2020年10月15日木曜日

日本のメディアが絶対に報道しないジョー・バイデン米民主党大統領候補の恐るべき正体(立沢賢一)―【私の論評】日本は次期米大統領が誰になって転んでもただで起きるべきではない(゚д゚)!

日本のメディアが絶対に報道しないジョー・バイデン米民主党大統領候補の恐るべき正体(立沢賢一)

トランプ大統領

アメリカのメディアの大半が「反トランプ派」

本年11月に行われる米国大統領選挙はメデイアの影響を強烈に受けます。

米国において、ワシントンポスト紙やニューヨークタイムズ紙などの新聞や、CNN、NBC、ABC、CBSなどのテレビを中心とするメインストリート・メディアは、全て反トランプ派のメディアです。

トランプ大統領に好意的なメディアはオーストラリアのメディア王・ルパート・マードックが設立したFOXテレビくらいです。

日本を含めた海外のメディアは米国のメインストリーム・メディアの翻訳バージョンのニュースばかりを配信していますから、かなり反トランプの色彩が濃い、偏見に満ち溢れた情報が日本では大量に流れていると言って良いでしょう。

その辺に関しては私が過去に配信したYouTube動画をご視聴頂ければ理解が深まると思います。

因みに、監視機関「メディア・リサーチ・センター(Media Research Center)」のプロジェクトである「ニュースバスターズ(NewsBusters)」は6月1日~7月31日までのABC、CBS、NBCによる夕方のニュースを分析しました。その結果、トランプ大統領に関する報道時間は512分で、バイデン候補の58分の9倍でした。

同センターの分析によりますと、大統領に対する評価的陳述の668件のうち634件つまり95%が否定的で、これに対してバイデン候補は12件のうち4件が否定的でした。

これはトランプ大統領のネガテイブな報道はバイデンの158倍以上という事実をあらわしていますが、流石にやり過ぎ感満載と言うべきでしょう。

トランプ大統領が6/22にオクラホマ州で開催した集会では、トランプ大統領から槍玉にあげられているtiktokのユーザーが、この集会に欠席する前提で、大量のチケットをオンラインで予約し、実際の参加者を減らしていたことがわかっています。

因みに、この集会には100万件以上もの参加申し込みがありましたが、上述のような意図的なキャンセルがあったおかげで、実際には19,000人しか参加しなかったのです。

それ故に、SNSが今年の大統領選における大切な武器の1つであるのは間違いないと言えるのです。

蛇足ですが、日本で皆さんがもし総理大臣だとして、一つのテレビ局以外の全てのメデイアが皆さんの足を引っ張る報道しかしないとしたら、それはフェアなメディアのあり方だと思われますか?

トランプ大統領は億万長者です。どちらかと言えば、米国の中産階級よりも、グローバリストに遥かに近い立場にあるにもかかわらず、何故グローバリストを敵にまわして大統領になり続けるのでしょうか?

トランプ大統領がそんなことをしなくても裕福に暮らしていける身分にあるにも関わらず、人生最期の時間を、本来自分とはあまり関係ない中産階級の人たちの生活を良くするために使おうという意味はどこにあるのでしょうか?

なぜ「初期の認知症」のバイデン氏が民主党の大統領候補になったのか

バイデン候補は77歳。米国のZogbyの調査によれば、米国の有権者の実に55%が「バイデンは初期の認知症である」と感じているようで、若者になるとその比率は60%を超えています。

若くて有能な人材で豊富なはずの米国で1973年から47年間も議員生活をして別段実績を出して来なかった老人政治家が、何故このタイミングで米国大統領候補になったのでしょう?

バイデン候補以外の候補者は社会主義派のバーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン、億万長者のマイケル・ブルムバーグ、LGBTのピート・ブティジェッジ、中道・穏健派ですが無名のエイミー・クロプシャーでした。

しかし、2016年のヒラリークリントンの時のように、別格な候補者は居ませんでした。従いまして、結果的には、消去法で候補者を選ぶことになったようです。

黒人とのハーフであるオバマ元大統領や初の女性大統領候補のヒラリークリントンの様に民主党はこれまで話題性のある候補者を選出していることから、LGBT代表のピート・ブティジェッジを当初は押していました。

ところがまだLGBTの大統領を選出するには時代が早かったようで、ブティジェッジ氏は票を伸ばせず撃沈しました。続くバーニー・サンダースとエリザベス・ウォーレンは社会主義思想が強すぎてやはり同様に無理と判断しました。ウォール街出身のマイケル・ブルムバーグは知名度もあり、個人資産が全米トップ11にランクする富豪ですので、資産を使って大統領になることが期待されましたが、出馬表明が遅すぎたため撤退しました。

結果、残ったのがバイデンなのです。

メディアは当初、バイデン候補をけなしていましたが、急遽、持ち上げまくるようになり、現在に至っています。

日本のメディアが絶対に書かないバイデン候補の正体

バイデン候補は、いわゆる「叩けば埃が出る」ような人だと言われています。

バイデン候補だけでなく、息子のハンター・バイデンも灰色の人物であり、要するにバイデン一家は問題一家だとも言えるのです。

それではどのような灰色の事案がバイデン候補の周りに見られるのかをここで紹介します。

1) バイデン候補の息子ハンターが、国防総省の定める「戦略的競争相手」である中国の企業に、積極的に投資していることが注目されていました。

バイデン候補は、息子ハンターが上海の未公開株投資会社BHRパートナーズの取締役を辞任したと発表しましたが、専門家の分析によれば、ハンターはまだ420万ドルの資産を保有しています。

2) バイデン候補が副大統領時代に、ハンターがウクライナエネルギー企業プリスマ社の取締役として2014-2019年に毎月5万ドルの給与を受けていました。

3) 倫理を監視するNPO団体・国家法律政策センター(National Legal and Policy Center、NLPC)は5月21日、教育省へ文書を提出したと発表しました。

NLPCは、バイデン・センターが過去3年間で「中国から受け取っている7000万ドル以上の資金のうち、2200万ドルは匿名」であり、情報の開示と全面的な調査を要求しています。

バイデン・センターとは、ペンシルベニア大学にバイデン氏が創設した公共政策提言組織です。公的記録によりますと、バイデン・センターは開設以来、中国から多額の寄付を受けていて、2018年の1件の寄付は「匿名」からで、総額1450万ドルでした。

ハンター・バイデン氏

4) バイデン候補自身の複数のセクハラ疑惑

などなどです。

「スキャンダルのデパート」バイデン候補がなぜ大統領候補になるのか?

バイデン候補が大統領選挙で勝利した場合、彼は米中貿易摩擦縮小、TPP導入、学生ローン負担減少、オバマケア継続、再生可能エネルギー需要増加、国境廃止による米国への移民増加、中国の通信機器大手・ファーウェイへの制裁解除、イラン制裁解除、公共投資減少などを推進すると表明しています。

まさに、トランプ大統領が強力に進めた政策の多くが反転することになります。

また、議会の反対もありますから可能かどうかはわかりませんが、バイデン候補は中国への経済制裁を解除する意向も口にしています。

つまり、彼が大統領になれば、グローバリスト(無国籍企業の宝庫であるシリコンバレーや国際金融資本家のるつぼであるウォール街やその他大企業群)は皆、恩恵を受けることができるのです。

ですから、バイデン候補はこうした利益受益者たちから凄まじい金額の選挙資金を受けていると言われています。

その証拠にバイデン候補はテレビCMに2億2000万ドル、デジタル広告に6000万ドルの予算をあてていると表明しています。

一方、トランプは現職の大統領にも拘らず、僅か1億4700万ドルに過ぎません。その額はバイデン候補の半分程度に過ぎないのです。

11月の米国大統領選はグローバリストとナショナリストとの戦争

11月の米国大統領選はバイデン候補の後ろ盾となって国境を無くそうとしているグローバリストVS豊かになれない米国中産階級の支持を得たトランプ大統領をはじめとするナショナリストの戦いです。

そして、万が一、バイデン候補が勝利した暁には、米国はグローバリストの餌食となり米国衰退のスピードが急速になると言われています。

それでもトランプ大統領が勝利する?

バイデン候補はほぼ1年近くのあいだ、全国的な世論調査でトランプ大統領に対してずっとリードしつづけてきました。

ここ最近ではバイデン候補の支持率は50%前後で、トランプ大統領に10ポイントもの差をつけることもありました。

しかし、これはメディアによってかなり歪められた結果であるとも考えられます。

投票日までまだ1カ月以上ありますが、メディアが正しい情報を報道していない中、果たして米国民に正しい決断が出来るのかが問題です。

これに関しては、以前私はYoutubeの動画を配信しましたので是非、ご視聴ください。



現在、多くの方々がバイデン候補の当選を予測しているようですが、私はトランプ大統領が再選すると確信しています。

そうでなければ、グローバリストの餌食となった米国民の未来は間違いなく暗黒化するからです。

たとえ多くのメディアに大多数の米国民が騙されているとしても、彼らは本能的にバイデン候補を大統領にしてはいけないと分かっている、と私は信じています。

日本のメディアによって情報統制されている皆さんには嘘のように聴こえるかも知れませんが、トランプ大統領は米国民にとって一筋の希望の光なのです。

立沢賢一(たつざわ・けんいち)

元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。

Youtube https://www.youtube.com/channel/UCgflC7hIggSJnEZH4FMTxGQ/

投資家サロン https://www.kenichi-tatsuzawa.com/neic

【私の論評】日本は次期米大統領が誰になっても、転んでもただで起きるべきではない(゚д゚)!

米国大統領選において日本のメディアのほとんどは、常に民主党のジョー・バイデンのリードが伝えられています。

米国のテレビ局は、バイデン派とトランプ派にはっきりと分かれて報道し、中立という立場はないようです。

冒頭の記事にもあり、私がこのブログも以前から掲載してきたように、米国のメディアのうち大手新聞は全部がリベラル派で、バイデン推しです。大手テレビ局は、foxTVのみが、保守派であとは全部がリベラル派です。

日本のテレビ局のすべてはリベラル派で、新聞は産経新聞だけが保守派であとはすべてがリベラル派です。そのためもあってか、日本のメディアを観ていると、トランプ大統領がいかにも悪辣な人物に思えてくる偏向報道ぶりです。

米国のテレビ局のように露骨ではないですが、バイデンに好意的です。

さて、問題の対中政策ですが、多くの識者が、たとえバイデンが勝ち民主党政権になっても、対中強硬策は変わらないと予想しています。

確かに、中国はアメリカの覇権に挑戦しているわけなので、それを跳ね返すのは超党派の方針のはずです。しかし、本当にそうでしょうか?

バイデンは中国が知的財産を盗んでいることは認めていますが、現在の対中関税は撤廃し、WHOにも復帰すると言っています。それでいて、どうやって中国の攻勢を止めるのか具体策は述べません。この点では、トランプ氏とは対照的です。

「中国は態度を改めなければならない」等とは言うのですが、一体どうやって改めさせるのか、よくわかりません。本人も自分で何を言っているのか、本当にわかっているのか定かでない印象は、SNSの動画を見ても十分わかります。

これではトランプ嫌いやバイデン推しの人たちも心配になるわけです。確かに米国においては中国の脅威については、超党派で理解されているようではあります。

しかし、ここで問題なのは、その脅威にどう対処するかです。ひとつの考え方が、中国に関与しながらも望ましい方向へ誘導することです。

一方、トランプ政権が推進しているのが、デカップリグです。つまり、中国と関わらないようにするという政策です。

最近、ポンペイオ国務長官が『クリーンネットワーク』という構想を発表しました。通信ネットワークから中国企業を徹底的に排除するという政策です。

ファーウェイなど中国企業による情報の抜き取りリスクを考えれば当然の措置ですが、まさにデカップリング政策です。

バイデンは、中国のリスクを理解していると言いながら、中国に関与しながらも望ましい方向へ誘導する立場(エンゲージメント派)のようです。

このブログにも掲載したように、2018年に習近平が「米国を頂点とする現在の世国際秩序を中国が塗り替えていく」と公表して以来、米国では天安門事件以降のエンゲージメント政策が完全に失敗したという前提に立って、現在の対中強硬策があるのですが、どうもバイデンは、時計の針を2年前に戻してしまおうと考えているようです。

エンゲージメント派というと体裁は良いですが、一言で言ってしまえば、中国市場で散々金儲けに励みながら、中国が豊かになって行けば自分たちと同じような自由主義的な資本主義に移行し、自分たちに脅威を与えることはないだろうと勝手に楽観視していただけです。それが完璧に間違いであったことは、すでに白日の下に晒されたと言って良いです。

サイレント・インベージョンの著者であるクライブ・ハミルトン教授は、マレイキ・オールバーグ氏との共著『Hidden Hand (隠れた手)』で、バイデンについて以下のように記述しています。

クライブ・ハミルトン教授

●2019年5月、ジョー・バイデンは、中国がアメリカにとって戦略的脅威であるという考えを嘲笑することで、民主党の大統領候補の他の全ての候補者とは一線を画した。

●バイデンは長年、中国に対してソフトなアプローチを採用していた。

●2013年12月にバイデン副大統領が中国を公式訪問した際には、息子のハンターがエアフォース2に搭乗していた。

●バイデンが中国の指導者とソフトな外交をしている間、息子のハンターは別の種類の会議をしていた。

●そして、渡航から 2 週間も経たないうちに、2013年6月にジョン・ケリーの継嗣子を含む他の2人の実業家と一緒に設立したハンターの会社は、プライベート・エクイティの経験が乏しいにもかかわらず、中国政府が運営する中国銀行を筆頭株主とするファンドBHRパートナーズを開設するための契約を最終決定した。
バイデンセンターについては、冒頭の記事にも掲載されています。これがバイデンとその息子のチャイナ・エンゲージメントです。バイデンはこれらを失いたくないのかもしれません。そうであれば、バイデンこそ自由主義諸国にとって最大のリスクになり得ます。

では今後、日本はどうしたら良いのでしょうか。仮に最悪バイデンが大統領になったとしても、米国議会や司法当局は、ほとんどが反エンゲージメント派です。日本は、相対的自立度を高めながらも、米国議会との連携を強め、さらに豪印との連携を強めていくべきです。

先日もこのブログに掲載したように、日米豪印外相が日本で会合を開催しました。マイク・ポンペオ米国務長官は10月6日、中国共産党政権に対抗するため、米国・日本・オーストラリア・インドによる4カ国安保対話(Quad、クアッド)を公式化し、拡大する意思を示しました。連携を深めていくことが重要です。

この対話は元々は安倍元総理大臣が呼びかけたものです。そうして米国は、これに他国も加えて将来的にはアジア版NATOにしていく構想もあります。

バイデンが何かの間違いで大統領になった場合は、日本が旗振り役となって、アジア版NATOを推進していくべきです。日本は、米国が抜けたTPPも推進して成立させたこともあります。日本ならきっとできます。

バイデンが大統領になれば、おそらく最初に言い出した米国は、TPPに再加入することが予想されます。これが、バイデンが大統領になったときの唯一の良い点かもしれません。ただし、トランプが大統領になった場合は、日本は米国を再度TPPに加入させるべく努力し、そうさせるべきです。

中国は今のままでは、TPPに加盟することはできません。これに参加するには、中国は体制を変えなければならず、それを実行すれば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊する恐れもあるからです。

中国が加入できないTPPは、経済的に中国を囲い込むことにもなります。これをトランプ大統領に理解させべきです。

トランプが大統領になってしばくらくしてから、米国は日本に対して過大な要求をしなくなりました。従来の米国は、理不尽ともいえるような過大な要求をしたこともありましたが、それは影を潜めました。

トランプ大統領も、中国が国際秩序を塗り替えると表明する前までは、時には過大・理不尽とも思える要求をしましたが、結局それはことごとく実現されませんでした。それは、米国にとっては中国という米国が中心となって構築してきた国際秩序を塗り替えようとするとんでもないことを考える国がでてきたことと、やはり安倍前総理大臣の力が大きいです。

国際ルールに沿った形で、自由貿易を推進し、紛争などに介入することもなく世界平和に貢献してきた日本は国際秩序を塗り替えようとまでは考えていないのは明白です。中国のように米国を毀損することなどあり得ず、むしろ米国にとって最も頼りになる同盟国です。

安倍総理(当時)とトランプ大統領

安倍前総理が築いた太いパイプもあり、そのことをトランプ氏はやっと理解できたようです。ここで、バイデンが大統領になり時計の針を2年前に戻ってしまえば、バイデン政権が中国に対しては現在よりは寛容になり、日本対しては、しばらく影を潜めていた過大で理不尽な要求をしてくる可能性が大です。

現状を考えると、日本にとっては、いや世界にとってバイデンよりもトランプのほうが良いです。しかし、米メディアはトランプ氏を「狂ったピエロ」のように報道し、日本のメディアも右に習えです。

しかし、たとえバイデンが大統領になったとしても、日本は米国議会、豪、印と結束して、これをはねのけ、バイデンがデカップリングを進めざるを得ないようにすべきです。

トランプが大統領になって、中国への制裁が一段落すれば、また日本に対する過大で理不尽な要求がでてくるようになるかもしれません。しかし、それに対しても菅政権が安倍政権のレガシーを引き継ぎ、たくみに対処し、米国との良い関係をさらに強くしていくべきです。

日本は、誰が次期大統領になって転んでもただで起きるべきではありません。

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米台国交回復決議案可決、国民党の「変節」と「赤狩り」時代の到来

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)

 驚いた。『米台国交回復を推進する』『中国共産党に対抗するよう米国の援助を求める』という2本の決議案が10月6日、台湾立法院(議会)本会議に提出され、全会一致で可決された。驚いたのは、法案そのものでなく、筋金入りの親中党派とされていた最大野党、国民党から提出されたことである。国民党は従来の親中立場を放棄し、与党民進党と足並みを揃えるだけでなく、蔡英文政権に対し米国との外交関係回復を「積極的に推進」するよう求めたのである。何があったのだろうか。


「反中」の「中」とは?

 「反中」が世界的潮流になったのである。

 米国の大手世論調査専門機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が10月6日に発表した世界規模の世論調査報告によると、多くの先進国における反中感情は近年ますます強まり、この1年で歴代最悪を記録した。

 同調査によると、反中感情を持つ14か国とその割合は、高い順番から日本(86%)、スウェーデン(85%)、豪州(81%)、デンマーク・韓国(75%)、英国(74%)、米国・カナダ・オランダ(73%)、ドイツ・ベルギー(71%)、フランス(70%)、スペイン(63%)、イタリア(62%)となっている。また、米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、イタリア、韓国、豪州、カナダの9か国の反中感情は、同機関が調査を始めてからの15年間で、過去最悪となった。



 中国に対して好感をもたない、否定的で、あるいは「反中」。では、その「中国」とは何を指しているのか。我々が普段使っている言葉の定義をしっかり規定することが大変重要だ。ピュー社の調査結果をみると、日本が世界一の「反中」国家になっている。漢字を使い、中国と同じ文化源流をもつ日本人がまさかそうした文化的意味で中国を否定しているとは思えない。

 しかも、同じ中華文化を共有している台湾や香港、その他の華人文化圏に対して、日本人が決して否定的ではないし、むしろ相互の好感度が高い。だとすれば、唯一の説明として、日本人が反感を抱いているのは、中国人・華人でもなければ、広義的な文化圏の意味における中国や中華でもなく、中国本土を支配している中国共産党にほかならない。さらに、「近年反中感情が強まり、過去1年で歴代最悪を記録した」ということも、中国共産党政権の内外政策や国際社会における姿勢の変化に由来したものではないかと思われる。

 ここのところ、米国の対中姿勢に明らかな変化があるとすれば、その1つは称呼だ。「中国」や「中国人民」と切り離して「CCP(中国共産党)」という名を使って批判している。ポンペオ米国務長官は7月23日、カリフォルニア州のリチャード・ニクソン図書館で行われた演説の中で、「中国共産党の最大の嘘は、それが14億の中国人民を代表していることだ」と指摘した。それはそうだ。いくら与党であっても自民党すなわち日本という人はいない。だから、「中国」と「中国共産党」をしっかり区別する必要がある。

 つまり、「反中国共産党」が世界的潮流になったのである。そんな中で米国の民主党も共和党と足並みを揃えて、対中強硬姿勢に徹している。それだけでなく、時には両党がお互いにどちらが中国にきつく当たれるかを競い合いさえしている。「反中国共産党」が米国内においてはすでに超党派の「コモンセンス」になっているわけだ。

 一方、台湾では、対中強硬路線を持つ与党・民主進歩党(民進党)と親中派で最大野党の国民党という二大政党が戦ってきた。世界が急激に変わるなか、台湾のこの政治構図が奇異でさえある。今年1月の台湾総統選で、国民党の公認候補として出馬し、現職の蔡英文総統に大敗した韓国瑜・高雄市長は後日、リコール(罷免)投票で職を追われた。反中に大きく傾いた台湾国内の民意に答えられずに、国民党は大やけどしてきた。

韓国瑜

悪臭を放つ沼に生まれた「親中派」

 中国共産党に中国大陸から追い出された国民党はなぜ、親中なのか。

 戦後の国共内戦で毛沢東率いる中国共産党に敗れて1949年に台湾へ移った蒋介石は反共だった。当時の国民党は、中国共産党を匪賊扱いで「共匪」と呼んで、大陸反攻を国是とする反共政党だった。大陸反攻を国是としたのも、台湾はあくまでも仮住まいでいずれ中国大陸を奪還し、正統政権として全土支配する意志があったからだ。蒋経国総統時代になっても、中国共産党とは「接触しない、交渉しない、妥協しない」という「三不政策」が基本方針であった。

 蒋介石がその著作『蘇俄在中国(ソ連が中国にあり)』に警告を発した。「共産党と交渉するいかなる政治家も国家も、自ら墓穴を掘るも同然。……交渉はいつまでも結果が出ず、引き伸ばし戦術は共産党の一種の作戦方法だ」。「三不政策」だけでなく、昨今トランプの「対話をしない」「棲み分けする」、つまり米中デカップリング政策も、共産党を知り尽くした蒋介石の理論を土台にしている。

 変化が生じ始めたのは80年代後半。台湾と大陸の通商・経済交流が徐々に拡大していく。国民党と共産党のイデオロギーにおける本質的な相違を棚上げして経済的利益を先行させた。その結果、経済の中国依存が進み、中国大陸をなくして台湾は生きて行けない段階にまで至ったのである。これは何も台湾に限った話ではなく、日本も欧米も同様といえる。

 問題は、「中国依存」の恩恵が広く全国民に行き渡らなかったことである。中国共産党政権の「統一戦線」は決して、相手国の一般国民を対象にしているわけではない。政財界のいわゆるキーパーソンを味方につける手法が取られるため、結果的に一部の特権階層が利益を手にしただけで、全体的国益が軽視・無視されてきたのである。

 トランプ政権の下では、「ドレイン・ザ・スワンプ」という標語が打ち出された。「スワンプ」とは、悪臭を放つ沼のことだ。腐敗した穢い黄濁な泥水が溜まっている。その中に蛭やトカゲや毒蛇がうじゃうじゃにょろにょろと這い回って棲息している。そこで排水溝やバキュームカーのような排水設備(ドレイン)を用いて汚水を抜き取り、排出させることだ。

 そうすると、いよいよ穢い沼底に棲息していた蛭やトカゲや毒蛇が姿を現し、これらを太陽の日差しに当てて天日干しにして日光消毒を行い、すべて殺してしまうということだ。泥沼の傍で、トランプがバキュームカーで泥水を抜き取っているという政治風刺画がある。チャイナマネーによって汚染されたワシントンやウォール街の既得権益層にトランプがターゲットを絞った。

 皮肉にも、自由民主主義国家の政財界が社会主義独裁国家によって汚染された。それは社会主義や共産主義に赤化されるのではなく、資本主義制度下で増殖・変異した「唯物的」な拝金主義ウイルスが巧妙に利用されたのである。このメカニズムは長きにわたりグローバリゼーションという大義名分の下で温存されてきた。誰もが気付かなかった。気付こうとしなかった。気付いても口に出して言えなかった。

日台連携、「赤狩り」時代の先を見据えて

 台湾でも、「ドレイン・ザ・スワンプ」キャンペーンの機運が高まっている。そこで、親中本家の国民党はこのままいけば、政権奪取が夢のまた夢だけでなく、そのうち泥水を抜き取られた沼底から蛭やトカゲが姿を現し、「赤狩り」に遭遇したところで、党が沈没しかねない。そうした危機感に駆られて、この際、思い切って方向転換しようと決心したのではないだろうか――親共から反共へと180度の方向転換。

 とはいっても、国民党内は決して一枚岩ではない。既得権益層がおとなしくこの大転換についていけるのか。ぶつぶつ文句を言いながらも、いざ議決になれば、賛成票を投じざるを得なかった。『米台国交回復を推進する』『中国共産党に対抗するよう米国の援助を求める』という2本の決議案が全会一致で可決されたことは、まさに「ドレイン・ザ・スワンプ」キャンペーン、つまり「赤狩り」時代の到来を意味する。

 国民党にとってはすべて悪い話ではない。なんといっても台湾に中華民国を移し、根を下ろしたときからの本流与党であり、豊富な「人」「財」の資源をもっている。基本的な立場を「反中国共産党」に切り替えたところで、むしろ重荷を下ろしての原点回帰といえる。ここからは民進党との戦いを本格化させ、政権奪還に挑むわけだ。

 いや、それだけではない。

 米台国交回復は決して机上の空論ではない。拙稿『米台国交樹立も視野に、トランプ対中闘争の5つのシナリオ』『米台国交樹立の落とし所、台湾海峡戦争になるのか?』にも書いたとおり、トランプは本気で検討しているはずだ。米台国交が回復すれば、中国共産党政権が発狂する。

 様々なシナリオが描かれるなか、「反中国共産党」の潮流が勢いを増し、その先に中国共産党政権の崩壊・交替があるかもしれない。そうなれば、蒋介石が夢見ていた「大陸反攻」が単なる夢ではなくなり、実現する可能性が出てくる。いざ大陸に民主主義の政体ができた時点で、国民党が民主主義国家運営のノウハウや豊富な党内人材を生かせば、与党としての貫禄を世界中に見せつける。そうした可能性も出てくる。

 目先の利益よりも長期的利益に着目し、より大きなビジョンを掲げる。実は日本も同じ状況に置かれている。中国共産党に取り込まれて商売上の利益を得てきた既得権益層には、その利益が白であれ、グレーであれ、あるいは黒であれ、いよいよリセットする時がやってきた。原点に立ち返り、日本国家の長期的利益を見据えて、台湾とも連携しながら、新たな一歩を踏み出そうではないか。

【私の論評】日本は具体的な対中国経済安全保障政策をリスト化することから始めよ(゚д゚)!

冒頭の記事にもある米世論調査大手ピュー・リサーチ・センターは5月12日、台湾で初めて行われた世論調査結果を発表しています。それによると、蔡英文政権下の台湾において、米国と中国に対する考えでは、米国を肯定的に捉える動きが高まっています。

台湾と米国の経済関係の緊密化については「支持する」が85%と高く、「支持しない」は11%にとどまりました。 政治的に緊密な関係を築く上でも、80%が米国との関係強化を支持しています。

いっぽう、共産党政権の中国との関係では、36%が緊密化を「支持する」としましたが、60%が「支持しない」と答えました。

調査は、2020年2月の総統選挙を控えた2019年10月16日から11月30日にかけて台湾で実施したもので、回答者は成人の1562人。

調査によると、政治的な所属に関わらず、回答者の68%が台米関係の強化を望んでいます。政権与党・民進党の支持者の大多数は、 米国との政治・経済関係の緊密化を支持していました。民進党支持者の中には、中国との関係強化を望む人は非常に少ない結果となりました。

いっぽう、親中派である国民党の支持者の多くは、米国および中国の双方との政治・経済関係の接近を支持し、両岸関係を肯定的に見ていました。調査では、台湾人か中国人かをめぐる自認についても質問しています。回答者の68%が「台湾人のみ」、28%が「台湾人と中国人の両方」、4%だけが「中国人のみ」と答えました。

台湾人や中国人に関する自認の質問では、民進党支持者および18~29歳の若年層が、「台湾人」と答えた人の割合はそれぞれ92%、83%と非常に高かい結果となりました。「台湾人」と回答した人のうち、中国本土を好ましいと考える人は23%でした。

この調査は、世界的に前例のない経済および社会的な悪影響をもたらした中共ウイルス(新型コロナウイルス)蔓延前に行われたもので、2020年5月の世論を必ずしも反映していません。

これらの台湾の自認に関する調査は、コロナ危機発生以降に行われた世論調査の結果が、台湾の民間シンクタンク・台湾民意基金会から2月24日に発表されています。

それによると、自分を「台湾人」と答えた人が83%に上り、同基金会の1991年以降の調査で最高となりました。同基金会は、ウイルス流行で中国に対する不信感が増し、台湾人意識の上昇を後押ししていると分析しました。「中国人」との回答は5%、「台湾人でも中国人でもある」は6%で、いずれも最低だったといいます。

この結果をみれば、国民党の「変節」もうなずけるというものです。いつまでも、親中的政党と国民からみなされれば、崩壊するしかありません。

韓国瑜を応援した国未薫陶支持者

では、日本ではどうなのでしょうか。上にもあるように、最近のピュー・リサーチ・センターにる調査では日本が世界で一番中国に対して否定的な感情を持っている人が85%と最大です。

そうして、これはおそらく上の記事にあるように、日本人の中国共産党に対する否定的な感情と見て良いでしょう。

中国共産党の悪逆非道ぶりはとどまるところを知りません。9月25、26両日、北京で極めて重要かつ深刻な会議が開かれ、中国共産党による少数民族の基本的人権の弾圧を擁護、是認する議論が恥じることなく展開されました。

ウイグル自治区に関する重要会議「中央新疆工作座談会」が6年ぶりに開催されたのです。中国メディアなどによると、出席した共産党最高指導部の前で、習主席は次のように述べたといいます。

「共産党の統治政策は完全に正しく、長期間にわたって必ず堅持すべきだ」「イスラム教の中国化を堅持せよ」「中華民族共同体の意識を心の奥底に根付かせよ」

これは現在、世界中で非難されている中国政府による「基本的人権の弾圧」を擁護する発言だといって良いものてす。中国政府の人権弾圧については、英国のドミニク・ラーブ外相が「おぞましく、甚だしい」と非難し、多くのヨーロッパ諸国がこれに同調しました。習氏は「人権の先生はいらない」と嘯(うそぶ)いてみせましたが、世界の中で人権を無視する中国は孤立しつつあります。

習氏の言葉の中で注目すべきは「イスラム教の中国化」「中華民族共同体の意識」との2つでしょう。

「イスラム教の中国化」とは、一体何を意味するのでしょうか。本来、イスラム教は世俗的な国家を超越した信仰の共同体を重視します。イスラム教の論理に基づけば、国家は人間がつくり上げたものに過ぎないからです。

ところが、習氏はイスラム教を中国化せよと主張します。これは要するに、国家、とりわけ中国共産党に盲目的に従属するイスラム教へと変化せよとのメッセージに他ならず、敬虔(けいけん)なイスラム教徒にとっては到底受け入れることのできない命令でしょう。そもそもマルクスが「宗教は阿片(アヘン)」と断じたように共産主義と宗教とは水と油の関係にあります。

「中華民族共同体」における、「中華民族」の概念にも注意を要します。

ここで漢民族と説いていないところが肝要です。「中華民族」は「漢民族」よりも大きな概念であり、「漢民族」以外の民族も包摂する概念なのです。

では、どの民族が、いかなる理由で「中華民族」に包摂されるのでしょうか。その点が非常に曖昧模糊(もこ)としています。重要なのは自分たちが「中華民族」との意識を有していなくとも、共産党政府が「中華民族」であると断ずれば、中華民族に包摂されてしまう危険性を孕(はら)んでいるという点です。「中華民族」の名の下に民族浄化、文化破壊が是認されてしまう可能性が否定できないことが何とも恐ろしいところです。

「自由」と「民主主義」「基本的人権」を守る諸国の一翼を担う日本は、国際社会と連携しつつ、こうした中国の人権を無視した暴虐な姿勢を厳しく批判しつつ、それだけではなく具体的に行動を起こすべきです。

目先の経済的利益に惑わされ、大局を見失うようなことがあってはなりません。先のピュー・リサーチ・センターの調査にもあるように、日本では中国(共産党)に対して、否定的な見方をしています。

政府としても、これを無視するわけにはいかないでしょう。対中政策は、米国に追随した形で、日本でも厳しくなりつつあります。たとえば、留学生ビザの審査厳格化や、警視庁では、外事部門 19年ぶり再編 北朝鮮や中国の担当部署拡充されました。

それでもまだ甘いところがあります。政府は民意を汲み取るという観点からも、さらに厳しい政策を実施すべきです。

特に日本は経済安全保障に力を入れるべきです。経済安全保障(英語ではEconomic Statecraft)とは「経済ツールを活用して地政学的国益を追求する手段」のことです。具体的には「貿易政策」「投資政策」「経済制裁」「サイバー」「経済援助」「財政・金融政策」「エネルギー政策」などがあります。経済安全保障と聞くと経済制裁を思い浮かべる人も多いと思いますが、実際にはより広い概念を示しています。

米国の経済安全保障戦略構想はオバマ政権から本格化しましたが、その前から下地はあります。米国は冷戦終結後に「NEC(National Economic Council)」という経済制裁に特化した組織を創設しました。経済制裁の重要なポイントは「どこの誰に対して制裁を課すのか?」ということです。

例えば最近では、米国が中国に対し、対ロシア制裁に違反したとして、中国共産党中央軍事委員会で装備調達を担う装備発展部と、その高官1人を米独自の制裁対象に指定しました。これもNECが前々からどこの誰に対して経済制裁を課すのが最も有効なのかを日々分析しているからこそ為せる技です。今後、NECも中国に対抗するべく、経済制裁以外の経済安全保障の分野もさらに組織を強化する予定です。

米国では国防権限法(National Defense Authorization Act)があります。この法律は米国の国防予算の大枠を決めるために議会が毎年通す法律です。2019会計年度の国防権限法では国防権限法839条に米国政府が取引を禁じる中国企業5社の社名(ファーウェイ、ZTE、ハイテラ、ハイクビジョン、ダーファ)がダイレクトに明記されました。

これによって、米国政府機関は中国5社のサーバー、ルーター、スマートフォンなどの機器の購入、取得、利用契約が禁止されました。さらに今後、米国政府は他の中国企業からの調達も禁止するだけでなく、「中国で製造された製品」の利用を禁止まで幅広く検討していると言われています。新型コロナウイルス感染症の影響で、米国でもサプライチェーンの国内回帰を促進しており、この流れを加速させる可能性が高いと考えられます。

日本では今年4月、NSC(国家安全保障会議)に経済班が創設され、経済安全保障戦略への取り組みを始めました。つまり、日本の経済安全保障戦略はやっと始まったばかりです。(経済班は2020年4月1日から経済産業省出身の審議官と総務、外務、財務、警察の各省庁出身の参事官ら約20人体制で始動しています)なお、内閣サイバーセキュリティセンターは、国内の官庁と重要インフラのサイバー攻撃への対応力向上を主としており、経済安全保障という意味合いでは限定的です。

セキュリティ・クリアランス制度(SC制度)の導入など、経済安全保障を抜本的に強化する必要があります。

日本は米国程大きな経済ではありませんが、それでも世界では中国の次の3番目です。(実際には中国のGDPはデタラメで、実際の中国のGDPはドイツ以下とする専門家もいます)
これだけの経済力をを有していれば、中国に対する制裁もかなりのことができるはずです。

日本は、中国共産党の価値観はとても受け入れられません、その価値観の変容を迫るような、巧妙で中国共産党にとっては、痛いところをつかれるような制裁を一日もはやく発動すべきです。

米国・ワシントンDCで昨年3月に設立された民間団体「現在の危険に関する委員会:中国(CPDC)」は5月27日、中国による香港弾圧に対抗するために、12項目に上る対中制裁リストをまとめ、ドナルド・トランプ政権と米議会に提出しています。

この委員会は昨年10月4日公開コラムでも紹介したが、トランプ大統領の首席戦略官だったスティーブ・バノン氏やジェームズ・ウールジー元中央情報局(CIA)長官らが中心になって創設し、いまも政権に強い影響力を持っています。(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67597)。

委員会が公表した「香港市民の自由のために立つ」と題した声明は、次のような制裁リストを掲げている(http://presentdangerchina.org/wp-content/uploads/2020/05/CPDC-Stand-With-Freedom-for-Hong-Kong-Statement-527209.pdf)。
1、香港はすでに高度な自治を失った。マイク・ポンペオ国務長官は1992年米・香港政策法と2019年香港人権・民主主義法に基づいて、香港に与えた貿易上の「最恵国待遇」を取り消すべきだ。

2、中国は国際金融取引に国際銀行間通信協会(SWIFT)システムを利用している。中国は法を守らない。トランプ大統領は直ちに中国のSWIFT利用を停止するよう指示すべきだ。 
3、中国企業は米証券市場で優遇扱いされている。トランプ政権は、優遇扱いの根拠になっている米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)と中国証券監督管理委員会(CSRC)が交わした2013年5月の覚書(MOU)について、30日以内にその効力を停止すべきだ。

4、上記の覚書が無効化されたときには、米国資本市場で資金調達している中国企業は上場を廃止されるべきだ。

5、米国資本市場から追放された中国企業は、米国の上場投資信託(ETF)ポートフォリオに含めてはならない。

6、中国政府が信用を裏打ちしている国債などの債券を販売、購入してはならない。

7、中国共産党が所有もしくは関係する金融機関は、米国の証券関係法及び規則、会計基準を遵守していない。したがって、彼らは米国資本市場で取引してはならない。

8、米国年金ファンドがそのポートフォリオに中国企業を含めないように、米労働省はガイドラインを改定すべきだ。

9、中国国民の自由な情報アクセスを促進するために、中国共産党の「グレート・ファイアウォール」と呼ばれる装置を打破すべきだ。

10、香港市民を弾圧した中共の責任者と団体は制裁されるべきだ。

11、中共による宗教的または民族的な少数者、政治犯の虐殺や、彼らが被害者になった臓器移植の事実を特定する努力をすべきだ。

12、中共の次の攻撃目標になる可能性が高い台湾市民を守るために、あらゆる手段が講じられるべきだ。

このリストはほとんどが米政府による経済安全保障政策と言って良いものです。まずは、日本もこのような具体的なリストを作成することからはじめるべきです。 

ただ、批判したり、「〇〇は遺憾だ」と表明してみても、現実は何も変わらないのです。具体的な行動をすべきです。

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2020年10月13日火曜日

ノーベル経済学賞に米大学の2人 「電波オークション」で貢献―【私の論評】電波オークションは、テレビ局にとっても、政府にとっても打ち出の小槌ではなくなった(゚д゚)!

 ノーベル経済学賞に米大学の2人 「電波オークション」で貢献


ポール・ミルグロム氏(写真左)とロバート・ウィルソン氏=米スタンフォード大ホームページより

ことしのノーベル経済学賞に、電波の周波数の割り当てなどに使われるオークションの研究や実用化に大きく貢献したアメリカ・スタンフォード大学の2人の研究者が選ばれました。

スウェーデンの王立科学アカデミーは、日本時間の12日午後7時前、ことしのノーベル経済学賞の受賞者を発表しました。

受賞が決まったのは、いずれもアメリカのスタンフォード大学の、ポール・ミルグロム氏、それに、ロバート・ウィルソン氏の2人です。

オークションの研究や実用化に大きく貢献したことが理由で、王立科学アカデミーは、「電波の周波数の割り当てなど、従来の方法では売ることが難しかったモノやサービスに使われる新たなオークションの制度設計を行い、世界中の納税者などの利益につながった」としています。

2人の研究成果は、1990年代のアメリカで、それまでは政府の認可手続きが必要だった電波の利用免許について、より高い金額を示した事業者に割り当てる、「電波オークション」の制度設計に役立てられました。

電波の周波数は地域や帯域によってさまざまで、事業者ごとに必要な種類や数も異なりますが、多くの周波数と買い手から、オークションによって、最適な組み合わせを導き出せるようになったということです。

電波オークションは手続きの透明性や効率性を高めるとして、現在までに世界各国で実施されているほか、日本でも一時、検討されるなど、大きな影響を与えました。
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ウィルソン氏「環境分野への適用も可能だと思う」

ノーベル経済学賞の受賞が決まったロバート・ウィルソン氏は電話での会見に臨み、「とてもうれしいニュースでした」と喜びを語りました。

また、「環境への適用も可能だと思います」と述べ、自身の研究成果が温室効果ガスの排出権など、さまざまな分野に応用できるという認識を示しました。

そして、最後にオークションで買ったものは何かと問われたのに対し、いったんは「私自身はオークションに参加したことはありません」と答えましたが、その後、「妻に指摘されましたが、インターネットでスキーのブーツを買いました。あれはオークションですね」と話し、会場の笑いを誘っていました。

慶應義塾大学 坂井教授「理論を実用化のレベルに」

ことしのノーベル経済学賞に電波の周波数の割り当てなどに使われるオークションの研究や実用化に大きく貢献したアメリカ・スタンフォード大学の2人の研究者が選ばれたことについて、ノーベル経済学賞に詳しい慶應義塾大学の坂井豊貴教授は、「『理論』を『実用化』のレベルまで育て上げ、実際にアメリカの電波オークションにも活用されるほどの影響力を及ぼした」と述べ、経済学によって社会の課題を解決しようという姿勢が評価されたと指摘しました。

一方で、ノーベル経済学賞に日本人が一度も選ばれていない ことについて坂井教授は、マクロ経済学の研究で世界的に知られるアメリカ・プリンストン大学教授の清滝信宏さん(65)を引き続き有力候補として挙げたうえで、「今後に期待したい」と述べました。

【私の論評】電波オークションは、テレビ局にとっても、政府にとっても打ち出の小槌ではなくなった!(◎_◎;)

冒頭の記事にもでてくる、「電波オークション」とは電波の周波数の一定期間の利用権を競争入札で決める方式で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の米国や英国、フランス、ドイツなど先進国で実施されています。

日本では原則、総務省が審査して選ぶ比較審査方式が採用されていますが、旧民主党政権時代もオークション導入は検討されています。平成24年3月には導入を閣議決定し、関連法案を国会に提出したのですが、当時野党だった自民党の反対などで審議されずに廃案となりました。



総務省によると、27年度の電波利用料金の収入は総額約747億円。主な通信事業者やテレビ局の電波利用負担額は、NTTドコモ約201億円▽KDDI約131億円▽ソフトバンク約165億円▽NHK約21億円▽日本テレビ約5億円▽TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京約4億円-などとなっています。

同制度を導入している米国では、2014年11月から翌15年1月までに実施されたオークションで、3つの周波数帯が計約5兆円で落札されたといいます。日本でも制度の導入で競売によって収入額の増加が予想されています。関係者によると、民主党政権時代の議論では、毎年平均で数千億円の収入になると推計し、増えた収入は政府の財源とすることを想定していたそうです。

今回のノーベル経済学賞した二人の経済学者の研究は、電波の周波数の割り当てなどに使われるオークションの実用化に大きく貢献したものです。

日本では、総務省の認可を受けた場合にしかテレビ放送事業はできません。「放送法」によって免許制度になっているわけなのですが、このことがテレビ局を既得権まみれにしています。

日本では電波オークションが行われないために、電波の権利のほとんどを、既存のメディアが取ってしまっています。たとえば、地上波のテレビ局が、CS放送でもBS放送でも3つも4つチャンネルを持ってしまっているのもそのためです。

電波オークションをしないために利権がそのままになり、テレビ局はその恩典に与っています。テレビ局は「電波利用料を取られている」と主張するのですが、その額は数十億円程度といったところです。

もしオークションにかければ、現在のテレビ局が支払うべき電波利用料は2000億円から3000億円は下らないでしょう。現在のテレビ局は、100分の1、数十分の1の費用で特権を手にしているのです。

つまり、テレビ局からすると、絶対に電波オークションは避けたいわけです。そのために、放送法・放送政策を管轄する総務省に働きかけることになります。

その総務省も、実際は電波オークションを実施すれば、その分収入があるのは分かっているはずです。それをしないのは、テレビ局は新規参入を防いで既得権を守るため、総務省は「ある目的」のために、互いに協力関係を結んでいるからです。

そこで出てくるのが「放送法」だ。昨今、政治によるメディアへの介入を問題視するニュースがよく流れているので、ご存じの方も多いだろう。話題の中心になるのが、放送法の4条。放送法4条とは以下の様な条文だ。

放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
 一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二  政治的に公平であること。
 三  報道は事実をまげないですること。
 四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

これを根拠に、政府側は「放送法を守り、政治的に公平な報道を心がけよ」と言い、さらに電波法76条に基づく「停波」もあり得るというわけです。

一方で、いわゆるリベラル派の人々は、放送法4条は「倫理規範だ」としています。つまり、単なる道徳上の努力義務しかない、と反論をしているのです。

しかし、世界ではそんな議論をしている国はありません。このようなくだらない議論をするのではなく、市場原理に任せ、自由競争をすれば良いだけの話だったのです。

今から15年くらい前であれば、電波オークションによって放送局が自由に参入して競争が起これば、新しい業者が参入してイノベーションも起こったかもしれません。質の高い報道や番組が生まれるたはずです。おかしなことを言っていたら人気がなくなるし、人気があれば視聴者を獲得しスポンサーも付くはずでした。そうやって放送局が淘汰されれば、放送法など必要性が無くなったかもしれませ。

電波オークションが実施されるとと一番困るのは既存の放送局でした。そのため、必死になって電波オークションが行われないように世論を誘導していました。そのためでしょうか、ほとんどの民放が今回のノーベル学賞の研究 が「電波オークション」に利用されていることを報道しません。

総務省はこうした事情を知っているので、「放送法」をチラつかせます。「テレビの利権を守ってやっているのだから、放送法を守れよ」というわけです。それはテレビ局も重々承知というわけで、マスコミは総務省と持ちつ 持たれつの関係になっているのです。

当時もし地上波で「実は電波利用料は数十億しか払ってないけど、本当は3000億円払わなければいけないですよね」などと言おうものなら、テレビ局の人間はみんな真っ青になって、番組はその場で終わって放送事故状態になったかもしれません。

テレビでコメンテーターをしているジャーナリスト等も、その利権の恩恵に与っているので大きな声で指摘しなかったのです。電波オークションをすれば、もちろん巨大な資本が参入しきたでしょう。国内企業をはじめ、外国資本にも新規参入したいという企業はたくさんありました。

既存のテレビ局は巨大な社屋やスタジオを所有していますが、これだけ映像技術が進歩している現在では、放送のための費用はそこまでかか らなくなりました。今では、インターネット上で自由に放送しているメディアがたくさんあるのだからそれは明らかです。中には、スマホだけでYouTubeやPodcastで、放送をしている人もいるくらいです。画質や音質等を問わなければ、現在では誰もが放送できるといっても過言ではありません。

しかし、現在では既存の放送局の権利を電波オークションで競り落とすと考えれば費用は膨大に思えますが、電波だけではなくインターネットを含めて考えれば、放送局そのものは何百局あってもかまわないのですから、新規参入者を増やせば費用は数百億円もかかるものではなくなりました。

資本力がある企業が有利かもしれませんが、技術が進歩しているために放送をする費用そのものはたいしたものでないのですから、放送局数を増やせば誰にでも門は開かれるようになりつつあります。

多様な放送が可能になれば、どのような局が入ってきても関係がないです。今は地上波キー局の数局だけが支配しているので、それぞれのテレビ局が異常なまでに影響力を強めています。影響力が強いから放送法を守れという議論にもなります。しかし放送局が何百もの数になれば影響力も分散され、全体で公平になります。そのほうが、健全な報道が期待できるでしょう。

加藤勝信官房長官は本日の記者会見で、菅義偉政権で周波数帯の利用権を競争入札にかける「電波オークション」を実施する可能性について「導入した各国のさまざまな課題も踏まえ、総務省においてオークション制度そのものを引き続き検討していくことが適当と考えている」と述べました。

同時に、オークション制度に関し「電波の割り当て手続きの透明性や迅速性の確保につながるなどのメリットがある一方、落札額の高騰により設備投資の遅延や事業運営に支障が生じる恐れがあるなど、デメリットも指摘されている」とも指摘しました。

ただし、先程指摘した通り、放送局自体の数を増やすことを前提とした場合、現在ではでは落札額が高騰することはありません。

そもそも、日本ではテレビでもラジオでもあまりにも放送局が少なすぎです。米国などで、テレビやラジオを視聴した経験のある人は、そもそもテレビのチャンネル数が段違い多いことに驚かれたことでしょう。

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米国のテレビには日本ではありえない程の数のチャンネルがある

たとえばニューヨークでは、ケーブルも含め、多数のチャンネルがあります。おそらく、数百はあるのではないでしょうか。ラジオ局もかなりです。2004年6月度、FCC(連邦通信委員会)は、AM局は4771局、商業FM局は6218局、および教育的FM放送局は2497局を認可しています。

あるラジオ局の司会者が居眠りをしてしまい、2時間ほど放送が中断になったのですが、誰も気づかなかったという笑い話のような話もあるくらいです。

このような状況を日本と比較すると、日本はいかに放送業界への参入障壁が高く、それによる一般ユーザーが不利益を被っていたかがわかります。多くの事業者がテレビ等の放送業界に参入したいと思ってもなかなかできないし、その結果多くの国民は、面白くないテレビをみなければならないという不利益を被っていたのです。

ただし、現在では状況が変わってきました。ネットの技術進歩で地上波の価値はかなり下がっています。15年くらい前に地上波TVがオークションに応じていれば地上波TVは既割当分を高値で売れたかもしれません。しかし、現在ではそのようなことはあり得ません。

政府としても、今となっから「電 波オークション」をしたとしても、2014年時の米国のように、収益を得ることはできないでしょう。

政府、テレビ局ともに時期を逸したと言えます。もはや、電波オークションは、テレビ局にとっても、政府にとっても打ち出の小槌ではなくなりました。

私は、最近テレビが全く面白くないです。視聴していて不愉快になることすらあります。いや、あまりのくだらなさに、倦怠感すら感じます。それでも、仕方なしに見ていることもありますが、最近は、YouTube,AmebaTV、Amazon Prime Video等を視聴する機会が多くなりました。

インターネットが台頭しつつある15年前に、こうしたことは十分予見できたはずです。このことを予見できないテレビ局は、今後ますます衰退していくことでしょう。

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学術会議任命見送り問題

日曜報道 THE PRIMEに出演した甘利氏(一番左)

 自民党の甘利明税制調査会長が、11日のフジテレビ番組「日曜報道 THE PRIME」に出演し、菅義偉首相が新会員候補6人の任命を見送った「日本学術会議」が日本の防衛研究にブレーキをかけてきたことを問題視した。これに対し、立憲民主党の今井雅人衆院議員は反論した。

 「学術会議は、防衛省の研究に対し(学者は)参加すべきではないというが、いまや軍事と民間のデュアルース(両用)で、境目はなくなってきている。インターネットも、もとは軍事研究から始まったものだ」

 甘利氏はこう語り、学術会議が2017年、軍事目的の研究に反対する立場から発表した「軍事的安全保障研究に関する声明」を指摘した。

 そのうえで、甘利氏は「中国が学者らを好待遇で引っ張り、研究や知識を全部、吸い取ろうとするのを、世界が警戒している。科学技術に関するある公的機関からは『日本の研究者も十数人参加している』とはっきりと言われた。学術会議は、中国の科学技術協会と相互協力の覚書を結んでいるが、中国は『軍民融合』政策を取る。学術会議が防衛省の研究に『参加すべきではない』とするなら、『(日本の研究者は中国の研究に)参加すべきではない』と言うべきだ」と強調した。

 一方、今井議員は「学術会議は、戦争に科学を使われたことの反省から成り立っている。その精神は尊重すべきで、(軍事研究には)抑制的にならなければいけない」といい、「(任命に関する国会答弁の)解釈を変えるなら、きちっと手続きを踏まなきゃいけない」と指摘した。

 これに、甘利氏は「任命責任はあるのに、選ぶ権限はないなんてあり得ない」と強調した。

【私の論評】日本学術会議の人事問題の本質は「第二次中央省庁再編」への布石(゚д゚)!

日本学術会議は15年に、中国科学技術協会と協力覚書を署名しています。つまり中国の軍事発展のために海外の専門家を呼び寄せる『千人計画』には協力しているとみて良いです。日本国内では軍事研究を禁じておきながら、中国の軍事研究には協力するという、非常に倒錯した組織です。

米国では「千人計画」に参加者が逮捕されている

左派野党やメディアは、任命されなかった6人が「安全保障関連法や特定秘密保護法などに反対した人物」として、あたかも菅首相が意にそぐわない人物を排除したとの批判を展開しています。

しかし、任命された99人の中にも安全保障関連法や特定秘密保護法に反対していた学者は大勢います。6人の任命見送りは、別の理由と考えるべきです。これを詳細に発表すると、この六人の名誉を著しく毀損することになりかねません。

そのようなことは、人事を実施する側からは絶対にできません。これは、公表しないのが常識です。これは、多くの組織を見ていれば、誰にでも理解できると思います。

マスコミなどでも、当然のことながら実施している入社試験で合否の理由など絶対に言いません。無論、普通の企業でも、人事の内容は公表しません。これは、どのような組織の人事にもあてはまることです。学術会議の人事だけが特別であるとの認識は間違いです。

今回の騒動で、国民は日本学術会議がどのような組織であるかを理解したでしょう。当然、民営化を含めた行政改革の対象です。

ドラッカー

経営学大家ドラッカー氏は人事について以下のように述べています。

あらゆる組織において人事は、その組織のマネジメントがどの程度有能か、どのような価値観を持っているか、仕事にどれだけ真剣に取り組んでいるかを白日の下にさらします。人事とその基準、さらにはその動機まで、いかに隠そうとしても知られることになります。それは際立って明らかです。

人は、他の者がどのように報われるかを見て、自らの態度と行動を決めます。仕事よりも追従のうまい者が昇進するのであれば、組織そのものが、業績の上がらない追従の世界となります。これまた、日本学術会議はその典型です。

公正な人事のために全力を尽くさないトップマネジメントは、組織の業績を損なうリスクを冒しているだけではない。組織そのものへの敬意を損なう危険を冒しています。過去の政府は、日本学術会議の人事に事実上関与しなかったので、時を経るごとに日本学術会議という組織自体が腐敗していったのだと思います。

マネジメントは、人事に時間を取られますし。そうでなければならないです。人事ほど長く影響し、かつ元に戻すことの難しいものはないからです。ところがあらゆる組織において昇進、異動のいずれにせよ、実態はまったくお粗末です。日本学術会議はその典型です。

だがドラッカーは、我慢してはならないと言います。
人事に完全無欠はありえないが、限りなく10割に近づけることはできる。人事こそもっともよく知られた分野だからである。(『チェンジ・リーダーの条件』)
だからこそ、菅総理はあえて6人の任命を見送り、人事に一石を投じたのでしょう。

ドラッカーは人事の手順のついて以下のように語っています。
人事に関する手順は、多くはない。しかも簡単である。仕事の内容を考える、候補者を複数用意する、実績から強みを知る、一緒に働いたことのある者に聞く、仕事の内容を理解させる。(『プロフェッショナルの原点』)
第一は、仕事の内容を徹底的に検討することです。仕事の求めるものが明らかでなくては、人事は失敗して当然です。しかも、同じポストでも、要求される仕事は、時とともに変わっていきます。仕事が変われば、求められる人材も異なるものとなります。

第二は、候補者を複数用意することです。人事において重要なことは、適材適所です。ありがたいことに、人間は多種多様です。したがって、適所に適材を持ってくるには、候補者は複数用意しておかなければならないです。異なる仕事は異なる人材を要求します。

第三は、候補者それぞれの強みを知ることです。それぞれの強みをそれぞれの実績から知らなければならないです。その強みは、仕事が求めているものであるかをチェックします。何事かを成し遂げられるのは、強みによってです。

第四は、一緒に働いたことのある者から、直接話を聞くことです。しかも数人から聞かなければなりません。人は人の評価において客観的にはなれないことを知らなければならないです。それぞれの人が、それぞれの人に、それぞれの印象を持つのです。

第五は、このようにして人事に万全を尽くした後において行なうべきことです。すなわち、本人に仕事の内容を理解させることです。仕事の内容を理解したことを確認することなく、人事の失敗を本人のせいにしてはならないのです。

具体的には、何が求められていると思うかを聞きます。3ヵ月後にはそれを書き出させるのです。新しいポストの要求するものを考えさせないことが、昇進人事の最大の失敗の原因です。ドラッカーは、「新しい仕事が新しいやり方を要求しているということは、ほとんどの者にとって、自明の理ではない」といいます。
追従や立ち回りのうまい者が昇進するのであれば、組織そのものが業績のあがらない追従の世界となる。人事に全力を尽くさないトップは、業績を損なうリスクを冒すだけでなく、組織そのものへの敬意を損なう。(『プロフェッショナルの原点』)
人事とは、これだけ手間がかかり、時間のかかるもので、しかもゆるがせにはできないものです。そもそも、日本学術会議の人事を菅総理が行うなどということは不可能です。今回の6名の任命見送りも、菅総理がいずれかの官僚に条件などを提示したうえで不適任者を選択するように指示をした結果ではないかと思います。

菅総理にとって重要なのは、閣僚人事と、各省庁の幹部官僚の人事です。特に閣僚人事はかなりの時間を割いて実行したでしょう。各省庁の幹部人事に関してもある程度の時間を割いて確認したでしょう。そうして、菅総理にとって、人事に関与するのはこれくらいが限界でしょう。

であれば、そもそも、日本学術会議は政府の機関とするのではなく、政府外の機関とすべきです。政府はもとより、菅総理がありとあらゆることに直接関与することなど、不可能です。もし、菅総理が日本学術会議の人事を実際に行い、その結果6人の不採用を決めているなどと思っている学者がいたとしたら、よほど自信と自意識のかたまりのような人だと思います。そもそも、これは政府の重要な仕事ではありません。

ドラッカー氏は政府の役割を指摘しています。これは、以前のブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
菅政権の政策シナリオを完全予想!改革を実現するために最も必要なこととは?―【私の論評】菅総理の政策は、継続と改革!半端な政治家・官僚・マスコミには理解できない(゚д゚)!

菅総理

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事からドラッカーが述べた政府の役割に関する部分のみを引用します。

"

政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)

この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。「統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い」というのです。

しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知りました。現在の上場企業等は、両者が分離されているのが普通です。たとえば、財務部と経理部は分離されているのが普通です。

そもそも、民間企業では、財務省(統治部門)と国税局(純然たる実行部門)一つの組織であることなどありえません。それだけ、現在の政府の組織は旧態依然のままなのです。

企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものではありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。

実行は現場ごとの目的の下にそれぞれの現場に任せ、トップが決定と方向付けに専念できるようにします。この企業で得られた原則を国に適用するなら、実行の任に当たる者は、政府以外の組織でなければならないことになります。

政府の仕事について、これほど簡単な原則はありません。しかし、これは、これまでの政治理論の下に政府が行ってきた仕事とは大いに異なります。

これまでの理論では、政府は唯一無二の絶対の存在でした。しかも、社会の外の存在でした。ところが、この原則の下においては、政府は社会の中の存在とならなければならないのです。ただし、中心的な存在とならなければならないのです。

おまけに今日では、不得手な実行を政府に任せられるほどの財政的な余裕はありません。時間の余裕も人手の余裕もありません。それは、日本も同じことです。

この300年間、政治理論と社会理論は分離されてきた。しかしここで、この半世紀に組織について学んだことを、政府と社会に適用することになれば、この二つの理論が再び合体する。一方において、企業、大学、病院など非政府の組織が、成果を上げるための機関となる。他方において、政府が、社会の諸目的を決定するための機関となる。そして多様な組織の指揮者となる。(『断絶の時代』)

 政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことなのですから、日本でいえば、最終的には各省庁の仕事は政府の外に置かなければならないのです。

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 無論、各省庁にも統治に関わる部分がありますから、それは内閣府などに取り込み、内閣府などは、政府の機関とし、他の省庁実行部分はすべて政府の外に配置すべきなのです。

このような文脈からしても、元々日本学術会議は政府の外に設置すべきなのです。

無論菅総理が、各省庁をすべて政府の外に置こうと考えているかどうかは、わかりません。それに仮に、そう考えていたとしてもすぐにはできることではありません。しかし、現在の政府をいまのままにしておくということは、望ましくないと考えているようではあります。

菅首相は「デジタル庁新設問題」を契機に「第二次中央省庁再編」を考えているようであり、今回の日本学術会議の人事がらみに関することも、その一環であり、前触れであると考えられます。

いずれにしても、まずは政府内の「統治」の部分と「実行」の部分ははっきり分ける方向ですすめるべきでしょう。それができない限り「デジタル庁」を設置しても、無意味です。

各省庁の古い体質を残したまま、デジタル化したとしても、大きな成果は得られないでしょう。

極端なことをいえば、当初は物理的な文書や判子を用いてでも良いので、まずは当面の「統治」と「実行」を分離するグランドデザインを描くべきでしょう。

そうして、グランド・デザインを基本にするにしても、今ある各省設置法を全て束ねて政府事務法として一本化し、各省の事務分担は政令で決めれば良いです。こうした枠組みを作れば、その時の政権の判断で省庁再編を柔軟に行えますし、デシタル化もスムーズに進むでしょう。

なぜ、このようなことをいうかといえば、それは「統治」と「実行」が分離されたある優良企業を実際に訪問して、その効率の良さに驚いたことがあるからです。

たとえば、その会社では決算書等の作成は、入社したての新人の仕事になっています。なぜそのようなことができるかといえば、決算書作成のマニュアルが整備されていて、それにはどの部署から必要な資料が入手できるか記載されており、それに基づきどのように決算書を作成すれば良いのか明示されているので、それが可能になるのです。

しかも、デジタル化された現在では、会社の端末を操作することで、その資料のほとんどが集められるようになっています。

その前提として、組織の「統治」部門と「実行」部門がはっきり分離されているということがありました。そうではない企業では、結局何度も決算書を作成して慣れている人が年度末にねじり鉢巻で、端末があるにもかかわらず、結局鉛筆をなめなめ作成しているというのが実情のようです。

さらに、どの部署がどの資料を作成するかなどのグランドデザインは、明確に定められているものの、時々の変化に対応するためその他は柔軟に対応できるように、社内の規程や規則が定められており、実際に柔軟に対応しているようでした。

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2020年10月11日日曜日

「沼地」:両党のトランプ批判者ばかりの討論委員会―【私の論評】トランプが次のサプライズで、勝利というパターンもあり得る(゚д゚)!

 「沼地」:両党のトランプ批判者ばかりの討論委員会


<引用元:デイリー・コーラー 2020.10.9


  • 大統領討論委員会はドナルド・トランプ大統領に対する両党の批判者であふれている
  • 委員会メンバーの大多数と委員長らも、トランプ批判者か元民主党献金者
  • ボブ・ドール元共和党上院議員は、委員会の共和党が誰もトランプ支持者でないことに懸念を表明

総選挙の討論会を企画する大統領討論委員会の幹部には、両党のトランプ批判者が多く含まれている。

委員会は公式には超党派で、共和党と民主党の両方が混在しているとされているが、圧倒的にドナルド・トランプ大統領に反対する政治的エスタブリッシュメントのメンバーで成り立っている。

複数の委員長と委員はどちらも大部分が、過去に大統領を目の敵にしていたか、民主党の候補者に献金をしたことのある人々だということが、デイリー・コーラー・ニュース・ファウンデーションの検証で分かった。

トランプは、2回目の討論会をバーチャルで行うという決定をめぐり委員会と衝突し、それを理由にトランプは討論会をボイコットした。

「国の大統領討論会―米国人がどう投票するか、またそもそも投票するかどうかに影響を及ぼすイベント―に関する重大な決定を下す人々は、大部分がいわゆる沼地と言われるD.C.―ニューヨークの小集団に属するエリートだ」と、ジャーナリストのヤシャール・アリは8日夜にニュースレターの中で指摘した。委員会の3名の共同委員長の1人であるケニス・ウォラックは、バラク・オバマ元大統領の2008年と2012年の選挙陣営に献金していたことが、連邦選挙管理委員会(FEC)の記録から明らかだ。ウォラックは、かつてリベラルのシンクタンクの責任者を務めていたが、バージニアのマーク・ウォーナー上院議員をはじめとする他の民主党に献金したこともFECの記録で分かっている。

女性有権者同盟の元会長である、ドロシー・ライディングス共同委員長も、FECの記録によると過去に民主党候補者に献金していた。

委員会で唯一の共和党共同委員長はフランク・ファレンコフだ。1980年代に共和党全国委員長を務め、その後は2013年までアメリカン・ゲーミング・アソシエーションの会長としてロビーストを務めた。

委員会の10人の委員には、元ABCニュース記者のチャーリー・ギブソンとノートルダム大学学長のジョン・ジェンキンズ師をはじめ、共和党と民主党が入り混じっている。

委員会の民主党と共和党のどちらも、トランプを声高に批判してきた人物たちだ。

ジョン・F・ケネディ政権で連邦通信委員会委員長を務めたニュートン・ミノーは、2017年10月のワシントン・ポストの論説で、5人の元大統領にトランプを非難するよう訴えた。

「あなた方は共に現在の乱用を非難し、憲法上の価値を再確認することができる。非公式にも公式にも国が次のステップを探求するよう導くことができる」とミノーは書いた。

「アメリカ合衆国と我々の価値のために、あなた方の声を今必要としている」と彼は続けた。

元民主党議員のジェーン・ハーマン委員は、2016年選挙運動の最初の段階でトランプを「恥ずべきだ」と呼んだ

委員会の共和党委員の1人である、シティグループ元会長のリチャード・パーソンズは2018年に、トランプは「合衆国大統領となるには不適格」であり、「アメリカにとって少しも良くない」と述べた。パーソンズは、敗北に終わった2016年のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事の大統領選挙陣営に献金したことが、FECの記録から分かっている

オリンピア・スノー元共和党メイン州上院議員は、2016年にトランプに反対していたことが知られているが、やはり委員会に在籍している。パーソンズ同様、スノーは2016年にジェブ・ブッシュに献金していたことがFECの記録から分かっている。

委員会は本紙のこの記事に対するコメントの要求に応じなかった。

ボブ・ドール元共和党カンザス州上院議員は9日、共和党の委員すらトランプを支持していないと懸念を表明し、委員会の公平性を疑問視した。

「私は(委員会の)共和党員を全員知っており、ほとんどが友人だ。彼らのうち誰も@realDonaldTrumpを支持していないことを懸念している。変更した討論委員会は不公平だ」とドールはこの日ツイートした。


【私の論評】トランプが次のサプライズで、勝利というパターンもあり得る(゚д゚)!


トランプの支持率は下がっているが・・・・


今年の米大統領選挙の支持候補をたずねる電話調査に対し、共和党や独立系の支持者は民主党支持者に比べて本心を明かさない割合が2倍に上ったことが、新たなオンライン調査(8月実施)で明らかになっています。世論調査が示すトランプ大統領の支持率は、実際に比べて低めに出ている可能性がありそうです。

インターネットを活用した市場調査やデータ収集を行う米企業クラウドリサーチの調査によると、電話調査で本心を明かさないと回答したのは民主党支持者が5.4%だったのに対し、共和党支持者は11.7%前後、独立系の支持者は10.5%に登りました。

理由に挙げられた中には、「現在のリベラルな観点から外れる意見を表明するのは危険」などがあったと、同社の共同最高経営責任者(CEO)で調査責任者のリーブ・リトマン氏が語りました。

クラウドリサーチはオンラインでこの調査を実施。支持する大統領選候補者を明かすことへの消極姿勢と相関関係が見られたのは支持政党だけで、年齢や人種、学歴、収入との相関はありませんでした。同社では2回調査を行いましたが、基本的に同じ結果が得られたといいます。

最近、ニューヨークタイムズが競合州(swing states)の有権者を対象にアンケート調査をしました。2016年にトランプ候補を選んだ有権者の86%は、11月3日の大統領選挙でも再びトランプに票を投じると答えました。トランプを支持しないと答えた有権者は6%しかいませんでした。


さらに、トランプ大統領の支持率は2017年1月から任期を通して43%程度でびくともしませんでした。

米大統領選における最新の支持率については、各種世論調査でおおむねバイデン候補のリードが広がりつつある傾向です。ニューヨークのウォール街では民主党支持者が多いものの、本音では「隠れトランプ支持者」も少なくないようです。

株価を「政権の通信簿」として重視してきたトランプ氏の方が、マーケットと距離を置くバイデン氏より「マシ」との判断です。さらに、バイデン氏はトランプ大統領が実施した法人減税を元に戻す方針を示しており、これが株安を誘発するリスクが指摘されています。

ブログ冒頭の記事では、両党のトランプ批判者ばかりの討論委員会の実体を示していました。これでは、討論会では、トランプが不利にみえたのも当然ですし、さらには以前からこのブログに述べているように米国の大手新聞のすべてが、リベラル派であり、大手テレビ局はfoxTVを除いてすべてリベラルということもあり、さらにトランプ不利に輪をかけて報道するのも当然といえば当然かもしれません。

とにかく、米国では多くの職場でも、学校でも、役所でも、芸能界でもそこで幅を利かしているのは、リベラルの考え方です。学問の世界もそうです。リベラル的な発言をしなければ、学問の世界からはじき出されてしまうので、保守派の研究者は研究を続けたいなら、軍関係の施設に入るしかないといわれているほどです。

このような状況で自分が保守派であること、さらには「トランプ支持派」であることなど、言えるわけもありません。ましては最近の騒然とした米国国内のことを考えると、自らトランプ支持派だと表明することは、死の危険を招く可能性すらあります。だからこそ、隠れトランプ支持派が増えるような土壌がもともとあるのです。

ただ、そうはいっても、2016年の選挙でトランプ大統領が誕生したことで証明されたように、米国には保守派およびその親派の人が少なくとも半分以上はいるはずなのです。この半分が、無視されているというのが現状です。日本では、この半分を無視した米国メディアの報道を垂れ流すだけなので、多くの日本人も米国の半分の実体を知らないというのが実情だと思います。

そうして、この現状を踏まえれば、トランプは再びサプライズを打ち出せば、大統領選挙での勝利は未だ射程内にあるといえると思います。

今年の大統領選挙は新型コロナウイルスの世界的な影響から民主党バイデン・チームは「コロナ」を利用するのは当初からはっきりしていました。今後、バイデンサイドからどんなサプライズがあるのかわかりませんが、すでにウッドワード氏の本は出版されているので、これ以上サプライズはないかもしれません。

ウッドワース氏の著書の表紙

最近はホワイトハウス内でもコロナのクラスターが発生したと報道されています。実際感染している人もいるのですが、それにしても、かなり人がまばらであることが指摘されています。特にウエスト・ウィングには二人しかいないということがデレビで指摘されていました。

これは情報の機密を守るためのホワイトハウス内の人払いかもしれません。しかしメディアや民主党はこのあたりを突っついてくるでしょう。しかし、それよりもバイデン・チームはサプライズどころか、副大統領候補討論会でペンス副大統領がハリス上院議員に答えを迫った「最高裁判事の増員」の話題の火消しに精いっぱいのようにも見えます。

そしてポンペオ国務長官がツイッターで4年前に問題になったヒラリー・クリントンが消去した3万3千通の電子メールの一部などを含む調査書の公開を示唆しましたが、これが共和党からのオクトーバーサプライズになるかもしれません。

これは誰もが興味あることでしょう。4年前の選挙では米国では多くの人々が、米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏の選対本部長のメール内容を公表し続けていたウィキリークスにくぎ付けになりました。

ウィキリークスが入手したメールのソース元を明かせばジュリアン・アサンジに大統領恩赦を与えるという交換条件をトランプ政権は提案していましたから、アサンジがそれを飲んだ可能性もあり、メールのソース元とその内容が大サプライズになるかもしれません。

さらには、最近進展していない、北朝鮮関係のサプライズもあるかもしれないです。あるいは、中国に対するさらに苛烈な制裁かもしれません。台湾との正式な国交の樹立かもしれません。あるいは、南シナ海の中国軍基地を吹き飛ばすかもしれません。

まだ大統領選はトランプにとって、十分射程距離内にあります。

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は、とにかく、思ってもみなかったサプライズが複数あるかもしれません。

そうなれば、トランプが勝利するということもあり得ると思います。米大統領選は、まだまだバイデンに決めちなどできません。まだまだ、トランプにも可能性があると認識すべきです。

2020年10月10日土曜日

スウェーデンでも「中国への怒り」が爆発! 西側諸国で最初に国交樹立も…中共批判の作家懲役刑が決定打 孔子学院はすべて閉鎖、宇宙公社は中国との契約打ち切り―【私の論評】国民の86%が中国に対して否定的な見方をしている現在、菅政権は旗幟を鮮明にせよ(゚д゚)!

 スウェーデンでも「中国への怒り」が爆発! 西側諸国で最初に国交樹立も…中共批判の作家懲役刑が決定打 孔子学院はすべて閉鎖、宇宙公社は中国との契約打ち切り


スウェーデンのロベーン首相

 「自由・民主」「人権」「法の支配」という基本的価値観を共有する、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国は、軍事的覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国共産党政権に対峙(たいじ)するため「日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)」を推進している。こうした動きは、欧州でも英国やフランス、ドイツにも広がりつつあるが、何と今週、人類の発展に貢献したノーベル賞受賞者を発表しているスウェーデンでも「中国への怒り」が爆発しているという。西側諸国で最初に国交を樹立した北欧最大の国家を激怒させた理由・背景とは。ノンフィクション作家、河添恵子氏が緊急寄稿第24弾で考察した。


 「オピニオン 中国のスウェーデン攻撃は民主主義では受け入れられない」

 スウェーデンの外交政策シンクタンク「ストックホルム自由世界フォーラム」は今月1日、こんなタイトルのリポートを発表した。執筆者は、元欧州議会議員である同フォーラム議長と、シニアフェローの2人である。

 英語でつづられたリポートは、「世界中の自由で開かれた社会は、中国共産党政府から攻撃を受けている。(異国の)政府を脅かし、批判者を沈黙させ、メディアに従順を強制するために、金満な経済力を利用している」「ウイグル人に対する迫害と暴力に抗議すれば、あなたは脅かされる」などと警鐘を鳴らしている。

 そして、首都ストックホルムにある中国大使館と中国当局による、スウェーデンの政治家やジャーナリスト、言論人、人権活動家などへの“恫喝(どうかつ)”を告発している。中国共産党の“戦狼外交”に、スウェーデン国民の堪忍袋の緒が切れたのだ。

 米世論調査会社「ピュー・リサーチセンター」が昨年12月に発表した、スウェーデンでの「対中感情調査」で、「国民の70%が中国に否定的な感情を抱いている」ことからも、それは明らかだ。

 しかも、新型コロナウイルスの感染拡大後、両国関係は修復不可能なレベルにまで悪化しているという。

 今年4月、スウェーデンの孔子学院と孔子課堂はすべて閉鎖され、複数の地方都市が中国との姉妹都市関係の解消に動き出した。ダーラナ市は、新型コロナウイルスが発生した武漢市との姉妹都市関係を終わらせ、リンショーピング市は、12月に予定されていた広東省代表団の訪問を「歓迎しない」と断ったという。

 スウェーデンは、1950年5月9日、前年10月に建国した中華人民共和国と国交を樹立した「最初の西側諸国」である。国連の議席をめぐっても当時、毛沢東主席と周恩来首相の主張を支持するなど、中共の“大恩人”といえる。そして今年は、両国の外交関係にとって大きな節目となる「国交樹立70周年」という記念の年だった。

 ところが、両国間では祝辞すら交わされていない。深刻な亀裂は、中国のある人物への対応が“火種”となっている。

 中共を批判する「禁書」を扱っていた香港「銅鑼湾書店」の大株主の1人で、作家でもあるスウェーデン国籍の桂民海氏が2015年、タイで中共当局に拉致・連行された。彼を擁護したスウェーデン人のジャーナリストは、中国大使から「狂気」「無知」「反中」などと誹謗(ひぼう)中傷を受けた。

 国際ペンクラブのスウェーデン支部は昨年11月、桂氏に対し、「言論・出版の自由賞」を授与した。アマンダ・リンド大臣(文化・スポーツ・民主主義・少数民族担当)が授賞式に出席すると、中国当局は「出席者は、中国では歓迎されなくなる」と威嚇した。

 ■ボルボまで「中国マネー」に売り渡すのか

 スウェーデンのステファン・ロベーン首相は「この類の脅しには絶対に屈しない。スウェーデンには自由があり、これがそうだ」と、テレビ番組で強く反発。リンド大臣も「桂氏を今すぐ解放すべきだ」と要求した。

 しかし、中国浙江省の裁判所は2月、桂氏に対して「懲役10年」の判決を言い渡した。理由は外国で違法に機密情報を提供した、だった。

 スウェーデンは、国家安全保障の観点から、中国との関係を見直す動きを加速させた。

 ロイター通信は9月21日、スウェーデン宇宙公社(SSC)が、宇宙船やデータ通信を支援するため、衛星地上基地の使用を認めるとした中国との契約について、「地政学的な情勢の変化を理由に延長しない」と決めたと報じた。基地はスウェーデンのほか、オーストラリアやチリにある。

 中国当局は「両国の宇宙協力は商業ベースで、国際慣行を順守しており、宇宙の平和利用が目的だ」と契約継続を望む弁明をした。だが、近年、北大西洋条約機構(NATO)との関係を深めているスウェーデンの国営企業の決定が覆るはずがない。

 さて、スウェーデンでは「3つのV」、つまり、「VOLVO(ボルボ=車)」「Vovve(ヴォヴェ=かわいい犬の意味)」「Villa(ヴィラ=一戸建て)」が人生の成功を定義するといわれる。

 そのボルボが今年2月、中国の「吉利(ジーリー)汽車との合併を検討」というニュースが流れた。スウェーデン人の誇りを「中国マネー」に売り渡すのだろうか?

 吉利汽車の創業者と習主席が「近い」関係にあることは周知の事実である。しかも、中共政府がかつて、外交官第1号としてスウェーデン大使に任命した耿飈氏は、習氏が大学卒業後、秘書を務めた最初のボスなのだ。

スウェーデン大使として任命された耿飈氏 写真はブログ管理人挿入

 「井戸を掘った国・国民」に対し、後ろ足で砂をかける。70年間で、関係を“破壊”へと向かわせた責任が誰にあるかは明らかだ。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)、『習近平が隠蔽したコロナの正体』(同)など多数。

【私の論評】国民の86%が中国に対して否定的な見方をしている今、菅政権は旗幟を鮮明にせよ(゚д゚)!

冒頭の記事にもあるように、米世論調査会社「ピュー・リサーチセンター」が昨年12月に発表した、スウェーデンでの「対中感情調査」で、「国民の70%が中国に否定的な感情を抱いている」のは何も昨年からのことではありません。むしろ数年前から、かなりスウエーデン国民は、中国に対して否定的になっていました。

たとえば、2018年9月2日、曾という3人の中国人観光客がスウェーデンの首都、ストックホルムのホテルの従業員から暴言を受け、さらには警察によりホテルの外に追い出され、最後には墓場に連れて行かれ放置されたとネットで訴えました。

このニュースを同年15日に伝えた人民日報系の環球時報は、「予定よりも早くホテルに到着し、昼まで部屋には入れないと言われ、父母は健康がすぐれないためロビーのソファーで休ませてほしいと頼んだが、ホテル側は拒否、暴力的に追い出された」「警察は意識がもうろうとする両親を殴打し、無理やり車に乗せ、ストックホルムから数十キロ離れた荒野の墓地に置き去りにした」などと報じました。

曾一家はその日のうちにスウェーデンを離れ、同紙は「スウェーデン警察の老人に取った行動は、現代国家には想像できないものだ」と批判しました。

これを受けて在スウェーデン中国大使館は「人権を標榜するスウェーデンが人権を軽視した」などと厳重な抗議を行い、中国のネット等でも怒りが巻き起こりました。

これに対しスウェーデンの現地メディアは、「3人が予約を間違えて前日の深夜に到着、客室は満員で翌日の昼でないとチェックインできないと説明したことでトラブルになった」「中国の観光客は体の調子が悪いからロビーのソファーで寝かせてくれと要求、ホテル側が拒否し、ホテルを出るよう求め、3人と言い争いになり、警察に通報した」などと報道、警察の対応も事態を沈静化させるもので、暴行などはなく問題はなかったと指摘しました。

さらに事件当時の動画を公開、警察が老人らを注意深くホテルの外に運び、老人が路上で泣きわめき、曾は女性警官とぶつかってもいないのに自分から路上に倒れ、警察が殴ってもいないのに「警察が我々を殺そうとしている」と英語で叫ぶ様子などが中国にも伝わりました。この関連動画を以下に掲載します。



さらに3人が連行されたという墓地は、実際にはストックホルムの中心部から6キロほどの地下鉄駅近くで荒野ではなく、ホームレスなどが夜を明かすことができる教会であり、墓地はすぐ脇にあったが、世界遺産にも指定された有名な観光地だったことも判明しました。

米メディアによると、スウェーデンの検察当局は事件が報じられる以前の7日、警察官の行動に問題はなかったとして事件に対する調査を終了したと発表。「(顧客が)秩序を乱す行為をしたことへの通常の対応だ」と現地紙にコメントしたといいます。

事件を受け、中国の外交部門は14日、スウェーデンに対し「驚きと怒りを覚える」「スウェーデン警察による、中国国民の生命と基本的人権を侵害する行為を厳しく非難する」「スウェーデンに対し、当事者である中国国民が求めている処罰、謝罪、賠償などの要求に応じるよう求める」と非常に厳しい口調で申し入れました。

ところがスウェーデン側の報道により事実が明らかになった17日には「大使館と外務省はスウェーデン側に申し入れ、事件を調査し、当事者の合理的な要求に答えるよう求めた」と急激にトーンダウンしました。

このような当初の中国側のスウエーデンに対する厳しい態度は、当時スウェーデン国籍で中国政府を批判する書籍を販売していた香港の書店関係者、桂民海氏が中国当局に拘束されたことで、スウェーデン政府が中国を人権侵害と批判したことや、中国政府が「チベット独立勢力」とみなすチベット仏教最高指導者、が当時スウェーデンを訪問したことへ不快感を強めていたことが背景にあったものとみられます。

スウェーデンでの事件のような、社会のルールを自分の都合のいいように解釈し、「ゴネればなんとかなる」「わめけば得をする」といわんばかりの中国人による事件は、中国内では当時頻繁として起こっていました。

たとえば、自分が予約した高速鉄道の座席を勝手に占拠し、「ここは自分の席だ」と言ってもどかない、こうしたトラブルが中国で立て続けに発生しています。それが海外に飛び火したというのが、この事件ということができると思います。

中国国内でも、こうした事件の背景などが分析されており、1人っ子政策により両親に甘やかされて育った「小皇帝」が、そのままわがままな大人となった「巨嬰」(巨大な赤ちゃん、giant infant)ではないかとの議論が起きました。

「巨嬰」という言葉を有名にしたのが、2016年に中国で出版された「巨嬰国」という書物です。

「(中国式)巨嬰」の特徴とその社会的な背景を分析したこの本でも、巨嬰の特徴として「ナルシスト」「極端にわがまま」「自己中心」「依存心が強い」などを挙げていますが、中国社会を批判する内容だとして、直ちに発禁本となりました。

こうした「巨嬰症」への最大の対処法は、きちんとしたルールを示し、ゴネ得は効かないということを分からせ、ルールを強制的に守らせることです。実際中国の鉄道当局がとった罰金や180日間の乗車禁止などの処分をすることで、その後このような事件は頻発しなくなりました。

一度は沈静化するようにみえた今回のスウェーデンでの問題でしたが、同国のテレビ番組「スウェーデン・ニュース」が事件を受け、『中国の観光客を歓迎しますが、路上で排泄をしないでください』と揶揄する内容を放送したことで、再びメディアや外交当局が猛烈に抗議するなど、しばらく余波が続きました。

中国語のニュースサイトで「大便」、「小便」を検索すると、多数の記事が見つかりますが、2016年以降でもかなりの事例があります。ここでは、詳細はあげません。日本でもサイトを検索するとかなり出ています。

中国政府は旅行中に“不文明的行為”を行った人物を罰則としてブラックリストに載せ、一定期間その旅行を制限する『観光客不文明行為記録管理暫定弁法』を2015年5月に施行しました。

これは見せしめを示すことで、中国国民に自覚を促そうとするものです。現在までに何人がブラックリストに載っているかは分からないですが、2017年6月の時点で29人という報道がありました。

こうして見てくると、「スウェーデン・ニュース」が中国人観光客を揶揄した内容は決して間違っておらず、中国政府がそれを⼗分認識していることは明⽩です。「スウェーデン・ニュース」が中国政府の痛い所を鋭く突いたので、国家の面子を守るために、逆切れするしか方策が無かったというのが真相のようです。

このような、振る舞いは、中国による他国への国際関係でもますます顕著となってきました。中国は国家そのものが、「巨嬰」的振る舞いをしているといえます。

冒頭の記事にでていた、米国の大手調査会社ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が10月6日に新たに発表した世界的な世論調査の報告によると、多くの先進国における反中感情は近年ますます強まっており、この1年で歴代最悪を記録しました。

同機関の世論調査によると、調査対象の14カ国(米国、ドイツ、フランス、英国、ノルウェー、スウェーデン、スペイン、イタリア、デンマーク、ハンガリー、カナダ、日本、韓国、オーストラリア)で、回答者の大多数が中国に対し「好意的でない」と回答しています。

また、米国、ドイツ、フランス、英国、スウェーデン、イタリア、カナダ、韓国、オーストラリアの9カ国の反中感情は、同機関が調査を始めてからの15年間で、過去最悪となりました。

中国共産党はコロナ危機に情報封鎖を行いました。また、香港や新疆ウイグル自治区における人権侵害が国際的に報道されました。さらに、批判を批判で返す好戦的姿勢の外交部報道官の発表は、国際社会からの広範な批判を引き起こしました。さらには、2018年に習近平は「米国に変わって中国が新たな世界秩序をつくる」と公表しています。

日本に対しては、尖閣水域での船舶や航空機による頻繁な示威活動や、尖閣諸島が中国の領土であるという歴史修正、日本にとっても生命線ともいえる南シナ海の環礁の軍事基地化など乱暴狼藉の限りをつくしています。

中国に対して否定的な見解を持つ14カ国とその割合は高い順番から、日本(86%)、スウェーデン(85%)、オーストラリア(81%)、デンマーク(75%)、韓国(75%)、英国(74%) 、カナダ(73%)、オランダ(73%)、米国(73%)、ドイツ(71%)、ベルギー(71%)、フランス(70%)、スペイン(63%)、イタリア(62%)となっています。以下にこの結果のグラフを掲載します。


この結果をみると、スウェーデンでは、中国に対する否定的な感情を持つ人が、昨年の12月の70%から85%にはねあがり、日本についで世界第二位となっています。

対中問題は、米国大統領選挙の重要な争点となっています。トランプ米大統領は中国指導者に対する批判を強めており、中国による知的財産窃盗問題への対策として外交、貿易、学術、ビザ審査などの規制を強化しています。

オーストラリアでは、豪中政府間の緊張の高まりから、中国に対する否定的な考えに転じる人の割合は最も増加しました。回答者の81%が「中国が嫌い」と答え、昨年より24ポイントも増加したことが同調査で明らかになりました。

今回の世論調査の結果は、国際社会において中国共産党は「ひとりぼっち」であることを浮き彫りにしました。さらに、コロナ危機においてマスクや医療資源、ワクチンなどの各国への提供を行なっていますが、信頼を得るには至っていません。共産党は国内および海外マスメディアに資金を投じて対外宣伝を続けていますが、少なくとも経済主要国ではその効果は出ていなません。

国内で「巨嬰」を取り締まる中共自身が、今や世界の「巨嬰」となっています。人民の「巨嬰」は取り締まるものの、自ら全く自重をする気配のない中共は、完璧なダブル・スタンダードといえます。

日本では、国民の86%と世界で最も中国に対して否定的な見解を持っているにも関わらず、政権内にも親中派がいる始末です。政権与党がこの有様ですから、最近話題の日本学術会議をはじめ、様々な団体や組織、民間企業が未だ親中的です。スウェーデンでは全館廃止された、孔子学院が、日本ではまだ各地の大学に存在しています。これは、大多数の国民の平均的な考え方から遊離していると言わざるを得ません。

菅義偉首相は先月25日夜、中国の習近平国家主席と就任後初の電話会談に臨みました。両首脳は今後も首脳間を含むハイレベルで2国間、地域、国際社会の諸課題について緊密に連携していくことで一致しました。首相によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期された習氏の国賓来日に関しては言及がなかったそうです。

上の記事にも言及されている「日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)」を推進しており、この対話は最近日本で行われたばかりです。

このQUADは米国の要望もあり、アジア地域のNATOのようになる可能性を秘めています。このようなこともあり、菅政権としては、対中国冷戦に参加せざるを得ないわけですが、いずれは自民党内の親中派を懐柔するか、排除するなどして、旗幟を鮮明にすべきです。

自民党内の親中派も、世界情勢をみればどうすべきかなど、理解できるはずです。にもかかわらず、親中的な態度を取り続ければ、何らかの利益を中国から供与されているのではないかと疑われることになります。もしそのようなことがはっきりすれば、日本政府からだけではなく、米国から制裁されることもにもなりかねません。

現在は、安倍前首相がトランプ氏と太いパイプで結ばれ、トランプ政権が中国に態度を硬化して以来、従来のように米国による理不尽な要請や、過大が要求などが影を潜めましたが、いつまでも、党内親中派にこだわり、旗幟を鮮明にしなければ、また過去のように日本に対する米国の圧力が高まることになります。そうなれば、日本はアジア版NATOからはじき出されるかもしれません。

そのようなことは避けるべきです。次の大統領が誰になっても、現在の米国の日本に対する姿勢を維持させるためにも、旗幟を鮮明にすべきです。

国の歴史や成り立ちが全く違い、人口も1023万と日本の1/10程度のスウェーデンですが、日本のリベラル左翼の方々は、社会福祉でも何でもスウェーデンを例にして語ることがあり、私自身は単純比較には無理があるということで、嫌いです。しかし、首相が旗幟を鮮明にするということでは日本もスウェーデンを見習うべきです。

一方旗幟を鮮明にすれば、日本はアジア版NATOで米国とともにリーダー的な地位を獲得して、世界でリーダーシップを発揮することができる可能性が大です。そのとき、安倍前首相の念願でもあった、戦後レジームからの脱却を果たせことになるでしょう。そのチャンスを潰すべきではありません。

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2020年10月9日金曜日

立場の違いが明確に、埋められないEUと中国の溝―【私の論評】EUは、米国が仕掛けた“対中包囲網”に深く関与すべき(゚д゚)!

 立場の違いが明確に、埋められないEUと中国の溝

EUが対中包囲網に加わる流れが濃厚に

EU首脳と習近平・中国国家主席の間で行われたビデオ会議(2020年9月14日)


(澁谷 司:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・アジア太平洋交流学会会長)

 今年(2020年)9月14日、習近平主席は、メルケル・ドイツ首相や他の欧州連合(以下、EU)首脳らとビデオサミットを開催した。メルケル首相に加えて、ウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(ドイツキリスト教民主同盟所属)とシャルル・イヴ・ジャン・ギスレーヌ・ミシェル欧州理事会議長(元ベルギー首相)も出席した。

 このサミットでは、中国とEUの立場の違いが鮮明になっている。周知の如く、中国は米国との関係が悪化した。そこで、北京はEUとの良好な関係維持を模索している。他方、EUは中国の香港やウイグル等での人権抑圧を批判しながらも、同国との経済関係維持を望んでいた。

人権問題に関して異なる見解

 アメリカの国営放送局のサイト『美国之音(VOA:ボイス・オブ・アメリカ)』(2020年9月15日付)に掲載された趙婉成の「EU-中国首脳会議は多くの困難な問題に直面」という記事が興味深いので紹介したい。

 同会議前、参加各国は相手国の輸出品を保護するため、地理的表示が明らかな食品・飲料に関する協定に署名した。

 例えば、スパークリングワインについて、中国はフランス・旧シャンパーニュ地方産のみ、その名の使用を許可する。協定で保護された他の製品には、アイリッシュウイスキー、イタリアのパルメザンハム、ギリシャのフィタチーズ、中国四川省成都市郫都区の豆板醤(とうばんじゃん)、同浙江省湖州市安吉県の白茶、同遼寧省盤錦市の米などがある。

 昨2019年、中国はEU内で第3位の農産物・食品輸出国だった。その輸出額は145億ユーロ(約1.8兆円)に達する。

 今回の会談では、人権問題が最も扱いにくいテーマだった。目下、香港・新疆等をめぐり、中国と欧州の見解の相違が日増しに深まっている。そのため、EU諸国の北京への対応が強硬になった。

 例えば、今年8月26日、EUは香港の警察が林卓廷(Lam Cheuk Ting)民主党議員など民主活動家数十人を逮捕したことを指弾した。また、EUは新疆ウイグル自治区のイスラム教徒に対する中国の弾圧に抗議している。

 他方、中国は世界最大の温室効果ガス排出国である。そこで、EUは中国が温室効果ガス削減に関して、さらに大きな国際公約を宣言し、遵守することを望んだ。

 なお、EU委員会は今年6月に発表した報告書では、新型インフルエンザが武漢で発生した際、中国共産党がソーシャルメディアを利用して嘘の情報を流したと論難した。確かに、習近平政権は、偽情報で中国のイメージを改善しようと試みている。

 以上が概要である。

 農産品については、中国とEUともに、一定の成果を上げたと考えられよう。しかし、人権問題に関しては、両者の溝が埋まることはなかった。

EUが米中間で中立を維持することは不可能

 次に、同じく『美国之音(VOA)』に掲載された樊冬寧の「話題の対話:習近平の“連欧で米を制す”に対し、トランプは中東カードを使用か?」(2020年9月18日付)という記事も面白いので、紹介しよう。

 まず、上海の復旦大学中国研究所研究員、宋魯鄭は「中国はEUにとって軍事的脅威とはなり得ないので、双方に地政学的な対立はないだろう。もしEUが中立を維持すれば、米国と中国の両方から利益を得ることができる」と主張した。

 一方、政治評論家の陳破空は、今度の中国・EU首脳会議は北京政府にとって思惑通りに事が運ばなかったと指摘している。EUの指導者たちは北京に対し、人権・ウイグル・香港問題などを非難した。だが、習近平主席はEUにとって肯定的な反応を示さなかったのである。

 また、陳はEUが米中の間で中立を維持することは不可能だと喝破した。同首脳会議では人権問題以外、他の主要議題でも、EUと米国の立場が一致している。

 例えば、市場アクセス、市場開放など、欧州は中国商品に常に門戸を開いているが、中国は欧州の資金と商品に制限を設けている、と陳は指摘した。

 さらに、陳は、欧州は会談直後、新疆とチベットの問題を取り上げた。ドイツの外相らは、米国と類似した方式で、「ドイツ版インテリジェンス戦略」を提示したと述べた。

 以上が概略の一部である。

さらに深まったEUと中国の溝

 今回のビデオサミットで、習近平主席はEUを利用して中国の“四面楚歌”状況を打破したいという狙いがあった。けれども、香港を含む中国国内の人権問題で、中国とEUは鋭く対立し、両者の溝はさらに深まった観がある。

 「新型コロナ」後、習近平政権は「戦狼外交」を展開したが、外交的手詰まり状態に陥った。そこで、今年9月下旬から10月初めにかけ、王毅外相が外交的突破口を開くため、欧州5カ国を訪問した。だが、王が香港での市民弾圧やウイグルの人権抑圧等で仏独から弾劾されている。

 今後、習近平政権が人権問題で政策転換をしなければ、EU諸国は、米国が仕掛けた“対中包囲網”に深く関与するに違いない。

[筆者プロフィール] 澁谷 司(しぶや・つかさ)
 1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。2020年3月まで同大学海外事情研究所教授。現在、JFSS政策提言委員、アジア太平洋交流学会会長。
 専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

【私の論評】EUは、米国が仕掛けた“対中包囲網”に深く関与すべき(゚д゚)!

中国との対決をずっと拒否し政治的に無作為だった欧州の指導者たちが、ついに立ち上がり始めたようです。ここ数年、ニュースの見出しを飾ってきたのは圧倒的にトランプ大統領と米中貿易戦争でした。

しかし、世界最大の貿易ブロックである欧州連合(EU)も米国と同様、中国には数々の不満を抱いており、欧州のモノやサービスに対して中国は非常にねじ曲がった貿易慣行や制限を課しています。新型コロナウイルスで欧州諸国が高い犠牲を払っていること、そして中国が欧州の不運につけ入り利益を得ようしていることが、多数の欧州指導者に行動を促すきっかけとなりました。

在中国の欧州企業関係者にとって、中国市場の競争条件の不公平さは周知のことで、企業グループやシンクタンクによる多くの報告書は何度となくこの問題を強調してきたのですが、欧州は従来、米国と比べて対決的な役割はあまり演じない道を選んできました。

EUは昨年から中国を「体制上のライバル」と呼び始めましたが、積極的な反発は限られたものでした。

その理由の一つは、EUのガバナンス構造に内在する弱点にあります。欧州は国ではなく地理上の圏域であり、EUも国家ではなく、英国離脱前は28、現在は27の加盟国をまとめている超国家的な組織です。

何事も全加盟国のコンセンサスがなければ実効性を持たないのです。共通通貨ユーロを使わない国もまだあります。全加盟国に国境を開放する国もあれば、そうでない国もあります。経済的に重要であることは確かですが、意見が一致した組織ではなく、実際のところ中国に関しては一致していませんでした。

中国については、積年の経済問題や市場アクセスに加えて、政府による人権侵害の拡大が欧州にとって無視できないほど深刻になってきています。チベットおよび東トルキスタンとして知られる新疆ウイグル自治区での文化的虐殺、台湾を国際舞台で孤立させようとする理不尽な要求、香港での厳しい弾圧と国家安全維持法の導入は目に余るものとなり、欧州の指導者たちは声を上げるようにりました。

これらの懸念に加えて、欧州の政策の中心である気候変動や持続可能なエネルギーの分野でも、かつて重要なパートナーと思われていた中国は約束を守らず、国内外で石炭ベースのエネルギー生産を拡大し続けています。

そして、最近の出来事により欧州の対中認識が一段と硬化しました。欧州の中国に対する政策が徐々に米国に歩み寄る中で、この8月には中国の王毅外相が欧州各地を歴訪して、「ご機嫌取り」の攻勢をかけ、一定の親善関係を形成しようとしたためです。

王毅氏は、ご機嫌を取ることには失敗したのですが、その攻勢は非常に強力でした。王毅氏のやり方は、意に沿わないことに直面するとホスト国を脅すことでした。ノルウェーでは、香港に関連した抗議活動家や抗議グループへのノーベル平和賞の授与が脅しの対象になりましたた。

中国の王毅外相は欧州5カ国を歴訪し、ノルウェーのスールアイデ外相(右女性)らと会談

ドイツではハイコ・マース外相との共同記者会見で、チェコ上院議長の台湾訪問について、チェコは「高い代償」を払うことになると語りました。これは即座にマース氏の非難を招き、マース氏は王毅氏に対し、「脅しはここにふさわしくない」と述べ、欧州では国家間の関係についてそのような振る舞いはしないと指摘しました。

フォルクスワーゲンのヘルベルト・ディース最高経営責任者が、新疆ウイグル自治区の収容所について知らないと発言した18か月前とは様変わりです。こうした欧州の新しい雰囲気は新鮮な息吹です。

これまで欧州の指導者たちが政治面や経済面で中国に対抗しようとしたときでさえ、足並みの乱れがあったため、その内容は限られていました。EUの枠組みの性格上、中国はドイツの産業界の首脳らにエネルギーを集中しました。

これは昨日もこのブログに掲載したばかりですが、ドイツも対中輸出への依存度が高く、最大の顧客である中国を批判することには消極的でした。中国はまた、中・東欧17か国と中国からなる経済協力の枠組み である「17+1」 のような、より小さな欧州諸国グループの同盟を構築しようとしています。

このグループは最近ギリシャを加えて拡大されましたが、ギリシャへの大規模な港湾投資以外は投資や大規模プロジェクトに関してこれといった見るべきものはありません。しかし、こうした諸国へのアプローチが友人を増やし、ハンガリーとギリシャの両国は中国を批判しようとしたEUの声明の表現を弱めさせる役割に回りました。

しかし、そのような「友情」ははかないものかもしれないです。これらの欧州諸国は、中国への真の親近感からというより、EU主要国による扱われ方への不満を示す手段として中国を見ている可能性がありまか。

欧州内部の足並みを乱す上での中国の最大の成果は、中国流のグローバリゼーションである「一帯一路構想」にイタリアが参加したことです。イタリアはEUの創設メンバーであり、「一帯一路構想」に参加した唯一の欧州先進国であることからみれば、確かに中国にとっては成功ではあります。しかし長続きはしないでしょう。

欧州の指導者は「体制上のライバル」である中国の脅威への対処は遅れたかもしれないです。しかし、イタリアの「一帯一路構想」への参加や、ギリシャの海運と港湾インフラへの大規模な投資、それに今年の新型コロナウイルス発生後の誤った情報やあからさまな嘘によって、欧州は中国と対処するに当たって疑念を抱かざるを得なくなりました。

英国のEUからの離脱も、中国対欧州の構図の上で複雑な問題です。10年前、英国のデービッド・キャメロン首相とジョージ・オズボーン財務相は経済と投資を中国政策の中心に据え、中英関係の黄金時代の幕開けを両国は歓迎しました。

EU離脱派の見解は異なりますが、現実には英国はEU内において特に単一市場確立の推進役であり、EU内部の議論の際には多くの国、特に北欧諸国が英国によって追い詰められました。英国はもはやEUのメンバーではなく政策に直接影響を与えることもできないです、今は中国に対して批判の急先鋒です。

英国 ボリス・ジョンソン首相

5G導入を巡るファーウェイに対する英国の態度の急変は中国にショックを与えましたが、それだけでなく英国は香港の保護についても驚くほど強硬な立場を取りました。300万人にも上るかもしれない香港市民に英国市民権の道を開こうとする英国の姿勢は、中国を激怒させています。

欧州が対中行動に消極的なのは、多くの欧州人、特に政治エリートがドナルド・トランプ氏を嫌っているからです。中国に関して欧州と米国は共通の不満を抱えているが、「アメリカ・ファースト」の政策は、欧州にもトランプ大統領の怒りの矛先が向いていることを意味します。

中国に対抗しようとすれば、トランプ大統領やポンペオ国務長官の側についたとみなされがちで、これはほとんどの欧州指導者が望んでいませんでした。彼らは国家レベルの懸念は理解していたものの、トランプ氏のアプローチのレトリックと態度が不愉快だったのです。

欧州の指導者は、訪欧したポンペオ国務長官から自国ネットワークでのファーウェイ使用を禁止しないなら米国の情報・軍事の協力から外されると言われた際に、脅しに応じて動いたと思われたくはなかったのです。たとえファーウェイを巡る安全保障上の懸念に加え、競合関係にある欧州のエリクソンやノキアの中国市場へのアクセスが非常に制限されていることは認めるにしてもです。

米国とEU(英国を含む)の対中政策が近づきつつある中で、両者にはなお大きく相違する部分があります。米中の第1段階の貿易合意で欧州は動揺しました。合意は開かれた自由貿易の考え方に逆行し、米国が中国の膨大な需要を囲い込むことにより、欧州の企業や産業にとって不利になると受け止めたからです。

これと同様に重要なことがある。米中間のいかなる貿易合意とも矛盾しているように見えるものですが、それは両国経済を切り離すデカップリングの問題です。

王毅外相の訪欧は、ここ数か月にわたる欧州での中国への反発を受けて、親善関係を回復するとともに、中国共産党の習近平総書記とEU議長国であるドイツのアンゲラ・メルケル首相とのオンライン形式の会議を前に、その土台づくりをするのが狙いでした。

メルケル首相の6か月間の輪番制EU議長国職は間もなく任期が終わります。習氏はまた、欧州理事会のシャルル・ミシェル議長や欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長ともビデオ会談をしました。習氏は王毅氏のように反感を引き起こすことはありませんでしたが、ほとんど成果はありませんでした。

貿易と投資環境の改善を重視したい人たちもいますが、長期にわたって未決着の包括的投資協定(CAI)については、中国側になすべき大きな課題があります。中国は経済の在り方を根本的に変える必要がありますが、それが実現すると考えている人はまずいないでしょう。

 習氏の厳格な支配の下で、国家と党は経済のあらゆる分野にその力を押し付けてきました。これに関して習氏の立場を変えるものは何もありません。彼は相互利益や共有された未来などについて立派な発言をするかもしれないいですが、実態は何も変わらないでしょう。

習氏は国際社会が望んだものを何も提供できないですが、彼は、世界は変化しており、その変化は中国にとって好ましい方向でないことを知っておかなければならないです。欧州は、中国による国際規範を踏みにじる行為についてようやく口にし始めましたが、言葉の変化は始まりにすぎないです。

昨年末に就任したばかりのジョセフ・ボレルEU外務・安全保障上級代表は、世界で独裁的な政権が増えている中、米国とEUの対話の必要性と、同じ志を持つ民主主義国と協力する必要性を提案しています。ボレル氏はロシア、トルコ、中国に明示的に言及しています。

ジョセフ・ボレルEU外務・安全保障上級代表

問題は、EUがそのようなグループをつくり、大統領であるトランプ氏とともに意味のある政策を策定できるかどうかです。 それとも、中国に対するEUと米国の姿勢の歩み寄りは、欧州指導者の個人的な好みにより近いバイデン氏の大統領就任にかかっているのでしょうか。

 今の段階では誰にも分かりません。 欧州が直面している問題は、中国との対決の必要性はあと4年も待っていられないということです。欧州は早急に行動を起こす必要があり、米国と行動を共にすべきです。

新型コロナウイルスの世界的大流行は、今後何年にもわたって経済的、政治的ショックをもたらすでしょう。志を同じくする民主主義諸国の協力が不可欠です。中国はもはや欧州で自由に振る舞えず歓迎もされないでしょう。時代は変わったのです。

しかし、特定の取引や個別の発言を制限したり、国際社会での悪弊を非難したりすることは、世界最大の貿易ブロックにふさわしい対中政策ではありません。欧州は中国に関してこれまでとは異なるスタイルで関わったり対抗したりできるはずですが、現状はそうした動きとほど遠いです。

欧州はボレル氏の提案を実行に移し、米国との間で分断ではなく一層の団結を実現しなければならないです。特に中国の台頭に対応するためにはそれが必要です。

特にEU内でも、ドイツ、フランス等にとっては、中国は大きな脅威にはならないかもしれないです。きっと自ら防ぐことができるでしょう。しかし一方で、中国は欧州の東欧や中欧等の比較的経済に恵まれない国々の独立を一段と脅かす恐れがあります。これらの国は経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱く、他国に介入されやすいからです。それこそがEUにおける大きな危機です。

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