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2020年7月22日水曜日

日米豪、合同軍事演習で中国威圧! 尖閣侵入「100日連続」…識者「日本は実効支配の強化へ公務員常駐を」— 【私の論評】日本は尖閣を守備できるし、奪取されても十分取り返せる能力がある!(◎_◎;)

日米豪、合同軍事演習で中国威圧! 尖閣侵入「100日連続」…識者「日本は実効支配の強化へ公務員常駐を」

   西太平洋上で日米豪の共同訓練に臨む海自護衛艦「てるづき」(右から2番目)
   や米空母「ロナルド・レーガン」(中央)など
    中国の暴挙が止まらない。沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で22日、中国海警局の武装公船などが確認された。これで、「100日連続」となった。世界全体で「死者60万人超」という新型コロナウイルスを世界的大流行(パンデミック)を引き起こしながら、軍事的覇権拡大を進める中国を牽制(けんせい)するため、海上自衛隊と米海軍、オーストラリア海軍は、西太平洋と南シナ海で共同訓練を実施した。

 海上保安庁第11管区海上保安本部(那覇)は22日朝、尖閣周辺の接続水域で中国公船4隻を確認した。うち1隻は機関砲のようなものを搭載しているという。海保の巡視船が領海に近づかないよう警告した。

 これで中国公船が確認されるのは、2012年9月の国有化以降、最長日数で「100日連続」となった。

 中国が侵入させているのは、日本の海保に相当する海警局の船舶だが、6月の人民武装警察法改正で、中国海軍と海警局が合同訓練や共同作戦を行うことが可能になった。外務省は17日、「軍の一部になっている」と、自民党の会合で報告した。

 こうしたなか、海上自衛隊トップの山村浩海上幕僚長は21日の記者会見で、西太平洋と南シナ海で、日米豪3カ国の共同訓練を19日から23日まで実施していると発表した。

 海自の護衛艦「てるづき」や、米海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」、オーストラリア海軍の強襲揚陸艦「キャンベラ」などが参加。敵の潜水艦、水上艦艇、航空機への対処を想定した戦術訓練を行っている。一帯の海域では、中国が覇権拡大をもくろんでおり、日米豪で対峙する構えだ。

 日本は今後、尖閣の「実効支配の強化」をどうすべきか。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「コロナ禍のなか、中国による海洋進出は目に余る状況だ。日米豪の共同訓練は、中国へのプレッシャーだろうが、尖閣周辺での『100日連続』の航行という実績をつくらせてしまえば、十分とはいえない。このまま、中国公船が居座るのは最悪の事態だ。自民党がかつて掲げた『尖閣諸島への公務員常駐』を検討すべきだ」と語っている。

【私の論評】日本は尖閣を守備できるし、奪取されても十分取り返せる能力がある!(◎_◎;)



最近の尖閣諸島周辺領海への中国艦艇侵入に関するポイントを二つ挙げます。

(1)中国海警局の船が日本の領海に勝手に入ってくることは問題ないのか。
(2)日本の領海内で中国海警局船が日本の漁船を追跡することは問題ないのか。

まず(1)については、少なくとも「領海に入ってきてそのまま通り過ぎるだけ」であれば国際法上、何の問題もありません。

海洋に関するさまざまな権利義務などについて定めた「UNCLOS」(国連海洋法条約)に規定されているように、船舶には一定の要件のもとに他国の領海を通航できる「無害通航権」が認められています。UNCLOSでは、無害通航を「それが通航にあたるか(第18条)」と、「それが沿岸国(この場合は日本)にとって無害であるか(第19条)」というふたつの要件に分け、両者に合致するものが無害通航となります。

このとき「通航」は、継続的かつ迅速に行わなければならず、他国の領海内で停船したり錨を降ろしたりすれば、それがやむを得ない場合を除き通航とは見なされません(第18条2項)。そして、たとえ通航にあたるとしても、それが沿岸国の平和、秩序又は安全を害するような場合(第19条1項)、具体的には軍事演習や情報収集の実施、航空機の発着艦や漁獲といった活動を実施した場合には、それは無害な通航とは見なされません(第19条2項)。

それでは最近、中国海警局の船が日本の領海に頻繁に侵入していることは、前述の要件に照らしてどう判断されるのでしょうか。
まず、報道によれば海警局の船は数時間にわたって日本領海内にとどまっていることも往々にしてあります。これは、UNCLOSの第18条2項にいう「継続的かつ迅速」な通航という規定に抵触する、いわゆる「徘徊」や「巡航」と解釈することもでき、そうであればこの時点で海警局の船は、そもそも通航を行っていないことになります。

また、そもそも海警局の船が尖閣諸島沖の日本領海内に侵入してくる目的が、日本の尖閣諸島における実効支配に挑戦するためということを考えると、これはUNCLOSの第19条1項における「沿岸国の平和、秩序又は安全」を害する行為にあたり、たとえそれが通航にあたるとしても無害性を有さず、やはり無害通航にはあたらない可能性が極めて高いです。

こうした中国海警局の行動に対して、尖閣諸島の警備に従事している海上保安庁はどのように対応できるのでしょうか。

先ほど確認したUNCLOSの25条には「沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる」と規定されています。これは沿岸国の保護権というもので、海警局の船が無害通航を行っているとは考えられない場合には、海上保安庁はこの保護権の行使を認められ、かつ相手の行動と釣り合いがとれる範囲内で、海上保安庁法第18条2項などによる措置をとることになります。

たとえば、海警局の船に対して日本の領海外への退去を要請したり、あるいは針路を変更するための接近をしたり、さらに日本漁船を保護するために海警局の船と漁船とのあいだに割り込んだりといった措置をとることができます。また、もし海警局の船が海上保安庁の船に対して放水や進路妨害を行ってきた場合には、海上保安庁側も同様の措置を実施することが可能です。

他方で、武器を使用して追い出すべきだという主張も時折、見られますが、そのような強硬な措置をとることは中国側の活動と比較した場合の均衡性を欠いてしまうほか、かえって事態のエスカレーションを招き、問題をさらに複雑なものとしてしまうため、適法かつ妥当な方法とはいえません。

現在、中国は尖閣諸島における日本の実効支配を弱めるために海警局の船を活動させています。こうした中国の考えをくじくためにも、海上保安庁が行っているような継続的かつ実効的な活動が必要不可欠であるということがいえます。
ただし、明らかに中国軍や民兵が尖閣諸島に上陸しようとし、日本がそれを察知した場合は、そうではありません。無論攻撃はできます。これは、国際法上何の問題にもなりません。
これについては、週刊新潮が、以下のように記事を書いています。
尖閣周辺で中国船が挑発行為、海上民兵による上陸作戦なら海自は手出しできず
この記事から一部を引用します。
  仮に、中国軍が尖閣諸島の占領に成功した場合、自衛隊は奪還作戦を実施することになる。しかし、防衛省が島嶼奪還作戦の目玉として導入したLCAC(エア・クッション艇)とAAV7(水陸両用強襲輸送車)は、尖閣諸島のような岩場で囲まれた島嶼への作戦には使用できない。この点は、中国軍が尖閣諸島へ上陸する際の問題点と全く同じである。 
 ゴムボート等の小型船、あるいはヘリコプターを用いての上陸となるわけだが、海岸近くの海中には機雷が敷設され、海岸は地雷原となっている可能性がある。また、ヘリコプターによる降下を試みた場合、携帯式の地対空ミサイルで攻撃される可能性がある。機関銃や対戦車ロケット等による攻撃に晒され、組織的に上陸すら出来ないまま撤収することになる可能性も高い。 
 このように、占領することよりも、奪還することのほうが大きな困難を伴う。 
 となれば、少人数の特殊部隊を夜間に上陸させ、ゲリラ戦を展開して中国軍を掃討するしかない。
この記事を読んでいると、まるで大東亜戦争の頃から一歩も進んでいないような内容なので、がっかりします。

日本は、大東亜戦争中には、世界で一番優れた潜水艦を持っていましたが、潜水艦をうまく使いこなせていませんでした。ご存知のようにドイツはUボートを第一世界大戦中も第二次世界大戦中も有効に使い、実際かなり成果を上げてました。

米国もかなり有効に潜水艦を使い、大東亜戦争中には、東京湾の中に侵入し、様々な情報を得ていたといわれてます。

対する日本は、あまりうまく活用されていなかったというのが実情でした。

尖閣では、日本はこの過ちを反省して、潜水艦を有効に使うべきでしょう。まずは、常時から尖閣付近を潜航して、情報を集め、危機的な状況になれば、尖閣付近に複数隻の潜水艦を配置し、軽快にあたらせ。

中国が、航空機や船舶によって、軍隊や民兵を運んで、尖閣に近づいた時に撃沈すれば良いのです。このブログにも以前から掲載させて頂いているように、日本の潜水艦は、中国の対潜哨戒能力では、発見できません。

最新鋭の「そうりゅう型」潜水艦は、兵装としては、艦首上部に6門のHU-606 533mm魚雷発射管を装備している。89式魚雷及び、UGM-84 ハープーン 対艦ミサイルを搭載しています。また8番艦(SS-508)以降には新たに潜水艦魚雷防御システム(Torpedo Counter Measures :TCM)が装備されています。

昨年進水した「そうりゅう型潜水艦」12番鑑「とうりゅう」

中国側が艦艇で軍隊や民兵を送り込んでくれば、潜水艦で撃沈して仕舞えば、尖閣上陸は不可能です。仮に、上陸したとして、やはり潜水艦を複数配置して、補給路を絶てば、尖閣の中国軍や民兵は戦闘能力を失います。全員餓死です。

中国がヘリコプターなのどの航空機により軍隊や民兵を送り込んできた場合には、空自や海自のイージス艦でこれを撃墜すれば良いです。これも、もし上陸されてしまった場合、やはり潜水艦を複数配置し、補給路を断てば良いのです。

さらに、日本の掃海能力は世界一ですから、中国が尖閣諸島付近に、機雷を設置したとしても、すぐに解除できます。その後、日本が尖閣付近に機雷を撒けば、中国の乏しい掃海能力では、これを除去できず、事実上尖閣諸島を封鎖し、中国軍や民兵を、飢死させることができます。これが、機雷によりやりやすくなります。これは、無論日本が掃海したいと思えば、すぐにできます。

中国は、このようなことを想定しているため、本当はずっと前に、中国海軍のロードマップにある通り、尖閣諸島を含む第一列島線を確保したかったのでしょうが、結局いまだにできていません。ロードマップでは本当は、今年中に第二列島線まで確保することになっているのですが、それは絵に描いた餅にすぎません。
日本としては、中国側が上陸の気配を見せれば、このような対応して、中国がここまではしないというか、できない場合の対処としては現在海上保安庁が実施してる方式の他に、尖閣諸島への公務員常駐などを実施すべきです。
【関連記事】

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2020年7月16日木曜日

米国が一線越えの果たし状、風雲急を告げる南シナ海— 【私の論評】尖閣諸島すら自ら守れないようでは、日本は中共なき後の新世界秩序づくり参加できなくなる!(◎_◎;)

米国が一線越えの果たし状、風雲急を告げる南シナ海

中国の領有権主張に、ついに堪忍袋の緒が切れた米国

         マイク・ポンペオ米国務長官。2020年7月13日、中国の南シナ海
         領有権主張に対する米国の立場を公式文書で表明した
(北村 淳:軍事社会学者)

 アメリカ政府は、これまで永年にわたってアメリカ外交の伝統の1つとしてきた鉄則からついに一歩を踏み出した。南シナ海での中国の領域主張を否定するだけでなく、中国と領域紛争中の諸国側を支持する立場を明確に表明したのである。

アメリカ外交の鉄則とは

 アメリカは第三国間の領域紛争には中立的立場を貫くことを外交の鉄則としてきた。

 様々な手段を用いて、“味方をする”側を実質的に支援することも少なくなかった。しかしながら、そのような場合でも表面上は中立を保っていた。すなわち、アメリカ政府として領域紛争当事者の一方の主張を公式に否定し、他方の主張を支持するという、外交的立場を明確にすることは断固として避け続けてきたのである。

その鉄則は、南シナ海全域で中国が強大な海洋戦力を振りかざして近隣諸国を威嚇し、南シナ海全域に対する中国の軍事的支配を確立しつつある状況に対しても適用されてきた。アメリカ政府はこれまで懸念を表明し続けてはいるものの、中国政府の主張を完全に否定して、中国と紛争中のフィリピン、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、インドネシア、台湾などの主張を明確に支持するという立場を明確かつ公式に表明することは避けていた。

 中国に対して融和的であったオバマ政権はもちろんのこと、トランプ政権といえども、これまでは南シナ海領域紛争に関する明確な立場を表明してはこなかった。

外交の鉄則に制約されてきたFONOP

 ただし、アメリカがまったく無策でいたわけでない。中国が南沙諸島に人工島まで建設し始めると、オバマ政権は中国に対して懸念を表明した。そして、南シナ海に軍艦を派遣して公海自由航行維持のための作戦(FONOP)を実施し、アメリカの威信を示して同盟国や友好国の信頼をつなぎ止めておこうとした。

 だが、オバマ大統領はFONOP(南シナ海での、以下同じ)にそれほど積極的ではなく、オバマ政権下でのFONOPは数カ月に一度のペースで極めて散発的に行われたにすぎなかった。

 トランプ大統領も就任直後は習近平主席との関係が悪くなかったため、FONOP実施のペースは若干上がった程度に留まっていた。しかし、米中関係がギクシャクし始めると、昨年(2019年)初頭あたりからのFONOPのペースは目に見えて上がってきている。

 FONOP実施の真意は、中国が南シナ海の大部分を中国の主権的海域であると主張している状況に対する牽制にある。とはいえアメリカは、第三国間の領域紛争には中立的立場を貫くという鉄則から逸脱することはできない。そこで、あくまでFONOPは「南沙諸島や西沙諸島などの周辺海域で領域紛争中諸国の双方の主張は、公海における自由航行を妨げる恐れがあるので、双方ともに必要以上の主張をせず、トラブルを生ぜしめないよう」という警告を発するための軍艦派遣である、という名目で実施されてきた。

 つまり、軍艦を派遣しても、中国に対して露骨に軍事的威圧を加えるような行動は極力とらない。たとえば中国が中国領と主張している人工島などの沿海域を通航するときは、国際法上認められている無害通航原則に従って、直線的針路を可及的速やかに通過する。途中停船させたり、射撃レーダー波を発したり、艦載機(ヘリコプターやドローン)を飛ばしたり、といった軍事的行動は封じ込めてきた。

 その結果、FONOPの米駆逐艦が、中国が中国領と主張している島嶼環礁に接近してくると、中国軍艦が接近してきて追尾を開始し、米軍艦がそれらの島嶼環礁から遠ざかるまで並走するという場面が繰り返された。

 そして中国当局はその都度、「中国の主権を踏みにじり、中国の主権的海域に侵入して軍事的威嚇を加えてきたアメリカ軍艦を、中国海軍が駆逐した」といった声明を発していた(中国は国内法で、あらゆる外国船舶艦艇は中国領海に接近通過するときは中国当局に対して事前に通告しなければならない、と規定している)。

 このようにしてFONOPは、形骸化した行事のようなものになってしまっていた。

新たな局面を迎える南シナ海

 オバマ政権が渋々FONOP実施を認めた当初から、米海軍や米海兵隊などの間には、「何らの軍事的威嚇にならない無害通航原則に従うだけのFONOPでは、中国の人工島建設をはじめとする南シナ海の軍事化を牽制する効果は全く期待できない」「アメリカは、領有権紛争で劣勢に立っている同盟国や友好国を明確に支持する立場を表明しなければならない」と主張する対中強硬論が存在していた。

 7月13日、それらの強硬論がようやく日の目を見ることになった。

 マイク・ポンペオ国務長官が、「南シナ海における中国による全ての主権的主張は国際法上認められるものではなく完全に違法である」「アメリカ政府はフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイの排他的経済水域や島嶼に関する領有権の主張などを支持する」との立場を明記した公式声明を発したのである(「U.S. Position on Maritime Claims in the South China Sea」)。

 アメリカ外交当局は、これまでの外交鉄則を大きく変針した。これにより、FONOPも含めてアメリカ海軍や空軍による南シナ海での対中軍事牽制行動も新たな局面を迎えることになるのは確実である。

次は尖閣問題について立場を表明か

 トランプ政権がさらに対中強硬姿勢を強めるであろう次のステップは東シナ海だ。これまで永年にわたってアメリカ政府は尖閣諸島の領有権紛争に関しても中立的立場を貫いてきた。

 日本政府高官は、米側高官たちが「尖閣諸島に対して日本が施政権を行使していると認識している」と表明すると、あたかも日本の主張を支持しているかのように手前勝手に解釈して胸をなで下ろす。しかし、アメリカ政府は「日本が尖閣諸島の領有権を保持している」あるいは「中国による尖閣諸島の領有権の主張は認められない」といった領有権に関する公的コメントを発することを避け続けてきている。

 だが、数年前から米軍関係者などの間では、アメリカ政府として公的に「尖閣諸島の領有権は日本にある」といった明確な立場を表明すべきであり、そうしなければ南シナ海のように東シナ海での中国の軍事的優勢が確立してしまう、と警告を発する者も少なくない。

 トランプ政権がそのような主張に従い、尖閣諸島をめぐる領有権紛争に関して「中国の領有権主張は、アメリカ政府としては認められない」という立場を示すならば(ただし台湾も領有権を主張しているため、そう単純にはいかないのだが)、極めて強力な対中強硬姿勢を明示することになる。

 もちろん我々としては、尖閣諸島に対する日本の領有権を確保するのはアメリカではなく日本自身であることを忘れてはならない。

【私の論評】尖閣諸島すら自ら守れないようでは、日本は中共なき後の新世界秩序づくり参加できなくなる!(◎_◎;)

このブログにもよく登場する米国の戦略家ルトワック氏は、2018年12月28日の産経新聞のインタビューに応えて、以下のような発言をしています。

エドワード・ルトワック氏
 ルトワック氏は現在の中国との「冷戦」の本質は、本来は「ランドパワー(陸上勢力)」である中国が「シーパワー(海洋勢力)」としても影響力の拡大を図ったことで米国や周辺諸国と衝突する「地政学上の争い」に加え、経済・貿易などをめぐる「地経学」、そして先端技術をめぐる争いだと指摘した。 
 特に先端技術分野では、中国はこれまで米欧などの先端技術をスパイ行為によって「好き勝手に盗んできた」とした上で、トランプ政権が今年10月に米航空産業へのスパイ行為に関与した疑いのある中国情報部員をベルギー当局の協力で逮捕し米国内で起訴するなど、この分野で「米中全面戦争の火ぶたを切った」と強調した。 
 一方、中国が南シナ海の軍事拠点化を進めている問題に関しては、トランプ政権が積極的に推進する「航行の自由」作戦で「中国による主権の主張は全面否定された。中国は面目をつぶされた」と強調。中国の軍事拠点については「無防備な前哨基地にすぎず、軍事衝突になれば5分で吹き飛ばせる。象徴的価値しかない」と指摘した。



であれは、米国としては今後もFONOPを実施するにしても、実際に南シナ海の中国軍の基地を叩くまでのことはしないと考えられます。

ただし、一つ懸念があります。それは、中国が南シナ海を中国の原潜の聖域とすることです。

中国が南シナ海で従来から、外国の軍事活動を許さないとの強硬姿勢を取っているのは、領土問題もあるでしょうが、本当の理由は、南シナ海を中国の戦略原潜の基地に接続する原潜の展開水域として確保したいから、ということは以前もこのブログでも述べています

どういうことかといえば、南シナ海は海南島の三亜を基地とする中国の戦略原潜の展開水域なのですが、中国は、対潜水艦兵器や海洋調査船を展開している米国と、インド・太平洋地域の米国の同盟国網によって、第一列島線の中に閉じこまれかねないと感じているのです。



そうして紛争の際には、戦略原潜が第一列島線の外に出る前に、米海軍に発見され、無力化されてしまうのではないかと懸念しているのです。

中国が南シナ海で外国の軍事活動にますます不寛容になっているのは、この懸念のためでしょう。

中国は南シナ海での外国の軍事活動に対して、公には領土問題の観点から抗議していますが、中国の為政者たちは内々には戦略原潜が基本であり、いかに将来の原潜による抑止を守るかが重要な関心事である、従来から述べています。

冷戦中、ソ連の戦略原潜は遠隔のバレンツ海やオホーツク海を基地としていましたが、中国が原潜の基地として選んだのは世界で最も重要なシーレーンの真っ只中に位置しています。

中国の原潜は新型の「晋」級戦略原潜に、射程距離4600マイルの弾道ミサイルを搭載するものと見られ、この原潜は現在海南島を基地としていると見られています。ただし、中国の原潜は未だ、ステルス制に劣り、先日も日本の海自に、日本近海での行動を暴露されてしまいました。

中国の南シナ海における強硬姿勢が、単なる領土主権の主張に留まらず、戦略原潜展開の必要性に基づくものであるとの見解は、第一列島線、第二列島線の概念を中心とする中国の海洋戦略、そして戦略ミサイル搭載原潜という大きな抑止力を持つ対米核抑止戦略に照らせば、当然のものでしょう。

このような見解は、私をはじめ日本でも述べられてきています。中国は南シナ海を、かつてソ連が冷戦中に対米核戦略の拠点としたオホーツク海のようにしようとしている、あるいは南シナ海を、中国の戦略原潜のための「聖域」としようとしている、といった見解です。

今のところ、中国の南シナ海の軍事基地のいずれかを、中国原潜の基地にしようという動きは見られません。しかし、そのような動きが見られた場合は、米国は躊躇わず、原潜基地を5分で吹き飛ばす可能性は十分にあります。

さて、一方尖閣諸島についてはどうでしょうか。米国では超党派の米上院議員グループが5月23日、南シナ海と東シナ海における中国政府の活動に関与した中国人や団体に対して、米国政府が制裁を科せるようにする法案を改めて提出しました。

共和党のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)とトム・コットン上院議員(アーカンソー州)、および民主党のベン・カーディン上院議員(メリーランド州)が提出した「南シナ海・東シナ海制裁法案」は、中国に圧力をかけ、中国が領有権を主張する中国沖の海域の実効支配をやめさせることを目的としていると、香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は伝えています。

この「南シナ海・東シナ海制裁法案」は未だ審議中ですが、いずれ成立するするのは間違いないです。だからこそ、7月13日、マイク・ポンペオ国務長官は、「南シナ海における中国による全ての主権的主張は国際法上認められるものではなく完全に違法である」「アメリカ政府はフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイの排他的経済水域や島嶼に関する領有権の主張などを支持する」との立場を明記した公式声明を発したのでしょう。

東シナ海の尖閣諸島については、上にもあるように、中国だけではなく、台湾も領有権を主張しているため、日本と台湾などと調整しなければならず、13日のポンペオ長官の公式声明には、盛り込まれなかったのでしょう。

ただし、尖閣諸島については、台湾の領有権は正統性に乏しく、しかも蔡英文政権が主張し始めたものではなく、国民党政権時代から主張されたものです。

これは、米国の後押しなどで、台湾と日本の間で漁業権問題などが平和的に解消できれば、十分に解決できるものと考えられます。

となると、いずれポンペオ長官は、「東シナ海における中国による尖閣諸島の主権的主張は国際法上認められるものではなく完全に違法である」「米国政府は日本の排他的経済水域や尖閣諸島に関する領有権の主張などを支持する」と声明を発表することになるでしょう。


ただし、尖閣諸島は日本の領土であるため、その防衛は日本が担うべき筋のものです。現状を打破するためには、まずは日本が独力で、尖閣周辺に海自の艦艇などを派遣して、中国の艦艇などを排除すべきです。

このような行動は、以前だとある程度の危険がありましたが、米国が日本の尖閣諸島領有をはっきり認めた後には、かなり実施しやすくなります。

私としては、これを実施するのは当然と思います。流石に、日本国内の勢力を排除するというのですから、これは現行の憲法の範囲でも十分にできそうです。

少なくとも米国はそう思うでしょう。それに関しては、このブログでも従来から述べているように、現状の自衛隊の能力でも、それは十分にできます。

ただし、現行法では、難しい点もあります。まずは、現行法を、平時の自衛権を発動できるような法律に変えていくべきです。この努力をすぐに始めなければ、米国から日本は自衛するつもりがあるのか、米国から疑われてしまうことでしょう。

以前からこのブログで述べているように、現在は自由主義陣営と、中国の全体主義との戦いの真っ最中であり、日本もこれに向けて、自由主義陣営に貢献しなければ、中共敗戦の後の、新世界秩序作りに日本は参加できなくなるかもしれません。

日本は、新たな理念を提唱できる可能性が大です。しかし、尖閣諸島すら自ら守れないようでは、その機会は訪れないかもしれません。

それどころか、日本は戦後レジームから逃れられなかったように、新世界秩序の中でも、一人前に扱われず、半人前の地位に甘んずることになりかねません。

それだけは、避けたいものです。

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2020年7月14日火曜日

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高橋洋一 日本の解き方

習近平国家主席
自民党は中国による「香港国家安全維持法(国安法)」に対する非難決議を了承した。習近平国家主席の国賓来日に関し、「党外交部会・外交調査会として中止を要請せざるを得ない」としている。沖縄県の尖閣諸島にも連日中国船が接近するなかで、日本の国益を守るためには、対中外交でどのようなスタンスが得策なのか。

 最近の中国は、周辺国と数々のトラブルを抱えている。英エコノミスト誌に掲載された風刺漫画で、ドラゴンに見立てられた中国が、右手でインド、右足で南シナ海諸国、左足で台湾とそれぞれ押し合い、尻尾は香港の自由を奪っている様子が描かれている。今のところ、左手は地面をつかんでいるが、筆者には日本の尖閣を伺っているように思えた。

 先日の本コラムで、国安法のことを書いたが、香港での国際公約である50年間の「一国二制度」を破ったことにとどまらず、同法の域外適用は異常である。域外適用とは、逆にいえば他国の国家主権を無視することであり、全世界を支配下にするという宣言のように筆者には見える。また、それは世界は中国のものという「中華思想」そのものだ。

 当然、隣国である日本も警戒すべきだ。尖閣での日本の主権侵害も放置できない。国安法を前提とすれば、わが国固有の領土である尖閣諸島で領有権を主張することは、世界のどこで言っても同法違反になってしまう。

 仮に、習主席を日本に招いて、安倍晋三首相が同氏に尖閣諸島の領有権を主張しても、同じく安倍首相は同法違反となりかねない。安倍首相が日本にいれば、中国と日本との間には犯罪人引き渡し条約はないので問題ないが、例えばフランスのように中国との同条約締結国に安倍首相が行ったとき、中国は国安法違反を理由として中国への引き渡しを求める可能性すらあるのだ。

 もう西側民主国家の常識では想像できないくらい、中国は帝国主義的国家になっている。国安法について、ポンペオ米国務長官は、自由のない言論統制を「全体主義的」と批判したが、世界制覇をもくろむ拡張覇権主義といってもいい。

 当然日本は各国の主権を尊重し、自国主権を守る立場なので、帝国主義の拡張覇権国家と付き合うのには限界がある。中国が国安法の自由抑圧・拡張覇権主義を取り下げないと、まともに対中外交はできないと言ったほうがいい。

 もちろん習主席の国賓としての訪日などありえず、今の中国とは一線を画したほうがいいのは明らかだ。でないと、西側民主主義国に間違ったメッセージを送ってしまう。

 その上で、日本の取るべき外交は、中国の周辺国で困っている国と連携して、中国の拡張覇権主義をどのように食いとどめるかだ。さらに、民主主義の欧米諸国とも共通の価値観を確認しつつ、安全保障と経済の連携を図り、その他の国へ民主主義を広めることも重要になる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】世界の中国の全体主義との戦いの終わりに、日本は新世界秩序の理念を提唱せよ!(◎_◎;)

日本の取るべき外交は、良くも悪くも米国の外交にかなり影響されます。日本は、まずは米国の姿勢を理解しておくべきです。

貿易戦争で始まった米中対立は、ハイテク覇権、香港問題、ウイグル人弾圧問題など、中国共産党の基本路線と真っ向からぶつかる展開となっています。米国としてもハイテク覇権の維持、民族自決、宗教の自由といった、国家の基本理念に関わる問題だけに、米中の歩み寄りは難しいです。

中国共産党旗の前で記念撮影する中国の人々
私は、米中対立における米国の究極の目的は中国共産党の壊滅にあるのではないかとみています。1983年にアメリカのレーガン大統領は「スターウォーズ計画」を発表し、当時のソ連に宇宙軍拡競争を仕掛け、ソ連の国力の消耗を狙いました。

その結果8年後の91年、ソ連は崩壊しました。宇宙軍拡競争をソ連に仕掛けた段階で、米国はソ連共産党の壊滅を目的としていたと考えられます。米国は日本に対しても、日露戦争終結直後から日本攻略を目的とした「オレンジ計画」という長期戦略を策定し、40年後にはこれが実現することになりました。

米国は自らの世界覇権を守るためには、長期で慎重な戦略を策定し、これを挙国一致で実行に移す能力のある国であることを忘れるべきではありません。

日本としては米中対立の中で、「和を以って尊しとなす」という聖徳太子以来の和の精神を基に、日本独自の共存共栄の世界観を世界に示し、対立を回避したいところですが、特に「国安法」の施行の後からは、もうこの争いは単なる覇権争いではなく、日本をも直接脅かす中国の全体主義的価値観と米国の自由・平等・人権などの西欧的価値観の戦いになってきました。

西欧的価値観は、長期間にわたって醸成され、今日に至っています。その中の一つにウェストファリア体制というものがあります。

ミュンスター条約(ウェストファリア条約)締結の図
ウエストファリァ体制とは、1648年のウェストファリア会議で成立した世界最初の近代的な国際条約とされている、三十年戦争の講和条約による体制です。66か国がこの条約に署名し、署名までに4年の歳月を費やしています。

この体制によって、プロテスタントとローマ・カトリック教会が世俗的には対等の立場となり、カルヴァン派が公認され、政治的にはローマ・カトリック教会によって権威付けられた神聖ローマ帝国の各領邦に主権が認められたことで、中世以来の超領域的な存在としての神聖ローマ帝国の影響力は薄れたました。

スイス、オランダの正式な帝国離脱が認められ、フランスはアルザス地方を獲得しました。

現代の世界を見渡せば「ウェストファリア体制」がどれぐらい残っているでしょうか。

主権国家の並立体制は、建前上は残っています。その意味でいえば、世界はいまだに「ウェストファリア体制」と言えます。

「ウェストファリア体制」とは、煎じ詰めると以下の3点です。
一 心の中では何を考えてもよい
二 人を殺してはならない
三 お互いの存在を認めあおう
という三要素です。そして、これらは最も確立された国際法であり、法則なので否定のしようがありません。

しかし、現実はどうでしょうか。

この三要素が当然だという価値観を持った国はどれぐらいあるのでしょうか。日米、そのた西欧先進国は、全てこの価値観を持っている言って良いでしょう。

ところが中国もロシアも、そうして無論北朝鮮もこのような価値観は持っていません。習近平、プーチン、金正恩共通しているのは、自分が殺されなければ、やっていいと考えるところです。むしろ、すでにバンバンやっています。

どっちつかずなのが韓国です。無論、韓国では中国やロシアのように人を殺すことはありませんが、それにしても、歴代の元大統領の多くは、無残な死に方をしています。

日本としては、明治以来西欧的価値観を受け入れ、全体主義的に陥ったこともなく(大東亜戦争中の日本の体制をナチズムと似たような全体主義というのは歴史を真摯に学んだことのないものの妄想です)、どちらかといえば、米国の方に与し易いのは事実です。

日本は米国の意図を汲み、強い方に従う劣位戦の発想ではなく、あくまで中国共産党の全体主義との戦いに挑み、日本人独自の世界観と歴史観に基づいた平和への道を世界に提示すべきです。

西欧諸国等の中国の全体主義との戦いは、中国共産党の崩壊によっていずれ終焉します。その後の世界は、日米やその他の戦勝国によって決められることでしょう。そうして、その時も結局「ウェストファリャ体制」は温存されることになるでしょう。特に上記で示した、三要素は必ず温存され、その上に新たな世界秩序が構築されることになるでしょう。

第二次世界大戦の終焉直前のヤルタ会談などでは、結局その後ソ連や中国、北朝鮮を台頭させ、ソ連時代の東欧の悲劇、アジア地域の不安定を招く結果となりました。日本は、独立国でありながら、そうではないような状況に悩むことになりました。

ヤルタ会談
今後の新世界秩序づくりにおいては、無論日本が積極的に関与し、リードし当面の世界にとって最も良い秩序を構成すべきです。おそらく、米国主導では、他国が反発してまとまらないでしょう。

その時に、日本が米国と他国との橋渡しとなり、まともな新世界秩序を作る架け橋となるべきです。そのようなことは、日本でなければ、なかなかできないことです。なぜなら、日本は自由主義陣営においては、経済力は第二位でありながら、第二次世界大戦後、一度も戦争したり、地域紛争などに介入したことがないからです。

さらに、最近ではTPPや欧州とのEPA協定を結ぶなど、世界に先駆けて大規模な自由貿易協定を結んだという実績もあります。インド太平洋地域では、日本は米国と当該地域の国々との橋渡しをしました。日本の安倍首相による橋渡しがなければ、米国のインド太平洋戦略など成り立たなかったことでしょう。

日本は第一次大戦後のパリ講和会議において、史上初めて国家として人種平等を提唱し、この時は米国の先日もこのブログに掲載したように、非常に問題のあるウィルソン米大統領の独断により廃案とされましたが、第二次世界大戦を経て、人種平等の世界が実現したのです。日本は歴史をリードする理念を提唱できる国家であることを日本人は忘れてはならないです。

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2020年6月30日火曜日

「世界中のリーダーの中で最も…」突出する安倍首相の存在感! 米朝会談のウラで韓国は… 「ボルトン回顧録」を読み解く ―【私の論評】コロナ対策を成功させた人口1億人を超えた唯一の国として日本は、これを世界に向けて大いに発信して行くべき!(◎_◎;)

「世界中のリーダーの中で最も…」突出する安倍首相の存在感! 米朝会談のウラで韓国は… 「ボルトン回顧録」を読み解く 

高橋洋一 日本の解き方

ボルトン前米大統領補佐官

 ボルトン前米大統領補佐官の回顧録が出版された。トランプ大統領の政策が大統領選の再選を目的にしたものばかりで、中国の習近平国家主席にも支援を申し出たと書かれている。

 予約の段階からベストセラーリストで第1位となり、公式出版の前からその内容が話題となっていた。筆者も電子書籍を入手し読んでみた。真偽は分からないが興味深い記述が多い。

 トランプ大統領が「フィンランドがロシアの一部かどうか側近に質問していた」ほか、英国のメイ前首相らとの会話で「英国は核保有国なのかと尋ねた」と記したうえで、「冗談として発言したわけではないのは明らかだった」として、基本的な知識が欠如していると指摘している。これに対して、トランプ大統領は、ボルトン氏を嘘つきだと批判している。

 日本に関係したところでは、2018年6月の初めての米中首脳会談で、実は共同声明のなかに拉致問題を入れることになっていたが、北朝鮮が反対してうまくまとめられなかったとある。この話などはそうだったのかと思ってしまうくだりだ。うまくいくかどうかは交渉なので分からなかったが、トランプ大統領は日本の要望には応えてくれたのかもしれない。

 トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が会うというのは、韓国側が提案をして正恩氏側を説得したと、ボルトン本では書かれている。正恩氏側が熱望したといわれていたが、そうではなく、韓国側の南北統一目標があったからだという。最近の北朝鮮の韓国に対する威嚇を見ると、説得的だ。

 もっとも、韓国側は否定している。

 日本に対しては、米軍の基地負担、駐留費負担を大幅に増やすよう要求したと書かれている。これについて、菅義偉官房長官は記者会見で「そうした事実はない」とした。ボルトン氏は確かに日本側にそう言ったが、日本側が正式提案として受け取っていなかったと見れば、ボルトン本と菅官房長官の会見の平仄(ひょうそく)が合う。

 2021年3月が日米間の協定の期限なので、通常、ボルトン氏の言うような提案は正式ではないだろう。つまり、ボルトン氏が勝手に話したが、正式提案ではないので、日本側は返事をする必要もなく、「聞いていない」とも言えるわけだ。

 本を実際に読んで印象に残ったのは、安倍晋三首相に対する記述の多さだ。ボルトン氏は、トランプ大統領と安倍首相の関係について、「トランプ大統領が世界中のリーダーの中で最も個人的に仲が良かったのは、ゴルフ仲間でもある安倍首相だった」と評価している。

 ちなみに、安倍首相に関する本文中の記述は、130カ所と従来の日本の指導者の中でも突出している。世界の他の指導者をみると、ロシアのプーチン大統領が188カ所、正恩氏が99カ所、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が155カ所とさすがに多いが、習主席が94カ所、ドイツのメルケル首相が38カ所、英国のジョンソン首相は14カ所だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】コロナ対策を成功させた人口1億人を超えた唯一の国として日本は、これを世界に向けて大いに発信して行くべき!(◎_◎;)

上の高橋洋一氏の文書、いつもながら客観的です。特に、一番最後の部分には、ボルトンの書籍に、世界各国の首脳に関する記述が何個あるのかを調査した上で、意見を述べています。

このあたり、さすがです。最近では、コンピュータにより文学を解析することが行われ、例えば源氏物語の中に「あはれ」とか「をかし」が何度出てくるのかをカウントして、同じ著者や他の著書の作品などと比較して、分析するなどのことが行われているそうです。

そうすることによってただ読んでいるだけでは分からないことが、かなり分析できるそうです。むろん 、研究者らは客観的な歴史も調べているでしょう。

高橋洋一もそのような分析をしていることがうかがわれます。その上での、発言ですから、所詮ただ読みましたなどというレベルではないのです。

その上で、安倍首相の存在感などについて語っているわけですが、信憑性は高いです

さて、安倍総理は海外ではどのように評価されているのでしょうか。それに関して、参考になりそうな記事があります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【谷本真由美】日本流コロナ対策:海外では大絶賛 ミスター安倍・ナイスガイ
谷本真由美氏
詳細は、この記事を是非ご覧になってください。読むと、英国の感染症に対する認識の低さに驚愕します。このかたは、現在英国在留中で、日本では”めいろま”のハンドル・ネームでSNS等でも有名な方です。

タイトルには「大絶賛 ミスター安倍・ナイスガイ」と安倍総理のことが入っているのですが、肝心の記事には、麻生副大臣の「民度発言」は、出てくるのですが、安倍総理の名前は一度も出てきません。

ただ、日本と比較して英国の感染症に対する認識が極度に低いことは、よく書かれていました。これを読むと、英国であれだけ感染が猛威を振るったことも理解できます。

日本では、当たり前のマスクをつけるとか、三蜜を避けるなどのことが、英国ではまともになされていかなったことがよくわかります。

これらの日本人の自発的行動は、日本人にとっては当たり前のことですが、英国人にとっては称賛に値するようです。

日本や日本人の感染症に対する態度や行動については、かなり称賛されていることが、書かれています。その日本と日本人を代表するのが、安倍総理ですから、谷本氏はわざわざ安倍総理が具体的にどのように称賛されているかには触れなかったのかもしれません。

ちなみに、”めいろま”さんは、以前以下のようなツイートをしています。



確かに、日本のコロナ対策は、当初は批判されたところもありましたが、後には称賛に変わっています。

世界多くの人が日本の対策を見て、「最初は焦り、批判し、日本の頑固さに気づき、日本は麻痺しているのだと思い、その後、(感染者や死者数の少なさに)驚き、最後は賛同する」といった一連の感情の変化を経験したようです。

日本は都市封鎖をせず、交通も遮断しないという緩やかな対策で世界的に有名でした。クルーズ船の乗客を公共交通機関で帰宅させ、検査数が少ない状態を保ち、検査やデータにミスが相次ぎ、強制隔離はせず、陽性患者も自宅で待機することができる上に買い物に出ることも許されるなど、あっけにとられる対策ながら、なんと死亡率は欧米各国と比べてはるかに低くかったのです。

そうして、各国の日本に対する評価は最近変わりました。英BBCが3月に日本の検査数が少ないことを挙げて「実際の感染者数は28万~70万人いる可能性がある」と報じたものの、4月末には日本を「最も健康的な国家」に選出し、「健康に対する意識がコロナ危機を最小限にとどめている」とマスクを着用する文化などを称賛したことを伝えました。

韓国については、3月にあるメディアが「安倍首相はわが国のウイルス対策の成功を無視し、自国民の苦痛を見て見ぬふりをしている」「崖っぷちの安倍政権はわが国の経験をくみ取り、勇気を持ってわが国に援助を要請するしかない」とし、「日本の対策は最終的に失敗するだろう」との見方を示していたものの、日本では感染拡大が徐々に抑えられる一方で韓国で再び感染が広がり立場が逆転したことを伝えました。

また、世界保健機関(WHO)についても、2月に同機関のシニアアドバイザーを務める進藤奈邦子氏が「今一番、世界中が心配しているのが日本」と発言したものの、5月25日にはテドロス事務局長が「ピーク時は1日700人以上の感染者が確認されたが、今は40人前後に減った。死者も最小限にとどまっている」として、「日本の対策は成功している」と称賛したことを伝えました。

日本の対策が奏功した理由については様々な憶測が出ています。日ごろからマスクを着用していること、手をよく洗い、屋内では靴を脱ぐこと。欧米人のようにキスやハグをしないこと、日本語は飛沫が飛びにくい言語であること、格差が少なく、貧困地域が多くないこと、アビガンなど有効な薬があったことなどが挙げられています。

普段からマスクをする習慣がある日本人
日本政府の専門家会議が5月29日の会見で、医療レベルや公衆衛生水準、市民の意識が高いことのほかに、「中国由来・欧州等由来の感染拡大の早期検出」と「日本のクラスター対策(早い段階で伝播の特徴を認識)」をあまり知られていないこととして挙げています。

いずれにせよ、日本の死者数が驚異的に少ないのは事実ですし、まだ予断は許されないですが、それにしても、第一波を乗り切った経験があるので、第二波、第三波がきても、欧米のように大きな感染になるとは思えません。

安倍政権は、もっと感染症対策の成功を世界にアピールすべきなのかもしれません。ただし、日本政府としては、未だ世界中でコロナが猛威をふるっている最中、さらには日本がこれから先、第二波、第三派に見舞われるかもしれない現状で、これよがしに、日本の感染症対策の現在までの大成功を喧伝する必要はないと考えているのかもしれません。

ただ、コロナが収束したあかつきには、それを世界に向かって明らかにしていくべきと思います。これにより、日本と安倍首相の世界での存在感はかなり高まることになります。

何しろ、世界の当面の課題はコロナ対策であり、それを成功させた人口1億人を超えた唯一の国として、これは世界に向けて大いに発信して行くべきです。

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2020年6月22日月曜日

中国の太平洋進出の行方を握る小さな島国の選挙―【私の論評】日本も米台と手を携えて、キリバスなど南太平洋の島嶼国を支援すべき(゚д゚)!

中国の太平洋進出の行方を握る小さな島国の選挙

                    ニューズウィーク日本版

初めて北京を訪問したキリバスのマーマウ大統領(2020年1月6日)
<昨年、台湾と断交して中国とサプライズ国交回復をした南太平洋のキリバス。中台のどちらを取るかは今度の選挙の最大の争点だ。もし中国なら、太平洋でアメリカとぶつかる>
南太平洋に浮かぶ島国、キリバスで22日、大統領選挙が行われた。親中派の現職ターネス・マーマウと、台湾との国交回復を訴える野党候補のバヌエラ・ベリナの一騎打ちで、中国の太平洋進出に大きな影響を与える選挙として注目を集めていた。キリバスは人口11万人の小国だが、その排他的経済水域は広大だ。【クリストファー・パラ】


中国にとっては何より、キリバスの東端にあるクリスマス島に進出の足場を築けるかどうかがかかっている。クリスマス島は世界最大級のサンゴ礁の島で、面積は約400平方キロ。ほんの2000キロも北上すれば、アメリカ太平洋軍が本拠を置くハワイのホノルルがある。クリスマス島に建設中の港湾設備は表向き、観光向けとされているが、中国軍の艦艇が利用することも可能だと米軍は神経をとがらせている。

 台湾にとっては、国交回復が実現すれば非常に大きな勝利だ。キリバスは昨年、台湾と断交して中国と国交を樹立。これにより台湾を主権国家として承認している国は世界15カ国になった。 

にもかかわらず、選挙結果の重要性は中国にとって台湾以上に大きいと、ローウィー研究所(オーストラリア)のナターシャ・カサムは指摘する。結果にかかわらず、台湾と国交のある国々にとってキリバスは、「中国へのくら替えがもたらす政治的代償」の大きさを示す反面教師になっているからだとカサムは言う。 

<寝耳に水だった中国へのくら替え>

 昨年9月の台湾との断交に関する発表は、マーマウ大統領の与党関係者にとっても驚きだった。事実、キリバスのテブロロ・シト国連大使兼駐米大使(元大統領)は、国連事務総長のオフィスで台湾が国連主催の会議に出席できるよう働きかけを行っていた時にこのニュースを聞いたという。キリバスが台湾と外交関係を結んだのは2003年のこと。マーマウも2016年の大統領選挙では、台湾との関係維持を公約に掲げて当選した。



 この突然のくら替えは、キリバス国内でも評判が悪かった。抗議デモが行われ、人々は台湾の旗を掲げ、「台湾大好き、中国は大嫌い、欲しいのは平和だ」と叫んだ。民意不在の決定だとして野党指導者のティタブ・タバネは政府を批判した。

 この動きは、党首だったベリナを初めとする一部の与党議員の造反も招いた。これにより、4月の総選挙では与党はかつての安定多数を失い、過半数を下回った。

 キリバス政府関係者などへの取材からは、マーマウの決断にはいくつかの理由があったことが伺える。

 まず第1に、今世紀末には1メートルくらい上昇すると見られている海面水位の問題がある。前政権は数十年のうちに島々が水没してしまうと考えていたのに対し、マーマウ政権は海水面の上昇に合わせて島も隆起するという学説を信奉。そして貧困対策として、野心的な開発計画に乗りだしたのだ。振興の目玉はクリスマス島を中心にした観光業とマグロ漁業だ。

<航空機の購入支援を断られて断交?>

その一環として、政府は首都タラワと3200キロ東方にあるクリスマス島(および世界の国々)を結ぶ長距離旅客機2機の導入を決めた。報道によれば政府は1機目を6000万ドルで購入し、台湾に対して2機目の購入費用を援助するよう求めたという。台湾のキリバスに対する援助予算が年に1000万ドルであることを考えると無茶な要求だ。蔡英文総統は援助で相手国を釣る「小切手外交」には反対の立場を取っており、台湾はキリバスの要求に難色を示した。台湾の呉●燮外相は断交を発表した際、「マーマウは商用機を購入するために多額の財政支援を求めてきた」ので台湾は優遇金利での融資を申し出たが、キリバス側から断わられたと語った。

だがベリナはあるインタビューで、台湾はキリバス政府にこれとは異なる提案をしたと聞いたと語っている。融資というのは表向きで、返済期日が来たら台湾は援助額を上積みして返済金額を相殺するという実質的に援助に相当する内容だったという。この話の真偽は不明だ。

<台湾からの「政治献金」に懸念>

政府関係者によれば、第2の理由は台湾が野党勢力に選挙資金を提供するのではという与党指導部の懸念だ。2003~2016年にかけて、当時野党だった現与党の人々は、台湾から選挙資金の援助を受けているとして当時の与党(現在の野党)をしばしば批判していた。この「関係」が復活するのではないかと心配しているわけだ。キリバスの法律では、政治献金の出所に関する規制がない。

3番目の理由は、台湾寄りの野党によると、中国から賄賂をもらって気がついたら中国に支配されていたという数々の小国と同じパターンだ。南太平洋のソロモン諸島もそうだ。ソロモン諸島はキリバスの4日前に中国と国交を回復した。ソロモン諸島マライタ州のダニエル・スイダニ州長がオーストラリのテレビ取材班に語ったところによると、中国との国交回復を支持するなら100万ドルをくれると言われ、断ったという。だが、政府内には、賄賂を喜んで受け取った腐敗した政治家が多くいたと思うと語った。

太平洋における中国の勢力拡大を取材するため南太平洋に来ていたオーストラリアの取材班は、キリバスのタラワに着いたばかりの時、ホテルで軟禁された。撮影許可を得ていなかったからだと当局は説明したという。だが、取材班が次の飛行機で国外追放される前、キリバスの初代大統領で現在は野党議員のイエレミア・タバイと、野党指導者タバネがホテルを訪ねてきた。二人は取材班の追放を「民主主義にとっての悲劇」と呼び、中国が賄賂で国交回復の支持者を増やしていると語ったという。

<中国がアメリカに取って変わる?>

野党の大統領候補ベリナは、フォーリン・ポリシー誌のインタビューに対し、マーマウが台湾から中国に乗り換えると発表した時、議員数人が抗議した。台湾は人気があるので、乗り換えによって議席を失うことを彼らは恐れたという。その時マーマウは、「選挙資金は中国から出るから心配するな」と言った。「ショックだった」と、ベリナは言う。

政府関係者は中国の援助は数億ドル規模で、全てが贈与であって融資ではないので、返済する必要はないと言っている。返済が滞り、せっかく建設したインフラを中国に奪われてしまう「債務の罠」に陥る危険はないというのだが、詳細は明らかにされていない。マーマウは初めて北京を訪問した時、「一帯一路」に関する覚書に署名している。当時はまだ与党幹部だったベリナによれば、その際に得た資金は全て融資だったという。

<手玉に取られずに済むのか>

22日の選挙の最大の焦点は中国だ。果たして中国は、野党が主張する通り、カネと中国から連れてきた労働者でキリバスを圧倒し、自分たちのための巨大インフラを作ろうとするのだろうか。彼らと共に、新型コロナウイルスも初めて持ち込まれるのか。戦略的に重要なクリスマス島を奪おうとするのだろうか。ソロモン諸島が中国と国交回復してわずか数日後、ツラギ島を丸ごとリースしようとしたように。

あるいは、マーマウ政権が断固とした姿勢を貫いて、近くのハワイからクリスマス島まで旅行者を引き寄せるための観光インフラ建設などに限った援助、それも贈与以外は受け取らず、国を豊かにすることができるだろうか。有権者はどちらを信じるのか。

国連大使兼駐米大使のシトによれば、アメリカはキリバスに援助はしていないが、文化的にも歴史的にも人気がある。1943年に日本の占領から解放したのもアメリカだ。約40年前、イギリスの植民地だったキリバスが独立し、アメリカと友好条約を結んだ時から、アメリカ政府の同意なしには、いかなる国もキリバスに軍事施設を作ってはならないことになっている。しかしこの条約も、6カ月前の通知で破棄できるという。

キリバスの選挙は戦略的にも極めて重要だ。中国が太平洋で支配を拡大してアメリカとその同盟国に取って代わるのか否か、この小さな島国次第で決まってしまうことにもありうる。

From Foreign Policy Magazine

【私の論評】日本も米台と手を携えて、キリバスなど南太平洋の島嶼国を支援すべき(゚д゚)!

6月5日付の産経新聞電子版に共同通信の小さな記事が載っていました。文字数にして200字ほどですから、紙面ではベタ記事でした。だが、とても重要なことを伝えていました。

ポイントは2つある。1つは、国務省が6月4日に「新型コロナウイルス感染症対策を巡り、台湾と連携し太平洋島しょ国への支援を強化すると発表した」こと。2つ目は、この太平洋島嶼国家への支援強化が、国務省と台湾の外交部がテレビ会議で意見交換したことを踏まえて発表されたことです。
◆米、感染対策で台湾と連携 太平洋島しょ国を支援
【産経新聞電子版:2020年6月5日】 
米国務省は4日、新型コロナウイルス感染症対策を巡り、台湾と連携し太平洋島しょ国への支援を強化すると発表した。中国が国際社会で台湾の孤立化を図る中、米国は感染対策支援の連携を通じ、台湾外交を支える狙いがあるとみられる。 
国務省によると、3日に同省や疾病対策センター(CDC)など米国の関係機関、台湾の外交部(外務省)などによるテレビ会議を開催。新型コロナを巡る太平洋島しょ国への支援強化に向けて意見交換した。(共同)
冒頭の記事にもあるように、台湾は蔡英文政権発足時の2016年5月には、ソロモン諸島、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの6つの太平洋島嶼国家と国交を保っていました。ところが、中国が自国の勢力圏に取り込もうとして2019年9月にソロモン諸島とキリバス共和国を台湾と断交させ、残るはマーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの4カ国となっています。

中国は、2017年6月にはパナマ共和国、2018年4月にはドミニカ共和国、同年8月にはエルサルバドル共和国という中米3カ国と台湾の国交を断絶させています。

米国の裏庭とも呼ばれるこの3カ国との断交は、台湾よりも米国が危機感を募らせ、国務省は2018年9月にドミニカ共和国、エルサルバドル共和国、パナマ共和国に駐在の大使(パナマは代理大使)を召還するという事態にまでなりました。香港に国家安全法導入を決定したのと同様、先に手を出したのは中国です。

その結果、米国連邦議会は下院も上院も全会一致で、台湾に不利となる行動をとった国に対し、外交関係のレベルの引き下げや、軍事的融資などの支援の一時停止または変更などの措置をとる権限を国務省に与える内容の「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ2019年法」を可決し、2020年3月26日にトランプ大統領が署名して成立しています。

ちなみに、法律の略称は「台北法(TAIPEI Act)」と言い、法律の名称「Taiwan Allies International Protection and Enhancement Initiative Act」の頭文字から命名されています。

米国はこの法案が上院に提出された2019年5月以降、次々と太平洋島嶼国家への支援を強化し始めました。

トランプ大統領は2019年5月にパラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦の3か国の大統領をホワイトハウスに招いて会談。国防総省が2019年6月1日に発表した「2019年インド太平洋戦略報告書」では、台湾を「国家(country)」と表記し、「インド太平洋地域の民主主義の社会がある地域に、シンガポール、台湾、ニュージーランド、モンゴルは信頼でき、有能で、米国の自然なパートナーである」と記すとともに、太平洋島嶼国家との連携強化が記れました。

トランプ米大統領と蔡英文台湾総統

実は日本も近年は太平洋島嶼国家との関係強化をはかっていて、2019年8月に河野太郎 氏が外務大臣として初めてパラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦の3ヵ国を訪問しています。

フィジー共和国の南太平洋大学で「我々『太平洋人』の AOI(碧い)未来のための3つの取組」と題して講演し、近年、自由で開かれたインド太平洋のビジョンのために太平洋島嶼国が重要な役割を果たすことがますます明白になって来ていると指摘し、日本が太平洋島嶼国に対するコミットメント強化を決定したと表明しています。

河野外務大臣は、防衛大臣に就任してからも太平洋諸島国家との関係強化をはかろうと、今年の4月上旬、軍隊を有するパプアニューギニア、フィジー、トンガの国防大臣や米・豪・英・仏など太平洋島嶼国と関係の深い国の実務者を東京に招き、安全保障上の課題に関する意見交換を行う「日・太平洋島嶼国国防大臣会合」を初めて主催する予定でした。

河野外務大臣(当時)

あいにく武漢肺炎の影響で延期せざるをえなかったのですが、この会合は島嶼国で影響力拡大を狙う中国を牽制することにありました。そこで、習近平・中国国家主席が来日する予定だった4月7日の直前、4月5日にメイン会議を行い、4日に来日した国防大臣とバイ会談や夕食会を開き、6日にも会議などを予定していたといいます。

中国が第一列島線(日本列島~台湾~フィリピン)を突破して西太平洋へ進出しようと狙っている現在、太平洋島嶼国家は、日本が提唱し、米国が戦略として取り入れた「自由で開かれたインド太平洋戦略」にとって重要な国々です。

その意味で、米国の国務省が台湾の外交部とテレビ会議を開いて直接意見を交換しながら、太平洋島嶼国家へ武漢肺炎対策の支援を決めたことは大きな前進だと考えられる。小さな記事だが重要だと述べた理由です。

ちなみに、台湾は4月半ば、国交国のマーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの4カ国へマスクを2万枚ずつ計8万枚と額式体温計なども提供し、台湾の能力が許す範囲内で支援していくと発表しています。

翻って、実は日本の外務省も太平洋島嶼国家への支援は「島サミット」開催などを通じて強化しています。米国と台湾とともに日米台の枠組みで太平洋島嶼国家への今回の支援に加わってもよいはずです。今後の推移を注視していますが、残念ながら出遅れた感は否めないです。

キリバスなどの南太平洋の国々は、小さな島嶼国が多く、現在の日本人にはあまり馴染みがありません。しかし、この地域は大東亜戦争時代には、日米両軍が多数の犠牲を出しながら、戦ったところです。その後に、現在の国際秩序が形成されました。

そのような歴史を持つ島々が新たな国際秩序を自分に都合の良いように作り変えようとする中国に、飲み込まれるのを黙って見ているわけには行きません。日本も、米台と手を携えて、これらの国々に対して支援をして、中国の魔の手から守るべきです。

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2020年6月19日金曜日

国家安全法で締め付けられる香港人の受け入れ— 【私の論評】香港市民が観光では日本を頻繁に訪れながら、移住となると豪英加・台湾になるのか、今一度真摯に考えてみるべき!(◎_◎;)

国家安全法で締め付けられる香港人の受け入れ

岡崎研究所

 中国は、香港国家安全法の適用を強行し、香港への締め付けを強化し、国際的約束である香港の一国二制度を葬り去ろうとしている。

 これに対し、トランプ大統領は5月29日、記者団を前にホワイトハウスで「香港には最早十分な自治はなく、返還以来我々が提供して来た特別な待遇に値しない」「中国は約束されていた“一国二制度”の方式を“一国一制度”で置き換えた」と述べ、「香港に異なる特別の待遇を与えている政策上の例外を撤廃するプロセス」を始めると言明した。これは、昨年成立した「香港民主主義・人権法」に基づく措置である。その他、トランプは中国の悪行を列挙し、「(中国寄りの)WHOとの関係を停止する」ことを含め、各種の対応策を講じることを予告した。


 香港に対する特別な待遇の撤廃は、犯罪人引渡、技術移転に対する輸出規制、ビザ、香港を中国とは別個の関税地域として取り扱うことなどに関係するとされるが、トランプは具体的詳細には踏み込まなかった。トランプは敵対的な調子で対中非難を展開したが、例によって、言いたいことを言っておいて、具体的詳細は中国の出方を測りつつ今後の検討に委ねるということのようである。対中輸入に発動している高関税を香港に適用するか否かの問題にも言及しなかった。

 香港に対する特別待遇の撤廃は強い副作用を伴うことになろう。香港住民の生き様を大きく害し、香港の金融センターとしての地位を損ない得る。2000社ある米国企業は撤退するかも知れない。資本も逃避するかも知れない。香港の価値が下がることによって世界は関心を失う。場合によっては、香港は自壊する。そのことは北京の思う壺かも知れない。仮に米国が、香港の自治の侵食に責任のある中国および香港の当局者に対する制裁を発動するとしても、それで中国の行動を抑止できる訳ではない。

 そこで、5月29日付けのウォールストリート・ジャーナルの社説‘Visas for Hong Kong’が提案するのが、希望する香港人を米国へ受け入れ、更には市民権を与えることである。香港国家安全法が施行されるに伴い、香港を脱出することを希望する人達は当然いるであろう。脱出するだけの財力ある人達の数は限られようが、多くは、まずは米国を目指すであろうから、米国は当然受け入れるべきである。

 逃避する香港人の自国受け入れについて、上記ウォールストリート・ジャーナル社説は中国に対する懲罰という捉え方をしているが、むしろ、自由と人権の擁護という理念に基づく行動、あるいは人道上の行動と捉える方が良いのではないか。5月28日、英国のラーブ外相は英国が一定の香港人を受け入れる用意のあることを表明したが、これも英国の旧宗主国としての立場を考慮して香港の人達を守る趣旨によるものと理解すべきであろう。ラーブは「中国が国家安全法を履行するに至るのであれば、香港の英国海外市民旅券(BNO passport)の所持者が英国に入国し、現行の6ヶ月ではなく、12ヶ月(更新可能)就労し就学することを認める、このことは将来的に市民権を得ることを可能にする」との趣旨を述べた。また、5月28日、台湾の蔡英文総統は、香港人を受け入れ支援する仕組みを整備したいと述べるとともに、過去1年香港からの移住者は41%増え5000人を超えていることを指摘している。

 日本への逃避を希望する香港人も、数は多くはないであろうが、出て来る可能性は十分予測できる。その場合、現在の入国管理制度でどうなるのかという問題があるかも知れないが、門前払いだけはすべきでない。むしろ、有能な人材の確保の観点を含め予め検討しておく必要があろう。 


【私の論評】香港市民が観光では日本を頻繁に訪れながら、移住となると豪英加・台湾になるのか、今一度真摯に考えてみるべき!(◎_◎;)

香港人の受け入れの話は、英国では昨年もありました。それについては、このブログでも取り上げたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載しました。
香港人に英国籍付与、英議員の提案は香港問題の流れをどう変えるか?―【私の論評】コモンウェルズの国々は、香港市民に国籍を付与せよ(゚д゚)!
英国国会議員、外交委員会委員長のトム・タジェンダット(Tom Tugendhat)氏

この記事は、2019年8月17日のものです。元記事は、立花 聡氏によるもので、以下のようなことが、掲載されていました。
「 英国国会議員、外交委員会委員長のトム・タジェンダット(Tom Tugendhat)氏は、1997年香港撤退(中国返還)の際に放置されてきた市民の国籍問題の解決を促し、英国籍付与の範囲を香港の中華系市民(ホンコン・チャイニーズ)にも及ぶべきだとし、英国が香港から引き上げた当時そうしなかったのは間違いであって、それを是正すべきだ(wrong that needs correcting)と主張した(8月13日付け英字紙デイリー・メール Online版)」。
なおこの記事には、立花 聡氏自身のコメントが寄せられていたのですが、最近はもっぱらツイッーを用いているので、コメントのほとんどはツイッターで寄せられるで、ブログに直接コメントが寄せられることは滅多になく、立花氏からのコメントがあったことに数ヶ月間も気づかず、比較的最近気づいたので、そのままになています。せっかく寄せていただいたのに、残念なことをしてしまいました。ここにお詫びいたします。(ただし、この記事も読んでいだければということになるとは思いますが・・・・)

この元記事を受けた形で、私自身は【私の論評】において、英国だけではなく、顧問ウェルズの国々も香港市民に国籍を付与すべきだと主張しました。

コモンウェルスの国々とは、イギリスの旧植民地の国々のことです。 地図で示すと以下の国々です。


これらの国々と英国は、今でも関係が深いですし、法体系なども似たところがあり、香港市民も全く縁もゆかりも無い国々よりは、移住しやすいと思います。

元々コモンウエルズとは、コモンウェルス(英: commonwealth)とは、公益を目的として組織された政治的コミュニティーを意味する用語です。歴史的には共和国の同義語として扱われてきましたが、原義としては哲学用語である「共通善 (英: common good)」を意味します。だからこそ、これらの国々が香港の人々を受け入れるべきと思ったのです。

かつてイギリスの植民地だった諸国との緩やかな連合体として「Commonwealth of Nations」が結成されており、その加盟国の中で現在もイギリスの君主を自国の君主元首)として戴く個々の国を「Commonwealth realm」(「レルム(realm)」の記事も参照)と呼びます。

米国でも、コモンウェルスを名乗っていないものの、バーモント州は、その州憲法の4箇所で「The Commonwealth」と自己言及しており、同様にデラウェア州も、州憲法で「当コモンウェルスの安全を脅かし得る手段を以って…」と自己言及しています。

これらコモンウェルズの国々と、米国のパーモント州や、デラウェア州なども香港の人々を受けいれる歴史的な根拠があるわけです。

日本にはこのような歴史的背景はないのですが、コロナ以前の香港人の日本訪問客はかなり多いです

コロナ直前の、2019年の年間訪問者数は、229万700人でした。これまで過去最高だった 2017 年 の223万1568人を超えました。年々、右肩上がりに上昇しており、2013年から約3倍ほど増えています。

香港の人口は、2018年で745.1万人ですから、この訪問客数は、かなりのものです。単純計算では、香港人の4人に1人以上は日本を訪れている計算になります。

もちろん単純に香港人の4人に1人が日本を訪れているというわけではなく、リピーターの数が多いことが見て取れます。日本政府観光局(JNTO)の調べによると、日本を訪れる香港人のうちリピーター率は82.1%でした。

訪日香港人人旅行者の消費額 は、2019年は約3,525億円。2013年時点では1,054億円程度だったため、数年で3倍以上に増加しています。

ちなみに、訪日香港人旅行者の都道府県別訪問率は以下の通りです。
1位:⼤阪府(33.3%)
2位:東京都(30.0%)
3位:千葉県(27.6%)
4位:京都府(20.2%)
5位:福岡県(11.2%)
出典:観光庁『訪日外国人消費動向調査(2018年版)』
最近の訪日香港人旅行者の傾向として、関西地方の人気が高く、大阪、京都、奈良へセットでまわる人が増えています。大阪はグルメやショッピング、京都は金閣寺、銀閣寺、清水寺など写真に収めたくなるような歴史の古いお寺巡りの人が多く訪れています。

リピーターが多いため、定番のスポットを巡るより、観光客があまり多くない穴場スポットへ行きたがる人が増えています。また、香港から日本までのLCCの路線が多く、東京や大阪など大都市だけではなく、九州や四国や中国地方の直行便もあります。

そのため、同じ場所へ旅行するより、いろいろな都市を制覇したがる傾向にあります。また、短期間で多くの観光地に行きたいという願望があります。さらに屋台文化のため、夜遊び好き。夜遅くまで営業している商業施設やドラッグストアの買い物が好きです。朝から夜遅くまで出かけて、時間を存分に使う人も少なくありません。

日本にこれだけ頻繁に訪れる香港の人々ですが、いざ移住ということになると、やはり
は豪英加ということになりそうです。台湾にも関心が高まっているそうです。

豪英加は、香港市民は、無論コモンウェルスの価値観を共有しているという側面があるのでしょう。それに、香港では、広東語と英語が公用語です。英語が公用語という豪英加は、魅力でしょう。

香港の人は広東語を話しますので、本当の中国語、北京語を理解しているか疑問に思う日本人が多いです。

また、台湾のことを違う国と考え、中国語と言ってもたぶん中国の中国語とは違う言葉を話していると思う日本人も少なくないでしょう。

実は北京語は香港でも台湾でも通じます。しかも香港と台湾だけでなく、マカオ、シンガポール、マレーシアでも通じます。香港は1997年に中国に帰還されてからすでに20年以上経ちました。

返還されてから中国語と中国史が必須科目になりましたので、今の香港の若い世代はもちろんのこと、非常に年配の方以外、ほとんどの世代の香港人は中国語を話せます。

ただ家族や友達同士での会話となるとやはり広東語が主流です。

台湾は香港よりもっと前、内戦後国民党が台湾に引っ越ししてから、中国語の普及教育が始まり、すでに70年位の歴史があります。

香港と違って、今はもはや家族、友達同士など身内でも中国語で会話している台湾人はとても多いです。

台湾の友人から聞いた話では、台南ではまだ家族で方言「台語」を使っている家庭はありますが、台北ではほとんどみんな中国語で会話しているとのことでした。

そうなると、台湾は香港人にとっては言葉も通じるし、文化的にも近いということで、魅力でしょう。

香港の人々にとって観光目的で日本に来るのと、日本に住むということでは、やはり隔たりが大きいのでしょう。

ただ、安倍晋三首相は11日の参院予算委員会で、香港の金融センターをはじめとする人材受け入れを推進する考えを表明しています。「香港を含め専門的、技術的分野の外国人材を受け入れてきた。引き続き積極的に推進する」と強調しました。自民党の片山さつき氏への答弁でした。

中国が香港への統制を強める「香港国家安全法」を巡り、片山氏は「香港の金融センターの人材を日本が受け入れるのも選択肢ではないか」と質問しました。

首相は「東京が金融面でも魅力あるビジネスの場であり続け、世界中から人材、情報、資金の集まる国際都市として発展を続けることは重要だ」と述べました。「金融センターとなるためには人材が集まることが不可欠だ」とも語りました。

英国のジョンソン首相は中国が香港国家安全法を撤回しない場合、香港の住民に英国の市民権を取得させる意向を示しています。香港情勢について首相は「日本としても深い憂慮を表明している。関係国とも連携し、適切に対応する」と強調しました。

英国ジョンソン首相

首相は新型コロナウイルスの感染拡大を受けてマスクや防護服などのサプライチェーン(供給網)を見直す意向も示しました。国民生活で必要な製品に関し「保健衛生、安全保障などの観点で、価格競争力だけに左右されない安定的な供給体制を構築する」と述べました。

中国を念頭に過度な依存を避ける考えを示したものです。「多角的な自由貿易体制の維持、発展が前提だ」とも語りました。

新型コロナの感染拡大を踏まえ、首相は「国難とも言える状況の中で様々な課題が浮かび上がった」と指摘しました。主要7カ国首脳会議(G7サミット)などの場を通じ「世界のあるべき姿について日本の考え方を提示し、新たな国際秩序の形成をリードする」と主張しました。

この言葉の通り、日本も新たな国際秩序の形成をリードできるようにしていただきたいものです。そのための指標として、香港の優秀な人材が日本を目指したくなるように、社会経済をレベルを上げていくべきです。経済的には日本は、今後大発展している可能性があることをこのブログでも掲載したとがあります。

香港市民がなぜ、観光では日本を頻繁に訪れながら、移住ということになると豪英加・台湾になるのか、今一度真摯に考えてみる必要がありそうです。これらの国々あって、日本にはない魅力とは何なのかを探る必要がありそうです。


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2020年6月13日土曜日

「日本は成功例の先駆け」米国が大絶賛したコロナレポートの衝撃内容— 【私の論評】日本人は「ジャパン・ミラクル」は連帯感によるものと認識するだけではなく、それを誇るべき!(◎_◎;)

「日本は成功例の先駆け」米国が大絶賛したコロナレポートの衝撃内容

まさに「ジャパン・パラドックス」だ

米国から見た日本のコロナ禍対策

ワシントンDCから米国人の目で日本の金融・財政政策を分析・解説する在米金融アナリスト、斎藤ジン氏がパートナーの一人である「OBSERVATORY VIEW」をほぼ毎号、読み参考にしている。

ニューヨークを本拠とする有名なユーラシア・グループのイアン・ブレマー代表が編集・発行する「eg update」も必読のニューズ・レターである。その他にも、DCで政治コンサルタントを務めるカール・アイゼルバーグ氏の「Monitor」も定期送付してもらっている。

本来、いずれも高額な購読料を支払うべきであるが、零細事務所を運営するジャーナリストに免じて贈呈扱いになっている。

日常が戻りつつあるニューヨーク市街地

さて、直近の「OBSERVATORY VIEW」(6月9日付)に斎藤氏が寄稿した「日本公衆衛生政策―コロナ、政治、ジャパン・パラドックス」は日本のコロナ禍対策を分析した秀逸のレポートである。

同レポート冒頭の長文リードは次のように始まっている。

<コロナに関して市場は以下を確認したがっている:(1)金融政策によって確実な信用フローが維持される、(2)財政政策が蒸発した需要を穴埋めする、(3)コロナを封じ込め、経済活動を再開する、この三つだが、現在(3)が最大の不透明要素だ。我々は感染症そのものについては何の付加価値も生み出せない。しかし感染症研究に基づいているとしても、公衆衛生政策は最終的に政治判断である。>

「日本はその成功例の先駆けと言える」

途中のパラグラフを割愛して、リードの最後を紹介する。

<日本は(感染症学分野で)主流派の予言を忠実に守らなかったことから、強い批判に晒されてきたが、その(新型コロナウイルス感染者の)死亡率は0.73と相対的に成功した国の一つだ。そして将来、日本のように政治的な裁量判断を多用する国が増え、社会の様々な側面(=公衆衛生危機、経済コスト、個人の自由とプライバシーに対する懸念など)を政治指導者の政治資本の範囲の中で考えるようになるだろう。日本はその成功例の先駆けと言える。>

レポートの見出しにある「ジャパン・パラドックス」とは、まさに我が国の政治指導者、即ち安倍晋三首相がコロナ危機当初、感染症学の専門家の助言よりも独自の裁量判断を重視するアプローチを追求し、国内外の専門家やコメンテーターから批判されていたが、様々な側面のバランスをどう取るのかと、政治資本の中で考えて優先順位を付けてきたのでコロナ感染者数と死亡者数の低さを得たことを指す。

日本は、韓国や台湾のように個人の自由とプライバシーの侵害の懸念よりもデジタル追跡ツールの使用を優先させ、且つ広範なPCR検査や感染者隔離のために民間施設徴用などが実施できなかった。それ故に、声高に日本のコロナ禍対策は間違っていると断じられたのである。

だがしかし、人口密度が高い大都市圏を抱えるだけでなく、約1億3000万人もの人々が米モンタナ州と同程度の広さの国土に住んでおり、しかも最も高齢化が進んでいる社会である日本の死亡率0.73は韓国(0.53)より若干高く、ドイツ(10.48)を大幅に下回っているのだ。

PCR検査の優先順位が低くなるのは不可避

斎藤氏の指摘はこうだ。確かにラッキーな面があったかも知れない。しかし、日本のアプローチの起点は「限られた能力でできるだけ多くの命を救うために医療崩壊だけは回避しなければならない」ということであり、そこから全ての優先順位付けを行ったと言う。

換言すれば、戦術的優先事項(1)クラスター(感染者集団)を最小限に抑え、(2)一定の症状(持病を含む)を持つ患者を優先的に治療する、の2つであった。であるならば、PCR検査の優先順位は低くなるのは不可避というのである。

斎藤氏の数多い指摘の中でも得心した件があった。<日本は先端医学の分野では決して米国と比肩することは出来ないと考えている。しかし感染症との闘いは結局、トップレベルの「ベスト・アンド・ブライテスト」ではなく、現場の名もない一兵卒の頑張りにかかっている。>

同氏が言う「現場の名もない一兵卒」とは、各地の保健所に監視と追跡のプロを含む様々な医療専門家で構成される現場の実行部隊であり、彼らがクラスターの特定と感染経路を愚直に追跡した影のヒーローであると讃えている。

そうであっても、コロナウイルスの「第2波」「第3波」は必ず襲来する。そのためにはSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)を含めて一連の相対的な成功体験に満足するのではなく、感染症対策の最新技術や医療システムを導入すべきだ。支給するマスクの数やPCR検査件数を競うのではない。いつの日か痛い目に遭って世界の笑いものにならないためにも、それは必要である。

【私の論評】日本人は「ジャパン・ミラクル」は連帯感によるものと認識するだけではなく、それを誇るべき!(◎_◎;)

コロナに限らず病気は、命を保つことができれば克服できます。どれくらいの方が亡くなるか、逆から言えば病気にかかった方のうちどのくらいが生き残るかということがいちばん重大なことです。

客観的な数字として人口100万人当たりで考えると、日本ではコロナ肺炎で亡くなった方は、英国の100分の1です。米国と比べても50分の1以下です。それを考えると、いままでの国民の努力は政府の要請と合致して、大成功していまい。海外の方からは、今回の日本の対応について「ジャパンミラクル」とか「ジャパンミラクル」と言われるのです。


WHOの首脳陣は、テドロス事務局長をはじめ、中国に支配されていると以前から批判しているのですが、現場には非常に優れた方々がいらっしゃいます。日本の方もいらっしゃるのですが、そういう人たちの共通の言葉も「日本の奇跡に学べ」です。

まもなくコロナによる異常事態は終息して行きますから、国民の方々は自信を持たれて、最後の踏ん張りとして、いままでのペースを守っていただきたいと思います。

まだまだ不安であることには変わりはありませんが、不安があってこそ対応策を考えるので、不安そのものにこだわらず、不安があることは自然だと考えていただきたいです。

諸外国と異なり、都市を強制封鎖するなどの強権的なことを行ったわけでもなく、ある意味で国民の連帯によって、ここまで押さえ込んで来たということは、何か日本にだけ特殊なことがあるのでしょうか。

同じアジアでも、韓国は個人情報を追跡してスマホも使い、トレースして行ったのですが、日本はそれすら一切やっていないのです。ではなぜかと言えば、やはり日本人の「連帯感」によるものではないでしょうか。

しかし、このようなことを言うと「いや、そんなはずはない、政府不審の声が溢れかえっていたじゃないか」と言う方も多いかもしれません。確かに、コロナウイルスが引き起こした心の病の1つが政府不審でした。

政府に対する指摘や批判が自由にできることが民主主義なのですが、政府に対する不審が世界的に高まっていることが、中国が引き起こした問題の根底にあります。そのため日本だけで特殊な政府批判が起きているわけではありません。

日本人の連帯は今回のコロナウイルスに対するものが初めてということではありません。2009年に日本列島を襲った新型インフルエンザのことを覚えておいででしょうか。感染力は強く、とりわけ高齢者の致死率が高いとして恐れられました。

当初政府は、新型インフルエンザウイルスの上陸を阻止する水際作戦に力点を置いていました。しかしそうした中で海外渡航歴のない人々の集団感染が判明しました。

過去の空港での水際作戦

その時点で政府の対処方針は、今回のコロナウイルスと同様、水際作戦から重症化を防ぐ作戦へと転換しました。軽症患者には十分な注意と指導を徹底して、地元の病院、或いは自宅で療養してもらい、重い症状の人をふやさないという作戦でした。

当時私も、手洗い、ウガイを励行し、外出時と会社内ではマスクを必ずつけ、自身を守り、周囲の高齢者や弱い存在を守れるよう心掛けました。そしてそれは成功しました。その頃の習慣が残っているため、その時から今まで一度もインフルエンザや風邪を患ったことがありません。

自分の健康と周りの人、他者、さらに社会全体の健康を重ね合わせて考えることが大事なのです。それは連帯意識と助け合いの精神に直結します。

あの3.11の東日本大震災で大地震と大津波に襲われたとき、東北地方の人々を中心に、日本人は全員が助け合いました。自分の身を守ったうえで、自分より弱い人たち、お年寄りを、皆が助けました。
日用品を買い求める人たちの行列=仙台市青葉区で2011年3月20日午前11時8分
一緒に頑張りました。こうした日本人の資質から見ても、やはり「コロナミラクル」は、日本人の連帯に負うとこが間違いなくあります。

今回のコロナでは、政府への不審もありましたが、それを乗り越えて、結局多くの日本人が連帯したことが、今回のジャパンミラクルにつながったと考えるべきでしょう。政府不審で反対の方々も多くは結局は従ったのでしょう。

ブログ冒頭の記事では、「いつの日か痛い目に遭って世界の笑いものにならないためにも」などと第2波、第3波の懸念を表明していますが、第2波、第3波は必ずあります。それがない大きな感染症はありません。

ただし、第1波の経験、100段上り切った経験があります。人の体で喩えれば、どこで膝が痛んだのか、どの人が弱かったのかということを経験しているので、第2波、第3波ではその経験を活かせます。

特に失敗を活かすことで乗り越えやすくなります。備えることは必要ですが、不安を増幅させる必要はありません。それに私は、第2 波、第3波でも、日本人の連帯が十二分に、発揮されることを信じて疑いません。

それと、私達日本人は、「ジャパン・ミラクル」に関して、もっと誇りを持つべきです。日本人の連帯が、コロナ・ウイルス封じ込めに効果があることは、間違い無いと思います。

私自身は、海外の人には、「ジャパン・ミラクル」は日本人の連帯によるものと、話しています。2009年に日本列島を襲った新型インフルエンザの時の日本人の連帯や、東日本大震災の時の日本人の連帯についても話をすると大抵は理解していただけます。

ここで、日本人は過度に謙虚になる必要はないと思います。なぜなら、日本人の連帯が世界に理解されれば、世界は変わるかもしれないからです。世界の国々でも、日本人の連帯が理解され、受けいられれれば、世界の他の国々にも将来また感染症が発生した時にミラクルが起こるかもしれないからです。

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