2020年7月14日火曜日

“帝国主義的覇権国家”の異常ぶり…中国とまともに付き合うのは限界だ! 日本は欧米諸国と安保・経済の連携を— 【私の論評】世界の中国の全体主義との戦いの終わりに、日本は新世界秩序の理念を提唱せよ!(◎_◎;)

“帝国主義的覇権国家”の異常ぶり…中国とまともに付き合うのは限界だ! 日本は欧米諸国と安保・経済の連携を 

高橋洋一 日本の解き方

習近平国家主席
自民党は中国による「香港国家安全維持法(国安法)」に対する非難決議を了承した。習近平国家主席の国賓来日に関し、「党外交部会・外交調査会として中止を要請せざるを得ない」としている。沖縄県の尖閣諸島にも連日中国船が接近するなかで、日本の国益を守るためには、対中外交でどのようなスタンスが得策なのか。

 最近の中国は、周辺国と数々のトラブルを抱えている。英エコノミスト誌に掲載された風刺漫画で、ドラゴンに見立てられた中国が、右手でインド、右足で南シナ海諸国、左足で台湾とそれぞれ押し合い、尻尾は香港の自由を奪っている様子が描かれている。今のところ、左手は地面をつかんでいるが、筆者には日本の尖閣を伺っているように思えた。

 先日の本コラムで、国安法のことを書いたが、香港での国際公約である50年間の「一国二制度」を破ったことにとどまらず、同法の域外適用は異常である。域外適用とは、逆にいえば他国の国家主権を無視することであり、全世界を支配下にするという宣言のように筆者には見える。また、それは世界は中国のものという「中華思想」そのものだ。

 当然、隣国である日本も警戒すべきだ。尖閣での日本の主権侵害も放置できない。国安法を前提とすれば、わが国固有の領土である尖閣諸島で領有権を主張することは、世界のどこで言っても同法違反になってしまう。

 仮に、習主席を日本に招いて、安倍晋三首相が同氏に尖閣諸島の領有権を主張しても、同じく安倍首相は同法違反となりかねない。安倍首相が日本にいれば、中国と日本との間には犯罪人引き渡し条約はないので問題ないが、例えばフランスのように中国との同条約締結国に安倍首相が行ったとき、中国は国安法違反を理由として中国への引き渡しを求める可能性すらあるのだ。

 もう西側民主国家の常識では想像できないくらい、中国は帝国主義的国家になっている。国安法について、ポンペオ米国務長官は、自由のない言論統制を「全体主義的」と批判したが、世界制覇をもくろむ拡張覇権主義といってもいい。

 当然日本は各国の主権を尊重し、自国主権を守る立場なので、帝国主義の拡張覇権国家と付き合うのには限界がある。中国が国安法の自由抑圧・拡張覇権主義を取り下げないと、まともに対中外交はできないと言ったほうがいい。

 もちろん習主席の国賓としての訪日などありえず、今の中国とは一線を画したほうがいいのは明らかだ。でないと、西側民主主義国に間違ったメッセージを送ってしまう。

 その上で、日本の取るべき外交は、中国の周辺国で困っている国と連携して、中国の拡張覇権主義をどのように食いとどめるかだ。さらに、民主主義の欧米諸国とも共通の価値観を確認しつつ、安全保障と経済の連携を図り、その他の国へ民主主義を広めることも重要になる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】世界の中国の全体主義との戦いの終わりに、日本は新世界秩序の理念を提唱せよ!(◎_◎;)

日本の取るべき外交は、良くも悪くも米国の外交にかなり影響されます。日本は、まずは米国の姿勢を理解しておくべきです。

貿易戦争で始まった米中対立は、ハイテク覇権、香港問題、ウイグル人弾圧問題など、中国共産党の基本路線と真っ向からぶつかる展開となっています。米国としてもハイテク覇権の維持、民族自決、宗教の自由といった、国家の基本理念に関わる問題だけに、米中の歩み寄りは難しいです。

中国共産党旗の前で記念撮影する中国の人々
私は、米中対立における米国の究極の目的は中国共産党の壊滅にあるのではないかとみています。1983年にアメリカのレーガン大統領は「スターウォーズ計画」を発表し、当時のソ連に宇宙軍拡競争を仕掛け、ソ連の国力の消耗を狙いました。

その結果8年後の91年、ソ連は崩壊しました。宇宙軍拡競争をソ連に仕掛けた段階で、米国はソ連共産党の壊滅を目的としていたと考えられます。米国は日本に対しても、日露戦争終結直後から日本攻略を目的とした「オレンジ計画」という長期戦略を策定し、40年後にはこれが実現することになりました。

米国は自らの世界覇権を守るためには、長期で慎重な戦略を策定し、これを挙国一致で実行に移す能力のある国であることを忘れるべきではありません。

日本としては米中対立の中で、「和を以って尊しとなす」という聖徳太子以来の和の精神を基に、日本独自の共存共栄の世界観を世界に示し、対立を回避したいところですが、特に「国安法」の施行の後からは、もうこの争いは単なる覇権争いではなく、日本をも直接脅かす中国の全体主義的価値観と米国の自由・平等・人権などの西欧的価値観の戦いになってきました。

西欧的価値観は、長期間にわたって醸成され、今日に至っています。その中の一つにウェストファリア体制というものがあります。

ミュンスター条約(ウェストファリア条約)締結の図
ウエストファリァ体制とは、1648年のウェストファリア会議で成立した世界最初の近代的な国際条約とされている、三十年戦争の講和条約による体制です。66か国がこの条約に署名し、署名までに4年の歳月を費やしています。

この体制によって、プロテスタントとローマ・カトリック教会が世俗的には対等の立場となり、カルヴァン派が公認され、政治的にはローマ・カトリック教会によって権威付けられた神聖ローマ帝国の各領邦に主権が認められたことで、中世以来の超領域的な存在としての神聖ローマ帝国の影響力は薄れたました。

スイス、オランダの正式な帝国離脱が認められ、フランスはアルザス地方を獲得しました。

現代の世界を見渡せば「ウェストファリア体制」がどれぐらい残っているでしょうか。

主権国家の並立体制は、建前上は残っています。その意味でいえば、世界はいまだに「ウェストファリア体制」と言えます。

「ウェストファリア体制」とは、煎じ詰めると以下の3点です。
一 心の中では何を考えてもよい
二 人を殺してはならない
三 お互いの存在を認めあおう
という三要素です。そして、これらは最も確立された国際法であり、法則なので否定のしようがありません。

しかし、現実はどうでしょうか。

この三要素が当然だという価値観を持った国はどれぐらいあるのでしょうか。日米、そのた西欧先進国は、全てこの価値観を持っている言って良いでしょう。

ところが中国もロシアも、そうして無論北朝鮮もこのような価値観は持っていません。習近平、プーチン、金正恩共通しているのは、自分が殺されなければ、やっていいと考えるところです。むしろ、すでにバンバンやっています。

どっちつかずなのが韓国です。無論、韓国では中国やロシアのように人を殺すことはありませんが、それにしても、歴代の元大統領の多くは、無残な死に方をしています。

日本としては、明治以来西欧的価値観を受け入れ、全体主義的に陥ったこともなく(大東亜戦争中の日本の体制をナチズムと似たような全体主義というのは歴史を真摯に学んだことのないものの妄想です)、どちらかといえば、米国の方に与し易いのは事実です。

日本は米国の意図を汲み、強い方に従う劣位戦の発想ではなく、あくまで中国共産党の全体主義との戦いに挑み、日本人独自の世界観と歴史観に基づいた平和への道を世界に提示すべきです。

西欧諸国等の中国の全体主義との戦いは、中国共産党の崩壊によっていずれ終焉します。その後の世界は、日米やその他の戦勝国によって決められることでしょう。そうして、その時も結局「ウェストファリャ体制」は温存されることになるでしょう。特に上記で示した、三要素は必ず温存され、その上に新たな世界秩序が構築されることになるでしょう。

第二次世界大戦の終焉直前のヤルタ会談などでは、結局その後ソ連や中国、北朝鮮を台頭させ、ソ連時代の東欧の悲劇、アジア地域の不安定を招く結果となりました。日本は、独立国でありながら、そうではないような状況に悩むことになりました。

ヤルタ会談
今後の新世界秩序づくりにおいては、無論日本が積極的に関与し、リードし当面の世界にとって最も良い秩序を構成すべきです。おそらく、米国主導では、他国が反発してまとまらないでしょう。

その時に、日本が米国と他国との橋渡しとなり、まともな新世界秩序を作る架け橋となるべきです。そのようなことは、日本でなければ、なかなかできないことです。なぜなら、日本は自由主義陣営においては、経済力は第二位でありながら、第二次世界大戦後、一度も戦争したり、地域紛争などに介入したことがないからです。

さらに、最近ではTPPや欧州とのEPA協定を結ぶなど、世界に先駆けて大規模な自由貿易協定を結んだという実績もあります。インド太平洋地域では、日本は米国と当該地域の国々との橋渡しをしました。日本の安倍首相による橋渡しがなければ、米国のインド太平洋戦略など成り立たなかったことでしょう。

日本は第一次大戦後のパリ講和会議において、史上初めて国家として人種平等を提唱し、この時は米国の先日もこのブログに掲載したように、非常に問題のあるウィルソン米大統領の独断により廃案とされましたが、第二次世界大戦を経て、人種平等の世界が実現したのです。日本は歴史をリードする理念を提唱できる国家であることを日本人は忘れてはならないです。

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2020年7月13日月曜日

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「国安法」施行で日本人が注意すべき“危険な国”は? 石平氏「習主席には地球全体を支配しようという思惑が? もし日本人が香港民主派に賛同する言動すると…」

香港への統制を強める習近平氏はあまりに危険だ。国際社会は警戒感を強める

中国政府による統制を強化する「香港国家安全維持法(国安法)」施行に伴い、自由主義諸国は「自国民に影響が出かねない」と警戒している。同法が定める違法行為を、外国人が香港だけでなく、香港以外の場所で行った場合でも、香港・中国側が求めれば拘束・移送される危険性があるのだ。香港や中国と「犯罪人の引き渡し条約」を結んでいる国は大丈夫なのか。日本人が注意すべき国を調べてみた。


 「中国が香港に国安法を導入した結果、香港との関係が根本的に変わった。『犯罪人引き渡し条約』は停止する。中国にも伝えた」

 オーストラリアのスコット・モリソン首相は9日の記者会見で、こう表明した。

 国安法は、中国への抗議活動などを取り締まるため、国家分裂や政権転覆、外国勢力と結託して国家の安全に危害を及ぼす行為だけでなく、それらを扇動、教唆することも禁止している。

 これらは香港で適用されるだけでなく、「香港の永住権を有しない者が、香港以外の場所で本法律に規定する罪を犯した場合、本法律が適用される」(38条)という。

 つまり、外国人が香港以外で「香港は独立すべきだ」と発言しても、同法が適用される可能性があるのだ。

 このため、冒頭のオーストラリアだけでなく、カナダのジャスティン・トルドー首相も3日、同様の条約停止を発表した。ニュージーランドも9日、引き渡し条約の見直しを表明した。



  日本は幸い、香港や中国と「犯罪人引き渡し条約」は結んでいない。ただ、同様の条約を、香港や中国と結んでいる国は多い=別表。ビジネスや観光で訪れる際は注意すべきだ。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「習主席には、国際法や国際関係の基本ルールが通用しない。地球全体を支配しようという思惑でもあるのではないか。日本人が香港の民主派に賛同する言動をすれば、香港や中国はもちろん、香港や中国と親しい国で拘束される危険性がある。日本政府は『国安法は受け入れられない』と断固たる声明を出すべきだ。中国の属国になるわけにはいかない」と語っている。

【私の論評】先進国は国際法を守らない中国の高官が自国を訪問したら、逮捕して裁判せよ!(◎_◎;)

香港で国安法が導入された当初から、上の記事で示されている懸念については、私もこのブログで表明しました。

これ一つを持ってみても、もはや習近平は世界の指導者にでもなったつもりで、世界中を自分に従え、世界中のいかなる国において誰かが中国や香港を批判しても、それを罰するつもりです。

すでに、多くの国々が犯人引渡し条約を破棄するか、その方向で、進めているのも当然出す。まともな民主国は、この条約を破棄することでしょう。

この中国の暴挙には、まずはほとんどの国で条約を破棄することで、ある程度対応することができます。条約を破棄しない国は、ロシアなどのわずかの国々になることでしょう。

ロシアなどのわずかな国々に、行かなければ良いのです。これは、米国などに行けなくなるのとは違いますから、個人に取っては、ほとんど問題にならないでしょう。

ただし、企業などでは、中国や、中国と「犯人引渡し条約」を結んでいる国に、拠点がある場合は、深刻な問題になりそうです。

しかし、これも中長期的には拠点を引きあげれば良いと思います。現状では、中国や中国と関係の深い国々でのビジネス展開は非常に危険です。一時的に利益が出たとしても、この先どうなるかわかりません。

そうして、この件に関して、中国を牽制する手段は他にもあります。それは、かつて台湾が行ったことです。それに関しては、随分前ですが、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

【日本で報道されない激レアニュース】台湾訪問中の中共高官2人、相次ぎ刑事告訴される―【私の論評】及び腰日本はなぜこのようなことをしないのか?

  スペインの国家裁判所に、ジェノサイドと拷問の罪で
  刑事告訴された江沢民・元国家主席を含む5人の中共高官

この記事は、2010年のものです。詳細は、この記事をご覧いただくもとして、この記事では当時台湾訪問中の中共高官2人が相継ぎ刑事告訴されたことを掲載しました。以下に一部を引用します。
中国宗教事務局の王作安・局長は、先週15日(2010年9月15日)に台湾を訪問した際、台湾法輪大法学会に、法輪功への集団弾圧を陣頭指揮した罪で告訴された。前日の14日、台湾を訪問中の陝西省趙正永・代理省長が同団体に刑事告訴されたばかり。 
台湾法輪大法学会は、台湾の高等裁判所の検察署にジェノサイドと民権公約違反の罪状で二人をそれぞれ刑事告訴し、身柄拘束を要求した。同検察署は訴状を受理した。
この時の台湾総統は、当然のことながら現在の蔡英文ではなく、中国寄りの馬英九でした。そのこともあって、これは大ごとにはならず、二人の中国高官も結局早期に釈放されたようです。それにしても、台湾検察が刑事告訴をしたということ事態が今から考えると、とてつもないことです。もしこの時に、本格的裁判をしていたらどうなったでしょうか。

2013年には、スペインの裁判所がチベット族の虐殺に関与した疑いで、中国の江沢民元国家主席(当時:87)ら元幹部5人に出した逮捕状が波紋を呼びました。

このようなことがあった後に、2013年3月14日には、習近平政権が成立しました。このようなことがあったせいでしょうか、習近平が初めて、米国の当時のオバマ大統領を訪問した時には、ひょっとして自分は米国司法当局に逮捕されるのではないかという危惧の念を抱いていたようです。

2013年オバマ大統領と習近平主席の初会談

なぜなら、法輪功信者は米国にも大勢いて、習近平の米国訪問の反対運動をしていたという事実があります。実際にオバマ政権の時の司法当局がそのようなことをしていたら、その後の中国の暴走を防げたかもしれません。

台湾やスペインがこのようなことをしているのですから、中国が実際に、国安法で他国に、中国を批判した個人などの引渡しを求めるようなことをした場合は、その報復として、中国人高官が米国などを訪れた場合、司法当局が身柄を拘束して、起訴して裁判を行えば良いのです。

習近平が日本を訪問したいというなら、訪問させて、検察が身柄を拘束して、裁判を行うというようなことをすれば良いです。そのようなことをすると、意外と現在の八方塞がり中国は、喜んでそれを受け入れ、八方塞がりの原因を作った習近平はあっさり失脚するかもしれません。

何しろ、これから、米国は中国に対する制裁をさらに強化し、多数の中国高官の資産を凍結しようとしています。そうなれば、金の切れ目が縁の切れ目で、習近平は中国の幹部からも敵ということになります。

理想も信念もない中国共産党幹部たちの、結びつきは金だけです。金を儲けさせてくれるから、習近平について行ったものを、その金がなくなれば、習近平に忠義立てする必要もなくなります。その習近平が身柄を拘束されるということになれば、大喜びする幹部も多いことでしょう。

中国の高官であれば、過去に虐殺や虐待に関わっているものも多いはずです。だから、起訴理由はいくらでもあります。そうして、それを米国だけが行うというのではなく、多くの国々で行うようにすれば良いでしょう。

国際法を守らない中国は、それくらいのことをされても当然です。

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中国軍が中東に基地を構える日――中国は「第二のアメリカ」になるか— 【私の論評】中共が力を分散すれば、対中勢力にとってますます有利になる!(◎_◎;)


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2020年7月12日日曜日

中国軍が中東に基地を構える日――中国は「第二のアメリカ」になるか— 【私の論評】中共が力を分散すれば、対中勢力にとってますます有利になる!(◎_◎;)

中国軍が中東に基地を構える日――中国は「第二のアメリカ」になるか

訪中したイランのザリーフ外相を迎える王毅外相(2019.8.26)
  • 中国は中東イランのキーシュ島を25年間租借する権利を得て、ここに軍事基地を構えようとしていると報じられている
  • 事実なら、中国はアジア、中東、アフリカを結ぶ海上ルートを確立しつつあるといえる
  • ただし、イランに軍事基地を構えた場合、中国自身も大きなリスクを背負うことになる
 海洋進出に合わせて中国はアジア、アフリカ各地に軍事基地を構えてきたが、今度は中東がそのターゲットになっている。

ペルシャ湾に中国軍基地ができる?

 中東の大国イランは今、コロナだけでなく、あるウワサによって揺れ動いている。イラン政府が中国との間で、4000億ドルの資金協力と引き換えにキーシュ島を25年間貸し出すことに合意したというのだ。

 ペルシャ湾のキーシュ島は91.5平方キロメートルで、約4万人が暮らす小島だが、大きな港がある他、平坦な地形のため飛行場もあり、交通の便は悪くない。



 その立地条件から古代から人が行き交い、古い街並みが観光名所にもなっている。最近では自由特別区としてショッピングセンターや高級ホテルが立ち並ぶリゾート地としての顔ももつ。

 このキーシュ島を中国に長期リースするという情報は、債務をタテに中国がスリランカの港の使用権を手に入れた一件を思い起こさせるため、イランで政府への不信感と批判が高まっているのだ。何が合意されたのか

 では、この情報は確かなのか。

 問題になっているのは、2016年に交わされた「中国・イラン包括的パートナーシップ協定」だ。昨年9月、米ペドロリアム・エコノミストは関係者の証言として、8月にイラン外相が北京を訪問した際、この協定に以下の内容がつけ加えられたと報じた。

・中国がエネルギー開発に2800億ドル、インフラ整備に1200億ドル、それぞれイランで投資すること

・その引き換えに、中国はイラン産原油を12 %割引き価格で購入できること

・中国の施設を警備するため中国兵5000名がイランに駐留できること(イランへの訓練も含まれるといわれる)

 これだけでも中国のプレゼンスがかなり増す内容だが、さらに追い討ちをかけるように今年2月、イランの民間メディア、タスニム通信が内部情報として「修正された協定にはキーシュ島のリース契約も含まれる」と告発した。それによると、キーシュ島に中国が恒久的に軍事拠点を構えることになる。
これをきっかけに、イラン国内の様々な立場から批判が噴出。反米的な保守強硬派のアフマディネジャド元大統領がナショナリストらしく「イラン国民はこの協定を拒否すべき」と主張する一方、もともとイラン現体制に批判的な亡命イラン人組織、イラン国民抵抗会議も「イラン史上最悪」と酷評している。

 イラン政府は合意内容を明らかにしておらず、中国政府もこの件には沈黙したままだ。しかし、いずれも明確に否定しないことは、キーシュ島租借に関するウワサに真実味を与えている。

誰がリースに向かわせたか

 仮に一連の報道が事実なら、中国はイランが困り果てた状況でキーシュ島の租借権を手に入れたことになる。イラン外相が北京を訪問し、協定が修正されたといわれる昨年8月は、ちょうどアメリカとの対立が激しくなった時期にあたるからだ。

 トランプ大統領は「イランが核開発に着手している」と主張し、2015年のイラン核合意を一方的に破棄。2018年暮れには経済封鎖を再開し、特に2019年春頃からは段階的に制裁を強化しただけでなく、戦略爆撃機などを派遣してイランを威嚇し始めた。

 トランプ大統領の主張はオバマ政権の業績を否定するとともに、北朝鮮との協議が行き詰まるなかで、大統領選挙に向けたアピールだったとみてよい。
ともあれ、アメリカによるこれまでにない圧力は、イランをそれまで以上に中国に接近させ、国内から批判が噴出することが目に見えていたキーシュ島の租借にまで足を踏み入れさせたといえるだろう。
中国の軍事展開への警戒感

 いずれにしても、このままキーシュ島に軍事施設ができれば、中国はユーラシアからアフリカにかけてのインド洋一帯での展開能力を高めることにもなる。

 「一帯一路」構想を掲げる中国は、その沿線上にこれまでにもジブチやセーシェルに軍事基地を構え、南沙諸島にも施設を建設してきた。


 これは「中国企業関係者の警備のため」というのが中国側の言い分だ。

 中国は2011年、「アラブの春」でカダフィ体制が崩壊したリビアに、油田で働く中国人労働者を救出するため軍艦を派遣した。この一件は、中国に中東・アフリカ一帯での展開能力を高める必要性を感じさせたとみられる。

 とはいえ、中国軍の海外展開が警戒感を招きやすいことも確かだ。それは西側諸国やインドなど周辺の大国だけでなく現地でも同じで、特にイランの場合、ジブチやセーシェルなどの小国と異なり、地域の大国としての自負もある。だとすると、イラン政府が協定の内容を明らかにしないことは不思議でない。
中国は「第二のアメリカ」になるか

 その一方で、キーシュ島に軍事拠点を構えれば、中国にとって新たなリスクが浮上することにもなる。

 外国軍隊の駐留はどこでも摩擦を生みやすいが、イスラーム圏ではとりわけ「異教徒の軍隊」への拒絶反応が強い。国際テロ組織アルカイダを率いたオサマ・ビン・ラディンがアメリカを断罪した一つの理由は、湾岸戦争(1991)でイラク軍を攻撃する拠点としてサウジアラビアに米軍が基地を構えたことにあった。

 このパターンに照らしてみると、イランに軍事拠点を構えた場合、中国はインド洋からペルシャ湾にかけての一帯でのプレゼンスを高められるだろうが、そのプレゼンスが大きいだけに、過激派から標的にされる公算も大きくなる。それは中国の中東進出におけるアキレス腱になり得る。

 中国政府はこれまで米軍の海外展開をしばしば「帝国主義」と批判し、「中国はアメリカと違う」と強調してきた。しかし、イスラーム圏で敵意の的になった場合、中国とアメリカの違いはこれまでになく小さくなるとみられるのである。

【私の論評】中共が力を分散すれば、対中勢力にとってますます有利になる!(◎_◎;)

上の記事の主張に関しては、私は概ね賛成です。中国が中東に本格的に、進出することは、そもそも不可能と私は思います。

これに関しては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中東で、中国が米国に取って代わることはできない―【私の論評】中国は中東への危険な一歩を歩みだした(゚д゚)!
イランのザリフ外相(左)と中国の王毅外相
この記事は、今年1月22日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事から以下に一部を引用します。

 ロシアはロシア帝国とソ連の後継であり、ロマノフ王朝時代から中東と深い関係にある。ソ連時代も中東において米国と覇を競った。土地勘もあり、やり方も知っている。しかし今日のロシアは、依然として強大な軍事力を誇っているものの、英国際戦略研究所(IISS)によれば2017年の軍事支出は日本より少ない。GDP(国内総生産)は韓国より小さく日本の3分の1にまで縮んでいる。総合国力において昔の面影はもはやない。影響力においても限りがあるということだ。 
 中国はどうか。国力を急速につけてきているが、歴史上、中東と全く関わってこなかった。中国の経験と知識には限界がある。 
 中国の一帯一路構想が、世界制覇に向けた中国のグランドデザインのように喧伝(けんでん)されている。しかし中国の現場から伝わってくる感触は、それとはほど遠い。大きなスローガンを次々に打ち出すものの、それを支え実行する理念、原則、ルール、実施の仕組みは、現場に近づけば近づくほど中身が見えなくなるのだ。 
 それに進出地域における経験と知識の不足という壁が立ちはだかる。これが中国の実態と言ってよい。 
 中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもある。 
 一帯一路構想を、中国を中心にかつて存在した朝貢貿易システムの再現と捉える人もいる。だが昔は、マルコポーロの例から分かるように、中国に来る人たちが道中のリスクをすべて負担した。しかし今度は中国が自ら出かける。リスクは中国が負わなければならない。中国が中東に積極的に関与するということは、宗教や民族など様々な理由から怨念が渦巻き、複雑で、世界一危険とみられる場所に足を突っ込むということなのだ。

最近ロシアと中国の中東進出を懸念する向きもありますが、ロシアには中東に関する知識や経験があるものの、GDPは東京都並で、これでは如何ともしがたいです。

中国は、最近は米中冷戦で経済は低迷気味ですが、国家単位で見れば、ロシアよりはかなり潤沢ながら、中国には中等の知識も、経験もありません。これでは、どうしようもありません。

結論から言えば、中露とも中東に本格的に進出することは困難です。この記事から、【私の結論】部分からも以下に引用します。
やはり中国の中東における経験と知識の不足という壁が立ちはだかっています。これが中国の実態です。中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもあります。 
そもそも、イスラム教の本質など中国人の多くはほとんど理解していないのではないでしょうか。私達の先進国の人間が、想定する平和とは、戦争のない状態です。少なくとも、中国でもこの考えは、先進国と変わらないかもしれません。

ところがイスラム教の想定する平和は、これとは随分違います。いくら戦争がなくてもイスラム教が世界を支配していない場合は平和ではなく、だからその平和を実現するために戦い続けなければならないというのがイスラムの考えで、これをジハードというのです。私達から見るとテロでも彼らから見ると宗教的な義務なのです。そういう観点からすると、イスラム教は平和の宗教ではありません。
テロも宗教的義務
これは、意外と習近平の考えとあい通ずるところがあるかもしれません。なぜなら習近平も世界の新たな秩序、それも中国の価値観でそれをつくりあげようとしているからです。
ただし、中国の国内のようなやり方で、中東でもゴリ押しすると、とんでもないしっぺ返しを食らうかもしれません。東南アジアでやっているように、多額の借款で中東諸国の港や、施設などを取り上げる等のことをすれば、それこそテロの標的になるということも十分考えられます。
日米にとって、中国の中東進出はどうなのかといえば、一言で言ってしまえば、歓迎すべきことかもしれません。なぜなら、中国が中東に進出すれば、テロ攻撃などにより、泥沼に嵌まり込み、とんでもないことになり、中東での軍事力を増強せざるを得なくなり、インド太平洋地域での、中国の軍事力が削がれることになるからです。

以前のこのブログにも述べたとうり、米国の外交、安全保障は、対中国を最優先としているようであり、その他のことは、中国と対峙するための制約要因としか見ていないようです。マスコミなどでは、トランプ大統領が個人的に北朝鮮に興味がないような報道をしているのを見かけますが、あれは間違いだと思います。

それにしても、中国は先日も述べたように、中東だけではなく、アフリカでも存在感を強めようとしています。さらには、EUでもマスク外交などを展開して、存在感を高めようとしています。

トランプ大統領が中国との対峙に集中しようとしているのとは、対照的です。とにかく、中共は、なんでも総合的に実施しようとしているようです。実施すべき事柄に優先順位をつけたり、当面何かに集中するという方式は、しばしば成功を修めることになりますが、何でも同時並行的に実施するとか、総合的に様々なことに取り組むことは、必ずと言って良いほど大失敗します。

軍事でも、外交でも、企業における仕事でも同じことが言えます。どのような仕事でも、実務上では、優先順位をつけて実行しなければ、物事はうまくは進みません。なぜなら、実務に投入する資源は限られているからです。

これは、企業でまともに、マネジメントをした経験のある人間なら、誰でも知っている原則です。トランプ大統領は長い間実業のマネジメントをしてきたので、これを骨身に染みているでしょう。しかし、中共はそうではありません。。

物事に集中しない、優先順位をつけないのは、官僚の特性でもあります。どこの国でも官僚は、総合的なやり方を好むようであり、毎年総合的対策を実施し、結局何も達成していないということが多いようです。

中国では選挙制度がないので、先進国のように選挙で選ばれた政治家はいません。その意味では、習近平を含む中国の指導者は、全員が指名制で選ばれ、その本質は官僚のようなものです。そのため、集中したり、優先順位をつけたりして、仕事をこなしていくべきことを理解していません。

特に民間であれば、営利企業であろうと、非営利企業であろうと、優先順位をつけずに業務を遂行すれば、いずれ弱体化し倒産します。しかし、官僚は違います。何をしようが役所は潰れることはありません。

これからも、中共は、南シナ海、東シナ海、太平洋、アフリカ、EU、中東などに手を出しつつ、ロシア、インド、その他の国々との長大な国境線を守備しつつ、米国と対峙して、軍事力、経済力、技術力を分散させる一方、日米加豪、EUなどは、中国との対峙を最優先すれば、中共にとってはますます不利な状況になります。

かつてのソ連も、世界中至る所で存在感を増そうとし、それだけでなく、米国との軍拡競争・宇宙開発競争でさらに力を分散しました。当時は米国も同じように力を分散したのですが、それでも米国の方が、国力がはるかに優っていたため、結局ソ連は体力勝負に負け崩壊しました。

今日、中共は、習近平とは対照的な、物事に優先順位をつけて実行することが習慣となっているトランプ氏という実務家と対峙しています。今のままだと、中国も同じ運命を辿りそうです。

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2020年7月11日土曜日

【ニュースの核心】中国問題が「ポスト安倍」の最大の焦点 親中勢力に“忖度”か批判加速か…候補の正念場が迫っている— 【私の論評】政治の世界は一寸先は闇、解散総選挙はおろか、禅譲できる人材が存在しない今安倍四選もあり得る!(◎_◎;)

【ニュースの核心】中国問題が「ポスト安倍」の最大の焦点 親中勢力に“忖度”か批判加速か…候補の正念場が迫っている

トランプ大統領は、空母「ロナルド・レーガン」を南シナ海に派遣し、習主席率いる中国軍を牽制した

米軍と中国人民解放軍が南シナ海で同時に、軍事演習を展開した。新型コロナウイルスへの対応で、世界各国が手いっぱいな間隙を突いて、中国が存在感を誇示する一方、米国は「思うがままにはさせない」と牽制(けんせい)した形だ。

 米軍は4日から、原子力空母「ロナルド・レーガン」と「ニミッツ」、駆逐艦などを加えた空母打撃群2つを南シナ海に派遣し、演習を始めた。

 公式には、「いかなる政治や世界の情勢を反映したものではない」と説明している。だが、同じ時期にパラセル(中国名・西沙)諸島付近で、中国海軍が軍事演習をしているのは、もちろん織り込み済みだ。

 米国は北朝鮮情勢が緊張していた2017年11月、空母3隻を同時に日本海へ派遣し、合同演習した。このときはドナルド・トランプ大統領が韓国国会で演説し、「われわれを甘く見るな」と警告した。

 今回は2隻だが、南シナ海の人工島に軍事基地を建設し、わが物顔でふるまう中国に対する警告であるのは明らかだ。マイク・ポンペオ国務長官は3日、ツイッターで中国に対し、「中国による南シナ海の係争海域での演習は非常に挑発的だ」と批判した。

 私は先週のコラムで、沖縄県・尖閣諸島を中国の侵略から守るために、周辺海域での日米合同軍事演習を提案したが、演習が有効な警告ツールになる実例である。

 そんななか、日本の永田町では「ポスト安倍」論議が盛り上がっている。もちろん着地点はまだ見えないが、新型コロナに加えて、香港情勢が緊迫するなか、中国問題が最大の焦点になってきた。

 日本は中国にどう立ち向かうのか。自民党は二階俊博幹事長が「親中派のドン」であるのは、よく知られた通りだ。外務省も中国専門家らが集う「チャイナスクール」を中心に親中派が強い。

 「ポスト安倍」候補は、親中勢力の意向を忖度(そんたく)して、中国批判をためらうのか、それとも批判を加速させるのか。私は中国に甘い態度をとれば、支持を失うとみる。

 なぜかと言えば、いまや一般国民だけではなく、中国をビジネスチャンスとみてきた企業にも、中国への警戒感が高まっているからだ。

 中国が香港に導入した「国家安全維持法」は香港市民だけでなく、外国人や外国企業にも適用される可能性がある(第38条)。加えて、トランプ政権の対決姿勢を見て、「中国ビジネスに深入りするあまり、米国を怒らせて制裁を食らったら元も子もない」と神経をとがらせているのである。

 政治家が中国に甘かったとすれば、最大の理由は支持者や支持企業が「中国とのビジネスを望んだ」、あるいは「働き手として、中国人就学生を必要とした」からだ。だが、その前提が新型コロナと香港問題で崩壊しつつある。

 同盟国である米国は、共和党も民主党も「反中国」だ。11月大統領選の結果にかかわらず、米国は対中対決姿勢を強めるだろう。この潮流を感じ取れないようでは、とてもじゃないが、日本の舵取りは任せられない。「ポスト安倍」候補の正念場が迫っている。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。
【私の論評】政治の世界は一寸先は闇、解散総選挙はおろか、禅譲できる人材が存在しない今安倍四選もあり得る!(◎_◎;)

7月に入ってから、永田町では「安倍首相が9月に始まる臨時国会の冒頭で内閣改造をし、同時に解散総選挙に打って出るのではないか」 という飛び交っているそうです。

突然浮上した解散総選挙の噂の震源地は、ネットなどによると、安倍首相の盟友の麻生太郎・副総理兼財務相だそうですが、これは確かめようもありません。そうして、この秋解散がまことしやかにささやかれる理由は、やはり、河井事件だというのです。

無論解散の判断は首相の専権事項ではあります。現在検察が克行容疑者から押収した資料、とくに会計帳簿と使途報告書に何が書かれているのかに注目が集まっています。

つまり、この先、何が飛び出すか分からないのです。検察も黒川問題で失墜した国民の信頼を取り戻そうと本気になっている中、安倍首相の責任問題にまで発展する可能性もあります。

そうした検察の動きを牽制するためにも、安倍総理が解散に打って出る可能性が出てきたというのです。さらに、もう一つの決断材料となりそうなのが「ポスト安倍」をめぐる思惑です。

安倍首相にとって理想的な展開は、自身の影響力を残しつつ、首相の座を禅譲できることです。

 「来年までに衆院選が行われる。自民党、政治の信頼回復のために努力しないと大変なことになる。しっかり努力したい」 2日、岸田文雄政調会長は、岸田派の会合でこうあいさつをしました。

「政治の信頼回復」は言うまでもなく、地元広島で起きた河井夫妻の事件への反省を示す言葉です。岸田氏はポスト安倍候補の一人ではあるが、岸田氏を推す声は世間でも、自民党内でも盛り上がっていません。そもそも岸田氏は政争を仕掛けられても、決して表では派手な喧嘩も立ち回りもしない温厚な人物です。

地元としては昨年は党本部から刺客まで送られているのですから、河井夫妻の辞職に伴う補欠選挙では、人選の段階から岸田氏に主導権を握って欲しいでしょう。ここで力を発揮し、存在感を示さなければ総理総裁の道はありません。

岸田文雄氏


岸田氏とは対照的に、首相の座への野心をむき出しにしているのが石破茂・元防衛相です。河井事件についても積極的にメディアで発言をし、安倍首相ら執行部の説明責任を求めています。

しかし、安倍総理としては、石破氏に総理の座を譲るくらいであれば、4選を目指して次の総裁選に出馬することも辞さないということも十分考えられます。 

安倍首相は、現実問題として現状では残念ながら、党内に総理の座を禅譲する相手がいなというのが現状でしょう。そうなると、かつて郵政解散に打って出た小泉純一郎元首相のように、解散した上でそれなりの成果を残し、任期を全うするという方法があります。

しかし、今の段階で郵政民営化のような奇策があるわけでもなく、コロナの第2波の危機感もあるなか解散のタイミングを見極めるのは非常に難しく、思案のしどころだったと思います。 

実際、相次ぐ首相自身の疑惑に河井夫妻の事件が重なり、安倍内閣の支持率は急降下しました。岸田派の会合が行われる数日前、自民党の党本部で行われた総務会では、村上誠一郎・元行革相が執行部に対し世間の厳しい声をこう訴え、怒号が飛び交う一幕があ理ました。 

ここにきて降って湧いたように、上記のような米国と中国の対立のかつて無いほどの激化です。その最中、石破氏は、とても考えられないような発言をしました。

石破氏は9日の派閥会合で、党外交部会などが中国の習近平国家主席の国賓来日の中止を日本政府に求めたことに苦言を呈したのです。「中国との関係にどういう影響を与えるかよく考えるべきだ」と述べたのです。



「礼儀は礼儀としてきちんと尽くさないといけない。その上で言うべきことは言うことが必要だ」とも語りました。

党外交部会と外交調査会がまとめた決議は中国が香港国家安全維持法を施行したことを非難しました。

このブログでも述べたように、中国は香港国家安全法で、世界中国々を対象として、他国の国家主権を認めないとしています。礼儀のある相手には礼儀は尽くすべきですが、日本はおろか世界中の国々の国家主権を認めない中国が相手であることを本当に理解しているのでしょうか。

この発言は、相当保守派の怒りを買っています。党内でも反発する人もかなり多いです。

上ので、長谷川氏の記事にもあるように、同盟国である米国は、共和党も民主党も「反中国」であり。11月大統領選の結果にかかわらず、米国は対中対決姿勢を今後ますます強めるでしょうし。無論、日本に対しても、中国に対して、厳しい態度をとり、それだけではなく米国の対中国制裁に呼応した動きを求めるでしょう。

そのような時に、日本政府が親中的な行動を取り続けていれば、必ず、米国から制裁されます。さらには、中共なき後、もしくは中共が存在していたとしても、かなり弱体化した後の新世界秩序において、日本は本来なれるはずだった、リーダー的地位からは放逐され、第二次世界大戦後長い間味わってきた、戦後レジームと同じような境遇に甘んじなければならないことになるでしょう。

現在は、まさに天下分け目の米中対立の最中にあり、中国には全く勝ち目がありません。石橋氏は、そのような潮流を認識できないようです。

この潮流を感じ取れないようでは、日本の舵取りなどは絶対に任せられないと、安倍総理自身も思うことでしょう。

検察は、河合事件について、安倍首相の責任問題にまで発展させることはできず、つもりもないでしょう。政治資金規正法や、公職選挙法は元々ざる法と言われている法律です。これらの法律によって、安倍総理を追及するということになれば、検察としては、有無を言わせない程の確実な安倍総理が何らかの犯罪を犯しているか、犯罪に関わっているという物証がないとできません。そ



それは、不可能です。しかし、そうであるにしても、自民党政権にマイナスのイメージがついてしまっことは明らかなので、これを払拭するためにも、安倍総理が解散総選挙に打って出る可能性があります。

また、石破氏や二階氏の相変わらずの親中ぶりや、岸田氏の頼りなさ、他のポスト安倍の、あまりのマクロ経済音痴ぷりには本当に頭が痛いでしょう。今のところ、禅譲できる適当な人材はいません。

であれば、みすみす親中派や、マクロ経済音痴で財務省等と張り合える人材がいない現状では、解散総選挙に打って出て、大勝しその勢いに乗って総裁選に出て、4選を目指すということも十分にあり得ます。

選挙においては、河合問題については有権者に分かり安いように説明をし、減税や、コロナ対策や、対中国政策や、現状や将来の水害などの自然災害対策のため大規模な積極財政並びに大規模な金融緩和策を同時行うことや、そのための財源などは全く何の心配もない(これは、このブログでも何度か解説してきたように、国債を大量発行しても財政負担が増えたり、将来世代への付けにはならないだけの話)ことなどもわかりやすく説明すれば、大勝利することも不可能ではありません。

特に、マグロ経済対策などについては、マスコミや経済学者や似非識者がいくら嘘を喚き散らしても、多くの国民の理解が従来よりはかなり進んでいるので、多くの有権者が理解してくれる可能性は大きいです。

そうして、これで大勝できれば、安倍四選も、あながち夢物語ではなくなります。

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2020年7月10日金曜日

中国ライバル視を顕著にしたEU委員長会見 — 【私の論評】到来する新世界秩序において、日本がリーダー的地位獲得するため安倍総理は党内の雑音を取り除き正しい道を進むべき!(◎_◎;)

中国ライバル視を顕著にしたEU委員長会見
資格
岡崎研究所

 6月22日、EUと中国はテレビ形式で首脳会談を行った。EU側からはミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)とフォンデアライエン欧州委員会委員長が、中国側からは李克強首相と習近平主席が参加した。会談では貿易・投資から、気候変動対策、デジタル分野、香港問題、人権、新型コロナへの対応に至る、極めて広範な問題について議論された。会談後のフォンデアライエン委員長の共同記者会見での発言から、EU側の対中不信の高まりが窺える。発言のポイントをかいつまんでご紹介すると次の通り。


 EUと中国との関係は、最も重要な戦略的関係の1つであると同時に、最もチャレンジングな関係の1つである。

・EUにとり人権と基本的自由は交渉の余地のないものである。

・EUは中国の最大の貿易パートナーであり、中国はEUにとり2番目のパートナーであるが、依然として不均衡な貿易・投資関係が続いている。昨年の首脳会談の声明に盛り込まれた市場アクセス障壁への対処は進展していない。また、投資協定の交渉を妥結させるには、国営企業の行動、補助金の透明性、技術の強制移転の問題についての中国側の中身のあるコミットメントが必要である。

・中国は、WTO改革、特に産業補助金についての将来の交渉に真剣に取り組む必要もある。

・中国の過剰生産能力(例えば、鉄鋼・金属部門、ハイテク部門)への対応を継続しなければならない。中国がこの問題で国際的な交渉の場に戻ってくることが重要である。

・我々は会談で、デジタルトランスフォーメーションの重要性、中国によるデジタルネットワークやバリューチェーンのセキュリテイ、レジリエンス、安定性に対する攻撃的なアプローチについて指摘した。病院などへのサイバー攻撃があった。ネット上での虚偽情報も増えている。こうしたことは容認できない。

・気候変動対策では、中国はリーダーを自任しているが、リーダーになることは行動する責任を伴うことである。2050年以降できるだけ早く中国が気候中立(温室効果ガスの排出ゼロ)にコミットすることを求める。中国がパリ協定の下で行動を引き上げ、模範を示すことを期待する。

・コロナウイルスのパンデミック対策では引き続き結束する。

・今や、我々の関係の極めて重要な分野について行動を加速し、前回の首脳会談以降の重要なコミットメントを果たし、相互主義と公平な競争条件に関する我々の懸念に対処する時だ。EUとして、我々は、迅速かつ実質的な進展を達成することにコミットしている。中国の指導者が我々の熱意のレベルに見合う行動をすることを期待する。

     *     *     *     *     *     *

 フォンデアライエン委員長の上記発言には、かなり強い表現も含まれている。中国の最近の行動に対する不満、不信、警戒の表れと見てよいであろう。香港問題、人権問題、貿易・投資における中国の不公正な慣行、サイバー空間における中国の無法ともいえる振る舞い(最近EUはデジタル分野を非常に重視している)は、EUの価値と利益に反するものであり、EUが警戒感を強めるのは当然である。新型コロナのパンデミックに際しての中国による情報の不透明な扱い、中国のいわゆるマスク外交、また、パンデミックに乗じた形で中国が欧州企業の買収を目指す動きなども欧州側の不信を高めている。

 フォンデアライエン委員長は、昨年9月に「閣僚」候補を決めるにあたり、自らが率いる欧州委員会を「地政学的委員会」にすると述べている。その意味には、自己主張を強める中国との関係を定義することが含まれている。その際に定義の具体的な内容は示されていない。しかし、上記会見での「EUと中国との関係は、最も重要な戦略的関係の1つであると同時に、最もチャレンジングな関係の1つである」といった発言からも察せられるように、中国を友好的なパートナーとしてよりもライバルとして見る傾向が強まるということになるだろう。

 もちろん、EUが米国のような乱暴なやり方で中国に対抗するとは考え難いし、EU加盟国の間でも中国への認識に温度差がある。それでも、EUは、従来よりも自らの主張を中国に強く伝えるようになり、両者の関係は緊張を強める場面が増えると思われる。EUと日本は、自由、人権、民主主義、国際規範の重視などの価値観を共有している。EUが中国に対しそうした価値観を明確に伝えてくれることは歓迎すべきことである。

 【私の論評】到来する新世界秩序において、日本がリーダー的地位獲得するため安倍総理は党内の雑音を取り除き正しい道を進むべき!(◎_◎;)

EUと、中国とでは、全く価値観が合わないでしょう。そもそも、EUというか、ヨーロッパの国々は、現在の自由と民主主義、法の支配、人権など西欧的価値の生みの親であり、特に第二次世界大戦では、ドイツ第三帝国の全体主義により、直接大きな被害を被っています。

ドイツ第三帝国を統治したヒトラー
そのためでしょうか、EUの価値観は日米とも異なるところがあります。例えば、いじめの問題があります。米国人に日本のいじめの問題を話すと、大抵の人は一定の理解を示していただけるのですが、EUの人々には、なかなか理解してもらえません。

理解していないどころか、国を問わず、彼らと話しているとそもそも「いじめ」に関する日本人や米国人の考え方そのものが、間違いではないかと思えてくるのです。

それに関しては、このブログにも何度か掲載したことがあります。私は、英国人、ドイツ人、フランス人あるいは他のEUの国の人たちに、「いじめとは何か」という質問を受けたことが何度かあります。

私が、説明をし始めると、彼ら全員が、個々人の表現は違っていたにしてもとにかく、私の説明には納得がいかないようで、「それは犯罪です」というのです。

何度もこのようなことを繰り返すうちに、日本人米国人とEUの人々の間には、価値観が異なるところがあることに気づきました。

それは、私達日本人や、米国人が学校という空間を、何やら治外法権のような、そこまでは行かなくとも特殊な空間だと見做しているのに対して、EUの人たちは、そうではなく、学校だろうが、職場だろうが、病院の病室などの特殊な空間も含めて、全く分けることなく、同じ価値観や、法律などによって規制されるべきことを当然のことと思っていると感じたのです。

それに比較して、陰湿ないじめも多い日本人や、日本などよりもはるかに苛烈な暴力による「いじめ」が頻繁にある米国などでは、何やら学校には、学校の価値観があったり、そもそもそれぞれの学校で異なる価値観があることを暗に認め、その結果として、不思議な法律や価値観が異なる閉鎖空間のような、治外法権の空間を生み出しているように感じられるようになりました。

最初は、EUの人たちの方が変わっていると思っていたのですが、彼らの話を聞いているうちに、自分の方がおかしいのではないか思うようになってきたのです。

確かに、自由とかそれに伴う責任とか、民主主義、法の支配、人権などの価値観が組織が変われば、変わるとみなすのは、おかしなことです。もし、そのようなことをしてしまえば、そもそも価値観なるものも、法の精神も成り立たないことになります。

よく考えてみれば、当然のことなのですが、多くの日本人は、学校という組織や空間を無意識に他の社会とは異なるものと考えがちです。今では、数が少なくなりつつあるブラック企業内では、社会常識など無視して、独自の価値で運営されています。

私は、あるドイツ人に、ドイツでの「いじめ」の対処法について聞いたことがあります。このブログの読者の方は、もうご存知からもしれませんが、それはいたってシンプルなものです。

窃盗・殺傷など明らかな犯罪の場合は、警察に通知するのには無論ですが、それとともに、警察に通知しないものついても、学校の最高責任者である、校長が問題のある生徒の親に、問題のある生徒の行動の是正を求める手紙を書くのだそうです。この手紙を三回親が受け取ると、その生徒は自動的に退学になるそうです。

これでは、「いじめ」なるもの、実は「犯罪そのものの」行為ががいずれ学校にはなくなるのも当然言えば、当然です。何しろ「いじめ」を繰り返す生徒そのものが、学校からいなくなるわけですから・・・・。

もちろん、担任の教師から当該生徒に何度か注意があったり、その後さらに校長からの注意が何回かあったりした後で、それでも改まらなかった時に、校長が手紙を出すということのようです。

校長には、そのような権限が最初から認められています。これは、学校の民主主義、法の支配、人権などの価値観を守るものとしてドイツでは従来から社会に当然のこととして受け入れられるいるようです。民主主義、法の支配、人権などの価値観は何としても守り抜かねばらないという通念が定着しているのでしょう。

いつまでも、「いじめ=犯罪」をやめない生徒にはこのような運命が待っているのです。何回も退学になれば、おそらく受け入れる学校がなくなり、その生徒は将来アウトローになる以外にないようです。しかし、それはやむを得ないという考え方なのでしょう。社会には残念ながら、少数のアウトローがいるものですが、学校だけがその例外ではないという考え方でしょう。

ちなみに、ドイツでは、未成年の生徒が、学校以外の場所でタバコをすっていたとしても、学校の教師は、注意する必要ないそうです。学校内のことは、教師に責任はあるのですが、学校外のことは教師ではなく、親が責任を取るべきものとされているようです。

ドイツの民族衣装を着たドイツの女子高生

これもシンプルです。日本の学校の先生方から見れば、本当に天国のようかもしれません。ただし、ドイツにも全く「いじめ」はないということではないです。ただし、日本のいじめは、大人や先生に隠れて、肉体的にも、精神的にもという事例が多いようですが。ドイツのいじめは、おおっぴらに。手加減なしに殴る蹴などのことが多いそうです。

ちなみに、ドイツ以外の人には、それぞれの国の「いじめ対処」を聞いたことはないですが、それにしても、EU域内の人たちのほとんどの人が「いじめ=犯罪」とするのですから、他の国の学校でも似たような制度などがあるのだと思います。

ただし、EU内に全く「いじめ」がないということではありません。例えば、日本では、フランスにはいじめがないという話が一部でまことしやかに、流通していますが、実際は、ほかの国と同様にフランスにもいじめは昔から存在していました。

いじめがなかったのではなく、いじめは「タブーとされ、存在しないものとみなされていた」ため、その存在が大きく明るみに出なかったと言った方がいいかもしれません。どちらかといえば、いじめの件数は日本では約410,000人で、児童生徒1000人あたりの認知件数は30.9件であり、児童生徒全体の約3%であるのに対し、10%存在するフランスは、日本よりもいじめが多いとも言えます。

フランスでは昨年11月7日木曜日に、いじめ撲滅キャンペーンが行われました。2010年頃から時々行われていたキャンペーンですが、2015年からは11月の最初の木曜日に毎年開催されることになり、昨年で5年目を迎えました。

フランスでは、自由と民主主義、法の支配、人権など西欧的価値が根付きすぎていて、それに違うものは、「あり得ない」という域に達しているのだと思います。それが、このような悲劇を生んできたのでしょうが、そのような悲劇を生むくらいに西欧的価値は絶対的なものなのでしょう。

EUの人々の中には、「いじめ=犯罪=あってはならないもの」という考えがあり、その背景になっているのが、自由と民主主義、法の支配、人権を当然とする価値観なのです。

米国でもこの価値観はしっかりと根付いているのでしょうが、米国では学校内でも過激な暴力がしょっちゅう起こるし、場合によっては銃を待ちいたものや、それどこか麻薬の取引などもあるため、米国人の誰もが「いじめ」という特殊な問題があることを認めないわけには行かないのでしょう。

このような価値観を持つEU域内の人々なのですから、中共によるウィグル人迫害や、香港の一国二制度の破壊や、自国内の人民対する暴力や、不公正な貿易、知的財産の剽窃などとても許容できるものではないでしょう。EU域内の人々であれば、誰も現在の中国と価値観を共有できる人などいないでしょう。

だからこそ、今回のフォンデアライエン委員長による中共に対する厳しい発言になったものと考えられます。

詳細は、この記事をご覧いただくもとして、以下に一部を引用します。
中国共産党はあらゆる手段を講じて西側諸国を分断し、揺さぶりをかけて、最後には支配しようとしています。日本でも鼻薬を嗅がされ、知らず知らずのうちに中国共産党の「有益な愚か者」として利用されている政治家、企業家、大学関係者は少なくありません。 
自分の利益だけを優先して自由と民主主義、法の支配、人権をないがしろにして良いわけがありません。日本でも超党派の議員で中国が関わる全ての問題を詳らかにして公に議論し、国民に知らせるプラットフォームをつくることが重要です。 
日本も、穏健でリベラルな保守主義者パッテン氏の警鐘に耳を閉ざしてはならないです。 
香港最後の総督クリストファー・パッテン氏
そうして、安倍総理自身は、これから新世界秩序の構築に日本としてもこれに乗り遅れることなく、機先を制することには、前向きなようです。
G7のアングロサクソン3カ国と欧州の独仏伊、この二つをまとめ、さらには台湾とも関係を深めコロナ後の新世界秩序の中でリーダー的地位を獲得していただきたいものです。
今、世界は次の段階に向かって激しく動いています。その段階とは、「自由主義諸国」と「中国を中心とするロシア、北朝鮮などの全体主義の国々」の闘いです。その闘いは、米国などを頂点とする新世界秩序が出来上がるまで続きます。

にも関わらず、日本では中国の習近平国家主席の「国賓」招聘の中止すらはっきり決まりません。国際情勢を見ても、国民感情からも、中国国内で多数の人民が虐殺され、世界に感染症を撒き散らし、不公正な貿易や知的財産の剽窃の仕放題、そのような国の首領が天皇陛下に謁見するなどあり得ない話なのはわかり切っているはずなのに、いまだに決められないでいます。

このような有様では、新世界秩序において、日本がリーダー的地位獲得するのはままならないかもしれません。そのようなことにならないように、安倍総理にはまずは党内の雑音などを取り除き正しい道を進んでいただきたいものです。

2020年7月9日木曜日

財政状況悪化を訴える談話で…隠されていた“不都合な数字” 国債はほぼ日銀が買い取る事実— 【私の論評】財務省を満足させて、顧客を蔑ろにすれば、大企業もマスコミも、いずれ存続不能となる!(◎_◎;)

財政状況悪化を訴える談話で…隠されていた“不都合な数字” 国債はほぼ日銀が買い取る事実
高橋洋一 日本の解き方


日本経団連名誉会長でもある榊原定征氏

    財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会で、榊原定征会長の談話が発表された。今後の財政運営について「悪化した財政から目をそらしてはならない」とするなど、財政再建の必要性を訴えたという。

 一般的にこうした談話は財務省官僚が用意することが多い。財務省官僚が財政制度等審議会会長に意見を振り付け、その審議会が財務相に諮問する形となっているので、結局、審議会が官僚の隠れみのとなり、大臣を誘導することになりがちだ。つまり、会長談話には財務省官僚からの最初の意見が凝縮されているとみていいだろう。

 財務省の見解はいつも同じで、「今の財政状況は悪い」と決めつけている。財政状況を正確に分析するには、ストックとフローからアプローチする。もちろん財政状況という以上、ストックの情報が基本になる。

 政府の財政状況といっても、企業と見方は同じであり、ストックは貸借対照表(バランスシート)、フローは損益計算書である。ただし、企業会計とまったく同じではなく、公会計によるストックのバランスシートとフローの毎年度予算になる。

 会長談話では、ストックとして公債残高964兆円、フローとして基礎的財政収支赤字66・1兆円が挙げられているが、重要な数字を隠している。

 ストックのバランスシートは、企業会計なら本体だけではなく、連結ベースのグループ会社全体のもので考える。政府も同じであり、中央銀行など子会社を含めた「統合政府」ベースだ。本コラムの読者はご存じだろうが、無償還・無利子を除く実質的な資産負債でみれば、日本の統合政府ベースのバランスシートは、純債務がほぼゼロの状態だ。この意味から、負債だけを強調する会長談話は正しくない。

 では、フローの基礎的財政収支赤字はどうか。これも正しい数字とはいえない。今回の補正予算では、政府と日銀の連合軍、つまり5月22日の財務大臣と日銀総裁の共同声明を読めば分かるように、国債発行額はほぼ日銀が買い取る。その場合、国債の償還・利払い負担は実質的にない。どういうことかというと、国債負担は通貨発行益で賄われるのだ。

 しかし、基礎的財政収支の計算上、初年度の国債発行分が赤字としてカウントされる。しかし、高校レベルの数学であるが、翌年度以降の日銀納付金の現在価値を合算すれば通貨発行益となるので、その赤字分は意味がないのだ。

 これでお分かりであろう。会長談話は、あえて不適切な基礎的財政収支赤字の数字を使って、財政状況が悪いと言っているのだ。ここで狡猾(こうかつ)なのは、あくまで会長個人の発言として、責任を逃げていることだ。

 今回の補正予算では、政府と日銀の連合なので、財政状況を悪くしない。それにも関わらず、財政状況が悪化しているという間違った情報を垂れ流しているのは、いかがなものだろうか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省を満足させて、顧客を蔑ろにすれば、大企業もマスコミも、いずれ存続不能となる!(◎_◎;)

そもそも、高橋洋一氏は「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした。それどころか日本政府には、借金が無いとしています。

高橋洋一氏が主張する。「借金1000兆円のウソ」です。借金が1000兆円もあるので、増税しないと財政破綻になるという、ほとんどのマスコミが信じている財務省の言い分が正しくないと指摘したのです。

借金1000兆円、国民一人当たりに直すと800万円になる。みなさん、こんな借金を自分の子や孫に背負わせていいのか。借金を返すためには増税が必要だ。このようなセリフは誰でも聞いたことがあるでしょう。財務省が1980年代の頃から、何度も繰り返してきたものだからです。

政府と日銀の連結バランスシートを見ると、資産側は変化なし、負債側は国債減、日銀券(当座預金を含む)増となります。つまり、量的緩和は、政府と日銀を統合政府で見たとき、負債構成の変化であり、有利子の国債から無利子の日銀券への転換ということです。

オンラインで政府のバランスシートを説明する高橋洋一氏

このため、毎年転換分の利子相当の差益が発生する(これをシニョレッジ〔通貨発行益〕といいます。毎年の差益を現在価値で合算すると量的緩和額になります。

また、政府からの日銀への利払いはただちに納付金となるので、政府にとって日銀保有分の国債は債務ではありません。これで、連結ベースの国債額は減少するわけです。

量的緩和が、政府と日銀の連結バランスシートにおける負債構成の変化で、シニョレッジを稼げるメリットがあります。と同時にデメリットもあります。それはシニョレッジを大きくすればするほど、インフレになるということです。そのため、デフレの時にはシニョレッジを増やせるが、インフレの時には限界があります。

その限界を決めるのがインフレ目標です。インフレ目標の範囲内であればデメリットはないですが、超えるとデメリットになります。

幸いなことに、今のところ、デメリットはなく、実質的な国債が減少している状態です。

こう考えてみると、財務省が借金1000兆円と言い、「だから消費増税が必要」と国民に迫るのは、前提が間違っているので暴力的な脅しがありません。実質的に借金は150~200兆円程度、GDP比で30~40%程度でしょう。

ちなみに、米国、英国で、中央銀行と連結したネット国債をGDP比でみてみます。米国で80%、65%、イギリスは80%、60%程度である。これを見ると、日本の財政問題が大変ですぐにでも破綻するという意見の滑稽さがわかるだろう。

その限界を決めるのがインフレ目標である。インフレ目標の範囲内であればデメリットはないが、超えるとデメリットになる。


日銀のインフレ目標は未だ達成されていない

幸いなことに、今のところ、デメリットはなく、実質的な国債が減少している状態だ。

こう考えてみると、財務省が借金1000兆円と言い、「だから消費増税が必要」と国民に迫るのは、前提が間違っているので暴力的な脅しでしかない。実質的に借金は150~200兆円程度、GDP比で30~40%程度だろう。

ちなみに、アメリカ、イギリスで、中央銀行と連結したネット国債をGDP比でみよう。アメリカで80%、65%、英国は80%、60%程度です。これを見ると、日本の財政問題が大変ですぐにでも破綻するという意見の滑稽さがわかるでしょう。

何しろ市中に出回る国債がほとんどないので、「日本の財政が大変なので財政破綻、国債暴落」と言い続けてきた、デタラメな元ディーラー評論家(元というのは使い物にならなかった人たちということ)にはこれから厳しい年月が待ち受けているでしょう。

2016年度の国債発行計画(http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2016/gaiyou151224.pdf)を見ると、総発行額162.2兆円、その内訳は市中消化分152.2兆円、個人向け販売分2兆円、日銀乗換8兆円です。

余談ですが、この日銀乗換は、多くの似非識者と言われている人々が禁じ手としている「日銀引受」です。高橋洋一史は、役人時代、この国債発行計画を担当していたときにもあったそうですが、これは、日銀の保有長期国債の償還分40兆円程度(短国を含めれば80兆円程度)まで引受可能ですが、市中枠が減少するため、民間金融機関が国債を欲しいとして、日銀乗換分を少なめにしているはずです。

要するに、今の国債市場は、国債の品不足なのです。カレンダーベース市中発行額は147兆円ですが、短国25兆円を除くと、122兆円しかありません。ここで、日銀の買いオペは新規80兆円、償還分40兆円なので、合計で120兆円。となると、市中消化分は、最終的にはほぼ日銀が買い尽くすことになります。

民間金融機関は、国債投資から貸付に向かわざるを得なくなります。これは日本経済にとっては望ましいことです。と同時に、市中には実質的に国債が出回らないので、これは財政再建ができたのと同じ効果になります。日銀が国債を保有した場合、その利払いは直ちに政府の納付金となって財政負担なしになります。償還も乗換をすればいいので、償還負担もありません。それが、政府と日銀を連結してみれば、国債はないに等しいという理由なのです。

こういう状態で国債金利はどうなるでしょうか。市中に出回れば瞬間蒸発状態で、国債暴落などあり得ません。なにしろ必ず日銀が買うのですから。

諸外国では減債基金は存在しません。借金するのに、その償還のために基金を設けてさらに借金するのは不合理だからです。なので、先進国では債務償還費は計上しません。この分は、国債発行額を膨らせるだけで無意味となり、償還分は借換債を発行すれば良いからです。

利払費9.9兆円で、その積算金利は1.6%といいます。市中分がほぼなく国債は品不足なのに、そんなに高い金利になるはずがありません。実は、この高い積算金利は、予算の空積(架空計上)であり、年度の後半になると、そんなに金利が高くならないので、不用が出ます。それを補正予算の財源にするのです。

このような空積は過去から行われていましたが、その分、国債発行額を膨らませるので、財政危機を煽りたい財務省にとって好都合なのです。債務償還費と利払費の空積で、国債発行額は15兆円程度過大になっています。

こうしたからくりは、予算資料をもらって、それを記事にするので手一杯のマスコミには決して理解できないかもしれません。

いずれにしても、上の記事で、高橋洋一氏が指摘しているように、政府と日銀を連結したバランスシートというストック面、来年度の国債発行計画から見たフロー面で、ともに日本の財政は、財務省やその走狗になっているマスコミ・学者が言うほどには悪くないことがわかるでしょう。

岡本財務次官

にもかかわらず、マスコミは、日本の財政は大変だ、財政再建が急務、それには増税というワンパターンの報道ばかりします。マスコミは、軽減税率のアメをもらったからといって、財務省のポチになるのはもうやめにしてほしいものです。さらには、財務省は、財界の大物を自分たちの省益を追求するために便利に使うこともやめるべきです。

財界の重鎮たちにも言いたいです。産業界も顧客を第一に考えるべきでしょう。顧客の支えがない限り、いかなる大企業でも一夜にして、存続不能になります。そのようなことになったとしても、財務省は絶対に助けてくれないことをお忘れなく。大事にしなくてはならないのは、財務省ではなく、顧客です。それを忘れることから、大企業の凋落が始まる
のです。

企業の目的は何でしょうか。売上や利益をあげることが企業の第一の目的でしょうか。経営学の大家ドラッカーは企業の目的の定義は一つしかない。それは「顧客を創造すること」だと言います。つまり、顧客の集合体としての市場を創り出すことが企業の目的だと言うのです。

企業にとって大切なのは「顧客第一主義」、つまり企業は「顧客満足」を追求すればよいと多くの人が思っています。しかし、ドラッカーに言わせれば「顧客満足」ではダメなのです。なぜダメなのか。それは社会が生き物だからです。

生き物の特徴は変化することです。そしてその変化の先行きはだれにもわかりません。変化しつづけその変化の先行きのわからない社会において生き残っていくには顧客満足では遅すぎます。企業自らが市場を創造し、未来を創り出していかなければならないのです。ドラッカーは、市場は神や自然や経済の力で生み出されるものではなく、ビジネスに関わる人達が作り出していくものだと言います。

そのことを忘れて、財務省を満足させて、顧客を蔑ろにすれば、大企業とて、いずれ存続不能となります。

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2020年7月8日水曜日

国際法秩序を無視した中国外交に歯止めを— 【私の論評】国際法を無視し、弁証法すら捨てた中共に未来なし!(◎_◎;)


岡崎研究所

6月19日付のワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンが、「もし中国が米国と良い関係を持ちたいのなら、中国はもっと良い行動をしなければならない」と題する論説を寄せ、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪共産党政治局委員(外交統括)との会談の内容を紹介しつつ、それが実質的には物別れであったと論じている。一部その要旨を紹介する。


 ポンペオ国務長官は、楊潔篪と6月17日ハワイで会談と晩餐のため数時間会った。最近の米中関係で顕著となっている相互非難を抑制する方法を探すため、中国側から今回の会談を要請してきたと言われる。それまでは、習近平がトランプに電話をすれば良かったが、トランプは3月27日の電話会談後、習近平と話すことに興味はないと言っていた。

国務省の声明は、「2人の指導者は意見交換をし、ポンペオは商業、安保、外交の分野で中国が不公正な慣行をやめる必要があると強調した。また、進行中のCOVID-19パンデミックと戦い、将来の大発生の防止のためには完全な透明性と情報共有の必要性があると強調した」と述べている。一方、中国の外務省によると、楊はより良い関係を望んでいるとポンペオに言ったが、香港への国家安全法、台湾への威嚇、新疆でのウイグル人の強制収容などあらゆる争点について、中国の立場を擁護した。

北京のやり方のパターンはよく知られている。北京の悪い行為を批判する人を侮辱または攻撃する。その後、緊張の高い状態を非難し、通常の関係に戻ることを、行動を何一つ変えずに提案する。しかし、今回は通常の関係に戻ることはない。

ロウギンの論説は、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪政治局委員との会談がうまくいかなかったこと、現在の米中関係悪化の傾向に歯止めがかからなかったことを指摘している。

米中外相会談の成果は、今後も話し合おうという合意だけである。中国側はこれまでの行動を擁護し、行動を変えることを拒否したが、そういうことでは再度話し合っても何も出てこないことになろう。

香港への国家安全法制の押し付け、新疆でのウイグル弾圧、台湾への恫喝は内政問題ではない。香港については、1984年の英中共同声明と言う条約に違反している問題であって、条約を守るかどうかの国際的な問題である。ウイグル問題については、国連憲章下で南アのアパルトヘイトなどに関連して積みあがってきた慣行は、人権のひどい侵害は国際的関心事項であるということである。台湾が中国とは異なるエンティティとして存在しているのは、事実である。

中国が台湾は中国の一部と主張していることを理解し、尊重するということは、中国が台湾に武力行使をしていいことを意味しない。

そのほか、インドとの国境紛争、豪州に対する経済制裁、ファーウェイ副社長のカナダでの拘束に絡んでの中国でのカナダ人拘束など、中国の最近のやり方には、国際法秩序を無視した遺憾なものが多い。中国が大きな国際的な反発の対象になり、そのイメージが特に先進国で悪化してきていることは否めない。

中国の緊張を高め、その緩和を申し出、その緩和の代償として相手側に何らかのことを譲らせるやり方は、ソ連、北朝鮮、中国などの共産国が多く使用してきた外交戦術であるが、すでに使われすぎて、相手側に見透かされるものになって来ている。

中国が行動を変えるべきであるとのロウギンの論説は、そういう状況の中で適切な論であると言える。

【私の論評】国際法を無視し、弁証法すら捨てた中共に未来なし!(◎_◎;)

国際関係で、中国の最大の問題は中国共産党の政治局常務委員に国際法を理解する者がいないことです。例えば南シナ海問題で中国が直面する国際司法環境の厳しさについて政治局常務委員に正しく伝えられたでしょうか。全く伝えられていないと思います。

中国の外交担当トップの「国務委員」は政治局委員どころか、さらに格が下の中央委員でしかありません。中国は、もともと他国のことは無視して、自国の都合で動く傾向のある国であることは、このブログでも何度が掲載したことがありす。それが、国の統治制度にも反映されているのです。

中国外交トップの楊潔チ・共産党政治局員

政策立案権限のない外務省は仲裁裁判所判断を「紙くず」と切り捨てました。担当する国際法に対し最低限の敬意すら払おうとしませんでした。

中共は現在の国際法が「西洋の産物」にすぎないと考えているのか。半世紀近くも国連に加盟し常任理事国の特権を享受しながら、常設仲裁裁判所の判断を否定する中国の態度は自己矛盾以外の何ものでもありません。国際法を完全無視するというのら、本来は国連から脱退すべきです。

そもそも中国には欧米型の「法の支配」という発想がありません。中国は全知全能の神と被造物である不完全な人間との契約(法)に基づく一神教の世界ではありません。日本にも、そのような考え方は、ありませんでしたが、明治以来それを理解しようと努めてきました。

これを日本では、「和魂洋才」として、とにかく西欧の考え方を学んだ上で、西欧列強に国際社会で伍していこうと努力しました。その努力は、最初は英国に認められ、日英同盟に結実しました。そうして、日本は名実ともに、国際社会の一員となりました。これは、後で述べ弁証法的な考え方に、基づいたものとも解釈できます。現在の中共にはそのようなことをするつもりは全くないです、本当に矛盾しています。

無論、様々な不幸な出来事があり、日本はその後、日英同盟も破棄し、大東亜戦争に月すすけわけですが、戦後には国際法を遵守し、国際社会に復帰しました。

その後の日本は、様々な矛盾を抱えつつも国際社会に貢献し、今日を迎えています。現状では、国内では様々な矛盾を抱え、憲法改正もできない有様です。しかし、そうは言っても、中国のように国際法を無視するようなことはありません。

中国の戦国時代に法家が説いた「法治」とは儒家の「徳治」に対する概念であり、法は権力者がつくるものです。被統治者は法の支配ではなく「立法者の支配」を受けて当然と考えます。

その意味で今2016年の中国の南シナ海実効支配に関する、国際司法判断は、人権や法の支配など欧米的概念と中華的法秩序との相克の新局面と見ることも可能です。

それと、今の中国政治指導者には共産主義者がよく用いていた弁証法的発展という考え方が身についていないようです。

弁証法とは、物の考え方の一つの型です。形式論理学では、「AはAである」という同一律を基本に置き、「AでありかつAでない」という矛盾が起こればそれは偽だとするのに対し、矛盾を偽だとは決めつけず、物の対立・矛盾を通して、その統一により一層高い境地に進むという、運動・発展の姿において考える見方です。

図式的に表せば、定立(「正」「自」とも言う)Aに対しその(自己)否定たる反立(「反」「アンチテーゼ」とも言う)非Aが起こり、この否定・矛盾を通して更に高い立場たる総合(「合」「ジンテーゼ」とも言う)に移る。この総合作用を「アウフヘーベン」(「止揚」「揚棄」と訳す)と言います。
弁証法の極めて理解しやすい事例

今の中国に見られる、ただ圧倒的に強い力関係にあるとき、単純に強行政策をとって力ずくで自らの意思を相手に押し付けるのはいかがなものでしょうか。弁証法的発展とは、自分たちの意思や行動に対する反作用の効能もよく計算に入れながら、その先に生まれる新しい関係性を戦略的に考える、いわゆる正→反→合という考え方です。

「一国二制度」をどのようにして香港住民も納得できる制度にすることができるのか。これを香港市民や当局者などを巻き込んで本格的に討議するならば、「弁証法的発展」の成果が出てくるかもしれないです。

米中対立はそもそもそれほどイデオロギー性の強いものではなく、超大国の座を目指すイニシアティブの争いの側面も強いです。したがってイデオロギー、政治・経済体制、陣営などで争った「米ソ冷戦」とは異なる面が多いです。

イニシアティブの調整さえうまくできれば、難しいことではありますが、米中共存は可能でしょう。そしてその道を探ることと香港「一国二制度」の再生は連動しています。香港に対する国家安全維持法が全人代で可決され、実施されました。

香港問題は米中新冷戦のフロントラインになりつつあります。香港に対する中国の過剰な強硬姿勢は、香港の良さを失わせる「愚策」以外の何ものでありません。

香港と中国との違いに基づき、香港社会にも受け入れ可能な香港政策を作り出す「弁証法的発展」の成果でもあった「一国二制度」は、返還から23年目で中国によって一方的に廃止されてしまいました。

中国の成長を支えた香港を強引に変化させることは、中国自身の「凋落の第一歩」を意味します。

中共は、本来であれば、西欧諸国が作った国際社会秩序を認めた上で、国際社会でビジネスをすべきでした。それと、国内が矛盾するなら、日本の「和魂洋才」ような、弁証法的な考え方で、矛盾を解消すべきでした。

下の写真は、平成11 8 23日発行の日本郵便の切手です。明治維新後、文明開化とともに外国から様々な文化がもたらされ、 当時のファッションもその影響をうけました。ハイカラとは、 当時大いに流行ったシャツの立て衿(ハイカラー)から来ており、 新しく小綺麗でしゃれた物事をハイカラと呼び、 また、そのような人をハイカラさんと呼びました。


これも、「和魂洋才」を示すエピソードの一つと言えます。とにかく当時の日本は、西欧の考え方を理解することが急務だったのです。

しかし、中共のやり方は、様々な矛盾を自国内を弁証法的に変えようとするのではなく、自国外を自国内部に合わせようとしています。その典型例が、最近の香港の「一国二制度」の破壊です。

先日もこのブログで述べたように、香港住民でない外国人までを「香港国家安全法」の適用対象とした習近平政権はもはや、世界の主人となって世界中の人々を支配てしまおうとするような狂気にとられているようです。

これは、とてつもないことです。個人でも、自分を変えずに、世界を変えることは困難です。それに比較して、まず自分を変えれば、世界が変わって見えてくるものであり、その世界で、自分の価値観を反映した何事かを実現することもできるようになります。

しかし、自分を全く変えないで、世界を変えようとだけすれば、ほとんどの場合失敗します。それどころか、どこまでもそれを推し進めようとすれば、精神に異常をきたしかねません。国も同じことです。

中国は、まさにその道を進んでいるようです。

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2020年7月7日火曜日

香港国安法 自民が非難決議案協議 習氏国賓中止 慎重な意見も香港国家安全法— 【私の論評】自民党は、中国の弱みを知り、中国と対峙することを最優先とする外交・軍事戦略に転じるべき!(◎_◎;)


香港の商業施設で抗議デモを行う人々=6日

 自民党は6日、中国による香港への統制強化を目的とした香港国家安全維持法の施行に関する外交部会などの会合を開いた。習近平国家主席の国賓来日を中止するよう政府に求める非難決議案について意見交換したが、中国との関係改善を重視するは二階俊博幹事長率いる二階派(志帥会)所属議員から文面の修正を求める意見が相次いだ。

 中山泰秀外交部会長は会合の冒頭「中国が治安維持法のようなものを制定・施行したことは看過できる問題ではない」と強調し、香港の自由と民主主義を守る必要性を訴えた。

 会合後、二階派の河村建夫元官房長官は記者団に「文書は修正すべきだ」と発言したことを明かした。二階氏周辺によると、同氏はこの会合について「日中関係を築いてきた先人の努力を水泡に帰すつもりか」と不快感を示したという。

 決議案は、中国側に「大国としての責任」の自覚を要求。習氏の国賓来日は中止するよう求め、香港情勢に関する5月の前回決議文の「再検討」から表現を強めている。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は6日の記者会見で、習氏の国賓来日について「具体的な日程調整をする段階にないという政府の立場はこれまでも申し上げてきた通りだ」と説明した。

【私の論評】自民党は、中国の弱みを知り、中国と対峙することを最優先とする外交・軍事戦略に転じるべき!(◎_◎;)

中国「香港国家安全維持法」に対し、もし日本の自民党は非難決議の一つも出せないなら「自民党」の党名をやめた方が良いかもしれません。「自由」と「民主」を看板にする資格などありません。

そもそも、「香港国家安全維持法」は全く異常というか、異様な法律です。

この法律の、36条~38条をみると、ウルトラ域外適用と言っても良いほどに、全世界を対象にしています。中国はまるで全宇宙を支配しようとしているようです。

なお、香港国家安全法全文和訳をした方が、ブログでそれを公開しています。そのリンクをいかに貼っておきます。

https://xiang-dian.hatenablog.com/entry/nsl

ただし、発言者27人中、決議に反対意見は5名、賛成意見は22名。出席者約50人のうち、原文に異論がなく発言しなかった人も考えると賛成が殆どではあります。

反対派の意見は、「隣国だから仲良くすべき」「先人の努力を台無しにする」でしたが、過去の日本がそれを続けてきた結果が今です。中国は「仲良く」を「弱さ」と見てつけ込みます。

過去の経験からも中国に対峙する覚悟がなければ中国との平和はなく、属国への道があるだけです。

媚び諂うだけの日中関係などいりません。自民党は、コロナ蔓延の初期に、中国からの入国禁止が遅れた際に支持率が急落したことを忘れるべきではありません。

二階派の反対で香港国安法非難と習近平国賓来日中止の決議一つできないなら自民党は終わるかもしれません。凄まじい人権弾圧と尖閣侵入等、世界が中国と闘う時に明確に中国側につく党を国民は2度と支持しないでしょう。各議員も中国への姿勢を明確にすべきです。

二階派の河村建夫元官房長官

これは、選挙の際の有権者の最大の判断材料となるでしょう。今こそ歴史の転換点なのです。覚悟のない議員は必要ありません。有権者は、これを落選させるべきです。

自民党は、この問題への対応を誤ると危険です。

この際自民党に問われるのは、力を背景に国際法を無視して現状を変更しようとする相手に対して、周辺国と国際社会を味方につける「外交力」と戦略的思考に基づく「情報発信力」でしょう。

中国は、最近の「マスク外交」に見られるように、あらゆる手段を使い、硬軟おりまぜて影響力を拡大させています。

また、尖閣諸島をめぐっても世界的に大規模な宣伝戦も繰り広げています。中国が発信する一方的な情報が世界に流布され、中国の影響下にある国々がそれを追認するという事態は避けなければならないのに、日本はこうした分野で中国に後れを取っていることは否めず、早急に取り組むべきべきです。

尖閣では、中国の攻勢に対して日本政府には、海上保安庁が現場で持ちこたえている間に外交による解決を目指すという「方針」はあるものの、日本全体としての長期的な戦略はみえません。それどころか、中国いどう対処するのかと言う戦略も明確ではありません。

世界で影響力を拡大し、独自の世界観と長期的な戦略で日本の主権を脅かし続ける隣国に対して、日本はどのように向き合っていくのか。この難問に答える新たな大戦略の構築が必要です。

参考になるのは、米国です。米国の戦略です。米国ではすでに中国と対峙するのは、当然の事となっていていますが、インド太平洋戦略や他の戦略や米国の行動を見ていると、米国は中国との対峙を最優先事項にしているようです。

他のことは、中国との対峙における制約要因とみているようです。数学的に言えば、中国が本命であり、他のことは従属関数か、定数のようにみなしているようです。

これに対して、中国は昨日も述べたように、ありとあらゆることを全て同時に同じく重きを置いて実行しようとしているようです。

これについては、軍事戦略でもその傾向が見られます。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【新型コロナと米中新冷戦】中国共産党「全正面同時攻撃」の“粗雑” 『超限戦』著者は「米国に絞って対決せよ」と主張 — 【私の論評】コロナで変わった世界で、米中対立は短くて2年、長くて4年で決着がつく‼︎
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国ではある将軍が、集中すべきことを提唱しています。

喬良・退役空軍少将
以下、一部を引用します。
     一方、『超限戦』の著者である喬良・退役空軍少将は、中国共産党とは違う主張をしている。
 例えば、喬氏は「主敵である米国に集中すべきだ」「ギャングの抗争においては、まず最も強い相手(ボス)を倒すことに集中するのが原則だ。ボスを倒してしまえば、雑魚は怖がる。まず、強敵に対処すべきで、その他の弱い相手にかまうべきではない。台湾が本当に独立の行動を起こさない限り、台湾を相手にすべきではない」「米国との力比べ(腕相撲)に集中すべきだ」「香港国家安全法は不可欠であり、香港問題はローカルな問題ではなく、米中対立の第一線だ。米国の抑圧をかわす重要な戦場だ」「中国が米国の包括的な抑圧に抵抗できれば、香港も抵抗できる。結局、香港問題は中米の競争問題なのだ」と主張している。
     つまり、喬氏の考えでは、現在、台湾よりも危険なのは香港であり、香港が米中対立の最前線になるという判断だ。
 軍事のセオリーでは、「全正面同時攻撃」は圧倒的な力がないと失敗に終わる。中国共産党が行っている「中国の意に沿わない国家・組織・個人をすべて攻撃する」やり方は粗雑だ。喬氏が主張する「米国に焦点を絞って対決せよ」は間違っていない。喬氏は手ごわい。
この記事では、喬氏は手ごわいなどとしていますが、 軍事でも、外交でも、企業における仕事でも同じことが言えます。どのような仕事でも、実務上では、優先順位をつけて実行しなければ、物事はうまくは進みません。なぜなら、実務に投入する資源は限られているからです。

これは、企業でまともに、マネジメントをした経験のある人間なら、誰でも知っている原則です。トランプ大統領は長い間実業のマネジメントをしてきたので、これを骨身に染みているでしょう。しかし、中共はそうではありません。外交でも、軍事でも、とにかく集中することなく、ありとあらゆることを同時に実行しようとします。

これは、官僚の特性でもあります。中国では選挙制度がないので、先進国のように選挙で選ばれた政治家はいません。その意味では、習近平を含む中国の指導者は、全員が指名制で選ばれ、その本質は官僚のようなものです。そのため、集中したり、優先順位をつけたりして、仕事をこなしていくべきことを理解していません。

習近平は政治家ではなく、その本質は官僚

そのため、昨日もこのブログで掲載したように、アフリカをはじめEUなどでもマスク外交を実施し、南太平洋の島嶼国など世界中で外交を展開して、ロシアやインドその他の国々と長い国境線を接しているにも関わらず、尖閣、台湾、南シナ海、フィリピン、南太平洋全域などありとあらゆる方面に軍事力を展開しようとしています。

これが中国の弱みと言っても良いと思います。自民党もこれを知った上で、外交・安全保障では中国と対峙することを最優先として、戦略を構築していくべきです。このような戦略がないから、党内では意見がまとまらず、有権者からは、信頼を失う結果となってしまいがちなのです。

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