ラベル 習近平 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 習近平 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020年2月17日月曜日

中国企業が従業員を大量解雇!習主席が最も恐れる事態に… 「物不足&ハイパーインフレ」でついに暴動も? 政府措置に人民反発「人命軽視だ!」―【私の論評】中国の高物価と人民解放軍が、習近平を失脚させるかもしれない(゚д゚)!


新型コロナウイルスは中国経済も直撃している

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。中国本土では17日朝時点で、新型肺炎(COVID19)の感染者は7万人以上、死者は計1765人となった。日本国内で確認された感染者も16日夜時点で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の355人を含め、計414人。日本政府は16日、「新型コロナウイルス感染症専門家会議」の初会合を官邸で開いたが、遅すぎではないか。米国やオーストラリアのように、入国拒否の対象地域を「中国全土」に広げるべきとの声も強い。専門家会議は日本の現状を「国内発生の早期」との認識で一致したが、初動対応に失敗した中国の二の舞にしてはならない。中国事情に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏が「中国経済の危機」「習近平政権の危機」に迫る緊急寄稿第4弾-。


 例年より長い春節(旧正月)休暇から明けた中国だが、多くの人民は日常生活に戻るどころか、「封鎖された都市」のなかで、不安と恐怖と怒り、そして悲壮感などを抱えながら過ごしている。

 ロイター通信や、台湾紙・自由時報(2月11日)などによると、北京市市場監督管理局は「先週、北京市内で営業していたレストランは約1万1500軒で、全レストランのわずか13%だった」という。

 都市部で360店舗以上を経営するチェーンレストラン大手「西貝」は、「従業員約2万人の給料の支払いが危うくなった」と報じられ、北京の大手カラオケチェーンの「K歌之王KTV」もすべて閉店したまま、従業員約200人が雇用契約を打ち切られた。

 職業教育チェーン企業の「IT兄弟連」北京校は、学生募集をストップして職員の解雇も決め、エレベーター内の電子広告などを展開する「中国新潮伝媒」は従業員500人の解雇を発表している。

 感染を阻止するため、生産現場で工場労働者が医療現場と同じ防護服を着ている映像も出回っているが、それも含め、企業側の経済的な負担としてのしかかっている。

 一説には、現状で「全国の30%の企業が解雇や縮小を決断した」というが、新型肺炎の発生地である湖北省武漢市のみならず、全国各地の中小企業が、経営危機に直面し、すでに多くの人民が失職や給料の遅配、減給の憂き目に遭っていることが推測される。

 皮肉なのは、武漢市において目下、人手不足で「4時間で4000元(約6万2800円)」などの好条件を提示し、求人に奔走しているのが葬儀場である。ある葬儀場の募集要項には「幽霊を恐れず、大胆で強いこと」と記されていたと拡散された。

 また、12日には台湾などのメディアが、「中国政府が、死体を収める袋を100万個、至急作るよう繊維工場に命じた」といった噂話まで報じた。

 中国の習近平国家主席が最も恐れる事態が「大規模解雇による社会不安の広まり」である。

習近平

 習氏の要請を受けて、中国発展改革委員会は11日の記者会見で、「企業の早期生産再開を促す9つの措置」を発表した。

 そこには、(1)物資輸送の保護に全力を注ぐこと(2)産業チェーンの修復、リアルタイムの監視と分析で人口移動を把握すること(3)換気・消毒、体温の監視など必要な措置で流行の広がりのリスクを効果的に軽減すること(4)科学的かつ医学的な観察による集団隔離-などの措置が掲げられた。

 さらに、12日には、「共同防衛・管理メカニズムに関する記者会見」が開催された。運輸部交通服務事業部長が「高速道路の出入り口、地方の幹線道路、農村道路などの無許可の閉鎖や分離、緊急輸送車両の通行妨害などを厳重に禁じる」と述べ、高速道路のサービスエリア、料金所、省・地方の幹線道路にアウトブレーク(集団発生)予防と管理検疫所、または検査ステーションを設置することも公にした。

 だが、北京政府が打ち出すこれらの措置に、武漢市はじめ地方の役人、経営者や人民が素直に喜ぶかは大いに疑問だ。それどころか、専門家の「感染者数のピークはまだこれから」との予測から、「中国当局は、経済安定のために外国人投資家の撤退を阻止し、経済的利益に重きを置いている」「政権の維持が最優先で人命軽視だ」といった反発につながっているのだ。

 しかも、中国全土では依然、消毒液やマスクなどの物資不足に直面しているが、湖北省の病院は医療廃棄物が山積し続け、武漢市の医療従事者は一説には3分の1が感染し、心身ともに限界に近づいているとされ、「医療現場の崩壊」が危惧されている。

 国内外の専門家はさらに、習政権が恐れる、もう1つの事態を指摘し始めている。「物不足によるハイパーインフレ」である。今後、職も食も得られない人民が、暴動を起こすか、餓死者が大量に出回る可能性は捨てきれない。

 習政権は崖っぷちにある。安倍晋三政権も、東京五輪・パラリンピックを中止にさせないためにも、「国家の緊急事態」として迅速かつ大胆な措置を断行すべきだ。


 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

【私の論評】中国の高物価と人民解放軍が、習近平を失脚させるかもしれない(゚д゚)!

確かに、中国のインフレは深刻です。1月の消費者物価指数(CPI)上昇率は5・4%と8年3カ月ぶりの高水準でした。物流や市場が整っている北京市でさえ、市場によっては白菜は1月の春節前の3倍、大根とキュウリは2倍の値をつけています。


上昇の主因は二つの疫病です。まずアフリカ豚熱(ASF)の流行で豚肉が品薄となり、1月の豚肉価格は前年比2倍以上の水準になりました。CPI上昇率でみても、昨年12月はASFを主因に4・5%まで上がりました。



これに、追い打ちをかけたのが1月下旬以降に急拡大した新型肺炎。国家統計局の董莉娟・高級統計師は10日発表の1月のCPI上昇について「春節と新型肺炎が影響した」と解説しました。

感染拡大で人々が外出を控えようと、物資の買い占めが各地で起きました。各地方政府は感染拡大を防ぐため人の移動を制限。外との人の往来を一切遮断する地区もあり、産地からの出荷を含め物流が滞りました。

春節明けの2月も働き手が郷里から元の職場に戻りきらず、物流網の回復は鈍いです。多くの地方政府が10日には工場の操業を解禁したのですが、人手不足や感染拡大への恐怖から生産再開が遅れています。

マスクなど感染防止に必要な品だけでなく、白菜など生鮮食品も大幅高です。国営新華社通信によると、河南省鄭州市のスーパーは白菜1個を63・9人民元(約1千円)で販売。

上海市のスーパーはレタス価格が8倍。山東省政府は高騰を防ごうと、感染防止グッズや生活必需品を仕入れ値から35%超値上げして売れば処分するとの通知を出しました。

中国情勢では、こうした庶民を苦しめるハイパーインフレと、人民解放軍の動向も見逃せません。

事実上、中国国内は「パンデミック(感染爆発)」状態といえ、最前線に立つ、人民解放軍の医療部隊も疲弊しつつあります。「政権は銃口から生まれる」(毛沢東)という国柄だけに、「死のウイルス」が解放軍内にまで広がれば、初動対応に失敗した習近平政権への怒りが爆発しかねないです。もともと、習政権に不満を抱えていた最精強の「北部戦区」などの動きが注目されています。

「依然として非常に厳しい」「大規模な措置が必要だ」

習国家主席は10日、北京市内の医療施設などを視察し、新型コロナウイルスをめぐる状況について、こう語りました。中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えました。

今回の感染拡大以降、習氏は公の場にほぼ姿を現しておらず、「最高権力者の身に何かが起きているのでは」との憶測も流れました。日本でも、福島原発事故後、一時行方不明となった大物政治家がいましたが、マスクに白衣姿で登場したことで、新型肺炎を心底警戒していることをうかがわせました。

ネット上では、「どうして、(新型ウイルスが発生した湖北省)武漢市に行かない?」といった批判も見られているといいます。

その武漢市では、突貫工事で「火神山医院」と「雷神山医院」が建設され、人民解放軍の医療部隊が運用しています。病床が足りず、体育館などに簡易ベッドを大量に設置して、感染者らを集中収容する方針が出されましたが、これは解放軍の「野戦病院」の手法です。

日本ではあまり知られていませんが、人民解放軍は、先進国などのような、国の軍隊ではなく中国共産党の軍隊(というか私兵)です。。「党が鉄砲を指揮する」というのが、中国のシビリアン・コントロール(文民統制)であり、軍を指揮する「最高実力者」は党中央軍事委員会主席です。

一方で、人民解放軍は歴史的成り立ちから、軍中央の支配が届きにくい半ば独立した軍閥の集まりでもあります。習氏に忠誠を誓う軍閥と、習氏と距離を置く軍閥があります。背景に、利権と政争が複雑に絡みあっています。

習氏は2012年、党総書記と党中央軍事委員会主席に選出された後、「軍の腐敗撲滅」や「統合作戦能力の向上」などを掲げて、軍改革を進めてきました。「7大軍区」から「5大戦区」に再編し、軍人を30万人削減しました。狙いの1つは、軍閥と一体化した反習派の軍区の解体といわれています。



習政権となって、解放軍は弱体化させられ、機能を奪われています。不満がかなり鬱積しているはずです。『隙さえあれば何かやってやろう』というのが軍の特性といえます。習氏が最も恐れるのは、人数が多く、軍事的にも充実している「北部戦区」でしょう。

北部戦区は16年2月、人民解放軍で最精強とされた旧瀋陽軍区と、旧北京軍区の内モンゴル自治区、旧済南軍区の山東省を統合して誕生しました。ロシアと朝鮮半島に接するため、軍事費が優遇され、最新兵器が集積されてきました。

司令部は瀋陽市に置かれています。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権と近く、北朝鮮利権の見返りに、武器やエネルギー、食糧などを極秘支援しているとの見方もあります。反習派の牙城とされています。

北朝鮮は1月下旬、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、中国人観光客の入国を無期限で禁止しました。盟友関係にある北部戦区から連絡でもあったのでしょうか。

新型肺炎の感染拡大で、中国国内では武漢市をはじめ、「70都市以上」「4億人」が封鎖・隔離されているという報道があります。封鎖都市の中には、北部戦区の管轄区域である山東省臨沂市(人口約1140万人)や、黒竜江省ハルビン市(同約960万人)も含まれています。

習政権の初期対応の遅れが、中国全土から世界各国に「死のウイルス」をバラまく結果となっています。軍人にも被害者が続出する出る事態となれば、解放軍、特に北部戦区はどう動くでしょうか。

新型肺炎の感染拡大阻止に解放軍が駆り出されていますが、軍人は集団生活をしているため、集団感染してもおかしくはないです。「人民解放軍内で感染拡大」という事態に陥れば、軍人も自分たちを守るために命令に背いたり、独自の道を進む可能性もあるでしょう。習氏の『個人崇拝』は崩れつつあります。最悪の場合、中国全土で暴動が起き、共産党体制が揺らぎかねないです。

特に、先にあげたハイパーインフレによる国民の鬱積と、人民解放軍の鬱積がたまり、憤怒のマグマが形成された場合、その憤怒のマグマが習近平に向いて大爆発した場合、習近平の失脚等も十分あり得るでしょう。

2020年2月6日木曜日

新型肺炎、ついに中国国内で習近平主席の稚拙な対応への批判高まる…共産党内部や国民から―【私の論評】常軌を逸した習近平の行動は、何を意味するのか?

新型肺炎、ついに中国国内で習近平主席の稚拙な対応への批判高まる…共産党内部や国民から

1月23日、中国共産党の祝賀会に出席する習近平氏

新型肺炎への対応の不備を中国共産党指導部が初めて認めた。共同通信は3日、『習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ』と題する記事を配信。「中国共産党の習近平総書記(国家主席)ら党最高指導部が新型コロナウイルスによる肺炎に関する会議を開き、感染症対応に誤りがあったことを認めた」と伝えた。中国の国家指導部が誤りを認めるのは非常に異例だ。共産党一党支配体制の揺らぎなのか、2日にはYouTube上に感染源となった武漢市に「臨時政府樹立」を訴える動画がアップロードされるなど、中国国内の混乱に拍車がかかっている。

「武漢臨時政府樹立」?

 動画は『緊急直播:武漢臨時政府湖北獨立宣言 605』と題し、2日にアップロードされた。4日正午現在でも視聴可能できた。動画では中国人男性が「武漢でSARSに似たウイルスの情報をネット上に流した医学生8名が警察に逮捕された」などと述べ、新型肺炎に対する中国当局の対応を批判。救援物資の公平な分配、感染予防策の適切な実施など5項目を中央政府に要求した。合わせて、普通選挙の実施、直接選挙による大統領の選出の必要性や、香港、チベットの独立を訴えた。

 この動画が武漢市の市民が作成したのか、語られている内容が事実なのか確認は取れていない。一方で、中国では当局への批判や、共産党の支配体制に対する批判、そして分離主義と呼ばれる「一つの中国」を否定する言論が厳しく統制されてきた。

 そもそも中国政府は「金盾」というインターネット上の検閲システムを使って、中国国内でのYouTubeやグーグルの利用を制限している。ウィーチャットやウェイボーなど中国国内で普及しているSNSではなく、YouTubeという媒体を使って動画が投稿されているため、この動画の信ぴょう性に難はある。一方で政府が動かずに、こうした習近平指導体制を真っ向から批判する動画が2日以上も野放しになっていること自体が異常な感を受ける。

習近平の身に何かが起きている

 中国情勢に詳しい評論家の石平氏は4日、Twitterに以下のように投稿した。

「習近平の身に何か起きているのではないかという観測が出ている。先月28日に彼がWHO事務局長と会談して以来公の場に姿をいっさい現していない。昨日、習が政治局会議を主宰したと報じられるが、テレビ局は会議の映像をいっさい流さないし、今日の人民日報も関連写真を掲載していない。何か変である」

「昨日の中共政治局常務委員会議にかんし、日本の一部報道に『中央指導部誤り認める』が出ている。確かに、会議の公式発表には『疫情対策における欠点と不足』を認めた個所があるが、それが中央政府の問題か地方政府の問題かを明確にせず、中央指導部が自分自身の誤りを認めたことになっていない」

石平氏「習氏の強力な指導者の虚像が崩壊」

 当サイトでは、石平氏に今回の投稿と新型肺炎の対処失敗に伴う習近平指導体制への影響に関して聞いた。

【石平氏の見解】

 今回の新型肺炎拡大の対処失敗で、習近平氏が就任以来7年間、宣伝機関などをフル活用して描いてきた「強力な指導者」の虚像が完全に崩れたと思います。初動対応の遅れや情報の隠蔽などは明らかで、「深刻な状況になってやっと動き出した」というイメージは拭えません。

 1月25日、新型肺炎の対策のための指導小組(対策本部)が立ち上がりました。本来であれば国家主席であり党総書記の習氏がトップになるべきところを、トップに就任したのは李克強首相でした。

 共産党にはさまざまな小組がありますが、習はすべての小組のトップに就任し、権力を集中させてきました。伝統的に本来、首相の李氏が就任するポストの中央財経指導小組ですら、習氏が就任したほどです。

 ところが、国民の生命がかかるまさに国家存亡の事態に際して、その対策の責任者につかないというのは明らかにおかしいです。少なくともこれまで、自然災害や疫病が発生した際、中国共産党のトップは必ず現地に入って最前線で激励してきました。江沢民も胡錦濤もそうでした。ところが、今回はその役目を李氏に押し付け、責任を放棄しました。

 こうした行動に対して、今まで国家主席の任期延長など、習氏の指導に疑問があった共産党幹部や国民の不満が暴発しつつあります。先日、中国中央電視台の生放送で取材を受けた武漢市幹部が党指導部の隠蔽工作を批判しました。また精華大の教授が党の対応を批判する文書を公表するなど、習近平指導部に対する批判の声が高まっています。

 一方で、李氏の評判は高まるばかりです。習氏は7年間、李氏の台頭を押さえつけていましたが、これでそれも終わりです。李氏の仕事ぶりは毎日、報道で伝えられています。

 この状況が続けば、習氏の権威体制に変化が生じてくるでしょう。新型肺炎が小康状態になるまで、共産党内には今回の失態に関して責任を追及する余裕はないでしょうが、ある程度、収まった時期に責任を問う声は上がると思います。少なくとも、習氏の個人独裁体制が崩れる可能性はあると思います。

(文=編集部)

【私の論評】常軌を逸した習近平の行動は、何を意味するのか?

冒頭の記事では、習近平の無責任体制を批判していますが、一方日本では、習近平が2月3日の会議で「初動対応の遅れを認めた。反省を表明するのは異例」という報道がなされて、いますが、これは日本の報道機関による、歪曲報道のようです。

それについては、遠藤誉さんのニューズウィーク日本版の記事で完璧に否定さています。その記事のリンクを以下に掲載します。
習近平は「初動対応の反省をして」いないし「異例」でもない

この記事より、以下に一部を引用します。

"
2月3日に習近平総書記が中共中央政治局常務委員会委員を招集し会議を開催した。筆者は「中共中央政治局常務委員会委員7人」に対して「チャイナ・セブン」という名前を付けたので、この後は便宜のため「チャイナ・セブン会議」と略称することにする。

2月3日のチャイナ・セブン会議で討議された内容は2月4日のコラム<習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」>でも述べたが、日本のメディアは異口同音に北京共同の報道<習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ>の線でしか報道していないので、それが如何に間違っているかを、単独に取り上げて考察したい。

以下に示すのは、共同通信の報道をはじめとして日本のメディアが一斉に報道しているチャイナ・セブン会議の内容の中の、根拠としている部分の文章である。

これをご覧いただければわかるように、会議では赤線で囲んだ一文は、その後に書いてある「5つの要」を指している。 

まず、赤線囲みの中を丁寧に翻訳すると「このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。われわれは必ず経験を総括し、そこから教訓を学ばなければならない」となる。

そのためには、何をしなければならないかということが、この赤線囲みの下に列挙された5つの「要」である。この「要」とは「~しなければならない」という意味で、政府文書でそのように書けば、「~せよ!」ということに相当する。

要1:今回の疫病伝染対応で露わになった短所や不足に対して、国家応急管理システムを強化し、危機処理能力(緊急・困難・危険という重要任務に対処する能力)を高めよ!

要2:公共衛生環境に対して徹底的にローラー作戦を実施し(しらみつぶしに不衛生な部分を捜査せよ)、公共衛生の短所を補え!

要3:市場監督を強化せよ!どのようなことがあっても、違法な野生動物市場と貿易を徹底的に打撃して取締り、源から重大な公共衛生のリスクを制御せよ!

要4:法治建設を強化し、公共衛生の法治を保障せよ!

要5:システマティックに(系統的に)国家の備蓄物システムの欠点を整理し、備蓄物の効能を高め、肝心な物資生産能力と布陣を向上させよ!

以上である。

この指示のどこに、「初動対応の遅れを反省する」などという言葉があり、またまるで習近平が「謝罪の意思を表明した」ような要素があろうか。
"
これを見る限り、習近平は初動対応の遅れを認めてもおらず、反省も表明していません。「初動対応の遅れを認めた。反省を表明するのは異例」という日本の報道機関の報道は、忖度以外の何ものでもないようです。それも、悪しき忖度です。

私自身は、この期に及んでも、日本への国賓待遇での訪問に固執する習近平が、「初動対応の遅れを反省したり、異例の反省を表明することなどあり得ないと思っていましたが、まさにその通りです。

日本では、ガールズグループ「TWICE」が31日、公式サイトを更新。2月1、2日に東京ドームシティ内で開催を予定していたCDお渡し会を、新型コロナウイルスによる肺炎患者拡大の問題を受けて中止すると発表しました。

ちなみに、「TWICE」は、2015年に韓国で結成された韓国人5人、日本人3人、台湾人1人の9人で構成された多国籍のアイドルグループです。

サイトで「新型コロナウィルスについて、WHO=世界保健機関による『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』宣言および日本政府が当該感染症を『指定感染症』とする政令について施行日を2月1日に前倒しする方針を示しましたことを受けまして、再度協議をいたしました結果、お客様およびメンバーならびにスタッフの健康および安全を最優先に考慮し、本イベントの開催を両日とも中止させていただくこととなりました」と説明しました。

新型肺炎の影響を鑑み、週末に開催予定の芸能イベントは続々と中止、延期を発表しています。

この日、アイドルグループ「日向坂46」は2月1日開催予定のイベントと、2日に東京ビッグサイトで予定していた握手会の延期を発表。「SKE48」「NMB48」もこの日、2月2日に大阪で予定していた握手会を延期しました。

日向坂46

ハロー!プロジェクト所属の「こぶしファクトリー」も同日、2月1日に予定していたミニライブと握手会の中止を発表しました。

このように、様々なイベントが日本国内でも中止されています。習近平の国賓待遇での来日を実行すれば、天皇皇后両陛下は無論のこと、安倍総理等を含めた日本の政府要人等が、習近平ならびにその随行員などをもてなすことになります。それをもてなすために、それ相当の人数の人々が接遇にあたるわけです。

習近平に天皇皇后両陛下、政府要人、ならびに接遇スタッフの健康および安全を最優先するという配慮ができるなら、今回の訪問は中止するか、延期するのが当たり前だと思います。習近平としては、天皇陛下にも謁見して、日本を味方につけ、何とか苦境を打開したいと目論んでいるのでしょう。

過去においても、現上皇陛下が天皇陛下であった時に、中国を訪問して、当時天安門事件で世界中からそっぽを向かれて孤立していた中国が、日本の天皇を迎えたということで、また世界に受け入れられたということがありました。これは、まさに中国共産党による天皇陛下の政治利用でした。

今回の、習近平の国賓待遇での日本訪問も、まさにこのような政治利用であり、日本ではほとんど報道されていないのですが、このブログで解説したように米中貿易交渉の完全敗北等の失地回復のための方策の一つなのでしょうが、それにしても時期が悪すぎます。

このような危機的な状況の時に一国のリーダーが母国を離れ、他国に国賓待遇で招かれるなどのことがあれば、いずれの国でも、そのリーダーへの信頼は著しく失墜するでしょう。

習近平は、昨年(2019年)9月3日、青年幹部らに重要講話を行っています。その際、習主席は55回以上も「闘争」と言う言葉を使用しています。目下、習主席は、共産党で党内闘争を行っていると見られています。

その原因は(1)一向に改善されない中国経済(2)いつまでも続く「米中貿易戦争」(3)収束しない香港デモ(4)5Gを巡る覇権争いで、ファーウェイ(華為技術)が限界(5)アジアに蔓延する「アフリカ豚コレラ」等が、当時から習近平政権の足を引っ張っていました。それに今年は、新型コロナウィルスの問題が加わったわけです。まさに、習近平政権の危急存亡の時と言っても過言ではありません。

ましてや、中国では、反習近平派が、習近平が来日すれば、その隙きを狙って何をするかもわかりません。クーデターが起きても不思議ではありません。そのような時期に訪日する習近平にはとても常人の常識があるとは思えません。

習近平が、このように社会常識が欠如しているのは、中国共産党という異常な組織に安住して埋没しているからでしょう。中国の歴代の主席の中でも、鄧小平あたりまでは、中国国内の自分たちの常識と、海外の常識は違うということは、認識していたでしょう。しかし、長い間中国の非常識に浸って生きてきた習近平はそうではないようです。

中国共産党は、国内外で非道の限りをつくし、反対するものは、暴力で弾圧し、WTOやWHOなどのような国際組織においても札束にものをいわせ、我が物がを振る舞い、他国の領土(チベット、ウイグル等)にも平気で侵略して我が物にし弾圧し、挙げ句の果てに世界唯一の超大国である米国の怒りを買っています。

そのような中国ですが、実は中国のGDPは虚偽であり、実は日本以下どころか、ドイツよりも下であるという識者などもいます。それも、かなり信憑性があります。

それはさておき、日本が、GDPが米国に次いで、二位と公式に言われていた時代でも、多少浮かれていたところはあったかもしれませんが、中国のような酷い振る舞いは、さすがにありませんでした。

やはり、中共は常識外れです。その中でも、習近平は非常識極まりありません。日本の報道機関も、習近平に忖度するというのなら、日本訪問中にクーデターが発生する危険もありえることなど報道すべきです。そのほうが、よほど習近平の身のためです。

いや、日本のメディアはもうそのようなことは十分承知しているのかもしれません。習近平は相当追い詰められていて、その時期ではないとわかっていながら、日本を国賓待遇で訪問して、事態を打開する以外に道はないのかもしれません。

【関連記事】


2020年2月4日火曜日

「新型肺炎」と「鳥インフルエンザ」、どっちが怖い?―【私の論評】この4月に日本を訪問する習近平は、失脚の可能性を自ら高めている(゚д゚)!



中国発の新型肺炎がどんどん広がっている。新型コロナウイルスによるものだといわれている。本書『知っておきたい感染症―― 21世紀型パンデミックに備える』 (ちくま新書)は近年たびたび世界を揺るがしている厄介な感染症について手際よくまとめた解説書だ。未然に防ぐために私たちは何をするべきなのか? 副題にもあるように、今後さらに強力な感染症が出現した場合、膨大な犠牲者が出て全世界が未曽有の大混乱に陥りかねないと警告している。

 著者の岡田晴恵さんは1963年生まれ。専門は、感染免疫学、公衆衛生学。ドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所、国立感染症研究所研究員などを経て、本書刊行時の肩書は白鷗大学教育学部教授。『人類vs感染症』 (岩波ジュニア新書)など感染症関連では多数の著書がある。今回の新型肺炎に関してもメディアにしばしば登場している。
症状が重篤で致死率が高い

 エボラウイルス病、二つのタイプの鳥インフルエンザ、SARS、MERS、...本書は主にこれら新しいタイプの感染症を軸に、デング熱や破傷風・マダニ感染症などについて、それぞれ一章を設けて詳述している。いずれもこの20年ほどの間に世界や日本を震撼させた感染症だ。

 中でも著者が怖さを強調するのは「H5N1型鳥インフルエンザ」だ。これこそが人類史上最悪のパンデミックを引き起こす可能性があるという。

 すでに1997年、香港で発生して18人の感染者のうち6人が死亡した。香港政府は、人への感染源とされた家禽140万羽をわずか3日間で殺処分するなどして、人への感染を絶った。ただし、この火種となったウイルスはその後も中国南部の野鳥などに存在し続け、2003年以降も世界各地の鳥に飛び火して流行が続いているという。15年までに人の感染者844人、死者449人が報告されている。散発的に発生しているので、大きく報じられることは少ないが、鳥から人への感染が続いているということであり、不気味だ。

 このウイルス感染の最大の特徴は、症状が重篤で致死率が高いこと。通常の季節性インフルエンザとは性質が全く異なる。全身の臓器がやられる。もしも感染が拡大すると、各国の社会機能や経済活動が麻痺状態に陥り、地球規模の危機となる。そのため国際機関と各国の農業行政当局は、鳥における流行の制圧と新型インフルエンザの発生を阻止する行動を続けている。日本でもH5N1型鳥インフルエンザが発生するたびに、大量の家禽を処分するなどの緊急対応がとられてきた。つい最近も中国・湖南省の養鶏場で発生、すでに約1万7千羽を殺処分したことが報じられている。

 H5N1型でパンデミックが起きた場合、2億人前後の死者が推定されているという。

遺伝子の突然変異を起こしやすい

 鳥インフルエンザは、もともとは鳥を宿主とするので人には感染しにくい。ところがインフルエンザのウイルスは、遺伝子の突然変異で、その性質を変化させやすい性質を持つ。変異は一定の割合で起きる。鳥の間で感染が拡大すれば、ウイルスが増殖するから変異ウイルスも増える。「人型」のウイルスが出現することがあるのだ。そうなるともはや鳥型のウイルスではなくなり、人に感染する「新型インフルエンザウイルス」になる。人はこのウイルスに対する防御免疫機能を持っていないので、感染すると重症化しやすいというわけだ。

 インフルエンザウイルスには多数の種類がある。たいがいは「弱毒型」。ところが、その中で「H5亜型」「H7亜型」は「強毒型」に変化する可能性がある。したがって「H5亜型」「H7亜型」の鳥インフルエンザが見つかった場合は、その段階では弱毒型でも、強毒型に変化する可能性があるので厳しい措置が取られることになる。

 強毒型に感染した家禽は1日か2日で100%死ぬ。しかし不思議なことに、水禽類(カモ、アヒル、ガン、ハクチョウなど)の多くは感染してもほとんど症状が出ないのだという。その理由はわかっていないそうだ。

 本書では、もう一つのタイプの怖い鳥インフルエンザ「H7N9型」についても一章設けて詳述している。

 ウイルス変異の仕組みはなかなか難しい。本書で詳しく説明されているが、先日、BOOKウォッチで紹介した『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』(ミネルヴァ書房)はカラー図解入りなのでわかりやすい。

「クラミジアによる肺炎」と発表

 新型肺炎との関連では、「SARS」が再び注目されている。ともにコロナウイルスとされ、中国が震源地。SARS は2002年11月から03年6月までに32か国で感染者8098人、死者774人の被害が出た。原因とされるSARSコロナウイルスは21世紀になって最初に流行した新型ウイルスだった。

 発生後、中国当局の対応は鈍かった。03年2月中旬になって、ようやく広東省における「非定型性肺炎」の流行を認め、病原体は「クラミジア」と発表した。

 しかし、香港では早くから「新型インフルエンザ」ではないかと心配の声が出ていた。ベトナムや台湾、シンガポールなど各地で類似の患者が見つかったこともあり、WHOが調査団を中国に派遣、3月中旬に「SARS」(重症急性呼吸器症候群)と命名、4月になって病原体は新たなコロナウイルスだということが特定された。新型インフルエンザではなかった。

 不思議だったのは、中国滞在経験がない人も感染していたことだった。のちにその理由がわかる。感染者の共通項をたぐると、いずれも同時期に香港の同じホテルの9階の部屋に滞在していたのだ。その後の調べで、当時この9階に、中国で問題の肺炎治療にあたっていた広州の医師が宿泊していたことが判明する。激しくせき込み、高熱を出していた。この医師はその後SARSと診断され死亡している。

 中国政府が情報を隠蔽したとか、後手に回ったともいわれるが、「新型」ゆえにWHOをはじめ、各国の専門家らも戸惑ったようだ。

 SARSウイルスは中国南部のコウモリが元々の宿主。それが何かの拍子に中間宿主を経て、人に侵入したとみられている。そして、重症肺炎を引き起こす新興感染症になった。その後の研究では、サル、ネズミ、ネコ、ハクビシンなどはSARSコロナウイルスの感染を受けてもほとんど発病しないことがわかった。さらに中国南部で野生動物を扱う人たちについて調べたところ、約20%がSARSもしくは類似ウイルスの抗体を持っており、彼らも発病しないか、軽傷ですんでいたという。不思議なウイルスだ。

韓国でも被害

 その後に発生した類似の感染症にMERSがある。2012年にサウジアラビアで第一例が見つかり、16年1月までに感染者1626人、死者が少なくとも586人。ウイルスの名称はMERSコロナウイルス。韓国での感染者186人、死者38人が目立った。最初の患者に、サウジアラビア滞在歴があった。

 MERSコロナウイルスは、ヒトコブラクダが人に伝播させたとみられている。ラクダ飼育者は、このウイルスの抗体を持つ率が高く、軽症で推移する場合が多いらしい。かつて中東の人は幼少のころからラクダと共生していたが、都市化が進み、ラクダと接しない人が増えたこととの関連が想定されている。

 動物はそれぞれ特有のコロナウイルスを持つ。人間の場合も、普通の風邪の5%は人のコロナウイルスによるものだという。通常、コロナウイルスは動物の種の壁を越えて感染することはほとんどないが、ウイルスの突然変異によって、種を越えるようになる。今回の新型肺炎の詳細は不明だが、似た経路をたどったのだろうか。

 近年の新種の感染症流行の背景には、交通網の発達や急激な都市化の影響があるとされる。エボラウイルス病はアフリカのごく一部の地域の風土病だったが、僻村と都市との交流が進んだことから疫病が都市部に波及、世界に拡散した。

 かつてインディアンやアイヌが、「文明社会」と接したことで、未知の病気を持ち込まれ苦しんだことはよく知られている。BOOKウォッチで紹介した『鎖塚――自由民権と囚人労働の記録』(岩波現代文庫)によると、明治政府は北海道の開拓で、樺太アイヌ人を動員しようとしたが、コレラや天然痘で大量の病死者が出たことなどから無理と判断、囚人に切り替えたそうだ。

 SARSやMERS、エボラ出血熱はその逆の話のような気もする。これからも「文明社会」が未知のウイルスと遭遇し、混乱に陥る可能性が大いにありそうだ。地震や噴火などの天変地異、核管理、温暖化などと並んで、感染症に対しても備えが必要だと痛感する。すでに医療や畜産関係者の間では周知のことと思われるが、政治家や行政一般、マスコミ関係者も日ごろから知識を深めておくべきだろう。本書はその一助となる良書だ。

【私の論評】この4月に日本を訪問する習近平は、失脚の可能性を自ら高めている(゚д゚)!


中国農業農村部(日本の農林水産省に相当)は2月1日、湖南省邵陽市の養鶏場で、ニワトリがH5N1型の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認されたと発表。この養鶏場には7850羽のニワトリが飼育されていましたが、そのうち4500羽がウイルスに感染して死亡したといいます。同省は「地元当局が感染の確認を受けて、予防的に1万7828羽を殺処分するなど、感染が広がらないよう処理をした」ことを明らかにしました。

冒頭の記事では、「H5N1型鳥インフルエンザ」こそが人類史上最悪のパンデミックを引き起こす可能性があるとしています。「H5N1型鳥インフルエンザ」のほうが、危機なようです。

米国疾病管理予防センターによると、鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染した例は2003年から19年の16年間で、世界中で計861例が報告されています。その原因となっているのは、養鶏場などで働いていて、感染したニワトリと密接に接触したためであることがほとんどです。致死率は50%以上と極めて高く、感染した861人のうち、455人が死亡。中国だけでは過去16年間に53件の鳥インフルエンザ感染が報告されており、31人が亡くなっているといいます。

これに対して、2002年から03年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合、感染による致死率は約10%。武漢が発生源の新型コロナウイルス感染の場合は約2%となっており、これらに比べるとH5N1型の鳥インフルエンザウイルスによる人間への毒性は極めて強力なことがわかります。

同センターは「ヒトからヒトへの感染はほとんど報告されていない」としていますが、中国では一緒に生活していた「きょうだい」や「親子」間での感染が原因で死亡したケースも報告されており、鳥インフルエンザが今回の新型コロナウイルスのようなヒトからヒトへの感染がまったくのゼロとはいえないようです。

新型コロナウイルスの場合も、中国政府は発生当初には「ヒト・ヒト感染はない」と報告していましたが、感染者の死亡例が増えるにつれて、前言を撤回しています。人間の体内に入ったウイルスが突然変異して、ウイルスの感染力が強くなった可能性も考えられます。

鳥インフルエンザ流行の兆しが見えたことで、中国への国際的な警戒感は強まりこそすれ、弱まることはないです。SARSの場合、02年秋に発生が確認され、感染の終結宣言が出されたのは03年7月でした。このため、SARSのコロナウイルスは暑さに弱いとの見方が強いですが、新型コロナウイルスがSARSと同じ性質かどうかは現段階では不明。これから半年間は油断できません。

新たな鳥インフルエンザの流行で、国際社会の対中警戒感は一層強まることは確実なので、習近平国家主席を最高指導者とする中国共産党政権は、その存立をかけて、年初から大きな危機を迎えているのは間違いないです。

現在、中国で新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大しています。中国動物疫病予防管理センターは、今回の鳥インフルエンザの発生は、中国の公衆衛生資源の負担をさらに増大させると指摘しています。

新型コロナウィルスの肺炎拡大は、もうすでに起こってしまったことなので、起こったもに対する対処しかないわけです。これは、中国をはじめ感染者が出た国々で最大限の努力で封じ込めていただき、なるべくはやく終息させていただきたいものです。

そうして、「H5N1型鳥インフルエンザ」に関しては、中国が全力で人への感染を防いでいただきたいものです。新型肺炎に加えて、「H5N1型鳥インフルエンザ」が人に感染して、蔓延してしまえば、中国はとんでもないことになりそうです。

このような時期に習近平氏らが日本を訪問をしているときに、中国内で政変が起こり、習近平氏を失脚させ、新たな政権を樹立ということも十分起こりえます。

楊潔チ氏

中国の外交担当トップである楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)中国共産党政治局員が、今月下旬に来日する方向で日中両政府が調整していることが分かりました。

北村滋国家安全保障局長と会談し、4月上旬に予定する習近平国家主席の国賓来日に向け詰めの調整を行います。ただ、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスに対処するため、習氏が来日を見送る可能性も指摘されています。楊氏の来日は、政府がこだわってきた春の国賓来日の有無を左右する重要なポイントになりそうです。

「影響があるとは聞いていない。予定通り準備を粛々と進めていきたい」

菅義偉官房長官は4日の記者会見で、現時点では新型肺炎の問題が習氏来日に向けた調整に影響を与えていないと強調しました。

ただ、習指導部にとって目下の最重要課題は国内での感染の封じ込めです。習氏は当面対応に追われ、とても外遊に出る余裕はないのではないはずです。中国側はメンツがあるので、今の時点では『訪日計画に影響しない』と言わざるを得ないでしょうが、直前でのキャンセルは十分あり得ると思います。

習氏の来日について、政府関係者は「楊氏が来たときの状況次第だ」と慎重な見方も示しています。本来は習氏の露払い役として来日する楊氏がどう対応するのか注目されるところです。

このような時期に、来日すれば、先にも述べたように、中国の反習近平派は、この機会を逃さず、真っ先に人民開放軍を掌握して、新政府樹立に走るかもしれません。今頃、反習近平派は鵜の目鷹の目(ウノメタカノメ)で、習近平の来日日程等を探って、クーデター計画などを練っているかもしれません。



実際中国には、クーデターの噂もありました。習近平が来日中に、クーデターが起こるか、来日から帰国した途端反逆者として逮捕されることも考えられます。そこまで行かなくても、習近平が帰国してから間もなく、政変が起こるということも十分考えられます。

何しろ、これだけ酷い伝染病の蔓延しているさなかに、苦しんでいる人民を尻目に、日本で国賓待遇を受けるといういうのですから、多くの人民の怒りは頂点に達することでしょう。場合によって、人民の憤怒のマグマが、習近平だけではなく、日本に向かって大爆発する可能性もあります。

ただでさえ、中国ではこのブログで以前掲載したように、毎年暴動が10万件も起こっており、それこそ、中国人民や本来外国であるはずの自治区等の人々の憤怒のマグマがいつ大爆発してもおかしくは無い状況です。それが、今回の新型肺炎騒ぎで、さらに頂点に達しています。反習近平派は、当然このような状況も利用するでしょう。

そのような状況にもかかわらず、習近平が日本を訪問するのは、自ら失脚する確率を高めているようなものです。楊氏訪問で、来日時期を延期するのが正常な判断だと思います。

ただし、中国は、香港や台湾に対してかなり強力な工作を行ったにも関わらず、香港の選挙で負け、その後台湾の選挙でも負け、新型肺炎では、当初の対処方法を間違い、国内で蔓延するだけではなく、海外にも患者を発生させてしまうような不手際を繰り返しています。

これは、当然のことながら、習近平の自身の大きな読み違いという側面もあると思います。そうして、習近平の取り巻きは、独裁政権にありがちな、とにかく現実を見るのではなく、上をみて仕事をして、おべっかばかり使っていて、現実が見えなくなっているかもしれません。であれば、習近平は裸の王様で、やはり予定通り来日して、あつさり失脚という道を自ら選んでしまうのかもしれません。今後の趨勢を見守っていきたいと思います。

【関連記事】

2020年1月27日月曜日

習近平「新型肺炎対策」の責任逃れと権謀術数―【私の論評】SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されて当然(゚д゚)!


中国で新型ウイルス肺炎拡大 各国で警戒

<新型肺炎の被害拡大を防ぐため、共産党政権は対策本部を急きょ設立した。だが、そのメンバー人事は予想外のものだった>

1月25日、中国共産党政治局常務委員会は新型肺炎に関する対策会議を開いた。昨年12月8日に新型肺炎が武漢で発見されて拡散して以来、共産党最高指導部がようやく開いた最初の対策会議なので、その中身が当然注目された。

まず今後の対策について、新華社通信が配信した対策会議の正式発表は冒頭からこう述べる。

「1月25日、中共中央政治局常務委員会は会議を開き、新型肺炎への対策に関する報告を聴取。疫情(疫病情況)の(拡大)防止・コントロール、特に患者の治療についての再研究・再手配・再動員を行なった」

つまり会議は、今後における新型肺炎の拡散防止と治療について、どういう措置をとるのかを研究し、実行のための手配や動員を行なった。ここで注目すべきなのは、「再研究・再手配・再動員」における「再」という言葉の連発である。

その意味するところは、共産党政治局常務委員会が事実上、今までの研究と手配と動員は不十分であることを認めた点にある。今までのやり方は不十分だったからこそ、「再研究・再手配・再動員」が必要となったのであろう。つまり政治局常務委員会は、今までの不手際を間接に認めた上で、対策の見直しや態勢の立て直しを図ろうとしている。

そこで態勢立て直しのためにとった重要な措置の1つが、党中央の「疫情対策指導小組」の設置である。

新型肺炎を防ぐ「指導小組」の疑問点

どういう組織なのかを理解するため、まず「小組」という言葉の意味を簡単に説明しておこう。中国共産党の中央指導部には多くの「小組」が設置されている。日本で言えば「統括本部」あるいは「対策本部」のようなものである。例えば「中央財経指導小組」は党と政府による経済運営・財政運営の統括本部であり、「中央外事工作指導小組」は即ち外交政策とその運営を統括する中国外交の最高司令塔である。

上述の「疫情対策指導小組」は、すなわち党中央新設の「新型肺炎対策本部」であり、党と政府と軍の全力を動員して疫病拡散の阻止や治療を行うという危機対策の司令塔なのである。

今になっての「対策本部」の設置はどう考えても遅すぎた感があるが、設置したこと自体は評価できよう。しかし、発表された「疫情対策指導小組」の中身やその布陣を見ていると、この「指導小組」は果たして、危機対策の司令塔の役割を果たせるのか、かなり疑問だ。

まず一つ不思議なことに、25日に新華社通信に配信された上述の共産党政治局常務委員会の正式発表は、「疫情対策指導小組」の設置を伝えたものの、誰かがこの「小組」の「組長」となっているかに一切言及してない。

何かの対策本部の設置を決めれば、同時にその長となる人事を発表するのは普通だ。事態が緊急である場合はなおさらである。しかし政治局常務委員会はどうやら、「疫情対策指導小組」の設置を決めておきながら、そのトップとなる人選を直ちに決められなかったようである。

「組長人事」はどうして迅速に決められなかったのか。考えられる理由の一つは、習近平国家主席自身を含めて中央指導部の誰もその役割を引き受けたくなかった、ということだ。

本来なら、習自身が「組長」の最適な人選である。国家の一大事への対処に当たって、共産党総書記・国家主席・軍事委員会主席として党国家の最高指導者・軍の最高司令官である彼こそ危機対策の司令塔の司令になるべきであろう。

実際、習は今まで前述の「中央財経指導小組」組長、「中央外事工作指導小組」組長のほかに十数の「組長」を兼任している。組長になることがこれほど好きな彼が今回の「疫情対策指導小組」の組長にならないのは、むしろ異例で筋が通らない。そして最高指導者の彼が進んで組長になろうとすれば、それを止める人も反対する人もいないはずである。しかし最高指導者の習は国家が存亡の危機に直面しているこの肝心な時に、先頭に立つことも全責任を負うことも拒否した模様である。

対策本部トップを引き受けた人物

最高指導者がこの有様では、共産党政権の新型肺炎対策はどこまで機能するか疑問だが、翌日の26日になると、疫情対策指導小組の組長人事がやっと判明した。李克強首相がそれを引き受けたのである。その日、李が組長として「疫情対策指導小組」の第1回目の会議を開いたと伝えられている。

新型肺炎対策本部のトップを押し付けつけられた?李首相(右)と押し付けた?習主席

この人事は普段なら「これでも良い」と思われようが、現在の重大なる緊急事態への対処に当たって決して強力な人事とは言えない。中国の場合、首相とはいっても、党総書記・国家主席・軍事委員会主席という三位一体の最高権力者よりはずっと弱い存在である。ましてや、「習近平一強」「習近平個人独裁」が確立されている現在、李が存在感の薄く権力も小さい、弱い首相であることは周知のとおりである。

この李が組長になっても、危機対策の司令塔としての役割を果たして果たせるかどうかは覚束ない。習ではなく李が組長となった時点で、疫情対策指導小組が強力な指導力を発揮することはもはや期待できなくなった、と言ってもいい。

これだけではない。さらに驚いたのは、李以外の疫情対策指導小組の布陣である。

まず、李の補佐役として指導小組の副組長となっているのは、政治局常務委員の王滬寧である。筆者はこの人事を人民日報で知ったとき、まさに狐に包まれたような異様な感じを受けた。

王は今、党内きっての理論家としてイデオロギーや宣伝を担当している。しかし、学者出身の彼は、地方や中央で政治の実務を担当した経験は一度もない。はっきり言って、理論家の王に今の危機で何らかの問題処理能力を果たすことは全く期待できない。副組長として実務面で李をサポートするはまずあり得ないが、その一方で政治局常務委員として、そして党内のイデオロギーの担当として、李の仕事に余計な口出しをしてくるのは必至だろう。王が副組長となったことで、ただでさえ無力な李はなおさら手足を縛られてしまう。

王を副組長に任命するこの人事を主導したのは当然李ではなく、王に近い習その人であると思われる。つまり習は、李に組長の大役を頼んでおきながら、安心して李に任せるのではなく、王を使って李首相を牽制したいのであろう。

副組長人事だけでなく、指導小組のメンバーの人選にも習の思惑が反映されている。

保健衛生の専門家がいない

新華社通信の発表で判明した指導小組の主要メンバーのうち、党中央弁公室主任の丁薛祥、党中央宣伝部長の黄坤明、北京市党委員会書記の蔡奇の3人がいずれも習の腹心の中の腹心であることは中国政界の常識である。上述の王滬寧を入れると、主要メンバーの半数が習近平派によって固められていることが分かる。

さらに奇妙なことに、主要メンバーには公安部長の趙克志や国務院秘書長の肖捷が入っているが、彼らと同じ大臣(閣僚)クラスの国家衛生健康委員会主任の馬暁偉や、衛生部長の陳竺の名前が見当たらない。

こうしてみると、危機の緊急対策本部としての疫情対策指導小組の人選は、実務重視・実行能力重視の視点から選ばれたわけでは決してなく、むしろ李への牽制という習の政治的思惑からの人事であることが一目瞭然である。

つまり習は国家の緊急事態に際し、自ら先頭に立って危機に当たる勇気もなければ責任感もなく、その責任を首相の李に押し付けてしまった。一方で、李に全権を委ねて李が思う存分仕事できる環境を作ってあげるのでもなく、逆に側近人事を行って李の仕事を牽制し、その手足を縛ろうとしている。

習のリーダーシップはもはや最悪と言うしかなく、この無責任さといい加減さで当面の危機を乗り越えられるわけはない。貧乏くじの役割を引き受けた李も要所要所で習の牽制を受け、きちんとしたリーダーシップを発揮できない。

このような指導体制で、今回の新型肺炎の事態収拾と危機克服は期待できそうもない。状況はまさに絶望的である。

【私の論評】SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されて当然(゚д゚)!

新型肺炎に関して、WHO(世界保健機構)が非常事態宣言を出さなかった事が激しく糾弾されることになるでしょう。習近平は事態を把握できていなかった可能性もあります。

WHOが大スポンサーの中国共産党を忖度した事が裏目に出たばかりか、台湾の締め出しも非難されることになるでしょう。日本としては世界の先頭に立って台湾のWHO加盟を訴えるべきです。

WHOが大スポンサーの中国共産党を忖度した事については、以下の記事が詳しいです。
「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より、結論部分のみ引用します。
 たとえ「緊急事態宣言」を受けたとしても、パンデミックを起こさないことの方が遥かに重要だと思うが、それを選択できないところに中国の欺瞞的な構造がある。地方政府の危なさと共に、こういった所に「ポキッと折れるかもしれない」中国の脆弱性が潜んでいるのである。 
 このような国の国家主席と「責任を共にすると誓い」、国賓として来日させようとしているのが日本の安倍内閣だ。天皇陛下と握手する場面を全世界にばらまかせることによって、習近平政権のやり方に正当性を与えようとしている。 
 このような状況にあってもなお、習近平を国賓として招聘するなどということが、どれほど恐ろしい未来を日本にそして全世界にもたらすか、安倍内閣は真相を見る目を持つべきだ。 
 野党も何をしているのか。習近平の国賓来日が、どれほど危険な将来をもたらすか、そのことにも目を向けた大局的な国会議論を望む。
日本では、新型のコロナウイルスによる肺炎について、安倍総理大臣は衆議院予算委員会で28日の閣議で、国内で感染が確認された場合、法律に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる「指定感染症」にする方針を明らかにしました。

     新型のコロナウイルスによる肺炎について、衆議院予算委員会で
    「指定感染症」にする方針を明らかにした安倍総理

この中で、安倍総理大臣は「政府としては、感染拡大が進んでいることを踏まえ、これまでに関係閣僚会議を開催し、水際対策のいっそうの徹底、検査体制の整備、国民に対する迅速かつ的確な情報提供、日本人渡航者や滞在者の安全確保などについて関係省庁で連携して、万全の対応をとるよう指示を行った」と述べました。

そのうえで、安倍総理大臣は「感染者に対する入院措置や、公費による適切な医療等を可能とするため、今般の新型コロナウイルスに関する感染症を感染症法上の『指定感染症』などにあすの閣議で指定する方針だ」と述べ、今回の肺炎について、28日の閣議で、国内で感染が確認された場合、法律に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる「指定感染症」にする方針を明らかにしました。

また、安倍総理大臣は中国政府との調整を加速させ、民間のチャーター機などあらゆる手段を通じて現地に滞在する日本人の希望者全員を速やかに帰国させる方針を重ねて明らかにしました。

新型コロナウイルスによる肺炎が「指定感染症」に含まれると、国内で感染が確認された場合、感染症法に基づいて強制的な措置をとることができます。

具体的には、都道府県知事が患者に対して感染症の対策が整った医療機関への入院を勧告し、従わない場合は強制的に入院させられるほか、患者が一定期間、仕事を休むよう指示できるようになります。入院などでかかる医療費は公費で負担されます。

指定の期間は原則1年間で、さらに最大で1年延長することができます。

指定感染症にはこれまでに平成15年に重症急性呼吸器症侯群「SARS」、平成25年にH7N9型の鳥インフルエンザなどが指定され、今回の肺炎が指定されれば平成26年の中東呼吸器症候群「MERS」以来、5例目となります。

指定までにかかる期間について厚生労働省は「過去には、2週間ほどかかった例もあったが、今回はそれよりも早く指定できるようにしたい」としています。

厚生労働省によりますと新型コロナウイルスによる肺炎については、指定感染症だけでなく検疫感染症にも指定される見通しです。

検疫感染症に指定されると、空港や港などの検疫所で感染が疑われる人が見つかった場合、法律に基づいて検査や診察を指示できるようになります。

具体的には、空港や港などで入国者に症状が出ていないかを質問し、感染が疑われる症状があった場合は検査や診察を受けるよう指示できます。

さらに、入国時に感染の疑いがある人については、一定期間、健康状態について報告を求めることができます。

これらに従わない場合は罰則を課すことができます。

日本としては、WHOが非常事態宣言を考慮したのか、新型肺炎に関して対応が鈍かったようですが、ようやく動きはじめました。

            スイス・ジュネーブのWHO本部で開かれた新型コロナウイルスによる肺炎感染に
            関する記者会見で発言するテドロス事務局長(2020年1月22日)

WHOをが非常事態宣言を出さなかったことに考慮したとしても、万が一国内で、新型肺炎が蔓延するようなことにでもなれば、多くの人命が失われたり、経済活動もままなくなるのは明らかなので、このような措置に踏み切ったのでしょう。

2020年に入ってからの27日間で世界は中東戦争の危機、オーストラリアの山火事による大量絶命の危機、新型肺炎によりグローバルパンデミックの危機に直面しているのに、習近平は自らの保身に走ることで、本当に新型肺炎に対処しようとしてるのか、はなはだ疑問です。現在のWHOも自らの使命を果たすつもりがあるのか、疑問です。

世界中の他の国々も続々と、日本政府のような措置をすでにとったか、とりつつあります。WHOの緊急事態宣言がない中で、世界中の国々がこうした措置をとっているのですから、WHOと中国の動きはなんともお粗末というか、現実を直視せず、中国人民に対してだけではなく、他の国々に対する裏切り行為でもあります。

現在は、我が国をはじめ、世界の国々は当面はパンデミックを封じ込めることに集中すべきですが、これが収束した場合には、WHOや中国を徹底的に糾弾すべきです。糾弾するだけではなく、制裁すべきです。

SARS続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は糾弾されて当然です。それでも改めなければ、対中冷戦に本気で取り組んでいる米国のように、他国も中国に対して厳しい制裁を課すべきです。そうして、WHOにも厳しい措置をとるべきです。

中国とWHOがまともにならなければ、世界にはいつまでもパンデミックの危機を拭い去ることはできません。頭が19世紀か、もしかすると18世紀であるかのような両者をこのまま捨置くわけには絶対にいきません。両者とも、本当にかなり痛い目に合わせないと、いつまでも同じことを繰り返すことになるだけです。

【関連記事】

2020年1月24日金曜日

歴史も証明。中国という国を滅ぼしかねぬ新型肺炎という「疫病」―【私の論評】新型肺炎の感染拡大で、習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなった(゚д゚)!

歴史も証明。中国という国を滅ぼしかねぬ新型肺炎という「疫病」

体温検査を受ける武漢を出て列車で移動する乗客。1月23日、杭州市

中国の武漢市を中心に猛威を振るう新型肺炎。1月25日の春節を含む大型連休には億単位の中国人が移動するとも言われ、パンデミックの可能性も囁かれていますが、過去にも中国から多くの疫病が世界に広がったとするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、中国の「疫病史」を紹介するとともに、現在も複数存在する「中国発の疫病」が世界に広がる要因を記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年1月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】「中国発パンデミック」はなぜ厄介なのか

新型肺炎、発症者540人超に拡大 死者は17人

中国湖北省武漢市を中心として広がる新型肺炎の感染が止まりません。ついに死者は17人、発症者540人超にも拡大しました。ついにアメリカでも武漢を訪れていた男性1人の感染者が確認されました。中国以外では、アメリカ、日本、韓国、タイで発症者が出ています。WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を出す可能性も出てきました。

死亡率は現在のところ2%でまだ低いですが、これから上昇していく可能性もあります。ちなみに、SARS(重症急性呼吸器症候群)も中国の広東省を発端として各国に広がりましたが、このときは発症者8,096人のうち774人が死亡しています(致死率9.6%)。

Summary of probable SARS cases with onset of illness from 1 November 2002 to 31 July 2003

また、2012年から中東やヨーロッパで発症例が報告され、2015年には韓国でも流行したMERS(中東呼吸器症候群)は、2,494人が発症し、そのうち死者は858人(致死率34.4%)でした。

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)

これに比べれば、まだまだ致死率は低いものの、前回のメルマガでも書いたように、これから旧正月によって一気に拡大する可能性があります。

また、かつてユーラシア大陸で流行った疫病は、必ずといっていいほど日本に入ってきています。江戸時代には天然痘(疫病)、麻疹(はしか)、赤痢が見られ、このうち天然痘は18世紀前期に大流行。麻疹も同時期に2~3回大流行し、赤痢は18世紀から19世紀にかけて大流行しました。いうまでもなく、中国からの伝染です。

中国では、1880年に広東と寧波でコレラが大流行。翌81年には北京でも大流行しました。この感染経路は、発源地を広東とする2003年のSARS流行とそっくりです。そして、中国でのコレラ大流行直後の1882年10月~11月の中旬、日本でもコレラが大流行することになります。北里柴三郎や初代内務省衛生局長であった長与専斉によれば、その日本侵入経路の起点は中国で、これがまず長崎に入り、そうして日本全国へ広がったといいます。

日本では、これに対処するため、1885年に函館、新潟、横浜、神戸、下関、長崎の港に常設の消毒所を設置。その後、1899年に「海港検疫法」が公布されるなどして、検疫制度が確立していきます。こうした取り組みが中国からの疫病侵入を防ぐ力となったのは言うまでもありません。しかし、一方の中国は、現在に至るまで根本的な対策は取られないままできているのです。

この日本と中国の衛生観念や防疫意識の違いは、台湾にも如実に見て取れます。日本植民地時代の台湾には、疫病の大々的な流行がほとんど見られませんでした。というのも、総督府は1900年代に入ってすぐに、都市計画に始まって衛生教育に至るまでを徹底して実施。北里柴三郎に依頼して、その一番弟子を台湾に呼んでまで、防疫をはじめとする公衆衛生に取り組んできたからです。

それが終戦で一変しました。日本が台湾から引き上げ、かわりに中国軍が台湾に進駐したとたん、すでに絶滅していたはずのコレラ、天然痘、ペスト、チフス、マラリアといった疫病の大流行が台湾全島を急襲したのです。1946年にはペストとコレラの、翌47年には天然痘の大流行に見舞われています。台湾から見た中国人とは、まさに疫病神以外の何者でもありませんでした。

中国でも日本軍が進出した際、地方の農民が大歓迎するケースも少なくありませんでした。それは、日本軍が通過した地方は、かならず伝染病が消えていき、衛生の問題と課題が消えるからでした。

中国の疫病流行は、すでに史前から甲骨文に刻まれています。現在、その甲骨文から確認できる殷周時代の古代人の疫病は約16~20種類もあります。そして、周初から漢代に至る「大疫」(疫病大流行)の記録では、しきりに「死者万数」「人多死」「士卒多死」「其死亡者三分有─」と、多くの死者を出したことを示す文言が繰り返し出ているのです。

中華帝国以後の中国は二千余年間、周期的、加速的に水害、旱魃等の天災に見舞われてきました。そして、旱魃の後に大飢饉が、水害の後に大疫病が発生するというのが、いわば「定番」になっています。歴代王朝の「正史」には疫病の大流行が数年ごとに、時には連年で記録されていることが、それを証明しています。

中国の歴代王朝は、実際には「大飢」や「大疫」によって滅ぼされた場合が多くあります。「大飢」によって生まれた流民が「大疫」の媒介や運び役となって世界へ拡散していくのです。

たとえば明の滅亡については、政治腐敗と、それに蜂起した農民反乱軍によって滅亡したと語られていますが、実は、それだけが要因ではありません。明末には「大疫」や「大飢」が間断なく襲い、餓死者や疫死者が続出。流民、流賊、流寇もあふれていたのです。これもまた、農民が反乱する要因にもなっていました。

ことに明末の万暦、崇禎年間(1573~1644年)には、華北地方で疫病が猛威をふるい、少なくとも1,000万人の死者が出ました。主にペストや天然痘です。明王朝は、実はこの大疫によって倒れたのであり、清に滅ぼされたわけではないのです。

また、黒死病(ペスト)といえば、中世のヨーロッパを襲った恐るべき流行が、史上でもっとも有名で、1348~51年の3年間で、人口の3分の1を死に至らしめています。その伝染経路については諸説があありますが、もっとも有力なのは中国大陸を発源地とするものです。

下の版画はパウル・フュルスト(Paul Fürst)の『Doktor Schnabel vonRom(ローマの嘴の医者)』(1656年)です。

当時はペストの原因として瘴気(悪性の空気)が考えれており、ハーブやスパイスが詰められた この独特のマスクは、ガスマスクの役割を果たしていました。ちなみに、当時の主な治療法は蛭(ヒル)による瀉血でした。


最初に大流行したのは南宋王朝です。この時、南征中だったモンケ・カーン(チンギス・カーンの孫、フビライ・カーンの兄)が病死していますが、その病気がペストだったとも指摘されています。南宋と戦っている間にモンゴル軍に伝染したのです。

このモンゴル軍の遠征を通じて、ペストは西アジア、クリミア、ベネチア、北アルプスを経て北上し、やがて全ヨーロッパに伝わっていきました。

元末の至正年間(1344~62年)の間には、「大疫」だけでも11回も起こっています。中華帝国の人口は、1200年には1億3,000万人いたとも推定されていますが、ペストの大流行によって、すでに1331年の時点で3分の2が死んでいます。ユーラシア大陸の東西ともにペストに襲われ、人口が大量に減ったのです。

また、それより以前、隋の煬帝末期の610年から唐初の648年の約40年間には、7回も疫病が大流行。隋も瘟疫で倒れています。

その他、インフルエンザ系の疫病はSARSに限らず、その発源地はほとんどが中国です。たとえば、1918年の秋に全世界で猛威を振るったインフルエンザ。感染者は地球人口の20~40%にも及び、感染からわずか4ヵ月で2,000万人が死亡し、その死亡率は約2.5%でした。日本でも2,000万人以上が感染し、死者は約40万人に上っています。

これが「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザで、名称からスペインが発源地であると誤解する人が多いですが、実は、これも中国が発生源でした。そもそもは、1917年に中国の南方で発生したものが、船便を通じて世界各国へと拡散したのです。

中国で医療衛生が制度化されたのは、なんと20世紀になってからのこと。義和団事件後に変法派官僚によって、やっと天津に衛生総局が設立(1902年)されたのです。それも、中国から世界にペストがばら撒かれることを危惧した列強からの強い要請があって、ようやく重い腰を上げたというのが本当のところです。外国人を排斥する大事件が引き金になって、その外国の圧力によってようやく医療衛生が制度化されるという、皮肉な話です。

一方、儒教の影響が現在も色濃い中国では、医師の社会的地位は非常に低いものです。たとえば日本と台湾では、通常、成績がいい学生が大学の医学部へ進みますが、中華の世界ではまったく逆で、成績の悪い学生が医師になるのです。だから、中国では現在も医者は軽んじられる存在なのです。

たとえば、中国では医者に対する患者の暴力行為が頻発しており、「医閙(イナオ)「医傷」などと呼ばれています。その件数は年間数万件にも及ぶため、中国政府は2018年に、毎年8月19日を「中国医師の日」にすることを定め、医者を尊重するよう呼びかけているほどです。

また、2012年の調査によると、臨床医の初任給は1カ月あたり平均2,339元ですが、中国の新卒の平均的な初任給は1カ月あたり3,051元であり、医師と看護師がもっとも低水準なのです(「中国網」2013年10月8日付)。このような状態であるため、誰も医師になりたがらないし、医療体制も低いままなのです。

また、日本のような医療保険制度がほとんど普及していない中国では、高額な医療費のために、病気になっても医者にかからない人民も多い。そのため、疫病が拡大してしまうのです。

もちろん、中国は言論統制の国であり、また、WHOまでもカネの力で牛耳っているため、事実隠蔽が平然と行われ、そのために被害が大きくなってしまうという点も重要です。

このように、中国発の疫病が世界に広がる要因は複数存在しています。日本人にとって、これからもっとも注意すべきは、パンデミックの流行です。中国への渡航、あるいは中国人観光客が多く集まる場所へ出かけていく場合には、十分に気をつける必要があります。

【私の論評】感染拡大で、習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなった(゚д゚)!

約20年前に流行したSARSは当初、ハクビシンが感染源と疑われましたが、現在はキクガシラコウモリが感染源であると考えられています。今回の新型肺炎の感染源は竹ネズミかアナグマ、蛇と説が分かれています。いずれもジビエ(野生の鳥獣食)として食されており、市場での取引を通じて人間に伝染したとの見方が強いです。

キクガシラコウモリのスープ
無論、他国の食文化を単純に否定するつもりはないですが、こうした食文化にも、病気を蔓延させる原因がある可能性ず大きいです。日本では、欧米では食べないクジラや、魚の刺し身を食すという食習慣がありますが、そもそも海産物であること、さらに細心の注意をはらった調理などにより、それが大規模な感染症の原因になったということは聞いたことがありません。

いくら食文化といっても、それが大規模な感染症を招くというリスクがあるなら、中国としてもそのような食文化は廃するか、それが不可能なら感染症を防ぐ方向で議論をすすめるべきです。


      竹ネズミの調理の動画。このくらいの衛生的な環境で調理されるなら
      問題はないのかもしれないが、劣悪な環境下での調理もあり得る

それに中共政府の対応も悪すぎです。もともと中国では、2019年12月の時点で、武漢で原因不明の肺炎患者が出ているとの情報がSNS上で出回っていました。その後も「海外で患者が出ているのに、国内の他地域にいないわけがない」との声があがっていました。

それから1カ月あまりで情報公開が始まったのは遅きに失した感が否めないです。中国の報道機関「財新メディア」は、現地からの報道として「複数の医師が最終的な感染者は6000人を超える可能性があると推計している」と報じました。財新はかつて当局によるSARS情報隠ぺいをスクープして名を馳せたジャーナリストの胡舒立氏が率いる独立系メディアです。

一方で当局寄りの論調が強い「環球時報」も、「武漢の対応の遅さを教訓とし、その他の地方での対応を急げ」という社説を掲げました。「早くから患者の全面隔離を実施し、伝染の経路をふさぐべきだった」と主張し、武漢当局を厳しく批判する内容ですが、こちらは責任を地方政府に押しつけ、中央への波及を防ぐ算段と見えなくもありません。

中国では24日から、春節に合わせた大型連休が始まりました。延べ約30億人が大移動する見込みで、日本など海外への旅行客も700万人を超える見通しです。

中国共産党機関紙、人民日報(電子版)によると、新型肺炎の発症者は24日朝までに31の省・自治区・直轄市のうち29で確認されており、武漢市だけ封鎖しても、新型肺炎が一気に国内外に拡散する危険性があります。

習近平は「(感染防止の取り組みが)非常に差し迫って重要だ」「(感染に関する情報は)直ちに発表しなければならない」と指示していますが、「社会全体の安定を断固として守らなければならない」とも述べており、パニックを阻止するための情報統制を示唆しました。

今後、日本国内で感染拡大・死者発生という事態になれば、初期の封じ込めに失敗した中国のトップ、習氏を「国賓」として歓迎できるのでしょうか。特に、仮に日本でも多くの人々がなくなることがあった場合、その責任者ともいえる人物を国賓として迎え入れるということは、国民感情が許さないと思います。

習近平

これ以外にも、元々中国は尖閣諸島付近の艦船による示威行動がますます過激になっているということもあります。これらをやめたというなら、国賓として迎えるということも筋が通りますが、そうでなければ、日本政府がいかに、丁寧に説明してもどう考えても無理筋です。

安倍首相は22日、衆院本会議での代表質問で、習氏の「国賓」招聘(しょうへい)について「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄に大きな責任を有しており、その責任を果たす意思を内外に示す機会としたい」「同時に、中国との間には懸案が存在している。主張すべきは主張し、中国側の前向きな対応を強く求めていく」と語っています。

新型肺炎の拡大は、習氏の「国賓」来日に直撃するのでしょうか。もしそうなれば、無論習近平は国内の疫病の問題を放置して、来日することは許されないでしょう。やはり、常識的に国内に陣取り、疫病対策の陣頭指揮をとるべきです。

仮に、日本で同じようなことがおこったとして、総理大臣がそれを無視して外遊ということになれば、とんでもないことになります。

日本としても、新型肺炎が蔓延している中、その当事者であり責任者でもある元首を国賓として迎え入れるなどということは、常識的にあり得ないです。

新型肺炎をめぐる中国の情報統制のような対応を見る限り、中国は発生国として国際的責任を果たしているとは思えません。習近平が国賓として来日すれば、天皇陛下も含めて日本全体で歓迎しなければならないですが、これまでの経緯もあり、祝賀ムードで迎えることを国民が許すとは考えにくいです。新型肺炎の感染拡大で、さらに習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなったのではないでしょうか。

【関連記事】

2020年1月20日月曜日

米中貿易「第1段階合意」を中国はマジメに履行しない―【私の論評】習近平は、未だ米国による対中国冷戦は米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いている(゚д゚)!

米中貿易「第1段階合意」を中国はマジメに履行しない

<米中両国が先週、貿易問題の「第1段階合意」文書に署名したことは世界を安堵させた。しかし習近平政権はこの合意を「ほどほど」にしか履行しないだろう>

劉鶴副首相(左)は微妙な表情でトランプ大統領と握手(1月15日、ワシントン)

米中両国政府は今月15日、貿易問題に関する「第1段階合意」の文書に署名した。この第1段階の合意には、(1)知財保護(2)技術移転の強要禁止(3)農産品の非関税障壁の削減(4)金融サービス市場の開放(5)通貨安誘導の抑止(6)輸入拡大(7)履行状況の検証――といった7項目が盛り込まれている。だが、先月16日に本サイト掲載の拙稿がすでに指摘しているように、それらは全て中国側が履行義務を一方的に負う性格の合意内容である。

例えば(1)知財保護は当然、中国側がアメリカの要求に応じて知的財産権に対する保護を約束したことであり、(2)技術移転の強要禁止はすなわち、中国側がアメリカの要求に応じて、今までの悪しき慣行である外国企業に対する技術移転の強要を止めていくことである。(4)金融サービス市場も当然、中国が外国の金融機構に対して国内市場を開放することを意味している。そして(6)輸入拡大で中国は今後2年間に2000億ドル分のアメリカ製品を追加で購入することを約束させられた。アメリカの一方的勝利である根拠

筆者が中国商務省の公式サイトで公表されている合意文書の中国語版を確認したところ、文中で「中国側が〇〇すべき」と規定された箇所は82にも上ったのに対し、「アメリカ側が〇〇すべき」というのはわずか4カ所しかない。合意事項のほとんどは中国側が履行義務を背負うものであることがよく分かろう。

一方のアメリカ側が合意の達成において「すべき」ことの内容は、去年の9月から1100億ドル分の中国製品に課している15%の制裁関税を半分の7.5%に減らす、というだけである。それ以外の2500億ドル分の中国製品に課している25%制裁関税はそのまま据え置きにされる。

結局アメリカ側は、中国に対する制裁関税の大半をそのまま維持しながら、中国側からは2000億ドル分の米国製品の購入や知的財産権への保護や金融サービス市場の開放などの約束を取り付けることに成功した。どう考えてもアメリカの一方的勝利である。

中国側が手に入れた最大の成果は、合意によってアメリカが中国製品に対して新たな制裁関税を発動する可能性は当分の間なくなるので、貿易戦争のさらなる拡大は避けられる、というところにある。とはいっても勝者はやはりアメリカである。第1段階合意はアメリカとトランプ大統領にとっての勝利であるからこそ、大統領はホワイトハウスに米政界・財界の要人たちを200人も招待して盛大な署名式を行い、得意満面の風情で自ら文書に署名した。一方の中国側にとっては、アメリカの諸要求を一方的に呑まされたこの合意内容は単なる敗北というよりも屈辱的な降伏、「城下の盟」というべきだろう。屈辱の合意だからこそ、習近平国家主席は署名式には出席せず、副首相の劉鶴を派遣して代役をさせた。それは当然、国家元首としての習の体面と権威を何とか保つための必要最低限の措置だろう。以前、劉が貿易協議の中国側代表としてアメリカを訪れる時、「国家主席特使」という肩書を付けることが多いが、今回はその肩書もない。習と今回の屈辱的合意との関係性を極力薄めたいという中国政府の思惑が見え透けている。

中国政府にとって、副首相の劉をアメリカに派遣して署名させたことにはもう1つの政治的効果があった。自国の副首相がホワイトハウスで、アメリカの国家元首たるトランプとあたかも対等であるかのように文書に署名したことで、中国政府は一般国民に「中国が優位である」との錯覚を与えることができた。実際、テレビを通してこの光景を眺めた多くの中国人ネットユーザーは一斉に「中国が凄い!」と興奮し、合意の内容とは関係なくいい気分になっていたようだ。

米中の「第1段階の合意」はこれで成立したが、今後の最大の問題は中国政府がこの合意内容をきちんと履行していくのかどうかにある。

そして私の結論は、それは今年11月のアメリカ大統領選の結果次第である。

一体どういうことか。合意内容の一つである、中国側が約束した追加2000億ドル分の米国製品の購入を例にとってみればわかりやすい。

米大統領選に潜む大きな「抜け穴」

合意に従って、中国は2020年と21年の2年間で、農産物・エネルギーなどを含めた米国製品を追加で2000億ドル分を買うこととなっている。しかし一部の経済紙や専門家が分析したように、その完全履行は中国にとって極めて難しい。経済の減速に従って中国の国内需要がむしろ減っていく中で、今までの輸入ペースを維持した上でさらに米国製品を追加で大量購入するのは、国内需要の面からしても購買能力の面からしてもかなりの無理を強いられる。

その一方、明確な数値目標が決められているこの約束の履行を、中国がごまかすのも結構難しい。履行しなければ、トランプ政権はいつでも中国に対する制裁関税の追加や引き上げを実行する。

それでは中国はどうするのか。実は中国にとって幸いなことに、「2年間で2000億ドル分の米国製品を買う」という約束には、米大統領選と絡む1つの大きな抜け穴がある。

この抜け穴とはすなわち、「2年間で2000億ドル分を買う」との約束はあるものの、最初の1年間、つまり2020年の今年にどれほど買うべきかは必ずしも明確に決められていない、ということである。

そうすると中国側はずる賢い方策を取ることができる。今年1年間、つまり米大統領選の結果とは関係なくトランプ大統領が確実に政権の座にいるこの1年間は、中国は約束した米国製品の購入を部分的に履行していく。例えばこの1年間で数百億ドル分の米国製品の追加購入を何とかして実現すれば、それでトランプ大統領のご機嫌を損なうことなく、合意を履行していることにもなる。

しかしその代わりに、年内に2000億ドル分の米国製品の半分以上を買うようなことは絶対しない。約束の「2000億ドル分米国製品購入」の大半をさまざまな理由をつけて来年の2021年に回す。そして今年11月まで大統領選の行方を見極める。「バイデン当選」は中国のチャンス

もしトランプが落選すれば、来年1月には新政権が誕生する。新政権は当然民主党政権になるが、もし運良く親中のジョー・バイデン前副大統領が新しい大統領になれば、それこそ中国にとっての起死回生のチャンスとなる。

来年1月に新政権が成立すれば、中国はトランプ政権と交わした「第1段階合意」の履行を渋ったり停止したりできる。前述のように、第1段階合意の諸項目はすべて中国が履行していくものだから、中国が状況に応じて履行を止めることも簡単にできる。その際、第1段階合意の破棄を明確に宣言する必要はまったくない。中国側が履行を止めていれば「合意」はその時点で死ぬのである。

その場合、中国に対してアメリカが取り得る唯一の制裁手段はすなわち制裁関税の引き上げあるいは追加拡大である。しかし、中国に圧力をかけるために、中国製品に対して大規模な制裁関税をかけるというやり方はそもそもトランプの発明であって、トランプだからこそ取れる強硬手段・非常手段である。新しい大統領が今のトランプと同じような強硬手段を取るかどうかはかなり疑問であろう。おそらく、新大統領が「第2のトランプ」でなければ、中国との貿易戦争の拡大にはなかなか踏み切れない。それこそ中国側の期待する展開である。

その際、今の第1段階合意の履行を一旦止めてから、アメリカの新政権との間で「自由貿易」の理念に基づく新たな貿易協議の再開を呼びかけ、米中間の貿易枠組みの再構築を目指すのが中国の新戦略となるであろう。それによって中国は、今のような悪夢の現状から脱出できる。

もちろんそれはトランプが再選を果たせないという前提であって、中国側の一方的な甘い期待ではある。しかし今の習政権には、そう期待する以外に難局打開の方法がない。トランプ政権との間で最初から履行困難な「第1段階合意」に署名した以上、この厄介な政権の早い終結に賭けるしかない。理論的には、この賭けの勝算は50%程度あるはずである。

しかし、もしトランプが再選を果たして来年からも引き続き大統領であるなら、中国は一体どうするのか。おそらく習政権とっては、それはそうなった時に考える問題で、今の緊急課題ではないのだろう。習政権にとっては、米国製品をほどほどに買うことで少なくとも今年いっぱい貿易戦争のさらなる拡大を避けることができれば、それはまず大いなる成果なのである。

第1段階の米中合意を「ほどほど」にして履行していくというのはおそらく、米国製品の購入だけでなく、他の合意内容の履行でも中国側の戦術となろう。知的財産権の保護にしても外国企業にたいする技術移転の強要にしても、中国は年内には今までの悪行をある程度控え目にしてアメリカに「改善」の実績をつくって見せるだろう。そして来年になって別の政権がアメリカで誕生するのであれば、最初から検証可能な数値目標のないこれらの合意事項の履行を放棄するのはいとも簡単である。

「第2段回の合意」はもはやない

第1段階の合意について結論を言えば、今年いっぱいは中国も米国製品の大量購入を含めた合意事項をある程度履行していくだろう。だが、来年になってどうなるのかは米大統領選の結果次第である。トランプが再選すれば、中国は苦しみながらも合意を履行していくしかないが、来年1月にアメリカの政権が変わった場合、中国が合意不履行に踏み切る可能性は大である。

後者の場合、米中間の貿易戦争となるのかどうかはアメリカの新政権・新大統領の考え方と政治スタイルによるので、今のところ予想は不可能だ。

最後に1つ付け加えれば、いわゆる「米中貿易第2段階の合意」は大統領選前はもはやないと考えた方がいい。選挙前の「第2段階の合意」が不可能だからこそ、双方は「第1段階合意」で手打ちしたわけである。今後の問題はむしろ、この「第1段階合意」がきちんと履行されていくのか、にある。

【私の論評】習近平は、未だ米対中冷戦は米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いている(゚д゚)!

弾劾訴追を受けたアメリカ史上3人目の大統領になったにもかかわらず、ドナルド・トランプの再選の可能性が急上昇しています。トランプ氏には旧来に政治的な思考などは通じません。いま米国では、大くの識者らが、トランプが2期を務め上げる連続で4人目の大統領となる確率を50%近いと見積もっています。

トランプ再選の可能性が高いとみる根拠は、2つあります。第1に米国経済が好調であることです。株式市場は上昇を続け、失業率は低下を続け、消費は増え続けています。高くあるべき指標は高く、低くあるべき指標は低いのです。

トランプ大統領は2020年の始まりを、歴史上記録にある中でどの大統領の同時期より低い平均失業率を取り仕切ったという実績で飾っています。

10日、労働統計局は12月の失業率が3.5パーセントという歴史的な低さを維持したと報告しました。トランプの大統領就任からまる1カ月後の2017年2月以降、毎月の失業率の平均は3.9パーセントでした。就任してから35カ月の間に平均4パーセントを下回った大統領はこれまでいませんでした。最も近かったのはドワイト・アイゼンハワーで、1953年2月から1955年12月までの間の平均は4.3パーセントでした。(下表参照)


ちなみに雇用は景気の指標の中でも、最も重要なものであり、たとえ他の指標が悪くても雇用に関する指標である、失業率が低ければ、及第点といえるほど重要なものです。

景気拡大期に行われた直近の12回の大統領選では、現職大統領が常に2期目を目指し、常に勝利を収めています。経済がこのまま好調を続ければ、民主党がトランプを退けることは極めて難しいです。

トランプ再選の可能性を支持する第2の根拠は、民主党がトランプに優る選択肢を提示できていないことです。

いま民主党の大統領候補指名争いの先頭集団には、4人の有力候補がいます。ジョー・バイデン前副大統領は全米の支持率調査で首位を維持しているが、77歳と高齢であることが深刻な弊害を露呈しています。選挙活動で訪れている州の名を頻繁に間違えたり、討論の最中にとりとめのない発言をしたりという具合です。

民主党の候補者が勝った場合、通商面で不確実性がなくなるかもしれないですが、人権問題で中国との関係がより厳しくなる可能性があります。

候補指名を目指す20人のほとんどは、トランプ氏が中国と関税を掛け合うことで農家や消費者、企業が痛めつけられていると批判するものの、ではどんな別のやり方をするのかについて意見が統一されていません。

結果として国際金融市場が動揺し、米消費者が中国からの輸入品価格上昇に直面したり、農家が最大の輸出市場を失う事態になっているのに、各候補者から出てくるメッセージは付け焼刃的であったり、時には支離滅裂な内容にとどまっています。

トランプ氏の側近らは、同氏の中国に対する強硬な態度は支持基盤を離反させず、むしろ活気づかせると主張しています。ただ貿易戦争での中国の報復措置により、与野党の支持が伯仲しているウィスコンシンやペンシルベニア、ミシガンなどの農家や製造業が2年にわたって痛手を受けており、トランプ氏にとって対中戦略が再選のより大きなリスクとなってきた様相です。

一方民主党も議会ではずっと中国に批判的で、米国の経済と安全保障が脅かされているとの立場を取ってきました。そこで大統領選に出馬した面々は、強引なトランプ氏と同じ手法とみなされることを避けつつ、独自の対中強硬策を打ち出すことに苦労しています。

対中通商政策はそのまま、民主党内の穏健派と急進派の相違も浮き彫りにしています。例えば穏健派でインディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏やベト・オルーク元下院議員は、トランプ氏が導入した関税の完全撤廃に動こうとしています。逆に急進派のバーニー・サンダース上院議員は関税が中国を屈服させる有効な武器だと評価し、エリザベス・ウォーレン上院議員が示した通商政策はトランプ氏と同じぐらい保護主義的と受け止められています。

対中強硬路線を崩さないトランプ大統領

それでも民主党の大統領候補指名を目指す人々の大半は、そのイデオロギーが何であれ、中国問題に慎重な態度を崩していません。

何しろピュー・リサーチセンターが8月に実施した世論調査では、米国民で中国に負の感情を持っている割合は60%と、昨年の47%から上昇したのです。トランプ氏の中国たたきに効果があるという証拠が出ています。

実際、16年の大統領選でトランプ氏が一気に台頭した原動力は、同氏が中国への敵意を示し、対決を約束したことでした。また米国内で工場の仕事がなくなり、地域経済が停滞するのを目にした多くの有権者の共感を呼んだのが、グローバル化や自由貿易に対する同氏の露骨な反感です。

トランプ氏はそうすることで、グローバル化は米国の労働者を犠牲にして多国籍企業を太らせている、というサンダース氏やウォーレン氏らの進歩派がずっと掲げてきた主張を取り込んだのです。

米国民が反中国のメッセージを待ち構えているのは間違いないです。しかし民主党側の出すメッセージは巧みで戦略的でなければならないです。さもないとトランプ氏に主導権を渡すことになるでしょう。この面で民主党の候補指名レース参加者が差別化を図るのは簡単ではなく、サンダース氏やウォーレン氏の通商問題に関するメッセージは、トランプ氏と違うとは一般有権者にみなされていません。

甘い期待を抱く習近平

以上のようなことを考えると、トランプ氏の再選が50%以上であると見るほうが良いでしょう。さらに、仮に番狂わせが起こって、民主党の候補者が大統領になったとしても、議会は超党派で、中国強硬派が多く、しかも民意も色濃く反中的であることから、次の大統領も中国に対峙し続けることでしょう。

トランプの再選がなかったにしても、米中関係が元のようになることは考えられず、習近平は引き続き厳しい対応に迫られることでしょう。

習近平は、未だ対中国冷戦はトランプ政権がどうのこうのではなく、最早米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いているようです。

【関連記事】

米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由―【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!





2019年11月23日土曜日

日本政府高官「ほとんどパーフェクトゲーム」 米国が韓国に圧力かける構図に GSOMIA失効回避―【私の論評】とうとう韓国のバランス外交の失敗が表沙汰になった。日本も習近平を国賓として招けば同じような目をみることに(゚д゚)!

日本政府高官「ほとんどパーフェクトゲーム」 米国が韓国に圧力かける構図に GSOMIA失効回避

記者団からGSOMIAの継続について記者団の質問に答える安倍首相=22日午後、首相官邸

 日本政府は、韓国からの輸出管理厳格化の撤回要求を拒否し続けた上、米国が韓国に圧力をかける構図を作り上げたことが、韓国政府の今回の決定につながったとみている。日本政府は貿易管理をめぐる当局間の協議再開には応じるものの、「一切妥協はしない」(政府高官)方針だ。

 「ほとんどこちらのパーフェクトゲームだった」

 韓国政府の突然の方針転換に日本政府高官はこう語った。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄通告を改めさせ、日米韓の安全保障協力が維持されるからだけではない。日本側の予想を超え、韓国が輸出管理の厳格化をめぐる世界貿易機関(WTO)への提訴手続きまで見合わせたからだ。

 韓国側は8月下旬、日本政府による対韓輸出管理厳格化への対抗措置としてGSOMIAの破棄を決定し、破棄撤回の条件として輸出管理厳格化の見直しを求めていた。

 韓国側の態度が変化したのは「ここ2、3日」(政府筋)だったという。

 日本政府は「GSOMIAと輸出管理は次元が違う」として韓国側が設定した土俵には乗らず、「賢明な対応」(菅義偉官房長官)を促し続ける戦術を徹底した。政府高官によると、米国は「トランプ米大統領は安倍晋三首相側に立つ」と韓国側に伝えており、日本政府は米国の韓国に対する圧力が非常に強かったとみている。

 日本政府は、日韓共通の同盟国である米国と課題意識を共有してきた。外交・安保関係者の間では、GSOMIAの破棄で最も影響を受けるのは米国だとの見方が強いからだ。外務省関係者は「首相はトランプ氏に対し、いかに韓国の対応がおかしいかを繰り返し説明してきた」と明かす。

 さまざまなレベルでの働きかけの結果、GSOMIAの破棄は米韓の問題でもあるとして「米国から韓国にガンガン言ってもらう」(外務省関係者)形に持ち込むことに成功した。

 文在寅政権は強気の言動を繰り返していたが、日本側のぶれない姿勢と米国の強い圧力を前に、実際は「追い詰められていた」(官邸関係者)とみられる。

 首相は22日夜、森喜朗元首相らと東京都内で会食した。出席者によると、首相はGSOMIAの失効回避について「よかった」と話していたという。(産経新聞 原川貴郎)


【私の論評】とうとう韓国のバランス外交の失敗が表沙汰に!日本も習近平を国賓として招けば同じような目をみることに(゚д゚)!

今回のGSOMIAの失効回避は、韓国のいわゆるバランス外交が失敗したことが露呈したと捉えるべきと思います。このバランス外交とは、なにかといえば、米と中国の間をうまくバランスをとり自国に有利になるようにする外交という言う意味です。

無論このバランス外交は成功事例もあるのですが、なかなかうまくいかないという現実があります。

韓国がいつからバランス外交的妄想に憑りつかれたのかといえば、後で述べるように髄分昔からですが、最近では記憶する限り盧武鉉大統領時代ではないかと思います。

それまで韓国は米国の忠実な同盟国として振る舞ってきたのですが、盧武鉉は強烈な反日、反米論者として登場しました。その親北姿勢は米国をハラハラさせる傍ら、彼が断固として宣言した外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大なものでした。

バランサーというのは米中とも韓国を敵に廻しては不利になるほど強力である必要があります。盧武鉉はイラク戦争に3260人もの軍隊を派遣したのですが、軍事同盟国の米国側からすれば、韓国が引き揚げれば困るほどの数ではありませんでした。

中国に対しては経済的接近を図る反面、米・日とは距離を置く路線を採りました 。米・中間のバランサーというからには当然の路線かもしれません。この路線を引き継いだのが朴槿恵大統領であり、盧泰愚政権時代に、民情首席を努めた現在の文在寅大統領です。


文在寅(左)と盧泰愚(右)

朴槿恵は、韓国がバランサーであるためには、近辺の日本ごときは「歴史を顧みない不道徳国家である」と欧米に“告げ口”して廻ることからバランス外交を始めました。しかし中韓は別にして首脳が悪口を言って廻る国家が尊敬されるはずもありません。

朴槿恵氏は外交路線として「安全保障は米国と手を携え」、「経済は中国を重視する」と称しました。メディアは「安米経中」と名付けましたが、朴氏は自らが引けば米も中も困ると考えたのでしょう。

「自らを小国と考えてはいけない。それは敗北主義だ」と強調しました。米欧と一回りしたあと15年、中国のコケ脅しのような軍事パレードに参加を強行しました。たまたま米韓の間で「高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備するのが懸案となっていました。

渋る韓国に米国が怒り、はっきり断れない韓国に中国が怒ったのです。この兵器は北朝鮮の攻撃に対して極めて有効ですが、同時に中国の攻撃をも防ぐことができます。防衛兵器の配備一つを巡っても、韓国のバランス外交は成り立たないのです。

韓国外交のどこが間違ったかは明瞭です。どこかの国と防衛条約を結んだら、敵と見做す相手国との付き合いには不都合が起こるということです。

告げ口外交を展開した朴槿恵韓国大統領(左)と、オバマ米大統領(右)

朴槿恵の弾劾・罷免の後、大統領になったのが文在寅であり、分在寅の外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大な、盧泰愚のそれを引き継いだものでした。

そのためか、朴槿恵よりもさらに大きなレベルで、バランス外交を推し進めようとしました。日本に対しても朴槿恵のような告げ口外交どころか、GSOMIA破棄を大統領選の選挙公約とし、その後も海自の哨戒機に対するレーザー照射、慰安婦問題の蒸し返し、徴用工裁判なとで、日本に対する対立姿勢を顕にしました。

挙げ句の果に、本当にGSOMIAを破棄しようとしたのですが、日本からは無視され、米国からはとてつもない圧力をかけられました。そのため、破棄はやめたのですが、これは韓国外交の完全敗北であるにもかかわらず、今回破棄は撤回するがいつでも破棄できると国内に宣伝中という有様です。

これは、結局のところ、韓国のバランス外交の失敗が表沙汰になったということです。いままでも、失敗は数多あるのですが、それでもなんとなく隠すことができました。特に、韓国内では隠蔽することができました。しかし、今回ばかりはさすがに隠蔽できないようです。

韓国のバランス政策は、最近始まったものではありません。李氏朝鮮第26代国王、後に大韓帝国初代皇帝となった高宗の政策は、外国を利用して他の国を抑え、自国は戦わずに安全を図る「以夷制夷(いいせいい)」というものでした。これは、現在でいえばバランス外交です。

清国の勢力が優勢となると対ロ接近を図り、第1、2次朝露密約(85、86年)を結びました。日清戦争(94年)後には再びロシアに接近しました。これは清国に代わり勢力を拡大した日本のけん制が狙いでした。しかし、これは結局失敗したのは、周知の通りです。

李氏朝鮮第26代国王、後に大韓帝国初代皇帝となった高宗

朝鮮半島では、古代にもバランス外交をしていたという史実が残っています。しかし、バランス外交はいずれの時代も成功を収めた事例はありません。にもかかわらず、現在の韓国でもなぜバランス外交を信奉しようとするのでしょうか。理解し難いところがあります。

しかし、文在寅氏、盧武鉉氏や朴槿恵氏を笑ってはいけないです。日本の政権与党である自民党にも、かつては日米、日中と“等距離外交”をすると豪語していた三木武夫首相がいました。

福田赳夫首相は“全方位外交”と称していました。その後も中国と太い人脈を繋げておけば、いざという時に役に立つと信じる党首脳がいたものでした。谷垣禎一氏や岸田文雄外相が属する宏池会は経済重視主義で中国側を向いていましたた。

日本は中国と太い人脈を繋げておいたはずなのに、その後ごく最近まで、日中関係表向きも、裏でもかなり悪化していました。

さらに、最近では中国は表では、日本に対する擦り寄り試製をみせています。これは、当然のことながら、米国から直接冷戦を挑まれていることや、香港問題が激化しているため、この時期に対日関係まで悪くはしたくないからでしょう。

とはいいながら、裏では尖閣に対する示威行動を未だに継続しているどころかさらに激化させています。これが共産主義の本質なのです。

にもかかわらず、日本は、来年習近平を国賓として迎えることを約束しています。こんなことをすれば、米国は当然反発するでしょうし、世界に日本が中国の蛮行を認めたという誤ったメッセージを与えてしまうことになりかねません。

ただし、自民党の保守系有志議員のグループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」(代表幹事・青山繁晴参院議員)は13日、国会内で会合を開き、中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域への公船の侵入行為や香港市民に対する弾圧姿勢を改めない限り、来春予定される習近平国家主席の国賓としての来日に反対する決議文をまとめています。

しかし、これは無論与党の中でも、一部の動きであり、自民党そのものが来日に反対しているわけではありません。

日本が、来年習近平を国賓で迎え、天皇陛下に謁見することにでもなれば、日本も米国や米国の同盟国などから、今日の韓国のような扱いを受けるようになることは必定です。韓国のように米国から大きな圧力を受けてから、迎えることをやめるよりは、自らとりやめるようにすべきです。そうすれば、中国に対してより大きな衝撃を与えることになりまり、米国や他の同盟国に好印象を与えられることになります。


【関連記事】

比、中国との合意否定 「大統領承認せず無効」―【私の論評】国家間の密約 - 歴史的事例と外交上の難しさ

比、中国との合意否定 「大統領承認せず無効」 まとめ フィリピンと中国の間で、南シナ海のアユンギン礁をめぐる密約の存在をめぐって対立が深まっている。 中国側は密約の存在を主張、フィリピン側は否定。真相は不明確で、両国の関係悪化が懸念されてる フイリピン マルコス大統領  フィリピ...