2024年12月4日水曜日

中国が南シナ海スカボロー礁とその周辺を「領土領海」と主張する声明と海図を国連に提出 フィリピンへの牽制か―【私の論評】中国の明確な国際法違反と地域緊張の高まり

 中国が南シナ海スカボロー礁とその周辺を「領土領海」と主張する声明と海図を国連に提出 フィリピンへの牽制か


中国政府はフィリピンと領有権を争う南シナ海のスカボロー礁とその周辺が「領土領海」と主張する声明と海図を国連に提出したと発表しました。

中国の国連代表部は2日、スカボロー礁と周辺海域が「領土領海」と主張する声明と関連する海図を国連に提出したとWEBサイトで発表しました。

声明と海図は国連のWEBサイトで公開されるとしています。

中国の海警局は先月30日スカボロー礁周辺に巡視船を派遣するなど領有権を争うフィリピンへの牽制を強めています。

中国政府は「領土領海」を主張する声明と関連の海図を国連に提出することでスカボロー礁の領有権を国際社会にアピールする狙いです。

【私の論評】中国の明確な国際法違反と地域緊張の高まり

まとめ
  • 中国政府は南シナ海のスカボロー礁に関して、独自に「領海基線」を定めて一方的に公表したが、この行動は国際海洋法条約(UNCLOS)に明確に違反している。
  • スカボロー礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置し、中国は2012年以降、実効支配を続けているが、2016年のハーグ仲裁裁判所は中国の主張を国際法上の根拠がないと認定した。
  • 中国が定めた「領海基線」は、スカボロー礁から12海里(約22.224キロメートル)の範囲を領土領海として主張しているが、これはUNCLOSの規定に違反している。
  • フィリピン政府は、中国の「領海基線」に対抗する法律を制定し、中国外務省はこれに強く反発したが、フィリピンは中国の主張を「法的根拠も効力もない」と非難している。
  • 中国の行動は国際法上の正当性を欠いており、国際社会はこのような不当な行為に断固として反対し、中国による南シナ海での横暴な振る舞いを徹底的に批判する必要がある。
中国政府は、南シナ海のスカボロー礁(中国名:黄岩島)について、領海を示す根拠となる「領海基線」を独自に定めて一方的に公表した。この基線は、中国が主張する領海の範囲を示すものである。しかし、この行動は国際海洋法条約(UNCLOS)の手続きに従っているようにみせながらも、明確に違反するものであり、国際社会からの強い批判を招いている。


スカボロー礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置しているが、中国は2012年以降、実効支配を続けてきた。中国のこの主張は、フィリピンと領有権を巡って争う動きの一部であり、中国の実効支配を正当化しようとする狙いがある。2016年のオランダ・ハーグの仲裁裁判所では、中国が主張する九段線に基づく主権や管轄権、歴史的権利は国際法上の根拠がないと認定されている。

九段線(九断線)は、南シナ海における広範な海洋権益を主張するための歴史的な線引きであるが、国際法的には認められていない。対して、領海基線は具体的に領海の範囲を定めるための地理座標を示すものであり、中国の場合にはUNCLOSの規定に違反するものである。

中国が定めた「領海基線」に基づいて、スカボロー礁から12海里の範囲を領土領海として主張している。12海里はキロメートルに換算すると約22.224キロメートルに相当し、スカボロー礁を中心とする半径約22.224キロメートルの円形の海域が、中国の主張する領土領海の範囲となる。しかし、この主張はUNCLOSの規定に違反しており、スカボロー礁はEEZまたは大陸棚に関する権原を生じない地形であると裁定されている。


中国のこの行動は、フィリピン政府が領海などの範囲を改めて明確に規定する法律を制定したことへの対抗措置とみられる。フィリピン政府は最近、領海などの範囲を改めて明確に規定する法律を制定し、中国外務省はこれに強く反発し、対抗措置をとる可能性を示唆していた。フィリピン政府は、中国が発表した「領海基線」は「法的根拠も効力もない」と非難しており、国連への抗議も行っている。

しかし、中国の行動はUNCLOSの規定に違反しており、その国際法上の正当性を欠いている。九段線を含む中国の主張は、UNCLOSを超えて主権や管轄権を主張するものであり、国際法違反と認定されている。スカボロー礁周辺では、中国海警局が船を相次いで派遣し、国連への海図寄託と合わせて実効支配を既成事実化しようとしている。中国側は「領海基線」の発表によって今後、スカボロー礁周辺で司法権を行使した動きに出る可能性もあり、フィリピンとの対立がさらに激しくなる恐れもある。


このように、中国が主張する領土領海の範囲はは明確なUNCLOS違反であり、その国際法上の正当性を欠いたものである。中国政府は、この行動を国連海洋法条約の締約国として履行義務の実践と位置づけるが、それは単なる自己正当化に過ぎない。

このような不当な行為には断固として反対すべきである。国際社会は、中国による南シナ海での横暴な振る舞いを徹底的に批判し、その無法な行動には厳しい制裁措置を講じる必要がある。国際法と海洋の秩序は守られなければならず、中国による南シナ海での横暴な振る舞いには断固として反対し、その無法な行動には厳しい制裁措置を講じる必要がある。国際社会は、この問題に対して一丸となって対応し、中国による不当な領有権主張を許さない姿勢を示すべきである。

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2024年12月3日火曜日

シリア・アサド政権は崩壊間近…ウクライナの泥沼にハマったプーチンが迫られる究極の選択」と、その後に襲う「深刻な打撃」―【私の論評】アサド政権崩壊がもたらす中東のエネルギー地政学の変化とトルコの役割

シリア・アサド政権は崩壊間近…ウクライナの泥沼にハマったプーチンが迫られる究極の選択」と、その後に襲う「深刻な打撃」

まとめ

  • シリア内戦が新たな局面を迎え、反政府勢力が重要都市アレッポを迅速に制圧し、アサド政権がほとんど抵抗せずに撤退した。
  • アサド大統領がモスクワに逃亡したとの情報があり、これは政権崩壊の兆しと見られている。
  • ロシアはシリアを戦略的に重要視しており、アサド政権を守ることが国益に直結しているが、ウクライナ戦争によりシリアへの支援が限られている。
  • アメリカとトルコは反アサド勢力を支援しており、アサド政権が崩壊すれば中東のパワーバランスが大きく変わる可能性がある。
  • ロシアはウクライナとシリアの両方を維持する難しい選択を迫られており、アサド政権の存続がロシアにとって大きな課題となっている。

 シリア内戦が新たな局面を迎え、反政府勢力がここ数年で最大の攻撃を開始した。主要都市アレッポが迅速に陥落し、シリアの状況は急変している。アレッポは首都ダマスカスに次ぐ重要な都市であり、その制圧は政権にとって大きな打撃である。政府軍はほとんど抵抗せずに撤退し、アサド大統領の逃亡が疑われている。

 日本のメディアでは、反政府勢力の攻勢が北部だけでなく中部にも広がっていると報じられているが、実際にはその進展はさらに深刻である。特にダマスカスでは激しい銃撃戦が続いており、アサド政権の支配が揺らいでいる。最近の報道によると、アサド大統領がモスクワに脱出したとの情報があり、これは公式には認められていないものの、ロシアのペスコフ報道官がコメントを拒否したことからも真実味が増している。

 アサド大統領のモスクワ訪問は、シリアの復興投資に関する話し合いだとする支持派の情報もあるが、それも疑わしいとされている。アサド一族が一緒にモスクワに向かったことは、政権崩壊の兆しを察知しての行動と見られている。反政府勢力が攻勢をかけた背景には、プーチン大統領のカザフスタン訪問や国防大臣の北朝鮮訪問があり、ロシア政府の動きが鈍いことを反政府勢力が見越して行動した可能性がある。

 シリアはロシアにとって戦略的に重要な地域であり、周辺には石油・天然ガスの重要な産出国が存在する。もしシリアが親欧米政権に転換すれば、中東のエネルギー供給がロシアにとって脅威となり得る。このため、アサド政権を守ることはロシアの国益に直結している。

 一方、ロシアはウクライナ戦争に注力しており、シリアへの兵力を十分に割くことができなくなっている。ロシア軍の支援が限られているため、アレッポの陥落はその象徴である。アサド政権の基盤は、ロシアやイラン、ヒズボラなどの支援に依存しているが、ヒズボラはイスラエルとの戦闘で弱体化しており、イランも直接的な支援が難しい状況である。これにより、アサド政権の支持基盤が大幅に弱体化している。

 また、アメリカは反アサド勢力を支援し、トルコは反政府勢力を強力に後押ししている。今後、アサド政権が崩壊すれば、ロシアやイランを除いた中東の多くの国々が利益を得ることが予想される。トルコが新たなパイプラインの重要な拠点となる可能性もあり、これがトルコのEU加盟の道を開くかもしれない。

 ロシアはシリアとウクライナの両方を維持しなければならない厳しい選択を迫られている。アサド政権を守るために兵力をシリアに動かすことは、ウクライナ戦争に悪影響を及ぼすリスクを伴う。今後のロシアの対応次第では、アサド政権が意外にも早く崩壊する可能性があり、その場合、プーチン政権への打撃は計り知れないものである。シリアの情勢は、ロシアの国際的な影響力や中東のパワーバランスに大きな影響を与えることが予想される。 

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】アサド政権崩壊がもたらす中東のエネルギー地政学の変化とトルコの役割

まとめ
  • アサド政権が崩壊すると、新たな親欧米政権が成立し中東のパワーバランスが変わり、エネルギー供給ルートが再編成されることでロシアに経済的打撃を与える可能性がある。
  • トルコは地政学的に重要な位置にあり、ロシアやカスピ海諸国、中東からのエネルギーをヨーロッパに輸送する際の要所となっている。
  • 欧州諸国はエネルギー供給の多角化を進め、トルコはその中核的な役割を担い、ロシアとの関係を維持しつつ独自の外交方針を展開している。
  • シリアの新政権がエネルギーインフラの再建を進めることで、トルコとシリアを結ぶ新たなエネルギー輸送ルートが構築され、トルコの地位がさらに強化される可能性がある。
  • トルコは米国との協調を重視し、ウクライナ戦争における停戦交渉に仲介役として関与することで、ロシアへの圧力を強める役割を果たすことが期待される。 


アサド政権が崩壊し、新たな親欧米政権が成立すれば、中東のパワーバランスが変化する。これにより、エネルギー供給ルートが再編成され、ロシアにとって経済的な打撃となる可能性がある。ウクライナ戦争におけるロシアの戦略にも影響を及ぼし、エネルギー市場での競争が激化することが予想される。

ロシアのウクライナ侵攻以降、国際政治・経済の舞台におけるトルコの発言力が顕著に高まっている。その背景には、トルコの地政学的優位性と、欧州諸国がロシアへのエネルギー依存を減らすための動きが密接に関係している。

トルコはユーラシア大陸でヨーロッパとアジアを結ぶ要衝に位置している。この地理的特性により、ロシアやカスピ海諸国、中東からの天然ガスや原油がトルコを経由してヨーロッパへ輸送されている。また、地中海に面していることから、中東や北アフリカからのエネルギー輸送にも重要な役割を果たしている。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、欧州諸国はエネルギー供給の多角化を加速させており、トルコはその中核的な役割を担い始めている。さらに、トルコはロシアと友好的な関係を維持しながらも、欧州諸国や中東諸国とも独自の外交方針を展開しており、制裁回避国としての特異な地位を確立している。

このような状況下で、もしシリアのアサド政権が崩壊し、新たな親米政権が誕生すれば、トルコの地位はさらに注目を集めることになるだろう。新政権がシリア国内のエネルギーインフラの再建を進める中で、シリアを経由した新たなエネルギー輸送ルートが構築される可能性が出てくる。トルコはこれを活用してエネルギー地政学の最重要国として台頭することが予想される。

現状ではトルコにはシリアを経由するパイプラインは存在しないが・・・・

たとえば、トルコとシリアを結ぶパイプラインや輸送網の建設が進めば、中東のエネルギー資源がより効率的に欧州へ供給される道が開かれる。これにより、トルコはエネルギー輸送のハブとしての地位をさらに強化し、欧州諸国からの信頼と依存を一層高めることができる。一方で、ロシアの影響力は削がれる可能性が高まり、これはトルコが西側諸国にとって戦略的に不可欠な存在となることを意味する。

トルコ政府は、この新たな機会を最大限に活用するため、国内のインフラ投資を拡大し、エネルギー分野での国際協力を強化するだろう。同時に、ロシアやイランなどの競争相手とのバランスを取りながら、地域の安定を図るための外交努力を続ける必要がある。結果として、トルコは中東から欧州へのエネルギー供給網の中核を担うことで、国際政治・経済の舞台でその存在感を一層高めることになると考えられる。

ここで仮に、シリアのアサド政権が崩壊し、新米政権が誕生すればどうなるか。新政権はシリア国内のエネルギーインフラを再建し、新たな供給ルートを模索するだろう。その結果、シリアを経由したエネルギー輸送網がトルコと結びつき、中東から欧州へのエネルギー供給がさらに効率化される可能性が高い。トルコはこれを活用し、「エネルギー地政学」の最重要国として脚光を浴びることになる。

具体的には、トルコとシリアを結ぶ新たなパイプライン建設や輸送網の整備が進めば、中東のエネルギー資源が欧州に向かうルートはさらに多様化する。これにより、トルコのエネルギー輸送ハブとしての地位は揺るぎないものとなり、欧州諸国との結びつきは一層深まるだろう。同時に、ロシアのエネルギー市場での影響力は大きく低下する可能性がある。

エルドアン・トルコ大統領(左)とトランプ米大統領

さらに、米国との協調もトルコの戦略にとって重要な意味を持つ。トランプ前大統領が提案するであろう、ウクライナのNATO加盟を巡る一時的な妥協案や停戦交渉を進める中で、トルコが仲介役として重要な役割を果たす可能性がある。トルコはロシアと直接対話できる立場にあり、その地政学的な要所としての価値は、米国にとっても見逃せない。

過去の事例を見ても、トルコはシリア内戦における反政府勢力支援を通じて米国と連携しつつ、自国の国益を守るための巧妙なバランスを保ってきた。現在のウクライナ戦争においても、トルコは同様のアプローチを取るだろう。特に、シリアでの新たなエネルギー回廊の整備の目処がつけば、トルコはその地理的優位性を活かし、米国と協力してロシアへの圧力を強める可能性が高い。その結果、ウクライナ戦争の停戦・休戦が実現する可能性が高まることになるだろう。

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2024年12月2日月曜日

<社説>ワシントン駐在問題 県民へ説明責任を果たせ―【私の論評】琉球新報ですら批判するワシントン駐在問題が日本の安保・外交に与える悪影響

 <社説>ワシントン駐在問題 県民へ説明責任を果たせ

まとめ

  • 「オキナワ・プリフェクチャー・DCオフィス」(DC社)の設立・運営に関して、県議会への報告が怠られ、株式会社設立の決定文書が残されていないことが問題視されている。
  • 県議会はワシントン駐在費用を含む2023年度一般会計決算案に反対し、不認定となった。野党はこれまでの疑問を持ち続け、執行部を追及してきた。
  • 玉城知事は、基地問題解決のためにワシントン駐在の重要性を認識し、透明性を持った運営と再発防止策の実施が求められている。

玉城デニー沖縄県知事

 県庁内での不適切な運営が指摘されている「オキナワ・プリフェクチャー・DCオフィス」(DC社)について、玉城デニー知事は県民や県議会に対し、再発防止策を含めた丁寧な説明が求められている。県は2015年に米国における基地問題の発信拠点を設立し、米議員との面会や知事の訪米時の調整などの業務を担ってきたが、設立や運営に関する議会への報告が怠られていた。また、設立に伴い取得した株式が公有財産として適切に管理されていなかったことも明らかになった。

 特に問題なのは、株式会社の形態で法人を設立する決定に関する文書が残されていないことで、これにより政策決定過程が不明となり、県民に対する説明責任が果たせない状況となっている。県議会では、野党の沖縄自民・無所属の会や中立会派の公明、維新の3会派が、ワシントン駐在費用を含む2023年度の一般会計決算案に反対し、不認定とする事態に至った。これに対し、野党はこれまでの疑問を持ち続け、執行部を追及してきた。

 玉城知事は、政治的対立がある中でも、ワシントン駐在が基地問題解決に不可欠であるなら、追及に正面から向き合う必要がある。透明性を持った運営を確立するためには、政策決定過程の文書管理を強化し、再発防止策を講じることが急務であるとされている。

 この記事は、琉球新報による元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】琉球新報ですら批判するワシントン駐在問題が日本の安保・外交に与える悪影響

まとめ
  • 琉球新報は沖縄の米軍基地問題に関する報道が一方的であり、特に基地反対運動に偏った内容が批判されている。
  • 玉城デニー知事に関する報道は、知事の立場を支持する一方で、対立候補や批判的意見を軽視している。
  • ワシントン駐在問題に関して、琉球新報は知事を批判し、透明性や説明責任の欠如を指摘している。
  • 沖縄が独自に外交を行うことで、日本の安全保障政策に悪影響が及ぶ可能性がある。
  • ワシントン駐在問題は沖縄だけでなく、日本全体の問題として真剣に捉えるべきであり、知事はその責任を果たすべきである。
琉球新報社 本社ビル

上の記事の元記事は、琉球新報のものである。この新聞は沖縄の米軍基地問題に関する報道が一方的であると批判されている。特に基地反対運動に偏った報道が目立ち、沖縄の地方政治や選挙に関する報道も特定の政党や候補者に対して偏向しているとの指摘がある。特に左派的な立場が強調されることが多く、誤報が指摘されるケースも見受けられる。このような状況は、琉球新報の報道スタンスや編集方針に対する疑問を引き起こし、読者の信頼性を損なうことになる。

玉城デニー知事に関する琉球新報の報道もまた、特定の政党や候補者に対する偏向が指摘される。知事の選挙時や在任中の報道において、琉球新報は基地問題や県民の権利に対する知事の立場を強調し、支持する姿勢を示している。このような報道は、知事の政策や発言を肯定的に取り上げる一方で、対立候補や批判的な意見についてはあまり扱われない傾向がある。

具体的な例として、玉城知事の訪米や米軍基地問題に関する活動が挙げられる。琉球新報は知事の努力や成果を強調する記事を多く掲載し、反対派の主張が十分に取り上げられないケースが見受けられる。この結果、読者に対して知事に対する支持を促す報道姿勢があると批判されることがある。また、過去の選挙においても、琉球新報は玉城知事の当選を支持する内容の記事を多く掲載し、対立候補に対して相対的に厳しい視点で報じることがあったため、偏向報道との指摘が生じた。このような報道姿勢は、琉球新報の編集方針や地域における政治的立場が影響していると考えられる。

沖縄米軍基地の分布

しかし、琉球新報はワシントン駐在問題に関しては知事を批判している。ワシントン駐在の設立に際し、県議会への報告が不十分であり、特に設立決定に関する文書が存在しないことが問題視されている。琉球新報は、行政の透明性が県民の信頼を得るために重要であると考え、この点で知事を厳しく非難している。

また、基地問題との関連性も無視できない。ワシントン駐在は沖縄の米軍基地問題を訴えるための重要な拠点であり、知事には効果的な発信が求められる。知事が米国において具体的な成果を挙げられない場合、琉球新報はその取り組みを厳しく評価する。

さらに、県議会との政治的対立が影響している。2023年度の一般会計決算案が不認定となった背景には、知事のワシントン駐在に対する議会の不満がある。沖縄県議会は与党と野党に分かれており、与党は主に「沖縄社会大衆党」と「日本共産党」、および知事を支持する無所属議員が含まれる。

一方、野党には「沖縄自民党」や「維新の会」、さらには「無所属の会」があり、知事の政策や運営について厳しい視点を持っている。特に野党からは「資金の流れがおかしい」といった疑問が投げかけられ、知事が議会に対して十分な説明をせず、経営状況の報告も怠ったことが問題視されている。このような議会の反発は、知事の行動を厳しく評価する報道へとつながっている。

さらに、メディアの役割とリベラル・左派の県民の期待も重要な要因である。琉球新報は地域メディアとして、リベラル左派の声を反映したり代表したりする責任があると考えている。知事が基地問題解決に向けた明確なビジョンを示さない場合、批判的な報道を行うことが求められると考えているようだ。これらの要因が相まって、琉球新報はワシントン駐在問題に関して知事を批判する姿勢を取っている。

ワシントン駐在問題は沖縄県内の政治問題であるばかりでなく、日本の外交の問題でもある。外交は国家が主管するべきものであり、沖縄がまるで独立国のように外交を行うことは、国家の一体性や外交政策の一貫性を損なう危険がある。この状況は、沖縄の多くの県民の声が埋もれるだけでなく、日本全体の外交戦略や安全保障にも悪影響を及ぼす。

玉城知事(右)は、河野洋平氏(左)とともに訪中、李強首相と会談=2023年7月、北京の人民大会堂

具体的には、沖縄が独自に外交を行うことで、日本政府の安全保障政策に対する整合性が欠け、地域における戦略的立場が弱体化する恐れがある。特に、沖縄は地政学的に重要な位置にあり、米軍基地が存在することから、日本の防衛において重要な役割を果たしている。

もし沖縄が独自の外交を進めることで日本政府と米国との関係が希薄化すれば、日本全体の安全保障に深刻な影響を及ぼす可能性がある。知事が適切な対応を取らなければ、沖縄の未来が脅かされるのは明白である。これを無視することは、県民の期待を裏切る行為に等しい。ワシントン駐在問題に関しては琉球新報ですら知事を厳しく批判している。この問題は、日本全体の問題として、真剣に捉えなければならない。その意味でも、玉城知事はこれを明らかにすべきである。  【関連記事】

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2024年12月1日日曜日

中国、南鳥島沖で「マンガン団塊」大規模採鉱を計画…商業開発認められればレアメタル独占の可能性―【私の論評】日米とEUの戦略的関与で中国主導の深海資源採掘ルール形成を阻止せよ!

中国、南鳥島沖で「マンガン団塊」大規模採鉱を計画…商業開発認められればレアメタル独占の可能性

まとめ
  • 中国の国有企業が、大規模な試験を計画: 中国は、来年夏以降、小笠原諸島沖を含む太平洋の公海で、最大7500トンのマンガン団塊を採掘する試験を実施予定。
  • 国際ルールの整備と、中国の優位性: 現時点では国際ルールが不十分なため、商業開発は行われていないが、中国が商業開発を推進すれば希少金属の供給網を支配する可能性がある。
  • 日本の対応必要性: 日本は技術開発の遅れを取り戻すため、採鉱から製錬までの商業開発技術を戦略的に向上させる必要がある。


 中国の国有企業が来年夏以降、小笠原諸島・南鳥島沖で最大7500トンのマンガン団塊を採鉱する計画を発表した。これは水深5000メートル以上での商業規模に近い試験であり、世界初とされるものである。商業開発が認められると、希少金属の国際供給網を中国が独占する恐れがあるため、各国の関心が高まっている。

 公海の海底鉱物は国連海洋法条約により人類の共有財産とされ、国際海底機構(ISA)がその管理を行っている。現在、商業開発は規制されているが、特定の国や企業には探査権が与えられている状況である。中国の企業は、南鳥島沖で20日間の試験を行う予定であり、海底のマンガン団塊を集めるとともに、生態系への影響を調査することになっている。

 一方で、日本は南鳥島周辺の資源開発を目指しているものの、技術面では中国や欧米に遅れを取っている。このような状況に対し、東京大学の教授は、中国の試験が成功すれば、日本はさらなる技術の向上を急がなければならないと指摘している。

 国際的には、環境への影響を懸念する声も存在するが、環境に配慮した採鉱技術が実現すれば、商業開発を容認する議論が進む可能性がある。日本は、商業開発に向けて採鉱から製錬までの技術を戦略的に強化し、これ以上の遅れを取らないようにすべきである。 

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】日米とEUの戦略的関与で中国主導の深海資源採掘ルール形成を阻止せよ!

まとめ
  • 中国の主導的役割: 中国は国際海底機関(ISA)で深海資源の採掘ルール作りにおいて主導的な役割を果たしており、特に採掘ライセンスの発行や技術規則の策定に強い影響を及ぼしている。
  • 日本の排他的経済水域(EEZ): 日本は自国のEEZ内にマンガン団塊を持ち、その採掘権利を有するが、これは問題の本質ではなく、ISAのルールづくりを中国が主導していることだ。
  • 国家安全保障と資源不足: 中国は深海底を国家安全保障の観点から「戦略的フロンティア」と位置づけ、資源不足に対処するため深海からの鉱物資源を重視している。
  • 国際法の未整備: 現在、深海採掘に関する国際的なルールは確立されておらず、中国はこの新たな産業のルール形成において優位性を持とうとしている。
  • 米国と国際連携の必要性: 米国はISAに正式加盟しておらず、観察者に留まっているが、UNCLOSの批准や環境基準の適用を通じてルール形成に関与し、他の西側諸国ととも深海資源の中国の一極支配に対抗すべきである。
上の記事では、結局日本の技術水準の話に帰結しており、この問題の本質が語られていない。問題の本質は、ISAのルールづくりが中国主導になっているということである。そこが明確に語られていないので、上の記事を読むと消化不良を起こしたような感じを受けてしまう。

まず、中国の小笠原諸島・南鳥島沖を含む太平洋の公海における採鉱計画は、日本の排他的経済水域(EEZ)内ではなく、公海に位置している。

一方、日本のEEZ内には、自国の資源としてのマンガン団塊が存在し、日本はその採掘権利を有している。したがって、日本は自国のEEZ内での資源開発を進める権利がある一方で、公海における他国の活動については、国際法に基づく監視や規制の枠組みの中での対応が必要となる。

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問題の本質は、小笠原諸島・南鳥島沖がどうのこうのというのではなく、ISAの公海資源の採掘のルールづくりに中国が主導的役割を果たしているということなのだ。

深海底採掘に関する国際的なルールはまだ確立されておらず、この新たな産業はようやく国際海底に広がる膨大な資源の開発を開始した段階にある。中国は、この分野で中心的な役割を果たすべく、国際海底機関(ISA)や国連海洋法条約(UNCLOS)の枠組みを活用しながら積極的に動いている。

中国はUNCLOS締約国として、長年にわたり新たな海洋法の形成に取り組んできた。その中で、中国の指導者たちは深海底が持つ戦略的および経済的価値に注目し、この分野への投資を強化してきた。特に、ISAでは中国の代表団が強い影響力を行使しており、採掘ライセンスの発行や技術規則の策定において重要な役割を果たしている。2023年のISA年次会合では、中国は発展途上国や一部のヨーロッパ諸国からの慎重なライセンス発行を求める声を抑制し、議論を自国の有利な方向へと導くことに成功した。

中国が深海底採掘に積極的に関与する理由は複数ある。その一つは国家安全保障の観点である。深海底は中国の国家安全保障法で「戦略的フロンティア」として位置づけられており、習近平政権の「全面的国家安全保障」のビジョンに基づき、軍事的・経済的利益の観点からも重要視されている。

また、最近は経済が落ち込みかなり緩和されてきたとはいえ、中国経済が抱える資源不足の問題に対応して、深海底から得られる鉱物資源が中国のサプライチェーン強化に寄与すると見込んでいるようだ。さらに、深海探査技術の開発は軍事目的にも応用可能であり、軍事的優位性を高める可能性がある。外交的には、国際海底という法的枠組みが未整備の領域で中国は主導権を握り、独自のルールを構築することで影響力を拡大しようとしている。

一方、米国はISAに正式加盟しておらず、観察者としての立場にとどまっている。この状況に対し、米国が取るべき対応としては、環境保護を前面に押し出して中国を外交的に孤立させることや、中国が「人類の共通資産」とされる国際海底資源を自己利益のために利用しているという矛盾を突くべきである。また、UNCLOSや新しい高海条約の批准を検討することで、国際法における影響力を強化し、ルール形成の場に直接関与することが重要である。トランプ政権は、事の重大性に気づけば、必ずこれに対処するだろう。

総じて、中国は深海底採掘のルール作りにおいて主導的な立場を確立しつつあるが、米国もその動きを抑制するための戦略を模索している。2024年7月に開催された国際海底機構(ISA)の会合では、深海採掘の規制や環境保護に関する議論が紛糾し、多くの加盟国が科学的知識の不足を理由に深海採掘の一時停止を求めたことが、主要な争点となった。また、ISAの運営や透明性に対する批判もあった。

米国は研修プログラムや環境対策に関する議論に貢献したが、採掘の迅速な承認に反対する強い意見に対抗するのは困難だった。その結果、政策形成における影響力は限られたままとなり、ISA内の信頼や運営問題を抱えた状態で主導権を発揮するには至らなかった。

中国が軍事拠点化している南シナ海スプラトリー諸島ティトゥ島。滑走路が見える(2023年)

中国にはすでに海洋における前科がある。中国は、南シナ海における人工島建設の過程で、高度な埋め立て技術を短期間で習得した。しかも、国際司法裁判所が、南シナ海の中国による支配には根拠がないと判決を出したにもかかわらず、我が物顔で、南沙諸島の礁に滑走路や軍事施設を構築し、特に永暑礁やスビ礁では、約3,000メートルの滑走路や複雑な施設を完成させた。

これにより、南シナ海での中国の環境破壊がすすみ、それだけではなく軍事的優位性が強化され、地域の安全保障や航行の自由に深刻な影響を及ぼしている。米国の戦略家、ルトワックは南シナ海の中国軍の基地は「無防備な前哨基地にすぎず、軍事衝突になれば5分で吹き飛ばせる。象徴的価値しかない」と語ったが、米国からみてはそうかもしれないが、周辺諸国にとっては大きな脅威である。これは、明らかに米国の失態であり、このような前哨基地は最初から構築させるべきではなかった。

さらに、これらの技術習得には、他国の技術を剽窃した可能性が指摘されている。特に、ドレッジ(浚渫)技術や埋め立てに使用される特殊装置の設計が急速に進歩した背景には、他国からの技術移転や非正規な手段での技術取得が絡んでいるとの見方もある。ただし、具体的な証拠の明示は限られているが、中国の知的財産侵害や技術移転問題が他の分野で多発していることからも、この可能性は否定できない。トランプ政権は、これを調査すべきであり、西側諸国は、半導体技術と同じく、高度な深海掘削技術の中国への移転も阻止すべきだろう。

現在の深海開発ルールは中国が優位性を持つ構造になっており、それに対抗するために、米国、日本、EUは戦略的な行動を取る必要がある。米国がまず行うべきは、UNCLOS(国連海洋法条約)を批准することである。これにより、国際海底機構(ISA)の意思決定に積極的に関与できるようになり、現在のように議論の場から除外される状況を改善できる。もしその気がないというなら、国連とは別個に西側諸国で別の組織を構築すべきだ。さらに、日本やEUとの連携を深め、環境基準やESG(環境・社会・ガバナンス)に基づいた厳格な規制を推進することで、中国主導のルールが緩和される可能性を低下させる必要がある。

また、米国は深海採掘に代わる技術開発にも注力すべきである。具体的には、日本が取り組んでいるような電子廃棄物からの資源回収を可能とする都市鉱山技術や、再利用可能な資源管理システムの研究に投資を行うべきだ。こうした取り組みによって、深海採掘への依存を低下させつつ、資源供給を安定化できると考えられる。

深海採掘に反対する国々は年々増加し2023年時点では21カ国になっていた

一方で、日米とEUは深海採掘の一時停止(モラトリアム)を支持し、環境保護を目的とする国際的な支持を広げる努力を進めるべきである。これに加えて、鉱物の効率的利用や代替エネルギー技術の研究を推進し、深海採掘の必要性を根本的に減少させる方策も重要である。しかし、当然のことながらISA内での影響力拡大もまた必要であり、特に環境保護基準や透明性の高い報告基準の採択を推進することで、中国の活動に一定の制約を加えるべきである。

これらの取り組みを通じて、中国が深海開発で優位性を確立するのを抑制し、公平な国際ルールを策定すべきである。また、環境保護と資源利用のバランスを取った持続可能な開発の実現も、今後の重要な課題として取り組むべきである。世界は、第二の南シナ海よりもさらにスケールの大きい、深海資源の中国一極支配を生み出すことがないように、結束すべきである。

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