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2023年11月22日水曜日

膠着状態のウクライナ戦争 カギはテクノロジーの革新―【私の論評】ウクライナ戦争、反転攻勢は膠着状態? 2~3年で占領地奪還の可能性も!

 膠着状態のウクライナ戦争 カギはテクノロジーの革新

岡崎研究所

まとめ
  • ウクライナのザルジニー総司令官は、戦争は膠着状態に陥っていると主張。
  • その原因は、双方のテクノロジーの水準が同じ水準に達したこと。
  • ウクライナが勝利するためには、ドローンや電子戦などの分野でテクノロジーの革新が必要。
  • 西側諸国はウクライナへの支援を継続する必要がある。
  • 米国の支援が減少すれば、ウクライナの勝利が遠のく。
ウクライナの攻撃型ドローン「バックファイア」

ウクライナ戦争は、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことで始まった。当初は、ウクライナ軍がロシア軍を撃退し、首都キーウの奪還に成功するなど、ウクライナが優勢に進んでいた。しかし、その後、ロシア軍は反撃に転じ、東部・南部で攻勢を開始した。

ウクライナ戦争は、現在も膠着状態が続いている。両軍とも大きな損害を被っており、戦況は大きく動いていない。

ウクライナ戦争の膠着状態の主な原因は、双方のテクノロジーの水準が同じ水準に達したことにあると分析されている。

具体的には、ドローンや電子戦などの分野で、両軍の技術は急速に進歩した。そのため、両軍とも有効な打撃を与えることができず、泥沼の戦いが続いている。

ウクライナが勝利するためには、ドローン、電子戦、砲撃制圧、地雷除去の4つの分野でテクノロジーの革新が必要だと、ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は主張している。

ドローン

ウクライナ軍は、ドローンを使ってロシア軍の戦車や部隊を攻撃している。しかし、ロシア軍もドローン対策を強化しており、ウクライナ軍のドローンも撃墜されるケースが増えている。

電子戦

電子戦とは、敵の通信やレーダーを妨害する技術です。ウクライナ軍は、電子戦を使ってロシア軍の砲撃を妨害している。しかし、ロシア軍も電子戦能力を強化しており、ウクライナ軍の電子戦も効果が薄れつつある。

砲撃制圧

砲撃制圧とは、敵の陣地や戦力を砲撃によって無力化することである。ウクライナ軍は、砲撃制圧を使ってロシア軍の進撃を阻止しようとしている。しかし、ロシア軍は地雷や防御陣地を強化しており、ウクライナ軍の砲撃も効果が薄れつつある。

地雷除去

ウクライナには、ロシア軍が敷設した地雷が数十万個あると推定されている。これらの地雷は、民間人やウクライナ軍兵士の生命を脅かしている。

ウクライナが地雷を除去するためには、最新の技術や機材が必要となる。

西側諸国の支援

西側諸国は、ウクライナへの支援を継続している。しかし、ウクライナが要求する最新のテクノロジーや兵器を供給することには慎重だ。

特に、米国は、ウクライナが敗北しないよう、しかし米国がロシアとの対決に引きずり込まれないよう確保することに目的を定めている。そのため、ウクライナへの支援を慎重に検討している。

【私の論評】ウクライナ戦争、反転攻勢は膠着状態? 2~3年で占領地奪還の可能性も(゚д゚)!

まとめ
  • ウクライナの反転攻勢は、当初から2~3年かかると予想されていた。
  • ウクライナ軍は、ロシア軍の占領地を分断し、弱い方を攻める戦略をとっているようだ。
  • 反転攻勢に成功すれば、2~3年以内に占領された土地を奪還できる可能性があると考えられた。
  • 反転攻勢に失敗した場合は、5年以上、下手をすると10年膠着状態が続く可能性がある。
  • ウクライナは、2024年前半までに占領地を分断し、戦況を有利に導こうとしている。
現在のウクライの反転攻勢を膠着しているとみるのは、まだ時期尚早です。私は、もともとウクライナの反転攻勢は時間がかかるとみていました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ウクライナ、反攻で「破滅的」損失 プーチン氏―【私の論評】今回の反転攻勢が成功すると、2~3年以内に占領された土地を奪還できるかも!戦争はまだ続く(゚д゚)!

ダム決壊で発生した水害

 ウクライナでダムが決壊したのは、テレビ報道などで皆さんご存知でしょう。決壊したのは2023年6月6日です。ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムが、ロシア軍の攻撃によって決壊されたとされています。このダムは、ドニプロ川に建設されており、貯水池の水量は日本の琵琶湖の約3分の2に相当します。ダムの決壊により、洪水が発生し、少なくとも21人が死亡しました。また、広範囲にわたる農地や住宅が浸水し、深刻な被害をもたらしました。

この直前から、それまで散発的だったウクライナ反攻が、組織的に体系的に行われるようになったとされています。それが本当かどうかは、軍事機密なので、未だに明らかにされていません。真相は戦後に公表されるでしょう。ただ、大方の軍事筋はこの前後で、ウクライナの本格的反攻が始まったのは間違いないものとしています。

この事実をもとに、当時の私の分析では、この時点から2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻によって奪われた土地を奪い返すのに、2〜3年はかかるだろうとこの記事に掲載しました。現在は、この時からまだ5ヶ月が経過したばかりです。

この記事より、予測の元となった根拠の部分をあげます。
今後の見通しとしては 、 今回の反転攻勢によりロシアの占領地の分断に成功すれば かなり有利になります 。

ただ 、分断すると 、今度は突破した部分が挟み撃ちに遭うので 、逆にウクライナ側は挟み撃ちから守りきる陣地をつくらなければなりません 。

これを秋冬の地面がぬかるむ時期にまでに できれば 、 分断されたロシア軍の弱い方を来年 ( 2024年 ) 攻めることになるでしょう 。 つまり 、 ドンバス地方かクリミアのどちらか弱い方を攻めて 、 再来年にもう片方残った方を攻める形になるでしょう 。

今回の反転攻勢が成功すると 、 2 ~ 3年以内には占領された土地を奪還できるかも知れないです 。 無論奪還しても戦争が終わるとは限りませんが 、 少なくとも見通しは立ちます 。

一方で反転攻勢に失敗し 、 投入された12旅団が磨り潰されるようなことになると、組織的な反転攻勢は今後 、 難しくなります 。 そうなると5年以上 、 下手をすると10年ぐらい膠着状態が続くかもしれません。いずれにせよ、現在の反転攻勢が成功したとしても、すぐに戦争が終わるとはみるべきではないです。

結論を言うと、反転攻勢がうまくいったとして、2〜3年でロシアに今回ロシアに占領された地域を取り返すことができる、失敗した場合は、5年以上、下手をすると10年かかる可能性があるということです。そうして、クリミア奪還などはその後ということになります。

ウクライナ軍女性兵士 実写写真

このように時間がかかることは、多くの現代人がなかなか理解しにくいところがあると思います。現代人は、何をするにしてもスイツチ一つですぐにできます。部屋を温めたり、風呂に入るにしても、一昔前はそれなりに時間と労力がかかりましたが現在ではすぐにできます。

ただ、これは第二次世界大戦を振り返ると、理解できるかもしれません。

連合軍がノルマンディー上陸をしたのは1944年6月6日です。ヨーロッパでの戦争が完全集結したのは1945年5月8日です。したがって、ノルマンディー上陸からヨーロッパでの戦争が完全集結するまで、1年11ヶ月かかりました。

具体的には、ノルマンディー上陸から1年後の1945年6月6日には、連合軍がベルリンに進攻し、ドイツ軍の抵抗が激化しました。その後、ソ連軍が東から、連合軍が西からドイツに迫り、1945年5月8日にドイツは降伏しました。

物量では圧倒的に有利で、制空権、制海権を完全掌握していた連合軍がノルマンディーに上陸したという時点で、すでに戦争の帰趨は決まり、ドイツの敗北は決定的だったといえます。しかし、実際に 連合軍が勝利を手にするには、それから2年近くの歳月を要したのです。

これを考えれば、兵器弾薬は西側諸国がウクライナに供与しているものの、戦っているのはほぼウクライナ軍のみであり、しかも地上戦が主戦場ですから、最終的な勝利を得るためには、戦況の不利、有利にかかわらず、ある程度時間がかかるとみるべきものと思います。

地上戦であれば、兵員輸送車などはありますが、それでも移動手段の多くは、歩兵の歩行ということになります。しかも、歩兵は敵と戦闘しながら歩きますし、さらに弾薬や食料などの重装備を背負っての移動ということになります。

そうなると、一日では最大で10km、現実的には数キロと考えて良いでしょう。このようなことを考えれば、通常の移動からみれば、はるかに時間がかかることは、理解できると思います。

ノルマンディー上陸作戦

現時点で、膠着状態かどうかは、はっきりとはわかりません。そのため、現状の膠着状態は、当初から予想されたものなのかどうか、見極める必要があります。ただ、これはウクライナ、ロシア双方とも、情報戦を展開していることから、現時点では正しく判断するのは難しいです。正しく判断できるようになるのは、これも戦後でしょう。

ただ、ワレリー・ザルジニー総司令官が「膠着状態」であると強調することには、それなりの理由があると考えられます。

ウクライナは、2024年アメリカの大統領選を前に、西側諸国からの支援を維持するために、冬季にも攻勢を続けることを決めたようです。

その理由の一つは、2024年以降は、米国に共和党の大統領が登場した場合、米国の支援が減少する可能性があるため、なるべく目に見える戦果を挙げて米国の支持を取り付けたいのでしょう。

もう一つは、前回の反攻作戦で、ロシア軍に地雷原を敷設される時間を与えてしまった反省から、冬季でも攻勢を継続して、地雷を敷設する時間を奪いたいからとみられます。

もちろん、冬季攻勢にはリスクもあります。しかし、ウクライナは、ドローンなどによる上空からの支援を計算したうえで、決断したようです。

ウクライナは、2024年前半までに、初期に想定された戦果である、南部から東部に広がるロシアの占領地の分断をしなければならないという悲壮な決意を持って戦いを継続しているとみられます。無論、分断に成功したとしても、それだけでは決着はつかず、戦争は継続します。しかし、2024年の前半までに、分断しなければ、戦況はかなり不利になる可能性もあります。

ただ、戦闘は不確実なものであり、当初の目論見どおりになる可能性は低いとみておくべきです。

ウクライナ側は、こうした状況を、支障のない限りにおいて、西側諸国に伝え、西側諸国は、短気を起こさず、気長にウクライナに対して支援を継続すべきでしょう。

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2023年11月14日火曜日

北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること―【私の論評】ロシア、中国のジュニア・パートナー化は避けられない?ウクライナ戦争の行方と世界秩序の再編(゚д゚)!

北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること

服部倫卓 (北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授)

まとめ
  • ウクライナ侵攻後、ロシアの貿易統計は非公開となったが、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの図書館で2022年版の貿易統計集が発見された。
  • この統計集によると、ロシアの貿易は、欧米日などの「非友好国」から、中国やインドなどの「友好国」に大きくシフトした。
  • 特に石油輸出では、中国とインドが急増し、2023年第1四半期には、ロシアの原油輸出の73.3%が中印向けとなった。
  • 半導体輸入については、先進国からの輸入が減少したものの、中国からの輸入は減少せず、ロシアの半導体不足は解消されていない。
  • ロシアの対外貿易では、中国が圧倒的なシェアを占めており、2023年には、露中貿易が往復で2200億ドルに達する見込みである。

 ウクライナ侵攻後、ロシアの貿易統計は非公開となったが、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの図書館で、2022年の貿易統計集が発見された。

 この統計集によると、ロシアの貿易は、欧米日などの「非友好国」から、中国やインドなどの「友好国」に大きくシフトした。

 特に石油輸出では、中国とインドが急増し、2023年第1四半期には、ロシアの原油輸出の73.3%が中印向けとなった。

また、半導体輸入については、先進国からの輸入が減少したものの、中国からの輸入は減少しなかった。

さらに、ロシアの貿易相手国では、中国が圧倒的なシェアを占めており、2023年には、露中貿易が往復2200億ドルに達する見込みである。

この結果、ロシアは、中国への依存度を高め、中国のジュニアパートナー化まっしぐらと言える状況となった。

なお、ロシアは、貿易統計を非公開とした理由について、国際的な制裁によるダメージを避けるためと説明している。

しかし、ロシアが貿易統計を隠したことによって、かえって、ロシアの経済状況の悪化を世界に知らしめることとなった。

【私の論評】ロシア、中国のジュニア・パートナー化は避けられない?ウクライナ戦争の行方と世界秩序の再編(゚д゚)!

まとめ
  • 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターは、旧ソ連・東欧地域の総合的・学際的研究を行う国内唯一の研究所である。
  • センターは、ロシアは中国のジュニア・パートナーになりつつあることを指摘。ウクライナ戦争でロシア最終的に敗北することになるだろう。
  • ロシアの敗北は、プーチン政権の存続にも影響を与える可能性がある。
  • ロシアの敗北は、中国の台頭をさらに加速させ、ユーラシア大陸の安全保障に大きな影響を及ぼすだろう。
  • 理想的な結末は、プーチンが失脚し、ロシアが西側諸国との関係を回復することである。


北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターは、旧ソ連・東欧地域の総合的・学際的研究を行う研究所です。国内唯一のセンターで、専任研究員11名、客員研究員20名、研究生20名が在籍しています。

研究テーマは、政治、経済、社会、文化、歴史など多岐にわたります。地域比較研究にも力を入れています。

研究成果は、学術論文や著書、報告書などの形で発表されており、国内外の学界で高い評価を受けています。政府や企業などの政策立案にも活用されており、旧ソ連・東欧地域の総合的な研究で国内外で高い評価を受けています。

私は、上の記事のロシアが中国のジュニア・パートナーになりつつあるという評価に賛成です。貿易統計がそれを裏付けています。ロシアが石油輸出を中国に依存していることは特に問題です。そのことについては、前から言う人もいましたが、今回それが数字で明確に確認されたといえます。

もし中国がロシアの石油の輸入を減らすことになれば、ロシア経済に壊滅的な打撃を与えるでしょう。そうして、現状ではそのようなことはないでしょうが、その可能性は完全に否定できません。そうしてこのような脅威があるからこそ、ロシアが中国のジュニア・パートナー化はますます避けられなくなるでしょう。半導体に関しても同じことがいえると思います。 ウクライナ戦争でロシアが勝つと信じている人は、欧米にはみられません。ほとんどの専門家は、ロシアはいずれ敗北すると考えていますが、それがいつになるかはわからないです。ただ、長期的には敗北するだろうと見る人が大勢を占めているように見えます。 日本では、ロシアのプロパガンダに影響されてロシアが勝つと信じている人もいるようですが、現実にはロシアは戦争に負けています。ロシアは多くの犠牲者を出し、経済はボロボロです。


米国、欧州、日本はウクライナに軍事・財政援助を行っています。この援助は、ウクライナが自国を守り、ロシア軍を押し返すのに役立っています。 ただロシアが核保有国であることを忘れるべきではありません。戦争が続けば核がエスカレートする危険性があるということです。しかし私は、ロシアが核兵器を使用するよりも、通常兵器で敗北する可能性の方が高いと考えます。 結論として、ロシアは中国のジュニア・パートナーになりつつあり、最終的にはウクライナでの戦争に敗北することになるでしょう。

そうして、ロシアの無謀なウクライナ侵攻が敗北に終われば、プーチン政権にどれほどのダメージを与えるかわからないです。モスクワの街頭での抗議行動から、明白な政権交代まで、何が起こるかわからないです。

ロシアはすでに侵略と人権侵害で西側諸国から孤立しています。そして中国は、世界的な影響力を拡大するために、ロシアの弱みにつけ込もうとしているようです。ウクライナで敗れたロシアが中国への依存を強めれば、中国がユーラシア大陸を支配し、海外における日米とその同盟国の利益を脅かすことになりかねないです。

これは保守派にとっては耐え難いことです。理想的な結末は、プーチンが失脚し、その後、西側諸国との関係を回復し、中国の手先になることを避ける新たな指導者が誕生することです。

自由で民主的なロシアが西側諸国の仲間入りをする。これは容易なことではないでしょうが、自由と民主主義はこれまでも長い困難を乗り越えてきました。さらに、中国経済はかつてないほど疲弊しています。強さと勇気と信念があれば、米国とその同盟国はロシアを共産主義中国の牙城から引き離すことができでしょう。

ウクライナ戦争の行方により、中国陣営と自由世界がロシアの引き抜き合戦を行い、その結果により世界秩序の再編が起こることなるでしょう。

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2023年9月23日土曜日

中国の軍備増強に対抗して、アメリカは“水面下での対抗策”をここまで進めていた!―【私の論評】IUSS(統合海底監視システム)の強化がインド太平洋地域の安保に革新をもたらす(゚д゚)!

中国の軍備増強に対抗して、アメリカは“水面下での対抗策”をここまで進めていた!

まとめ
  • 米国と中国は、ウクライナ情勢や台湾問題などについて協議したが、対立は深まるばかりである。
  • 中国とロシアは、米国主導の西側に対抗するため、関係を深めている。
  • 米国は、中国の軍事力増強に対抗するため、冷戦時代の海底諜報プログラムを復活させた。
ニューヨークで会談した米国の国務長官ブリンケンと中国の韓正国家副主席

 米国の国務長官ブリンケンと中国の韓正国家副主席は、9月18日に国連総会に合わせて米ニューヨークで会談し、米国は中国に対し、ウクライナに侵攻しているロシアへの軍事支援を控えるよう再度求めた。

 両国は数週間後に高官協議を再開し、対話を続けることで一致したと報じられている。同日、中国の外相王毅はロシアの外相ラブロフとモスクワで会談し、プーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記の首脳会談や米国の安全保障政策について協議したと言われている。

 また、米国が中国に対抗するために冷戦時代の統合海底監視システム(IUSS)を再開し、最新化し、さらに海洋の監視にAIソフトウェアを活用していることも報じられている。

 一方で、中国とロシアの関係は緊密化し、両国は米国主導の西側に対抗する姿勢を強化しており、世界再編を共同で推し進め、途上国での影響力を拡大しようとしている。現時点では正式な軍事同盟はないものの、大きな衝突があればその可能性もあるとされている。

COURRiER Japon

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】IUSS(統合海底監視システム)の強化がインド太平洋地域の安保に革新をもたらす(゚д゚)!

まとめ

  • IUSS(統合海底監視システム)は、米国が旧ソ連の潜水艦を監視するために設置された海底諜報プログラムで、海底に固定されたケーブルを使用して潜水艦の航跡や通信を監視する。
  • 米国国防総省の2023年予算書によれば、IUSSの近代化のために約1兆円の予算が割り当てられており、海底ケーブルの更新や監視船の改良、AIソフトウェアの開発などに充てられる。
  • IUSSの最新化により、高精度で広範囲の監視が可能になり、中国の潜水艦をより正確に位置特定できるようになる。
  • IUSSの強化により、インド太平洋地域においても安全保障が強化されることになる。
IUSSの強化は、インド太平洋地域の安全保障に大きな影響を与え、日本とアメリカの協力を通じて地域の平和と安定を維持し、中国の海洋進出に対抗するための重要な措置となります。


これは「統合海底監視システム(Integrated Undersea Surveillance System)」の略で、1950年代に米国が旧ソ連の潜水艦を監視するために設置した海底諜報プログラムです。海底に固定されたケーブルを使って、潜水艦の航跡や通信を傍受するものです。

IUSSの一環で用いられるとみられる水中ドローン

また、米国国防総省の2023年会計年度予算書によると、海軍の「統合海底監視システムの強化」のための予算は、106億ドル(日本円では1兆超)とされています。この予算は、海底ケーブルの更新、監視船の改良、AIソフトウェアの開発などに充てられるとされています。
米国は、2022年から2023年にかけて、IUSSの海底ケーブルの更新や、監視船やドローンの改良などを進めているとされています。これにより、米国は以下の点で軍事的に有利になると考えられます。以下に、IUSSの最新化による具体的な影響について、解説します。

高精度で広範囲の監視が可能になる

IUSSの最新化により、海底に固定されたケーブルの性能が向上し、より高精度で広範囲の監視が可能になります。これにより、中国の潜水艦が海底に潜んでいる場合でも、米国はより正確に位置を特定できるようになるでしょう。

より早く潜水艦の位置を特定できるようになる

IUSSの最新化により、海底に固定されたケーブルの設置場所が増え、また、より高性能なセンサーが搭載されるようになると考えられます。これにより、中国の潜水艦が海上に出てきた時点で、米国はより早く位置を特定できるようになるでしょう。

潜水艦の通信をより確実に傍受できるようになる

IUSSの最新化により、海底に固定されたケーブルの性能が向上し、また、より高性能なセンサーが搭載されるようになると考えられます。これにより、中国の潜水艦の通信をより確実に傍受できるようになるでしょう。

これらの利点により、米国は中国の潜水艦戦力をより効果的に監視・抑止できるようになると期待されます。

これについては、以下のロイターの記事が詳しく報道しています。

U.S. revives Cold War submarine spy program to counter China

IUSSの海底ケーブルは、北極海から南極海までの世界中の海底に設置されています。特に、中国の潜水艦戦力が活発な太平洋や大西洋の海底に重点的に設置されていると考えられます。

具体的には、以下の海域に設置されているとされています。
  • 北極海:グリーンランド海、ノルウェー海、バーents海
  • 大西洋:北大西洋、地中海、インド洋
  • 太平洋:北太平洋、南太平洋
IUSSの海底ケーブルは、海底に固定されたセンサーと、海中を航行する監視船によって構成されています。センサーは、潜水艦の航跡や通信を傍受する役割を果たし、監視船は、センサーで収集したデータを収集・分析する役割を果たします。

IUSSの海底ケーブルの設置場所は、米国政府の機密情報となっており、具体的な位置は明らかにされていません。しかし、海底ケーブルの設置場所は、中国の潜水艦戦力の脅威を踏まえて決定されていると考えられます。

中国もまた、独自の海底監視システムを構築しています。このシステムは「グレート・アンダーウォーター・ウォール」と呼ばれており、南シナ海を中心に海底ケーブルが敷設されています。このシステムは、音声のみを拾うものとみらています。

米国と中国の海軍力競争は、今後も激化していくと考えられています。

日本は、2022年に「海上監視体制強化事業」を開始し、海底監視能力の強化を進めています。この事業では、海底ケーブルや無人船などの新たな技術を活用した海底監視システムの整備が計画されています。

海底ケーブルを用いた海底監視システムは、米国のIUSSと同様に、海底に固定されたケーブルを使って、潜水艦の航跡や通信を傍受するものである。電磁波を用いた海底監視システムは、海中の電磁波を観測することで、潜水艦の位置や航跡を特定するものです。

日本政府は、これらの新しい海底監視システムを活用することで、中国の海洋進出に対抗し、日本の海洋権益を守る体制を整えていきます。

なぜ、日米や中国が海底監視システムを構築するかといえば、それは現代海戦の主役は潜水艦だからです。

艦艇には二種類しかありません。水上艦艇と潜水艦です。水上艦艇は、監視衛星などでも簡単に発見できます。水上艦艇は、大型空母であっても、現代海戦においては、ミサイルの大きな目標に過ぎません。発見されれば、すぐに撃沈されます。無論対抗措置はありますが、ミサイルで飽和攻撃などされてしまえば、防ぎようはありません。

中国のミサイルに攻撃される米空母(想像画)

しかし、潜水艦は違います。そもそも、現在の監視衛星は、水上艦艇を発見することはできますが、水中の潜水艦は発見できません。無論、哨戒機や哨戒挺は特定の広さの海域に予め潜水艦が存在するとわかっている場合は、これを発見することはできますがそうでない場合は、難しいです。

潜水艦が水中に潜み、駆動装置などを駆動させず水中に潜んだり、潮流に乗って移動している場合は、これは発見するのはかなり難しいです。ただし、駆動しはじめると、音がでたり、海水温が微妙に変化したり、微弱な電磁波がでたりするので、これを発見することができます。

しかし、広大な海で、捜索範囲が限られている、哨戒機や哨戒挺でこれをすべて発見することは不可能です。だからこそ、海底監視システムが必要なのです。そうして、米国による海底システムの強化は、現在でも世界トップクラスの米国の対潜水艦戦争(ASW:Anti Submarine Wafare)をさらに高めることになり、中国の海洋進出をより困難にすることになります。

現代海戦の主役潜水艦 写真は日本の潜水艦「はくげい」

特に米国のIUSSの強化は、特にインド太平洋地域の地政学的景観に大きな影響を与える可能性が高いです。

中国は最近では、空母を建造したり、原潜を建造したりして、海軍力の増強を図ってきました。しかし、米国は大規模に艦艇を増やしたり、潜水艦を増やすことはしてきませんでした。海底監視システムを強化することを優先したのでしょう。

米国の海洋監視システム(IUSS)の強化は、インド太平洋地域に大きな影響をもたらすことが予想されます。IUSSは、海底監視だけではなく、海底地震や津波のモニタリング、違法漁業の取り締まりなど、多くの情報を提供しています。

日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表では、日本と米国はインド太平洋地域へのコミットメントを強調し、地域の平和と安全、繁栄における日米同盟の重要性を再確認しています。IUSSの強化は、変化する安全保障の課題に適応し、同盟を現代化し、共同の能力を向上させるための重要な一環です。

IUSSはインド太平洋地域における安定を維持し、必要に応じて行動を起こすための協力の一環として位置づけられています。また、自由な通商と国際法の尊重、航行・上空飛行の自由なども再確認されています。

米国は東シナ海での中国の活動にも懸念を表明し、尖閣諸島や南シナ海における中国の不法な海洋権益に対しても強く反対しています。米国は、日米が協力し、インド太平洋地域で共有する安全、平和、繁栄に向けた取り組みにコミットしています。また、日本、米国、豪州、インドの「Quad(クアッド)」協力も非常に重要視しています。

IUSSの強化により、地域全体の安全保障が強化され、地政学的なバランスが改善され、私たちの未来に向けた希望がより一層高まることになるでしょう。

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2023年9月10日日曜日

米国で暗躍のロシアのスパイ、「依然過多な状態」 FBI長官―【私の論評】ロシアに対抗するためにも、スパイ防止法を制定すべき(゚д゚)!

米国で暗躍のロシアのスパイ、「依然過多な状態」 FBI長官

まとめ

  • 米国内で活動するロシアのスパイの人数は、依然として多すぎる。
  • ロシアは、伝統的な情報機関要員だけでなく、外国人を支援者として取り込む「連絡要員」も動かしている。
  • 米政府は、プーチン大統領率いるロシアを敵対国として位置づけており、この伝統的な防諜上の懸念が再び強まっている。

 米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は、米国内で活動するロシアのスパイの人数は、摘発する努力を重ねているものの、依然として「多すぎる」と危機感を示した。

FBIのレイ長官

 レイ長官は、ロシアの伝統的な防諜上の脅威は大きくなっており、米国は可能な限りの手段で阻止や封じ込めを試みていると述べた。

 米国は、2018年に情報機関要員と割り出したロシア人外交官60人を追放し、シアトルにある領事館の閉鎖も求めた。

 ロシアが動かすスパイは、伝統的な情報機関要員だけでなく、外国人を支援者として取り込む「連絡要員」も含まれる。

 米国は、ロシア諜報機関を支援した疑いでメキシコ人を逮捕したほか、オランダの情報機関は、ジョンズ・ホプキンス大高等国際関係大学院で学んでいたロシア軍の諜報要員の身元を公に暴露した。

 米国内に潜むロシア人のスパイの脅威は、冷戦時代から存在していたが、米政府はプーチン大統領率いるロシアを敵対国として位置づける姿勢を強めており、この伝統的な防諜上の懸念が再び米指導部内に強まっている。

【私の論評】ロシアに対抗するためにも、スパイ防止法を制定すべき(゚д゚)!

まとめ
  • 日本に約120人のロシアのスパイが潜伏しているとみられている。
  • ロシアのスパイは、ハイテク企業の社員を標的にしている。
  • ロシアのスパイは、道を尋ねるふりをして話しかけ、飲み友達になるなどして信頼を得た後、社外秘の資料や情報を持ち出そうとする。
  • 警視庁は、ロシアのスパイの手口に注意喚起し、対策を講じるよう呼びかけている。
  • 日本政府は、ロシアのウクライナ侵攻に対応して、在日ロシア大使館の外交官8人を国外追放したが、ロシアはこれに報復措置をとった。
  • 日本は、ロシアのスパイ活動に対抗するために、スパイ防止法を制定し、情報機関の監視・モニタリングの権限を拡大するなどの対策を講じる必要がある。
ロシアのスパイは、日本各地で約120人が暗躍していると言われています。彼らは、太平洋戦争直前まで日本を舞台に活躍したソ連の伝説的スパイ、リヒャルト・ゾルゲの後輩たちです。

ロシアのスパイは、飲み屋街や展示会などの出会いの場で連絡先を交換し、協力者にふさわしい人物を抽出します。協力者にすべき人物が決まったら、信用させ、術中にはめていく「デベロッピング(開発)」へ移行するのが定石です。

警視庁は、ロシアのスパイがハイテク企業の社員に接触していることを注意喚起しています。彼らの手口を知ることが身を守る第一歩です。

警視庁

警視庁は、ロシアのスパイがハイテク企業の社員に接触して、企業の技術情報を盗もうとしているとして注意喚起しています。

警視庁によると、ロシアのスパイは、以下のような手口で接触してきます。
  • 道を尋ねるふりをして、社員に話しかける
  • 飲み友達になるなどして、社員を手なずける
  • 社員の信頼を得た後、社外秘の資料や情報を持ち出させる
警視庁は、このような手口に注意し、不審な人物から接触があった場合は、警察に相談するよう呼びかけています。

具体的には、以下のような点に注意することが大切です。
  • 道を尋ねるふりをして話しかけてくる人には、用心する
  • 知らない人から飲み会に誘われたら、断る
  • 仕事以外のことで、社外秘の資料や情報を持ち出すことはしない
また、警視庁は、ハイテク企業の社員に対して、以下の対策を講じるよう勧めています。
  • 情報セキュリティ対策を徹底する
  • 社員への教育を徹底する
情報セキュリティ対策では、社内ネットワークのセキュリティを強化したり、社員への情報セキュリティ教育を実施したりすることが重要です。また、社員への教育では、スパイの手口や、情報漏洩の防止策などを周知することが大切です。

ロシアのスパイというと、ロシア人を思い浮かべてしまう人も多いですが、日本国内で工作員を雇っている可能性もありますし、さらにロシア連邦は広大であり、特に極東などでは、中央アジア系の人も多く、見かけは日本人のような人もいます。自分は、ロシア人とは関わりがないから大丈夫と考えるべきではありません。

警視庁の注意喚起は、ハイテク企業の社員だけでなく、すべての国民にとって重要な情報です。ロシアのスパイの存在を認識し、対策を講じることで、情報漏洩を防ぎ、国家安全保障を守ることにつながります。

日本政府は、ロシアのウクライナ侵攻に対応して、2022年4月20日午在日ロシア大使館の外交官8人を国外追放しました。一部の外交官は諜報機関に所属していた可能性が指摘され、日本におけるスパイ活動の規制が不十分であることが問題視されています。

ロシア大使館


国際情勢の不安定化とともに、日本の国家機密や同盟国の情報保護が焦点となり、政府に法整備と諜報・防諜体制の強化が求められています。

ロシア外務省は、4月21日、日本政府の外交官追放に報復措置として、日本大使館の外交官8人を国外追放すると発表しました。また、ロシアは、5月4日、岸田文雄首相や林芳正外相ら日本人63人を無期限で入国禁止とする制裁措置を発表しました。

一部専門家は、ロシアの外交官が日本で反米感情を高め、日本政府との対立を助長するための工作活動に関与していた可能性を指摘し、日本にとってはロシアの対抗措置によるリスクが限定的であると述べています。

戦後から日本での対日工作が何度も発覚しており、機密情報の窃取だけでなく、ロシアに有利な主張をする人物やメディアも問題とされています。そのため、日本は国家の諜報活動に対する意識を高め、ロシアの情報機関の活動を詳細に監視し、適切な法律や措置を検討すべきとの意見が示されています。

日本でも、国内に潜むロシア人のスパイの脅威は、冷戦時代から存在していましたが、日本政府はプーチン大統領率いるロシアに対峙する姿勢を強めており、この伝統的な防諜上の懸念が日本でも強まりつつあるとみられます。

以下にロシア関係の主なスパイ事件とみられるものをあげます。

1997年 翻訳業の男性が、ロシア対外諜報庁(SVR)機関員と接触し、未公開のパソコン関連機器のマニュアルを渡し、書類送検された。

2000年 防衛庁(当時)防衛研究所勤務の海上自衛隊三佐が、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)所属の大使館付武官に防衛庁の戦術概説など秘密資料を渡したとして逮捕された。

2002年 GRU所属の在日ロシア通商代表部元部員が、元航空自衛隊准尉の防衛装備品会社社長に対して、米国製戦闘機用ミサイルの資料を要求していた。元部員が書類送検された。

2008年 内閣情報調査室職員が、GRU所属とみられる在日ロシア大使館2等書記官に内政情報を漏らし、職員と書記官が書類送検された。

2020年 ソフトバンク元社員が、在日ロシア通商代表部元職員の工作を受けて機密情報を不正取得し、逮捕された。元職員も書類送検された。

ロシアのスパイ活動のような外国情報機関の脅威に対抗するために、日本は包括的なスパイ防止法を優先的に成立させるべきです。既存の法律や執行メカニズムを強化することで、ある程度の効果は得られるかもしれないですが、この種の秘密工作と適切に戦うためには、専用の反スパイ法が必要です。

ロシアの女性スパイ アンナ・チャップマン

反スパイ法に含まれるべき重要な条項には、以下のようなものがあります。機密情報の窃盗や送信、機密サイトの監視、政府機関に潜入するための偽装工作など、スパイ行為を明確に犯罪化すること。これにより、日本の当局は外国人スパイを訴追する手段を得ることになります。
  1. スパイ行為で有罪判決を受けた者には、長期の実刑判決や多額の罰金を含む厳しい刑事罰を与えるべきです。強い刑罰は最高の抑止力です。
  2. 日本の政治や世論を操作することを目的とした外国のプロパガンダ、偽情報、影響力キャンペーンを禁止すべきです。ロシアはこのような手口を使っているため、非合法化することでその影響を抑えることができます。
  3. スパイ活動を発見するために、日本の情報機関に監視・モニタリングの権限を拡大することを認めるべきです。慎重に規制されれば、これらの新しい権限は情報機関に必要な手段を与えることになります。
  4. 外国のスパイを特定し、監視し、逮捕するために、情報機関と法執行機関との間の緊密な協力を促進すべきです。官僚主義的な障壁を取り払い、情報共有を促進することが重要です。
  5. スパイの疑いを通報した内部告発者を報復から守るべきです。彼らの勇気は罰せられるのではなく、奨励されるべきです。法律で彼らを保護すべきです。
  6. 新たな権限や権限の乱用を防ぐため、適切な監督と説明責任を確保すべきです。頻繁な監査と透明性が重要です。
反スパイ法は、慎重に考案され実施されれば、ロシアの諜報活動の脅威に対抗するための実質的な新しい手段を日本の当局に与えるはずです。

資源の拡大、厳しい制裁、サイバー防衛といった他の措置と組み合わせれば、日本におけるロシアのスパイ活動を大幅に妨げることができるでしょう。

そうして、これは、ロシアに対してだけではなく、他国のスパイについても同様のことがいえます。

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2023年8月18日金曜日

中露艦艇が沖縄本島と宮古島間を初めて同時通過 防衛省「重大な懸念」―【私の論評】中露艦隊の行動は、国内向けの虚勢とプロパガンダの発露か(゚д゚)!

中露艦艇が沖縄本島と宮古島間を初めて同時通過 防衛省「重大な懸念」

東シナ海を航行する中露の合同艦隊 AI生成画像

 中国とロシアの海軍艦艇が、沖縄本島と宮古島の間を同時に通過するのが、初めて確認された。

 防衛省によると、17日、中国とロシアのミサイル駆逐艦やフリゲートなどあわせて11隻が、太平洋から沖縄本島と宮古島の間を通って東シナ海に入った。

 両国艦艇の同時通過を確認したのは初めて。

 艦艇の大半は先月、日本海で射撃や陣形運動などの共同訓練を行っていて、その後、太平洋での「合同パトロール」に参加したとみられる。

 防衛省は「我が国に対する示威行動を明確に意図したもので、安全保障上、重大な懸念だ」として警戒・監視を続けている。

【私の論評】中露艦隊の行動は、国内向けの虚勢とプロパガンダの発露か(゚д゚)!

これは明らかに、中国共産党とロシアの侵略者による挑発的な行動であり、米国とこの地域の米国の同盟国である日本を威嚇するためのものです。

中国とロシアの同盟関係は便宜的なものであり、真のパートナーシップではありません。東シナ海に両国海軍の艦艇を通過させるは、その海域の支配権を主張し、力を誇示することを意味しています。

便宜的な中露の同盟関係  AI生成画像

これらの権威主義的な政権による好戦的な行動の最新形態であるとみるべきです。米現政権が弱腰であることを利用し、勢力圏を拡大しようとしているとみられます。そのような姿勢の前では、弱さを見せるわけにはいかないです。

米国は自信と強さを示し、自国の海軍プレゼンスを高め、日本や台湾のような同盟国を守ることを明確にすべきです。日本もそうです。

米国と日本を含む同盟国はかつてソビエトを打ち破り、今度は中国に対抗しています。このことは、あまり日本では認識されていませんが、米国は冷戦中にオホーツク海のロシアの原潜の監視活動を依頼し、日本はその依頼に応えて、監視活動を実施し、その結果として、米国はソ連の原潜をオホーツク海で囲い込み、日本は対潜哨戒能力を飛躍的に高めました。

力の均衡による平和

冷戦中にも発揮された力の均衡よる平和。それが、中露の指導者たちに理解できる唯一の現実だといえます。日米は軍備をさらに増強し、自由と民主主義という同盟国の価値観を守り、共産主義の蔓延を食い止めなければならないです。私は、保守的なリーダーシップの下で、日米がこの難局に立ち向かい、何世代にもわたって平和と繁栄を確保することを信じています。

私たちは中露による、砲艦外交や戦狼戦術に怯むことはないです。米海軍は依然として海を支配する力であり、日本の海軍力も強力であり、中露が限度を超えた行動をとれば、それを使って牽制することができます。

中国とロシアによる今回の共同海軍行動は、無策で、主に見せかけのものに思えます。中露の対潜水艦戦能力(ASW:Anti Submarine Warfare)は明らかに日米より劣っており、東シナ海での実質的な海上作戦は中露にとって非常に危険なものです。

日米はほぼ間違いなく彼らの動きを注視しており、追跡することで貴重な情報を得られるでしょう。日本による 「危険な 追跡」に対する中国の不満は噴飯ものといえます。

国際水域はすべての人に開かれており、海軍は日常的にその地域の潜在的な敵対者の動きを監視しています。これは標準的な手順であり、決して挑発的なものではありません。

すべての人に開かれた国際水域 AI生成画像

海軍艦艇を敏感な海域に送り込み、挑発しているのは中国とロシアです。彼らの抗議は空虚です。中国とロシアが現時点で東シナ海で軍事的優位性を真に発揮することはできません。中露には日米同盟に本気で挑むだけの海軍力も技術力もありません。

これはむしろ、国内向けの虚勢とプロパガンダの発露のように思えます。これは中露の期待とは裏腹に日米間の連携の強さとパートナーシップの誇示の良い機会になったかもしれません。

日米両国は、中露艦隊の監視を続けるべきであり、中国からの苦情は無視すべきです。好戦的な中国を前にして後退したと見られてはならないです。同時に、直接的な対立や挑発は避けるべきです。

日米は、中露艦隊の情報を集め、こちらの優位性を示し、それ以外はほとんど気に留めず、賢く振る舞うべきです。日米は優位に立っており、慎重かつ毅然とした行動によってそれを維持しなければならないです。

日米の保守派は、力による平和の重要性を理解しています。中露の行動は、本当の脅威とはいえないただの威勢の良い進軍ラッパのようなものかもしれません。しかし、それでも警戒を怠らず、毅然とした態度で臨まなければならないです。

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2023年7月25日火曜日

釜山に寄港した米戦略原子力潜水艦のもう一つの目的は「中国抑止」―【私の論評】核を巡る北朝鮮やウクライナの現実をみれば、日本には最早空虚な安保論議をする余地はない(゚д゚)!

釜山に寄港した米戦略原子力潜水艦のもう一つの目的は「中国抑止」

マイケル・マッコール米下院外交委員長

 マイケル・マッコール米下院外交委員長は、米国の戦略原子力潜水艦が釜山(プサン)に寄港したのは、北朝鮮だけでなく中国を抑止する狙いもあると述べた。

 マッコール委員長は、米国がなぜ今韓国に戦略原子力潜水艦を展開したと考えるかという質問に「攻撃を抑止するために今必要な戦力投射だ」としたうえで、「我々は日本海(東海)にロケットを発射する北朝鮮だけでなく、中国の攻撃性も注視している」と答えた。また、中国が台湾を訪問した自分をはじめとする米国議員たちを威嚇するため、艦艇と戦闘機で台湾を包囲した事例が中国の攻撃的な態度を示していると述べた。

 マッコール委員長はさらに「北朝鮮は我々がそこにいて、原子力潜水艦を持つ我々の方が優位に立っていることを認識すべきだ」とし、「我々は北朝鮮と習(近平)主席に、軍事的に攻撃的な行動には代償が伴うことを信じさせなければならない」と語った。米議会の代表的な対中タカ派のマッコール委員長のこのような発言は、核ミサイルを装着した戦略原子力潜水艦の韓国への寄港が、北朝鮮だけでなく中国をけん制する意図と効果を持っていることを示したものといえる。

 マッコール委員長はこのような脈絡で、朝鮮半島に配備あるいは展開される米軍の戦力の役割は、中国の台湾侵攻の可能性と関連し北朝鮮を抑止するためだと説明した。また「そこ(韓国)に(米軍)太平洋司令部艦隊がいるのは、(中国と)台湾の衝突発生時に北朝鮮を阻止するため」だとし、「そのような衝突時に北朝鮮がミサイルを発射すること」を韓国とともに抑止しなければならないと述べた。台湾有事(戦争)と朝鮮半島有事は事実上連動しているため、韓米がともにこれを抑止しなければならないという見解だ。マッコール委員長は、北朝鮮は米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有しているが、ここに装着できる核弾頭はまだ保有していないと説明した。

 一方、戦略原子力潜水艦が釜山に寄港し、韓米初の核協議グループ(NCG)会議が開かれた18日、板門店(パンムンジョム)の軍事境界線を越えて越北した在韓米軍のトラビス・キング二等兵については、亡命したというよりは「自らの問題から逃げた」と語った。また「ロシア、中国、イランは米国人を抑留した際、特に軍人を抑留した際、(送還の)見返りを求めてきた。私はそれを懸念している」と述べた。

この記事は、元記事の引用です。詳細を知りたい方は元記事をご覧になってください。

【私の論評】核を巡る北朝鮮やウクライナの現実をみれば、日本には最早空虚な安保論議をする余地はない(゚д゚)!

上の記事で、「マイケル・マッコール米下院外交委員長は、米国の戦略原子力潜水艦が釜山(プサン)に寄港したのは、北朝鮮だけでなく中国を抑止する狙いもあると述べた」とされていますが、これと同じような主張は従来からこのブログでも何度かしてきました


しかし、このような発言は、私の知る限りでは、今回のマッコール米下院外交委員長が初めてではないかと思います。

ただ、軍事的にはこれは当然のことであり、韓国に原潜などの戦略資産を配置することは、当然のことながら北朝鮮だけではなく中国を意識したものでもあり、中国に対する牽制という意味あいもあります。多くの軍事筋の専門家は当然このようにみてきましたが、今回改めてそれが公に示された形となりました。

朝鮮半島というと、もう一つ、一般に知られていないというか認識されていないこともあります。それは、北朝鮮とその存在が、結果として朝鮮半島に中国が浸透するのを防いできたということです。これは、米国の戦略家ルトワックも主張しています。

エドワード・ラトワックは、地政学や国際関係について幅広い著作を持つ著名なアメリカの軍事戦略家です。ルトワック氏は北朝鮮について、その核兵器開発が中国の朝鮮半島支配を抑止していると主張しています。

中国が北朝鮮の経済と政府を支配しているようにみえながら、現実には北朝鮮の核兵器は中国が北朝鮮を完全に吸収することを妨げているのです。

エドワード・ルトワック氏

ルトワックは以下のように語っています。

「北朝鮮の核兵器は、どんな条約よりも確実に北朝鮮の主権を保証している。 金正恩の核瀬戸際外交は、あらゆる方向からの金正恩の支配に対する脅威を抑止している。 北朝鮮の通常兵力は中国にとって深刻な挑戦にはならないが、その核兵器は、中国がそうでなければかけうる圧力から北朝鮮を守っている」。

言い換えれば、もし北朝鮮に核兵器がなければ、中国は北朝鮮を意のままに操り、事実上、中国の衛星国家として、はるかに大きな影響力を持つことになります。しかし、金正恩は中国を攻撃できる核兵器を持っているため、習近平は慎重に行動しているのです。

中国は、金正恩を過度に追い詰めることによる不安定化と、それによる中国の犠牲を恐れています。だから、現状を維持するために金正恩体制を支え続けているのです。これはなかなか理解しにくいかもしれませんが、ルトワックによれば、北朝鮮の核による抵抗は、中国が朝鮮半島全体を支配することを実際に妨げているのです。

中国と交流する北朝鮮人民 AI生成画像

北朝鮮の核兵器は、中国が北朝鮮を慎重に扱うべき独立した存在として扱いつつも、関与しつづけるというアプローチを取らざるを得なくしたのです。つまり、金正恩の核兵器は、他の面で中国に深く依存しながらも、この意味で北朝鮮の自主性を強化したのです。

核瀬戸際政策による抑止力が、北朝鮮の主権を存続させているのです。これは挑発的な議論でありますが、北朝鮮と中国、そして核兵器の影響力の間の地政学的力学に対する戦略的論理と洞察に満ちたものです。

ルトワックは、米国が半島の非核化を目指しているとしても、国家間の複雑な関係がいかに意図しない結果を招きかねないかを浮き彫りにしています。

北朝鮮とその核が結果的に、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいることを考えると、ウクライナがソ連崩壊後にも核兵器を保持していれば、現在のような苦境に陥らなかった可能性が高かったかもしれません。

北朝鮮と同じように、核兵器はロシアのウクライナに対する侵略を抑止できたかもしれないです。ウクライナが1991年にソ連の核兵器を継承した当時、ウクライナは世界第3位の核兵器保有国でした。しかし、ウクライナは1994年のブダペスト覚書で、ロシア、アメリカ、イギリスからの安全保障の保証と引き換えに、これらの核兵器を放棄しました。

これは致命的な誤りでした。もしウクライナが核兵器を保持していれば、ロシアが2014年にクリミアを併合したり、ウクライナ東部の親ロシア派分離主義者を支援したりすることはなかったでしょう。

ロシアがウクライナに侵攻すれば、北朝鮮と同じ抑止力である核報復を受けることになります。核保有国が侵略されることはほとんどありません。しかし、ウクライナは北朝鮮とはいくつかの重要な違いがあります。

ウクライナは西側諸国との緊密な関係を求めており、核兵器を放棄するのは信頼を築くためだでした。核兵器を保持することは、ウクライナを孤立させることになりかねませんでした。また、ウクライナがソ連の核を適切に確保し、維持できたという保証もありませんでした。

ロシアはソ連の後継国として、武力で核を奪おうとしたかもしれないです。それでも、ウクライナが核武装すれば、東欧の戦略的景観とロシアの計算が決定的に変わっていたでしょう。キエフが核兵器で対応できるのであれば、プーチンが直接対決を選ぶとは思えません。

そのため、厄介な複雑さが生じたかもしれないですが、核抑止力理論によれば、ウクライナがそのような兵器を保有していれば、ロシアはそう簡単にウクライナの主権を侵すことはないでしょう。

この教訓は、核拡散は時として、強力な敵対勢力を抑止することで安全保障を強化する可能性があるということです。これはすぐには理解し難いことではありますが、「安全のための核兵器」という論理は明らかに北朝鮮にも当てはまるし、ウクライナの場合にも当てはまるでしょう。

現在の状況を考えると1994年のウクライナの決断は重大な過ちであり、ロシアの侵攻の余地を残してしまったようです。このような複雑な地政学的問題には、意図せざる結果の法則が立ちはだかります。もしウクライナが核兵器を放棄せずに保持していたら、おそらくロシアはクリミアやウクライナ東部に干渉することはなかったかもしれません。

北朝鮮と同じように、核兵器がウクライナを守っていたかもしれないです。ただ、結局のところ、どのような展開になったかを確実に知る方法はないです。

しかし、これについて我々が参考にすることはできます。核武装国ロシアが非核武装国ウクライナを侵略しても米国はロシアとの戦争に参加しませんでした。ブダペスト協定があるにも拘らずバイデン大統領はエスカレートして米露の核戦争になっては困るからだと言い訳をしました。これは、核武装国中国が非核武装国日本を侵略しても米国は戦闘に参加しない可能性があることを明らかにしたと思います。

これは日本の非核政策に疑問を投げかけるものです。日本が核抑止力を持つことは、自国の核兵器によってであれ、米国との核シェアリング協定に参加することによってであれ、大きな利益をもたらすと考えられます。

中国が北朝鮮からの核報復を恐れているように、日本が核兵器を持てば、中国は武力で日本の領土を奪おうとはしないでしょう。議論の余地はありますが、核兵器は、核武装した敵対国に直面したときに、究極の国家安全保障を提供するものでもあります。

日本には、その気になれば核兵器を迅速に開発できる技術的能力があります。インフラと濃縮ウランが整備され、安全保障環境が悪化した場合にのみ核兵器が組み立てられる「閾(しきい)値能力」を主張する人もいます。

しかし、核兵器開発の検討でさえ、中国を刺激し、関係を悪化させる可能性もうあります。安倍元総理の主張した米国との核シェアリングという選択肢は、良い妥協案かもしれないです。米国は、共同管理の下で日本国内に核兵器を配備し、日本へのいかなる攻撃にも同盟国が核で対抗することを明確にすることができます。

安倍元総理

これは、抑止力を維持しつつ、日本の単独行動に対する懸念に対処するものであります。日本の核武装への動きは、日本の平和主義憲法や世界的な核不拡散の努力を傷つけるという批判がもあります。

また、日本が独自の核兵器を保有すれば、エスカレーションの危険性もあります。しかし、日本の安全保障は高邁な理想以上の現実であり、中国の野望を抑止できなければ、存亡に関わる結果を招きかねないものです。

日本は自国の防衛を確保するために、核シェアリング、または独立した核抑止力を含むあらゆる選択肢を模索することが賢明です。空虚な保証に基づいた政策は、国家の自殺行為となる危険があります。もし中国が、侵略される同盟国をジョー・バイデンが助けないと見れば、日本の核兵器だけが最終的に中国の核兵器からの安全を保証するかもしれないです。

核拡散が進む世界は望ましくないですが、耐え難い脅威に直面したときには必要なこともあります。日本の指導者たちは、他国の征服から国を守るという第一の義務を考えなければならないです。

二大政党制のせいで、日本支援に関しても一枚岩とはいえない、日本にとっては気まぐれとも見える米国の支援に頼るのは、あまりにも危険であるといえます。賛否両論はありますが、核シェアリングや日本独自の核兵器開発は、日本にとって最も安全な選択肢かもしれないです。日本にはもはや北朝鮮やウクライナの現実をみてもなお、空虚な安保論をする余地はないと思います。

私は、もし安倍元総理がご存命であれば、上で述べたのと同じような論議をして、核シェアリングを重要性をさらに説いていたと思います。

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2023年7月22日土曜日

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対中強硬派の元米政府高官、台湾有事に備えた軍事力強化を指摘 ウクライナ積極的支援の岸田首相の戦略は「行きすぎだ」

エルブリッジ・コルビー氏

 アメリカのバイデン大統領は閣僚らを相次いで中国に派遣し、緊張が続く米中関係の安定化を模索しています。一方で、対中強硬派の元政府高官からは、台湾有事に備えた軍事力の強化を急ぐべきだとの声も出ています。  トランプ政権で国防副次官補として、対中国戦略の策定に関わったエルブリッジ・コルビー氏は、「中国との競争の管理」を掲げるバイデン政権の政策は、中国が台湾侵攻を真剣に検討している場合には機能しないと指摘しました。  コルビー元国防副次官補「最も重要なことは中国に対し、大規模な紛争を起こすことは、自国の利益にならないと思わせることだ。重要なのは『拒否戦略』、つまり軍事力の行使は失敗すると分からせることだ」  コルビー氏はウクライナへの軍事支援をアメリカが過剰に負担していると指摘し、むしろ対中国のための軍事力増強を急ぐべきだと指摘しました。また、経済制裁によって、中国の台湾侵攻の決意を変えることはできないとも分析しています。  一方、ウクライナを積極的に支援することで、対中国での欧米諸国の協力を引き出そうとする岸田首相の戦略について「行きすぎだ」と警鐘を鳴らしました。  コルビー元国防副次官補「政策として(欧米からの)感謝に訴えることは賢明ではない。重要なのは軍事力だが、それがウクライナに費やされている。私が日本や台湾なら『違う、ここ(インド太平洋)に注目してくれ』と言う」  コルビー氏は、その上で、日本が防衛費をGDP(=国内総生産)の3%にまで引き上げることが望ましいとしています。

【私の論評】同盟国からの喝采ではなく、中国に対抗する力による平和こそが日本が歩むべき道(゚д゚)!

上の記事のコルビー氏の指摘は正しいと思います。もし中国共産党が、米国が自分たちに甘くなっているという考えを持てば、権威主義的支配をさらに拡大するチャンスだと考えるでしょう。

中国共産党博物館

台湾への侵攻を米国は容認できません。台湾とこの地域の同盟国を守ることを明確にする必要があります。外交官を中国に派遣して世間話をするのは良いことですが、軍事的な態勢をしっかりと示すことでそれを裏付けるべきです。暴君が理解できる唯一の言語は力です。バイデン大統領は、ソ連との戦いで大いに役立った、力による平和という実績ある戦略に従うのが良いでしょう。弱さは侵略を招くのみです。

先日もこのブログで紹介したように、6月22日付の米ワシントン・ポスト(WP)紙は「米国のアジア同盟国は静かに中国への対抗に参加」との同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンの論説記事を掲載し、中国と対峙する上で、サリバン大統領補佐官訪日と初の日米比韓高官のミニラテラル開催はブリンケン国務長官の訪中より重要だと指摘しています。

アジアにおける同盟関係は、中国の地域支配の野心に対抗するための基本です。日本、韓国、インドのような同盟国との会談は、リベラルな外交官による空虚な話よりもはるかに強いメッセージを北京に送ることになります。

米国が同盟国と肩を並べることは、インド太平洋地域の平和と繁栄に対する米国のコミットメントの強さを示すものです。米国はあまりにも長い間、中国との誤った関与政策を優先し、アジアの同盟関係を軽視してきました。

米国は、中国が米国を経済的に利用し、世界中にその勢力を拡大することを許してしまいました。今こそ米国は、民主主義の価値観を共有する同盟国の重要性を再認識すべき時です。インド、日本、韓国などとともに、中国の侵略に対抗し、台湾と香港の自由を守り、この地域の自由貿易を促進することができます。

バイデンはジョシュ・ロギンのような声に耳を傾け、同盟関係を中国戦略の中心に据えるのが賢明でしょう。バイデン政権による中国との協力や競争の管理という話はすべて失敗する運命にあるといえます。

中国はそれを弱点と見なし、利用するでしょう。ロナルド・レーガン氏や安倍晋三氏は、平和は強さと同盟国との結束によってもたらされることを知っていました。バイデンは彼らの知恵に従うべきでしょう。同盟こそが勝利への鍵なのです。

ウクライナへの軍事支援を米国が過剰に負担しているというコルビー氏の指摘は、正しいです。ウクライナのような遠い紛争に資源を浪費するのではなく、中国の侵略を抑止することが最優先されるべきです。なぜなら、ロシアの人口とGDPは両方とも中国の1/10に過ぎず、中国と比較すれば、ロシアの脅威ははるかに小さなものであるからです。

中国がアジアで、ロシアのような振る舞いをすれば、世界に計り知れない惨禍をもたらすのは、確かです。眼の前の戦争ばかり注視して、より大きな脅威を無視することはできません。それに、バイデンの対露政策は完璧に間違えていると思います。戦争前に、ロシアがウクライナに侵攻した場合、米国単独でもウクライナに軍を派遣すると表明すべきでした。

習近平(左)とプーチン(右)

中国を抑止できる唯一の方法は、太平洋における強力な軍事力の誇示以外にありません。制裁や厳しい言葉は無意味です。そもそも、彼ら自身があらゆる権力闘争を力で切り抜けて指導者になったのですから、中国の共産主義指導者は力しか理解しません。米国は、海軍力を急速に増強し、この地域のミサイル防衛を強化し、台湾へのいかなる動きも米軍の全戦力で迎え撃つことを明確にすべきです。これについては、安倍元総理も暗殺される直前にそうすべきと、語っていました。

民主党政権は過去に予算削減と無駄遣いで軍備を弱体化させました。それは終わらせなければならないです。台湾と同盟国を守るために、より多くの艦船、飛行機、軍隊が必要です。中国への依存を許してしまった今、経済的な脅しは空虚に響きます。

コルビー氏が言うように、中国が台湾を奪取する決意を固めているのであれば、米軍の大規模な報復という信頼できる脅威だけが、彼らの台湾侵攻の意図を砕くことになるでしょう。バイデン氏は彼のアドバイスに耳を傾けるのが賢明でしょう。

アジア以外で資源を浪費すぎるのをやめ、アジアにおける軍事力を再構築し、台湾を防衛することを明確にし、それを貫く準備をすべきです。それが中国の野心に対抗する唯一の方法です。バイデンが必要なことをできないのであれば、おそらく、米国はそれをするリーダーを見つける時といえるかもしれません。米国の安全保障は、力による平和にかかっているのです。

岸田首相の戦略についてもコルビー氏は鋭い洞察力を発揮しているといえると思います。ウクライナを支援することで欧米の機嫌を取ろうという日本の戦略は近視眼的ともいえます。日本の安全保障は、欧州の同盟国から喝采を浴びることではなく、中国からの侵略を抑止することにかかっているのです。

日本がウクライナ等に費やそうとする資源は、台湾を守り中国に対抗するために日本の軍事力を高め、米国と協力することに費やした方が賢明です。コルビー氏の言う通り、日本は同盟国からの感謝や空約束に頼るべきでありません。

バイデン大統領(左)と岸田首相(右)

日本は、自国は自分たちで護るという気概をみせるべきです。防衛費をGDPの3%以上に増やし、海軍力とミサイル戦力を増強し、この地域における米国の軍事戦略と一体化すべきでしょう。ウクライナをめぐる同盟国へのアピールは、日本と台湾が直面している真の脅威から目をそらすものです。

中国は、米国の影響力を西太平洋から押し出すために積極的に軍備を拡大しており、台湾はその正面に位置していまい。安倍元総理大臣が語ったように、台湾有事は日本有事でもあるのです。

このブログでは、中国による台湾侵攻は難しいことを何度か述べてきました。それは、あまりに多くの人が、中国の台湾侵攻が簡単と思い込んでいるようなので、軍事的にはそうではないことを強調したかったからです。実際簡単であれば、もうとうに侵攻していることでしょう。

ロシアのウクライナ侵攻も軍事的にはかなり難しいことも強調しましたが、現在のロシアのウクライナ侵攻はまさにその通りの展開になっています。多くの都市をミサイルで破壊しつくしてもなお、ロシアはウクライナで目的を達成できていません。

確かに、軍事的には侵攻は難しいのですが、中国が台湾を破壊するのは容易いです。台湾は、ウクライナよりははるかに領土が狭いため、ウクライナよりもはるかに破壊はし易いです。ロシアがいままで、ウクライナに打ち込んできたミサイルに相当するミサイルを台湾に打ち込めば、台湾の領土のほとんどは破壊しつくされるでしょう。そうして、中国は台湾を破壊さえすれば、簡単に侵攻できると、勘違いする可能性もあります。

勘違いしても、いざ本当に侵攻ということになれば、中国人民解放軍はその使命を達成するのは現実にはかなり困難かもしれませんが、しかし台湾の受ける被害は甚大なものとなります。これは、絶対に避けるべきです。侵攻できなくても破壊そのものを許してしまえば、それは彼らにとって、他国に脅威を与える格好のツールになってしまいます。

近隣諸国は、侵攻されないまでも、破壊し尽くされる脅威におののいて、中国の言う通りになるということも考えられます。そのようなことにならないためにも、中国に台湾を破壊する機会を何が何でも与えてはならないのです。

日本は、台湾の防衛と中国への対抗を最優先課題としなければならないのです。西側の同盟国から賞賛されるようなことは無視し、日本と地域のパートナーを守るために必要なことだけに集中すべきです。

高度な軍事力に投資し、有事の際に台湾を支援する態勢を強化し、米インド太平洋軍との協力をさらに進めるべきです。遠く離れたウクライナを守るために声を合わせるのは、空虚なパフォーマンスに過ぎません。台湾を守ることこそが特に日本にとっては、最も重要なのです。コルビー氏は賢明な助言をしていると思います。

そうして、日本が中国に対峙することが、中国がロシアを支援する力を削ぐことにもなることを忘れるべきではありません。中国にしっかり対峙することが、ウクライナを助けることにもなるのです。

このあたりを勘違いすべきではありません。ウクライナにも莫大な支援をしつつ、中国にもしっかりと対峙するのは難しいです。ウクライナへの支援はできる範囲ですべきであって、日本にとっては台湾を守り抜くのが最優先課題なのです。

コルビー氏は賢明な助言をしています。岸田政権は、海外に媚びへつらうという見当違いの戦略を捨て、もっと身近なところにある真の国家安全保障の優先事項に集中すべきです。同盟国からの喝采ではなく、中国に対抗する力による平和こそが最も確かな道です。日本は彼の助言に耳を傾けるのが良いでしょう。

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2023年7月6日木曜日

バイデン大統領、スウェーデンのNATO加盟に改めて全面的支持を表明 クリステション首相と会談―【私の論評】スウェーデンは、ロシアバルチック艦隊をバルト海に封じ込めることに(゚д゚)!

バイデン大統領、スウェーデンのNATO加盟に改めて全面的支持を表明 クリステション首相と会談

バイデン大統領

 NATO=北大西洋条約機構の首脳会議を来週に控え、アメリカのバイデン大統領は5日、NATO加盟の手続きを進めるスウェーデンの首相と会談し、改めて加盟への全面的な支持を表明しました。

 バイデン大統領「結論はシンプルだ。スウェーデンは我々の同盟(NATO)をより強くしてくれるし、同じ価値観を持っている」

 会談でスウェーデンのNATO加盟を全面的に支持したバイデン大統領に対し、スウェーデンのクリステション首相も、「我々はNATO全体に安全を提供するために貢献できる」と述べ、改めて加盟に意欲を示しました。

 スウェーデンのNATO加盟には全ての加盟国の承認が必要ですが、トルコとハンガリーが難色を示しています。

 こうした中、アメリカのブリンケン国務長官は5日、トルコの外相と電話で会談し、スウェーデンの加盟を支持するよう求めました。

【私の論評】スウェーデンは、ロシアバルチック艦隊をバルト海に封じ込めることに(゚д゚)!

北欧のフィンランドとスウェーデンは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、NATOへの加盟を検討しています。フィンランドは、ソ連による1939年の冬戦争を経験しており、NATOへの加盟により、ロシアの侵攻を防ぐことができると考えています。スウェーデンも、NATOへの加盟により、軍事力を強化し、ロシアの脅威から身を守ることができると考えています。

NATOは、フィンランドとスウェーデンの加盟を歓迎しており、両国は、6月末のマドリードでのNATO首脳会議で加盟が招請される見通しです。しかし、ロシアは、NATOの北方拡大を強く反対しており、加盟手続きが完了するまでの期間に、軍事的な揺さぶりをかけてくる可能性があります。NATOは、平時のペースではない手続きの加速化が求められています。

フィンランドとスウェーデンのNATOへの加盟は、ヨーロッパの安全保障体制に大きな影響を与える可能性があります。NATOは、ロシアの脅威に対抗するための抑止力として機能していますが、フィンランドとスウェーデンの加盟により、NATOの軍事力はさらに強化されることになります。これは、ロシアにとって大きな脅威となるでしょう。

フィンランドとスウェーデンのNATOへの加盟は、ロシアとNATOの対立をさらに深める可能性があります。ロシアは、NATOの北方拡大を受け入れることはなく、加盟手続きが完了した場合、ロシアは軍事的な対抗措置をとる可能性もあります。NATOとロシアの対立がエスカレートした場合、ヨーロッパの安全保障は大きな危機に直面する可能性があります。


スウェーデンは潜水艦の建造と運用に長い歴史があり、その対潜水艦戦(Anti Submarine Warefare ASW)能力は世界でもトップクラスとされています。

スウェーデン海軍は現在3隻のゴトランド級潜水艦を運用しており、このうち2隻は、改修されてさらに強力になっています。これらは世界で最も先進的な通常型潜水艦のひとつです。さらにスウェーデンは最新型の潜水艦「A26」の開発も進めています。これらの潜水艦は、最先端のソナーシステム、魚雷、ミサイルを装備している。また、非常に静かなため、探知が難しいです。

スゥエーデンのゴトランド型潜水艦

2004年、ゴトランド級は対潜戦の研究のために当初1年間の予定で米海軍へ貸与されました 2006年、貸与は12ヶ月延長されました。

2005年の演習でゴトランドは空母ロナルド・レーガンと共に複数の写真に収まっています。米海軍はこの演習で通常動力潜水艦に対する作戦法を経験しました。

2007年7月、ゴトランドはサンディエゴからスウェーデンへ回航して返却されました。

スウェーデン海軍は潜水艦のほかにも、水上艦、航空機、センサーなど、数多くのASW資産を保有しています。これらの資産は、潜水艦を探知、追跡、破壊するために使用されます。

スウェーデンのASW能力は、その立地条件から特に重要です。スウェーデンは戦略的に重要な水路であるバルト海に位置しています。バルト海にはロシアの潜水艦も多く、スウェーデンにとって潜在的な脅威となっています。

その戦略的位置と高度なASW能力の結果、スウェーデンはASW大国とみなされています。スウェーデン海軍は定期的にNATO演習に参加しており、そのASW能力はNATO同盟国から高く評価されています

以下はスウェーデンのASW能力についての補足です。

スウェーデン海軍にはASW専門飛行隊があり、ASW資産の訓練と配備を担当している。まて、ASW専用射場を含む多くのASW訓練施設を有している。スウェーデン海軍は定期的にバルト海でASW演習を行っています。

スウェーデン海軍は、ASW作戦に特化した多国籍軍であるNATOの常設海軍部隊(STANAVFOR)のメンバーです。

全体として、スウェーデンは先進技術、訓練、経験の組み合わせに基づく強力なASW能力を有している。この能力は、バルト海におけるスウェーデンの安全を守るために不可欠です。

もしスウェーデンがNATOに加盟すれば、これらのASW能力を同盟にもたらすことになります。これにより、ロシアの攻撃からバルト海を防衛するNATOの能力は大幅に強化されることになります。ロシアはこのことを認識しており、スウェーデンのNATO加盟の可能性を批判してきた理由のひとつでもあります。

2014年、ロシアのプーチン大統領は、スウェーデンのNATO加盟はバルト海地域の「不安定化要因」になると述べました。また、"一定の報復措置を取らざるを得なくなる "とも述べました。

ロシアがスウェーデンのASW能力を脅威と見ていることは明らかです。スウェーデンがNATOに加盟すれば、ロシアがバルト海に力を投射することがより困難になります。ロシアがスウェーデンのNATO加盟に批判的なのはこのためです。

スウェーデンのASW能力は、西側諸国とロシアとの間で紛争が発生した場合、NATOにとって重要な資産になることでしょう。バルト海は比較的閉鎖的な水域であり、ASW作戦に理想的な場所である。スウェーデンには先に述べたようにステルス性の高い通常型潜水艦を持っいますし、ヴィスビー級コルベットは、ステルス性が高く発見されにくい設計になっているため、この種の戦争に特に適しています。

ヴィスビー級コルベット

ASW能力に加えて、スウェーデンはバルト海での紛争で貴重な資産を多数保有しています。長距離哨戒機を多数保有する空軍や、沿岸防衛のための十分な装備と訓練を備えた陸上部隊などです。

もしスウェーデンがNATOに加盟すれば、ロシアの攻撃からバルト海を防衛する同盟の能力が大幅に強化されます。スウェーデンのASW能力とNATOのその他の資産の組み合わせは、ロシアがバルト海に力を投射することを非常に困難にするでしょう。

簡単にいうと、ロシア海軍はバルト海に封じ込められることになるでしょう。

もちろん、欧米列強とロシアが衝突した場合に何が起こるかを断言することはできないです。しかし、スウェーデンがNATOに加盟することで、ロシアがバルト海で目的を達成することはより困難になるでしょう。


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