

岸田総理は参議院予算委員会で、北方領土について「ロシアにより不法占拠されている」と明言したそうだが、もう少し正確に、北方領土は「ロシア・ウクライナ・ジョージアなどによって構成されたソ連軍によって不法占拠された。そのときの指導者はジョージアのスターリンだった。その後、日ソ交渉の際にウクライナ人フルシチョフは返還を拒否した。ソ連解体ののちはロシアが占拠を継続しているが、島民のなかでウクライナ人の比率が非常に多く一説には四割にも上る。ロシアのみならず不法占拠に荷担しているウクライナにも強く抗議したい」というべきであった。

国会で演説させるなら、北方領土のウクライナ人たちに島を離れて日本に返すように呼びかけることを条件にして欲しいくらいだった。
ウクライナは旧ソ連の中核であって被支配者でないという、八幡氏の主張は、筋が通っており、正しいとは思います。ただ、単純比較はできないかもしれませんが、日本も戦中に満蒙開拓団を中国の東北地方や内モンゴルなどに、国策として開拓民を送っているということもありますし、終戦間近に旧ソ連が日ソ不可侵条約を破り、開拓民たちの居住していた地域にも侵攻して酷い目にあったという記憶もあります。

そうして、満蒙開拓団は戦後すべて引き上げて、日本に戻り、現地に残って開拓を継続した人はいません。稀に残った人もいますが、その人達は残留孤児として中国人に育てられ、戦後の日中の交渉で、日本に戻ってきた人もいます。

私が言いたいのは、満蒙開拓団によって満州等に行った人たちは、国策に従っただけであり、何の罪もないということです。

昭和13年10月号(満州移住協会発行)

上の写真は、「開け満蒙」という雑誌の表示を飾った、満蒙開拓青少年義勇軍の写真です。これは、満州国の治安回復と維持、それに対ソ国防の一環を目的とした開拓移民政策の一環としてつくられたものです。

農家の二、三男を中心として志願者を募集、昭和13(1938)年5月に、北海道の第一陣として当時15歳の少年たちが札幌駅を出発しました。8万6000人の青少年義勇軍は、関東軍の予備隊的な存在でしたが、昭和20(1945)年8月9日のソ連参戦時には、関東軍に編入、ソ連軍と激しい戦闘をしました。

北方領土に居住するウクライナ人たちも、旧ソ連の国策によって移住したのであり、金儲けをしようとか、一旗揚げようとかという人たちもいたかもしれませんが、自ら意図して意識して違法な不法占拠してやろうと考えて来たわけではないでしょう。

ただ、厳密にいえば、不法占拠をしていたことには変わりありません。しかし、不法占拠に対する措置はあとからでも十分にできます。まずは日本は北方領土をいかに取り返すに専念して、不法占拠に対する処置や、北方領土の主権回復に関係する様々な問題の解決などは、あとからじっくり実施しても良いと思います。まずは、北方領土が戻ってくる道筋をつけることが最優先だと思います。

ロシアのウクライナ武力侵攻自体は到底許されることではありません。これを許してしまえば、その後の世界はカオスに突入することになります。まずは、一日もはやく戦争を終わらせるようにして、その後にある程度様々な情報を集めた上で、ロシアの言い分も認められる部分は認めるべきと思います。

それを前提とした上で、公平な裁判をすべきと思います。ただ、裁判をするためには、ロシアが政変などで体制が変わり、旧体制が裁かれるということになると思うので、それまでには、多少年月を要するかもしれません。逆にいえば、ロシアがウクライナに侵攻してしまった現状においては、そこまでしなければ、世界は混沌するするだけになるといえるでしょう。いずれ、そこまでしないとならないと思います。しかし、単純にロシアやプーチンを悪魔化すべきではないとも思います。

日本は、極東軍事裁判で一方的に悪者にされて、連合国側の価値判断だけで裁かれたことを忘れるべきではありません。そうして、この裁きは第二次世界大戦の戦後を終わらせる重要な裁判になることを認識すべきです。

そうして、第二次世界大戦後に一度も他国に攻め入ったり、介入したり、戦争もしたことのない日本こそ、今後の世界の新秩序を樹立するためにリーダーシップを発揮すべきです。米英や中露など第二次世界大戦戦勝国が、表立って動けば反発する国も多く、まとまるものもまとまらないと思います。日本がリーダーシップを発揮すれば、正面切って嫌がるのは、中露と北朝鮮と、韓国だけでしょう。それも露骨に嫌がり、大反対するでしょう。しかし、日本はこれに怯むべきではありません。

現在のロシアは、旧ソ連邦が崩壊したときとも状況は似ていると思います。私は、旧ソ連邦が崩壊したときも、北方領土を取り返す好機だと思いましたが、日本政府の動きは鈍く結局返ってきませんでした。

西欧諸国も、冷戦終了後にも、ソ連崩壊後にも、新たな秩序づくりには、積極的には取り組みませんでした。とにかく、現実離れした、第二次世界大戦直後の秩序にしがみつこうとしました。

それは、ソ連崩壊後ですら、国連憲章の記載は未だに、中華民国、ソビエト連邦のままであり、中華人民共和国、ロシア連邦が常任理事国の地位を引き継いでいることでも理解できます。このような中途半端なことをしたことが、ロシアのウクライナ侵攻の遠因にもなっていると思われます。

国連憲章を書き換えるか、中共やロシア連邦は常任理事国にしないなど、どちらか一方にするか、そもそも世界が第二次世界大戦終了直後とは変わってしまったのですから、国連のシステムを変えるか、あるいは新たな枠組みを作り出すのか、はっきりすべきでした。

このような優柔不断な有様だったからこそ、日本政府の努力が足りなかったせいもありますが、日本は北方領土を取り戻すことができなかったのだと思います。

今回のロシアのウクライナ侵攻後の戦争終了時には、そのようなことがないように、日本は世界の新たな秩序をつくるための提言やシステムの概要など今から準備をしておくべきものと思います。そうせずに曖昧なままにしておけば、世界は今後もウクライナ戦争のような事態に巻き込まれることになります。そうして、それは第三次世界大戦へとも繋がりかねません。

岸田政権には全く無理かもしれませんが、そのような提言やシステムの概要が必要になったときには、岸田政権ではない可能性も高いです。まずは、志の高い超党派の議員団などで実施してはいかがでしょうか。今後の世界には、中露や北朝鮮が、それを受け付けるか受け付けないかは別にして、新たな秩序づくりは避けて通れません。それを避ければ、世界はいずれ崩壊します。

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2015年9月7日月曜日

【覚醒せよ日本】天津大爆発から始まる中国「独裁体制」崩壊の可能性 押し寄せる難民への対策急務―【私の論評】トリクルダウン理論を捨てない限り旧ソ連と同じく中国崩壊は必定(゚д゚)!

【覚醒せよ日本】天津大爆発から始まる中国「独裁体制」崩壊の可能性 押し寄せる難民への対策急務

中国・天津市で発生した大規模爆発
中国経済の本格的崩壊が始まった。不動産バブルは2年前から崩壊しており、今年6月から株価の暴落が始まった。強権発動で何とか食い止めたようには見えるが、実は暴落のプロセスは始まったばかりである。

習近平政権は市場経済を捨てて、共産党の原点である統制経済に戻ってしまった。株価暴落を止めようとして、株式市場を破壊する愚行を行っている。8月にはついに、人民元高の維持ができずに、通貨安政策に方向転換せざるを得なくなった。国内金利も低め誘導を繰り返している。

これでは、外資が中国を見捨てて、対外流出するのを防ぐことはできない。さらなる元安となるので輸出産業が復活するかといえば、平均賃金が上昇しており、輸出大国を再現することは不可能である。低賃金労働はベトナムやバングラデシュに流出している。

「株価」「不動産」「人民元」の3つがともに価値を失っているということは、中国経済そのものが崩壊過程にあるということだ。

加えて、8月12日には、天津市で150人以上の死者が出る大規模爆発が起きた。続いて、22日には山東省●(=さんずいに災の火が田)博(しはく)市、23日には江蘇省蘇州市、24日には河南省鄭州(ていしゅう)市、26日には湖北省武漢市で、大爆発事故が起きている。

筆者は、天津市の大爆発はトップレベルの権力闘争が絡んでいると推測している。「追い詰められた江沢民派中心の反体制派による、習近平政権へのテロではないか」という未確認情報もある。

この意味で、天津市の大爆発は、チェルノブイリ原発事故がソ連崩壊に果たしたのと同様のインパクトを中国に与えるだろう。つまり、大爆発がきっかけとなり、共産党独裁体制が崩壊に向かう可能性がある。

中国では、貧富の差の拡大やバブル経済の崩壊で、年数万件といわれる暴動が起きている。習政権は、少数民族への弾圧も強化させており、この反発も無視できない。

中国の体制崩壊は、長期的には日本のためにはプラスだ。軍国主義国家、ファシズム国家の脅威が収束に向かうのである。だが、短期的、直接的には、多くの被害を覚悟しなければならない。

それは中国経済の悪影響を受けた株価急落だけではない。もっと恐れるべきことは、体制崩壊に伴う、大量の難民が日本に流入すること、すなわち違法入国である。

現在、中東のイスラム圏の内乱が、数百万人単位の難民を生み出し、昨年と今年だけで、約55万人の難民がヨーロッパに流入している。経済的に疲弊したギリシャやイタリアはもちろん、ドイツや北欧諸国も難民受け入れは限界となり、国民から怨嗟(えんさ)の声が上がっている。

日本は今後起きるであろう、さまざまな変動に十分な備えをしなければならない。欧州で起きていることは、対岸の火事ではない。

■藤井厳喜(ふじい・げんき)

【私の論評】トリクルダウン理論を捨てない限り旧ソ連と同じく中国崩壊は必定(゚д゚)!

上の国際政治学者の藤井厳喜氏の記事に関して、特に「天津市の大爆発は、チェルノブイリ原発事故がソ連崩壊に果たしたのと同様のインパクトを中国に与えるだろう。つまり、大爆発がきっかけとなり、共産党独裁体制が崩壊に向かう可能性がある」という予想に関しては、先月16日の段階で、私も同じように予測して、このブログに掲載していました。

そのブログの記事のリンクを以下に掲載します。
中国・天津倉庫爆発】世界4位の貿易港が機能不全…中国経済にダメージ なお爆発音も―【私の論評】今回の天津大爆発事故の原因は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じく遅れた社会・政治体制に根ざすものだ!
天津市の惨状
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、今回の天津の大爆発は旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じく遅れた社会・経済体制に原因があることを指摘しました。

この記事には、チェルノブイリ原発事故から程なくして崩壊した、ソビエト連邦の崩壊の原因も掲載しました。その部分から一部分を以下に引用します。
さて、ここでソ連崩壊の原因について簡単に振り返っておきます。

その原因は主に三つあったと考えられます。一つは経済的要因、二つ目は政治的要因、三つ目は民族的要因です。

一つ目の経済的要因に関しては、まずは過去の共産主義・社会主義体制の国々にありがちであった、極度に低い労働生産性があげられます。これは、あまり説明の必要はないと思われますので、ここで詳しくは説明しません。

その次に、計画経済の非効率というものがありました。これから成長する産業、これから育てるべき産業など、民間企業ですら予測がおうおうに外れるのに、設計主任(ソ連の計画経済を主導する官僚のこと)には到底無理でした。

かつての社会主義国では、優秀な官僚を設計主任にして、計画経済を実施すれば、経済は良くなるとの信念に基づき、計画経済が運用されていたのですが、ご存知のようにこの試みはことごとく失敗しました。 
結局は、ソ連も計画経済で大失敗しました。ソ連末期のことで、驚いたことがひとつありました。それは、当時のソ連のアイロンです。普通の先進国なら、アイロン一つとっても、競争が激しいため、様々なタイプのデザインや機能が盛り込まれ、いくつもの種類が販売されているのが普通でしたが、当時のソ連では何と一種類のアイロンが販売されているだけであって、しかもそのデザインは30年間変わっていなかったそうです。 
このアイロンの事例でもわかるように、低い労働生産性と、計画経済のもと、すべては国家が優先であり、国民生活の向上は後回しにされました。
二つ目の政治的要因に関しては、様々なことがあるので、ここでは唯一最大のものをあげておきましょう。

労働生産性の低さ、計画経済の度重なる失敗によって、ソ連の経済は低迷していたのですが、それでも当時のソ連は強大な軍事力を維持し、宇宙開発を推進しました。そのため、これらに相当の投資が必要でした。しかし、これらを実行したからといって、経済的には失うもが大きいだけで、何ら寄与するところありませんでした。

にもかかわらず、なぜそんなことをしたかといえば、当時のソ連の幹部による政治的判断であったことは言うまでもありません。今から思えば、計画経済など捨て、産業の育成をはかれば良かったと思いますが、当時のソ連の高級官僚には及びもつかず、政治的判断で、巨万の富が軍事力と、宇宙開発に注がれたのです。

最後の民族的要因としては、ソ連邦が世界に例をみない連邦国家であり、多民族国家でったということがあります。その多民族国家――すくなくともいくつかの大きな民族集団を単位に形成していた連邦国家――が、ソ連崩壊にともない連邦国家としての存在をやめ、さらに社会主義を捨てたという事実を忘れてはなりません。

ソ連時代には、連邦の組織の要職のほとんどを占めていたのは、ロシア系です。これが、あの広大な領土を占める、ソビエト連邦のあらゆる組織の多くを占めていたのですから、他民族から反感をかってしまいました。
ゴルバチョフが、主導したソ連末期のペレストロイカ(ロシア語で改革という意味)は、もともと経済の改革からはじまったのですが、打ち出した政策がつぎつぎと裏目にでて、地方ほどツケがまわってくることになってしまいました。
さて、この三つのソ連崩壊の要因、見事に今の中国と同じではありませんか。私は、このソ連崩壊の要因を分析する過程において、かなり中国の現状と似ていると感じました。

かつてのソ連と、現在の中国とでは、明らかに異なるところもあります。それは、経済です。旧ソ連の場合は、最後まで社会主義体制を崩すことなく、経済的には低迷し続けました。

一方、中国においては、鄧小平以降は、一党独裁政党の共産党の名前は残りましたが、実質的には国家資本主義体制に以降しました。そのため、富める者から富めという鄧小平の掛け声ととも、いっときかなり中国は経済発展をしました。

しかし、鄧小平をはじめとする中国共産党幹部の思惑は見事に外れたようです。彼らの頭の中には、トリクルダウン理論があったものと考えられます。

トリクルダウン理論の瑕疵を示す模式図

トリクルダウン理論(トリクルダウンりろん、trickle-down effect)とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする経済理論または経済思想です。これは、サプライサイド経済学における中心的な思想となっています。

しかし、実証性の観点からは、富裕層をさらに富ませれば貧困層の経済状況が改善することを裏付ける有力な研究は存在しません。それどころか、OECDによる実証研究では貧富の格差の拡大が経済成長を大幅に抑制することが結論づけられています。

ちなみに、アベノミクスをトリクルダウンとする馬鹿な説もありますが、これらは全く関係はありません。アベノミクスにおける、金融緩和、積極財政、成長戦略は通常の当たり前の、経済政策でありトリクルダウン理論とは全く関係ありません。

中国のトリクルダウン理論による政策は、中国共産党幹部やそれに近い人たち、その一族、あるいは、それらの人脈に連なる人々が富むように人為的に作り上げれたものです。

このトリクルダウン理論は、中国でも見事に大失敗し、今日では藤井氏がブログ冒頭の記事でも指摘する通り、今の中国では「株価」「不動産」「人民元」の3つがともに価値を失っており、中国経済そのものが崩壊過程にあります。

これを改善するためには、トリクルダウン理論を捨てるしかないのですが、そのためには、中国ではまだ十分になされていない、民主化、政治と経済の完全分離、法治国家化が大前提となりますが、中国共産党中央政府は、これを実施するつもりは全くないようです。

であれば、いくら現中国が国家資本主義体制であるにしても、このままでは、理由は異なるもの、旧ソ連と同じく、経済が疲弊し続けることになります。

そうなると、旧ソ連崩壊の三つの要因と同じこととなり、このままであれば、中国もソ連と同じく、崩壊するしかなくなります。

90年前、旧ソ連の第1回ミスコンテスト

藤井厳喜氏のような、国際政治学者も私と同じような見解であることに、本日はまさに、我が意を得たりという思いがしました。

それにしても、私の記事で、中国崩壊後のことまで考えてはいませんでしたが、確かに藤井氏の指摘するように難民問題が発生しそうです。

日本としては、今からこれに対処することを考えて置かなければならないと思います。一番良いのは、中国人民が難民とならなくても、何とか生活していける状況を作り出すことです。

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2021年5月10日月曜日

ロシアが演習でウクライナを「恫喝」した狙い―【私の論評】現状では、EU・日米は、経済安保でロシアを締め上げるという行き方が最も妥当か(゚д゚)!

ロシアが演習でウクライナを「恫喝」した狙い

岡崎研究所

 ロシア軍がウクライナとの国境地帯に集結し、ウクライナとロシアとの緊張が高まっていた。戦車、軍用機、海軍艦艇とともにロシア軍兵士約10万人が展開し、米国とNATOはこれを厳しく非難していた。


 この展開についてロシア側は、部隊は演習をしているのであり、誰に対する脅威でもない、と言ってきた。4月23日、ロシアのショイグ国防相は、演習は終わったとして部隊に撤収を命じた。ただし、ショイグは、NATOの年次欧州防衛演習(東欧諸国で6月まで行われている演習)で不利な状況が出て来た場合にすぐ対応できるようにロシアの全部隊は即応体制にとどまるべきである、とも述べている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領の補佐官の一人は、撤退が正確に何を意味するのか確かではないと注意喚起した。彼は「撤退は歓迎されるが、最近の数か月と過去数年の前例のないロシア軍の増強を見ると、撤退声明が何を意味するのかはっきりしない、まだこの件がどう展開するか、予見するのは難しい」と述べている。

 とはいえ、緊張は緩和されつつあると見てよいだろう。歓迎できる展開である。

 ロシアがどうして撤収に踏み切ったのかについては、4月13日にバイデン大統領が欧州のどこかで米ロ首脳会談を開くことを提案し、ウクライナ問題も話し合うことを電話でプーチン大統領に提案したことが大きな役割を果たしたという説が多い。おそらく、その通りなのだろう。

 4月22日、ロシアが2014年に一方的に併合を宣言したウクライナ南部クリミア半島で、
 軍用ヘリコプターから軍事演習を視察するショイグ国防相

 ロシアの今回の演習は、ウクライナ領内に侵攻する能力を誇示し、ウクライナを恫喝することを目的にしていた。

 プーチンに敬意を示していたトランプと違い、バイデンはロシアに厳しく、クリミア併合についても認めていないし、今後も認めるつもりはないと明言している。これを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領もクリミア奪還を言うなどしている。今回の演習はそういうことも考慮したうえで、バイデン政権を試すものであったと思われる。

 今後の米ロ首脳会談がどういう話し合いになるのかが注目されるが、プーチンもバイデンも基本的な立場を変えるとは思われない。この問題は米ロ間で意見が異なる問題として残っていくことになろう。

 ロシアとウクライナの関係は、こういう演習騒ぎや東部ウクライナでの紛争の激化を受けて、どんどん悪くなっていくだろうと思われる。プーチンの支持率を80%以上に押し上げたクリミア併合は、ロシアとウクライナ関係に大きな懸案として残るだろう。

 なお、1994年に米英露は、ウクライナが非核兵器国となることの見返りに国境の尊重などをいわゆるブダペスト合意で約束した。この合意は政治的なものであるが、ロシアにより破られた。

【私の論評】現状では、EU・日米は、経済安保でロシアを締め上げるという行き方が最も妥当か(゚д゚)!

ナヴァリヌイに対する毒殺未遂、その帰国直後の拘束、執行猶予判決の実刑化、ナヴァリヌイ釈放要求デモに対する取り締まりなど、ロシアの現状は西側のパートナーになりうる国ではなく、西側との対決を選んだ国であるといえます。

3月月初めEUの外交責任者であるジョセップ・ボレルがモスクワを訪問しましたが、セルゲイ・ラブロフ外相から非礼とも受け止められる扱いを受け、ほうほうの体でブリュッセルに戻りました。

ジョセップ・ボレル

そうして同月22日に開かれたEU外相理事会は予想通りロシアに新たな制裁を科すことを決めました。ロシアのラブロフ外相はボレルに恥をかかせるために共同記者会見を利用したとしか考えられないです。

その上、ボレルがモスクワ訪問中にEU3か国(ドイツ、ポーランド、スウェーデン)の外交官追放措置を、ボレルに事前に通報することなく突然発表しました。このようなロシアの振る舞いはEU=ロシア関係を今後難しいものにしていくでしょう。

EUの中では、バルト諸国やポーランドなど東側の国がロシアに厳しく、独仏伊西など西側の国がロシアに甘いという分裂がありますが、今後、東側諸国の意見がより強く反映した政策になっていく可能性が強いです。ドイツ、スウェーデン、ポーランドは自国の外交官追放に対し、ロシアの外交官を追放する措置をすぐにとりました。

プーチンのロシアは、国際法を無視するという点で、習近平の中国と同じです。中ロは最近ますます共同戦線をはっています。プーチン政権は、改正憲法で、憲法は国際法より上位の法であると勝手に規定し、ロシアをならずもの国家にしています。

こういうロシアの変化は、当然、日ロ関係にも影響を与えます。メドヴェージェフは改正憲法でロシアの領土を譲渡してはならないことになったので、日ロ間の領土交渉は終わったとの趣旨の発言をしています。

このような政権を相手に条約を結んでも意味がありません。ロシアとの外交関係のあり方を真剣に再考すべきです。日ソ共同宣言に違反するロシアの言動は厳しくとがめ、覚悟を持って、本当のロシアに日本も対峙していくべきです。

プーチン

プーチンはネオスターリン主義者であり、プーチンとの関係で日ロの諸問題を話し合いで進展させることはほぼ不可能です。プーチンは2036年まで政権の座に居られることに改正憲法でなっていますが、ロシア国内での反プーチンのデモなどを見ると、そういうことにはならないでしょう。ポスト・プーチンをにらんで、対ロ外交は考えていかざるを得ないでしょう。

ただし、このブログにも度々掲載しているように、ロシアのGDPはいまや日本の1/5であり、東京都とほぼ同じです。東京都がいくら軍事力を強化したにしても、限界があるのと同じく、現状のロシアは、米国抜きのNATOとも本格的に対峙することはできないでしょう。

とはいいながら、ロシアは旧ソ連の核や軍事技術を継承する国であり、侮ることはできませんが、それにしても限界は見えています。

ウクライナのゼレンスキー大統領の補佐官の一人は、ウクライナ付近のロシア軍の撤退が正確に何を意味するのか確かではないと注意喚起したといいますが、その意味するところは、大規模な演習にはとてつもなく大きな費用がかかるので、いつまでも続けることはできないということを意味しているのだと思います。

国内最大規模の実弾射撃訓練「富士総合火力演習」(2014年)でさえも、2時間で使った弾薬約44トンは約3・5億円相当です。燃料費の約3000万円を合わせて約4億円です。ロシアの実施する、大演習だとまさに天文学的な費用がかかるものと考えられます。

富士総合火力演習


1991年12月、ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)が崩壊しました。2021年はそれから30年が経過したメモリアルイヤ ーです。連邦を構成した15の共和国はその後、いわゆる体制転換を経て現在に至っています。ウクライナもその一つです。 

 ソ連の後継国家であるロシアの経済は、この30年で10年ごとに危機と繁栄、停滞と紆余曲折を経てきました。この 間、課題であった原油依存からの脱却はあまり進みませんでした。

さらに原油価格の低迷に加えて、2014年のクリミ ア危機以降は欧米から経済制裁を受けており、経済は苦境にあえいでいます。 

 他方で、ロシア社会は近年、所得格差の是正などに成功したことなどから安定を強めています。とはいえそうした安 定は2000年代の繁栄の10年期の貯金を切り崩して実現した安定でもあります。

社会の安定が続くためにも、ロシア経済は成長の持続可能性を高めていく必要があります。 ロシア経済が今後10年で活力を取り戻すためには、引き続き資源国として歩み続けるにせよ、産業構造の多角 化を図るにせよ、外資の一段の導入が不可欠です。

そのためには、ビジネス環境の一段の整備に努めると同 時に、やはり欧米との関係改善も大きな課題となるはずでした。 

 産業政策と外交政策を両立させるためには、政治の安定が必要条件になります。つまるところ、プーチン政権から権 力がスムーズに移行されるかどうかが、今後のロシア経済のカギを握ることになるはずです。となると、ロシア経済の回復は絶望的とみるべきでしょう。

現状では、EUや日米は、経済安保でロシアを締め上げるという行き方が、最も妥当であると考えられます。その先に、プーチンの退陣、そうして西側のパートナーになりうるロシアがみえてくることになります。


ミサイル防衛を危ぶませる極超音速兵器―【私の論評】日本にとってイージスアショアよりも、核ミサイルに対する「先制攻撃」の方が、はるかに現実的(゚д゚)!

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2014年5月29日木曜日

米国議会で日増しに強くなる対中強硬論―【私の論評】世界は複雑だ!米中一体化、G2など中国の妄想にすぎない!しかし、日本にとってはこの妄想につけこむ絶好のタイミングかもしれない(゚д゚)!

米国議会で日増しに強くなる対中強硬論

米国国会議事堂

 米国連邦議会下院外交委員会のアジア太平洋小委員会が5月20日に開いた公聴会は、米国全体の中国への姿勢が著しく険悪化している様子をあらわにした。米国の中国への敵対傾向が明らかに強まり、米中間の「新冷戦」という言葉をも連想させるようになったのだ。 

 「中国はいまや全世界の平和と安定と繁栄への主要な脅威となったのです!」

 この公聴会ではこんな強硬な発言が出た。

 公聴会の主題は米国の「アジアへの旋回」である。このスローガンはオバマ政権が新政策として鳴り物入りで宣伝してきたが、どうも実態がはっきりしない。もしも安全保障面でアジアでの備えを重視するならば、当然、米軍の新たなアジア配備や、そのための国防予算の増額が見られるはずなのだが、見当たらない。オバマ政権の唱える「アジア最重視」も、レトリック(修辞)だけで実効措置が伴わない意図表明にすぎないという懸念がワシントンでも広がって久しい。

 中国の威嚇的な行動はますます激しさを増している。異常とも言えるほどの急ペースで軍拡をもう20年も続けているうえに、東シナ海での防空識別圏(ADIZ)の一方的な宣言、尖閣諸島での恒常的な日本側の領空領海への侵犯、南シナ海での無法な領有権拡張、対米サイバー攻撃、そして他国領土を強引に奪うロシアへの接近など、国際規範無視の中国の荒っぽい行動は、ついに米国側の忍耐の限界を超えたかのようにも見える。

 さらに、この5月には、中国人民解放軍の房峰輝総参謀長が訪米し「アジアでの紛争は米国のアジア政策のせいだ」と非難した。習近平国家主席は、ロシアやイランの首脳を交えた上海での「アジア信頼醸成措置会議」で「アジアの安全はアジアの人間が守る」と述べ、事実上、米国のアジア撤退をも求めた。オバマ政権の宥和政策にもかかわらず、中国は明らかに米国を敵視しているとしか思えないのである。

 こうした現況について、米国では以下のようにも総括された。

 「中国に対して、米側には伝統的に『敵扱いすれば、本当に敵になってしまう』として踏みとどまる姿勢が強く、中国を『友好国』『戦略的パートナー』『責任ある利害保有者』『拡散防止の協力国』などと扱ってきました。だが、そうして40年も宥和を目指してきたのにもかかわらず、中国はやはり敵になってしまったのです」(元国防総省中国担当、ジョー・ボスコ氏)

 皮肉な表現ではあるが、明らかにオバマ政権の対中宥和策への批判だと言える。

 中国が少なくともアジアにおいて、米国主導の現在の国際秩序を従順に受け入れる構えがないことはすでに明白となってきた。いや、受け入れないだけではなく、むしろ打破したいと意図していると言う方が正確だろう。

 そうした中国がロシアに本格的な接近をしてきたことは米国にとってさらに気がかりな動きである。万が一、中国とロシアの両国が団結し、連帯して、米国に対抗するとなると、いまの世界の国際秩序や安全保障構造は根本から変わってしまう。1991年にソビエト連邦が完全に瓦解して以来の最大の出来事ともなろう。米中関係の険悪化には、世界大動乱の予兆とも言える、そんな重大な要素も絡んでいるのだ。

 だがその一方でわが日本では、集団的自衛権をめぐる論議でも、肝心の外部の安保情勢ではなく国内の法的手続きを最優先しての内向きな攻防が続く。

 多数の国家が絡み合ういまの世界の安全保障情勢の中で、日本だけが孤立して安全が高まるはずがない。防衛や安保の面での国際的な連帯や協調がいまほど重要な時期はない。それにもかかわらず、日本内部での集団的自衛権容認への反対論は、砂に頭を突っこむことで見たくない現実から目を背ける、ダチョウの平和を思わせるのである。

上の記事は、要約です。詳細をご覧になりたい方は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】世界は複雑だ!米中一体化、G2など中国の妄想にすぎない!しかし、日本にとってはこの妄想につけこむ絶好のタイミングかもしれない(゚д゚)!

上の記事でも明らかなように、オバマ大統領の中国宥和政策は、あまり実を結ばなかったのが現実です。オバマの前の大統領、ブッシュ氏は宥和政策はとりませんでした。少なくとも、年に一回くらいは、中国に対して声明を発表し、民主化をすること、政治と経済を分離すること、法治国家化をすることなど厳しく要求していました。

オバマになってからは、そのようなことはなくなり、宥和政策ばかりとるようになりました。

こうした宥和政策は、過去においても失敗しています。それは、ナチスドイツに対するイギリの宥和政策です。

これについては、以前のこのブログでも掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
歴史に学ぶ-(1)ミュンヘン会議(1938年9月29日~30日)、チェコスロバキア解体(1939年)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では当時のイギリスの首相チェンバレンによる対独宥和政策が、結果として第二次世界大戦開戦の誘引ともなったことを掲載しました。

握手を交わすチェンバレン(左)とヒトラー

以下にこの記事から現代でも学ぶべき点に関して私が掲載した文章をコピペさせていただきます。
理不尽な要求には、絶対に屈しないということにつきる。このときに、イギリスをはじめフランス、ソビエト連邦、ポーランドをはじめとする東欧諸国も構えを崩さず、さらにアメリカの応援も要請して徹底抗戦も辞さずという態度をみせれば、戦争が回避できた可能性もあったはずである。無論、歴史にもしも、という言葉に意味はないが、これからのことを考えるためには役にたつだろう。 
現在チベット問題がクローズアップされているが、この問題も絶対に譲歩すべきではないだろう。少なくともチベットの自治は認めさせるべきであるとの意思表示は、はっきりすべきだろう。さらに、中国がこれ以上領土拡張の野心を見せたときは、たとえどのようなことになろうとも、絶対に認めないという姿勢が必要だろう。
さら、福田総理大臣はどうなのだろう。少なくとも日本のチェンバレンと呼ばれるようなことには、なってもらいたくない。
この記事は、 2008年のものです。この当時は、福田首相でした。福田首相にかぎらず、日本の歴代の総理大臣は安部総理は別として、ほとんどが対中宥和策をとってきました。最近の中国の暴虐非道は、他にも様々な理由もありましたが、こうし宥和政策も誘引したことは否めませせん。

ソ連の崩壊により、その後継者たるロシアは、小国化してしまいました。これにより、中国は特に陸上で国境を接する国々からの脅威はほとんどなくなりました。ソビエト帝国が瓦解した現在、今や世界唯一の超大国(中国は、超大国とはいえない発展途上国です)アメリカのオバマ大統領の対中宥和政策です。

これが、中国の海洋進出に拍車をかけています。これに関しては、このブログでも何度か掲載してきました。その代表的なものを以下に掲載します。
上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!

小国化したロシアは、未だに大国
のように見せかけているが・・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、ロシアが小国になった(GDPは日本の1/5)事実をもとに、中ロ国境の国境溶解(中国人のシベリアなどへの移動により、国境が不明確になっている現象)により、中国は陸上での差し迫った脅威がなくなり、それが、中国の海洋進出の誘引になっていることを掲載しました。

さらに、ロシアとしては、こうした国境溶解などにかなり脅威を感じていることを掲載しました。

このような状況のもと、日本はもともと対中宥和的で、アメリカのオバマが対中宥和政策をとれば、中国が海洋進出をして、傍若武人な振る舞いをすることは必然といっても良いです。尖閣問題もこうした流れの中で発生したものです。

しかし、日本では安倍政権が成立してからは、少なくとも対中宥和政策はとらなくなりました。

そんな中で、外交オンチのオバマは、対中宥和政策をとりつづけました。

オバマがもう少し早い時点で、尖閣は日本固有の領土であることをはっきり表明すれば、尖閣問題はあそこまで激しくならなかったことが考えられます。南シナ海についても同じことです。

こうしたオバマの煮え切らない態度に、アメリカ議会は黙認していることはできず、このブログ冒頭の記事が掲載しているように、対中強硬論に傾いているのだと思います。

日本の安部首相が中国を意識した安全保障のダイヤモンドを構築し、アメリカはオバマはともかく、議会が対中恐慌論に傾いている現在。これは、日本にとっては大きな外交上のチャンスかもしれません。

ブログの冒頭の記事では、「中国とロシアの両国が団結し、連帯して、米国に対抗する」などということはほとんど考えられません。まずは、過去においてはソ連が現在ではロシアは、中国に対して譲歩したということは一回もありません。

大国ロシアの復活を目論むプーチン

現在の中ロ国境は、比較的安定していますが、これは中国がロシアに一方的に屈辱的譲歩して定まったものです。今後暫くは、中国が軍事的にロシアの脅威になるような行動をしても、ロシアは何一つ譲歩することなく、中国を軍事的に屈服させることでしょう。

しかし、これも長くは続きません。今やロシアは日本のGDPの1/5、人口も日本より多少多い1億4千万人程度に過ぎません。その中でも支配者階層のロシア人の数は、日本人と同程度です。現状では、旧ソ連邦時代に築いた軍事技術などが中国を圧倒していますが、これから先はどうなるかはわかりません。

現在、ロシアと中国が強く結びつくということにでもなれば、ロシアは中国の属国になりかねません。ロシアは絶対にそのような道は選ばないでしょう。まずは、ロシアと中国の結びつきとは、表面上のことであり、現実的ではありません。これに関しては、昨日一昨日も掲載した中ロの接近は、「氷の微笑」に過ぎないとする、ルトワック氏の分析が的を射ているようです。詳細を知りたい方は、是非ご覧になって下さい。

ルトワック氏

さて、現状は、オバマが外交オンチではあっても、米国議会が対中強硬論に傾いている状況にあるわけです。それに、ロシアは中ロ国境の国境溶解に苦しみ、何とか打開策を探していますロシア以外の中国と陸並びに海で、国境を接する国々も中国の脅威が日増しに増大しています。

この状況は、良く考えてみれば、日本にとってはかなり有利な状況でもあります。日本は、安部総理の実行するアメリカなどに偏る外交ではなく、他の国々も含めた全方位外交が今後さらに効果を増すことになると思います。

今の日本は、対中強硬論のアメリカ議会を後ろ盾とすることができます。国境溶解に悩むロシアは、北方領土の交渉を続けるとしています。ロシアは、日本の経済援助を望んいます。そうして、経済が発展すれば、国境溶解に備えることができます。アジアにおいては、中国・韓国・北朝鮮以外の国々は日本の再軍備を望んですらいます。

この状況はかなり日本にとって良い状況であり、中国の脅威をはねのけ、アジアのリーダーになる可能性が高めるものでもあります。

しかし、残念ながら、ブログ冒頭の記事でも指摘しているように、以下のような状況にあります。
集団的自衛権をめぐる論議でも、肝心の外部の安保情勢ではなく国内の法的手続きを最優先しての内向きな攻防が続く。 
 多数の国家が絡み合ういまの世界の安全保障情勢の中で、日本だけが孤立して安全が高まるはずがない。防衛や安保の面での国際的な連帯や協調がいまほど重要な時期はない。それにもかかわらず、日本内部での集団的自衛権容認への反対論は、砂に頭を突っこむことで見たくない現実から目を背ける、ダチョウの平和を思わせるのである。
安全保障は、上の文章が示しているように国際的な連帯や協調が重要です。そうして、それだけではありません。

安全保障は、軍事力や国際的な連帯や協調だけではなく、金融・経済・外交が密接にからみあった、統合的なものてあり、これに対応するには統合的思考によらなければ、なかなか解決できるものでありません。海にだけ気を取られていたり、集団的自衛権や国内のことだけを考えていては何も成就しません。

世界は、複雑です。米中二極体制、G2などという考えはとうてい成り立たないものであり、これは中国の妄想に過ぎません。ただし、中国がこの妄想にふけり続ければ、過去のソ連と同じよう崩壊することになります。そこに日本がつけいる隙があります。そうして、今は日本がこれを最大限に活用できる絶好のタイミングにあります。安部総理はこれを狙っています。

能天気な平和主義は支那に一方的に利用されるだけです。実際、外交オンチのオバマは、宥和政策を中国に利用されてきました。日本の宥和政策も、過去には支那に貪り尽くされ、今もそうです。将来がそうであっては絶対になりません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!




【関連図書】

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2008年8月10日日曜日

1500人死亡と、ロシアが空爆 南オセアチアの武力衝突-グルジアは脆弱な軍隊で何をしようというのか?

世の中が良くも悪くも、北京オリンピックで沸き立っているときに、グルジアが南オセチア自治州に侵入、平和維持軍として南オセアチア自治州内にいたロシア軍にも攻撃を加え、事実上の戦争状態に入った。最近グルジアの軍隊はずいぶん強化されたとはいえ、ロシア軍とは比較の対象にもならない。この脆弱な軍隊でグルジアはどうしようというのか?

グルジアとロシアの角逐:グルジアの無人偵察機撃墜


1500人死亡と、ロシアが空爆 南オセチアの武力衝突
グルジア・トビリシ――グルジアからの分離独立を目指す親ロシアの南オセチア自治州での武力衝突で、戦車部隊を進攻させるなどの軍事介入に8日踏み切ったロシアのラブロフ外相は同日、自治州での戦闘でこれまで約1500人が死亡したと述べた。AP通信が報じた。


死亡者はさらに増えているとしている。ロシアはグルジアの攻撃で和平維持部隊に参加していた同国兵士15人が死亡したと主張。親米のグルジア政府は、ロシア軍機が8日、町、ポチの石油輸出用の港湾施設、空軍基地3カ所を爆撃したと非難した。グルジアは戒厳令発令も検討しており、ロシアとグルジアの大規模衝突に発展する恐れも出てきた。ロシアの空爆は9日も続いたとの情報がある。

グルジア共和国の地図

グルジアのサーカシビリ大統領はロシア軍の自国への侵攻を非難。ロシアのメドベージェフ大統領は8日、グルジアに停戦を強いるため自治州にロシア軍を送ったと述べた。

AP通信によると、自治州の州都ツヒンバリの多数の地域はグルジア軍と分離派政府軍、ロシア軍の戦闘で灰燼(かいじん)に帰しつつある。戦闘は散発的に続いている模様。ロシアのインタファクス通信によると、自治州政府の報道官はグルジア軍を撃退したと述べたが、真偽は不明。

グルジアは今回の戦闘拡大について、分離派の政府部隊がグルジア領内に入り、村落を破壊、民間人複数を殺害したたのが原因と強調。分離派政府は停戦協定を破ったのはグルジア側
と反論している。双方は8日、ロシアの仲介で会談予定だったが、グルジアは分離派側が砲撃でこの話し合いを葬ったと主張した。

グルジアと南オセチアは1990年に軍事衝突を起こし、92年に和平合意を結んでいる。ただ、これ以降、南オセチアは事実上の独立状態にあった。同自治州は、ロシアの北オセチア共和国への併合を望んでいる。

グルジア共和国軍について(2004年の資料より)
グルジアの戦力機構は、軍(地上軍、空軍、海軍及び防空軍から成る。)、国家親衛隊、国内軍及び国境軍により代表される。西側の専門家の評価によれば、グルジアは、正規軍2万6千人及び予備役25万人を有する。地上軍は、約2万4 千人、2個自動車化狙撃旅団、1個砲兵旅団、並びに国家親衛旅団を数える。アメリカ人教官が訓練しているものを含めて、数個独立大隊も存在する。平和維持軍の大部分は、戦闘能力が制限されているか、全くない。

地上軍の戦闘編成には、戦車×79両(T-55×48両及びT-72×31両)、BMP-1及びBMP-2、BTR-70及びBTR-80×111両が数えられた。砲兵は、主として旧式の85mm及び100mm砲である。比較的近代的な122mm及び152mm自走砲、並びに多連装ロケット発射システム「グラード」が1部隊に存在する。

グルジア空軍は、地上軍よりも惨めな状態にある。公式データによれば、トビリシは、Su-25攻撃機×6機、Mi-24戦闘ヘリ×3機及びMi-8多目的ヘリ×4機を保有している。これらの機体の戦闘能力は、大きな疑問を持たれている。緊急措置として、トビリシの工場で、ソ連時代の部品が存在する若干機のSu-25が組み立てられ得る。

グルジアが防空システムを事実上失ったことは重要である。領空偵察任務遂行のために、トビリシは、脆弱な民用レーダーにしか頼れない。火器は、低空飛行機からの部隊防御専用の旧式の高射ミサイル複合体「ストレラ-10」若干基しか存在しない。

グルジアは、職業制軍事要員の訓練システムを失った。軍事統制機関は、余り教育されておらず、近代的な諸兵科協同作戦の組織及び実施の経験を有していない。

NATOの軍服を着た、グルジア兵

グルジア軍将校は、月60~70ラリ(約30米ドル)を、義務年限内兵士は、更に少なく、2~3ラリを不定期に受け取る。軍への食料、軍服等の補給に著しい中断が起こり、再三、グルジア議会内における当状況の審議の原因となった。今年7月、国防相ダヴィド・テフザゼは、議会国防・安全保障委員会の会議において、財政不足によりグルジア軍が崩壊の瀬戸際にあると表明した。国防相の言葉によれば、近い将来、国防省の財政状態が改善されなければ、状況は予測できないものとなる。最終的に、軍だけではなく、グルジアの権力全体が崩壊するはずである。

現在のグルジア共和国軍は軍事力はかなりアップはされているが???
現代のグルジア共和国軍は、増強され上のような状況にあるわけではない。しかし、2004年当時の軍事力をみると、いくら現在増強されたといってもその規模、能力はロシアと比較の対象にはなりません。

なお現状の軍事力をBBCの資料より掲載しておきます。
グルジア
総兵力: 26,900、戦車 (T-72): 82、その他の武装車: 139、戦闘機 (Su-25): 7、ロケット弾など: 95

ロシア
総兵力: 641,000、戦車(多種): 6,717、その他の武装車:6,388、戦闘機 (多種): 1,206、ロケット弾など(多種): 7,550


グルジアは、旧ソ連から分離独立して独自の路線を歩んでいます。BTCパイプラインはその現われで、このパイプラインによって、旧ソ連の領土内を通過しなくても原油を輸出できるようになりました。これは、石油を元に世界への覇権を強めるロシアにとっては非常に都合の悪いことです。

また、グルジアは、NATOに入ることを公表しています。さらに、アメリカ軍の軍事顧問などもいて、軍隊の訓練のほか、武器なども供与されている。ロシアからすれば、まさに目の上のタンコブのような存在です。

グルジアの現大統領は、大統領選で南オセチア自治州をグルジアの手にもどすことを公約としました。それに、もともとグルジア領土の南オセアチアに最初に軍隊を駐留させたのはロシアであり、自分達の領土をとるロシアには反感を持っていたものと思います。だからこそ、長い間機会を狙っていたのだと思います。しかし、上記にあるように2004年のレベルではとても、戦争をする状況にはなかったものを徹底的に戦力を増強したことと、NATOやアメリカの後ろ盾もあるため、ロシアも本格的に戦争に突入することはないだろうと読みもあるのだと思います。

いずれにせよ、ロシア、グルジア、アメリカ、NATOなどの利害も絡み、複雑なことになりそうです。グルジア・ロシア双方とも適当な落としどころを認識していればよいのでずが、下手をすると仮に停戦になったとしても何年後かに、第三次世界大戦の引き金にならないとも限りません。そこまではいかなくても、冷戦終了後それなりに均衡していた、軍事バランスが崩れる可能性もあります。これらの観点から、私はグルジア情勢に関してはこれからも調べておき、何か異変があれば、このブログで皆様にお伝えします。

[年譜]
  • 1991年12月 - ソビエト連邦の解体により独立
  • 1992年1月 - ズヴィアド・ガムサフルディア大統領が失脚
  • 1992年3月 - エドゥアルド・シェワルナゼが国家評議会議長に就任
  • 1992年10月 - エドゥアルド・シェワルナゼが最高会議議長に就任
  • 1995年11月 - エドゥアルド・シェワルナゼが大統領に就任
  • 2000年4月 - エドゥアルド・シェワルナゼ大統領再選
  • 2002年8月 - チェチェン共和国武装勢力に加わっていた日本人義勇兵(元自衛隊員)がグルジア領内で拘束されたとの報道
  • 2003年11月23日 - バラ革命、エドゥアルド・シェワルナゼ大統領が辞任、ニノ・ブルジャナゼ暫定政権発足
  • 2004年1月4日 - 大統領選挙を実施、ミヘイル・サアカシュヴィリが圧勝
  • 2004年1月25日 - ミヘイル・サアカシュヴィリが大統領に就任
  • 2006年3月27日 - ロシア政府、グルジア産ワインの輸入禁止を表明、親欧米色を強めるグルジア政府に対する圧力ともいわれる
  • 2006年5月23日 - キエフにおいてGUAMの設立が宣言され、グルジアも加盟を表明
  • 2006年7月13日 - ロシアを通過せずに旧ソ連圏産の石油を輸出することが可能で、グルジア領内も通過するBTCパイプライン開通
  • 2006年7月25日 - グルジア軍が、独立を主張しているアブハジアに 軍事攻撃を仕掛ける。アブハジア側とグルジア側にまたがるコドリ渓谷での26日までの戦闘で、現地を支配していたアブハジア系民兵を追い出した。グルジア 側は、この戦闘で攻撃ヘリ数機、兵員輸送トラック34台、戦闘用車両18台を投入した。この戦闘で民間人一人が死亡、数人が負傷、民兵25人が捕虜となっ た。
  • 2006年9月27日 - グルジア治安当局が、スパイ行為を行ったとしてロシア軍将校ら十数人を拘束。ロシア外務省は28日、抗議のため駐グルジア大使を召還。
  • 2006年10月17日 - 国連安保理、アブハジアに対する「グルジア政府の挑発的行動」を非難する決議を採択。
  • 2007年8月7日 - グルジア北部で国籍不明の軍用機がミサイルを投下。グルジア政府は「ロシアの恫喝」と非難するが、「自作自演」ともいわれる。以前にも「グルジア領内への空爆」を自作自演した疑惑tanakanews.comが存在するため。
  • 2007年9月27日 - 以前からタカ派として国民からの人気が高かったイラクリ・オクルアシヴィリ元国防相が拘束される。大統領から反政府的とされるビジネスマンの殺害を命じられたと「告白」したことが原因か。28日には元国防相の身柄拘束に反対するデモがトビリシで行われる。この件以降、グルジア各地での反政府デモが活発化。
  • 2007年11月1日 - サアカシュヴィリ大統領の辞任や議会選挙の前倒しなどを求めるデモがトビリシなどで行われる。7日に武力鎮圧されるまで、グルジア各地で断続的にデモが発生。
  • 2007年11月7日 - サアカシュヴィリ大統領、非常事態宣言発令。当初は2週間ほど継続される予定だったが、16日に解除。
  • 2007年11月14日 - グルジア政府が、反政府的報道を行ったとして野党系テレビ局「Imedi」の放送免許を停止。同局は11月7日、グルジア政府特殊部隊の強襲を受け、スタジオ・放送機材などを破壊されていた。免許停止自体は12月5日に解除されるが、放送再開には時間がかかるとの見方も。
  • 2007年11月25日 - サアカシュヴィリ大統領が、野党側が求めていた議会選の前倒しを拒否。代わりに大統領選の前倒しを行うことを表明し、立候補のため大統領職を辞任。大統領 選は1月5日と決まるも、同日国会前では数万人が参加するデモが発生。11月7日の衝突以降、初の大規模デモとなる。
  • 2007年11月27日 - 事実上の国外追放処分を受けドイツに滞在していたオクルアシヴィリ元国防相が、ドイツ検察当局に拘束される。
  • 2008年8月8日 - 事実上の独立状態にあった南オセチア自治州に侵攻。平和維持軍として駐留していたロシア軍にも攻撃を加え、ロシアと戦闘状態に入る。
グルジアに関しては、本日始めてこのブログに掲載したため、過去に関連記事はありませんが、もう一方の当事者である、ソ連、ロシアのことは過去にも掲載してあります。以下の反転文字をクリックしていただくと、その記事に飛ぶことができます。実際検索してみると、意外なものもありました。こちらも是非ご覧になってください。


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2022年6月28日火曜日

ウクライナ戦争の「ロシア敗北」が対中戦略となる―【私の論評】「ウクライナGDPロシア凌駕計画」を実行すれば、極めて効果的な対中戦略になる(゚д゚)!

ウクライナ戦争の「ロシア敗北」が対中戦略となる

岡崎研究所

 6月9日付のワシントン・ポスト紙(WP)に、同紙コラムニストのファリード・ザカリアが、「最善の対中戦略? ロシアを敗北させろ」と題する論説を寄せ、ウクライナ戦争でのロシアの敗北が中国に与える影響を論じている。


 ザカリアは、論説の冒頭で、バイデン大統領の次の言葉を引用した。「もしロシアにその行動に重い対価を払わせないならば、それは他の侵略国に彼らも領土を取得し、他国を従属させられるとのメッセージを送るだろう。それは他の平和的民主国の生き残りを危険にさらす。そしてそれは規則に基づく国際秩序の終りを意味し、世界全体に破局的結果をもたらす侵略行為に扉を開く」。

 その上で、論説の最後の方で、今、最善の対中戦略はロシアをウクライナで敗北させることであるとした。それは、ロシアを強く支持した習近平にとって、同盟国ロシアが敗北することは、自らの痛手ともなるからである。逆に、プーチンが生き残れば、習近平も、西側諸国は規則に基づく国際秩序を十分に守れなくなっていると思い、攻撃に出る危険も増すと述べる。

 ザカリアの論説は、良く考えられた的を射た論説である。

 ロシアのウクライナ戦争を失敗に終わらせること、ロシアがこの戦争で弱い国になってしまうことを確保することは、今後の世界情勢がどういうように発展していくかを決めると思われる。

 中国は、米国を主敵と考え、対米関係で対抗的姿勢をとっており、ロシアのウクライナ戦争を非難していない。経済制裁によるロシアの苦境を和らげるように、欧州が輸入することをやめようとしている石油を買っている。

 中国は、ロシアへの武器供与はしていないようであるが、それ以外には総じてロシアと協力的関係を維持している。習近平が個人的にもプーチンを支持しているからであろう。

 ロシアの侵攻前、2月4日、北京五輪開会式の日に行われた習近平とプーチン会談で、プーチンがウクライナ侵攻計画を習近平に話したかどうかについては、断言できない。在ウクライナ・中国大使館は侵攻まで、首都から退避する措置を何らとらなかったからである。

求められる日本の不退転の姿勢

 今はウクライナでのロシアの敗北は、中国に大きな影響を与える。

 ザカリアがロシアのウクライナでの敗北を確実にすることが対中戦略上も決定的重要性を持つというのはその通りであろう。ロシアは衰退しているが、衰退する大国は危険でもあることを第一次世界大戦のオーストリア・ハンガリー帝国を例に指摘しているのもその通りだろう。

 日本は、南を中国、北はロシアと国境を接している。かつて安倍晋三政権時代、日本は、対中戦略において、ロシアと接近することも必要だとした。

 それは、冷戦時代に米国が対ソビエト戦略において中国と接近したのと似ている。しかし、ウクライナへのロシアの侵攻や北朝鮮のミサイル発射に対する中露の協力的姿勢を目の前にした今日、もはや、そのやり方は通用しないことがわかった。

 日本にとっては、より厳しい国際環境にあるが、自国の国防力を強化するとともに、日米同盟の緊密化、さらに価値観を共有する友好国と共に、より協力して行動することが必要だろう。

【私の論評】「ウクライナGDPロシア凌駕計画」を実行すれば、極めて効果的な対中戦略になる(゚д゚)!

ファリード・ザカリアが、「最善の対中戦略? ロシアを敗北させろ」 という主張には、賛成できる面もありますが、賛成できない面もあります。まずは、どの程度の敗北を想定しているのかはっきりしていない点があります。

無論私自信も、ロシアは敗北させるのは当然のこととは思っています。ただ、どこまで敗北させられるかは未知数の部分もあります。そもそも、ロシアはウクライナに攻め込んでいますが、ロシア自体はウクライナに攻め込まれているわけではありません。また、ウクライナが攻め込むつもりもないでしょう。


また、NATO諸国もロシアがNATO諸国のいずれかの国が侵攻されない限り、ロシアを直接攻撃したり、ロシア領に侵攻することはしないでしょう。

そうなると、ロシアが戦争に負けても、最悪ウクライナから引き上げるだけということになるでしょう。ロシアのモスクワを含む一部の地域にでもNATO等が侵攻していれば、それこそ、第一次世界大戦のドイツに対するような過酷な制裁を課することができるかもしれません。

しかし、ウクライナ戦争の戦後は、そのようなことはできません。ロシアを敗北させるには、限界があるということです。

であれば、敗北させたり、制裁を課したりするだけではなく、他の手立てを考えるべきだと思います。

それは、人口4400万人のウクライナの一人あたりのGDP(4,828ドル、ロシアは約1万ドル) を引き上げ、人口1億4千万人のロシアよりGDPを遥かに大きくすることです。現在ロシアのGDPは韓国を若干下回る程度です。

韓国の人口は、5178万ですから、一人あたりのGDPで韓国を多少上回ることで、ウクライナのGDPはロシアを上回ることになります。

そうして、その条件は揃いつつあると思います。まずは、戦争が終了した場合、西側諸国の支援のもとに復興がはじまります。ロシアは戦争に負けても、ウクライナに賠償金支払うつもりは全くないでしょうが、西側諸国が凍結したロシアの私産をすべてウクライナ復興にあてることになるでしょう。

あれだけ国土が痛めつけられたわけですから、これを復興するということになれば、それだけで経済活動はかなり盛んになるはずです。日本も第二次世界大戦では甚大な被害を受けましたが、凄まじい速度で復興しました。インフラが破壊されたということは、別の面からみると、効率が良く、費用対効果が高いインフラに取り替えることができるということです。

さらに、ウクライナはITなども進んでいますから、爆発的な成長が期待できます。軍需産業も存在しますから、軍需と民間の両方で経済を牽引することができるでしょう。

ただ、戦後復興が終了した後に、さらに経済を大きくしようとすれば、西欧諸国なみの民主化は避けて通れないでしょう。実際このブログで過去に紹介したように、経済発展と民主化は不可分です。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由―【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
G20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリアであった。それに1万ドルの壁を破った韓国、サウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁に跳ね返されたアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6ヶ国、まだそれに至らないインドとインドネシア。それに1万ドルになったと思われる中国だ。

さらに、世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。
民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。ただし、その例外が10ヶ国ある。その内訳は、カタール、UAEなどの産油国8ヶ国と、シンガポールと香港だ。

ここでシンガポールと香港の民主主義指数はそれぞれ、6.03と5.57だ。民主主義指数6というのは、メキシコなどと同じ程度で、民主主義国としてはギリギリだ。

もっとも、民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.71と高い。

さて、中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。
現状のロシアの一人あたりのGDPは、中国と同程度の1万ドル前後です。中国の人口は14億人で丁度ロシアの人口の十倍なので、国単位では中国のGDPはロシアの十倍になっていますが、両国とも、バルト三国や台湾よりも一人あたりのGDPは低いのです。

どうして民主化が経済発展に結びつくのかに関してはの論考は、ここで述べると長くなってしまうので、下の記事を参考にしてください。
【日本の解き方】中国共産党100年の功罪と今後 経済世界2位に成長させたが…一党独裁では長期的に停滞へ―【私の論評】中国も、他の発展途上国と同じく中所得国の罠から抜け出せないワケ(゚д゚)!
戦後復興後にウクライナが民主化に取り組み西側諸国のようになれば、 一人あたりのGDPがロシアをはるかに上回るのは、さほど難しいことではないでしょう。

それに、最近ウクライナが本格的に民主化する可能性が高まってきました。それは、ウクライナのEU加盟の可能性です。


ウクライナにとり欧州連合(EU)加盟は念願である一方、EU基準に程遠い制度や体質が改善されず実現は夢のまた夢でした。候補国として一歩を踏み出せた意義は大きいです。ロシアの侵略に対する欧米の「支援疲れ」も叫ばれる中、勇気づけられたことでしょう。

ロシアとの関係を断ち切りたいウクライナにとって、EU加盟で域内諸国との人、物、金の移動が自由になればメリットは大きいです。各国との通商がより活発になり、企業誘致やEUからの助成金も見込めます。外交上もロシアに対抗する後ろ盾ができ、国力の底上げにつながります。

ただ、今回の動きがロシアの侵略で大勢の命が失われた結果であることも忘れてはならないです。EU加盟には法の支配や人権など多くの項目でEU基準をクリアする必要があります。ウクライナは加盟に向けて国内法や規制を変更してきたが、それでも候補国になれていなかったのが実情です。

新興財閥(オリガルヒ)が政権と癒着する、裁判官や検察官の試験に賄賂で合格する、大学教授が授業の単位を金で売るなど、ウクライナは有数の汚職国家といわれてきました。

親露派政権が倒れてクリミア半島が占領された2014年以降、国家汚職対策局を設置するなど汚職排除に努めたましたが、いまだになくならないです。基準があいまいな汚職対策をEUがどう評価するかが、加盟に向けたポイントになります。

EU加盟は社会が変わるということです。汚職や腐敗体質が浸透しているウクライナは、急激な変化が生む負の側面も想定しておかなくてはならないです。

通常、加盟手続きには10年前後かかります。EUも1カ国を特別扱いするわけにいかず、他の候補国よりも先に加盟することはないです。道のりは長いですが、西側諸国の全面的支援もあります。焦らずに課題を着実に解決すれば加盟が早まる可能性もゼロではないです。

そうして、ウクライナがEU諸国並に民主化できれば、さらに経済発展する可能性が高いです。過去の汚職や腐敗にまみれてきた、ウクライナが社会を変えることは難しいかもしれませんが、それでも、民主化してロシアのGDPをはるかに凌駕することを目指すべきです。

そうして、日本のかつての池田内閣の「所得倍増計画」のように、「ウクライナGDPロシア凌駕計画」などと公言したうえで、実際にそれを達成すれば、より効果的でしょう。

また、ウクライナならそれも可能です。すでに一人あたりのGDPがロシアのそれを上回っているバルト三国の人口は、三国合わせても619万人です。これでは、バルト三国全体をあわせても、ロシアのGDPを上回るのは至難の技です。

台湾も一人あたりのGDPでは、中国を上回っていますが、台湾の人口は、2357万人であり、バルト三国などよりは大きいですが、台湾が中国のGDPを上回るのは到底不可能です。

ウクライナは戦争前のロシアのGDPを上回る可能性が十分あります。そうして、もしそうなったとすれば、これはとてつもないことになります。ウクライナは軍事にも力をいれるでしょうから、軍事費でも、経済的にもロシアを上回る大国が東ヨーロッパのロシアのすぐ隣にできあがることになります。

その頃には、ロシアの経済は疲弊して、ウクライナのほうが存在感を増すことになるでしょう。そうして、ロシアのウクライナに対する影響力はほとんどなくなるでしょうしょう。実際、日本でも1960年代の高度経済成長の頃から、当時のソ連の影響は日本国内ではほとんどなくなりました。これを見る中国は、武力侵攻は割に合わないどころか、経済的にも軍事的にも疲弊しとんでもないことになることを思い知るでしょう。

それどころか、ロシアの国民は繁栄する一方のウクライナに比較して没落する一方のロシアの現状に不満を抱くようになるでしょう。ロシア人以外の民族で構成さているロシア連邦国内の共和国などでは独立運動が再燃するかもしれません。

実際、ウクライナが大国になれば、多くの国がウクライナと交易してともに従来より栄えるようになるでしょう。ロシアの経済の停滞を補う以上のことが期待できます。ウクライナがNATO入る入らないは別にして、安全保証ではロシアの前にウクライナが控えているという事実が安心感を与えることになるでしょう。

また、ウクライナ戦争中に西欧諸国から支援を受けたウクライナは、その期待に答えようとするでしょう。

もし大国になったウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアはパニック状態になるでしょう。それは、中国も驚愕させることになるでしょう。

日本としては、戦災・震災の復興の経験を生かし、ウクライナに対して資金援助だけではなく、様々なノウハウを提供すべきでしょう。さらには、ロシアに侵攻される直前のウクライナは日本にも似た状況にあったことから、復興し経済成長したウクライナのあり方は、日本にとっても非常に参考になります。

日本は、自らも学ぶという姿勢でウクライナに支援すべきでしょう。

ただし、先程も述べたように、ウクライナが西洋諸国なみの民主化を実現しなければ、これは絵に描いた餅で終わることになります。

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2019年2月27日水曜日

北朝鮮とベトナムの友情の秘密―【私の論評】友情の背景には中国の覇権主義が(゚д゚)!

北朝鮮とベトナムの友情の秘密

パスカル・ヤン (著述家)

 フレデリック・フォーサイスの『戦争の犬たち』が映画化されたのは、1980年のことだった。小説が素晴らしいので楽しみにしていると、ベルギーで友達になった米国人女性が既に観たが、がっかりでむしろ同種の傭兵映画『ワイルド・ギース』を激賞し、小説『リンガラ・コード』もいいが、『戦争の犬たち』の映画を酷評していた。

 彼女は、ザイールのキンシャサ駐在員の妻で、健康診断と休暇をかねてベルギーのブリュセルに数週間滞在しているようだった。

 彼女のお陰で、立て続けにアフリカを舞台にした映画を見ると、ソ連邦の影響なのか、キューバ兵が必ず登場する。米国の世界戦略に対して、ソ連も当時は元気いっぱいで、世界を手中に収めるべく、たとえば、イスラエルとの中東戦争では、操縦士を東ドイツからエジプトに派遣し、現地の操縦士の苦手な夜間の空中戦に備え国際化していたのだ。今で言えば中国のアフリカ進出と同じであろうか。

ソビエト社会主義共和国連邦大使館広報部が日本人向けに刊行していた月刊広報誌
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 歩兵軍団としては、ソ連の代わりにキューバ兵が共産化したアフリカ中央部に多数派遣され、上記の映画では、『怪傑ゾロ』のスペイン兵のように必ず登場し、死んでも死んでも登場していたと記憶する。

ソ連への旅

 そんな折、留学中のベルギーの大学にビラが貼られ、真冬のモスクワとレニングラード(現在のサンクトペテルスブルグ)に15日間現在の貨幣価値でも5万円程度で行けると出ていた。

 試験も終わり、真冬ではあるが、ソ連をみる絶好のチャンスだと思い参加をきめた。その間、二回ほど事前の集合があったが、手続き的な説明でビザや通貨の問題であり、洗脳教育はなかったのか、あったのか、眠っていたので不明だ。

 パスポートは、白紙でできたものをソ連の国営インツリーストが用意してくれ、旅の最後に回収とのことであった。「ソ連の入国スタンプがあると就職にも困るだろう」だと、よく知っている。

 既に、冷戦も末期になっており、軋みが生まれ始めるなか、ソ連は必死に軍備拡張と人気取りをしながら、厳しいアフガン戦争の最中であったのだ。

 1月も半ばに成り、凍え死ぬようなベルギーからアエロフロートのイリューシン62に乗って、更に極寒地モスクワのシュレメチボ第二空港に到着した。そこからは、インツリーストの手配に乗り、コンベアーに乗って盛りだくさんな旅がはじまった。

 時々、洗脳教育の時間があったが、講師はすべてフランス語が完璧に話すロシア人であり、フランス語系ベルギー大学生なので、ヒートアップした議論が展開されることになる。メンバーで外国人は、僕のほか米国人が数名いたが、「SS20配置」問題やシベリアガスパイプライン問題、アフガン問題に関する議論には、僕らは聞くだけであった。白熱して入ることはできなったと言うべきだろう。

 しかし、ロシア人はフランス語を使いながら、極めて丁寧に防戦し、社会主義がいかに素晴らしいかを教えているのだが、ハンガリー動乱やプラハの春についての話になると、さらに防戦一方になっていたようだ。

1989年 全ソビエト労働組合の水着コンペティション作品

 不思議なことに、米国人学生の一人は、三沢にとても詳しくその後、彼とは音信不通になって現在に至っている。

 そんなチームとの珍道中で、有名な大学のキャンパスや星の町も訪問し、レニングラードではコンサート三昧や食事三昧であった。食糧難のソビエト連邦で、僕らに対する見栄なのか、後半は食べ疲れてしまい、半分以上は手つかずで、残るのを見計らったかのように、ウエーターが別の容器に回収していた。その手際の良さは、神の手のようであり、バナナなど南方の果物は金貨を扱うように回収していたのを思い出す。

 米国人は、ソ連の崩壊をいっていたが、確かにその後10年は持たなかったのだ。アンドロポフ、チェルネンコ時代であり、モスクワもレニングラードにも笑いは全く存在していなかった。地下鉄の過度な美しさやシステムに驚いたが、逆に国内便の旅客機は、飛ぶのが不思議な代物で、当時禁止されていた、『ドクトル・ジバゴ』の映画、ララのテーマが何度も機内でながれていて、ちぐはぐさに全員で大笑いした。

 中でも、世界から青年を集めたパトリス・ルムンバ大学で、別のちぐはぐさを目撃した。平等のはずの社会主義で、肌の色による差別が隠然と存在していることを知り、その後、たまたまタクシーを待つことになり、僕と黒人の仲間を少し離れて待つように先方の学生からアドバイスをうけた。後で聞くと、ソ連は人種のカーストがあり、黒人、アジア人、アラブ人は、差別されてしまうとのこと。それもあからさまだそうだ。

ソ連での北朝鮮人とベトナム人の出会い

 そういえば、アフリカからの留学生も多いし、アジア人も多数いたが、フランスやベルギーの大学でよく見る、黒人と白人のカップルは皆無であったのだ。

 聞いてみると、はやりアジア人同士の結束や、ラテンアメリカ人同士のコミニティーはあるが、人種を超えての結束は皆無だとのこと。かといって同国人の結束が強いかというと違うようだ。

 各国の共産主義の度合いに応じてもカーストがあるようで、キューバは圧倒的に高いようだが、役割としては兵士をアフリカに提供することのようであった。

 そして、北朝鮮からの学生は原典を徹底して勉強し、ベトナムの学生と成績を争っているとのこと。

 当時パリの日本館や国際学生村を思い出したが、そこでも台湾からの学生と日本からの学生は旧知のようなつきあいがすぐに始り、その後終生続く場合も多い。

 ベトナムからの留学生と北朝鮮からの留学生は今でもひとたびロシア語になれば、時空を超えて、モスクワでも学生時代に戻るに違いないのだ。

 ベトナムも北朝鮮もソ連邦のお陰で、そんな財産をもっていることを,トランプ大統領は知ってのだろうか。

【私の論評】友情の背景には中国の覇権主義が(゚д゚)!
冒頭の記事では、

「ベトナムからの留学生と北朝鮮からの留学生は今でもひとたびロシア語になれば、時空を超えて、モスクワでも学生時代に戻るに違いないのだ。

ベトナムも北朝鮮もソ連邦のお陰で、そんな財産をもっている」

などとしていますが、北朝鮮とベトナムの友情の背後には、無論そういう側面もあることは否定しませんが、そのようなことよりももっと大きな背景があると思います。本日はそれについて解説します。ただし、上の記事を書いた人は、そのことは当然であり、その上でソ連のとりもつ縁を語っているのかもしれません。

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩党委員長は2月27~28日に、ベトナムの首都ハノイで2度目の首脳会談を開催中です。

握手するトランプ米大統領と金正恩労働党委員長=27日、ハノイ

昨年6月のシンガポール会談は華やかなイベントにすぎず、「取りあえず世界から脚光を浴びよう」と両首脳とも思ったのでしょうが、今回は違うはずです。米朝両国にとって、ベトナムは特別な国です。この因縁の地で長い対立に終止符を打ち、一歩前へ踏み出そうとしているのではないでしょうか。

かつてベトナムは泥沼の戦争に耐えて、米国を敗走させました。ベトナム戦争終結から20年余り後の95年に国交正常化を実現。その間、ベトナムは86年からドイモイ(刷新)政策を進めて経済発展を遂げ、国際的な孤立状態から脱出していました。米国からすれば、ベトナムは対立から和解へと移行できた建設的なパートナーといえます。

一方、朝鮮戦争で戦った北朝鮮とは53年に休戦協定を結んだ後も国交樹立には程遠く、朝鮮半島は「冷戦最後の地」と言われています。国民を飢餓に追い込みながら軍事優先で核ミサイル開発に突き進んできた北朝鮮の歴代指導者も経済発展の重要性は認識していただでしょうが、本格的な改革開放に踏み切れないでいました。実際、金が中国を訪問するたびに先端科学技術を誇る同国の工場や研究所を見学するのは、

「自国を豊かにしたい」という気持ちの表れでしょう。問題はどこを経済発展のモデルとするかです。「ベトナムに見習え」と、トランプは金に言い聞かせるかもしれないです。もはや行き詰まりを見せつつある中国流社会主義市場経済の「成功物語」よりも、対米関係において同じような歴史問題を見事に解決してきたベトナムのほうが身近な模範になりそうです。

金にとっても、ベトナムは親しみを覚える相手です。昨年12月3日、在ハノイ北朝鮮大使館は、「建国の父」金日成(キム・イルソン)国家主席のベトナム訪問60周年を記念する行事を開催して、両国の厚情を温めました。

中国の覇権主義に対抗

容姿から歩き方まで祖父そっくりの正恩にとって、ベトナム訪問を実現すれば対内的に二重の宣伝になります。祖父の「偉大な足跡」をたどっていることと、祖父でさえ解決できなかった「米帝との戦後処理」を清算した、と誇示できるからです。

ベトナムと北朝鮮の対米関係を考える場合、陰の存在となってきた大国、中国を忘れるべきではありません。

中国は「抗米援朝/援越」という歴史ドラマの主人公でした。朝鮮戦争では50年から最終的に撤退する58年まで、中国は約135万人以上の「志願軍(義勇軍)」を投入しました。犠牲者の中には最高指導者・毛沢東の息子も含まれています。中国と文字どおり「鮮血で固められた友情」を構築したことで、北朝鮮は国家の命脈を保てました。

ベトナムに対しても、中国は志願軍としての派遣こそなかったものの、数十万人規模に上る軍事技術者と労働者を送り込み、武器弾薬の提供を惜しみませんでした。社会主義体制を守るために共同戦線を組んでいました。

しかし、大国米国に勝った小国ベトナムは、温情を装った中国の覇権主義的内政干渉に果敢に異議を唱えました。中国が「恩知らずを懲罰」しようとして起きたのが79年の中越戦争です。ベトナムと同じく、歴史的に長らく陸続きの中国による支配下に置かれてきた北朝鮮はこの懲罰戦争を苦々しく傍観し、心情的にはベトナムを支援したことでしょう。

結局、中越戦争は社会主義国同士が交戦することで、冷戦体制の崩壊を促しました。イデオロギー的な対立以上に中国の覇権主義こそが脅威、という現実を国際社会に認識させたからです。

1979年に中国・ベトナム間で勃発した戦争。ポル・ポト政権を崩壊させたベトナムへの懲罰として
中国は解放軍10万人を派遣。しかし、装備・練度共に優越するベトナム軍に解放軍は
大損害を被り、1ヶ月足らずで撤退を余儀無くされた。

ベトナムも北朝鮮も中国と直接国境を接しています。ベトナムは中越戦争に勝利して中国を屈服させました。これは、同じく中国と国境を接している北朝鮮は大いに勇気づけられたでしょう。

一方の北朝鮮は、中国と戦争をしたことはありませんが、やはり中国と国境を接しており、中国に何かと干渉されていました。ところが、北朝鮮が核とミサイルを開発してからこれはずいぶんと変わりました。

北朝鮮と中国は国境を接していることから、短距離ミサイルでも中国を攻撃できます。国境付近で中国が不穏な動きをみせた場合は、短距離核ミサイルでこれを撃破することができます。

さらに、中距離核ミサイルでも、北京や上海などの大都市を攻撃することができます。ICBMでなくても、中国の要衝を叩くことができます。

これは、米国よりも中国のほうが脅威を感じていると言っても過言ではないでしょう。もし、北朝鮮が核を有していなければ、金正恩は叔父である張成沢を粛清したり、兄である金正男を暗殺することはできなかったでしょう。それを実行すれば、ただちに中国が何らかの行動に出た可能性が大です。

しかし、核を持つ北朝鮮に対して、中国はそれはできませんでした。そうして、現状をみまわしていると、北朝鮮は中国に従属しようとする韓国にかわって、今や朝鮮半島が中国に侵食されないように防波堤の役割を担っているのです。

ただし、無論私はこの金正恩の決断を支持するわけではありません。それはまた世界がより危険になることを意味するからです。混み合う空港で異母兄の殺害を命じる男ならば(韓国の情報当局が正しければ)、より多くの人々を死滅させることが自身の存続を保証すると思えば、あるいはもう失うものは何もないと感じれば、ためらうことは何もないことでしょう。

しかし、もし北朝鮮が核を有していなければ、今日米国と首脳会談を開催することなどできなかったでしょう。それどころか、金王朝は滅ぼされ、北には中国の傀儡政権が樹立され、今頃韓国を最終的に組み込もうとしていたに違いありません。

これに関しては、ベトナムを多いに勇気づけたことでしょう。北の核は、中国の注意をそれにひきつけるということで、ベトナムにとっても、安全保障上のメリットがあることはいうまでもありません。実行するしないは別にして、ベトナムも核を持つという選択肢もあり得ることを認識しているに違いありません。

2月のハノイには中国の習近平(シー・チンピン)国家主席も晴れ舞台に登場したいに違いないですが、今のところ誰からも招待されていないようです。ただ米朝会談後、金が帰途に北京詣でをするならば、習は金を「礼儀正しい、儒教精神の長幼の序をわきまえた好青年」と評価することでしょう。

ただし、核を持つ北朝鮮に対しては、習近平といえども好き勝手に干渉することはできません。その北朝鮮が米国側につくことになれば、中国の安全保障政策も大きく変わるに違いありません。

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