2023年4月19日水曜日

安倍元首相の「暗殺成功して良かった」で大炎上、作家で法大教授の島田雅彦氏 発言翌日に岸田首相襲撃 夕刊フジに寄せた全文を掲載―【私の論評】島田氏は非常識発言だけは控えこれからも活動を続け、愚劣なサヨクの人間性の退廃の極みの見本であり続けよ(゚д゚)!

安倍元首相の「暗殺成功して良かった」で大炎上、作家で法大教授の島田雅彦氏 発言翌日に岸田首相襲撃 夕刊フジに寄せた全文を掲載



 作家で、法政大学国際文化学部教授の島田雅彦氏(62)の発言が大炎上している。14日に生配信した自身のインターネット番組「エアレボリューション」で、昨年7月の安倍晋三元首相暗殺事件を念頭に、「暗殺が成功して良かった」などと発言したのだ。テロや殺人を容認したと受け取れるうえ、新たなテロを誘発しかねないだけに、ネット上だけでなく言論界からも「とんでもない発言」「リベラリズムからもかけ離れている」などと激しい批判が相次いでいる。発言翌日には、岸田文雄首相の選挙応援演説会場に爆発物が投げ込まれる事件も発生した。夕刊フジの取材に対し、島田氏は「公的な発言として軽率であった」などと長文の回答を寄せた。


 大炎上している発言は、島田氏が、政治学者で京都精華大学准教授の白井聡氏とレギュラー出演するネット番組「エアレボリューション」で飛び出した。ゲストは、ジャーナリストの青木理氏だった。

望月衣塑子氏と島田雅彦氏 類は友を呼ぶ?

 統一地方選・前半戦(9日投開票)の結果を踏まえて、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題や、自民党の批判、立憲民主党の惨状などが話題に上がるなか、島田氏は次のように語った。

 「こんなことを言うと、また顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれないけど、いままで何ら一矢報いることができなかったリベラル市民として言えばね、せめて『暗殺が成功して良かったな』と。まあそれしか言えない」

 前後の文脈から、昨年7月の安倍元首相の暗殺事件を指すことは明白だった。笑顔を浮かべた島田氏は、続けて23日投開票の衆院山口4区補選に言及した。

 「(自民党は)うまいこと、この暗殺による被害者側の立場に立った」「(立憲民主党の元参院議員)有田(芳生)さん、頑張ってほしいですけどね」「(自民党は)『亡くなった安倍元首相の魂を受け継ぎ』みたいなことを言っている。『弔い合戦』に持ち込んだ者が何か〝坊主丸儲け〟した感じが否めない」

 島田氏は1961年、東京都生まれ。東京外国語大学卒。83年に『優しいサヨクのための嬉遊曲』を発表して注目される。84年に『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞、92年に『彼岸先生』で泉鏡花文学賞を受賞。2003年から法政大学国際文化学部教授。昨年4月に紫綬褒章を受章している。

 島田氏による発言に対し、ネット上では「暗殺を是とする発想は非常に危険」「暗殺を良かったと思うのがリベラル市民なのか」「残されたご遺族の気持ちを思うと…」「思想関係なく暴力に訴えた時点で終わり」「法政大学は(中略)彼を通じて学生に何を教えるつもりだろう」「さすがにアウト」などの批判が噴出した。

 政治評論家の屋山太郎氏も「とんでもなく、ひどい発言。教育者という自分の立場も考えるべきだ。極めて非常識であり、公の場で話す資格はない」「世界中どこにも『暗殺がいい』という常識はない」と怒りをあらわにした。

 ジャーナリストの有本香氏も「恐ろしい発言だ。リベラリズムから最もかけ離れている」と指摘した。

 批判が噴出するなか、島田氏は17日、自身のツイッターに「暴力装置としての国家を監視すべきメディアが国家と一丸となって民を抑圧するようでは私達の居場所はさらに狭まる」と投稿した。

 島田氏は一体、自身の発言をどう考えているのか。

 夕刊フジは17日夕、法政大学を通じて、島田氏に対し、「暗殺が成功して良かった」という発言の真意や、暴力による言論封殺への考えなど、4つの質問を送った=別表。翌18日午後3時に、島田氏から長文の回答が届いた。

有本氏「世直しのためならテロ容認かと問いたい」

 島田氏はまず、「テロの成功に肯定的な評価を与えたことは公的な発言として軽率であったことを認めます。殺人を容認する意図は全くありませんが、そのように誤解される恐れは充分にあったので、批判は謙虚に受け止め、今後は慎重に発言するよう努めます」と反省を記していた。

 次に、安倍元首相暗殺事件で、殺人罪などで起訴された山上徹也被告(42)に触れ、「安倍元首相襲撃事件には悪政へ抵抗、復讐(ふくしゅう)という背景も感じられ、心情的に共感を覚える点があったのは事実です」「山上容疑者への同情からつい口に出てしまったことは申し添えておきます」と続けた。

 大学教授としての立場からは、「大学の講義で殺人やテロリズムを容認するような発言をしたことはありません。テロ容認。言論に対する暴力的封殺に抵抗を覚えるのは一言論人として当然」などと説明した。

 島田氏の独自の主張は、「回答全文」をご覧いただきたい。

 識者は、問題発言と回答全文をどう見るか。

 前出の有本氏は「島田氏は『殺人を容認する意図は全くありませんが、そのように誤解される恐れは充分にあった』と述べているが、それは『誤解』なのでしょうか? 冒頭で『テロの成功に肯定的な評価を与えたことは公的な発言として軽率であった』と明確に認めている。論旨が一貫しておらず、作家が書く文章とはとても思えない」と指摘した。

 有本氏は、島田氏が「(安倍元首相暗殺事件には)悪政へ抵抗、復讐という背景も感じられ」と述べた箇所にも触れ、続けた。

 「山上被告は、安倍元首相を逆恨みしたのであって、事実誤認も甚だしい。情報を取る力にも疑問を感じる」と語った。

 島田氏が「テロリズムが世直しのきっかけになったケースはほとんどない」と述べている点についても、有本氏は「世直しのきっかけになるのだったら、テロを容認するのかと問いたい」と指摘した。

 有本氏は最後に、「バカげた発言には徹底的に批判・反論するが、どんなに考えが違う意見であっても、『自由に発言できる権利』は必要。私は『ひどい発言は言わせるな』とか、『大学からたたき出せ』とは思わない」と強調した。

 法政大学は、教授である島田氏の「暗殺が成功して良かった」といった発言を、どう受け止めているのか。

 大学の広報担当者は夕刊フジの取材に対し、当該の発言を動画で確認したと認めたうえで、「個人の発言であり、個々の教員がメディア、マスコミなどで行う発言については大学としては関知しない」という見解を示した。

 【島田雅彦氏への質問事項】

 ①「あの暗殺が成功して良かった」という発言の意味・真意は

 ②暴力で言論が封じられることを、時と場合によっては良いと考えるのか

 ③法政大学教授として「テロ行為の容認」という教育をしているのか

 ④放送翌日、岸田首相に爆発物が投げつけられる事件が発生した。感想を

 【島田雅彦氏の回答全文】

 テロの成功に肯定的な評価を与えたことは公的な発言として軽率であったことを認めます。殺人を容認する意図は全くありませんが、そのように誤解される恐れは充分にあったので、批判は謙虚に受け止め、今後は慎重に発言するよう努めます。

 ただ、安倍元首相襲撃事件には悪政へ抵抗、復讐(ふくしゅう)という背景も感じられ、心情的に共感を覚える点があったのは事実です。山上容疑者が抱えていた旧統一教会に対する怨恨(えんこん)には同情の余地もあり、そのことを隠すつもりはありません。

 さらに政権と旧統一教会の癒着を暴露する結果になったのも事実です。今回の「エアレボリューション」での発言はそうしたことを踏まえ、かつ山上容疑者への同情からつい口に出てしまったことは申し添えておきます。

 また大学の講義で殺人やテロリズムを容認するような発言をしたことはありません。テロ容認。言論に対する暴力的封殺に抵抗を覚えるのは一言論人として当然であるし、また暴力に対する暴力的報復も否定する立場から、先制攻撃や敵基地攻撃など専守防衛を逸脱する戦争行為にも反対します。

 戦争はしばしば、言論の弾圧という事態を伴ってきたという歴史を振り返り、テロリズムと同様に戦争にも反対の立場であることを明言しておきます。

 一方で、安倍元首相暗殺事件や岸田首相襲撃事件を言論に対する暴力と捉える場合、これまで政権が行ってきた言論、報道への介入、文書改竄(かいざん)、説明責任の放棄といった負の側面が目立たなくなるということもありました。

 また民主主義への暴力的挑戦と捉えると、国会軽視や安保三法案の閣議決定など民主主義の原則を踏み躙るような行為を公然と行ってきた政権があたかも民主主義の守護者であったかのような錯覚を与えるという面もあります。

 テロは政権に反省を促すよりは、政府の治安維持機能を強化し、時に真実を隠蔽することに繋がることもあるがゆえ、肯定的評価を与えることはできません。そのことはテロリズムを描いた拙著『パンとサーカス』でも明らかにしています。

 放送の翌日に岸田首相に爆発物が投げつけられる事件が起きましたが、歴史を振り返ると、テロリズムが世直しのきっかけになったケースはほとんどないし、連鎖反応や模倣犯を呼び込む可能性もあると改めて思いました。

 ※長文のため、編集局で改行だけしました。

【私の論評】島田氏にはこれからも活動を続け、愚劣なサヨクの人間性の退廃の極みの見本であり続けよ(゚д゚)!

冒頭の動画を視聴して、思わず「この動画を視聴して絶句しました。末恐ろしいです」ツイートしました。もう、そのくらいしか言いようがありませんでした。

テロというと、赤報隊事件(せきほうたいじけん)を思い出します。これは、1987年(昭和62年)から1990年(平成2年)にかけて「赤報隊」を名乗る犯人が起こしたテロ事件です。

警察庁広域重要指定番号から、「広域重要指定116号事件」とも呼ばれました。

記者が政治的テロによって殺害された日本国内唯一の事例とされれますが、2003年(平成15年)に全ての事件が公訴時効を迎え、2022年現在に至るまで犯人の特定がされていない未解決事件となっています。以下にその概要を掲載します。
1987年(昭和62年)1月24日(土曜日) - 朝日新聞東京本社銃撃事件
5月3日(日曜日) - 朝日新聞阪神支局襲撃事件
9月24日(木曜日) - 朝日新聞名古屋本社社員寮襲撃事件
1988年(昭和63年)3月11日(金曜日) - 朝日新聞静岡支局爆破未遂事件
3月11日(金曜日)消印 - 中曽根康弘・竹下登両元首相脅迫事件
8月10日(水曜日) - 江副浩正リクルート会長宅銃撃事件
1990年(平成2年)5月17日(木曜日) - 愛知韓国人会館放火事件
特に朝日新聞阪神支局襲撃事件では執務中だった記者2人が殺傷され、言論弾圧事件として大きな注目を集めました。

私自身は、朝日新聞は好きではありませんが、だからとってこのようなテロ事件を肯定するような発言などしませんし、そもそもできません。目の前でそのような発言をする人がいたら、諌めることでしょう。

赤報隊事件を伝える当時の朝日新聞

民主党政権のときは、かなり政権批判をしましたが、批判するとときは、無論是々非々で批判する姿勢を貫いているのですが、民衆党には結果としてほんど批判ばかりになってしまいましたが、それでも民主党政権の要人が暗殺されれば良いなどのことは、考えたことすらありません。

島田雅彦氏が安倍元首相の暗殺に関して「あの暗殺が成功して良かった」と発言したことは、極めて遺憾であり、社会的に非難されるべき発言です。

暴力や暗殺は、法律に違反するだけでなく、人権や民主主義の原則にも反する行為です。政治的な対立や意見の相違は、平和的な方法で解決するべきであり、暴力や暗殺を支持するような発言は社会的に許容されるべきではありません。

政治家や公人に対する暴力や脅迫は、社会的な混乱を引き起こし、民主主義や法治主義を損なう可能性があります。政治的な意見の表明は言論の自由によって保障されていますが、他人の権利や安全を尊重し、平和的な方法で意見を述べるべきです。

島田雅彦氏の発言は、倫理的、社会的な問題を引き起こす可能性があります。政治的な対立や意見の相違は、平和的な方法で解決する必要があります。

次に、上の記事の島田氏の回答文に関する分析を以下に述べます。
まず、島田氏は自身の発言が軽率であったことを認め、テロの成功に肯定的な評価を与えたことを否定しています。また、殺人を容認する意図は全くないと述べています。

しかし、島田氏は安倍元首相襲撃事件に対して、背景に悪政への抵抗や復讐の要素があることを指摘し、山上容疑者が抱えていた旧統一教会に対する怨恨に同情の余地があると述べています。また、政権と旧統一教会の癒着を暴露する結果になったことを事実と認めています。

さらに、島田氏は自身が大学の講義で殺人やテロリズムを容認するような発言をしたことはないと明言し、テロ容認や言論に対する暴力的封殺に反対する立場を取っています。また、先制攻撃や敵基地攻撃など専守防衛を逸脱する戦争行為にも反対する立場を述べています。

一方で、島田氏は安倍元首相暗殺事件や岸田首相襲撃事件を言論に対する暴力と捉える場合、政権の負の側面が目立たなくなることを指摘し、政権の民主主義への挑戦を暴露するという観点もあると述べています。

このように、島田氏の回答には、テロの容認や言論に対する暴力を肯定する意図はないという一方で、事件の背後にある政治的な背景や民主主義への挑戦を考慮する見解が含まれており、賛否両論があるとみられます。島田氏は今後は慎重に発言することを努めると述べています。そう願いたいです。
欧米諸国では、言論人が暴力や暴力行為を容認するような発言をすることは、しばしば大きな批判を浴びることがあります。ただし、表現の自由の保護にも配慮がなされており、法的な制裁があるわけではありません。ただし、そのような発言によって人々が危険にさらされた場合や、社会的な混乱を引き起こした場合は、警察や検察当局によって捜査されることがあります。

例えば、米国では、2017年のバージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義者による抗議活動中に起きた暴力事件の後、アルタイト(alt-right)と呼ばれる運動の指導者であるリチャード・スペンサーが、白人至上主義者に対する暴力行為を容認するような発言をしたことで、批判を浴びました。また、同様の理由で、YouTubeなどのソーシャルメディアプラットフォームから追放されるなど、スペンサー自身の影響力も減少しています。

リチャード・スペンサー

また、英国でも、2010年には、カトリック系新聞の編集者であるバーナード・ゴールドバーグが、同性愛者に対して暴力を容認するような発言を行ったことで、大きな批判を浴びました。ゴールドバーグは、その後、自身の発言が誤解を招いたと釈明し、謝罪することで事態を収拾することができました。

以上のように、欧米では、表現の自由と社会秩序のバランスを取りながら、言論人の発言を取り扱っています。暴力を容認するような発言は、暴力を伴う場合は別にして、発言自体はしばしば批判を浴びることがありますが、法的な制裁があるわけではありません。

上の記事で有森香氏が、作家が書いた文書とは思えないと評していますが、私は島田氏の書籍を読んだことは一度もないですし読むつもりもないですが、回答文だけを読んでいると、島田雅彦氏は本当に作家なのかと思えてきます。これだけ短い文書で、論旨が一貫していないのですから、本当に本など書けるのかと思ってしまいます。

しかも、反省文で自著『パンとサーカス』宣伝までしており本気で謝るつもりがないと見えます。今後、このような発言は謹んでいただきたいとは思いますが、大学をやめろとか、作家活動をやめろ、テレビに出すな等とはいいません。そんなことをしてしまえば、リベラル左翼の十八番のキャンセルカルチャーと同じことになってしまいます。

島田氏には、非常識な発言だけは控えていただき、このまま偏向メディアに出続けたり、書籍を書いたり、大学で教育活動を続け、醜い姿(容姿を言っているわけではない)を晒し続け愚劣なサヨクの人間性の退廃の見本であり続けて欲しいです。それが、彼にできる唯一の社会貢献だと思います。

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2023年4月18日火曜日

FBI、中国人工作員とみられる2人逮捕 司法省は中国人34人を訴追―【私の論評】法的根拠がない日本でもスパイから身を守る方法はあるが、やはりスパイ防止法は必要(゚д゚)!

FBI、中国人工作員とみられる2人逮捕 司法省は中国人34人を訴追


 米連邦捜査局(FBI)が中国人工作員と疑われる2人を逮捕したことが分かった。また米司法省は、米国在住の反体制派の発言封じや嫌がらせを試みたとして、中国人34人を訴追した。

 逮捕された盧建旺容疑者と陳金平容疑者は、ニューヨークのチャイナタウンでひそかに「警察署」を運営していた疑いが持たれている。両容疑者は米国籍の保有者。共謀して中国政府の代理人として活動し、司法妨害を試みた疑いで訴追された。

中国の警察機能を担う出先機関が入っていたとされるビル(中央)=2023年4月17日、米ニューヨーク

 ニューヨーク州東部地区連邦地検の報道官によると、2人は17日、ニューヨークの連邦裁判所に出廷した。「警察署」は昨年秋に捜索令状が執行された後、閉鎖されたという。

 盧容疑者は25万ドル、陳容疑者は40万ドルの保釈金を支払い釈放された。中国領事館から半マイル(約800メートル)を超える移動や共謀者との連絡は禁止されている。両容疑者とも答弁をしていない。

 司法省はまた、中国政府に批判的な米国在住の中国人に嫌がらせを行ったとして、中国国家警察の警官34人を訴追すると発表した。

 司法省によると、34人はいずれも中国在住で、身柄は拘束されていない。34人は中国に対する世界の見方に影響を与えることを目的とした特別プロジェクトの取り組みに参加していたとされる。

 司法省によると、工作員2人はSNSを使って中国に好意的な内容を投稿したり、米国や中国人の民主化活動家を含む「敵とみなした」存在を攻撃したりした疑いがある。違法運営されていた警察署は「初めて確認された米国内の海外警察署」で、中国公安部のために設置されたものだという。

 工作員2人は中国公安部の指示で、米国民が運営しているように見せかけたアカウントを創設、維持していたとされる。プロパガンダの話題としては、米国外交や香港の人権問題、ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルス、ジョージ・フロイドさん殺害事件をきっかけに起きた人種的公正を求めるデモなどがあったという。

 オルセン司法次官補は声明で、「中国は抑圧的な治安機関を通じ、反体制派や政府に批判的な人を監視、威嚇するための秘密拠点をニューヨークに設けた」と指摘。「中国の行動は許容される国家の行動の限度をはるかに超えている。我々は断固として、米国に住む全ての人の自由を専制体制の抑圧の脅威から守る」と述べた。

【私の論評】法的根拠がない日本でもスパイから身を守る方法はあるが、やはりスパイ防止法は必要(゚д゚)!

松野博一官房長官は18日午後の会見で、米当局が中国の「秘密警察署」を運営した疑いで男2人を逮捕したことに関連し、日本国内でも主権を侵害する行為が行われているのであれば、断じて認められないと外交ルートを通じて中国側に申し入れを行ったと述べました。


松野官房長官は、米当局による逮捕に関し「他国の内政に関することである」としてコメントを控えました。

しかし、中国による日本国内での同様の活動に対しては「中国側に対し、外交ルートを通じわが国の主権を侵害するような活動が行われているのであれば、断じて認められない旨の申し入れを行っている」と説明しました。

その上で「関係国とも適切な形で情報共有を行ってきており、引き続き緊密に連携しつつ、各種情報の収集・分析に努めてきている」と指摘。「いずれにせよわが国での(中国による)活動の実態解明を進めているところであり、その結果に応じて適切な措置を講じる考えである」と述べました。

スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ(Safeguard Defenders)」が発表した報告書によると、中国政府が海外に在住する中国人を監視し、場合によっては強制帰国させるため、日本を含む欧米諸国など53ヵ国102ヵ所に「中国警察署」を設置しているといいます。

これは、単に海外に居住する中国人の人権侵害に留まらず、国際法の原則に違反し、第三国の主権を侵害している行為です。すでに、米国やカナダ、ドイツ、オランダなど欧米各国で設立され、日本でも東京など2ヵ所に拠点があるとされています。

2014年以降、中国政府は、政権批判を続けたなどとして在外中国人1万人あまりを強制的な手段で帰国させました。さらに対象となる中国人の親族などが中国国内で不当な嫌がらせにあったとされます。

それにしても、中国はなぜこうしたことを行うのでしょう。通常常識的に考えられる日本に在住あるいは滞在する中国人に対する通常の行政サービスであれば、在外公館があるから、そこが対象すべきですし。そもそも在外公館でなければできません。それ以外の組織がそれを実行すれば、それだけで犯罪です。

それには、背景があります。中国は現在、大量の資金と人材が海外に流出しているので、それを取り戻したいというのが本来の狙いとみられます。

日本は中国にとって外国ですから、さすがに強制送還はできません。だから圧迫して、自分で帰るように仕向けているということもあるようです。

無論対象は、対象者が犯罪者の場合もあるかも知れませんが、そうではない人たちに対しても働きかけているようです。

さらに、いまのところ、日本国内の秘密警察署は在日中国人の人間と関係で語られていますが、中国の法律には域外適用という考え方があるので、我々日本人も関係する可能性はありえます。

反中的な発言をする言論人などは、「日本国内にいれば安全だ」と思っているかもしれませんが、域外適用でそのような人ががある日、拉致されてしまう可能性もあり得ます。

さらに、在外中国人の情報入手にもTikTokが使用されている可能性があります。むしろ関係がないと考えるほうが不自然でしょう。中国には「国家情報法」という法律があり、その第7条では「中国の国民や組織は中国政府の情報(諜報)活動に協力する義務がある」と明記されているからです。TikTokの運営会社が中国企業である以上、この法律に従うのは当然のことなのです。

TikTokは犯罪に用いられることもある スパイには格好のツールにになり得る

そうしてこの情報収集は、在外中国人だけに留まらないのは言うまでもありません。各国に展開している中国警察の拠点とTikTokからの情報で、場合によっては日本の警察以上に、中国警察が日本人各個人の動向を把握している可能性すらあります。

TikTokは撮影者などの顔から撮影場所、周辺の風景などの情報が認識可能です。膨大な数の動画をデータ化すれば、日本各地のさまざまな人物や場所の情報を得ることができます。もちろん、撮影ではなく見る側についても、地域の年齢構成から動画の好み、思想性までも把握されてしまう恐れがあります。

相手の好みがわかれば、親しく近づくことも容易ですし、さらに深くスパイ活動を行うことも簡単にできてしまいます。親中的な日本人、反中的な日本人を分別したり、在日スパイによって罠にはめる、意のままに動くように脅迫する、といったことも簡単でしょう。

米国としては、放置しておけばやがでそのようなことになりかねないことも懸念して、「警察署」を運営していたとみられる、2人を逮捕したのでしょうし、TikTokの使用制限がなされつつあるのでしょう。

米下院外交委員会は1日、米国で中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を全面禁止する権限をバイデン大統領に付与する法案を賛成24反対16の賛成多数で可決しました。

法案は今後、上下両院の本会議を通過し、バイデン大統領の署名が必要で、成立までの道のりは依然不透明だ。しかし成立すれば、1億人超とされるTikTok利用者に影響が及ぶ可能性があります。TikTokに限らず、中華アプリにはその危険性があることは認識すべきです。

日本には現在スパイ防止法がないため、警察は表立った犯罪事実がないと動きようがないということは良く言われていますし、多くの人が知っている事実です。そのため、日本においてはスパイ防止法の制定は必須です。

しかし、犯罪事実がないと動きようがないというのは、スパイ活動そのものをしていることが明白であっても、それだけでは逮捕したりできないということですが、犯罪事実があれば、逮捕できるということです。

たとえば、あなたが中国側に弱みを握られて、中国スパイから情報を求められたり、何かの違法行為をそそのかされたとして、それだけでは警察も動かないですが、それを放置すれば、いずれ脅しなどをかけてくる可能性があります。

中国スパイもいきなり、拉致や殺傷などの挙には出る前にまずは何らかの方法で嫌がらせや脅しに出でくる可能性が高いです。そうなれば、警察が動く可能性がありますし、脅しなどの現行犯等では逮捕できます。

これにうまく対処するには、恐喝などを受ける前に、警察などに相談し、予め恐喝等に備えるなどのことをしておけば、警察はこれを逮捕する等こともできます。

犯罪に手を染めたり、気密情報を漏らしたり、暴力被害にあったり、拉致されるなどのことを避けるためにも、もし中国スパイからの接触があった場合などには、このようなことを頭に入れておいて、行動すべきでしょう。このようなことで、人生を詰んでしまったり、被害を受けたりすることは避けるべきです。

それにしても、スパイ防止法があるにこしたことはないのは確かです。早く成立させて欲しいものです。成立すれば、政界、財界、学界、マスコミなどかなりスパイに浸透されていることが暴露されることになるでしょう。それを嫌がる人が大勢いるので、なかなかスパイ防止法が成立しないのでしょう。そのような圧力に負けず、是非成立させていただきたいものです。

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2023年4月17日月曜日

北方領土で演習のロシア太平洋艦隊は日本を脅かせるほど強くない──米ISW―【私の論評】ロシアが北方領土で軍事演習を行っても日本に全く影響なし(゚д゚)!

北方領土で演習のロシア太平洋艦隊は日本を脅かせるほど強くない──米ISW

 <ロシアの太平洋艦隊は、日本のウクライナ追加支援を牽制するため北方領土でミサイル発射訓練などを行っただが、日本を脅すほどの戦闘力はない、と米シンクタンクが分析した>

 ロシア海軍がアジア太平洋地域で軍事・安全保障任務を遂行するためにある太平洋艦隊は、他国から脅威とみなされるには「戦闘力」不足の可能性が高いと、米シンクタンクが指摘した。



 アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)は、4月14日にウクライナ戦争に関する最新の分析を発表。ロシア軍が太平洋艦隊の抜き打ち検査の一環としてミサイル発射と魚雷のテストを実施したことについてコメントした。

 ロシア政府は目前に迫った5月のG7サミットにおいて日本のさらなるウクライナ支援を抑止する材料として、太平洋艦隊の戦闘点検で威嚇しようとしたのだろう、とISWは述べている。

 ドイツのキール世界経済研究所が4月4日に発表したデータによると、この戦争が始まってから、日本がウクライナに提供した援助の総額は、2月24日の時点で56億6000万ユーロ(62億ドル)に達している。

 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は14日、今回の抜き打ち検査の目的は 「海洋における敵の攻撃を撃退するために、軍隊の能力を高めることだ」と、国営テレビで発表した。

 この検査は「あらゆる戦略的方向で任務を遂行するための軍司令部や各部隊の状態を評価し、準備態勢を高めること」をめざすものだ、とショイグは述べ、それには千島列島南部とサハリン島に上陸する敵を撃退する能力も含まれる、と付け加えた。

対ウクライナ追加支援を警戒

 千島列島の国後、択捉、色丹、歯舞の4島は、第二次世界大戦の終結時にソ連が占領し、自国領に「編入」した島々だ。日本はこの4島を日本固有の「北方領土」と主張しており、この問題で日露関係は何十年にもわたって緊張している。第二次大戦を正式に終結させる平和条約が日露間で締結されなかったのは、日本が領有権を主張し、ロシアが占領している島々をめぐる紛争が主な理由となっている。

 この4島は日本の北海道とロシアのカムチャッカ半島の間に位置するため、多くの軍事的、政治的な利点がある。

 5月19日から21日にかけて開催されるG7サミットで議長を務める予定の岸田文雄首相は、3月にウクライナの首都キーウをサプライズ訪問。議長国を務める日本として「ウクライナ侵略への対応を主導する決意を示すことができた」と語った。

 「ロシアの東部を管轄する東部軍管区(EMD)は最近、日本の千島列島の北に位置する幌筵島(パラムシル島)に、ロシアが開発した沿岸防衛用地対艦ミサイルシステムの砲台を配備した。これは日本がウクライナへの追加支援を行うことに対する警告であろうと当研究所は評価した」とISWは報告している。


 ISWは、広島で開催されるG7で日本がウクライナへの支援を増やさないように、ロシアは北太平洋で「軍事態勢」をとり、日本の鼻先で軍備増強をしてみせようとしている可能性が高いと述べた。

 だがISWの評価によれば、ロシア軍は「現時点で日本を脅かす立場にない」という。そして、太平洋艦隊の第40海軍歩兵旅団と第155海軍歩兵旅団の部隊が、昨年末と今年初めにウクライナ東部ドネツク州のヴフレダール付近の戦闘で、大きな損害を被ったことを指摘した。

 「太平洋艦隊は、太平洋地域におけるロシアのパワー・プロジェクション(戦力投射)能力に必要な戦闘力が不足しているようだ。そうであれば、日本にとっての真の脅威となるような姿勢を見せたり、対等な軍事大国であることを中国に確信させたりすることは難しい」と、ISWは主張している。

【私の論評】ロシアが北方領土で軍事演習を行っても日本に全く影響なし(゚д゚)!

ロシア軍の北方領土の演習は、日本でも報道されましたが、ほとんどの番組では、淡々と事実を述べるのみで、それがどのような意味を持つのか、この演習そのものは、日本にとって脅威なのか、伝えないため、多くの人にとっては無意味なものになっています。

ロシアは北方艦隊を含めて5つの軍管区に分かれているのですが、このうち北方艦隊を除いて4つの軍管区の地上部隊をドンバスの戦いに参加させていました。

4つの軍管区からの部隊をウクライナ侵攻では、南、中央、東、西という4つの方面軍に分けていることが確認され、プーチン大統領はそれぞれに信頼する将軍を司令官に任命していました。

北方領土に展開するロシア軍は、上の記事にもあるように、極東ロシア地上軍(東部軍管区)です。極東ロシア地上軍は、ソ連邦崩壊前では、40数個師団でした。現在では、半数以下の12個旅団(師団の半分から2/3の規模)と2個師団合計8万人です。

これは、最盛期の4分の1以下になったということになります。軍の地位も下がり、予算も多く削減され、兵員の士気は下がっていました。一時増やしはじめたこともあったのですが、これはウクライナ戦争で頓挫したよゔてす。

この極東からも、ロシア軍はウクライナに戦車揚陸艦で戦車や弾薬、人員等を運んだというのですから、いかにウクライナに侵攻したロシア軍が物資不足や人員不足に悩まされているのかがうかがえます。

東部管区には、太平洋艦隊が配置されていますが、太平洋艦隊の第40海軍歩兵旅団と第155海軍歩兵旅団の部隊が、昨年末と今年初めにウクライナ東部ドネツク州のヴフレダール付近の戦闘で、大きな損害を被ったと上の記事では指摘されています。

今年2月には、精鋭5000人で構成されるとされていた、極東・太平洋艦隊第155海軍歩兵旅団が、東部の戦闘で壊滅した可能性が浮上していました。

太平洋艦隊第155海軍歩兵旅団の上陸訓練 ウラジオストック(2020年)

現在のロシア軍による日本への挑発行為は、今の極東ロシア軍にできる精一杯の虚勢に過ぎず、わが国に脅威を与えるような活動とは程遠いです。

ある程度の準備期間を経て、満を持してウクライナに侵攻したロシア軍でさえ、あの体たらくです。ましてや、日米に比して貧弱で駆逐艦以上の戦闘艦艇は7隻程度しかなく海上自衛隊の10分の1程度の太平洋艦隊です。

ロシア太平洋艦隊旗艦「ワリャーグ」、ウクライナで撃沈された「モスクワ」と同型艦

ロシア空軍は、日常の活動などを見ても航空機の稼働率がおそらく30%に満たず、パイロットの操縦訓練(飛行時間は空自の半分以下)も全く航空自衛隊とは比較にならないような低練度の空軍の飛行部隊や海軍航空部隊の現状で、通常戦力ではとても日米の軍事力に太刀打ちできるはずはないです。

仮に日露が有事になったとするとロシアの艦船は、日本の潜水艦が潜む宗谷海峡と津軽海峡は危なくて通れなくなるので、太平洋方面での作戦やウラジオストクから補給を受けるカムチャツカの基地の維持も難しくなります。

海戦では、対潜水艦戦(ASW:Anti Submarine Warfare)能力が圧倒的に優れた日本はロシアを圧倒することになるでしょう。、実際もし第二次日露戦争が勃発したら「日本が海戦を制する」とロシアメディアが断言しています。

それでも、台湾有事などで中国の艦隊と連携行動を取られると、ロシア海軍も日米にとって煩わしい存在になるでしょうが、それも大したものにはならないでしょう。

なぜ、このようなことになるかといえば、現在のロシアはウクライナ戦争前であってすら、GDPは韓国を若干下回る程度でした。一人あたりのGDPに至っては、1万ドル(日本円で100万円)を若干上回る程度てす。ちなみに、中国も一人あたりGDPではロシアとあまり変わりありませんが、人口が14億人なので、中国のGDPはロシアの10倍です。

ロシアというと軍事大国というイメージが強いですが、軍事費に関していうと、実はそうでもありません。以下に

世界各国の軍事費をみていくと、やはり米国が世界一の軍事大国で、2位の中国の2.7倍。ただし中国はこの10年で2倍以上、20年では10倍以上も軍事費を増やしており、存在感を増していることがわかります。

世界各国の軍事費をみていくと、やはり米国が世界一の軍事大国で、2位の中国の2.7倍。ただし中国はこの10年で2倍以上、20年では10倍以上も軍事費を増やしており、存在感を増していることがわかります。
世界各国の軍事費をみていくと、やはり米国が世界一の軍事大国で、2位の中国の2.7倍。ただし中国はこの10年で2倍以上、20年では10倍以上も軍事費を増やしており、存在感を増していることがわかります。 【世界の軍事費 トップ10】 1「米国」80,067,200万米ドル 2「中国」29,335,200万米ドル 3「インド」7,659,800万米ドル 4「イギリス」6,836,600万米ドル 5「ロシア」6,590,800万米ドル 6「フランス」5,601,700万米ドル 7「ドイツ」5,556,400万米ドル 8「サウジアラビア」5,412,400万米ドル 9「日本」5,412,400万米ドル 10「韓国」5,022,700万米ドル ーーーーーーーーーーーーーーー 36位「ウクライナ」594,300万米ドル 出所:世界銀行 資料:GLOBAL NOTE ※データは2021年 ※中国は政府公式予算に含まれない軍事支出の推計を含む、日本は軍人恩給を含まない
ロシアは世界第2の軍事大国だとされてきましたが、軍事費でいうと、現在ではイギリスを下回ります。日本は、防衛費を倍増すると、ロシアの軍事費を大幅に上回ることになります。

これで、なぜ世界第2 の軍事大国といわれきたかというと、それはロシアはソ連の核や兵器及び軍事技術を継承した国であるため、それを加味して、世界第2と言われてきたと思います。そのため、決して侮ることはできないです。実際、中距離弾道弾も多数配備しており、この点では軽視すべき相手ではありません。

ただ今や、ロシアにはウクライナと北方領土の2正面で戦争をできるだけの力がないことは明らかです。現状では、米国抜きのNATOとも正面から対峙するのは不可能でしょう。

ウクライナ戦争が始まった直後、私はこのブログで、ロシアがウクライナ戦争でできることは、兵站の脆弱さを根拠に、東部のいくつかの州の全部もしくは一部を占領できるのが関の山だろうと予測しましたが、現在戦況は実際にそうなりつつあります。

マスコミはこのようなことは報道せず、ただロシアが北方領土で演習という事実を淡々と報道するだけです。それは、結果として単純にロシアの脅威を煽ることになりかねませんし、北方領土交渉を間違った方向に誘導しかねません。

米軍は、台湾有事などのシミレーションで、米軍が負ける場合を想定する事が多いです。それを米国は、軍の改善や改革に結びつけています。日本もそのような姿勢を堅持すべきです。中国は、負ける場合を指摘した将軍に「執行猶予付き死刑判決」を出しています。どちらが、軍を強くするかといえば、無論米国の方です。

ただ、私達は、あくまでロシアを等身大に見ていくべきです。今回ロシアが北方領土で演習を行ったとしても、上の記事にあるようにロシア軍は「現時点で日本を脅かす立場にない」です。

日本政府がこれによって、ウクライナ政策を変えたり、その他の政策や防衛・外交政策を変えざるを得ないような影響を受けることは、全くありません。

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2023年4月16日日曜日

北朝鮮ミサイル、奇襲能力高い固体燃料式か…韓国軍関係者「新型ICBMの可能性」―【私の論評】揺らぐ核の優位性で、精神が不安定化したか金正恩(゚д゚)!

北朝鮮ミサイル、奇襲能力高い固体燃料式か…韓国軍関係者「新型ICBMの可能性」

北朝鮮が発射に初成功したと発表した新型固体燃料使用ICBM火星18

 13日に北朝鮮から発射されたミサイルについて、米韓は奇襲能力が高い固体燃料式の新型ミサイルとの見方を強めている。北朝鮮は固体燃料式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を進めており、ミサイル技術の向上を誇示した可能性がある。

 韓国軍関係者は「中距離以上の(射程を持つ)新型の弾道ミサイル」とみており、固体燃料式の新型ICBMの可能性もあるとの見方を示した。

 固体燃料式は液体燃料式よりも発射後の上昇速度が速い。液体燃料の場合、噴射される炎がろうそくのように細長いのに対し、固体燃料式はスカートのように広がる。聯合ニュースによると、米韓当局は今回、こうしたエンジンの特徴を捉えた。複数の韓国メディアは、固体燃料式の新型ICBMとの見方が有力と報じた。

 固体燃料式は、液体燃料のように発射直前に注入する手間が不要で、発射の兆候の早期探知が難しい。

 北朝鮮は、固体燃料式の短距離弾道ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験は実施したが、中長距離弾道ミサイルでは確認されていない。

 北朝鮮は2021年の朝鮮労働党大会で発表した「国防力発展5か年計画」に固体燃料式ICBMの開発を盛り込んだ。昨年12月には高出力の固体燃料エンジンの地上燃焼実験に初めて成功したと主張した。今年2月に行われた軍事パレードでは、固体燃料式のICBMとみられるミサイルを移動式発射台(TEL)に載せて登場させた。

【私の論評】揺らぐ核の優位性で、精神が不安定化したか金正恩(゚д゚)!

日本のメディアは、北朝鮮のミサイルなどについては、事細かく報道するのに、それに対する日米韓などの対応は、散発的に事実だけは報道するのですが、まとめて統合的に報道しないので、多くの人は実体が見えなくなるようです。そのため、本日は日米韓の北への主に軍事的対応に関することを掲載しようと思います。

このようなことを知れば、なぜ北朝鮮が特に最近矢継ぎ早にミサイルを発射するのか、西側諸国では確率された技術でありながら、北朝鮮としては目先の新しさを追求するのかご理解いただけるものと思います。

金正恩が最も神経を尖らせているのは、米韓によるNATO型の核の共有です。これについては、生前安倍元総理もこれを提唱していました。

韓国の核保有を求める韓国世論の高まりの中で、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、今月末の米国国賓訪問時にこの問題をバイデン大統領と協議しようとしています。もしも米国との間で合意に至れば、北朝鮮の韓国への核脅迫は通用しなくなります。

金与正は4月1日の談話で「ゼレンスキーが米国の核兵器搬入だの、独自核開発などと言い立てるのは、自国と国民の運命をもって賭博してでも、なんとかして自分らの余命を維持してみようとする極めて危険な政治的野望の表れである」などと非難しました。

さらに、「米国を神頼みにして主人の虚弱な約束を盲信する手先らは、核時限爆弾を背中に負う自滅的な核妄想から一日も早く覚める方が自分らの命を守る最上の選択になることをはっきり悟らなければならない」とゼレンスキー政権を激しく攻撃しました。


この談話での、ゼレンスキーを、尹錫悦と言い換えれば、そのまま韓国へのメッセージとなりまい。これは「米英中ロ仏だけが核兵器を保有できるのか」として、核保有の正当性を主張してきた北朝鮮のこれまでの立場とは完全に矛盾します。

こうした矛盾に満ちた混乱した主張は、現在米韓の間で検討が進められている「核共有」に対する脅威からきたものでしょう。ちなみに、米韓核共有の話がすすめば、日本も安倍元総理が提唱していた「核共有」の議論が進むことも予想されます。それも恐怖なのでしょう。

米韓で検討されている金正恩が恐れるもう一つの軍事対応は「ダークイーグル(Dark Eagle)ミサイル」(LRHW)の実戦配備でしょう。

このミサイルの発射が初公開されたのは一昨年でした。2021年10月77日、ワシントン州タコマ市郊外にある米陸軍のルイス=マコード統合基地に、開発中の新型中距離ミサイル「LRHW」の試作型発射機が送られ初公開されました。

「ダークイーグル」は、陸海空共通の極超音速滑空体(C-HGB)を弾頭に使う極超音速滑空ミサイルで、マッハ17、射程2775km以上の最新式の新型中距離ミサイルです。

ダークイーグルの発射想像図

今年3月29日の米軍報道資料によると、この「ダークイーグル」が、米軍の「第3野戦歩兵連隊第5大隊第1多領域任務部隊(MDTF)長距離射撃隊)」に実戦配置されたとされています。

この多領域任務部隊(MDTF)は、ダークイーグルと短距離射程(32-1000km)のハイマース(HIMARS Prsm)そして中距離射程(460ー1600km)のMRCと組み合わせて構成されているといいます。

「ダークイーグル」は、インド太平洋地域に3個部隊が配備されるとされていますが、今のところどの地域に配置するかは明らかにされていません。米国本土だけの配置では迅速対応ができないのは明らかなので、インド太平洋地域のどこかに前進配備するのは間違いないです。

この「ダークイーグルミサイル」の韓国配備を金正恩は恐れているのでしょう。4月10日の党中央軍事委員会で、金正恩が韓国の地図を映し出し指さしている場面がありましたが、「ダークイーグル」対策を語ったかもしれないです。このミサイルが韓国の平沢(ピョンテク)市にある米軍基地(キャンプ・ハンフリーズ)に配備されれば、平壌へは1分、北京は3分で精密打撃できます。

そうなれば、今北朝鮮が見せびらかしている各種短距離ミサイルの原点遮断が可能となります。それは北朝鮮の各種短距離ミサイルで無力化状態に陥っていた韓国の「キルチェーン(策源地先制攻撃)」復活を意味します。金正恩が不眠症に陥るのは当然です。

金正恩は現在、韓国支配を実現するために「敵がいかなる手段と方式によっても対応が不可能な多様な軍事的行動方案をつくる」として「国防計画5カ年計画」の完成を急いでいますが、しかしそれが完成された頃には、米国によって、「ダークイーグル」をも上回る、とてつもない新兵器が開発されているかもしれないです。

現状の北朝鮮の通常兵器は、米国の数十年前の水準にすぎません。現在ウクライナ戦争においては、ロシア空軍が思ったよりも活躍していませんが、それはロシアの防空システムが米国と比較すれば、30年近くも遅れているからだとされています。

北朝鮮の防空システムは、ロシアよりも遅れており、冷戦期のものから進歩していないとされています。そうなると、北はミサイルや航空機の侵入を防ぐことはできません。

旧ソ連時代終わりに製造されたMiG-29など、北朝鮮では近代的な戦闘機も所有している空軍ですが、その軍事力の主翼は「性能の劣った」戦闘機や複葉機です。

米韓の航空機の侵入やミサイルを防ぐことはできません。爆弾やミサイルが金正恩の頭上に落ちてきても、それを防ぐ手立てはないのです。

海軍はどうかといえば、米国防総省によると水上艦艇は「数は多いが老朽化している小さな巡視艇」で構成されているといいます。これでは、米軍はおろか韓国軍にも太刀打ちできないでしょう。

ただし、高性能から程遠く老朽化も進む反面、北朝鮮の潜水艦の数だけは小さなものまで含めると世界最大規模といわれています。2010年には北朝鮮の小さな潜水艦が韓国船を沈め、46人の船員が亡くなっています。

ただし、ASW(対潜水艦戦)能力とくに、対潜哨戒能力はかなり劣っているので、実際の戦争になった場合、戦力になるとは考えられません。

北朝鮮は最近SLBMも発射するようになりました。旧式でありますが、北朝鮮には1隻だけ「ゴレ級」という潜水艦があり、これは1発だけ弾道ミサイルを搭載できます。このほかに新浦の造船所で潜水艦をつくっていて、これは3発くらいSLBM(潜水艦搭載型大陸間弾道弾)積めると言われています。

しかし、この両方を海に出しても4発しかありません。しかも通常動力型なのでそんなに長くは潜れないですし、遠くにも行けません。さらに、現状では日米の対潜哨戒機や潜水艦が北の潜水艦を監視しており、実際に戦争になり北の潜水艦が出撃すれば、日米に追尾され、核ミサイル発射の様子をみせれば、撃沈ということになります。

国防5カ年計画では、原子力潜水艦をつくろうとしていますが、できたとしても、北朝鮮軍のASW(対潜水艦戦争)能力が、日米に著しく劣るので、これもいざ実戦となれば、すぐに撃沈されてしまいます。

頼みの綱の陸軍ですが、これは旧式ではありながら、韓国のソウルは国境から近いので、かなりの砲弾やミサイルを打ち込めるのは事実です。

だだ、弾丸・ミサイルの備蓄はある程度はあるようなのですが、国内で餓死者が出る始末で、肝心要の食料が十分ではなく、長期にわたって戦闘を継続できるような状態ではありません。

通常兵力では劣る北朝鮮ですが、核の優位を保ち続けることで独立を維持し、金王朝を維持してきたのですが、先にあげたように、米韓に「核共有」され、「ダークイーグル」を配備されてしまうと、その優位性は完璧に崩れることになります。

これでは、金正恩が不眠症に陥るのは当然といえば当然です。核の優位性のない北には、安全保障的には何の優位性もありません、いつ斬首部隊が空から降りてきて、殺されるかわかりません。地下に潜っても、いつバンカー・バスターに攻撃されるかわかりません。

金正恩の立場に立ってみれば、ある日、数十機もの艦載機や、爆撃機が自分襲ってくるかわかりませんし、韓国から米韓合同軍が大挙して押し寄せてくるかもしれません。

最近金正恩は、自分の娘や妻などを伴い、ミサイルの発射を見学したり、公の場に姿を表すようになりました。これは、さまざまな憶測を生んでいますが、このようなこと、特にミサイルの発射の見学などは、プーチンですら娘や妻を同伴させるようなことはしていません。

普通なら誰でも、ミサイル発射など危険を伴うことが考えられますから、家族など同伴しないでしょう。予めスケジューリングされている場に、姿を表すことは、米韓から攻撃されたり、テロリスト等に狙われる可能性もあります。

プーチンの家族は、噂では中央アジアの安全な地下シェルター(宮殿ともいわれている)にいるともいわれています。家族の安全を願うなら、誰でも自分ができる範囲でこのようにすると思います。私としては、不眠症になるくらい不安な金正恩は、娘や妻を同伴して行動することによって、自らの安全を確保しているのではないかと疑っています。

ミサイル発射施設を娘を同伴して視察する金正恩

子どもや、妻を同伴し人間の盾にすれば、米韓軍もさすがにその目の前で、斬首作戦を実行したり、爆弾やミサイルで攻撃したりはしないだろとう見ているのかもしれません。だとすれば、金正恩の精神状態はかなり不安定化しているといえるかもしれません。

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2023年4月15日土曜日

警護計画を事前に警察庁が確認 首相演説会場で筒投げ爆発―【私の論評】左翼リベラル系メデイアや言論人は最低限、暗殺、大量殺人、自殺を政治利用するな(゚д゚)!

警護計画を事前に警察庁が確認 首相演説会場で筒投げ爆発

取り押さえられてもなおカメラ目線であるのが不思議で不気味な犯人

 衆院和歌山1区補欠選挙の応援で、和歌山市の雑賀崎漁港を訪れた岸田文雄首相の近くに爆発物のようなものが投げ込まれた事件で、警護計画を事前に警察庁が確認していたことが15日、和歌山県警への取材で分かった。

 昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を受け、警察庁は警護要則を全面的に改正。都道府県警が行う全ての警護計画を警察庁が事前審査し、必要があれば計画を修正する仕組みに改められた。

 県警によると、威力業務妨害容疑で逮捕された職業不詳、木村隆二容疑者(24)=兵庫県川西市=は調べに対して「弁護士が来てからお話しします」と供述。事件について黙秘しており、県警が動機や経緯を調べている。

 事件は15日午前11時25分ごろ発生。岸田首相が雑賀崎漁港でエビなどの地元海産物の試食を終え、聴衆の前に移動して演説を始めようとしたところ、銀色の筒状のものが投げ込まれ、爆発した。

 首相にけがはなかったが、現場にいた県警の男性警察官1人が軽傷を負った。木村容疑者はその場で取り押さえられた。首相は演説会場を車で離れ避難し、和歌山市内の県警本部へ移動。同日午後にJR和歌山駅前で街頭演説を再開した。

【私の論評】左翼リベラル系メデイアや言論人は最低限、暗殺、大量殺人、自殺を政治利用するな(゚д゚)!

まずは、岸田首相がご無事で良かったです。

安倍元総理、暗殺事件では、メディアや活動家がテロリストを擁護し、神格化し、その利益に資する主張を繰り返し、犠牲者をあたかも犯罪者のように罵り、一部野党とメディアが執拗に政府を悪魔化し続けていました。これでは、このようなテロリズムがいつ発生しても不思議ではありませんでした。

今回の事件は、まだ動機などの解明がされていないため、詳細はわかりませんが、模倣犯である可能性はかなり高いです。

模倣というと、「ウェルテル効果」と呼ばれている現象があります。社会学者のデヴィッド・フィリップスが1970年代に実証しました。

名称は1774年にゲーテが著した小説『若きウェルテルの悩み』に由来します。主人公の自殺という結末に誘発された当時の若者が、同様の方法で自殺を試みた例が多発したからでした。

日本での先駆けは1903年(明治36年)のエリート学生、藤村操の華厳滝への投身自殺に伴う自殺の連鎖です。「人生は不可解である」という謎めいた言葉を残した遺書「巌頭之感」などが大々的に報じられました。


藤村操と木に彫られた遺書『巌頭之感』

これは「模倣自殺(copycat suicide)」とも言われ、ソーシャルメディアが普及し有名人をより身近な存在として感じる現在では、急速に広範囲に作用することが懸念されています。

2021年12月17日に、大阪市北区の雑居ビルで25人が死亡した放火殺人事件が起きたことは覚えておられる方も多いでしょう。雑居ビルに入っていた心療内科クリニックに60代の男性が放火し、職員や患者らが犠牲になった事件です。大阪府警は、計画的な犯行との見方を強めていました。

恐るべきことにここでもウェルテル効果と似た「模倣」の疑いが影を落としています。36人の犠牲者を出した京都アニメーションの放火殺人事件に関する新聞記事などが男性の住居から見つかったからです。男性の死亡により動機の解明は困難になったものの、新聞記事は単に放火の手段の参考として使われただけではないことも考えられます。


米国頻発している銃乱射事件について、社会科学雑誌「ニュー・アトランティス」の編集者アリ・N・シュルマンは、大量殺人が模倣行為であり、犯人は模倣者であるとの見解がここ数年で確立したと述べました。

「アリゾナ州立大学の数学者シェリー・タワーズ氏の研究によると、銃乱射事件が発生する確率は、直前に別の銃乱射事件が起きた場合に大幅に高まることが判明。発生確率が高まる期間は平均で13日間であることも分かった」という。

また、「特定の銃撃犯がそれ以前の銃撃犯を称賛したり、そこから学習したりした具体的証拠」もあるとしました(銃乱射事件、連鎖のわけ 世間の注目が引き金に/2017年11月24日/WSJ)。要するに強く影響されることは、あり得るのです。

人類学者のエリオット・レイトンは、犯人は大量殺人が世間に大きな衝撃をもたらすことに意識的だと指摘しています。

「凶暴な文化的英雄というアイデンティティの抜け道は、殺人者に称賛や愛情はほとんどもたらさないだろうが、大衆の敬意とマスコミの注目は確実に約束されている。それによって称賛や愛情の欠如は十分に償われるだろう。この特殊な意味において、殺人の価値と行動は、主流文化と完全な調和を保っているのである」(「大量殺人者の誕生」中野真紀子訳、人文書院)。

レイトンは、同書で以下のようにも語っています。

「むしろ彼らは、殺人という社会的発言が一種の不滅性をもたらすのを承知した上で、一息に続く爆発的行動によって復讐を果たし、死にたいと願っているのである」。

殺人者は、社会に永久に消えない傷を残すことによって、自らの存在の報われなさを癒やすのです。しかし、社会とは概念上のものではありながらも、厳然と存在し、実体は強靭でしなやかであり、変幻自在に変わっていくものです。

そもそも、人間は社会的な生き物であり、どのような社会にも、それが緩いか、きついかは別にして、規範や序列があります。それがなくなれば、社会は崩壊します。それが嫌なら、無人島で一人で生活するしかありませんが、無人島であっても、複数の人間が生活することになれば、そこには自然と規範や序列ができあがり、小さいなが社会が構築されるのです。

そうして社会そのものを個人が破壊するのは至難の業です。よって、暗殺者や大量殺人者が、社会を傷つけようと企てても、実際に傷付けられるのは社会そのものではなく、たまたま居合わせた人や通りすがりの人ということになります。あるいは、安倍元首相など社会を代表するとみられる人ということになります。

アリ・N・シュルマンは、2017年、ジャーナリズム研究機関のポインター・インスティテュートが承認した伝播効果を避けることを目的とするベストプラクティス(最良慣行)指針を紹介しています。

「犯人の名前は必要な場合に限って伝える、イメージが美化される可能性を避ける、『史上最悪の』などの最上級表現を控える」といった内容です。

ニュージーランドでは、現地時間2019年3月15日13時40分にクライストチャーチにある2つのモスクで銃撃事件が発生しました。

当時のニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、銃撃犯の名前を一切口にしないと誓ったのですが、これはレイトンのいう「不滅性」を少しでも骨抜きにしようとする試みの一つといえます。

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン元首相

アーダーン首相は議会で、「男はこのテロ行為を通じて色々なことを手に入れようとした。そのひとつが、悪名だ。だからこそ、私は今後一切、この男の名前を口にしない」「皆さんは、大勢の命を奪った男の名前ではなく、命を失った大勢の人たちの名前を語ってください」と演説しました(ニュージーランド首相、銃撃犯の名前は今後一切口にしないと誓う/2019年3月19日/BBC)。

この言葉の後段の言葉は非常に重いです。

わたしたちは、メディア通じて多くの悲劇を目の当たりにし、またそこから模倣という恐るべき学びを得る事態もあり得るからです。

まさに、安倍元首相の暗殺犯に関して、憎むべきテロを讃えた左翼メディアや言論人たちは、これを助長したのです。それどころか、暗殺犯をモデルとした映画まで上映される始末です。

大量殺人と同じく、安倍元首相暗殺犯や今回の犯人も、社会の不滅性、メディアの不滅性を疑うどころか強く信じているのでしょう。それらを意義あるものと感じているからこそ、破壊に値するとの発想を呼び込んでしまうのでしょう。

しかし、彼らは勘違いしています。結局のところ社会とは概念であり、直接コミュニケーションできる具体的な対象ではないからです。しかし、概念であっても社会は厳然と存在しており、その社会はもともと永遠不滅なものではなく、時を経て変幻自在に姿を変えていきます。小さな社会は、他の社会と統合したり、大きな社会は分裂したりします。

米国においては、トランプ氏が社会を分断したなどと批判されていますが、そもそも社会は異なる価値観、規範、序列によって規定されるコミュニティーにより構成されており、米国社会も他の国々の社会も、もともと分断されているともいえます。それが、社会問題化するまでに分断されるか、されないかが問題であって、社会とはもともとそういうものです。

暗殺者や大量殺人犯等が思っている以上に、多くの社会は強靭であり、しなやかです。実際、日本社会は、第二次世界大戦の惨禍を経ても、立ち直り経済発展をやり遂げました。かなり大きな自然災害にあっても多くの人は、一時は悲しみに打ちひしがれていても、また立ち上がり悲しみを乗り越え、生活をしていきます。

私は、福島県の相馬町で、震災で子ども孫や親など多くの人がなくなってしまった人が、周りの人たちに支えられて相馬野馬追に参加する姿や様をテレビで視聴しましたが、感動を覚えるとともに、社会の強靭さや靭やかさについて改めて知ることができました。

こうした強靭でしなやかな社会を暴力によって自らが変えられるという妄想でしか、自らの心を奮い立たせることができなくなったことこそ、彼らの地獄です。

このような妄想を助長するメディアも、最近ではかなり弱体化してきしまた。

今後メディアは、暗殺や大量殺人があったときには、あるいは著名人の自殺などがあったときには、犠牲者や遺族とともに苦しみ、哀悼の意を表すプロセスの中に、他者との死別や、自身の死について、事件に巻き込まれた人と同じような感覚を呼び起こすような報道をすべきです。

また、人によっては今回のような極端な行為には至らないまでも、自他を傷付ける言動を取っていた可能性を思い返し、その危うい巡り合わせを他人事として片付けられず深く省みさせるような報道、世界の不条理についてどのような姿勢向き合うのか考えざるを得なくするような報道をすべきです。

そうでないと、今のままではメデイアは大量殺人や暗殺、自殺を助長する存在になってしまいかねません。私は、メディアは昔からその傾向があったと思うのですが、最近その傾向に拍車がかかってきたように思われてなりません。

それは、いつの頃なのかといえば、「保育園落ちた日本死ね!!!」の発言あたりからだと私は思うのです。

この発言は、2016年2月15日にはてな匿名ダイアリーに投稿された、待機児童問題を強烈に批判する内容の記事でした。それをそのまま以下に掲載します。

何なんだよ日本。

一億総活躍社会じゃねーのかよ。

昨日見事に保育園落ちたわ。

どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。

子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ?何が少子化だよクソ。
— 匿名(Twitterアカウント名:保育園落ちた人)、保育園落ちた日本死ね!!!

このように投稿したくなる気持ちはわからないでもないです。それにしても、匿名の「保育園落ちた日本死ね!!!」は酷いと思います。

これだけなら、さほど問題にはならなかったと思うのですが、民進党の山尾志桜里衆議院議員(当時)は、2016年2月29日にこの記事を国会で取り上げ、安倍晋三首相(当時)は、匿名であり「本当か確かめようがない」と答弁したとの報道があったあたりからおかしくなってきました。

この記事と安倍の国会答弁に触発される形で、国会周辺で待機児童問題への抗議運動が行われました。さらに、「保育園落ちた日本死ね」が2016年の新語・流行語大賞のトップテンに入ったのです。

選考委員会は「このフレーズが先導するようにして大きな社会問題を現出させた」と評価し、受賞者は、記事の投稿者が匿名のために、国会でこの言葉を初めて取り上げた山尾が選ばれたのです。

これに対して、左翼リベラル系の人々は称賛する人が多かったです。

一方、タレントで5人の子を持つつるの剛士氏は、「こんな汚い言葉に国会議員が満面の笑みで登壇、授与って。なんだか日本人としても親としても僕はとても悲しい気持ちになりました。きっともっと選ばれるべき言葉や、神ってる流行あったよね。。」などとTwitterに投稿。

この投稿には賛否の声が上がり、その後「『綺麗な言葉を使おうね』なんて一言も言ってないです」、「ただ、死ねが流行語?? と。そんな声に国会議員が満面の笑みで登壇に違和感を覚えたというイチ視聴者の感想ツイートでした。。すいませんでした」などと投稿しました。

石平氏は、Twitterに「普通の日本人の間では、『日本死ね』のような言葉が流行った気配はないし、流行るはずもないのであろう。むしろ、それをわざと流行らせたい人がいる」と批判ツイートを投稿しました。

2ちゃんねる元幹部の山本一郎氏は、朝日新聞系のネットメディアであるハフポストが特定の野党と協力して広めた運動と主張していました。

いずれにせよ「死ね」という言葉がどのような形であれ使われることになったことには非常に違和感と危機感を覚えました。それは当時のブログ記事にも書いています。

私としては、「日本死ね」あたりから、メデイアなどが変遷していったように思えます。その後、ネットなどでは「アベ死ね」などの言葉がみられるようになりましたし、「アベ政治を許さない」というポスターを見かけるようになり、さらには私自身も、ご高齢の御婦人がスーパーで「アベ政治を許さない」というストラップを財布につけているのを見かけました。

このあたりから、「アベや政権などに対しては何を言っても構わない」という風潮が一気に一部の人にではありますが、広まったように思います。最近のコニタン騒動もその傍系かもしれません。

それが安倍元総理の暗殺や今回の暗殺未遂に繋がったかは、わかりませんが、メディアや左翼リベラル系言論人は、その可能性は全く否定はできないことを認識し、大量殺人や暗殺や自殺に対する報道や言論の姿勢を変えるべきです。

少なくとも、暗殺、大量殺人、自殺などを政治利用するのだけはやめていただきたいです。

変える気がないというのなら、いずれ自ら消えていくしかなくなるでしょう。実際、高橋洋一氏は新聞の発行部数の減り具合から、昨年10年後新聞は消えるだとろうと予測しています。

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2023年4月14日金曜日

黒田日銀10年の正当な評価 雇用確保は歴代最高の実績、海外紙は評価するも残念な日本のマスコミ報道―【私の論評】黒田日銀をまともに評価できないマスコミは、すでにオワコンか(゚д゚)!

日本の解き方

職員から贈られた花束を手に退任する日銀の黒田東彦総裁=7日午後、日本銀行本店

 黒田東彦(はるひこ)氏は4月8日、日銀総裁を任期満了で退任した。歴代最長となった10年の在任期間だ。退任前の7日の記者会見では、大規模な金融緩和策は適切だったとし、デフレでない状況をつくり、効果を上げたと述べた。

 黒田氏は、金融緩和で名目金利を下げるとともにインフレ予想を高めることにより、実質金利(名目金利からインフレ予想を引いたもの)を下げることで、実体経済に影響を与えることを繰り返し説明していた。

 これに加えると、失業率がNAIRU(インフレを加速させない最低水準の失業率)まで下げるのがマクロ経済政策の目標である。

 さて、黒田日銀の10年間で、どこまでできたか。

 財務省出身で消費税増税賛成というスタンスの黒田氏は、自らの口から言わなかったが、2014年4月と19年10月の2度の消費増税がなければ、2%のインフレ目標はかなり早期に達成できただろう。記者会見ではそうした質問をすべきだった。

 14年4月の消費増税があっても、強力な金融緩和のおかげで19年にはその環境が整っていた。もっとも、この期待は19年10月の消費増税と20年からのコロナ禍で吹っ飛んでしまった。

 それでも、雇用の確保という金融政策の主目的からみると、歴代最高のパフォーマンスだ。金融政策は「dual mandate(2つの責務)」といい、物価の安定と雇用の確保を目的とする。

 NAIRUを達成したいがために、過度の金融緩和を戒めるのが、インフレ目標だ。これは『安倍晋三回顧録』にも書かれている。日本のマスコミにはこうした常識がない人が多すぎる。

 消費増税やコロナ禍でも雇用を確保できているのは、金融政策のたまものだ。先進国でコロナ禍でも日本は最も雇用を確保した国だ。

 黒田日銀による大規模金融緩和で失業率が下がったことについては、「これは民主党政権時代の流れだ」という無理解もある。

 15~64歳人口は一貫して減少している。民主党時代には、就業者数が減少し、それを上回るペースで労働力人口も減少したために、見かけ上、失業率が低下した。しかし、安倍政権では、就業者数が猛烈に増加し労働力人口を上回ったので失業率が低下した。それぞれの中身はまったく異なるものだ。

 黒田日銀の業績について、雇用に着目するマスコミを探したが、残念ながらあまりなかった。ただし、海外紙は黒田日銀を評価しているものばかりだ。

 雇用が確保されると、その後に賃金が上がり始め、インフレ率も上がる。マスコミの論調は、黒田氏が「インフレ目標を達成できずに残念だ」と言ったところだけを切り取り、雇用を400万人作ったということは無視している。

 そもそもインフレ目標を達成していないではないか、というのは、金融政策の2つの責務をしっかり理解していないために出てくる批判だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】黒田日銀をまともに評価できないマスコミは、すでにオワコンか(゚д゚)!

安倍元総理が、総理時代に日銀が金融緩和すべきことを語り、それに日銀黒田総裁が異次元の包括的緩和を実行し、その後はイールド・カーブコントロールをしたものの、それでも緩和を継続したことにより、日本の雇用は間違いなく、改善しました。それは、多くの人が実感しているところです。

これは大学・大学院、高校などの就職担当の先生と話をすれば、それは誰もが実感していますし、他ならぬ若者たちも、雇用面で恩恵を受けたことは実感しています。だからこそ、安倍政権の支持率は特若者では高かったといえます。

私は会社で、人事を担当していた時期があり、民主党政権の時代には採用がかなりやりやすかったのをしっかり覚えています。安倍政権になってから以降は、難しくなったことをしっかりと記憶しています。これは、多くの会社の人事担当車はそう感じているでしょう。

直接人事等に関わったことがなくて、このような記憶のない人もいるでしょう。それにしても、テレビなどで就職難も伝えられていたので、安倍政権になってから、雇用がかなり良くなったことは、普通に生活していれば、誰もが実感できたはずです。

それが、実感できない人は、よほど鈍感なのか、高齢者で社会の変化と自分の生活にほとんど関係のない人、あるいは安倍元総理に反感を持っているなどの特殊な事情がある人たちだけでしょう。

この特殊な事情のある人達、結構存在します。私自身、twitterに安倍政権時の失業率の低下や雇用の創出について、一目でわかるようなグラフをいくつか掲載し、その偉業を称えたところ、普段はそのような人はいないのですが、結構の人数の人が、これに対する反論をしてきたので驚いたことがあります。こういう反論には全く論拠が薄弱であり屁理屈に近いものなので、まともに話をしていても仕方ないと思い、徹底的にブロックしました。

安倍元総理や黒田総裁の業績を認めたくない人たちが多いようです。マスコミもそうなのでしょう。しかし、これは以下のグラフなどみれば、どう考えても彼らの業績を否定することはできません。


このグラフをみれば、いかに安倍政権が、そうして直接的には黒田総裁が、失業率を低下させ、就業者数を増したかが、一目瞭然です。

下の表は、安倍・菅政権における、失業率の変化です。他国がかなり失業率が増えているのに、日本はさほど増えていないことがわかります。


なぜこのようなことができたかとえば、安倍・菅政権で合わせて100兆円ものコロナ対策補正予算を組み、さまざまな経済対策を打ったことによります。

この100兆円の財源は、政府が大量の国債発行をし、日銀がそれを買い取ることにより賄われました。日本では、日本独自の雇用調整助成金制度も活用したため、 このようなことが可能になったのです。

それにしても、日銀が金融緩和を継続しつつ、大量の国債を政府が買い取らなければ、このような偉業は達成できなかったはすです。

さらに、下のグラフをご覧になれば、いかに黒田日銀が雇用に貢献したかが理解できます。


このグラフをみれば、上の記事にもあるように、15~64歳人口は一貫して減少しています。民主党時代には、就業者数が減少し、それを上回るペースで労働力人口も減少したために、見かけ失業率が低下しました。しかし、安倍政権では、就業者数が猛烈に増加し労働力人口を上回ったので失業率が低下したのです。同じ低下であっても、中身はまったく異なるものなのです。

下のグラフをごらんいただければ、どのようなとにどのような財政や金融政策をすれば良いのかすぐに理解できます。


上の記事で、金融政策の2つの責務とは何を意味するかといえば、インフレ目標は、最低の失業率を目指すときに、金融緩和しすぎてインフレ率が高くならないように、ギリギリ許容できる最低のインフレ率です。

アベノミクスで完全雇用を達成したとき、インフレ率が2%になっていないなら、それを悪いことと考える必要ありません。むしろそれは良いことです。まだ、緩和の余地があるということです。

インフレ目標とはそのようにみるべきものであり、達成していなけば、失敗ということではありません。重要なのは雇用です。

インフレ目標の意味もわからず経済記事を書くのが、日本の経済記者です。情けないです。

上の記事にもあるように、黒田総裁は海外メデイアでは評価されています。

黒田総裁の決断が海外メディアで好意的に取り上げられた例として、2021年3月、一部の国内政治家から金融緩和の縮小を求める声が高まる中、日本銀行が超低金利政策を維持することを決定したことがあげられます。

黒田総裁の決断は、COVID-19パンデミックからの日本経済の回復を支援することへのコミットメントと、インフレへの懸念よりも経済成長を優先する意思の表れだと見なされました。

多くの海外メディアは黒田総裁の決断を賞賛し、フィナンシャル・タイムズは「日本経済の継続的な復活を確実にする賢い行動」と評し、ブルームバーグは黒田総裁を政治的圧力に直面した「堅実な手」と称賛しました。

安倍元総理や、黒田元日銀総裁の業績をまともに、認識できないメデイアはもうオワコンと言って良いでしょう。あと10年も持たないと思います。昨年高橋洋一氏が、大手新聞の発行部数の減少傾向を示し、このままだと10年で消滅と語っていました。おカネを払って、質の悪い経済情報などを受ける意味などありません。

日銀総裁を退任した黒田東彦氏は、政策研究大学院大学(GRIPS)の政策研究院(訂正)シニアフェローに11日付で就任しました。同大学大学運営局長の岡本任弘氏が12日明らかにしました。秋からは学生向けの講義も予定しているそうです。黒田氏の講義や公演なら、聴く機会があれば、聴いてみたいです。

一方、元日銀総裁の白川方明氏は、青山学院大学国際政治経済学部特任教授に就任したそうですが、一体何を教えているのでしょうが、教えられる学生も気の毒だと思います。



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2023年4月13日木曜日

統一地方選前半で〝維新が躍進〟 国政への影響力も強まる勢い 大阪の「クアッド」勝利で政権の枠組み変わる可能性も―【私の論評】今回の維新の躍進は、将来自民のレクイエムになるか(゚д゚)!

日本の解き方


 統一地方選の前半の投開票が9日に行われた。

 全国で唯一、与野党の全面対決となった北海道知事選挙では、与党などが推薦した現職の鈴木直道氏が当選した。大阪は、府知事選挙で現職の吉村洋文氏、大阪市長選挙で新人の横山英幸氏が当選し、前回に引き続き、大阪維新の会がダブル選挙を制した。

 保守分裂となった奈良県知事選挙は、日本維新の会の新人、山下真氏が当選し、大阪府以外で初めて維新公認の知事が誕生した。

 大阪府議会・市議会で維新が過半数の議席を獲得した。維新は府知事選、大阪市長選、府議会選、大阪市議会選の「クアッド(4つの)勝利」だ。維新は、今回、投票が行われた41道府県議会議員選挙でも選挙前の議席を大幅増加させる躍進となった。ただし、奈良県知事選は、自民の内部分裂による漁夫の利だった。

 維新の馬場伸幸代表は記者会見で「大阪府と大阪市の首長と、議会の過半数を預かることになれば『大阪都構想』に代わる次の大きなテーマを考えていく必要がある」と述べた。

 その上で、公明党の衆院の現職議員がいる大阪と兵庫の合わせて6つの小選挙区にこれまで候補者の擁立を見送ってきたことについて「公明党との関係は一度リセットさせていただく」とし、次の衆院選では擁立する可能性に言及した。これは、国政レベルでの自民・公明の連立にも影響があるかもしれない。

 大阪知事再選の吉村洋文氏は、大阪へのIR(統合型リゾート)誘致は民意を得たとした。過去に2度、住民投票で否決された大阪都構想については、現時点での予定はないが今後の任期4年間で何が起きるかわからないとした。はたして「三度目の正直」なのか、「二度あることは三度ある」のか。

 自民党は奈良県知事選でヘマをやってしまった。ただし、道府県議選では、議席を減らしたがまずまずの戦いをした。

 立憲民主党は、道府県議選で微増だった。大串博志選対委員長は、小西洋之参院議員の「サル発言」について、直接の影響を大きく受けている感じはなかったとしている。

 公明党と国民民主党は、道府県議選でほぼ同数だったが、共産党は党員除名騒動の影響もあってか、減少した。

 これからの国政選挙補選、後半戦の統一地方選で、維新の勢いがどうなるのだろうか。前半戦を見る限り、維新は地方選で着実に力をつけており、国政選挙では地方での底力が基盤になるので、国政への影響も出てくるだろう。

 大阪では、自民と共産が組んでも維新の勢いが止められなかった。

 大阪の「クアッド」勝利で公明の牙城が揺らぎ、自公連立に影響があると、政権の枠組み変更にもなりかねない。

【私の論評】今回の維新の躍進は、将来自民のレクイエムになるか(゚д゚)!

維新は、大阪府議会では過半数を占めていましたが、市議会では達していませんでした。それが、今回の選挙で、市議会で46議席を獲得。初めて過半数になりました。


一方自民党は府議団と市議団の幹事長が落選するなど、惨敗。両議会で大幅に議席を減らすことになりました。 

維新のこの躍進に危機感を覚えているのは、自民党ではなく公明党でしょう。大阪府の衆院選挙区は、19区あります。2021年の選挙では維新が15議席、公明党が4議席を獲得しました。

公明党が獲得した選挙区には、維新は候補を立てなかったのです。それは、市議会で公明党の協力が必要だったからです。しかし今回、市議選で維新が過半数を取りました。公明党に頼らなくても市議会運営ができるようになったのです。

たとえば維新が3回めになる『大阪都構想』を示して、公明党に『全面協力をするなら候補者を立てませんよ』ということだってありうるかもしれません。 どうやら、切り札は維新の手中にあるようです。

維新の馬場代表は、先の参院選をホップ、今回の統一地方選挙をステップ、来たるべき衆院選をジャンプと表現しています。果たして悲願の全国政党になることは可能でしょうか。 

今回兵庫県では、神戸市内の全選挙区で議席を獲得。京都府でも選挙前を3議席上回りましたが、強いのはやはり関西圏です。

北海道、群馬、栃木、香川、埼玉、福岡、熊本などの議会選挙で初議席を獲得したものの、神奈川で取りこぼすなど、関西圏以外では弱さも見受けられます。しかし、各党とも無視できない存在になっていることだけは間違いないです。

10年近く続いた保守的な安倍晋三・菅義偉政権が終わり、比較的リベラルと言われる岸田文雄政権で、もし「保守派の離反」が進むなら、自民党にとって怖いのは、立憲民主党などのリベラル野党でなく、維新などの保守野党です。岸田首相は少し心配した方が良いでしょう。

月曜(10日)朝、統一地方選の結果が新聞報道されるなか、気になるニユースがありました。朝日新聞の世論調査で、岸田政権の少子化対策や防衛増税に国民が冷淡だったのです。

調査によると、少子化対策の取り組みへの評価は拮抗していますが、「少子化が改善するか」との問いには、「期待できない」の61%が、「できる」の33%に対し倍もありました。

さらに負担が今より「増えるのはよくない」は60%で、「よい」は36%。こちらも、ほぼダブルスコアなのだ。国民は政権の少子化対策を「評価しているふりはしているが、効果に期待せず、従って負担増もイヤ」だと考えているのではないでしょうか。





防衛増税に関しては、68%が反対でした。こちらも、最近の日本の安全保障環境が変化したので、防衛費増自体には賛成もしくはある程度は賛成だか、負担増はイヤだということを示していると考えられます。防衛費増自体についてのアンケート結果を出さないのは、朝日新聞の防衛費増自体に反対したいという、願望の現れで、さすが「朝日クオリティー」といわざるをえません。

ネットで「少子化対策で年10万円の負担増」というニュースが流れてきたので、他のソースで調べてみたところ、立憲民主党の山井和則衆院議員が国会の質問で、「8兆円とも言われる少子化対策の予算を(全額)保険料で賄うとすれば、1年間で10万円の負担」と指摘していました。

8兆円全額を保険料で賄うということは現実にはあり得ず、政府側は「負担増ばかりを前面に出した印象操作」と言いたいでしょう。しかし、そもそも政府が国民負担の議論から逃げて財源をあいまいにしているのですから、こういう質問が出てくるのが当然です。

3月31日に出された少子化対策のたたき台では、児童手当や給食費など所得制限をつけずに気前よく配るとしていますが、それで子供が増えるのかどうかはなはだ疑問です。「社会で子供を育てる」と言えば聞こえは良いですが、効果がよく分からない政策のために、自分の負担が増えることに国民は納得しないでしょう。

それに、以前このブログでも示したように、少子化対策の財源を保険料にするというのは、実質増税と同じであり、財務省は「保険領の増額で賄うのはおかしい」という世論を盛り上げ、結局諸費税増税に持っていく思惑があるとみられます。財務省は、防衛増税も同時に成し遂げたいとの思惑があるとみられます。

防衛費は、現行と比べ4兆円増えるので、岸田首相は27年度以降の防衛費は、1兆円強を増税で賄う方針を示しています。無論、これは財務省の意向を反映したものでしょう。

国民としては、少子化対策、防衛費の両方とも消費税増税などで賄えば、負担がかなり増えることを危惧しているのでしょう。これは、当然のことだと思います。

岸田首相は早めに少子化対策や防衛費倍増の、財源をはっきり示すべきです。無論、両方とも増税ではなく、政府が国債を発行して、日銀がそれを買い取るという方式で実施すべきです。

これは、安倍・菅両政権のコロナ対策で行われた方式であり、安倍元首相の言葉を借りれば、「政府日銀連合軍」による資金の調達です。調達総額は両政権合計で100兆円にのぼります。このような対策を行ったので、日本経済はコロナ禍を経ても現在他国のように酷くは落ち込んではいません。

それどころか、コロナ禍期間中であっても、日本では他国のように大きく失業率が上がることもありませんでした。菅政権は、病床確保には医療村の強烈な反対にあって失敗しましたが、それでも脅威のワクチン接種のスピードで、結局医療崩壊を起こすこともなく、コロナ禍を収束させることに成功しました。

これで、国債の大量発行が、将来世代へのつけにならないこともはっきりしました。もし、この100兆円の調達で何かの不具合がでてくれば、財務省は得たりとばかりに、さまざまな不都合をあげつらい今頃コロナ復興税をすすめているはずです。そうならないのは、現状でも将来的にもそのような危機は訪れることはないからです。

このあたり、財務省は見かけは優秀であるようにみえて、実は 抜けています。財務省の省益に立脚すれば、財務省は過去にそうだったように、まず先にさまざまな屁理屈をつけてコロナ復興税を実施するべきです。そうでないと、結局多くの国民が、100兆円の国債を発行しても何も問題がないことに気づいてしまいます。

もう、多くの国民は気づきつつあるようです。だから朝日新聞のアンケート調査でさえも、負担が増えることに対して圧倒的に反対する人が多いのでしょう。ただ、財務省としては、多くの人を巻き込むことができる、もっともらしい屁理屈が思いつかないくらいに、現状の日本経済はあまり問題がないのでしょう。

現状で増税するのは、少子化対策や防衛費増は、将来世代にも利益をもたらすにもかかわらず、現世代に大きな負担を負わせることになります。そうして、日本ではなぜが減税はほとんど行われないので、現代世代が大きな負担を負うだけではなく、将来世代も負うことになるのです。そのことに、国民は反発しているのです。

しかし、財務省は岸田政権を潰してでも、何が何でも消費税増税をやり遂げようとしているのです。岸田首相はそのことにはやく気づくべきです。そうして、少子化対策や防衛費増には、安倍・菅政権が行ったように、増税なしで、政府日銀連合軍で調達することを政治決断すべきです。

そうでないと、国民の反発はつのり、維新の会が国政においても、躍進するのを許すことになります。連立政権という手もありますが、岸田政権が増税を決めれば、自民党の勢力は衰え、維新の会を参考にして、多くの保守政党ができあがり、自民党はその中に埋没するかもしれません。まだ、統一地方選後半戦や、次の国政選挙の結果をみてみないとわかりませんかが、自民党の保守岩盤増がそれでも良いと思うようになれば、自民党の終わりが始まります。

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2023年4月12日水曜日

マクロン大統領の〝台湾発言〟や米軍の機密情報の流出…自由主義陣営に乱れ 島田洋一氏「日本は『経済』でリーダーシップを」―【私の論評】日本が破竹の経済発展を遂げ、G7諸国の経済を牽引することが安保につながる(゚д゚)!

マクロン大統領の〝台湾発言〟や米軍の機密情報の流出…自由主義陣営に乱れ 島田洋一氏「日本は『経済』でリーダーシップを」

マクロン大統領(左)と習国家主席の接近には批判が渦巻く

 欧米を中心にする自由主義陣営の「結束」に乱れが生じている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が中国訪問時(5~7日)に、台湾情勢について、「われわれ(欧州)のものではない危機」と発言したことに対し、欧州の対中強硬派から批判が相次いでいる。米軍などの機密文書がSNS(交流サイト)に流出した問題では、国防総省が機密情報が文書に含まれていることを認めた。流出文書によって、米国が韓国高官の会話を傍受していた疑惑が持ち上がるなど、同盟国や友好国との関係にも影響が出つつある。覇権拡大を図る中国やロシアに対峙(たいじ)するため、団結が求められる自由主義陣営は大丈夫なのか。


 欧州で波紋を広げているマクロン氏のインタビューは、仏紙「レゼコー」(電子版)などが9日掲載した。

 マクロン氏はインタビューで、EU(欧州連合)は米中対立と距離を置き、「第三極」を目指すべきだと主張し、次のように語った。

 「台湾での(緊張の)高まりに、われわれの利害はあるか。答えはノンだ。最悪なのは、米国のペースや中国の過剰反応に追随せねばならないと考えること」「われわれのものではない危機にとらわれれば、罠に陥る」

 共産党一党独裁の中国を前に、「自由」「民主」「人権」「法の支配」という共通の価値観を持つ自由主義陣営の結束を危うくする発言である。

 ドイツでは早速、連立与党内から批判が飛び出した。

 社会民主党(SPD)で外交問題を担当する下院議員はドイツ紙で、「中国に対し、西側が分裂するのは誤り」と強調し、ロシアのウクライナ侵攻を教訓として、「強権国家におもねるべきではない」と自由主義陣営の連携を訴えた。

 欧州を含む各国の議員で作る「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC)は声明を出し、マクロン氏の発言を「台湾海峡の平和を維持するための国際社会の努力を損なった」と批判した。

 声明には、英国やフランス、ドイツのほか、スウェーデン、オランダなどの国会議員が名前を連ねている。

フランスのメディアも「失策」(フィガロ紙)と酷評した。

 米機密文書流出問題も深刻だ。

 米国防総省のクリス・メアー国防長官補佐官(広報担当)は10日、流布している文書には機密情報が記されたものが含まれていることを認めた。メアー氏は「深刻に受け止めている」「(文書の)一部が改変されているとみられる」として、情報戦に利用されている可能性を示唆した。

 ウクライナ政府は、流出文書の内容について「偽情報」とし、ロシア軍に対する作戦とは「無関係」と強調している。同国ではロシアに対する反攻が近く始まるとされる重要時期を迎えており、米CNNテレビは、ゼレンスキー氏に近い筋の話として、「流出のために、すでに軍の計画の一部を変更させた」とも報じた。

 バイデン政権は、中国やロシアへに対抗するため、同盟・友好国との連携強化を目指しているが、流出文書では、同盟国が米国の通信傍受対象となっていた疑惑も持ち上がった。

 ある文書には、米国の要請でウクライナに砲弾を供与することを懸念する韓国高官2人のやりとりが記載されていた。イスラエルの諜報機関「モサド」が、国内の反政府デモを後押ししているとの情報を記した文書もあったとされている。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の国賓訪米を今月下旬に控えている韓国では、政府が11日、「相当部分」が偽造されたとする公式見解を表明した。一方で、「事実なら深刻な主権侵害」(朝鮮日報社説)などと反発が広がっている。

 一連の事態をどうみるべきか。

 福井県立大学の島田洋一名誉教授は「中国やロシアの脅威に対処しなければならないタイミングで、西側諸国の間で足並みがそろわないのは憂慮すべき事態だ。フランスなど『中国との経済関係』を重視している国があるため、今回のように自由主義陣営が切り崩される恐れは今後もある。来月、広島で行われるG7(先進7カ国)首脳会議で、日本は議長国を務める。結束再確認のため、日本は自由主義陣営による経済圏構築など、経済分野でリーダーシップを発揮すべきではないか」と話した。

【私の論評】日本が破竹の経済発展を遂げ、G7諸国の経済を牽引することが安保につながる(゚д゚)!

上の記事で、島田洋一氏が、日本は自由主義陣営による経済健康そうなど、経済分野でリーダーシップを発揮すべきと主張していますが、その通りです。

中国は、マクロンの台湾関連の発言を最大限に利用し、G7の結束を弱め、さらには分断しようと虎視眈々と狙っているでしょう。

経済分野というと、中国経済は停滞し、中国がG7などに直接的に経済分野で対抗しようとしても、かなり無理があります。何しろ、中国はコロナ禍前から、国際金融のトリレンマに囚われ、結果として独立した金融政策ができない状態になっています。だからこそ、失業問題もなかなか解消できないでいます。

しかし、その中国も経済分野で、できることはやろうとしています。その一つとして、中国政府は、ハイテク製品に使われる高性能レアアース(希土類)磁石の製造に関する技術の輸出禁止に向けて検討作業を進めていることが明らかになりました。中国政府の輸出禁止・輸出制限技術リストで、レアアースの精錬や加工などの技術の輸出制限を盛り込む予定です。


レアアースといえば、2010年に沖縄・尖閣諸島をめぐり日中が対立すると、中国側が対日輸出を一時停止したことがあります。

これに対して、日本政府と企業は、中国以外での調達先確保、国内での再利用推進、省資源や代替原料の技術開発などの対策を行いました。その結果、中国からのレアアース輸入量は半減、輸入の中国依存度も8割から5割に低下しました。レアアース価格は暴落し中国では生産停止に追い込まれる企業も出ました。

さらに、安倍晋三・菅義偉政権の時、中国以外の海外で行っていた精錬加工を日本国内でできるような対策もしており、相当の準備もできています。岸田首相は、昨年10月にオーストラリアを訪問しましたが、その時に日豪両政府は22日、レアアース(希土類)といった重要鉱物のサプライチェーン(供給網)を構築するため、投資や研究開発の促進など連携を強化することを申し合わせた文書を交わしました。

米国は自国での鉱山開発にレアアース生産に占める中国依存度は9割から7割まで下がった。しかし、自国で生産したレアアースの多くを中国に輸出して、現地で精錬してから輸入しています。

日本はレアアースを使う高性能磁石の生産を得意としており、原材料のレアアースの確保は中国以外からの調達や再利用である程度のめどがたっています。米国は高性能磁石を搭載するハイテク製品が得意ですが、中国にレアアース精錬を依存している弱点があります。

今回の措置は、中国が米国に対抗するのが目的です。レアアースに対する準備をしてきた日本が米国等の弱みを補える可能性がある。

レアアースが注目されるのは、電気自動車(EV)などでは強力な磁力を有する駆動モーターが必要ですが、それにレアアースが欠かせないかです。日本では、すでにレアアースなしでハイブリッド(HV)車用の駆動モーターを開発しています。

中国がEVでの覇権争いのためにレアアース禁輸等を仕掛けるのであれば、世界のEV戦略を一部HVに変更するという手もあります。

日米でEV戦略を見直し、欧州連合(EU)が合成燃料「e―fuel(イーフューエル)」を使うエンジン車の販売を例外としたように、対中対策でレアアースなしのHVを認めることも検討すべきです。中国によるレアアース生産と精錬は著しい環境破壊を招いており、日本によるレアアースなしのハイブリッドは環境に貢献することになります。

もともとHVからEV主導になったのは、欧米の自動車会社の戦略でした。

それに中国も乗ったのですが、ここに来て日米欧州とも経済安全保障が重要になってきたので、その観点からEV戦略を見直すべきです。

昨日このブログでは、来月、広島で行われるG7(先進7カ国)首脳会議で、日本は議長国を務めることから、岸田首相は、安倍氏がインド太平洋戦略を構想し、米国にこれを採用させるとともに、インド太平洋地域の国々を巻き込んだときのような役割を担って、G7広島サミットでフランスが、インド太平洋戦略で貢献するように促していただきたいものです。それが、ドイツや他のEU諸国に対しても、これを巻き込むことにつながるとししました。

ただ、岸田首相がリップサービスだけで、これを行えば、フランスやドイツなどのG7の国々は、表面上はそれを受け入れたように見せても、中国との関係をなかなか断てない可能性があります。それに対して、上記で述べたような、中国のレアアースに頼らなくて、良い仕組みを提唱し、それを主導していけば、G7の国々も納得し、中国に対する牽制で一致協力できる可能性が高まります。

経済分野でいうと、日本は他のG7諸国と比較すれば、経済は堅調です。なぜかといえば、安倍・菅政権において、合わせて100兆円ものコロナ対策補正予算を組み、それで経済対策を行ったからです。

100兆円を調達するには、政府日銀連合軍(政府が発行した大量の国債を日銀が買い取る方式)使ったので増税の必要はありませんでした。増税なしを政治決断した安倍菅さんは素晴らしいです。

国内にはなぜか、アベノミクスを否定する論調も少なくないですが、アベノミクスはマクロ経済学の基本である財政政策と金融政策、ミクロ政策の基本である成長戦略を組み合わせたもので、ベン・バーナンキ氏やミルトン・フリードマン氏らノーベル賞を受賞した経済学者の理論にも沿ったものです。

ベン・バーナンキ氏

アベノミクスを否定する方々は、ノーベル賞級の経済学者の理論を否定しているのです。彼らが正しいのなら、それを論文にまとめて、世界水準の経済誌に発表すべきです。ただ、それをやれば「馬鹿」といわれておしまいで、掲載されることもないでしょう。

今後岸田政権は、増税することなく、金融緩和の継続と積極財政を実施し、日本経済を発展させ、世界経済の牽引役を担うべきです。現在は、米国をはじめとするG7の国々は利上げの影響で、今後急速に経済が伸びることはありません。

中国も、先に述べたように独立した金融政策すらできない状況なので、今後急速に発展することもありえません。

主要国における消費者物価指数の動き クリックすると拡大します

今その可能性を秘めているのは、長い間デフレだった日本だけです。日本では、物価高がいわれていますが、他国と比較すれば、さほどでないことがわかります。中国は物価が下がり気味ですが、これは金融緩和がしたくてもできないことの裏返しであり、良いことではありません。日本が他国と比較して、破格の経済発展をすれば、輸入も増え、G7の国々も中国に期待することはなくなります。

日本の経済発展により、日本国内はもとより、中国の意図を挫き世界が救われることになります。特に、日本の賃金は中長期的に上昇することになるでしょう。岸田首相はこの機会を逃すべきではありません。

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