2023年11月15日水曜日

「日本空母が大西洋でテスト!」米海軍研究所が発表 どの護衛艦いつ派米?―【私の論評】空母の政治的メッセージと現代海戦:軍事力と国家間関係の舞台裏(゚д゚)!

「日本空母が大西洋でテスト!」米海軍研究所が発表 どの護衛艦いつ派米?

まとめ
  • 「かが」は、すでに飛行甲板の改修が完了しており、試験航海などを実施中。 
  • 日本側の視察団は、イギリスの空母「プリンス・オブ・ウェールズ」のF-35B運用試験を視察済み。 
  • 「かが」の試験海域は、「プリンス・オブ・ウェールズ」と同じ海域になる見込み。 
  • 日本政府は、いずも型護衛艦2隻の空母化とF-35Bの導入を計画。 
  • F-35Bは、航空自衛隊の新田原基地に配備される予定。 
  • イギリス海軍の「プリンス・オブ・ウェールズ」は、無人航空機やアメリカ海兵隊との合同訓練も実施している。

改装中の「かが」 すでに飛行甲板全部が真四角になっている

 2024年に、日本最大級の軍艦であるいずも型護衛艦の2番艦「かが」が、アメリカ東海岸に来航し、F-35B戦闘機の運用試験を行うことが発表されました。

 「かが」は、2023年11月現在、飛行甲板の形状を一新し、所要の改修が施された状態で、試験航海などを実施中です。

 すでに海上自衛官と航空自衛官からなる日本側の視察団は、2023年10月末にアメリカ東海岸、大西洋沖を遊弋するイギリスの空母「プリンス・オブ・ウェールズ」において、F-35B戦闘機の運用試験を視察しています。

 「プリンス・オブ・ウェールズ」が試験を実施しているのと同じ海域で、「かが」もF-35Bの運用に関する各種試験を行うとみられます。

 日本政府は、いずも型護衛艦2隻について空母化を進め、同時に垂直離着陸が可能なF-35B戦闘機の導入も計画しています。

 F-35Bは、現在、42機程度の導入を予定しており、それらを運用するための飛行隊を航空自衛隊に新編し、宮崎県新富町にある新田原基地に配置することも公表しています。

 イギリス海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は、前述の米東海岸での各種テストの中で無人航空機による試験や、アメリカ海兵隊との合同訓練も行っているため、もしかしたら同様のテストを海上自衛隊のいずも型護衛艦でも実施するかもしれません。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】空母の政治的メッセージと現代海戦:軍事力と国家間関係の舞台裏(゚д゚)!

まとめ
  • 現代海戦では、潜水艦の優位性が高まっており、対潜戦(ASW)能力が重要だが、空母も航空攻撃能力や政治的なメッセージとして重要。
  • 米国は空母を使い、政治的な意思を示すために東地中海に2隻の空母を派遣。これはイスラエルを支援し、地域の安定を維持するという政治的メッセージを伝えている。
  • 中国の空母は技術的には米国に劣るが、政治的メッセージを発するためには有効。日本のASW能力が中国より優れていることが多くの国民に知られていない日本にとっても政治的な脅威だ
  • 潜水艦や他の軍事技術に関する情報開示は重要であり、情報を適切に開示することで国家の脅威に対する理解を促進し、国民の信頼を得ることができ。
  • 空母は、軍事的な側面だけでなく、政治的な意図を伝えるためにも重要であり、その能力を最大限に活用すべきであり、情報の適切な開示と共有は、国家の脅威への本質的理解を深める。
このブログでは、以前空母に関しては、今日では軍事的にはあまり大きな意味はないですが、政治的には大きな意味があることを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
いずも型護衛艦「空母化」必要なの? 軍事的な合理性はあるか それ以上に大切な「日本の見られ方」―【私の論評】空母の利点と使い方:軍事戦力から災害支援まで(゚д゚)!

この記事を要約すると以下のようになります。


世界最大の空母「ジェラルド・R・フォード」(手前)


"
現代海戦では、潜水艦の脅威がますます高まっている。そのため、潜水艦を探知・撃沈する対潜戦(ASW)能力が、海軍力の要となる。しかし、空母も依然として重要な役割を果たす。

空母は、広範囲にわたる航空攻撃能力を有しており、海上制海権の確保や、遠距離からの攻撃が可能である。また、空母は政治的なメッセージとしても重要な意味を持つ。空母の存在は、その国の軍事力や政治的プレゼンスを示すとともに、同盟国や友好国に対する抑止力にもなる。

したがって、現代海戦においては、ASW能力の強化とともに、空母の有用性も認識しておくことが重要である。

具体的には、以下の点が挙げられる。
  • 空母は、広範囲にわたる航空攻撃能力を有しており、海上制海権の確保や、遠距離からの攻撃が可能である。
  • 空母は、政治的なメッセージとしても重要な意味を持つ。空母の存在は、その国の軍事力や政治的プレゼンスを示すとともに、同盟国や友好国に対する抑止力にもなる。
空母は、ASW能力の強化とともに、このような政治的な意味合いも考慮して、今後も重要な役割を果たしていくと考えられる。
"
空母は、政治的メッセージを発するには非常に有用なものです。たとえば、米国がハマスとの戦いでイスラエルを支持すると公表しただけでは、それが本気なのかどうか、なんともいえないところがありますが、米国が東地中海に空母を派遣すれば、本気度を示すことができます。

米国は現在、東地中海に2隻の空母を派遣しています。1隻は、2023年10月8日に派遣された原子力空母「ジェラルド・フォード」であり、もう1隻は、2023年10月14日に派遣された原子力空母「ドワイト・アイゼンハワー」です。

特に、ジェラルド・フォードは世界最大の空母です。全長は337メートル、全幅は78メートル、排水量は10万トンを超えます。これは、これまでに建造された空母の中で最大のサイズです。

これらの空母は、イスラエルとハマスとの戦闘が拡大するのを防ぐために派遣されたものです。また、イランやレバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラの動きを抑止することも目的とされています。

米国は、東地中海に空母を派遣することで、同盟国であるイスラエルを支援し、地域の安定を維持することを狙っています。空母派遣はこうした国家の意思をはっきり政治的メッセージとして示すことができます。

中国の空母も、このような「政治的メッセージ」を発するためのものという性格が強いようです。そもそも、中国の空母は下のような理由からあまり実用的ではありません。

中国の空母

・設計が旧式
中国の空母は、ソ連から購入した航空母艦「ヴァリャーグ」を改造した「遼寧」と、その設計をベースに建造された「山東」の2隻のみであり、設計が旧式です。そもそ、米国のように原子力空母ではないので、航行速度も遅く、長い期間にわたって航行することはできません。

特に「遼寧」は、1980年代に建造された「ヴァリャーグ」を改造したものであり、艦体の大きさや航空機運用能力などにおいて、現代の空母に比べて劣ります。航空機運用能力が限られています。
中国の空母は、艦載機として、艦上攻撃機の「殲-15」や、戦闘機の「殲-15D」などを運用しています。しかし、これらの航空機は、いずれも中国が独自開発したものであり、実戦経験が不足しています。 
また、中国の空母は、カタパルトがないことや滑走路が短いため、艦上攻撃機などの大型機の運用に制限があります。また、航空機に搭載できる燃料や弾薬の量を減らす必要があります。フル装備、フル燃料で発艦させられないという致命的な血管があります。
・防御力が脆弱
中国の空母は、対空ミサイルやCIWSなどの防御システムを装備していますが、その能力は、アメリカなどの先進国に比べて劣るとされています。

特に、中国の空母は、潜水艦や対艦ミサイルなどの脅威に対して、脆弱であると指摘されています。
このように、中国の空母は、設計が旧式で、航空機運用能力が限られている、防御力が脆弱であるなど、実用性に欠ける点が指摘されています。

しかし、中国はさらに新たな空母を建造中です。中国製の空母には、このように様々な欠点があるのにそれでもなお建造するにはそれなりの理由があります。

それはやはり「政治的メッセージ」を強力に発することができるからです。日米とその同盟国にとっては、中国の空母はさほど脅威ではないのですが、それ以外の国々とっては未だに大きな脅威です。

日本にとってはさほど脅威ではないのですが、それでも中国の空母が沖縄付近を航行したりすれば、日本の国民も脅威に感じるはずです。

現実にはASW(対潜戦)の能力に優れた日本にとっては、あまり脅威ではないのですが、これは多くの国民あまり知られていませんし、特に潜水艦の行動は昔から度の国でも隠密にするのが常です。尖閣列島に関しては、水上艦艇に関しては報道されますが、潜水艦については報道されません。

尖閣諸島で中国様々な行動をとりつつも、結局尖閣奪取などの最終段階の軍事行動をとらないのは、結局中国が日本の潜水艦隊の存在を脅威に感じているからでしょう。もし、中国がこれに脅威を感じていなかったなら、もうすでに尖閣諸島は中国に実効支配されていたでしょう。

しかし、これは一般国民の知るところとはなりません。そのため、日本国民の中には閉塞感を感じる人も多いかもしれません。

しかし、今後は日本の「空母」が尖閣付近や沖縄付近、さらには南シナ海を航行するようになり、中国だけではなく、日本国民に対して「政治的メッセージ」を発信するようになるかもしれません。

そうして、「政治的メッセージ」を発信できる背景には、日本のASWが中国よりも格段に優れていることがあります。尖閣付近に「空母」を航行させるには、まずは中国のミサイルや航空機の脅威を排除できるだけの防空能力をもち、さらに、中国の艦艇や潜水艦の脅威を排除できるだけのASWの能力が必要だからです。そうして、日本はその能力をすでに有しています。

後は、実行するのみです。空母はそのように活用すべきです。これにより、日本国民も日本の国防力を信頼するようになるでしょう。空母は、潜水艦と異なり、その行動は表に出すべきものです。

ただ、潜水艦に関しても、用心深くする必要はあるでしょうが、意図的に出すときにはだすべきです。どんな兵器もある程度情報を開示しなければ、無意味です。

たとえば、敵に知られたくないという理由で、兵器や軍事力を一切表に出さなければ、抑止力とならない可能性もあります。たとえば、米国が米国の核兵器情報を徹底的に隠し、いかなる情報も特に最新情報など一切表に出さなければ、敵対国は勘違いして、核兵器を用いるかもしれません。

そのようなことは、民間企業の新製品開発でもいえます。全く情報を隠せば、弊害が出ます。そもそも徹底的に隠すということになれば、開発部隊の情報収拾に支障がでます。必要な情報を集めれば、何のための情報集めかということが対抗馬に察知されるため、表立って情報が収拾できなくなります。仮に、それを許せば、対抗馬の企業がそれを察知、似たような製品を先に市場に投入するかもしれません。

さらに、製品化の直前まで、販売部隊が何も知らされないということになれば、事前にマーケティングができないばかりか、販売されても、その販売部隊自体が、当の新商品を十分に知らないということになります。

それくらいなら、早い段階から、制御しつつ徐々に知らせていくというのが最善の方法です。開発段階で、知られて良い情報、そうではない情報を峻別した上で、知らせて良いものは開示すべきです。たとえば、アップルの革新的な「Vison Pro」に関してはもうすでに発売の1年前くらいからその概要を発表しています。

現在Vison Proの概要は多くの人に知られている

日米でも潜水艦の情報は隠す傾向が強かったのです、しかし米国では昨年あたりから、公表された軍事シミレーションで潜水艦を用いたものを出し始めました。それによると、台湾有事には日米は甚大な被害をうけるものの、結局中国は台湾に侵攻できないという結論を出していました。それ以前のシミレーションでは潜水艦なしで、米国が負けるというものがほとんどでした。

日本においては、未だ潜水艦を用いた台湾有事のシミレーションは公表していません。これは、いわゆる軍事アナリストも同様であり、ほとんどのシミレーションでなぜか台湾有事のシミレーションで潜水艦は登場しません。まるで、日本には潜水艦は存在しないかのような論評が多いです。ただ、インターネットの番組で、潜水艦を前提に台湾有事を語る元自衛隊幹部もいましたが、これは本当に例外的と言っても良いです。

日本では、憲法9条や周辺国の反発、経済的負担などから、「空母建造」などとんでもないという世論がありましたが、最近では世界情勢も変化して、「空母建造」を真っ向から否定する論調は以前よりはかなり弱まっています。

日本でも、空母の就役を皮切りに、潜水艦に関しても、制御された形で、ある程度情報が開示され、それに基づいて議論されるようになって欲しいものです。

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2023年11月14日火曜日

北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること―【私の論評】ロシア、中国のジュニア・パートナー化は避けられない?ウクライナ戦争の行方と世界秩序の再編(゚д゚)!

北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること

服部倫卓 (北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授)

まとめ
  • ウクライナ侵攻後、ロシアの貿易統計は非公開となったが、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの図書館で2022年版の貿易統計集が発見された。
  • この統計集によると、ロシアの貿易は、欧米日などの「非友好国」から、中国やインドなどの「友好国」に大きくシフトした。
  • 特に石油輸出では、中国とインドが急増し、2023年第1四半期には、ロシアの原油輸出の73.3%が中印向けとなった。
  • 半導体輸入については、先進国からの輸入が減少したものの、中国からの輸入は減少せず、ロシアの半導体不足は解消されていない。
  • ロシアの対外貿易では、中国が圧倒的なシェアを占めており、2023年には、露中貿易が往復で2200億ドルに達する見込みである。

 ウクライナ侵攻後、ロシアの貿易統計は非公開となったが、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの図書館で、2022年の貿易統計集が発見された。

 この統計集によると、ロシアの貿易は、欧米日などの「非友好国」から、中国やインドなどの「友好国」に大きくシフトした。

 特に石油輸出では、中国とインドが急増し、2023年第1四半期には、ロシアの原油輸出の73.3%が中印向けとなった。

また、半導体輸入については、先進国からの輸入が減少したものの、中国からの輸入は減少しなかった。

さらに、ロシアの貿易相手国では、中国が圧倒的なシェアを占めており、2023年には、露中貿易が往復2200億ドルに達する見込みである。

この結果、ロシアは、中国への依存度を高め、中国のジュニアパートナー化まっしぐらと言える状況となった。

なお、ロシアは、貿易統計を非公開とした理由について、国際的な制裁によるダメージを避けるためと説明している。

しかし、ロシアが貿易統計を隠したことによって、かえって、ロシアの経済状況の悪化を世界に知らしめることとなった。

【私の論評】ロシア、中国のジュニア・パートナー化は避けられない?ウクライナ戦争の行方と世界秩序の再編(゚д゚)!

まとめ
  • 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターは、旧ソ連・東欧地域の総合的・学際的研究を行う国内唯一の研究所である。
  • センターは、ロシアは中国のジュニア・パートナーになりつつあることを指摘。ウクライナ戦争でロシア最終的に敗北することになるだろう。
  • ロシアの敗北は、プーチン政権の存続にも影響を与える可能性がある。
  • ロシアの敗北は、中国の台頭をさらに加速させ、ユーラシア大陸の安全保障に大きな影響を及ぼすだろう。
  • 理想的な結末は、プーチンが失脚し、ロシアが西側諸国との関係を回復することである。


北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターは、旧ソ連・東欧地域の総合的・学際的研究を行う研究所です。国内唯一のセンターで、専任研究員11名、客員研究員20名、研究生20名が在籍しています。

研究テーマは、政治、経済、社会、文化、歴史など多岐にわたります。地域比較研究にも力を入れています。

研究成果は、学術論文や著書、報告書などの形で発表されており、国内外の学界で高い評価を受けています。政府や企業などの政策立案にも活用されており、旧ソ連・東欧地域の総合的な研究で国内外で高い評価を受けています。

私は、上の記事のロシアが中国のジュニア・パートナーになりつつあるという評価に賛成です。貿易統計がそれを裏付けています。ロシアが石油輸出を中国に依存していることは特に問題です。そのことについては、前から言う人もいましたが、今回それが数字で明確に確認されたといえます。

もし中国がロシアの石油の輸入を減らすことになれば、ロシア経済に壊滅的な打撃を与えるでしょう。そうして、現状ではそのようなことはないでしょうが、その可能性は完全に否定できません。そうしてこのような脅威があるからこそ、ロシアが中国のジュニア・パートナー化はますます避けられなくなるでしょう。半導体に関しても同じことがいえると思います。 ウクライナ戦争でロシアが勝つと信じている人は、欧米にはみられません。ほとんどの専門家は、ロシアはいずれ敗北すると考えていますが、それがいつになるかはわからないです。ただ、長期的には敗北するだろうと見る人が大勢を占めているように見えます。 日本では、ロシアのプロパガンダに影響されてロシアが勝つと信じている人もいるようですが、現実にはロシアは戦争に負けています。ロシアは多くの犠牲者を出し、経済はボロボロです。


米国、欧州、日本はウクライナに軍事・財政援助を行っています。この援助は、ウクライナが自国を守り、ロシア軍を押し返すのに役立っています。 ただロシアが核保有国であることを忘れるべきではありません。戦争が続けば核がエスカレートする危険性があるということです。しかし私は、ロシアが核兵器を使用するよりも、通常兵器で敗北する可能性の方が高いと考えます。 結論として、ロシアは中国のジュニア・パートナーになりつつあり、最終的にはウクライナでの戦争に敗北することになるでしょう。

そうして、ロシアの無謀なウクライナ侵攻が敗北に終われば、プーチン政権にどれほどのダメージを与えるかわからないです。モスクワの街頭での抗議行動から、明白な政権交代まで、何が起こるかわからないです。

ロシアはすでに侵略と人権侵害で西側諸国から孤立しています。そして中国は、世界的な影響力を拡大するために、ロシアの弱みにつけ込もうとしているようです。ウクライナで敗れたロシアが中国への依存を強めれば、中国がユーラシア大陸を支配し、海外における日米とその同盟国の利益を脅かすことになりかねないです。

これは保守派にとっては耐え難いことです。理想的な結末は、プーチンが失脚し、その後、西側諸国との関係を回復し、中国の手先になることを避ける新たな指導者が誕生することです。

自由で民主的なロシアが西側諸国の仲間入りをする。これは容易なことではないでしょうが、自由と民主主義はこれまでも長い困難を乗り越えてきました。さらに、中国経済はかつてないほど疲弊しています。強さと勇気と信念があれば、米国とその同盟国はロシアを共産主義中国の牙城から引き離すことができでしょう。

ウクライナ戦争の行方により、中国陣営と自由世界がロシアの引き抜き合戦を行い、その結果により世界秩序の再編が起こることなるでしょう。

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2023年11月13日月曜日

世界中でスマホが売れなくなった理由―【私の論評】ARグラスとスマホの連携がスマホの需要を伸ばす(゚д゚)!

世界中でスマホが売れなくなった理由


まとめ
  • 高インフレでスマホの販売価格が上昇
  • テクノロジーの頭打ちで買い替え需要が減退
  • クラウドサービスの充実でスマホの買い替え不要
  • インフレ収束やイノベーションで買い替え需要再燃
  • スマホメーカーやIT企業の取り組みで回復へ
スマホメーカーやIT企業の取り組みで回復へグローバル、日本でのスマホの出荷台数が落ち込んでいる。その理由は、以下の3つである。

・高インフレ
高インフレにより、スマホの販売価格が上昇した
特に日本では円安が進行したことで、iPhoneなどの高価格帯のスマホがさらに高騰し、買い替えが困難になった。

・テクノロジーの頭打ち
5Gの普及に伴い、スマホの基本性能はほぼ完成された。そのため、買い替えを促すようなイノベーションが起こりにくくなっている。

・クラウドサービスの充実
クラウドサービスにより、スマホ本体に搭載されている機能や性能がなくても、先端テクノロジーを活用できるようになった。そのため、スマホの買い替えが不要になった。

今後、スマホの売れ行きが回復するには、以下のいずれかが実現される必要がある。
  • インフレが収束し、スマホの販売価格が下落する。
  • スマホのテクノロジーにイノベーションが起こり、買い替え需要が再燃する。
  • クラウドサービスでは実現できない、スマホならではの新たな機能や性能が登場する。
いずれも、容易なことではないが、スマホメーカーやIT企業は、これらの課題を解決するために、さまざまな取り組みをしていくことになるだろう。

【私の論評】ARグラスとスマホの密接な連携がスマホの需要を伸ばす(゚д゚)!

まとめ
  • このブログでは過去には、ガジェットなどテクノロジー関係の記事も掲載していたが、最近ではわくわく感がなくなり掲載しなくなった。
  • PDAは限られた機能と通信速度の制約でコモディティ化したが、iPhoneの登場で革新が生まれ、従来のモバイルデバイスとは異なる体験が可能になったが、最近ではスマホもコモディティ化しつつある。
  • ARグラス(Xreal air)を導入し、スマートフォンとの連携でデスクトップモードを活用。画面の大きさや解像度により、スマートフォンよりもはるかに優れた視覚体験を体験。
  • スマホはワクワク感が薄れたが、ARグラスなどの新技術との組み合わせにより需要再生の可能性が期待できる。
  • 今後AR、VR技術の普及により、ユーザーに新たな感動をもたらす可能性があり、これに注力すべき。今後、このブロクでも、AR、VRに関連する記事の充実を図る予定

このブログの古くからの読者なら、このブログでもかつては、テクノロジー系の記事も結構掲載されていたことをご存知だと思います。iPhoneなどのスマホ、パソコン、iPad などのタブレットPCや、その他のテクノロジーに関するものを掲載していました。

iPhone 3GS

私自身は、iPhoneはiPhone3GSから使い始めています。iPhone3GSの日本での発売は、2009年6月26日です。私が購入したのは、確か2009年の冬だったと思います。

なぜ、そうしたかというと、何といっても比較的新しい技術が詰め込まれた、iPhoneにワクワク感を感じたからです。それまでのガラケーにはあまり興味はありませんでした。通話でき、写真がとれれば何でも良いと考えていました。その背景として、すでにPDAを使っていたからというのもあったと思います。

PDA(ピーディーエー)は、Personal Digital Assistantの略で、個人向けの情報管理用の小型モバイル装置のことです。携帯電話を少し大きくしたサイズで、簡略化したパソコンの機能・アプリケーション(パソコンと互換性をもつ場合が多い)と、ディスプレイ、入力部を装備しています。しかし、こんな説明よりも、現在のスマホから電話機能だけなくしたものという説明の方が現在ではわかりやすいかもしれまん。

PDAは、スケジュール管理や住所録機能、メモ機能などを備えており、手帳代わりになる機能を持っています。また、インターネットに接続したり、電子メールを送受信する機能なども備えています。

PDAは、米国アップルコンピューター社(現アップル)が提唱した名称です。本格的なPDAは、当時のアップル・コンピュータ(現アップル)のCEOであったジョン・スカリーが1990年代に利用していたと言われています。

日本における代表的なPDAには、シャープのザウルスがあります。ドコモでは、10円メールの機能を搭載した「モバイルZ」、「ピーターパン」、「ポケットボード」、「INTERTOP for DoCoMo」、「sigmarion」等がありました。

今は懐かしいPDA

ただ、当時のPDAはメモリも少なく、私の所有していたものは、写真がとれるものではなく、通信は「H゛(エッジ)」を用いていました。これはPHSの一種です。PHSは2020年段階でサービスは終了しています。現在の若い人たちでは知る人も少ないです。

通信速度も今日の4Gや5Gに比較すれば、かなり遅かったです。その為扱うデータもテキストベースがほとんどでした。エッジをバソコンにも利用していましたが、パソコンでもPDAでも動画は見るには見える位のものでした。かなり荒い画面か、小さな画面しか見えませんでした。

私自身は、PDAに多少ワクワクがあったものの、実際使ってみると、残念ながらこういっては失礼でしたが、「おもちゃ」の域を超えるものではありませんでした。そのため、PDAは徐々に使わなくなり、もっぱら携帯用としては、モバイルパソコンを用いるようになりました。

私の身の回りでは、PDAを使っている人はいませんでした。ただ、取引先の大手企業の営業マンでは、使っている人もいましたが、失礼ながら「おもちゃ」を使っているなと言う感覚でした。私自身は、スケジュール管理など手帳を使っていました。

そのような折に、iPhoneが発売され、ワクワク感は半端なかったです。そうして、実際にiPhone3GSを購入したのです。これは、「おもちゃ」ではなくかなり使えると直感しました。

実際結構使えました。そうして、iPadも発売開始されてから、半年後くらいに購入しました。これもワクワク感を感じました。

そうして、当時はこのブログにも当時はなかったiPadとiPhoneの連携機能などについて、こういうのがあれば良いという内容の記事を掲載しました。そうして、それは現実化しています。

このような経験を踏まえた上でいうと、スマホはもう当たり前となり、コモディティー化してしまいワクワクが失せてしまったので、インフレが収拾したとしても多少は売上があがるかもしれないでしょうが、あくまで多少の範囲になると考えられます。

ただ、スマホが売れる可能性もなきにしもあらずです。スマホに飽きた私は、iPhone7plusから買い替えはしなかったのですが、実は昨年スマホを二台購入しました。

iPhone7plus

iPhoneは、さすがに古くなったので昨年夏に、iPhone13に買い替えました。それと、アンドロイド端末を購入しました。なぜ購入したかというと、Xreal air(ARグラス)を購入したのですが、iPhoneでは使えなかっので、これを使えるスマホということでアンドロイドを初めて購入したのです。

Xrealは中華製ということで、不安感がありましたが、その不安故に、Xreal airを用いるときには、アンドロイド端末をだけを使うようにしています。そうして、アンドロイド端末にはパソコン画面のような画面を見られる機能があります。これを「デスクトップモード」といいます。

デスクトップモードは、アンドロイド端末の画面を縦長から横長に切り替えることで、パソコンのように画面を広く使うことができます。デスクトップモードでは、パソコンと同じように、複数のアプリを同時に表示したり、ウィンドウを自由に配置したりすることができます。

Xrealには専用アプリがあるのですが、これはほとんど使いません、もっぱら「デスクトップモードを用いています」さらに、これはに端末をタッチパッドにする機能もあり、これも用いています。

スマホの画面は小さいので、Xrealには重宝しています。XrealのARグラスは、画面が大きいということもありますが、5メートル先位の画面として投影されるので、近視の人には見ずらいですが、目にとっては遠くの画面を見ているのと同じなので目疲れが少ないです。ただ、こうしたグラス特有の疲れはあります。従来とは質の異なる疲れということできます。

しかし、近視にはなりにくいですし、スマホの小さな画面と比較すれば、遥かに大きいのが良いです。スマホで4k画面を見ても、意味がありませんが、ARグラスなら4k画面を見て、その高い解像度を認識できます。今後動画をスマホを見るより、ARグラスでみるというような使い方が伸びていくでしょう。そうして、今は3Dのソフトが少ないですが、今後伸びていくでしょう。

ただ、「デスクトップモード」も使いにくいところはあるので今後XrealのようなARグラスが使いやすいようなスマホが開発されていくと思います。現在はスマホとグラスをコードで繋がないと使えませんが、将来はコードレスになると良いと思います。

それと、現状では消費電力が半羽ないです。Xrealはスマホで使うことが前提となっていますが、大体4時間くらいしか継続して使えません。しかも、スマホもグラス自体熱くなります。無論、火傷するほどではないですが、それにしてもこのあたりは改善してほしいものです。

Xreal Ari

そうして、VRも使ったことはあるのですが、完全密閉して、外の景色をわざわざレンズで捕らえて、VRグラスなどにに映し出してARを実現するという方法には疑問を感じます。

そのようなことをしなくても、ARグラスのように現実世界が見えていて、そこに様々な情報を表示するほうが良いように思います。

VRは完全密閉であり、かなり大仰なものであり、外出時に使うには抵抗があり、さすがに一度も使ったことはありません。Xrealはサングラス型なので、その抵抗は少ないのですが、比較的濃いサングラスなので、それなりの抵抗はあります。そのため、外ではあまり使いません。ただ、JRなどで比較的長旅をする時には使っています。これは、かけても周りが見えますから安心ですし、大画面なのが良いです。

このあたりが今後の課題なのでしょう。私としては、ARグラスのグラス部分に「調光フィルム」の役割も担わせ、外の景色も見たい場合は、素通しにし、外の景色を遮断したいときには完全に遮光する、しかも用途に応じて数段階にするなどのことが望ましいと思います。

長々書いてきましたが、結論としては、スマホはワクワク感がなくなっので、今後大きく需要が伸びる可能性は少ないですが、ARグラスなどと連携するとまた伸びる可能性があるというところになると思います。

最近、ガジェㇳやパソコン等にはワクワク感がなくなったので、あまりこのブログに掲載しなくなりましたが、AR、VRなどまたワクワク感を感じるものもでてきたので、また掲載していこうと思います。よろしくお願いします。

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2023年11月12日日曜日

ポスト岸田有力は高市早苗、萩生田光一、茂木敏充各氏 政治評論家らが徹底分析―【私の論評】岸田首相、総裁選で再選ならず?さらにリベラル色強い政権誕生し、政府は財務省の言いなりに(゚д゚)!

ポスト岸田有力は高市早苗、萩生田光一、茂木敏充各氏 政治評論家らが徹底分析

まとめ
  • 岸田首相、年内の衆院解散見送り
  • 岸田首相の支持率、歴代首相ワースト
  • 岸田首相の求心力低下、政局に影響
  • 次期総裁選、高市早苗・萩生田光一・茂木敏充の争いか
  • 次期総裁選の争点、選挙の強さ・安倍イズムの継承・岩盤保守層の動向
岸田首相

 岸田首相の年内の衆院解散見送りは、求心力低下の象徴的な出来事となった。岸田首相は、解散時期を探りながら、政権浮揚策を打ち出すことで支持率の回復を図ろうとしていた。しかし、解散を見送ったことで、国民や自民党内から「決断できないリーダー」というイメージが定着し、支持率はさらに低下した。

 岸田首相の支持率低下は、政権浮揚策の不発も一因となっている。岸田首相は、物価高騰や円安などの経済問題、ウクライナ情勢などの外交問題、そして、社会保障や教育改革などの国内問題など、多岐にわたる課題に直面している。しかし、これらの課題に対して、明確な解決策を示すことができていない。

 岸田首相の求心力低下は、政局の混乱を招く可能性もある。岸田首相が次期総裁選に出馬しない場合、自民党内の次期総裁を巡る争いが激化する可能性がある。また、岸田首相が次期総裁選に出馬する場合でも、求心力低下によって、総裁選で苦戦する可能性もある。

 次期総裁選では、高市早苗経済安保相、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長の3氏が争う構図が予想されている。高市氏は、安倍晋三元首相の外交路線を継承する強硬な保守派である。河野氏は、デジタル化や少子化対策などの政策に強い。石破氏は、自民党内の中道派を代表する存在である。

 次期総裁選では、安倍イズムの継承が争点となる。安倍元首相は、憲法改正や防衛力強化、経済成長などの政策を推進した。これらの政策を継承できる人物が次期総裁に選出されれば、政局の安定につながる可能性がある。

 しかし、安倍イズムを継承できる人物が次期総裁に選出されなかった場合、政局は混乱する可能性がある。岸田首相が退陣した場合、自民党内では、保守派と中道派の間で対立が激化する可能性がある。また、野党は、政権の不安定さを利用し、政権交代を狙う可能性もある。

 岸田首相の求心力低下は、日本の政治に大きな影響を与える可能性がある。今後の政局の動向を注視していく必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】岸田首相、総裁選で再選ならず?さらにリベラル色強い政権誕生し、政府は財務省の言いなりに(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田首相を来年の総裁選までの間に、辞任させることは本人以外にはできない。首相には、来年の秋までには、起死回生の手を打つ時間は残されている。
  • 来年の総裁選の候補者茂木氏、上川氏、河野氏は、いずれも来年の総裁選の有力候補である。
  • この三氏は、いずれもリベラル的な政治信条を持っており、いずれも財務省出身であり、財務省寄りの政策を支持する姿勢を見せている。
  • 岸田政権は、保守岩盤層の支持が低く、これを早急に立て直す必要がある。
  • 岸田政権が継続できなければ、よりリベラル派と財務省に傾いた政権が誕生する可能性が高い。

自民党総裁選で岸田首相が総裁選に出馬しないか、出馬して落ちるか、それ以前に自ら辞任することでもなければ、総理大臣を辞めさせることは、何をもってもすることはできません。こればかりは、さすがに事実上大きな政治グループとも呼べるような存在になってしまった財務省も何もできないです。岸田首相が自ら辞めない限りは。

そのため、先日このブログでも指摘したように、岸田首相には来年の秋までには、起死回生の手を打つ時間は残されているといえます。

私が最も懸念するのは、来年の総裁選で、岸田首相よりもリベラル(まともなリベラル派の方に申し訳ないので似非リベラルとでもしておきます(笑))寄り、財務省寄りの総裁が誕生することです。誤解なきように、ことわっておきますが、以下は、自らの希望や理想などをすべて廃して、現実的な立場から論じたものです。

上の記事では高市、萩生田、茂木の他に、石破、上川、小泉、河野、西村、林等(敬称略以下同じ)があげられています。

石破茂は、地方への訪問や地域での活動に積極的な方として知られています。政治家として地域の声を聞くために頻繁に地方を訪れ、地域の問題や要望を把握しようと努力しています。彼の地方訪問の頻度は他の議員と比べて高いと言えるでしょう。したがって、地方の自民党員の信頼は厚いです。

ただ、石破はしばしば自民党内で異論を唱えたり、党の方針に対して批判的な意見を述べたことが頻繁にあり、自民党内のほとんどの議員が石破を蛇蝎の如く嫌っています。そのため、石破は候補者とはなりえないし、候補者になっても当選する可能性はありません。総裁選は、自民党議員と党員が選ぶものであり、マスコミや国民が決めるものではありません。

それに、石破の場合は、自民党議員の信頼が著しく低く、自民党総裁選に出るためには、自民党所属国会議員20人の推薦が必要ですが、石破氏がこれを集められる可能性はかなり低いです。

小泉に関しては、過去に奇抜な発言や行動を繰り返したため、能力そのものが疑われおり、ほとんど見込みはないでしょう。

林に関しては、岸田政権で外務大臣でしたが、直近の内閣改造では、外されています。林は、岸田首相と同派閥であり、総理大臣候補ともみられおり、岸田首相は、林が派閥内で権力を増すことを恐れ、閣僚というポストにつけ自身に逆らわせないようにしたのと同時に位打ちを狙ったとみられますが、それが功を奏したとみられ、外務大臣から外したとみられます。

林氏には、総裁への目はなくなり、宏池会(岸田派)内での権力闘争にも負けたとみるべきでしょう。

高市早苗氏

高市は、保守層の信頼は厚いですし、総裁選に出馬したことがありますが、それは安倍元首相の支援があったからであり、今後はそれは期待できませんし、無派閥です。自民党内の有力派閥の争いが大きくなり、派閥争いの無風期間を意図的につくりだすために、派閥争いに関係のない候補者を推すような場合、そうしてその時に高市に白羽の矢があたるということでもない限り見込みはほとんどないでしょう。私自身、高市氏が自民党総裁になれば良いと思いますが、現実にはその見込は限りなく低いです。

以上を除外すると萩生田、茂木、上川、河野、西村が残ります。

この中で、髙橋洋一氏は萩生田氏のことを、「政治家には珍しく自ら前にでることがない人物」と評しています。

髙橋洋一氏は萩生田氏のことを、「政治家には珍しく自ら前にでることがない人物」と評していました。これは、髙橋氏が萩生田氏と共著で出版した『萩生田光一 経済安全保障戦略』(2022年)の中で述べられたものです。

髙橋氏は、萩生田氏について、「派閥の重鎮でありながら、自らの主張を前面に押し出すことは少ない。むしろ、聞き役に徹し、相手の意見に耳を傾けることが多い」と評しています。また、「萩生田氏は、政治家としては珍しく、経済理論を深く理解している。しかし、その一方で、政治家としてはあまり華やかな印象がない」とも述べています。

髙橋氏以外にも、萩生田氏のことを「自ら前に出ない人物」と評する人は少なくありません。例えば、萩生田氏の秘書を務めたこともある、政治評論家の田中宏氏は、「萩生田氏は、自分の主張を押し通すタイプではない。むしろ、周囲の意見を取り入れながら、合意形成を図っていくタイプだ」と述べています。

また、萩生田氏の同期である衆議院議員の河野太郎氏も、「萩生田氏は、自分の考えを人に押し付けるタイプではない。むしろ、相手の意見に耳を傾け、共通の認識を形成していくタイプだ」と述べています。

このように、萩生田氏は、政治家としては珍しく、自ら前に出ることが少ない人物であるとの評価が多いようです。おそらく、萩生田氏が、総裁選に出馬するのは、旧安安倍派の多数が、推した場合に限られるでしょう。そうなると、そもそも総裁選に出馬することはないかもしれません。

安倍元総理(左)と萩生田光一(右)

西村も萩生氏と同じく前に出ないという評価があります。例えば、2023年9月20日付の読売新聞の記事では、西村氏の秘書官が「西村大臣は、メディアに出るとか、自分の主張を前に出すとか、そういうことにはあまり興味がない」と語っています。

このように、西村氏は政治家としては珍しく、自ら前に出ることが少ない人物であるという評価が、広く共有されています。西村氏も自ら積極的に総裁選に立候補する可能性は少ないと考えられます。

そうして現在、自民党最大派閥の安倍派は、会長不在の状態が続いています。安倍晋三元首相の銃撃事件を受けて、派閥の結束を保つために、塩谷立元文部科学相と下村博文元文部科学相を会長代理に据えましたが、結局は後継会長を決めることができず、集団指導体制を維持しています。

これでは、派閥内で結束して、総裁選に挑む事ができないかもしれません。そうなると、安倍派が総裁選に出ても、萩生田、西村が総裁になれる目は低くなると考えられます。

そうなると、茂木、上川、河野のうちの誰かが、総裁になる可能性が高まります。

茂木、上川、河野の3名は、いずれもリベラル的な政治信条を持っているといえます。

茂木氏は、憲法改正や集団的自衛権の行使容認など、保守的な政策を支持する姿勢を見せることもありますが、一方で、同性婚や選択的夫婦別姓など、リベラルな政策にも理解を示しています。また、新型コロナウイルス感染症の対応では、政府の感染拡大防止策を批判するなど、保守的な姿勢から離れた行動も見られました。

上川氏は、法務大臣として、人権擁護や司法改革を推進してきました。また、同性婚や選択的夫婦別姓など、リベラルな政策にも理解を示しています。

河野氏は、行政改革担当大臣として、官僚機構の改革を推進してきました。また、憲法改正や集団的自衛権の行使容認など、保守的な政策にも理解を示しています。しかし、同性婚や選択的夫婦別姓など、リベラルな政策にも理解を示しており、総裁選では、保守とリベラルをバランスさせた政策を掲げていました。

茂木、上川、河野の3名は、いずれも財務省出身の政治家です。そのため、財務省の考え方や政策に理解を示し、協力する姿勢を見せることが多いといえます。岸田首相自身は財務省出身ではありません。

具体的には、以下の政策において、財務省寄りの姿勢が見られます。
  • 財政健全化の推進
  • 歳出抑制
  • 金融規制の強化
これらの政策は、財務省が長年推進してきた政策であり、自民党の保守的な主流派も支持している政策です。そのため、茂木氏、上川氏、河野氏も、これらの政策を支持する姿勢を見せることは自然なことといえます。

左から茂木氏、上川氏、河野氏

そうなると、この中の誰が、総理大臣になろうと、岸田政権よりもさらにリベラル派に傾くこと、財務省寄りの政権が出来上がることになる可能性が高まることになります。

私自身は、岸田政権を積極的に支持するものではありませんが、保守派として現実的にみれば、以上のことを考えると、次の総裁選も期待できず、岸田政権がのほうマシという判断二ならざるを得ません。

岸田首相が自らの政権基盤を安定させるために、リベラル派に傾いた政権を保守に回帰させ、財務省と決別するなどのことをした上で、継続したほうが良いという結論に落ち着くことになります。

それが、これ以上日本の経済や保守的価値観をこれ以上毀損させないための唯一の道であると思います。岸田政権が続いている間に、保守派が準備をして、次の段階に移行するというシナリオが最適と思われます。その際には、日本保守党や国民民主党などの動きも役に立つと思います。

まだ、様子を見てみないと判断できませんが、ただ岸田首相にその覚悟があるのか、これも不透明であり、これにも期待できないということになれば、ここ数年かなり昏迷して、経済的にも政治信条的にもとてつもない状況を受け入れるしか仕方なくなるかもしれません。

また、あの昏迷した民主党政権時代のようなことになることを覚悟しなければならないかもしれません。しかし、直近の毀損を恐れて、日本が将来的大きく毀損されること防ぐには、その覚悟も必要になるかもしれません。岸田首相の動向いかんで、それもやむ無しということになるかもしれません。その時にも、日本保守党や国民民主党の動きは、保守派にとって望まいしいものになるでしょう。

しかし、できればソフトランディングしたほうが良いでしょう。自民党の保守派、積極財政派の議員は以上のことを理解した上で、冷静な判断をして行動していただきたいものです。外から、客観的、現実的に見るとそのように見えます。財務省やマスコミ、野党などに煽られて、軽挙妄動に走ることは慎むべきです。十分情勢を見極め、よく考えた上で行動すべきです。そうして、それは保守派の国民にとっても同じことだと思います。

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2023年11月11日土曜日

中国のブイ巡る高市早苗氏発言 国際法基準なら撤去は可能だ 高橋洋一―【私の論評】中国の尖閣周辺ブイ、自国潜水艦のステルス性の低さを補うのが狙いか(゚д゚)!

 日本の解き方

中国のブイ巡る高市早苗氏発言 国際法基準なら撤去は可能だ 高橋洋一

中国が設置したとみられる気象観測用ブイ 直径10メートル

まとめ
  • 高市早苗経済安保相は、尖閣諸島周辺の中国の排他的経済水域(EEZ)に設置されたブイについて、「日本が撤去しても違法ではない」との見解を述べた。
  • 11月1日の参院予算委員会で、東徹氏と上川陽子外相の間で、中国のブイに関する議論が発生。撤去には国際法の規定の解釈が焦点。
  • 一部意見では、高市氏の発言と閣内の意見が一致していないとの指摘があり、特に上川外相の国際法への慎重姿勢に疑問の声が上がっている。
  • フィリピンは、自国EEZ内で中国の設置物を撤去し、国際的な評価を受けている。この事例が日本にも示唆を与えている。
  • 中国のブイが潜水艦探知に使用されている可能性が考慮され、撤去要求の前に海上保安庁が調査すべきだとの提案がされている。

 高市早苗経済安保相は、中国が尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)に設置したブイについて、「日本が撤去しても違法ではない」との見解を表明した。この発言は、11月1日の参院予算委員会で、中国のブイに関する議論が東徹氏と上川陽子外相の間で発生したことに端を発している。具体的には、尖閣諸島の北西約80キロに位置するブイについての取り決めが問題となり、東氏は中国が応じない場合は実力行使も辞さないべきだと主張したが、上川外相は国際法に基づいて慎重な態度を示した。

 この議論に対し、高市氏の発言が閣内の立場と一致していないとの意見も浮上している。特に、上川外相は国際法に規定がないから撤去できないとの立場をとり、これに対して違和感を抱く声がある。一部の専門家は、国際法が基本的に「ネガティブリスト」であり、許可されていない行為が規定されているため、規定がないからといって行為が許容されるわけではないと指摘している。

 一方で、フィリピンが中国のEEZ内で設置されたものを撤去した例が引き合いに出され、この対応が国際的にも評価されている。この事例から、日本も同様にブイの撤去を検討すべきだとの声が上がっている。さらに、中国のブイが海上基地と見なされるほど大きいことから、同様の行動が逆転の立場でとられた場合、日本にとっての影響が懸念されている。

 最後に、筆者は撤去を要求するだけでなく、ブイが精密な潜水艦探知に使用されている可能性があることを考慮し、海上保安庁が調査を行うべきだと提案している。この調査を通じて、中国の設置意図が明らかになり、安全保障の観点から重要な情報を得ることができるとの立場を示している。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国の尖閣周辺ブイ、自国潜水艦のステルス性の低さを補うのが狙いか(゚д゚)!

まとめ
  • 高橋洋一氏は、尖閣諸島周辺のブイには精密な潜水艦探知に使用される可能性が高く、中国の海軍が日本の潜水艦の動向を監視している可能性があると指摘
  • 中国の対潜水艦哨戒能力はまだ日米やその同盟国に比べて遅れており、ブイの設置がパワーバランスに大きな変化をもたらす可能性は低い
  • 中国がブイを設置する背景には、将来の潜水艦や対潜水艦の作戦に役立てる意図があり、特に水中音響や地形、潮流に関するデータ収集が目的とみられる
  • ブイが収集した潮流や地形のデータは、潜水艦の作戦において戦術的な優位性をもたらす可能性があり、中国がこの情報を利用して潜水艦のステルス性を向上させる可能性がある
  • 海上保安庁がブイを調査すべきであり、これによって中国の意図や能力の分析が可能になり、日本の安全保障上のリスクを把握できる

上の記事で高橋洋一氏は、「ブイが精密な潜水艦探知に使用されている可能性」を指摘しています。確かに、このブイには、日本の海軍の活動を監視するためのハイテク監視装置が満載されている可能性が高いです。中国は潜水艦艦隊を急速に拡大しているため、日本の潜水艦を探知・追跡する装置を設置することは、この地域における中国の軍事的野心と完全に一致します。

ただ、中国の対潜水艦哨戒能力は、日米やその同盟国に比べてまだはるかに遅れているため、ブイを設置したところでパワーバランスが劇的に変わることはないでしょう。

それにこのようなことをすれば、日本などから非難され、国際的なイメージも落ちるはずです。

中国の対潜哨戒機

それてもなお、ブイを設置するにはどのような意味があるのでしょうか。おそらく、中国が将来の潜水艦や対潜水艦の作戦に役立てる意図があると考えられます。この地域の水中音響や地形に関する貴重なデータを得たいのでしょう。

そして、何よりも知りたいのは、この海域の潮流でしょう。この地域の海流と潮の流れを理解することは、潜水艦の作戦に大きな戦術的優位性をもたらすことになります。

潮流の速度、方向、塩分濃度、音響に関する正確なデータがあれば、中国の潜水艦は潮流に乗って静かに漂うことで、その動きを効果的に隠すことができます。

中国の潜水艦はステルス性に劣りかなり騒音が出るので、対潜哨戒能力に優れた日米は、これを比較的簡単に探知することができます。

しかし中国の潜水艦が、駆動装置を止めて、潮流に乗って移動している限りにおいては、日米の対潜水艦部隊がこれを探知・追跡することはかなり難しくなります。ただし、中国の潜水艦が魚雷やミサイルを発射したり、移動するために駆動装置を用いれば、東シナ海は水深も比較的浅いため、比較的発見しやすいです。

海中環境をよりよく把握することは、中国の海軍能力、特に猛烈なペースで拡張している潜水艦隊を前進させるために極めて重要です。

これらのブイが海流、塩分濃度、音響に関するデータを収集しているとすれば、尖閣諸島付近で活動する中国潜水艦のステルス性と有効性を大幅に高めることができます。これは、領海を守る日本の安全保障上の利益に対する深刻な脅威となるでしょぅ。

中国がこれらのブイを配備する動機が、単純な海洋モニタリングや環境調査だけではなく、潜水艦の探知や、潜水艦のステルス性を高めるための潮流の発見などを企図している可能性が高いです。

中国の潜水艦

ブイは、中国が繰り返し自国領だと主張している島の近くに戦略的に設置されています。私は、このブイが収集したデータが、対潜水艦戦で日米が現在保持している戦術的優位性を侵食するために使用されるかもしれないという重大な懸念を抱いています。

中国は、公然の対立を引き起こすことなく、日米の戦略的優位性を少しずつ削ぎ落とそうとしているようです。我々は、あらゆる機会を通じて、中国の戦略的姿勢に対抗しなければならないです。

ただし、日米はこの海域おける潮流等のデータをかなり綿密に大量に集めていることから、中国の潜水艦が潮流を利用する場合、どの潮流を利用するかなどは知り抜いており、予め予防線を張ることは可能です。

潮流に乗る潜水艦

そのため、中国がブイを設置し潜水艦が利用できる潮流に関するデータを収集したからといって、すぐにパワーバランスが劇的に変わることはないでしょう。

ただ、中国は潜水艦建造を急速にすすめいるものの、これらの潜水艦はステルス性に劣るため、中国の海軍力の増強には繋がらないともみられていました。しかし、潮流により、ステルス性を克服し、しかも数が多くなれば、これは無視できません。そうして、まさにこれを中国海軍は狙っているとみられます。

やはり、髙橋洋一氏が主張しているように、潜水艦探知や潮流の情報を把握するためのものなのか、海上保安庁が調査を行うべきと思います。そうすれば、中国の意図、潜水艦探知能力、潮流等の分析能力を知ることができます。

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2023年11月10日金曜日

年内衆院解散見送りへ 支持率低迷、岸田首相「経済専心」―【私の論評】岸田首相、権力基盤維持のため従来の慣習破りを続けられるか(゚д゚)!

年内衆院解散見送りへ 支持率低迷、岸田首相「経済専心」

まとめ
  • 岸田首相は、年内の衆院解散・総選挙を見送る意向を固めた。
  • 内閣支持率の低迷を踏まえ、衆院選を戦う環境は整っていないと判断した。
  • 当面は信頼回復に向けて物価高対策などに全力を挙げ、年明け以降、解散のタイミングを改めて探る。
  • 首相は、9月に内閣改造・党役員人事を行い、10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求し、所得税などの減税も打ち出したが、政権浮揚にはつながらず、10月の衆参2補欠選挙は1勝1敗に終わった。
  • 与党内では、次の解散のタイミングは24年度予算案成立後の来年4~6月との見方が出ている。
岸田首相


 岸田文雄首相は、年内の衆院解散・総選挙を見送る意向を固めた。

 内閣支持率の低迷を踏まえ、衆院選を戦う環境は整っていないと判断した。当面は信頼回復に向けて物価高対策などに全力を挙げ、年明け以降、解散のタイミングを改めて探る。

 首相は、年内の衆院解散の可能性を問われ、「まずは経済対策、先送りできない課題に一つ一つ、一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と表明した。

 首相は、9月に内閣改造・党役員人事を行い、10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求し、所得税などの減税も打ち出した。

 しかし、政権浮揚にはつながらず、10月の衆参2補欠選挙は1勝1敗に終わった。内閣支持率が危険水域とされる2割台に落ち込む世論調査も相次いでいる。不祥事に伴う法務副大臣など政務三役の辞任が続き、与党内では早期解散は困難との見方が広がっていた。

 2023年度補正予算案の国会審議は11月末ごろまでかかる見込みで、その後は24年度予算案の編成作業が本格化する。首相は11月末からアラブ首長国連邦(UAE)で開かれる国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)への出席を検討。12月16~18日には東京で東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議を予定しており、政治日程の窮屈さも考慮したとみられる。

 与党内では、次の解散のタイミングは24年度予算案成立後の来年4~6月との見方が出ている。首相は来秋の党総裁選前に衆院選で勝利し、総裁選を無風で乗り切る戦略を含め、解散の機会を慎重に探る考えだ。

【私の論評】岸田首相、権力基盤維持のため従来の慣習破りを続けられるか(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田首相は、自らの権力基盤を維持するために、従来の慣習をしばしば破っている。
  • その一例として、2022年8月に、幹事長を務めていた二階俊博氏を解任したことが挙げられる。
  • また、同月の閣僚人事では、非自民党議員を閣僚に任命するなど、異例の人事を行い、党内から反発を招いた。
  • さらに、自民党の過半数議席を背景に、野党の意見を無視して法案を成立させるなど、民主主義の根幹を揺るがすような行動も見られる。LGBT法案成立の過程では通常の自民党内での手続きを破った。
  • 岸田氏のこうした強権的な姿勢は、今後良い方向に出る可能性は現時点では否定しきれない。

日本政府には、為替特会など財源になるうる財源が豊富存在しています。特会などに積立などを活用すれば、50兆円くらいの財源を確保できます。様々な財源を有効活用するようにすれば、財源に煩わされることなく、所得税の減税や最終消費者への給付金など、景気刺激策を実施することができます。

日本政府の豊富な財源

減税と補助金の経済効果は実はマクロ的にみれば、ほとんど同じです。減税は可処分所得を増加させ、消費を促進します。補助金は企業の設備投資や雇用を促進します。どちらも景気刺激策としては有効です。

ただ、補助金の執行率が悪いです。なぜなら補助金は、事業者や団体に交付されることが多いからです。しかし、事業者や団体は、補助金を使って必ずしも新たな投資や雇用を増やすとは限らないです。また、補助金は、予算の一部が執行されないまま積み残されることもありがちです。

一方、減税は、可処分所得を直接増加させるため、執行率は100%になります。また、減税は、国民の消費意欲を高めるため、景気刺激策として効果的です。

それと、賃金に関して政労使会議で議論されていますが、この会議は、政府、労働組合、経営者団体の代表者が集まり、賃上げや雇用対策などを話し合うものです。しかし、これは政労使会議はセレモニーにすぎないです。実効性のある経済対策などはできません。

そんなことよりも、需給ギャップが埋まれば、企業は賃上げを自発的に行うというか、行わざるを得ない状況になります。需給ギャップ(15兆円から20兆円)を埋めるための景気刺激策が実施されれば、賃上げは自然に推進されることになります。

政労使会議で賃金は決められるものではありません。これは、厚生労働省が雇用の主務官庁でないことと同じようなものです。厚生労働省は失業率などの統計をまとめる官庁であって、日銀こそが雇用の主務官庁です。日銀が物価を数%あげる政策をすれば、日本では数百万人の雇用が発生します。ただ、労働投⼊ギャップを埋めるのは、厚生労働省が主務官庁といえるでしょう。

労働投⼊量の潜在労働投⼊量から の乖離で定義され、①就業率ギャップ、②労働⼒率ギャッ プ(労働⼒率のトレンドからの乖離)、③労働時間ギャッ プ(労働時間のトレンドからの乖離)を合計することによ って算出します。しかし、このギャップを埋めるのは雇用が存在しているから埋められるのであって、雇用そのものは中央銀行の金融政策によるものです。そうして、失業率が下がれば人手不足となり、賃金もそれにつれてあがるのです。

欧米では常識なのですが、このあたりが、日本ではなぜか認知されていません。だからこそ、政労使会議という実効性のないセレモニー的な会議が行われるのでしょう。

以上のように、日本政府は50兆円の財源を活用して、減税または最終消費者への給付金を実施すべきであり、これにより、可処分所得を増加させ、需給ギャップを埋め、賃上げを促進することができます。

何が言いたかったかといえば、岸田首相は本気で経済対策に専念しようすれば、間違いなく経済を良くできる状況にあるということです。ただ、それには、財務省の抵抗に抗う必要があります。

安倍元首相は、回顧録で、財務省について「国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば、満足なんです」「省益のためなら政権を倒すことも辞さない」などと批判していました。実際、財務省の抵抗は凄まじいものであり、歴代の総理大臣はこれに抗えなかったようです。

安倍総理が、消費税増税を二度延期したときには、一部のマスコミは「財務省の意向に逆らった初の首相」と報道したくらいです。

以上のような状況から岸田おろしが始まったという見解もあります。ただ、私自身は現状では安易岸田おろしはすべきではないと思います。なぜなら、自民党内で次の総理になりえる人物がおらず、今後、首相が変わるたびに、ますます自民党はリベラル色を強めていくことが予感されるからです。

たとえば、次の総裁として有望といわれる河野太郎氏関して、「河野太郎が総理大臣になると日本終了」という人たちもいます。彼らは、主に以下のような理由でそう考えていると考えられます。

・エネルギー政策
河野氏は脱原発派として知られており、原発ゼロを実現するためには、再生可能エネルギーの導入を急速に進める必要があると主張しています。しかし、再生可能エネルギーの導入にはコストや技術的な課題があり、また、安定した電力供給を維持するためには原発の役割も不可欠であるという意見もあります。そのため、河野氏が総理大臣になった場合、電力不足や電気料金の高騰などの問題が発生し、日本経済や国民生活に大きな影響を与えると懸念されています。

 ・外交政策

河野氏は外交においては、米国との同盟関係を重視し、中国の台頭に対抗する姿勢を強めるとしながら、中国との経済交流を重視する姿勢を繰り返し示してきました。2022年7月には、中国の習近平国家主席と会談し、経済協力や人文交流の拡大について話し合いました。また、2023年3月には、中国の王毅外相と会談し、日中関係の改善に向けた議論を行いました。

また、河野氏日中友好議員連盟に所属しています。日中友好議員連盟は、日中関係の友好と発展を目的とした議員連盟であり、親中的な議員が多く所属しています。また、河野家は中国でのファミリービジネスを問題視するむきもあります。現在、河野氏の母親である河野洋子氏が社長を務めています。河野洋子氏は、河野氏の政治活動を支えるとともに、中国での事業を継続的に拡大させています。
・政治姿勢
河野氏は政治家として、強烈な個性と発言で知られています。そのため、河野氏が総理大臣になった場合、国民の意見を十分に反映しない独善的な政治を進め、社会の分断をさらに深めるのではないかという懸念もあります。
もちろん、これらの懸念はあくまでも可能性であり、河野氏が総理大臣になったとしても、必ずしも日本が終了するわけではありません。しかし、河野氏の政治姿勢や政策に対する国民の理解や支持が得られなければ、日本が大きな混乱に陥る可能性は否定できません。

河野太郎氏

私は、今後日本の総理大臣が変わるたびに、自民党がさらにリベラル的な方向に流れていくのではないかと懸念しています。菅政権は、安倍政権を継承しましたが、それは安倍元総理が存命しており、菅氏は自分の持ち味を出すではなく継承することに重点を置いたからだと思います。それに文字通りの短期政権だったので、安倍路線を変えようもなかったからであると考えられます。

岸田政権も当初は、安倍路線を引き継ぐようにもみえましたが、二年目にして、随分とリベラル寄りになり、あろうことか、LGBT理解増進法を通常の自民党内の手続きを省き拙速に成立させてしまいました。そうして、財務省の意向を強く反映するようになりました。

リベラル派に傾いたことにより、自民党の保守岩盤支持層が離れていき、財務省の意向を反映するようになったことで、他の支持層も離れたのでしよう。このようなことが岸田政権の支持率が下がっていることの原因であると思われます。

これを巻き返すには、岸田首相はリベラル派から保守派への回帰を実現し、財務省の意向をはねのけ、まともな経済対策をすべきなのです。

これは、望み薄と見るむきもありますが、全くチャンスがないということはないと思います。

岸田首相は、自らの権力基盤を揺るがすものには、常識を破るような行動にでてきた過去があります。

たとえば、二階俊博氏を幹事長から追い出しました。岸田首相は、二階氏が党内の権力基盤を握っていることを懸念し、首相就任直後に幹事長を退任させることで、政権運営の主導権を握りました。これは、岸田首相が、自らの政治生命をかけて二階氏の退任を実現させたものです。これは、自民党内の権力闘争において、首相が自らの意志を貫くという、従来の常識を覆すものでした。

二階氏


岸田首相は、就任直後から、中国の海洋進出や人権問題に強く懸念を示してきました。また、中国への対抗を重視する米国との関係を強化し、日米同盟を強化する姿勢を打ち出しています。これは、従来の日本外交の常識である「中国との友好」を重視する出身派閥の宏池会等の姿勢から大きく転換したものです。特に、これに関してはほとんど評価されませんが、それは自民党内では特異といえる安倍元首相を比較の対象にしているのだと思います。自民党の大勢は、「中国との友好」を重視しています。

 岸田首相は、野党の合意を求めることなく法案を可決するために、国会での党の超大勢を何度も利用してきました。それどころかLGBT理解増進法案成立過程においては、自民党内の通常の手続きを省いてまで成立させました。これは、日本の民主主義を弱体化させているとの非難を浴びています。

岸田外相は、2027年までに日本の防衛予算をGDPの2%に引き上げると公約しました。これは、戦後日本の平和主義政策からの大きな転換となります。

これらは、岸田外相が自らの権力基盤を維持するために、良い悪いの価値判断は別にして、これまで考えられなかった規範を破ったほんの一例に過ぎないです。岸田首相が長期的にこのアプローチを維持できるかどうかはまだわからないです。

従来の常識を翻す人々 AI生成画像


一部のアナリストは、これらは、岸田外相が伝統を破ろうとするのは強さの表れであり、日本が直面する課題に対処するために必要なことだと考えているようです。また、岸田氏の行動が日本の民主主義や制度を弱体化させていると懸念する向きもあります。岸田首相のアプローチが長期的にどのような意味を持つのか、それを語るのは時期尚早かもしれません。

そうして、もうひとつ忘れてならないのが、来年の米大統領選挙です。現状ではトランプ氏が優勢です。選挙は水もので、どうなるかはわかりませんが、共和党が優勢であるのは間違いなく、トランプ氏もしくは他の共和党の候補が大統領になるのは確実だとみられます。そうなると、岸田政権は政策を転換せざるを得なくなります。そうなると、自民が保守派への揺り戻しされる可能性は高まると思います。

無論、総裁選は米大統領選の前に行われますが、その影響は選挙戦前から現れ始めるでしょうし、次期総裁が誰になろうとも、リベラル派に傾き続けるようなことはできないでしょう。

岸田首相は、自らの権力基盤を維持強化するために、リベラルに傾いた政権を保守派寄りに立て直したり、財務省に逆らってまともな経済対策を実行させる可能性は、いまのところはまだ完全に捨て去ることができない状況にあると思います。

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2023年11月9日木曜日

中国覇権が進む中、南太平洋へ重い腰を上げた米国―【私の論評】経済減速でリスクテイクを強める習近平、南太平洋への軍事進出の可能性(゚д゚)!

中国覇権が進む中、南太平洋へ重い腰を上げた米国

岡崎研究所

まとめ
  • 米政権は長らく南太平洋諸島国に無関心だったが、中国の南太平洋での活動が増加し、米国はこ最近の地域への関与を強化している。
  • 中国の南太平洋への経済投資や支援が増加しており、南太平洋諸国は中国との地域安全保障協定には消極的で、米国の関与を望んでいる。
  • 南太平洋諸国の主要な関心事は地球規模の気候変動への対処であり、米国の気候変動対策の支援が重要視されている。
  • 中国の海洋進出に対抗するため、日本は南太平洋への関与をさらに強化する必要がある。


 この記事は、中国との競争において、どの国や地域も無視できないとし、南太平洋諸国へのアメリカの関与が地域全体の安定にとって不可欠であることを強調しています。

 2023年10月17日のワシントン・ポストの社説によれば、米政権は長らく南太平洋諸島国に対して無関心だったが、中国の南太平洋での活動が増加し、その地域への米国の関与が強化されていると指摘している。米国は中国との競争において南太平洋諸国を無視すべきでない。

 米国はマーシャル諸島と軍事協定を締結し、クック諸島とニウエとの外交関係を確立した。また、ソロモン諸島とトンガに大使館を開設する計画も進行中だ。

 南太平洋諸島国への米国の関与が急増している背後には、中国の存在がある。中国はこの地域への経済投資を増加させ、新型コロナパンデミックの際にはワクチンや医療支援を提供した。ただし、南太平洋諸国は中国との地域安全保障協定には消極的で、米国の関与を望んでいるとされている。

 この地域の主要な関心事は、地球規模の気候変動への対処であり、海面上昇などの影響が既に現れている。米国のインフラ構築と気候変動対策の支援が評価されている。

 最終的に、この記事は、中国との競争において、米国や南米を含むどの国や地域も無視できないことを強調し、南太平洋諸国への米国の関与の重要性を強調している。

 南太平洋は、日本にとって重要な地域である。中国が影響力を拡大しようとしているため、日本は島国への関与を強化していく必要がある。

 日本統治時代の歴史的つながりは、島国と日本の信頼関係の基礎となっている。日本は、ODAや人的交流を通じて、島国との協力を継続していく必要がある。

 日本は、島国にODAを拡大し、気候変動対策やインフラ整備を支援している。また、島国との間で、議員派遣や青年交流などの人的交流を活発化させている。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】経済減速でリスクテイクを強める習近平、南太平洋への軍事進出の可能性(゚д゚)!

まとめ
  • 中国の南太平洋への経済的投資は、近年伸びたものの、最近は減少している。
  • 習近平は、権力を維持するためには不安定な状況を意図的に作り出す人物であり、通常の民主国家の指導者像があてはまる人物ではない。
  • 習近平は、権力基盤を強化するため、軍や外交などの重要なポストを自分の側近で固めようとしている。
  • 中国経済の減速は、習近平のリスクテイクを抑制するのではなく促す可能性がある。
  • 習近平は、経済の低下を補う軍事力行使も辞さない可能性がある。

上の記事には、間違いとはっきりとはいえないものの、最近の状況を反映していない部分もあります。それは、「中国はこの地域への経済投資を増加させ」という部分です。

中国のこの地域の経済的投資に関して、以前このブログで以下のような内容を掲載したことがあります。
  • 中国の太平洋への援助は2008年から提供され、16年にピークに達したが、その後減少し、現在では地域全体の援助総額の9%に過ぎず、オーストラリアやアジア開発銀行に次ぐ第3位となっている。この減少の背後には、太平洋諸国が中国への負債を抱え、中国資金への関心を失ったことが影響しており、米国もこの問題を懸念している。
  • さらに、中国の海外援助の減少は太平洋地域に限らず、特に新型コロナ流行後には大規模なインフラ整備や融資計画が放棄されている。中国は「一帯一路」イニシアティブを推進したが、近年の太平洋への援助は大幅に減少しており、融資支出も減少している。
ただ、中国が南太平洋の国々に関与し始めたのは、1990年代後半からと言われています。それ以前は皆無に近かったことを考えると、現在でも比較的高いといえるかもしれませんが、直近では激減しています。

これは、最近の中国の経済の低迷も反映しているものと考えられます。現在の中国の経済状況を考えると、中国は他国に関与するのではなく、まずは自国内の問題を解決することに専念するべきであり、対外関係は支障が出ない程度の留めるべきです。そうして、多くの人が、中国もきっとそうするだろうと考えるでしょう。

無論、中国以外の国の指導者ならばそうするでしょう。しかし、中国は違うようです。たとえば、米国は、2001年に中国がWTOに加盟したことで、中国の経済が成長し、国民の生活水準が向上すると考えていました。そして、中国が豊かになれば、民主主義や人権などの価値観を共有する国に変わると信じていました。

しかし、中国はWTOに加盟して以降、経済成長を遂げましたが、政治体制や社会制度は大きく変わることはありませんでした。中国共産党は、依然として一党独裁体制を維持し、市場も開放しておらず、人権侵害や労働者の権利侵害などの問題が続いています。

そうして、習近平はこのような傾向をさらに助長し、以下のような失敗しています。

・経済政策の失敗

習近平は、中国の経済成長を加速させるために、一帯一路構想やAIなどの新興技術への投資を積極的に進めてきました。しかし、これらの政策は、多くの場合、効果が上がらず、むしろ経済的な混乱や社会問題を引き起こす結果となっています。

例えば、一帯一路構想は、中国の企業が海外のインフラ整備事業に参入することによって、中国の経済的影響力を拡大することを目的とした政策です。しかし、実際には、多くのプロジェクトが赤字に陥り、中国の経済を圧迫する結果となっています。

また、AIなどの新興技術への投資も、中国の経済成長に貢献するどころか、むしろ新たな格差や失業問題を引き起こす結果となっています。
中国のAI  AI生成画像
・外交政策の失敗
習近平は、中国の国際的地位を向上させるために、積極的な外交政策を展開してきました。しかし、これらの政策は、多くの場合、中国の孤立を招く結果となっています。

例えば、習近平は、香港や新疆ウイグル自治区などの人権問題に対する国際的な批判を無視し、強硬な姿勢を貫いています。また、台湾海峡問題や南シナ海問題などの領土問題をめぐって、周辺諸国と対立を深めています。
・内政政策の失敗
習近平は、中国の政治的安定を維持するために、強権的な政治体制を強化してきました。しかし、これらの政策は、中国の民主化の遅れや、人権の抑圧を招く結果となっています。

例えば、習近平は、共産党の権威を強化するために、政治的な反対派を弾圧しています。また、言論や表現の自由を制限し、国民の監視を強化しています。
これらの事柄を踏まえると、習近平が必ずしも優れた政治家ではない可能性は十分に考えられます。したがって先進国にみられる普通の政治家なら、絶対しないようなことを習近平ならするということは十分に考えられれます。

経済的にかなり苦しくなれば、先進国に見られる普通の政治家なら、南太平洋の島嶼国に対する関与をやめるか、低減するかして、経済を立て直し、その後にまた南太平洋への強化を開始するというように、その時々で優先順位をつけて行動すると思います。

しかし、中国の指導者、その中でも特に習近平は、そうは考えないかもしれません。経済的に苦しくなっても、南太平洋への関与は継続したい、しかし経済力をフルには使えない、であれば、軍事力を使えば良いと単純に考えるかもしれません。

もちろん軍事力といっても、最初から軍事力を行使するという意味ではありません。あくまで段階があります。すぐに、軍事力を行使ということはないでしょう。最初は、艦艇等を派遣したり、近辺で軍事演習をしたり、島嶼国に軍事基地を設置するなどのことから始めるでしょう。

普通のまともな政治家なら軍事力を使うことは、富をすぐに生み出す事はありえず、経済をさらに苦しくするだけであることを認識し、やはり国内経済の立て直しを優先するでしょう。

しかし、そもそも習近平はこのような範疇に収まるような人物ではありません。

習近平

習近平は、権力を握ってから11年間で、政治局員6人、中央委員会委員35人、将軍60人、試算によれば党員約350万人を追放しました。この反腐敗キャンペーンは、習近平の権力基盤を強化し、中国共産党の統制を強める目的で行われてきました。

元米国国家安全保障副顧問で、中国の専門家であり、対中国強硬政策の主要提唱者として知られている、ポッティンジャー氏は、この反腐敗キャンペーンについて、「激動は習近平施政の特徴で不具合ではない」と述べています。これは、習近平は、権力を維持するためには、不安定な状況を恐れないということを示しています。

また、ポッティンジャー氏は、最新の国防部長や外交部長、ロケット軍司令官などの異動について、「党を不安定な状況に置き、自分の優越性を高めようとする積極的仕掛けの一環ではないか」と主張しています。この異動は、習近平が権力基盤をさらに強化するために、軍や外交などの重要なポストを自分の側近で固めようとしていることを示しています。

さらに、ボッティンジャー氏は、「中国経済が減速していることで、習近平は、逆にリスクを冒しても、中国の国際的な地位を高めようとするかもしれない。中国は、現在米国を弱いと見ており、台湾に軍事的圧力を強めることで、米国を牽制しようとしている」との主旨のことを述べています。

そうして、このことは台湾だけではなく、南太平洋のような世界中の軍事・政治的に重要な拠点で起こりえる可能性があります。

南太平洋に進出した中国 AI生成画像

習近平はかつてないほど権力を強化し、目標達成のためには武力行使も辞さない可能性もあります。中国経済は減速しており、習近平は国民の目をそらし、権力の掌握を維持するためにリスクを冒す可能性が高まっています。

中国の外交政策はますます自己主張を強めており、南太平洋をはじめとする軍事的・政治的に重要な地域で目標を達成するために軍事力を行使する可能性もあります。 習近平と中国の行動を注意深く監視することが重要です。もし中国が攻撃的な行動に出た場合、国際社会は対応する準備を整えておかなければならないです。

習近平は期せずして、自らの権力基盤をさらに強化するためだけに「最後の一撃」を企図するかもしれません。しかし、それが実行されてしまえば、現中国の体制は崩れるかもしれませんが、最後の一撃を食らった地域は、とんでもないことになるわけで、ウクライナ、ガザだけでも昏迷を極めているのに、さらに世界は新たな懸念を抱えてしまうことになります。

米議会下院で中国特別委員会委員長のギャラガー氏は、米中の戦略的競争において長期的には米国が有利だが、10年の短期では危険な状態にあると述べています。今後10年後からは、米国が圧倒的に有利なるのは目に見えていますが、ここ10年以内は非常に危険だというのです。

この危機を回避するため日米と同盟国は、さらに結束を深め、外交・軍事的な努力を継続し、発展させるべきです。

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