2023年3月14日火曜日

画期的な台湾外相の訪米 問われる日本の対応―【私の論評】蔡英文総統は8月訪米、日本も招いて首脳会談すべき(゚д゚)!

画期的な台湾外相の訪米 問われる日本の対応

岡崎研究所


 2023年2月23日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の解説記事は、台湾の呉釗燮・外交部長(外相)の訪米は米台関係において画期的であると述べ、米台間の要人交流の活発化を報じている。

 台湾の外相が米高官との会談のため訪米した。異例のことである。台湾の中央通訊社(CNA)には、呉釗燮・外交部長と顧立雄・国家安全会議議長がウェンディ・シャーマン米国務副長官らと、米国の台湾における代表機関である米国在台湾協会(AIT)のワシントン本部を後にする姿が写っている。

 CNAによると、2月21日の会談は国家安全保障問題を焦点に7時間に及んだ。台湾の識者達は、台湾問題を扱う米国事務所という準公式の場で行われた今回の会談は米台関係の注目すべき一歩であると言う。

 中国外交部報道官は、2月24日、米国は中国の台頭を封じ込めるために台湾を利用していると非難した。中国は長年、台湾を外交的に孤立させる事に成功してきたが、ロシアのウクライナ侵攻は、台湾が中国に攻撃される可能性への懸念を高め、米国と同盟国は台湾への支持表明を強めることとなった。

 米台間に正式の外交関係はないが、両者は互いの首都に利益代表部を維持し、議員や元官僚の代表団を多数受け入れてきた。米国は台湾に武器も供与し、公式には米国は曖昧政策を続けているが、バイデン大統領は、台湾が攻撃された際には米国は支援すると繰り返し述べている。

 民主党のペロシ下院議員は昨夏、下院議長在任中に台湾を訪問した。最近選出されたマッカーシー下院議長も台湾を訪問したいと述べている。2月23日、カンナ下院議員(民主党、カリフォルニア州選出)率いる議員団が台北で蔡英文総統と会談した。そこには、ゴンザレス(共和党、テキサス州選出)、オーキンクロス(民主党、マサチューセッツ州選出)、ジャクソン(民主党、イリノイ州選出)各議員が含まれる。別途、ギャラガー・米中戦略的競争に関する米国下院特別委員長も訪台し、蔡英文らと会談した。

*    *    *

 台湾の呉外相が最近、米国を訪問し、7時間にわたってワシントンにおいて、米政府関係者と協議した。1979年の米台外交関係断絶以来、現役の台湾の外相がワシントンを訪問し、AIT事務所において米政府関係者と会談したのは初めてのことであり、米台関係における画期的事件ととらえることが出来る。

 WSJはじめメディアは、単に会談が行われた事実を伝えるのみで、内容の詳細については触れていないが、米台間の外交では特筆すべき一大進展であったことは間違いない。

 なお、今のところ、日本では、台湾の総統、副総統、行政院長(首相)、国防相、外相については、日本国内で直接日本政府関係者と会談することを避けるのが、日台断交以来の日本政府の慣行になっている。この点、今回の呉外相の訪米は、このような旧来の日台間の慣行に比して、新機軸をなすものと言えよう。

 呉に同行した台湾代表団には国家安全会議の顧秘書長が入っている。また、米国側より、シャーマン国務副長官やファイナー米大統領副補佐官(国家安全保障担当)が参加した。

 WSJの本記事は米台関係がこのように急速に変貌を遂げつつある背景としてウクライナへのロシアの侵略があり、台湾をめぐっても同じようなことが起こるのではないかとの危惧の念が米国政府側にあるからだろうと述べている。

 正式な外交関係がないからと言って、台湾の状況をただ傍観するだけでは、今後「台湾有事」が発生するのを抑止できなくなる恐れもあると米国側が判断したからというWSJの見方は決して間違ってはいないだろう。

 台湾の世論では、有事の際に米国は果たして支援してくれるのだろうかという議論が引き続き行われている。呉外相の訪米は、米国としての本気度を示すものと受け取られることも折り込んだ米台間のアレンジメントであろう。

 バイデン政権としては、もし将来台湾が武力攻撃の対象になれば、「台湾関係法」を持ち、台湾に武器を供与することにコミットしている米国としては、「一つの中国」政策につき「曖昧さ」を維持しつつも、台湾救援のために駆けつける構えを示したいところであろう。
日台関係の深化は急務

 最近、日本においても「台湾有事」が発生した際に、日本としていかに対応するかが話題になることが多い。日本としては、安保関連法案に基づき、米国の台湾支援に対する後方支援を行うだけではなく、日ごろからハイレベルで、軍事面を含め、台湾の政策決定者との間で情報交換しあうような関係を築く必要がある。今回の呉外相の訪米はそのためのヒントとなろう。

 台湾問題を「核心中の核心問題」と位置づけ「台湾統一」のためには武力を行使することも排除しないとする中国の猛反発は目に見えているが、中国の台湾への軍事侵攻の可能性を考慮すれば、今回の呉外相の米国訪問は、日本の台湾問題への取り組みにおいても重要な課題を提起するものである。

【私の論評】蔡英文総統は8月訪米、日本も招いて首脳会談すべき(゚д゚)!

このブログでは、中国による台湾侵攻は難しいということを掲載してきました。これは、マスコミなどが日々それを煽るため、多くの人が、中国はいとも簡単に台湾に軍事侵攻して、台湾を併合できると思うのではないかと懸念したため、実はそう簡単ではないことを掲載してきました。私は、中国がいとも簡単に台湾に侵攻できると思い込むのは、中国の思うつぼだと思います。

実際、中国が台湾を侵攻しようとすれば、現在ウクライナがロシアに抵抗しているように台湾軍がこれに真正面から抵抗すれば、開戦当初のウクライナ軍よりも、はるかに精強で現代的な兵器を整えてる台湾軍により、中国軍はかなりの損害を被ることが予想されます。

台湾軍女性兵士

なぜなら、台湾は島嶼国でありながら最高峰の玉山(3,952m)は、日本の最高峰富士山よりも高く、東は切り立った山であり、海の水深は深く、西の海は浅いので潜水艦は発見されやすく、上陸地点は限られており、上陸する人民解放軍は、高地の台湾軍から容易に狙い撃ちされることになるからです。

さらに日米が加勢すれば、中国は台湾に侵攻してこれを併合するのはかなり難しくなります。それは、最近の米国の台湾有事のシミレーションによっても明らかにされています。しかし、だからといって中国が未来永劫にわたって台湾に侵攻しないという保証はありません。

中国としては、軍事的手段以外の手を駆使して、台湾併合をはかるでしょうが、最後のひと押しで軍事力を使う可能性は捨てきれません。特に、侵攻は難しいものの、ミサイル等を用いて、台湾の軍事施設などを破壊することはすぐにできます。ただ、台湾も長距離ミサイルを配備しており、そうなれば中国側損失を被るのは必定です。

しかし、侵攻で台湾を一気に併合するのではなく、軍事以外のあらゆる手段を用いて、台湾を外交的に孤立させたり、中国脅威論を煽ったり、通商妨害をしたり、台湾を弱体化するなどのことをしてから、軍事力も用いつつ最終的に台湾を奪取して併合するなどのことは十分に考えられます。私は、むしろこちらのほうがはるかに中国にとって現実的なシナリオだと思います。

中国が軍事力のみで台湾を侵攻するというのなら、台湾もそれに備えて、軍事力を強化し、人民解放軍の弱点を知り抜いた日米も台湾に武器を供与したり、共同軍事訓練をしたりすればそれで良いです。

しかし、事はそう単純ではないのです。台湾の多くの人々は、台湾が中国に併合されることには反対ですが、中国と利害が一致する人や親中的な人も存在します。それも、有力者の中にもそういう人は存在します。

中国が台湾内で影響力を増し、次期台湾総裁選で親中派の国民党の候補者を当選させるなどの工作をし、その他に対してもありとあらゆる方面に幅広く工作して台湾のあらゆるところに浸透し、台湾が合法的に中国に自発的に併合されるという、シナリオも十分考えられます。

もし、自発的に併合されなければ、台湾へのあらゆる方面への工作を強化し、これが最終局面を迎えた段階で、易々と侵攻というか、進駐に近い形で台湾に軍を派遣して奪取することも十分に考えられます。

このような脅威は常に懸念されるからこそ、台湾は米国等と関係を深めようとしているのです。

そうしたなかで、台湾の呉釗燮・外交部長(外相)が先月21日、米首都ワシントンDC近郊で米政府高官と非公式の会談を開いたのは画期的なことです。

台湾の呉釗燮・外交部長(外相)

会談は米バージニア州にある米国在台湾協会(AIT)の本部で実施しました。米国側からはシャーマン国務副長官らが出席し、台湾側からは国家安全会議(NSC)の顧立雄秘書長も参加しました。

米台高官の非公式会談は定期的に実施されています。直近では2022年6月に台湾NSCの顧氏の訪米が報じられました。

さらに、台湾の蔡英文総統が8月までに訪米する方針を固め、米国側と調整に入ったことが分かりました。産経新聞が先月25日、複数の台湾当局関係者の話として報じました。

蔡英文氏は、台湾・民主進歩党主席だった頃、次期総統選候補者として、2015年5月末から6月にかけて訪米したことがあります。台湾総統として、米国を訪れるのは初めてのことです。

蔡氏は来年5月に退任しますが、台湾への軍事的圧力を強める共産党一党独裁の中国を牽制し、蔡政権の外交成果の集大成として「米台関係の緊密さ」をアピールする狙いといいます。中国の習近平国家主席は「台湾の武力統一」を排除しておらず、激しく反発しそうです。

蔡英文総統が米国を訪れるのは画期的なことです。これにより、米台間の揺るぎない関係を中国にに見せつけ、中国の台湾侵攻を牽制することなるのは間違いないです。


蔡氏の訪米待望論は以前からありましたが、米国が中国の反発を懸念してためらっていたようです。ところが、中国は「台湾併合」を公言し、緊張感を高めており、習政権に配慮する意味はなくなりました。米台連携を緊密化することが最大の抑止力になります。

日本も「自由」「民主主義」「人権」「法の支配」といった普遍的価値を共有する台湾との関係を強化すべきです。

日本も、議員団の訪台だけでなく、台湾総統を招くとか、総理大臣や外務大臣が訪台するなどのことをすべきです。そうして日米台連携を緊密にすることがさらに、抑止力を高めることになります。

そうして、来年台湾に新総統が誕生したときには、総理大臣が出向いて、台湾で首脳会談を開催すべきです。

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2023年3月13日月曜日

中露首脳、来週にもモスクワで会談か ロイター報道―【私の論評】習近平と人民解放軍の争いの行末を占えるか?来週の習・プーチン会談(゚д゚)!

中露首脳、来週にもモスクワで会談か ロイター報道


 ロイター通信は13日、中国の習近平国家主席が来週にもロシアの首都モスクワを訪問し、プーチン大統領と会談する予定だと報じた。会談が実現した場合、中露はともに対立する米国への対処方針や、ウクライナ情勢に関して中国が先月24日に提示した和平案などを協議するとみられる。

 プーチン氏は昨年12月、オンライン形式での中露首脳会談で習氏を今春にもモスクワに招待したい意向を伝達。プーチン氏は今年2月22日、訪露した中国の外交担当トップ、王毅共産党政治局員と会談し、「習氏の訪露を心待ちにしている」と述べていた。

 それぞれ台湾情勢やウクライナ情勢で米国と対立する中露は、連携を強化し、自国単独で米国と対峙(たいじ)する事態を避けたい思惑だとみられている。

 ロシアとウクライナ双方に譲歩を通じた早期停戦を求めた中国の和平案を巡っては、ロシアは中国の関与を歓迎する一方、「軍事作戦は目標達成まで継続する」とし、早期停戦には応じない立場を示している。

【私の論評】習近平と人民解放軍の争いの行末を占えるか?来週の習・プーチン会談(゚д゚)!

習近平がプーチンの招請に応じて、今年の春にロシアを訪問する可能性があることについては、このブログで何度か述べてきました。

この会談の結果により、現在の中露関係が見極められるだろとうということも主張してきました。それらの記事から一つの記事のリンクを以下に掲載します。
「同盟しない、対抗しない、第3国をターゲットとしない」、習近平政権、ロシア見切りへ外交方針大転換―【私の論評】習近平がロシアを見限ったのは、米国の半導体規制が原因か(゚д゚)!

外相に就任した秦剛氏氏


これは、今年1月17日の記事です。この記事より一部を引用します。

昨年12月30日、習主席は今年3月開催予定の全人代を待たずにして異例の「閣僚人事」を行い、前駐米大使の秦剛氏を外務大臣に任命しました。

外相に就任した2日後の今年元旦、秦剛氏はさっそく米国のブリンケン国務長官と電話会談を行い、新年の挨拶を交わしたと同時に、「米中関係の改善・発展させていきたい」と語りました。

米国務長官との電話会談の9日後、秦外相は本来一番の友好国であるはずのロシア外相との電話会談を行ったのですが、その中でロシア側に対し、今後の中露関係の「原則」として「同盟しない、対抗しない、第三国をターゲットとしない」という「三つのしない」方針を提示しました。

それは明らかに、米国を中心とした西側に配慮してロシアと関係見直しに出た挙動であって、習政権の対米改善外交の一環であろうとも思われます。

こうした中で、ブリンケン米国務長官の2月訪中が双方の間で決定され、長官は2月5日、6日の日程で北京を訪問する予定でした。 ところが「ブリンケン訪中」の直前になって、中国の放った偵察気球一つでそれが延期されることとなりました。その後も、全部が中国の気球かは、まだわからないものの、カナダやアラスカでも行われことが報じられ、さらに止めの一発のように、今回のレーザー照射です。

中国外交部は、習近平の外交方針を代弁しているとみられます。よって、「同盟しない、対抗しない、第三国をターゲットとしない」という「三つのしない」方針は、習近平の方針であると考えられ、これはロシアとの関係を見直すと受け取れる発言です。

その直後に偵察気球問題が発生しました。この偵察気球は人民解放軍が上げたとみて、間違いありません。

月3日、米本土上空で米軍偵察機U2から撮影した中国の偵察気球

中国海警局は、組織改編により、人民解放軍の下に組み入れられています。したがって、フィリピン船へのレーダー照射も軍の意向と考えられます。

これは、ロシアと距離を置こうとしている、習近平指導部に対して、軍が意趣返ししたと受け取れます。習近平指導部と、軍との間で、対ロシア政策を巡って齟齬があるのは間違いないと見えます。

この記事の結論は以下のようなものです。

現状は、ウクライナもロシアも弾薬が不足気味のようで、戦線は膠着していますが、中国がロシアに対して、見切り外交に舵を切ったことから、今後はウクライナのほうが圧倒的に有利になる可能性がでてきました。

今春に習近平はロシアを訪問するのでしょうか、私は訪問しない可能性も出てきたと思います。訪問したとしても、型通りの話ししかなく、形式的なものになる可能性が高まってきたものと思います。

さて、今回習近平が、ロシアを訪問するということで、習近平としては、軍の意向も反映して、ロシアに対して無下にもできないというスタンスであるのは間違いないようです。

上の記事にもあるように、ロシアとウクライナ双方に譲歩を通じた早期停戦を求めた中国の和平案を巡っては、ロシアは中国の関与を歓迎する一方、「軍事作戦は目標達成まで継続する」とし、早期停戦には応じない立場を示しています。

和平提案については話はされるでしょうが、これをロシアが受け入れて、すぐに具体的な交渉にはいることはないでしょう。

今回の会談がほぼこれだけで終わり他にめぼしいものがなければ、習近平はロシアと距離を置こうとしているとみなすことができると思います。プーチンと会談したのは、人民解放軍への懐柔策ともみられます。

一方、中国の和平提案以外にも、中国のロシアに対する支援策、特に軍事支援などが具体的に話され、何らかの合意に達すれば、これは習近平が軍部に折れたともみなされ、中国内では人民解放軍が優勢であり、今後それこそ偵察気球やレーザー照射による意趣返しどころか、大規模な権力闘争もしくはそれを通り越して、武力による争いや内乱などに発展する可能性もあるとみるべきと思います。

ロシアの武器提供も含め、習近平がロシアを支援することを表明すれば、ウクライナ戦争はさらに長引くことも予想され、米国を含む西側諸国の大反発を招くのは必定です。米国は中国に対して、さらに制裁を強化するでしょう。特に半導体での締め付けはかなり厳しくなる可能性があります。現在中国は軍事転用可能な最新型の半導体等に関する規制をうけていますが、これが拡大され、半導体そのもの製造、輸入を妨害する等の厳しい措置にでるかもしれません。

まさに、来週の中露首脳会談の推移によって、これが占えると思います。滅多にない機会です。さて、どうなるか、何か動きがあれば、またレポートさせていただきます。

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2023年3月12日日曜日

ミクロネシア大統領、中国の「賄賂、脅しや政治戦争」非難―【私の論評】南太平洋波高し!米加改めて確認、日本の林外相は今月島嶼国を訪問(゚д゚)!

ミクロネシア大統領、中国の「賄賂、脅しや政治戦争」非難

ミクロネシア連邦のパニュエロ大統領

米国と自由連合協定を組むミクロネシア連邦のパニュエロ大統領が、太平洋で「政治的な戦争」を仕掛けていると中国を非難し、同国との外交関係の断絶も提唱する書簡をしたためていたことが12日までにわかった。

論議を招きそうな大胆な内容が交じる書簡は13ページの長さで、CNNも入手した。中国は台湾への侵攻を準備しているとし、この戦争が起きた場合、ミクロネシアの中立の立場を確保するため賄賂、政治的な干渉に加え、「直接的な脅し」さえかけていると指弾した。

また、中国に代わり台湾との外交樹立を検討したこともあると明かした。

パニュエロ氏は自国内で中国が進めるとされる政治的な戦争について、同盟関係の構築、経済的な方途や公共の場でのプロパガンダ流布などの公然たる活動に言及。さらに、「賄賂、心理戦争や恐喝」といった非公然活動にも触れた。

中国によるこの政治的な戦争が多くの分野で成功している理由の一つは、「共謀者になったり、沈黙を守らせるために我々が収賄されているからだ」と主張。「激しい表現だが、実態の正確な描写でもある」と強調した。

パニュエロ氏はこれまでも、南太平洋を含むインド太平洋で影響力の拡大を図る中国に対して警戒姿勢を見せ、その旨の発言も示してきた。

中国は近年、一部の島しょ国家で自らが関与するスタジアム、高速道路や橋梁などインフラ施設の建設を推進し、存在感の誇示を図っている。中国の習近平(シーチンピン)国家主席も2014、18両年に島しょ国家を歴訪し、政府高官の派遣にも踏み切っている。

南太平洋諸国を台湾から切り離す狙いもあるとされ、同地域では台湾を認める国が14カ国のうちの4カ国までに落ち込んだ。2019年にはソロモン諸島とキリバスが台湾を見限り、中国との国交樹立に転じていた。

この中でパニュエロ大統領は、中国が太平洋の10カ国の島しょ国家に申し出た広範な地域的な安全保障の枠組みにも反対の見解を表明。昨年5月には太平洋諸国の22人の指導者に書簡を送り、枠組みの提案は中国と外交的な関係を持つ島しょ国家を中国の勢力圏へさらに引き寄せる意図があると警告。

島しょ国家の主権が揺さぶられるほか、提案への調印は中国と西側諸国の間の緊張が高まる新たな冷戦をもたらしかねないと釘を刺していた。提案は結局、実現していなかった。

オーストラリア北東部に多く位置する太平洋の島しょ国家は軍事戦略上、米軍基地もある西太平洋の米領グアム島と米国の同盟国オーストラリアをつなげる重要な接続回路と長年位置づけられてきた。

パニュエロ氏は最近の総選挙で議席を失い、今後2カ月内に大統領を退任する予定。大統領は19年から務めていた。

一方、中国外務省の報道官は定例の記者会見でパニュエロ氏の書簡内容に触れ、「中傷や非難のたまもの」と反論。中国は国の規模の大小に関係なく全ての国の平等性を常に支持してきたことを強調したいとし、ミクロネシアが自らの事情に基づき開発の方途を選ぶことを終始尊重してきたとも続けた。

【私の論評】南太平洋波高し!米加改めて確認、日本の林外相は今月島嶼国を訪問(゚д゚)!

中国の南太平洋での最近の動きについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中対立の最前線たる南太平洋 日米豪仏の連携を―【私の論評】米中対立の最前線は、すでに台湾から南太平洋に移った(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を以下に引用します。

その(中国の台湾侵攻には大きな犠牲が伴う)ため中国としては、軍事的侵攻は避け、台湾が持つ他国との国交をどんどん消していくことで、台湾に外交をできなくさせる狙いがあるのでしょう。

そうすることによって、台湾を国際社会から孤立させ、あわよくば、台湾を飲み込んでしまうとする意図があると考えられます。中国はそれぞれの国(南太平洋の島嶼国)に対し、中国と台湾の二重承認を許していません。まさに白か黒かのオセロゲームのようです。台湾を国際的に孤立させるため、中国は膨大な支援を通じて、台湾と断交し、自分たちと国交を結ぶように迫っているのです。

現在、台湾と外交関係を維持する国は世界でたった14か国です。うち4か国が太平洋の小さな島国です。最近ではソロモン諸島、それにキリバスが台湾から中国へスイッチしました。中国が国交を結んだ国々では中国主導でインフラ整備を進めています。

それは、対象国のためであるとともに、中国自身が共同利用しようという狙いもあるとみられます。台湾問題に行き詰まった中国は、今後も南太平洋でさまざまな活動を行い、活路を見出すつもりでしょう。このままの中国有利な情勢が続けば、断交ドミノ現象はいっそう勢いを増す恐れがあります。米豪日は、今後のマーシャル諸島、ツバル、パラオ、ナウルへ政治的なテコ入れを強化していくでしょう。

その意味では、米中対立の最前線は、台湾そのものではなく、すでに南太平洋に移っていると認識を改めるべきです。そうして、南太平洋でも軍事力の衝突というよりは、経済支援や、外交的な駆け引きが主であり、米国とその同盟国と、中国との間の戦いということになるでしょう。特に同盟国がほとんどない中国にとっては、南太平洋の島嶼国を味方につけることは重要です。国連の会議などでは、どのような小さな国でも、一票は一票です。
もちろん、中国は台湾統一を諦めたわけではありません。しかし、昨年暮れ米国が中国による台湾侵攻をシミレートした結果を公表しましたが、それはできないという結果が出ています。

さらに、中国は日米も攻撃して、日米が甚大な被害を被る可能性もありますが、それでも台湾侵攻はできないという結果になっています。

その事自体は、中国も認識しているでしょう。それでも無理をして台湾を武力侵攻すれば、中国海軍が崩壊する可能性もあります。だからこそ、中国は当面、南太平洋の島々に対して外交攻勢を強め、台湾の力を弱め、さらに軍事的要衝でもあるこの地域を中国の覇権が及ぶ地域にすることが予想されます。

この動きに対して、日本を含めた西側諸国も対応力を強めつつあります。AUKUS(オーカス)は、2021年9月にオーストラリア(Australia)、英国(United Kingdom)、米国(United States)の3カ国によって発足合意に至った軍事・安全保障上の同盟の枠組みです。太平洋を中心とする海域の軍事的主導権を握る対中国戦略の枠組みともされます。

AUKUSの枠組みには加わっていない日本も、中国の脅威を感じている点で米国やオーストラリアと立場を同じくします。22年5月23日に東京で行われた日米首脳会談では「国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」という共同声明が発表されるなど、日米間の軍事面での関係は今後さらに強化されていくとみらます。

南太平洋における日米豪等の連携は既にとれているところがありますが、米国は、AUKUS加盟国ではないカナダに対してもそれを再確認しています。

米国とカナダは10日、インド太平洋地域の安全保障や経済などに関する初の対話を開き、南太平洋の島嶼(とうしょ)国や東南アジア諸国への関与を強化する方針で一致しました。米国家安全保障会議(NSC)が11日発表しました。カナダは昨年、中国を「秩序を乱す大国」と位置付けたインド太平洋戦略を策定しており、中国と覇権を争う米国と足並みをそろえました。

悪手するバイデン米大統領(左)とトルドー加大統領

南太平洋というと、かつてはこの海域の島嶼国を巡って日米が熾烈な戦いを繰り広げました。それを題材とした「南太平洋波高し」という映画が今月ケープルテレビなどで放映されたそうですが、今日すぐに南太平洋で戦争が起こるなどとは思えませんが、中国の外交攻勢等や、日米加豪などのこれに対抗と、再びこの地域は波が高い状態になりつつあるといえます。

米カナダ両政府は、インド太平洋地域や南シナ海の安定を確保するため、東南アジア諸国連合(ASEAN)や地域協力機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」、太平洋の島嶼国を支援する枠組み「ブルーパシフィックにおけるパートナー」との協力や連携を強めることを確認しました。

対話は米国とカナダが地域への関与を深めることを目的に昨年10月の両国外相会談で開催を決定。初対話には米国のキャンベル・インド太平洋調整官とカナダのトーマス首相補佐官が出席しました。

日本もこの動きに呼応しています。日本政府は3月下旬に林芳正外相をソロモン諸島とキリバス、クック諸島に派遣する方向で調整を始めたと、2023年3月12日日曜、読売新聞が複数の政府関係者からの情報を引用し報じました。

日程は3月18日~22日となる見込みで、昨年、中国がソロモン諸島と安全保障協定を締結し、中国が南太平洋地域での影響力を拡大しようとしていると、米国やオーストリアから懸念が示されていることを受けての歴訪となります。

林外相は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け3つの島国との協力を確認する意向で、安全保障面での協力についても提案することを検討していると報じられています。

映画「南太平洋波高し」のポスター 高倉健(左) 鶴田浩二(右)

南太平洋では、島嶼国を巡って日米が熾烈な戦いを繰り広げた地域でもあります。今月は、これを題材とした「南太平洋波高し」という映画が、東映チャンネルで放映されていました。この地域、かつてのようにすぐに戦争になるという事は考えられませんが、中国の外交攻勢等とそれに対抗する日米豪加等が、火花を散らし、また波が高くなりそうです。

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2023年3月11日土曜日

「復興増税」という歴史的な〝愚策〟 震災対応で反面教師にしたい 日本学術会議のレベルも露呈した―【私の論評】過去に巨額の戦費を賄ったように、復興、防衛でも日銀政府連合軍で経費を賄える(゚д゚)!

日本の解き方


 2011年3月11日、東日本大震災があった。本来やるべき対応は大規模財政支出と金融緩和の同時発動だったが、当時の民主党政権は何を間違ったのか、復興増税という歴史に残る愚策を行った。

 民主党政権下で復興増税が決まるのは素早い対応だった。震災直後に、当時の菅直人首相は、谷垣禎一自民党総裁と会談し、復興増税の方針が定められた。当然、この行動の裏には財務省官僚がいた。4月14日に第1回の東日本大震災復興構想会議(議長は五百籏頭真・元防衛大学校長)があり、冒頭の議長あいさつ時に、復興増税が言及された。この会議を仕切っていたのは財務官僚であり、そのシナリオ通りに復興増税が盛り込まれたのだ。

五百籏頭真・元防衛大学校長

 このストーリーは、日本のほとんどの経済学者から支持された。ちなみに、ネット上で復興増税の賛成者リストを見つけることができるが、多くの著名な日本の経済学者が名を連ねている。

 また、11年4月に日本学術会議から出された「東日本大震災への第三次緊急提言」でも復興増税を勧めた。この提言は民主党政権で実行され、多くの人が今でも苦しんでいる。学術会議会員の推薦要件として「優れた研究・業績」があるが、こうした提言から、その学者のレベルが分かるというものだ。

 その当時、筆者は野党の政治家だった安倍晋三氏らとこうした動きを激しく批判した。東日本大震災による経済ショックは「需要ショック」だと予想し、国債発行で復興対策を賄うものの、それらは日銀が購入すれば事実上財政負担がなくなる。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)元議長が提言した「財政・金融同時出動」だ。

 仮に日銀が購入しないとしても、東日本大震災のように数百年の一度の経済ショックに対しては、超長期国債で財源作りをすれば、その償還も超長期であるので、当面の増税措置は不要である。こうした考え方は、従来の財政学においても、課税平準化理論として学部や大学院でも教えられていたレベルのものだ。

 いずれにしても、復興増税は不要であった。自然災害の後に増税が行われたのは古今東西をみても例がなく、復興増税が愚策であることは誰にでもわかるだろう。

 しかし、当時の民主党政権は、財務省の強力な後押しで復興増税を選び、実行した。その結果、日本経済は、1度目は東日本大震災、2度目は復興増税で往復ビンタされたようなものだった。この意味で、民主党、財務省、主流派経済学者、マスコミのレベルは低かったといえるだろう。

 幸いにも、安倍・菅義偉政権のコロナ対策では、大震災時になかった大規模財政出動と金融緩和の同時発動が行われた。結果として日本経済のパフォーマンスは他国より良かったのみならず、財政負担もない。東日本大震災を反面教師とし、コロナ対策を教訓としよう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】過去に巨額の戦費を賄ったように、復興、防衛でも日銀政府連合軍で経費を賄える(゚д゚)!

上の記事にもあるとおり、安倍・菅両政権においては、コロナ渦の期間に計100兆円の補正予算を組み、コロナ対策を実行しました。この期間は、他国の失業率がかなりあがったにもかかわらず、日本においては雇用調整助成金という制度も用いて、雇用対策を行ったため、この期間も通常と変わりなく2%台で失業率は推移しました。


マクロ経済対策において最も優先すべきは雇用であり、雇用が良ければ他の指標が良くなくても合格といわれています。菅政権末期には、「コロナ対策」が失敗したようにマスコミが盛んに印象操作をしたため、失敗したかのように思い込んでいる人もいるようですが、そんなことはありません。

菅政権は、コロナ病床の確保には、医療ムラ(厚生ムラともいう)の反対にあって、失敗しましたが、破竹のワクチン接種のスピードで、あっという間に、日本はワクチン接種率の低さを挽回し、世界のトップクラスの摂取率に躍り出ました。

ちなみに、コロナを感染症分類の2類から5類に分類し直すことも安倍政権においても検討はされたものの、結局安倍・菅政権においてはできませんでしたが、これも簡単に言えば、医療ムラの反対があったからです。

また、ワクチン接種率の低さには事情がありました。それは、日本ではコロナ肺炎の罹患率が、桁違いに低かったという事実です。疫病対策の常識として、感染率の高い地域や国からワクチン接種をすすめるのが常道です。

その意味では、日本のワクチン接種が遅れたのは、決して安倍・菅政権の失敗とはいえません。もし、日本がコロナ渦の最初の時期に、世界中からワクチンを集め日本国内で接種を大々的に進めたとしたら、日本より桁違いに感染率が高かった、世界中の国々から非難を受けた可能性があります。

特にG7の国々も、感染率が高かったので、轟々たる非難の声が巻き起こった可能性があります。そのため、日本政府は当初は、ワクチン接種を医療従事者等に優先して行うなどのことをしたのです。極めてまともな措置でした。

そうして、菅政権末期においては、結果として大規模医療崩壊を起こすこともなく、コロナ渦は収束しました。これは、失敗ではなく、さすがに菅政権当時に「ゼロコロナ」にしてコロナ終息させるのは無理筋であり、菅政権の対策は成功としても良いはずなのですが、マスコミの印象操作等で「失敗」と見なしている人も今でも多いです。

このあたりは正しく認識すべきです。現在では、コロナ対策も含めて、菅政権の功績を見直す動きもあります。

一方、東日本大震災では復興税を導入してしまったため、経済は落ち込み、デフレが進行しました。復興税は、税という性格から、軽減、免税措置はあったものの、被災地の住人にまで、課税し現在でも未だに徴税されつづけており非常に過酷なものです。

震災からの復興では、様々なインフラに投資がなされ、それは将来世代も利用するものであり、国債などでは、それを将来世代も負担することになります。一方税金で復興を賄うことになれば、現世代にのみ負担がのしかかることになります。

東日本震災での津波の様子(出典:岩手県久慈市)

これは、国債で賄うべきものでした。上の高橋洋一の記事にも、課税平準化理論のことに触れられていますが、これについて簡単に解説します。

課税平準化理論とは、租税均等論とも呼ばれ、所得や富の不平等を解消するために税制を設計する際に用いられる原則です。この理論では、個人の所得や富の差に基づき、より公平な税率を適用することを提案しています。

具体的には、所得や財産の多い人には高い税率を、少ない人には低い税率を適用することが推奨されています。これにより、富の再分配が促進され、社会の不平等を解消できます。

さらに、租税均等論は、税制の透明性と公平性の重要性を強調しています。税制が複雑で理解しにくい場合、透明性に欠け、不公平感を与えることになりかねません。

課税平準化理論は、政府が公平で効果的な税制を設計するための基本原則であるとして広く受け入れられています。しかし、具体的な税制の設計は、その実施に影響を与える様々な政治的・経済的要因のために困難な場合があります。

国債の利用に関しては、租税均等論は特定の状況においてその利用を推奨することがあります。例えば、税収が予想より少ない場合や、政府が緊急に資金を必要とする場合、一時的な赤字を補うために国債を発行することができます。

さらに、政府が長期的なインフラ、教育、医療プロジェクトに投資する必要がある場合、必要な資金を調達するために国債を発行することができます。

さらに、国債を発行することで、高所得者から多くの税収を集め、低所得者に再分配することで、税負担の平準化を図ることができます。ただし、国債の発行には財務リスクが伴うため、国債発行に過度に依存しないよう、政府の財政状況を慎重に判断する必要があります。

東日本大震災の復興では、政府が緊急に資金を必要とする場合にあたり、これは国債を発行して賄うべきでした。国債発行の財務リスクとしては、特にインフレが懸念されますが、東日本大震災の時の日本は、デフレ状況でしたから、たとえ大量に国債を発行したとしても、財政赤字になること考えられませんでした。

それは、安倍・菅両政権における、補正予算のための国債発行でも証明されました。両政府が大量の国債を発行して、それを日銀が買い取っても、日本はインフレにはなりませんでした。

最近でも、1月の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は2020年と基準として102.2、前年同月比は3.2%の上昇です。これは、諸外国と比較すれば、高い数値とはいえません。ちなみに、米国では同5.6%上昇です。前月の5.7%から鈍化したものの、これも民間予想の5.5%を上回りました。

現状の物価の上昇は、海外から輸入しているエネルギー・資源価格に由来するものであり、それが他も波及したものです。日本は、インフレ傾向にあるとはいえません。むしろ未だデフレから抜けきっていない状況です。

この状況で、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、参考にすべきは、安倍・菅政権であり、民主党の菅(かん)政権の経済対策ではありません。

岸田政権も、安倍・菅政権を参考にして、防衛増税などすべきではありません。防衛増税などしてしまえば、課税平準化理論からみれば、現世代にだけ負担が大きくなってしまいます。

負担が大きくなるだけでも大変なのに、軍事的脅威はさらに大きくなるかもしれません。それは、日露戦争の事例でもわかります。

日本が日露戦争の負債を完済したのは82年後の昭和61年(1986年)です。 その借金の大部分は、当時覇権国家だった英国のロンドンのシティ(米国ウォール街に相当する金融街)において外債(日本国債)を発行することで調達されました。これは、外国からの国債購入ということで、日本の金融期間などからの購入ではないので、借金と呼べると思います。

しかし、日本は1960年代には高度成長果たしており、1974年にはオイルショックで一時経済成長率は落ちたものの、その後は1960年代程の成長はしていないものの、それでも1986年は6%台の成長をしています。

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これは、日露戦争時の膨大な戦費も、毎年少しずつ返済したので、さほど日本経済に悪影響を与えていなかった証左だと思います。

一方もし、日本が国債で戦費を賄わず、税金で賄ったとしたら、当時の日本は貧乏でしたから、経済は低迷するどころか、破綻し、日露戦争に負けていたかもしれません。

日露戦争に負けて、その後もロシアとソ連に浸透され続け、日本はウクライナのようにロシアに飲み込まれていたかもしれません。

では、第二次世界大戦は負けたので全く無駄ではなかったのかという議論もあると思います。太平洋戦争の戦費はあまりにも膨大で、そもそも当時の日本では税金を使って調達することは不可能でした。このため、戦費のほとんどは日銀による国債の直接引き受けによって賄われました。現在の日本で、国債の大量発行を忌避するのはこのときの記憶があるからかもしれません。

現在の量的緩和策にも通じるところがありますが、超巨大な戦費を国債で賄ったため、発行量もとてつもないものでした。

現在とは異なり、戦争中は価格統制が敷かれていたことからあまり顕在化しなかったものの、それでも戦争が始まると物価水準はどんどん上がっていきました。この財政インフレは終戦後、準ハイパーインフレとして爆発することになりました。ただ、このインフレも終息して、日本は高度成長を迎えることになります。

巨大な戦費も増税ではなく、国債償還で毎年少しずつ行ったため、その後日本経済にダメージを与え続けることはなく、日本は高度成長を果たすことができたのです。

そうして何よりも、当時は日露戦争当時のロシアに変わって、ソ連が台頭しましたが、もし日本が増税で戦費を賄おうとしていれば、すぐに行き詰まり、ひょっとすると米英とは戦争にはならなかったかもしれませんが、ソ連が朝鮮半島を席巻し、現在の朝鮮半島、中国のかなりの部分はソ連の領土になっていたかもしれません。それどころか、日本もソ連の領土になっていた可能性もあります。

幸いなことに、戦争末期でも、現在の北方領土の日本陸軍はある程度の余力を残していたのと、当時のソ連軍の海上輸送力か脆弱だったこともあり占守島の戦いで、ソ連軍を打ち負かし、北海道がソ連軍に占拠されるなどのことはありませんでした。そもそも、増税で戦費を賄うなどのことをすれば、占守島などに防衛部隊を設置することもできなかったかもしれません。

占守島に今も残る日本軍の戦車の残骸

日露戦争、第二次世界時も、日本の経済は脆弱であったため、巨大な戦費を賄うために、増税などということは到底不可能であることを誰もが理解しました。だから、戦費のほとんどは日銀による国債の直接引き受けによって賄われたのです。安倍元総理の言葉でいえば、「政府日銀連合軍」によって賄われたのです。

その後日本は、高度成長などにより、富を蓄え、過去の日本よりははるかに豊になりました。そのため、最近では震災から復興や、防衛費の倍増など巨大ブロジェクトの費用を賄う際には、すぐに財源はどうするというかということで、国債ではなく増税ということがいわれるようになりました。

確かに、今の日本は増税でこれらを賄えるようにはなりましたが、巨大プロシェクとなどの財源をすべて増税で賄うというのでは、現世代への負担が大きくなるのは、今も昔も変わりません。

確かに、戦費のほとんどは日銀による国債の直接引き受けによって賄われました。そのため、戦後の日本ではこれを忌避する傾向がありました。しかし、これは巨大ブロジェクトの費用を賄うための、まともな方法です。

それに巨大な戦費も国債で賄ったから何とかなったものの、全部増税で賄っていれば、今頃日本はとっくに破綻して、それどころか、ソ連に占領され、ソ連に組み込まれ、従来のウクライナのようになり、いずれ独立したかもしれませんが、それでも現在のウクライナのようにロシアに侵略されていたかもしれません。

そこまでいかなくても、過度の干渉を受けていたかもしれません。そうして、多くの日本人は今頃ウクライナ戦争の最前線に動員され、多くの犠牲者を出していたかもしれません。歴史の歯車が狂っていたとすれば、そうなっていた可能性は否定できません。

以上を私の思いつきのように捉える人は、朝鮮戦争後マッカーサーは、実際に朝鮮半島で戦った経験を踏まえて、「第二次世界大戦中の日本の大陸での戦争は、防衛戦争だった」と証言した事実を思い出すべきと思います。

過去に巨大な戦費を賄ったという経験則から、これを忌避して、すべてを増税で賄おうとすれば、現世代が疲弊し、それこそ将来世代へ疲弊しきった日本を引き継がせることになります。

そのようなことにならないためにも、私達は、菅(かん)政権の東日本大震災復興政策を反面教師とし、安倍・菅(すが)政権のコロナ対策を教訓とすべきなのです。

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2023年3月10日金曜日

東京大空襲から78年 犠牲者約10万人 慰霊の法要 墨田区―【私の論評】B29は無敵ではない!日本本土を爆撃した搭乗員に甚大な被害が(゚д゚)!

東京大空襲から78年 犠牲者約10万人 慰霊の法要 墨田区


 およそ10万人が犠牲となった東京大空襲から78年となる10日、東京・墨田区では慰霊の法要が行われ、遺族などが犠牲になった人たちに祈りをささげました。

 太平洋戦争末期の昭和20年3月10日未明、アメリカのB29爆撃機による大空襲で東京は下町を中心に壊滅的な被害を受け、およそ10万人が犠牲となりました。

 この大空襲から78年となる10日、墨田区の東京都慰霊堂で、秋篠宮ご夫妻も参列されて慰霊の法要が行われました。

 そして、東京都の小池知事、それに遺族の代表などおよそ100人が焼香を行い、犠牲になった人たちに祈りをささげました。

 法要のあと遺族の代表として参列した五関愛子さん(79)は「大空襲で義理の兄と姉の3人を亡くしました。戦争は人が人を殺すことなので、そういったことは避けて世界中が平和に過ごせる世の中になってほしい」と話していました。

 また、祖父母たちを失った齋藤明さん(60)は「私は直接、戦争を知らない世代だが、今の安らかな生活があるのは、犠牲になった人たちがいたからだと思っている。このことを自覚して次の世代に伝えていきたい」と話していました。

【私の論評】B29は無敵ではない!日本本土を爆撃した搭乗員に甚大な被害が(゚д゚)!

まずは、東京大空襲でなくなった東京都民、日米の将兵の方々のご冥福をお祈りします。日本では、東京大空襲については今ではあまり語られなくなりましたが、この記憶は、正しく伝承し続けるべきでしょう。

東京大空襲などで、爆撃任務にあたったB29ですが、戦争末期の日本は、7000~9000メートルの高高度を大挙して押し寄せるB29に手も足も出せなかった-という話が横行しているが、現実はそうではありませんでした。

東京大空襲においては、米軍は焼夷弾(現在で言うナパーム)弾を大量に使用したため、木造建築の多かった当時の東京では大きな火災が発生して甚大な被害を被ることになりました。

空襲の主力となったB-29戦略爆撃機による爆弾投下

ところが、この東京大空襲時にも、B29は被害を被っています。東京大空襲は米軍任務番号40号、1945年3月9日(爆撃は翌10日未明まで)の東京市街地に対する夜間無差別爆撃では、B-29が325機出撃し損失が14機、内訳は日本軍の対空火器での撃墜2機、事故1機、その他4機(3機が燃料切れ墜落、1機不明)、7機が原因未確認とされています。

閲覧注意! 東京大空襲による死者 焼夷弾のため黒焦げに・・・

原因未確認の7機はすべて連絡のないまま行方不明となった機ですが、この日に出撃して無事帰還したB-29搭乗員からは、東京上空で7機のB-29がおそらく撃墜されたという報告があり、さらに行方不明の1機については銚子岬の上空で4本の探照灯に捉えられて、大小の対空火器の集中砲火で撃墜されたという詳細な報告があったのにもかかわらず、米軍は原因未確認の損失とされました。

この日に日本軍により撃墜されたと判定されたのは、東京上空で対空火器で撃墜された1機と、対空火器による損傷で不時着水して搭乗員全員が救助された1機の合計2機のみに留まりました。当時の米軍は日本軍の攻撃(Enemy Action)による損失と認定するにはよほどの確証が必要で、それ以外は未知(ないし未確認)の原因(lost to unknown reasonsもしくはcauses)とする慣習であったので、原因未確認の損失が増加する傾向にありました。

1942年4月に新たに編成された日本陸軍「飛行第244戦隊」は、東京・調布基地を拠点に帝都防空戦に大活躍した精鋭部隊です。保有機は40機の三式戦闘機「飛燕(ひえん)」でした。

戦争末期の日本は、B29に手も足も出せなかったというまことしやかな説が横行していますが、現実はそうではなかったのです。帝都上空では、B29爆撃機の大編隊に、飛行第244戦隊が立ちはだかったのです。日本軍の高射砲も最大で1万9千メートルまで弾丸を飛ばすことができたとされています。

この部隊に44年11月、24歳の小林照彦大尉が戦隊長として着任しました。小林氏は後に、B29爆撃機10機を含む、敵機12機を撃墜した「本土防空戦のエース」となりました。同隊は翌12月、B29の大編隊を迎え撃ち、6機撃墜・2機撃破の大戦果を上げました。

操縦席側面にB-29を模った撃墜マークを多数描いた陸軍飛行第244戦隊の三式戦闘機「飛燕」

このとき、四宮徹中尉は、B29への体当たり攻撃で片翼をもぎ取られながらも無事帰還しました。中野松美伍長は、B29の真上に張り付く“馬乗り”の姿勢で、B29の胴体をプロペラで切り裂いて撃墜し、生還しました。板垣政雄伍長も、最後尾を飛んでいたB29に体当たりして帰還しました。

この日の武勲により、空対空特別攻撃隊は「震天制空隊」と命名されました。その名の通り、B29の乗員を恐怖に陥れる一方、日本国民の戦意を高揚させました。

B29は11人の搭乗員を乗せています。そのため、1人乗りの「飛燕」が体当たりして撃墜すれば、11倍の敵と刺し違うことになります。当時言われていた「一人十殺」は単なる掛け声ではなかったのです。

先の戦争におけるB29の被害機数はあまり知られていません。軍事評論家の井上和彦氏によれば、本土空襲に来た米第20空軍ののべ出撃機数は3万3004機でそのうち、何と、陸海軍の本土防空部隊によって485機が撃墜され、2707機が撃破されていたのです。

以下に「B-29の出撃総数と第21爆撃集団のB-29出撃1回に対する日本軍戦闘機の攻撃回数推移」の表を掲載します。


上表のとおり1945年1月までの日本軍戦闘機によるB-29への迎撃は執拗であり、特に京浜地区の防衛を担う立川陸軍飛行場や調布陸軍飛行場に配備されていた二式戦「鍾馗」・三式戦「飛燕」、海軍厚木基地・横須賀基地に配備されていた雷電はB-29撃墜にとって有効な存在で、爆撃後背後から襲い、一度に十数機を被撃墜・不時着の憂き目に合わせたこともしばしばでした。

日本軍戦闘機の装備の中で、B-29搭乗員に恐れられたのが三号爆弾であり、B-29搭乗員は炸裂後の爆煙の形状から白リン弾と誤認し、三号爆弾を「いやな白リン爆雷」と呼んで、空中で爆発すると凄まじい効果があったと回想しています。

第三三二海軍航空隊に所属し零戦52型でB-29を迎撃した中島又雄中尉によれば、三号爆弾は命中させるのは非常に困難でしたが、なかには7機のB-29を撃墜した搭乗員もいたといいます。撃墜できなくとも、B-29の編隊を乱して、損傷したり落伍したB-29を集中して攻撃できるという効果もありました。

ただ、表中で、1954年の3月以降は、戦闘機そのものは戦争末期に向かい徐々に増えていっているですが、戦闘機の攻撃回数そのものはかなり減っています。これは、ガソリンや弾薬などの物資が不足していたからだと考えられます。

その他の資料でも、B29の被害も甚大だったことがわかります。『B29 日本本土の大爆撃』(サンケイ新聞社出版局)p210「B29のその後」には、米第二十航空軍の死者として、3015人が死傷・行方不明との記載があります。出典・参考図書の記載はありません。

『図説 アメリカ軍の日本焦土作戦』(河出書房新社)p118-119「アメリカ軍が認めたB29の喪失機数は最大四百八十五機」には、中国・ビルマ・インドおよびマリアナからの作戦全般を通じて、第二十航空軍の戦闘搭乗員のうち、戦死または行方不明者は総計3041名、攻撃行動中の戦傷者は332名とあり。なおこの節の記載の出典は第20航空軍がまとめた「日本本土爆撃慨報」です。

『日本上空の米第20航空軍』(大学教育出版)の、p14に戦争末期の5か月間の米軍の損失は搭乗員297組3267人との記載があり。これは米陸軍が1947年に発行した冊子「第20航空軍小史」を邦訳したもので、p41には該当箇所の原文もあります。

なお『戦争の日本史23 アジア・太平洋戦争』(吉川弘文館)p261「戦場における死 特攻作戦の考察」によると、航空特攻を中心とした特攻隊の全戦死者数は陸海軍合計で4160名です。

階級や年齢別の分析もあり。データの出典元である『陸軍と海軍』には、p210「海軍善玉論批判」に特別攻撃隊の戦死者4160名との記載があります。またp229「海軍特攻戦死現役将校の分析」に陸軍1688名、海軍航空特攻2525名、回天特攻89名との記載があります。

米軍のB29日本本土への爆撃隊だけでも、日本の特攻隊の死者は下回りますが、それに匹敵するくらいの3000人以上がなくなっているのです。

戦後、前出の小林氏や、専任飛行隊長の竹田五郎大尉、B29を5機撃墜・7機撃破した撃墜王、生野文介大尉など、本土防空戦に活躍した面々は、航空自衛隊でも本土防空を担いました。

ちなみに、竹田氏は1976年9月、ソ連のベレンコ中尉が亡命を求めてミグ25で函館空港に飛来したときの北部航空方面隊司令官でした。このとき的確に対処できたのは、かつての本土防空戦の経験からでしょう。

竹田氏はその後 第14代航空幕僚長となり、さらに自衛隊制服組のトップとなる第12代統合幕僚会議議長を務めています。

戦後の日本の空も、飛行第244戦隊の精鋭によって守られていたのでした。

日本の当時の果敢な将兵の捨て身の覚悟で、日本を爆撃したB29の搭乗員も決して安全ではなかったのです。少なからぬ将兵がなくなっています。このようなことが、米国を警戒させ、日本が米国に対して二度と立ち上がれないように、様々な縛りをつけたのでしょう、その最たるものが「日本国憲法」でしょう。

戦争の記憶は辛いものですが、正しい記録を伝承すべきです。特に、戦争中には、戦争当事国は、被害や損害を秘密にしてなかなか表には出しません。これを表に出すことは、戦争遂行の上で不利になることもあるからです。

戦時中の大本営発表のことを嘘八百と批判するむきもありますが、これはいずれの国でも戦時中は当然のことです。

しかし、正しい損害の状況などを認識することは、歴史を振り返る上で決して避けてはいけないものだと思います。それを曖昧にすれば、歴史を正しく認識できなくなる可能性もあるからです。

現在戦われているウクライナ戦争でも、ロシアとウクライナが様々な情報を出していますが、これは単純には信じることはできないです。両方とも意図的なプロパガンダである可能性があるからです。

ソ連崩壊後の1990年代に、旧ソ連の情報が公開されましたが、その中には過去の歴史を覆すものもありました。たとえば日本国内ではノモンハン事件は、日本の惨敗であり、小太平洋戦争のようだったなどの説が流布されていますが、これは間違いだったことがわかりました。

実は、ソ連側もかなりの損害を被っており、日本側も損害が多く、日本が勝ったとはいえませんが、どちらかというと日本が辛勝したといえるような資料が見つかったのです。

戦争中はそうするのは無理もないことです。しかし戦争が終わった時点では、差し支えがないと判断された時には、いずれの側も正しい数字を出すべきでしょうし、どのような意図で、戦争を遂行したかも公表すべきでしょう。正しい歴史を残し、後世に伝えるためです。それによって、後世の世代が正しい認識を持てるようにするためです。

そういう観点から、本日は敢えて日本で流布されているB29無敵説を正すためにこの記事を掲載させていただきました。

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中国艦艇40隻超 南シナ海比島に集結―【私の論評】日豪が協同で潜水艦を運用すれば、南シナ海で米軍が手薄になっても中国を牽制できる(゚д゚)!




2023年3月9日木曜日

中国艦艇40隻超 南シナ海比島に集結―【私の論評】日豪が協同で潜水艦を運用すれば、南シナ海で米軍が手薄になっても中国を牽制できる(゚д゚)!

中国艦艇40隻超 南シナ海比島に集結


大塚智彦(フリージャーナリスト)

「大塚智彦の東南アジア万華鏡」

まとめ】

・フィリピンが実効支配している南沙諸島のパグアサ島周辺海域に中国艦船が集結。

・南沙省島周辺で中国のフィリピンに対する示威行為が目立つ。

・「九段線」が国際法に違反するという判断が下されたが、中国は現在に至るまでそれを完全に無視。


南シナ海の南沙諸島にあるフィリピンが実効支配を続ける島の周辺海域に3月4日以降、中国の海軍、海警局艦艇や海上民兵が乗り込んだ船舶など40隻以上が集結し、フィリピン側に嫌がらせを続けていることを7日に比沿岸警備隊が明らかにした。

中国は北京で3月5日から全国人民代表大会(全人代)を開催しており、これに合わせて一方的に宣言した自国の海洋権益が及ぶ範囲とする「九段線」における示威行為でフィリピンへの圧力を強めているものとみられている。

比沿岸警備隊によるとフィリピンが実効支配している南沙諸島のパグアサ島周辺海域に中国の艦船が集結して居座っていることが明らかになった。

それによると中国人民解放軍海軍艦艇、海警局艦艇「5203」号に加えて海上民兵が乗り組んでいるとみられる艦船42隻が確認されている。

こうした中国の艦船は3月4日に同海域に展開しているのが確認され、7日現在も同海域に留まっているという。

★約400人が在住するパグアサ島

 フィリピン南部パラワン州プエルトプリンセラの西方海上約483キロの南シナ海にあるパグアサ島は南沙諸島で2番目に大きな島で、1971年以来フィリピンが実効支配し、海軍兵士、沿岸警備隊隊員、漁民などの一般市民合計約400人(うち子供70人)が居住している。

 島には1400メートルの滑走路も整備され、行政的にはパラワン州の一部となっている。

 パグアサ島の南西約25キロの海上には中国が軍事拠点化しているスービ礁がある。

 スービ礁は暗礁で元々はベトナムが支配していたが1988年に中国が攻撃して奪取。以後埋め立て工事を行い3000メートル級の滑走路やレーダー施設が建設され、海軍兵士も駐留するなど完全な軍事基地と化している。

 スービ礁が間近にあることからパグアサ島はたびたび中国から嫌がらせを受けており、2020年には同島周辺海域に中国漁船100隻以上が押し掛けて示威行動を行った。

 また2022年11月20日には中国の大型ロケットからの落下残骸とみられる部品がパグアサ島近くの海域で発見された。フィリピンの海軍兵士が乗ったゴムボートでこの部品をパグアサ島の砂州付近の海域で曳航していたところ中国海警局船舶が妨害し、曳航ロープを切断。残骸部品を奪取するという事態をも起きている。

 この時も比沿岸警備隊は「妨害され、ロープを切断されて奪われた」と説明したが中国外務省は「比側が最初に浮遊物を発見し引揚げ曳航したものの双方が現場で友好的に協議してフィリピン側が中国側に返還した。現場で遮ったり奪い取るなどの状況はなかった」と常套手段である自己正当化に終始し、比世論の大反発を招いた経緯がある。

★繰り返し中国側に警告

 フィリピン沿岸警備隊はパグアサ島周辺に集結して動かない中国の40隻以上の艦艇群に対して「そこはフィリピンの領海内である。直ちに離れるように」という警告を無線で繰り返している。

 しかし中国側からは何の反応もなく完全に無視し続けているという。

 マルコス大統領はこれまでのところ今回のパグアサ島での事案に対して特にコメントをしていないが、2月6日に発生した南シナ海スプラトリー諸島周辺海域での中国海警局船舶による比沿岸警備隊艦艇へのレーザー照射事件を受けて在フィリピン中国大使を大統領官邸に召喚して直接遺憾の意を示すという異例の対応を取っただけに、今後中国に対してさらに厳しい対応を取る可能性もでている。

 2月21日にも比沿岸警備隊の航空機が南シナ海を警戒監視飛行中に、比排他的経済水域(EEZ)内にあるサビナ礁周辺に中国艦船約30隻が集結しているのを発見、航空機は無線を傍受したが意味不明で逆に同海域からの退去を航空機から中国艦船に命じた。

 同様のことは比が実効支配するアユンギン礁周辺海域でも同日確認されており、中国の南シナ海とくに南沙省島周辺でフィリピンに対する示威行為が特に目立つ状況となっている。

★中国の一方的主張と行動

 南シナ海の大半を占める「九段線」を根拠として中国は島嶼や環礁での埋め立て工事などで次々と軍事拠点化を進めており、フィリピンが実効支配するアユンギン礁やパグアサ島に対しても「中国の海洋権益が及ぶ範囲」としてフィリピンの領海やEEZ内にも関わらずに妨害行動や嫌がらせを繰り返している。

 南シナ海を巡ってはフィリピン以外にもマレーシア、ベトナム、ブルネイが領有権を主張して中国と対立している。

 一方的に中国が主張している「九段線」を巡っては2014年にフィリピンのベニグノ・アキノ大統領(当時)がその不当性をオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)に提訴。

 2016年にPCAは「九段線とその囲まれた海域に対する中国が主張してきた歴史的権利は国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」との判断を下した。

 しかし自らの主張が国際的に認められなかったことから、中国はこの判断を現在に至るまで完全に無視し続けている。

 そうした中国の態度が「法の順守」とか「国際的な協調」「対話を通じた問題解決」などという決まり文句とは相容れない自己矛盾、自己撞着を起こしていることを国際社会はすでに見抜いている。

 今の中国では「反省」とか「謝罪」などという類の言葉を用いることは、どんなにその責任が政府にあろうとも中国共産党支配が続く限りありえない状況となっており、それが南シナ海を緊張の海にしているのだ。

【私の論評】日豪が協同で潜水艦を運用すれば、南シナ海で米軍が手薄になっても中国を牽制できる(゚д゚)!

フィリピンでの緊張が続いている中、ロイター通信などは8日、複数の米当局者の話として、オーストラリアが米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の合意に基づき、米国製のバージニア級攻撃型原子力潜水艦を2030年代に最大5隻を購入する見込みだと報じました。

13日に西部カリフォルニア州サンディエゴで開かれるオーカス首脳会談で豪州の原潜導入計画を協議するとしています。

豪州はバージニア級原潜を30年代前半に3隻購入し、2隻を追加調達することを検討しています。30年代後半には、英国の設計に米国の技術を組み込んだ新たな潜水艦を建造する案が出ています。また、米国は自国の潜水艦を豪州に毎年寄港させ、27年頃までに豪西部に潜水艦数隻の配備を目指すといいます。

中国は東・南シナ海に加え、遠い海域でも海洋進出を図ろうとしています。米英は豪軍の潜水艦が幅広い海域で活動できるように支援することで、中国に対抗していく考えです。

米ホワイトハウスによると、バイデン大統領は13日のオーカス首脳会談に加え、アルバニージー豪首相、スナク英首相と個別会談も行います。

中国軍は2018年南シナ海に建設した7つの人工島(すなわち前進軍事拠点)のうち戦闘機の離発着が可能な滑走路を持つ3つの人工島を中心に、対空・対艦ミサイルを配備することにより、南シナ海における中国の航空優勢、海上優勢が格段に向上し、我が国のオイルシーレーン上も大きな懸念が生じたといえます。

我が国のシーレーンは、下の地図をご覧居いただければ、わかるように、中国の軍事基地に囲まれたといえます。


中国のこの海域でのフィリピンに対する脅威は、そのまま我が国の脅威でもあります。中国は、これによって、我が国に対する通商妨害や通商破壊の準備も整えつつあるといえます。

現在世界の超大国は、米国一国となりました。その米国では、ジョー・バイデン米政権が、中国の軍事的覇権主義に対峙する強い姿勢を示しました。ダニエル・クリテンブリンク国務次官補は2月28日、米下院外交委員会の公聴会で、中国による沖縄・尖閣諸島や台湾への威圧に対し、「米国は対抗し続ける」と表明しました。

中国とロシア、北朝鮮などの専制主義国家が連携を強めるなか、米国は世界各国で外交攻勢を仕掛けている。識者は「米国が『戦時体制』に入った」と分析しました。 東アジア・太平洋を担当するクリテンブリンク氏は、委員会に事前提出した書面証言で、南シナ海や尖閣諸島を含む東シナ海、台湾海峡をめぐる中国の脅威や挑発を看過しない立場を表明しました。

ダニエル・クリテンブリンク国務次官補

ただ、いかに超大国米国とはいえ、軍事力には限りがあります。世界でかなり大きな紛争が起こった場合、米国は二正面作戦なら対応できますが、さすがに三正面作戦まではできないです。それでも、三正面作戦を実行すれば、兵力を小出しにすることになり、最悪全正面で敗北することになりかねません。

現状では、ウクライナ戦争中でもあり、ロシアはこれにかかりっきりなっているため、米国が三正面作戦を実行することを余儀なくされることは、想像しにくいですが、未来永劫にわたって、それがないという保証はありません。

ただ、日米豪などと中露等が全く異なるのは、日米は多くの同盟国、準同盟国を持っていることです。日本が従来のように、米国一辺倒だったのを、多くの仲間を作れるようになったのは、安倍政権の功績です。

米国が二正面作戦で身動きが取れなくなっているときに、大きな紛争などが起これば同盟国、準同盟国、同士国、特にその近辺にあるそれらの国々協力しあいながら、もう一つの正面を受け持つのは当然のことです。そうでなければ、中露に付け入る隙を与えることになります。

特にフィリピンなどで、中国が軍事的行動に打って出た場合、日豪がこれに協力して対抗すべきです。特に、日本は中東から大量の原油を輸入しており、フィリピンの近くにはシーレーンが通っており、これは是が非でも守らなければなりません。

一方オーストラリアは原油生産国でもあります。しかし、中国の艦艇がオーストラリアの近海を航行するなど、中国からの圧力はありますし、南シナ海はオーストラリアに比較的近い位置にあります。

中国が、南シナ海の軍事基地に対艦ミサイルや、対空ミサイルを配備した現在、航空機も艦艇も中国の標的になります。潜水艦はこれに対抗策としてかなり有効です。なぜなら、このブログも何度か掲載しているように、中国のASW(Anti Submarine Wafare:対潜水艦戦)の能力は、日米と比較してかなり劣っている点があるからです。

そのため、オーストラリアが原潜を持つことは、中国に対してかなりの牽制になります。特に、米国が二正面作戦をせざるを得ない状況に追い込まれたとき、日豪が共同で、南シナ海の監視や中国への牽制を強めることができます。

普段から、日米豪が協同で、南シナ海の監視を行えば、いざというときの情報共有や連携もしやすいです。

オーストラリアは原潜を持つことを選択しましたが、一方日本は、どうかといえば、私自身は原潜を持つ必要性はさほど高くはないとは思うのですが、検討はすべきと思います。

日本の海上安全保障上の主な脅威は中国と北朝鮮であり、両国とも地理的に極めて近いです。海上自衛隊の通常動力の攻撃型潜水艦(SSK)は、すでに22隻体制を整えてあり、日本海と黄海、東シナ海、南シナ海、さらには西太平洋、インド太平洋海域で活動するための優れたプラットフォーム(基盤)になっています。

新型のリチウムイオン電池と長時間潜航可能な非大気依存推進(AIP)機関を使うことで、日本の潜水艦は海洋上の重要水路、さらには中国や北朝鮮の海軍基地や港の外側に長期間にわたって居続けることができます。

2017年から建造が始まった新型潜水艦『たいげい』型は、原子力を使わない通常動力潜水艦としては世界トップレベルの潜航能力を持ちます。鉛蓄電池と比べて、より多くの電力を素早く充電、放電できる上、水素ガスも発生しないリチウムイオン蓄電池の特性を最大限に発揮できるよう、設計を改めた点が大きなポイントです。

『たいげい』型の4番艦からは、潜航しながら速やかに蓄電池を充電できる「新型スノーケル発電システム」を採用。これにより、これまで以上に効率的に潜水艦の充電ができるようになっています。

三菱重工業神戸造船所にて進水式を行なう海上自衛隊 「たいげい型3番艦」潜水艦じんげい(SS-515)。2022年10月12日

日本の潜水艦は、関心を寄せている他の場所でも何週間も都合よく海上交通を監視することができます。議論の中心となるべきは、海自がより広範囲の地域をカバーするためにさらに多くのSSKを持つべきかどうかです。こちらの方が、より金額に見合うだけの価値があるものと考えられます。

オーストラリアが最終的に攻撃型原潜を選んだ理由は、フランスとの契約で当初得る予定だった12隻の通常動力型潜水艦を保有したとしても、オーストラリア海軍がインド太平洋地域に常時2、3隻以上を派遣することが難しかったからです。

というのも、オーストラリア海軍の基地は、潜水艦を運用する海域とはかなりの距離があるためです。通常動力型潜水艦は移動のために大量の燃料を使うため、目的地に着いても任務に就く時間が限られてしまいます。これに対し、原潜であれぱオーストラリアから遠く離れた場所でも長期間任務にあたることができます。

さらに、オーストラリア海軍は今、この地域で米海軍を支える遠征海軍になろうとしています。この役割を果たすのに、原潜は強力な武器やセンサー、無人システムを擁するだけに、より適しています。これらはこれまでのところ、オーストラリア本土から提供できないアセット(軍事資産)です。

これは海自の場合には当てはまりません。海自は日本近海を守るための防御的な組織であり、地域を越えて力を行使する遠征海軍ではありません。海自は無人システムやミサイルなどを日本本土から利用発射でき、高額な原潜にそれらを搭載する必要がありません。

忘れてはいけないことは、潜水艦は海洋安全保障の一部を占めているに過ぎないことです。無人システムから水上艦、宇宙や地上配備のシステムまでさまざまなプラットフォームがすべて海上安全保障での役割を負っています。

原潜を開発し、建造するには多額の費用がかかりますが、日本の陸海空の自衛隊がすでに持っている能力をそれほど増強する訳ではありません。むしろ、陸、空、海上、海中の分野で実際に革新的で大きな影響を及ぼすプラットフォームや技術に投資すべきです。

ただし、原潜のメリットとして、その原子炉が供給する継続的な電力に代わるものはないです。まさに、電気の使い放題ができます。燃料供給なしにかなり長時間潜航できますし、電力供給量は無限大と言ってもよく、このエネルギーを最大限に利用して、防御装置や原潜と協同できる電力で動く自律型無人潜水機(UUV)を運用でき、これらとセンサーをインテグレート(統合)でき、効率的な作戦を実行できるというメリットがあります。

したがって、日本が将来の活動で潜水艦により大きな戦略的価値を与えることを検討するなら、原潜導入という選択肢を検討することは賢明な判断と言えると思います。

いずれにしても、日豪が協同で潜水艦を運用すれば、南シナ海で米軍が手薄になったとしも、中国を牽制できる能力が飛躍的に高まることは間違いないです。

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〝高市潰し〟か 小西洋之議員が公表「取扱厳重注意」放送法文書〝流出〟の背景 総務省の内部対立を指摘する声も


 総務省は7日、立憲民主党の小西洋之参院議員が公表した同省の内部文書とされる資料を公式な「行政文書」と認めた。野党は、安倍晋三政権がテレビ番組に圧力をかけようとした証拠だと批判している。ただ、文書の記述は推定や伝聞に基づくものも含まれるうえ、「公共の電波」を使って放送されるテレビ番組の「政治的公平」は以前から問題視されてきた。行政文書を提供したとされる総務官僚の行為に、法的問題(国家公務員法違反など)はないのか。総務省内に残る「旧自治省」と「旧郵政省」の対立と、高市早苗経済安全保障担当相が追及される背景とは。いくつかの論点を取材・考察した。


 「文書の内容が正確なものだったかなどを、総務省で引き続き精査している」「経緯は総務省が国民に分かりやすく適切に説明することが重要」

 岸田文雄首相は7日の衆院本会議で文書について問われ、こう答えた。

 問題の文書は78ページ。小西議員が総務省職員から受け取ったとして2日に公表した。安倍政権当時の2014~15年、官邸側と総務省が放送法をめぐって協議した経緯という。総務省は7日、行政機関の職員が職務上つくり、組織的に用いるものとして保有する「行政文書」と認めた。

 野党側は「放送法の解釈を事実上変更し、番組に圧力をかける目的があった」などと批判している。

 新聞や雑誌などと違い、国民共有の財産である「公共の電波」を使用するテレビ局の番組に対しては、放送法が定められている。同法第4条では、「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などと記されている。

 昨年、「政治的公平」が疑問視される出来事があった。

 テレビ朝日系の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」で昨年9月28日、同社社員のコメンテーター、玉川徹氏が生放送で、「僕は演出側の人間ですから、テレビのディレクターをやってきましたから、それはそういう風につくりますよ。政治的意図がにおわないように制作者としては考えますよ」と発言したのだ。

 テレビでは以前から、特定番組の「政治的公平」が疑われてきた。

 米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏は、日本のテレビ番組の現状について「特定の政権や、政策などへの批判や意見ありきで、番組が作成されているようにみえる。賛成・反対意見の放送時間の比重が偏っていたり、反対運動も主催者発表をそのまま流したりしている」テレビは絶大な影響力がある。電波を独占する局だけが情報を統括できてしまう現状は問題だ」などと語った。

 「行政文書の提供・流出」も注目点だ。文書の多くには、「厳重取扱注意」「取扱厳重注意」の記載があった。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は7日の記者会見で、「行政文書が安易に外に流出すること自体、国家のセキュリティー管理としては問題だ」「外に出すことがルールとして駄目だとされているものが、国会議員の手に渡り、国会で議論になり、後付けでそれを認めていくというようなことになった」と批判した。

 これに対し、前出の小西氏は「違法行為を告発した総務省職員は、国家公務員の鏡であり、真の英雄です」「『国家公務員法の守秘義務に反せず、むしろ、積極的に法令違反の是正に協力すべき』が政府見解です」などとツイートし、公益通報だと主張している。

■総務省「内部対立」か

 法的な問題はないのか。

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「国家公務員法違反罪などで刑事告発があれば、特捜部が担当する政治案件になる。特捜も推移を見守っているだろう。まず真偽を検証するため、総務省への聞き取りや資料を精査する。内容が事実なら、国家公務員法違反などに該当する機密漏洩(ろうえい)かの判断が焦点だ。また、資料に捏造(ねつぞう)があれば虚偽公文書作成罪に該当する可能性もある。時間が経過しており検証は困難だが、並行して総務省の調査や、内規に基づく処分もあるだろう」と語る。

 それにしても、このタイミングで騒動が勃発した背景は何か。

 玉木氏は「民主主義のプロセスに関して、リークを通じて何かをやろうとすることが、政治的意図をもとに行われたとしたら問題だ。特に、選挙(=今春の統一地方選)にこういったものがどう影響するかどうかも含め、適切な行為とは思えない」と指摘する。

 総務省の内部対立を指摘する声もある。総務省は2001年、「自治省」「郵政省」「総務庁」などが統合されて発足した。〝出身母体〟による主導権争いがあるというのだ。

 政府関係者は「文書に何度も登場する礒崎陽輔首相補佐官(当時)は旧自治省出身。電波行政を担当する総務省の旧郵政省側と緊張感のあるやり取りをした。『敵』が多かった」と証言する。

 もう一つ、指摘される背景が〝高市潰し〟だ。

 高市氏のお膝元の奈良で4月、県知事選が行われる。高市氏の元秘書官も務めた元総務官僚の新人が出馬するが、現職候補と「保守分裂選挙」の様相を呈している。

 さらに、高市氏は経済安保相として、安全保障に関わる機密情報を扱える人を認定する「セキュリティー・クリアランス(S・C=適格性評価)」創設の正念場を迎えている。反対派の妨害工作との見方もある。

前出の政府関係者は「政権を『攻撃』する意図で不確かな資料を野党側に漏洩したとすれば、組織の情報管理上、最悪の事態だ」と語った。

■「放送法文書」問題 主な論点

①テレビなど放送の特殊性

②政治的公平性と安倍政権の圧力

③総務省の行政文書の不備

④行政文書の提供・流出(国家公務員法違反では)

⑤騒動の背景(旧自治省vs旧郵政省、高市潰し?)

【私の論評】文書からは総務省内の旧自治省系と、小西氏が出身の旧郵政省系の派閥争いが読み取れる(゚д゚)!

上の記事では、いろいな要素をあげているので、かえって解りにくくなっている部分がありますが、その本質は現総務省の中における旧自治省系と、旧郵政省系の派閥争いです。それは、下の高橋洋一氏の動画をご覧いだたければ、ご理解いただけるものと思います。

小西議員が公開した、いわゆる「行政文書」は、安倍政権下で当時の総理補佐官が「放送法の事実上の解釈変更を求めた経緯が記された」と指摘されています。文書は行政文書であることが確認されたと、松本剛明総務大臣が3月7日、会見で述べています。

文書自体は、公表されていますので、以下のリンクからご覧になることができます。

立憲民主党の小西洋之参院議員が公表した同省の内部文書とされる資料

この文書自体は、行政文書であることは、見ればだいたいわかります。しかし、当該の行政文書が正しいかどうかはまったくの別問題です。 ただ、一見した限りでは、ひどい行政文書だという印象を受けました。例えば当該文書には「厳重取扱注意」と記されていますが、普通の行政文書には「取扱厳重注意」です。

官庁で作成される文書は、配布先を見ると、それが行政文書かどうかはわかります。行政文書とは官僚が仕事で作成文書であり、個人メモではありません。個人メモは、作成者自身だけしか見ないものです。

官庁で、仕事で作成したものは、官庁内の多くの人が見ます。当該の行政文書でも配布先を見ると、何人かいるでしょう。 このようなものは、行政文書といえます。

とこが当該文書の当時の高市早苗総務大臣への大臣レクチャーのところを見ると、大臣室には回覧されていないことがわかります。大臣レクチャーにかかわる文書は大臣室に回すのが普通です。

なぜかと言うと、内容に誤りがあってはいけないからです。でも当該文書は回覧されていません。ですから、これでは当時の高市総務大臣はがチェックできません。レクチャーの内容が適切にに書かれていない可能性が高いです。

要するに高市氏に文書が回覧されていないことから、高市氏が実際には、語っていないことが書いてある可能性があります。あるいは逆に、語ったことが書れていない可能性もあります。たとえば大臣がレクチャーの中で質問したことも正確には書かれていない可能性があります。

そういうことは大臣室に回せばチェックできます。でも、旧郵政のトップである桜井俊さんにしか回していない。事務次官と大臣室には回していないので、適当に書かれていてもわからないのです。ただし、行政文書にはなります。

定義上は行政文書になりますが、それ自体が正しいか正しくないかで言うと「あまり信憑性がない」というのが、外形的にすぐわかるような行政文書です。

この文書よく読めば、総務省のなかの、旧郵政省と旧自治省の争いが官邸まで波及したことが読み取れます。磯崎補佐官は旧自治省の方です。 山田秘書官は旧郵政省の方ですから、両方で派閥争いをしていることが読み取れる文章になっています。

省庁再編で統合された官庁

しかも、当時の総務省内の話が官邸まで及んだことが読み取れます。特に高市さんは総務大臣でしたから、それがすぐに認識できます。ただ、当時の高市大臣は、派閥争いには関わらないというスタンスでした。というより、そもそも官庁内の派閥争いには、ほとんど関心がない感という感覚だったと思います。

いずれかに片寄せすると、一方の肩を持ってしまうことになり、厄介なことになります。 ですからいずれにも近付かず、適当にあしらっていたのが実態だつたと思います。

この文書全78ページのうち、磯崎氏の名前が出てくる部分は多いですが、高市大臣が出てくるのは4ページのみです。

なぜこのような8年前の文書が今になって表に出たのでしょうか。それはおそらく上の記事では、元総務官僚の新人が出馬するとしか書かれておらず、何のことかわかりませんが、高市氏のお膝元の奈良で4月、県知事選においては、高市氏の元秘書官も務めた元総務官僚(旧自治省系)の新人が出馬、大分県補選においても、それぞれ旧自治出身者が立候補します。

高市氏を攻撃することで、元自治省出身者を貶め、ネガティブキャンペーンを実施して選挙戦を不利にさせる作戦であると考えられます。高市氏を貶めたい人たちと、旧自治省出身者を貶めたい旧郵政省派閥が協力した可能性もあります。

このようなことに、小西議員や野党、マスコミは利用されているに過ぎないとみるべきでしょう。お粗末です。結局いくら追求しようと、「モリ・カケ・桜」の二の舞いを舞うだけでしょう。これでは、自民党も対応には時間を費やすことになるかもしれませんが、安泰でしょう。

しかし、このようなことで国会で無駄時間を費やしていただきたくないものです。現状では、安全保障、外交、経済などの問題が山積しています。

まともな国会審議をしていただきたいものです。

最近、長年にわたり頻繁に利用させていただいているタクシー会社が今月の19日に廃業することを決めたということを運転手の方から聞いたばかりです。

正直かなり驚きました。原因は、人手不足だそうです。とにかくドライバーのなり手がおらず、運営していても、いずれ赤字になることは明らかで、運営を断念したようです。

巷で、人手不足であることが言われていますが、実際に身近でこのようなことが起こったのには驚きました。

現在日本は海外から輸入している、エネルギー・資源価格などが高騰しているところにもってきて、日銀が金融緩和を継続しているため、人手不足になるのは当然のことです。

ただし、日本はデフレから完全に脱却しておらず、日着は金融緩和を継続すべきです。利上げなどの引き締め策に転ずることになれば、またデフレに舞い戻ることになります。

このようなときに真っ先に実行すべきは、現在未だ日本経済に存在する受給ギャップ30兆円を埋めることです。

現状のままだと、価格高騰と、日銀の金融緩和策により、人手不足にはなるものの、多くの企業は需要が少ないなか価格転嫁をするのは難しくなります。特に、中小企業はそうです。先にあげたタクシー会社もその典型的な事例であり、多くの老舗や、町工場などか廃業を余儀なくされています。

昨年10月28日夕刻に閣議決定された総合経済対策は、電気・都市ガス料金の負担軽減など物価高騰への対応が柱で、国費の一般会計歳出が29兆1000億円程度とさました。ただ、ほんんど全部が補助金で実行されるため、実行するのが遅かったり、執行できないものも出やすいです。

そのため、需給ギャップが急速に埋めるのは難しいです。そのため、エネルギー・資源価格が高騰しても、多くの企業が価格転嫁できず、先のようなタクシー会社のような事例もでてくるようになるのです。

普通の国だと、減税主体で実行するので、執行速度はかなりはやいですし、執行漏れも少ないです。補助金となると、実行するのは市町村などが窓口となって実施するので、人員も限られているこれらの自治体が実行するには時間がかかります。しかも、colabo問題でも明らかになったように、審査や監査なども甘くなり、不正の温床になりやすくなります。だから、経済政策は他国と同じように減税を主体とすべきなのです。

このような大問題があるのに、それは無視して、小西議員は正確性が疑われるような行政文書で、総務省内の郵政派閥の文書をわざわざ国会で取り上げ、高市氏を貶めるとともに郵政派閥に肩入れするような馬鹿真似をしています。小西氏は元々旧郵政省出身なので、こういうことするのかもしれませんが、現在の立場は国会議員です。立場をわきまえるべきです。これを、立憲民主党やマスコミも取り上げて、問題にしようとしています。

小西議員

あまりにポンコツすぎて、空いた口が閉まりません。こういう人たちには、「インド太平洋戦略」という概念を生み出し、世界に新たな秩序を作り出した、安倍元総理のものの考え方など全く理解できないのでしょう。私は、安倍元総理のものの考え方は、統合的思考の極致であり、本来政治家とはこういう考え方をすべきと思っています。

無論、政局も重要です。いくら素晴らしい政策論を語っても、足場が脆弱では、影響力を行使できません。しかし、政治家が政局だけで動けば、有権者にとっては無意味な存在になってしまいます。政治家は、政局も統合的思考の枠組みの中で捉えて物事を考え、行動すべきです。

政治家がそのような考え方ができず、本当にチマチマした考え方や行動しかしないのでは世も末です。政治家は本来世界と日本との関係や日本全体のスケールでマクロ的に物事を考えるべきです。そういう視点がなくて、ただ現場をミクロ的にしかみないのであれば、政治家には不向きです。社会事業家等になり、現場で困った人たちを直接助けるべきです。

時間的尺度もせいぜい数ヶ月後のことしか考えないようでは、終わっています。国家百年の計という言葉があるように、100年後のことを考えることも場合によっては必要かもしれませんが、いくら100年後ことを考えても現世代の人はそれを確認することもできず、実用的ではないかもしれません。ただ最低でも10年後や30年後のことを考えて、仕事をすべきでしょう。目の前の、倒閣運動に集中し、それで一喜一憂するようでは、到底まともな政治家とはいえません。

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2023年3月7日火曜日

対中「先制降伏」論の何が危険か―【私の論評】日本が対中「先制降伏」すれば、米国は日本に対して大規模な焦土作戦を実行する(゚д゚)!

対中「先制降伏」論の何が危険か

国旗掲揚式で中国国旗を掲げる子供たち=香港で2021年10月1日

【まとめ】

・日本には中国に攻められたら「先制降伏」するのが正解との趣旨を公言する評論家や「学者」がいる。

・中国に無抵抗降伏した途端、アメリカは瞬時にして「最凶の敵」に転ずる。

・「先制降伏」すれば、占領中国軍による暴虐と、アメリカによる攻撃の両方に晒されることになろう。


アメリカの次期大統領選に出馬を検討するマイク・ポンペオ前国務長官は、かつて米陸軍の戦車部隊長として東西ドイツ国境地帯で偵察任務に当たった経験を持つ。

その時期、常にレーガン大統領の言葉を肝に銘じていたという。

「アメリカが自由を失えば、どこにも逃げる場所はない。我々は最後の砦だ」

日本には、中国に攻められたら逃げればいい、無理に抵抗せず降伏するのが正解との趣旨を公言する評論家や「学者」がいるが、歴史およびアメリカを知らない発言という他ない。

例えばテレビコメンテーターの橋下徹氏は、ロシアの侵略に軍事的抵抗を続けるウクライナに関し、抵抗すれば死傷者が増えるだけだから「政治的妥結」(降伏と同義だろう)をし、将来起こるかも知れない(と氏が仮定する)状況の好転に期待すべきだと、在日ウクライナ人研究者らに繰り返し説諭してきた。

これは、尖閣諸島への領土的野心を隠さない中国共産党政権(以下中共)の習近平総書記に対して、暗に「少なくとも僕はテレビを通じて、一切抵抗するなと、日本国民の説得に当たります」とメッセージを送っているに等しい。

中共は常に日本世論の動向を注視している。プーチン氏同様、独裁病の進行が懸念される習近平氏が、大手地上波放送局に頻繁に登場する橋下氏らの影響力を過大評価し、無謀な軍事行動に出るといった展開もあり得ないわけではない。

しかし橋下氏の勧めに反して、自衛隊はもちろん多くの国民は戦いや抵抗を選ぶから、日本はウクライナのような状況に陥るだろう(専守防衛を改めない限り、本土が戦場にならざるを得ない)。

トップに遵法精神も人権感覚もない国の軍隊は、占領地で歯止めなき暴行略奪集団と化す。現に、非武装のウクライナ人商店主らを背後から射殺し、略奪、乾杯に及ぶロシア兵たちの姿が監視カメラに捉えられている。

橋下氏は次のようにも述べている。

《軍事的合理性に基づく撤退は当然あり得る。問題は一般市民をどうするかだ。ロシア軍はウクライナ市民を虐殺するので戦うしかないと言っていたのなら一般市民を置き去りにする撤退はあり得ない》(2022年5月28日付ツイート)

当初は、降伏すればロシア占領下で平穏に暮らせるとのシナリオを提示していたはずだが、ロシア軍の残虐行為が次々明らかになるにつれ、ウクライナ軍は市民を全員引き連れてどこかに撤退し、町を無人の状態でロシア軍に引き渡せとの立場に変わったらしい。

中国軍日本侵攻の場合に置き換えれば、自衛隊は一般市民を先導していち早く僻地まで撤退せよ、あるいは海外に逃避せよ、との主張になろう。無傷のまま明け渡された家屋は中国兵が利用し、やがては一般の中国人が住むことになる。

要するに、中共に攻撃を逡巡させるような抵抗や反撃の態勢(すなわち抑止力)を日本は放棄し、中国の植民地になる運命を甘受せよというのが橋下論法の行き着く先となる。

こうした議論は、「アメリカの怖さ」を理解していない点でも致命的である。今でこそ同盟国だが、日本が中国に無抵抗降伏した途端、アメリカは瞬時にして「最凶の敵」に転ずるだろう。

東アジアにおいて、地理的位置、経済力の点で戦略的に最重要の日本が、中国軍の基地およびハイテク拠点として使われるのを座視するほどアメリカはのんき者ではない。

戦わずに手を挙げれば平穏無事どころか、占領中国軍による暴虐と、アメリカによる攻撃の両方に晒されることになろう。歴史はそうした事例に満ちている。

例えば第二次世界大戦初期の1940年7月3日、イギリス海軍が、直前まで同盟国ながらドイツに降伏したフランスの艦隊に総攻撃を加えた。地中海に面した仏領アルジェリアの湾に停泊していた船舶群だった。

その2週間前、フランスはナチスのパリ無血入城を許していた。そのためイギリスは、陸軍力、空軍力に比し海軍力が弱かったドイツが、フランス艦隊を組み込むことで一挙に海においても強敵となり、軍事バランスが決定的に崩れかねないと懸念した。そこでまず、艦船の引き渡しをフランス海軍に要求したが拒否されたため、殲滅作戦に出たわけである。

この間、フランス海軍のダーラン司令官は、ドイツ軍の傘下には決して入らないと力説したが、英側の容れるところとはならなかった。

結局、イギリス軍の爆撃によって、フランス側は、艦船多数を失うと共に、1297人の死者を出した。

アメリカも、戦略的に最重要の横須賀海軍基地(巨大空母が入港できるドックがある)をはじめ、日本にある軍事施設や戦略インフラを相当程度破壊してから去るだろう。

アメリカに甘え、アメリカを知らない「先制降伏」論は、日本を、かつて「中東のパリ」と言われるほど栄えながら、その後、戦乱とテロで荒廃の地と化したレバノンの東洋版へと導くだろう。

【私の論評】日本が対中「先制降伏」すれば、米国は日本に対して大規模な焦土作戦を実行する(゚д゚)!

米国による第二次世界大戦後における日本の占領は世界史上稀にみるほど、穏当なものでした。無論、問題がなかったかといえば、そのようなことはなく、極東裁判そのものには問題があり、GHQによるプレスコードによる言論統制は今でも日本に悪影響を与えているなどの問題はあります。

しかし、戦前のソ連内におけるウクライナなどへの圧政、第二次世界大戦中のドイツによる東欧諸国の占領、戦後のソ連による東欧諸国の占領政策等の苛烈さから比較すれば、米国の日本占領政策は穏当なものでした。

このブログでは、当時ソ連に属していた、ウクライナに対する圧政について掲載したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。
橋下氏らの執拗な「降伏」「妥協」発言、なぜそれほど罪深いのか ウクライナへの“いたわりに欠ける”姿勢で大炎上!―【私の論評】自由と独立のために戦うウクライナ人など馬鹿げていると指摘するのは、無礼と無知の極み(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。ここでは、スターリンの圧政のもとで起こされた人為的飢餓により、年間400万から1000万人超が餓死させられた大飢饉(ホロドモール)に関してのみ引用します。
さて、ここではホロドモールについてさらに詳しく述べていこうと思います。

当時限られた農作物や食料も徴収された人々は、鳥や家畜、ペット、道端の雑草を食べて飢えをしのいでいました。それでも耐えられなくなり、遂には病死した馬や人の死体を掘り起こして食べ、チフスなどの疫病が蔓延したとされています。
ウクライナの飢餓を伝える当時の米国の新聞
極限状態が続き、時には、自分たちが食事にありつくため、そして子どもを飢えと悲惨な現状から救うために、我が子を殺して食べることもあったと言います。おそるべきディストピアです。

通りには力尽きて道に倒れた死体が放置され、町には死臭が漂っているという有様でした。当時は、飢饉や飢えという言葉を使うことも禁じられていたそうです。

飢饉によってウクライナでは人口の20%(国民の5人に1人)が餓死し、正確な犠牲者数は記録されてないものの、400万から1450万人以上が亡くなったと言われています。

また、600万人以上の出生が抑制されました。被害にあった領域はウクライナに限らず、カフカスやカザフスタン、ベラルーシ、シベリア西部、ヨーロッパ・ロシアのいくつかの地域にまで及んでいます。

ソ連では長きにわたってホロドモールの事実が隠蔽され、語られることはありませんでした。結局、ソ連政府がこの大飢饉を認めたのは1980年代になってからです。

この飢餓の主な原因は、凶作が生じていたにもかかわらず、ソ連政府が工業化推進に必要な外貨を獲得するために、農産物を飢餓輸出したことにあります。

このことからウクライナでは、ホロドモールはソ連による人為的かつ計画的な飢餓であり、ウクライナ人へのジェノサイド(大虐殺)とみなされています。

しかし、ソ連は飢饉の存在自体は認めたものの、被害を被ったのはウクライナ人だけではないとして、虐殺については否定しました。

ソ連は虐殺を否定したものの、これは同じような被害を被ったのはウクライナ人だけではないと語っていることから、当時のソ連領内の他の地域でもこれと同様なことがあったことを暗に認めているわけです。

工業化推進に必要な外貨を獲得するために、農産物を飢餓と引き換えに輸出したというのですから、酷い話です。

ソ連の悪行はこれにとどまりません。

旧ソ連時代の共産党による「犯罪」を正当化するプーチン氏 ロシアが再び中・東欧諸国を脅かし始めた今、日本も対峙すべき―【私の論評】日本はプーチンの価値観を絶対に受け入れられない(゚д゚)!

赤軍に捕虜にされたポーランド軍将兵 多くがカティンの森事件で殺害された

 これは、昨年2月23日の記事です。この記事では、ソ連の東欧に対する過去の圧政に対して掲載しました。江崎道朗氏の元記事からその部分のみを以下に引用します。

 第二次世界大戦後、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどの中・東欧諸国はソ連の影響下に組みこまれ、バルト三国は併合された。これらの国々は50年近く共産党と秘密警察による人権弾圧と貧困に苦しめられてきた。

 意外かもしれないが、そうした中・東欧の「悲劇」が広く知られるようになったのは、1991年にソ連邦が解体した後のことだ。日本でも戦後長らく、ソ連を始めとする共産主義体制は「労働者の楽園」であり、ソ連による人権弾圧の実態は隠蔽されてきた。

 ソ連解体後、ソ連の影響下から脱し、自由を取り戻した中・東欧諸国は、ソ連時代の人権弾圧の記録をコツコツと集めるだけでなく、戦争博物館などを建設して、積極的にその記録を公開するようになった。

 そこで、私は2017年から19年にかけて、バルト三国やチェコ、ハンガリー、オーストリア、ポーランドを訪れて、各国の戦争博物館を取材した。それらの博物館には、ソ連と各国の共産党によって、いかに占領・支配されたか、秘密警察によってどれほどの人が拷問され、殺されたのか、詳細に展示している。
リトアニア KGBジェノサイド博物館(江崎道朗氏撮影)
 旧ソ連時代の共産党一党独裁の全体主義がいかに危険であり、「自由と独立」を守るため全体主義の脅威に立ち向かわなければならない。中・東欧諸国は、このことを自国民に懸命に伝えようとしているわけだ。

 それは、ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアの指導者たちが再び、中・東欧諸国を脅かすようになってきているからだ。プーチン氏らは、旧ソ連時代の「犯罪」を「正当化」し、ウクライナを含む旧ソ連邦諸国を、再び自らの影響下に置こうとしている。

以下にこの記事の【私の論評】から一部を引用します。

ウイグルや香港など、中国共産党からみれば彼らの私有物なのです。助ける方法などありません。むしろ今の中国は他人の持ち物を奪おうとしているのです。

欧米と中露の根本的な違いは何でしょうか。「人を殺してはならない」との価値観が通じる国と通じない国です。日本は明らかに「人を殺してはならない」との価値観の国々と生きるしかありません。そうして、同盟の最低条件は「自分の身を自分で守る力があること」です。

国際社会では軍事力がなければ何も言えないのです。ようやく「防衛費GDP2%」が話題になりましたが、それで間に合うのでしょうか。 いきなり核武装しろとまでは言いませんが、国際社会での発言力は軍事力に比例します。金を出さなければ何もできないです。

 欧米でも、西欧人に対しては「人を殺してはならない」という価値観をはやくから持っていましたが、西欧人以外は事実上の適応除外的な扱いをし、植民地においては苛烈な圧政を強いるようなことを平気でしていました。

国際会議において人種差別撤廃を明確に主張した国は日本が世界で最初です。第一次世界大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会において、日本が主張した、「国際連盟規約」中に人種差別の撤廃を明記するべきという提案をしました。

ところが、この提案に当時のアメリカ合衆国大統領だったウッドロウ・ウィルソンは反対で事が重要なだけに全員一致で無ければ可決されないと言って否決しました。

その後第二次世界大戦を経て、戦後に多くの国々が独立して、今日では人種差別撤廃は民主主義国においては当然のこととされています。

しかしこれを未だに軽んじているのが、ソ連の承継国ともいえる現在のロシアです。その残虐性は今もウクライナで発揮されています。ロシアのミサイルは、民間人施設を徹底的に叩き、多くの町を廃墟にしています。戦闘以外での殺人、略奪、強姦などが行われていたことが、報道さています。

それは、ウクライナ人に対してだけではなく、自国民である予備役に対しても遺憾なく発揮されています。

イギリス国防省は5日、ウクライナ侵攻を続けるロシアの予備役が、弾薬不足のために「シャベル」を使って「接近戦」を行っている可能性が高いとの見方を示しています。督戦隊まがいのようなことをしているという報道もあります。

中国は、ウイグル、チベット、内モンゴル自治区などで、苛烈な圧政をしています。

中露北等はいまでも、「必要とあらば人を殺しても構わない」という価値観を有している国です、このような国と我が国のような「人を殺してはならない」という価値観の国とは理解し合えるはずもありません。日本は同じ価値観の国々と生きるしかないのです。

にもかかわらず、日本が中国に無条件降伏してしまえば、中国は日本の優れた技術力を我がものにして、それで様々な軍事品から民生品まで、日本人に安い賃金で製造させ自国内に輸入したり、海外に輸出したりで自国を豊にするとともに、日本を米国に対する防波堤にすることは確実です。それどころか、日本を米国に対峙するための前進基地するでしょう。

米国からみれば日本は、中国を制裁すべき国なのにそれどころか、中国に無条件降伏してしまえば、積極的に中国を助けることになります。これは、米国に対する著しい裏切りであり、敵対行為であり、国際法違反でもあります。それだけで厳しい制裁対象になります。それどころか、世界から爪弾きされます。

そんなことは最初から分かりきっていますから、そもそも、米国が日本から引きあげるということになれば、将来に敵なる日本、しかも強敵になりそうな日本をそのまま中国に引き渡すはずもなく、軍事施設、艦船、航空機、武器などは破壊できるだけ破壊しつくし、日本の原発、火力発電所などの大部分を破壊し、鉄道、空港、港湾主要インフラも破壊するでしょう。

物理的には破壊しないかもしれませんが、ハッキング等で、破壊して使えないようにすることは十分にあり得ます。

さらに、当然のことながら、金融システムなども破壊するでしょう。無論米国資産は、できるだけ、持ち帰るでしょう。知的財産なども破壊するでしょう。それどころか、優秀な技術者その他米国に大きく寄与するような有能な人たちは、米国に引き抜かれることになるでしょう。

しかし、怒りを顕にした米国は、日本の皇族等を受け入れないかもしれません。他の国に受け入れてもらい、細々と日本文化が継承されることになるかもしれません。

これは、いわゆる焦土作戦というものです。これは、戦争等において、防御側が、攻撃側に奪われる地域の利用価値のある建物・施設や食料を焼き払い、その地の生活に不可欠なインフラストラクチャーの利用価値をなくして攻撃側に利便性を残さない、つまり自国領土に侵攻する敵軍に食料・燃料の補給・休養等の現地調達を不可能とする戦術及び戦略の一種です。

米国はアフガニスタンからの撤退は失敗していますが、それでも現状のアフガンは国外からの支援は枯渇し、物価は急騰。現地通貨の価値は暴落し、アフガンが持つ94億ドルの準備金も米国に凍結されて引き出せません。そのため、タリバンは経済では八方塞がりになっています。日本が対中「先制降伏」となれば、米国にとっては、アフガン失うどころではなく、大きな損失であり、しかも事前にそれは余地できるでしょうから、当然焦土作戦をできるだけ実施することになるでしょう。

本当に米軍が立ち去ることになれば、焦土作戦はかなり大規模なものになることが予想されます。無論、民間人や自衛隊員等を積極的に殺すことはしないでしょうが、この焦土作戦に反対するものは、殺傷される可能性もあり得るでしょう。そのようなことになっても、日本は米国を裏切り、国際法違反をしているのですから、米国側にためらいはないでしょう。特に、米国民の多くも、これに積極的に反対する人は少ないでしょう。

さらに、日本の弱点を知り抜いた米国は、通商破壊まではしないでしょうが、あらゆる方法で通商妨害を行い、日本は、エネルギーや食糧などを海外から輸入する道を絶たれるかもしれません。中国から多くを輸入するようになり、日本人は中国なしでは、生活できなくなるでしょう。

米軍の焦土作戦でめぼしいもの何もなくなった日本に進駐してきた中国は、日本から富を得るどころか、多数の日本人を当面養わざるを得ないことになり、何もない日本に怒りを顕にして、日本人をウイグル人やチベット人らと同じように強制労働させることになるでしょう。

挙げ句の果に、中国は「計画的、組織的、統一的な政策」として「長期的に日本人の人口削減」を実行し、日本人を地上から消そうとするかもしれません。そうして、日本を中国の領土の一部にして、多くの中国人が日本に移住することになるでしょう。

「先制降伏」すれば、日本にはこのような悲惨な未来が訪れるのです。ウクライナも日本と異なる形であるものの悲惨な未来が待っていることが予想できたからこそ、ロシアに対して徹底抗戦しているのです。平和ボケ日本人は目を覚ますべきです。

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